JP2023048264A - 積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明の目的は、一方向強化繊維層と強化繊維織物層を組み合わせてなるFRP積層体において、強化繊維織物側をき裂進展させることで、一方向強化繊維への層内遷移を抑制することが可能となるFRP積層体を提供することである。【解決手段】 一方向に引き揃えられた強化繊維とマトリックス樹脂とを含む繊維強化複合材料の層(以下、一方向強化繊維層)と、その表面に隣接して積層された強化繊維織物とマトリックス樹脂とを含む繊維強化複合材料の層(以下、強化繊維織物層)とを含む積層体であって、少なくとも一つの一方向強化繊維層における該一方向の強化繊維と、その表面に隣接する少なくとも一つの強化繊維織物層の該強化繊維織物の間に樹脂層が存在し、該樹脂層に、真球ポリマー粒子と不定形ポリマー粒子とが含まれ、該一方向強化繊維の繊維方向と垂直方向の断面において、該樹脂層の強化繊維織物側に存在するポリマー粒子の占める面積における、該不定形ポリマー粒子の存在割合が50%より高い、積層体。【選択図】なし
Description
本発明は、一方向に引き揃えられた強化繊維を含む繊維強化複合材料の層と、その表面に積層された強化繊維織物を含む繊維強化複合材料の層とを含む積層体に関する。
近年、炭素繊維やアラミド繊維などを強化繊維として用いた繊維強化複合材料(FRP)は、その高い比強度と比弾性率を利用して、航空機や自動車などの構造材料、テニスラケット、ゴルフシャフトおよび釣り竿などのスポーツ、および一般産業用途などに利用されてきた。
そのFRPの製造方法には、強化繊維に未硬化のマトリックス樹脂が含浸されたシート状中間材料であるプリプレグを用い、それを硬化させる方法や、モールド中に配置した強化繊維に液状の樹脂を流し込んで、それを硬化させるレジン・トランスファー・モールディング法などが用いられている。これらの製造方法のうち、プリプレグを用いる方法では、通常、プリプレグを複数枚積層した後、加熱加圧することによってFRP成形物を得ている。
中でも航空機や自動車などの構造材用途では、一方向に引き揃えられた強化繊維とマトリックス樹脂とを含むFRPの層(以下、一方向強化繊維層または一方向FRP)を有するFRPを製造した後に、他の成形品と接合するなどの目的で、FRPに穴あけ加工を施す場合がある。この場合、FRP表面の強化繊維が一方向に引き揃えられていると、加工時に切断された強化繊維が剥離し、ささくれ立って、外観表面が悪くなるという問題があった。
この問題に対しては、上記一方向FRPの表層に強化繊維織物とマトリックス樹脂とを含むFRPの層(以下、強化繊維織物層または織物FRP)を積層することで、一方向に引き揃えられている場合に比べて、ささくれなどが生じづらくなることが知られている。そこで、穴あけ加工を施す必要があるFRPを製造する場合には、表面に織物FRPを用いることが多い(特許文献1)。
層間剥離を抑制する手法としては、層間に樹脂層を形成し、樹脂層内にポリマー粒子を配置する手法が挙げられる。一方向強化繊維のみからなるFRPでは、層間にポリマー粒子を配置することで、層間をき裂進展する際に、エネルギー吸収が大きくなり、高い層間靱性を得ることができることが報告されている(特許文献2~4)。
特許文献1に記載の発明においては、強化繊維織物と一方向強化繊維を組み合わせてなるFRPでは、一方向強化繊維の非繊維方向における両者の線膨張係数に差があるため、室温環境下で織物FRPと一方向FRPの間に残留応力が発生する。さらに、弾性率にも差があるため、強化繊維織物層と一方向強化繊維層の層間で、ドリル加工時に剥離(以下、層間剥離と記載する)が発生する傾向にあった。
特許文献2~4に記載の発明においては、層間をき裂進展する際に、き裂が層間から繊維層内に遷移(以下、層内遷移と記載)することで、ポリマー粒子によるエネルギー吸収ができず、想定よりも低い層間靱性となってしまう問題があった。特に、一方向強化繊維層と強化繊維織物層を組み合わせてなるFRP積層体の層間においては、強化繊維織物側では繊維同士で拘束されているため層内遷移が発生しないが、一方向強化繊維への層内遷移が問題となっていた。
本発明の目的は、一方向強化繊維層と強化繊維織物層を組み合わせてなるFRP積層体において、強化繊維織物側をき裂進展させることで、一方向強化繊維への層内遷移を抑制することが可能となるFRP積層体を提供することである。
一方向に引き揃えられた強化繊維とマトリックス樹脂とを含む繊維強化複合材料の層(以下、一方向強化繊維層)と、
その表面に隣接して積層された強化繊維織物とマトリックス樹脂とを含む繊維強化複合材料の層(以下、強化繊維織物層)とを含む積層体であって、
少なくとも一つの一方向強化繊維層における該一方向の強化繊維と、その表面に隣接する少なくとも一つの強化繊維織物層の該強化繊維織物の間に樹脂層が存在し、
該樹脂層に、真球ポリマー粒子と不定形ポリマー粒子とが含まれ、
該一方向強化繊維の繊維方向と垂直方向の断面において、該樹脂層の強化繊維織物側に存在するポリマー粒子の占める面積における、該不定形ポリマー粒子の存在割合が50%より高い、積層体である。
その表面に隣接して積層された強化繊維織物とマトリックス樹脂とを含む繊維強化複合材料の層(以下、強化繊維織物層)とを含む積層体であって、
少なくとも一つの一方向強化繊維層における該一方向の強化繊維と、その表面に隣接する少なくとも一つの強化繊維織物層の該強化繊維織物の間に樹脂層が存在し、
該樹脂層に、真球ポリマー粒子と不定形ポリマー粒子とが含まれ、
該一方向強化繊維の繊維方向と垂直方向の断面において、該樹脂層の強化繊維織物側に存在するポリマー粒子の占める面積における、該不定形ポリマー粒子の存在割合が50%より高い、積層体である。
本発明によれば、一方向強化繊維と強化繊維織物の間において、強化繊維織物側の樹脂層をき裂進展させることで、層間剥離が発生しにくいFRPを提供することが可能となる。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明のFRP積層体は、通常、一方向に引き揃えられた強化繊維とマトリックス樹脂からなるプリプレグの表面に、強化繊維織物とマトリックス樹脂からなるプリプレグを積層させて、硬化することで成形されるものである。さらに、その一方向強化繊維と強化繊維織物の間に樹脂層が形成されており、その樹脂層には不定形ポリマー粒子と真球ポリマー粒子が両方配置されている。さらに、その樹脂層は少なくとも、一方向強化繊維の繊維方向と垂直方向の断面において、樹脂層の強化繊維織物側に存在する粒子の占める面積における、不定形ポリマー粒子の存在割合が高くなっている。
<材料>
(強化繊維)
一方向強化繊維は一般に多数の単繊維が束ねられた強化繊維束として用いられるが、例えば炭素繊維では、通常、1,000本~1,000,000本程度の単繊維がテープ状に集合したものを「トウ」と呼んでおり、このトウを配列させてシート状強化繊維束を得ることができる。配列状態は強化繊維長手方向に、一方向に配列させた物を一方向強化繊維、繊維を縦横に組み合わせ配列させた物を強化繊維織物と呼ぶ。FRPの力学特性を優先させる時には一方向材が用いられ、ドリル加工時のバリ抑制の場合や複材形状を作製する場合には強化繊維織物が用いられる傾向がある。強化繊維織物としては、平織や綾織、サテンなどを例示することができ、その他にも、編物や組物なども用いることができる。
本発明に用いられる強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、PBO繊維、高強力ポリエチレン繊維、アルミナ繊維および炭化ケイ素繊維などを用いることができる。これらの繊維を、2種類以上混合して用いても構わない。特に、材料の軽量化や高強度化の要求が高い用途においては、その優れた比弾性率と比強度のため、炭素繊維を好適に用いることができる。
<材料>
(強化繊維)
一方向強化繊維は一般に多数の単繊維が束ねられた強化繊維束として用いられるが、例えば炭素繊維では、通常、1,000本~1,000,000本程度の単繊維がテープ状に集合したものを「トウ」と呼んでおり、このトウを配列させてシート状強化繊維束を得ることができる。配列状態は強化繊維長手方向に、一方向に配列させた物を一方向強化繊維、繊維を縦横に組み合わせ配列させた物を強化繊維織物と呼ぶ。FRPの力学特性を優先させる時には一方向材が用いられ、ドリル加工時のバリ抑制の場合や複材形状を作製する場合には強化繊維織物が用いられる傾向がある。強化繊維織物としては、平織や綾織、サテンなどを例示することができ、その他にも、編物や組物なども用いることができる。
本発明に用いられる強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、PBO繊維、高強力ポリエチレン繊維、アルミナ繊維および炭化ケイ素繊維などを用いることができる。これらの繊維を、2種類以上混合して用いても構わない。特に、材料の軽量化や高強度化の要求が高い用途においては、その優れた比弾性率と比強度のため、炭素繊維を好適に用いることができる。
一方向強化繊維用の炭素繊維の市販品としては、“トレカ(登録商標)”T800G-24K、“トレカ(登録商標)”T800S-24K、“トレカ(登録商標)”T700G-24K、“トレカ(登録商標)”T300-3K、および“トレカ(登録商標)”T700S-12K(以上東レ(株)製)などが挙げられる。
強化繊維織物用の炭素繊維の市販品としては、“トレカ(登録商標)”クロス CM6644G などが挙げられる。
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂は熱硬化性樹脂組成物であり、種類は特に制限はなく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などを主成分とする熱硬化性樹脂組成物のいずれも好適に用いることができる。
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂は熱硬化性樹脂組成物であり、種類は特に制限はなく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などを主成分とする熱硬化性樹脂組成物のいずれも好適に用いることができる。
特に、エポキシ樹脂は、強化繊維との接着性が良いので、強度に優れたFRPを得る場合に特に好ましく用いることができる。中でも、3官能以上のエポキシ樹脂が好適に用いられる。本発明で用いられる3官能以上のエポキシ樹脂とは、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する化合物である。3官能以上のエポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルアミン型エポキシ樹脂およびグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。
3官能以上のエポキシ樹脂を用いることで、積層体の層間靭性とマトリックス樹脂の弾性率が向上するという点でより好ましい。また、不定形ポリマー粒子周辺のマトリックス樹脂の弾性率が粒子の弾性率よりさらに高くなるものであれば、不定形ポリマー粒子の周辺の樹脂への応力集中がさらに高くなるため、き裂が強化繊維織物側をより進展しやすくなり、一方向強化繊維への層内遷移が抑制されるという点でより好ましい。3官能以上のエポキシ樹脂において、官能基数は好ましくは3~7であり、より好ましくは3~4である。官能基数が多すぎると硬化後のマトリックス樹脂が脆くなってしまい、層間靭性を損ねる場合がある。例えば、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルスルホン型、アミノフェノール型、メタキシレンジアミン型、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン型、イソシアヌレート型等のエポキシ樹脂が挙げられる。特に、物性のバランスが良いことから、ジアミノジフェニルメタン型とアミノフェノール型のエポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。
3官能以上のグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルスルホン型、アミノフェノール型、メタキシレンジアミン型、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン型、イソシアヌレート型等のエポキシ樹脂が挙げられる。中でも物性のバランスが良いことから、ジアミノジフェニルメタン型とアミノフェノール型のエポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。また、3官能以上のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型およびテトラフェニロールエタン型等のエポキシ樹脂が挙げられる。
アミノフェノール型のエポキシ樹脂の市販品としては、ELM120やELM100やELM434(以上、住友化学(株)製)、“jER(登録商標)”630(三菱化学(株)製)、および“アラルダイト(登録商標)”MY0510(ハンツマン(株)製)、“アラルダイト(登録商標)”MY0600(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、“アラルダイト(登録商標)”MY0610(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、“アラルダイト(登録商標)”MY721(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)などが挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、DEN431やDEN438(以上、ダウケミカル社製)および“jER(登録商標)”152(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
オルソクレゾールノボラック型のエポキシ樹脂市販品としては、EOCN-1020(日本化薬(株)製)や“エピクロン(登録商標)”N-660(DIC(株)製)などが挙げられる。
3官能以外のエポキシ樹脂として用いられるエポキシ樹脂のうち、2官能のエポキシ樹脂としては、フェノールを前駆体とするグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。このようなエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ヒダントイン型およびレゾルシノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“EPON(登録商標)”825(三菱化学(株)製)、“エピクロン(登録商標)”850(DIC(株)製)、“エポトート(登録商標)”YD-128(新日鐵化学(株)製)、およびDER-331やDER-332(以上、ダウケミカル社製)などが挙げられる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、GY285(ビスフェノールF、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)などが挙げられる。
本発明のFRP用エポキシ樹脂組成物は、硬化剤を配合して用いると良い。ここで説明される硬化剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の硬化剤であり、エポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物である。硬化剤としては、具体的には、例えば、ジシアンジアミド、芳香族ポリアミン、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタンおよび三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などが挙げられる。
芳香族ポリアミンを硬化剤として用いることにより、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物が得られる。特に、芳香族ポリアミンの中でも、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体は、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物を得るため最も適している硬化剤である。
また、ジシアンジアミドと尿素化合物、例えば、3,4-ジクロロフェニル-1,1-ジメチルウレアとの組合せ、あるいはイミダゾール類を硬化剤として用いることにより、比較的低温で硬化しながら高い耐熱耐水性が得られる。酸無水物を用いてエポキシ樹脂を硬化することは、アミン化合物硬化に比べ吸水率の低い硬化物を与える。その他、これらの硬化剤を潜在化したもの、例えば、マイクロカプセル化したものを用いることにより、プリプレグの保存安定性、特にタック性やドレープ性が室温放置しても変化しにくい。これらの硬化剤は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
芳香族ポリアミン硬化剤の市販品としては、“セイカキュア(登録商標)”S(和歌山精化工業(株)製)、MDA-220(三井化学(株)製)、“jERキュア(登録商標)”W(三菱化学(株)製)、および3,3’-DAS(三井化学(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M-DEA(Lonza(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M-DIPA(Lonza(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M-MIPA(Lonza(株)製)および“Lonzacure(登録商標)”DETDA 80(Lonza(株)製)などが挙げられる。
(ポリマー粒子) 本発明では、樹脂層にポリマー粒子を配置することで、FRPとしたときに、マトリックス樹脂の靱性が向上し層間靭性が向上する。ポリマー粒子を用いることで、樹脂層をき裂進展する際に、粒子周辺の樹脂で応力集中が発生することから、樹脂層を進展したき裂は、ポリマー粒子内に向けて進展し、樹脂層の破壊に必要なエネルギーが大きくなるため、高い層間靭性を与える。本発明で用いられるポリマー粒子の素材としては、マトリックス樹脂に混合または溶解して用い得るポリマー樹脂がよく、中でも、ポリアミドは最も好ましく、ポリアミドの中でも、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12やナイロン6及び12の共重合体は、特に良好な熱硬化性樹脂との接着強度を与える。このポリマー粒子の形状としては、粒子の長径に対する短径の割合(以下、真球度と記載)が高い真球ポリマー粒子と、真球度が低い不定形ポリマー粒子が挙げられ、本発明では両者を併用する。
(ポリマー粒子) 本発明では、樹脂層にポリマー粒子を配置することで、FRPとしたときに、マトリックス樹脂の靱性が向上し層間靭性が向上する。ポリマー粒子を用いることで、樹脂層をき裂進展する際に、粒子周辺の樹脂で応力集中が発生することから、樹脂層を進展したき裂は、ポリマー粒子内に向けて進展し、樹脂層の破壊に必要なエネルギーが大きくなるため、高い層間靭性を与える。本発明で用いられるポリマー粒子の素材としては、マトリックス樹脂に混合または溶解して用い得るポリマー樹脂がよく、中でも、ポリアミドは最も好ましく、ポリアミドの中でも、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12やナイロン6及び12の共重合体は、特に良好な熱硬化性樹脂との接着強度を与える。このポリマー粒子の形状としては、粒子の長径に対する短径の割合(以下、真球度と記載)が高い真球ポリマー粒子と、真球度が低い不定形ポリマー粒子が挙げられ、本発明では両者を併用する。
真球ポリマー粒子の平均粒径は、5~50μmの範囲であると好ましく、より好ましくは7~40μmの範囲、さらに好ましくは10~30μmの範囲である。上記の上限のいずれかと下限のいずれかとの組み合わせによる範囲であってもよい。平均粒径を5μm以上とすることで、ポリマー粒子が強化繊維の束の中に侵入せず、得られる積層体の樹脂層に留まることができ、平均粒径を50μm以下とすることでプリプレグ表面の樹脂層の厚みを適正化し、得られる積層体において、繊維質量含有率を適正化することができる。不定形ポリマー粒子の平均粒径についても、好適な範囲は、真球ポリマー粒子の平均粒径の範囲と同一であり、上記同様の理由が考えられる。
ここで、ポリマー粒子の平均粒径については、真球、不定形の粒子ともに、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡にて粒子を1000倍以上に拡大し写真撮影し、無作為に粒子を選び、その粒子の外接する円の直径を粒径とし、その粒径の平均値(n=50)として求める。
前記真球ポリマー粒子の使用により、FRPのドリル加工時に、層間剥離が低減される。特に、真球ポリマー粒子を用いることで、エポキシ樹脂の流動特性を低下させないため、強化繊維への含浸性が優れ、FRPのドリル加工時に、層間遷移が低減され得る。高い真球度のポリマー粒子を用いることで、樹脂層をき裂進展する際に、ポリマー粒子周辺の樹脂において、発生する応力集中が小さくなり、高い層間靭性を実現することができる。真球ポリマー粒子の真球度は、90~100の範囲であり、好ましくは95以上、より好ましくは97以上である。真球ポリマー粒子の市販品として、“アミラン(登録商標)”SP-500、SP-10、TR-1、TR-2(東レ(株)製)などが挙げられる。さらに、ポリアミドからなる真球ポリマー粒子としては、国際公開第2018/207728号パンフレット記載のポリアミド粒子(実施例で説明)などを例示することができる。
ここで、ポリマー粒子の真球度は、個々の粒子径を、走査型電子顕微鏡にて、粒子を1000倍で観察して、写真から任意の30個の粒子を選択して、その短径と長径を測長し、下記数式に従い算出する。
エポキシ樹脂全体に対する真球ポリマー粒子の添加重量割合は、3質量%~20質量%が好ましい。3質量%以上とすることで、高い層間靱性を得ることが可能となり、20質量%以下とすることで、樹脂を低粘度にすることが可能となり、均一なフィルムを得ることができる。
前記不定形ポリマー粒子について、真球ポリマー粒子の形状が均一であるのに対して、不定形ポリマーは真球度が低く、不規則な形状を有する。そのため、樹脂層をき裂進展する際に、粒子周辺の樹脂の応力集中が粒子の形状によって異なり、粒子周辺の樹脂の破壊が不規則に発生するため、き裂の迂曲を誘起することができる。き裂の迂曲を誘起させることができる不定形ポリマー粒子の真球度として好ましくは、30~80の範囲である。かかる真球度が小さすぎると、粒子周辺の樹脂の応力集中が高くなりすぎ、破壊が早期に発生し、得られる層間靭性が低くなる場合がある。
不定形ポリマー粒子の市販品としては、“オルガソール(登録商標)”1002D、2001UD,2001EXD、2002D、3202D,3501D,3502D、(以上、アルケマ社製)等が挙げられる。
エポキシ樹脂全体に対する不定形ポリマー粒子の添加重量割合は、3質量%~20質量%が好ましい。3質量%以上とすることで、き裂の迂曲を高頻度で発生させることが可能となり、20質量%以下とすることで、樹脂を低粘度にすることが可能となり、均一なフィルムを得ることができる。
さらに、一方向強化繊維の繊維方向と垂直方向の断面において、樹脂層の強化繊維織物側に存在する粒子の占める面積における不定形ポリマー粒子の存在割合を50%より高くすることで、樹脂層内を進展するき裂を強化繊維織物側に迂曲させることが可能となる。これにより、一方向強化繊維への層内遷移を抑制することが可能となる。ここで、上記存在割合は、後述の実施例に測定方法を詳述する。また、樹脂層の強化繊維織物側とは、一方向強化繊維と強化繊維織物の間に存在する樹脂層において、強化繊維織物に近い側の半分の樹脂層の領域を意味する。具体的には、上記断面から任意に選択した5箇所を撮像して、撮像された画面にて、実施例に後述する方法により、樹脂層の中央線を取得する。中央線より強化繊維織物側を「強化繊維織物に近い側の半分の樹脂層の領域」として、同領域の面積に対するポリマー粒子の面積割合Pと不定形ポリマー粒子の面積割合Iをそれぞれ測定し、IをPにより除して求める。なお、中央線上に存在するポリマー粒子は測定しないものとする。5か所の断面画像について同様に上記存在割合を算出し、その平均値を採る。
ここで、強化繊維織物は繊維同士で拘束しあっているため、強化繊維織物層への層内遷移は通常発生しない。樹脂層を進展するき裂をより確実に強化繊維織物側に迂曲させることができる上記不定形ポリマー粒子の存在割合として好ましくは、60%以上の範囲にあることである。
以下、実施例によって、本発明の積層体について、より具体的に説明する。実施例で用いた樹脂原料、プリプレグおよびFRP積層体の作製方法および評価法を、次に示す。実施例のプリプレグの作製環境および評価は、特に断りのない限り、温度25℃±2℃、相対湿度50%の雰囲気で行ったものである。
<炭素繊維(一方向強化繊維用)>
“トレカ(登録商標)”T800S-24K(フィラメント数24,000本、引張強度7.0GPa、引張弾性率324GPa、引張伸度2.0%の炭素繊維、東レ(株)製)。
<炭素繊維(強化繊維織物用)>
“トレカ(登録商標)”クロス “CM6644G”(東レ(株)製)。
<マトリックス樹脂>
3官能以上のエポキシ樹脂
・ELM434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学(株)製)
・“アラルダイト(登録商標)”MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
・“アラルダイト(登録商標)”MY0600(トリグリシジルメタアミノフェノール、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
2官能エポキシ樹脂
・“EPON(登録商標)”825(ビスフェノールA、三菱化学(株)製)
・GY285(ビスフェノールF、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
<硬化剤>
・“セイカキュア(登録商標)”-S(4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、和歌山精化(株)製)
<熱可塑性樹脂>
・“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製)。
<ポリマー粒子>
・真球ポリマー粒子:以下の製法により得られたポリアミド6粒子(モード径:15.0μm、平均粒径:15.0μm)
国際公開第2018/207728号公報を参考に、3Lのヘリカルリボン型の撹拌翼が付属したオートクレーブに、ε-カプロラクタム(東レ(株)製)200g、第2成分のポリマーとしてポリエチレングリコール(和光純薬工業(株)製1級ポリエチレングリコール20,000、重量平均分子量18,600)800g、水1,000gを加え均一な溶液を形成後に密封し、窒素で置換した。その後、撹拌速度を100rpmに設定し、温度を240℃まで昇温させた。この際、系の圧力が10kg/cm2に達した後、圧が10kg/cm2を維持するよう水蒸気を微放圧させながら制御した。温度が240℃に達した後に、0.2kg/cm2・分の速度で放圧させた。その後、窒素を流しながら1時間温度を維持し重合を完了させ、2,000gの水浴に吐出しスラリーを得た。溶解物を溶かした後に、ろ過を行い、ろ上物に水2,000gを加え、80℃で洗浄を行った。その後200μmの篩を通過させた凝集物を除いたスラリー液を、再度ろ過して単離したろ上物を80℃で12時間乾燥させ、ポリアミド6粉末を140g作製した。得られた粉末の融点はポリアミド6と同様の218℃、結晶化温度は170℃であった。
・不定形ポリマー粒子
“オルガソール(登録商標)”1002 D NAT1(アルケマ(株)、平均粒径:20.0μm)
“オルガソール(登録商標)”3502 D NAT1(アルケマ(株)、平均粒径:20.0μm)
(1)エポキシ樹脂組成物の調製
上記エポキシ樹脂と熱可塑性樹脂を表1のとおり混練し、150℃以上に昇温し、そのまま1時間攪拌することで熱可塑性樹脂を溶解させて透明な粘調液を得た。この液を混練しながら降温した後、硬化剤を添加してさらに混練し、第1樹脂組成物を得た。
<炭素繊維(一方向強化繊維用)>
“トレカ(登録商標)”T800S-24K(フィラメント数24,000本、引張強度7.0GPa、引張弾性率324GPa、引張伸度2.0%の炭素繊維、東レ(株)製)。
<炭素繊維(強化繊維織物用)>
“トレカ(登録商標)”クロス “CM6644G”(東レ(株)製)。
<マトリックス樹脂>
3官能以上のエポキシ樹脂
・ELM434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学(株)製)
・“アラルダイト(登録商標)”MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
・“アラルダイト(登録商標)”MY0600(トリグリシジルメタアミノフェノール、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
2官能エポキシ樹脂
・“EPON(登録商標)”825(ビスフェノールA、三菱化学(株)製)
・GY285(ビスフェノールF、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
<硬化剤>
・“セイカキュア(登録商標)”-S(4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、和歌山精化(株)製)
<熱可塑性樹脂>
・“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製)。
<ポリマー粒子>
・真球ポリマー粒子:以下の製法により得られたポリアミド6粒子(モード径:15.0μm、平均粒径:15.0μm)
国際公開第2018/207728号公報を参考に、3Lのヘリカルリボン型の撹拌翼が付属したオートクレーブに、ε-カプロラクタム(東レ(株)製)200g、第2成分のポリマーとしてポリエチレングリコール(和光純薬工業(株)製1級ポリエチレングリコール20,000、重量平均分子量18,600)800g、水1,000gを加え均一な溶液を形成後に密封し、窒素で置換した。その後、撹拌速度を100rpmに設定し、温度を240℃まで昇温させた。この際、系の圧力が10kg/cm2に達した後、圧が10kg/cm2を維持するよう水蒸気を微放圧させながら制御した。温度が240℃に達した後に、0.2kg/cm2・分の速度で放圧させた。その後、窒素を流しながら1時間温度を維持し重合を完了させ、2,000gの水浴に吐出しスラリーを得た。溶解物を溶かした後に、ろ過を行い、ろ上物に水2,000gを加え、80℃で洗浄を行った。その後200μmの篩を通過させた凝集物を除いたスラリー液を、再度ろ過して単離したろ上物を80℃で12時間乾燥させ、ポリアミド6粉末を140g作製した。得られた粉末の融点はポリアミド6と同様の218℃、結晶化温度は170℃であった。
・不定形ポリマー粒子
“オルガソール(登録商標)”1002 D NAT1(アルケマ(株)、平均粒径:20.0μm)
“オルガソール(登録商標)”3502 D NAT1(アルケマ(株)、平均粒径:20.0μm)
(1)エポキシ樹脂組成物の調製
上記エポキシ樹脂と熱可塑性樹脂を表1のとおり混練し、150℃以上に昇温し、そのまま1時間攪拌することで熱可塑性樹脂を溶解させて透明な粘調液を得た。この液を混練しながら降温した後、硬化剤を添加してさらに混練し、第1樹脂組成物を得た。
また、上記エポキシ樹脂と熱可塑性樹脂を表1のとおり混練し、150℃以上に昇温し、そのまま1時間攪拌することで熱可塑性樹脂を溶解させて透明な粘調液を得た。この液を混練しながら降温した後、表1に示すとおりに真球ポリマー粒子、不定形ポリマー粒子を添加して混練した後、さらに硬化剤を添加して混練し、第2樹脂組成物を得た。
(2)一方向プリプレグの製造
2段含浸法を用いて作製した。シリコーンを塗布した離型紙上に、上記(1)で作製した第1樹脂組成物または第2樹脂組成物を均一に塗布して、それぞれ第1樹脂フィルム(樹脂目付30g/m2)、第2樹脂フィルム(樹脂目付20g/m2)とした。2枚の第1樹脂フィルムの間に一方向に均一に引き揃えた炭素繊維を挟み込み、プレスロールを用いて加熱、加圧して、炭素繊維に第1樹脂組成物が含浸した1次プリプレグを得た。次いで、1次プリプレグから両方の離型紙を剥離した。次に、2枚の第2樹脂フィルムの間に1次プリプレグを挟み込み、プレスロールを用いて加熱、加圧して、1次プリプレグに第2樹脂組成物が含浸した一方向プリプレグを得た(炭素繊維質量190g/m2、樹脂含有率35.5質量%)。
(3)織物プリプレグの製造
2段含浸法を用いて作製した。シリコーンを塗布した離型紙上に、上記(1)で作製した第1樹脂組成物または第2樹脂組成物を均一に塗布して、それぞれ第1樹脂フィルム、第2樹脂フィルムとした。2枚の第1樹脂フィルムの間に炭素繊維織物を挟み込み、プレスロールを用いて加熱、加圧して、炭素繊維に第1樹脂組成物が含浸した1次プリプレグを得た。次いで、1次プリプレグから両方の離型紙を剥離した。次に、2枚の第2樹脂フィルムの間に1次プリプレグを挟み込み、プレスロールを用いて加熱、加圧して、1次プリプレグに第2樹脂組成物が含浸した織物プリプレグを得た(炭素繊維質量195g/m2、樹脂含有率40質量%)。
(4)モードI層間靭性(GIC)試験における層内遷移割合の測定
ASTM D5528(2002)に準じ、次の(a)~(e)の操作により層内遷移割合を測定した。
(a)一方向プリプレグと織物プリプレグを250mm×250mmにそれぞれカットした後、一方向プリプレグの繊維方向を同方向に揃えて、13ply積層した一方向プリプレグ積層体を2つ作製した。織物プリプレグ1plyが中心になるように、2つの一方向プリプレグ13plyで挟むように積層し、一方向プリプレグと織物プリプレグで合わせて27plyのプリプレグ積層体を作製した。なお、織物プリプレグの経糸と、一方向プリプレグの繊維方向が同じ方向になるように積層した。これに、一方向プリプレグと織物プリプレグの片方の間(13ply目と14ply目の間)に、厚み12.5μmの長方形状のフッ素樹脂製フィルムを積層体端部から0°方向に40mm差し込み、初期き裂を作製した。
(b)積層したプリプレグをナイロンフィルムで隙間のないように覆い、オートクレーブ中で昇温速度1.5℃/分で180℃まで昇温した後、温度180℃、圧力7kg/cm2で2時間加熱加圧して硬化し、FRPを成形した。
(c)(b)で得たFRPの一方向材の0°を長さ方向とし、幅25mm、長さ200mmにカットした。繊維方向は、サンプルの長さ方向と平行になるようにカットした。
(d)ASTM D5528(2002)に従い、ピン負荷用ブロック(長さ25mm、アルミ製)を試験片表面に接着した。
(e)き裂進展を観察しやすくするため、試験片の両側面に白色塗料を塗った。
(2)一方向プリプレグの製造
2段含浸法を用いて作製した。シリコーンを塗布した離型紙上に、上記(1)で作製した第1樹脂組成物または第2樹脂組成物を均一に塗布して、それぞれ第1樹脂フィルム(樹脂目付30g/m2)、第2樹脂フィルム(樹脂目付20g/m2)とした。2枚の第1樹脂フィルムの間に一方向に均一に引き揃えた炭素繊維を挟み込み、プレスロールを用いて加熱、加圧して、炭素繊維に第1樹脂組成物が含浸した1次プリプレグを得た。次いで、1次プリプレグから両方の離型紙を剥離した。次に、2枚の第2樹脂フィルムの間に1次プリプレグを挟み込み、プレスロールを用いて加熱、加圧して、1次プリプレグに第2樹脂組成物が含浸した一方向プリプレグを得た(炭素繊維質量190g/m2、樹脂含有率35.5質量%)。
(3)織物プリプレグの製造
2段含浸法を用いて作製した。シリコーンを塗布した離型紙上に、上記(1)で作製した第1樹脂組成物または第2樹脂組成物を均一に塗布して、それぞれ第1樹脂フィルム、第2樹脂フィルムとした。2枚の第1樹脂フィルムの間に炭素繊維織物を挟み込み、プレスロールを用いて加熱、加圧して、炭素繊維に第1樹脂組成物が含浸した1次プリプレグを得た。次いで、1次プリプレグから両方の離型紙を剥離した。次に、2枚の第2樹脂フィルムの間に1次プリプレグを挟み込み、プレスロールを用いて加熱、加圧して、1次プリプレグに第2樹脂組成物が含浸した織物プリプレグを得た(炭素繊維質量195g/m2、樹脂含有率40質量%)。
(4)モードI層間靭性(GIC)試験における層内遷移割合の測定
ASTM D5528(2002)に準じ、次の(a)~(e)の操作により層内遷移割合を測定した。
(a)一方向プリプレグと織物プリプレグを250mm×250mmにそれぞれカットした後、一方向プリプレグの繊維方向を同方向に揃えて、13ply積層した一方向プリプレグ積層体を2つ作製した。織物プリプレグ1plyが中心になるように、2つの一方向プリプレグ13plyで挟むように積層し、一方向プリプレグと織物プリプレグで合わせて27plyのプリプレグ積層体を作製した。なお、織物プリプレグの経糸と、一方向プリプレグの繊維方向が同じ方向になるように積層した。これに、一方向プリプレグと織物プリプレグの片方の間(13ply目と14ply目の間)に、厚み12.5μmの長方形状のフッ素樹脂製フィルムを積層体端部から0°方向に40mm差し込み、初期き裂を作製した。
(b)積層したプリプレグをナイロンフィルムで隙間のないように覆い、オートクレーブ中で昇温速度1.5℃/分で180℃まで昇温した後、温度180℃、圧力7kg/cm2で2時間加熱加圧して硬化し、FRPを成形した。
(c)(b)で得たFRPの一方向材の0°を長さ方向とし、幅25mm、長さ200mmにカットした。繊維方向は、サンプルの長さ方向と平行になるようにカットした。
(d)ASTM D5528(2002)に従い、ピン負荷用ブロック(長さ25mm、アルミ製)を試験片表面に接着した。
(e)き裂進展を観察しやすくするため、試験片の両側面に白色塗料を塗った。
作製したFRPを用いて、以下の手順により、層内遷移割合の測定を行った。ASTM D5528(2002)に従い、“インストロン(登録商標)”5565型を用いて試験を行った。(4)(a)で積層体内に差し込んだフッ素樹脂製フィルムの先端から、0°方向にき裂進展の長さが50mmに到達するまで、クロスヘッドスピードを1.0mm/minとしてき裂進展させた。試験終了後、き裂を試験片の端部までき裂進展させ、2つの試験片として、下記数式に従い、上記フィルム先端からき裂進展させた50mm×試験片幅(25mm)の範囲内で層内遷移した割合を測定した。なお、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM-6301NF)を用いて、き裂進展した領域の上下の破面で強化繊維の表面が露出している領域を層内遷移した領域とした。測定した試験片の数は5とした。
(5)樹脂層における強化繊維織物側に存在するポリマー粒子の占める面積における不定形ポリマー粒子の存在割合
一方向FRPと織物FRPの間の樹脂層における上記不定形ポリマー粒子の存在割合は、(4)モードI層間靭性(GIC)試験用の試験片のフィルム未挿入部を一方向強化繊維の繊維方向と垂直な方向に切断し、その断面を研磨後、光学顕微鏡で200倍に拡大し、一方向強化繊維と強化繊維織物の間の樹脂層が視野内に納まるようにして写真撮影した画像から測定した。
一方向FRPと織物FRPの間の樹脂層における上記不定形ポリマー粒子の存在割合は、(4)モードI層間靭性(GIC)試験用の試験片のフィルム未挿入部を一方向強化繊維の繊維方向と垂直な方向に切断し、その断面を研磨後、光学顕微鏡で200倍に拡大し、一方向強化繊維と強化繊維織物の間の樹脂層が視野内に納まるようにして写真撮影した画像から測定した。
撮影した画像の樹脂層において、面外方向と平行な任意の線上における、一方向強化繊維で樹脂層に最も近い繊維単体の中心と、強化繊維織物で樹脂層に最も近い繊維単体の中心との中央点を得た。その操作を画像内の一方向強化繊維の面内方向において10μmおきに行い、隣接する点をつなぐことで、樹脂層の中央線を取得した。樹脂層の中央線より強化繊維織物側に近い樹脂層の領域における、同領域の面積に対するポリマー粒子の面積割合Pと不定形ポリマー粒子の面積割合Iをそれぞれ測定した。なお、中央線上に存在するポリマー粒子は測定しないものとする。IをPにより除して、ポリマー粒子の占める面積における不定形ポリマー粒子の存在割合を算出した。5か所の断面画像を測定し、個々に上記存在割合を算出し、その平均値を採った。
(6)ポリマー粒子の真球度の測定
ポリマー粒子の個々の粒子径は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM-6301NF)にて、粒子を1000倍で観察し、測長した。写真から任意の30個の粒子を選択して、その短径と長径を測定し、上記した数式に従い、真球度を算出した。不定形ポリマー粒子については、上記した2種類の“オルガソール(登録商標)”を1:1(質量比)で混合したものを測定した。
(実施例1、比較例1)
それぞれ、表1に記載の組成で、上記(2)または(3)のとおり一方向プリプレグ、強化繊維織物プリプレグを作製し、(4)(a)のとおりプリプレグ積層体を構成し、上記の(4)モードI層間靭性(GIC)試験用の試験片の作成と層内遷移割合の測定を実施した。また、(5)に従って強化繊維織物側に存在するポリマー粒子の占める面積における不定形ポリマー粒子の存在割合(表中で、「不定形ポリマー粒子の存在割合」)を、(6)に従ってポリマー粒子の真球度を測定した。上記層内遷移割合と不定形ポリマー粒子の存在割合、ポリマー粒子の真球度を表1に示す。
(6)ポリマー粒子の真球度の測定
ポリマー粒子の個々の粒子径は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM-6301NF)にて、粒子を1000倍で観察し、測長した。写真から任意の30個の粒子を選択して、その短径と長径を測定し、上記した数式に従い、真球度を算出した。不定形ポリマー粒子については、上記した2種類の“オルガソール(登録商標)”を1:1(質量比)で混合したものを測定した。
(実施例1、比較例1)
それぞれ、表1に記載の組成で、上記(2)または(3)のとおり一方向プリプレグ、強化繊維織物プリプレグを作製し、(4)(a)のとおりプリプレグ積層体を構成し、上記の(4)モードI層間靭性(GIC)試験用の試験片の作成と層内遷移割合の測定を実施した。また、(5)に従って強化繊維織物側に存在するポリマー粒子の占める面積における不定形ポリマー粒子の存在割合(表中で、「不定形ポリマー粒子の存在割合」)を、(6)に従ってポリマー粒子の真球度を測定した。上記層内遷移割合と不定形ポリマー粒子の存在割合、ポリマー粒子の真球度を表1に示す。
実施例1と比較例1との対比により、真球ポリマー粒子に加えて、不定形ポリマー粒子を用い、さらに、一方向FRPと織物FRPの間の樹脂層において、強化繊維織物側に存在する粒子の占める面積における不定形ポリマー粒子の存在割合を高くすることで、一方向強化繊維への層内遷移が抑制されることが示された。
本発明によれば、一方向強化繊維への層内遷移を抑制することができることから、ドリル加工を施す構造物に好適に用いられる。例えば、航空宇宙用途では主翼、尾翼およびフロアビーム等の航空機一次構造材用途、フラップ、エルロン、カウル、フェアリングおよび内装材等の二次構造材用途、ロケットモーターケースおよび人工衛星構造材用途等に好適に用いられる。また一般産業用途では、自動車、船舶および鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト等に好適に用いられる。
Claims (6)
- 一方向に引き揃えられた強化繊維とマトリックス樹脂とを含む繊維強化複合材料の層(以下、一方向強化繊維層)と、
その表面に隣接して積層された強化繊維織物とマトリックス樹脂とを含む繊維強化複合材料の層(以下、強化繊維織物層)とを含む積層体であって、
少なくとも一つの一方向強化繊維層における該一方向の強化繊維と、その表面に隣接する少なくとも一つの強化繊維織物層の該強化繊維織物の間に樹脂層が存在し、
該樹脂層に、真球ポリマー粒子と不定形ポリマー粒子とが含まれ、
該一方向強化繊維の繊維方向と垂直方向の断面において、該樹脂層の強化繊維織物側に存在するポリマー粒子の占める面積における、該不定形ポリマー粒子の存在割合が50%より高い、積層体。 - 前記真球ポリマー粒子および前記不定形ポリマー粒子は、素材がポリアミドである、請求項1記載の積層体。
- 前記真球ポリマー粒子の真球度が、90~100の範囲にある、請求項1または2記載の積層体。
- 前記不定形ポリマー粒子の真球度が、30~80の範囲にある、請求項3に記載の積層体。
- 前記不定形ポリマー粒子の存在割合が60%以上の範囲にある、請求項1~4のいずれかに記載の積層体。
- 前記マトリックス樹脂に、3官能以上のグリシジルアミンが含まれる、請求項1~5のいずれかに記載の積層体。
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