JP2023054434A - 印刷方法及び印刷装置 - Google Patents

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JP2023054434A JP2021163273A JP2021163273A JP2023054434A JP 2023054434 A JP2023054434 A JP 2023054434A JP 2021163273 A JP2021163273 A JP 2021163273A JP 2021163273 A JP2021163273 A JP 2021163273A JP 2023054434 A JP2023054434 A JP 2023054434A
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Hirofumi Hanazawa
さゆり 小島
Sayuri Kojima
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聡 高橋
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Abstract

【課題】 被印刷物に対して処理液を付与した後で、被印刷物に付与された処理液を加熱乾燥せずに、被印刷物の処理液が付与された領域に対してインクを付与する場合、形成された画像の耐擦過性が低下する課題がある。また、処理液に紫外線吸収剤を含有させた場合、処理液において沈殿又は分離が発生する課題および処理液を被印刷物に対して付与する際に付与ムラが発生する課題がある。【解決手段】 被印刷物に対して処理液を付与する処理液付与工程と、前記処理液を付与された前記被印刷物に対してインクを付与するインク付与工程と、前記処理液及び前記インクを付与された前記被印刷物に対して紫外線を照射する照射工程と、を含む印刷方法であって、前記印刷方法は、前記処理液付与工程後から前記インク付与工程前において、前記処理液を付与された前記被印刷物を加熱する加熱工程を含まず、前記処理液は、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、多価金属塩、有機溶剤、及び水を含有することを特徴とする印刷方法。【選択図】なし

Description

本発明は、印刷方法及び印刷装置に関する。
ポスター等の耐水性、及び耐光性が要求される用途で用いるインクとして、顔料等の色材を用いたインクが知られている。このようなインクを、インクジェット記録方式により、商業印刷などに用いられるコート紙等の低吸収性の記録媒体に吐出した場合、隣接する液滴同士が記録媒体上で合一し、画像不良(ビーディング)が発生する。このようなビーディングを解消する方法として、インク中の色材を凝集させる作用を有する多価金属塩を含む処理液を、インクを吐出する前の記録媒体に塗布する方法が知られている。
しかし、処理液を用いる場合、記録媒体上に、インクの溶媒に加えて、処理液の溶媒も付与されることになり、記録媒体上の溶媒量が増大するため、コックリングの問題が発生しやすくなる。
特許文献1には、媒体に対してカラーインクを用いて印刷を行う印刷装置であって、カラーインクを媒体に付着させる前に媒体に付着させる液体である前処理剤を吐出するインクジェットヘッドである前処理剤用ヘッドと、カラーインクを吐出するインクジェットヘッドであるカラーインク用ヘッドと、エネルギー線を照射するエネルギー線照射部とを備え、前処理剤は、溶媒を含み、かつ、エネルギー線に応じて発熱する液体であり、エネルギー線照射部は、媒体において印刷がされる各位置に対し、前処理剤用ヘッドが前処理剤を吐出した後にエネルギー線を照射して、前処理剤の溶媒の少なくとも一部を蒸発させることを特徴とする印刷装置が開示されている。
また、特許文献1には、エネルギー線照射部は、媒体において印刷がされる各位置に対し、前処理剤用ヘッドが前処理剤を吐出した後、カラーインク用ヘッドがカラーインクを吐出する前にエネルギー線を照射して、前処理剤の溶媒の少なくとも一部を蒸発させることが開示されている。
しかしながら、被印刷物に対して処理液を付与した後で、被印刷物に付与された処理液を加熱乾燥せずに、被印刷物の処理液が付与された領域に対してインクを付与する場合、形成された画像の耐擦過性が低下する課題がある。また、処理液に紫外線吸収剤を含有させた場合、処理液において沈殿又は分離が発生する課題および処理液を被印刷物に対して付与する際に付与ムラが発生する課題がある。
本発明は、被印刷物に対して処理液を付与する処理液付与工程と、前記処理液を付与された前記被印刷物に対してインクを付与するインク付与工程と、前記処理液及び前記インクを付与された前記被印刷物に対して紫外線を照射する照射工程と、を含む印刷方法であって、前記印刷方法は、前記処理液付与工程後から前記インク付与工程前において、前記処理液を付与された前記被印刷物を加熱する加熱工程を含まず、前記処理液は、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、多価金属塩、有機溶剤、及び水を含有することを特徴とする印刷方法に関する。
本発明によれば、被印刷物に対して処理液を付与した後で、被印刷物に付与された処理液を加熱乾燥せずに、被印刷物の処理液が付与された領域に対してインクを付与する場合であっても、形成された画像の耐擦過性の低下が抑制され、また、処理液に紫外線吸収剤を含有させた場合であっても、処理液における沈殿又は分離の発生が抑制され、処理液を被印刷物に対して付与する際における付与ムラの発生が抑制される印刷方法を提供することができる。
図1は、印刷装置の一例を示す模式図である。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
<<印刷方法>>
本開示の印刷方法は、被印刷物に対して処理液を付与する処理液付与工程と、処理液を付与された被印刷物に対してインクを付与するインク付与工程と、処理液及びインクを付与された被印刷物に対して紫外線を照射する照射工程と、を含み、必要に応じてその他
工程を含んでもよい。
本開示における「被印刷物」は、処理液及びインクを付与される対象物である。
本開示における「処理液」は、被印刷物に対して付与され、処理液が付与された領域に対して後から付与されるインクと接触することで、インクにおいて凝集又は増粘を生じさせる液体組成物である。
本開示における「インク」は、被印刷物の処理液が付与された領域に対して付与されることで画像を形成する液体組成物である。
<処理液付与工程>
処理液付与工程は、処理液を被印刷物に対して付与する工程である。
処理液を付与する方法としては、特に限定されず、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
-処理液-
処理液は、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、多価金属塩、有機溶剤、及び水を含む。また、必要に応じて、界面活性剤、及びその他成分を含んでもよい。
--ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物--
処理液は、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を含む。
ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物は、紫外線吸収剤として添加され、後述する照射工程において紫外線を照射されることで発熱し、処理液及びインクに由来する被印刷物上の液体成分の少なくとも一部を蒸発させる。これにより、被印刷物に付与された処理液を加熱乾燥せずに、被印刷物の処理液が付与された領域に対してインクを付与することで、処理液及びインクに由来する被印刷物上の液体成分の量が多い場合であっても、当該液体成分の乾燥を十分に行うことができ、形成された画像の耐擦過性の低下が抑制される。
但し、紫外線吸収剤は、その種類又は含有量によっては、処理液において凝集を生じる場合があり、これに伴って処理液における沈殿又は分離が発生し得るが、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を用いた場合、処理液における沈殿又は分離の発生は抑制される。処理液における沈殿又は分離の発生が抑制されると、処理液をローラ等により被印刷物に対して付与(一例として、塗布)する際に、付与ムラ(一例として、塗布ムラ)の発生が抑制され、結果として、形成される画像における濃度ムラの発生が抑制される。
ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、Tinuvin400-DW(N)(BASF社製)、Tinuvin477-DW(N)(BASF社製)、Tinuvin479-DW(N)(BASF社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物を用いることもできる。
Figure 2023054434000001
なお、上記一般式(1)において、nは12または13を表す。
ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物の含有量は、処理液の質量に対して0.1質量%以上10.0質量%以下が好ましく、0.3質量%以上5.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上4.0質量%以下が更に好ましい。
ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物の含有量は、処理液に含まれる沸点が180℃以上の有機溶剤の質量に対して10.0質量%以上30.0質量%以下が好ましい。10.0質量%以上30.0質量%以下であることで、処理液における沈殿又は分離の発生がより抑制される。処理液における沈殿又は分離の発生がより抑制されると、処理液をローラ等により被印刷物に対して付与(塗布)する際に、付与ムラ(塗布ムラ)の発生がより抑制され、結果として、形成される画像における濃度ムラの発生がより抑制される。また、処理液の付与ムラ(塗布ムラ)の発生がより抑制されることで、処理液及びインクに由来する被印刷物上の液体成分の乾燥を均一に行うことができ、形成された画像の耐擦過性の低下がより抑制される。
--多価金属塩--
多価金属塩は、インク中の色材との電荷的な作用によって会合し、色材の凝集体を形成して、色材を液相から分離させ、被印刷物への定着を促進させる。これにより、被印刷物として低浸透性基材を用いた場合などであったとしても、インクにより形成される画像においてビーディングの発生が抑制される。また、処理液において、多価金属塩及びヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を併用することで、紫外線吸収剤としてのヒドロキシフェニルトリアジン系化合物の機能により、被印刷物の処理液が付与された領域に対して付与されたインクを素早く乾燥させることができるため、インクにより形成される画像においてビーディングの発生がより抑制される。
多価金属塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン化合物、クロム化合物、銅化合物、コバルト化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物、鉄化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、亜鉛化合物、ニッケル化合物等の塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、顔料等の色材を効果的に凝集させることができる点から、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、ニッケル化合物の塩が好ましく、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩がより好ましい。
なお、多価金属塩はイオン性のものが好ましい。特に、上記多価金属塩がマグネシウム塩、カルシウム塩であることが好ましい。
マグネシウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、珪酸マグネシムなどが挙げられる。
カルシウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、珪酸カルシウムなどが挙げられる。
バリウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸バリウムなどが挙げられる。
亜鉛化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫化亜鉛、炭酸亜鉛などが挙げられる。
アルミニウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、珪酸アルミニウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
これらの中でも、溶剤への溶解性から硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硫酸マグネシウムなどが好ましい。
多価金属塩の含有量は、処理液の全量に対して、0.8モル/kg以上1.4モル/kg以下が好ましい。多価金属塩の含有量が0.8モル/kg以上であることで、インク吸収性の低い被印刷物を用いた場合などでもビーディングの発生を抑制でき、高画質な画像を形成できる。また、多価金属塩の含有量が1.4モル/kg以下であることで、処理液の保存安定性が向上する。
なお、後述する有機溶剤としてグリセリンを用いる場合、多価金属塩の含有量に対し、グリセリンの含有量の質量比は、1.05以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。質量比が1.05以上であることで、多価金属塩の結晶の析出が抑制され、結晶の析出に起因する異常画像(画像濃度のムラ)が抑制できる。
--水--
水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乾燥性の点から、含有される液体(処理液)の全量に対して、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
--有機溶剤--
有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤などを用いることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
また、有機溶剤としては、上記の通り、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物との関係から沸点が180℃以上である有機溶剤を含むことが好ましい。
沸点が180℃以上である有機溶剤としては、例えば、1,2-プロパンジオール(沸点188℃)、1,2-ブタンジオール(沸点194℃)、エチレングリコール(沸点197.3℃)、ジエチレングリコール(沸点244.3℃)、1,2-プロパンジオール(沸点188.2℃)、1,3-ブタンジオール(沸点207℃)、1,4-ブタンジオール(沸点230℃)、2,3-ブタンジオール(沸点182℃)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(沸点203℃)、トリエチレングリコール(沸点276℃)、1,2-ペンタンジオール(沸点206℃)、1,3-ペンタンジオール(沸点209℃)、2,4-ペンタンジオール(沸点198℃)、1,5-ペンタンジオール(沸点239℃)、1,2-ヘキサンジオール(沸点223℃)、1,3-ヘキサンジオール(沸点221.7℃)、2,5-ヘキサンジオール(沸点217℃)、グリセリン(沸点290℃)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(沸点244℃)、1,2,4-ブタントリオール(沸点312℃)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(沸点232℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点196℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(沸点237℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(沸点256℃)、2-ピロリドン(沸点245℃)、N-メチル-2-ピロリドン(沸点204℃)、γ-ブチロラクトン(沸点204℃)、ホルムアミド(沸点210℃)、N-メチルホルムアミド(沸点199℃)、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(沸点215.2℃)、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(沸点215℃)、ジエタノールアミン(沸点269℃)、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)、スルホラン(沸点285℃)、プロピレンカーボネート(沸点240℃)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(沸点244℃)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(沸点232℃)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤の含有量は、含有される液体(処理液)の全量に対して、乾燥性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
--一般式(2)で表される化合物(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)--
処理液は、下記一般式(2)で表される化合物を含んでもよい。一般式(2)で表される化合物は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルである。処理液中に一般式(2)で表される化合物を含むことで、被印刷物に処理液が付与されたときに濡れ広がりやすくなる。これにより、被印刷物の表面に処理液が均一に薄く広がることで、被印刷物に付与された処理液が乾燥するまでの時間が短くなる。また、処理液の被印刷物に対する浸透性も向上する。これにより、被印刷物の処理液が付与された領域に対して付与されたインクにおける乾燥性が向上し、形成される画像が強固になって耐擦過性がより向上する。
Figure 2023054434000002
(上記一般式(2)中、nは、3以上11以下の整数を表す。)
なお、一般式(2)におけるnは、上記の通り、3以上11以下の整数であることが好ましい。nが3以上11以下の整数であることで、被印刷物に処理液が付与されたときにより濡れ広がりやすくなる。これにより、被印刷物の表面に処理液が均一に薄く広がることで、被印刷物に付与された処理液が乾燥するまでの時間がより短くなる。また、処理液の被印刷物に対する浸透性もより向上する。これにより、被印刷物の処理液が付与された領域に対して付与されたインクにおける乾燥性が向上し、形成される画像が強固になって耐擦過性がより向上する。
一般式(2)で表される化合物としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、TRITON HW-1000(ダウ・ケミカル社製)、TERGITOL TMN-3(ダウ・ケミカル社製)、TERGITOL TMN-6(ダウ・ケミカル社製)、TERGITOL TMN-100X(ダウ・ケミカル社製)、TERGITOL TMN-10(ダウ・ケミカル社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、TRITON HW-1000(ダウ・ケミカル社製)、TERGITOL TMN-6(ダウ・ケミカル社製)が好ましい。
一般式(2)で表される化合物の含有量は、処理液の質量に対して、0.0005質量%以上1.6質量%以下が好ましく、0.001質量%以上0.2質量%以下がより好ましい。含有量が0.0005質量%以上1.6質量%以下であると、ビーディングの発生を抑制しつつ、耐擦過性を向上することができる。
--界面活性剤--
界面活性剤は、表面張力を下げることで各種被印刷物に対する含有される液体(処理液)の濡れ性を向上させることができるため、ムラなく付与することができる。また、界面活性剤は、含有される液体を被印刷物に対して適度に濡れやすくすることによって、各種被印刷物への浸透速度を速めることができる。浸透速度を速めることで、処理液を付与した被印刷物に対して付与されるインク中に含まれる色材の過剰な凝集を抑制することができる。
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
Figure 2023054434000003
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
Figure 2023054434000004
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
Figure 2023054434000005
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-CmF2m+1でmは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、含有される液体(処理液)の質量に対して0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
--その他の成分--
処理液には、必要に応じて、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
--処理液の製造方法--
処理液は、構成成分を水性媒体中に分散又は溶解させ、更に必要に応じて撹拌混合することにより得ることができる。撹拌混合としては、通常の撹拌羽を用いた撹拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機などを用いて行うことができる。
--処理液の物性--
処理液の物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜、粘度、表面張力、pHなどを選択することができる。
処理液の粘度としては、25℃で、0.5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましい。ここで、粘度は、例えば、粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)などを用いて測定することができる。
処理液の表面張力としては、25℃で、45mN/m以下が好ましく、40mN/m以下がより好ましい。
処理液のpHとしては、例えば、4以上12以下が好ましく、6以上10以下がより好ましい。
<インク付与工程>
インク付与工程は、インクを被印刷物の処理液を付与された領域に対して付与する工程である。
インクを付与する方法としては、特に限定されず、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット法による付与であることが好ましい。
また、本発明の印刷方法は、上記の処理液付与工程後からインク付与工程前において、処理液を付与された被印刷物を加熱する加熱工程を含まない。当該加熱工程による処理液の乾燥を行わなくても、後述する照射工程により、処理液及びインクに由来する被印刷物上の液体成分の乾燥を十分に行うことができるためである。
なお、加熱工程を含まないとは、処理液付与工程後からインク付与工程前において、処理液を付与された被印刷物を直接的に加熱する工程を含まないことを表す。すなわち、印刷装置内の機内温度が上昇する等により間接的に加熱されたとしても、加熱工程を含まない場合に含まれる。また、処理液を付与された被印刷物を直接的に加熱する工程とは、例えば、被印刷物の搬送経路の、処理液付与手段が設けられた位置及びインク付与手段が設けられた位置の間に、処理液を付与された被印刷物を加熱する加熱手段が設けられている場合における工程などを表す。
-インク-
インクの組成は、特に限定されないが、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、有機溶剤、水、色材、樹脂、界面活性剤、及びその他成分などを含む。なお、有機溶剤、水、界面活性剤、及びその他の成分については、上記の処理液と同様のものを用いることができるため、これらの説明を省略する。
--ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物--
インクは、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を含んでもよい。
ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物は、上記の処理液と同様、紫外線吸収剤として添加され、後述する照射工程において紫外線を照射されることで発熱し、処理液及びインクに由来する被印刷物上の液体成分の少なくとも一部を蒸発させる。これにより、被印刷物に付与された処理液を加熱乾燥せずに、被印刷物の処理液が付与された領域に対してインクを付与することで、処理液及びインクに由来する被印刷物上の液体成分の量が多い場合であっても、当該液体成分の乾燥を十分に行うことができ、形成された画像の耐擦過性の低下が抑制される。
ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物の種類としては、上記の処理液と同様のものを使用することができる。
ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物の含有量は、インクの質量に対して0.1質量%以上10.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上2.0質量%以下が更に好ましい。
ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物の含有量は、インクに含まれる沸点が180℃以上の有機溶剤の質量に対して0.5質量%以上10.0質量%以下が好ましい。0.5質量%以上であることで、照射工程において乾燥させるときにコックリング性を向上させることができる。また、10.0質量%以下であることで、吐出安定性を向上させることができる。
--色材--
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、混晶を使用してもよい。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性のよいものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
更に、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
色材の含有量は、インクの用途等によって適宜決定すればよいが、インクの質量に対して1.0質量%以上15.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下がより好ましい。
顔料を分散させてインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、用いられる顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料が含まれてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
--樹脂--
インクは、樹脂を含んでもよい。樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル-スチレン系樹脂、アクリル-シリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いてもよい。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、及び高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
--インクの製造方法--
インクは、構成成分を水性媒体中に分散又は溶解させ、更に必要に応じて撹拌混合することにより得ることができる。撹拌混合としては、通常の撹拌羽を用いた撹拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機などを用いて行うことができる。
--インクの物性--
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば、回転式粘度計(東機産業株式会社製、RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの静的表面張力としては、被印刷物上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、25mN/m以下が好ましく、22mN/m以下がより好ましい。このような静的表面張力が低いインクを用いた場合、処理液を付与した後の被印刷物に付与されるインクにおいて濡れ広がりが大きくなり、インクの蒸発乾燥および浸透乾燥が促進される。そのため、処理液と静的表面張力が低いインクとを用いることで、インクにより形成される画像における残存溶剤量が少なくなり、より強固な画像を形成することができ、耐擦過性がより向上する。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7以上12以下が好ましく、8以上11以下がより好ましい。
<照射工程>
照射工程は、処理液及びインクを付与された被印刷物に対して紫外線を照射する工程である。紫外線を照射されることで、上記の通り、処理液に含まれていた紫外線吸収剤であるヒドロキシフェニルトリアジン系化合物が発熱し、処理液及びインクに由来する被印刷物上の液体成分の少なくとも一部を蒸発させる。これにより、被印刷物に付与された処理液を加熱乾燥せずに、被印刷物の処理液が付与された領域に対してインクを付与することで、処理液及びインクに由来する被印刷物上の液体成分の量が多い場合であっても、当該液体成分の乾燥を十分に行うことができ、形成された画像の耐擦過性の低下が抑制される。
紫外線を照射する方法としては、特に限定されないが、例えば、紫外線発光ダイオード(以下、UV-LEDともいう)を用いる方法が好ましい。
また、照射する紫外線としては、波長365nm又は波長385nmにピークを有する紫外線であることが好ましい。
<被印刷物>
被印刷物としては、特に制限なく用いることができ、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、低浸透性基材(低吸収性基材)に対して特に好適に用いることができる。
低浸透性基材とは、水透過性、吸収性、又は吸着性が低い表面を有する基材を意味し、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれる。低浸透性基材としては、商業印刷に用いられるコート紙や、古紙パルプを中層、裏層に配合して表面にコーティングを施した板紙のような被印刷物等が挙げられる。
なお、被印刷物としては、1つの印刷単位ごとに印刷可能なカット紙、被印刷物の搬送方向に複数の印刷単位を印刷可能な連帳紙やロール紙等を用いることができる。
<低浸透性基材>
低浸透性基材としては、例えば、支持体と、支持体の少なくとも一方の面側に設けられた表面層と、を有し、更に必要に応じてその他の層を有するコート紙などの被印刷物が挙げられる。
支持体と表面層を有する被印刷物においては、動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の被印刷物への転移量は、2mL/m以上35mL/m以下が好ましく、2mL/m以上10mL/m以下がより好ましい。
接触時間100msでのインク及び純水の転移量が少なすぎると、ビーディングが発生しやすくなることがあり、多すぎると、画像形成後のインクドット径が所望の径よりも小さくなりすぎることがある。
動的走査吸液計にて測定した接触時間400msにおける純水の被印刷物への転移量は、3mL/m以上40mL/m以下が好ましく、3mL/m以上10mL/m以下がより好ましい。
接触時間400msでの転移量が少ないと、乾燥性が不十分となり、多すぎると、乾燥後の画像部の光沢が低くなりやすくなることがある。接触時間100ms及び400msにおける純水の被印刷物への転移量は、いずれも被印刷物の表面層を有する側の面において測定することができる。
ここで、動的走査吸収液計(dynamic scanning absorptometer;DSA,紙パ技協誌、第48巻、1994年5月、第88頁~92頁、空閑重則)は、極めて短時間における吸液量を正確に測定できる装置である。動的走査吸液計は、吸液の速度をキャピラリー中のメニスカスの移動から直読する、試料を円盤状とし、この上で吸液ヘッドをらせん状に走査する、予め設定したパターンに従って走査速度を自動的に変化させ、1枚の試料で必要な点の数だけ測定を行う、という方法によって測定を自動化したものである。
紙試料への液体供給ヘッドはテフロン(登録商標)管を介してキャピラリーに接続され、キャピラリー中のメニスカスの位置は光学センサで自動的に読み取られる。具体的には、動的走査吸液計(K350シリーズD型、協和精工株式会社製)を用いて、純水又はインクの転移量を測定することができる。
接触時間100ms及び接触時間400msにおける転移量としては、それぞれの接触時間の近隣の接触時間における転移量の測定値から補間により求めることができる。
-支持体-
支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、木材繊維主体の紙、木材繊維及び合成繊維を主体とした不織布のようなシート状物質などが挙げられる。
支持体の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm~300μmが好ましい。また、支持体の坪量は、45g/m~290g/mが好ましい。
-表面層-
表面層は、顔料、バインダー(結着剤)を含有し、更に必要に応じて、界面活性剤、その他の成分を含有する。
顔料としては、無機顔料、もしくは無機顔料と有機顔料を併用したものを用いることができる。無機顔料としては、例えば、カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、非晶質シリカ、チタンホワイト、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クロライトなどが挙げられる。無機顔料の添加量は、バインダー100質量部に対し50質量部以上が好ましい。
有機顔料としては、例えば、スチレン-アクリル共重合体粒子、スチレン-ブタジエン共重合体粒子、ポリスチレン粒子、ポリエチレン粒子等の水溶性ディスパージョンがある。有機顔料の添加量は、表面層の全顔料100質量部に対し2質量部~20質量部が好ましい。
バインダーとしては、水性樹脂を使用することが好ましい。水性樹脂としては、水溶性樹脂及び水分散性樹脂の少なくともいずれかを好適に用いることができる。水溶性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエステルとポリウレタンなどが挙げられる。
表面層に必要に応じて含有される界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アニオン活性剤、カチオン活性剤、両性活性剤、非イオン活性剤のいずれも使用することができる。
表面層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、支持体上に表面層を構成する液を含浸又は塗布する方法により行うことができる。表面層を構成する液の付着量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、固形分で、0.5g/m~20g/mが好ましく、1g/m~15g/mがより好ましい。
<記録物>
本開示において「記録物」とは、被印刷物と、被印刷物に対して上記の処理液及びインクを付与することで形成された画像と、を有する構造物である。記録物は、処理液及びインクが付与された被印刷物を乾燥させたものでも、乾燥させておらず湿潤状態にあるものでもよく、また、処理液及びインクに加えて更に別の液体組成物が付与されている状態のものであってもよい。
上記画像は、少なくとも、処理液に由来するヒドロキシフェニルトリアジン系化合物及び多価金属塩と、インクに由来する色材と、を有する。
<<印刷装置>>
印刷装置は、被印刷物に対して処理液を付与する処理液付与手段と、処理液を付与された被印刷物に対してインクを付与するインク付与手段と、処理液及びインクを付与された被印刷物に対して紫外線を照射する照射手段と、を有し、必要に応じてその他構成を有してもよい。その他構成としては、例えば、処理液を収容している処理液収容手段、インクを収容しているインク収容手段などが挙げられる。
図1を参照して、印刷装置の一例について説明する。図1は、印刷装置の一例を示す模式図である。
図1に示す印刷装置1は、被印刷物2を給紙する給紙手段3と、処理液を収容している処理液収容手段から供給された処理液を被印刷物2に対して付与する処理液付与手段4と、インクを収容しているインク収容手段から供給されたインクを被印刷物2の処理液が付与された領域に対して付与するインク付与手段5と、処理液及びインクを付与された被印刷物2に対して紫外線を照射する照射手段6と、乾燥後の被印刷物を巻き取る巻取手段7と、を有する。なお、印刷装置1は、被印刷物2の搬送経路の、処理液付与手段4が設けられた位置及びインク付与手段5が設けられた位置の間に、処理液を付与された被印刷物2を加熱する加熱手段を有さない。
給紙手段3は、処理液付与手段4が処理液を付与する位置及びインク付与手段5がインクを付与する位置に被印刷物2を給紙する手段である。図1では、被印刷物2として連続紙を用いている。連続紙とは、印刷の際の搬送方向に連続しており、搬送方向におけるプリント単位(1ページ)の長さよりも長い被印刷物である。連続紙としては、例えば、ロール状に丸められたロール紙を用いることができる。図1では、給紙手段3は、給紙ローラであり、ロール状に丸められた被印刷物2が給紙手段3にセットされている。
処理液付与手段4は、給紙された被印刷物2に対して処理液を付与する手段であり、上記の処理液付与工程を実行する。図1に示す処理液付与手段4は、ローラによって被印刷物2に処理液を付与するローラ塗布方式であるが、インクジェット記録方式で付与する手段であってもよい。インクジェット記録方式で付与する手段の場合、処理液に対応する1つ以上の吐出ヘッドを有していることが好ましい。
インク付与手段5は、給紙された被印刷物2に対してインクを付与して画像を形成する手段であり、上記のインク付与工程を実行する。インク付与手段5としては、インクジェット記録方式で付与する手段が好ましい。インクジェット記録方式で付与する手段の場合、例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)に対応する4つの吐出ヘッドを有していることが好ましい。
照射手段6は、処理液及びインクを付与された被印刷物2に対して紫外線を照射する手段であり、上記の照射工程を実行する。照射手段6としては、UV-LEDであることが好ましい。
インクジェット記録方式は、液体組成物に、刺激を印加し、液体組成物を吐出させる方法である。刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、熱(温度)、圧力、振動、光、などが例示される。刺激は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適に使用される。
液体組成物に用いられる液体組成物の吐出の態様としては、例えば、液体組成物流路内の液体組成物を加圧する圧力発生手段として圧電素子を用いて液体組成物流路の壁面を形成する振動板を変形させて液体組成物流路内容積を変化させて液体組成物滴を吐出させるピエゾ方式、発熱抵抗体を用いて液体組成物流路内で液体組成物を加熱して気泡を発生させるサーマル方式、液体組成物流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置して振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで液体組成物流路内容積を変化させて液体組成物滴を吐出させる静電方式などが挙げられる。
吐出させる液体組成物の液滴の大きさとしては、例えば、3.0pL以上4.5pL以下が好ましく、その吐出噴射の速さとしては、5m/s以上20m/s以下が好ましく、その駆動周波数としては、1kHz以上が好ましく、その解像度としては、300dpi以上が好ましい。
なお、上記のインクジェット記録方式に用いられる吐出ヘッドには、それぞれ液体組成物を収容するサブタンク等の収容体が設けられていてもよい。吐出ヘッドに収容される液体組成物は、メインタンクとしての他の収容体から、それぞれ供給されたものであってもよい。他の収容体としては、液体組成物を収容し、樹脂等でケーシングされたカートリッジや、ボトル等が例示される。カートリッジにおいて、液体組成物は、内袋がポリエチレン等の樹脂製のアルミパウチに収容されていてもよい。
巻取手段7は、給紙手段3によって給紙され、処理液付与手段4によって処理液が付与され、インク付与手段5によってインクが付与され、照射手段6によって紫外線が照射された被印刷物2を巻き取る手段である。巻取手段7が、被印刷物2を巻き取ることで、被印刷物2は、図1の矢印で示す搬送方向に搬送される。
なお、図1では、被印刷物としてロール紙を用いた場合を示したが、被印刷物はこれに限定されない。他の被印刷物としては、例えば、所定間隔毎に折り曲げられた連帳紙、切断可能なミシン目が所定間隔で形成された連続帳票等のロール状に巻かれていない連続紙を用いてもよい。このように、ロール紙以外の被印刷物を用いる場合は被印刷物を巻き取る必要がないので、図1に示した巻取手段7は省略することができる。
また、本実施の形態にかかる印刷装置では、連続紙に限らずカット紙を被印刷物として用いてもよい。カット紙とは、印刷の際の搬送方向におけるプリント単位(1ページ)ごとに独立した被印刷物である。
また、処理液付与手段4、インク付与手段5、及び巻取手段7などの各手段が、単一の装置である印刷装置1に設けられている場合に限らず、例えば、処理液付与手段4、インク付与手段5、及び巻取手段7などの各手段が別々の装置に分散して存在してもよい。
また、印刷装置は、被印刷物に対して処理液及びインクを付与することで画像を形成するものであれば制限はない。印刷装置としては、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファクシミリ/複写装置の複合機、立体造形装置などが例示される。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
<共重合体の合成>
-共重合体Aの合成例-
撹拌装置、滴下装置、温度センサー、及び上部に窒素導入装置を有する還流装置を取り付けた反応容器を備えた自動重合反応装置(轟産業株式会社製、重合試験機DSL-2AS型)の反応容器に、メチルエチルケトンを550g仕込み、撹拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に加温した後、滴下装置によりメタクリル酸-2-ヒドロキシエチルを75.0g、メタクリル酸を77.0g、スチレンを80.0g、メタクリル酸ブチルを150.0g、アクリル酸ブチルを98.0g、メタクリル酸メチルを20.0g、及び「パーブチル(登録商標)O」(日油株式会社製)40.0gの混合溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に同温度で15時間反応を継続させて、酸価100mgKOH/g、重量平均分子量21,000、ガラス転移温度Tg(計算値)31℃のアニオン性基含有スチレン-アクリル系共重合体Aのメチルエチルケトン溶液を得た。反応終了後、メチルエチルケトンの一部を減圧留去し、不揮発分を50質量%に調整したスチレン-アクリル系共重合体A溶液を得た。
<顔料分散体の調整>
-顔料分散体1の調整例-
冷却用ジャケットを備えた混合槽に、銅フタロシアニン(大日精化工業株式会社製、SEIKALIGHT BLUE A612)を1,000g、アニオン性基含有スチレン-アクリル系共重合体A溶液を800g、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を143g、メチルエチルケトンを100g、及び水を1,957g仕込み、撹拌混合した。
得られた混合液を、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置(日本コークス工業株式会社製、SCミルSC100)に通し、循環方式(分散装置より出た分散液を混合槽に戻す方式)により6時間分散した。分散装置の回転数は2,700回転/分間とし、冷却用ジャケットには冷水を通して分散液温度が40℃以下に保たれるようにした。分散終了後、混合槽より分散原液を抜き取り、次いで、水10,000gで混合槽及び分散装置流路を洗浄し、分散原液と合わせて希釈分散液を得た。ガラス製蒸留装置に希釈分散液を入れ、メチルエチルケトンの全量と水の一部を留去した。室温まで冷却後、撹拌しながら10質量%塩酸を滴下してpH4.5に調整した後、固形分をヌッチェ式濾過装置(日本化学機械製造株式会社製、加圧濾過機)で濾過、水洗した。ケーキを容器に取り、20質量%水酸化カリウム水溶液200gを加えた後、ディスパ(プライミクス株式会社製、TKホモディスパー)にて分散し、更に水を加えて不揮発分を調整して、不揮発分20質量%のカーボンブラックが水酸化カリウム中で中和されたカルボキシル基含有スチレン-アクリル系共重合体で被覆された複合粒子として水性媒体中に分散した顔料分散体1を得た。
-顔料分散体2の調整例-
顔料分散体1の調製例において、銅フタロシアニンをカーボンブラック(商品名:Raven1080、コロンビヤンカーボン日本株式会社製)に変更した以外は、顔料分散体1の調製例と同様にして、顔料分散体2を得た。
<インクの調整>
-インク1の調整例-
グリセリン22.0質量%、1,3-ブタンジオール11.0質量%、1,3-オクタンジオール2.0質量%、界面活性剤(商品名:TEGO WET270、エポニックデグサ株式会社製)0.1質量%、及びイオン交換水を1時間撹拌し均一に混合し、ロジン変性マレイン酸樹脂(ハリマ化成社製:ハリマックR-100)2.0質量%を加えて更に1時間撹拌し均一に混合した後、顔料分散体1を固形分量が8.0質量%になるように加えて更に1時間撹拌し均一に混合した。この混合物を平均孔径が0.8μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにより加圧濾過し、粗大粒子やゴミを除去してインク1を得た。
-インク2~3の調整例-
インク1の調製例において、インクの組成を下記表1に記載の組成に変更した以外は、インク1の調製例と同様にして、インク2~3を得た。なお、表1における組成の各数字の単位は「質量%」である。また、紫外線吸収剤の含有量は全量を表す。また、色材(顔料分散体1~2)の含有量は固形分量を表す。
Figure 2023054434000006
<処理液の調整>
-処理液1の調整例-
界面活性剤(商品名:TEGO WET270、エポニックデグサ株式会社製)0.1質量%、硝酸マグネシウム6水和物(昭和化学株式会社製)25.6質量%、1,2プロパンジオール10.0質量%、イオン交換水を添加し、1時間撹拌し均一に混合した。更に、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物(紫外線吸収剤)であるTinuvin477-DW(N)(BASF社製)を10.0質量%加えて合計を100質量%とし、1時間撹拌して均一に混合し、処理液1を得た。
-処理液2~32の調整例-
処理液1の調製例において、処理液の組成を下記表2~6記載の組成に変更した以外は、処理液1の調製例と同様にして、処理液2~32を得た。なお、表2~6おける組成の各数字の単位は「質量%」である。また、紫外線吸収剤の含有量は全量を表す。
Figure 2023054434000007
Figure 2023054434000008
Figure 2023054434000009
Figure 2023054434000010
Figure 2023054434000011
なお、表1~6の各成分の詳細については、以下の通りである。
-ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤-
・TINUVIN 400DW(N)(BASF社製、紫外線吸収剤の含有量20.0質量%)
・TINUVIN 477DW(N)(BASF社製、紫外線吸収剤の含有量20.0質量%)
・TINUVIN 479DW(N)(BASF社製、紫外線吸収剤の含有量20.0質量%)
-その他の紫外線吸収剤-
・UVA-805(BASF社製、紫外線吸収剤の含有量33.0質量%)
-一般式(2)の化合物-
・HW-1000(商品名:TRITON HW-1000、n=6、ダウ・ケミカル社製)
-樹脂-
・ロジン変性マレイン酸樹脂(商品名:ハリマックR-100、ハリマ化成株式会社製)
-界面活性剤-
・TEGO WET270(商品名:TEGO WET270、エポニックデグサ株式会社製)
・ユニセーフA-LY(商品名:ユニセーフA-LY、ノニオン系界面活性剤、日油株式会社製)
-多価金属塩-
・硝酸マグネシウム6水和物(昭和化学株式会社製)
・硝酸カルシウム4水和物(昭和化学株式会社製)
[処理液の沈殿又は分離]
作製した処理液において、沈殿又は分離の発生の有無を観察した。観察結果を下記表7に示す。なお、沈殿又は分離の発生した処理液は、実用困難であるため、以下の塗布ムラ及び耐擦過性の評価試験には用いなかった。
[塗布ムラ]
まず、作製した処理液とインクを下記表7に示すように組み合わせてインクセットとした。
次に、図1に示す印刷装置を使用し、処理液を被印刷物(北越コーポレーション社製、NEW-DV、坪量:450gsm)に対し、塗布量が0.8g/mとなるように塗布した後、被印刷物の処理液が塗布された領域に対しインク付与手段(IPSiO GXe-5500(株式会社リコー製)に搭載されている吐出ヘッド)からインクを吐出させてベタ画像を印刷し、直後に6インチコンベアーUV硬化システム(Heraeus社製)に通紙して乾燥させ、印刷サンプルを得た。なお、6インチコンベアーUV硬化システム(Heraeus社製)において、UV-LEDランプの照度は3500W/cm、紙面までの距離は30mm、線速は5.0mpmとなるように設定し、照射する紫外線の波長は下記表7に示すものにした。
更に、処理液を印刷装置に充填してから48時間放置し、その後同様に印刷して、48時間放置後の印刷サンプルを得た。
得られた2種類の印刷サンプルに対して、下記評価基準に基づいて「塗布ムラ」を評価し、評価結果を下記表7に示した。
(評価基準)
A:ベタ画像に塗布ムラの影響による濃度ムラがみられない
B:ベタ画像に塗布ムラの影響による濃度ムラがわずかにみられる
C:ベタ画像に塗布ムラの影響による濃度ムラがみられる
[耐擦過性]
まず、作製した処理液とインクを下記表7に示すように組み合わせてインクセットとした。
次に、図1に示す印刷装置を使用し、処理液を被印刷物(北越コーポレーション社製、NEW-DV、坪量:450gsm)に対し、塗布量が0.8g/mとなるように塗布した後、被印刷物の処理液が塗布された領域に対しインク付与手段(IPSiO GXe-5500(株式会社リコー製)に搭載されている吐出ヘッド)からインクを吐出させてベタ画像を印刷し、直後に6インチコンベアーUV硬化システム(Heraeus社製)に通紙して乾燥させ、印刷サンプルを得た。なお、6インチコンベアーUV硬化システム(Heraeus社製)において、UV-LEDランプの照度は3500W/cm、紙面までの距離は30mm、線速は5.0mpmとなるように設定し、照射する紫外線の波長は下記表7に示すものにした。
得られた印刷サンプルのベタ画像部を、乾燥が終了してから30秒後に爪で擦った後の画像品質を、目視により観察し、下記評価基準に基づいて、「耐擦過性(爪スクラッチ)」を評価し、評価結果を下記表7に示した。
(評価基準)
A:爪スクラッチで傷が発生せず、画像濃度の変化がほぼ見られない
B:爪スクラッチで傷が発生しないが、画像濃度が変化する
C:爪スクラッチで傷が発生する
Figure 2023054434000012
1 印刷装置
2 被印刷物
3 給紙手段
4 処理液付与手段
5 インク付与手段
6 照射手段
7 巻取手段
特開2019-155726号公報

Claims (7)

  1. 被印刷物に対して処理液を付与する処理液付与工程と、前記処理液を付与された前記被印刷物に対してインクを付与するインク付与工程と、前記処理液及び前記インクを付与された前記被印刷物に対して紫外線を照射する照射工程と、を含む印刷方法であって、
    前記印刷方法は、前記処理液付与工程後から前記インク付与工程前において、前記処理液を付与された前記被印刷物を加熱する加熱工程を含まず、
    前記処理液は、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、多価金属塩、有機溶剤、及び水を含有することを特徴とする印刷方法。
  2. 前記有機溶剤は、沸点が180℃以上の有機溶剤を含有し、
    前記ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物の含有量は、前記沸点が180℃以上の有機溶剤の含有量に対して10.0質量%以上30.0質量%以下である請求項1に記載の印刷方法
  3. 前記処理液は、更に、下記一般式(2)で表される化合物を含有する請求項1又は2に記載の印刷方法。
    Figure 2023054434000013
    (上記一般式(2)中、nは、3以上11以下の整数を表す。)
  4. 前記ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1から3のいずれか一項に記載の印刷方法。
    Figure 2023054434000014
    (上記一般式(1)中、nは、12又は13を表す。)
  5. 前記インクは、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、有機溶剤、水、及び色材を含有する請求項1から4のいずれか一項に記載の印刷方法。
  6. 前記紫外線は、UV-LEDにより照射され、波長365nm又は波長385nmにピークを有する請求項1から5のいずれか一項に記載の印刷方法。
  7. 被印刷物に対して処理液を付与する処理液付与手段と、前記処理液を付与された前記被印刷物に対してインクを付与するインク付与手段と、前記処理液及び前記インクを付与された前記被印刷物に対して紫外線を照射する照射手段と、を有する印刷装置であって、
    前記印刷装置は、前記被印刷物の搬送経路の、前記処理液付与手段が設けられた位置及び前記インク付与手段が設けられた位置の間に、前記処理液を付与された前記被印刷物を加熱する加熱手段を有さず、
    前記処理液は、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、多価金属塩、有機溶剤、及び水を含有することを特徴とする印刷装置。
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