JP2023041164A - インジェクター - Google Patents

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Kotaro Tabuchi
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Abstract

【課題】インジェクター内部で酸化剤を旋回流にさせて、インジェクター外部で噴射された燃料と混合させて微粒化し、燃焼効率を高めることができるインジェクターを提供すること。【解決手段】本発明の一態様によれば、インジェクターが提供される。このインジェクターは、ピントル部と、マニホールド部とを備える。ピントル部は、その側面に複数の噴射孔を有する。マニホールド部は、貫通穴と、第1マニホールド部と、第2マニホールド部とを備える。貫通穴は、ピントル部の胴体部を挿入可能に構成される。第1マニホールド部は、凸部を有し、第1マニホールド部の端面から該凸部の上面に貫通された複数の流入孔を備え、該流入孔は、酸化剤を流入可能に構成される。第2マニホールド部は、凸部の形状に対応する凹部を有し、凸部と嵌合されており、凸部の上面と凹部の内部下面との間に流路を備え、酸化剤を流路の開口部から噴射孔に向かって流出可能に構成される。【選択図】図1

Description

本発明は、インジェクターに関する。
インジェクターは、例えば、液体燃料ロケット等において用いられている。液体燃料ロケットは、燃料を酸化剤と共に燃焼室で燃焼させ高温高圧の燃焼ガスを発生させ、そのガスをノズルから噴射することにより推進力を得ている
特許文献1には、燃料と酸化剤を燃焼する技術が開示されている。燃焼装置が、このような噴射器(以下インジェクターと呼ぶ)を用いることで、高効率の燃焼を維持することができる。
特開平7-49060号公報
ところが、特許文献1に開示されている技術等で燃焼効率を高める場合、インジェクター内部で、燃料と酸化剤とを混合させて微粒化し、噴射させる。そのため、インジェクターを簡素化して、燃焼効率を高める必要がある。
本発明では上記事情を鑑み、インジェクター内部で酸化剤を旋回流にさせて、インジェクター外部で噴射された燃料と混合させて微粒化し、燃焼効率を高めることができるインジェクターを提供することとした。
本発明の一態様によれば、インジェクターが提供される。このインジェクターは、ピントル部と、マニホールド部とを備える。ピントル部は、その側面に複数の噴射孔を有する。マニホールド部は、貫通穴と、第1マニホールド部と、第2マニホールド部とを備える。貫通穴は、ピントル部の胴体部を挿入可能に構成される。第1マニホールド部は、凸部を有し、第1マニホールド部の端面から該凸部の上面に貫通された複数の流入孔を備え、該流入孔は、酸化剤を流入可能に構成される。第2マニホールド部は、凸部の形状に対応する凹部を有し、凸部と嵌合されており、凸部の上面と凹部の内部下面との間に流路を備え、酸化剤を流路の開口部から噴射孔に向かって流出可能に構成される。
このような態様によれば、インジェクター外部で酸化剤を旋回流にさせて、噴射された燃料と混合させて微粒化し、燃焼効率を高めることができる。
インジェクター1を表す斜視図である。 インジェクター1を表す投影図である。 実施形態に係るピントル部2の斜視図である。 実施形態に係るインジェクター1の断面図である。 実施形態に係るマニホールド部3の斜視図である。 実施形態に係る第2マニホールド部33の平面図である。 実施形態に係る燃焼器4の斜視図及び断面図である。 実施形態に係るマニホールド部3の6箇所の流入孔323から酸化剤POが流入された流路34内の流速Vを表した図である。 6箇所の流入孔323から酸化剤POが流入された流れを表した第1画像S1の一例を表した図である。 実施形態に係るマニホールド部3の5箇所の流入孔323から酸化剤POが流入された流路34内の流速Vを表した図である。 5箇所の流入孔323から酸化剤POが流入された流れを表した第2画像S2の一例を表した図である。
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
1.1 インジェクター1
第1章では、本実施形態に係るインジェクターについて説明する。図1は、インジェクター1を表す斜視図である。図2は、インジェクター1を表す投影図である。図1及び図2に表されたように、インジェクター1は、ピントル部2と、マニホールド部3とを備える。インジェクター1で、燃料PCと酸化剤POが混合され、燃焼室44(図7)で燃やされて高温の燃焼ガスとなる。以下ロケットのインジェクター1として説明する。
1.2 ピントル部2
図3は、実施形態に係るピントル部2の斜視図である。ピントル部2は、ロケットエンジンの推進剤Pである燃料PCを噴射する部材である。ピントル部2は、末端部21と、胴体部22と、先端部23とを備える。さらに、ピントル部2は、末端部21に第2流入孔24を有し、その胴体部22の側面29に複数の噴射孔25を有する。第2流入孔24は、複数の噴射孔25と連通し、第2流入孔24から流入した燃料PCを噴射孔25から噴射可能に構成される。ここで、噴射孔25は、胴体部22の側面29の外周方向に複数列で、等間隔に配置されている。
ピントル部2は、後述するマニホールド部3の有する貫通穴31に挿入される。ピントル部2の末端部21は、ピントル部2がマニホールド部3に対して、円筒状に形成された末端部21の径方向(スラスト方向)に移動しないように、フランジ形状を有し、マニホールド部3と固定されている。フランジ形状を有する末端部21は、複数の貫通穴26を有し、当該貫通穴26にボルトが挿入され、ピントル部2とマニホールド部3とが締結される。ピントル部2の胴体部22は、円筒形であり、ピントル部2の先端部23は、半円球状である。
1.3 マニホールド部3
マニホールド部3は、タンク(不図示)から送出された酸化剤POの流れを分岐させる部材である。マニホールド部3は、貫通穴31と、第1マニホールド部32と、第2マニホールド部33とを備える。さらにマニホールド部3は、後述する流路34(図4)と、開口部35(図5)とを備える。第1マニホールド部32の凸部324と、第2マニホールド部33と凹部334とが嵌合されてマニホールド部3を構成している。互いに嵌合された、第1マニホールド部32と第2マニホールド部33とは、ボルト等の部材で締結されている。
貫通穴31は、第1マニホールド部32と第2マニホールド部33とを貫通している穴である。貫通穴31は、ピントル部2の胴体部22を挿入可能に構成される。貫通穴31に挿入されたピントル部2は、第1マニホールド部32と第2マニホールド部33とを貫通し、ピントル部2の胴体部22の一部と先端部23とが、ピントル部2から突起した状態となる。
図4は、実施形態に係るインジェクター1の断面図である。図5は、実施形態に係るマニホールド部3の斜視図である。図6は、実施形態に係る第2マニホールド部33の平面図である。図4~図6に表されたように、第1マニホールド部32は、凸部324を有し、第1マニホールド部32の端面321から該凸部324の上面322に貫通された複数の流入孔323を備え、流入孔323は、酸化剤POを流入可能に構成される。酸化剤POは、加圧された状態で、各々の流入孔323に分配されて流入される。図2に表された流入孔323は、同図に表された流入孔323-1~流入孔323-6のうち任意のものである。図2に表された流入孔323の数は、一例であり、流入孔323の数は、マニホールド部3の備え付けられるロケットの仕様等の条件によって決定される。流入孔323の形状は、円形であっても、矩形であってもよい。流入孔323は軸方向にテーパ角を有してもよい。流入孔323の形状は、限定されない。
第2マニホールド部33は、凸部324の形状に対応する凹部334を有し、凸部324と嵌合されており、凸部324の上面322と凹部334の内部下面331との間に流路34を備え、酸化剤POを流路34の開口部35から噴射孔25に向かって流出可能に構成される。ここで、第1マニホールド部32と第2マニホールド部33との嵌合は、中間ばめ、又はしまりばめである。インジェクター1は、第1マニホールド部32と第2マニホールド部33との間から酸化剤POが漏洩させないよう、しまりばめが好ましい。
流路34は、第1マニホールド部32の凸部324と第2マニホールド部33の凹部334との間に形成される。そのため、第1マニホールド部32の凸部324の有する複数の流入孔323から流出した酸化剤POは、流路34で合流する。
開口部35は、ピントル部2の外周面28と、マニホールド部3の有する貫通穴31の内周面335との間に形成され、流路34と連通している。かかる構造によって、流路34で合流した酸化剤POは、開口部35から噴射孔25に向かって流出する。
第2マニホールド部33の凹部334の後端面332に突起部333を備え、突起部333は貫通穴31が貫通されている。また、貫通穴31には、ピントル部2が挿入されている。そのため、ピントル部2の軸27方向に向かって、突起部333の内周面335と、ピントル部2の胴体部22の外周面28との間に、流路34が形成される。かかる構造により、酸化剤POは、ピントル部2の軸27方向に向かって、開口部35から流出されるため、ピントル部2の噴射孔25から噴出される燃料PCと、略直角で衝突する。このため、効率よく混合され、燃料PCは、微粒化される。
1.3 燃焼器4
図7は、実施形態に係る燃焼器4の斜視図及び断面図である。燃焼器4は、内部に円筒形の燃焼室44を有する。燃焼室44は、燃料PCが燃焼する空間であり、熱機関においては燃焼(酸化)により熱エネルギーを発生する部位である。具体的には、燃焼室44での燃焼により熱エネルギーを伴う高温、高圧のガスが噴射される。その反動で、ロケットエンジンは、推進力を得る。燃焼器4は、燃焼器上面部41と、燃焼器本体部42と、燃焼器下面部43と、燃焼室44とを備える。
燃焼器4は、燃焼器上面部41と、燃焼器本体部42と、燃焼器下面部43とがそれぞれ固定されて構成される。具体的には、燃焼器上面部41の後端面412と、燃焼器本体部42の前端面421とが締結され、燃焼器本体部42の後端面422と、燃焼器下面部43の前端面431とが締結される。これらの締結には、ボルト又はネジが使用されてもよいが、これらの締結材に限定されない。
燃焼器上面部41は、第2マニホールド部33に固定される。具体的には、燃焼器上面部41の前端面411と、第2マニホールド部33の後端面332とが締結さる。締結にあたり、ボルト又はネジが使用されてもよいが、これらの締結材に限定されない。
燃焼器上面部41は貫通穴413を有し、第2マニホールド部33の後端面332の突起部333が挿入される。かかる構造によって、貫通穴31に挿入されたピントル部2の胴体部22の一部と先端部23は、燃焼器上面部41の後端面412から突き出た状態になる。これにより、燃焼器上面部41おいて、酸化剤POと、燃料PCとが衝突し、混合される。
燃焼器上面部41の後端面412は、曲率を有する凹面414を有する。そのため、ピントル部2の噴射孔25から噴射された燃料PCと、開口部35から流出した酸化剤POとが混合した後、混合された燃料PCは、後端面412の凹面414に衝突して、スラスト方向に流される。かかる構造により、混合された燃料PCは、燃焼室44に押し込まれ、燃焼室44の全体に拡散される。
燃焼器本体部42内部の燃焼室44で、拡散された燃料PCが燃焼し、熱エネルギーを伴う高温、高圧のガスが発生する。ここでの燃焼効率は、燃焼室44全体に、燃料PCが広汎に拡散されることによって、高まる。
燃焼器下面部43は、燃焼器本体部42と固定され、燃焼器下面部43の後端面432に燃焼室開口部433を有する。当該燃焼室開口部433から熱エネルギーを伴う高温、高圧のガスが吐出される。
1.4 推進剤P
ロケットの推進剤Pは、燃料PCと、酸化剤POとに分けられる。さらに燃料PCは、固体燃料と、液体燃料とに分けられる。本実施形態において、燃料PCは、液体燃料が好ましい。燃料PCは、具体的には、エタノール、ケロシン、液体水素、液化メタン等の物質であるが、これらに限定されない。また、酸化剤POは、酸化過程における酸の供給源になる物質である。具体的には、酸化剤POは、液化酸素、ガス酸素等の物質であるが、これらに限定されない。
1.5 材料
ピントル部2及びマニホールド部3の材料は、推進剤Pの物性を考慮し、極低温用材料が使用される。そのため、低温脆性を示さないステンレスが使用されるのが好ましい。具体的には、材料は、SUS304であり、高温耐性を考慮する場合は、SUS310Sが好ましいが、これらの材料に限定されない。
2 インジェクター1の構造上の各機能
第2章では、第1章で説明したインジェクター1の構造上の各機能について説明する。説明にあたり、本実施形態では、上述したマニホールド部3内部の凸部324及び凹部334は、星型多角形の形状を有する。
2.1 ピントル部2の機能
本節では、ピントル部2の有する機能について説明する。ピントル部2は、末端部21に第2流入孔24を有し、その胴体部22の側面29の外周方向に複数の噴射孔25を有する。タンク(不図示)に貯蔵された燃料PCが、加圧されてピントル部2に送出される。燃料PCはピントル部2の第2流入孔24から流入し、複数の噴射孔25から噴射される。噴射された燃料PCは、開口部35から流出された燃料PCと混合し、燃焼室44内に拡散して、燃焼する。
図3に表したように、ピントル部2は、直円柱の胴体部22を有しているため、ピントル部2の側面29は、ピントル部2の中心線から平行である。そのため、燃料PCは、側面29に配置された複数の噴射孔25から、燃焼室44の半径方向に向かって噴射される。噴射された燃料PCは、マニホールド部3の開口部35から旋回流となって流出された酸化剤POと、噴射方向に対して直角方向で、衝突する。このように直角方向で衝突するため、鋭角方向での衝突と比べて、両者の衝突によるエネルギーが大きく、燃料PCの微粒化の促進に資する。これにより、燃焼効率が高まる。酸化剤POが旋回流となる現象については、次節で詳述する。
ピントル部2の噴射孔25は、胴体部22の側面29に等間隔で配置されている。このため、燃料PCは、ピントル部2の中心から、燃焼室44の半径方向に均等に噴射される。その結果、燃焼室44内で、均等に燃焼が生じるため、局部的焼損等の異常燃焼等が発生しにくい。
ピントル部2の噴射孔25は、胴体部22の側面29の外周方向に複数列で配置されている。噴射孔25
の内径を大きくすると、燃料PCの噴射速度は、低下する。一方で、噴射孔25の内径を小さくすると、燃料PCの噴射速度は、上昇する。そのため、噴射孔25の内径を小さくすることが好ましいが、噴射孔25の間隔が狭くなり、互いの噴射孔25から噴射された燃料PCが衝突するため、エネルギー損失が生じる。そのため、噴射孔25は、複数列で、等間隔で配置されることが好ましい。例えば、図4に表したように、噴射孔25は、第1噴射孔25aと、第2噴射孔25bとを二列に配列させて備えてもよい。
上述したように、ピントル部2の噴射孔25が、胴体部22の側面29の外周方向に複数列で、かつ等間隔で、配置されていることで、燃料PCと酸化剤POが効率よく衝突し混合される。その結果、燃焼効率が高まる。また、ピントル部2は、胴体部22の側面29に複数の噴射孔25を備える簡易的な構造のため、噴射孔25の加工が容易であり、ロケット製造者は、製造コストを低下させることができる。
2.2 マニホールド部3の機能
本節では、マニホールド部3の有する機能について説明する。ここで、マニホールド部3内部の凸部324及び凹部334は、星型多角形の形状について図6を用いて明示する。図6に表された星型多角形の頂点36は、星型多角形の凸角の突き出ている点であり、同図に表された頂点36-1~頂点36-6のうち任意のものである。同様に星型多角形の交点37は、星型多角形の凹角の凹んでいる点であり、同図に表された交点37-1~交点37-6のうち任意のものである。また、斜辺38は、頂点36と交点37を結ぶ辺であり、同図に表された斜辺38-1~斜辺38-12(途中符号省略)のうち任意のものである。星型多角形の有する頂角は、全て同一の角度でもよいし、一部の角度を他の角度と異なるように構成されてもよい。同様に、星型多角形の有する交角は、全て同一の角度でもよいし、一部の角度を他の角度と異なるように構成されてもよい。また、星型多角形の有する斜辺38の長さは、全て同一でもよいし、一部の長さを他の長さと異なるように構成されてもよい。
図5及び図6に表されたように、星型多角形の形状を有するマニホールド部3において、複数の流入孔323は、星型多角形の各頂点36から延びる2つの斜辺38に囲まれた間で、且つ、星型多角形の中心から等距離に配置されている。ロケットを推進させるために、タンク(不図示)に貯蔵された酸化剤POは、加圧されて複数の流入孔323にそれぞれ流入する。各流入孔323から流出された酸化剤POは、流路34で再度合流する。ここで、酸化剤POは、流路34で拡散され、圧力の低い開口部35に送出される。即ち、酸化剤POは、マニホールド部3の有する開口部35の半径方向に向かって流れる。一方で、流入孔323は、星型多角形の各頂点36から延びる2つの斜辺38に囲まれているため、拡散された酸化剤POは、この2つの斜辺38に衝突して、開口部35の接線方向に向かって流れる。このため、酸化剤POは、半径方向及び接線方向に向かう力が合成され、旋回流となって、開口部35に送出される。
接線方向に向かう流れの形成は、流体が壁に沿って流れていく現象(コアンダ効果)による。即ち、酸化剤POは粘性を有するため、酸化剤POが星型多角形の各頂点36から延びる2つの斜辺38に沿って流れると、斜辺38の表面に境界層が生成され、それに伴いエネルギー損失が発生する。そのため、酸化剤POの流速が低下する。一方、質量保存の法則により流量が一定になるように周囲の酸化剤POが斜辺38の表面に引き寄せられる。このように、流入孔323から流出された酸化剤POは、星型多角形の各頂点36から延びる2つの斜辺38の表面に引き寄せられて、半径方向及び接線方向に向かう力が合成され、旋回流となって、開口部35に送出される。
上述したように、流入孔323は、星型多角形の中心から等距離に配置されているため、均等に流入孔323から流出された酸化剤POは、半径方向及び接線方向に向かう力が等しい。そのため、半径方向及び接線方向に向かう力によって生成された旋回流は、開口部35の円周方向に、均一に発生する。この結果、酸化剤POは、安定した旋回流となって、開口部35に送出され、ピントル部2の噴射孔25に向かって流出される。
酸化剤POは、旋回流の遠心力で燃焼室44の半径方向に流出される。また、開口部35は、燃焼室44の軸45方向に開口されているため、酸化剤POは、燃焼室44の軸45方向に向かって流出される。このため、酸化剤POと衝突し、混合した燃料PCは、旋回流によって、燃焼室44内の半径方向と軸45方向とに向けて、均一に拡散されて、燃焼する。かかる現象により、酸化剤POが混合された燃料PCが、燃焼室44全体で旋回しながらに燃焼するため、燃焼効率が高まる。そのため、燃焼室44の容積を小形化することができる。
ここで、旋回流の向きは、複数の流入孔323から最初に流れた酸化剤POの方向によって決定される。慣性の法則により、外部から強制的に力を加えない限り、推進剤Pは、最初に決定された方向で安定的に旋回流となって開口部35から流出される。
マニホールド部3の有する凸部324及凹部334の星型多角形は、星型六角形でもよい。マニホールド部3の有する凸部324及凹部334は、星型多角形であれば、星型多角形の各頂点36から延びる2つの斜辺38に、酸化剤POが衝突して、開口部35の接線方向に向かって流れる。星型多角形は、このような機能を有するものの、多角形の数を増やすと、星型多角形の各頂点36から延びる2つの斜辺38の長さが短くなる。そのため、酸化剤POが開口部35の接線方向に向かって流れる量が減少する。このような理由から、多角形の数を増やすことは、性能面でマイナスとなる。
さらに、流入孔323の数が増えると、流入孔323の内径が小さくなる。そのため、流入孔323での圧力損失が大きくなるため、マニホールド部3に流入する酸化剤POは、タンクからより高圧で送出されなくてはならない。したがって、多角形の数を増やすことは、圧力を高める装置を大型化する必要があり、重量面及びコスト面でもマイナスとなる。
一方で、多角形の数を減らすと、星型多角形の各頂点36から延びる2つの斜辺38の中心角は、より鋭角となる。酸化剤POは、2つの斜辺38に衝突して、斜辺38に沿って流れるものの、開口部35の半径方向に向かって流れる。そのため、酸化剤POの接線方向の向かう遠心力が少なくなり、旋回流が形成されにくくなる。かかる理由により、星型多角形は、星型六角形が好ましい。
ここで、マニホールド部3の有する貫通穴31の内径は、星型多角形の流入孔323の中心を結んだ外形の直径に対して、0.1以上0.5以下である。酸化剤POは、星型多角形の各頂点36から延びる2つの斜辺38に衝突して、旋回流となって、開口部35に送出される。流入孔323から第2マニホールド部33を貫通する貫通穴31までの距離が長いと、酸化剤POと、流路34の壁面との間の摩擦によって圧力損失が大きくなり、酸化剤POの流速が低下する。ひいては、旋回流が弱まる。一方で、流入孔323から第2マニホールド部33を貫通する貫通穴31までの距離が短いと、酸化剤POの多くは、開口部35の半径方向に向かって送出される。そのため、旋回流が形成されにくくなる。
そのため、(第2マニホールド部33を貫通する貫通穴31の内径/流入孔323の中心を結んだ外形の直径)は、0.1以上0.5以下であることが好ましい。ここで、(第2マニホールド部33を貫通する貫通穴31の内径/流入孔323の中心を結んだ外形の直径)は、0.1,0.11,0.12,0.13,0.14,0.15,0.16,0.17,0.18,0.19,0.2,0.21,0.22,0.23,0.24,0.25,0.26,0.27,0.28,0.29,0.3,0.31,0.32,0.33,0.34,0.35,0.36,0.37,0.38,0.39,0.4,0.41,0.42,0.43,0.44,0.45,0.46,0.47,0.48,0.49,0.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
第2マニホールド部33の凹部334の内部下面331は、第2マニホールド部33の中心から半径方向にテーパ角を有する。第1マニホールド部32と、第2マニホールド部33との間に形成される流路34は、マニホールド部3の中心に向かうにしたがって、星型多角形の各頂点36から延びる2つの斜辺38が広がる。そのため、流路34は、円周方向に広がり、流路34の断面積は大きくなる。質量保存の法則により、流路34のどの断面においても、酸化剤POの単位時間当たりの流量は、一定となる。そのため、酸化剤POの流速を一定にするため、流路34の隙間を狭めて、流路34の断面積を等しくさせる必要がある。かかる理由により、第2マニホールド部33の凹部334の内部下面331は、半径方向にテーパ角を有することが好ましい。ここでは、テーパ角は、第2マニホールド部33の中心軸と直交する座標軸に対して、中心から半径方向に後端面332に向かうのがマイナス方向の角度とする。
そのため、好ましくは、テーパ角は、内部下面331に対して-20°以上-2°以下である。ここで、テーパ角は、内部下面331に対して、-20,-19.9,-19.8,-19.7,-19.6,-19.5,-19.4,-19.3,-19.2,-19.1,-19,-18.9,-18.8,-18.7,-18.6,-18.5,-18.4,-18.3,-18.2,-18.1,-18,-17.9,-17.8,-17.7,-17.6,-17.5,-17.4,-17.3,-17.2,-17.1,-17,-16.9,-16.8,-16.7,-16.6,-16.5,-16.4,-16.3,-16.2,-16.1,-16,-15.9,-15.8,-15.7,-15.6,-15.5,-15.4,-15.3,-15.2,-15.1,-15,-14.9,-14.8,-14.7,-14.6,-14.5,-14.4,-14.3,-14.2,-14.1,-14,-13.9,-13.8,-13.7,-13.6,-13.5,-13.4,-13.3,-13.2,-13.1,-13,-12.9,-12.8,-12.7,-12.6,-12.5,-12.4,-12.3,-12.2,-12.1,-12,-11.9,-11.8,-11.7,-11.6,-11.5,-11.4,-11.3,-11.2,-11.1,-11,-10.9,-10.8,-10.7,-10.6,-10.5,-10.4,-10.3,-10.2,-10.1,-10,-9.9,-9.8,-9.7,-9.6,-9.5,-9.4,-9.3,-9.2,-9.1,-9,-8.9,-8.8,-8.7,-8.6,-8.5,-8.4,-8.3,-8.2,-8.1,-8,-7.9,-7.8,-7.7,-7.6,-7.5,-7.4,-7.3,-7.2,-7.1,-7,-6.9,-6.8,-6.7,-6.6,-6.5,-6.4,-6.3,-6.2,-6.1,-6,-5.9,-5.8,-5.7,-5.6,-5.5,-5.4,-5.3,-5.2,-5.1,-5,-4.9,-4.8,-4.7,-4.6,-4.5,-4.4,-4.3,-4.2,-4.1,-4,-3.9,-3.8,-3.7,-3.6,-3.5,-3.4,-3.3,-3.2,-3.1,-3,-2.9,-2.8,-2.7,-2.6,-2.5,-2.4,-2.3,-2.2,-2.1,-2であり、さらに好ましくは、テーパ角は、内部下面331に対して-10~-5°である。また、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
上述した構造にすることで、マニホールド部3内部の流路34を流れる酸化剤POの動圧及び静圧の変化は小さくなる。その一方で、マニホールド部3内部の流路34を流れる酸化剤POは、ピントル部2の外周部から開口部35に流れるとき、旋回流を増加させるため、酸化剤POの動圧が高められる。当該動圧を高めるため、開口部35の隙間であるクリアランス値Δrは、マニホールド部3の内部の凸部324及び凹部334から形成される流路34の平均隙間ΔCより狭く設計される必要がある。しかし、ΔrがΔCより狭すぎると、旋回流の運動エネルギーは増加するが、タンク(不図示)から酸化剤POを送出するターボポンプ(不図示)等の供給装置も大型化する。配管系も含めて、装置が大型化し、ひいてはロケットの重量が増大し、ロケットの推進効率が低下する。
そのため、(流路34の平均隙間ΔC/クリアランス値Δr)は、0.125以上0.17以下であることが好ましい。ここで、(流路34の平均隙間ΔC/クリアランス値Δr)は、0.125,0.126,0.127,0.128,0.129,0.13,0.131,0.132,0.133,0.134,0.135,0.136,0.137,0.138,0.139,0.14,0.141,0.142,0.143,0.144,0.145,0.146,0.147,0.148,0.149,0.15,0.151,0.152,0.153,0.154,0.155,0.156,0.157,0.158,0.159,0.16,0.161,0.162,0.163,0.164,0.165,0.166,0.167,0.168,0.169,0.17であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
マニホールド部3は、上述した構造を有することで、酸化剤POを安定した旋回流として、開口部35に流出させることができる。かかる旋回流によって、酸化剤POは、ピントル部2の噴射孔25から燃焼室44の内壁に向かって噴射される燃料PCと、略直角で混合される。そのため酸化剤POと混合された燃料PCは、燃焼室44の内壁に向かって旋回流となって燃焼室44内で燃焼し、熱エネルギーを伴う高温、高圧のガスが発生する。この結果、燃焼室44全体で、燃料PCが無駄なく燃焼するため、燃焼効率が高まる。さらに、むらなく混合されて局部的焼損等の異常燃焼等が発生しにくくなる。
さらに、マニホールド部3の端面321の下方に、ピントル部2の噴射孔25が配置されているため、酸化剤POと燃料PCが混合し、燃焼する位置が、インジェクター1の外側となる。インジェクター1は、かかる構造を有しているため、ピントル部2及びマニホールド部3の内部での異常燃焼を防ぎうる。
3 インジェクター1内の酸化剤POの流れ
第3章では、第1章と第2章とで説明したインジェクター1内の酸化剤POの流れについて説明する。ここでは、マニホールド部3内部の凸部324及び凹部334は、星型六角形の形状を有する。酸化剤POの流れは、有限体積法を用いた流体シミュレーションの結果に基づくものである。
3.1 6箇所の流入孔323から酸化剤POか流入された結果
図8は、実施形態に係るマニホールド部3の6箇所の流入孔323から酸化剤POが流入された流路34内の流速Vを表した図である。図8に記載された第1グラフR1の横軸は、開口部35の第2マニホールド部33を貫通する貫通穴31の内周面335からピントル部2の胴体部22の外周面28までの距離Lである。即ち、第1グラフR1の横軸は、開口部35近傍における流路34の半径方向の距離Lである。第1グラフR1の縦軸は、酸化剤POの流速Vである。酸化剤POの流速Vは、半径方向の流速u_rと接線方向の流速u_thetaとに分かれて記載されている。
半径方向の流速u_rは、半径方向に対してほぼ一定の流速Vである。一方、接線方向の流速u_thetaは、半径方向の流速u_rより速い。このシミュレーション結果より、開口部35近傍の流路34で、酸化剤POの旋回流が発生していることが明らかである。なお、第1グラフR1の横軸の左右で、接線方向の流速u_thetaが低下しているのは、酸化剤POの粘性により、第2マニホールド部33を貫通する貫通穴31の内周面335と、ピントル部2の外周面28とでせん断力(摩擦力)が生じているからである。接線方向の流速u_thetaは、半径方向の流速u_rより速いため、より大きいせん断力(摩擦力)が生じているため、接線方向の流速u_thetaの速度勾配が大きい。
図9は、6箇所の流入孔323から酸化剤POが流入された流れを表した第1画像S1の一例を表した図である。第1画像S1は、流体シミュレーションによって解析された酸化剤POの流れを可視化したものである。第1画像S1は、マニホールド部3の上面からみた第1画像S1aと、マニホールド部3の下面からみた第1画像S1bとに分けて表されている。図9から明らかなように、開口部35近傍との流路34で、酸化剤POが旋回しながら、マニホールド部3の軸39方向に流出されている。
3.2 5箇所の流入孔323に酸化剤POが流入された結果
図10は、実施形態に係るマニホールド部3の5箇所の流入孔323から酸化剤POが流入された流路34内の流速Vを表した図である。本節では、6箇所の流入孔323のうち1箇所を塞いで、酸化剤POが流入孔323から流入れた例を説明する。図10に記載された第2グラフR2の横軸及び縦軸は、図8同様、開口部35近傍における流路34の半径方向の距離L及び酸化剤POの流速Vである。
図10の第2グラフR2に表された酸化剤POの流速Vの傾向は、図8の第1グラフR1に表された傾向とほぼ同一である。一方で、5箇所の流入孔323から酸化剤POが流入された場合と、6箇所の流入孔323から酸化剤POが流入された場合とを比べて、半径方向の流速u_rは、ほぼ同一であるが、接線方向の流速u_thetaは、速い。
これは、流入孔323を6箇所から5箇所に減らしたことで、1箇所当たりの流入孔323に流れる単位時間あたりの酸化剤POの量が増え、酸化剤POの接線方向の流速u_thetaが速くなった。さらに、塞がれた1箇所の近傍の流路34で、酸化剤POが流出されないため、流体のエネルギー損失が発生し、他の流入孔323から、このエネルギー損失を補うように、酸化剤POが接線方向に多く流れるため、接線方向の流速u_thetaが速くなる。
かかる流れの現象に基づき、流入孔323の数を増減させることで、酸化剤POの接線方向の流速u_thetaは、調整可能に構成される。このように接線方向の流速u_thetaが調整可能であるため、酸化剤POの旋回流の強さが調整可能となる。調整される具体例として、燃焼室44の直径が大きい場合、流入孔323の数を減らすことで、酸化剤POの旋回流を強くさせることができる。その結果、燃焼室44全体で燃焼が発生する。
図11は、5箇所の流入孔323から酸化剤POが流入された流れを表した第2画像S2の一例を表した図である。図9と同様、第2画像S2は、流体シミュレーションによって解析された酸化剤POの流れを可視化したものである。第2画像S2は、マニホールド部3の上面からみた第2画像S2aと、マニホールド部3の下面からみた第2画像S2bとに分けて表されている。5箇所であっても、開口部35近傍の流路34で、酸化剤POが旋回しながら、マニホールド部3の軸方向に流出されている。
星型多角形の形状を有するマニホールド部3において、使用する流入孔323の数を調整することで、大きさ、形状等の仕様の異なる燃焼室44であっても、効率のよい燃焼が得られる。そのため、仕様の異なる燃焼室44であっても、同一のインジェクター1が適用できるため、インジェクター1は、数多くの燃焼室44で使用可能となる。そのため、インジェクター1の大量生産が可能となるため、本機能は、インジェクター1の製造コストの低下に資する。
さらに、使用されない流入孔323に、酸化剤POの流速、流量等の物理量を測定するセンサー(不図示)を挿入することができるため、新たに孔を加工する必要がない。
4.インジェクター1の最適設計手法
第4章では、第1章~第3章で説明したインジェクター1及び燃焼器4の最適設計手法について説明する。以下のステップを踏んでインジェクター1及び燃焼器4の設計値が決定される。
4.1 空燃比の決定
最初に空燃比が決定される。空燃比は、ロケットの推進剤Pとして使用される酸化剤PO及び燃料PCの質量比であり、酸化剤POの質量Oを、燃料PCの質量Fで割った無次元量である。以下数1で算出される。ここで、εは空燃比である。
Figure 2023041164000002
4.2 ピントル部2の絞りの決定
次に、ピントル部2の胴体部22の外径と、ピントル部2の噴射孔25の数及び内径とが決定される。ここでは、流路34の絞りを決定するための係数としてブロッキングファクターBFが用いられる。開口部35から流出される酸化剤POが、ピントル部2から噴射される燃料PCによって、どの程度遮られているかを示す値である。ブロッキングファクターBFは、以下数2で算出される。Nholesは、ピントル部2の噴射孔25の数、Dholesは、噴射孔25の内径、Dpintleは、噴射孔25の配置されているピントル部2の胴体部22の外径である。
Figure 2023041164000003
ブロッキングファクターBFが1のとき、理論上、流路34から流出される酸化剤POが、噴射孔25から噴射される全燃料PCと衝突する。そのため、酸化剤PO及び燃料PCの微細化が促進され、燃焼効率も高い。一方で、酸化剤PO及び燃料PCの物性と、旋回流の状態等との関係で、理論通りに衝突度合いが増加するとは限らない。
そのため、ブロッキングファクターBFは、0.7以上1.3以下であることが好ましい。ここで、ブロッキングファクターBFは、0.7,0.71,0.72,0.73,0.74,0.75,0.76,0.77,0.78,0.79,0.8,0.81,0.82,0.83,0.84,0.85,0.86,0.87,0.88,0.89,0.9,0.91,0.92,0.93,0.94,0.95,0.96,0.97,0.98,0.99,1,1.01,1.02,1.03,1.04,1.05,1.06,1.07,1.08,1.09,1.1,1.11,1.12,1.13,1.14,1.15,1.16,1.17,1.18,1.19,1.2,1.21,1.22,1.23,1.24,1.25,1.26,1.27,1.28,1.29,1.3であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
4.3 クリアランス値の決定
次に、ピントル部2の胴体部22と、第2マニホールド部33の開口部35とのクリアランス値Δrが決定される。クリアランス値Δrを決定する前に、数3によって与えられる推進剤総運動量比TMR(Total Momentum Ratio)が算出される。ここで、mfuel、fuelは、燃料PCの流量及び速度であり、moxi、oxiは、酸化剤POの流量及び速度である。
Figure 2023041164000004
クリアランス値Δrは、推進剤総運動量比TMR、空燃比ε(=O/F)、ピントル部2の噴射孔25の数Nholes、噴射孔25の内径Dholes、ピントル部2の胴体部22の外径Dpintle、燃料PCの密度ρfuel及び酸化剤POの密度ρoxiの各値を数4に代入することによって算出される。
Figure 2023041164000005
クリアランス値Δrは、開口部35の隙間であるため、この値が小さいほど、酸化剤POの流速が速くなる。一方、圧力損失が増加するため、タンク(不図示)からマニホールド部3に酸化剤POを供給するエネルギーも増加する。また、クリアランス値Δrが小さいと、ピントル部2及びマニホールド部3を製造する加工精度も高くなるため、製造コストが上昇する。一方で、クリアランス値Δrが大きいと、酸化剤POの流速が低下するため、旋回流の運動エネルギーが低下し、燃料PCとの衝突による微粒化が図れない。そのため、クリアランス値Δrは、胴体部22の外径Dpintleとの関係で決定される無次元化数が、数5の範囲内に入ることが好ましい。
Figure 2023041164000006
クリアランス値Δrが好適な範囲に入るように、数4に係る各値を修正して、インジェクター1の設計値が決定される。
そのため、(クリアランス値Δr/外径Dpintle)は、0.01より大きく、0.15未満であることが好ましい。ここで、(クリアランス値Δr/外径Dpintle)は、0.015,0.02,0.025,0.03,0.035,0.04,0.045,0.05,0.055,0.06,0.065,0.07,0.075,0.08,0.085,0.09,0.095,0.1,0.105,0.11,0.115,0.12,0.125,0.13,0.135,0.14,0.145であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
4.4 マニホールド部3内部の凸部324及凹部334の星型多角形の決定
次にマニホールド部3内部の凸部324及凹部334の星型多角形の形状が決定される。星型多角形の頂点36から開口部35(第2マニホールド部33を貫通する貫通穴31の外周)までの頂点距離Lと、星型多角形の交点37から開口部35(第2マニホールド部33を貫通する貫通穴31の外周)までの交点距離Lとは、以下の数6及び数7で算出される。ここで星型多角形の交点37は、各頂点36の間の凹み部分で最もマニホールド部3の中心に近い点とする。頂点距離Lを交点距離Lで割った無次元数が、数6で示された範囲内に入ることが好ましい。
Figure 2023041164000007
そのため、(頂点距離L/交点距離L)は、1.8より大きく、2.2未満であることが好ましい。ここで、(頂点距離L/交点距離L)は、1.81,1.82,1.83,1.84,1.85,1.86,1.87,1.88,1.89,1.9,1.91,1.92,1.93,1.94,1.95,1.96,1.97,1.98,1.99,2,2.01,2.02,2.03,2.04,2.05,2.06,2.07,2.08,2.09,2.1,2.11,2.12,2.13,2.14,2.15,2.16,2.17,2.18,2.19であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
数7では、交点距離Lをピントル部2の胴体部22の外径Dpintleで、無次元数が、数7で示された範囲内に入ることが好ましい。
Figure 2023041164000008
そのため、(交点距離L/外径Dpintle)は、1.3より大きく、1.65未満であることが好ましい。ここで、(交点距離L/外径Dpintle)は、1.31,1.32,1.33,1.34,1.35,1.36,1.37,1.38,1.39,1.4,1.41,1.42,1.43,1.44,1.45,1.46,1.47,1.48,1.49,1.5,1.51,1.52,1.53,1.54,1.55,1.56,1.57,1.58,1.59,1.6,1.61,1.62,1.63,1.64であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
数1~数5までの式で、ピントル部2の胴体部22の外径Dpintleが決定され、数6及び数7で星型多角形の主な寸法が決定される。
4.5 燃焼室44の内径の決定
次に、ピントル部2の胴体部22の外径Dpintleから、燃焼室44の内径Dchamberが決定される。燃焼室44内で、酸化剤POが混合された燃料PCが燃焼室44内に充分拡散し、かつ、燃焼により熱エネルギーを伴う高温、高圧のガスが噴射されることが好ましい。そのため、両者の要望を満たすべく、燃焼室44の内径Dchamberは、以下数8で算出される。
Figure 2023041164000009
上述したステップを踏むことで、インジェクター1及び燃焼器4の適正な設計パラメーターが算出される。ステップは、一例であって、順序を変更して、適正な設計パラメーターが算出されてもよい。このように、推進剤Pである酸化剤PO及び燃料PCと、ピントル部2の胴体部22の外周と、ピントル部2の噴射孔25の数及び内径と、星型多角形の主な寸法とを決定することで、燃焼室44の適正な内径が決定される。ロケット設計者は、試行錯誤実験をする過程を低減し、適正なインジェクター1及び燃焼器4の設計パラメーターを決定することができる。
5.変形例
本章では、インジェクター1に係る変形例について説明する。即ち、下記のような態様によって前述した実施形態を実施してもよい。
(1)ピントル部2の有する第2流入孔24は、第2流入孔24から流入した酸化剤POを噴射孔25から噴射可能に構成され、第1マニホールド部32の有する流入孔323は、燃料PCを流入可能に構成されてもよい。即ち、ロケットエンジンにおいて、極低温用の酸化剤POと常温用の燃料PCを用いる場合は,極低温用の酸化剤POをピントル部2に流し、常温用の燃料PCをマニホールド部3に流すことで、常温用の燃料PCが凍結する可能性を減少させる。これは、ピントル部2内の流路長がマニホールド部3内の流路長より短いため、ピントル部2に流入する極低温酸化剤POによって、マニホールド部3の熱が奪われにくいからである。その結果、常温用の燃料PCをマニホールド部3に流しても、常温用の燃料PCが凍結することが防げる。
(2)第2マニホールド部33の凹面414の内部下面331は、円周方向にガイドを有してもよい。ガイドは、円周方向からピントル部2の中心部に向かうように、配置されることで、各流入孔323から流出された酸化剤POの相互の衝突によるエネルギー損失を抑えて、旋回流を生成する。
(3)マニホールド部3の内部において、星型多角形の各頂点36から延びる2つの斜辺38の円周角度は、マニホールド部3の半径方向に対して、左右対称でなくてもよい。即ち、一方の斜辺38と半径方向に向かう線で形成される角度と、他方の斜辺38と半径方向に向かう線で形成される角度とを相違させることで、マニホールド部3から発生する旋回流の方向が決定されてもよい。タンクから流入される酸化剤POが安定した流れでなくても、旋回流は安定的に生成される。
(4)マニホールド部3の内部において、星型多角形の各交点37を固定し、各頂点36は、円周方向に右又は左に移動してもよい。このような構造にすることで、星型多角形の各頂点36から延びる2つの斜辺38の円周角度の中心を通る線は、マニホールド部3の中心から外れる。そたため、一方の斜辺38と半径方向に向かう線で形成される角度と、他方の斜辺38と半径方向に向かう線で形成される角度とが相違し、上記(3)と同様の旋回流が生成される。
6.結言
このように、インジェクター1を構成するマニホールド部3の内部に、星型多角形の形状を有する凸部324及び凹部334から形成される流路34を設けることで、安定した旋回流を酸化剤POに与えることができる。この結果、ピントル部2から噴出した燃料PCと酸化剤POとは、効率よく混合し、燃焼器4内に均一に拡散されて燃焼する。その結果、燃焼振動または燃焼スパイクあるいは局部的焼損等の異常燃焼が低減される。さらに、インジェクター1は、ロケットの主推進装置あるいは人工衛星の軌道制御または姿勢制御のガスジェット装置として広く使用され、効率のよいロケット推進が実現でき、軌道制御、姿勢制御が精確になされる。
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記インジェクターにおいて、前記ピントル部の前記胴体部は円筒形であり、前記ピントル部の先端部が半円球状である、もの
前記インジェクターにおいて、前記ピントル部は、末端部に第2流入孔を有し、該第2流入孔は、複数の前記噴射孔と連通し、該第2流入孔から流入した燃料を前記噴射孔から噴射可能に構成される、もの。
前記インジェクターにおいて、前記噴射孔は、前記側面の外周方向に複数列で、等間隔に配置されている、もの。
前記インジェクターにおいて、前記凸部及び前記凹部は、星型多角形の形状を有する、もの。
前記インジェクターにおいて、複数の前記流入孔は、前記星型多角形の各頂点から延びる2つの斜辺に囲まれた間で、且つ、前記星型多角形の中心から等距離に配置されている、もの。
前記インジェクターにおいて、前記星型多角形は、星型六角形である、もの。
前記インジェクターにおいて、前記貫通穴の内径は、前記星型多角形の外形に対して、0.1以上0.5以下である、もの。
前記インジェクターにおいて、前記凹部の前記内部下面は、前記第2マニホールド部の中心から半径方向にテーパ角を有する、もの。
前記インジェクターにおいて、前記テーパ角は、前記内部下面に対して-20°以上-2°以下である、もの。
前記インジェクターにおいて、前記第2マニホールド部の前記凹部の後端面に突起部を備え、該突起部は前記貫通穴が貫通されている、もの。
もちろん、この限りではない。
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1 :インジェクター
2 :ピントル部
21 :末端部
22 :胴体部
23 :先端部
24 :第2流入孔
25 :噴射孔
25a :第1噴射孔
25b :第2噴射孔
26 :貫通穴
27 :軸
28 :外周面
29 :側面
3 :マニホールド部
31 :貫通穴
32 :第1マニホールド部
321 :端面
322 :上面
323 :流入孔
323-1 :流入孔
323-2 :流入孔
323-3 :流入孔
323-4 :流入孔
323-5 :流入孔
323-6 :流入孔
324 :凸部
33 :第2マニホールド部
331 :内部下面
332 :後端面
333 :突起部
334 :凹部
335 :内周面
34 :流路
35 :開口部
36 :頂点
36-1 :頂点
36-2 :頂点
36-3 :頂点
36-4 :頂点
36-5 :頂点
36-6 :頂点
37 :交点
37-1 :交点
37-2 :交点
37-3 :交点
37-4 :交点
37-5 :交点
37-6 :交点
38 :斜辺
38-1 :斜辺
38-2 :斜辺
38-12 :斜辺
39 :軸
4 :燃焼器
41 :燃焼器上面部
411 :前端面
412 :後端面
413 :貫通穴
414 :凹面
42 :燃焼器本体部
421 :前端面
422 :後端面
43 :燃焼器下面部
431 :前端面
432 :後端面
433 :燃焼室開口部
44 :燃焼室
45 :軸
L :距離
P :推進剤
PC :燃料
PO :酸化剤
R1 :第1グラフ
R2 :第2グラフ
S1 :第1画像
S1a :第1画像
S1b :第1画像
S2 :第2画像
S2a :第2画像
S2b :第2画像
V :流速

Claims (11)

  1. インジェクターであって、
    ピントル部と、マニホールド部とを備え、
    前記ピントル部は、その側面に複数の噴射孔を有し、
    前記マニホールド部は、貫通穴と、第1マニホールド部と、第2マニホールド部とを備え、
    前記貫通穴は、前記ピントル部の胴体部を挿入可能に構成され、
    前記第1マニホールド部は、凸部を有し、前記第1マニホールド部の端面から該凸部の上面に貫通された複数の流入孔を備え、該流入孔は、酸化剤を流入可能に構成され、
    前記第2マニホールド部は、
    前記凸部の形状に対応する凹部を有し、前記凸部と嵌合されており、
    前記凸部の上面と前記凹部の内部下面との間に流路を備え、前記酸化剤を前記流路の開口部から前記噴射孔に向かって流出可能に構成される、もの。
  2. 請求項1に記載のインジェクターにおいて、
    前記ピントル部の前記胴体部は円筒形であり、前記ピントル部の先端部が半円球状である、もの
  3. 請求項1又は請求項2に記載のインジェクターにおいて、
    前記ピントル部は、末端部に第2流入孔を有し、該第2流入孔は、複数の前記噴射孔と連通し、該第2流入孔から流入した燃料を前記噴射孔から噴射可能に構成される、もの。
  4. 請求項1~請求項3の何れか1つに記載のインジェクターにおいて、
    前記噴射孔は、前記側面の外周方向に複数列で、等間隔に配置されている、もの。
  5. 請求項1~請求項4の何れか1つに記載のインジェクターにおいて、
    前記凸部及び前記凹部は、星型多角形の形状を有する、もの。
  6. 請求項5に記載のインジェクターにおいて、
    複数の前記流入孔は、前記星型多角形の各頂点から延びる2つの斜辺に囲まれた間で、且つ、前記星型多角形の中心から等距離に配置されている、もの。
  7. 請求項5又は請求項6に記載のインジェクターにおいて、
    前記星型多角形は、星型六角形である、もの。
  8. 請求項5~請求項7の何れか1つに記載のインジェクターにおいて、
    前記貫通穴の内径は、前記星型多角形の外形に対して、0.1以上0.5以下である、もの。
  9. 請求項1~請求項8の何れか1つに記載のインジェクターにおいて、
    前記凹部の前記内部下面は、前記第2マニホールド部の中心から半径方向にテーパ角を有する、もの。
  10. 請求項9に記載のインジェクターにおいて、
    前記テーパ角は、前記内部下面に対して-20°以上-2°以下である、もの。
  11. 請求項1~請求項10の何れか1つに記載のインジェクターにおいて、
    前記第2マニホールド部の前記凹部の後端面に突起部を備え、該突起部は前記貫通穴が貫通されている、もの。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7465027B1 (ja) 2023-10-02 2024-04-10 江▲蘇▼大学 正逆旋回流により噴霧燃焼を強化して気液ピントルインジェクターのピントルロッドの頭部を冷却する気液ピントルインジェクター

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