JP2023056209A - 舌運動計測デバイス、舌運動モニタリングシステム、および舌運動モニタリング方法 - Google Patents

舌運動計測デバイス、舌運動モニタリングシステム、および舌運動モニタリング方法 Download PDF

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Mariko Otani
恵理 西
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Abstract

【課題】装着性および伸縮耐久性に優れた舌運動計測デバイスを提供する。【解決手段】本発明の優れた舌運動計測デバイスは、被験者の舌運動を計測する舌運動計測デバイスであって、計測者の手に装着するための、絶縁性シリコーンゴムで構成された手袋と、手袋の外面側における指先領域に設けられた、舌圧力を計測する圧力センサと、圧力センサに電気的に接続された伸縮性配線と、を備えるものである。【選択図】図1

Description

本発明は、舌運動計測デバイス、舌運動モニタリングシステム、および舌運動モニタリング方法に関する。
舌運動計測デバイスについて様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1において、乳児の舌の動作を検知するセンサと、授乳状態を示す信号である授乳表示信号を生成して出力する授乳検出出力部と、センサと授乳検出出力部とを電気的に接続する金属製のリード線と、を備える授乳観測装置が記載されている(特許文献1の請求項2、段落0010、図1等)。
特開2006-340777号公報
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載の授乳観測装置において、装着性および伸縮耐久性の点で改善の余地があることが判明した。
本発明者はさらに検討したところ、舌運動計測デバイスにおいて、圧力センサに接続される配線として伸縮性配線を使用するとともに、これらが搭載される手袋を、シリコーンゴム材料によって構成することにより、計測者の手に装着しやすく、使用時や着脱時に手袋が繰り返し変形したときでも配線における破断を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
被験者の舌運動を計測する舌運動計測デバイスであって、
計測者の手に装着するための、絶縁性シリコーンゴムで構成された手袋と、
前記手袋の外面側における指先領域に設けられた、舌圧力を計測する圧力センサと、
前記圧力センサに電気的に接続された伸縮性配線と、
を備える、舌運動計測デバイスが提供される。
また本発明によれば、
上記の舌運動計測デバイスと、
舌運動情報処理装置と、
を備える、舌運動モニタリングシステムが提供される。
また本発明によれば、
上記の舌運動計測デバイスを用いて、被験者の舌運動に関する舌運動情報を取得する工程を有する、舌運動モニタリング方法が提供される。
本発明によれば、装着性および伸縮耐久性に優れた舌運動計測デバイス、それを用いた舌運動モニタリングシステム、および舌運動モニタリング方法が提供される。
舌運動計測デバイスの構成の一例を模式的に示す上面図である。 図1のα領域の拡大図である。 図2のA-A矢視における断面図である。 舌運動計測デバイスの積層構造の変形例を模式的に示す図である。 舌運動情報処理装置の機能ブロックの一例を示す図である。 舌運動モニタリングシステムのシステム構成の一例を示す図である。 実施例の舌運動計測デバイスの構成を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
本実施形態の舌運動計測デバイスについて概説する。
本実施形態の舌運動計測デバイスは、計測者の手に装着するための、絶縁性シリコーンゴムで構成された手袋と、手袋の外面側における指先領域に設けられた、舌圧力を計測する圧力センサと、圧力センサに電気的に接続された伸縮性配線と、を備える。
このような舌運動計測デバイスは、被験者の舌運動を計測するために計測者に装着される装着型計測デバイスとなる。
被験者は、舌を有する生物であれば特に限定されず、具体的には、ヒト、又はヒト以外の哺乳類を含む動物であってもよい。
ヒトは、乳児、幼児、高齢者、又はこれ以外の世代の成人や子供でもよく、健康者、又は機能回復訓練者などの非健康者でもよい。
上記の舌運動計測デバイスにより、被験者の舌運動についてモニタリング可能となり、さらには舌運動の定量評価も可能になる。舌運動は、乳児の吸啜運動や、ヒトの摂食・嚥下運動等に深く関連し、健康状態を把握するための指標となり得る。したがって、舌運動を評価することは、乳児の吸啜能力等の、被験者の舌機能の状態を適切に把握することができる上、リハビリテーションや様々なケア等の様々な応用が期待される。
具体的な応用の一例として、保育、検診、及び医療等の各場面における乳児の哺乳時吸啜能力の評価、被験者の舌運動機能と様々な疾病との関連評価、被験者の舌運動機能の低下に伴う疾病や健康障害の評価や治療、リハビリテーション等が挙げられる。
上記の特許文献1に記載の人工乳首型計測デバイスにおいては、人工乳首に設置されたセンサの位置が固定されているため、被験者の口腔内においてセンサ位置を微調整することが難しい。
これに対して、本実施形態の手袋型計測デバイスにおいては、計測者が手に装着した状態で指を動かすことによって、センサ位置を、被験者の口腔内における適切な位置に微調整し固定できるため、誰でも容易に計測することが可能となる。
本実施形態によれば、手袋および配線を伸縮性材料で構成することにより、伸長及び/又は曲げが良好であり、操作性に優れた舌運動計測デバイスを実現できる。
また、手袋の伸長等の変形時においても、伸縮性配線における断線が抑制され、安定的に舌運動の計測可能となる。このため、伸張耐久性が良好な舌運動計測デバイスを実現できる。
本実施形態の舌運動計測デバイスの各構成について詳述する。
図1は、舌運動計測デバイス100の構成の一例を模式的に示す上面図である。図2は、図1のα領域の拡大図である。図3は、図2のA-A矢視における断面図である。
図1の舌運動計測デバイス100は、手袋120、圧力センサ110、および伸縮性配線130を備える。
計測者とは、被験者の舌運動におけるモニタリングのための測定作業を行う者である。
計測者は、舌運動計測デバイス100が装着された手200を、被験者の口腔内に入れる。被験者が舌運動を行ったとき、舌運動の圧力に関する情報を示すセンサ信号を、口腔内中の圧力センサ110が、検知し、伸縮性配線130を介して外部に伝達する。
(手袋)
手袋120は、計測者の手200に装着可能な構造であればとくに限定されない。
手袋120は、少なくとも1本の指部123を有していればよく、2本~5本のいずれの複数の指部123を有してもよい。図1の手袋120は、指部123a(母指部)および指部123e(小指部)の2本の指部123を有する。
指部123の本数を4以下とすることで、5本の場合と比べて手袋120の装脱着し易さを向上できる。指部123の本数を2本以上とすることで、1本の場合と比べて、指部123の指203の周囲方向における位置ずれを抑制できる。このため、舌運動計測デバイス100の計測安定性を向上できる。
指部123の指先領域に圧力センサ110が設置されている。測定者の指203とともに指部123を被験者の口腔内に挿入した状態で、その圧力センサ110により被験者の舌運動が計測される。
圧力センサ110は、複数の指部(母指部、指示部、中指部、薬指部、小指部)のいずれかの1本、または2本以上に設置されていてもよい。図1の手袋120において、圧力センサ110は指部123e(小指部)に設置されている。これにより、指部123e中に挿入した測定者の小指203eを、乳児、幼児など年齢が低い被験者における口腔に挿入することが容易になる。
圧力センサ110が設置される先端領域とは、被験者の口腔内に挿入可能な場所であれば特に限定されない。先端領域の一例は、指部123の全長Lに対して、例えば、その先端から1/2Lまでの範囲、先端から1/3Lまでの範囲としてもよく、計測者の指203に装着したとき、指先から末節までの範囲としてもよい。
手袋120は、少なくとも1本の指部123と連結する甲部124を有していてもよい。甲部124は、計測者の手200における甲204の少なくとも一部を覆うものであればよく、甲204の全面を覆うものでもよい。甲204の一部を覆う部分被覆タイプの甲部124の例として、甲204の上半分を覆うものでもよく、甲204の左半分または右半分を覆うものでもよい。なお、部分被覆タイプの甲部124の被覆面積は、甲部124が連結する指部123の本数に応じて適宜調整可能である。
このような甲部124により、指サックのみの場合と比較して、指部123の位置ズレが抑制できる。
なお、手袋120は、甲部124を有さずに、複数の指部123を連結する部を有してもよい。この連結する部は、手袋120が手200に装着時において、手200の水かきの位置に沿った状態となる。
手袋120は、甲部124とともに、手200の平を覆う平部を有してもよい。平部は、手袋120を平面静置したときに甲部124の上面側から見たとき、甲部124と対称構造となるように構成されてもよいが、被覆範囲や被覆形状が異なる等の甲部124と異なる形状を有してもよい。
手袋120は、甲部124と連結しており、計測者の手首206を周方向に覆う手首部126を有してもよい。手首部126は、計測者の手首206の周方向に一周覆うものが好ましい。手首部126により、手200を動かしたときの甲部124の位置ずれを抑制できる。
手袋120は、絶縁性シリコーンゴムで構成されおり、柔軟性および伸縮性を有する。このため、手袋120は、測定者の手200への装着性が良好である。また、手袋120に設置された伸縮性配線130に測定者の手200に生じる生体電流が経絡してしまう事を抑制できる。
手袋120は、厚み方向の断面視において、外面121と内面122とを有するシート状の絶縁性シリコーンゴムを有する。
手袋120は、通常、2枚のシート状の絶縁性シリコーンゴムを重ねた構造を有する。手袋120の甲部124を垂直方向からみたとき、2枚のシート状の絶縁性シリコーンゴムは、手200や指203が通る穴を除いて、互いにシームレスに接合していてもよく、糸や接着剤などの接合材料により周縁部が接合されていてもよい。なお、手袋120において、甲部124の一部が、甲部124の他の部分と、ボタンなどにより連結自在に構成されていてもよい。
手袋120の内面122における表面上の少なくとも一部において、凹凸構造が形成されていてもよい。この凹凸構造は、指部123における内面122の表面上および/または甲部124における内面122の表面上に形成されることが好ましい。これにより、手袋120中に手200を出し入れするときの装脱着性を向上できる。また、使用前の手袋120において、2枚のシート状の絶縁性シリコーンゴムが密着してしまうことを抑制できる。
凹凸構造を有する内面122の表面粗さRaの下限は、例えば、1.0μm以上、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2.0μm以上、さらに好ましくは5.0μm以上である。
一方、表面粗さRaの上限は、とくに限定されないが、例えば、100μm以下でもよく、50μm以下でもよく、20μm以下でもよい。
表面粗さRaは、Keyence製VK-9700レーザ顕微鏡を用いて、レンズ:倍率20x、ピッチ:0.2μmの条件で測定する。続いて、解析ソフトVKanalyzerに記載されるJIS B0601-2001に準拠し、測定面積:300μm×300μmの条件で、平面状表面における表面粗さRa(μm)を計測する。
また、凹凸構造を有する内面122におけるタックピーク値TPの上限値は、例えば、4.0N以下、好ましくは3.0N以下、より好ましくは1.0N以下である。これにより、手袋120の内面122において良好な滑り性を実現できる。
タックピーク値TPの下限値は、特に限定されないが、例えば、0N超でもよく、0.1N以上でもよい。
上記タックピーク値TPの測定手順は、次の通りである。
面積150mmのフラット面を有するアルミ製プローブを、プローブ移動速度:2.3mm/秒、プローブ圧着強度:12N、圧着時間:6秒の条件で、当該アルミ製プローブのフラット面を測定対称の表面に接触させ、プローブ移動速度:2.3mm/秒の条件で上方に引き剥がしたときの、プローブタック試験による測定対象の表面におけるタックピーク値を5回測定し、この5回の測定値の平均値を上記のタックピーク値TPとする。
手袋120の引裂強度の下限は、例えば、25N/mm以上、好ましくは28N/mm以上、より好ましくは30N/mm以上、さらに好ましくは33N/mm以上、一層好ましくは34N/mm以上である。これにより、繰り返し使用時における耐久性を向上できる。また、薄くしても破れにくいデバイスを構成できる。このため、手袋120の設計自由度を向上できる。また、手袋120は、糸により縫い付けが可能となる。
一方、上記手袋120の引裂強度の上限は、特に限定されないが、例えば、80N/mm以下としてもよく、70N/mm以下としてもよい。これにより、手袋120の諸特性のバランスをとることができる。
手袋120のシート厚みの上限は、用途に応じて設定可能であり、例えば、2mm以下、好ましくは1mm以下でもよいが、変形容易性の観点から、より好ましくは500μm以下である。
一方、手袋120のシート厚みの下限は、機械的強度の観点から、例えば、20μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上である。
手袋120のデュロメータ硬さAの上限は、特に限定されないが、例えば、80以下でもよく、好ましくは70以下でもよい。これにより、屈曲や伸張などの変形が容易となる変形容易性を高められる。
一方、手袋120のデュロメータ硬さAの下限は、例えば、10以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上である。これにより、摩擦耐久性や機械的強度を高められる。
手袋120の破断伸びの下限は、例えば、100%以上であり、好ましくは200%以上であり、より好ましくは300%以上であり、さらに好ましくは400%以上である。これにより、手袋120の高伸縮性および耐久性を向上させることができる。
一方、上記手袋120の破断伸びの上限は、特に限定されないが、例えば、2000%以下としてもよく、1800%以下としてもよい。これにより、手袋120の諸特性のバランスをとることができる。
手袋120の引張強度の下限は、例えば、5.0MPa以上であり、好ましくは8.0MPa以上であり、より好ましくは10.0MPa以上である。これにより、手袋120の機械的強度を向上させることができる。また、繰り返しの変形に耐えられる耐久性に優れた手袋120を実現できる。
一方、手袋120の引張強度の上限は、特に限定されないが、例えば、25MPa以下としてもよく、20MPa以下としてもよい。これにより、手袋120の諸特性のバランスをとることができる。
本実施形態において、舌運動計測デバイスの各部材の特性や各部材の特性を測定する方法として、各部材をそのまま試験片として使用してもよく、各部材を所定の形状に切断したりや複数を重ねて所定厚みとした試験片を使用してもよい。また、各部材に使用したシリコーンゴム(絶縁性シリコーンゴム又は導電性シリコーンゴム)を用いて測定してもよい。
(デュロメータ硬さAの測定手順)
シリコーンゴムを用いて、シート状試験片を作製し、JIS K6253(1997)に準拠して、25℃における、得られたシート状試験片のデュロメータ硬さAを測定する。
(引張強度の測定手順)
シリコーンゴムを用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、25℃における、ダンベル状3号形試験片の引張強度を測定する。
(破断伸びの測定条件)
シリコーンゴムを用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、得られたダンベル状3号形試験片について、25℃における破断伸びを測定する。破断伸びは、[標線間移動距離(mm)]÷[初期標線間距離(20mm)]×100で計算する。
(引裂強度の測定手順)
シリコーンゴムを用いて、JIS K6252(2001)に準拠して、クレセント形試験片を作製し、25℃における、得られたクレセント形試験片の引裂強度を測定する。
手袋120は、煮沸消毒可能となるように構成されてもよい。すなわち、手袋120を構成する絶縁性シリコーンゴムは、アルコールに対して耐薬品性を有していてもよく、100℃の熱処理前後における上記のゴム特性の変動が小さいものを採用することができる。これにより、使用前の手袋120に対してアルコールや熱による殺菌・滅菌処理が可能となる。このような特性は、手袋120を繰り返し使用するときに一層有効である。
手袋120は、耐アルコール性を有するように構成されてもよい。例えば、手袋120は、アルコール中に5分間浸漬する前後における体積変化(浸漬後の体積/浸漬後前の体積)が10%以下となるように構成されてもよい。アルコールとしては、消毒に一般的に使用されるエタノールやイソプロピルアルコール等が挙げられるが、これに限定されない。
また、手袋120は、例えば、100℃で10分間加熱する前後における物性変化(加熱後の物性値/加熱前の物性値)が1%以下となるように構成されてもよい。
物性としては、上述の、硬度、破断伸び、引張強度等が挙げられるが、これに限定されない。
手袋120は、生体適合性を有するように構成されてもよい。すなわち、手袋120を構成する絶縁性シリコーンゴムは、生体適合性を有するものを採用できる。
また、上記の引裂強度を有するシリコーンゴムにより手袋120が構成されるため、手袋120の破損などによる破片が被験者に誤飲されてしまうことを抑制できる。これにより、手袋120の使用時の安全性を高められる。
(圧力センサ)
圧力センサ110は、受圧面が外力から受けた力を電気信号に変換するものである。
圧力センサ110は、外力によって電気特性が変化する部材を少なくとも備えるものであればよく、例えば、圧抵抗効果を利用したセンサ、圧電効果を利用したセンサ、又は静電容量を利用したセンサなどが用いられる。
圧力センサ110として、ひずみゲージ式、感圧導電ゴム式、静電容量方式、成膜方式、抵抗線方式、機械方式等の、市販品の圧力センサを使用してもよい。
圧力センサ110には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の微小な電気機械システムにより作製された力センサを含むものとし、受圧面が外力から受けた力を検出できるセンサであればよい。
圧力センサ110は、受圧面を有していればよく、例えば、チップ状に構成されてもよいが、これに限定されない。
圧力センサ110一例は、圧抵抗効果を有する感圧抵抗体、圧電効果を有する圧電体、又は静電容量膜を有してもよい。この中でも、感圧抵抗体は、エラストマーまたはプラスチックを含んでもよく、好ましくはシリコーンゴムを含んでもよい。
圧力センサ110の具体例は、例えば、感圧抵抗体の一つである感圧導電性シリコーンゴムで構成されてもよく、好ましくは導電性フィラー及びシリコーンゴムを含む導電性シリコーンゴムで構成されてもよい。圧力センサ110及び伸縮性配線130がいずれも導電性シリコーンゴムで構成される場合、圧力センサ110の導電性シリコーンゴムの体積抵抗値は、伸縮性配線130の導電性シリコーンゴムの体積抵抗値よりも高くなるように構成されているものであればよい。
具体的な一例として、圧力センサ110を構成する導電性シリコーンゴムは、導電性フィラーとして導電性炭素材料を含むことが可能である。この場合、伸縮性配線130を構成する導電性シリコーンゴムは、銀粉などの金属粉を含んでもよい。
例えば、圧力センサ110中の導電性炭素材料を含む導電性シリコーンゴムの体積抵抗率が10―1Ω・cm~10Ω・cmでもよい。この場合、伸縮性配線130の導電性シリコーンゴムの体積抵抗値は、例えば、10-5Ω・cm~10-1Ω・cmとしてよい。この体積抵抗率は、25℃、未伸長時に測定する。
このような圧力センサ110は、例えば、導電性炭素材料及びシリコーンゴムを含む導電性ペーストを用いた印刷方法により形成されてもよい。
図1の圧力センサ110は、図3に示すように、手袋120の指部123における外面121の表面上に搭載されるが。圧力センサ110の厚み方向の配置位置は、これに限定されない。圧力センサ110の全体または全体の一部は、手袋120を構成するシート状の絶縁性シリコーンゴム中に埋設されてもよい。
圧力センサ110の周方向の配置位置は、爪210が存在する爪領域内、指203の腹領域内、または指203の側面領域内のいずれでもよい。圧力センサ110の設置面積の観点から、爪領域内または腹領域内でもよいが、圧力センサ110の測定安定性の観点から、爪領域内が好ましい。爪210が圧力センサ110の下側を補強するため、圧力センサ110の測定安定性を向上できる。
なお、計測者は、圧力センサ110が設けられていない指203の腹により、乳児の口蓋部を刺激し、吸啜反射を誘発させることが可能である。必要なら、計測者(医療従事者)は、舌運動計測デバイス100による舌運動のモニタリングとともに、触診(指の感覚)によっても被験者の舌運動の状態を確認してもよい。
圧力センサ110の個数は、1個以上であればよく、2個以上の複数でもよい。
図2の圧力センサ110は、一例として、圧力センサ110aおよび圧力センサ110bの2個を有する。
複数の圧力センサ110は、舌根から舌尖に向かう方向を、舌の前方向としたとき、この舌の前方向に列状の配置されることが好ましい。これにより、舌根と舌尖とを独立した舌運動として計測可能になる。また、乳児の蠕動様運動時の舌から受ける圧力又は力である舌圧力を検知可能となる。さらに、列中の圧力センサ110の個数は、2個以上でも、3個以上でもよい。これにより、舌根側から舌尖側までの舌運動をより的確に評価可能になる。
また、複数の圧力センサ110における、舌の前方向に見たときの配置が、1列でもよく、2列以上の複数列でもよい。例えば、3個の2列、5個の2列、5個の3列などが挙げられる。これにより、舌の右側から舌の左側までの舌運動をより的確に評価可能になる。
圧力センサ110の個数や配置は、取得する舌運動情報の観点から、適宜、選択可能である。
(伸縮性配線)
伸縮性配線130は、圧力センサ110に電気的に接続し、圧力センサ110から電気信号を外部に伝達できる。
伸縮性配線130は、導電性シリコーンゴムで構成されてもよい。
伸縮性配線130と手袋120とが同種のエラストマーであるシリコーンゴムで構成されるため、伸縮性配線130と手袋120とが直接接する部分での密着性を向上させることができる。
また、伸縮性配線130は、導電性フィラー及びシリコーンゴムを含む導電性ペーストの印刷物で構成されてもよい。印刷方法により、伸縮性配線130の配線デザインの設計自由度が良好となる。
ただし、伸縮性配線130の形成方法は、ペーストを用いた印刷方法に限定されず、その他、導電性塗料を使用した一般的な印刷方法を用いてもよい。
伸縮性配線130は、伸縮性を有する。
本明細書において、伸縮性とは、所定方向に伸長したときの伸長率で表す。
所定方向としては、伸縮性配線130の長さが最大となる延在方向を採用してもよい。
延在方向に伸長させたとき、伸縮性を有するとは、伸長率が、例えば、10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上まで伸長可能であり、かつ、その伸長率時において伸縮性配線130が断線しない状態を意味する。
25℃、未伸長時における伸縮性配線130の体積抵抗率は、例えば、1×10-5Ω・cm以上1×10-1Ω・cm以下、好ましくは5×10-5Ω・cm以上5×10-2Ω・cm以下、より好ましくは1×10-4Ω・cm以上1×10-2Ω・cm以下である。このような範囲内とすることで、未伸長時、さらには伸長時においても、優れた電気特性の伸縮性配線130を実現できる。また、安定した舌運動計測が可能になる。
伸縮性配線130は、圧力センサ110毎に、出力信号用配線を2本有してもよく、圧力センサ110の回路設計に応じて、定圧電源用配線及び/又はGND(グランド)用配線をさらに有してもよい。
なお、GND用配線は、複数の圧力センサ110において共通の配線を使用してもよい。
図2の配線130a及び配線130bは、圧力センサ110aに接続し、配線130c及び配線130dは、圧力センサ110bに接続する。これらの伸縮性配線130は、出力信号用配線となる。
外力を加えて圧力センサ110aの抵抗値を変動させると、配線130aおよび配線130cの間における出力電圧が変動する。この出力電圧変動に基づき、圧力センサ110aが受けた外力を計測する。
図3の伸縮性配線130は、手袋120の外面121の表面上に設置されるが、これに限定されない。
伸縮性配線130は、全体が外面121の表面上に設置されてもよいが、その一部が手袋120の内部に埋設されてもよく、末端以外の引き出し配線部分が手袋120中に埋設されてもよい。
伸縮性配線130は、手袋120の指部123から甲部124まで延在する引き出し配線部分を有してもよい。引き出し配線部分は、甲部124のみならず、反対側の掌部や手首部126にまで配置されていてもよい。これにより、多様な配線構造を実現できるため、圧力センサ110の集積化が可能となる。
伸縮性配線130は、多層配線構造を有してもよい。多層配線構造の一例として、導電性シリコーンゴムで構成された配線層と絶縁性シリコーンゴムで構成された絶縁層が交互に積層した構造を有し、配線層が2層以上有するものが挙げられる。これにより、圧力センサ110の一層の集積化が可能となる。
図4は、舌運動計測デバイス100の積層構造の変形例を模式的に示す図である。
舌運動計測デバイス100は、図4(a)の伸縮性配線130の表面の少なくとも一部を被覆するカバー部140を有してもよい。これにより、伸縮性配線130の機械的強度を一層高められる。
カバー部140は、絶縁性シリコーンゴムで構成されてもよい。絶縁性シリコーンゴムには、煮沸消毒性や生体適合性を付与できる。このため、被験者への使用安全性を高め、使用時の衛生面の管理が容易となる。
また、カバー部140は、伸縮性配線130を被覆した上で、手袋120の外面121まで被覆してもよい。これにより、同じシリコーンゴムで構成されるため、カバー部140と手袋120および/または伸縮性配線130との密着性を向上できる。
また、カバー部140は、伸縮性配線130の一端にある外部接続部を被覆しないように構成される。一端は、伸縮性配線130が圧力センサ110と接続する他端とは反対側の端部である。例えば、カバー部140に開口部が形成され、その開口部に伸縮性配線130の一端が位置してもよい。
図4(a)のカバー部140は、圧力センサ110の受圧面(上面)を被覆しないように構成される一方で、図4(b)のカバー部141は、圧力センサ110の受圧面を被覆するように構成される。
受圧面を露出させることにより、圧力センサ110の外力感度を高く維持できる。
受圧面を被覆することにより、圧力センサ110と手袋120との固定をより強固なものとすることができるため、使用安全性を高められる。また、カバー部141に絶縁性シリコーンゴムを用いることで、カバー部141が受圧面を被覆したとしても、カバー部141の弾性変形によって、受圧面が受ける外力が低減することを抑制できる。
図4(c)の補強部150が、圧力センサ110と対抗する位置における、手袋120の内面122に配置されていてもよい。補強部150により、圧力センサ110の測定安定性を向上できる。
補強部150は、例えば、絶縁性シリコーンゴムで構成されてもよい。例えば、手袋120の一部が厚く構成された層厚部分を補強部150としてもよいが、手袋120よりも硬度が別部材により補強部150が構成されてもよい。
(舌運動モニタリングシステム)
本実施形態の舌運動モニタリングシステムについて、図5、6を用いて説明する。
図5は、舌運動情報処理装置10の機能ブロックの一例を示す図である。図6は、舌運動モニタリングシステム1のシステム構成の一例を示す図である。
舌運動モニタリングシステム1は、少なくとも舌運動計測デバイス100および舌運動情報処理装置10を備えるものである。舌運動情報処理装置10は、舌運動計測デバイス100の圧力センサ110で取得された情報(電気信号)について、取得、解析、記憶、および/または表示する装置である。
図6の舌運動モニタリングシステム1(舌運動情報処理システム)は、舌運動計測デバイス100、ネットワーク20、および端末30を備える。舌運動情報処理装置10は、舌運動計測デバイス100中に設置されている。ただし、舌運動情報処理装置10の各機能の一部または全部が、舌運動計測デバイス100とは別の装置(コンピュータ)上で実現されていてもよい。
図5の舌運動情報処理装置10は、取得部11、記憶部12、解析部13、および通信部14を備える。
取得部11は、舌運動計測デバイス100から送られてきた圧力センサ110のセンサ信号等の被験者の舌運動に関する舌運動情報を取得する。
舌運動情報には、舌圧力、舌圧力分布、及びこれらの経時変化の少なくとも一または二以上が含まれる。舌圧力の情報は、被験者の舌における1点計測箇所毎の情報を含む。舌圧力の情報は、舌圧力における、所定時の値、最大値、最小値、所定期間における平均値、最大値・最小値等の所定値に対応する時間、及び/又は、これらの経時変化を示す波形データ等であってもよい。
舌圧力分布の情報は、複数の計測箇所の情報を含み、所定エリア内の舌圧力の合算値などの舌圧力の情報から適当な式から算出される計算値であってもよい。
取得部11は、舌から受ける圧力に応じて変動する圧力センサ110からの出力電圧を、例えば、受圧面の面積を除して舌圧力を算出でき、A/D変換回路を用いて、デジタル信号に変換してもよく、近似曲線を用いて出力電圧を近似してもよい。
また、取得部11は、圧力センサ110のセンサ信号に基づいて、上記の舌運動情報を算出できる。
取得部11は、被験者の舌運動情報を記憶部12に記憶させる。
解析部13は、上記舌運動情報に基づいて、被験者の舌機能を解析する。
解析の一例として、解析部13は、記憶部12に記憶された舌運動情報および所定条件を読み出し、所定条件の適否を判断する。
所定条件は、計測目的に応じて適宜設定できるが、一例として、分類判定条件や合否判定条件等が挙げられる。分類判定の一例は、乳児による吸啜の良好度合を3以上の複数段階にレベル分けすること等が挙げられる。
解析部13は、上記被験者の舌機能の合否結果等の、被験者の舌機能についての解析結果を、記憶部12に記憶させる。
通信部14は、記憶部12に記憶された解析結果を、表示部31に出力する。
表示部31は、図6の端末30に設けられているが、これに限定されず、舌運動情報処理装置10や別の装置(外部モニタなど)に設けられてもよい。
表示部31は、LED(Light Emitting Diode)表示器、ランプ、液晶ディスプレイ、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイなどを含む。
表示部31は、上記舌運動情報及び/又は上記解析結果を表示する。
舌運動情報処理装置10は、さらに操作部を備えてもよい。
操作部は、ユーザによる操作部の操作を受け付け、舌運動情報処理装置10を制御しているプロセッサに通知する。操作部は、スイッチまたはタッチパネル等の物理ボタンや音声入力手段で構成される。
操作部の操作によって、舌運動計測デバイス100の各種の動作の開始や終了、または各種の動作の設定等を行うことが可能である。
舌運動情報処理装置10は、さらに報知部を備えてもよい。
報知部は、光手段や音手段等によって計測者に報知する。光手段としてランプ等、音手段としてスピーカ等が挙げられる。
報知部は、スピーカから音声を発すること、または、ランプを点灯または消灯すること等によって、上記被験者の舌機能の合否結果等の各種の情報を報知できる。例えば、乳児の吸啜能力が良好である旨を表示部31で表示することに代えて、報知部が報知してもよい。
舌運動情報処理装置10は、電源を備える。電源として、一次電池、二次電池(バッテリー)、室内の電源コンセントなどを使用してもよい。
なお、解析部13は、取得部11から出力された舌運動情報を解析してもよい。
通信部14は、解析部13から出力された解析結果を表示部31に出力してもよい。
操作部および/または報知部は、端末30に設けられていてもよい。
また、記憶部12は、舌運動計測デバイス100上に設けられてもよいが、これに限定されず、クラウド等、外部の記憶装置であってもよい。
舌運動情報処理装置10のハードウエア構成の一例を説明する。舌運動情報処理装置10は、バス、プロセッサ、メモリ、ストレージデバイス、入出力インタフェース、及びネットワークインタフェース等を有する。
バスは、プロセッサ、メモリ、ストレージデバイス、入出力インタフェース、及びネットワークインタフェースが、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサなどを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などで実現されるプロセッサである。
メモリは、RAM(Random Access Memory)などで実現される主記憶装置である。
ストレージデバイスは、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又はROM(Read Only Memory)などで実現される補助記憶装置である。舌運動情報処理装置10の各機能(例えば取得部11及び解析部13)を実現するプログラムモジュールを記憶している。プロセッサがこれら各プログラムモジュールをメモリ上に読み込んで実行することで、そのプログラムモジュールに対応する各機能が実現される。
入出力インタフェースは、舌運動情報処理装置10と各種入出力機器とを接続するためのインタフェースである。例えば舌運動情報処理装置10は、入出力インタフェースを介して舌運動計測デバイス100、操作部、表示部31、および報知部等と通信する。
ネットワークインタフェースは、舌運動情報処理装置10をネットワーク20に接続するためのインタフェースである。このネットワークは、例えばLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)である。ネットワークインタフェースがネットワーク20に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。舌運動情報処理装置10は、ネットワークインタフェースを介して舌運動計測デバイス100や端末30と通信してもよい。
舌運動情報処理装置10の各機能の一部を備える舌運動計測デバイス100の一例は、取得部11および通信部14を少なくとも備える。
取得部11および通信部14を備える舌運動計測デバイス100は、手袋120に設置された無線接続可能なネットワークインタフェースを有する、無線通信式測定デバイスであってもよい。これにより、無線接続可能なネットワークインタフェースを介して無線で別の装置と通信接続可能になる。この場合、舌運動計測デバイス100とは別の装置において、被験者の舌機能の解析を行う。
また、無線通信式の舌運動計測デバイス100は、手袋120に設置された、一次電池や二次電池等により駆動可能なモバイル電源をさらに備えるポータブル式測定デバイスであってもよい。
これにより、舌運動計測デバイス100で計測した被験者の舌運動情報を外部へ通信し、その情報の利用や活用を行うことが可能となり、出先や家庭においても計測が容易となる。
上記の舌運動計測デバイス100は、上記のネットワークインタフェースやモバイル電源のみならず、手袋120に設置された、舌運動情報処理装置10を構成する上記のハードウエアの一部または全部をさらに備えてもよい。上記の引裂強度を有するシリコーンゴムにより手袋120が構成されるため、手袋120上において上記のハードウエアを設置したとしても、手袋120の破損を抑制することが可能である。
本実施形態の舌運動モニタリング方法は、舌運動計測デバイス100を用いて舌運動モニタリングできる。この舌運動モニタリング方法は、舌運動計測デバイス100の検知結果から、被験者の舌運動に関する舌運動情報を取得する工程を有する。
また、運動モニタリング方法は、得られた上記の舌運動情報に基づいて、上記の所定条件の適否を判断する工程を含む。
(シリコーンゴム)
以下、舌運動計測デバイス100の各部材を構成するシリコーンゴムについて説明する。
本明細書中、シリコーンゴムは、伸縮可能な弾性体を意味する。シリコーンゴムは、エラストマーの中でも、化学的に安定であり、柔軟性にも優れる。また、シリコーンゴムは、衛生面や生体適合性の観点からも好ましい。
シリコーンゴムは、絶縁性シリコーンゴムと導電性シリコーンゴムとに分類される。
絶縁性シリコーンゴムは、シリコーンゴムを含むが、導電性フィラーを含まない。導電性フィラーを含まない分、伸縮性などをより向上できる。
導電性シリコーンゴムは、シリコーンゴムと、導電性フィラーとを含む。これにより、導電性シリコーンゴムの伸縮性及び導通性を高められる。
導電性フィラーが、例えば、粉末状または繊維状の、金属系フィラー、炭素系フィラー(導電性炭素材料)、金属酸化物フィラー、及び金属メッキフィラーからなる群から選ばれる一または二以上を含んでもよい。
絶縁性シリコーンゴム及び導電性シリコーンゴムの少なくとも一方、好ましくは両方が、非導電性フィラー含んでもよい。これにより、機械的強度を一層高められる。
非導電性フィラーとしては、公知の材料が使用できるが、例えば、シリカ粒子、シリコーンゴム粒子、タルク等を用いてもよい。この中でも、シリカ粒子を含んでもよい。
また、絶縁性シリコーンゴムおよび/または導電性シリコーンゴムに含まれるシリコーンゴムは、ビニル基含有オルガノポリシロキサンを含むシリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で構成されてもよい。
手袋120の絶縁性シリコーンゴム、伸縮性配線130の導電性シリコーンゴム、および圧力センサ110の導電性シリコーンゴムのうち、少なくとも2つ、又は全てが、同一のシリコーンゴムを含むように構成されてもよい。
本明細書中、同一のシリコーンゴムを含むとは、シリコーンゴム系硬化性組成物が、少なくとも、同種のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを含むことを意味し、さらに、同種の架橋剤、同種の非導電性フィラー、同種のシランカップリング剤、及び同種の触媒からなる群から選ばれる一又は二以上を含んでもよい。
同種のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとは、少なくとも官能基が同じビニル基を含み、直鎖状を有していればよく、分子中のビニル基量や分子量分布、あるいはその添加量が異なっていてもよい。
同種の架橋剤とは、少なくとも直鎖構造や分岐構造などの共通の構造を有していればよく、分子中の分子量分布や異なる官能基が含まれていてもよく、その添加量が異なっていてもよい。
同種の非導電性フィラーとは、少なくとも共通の構成材料を有していればよく、粒子径、比表面積、表面処理剤、又はその添加量が異なっていてもよい。
同種のシランカップリング剤とは、少なくとも共通の官能基を有していればよく、分子中の他の官能基や添加量が異なっていてもよい。
同種の触媒とは、少なくとも共通の構成材料を有していればよく、触媒中に異なる組成が含まれていてもよく、その添加量が異なっていてもよい。
同一のシリコーンゴムを構成するシリコーンゴム系硬化性組成物には、さらに、異なる種類の、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン、架橋剤、非導電性フィラー、シランカップリング剤、及び触媒からなる群から選ばれる一又は二以上を含んでもよい。
以下、上記のシリコーンゴム系硬化性組成物における成分について詳細を説明する。
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を含むことができる。ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物の主成分となる重合物である。
上記ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、直鎖構造を有するビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を含むことができる。
上記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、直鎖構造を有し、かつ、ビニル基を含有しており、かかるビニル基が硬化時の架橋点となる。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)のビニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ15モル%以下であるのが好ましい。これにより、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中におけるビニル基の量が最適化され、後述する各成分とのネットワークの形成を確実に行うことができる。
本明細書中、「~」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
なお、本明細書中において、ビニル基含有量とは、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する全ユニットを100モル%としたときのビニル基含有シロキサンユニットのモル%である。ただし、ビニル基含有シロキサンユニット1つに対して、ビニル基1つであると考える。
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の重合度は、特に限定されないが、例えば、好ましくは1000~10000程度、より好ましくは2000~5000程度の範囲内である。なお、重合度は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の比重は、特に限定されないが、0.9~1.1程度の範囲であるのが好ましい。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、上記のような範囲内の重合度および比重を有するものを用いることにより、得られるシリコーンゴムの耐熱性、難燃性、化学的安定性等の向上を図ることができる。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)としては、特に、下記式(1)で表される構造を有するものであるが好ましい。
Figure 2023056209000002
式(1)中、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
また、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
さらに、式(1)中のRおよびRの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(1)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。さらに、R、およびRについても同様である。
さらに、m、nは、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは0~2000の整数、nは1000~10000の整数である。mは、好ましくは0~1000であり、nは、好ましくは2000~5000である。
また、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の具体的構造としては、例えば下記式(1-1)で表されるものが挙げられる。
Figure 2023056209000003
式(1-1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基またはビニル基であり、少なくとも一方がビニル基である。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、ビニル基含有量が分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ0.4モル%以下である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を含んでもよい。第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)のビニル基量は、0.1モル%以下でもよい。
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)とビニル基含有量が0.5~15モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを含有してもよい。
シリコーンゴムの原料である生ゴムとして、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、ビニル基含有量が高い第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせることで、ビニル基を偏在化させることができ、シリコーンゴムの架橋ネットワーク中に、より効果的に架橋密度の疎密を形成することができる。その結果、より効果的にシリコーンゴムの引裂強度を高めることができる。
具体的には、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、例えば、上記式(1-1)において、R1がビニル基である単位および/またはR2がビニル基である単位を、分子内に2個以上有し、かつ0.4モル%以下を含む第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、R1がビニル基である単位および/またはR2がビニル基である単位を、0.5~15モル%含む第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを用いるのが好ましい。
また、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)は、ビニル基含有量が0.01~0.2モル%であるのが好ましい。また、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)は、ビニル基含有量が、0.8~12モル%であるのが好ましい。
さらに、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせて配合する場合、(A1-1)と(A1-2)の比率は特に限定されないが、例えば、重量比で(A1-1):(A1-2)が50:50~95:5であるのが好ましく、80:20~90:10であるのがより好ましい。
なお、第1および第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)および(A1-2)は、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、分岐構造を有するビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(A2)を含んでもよい。
<<オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を含むことができる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、直鎖構造を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐構造を有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)とに分類され、これらのうちのいずれか一方または双方を含むことができる。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖構造を有し、かつ、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分が有するビニル基とヒドロシリル化反応し、これらの成分を架橋する重合体である。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子量は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が20000以下であるのが好ましく、1000以上、10000以下であることがより好ましい。
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の重量平均分子量は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算により測定することができる。
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
以上のような直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)としては、例えば、下記式(2)で表される構造を有するものが好ましく用いられる。
Figure 2023056209000004
式(2)中、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
なお、式(2)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。Rについても同様である。ただし、複数のRおよびRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。
また、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
なお、式(2)中のR,R,Rの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、分子内の架橋反応を防止する観点から、メチル基が好ましい。
さらに、m、nは、式(2)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは2~150整数、nは2~150の整数である。好ましくは、mは2~100の整数、nは2~100の整数である。
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有するため、架橋密度が高い領域を形成し、シリコーンゴムの系中の架橋密度の疎密構造形成に大きく寄与する成分である。また、上記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)同様、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分のビニル基とヒドロシリル化反応し、これら成分を架橋する重合体である。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の比重は、0.9~0.95の範囲である。
さらに、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)としては、下記平均組成式(c)で示されるものが好ましい。
平均組成式(c)
(H(R3-aSiO1/2(SiO4/2
(式(c)において、Rは一価の有機基、aは1~3の範囲の整数、mはH(R3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である)
式(c)において、Rは一価の有機基であり、好ましくは、炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
式(c)において、aは、ヒドリド基(Siに直接結合する水素原子)の数であり、1~3の範囲の整数、好ましくは1である。
また、式(c)において、mはH(R3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は分岐状構造を有する。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、その構造が直鎖状か分岐状かという点で異なり、Siの数を1とした時のSiに結合するアルキル基Rの数(R/Si)が、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)では1.8~2.1、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)では0.8~1.7の範囲となる。
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有しているため、例えば、窒素雰囲気下、1000℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の残渣量が5%以上となる。これに対して、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖状であるため、上記条件で加熱した後の残渣量はほぼゼロとなる。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の具体例としては、下記式(3)で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure 2023056209000005
式(3)中、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基、もしくは水素原子である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(3)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
また、式(3)中、「-O-Si≡」は、Siが三次元に広がる分岐構造を有することを表している。
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)において、Siに直接結合する水素原子(ヒドリド基)の量は、それぞれ、特に限定されない。ただし、シリコーンゴム系硬化性組成物において、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中のビニル基1モルに対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の合計のヒドリド基量が、0.5~5モルとなる量が好ましく、1~3.5モルとなる量がより好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)および分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)と、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)との間で、架橋ネットワークを確実に形成させることができる。
<<シリカ粒子(C)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、必要に応じ、非導電性フィラーとして、シリカ粒子(C)を含むことができる。
シリカ粒子(C)としては、特に限定されないが、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ等が用いられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリカ粒子(C)は、例えば、BET法による比表面積が例えば50~400m/gであるのが好ましく、100~400m/gであるのがより好ましい。また、シリカ粒子(C)の平均一次粒径は、例えば1~100nmであるのが好ましく、5~20nm程度であるのがより好ましい。
シリカ粒子(C)として、かかる比表面積および平均粒径の範囲内であるものを用いることにより、形成されるシリコーンゴムの硬さや機械的強度の向上、特に引張強度の向上をさせることができる。
<<シランカップリング剤(D)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、シランカップリング剤(D)を含むことができる。
シランカップリング剤(D)は、加水分解性基を有することができる。加水分解基が水により加水分解されて水酸基になり、この水酸基がシリカ粒子(C)表面の水酸基と脱水縮合反応することで、シリカ粒子(C)の表面改質を行うことができる。
また、このシランカップリング剤(D)は、疎水性基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にこの疎水性基が付与されるため、シリコーンゴム系硬化性組成物中ひいてはシリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)の凝集力が低下(シラノール基による水素結合による凝集が少なくなる)し、その結果、シリコーンゴム系硬化性組成物中のシリカ粒子の分散性が向上すると推測される。これにより、シリカ粒子とゴムマトリックスとの界面が増加し、シリカ粒子の補強効果が増大する。さらに、ゴムのマトリックス変形の際、マトリックス内でのシリカ粒子の滑り性が向上すると推測される。そして、シリカ粒子(C)の分散性の向上及び滑り性の向上によって、シリカ粒子(C)によるシリコーンゴムの機械的強度(例えば、引張強度や引裂強度など)が向上する。
さらに、シランカップリング剤(D)は、ビニル基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にビニル基が導入される。そのため、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化の際、すなわち、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)が有するビニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とがヒドロシリル化反応して、これらによるネットワーク(架橋構造)が形成される際に、シリカ粒子(C)が有するビニル基も、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とのヒドロシリル化反応に関与するため、ネットワーク中にシリカ粒子(C)も取り込まれるようになる。これにより、形成されるシリコーンゴムの低硬度化および高モジュラス化を図ることができる。
シランカップリング剤(D)としては、疎水性基を有するシランカップリング剤およびビニル基を有するシランカップリング剤を併用することができる。
シランカップリング剤(D)としては、例えば、下記式(4)で表わされるものが挙げられる。
-Si-(X)4-n・・・(4)
上記式(4)中、nは1~3の整数を表わす。Yは、疎水性基、親水性基またはビニル基を有するもののうちのいずれかの官能基を表わし、nが1の時は疎水性基であり、nが2または3の時はその少なくとも1つが疎水性基である。Xは、加水分解性基を表わす。
疎水性基は、炭素数1~6のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられ、中でも、特に、メチル基が好ましい。
また、親水性基は、例えば、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基またはカルボニル基等が挙げられ、中でも、特に、水酸基が好ましい。なお、親水性基は、官能基として含まれていてもよいが、シランカップリング剤(D)に疎水性を付与するという観点からは含まれていないのが好ましい。
さらに、加水分解性基は、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、クロロ基またはシラザン基等が挙げられ、中でも、シリカ粒子(C)との反応性が高いことから、シラザン基が好ましい。なお、加水分解性基としてシラザン基を有するものは、その構造上の特性から、上記式(4)中の(Y-Si-)の構造を2つ有するものとなる。
上記式(4)で表されるシランカップリング剤(D)の具体例は、例えば、官能基として疎水性基を有するものとして、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランのようなアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシランのようなクロロシラン;ヘキサメチルジシラザンが挙げられ、官能基としてビニル基を有するものとして、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランのようなアルコキシシラン;ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシランのようなクロロシラン;ジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられるが、中でも、上記記載を考慮すると、特に、疎水性基を有するものとしてはヘキサメチルジシラザン、ビニル基を有するものとしてはジビニルテトラメチルジシラザンであるのが好ましい。
本実施形態において、シランカップリング剤(D)の含有量の下限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、シランカップリング剤(D)の含有量上限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対して、100質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
シランカップリング剤(D)の含有量を上記下限値以上とすることにより、シリコーンゴムが手袋120との適度な密着性を持ち、また、シリカ粒子(C)を用いる場合においては、シリコーンゴム全体としての機械的強度の向上に資することができる。また、シランカップリング剤(D)の含有量を上記上限値以下とすることにより、シリコーンゴムが適度な機械特性を持つことができる。
<<白金または白金化合物(E)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、白金または白金化合物(E)を含むことができる。
白金または白金化合物(E)は、硬化の際の触媒として作用する触媒成分である。白金または白金化合物(E)の添加量は触媒量である。
白金または白金化合物(E)としては、公知のものを使用することができ、例えば、白金黒、白金をシリカやカーボンブラック等に担持させたもの、塩化白金酸または塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯塩、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯塩等が挙げられる。
なお、白金または白金化合物(E)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<<水(F)>>
また、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物には、上記成分(A)~(E)以外に、水(F)が含まれていてもよい。
水(F)は、シリコーンゴム系硬化性組成物に含まれる各成分を分散させる分散媒として機能するとともに、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)との反応に寄与する成分である。そのため、シリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)とを、より確実に互いに連結したものとすることができ、全体として均一な特性を発揮することができる。
さらに、水(F)を含有する場合、その含有量は、適宜設定することができるが、具体的には、シランカップリング剤(D)100重量部に対して、例えば、10~100重量部の範囲であるのが好ましく、30~70重量部の範囲であるのがより好ましい。これにより、シランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させることができる。
(その他の成分)
さらに、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記(A)~(F)成分以外に、他の成分をさらに含むことができる。この他の成分としては、例えば、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ガラスウール、マイカ等のシリカ粒子(C)以外の無機充填材、反応阻害剤、分散剤、顔料、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等の添加剤が挙げられる。
なお、シリコーンゴム系硬化性組成物において、各成分の含有割合は特に限定されないが、例えば、以下のように設定される。
本実施形態において、シリカ粒子(C)の含有量の上限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対し、例えば、60重量部以下でもよく、好ましくは50重量部以下でもよく、さらに好ましくは40重量部以下でもよい。これにより、硬さや引張強等の機械的強度のバランスを図ることができる。また、シリカ粒子(C)の含有量の下限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対し、特に限定されないが、例えば、10重量部以上でもよい。
シランカップリング剤(D)は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、例えば、シランカップリング剤(D)が5重量部以上100重量部以下の割合で含有するのが好ましく、5重量部以上40重量部以下の割合で含有するのがより好ましい。これにより、シリカ粒子(C)のシリコーンゴム系硬化性組成物中における分散性を確実に向上させることができる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の含有量は、具体的にビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)及びシリカ粒子(C)及びシランカップリング剤(D)の合計量100重量部に対して、例えば、0.5重量部以上20重量部以下の割合で含有することが好ましく、0.8重量部以上15重量部以下の割合で含有するのがより好ましい。(B)の含有量が前記範囲内であることで、より効果的な硬化反応ができる可能性がある。
白金または白金化合物(E)の含有量は、触媒量を意味し、適宜設定することができるが、具体的にビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シリカ粒子(C)、シランカップリング剤(D)の合計量に対して、本成分中の白金族金属が重量単位で0.01~1000ppmとなる量であり、好ましくは、0.1~500ppmとなる量である。白金または白金化合物(E)の含有量を上記下限値以上とすることにより、得られるシリコーンゴム組成物を十分硬化させることができる。白金または白金化合物(E)の含有量を上記上限値以下とすることにより、得られるシリコーンゴム組成物の硬化速度を向上させることができる。
さらに、水(F)を含有する場合、その含有量は、適宜設定することができるが、具体的には、シランカップリング剤(D)100重量部に対して、例えば、10~100重量部の範囲であるのが好ましく、30~70重量部の範囲であるのがより好ましい。これにより、シランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させることができる。
<シリコーンゴムの製造方法>
次に、本実施形態のシリコーンゴムの製造方法について説明する。
本実施形態のシリコーンゴムの製造方法としては、シリコーンゴム系硬化性組成物を調製し、このシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによりシリコーンゴムを得ることができる。
以下、詳述する。
まず、シリコーンゴム系硬化性組成物の各成分を、任意の混練装置により、均一に混合してシリコーンゴム系硬化性組成物を調製する。
[1]たとえば、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)と、シリカ粒子(C)と、シランカップリング剤(D)とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置により、混練することで、これら各成分(A)、(C)、(D)を含有する混練物を得る。
なお、この混練物は、予めビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とシランカップリング剤(D)とを混練し、その後、シリカ粒子(C)を混練(混合)して得るのが好ましい。これにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)中におけるシリカ粒子(C)の分散性がより向上する。
また、この混練物を得る際には、水(F)を必要に応じて、各成分(A)、(C)、および(D)の混練物に添加するようにしてもよい。これにより、シランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させることができる。
さらに、各成分(A)、(C)、(D)の混練は、第1温度で加熱する第1ステップと、第2温度で加熱する第2ステップとを経るようにするのが好ましい。これにより、第1ステップにおいて、シリカ粒子(C)の表面をカップリング剤(D)で表面処理することができるとともに、第2ステップにおいて、シリカ粒子(C)とカップリング剤(D)との反応で生成した副生成物を混練物中から確実に除去することができる。その後、必要に応じて、得られた混練物に対して、成分(A)を添加し、更に混練してもよい。これにより、混練物の成分のなじみを向上させることができる。
第1温度は、例えば、40~120℃程度であるのが好ましく、例えば、60~90℃程度であるのがより好ましい。第2温度は、例えば、130~210℃程度であるのが好ましく、例えば、160~180℃程度であるのがより好ましい。
また、第1ステップにおける雰囲気は、窒素雰囲気下のような不活性雰囲気下であるのが好ましく、第2ステップにおける雰囲気は、減圧雰囲気下であるのが好ましい。
さらに、第1ステップの時間は、例えば、0.3~1.5時間程度であるのが好ましく、0.5~1.2時間程度であるのがより好ましい。第2ステップの時間は、例えば、0.7~3.0時間程度であるのが好ましく、1.0~2.0時間程度であるのがより好ましい。
第1ステップおよび第2ステップを、上記のような条件とすることで、前記効果をより顕著に得ることができる。
[2]次に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、白金または白金化合物(E)とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置を用いて、上記工程[1]で調製した混練物に、各成分(B)、(E)を混練することで、シリコーンゴム系硬化性組成物を得る。得られたシリコーンゴム系硬化性組成物は溶剤を含むペーストであってもよい。
なお、この各成分(B)、(E)の混練の際には、予め上記工程[1]で調製した混練物とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)とを、上記工程[1]で調製した混練物と白金または白金化合物(E)とを混練し、その後、それぞれの混練物を混練するのが好ましい。これにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応を進行させることなく、各成分(A)~(E)をシリコーンゴム系硬化性組成物中に確実に分散させることができる。
各成分(B)、(E)を混練する際の温度は、ロール設定温度として、例えば、10~70℃程度であるのが好ましく、25~30℃程度であるのがより好ましい。
さらに、混練する時間は、例えば、5分~1時間程度であるのが好ましく、10~40分程度であるのがより好ましい。
上記工程[1]および上記工程[2]において、温度を上記範囲内とすることにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応の進行をより的確に防止または抑制することができる。また、上記工程[1]および上記工程[2]において、混練時間を上記範囲内とすることにより、各成分(A)~(E)をシリコーンゴム系硬化性組成物中により確実に分散させることができる。
なお、各工程[1]、[2]において使用される混練装置としては、特に限定されないが、例えば、ニーダー、2本ロール、バンバリーミキサー(連続ニーダー)、加圧ニーダー等を用いることができる。
また、本工程[2]において、混練物中に1-エチニルシクロヘキサノールのような反応抑制剤を添加するようにしてもよい。これにより、混練物の温度が比較的高い温度に設定されたとしても、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応の進行をより的確に防止または抑制することができる。
[3]次に、シリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによりシリコーンゴムを形成する。
本実施形態において、シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の硬化工程は、例えば、100~250℃で1~30分間加熱(1次硬化)した後、200℃で1~4時間ポストベーク(2次硬化)することによって行われる。
以上のような工程を経ることで、シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の硬化物からなるシリコーンゴムが得られる。
なお、[3]次に、工程[2]で得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を、溶剤に溶解させることにより、絶縁性ペーストを得ることができる。
また、[3]次に、工程[2]で得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を、溶剤に溶解させ、導電性フィラーを加えることで導電性ペーストを得ることができる。
(溶剤)
導電性ペーストや絶縁性ペーストは、溶剤を含む。
溶剤としては、公知の各種溶剤を用いることができるが、例えば、高沸点溶剤を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記高沸点溶剤の沸点の下限値は、例えば、100℃以上であり、好ましくは130℃以上であり、より好ましくは150℃以上である。これにより、スクリーン印刷などの印刷安定性を向上させることができる。一方で、上記高沸点溶剤の沸点の上限値は、特に限定されないが、例えば、300℃以下でもよく、290℃以下でもよく、280℃以下でもよい。これにより、配線形成時においての過度の熱履歴を抑制できるので、下地へのダメージや、導電性ペーストで形成された配線の形状を良好に維持することができる。
また、溶剤としては、シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の溶解性や沸点の観点から適切に選択できるが、例えば、炭素数5以上20以下の脂肪族炭化水素、好ましくは炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素、より好ましくは炭素数10以上15以下の脂肪族炭化水素を含むことができる。
また、溶剤の一例としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、トリフルオロメチルベンゼン、ベンゾトリフルオリドなどの芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタンなどのハロアルカン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジエチルカーボネートなどのエステル類などを例示することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで用いられる溶媒は、上記の導電性ペースト中の組成成分を均一に溶解ないし分散させることのできる溶媒の中から適宜選択すればよい。
上記溶剤が、ハンセン溶解度パラメータの極性項(δ)の上限値が、例えば、10MPa1/2以下であり、好ましくは7MPa1/2以下であり、より好ましくは5.5MPa1/2以下である第1溶剤を含むことができる。これにより、ペースト中においてシリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の分散性や溶解性を良好なものとすることができる。この第1溶剤の上記極性項(δ)の下限値は、特に限定されないが、例えば、0Pa1/2以上でもよい。
上記第1溶剤におけるハンセン溶解度パラメータの水素結合項(δ)の上限値が、例えば、20MPa1/2以下であり、好ましくは10MPa1/2以下であり、より好ましくは7MPa1/2以下である。これにより、ペースト中において、シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の分散性や溶解性を良好なものとすることができる。この第1溶剤の上記水素結合項(δ)の下限値は、特に限定されないが、例えば、0Pa1/2以上でもよい。
ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)は、ある物質が他のある物質にどのくらい溶けるのかという溶解性を表す指標である。HSPは、溶解性を3次元のベクトルで表す。この3次元ベクトルは、代表的には、分散項(δ)、極性項(δ)、水素結合項(δ)で表すことができる。そしてベクトルが似ているもの同士は、溶解性が高いと判断できる。ベクトルの類似度をハンセン溶解度パラメータの距離(HSP距離)で判断することが可能である。
本明細書で用いている、ハンセン溶解度パラメーター(HSP値)は、HSPiP(Hansen Solubility Parameters in Practice)というソフトを用いて算出することができる。ここで、ハンセンとアボットが開発したコンピューターソフトウエアHSPiPには、HSP距離を計算する機能と様々な樹脂と溶剤もしくは非溶剤のハンセンパラメーターを記載したデータベースが含まれている。
各樹脂の純溶剤および良溶剤と貧溶剤の混合溶剤に対する溶解性を調べ、HSPiPソフトにその結果を入力し、D:分散項、P:極性項、H:水素結合項、R0:溶解球半径を算出する。
本実施形態の溶剤としては、例えば、シリコーンゴムやシリコーンゴムを構成する構成単位と溶剤との、HSP距離、極性項や水素結合項の差分が小さいもの選択することができる。
室温25℃においてせん断速度20〔1/s〕で測定した時の導電性ペースト及び/又は絶縁性ペーストの粘度の下限値は、例えば、1Pa・s以上であり、好ましくは5Pa・s以上であり、より好ましくは10Pa・s以上である。これにより、成膜性を向上させることができる。また、厚膜形成時においても形状保持性を高めることができる。一方で、室温25℃における導電性ペースト及び/又は絶縁性ペーストの粘度の上限値は、例えば、100Pa・s以下であり、好ましくは90Pa・s以下であり、より好ましくは80Pa・s以下である。これにより、ペーストにおける印刷性を向上させることができる。
室温25℃において、せん断速度1〔1/s〕で測定した時の粘度をη1とし、せん断速度5〔1/s〕で測定した時の粘度をη5とし、チキソ指数を粘度比(η1/η5)とする。
このとき、導電性ペースト及び/又は絶縁性ペーストのチキソ指数の下限値は、例えば、1.0以上であり、好ましくは1.1以上であり、より好ましくは1.2以上である。これにより、印刷法で得られた配線の形状を安定的に保持することができる。一方で、導電性ペースト及び/又は絶縁性ペーストのチキソ指数の上限値は、例えば、3.0以下であり、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2.0以下である。これにより、ペーストの印刷容易性を向上させることができる。
絶縁性ペースト中におけるシリコーンゴム系硬化性組成物の含有量は、絶縁性ペースト100質量%中、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、絶縁性ペースト中におけるシリコーンゴム系硬化性組成物の含有量は、絶縁性ペースト100質量%中、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましい。
(導電性フィラー)
導電性フィラーとしては、公知の導電材料を用いてもよいが、金属粉(G)、又は導電性炭素材料を用いてもよい。
金属粉(G)を構成する金属は特に限定はされないが、例えば、銅、銀、金、ニッケル、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモン、或いはこれらを合金化した金属粉のうち少なくとも一種類、あるいは、これらのうちの二種以上を含むことができる。これらのうち、金属粉(G)としては、導電性の高さや入手容易性の高さから、銀または銅を含むこと、すなわち、銀粉または銅粉を含むことが好ましい。なお、これらの金属粉(G)は他種金属でコートしたものも使用できる。
導電性炭素材料としては、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン等が挙げられる。
本実施形態において、金属粉(G)の形状には制限がないが、樹枝状、球状、リン片状等の従来から用いられているものが使用できる。この中でも、リン片状の金属粉(G)を用いてもよい。
また、金属粉(G)の粒径も制限されないが、たとえば平均粒径D50で0.001μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上であり、さらに好ましくは0.1μm以上である。金属粉(G)の粒径は、たとえば平均粒径D50で1,000μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下である。
平均粒径D50をこのような範囲に設定することで、シリコーンゴムとして適度な導電性を発揮することができる。
なお、金属粉(G)の粒径は、たとえば、導電性ペースト、あるいは導電性ペーストを用いて成形したシリコーンゴムについて透過型電子顕微鏡等で観察の上、画像解析を行い、任意に選んだ金属粉200個の平均値として定義することができる。
導電性ペースト中における導電性フィラーの含有量は、導電性ペーストの全体に対して、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、導電性ペースト中における導電性フィラーの含有量は、導電性ペーストの全体に対して、85質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることがさらに好ましい。
導電性フィラーの含有量を上記下限値以上とすることにより、シリコーンゴムが適度な導電特性を持つことができる。また、導電性フィラーの含有量を上記上限値以下とすることにより、シリコーンゴムが適度な柔軟性を持つことができる。
導電性ペースト中におけるシリコーンゴム系硬化性組成物の含有量は、導電性ペースト100質量%中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、導電性ペースト中におけるシリコーンゴム系硬化性組成物の含有量は、導電性ペースト100質量%中、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。
シリコーンゴム系硬化性組成物の含有量を上記下限値以上とすることにより、シリコーンゴムが適度な柔軟性を持つことができる。また、シリコーンゴム系硬化性組成物の含有量を上記上限値以下とすることにより、シリコーンゴムの機械的強度の向上を図ることができる。
導電性ペースト中におけるシリカ粒子(C)の含有量の下限値は、シリカ粒子(C)および導電性フィラーの合計量100質量%に対して、例えば、1質量%以上であり、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上とすることができる。これにより、シリコーンゴムの機械的強度を向上させることができる。一方で、上記導電性ペースト中における上記シリカ粒子(C)の含有量の上限値は、シリカ粒子(C)および導電性フィラーの合計量100質量%に対して、例えば、20質量%以下であり、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。これにより、シリコーンゴムにおける伸縮電気特性と機械的強度のバランスを図ることができる。
伸縮性配線130を構成する導電性ペーストを硬化させた導電硬化物中の導電性フィラーの含有量の下限は、導電硬化物の100質量%中、例えば、65質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上である。これにより、伸縮電気特性を高められる。一方、導電硬化物中の導電性フィラーの含有量の上限は、伸縮性配線130の100質量%中、例えば、95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。これにより、伸縮性などのゴム特性の低下を抑制できる。
(舌運動計測デバイスの製造方法)
次に、本実施形態の舌運動計測デバイスの製造方法ついて説明する。
手袋の成形には、シート状の絶縁性シリコーンゴムの2枚を重ね合わせて所定の手袋形状に加工する方法などの方法が用いられるが、これに限定されない。
シート状の絶縁性シリコーンゴムの製造方法は、導電性フィラーを含まないシリコーンゴム系硬化性組成物(コンパウンド)を用いて、カレンダー成形やコンプレッション成形などの一般的な成形方法を用いてもよく、または、シリコーンゴム系硬化性組成物を含む絶縁性ペーストを用いて印刷方法を用いてもよい。
手袋形状の加工については、金型を用いる手法や、切断加工する手法、あるいは、絶縁性ペーストの場合には開口を有するマスクを用いる手法等が用いられる。伸縮性配線をシート状の絶縁性シリコーンゴムに形成した後に、それを手袋形状に加工してもよいが、手袋形状に加工した後に手袋状の絶縁性シリコーンゴム上に伸縮性配線を形成してもよい。
また、鋳型を、絶縁性ペースト中に浸漬させ、鋳型の表面上に付着した絶縁性ペーストを乾燥、硬化することにより、3次元構造の手袋を成形することも可能である。
伸縮性配線の成形には、シリコーンゴム系硬化性組成物を含む導電性ペーストを用いた印刷方法が用いられるが、これに限定されない。
例えば、シート状の絶縁性シリコーンゴム上または絶縁性シリコーンゴムからなる手袋の外面上に、所定開口パターンを有するマスクを介して導電性ペーストを塗工する。塗工方法は、スキージを用いたスキージ印刷方法を用いてもよい。続いて、導電性ペーストを乾燥させて、配線パターンを形成する。
乾燥条件は、絶縁性ペースト中の溶剤の種類や量に応じて適宜設定することができるが、例えば、乾燥温度を120℃~180℃、乾燥時間を1分~30分等とすることができる。
続いて、配線パターンを硬化して、伸縮性配線を形成する。
硬化条件としては、シリコーンゴム系硬化性組成物に応じて適宜設定できるが、例えば、硬化温度を120℃~220℃、硬化時間を1時間~3時間等とする。
その後、伸縮性配線上に圧力センサ搭載する。例えば、導電性ペーストや半田材料等の接続材料を用いて、これらを電気的に接続できる。
以上により、舌運動計測デバイスが得られる。
必要に応じて、配線パターン又は配線パターンを硬化した伸縮性配線上に、カバー部を形成する工程を追加してもよい。カバー部の形成方法は、上述の絶縁性ペーストを用いた印刷方法が挙げられる。
なお、カバー部用の絶縁性ペーストの硬化処理は、伸縮性配線用の導電性ペーストの硬化処理と一緒に行ってもよい。ただし、このような一括硬化処理に限定されず、各ペーストを個別に硬化処理してもよい。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
表1に示す原料成分を以下に示す。
(A1-1):第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン:下記の合成スキーム1により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(上記式(1-1)で表わされる構造)
(A1-2):第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン:下記の合成スキーム2により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(上記式(1-1)で表わされる構造でRおよびRがビニル基である構造)
(オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B))
(B-1):オルガノハイドロジェンポリシロキサン:モメンティブ社製、「TC-25D」
(シリカ粒子(C))
(C):シリカ微粒子(粒径7nm、比表面積300m/g)、日本アエロジル社製、「AEROSIL300」
(シランカップリング剤(D))
(D-1):ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、Gelest社製、「HEXAMETHYLDISILAZANE(SIH6110.1)」
(D-2)ジビニルテトラメチルジシラザン、Gelest社製、「1,3-DIVINYLTETRAMETHYLDISILAZANE(SID4612.0)」
(白金または白金化合物(E))
(E-1):白金化合物 (モメンティブ社製、商品名「TC―25A」)
(水(F))
(F):純水
(金属粉(G))
(G1):銀粉、徳力化学研究所社製、商品名「TC-101」、メジアン径d50:8.0μm、アスペクト比16.4、平均長径4.6μm
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合成)
[合成スキーム1:第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)の合成]
下記式(5)にしたがって、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を合成した。
すなわち、Arガス置換した、冷却管および攪拌翼を有する300mLセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)、カリウムシリコネート0.1gを入れ、昇温し、120℃で30分間攪拌した。なお、この際、粘度の上昇が確認できた。
その後、155℃まで昇温し、3時間攪拌を続けた。そして、3時間後、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン0.1g(0.6mmol)を添加し、さらに、155℃で4時間攪拌した。
さらに、4時間後、トルエン250mLで希釈した後、水で3回洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール1.5Lで数回洗浄することで、再沈精製し、オリゴマーとポリマーを分離した。得られたポリマーを60℃で一晩減圧乾燥し、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を得た(Mn=2,2×10、Mw=4,8×10)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.04モル%であった。
Figure 2023056209000006
[合成スキーム2:第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)の合成]
上記(A1-1)の合成工程において、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)に加えて2,4,6,8-テトラメチル2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.86g(2.5mmol)を用いたこと以外は、(A1-1)の合成工程と同様にすることで、下記式(6)のように、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)を合成した。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.92モル%であった。
Figure 2023056209000007
(シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
以下の手順に従って、サンプル1、2、3のシリコーンゴム系硬化性組成物を調整した。
まず、下記の表1に示す割合で、90%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シランカップリング剤(D)および水(F)の混合物を予め混練し、その後、混合物にシリカ粒子(C)を加えてさらに混練し、混練物(シリコーンゴムコンパウンド)を得た。
ここで、シリカ粒子(C)添加後の混練は、カップリング反応のために窒素雰囲気下、60~90℃の条件下で1時間混練する第1ステップと、副生成物(アンモニア)の除去のために減圧雰囲気下、160~180℃の条件下で2時間混練する第2ステップとを経ることで行い、その後、冷却し、残り10%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を2回に分けて添加し、20分間混練した。
続いて、下記の表2に示す割合で、得られた混練物(シリコーンゴムコンパウンド)100重量部に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)、白金または白金化合物(E)を加えて、ロールで混練し、シリコーンゴム系硬化性組成物を得た。
(絶縁性ペーストの調製)
得られた32重量部のサンプル1のシリコーンゴム系硬化性組成物を、68重量部のデカン(溶剤)に浸漬し、続いて自転・公転ミキサーで撹拌し、絶縁性ペーストを得た。
(導電性ペーストの調製)
得られた13.7重量部のサンプル2のシリコーンゴム系硬化性組成物を、31.8重量部のデカン(溶剤)に浸漬し、続いて自転・公転ミキサーで撹拌し、54.5重量部の金属粉(G1)を加えた後に三本ロールで混練することで、導電性ペースト1を得た。
また、得られた11.1重量部のサンプル2のシリコーンゴム系硬化性組成物を、25.9重量部のデカン(溶剤)に浸漬し、続いて自転・公転ミキサーで撹拌し、63.0重量部の金属粉(G1)を加えた後に三本ロールで混練することで、導電性ペースト2を得た。
Figure 2023056209000008
[実施例1]
(舌運動計測デバイスの作製)
得られたサンプル3のシリコーンゴム系硬化性組成物を170℃、10MPaで10分間プレスし、厚み:150μmのシート状に成形すると共に、一次硬化した。続いて、200℃、4時間で二次硬化して、A4サイズのシート状シリコーンゴム(シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物)を2枚得た。
続いて、図7に示すように、得られた導電性ペースト1を用い、所定パターンを有するマスクを介して、幅:0.4mm、厚み:40μmの配線パターンをシート状シリコーンゴムの一面(外面)上に7本描き、140℃、30分で乾燥して、7本の配線パターンを形成した。
続いて、得られた絶縁性ペーストを用いて、所定パターンを有するマスクを介して、7本の配線パターン上に塗膜を形成し、140℃、30分で乾燥することにより、厚み50μmのカバー部パターンを形成した。ただし、配線パターンの両端を露出するように、カバー部パターンに開口部を形成した。
その後、対応する4本(電源、GND(2つの圧力センサで共通とした)、出力信号(+)、出力信号(-))の配線パターンの端部をまたがるようにして、2個の圧力センサ(フォースセンサ、HSFPAR003A、アルプスアルパイン社製)を載せ、これらを上記導電ペースト1により接着し、120℃、2時間乾燥、硬化した。この硬化処理により、7本の配線パターンから伸縮性配線を形成し、カバー部パターンから伸縮性カバー部を形成するとともに、各伸縮性配線と各圧力センサとを電気的に接合した。
伸縮性配線が形成されたシート状シリコーンゴムの印刷面上に、配線が印刷されていないもう一枚のシート状シリコーンゴムを重ね合わせて、積層シートを準備した。
積層シートについて、手袋形状となるように糸を用いてミシンで縫製し、余白を切り取った。
その後、手袋形状の積層シートを裏表にひっくり返して、図7に示す舌運動計測デバイスを作製した。
図7の舌運動計測デバイスは、5本指の手袋と、手袋の小指部における外面に形成された2つの圧力センサ、および圧力センサと電気的に接続しており、手袋の外面に形成された7本の伸縮性配線を備えるものであった。
(硬度)
手袋に用いたサンプル3のシリコーンゴム系硬化性組成物を170℃、10MPaで10分間プレスし、シート状に成形すると共に、一次硬化した。続いて、200℃、4時間で二次硬化して、厚み:150μmのシート状の手袋120(シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物)を試験片として用いた。
上記試験片を厚さ6mmになるように積層し、JIS K6253(1997)に準拠して、25℃における、得られたシート状試験片のデュロメータ硬さAを測定した。
(引裂強度)
上記試験片を用いて、JIS K6252(2001)に準拠して、25℃における引裂強度を測定した。単位はN/mmである。
(引張強度)
上記試験片を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、25℃における引張強度を測定した。単位はMPaである。
(破断伸び)
上記試験片を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、破断伸びを測定した。破断伸びは、[チャック間移動距離(mm)]÷[初期チャック間距離(35mm)]×100で計算した。単位は%である。
得られた舌運動計測デバイスの手袋において、硬度が29.7、引裂強度が39.1N/mm、引張強度が9.4MPa以上、破断伸びが1,036%であった。
また、舌運動計測デバイスの伸縮性配線において、25℃における体積抵抗値が3.2×10-4Ω・cmであった。
また、得られたシート状シリコーンゴムについて、エタノール中に5分間浸漬した前後における体積変化は10%以内であり、100℃で10分間加熱した前後における引裂強度の変化は1%以内であった。
[比較例1]
上記シート状のシリコーンゴムに代えて、硬度90の0.5mm厚のウレタンゴムシート(市販品)を使用した以外、実施例1と同様にして、舌運動計測デバイスを作製した。
得られた舌運動計測デバイスについて、以下の項目を評価した。
<装着性>
舌運動計測デバイスを計測者の手に装着するとき、および手から脱着するときの、装着しやすさ(装着性)について評価を行った。
実施例1の舌運動計測デバイスは、比較例1と比べて、非常に装着感が良好であることが確認できた。
<伸縮耐久性>
得られた実施例1の舌運動計測デバイスを、伸縮配線の延在方向に対して20%伸長する伸長操作を10回繰り返し、そのときの、配線間の抵抗値を経時的に測定した。
実施例1において、未伸長時の抵抗値が9.1Ω、10回伸長後の未伸長時抵抗値が9.5Ω、10回伸長操作中伸長時における最大抵抗値が13.3Ωであった。実施例1の舌運動計測デバイスは、伸長操作後においても配線間の抵抗が測定可能であることを確認した。なお、抵抗は25℃環境下で測定した。
また、実施例1の舌運動計測デバイスにおいて、繰り返し伸長操作後においても、手袋と伸縮性配線との剥離が生じないことを確認した。
<舌運動計測>
(舌運動モニタリングシステムの作製)
得られた実施例1の舌運動計測デバイスの伸縮性配線を、A/D変換回路(サンプリング周波数:100Hz、量子化分解能:10bit)を介して、パソコンに電気的に接続し、舌運動モニタリングシステムを作製した。
(特性評価)
荷重測定器を用いて圧力センサに外力(N)を付与し、圧力センサから出力される出力電圧(V)を測定した。力(N)は、受圧面の面積で除して、圧力(kPa)に変換した。
圧力センサにおける非線形性の出力電圧は、近似曲線を用い、近似誤差が12%以内となるように、圧力(kPa)に変換した。
圧力センサの受圧面に3Nの力を付与し、それを瞬時に取り除いた際の応答時間を測定した。
以上の舌運動モニタリングシステムを用いて、圧力センサに外力が付与された(出力電圧を圧力に変換したときの)力(Pa)と応答時間との関係を測定できることが確認された。
(被験者の舌運動モニタリング)
舌運動計測デバイスの手袋を計測者の手に装着した後、被験者(成人、男性、38歳)の口腔内に計測者の小指を挿入し、指先に配置した圧力センサを被験者の舌の表面上に静置した。
被験者が舌を動かした際、経時的に、舌運動から受ける外力(圧力)をモニタリングできることが確認された。
1 舌運動モニタリングシステム
10 舌運動情報処理装置
11 取得部
12 記憶部
13 解析部
14 通信部
20 ネットワーク
30 端末
31 表示部
100 舌運動計測デバイス
110 圧力センサ
110a 圧力センサ
110b 圧力センサ
120 手袋
121 外面
122 内面
123 指部
123a 指部(母指部)
123e 指部(小指部)
124 甲部
126 手首部
130 伸縮性配線
130a 配線
130b 配線
130c 配線
130d 配線
140 カバー部
141 カバー部
150 補強部
200 手
203 指
203a 母指
203e 小指
204 甲
206 手首
210 爪
210e 爪

Claims (18)

  1. 被験者の舌運動を計測する舌運動計測デバイスであって、
    計測者の手に装着するための、絶縁性シリコーンゴムで構成された手袋と、
    前記手袋の外面側における指先領域に設けられた、舌圧力を計測する圧力センサと、
    前記圧力センサに電気的に接続された伸縮性配線と、
    を備える、舌運動計測デバイス。
  2. 請求項1に記載の舌運動計測デバイスであって、
    前記手袋の引裂強度が25N/mm以上である、舌運動計測デバイス。
  3. 請求項1又は2に記載の舌運動計測デバイスであって、
    前記手袋が、煮沸消毒可能である、舌運動計測デバイス。
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の舌運動計測デバイスであって、
    前記手袋は、耐アルコール性を有する、舌運動計測デバイス。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の舌運動計測デバイスであって、
    前記手袋の内面における表面上に凹凸構造が形成されている、舌運動計測デバイス。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の舌運動計測デバイスであって、
    前記手袋のシート厚みが20μm以上2mm以下である、舌運動計測デバイス。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の舌運動計測デバイスであって、
    前記手袋のデュロメータ硬さAが10以上80以下である、舌運動計測デバイス。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の舌運動計測デバイスであって、
    前記手袋は、計測者の手の甲を覆う甲部と、前記甲部に連結した少なくとも1本以上の指部と、を有する、舌運動計測デバイス。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載の舌運動計測デバイスであって、
    前記手袋の内面において、前記圧力センサと対向する位置に補強部を有する、舌運動計測デバイス。
  10. 請求項1~9のいずれか一項に記載の舌運動計測デバイスであって、
    前記手袋は、2枚のシート状の絶縁性シリコーンゴムを重ねた構造を有する、舌運動計測デバイス。
  11. 請求項1~10のいずれか一項に記載の舌運動計測デバイスであって、
    前記伸縮性配線が、導電性シリコーンゴムで構成される、舌運動計測デバイス。
  12. 請求項1~11のいずれか一項に記載の舌運動計測デバイスであって、
    前記伸縮性配線が、導電性フィラー及びシリコーンゴムを含む導電性ペーストの印刷物で構成される、舌運動計測デバイス。
  13. 請求項1~12のいずれか一項に記載の舌運動計測デバイスであって、
    前記伸縮性配線が、前記手袋の指から甲まで延在する引き出し配線部分を有する、舌運動計測デバイス。
  14. 請求項1~13のいずれか一項に記載の舌運動計測デバイスであって、
    前記伸縮性配線が、多層配線構造を有する、舌運動計測デバイス。
  15. 請求項1~14のいずれか一項に記載の舌運動計測デバイスであって、
    前記伸縮性配線の表面を覆う、絶縁性シリコーンゴムで構成されたカバー部を備える、舌運動計測デバイス。
  16. 請求項1~15のいずれか一項に記載の舌運動計測デバイスであって、
    前記手袋に設置された、無線接続可能なネットワークインタフェースを備える、舌運動計測デバイス。
  17. 請求項1~16のいずれか一項に記載の舌運動計測デバイスと、
    舌運動情報処理装置と、
    を備える、舌運動モニタリングシステム。
  18. 請求項1~16のいずれか一項に記載の舌運動計測デバイスを用いて、被験者の舌運動に関する舌運動情報を取得する工程を有する、舌運動モニタリング方法。
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