JP2023064975A - 金属製カップの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、アルミニウム合金等からなる金属製カップの製造方法に関する。
既存の飲料用カップには陶器製、ガラス製、金属製、紙製、プラスチック製等がある。このうち、金属製、紙製、プラスチック製のカップは、陶器製やガラス製と比べて軽量であり、持ち運びに便利である。特に、アルミニウム金属製のカップは強度的にも優れており、近年では、環境への配慮からも注目されてきている。
この金属製カップを製造する方法として、特許文献1には、金属板を抜き及び絞り加工してカップを形成し、そのカップにしごき加工を施すことにより円筒状の垂直壁プリフォームを形成し(DI工程)、その開口端部を丸めてカール部を形成した後、段階的絞り処理により、カール部から底部に向けて、連続的に小さくなる直径及び異なる高さの垂直壁区画を有する垂直絞りカップを形成し、その後、テーパ状の輪郭を有するダイを用いて、垂直壁区画の各々を拡げることにより、各垂直壁区画をテーパ状側壁としたテーパ状カップを形成し、最後に、カップの底に、ドーム部を形成する、ことが記載されている。
ところで、このようなカップの成形においては、金属板を降伏点以上に塑性加工するため、大量の潤滑油が用いられる。このため、成形後に脱脂洗浄して潤滑油を除去する工程が必要になり、脱脂洗浄装置、洗浄後の缶の乾燥装置等を備えるため、設備が大掛かりになり、洗浄に使用した水の後処理も必要となる。
この点、潤滑油の使用を削減又は低減した製造方法として、特許文献2が開示されている。特許文献2に開示の方法は、樹脂被覆した金属板を用い、その樹脂被覆面に飽和炭化水素系潤滑剤を塗布した後に、絞り成形して有底円筒状の缶を形成し、その缶を加熱して、缶に付着した潤滑剤を揮発させる方法である。
しかしながら、特許文献2記載の金属缶は胴部が円筒状であるのに対して、特許文献1に記載の金属製カップは、胴部がテーパ状に形成されており、特許文献2に記載の金属缶以上に大きな加工が繰り返されるので、特許文献2記載のように単に樹脂被覆した金属板を用いるだけでは、所望の金属製カップを製造することは難しい。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、所望のテーパ形状の金属製カップを確実に製造することを目的とする。
本発明の金属製カップの製造方法は、胴部に底部より開口部に向けて拡径するテーパ面を有する金属製カップの製造方法であって、表面が樹脂層により被覆された樹脂被覆金属板を絞りしごき加工することにより有底円筒状の筒体を形成する筒体形成工程と、前記筒体の胴部に前記テーパ面を形成してテーパ筒体を成形するテーパ面形成工程とを備えるとともに、前記テーパ面形成工程より前に、前記樹脂被覆金属板又は前記筒体のいずれかの表面に、飽和炭化水素系潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布工程を有し、前記テーパ面形成工程の後に、前記テーパ筒体を前記飽和炭化水素系潤滑剤の融点以上に加熱する加熱工程を有する。
樹脂被覆金属板は、その樹脂層が有する潤滑性により、筒体形成工程の絞りしごき加工を円滑に行うことができる。しかし、この筒体形成工程での加工により樹脂層には歪が生じており、その歪が生じた状態でさらにテーパ面形成工程で筒体の胴部にテーパ面を形成すると、樹脂層が剥離するなどの不具合が生じる。
本発明の方法では、このテーパ面形成工程の前に、飽和炭化水素系潤滑剤を表面に塗布しているので、この飽和炭化水素系潤滑剤の潤滑作用によりテーパ面形成工程を円滑に行うことができ、所望の形状の金属製カップを製造することができる。そして、このテーパ面形成工程の後に、テーパ筒体を飽和炭化水素系潤滑剤の融点以上に加熱しているので、飽和炭化水素系潤滑剤を金属製カップの表面に残存させずに揮発させることができる。
本発明の方法では、このテーパ面形成工程の前に、飽和炭化水素系潤滑剤を表面に塗布しているので、この飽和炭化水素系潤滑剤の潤滑作用によりテーパ面形成工程を円滑に行うことができ、所望の形状の金属製カップを製造することができる。そして、このテーパ面形成工程の後に、テーパ筒体を飽和炭化水素系潤滑剤の融点以上に加熱しているので、飽和炭化水素系潤滑剤を金属製カップの表面に残存させずに揮発させることができる。
また、本発明の金属製カップの製造方法は、胴部に底部より開口部に向けて拡径するテーパ面を有する金属製カップの製造方法であって、表面が樹脂層により被覆された樹脂被覆金属板を絞りしごき加工することにより有底円筒状の筒体を形成する筒体形成工程と、前記筒体の胴部に前記テーパ面を形成してテーパ筒体を成形するテーパ面形成工程とを備え、前記樹脂層は、飽和炭化水素系潤滑剤が混入されおり、前記テーパ面形成工程の後に、前記テーパ筒体を前記飽和炭化水素系潤滑剤の融点以上に加熱する加熱工程を有する。
樹脂層に潤滑剤を混入させておくことにより、筒体形成工程及びテーパ面形成工程を円滑に行わせることができる。このため、前述した潤滑剤塗布工程を省略することが可能になる。なお、加熱工程を設けたことにより、加工によって樹脂層の表面ににじみ出た潤滑剤を揮発させて消失させることができるとともに、樹脂層の加工歪を除去して密着性を高めることができる。
本発明の金属製カップの製造方法において、前記加熱工程の後に、前記テーパ筒体の開口端部にエッジを含む端部を巻き込んでなるカール部を形成するカール工程を有するとよい。
カール部を有することにより、直接口を付けて飲料を飲んでも安全である。また、加熱工程を経ているので、筒体形成工程及びテーパ面形成工程により蓄積した樹脂層の歪も除去されており、密着性が向上している。このため、このカール工程で割れや剥離等が生じることが抑制される。
本発明の金属製カップの製造方法において、前記テーパ面形成工程は、前記筒体の開口部側を拡径しながら前記テーパ面を形成する方法とすることができる。また、逆に、前記筒体の底部側を縮径しながら前記テーパ面を形成することができる。
いずれの方法でもテーパ面を形成できる。この場合、筒体形成工程は既存の飲料缶やボトル缶における筒体形成設備を流用することが可能である。
いずれの方法でもテーパ面を形成できる。この場合、筒体形成工程は既存の飲料缶やボトル缶における筒体形成設備を流用することが可能である。
本発明によれば、テーパ面形成工程の前に飽和炭化水素系潤滑剤を塗布していることにより、樹脂被覆層の剥離等を生じることなく、円滑にテーパ面を形成することができ、テーパ形状の金属製カップを確実に製造することができる。
以下、本発明に係る金属製カップの製造方法の実施形態を図面を参照して説明する。
本実施形態の製造方法によって製造される金属製カップ1は、図4に示すように、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属板をプレス成形により有底筒状に形成したものであり、底部2の直径より開口部3の直径が大きく、全体として底部2から開口部3に向けて漸次拡径するテーパ状の胴部4を有し、開口部3に、エッジ部を含む端部を半径方向外方に巻き込んでなるカール部5が形成されている。この金属製カップ1の半径方向の中心を缶軸Cとする。
底部2は、凹状に湾曲したドーム部6、その外周縁に連続し、缶軸方向下方に向かうにしたがって漸次拡径する内側テーパ壁部7、内側テーパ壁部7の外周縁に連続し、金属製カップ1をテーブル等に置いたときに接地部となるリム部8、リム部8の外周端から胴部4の最下端につながるテーパ状の立ち上がり部9を連続させた形状である。
胴部4は、底部2付近と開口部3付近とに缶軸Cに沿うストレート状の円筒部11,12が形成されており、底部2から連続する下部円筒部11の上端に、わずかな範囲で下部段部13が形成されるとともに、カール部5に連続する上部円筒部12の下端にも、わずかな範囲で上部段部14が形成され、これら下部段部13の上端と上部段部14の下端との間が、下方から上方に向けて漸次直径が大きくなるテーパ面15aを有するテーパ筒部15に形成されている。
この金属製カップ1の諸寸法は必ずしも限定されるものではないが、例えば、カール部の直径(外径)D1が75mm以上100mm以下、接地部の直径D2が45mm以上60mm以下、全体の高さH1が80mm以上180mm以下、ドーム部6の深さH2が1mm以上15mm以下、下部円筒部11の直径D3が50mm以上70mm以下、上部円筒部12の直径D4が70mm以上95mm以下、底面から下部段部13の下端までの高さH3が8mm以上25mm以下、カール部5の上端から上部段部14の上端までの長さH4が8mm以上20mm以下、水平面に対するテーパ筒部15の角度θが80°以上85°以下に形成される。
次に、このような形状の金属製カップ1の製造方法の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
金属製カップ1は、図1に示すように、材料となる樹脂被覆金属板21のコイル22を受け入れて巻き戻しながら(コイル巻き戻し工程)、その樹脂被覆金属板21の両面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布工程、潤滑剤が塗布された樹脂被覆金属板21をプレスを用いて有底円筒状の筒体31を形成する筒体形成工程と、その筒体31の内面及び外面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布工程、筒体31の胴部32に底部側より開口部側の外径が大きいテーパ面15aを形成してテーパ筒体41を成形するテーパ面形成工程、テーパ筒体41を加熱して潤滑剤を揮発させる加熱工程、テーパ筒体41の外周面にUV印刷を施すUV印刷工程、テーパ筒体41の外周面のUV塗料に紫外線を照射して硬化させる紫外線硬化工程、検査工程及び梱包工程を経て製造、出荷される。
以下、詳細に説明する。
<第1実施形態>
金属製カップ1は、図1に示すように、材料となる樹脂被覆金属板21のコイル22を受け入れて巻き戻しながら(コイル巻き戻し工程)、その樹脂被覆金属板21の両面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布工程、潤滑剤が塗布された樹脂被覆金属板21をプレスを用いて有底円筒状の筒体31を形成する筒体形成工程と、その筒体31の内面及び外面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布工程、筒体31の胴部32に底部側より開口部側の外径が大きいテーパ面15aを形成してテーパ筒体41を成形するテーパ面形成工程、テーパ筒体41を加熱して潤滑剤を揮発させる加熱工程、テーパ筒体41の外周面にUV印刷を施すUV印刷工程、テーパ筒体41の外周面のUV塗料に紫外線を照射して硬化させる紫外線硬化工程、検査工程及び梱包工程を経て製造、出荷される。
以下、詳細に説明する。
[コイル巻き戻し工程]
コイル22として受け入れられる樹脂被覆金属板21は、図5に示すように、アルミニウム合金からなる金属板23の両面に、ポリエステルフィルム、例えばポリテトラフルオロエチレンからなる樹脂層24が形成されている。これらの厚さは限定されないが、金属板23が0.23mm以上0.30mm以下、樹脂層24が3μm以上40μm以下である。
このコイル22を巻き戻しながら、次の工程に樹脂被覆金属板2を供給する。
コイル22として受け入れられる樹脂被覆金属板21は、図5に示すように、アルミニウム合金からなる金属板23の両面に、ポリエステルフィルム、例えばポリテトラフルオロエチレンからなる樹脂層24が形成されている。これらの厚さは限定されないが、金属板23が0.23mm以上0.30mm以下、樹脂層24が3μm以上40μm以下である。
このコイル22を巻き戻しながら、次の工程に樹脂被覆金属板2を供給する。
[潤滑剤塗布工程(1)]
この潤滑剤塗布工程(1)では、コイル22から繰り出される樹脂被覆金属板21の両面に飽和炭化水素系潤滑剤を塗布する。この飽和炭化水素系潤滑剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、ペトロラタム、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エチレン-プロピレンワックス等であり、融点が35℃以上60℃以下のものが選択される。この潤滑剤を樹脂被覆金属板21の両面に、0.4mg/m2以上3.0mg/m2以上の塗布量で均一に塗布する。
なお、後述するように、目的とする金属製カップの形状や大きさ、あるいは樹脂層24の性状等によっては、この潤滑剤塗布工程を省略することが可能である。
この潤滑剤塗布工程(1)では、コイル22から繰り出される樹脂被覆金属板21の両面に飽和炭化水素系潤滑剤を塗布する。この飽和炭化水素系潤滑剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、ペトロラタム、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エチレン-プロピレンワックス等であり、融点が35℃以上60℃以下のものが選択される。この潤滑剤を樹脂被覆金属板21の両面に、0.4mg/m2以上3.0mg/m2以上の塗布量で均一に塗布する。
なお、後述するように、目的とする金属製カップの形状や大きさ、あるいは樹脂層24の性状等によっては、この潤滑剤塗布工程を省略することが可能である。
[筒体形成工程]
次に、筒体形成工程では、潤滑剤が塗布された樹脂被覆金属板21を打ち抜いて絞り加工することにより、図6(a)に示すように比較的大径で浅いカップ35を形成する絞り成形、このカップ35をしごき及び再絞り成形することにより、カップ35より小径で図6(b)に示すように所定高さの有底円筒状の筒体31を形成するしごき・再絞り成形、その筒体31の開口端部をトリミングして高さを周方向に揃えるトリミングの処理を得て、筒体31(トリミング後も筒体として同一符号を付す)が形成される。この筒体形成工程では、筒体21の底部2は、金属製カップ1の底部2の最終形状に仕上げられ、ドーム部6、リム部8等を有している。
次に、筒体形成工程では、潤滑剤が塗布された樹脂被覆金属板21を打ち抜いて絞り加工することにより、図6(a)に示すように比較的大径で浅いカップ35を形成する絞り成形、このカップ35をしごき及び再絞り成形することにより、カップ35より小径で図6(b)に示すように所定高さの有底円筒状の筒体31を形成するしごき・再絞り成形、その筒体31の開口端部をトリミングして高さを周方向に揃えるトリミングの処理を得て、筒体31(トリミング後も筒体として同一符号を付す)が形成される。この筒体形成工程では、筒体21の底部2は、金属製カップ1の底部2の最終形状に仕上げられ、ドーム部6、リム部8等を有している。
なお、通常の飲料缶に用いられている、いわゆる2ピース缶も、同様の筒体形成工程を経て製造される。この2ペース缶では、この筒体形成工程の特にしごき・再絞り成形において、ソリュブルオイルが用いられ、筒体表面がソリュブルオイルで濡れた状態に仕上げられるが、この実施形態では、金属板23の両面が樹脂層24により被覆されているとともに潤滑剤が塗布されているため、ソリュブルオイルは用いない。したがって、2ピース缶で実施されている筒体形成工程後の洗浄、乾燥工程も本実施形態では実施しない。
[潤滑剤塗布工程(2)]
次に、得られた筒体31の表面に潤滑剤を塗布する。この潤滑剤も前述した潤滑剤塗布工程(1)と同じ飽和炭化水素系潤滑剤が用いられ、筒体の内面及び外面に、0.4mg/m2以上3.0mg/m2以上の塗布量で均一に塗布される。
なお、筒体形成工程の前に潤滑剤が塗布されているため、筒体形成工程終了後にその潤滑剤が筒体31の表面に所定量残存している場合は、この筒体形成工程後の潤滑剤塗布工程(2)は省略できる。
次に、得られた筒体31の表面に潤滑剤を塗布する。この潤滑剤も前述した潤滑剤塗布工程(1)と同じ飽和炭化水素系潤滑剤が用いられ、筒体の内面及び外面に、0.4mg/m2以上3.0mg/m2以上の塗布量で均一に塗布される。
なお、筒体形成工程の前に潤滑剤が塗布されているため、筒体形成工程終了後にその潤滑剤が筒体31の表面に所定量残存している場合は、この筒体形成工程後の潤滑剤塗布工程(2)は省略できる。
[テーパ面形成工程]
次いで、筒体31の胴部32にテーパ面15aを形成する。このテーパ面形成工程では、図7に示すように、筒体31の底部2をチャック51により保持した状態で、筒体31に開口部側からパンチ52を押し込んで、筒体31の胴部32を、底部側より開口部側に向けて拡径する。チャック51による底部2の保持状態は維持したまま、外径の異なる複数のパンチ52を用いて、外径の小さい順にパンチを押し込んで、筒体31の胴部32を徐々に拡径することが行われる。この場合のパンチとしては、図示は省略するが、例えば、先端の小径部に対して大径部を形成した段付きパンチと、外周面が滑らかなテーパ面に形成されたテーパパンチとが複数の外径で用意される。そして、筒体31を段付きパンチで加工することにより、筒体31の外周面に段部を形成し、段付きパンチを筒体31から引き抜いた後、その段部をテーパパンチによって滑らかなテーパ面に形成するという加工を繰り返して、全体をテーパ面15aに形成する。あるいは、複数の外径の段付きパンチにより連続して加工することにより、筒体31の外周面に、径の異なる複数の段部を底部2から開口部にかけて多段状に形成し、その各段部を対応するテーパパンチで滑らかに整形して、全体をテーパ面15aに形成するようにしてもよい。
次いで、筒体31の胴部32にテーパ面15aを形成する。このテーパ面形成工程では、図7に示すように、筒体31の底部2をチャック51により保持した状態で、筒体31に開口部側からパンチ52を押し込んで、筒体31の胴部32を、底部側より開口部側に向けて拡径する。チャック51による底部2の保持状態は維持したまま、外径の異なる複数のパンチ52を用いて、外径の小さい順にパンチを押し込んで、筒体31の胴部32を徐々に拡径することが行われる。この場合のパンチとしては、図示は省略するが、例えば、先端の小径部に対して大径部を形成した段付きパンチと、外周面が滑らかなテーパ面に形成されたテーパパンチとが複数の外径で用意される。そして、筒体31を段付きパンチで加工することにより、筒体31の外周面に段部を形成し、段付きパンチを筒体31から引き抜いた後、その段部をテーパパンチによって滑らかなテーパ面に形成するという加工を繰り返して、全体をテーパ面15aに形成する。あるいは、複数の外径の段付きパンチにより連続して加工することにより、筒体31の外周面に、径の異なる複数の段部を底部2から開口部にかけて多段状に形成し、その各段部を対応するテーパパンチで滑らかに整形して、全体をテーパ面15aに形成するようにしてもよい。
また、このテーパ面形成工程において、材料が伸ばされるので、材料の部分的な伸びのばらつきにより、開口端縁が周方向に波打つように高さにばらつきが生じやすい。そこで、切断ツールを使ったトリミング工程により開口端部を切り取って高さを揃えた状態とする。
[カール部形成工程]
次に、テーパ面15aを形成したテーパ筒体41の開口端部に、ストレートの円筒部12´が形成されており、この円筒部12´にカール部5を形成する。この工程においても、図8に示すように、テーパ筒体41の底部2をテーパ面形成工程で用いたチャック51による保持状態が維持され、円筒部12´の開口端にカーリングツール55,56を押し付けながら周方向に旋回させることにより、テーパ筒体41の開口端部のエッジを含む端部を拡開しながら折り返して、カール部5を形成する。これにより、金属製カップ1が形成される。
次に、テーパ面15aを形成したテーパ筒体41の開口端部に、ストレートの円筒部12´が形成されており、この円筒部12´にカール部5を形成する。この工程においても、図8に示すように、テーパ筒体41の底部2をテーパ面形成工程で用いたチャック51による保持状態が維持され、円筒部12´の開口端にカーリングツール55,56を押し付けながら周方向に旋回させることにより、テーパ筒体41の開口端部のエッジを含む端部を拡開しながら折り返して、カール部5を形成する。これにより、金属製カップ1が形成される。
[加熱工程]
カール部形成工程後の金属製カップ1を100℃以上240℃以下の温度に加熱し、その到達温度に1分以上10分以下の時間保持する。先に塗布しておいた飽和炭化水素系潤滑剤は、融点が35℃以上60℃以下であるので、この加熱工程において揮発し消失する。その揮発を促進させるため、オーブンを用い、内部を通風することにより乾燥させる。
また、ここまでの工程で、金属製カップ1は筒体形成工程、テーパ面形成工程、カール部形成工程等で繰り返し加工が施されているため、樹脂層24に歪が生じており、樹脂層24が剥離するおそれがある。この加熱工程を経ることにより、樹脂層24の歪が除去され、密着性が向上する。
カール部形成工程後の金属製カップ1を100℃以上240℃以下の温度に加熱し、その到達温度に1分以上10分以下の時間保持する。先に塗布しておいた飽和炭化水素系潤滑剤は、融点が35℃以上60℃以下であるので、この加熱工程において揮発し消失する。その揮発を促進させるため、オーブンを用い、内部を通風することにより乾燥させる。
また、ここまでの工程で、金属製カップ1は筒体形成工程、テーパ面形成工程、カール部形成工程等で繰り返し加工が施されているため、樹脂層24に歪が生じており、樹脂層24が剥離するおそれがある。この加熱工程を経ることにより、樹脂層24の歪が除去され、密着性が向上する。
[UV印刷工程]
必要な場合、UV印刷工程が施される。
このUV印刷工程は、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクを用いてインクジェット印刷機により金属製カップ1の胴部4あるいは底部2の外面に製造ロット等の印刷を施す工程である。
必要な場合、UV印刷工程が施される。
このUV印刷工程は、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクを用いてインクジェット印刷機により金属製カップ1の胴部4あるいは底部2の外面に製造ロット等の印刷を施す工程である。
[紫外線硬化工程]
印刷された紫外線硬化型インクに紫外線を照射して硬化させる。
印刷された紫外線硬化型インクに紫外線を照射して硬化させる。
[検査工程]及び[梱包工程]
上記のようにして製造された金属製カップ1は、内面及び外面の外観検査等の検査工程を経て、梱包される。梱包は、一つの金属製カップ1の中に開口部3から他の金属製カップ1を底部2から挿入する操作を順次繰り返すことにより、複数の金属製カップ1をスタックした状態とし、これを梱包材により梱包して、出荷される。
上記のようにして製造された金属製カップ1は、内面及び外面の外観検査等の検査工程を経て、梱包される。梱包は、一つの金属製カップ1の中に開口部3から他の金属製カップ1を底部2から挿入する操作を順次繰り返すことにより、複数の金属製カップ1をスタックした状態とし、これを梱包材により梱包して、出荷される。
このようにして製造される金属製カップ1は、テーパ面形成工程の前に、飽和炭化水素系潤滑剤を表面に塗布しているので、この飽和炭化水素系潤滑剤の潤滑作用によりテーパ面形成工程を円滑に行うことができ、所望の形状の金属製カップを製造することができる。そして、このテーパ面形成工程の後に、テーパ筒体41を飽和炭化水素系潤滑剤の融点以上に加熱しているので、飽和炭化水素系潤滑剤を金属製カップ1の表面に残存させずに揮発させることができる。
<第2実施形態>
図2は第2実施形態の製造方法を示している。この第2実施形態では、筒体形成工程後に、筒体の外周面に印刷を施す点が第1実施形態と異なっている。
具体的には、筒体形成工程後に、加熱工程、印刷工程、焼付工程を経て、筒体の外周面に印刷される。
[加熱工程]
筒体形成工程の前に潤滑剤塗布工程(1)により飽和炭化水素系潤滑剤が塗布されている場合、筒体形成工程後に筒体31に残存する潤滑剤を揮発させる。具体的方法は、第1実施形態で説明した加熱工程と同様である。この工程では、後に印刷工程で筒体の外周面にインクを塗布するため、外周面に潤滑剤が残存しているとインクが十分に付着しないので、印刷工程の前に潤滑剤を消失させるのである。
[印刷工程]
印刷工程では、筒体31を印刷機に供給し、印刷機において筒体31をその缶軸Cを中心に回転させながら、下地塗装し、その下地塗装した後に印刷を施し、その印刷面に透明な塗膜(オーバーコート又は仕上げニス)を形成する。
[焼付工程]
印刷工程後に、筒体31をオーブン内に通して印刷層及び塗膜を焼き付け、乾燥させる。
図2は第2実施形態の製造方法を示している。この第2実施形態では、筒体形成工程後に、筒体の外周面に印刷を施す点が第1実施形態と異なっている。
具体的には、筒体形成工程後に、加熱工程、印刷工程、焼付工程を経て、筒体の外周面に印刷される。
[加熱工程]
筒体形成工程の前に潤滑剤塗布工程(1)により飽和炭化水素系潤滑剤が塗布されている場合、筒体形成工程後に筒体31に残存する潤滑剤を揮発させる。具体的方法は、第1実施形態で説明した加熱工程と同様である。この工程では、後に印刷工程で筒体の外周面にインクを塗布するため、外周面に潤滑剤が残存しているとインクが十分に付着しないので、印刷工程の前に潤滑剤を消失させるのである。
[印刷工程]
印刷工程では、筒体31を印刷機に供給し、印刷機において筒体31をその缶軸Cを中心に回転させながら、下地塗装し、その下地塗装した後に印刷を施し、その印刷面に透明な塗膜(オーバーコート又は仕上げニス)を形成する。
[焼付工程]
印刷工程後に、筒体31をオーブン内に通して印刷層及び塗膜を焼き付け、乾燥させる。
そして、第1実施形態で説明した[筒体への潤滑剤塗布工程]以降の工程を経て、金属製カップ1が製造される。
なお、第1及び第2実施形態において、筒体形成工程の前に潤滑剤塗布工程(1)を設けたが、金属板23の両面に樹脂層24が形成されているので、目的とする金属製カップの形状、大きさ等によっては、筒体形成工程の前の潤滑剤塗布工程(1)は省略することが可能である。
さらに、潤滑剤塗布工程(1)(2)と潤滑剤を2回塗布することとしたが、前述したように、筒体形成工程後にその潤滑剤が筒体の表面に所定量残存している場合は、筒体形成工程後の潤滑剤塗布工程(2)を省略することができる。
第2実施形態では、筒体形成工程前の潤滑剤塗布工程(1)を省略したときは、印刷工程前の加熱工程も不要になる。
第2実施形態では、筒体形成工程前の潤滑剤塗布工程(1)を省略したときは、印刷工程前の加熱工程も不要になる。
<第3実施形態>
上記各実施形態では飽和炭化水素系潤滑剤の塗布工程を設けたが、第3実施形態では、樹脂被覆金属板21の樹脂層24に飽和炭化水素系潤滑剤を混入しておく。
したがって、この第3実施形態では、潤滑剤塗布工程が省略され、図3に示すように、材料となる樹脂被覆金属板21のコイル22を受け入れて巻き戻しながら(コイル巻き戻し工程)、プレスを用いて有底円筒状の筒体31を形成する筒体形成工程と、筒体31の胴部32に底部側より開口部側の外径が大きいテーパ面15aを形成してテーパ筒体41を成形するテーパ面形成工程、テーパ筒体41を加熱する加熱工程、UV印刷工程、紫外線硬化工程、検査工程及び梱包工程となる。
上記各実施形態では飽和炭化水素系潤滑剤の塗布工程を設けたが、第3実施形態では、樹脂被覆金属板21の樹脂層24に飽和炭化水素系潤滑剤を混入しておく。
したがって、この第3実施形態では、潤滑剤塗布工程が省略され、図3に示すように、材料となる樹脂被覆金属板21のコイル22を受け入れて巻き戻しながら(コイル巻き戻し工程)、プレスを用いて有底円筒状の筒体31を形成する筒体形成工程と、筒体31の胴部32に底部側より開口部側の外径が大きいテーパ面15aを形成してテーパ筒体41を成形するテーパ面形成工程、テーパ筒体41を加熱する加熱工程、UV印刷工程、紫外線硬化工程、検査工程及び梱包工程となる。
この第3実施形態における加熱工程は、樹脂被覆金属板21の樹脂層24中の飽和炭化水素系潤滑剤が筒体形成工程等によって表面ににじみ出る場合があるので、その表面ににじみ出た潤滑剤を加熱によって揮発させて消失させ、また、樹脂層24中の加工歪を除去して密着性を向上させるために行う。
この製造方法(第1~第3実施形態)により製造される金属製カップ1は、通常の2ピース缶の飲料缶とは異なり、飲料等が充填されることなく販売される。このため、出荷後に充填工場で加熱されることがなく、樹脂層24の密着性が良好に維持される。
なお、この第3実施形態においても、第1及び第2実施形態で実施したテーパ面形成工程の前の潤滑剤塗布工程(2)及びその後の加熱工程を追加的に実施することは可能である。
この製造方法(第1~第3実施形態)により製造される金属製カップ1は、通常の2ピース缶の飲料缶とは異なり、飲料等が充填されることなく販売される。このため、出荷後に充填工場で加熱されることがなく、樹脂層24の密着性が良好に維持される。
なお、この第3実施形態においても、第1及び第2実施形態で実施したテーパ面形成工程の前の潤滑剤塗布工程(2)及びその後の加熱工程を追加的に実施することは可能である。
C 缶軸
1 金属製カップ
2 底部
3 開口部
4 胴部
5 カール部
6 ドーム部
7 内側テーパ壁部
8 リム部
9 立ち上がり部
11 下部円筒部
12 上部円筒部
13 下部段部
14 上部段部
15 テーパ筒部
15a テーパ面
21 樹脂被覆金属板
22 コイル
23 金属板
24 樹脂層
31 筒体
32 胴部
41 テーパ筒体
1 金属製カップ
2 底部
3 開口部
4 胴部
5 カール部
6 ドーム部
7 内側テーパ壁部
8 リム部
9 立ち上がり部
11 下部円筒部
12 上部円筒部
13 下部段部
14 上部段部
15 テーパ筒部
15a テーパ面
21 樹脂被覆金属板
22 コイル
23 金属板
24 樹脂層
31 筒体
32 胴部
41 テーパ筒体
Claims (5)
- 胴部に底部より開口部に向けて拡径するテーパ面を有する金属製カップの製造方法であって、表面が樹脂層により被覆された樹脂被覆金属板を絞りしごき加工することにより有底円筒状の筒体を形成する筒体形成工程と、前記筒体の胴部に前記テーパ面を形成してテーパ筒体を成形するテーパ面形成工程とを備えるとともに、前記テーパ面形成工程より前に、前記樹脂被覆金属板又は前記筒体のいずれかの表面に、飽和炭化水素系潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布工程を有し、前記テーパ面形成工程の後に、前記テーパ筒体を前記飽和炭化水素系潤滑剤の融点以上に加熱する加熱工程を有することを特徴とする金属製カップの製造方法。
- 胴部に底部より開口部に向けて拡径するテーパ面を有する金属製カップの製造方法であって、表面が樹脂層により被覆された樹脂被覆金属板を絞りしごき加工することにより有底円筒状の筒体を形成する筒体形成工程と、前記筒体の胴部に前記テーパ面を形成してテーパ筒体を成形するテーパ面形成工程とを備え、
前記樹脂層は、飽和炭化水素系潤滑剤が混入されており、
前記テーパ面形成工程の後に、前記テーパ筒体を前記飽和炭化水素系潤滑剤の融点以上に加熱する加熱工程を有することを特徴とする金属製カップの製造方法。 - 前記加熱工程の後に、前記テーパ筒体の開口端部にエッジを含む端部を巻き込んでなるカール部を形成するカール工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の金属製カップの製造方法。
- 前記テーパ面形成工程は、前記筒体の開口部側を拡径しながら前記テーパ面を形成する方法とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の金属製カップの製造方法。
- 前記テーパ面形成工程は、前記筒体の底部側を縮径しながら前記テーパ面を形成することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の金属製カップの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021175476A JP2023064975A (ja) | 2021-10-27 | 2021-10-27 | 金属製カップの製造方法 |
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