JP2023048105A - L10型のFeNi規則合金およびその製造方法 - Google Patents

L10型のFeNi規則合金およびその製造方法 Download PDF

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裕彰 藏
Hiroaki Kura
隆宏 西尾
Takahiro Nishio
英治 渡部
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禎彰 林
Sadaaki Hayashi
貴之 山本
Takayuki Yamamoto
永 前原
Hisashi Maehara
孝則 松野
Takanori Matsuno
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Abstract

【課題】窒化効率を向上させることにより製造コストの低減が可能なFeNi超格子およびその製造方法を提供する。【解決手段】L10型の規則構造を有し、硫黄を含むL10型のFeNi規則合金であって、硫黄の含有量が0.01質量%以上であり、硫黄が10質量%以下である。また、L10型の規則構造を有するL10型のFeNi規則合金の製造方法として、Sを含むFeNi合金を窒化処理してFeおよびNiを含む窒化物を得ることを含む。【選択図】図3

Description

本発明は、L1型の規則構造を有するL1型のFeNi(鉄-ニッケル)規則合金(以下、FeNi超格子ともいう)およびその製造方法に関するものである。
FeNi超格子は、高い耐熱性を有した磁石材料および磁気記録などの磁気デバイス材料として期待されている。例えば、特許文献1に、高品質なFeNi超格子の製造方法が開示されている。ここに示される製造方法では、窒化処理によってFeNi合金を窒化して窒化物を得た後、脱窒素処理によって窒化物から窒素を脱離させるという窒化脱窒素法を用いることで高品質なFeNi超格子を製造している。
特許第6332359号公報
しかしながら、従来の窒化脱窒素法では、窒化処理においてFeNi超格子の前駆物質のFeNiNを合成するのに、原料であるFeNi合金に対して、大量のアンモニア(NH)を必要としており、窒化効率の低いことがFeNi超格子磁粉の製造コストを高める要因の一つなっていた。
このため、本発明者らは、窒化効率を向上させるべく検討を重ねたところ、窒化工程で生成する窒化物は熱により分解するため窒化効率が低下することを確認できた。
本発明は上記点に鑑みて、窒化効率を向上させることにより製造コストの低減が可能なFeNi超格子およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、L1型の規則構造を有するL1型のFeNi規則合金は、硫黄(S)を含んでいる。
このように、硫黄を含むL1型のFeNi規則合金とすること、つまり硫黄を含むFeNi合金を原材料としてL1型のFeNi規則合金を形成することにより、高い窒化効率を得ることが可能となる。
請求項8に記載の発明では、L1型のFeNi規則合金の製造方法は、硫黄(S)を含むFeNi合金を窒化処理してFeおよびNiを含む窒化物を得ることを含んでいる。
このように、硫黄を含むFeNi合金に対して、窒化処理を行うようにしている。このようにすることで、高い窒化効率を得ることが可能となる。
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
L1型のFeNi規則構造の格子構造を示した模式図である。 FeNiNの格子構造を示した模式図である。 第1実施形態にかかるFeNi超格子の合成プロセスを示したフローチャートである。 第2実施形態にかかるFeNi超格子の合成プロセスを示したフローチャートである。 各実施例と比較例について、FeNi超格子の製造条件の相違、FeNiNの形成率、アンモニア効率などを示した図表である。 比較例2と実施例3の粉末X線回折(XRD)パターンの測定結果を示した図である。 透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面TEM観察や組成像観察を行った結果を示す図である。 TEMを用いて断面TEM観察や組成像観察を行った結果を示す図である。 各実施例と比較例について、FeNi超格子の製造条件の相違、FeNiNの形成率、アンモニア効率などを示した図表である。 各実施例と比較例について、FeNi超格子の製造条件の相違、FeNiNの形成率、アンモニア効率などを示した図表である。 比較例2、実施例3と実施例7のFeNiNを用いて得たFeNi超格子磁粉の磁気特性を示す図である。 実施例3と実施例4のそれぞれのFeNi超格子磁粉についてのX線吸収端近傍スペクトル(XANES)を示した図である。
以下、本発明の実施形態について詳述する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための一例であり、本発明を以下のものに限定するものではない。なお、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
<L1型のFeNi規則合金>
本実施形態のL1型のFeNi規則合金は、L1型の規則構造を有し、硫黄を含む。ここでいうL1型の規則合金とは規則度が0.1以上であることを意味し、好ましくは0.5以上とすることができる。また、規則度の上限は1以下であってよい。本実施形態にかかるL1型FeNi規則合金は、磁性粉末および磁性材料として好適に使用される。磁性材料としては、例えば焼結磁石やボンド磁石および磁気記録材料等の磁性材料が挙げられる。ここでいう規則度Sとは、FeNi超格子における規則化の度合を示している。L1型の規則構造は、面心立方格子を基本とした構造となっており、図1に示すような格子構造を有している。この図において、面心立方格子の(001)面の積層構造における最も上面側の層をIサイト、最も上面側の層と最も下面側の層との間に位置している中間層をIIサイトとする。この場合、Iサイトに金属Aが存在する割合をx、金属Bが存在する割合を1-xとすると、Iサイトにおける金属Aと金属Bが存在する割合はA1-xと表される。同様に、IIサイトに金属Bが存在する割合をx、金属Aが存在する割合を1-xとすると、IIサイトにおける金属Aと金属Bが存在する割合はA1-xと表される。なお、xは、0.5≦x≦1を満たす。そして、この場合において、規則度Sは、S=2x-1で定義される。
規則度は次の数式1に示されるL1型のFeNi規則合金における規則度Sの見積もり式により見積もることができる。
Figure 2023048105000002
ここで、数式1中、「Isup」は粉末X線回折(XRD)法で観測することができるXRDパターンにみられるL1型の規則合金特有の回折ピーク(超格子回折ピーク)の積分強度である。「Ifund」はFeNi合金とL1型のFeNi規則合金の両方に現れる回折ピーク(基本回折ピーク)の積分強度である。そして、「(Isup/Ifundobs」は、各実施例および比較例における測定されたX線回折パターンにおける超格子回折ピークの積分強度と基本回折ピークの積分強度との比である。また、「(Isup/Ifundcal」は、リートベルトシミュレーションから見積もられる規則度1のFeNi規則合金の超格子回折ピークの積分強度と基本回折ピークの積分強度との比である。そして、数式1に示されるように、これら両比の平方根が規則度Sとして求められる。ここで用いるXRD装置についてはリガク社製SmartLab等の一般的なものを用いることができるが、X線にFe-kβ線を用いることで精度よくSを見積もることができる。
L1型のFeNi規則合金における硫黄(S)の含有量の下限は、例えば、0.01質量%以上とすることができ、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上とすることができる。また、L1型のFeNi規則合金におけるSの含有量の上限は、例えば、10質量%以下とすることができ、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.75質量%以下、特に好ましくは0.53質量%以下とすることができる。Sの含有量は、後述の実施例に記載した方法によって測定することができる。
L1型のFeNi規則合金における、硫黄(S)の酸化数は、S2-もしくはS6+またはそれらの混合状態を含んでいてもよい。また、硫黄(S)の酸化数は、S2-もしくはS6+またはそれらの混合状態であってもよい。硫黄の酸化数は、後述のXAFS測定(すなわち、部分蛍光収量測定)により測定することができる。XAFS測定における2482.0±2eVに出現する吸収ピークが、S6+に起因するピーク、2471.5±2eVに出現する吸収ピークが、S2-に起因するピークとみなすことができる。これらの吸収ピークが存在することをもって、S2-とS6+のそれぞれが存在すると判断することができる。また、アンモニア効率の向上効果が得られれば、FeNi超格子に含まれる硫黄の酸化数は、S2-およびS6+以外であってもよい。
L1型のFeNi規則合金は、L1型の規則構造を有した後述の図7や図8に示されるような粒子100によって構成されていてもよい。L1型のFeNi規則合金は、L1型の規則構造を有した粒子100によって構成されている場合、Sが粒子全体に存在した状態になっていても良いし、粒子内部に偏析した状態になっていても良く、粒子表面に偏析した状態になっていても良い。Sの状態は、後述の実施例に記載した方法によって測定することができる。
L1型のFeNi規則合金が、L1型の規則構造を有した粒子によって構成されている場合の平均粒径の下限は、例えば、10nm以上とすることができ、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上とすることができる。また、平均粒径の上限は、例えば、5000nm以下とすることができ、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下とすることができる。平均粒径は走査型電子顕微鏡(SEM)像から測定することができる。
L1型のFeNi規則合金は、一次粒子が集合した二次粒子で構成されていてもよく、その場合の一次粒子の平均粒径の下限は、例えば、10nm以上とすることができ、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上とすることができる。また、一次粒子の平均粒径の上限は、例えば、1000nm以下とすることができ、好ましくは500nm以下とすることができる。一次粒子の平均粒径はXRDパターンをウィリアムソン・ホール法で解析することで算出することができる。
L1型のFeNi規則合金におけるFeとNiの合計のモル数に対するFeのモル数の比は、0.4~0.6であってよく、好ましくは0.45~0.55であってよく、より好ましくは0.48~0.52であってよい。FeおよびNiのモル数は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法や電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析法(EDS)などによって測定することができる。
<L1型のFeNi規則合金の製造方法>
本実施形態のL1型のFeNi規則合金の製造方法は、硫黄(S)を含むFeNi合金を窒化処理してFeおよびNiを含む窒化物を得ることを含む。本願実施形態によると、窒化工程に用いられるFeNi合金はSを含んでいることにより窒化工程で生成するFeNi窒化物の熱による分解を抑制できるので窒化効率が向上すると考えられる。本実施形態により製造されるL1型FeNi規則合金は、磁性粉末および磁性材料として好適に使用される。磁性材料としては、例えば焼結磁石やボンド磁石および磁気記録材料等の磁性材料が挙げられる。
[窒化工程]
窒化工程では、Sを含むFeNi合金(以下FeNi-Sともいう)を窒化処理してFe及びNiを含む窒化物(以下FeNi窒化物)を得ることができる。窒化処理は、FeNi-SからFeNi窒化物が得られれば、特に限定されないが、アンモニアガスや窒素によるガス窒化や、プラズマ窒化や、金属アミドを用いた窒化などがあげられる。具体的には、予め作製したFeNi-Sをアンモニアガスフロー下において熱処理することで窒化処理を行う。窒化処理におけるアンモニアガスの流量は、FeNi-S1gに対して0.1~10リットル/minとすることができ、好ましくは0.5~5リットル/minとすることができる。熱処理温度は、例えば300~500℃とすることができ、好ましくは310~475℃とすることができ、より好ましくは330℃~450℃とすることができる。熱処理時間は、例えば5~50時間とすることができ、好ましくは10~20時間とすることができる。窒化工程で得られるFeNi窒化物は、Sを含むFeNi窒化物(以下FeNi窒化物-Sともいう)であってよい。
窒化工程に用いられるSを含むFeNi合金は、不規則構造で構成されていても良い。ここでいう不規則構造とは、原子の配列が規則性を持たずにランダムなものであってもよいし、X線回折法で測定した場合に、L1型の規則構造のピークが観察されないものであってもよい。
窒化工程に用いられるFeNi-Sは、公知の方法により作製されたFeNi合金に対して、必要に応じて所定の量の硫黄元素を含む化合物(以下硫黄化合物ともいう)を添加することにより作製することができる。FeNi合金と硫黄化合物とを混合した後、熱処理することや、FeNi合金と硫黄化合物を反応させることにより作製することもできる。また、硫化水素ガスなどによってFeNi合金の一部を硫化して作製することもできる。硫黄化合物としては、硫黄元素を含んでいればよく、例えば硫黄、有機硫黄化合物や、硫化鉄、硫化ニッケルなどの金属硫化物等、硫酸アンモニウム、硫酸鉄、硫酸ニッケルなどの硫酸塩等が挙げられる。
窒化工程に用いられるFeNi-Sは、窒化工程中に合成されてもよく、具体的には、例えば、FeNi合金をアンモニアガスと硫化水素を混合した混合ガスフロー下において熱処理することでFeNi窒化物-Sの合成と窒化が並行して行われる(浸硫窒化)。
窒化工程に用いられるFeNi-SにおけるFeとNiの合計のモル数に対するFeのモル数の比は、0.4~0.6であってよく、好ましくは0.45~0.55であってよく、より好ましくは0.48~0.52であってよい。
窒化工程に用いられるFeNi-Sにおける硫黄(S)の含有量は、例えば0.01質量%~10質量%とすることができ、好ましくは0.02質量%~2.0質量%とすることができ、より好ましくは0.02質量%~1.5質量%とすることができ、さらに好ましくは0.03質量%~1.0質量%とすることができ、特に好ましくは0.05質量%~0.7質量%とすることができる。窒化工程に用いられるFeNi-SにおけるSの含有量が上述の範囲にあると、最終的に得られるFeNi規則合金の磁気性能の低下を抑制しつつ、窒化を促進できる傾向がある。S含有量は後述の実施例に記載した方法によって測定することができる。
窒化工程で得られるFeNi窒化物としては、FeNiN、FeNiNなどがあげられ、L1型のFeNi規則合金を得るためにFeNiNの割合が大きい方が好ましい。FeNiNは、図2に示されるような結晶構造を有しており、XRD回折パターンから同定することができる。窒化工程後に含まれるFeNi窒化物の割合は物全体の90質量%以上とすることができる。FeNi窒化物におけるFeNiNの割合は、50質量%以上とすることができ、好ましくは、80質量%以上とすることができる。窒化工程後の窒化物の割合、FeNiNの割合はXRD回折パターンを参照強度比(RIR)法で解析することで算出することができる。
窒化工程で得られるFeNi窒化物におけるFeとNiの合計のモル数に対するFeのモル数の比は、0.4~0.6であってよく、好ましくは0.45~0.55であってよく、より好ましくは0.48~0.52であってよい。FeおよびNiのモル数は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法や電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析法(EDS)などによって測定することができる。
窒化工程で得られるFeNi窒化物は、硫黄(S)を含んでいてよい。FeNi窒化物がSを含む場合のSの含有量の下限は、例えば、0.01質量%以上とすることができ、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上とすることができる。また、L1型のFeNi規則合金におけるSの含有量の上限は、例えば、10質量%以下とすることができ、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下、特に好ましくは0.7質量%以下とすることができる。Sの含有量は、後述の実施例に記載した方法によって測定することができる。
窒化工程で得られるFeNi窒化物がSを含む場合、粒子によって構成されていてもよい。FeNi窒化物が粒子によって構成されている場合、Sが粒子全体に存在した状態になっていても良いし、粒子内部にて偏析した状態になっていても良い。また、Sが粒子表面に偏析した状態になっていても良い。Sの状態は、後述の実施例に記載した方法によって測定することができる。
窒化工程で得られるFeNi窒化物が粒子によって構成されている場合の平均粒径の下限は、例えば、10nm以上とすることができ、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上とすることができる。また、平均粒径の上限は、例えば、5000nm以下とすることができ、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下とすることができる。平均粒径は走査型電子顕微鏡(SEM)像から測定することができる。
窒化工程で得られるFeNi窒化物は、一次粒子が集合した二次粒子で構成されていてもよく、その場合の一次粒子の平均粒径の下限は、例えば、10nm以上とすることができ、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上とすることができる。また、平均粒径の上限は、例えば、1000nm以下とすることができ、好ましくは500nm以下とすることができる。平均粒径は一次粒子の平均粒径はXRDパターンをウィリアムソン・ホール法で解析することで算出することができる。
窒化工程においては、FeNi-Sに対して窒化処理を行うようにしている。このようにすることで、後述する実施例に示されるように、高い窒化効率を得ることが可能となる。窒化工程における窒化効率は、4.7×10-5より大きくすることができ、好ましくは10×10-5以上とすることができ、より好ましくは20×10-5以上とすることができる。なお、本明細書でいう「窒化効率」とは、窒化処理で得られるFeNiNの形成量(g)を窒化処理において消費した窒素原料(g)で割った数のことである。また、窒素原料としてアンモニアを用いた場合の窒化効率(以下アンモニア効率ともいう)とは、FeNiNの形成量(g)を消費したアンモニア量(g)で割った数のことであり、FeNiNを合成するのに必要となったアンモニア量を示している。アンモニア効率の数値が高いほど少量のアンモニアでFeNiNを合成できていることを意味している。
窒化工程においては、FeNi合金としてSを含むL1型のFeNi規則合金を用いてもよい。Sを含むL1型のFeNi規則合金は、本願実施形態の他に、公知の方法により作製されたL1型のFeNi規則合金に対して、必要に応じて所定の量の硫黄化合物を添加することにより作製することができる。L1型のFeNi規則合金と硫黄化合物とを混合した後、熱処理することや、L1型のFeNi規則合金と硫黄化合物を反応させることにより作製することもできる。また、硫化水素ガスなどによってL1型のFeNi規則合金の一部を硫化して作製することもできる。硫黄化合物としては、上述の通りである。L1型の規則構造のFeNi-Sを用いた場合は、規則度の向上が期待できる。
[脱窒素工程]
脱窒素工程では、上述の窒化工程で得られたFeNi窒化物を脱窒素処理してL1型のFeNi規則合金を得ることができる。具体的には、窒化工程で得られたFeNi窒化物を解砕後、水素雰囲気下熱処理することで脱窒素処理を行うことができる。脱窒素処理における水素の流量は、FeNi窒化物-S1gに対して0.01~10リットル/minとすることができ、好ましくは0.1~5リットル/minとすることができる。熱処理温度は、例えば100~400℃とすることができ、好ましくは200~350℃とすることができる。熱処理時間は、例えば1~24時間とすることができ、好ましくは2~10時間とすることができる。脱窒素工程で得られるL1型のFeNi規則合金は、Sを含むL1型のFeNi規則合金であってよい。
以下、窒化工程に用いられるSを含むFeNi合金の製造方法の一例について説明する。
(第1実施形態)
図3に示すように、第1実施形態は、Sを含むFeNi酸化物(以下FeNi酸化物-Sともいう)を還元してFeNi-Sを得る還元工程を含む。
還元工程における還元方法は、特に限定されないが、例えば、Sを含むFeNi酸化物を還元性ガス雰囲気にて熱処理することでFeNi-Sを得ることができる。還元性ガスの流量は、FeNi酸化物-S8.5gに対して1リットル/minとすることができ、好ましくは0.5~10.0リットル/minとすることができる。熱処理温度は、例えば300~700℃とすることができ、好ましくは450~700℃とすることができる。熱処理時間は、例えば1~10時間とすることができ、好ましくは1.5時間とすることができる。還元性ガスとしては、水素、一酸化炭素が挙げられるが、還元性の点から水素が好ましい。
FeNi酸化物-SにおけるFeとNiの合計のモル数に対するFeのモル数の比は、0.4~0.6であってよく、好ましくは0.45~0.55であってよく、より好ましくは0.48~0.52であってよい。
還元工程に用いられるFeNi酸化物-Sは、Fe酸化物やNi酸化物を含んでいてもよいし、FeおよびNiを含む酸化物を含んでいてもよい。また、Fe酸化物、Ni酸化物及びFeおよびNiを含む酸化物は、それぞれSを含んでいてもよい。ここでいうFeおよびNiを含む酸化物は一個の酸化物粒子の中にFe元素およびNi元素を含むことを意味する。
還元工程に用いられるFeNi酸化物-Sは、本願実施形態や公知の方法により作製されたFeNi酸化物に対して、必要に応じて所定の量の硫黄化合物を添加することにより作製することができる。FeNi酸化物と硫黄化合物とを混合した後、熱処理することや、FeNi酸化物と硫黄化合物を反応させることにより作製することもできる。また、硫化水素ガスなどによってFeNi酸化物の一部を硫化して作製することもできる。硫黄化合物としては、上述の通りである。
還元工程に用いられるFeNi酸化物-Sは、還元工程中に合成されてもよく、具体的には、例えば、FeNi酸化物を水素ガスと硫化水素を混合した混合ガスフロー下において熱処理することでFeNi酸化物-Sの合成と還元が並行して行われる。
Fe酸化物は特に限定されないが、FeO、Fe、Feなどがあげられ、その他に鉄金属、水酸化鉄、炭酸鉄、塩化鉄、ヨウ化鉄、臭化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、燐酸鉄、シュウ酸鉄などを原料として酸化した酸化物などがあげられ、中でもSを含むFe酸化物のS源になるので、硫酸鉄が好ましい。Sを含むFe酸化物は、上述のFeNi酸化物-Sに記載の作製方法により作製してもよい。
Ni酸化物は特に限定されないが、NiOなどがあげられ、その他にニッケル金属、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、ヨウ化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、燐酸ニッケル、シュウ酸ニッケルなどを原料として酸化した酸化物などがあげられ、中でもSを含むNi酸化物のS源になるので、硫酸ニッケルが好ましい。Sを含むNi酸化物は、上述のFeNi酸化物-Sに記載の作製方法により作製してもよい。
FeおよびNiを含む酸化物は、FeとNiを含む溶液と沈殿剤を混合し、FeとNiとを含む沈殿物を得る工程(沈殿工程)、および、前記沈殿物を熱処理することにより、FeとNiを含む酸化物を得る工程(酸化工程)によって、製造することができる。この方法によると、得られるFeおよびNiを含む酸化物の平均粒径や粒度分布の制御を行いやすく、また、FeとNiを含む酸化物中のFe元素とNi元素の分布が均一になりやすい。
[沈殿工程]
沈殿工程では、強酸性の溶液にFe原料、Ni原料を溶解して、FeとNiを含む溶液を調製する。
Fe原料、Ni原料としては、酸性溶液に溶解できるものであれば限定されない。Fe原料としては、例えば鉄金属、酸化鉄、水酸化鉄、炭酸鉄、塩化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、燐酸鉄、シュウ酸鉄などが挙げられ、鉄金属、炭酸鉄、硫酸鉄、塩化鉄を用いるのが好ましく、Sを含む沈殿物のS源になるので硫酸鉄がより好ましい。Ni原料としては例えば、ニッケル金属、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、ヨウ化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、燐酸ニッケル、シュウ酸ニッケルが挙げられ、中でも、ニッケル金属、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケルを用いるのが好ましく、Sを含む沈殿物のS源になるので硫酸ニッケルがより好ましい。酸性溶液としては、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸などが挙げられ、中でもS、FeおよびNiを含む沈殿物のS源になるので、硫酸が好ましい。FeとNiを含む溶液の濃度はFe原料とNi原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整することができる。
FeとNiを含む溶液におけるFeとNiの合計のモル数に対するFeのモル数の比は、0.4~0.6であってよく、好ましくは0.45~0.55であってよく、より好ましくは0.48~0.52であってよい。
FeとNiを含む溶液と沈殿剤を反応させることにより、FeとNiを含む沈殿物を得る。FeとNiを含む溶液と沈殿剤の反応は、FeとNiを含む溶液に対して沈殿剤を投入しても良いし、沈殿剤に対してFeとNiを含む溶液を投入しても良い。また、ここでいうFeとNiを含む溶液は、沈殿剤との反応時にFeとNiを含む溶液となっていればよく、FeとNiを含む原料を別々の溶液として調製し、各々の溶液を投入して沈殿剤と反応させても良い。別々の溶液として調製する場合においても、各原料が実質的に酸性溶液に溶解する範囲で適宜調整する。沈殿剤としては、FeとNiを含む溶液と反応して沈殿物が得られるものであれば限定されず、シュウ酸や、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液等のアルカリ溶液などが挙げられる。また、FeとNiを含む溶液に対して炭酸ガスを吹き込むことにより沈殿物を得ることができる。生成する沈殿物としては、シュウ酸塩、炭酸塩、水酸化物などが挙げられる。
沈殿工程は、沈殿物を分離洗浄する工程を含んでもよい。沈殿物を分離する方法としては、例えば、得られた沈殿物に溶媒(好ましくは水)を加えて混合した後、濾過法、デカンテーション法等を用いることができる。また、洗浄は、一度分離した沈殿物に対して同じことを繰り返すことで洗浄することができる。
沈殿物を分離した後は、続く酸化工程の熱処理において残存する溶媒に沈殿物が再溶解して、溶媒が蒸発する際に沈殿物が凝集したりすることを抑制するために、分離物を脱溶媒しておくことが好ましい。脱溶媒する方法として具体的には、例えば溶媒として水を使用する場合、70℃以上200℃以下のオーブン中で5時間以上12時間以下の時間、乾燥する方法が挙げられる。また乾燥後必要に応じて、解砕や粉砕を行い粒度調整を行っても良い。
S、Fe及びNiを含む沈殿物は、必要に応じて所定の量の硫黄化合物をFeとNiを含む溶液と沈殿剤との反応の際や反応終了後に添加することで得ることができるし、分離洗浄する工程にて硫黄化合物を添加することで得ることができる。また得られた沈殿物に対して、必要に応じて所定の量の硫黄化合物を添加することや、沈殿物と硫黄化合物を反応させることにより作製することができる。沈殿物と硫黄化合物との反応は、例えば、沈殿物と硫黄化合物とを混合した後、熱処理することで行うことができる。また、硫化水素ガスなどによって沈殿物の一部を硫化して作製することもできる。硫黄化合物としては、上述の通りである。
[酸化工程]
酸化工程とは、沈殿工程で得られたFe及びNiを含む沈殿物を熱処理することにより、FeとNiを含む酸化物を得る工程である。酸化工程は、例えば、熱処理により沈殿物を酸化物に変換することができる。沈殿物を熱処理する場合、酸素の存在下で行われる必要があり、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。また、酸素存在下で行われる必要があるため、沈殿物中の非金属部分に酸素原子を含むことが好ましい。また、酸化工程ではS、Fe及びNiを含む沈殿物を用いるとFeNi酸化物-Sが得られる。また得られたFeNi酸化物-Sは、必要に応じて、解砕や粉砕を行い粒度調整を行っても良い。
酸化工程における熱処理温度(以下、酸化温度)は特に限定されないが、熱処理温度は、例えば200~800℃とすることができ、好ましくは350~450℃とすることができる。熱処理時間は、例えば4~24時間とすることができ、好ましくは8時間とすることができる。
得られる酸化物は、酸化物粒子内においてFe、Niの微視的な混合が充分になされ、沈殿物の形状、粒度分布等が反映された酸化物粒子である。
酸化工程に用いられるS、Fe及びNiを含む沈殿物は、酸化工程中に合成されてもよい。具体的には、例えば、Fe及びNiを含む沈殿物を空気と硫化水素を混合した混合ガスフロー下において熱処理することでS、Fe及びNiを含む沈殿物の合成と酸化が並行して行われる。
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してFeNiNの製造方法を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。以下、図4に示す本実施形態のFeNi超格子の合成プロセスを示したフローチャートを参照して、本実施形態のFeNi超格子の製造方法について説明する。
まず、図4に示すように、Sを添加したFeNi合金を作成する。具体的には、最初に、FeNi粉末を用意する。FeNi粉末としては、組成比がFe:Ni=50:50となるものを用意すると好ましいが、概ね50:50になっていれば良い。例えばFeの割合が50±3%、Niはその残りの{100-(50±3)}%程度であれば良い。このようなFeNi粉末としては、例えば、日清エンジニアリング社製の熱プラズマ法で合成したFeNiナノ粒子や、エプソンアトミックス社製のガスアトマイズ法で合成したFeNi粉末などを用いることができる。
次に、FeNi粉末に対して、HSガスと窒素(N)ガスの混合ガス中で反応させる。これにより、Sを添加したFeNi合金であるFeNi-Sが得られる。例えば、混合ガスとしては、3%HSガス+97%Nガスを用いており、2~24時間、200~500℃での加熱処理を行うことでFeNi-Sを得ることができる。
この後は、第1実施形態と同様の手法によって窒化処理を行ってFeNiN-Sを合成したのち、さらに脱窒素処理を行ってFeNi超格子を得る。このようにして得たFeNi超格子も、Sを含んだものとなる。この場合にも、後述する実施例に示されるように、高いアンモニア効率を得ることが可能となる。
以下、上記した各実施形態の製造方法などを含めて様々な手法でFeNi-Sを生成したのち、窒化脱窒素処理を行った実施例について、硫黄を含まないFeNiを用いた比較例と対比して説明する。
図5は、各実施例と比較例について、FeNi超格子の製造条件の相違やFeNiNの形成率、アンモニア効率などがどう変化したかを示した図表である。図中の(1)は第1実施形態の製造方法、(2)は第2実施形態の製造方法を意味しており、実施例1から5については詳細を後述する。実施例6は、第2実施形態のうちのガスアトマイズ法で作成したFeNi合金粒子に対して硫酸アンモニウムを反応させることでFeNi-Sを合成した場合を示している。実施例7は、第2実施形態のうちの熱プラズマ法で作成したFeNi合金粒子に対して硫酸アンモニウムを反応させることでFeNi-Sを合成した場合を示している。また、比較例1、2は、熱プラズマ法で作成したFeNiを硫酸アンモニウムと反応させることなく、そのまま窒化脱窒素処理した場合を示している。
なお、図5中に示した硫黄量(mass%)、つまりFe、Ni、Sの合計質量に対するSの質量比率については、一般的に用いられる元素量分析法を用いて評価している。例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法や電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析法(EDS)などによって硫黄量を同定することができる。この硫黄量(mass%)については、窒化脱窒素処理の前後においてほぼ等しい値になる。FeNiN形成率は、窒化前のFeNi合金の量に対する窒化後のFeNiNの形成量の割合であり、粉末XRDパターンを測定し、参照強度比(RIR)法から算出している。より具体的には、FeNiN形成率は、窒化前の原料に含まれるFeNi合金全量が、窒化によりFeNiNとして得られたと仮定した場合のFeNiNの理想的な形成量に対する、実際に得られたFeNiNの形成量の割合である。RIR法による形成率の解析にはXRD装置(リガク社製SmartLab)付帯の分析ソフトウェア(PDXL2)のデータベースに記憶されているFeNiNとFeNiNとFeNi合金のRIR値を用いた。また、効率向上率は、比較例2を基準とした場合の比較例1、実施例1~7それぞれの場合のアンモニア効率の比率を示したものである。
以下、実施例1~7、9、10、12、13について詳細を説明する。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
実施例1
[沈殿工程]
攪拌を行っている10質量%シュウ酸水溶液3リットルに対して、5質量%の硫酸鉄水溶液0.34リットルと、9質量%硫酸ニッケル水溶液0.2リットルを、鉄とニッケルのモル比が50;50になるようにそれぞれ加えた。これにより、FeとNiおよびSを含むシュウ酸塩のスラリーを得た。得られたスラリーをデカンテーションにより純水で洗浄した後、FeとNiを含むシュウ酸塩を固液分離した。分離したFeとNiを含むシュウ酸塩を100℃のオーブン中で10時間乾燥した。なおシュウ酸塩に含まれるSは原料の硫酸鉄又は硫酸ニッケルの硫酸イオンによるものと考えられる。
[酸化工程]
得られたFeとNiおよびSを含むシュウ酸塩50gを大気中400℃で8時間、熱処理した。冷却後、FeとNiおよびSを含む酸化物を得た。
[還元工程]
FeとNiおよびSを含む酸化物8.5gを水素ガス雰囲気(水素流量1リットル/min)にて450℃で1.5時間、熱処理した。冷却後、Sを含むFeNi合金を得た。合金における硫黄量は0.03質量%であった。なお、硫黄量は、塩酸溶解してICP-AES法(装置名:Optima8300)により測定を行い、Fe、Ni、Sの合計質量に対するSの質量比率とした。
[窒化工程]
Sを含むFeNi合金0.4gに対して、アンモニアガス雰囲気(アンモニア流量1リットル/min)、335℃で40時間熱処理を行いFeNiNを得た。FeNiN形成率は95%であった。なお、FeNiN形成率は、Feのkβ線(波長:1.75653Å)を用いたX線回折法(装置名Smartlab, 管電流200mA、管電圧45kV)により測定を行い、FeNiNのピーク(40°)の積分強度とFeNiNのピーク(41.5°)の積分強度の合計に対するFeNiNのピークの積分強度の割合とした。FeNiN形成率は、原料であるFeNi合金の質量と、得られたFeNi窒化物の質量に加えて、粉末XRDパターンを測定し、参照強度比(RIR)法を用いて算出している。
[脱窒素工程]
得られたFeNiNを水素ガス雰囲気(水素流量1リットル/min)にて250℃、20時間熱処理することでL1型のFeNi規則合金を得た。なおL1型の規則合金における硫黄量は0.03質量%であり、還元工程にて得られたSを含むFeNi合金とほぼ同じ量であることを確認した。なお硫黄量は、得られたFeNi合金を塩酸溶解してICP-AES法により測定し、Fe、Ni、Sの合計質量に対するSの質量比率とした。
実施例2
窒化工程における熱処理温度を415℃に変更したこと以外は実施例1と同様に行った。
実施例3
実施例1で得られたFeとNiおよびSを含むシュウ酸塩に対して硫酸アンモニウム加えて熱処理したこと以外は実施例2と同様に行った。なお硫酸アンモニウムは、シュウ酸塩に対して0.02質量%加えた。その結果合金粒子における硫黄量は0.05質量%であった。
実施例4
実施例1で得られたFeとNiおよびSを含むシュウ酸塩に対して硫酸アンモニウム加えて熱処理したこと以外は実施例2と同様に行った。なお硫酸アンモニウムは、シュウ酸塩に対して0.11質量%加えた。その結果合金粒子における硫黄量は0.14質量%であった。
実施例5
実施例1で得られたFeとNiおよびSを含むシュウ酸塩に対して硫酸アンモニウム加えて熱処理したこと以外は実施例2と同様に行った。なお硫酸アンモニウムは、シュウ酸塩に対して0.45質量%加えた。その結果合金粒子における硫黄量は0.48質量%であった。
まず、比較例1、2においては、FeNiに硫黄を加えていない従来の製法によってFeNi超格子を製造していることから、Sのドープ方法や硫黄量(mass%)については「無」を意味する“-”となっている。比較例2のように、NH量を5リットル/minとして300℃、40時間窒化した場合には、FeNiNの形成率が99%とほぼ100%になることから、このときのアンモニア効率4.7(×10-5)を基準とする。これに対して、比較例1のようにNH量を1リットル/minと比較例2よりも少なくすると、FeNiNの形成率が15%しかなくなる。アンモニア効率も3.6(×10-5)しか得られず、効率向上率も0.76と基準となる比較例2より大幅に低下している。
このことから、硫黄を加えていないFeNiを窒化脱窒素処理する場合には、NH量を少なくすることができず、NH量を5リットル/min程度にしないと、FeNiN形成率を高くできずにアンモニア効率が悪くなることが判る。
なお、窒化処理時の温度を300℃としているが、硫黄を加えていないFeNiの場合には、300℃を超える高温になるとFeNiN形成率が安定化せず、同様にアンモニア効率が低くなる。また、窒化処理を40時間としているが、これよりも短くするとFeNiN形成率が安定化せず、同様にアンモニア効率が低くなる傾向がある。また、試料量を400(mg)としているが、1度に窒化処理するFeNiの量を増加させた場合にも、FeNiN形成率が安定化せず、同様にアンモニア効率が低くなる。このため、上記したように、NH量を減少させたり、窒化処理を短時間にしたり、1度に窒化処理するFeNiの量を増加したりすると、アンモニア効率が悪くなって、純粋なFeNiNを得ることができなくなる。
一方、実施例1~7では、硫黄を加えたFeNiに対して窒化脱窒素処理を行っているが、実施例1~7すべての場合において、基準よりも高いアンモニア効率が得られた。
実施例1では、硫黄量が0.03(mass%)と少ないが、335℃、40時間の窒化処理条件下でNH量を1リットル/minと少なくしても、FeNiN形成率が95%と高い値となり、アンモニア効率が22.9(×10-5)と高い値になった。効率向上率についても4.8と高い値となった。
実施例2では、実施例1と同じ硫黄量において、窒化処理の温度のみ415℃と高くしたところ、FeNiN形成率が43%に低下したものの、アンモニア効率が10.4(×10-5)と基準よりも高い値になった。効率向上率についても2.2と高い値になった。
実施例3では、硫黄量を0.05(mass%)と実施例1よりも多くした場合、415℃、40時間の窒化処理条件下でNH量を1リットル/minと少なくしても、FeNiN形成率が97%と高い値となり、アンモニア効率が23.6(×10-5)と高い値になった。効率向上率についても4.9と高い値となった。後述するように、硫黄量に応じて窒化処理の温度を変化させた方がFeNiN形成率を高くできることを確認しており、実施例3では、よりFeNiN形成率を高くできるように窒化処理の温度を415℃としている。このため、特にFeNiN形成率を高い値にできており、より高いアンモニア効率を得ている。
実施例4では、硫黄量を0.14(mass%)と実施例3よりも多くし、実施例3と窒化処理条件を同じにした場合に、FeNiN形成率が90%と高い値を維持できていて、アンモニア効率も21.8(×10-5)と高い値を維持できていた。効率向上率についても4.6と高い値となった。実施例5~7では、実施例4よりも更に硫黄量を多くし、実施例3、4と同じ窒化処理条件としている。実施例5では硫黄量を0.48(mass%)としており、FeNiN形成率が94%、アンモニア効率が22.8(×10-5)、効率向上率が4.8といずれも高い値となった。実施例6では硫黄量を1.05(mass%)としており、FeNiN形成率が92%、アンモニア効率が22.1(×10-5)、効率向上率が4.7といずれも高い値となった。実施例7では硫黄量を2.26(mass%)としており、FeNiN形成率が88%、アンモニア効率が21.2(×10-5)、効率向上率が4.5といずれも高い値となった。
参考として、比較例2と実施例3の場合ついて、XRDパターンの測定結果を図6に示す。この図中に示した“O”は、FeNiN起因のXRD回折ピークである。比較例2、実施例3ともに、高純度のFeNiNが得られていることが判る。
これら実施例1~7より、FeNiに硫黄を加えてから窒化脱窒素処理を行ってFeNi超格子を製造した場合、硫黄を加えていない従来の製法と比較して、FeNiN形成率を高められ、アンモニア効率を高められることが判る。具体的には、硫黄量を0.03(mass%)以上とすることで、従来の製法に対してアンモニア効率を2倍以上に向上させることができる。したがって、本実施形態のFeNi超格子においては、アンモニア効率を高められることによって、NH量の減少、窒化処理の短時間化、1度に窒化処理する材料量の増加の少なくとも1つを行え、製造コストの低減を図ることが可能となる。
また、実施例1~5のように、第1実施形態の製造方法によって製造したFeNi超格子について、TEMを用いて断面TEM観察や組成像観察を行ったところ、図7に示す結果が得られた。この図中、画像1は断面TEM観察の結果を示しており、画像2~4はそれぞれSの組成像、Feの組成像、Niの組成像を示している。
図7中のFeNi超格子の粒子100が画像1のように分布している場合において、画像3、4に示すFeやNiの組成像に示されるように、FeNiが均等に存在していて、FeNi超格子が良好な状態で形成されている。そして、画像2に示されるように、SがFeNi超格子の粒子100の分布に対応して、全体的に分布して存在した状態になっていることが判る。そして、SがFeNi超格子の粒子100の全体に存在した状態になっているということは、FeNi超格子の製造過程においても、SがFeNi合金やFeNiNの粒子100の全体に存在した状態になっていると言える。このように、Sが超格子の粒子100の全体に存在した状態になっている場合、換言すればFeNi超格子の製造過程においてFeNi合金やFeNiNにSが粒子100の全体に存在した状態になっている場合、高いアンモニア効率を得ることができていることが判る。
なお、図7中に示したように、実施例1~5ではFeNi超格子の粒子径が100nm程度になっているが、この粒子径についてはFeNi超格子の適用する目的に応じて適宜変更可能で、例えば100nm~数μmの範囲で変更することができる。実験によれば、FeNi超格子の粒子径は、FeNi酸化物を得るときの焼成温度やFeNi合金を得るときの還元温度に応じて変化し、温度が高いほど粒子径が大きくなり易いという傾向があることを確認している。粒子径の変化は磁気特性や耐環境性に影響を与えるため、FeNi超格子の適用する目的に応じて、所望の磁気特性や耐環境性が得られるように、焼成温度や還元温度を設定すれば良い。
一方、実施例6、7のように、第2実施形態の製造方法によって製造したFeNi超格子についても、断面TEM観察や組成像観察を行い、粒径が大きなものを抽出したところ、図8に示す結果が得られた。この図中、画像1は断面TEM観察の結果を示しており、画像2~4はそれぞれSの組成像、Feの組成像、Niの組成像を示している。
図8中の画像1に示すように、粒子径の大きなFeNi超格子を確認した場合においても、画像3、4に示すFeやNiの組成像に示されるように、粒子100中にFeNiが均等に存在していて、FeNi超格子が良好な状態で形成されている。そして、画像2に示されるように、SがFeNi超格子の粒子100の表面に偏析して存在した状態になっていることが判る。そして、SがFeNi超格子の粒子100の表面に偏析した状態になっているということは、FeNi超格子の製造過程においても、SがFeNi合金やFeNiNの粒子の表面に偏析した状態になっていると言える。このように、SがFeNi超格子の粒子100の表面に偏析している場合、換言すればFeNi超格子の製造過程において、FeNi合金やFeNiNの粒子表面にSが偏析していても、高いアンモニア効率を得ることができていることが判る。
次に、硫黄量を一定として窒化処理時の温度を変化させて、FeNiN形成率やアンモニア効率および効率向上率を調べた。具体的には、上記した実施例4のように硫黄量を0.14(mass%)とした場合において、窒化処理の温度を変化させて実験を行った。また、比較例として、従来の製法についても同様の実験を行った。図9は、その結果を示した図表である。この図中において、実施例4は、図5中の実施例4と同じものであり、実施例9、10および比較例9、10は、実施例4に対して窒化処理の温度のみを変化させた場合を示している。また、比較例2は、図5中の比較例2と同じものであり、比較例3~6は、比較例2に対して窒化処理の温度のみを変化させた場合を示しており、NH流量については5リットル/minのままとしている。
実施例9、10に示されるように、窒化処理の熱処理温度を375℃、450℃とした場合には、FeNiN形成率はそれぞれ76%、80%となっているが、アンモニア効率はそれぞれ18.4(×10-5)、19.2(×10-5)と高い値になっている。また、効率向上率についても、それぞれ3.9、4.1と高い値になった。さらに、実施例4のように、窒化処理の温度を415℃として実施例9と実施例10の間の温度にした場合にも、アンモニア効率および効率向上率が高い値になった。
また、比較例9、10に示されるように、窒化処理の熱処理温度を325℃、500℃とした場合にはFeNiN形成率がそれぞれ12%、3%、アンモニア効率がそれぞれ2.9(×10-5)、0.72(×10-5)となった。効率向上率についても、それぞれ0.61、0.15となった。これらの結果より、0.14質量%のSを加えた場合、窒化処理の温度を325℃よりも高く、500℃よりも低い温度範囲とすることで、アンモニア効率および効率向上率を高くすることが可能になることが判る。より好ましくは、窒化処理の温度を375~450℃の温度範囲とすることで、アンモニア効率および効率向上率を高くすることが可能になることが判る。
これに対して、比較例2、4ではFeNiN形成率、アンモニア効率および効率向上率が比較的高い値になっているが、比較例3、5、6ではFeNiN形成率、アンモニア効率および効率向上率が低い値もしくはゼロになった。
具体的には、比較例2、4のように、窒化処理の温度を300℃、325℃とした場合にはFeNiN形成率がそれぞれ99%、95%、アンモニア効率がそれぞれ4.7(×10-5)、4.6(×10-5)となった。効率向上率についても、それぞれ1、0.98となった。
また、比較例3のように、窒化処理の温度が275℃と300℃未満になると、FeNiN形成率が0%、アンモニア効率が0、効率向上率が0となった。同様に、比較例5、6のように、窒化処理の温度を375℃、415℃とした場合にはFeNiN形成率がそれぞれ9%、0%、アンモニア効率がそれぞれ0.43(×10-5)、0、効率向上率がそれぞれ0.09、0と低い値もしくは0になった。これらの結果より、Sを加えていない場合、窒化処理の温度を300~325℃の範囲にしないと、所望のアンモニア効率および効率向上率が得られないことが判る。
上記したように、Sを加えた場合には、窒化処理の温度を少なくとも375~450℃の温度範囲とすることで、所望のアンモニア効率および効率向上率が得られる。これに対して、Sを加えない従来の製造方法の場合には、窒化処理の温度を少なくとも300~325℃の温度範囲にしないと、所望のアンモニア効率および効率向上率が得られない。したがって、Sを加えることで、所望のアンモニア効率および効率向上率が得られる温度範囲を広げることが可能となり、プロセス温度上昇とプロセスウィンドウの拡大も可能になる。プロセス温度上昇が可能になると、より高い温度でFeNiN-Sを合成できるため、FeNi超格子の結晶性の向上が図れる。これにより、FeNi超格子の特性向上が可能になる。また、プロセスウィンドウの拡大が可能になると、窒化処理の温度の設定をそのプロセスウィンドウの範囲内で行えば良いため、温度管理が容易になる。
なお、ここでは実施例4のように硫黄量を0.14mass%とする場合において、実施例4、9および10の結果に基づいて窒化処理の温度を少なくとも375~450℃の温度範囲とすることについて説明した。しかしながら、これは一例を挙げたに過ぎず、例えば実施例1に示したように窒化処理温度を少なくとも335℃以上とすることで、高いアンモニア効率および効率向上率を得ることができる。このため、硫黄量を0.03mass%以上2.26mass%以下とする場合において、窒化処理の温度を335~450℃とすれば良いため、よりプロセスウィンドウの拡大が可能になる。
さらに、硫黄量を一定として窒化処理の時間を変化させて、FeNiN形成率やアンモニア効率および効率向上率を調べた。具体的には、上記した実施例3のように硫黄量を0.05(mass%)とした場合において、窒化処理の時間を変化させて実験を行った。また、比較例として、従来の製法についても同様の実験を行った。図10は、その結果を示した図表である。この図中において、実施例3は、図5の実施例3と同じものであり、実施例12、13は、実施例3に対して窒化処理の時間のみを変化させた場合を示している。また、比較例2は、図5中の比較例2と同じものであり、比較例7、8は、比較例2に対して窒化処理の時間のみを変化させた場合を示している。
実施例12、13に示されるように、窒化処理の時間を10時間、20時間と40時間よりも短くした場合でも、FeNiN形成率がそれぞれ88%、93%、アンモニア効率がそれぞれ84.6(×10-5)、44.9(×10-5)と高い値になっている。また、効率向上率についても、それぞれ17.9、9.5と高い値になった。このため、Sを加えた場合、窒化処理時間を短時間化しても、アンモニア効率および効率向上率を向上することが可能になると言える。
これに対して、比較例7、8のように、窒化処理の時間を10時間、20時間とした場合には、FeNiN形成率がそれぞれ5%、40%、アンモニア効率がそれぞれ0.97(×10-5)、3.9(×10-5)となった。効率向上率についても、それぞれ0.20、0.82となった。これらの結果より、Sを加えていない場合、窒化処理の時間を40時間以上にしないと、所望のアンモニア効率および効率向上率が得られないことが判る。
このように、Sを加えた場合には、窒化処理の時間を40時間よりも短時間化しても、高いアンモニア効率および効率向上率を得ることが可能になる。
参考として、比較例2と実施例3および実施例7のFeNiNを250℃で4時間脱窒素処理して得られたFeNi超格子磁粉の規則度と磁気特性について調べた。比較例2のFeNi窒化物を脱窒素することで得られたFeNi超格子の規則度は0.71であったのに対し、実施例3のFeNi窒化物を脱窒素して得られるFeNi超格子の規則度は0.68でありほぼ同等となった。実施例7の規則度は0.60であった。図11は、それぞれのヒステリシスカーブを示している。保磁力については、比較例2では142kA/mになっていた。これに対して、実施例3では135kA/mとなっており、実施例7では120kA/mとなっていた。飽和磁化については、比較例2では139Am/kg、実施例3も139Am/kgとなっていた。実施例7では91Am/kgとなっていた。このことから、実施例3のようにSが適量加えられたFeNi超格子は、比較例2のようにSが加えられていないFeNi超格子と同等の性能が得られていることが判る。硫黄量が過剰であると実施例7のように飽和磁化の低下を引き起こすため、磁気性能の観点からは2質量%以下であることが好ましい。
この結果および上記した図5に示す比較例2と実施例3のXRDパターンの測定結果より、硫黄を適量ドープしたことによる結晶構造や磁気特性に及ぼす影響は観察されなかった。したがって、硫黄をドープしても、性能を落とすことなくFeNi超格子の作成時のアンモニア効率を向上でき、FeNi超格子の作成効率を高めることが可能になると言える。
また、本発明者は、実施例3と実施例4のそれぞれで得られたFeNi超格子磁粉に含まれる硫黄の酸化数を調べた。具体的には、あいちシンクロトロン光センターBL6N1にて、XAFS測定(すなわち、部分蛍光収量測定)を、以下の手順で実施した。
(1)エネルギー較正
試料を測定する前に標準試料であるKSOのS K-edge XANES測定を行った。そのときのpeak topが2481.70eVとなるようエネルギー較正を行った。XANESは、X-ray Absorption Near Edge Structureの略称である。
(2)試料準備
試料をインジウムシートに埋め込み、導電性カーボンテープを使用して試料ホルダーに貼り付けた。試料を貼り付けた試料ホルダーをHe大気圧チェンバーに導入し、測定前に30分程度He置換を行った。
(3)本測定
2440-2550eVの測定範囲で部分蛍光収量測定を行った。入射光の入射角度は、試料プレートに対して20°であった。
(4)測定結果の解析
本発明者は、解析ソフトウェアとして「Athena」を用いて、測定結果の解析を行った。収端E0 2471eV、Pre-edge range 2440~2470eV、Normalization range 2508~2547eVの設定で、平坦化と規格化を行った。そして、標準試料との比較によって、S6+に起因する吸収ピークおよびS2-に起因する吸収ピークの存在の有無を判断した。吸収ピークの存在の有無を、ノイズレベルの10倍以上(すなわち、S/N比10以上)の吸収強度の立ち上がりをもって判断した。このノイズレベルは、Pre-edge rangeのうち2440~2460eVの範囲での信号の偏差の絶対値の平均値である。S6+標準試料として、(NHSOを用いた。S2-標準試料として、FeSを用いた。2482.0±2eVに出現する吸収ピークが、S6+に起因するピークである。2471.5±2eVに出現する吸収ピークが、S2-に起因するピークである。これらの吸収ピークが存在することをもって、S2-とS6+のそれぞれの状態が存在すると判断した。
測定および解析の結果、図12に示す結果が得られた。図12は、実施例3と実施例4のそれぞれのFeNi超格子磁粉についてのX線吸収端近傍スペクトル(XANES)を示した図である。図12には、標準試料の(NHSOおよびFeSのX線吸収端近傍スペクトルも示されている。図12に示すように、実施例3と実施例4のどちらにおいても、硫黄の酸化数は、S2-とS6+の混合状態であった。実施例3では、実施例4よりもS6+が多く含まれていた。実施例4では、実施例3よりもS2-が多く含まれていた。ちなみに、図示しないが、実施例3と実施例4のそれぞれにおいて、脱窒素の前後における硫黄の酸化数はほぼ同じであることが、確認されている。
図12に示す結果より、FeNi超格子に含まれる硫黄は、硫黄元素単体の状態ではなく、他の元素と化合した状態であることがわかった。また、図12に示す結果および図5に示す実施例3と実施例4のアンモニア効率の結果より、硫黄の酸化数が異なっていても、アンモニア効率の向上効果が得られることが言える。なお、実施例3と実施例4では、硫黄の酸化数がS2-とS6+の混合状態であったが、硫黄の酸化数がS2-とS6+の一方のみであっても、アンモニア効率の向上効果が得られると考えられる。また、アンモニア効率の向上効果が得られれば、FeNi超格子に含まれる硫黄の酸化数は、S2-およびS6+以外であってもよい。
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
例えば、第1実施形態ではFeNi酸化物に対して、第2実施形態ではFeNi合金の段階でSをドープしているが、Sのドープについては窒化処理時に行われていれば良い。第1実施形態であれば、Fe,Ni塩やFeNi合金の段階でSをドープしても良い。また、窒化処理時にSがドープされるようにしても良い。さらに、Sのドープ方法についても、第1、第2実施形態で挙げた方法に限らず、任意の方法によって行うことができる。一例を挙げると、原材料に硫酸アンモニウムを添加したのち熱処理を行うようにしたり、原材料にHSを作用させたりすることが挙げられる。例えば、金属FeNiに対して硫酸アンモニウムを添加したり、窒化処理時にNHガスにHSを混合する浸琉窒化を行ったりするなど、任意の方法によってFeNi-Sを合成することができる。
また、上記第2実施形態では、FeNi超格子中にSが偏析した場合の一例としてFeNi超格子の粒子の表面に偏析した例を挙げたが、表面以外であっても良い。例えば、FeNi超格子の粒子の内部にSが偏析していても良い。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。
[1]L1型の規則構造を有し、硫黄を含むL1型のFeNi規則合金。
[2]前記硫黄の含有量が0.01質量%以上である、[1]に記載のL1型のFeNi規則合金。
[3]前記硫黄が10質量%以下である、[1]または[2]に記載のL1型のFeNi規則合金。
[4]前記L1型の規則構造を有した粒子(100)によって構成され、該粒子の全体に前記硫黄が存在した状態になっている、[1]ないし[3]のいずれか1つに記載のL1型のFeNi規則合金。
[5]前記L1型の規則構造を有した粒子(100)によって構成され、該粒子に前記硫黄が偏析した状態になっている、[1]ないし[3]のいずれか1つに記載のL1型のFeNi規則合金。
[6]前記粒子の表面に前記硫黄が偏析した状態になっている、[5]に記載のL1型のFeNi規則合金。
[7]前記硫黄の酸化数は、S2-もしくはS6+またはそれらの混合状態を含む、[1]ないし[6]のいずれか1つに記載のL1型のFeNi規則合金。
[8]硫黄を含むFeNi合金を窒化処理してFeおよびNiを含む窒化物を得ることを含むL1型のFeNi規則合金の製造方法。
[9]前記FeNi合金における硫黄の含有量が0.01質量%以上である[8]に記載のL1型のFeNi規則合金の製造方法。
[10]前記FeNi合金における硫黄の含有量が10質量%以下である[8]または[9]に記載のL1型のFeNi規則合金の製造方法。
[11]前記窒化処理において、温度が300~500℃の範囲である熱処理を行うことを含む、[8]ないし[10]のいずれか1つに記載のL1型のFeNi規則合金の製造方法。
[12]前記窒化処理において、温度が330~450℃の範囲である熱処理を行うことを含む、[8]ないし[11]のいずれか1つに記載のL1型のFeNi規則合金の製造方法。
[13]前記窒化処理において、FeおよびNiを含む窒化物を得る際の窒化効率が4.7×10-5より大きいことを含む、[8]ないし[12]のいずれか1つに記載のL1型のFeNi規則合金の製造方法。
100 FeNi超格子の粒子

Claims (13)

  1. L1型の規則構造を有し、硫黄を含むL1型のFeNi規則合金。
  2. 前記硫黄の含有量が0.01質量%以上である、請求項1に記載のL1型のFeNi規則合金。
  3. 前記硫黄が10質量%以下である、請求項1または2に記載のL1型のFeNi規則合金。
  4. 前記L1型の規則構造を有した粒子(100)によって構成され、該粒子の全体に前記硫黄が存在した状態になっている、請求項1または2に記載のL1型のFeNi規則合金。
  5. 前記L1型の規則構造を有した粒子(100)によって構成され、該粒子に前記硫黄が偏析した状態になっている、請求項1または2に記載のL1型のFeNi規則合金。
  6. 前記粒子の表面に前記硫黄が偏析した状態になっている、請求項5に記載のL1型のFeNi規則合金。
  7. 前記硫黄の酸化数は、S2-もしくはS6+またはそれらの混合状態を含む、請求項1または2に記載のL1型のFeNi規則合金。
  8. 硫黄を含むFeNi合金を窒化処理してFeおよびNiを含む窒化物を得ることを含むL1型のFeNi規則合金の製造方法。
  9. 前記FeNi合金における硫黄の含有量が0.01質量%以上である請求項8に記載のL1型のFeNi規則合金の製造方法。
  10. 前記FeNi合金における硫黄の含有量が10質量%以下である請求項8または9に記載のL1型のFeNi規則合金の製造方法。
  11. 前記窒化処理において、温度が300~500℃の範囲である熱処理を行うことを含む、請求項8または9に記載のL1型のFeNi規則合金の製造方法。
  12. 前記窒化処理において、温度が330~450℃ の範囲である熱処理を行うことを含む、請求項8または9に記載のL1型のFeNi規則合金の製造方法。
  13. 前記窒化処理において、FeおよびNiを含む窒化物を得る際の窒化効率が4.7×10-5より大きいことを含む、請求項8または9に記載のL1型のFeNi規則合金の製造方法。
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