JP2023040878A - 有機無機複合微粒子分散液およびその製造方法、並びに砥粒分散液 - Google Patents

有機無機複合微粒子分散液およびその製造方法、並びに砥粒分散液 Download PDF

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Kazuhiro Nakayama
真也 碓田
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Abstract

【課題】優れた研磨特性を有する有機無機複合微粒子分散液を提供すること。【解決手段】下記[1]、[2]および[3]の要件を備え、動的光散乱法により測定した平均粒子径(D1)が20nm以上以上600nm以下の有機無機複合微粒子が溶媒に分散してなる、有機無機複合微粒子分散液。[1]前記有機無機複合微粒子は、有機成分を含まない無機成分からなる母粒子と、前記母粒子の表面上に無機成分と有機成分を含有する有機無機複合層を有すること。[2]前記有機無機複合微粒子は、無機成分あたりのCOD値が100ppm以上10%以下であること。[3]前記有機無機複合層の厚さは、1nm以上500nm以下であること。【選択図】なし

Description

本発明は、研磨用砥粒分散液として好適な有機無機複合微粒子分散液およびその製造方法、並びに砥粒分散液に関する。更には、粒子連結型有機無機複合微粒子を含む有機無機複合微粒子分散液およびその製造方法、並びに砥粒分散液に関する。
例えば、シリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカゾルのうち、シリカ微粒子の形状が球状以外の形状からなるシリカゾルとしては、鎖状、数珠状または長球状のものが知られている。また、その他には、粒子連結型のシリカ微粒子が溶媒に分散してなる粒子連結型シリカゾルも知られており、これらは、例えば、各種研磨剤として使用されている。
特許文献1には、画像解析法により測定される平均粒子径が5~300nmの範囲にあるアルミナ-シリカ複合一次粒子が2個以上結合した構造を含む粒子連結型アルミナ-シリカ複合微粒子が分散媒に分散してなる粒子連結型アルミナ-シリカ複合ゾルおよびその製造方法の発明が開示されている。特許文献1では、この粒子連結型アルミナ-シリカ複合微粒子が、アルミナ-シリカ複合一次粒子として、表面に複数の疣状突起を有する球状粒子を含むことを特徴とする。この発明は、通常の粒子連結型有機無機複合微粒子または非球状アルミナ-シリカ複合微粒子とは異なる特異な構造を有する。このため、例えば、研磨材および研磨用組成物として有用であり、特に高研磨速度の効果において優れるものとされている。しかし、アルミニウムは研磨基板の種類によっては汚染物質となってしまうため、好ましくない。
特許文献2には、画像解析法により測定される平均粒子径が5~300nmの範囲にあるシリカ一次粒子が2個以上結合した構造を含む粒子連結型有機無機複合微粒子が分散媒に分散してなる粒子連結型シリカゾルおよびその製造方法の発明が開示されている。特許文献2では、この粒子連結型有機無機複合微粒子が、シリカ一次粒子として、表面に複数の疣状突起を有する球状粒子を含むことを特徴とする。この発明は、通常の粒子連結型有機無機複合微粒子または非球状有機無機複合微粒子とは異なる特異な構造を有することから、例えば、研磨材および研磨用組成物として有用であり、特に高研磨速度の効果において優れるものであるとされている。しかし、結合様態としてテトラポット型を含み、さらには疣状突起を含むことにより局所的な研磨基板への応力集中が発生しやすいためか、スクラッチ等の研磨傷を生じやすい。
特開2009-155180号公報 特開2011-016702号公報
本発明は、優れた研磨特性を有する有機無機複合微粒子分散液およびその製造方法、並びに砥粒分散液を提供することを目的とする。更には、粒子連結型有機無機複合微粒子を含む有機無機複合微粒子分散液およびその製造方法、並びに砥粒分散液を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、下記[1]、[2]および[3]の要件を備え、動的光散乱法により測定した平均粒子径(D1)が20nm以上600nm以下の有機無機複合微粒子が溶媒に分散してなる、有機無機複合微粒子分散液が提供される。
[1]前記有機無機複合微粒子は、有機成分を含まない無機成分からなる母粒子と、前記母粒子の表面上に無機成分と有機成分を含有する有機無機複合層を有すること。
[2]前記有機無機複合微粒子は、無機成分あたりのCOD値が100ppm以上10%以下であること。
[3]前記有機無機複合層の厚さは、1nm以上500nm以下であること。
本発明の一態様によれば、前記本発明の一態様に係る有機無機複合微粒子分散液を含む、砥粒分散液が提供される。
本発明の一態様によれば、下記工程1を含む、前記本発明の一態様に係る有機無機複合微粒子分散液の製造方法が提供される。
工程1:SiO濃度0.1質量%以上30質量%以下のシリカ微粒子分散液に、カチオン性の有機高分子成分を下記の割合(WA/WS)の範囲内で添加し、続いて、40℃以上98℃以下に加熱し、0.5時間以上保持し、粒子連結型有機無機複合微粒子分散液を得る工程
0.002≦WA/WS≦0.3
(ここで、WSは、シリカ微粒子分散液中のシリカ質量であり、WAは、カチオン性の有機高分子成分の質量である。)
本発明によれば、優れた研磨特性を有する有機無機複合微粒子分散液およびその製造方法、並びに砥粒分散液を提供できる。更には、粒子連結型有機無機複合微粒子を含む有機無機複合微粒子分散液およびその製造方法、並びに砥粒分散液を提供できる。
本発明に係る有機無機複合微粒子を示す概略図であり、図1(A)は単粒子型有機無機複合微粒子を示し、図1(B)は粒子連結型有機無機複合微粒子を示す。 本発明に係る有機無機複合微粒子における微粒子の中心からの距離とCOD値との関係を示すグラフである。
[有機無機複合微粒子分散液]
本発明の有機無機複合微粒子分散液は、下記[1]、[2]および[3]の要件を備え、動的光散乱法により測定した平均粒子径(D1)が20nm以上600nm以下の有機無機複合微粒子が溶媒に分散してなることを特徴とする。
[1]前記有機無機複合微粒子は、有機成分を含まない無機成分からなる母粒子と、前記母粒子の表面上に無機成分と有機成分を含有する有機無機複合層を有すること。
[2]前記有機無機複合微粒子は、無機成分あたりのCOD値が100ppm以上10%以下であること。
[3]前記有機無機複合層の厚さは、1nm以上500nm以下であること。
(動的光散乱法/粒子径/粒子形状)
本発明の有機無機複合微粒子の形状は、格別に制限されるものではないが、前記有機無機複合微粒子を研磨用途に適用する場合、実用的な研磨速度を得るうえで、好適には非球状ないし粒子連結型が好ましい。有機無機複合微粒子の大きさは、動的光散乱法により測定される平均粒子径(D1)が20nm以上600nm以下の範囲にあるものが必要である。前記有機無機複合微粒子分散液を研磨用途に適用した場合、平均粒子径(D1)が20nm未満の場合、実用的な研磨速度を得られない場合がある。また、平均粒子径(D1)が600nmを超える場合は、研磨基板にスクラッチ(線状痕)が生じ易くなる。
平均粒子径(D1)の範囲としては、好ましくは30nm以上400nm以下、より好ましくは50nm以上300nm以下の範囲である。
(母粒子/有機無機複合層/COD値)
本発明の有機無機複合微粒子は、下記の要件[1]を備えることが必要である。
要件[1]有機成分を含まない無機成分からなる母粒子と、前記母粒子の表面上に無機成分と有機成分を含有する有機無機複合層を有すること。
すなわち、本発明の有機無機複合微粒子の構造は、少なくとも、母粒子と、これを覆う被覆層を備えている。前記母粒子は、有機成分を含まない無機成分からなる。また、前記被覆層は、無機成分と有機成分を含有してなる。なお、本発明では、この被覆層を「有機無機複合層」ともいう。なお、有機無機複合微粒子は、図1(A)に示すように、母粒子MOTと、これを覆う有機無機複合層CMPと、これを覆う最外層OUTとを備えていてもよい。
本発明の有機無機複合微粒子は、下記の要件[2]を備えることが必要である。
要件[2]無機成分あたりのCOD値が100ppm以上10%以下であること。
なお、前記有機無機複合層は、無機成分と有機成分の複合系である。有機成分の存在については、有機無機複合微粒子を溶解させた場合におけるCOD(化学的酸素要求量)を測定することで確認できる。有機無機複合微粒子は、無機成分あたりのCOD値が300ppm以上5%以下であることがより好ましい。なお、COD測定値は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
なお、前記有機無機複合層中の有機成分は粒子の中心から外側に向って濃度勾配を備えていることが好ましい。すなわち、粒子の中心を含む母粒子は有機成分を含んでいないが、母粒子の外側の有機無機複合層は、有機成分を含む。有機無機複合層中の有機成分の濃度は、外側に向かうにつれて次第に低くなっていく。更に有機無機複合層の外側の層、すなわち最外層は有機成分を含んでいない。このように、粒子の中心から外側に向かって有機成分の濃度が変動していくことを濃度勾配があるという。また、有機成分の有無や濃度勾配は粒子の中心から外側に向かってCOD値を測定することで確認できる(図2参照)。
このような粒子の内部に含まれる有機成分は無機成分と比較して柔らかいため、研磨用砥粒として用いた場合、弾性変形し易くなる傾向にある。砥粒が弾性変形すると基板との接触面積が増え、研磨速度が向上するため好ましい。しかし、粒子内部に局所的に有機成分の濃度が高い領域があると、粒子の強度が不足し、研磨時に粒子が崩壊し、研磨速度が低下する懸念がある。そこで、有機成分が研磨粒子内に偏在、即ち有機成分の濃度勾配を備えることで、粒子の強度は保ちつつ、粒子が崩壊することなく高い研磨速度を示すと推定している。
前記母粒子の無機成分としては、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナの複合系(いわゆるシリカ-アルミナ)、チタニア、ジルコニア、およびセリア、並びに、これらの複合酸化物等が挙げられる。このうち、シリカあるいはシリカ-アルミナ複合系が好ましい。
前記有機無機複合層の無機成分としては、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナの複合系(いわゆるシリカ-アルミナ)、チタニア、ジルコニア、およびセリア、並びに、これらの複合酸化物等が挙げられる。このうち、シリカあるいはシリカ-アルミナ複合系が好ましい。同じく前記有機無機複合層の有機成分としては、有機化合物(有機高分子化合物を含む)であれば限定されるものではない。通常は有機無機複合微粒子の合成段階で使用する有機化合物(有機高分子化合物を含む)あるいは、その分解物である。具体的な分解物としては、イミノ基やアミノ基を備える化合物、カルボン酸、アルデヒド、ニトリル、ケトン、アルコール、エーテル、アルケン、アルキン、エステル、アミド、またはシアノ基を備える化合物や、アミノ酸系の化合物、及びこれらの塩》等を挙げることができる。具体的な有機化合物としては、ポリジエチルアミノエチルメタクリレート(PDEAEM)、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロリド(PDMDAAC)、およびポリアルキレンイミンなどの化合物や、これら化合物に前述の官能基を備える化合物が挙げられる。
前記母粒子の平均粒子径は、通常、5nm以上500nm以下の範囲である。
本発明の有機無機複合微粒子は、下記の要件[3]を備えることが必要である。
要件[3]有機無機複合層の厚さは、1nm以上500nm以下であること。
本発明の有機無機複合微粒子分散液を研磨用途に適用する場合、有機無機複合層の厚さが前記範囲内であれば、砥粒も有機無機複合層に由来して、研磨時に弾性変形し易いため研磨傷が発生しにくく、さらに研磨基板の平坦性も向上するため有用である。なお、有機無機複合層の厚さが1nm未満の場合、有機無機複合層が薄いため、砥粒が弾性変形しにくくなるため、研磨速度や平坦性が向上し難くなる傾向にある。
前記有機無機複合層の厚さとしては、3nm以上300nm以下であることが好ましい。なお、前記有機無機複合層の厚さの測定については、後述の方法を用いて測定できる。
(有機無機複合微粒子の形状)
本発明の有機無機複合微粒子の形状は、前記のとおり格別に制限されるものではなく、独立した球状粒子、独立した非球状粒子、独立した球状粒子ないし非球状粒子が連結してなる粒子連結型粒子などの何れであっても構わない。なお、ここで球状粒子は、その短径/長径比が0.8以上1以下の範囲のものを意味する。前記有機無機複合微粒子を研磨用途に適用する場合、実用的な研磨速度を得るうえで、粒子連結型粒子が好ましい。一方、研磨後のスクラッチを低減化させたい場合や平坦性を向上させたい場合は、球状粒子が好ましい。
(粒子連結型有機無機複合微粒子を含む有機無機複合微粒子分散液)
本発明においては、前記有機無機複合微粒子として、粒子連結型有機無機複合微粒子を含む、前記有機無機複合微粒子分散液であることが好ましい。粒子連結型有機無機複合微粒子は、単粒子状の有機無機複合微粒子が連結した構造を有してなる。ここで単粒子状の有機無機複合微粒子の形状は、球状であってもよく、非球状であってもよい。
本発明の有機無機複合微粒子分散液は、下記[1A]、[2]および[3]の要件を備え、動的光散乱法により測定した平均粒子径(D1)が20nm以上600nm以下の粒子連結型有機無機複合微粒子が溶媒に分散してなることを特徴とする。
[1A]前記粒子連結型有機無機複合微粒子は、有機成分を含まない無機成分からなる母粒子と、前記母粒子の表面上に無機成分と有機成分を含有する有機無機複合層を有する一次有機無機複合微粒子が連結してなるか、或いは、有機成分を含まない無機成分からなる母粒子が連結してなり、連結した母粒子の表面上に無機成分と有機成分を含有する有機無機複合層を有すること。
[2]前記粒子連結型有機無機複合微粒子は、無機成分あたりのCOD値が100ppm以上10%以下であること。
[3]前記有機無機複合層の厚さは、1nm以上500nm以下であること。
本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子は、下記の要件[1A]を備えることが必要である。
要件[1A]有機成分を含まない無機成分からなる母粒子と、前記母粒子の表面上に無機成分と有機成分を含有する有機無機複合層を有する一次有機無機複合微粒子が連結してなるか、或いは、有機成分を含まない無機成分からなる母粒子が連結してなり、連結した母粒子の表面上に無機成分と有機成分を含有する有機無機複合層を有すること。
すなわち、粒子連結型有機無機複合微粒子は、単粒子状の有機無機複合微粒子(以下「単粒子型有機無機複合微粒子」とも称する)が連結した構造を有してなるものである。また、粒子連結型有機無機複合微粒子は、有機成分を含まない無機成分からなる一次粒子が連結した構造の母粒子の表面上に無機成分と有機成分を含有する有機無機複合層を有するものであってもよい。なお、本明細書において、「有機無機複合微粒子」は、「単粒子型有機無機複合微粒子」と、「粒子連結型有機無機複合微粒子」の両方を含む概念とする。
粒子連結型有機無機複合微粒子の大きさ、要件[2]および[3]、並びに母粒子については、前述の通りである。
先に述べた、「有機無機複合微粒子が連結した」とは、隣接する有機無機複合微粒子の間に生成した結合によって、隣接する有機無機複合微粒子同士が互いに固定化したことをいう。ここで結合の種類は特に限定されるものではないが、例えば隣接する一次複合微粒子のそれぞれの表面シラノール基同士の縮合反応により生じたシロキサン結合等の化学的結合を挙げることができる。
以下、前記の粒子連結型有機無機複合微粒子の分散液を「粒子連結型有機無機複合微粒子分散液」または「連結粒子分散液」ともいう。
粒子連結型有機無機複合微粒子を構成する一次粒子即ち、「一次有機無機複合微粒子」のことを「一次複合微粒子」ともいう。
また、前記の一次複合微粒子が連結した構造からなる粒子連結型有機無機複合微粒子を「連結粒子」ともいう。
本発明の一次複合微粒子が連結した構造からなる立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子を「立体状連結粒子」ともいう。
さらに、本発明の一次複合微粒子が連結した構造からなる立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子(立体状連結粒子)以外の一次複合微粒子が連結した構造からなる粒子連結型有機無機複合微粒子(連結粒子)を、「平面状連結粒子」ともいう。
連結粒子は、多数の一次複合微粒子が結合した構造を有する。連結粒子において、一次複合微粒子1個を含んだ最小の構成単位を、本願においては、便宜上、「単位構造」という場合がある。ここで「単位構造」とは、一次複合微粒子1個を含み、更に該一次複合微粒子に隣接した一次複合微粒子との間に形成されるネック部の一部を含んでなる。本発明における粒子連結型有機無機複合微粒子は、前記単位構造が連結した構造からなる粒子連結型有機無機複合微粒子ということもできる。前記立体状連結粒子、前記平面状連結粒子についても同様である。
後述するように、粒子連結型有機無機複合微粒子分散液を製造するための主要な原料のひとつである有機無機複合微粒子分散液ないし有機無機複合微粒子を、それぞれ「原料とした有機無機複合微粒子分散液」、「原料とした有機無機複合微粒子」と称する場合がある。
加えて、連結粒子以外の一次複合微粒子を「単粒子」ともいう。
本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子分散液に含まれる有機無機複合微粒子とは、粒子連結型有機無機複合微粒子分散液に含まれるすべての有機無機複合微粒子(連結粒子および単粒子)をいう。
本発明において、粒子の特徴を、透過型顕微鏡写真または走査型顕微鏡写真を用いて特定する場合がある。この場合において、写真の代わりに透過型顕微鏡画像を用いても同様に行うことができる。走査型顕微鏡写真においても、同様に走査型顕微鏡画像を用いることができる。
(粒子連結型有機無機複合微粒子)
本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子は、立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子(立体状連結粒子)と、立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子以外の粒子連結型有機無機複合微粒子(平面状連結粒子)とからなる。
前記「粒子連結型有機無機複合微粒子」における一次複合微粒子については、その形状が球状ないし略球状であることが好ましい。なお、係る球状粒子等と共に他の形状の粒子(例えば、卵状、立方体状または棒状の粒子)が少量混在しても構わない。
前記一次複合微粒子の粒子径は、均一でもよく、それぞれ互いに異なっていてもよい。ここで一次複合微粒子の形状については、透過型電子顕微鏡写真(倍率:20万倍)から確認することができる。
前記連結粒子における一次複合微粒子の平均粒子径(透過型電子顕微鏡写真、倍率20万倍)は20nm以上600nm以下が好ましく、30nm以上400nm以下がより好ましく、50nm以上300nm以下がさらに好ましい。なお、係る平均粒子径を本願では、平均粒子径[F]で表す。平均粒子径[F]の測定方法は、後述の通りである。
連結粒子における一次複合微粒子の平均粒子径が5nm未満の場合は、一次複合微粒子が凝集して得られる連結粒子が塊状になる傾向がある。また、研磨用途においては、研磨基板への応力集中が得られないためか、十分な研磨速度が得られず好ましくない。一次複合微粒子の平均粒子径が600nmを超える場合は、例えば、研磨用途において、研磨基板と連結粒子との間の接触面積の低下が著しくなり、研磨速度の低下を招く場合がある。また、研磨面にスクラッチ(線状痕)が発生しやすくなる場合がある。
立体状連結粒子における一次複合微粒子と、平面状連結粒子における一次複合微粒子の平均粒子径と、前記連結粒子における一次複合微粒子の平均粒子径には有意な差は見られない。
[立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子(立体状連結粒子)]
本発明における立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子は、鎖状で、かつ少なくとも1つの分岐(a)を有する構造と、この構造に対する立体構造を有することを特徴とする。より具体的には、粒子連結型有機無機複合微粒子は、図1(B)に示すように、白丸で示す一次複合微粒子が鎖状に連結した鎖状構造(Ch)を有する。さらに、この鎖状構造(Ch)に、一次複合微粒子が連結して、分岐(a)を有する。ここで、分岐(a)の数は、1つ以上であればよく、特に制限はない。鎖状構造(Ch)と、分岐(a)とは、ほぼ同一平面上に存在する。そして、この平面に交差し、角度をなすような方向(以下、「立体方向」ともいう)に、黒丸で示された一次複合微粒子が結合して、立体構造を有するように、分岐(b)または末端(c)を形成している。
少なくとも1つの分岐(a)を有する構造と、この構造に対する立体構造を有するとは、具体的には次の(1)または(2)の構造のうちの少なくとも1つであることを意味する。
(1)前記分岐(a)に対し、立体方向に伸長してなる分岐(b)
(2)前記分岐(a)に対し、立体方向に伸長してなる末端(c)
前記鎖状とは、一次有機無機複合微粒子が連結してなる細長い構造を指し、屈曲状ないし直鎖状と呼ぶこともできる。なお、この様な鎖状粒子が両端で結合し、環状を構成してなる粒子連結構造、網目構造、一次複合微粒子が凝集してテトラポッド様となった構造および一次複合微粒子の不規則な凝集体(例えば、複数の一次複合微粒子を含む塊状の凝集体)は、前記鎖状の範囲には含まれない。
前記分岐(a)とは、立体状連結粒子の両末端の一次複合微粒子を除いた粒子において、直鎖方向以外に一次複合微粒子または一次複合微粒子の連結体の末端が結合してなる枝分かれ構造を指す。(立体状連結粒子において分岐(a)が結合してなる一次複合微粒子を含む鎖状部分を「主鎖」と称する。)
前記分岐(b)とは、立体状連結粒子の両末端の一次複合微粒子を除いた粒子において、直鎖方向以外に一次複合微粒子または一次複合微粒子の連結体の末端が結合してなる枝分かれ構造であって、前記分岐(a)の伸長方向に対し、立体方向に伸長してなる分岐を指す。立体方向については、後記のとおり、透過型電子顕微鏡写真から判定することができる。
前記末端(c)とは、立体状連結粒子の両末端の一次複合微粒子を除いた粒子において、直鎖方向以外に一次複合微粒子または一次複合微粒子の連結体の末端が結合してなる屈曲構造であって、前記分岐(a)の伸長方向に対し、立体方向に伸長してなる屈曲構造を指す。ここで、立体方向については、後記のとおり、透過型電子顕微鏡写真から判定することができる。
前記立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子における一次複合微粒子の平均連結個数は、5個以上20個以下の範囲にあることが好ましい。
本発明における立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子は、要件[2]で規定する鎖状で、かつ少なくとも1つの分岐(a)を有する構造と、この構造に対する立体構造を有するものである。係る立体構造については、粒子連結型有機無機複合微粒子分散液の電子顕微鏡写真(透過型電子顕微鏡写真、TEM写真)を用いて確認できる。
本発明の立体状連結粒子は、前記のとおり分岐(a)と分岐(b)あるいは分岐(a)と末端(c)を有するものであり、分岐(a)の伸長方向と分岐(b)の伸長方向は、立体状構造の関係にあり、同様に分岐(a)の伸長方向と末端(c)の伸長方向も立体状構造の関係にあるので、該立体状連結粒子を砥粒として研磨基板上に適用した場合、研磨時に本発明の立体状連結粒子は、研磨機基板と複数の接触点において応力が集中し易いので、研磨速度の増進に寄与することができる。
更に立体状連結粒子からなる砥粒は、その回転運動により、研磨基板と動的な接触面積を増大するので、これも研磨速度の増大に寄与することができる。
本発明では立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子の確認を次のように行う。一次複合微粒子が連結した構造からなる粒子連結型有機無機複合微粒子を含む粒子連結型有機無機複合微粒子分散液(SiO濃度1質量%、動的光散乱法で測定された平均粒子径が20nm~600nmの範囲)の透過型電子顕微鏡写真(倍率:20万倍)を用意し、少なくとも粒子が連結した形状の任意の200個の粒子のうち、立体状連結粒子に相当する粒子の個数を測定し、立体状連結粒子の個数割合を算定する。
立体状連結粒子の判定基準は次のとおりである。すなわち、特定の粒子連結型有機無機複合微粒子に関し、下記の(1)~(3)の要件を満たすかを確認する。
(1)一次複合微粒子の連結個数が5個以上で鎖状構造
(2)主鎖構成粒子のうち、末端の粒子以外の粒子に結合した分岐(分岐(a))が少なくとも1箇存在する
(3)当該特定の粒子連結型有機無機複合微粒子上に重複して、他の一次粒子に比して、濃淡が濃い部分が確認できること。
以上の要件を満たす粒子連結型有機無機複合微粒子は、分岐(a)に対し、立体方向に伸長してなる分岐(b)あるいは立体方向に伸長してなる末端(c)を有すると判定し、分岐(a)に対する立体構造を有する立体状連結粒子とする。
[有機成分]
本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子は、有機成分を含有する。
ここで、「含有する」とは、粒子連結型有機無機複合微粒子の内部への内包を指すが、有機成分の一部が、当該粒子表面へ吸着していても構わない。なお、有機成分は、粒子連結型有機無機複合微粒子分散液において、有機成分の一部が当該分散液中に溶出していてもよい。
本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子は、有機成分を内包することが好ましい。
無機粒子に有機成分を添加した場合、通常、有機成分は無機粒子表面へ吸着する。この粒子表面に有機成分が吸着した有機無機複合微粒子を研磨砥粒として使用した場合に、有機成分が研磨基板と粒子間のクッション層として働くためか、研磨速度を低下させる場合があり好ましくない。また、有機無機複合微粒子表面から脱離した有機成分が被研磨基板に吸着することで汚染させるため好ましくない。
これに対し、本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子においては、有機成分の大部分または全部を内包するために、上述の研磨速度低下や、基板の汚染を生じないという利点がある。
なお、前記有機成分とは、本発明の製造方法において、原料として添加された有機高分子成分に由来するものである。有機高分子成分は、本発明の製造方法を経て得られる立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子において、有機高分子の性状を維持する場合と、有機高分子の性状を維持せず、例えば、有機化合物となっている場合がある。
なお、粒子連結型有機無機複合微粒子が内部に有機成分を内包することは、例えば、次のような方法で確認できる。すなわち、粒子連結型有機無機複合微粒子を溶解させた場合における溶解液のCOD(化学的酸素要求量)を測定することで確認できる。COD測定値は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
粒子連結型有機無機複合微粒子が内部に有機高分子成分を内包するという観点から、このCOD測定値は、シリカ100重量部に対して100ppm以上10%以下であることが好ましい。
本発明の製造方法に用いる有機高分子成分は、その分子構造を限定されず直鎖状、平面分岐上、立体分岐状のいずれでもよい。
有機高分子成分は、カチオン性官能基を有するカチオン性であり、その構造にカチオン性官能基を含んでいるが、アニオン性官能基、ノニオン性官能基のいずれか、または全てを含んでいてもよい。上述の通り、カチオン性官能基を有することで、有機無機複合微粒子の表面電荷を制御することが可能であるため、好ましい。
有機高分子成分の重量平均分子量は、300以上100,000以下であることが好ましく、300以上50,000以下であることがより好ましく、300以上5,000以下であることが特に好ましく、300以上2,000以下であることが最も好ましい。有機高分子成分の重量平均分子量が上記範囲を下回る場合、有機無機複合微粒子の凝集を進行させるために大量の有機高分子成分を必要とするため、経済上好ましくない。また、有機高分子成分の重量平均分子量が上記範囲を超える場合は有機無機複合微粒子の凝集が制御できず、所望の粒子を得にくい傾向にある。
有機高分子成分は、特に限定されないが、例えば、ポリジエチルアミノエチルメタクリレート(PDEAEM)、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロリド(PDMDAAC)、およびポリアルキレンイミンが挙げられる。
本発明で用いるポリアルキレンイミンとは、例えば、エチレンイミン、プロピレンイミン、ブチレンイミン、ジメチルエチレンイミン、ペンチレンイミン、ヘキシレンイミン、ヘプチレンイミン、オクチレンイミンといった炭素数2~8のアルキレンイミンを重合して得られるポリマー、並びに、これらを種々の化合物と反応させて化学的に変性させたポリマーを意味する。
[立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子における29Si-NMRスペクトル]
本発明における立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子の29Si-NMRスペクトルを測定した場合、以下の条件を満たすことが好ましい。
Q4のピーク面積に対するQ2およびQ3のピーク面積の合計の比[(Q2+Q3)/Q4)]は、1.1以上2.0以下の範囲にあることが好ましい。この機構は定かではないが、粒子調製プロセスにおいて有機成分がシラノール基に吸着することで縮重合が阻害され、結果として、[(Q2+Q3)/Q4)]の値が1.1を超えると、本発明者らは推測する。すなわち、上記の仮説と本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子が有機成分を内包していることに基づくと、[(Q2+Q3)/Q4)]の値がこの範囲にあることから、本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子内部は、従来公知の有機無機複合微粒子と比較して、縮重合が進行していないと推測される。縮重合が進行していないことから、本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子は、その粒子密度が比較的疎であると推測される。すなわち研磨砥粒として用いた場合の粒子個数が増加し、より具体的には、粒子連結型有機無機複合微粒子と研磨基板との接触面積を増大させることができ、高い研磨速度を得ることができると、本発明者らは推測している。さらに、粒子の内部に有機成分を含有していることから、粒子が柔らかくなり弾性変形し易くなる。その結果、基板との接触面積が増えるため、研磨速度が向上する。また、2.0を超えてしまうとシロキサン結合が不足し、粒子の強度が顕著に低下するため、研磨砥粒として用いた場合に粒子破壊が生じ、研磨性能が低下するため好ましくない。
[立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子における長さ方向の平均最長径(DLa)]
本発明における立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子(立体状連結粒子)は、下記の要件[4]を備えることが好ましい。
要件[4]20nm≦DLa≦1,000nm
ここで、立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子の長さ方向における平均最長径(DLa)は、立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子50個の最長径(DL)をそれぞれ測定し、平均した値である。
具体的には、立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子における長さ方向の最長径(DL)は、有機無機複合微粒子分散液(SiO濃度0.05質量%)の走査型電子顕微鏡(20万倍)を用い、立体状連結粒子に該当する粒子50個について、それぞれの最長径(DL)をそれぞれ測定し、その平均値を算定する。
立体状連結粒子の長さ方向の平均最長径(DLa)が、20nm以上1,000nm以下であると、優れた研磨速度が得られるので、好ましい。
立体状連結粒子の長さ方向の平均最長径(DLa)が、20nm未満であると、十分な研磨速度を得られない場合があり、好ましくない。また、立体状連結粒子の長さ方向の平均最長径(DLa)が、1,000nmを超えると、研磨基板上で傷が生じやすくなるため、好ましくない。
立体状連結粒子の長さ方向の最長径(DLa)は、30nm以上600nm以下がより好ましく、50nm以上600nm以下が最も好ましい。
[立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子における太さ方向の平均直径(DTa)]
本発明における立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子(立体状連結粒子)は、下記の要件[5]を備えることが好ましい。
要件[5] 10nm≦DTa≦800nm
ここで、立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子(立体状連結粒子)の太さ方向における平均直径DTaは、50個の立体状連結粒子について、各粒子における極大値(DTmax)の平均値を、さらに平均した値([50個の立体状連結粒子についてDTmaxを合計した値]/50)をいう。
立体状連結粒子は、外形的に太さ方向の距離が極小値(DTmin)と極大値(DTmax)をそれぞれ2箇所以上有する。
立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子における太さ方向とは、長さ方向の最長径(DL)と直交する方向をいう。
立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子における外形的な太さ方向の直径DTは、粒子の外縁部と太さ方向の線分とが交わる2交点間の距離をいう。
「粒子連結型有機無機複合微粒子の外縁部」とは、走査型顕微鏡写真等(SEM写真等)を用いて、粒子連結型有機無機複合微粒子を平面視(写真投影図)した場合における粒子連結型有機無機複合微粒子の輪郭をいう。
立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子における外形的な太さ方向の直径DTは、走査型電子顕微鏡(20万倍)を用いて測定する。
立体状連結粒子の太さ方向における平均直径(DTa)が、10nm以上800nm以下であると、実用上の不都合を生じず好ましい。立体状連結粒子の太さ方向における平均直径(DTa)が、10nm未満であると、分散液の著しい増粘を伴い、取り扱い上の不都合を生じるため、好ましくない。また、立体状連結粒子の太さ方向における平均直径(DTa)が、800nmを超えると、粒子の沈降性が大きくなり、取り扱い上の不都合を生じるため、好ましくない。
立体状連結粒子の太さ方向における平均最長直径(DTa)は、20nm以上600nm以下がより好ましい。40nm以上600nm以下がさらに好ましく、60nm以上600nm以下が最も好ましい。
本発明における立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子の長さ方向の平均最長径(DLa)が20nm以上1000nm以下の範囲であり、かつその太さ方向の平均直径(DTa)が、10nm以上800nm以下の範囲であることが好ましい。
[立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子の太さ方向の直径(DT)における平均変動係数(C.V.)]
本発明における立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子(立体状連結粒子)は、下記の要件[6]を備えることが好ましい。
要件[6]10%≦C.V.≦40%
立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子の太さ方向の直径(DT)の変動係数および平均変動係数(C.V.)は、次のように求める。
(1)立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子における最長径DLを求めるときに用いた走査型電子顕微鏡写真を使用する。
(2)最長径DLを2等分し、直交する線分が粒子外縁と交わる2交点を求め、該2交点を結ぶ線分をDTとする。
(3)任意に選択した50個の立体状連結粒子について上記(2)の測定を行い、それらの平均値(DT50個の合計/50)を太さ方向の平均直径DTaとした。
(4)任意に選択した50個の立体状連結粒子について上記(2)の測定を行い、50個の立体状連結粒子のそれぞれのDTの値について変動係数を求め、それらを平均した値を平均変動係数(C.V.)とした。
平均変動係数(C.V.)が10%以上40%以下の範囲にあると、良好な研磨速度が得られるので好ましい。
平均変動係数(C.V.)が10%未満であると、分岐の形成が不十分であり、所望の研磨特性が得られないため好ましくない。また、平均変動係数(C.V.)が40%を超えると、粒子と基板の接触が不均一になるためか所望の研磨特性が得られず、研磨基板に傷が生じる傾向が強まり、好ましくない。
平均変動係数(C.V.)は、15%以上35%以下の範囲であることがより好ましい。
[立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子のネック部]
本発明の立体状連結粒子においては、立体状連結粒子生成後の珪酸液等のシリカ補強処理の程度により、隣接する一次複合微粒子間に形成されるネック部に違いが生じる。ネック部の深さを、隣接する一次複合微粒子(p1)と一次複合微粒子(p2)の両方に外接する直線Cを引き、一次複合微粒子(p1)と(p2)の接合部から該直線Cに直交する線分を求め、その線分をネック部深さ(L)[nm]とし、Ls、LmおよびFを下記のとおり定める。
F:立体状連結粒子における一次複合微粒子の平均粒子径(透過型電子顕微鏡)
L:ネック部深さ
Ls:同一の立体状連結粒子におけるネック部深さの平均値
Lm:50個の立体状連結粒子におけるネック部深さの平均値
このとき、Lmは、下記数式(2-1)で表される範囲を満たすことが好ましい。
0≦Lm≦F/3・・・(2-1)
Lmが上記範囲にある場合、一次粒子間のネックは十分にシリカで補強されており、研磨時の荷重を受けても、粒子連結構造および立体状構造は保持されるので、粒子と研磨基板との高接触面積が得られ、所望の研磨性能を得ることができる。
他方、Lmの値がF/3の値より大きい場合、即ち、ネック部の深さの平均値(Lm)が、前記一次複合微粒子の平均粒子径(F)の3分の1より大きい場合は、一次粒子間のネック部深さがシリカで十分に補強されていない状態であり、研磨時の荷重により立体状連結粒子の構造が崩壊し、研磨速度が低下する場合がある。
Lmが、F/2を超えると粒子連結状とは見做せない。
Lmは、下記数式(2-2)で表される範囲を満たすことがより好ましく、下記数式(2-3)で表される範囲を満たすことがさらに好ましい。
0<Lm<F/6・・・(2-2)
0<Lm<F/9・・・(2-3)
[立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子のネック部深さの平均変動係数(C.V.(Lm))]
本発明における立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子(立体状連結粒子)は、下記の要件を備えることが好ましい。
0%≦C.V.(Lm)≦40%
ここで、C.V.(Lm)は、上述のとおりに求めた各粒子のLsを50個の立体連結粒子に対して求め、求めた50個間での変動係数である。C.V.(Lm)は、0%以上35%以下の範囲であることがより好ましく、0%以上30%以下の範囲であることがさらに好ましい。
C.V.(Lm)が上記範囲にある場合、ネック補強が均一になされており、研磨中の粒子崩壊が抑制でき、研磨速度が安定する。
C.V.(Lm)が40%を超える場合、すなわち粒子間のネック部深さのばらつきが大きい場合は、各粒子と基板との接触面積にもばらつきが生じるためか、研磨速度の低下やスクラッチ等の欠陥が発生しやすい場合がある。
[ネック部深さの測定方法]
立体状連結粒子の任意の箇所において、隣接する一次複合微粒子(p1)と一次複合微粒子(p2)の両方に外接する直線Cを引き、一次複合微粒子(p1)と(p2)の接合部から該直線Cに直交する線分を求め、その線分をネック部分深さ(L)[nm]とする。
同一の立体状連結粒子の任意の3箇所で、上記ネック部分深さ(L)[nm]を求め、それらの平均値(Ls)[nm]を算定する。この測定と算定を50個の立体状連結粒子について行い、その平均値(Lm)[nm]を求める。
[立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子における一次複合微粒子の平均連結個数]
本発明の立体状連結粒子における一次複合微粒子の平均連結個数は、5個以上20個以下の範囲にあることが好ましい。
平均連結個数が5個未満であると、動的な接触面積が十分に得られないためか所望の研磨速度が得られないことから好ましくない。また、平均連結個数が20個を超えると、連結型というよりも凝集塊の形態となり、ディフェクト等の原因となるため好ましくない。
本発明の立体状連結粒子における一次複合微粒子の平均連結個数は、5個以上15個以下の範囲がより好ましい。
本発明の立体状連結粒子における一次複合微粒子の平均連結個数は、立体状連結粒子分散液の走査型電子顕微鏡写真(20万倍)を用いて測定する。
走査型電子顕微鏡写真を用いて、各立体状連結粒子について、一次複合微粒子の連結個数を目視によって、数える。そして、立体状連結粒子50個の連結個数の平均値を平均連結個数とする。
[立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子における一次複合微粒子]
立体状連結粒子における一次複合微粒子の平均粒子径範囲は、前記連結粒子における一次複合微粒子の平均粒子径と同様である。即ち、前記立体状連結粒子における一次複合微粒子の平均粒子径は5nm以上600nm以下が好ましく、20nm以上400nm以下がより好ましく、60nm以上300nm以下がさらに好ましい。平均粒子径が5nm未満の場合は、一次粒子が凝集して得られる連結粒子が塊状になる傾向がある。また、研磨用途においては、応力集中が得られないためか、十分な研磨速度が得られず好ましくない。平均粒子径が600nmを超える場合は、例えば、研磨用途において、接触面積の低下が著しくなり、研磨速度の低下を招くときがある。また、平均粒子径が600nmを超える場合は、例えば、研磨面にスクラッチ(線状痕)が発生するときがある。
[立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子(立体状連結粒子)以外の粒子連結型有機無機複合微粒子(平面状連結粒子)]
本発明の平面状連結粒子は、立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子(立体状連結粒子)以外の粒子連結型有機無機複合微粒子(連結粒子)である。
このため、一次複合微粒子が2個以上、連結した粒子であって、立体状連結粒子以外であれば、平面状連結粒子に含まれる。例えば、一次複合微粒子が2個連結したものは、分岐構造が想定し得ないため、全て、平面状連結粒子に含まれる。
また、平面状連結粒子は、立体状連結粒子のように鎖状に連結したものに限定されない。例えば、平面状連結粒子には、一次複合微粒子が連結粒子の構造における一部または全部が環状に連結したものを含む。
[粒子連結型有機無機複合微粒子(連結粒子)以外の有機無機複合微粒子(単粒子)]
本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子(連結粒子)以外の有機無機複合微粒子(単粒子)は、一次複合微粒子が2個以上連結したもの以外を含む。有機無機複合微粒子(単粒子)は、連結粒子を生成するために、反応物として用いた一次複合微粒子における未反応の一次複合微粒子が主な成分である。
[粒子連結型有機無機複合微粒子分散液の有機無機複合微粒子が含有するCa、MgおよびAlの割合]
本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子分散液における有機無機複合微粒子が含有するCa、Mg、AlおよびFeの割合は、それぞれ、25ppm以下、25ppm以下,150ppm以下および50ppm以下が好ましい。各元素の含有割合は、有機無機複合微粒子の単位質量あたりに含まれる各元素の質量の割合として表す。
本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子分散液の有機無機複合微粒子は、一次複合微粒子またはこれがシリカによって結合したものである。このため、例えば、CaO、MgO、AlあるいはFeの結合剤成分を含有しない。したがって、本発明の有機無機複合微粒子を含んでなる粒子連結型有機無機複合微粒子分散液を半導体基板あるいは配線基板等の半導体デバイスの研磨用途に適用した場合、これらの結合剤成分に起因する金属汚染の問題を生じるおそれが低い。
前記粒子連結型有機無機複合微粒子分散液中の有機無機複合微粒子におけるCa含有量は10ppm以下、Mg含有量は10ppm以下、Al含有量は100ppm以下、Fe含有量は30ppm以下、がより好ましい。
本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子分散液は、その分散質として、立体状連結粒子を5個数%以上50個数%以下含むことが好ましい。
立体状連結粒子の個数割合は5個数%以上50個数%以下の範囲が好ましい。より好ましくは5個数%以上30個数%以下の範囲が好ましく、さらに好ましくは5個数%以上25個数%以下の範囲が好ましい。また、平面状連結粒子の割合は50個数%以上95個数%が好ましい。
立体状連結粒子の個数割合が5個数%以上50個数%以下の範囲の場合、本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子分散液を研磨用途に適用した場合、前記の研磨速度の増大に効果的に寄与することができる。
立体状連結粒子の個数割合が5個数%未満の場合、砥粒のうち、前記立体状構造を有した立体状連結粒子の割合が低いため、研磨後の基板の表面粗さは低くなるものの、研磨速度も低下する。
立体状連結粒子の個数割合が50個数%を超える場合、砥粒のうち、前記立体状構造を有した立体状連結粒子の割合が過剰で、研磨速度は増大するものの、研磨基板上でのスクラッチ発生や表面粗さが悪化するといった問題が生じやすくなる。立体状連結粒子個数割合が50個数%以下の場合、50%超存在する単粒子や連結度の高くない粒子および平面状連結粒子が、研磨基板の粗さを良化させ、50%以下の立体状連結粒子が高い研磨速度を示す。そのため、研磨速度と表面粗さを両立する事ができる。
立体状連結粒子の個数%は、次のように求める。連結粒子分散液(固形分濃度0.05質量%)の透過型顕微鏡写真(20万倍)により、少なくとも粒子が連結した形状の粒子を200個任意に選択する。選択した200個における個々の粒子を立体状連結粒子または平面状連結粒子のいずれかに選別する。そして、立体状連結粒子の個数を200で除した値を立体状連結粒子の個数%とする。
本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子分散液における、立体状連結粒子の体積%は、40体積%以上95体積%以下の範囲が好ましい。
立体状連結粒子の体積割合が40体積%以上95体積%以下の範囲の場合、本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子分散液を研磨用途に適用したとき、前記の研磨速度の増大に効果的に寄与することができる。
立体状連結粒子の体積割合が40体積%未満の場合、砥粒のうち、前記立体構造を有した立体状連結粒子の割合が低く、研磨速度の増大に対する寄与も少ない。
立体状連結粒子の体積割合が95体積%を超える場合、砥粒のうち、前記立体構造を有した立体状連結粒子の割合が過剰で、研磨速度は増大するものの、研磨基板上でのスクラッチ発生といった問題が生じやすくなる。
立体状連結粒子の体積割合は好ましくは45体積%以上90体積%以下、更に好ましくは50体積%以上86体積%以下である。
立体状連結粒子の体積%(W)の求め方は、後述の通りである。
本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子分散液は、立体状連結粒子および平面状連結粒子以外に、発明の効果に大きな影響を与えない範囲で、粒子連結していない単粒子を含んでいてもよい。例えば、砥粒として用いる場合には、粒子連結型有機無機複合微粒子の体積に対する単粒子の体積の比は、前者100(体積部)に対し、後者55(体積部)以下であることが望ましい。(ここで、粒子連結型有機無機複合微粒子の体積とは、立体状連結粒子の体積と平面状連結粒子の体積の総和を意味する。)粒子連結型有機無機複合微粒子の体積に対する単粒子の体積の比が上記範囲内であれば、本発明の効果を損なうことがない。なお、単粒子の前記体積比が55(体積部)を超える場合、砥粒のうち前記立体構造を有した立体状連結粒子の割合が相対的に低く、例えば、研磨速度の増大に対する効果も生じ難くなる。
また、粒子連結型有機無機複合微粒子の個数に対する単粒子の個数の比は、前者100(個数部)に対し、後者210(個数部)以下であることが望ましい。(ここで、粒子連結型有機無機複合微粒子の個数とは、立体状連結粒子の個数と平面状連結粒子の個数の総和を意味する。)粒子連結型有機無機複合微粒子の個数に対する単粒子の個数の比が上記範囲内であれば、本発明の効果を損なうことがない。なお、単粒子の前記個数比が210(個数部)を超える場合、砥粒のうち前記立体構造を有した立体状連結粒子の割合が相対的に低く、例えば、研磨速度の増大に対する効果も生じ難くなる。
連結粒子分散液の固形分濃度は2質量%以上50質量%以下が好ましい。この範囲であれば、経時での粒子の沈降も生じ難く、貯蔵ないし運送にも適用できる。50質量%を超えると、粒子の凝集およびそれに伴う沈降が生じやすくなる。特に連結粒子分散液を研磨用途に適用した場合、その様な粒子の凝集あるいは沈降は、研磨砥粒分散液の安定性を損ない、研磨速度や研磨効率を低下させる場合がある。また、研磨処理のために研磨砥粒分散液を保管する容器内あるいは供給する工程で、容器あるいは供給装置内の内壁に付着した研磨砥粒分散液は、容易に乾燥して凝集物となり、再度研磨砥粒分散液に混入して、研磨処理により傷(スクラッチ)発生の原因となることがある。2質量%未満では、連結粒子分散液を各種用途に適用するにあたり濃縮が必要となり、実用的ではない。
前記固形分濃度は5質量%以上30質量%以下がより好ましい。
ここで固形分濃度は、連結粒子分散液の分散質の濃度を意味し、具体的には、有機無機複合微粒子の質量(連結粒子(立体状連結粒子および平面状連結粒子))および単粒子を合計した質量)に基づく濃度である。
前記連結粒子分散液の溶媒または分散媒については、水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒のいずれであっても良い。有機溶媒としては、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等)、エーテル類、エステル類およびケトン類等の水溶性の有機溶媒が挙げられる。
[粒子連結型有機無機複合微粒子分散液の製造方法]
<工程1>
工程1は、シリカ微粒子分散液(SiO濃度0.1質量%以上30質量%以下)にカチオン性の有機高分子成分を、下記の割合(WA/WS)の範囲内で添加し、続いて、40℃以上98℃以下に加熱し、0.5時間以上保持し、粒子連結型有機無機複合微粒子分散液を得る工程である。
0.002≦WA/WS≦0.3
(ここで、WSは、シリカ微粒子分散液中のシリカ質量(g)であり、WAは、カチオン性の有機高分子成分の質量(g)である。)
工程1で使用するシリカ微粒子分散液は、分散媒にシリカ微粒子が分散したものである。分散媒としては、連結粒子分散液の溶媒または分散媒が挙げられる。
シリカ微粒子としては、連結粒子における一次複合微粒子と同様の形状および同様の平均粒子径を有することが好ましい。
また、シリカ微粒子が含有するCa、Mg、AlおよびFe濃度は、シリカ微粒子の単位質量あたり、Ca、Mg、AlおよびFeの質量として、下記のとおりであることが好ましい。
Ca:25ppm以下
Mg:25ppm以下
Al:150ppm以下
Fe:50ppm以下
工程1で使用するシリカ微粒子分散液のSiO濃度は、0.1質量%以上30質量%以下が好ましい。有機無機複合微粒子分散液のSiO濃度が0.1質量%未満の場合は、SiO濃度が薄いことが影響してシリカ粒子の連結構造が生じ難くなる。また、SiO濃度が30質量%を超える場合は、シリカ粒子の連結が無秩序に生じるため、粒子の構造が制御できなくなる傾向がある。工程1で使用する有機無機複合微粒子分散液のSiO濃度は、1質量%以上18質量%以下の範囲がより好ましい。
工程1で使用するシリカ微粒子分散液において、SiO/NaO(モル比)は制限されるものではなく、Naを全く含まないものを使用してもよい。
工程1において脱塩する方法としては、陽イオン交換樹脂で、NaイオンをHイオンに交換する方法が挙げられる。
陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂または弱酸性陽イオン交換樹脂等が挙げられ、-SOHまたは-COOH等に置換した構造を有する樹脂が挙げられる。
工程1で使用するシリカ微粒子分散液のpHは、シリカ微粒子分散液が安定であればよく、特に制限されない。工程1で使用するシリカ微粒子分散液のpHは、2以上12以下で構わない。pH調整は、例えば、Naのイオン交換より行うことができる。
工程1で使用するカチオン性の有機高分子成分は、シリカ微粒子分散液に、WA/WSが0.002以上0.3以下の割合で添加する(ここで、WSは、シリカ微粒子分散液中のシリカ質量(g)であり、WAは、カチオン性の有機高分子成分の質量である)。
WA/WSが上記範囲でpH緩衝液またはpH調整剤を使用すると、緩衝剤またはpH調整剤の作用により、立体状連結粒子および平面状連結粒子が生成しやすくなる。
WA/WSが0.002未満では、平面状連結粒子および立体状連結粒子が生成し難い。また、WA/WSが0.3を超えると、pH緩衝剤が過剰となり、粒子の凝集が生じやすくなり、塊状の粒子が生成しやすくなる。WA/WSは、0.005以上0.1以下であることがより好ましく、0.01以上0.05以下であることが特に好ましい。
カチオン性の有機高分子成分は、水に溶解させて水溶液として使用される。この有機高分子成分は、前述の通りのものである。
なお、本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子分散液の製造方法においては、従来公知の無機系凝集剤を用いないことが好ましい。
有機高分子成分、特にカチオン性の官能基を含む有機高分子成分を用いることで、有機無機複合微粒子表面の電荷を制御することができる。そして、無機系凝集剤を用いることなく所望のモルフォロジーを有する粒子連結型有機無機複合微粒子を得ることができる。さらには、従来公知の手法により得られる有機無機複合微粒子と比較して、金属不純分の含有量を低くすることができ、特に半導体研磨用途においては研磨基盤または研磨装置の汚染を防ぐことができるために好適である。
なお、本発明のメカニズムについて発明者らは以下の様に解釈している。
本発明の製造方法の工程1において、原料シリカ微粒子分散液に所定の割合でカチオン性の有機高分子を添加して、必要に応じてアルカリを添加して最適なpHに調整して加熱し所定時間保持すると、負に帯電した原料シリカ微粒子表面の全面または一部に有機高分子が吸着する。この際、有機高分子の吸着平衡が生じるため、添加した有機高分子の全量は原料シリカ母粒子に吸着されず、その一部は溶媒中にも存在する。また、原料シリカ微粒子分散液の比表面積に対して過剰量の有機高分子を添加した場合も、同様に溶媒中に有機高分子が存在する。次に、工程2では、この溶液に、酸性珪酸液を添加する。添加された酸性珪酸液は粒子表面に沈着するが、粒子表面の一部または全部が有機高分子で覆われており、有機高分子層の上をシリカが被覆する。そのため、有機高分子は粒子の内部に含包される。有機高分子層がシリカで被覆されると、その表面は再びアニオン性が強くなるため、溶媒中に残存していた有機高分子がその表面に吸着され始める。吸着された有機高分子層の上に更にシリカが沈着し、再び表面はアニオン性が強くなる。これを繰り返すことで、シリカ母粒子上に、シリカと有機高分子からなる有機無機複合層が形成される。また、このようなメカニズムによって有機高分子層の濃度勾配が生じると発明者らは推定している。
また、有機高分子の分子量や添加量、温度や濃度の条件によって、母粒子上に吸着するカチオン性の有機高分子の吸着量は変わり、カチオン性の有機高分子の吸着量が多い場合は、粒子の表面電位はゼロに近づいたり、プラスに帯電する場合がある。このような場合、粒子の分散安定性が保てなくなり、粒子同士の凝集が生じる。凝集した状態で、更に酸性珪酸液が添加されると、粒子の表面にシリカが沈着し、凝集した一次粒子が固定化され、連結型の複合微粒子が生じる。なお、凝集した一次粒子上にシリカの被覆がある程度進むと、粒子の表面は十分安定なアニオン性の表面電位となるため、粒子の凝集は進行しなくなる。またこの凝集はある程度、等方的に進むため、三次元的に連結が進み、立体的な分岐構造を形成する。更に、有機高分子を粒子内部に含包するため、有機無機複合層においては、シロキサン結合が十分に進まないため、29Si-NMRスペクトルを測定すると、有機無機複合層を備えない粒子と比較して、Q2やQ3のピーク強度比が大きくなる。
また、有機高分子の添加量などの条件を調整して、有機高分子が吸着した状態でも粒子が分散性を保てる表面電位となるようにし、珪酸で粒子成長させると一次粒子が凝集していない有機無機複合微粒子、すなわち単粒子状の有機無機複合微粒子を得ることもできる。さらに、この単粒子状の有機無機複合微粒子を、公知の方法で連結化させることで、連結型有機無機複合微粒子を得ることができる。
本発明の製造方法の工程2では、前記の分岐および立体的構造を有した粒子連結型有機無機複合微粒子に所定条件下での珪酸添加処理によって、隣接する有機無機複合微粒子間のネックを埋めつつ粒子成長が進行する。
前記珪酸添加処理において、粒子表面に吸着した有機高分子成分上にシリカ成分が沈着し、結果として粒子内部に前記有機高分子成分に由来する有機成分が内包された粒子連結型有機無機複合微粒子が得られる。
一方、粒子成長中の粒子表面に対し、溶媒中に存在した有機高分子成分の吸着が進行することで表面電位の増大が生じ、粒子成長中においても有機無機複合微粒子の会合が進行し、二次会合が生じる。このため、本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子は分岐・立体的構造の発達が更に促進される。なお、必ずしも有機高分子成分の全てが粒子連結型有機無機複合微粒子に内包される必要はなく、粒子表面に吸着された状態も存在してもよい。
工程1においては、必要に応じて、pH緩衝剤およびpH調整剤を使用してもよい。pH緩衝剤としては、公知の無機系または有機系のpH緩衝剤を使用することが望ましい。
pH緩衝剤の例としては、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、四ホウ酸カリウムおよび水酸化アンモニウム等が挙げられる。これらのうち、酢酸アンモニウムまたは酢酸ナトリウムが特に好ましい。
また、pH調整剤としては、公知の無機系または有機系のpH調整剤を使用することが望ましい。
pH調整剤の例としては、酸としては、酢酸、ギ酸、炭酸、塩酸、硝酸、リン酸、次亜リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸およびヘキサメタリン酸等が挙げられる。
塩基の例としては、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物およびアンモニア等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性から水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニアが好ましい。
工程1における加熱前のpHは、9.0以上13.0以下の範囲にあることが好ましい。
[加熱等の処理(立体状連結粒子の生成)]
pH緩衝材またはpH調整剤で所定のpHに調整したのち、40℃以上98℃以下に加熱し、例えば、0.5時間以上64時間以下に保持することが好ましい。
加熱することにより、カチオン性の有機高分子を吸着した無機微粒子の凝集が促進し、更に隣接する無機微粒子の間にSiOによる結合が形成され、連結粒子が生成する。
加熱温度が、40℃未満であると、連結反応が促進されにくく所望の粒子連結型シリカ粒子が得られないため、好ましくない。加熱温度が98℃を超えると凝集塊を生じ易く所望の粒子連結型有機無機複合微粒子を得られないため、好ましくない。
また、保持時間が、0.5時間未満であると、連結反応が十分に進行しないため、好ましくない、また、保持時間が、64時間を超えると、工程にかかる費用が高コストとなるために、経済的に好ましくない。
本発明では、工程1のみを経て得られた粒子連結型有機無機複合微粒子分散液を便宜上、粒子連結型有機無機複合微粒子分散液(I)とし、工程1および工程2を経て得られた粒子連結型有機無機複合微粒子分散液を粒子連結型有機無機複合微粒子分散液(II)と称する場合がある。
<工程2>
工程1で得られた連結粒子は、隣接する一次複合微粒子の間にSiOによる結合が形成されているが、結合した部分(以下、「ネック」ともいう)が小さく、脆い。このため、結合した部分を成長させ、隣接する一次複合微粒子の間の結合を強くすることが好ましい。
そこで、ネック部の成長を目的として、加熱による熟成やシリカによる補強等、特に粒子を成長させる工程である工程2を行うことが好ましい。
工程2では、工程1で得た粒子連結型有機無機複合微粒子分散液に対し、酸性珪酸液を、下記の割合(WF/WS)となるように連続的または断続的に添加し、粒子成長させる処理を施す。
0.01≦WF/WS≦20
(ここで、WSは、粒子連結型有機無機複合微粒子分散液中のシリカ質量(g)であり、WFは、酸性珪酸液中のシリカ質量(g)である。)
酸性珪酸液を添加する前に、必要に応じてアルカリ成分を添加してもよく、アルカリ性成分としては、アンモニアおよび水ガラス等を使用できる。アルカリ性成分は、溶液にして用いることもできる。アルカリ性成分を溶解する溶媒は、連結粒子分散液の溶媒または分散媒が挙げられる。溶媒は、工程1で使用した分散媒が好ましく、水がより好ましい。
工程2における粒子連結型有機無機複合微粒子分散液のSiO濃度は、0.1質量%以上30質量%以下が好ましい。
工程2では、粒子連結型有機無機複合微粒子分散液に酸性珪酸液を連続的または断続的に、WF/WSが0.01以上20以下の範囲で添加する。
WF/WSが0.01未満であると、粒子連結型有機無機複合微粒子の連結部分の成長が不十分であるためか、所望の研磨特性が得られないため、好ましくない。また、WF/WSが20を超えると、得られた粒子連結型有機無機複合微粒子の形状が球状に近づき連結形状を保てない場合があるため、好ましくない。
工程2おける温度は、添加した酸性珪酸液が溶解し、粒子上に沈着させるための温度であり、70℃以上98℃以下が好ましい。
工程2における酸性珪酸液の添加は、連続的または断続的に行うことができる。
酸性珪酸液は、珪酸アルカリ金属(珪酸ナトリウム等)を水に溶解させ、アルカリ金属イオンを水素イオンに交換したものである。アルカリ金属イオンを水素イオンに交換する方法としては、陽イオン交換樹脂を使用する方法が挙げられる。酸性珪酸液は、pHが6以下であれば使用することができる。酸性珪酸液のSiO濃度としては、1質量%以上6質量%以下のものを使用することができる。
SiO濃度が1質量%未満であると、添加する酸性珪酸液が多量に必要となるため、経済上好ましくない。また、6質量%以上であると、酸性珪酸液自体が不安定であるため、好ましくない。SiO濃度は、1質量%以上5質量%以下がより好ましい。
<工程3>
粒子(特に粒子におけるネック部)をさらに成長させるという観点から、さらに工程3を行ってもよい。
工程3は、工程2を施している粒子連結型有機無機複合微粒子分散液に対し、pH10.0以上にpH調整処理し、続いて、酸性珪酸液を連続的または断続的に添加し、粒子成長させる処理を施す工程である。
工程3の操作は、工程2の操作とほぼ同様である。例えば、工程2で得られた粒子連結型有機無機複合微粒子分散液(II)に対して、さらに、工程3を施すことによって、連結粒子をさらに成長(特にネック部を成長)させることができる。
なお、工程3は、上記の観点から、複数回を繰り返して行ってもよい。
[粒子連結型有機無機複合微粒子分散液を含む砥粒分散液]
本発明の連結粒子分散液を含む砥粒分散液(「研磨用組成物」ともいう。)は、さらに他の成分を含むことができる。
他の成分として、研磨促進剤、界面活性剤、親水性化合物、複素環化合物、pH調整剤およびpH緩衝剤から選ばれる1以上の成分を使用することができる。
研磨促進剤の例としては、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、フッ酸等の酸、あるいはこれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩およびこれらの混合物等が挙げられる。これらの研磨促進剤を含む研磨用組成物の場合、複合成分からなる被研磨材を研磨する際に、被研磨材の特定の成分についての研磨速度を促進することにより、最終的に平坦な研磨面を得ることができる。
本発明に係る研磨用組成物が研磨促進剤を含有する場合、その含有量としては、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤および/または親水性化合物研磨用組成物の分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤または親水性化合物を添加することができる。
界面活性剤と親水性化合物は、いずれも被研磨面への接触角を低下させる作用を有し、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤および/または親水性化合物としては、例えば、以下の群から選ばれるものを使用することができる。
陰イオン界面活性剤として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、およびリン酸エステル塩等が挙げられる。カルボン酸塩として、石鹸、N-アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、およびアシル化ペプチド等が挙げられる。スルホン酸塩として、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンおよびアルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、およびN-アシルスルホン酸塩等が挙げられる。硫酸エステル塩として、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、およびアルキルアミド硫酸塩等が挙げられる。リン酸エステル塩として、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩等が挙げられる。
陽イオン界面活性剤として、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、およびイミダゾリニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤として、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、およびアルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
非イオン界面活性剤として、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、エーテル型として、ポリオキシエチレンアルキルおよびアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられ、エーテルエステル型として、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、エステル型として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル、含窒素型として、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が例示される。その他に、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤もしくは非イオン系界面活性剤が好ましい。また、塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられ、特にアンモニウム塩およびカリウム塩が好ましい。
さらに、その他の界面活性剤、親水性化合物等としては、エステル(グリセリンエステル、ソルビタンエステルおよびアラニンエチルエステル等)、エーテル(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリエチレングリコール、アルケニルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリプロピレングリコール、アルキルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、およびアルケニルポリプロピレングリコール等)、多糖類(アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、カードランおよびプルラン等)、アミノ酸塩(グリシンアンモニウム塩およびグリシンナトリウム塩等)、ポリカルボン酸およびその塩(ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p-スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩およびポリグリオキシル酸等)、ビニル系ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリアクロレイン等)、スルホン酸およびその塩(メチルタウリン酸アンモニウム塩、メチルタウリン酸ナトリウム塩、硫酸メチルナトリウム塩、硫酸エチルアンモニウム塩、硫酸ブチルアンモニウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、1-アリルスルホン酸ナトリウム塩、2-アリルスルホン酸ナトリウム塩、メトキシメチルスルホン酸ナトリウム塩、エトキシメチルスルホン酸アンモニウム塩、3-エトキシプロピルスルホン酸ナトリウム塩等)、およびアミド等(プロピオンアミド、アクリルアミド、メチル尿素、ニコチンアミド、コハク酸アミドおよびスルファニルアミド等)が挙げられる。
なお、適用する被研磨基材がガラス基板等である場合は何れの界面活性剤であっても好適に使用できるが、半導体集積回路用シリコン基板等の場合であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはハロゲン化物等による汚染の影響を嫌う場合にあっては、酸もしくはそのアンモニウム塩系の界面活性剤を使用することが望ましい。
本発明に係る研磨用組成物が界面活性剤および/または親水性化合物を含有する場合、その含有量は、総量として、研磨用組成物の1L中、0.001g以上10g以下とすることが好ましく、0.01g以上5g以下とすることがより好ましく0.1g以上3g以下とすることが特に好ましい。
界面活性剤および/または親水性化合物の含有量は、充分な効果を得る上で、研磨用組成物の1L中、0.001g以上が好ましく、研磨速度低下防止の点から10g以下が好ましい。
界面活性剤または親水性化合物は1種のみでもよいし、2種以上を使用してもよく、異なる種類のものを併用することもできる。
本発明の研磨用組成物については、被研磨基材に金属が含まれる場合に、金属に不動態層または溶解抑制層を形成させて、被研磨基材の侵食を抑制する目的で、複素環化合物を含有させても構わない。ここで、「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子、または水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、およびホウ素原子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。複素環化合物の例として、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、テトラゾール等を用いることができる。より具体的には、1,2,3,4-テトラゾール、5-アミノ-1,2,3,4-テトラゾール、5-メチル-1,2,3,4-テトラゾール、1,2,3-トリアゾール、4-アミノ-1,2,3-トリアゾール、4,5-ジアミノ-1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明に係る研磨用組成物に複素環化合物を配合する場合の含有量については、0.001質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上0.7質量%以下であることがより好ましく、0.002質量%以上0.4質量%以下であることがさらに好ましい。
上記各添加剤の効果を高めるため等に必要に応じて酸または塩基を添加して研磨用組成物のpHを調節することができる。
本発明に係る研磨用組成物をpH7以上に調整するときは、pH調整剤として、アルカリ性のものを使用する。望ましくは、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、エチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアミン等のアミンが使用される。
研磨用組成物をpH7未満に調整するときは、pH調整剤として、酸性のものが使用される。例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸等のヒドロキシ酸類が使用される。
研磨用組成物のpH値を一定に保持するために、pH緩衝剤を使用しても構わない。pH緩衝剤としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、4ホウ酸アンモ四水和水等のリン酸塩およびホウ酸塩または有機酸等を使用することができる。
本発明に係る研磨用組成物については、必要に応じて溶媒を用いることができる。溶媒としては通常、水を用いるが、必要に応じてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を用いることができ、他にエーテル類、エステル類、ケトン類等水溶性の有機溶媒を用いることができる。また、水と有機溶媒からなる混合溶媒であってもよい。
本発明に係る研磨用組成物中の研磨用粒子の濃度は、0.5質量%以上50質量%以下、さらには5量%以上30質量%以下の範囲にあることが好ましい。濃度が0.5質量%未満の場合は、基材や絶縁膜の種類によっては濃度が低すぎて研磨速度が遅く生産性が問題となることがある。研磨用粒子の濃度が50質量%を超えると研磨材の安定性が不充分となり、研磨速度や研磨効率がさらに向上することもなく、また研磨処理のために分散液を供給する工程で乾燥物が生成して付着することがあり傷(スクラッチ)発生の原因となることがある。
[実施例および比較例で用いた分析方法]
以下に本発明の好適な実施例を述べる。実施例および比較例における各種特性の測定方法については、特に断りの無い限り、以下に記す方法にて実施した。
[1]動的光散乱法による平均粒子径測定方法
動的光散乱法による粒子連結型有機無機複合微粒子の平均粒子径(D1)の測定方法は次のとおりである。
試料(粒子連結型有機無機複合微粒子を含む分散液)を0.58%アンモニア水にて希釈して、シリカ濃度1質量%に調整し、レーザーパーティクルアナライザー(例えば粒径測定装置(1))を用いて測定する。
[粒径測定装置(1)の概要]
大塚電子株式会社製、型番「ゼータ電位・粒径測定システム ELSZ-1000」(測定原理:動的光散乱法、光源波長:665.70nm、温度調整範囲:10~90℃、セル:10mm角のプラスチックセル)
[2]粒子連結型有機無機複合微粒子分散液(連結粒子分散液)における立体構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子(立体状連結粒子)の個数の測定方法および個数割合の算出方法
1.測定試料の調製
(1)粒子連結型有機無機複合微粒子分散液を濃縮またはイオン交換水を用いて希釈し、固形分濃度0.05質量%とした。
(2)上記(1)で固形分濃度0.05質量%とした分散液に超音波をかけてから、その0.1gを撮影試料とした。
2.連結粒子および立体状連結粒子の個数割合の測定方法
(1)上記1.で調製した試料を、透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、超高分解能走査電子顕微鏡・型番S-5500)を用い、20万倍で撮影した。
(2)得られた写真において、少なくとも粒子が連結した形状を有する粒子を、任意に200個選択した。
(3)これらの粒子について、立体状連結粒子を特定し、その粒子数を数えた。
立体状連結粒子の判定基準は次のとおりである。すなわち、特定の粒子連結型有機無機複合微粒子に関し、下記の1)~3)の要件を満たすかを確認する。
1)一次複合微粒子の連結個数が5個以上で鎖状構造
2)主鎖構成粒子のうち、末端の粒子以外の粒子に結合した分岐(分岐(a))が少なくとも1箇存在する
3)当該粒子上に重複して、他の一次粒子に比して、濃淡が濃い部分が確認できること。
以上の1)~3)の要件を満たす粒子連結型有機無機複合微粒子は、分岐(a)に対し、立体方向に伸長してなる分岐(b)あるいは立体方向に伸長してなる末端(c)を有し、立体構造を有すると見做し、立体状連結粒子とする。
(4)立体状連結粒子の個数%は、連結粒子200個あたりの立体状連結粒子の数を百分率で表したものである。
(5)立体状連結粒子の体積%は、次の様にして求めた。
DLaおよびDTaを用いて画像解析法による平均粒子径DLTを求める。DLTは以下の式で表される。
DLT=(DLa+DTa)/2
ここで、立体状連結粒子のDLT(平均粒子径)をDLTt、平面状連結粒子のDLT(平均粒子径)をDLTpとし、立体状連結粒子の体積をVLTt、平面状連結粒子の体積をVLTpとしたとき、VLTtと、VLTpは、それぞれ次の様に求められる。
VLTt=Σ(DLTt/Dp)×(立体状連結粒子の個数%)、
VLTp=Σ(DLTp/Dp)×(平面状連結粒子の個数%)、
そして、求めたVLTtおよびVLTpから立体状連結粒子の体積%(W)を以下の式で求めることができる。
W=VLTt/(VLTp+VLTt)×100
ここで、Dpは、単粒子の平均粒子径[nm]である。
[3]立体状連結粒子の平均連結個数の測定方法
1.立体状連結粒子の平均連結個数の測定方法
(1)前記[2]と同様に測定した電子顕微鏡写真を用意する。
(2)同写真における立体状連結粒子における一次複合微粒子の連結個数を目視によって数えた。
(3)任意に選択した50個の立体状連結粒子について上記(2)を行い、一次複合微粒子の連結個数を平均した。この平均値を立体状連結粒子の平均連結個数とした。
2.立体状連結粒子における一次複合微粒子の平均粒子径[F]の測定方法
(1)前記[2]と同様に測定した電子顕微鏡写真を用意する。
(2)同写真における立体状連結粒子における一次複合微粒子の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値を求める。
(3)任意に選択した50個の立体状連結粒子について上記(2)を行い、50個の平均値を求め、その値を前記平均粒子径[F]とする。
なお、平面状連結粒子の測定を行う場合も上記と同様である。
[4]立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子(立体状連結粒子)における長さ方向の平均最長径(DLa)および太さ方向の平均直径(DTa)の測定方法
1.測定試料の調製および走査型顕微鏡(SEM)を用いた撮影
測定試料の調製およびSEMを用いた撮影は、上記[2]立体状連結粒子の平均連結個数の測定方法における1.に準じて行った。
2.立体状連結粒子における長さ方向の平均最長径(DLa)の測定方法
(1)上記[2]において、使用した電子顕微鏡写真を用い、立体状連結粒子において、粒子外縁間の2点間を結ぶ線分のうち、その長さが最長となる線分の長さを最長径(DL)とする。
(2)任意に選択した50個の立体状連結粒子について上記(1)を行い、それらの平均値([50個の立体状連結粒子について、それぞれのDLを合計した値]/50)を長さ方向の平均最長径DLaとした。
3.立体状連結粒子における太さ方向の平均直径(DTa)の測定方法
(1)上記[2]において、使用した電子顕微鏡写真を用い、立体状連結粒子において、粒子外縁間の2点間を結ぶ線分のうち、その長さが最長となる線分の方向を長さ方向と定め、それに対し、直交する方向を太さ方向とする。
(2)前記DLと直交する線分が粒子外縁と交わる2交点を求め、該2交点間の距離が、最長となる線分をDTとする。
(3)任意に選択した50個の立体状連結粒子について上記(2)の測定を行い、それらの平均値(DT50個の合計/50)を太さ方向の平均直径DTaとした。
4.任意に選択した50個の立体状連結粒子について上記(2)の測定を行い、50個の立体状連結粒子のそれぞれのDTの値について変動係数を求め、それらを平均した値を平均変動係数(C.V.)とした。
[5]立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子における比表面積換算粒子径の測定方法
Naタイトレーション法による比表面積測定および平均粒子径測定
1)SiOとして1.5gに相当する試料をビーカーに採取してから、恒温反応槽(25℃)に移し、純水を加えて液量を90mLにする。(以下の操作は、25℃に保持した恒温反応槽中にて行った。)
2)0.1モル/L塩酸を加え、pHを3.6にする。
3)塩化ナトリウムを30g加え、純水で150mLに希釈し、10分間攪拌する。
4)pH電極をセットし、攪拌しながら0.1モル/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pH4.0に調整する。
5)pH4.0に調整した試料を0.1モル/L水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、pH8.7~9.3の範囲での滴定量とpH値を4点以上記録して、0.1モル/L水酸化ナトリウム水溶液の滴定量をX、その時のpH値をYとして、検量線を作る。
6)次の式(2)からSiO1.5g当たりのpH4.0から9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム水溶液の消費量V(mL)を求め、後記式(3)に従って比表面積SA[m/g]を求める。
V=(A×f×100×1.5)/(W×C)・・・(2)
上記式中、
A:SiO1.5g当たりpH4.0から9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム水溶液の滴定量(mL)
f:0.1モル/L水酸化ナトリウム水溶液の力価
W:試料採取量(g)
C:試料のSiO濃度(質量%)
をそれぞれ表す。
SA=29.0V-28・・・(3)
また、比表面積換算粒子径D2(nm)は、式(4)から求める。
比表面積換算粒子径D2(nm)=6000/(ρSiO2×SA)・・・(4)
(ここで、ρSiO2はシリカ粒子の密度2.2[g/cm]を表す。)
BET法(窒素吸着法)による比表面積測定および平均粒子径測定
粒子連結型シリカゾル50mLをHNOでpH3.5に調整し、1-プロパノール40mLを加え、110℃で16時間乾燥した試料について、乳鉢で粉砕後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成し、測定用試料とした。そして、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を用いて窒素吸着法(BET法)を用いて、窒素の吸着量から、BET1点法により比表面積を算出した。
具体的には、試料0.5gを測定セルに取り、窒素30v%とヘリウム70v%との混合ガス気流中、300℃で20分間脱ガス処理を行い、その上で試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、粒子連結型シリカゾルの比表面積を算出した。また、得られた比表面積(SA)を前記式(4)に代入して比表面積換算粒子径d1を求めた。
[6]Ca、Mg、AlおよびFeの含有割合の測定方法
1.試料の調製
固形分濃度20質量%に調整した粒子連結型有機無機複合微粒子分散液80gを試料とする。
2.Ca、Mg、AlおよびFeの含有割合の測定方法
(1)約1gの粒子連結型有機無機複合微粒子分散液を白金皿に精秤する。
(2)上記(1)に、リン酸3mL、硝酸5mLおよび弗化水素酸10mLを加えて、サンドバス上で加熱する。
(3)乾固したら、少量の水と硝酸50mLを加え溶解させて、100mLのメスフラスコにおさめ、水を加えて、100mLにする。
(4)次に、100mLにおさめた溶液から分液10mLを20mLのメスフラスコに採取する操作を5回繰り返し、分液10mLを5個得る。
(5)これを用いて、ICPプラズマ発光分析装置(SII製、品番SPS5520)にて、標準添加法で測定を行う。
(6)同様の方法でブランクを測定し、ブランク分を差し引いて調整し、各元素における測定値とする。
(7)上記測定値から、粒子連結型有機無機複合微粒子分散液に含まれる有機無機複合微粒子の単位質量あたりに含まれる各元素(Ca、MgおよびAl)の質量の割合を求めた。
[7]粒子連結型有機無機複合微粒子を溶解させた場合におけるCOD(化学的酸素要求量)の測定方法
過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(COD)は以下の手順で測定した。
試料の適量を三角フラスコ300mLにとり、水を加えて100mLとし、硫酸(1+2)(体積比で硫酸1:水2)10mLを加え、硝酸銀溶液(200g/L)5mLを加えて振り混ぜた後、5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液10mLを加えて、沸騰水浴中にフラスコを入れ30分間加熱した。
このとき沸騰水浴の面は、つねに試料面より上部にあるようにした。
次に、しゅう酸ナトリウム溶液(12.5mmol/L)10mLを加え、50~60℃に保ちながら5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液で逆滴定し、液の色がうすい紅色を呈した点を終点とした。
別に同一条件で水を用いた空試験を行った。
次式によって、過マンガン酸カリウムによる酸素消費量のmgO/Lを算出した。
COD=(a-b)×f×1000/V×0.2
COD:過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(mgO/L)
a:滴定に要した5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液量(mL)
b:空試験の滴定に要した5mmol過マンガン酸カリウム溶液量(mL)
f:5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液のファクタ
V:試料量(mL)
0.2:5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液1mLの酸素相当量(mg)
[8]粒子連結型有機無機複合微粒子の29Si-NMRスペクトルの測定
29Si CPMAS NMRスペクトルの測定には、Agilent製VNMRS-600(14.1T、H共鳴周波数:600MHz)を用いた。
測定サンプルは乳鉢を用いて粉砕し、均一になるように5mmの固体NMR試料管に充填した後に、外部磁場に対するマジック角(54.7°)で、6kHzにて回転させた。このときの29Si共鳴周波数は、119.2MHz、H 90°パルス幅は5.0μs、コンタクト時間は7ms、FID後の待ち時間は5s、FIDの積算回数は10000回程度であった。ポリジメチルシランのピーク-34.44ppmをケミカルシフトの二次標準とし、得られたスペクトルを、Originを用いGaussian関数で近似して波形分離した。
以上のようにして、29Si-NMRスペクトルを測定し、このスペクトルをから、Q2、Q3およびQ4のピーク強度、およびピーク面積を読み取った。そして、Q4のピーク強度に対するQ3のピーク強度の比(Q3/Q4)、並びに、Q4のピーク面積に対するQ2およびQ3のピーク面積の合計の比[(Q2+Q3)/Q4)]を算出した。
[9]母粒子、有機無機複合層および最外層の存在確認と、有機無機複合層における有機成分の濃度勾配の確認
比表面積換算粒子径が既知(溶解前粒子径)のシリカゾルを4.8%の水酸化ナトリウムで希釈し、SiO濃度5.0%に調整した。この溶液を70℃で加熱して1時間保持することで溶解処理を行った。溶解処理後の溶液を限外膜で分離し、分離した液中のシリカ濃度とCODを分析した。なお、溶解後の粒子サイズは、下記計算式に基づいて算出した。
溶解後粒子径 = {(5.0-限外膜で分離した溶液中のシリカ濃度)/5.0}1/3×溶解前粒子径
溶解層の厚みは、溶解前粒子径から溶解後の粒子径を差し引くことで算出でき、有機無機複合層の厚みは、下記計算式に基づいて算出した。
有機無機複合層厚み = 溶解前粒子径-(母粒子粒子径+無機成分のみからなる最外層厚み)
また、溶解処理において添加する水酸化ナトリウム量や加熱時間および温度を調整することで溶解層の厚みを調整することができ、数nm単位で溶解することができる。
数nm単位の溶解操作を繰り返して行うと、まず溶解層の厚みが薄い場合は、溶解液にはCOD値が検出されないか、または、極めて低い濃度で検出される。CODが検出されない層が無機成分からなる最外層である。続けて溶解を繰り返すと溶解液中にCODが検出されるようになり、COD値が検出される溶解液に相当する厚みが有機無機複合層である。続けて、溶解処理を繰り返していくと溶解液中に含まれるCOD値が徐々に高くなる。このように溶解層中のCOD濃度が変化していく場合に有機成分の濃度勾配があると判断される。
更に続けて溶解処理を行っていくと、溶解液中にCOD値が検出されなくなる。COD値が検出されなくなった際の溶解後粒子径が母粒子サイズである。
より具体的には、図2に示すように、有機無機複合微粒子の中心からの距離と、COD値との関係を示すグラフを作成することで、母粒子、有機無機複合層および最外層の存在を確認できる。微粒子の中心からの距離が大きい側からみて、COD値が検出されない部分が最外層である。次に、COD値が検出される部分が有機無機複合層である。次いで、COD値が検出されなくなった部分が母粒子である。
なお、製造時に予め原料として調合に使用する原料無機粒子のサイズがわかっている場合は、原料無機粒子のサイズと良い一致を示す。
なお、有機無機複合微粒子の厚みを測定する際の粒子径は、比表面積換算粒子径を用いるものとする。
[10]SiO絶縁膜(厚み1μm)基板に対する研磨特性の評価方法と研磨用砥粒分散液の調製方法
[研磨用砥粒分散液の調製]
実施例および比較例の各々において得られた粒子連結型有機無機複合微粒子分散液あるいは有機無機複合微粒子分散液について、それぞれイオン交換水を加えて希釈し、いずれも固形分濃度1.0質量%に調整し、それぞれ硝酸水溶液(濃度5%)を添加してpH6.0に調整し、研磨用砥粒分散液とした。
[研磨試験方法]
被研磨基板として、熱酸化法により作製したSiO絶縁膜(厚み1μm)基板を準備し、この被研磨基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「IC-1000/SUBA400同心円タイプ」)を使用し、基板荷重0.04MPa、テーブル回転速度90rpmで研磨用砥粒分散液を200mL/分の速度で1分間供給して研磨を行った。
そして、研磨前後の被研磨基板の重量変化を求めて研磨速度(nm/min)を算定した。また、研磨基材の表面の平滑性(表面粗さ[Ra])を原子間力顕微鏡(AFM、株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。平滑性と表面粗さは概ね比例関係にあるため、表には表面粗さを記載した。
[原料とした無機微粒子の平均粒子径]
本発明の粒子連結型有機無機複合微粒子分散液を製造するための原料とした無機微粒子分散液における無機微粒子の平均粒子径の測定方法は次のとおりである。
[測定方法]
無機微粒子分散液(固形分濃度:0.05質量%)を用いて作成した試料の透過型電子顕微鏡(倍率:20万倍)で撮影した。その写真を用い、50個の一次粒子を任意に選択した。任意に選択された各一次粒子を写真投影(平面視)した場合に、円形のものは、直径を粒子径とした。また、円形以外の一次粒子は、写真投影(平面視)した場合に粒子の外縁と外縁との間の距離について、最長のものと最短のものを平均した値を粒子径とした。50個の粒子について、粒子径を合計し、粒子の個数で除した平均値をシリカの平均粒子径とした。
[酸性珪酸液]
珪酸ナトリウム水溶液(SiO濃度5質量%)を陽イオン交換樹脂塔に通すことにより調製し、酸性珪酸液(SiO濃度4.6質量%、pH2.3、SiO/NaO[モル比]=1200)を調製した。
以下、実施例および比較例では、この酸性珪酸液を使用した。
<粒子連結型有機無機複合微粒子分散液の調製>
[実施例1]
シリカ微粒子分散液「カタロイドSI-50」(比表面積換算粒子径25nm)、固形分濃度48質量%、日揮触媒化成(株)製)124gを、純水で固形分濃度2.4質量%に希釈した。
この希釈したシリカ微粒子分散液に、pH調整剤として水酸化ナトリウム水溶液(濃度5.0質量%)71gを添加した。
次に、このpHを調整したシリカ微粒子分散液にカチオン性の有機高分子として重量平均分子量600のポリエチレンイミン水溶液(濃度0.1質量%)1500gを添加した。添加後のPHは12.1であった。
続いて、このカチオン性の有機高分子を含むシリカ微粒子分散液を98℃に昇温し、98℃で30分間保持した。続いて酸性珪酸液(SiO濃度4.6質量%)5,518gを、16時間かけて添加した。添加終了後温度を保持したまま1時間熟成を行った。この操作により、粒子成長させ、併せて一次粒子間のネック部をも成長させた。粒子連結型有機無機複合微粒子分散液(固形分濃度3.3質量%)を得た。
得られた粒子連結型有機無機複合微粒子分散液は、前記測定方法によって、立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子を含むことを確認した。立体状分岐構造(三次元分岐構造)を有する粒子連結型有機無機複合微粒子(立体状連結粒子)の個数割合は、23%であった。
限外濾過装置にて、この粒子連結型有機無機複合微粒子分散液を濃縮し、SiO濃度を12%に調整した。さらに、ロータリーエバポレーターにて、この粒子連結型有機無機複合微粒子分散液を濃縮し、SiO濃度を40質量%に調整し、各種測定を行った。
[実施例2]
シリカ微粒子分散液「カタロイドSI-50」83gを、純水で固形分濃度1.9質量%に希釈した。
この希釈したシリカ微粒子分散液に、pH調整剤として水酸化ナトリウム水溶液(濃度5.0質量%)61gを添加した。
次に、このpHを調整したシリカ微粒子分散液に、カチオン性の有機高分子として重量平均分子量600のポリエチレンイミン水溶液(濃度0.3質量%)360gを添加した。添加後のPHは11.9であった。続いて、このカチオン性の有機高分子を含むシリカ微粒子分散液を98℃に昇温し、98℃で120分間保持した。続いて酸性珪酸液(SiO濃度4.6質量%)7,610gを、20時間かけて添加した。添加終了後温度を保持したまま1時間熟成を行った。この操作により、粒子成長させ、併せて一次粒子間のネック部をも成長させた。粒子連結型有機無機複合微粒子分散液(固形分濃度3.8質量%)を得た。
得られた粒子連結型有機無機複合微粒子分散液は、前記測定方法によって、立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子を含むことを確認した。立体状分岐構造(三次元分岐構造)を有する粒子連結型有機無機複合微粒子の個数割合は、23%であった。
得られた粒子連結型有機無機複合微粒子分散液の濃縮および各種測定は、実施例1と、同様に行った。
[実施例3]
シリカ微粒子分散液「カタロイドSI-40」(比表面積換算粒子径18nm)、固形分濃度40.5質量%、日揮触媒化成(株)製)111gを、純水で固形分濃度1.9質量%に希釈した。
この希釈したシリカ微粒子分散液に、pH調整剤として水酸化ナトリウム水溶液(濃度5.0質量%)62gを添加した。
次に、このpHを調整したシリカ微粒子分散液に、カチオン性の有機高分子として重量平均分子量600のポリエチレンイミン水溶液(濃度0.3質量%)375gを添加した。添加後のPHは12.2であった。
続いて、このカチオン性の有機高分子を含むシリカ微粒子分散液を98℃に昇温し、98℃で120分間保持した。続いて酸性珪酸液(SiO濃度4.6質量%)9106gを、24時間かけて添加した。添加終了後温度を保持したまま1時間熟成を行った。この操作により、粒子成長させ、併せて一次粒子間のネック部をも成長させた。粒子連結型有機無機複合微粒子分散液(固形分濃度3.9質量%)を得た。
得られた粒子連結型有機無機複合微粒子分散液は、前記測定方法によって、立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子を含むことを確認した。立体状分岐構造(三次元分岐構造)を有する粒子連結型有機無機複合微粒子の個数割合は、42%であった。
得られた粒子連結型有機無機複合微粒子分散液の濃縮および各種測定は、実施例1と、同様に行った。
[比較例1]
シリカ微粒子分散液「カタロイドSI-50」、固形分濃度48質量%、日揮触媒化成(株)製)について、各種測定を実施例1と同様に行った。
[比較例2]
シリカ微粒子分散液「カタロイドSI-45P」(比表面積換算粒子径45nm)、固形分濃度40.5質量%、日揮触媒化成(株)製)について、各種測定を実施例1と同様に行った。
[比較例3]
ヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、AEROSIL50)300gにイオン交換水と5%の水酸化ナトリウムを加え、pH10.0でSiO濃度2.5質量%に調整した。その後、φ0.5mmのジルコニアビーズを用い、アシザワファインテック社製ビーズミルLMZ06を用いて湿式粉砕を行った。ビーズと粉砕液を分離したのち、更にφ0.25mmの高純度シリカビーズを用い、湿式粉砕をした。得られた粉砕液をロータリーエバポレーターでSiO濃度40質量%に濃縮し、シリカ微粒子分散液を得た。
得られたシリカ微粒子分散液について、各種測定を実施例1と同様に行った。
[製造条件および各種測定の結果]
実施例における製造条件を表1に示す。また、実施例および比較例における各種測定の結果を表2に示す。
Figure 2023040878000001
Figure 2023040878000002
表2に示す結果からも明らかなように、実施例1~3で得られた粒子連結型有機無機複合微粒子分散液によれば、研磨性の優れた特性を有することが確認された。

Claims (18)

  1. 下記[1]、[2]および[3]の要件を備え、動的光散乱法により測定した平均粒子径(D1)が20nm以上600nm以下の有機無機複合微粒子が溶媒に分散してなる、有機無機複合微粒子分散液。
    [1]前記有機無機複合微粒子は、有機成分を含まない無機成分からなる母粒子と、前記母粒子の表面上に無機成分と有機成分を含有する有機無機複合層を有すること。
    [2]前記有機無機複合微粒子は、無機成分あたりのCOD値が100ppm以上10%以下であること。
    [3]前記有機無機複合層の厚さは、1nm以上500nm以下であること。
  2. 前記有機無機複合層中の有機成分は粒子の中心から外側に向かって濃度勾配を備えている、請求項1に記載の有機無機複合微粒子分散液。
  3. 前記有機無機複合微粒子が、前記有機無機複合層の表面に、更に無機成分のみからなる最外層を有する、請求項1または請求項2に記載の有機無機複合微粒子分散液。
  4. 前記有機無機複合微粒子を一次有機無機複合微粒子として、前記一次有機無機複合微粒子が連結した構造からなる粒子連結型有機無機複合微粒子を含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の有機無機複合微粒子分散液。
  5. 下記[1A]、[2]および[3]の要件を備え、動的光散乱法により測定した平均粒子径(D1)が20nm以上600nm以下の粒子連結型有機無機複合微粒子が溶媒に分散してなる、有機無機複合微粒子分散液。
    [1A]前記粒子連結型有機無機複合微粒子は、有機成分を含まない無機成分からなる母粒子と、前記母粒子の表面上に無機成分と有機成分を含有する有機無機複合層を有する一次有機無機複合微粒子が連結してなるか、或いは、有機成分を含まない無機成分からなる母粒子が連結してなり、連結した母粒子の表面上に無機成分と有機成分を含有する有機無機複合層を有すること。
    [2]前記粒子連結型有機無機複合微粒子は、無機成分あたりのCOD値が100ppm以上10%以下であること。
    [3]前記有機無機複合層の厚さは、1nm以上500nm以下であること。
  6. 前記粒子連結型有機無機複合微粒子が、少なくとも1つの分岐構造を有し、更に前記分岐構造に対する立体状分岐構造を有してなる、請求項5に記載の有機無機複合微粒子分散液。
  7. 前記立体状分岐構造が、下記(1)および(2)の構造のうちの少なくとも1つである、請求項6に記載の有機無機複合微粒子分散液。
    (1)前記分岐(a)に対し、立体方向に伸長してなる分岐(b)
    (2)前記分岐(a)に対し、立体方向に伸長してなる末端(c)
  8. 前記粒子連結型有機無機複合微粒子の29Si-NMRスペクトルを測定した場合、Q4のピーク強度に対するQ3のピーク強度の比((Q2+Q3)/Q4)が、1.0以上2.0以下の範囲にある、請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の有機無機複合微粒子分散液。
  9. 前記立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子は、下記[4]および[5]の要件を備える、請求項4から請求項8のいずれか一項に記載の有機無機複合微粒子分散液。
    [4]20nm≦DLa≦1,000nm
    DLa:前記立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子の長さ方向における最長径(DL)の平均値
    [5]10nm≦DTa≦800nm
    DTa:前記立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子の太さ方向における直径(DT)の平均値
  10. 前記立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子は、下記[6]の要件を備える、請求項4から請求項9のいずれか一項に記載の有機無機複合微粒子分散液。
    [6]10%≦C.V.≦40%
    C.V.:前記立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子の太さ方向における直径(DT)の平均変動係数
  11. 前記立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子は、前記一次有機無機複合微粒子の平均連結個数が、5個以上20個以下の範囲にある、請求項4から請求項10のいずれか一項に記載の有機無機複合微粒子分散液。
  12. 前記有機無機複合微粒子に含まれるCa、Mg、FeおよびAlの割合が、下記のとおりであることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の有機無機複合微粒子分散液。
    Ca:25ppm以下
    Mg:25ppm以下
    Al:150ppm以下
    Fe:50ppm以下
  13. 前記立体状分岐構造を有する粒子連結型有機無機複合微粒子を5個数%以上50個数%以下含む、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の有機無機複合微粒子分散液。
  14. 請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の有機無機複合微粒子分散液を含む、砥粒分散液。
  15. 下記工程1を含む、請求項5に記載の有機無機複合微粒子分散液の製造方法。
    工程1:SiO濃度0.1質量%以上30質量%以下のシリカ微粒子分散液に、カチオン性の有機高分子成分を下記の割合(WA/WS)の範囲内で添加し、続いて、40℃以上98℃以下に加熱し、0.5時間以上保持し、粒子連結型有機無機複合微粒子分散液を得る工程
    0.002≦WA/WS≦0.3
    (ここで、WSは、シリカ微粒子分散液中のシリカ質量であり、WAは、カチオン性の有機高分子成分の質量である。)
  16. 前記工程1において、加熱前のpHが9.0以上13.0以下の範囲にある、請求項15に記載の有機無機複合微粒子分散液の製造方法。
  17. 前記工程1に続いて、下記工程2を含む、請求項15または請求項16に記載の有機無機複合微粒子分散液の製造方法。
    工程2:前記工程1で得た粒子連結型有機無機複合微粒子分散液に対し、酸性珪酸液を、下記の割合(WF/WS)となるように連続的または断続的に添加し、粒子成長させる処理を施す工程
    0.01≦WF/WS≦20
    (ここで、WSは、粒子連結型有機無機複合微粒子分散液中のシリカ質量であり、WFは、酸性珪酸液中のシリカ質量である。)
  18. 前記有機高分子成分の重量平均分子量が、300以上100,000以下の範囲にある、請求項15から請求項17のいずれか一項に記載の有機無機複合微粒子分散液の製造方法。
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