JP2023044681A - ベタメタゾン吉草酸エステル含有軟膏剤 - Google Patents

ベタメタゾン吉草酸エステル含有軟膏剤 Download PDF

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宜孝 友田
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崇剛 小林
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Abstract

【課題】良好な製剤安定性を有するベタメタゾン吉草酸エステル含有軟膏剤を提供する。【解決手段】(A)ベタメタゾン吉草酸エステルと、(B)軟膏基剤とを含有し、(C)クロタミトン、メントール、カンフル、グリチルレチン酸、アラントイン、ジフェンヒドラミン及びその塩、及びトコフェロール酢酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする、軟膏剤。【選択図】なし

Description

本発明は、ベタメタゾン吉草酸エステル含有軟膏剤に関する。より詳細には、ベタメタゾン吉草酸エステルを含有する軟膏剤に関して、ベタメタゾン吉草酸エステルの分散安定性を改善して偏在を抑制するための技術に関する。
一般にステロイド骨格を有する化合物は、微量で高い生理活性を示すことが知られている。なかでも副腎皮質ホルモンは、炎症を伴う皮膚の痒み、赤み、及び腫れなどの症状の改善に有効であり、湿疹(アトピー性皮膚炎による湿疹を含む。以下、同じ。)、痒疹(汗疹、蕁麻疹、かぶれ、及び虫さされ等による痒疹を含む。以下、同じ。)、皮膚炎、および乾癬等の治療に広く用いられている。通常、副腎皮質ホルモンを含む外用製剤には、その他の有効成分として、非ステロイド系抗炎症剤、局所麻酔剤、血行促進剤、殺菌剤、皮膚保護剤、抗生物質、及び清涼剤などが、適宜に組み合わせて配合されるが、配合成分の組み合わせによっては、製剤的安定性を確保することが難しくなったり、皮膚刺激が惹起されたり、また使用感が悪いものになる等の製剤上の問題が発生する。
このため、製剤の設計には、薬理作用(効能・効果)に加えて、製剤の物理的安定性、皮膚等の生体への安全性、及び使用感等を総合的に考慮する必要がある。
前述する副腎皮質ホルモンのうち、ベタメタゾン吉草酸エステルのように17位または21位にヒドロキシル基を有するステロイドがアセチル化またはバレリル化してなるエステル化ステロイドは、併用する化合物によって、製剤中で分解されやすくなることが指摘されている(特許文献1及び2等参照)。
また、ベタメタゾン吉草酸エステルは、流動パラフィンや白色ワセリンなどの軟膏基剤に溶解しにくい成分である。このため、ベタメタゾン吉草酸エステルを、軟膏基剤を主成分とする軟膏剤の形態に製剤化するには、軟膏基剤に安定して分散させることが必要である。
一般的に製剤中での有効成分の偏在化を改善する方法として、アジピン酸ジイソプロピルやミリスチン酸イソプロピル等の溶解剤を配合する方法がある。しかし、この方法は、製剤中の有効成分の溶解性を高める方法であり、軟膏基剤に溶解しないベタメタゾン吉草酸エステルについて分散性を高める方法としては適していない。また、前記成分は皮膚への刺激が問題になる可能性があり、軟膏剤の軟膏基剤として、皮膚への刺激がない流動パラフィンや白色ワセリンなどを用いる場合の利点が損なわれる。
特開2005-343890号公報 特開2005-343891号公報
本発明は、軟膏基剤へのベタメタゾン吉草酸エステルの分散安定性を改善して、その偏在化が抑制された軟膏剤、及びその製造方法を提供することを課題とする。
また本発明は、ベタメタゾン吉草酸エステルと軟膏基剤を含有する軟膏剤に関して、ベタメタゾン吉草酸エステルの分散安定性を改善して偏在化を抑制する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、有効成分としてベタメタゾン吉草酸エステル、基剤として軟膏基剤を含有する軟膏剤を設計するにあたり、鋭意検討を重ねていたところ、軟膏基剤が溶解し始める35℃以上になると、ベタメタゾン吉草酸エステルの分散性安定性が低下し、軟膏剤中で偏在化するという問題が生じることを知見した。そこで、これを解決すべく、鋭意検討していたところ、ベタメタゾン吉草酸エステルと軟膏基剤とに加えて、クロタミトン、メントール、カンフル、グリチルレチン酸、アラントイン、ジフェンヒドラミン及びその塩、及びトコフェロール酢酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種を配合し、これを、軟膏基剤を主剤として含む軟膏剤中でベタメタゾン吉草酸エステルと共存させることで、ベタメタゾン吉草酸エステルの分散安定性が向上し、35℃以上の温度条件下で保存した場合に生じる偏在が抑制できることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて、さらなる改良を重ねて完成したものであり、下記の実施形態を包含するものである。
(I)軟膏剤
(I-1)(A)ベタメタゾン吉草酸エステルと、
(B)軟膏基剤とを含有し、
(C)クロタミトン、メントール、カンフル、グリチルレチン酸、アラントイン、ジフェンヒドラミン及びその塩、及びトコフェロール酢酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする、軟膏剤。
(I-2)前記(B)軟膏基剤が、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、白色ワセリン、及びマクロゴールよりなる群から選択される少なくとも1種である、(I-1)に記載する軟膏剤。
(I-3)前記(B)成分が油性基剤であり、軟膏剤が実質的に水を含有しない非水系製剤である、(I-1)又は(I-2)に記載する軟膏剤。
(II)軟膏剤の製造方法
(II-1)(A)ベタメタゾン吉草酸エステルと(B)軟膏基剤とを含有する軟膏剤中におけるベタメタゾン吉草酸エステルの分散安定性を改善するための、前記軟膏剤の製造方法であって、
(A)ベタメタゾン吉草酸エステル、及び(B)軟膏基剤に加えて、
(C)クロタミトン、メントール、カンフル、グリチルレチン酸、アラントイン、ジフェンヒドラミン及びその塩、及びトコフェロール酢酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種を配合する工程を有することを特徴とする、前記製造方法。
(II-2)前記分散安定性改善が、35℃以上の温度条件下における軟膏剤中の(A)ベタメタゾン吉草酸エステルの偏在化の抑制である、(II-1)に記載する製造方法。(II-3)前記(B)成分が油性基剤であり、軟膏剤が実質的に水を含有しない非水系製剤である、(II-1)又は(II-2)に記載する製造方法。
(III)軟膏剤中におけるベタメタゾン吉草酸エステルの分散安定性改善方法
(III-1)(A)ベタメタゾン吉草酸エステルと(B)軟膏基剤とを含有する軟膏剤中におけるベタメタゾン吉草酸エステルの分散安定性の改善方法であって、
前記軟膏剤中に、(A)ベタメタゾン吉草酸エステルと、(B)軟膏基剤と、
(C)クロタミトン、メントール、カンフル、グリチルレチン酸、アラントイン、ジフェンヒドラミン及びその塩、及びトコフェロール酢酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種とを共存させることを特徴とする、前記方法。
(III-2)前記分散安定性改善が、35℃以上の温度条件における軟膏剤中の(A)ベタメタゾン吉草酸エステルの偏在化の抑制である、(III-1)に記載する方法。
(III-3)前記(B)成分が油性基剤であり、軟膏剤が実質的に水を含有しない非水系製剤である、(III-1)又は(III-2)に記載する方法。
本発明によれば、良好な製剤安定性を有するベタメタゾン吉草酸エステル含有軟膏剤を提供することができる。より詳細には、本発明によれば、ベタメタゾン吉草酸エステルと軟膏基剤を含有する軟膏剤について、ベタメタゾン吉草酸エステルの分散安定性を向上させることができ、35℃以上の温度条件下での保存で生じ得るベタメタゾン吉草酸エステルの偏在化が有意に抑制されてなる軟膏剤を提供することができる。
(I)軟膏剤、及びその製造方法
本発明の軟膏剤(以下、単に「本軟膏剤」とも称する)は、下記の(A)、(B)及び(C)成分を含有する。
(A)ベタメタゾン吉草酸エステル
(B)軟膏基剤、
(C)クロタミトン、メントール、カンフル、グリチルレチン酸、アラントイン、ジフェンヒドラミン及びその塩、及びトコフェロール酢酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種。
以下、これらの成分について説明する。
(A)成分
ベタメタゾン吉草酸エステルは、17位のヒドロキシル基がバレリル化され、21位のヒドロキシル基がアセチル化されてなるエステル化ステロイドである。当該化合物は、抗炎症作用を有するストロングなステロイドであり、下記の効能・効果が知られている:
湿疹・皮膚炎群(進行性指掌角皮症、女子顔面黒皮症、ビダール苔癬、放射線皮膚炎、日光皮膚炎を含む)、皮膚そう痒症、痒疹群(じん麻疹様苔癬、ストロフルス、固定じん麻疹を含む)、虫さされ、乾癬、掌蹠膿疱症、扁平苔癬、光沢苔癬、毛孔性紅色粃糠疹、ジベルバラ色粃糠疹、紅斑症(多形滲出性紅斑、結節性紅斑、ダリエ遠心性環状紅斑)、紅皮症(悪性リンパ腫による紅皮症を含む)、慢性円板状エリテマトーデス、薬疹・中毒疹、円形脱毛症(悪性を含む)、熱傷(瘢痕、ケロイドを含む)、凍瘡、天疱瘡群、ジューリング疱疹状皮膚炎(類天疱瘡を含む)、痔核、鼓室形成手術・内耳開窓術・中耳根治手術の術創。
本軟膏剤中に含まれる(A)成分の量は、本発明の効果を妨げることなく、所望の薬効を発揮する量であればよく、その範囲で適宜設定調整することができる。例えば、本軟膏剤を、炎症を伴う皮膚の痒み、赤みまたは腫れなどの症状を有する皮膚疾患(例えば、湿疹、痒疹、皮膚炎または乾癬等)を改善する外用製剤(医薬製剤)として調製する場合、本軟膏剤中の(A)成分の含有量としては、0.0002~10質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.002~2質量%であり、より好ましくは0.01~0.3質量%である。
(B)成分
(B)成分は、軟膏剤に慣用の外用基剤であり、医薬品または医薬部外品の製造に通常使用されるものであれば、制限されない。例えば、油脂性基剤(流動パラフィン、パラフィン、白色ワセリン、黄色ワセリン、及びワセリン等の鉱物油;オリーブ油、ダイズ油、ナタネ油、ヒマシ油等の植物油;牛脂、豚脂、卵黄油等の動物油;中鎖脂肪酸トリグリセリド等の合成油)、ロウ類(ミツロウ、サラシミツロウ、ラノリン等)、炭化水素類(ポリスチレン、スクワレン、スクワラン、ゲル化炭化水素等)、高級アルコール(セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等)、コレステロール、プロピレングリコール、グリセリン、マクロゴール、1,3-ブチレングリコール、シリコン油等を例示することができる。好ましくは流動パラフィン、パラフィン、白色ワセリン、ワセリン、及びマクロゴールであり、より好ましくは油性基剤であり、例えば流動パラフィン及び白色ワセリンを挙げることができる。これらの軟膏基剤は、1種単独で用いてもよいし、また2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。
本軟膏剤中の(B)成分の含有量としては、総量で30質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。(B)成分の上限値は、99.99質量%を限度として、(A)及び(C)成分、並びに他成分を含む場合はそれらを含む総量が100質量%を超えない範囲で設定することができる。
(C)成分
本軟膏剤において、(C)成分は、クロタミトン、メントール、カンフル、グリチルレチン酸及びその塩、アラントイン、ジフェンヒドラミン及びその塩、並びにトコフェロール酢酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種である。これらの(C)成分は、いずれも外用製剤の薬効成分として汎用されている成分である。これらは一種単独で、前記(A)及び(B)成分と併用してもよいし、また二種以上を任意に組み合わせて、前記(A)及び(B)成分と併用してもよい。
クロタミトンは、鎮痒作用や疥癬治療作用等を有することが知られている。本軟膏剤中に含まれるクロタミトンの量は、(A)成分の薬効を妨げることなく、本発明の効果を発揮する量であればよく、その範囲で適宜設定調整することができる。例えば、本軟膏剤100質量%中のクロタミトンの含有量としては、0.1~20質量%の範囲を例示することができる。好ましくは1~15質量%であり、より好ましくは2~10質量%である。
本発明が対象とするメントールには、各種のジアステレオマー、及び鏡像異性体が含まれる。好ましくは医薬品成分として使用できるメントールであり、より好ましくはl-メントールである。メントールの作用として、清涼化作用、防腐作用、鎮痛作用、局所血管拡張作用等が知られている。本軟膏剤中に含まれるメントールの量は、(A)成分の薬効を妨げることなく、本発明の効果を発揮する量であればよく、その範囲で適宜設定調整することができる。例えば、本軟膏剤100質量%中のメントールの含有量としては、0.001~20質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.01~15質量%であり、より好ましくは0.1~10質量%である。
本発明が対象とするカンフルには、各種のジアステレオマー、及び鏡像異性体が含まれる。好ましくは医薬品成分として使用できるカンフルであり、より好ましくはdl-カンフルである。カンフルの作用として、清涼化作用、防腐作用、鎮痛作用、鎮痒作用、消炎作用、血行促進作用等が知られている。本軟膏剤中に含まれるカンフルの量は、(A)成分の薬効を妨げることなく、本発明の効果を発揮する量であればよく、その範囲で適宜設定調整することができる。例えば、本軟膏剤100質量%中のカンフルの含有量としては、0.01~20質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.05~15質量%であり、より好ましくは0.1~10質量%である。
グリチルレチン酸は、抗炎症作用、鎮痒作用、肥満細胞脱顆粒抑制作用、及びホスホリパーゼA2阻害作用を有することが知られている。グリチルレチン酸として、好ましくはβ-グリチルレチン酸を挙げることができる。グリチルレチン酸の塩としては、薬学的に許容される塩であり、例えば、カリウムやナトリウムなどのアルカリ金属塩、アンモニウム塩を例示することができる。本軟膏剤中に含まれるグリチルレチン酸またはその塩の量は、(A)成分の薬効を妨げることなく、本発明の効果を発揮する量であればよく、その範囲で適宜設定調整することができる。例えば、本軟膏剤100質量%中のグリチルレチン酸またはその塩の含有量としては、0.01~10質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.05~5質量%であり、より好ましくは0.1~2質量%である。
本発明が対象とするアラントインには、グリオキシル酸のジウレイド(別名:5-ウレイドヒダントイン、グリオキシジウレイド)のほか、その誘導体であるアラントインアセチル-DL-メチオニン、アラントインジヒドロキシアルミニウム、またはアラントインポリガラクツロン酸が含まれる。好ましくはグリオキシル酸ジウレイドである。アラントインの作用として、角質細胞増殖促進作用、抗刺激作用、消炎鎮静作用、および抗アレルギー作用等が知られている。またアラントインは、角質細胞増殖促進作用に基づいて創傷治癒作用や組織修復賦活作用を発揮することが知られている。本軟膏剤中に含まれるアラントインの量は、(A)成分の薬効を妨げることなく、本発明の効果を発揮する量であればよく、その範囲で適宜設定調整することができる。例えば、本軟膏剤100質量%中のアラントインの含有量としては、0.01~20質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.05~10質量%であり、より好ましくは0.1~5質量%である。
ジフェンヒドラミンは、ヒスタミンH1受容体遮断作用を有し、H1受容体を介するヒスタミンによるアレルギー性反応(毛細血管の拡張と透過性亢進、痒み、発赤、腫れ)を抑制する。ジフェンヒドラミンの塩としては、薬学的に許容される塩であり、例えば、塩酸等の無機酸との塩、サリチル酸等の有機酸との塩を例示することができる。本軟膏剤中に含まれるジフェンヒドラミン又はその塩の量は、(A)成分の薬効を妨げることなく、本発明の効果を発揮する量であればよく、その範囲で適宜設定調整することができる。例えば、本軟膏剤100質量%中のジフェンヒドラミン又はその塩の含有量としては、0.01~10質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.05~5質量%であり、より好ましくは0.1~2質量%である。
トコフェロール酢酸エステルは、ビタミンE(トコフェロール)の誘導体である。本発明が対象とするトコフェロール酢酸エステルには、各種の立体異性体が含まれる。好ましくは医薬品成分として使用できるトコフェロール酢酸エステルであり、より好ましくはd-α-トコフェロール酢酸エステル、及び種々の立体異性体の混合物である。血行促進作用を有する。本軟膏剤中に含まれるトコフェロール酢酸エステルの量は、(A)成分の薬効を妨げることなく、本発明の効果を発揮する量であればよく、その範囲で適宜設定調整することができる。例えば、本軟膏剤100質量%中のトコフェロール酢酸エステルの含有量としては、0.01~10質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.05~5質量%であり、より好ましくは0.1~2質量%である。
前記成分のうち、(A)成分と(B)成分を含み、(C)成分を含まない軟膏剤は、後述する実験例で示すように(比較例1参照)、軟膏基剤が溶融し始める温度で、経時的に(A)成分の分散安定性が低下し、軟膏中で偏在するという問題が生じる。この問題は、軟膏剤に前述する(C)成分を配合して、(A)成分と(B)成分との共存状態におくことで改善することができる。
本軟膏剤における(A)成分と(C)成分との配合比(質量比)は、本発明の効果(偏在化抑制)が得られることを限度として、制限されない。
例えば、
(C)成分がクロタミトンである場合、(A)成分100質量部に対する(C)成分の割合として0.8~334質量部の範囲、好ましくは8~250質量部、より好ましくは16~167質量部;
(C)成分がメントールである場合、(A)成分100質量部に対する(C)成分の割合として0.008~334質量部の範囲、好ましくは0.08~250質量部、より好ましくは0.8~167質量部;
(C)成分がカンフルである場合、(A)成分100質量部に対する(C)成分の割合として0.08~334質量部の範囲、好ましくは0.4~250質量部、より好ましくは0.8~167質量部;
(C)成分がグリチルレチン酸又はその塩である場合、(A)成分100質量部に対する(C)成分の割合として0.08~167質量部の範囲、好ましくは0.4~84質量部、より好ましくは0.8~34質量部;
(C)成分がアラントインである場合、(A)成分100質量部に対する(C)成分の割合として0.08~334質量部の範囲、好ましくは0.4~167質量部、より好ましくは0.8~84質量部;
(C)成分がジフェンヒドラミン又はその塩である場合、(A)成分100質量部に対する(C)成分の割合として0.08~167質量部の範囲、好ましくは0.4~84質量部、より好ましくは0.8~34質量部;
(C)成分がトコフェロール酢酸エステルである場合、(A)成分100質量部に対する(C)成分の割合として0.08~167質量部の範囲、好ましくは0.4~84質量部、より好ましくは0.8~34質量部;
などを例示することができる。
(D)任意の薬理活性成分
本軟膏剤には、本発明の効果を妨げないことを限度として、前述する(A)~(C)成分に加えて、さらに他の薬理活性成分が含まれていてもよい。制限されないものの、非ステロイド系抗炎症剤、局所麻酔剤、鎮痒剤、血行促進剤、殺菌剤、皮膚保護剤、抗生物質、保湿剤、及び/又は清涼剤を例示することができる。これらは、外用剤、特に皮膚外用剤に配合できる成分であればよいが、本発明の本軟膏剤を、炎症を伴う皮膚の痒み、赤みまたは腫れなどの症状を有する皮膚疾患(例えば、湿疹、痒疹、皮膚炎または乾癬等)を改善する外用製剤(医薬製剤)として調製する場合は、当該外用製剤に配合することができる成分であることが好ましい。
(E)任意の担体・添加剤
本軟膏剤は、前述する成分以外に、本発明の効果を妨げないことを限度として、適宜、従来公知の担体や添加剤を任意に配合することができる。これらの担体や添加剤としては、例えば増粘剤、抗酸化剤、緩衝剤、pH調整剤、流動化剤、着色剤、及び/又は香料等を、制限なく、例示することができる。
本軟膏剤は、前述する成分のうち、少なくとも(A)成分と(B)成分と(C)成分とを混合して、慣用の製造方法に従って軟膏剤の形態に製造することができる。制限されないものの、例えば、下記の方法で製造することができる:
(1)予め加温して溶解しておいた(B)成分に、(A)成分を分散させる。
(2)(C)成分は、予め、加温して溶解した(B)成分に配合しておいてもよいし、また(A)成分と一緒に、後から加温溶解した(B)成分に添加配合してもよい。
(3)これをよく撹拌して、(C)成分を含む(B)成分中に、(A)成分を分散させる。
斯くして調製される本軟膏剤は、(C)成分を含まない軟膏剤と比較して、(B)成分中で(A)成分が安定して分散しており、少なくとも35~50℃の温度条件下で保存した場合での(A)成分の偏在化が有意に抑制されていることを特徴とする。つまり、良好な保存安定性を有する軟膏剤として有用である。
本軟膏剤は、(A)成分の薬理作用に基づいて、炎症を伴う皮膚の痒み、赤みまたは腫れなどの症状を有する皮膚疾患(例えば、湿疹、痒疹、皮膚炎または乾癬等)を改善する外用製剤(医薬製剤)として好適に用いることができる。適用部は、制限されず、手、足、指、顔、頭、及び体など、皮膚全般に対して広く用いることができる。また肛門部や陰部周辺などの皮膚の角質が薄い部位にも適用することができる。これらの皮膚への適用量や用法も特に制限されず、患部の症状や有効成分の含有量に応じて、一日1回~数回、適量を皮膚などの外皮に塗布することなどにより用いることができる。
(II)軟膏剤の安定性改善方法
本発明は、前述する(A)成分及び(B)成分を含有する軟膏剤について、(A)成分の分散安定性を改善する方法を提供する。
後述する実験例に示すように、(A)成分及び(B)成分を含有し、(C)成分を含有しない軟膏剤は、(A)成分の分散安定性が低く、特に(B)成分が溶解し始める温度以上(実験例では35℃以上)で偏在化する。こうした(A)成分の分散安定性の不良は、これに前述する(C)成分を共存させることで改善することができる。
本発明が対象とする「軟膏剤の安定性改善」には、(A)成分及び(B)成分を含有する軟膏剤における(A)成分の経時的偏在化が抑制されることが含まれる。(A)~(C)成分を含む軟膏剤が、(A)及び(B)成分を含み(C)成分を含まない軟膏剤と比較して、経時的偏在化が少ない場合、前者軟膏剤は、(C)成分の配合により(A)成分の偏在化が抑制されており、分散安定性が改善されていると判断することができる。
(A)成分の経時的偏在化は、測定対象の軟膏剤をチューブ等の容器に充填し、35℃または50℃の恒温条件の暗所条件下に1週間、縦置きした状態で静置保存し、保存後にチューブ先端(上端部)及びチューブ底部(下端部)からそれぞれサンプリングして、サンプル中の(A)成分の含有割合を測定し、それを比較することで評価することができる。詳細は、後述する実験例の記載を参照することができる。
軟膏剤中の(A)~(C)成分、これらの配合割合、及び配合比などは、前記(I)に記載した通りであり、当該記載はここに援用することができる。各成分を混合し、(A)~(C)成分の共存状態を形成した後、慣用の方法により軟膏剤を調製することで、本発明の方法を実現した軟膏剤を得ることができる。
以上、本明細書において、「含む」及び「含有する」の用語には、「からなる」及び「から実質的になる」という意味が含まれる。
以下、本発明の構成及び効果について、その理解を助けるために、実験例を用いて本発明を説明する。但し、本発明はこれらの実験例によって何ら制限を受けるものではない。以下の実験は、特に言及しない限り、室温(25±5℃)、及び大気圧条件下で実施した。なお、特に言及しない限り、以下に記載する「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実験例で使用した化合物及び組成物は下記の通りである。
ベタメタゾン吉草酸エステル:Sicor
クロタミトン:住友化学(株)
l-メントール:シムライズ(株)
dl-カンフル:長岡実業(株)
グリチルレチン酸:アルプス薬品工業(株)
アラントイン:北大貿易(株)
ジフェンヒドラミン:金剛化学(株)
トコフェロール酢酸エステル(鹿特級):DSMニュートリションジャパン
白色ワセリン:CALMET
流動パラフィン:SONNEBORN
[軟膏剤の経時的安定性の評価方法]
(1)軟膏剤中のベタメタゾン吉草酸エステルの定量方法
下記に示す条件の液体クロマトグラフィー法によって実施した。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:254 nm)
カラム:STR ODS-II (信和化工株式会社製)又はこれと同等の性能を有するもの。
移動相:メタノール:水 =7:3
(2)軟膏剤におけるベタメタゾン吉草酸エステルの経時的偏在の評価方法
調製した軟膏剤について、前記方法にてベタメタゾン吉草酸エステルの含有量(初期値)を測定した後、軟膏剤容器として汎用のアルミチューブ(φ19.1)に空間ができないように10g充填し、蓋をした後、これを縦置きの状態で、35℃又は50℃の暗所条件下に1週間に亘り、静置保存する。
保存後、チューブの両端(縦置きした状態の上端部、及び下端部)から、試料をサンプリングし、上記方法で各試料に含まれるベタメタゾン吉草酸エステルの量を測定する(測定値)。
軟膏剤調製時のベタメタゾン吉草酸エステルの含有量(初期値)と前記で得られた測定値から、下式に従って、残存率(%)を算出する。
[残存率]
残存率(%)= 測定値/初期値 ×100
実験例1 軟膏剤の調製とその安定性評価(その1)
(1)軟膏剤の調製方法
表1及び2に記載する組成に従って、非水系の軟膏剤(比較例1、実施例1~9)を調製した。具体的には、まず白色ワセリンを75±5℃で加温溶解し、この中に、予め混合しておいた、流動パラフィンとベタメタゾン吉草酸エステルの混合物を加えて撹拌し、軟膏剤とした(比較例1)。また、dl-カンフル、l-メントール、及びイソプロピルメチルフェノールを配合する場合は、白色ワセリンを加温溶解するときに、同時に混合した(実施例2~5)。また、グリチルレチン酸、アラントイン、ジフェンヒドラミン、またはトコフェロール酢酸エステルを配合する場合は、白色ワセリン加温後に投入し、流動パラフィンとベタメタゾン吉草酸エステルに一緒に混合し、これを白色ワセリンの中に添加配合した(実施例1、及び5~9)。また、クロタミトンを配合する場合は、クロタミトンとベタメタゾン吉草酸エステルとを一緒に混合し、これを白色ワセリン及び流動パラフィンの中に添加配合した。
(2)実験方法
調製した軟膏剤(比較例1、実施例1~9)中のベタメタゾン吉草酸エステルの含有量(初期値)を前述する方法で測定した後、これをアルミチューブに充填後、前述する保存条件下にて、1週間保存した。保存後、チューブの両端(上端部、下端部)から試料をサンプリングして、再度ベタメタゾン吉草酸エステルの含有量(測定値)を測定して、各々の残存率を求め、ベタメタゾン吉草酸エステルの偏在性(保存後の分散性、分散安定性)を評価した。
(3)実験結果
結果を表1及び2に合わせて示す。
Figure 2023044681000001
Figure 2023044681000002
表1に示すように、軟膏基剤(流動パラフィン、白色ワセリン)に分散させたベタメタゾン吉草酸エステルは、35℃以上の温度での保存で分散性が低下し、経時的に偏在化する傾向が認められた。この傾向は温度が高くなるほど顕著であった。また、このことから、温度が35℃に満たない場合(例えば、30℃程度)でも、長期保存により、軟膏基剤中でのベタメタゾン吉草酸エステルの分散安定性が低下して、偏在化するリスクがあることが窺われた。
これに対して、表1及び2に示すように、軟膏基剤中にベタメタゾン吉草酸エステルに加えて、クロタミトン、メントール、カンフル、グリチルレチン酸、アラントイン、ジフェンヒドラミン、及びトコフェロール酢酸エステルを単独または組み合わせて配合することで、ベタメタゾン吉草酸エステルの分散安定性が改善され、偏在化が抑制できることが確認された。特に、メントール、カンフル、グリチルレチン酸、アラントイン、及びトコフェロール酢酸エステルに高い効果が認められた。
実験例2 軟膏剤中のベタメタゾン吉草酸エステルの状態の確認
前記比較例1及び実施例3の軟膏剤(調製直後)を、スライドガラス上に均一に薄く塗りプレパラートを調製した後、顕微鏡で、視野範囲(0.24mm2)中に含まれているベタメタゾン吉草酸エステルの粒の数を数えた。
結果を表3に示す。
Figure 2023044681000003
この結果から、実験例1の実施例3で認められた効果は、軟膏基剤中のベタメタゾン吉草酸エステルの溶解性を向上しているのではなく、分散性を安定化しているものと考えられる。つまり、実施例3において、カンフルは溶解補助剤として機能しているのではないことが確認された。実験例1の他の成分も同様であると考えられる。
実験例2 軟膏剤の調製とその安定性評価(その2)
実験例1の実施例2の結果を踏まえて、メントールの配合量を変えて、同様の試験を行った。結果を表4に示す。
Figure 2023044681000004
表4に示すように、少なくとも0.1~5%濃度のメントールを配合することで、軟膏基剤中でのベタメタゾン吉草酸エステルの分散安定性が改善されて、偏在化が抑制できることが確認された。

Claims (6)

  1. (A)ベタメタゾン吉草酸エステルと、
    (B)軟膏基剤とを含有し、
    (C)クロタミトン、メントール、カンフル、グリチルレチン酸、アラントイン、ジフェンヒドラミン及びその塩、及びトコフェロール酢酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする、軟膏剤。
  2. 前記(B)軟膏基剤が、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、白色ワセリン、マクロゴールよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載する軟膏剤。
  3. (A)ベタメタゾン吉草酸エステルと(B)軟膏基剤とを含有する軟膏剤中におけるベタメタゾン吉草酸エステルの分散安定性を改善するための、前記軟膏剤の製造方法であって、
    (A)ベタメタゾン吉草酸エステル、及び(B)軟膏基剤に加えて、
    (C)クロタミトン、メントール、カンフル、グリチルレチン酸、アラントイン、ジフェンヒドラミン及びその塩、及びトコフェロール酢酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種を配合する工程を有することを特徴とする、前記製造方法。
  4. 前記分散安定性改善が、35℃以上の温度条件下における軟膏剤中の(A)ベタメタゾン吉草酸エステルの偏在化の抑制である、請求項3に記載する製造方法。
  5. (A)ベタメタゾン吉草酸エステルと、(B)軟膏基剤とを含有する軟膏剤中におけるベタメタゾン吉草酸エステルの分散安定性の改善方法であって、
    前記軟膏剤中に、(A)ベタメタゾン吉草酸エステルと、(B)軟膏基剤と、
    (C)クロタミトン、メントール、カンフル、グリチルレチン酸、アラントイン、ジフェンヒドラミン及びその塩、及びトコフェロール酢酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種とを共存させることを特徴とする、前記方法。
  6. 前記分散安定性改善が、35℃以上の温度条件下における軟膏剤中の(A)ベタメタゾン吉草酸エステルの偏在化の抑制である、請求項5に記載する方法。
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