JP2023066366A - 熱輻射素子、熱輻射素子モジュール、及び熱輻射光源 - Google Patents

熱輻射素子、熱輻射素子モジュール、及び熱輻射光源 Download PDF

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【課題】従来の熱輻射素子と比較して、エネルギー効率を高めること。【解決手段】熱輻射素子(1)は、第1主面(主面14b)及び第2主面(主面14a)を有する半導体製の基板(14)と、第1主面(主面14b)及び第2主面(主面14a)の各々に、それぞれ設けられた第1導体層(導体層15)及び第2導体層(導体層13)と、第1導体層(導体層15)の外縁領域に設けられた電極対と、を備えている。【選択図】図2

Description

本発明は、熱輻射素子に関する。また、本発明は、熱輻射素子を備えた熱輻射素子モジュール及び熱輻射光源にも関する。
近年、材料表面へ微細構造を形成することで、材料に依存しない光学特性を得る技術が広く研究されている。微細構造の1つにプラズモニック構造体があり、プラズモニック構造体の1つとして、プラズモニック完全吸収体が報告されている。プラズモニック完全吸収体は、プラズモニック構造体のうち特定の波長帯域で高い吸収率を有するものである。プラズモニック完全吸収体は、導体-絶縁体-導体が積層された共振器構造であり、MIM(metal-insulator-metal)構造とも呼ばれる。
キルヒホッフの法則によれば、不透明な媒体において放射率は吸収率に等しい。そのため、MIM構造を用いて、材料表面における放射率を制御できることも報告されている。放射率とは、実在面と黒体面との放射強度の比により表される。プランクの法則より、黒体面における熱放射が定められ、これに放射率を乗じたものが、実在面における熱放射である。なお、熱放射は、黒体やMIM構造などの物体の温度に応じて、物体の熱エネルギーが電磁波として放出される現象である。以下において、特に断りなく放射という場合、熱放射を意味する。
放射率制御に関する先行技術文献として、例えば特許文献1が挙げられる。特許文献1は、MIM構造を用いた放射率の波長制御により、狭帯域な赤外線の熱放射を行う技術である。
また、特許文献2に記載されているように、MIM構造を用いた放射率制御の技術を適用した熱放射光源が知られている。特許文献2は、表層に酸化を抑制する層を用いることで、大気中で動作させた場合に生じ得るMIM構造の酸化を抑制する技術である。
ところで、特許文献1の図1の(b)及び特許文献2の図1に示されているように、MIM構造は、基板(特許文献1においては下地)上に積層されている。以下において、基板と、基板上に積層されたMIM構造とをまとめて熱輻射素子と称する。
このような熱輻射素子を用いて熱放射を利用するためには、MIM構造を所定の動作温度へ加熱することが必須である。動作温度が高いほど、熱放射の強度は高くなる上、短波長側の輻射を放射する。温度とは熱エネルギーの収支である。熱エネルギーの損失量に対して投入量が多くなるほど、温度が高くなる。同じ材料が同じエネルギーを保有する時、温度上昇量は体積によって異なる。物体の温度を1℃上げるのに必要な熱エネルギーは、熱容量C[J/℃]、比熱c[J/kg・℃]、密度ρ[kg/m]、及び体積V[m]として式(1)の通りに定義される。
C=c×ρ×V ・・・(1)
特開2018-136576号公報 特開2020-64820号公報
上述した特許文献2には、熱輻射光源においてMIM構造を加熱する方法として、基板に通電することにより基板を自己発熱させる方法と、外部加熱部(例えばヒーター)を用いて基板及びMIM構造を外部加熱する方法とが記載されている。これらのいずれの方法においても、MIM構造を加熱する場合の伝熱経路は、基板を経由する。このように、MIM構造からみた場合、基板が熱源として機能する。したがって、MIM構造の温度を上述した動作温度に到達させるためには、熱源である基板の温度を動作温度以上に保つ必要がある。
基板は、MIM構造と比較して、厚みが厚いので必然的に体積が大きくならざるを得ない。すなわち、基板の熱容量Cは、MIM構造の熱容量Cよりも大きくならざるを得ない。そのため、熱源である基板を用いてMIM構造の全体を加熱する従来の方法(例えば特許文献2に記載の方法)には、エネルギー効率を高める余地がある。
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みなされたものであり、従来の熱輻射素子である特許文献2の熱輻射素子と比較して、エネルギー効率を高めることを目的とする。また、本発明の一態様は、従来よりもエネルギー効率が高い熱輻射素子を備えた熱輻射素子モジュール及び熱輻射光源を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る熱輻射素子は、第1主面及び第2主面を有する半導体製の基板と、前記第1主面及び前記第2主面の各々に、それぞれ設けられた第1導体層及び第2導体層と、前記第1導体層の外縁領域に設けられた電極対と、を備えている。
また、上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る熱輻射素子モジュールは、本発明の一態様に係る熱輻射素子と、前記熱輻射素子を収容するキャビティ、及び、前記電極対に電力を供給する電力端子が設けられた筐体と、を備えている。本熱輻射素子モジュールにおいては、前記キャビティの内部において、前記基板の少なくとも一部は、前記キャビティに対して接合部材を用いて固定されている、構成が採用されている。
また、上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る熱輻射光源は、本発明の一態様に係る熱輻射素子モジュールを備えている。
本発明の一態様によれば、従来の熱輻射素子である特許文献2の熱輻射素子と比較して、エネルギー効率を高めることができる。また、本発明の一態様によれば、従来よりもエネルギー効率が高い熱輻射素子を備えた熱輻射素子モジュール及び熱輻射光源を提供することができる。
上図は、本発明の一実施形態に係る熱輻射素子モジュールの平面図であり、下図は、同じ熱輻射素子モジュールの断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る熱輻射素子の断面図である。 図2に示した熱輻射素子を、電極対の側から見た場合に得られる平面図である。 図2に示した熱輻射素子が備えているプラズモニック完全吸収体の一部を拡大した拡大斜視図である。 図2に示した熱輻射素子の第1の変形例の断面図である。 図2に示した熱輻射素子の第2の変形例の断面図である。
〔第1の実施形態〕
本発明の一実施形態に係る熱輻射素子モジュールMについて、図1~図4を参照して説明する。図1の上図は、熱輻射素子モジュールMの平面図であり、図1の下図は、熱輻射素子モジュールMの断面図である。熱輻射素子モジュールMの平面図は、筐体20に設けられたキャビティCの開口部APを、光学窓23の主面の法線方向から平面視した場合に得られたものである。熱輻射素子モジュールMの断面図は、光学窓23の主面の法線方向に沿い、且つ、熱輻射素子1を含む断面において得られたものである。図2は、熱輻射素子1の断面図であり、図1における熱輻射素子1の部分を拡大したものである。なお、図2においては、各構成要素の厚み方向を拡大して図示している。図3は、熱輻射素子1を、電極対16の側から見た場合に得られる平面図である。図4は、熱輻射素子1が備えているプラズモニック完全吸収体10の一部を拡大した拡大斜視図である。
〔熱輻射素子モジュールの概要〕
熱輻射素子モジュールMは、図1の上図及び下図に示すように、熱輻射素子1と、筐体20と、電極パッド21,22と、光学窓23と、接合部材24と、電力端子25,26と、を備えている。
ここで、本発明の一実施形態でもある熱輻射素子1は、プラズモニック完全吸収体10と、基板14と、導体層15と、電極対16と、を備えている。また、プラズモニック完全吸収体10は、導体層13と、絶縁体層12と、導体層11と、を備えている。
熱輻射素子モジュールMは、電力端子25,26を用いてプラズモニック完全吸収体10の一部を構成する導体層13、基板14、及び導体層15に通電することによって、熱放射に起因する電磁波(具体的には、可視光、近赤外光、中赤外光、及び遠赤外光のうち少なくとも何れか)を放出する。このように、熱輻射素子モジュールMは、可視光、近赤外光、中赤外光、及び遠赤外光のうち少なくとも何れかの電磁波を出射する熱輻射光源として機能する。すなわち、熱輻射素子モジュールMを用いた熱輻射光源も本発明の範疇に含まれる。なお、熱輻射光源は、熱輻射素子モジュールMに加えて、電力端子25,26を介して熱輻射素子モジュールMに電力を供給する電源モジュールを更に備えていてもよい。
熱輻射素子モジュールMは、電力端子25,26を用いて、室温近傍の温度領域では、導体層15の面内方向に電流を流すように、また、動作温度近傍の温度領域では、導体層13,15の面内方向に電流を流すように構成されている。
導体層13,15の面内方向に流れる電流は、ジュール熱を発生させる。したがって、熱輻射素子モジュールMにおいては、その熱エネルギーを用いて熱輻射素子1を所定の動作温度まで加熱することによって、上述した電磁波を放出する。熱輻射素子1の動作温度は、プラズモニック完全吸収体10における共晶反応が進まない温度範囲内において適宜定めることができる。プラズモニック完全吸収体10が放出する光は、動作温度を高めれば高めるほどその強度が高まる。本実施形態で説明する熱輻射素子1においては、動作温度として300℃以上1200℃以下を想定している。
<基板>
基板14は、一対の主面14a,14bを有する半導体製の板状部材である。図2に示した状態では、主面14aが上側に位置し、主面14bが下側に位置する。基板14の形状は、適宜定めることができるが、長方形状又は正方形状であることが好ましい。本実施形態においては、基板14の形状として正方形を採用している。
本実施形態においては、基板14を構成する材料として、半導体の一例であるシリコンであって、抵抗率が1Ωmであるシリコンを採用している。ただし、基板14を構成する材料は、温度の上昇とともに抵抗率が低下する半導体であればよく、シリコンに限定されない。また、半導体の抵抗率は、熱輻射素子1の構成(例えば、導体層13、基板14、及び導体層15の厚み)や想定されている動作温度などに応じて適宜定めることができる。本実施形態において、基板14を構成する半導体の抵抗率は、1×10-2Ωm以上2Ωm以下であることが好ましい。また、基板14を構成する半導体の抵抗率は、規格(日本工業規格や米国材料試験協会により定められた規格など)に準拠した抵抗測定方法を用いて測定されていることが好ましい。このように、抵抗率が保証されている半導体製の基板14を用いることにより、製造された熱輻射素子1において生じ得る温度特性のばらつきを抑制することができる。また、基板14を構成する半導体にドープされているドーパントは、n型及びp型の何れであってもよい。
基板14は、室温においては、大きな抵抗率を有している。シリコンの一例である真性シリコンの場合、室温における抵抗率は、1×10Ωm程度である。したがって、後述する導体層15に通電し始めた時点では、基板14には電流が流れず、導体層15のみを電流が流れる。
基板14の抵抗率は、上述したように、温度の上昇とともに低下する。真性シリコンの場合、300℃における抵抗率は、1×10-1Ωmを下回り、400℃における抵抗率は、1×10-2Ωmを下回り、500℃における抵抗率は、1×10-3Ωm程度になる。したがって、基板14の温度が上昇すればするほど基板14の抵抗率は低下するため、電流は、導体層15のみならず導体層13も流れるようになる。
このように、後述する電極161と電極162との間には、導体層13及び導体層15からなる並列の電流路が形成されるため、電極161と電極162との間に生じる抵抗値は、導体層13の面内抵抗値と、導体層15の面内抵抗値と、基板14の面直抵抗値(導体層13と導体層15との間の抵抗値)と、を合成することにより定められる。熱輻射素子1においては、導体層13、基板14、及び導体層15の厚みを適宜調整することにより、熱輻射素子1の動作温度における電極161と電極162との間に生じる抵抗値における変化を抑制することができる。したがって、熱輻射素子1においては、電極161と電極162との間に生じる抵抗値をモニターしやすい任意の抵抗値に調整することができる。
また、熱輻射素子1においては、電極161と電極162との間に生じ得る抵抗値をモニターすることにより、プラズモニック完全吸収体10の温度を把握することができる。プラズモニック完全吸収体10が放射する電磁波のスペクトルは、プラズモニック完全吸収体10の温度に依存しているので、熱輻射素子1においては、電極161と電極162との間に生じ得る抵抗値が所定の値になるように電極対16間に供給する電流を制御することによって、所定のスペクトルを得ることができる。
以上のように、熱輻射素子1においては、電極161と電極162との間に生じる抵抗値を精度よくモニターできるので、プラズモニック完全吸収体10の温度制御を容易にできる。また、熱輻射素子1においては、プラズモニック完全吸収体10の温度をモニターするための温度計を別個に設ける必要がないため、熱輻射素子1を小型化及び低コスト化することができる。
なお、基板14の厚みt(図2参照)は、100μm以上1mm以下であることが好ましい。本実施形態では、厚みtとして200μmを採用している。
主面14aには、導体層13、絶縁体層12、及び導体層11がこの順番で積層されたプラズモニック完全吸収体10が設けられている。プラズモニック完全吸収体10については、後述する。一方、主面14bには、導体層15及び電極対16がこの順番で積層されている。導体層15及び電極対16については、後述する。主面14b及び主面14aは、それぞれ、第1主面及び第2主面の一例である。
<第1導体層>
図2及び図3に示すように、導体層15は、主面14bの全域を覆うように設けられている。本願発明の一態様において、第1導体層は、電極対が積層されている導体層を指す。したがって、導体層15は、第1導体層の一例である。導体層15は、後述する電極対16を用いて電流を面内方向に流されることによって、プラズモニック完全吸収体10及び基板14を加熱するヒーターとして機能する。したがって、導体層15を構成する導体は、銅やアルミニウムや金などと比較して高い抵抗率を有するものが好ましい。また、半導体は様々な金属と共晶合金化しやすい特性を持つ。例えば、融点が3422℃のタングステンは650℃以下でシリコンと共晶反応を示し、抵抗率が変化する。したがって、導体層15を構成する導体は、半導体と共晶反応する温度の高いものが好ましい。導体層15を構成する好ましい導体の例としては、窒化ハフニウム(HfN)、窒化チタン(TiN)、及びモリブデン(Mo)が挙げられる。
<電極対>
図2及び図3に示すように、電極対16を構成する電極161,162は、導体層15の主面のうち基板14と逆側の主面(図2においては下側の主面)である主面15aに、設けられている。
導体層15の全域に電流を流すために、電極161,162は、導体層15の外縁領域に設けられている。導体層15の外縁領域とは、導体層15を形成する4辺に沿った環状の領域である。より具体的には、電極161,162は、基板14と同様に正方形である導体層15の一対の対辺(図3においては左側及び右側に位置する一対の対辺)に沿って設けられている。電極161,162は、帯状あるいは長方形の導体パターンである。電極161は、図3において左側に位置する辺に沿って設けられており、電極162は、図3において右側に位置する辺に沿って設けられている。
本実施形態では、電極161,162として、主面15aの上に、チタン(Ti)、プラチナ(Pt)、及び金(Au)をこの順番で積層したTi/Pt/Auの3層膜を用いている。各層の厚みは、適宜定めることができるが、本実施形態では、Ti及びPtの厚みを30nmとし、Auの厚みを500nmとしている。
電極161,162の各々に、それぞれ極性が異なる配線を接続し電力を供給することによって、電極161,162の何れか一方から他方に向かって電流が流れる。すなわち、導体層15には、主面15aの面内方向に電流が流れる。したがって、導体層15の主面15aに設けられた電極161,162は、導体層15の主面の面内方向に電流を流す電極の一例である。
なお、本実施形態においては、電極161,162として、上述したように多層膜の一例であるTi/Pt/Auの3層膜を用いている。ここで、Ti/Ptの各層は、下地層として機能し、Auの層は、主たる導電層として機能する。下地層のTi層は、導体層15に対する電極161,162の密着性を高め、導体層15と電極161,162との間に生じ得る接触抵抗を低減する。また、下地層のPt層は、Au層とTi層との間で生じ得る拡散を防止あるいは抑制し、電極の抵抗変化を抑制する。ただし、下地層の構成は、Ti/Ptに限定されない。下地層の構成は、単層膜であってもよし、3層以上の多層膜であってもよい。また、主たる導体層として機能するAuの代わりに異なる金属を用いることもでき、例えばAgや、Agを主成分とした合金などを用いることができる。また、電極161,162においては、Ti/Ptの下地層を省略し、Auの単層膜を採用することもできる。電極161,162の各々の構成は、上述した例に限定されず、導電率の高さや、反応性の低さや、融点の高さなどを考慮して適宜定めることができる。
<プラズモニック完全吸収体>
熱輻射素子1が備えているプラズモニック完全吸収体10は、図4に示すように、導体層11と、絶縁体層12と、導体層13とを備えている。導体層11は、第3の導体層の一例であり、導体層13は、第2導体層の一例である。基板14の主面14a上には、導体層13、絶縁体層12、及び導体層11がこの順番で積層されている。
(第2導体膜)
導体層13は、基板14の一方の主面(図2においては上側の主面)である主面14a上に、主面14aの全域を覆うように形成された導体製の膜である。導体層13は、第2導体層の一例である。
本実施形態においては、導体層13を構成する導体として窒化ハフニウム(HfN)を採用している。ただし、導体層13を構成する導体は、HfNに限定されるものではなく、金属的な導電特性を有する材料であればよい。使用時に高温になることが想定される基材の表面上にプラズモニック完全吸収体10を形成する場合、導体層13を構成する材料は、HfNのように融点が高い材料であることが好ましい。HfNの典型的な融点は、3330℃である。加えて、導体層13を構成する材料は、HfNのように半導体と共晶反応する温度の高いものが好ましい。HfNは、1200℃以下の温度領域では、シリコンと共晶反応を示さない。
なお、主面14aのうち導体層13を形成する領域は、主面14aの全部であってもよく、主面14aの一部であってもよく、適宜定めることができる。本実施形態では、主面14aの全面に導体層13を形成している。
本実施形態においては、導体層13の厚みt13(図2参照)として140nmを採用している。ただし、厚みt13は、140nmに限定されるものではなく、例えば、10nm以上10μm以下の範囲内において適宜定めることができる。なお、厚みt13は、特許請求の範囲に記載の厚みt1の一例である。
(絶縁体膜)
絶縁体層12は、導体層13の主面のうち基板14と逆側の主面(図2においては上側の主面)である主面13aに、少なくとも主面13aの一部を覆うように形成された絶縁体製の膜である。本実施形態において、絶縁体層12は、図2に示すように、主面13aの全域を覆うように設けられている。ただし、主面13aのうち絶縁体層12を設ける領域は、主面13aの全域であってもよく、主面13aの一部であってもよく、適宜定めることができる。
なお、本実施形態においては、厚みが均一なベタ膜である絶縁体層12が形成されている。ただし、絶縁体層12は、複数の導体パターン111が形成される領域にのみ形成されていてもよい。すなわち、絶縁体層12は、導体層11と同様に、周期的に配置された複数の導体パターンであって、各々が円形状又は正多角形状である複数の導体パターンにより構成されていてもよい。
本実施形態においては、絶縁体層12を構成する材料としてSiOを採用している。ただし、絶縁体層12を構成する材料は、絶縁体であればよく、SiOに限定されるものではない。このような材料の例としては、絶縁性の酸化物が挙げられる。なお、使用時に高温になることが想定される基板14の主面14a上にプラズモニック完全吸収体10を形成する場合、絶縁体層12を構成する材料は、SiO、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、及び、SiOとAlとの混合物の何れかであることが好ましい。
本実施形態においては、絶縁体層12の厚みt12(図2参照)として180nmを採用している。ただし、厚みt12は、180nmに限定されるものではなく、例えば、10nm以上10μm以下の範囲内において適宜定めることができる。
(第3導体層)
導体層11は、絶縁体層12の主面のうち絶縁体層12と逆側の主面(図2においては上側の主面)である主面12aの全域に亘って形成されている。ただし、主面12aのうち導体層11を設ける領域は、主面12aの全域であってもよく、主面12aの一部であってもよく、適宜定めることができる。導体層11は、第3導体層の一例である。このように、上述した絶縁体層12と、導体層11とは、第2導体層の一例である導体層13の主面13aに、この順番で積層されている。
導体層11は、各々が円形状である複数(図4においては9個)の導体パターン111からなる。ただし、各導体パターン111の形状は、円形状に限定されるものではなく、正多角形状であってもよい。当該正多角形状の好ましい例としては、正六角形状が挙げられる。
なお、符号111は、複数の導体パターン111のうち1つの導体パターン111のみに付している。図4に示すように、複数の導体パターン111は、主面12a上に、2次元的に、且つ、周期的に配置されている。本実施形態においては、図4に示すように、導体パターン111の周期的な2次元配置として正方配置を採用している。ただし、この周期的な2次元配置は、正方配置に限定されるものではなく、例えば、六方配置であってもよい。
本実施形態においては、導体層11の各導体パターン111を構成する導体として窒化ハフニウム(HfN)を採用している。ただし、各導体パターン111を構成する導体は、HfNに限定されるものではなく、金属的な導電特性を有する材料であればよい。この点について、各導体パターン111を構成する導体は、導体層13を構成する導体と同じである。
また、本実施形態においては、導体層11の厚みt11(図2参照、すなわち各導体パターン111の厚み)として40nmを採用している。ただし、厚みt11は、40nmに限定されるものではなく、例えば、10nm以上10μm以下の範囲内において適宜定めることができる。なお、厚みt11は、特許請求の範囲に記載の厚みt3の一例である。
また、導体層13の厚みt13、及び、導体層11の厚みt11は、t13>1.5×t11の関係を満たす、ことが好ましい。厚みt11は、第3導体層の厚みt3の一例であり、厚みt13は、第1導体層の厚みt1の一例である。
<筐体>
筐体20は、直方体状のブロックである。本実施形態において、筐体20を構成する材料は、セラミックの一例であるアルミナである。ただし、筐体20を構成するセラミックは、アルミナに限定されるものではなく、適宜選択することができる。また、筐体20を構成する材料は、セラミックに限定されるものではなく、金属や合金であってもよいし、樹脂などの有機化合物であってもよい。ただし、筐体20を構成する材料は、熱輻射素子1の動作温度を150℃以上に設定する場合、金属、合金、及びセラミックの何れかであることが好ましい。
筐体20の一対の主面のうち、図1に示した状態において上側に位置する主面を主面20aと称し、図1に示した状態において下側に位置する主面を主面20bと称する。主面20aには、キャビティCが形成されている。キャビティCの深さは、筐体20の厚みよりも薄い。したがって、キャビティCは、主面20bまでは貫通していない。
キャビティCは、2つのサブキャビティC1,C2により構成されている。
サブキャビティC1は、主面20aに近い領域(すなわち浅い領域)に形成されている。サブキャビティC2は、サブキャビティC1と比較して、主面20aから遠い領域(すなわち深い領域)に形成されている。サブキャビティC1の開口部APは、平面視した場合に、熱輻射素子1を包含することができるように、そのサイズを定められている。なお、図1の上図には符号APを明記しているが、図1の下図ではAPの図示を省略している。
一方、サブキャビティC2の開口部であって、サブキャビティC1の底面に形成された開口部は、平面視した場合に、熱輻射素子1により包含されるように、そのサイズを定められている。このように構成されたキャビティCは、階段状に形成されている。
キャビティCのうちサブキャビティC1には、熱輻射素子1が収容されている。また、サブキャビティC1の底壁には、電極161,162と一部分で接する電極パッド21及び22が設けられている。熱輻射素子1において、基板14の一部を構成する電極161,162の各々は、それぞれ、サブキャビティC1の底壁に設けられた電極パッド21,22に対して、導電性を有する接合部材を用いて固定されている。すなわち、電極161,162の各々は、それぞれ、電極パッド21,22と導通している。
なお、電極パッド21,22は、電極161,162に電力を提供すると同時に、熱輻射素子1において生じる熱エネルギーを筐体20側へ伝導させてしまう。この熱伝導に伴う筐体20の加熱を抑制するために、電極パッド21,22と電極161,162との接触面積は、狭い方が好ましい。一方、この接触面積を狭くしすぎてしまうと、電極パッド21,22と電極161,162との接触抵抗が大きくなりなりすぎてしまう。この接触面積は、熱輻射素子1から筐体20への熱伝導の大きさと、電極パッド21,22と電極161,162との接触抵抗の大きさとに鑑みて、適宜設定することができる。
本実施形態では、接合部材として焼結型接合材の銀(Ag)ペーストを採用している。焼結型の銀ペーストは、200℃程度まで加熱することにより、対象物同士を無加圧状態で接合することができる。本実施形態で用いている銀ペーストは、焼結された場合に、熱輻射素子1の動作温度(例えば300℃以上900℃以下の何れかの温度)に耐える耐熱性をもっているので、接合部材として好ましい。なお、図1の下図においては、接合部材の図示を省略している。
このように、熱輻射素子1は動作温度が高いので、エネルギー効率を高めるためには、熱輻射素子1から筐体20へ熱が伝導することにより散逸する熱エネルギーを抑制することが好ましい。熱輻射素子モジュールMにおいては、サブキャビティC1に加えてサブキャビティC2が筐体20に形成されていることによって、熱輻射素子1と筐体20との間に生じ得る熱伝導のパスを限定することができる。
なお、本実施形態においては、電極161,162の各々の一部に、それぞれ、電極パッド21,22が接触するように構成されている。電極161,162と電極パッド21,22との接触面積を限定することによって、電極パッド21,22と電極161,162との間に熱伝導のパスを限定することができる。
図1の下図に示すように、筐体20には、電力端子25,26が設けられている。電力端子25は、筐体20の外部から内部へ引き込まれている。そのうえで、電力端子25の先端は、電極パッド21に導通している。同様に、電力端子26は、筐体20の外部から内部へ引き込まれている。そのうえで、電力端子26の先端は、電極パッド22に導通している。なお、電力端子25,26の各々を筐体20の内部に引き込んでいる部分は、密閉性を保つように封止されている。
図1の上図及び下図に示すように、開口部APは、光学窓23により覆われている。光学窓23を構成する材料は、透光性を有し、且つ、筐体20が達する温度(例えば270℃以下の何れかの温度)に耐える耐熱性をもっていることが好ましく、本実施形態では、ホウケイ酸ガラス製の板状部材を採用している。
光学窓23は、接合部材24を用いて筐体20の主面20aに接合されている。本実施形態では、接合部材24として金(Au)錫(Sn)はんだを用いている。すなわち、開口部APは、光学窓23により封止されている。
また、熱輻射素子モジュールMにおいては、キャビティCの内部の圧力がキャビティCの外部の圧力(例えば大気圧)よりも低くなるように構成されている。この構成は、例えば、大気圧よりも減圧された減圧環境下においてキャビティCを封止することによって実現できる。キャビティCの内部の圧力は、限定されないが、1×10Pa以下であることが好ましく、1×10Pa以下であることがより好ましい。キャビティCの内部の圧力が低ければ低いほど、キャビティCの断熱性を高めることができる。
〔まとめ〕
本発明の一態様である熱輻射素子1は、第1主面の一例である主面14b及び第2主面の一例である主面14aを有する半導体製(本実施形態ではシリコン製)の基板14と、第1主面(主面14b)及び第2主面(主面14a)の各々に、それぞれ設けられた第1導体層(導体層15)及び第2導体層(導体層13)と、第1導体層(導体層15)の外縁領域に設けられた電極対16と、を備えている。
この構成によれば、プラズモニック完全吸収体10が動作温度に到達している状態においては、基板14の抵抗率が減少しているので、導体層15に加えて導体層13を熱源として用いる。このように、プラズモニック完全吸収体10の一部を構成する導体層13を直接熱源として利用することができるので、熱輻射素子1は、従来の熱輻射素子である特許文献2の熱輻射素子と比較して、エネルギー効率を高めることができる。
また、熱輻射素子1においては、電極161と電極162との間に生じ得る抵抗値を、導体層13及び導体層15の各々の面内抵抗値に加えて、基板14の面直抵抗値(導体層13と導体層15との間の抵抗値)を用いて合成することになる。したがって、電極161と電極162との間に生じ得る抵抗値を、導体層13及び導体層15の各々の面内抵抗値と関係なく、モニターしやすい任意の抵抗値に設定することができる。
したがって、熱輻射素子1においては、電極161と電極162との間に生じる抵抗値を精度よくモニターできるので、プラズモニック完全吸収体10の温度制御を容易にできる。
また、熱輻射素子1においては、プラズモニック完全吸収体10の温度をモニターするための温度計を別個に設ける必要がないため、熱輻射素子1を小型化及び低コスト化することができる。
また、熱輻射素子1は、第2導体層(導体層13)の表面(本実施形態においては、導体層13の主面13a)に、順番に積層された絶縁体層12及び第3導体層(導体層11)であって、第2導体層(導体層13)と共に(本実施形態においては導体層13と共に)、プラズモニック完全吸収体10を構成する絶縁体層12及び第3導体層(導体層11)と、を更に備えている。
この構成によれば、プラズモニック完全吸収体の各パラメータを適宜設定することにより、熱輻射素子1が放射する電磁波のスペクトルを制御することができる。
なお、図5を参照して後述するように、熱輻射素子1の一変形例は、第1導体層(導体層15)の表面である主面15aに、順番に積層された絶縁体層12A及び第3導体層(導体層11A)であって、第1導体層(導体層15)と共にプラズモニック完全吸収体10Aを構成する絶縁体層12A及び第3導体層(導体層11A)と、を更に備えていてもよい。すなわち、プラズモニック完全吸収体は、第2導体層(導体層13)側に設けられていてもよいし、第1導体層(導体層15)側に設けられていてもよい。
また、熱輻射素子1においては、第3導体層(導体層11)は、2次元的に、且つ、周期的に配置された複数の導体パターン111であって、各々が円形状又は正多角形状である複数の導体パターン111からなる、構成が採用されている。
この構成によれば、複数の導体パターン111の大きさ及び周期的な配置を調整することによって、プラズモニック完全吸収体10から放出される光の波長域を調整することができる。
また、熱輻射素子1においては、第1導体層(導体層15)及び第2導体層(導体層13)のうち、絶縁体層12及び第3導体層(導体層11)とともにプラズモニック完全吸収体10を構成する導体層(導体層13)の厚みt1(t13)、及び、第3導体層(導体層11)の厚みt3(t11)は、t1>1.5×t3(t13>1.5×t11)の関係を満たす、構成が採用されている。
この構成によれば、導体層13の抵抗値を適度に低くすることができるため、導体層13に大きな電流を流しやすくなる。したがって、導体層13において生じる熱エネルギーを大きくすることができる。
また、熱輻射素子1においては、第1導体層(導体層15)及び第2導体層(導体層13)のうち、絶縁体層12及び第3導体層(導体層11)とともにプラズモニック完全吸収体10を構成する導体層(本実施形態においては導体層13)と、第3導体層(導体層11)とは、HfNにより構成されている、構成が採用されている。
HfNは、融点が高いことに加え、半導体との共晶反応が進みにくいことで知られている。そのため、この構成によれば、基板14を構成する半導体との間において進み得る共晶反応を抑制することができる。したがって、熱輻射素子1の動作温度を高めることができる。
熱輻射素子1においては、絶縁体層12は、SiO、Al、及びAlNのうち少なくとも何れかにより構成されている、構成が採用されている。
この構成によれば、高い絶縁性を有する絶縁体層12を容易に形成することができる。
また、熱輻射素子1においては、基板14の厚みtは、100μm以上1mm以下である、構成が採用されている。
この構成によれば、電極161と電極162との間に生じ得る抵抗値をモニターしやすい任意の抵抗値に設定することができる。
また、熱輻射素子1においては、基板14は、シリコン製である、構成が採用されている。
この構成によれば、基板14のコストを抑制することができる。また、ドーパントのドープ量と基板の厚さとを適宜設定することによって、基板14の面直抵抗値を容易に調整することができる。
本発明の一態様である熱輻射素子モジュールMは、熱輻射素子1と、熱輻射素子1を収容するキャビティC、及び、電極対である電極161,162に電力を供給する電力端子25,26が設けられた筐体20と、を備えている。熱輻射素子モジュールMにおいては、キャビティCの内部において、基板14の少なくとも一部は、キャビティCに対して接合部材を用いて固定されている、構成が採用されている。具体的には、電極161,162の各々は、それぞれ、電極パッド21,22の各々に対して接合部材(焼結型の銀ペースト)を用いて固定されている。
このように構成された熱輻射素子モジュールMは、熱輻射素子1と同様の効果を奏する。また、熱輻射素子モジュールMを構成する熱輻射素子は、熱輻射素子1に限定されず、図5に図示する熱輻射素子1Aであってもよいし、図6に図示する熱輻射素子1Bであってもよい。熱輻射素子1A,1Bについては、後述する。
熱輻射素子モジュールMにおいては、キャビティCの開口部APを平面視した場合(図1の上図参照)に、開口部APは、熱輻射素子1を包含しており、開口部APは、透光性を有する光学窓23により封止されており、キャビティCの内部の圧力は、キャビティCの外部の圧力よりも低い、構成が採用されている。
この構成によれば、キャビティCの内部の圧力が外部の圧力以上である場合と比較して、キャビティCの断熱性を高めることができるので、導体層13により生じた熱エネルギーがキャビティCの外部へ散逸するのを低減することができる。したがって、熱輻射素子モジュールM全体としてもエネルギー効率を高めることができる。
また、熱輻射素子モジュールMにおいては、導体層13及び導体層15が生成する熱エネルギーを用いて熱輻射素子1を所定の動作温度まで加熱することによって、熱放射に起因する電磁波(具体的には、可視光、近赤外光、中赤外光、及び遠赤外光のうち少なくとも何れか)を放出する。このように、熱輻射素子モジュールMは、可視光、近赤外光、中赤外光、及び遠赤外光のうち少なくとも何れかの電磁波を出射する熱輻射光源として機能する。すなわち、熱輻射素子モジュールMを備えた熱輻射光源も本発明の範疇に含まれる。
なお、ここでは、図1及び図2に図示した熱輻射素子1を用いて本願発明の一態様が奏する効果を説明した。ただし、上述した熱輻射素子1の効果は、後述する熱輻射素子1A,1Bにおいても同様に得られる。
〔第1の変形例〕
熱輻射素子1の第1の変形例である熱輻射素子1Aについて、図5を参照して説明する。図5は、熱輻射素子1における図2に対応する断面図であって、熱輻射素子1Aの断面図である。
図2に示す熱輻射素子1において、プラズモニック完全吸収体10は、導体層13及び導体層15のうち電極対16が設けられていない側の導体層である導体層13の側に設けられている。すなわち、導体層13は、絶縁体層12及び導体層11と共にプラズモニック完全吸収体10を構成する。
一方、本変形例の熱輻射素子1Aにおいて、プラズモニック完全吸収体10Aは、導体層13及び導体層15のうち電極対16Aが設けられている側の導体層である導体層15の側に設けられている。すなわち、導体層15は、絶縁体層12A及び導体層11Aと共にプラズモニック完全吸収体10を構成する。なお、プラズモニック完全吸収体10Aを構成する絶縁体層12A及び導体層11Aは、プラズモニック完全吸収体10Aを構成する絶縁体層12及び導体層11と同一に構成されている。したがって、本変形例では、その説明を省略する。
以上のように、本発明の一態様において、基板14の主面14a及び主面14bの各々に設けられた導体層のうち、電極対16が設けられた導体層を第1導体層とし、電極対16が設けられていない導体層を第2導体層として、プラズモニック完全吸収体は、第1導体層側(主面14b側)に設けられていてもよいし、第2導体層側(主面14a側)に設けられていてもよい。
〔第2の変形例〕
熱輻射素子1の第2の変形例である熱輻射素子1Bについて、図6を参照して説明する。図6は、熱輻射素子1における図2に対応する断面図であって、熱輻射素子1Bの断面図である。
図2に示す熱輻射素子1においては、基板14の一方の主面(図2においては主面14a)側に設けるメタサーフェス構造の一例としてプラズモニック完全吸収体を採用している。
一方、本変形例の熱輻射素子1Bにおいては、基板14Bの一方の主面(図6においては主面14Ba)側に設けるメタサーフェス構造の一例として、ナノスケールの凹凸構造を採用している。メタサーフェス構造としてナノスケールの凹凸構造を採用することにより、プラズモニック完全吸収体を採用する場合よりも放射する電磁波の帯域を広帯域化することができる。
なお、熱輻射素子1Bにおいて、ナノスケールの凹凸構造は、主面14Bbに形成されていてもよい。
本発明の一実施例である熱輻射素子1について以下に説明する。本実施例では、熱輻射素子として、図2に示した熱輻射素子1の構成を採用し、各構成要素を以下の通り設計した。
基板14として、シリコン製であり、厚みtが200μmであり、1辺の長さが5mmの正方形である板状部材を採用した。このシリコンの室温における抵抗率は、1Ωmであった。
導体層15として、厚みt15が140nmであるHfN膜を採用した。
導体層13として、厚みt13が140nmであるHfN膜を採用した。
絶縁体層12として、厚みt12が180nmであるSiO膜を採用した。
導体層11として、厚みt11が40nmであるHfN膜を採用した。また、導体層11を構成する複数の導体パターン111の形状として、直径が400nmである円形状を採用した。また、複数の導体パターン111の周期的な配置として、周期が650nmである正方配置を採用した。
電極161,162の各々として、厚みが500nmであるAu膜を採用した。また、電極161,162の各々を平面視した場合の形状として、幅が500μmであり、長さが5mmである長方形を採用した。
本実施例で採用したHfNの電気抵抗率は、約1×10-3(Ω・mm)であり、本実施例で採用したSiOの電気抵抗率は、約1×1015(Ω・mm)である。また、本実施例の熱輻射素子1Aにおいて、プラズモニック完全吸収体10Aの厚みは、合計で340nmである。
本実施例においては、熱輻射素子1の動作温度の一例として350℃以上500℃以下を採用し、電極161と電極162との間に生じる抵抗値を調べた。ここでは、電極161と電極162との間に印加する電圧を5Vに固定し、電極161と電極162との間に流れる電流を調べた。その結果、電極161と電極162との間に生じる抵抗値は、350℃、400℃、450℃、及び500℃の各々において、それぞれ、6.3Ω、5.3Ω、4.6Ω、及び4.3Ωであった。
このように、熱輻射素子1においては、温度の上昇に伴い、導体層13及び導体層15を構成するHfNの抵抗率が微増するものの、基板14を構成するシリコンの抵抗率が減少する。そのため、温度の上昇に伴い、電極161と電極162との間に生じる抵抗値は減少していった。
また、本実施例では、熱輻射素子1が放射する電磁波のスペクトルを測定し、1.0μm以上2.0μm以下の近赤外光を安定して放出することを確認した。すなわち、本実施例の熱輻射素子1は、動作温度として350℃以上500℃以下を採用した場合に、1.0μm以上2.0μm以下の近赤外光を安定して放出する熱輻射光源として好適に利用できることが分かった。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
M 熱輻射素子モジュール
1 熱輻射素子
10 プラズモニック完全吸収体
11 導体層(第3導体層)
111 導体パターン
12 絶縁体層
13 導体層(第2導体層)
14 基板(半導体製の基板)
14a 主面(第2主面)
14b 主面(第1主面)
15 導体層(第1導体層)
16 電極対
20 筐体
C キャビティ
AP 開口部
21,22 電極パッド
23 光学窓
24 接合部材
25,26 電力端子

Claims (12)

  1. 第1主面及び第2主面を有する半導体製の基板と、
    前記第1主面及び前記第2主面の各々に、それぞれ設けられた第1導体層及び第2導体層と、
    前記第1導体層の外縁領域に設けられた電極対と、
    を備えている熱輻射素子。
  2. 前記第1導体層又は前記第2導体層の表面に、順番に積層された絶縁体層及び第3導体層であって、前記第1導体層又は前記第2導体層と共にプラズモニック完全吸収体を構成する絶縁体層及び第3導体層を更に備えている、
    請求項1に記載の熱輻射素子。
  3. 前記第3導体層は、2次元的に、且つ、周期的に配置された複数の導体パターンであって、各々が円形状又は正多角形状である複数の導体パターンからなる、
    請求項2に記載の熱輻射素子。
  4. 前記第1導体層及び前記第2導体層のうち、前記絶縁体層及び第3導体層とともに前記プラズモニック完全吸収体を構成する導体層の厚みt1、及び、前記第3導体層の厚みt3は、t1>1.5×t3の関係を満たす、
    請求項3に記載の熱輻射素子。
  5. 前記第1導体層及び前記第2導体層のうち、前記絶縁体層及び前記第3導体層とともに前記プラズモニック完全吸収体を構成する導体層と、前記第3導体層とは、HfNにより構成されている、
    請求項2~4の何れか1項に記載の熱輻射素子。
  6. 前記絶縁体層は、SiO、Al、及びAlNのうち少なくとも何れかにより構成されている、
    請求項2~4の何れか1項に記載の熱輻射素子。
  7. 前記基板の厚みは、100μm以上1mm以下である、
    請求項1~4の何れか1項に記載の熱輻射素子。
  8. 前記基板は、シリコン製である、
    請求項1~4の何れか1項に記載の熱輻射素子。
  9. 前記基板は、シリコン製であり、
    前記第1主面又は前記第2主面には、ナノスケールの凹凸構造が設けられている、
    請求項1に記載の熱輻射素子。
  10. 請求項1~4の何れか1項に記載の熱輻射素子と、
    前記熱輻射素子を収容するキャビティ、及び、前記電極対に電力を供給する電力端子が設けられた筐体と、を備え、
    前記キャビティの内部において、前記基板の少なくとも一部は、前記キャビティに対して接合部材を用いて固定されている、
    熱輻射素子モジュール。
  11. 前記キャビティの開口部を平面視した場合に、前記開口部は、前記熱輻射素子を包含しており、
    前記開口部は、透光性を有する光学窓により封止されており、
    前記キャビティの内部の圧力は、当該キャビティの外部の圧力よりも低い、
    請求項10に記載の熱輻射素子モジュール。
  12. 請求項10に記載の熱輻射素子モジュールを備えている、
    熱輻射光源。
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