JP2023047211A - フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い生産性のもと製造することが可能であり、かつ、良好なNiろう付け性を有する、フェライト系ステンレス鋼を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.003~0.020%、Si:0.01~0.60%、Mn:0.01~0.40%、P:0.040%以下、S:0.020%以下、Cr:16.0~25.0%、Ni:0.01~0.60%、Al:0.10~0.30%、Nb:0.10~0.60%、Mo:0.01~2.50%およびN:0.020%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、フェライト系ステンレス鋼に関する。
近年、地球環境保護の立場から、自動車に対して燃費のさらなる向上や排気ガス浄化の強化が求められている。このため、排熱回収器や、EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラー等の排気ガス再循環装置の自動車への適用が拡大しつつある。
ここで、排熱回収器とは、エンジン冷却水や排気ガスの熱を再利用することで、燃費を向上させる装置である。一般的に、排熱回収器は、触媒コンバーターとマフラーの間に設置され、パイプ、プレート、フィン、サイドプレート等を組み合わせた熱交換器部分と、入側・出側パイプ部分とで構成される。そして、排気ガスは、入側パイプから熱交換器部分に入り、そこで、その熱をフィンなどの伝熱面を介して冷却水へ伝え、出側パイプから排出される。また、このような排熱回収器の熱交換器部分を構成するプレートやフィンの接着および組み立てには、Ni含有ろう材による高温(例えば、1000~1150℃程度)でのろう付け(以下、Niろう付けともいう)が主に用いられる。
また、排気ガス再循環装置、例えば、EGRクーラーは、エキゾーストマニホールドなどから一部の排気ガスを取り入れるパイプと、取り入れた排気ガスを冷却する熱交換器と、冷却した排気ガスをエンジンの吸気側に戻すパイプとで構成される。EGRクーラーは、具体的な構造としては、エキゾーストマニホールドから排気ガスをエンジンの吸気側に還流させる経路上に、水流通路と排気ガス通路を併せ持つ、熱交換器を有する構造となっている。このような構造とすることにより、排気側における高温の排気ガスが、熱交換器によって冷却される。そして、冷却された排気ガスが吸気側に還流してエンジンの燃焼温度を低下させ、高温下で生成しやすいNOの生成を抑制する。また、EGRクーラーの熱交換器部分は、軽量化、コンパクト化、コスト低減などの理由から、薄い板をフィン状に重ね合わせて構成されており、これらの接着および組み立てには、やはりNiろう付けが主に用いられる。
さらに、給湯器においても、環境対応型機器への切換が進んでおり、熱交換器の適用が広がっている。例えば、ガス給湯器では、二次熱交換器にて排気ガスから潜熱を回収し、再利用することにより、熱効率を向上させ、ガスの使用量を削減している。また、電気温水器においても、熱交換器が使用されている。これらの給湯器には、プレート型熱交換器が広く利用され、その組み立てには、やはりNiろう付けが主に用いられる。
このように、排熱回収器や排気ガス再循環装置、給湯器などの熱交換器部分は、主にNiろう付けにより接着および組み立てされている、そのため、これらの熱交換器部分に用いられる素材には、Niろう付けにおける良好なろう付け性(以下、Niろう付け性ともいう)が求められる。
以上のようなことから、排熱回収器や排気ガス再循環装置、給湯器の熱交換器部分には、一般的に良好なろう付け性を示すオーステナイト系ステンレス鋼が使用されている。しかし、オーステナイト系ステンレス鋼はNiを多量に含有するために、高コストになるという点や、熱膨張係数が大きくなって高温での熱疲労特性が低くなるという点に問題がある。
そこで、排熱回収器や排気ガス再循環装置、給湯器の熱交換器部分に、オーステナイト系ステンレス鋼に比べてNi含有量の少ないフェライト系ステンレス鋼を用いることが検討されている。
例えば、特許文献1には、
「質量%で、C:0.003~0.020%、Si:0.05~0.60%、Mn:0.05~0.50%、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Cr:17.0~24.0%、Ni:0.20~0.80%、Cu:0.01~0.80%、Mo:0.01~2.50%、Al:0.001~0.015%、Nb:0.25~0.60%、N:0.020%以下、
を含有し、以下の式(1)および式(2)を満たすとともに、残部がFeおよび不可避的不純物
からなる組成を有することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
Cu+Mo≧0.30% ・・・(1)
4Ni-(Si+Mn)≧0% ・・・(2)
(式(1)中のCu、Mo、式(2)中のNi、Si、Mnは、各元素の含有量(質量%)を示す。)」
が開示されている。
特許文献2には、
「質量%で、C:0.03%以下、Si:0.1越え~1%、Mn:2%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cr:16~25%、Nb:0.15~0.8%、N:0.03%以下、Al:0.03%以下、Ti:0.03%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなる、ろう付け用フェライト系ステンレス鋼。」
が開示されている。
特開2018-87383号公報 特許2011-157616号公報
特許文献1および2に記載のフェライト系ステンレス鋼は、所望のろう付け性を確保するため、Al含有量の上限を厳しく制限する必要がある。そのため、特許文献1および2に記載のフェライト系ステンレス鋼の製造に際しては、高いAl除去能力を持った設備を導入する必要があり、生産性の面に課題がある。
このように、特許文献1および2に開示されるフェライト系ステンレス鋼はいずれも、生産性の面に課題がある。そのため、高い生産性のもと製造することが可能であり、かつ、良好なNiろう付け性を有する、フェライト系ステンレス鋼の開発が望まれているのが現状である。
本発明は、上記現状に鑑み開発されたものであって、高い生産性のもと製造することが可能であり、かつ、良好なNiろう付け性を有する、フェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
ここで、高い生産性(のもと製造することが可能である)とは、一般的な製造ラインにより追加の特別な処理を行うことなく製造可能であることを意味する。
また、良好なNiろう付け性とは、供試材となるステンレス鋼の表面に設置したNi含有ろう材を加熱する際に、Ni含有ろう材の広がり率が150%以上となることを意味する。また、Ni含有ろう材の広がり率は、次式により算出する。
[Ni含有ろう材の広がり率(%)]=[供試材の表面における加熱後のNi含有ろう材の円相当直径(mm)]÷[供試材の表面における加熱前のNi含有ろう材の円相当直径(mm)]×100
なお、Ni含有ろう材の加熱条件などについては、後述の実施例の記載を参照すればよい。
さて、本発明者らは、上記の目的を達成すべく、鋭意検討を重ね、以下の知見を得た。
(1)ろう付けはろう材を溶融させ、ろう材とステンレス鋼の母材(以下、単に母材ともいう)間で発生する金属結合を活用して母材同士を接合する手法である。ろう付けは、真空または窒素やアルゴンといった不活性ガスをキャリアガスとした雰囲気中で行われることが一般的である。しかし、雰囲気中の酸素を完全に除去することは困難であり、母材表層では(母材に含まれる元素の)酸化物や窒化物といった安定な化合物が生成される。これらの化合物は、ろう材のぬれを阻害する。そのため、従来、ろう付け性向上のためには、これらの化合物の形成を極力防ぐ必要があり、特に、特許文献1および2の技術のように、易酸化元素であるAlの含有量を低減する必要がある、と考えられていた。
(2)しかし、発明者らが、成分組成を種々変化させたステンレス鋼を製造してそのNiろう付け性を評価したところ、成分組成を適正に調整したうえで、Alを適正量含有させる、特には、Al含有量を0.10~0.30質量%とすることにより、一般的な製造ラインにより追加の特別な処理を行うことなく、良好なNiろう付け性を有するフェライト系ステンレス鋼が製造できる、との知見を得た。
(3)上記の理由について、発明者らは次のように考えている。
上述したように、Alは易酸化元素であるため、ろう付け時に母材表層では酸化物などのAl化合物が生成される。特に、成分組成を適正に調整したうえでAlを適正量含有させることによって、ろう付け時に、Al化合物が母材表層に一定量以上かつ不均一に生成する。この不均一に生成したAl化合物により、母材表面では微細凹凸が生じ、この微細凹凸によって、溶融したろう材の見かけの接触角が低下する。その結果、ろう材のぬれ性が向上し、良好なNiろう付け性が得られる。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.003~0.020%、
Si:0.01~0.60%、
Mn:0.01~0.40%、
P:0.040%以下、
S:0.020%以下、
Cr:16.0~25.0%、
Ni:0.01~0.60%、
Al:0.10~0.30%、
Nb:0.10~0.60%、
Mo:0.01~2.50%および
N:0.020%以下
であり、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する、フェライト系ステンレス鋼。
2.前記成分組成が、さらに質量%で、
Cu:1.00%以下、
Co:0.70%以下および
W:1.00%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する、前記1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
3.前記成分組成が、さらに質量%で、
Ti:0.10%以下、
V:0.10%以下、
Zr:0.10%以下、
Mg:0.0050%以下、
Ca:0.0050%以下、
B:0.0050%以下、
REM(希土類金属):0.100%以下、
Sn:0.300%以下および
Sb:0.100%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する、前記1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼。
4.排熱回収器、排気ガス再循環装置または給湯器の熱交換器用である、前記1~3のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼。
本発明によれば、高い生産性のもと製造することが可能であり、かつ、良好なNiろう付け性を有する、フェライト系ステンレス鋼を得ることが出来る。
本発明のフェライト系ステンレス鋼を、以下の実施形態に基づき説明する。
まず、本発明の一実施形態に従うフェライト系ステンレス鋼の成分組成について説明する。なお、成分組成における元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であり、以下、特に断らない限り、単に「%」で示す。
C:0.003~0.020%
C含有量が多くなると強度が向上し、少なくなると加工性が向上する。ここで、Cは、十分な強度を得るために0.003%以上の含有が必要である。しかし、C含有量が0.020%を超えると、加工性の低下が顕著となる。また、粒界にCr炭化物が析出し、鋭敏化により耐食性が低下しやすくなる。そのため、C含有量は0.003~0.020%の範囲とする。C含有量は、好ましくは0.004%以上である。また、C含有量は、好ましくは0.015%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。
Si:0.01~0.60%
Siは、脱酸剤として有用な元素である。このような効果は、0.01%以上のSiの含有で得られる。しかし、Si含有量が0.60%を超えると、ろう付け時にSi酸化物やSi窒化物等のSi濃化物がステンレス鋼の表面に形成され易くなり、ろう付け性が低下する。そのため、Si含有量は0.01~0.60%の範囲とする。Si含有量は、好ましくは0.10%以上である。また、Si含有量は、好ましくは0.40%以下である。
Mn:0.01~0.40%
Mnは、脱酸作用を有する元素である。このような効果は、0.01%以上のMnの含有で得られる。しかし、Mn含有量が0.40%を超えると、ろう付け時にMn濃化物がステンレス鋼の表面に形成され易くなり、ろう付け性が低下する。そのため、Mn含有量は0.01~0.40%の範囲とする。Mn含有量は、好ましくは0.10%以上であり、より好ましくは0.15%以上である。また、Mn含有量は、好ましくは0.20%以下である。
P:0.040%以下
Pは、鋼に不可避的に含まれる元素である。Pの過剰な含有は、溶接性を低下させ、粒界腐食を生じさせやすくする。その傾向は、Pの0.040%超の含有で顕著となる。そのため、P含有量は0.040%以下とする。P含有量は、好ましくは0.030%以下である。
S:0.020%以下
Sは、鋼に不可避的に含まれる元素である。Sの過剰な含有、特に0.020%超の含有は、MnSの析出を促進して耐食性を低下させる。よって、S含有量は0.020%以下とする。S含有量は、好ましくは0.010%以下である。
Cr:16.0~25.0%
Crは、耐食性の確保に有効な元素である。Cr含有量が16.0%未満では、ろう付け後に十分な耐食性が得られない。一方、Cr含有量が過度に多くなると、Niろう付けの際に、ステンレス鋼の表面にCr酸化皮膜が生成し。Niろう付け性が低下する。そのため、Cr含有量は16.0~25.0%の範囲とする。Cr含有量は、好ましくは18.0%以上であり、より好ましくは19.0%以上である。また、Cr含有量は、好ましくは22.5%以下であり、より好ましくは21.0%以下であり、さらにより好ましくは20.0%未満である。
Ni:0.01~0.60%
Niは、耐食性および靭性の確保に有効な元素である。このような効果は、Niの0.01%以上の含有で得られる。一方、Ni含有量が0.60%を超えると、加工性が低下する。よって、Ni含有量は、0.01~0.60%とする。Ni含有量は、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.10%以上である。また、Ni含有量は、好ましくは0.40%以下である。
Al:0.10~0.30%
Alは、重要な元素の1つである。上述したように、成分組成を適正に調整したうえで、Alを適正量含有させることによって、Niろう付けの際にAl酸化物やAl窒化物等のAl化合物がステンレス鋼表層に不均一に生成し、ステンレス鋼の表面に微細凹凸が生じる。この微細凹凸により、溶融したろう材の見かけの接触角が低下し、ろう材のぬれ性が向上する。このような効果を得るため、Al含有量は0.10%以上とする。しかし、Al含有量が0.30%を超えると、Niろう付けの際に、Al酸化物やAl窒化物等のAl化合物がステンレス鋼の表面に一様に生成し、ステンレス鋼の表面に生じる微細凹凸の高低差や間隔が十分ではなくなる。その結果、ろう材のぬれ性が低下し、ろう付けが困難になる。そのため、Al含有量は0.10~0.30%とする。Al含有量は、好ましくは0.12%以上である。Al含有量は、好ましくは0.20%以下である。
Nb:0.10~0.60%
Nbは、CおよびNと結合することにより、Cr炭窒化物の析出による耐食性の低下(鋭敏化)を抑制する元素である。このような効果は、Nb含有量が0.10%以上で得られる。一方、Nb含有量が0.60%を超えると、溶接部で溶接割れが生じやすくなる。そのため、Nb含有量は、0.10~0.60%の範囲とする。Nb含有量は、好ましくは0.30%以上である。また、Nb含有量は、好ましくは0.45%以下であり、より好ましくは0.35%以下である。
Mo:0.01~2.50%
Moは、ステンレス鋼の不動態化皮膜を安定化させて耐食性を向上させる。このような効果は、Mo含有量が0.01%以上で得られる。しかし、Mo含有量が2.50%を超えると、熱間圧延時に表面欠陥が発生しやすくなる。よって、Mo含有量は、0.01~2.50%の範囲とする。Mo含有量は、好ましくは0.45%以下、より好ましくは0.15%以下、さらに好ましくは0.05%以下である。
N:0.020%以下
N含有量が0.020%を超えると、耐食性と加工性が著しく低下する。従って、N含有量は0.020%以下とする。N含有量は、好ましくは0.015%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。なお、N含有量の下限については特に限定されるものではないが、過度の脱Nはコストの増加を招く。そのため、N含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
以上、本発明の一実施形態に従うフェライト系ステンレス鋼の基本成分組成について説明したが、さらに、以下の(A群)および(B群)に係る任意添加元素を、単独で、または、組み合わせて、含有させることができる。
(A群)
Cu:1.00%以下、
Co:0.70%以下および
W:1.00%以下
のうちから選んだ1種または2種以上
(B群)
Ti:0.10%以下、
V:0.10%以下、
Zr:0.10%以下、
Mg:0.0050%以下、
Ca:0.0050%以下、
B:0.0050%以下、
REM(希土類金属):0.100%以下、
Sn:0.300%以下および
Sb:0.100%以下
のうちから選んだ1種または2種以上
Cu:1.00%以下
Cuは、耐食性を高める元素である。このような効果を得るためには、Cu含有量を0.01%以上とすることが好適である。しかし、Cu含有量が1.00%を超えると、熱間加工性が低下する。そのため、Cuを含有させる場合、その含有量は1.00%以下とすることが好ましい。Cu含有量は、より好ましくは0.80%以下であり、さらに好ましくは0.60%以下である。
Co:0.70%以下
Coは、耐食性を高める元素である。このような効果を得るためには、Co含有量を0.01%以上とすることが好適である。Co含有量は、より好ましくは0.05%以上である。しかし、Co含有量が0.70%を超えると、加工性が低下する。そのため、Coを含有させる場合、その含有量は0.70%以下とすることが好ましい。Co含有量は、より好ましくは0.50%以下、さらに好ましくは0.20%以下である。
W:1.00%以下
Wは、耐食性を高める元素である。このような効果を得るためには、W含有量を0.01%以上とすることが好適である。しかし、W含有量が1.00%を超えると、加工性が低下する。そのため、Wを含有させる場合、その含有量は1.00%以下とすることが好ましい。W含有量は、より好ましくは0.50%以下、さらに好ましくは0.20%以下である。
Ti:0.10%以下
Tiは、鋼中に含まれるCおよびNと結合し、鋭敏化を防止する効果を有する。このような効果を得るためには、Ti含有量を0.01%以上とすることが好適である。一方、Tiは酸素に対して活性な元素であるため、Ti含有量が0.10%を超えると、Niろう付け時にTi酸化皮膜がステンレス鋼の表面に生成し、ろう付け性が低下する。よって、Tiを含有させる場合、その含有量は0.10%以下とすることが好ましい。Ti含有量は、より好ましくは0.05%以下である。
V:0.10%以下
Vは、Ti同様に、鋼中に含まれるCおよびNと結合し、鋭敏化を防止する効果を有する。このような効果を得るためには、V含有量を0.01%以上とすることが好適である。一方、Vは酸素に対して活性な元素であるため、V含有量が0.10%を超えると、Niろう付け時にV酸化皮膜がステンレス鋼の表面に生成し、ろう付け性が低下する。そのため、Vを含有させる場合、その含有量は0.10%以下とすることが好ましい。
Zr:0.10%以下
Zrは、TiやNbと同様に、鋼中に含まれるCおよびNと結合し、鋭敏化を防止する効果を有する。このような効果を得るためには、Zr含有量を0.01%以上とすることが好適である。Zr含有量は、より好ましくは0.03%以上である。一方、Zrは酸素に対して活性な元素であるため、Zr含有量が0.10%を超えると、Niろう付け時にZr酸化皮膜がステンレス鋼の表面に生成し、ろう付け性が低下する。そのため、Zrを含有させる場合、その含有量は0.10%以下とすることが好ましい。Zr含有量は、より好ましくは0.05%以下である。
Mg:0.0050%以下
Mgは、脱酸剤として作用する。このような効果を得るためには、Mg含有量を0.0005%以上とすることが好適である。しかし、Mg含有量が0.0050%を超えると、鋼の靭性が低下して製造性が低下する。そのため、Mgを含有させる場合、その含有量は0.0050%以下とすることが好ましい。Mg含有量は、より好ましくは0.0020%以下である。
Ca:0.0050%以下
Caは、溶接部の溶け込み性を改善して溶接性を向上させる。このような効果を得るためには、Ca含有量を0.0005%以上とすることが好適である。Ca含有量は、より好ましくは0.0010%以上である。しかし、Ca含有量が0.0050%を超えると、CaとSとが結合してCaSが生成し、耐食性が低下する。そのため、Caを含有させる場合、その含有量は0.0050%以下とすることが好ましい。Ca含有量は、より好ましくは0.0040%以下である。
B:0.0050%以下
Bは、二次加工脆性を改善する元素である。このような効果を得るためには、B含有量を0.0005%以上とすることが好適である。しかし、B含有量が0.0050%を超えると、固溶強化により延性が低下する。そのため、Bを含有させる場合、その含有量は0.0050%以下とすることが好ましい。
REM(希土類金属):0.100%以下
REM(希土類金属)は、脱酸に有効な元素である。このような効果を得るためには、REM含有量を0.001%以上とすることが好適である。REM含有量は、より好ましくは0.010%以上である。しかし、REM含有量が0.100%を超えると、熱間加工性が低下する。そのため、REMを含有させる場合、その含有量は0.100%以下とすることが好ましい。REM含有量は、より好ましくは0.050%以下である。なお、REMは、ScおよびYと、原子番号57のLa(ランタン)から原子番号71のLu(ルテチウム)までの15元素との総称であり、ここでいうREM含有量は、これらの元素の合計含有量である。
Sn:0.300%以下
Snは、加工肌荒れ抑制に有効な元素である。このような効果を得るためには、Sn含有量を0.001%以上とすることが好適である。しかし、Sn含有量が0.300%を超えると、熱間加工性が低下する。そのため、Snを含有させる場合、その含有量は0.300%以下とすることが好ましい。Sn含有量は、より好ましくは0.050%以下である。
Sb:0.100%以下
Sbは、Snと同様に、加工肌荒れ抑制に有効な元素である。このような効果を得るためには、Sb含有量を0.001%以上とすることが好適である。しかし、Sb含有量が0.100%を超えると、加工性が低下する。そのため、Sbを含有させる場合、その含有量は0.100%以下とすることが好ましい。Sb含有量は、より好ましくは0.050%以下である。
本発明の一実施形態に従うフェライト系ステンレス鋼の成分組成における上記の元素以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、上記した任意添加成分に係る元素について、その含有量が各好適下限値未満の場合には、当該元素を不可避的不純物として扱うものとする。
なお、フェライト系とは、フェライト相を主体とした組織、具体的には、組織全体に対する面積率で80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のフェライト相と、(フェライト相以外の)残部組織とからなる組織を有することを意味する。残部組織としては、例えば、マルテンサイト相および残留オーステナイト相が挙げられる。フェライト単相(フェライト相が組織全体に対する面積率で100%)であってもよい。
ここで、フェライト相の面積率は、以下のようにして測定する。すなわち、供試材となるステンレス鋼から断面観察用の試験片を作製する。ついで、試験片に王水によるエッチング処理を施してから、10視野について倍率200倍で光学顕微鏡による観察を行い、組織形状とエッチング強度からマルテンサイト相とフェライト相および残留オーステナイト相とを区別する。その後、画像処理により、視野ごとにフェライト相の面積率を求め、10視野での算術平均値を算出する。
また、本発明の一実施形態に従うフェライト系ステンレス鋼の形状は特に限定されるものではないが、例えば、板状(鋼板)、管状(鋼管)および棒状(丸棒材や角材など)などを例示することができる。また、厚み(丸棒材の場合は外径)は、0.1~15.0mmとすることが好適である。
次に、本発明の一実施形態に従うフェライト系ステンレス鋼の好適な製造方法を、板状のフェライト系ステンレス鋼(フェライト系ステンレス鋼板)を製造する場合を例示して説明する。
まず、上記の成分組成を有する鋼素材(鋼スラブ)を、熱間圧延して所定板厚の熱延鋼板とする。ついで、該熱延鋼板に任意に熱延板焼鈍を施し、熱延焼鈍鋼板とする。ついで、該熱延鋼板または熱延焼鈍鋼板に冷間圧延を施して所定板厚の冷延鋼板とする。ついで、該冷延鋼板に冷延板焼鈍を施し、冷延焼鈍鋼板とする。これにより、上記の成分組成を有する板状のフェライト系ステンレス鋼(フェライト系ステンレス鋼板)を製造することができる。なお、熱間圧延や冷間圧延、熱延板焼鈍、冷延板焼鈍などの条件は特に限定されず、常法に従えばよい。
例えば、鋼を溶製する製鋼工程では、転炉または電気炉等で溶解した鋼をVOD法等により二次精錬し、上記の成分組成を有する鋼とすることが好ましい。溶製した溶鋼は、公知の方法で鋼素材とすることができるが、生産性および品質面からは連続鋳造法によることが好ましい。ついで、鋼素材を、好ましくは1050~1250℃に加熱し、熱間圧延により所定板厚の熱延鋼板とする。ついで、上記の熱延鋼板に、任意に900~1150℃の温度で連続焼鈍を施した後、任意に酸洗等により脱スケールし、熱延焼鈍鋼板とする。さらに、任意に、酸洗前にショットブラストによりスケール除去してもよい。
また、上記熱延鋼板または熱延焼鈍鋼板に、冷間圧延を施してもよい。冷間圧延の回数は、1回でもよいが、生産性や要求品質上の観点から、中間焼鈍を挟んで2回以上としてもよい。また、冷間圧延における総圧下率は60%以上が好ましく、より好ましくは70%以上である。ついで、冷間圧延して得られた冷延鋼板に、任意に、好ましくは900~1150℃、より好ましくは950~1150℃の温度で連続焼鈍(仕上げ焼鈍)を施した後、任意に酸洗し、冷延焼鈍鋼板とする。なお、連続焼鈍を光輝焼鈍で行って、酸洗を省略してもよい。さらに用途によっては、仕上げ焼鈍後、スキンパス圧延等を行って、鋼板の形状や表面粗度および材質調整を行ってもよい。
上記の例では、板状とする場合の製造方法を例として説明したが、板状以外に熱間加工および冷間加工することもできる。この場合の熱間加工や冷間加工などの条件も特に限定されず、常法に従えばよい。
なお、本発明の一実施形態に従うフェライト系ステンレス鋼は、Niろう付けの母材に用いて特に好適である。Niろう付けは、例えば、真空炉または雰囲気炉を使用し、真空度が4.0×10-3 Pa~60Pa以下の真空雰囲気または窒素キャリア雰囲気で実施することが好ましい。ろう付け時の温度は特に限定されないが、1050~1150℃が好ましい。また、Ni含有ろう材は、50質量%以上のNiを含有し、その他の元素を添加することにより融点を調整した、ろう付け用のNi合金である。Ni含有ろう材の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、ペースト状ろう材(粉体のろう材を有機物で構成されたバインダーと混ぜ合せたもの)が好ましい。
また、本発明の一実施形態に従うフェライト系ステンレス鋼は、組み立て時にNiろう付けが一般的に行われる熱交換器、例えば、排熱回収器、排気ガス再循環装置または給湯器(電気温水器や潜熱回収型給湯器)の熱交換器に好適に用いることができる。特に、本発明の一実施形態に従うフェライト系ステンレス鋼は、排熱回収器または排気ガス再循環装置の熱交換器に好適に用いることができる。
表1に示した成分組成(残部はFeおよび不可避的不純物)を有する鋼を真空溶解炉で溶製した後、当該鋼を1100~1200℃で1時間加熱し、熱間圧延して板厚:4.0mmの熱延鋼板を得た。ついで、該熱延鋼板に、950~1100℃の温度域での熱延板焼鈍を施し、熱延焼鈍鋼板を得た。ついで、該熱延焼鈍鋼板に、機械研削を施してスケールを除去した後、冷間圧延を施して、板厚:1.0mmの冷延鋼板を得た。ついで、該冷延鋼板に、950~1100℃の温度域で仕上げ焼鈍を施し、冷延焼鈍鋼板を得た。得られた冷延焼鈍鋼板の表面をエメリー研磨紙で1000番まで研磨し、アセトンによる脱脂を行い、供試材とするフェライト系ステンレス鋼を得た。
かくして得られたフェライト系ステンレス鋼について、以下の要領で、Niろう付け性の評価を行った。なお、供試材とするフェライト系ステンレス鋼の成分組成は、表1に記載した各鋼種の成分組成と実質的に同じであり、発明例についてはいずれも上記の成分組成の範囲を満足するものであった。また、上述した方法により、供試材とするフェライト系ステンレス鋼の組織がいずれも面積率で95%以上のフェライト相を含むものであることを確認した。
(Niろう付け性の評価)
上記のフェライト系ステンレス鋼(冷延焼鈍鋼板)から、幅:50mm、長さ:50mmの試験片を切り出した。ついで、試験片の表面の直径5mmの円内に、0.1gのNi含有ろう材(Ni-29質量%Cr-4質量%Si-6質量%P、バインダー混合比10質量%)を設置した。ついで、真空炉内に試験片を水平に配置し、真空炉内を8.0×10-2Paまで真空引きした。ついで、真空炉を加熱し、試験片を1090℃の真空雰囲気中で10分間保持した。ついで、室温まで冷却し、試験片の表面におけるNi含有ろう材の円相当直径を測定した。そして、次式によりNi含有ろう材の広がり率を算出し、以下の評価基準により、Niろう付け性を評価した。評価結果を表1に併記する。
[Ni含有ろう材の広がり率(%)]=[供試材の表面における加熱後のNi含有ろう材の円相当直径(mm)]÷[供試材の表面における加熱前のNi含有ろう材の円相当直径(mm)]×100
・評価基準
◎(合格、特に優れている):Ni含有ろう材の広がり率が160%以上
〇(合格):Ni含有ろう材の広がり率が150%以上160%未満
×(不合格):Ni含有ろう材の広がり率が150%未満
Figure 2023047211000001
表1に示したように、発明例のフェライト系ステンレス鋼ではいずれも、良好なNiろう付け性が得られた。なかでも、発明例No.1およびNo.2では、特に優れたNiろう付け性が得られた。また、発明例のフェライト系ステンレス鋼はいずれも、高い生産性のもと製造することが可能である、すなわち、一般的な製造ラインにより追加の特別な処理を行うことなく製造することが可能なものであった。
一方、比較例では、良好なNiろう付け性が得られなかった。
すなわち、比較例No.15では、Cr含有量が上限値を超えたため、良好なNiろう付け性が得られなかった。
比較例No.16では、Al含有量が下限値に満たなかったため、良好なNiろう付け性が得られなかった。
比較例No.17では、Al含有量が上限値を超えたため、良好なNiろう付け性が得られなかった。
比較例No.18では、Si含有量が上限値を超えたため、良好なNiろう付け性が得られなかった。
比較例No.19では、Mn含有量が上限値を超えたため、良好なNiろう付け性が得られなかった。
本発明の一実施形態に従うフェライト系ステンレス鋼は、高い生産性のもと製造することが可能であり、かつ、良好なNiろう付け性を有する。そのため、本発明の一実施形態に従うフェライト系ステンレス鋼は、組み立て時にNiろう付けが一般的に行われる熱交換器、例えば、排熱回収器、排気ガス再循環装置または給湯器(電気温水器や潜熱回収型給湯器)の熱交換器に好適に用いることができる。特に、本発明の一実施形態に従うフェライト系ステンレス鋼は、排熱回収器または排気ガス再循環装置の熱交換器に好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.003~0.020%、
    Si:0.01~0.60%、
    Mn:0.01~0.40%、
    P:0.040%以下、
    S:0.020%以下、
    Cr:16.0~25.0%、
    Ni:0.01~0.60%、
    Al:0.10~0.30%、
    Nb:0.10~0.60%、
    Mo:0.01~2.50%および
    N:0.020%以下
    であり、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する、フェライト系ステンレス鋼。
  2. 前記成分組成が、さらに質量%で、
    Cu:1.00%以下、
    Co:0.70%以下および
    W:1.00%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有する、請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  3. 前記成分組成が、さらに質量%で、
    Ti:0.10%以下、
    V:0.10%以下、
    Zr:0.10%以下、
    Mg:0.0050%以下、
    Ca:0.0050%以下、
    B:0.0050%以下、
    REM(希土類金属):0.100%以下、
    Sn:0.300%以下および
    Sb:0.100%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有する、請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  4. 排熱回収器、排気ガス再循環装置または給湯器の熱交換器用である、請求項1~3のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼。
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