JP2023043420A - 構造物評価システム、構造物評価装置及び構造物評価方法 - Google Patents

構造物評価システム、構造物評価装置及び構造物評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】構造物の表面に与えられる衝撃が一様ではない場合であっても、構造物の評価精度を向上させること。【解決手段】実施形態の構造物評価システムは、3つ以上のセンサと、位置標定部と、評価部とを持つ。3つ以上のセンサは、構造物における第1の方向と、前記第1の方向に直交する第2の方向それぞれに異なる間隔で前記構造物に対して衝撃が与えられる面と異なる面に配置され、前記構造物から発生した弾性波を検出する。位置標定部は、前記3つ以上のセンサそれぞれによって検出された弾性波に基づいて、前記弾性波の発生源の位置を標定する。評価部は、前記位置標定部による位置標定に基づく情報と、前記衝撃が与えられる位置を示す情報とに基づいて、前記構造物の劣化状態を評価する。【選択図】図11

Description

本発明の実施形態は、構造物評価システム、構造物評価装置及び構造物評価方法に関する。
橋梁のような構造物の表面にセンサを設置することで、構造物内部で発生する弾性波を検出することができる。さらに、複数のセンサを構造物の表面に設置することで、各センサで検出した弾性波の到達時刻の差に基づいて、弾性波の発生源(以下「弾性波源」という)の位置を標定することができる。外部から構造物の表面に衝撃を与えた場合にも構造物内部で弾性波が発生する。そのため、弾性波源の位置を標定することができる。
構造物内部における弾性波の伝搬経路に損傷がある場合、弾性波の伝搬が妨げられる。このような場合、弾性波源の標定結果の精度が低下してしまう。降雨時の雨滴による路面への衝突のように空間的に一様に付与される衝撃を構造物の表面に与えて対面に設置されたセンサによって弾性波を検出した場合、内部に損傷を有する領域では弾性波源の密度が低下して観測される。このような特性を利用して、構造物内部の損傷を検出することができる。
一様に付与される衝撃を構造物の表面に与える手法を用いた場合、構造物内部に損傷がなければ弾性波源の分布は一様となる。この手法では、一様に付与される衝撃を構造物の表面に与えることを前提としている。しかしながら、路面に対し手一様に衝撃を与えるためには、雨滴などの自然現象を用いるか、路面を広範囲に渡り打音する必要があった。そのためには、車線規制などを行う必要があり、利用者の利便性を損なう可能性がある。規制の必要がない、限定された範囲のみに衝撃を与えることで、利用制限を回避することも考えられるが、構造物の表面に与えられる衝撃が一様ではない場合には標定精度が低下してしまう場合があった。
国際公開第2017/217034号
本発明が解決しようとする課題は、構造物の表面に与えられる衝撃が一様ではない場合であっても、構造物の評価精度を向上させることをすることができる構造物評価システム、構造物評価装置及び構造物評価方法を提供することである。
実施形態の構造物評価システムは、3つ以上のセンサと、位置標定部と、評価部とを持つ。3つ以上のセンサは、構造物における第1の方向と、前記第1の方向に直交する第2の方向それぞれに異なる間隔で前記構造物に対して衝撃が与えられる面と異なる面に配置され、前記構造物から発生した弾性波を検出する。位置標定部は、前記3つ以上のセンサそれぞれによって検出された弾性波に基づいて、前記弾性波の発生源の位置を標定する。評価部は、前記位置標定部による位置標定に基づく情報と、前記衝撃が与えられる位置を示す情報とに基づいて、前記構造物の劣化状態を評価する。
実施形態における構造物評価システムのセンサ配置に関する概要を説明するための図。 路面を走行する車両の走行部により引き起こされた弾性波の波線とセンサとの関係を説明する図。 従来のセンサ配置の一例を示す図。 従来のセンサ配置の問題点を示す図。 X軸方向のセンサ間隔をずらした時の波線分布の違いを説明するための図。 図5に示したようにセンサを配置した場合の効果を説明するための図。 実施形態における検査範囲を拡大するためのセンサ配置の具体例(その1)を示す図。 実施形態における検査範囲を拡大するためのセンサ配置の具体例(その2)を示す図。 実施形態における検査範囲を拡大するためのセンサ配置の具体例(その3)を示す図。 実施形態における検査範囲を拡大するためのセンサ配置の具体例(その4)を示す図。 第1の実施形態における構造物評価システムの構成を示す図。 第1の実施形態における信号処理部の機能を表す概略ブロック図。 第1の実施形態における構造物評価システムによる劣化状態の評価処理の流れを示すシーケンス図。 第1の実施形態における補正値の一例を示す図。 補正後の弾性波源密度分布の一例を表す図。 第1の実施形態における補正値の別例を示す図。 第2の実施形態における構造物評価システムの構成を示す図。 第3の実施形態における構造物評価システムの構成を示す図。
以下、実施形態の構造物評価システム、構造物評価装置及び構造物評価方法を、図面を参照して説明する。
(概要)
実施形態における構造物評価システムは、構造物の表面(以下「路面」という。)に与えられる衝撃が空間的に一様ではない場合であっても、構造物の評価精度を向上させることができるシステムである。路面に与えられる衝撃が空間的に一様ではない場合とは、評価対象となる領域内において付与される衝撃の位置が偏っている場合である。例えば、路面に与えられる衝撃が空間的に一様ではない場合とは、図1に示すように路面(構造物50の表面)を車両が通行する場合が想定される。
図1は、実施形態における構造物評価システムのセンサ配置に関する概要を説明するための図である。図1に示すような状況下では、車両の走行部W(例えば、タイヤ)と路面との接触により、路面に対して荷重がかかる。路面に対する荷重は、車両の走行部Wによって引き起こされる。このように、車両の走行部Wは、路面に衝撃を与える。その結果、構造物50内で弾性波が発生する。車両の走行部Wと路面との接触した場所が、弾性波源SRとなる。一方で、路面の領域のうち車両の走行部Wが通過していない領域には衝撃が与えられない。
車両の走行部Wにより引き起こされた弾性波を、構造物50の下面に設置された1以上のセンサSで検出した場合、構造物50の内部に損傷を有する領域では弾性波源SRの密度が低下して観測される。このような特性を利用して、構造物50内部の損傷を検出することができる。すなわち、車両の走行部Wが発生させる弾性波が1以上のセンサSまで伝搬するときの波線WLの通過範囲における損傷の有無を評価することができる。
図1(A)には路面を走行する車両の走行部Wと構造物50とを側面から見た場合における波線分布を示し、図1(B)には路面を走行する車両の走行部Wと構造物50とを正面から見た場合における波線分布を示している。なお、図1(A)における矢印は、車両進行方向(第1の方向)を表す。波線分布とは、複数の波線WLの分布を表す。
車両の走行部Wが車両進行方向に向かって走行するため、車両進行方向には連続的に弾性波源SRが存在する。そのため、図1(A)に示すように、波線WLが広範囲に渡りまんべんなく分布していることが分かる。一方で、図1(B)に示すように、車両の走行部Wにより引き起こされた弾性波は、車両の走行部Wが走行する場所である輪荷位置に弾性波源SRが集中する。ここで、輪荷位置とは、車両の走行部Wにより荷重がかかる位置を表す。そのため、構造物50の内部を通過する弾性波の経路が偏っていることが分かる。図1(B)に示すように、波線WLの分布は疎らになり、波線WLが通らない領域が存在することが分かる。この場合、波線WLが通過しない領域に損傷が存在していても、評価できないことになる。
図2は、路面を走行する車両の走行部Wにより引き起こされた弾性波の波線WLとセンサSとの関係を説明する図である。走行する車両の走行部Wと路面との相互作用により発生する弾性波は、十分に長い線音源と仮定することができる。ここでは、座標O(0,0,0)から、十分に長い距離lだけ離れたL(0,l,0)までの線音源とする。このとき、厚さhの構造物50の下面に設置したセンサS(d,y,h)まで伝わる弾性波線群は、図2に示すように、O,L,Sを含む平面R上に載ることになる。波線WLの通過領域が、センサSでカバーできる検査範囲に相当する。
通常、複数のセンサSで所定の検査領域を囲む場合、複数のセンサSの配置は、略正方格子の交点に配置される。橋梁等の構造物の場合、図3に示すように、Z軸方向(例えば、車両進行方向)及びX軸方向(例えば、車両進行方向に直交する方向)(第2の方向)の二軸に対して格子状に配置される。図3に示す各センサSの配置間隔は等しい。この場合、各センサSで検出された弾性波に基づいて劣化状態を評価できる領域は、センサSで囲まれる範囲内である。一般的に、Z軸方向と車両の走行軸方向は一致するため、この場合、Z軸方向の列に着目すると、Z軸方向と平行に各センサSが整列することになる。
Z軸方向と平行関係にある3つのセンサS,S,Sを例とすると、センサS,S,Sで検出される弾性波の波線WLは図4(A)~(C)のようになる。図4(A)~(C)に示す通り、全ての波線WLが同一の平面R上に載っていることが分かる。すなわち、線音源と平行の位置にある複数のセンサSへ向かう波線WLは同一の平面上にあり、通過領域が重複していることになる。検査範囲を拡大するためには、X軸方向のセンサSの配置間隔Δdを十分に小さくする必要があることが分かる。
一方で、Z軸方向のセンサSの配置間隔をΔyとすると、線音源長さlに対してΔyが小さい距離にあるセンサSは波線WLの重複範囲が大きく、センサの数を増やしても、有効な検査範囲を広げることに寄与しないことになる。そこで、センサSの配置において、Z軸方向のセンサ間隔Δyと、X軸方向のセンサ分解能Δdの間に、以下の式(1)に示す関係があるように複数のセンサSを配置することにより、センサ数を増やすことなく、検査範囲を拡大することが可能となる。
Figure 2023043420000002
このときのΔdは、線音源からの距離の分解能に相当し、センサ間隔が一定の場合には、センサ間隔そのものとなる。センサ間隔がばらつく場合には、例えば次のように定義する。N個のセンサS~Sがあったときに、それぞれのセンサと線音源までの距離をd~dとする。d~dを距離昇順に整列させた数列に対して、その階差数列をΔd,・・・,ΔdN-1とすると、その最大値をΔd=max{Δd,・・・,Δd}と定義することができる。また、平均値を用いて、Δd=mean{Δd,・・・,Δd}としてもよい。
X軸方向のセンサ間隔をずらした時の波線分布の違いを図5に示す。図5(A)では、センサSの配置位置(d,y,h)からセンサSをX軸方向にΔdずらした位置(d+Δd,y,h)に配置した場合の波線分布の違いを示している。図5(B)では、センサSの配置位置(d,y,h)からセンサSをX軸方向に-Δdずらした位置(d-Δd,y,h)に配置し、センサSをX軸方向にΔdずらした位置(d+Δd,y,h)に配置した場合の波線分布の違いを示している。図5(A)及び(B)を参照すると、センサSを基準に、X軸方向、すなわち車両進行方向に直交する方向にセンサS,Sの配置をずらすことで検査範囲が拡大されていることがわかる。
図6は、図5に示したようにセンサを配置した場合の効果を説明するための図である。図6(A)には従来のセンサ配置を示し、図6(B)には図5に示したセンサ配置を示している。図6(A)及び図6(B)では、上面図、側面図及び断面図を示している。図6(A)及び図6(B)の各上面図で示す通り、車両走行方向に設置しているセンサSの数は同じであり、車両走行方向に直交する方向におけるセンサSの配置が異なる。その結果、断面図に示す通り、図6(A)に示す従来のセンサ配置では線音源からの距離が同じものは、同一面に波線が載ってしまう。一方で、図6(B)に示す実施形態におけるセンサ配置では線音源からの距離に分散を持たせるように配置させることで、波線が重複しなくなっていることがわかる。これにより、検査範囲が拡大されていることがわかる。
上述した点を踏まえ、検査範囲を拡大するためのセンサ配置の具体的な構成について説明する。
(センサ配置の例1:長方格子)
図7は、実施形態における検査範囲を拡大するためのセンサ配置の具体例(その1)を示す図である。図7では、N×M個(N、Mは2以上の整数)のセンサSを長方格子状に配置する例を示している。N×M個のセンサSを格子の各頂点に配置したとき、車両走行方向(Z軸)に直交する方向(X方向)のセンサ間隔をqとし、車両走行方向に平行な方向のセンサ間隔をpとし、それぞれの平均のセンサ間隔を(‐)q,(‐)p(‐は、qとpそれぞれの上に位置)とする。(‐)q及び(‐)pは、以下の式(2)のように表される。
Figure 2023043420000003
図7に示すセンサ配置は、式(2)における(‐)q,(‐)pが、以下の関係を満たすことを特徴とするセンサ配置である。
(‐)p>(‐)q
このように配置することで、従来と同じ数のセンサを用いた場合、長方格子に配置したほうが車両進行方向の距離が長い。そのため、従来と同じ数のセンサを用いた場合、従来のセンサ配置(略正方格子)に比べて車両進行方向における弾性波の検出範囲を広くすることができる。
(センサ配置の例2:千鳥)
図8は、実施形態における検査範囲を拡大するためのセンサ配置の具体例(その2)を示す図である。図8では、N×M個のセンサSを千鳥配置とする例を示している。すなわち、車両進行方向における各センサSが互い違いの位置となるように配置する。すなわち、図8に示すセンサ配置の具体例(その2)では、N×Mの格子点上で、かつ隣接する格子点にはセンサSが配置されない位置にセンサSを配置する。車両走行方向(Z軸)に直交する方向(X方向)のセンサ間隔をqとし、車両走行方向に平行な方向のセンサ間隔をpとし、それぞれの平均のセンサ間隔を(‐)q,(‐)pとする。(‐)q及び(‐)pは、上記の式(2)のように表される。
図8に示すセンサ配置は、式(2)における(‐)q,(‐)pが、以下の関係を満たすことを特徴とするセンサ配置である。
(‐)p>(‐)q
このように配置することで、少ないセンサ数でも弾性波の検出範囲を広くすることができる。
(センサ配置の例3:傾斜格子)
図9は、実施形態における検査範囲を拡大するためのセンサ配置の具体例(その3)を示す図である。図9では、N×M個のセンサSを傾斜させて配置する例を示している。N×M個のセンサSを傾斜した格子の頂点に配置したとき、車両走行方向(Z軸)に直交する方向(X方向)のセンサ間隔をqとし、車両走行方向に平行な方向のセンサ間隔をpとし、それぞれの平均のセンサ間隔を(‐)q,(‐)pとする。(‐)q及び(‐)pは、上記の式(2)のように表される。
図9に示すセンサ配置は、式(2)における(‐)q,(‐)pが、以下の関係を満たすことを特徴とするセンサ配置である。
(‐)p>(‐)q
このように配置することで、弾性波が各センサSまで伝搬するときの波線の重複を従来よりも少なくすることができる。そのため、従来と同じ数のセンサを用いた場合、従来のセンサ配置(略正方格子)に比べて弾性波の検出範囲を広くすることができる。
(センサ配置の例4:不等間隔格子)
図10は、実施形態における検査範囲を拡大するためのセンサ配置の具体例(その4)を示す図である。図10では、N×M個のセンサSを不等間隔格子状に配置する例を示している。図10では、車両走行方向をZ軸方向、車両走行方向に直交する方向をX方向とする。N×M個のセンサSを不等間隔格子の各頂点に配置したとき、車両走行方向に直交する方向に隣接するセンサとのX軸方向のセンサ間隔をqとし、車両走行方向に平行な方向に隣接するセンサとのZ軸方向のセンサ間隔をpとし、それぞれの平均のセンサ間隔を(‐)q,(‐)pとする。(‐)q及び(‐)pは、以下の式(3)のように表される。
Figure 2023043420000004
図10に示すセンサ配置は、式(3)における(‐)q,(‐)pが、以下の関係を満たすことを特徴とするセンサ配置である。
(‐)p>(‐)q
このように配置することで、弾性波が各センサSまで伝搬するときの波線の重複を従来よりも少なくすることができる。そのため、従来と同じ数のセンサを用いた場合、従来のセンサ配置(略正方格子)に比べて弾性波の検出範囲を広くすることができる。
次に、複数のセンサSを、上記のセンサ配置(その1)から(その4)のいずれかで配置して、構造物50の劣化状態を評価する構成について説明する。
(第1の実施形態)
図11は、第1の実施形態における構造物評価システム100の構成を示す図である。
構造物評価システム100は、構造物50の健全性の評価に用いられる。以下の説明において、評価とは、ある基準に基づいて構造物50の健全性の度合い、すなわち構造物50の劣化状態を決定することを意味する。
以下の説明では、構造物50の一例としてコンクリートで構成された橋梁を例に説明するが、構造物50は橋梁に限定される必要はない。構造物50は、亀裂の発生または進展、あるいは外的衝撃(例えば雨、人工雨など)に伴い弾性波11が発生する構造物であればどのようなものであってもよい。例えば、構造物50は、岩盤であってもよい。なお、橋梁は、河川や渓谷等の上に架設される構造物に限らず、地面よりも上方に設けられる種々の構造物(例えば高速道路の高架橋)なども含む。構造物50の厚さは、例えば15cm以上である。
構造物50の劣化状態の評価に影響を及ぼす損傷としては、例えば亀裂、空洞、土砂化等の弾性波11の伝搬を妨害する構造物内部の損傷がある。ここで、亀裂には、縦方向の亀裂、横方向の亀裂及び斜め方向の亀裂等が含まれる。縦方向の亀裂とは、路面に対して垂直な方向に生じている亀裂である。横方向の亀裂とは、路面に対して水平な方向に生じている亀裂である。斜め方向の亀裂とは、路面に対して水平及び垂直以外の方向に生じている亀裂である。土砂化とは、主にアスファルトとコンクリート床版の境界部でコンクリートが土砂状に変化する劣化である。
構造物評価システム100は、複数のセンサ20-1~20-n、信号処理部30及び構造物評価装置40を備える。複数のセンサ20-1~20-nそれぞれと信号処理部30とは、有線により通信可能に接続される。信号処理部30と構造物評価装置40とは、有線又は無線により通信可能に接続される。なお、以下の説明では、センサ20-1~20-nを区別しない場合にはセンサ20と記載する。センサ20-1~20-nは、上述したセンサSに相当する。センサ20-1~20-nは、センサ配置(その1)から(その4)のいずれかの配置で構造物50に配置されている。
センサ20は、圧電素子を有し、構造物50内部から発生する弾性波11を検出する。センサ20は、構造物50の面上における弾性波11を検出することが可能な位置に設置される。例えば、センサ20は、路面、側面及び底面のいずれかの面上に設置される。センサ20は、検出した弾性波11を電気信号に変換する。以下の説明では、センサ20が、構造物50の底面に設置されている場合を例に説明する。
センサ20には、例えば10kHz~1MHzの範囲に感度を有する圧電素子が用いられる。センサ20は、周波数範囲内に共振ピークをもつ共振型、共振を抑えた広帯域型等の種類があるが、センサ20の種類はいずれでもよい。センサ20が弾性波11を検出する方法は、電圧出力型、抵抗変化型及び静電容量型等があるが、いずれの検出方法でもよい。
センサ20に代えて加速度センサが用いられてもよい。この場合、加速度センサは、構造物50内部で発生する弾性波11を検出する。そして、加速度センサは、センサ20と同様の処理を行うことによって、検出した弾性波11を電気信号に変換する。
センサ20と信号処理部30との間には、例えば不図示の増幅器及びA/D変換器が設けられる。
増幅器は、センサ20から出力された電気信号を増幅する。増幅器は、増幅後の電気信号をA/D変換器に出力する。増幅器は、例えばA/D変換器において処理ができる程度に電気信号を増幅する。
A/D変換器は、増幅された電気信号を量子化してデジタル信号に変換する。A/D変換器は、デジタル信号を信号処理部30に出力する。
信号処理部30は、A/D変換器から出力されたデジタル信号を入力とする。信号処理部30は、入力したデジタル信号に対して信号処理を行う。信号処理部30が行う信号処理は、例えば、ノイズ除去、パラメータ抽出等である。信号処理部30は、信号処理後のデジタル信号を含む送信データを生成する。信号処理部30は、生成した送信データを構造物評価装置40に出力する。
信号処理部30は、アナログ回路又はデジタル回路を用いて構成される。デジタル回路は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やマイクロコンピュータにより実現される。デジタル回路は、専用のLSI(Large-Scale Integration)により実現されてもいい。また信号処理部30は、フラッシュメモリ等の不揮発メモリや、取り外し可能なメモリを搭載してもよい。
図12は、第1の実施形態における信号処理部30の機能を表す概略ブロック図である。信号処理部30は、波形整形フィルタ301、ゲート生成回路302、到達時刻決定部303、特徴量抽出部304、送信データ生成部305、メモリ306及び出力部307を備える。
波形整形フィルタ301は、入力されたデジタル信号から所定の帯域外のノイズ成分を除去する。波形整形フィルタ301は、例えばデジタルバンドパスフィルタ(BPF)である。波形整形フィルタ301は、ノイズ成分除去後のデジタル信号(以下「ノイズ除去信号」という。)をゲート生成回路302及び特徴量抽出部304に出力する。
ゲート生成回路302は、波形整形フィルタ301から出力されたノイズ除去信号を入力とする。ゲート生成回路302は、入力したノイズ除去信号に基づいてゲート信号を生成する。ゲート信号は、ノイズ除去信号の波形が持続しているか否かを示す信号である。
ゲート生成回路302は、例えばエンベロープ検出器及びコンパレータにより実現される。エンベロープ検出器は、ノイズ除去信号のエンベロープを検出する。エンベロープは、例えばノイズ除去信号を二乗し、二乗した出力値に対して所定の処理(例えばローパスフィルタを用いた処理やヒルベルト変換)を行うことで抽出される。コンパレータは、ノイズ除去信号のエンベロープが所定の閾値以上であるか否かを判定する。
ゲート生成回路302は、ノイズ除去信号のエンベロープが所定の閾値以上となった場合、ノイズ除去信号の波形が持続していることを示す第1のゲート信号を到達時刻決定部303及び特徴量抽出部304に出力する。一方、ゲート生成回路302は、ノイズ除去信号のエンベロープが所定の閾値未満になった場合、ノイズ除去信号の波形が持続していないことを示す第2のゲート信号を到達時刻決定部303及び特徴量抽出部304に出力する。
到達時刻決定部303は、不図示の水晶発振器などのクロック源から出力されるクロックと、ゲート生成回路302から出力されたゲート信号とを入力とする。到達時刻決定部303は、第1のゲート信号が入力されている間に入力されたクロックを用いて、弾性波到達時刻を決定する。到達時刻決定部303は、決定した弾性波到達時刻を時刻情報として送信データ生成部305に出力する。到達時刻決定部303は、第2のゲート信号が入力されている間に処理を行わない。到達時刻決定部303は、クロック源からの信号をもとに、電源投入時からの累積の時刻情報を生成する。具体的には、到達時刻決定部303は、クロックのエッジをカウントするカウンタとし、カウンタのレジスタの値を時刻情報とすればよい。カウンタのレジスタは所定のビット長を有するように決定される。
特徴量抽出部304は、波形整形フィルタ301から出力されたノイズ除去信号と、ゲート生成回路302から出力されたゲート信号とを入力とする。特徴量抽出部304は、第1のゲート信号が入力されている間に入力されたノイズ除去信号を用いて、ノイズ除去信号の特徴量を抽出する。特徴量抽出部304は、第2のゲート信号が入力されている間に処理を行わない。特徴量は、ノイズ除去信号の特徴を示す情報である。
特徴量は、例えば波形の振幅[mV]、波形の立ち上がり時間[usec]、ゲート信号の持続時間[usec]、ゼロクロスカウント数[times]、波形のエネルギー[arb.]、周波数[Hz]及びRMS(Root Mean Square:二乗平均平方根)値等である。特徴量抽出部304は、抽出した特徴量に関するパラメータを送信データ生成部305に出力する。特徴量抽出部304は、特徴量に関するパラメータを出力する際に、特徴量に関するパラメータにセンサIDを対応付ける。センサIDは、構造物50の健全性の評価対象となる領域(以下「評価領域」という。)に設置されているセンサ20を識別するための識別情報を表す。
波形の振幅は、例えばノイズ除去信号の中で最大振幅の値である。波形の立ち上がり時間は、例えばゲート信号の立ち上がり開始からノイズ除去信号が最大値に達するまでの時間T1である。ゲート信号の持続時間は、例えばゲート信号の立ち上がり開始から振幅が予め設定される値よりも小さくなるまでの時間である。ゼロクロスカウント数は、例えばゼロ値を通る基準線をノイズ除去信号が横切る回数である。
波形のエネルギーは、例えば各時点においてノイズ除去信号の振幅を二乗したものを時間積分した値である。なお、エネルギーの定義は、上記例に限定されず、例えば波形の包絡線を用いて近似されたものでもよい。周波数は、ノイズ除去信号の周波数である。RMS値は、例えば各時点においてノイズ除去信号の振幅を二乗して平方根により求めた値である。
送信データ生成部305は、センサIDと、時刻情報と、特徴量に関するパラメータとを入力とする。送信データ生成部305は、入力したセンサIDと、時刻情報と、特徴量に関するパラメータとを含む送信データを生成する。
メモリ306は、送信データを記憶する。メモリ306は、例えばデュアルポートRAM(Random Access Memory)である。
出力部307は、メモリ306に記憶されている送信データを構造物評価装置40に逐次出力する。
図11に戻って説明を続ける。
構造物評価装置40は、通信部41、制御部42、記憶部43及び表示部44を備える。
通信部41は、信号処理部30から出力された送信データを受信する。
制御部42は、構造物評価装置40全体を制御する。制御部42は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部42は、プログラムを実行することによって、取得部421、イベント抽出部422、位置標定部423、分布生成部424、補正部425及び評価部426として機能する。
取得部421、イベント抽出部422、位置標定部423、分布生成部424、補正部425及び評価部426の機能部のうち一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)、FPGAなどのハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置などの非一時的な記憶媒体である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
取得部421、イベント抽出部422、位置標定部423、分布生成部424、補正部425及び評価部426の機能の一部は、予め構造物評価装置40に搭載されている必要はなく、追加のアプリケーションプログラムが構造物評価装置40にインストールされることで実現されてもよい。
取得部421は、各種情報を取得する。例えば、取得部421は、通信部41によって受信された送信データを取得する。取得部421は、取得した送信データを記憶部43に保存する。第1の実施形態において取得部421は、評価対象となる構造物50を走行した車両10に関する情報(以下「車両情報」という。)を所定期間分取得する。
車両情報は、例えば所定の期間に構造物50を走行した車両10の車種情報と、構造物50の車両10の通行量情報である。車両10の車種情報には、少なくとも車両10のトレッド幅の情報が含まれる。車両10の通行量情報は、所定の期間に構造物50をどの車種の車両10が何台通過したかを示す情報である。取得部421は、車両情報を、ユーザの入力によって取得してもよいし、交通情報を記憶しているサーバから取得してもよい。
イベント抽出部422は、記憶部43に記憶されている送信データの中から1イベントにおける送信データを抽出する。イベントとは、構造物50で起こった弾性波発生事象を表す。本実施形態における弾性波発生事象は、車両10による路面の通過である。1回のイベントが発生した場合、複数のセンサ20で略同時刻に弾性波11が検出されることになる。すなわち、記憶部43には、略同時刻に検出された弾性波11に関する送信データが記憶されていることになる。そこで、イベント抽出部422は、所定の時間窓を設け、到達時刻が時間窓の範囲内に存在する全ての送信データを1イベントにおける送信データとして抽出する。イベント抽出部422は、抽出した1イベントにおける送信データを位置標定部423に出力する。
時間窓の範囲Twは、対象とする構造物50における弾性波伝搬速度vと、最大のセンサ間隔dmaxを用いて、Tw≧dmax/vの範囲になるように決定してもよい。誤検出を避けるためには、Twをできるだけ小さい値に設定することが望ましいため、実質的にはTw=dmax/vとすることができる。弾性波伝搬速度vは、予め求められていてもよい。
位置標定部423は、センサ位置情報と、イベント抽出部422によって抽出された複数の送信データそれぞれに含まれるセンサID及び時刻情報とに基づいて弾性波源の位置標定を行う。
センサ位置情報には、センサIDに対応付けてセンサ20の設置位置に関する情報が含まれる。センサ位置情報は、例えば緯度および経度、あるいは構造物50の基準となる位置からの水平方向および垂直方向の距離などのセンサ20の設置位置に関する情報を含む。位置標定部423は、センサ位置情報を予め保持している。センサ位置情報は、位置標定部423が弾性波源の位置標定を行う前であればどのタイミングで位置標定部423に記憶されてもよい。
センサ位置情報は、記憶部43に記憶されていてもよい。この場合、位置標定部423は、位置標定を行うタイミングで記憶部43からセンサ位置情報を取得する。弾性波源の位置の標定には、カルマンフィルタ、最小二乗法などが用いられてもよい。位置標定部423は、計測期間中に得られた弾性波源の位置情報を分布生成部424に出力する。
分布生成部424は、位置標定部423から出力された複数の弾性波源の位置情報を入力とする。分布生成部424は、入力した複数の弾性波源の位置情報を用いて、弾性波源分布を生成する。弾性波源分布は、弾性波源の位置が示された分布を表す。より具体的には、弾性波源分布は、横軸を通行方向の距離とし、縦軸を幅方向の距離として、評価対象となる構造物50を表した仮想的なデータ上において弾性波源の位置を示す点が示された分布である。分布生成部424は、弾性波源分布を用いて弾性波源密度分布を生成する。例えば、分布生成部424は、弾性波源の位置をコンター図で表すことによって弾性波源密度分布を生成する。
補正部425は、衝撃に応じて定まる補正値を用いて、位置標定部423による位置標定に基づく情報を補正する。第1の実施形態において衝撃に応じて定まる補正値とは、取得部421によって取得された車両情報により得られる補正値である。補正値は、車両10の走行部の通過位置に極値を持つ。位置標定に基づく情報は、位置標定する前(例えば、弾性波の振幅)又は標定結果を用いて得られる情報である。例えば、位置標定に基づく情報は、弾性波源密度分布である。以下の説明では、位置標定に基づく情報が、弾性波源密度分布である場合を例に説明する。
評価部426は、補正された情報に基づいて構造物50の劣化状態を評価する。具体的には、評価部426は、補正された弾性波源密度分布を用いて構造物50の劣化状態を評価する。例えば、評価部426は、弾性波源の密度が閾値以上の領域を健全な領域と評価し、弾性波源の密度が閾値未満の領域を損傷領域と評価する。弾性波源と、各センサ20それぞれまでの弾性波の伝搬経路を示す波線が通過した領域が評価領域となる。そこで、評価部426は、評価領域内において構造物の劣化状態を評価する。
記憶部43は、取得部421によって取得された送信データ及び車両情報を記憶する。記憶部43は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。
表示部44は、評価部426の制御に従って評価結果を表示する。さらに、表示部44は、評価部426の制御に従って、弾性波源と、各センサ20までの弾性波の伝搬経路を示す波線群を例えば投影法により表示する。表示部44は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置である。表示部44は、画像表示装置を構造物評価装置40に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、表示部44は、評価結果を表示するための映像信号を生成し、自身に接続されている画像表示装置に映像信号を出力する。
図13は、第1の実施形態における構造物評価システム100による劣化状態の評価処理の流れを示すシーケンス図である。図13の処理は、評価対象となる構造物50を車両10が走行したことに応じて実行される。
評価対象となる構造物50を車両10が走行すると、車両10の走行部が路面に接触する。これにより、構造物50内で弾性波11が発生する。複数のセンサ20それぞれは、構造物50内で発生した弾性波11を検出する(ステップS101)。複数のセンサ20それぞれは、検出した弾性波11を電気信号に変換して信号処理部30に出力する(ステップS102)。複数のセンサ20それぞれから出力された電気信号は、不図示の増幅器に増幅される。増幅後の電気信号は、A/D変換器によってデジタル信号に変換される。
信号処理部30は、A/D変換器から出力されたデジタル信号を入力する。信号処理部30の到達時刻決定部303は、各弾性波11の到達時刻を決定する(ステップS103)。具体的には、到達時刻決定部303は、第1のゲート信号が入力されている間に入力されたクロックを用いて弾性波到達時刻を決定する。到達時刻決定部303は、決定した弾性波到達時刻を時刻情報として送信データ生成部305に出力する。到達時刻決定部303は、この処理を、入力した全てのデジタル信号に対して行う。
信号処理部30の特徴量抽出部304は、第1のゲート信号が入力されている間に入力されたデジタル信号であるノイズ除去信号を用いて、ノイズ除去信号の特徴量を抽出する(ステップS104)。特徴量抽出部304は、抽出した特徴量に関するパラメータを送信データ生成部305に出力する。送信データ生成部305は、センサIDと、時刻情報と、特徴量に関するパラメータとを含む送信データを生成する(ステップS105)。出力部307は、送信データを構造物評価装置40に逐次出力する(ステップS106)。
構造物評価装置40の通信部41は、信号処理部30から出力された送信データを受信する。取得部421は、通信部41によって受信された送信データを取得する。取得部421は、取得した送信データを記憶部43に記録する(ステップS107)。イベント抽出部422は、記憶部43に記憶されている送信データの中から1イベントにおける送信データを抽出する。イベント抽出部422は、抽出した1イベントにおける送信データを位置標定部423及び分布生成部424に出力する。
位置標定部423は、イベント抽出部422から出力された送信データに含まれるセンサID及び時刻情報と、予め保持しているセンサ位置情報とに基づいて弾性波源の位置を標定する(ステップS108)。具体的には、まず位置標定部423は、複数のセンサ20それぞれへの弾性波11の到達時刻の差を算出する。次に、位置標定部423は、センサ位置情報と、到達時刻の差の情報とを用いて弾性波源の位置を標定する。
位置標定部423は、計測期間中にイベント抽出部422から1イベントの送信データが出力される度にステップS108の処理を実行する。これにより、位置標定部423は、複数の弾性波源の位置を標定する。位置標定部423は、複数の弾性波源の位置情報を分布生成部424に出力する。
分布生成部424は、位置標定部423から出力された複数の弾性波源の位置情報を用いて弾性波源分布を生成する。具体的には、分布生成部424は、得られた複数の弾性波源の位置情報で示される弾性波源の位置を、仮想的なデータ上にプロットすることによって弾性波源分布を生成する。分布生成部424は、生成した弾性波源分布をコンター図で表すことによって弾性波源密度分布を生成する(ステップS109)。分布生成部424は、生成した弾性波源密度分布を補正部425に出力する。
補正部425は、分布生成部424から出力された弾性波源密度分布と、記憶部43に記憶されている車両情報とを入力する。補正部425は、入力した車両情報を用いて得られる補正値で弾性波源密度分布を補正する(ステップS110)。
具体的には、まず補正部425は、車両情報を用いて下記式(4)に基づいて補正値f(x、y)を算出する。
Figure 2023043420000005
式(1)においてyは道路の幅方向の距離、kは係数、aは走行部位置、wは通行位置のばらつき度合いを表す。式(1)により得られる補正値は、y方向の走行部の通過位置にピークを持ち、x方向の通行方向には一定の値を持つ分布となる。補正の際に使用する走行部位置としては、車両情報に含まれる車両10のトレッド幅を参照することができる。
弾性波11の発生が多いと考えられる大型車両の場合、10tトラックでトレッド幅が1900mm程度である。このため、走行部位置aは、車線の中央より±950mmの位置に設定することができる。普通車両の場合、トレッド幅が1500mm程度である。このため、走行部位置aは、車線の中央より±750mmに設定することができる。
評価対象となる構造物50の交通事情に応じて、走行部位置を決めることもできる。評価対象となる構造物50が大型車両の通らない道路である場合、トレッド幅として例えば普通車の1500mm程度を採用し、車線の中央より±750mmに設定することもできる。構造物50の交通事情の情報は、外部から構造物評価装置40に入力されてもよいし、車両情報に含まれていてもよい。
補正部425は、車両情報に含まれる車種の情報の統計値に基づいて走行部位置aを決定してもよい。例えば、補正部425は、車両情報に含まれる車種の情報の統計結果から、通行数が最多の車種のトレッド幅を走行部位置aとしてもよい。例えば、補正部425は、車両情報に含まれる車種の情報の統計結果から、トレッド幅が最大の車種のトレッド幅を走行部位置aとしてもよいし、平均のトレッド幅を走行部位置aとしてもよい。
通行位置のばらつきに関しては、評価対象となる構造物50の状況により定めることができる。例えば、高速道路や道幅の広い道路においては、各車両10の通行位置のばらつきは大きくなる。一方で、車両10が一台しか通行できないような狭い道路においては、どの車両も略同じ位置を通行するためばらつきは小さくなる。したがって、補正部425は、通行量情報、道路幅や車線変更の頻度等を参照することで、通行位置のばらつき度合に関するパラメータを適切に設定する。
上記の式(4)に基づいて算出された補正値の一例を図14に示す。図14において横軸は幅方向の距離を表し、縦軸は補正値f(x、y)を表す。図14に示すように、補正値f(x、y)は、少なくとも車両10の走行部の通過位置に対応する弾性波源密度分布上の位置の値(例えば、密度)を減少させるような値を有する分布で表される。すなわち、補正値f(x、y)は、車両10の走行部の通過位置に対応する弾性波源密度分布上の位置の値を最も減少させ、通過位置から離れる位置ほど減少させないような値を有する分布で表される。
図14では、車両10の走行部の通過位置が2つある場合の補正値f(x、y)を例に示している。そのため、図14に示す補正値f(x、y)では、車両10の走行部の通過位置に対応する弾性波源密度分布上の位置の値を最も減少させるような値を2つ有する。評価領域によっては、車両10の走行部の通過位置が1つの場合もある。そのため、補正値f(x、y)では、車両10の走行部の通過位置に対応する弾性波源密度分布上の位置の値を最も減少させるような値を1つ以上有していればよい。
補正部425は、算出した補正値f(x、y)を、弾性波源密度分布に掛け合わせることによって弾性波源密度分布を補正する。具体的には、補正部425は、弾性波源密度分布の幅方向に対して、算出した補正値f(x、y)の幅方向の距離に応じた補正値f(x、y)をそれぞれ乗算する。
例えば、補正部425は、弾性波源密度分布の幅方向の距離“500”の位置の密度の値に対して、算出した補正値f(x、y)の幅方向の距離“500”の位置に応じた補正値f(x、y)を乗算する。補正部425は、弾性波源密度分布の通行方向に対しても同様に、幅方向の距離に応じた補正値f(x、y)をそれぞれ乗算する。例えば、補正部425は、弾性波源密度分布の幅方向の距離“500”の位置に対応する通行方向の距離“0~3000”の位置の密度の値全てに対して、算出した補正値f(x、y)の幅方向の距離“500”の位置に応じた補正値f(x、y)を乗算する。
補正部425は、上記の処理により弾性波源密度分布を補正することで、図15に示す補正後の弾性波源密度分布ADを生成する。補正部425は、補正後の弾性波源密度分布ADを評価部426に出力する。
図15は、補正後の弾性波源密度分布ADの一例を表す図である。図15において、横軸は車両の通行方向の距離を表し、縦軸は幅方向の距離を表す。図15に示す補正後の弾性波源密度分布ADは、弾性波源密度分布Dに比べて、車両10の走行部の通行による影響が軽減されていることがわかる。車両10の走行部の通行による影響とは、車両10の走行部が通行した位置の弾性波源の密度が高くなることである。評価部426は、補正部425から出力された補正後の弾性波源密度分布ADを用いて、構造物50の劣化状態を評価する(ステップS111)。
評価部426は、従来評価手法により補正後の弾性波源密度分布ADで設定された閾値15よりも密度が低い領域を損傷領域として評価する。評価部426は、評価結果を表示部44に出力する。表示部44は、評価部426から出力された評価結果を表示する(ステップS112)。例えば、表示部44は、評価結果として、補正後の弾性波源密度分布を表示してもよいし、損傷領域とみられる領域を他の領域と表示態様を変えて表示してもよい。さらに、評価部426は、位置標定部423により標定された弾性波源と、各センサ20の設置位置情報とに基づいて、弾性波源から各センサ20までの弾性波の伝搬経路を示す波線群を投影法により表示部44に表示させてもよい。これにより、例えば、図1(B)に示す波線群WLを表示することが可能になる。なお、評価部426は、波線群を3次元で表示させてもよい。
以上のように構成された構造物評価システム100では、センサ20配置により弾性波の検出範囲を拡大することにより、従来と同じ数のセンサ20を用いた場合であっても、従来よりも広い範囲で弾性波を検出することができる。さらに構造物評価システム100では、衝撃に応じて定まる補正値f(x、y)を用いて、位置標定部423による位置標定に基づく情報の偏りを軽減するように補正する。より具体的には、構造物評価装置40は、評価対象となる構造物50を走行した車両10の車両情報から将来の衝撃に対する補正値f(x、y)を算出する。そして、構造物評価装置40は、算出した補正値f(x、y)を用いて、位置標定に基づく情報である弾性波源密度分布における車両10の走行部の通過に起因する衝撃の影響を補正する。これにより、誤診断を軽減することができる。そのため、路面に与えられる衝撃が一様ではない場合であっても、構造物50の評価精度を向上させることが可能になる。
補正部425は、少なくとも衝撃が付与される位置における情報を補正するための極値部分を1つ以上有する補正値f(x、y)で、弾性波源密度分布を補正する。衝撃が付与される位置における情報は、例えば、車両10の走行部の通行により影響を受ける位置における情報である。上記のように、車両10の走行部が通行する位置は、車両10の走行部が通行しない位置に比べて密度が高くなる傾向がある。そこで、補正部425では、車両10の走行部の通行により生じる影響を軽減するために極値部分を1つ以上有する補正値f(x、y)で補正を行う。これにより、車両10の走行部の通行により生じる影響を軽減することができる。その結果、路面に与えられる衝撃が一様ではない場合であっても、構造物50の評価精度を向上させることが可能になる。
以下、構造物評価システム100の変形例について説明する。
補正値は、式(4)で得られる形に限定されない。例えば、補正値は、図16に示すように、矩形あるいは矩形に近い形状の関数によって表される分布であってもよい。
補正部425は、車両情報から得られる車両10の車種の割合に応じて、車種ごとのトレッド幅に対して重み付けした分布を重ね合わせることで、より実際に近い補正値f(x、y)を算出してもよい。
道幅が非常に細いといった状況により、どの車両10も略同じ位置を走行する場合、輪荷位置以外の領域ではほとんど弾性波11を発生するような衝撃が付与されない場合も起こり得る。そこで、評価部426は、評価対象領域のうち衝撃が付与された頻度が閾値以上と想定される領域の劣化状態を評価するように構成されてもよい。
上記の実施形態では、補正部425が、車両情報における車両10のトレッド幅と、通行量情報とを用いて補正値f(x、y)を算出する構成を示したが、補正部425は車両10のトレッド幅に基づいて補正値f(x、y)を算出してもよい。このように構成される場合、例えば補正部425は、上記の式(4)において通行位置のばらつき度合いwを1として補正値f(x、y)を算出する。走行部位置aは、上記の実施形態と同様に求められてもよい。
これにより、補正部425は、通行量情報が得られなかったとしてもトレッド幅の情報により補正値f(x、y)を算出することができる。そのため、少ない情報量で補正を行うことが可能になる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、補正部425が車両情報を用いて補正値f(x、y)を算出する構成を示した。第2の実施形態では、センサ20から得られる電気信号に基づいて車両10の通過した位置を推定して補正値f(x、y)を取得する構成について説明する。
図17は、第2の実施形態における構造物評価システム100aの構成を示す図である。第2の実施形態における構造物評価システム100aでは、構造物評価装置40に代えて構造物評価装置40aが備えられる点以外は第1の実施形態と同様である。以下、相違点に係る構造物評価装置40aの構成について説明する。
構造物評価装置40aは、通信部41、制御部42a、記憶部43a及び表示部44を備える。制御部42aは、構造物評価装置40a全体を制御する。制御部42aは、CPU等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部42aは、プログラムを実行することによって、取得部421a、イベント抽出部422、位置標定部423、分布生成部424、補正部425a及び評価部426として機能する。
取得部421a、イベント抽出部422、位置標定部423、分布生成部424、補正部425a及び評価部426の機能部のうち一部または全部は、ASICやPLD、FPGAなどのハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置などの非一時的な記憶媒体である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
取得部421a、イベント抽出部422、位置標定部423、分布生成部424、補正部425a及び評価部426の機能の一部は、予め構造物評価装置40aに搭載されている必要はなく、追加のアプリケーションプログラムが構造物評価装置40aにインストールされることで実現されてもよい。
制御部42aは、取得部421及び補正部425に代えて取得部421a及び補正部425aを備える点で制御部42と構成が異なる。以下、相違点について説明する。
取得部421aは、各種情報を取得する。例えば、取得部421aは、通信部41によって受信された送信データを取得する。取得部421aは、取得した送信データを記憶部43に保存する。第2の実施形態において取得部421aは、評価対象となる構造物50において健全な領域の位置を示す情報(以下「健全位置情報」という。)を取得する。取得部421aは、ユーザの入力によって健全位置情報を取得する。
補正部425aは、衝撃に応じて定まる補正値f(x、y)を用いて、位置標定部423による位置標定に基づく情報を補正する。第2の実施形態において衝撃に応じて定まる補正値とは、センサ20から得られる電気信号に基づいて得られる補正値である。例えば、第2の実施形態において衝撃に応じて定まる補正値は、センサ20から得られる電気信号に基づいてトレッド幅を算出して得られる補正値である。
記憶部43aは、取得部421aによって取得された送信データ及び健全位置情報を記憶する。記憶部43aは、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。
第2の実施形態における構造物評価システム100aによる劣化状態の評価処理の流れについて説明する。第2の実施形態における構造物評価システム100aでは、図13に示したステップS110の処理が第1の実施形態と異なる。以下、その点について説明する。
補正部425aは、分布生成部424から出力された弾性波源密度分布と、記憶部43aに記憶されている健全位置情報とを入力する。補正部425aは、入力した弾性波源密度分布と、健全位置情報とに基づいて弾性波源密度分布を補正する(ステップS110)。具体的には、まず補正部425aは、弾性波源密度分布を用いて車両10の走行部の通過位置を推定する。
上述したように、車両10が路面を通過した場合には、弾性波源密度分布の通行方向の密度が連続して高くなる傾向がある。より具体的には、車両10の走行部の通過位置に対応する弾性波源密度分布上の位置の密度が通行方向に連続して高くなる傾向がある。これは、車両10が路面を走行することによって、車両10の通行方向に対して連続して衝撃が付与されるためである。そこで、補正部425aは、第1の条件及び第2の条件に基づいて車両10の走行部の通過位置を推定する。
第1の条件は、弾性波源密度分布の通行方向において密度が第1の閾値以上となっている領域が第1の距離以上連続していることである。第2の条件は、第1の条件を満たす領域が幅方向に2つ以上存在することである。補正部425aは、第2の条件を満たす場合に、第1の条件を満たす領域それぞれを車両10の走行部の通過位置と推定する。
次に、補正部425aは、推定した車両10の走行部の通過位置に対応する弾性波源密度分布上の位置の値を閾値以上減少させるような補正値f(x、y)を算出する。例えば、補正部425aは、推定した車両10の走行部の通過位置に対応する弾性波源密度分布上の位置の値を最も減少させるような補正値f(x、y)を算出する。補正部425aは、補正値f(x、y)を算出する際、健全位置情報を用いる。例えば、補正部425aは、健全位置情報で示される領域の密度の値(以下「基準値」という。)を基準として補正値f(x、y)を算出する。補正部425aは、推定した車両10の走行部の通過位置に対応する弾性波源密度分布上の位置の値を基準値に合わせるように補正値の最低値を決定する。補正部425aは、算出した補正値f(x、y)を、弾性波源密度分布に掛け合わせることによって弾性波源密度分布を補正する。
以上のように構成された構造物評価システム100aでは、衝撃に応じて定まる補正値f(x、y)を弾性波源密度分布から取得する。より具体的には、構造物評価装置40aは、車両10が評価対象となる構造物50を走行したことによって得られる弾性波源密度分布から過去の衝撃に対する補正値f(x、y)を算出する。そして、構造物評価装置40aは、算出した補正値f(x、y)を用いて、位置標定に基づく情報である弾性波源密度分布における車両10の走行部の通過に起因する衝撃の影響を補正する。これにより、誤診断を軽減することができる。そのため、路面に与えられる衝撃が一様ではない場合であっても、構造物50の評価精度を向上させることが可能になる。
以下、構造物評価システム100aの変形例について説明する。
評価領域によっては、車両10の走行部の通過位置が1つの場合もある。そこで、補正部425aは、以下のように車両10の走行部の通過位置を推定してもよい。補正部425aは、第1の条件を満たし、第2の条件を満たさない場合には、第1の条件を満たす1つの領域を車両10の走行部の通過位置と推定する。この場合、補正部425aは、推定した車両10の走行部の通過位置に対応する弾性波源密度分布上の位置の値を最も減少させるような補正値f(x、y)を算出する。
このように構成されることによって、評価領域内において車両10の通過位置が1つしかない場合であっても、車両10の走行部の通過に起因する衝撃の影響を補正することができる。その結果、構造物50の評価精度を向上させることが可能になる。
上記の実施形態では、補正部425aが、弾性波源密度分布から車両10の通過位置を推定して補正値f(x、y)を取得する構成を示した。これに対し、補正部425aは、ユーザによって生成された補正値f(x、y)を用いて弾性波源密度分布を補正するように構成されてもよい。このように構成される場合、ステップS109の処理において分布生成部424は、生成した弾性波源密度分布を表示部44に出力する。表示部44は、弾性波源密度分布を表示する。
ユーザは、表示部44に表示された弾性波源密度分布を参照して、車両10の走行部が通過した位置を把握する。そしてユーザは、車両10の走行部が通過したことにより生じる影響を抑制可能な補正値f(x、y)を生成して構造物評価装置40aに入力する。影響を抑制可能な補正値f(x、y)とは、車両10の走行部が通過したことで高くなった弾性波源の密度に相当する値を減少させることが可能な値である。例えば、影響を抑制可能な補正値f(x、y)は、車両10の走行部が通過したことにより生じる影響を打ち消すことができるような値であることが望ましい。補正部425aは、入力された補正値f(x、y)を用いて弾性波源密度分布を補正する。
このように構成されることによって、ユーザの視認により車両10の走行部が通過した位置を把握している。これにより、大まかに車両10の走行部が通過した位置を推定することができる。そして、ユーザが、車両10の走行部が通過したことにより生じる影響を抑制可能な補正値f(x、y)を生成して構造物評価装置40aに入力する。これにより、構造物評価装置40aでは、補正値f(x、y)を算出する必要がない。そのため、処理負荷を軽減することができるとともに、路面に与えられる衝撃が一様ではない場合であっても、構造物50の評価精度を向上させることが可能になる。
道幅が非常に細いといった状況により、どの車両10も略同じ位置を走行する場合、輪荷位置以外の領域ではほとんど弾性波11を発生するような衝撃が付与されない場合も起こり得る。そこで、評価部426aは、評価対象領域のうち衝撃が付与された頻度が閾値以上と想定される領域の劣化状態を評価するように構成されてもよい。
このように構成されることによって、処理負荷を軽減することができるとともに、誤診断を抑制することができる。
(第3の実施形態)
第1の実施形態及び第2の実施形態では、補正値f(x、y)を用いて弾性波源密度分布を補正する構成を示した。道幅が非常に細いといった状況により、どの車両10も略同じ位置を走行する場合、輪荷位置以外の領域ではほとんど弾性波11を発生するような衝撃が付与されない場合も起こり得る。この場合、衝撃の付与頻度が閾値未満の領域に対して補正を行ってもより顕著な効果は得られないこともある。そこで、第3の実施形態では、弾性波源密度分布の補正を行わず、評価対象領域のうち衝撃が付与された頻度が閾値以上と想定される領域の劣化状態を評価し、衝撃が付与された頻度が閾値未満と想定される領域の劣化状態を評価しない構成について説明する。
図18は、第3の実施形態における構造物評価システム100bの構成を示す図である。第3の実施形態における構造物評価システム100bでは、構造物評価装置40に代えて構造物評価装置40bが備えられる点以外は第1の実施形態と同様である。以下、相違点に係る構造物評価装置40bの構成について説明する。
構造物評価装置40bは、通信部41、制御部42b、記憶部43b及び表示部44を備える。制御部42bは、構造物評価装置40b全体を制御する。制御部42bは、CPU等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部42bは、プログラムを実行することによって、取得部421b、イベント抽出部422、位置標定部423、分布生成部424及び評価部426bとして機能する。
取得部421b、イベント抽出部422、位置標定部423、分布生成部424及び評価部426bの機能部のうち一部または全部は、ASICやPLD、FPGAなどのハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置などの非一時的な記憶媒体である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
取得部421b、イベント抽出部422、位置標定部423、分布生成部424及び評価部426bの機能の一部は、予め構造物評価装置40bに搭載されている必要はなく、追加のアプリケーションプログラムが構造物評価装置40bにインストールされることで実現されてもよい。
制御部42bは、取得部421及び評価部426に代えて取得部421b及び評価部426bを備える点、補正部425を備えない点で制御部42と構成が異なる。以下、相違点について説明する。
取得部421bは、各種情報を取得する。例えば、取得部421bは、通信部41によって受信された送信データを取得する。取得部421bは、取得した送信データを記憶部43bに保存する。第3の実施形態において取得部421bは、評価対象となる構造物50に関する情報を取得する。評価対象となる構造物50に関する情報は、少なくとも構造物50の道幅の情報を含む。
評価部426bは、衝撃の付与頻度に基づいて構造物50の劣化状態を評価する。具体的には、評価部426bは、衝撃の付与頻度が閾値以上と想定される領域の劣化状態を評価し、衝撃が付与された頻度が閾値未満と想定される領域の劣化状態を評価しない。例えば、評価部426bは、衝撃の付与頻度が閾値以上と想定される領域において弾性波源の密度が閾値以上の領域を健全な領域と評価し、衝撃の付与頻度が閾値以上と想定される領域において弾性波源の密度が閾値未満の領域を損傷領域と評価する。
記憶部43bは、取得部421bによって取得された送信データ及び評価対象となる構造物50に関する情報を記憶する。記憶部43bは、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。
第3の実施形態における構造物評価システム100bによる劣化状態の評価処理の流れについて説明する。第3の実施形態における構造物評価システム100bでは、評価部426bが、取得部421bによって取得された評価対象となる構造物50に関する情報に含まれる道幅の情報に基づいて、評価対象となる構造物50の道幅が非常に細いといった条件を満たすか否かを判定する。道幅が非常に細いといった条件は、予め設定されているものとする。例えば、道幅が非常に細いといった条件は、道幅が、特定の車両(例えば、普通車)のトレッド幅と同じ又は所定の幅分(例えば、+10mm等)だけ広いといった条件である。評価対象となる構造物50の道幅が非常に細いといった条件を満たす場合に以下の処理が実行される。一方で、評価対象となる構造物50の道幅が非常に細いといった条件を満たさない場合に以下の処理は実行されない。
評価対象となる構造物50の道幅が非常に細いといった条件を満たす場合、構造物評価システム100では、図13に示すステップS101からステップS109までの処理が実行される。その後、評価部426bは、評価対象領域のうち衝撃が付与された頻度が閾値以上と想定される領域の劣化状態を評価する。
以上のように構成された構造物評価システム100cでは、衝撃が付与された頻度が閾値未満と想定される領域の劣化状態を評価しない。これにより、誤診断を軽減することができる。そのため、路面に与えられる衝撃が一様ではない場合であっても、構造物50の評価精度を向上させることが可能になる。
以下、各実施形態に共通の変形例について説明する。
信号処理部30は、構造物評価装置40,40a,40bに備えられてもよい。
上記の各実施形態では、複数のセンサ20-1~20-nが、1台の信号処理部30に接続されている構成を示した。構造物評価システム100,100a,100bは、複数台の信号処理部30を備え、各センサ20それぞれが異なる信号処理部30に接続されてもよい。
構造物評価装置40,40a,40bが備える各機能部は、一部又は全てが他の装置に備えられてもよい。例えば、構造物評価装置40,40a,40bが備える表示部44が他の装置に備えられてもよい。このように構成される場合、構造物評価装置40,40a,40bは、評価結果を、表示部44を備える他の装置に送信する。表示部44を備える他の装置は、受信した評価結果を表示する。
上記の各実施形態では、路面に対して空間的に一様ではない衝撃を与える対象(以下「非一様対象」という。)が車両10の走行部である場合を例に説明した。上記の各実施形態において、非一様対象は、車両10の走行部に限定される必要はない。例えば、非一様対象は、散水車両、人力による手押し車両及び固定スプリンクラー等が挙げられる。以下、詳細に説明する。
(非一様対象が散水車両である場合)
散水車両は、散水しながら路面を走行可能な車両である。例えば、散水車両は、車両の後方に散水するための散水装置が取り付けられた車両である。散水装置は、例えば円形領域の中心をピークとした正規分布となるような分布で水滴(物体)を散布する。この場合、路面に付与される衝撃は、水滴である。
散水車両が定速で路面を通り過ぎた場合、水滴が散布された路面の位置をピークとする分布(例えば、弾性波源密度分布)が得られる。補正部425,425aは、得られた分布の偏りを抑制可能な補正値f(x、y)を算出する。そして、補正部425,425aは、算出した補正値f(x、y)を、弾性波源密度分布に乗算することによって、弾性波源密度分布を補正する。
散水車両に限定されず、人が、水や氷等の複数の物体を所定の方法で散布することによって、路面に対して空間的に一様ではない衝撃を与えてもよい。所定の方法としては、人が散水装置を持ち歩いて散布する方法や、装置を介さずに水や氷等を路面に対して直接散布する方法(例えば、手に水や氷を持って、路面にばら撒く方法)等が挙げられる。
この構成により、車両10の走行部以外で衝撃を付与する場面においても適用することができる。そのため、利便性を向上させることが可能になる。
(非一様対象が手押し車両である場合)
手押し車両は、人力で路面を走行することにより、一定の間隔で路面に対して衝撃を付与することが可能な車両である。例えば、手押し車両は、打撃機構を備える車両である。打撃機構は、例えば歯形の回転機構である。人力により手押し車両が路面を走行すると、歯形の回転機構が一定の間隔で路面に接触することにより、歯形の回転機構が路面に衝撃を与える。
このような手押し車両が路面を通り過ぎた場合、歯形の回転機構が接触した路面の位置をピークとする分布(例えば、弾性波源密度分布)が得られる。補正部425,425aは、この分布の偏りを打ち消すような補正値f(x、y)を算出する。そして、補正部425,425aは、算出した補正値f(x、y)を、弾性波源密度分布に乗算することによって、弾性波源密度分布を補正する。なお、打撃機構は、歯形の回転機構に限らず、路面に対して衝撃を付与することができればどのような機構であってもよい。
打撃機構で路面に衝撃を付与する方法は、手押し車両に限定されず、打撃機構を車両でけん引する方法であってもよい。
この構成により、車両10の走行部以外で衝撃を付与する場面においても適用することができる。そのため、利便性を向上させることが可能になる。
(非一様対象が固定スプリンクラーである場合)
固定スプリンクラーは、一定の時間間隔で、路面の所定の範囲に水滴を散布することが可能な散布装置である。この場合、路面に付与される衝撃は、水滴である。固定スプリンクラーは、車両10が走行可能な道路外に設置された複数の街頭それぞれに設置される。このような固定スプリンクラーにより水滴が路面に散布された場合、路面の所定の範囲に衝撃が付与されることになる。分布生成部424は、付与された衝撃に基づいて弾性波源密度分布を生成する。固定スプリンクラー毎に異なる水滴が路面に付与されるため、分布生成部424は各固定スプリンクラーから付与された水滴に応じた弾性波源密度分布を生成する。
補正部425,425aは、各固定スプリンクラーから付与された水滴に応じた偏りを打ち消すような補正値f(x、y)を固定スプリンクラー毎に算出する。そして、補正部425,425aは、算出した補正値f(x、y)それぞれを、各固定スプリンクラーに対応する弾性波源密度分布に乗算することによって、各弾性波源密度分布を補正する。
この構成により、車両10の走行部以外で衝撃を付与する場面においても適用することができる。そのため、利便性を向上させることが可能になる。
上記の各実施形態では、位置標定に基づく情報として弾性波源密度分布を例に説明した。位置標定に基づく情報は、標定結果を用いて得られる情報であればどのような情報であってもよい。例えば、位置標定に基づく情報は、平均振幅であってもよい。平均振幅は、衝撃毎にセンサ20にて検出された第1ヒットの弾性波の振幅を、所定の領域毎に平均して算出されたものである。所定の領域は、予め定められた大きさを有する領域である。第1ヒットの弾性波の振幅は、第1ヒットの弾性波が生じた位置を含む所定の領域における平均の算出に用いられる。そのため、衝撃が付与されないために弾性波が発生しない所定の領域では、平均振幅が0に近い値となる。
そして、補正部425は、衝撃に応じて定まる補正値f(x、y)を用いて所定の領域毎に平均振幅の値を補正する。例えば、補正部425は、車両10の走行部の通過位置に対応する所定の領域における平均振幅の値を減少させるような補正値f(x、y)で補正を行う。評価部426は、補正後の平均振幅の値に基づいて所定の領域毎に構造物50の劣化状態を評価する。具体的には、評価部426は、車両10の走行部の通過位置に対応する所定の領域であって、補正後の平均振幅の値が閾値未満の領域を損傷領域と評価する。車両10の走行部の通過位置に対応する所定の領域であるか否かは、トレッド幅の情報に基づいて判定されてもよいし、外部から入力されてもよい。
評価部426は、従来評価手法の他に、以下のように評価してもよい。評価部426は、補正後の弾性波源密度分布AD上において、所定の範囲の複数の領域を設定する。これにより、評価部426は、補正後の弾性波源密度分布AD上で各領域を区分けする。評価部426は、区分けした領域(以下「分割領域」という。)毎に閾値15との比較を行う。例えば、評価部426は、分割領域内の密度と、閾値15とを比較する。評価部426は、比較の結果、閾値15よりも密度が低い領域を損傷領域として評価する。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、構造物における第1の方向と、第1の方向に直交する第2の方向それぞれに異なる間隔で構造物に対して衝撃が与えられる面と異なる面に配置され、構造物から発生した弾性波を検出する少なくとも3つ以上のセンサ20と、3つ以上のセンサ20それぞれによって検出された弾性波に基づいて、弾性波の発生源の位置を標定する位置標定部423と、位置標定部423による位置標定に基づく情報と、衝撃が与えられる位置を示す情報とに基づいて、構造物の劣化状態を評価する評価部426とを持つことにより、構造物の表面に与えられる衝撃が一様ではない場合であっても、構造物の評価精度を向上させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
20、20-1~20-n…センサ,30…信号処理部,40…構造物評価装置,41…通信部,42、42a、42b…制御部,43、43a、43b…記憶部,44…表示部,421、421a、421b…取得部,422…イベント抽出部,423…位置標定部,424…分布生成部,425、425a…補正部,426、426b…評価部,301…波形整形フィルタ,302…ゲート生成回路,303…到達時刻決定部,304…特徴量抽出部,305…送信データ生成部,306…メモリ,307…出力部

Claims (13)

  1. 構造物における第1の方向と、前記第1の方向に直交する第2の方向それぞれに異なる間隔で前記構造物に対して衝撃が与えられる面と異なる面に配置され、前記構造物から発生した弾性波を検出する少なくとも3つ以上のセンサと、
    前記3つ以上のセンサそれぞれによって検出された弾性波に基づいて、前記弾性波の発生源の位置を標定する位置標定部と、
    前記位置標定部による位置標定に基づく情報と、前記衝撃が与えられる位置を示す情報とに基づいて、前記構造物の劣化状態を評価する評価部と、
    を備える構造物評価システム。
  2. 前記評価部は、前記弾性波の発生源と、前記3つ以上のセンサそれぞれまでの弾性波の伝搬経路を示す波線が通過した領域を評価領域とし、前記評価領域内において前記構造物の劣化状態を評価する、請求項1に記載の構造物評価システム。
  3. 前記3つ以上のセンサは、前記第1の方向よりも前記第2の方向の方が小さい間隔で配置される、請求項1又は2に記載の構造物評価システム。
  4. 前記第1の方向における配置間隔は、前記第1の方向に平行な位置に設置されたセンサとの、前記第1の方向におけるセンサ間隔の統計値であり、
    前記第2の方向における配置間隔は、前記第2の方向に平行な位置に設置されたセンサとの、前記第2の方向のセンサ間隔の統計値である、請求項3に記載の構造物評価システム。
  5. 前記3つ以上のセンサは、長方格子状に配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の構造物評価システム。
  6. 前記3つ以上のセンサは、千鳥状に配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の構造物評価システム。
  7. 前記3つ以上のセンサは、第1の方向に対して所定の傾きを持つ格子状に配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の構造物評価システム。
  8. 前記3つ以上のセンサは、不等間隔格子状に配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の構造物評価システム。
  9. 前記弾性波の発生源と、前記3つ以上のセンサそれぞれまでの弾性波の伝搬経路を示す波線を表示する表示部をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の構造物評価システム。
  10. 前記構造物は、車両が走行可能な道路を含み、
    衝撃に応じて定まる補正値を用いて、前記位置標定に基づく情報を補正する補正部をさらに備え、
    前記補正部は、前記車両の走行部と路面との接触により生じる前記衝撃の発生位置に基づいて前記補正値を算出する、請求項1から9のいずれか一項に記載の構造物評価システム。
  11. 前記評価部は、前記弾性波の特徴量が第一の閾値未満の領域を前記構造物の劣化が生じている領域と評価する、請求項10に記載の構造物評価システム。
  12. 構造物における第1の方向と、前記第1の方向に直交する第2の方向それぞれに異なる間隔で前記構造物に対して衝撃が与えられる面と異なる面に配置され、前記構造物から発生した弾性波を検出する少なくとも3つ以上のセンサそれぞれによって検出された弾性波に基づいて、前記弾性波の発生源の位置を標定する位置標定部と、
    前記位置標定部による位置標定に基づく情報と、前記衝撃が与えられる位置を示す情報とに基づいて、前記構造物の劣化状態を評価する評価部と、
    を備える構造物評価装置。
  13. 構造物における第1の方向と、前記第1の方向に直交する第2の方向それぞれに異なる間隔で前記構造物に対して衝撃が与えられる面と異なる面に配置され、前記構造物から発生した弾性波を検出する少なくとも3つ以上のセンサそれぞれによって検出された弾性波に基づいて、前記弾性波の発生源の位置を標定し、
    位置標定に基づく情報と、前記衝撃が与えられる位置を示す情報とに基づいて、前記構造物の劣化状態を評価する構造物評価方法。
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