JP2023048327A - 光ファイバモジュール及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】MCFとSMFバンドルを接続したFIFOデバイスにおいて、ピストニング現象の影響を抑制した接続安定性の高い接続方式を提供する。【解決手段】 光ファイバモジュール100は、複数のコアを有するマルチコアファイバ(MCF)10と、1つのコアを有する複数のシングルモードファイバ(SFM)を束ねたファイババンドル20と、MCF10の固定端を保持する第1の保持部材30と、ファイババンドル20の固定端を保持する第2の保持部材40と、第1及び第2の保持部材30,40が挿入されMCF10とファイババンドル20の固定端側の端面同士を突き合わせた状態を維持するスリーブ50と、MCF10とファイババンドルの端面の間に介在した接着部60を有する。第1及び第2の保持部材30,40の少なくとも一方は透光素材で構成されており、接着部60は光硬化性の接着剤を硬化させたものである。【選択図】図2
Description
本発明は、マルチコアファイバ(MCF)とシングルモードファイバ(SMF)を束ねたファイババンドルとを接続した光ファイバモジュールや、その製造方法に関するものである。
従来から、光ファイバネットワークにおけるトラヒック量の増大に対して、その要求に応えるべく空間分割多重伝送(SDM)が提唱されている。また、SDMの1つの方式として1本の光ファイバに複数の伝搬コアを有するMCFが提案されている。
MCFについては、例えばコア数について多くの提案がなされている。非結合型MCFの場合、隣接するコア間とのクロストークの影響を考慮すると、コアピッチは40μm~50μmとなり、そのクラッド層厚の制約から光ファイバのクラッド径が決められる。しかし、光ファイバの量産性や曲げ応力の影響などを考慮した場合、MCFのクラッド径を既存のSMFに近くする必要がある。このため、現在、MCFとしては、クラッド径がΦ150μmの7コアのもの(図3(a)参照)や、クラッド径をSMFと同径のΦ125μmとした4コアのもの(図3(b)参照)などが、実用性の高いMCFとして提案されている。
MCFは1本の光ファイバ中に複数のコアを有しているため、既存のSMF伝送系や送受信器と接続する為にはMCFの各コアとSMFのコアを接続する必要があるが、前述した通りMCFとSMFは構造が異なっているため、光コネクタ等で直接する接続することは難しい。そこで、MCFとSMFとを接続するためのファンイン/ファンアウト(FIFO)デバイスについて検討が進められている。例えば、MCFとSMFとを直接接続する従来の方式では、特許文献1(主に図1)に示されるような規格化された光コネクタとアダプタを利用してFIFOを構成する。すなわち、細径のSMFを束ねたバンドルとMCFとをそれぞれフェルールに固定し、これらのSMFバンドルとMCFの端面同士を突き合わせることで両者を直接接続することができる。
フェルールの接続端側には、ファイバを固定するためのキャピラリが設けられている。このキャピラリには、一般的に形状安定性が高く生産性にも優れたセラミック(ジルコニア)が用いられている。MCFを固定したキャピラリとSMFバンドルを固定したキャピラリとは、それらの外径の差が±0.5μmとなっており、穴偏心量も0.5μm~1μmと高精度で作製される。そして、割スリーブを用いて対向する2つのキャピラリを隙間なく把持することでファイバ同士を接続することができ、その際に各ファイバの軸を調心する作業も不要となる。
ところで、特許文献1に開示された光コネクタは、光ファイバ端面を弾性変形させて直接密着させるフィジカルコンタクトを行うことで接続面での反射を抑制するようにしており、そのためにフェルール同士をバネ部材(ロック用ツメ部材)により加圧して押圧をかける構造となっている。また、この光コネクタによる加圧量は日本産業規格(JIS)で規定されており、JISC5970,C5971,C5972,C5973に相当するような一般的に使用される光コネクタの規定加圧量はすべて同じである。
このような光コネクタのバネによる光ファイバの加圧に関しては、ピストニングと呼ばれる現象が起きても確実に光ファイバの端面同士がフィジカルコンタクトし続ける加圧量が設定されている。ここにいうピストニング現象とは、光コネクタ同士の接続において、光ファイバ自体とこの光ファイバをキャピラリに固定するための接着剤との熱膨張係数差による膨張収縮により、外気温度の変化でフェルールに対して光ファイバが突き出したり引き込んだりする現象である。
ところが、バネ部材によって光ファイバをそれらの端面同士が突き合う方向に加圧している状態において、ピストニング現象の影響により光ファイバが大きく突き出すと、光ファイバに過度なストレスがかかって伝送時の損失が増大したり、最悪の場合には光ファイバを構成するガラスに破損が発生するおそれがある。反対に、ピストニング現象により光ファイバが大きく引き込まれると、光ファイバ同士のフィジカルコンタクトに外れが発生し、伝送時に接続損失と反射が増大するという問題がある。
このため、光ファイバとフェルールを固定する接着剤の塗布量は少ないほど望ましい。また、光ファイバ同士の軸ズレによる接続損失の劣化を抑えるためにも、ファイバクラッド径とフェルールキャピラリの穴径のクリアランスは1μm以下となることが望ましいといえる。しかし、SMFバンドルは、例えば図3に示すように、複数のSMFを束ねた際に、SMF同士の間の隙間が大きくなり、その隙間を埋めるために接着剤の塗布量も多くなる。一方で、MCFの場合は、このような隙間は生じないため、SMFバンドルと比べて、光ファイバをフェルールに固定するための接着剤の塗布量は少なくて済む。例えば、7コアFIFOにおいて、光ファイバの外径とフェルール内径の間の隙間面積は、MCFでは0.24μm2であるのに対して、SMFバンドルでは3.4μm2となる。また、4コアFIFOの場合は、MCFの隙間面積は0.2μm2であるのに対して、SMFバンドルの隙間面積は2.2μm2となる。このように、MCFとSMFバンドルとでは、フェルールとの間の隙間が面積比において10倍以上の差が生じている。そして、この隙間面積を接着剤によって埋める形になることから、SMFバンドルの方が接着剤量が多くなり、その結果ピストニング現象の影響も自ずと大きくなる。このように、従来の光ファイバのように、バネ部材によって光ファイバの端面同士を加圧する方式では、MCFとSMFバンドルとの接着剤の塗布量の差により、ピストニング現象の影響にも差が生じることなり、両者の接続が不安定になることが課題となっていた。
そこで、本発明は、MCFとSMFバンドルを接続したFIFOデバイスにおいて、ピストニング現象の影響を抑制し、接続安定性の高い接続方式を提案することを主な目的とする。
本発明の発明者らは、上記した従来技術の課題を解決する手段について鋭意検討した結果、MCFとSMFバンドルの端面同士を光学接着剤により固定することにより、バネ部材等によって加圧して光ファイバの端面同士が突き合わされた状態を維持することが不要になるため、ピストニング現象の影響を受け難くなるという知見を得た。そして、本発明者らは、上記知見に基づけば従来技術の課題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。具体的に説明すると、本発明は以下の構成又は工程を有する。
本発明の第1の側面は、光ファイバモジュールに関する。本発明に係る光ファイバモジュールは、マルチコアファイバ(MCF)と、シングルモードファイバ(SMF)のファイババンドルと、第1の保持部材と、第2の保持部材と、スリーブと、接着部を有する。MCFは、複数の光伝搬用のコアを有する光ファイバである。ファイババンドルは、1つの光伝搬用のコアを有するSMFを複数束ねた光ファイバである。光ファイバモジュールを製造する際に、MCFの各コアとファイババンドルの各コアは一対一対応するように配置される。第1の保持部材は、MCFの固定端を保持する。第2の保持部材は、SMFのファイババンドルの固定端を保持する。例えば、第1及び第2の保持部材はそれぞれキャピラリとフェルールを含む。スリーブは、第1の保持部材及び第2の保持部材が挿入され、MCFの固定端側の端面とファイババンドルの固定端側の端面とを突き合わせた状態を維持するための部材である。スリーブの例は、割スリーブと精密スリーブである。接着部は、少なくとも、MCFの端面とファイババンドルの端面との間に介在し、これらの端面同士を固定している。このため、この接着部は、各ファイバのコアを伝搬する光が通過することとなる。そして、本発明において、第1の保持部材と第2の保持部材の両方又はいずれか一方は、少なくとも部分的に透光素材で構成されている。また、接着部は、光硬化性の接着剤を硬化させたものである。つまり、この接着部は、第1又は第2の保持部材の投光部分を介して光を照射することにより硬化されたものである。
上記構成のように、MCFとファイババンドルの端面同士を接着部によって固定しておくことで、ピストニング現象が生じて光ファイバがフェルールに対して突き出したり引き込まれたりした場合であっても、両者の接合状態を維持できるため接続安定性を高めることができる。特に接着部は光硬化性の接着剤を硬化させたものであり、第1又は第2の保持部材の投光部分を介して光を照射することにより硬化させることが可能である。このため、光ファイバの端面同士の間に接着部を容易に形成できる。
本発明に係る光ファイバモジュールにおいて、スリーブは、MCFの端面とファイババンドルの端面とが突き合う方向に押力を付与するための機構を有しないものであることが好ましい。つまり、本発明において、スリーブには、従来の規格化された光コネクタのようなバネ構造やスプリングなどの押力付与機構は不要である。スリーブが、MCFとファイババンドルとが付き合うように加圧するものであると、前述したようにピストニング現象の影響を大きく受けることになる。一方で、本発明では、前述のようにMCFとファイババンドルの端面同士を光硬化性の接着部により固定しているため、従来の光コネクタのようなバネ構造を採用しなくても、これらの端面同士の接合状態を維持することができる。従って、本発明において、光コネクタのようなバネ構造等は不要となる。その結果、本発明によれば、ピストニング現象の影響を抑制することができる。また、モジュールの構造の簡素化及び部品点数の減少を図ることができるため、製造コストを削減することも可能である。
本発明に係る光ファイバモジュールにおいて、接着部は、さらに、第1の保持部材と第2の保持部材との間にも介在していることが好ましい。これにより、MCFとファイババンドルだけでなく、第1の保持部材と第2の保持部材も、この接着部によって固定することが可能となる。
本発明に係る光ファイバモジュールにおいて、接着部は、さらに、第1の保持部材及び第2の保持部材の両方又はいずれか一方とスリーブとの間にも介在していることが好ましい。これにより、MCFとファイババンドルだけでなく、第1又は第2の保持部材とスリーブも、この接着部によって固定することが可能となる。
本発明に係る光ファイバモジュールにおいて、MCF及びファイババンドルのコアの屈折率と接着部の屈折率はほぼ等しいことが好ましい。具体的には、MCFのコアの屈折率をn1とし、ファイババンドルに含まれるSMFのコアの屈折率をn2とした場合に、MCFのコアとSMFのコアの間に位置する接着部の屈折率n3は、以下の式で表される。
[式]n3=((n1+n2)/2)±0.02
これにより、各光ファイバのコアを伝搬する光は、接着部を通過する際に損失や反射等の影響を実質的に受けないこととなる。
[式]n3=((n1+n2)/2)±0.02
これにより、各光ファイバのコアを伝搬する光は、接着部を通過する際に損失や反射等の影響を実質的に受けないこととなる。
本発明の第2の側面は、光ファイバモジュールの製造方法に関する。本発明に係る製造方法では、まず、MCFの固定端を保持する第1の保持部材と、このMCFの各コアの配置に対応するように複数のSMFを束ねたファイババンドルの固定端を保持する第2の保持部材とをスリーブ内に挿入し、MCFの固定端側の端面とファイババンドルの固定端側の端面とを突き合わせた状態を維持する。次に、MCFの端面及びファイババンドルの端面の両方又はいずれか一方に硬化前の光硬化性の接着剤を塗布するか、これらの端面の間に接着剤を導入する。ここで、第1の保持部材及び第2の保持部材の両方又はいずれか一方は少なくとも部分的に透光素材で構成されている。そこで、その透光素材で構成された部位を介して、接着剤に光を照射して、接着剤を硬化させる。本発明に係る製造法によれば、前述した第1の側面に係る光ファイバモジュールを効率的に製造することができる。
本発明によれば、MCFとSMFバンドルを接続したFIFOデバイスにおいて、ピストニング現象の影響を抑制し、接続安定性の高い接続方式を提供することができる。
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
図1は、本発明の一実施形態に係る光ファイバモジュール100の外観を示している。図1に示されるように、本発明に係る光ファイバモジュール100は、マルチコアファイバ(MCF)10と、複数のシングルモードファイバ(SMF)を束ねたファイババンドル20とを光学的に結合した光学部品である。また、図2は、この光ファイバモジュール100の断面図であり、MCF10とファイババンドル20の結合部分を中心とした断面構造を示している。図1及び図2に示されるように、光ファイバモジュール100は、基本的に、MCF10及びファイババンドル20に加えて、第1及び第2の保持部材30,40とスリーブ50を含む
MCF10とファイババンドル20は、いずれも光ファイバの技術分野において公知のものを用いることができる。光ファイバは、石英ガラスや樹脂などで形成された繊維状の部材であり、クラッドの中に光信号伝搬用のコアが形成されている。コアは、クラッドと比較して屈折率が高く設計されており、コアに導入された光は、クラッド層との屈折率差により全反射することによってコア内に閉じ込められた状態で伝搬する。MCF10は、クラッド内に複数のコアが形成されており、空間分割多重伝送方式にて光信号を伝送できうる。SMFは、クラッド内にコアが一つのみ形成されている。複数のSMFを束ねてファイババンドル20を形成することにより、MCF10とファイババンドル20のそれぞれのコアを一対一対応にて光学的に結合できる。MCF10及びファイババンドル20の一例は図3に示されている。MCF10及びファイババンドル20としては、図3に示した7コア型や4コア型の他、様々なコア数、コア配列、コア間隔のものを採用することができる。
第1及び第2の保持部材30,40は、MCF10とファイババンドル20の固定端(接続端)を保持するための部材である。具体的には、第1の保持部材30がMCF10の固定端を保持し、第2の保持部材40がファイババンドル20の固定端を保持する。これらの保持部材30,40は、それぞれキャピラリ31,41とフェルール32,42を含む。
キャピラリ31,41は、円柱などの棒状に形成されており、その中心には、前後に貫通する貫通孔が形成されている。MCF10は、固定端側の樹脂被膜12を除去して、クラッド及び複数のコアからなるファイバ本体11を露出させて、このファイバ本体11がキャピラリ31の貫通孔に挿入されている。また、ファイババンドル20は、MCF10と同様に複数のSMFの樹脂被膜22を除去した後、MCF10のコアピッチと各SMFのクラッド径が同径になるようにSMFの先端に細径化処理を行った上で、複数のSMFのクラッド及びコアからなるファイバ本体21をキャピラリ41の貫通孔に挿入することにより形成されている。あるいは、ファイババンドル20は、MCF10のコアピッチと同径のクラッド径を持つ複数のSMFを束ねて、束ねたSMFのファイバ本体21をキャピラリ41の貫通孔に挿入することにより形成されている。なお、各キャピラリ31,41の貫通孔の内径は、MCF10やファイババンドル20のファイバ本体11,21が挿入可能なように、これらの先端の外形よりも僅かに大きくされている。その後、MCF10とファイババンドル20のファイバ本体11,21をそれぞれ各キャピラリ31,41に接着固定する。その際に、図3に示したように、MCF10やファイババンドル20の外周に接着剤層が形成され、この接着剤層によりMCF10とファイババンドル20はキャピラリ31,41に固定されることとなる。その後、各キャピラリ31,41の端面を研磨する。キャピラリの端面の研磨方法は公知であるが、例えば図2に示されるように、半球面状に研磨すればよく、その他斜め半球面状に研磨することもできる。
本発明において、MCF10が挿入されたキャピラリ31とファイババンドル20が挿入されたキャピラリ41の少なくともいずれか一方は、紫外線又は可視光を透過する透光素材で形成される。後述するように、キャピラリ31,41のいずれかは、MCF10とファイババンドル20の端面同士の間に塗布された光硬化性の接着剤を硬化させる光を透過するものであることが必要となる。透光性のキャピラリは、例えばガラス材又は樹脂成型材のような透明材料で形成すればよい。具体的には、透光性のキャピラリとしては、光硬化性の接着剤を硬化させるために利用する紫外線(例えば波長10~400nmの光)又は可視光(例えば波長360~830nmの光)を、30%以上透過する材料を選択すればよい。一方で、本発明では、キャピラリ31,41のいずれか一方が透光性を持つものであれよく、他方は不透明なものであってもよい。不透明なキャピラリとしては、セラミックやジルコニアなどの一般的に利用されている材料を選択すればよい。特に、本発明では、ファイババンドル20が挿入されたキャピラリ41として、形状安定性の高いセラミック製やジルコニア製のものを採用することが好ましい。これにより、キャピラリ41内でファイババンドル20を構成するSMFに位置ずれ等が生じることを抑制できる。この場合、MCF10が挿入されたキャピラリ31を、ガラス材又は樹脂成型材のような透明材料で形成することが必要となる。なお、キャピラリ31,41は、少なくも部分的に透明材料で形成されていればよく、必ずしも全体が透明材料である必要はない。
フェルール32,42は、中心に孔部を有する円筒状に形成されており、その前端側には周方向にわたって径方向外方へ張り出すフランジが形成されている。各フェルール32,42の孔部の前端側には、キャピラリ31,41が嵌合されており、このキャピラリ31,41の貫通孔はフェルール32,42の孔部と連通している。このため、キャピラリ31,41に挿入されたMCF10又はファイババンドル20は、フェルール32,42の孔部を挿通することとなる。従来のフェルールには、バネ部材やスプリングなど、光ファイバ同士が突き合う方向に向かってキャピラリを加圧するための付勢部材が必要となる。これに対して、本発明のフェルール32,42には、このようなバネ部材やスプリング等の付勢部材は不要である。このため、図2に示されるように、フェルール32,42の構造を簡素化できる。
スリーブ50は、略円筒状であり、その内部に2つのキャピラリ31,41の先端側が挿入される。これにより、MCF10とファイババンドル20が調心される。また、スリーブ50内に挿入された状態でキャピラリ31,41を円周方向に回転させることで、MCF10の各コアとファイババンドル20の各コアとが一致する。さらに、スリーブ50は、MCF10の固定端側の端面とファイババンドル20の固定端側の端面とを突き合わせた状態を維持する。なお、なお、スリーブ50は、MCF10とファイババンドル20の軸方向(すなわち互いに突き合う方向)に向かって加圧するものではない。スリーブ50の例は、軸方に沿ってスリットが形成された割スリーブと、キャピラリが挿入可能な内径が高精度に形成されたスリットを持たない精密スリーブである。図1に示されるように、本実施形態においては、スリットを持つ割スリーブ50が採用されている。割スリーブ50の場合、MCF10とファイババンドル20の径方向に力を加えることによってこれらを保持している。つまり、MCF10とファイババンドル20は、割スリーブ50によって挟み込まれることで、円周方向への回転や軸方向への進退が制止される。
図2の拡大図に示したように、本発明に係る光ファイバモジュール100は、さらに接着部60を含む。図2の拡大図に示されるように、接着部60は、少なくとも、MCF10のファイバ本体11の端面とファイババンドル20のファイバ本体21の端面との間に介在し、これらの端面同士を固定している。さらに具体的には、接着部60は、MCF10の端面とファイバ本体21の端面の間だけでなく、2つのキャピラリ31,41の先端面の間にも介在しており、これらの先端面同士を固定している。さらに、接着部60は、各キャピラリ31,41の外面とスリーブ50の内面の間にも介在しており、これらの外面と内面を固定している。このように、本実施形態では、接着部60により、MCF10の端面、ファイババンドル20の端面、各キャピラリ31,41の先端面、及びスリーブ50が一体的に固定される。
接着部60は、光硬化性の接着剤を硬化させたものである。このような光硬化性の接着剤としては、紫外線硬化型又は可視光硬化型の接着剤を利用すればよい。例えば、MCF10の端面及び/又はファイババンドル20の端面に硬化前の接着剤を塗布した後、これらを保持したキャピラリ31,41をスリーブ50内に挿入し、端面同士を突き合わせた状態で光(紫外線又は可視光)を接着剤に照射することで、この接着剤が硬化した接着部60を形成することができる。あるいは、MCF10とファイババンドル20を保持したキャピラリ31,41をスリーブ50内に挿入して端面同士を突き合わせた状態で、これらの端面の間に硬化前の接着剤を導入し、その後この接着剤に照射することで、この接着剤が硬化した接着部60を形成することもできる。
また、硬化用の光は、透光性材料で形成されたキャピラリ31,41を透過させて、MCF10とファイババンドル20の端面の間に塗布された接着剤に照射すればよい。前述したように、2つのキャピラリ31,41の少なくとも一方は透光性材料で形成されているため、この透光性材料を通じて、硬化用の光を光硬化性の接着剤に当てることができる。また、スリーブ50が割スリーブである場合、この割スリーブのスリットの隙間から硬化用の光を光硬化性の接着剤に当てることも可能である。このような観点から、本発明においては、スリーブ50として、精密スリーブよりも割スリーブを採用することが好ましいといえる。ただし、割スリーブを採用した場合であっても、MCF10とファイババンドル20の端面の間に塗布された接着剤の全体に対して効率的に光を照射するために、2つのキャピラリ31,41の一方又は両方を透光性材料で形成することが好ましいといえる。
なお、光学部品の接合に用いられる光学接着剤としては、主に加熱により硬化する熱硬化型と、光の照射により硬化する光硬化型とが知られている。ただし、熱硬化型の接着剤は、硬化後の常温に戻る過程で収縮が起こり易く、このことで接着前後での位置ズレが起き、また応力歪みも発生し易いなどの懸念点から、本発明の用途には相応しくない。一方で、光硬化型の接着剤は、硬化時の収縮が少なく、また完全硬化に必要な時間が熱硬化型よりも短いことから製造時間を短縮できるというメリットもある。従って、本発明では、光ファイバの端面同士の接着用途としては、光硬化型の接着剤を使用することが好ましい。
また、本発明では、MCF10とファイババンドル20の端面同士をフィジカルコンタクトさせておらず、これらの間には接着部60が介在することとなる。この場合、光ファイバのコアと接着部60の屈折率差が大きいと、フレネル反射による端面反射が発生することが懸念される。従って、本発明では、このような端面反射を抑制するために、硬化後の接着部60の屈折率を光ファイバのコアの屈折率と近しいものにすることが必要になる。具体的には、MCF10の複数のコアのうち、ある特定のコアの屈折率をn1とする。また、ファイババンドル20に含まれる複数のSMFのコアのうち、MCF10の上記特定のコアに結合されたSMFのコアの屈折率をn2とする。また、MCF10の上記特定のコアと、これに結合されたSMFのコアの間に位置する接着部60の屈折率をn3とする。この場合、以下の式を満足することが好ましい。
[式]n3=((n1+n2)/2)±0.02
これにより、接着部60の屈折率を光ファイバのコアの屈折率と実質的に等しくできるため、端面反射を抑制することができる。
[式]n3=((n1+n2)/2)±0.02
これにより、接着部60の屈折率を光ファイバのコアの屈折率と実質的に等しくできるため、端面反射を抑制することができる。
なお、本発明において、スリーブ50は、透明であってもよいし不透明であってもよい。スリーブが透明であれば、MCF10とファイババンドル20の端面の間に塗布された光硬化の接着剤(接着部60)に対して光を照射しやすくなる。また、スリーブ50は、その内面がミラー又はハーフミラーによって形成されていてもよい。例えば、スリーブ50の内面をミラーで形成することで、スリーブ50内に照射された光が拡散し、MCF10とファイババンドル20の間に付された接着剤に対して効率よく全体的に光を照射できる。また、スリーブ50の内周面を、内から外へ出ていく光を反射し、外から内に入る光を透過するハーフミラーとすることで、MCF10とファイババンドル20の間に付された接着剤に対して光を照射しやすくなる。
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
10…マルチコアファイバ(MCF) 11…ファイバ本体
12…樹脂被膜 20…ファイババンドル
21…ファイバ本体 22…樹脂被膜
30…第1の保持部材 31…キャピラリ
32…フェルール 40…第2の保持部材
41…キャピラリ 42…フェルール
50…スリーブ 60…接着部
100…光ファイバモジュール
12…樹脂被膜 20…ファイババンドル
21…ファイバ本体 22…樹脂被膜
30…第1の保持部材 31…キャピラリ
32…フェルール 40…第2の保持部材
41…キャピラリ 42…フェルール
50…スリーブ 60…接着部
100…光ファイバモジュール
Claims (6)
- 複数のコアを有するマルチコアファイバと、
前記マルチコアファイバの各コアの配置に対応するように、1つのコアを有する複数のシングルモードファイバを束ねたファイババンドルと、
前記マルチコアファイバの固定端を保持する第1の保持部材と、
前記ファイババンドルの固定端を保持する第2の保持部材と、
前記第1の保持部材及び前記第2の保持部材が挿入され、前記マルチコアファイバの固定端側の端面と前記ファイババンドルの固定端側の端面とを突き合わせた状態を維持するスリーブと、
前記マルチコアファイバの前記端面と前記ファイババンドルの前記端面との間に介在した接着部とを有し、
前記第1の保持部材及び前記第2の保持部材の両方又はいずれか一方は、少なくとも部分的に透光素材で構成されており、
前記接着部は、光硬化性の接着剤を硬化させたものである
光ファイバモジュール。 - 前記スリーブは、前記マルチコアファイバの前記端面と前記ファイババンドルの前記端面とが突き合う方向に押力を付与するための機構を有しない
請求項1に記載の光ファイバモジュール。 - 前記接着部は、さらに、前記第1の保持部材と前記第2の保持部材との間にも介在している
請求項1又は請求項2に記載の光ファイバモジュール。 - 前記接着部は、さらに、前記第1の保持部材及び前記第2の保持部材の両方又はいずれか一方と前記スリーブとの間にも介在している
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ファイバモジュール。 - 前記マルチコアファイバのコアの屈折率をn1とし、前記ファイババンドルに含まれる前記シングルモードファイバのコアの屈折率をn2とした場合に、前記マルチコアファイバのコアと前記シングルモードファイバのコアの間に位置する前記接着部の屈折率n3は、((n1+n2)/2)±0.02である
請求項1から請求項4のいずれかに記載の光ファイバモジュール。 - 複数のコアを有するマルチコアファイバの固定端を保持する第1の保持部材と、前記マルチコアファイバの各コアの配置に対応するように複数のシングルモードファイバを束ねたファイババンドルの固定端を保持する第2の保持部材とをスリーブ内に挿入し、前記マルチコアファイバの固定端側の端面と前記ファイババンドルの固定端側の端面とを突き合わせた状態を維持する工程と、
前記マルチコアファイバの前記端面及び前記ファイババンドルの前記端面の両方又はいずれか一方に硬化前の光硬化性の接着剤を塗布するか、これらの端面の間に前記接着剤を導入する工程と、
前記第1の保持部材及び前記第2の保持部材の両方又はいずれか一方は少なくとも部分的に透光素材で構成されており、その透光素材で構成された部位を介して、前記接着剤に光を照射して、前記接着剤を硬化させる工程と、を含む
光ファイバモジュールの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021157583A JP2023048327A (ja) | 2021-09-28 | 2021-09-28 | 光ファイバモジュール及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2021157583A JP2023048327A (ja) | 2021-09-28 | 2021-09-28 | 光ファイバモジュール及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2023048327A true JP2023048327A (ja) | 2023-04-07 |
Family
ID=85779931
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2021157583A Pending JP2023048327A (ja) | 2021-09-28 | 2021-09-28 | 光ファイバモジュール及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2023048327A (ja) |
-
2021
- 2021-09-28 JP JP2021157583A patent/JP2023048327A/ja active Pending
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