JP2023045493A - ラインインクジェットプリンタ及びインクジェット記録方法 - Google Patents

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Midori Sekine
恭平 田中
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Abstract

【課題】任意の記録速度で記録した場合でも、密着性と埋まり性に優れる記録物を与えうるラインインクジェットプリンタの提供。【解決手段】記録媒体の搬送機構と、記録媒体の幅に相当する長さを有し、記録媒体上に放射線硬化で形成した下層インクの硬化塗膜上に、放射線硬化型である上層インクを吐出して付着させるラインヘッドと、上層インクに放射線を照射して硬化塗膜を形成する照射部と、搬送機構によりラインヘッド下を所定の搬送速度で記録媒体を通過させ、ラインヘッドにより所定の付着量となるよう上層インクを吐出して記録する制御部とを備え、制御部は、搬送速度V1で上層インク付着量D1で記録を行う第1記録モードと、搬送速度V1よりも遅い搬送速度V2で上層インク付着量D1以上の付着量D2で記録を行う第2記録モードとを実行し、下層インクは重合性化合物を含み、単官能モノマーの含有量は、重合性化合物の総量に対して、50質量%以上。【選択図】図1

Description

本発明は、ラインインクジェットプリンタ及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。その中で、吐出安定性等について種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、インクの濡れ広がり性に優れた光硬化型インクジェットインクセットを提供することを目的として、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有する下層用光硬化型インクジェットインクと、上層用光硬化型インクジェットインクと、を含み、下層用光硬化型インクジェットインクの表面張力が、上層用光硬化型インクジェットインクの表面張力よりも大きいインクセットが開示されている。
特開2013-177530号公報
ところで、下層インクが単官能モノマーを多く含むことにより、得られる記録物の密着性が向上するが、下層インクの塗膜に対して上層インクが浸透しやすい傾向にあり、濡れ広がり性が不足することがあることが分かってきた。
本発明のラインインクジェットプリンタは、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、前記記録媒体の幅に相当する長さを有し、記録媒体上に放射線硬化で形成した下層インクの硬化塗膜上に、放射線硬化型である上層インクを吐出して、付着させるラインヘッドと、前記下層インクの硬化塗膜上の前記上層インクに放射線を照射して、前記上層インクの硬化塗膜を形成する照射部と、前記搬送機構により前記ラインヘッド下を所定の搬送速度で前記記録媒体を通過させつつ、前記ラインヘッドにより所定の付着量となるように前記上層インクを吐出して前記記録媒体に付着させることで記録を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、搬送速度V1で、上層インク付着量D1で記録を行う第1記録モードと、搬送速度V1よりも遅い搬送速度V2で、上層インク付着量D1以上の上層インクの付着量D2で記録を行う第2記録モードと、を実行し、前記下層インクは重合性化合物を含み、単官能モノマーの含有量は、前記重合性化合物の総量に対して、50質量%以上である。
また、本発明のインクジェット記録方法は、上記ラインインクジェットプリンタを用いて、前記第1記録モードと、前記第2記録モードと、のいずれかを選択し、選択した記録モードにより記録を行う。
本実施形態のラインインクジェットプリンタの一例の概略側面図である。 本実施形態で使用される記録装置で行われる制御部の動作処理の一例を示すフローチャート
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
また、「主走査」とは、インクジェットヘッドを記録媒体に対し相対的な位置を移動させつつ、インクジェットヘッドからインクを吐出して記録媒体に付着させる動作をいう。主走査では、インクジェットヘッドが固定されて記録媒体が動いても、記録媒体が固定されてインクジェットヘッドが動いても、その両方が組み合わされていてもよい。このなかでも、ラインインクジェットプリンタでは、典型的には、ラインインクジェットヘッドが固定されて、その直下を記録媒体が搬送されることが多く、以下においてもこのような主走査を例に述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、「主走査方向」とは、上記インクジェットヘッドと記録媒体の相対的な移動方向である。ラインインクジェットヘッドが固定されて、その直下を記録媒体が搬送される場合には、記録媒体の搬送方向(流れ方向)と主走査方向とは一致する。また、主走査方向は、記録媒体の幅方向に直行する方向でもある。この主走査方向に直行する方向を「副走査方向」ともいう。
〔ラインインクジェットプリンタ〕
本実施形態のラインインクジェットプリンタは、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、記録媒体の幅に相当する長さを有し、記録媒体上に放射線硬化で形成した下層インクの硬化塗膜上に、放射線硬化型である上層インクを吐出して、付着させるラインヘッドと、下層インクの硬化塗膜上の上層インクに放射線を照射して、上層インクの硬化塗膜を形成する照射部と、搬送機構によりラインヘッド下を所定の搬送速度で記録媒体を通過させつつ、ラインヘッドにより所定の付着量となるように上層インクを吐出して記録媒体に付着させることで記録を実行する制御部と、を備え、制御部は、搬送速度V1で、上層インク付着量D1で記録を行う第1記録モードと、搬送速度V1よりも遅い搬送速度V2で、上層インク付着量D1以上の上層インクの付着量D2で記録を行う第2記録モードと、を実行し、下層インクは重合性化合物を含み、単官能モノマーの含有量は、重合性化合物の総量に対して、50質量%以上である。
従来は、下層インク層と上層インク層を重ねて形成し、下層インク層を隠蔽層として用いることで、良質な画像を記録することが行われていた。しかしながら、下層インクが単官能モノマーを多く含むことにより、得られる記録物の密着性が向上するが、下層インクの塗膜に対して上層インクが浸透しやすい傾向にあり、上層インクが濡れ広がらず浸透してしまうことが分かってきた。このように上層インクが下層インク層に対して浸透すると、得られる記録物の埋まり性が低下しうる。また、一方で、下層インクの単官能モノマー量を減らそうとすると密着性が低下しうる。
従来の記録方法では画像の色濃度を一定としようとして、高速印刷モードであっても低速印刷モードであっても、上層インク付着量は変化させずに一定とするように制御を行っていたが、上記のように上層インクが下層インク層に対して浸透することを考慮すると、放射線照射時に下層インク層上に残っている上層インクの量が、埋まり性向上の観点から重要となる。
これに対して、本実施形態のラインインクジェットプリンタは、搬送速度V1で、上層インク付着量D1で記録を行う第1記録モードと、搬送速度V1よりも遅い搬送速度V2で、上層インク付着量D1以上の上層インクの付着量D2で記録を行う第2記録モードと、を実行する制御部を備えることにより、搬送速度が遅いほど付着する上層インクの付着量を多くするように制御する。
これによって、早い搬送速度V1で記録媒体を搬送した時には、上層インクが付着してから放射線が照射されるまでの時間が短くなるため、下層インク層に浸透する上層インクも少なくなるので、上層インク付着量D1を少なくして記録を行い(第1記録モード)、遅い搬送速度V2で記録媒体を搬送した時には、上層インクが付着してから放射線が照射されるまでの時間が長くなるため、下層インク層に浸透する上層インクも多くなるので、上層インク付着量D2を多くして記録を行う(第2記録モード)をことが可能となる。
そのため、第1記録モードにおいて、放射線が照射されるタイミングで、下層インク層上に浸透せずに存在する上層インク量R1と、第2記録モードにおいて、放射線が照射されるタイミングで、下層インク層上に浸透せずに存在する上層インク量R2と、の差を小さくすることが可能となる。すなわち、上記のような制御部を備えることで、第1記録モード(高速印刷モード)であっても、第2記録モード(低速印刷モード)であっても、埋まり性の近い記録物を得ることができる。
以下、本実施形態のラインインクジェットプリンタの一例について、図面を参照しながら説明するが、本実施形態で使用される記録装置は、以下の態様に限定されるものではない。
図1に、本実施形態のラインインクジェットプリンタの一例の概略側面図を示す。図1に示すように、プリンタ1は、給送部100と、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構200と、記録媒体にインクを吐出して付着させるラインヘッド300と、インクに放射線を照射する照射部400と、制御部500と、排出部700とを備える。
1.搬送機構
搬送機構は、記録媒体を搬送方向に搬送する機構である。図1においては、ロール状の記録媒体Fが給送部100から搬送機構200へ供給され、搬送機構200は、給送部100から送られた記録媒体Fをラインヘッド300へ搬送することができるように構成されている。具体的には、搬送機構200は、第1送りローラー201、第2送りローラー202を有し、送られた記録媒体Fを搬送方向下流側のラインヘッド300へ搬送することができるように構成されている。
搬送機構200の搬送方法としては、従来公知のものを適宜用いることができ、一又は複数のローラー、または、ローラーにより送られるベルトなどを用いてもよい。なお、制御部500は、搬送機構200を制御することにより、第1記録モードにおける搬送速度V1及び第2記録モードにおける搬送速度V2を制御することができる。
2.ラインヘッド
本実施形態のラインインクジェットプリンタは、少なくとも、記録媒体の幅に相当する長さを有し、記録媒体上に放射線硬化で形成した下層インクの硬化塗膜上に、放射線硬化型である上層インクを吐出して、付着させるラインヘッドを有する。ラインヘッドと記録媒体とが当該幅方向と交差する走査方向に相対的に位置を変えながら記録媒体に向けて、ラインヘッドからインクが吐出されることにより、記録を実行することができる。
本実施形態のラインインクジェットプリンタは、記録媒体上に下層インクを吐出して、付着させるラインヘッド(以下、「第1ラインヘッド210」という)を有していてもよい。なお、上層インクを吐出するラインヘッドは第2ラインヘッド320といい、第1ラインヘッド310と第2ラインヘッド320を区別する必要のないときは、単にラインヘッド300ともいう。
第1ラインヘッド310は、搬送機構200から送られた記録媒体Fに対して下層インクを吐出し、後述する第1照射部410が下層インクに放射線を照射して、下層インク層を形成する。次いで、第2ラインヘッド320は、搬送機構200から送られた記録媒体Fの下層インク層に対して、上層インクを吐出し、後述する第2照射部420が下層インクに放射線を照射して、上層インク層を形成する。
ラインヘッド300は、インクを収容するキャビティと、当該キャビティ毎に設けられた吐出駆動部と、インクを吐出するノズルとを有する。キャビティ、並びにキャビティ毎に設けられる吐出駆動部及びノズルは、それぞれ互いに独立して、一のヘッドに複数個設けられていてもよい。吐出駆動部は、機械的な変形によりキャビティの容積を変化させる圧電素子のような電気機械変換素子や、熱を発することによりインクに気泡を発生させ吐出させる電子熱変換素子などを用いて形成することができる。
プリンタ1は、1色のインクにつきラインヘッドを1個設けていてもよいし、1色のインクにつきラインヘッドを複数個設けていてもよい。ラインプリンタでは、ヘッドが(ほぼ)移動せずに固定されて、1パス(シングルパス)で記録が行われる。ラインプリンタは記録速度が速い点でシリアルプリンタよりも有利である。
ここで、「記録媒体の幅に相当する長さ」とは、記録媒体の幅とラインヘッドの長さ(幅)とが完全に一致している場合に限らず、記録媒体の幅に相当する長さ以上の長さであってもよいし、インクが吐出されるべき(画像が記録されるべき)記録媒体の幅(被記録幅)に相当する長さであってもよい。
3.照射部
本実施形態のラインインクジェットプリンタは、少なくとも、下層インクの硬化塗膜上の上層インクに放射線を照射して、上層インクの硬化塗膜を形成する照射部を有する。ラインヘッドにより付着したインクに対して放射線を照射することで、インク中の重合性化合物の重合反応が開始することでインクが硬化し、硬化塗膜が形成される。このとき、重合開始剤が存在すると、ラジカル、酸、及び塩基などの活性種(開始種)を発生し、モノマーの重合反応が、その開始種の機能によって促進される。
本実施形態のラインインクジェットプリンタは、記録媒体上の下層インクに放射線を照射して、下層インクの硬化塗膜を形成する照射部(以下、「第1照射部410」という)を有していてもよい。なお、上層インクに放射線を照射して、照射部は第2照射部420といい、第1照射部410と第2照射部420を区別する必要のないときは、単に照射部400ともいう。
ここで、放射線としては、紫外線、赤外線、可視光線、エックス線等が挙げられる。放射線源は、インクジェットヘッドの下流に設けられた放射線源によって、インクに対して照射する。放射線源としては、特に制限されないが、例えば、紫外線発光ダイオードが挙げられる。このような放射線源を使用することで、装置の小型化やコストの低下を実現できる。紫外線源としての紫外線発光ダイオードは、小型であるため、インクジェット装置内に取り付けることができる。
例えば、紫外線発光ダイオードを用いることにより、上述の放射線硬化型インクジェット組成物の組成に起因して低エネルギーかつ高速での硬化を実現できる。また、照射エネルギーは、照射時間に照射強度を乗じて算出される。そのため、搬送速度の調整によって照射時間を短縮又は延長することができる。一方、照射強度を減少又は増大させることもできる。これにより、塗膜の硬化が緩やかに起こるので、発色性に優れる硬化塗膜を得ることができる。
プリンタ1は、1つのラインヘッドに対して照射部を1個設けていてもよいし、ラインヘッドを複数個のラインヘッドに対して照射部を1個設けていてもよい。
4.制御部
制御部500は、プリンタ1全体の動作を制御することができる。例えば、制御部500は、搬送機構200によりラインヘッド300下を所定の搬送速度で記録媒体Fを通過させつつ、ラインヘッド300により所定の付着量となるように上層インクや下層インクを吐出して記録媒体に付着させることで記録を実行する制御を行うことができる。
特に、制御部500は、搬送速度V1で、上層インク付着量D1で記録を行う第1記録モードと、搬送速度V1よりも遅い搬送速度V2で、上層インク付着量D1以上の上層インクの付着量D2で記録を行う第2記録モードと、を実行する。
ここでインク付着量Dは下記式(I)により表される値であり、制御部500は、第2ラインヘッド320から吐出されるインク滴のドットサイズ及びDutyを制御することで、インク付着量D1及びインク付着量D2を制御することができる。なお、第2ラインヘッド320の解像度(dpi)と、第2ラインヘッド320から吐出される上層インクのドット重量(ng/dоt)は、記録の開始から終了までの間一定である。
インク付着量D=(ドットサイズ)×(Duty)/(搬送速度V)・・・(I)
また、上記の他、制御部500は、第1ラインヘッド310から吐出されるインク滴のドットサイズ及びDutyを制御したり、第1照射部及び第2照射部の放射線の照射エネルギーなどを制御したりすることができる。
4.1.第1記録モード
第1記録モードでは、第2記録モードと比較して早い搬送速度V1で記録媒体を搬送するとともに、下層インク層に対して、第2記録モード以下の上層インク付着量D1で記録を行う。このように、早い搬送速度V1で記録媒体を搬送した時には上層インクが付着してから放射線が照射されるまでの時間が短くなるため、下層インク層に浸透する上層インクも少なくなるので、上層インク付着量D1を少なくして記録を行うことができる。
また、制御部500は、第1記録モードでは、第2記録モードと比較して早い搬送速度V1で記録媒体を搬送するように搬送機構200を駆動するとともに、記録媒体に対して、第2記録モードと同程度の下層インク付着量で記録を行うように第1ラインヘッド310を駆動してもよい。このように第1記録モードと第2記録モードで、同程度の下層インク付着量とすることで、隠蔽層の厚さを同程度とすることができる。制御部がこのような制御をすることにより、第1記録モード(高速印刷モード)であっても、第2記録モード(低速印刷モード)であっても、隠蔽性の近い記録物を得ることができる。
4.2.第2記録モード
第2記録モードでは、第1記録モードと比較して遅い搬送速度V2で記録媒体を搬送するとともに、下層インク層に対して、第1記録モード以上の上層インク付着量D2で記録を行う。このように、遅い搬送速度V2で記録媒体を搬送した時には上層インクが付着してから放射線が照射されるまでの時間が長くなるため、下層インク層に浸透する上層インクも多くなるので、上層インク付着量D2を多くして記録を行うことができる。
5.排出部
排出部700は、上層インク層が形成された記録媒体Fをさらに送り方向Y下流側へ送り、プリンタ1の外部へ排出することができるように設けられている。
6.下層インク
下層インクは、放射線硬化型のインクであれば、特に制限されないが、例えば、重合性化合物を含み、必要に応じて、色材、光重合開始剤、重合禁止剤やスリップ剤などのその他の添加剤を含んでもよい。
6.1.色材
下層インクが含む色材としては、下層インクが隠蔽性を有する下地層となることから白色色材が好ましい。ただし、下層インクが含む色材は白色色材に限定されず、他の非白色色材を使用することもできる。以下においては、白色色材について例示するが、非白色色材としては上層インクにおいて述べるものを適宜使用してもよい。
白色色材としては、特に制限されないが、例えば、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの白色無機顔料が挙げられる。当該白色無機顔料以外に、白色の中空樹脂粒子及び高分子粒子などの白色有機顔料を使用することもできる。
白色色材としては、上記例示した中でも、白色度等が良好であるという観点から、二酸化チタン(ピグメントホワイト6)を用いることが好ましい。
白色色材の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは10~25質量%であり、より好ましくは12.5~22.5質量%であり、さらに好ましくは15~20質量%である。白色色材の含有量が上記範囲内であることにより、隠蔽性や密着性がより向上し、この上に形成される上層インクの画像の埋まり性もより向上する傾向にある。
6.2.分散剤
色材は、分散媒中に安定的に分散できることが好適であり、そのために分散剤を使用して分散させてもよし、自己分散型としてもよい。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち1種以上を主成分とするものが挙げられる。分散剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高分子分散剤の市販品として、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ、アベシア(Avecia)社やノベオン(Noveon)社から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse36000等)、BYK Additives&Instruments社製のディスパービックシリーズ、楠本化成社製のディスパロンシリーズが挙げられる。
下層インクに含まれる分散剤の含有量は、下層インクの総量に対して、好ましくは0.1~2.0質量%であり、より好ましくは0.1~1.0質量%であり、さらに好ましくは0.1~0.5質量%である。
6.3.重合性化合物
重合性化合物には、重合性官能基を1つもつ単官能モノマーと、重合性官能基を複数持つ多官能モノマーと、重合性官能基を1又は複数もつオリゴマーと、が含まれる。各重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
6.3.1.単官能モノマー
下層インクは重合性化合物として単官能モノマーを含む。単官能モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、窒素含有単官能モノマー、架橋縮合環構造を有する単官能(メタ)アクリレート、芳香族基含有単官能モノマー、脂肪族基含有単官能モノマーが挙げられる。
下層インクに含まれる単官能モノマーの含有量は、重合性化合物の総量に対して、50質量%以上であり、好ましくは55~90質量%であり、より好ましくは60~85質量%である。単官能モノマーの含有量が50質量%以上であることにより、記録媒体に対する下層インク層の密着性がより向上する。一方で、単官能モノマーの含有量が50質量%以上であると、上層インクが下層インク層に浸透しやすくなり、埋まり性が低下しやすくなるため、本発明が特に有用となる。
6.3.1.1.窒素含有単官能モノマー
窒素含有単官能モノマーとしては、特に制限されないが、例えば、ビニルメチルオキサゾリジノン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルフォルムアミド、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルアセトアミド及びN-ビニルピロリドン等の窒素含有単官能ビニルモノマー;アクリロイルモルフォリン等の窒素含有単官能アクリレートモノマー;(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロライド4級塩等の(メタ)アクリルアミド等の窒素含有単官能アクリルアミドモノマーが挙げられる。
このなかでも、窒素含有単官能ビニルモノマー又は窒素含有単官能アクリレートモノマーの何れかを含むことが好ましく、ビニルメチルオキサゾリジノン(VMOX)、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン、又はアクリロイルモルフォリン(ACMO)などの含窒素複素環構造を有するモノマーがより好ましく、アクリロイルモルフォリンを含むことがさらに好ましい。
このような窒素含有単官能モノマーを用いることにより、塗膜の耐擦過性がより向上する傾向にある。さらに、ビニルメチルオキサゾリジノンやアクリロイルモルフォリン等の含窒素複素環構造を有する窒素含有単官能アクリレートモノマーは塗膜の延伸性及び密着性をより向上させる傾向にある。
下層インクに含まれる窒素含有単官能モノマーの含有量は、下層インクの総量に対して、好ましくは5.0~35質量%であり、より好ましくは10~30質量%であり、さらに好ましくは15~25質量%である。窒素含有単官能モノマーの含有量が上記範囲内であることにより、記録媒体に対する下層インク層の密着性や下層インクと上層インクの密着性、下層インクの硬化性、上層インクの埋まり性がより向上する傾向にある。
6.3.1.2.芳香族基含有単官能モノマー
芳香族基含有単官能モノマーとしては、特に制限されないが、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アルコキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート、アルコキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
このなかでも、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、フェノキシエチルアクリレート(PEA)がさらに好ましい。このような芳香族基含有単官能モノマーを用いることにより、光重合開始剤の溶解性がより向上し、下層インクの硬化性がより向上する傾向にある。特に、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤やチオキサントン系光重合開始剤を用いる場合にその溶解性が良好となる傾向にある。
下層インクに含まれる芳香族基含有単官能モノマーの含有量は、下層インクの総量に対して、好ましくは5.0~40質量%であり、より好ましくは10~35質量%であり、さらに好ましくは15~30質量%である。芳香族基含有単官能モノマーの含有量が上記範囲内であることにより、記録媒体に対する下層インク層の密着性や下層インクと上層インクの密着性、下層インクの硬化性、上層インクの埋まり性がより向上する傾向にある。
6.3.1.3.脂肪族基含有単官能モノマー
脂肪族基含有単官能モノマーとしては、特に制限されないが、例えば、3,3,5-トリメチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、tertブチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリル酸-1,4-ジオキサスピロ[4,5]デシ-2-イルメチル等の脂環属基含有(メタ)アクリレート;イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐鎖の脂肪属基含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどの架橋縮合環構造を有する単官能(メタ)アクリレート;ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレートが挙げられる。
このなかでも、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、ジシクロペンテニルアクリレート(DCPA)などが好ましい。このような脂肪族基含有単官能モノマーを用いることにより、下層インクの硬化性及び耐擦性がより向上する傾向にあることに加えて、上層インクの埋まり性がより向上する傾向にある。
下層インクに含まれる脂肪族基含有単官能モノマーの含有量は、下層インクの総量に対して、好ましくは1.0~20質量%であり、より好ましくは3.0~17.5質量%であり、さらに好ましくは5.0~15質量%である。下層インクの総量に対する脂肪族基含有単官能モノマーの含有量が上記範囲であることにより、記録媒体に対する下層インク層の密着性や下層インクと上層インクの密着性、下層インクの硬化性、上層インクの埋まり性がより向上する傾向にある。
6.3.1.4.その他
その他の単官能モノマーとしては、上記の他に、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸;該不飽和カルボン酸の塩;不飽和カルボン酸のエステル、ウレタン、アミド及び無水物;アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタンを用いてもよい。
6.3.1.5.極性単官能モノマー
上記のように例示した中でも、下層インクは、重合性化合物として、窒素複素環構造を有する重合性化合物及び/又はOH基を有する重合性化合物を含むことが好ましい。このような極性単官能モノマーを有することにより、下層インクの塗膜の表面自由エネルギーが上がるため、上層インクの埋まり性がより向上する傾向にある。
窒素複素環構造を有する重合性化合物としては、上述したように、ビニルメチルオキサゾリジノン(VMOX)、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン、又はアクリロイルモルフォリン(ACMO)などが挙げられる。
また、OH基を有する重合性化合物としては、上述したように、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートなどが挙げられる。
窒素複素環構造を有する重合性化合物及びOH基を有する重合性化合物の合計含有量は、重合性化合物の総量に対して、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25~45質量%であり、さらに好ましくは30~40質量%である。窒素複素環構造を有する重合性化合物及びOH基を有する重合性化合物の合計含有量が上記範囲内であることにより、上層インクの埋まり性がより向上する傾向にある。
6.3.2.多官能モノマー
多官能モノマーとしては、特に制限されないが、例えば、ビニル基含有(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
下層インクに含まれる多官能モノマーの含有量は、重合性化合物の総量に対して、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは10~45質量%であり、さらに好ましくは15~40質量%である。多官能モノマーの含有量が上記範囲内であることにより、記録媒体に対する下層インク層の密着性や下層インクと上層インクの密着性、下層インクの硬化性、上層インクの埋まり性がより向上する傾向にある。
6.3.2.1.ビニル基含有(メタ)アクリレート
ビニル基含有(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。このようなビニル基含有(メタ)アクリレートを含むことにより、下層インクの粘度が低下し、吐出安定性がより向上する傾向にある。また、下層インクの硬化性がより向上するとともに、硬化性の向上に伴って記録速度をより高速化することが可能となる。
2C=CR1-CO-OR2-O-CH=CH-R3 ・・・ (I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2~20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1~11の1価の有機残基である。)
上記式(1)において、R2で表される炭素数2~20の2価の有機残基としては、炭素数2~20の直鎖状、分枝状又は環状の、置換されていてもよいアルキレン基、構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合による酸素原子を有する、置換されていてもよい炭素数2~20のアルキレン基、炭素数6~11の、置換されていてもよい2価の芳香族基が挙げられる。これらの中でも、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数2~6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn-プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2~9のアルキレン基が好ましい。さらに、下層インクをより低粘度化でき、かつ、下層インクの硬化性をさらに良好にする観点から、R2が、オキシエチレン基、オキシn-プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2~9のアルキレン基となっている、グリコールエーテル鎖を有する化合物がより好ましい。
上記式(1)において、R3で表される炭素数1~11の1価の有機残基としては、炭素数1~10の直鎖状、分枝状又は環状の、置換されていてもよいアルキル基、炭素数6~11の、置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又はエチル基である炭素数1~2のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6~8の芳香族基が好適に用いられる。
上記の各有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。
式(1)の化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o-ビニロキシメチルフェニルメチル、メタアクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)イソプロピル等が挙げられる。これらの具体例のうち、インク組成物の硬化性及び粘度と、塗膜の耐擦性とのバランスをとりやすくする観点から、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)が好ましい。
下層インクに含まれるビニル基含有(メタ)アクリレートの含有量は、下層インクの総量に対して、好ましくは10~45質量%以上であり、より好ましくは15~40質量%であり、さらに好ましくは20~35質量%である。ビニル基含有(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲内であることにより、下層インクの粘度が低下し、吐出安定性がより向上し、記録媒体に対する下層インク層の密着性や下層インクと上層インクの密着性、下層インクの硬化性、上層インクの埋まり性がより向上する傾向にある。
6.3.2.2.多官能(メタ)アクリレート
多官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、例えば、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジメタアクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
このなかでも、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)が好ましい。このような多官能(メタ)アクリレートを用いることにより、下層インクの硬化性及び耐擦性がより向上する傾向にあることに加えて、下層インクの塗膜の光沢の低下がより抑制される傾向にある。
また、下層インクに含まれる多官能(メタ)アクリレートの含有量は、下層インクの総量に対して、好ましくは10~45質量%以上であり、より好ましくは15~40質量%であり、さらに好ましくは20~35質量%である。多官能(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲内であることにより、記録媒体に対する下層インク層の密着性や下層インクと上層インクの密着性、下層インクの硬化性、上層インクの埋まり性がより向上する傾向にある。
6.3.3.オリゴマー
オリゴマーとしては、特に制限されないが、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマーが挙げられる。このなかでも、ウレタンアクリレートオリゴマーが好ましい。このようなオリゴマーを用いることにより、インクの延伸性や光沢性が向上することに加えて、インク臭気がより低減する傾向にある。
アクリレートオリゴマーは、メタクリレートオリゴマーであってもよい。ここでメタクリレートオリゴマーとは、メタクリロイル基を有するオリゴマーである。
ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテル骨格を有するポリエーテル系ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステル骨格を有するポリエステル系ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリカーボネート骨格を有するポリカーボネート系ウレタンアクリレートオリゴマーが挙げられる。また、芳香族ウレタンアクリレートオリゴマー、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーであることも好ましく、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーがより好ましい。中でも、ポリエーテル系脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーであることが特に好ましい。
エポキシアクリレートオリゴマーとしては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA骨格を有する化合物及びポリエステル骨格を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
6.4.光重合開始剤
光重合開始剤としては、放射線を照射することにより活性種を生じるものであれば特に限定されないが、例えば、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、アルキルフェノン系重合開始剤、チタノセン系重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等の公知の光重合開始剤が挙げられる。これらの中でも、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。このような光重合開始剤を用いることにより、下層インクの硬化性がより向上し、特にUV-LEDの光による硬化プロセスによる硬化性がより向上する傾向にある。光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
このようなアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 1800(ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドと、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトンの質量比25:75の混合物)、IRGACURE TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)(以上全てBASF社製)等が挙げられる。
下層インクに含まれる光重合開始剤の含有量は、下層インクの総量に対して、好ましくは3.0~12質量%であり、より好ましくは5.0~10質量%であり、さらに好ましくは7.0~9.0質量%である。光重合開始剤の含有量が上記範囲内であることにより、下層インクの硬化性及び光重合開始剤の溶解性がより向上する傾向にある。
6.5.その他の添加剤
本実施形態に係る下層インクは、必要に応じて、重合禁止剤、スリップ剤等の添加剤をさらに含んでもよい。
6.5.1.重合禁止剤
本実施形態に係る下層インクは、重合禁止剤をさらに含んでもよい。重合禁止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合禁止剤としては、以下に限定されないが、例えば、p-メトキシフェノール、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、ヒドロキノン、クレゾール、t-ブチルカテコール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-ブチルフェノール)、及び4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ヒンダードアミン化合物などが挙げられる。
重合禁止剤の含有量は、下層インクの総量に対して、好ましくは0.05~1.0質量%であり、より好ましくは0.05~0.5質量%である。
6.5.2.スリップ剤
本実施形態に係る下層インクは、スリップ剤をさらに含んでもよい。スリップ剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
スリップ剤としては、シリコーン系界面活性剤が好ましく、ポリエステル変性シリコーンまたはポリエーテル変性シリコーンであることがより好ましい。ポリエステル変性シリコーンとしては、BYK-347、348、BYK-UV3500、3510、3530(以上、BYK Additives&Instruments社製)等が挙げられ、ポリエーテル変性シリコーンとしては、BYK-3570(BYK Additives&Instruments社製)等が挙げられる。
スリップ剤の含有量は、下層インクの総量に対して、好ましくは0.01~2.0質量%であり、より好ましくは0.05~1.0質量%である。
6.6.表面張力
25℃における下層インクの表面張力は、好ましくは20~45mN/mであり、より好ましくは25~40mN/mであり、さらに好ましくは30~36mN/mである。上層インクの表面張力が上記範囲内であることにより、上層インクが浸透し難くなり、埋まり性がより向上し、また吐出安定性がより向上する傾向にある。
下層インクの表面張力は上層インクの表面張力よりも大きい方が好ましい。25℃における上層インクの表面張力と25℃における下層インクの表面張力との差は、好ましくは5.0mN/m以上であり、より好ましくは7.5mN/m以上であり、さらに好ましくは10mN/m以上である。上層インクの表面張力が上記範囲内であることにより、埋まり性がより向上する傾向にある。
6.7.ガラス転移温度
下層インクにおいて、各重合性化合物の含有質量比を重みとする、各重合性化合物のホモポリマーのガラス転移温度の加重平均は、好ましくは30~70℃であり、より好ましくは35~65℃であり、さらに好ましくは35~60℃である。ガラス転移温度の加重平均が上記範囲であることにより、上層インクの埋まり性や上層インク層と下層インク層の密着性がより向上する傾向にある。
ガラス転移温度の加重平均の計算方法について説明する。ガラス転移温度の加重平均の値をTgAll、各重合性化合物のホモポリマーのガラス転移温度をTgN、その重合性化合物の含有質量比をXN(質量%)とする。Nは放射線硬化型インクジェット組成物に含まれる重合性化合物の種類に応じ、1から順に数字が入る。例えば3種類の重合性化合物を用いた場合、Tg1、Tg2、Tg3が生じる。なお各重合性化合物のホモポリマーのガラス転移温度は、その重合性化合物の安全データシート(SDS)やカタログ情報により入手することができる。ガラス転移温度の加重平均TgAllは、各重合性化合物によって計算されたガラス転移温度TgNと、含有質量比XNとの積の総和である。したがって下記式(2)が成り立つ。
TgAll=ΣTgN×XN・・・(2)
なお、ガラス転移温度の加重平均は、用いる重合性化合物のガラス転移温度、及び、用いる重合性化合物の含有質量比により、調整することができる。
7.上層インク
上層インクは、放射線硬化型のインクであれば、特に制限されないが、例えば、色材、重合性化合物、及び光重合開始剤を有し、必要に応じて重合禁止剤やスリップ剤などのその他の添加剤を含んでもよい。
7.1.色材
上層インクが含む色材としては、非白色色材が挙げられるが、これに限定されず白色色材であってもよい。非白色色材としては、上記白色色材以外の色材であれば特に限定されないが、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類などの無機顔料;キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料、及びアゾ系顔料等の有機顔料が挙げられる。非白色色材は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
非白色色材の含有量は、上層インクの総量に対して、好ましくは0.5~10質量%であり、より好ましくは1.5~7.5質量%であり、さらに好ましくは2.0~6.0質量%である。非白色色材の含有量が上記範囲内であることにより、発色性や視認性がより向上する傾向にある。
非白色色材は、分散媒中に安定的に分散できることが好適であり、そのために分散剤を使用して分散させてもよい。分散剤としては、樹脂分散剤等が挙げられ、具体的には下層インクで例示したものと同様のものを用いることができる。また、非白色色材は、例えば、オゾン、次亜塩素酸、発煙硫酸等により、顔料表面を酸化、あるいはスルホン化して顔料粒子の表面を修飾することにより、自己分散型の顔料として使用してもよい。
上層インクに含まれる分散剤の含有量は、上層インクの総量に対して、好ましくは0.1~2.0質量%であり、より好ましくは0.3~1.5質量%であり、さらに好ましくは0.5~1.5質量%である。
非白色色材を含有する上層インク組成物としては、特に限るものではないが、例えば、シアンインク、イエローインク、マゼンタインク、ブラックインクなどが挙げられる。
7.2.重合性化合物
重合性化合物には、重合性官能基を1つもつ単官能モノマーと、重合性官能基を複数持つ多官能モノマーと、重合性官能基を1又は複数もつオリゴマーと、が含まれる。各重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上層インクが含む重合性化合物としては、具体的には白色インクで例示したものと同様のものを用いることができる。以下においては、各重合性化合物の含有量について述べる。
上層インクに含まれる単官能モノマーの含有量は、重合性化合物の総量に対して、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは60~99質量%であり、さらに好ましくは65~99質量%であり、よりさらに好ましくは70~99質量%であり、さらにより好ましくは75~99質量%であり、特に好ましくは80~99質量%である。上層インクの単官能モノマーの含有量が55質量%以上であることにより、上層インク層と下層インク層の密着性が向上する一方で、上層インクが下層インク層に浸透しやすくなり埋まり性が低下する。そのため、本発明が特に有用となる。
上層インクに含まれる窒素含有単官能モノマーの含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは2.5~25質量%であり、より好ましくは5.0~20質量%であり、さらに好ましくは7.5~17.5質量%である。窒素含有単官能モノマーの含有量が上記範囲内であることにより、上層インクの埋まり性や上層インク層と下層インク層の密着性がより向上する傾向にある。
上層インクに含まれる芳香族基含有単官能モノマーの含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは15~50質量%であり、より好ましくは20~45質量%であり、さらに好ましくは25~40質量%である。芳香族基含有単官能モノマーの含有量が上記範囲内であることにより、上層インクの埋まり性や上層インク層と下層インク層の密着性がより向上する傾向にある。
上層インクに含まれる脂肪族基含有単官能モノマーの含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは10~35質量%であり、より好ましくは12.5~32.5質量%であり、さらに好ましくは15~30質量%である。脂肪族基含有単官能モノマーの含有量が上記範囲であることにより、上層インクの埋まり性や上層インク層と下層インク層の密着性がより向上する傾向にある。
上層インクに含まれる多官能モノマーの含有量は、重合性化合物の総量に対して、好ましくは45質量%以下であり、好ましくは1~40質量%であり、より好ましくは1~35質量%であり、さらに好ましくは1~30質量%であり、よりさらに好ましくは1~25質量%であり、さらにより好ましくは1~20質量%である。多官能モノマーの含有量が上記範囲内であることにより、上層インクの埋まり性や上層インク層と下層インク層の密着性がより向上する傾向にある。
上層インクに含まれるビニル基含有(メタ)アクリレートの含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは1.0~35質量%であり、より好ましくは1.0~25質量%であり、さらに好ましくは1.0~15質量%である。ビニル基含有(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲内であることにより、上層インクの粘度が低下し、吐出安定性がより向上することに加え、上層インクの埋まり性や上層インク層と下層インク層の密着性がより向上する傾向にある。
7.3.光重合開始剤
上層インクが含む重合性化合物としては、具体的には白色インクで例示したものと同様のものを用いることができる。
上層インクに含まれる光重合開始剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは5.0~17.5質量%であり、より好ましくは7.5~15質量%であり、さらに好ましくは10~12.5質量%である。光重合開始剤の含有量が上記範囲内であることにより、上層インクの硬化性がより向上する傾向にある。
上層インクに含まれる光重合開始剤の含有量は、下層インクに含まれる光重合開始剤の含有量以上であることが好ましい。これにより、放射線照射時の上層インクの硬化性がより向上し、上層インクが下層インクに浸透する前に、硬化を促進することができ、埋まり性がより向上する。上層インクに含まれる光重合開始剤の含有量は、下層インクに含まれる光重合開始剤の含有量よりも、好ましくは1.0質量%以上多く、より好ましくは1.5質量%以上多く、さらに好ましくは2.0質量%以上多い。
7.4.その他の添加剤
本実施形態に係る白インクは、必要に応じて、重合禁止剤、スリップ剤等の添加剤をさらに含んでもよい。上層インクが含む重合禁止剤、スリップ剤等としては、具体的には白色インクで例示したものと同様のものを用いることができる。
上層インクに含まれる重合禁止剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは0.05~1.0質量%であり、より好ましくは0.05~0.5質量%である。
上層インクに含まれるスリップ剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは0.01~2.0質量%であり、より好ましくは0.05~1.0質量%である。
7.5.表面張力
25℃における上層インクの表面張力は、好ましくは10~34mN/mであり、より好ましくは15~30mN/mであり、さらに好ましくは20~25mN/mである。上層インクの表面張力が上記範囲内であることにより、埋まり性がより向上する傾向にある。
7.6.ガラス転移温度
下層インクにおいて、各重合性化合物の含有質量比を重みとする、各重合性化合物のホモポリマーのガラス転移温度の加重平均は、好ましくは35~70℃であり、より好ましくは40~65℃であり、さらに好ましくは45~60℃である。ガラス転移温度の加重平均が上記範囲であることにより、上層インクの埋まり性や上層インク層と下層インク層の密着性がより向上する傾向にある。
〔インクジェット記録方法〕
本実施形態のインクジェット記録方法は、上記ラインインクジェットプリンタを用いて、上記第1記録モードと、上記第2記録モードと、のいずれかを選択し、選択した記録モードにより記録を行う方法である。
図2は、本実施形態で使用される記録装置で行われる制御部の動作処理の一例を示すフローチャートである。記録装置の制御部は、記録を開始する場合に、ステップS200で、記録モードの決定を行う。
記録モードの決定は、例えば、プリンタ1に対して、コンピューターなどの外部機器から入力した入力信号によって決定されたり、プリンタ1が備えるユーザー入力部へのユーザーの入力情報によって決定される。ここで、外部機器からの入力信号や、ユーザーの入力情報は、記録モードを直接指定する情報であってもよいし、記録速度の指定や、画質の指定などの、記録に関する情報であってもよい。記録に関する情報はこれらには限られない。後者の場合は、記録装置は、予め記録に関する情報に対応する記録モードを定めた対応情報を制御部などの記録装置内に記録しており、対応情報を参照して記録モードを決定する。
ステップS201では、決定された記録モードを判別する。ステップS202又はS203では、決定された記録モードに応じて、記録モードに対応付いた記録条件で記録装置を制御する。記録条件は、例えば、第1記録モードまたは第2モードで記録を行うために必要となる、ノズル列の記録に使用する部分の選択などである。その他、記録装置の動作に関する制御なども含まれてもよい。例えばインクの最大の付着量や1次乾燥の条件などの、記録に関する制御条件などである。
ステップS204では記録を実行する。記録モードの種類は図では2つを示したが、3つ以上あってもよい。記録装置の制御は、図2のように記録の開始前に行ってもよいが、記録中に行ってもよい。つまり記録条件で記録装置が制御された状態で記録が行われればよい。
このようにして、要求される画質や記録速度などに応じて、第1記録モードまたは第2記録モードを選択して行うことで、画質の優れた画像の記録が可能であり、また、記録速度が優れる記録も可能である。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
1.インク組成物
色材、分散剤、各モノマーの一部を秤量して顔料分散用のタンクに入れ、タンクに直径1mmのセラミック製ビーズミルを入れて攪拌することにより、色材をモノマー中に分散させた顔料分散液を得た。次いで、表1に記載の組成となるように、ステンレス製容器である混合物用タンクに、残りのモノマー、重合開始剤、重合禁止剤、及びその他の成分を入れ、混合攪拌して完全に溶解させた後、上記で得られた顔料分散液を投入して、さらに常温で1時間混合撹拌し、さらに5μmのメンブランフィルターでろ過することにより各例の放射線硬化型インクジェット組成物を得た。なお、表中の各例に示す各成分の数値は特段記載のない限り質量%を表す。
Figure 2023045493000002
Figure 2023045493000003
<単官能モノマー>
・PEA(商品名「ビスコート#192」、大阪有機化学工業株式会社製、フェノキシエチルアクリレート)
・ACMO(KJケミカルズ株式会社製、アクリロイルモルフォリン)
・4-HBA(大阪有機化学工業株式会社製、4-ヒドロキシブチルアクリレート)
・DCPA(日立化成株式会社製社製、ジシクロペンテニルアクリレート)
・IBXA(大阪有機化学工業株式会社製、イソボルニルアクリレート)
・VMOX(ビニルメチルオキサゾリジノン、BASF社製)
<多官能モノマー>
・VEEA(株式会社日本触媒製、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル)
・DPGDA(商品名「SR508」、サートマー株式会社製、ジプロピレングリコールジアクリレート)
<重合開始剤>
・819(商品名「IRGACURE 819」BASF社製、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド)
・TPO(商品名「IRGACURE TPO」、BASF社製、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)
<重合禁止剤>
・MEHQ(商品名「p-メトキシフェノール」、関東化学株式会社製、ヒドロキノンモノメチルエーテル)
<スリップ剤>
・BYK-UV3500(BYK Additives&Instruments社製、アクリロイル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)
<色材(顔料)>
・PW6(酸化チタン)
・PB15:3(C.I.ピグメントブルー15:3)
<分散剤>
・Solsperse36000(Lubrizol社製、高分子分散剤)
表1~2中、物性欄の「単官能モノマー割合」は、重合性化合物の総量に対する、単官能モノマーの含有量を表す。重合性化合物としては、具体的には、表1中の単官能モノマー、多官能モノマーを指す。
表1中、物性欄の「極性モノマー割合」は、重合性化合物の総量に対する、極性モノマーの含有量を表す。重合性化合物としては、具体的には、表1中の単官能モノマー、多官能モノマーを指す。また、表1中における極性モノマーは、ACMO、4-HBAである。
表1~2中、組成欄の各重合性化合物の左欄に記載の「Tg」は、各重合性化合物のホモポリマーのガラス転移温度を表す。
表1~2中、物性欄の「Tg」は、重合性化合物の含有質量比を重みとする、各重合性化合物のホモポリマーのガラス転移温度の加重平均を表す。
表1~2中、物性欄の「表面張力」は、表面張力計(協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP-Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定した。
2.評価方法
2.1.埋まり性
図2にしめすように、搬送機構と、第1ラインヘッド、第1照射部、第2ラインヘッド、第2照射部、及び制御部を有するラインインクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製)を試作した。このラインインクジェットプリンタに、上記のように調製した上層インクと下層インクを充填した。そして、このラインインクジェットプリンタを用いて記録媒体(PET50A)に向けて、第1ラインヘッドから下層インクを吐出し、記録媒体に付着した下層インクを第1照射部により硬化させ、次いで、第2ラインヘッドから上層インクを吐出し、下層インク層に付着した上層インクを第2照射部により硬化させて、記録物を得た。
この記録において、ドット密度は600dpi*600dpiであり、搬送速度、Duty、ドットサイズ、及びインク付着量は、表3又は4に記載の記録条件とした。
このようにして、第1記録モードと第2記録モードで記録を行い、得られた硬化物について、上層インクの埋まり性を目視で観察するした。評価基準は下記のとおりである。
(評価基準)
A:記録媒体から30cmの高さからの目視で、埋まっていた(下地の白が見えなかった。)。
B:記録媒体から1mの高さからの目視で、埋まっていた(下地の白が見えなかった。)。
C:記録媒体から1mの高さからの目視で、下地の白が見えた。
2.2.密着性
上記埋まり性の評価と同様にして、表4に記載の記録条件で、ポリ塩化ビニルフィルム上に硬化後の塗膜を作製した。得られた塗膜に対して、JIS K5600-5-6に準じてクロスカット試験の評価を行った。
より具体的には、カッターで、塗膜に対して垂直になるように切込み工具の刃を当てて、切込み間の距離が1mmのマス目を入れて、10×10マスの格子を作った。格子に、約75mmの長さの透明付着テープ(幅25mm)を貼り付け、硬化膜が透けて見えるように十分指でテープを擦った。次に、テープを貼り付けて5分以内に、60°に近い角度で、0.5~1.0秒で確実にテープを硬化膜から引き剥がして、格子の状態を目視にて観察した。評価基準は下記のとおりである。
(評価基準)
AA:格子に硬化膜の剥離は認められなかった。
A:格子の50%未満に硬化膜の剥離が認められた。
B:格子の50%以上に硬化膜の剥離が認められた。
2.3.硬化性
綿棒加重タック性評価を行った。上記埋まり性の評価と同様にして、表4に記載の記録条件で、ポリ塩化ビニルフィルム上に硬化後の塗膜を作製した。この際、395nmにピーク波長を有するLEDを用い、下層インクに照射される紫外線の照射エネルギーを少しずつ変えて記録を行った記録物を得た。そして、下層インクの塗膜表面を綿棒で擦り、綿棒が着色しない照射強度を基準に硬化性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
A:200mJ/cm2未満で硬化
B:200mJ/cm2以上300mJ/cm2未満で硬化
C:300mJ/cm2以上400mJ/cm2未満で硬化
D:400mJ/cm2以上で硬化
Figure 2023045493000004
Figure 2023045493000005
1…プリンタ、100…給送部、200…搬送機構、201…第1送りローラー、202…第2送りローラー、300…ラインヘッド、310…第1ラインヘッド、320…第2ラインヘッド、400…照射部、410…第1照射部、420…第2照射部、500…制御部、F…記録媒体、Y…送り方向。

Claims (7)

  1. 記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
    前記記録媒体の幅に相当する長さを有し、記録媒体上に放射線硬化で形成した下層インクの硬化塗膜上に、放射線硬化型である上層インクを吐出して、付着させるラインヘッドと、
    前記下層インクの硬化塗膜上の前記上層インクに放射線を照射して、前記上層インクの硬化塗膜を形成する照射部と、
    前記搬送機構により前記ラインヘッド下を所定の搬送速度で前記記録媒体を通過させつつ、前記ラインヘッドにより所定の付着量となるように前記上層インクを吐出して前記記録媒体に付着させることで記録を実行する制御部と、を備え、
    前記制御部は、
    搬送速度V1で、上層インク付着量D1で記録を行う第1記録モードと、
    搬送速度V1よりも遅い搬送速度V2で、上層インク付着量D1以上の上層インクの付着量D2で記録を行う第2記録モードと、を実行し、
    前記下層インクは重合性化合物を含み、単官能モノマーの含有量は、前記重合性化合物の総量に対して、50質量%以上である、
    ラインインクジェットプリンタ。
  2. インク付着量Dは、下記式(I)により表される値であり、
    インク付着量D=(ドットサイズ)×(Duty)/(搬送速度V)・・・(I)
    前記制御部は、前記ラインヘッドから吐出されるインク滴のドットサイズ及びDutyを制御することで、前記インク付着量D1及びインク付着量D2を制御する、
    請求項1に記載のラインインクジェットプリンタ。
  3. 前記下層インクが、前記重合性化合物として、窒素複素環構造を有する重合性化合物及び/又はOH基を有する重合性化合物を含み、
    前記窒素複素環構造を有する重合性化合物及び前記OH基を有する重合性化合物の合計含有量が、前記重合性化合物の総量に対して、20質量%以上である、
    請求項1又は2に記載のラインインクジェットプリンタ。
  4. 前記下層インクは、前記重合性化合物として、下記一般式(I)で表わされるビニル基含有(メタ)アクリレートを含む、
    2C=CR1-CO-OR2-O-CH=CH-R3 ・・・ (I)
    (式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2~20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1~11の1価の有機残基である。)
    請求項1~3のいずれか一項に記載のラインインクジェットプリンタ。
  5. 前記下層インクの表面張力は、前記上層インクの表面張力よりも大きい、
    請求項1~4のいずれか一項に記載のラインインクジェットプリンタ。
  6. 前記上層インクは、非白色色材を含む、
    請求項1~5のいずれか一項に記載のラインインクジェットプリンタ。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載のラインインクジェットプリンタを用いて、
    前記第1記録モードと、前記第2記録モードと、のいずれかを選択し、
    選択した記録モードにより記録を行う、
    インクジェット記録方法。
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