JP2023044089A - ハイブリッド車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハイブリッド車両において、燃料消費量の悪化を抑制しつつ排気ガス中のNOx量を削減する。【解決手段】パワー分配部103は、アシスト電力あたりの燃料消費量の削減量である燃費アシストコストが燃費収支コストより大きく、かつ、アシスト電力あたりのNOx低減量である排気NOxアシストコストが所定値より大きいとき、アシスト走行モードによる走行を行うよう、EG指令パワーPeとMG指令パワーPmを算出する。【選択図】図2
Description
本開示は、ハイブリッド車両に関する。
車両の動力源として、内燃機関およびモータジェネレータ(回転電機)を備えたハイブリッド車両が知られている。ハイブリッド車両においては、車両の走行に必要な動力を、内燃機関の出力とモータジェネレータの出力とで分担して走行する。たとえば、内燃機関から必要な動力を出力するEG走行モード、モータジェネレータから必要な動力を出力するEV走行モード、内燃機関およびモータジェネレータから必要な動力を出力するアシスト走行モード、および、走行に必要な動力以上の出力を内燃機関から出力し、内燃機関の出力により発電を行いつつ走行を行う発電モードを切り替えて、走行することができる。
たとえば、特開2015-77923号公報(特許文献1)に開示されたハイブリッド車両では、EV走行モードにおける燃料消費削減量を消費電力で除したEV効果が、内燃機関の出力により発電を行う場合の燃料消費増加量を発電電力で除して算出されるエンジン発電コストよりも大きいとき、EV走行モードを選択することにより、燃費を向上している。
特許文献1には、内燃機関の効率等を考慮して、EV走行モード、エンジン走行モード、および、発電モードを選択する走行モード選択部が開示されているが、アシスト走行モードの選択については言及されていない。
アシスト走行モードにおいては、車両の走行に必要な動力をモータジェネレータの出力で分担し内燃機関の出力を抑制できるので、必要な動力を内燃機関から出力するエンジン走行モードに比較して、内燃機関の燃料消費量の削減を期待できるとともに、特に、加速時における内燃機関の排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)の量を削減することが期待できる。しかし、モータジェネレータの出力を大きくすると、モータジェネレータで消費する電力が増大するため、発電モードにおける内燃機関の出力が大きくなり、燃料消費量の増加やNOx量の増加を招く。
したがって、内燃機関の排ガス中のNOx量の削減を図るため、アシスト走行モードにおけるモータジェネレータの出力を大きくすると、NOxの削減量に対して燃料消費量の悪化が顕著になるという問題がある。
本開示の目的は、ハイブリッド車両において、燃料消費量の悪化を抑制しつつ排気ガス中のNOx量を削減することである。
本開示のハイブリッド車両は、内燃機関と回転電機を含む動力源と、回転電機に電力を供給する蓄電装置と、内燃機関と回転電機を制御する制御装置と、を備えたハイブリッド車両である。制御装置は、要求駆動パワーを算出する要求駆動パワー算出部と、要求駆動パワーと蓄電装置のSOCに基づいて、内燃機関から出力されるEGパワーと回転電機から出力されるMGパワーとを算出するパワー分配部と、要求駆動パワーのすべてをEGパワーに分配したときに内燃機関が単位時間あたりに消費する燃料消費量と、回転電機からMGパワーを出力したときに内燃機関が単位時間あたりに消費する燃料消費量との差であるアシスト燃費低減量を算出する燃費低減量算出部と、MGパワーを出力するために、蓄電装置から回転電機に供給する電力であるアシスト電力を取得するアシスト電力取得部と、アシスト燃費低減量をアシスト電力で除することにより求められる燃費アシストコストを算出する燃費アシストコスト算出部と、アシスト電力に相当する電力を蓄電装置へ充電するために、EGパワーを用いて発電される発電電力を取得する発電電力取得部と、EGパワーを用いて発電電力を発電するために、内燃機関が単位時間当たりに消費する燃料消費量である発電燃費増加量を算出する発電燃費増加量算出部と、発電燃費増加量を発電電力で除することにより求められる燃費発電コストを算出する燃費発電コスト算出部と、アシスト電力あたりの排気NOx量の低減量に相当する排気NOxアシストコストを算出する排気NOxアシストコスト算出部と、所定期間の走行において、燃費アシストコストが燃費収支コストより大きいときにアシスト電力により回転電機を駆動し、かつ、燃費発電コストが燃費収支コストより小さいときにEGパワーを用いて発電電力を発電した場合に、アシスト電力と発電電力との収支が釣り合う燃費収支コストを取得する燃費収支コスト取得部と、を備える。パワー分配部は、燃費アシストコストが燃費収支コストより大きく、かつ、排気NOxアシストコストが所定値より大きいとき、EGパワーとMGパワーを用いて走行するよう、EGパワーとMGパワーとを算出する。
この構成によれば、ハイブリッド車両は、内燃機関から出力されるEGパワーと回転電機から出力されるMGパワーを用いて走行する。制御装置のパワー分配部は、要求駆動パワーと蓄電装置のSOCに基づいて、内燃機関から出力されるEGパワーと回転電機から出力されるMGパワーとを算出する。燃料低減量算出部は、要求駆動パワーのすべてをEGパワーに分配したときに内燃機関が単位時間あたりに消費する燃料消費量と、回転電機からMGパワーを出力したときに内燃機関が単位時間あたりに消費する燃料消費量との差であるアシスト燃費低減量を算出する。アシスト燃費低減量は、EGパワーに加えてMGパワーを用いて走行した場合における、燃料消費量の低減量である。
アシスト電力取得部は、MGパワーを出力するために、蓄電装置から回転電機に供給する電力であるアシスト電力を取得する。燃費アシストコスト算出部は、アシスト燃費低減量をアシスト電力で除することにより燃費アシストコストを算出する。燃費アシストコストは、アシスト電力あたりの燃料消費量の削減量である。
発電電力取得部は、アシスト電力に相当する電力を蓄電装置へ充電するために、EGパワーを用いて発電される発電電力を取得し、発電燃費増加量算部は、EGパワーを用いて発電電力を発電するために、内燃機関が単位時間当たりに消費する燃料消費量である発電燃費増加量を算出する。発電燃費増加量は、アシスト電力に相当する電力を発電する際に必要となる燃料消費量の増加量である。
燃費発電コスト算出部は、発電燃費増加量を発電電力で除することにより燃費発電コストを算出する。燃費発電コストは、発電電力あたりの燃料消費量の増加量である。
排気NOxアシストコスト算出部は、アシスト電力あたりの排気NOx量の低減量に相当する排気NOxアシストコストを算出する。排気NOx量は、内燃機関の排気ガス中のNOx量である。アシスト電力を用いてMGパワーを出力すると、EGパワーを小さくすることができるので、排気NOx量が低減する。
燃費収支コスト取得部は、所定期間の走行において、燃費アシストコストが燃費収支コストより大きいときアシスト電力により回転電機を駆動し、かつ、燃費発電コストが燃費収支コストより小さいときEGパワーを用いて発電電力を発電した場合に、アシスト電力と発電電力の収支が釣り合う、燃費収支コストを取得する。パワー分配部は、燃費アシストコストが燃費収支コストより大きく、かつ、排気NOxアシストコストが所定値より大きいとき、EGパワーとMGパワーを用いて走行するよう、EGパワーとMGパワーとを算出する。
燃費アシストコストが燃費収支コストより大きいとき、回転電機からMGパワーを出力して走行すると、燃費アシストコストが燃費収支コストより小さいときにMGパワーを出力して走行する場合に比較して、アシスト電力あたりの燃料消費量の削減量が大きくなる。また、排気NOxアシストコストが所定値より大きいときに、MGパワーを出力して走行すると、排気NOxアシストコストが所定値より小さい場合にMGパワーを出力して走行する場合に比較して、アシスト電力あたりのNOx削減量が大きくなる。したがって、燃費アシストコストが燃費収支コストより大きく、かつ、排気NOxアシストコストが所定値より大きいとき、EGパワーとMGパワーを用いて走行するので、燃料消費量の悪化を抑制しつつ排気ガス中のNOx量を削減することが可能になる。
制御装置は、発電電力あたりの排気NOxの増加量に相当する排気NOx発電コストを算出する排気NOx発電コスト算出部をさらに備え、パワー分配部は、燃費発電コストが燃費収支コストより小さく、かつ、排気NOx発電コストが所定値より小さいとき、EGパワーを用いて発電電力を発電しながら走行するよう、EGパワーを算出してもよい。
この構成によれば、排気NOx発電コスト算出部は、発電電力あたりの排気NOxの増加量に相当する排気NOx発電コストを算出する。発電電力はEGパワーを用いて発電されるので、発電電力を発電する際に排気NOx量が増加する。燃費発電コストが燃費収支コストより小さいとき、EGパワーを用いて発電電力を発電すると、燃費発電コストが燃費収支コストより大きいときにEGパワーを用いて発電する場合に比較して、発電電力あたりの燃料消費量の増加量が小さくなる。また、排気NOx発電コストが所定値より小さいときに、EGパワーを用いて発電すると、排気NOx発電コストが所定値より大きい場合にEGパワーを用いて発電する場合に比較して、発電電力あたりのNOx増加量が小さく。したがって、燃費発電コストが燃費収支コストより小さく、かつ、排気NOx発電コストが所定値より小さいとき、EGパワーを用いて発電電力を発電しながら走行するので、燃料消費量の悪化とNOx量の増加を抑制することが可能になる。
制御装置は、内燃機関の運転状態に基づいて、内燃機関の燃料噴射量あたりの排ガス中のNOx量を表す排気NOx感度を算出する排気NOx感度算出部をさらに備え、排気NOxアシストコスト算出部は、燃費アシストコストと排気NOx感度に基づいて、排気NOxアシストコストを算出するようにしてもよい。また、排気発電コスト算出部は、燃費発電コストと排気NOx感度に基づいて、排気NOx発電コストを算出するようにしてもよい。
所定値は、所定期間の走行における、内燃機関の排ガス中のNOx量と内燃機関の燃料消費量の関係において、NOx量の減少に対する燃料消費量の増加が設定値以上になるアシスト量に基づいて設定されてもよい。なお、アシスト量は、EGパワーとMGパワーを用いて走行する際のMGパワーである。
所定期間の走行において、MGパワー(アシスト量)が大きくなるに伴い排ガス中のNOx量は減少するが、MGパワー(アシスト量)が大きくなりすぎると、アシスト電力に相当する電力をEGパワーを用いて発電する必要があるため、NOxの削減量に対して燃料消費量の増加が顕著になる。所定値を、NOx量の減少(NOxの削減量)に対する燃料消費量の増加が設定値以上になるMGパワー(アシスト量)に基づいて設定することにより、NOxの削減量に対して燃料消費量の増加が顕著になることを抑止できる。
所定期間の走行は、予め定められた走行モードであってよい。
ハイブリッド車両の走行状態は、運転者(ユーザ)や使用環境によって異なるので、本開示によって好適な効果を得るためには、所定期間の走行を実際の走行状態に合わせることが望ましい。したがって、所定期間の走行を、一般的な走行環境に近い走行モード、たとえば、所定期間の走行を、WLTC(Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycle)における「市街地走行」や「郊外走行」の走行モードによる走行とすることにより、好適に、燃料消費量の悪化を抑制しつつ排気ガス中のNOx量を削減することが可能になる。
ハイブリッド車両の走行状態は、運転者(ユーザ)や使用環境によって異なるので、本開示によって好適な効果を得るためには、所定期間の走行を実際の走行状態に合わせることが望ましい。したがって、所定期間の走行を、一般的な走行環境に近い走行モード、たとえば、所定期間の走行を、WLTC(Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycle)における「市街地走行」や「郊外走行」の走行モードによる走行とすることにより、好適に、燃料消費量の悪化を抑制しつつ排気ガス中のNOx量を削減することが可能になる。
本開示によれば、ハイブリッド車両において、燃料消費量の悪化を抑制しつつ排気ガス中のNOx量を削減することができる。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係るハイブリッド車両1の全体構成を示す図である。ハイブリッド車両1は、動力源として、内燃機関10、およびモータジェネレータ(以下、「MG」と称する。)30を備えたハイブリッッド車両である。
図1は、本実施の形態に係るハイブリッド車両1の全体構成を示す図である。ハイブリッド車両1は、動力源として、内燃機関10、およびモータジェネレータ(以下、「MG」と称する。)30を備えたハイブリッッド車両である。
内燃機関10は、たとえば、圧縮着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)である。内燃機関10は、火花点火式内燃機関(ガソリンエンジン)であってもよい。MG30は、回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石を埋め込んだIPM(Interior Permanent Magnet)同期電動機である。MG30のロータ軸は、K0クラッチ20を介して内燃機関10のクランク軸(出力軸)に接続される。また、MG30のロータ軸は、発進クラッチ40を介して自動変速機50の入力軸に接続される。MG30は、電動機(モータ)として動作するとともに、発電機(ジェネレータ)として動作する。
K0クラッチ20は、油圧式摩擦係合装置(油圧クラッチ)であり、内燃機関10のクランク軸とMG30のロータ軸の間の動力を、遮断あるいは伝達する。K0クラッチ20が係合されることにより、内燃機関10のクランク軸とMG30のロータ軸の間で動力伝達が可能になる。K0クラッチ20が開放されることにより、内燃機関10のクランク軸とMG30のロータ軸の間の動力伝達が遮断される。
K0クラッチ20が係合されているとき、MG30が電動機として動作すると、内燃機関10の出力トルクに加えてMG30の出力トルクが、発進クラッチ40の入力軸に入力され、内燃機関10の出力トルクにMG30の出力トルクが加算され、駆動輪70を駆動することが可能になる(アシスト走行モード)。なお、本開示において、内燃機関10の出力をEGパワーと称し、MG30の出力をMGパワーとも称する。K0クラッチ20が係合されているとき、内燃機関10のクランク軸を介してMG30を駆動することにより、MG30は発電機として動作し、EGパワーを用いた発電が行われる(発電走行モード)。また、MG30は、駆動輪70から入力される被駆動力(制動力)によって、回生発電を行うこともできる。
内燃機関10が停止しているとき、K0クラッチ20を介して、MG30の出力トルクで内燃機関10をクランキングして、内燃機関10を始動することができる。K0クラッチ20を開放した状態で、MG30の出力トルクのみでハイブリッド車両1を走行させることも可能である(EV走行モード)。また、K0クラッチ20が係合しているとき、MG30の指令トルクを0にすることで、内燃機関10の出力トルクのみで走行することが可能である(エンジン走行モード)。
発進クラッチ40は、油圧式摩擦係合装置(油圧クラッチ)であり、MG30のロータ軸と自動変速機50の入力軸の間の動力を、遮断あるいは伝達する。発進クラッチ40が係合されることにより、MG30のロータ軸と自動変速機50の入力軸との間で動力伝達が可能になる。発進クラッチ40が開放されることにより、MG30のロータ軸と自動変速機50の入力軸との間の動力伝達が遮断される。
自動変速機50は、遊星歯車式の多段自動変速機であり、複数の摩擦係合要素の係合および解放の組み合わせを制御することにより、各変速段を達成する。自動変速機50の出力軸は、プロペラシャフトを介してディファレンシャルギヤ60に接続されている。ディファレンシャルギヤ60は、ドライブシャフトを介して駆動輪70に接続されている。
PCU(Power Control Unit)80は、蓄電装置90から受ける直流電力を、MG30を駆動するための交流電力に変換する。また、PCU80は、MG30により発電(回生)された交流電力を、蓄電装置90を充電するための直流電力に変換する。PCU80は、たとえば、インバータと、インバータに供給される直流電圧を蓄電装置90の電圧以上に昇圧するコンバータとを含んで構成される。
蓄電装置90は、再充電可能な直流電源であり、たとえばリチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池を含んで構成される。蓄電装置90は、MG30が発電した電力を受けて充電される。そして、蓄電装置90は、その蓄えられた電力をPCU80へ供給し、MG30が駆動される。
蓄電装置90には、監視ユニット91が設けられる。監視ユニット91には、蓄電装置90の電圧、入出力電流および温度をそれぞれ検出する電圧センサ、電流センサおよび温度センサ(いずれも図示せず)が含まれる。監視ユニット91は、各センサの検出値(蓄電装置90の電圧、入出力電流および温度)をBAT-ECU(Electronic Control Unit)110に出力する。
ハイブリッド車両1は、HV-ECU100と、BAT-ECU120と、E/G-ECU130とを備える。各ECUは、図示しない、CPU(Central Processing Unit)、メモリおよび入出力バッファを含み、各種センサからの信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、各機器の制御を行なう。
HV-ECU100は、内燃機関10を制御するための指令をE/G-ECU130に出力するとともに、MG30を制御するための指令をPCU80に出力する。また、HV-ECU100は、K0クラッチ20、発進クラッチ40、および自動変速機50を制御する。
BAT-ECU120は、監視ユニット91から出力された各センサの検出値に基づいて、蓄電装置90のSOC(State Of Charge)を算出し、HV-ECU100に出力する。
E/G-ECU130は、HV-ECU100の指令に基づき、内燃機関10の出力を制御する。なお、HV-ECU100の指令に基づき、E/G-ECU130で、K0クラッチ20、発進クラッチ40、および自動変速機50を制御してもよく、K0クラッチ20、発進クラッチ40、および自動変速機50を制御する新たなECU(駆動ECU)を設けてもよい。これら各ECUが、本開示の「制御装置」に相当する。
アクセル開度センサ131は、アクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度APを検出する。エンジン回転速度センサ132は、内燃機関の回転速度NEを検出する。車速センサ133は、ハイブリッド車両1の車速SPDを検出する。
図2は、HV-ECU100に構成された機能ブロックを説明する図である。要求駆動パワー算出部101は、ハイブリッド車両1の走行制御のために、たとえば、アクセル開度AP、車速SPD等に基づいて要求駆動トルクTrを算出し、要求トルクTrに駆動輪70の回転速度を乗じて、要求駆動パワーPdを求める。充電要求算出部102は、蓄電装置90のSOCに基づき、充電要求の有無を算出する。
パワー分配部103は、要求駆動パワーPdと充電要求の有無(すなわち、蓄電装置90のSOC)に基づいて、内燃機関10から出力されるEGパワーであるEG指令パワーPeと、MG30から出力されるMGパワーであるMG指令パワーPmを算出する。パワー分配部103で算出されるEG指令パワーPeとMG指令パワーPmの大きさによって、ハイブリッド車両1の走行モードが決定する。
たとえば、EG指令パワーPeを0として、要求駆動パワーPdのすべてをMG指令パワーPmに分配し(Pm=Pd)すると、MGパワーで走行する「EV走行モード」になる。EG指令パワーPeを、MG30を駆動して発電を行うために必要な発電パワーPgと要求駆動パワーPdとを加算した値(Pe=Pd+Pg)とすると、内燃機関10の出力で発電しながら走行する「発電走行モード」となる。EG指令パワーPeを内燃機関10を高効率に運転可能な値とするとともに、要求駆動パワーPdに対するEG指令パワーPeの不足分をMG指令パワーPmで補うよう(Pm=Pd-Pe)、要求駆動パワーPdをEG指令パワーPeおよびMG指令パワーPmに分配すると、EGパワーとMGパワーを用いて走行する「アシスト走行モード」になる。要求駆動パワーPdのすべてをEG指令パワーPeに分配し(Pe=Pd)すると、EGパワーのみで走行する「エンジン走行モード」になる。
図3は、アシスト走行モードを用いた場合における、内燃機関10の排ガス中に含まれるNOx量と内燃機関10の燃料消費量の関係を示す図である。図3において、上段は内燃機関10のから出力されるEGトルク(EGパワー)を示しており、中段は内燃機関10から排出されるNOx量を示しており、下段は内燃機関10の燃料消費量(CO2排出量)を示している。なお、横軸は時間である。
図3において、実線は、アクセル開度AP等によって算出された要求駆動パワーPdのすべてを内燃機関10から出力されるEGパワー(EG指令パワーPe)に分配し、アシスト走行モードを用いない場合(エンジン走行モードで走行した場合)を示している。破線および一点鎖線は、要求駆動パワーの一部をMG30から出力されるMGパワー(MG指令パワーPm)に分配した、アシスト走行モードを用いて走行した場合を示している。以下、アシスト走行モード(EGパワーとMGパワーを用いて走行する走行モード)におけるMGパワーの大きさをアシスト量と称する。破線はアシスト量が小さい場合を示しており、一点鎖線はアシスト量が大きい場合を示している。
アシスト量が小さい場合、図3の上段おいて破線に示すよう、EGパワーの立ち上がり時のEGパワーが、アシスト量の大きさだけ減少する。EGパワーが小さくなるので、内燃機関10から排出されるNOx量が低減するとともに、燃料消費量も低減する。アシスト量が小さい場合、内燃機関10のEGパワーの低減量が小さいため、図3の中段に破線で示すように、NOxの低減量は比較的小さく、また、下段に示すよう、内燃機関10の燃料消費量の低減量も比較的小さい。
アシスト走行モードでは、蓄電装置90からMG30に電力が供給されるので、蓄電装置90のSOCが低下する。アシスト走行モードにおいてMG30に供給される電力をアシスト電力と称すると、アシスト電力の大きさに応じてSOCが低下する。SOCが低下すると、蓄電装置90を充電するために、発電走行モードによる走行が必要になる。アシスト量が小さい場合、アシスト電力が小さいので、アシスト電力に相当する発電電力を発電するのに必要な発電パワーPgも比較的小さく、図3の上段に破線で示すよう、発電走行モードにおけるEGパワー(エンジン指令パワーPe=Pd+Pg)も比較的小さい。このため、図3の中段および下段に破線で示すよう、発電走行モードにおいて、NOxの増加量および燃料消費量の増加量とも、比較的少ない。
アシスト量が大きい場合、図3の上段おいて一点鎖線に示すよう、EGパワーの立ち上がり時のEGパワーが、アシスト量の大きさだけ減少する。アシスト量が大きい場合、内燃機関10のEGパワーの低減量が大きいため、図3の中段に一点鎖線で示すように、NOxの低減量は大きく、また、下段に示すよう、内燃機関10の燃料消費量の低減量も大きい。アシスト量が大きい場合、アシスト電力が小大きいので、アシスト電力に相当する発電電力を発電するのに必要な発電パワーPgも大きくなり、図3の上段に一点鎖線で示すよう、発電走行モードにおけるEGパワー(エンジン指令パワーPe=Pd+Pg)も大きい。このため、図3の中段および下段に一点鎖線で示すよう、発電走行モードにおいて、NOxの増加量および燃料消費量の増加量とも、大きくなる。
このように、アシスト走行モードでは、燃料消費量の低減だけでなくNOx量の低減効果も期待できる。しかし、アシスト量を増加すると、アシスト電力に相当する電力を発電するために、燃料消費量の増大やNOx量の増大を招くので、燃料消費量およびNOx量の削減効果が悪化する。図4は、図3に示した走行における、燃料消費量およびNOx量の削減効果とアシスト量の関係を示す図である。図4において、縦軸は内燃機関10の排ガス中のNOx量(NOx排出量)であり、横軸は内燃機関10の燃料消費量(CO2排出量)である。図4の〇(●)は、アシスト走行モードにおけるアシスト量を所定の値に設定したときにおける、NOx排出量と燃料消費量をプロットしたものであり、破線矢印に示した方向に沿ってアシスト量が大きくなる。
図4は、アシスト走行モードにおいて、MGパワーによって内燃機関10の排ガス中のNOxが減少する量および燃料消費量が減少する量と、発電走行モードにおいて、アシスト電力に相当する電力をEGパワーを用いて発電する際に内燃機関10の排ガス中のNOxが増加する量および燃料消費量が増加する量とによって変化する、内燃機関10の排ガス中のNOx量と燃料消費量の関係を表している。図4に示すように、アシスト量が増加するに伴い、NOx量が減少し燃料消費量が増加する。アシスト量が比較的小さな領域では、NOxの低減量(削減効果)に対して燃料消費量の増加は少ないが、アシスト量が大きくなると、NOxの低減量に対して燃料消費量が大きく増加する。したがって、アシスト走行モードにおけるアシスト量を、図4の●で示したアシスト量に制御することにより、燃料消費量の増加を抑制しつつNOxの低減量を大きくすることができる。●で示した点は、アシスト量の増加によってNOx量が減少する際に、NOxの減少量に対する燃料消費量の増加が急激に大きくなる点である。
本実施の形態では、ハイブリッド車両1が所定期間の走行を行った際、図4の●で示したアシスト量に制御することにより、燃料消費量の増加を抑制しつつNOxの低減量を大きくする。このために、HV-ECU100は、図2に示すように、燃費低減量算出部104、アシスト電力取得部105、燃費アシストコスト算出部106、発電電力取得部107、発電燃費増加量算出部108、燃費発電コスト算出部109、排気NOx感度算出部110、排気NOxアシストコスト算出部111、排気NOx発電コスト算出部112、燃費収支コスト取得部113、を備える。
燃費低減量算出部104は、要求駆動パワー算出部101で算出した要求駆動パワーPdのすべてをEG指令パワーPeに分配したときに内燃機関10が単位時間あたりに消費する燃料消費量FeとMG30からMG指令パワーPm(アシスト量)を出力したときに内燃機関10が単位時間あたりに消費する燃料消費量Faとの差であるアシスト燃費低減量Adを算出する。要求駆動パワーPdのすべてをEG指令パワーPeに分配したときに内燃機関10が単位時間あたりに消費する燃料消費量Feは、たとえば、EGパワーと燃料消費量(単位時間あたりの燃料消費量[g/h])の関係を示すマップから、EG指令パワーPeを要求駆動パワーPdで運転したとき(Pe=Pd)の燃料消費量[g/h]を燃料消費量Feとして算出する。EGパワーと燃料消費量の関係を示すマップは、予め実験等によって作成され、メモリに格納されている。あるいは、燃料消費量Feは、特許文献1に開示されているように、エンジン指令パワーPe、エンジン効率および燃料エネルギ密度から算出するようにしてもよい。
また、要求駆動パワー算出部101で算出した要求駆動パワーPdからMG指令パワーPm(アシスト量)を減算した値のEG指令パワーPe(Pe=Pd-Pm)を用いて、EGパワーと燃料消費量の関係を示すマップから燃料消費量を求め、求めた燃料消費量[g/h]を燃料消費量Faとして算出する。加速時等、要求駆動パワーPdが内燃機関10を高効率に運転可能な領域よりも大きい場合には、要求駆動パワーPdの一部をMG30から出力するMGパワーで分担することにより内燃機関10を高効率領域で運転を行う。たとえば、パワー分配部103において、車速SPDや自動変速機50の変速比(変速段)等の情報から、現在の運転状態において、内燃機関10を効率的に運転可能なEG指令パワーPeを求め、要求駆動パワーPdが内燃機関10を効率的に運転可能なEG指令パワーPeより大きい場合、内燃機関10を効率的に運転可能なEG指令パワーPeと要求駆動パワーPdの差をMG指令パワーPm(アシスト量)として算出する。したがって、要求駆動パワーPdからMG指令パワーPmを減算した値のEG指令パワーPe(Pe=Pd-Pm)は、現在の運転状態において、内燃機関10を効率的に運転可能なEG指令パワーPeに相当する。
燃料消費量Feから燃料消費量Faを減算することにより、アシスト燃費低減量Adを算出する。アシスト燃費低減量Adは、EGパワーに加えてMGパワーを用いて走行した場合(アシスト走行モード)における、燃料消費量の低減量である。
アシスト電力取得部105は、アシスト走行モード時、MGパワーを出力するために、蓄電装置90からMG30に供給する電力であるアシスト電力を取得する。たとえば、MG30からMG指令パワーPmを出力するため、PCU80からMG30に供給する電流指令値からアシスト電力[kW]を算出する。
燃費アシストコスト算出部106は、アシスト燃費低減量Adをアシスト電力で除して燃費アシストコスト[g/kWh]を算出する(燃費アシストコスト[g/kWh]=アシスト燃費低減量Ad[g/h]/アシスト電力[kw])。燃費アシストコストは、アシスト電力あたりの燃料消費量の削減量である。
発電電力取得部107は、アシスト電力に相当する電力を蓄電装置90へ充電するために、EGパワーを用いて発電される発電電力を取得する。アシスト電力取得部105で取得したアシスト電力[kW]の値を、発電電力[kW」として取得してよい。
発電燃費増加量算出部108は、EGパワーを用いて発電電力を発電するために、内燃機関10が単位時間当たりに消費する燃料消費量である発電燃費増加量Hdを算出する。たとえば、EGパワーと燃料消費量(単位時間あたりの燃料消費量[g/h])の関係を示すマップから、EG指令パワーPeを要求駆動パワーPdで運転したとき(Pe=Pd)の燃料消費量[g/h]を燃料消費量Feとして算出する。そして、発電電力取得部107で取得した発電電力を発電する際にMG30を駆動するために必要な発電パワーPgと要求駆動パワーPdを加算した値のEG指令パワーPe(Pe=Pd+Pg)を用いて、EGパワーと燃料消費量の関係を示すマップから求め、求めた燃料消費量[g/h]を燃料消費量Fgとして算出する。そして、燃料消費量Fgから燃料消費量Feを減算することにより、発電燃費増加量Hdを算出する。発電燃費増加量Hdは、アシスト電力に相当する電力を発電する際に必要となる燃料消費量の増加量である。
燃費発電コスト算出部109は、発電燃費増加量Hdを発電電力で除して燃費発電コスト[g/kWh」を算出する(燃費発電コスト[g/kWh」=発電燃費増加量Hd[g/h]/発電電力[kw])。燃費発電コストは、燃費発電コストは、発電電力あたりの燃料消費量の増加量である。
排気NOx感度算出部110は、内燃機関10の運転状態に基づいて内燃機関10の燃料噴射量あたりの排ガス中のNOx量を表す排気NOx感度を算出する。本実施の形態では、1回の燃焼行程における燃料噴射量あたりのNOx量を排気NOx感度として求める(排気NOx感度=1回の燃料噴射量/NOx量)。図5は、排気NOx感度を算出するためのマップの例を示す図である。図5において、縦軸は内燃機関10の負荷(アクセル開度AP)であり、横軸は内燃機関10の回転速度NEである。内燃機関10から排出されるNOx量は、高負荷・高回転であるほど大きくなるので、図5に示すように、排気NOx感度は、高負荷・高回転側ほど大きな値になる。排気NOx感度算出部110は、負荷(アクセル開度AP)と回転速度NEを用いて、図5のマップから排気NOx感度を算出する。
排気NOxアシストコスト算出部111は、燃費アシストコストと排気NOx感度に基づいて、排気NOxアシストコストを算出する。たとえば、燃費アシストコストと排気NOx感度を乗算することにより、排気NOxアシストコストを算出する(排気NOxアシストコスト=燃費アシストコスト×排気NOx感度)。排気NOxアシストコストは、アシスト電力あたりのNOx低減量に相当する。
排気NOx発電コスト算出部112は、燃費発電コストと排気NOx感度に基づいて、排気NOx発電コストを算出する。たとえば、燃費発電コストと排気NOx感度を乗算することにより、排気NOx発電コストを算出する(排気NOx発電コスト=燃費発電コスト×排気NOx感度)。排気NOx発電コストは、発電電力あたりのNOx増加量に相当する。
燃費収支コスト取得部113は、燃費収支コストを算出する。燃費収支コストは、ハイブリッド車両1の所定期間の走行において、燃費アシストコストが燃費収支コストより大きいときアシスト走行モードで走行し(アシスト電力によりMG30を駆動し)、かつ、燃費発電コストが燃費収支コストより小さいとき発電走行モードで走行した場合(EGパワーを用いて発電電力を発電した場合)に、アシスト電力と発電電力の収支が釣り合う値である。図6は、燃費収支コストについて説明する図である。図6(A)は、WLTCの「市街地モード」および「郊外モード」(以下、「所定走行モード」と称する)で走行した場合における、燃費アシストコストを示している。この燃費アシストコストは、ハイブリッド車両1が所定走行モードで走行した際に、要求駆動パワーPdが内燃機関10を効率的に運転可能なEG指令パワーPeより大きいとき、パワー分配部103で上記のように算出されるMG指令パワーPm(アシスト量)と、MG指令パワーPm(アシスト量)の出力に必要なアシスト電力に基づいて、算出される。たとえば、ハイブリッド車両1を所定走行モードで走行した実験、あるいは、シミュレーション等によって、図6(A)に示した燃費アシストコストを得ることができる。
図6(B)は、所定走行モードを走行した場合における、燃費発電コストを示している。この燃費発電コストは、図6(A)において燃費アシストコストを算出した際のアシスト電力に相当する電力(発電電力)を発電するために必要な発電パワーPgに基づいて算出される。たとえば、所定走行モードにおいて、要求駆動パワーPdが正(+)の場合に、要求駆動パワーPdの発電パワーPgを加算した値をEG指令パワーPe(Pe=Pd+Pg)として走行した場合における燃費発電コストを、実験あるいはシミュレーション等によって求める。
図6(C)は、図6(A)において破線で示した閾値より燃費アシストコストが大きいときに、アシスト走行モードで走行した場合(アシスト電力によりMG30を駆動した場合)におけるアシスト電力(蓄電装置90から放電される放電電力)を示した図である。また、図6(D)は、図6(B)において破線で示した閾値(図6(A)の閾値と同じ値である)より燃費発電コストが小さいときに、発電走行モードで走行した場合(要求駆動パワーPdに発電パワーPgを加算して走行した場合)における発電電力(蓄電装置90からに充電される充電電力)を示した図である。
図6(C)および(D)において、破線で示した閾値が大きくなると、アシスト電力(放電電力)の電力量(図6(C)のアシスト電力で囲まれた面積)が小さくなり、発電電力(充電電力)の電力量(図6(D)発電電力で囲まれた面積)が大きくなる。また、閾値が小さくなると、アシスト電力(放電電力)の電力量が大きくなり、発電電力(充電電力)が小さくなる。したがって、破線で示した閾値の大きさを調整することにより、アシスト電力の電力量と発電電力の電力量を調整することができる。実験等により、アシスト電力の電力量と発電電力の電力量が同じになる(所定走行モードの走行において、アシスト電力と発電電力の収支が釣り合う)閾値の値を求め、メモリに記憶されている。燃費収支コスト取得部113は、メモリから閾値を読み出し、その閾値を燃費収支コストとして取得する。
パワー分配部103は、燃費アシストコスト算出部106で算出した燃費アシストコストが、燃費収支コスト取得部113で取得した燃費収支コストより大きく、かつ、排気NOxアシストコスト算出部111で算出した排気NOxアシストコストが所定値より大きいとき、アシスト走行モードで走行するよう、EG指令パワーPeとMG指令パワーPmを算出する。たとえば、車速SPDや自動変速機50の変速比(変速段)等の情報から、現在の運転状態において、内燃機関10を効率的に運転可能なEG指令パワーPeを算出する。要求駆動パワーPdからEG指令パワーPeを減じた値を、MG指令パワーPmとして算出する。そして、内燃機関10の出力がEG指令パワーPeとなるよう、E/G-ECU130を介して内燃機関10が制御されるとともに、MG30の出力がMG指令パワーPmとなるようPCU80が制御される。
燃費アシストコストは、アシスト電力あたりの燃料消費量の削減量であるので、燃費アシストコストが燃費収支コストより大きいときにアシスト走行モードで走行することにより、燃費の悪化を抑制しつつNOx量の削減を図れる。しかしながら、燃費アシストコストが燃費収支コストより大きいすべての運転状態においてアシスト走行モードの走行を行うと、図4において説明したように、アシスト量が大きくなり、NOxの低減量に対して燃料消費量が大きく増加する。所定値は、所定走行モードにおいて、アシスト量を図4に●で示したアシスト量に制御するための値である。図4の●は、内燃機関10の排ガス中のNOx量と内燃機関10の燃料消費量の関係において、アシスト量の増加によってNOx量が減少する際に、NOxの減少量に対する燃料消費量の増加が急激に大きくなる点であり、NOxの減少量に対する燃料消費量の増加が設定値以上になるアシスト量である。たとえば、設定値は、図4に示した、内燃機関の排ガス中のNOx量と内燃機関の燃料消費量の関係において、アシスト量が増大した際に曲率が変化する点から定めるようにしてよい。
排気NOxアシストコストが所定値より大きいときに、アシスト走行モードによる走行を行うと、図4の●で示したアシスト量になるような所定値を、ハイブリッド車両1を所定走行モードで走行した実験、あるいは、シミュレーション等により求め、予めメモリに記憶しておく。パワー分配部103は、メモリから所定値を読み出すことにより、排気NOxアシストコストと所定値を比較する。排気NOxアシストコストは、アシスト電力あたりのNOx低減量(NOx削減量)であり、排気NOxアシストコストが所定値より大きい運転状態においてアシスト走行モードで走行することにより、NOxの低減量に対して燃料消費量が大きく増加することを抑制できる。
パワー分配部103は、燃費発電コスト算出部109で算出した燃費発電コストが、燃費収支コスト取得部113で取得した燃費収支コストより小さく、かつ、排気NOx発電コスト算出部112で算出した排気NOx発電コストが所定値より小さいとき、発電走行モードで走行するよう、EG指令パワーPeを算出する。たとえば、要求駆動パワーPdに発電パワーPgを加算した値をEG指令パワーPe(Pe=Pd+Pg)とする。そして、内燃機関10の出力がEG指令パワーPeとなるよう、E/G-ECU130を介して内燃機関10を制御するとともに、EGパワーでMG30を駆動し発電を行う。MG30で発電された電力(発電電力)は、蓄電装置90に充電される。
燃費発電コストは、発電電力あたりの燃料消費量の増加量であるので、燃費発電コストが燃費収支コストより小さいときに発電走行モードで走行することにより、燃費の悪化を抑制できる。しかしながら、燃費発電コストが燃費収支コストより小さいすべての運転状態において発電走行モードで走行すると、燃費悪化の抑制効果が小さくなるとともにNOx量が大きくなる。そこで、排気NOx発電コストが、排気NOxアシストコストの比較に用いた所定値(排気NOxアシストコストが所定値より大きいときに、アシスト走行モードによる走行を行うと、図4の●で示したアシスト量になるような所定値)より小さなときに発電走行モードを実行する。排気NOx発電コストは、発電電力あたりのNOx増加量であり、排気NOx発電コストが所定値より小さい運転状態において発電走行モードで走行することにより、燃費の悪化とNOx量の増加を抑制する。また、排気NOxアシストコストと排気NOx発電コストの比較値(閾値)として、同じ所定値を用いているので、所定走行モードの走行におけるアシスト電力と発電電力の収支も釣り合う。
図7は、HV-ECU100で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、ハイブリッド車両1の走行中に所定期間毎に繰り返し処理される。まず、ステップ(以下、ステップを「S」と省略する)10において、蓄電装置90の強制充電が必要か否かを判定する。蓄電装置90のSOCが下限値以下のとき、強制充電が必要であると判定され(肯定判定され)、今回のルーチンを終了する。なお、強制充電が必要な場合は、たとえば、発電パワーPgを最大値に設定した発電走行モードによる走行を実行してよい。強制充電が必要でない場合には、否定判定されてS11へ進む。
S11では、蓄電装置90の強制放電が必要か否かを判定する。たとえば、長い下り坂を走行し、回生電力により蓄電装置90のSOCが上限値を超えた場合、強制放電が必要であると判定される。強制放電が必要であり肯定判定されると、今回のルーチンを終了する。なお、強制放電が必要な場合は、たとえば、EV走行モードの領域を拡大し、電力を使用した走行を積極的に行ってよい。強制放電が必要でない場合には、否定判定されS12へ進む。
S12では、燃費アシストコスト算出部106で燃費アシストコストを算出し、燃費発電コスト算出部109で燃費発電コストを算出し、排気NOxアシストコスト算出部111で排気NOxアシストコストを算出し、排気NOx発電コスト算出部112で排気NOx発電コストを算出して、S13へ進む。
S13において、パワー分配部103は、燃費アシストコストが燃費収支コストより大きいか否かを判定する。燃費アシストコストが燃費収支コストより大きい場合、肯定判定されS14に進む。燃費アシストコストが燃費収支コスト以下の場合には、否定判定されS16へ進む。
S14では、排気NOxアシストコストが所定値より大きいか否かを判定する。排気NOxアシストコストが所定値より大きいとき、肯定判定されS15へ進む。排気NOxアシストコストが所定値以下の場合には、否定判定されS19へ進む。
S15では、アシスト走行モードによる走行が実行される。たとえば、現在の運転状態において、内燃機関10を効率的に運転可能なEG指令パワーPeを算出し、要求駆動パワーPdからEG指令パワーPeを減じた値を、MG指令パワーPmとして算出する。そして、内燃機関10の出力がEG指令パワーPeとなるよう内燃機関10を制御するとともにMG30の出力がMG指令パワーPmとなるよう制御して、アシスト走行モードによる走行を行う。
S16では、燃費発電コストが燃費収支コストより小さいか否かを判定する。燃費発電コストが燃費収支コストより小さい場合、肯定判定されS17に進む。燃費発電コストが燃費収支コスト以上の場合には、否定判定されS19へ進む。
S17では、排気NOx発電コストが所定値より小さいか否かを判定する。排気NOx発電コストが所定値より小さいとき、肯定判定されS18へ進む。排気NOx発電コストが所定値以上の場合には、否定判定されS19へ進む。
S18では、発電走行モードによる走行が実行される。たとえば、要求駆動パワーPdに発電パワーPgを加算した値をEG指令パワーPe(Pe=Pd+Pg)とし、内燃機関10の出力がEG指令パワーPeとなるよう制御するとともに、EGパワーでMG30を駆動し発電を行いながら走行する。
S19では、エンジン走行モードによる走行が実行され、EG指令パワーPeを要求駆動パワーPdとして(Pe=Pd)、内燃機関10の出力で走行する。この場合、MG指令パワーPmは、0に設定される。
本実施の形態では、燃費アシストコストが燃費収支コストより大きく、かつ、排気NOxアシストコストが所定値より大きいとき、アシスト走行モードによって、EGパワーとMGパワーを用いて走行するので、燃料消費量の悪化を抑制しつつ排気ガス中のNOx量を削減することが可能になる。また、燃費発電コストが燃費収支コストより小さく、かつ、排気NOx発電コストが所定値より小さいとき、発電走行モードによって、EGパワーを用いて発電電力を発電しながら走行するので、燃料消費量の悪化とNOx量の増加を抑制することが可能になる。
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、排気NOxアシストコスト算出部111は、燃費アシストコストと排気NOx感度に基づいて、排気NOxアシストコストを算出している。また、排気NOx発電コスト算出部112は、燃費発電コストと排気NOx感度に基づいて、排気NOx発電コストを算出している。実施の形態2では、実験やシミュレーションによって予め設定した、内燃機関10のNOx排出量マップを用いて、排気NOxアシストコストおよび排気NOx発電コストを算出する。図8は、内燃機関10のNOx排出量のマップの一例を示す図である。図8おいて、縦軸は内燃機関10の出力トルクTqであり、横軸は回転速度NEであり、このマップは、実験等によって予め設定され、HV-ECU100のメモリに格納されている。出力トルクTrと回転速度NEをパラメータとして、NOx排出量D*[g/h]を図8のマップから求めることができる。
上記実施の形態1では、排気NOxアシストコスト算出部111は、燃費アシストコストと排気NOx感度に基づいて、排気NOxアシストコストを算出している。また、排気NOx発電コスト算出部112は、燃費発電コストと排気NOx感度に基づいて、排気NOx発電コストを算出している。実施の形態2では、実験やシミュレーションによって予め設定した、内燃機関10のNOx排出量マップを用いて、排気NOxアシストコストおよび排気NOx発電コストを算出する。図8は、内燃機関10のNOx排出量のマップの一例を示す図である。図8おいて、縦軸は内燃機関10の出力トルクTqであり、横軸は回転速度NEであり、このマップは、実験等によって予め設定され、HV-ECU100のメモリに格納されている。出力トルクTrと回転速度NEをパラメータとして、NOx排出量D*[g/h]を図8のマップから求めることができる。
HV-ECU100は、要求駆動パワー算出部101で算出した要求駆動パワーPdのすべてをEG指令パワーPeに分配したときに内燃機関10から出力される出力トルクTqとエンジン回転速度NEをパラメータとして、図8のマップから、NOx排出量Deを算出する。HV-ECU100は、要求駆動パワー算出部101で算出した要求駆動パワーPdからMG指令パワーPmを減算した値のEG指令パワーPe(Pe=Pd-Pm)で内燃機関10を運転したときに、内燃機関10から出力される出力トルクTqとエンジン回転速度NEから、図8のマップから、アシスト有りのNOx排出量Daを算出する。HV-ECU100は、発電電力取得部107で取得した発電電力を発電する際にMG30を駆動するために必要な発電パワーPgと要求駆動パワーPdを加算した値のEG指令パワーPe(Pe=Pd+Pg)を用いて内燃機関10を運転したときに、内燃機関10から出力される出力トルクTqとエンジン回転速度NEから、図8のマップから、MG発電時のNOx排出量Dhを算出する。
HV-ECU100は、NOx排出量DeからNOx排出量Daを減算することにより、排気NOx低減量Ddを算出する。そして、排気NOx低減量Ddを、アシスト電力取得部105で取得したアシスト電力で除することにより、アシスト電力あたりのNOx低減量に相当する排気NOxアシストコストを算出する。
HV-ECU100は、NOx排出量DhからNOx排出量Deを減算することにより、排気NOx増加量Diを算出する。そして、排気NOx増加量Diを、発電電力取得部107で取得した発電電力で除することにより、発電電力あたりのNOx増加量に相当する排気NOx発電コストを算出する。
実施の形態2において、排気NOxアシストコストおよび排気NOx発電コストの算出方法以外は、実施の形態1と同様であり、上記のように算出された排気NOxアシストコストおよび排気NOx発電コストを用いて、図7のフローチャートが実行される。この実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、燃費アシストコストが燃費収支コストより大きく、かつ、排気NOxアシストコストが所定値より大きいとき、アシスト走行モードによって、EGパワーとMGパワーを用いて走行するので、燃料消費量の悪化を抑制しつつ排気ガス中のNOx量を削減することが可能になる。また、燃費発電コストが燃費収支コストより小さく、かつ、排気NOx発電コストが所定値より小さいとき、発電走行モードによって、EGパワーを用いて発電電力を発電しながら走行するので、燃料消費量の悪化とNOx量の増加を抑制することが可能になる。
上記の実施の形態では、「燃費収支コスト」および「所定値」は、所定走行モードで走行した実験等により求め、予めメモリに記憶されている。この「燃費収支コスト」および「所定値」の少なくとも一方を、ハイブリッド車両1の走行状態等によって変更してもよい。たとえば、ハイブリッド車両1の走行状況が所定走行モードと大きく乖離する場合や蓄電装置90が劣化した場合等においては、好適に、燃料消費量の悪化を抑制しつつ排気ガス中のNOx量を削減することができない場合がある。また、ハイブリッド車両1が走行する環境(地域等)によっては、燃費より排気エミッションを優先することが望まれたり、排気エミッションより燃費を優先することが望まれたりする場合もある。したがって、ハイブリッド車両1の走行中の電力消費量、走行状況、使用領域などを学習・予測することにより、燃費収支コストおよび所定値の少なくとも一方を、ハイブリッド車両1の走行状態に応じて変更するようにしてもよい。これによって、要求される燃費収支コストおよび所定値の少なくとも一方を走行中に変更することにより、より好適に、燃料消費量の悪化を抑制しつつ排気ガス中のNOx量を削減することができる。
上記の実施の形態では、所定走行モードとして、WLTCの「市街地モード」および「郊外モード」で走行した場合における走行モードを用いていたが、WLTC以外の走行モードであってよい。また、所定値は、代表走行パターンによって予め算出した値であってもよい。長い降坂路等によって蓄電装置90のSOCが上限値以上になる場合などは、所定値を低下して、アシスト走行モードによる走行領域を拡大するようにしてもよい。
上記の実施の形態では、MG30の力行/回生を切り替えることによりアシスト走行モードと発電走行モードを行う、所謂、1モータハイブリッド車に本開示を適用した例について説明を行ったが、2つのモータジェネレータを備えた、所謂、シリーズ・パラレルハイブリッド車にも、本開示を適用することができる。また、1モータハイブリッド車の場合、図1に示したハイブリッド車両1の構成は一例であり、MGやクラッチの配置、各ECUの配置(機能分担)等は、これに限られない。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 ハイブリッド車両、10 内燃機関、20 K0クラッチ、30 モータジェネレータ(MG)、40 発進クラッチ、50 自動変速機、60 ディファレンシャルギヤ、70 駆動輪、80 PCU、90 蓄電装置、91 監視ユニット、100 HV-ECU、101 要求駆動パワー算出部、102 充電要求算出部、103 パワー分配部、104 燃費低減量算出部、105 アシスト電力取得部、106 燃費アシストコスト算出部、107 発電電力取得部、108 発電燃費増加量算出部、109 燃費発電コスト算出部、110 排気NOx感度算出部、111 排気NOxアシストコスト算出部、112 排気NOx発電コスト算出部、113 燃費収支コスト取得部、120 BAT-ECU、130 E/G-ECU、131 アクセル開度センサ、132 エンジン回転速度センサ、133 車速センサ。
Claims (6)
- 内燃機関と回転電機を含む動力源と、前記回転電機に電力を供給する蓄電装置と、前記内燃機関と前記回転電機を制御する制御装置と、を備えたハイブリッド車両であって、
前記制御装置は、
要求駆動パワーを算出する要求駆動パワー算出部と、
前記要求駆動パワーと前記蓄電装置のSOCに基づいて、前記内燃機関から出力されるEGパワーと前記回転電機から出力されるMGパワーとを算出するパワー分配部と、
前記要求駆動パワーのすべてを前記EGパワーに分配したときに前記内燃機関が単位時間あたりに消費する燃料消費量と、前記回転電機から前記MGパワーを出力したときに前記内燃機関が単位時間あたりに消費する燃料消費量との差であるアシスト燃費低減量を算出する燃費低減量算出部と、
前記MGパワーを出力するために、前記蓄電装置から前記回転電機に供給する電力であるアシスト電力を取得するアシスト電力取得部と、
前記アシスト燃費低減量を前記アシスト電力で除することにより求められる燃費アシストコストを算出する燃費アシストコスト算出部と、
前記アシスト電力に相当する電力を前記蓄電装置へ充電するために、前記EGパワーを用いて発電される発電電力を取得する発電電力取得部と、
前記EGパワーを用いて前記発電電力を発電するために、前記内燃機関が単位時間当たりに消費する燃料消費量である発電燃費増加量を算出する発電燃費増加量算出部と、
前記発電燃費増加量を前記発電電力で除することにより求められる燃費発電コストを算出する燃費発電コスト算出部と、
前記アシスト電力あたりの排気NOx量の低減量に相当する排気NOxアシストコストを算出する排気NOxアシストコスト算出部と、
所定期間の走行において、前記燃費アシストコストが燃費収支コストより大きいときに前記アシスト電力により前記回転電機を駆動し、かつ、前記燃費発電コストが前記燃費収支コストより小さいときに前記EGパワーを用いて前記発電電力を発電した場合に、前記アシスト電力と前記発電電力との収支が釣り合う前記燃費収支コストを取得する燃費収支コスト取得部と、を含み、
前記パワー分配部は、前記燃費アシストコストが前記燃費収支コストより大きく、かつ、前記排気NOxアシストコストが所定値より大きいとき、前記EGパワーと前記MGパワーを用いて走行するよう、前記EGパワーと前記MGパワーとを算出する、ハイブリッド車両。 - 前記制御装置は、前記発電電力あたりの排気NOxの増加量に相当する排気NOx発電コストを算出する排気NOx発電コスト算出部をさらに備え、
前記パワー分配部は、前記燃費発電コストが前記燃費収支コストより小さく、かつ、前記排気NOx発電コストが前記所定値より小さいとき、前記EGパワーを用いて前記発電電力を発電しながら走行するよう、前記EGパワーを算出する、請求項1に記載のハイブリッド車両。 - 前記制御装置は、前記内燃機関の運転状態に基づいて、前記内燃機関の燃料噴射量あたりの排ガス中のNOx量を表す排気NOx感度を算出する排気NOx感度算出部をさらに備え、
前記排気NOxアシストコスト算出部は、前記燃費アシストコストと前記排気NOx感度に基づいて、排気NOxアシストコストを算出する、請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両。 - 前記制御装置は、前記内燃機関の運転状態に基づいて、前記内燃機関の燃料噴射量あたりの排ガス中のNOx量を表す排気NOx感度を算出する排気NOx感度算出部をさらに備え、
前記排気NOx発電コスト算出部は、前記燃費発電コストと前記排気NOx感度に基づいて、排気NOx発電コストを算出する、請求項2または請求項3に記載のハイブリッド車両。 - 前記EGパワーと前記MGパワーを用いて走行する際の前記MGパワーをアシスト量と称したとき、
前記所定値は、前記所定期間の走行における、前記内燃機関の排ガス中のNOx量と前記内燃機関の燃料消費量の関係において、NOx量の減少に対する燃料消費量の増加が設定値以上になる前記アシスト量に基づいて設定される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。 - 前記所定期間の走行は、予め定められた走行モードである、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
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