JP2023060476A - 熱伝導材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

Figure 2023060476000001
【課題】熱伝導性に優れた熱伝導材を提供する。
【解決手段】本発明は、窒化ホウ素粒子とその窒化ホウ素粒子に結合したカーボンナノチューブ粒子とを有する複合粒子が含まれる熱伝導材である。熱伝導材は、複合粒子を含むフィラーでも、そのフィラーをマトリックス中に含む複合材でもよい。カーボンナノチューブ粒子は、例えば、窒化ホウ素粒子とカーボンナノチューブ粒子の合計量に対して5~35体積%含まれるとよい。このような複合粒子は、例えば、窒化ホウ素粒子とカーボンナノチューブ粒子を含む成形体を加熱して焼成体を得る焼成工程と、その焼成体を粉砕する粉砕工程とを経て得られる。焼成工程は、例えば、窒素雰囲気下で1500~2000℃で加熱してなされる。
【選択図】図1A

Description

本発明は、窒化ホウ素を含む熱伝導材等に関する。
高密度化や高性能化等された電子機器(半導体モジュール等)は、その機能や寿命等を維持するために放熱が必要となる。電子機器の放熱は、通常、金属製等の放熱部材(ヒートシンク、筐体等)を通じてなされる。この際、電子機器(発熱源)と放熱部材の間には、接触する表面にある凹凸やうねり等を吸収する放熱シート(熱伝導シート、熱伝導性絶縁シート等)が介装されることが多い。
放熱シートには、例えば、熱伝導性に優れるフィラーと、柔軟性(弾力性)や密着性に優れる樹脂(エラストマー、ゴム等を含む。)とからなる複合材(組成物を含む。)が用いられる。
フィラーとして、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス粒子(繊維を含む)が用いられてきた。しかし、シリカやアルミナは熱伝導率が比較的小さい。また窒化アルミニウムは水(HO)と反応してアンモニア(NH)を発生するため、耐湿性が低く長期信頼性に劣る。そこで、熱伝導性や電気絶縁性に優れると共に化学的にも安定な窒化ホウ素(BN)粒子が、複合材のフィラーとして多用されつつある。
窒化ホウ素には、一般的に、六方晶系の常圧相(適宜「h-BN」ともいう。)と、立方晶系の高圧相(適宜「c-BN」ともいう。)とがある。通常、六方晶系窒化ホウ素(h-BN)がフィラーとして用いられる。なお、h-BNは、黒鉛と類似した六角網目層が積層された鱗片状からなり、通常、面方向(a軸(100)方向)の熱伝導率が厚さ方向(c軸(002)方向)の熱伝導率よりも大きい熱伝導異方性を有する。
このよう窒化ホウ素粒子に関して種々の提案がなされており、例えば、下記の特許文献に関連した記載がある。
特開昭59-64355 特開2010-260225 特開2012-255055 特開2018-159062 特開2011-184507
特許文献1~4は、窒化ホウ素粒子(h-BN粒子)のみからなるフィラーを用いた複合材を提案しているに過ぎない。特許文献5は、窒化ホウ素粒子、アルミナ粒子および窒化アルミニウム粒子からなる熱伝導性フィラーを提案している。しかし、そのフィラーを用いた複合材(シート)の熱伝導率は高々7W/mKに留まっている。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、窒化ホウ素を有する新たな熱伝導材等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、窒化ホウ素粒子にカーボンナノチューブ粒子を密着させた複合粒子(フィラー)を得ることに成功し、その複合粒子を含む複合材が高い熱伝導率を発現することを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《熱伝導材》
本発明は、窒化ホウ素粒子と該窒化ホウ素粒子に着接したカーボンナノチューブ粒子とを有する複合粒子を含む熱伝導材である。
本発明によれば、複合粒子を含むフィラー(熱伝導材の一形態)またはそのフィラーを含む複合材(熱伝導材の別形態)の熱伝導率の向上を図れる。この理由は定かではないが、本発明に係る複合粒子が次のような状態(構造)であるためと考えられる。すなわち、本発明に係る複合粒子は、窒化ホウ素粒子(適宜「BN粒子」という。)がカーボンナノチューブ粒子(適宜「CNT粒子」という。)で修飾された粒子からなり、BN粒子とCNT粒子は、少なくとも着接した状態(密接に付着した状態)であると考えられる。換言すると、本発明に係る複合粒子は、BN粒子とCNT粒子が単に混在しているだけの状態ではなく、また、BN粒子とCNT粒子が局所的または部分的に単に接触しているだけの状態でもないと考えられる。
但し、本明細書でいう着接状態は、BN粒子とCNT粒子の間、さらにはCNT粒子を通じてBN粒子の隣接間で、安定した熱伝導が可能な状態であれば足り得る。従って、着接しているBN粒子とCNT粒子は、必ずしも、化学的または物理的に結合または接合している状態でなくてもよい。
《熱伝導材の製造方法》
本発明は、熱伝導材の製造方法としても把握される。例えば、本発明は、窒化ホウ素粒子とカーボンナノチューブ粒子を含む成形体を加熱して焼成体を得る焼成工程と、該焼成体を粉砕する粉砕工程とを備え、該窒化ホウ素粒子に該カーボンナノチューブ粒子が着接した複合粒子を得る熱伝導材の製造方法でもよい。
《複合材/熱伝導部材》
本発明は、熱伝導材の一形態である複合材または熱伝導部材としても把握される。例えば、本発明の熱伝導材は、複合粒子と複合粒子を保持するマトリックス(またはバインダ)とを有する複合材でもよい。また本発明の熱伝導材(複合材)は、放熱部材、基板、ケース等の熱伝導部材でもよい。
《その他》
(1)本明細書でいう「~材」は、「材料」または「部材」を意味する。例えば、熱伝導材は、複合粒子自体、複合粒子を含むフィラー、それらの集合体(粉末)等でもよいし、複合粒子やフィラー(粒子、粉末等)と、母材(マトリックス)または結合材(バインダ)とを有する有形な複合材(素材を含む)でもよいし、その複合材を所望形状にした複合部材(シート等)でもよい。
(2)本明細書でいう「x~y」は、特に断らない限り、下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a~b」のような範囲を新設し得る。本明細書でいう「x~yμm」は、特に断らない限り、xμm~yμmを意味する。他の単位系(W/mK、Ωm等)についても同様である。
フィラーの充填率と複合材の熱伝導率(垂直方向)との関係を示すグラフである。 フィラーの充填率と複合材の熱伝導率(水平方向)との関係を示すグラフである。 フィラーの充填率と複合材に含まれるh-BN粒子の配向度との関係を示すグラフである。 フィラーの充填率と複合材の空隙率との関係を示すグラフである。 複合材に係る比抵抗と熱伝導率の関係を示す散布図である。 複合材のX線回折測定を示す模式図である。 フィラーの構成粒子を模式的に示すモデル図である。
本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、熱伝導材(複合粒子、フィラー、複合材、部材等)のみならず、その製造方法等にも適宜該当する。方法的な構成要素であっても物に関する構成要素となり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《複合粒子》
複合粒子は、窒化ホウ素粒子(BN粒子)とカーボンナノチューブ(CNT粒子)を少なくとも含み、BN粒子がCNT粒子で修飾されてなる。より具体的にいうと、BN粒子とCNT粒子は着接しており、少なくとも両粒子間で安定した熱伝導が確保され得る。この着接は、例えば、密着、結合(さらには連結)、接合等である。その結合は、例えば、焼結、化学結合(ファンデルワールス結合を含む)等である。接合は、BN粒子とCNT粒子が直接的に接合する場合でも、中間材(接着剤等)が介在する場合でもよい。
複合粒子中において、複数のBN粒子同士や複数のCNT粒子同士が着接(結合等)していてもよい。またCNT粒子は、複数のBN粒子を架橋するように着接(結合等)していてもよい。なお、BN粒子やCNT粒子は凝集した状態(二次粒子状態)でもよい。
着接しているBN粒子とCNT粒子は、原粒形(例えば原料粉末時の粒子形状)をほぼ維持していてもよいし、変形していてもよい。
なお、本明細書でいう複合粒子やフィラーには、着接していないBN粒子やCNT粒子が含まれてもよいし、それら以外の粒子(例えば、黒鉛粒子(カーボンブラックを含む。)、ダイヤモンド粒子、他のナノカーボン粒子(カーボンナノホーン(CNH)、フラーレン、グラフェン等)が含まれてもよい。
《窒化ホウ素粒子》
BN粒子は、例えば、六方晶構造の窒化ホウ素(h-BN)または立方晶構造の窒化ホウ素(c-BN)からなる。BN粒子は、h-BN粒子とc-BN粒子の両方を含んでもよいが、通常、h-BN粒子である。
BN粒子のサイズや形態は問わない。h-BN粒子なら、例えば、最大長が1~100μm、10~60μmさらには20~40μm程度である。最大長は、例えば、粒子の顕微鏡写真(例えばSEM像)から求まる。敢えていうなら、一視野(1500μm×1000μm)あたりに存在する粒子の各最大長を算術した平均値をその粒子のサイズとするとよい。本発明でいう他の粒子(複合粒子、CNT粒子等)のサイズも同様に定まる。なお、粒子の形状(略鱗片状、略繊維状、略長球状、略球状等)とは関係なく、粒子サイズを単に「粒径」ともいう。
h-BN自体(単層)は六角格子構造の網目状であるが、BN粒子自体は、h-BN単層でも、それらの積層体または集合体(凝集体、二次粒子)でもよい。従ってBN粒子は、必ずしも鱗片状でなくてもよい。
《カーボンナノチューブ粒子》
CNT粒子は、通常、微小(例えば最大長が0.001~5μmさらには0.01~2μm)で、BN粒子よりも熱伝導率が十分に大きい。このようなCNT粒子は、少量でも、BN粒子間に優れた熱伝導パスを形成し得る。そこでCNT粒子は、例えば、窒化ホウ素粒子とカーボンナノチューブ粒子の合計量に対して5~35体積%、10~30体積%さらには15~25体積%含まれるとよい。CNT粒子が過少でも過多でも、複合粒子ひいては複合材の熱伝導率が低下し得る。特にCNT粒子が過多になると、複合材の絶縁性(電気抵抗率)が低下し得る。
なお、粒子の体積割合(vol.%)は、粒子の真密度を用いて算出され得る。調製時の体積割合なら、配合される粒子(原料粉末)の質量とその真密度から、体積割合が算出され得る。複合粒子における構成粒子の体積割合なら、複合粒子の質量および体積と、各構成粒子の真密度とから算出され得る。複合材に含まれる構成粒子の体積割合なら、複合材から複合粒子を分離して、その複合粒子について同様に算出すればよい。なお、複合材全体に対する各粒子の体積割合も同様にして求め得る。
《複合材》
熱伝導材は、少なくとも複合粒子を含むフィラーが、マトリックス(バインダを含む。)で保持された複合材(素材または部材)でもよい。
(1)フィラー
フィラーは、例えば、複合材全体に対して55~95体積%さらには60~80体積%含まれるとよい。フィラーの充填率が過小では、複合材の熱伝導率も低下し得る。フィラーの充填率を過大にしても、複合材の熱伝導率が増加するとは限らない。
なお、複合材の製造時におけるフィラーの充填率(体積%)は、原料の配合量と密度から特定される。複合材中におけるフィラーの充填率は、複合材の全体量と複合材から分離してフィラー量とから特定される。フィラーを分離できないときは、複合材(断面)の観察像から間接的に特定してもよい。
フィラーの全体または一部は、マトリックスとの親和性を高める表面処理がなされているとよい。表面処理により、マトリックス中におけるフィラーの分散性、充填性、密着性等が向上し、複合材の熱伝導率が向上し得る。
表面処理は、例えば、疎水化処理またはカップリング処理である。マトリックスが有機材料(樹脂、ゴム・エラストマー等)なら、例えば、シランカップリング処理やフッ素プラズマ処理等を行えばよい。シランカップリング処理は、マトリックス側の官能基(アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、アクリル基等)に対応する反応基を備えた種々のシランカップリング剤を用いて行える。代表的なシランカップリング剤として、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS:C19NSi)がある。なお、シランカップリング剤は、通常、無機材料であるフィラー(複合粒子等)側にある官能基(ヒドロキシキ基、メトキシ基、エトキシ基等)にも対応する反応基(シリル基等)を備える。
表面処理剤の含有量(配合量・添加量)は、例えば、未処理前のフィラー全体100質量部に対して0.1~3質量部、0.5~2.5質量部さらには1~2質量部である。過少な表面処理剤ではその効果が乏しく、表面処理剤を過多にしても効果の向上は少ない。
なお、表面処理は、混合(混練を含む。)前のフィラーになされてもよいし、マトリックスとフィラーの混合時に表面処理剤(カップリング剤等)を添加等してなされてもよい。
(2)マトリックス
マトリックス(バインダを含む)は、例えば、絶縁性を有する有機材料からなる。具体的にいうと、通常、樹脂やゴム・エラストマー等がマトリックスとなる。樹脂は、熱硬化性樹脂でも、熱可塑性樹脂でもよい。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等である。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等である。ゴムは、例えば、エチレン- プロピレン- ジエンゴム( E P D M ) 、ブチルゴム等である。なお、本明細書では、特に断らない限り、ゴム・エラストマーを含めて、単に「樹脂」という。
《製造方法》
(1)複合粒子
BN粒子とCNT粒子が着接した複合粒子の製造方法は種々考えられる。例えば、複合粒子は、BN粒子とCNT粒子の混合物(さらには成形体)を焼成することで得られる。より具体的にいうと次の通りである。
混合物は、例えば、窒化ほう素粉末(h-BN粉末等)とカーボンナノチューブ粉末を混合して得られる。このような混合は、ボールミル、振動ミル、V型混合機等を用いてなされる(混合工程)。このとき、積層状態のh-BN粒子も粉砕され得ると好ましい。なお、混合は乾式でもよいが、湿式によれば微小なCNT粒子の飛散や浮遊等を抑止し易い。
混合物をそのまま焼成してもよいし、その混合物を加圧成形した成形体を焼成してもよい(焼成工程)。成形体は、例えば、混合物を金型成形、CIP(Cold Isostatic Pressing/冷間等方圧加工法)成形、RIP(Rubber Isostatic Pressing/ゴム等方圧加工法)成形等して得られる(成形工程)。なお、成形体は、焼成後の粉砕が可能な形状であれば足る。成形圧力は、例えば、50~500MPaさらには200~400MPa程度である。
混合物(その成形体を含む。)を加熱することにより、焼成体(さらには焼結体)が得られる。その加熱温度は、例えば、1600℃~2000℃、1700~1900℃さらには1750~1850℃である。加熱時間は、例えば、0.3~3時間さらには0.7~2時間である。なお、HIP(Hot Isostatic Pressing/熱間等方圧加工法)により、上述した成形と焼成が同時になされてもよい。
加熱雰囲気は、例えば、非酸化雰囲気中でなされるとよい。非酸化雰囲気は、例えば、不活性ガス雰囲気または真空雰囲気である。不活性ガス雰囲気は、希ガス雰囲気でも、窒素ガス雰囲気でもよい。
焼成体を解砕または粉砕することにより、複合粒子からなる粉末(「複合粉末」という。)が得られる(粉末化工程)。なお、焼成体の粉砕工程は、小型粉砕機やクラッシャー機等を用いて行える。
複合粉末は、例えば、篩い分けにより1~100μmさらには1~53μmに分級(粒度調整)されてもよい。平均粒径(メジアン径:D50)でいえば、例えば、5~45μmさらには16~22μmに調整されてもよい。
(2)複合材
フィラーがマトリックスで保持された複合材は、例えば、圧縮成形、射出成形、トランスファー成形等により形成される。マトリックスが熱硬化性樹脂からなる場合、成形後に、熱硬化処理(キュア処理)がなされてもよい。複合材は、最終製品形状またはそれに近い形状のものでもよいし、後加工される素材や中間材でもよい。
《用途》
複合材は、例えば、放熱シート等の放熱部材、電子機器等の基板、ケース等、それらの一部に用いられる。複合材の熱伝導率(特にBN粒子の面方向(a軸方向)の熱伝導率)は、例えば、15~40W/mKさらには20~30W/mKとなり得る。複合材の比抵抗は、例えば、10~10Ωmさらには10~10Ωmとなり得る。
h-BN粒子を含むフィラーを樹脂(マトリックス)中に充填した複合材を複数種製作し、それらの特性(熱伝導率、比抵抗等)を評価した。このような具体例を示しつつ、本発明をより詳しく説明する。
《フィラーの製作》
4種類のフィラー(試料1、試料C1、試料C2および試料C3)を用意した(図4参照)。各フィラーは次のように製作した。
(1)試料1(複合粒子)
原料として、市販されているh-BN粉末(デンカ株式会社製デンカボロンナイトライド粉末SGP/BN純度:99%以上、粒度:18μm(D50))とCNT粉末(Nanocyl社製NC7000/平均直径:9.5nm、平均長さ:1.5μm)を用意した。
h-BN粉末:18gとCNT粉末:4gをボールミルで湿式混合した(混合物)。h-BN粒子の真密度:2.27g/cm、CNT粒子の真密度:2.20g/cmであるため、それらの体積分率はh-BN粒子:CNT粒子=8:2(両粒子の合計に対するCNT粒子の体積割合:20体積%)に相当する。
なお、湿式混合は、ジルコニアボール(ZrO/粒径5mm):500g、アセトン:160gを用いて12時間行った。
ジルコニアボールを除いた濾過物から、ロータリーエバポレーターでアセトンを蒸留させた後、さらに真空乾燥(常温)を行った。こうして得られたh-BN粒子とCNT粒子の混合物を、2重の塩化ビニール袋に入れて冷間静水圧加圧成形(CIP)した(成形工程)。このときの成形圧力は3t/cm(294MPa)とした。
成形体(30mm×21mm×21mm)を焼結炉に入れ、Nガスフロー下で、1800℃×1時間加熱した(焼成工程)。こうしてh-BN粒子とCNT粒子の焼成体を得た。
その焼成体を、ドラフトチャンバー内に設置したカッターミルで数分間粉砕した。粉砕粉を篩い分けにより、53μm未満に粒度調整した。こうしてh-BN粒子がCNT粒子で修飾されたフィラー(複合粒子)を得た。
(2)試料C1
上述した成形前の混合物を解砕して、篩い分けにより粒度調整(53μm未満)した粉末をフィラーとした。つまり、試料C1のフィラーは、上述した成形工程と焼成工程が施されていない。それ以外の工程は試料1と同様に行った。
(3)試料C2
上述したh-BN粉末をそのままフィラーとして用いた。
(4)試料C3
上述したCNT粉末をそのままフィラーとして用いた。
《複合材の製作》
フィラーをマトリックスで保持した複合材を製作した。フィラーの充填率は、特に断らない限り、複合材全体(100体積%)に対して50~90体積%とした。マトリックス(バインダ)には、一液加熱硬化型エポキシ樹脂(セメダイン株式会社製EP160/単に「樹脂」という。)を用いた。具体的な工程は次の通りである。
フィラーと樹脂をプラスチック製容器内で10分間混練した。真空乾燥させた混練物を解砕して、フィラーに樹脂が付着したコンパウンドを得た。このコンパウンドを金型に充填して、一軸方向に圧縮成形した。このとき、金型温度:120℃、成形圧力:20MPaとした加圧状態を30分保持し、樹脂を熱硬化させた。これにより、複合体を大気雰囲気中で加熱(120℃×30分)し、フィラーが樹脂で保持された円柱状の複合体(φ14mm×20mm)を得た。
本実施例では、試料1、試料C1、試料C2または試料C3のフィラーを用いた複合材を、それぞれ順に試料M1、試料MC1、試料MC2、試料MC3という。
《測定》
(1)熱伝導率
複合材の熱伝導率(λ)をナノフラッシュ法(測定装置:NETZSCH製LFA447)により求めた。具体的にいうと、ナノフラッシュ法で測定した熱拡散率(α)と、示差走査熱量計(DSC)で求めた比熱(Cp)と、アルキメデス法で求めた密度(ρ)とから、λ=α・Cp・ρとして熱伝導率を算出した。
熱拡散率の測定には、円柱状の複合材から、軸方向(加圧方向)に垂直な方向に切り出した薄い板状のサンプル(適宜「垂直サンプル」という。)と、その軸方向に平行な方向に切り出した薄い板状のサンプル(適宜「平行サンプル」という。)とを用いた。垂直サンプルの熱伝導率は「垂直方向」の熱伝導率といい、平行サンプルの熱伝導率には「平行方向」の熱伝導率という。フィラーの充填率と熱伝導率の関係を図1Aおよび図1Bに示した。本明細書では、適宜、その垂直方向の熱伝導率を単に「熱伝導率」という。
(2)配向度
図3に示すように、複合材から切りした試験片(12mm×12mm×2mm)の表面をX線回折解析(XRD/Cu-Kα/株式会社リガク製UltraV)した。試験片の切り出しは、ビューラー社製IsoMet1000 を用いて、圧縮方向(一軸方向)に沿って行った。
こうして得られたXRDのプロファイル(2θ=20°~60°)を用いて、BN粒子のa軸方向の配向度を次式に示すピーク強度比から算出した。
配向度(%)=100×I(100)/{I(100)+I(002)}
ここで、I(100):(100)面のピーク強度、I(002):(002)面のピーク強度である。各試料に係る充填率と配向度の関係を図1Cに示した。
(3)空隙率
複合材の見掛密度(D)をアルキメデス法により求めた。見掛密度(D)と理論密度(Dth)から、次式により複合材の空隙率を求めた。
空隙率(%)=100×{1-(D/Dth)}
なお、理論密度(Dth)は、複合材の製作に用いた原料(h-BN粒子、CNT粒子、バインダ)の配合量と真密度から算出した。各試料に係る充填率と空隙率の関係を図1Dに示した。
(4)比抵抗
複合材の比抵抗は、円板状の垂直サンプルを用いて、室温域で直流四端子法により測定した。各試料に係る熱伝導率と比抵抗の関係を図2にまとめて示した。
《評価》
(1)熱伝導率
図1Aと図1Bから明らかなように、h-BN粒子とCNT粒子を焼成して得られた複合粒子をフィラー(試料1)とする複合材(試料M1)は、垂直方向のみならず平行平行でも、他の複合材よりも高い熱伝導率を発現した。この傾向は、特に、充填率が55体積%以上さらには65体積%以上で顕著であった。
(2)配向度
図1Cから明らかなように、複合粒子をフィラー(試料1)とする複合材(試料M1)は、充填率が65体積%以上となる範囲で、他の複合材よりも配向度が高くなった。特に、充填率が70体積%となる付近(例えば60~80体積%さらには65~75体積%)でその配向度が大きくなった。但し、その配向度は高々50%~55%程度に留まった。
(3)空隙率
図1Dから明らかなように、複合粒子をフィラー(試料1)とする複合材(試料M1)は、他の複合材よりも、概ね全域で空隙率が小さくなった。特に、充填率が75体積%以下(例えば50~75体積%さらには65~73体積%)で、空隙率が顕著に小さくなった。図1A、図1Bと図1Dの比較から、空隙率の減少と熱伝導率の向上には相関があると考えられる。
(4)比抵抗と熱伝導率
図2から明らかなように、複合粒子をフィラー(試料1)とする複合材(試料M1)は他の複合材よりも、高比抵抗(電気抵抗率)と高熱伝導率を高次元で両立することがわかった。
《考察》
上述した結果を踏まえて、フィラーの形態(構造)により複合材の熱伝導率が変化したと推察される。具体的には次の通りである。
図4に示すように、複合粒子(試料1)は、CNT粒子がh-BN粒子に着接していると共にh-BN粒子の隣接間を架橋(連接)していると考えられる。これにより複合粒子をフィラーとする複合材(試料M1)は、多数の熱伝導パスが形成されて、高い熱伝導率を発現したと考えられる。
CNT粒子とh-BN粒子の単なる混合物からなるフィラー(試料C1)は、h-BN粒子から遊離したCNT粒子の周囲に多くの空隙が形成されると考えられる。このため複合材(試料MC1)は、フィラーの充填率が増加しても、熱伝導率が向上しなかったと考えられる。
h-BN粒子のみをフィラー(試料C2)とする複合材(試料MC2)は、充填率の増加と共に垂直方向の熱伝導率も多少増加したが、その基本的な傾向は複合材(試料MC1)と同様と考えられる。
以上から、本発明の熱伝導材(フィラーまたは複合材)が熱伝導性に優れることが確認された。

Claims (7)

  1. 窒化ホウ素粒子と該窒化ホウ素粒子に着接したカーボンナノチューブ粒子とを有する複合粒子を含む熱伝導材。
  2. 前記カーボンナノチューブ粒子は、前記窒化ホウ素粒子と該カーボンナノチューブ粒子の合計量に対して5~35体積%含まれる請求項1に記載の熱伝導材。
  3. 前記複合粒子と該複合粒子を保持するマトリックスとを有する複合材からなる請求項1または2に記載の熱伝導材。
  4. 前記複合粒子は、前記複合材全体に対して55~95体積%含まれる請求項1~3のいずれかに記載の熱伝導材。
  5. 窒化ホウ素粒子とカーボンナノチューブ粒子を含む成形体を加熱して焼成体を得る焼成工程と、
    該焼成体を粉砕する粉砕工程とを備え、
    該窒化ホウ素粒子に該カーボンナノチューブ粒子が着接した複合粒子を得る熱伝導材の製造方法。
  6. 前記焼成工程は、1500~2000℃でなされる請求項5に記載の熱伝導材の製造方法。
  7. 前記焼成工程は、窒素雰囲気中でなされる請求項5または6に記載の熱伝導材の製造方法。
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