JP2023039710A - 重み係数決定装置、重み係数決定方法、およびプログラム - Google Patents

重み係数決定装置、重み係数決定方法、およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】 最適化問題を求解するために用いる評価関数の重み係数をその最適化問題に適した値にする。【解決手段】 重み係数決定装置200は、第1最適化問題のアルゴリズムにより、評価関数Jに含まれる評価指標ei'を定める評価関数内変数について、評価関数Jの値が最大または最小になるときの計算値di'_simを算出し、算出した評価関数内変数の計算値di'_simと、予め設定されている当該評価関数内変数の最適値di'_optと、の差を評価する差分評価指標|di'_sim-di'_opt|の値を算出し、算出した差分評価指標の値に基づいて、重み係数の最適解wi_optを決定する。【選択図】 図2

Description

本発明は、重み係数決定装置、重み係数決定方法、およびプログラムに関し、特に最適化問題を求解するために用いる評価関数に含まれる重み係数を決定するために用いて好適なものである。
最適化問題は、複数の評価指標のそれぞれについて最も評価が高くなるような設計変数を求める問題である。具体的に、最適化問題の求解対象である設計変数(決定変数とも称される)を含む変数を用いて複数の評価指標を構成すると共に、複数の評価指標と、各評価指標に対する重み係数と、を用いて評価関数を定式化し、評価関数の値が最小または最大になるときの設計変数を含む変数の値を求める。このように最適化問題は、評価関数と重み係数とを用いて表される。重み係数は、複数の評価指標間の評価のバランスを表すものであり、評価関数の値を算出する前に予め決定される。重み係数の値の大小関係は、複数の評価指標の重要度に応じて定まり、重要な評価指標に対する重み係数であるほど絶対値を大きくする。なお、評価関数は、目的関数やコスト関数などとも称される。また、重み係数は、コスト係数などとも称される。
特許文献1には、コークス炉の投入熱量を制御するために、最適化問題を利用する技術が開示されている。具体的に特許文献1には、窯間のコークス温度偏差を用いた評価指標と、窯ごとのコークス温度変化量を用いた評価指標との重み付き線形和で表される評価関数の値が最小となるときの窯ごとのコークス温度変化量を算出し、窯ごとのコークス温度変化量を、燃焼ガスおよび空気の流量を調整する調整弁の開度の変更量に換算することが開示されている。
特開平9-302351号公報
坪井祐太,牧野貴樹著、「第13回 自然言語処理における逆強化学習・模倣学習の適用」、計測と制御、第52巻、第10号、2013年10月号、922-927頁
しかしながら、特許文献1に記載の技術を含め、評価関数における重み係数は、最適化問題の立案者の経験を頼りにして決定されるのが一般的である。例えば、特許文献1に記載の技術では、コークス炉の投入熱量を制御した結果、所望の品質のコークスが得られない場合、評価関数における重み係数を調整することを繰り返し実行することになる。したがって、重み係数の値として適切な値を評価関数に設定することが容易ではない。このような問題点は、コークス炉の投入熱量の制御のようなプロセス制御を実行するための最適化問題に限らず、各種の最適化問題において共通の問題点として存在する。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、最適化問題を求解するために用いる評価関数の重み係数をその最適化問題に適した値にすることを目的とする。
本発明の重み係数決定装置は、最適化問題を求解するために用いられる評価関数に含まれる複数の評価指標に対する重み係数を逆強化学習により決定する重み係数決定装置であって、前記評価指標を定める変数である評価関数内変数について、前記評価関数の値が最大または最小になるときの計算値を算出する算出手段と、前記算出手段により算出された前記評価関数内変数の計算値と、予め設定されている当該評価関数内変数の最適値と、の差を評価する差分評価指標の値を算出し、算出した前記差分評価指標の値に基づいて、前記重み係数の値を決定する重み係数決定手段と、を備える。
本発明の重み係数決定方法は、最適化問題を求解するために用いられる評価関数に含まれる複数の評価指標に対する重み係数を逆強化学習により決定する重み係数決定方法であって、前記評価指標を定める変数である評価関数内変数について、前記評価関数の値が最大または最小になるときの計算値を算出する算出工程と、前記算出工程により算出された前記評価関数内変数の計算値と、予め設定されている当該評価関数内変数の最適値と、の差を評価する差分評価指標の値を算出し、算出した前記差分評価指標の値に基づいて、前記重み係数の値を決定する重み係数決定工程と、を備える。
本発明のプログラムは、前記重み係数決定装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのものである。
本発明によれば、最適化問題のアルゴリズムにより算出した評価関数内変数の計算値と最適値との差を評価した結果に基づいて、評価関数内変数により定められる評価指標に対する重み係数を決定するので、最適化問題を求解するために用いる評価関数の重み係数をその最適化問題に適した値にすることができる。
重み係数を決定する方法の一例を説明する図である。 重み係数決定装置の機能的な構成の一例を示す図である。 重み係数決定方法の一例を説明するフローチャートである。 コークス炉およびコークス製造プロセスの一例を示す図である。 炉団温度の一例を説明する図である。 コークスが炭化室から押し出されている様子の一例を示す図である。 処理装置の機能的な構成の一例を示す図である。 コークス温度、炉団温度、投入熱量、および乾留時間と時間との関係の一例を示す図である。 目標炉温軌道の一例を説明する図である。 非定常操業の開始時刻に決定される目標炉温軌道の一例を説明する図である。 操業条件が変更されたタイミングで決定される目標炉温軌道の一例を説明する図である。 処理方法の一例を説明するフローチャートである。 目標炉温軌道および実績炉温軌道の一例を示す図である。 重み係数決定装置の機能構成の適用例を示す図である。 オペレータ操作履歴、操業条件、および制御履歴の一例を説明する図である。 目標炉温軌道、推定炉温軌道、およびオペレータ介入炉温軌道の一例を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
[概要]
まず、本実施形態の概要の一例について説明する。本実施形態では、最適化問題を求解するために用いられる評価関数に含まれる複数の評価指標に対する重み係数を逆強化学習により決定する。図1は、重み係数を決定する方法の一例を説明する図である。なお、本発明は、図1に示すものに限定されない。
背景技術の欄で説明したように、最適化問題では、最適化問題の求解対象である設計変数を含む変数を用いて複数の評価指標を構成すると共に、複数の評価指標と、各評価指標に対する重み係数と、を用いて評価関数を定式化し、評価関数の値が最小または最大になるときの設計変数を含む変数の値を求める。以下の説明では、設計変数を含む変数を、評価関数内変数とも称する。図1では、評価関数JがI個(Iは2以上の整数)の評価指標eiの重み付き線形和で表される場合を例示する(算出処理C1に示すJ=Σwi・eiを参照)。評価指標eiは、評価関数内変数diの関数で表されても、評価関数内変数diに等しくても良い。また、1個の評価指標eiが、複数の評価関数内変数diの関数で表されても良い。なお、図1の各式において、変数iは、評価指標ei(評価関数内変数di)を特定する変数である。
図1の算出処理C1において、評価関数Jの値が最大または最小になるときの設計変数を最適解として算出する。設計変数は、評価関数内変数のうち、最適化問題の求解対象となる変数である。なお、評価関数Jの値が最大または最小になるとは、評価関数Jの値が、最適化問題のアルゴリズムにより定まる条件(および必要に応じて制約式)を満足する範囲で最大または最小になることを指す(このことは以降の説明でも同じである)。最適化問題のアルゴリズムにより定まる条件として、設計変数の前回値に対する今回値の変動が所定値以下であるという条件が例示される。
このように、最適化問題では、評価関数Jにおける各評価指標eiに対する重み係数wiを予め設定しておき、評価関数Jの値が最大または最小となるときの評価関数内変数diを算出する。本発明者らは、過去の実績から、所望の結果が得られたときの評価関数内変数diを特定することができることに着目した。例えば、物品を処理する際に、物品の処理コストおよび処理時間を評価指標(評価関数内変数)とする場合、過去の各物品の処理実績の中に、各物品の処理コストが所望のコスト以下になり、且つ、各物品の処理時間が所望の時間以下になるような処理実績が得られることがある。本発明者らは、このような所望の結果が得られたときの評価関数内変数diを所与の最適値として、逆強化学習の手法を用いれば、評価関数J(重み係数wi)の最適解を探索することができることを見出した。
非特許文献1に記載されているように、逆強化学習は、最適訓練行動列が与えられていることを仮定し、報酬関数の下での行動列と最適訓練行動列とで定義される目的関数を最小化する手法である。すなわち、逆強化学習は、最適な行動・動作が所与であるものとし、報酬関数の下で定められる行動・動作と、予め設定されている最適な行動・動作と、の差が最小になるような、報酬関数を決定する手法である。
図1において、報酬関数は、評価関数Jに対応する。また、最適訓練行動列は、最適な評価関数内変数di'_optに対応する。以下の説明では、この最適な評価関数内変数を、評価関数内変数の最適値とも称する。ここで、変数i'は、iと同様に、評価指標ei'(評価関数内変数di')を特定する変数であるものとし、評価指標ei'(評価関数内変数di')の数はI'個であるものとする(I'は、I以下の正の整数)。すなわち、評価指標ei'(評価関数内変数di')は、評価関数Jに含まれる評価指標ei(評価関数内変数di)のうち少なくとも1個の評価指標ei(評価関数内変数di)を示す。評価指標ei'(評価関数内変数di')は、評価関数Jに含まれる評価指標ei(評価関数内変数di)と完全に一致していても、評価関数Jに含まれる評価指標ei(評価関数内変数di)の一部のみであっても良い。
また、図1において、報酬関数の下で定められる行動・動作は、評価関数Jの値を最大または最小であるときの評価関数内変数di'_simに対応する。以下の説明では、この評価関数内変数を、評価関数内変数の計算値とも称する。
また、図1において、報酬関数の下での行動列と最適訓練行動列とで定義される目的関数は、図1の算出処理C2において算出される差分評価指標|di'_sim-di'_opt|を用いて表される。ここで、差分評価指標|di'_sim-di'_opt|は、評価関数Jに含まれる評価関数内変数diのうち少なくとも1個の評価関数内変数diについて算出されていれば良く、必ずしも評価関数Jに含まれる評価関数内変数diの全てについて算出される必要はない。前述したように評価指標ei(評価関数内変数di)は、最適化問題における評価関数Jに含まれる評価指標ei(評価関数内変数di)である。評価指標ei'(評価関数内変数di')は、最適化問題における評価関数Jに含まれる評価指標ei(評価関数内変数di)のうち、逆強化学習で用いる(差分評価指標の算出に用いる)評価指標ei(評価関数内変数di)を示す。評価関数Jの値を最大または最小であるときの評価関数内変数di_simのうち、強化学習で用いる(差分評価指標の算出に用いる)評価関数内変数がdi'_simになる。
また、図1において、報酬関数の下での行動列と最適訓練行動列とで定義される目的関数を最小化することは、各評価関数内変数di'についての差分評価指標|di'_sim-di'_opt|が最小になるような評価関数J(重み係数wi)を算出することに対応する。
図1において、逆強化学習により重み係数wiを決定するために、まず、算出処理C1において、重み係数wiの初期値を評価関数Jの右辺に与えて、評価関数内変数の計算値di_sim(最適解)を算出する。また、前述したように、評価関数内変数の最適値di'_optは、行動・動作の過去の実績に基づいて定められ、所与である。そこで、算出処理C2において、評価関数内変数の計算値di_simおよび最適値di'_optを用いて差分評価指標|di'_sim-di'_opt|の値を算出し、算出した差分評価指標の値に基づいて、重み係数の最適解wi_optを決定する。差分評価指標|di'_sim-di'_opt|の値が所定の条件を満足していない場合には、重み係数wiを更新する。そして、更新後の重み係数wiを用いて、算出処理C1、C2を再び実行する。すなわち、算出処理C1、C2は、差分評価指標|di'_sim-di'_opt|の値が所定の条件を満足するまで繰り返し実行される。そして、差分評価指標|di'_sim-di'_opt|の値が所定の条件を満足したときの評価関数内変数の計算値di'_simを特定する。そして、特定した評価関数内変数の計算値di'_simの算出元となる評価関数Jにおける重み係数wiを、重み係数の最適解wi_optとして決定する。なお、1回目の算出処理C2で算出した差分評価指標の値が所定の条件を満足している場合には、算出処理C1、C2の再実行は不要である。
以上のようにして算出処理C1、C2を実行することにより、評価関数Jの重み係数wiを、逆強化学習により決定することができる。評価関数Jを構成する評価指標eiは特に限定されない。例えば、評価指標eiは、処理される物品に関する評価指標を含む。この場合、評価指標eiを定める評価関数内変数diには、物品が処理されることにより値が変動する物理量を示す変数が含まれる。このような物理量として、例えば、物品を処理するために用いられる装置の状態を表す物理量を示す変数と、前記物品の状態を表す物理量を示す変数と、のうち少なくとも一方が挙げられる。物品の処理には、例えば、物品の運搬(物流)や製品の製造が挙げられる。物品を処理するために用いられる装置の状態を表す物理量として、例えば、物品を運搬する装置の状態を表す物理量や製品の製造装置や検査装置の状態を表す物理量が挙げられる。また、物品の状態を表す物理量は、物品の温度などである。設計変数以外の評価関数内変数diがこのような物理量である場合、評価関数内変数diを、機械学習モデルや物理モデル(物理現象を表現する微分方程式)を用いて予測計算(推定計算)しても良い。ただし、評価関数Jを構成する評価指標eiは、処理される物品に関する評価指標に限定されるものではなく、評価関数Jを構築することができる複数の評価指標ei(複数の評価関数内変数di)であればどのような評価指標であっても良い。
本欄に記載の内容を前提として、以下に、評価関数Jの重み係数wiを、逆強化学習により決定する重み係数決定装置および重み係数決定方法の一例について説明する。
[重み係数決定装置および重み係数決定方法]
図2は、重み係数決定装置200の機能的な構成の一例を示す図である。図3は、重み係数決定装置200を用いて実行される重み係数決定方法の一例を説明するフローチャートである。なお、重み係数決定装置200のハードウェアは、例えば、中央処理装置、主記憶装置、補助記憶装置、入力装置、および出力装置を備える情報処理装置を用いることにより実現される。また、重み係数決定装置200のハードウェアは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアにより実現されても良い。
重み係数決定装置200は、最適化問題を求解するために用いられる評価関数に含まれる複数の評価指標に対する重み係数を逆強化学習により決定するための処理を実行する装置である。重み係数決定装置200は、算出部210と、重み係数決定部220と、評価指標決定部230、記憶部240と、出力部250と、を備える。なお、記憶部240は、重み係数決定装置200の外部に設けられても良い。
<<算出部210、重み係数決定部220>>
算出部210は、最適化問題のアルゴリズムにより最適化問題の求解対象である設計変数を含む複数の評価関数内変数の計算値di_sim(最適解)を算出する。複数の評価関数内変数の計算値di_simは、評価関数Jの値が最小または最大になるときの評価関数内変数diの値である。以下の説明では、評価関数Jの値が最小または最大となるときの評価関数内変数の計算値di_simを算出する最適化問題を、第1最適化問題とも称する。第1最適化問題のアルゴリズムとして、遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法によるアルゴリズムが例示される。本実施形態では、第1最適化問題のアルゴリズムとして、遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法を用いる場合を例示する。ただし、第1最適化問題のアルゴリズムは、メタヒューリスティクス手法によるアルゴリズム以外の公知のアルゴリズムであっても良い。なお、遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法自体は公知の技術で実現されるので、その詳細な説明を省略する。
重み係数決定部220は、複数の評価関数内変数diのうちの少なくとも1つの評価関数内変数の計算値di'_simと、予め設定されている当該評価関数内変数の最適値di'_optと、の差を評価する差分評価指標の値を算出し、算出した差分評価指標の値に基づいて、重み係数wiの値を決定する。図1に示した例では、差分評価指標は、|di'_sim-di'_opt|に対応する。本実施形態では、重み係数決定部220は、各評価関数内変数di'についての差分評価指標|di'_sim-di'_opt|の総和を評価関数J_difとして用いる最適化問題のアルゴリズムにより、重み係数wiの値を決定する場合を例示する。以下の説明では、当該最適化問題を、第2最適化問題とも称する。また、評価関数Jと区別するために、評価関数J_difを、差分評価関数J_difとも称する。重み係数決定部220は、算出部210により重み係数wiの値を異ならせて算出された評価関数内変数の計算値di'_simが、差分評価関数J_difの値が最小または最大になるときの評価関数内変数の計算値di'_simであるか否かを判定する。なお、差分評価関数J_difの値が最小または最大になるとは、差分評価関数J_difの値が、第2最適化問題のアルゴリズムにより定まる条件(および必要に応じて制約式)を満足する範囲で最大または最小になることを指す(このことは以降の説明でも同じである)。
そして、重み係数決定部220は、差分評価関数J_difの値が最小または最大になるときの評価関数内変数の計算値di'_simの算出元となる評価関数Jに対して設定された重み係数wiを、重み係数の最適解wi_optとして決定する。本実施形態では、第2最適化問題のアルゴリズムとして、遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法を用いる場合を例示する。ただし、第2最適化問題のアルゴリズムも、第1最適化問題のアルゴリズムと同様に、メタヒューリスティクス手法によるアルゴリズム以外の公知のアルゴリズムであっても良い。なお、第1最適化問題のアルゴリズムと第2最適化問題のアルゴリズムは同じアルゴリズムでなくても良い。
<<評価指標決定部230>>
評価指標決定部230は、重み係数決定部220により決定された重み係数の最適解wi_optの絶対値が、正の閾値以下である場合、当該重み係数の最適解wi_optに乗算される評価指標eiは、評価関数Jの値に与える影響が小さいものとして、当該評価指標eiを評価関数Jに含めない評価指標eiとして決定する。一方、評価指標決定部230は、重み係数決定部220により決定された重み係数の最適解wi_optの絶対値が、正の閾値を上回る場合、当該評価指標eiを評価関数Jに含める評価指標eiとして決定する。正の閾値として0(零)に近い値または0(零)が予め設定される。例えば、評価指標決定部230は、重み係数決定部220により決定された重み係数の最適解wi_optの絶対値が、正の閾値以下である場合、当該重み係数を0(零)に設定(変更)することで、当該重み係数の最適解wi_optに乗算される評価指標eiを評価関数Jに含めない評価指標eiとして決定する。一方、評価指標決定部230は、重み係数決定部220により決定された重み係数の最適解wi_optの絶対値が、正の閾値を上回る場合、当該重み係数の最適解wi_optを変更しないことで、当該重み係数の最適解wi_optに乗算される評価指標eiを評価関数Jに含める評価指標eiとして決定する。
<<記憶部240>>
記憶部240は、算出部210、重み係数決定部220、および評価指標決定部230による処理で必要な情報として、算出部210および重み係数決定部220による処理が開始する前に予め設定しておく必要がある情報を記憶する。記憶部240は、例えば、評価関数Jおよび差分評価関数J_difを表す数式と、評価関数内変数の最適値di'_optと、差分評価関数J_difにおける重み係数wi'_dif(後述する(3)式を参照)と、を記憶する。
また、前述したように、評価関数内変数の最適値di'_optは、行動・動作の過去の実績に基づいて定められる。記憶部240は、評価関数内変数の最適値di'_optを定めた際に得られた物理量の実績値であって、評価関数Jの評価指標eiを算出するために用いられる物理量の実績値を、当該評価関数内変数の最適値di'_optと関連付けて記憶する。この物理量の実績値は、算出部210における評価関数J(評価指標ei)の算出の際に用いられる。このようにすれば、算出部210は、評価関数内変数の最適値di'_optが得られたときと同じ条件下で、差分評価指標|di'_sim-di'_opt|の値が所定の条件を満足したときの評価関数内変数の計算値di'_simを算出することができる。
この他、記憶部240は、例えば、重み係数の最適解wi_optの絶対値と比較される閾値などを記憶する。
なお、記憶部240に記憶される情報の取得形態としては、オペレータによる入力装置に対する操作、外部装置からの受信、および可搬型記憶媒体からの読み出しのうちの少なくとも1つが例示される。
<<出力部250>>
出力部250は、重み係数決定部220および評価指標決定部230により決定された内容を示す情報を出力する。例えば、評価指標決定部230が、重み係数決定部220により決定された、重み係数の最適解wi_optを0(零)に設定(変更)する場合、評価指標決定部230により変更されなかった重み係数の最適解wi_optについては、重み係数決定部220により決定された重み係数の最適解wi_optの情報を出力し、評価指標決定部230により変更された重み係数の最適解wi_optについては、当該重み係数を0(零)とすることを示す情報を出力する。なお、出力部250は、重み係数決定部220および評価指標決定部230により決定された内容を示す情報であれば、この他の情報を出力しても良い。例えば、出力部250は、重み係数決定部220により決定された重み係数の最適解wi_optの情報と、評価指標決定部230により評価関数Jに含める評価指標eiとして決定された評価指標eiおよび評価関数Jに含めない評価指標eiとして決定された評価指標eiの情報と、を出力しても良い。出力の形態として、コンピュータディスプレイへの表示、外部装置への送信、および重み係数決定装置200の内部または外部の記憶媒体への記憶のうちの少なくとも1つが例示される。
以下に、図3のフローチャートによる重み係数決定方法について説明する。なお、図3のフローチャートが開始する前に、算出部210、重み係数決定部220、および評価指標決定部230による処理が開始する前に予め設定しておく必要がある情報が記憶部240に記憶されているものとする。
図3のステップS301において、重み係数決定部220は、評価関数内変数の最適値di'_optを記憶部240から読み出して取得する。
次に、ステップS302において、重み係数決定部220は、重み係数wiの候補群(複数の候補)を生成する。重み係数wiの候補群に含まれる候補には、それぞれI個の重み係数wi(i=1~I)が含まれる。本実施形態では、重み係数の最適解wi_optを算出するために、遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法を用いる。したがって、重み係数wiの候補群に含まれる個々の候補は、遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法に従って生成される。
次に、ステップS303において、算出部210は、ステップS302で生成されたI個の重み係数wiの初期値、または、後述するステップS306で更新されたI個の重み係数wiを用いて、以下の(1)式の評価関数Jの値が最小になるときの評価関数を含む評価関数内変数を、評価関数内変数の計算値di_simとして算出する。評価指標eiは、例えば、以下の(2)式で表される。ここで、di_refは、評価指標di_simに対する目標値である。本実施形態では、(1)式の評価関数Jの値が最小になるときの評価関数内変数は、遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法に従って算出される。また、(1)式の評価関数Jに加えて制約式を用いて最適化問題を構成しても良い。このようにする場合、算出部210は、制約式を満足する範囲で評価関数Jの値が最小になるときの評価関数内変数を算出する。制約式の少なくとも1つは、説明変数内変数diを用いて表されるのが好ましい。なお、例えば、(1)式の右辺の各項(i=1~Iのそれぞれにおけるwi・ei)に(-1)を乗算したものを評価関数Jとする場合、算出部210は、当該評価関数Jの値が最大になるときの設計変数を含む評価関数内変数を、評価関数内変数の計算値di_simとして算出することになる。
Figure 2023039710000002
次に、ステップS304において、重み係数決定部220は、ステップS301で取得した評価関数内変数の最適値di'_optと、ステップS303で算出された評価関数内変数の計算値di_simのうち変数i'で識別される評価関数内変数の計算値di'_simと、を用いて、以下の(3)式の差分評価目的関数J_difの値を算出することを、重み係数wiの候補群のそれぞれについて実行する。なお、(3)式のΣの下のi'は、変数iのうちの変数i'のそれぞれについての積算を実行することを表す。
Figure 2023039710000003
なお、(3)式における重み係数wi'_difは、差分評価指標|di'_sim-di'_opt|に対する重み係数であり、評価関数Jにおける重み係数wiとは異なる。重み係数wi'_difは、評価関数内変数の計算値di_simの算出精度や、評価関数内変数の最適値di'_optの信頼性などに基づいて定めれば良く、重み係数wiを決定する場合のように、現実の行動・動作を考慮しなくて良い。
次に、ステップS305において、重み係数決定部220は、重み係数wiの候補のそれぞれについての差分評価目的関数J_difの値の算出結果に基づいて、収束条件を満足するか否かを判定する。収束条件は、遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法で用いられる収束条件であれば、どのような条件であっても良い。収束条件は、例えば、重み係数wiの候補群に含まれる個々の候補について算出した差分評価目的関数J_difの値のうちの最小値が所定値以下であるという条件であっても、差分評価目的関数J_difの値の算出回数(繰り返し処理の回数)が所定値であるという条件であっても良い。
なお、例えば、(3)式の右辺の各項(wi'_dif・|di'_sim-di'_opt|)に(-1)を乗算したものを差分評価目的関数J_difとする場合、前述した収束条件として、例えば、重み係数wiの候補群に含まれる個々の候補について算出した差分評価目的関数J_difの値のうちの最大値が所定値以上であるという条件が用いられる。
ステップS305の判定の結果、収束条件を満足しない場合(ステップS305でNOの場合)、ステップS306の処理が実行される。ステップS306において、重み係数決定部220は、重み係数wiの候補群を更新する。そして、更新後の重み係数wiの候補を用いて、ステップS303~S305の処理が実行される。このようにステップS303~S306の処理は、収束条件を満足するまで繰り返し実行される。
そして、ステップS306において、収束条件を満足すると判定されると(ステップS306でYESの場合)、ステップS307の処理が実行される。ステップS307において、重み係数決定部220は、収束条件を満足したときに算出した複数の重み係数wiの候補に対する差分評価目的関数J_difのうち、最小値を示す差分評価目的関数J_difの算出に用いた評価関数内変数の計算値di'_simを特定する。重み係数決定部220は、算出部210が、当該評価関数内変数の計算値di'_simを第1最適化問題の最適解として算出したときに用いた評価関数Jに設定されている重み係数(の候補)wiを、重み係数の最適解wi_optとして決定する。
次に、ステップS308において、評価指標決定部230は、重み係数決定部220により決定された、重み係数の最適解wi_optの絶対値が、正の閾値以下であるか否かを判定する。この判定の結果、重み係数決定部220により決定された、重み係数の最適解wi_optの絶対値が、正の閾値以下である場合、当該評価指標eiを評価関数Jに含めない評価指標eiとして決定する。一方、評価指標決定部230は、重み係数決定部220により決定された、重み係数の最適解wi_optの絶対値が、正の閾値を上回る場合、当該評価指標eiを評価関数Jに含める評価指標eiとして決定する。
次に、ステップS309において、出力部250は、重み係数決定部220および評価指標決定部230により決定された内容を示す情報を出力する。ステップS309の処理が終了すると、図3のフローチャートによる処理は終了する。
[まとめ]
以上のように本実施形態では、重み係数決定装置200は、第1最適化問題のアルゴリズムにより、評価関数Jに含まれる評価指標ei'を定める評価関数内変数について、評価関数Jの値が最大または最小になるときの計算値di'_simを算出する。そして、重み係数決定装置200は、算出した評価関数内変数の計算値di'_simと、予め設定されている当該評価関数内変数の最適値di'_optと、の差を評価する差分評価指標|di'_sim-di'_opt|の値を算出し、算出した差分評価指標の値に基づいて、重み係数の最適解wi_optを決定する。したがって、第1最適化問題を求解するために用いる評価関数Jの重み係数wiを第1最適化問題に適した値にすることができる。
また、本実施形態では、重み係数決定装置200は、差分評価関数J_deffを用いた第2最適化問題を求解することにより、重み係数の最適解wi_optを決定する。したがって、試行錯誤的な手法によらずに重み係数の最適解wi_optを決定することができる。
また、本実施形態では、重み係数決定装置200は、重み係数wiの候補値を用いて第1最適化問題のアルゴリズムにより評価関数内変数の計算値di_simを算出する。そして、重み係数決定装置200は、差分評価指標|di'_sim-di'_opt|の値が所定の条件を満たす場合の評価関数内変数の計算値di'_simの算出に用いた重み係数wiの候補値を重み係数の最適解wi_optとして決定する。この際、重み係数決定装置200は、差分評価指標の値が所定の条件を満たすまで重み係数wiの候補値を繰り返し変更する。したがって、特定の問題に依存しない最適化問題のアルゴリズムを用いて、重み係数の最適解wi_optを探索することができる。
また、本実施形態では、記憶部240は、評価関数内変数の最適値di'_optと、当該評価関数内変数の最適値di'_optを定めた際に得られた物理量の実績値であって、評価指標eiを算出するために用いられる物理量の実績値と、を相互に関連付けて記憶する。そして、重み係数決定装置200は、評価関数内変数の最適値di'_optに関連付けられて記憶されている物理量の実績値を用いて評価関数内変数の計算値di_simを算出する。したがって、算出部210は、評価関数内変数の最適値di'_optが得られたときと同じ条件下で、差分評価指標|di'_sim-di'_opt|の値が所定の条件を満足したときの評価関数内変数の計算値di'_simを算出することができる。
また、本実施形態では、評価関数内変数diに、物品が処理されることにより値が変動する物理量を示す変数を含める。したがって、物品を処理する際の行動・動作の指標を、第1最適化問題を用いて求解する際に、評価関数の重み係数を、当該最適化問題に適した値に決定することができる。
また、本実施形態では、重み係数決定装置200は、評価関数内変数diのうち、設計変数以外の評価関数内変数di'の少なくとも1つにおける前記物理量の予測計算を実行する。したがって、例えば、物品を処理した際に想定(予測)される物理量を、熟練者などにより定められる最適値と比較して評価することができる。
また、本実施形態では、重み係数決定装置200は、重み係数の最適解wi_optの値に基づいて、当該重み係数の最適解wi_optに対する評価指標eiを評価関数Jに含めるか否かを判定して、評価関数Jに含める評価指標eiを決定する。したがって、評価指標eiとして考えられる複数(多数)の候補を評価関数Jに含めておき、それらの評価指標eiの中から、評価関数Jに適した評価指標eiを選択することができる。
[適用例]
以下では、コークス炉の非定常操業時における投入熱量の制御を例に挙げて、評価関数Jを構築して評価関数内変数の計算値di_simを算出する場合を例示する。そこで、コークス炉の非定常操業時における投入熱量の制御の一例について説明する。
<コークス炉およびコークス製造プロセスの概要>
まず、図4、図5A、および図5Bを参照して、コークス炉1の概略構成の一例と、コークス製造プロセスの一例の概要と、を説明する。図4は、コークス炉およびコークス製造プロセスの一例を示す図である。図5Aは、炉団温度の一例を説明する図である。図5Bは、コークスが炭化室から押し出されている様子の一例を示す図である。なお、図5Aおよび図5Bでは、内部を透視した様子を示す。
図4および図5Aに示すように、コークス炉1では、炭化室(窯)2と燃焼室3とが炉壁4を介して交互に配置されている。炭化室2は、装炭された石炭を乾留してコークスを得る。燃焼室3は、燃料ガスを燃焼させることにより、炭化室2を高温に保つ。
背景技術の欄で説明したように、コークス炉1によるコークス製造プロセスにおいて、窯出し装炭作業には、所謂ブロック窯出し法が採用される。窯出し装炭作業は、図5Bに示すような押出ラム7により炭化室2からコークスを押し出し、引き続きその炭化室2に石炭を供給する作業である。ブロック窯出し法では、全ての炭化室2をDa個(Daは2以上の整数)の通りに分割し、分割した通りの単位で窯出し装炭作業が実行される。炭化室2の並び順でDa個置きの複数の炭化室2が同一の通りに属するように各炭化室2がいずれかの通りに割り当てられる。本欄では、Daを5としてブロック窯出し法で窯出し装炭作業が実行される場合を例示する。この場合、例えば、1の通りに炭化室No.1、6、11、16、・・・の炭化室2が割り当てられ、2の通りに炭化室No.2、7、12、17、・・・の炭化室2が割り当てられ、3の通りに炭化室No.3、8、13、18、・・・の炭化室2が割り当てられ、4の通りに炭化室No.4、9、14、19、・・・の炭化室2が割り当てられ、5の通りに炭化室No.5、10、15、20、・・・の炭化室2が割り当てられる。通り単位で、若番の炭化室2から順に窯出し装炭作業が実行される。例えば、1の通りに割り当てられた炭化室2の窯出し装炭作業は、炭化室No.1の炭化室2、炭化室No.6の炭化室2、炭化室No.11の炭化室2、炭化室No.16の炭化室2、・・・の順に実行される。また、窯出し装炭順序は、急激な温度低下を防止するために、例えば1の通り、3の通り、5の通り、2の通り、4の通りの順とする。或る通りで窯出し装炭作業を終了したタイミングから、次の通りで窯出し装炭作業を終了するタイミングまでの時間を通り時間と称する。通り時間は、一般的に3~6時間程度になる。なお、本欄は、ブロック窯出し法に限定されない。例えば、以下の説明において、通り(ブロック)を個々の炭化室2として扱えば、1つの炭化室2の単位で窯出し装炭作業を実行する場合についても適用することができる。
また、コークス炉製造プロセスにおいては、全燃焼室3の投入熱量を一括で調整し、各通りの平均的な乾留状態を制御する炉団制御が実行される。すなわち、コークス炉1への投入熱量は、全燃焼室3に対して設置された1個の調整弁5を操作することにより制御される。調整弁5は、燃料ガスおよび燃焼用空気の混合気体の流量を調整するための弁である。また、調整弁5は、後述する処理装置600の制御下で、不図示のアクチュエータを介して操作される。全燃焼室3の温度の代表値は、炉団温度と称される。例えば、図5Aに示すように全燃焼室3のうちの複数の燃焼室3に、燃焼室3の雰囲気温度を測定する温度計6を設置し、温度計6が設置された燃焼室3の平均温度を炉団温度とする本欄では、コークス炉1の燃焼室3における温度である炉温が炉団温度である場合を例示する。なお、本欄の手法は、全燃焼室3の投入熱量を一括で調整する場合に限定されない。例えば、1つの炭化室2の単位で窯出し装炭作業を実行する場合、各燃焼室3に調整弁およびアクチュエータを設置し、炭化室2ごとに乾留状態(投入熱量)を制御しても良い。
また、温度計6は、全燃焼室3のそれぞれに設置されていても、一部の燃焼室3にのみ設置されていても良い。そして、例えば、全ての燃焼室3に温度計6を設置し、各燃焼室3の温度を当該燃焼室3の温度(炉温)としても良い。
また、前述したように、コークスは、押出ラム7により炭化室2から押し出される。図5Bに示す例では、押出ラム7により炭化室2から押し出されたコークスは、ガイド車9を経由して、ガイド車9の下方に配置された不図示の消火車に排出され、当該消火車により下工程に運搬される場合を例示する。なお、ガイド車9は、窯出し装炭作業を行う炭化室2の位置に移動する。図5Bでは、図5Bの下に位置する炭化室2で製造されたコークスを、ガイド車9を経由して不図示の消火車に排出して窯出し装炭作業が終了した後、ガイド車9が図5Bの上に位置する炭化室2に移動することを、移動後のガイド車9を二点鎖線で示すことにより表している。また、図5Bでは、ガイド車9の内部に、非接触でコークスの温度を測定する温度計8が設置されている場合を例示する。温度計8は、ガイド車9に設けられている窓部を介してガイド車9の内部のコークスの通過経路を臨むように設置されている。このように本実施形態では、コークスの押出作業(窯出し作業)の最中(押出時)に炭化室2から出た直後のコークスの温度を測定する場合を例示する。なお、炭化室2から排出されたコークスの温度を測定していれば、コークス温度は、必ずしもこのようにして測定される必要はない。以下の説明では、このような炭化室2から出たコークスの温度をコークス温度とも称する。
<処理装置600の概要>
図6は、処理装置600の機能的な構成の一例を示す図である。なお、処理装置600のハードウェアは、例えば、中央処理装置、主記憶装置、補助記憶装置、入力装置、および出力装置を備える情報処理装置を用いることにより実現される。また、処理装置600のハードウェアは、PLC(Programmable Logic Controller)により実現されても良いし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアにより実現されても良い。
本欄では、処理装置600は、炉温の非定常操業時における目標値である目標炉温を決定する。前述したように本欄では、炉温が炉団温度である場合を例示する。定常操業においては、前述した窯出し装炭作業が、通り時間に対応するほぼ一定の周期で繰り返し実行される。これに対し、非定常操業においては、設備のメンテンナンス等により窯出し装炭作業を一時的に休止する。そこで、非定常操業時においては、例えば、炉団温度を一時的に低下させて設備のメンテンナンス等を実施した後、炉団温度を上昇させる。非定常操業は、窯出し装炭作業を一時的に休止している期間と、当該期間に続く少なくとも1回の窯出し装炭作業(装炭および押出)が実行されている期間と、を含む期間における操業である。本欄では、非定常操業は、窯出し装炭作業を一時的に休止している期間と、当該期間に続く少なくとも1つの通りにおける窯出し装炭作業が実行されている期間と、を含む期間における操業とする。
また、本欄では、非定常操業の開始時および終了時は、窯出し装炭作業(コークスの押出(窯出し)作業)の終了時であるものとする。コークスの押出作業の終了時は、炭化室2内の全てのコークスが当該炭化室2から押し出された(排出された)タイミング以降のタイミングである。コークスの押出作業の終了時は、例えば、炭化室2から全てのコークスが排出されたタイミングであっても良いし、その後、炭化室2の扉を閉めたタイミングであっても良いし、炭化室2から排出されたコークスの温度が測定されるタイミングであっても良いし、炭化室2から押し出されたコークスが下工程に運搬されることを開始したタイミングであっても良い。また、コークス工場の操業マニュアルにおいて、コークスの押出作業が終了するとされているタイミングでも良い。以下の説明では、窯出し装炭作業を一時的に休止している期間を、休止期間とも称する。なお、操業異常が生じた場合には、非定常操業の開始時を、操業異常を検出したタイミングとしても良い。
図6において、コークス炉1における目標炉温を決定することを含む処理を実行する処理装置600は、取得部610と、予測値算出部620と、目標炉温決定部630と、制御部640と、を備える。
取得部610は、処理装置600で使用する各種のデータを取得する。取得部610が取得するデータには、現在から過去の操業の実績値と、将来の操業のスケジュール値と、操業の目標値と、処理装置600における計算に使用する各種の設定値と、が含まれる。データの取得形態として、オペレータによる入力装置に対する操作、外部装置からの受信、および可搬型記憶媒体からの読み出しのうちの少なくとも1つが例示される。なお、個々のデータは、任意のタイミングで処理装置600に入力され取得部610に取得される。従って、個々のデータは、必ずしも同じタイミングで処理装置600に入力され取得部610で取得される必要はない。
予測値算出部620は、非定常操業時における炉団温度の予測値に影響を与える因子である第1影響因子に基づいて、非定常操業時における炉団温度の予測値を算出する。また、予測値算出部620は、非定常操業時におけるコークスの乾留状態を表す物理量の予測値に影響を与える因子である第2影響因子に基づいて、コークスの乾留状態を表す物理量の予測値を算出する。
なお、コークスの乾留状態とは、製造されたコークスにおいて石炭がどの程度乾留(熱分解)された状態であるのかを示し、コークスの品質を表す指標である。また、第1影響因子は、非定常操業時における炉団温度の予測値に影響を与える因子であれば特に限定されない。本欄では、第1影響因子に、非定常操業時における燃焼室3に対する投入熱量の予測値と、非定常操業時における炉団温度の予測値の予測時刻よりも前のタイミングにおける炉団温度と、が含まれる場合を例示する。ここで、炉団温度の予測値の予測時刻よりも前のタイミングにおける炉団温度は、予測値であっても実測値であっても良い。
また、第2影響因子は、非定常操業時におけるコークスの乾留状態を表す物理量(本実施形態では非定常操業の終了時のコークス温度)の予測値に影響を与える因子であれば特に限定されない。本実施形態では、第2影響因子に、炉団温度の予測値と、乾留時間とが含まれる場合を例示する。乾留時間は、Da(=5)個の全ての通りにおける窯出し装炭作業が1回ずつ実行されるのに要する時間に等しい。
コークスの乾留状態を表す物理量としては、例えば、非定常操業時に製造されるコークスの温度、非定常操業時における炉壁4の温度などがある。非定常操業時におけるコークスの乾留状態を表す物理量は、定常状態に復帰したときのコークスの乾留状態を目標の状態に近づけるために用いられる。このような観点から、非定常操業時におけるコークスの乾留状態を表す物理量は、非定常操業から定常状態に復帰するタイミングに近いタイミングにおけるものほど好ましい。そこで、本欄では、非定常操業時におけるコークスの乾留状態を表す物理量が、休止期間が終了した後、最初に炭化室2に装炭されている石炭についてのコークス温度である場合を例示する。なお、後述する図7に示すように、本実施形態では、休止期間が終了してから6通り目の通りにおけるコークスの押出作業の終了時刻を、非定常操業の終了時(非定常操業の終了時刻te)としているので、休止期間が終了した後、最初に炭化室2に装炭されている石炭についてのコークス温度は、非定常操業の終了時のコークス温度である。そこで、以下の説明では、休止期間が終了した後、最初に炭化室2に装炭されている石炭についてのコークス温度を非定常操業の終了時のコークス温度とも称する。また、本欄では、コークス温度が、通り毎の代表値である通り代表値である場合を例示する。代表値として、例えば、算術平均値、中央値、最頻値、および最小値のいずれかが例示される。なお、前述したように、非定常操業時におけるコークスの乾留状態を表す物理量は、コークス温度に限定されず、例えば、非定常操業時における炉壁4の温度でも良い。
コークス温度は、炭化室2から排出されたコークスの温度であり、例えば、図5Bに示す温度計8による測定値により算出される。押出ラム7により炭化室2からコークスを押し出しているときに、炭化室2から順次排出されるコークスの温度を、温度計8で測定し、測定した各時刻および各位置における温度の代表値を、当該炭化室2で製造されたコークスの温度とする。代表値として、算術平均値(測定した各時刻および各位置における温度の和を、温度の測定数で割った値)、中央値、最頻値、および最小値のいずれかが例示される。そして、1つの通りに属する炭化室2で製造されたコークスの温度の代表値を、コークス温度(通り代表値)とする。前述したように、通り代表値は、例えば、通り平均値(1つの通りに属する炭化室2で製造されたコークスの温度の和を、当該通りに属する炭化室2の数で割った値)である。なお、コークス温度は、炭化室2から排出された直後のコークスの温度であることが好ましいため、図5Bに示すようにしてコークス温度を定めることを例示するが、コークス温度を測定するための温度計やコークス温度の定め方自体は、例えば、コークス工場で採用されているものを用いればよく、以上のようなものに限定されない。なお、非定常操業時におけるコークスの乾留状態を表す物理量を、非定常操業時における炉壁4の温度とする場合にも、炉壁4の温度を、1つの通りに属する炭化室2でコークスを製造しているときの炉壁4の温度の代表値(通り代表値)とする。炉壁4の温度は、例えば、炉壁4に埋設された不図示の温度計により測定される。
なお、第1影響因子および第2影響因子として採用する因子は、例えば、目的変数(非定常操業時における炉団温度の予測値、非定常操業の終了時のコークス温度の予測値)に対する説明変数(第1影響因子、第2影響因子)を選択するための公知の手法(例えば、教師データを用いた目的変数と説明変数との相関係数の算出や、多重共線性を有する説明変数の排除等)を用いて決定される。また、目的変数と説明変数の少なくとも1つとを同じ物理量とし、目的変数である予測値の予測時刻よりも前の時刻の予測値または実績値を説明変数(第1影響因子、第2影響因子)としても良い。説明変数から目的変数を算出する手法自体は、例えば、回帰分析などの公知の機械学習の手法により実現される。
図7は、コークス温度、炉団温度、投入熱量、および乾留時間と時間との関係の一例を示す図である。
本欄では、コークス温度および乾留時間は、通り毎の代表値であるため、1つの通りにおける窯出し装炭作業が実行されると得られる。すなわち、コークス温度および乾留時間は、通り時間の周期で得られる。図7に示すコークス温度および乾留時間のグラフ(一番上のグラフと一番下のグラフ)において、時間軸方向で隣り合う2個のプロット(●)の、時間軸方向における間隔が通り時間ttになる。図7では、時刻teにおける通り時間tt(te)を例示する。なお、通り時間ttは、概ね一定の時間であるが、異なる時間になる場合もある。
前述したように乾留時間は、Da(=5)個の全ての通りにおける窯出し装炭作業が1回ずつ実行されるのに要する時間に等しい。従って、図7に示すコークス温度および乾留時間のグラフにおいて、時間軸方向で隣り合う6個のプロット(●)の両端のプロットの、時間軸方向における間隔が乾留時間になる。図7では、時刻teにおける乾留時間tk(te)を例示する。
また、休止期間においては窯出し装炭作業が実行されないため、コークス温度および乾留時間は得られない(図7において、休止期間においてはコークス温度および乾留時間のグラフにプロット(●)が付されていないことを参照)。
一方、炉団温度および投入熱量は、窯出し装炭作業とは無関係に得られる(図7において、休止期間においても炉団温度および投入熱量のグラフにプロット(●)が付されていることを参照)。本欄では、コークス炉1の制御周期(後述する制御部640における制御信号の出力周期)で炉団温度および投入熱量の予測値および実績値が得られ、通り時間の周期でコークス温度の予測値および実績値が得られ、通り時間の周期で乾留時間のスケジュール値および実績値が得られる場合を例示する。また、コークス炉1の制御周期は1時間(hr)であるものとする。
図7において、時刻tsは非定常操業の開始時刻の一例であり、時刻teは非定常操業の終了時刻の一例である。
具体的に本欄では、窯出し装炭作業(炭化室2への装炭と押出)の休止が開始される時よりもDb通り(Dbは1以上の整数)前の通りにおけるコークスの押出作業の終了時刻を非定常操業の開始時刻tsとする場合を例示する。より具体的に本欄では、Dbが2である場合を例示する。従って、図7において、休止期間が開始される時よりも2通り前の通りにおけるコークスの押出作業の終了時刻(休止期間の開始時刻から過去に向かって数えて2つ目のコークス温度のプロットの時刻)が、非定常操業の開始時刻tsである。設備のメンテナンスが実行される場合のように休止期間が事前に把握されている場合には、Dbは1であっても2以上の整数であっても良い。一方、操業異常が生じた場合のように休止期間が事前に把握されないような場合には、Dbは1であるのが好ましい。なお、図7では、表記の都合上、コークス温度および乾留時間のグラフにおいて、休止期間と重なっているプロットがあるが、当該プロットは、休止期間の直前、直後における通り単位での窯出し装炭作業により得られるものである。従って、前述した説明において休止期間が開始される時よりも2通り前の通りとは、休止期間の開始時刻に重なっているプロットを含めて、休止期間の開始時刻から過去に向かって数えて2つ目のコークス温度のプロットの時刻に対応する。
また、本欄では、窯出し装炭作業(炭化室2への装炭と押出)の休止が終了してからDa+1通り目の通りにおけるコークスの押出作業の終了時刻が、非定常操業の終了時刻teである場合を例示する。なお、通りにおけるコークスの押出作業の開始とは、当該通りに属する炭化室2のうち、最初にコークスの押出作業が実行される炭化室2内のコークスの押出作業の開始を指し、通りにおけるコークスの押出作業の終了とは、当該通りに属する炭化室2のうち、最後にコークスの押出作業が実行される炭化室2内のコークスの押出作業の終了を指す。前述したように本欄では、Daが5である場合を例示する。従って、図7において、休止期間が終了してから6通り目の通りにおけるコークスの押出作業の終了時刻(休止期間の終了時刻から未来に向かって数えて6つ目のコークス温度のプロットの時刻)が、非定常操業の終了時刻teである。休止期間が終了してから1通り目からDa通り(5通り)目までの通りにおいては、休止期間の間に炭化室2に存在している石炭からコークスが製造される。
一方、休止期間が終了してからDa+1通り(6通り)目の通りにおいては、休止期間が終了した後に炭化室2に石炭が装入される。休止期間が終了した後に炭化室2に装入されたコークスの乾留状態が可及的に早く定常状態における乾留状態に近づくようにするのが好ましい。そこで、本欄では、窯出し装炭作業(炭化室2への装炭と押出)の休止が終了してからDa+1通り(6通り)目の通りにおけるコークスの押出作業の終了時刻を、非定常操業の終了時刻teとする。すなわち、非定常操業の終了時刻teは、休止期間が終了した後に最初に窯出し装炭作業を実行する通りにおけるコークスの押出作業の終了時刻である。ただし、非定常操業の終了時刻は、窯出し装炭作業(炭化室2への装炭と押出)の休止が終了してからDa+1通り目の通りにおけるコークスの押出作業の終了時刻に限定されない。例えば、窯出し装炭作業(炭化室2への装炭と押出)の休止が終了してからDa+x通り目の通りにおけるコークスの押出作業の終了時を、非定常操業の終了時刻とし、xの値を1以上の整数の中から選択しても良い。xやDbの値は、例えば、後述するようにして、目標炉温軌道に対する炉団温度の実績値の偏差に応じた投入熱量の制御を実際に実行した結果、所望の品質のコークスが得られるように適宜調整すれば良い。
以上のように非定常操業となる期間(非定常操業時)は時刻ts~teの期間になる。
図6の説明に戻り、本欄では、予測値算出部620は炉状態算出部621と、投入熱量算出部622と、を有する。
前述したように本欄では、第1影響因子は、燃焼室3に対する投入熱量の予測値を含む。そこで、投入熱量算出部622は、非定常操業時の燃焼室3に対する投入熱量の予測値を算出する。炉状態算出部621は、前述した第1影響因子に基づいて、非定常操業時の炉温の予測値を算出することと、前述した第2影響因子に基づいて、非定常操業時のコークスの乾留状態を表す物理量の予測値を算出することと、を実行する。本欄では、炉温は炉団温度であり、コークスの乾留状態を表す物理量はコークス温度である。
目標炉温決定部630は、予測値算出部620で算出された非定常操業時の炉温の予測値と、予測値算出部620で算出された非定常操業時のコークスの乾留状態を表す物理量の予測値と、に基づいて、非定常操業時における炉温の目標値である目標炉温の時間変化である目標炉温軌道を決定する。本欄では、目標炉温は、炉団温度の目標値である目標炉団温度である。
制御部640は、燃焼室3に対する投入熱量を、目標炉温決定部630により決定された目標炉温軌道と、炉温の実績値と、の差に応じた熱量にするための制御信号を生成して出力する。
ここで、本欄の炉状態算出部621、投入熱量算出部622、目標炉温決定部630、および制御部640における処理の具体例を説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて、燃焼室3に対する投入熱量を、投入熱量と略称し、非定常操業の終了時のコークス温度を、コークス温度と略称し、非定常操業時の炉団温度を、炉団温度と略称する。
<炉状態算出部621>
まず、炉状態算出部621における処理の具体例を説明する。
本欄では、炉状態算出部621は、プロセスモデルとして、投入熱量(GJ/hr)を入力とする線形時系列モデルを用いた計算を実行することにより、炉団温度の予測値を算出する。線形時系列モデルは、プロセス状態の予測値を所定時間毎に計算する統計解析モデルの一つである。本欄では、線形時系列モデルを二次遅れ系のモデルとして、以下の(4)式~(6)式に示す回帰式を例示する。
Figure 2023039710000004
ここで、Trは、炉団温度(℃)である。Qは、投入熱量(GJ/hr)である。ΔTr(t+1)、ΔTr(t)、ΔTr(t-1)は、それぞれ、時刻t+1、t、t-1における炉団温度Tr(t+1)、Tr(t)、Tr(t-1)の、時刻t、t-1、t-2における炉団温度Tr(t)、Tr(t-1)、Tr(t-2)に対する変化量(℃)である。すなわち、ΔTr(t+1)=Tr(t+1)-Tr(t)、ΔTr(t)=Tr(t)-Tr(t-1)、ΔTr(t-1)=Tr(t-1)-Tr(t-2)の関係が成り立つ。ΔQ(t+1)は、時刻t+1における投入熱量Q(t+1)の、時刻tにおける投入熱量に対する変化量(GJ/hr)である。すなわち、ΔQ(t+1)=Q(t+1)-Q(t)の関係が成り立つ。なお、前述したように、t+1、t-1、t-2は、それぞれ、時刻tの1時間後、1時間前、2時間前の時刻である。
Q(t)は、投入熱量算出部622により算出される投入熱量である。ΔQ(t+1)は、投入熱量算出部622により算出される投入熱量に基づいて算出される。時刻tが非定常操業の開始時刻tsである場合、Tr(t)、Tr(t-1)、Tr(t-2)は、それぞれ、時刻ts、ts-1、ts-2における炉団温度の実績値であり、ΔTr(t)、ΔTr(t-1)は、これらの実績値に基づいて算出される。時刻tが非定常操業の開始時刻tsよりも後の時刻である場合、ΔTr(t)、ΔTr(t-1)は、当該時刻tよりも前の時刻における(4)~(6)式の算出結果(ΔTr(t+1))に基づいて算出される。非定常操業の開始時刻tsよりも後の時刻t(>ts)における炉団温度Tr(t)が炉団温度の予測値になる。
係数a1、a2、b1は、それぞれ、ΔTr(t)、ΔTr(t-1)、ΔQ(t+1)に対する係数である。係数a1、a2、b1として、コークス炉1の過去の操業結果に(4)式の形が最も合うときの係数が別途求められる。例えば、コークス炉1の過去の操業結果から得られる、一組のΔTr(t+1)、ΔTr(t)、ΔTr(t-1)、およびΔQ(t+1)のデータを1つの教師データとして多数の教師データを作成し、教師データを用いて重回帰分析を実行することにより係数a1、a2、b1を求めれば良い。
また、本欄では、炉状態算出部621は、プロセスモデル(物理モデル)として、炉団温度(℃)および乾留時間(hr)を入力とする線形モデルを用いた計算を実行することにより、コークス温度の予測値を算出する。線形モデルは、プロセス状態の予測値を計算する統計解析モデルの一つであり、本欄では、線形モデルとして、以下の(7)式~(12)式に示す重回帰式を例示する。
Figure 2023039710000005
ここで、Tcは、コークス温度(℃)であり、tkは、乾留時間(hr)である。Tc(ts)は、非定常操業の開始時刻tsにおけるコークス温度の実績値であり、Tc(te)は、非定常操業の終了時刻teにおけるコークス温度の予測値である。従って、(8)式に示すように、ΔTcは、非定常操業の開始時刻tsから非定常操業の終了時刻teまでの期間におけるコークス温度のコークス温度の変化量になる。Tr(ts)は、非定常操業の開始時刻tsにおける炉団温度の実績値である。Tr(te-Δt1)、Tr(te-Δt2)、Tr(te-Δt3)は、それぞれ、非定常操業の終了時刻teのΔt1時間前、Δt2時間前、Δt3時間前の時刻te-Δt1、te-Δt2、te-Δt3における炉団温度の予測値である。Tr(te-Δt1)、Tr(te-Δt2)、Tr(te-Δt3)は、(4)式~(6)式により算出される。ここで、Δt1、Δt2、およびΔt3は、Δt1≧0、Δt1<Δt2<Δt3、およびte-Δt3>tsの関係が成り立つように設定される。また、tk(ts)は、非定常操業の開始時刻tsにおける乾留時間の実績値であり、tk(te)は、非定常操業の終了時刻teにおける乾留時間のスケジュール値(hr)である。係数c1、c2、c3、d1は、それぞれ、ΔTr1、ΔTr2、ΔTr3、Δtkに対する係数である。係数c1、c2、c3、d1として、コークス炉1の過去の操業結果に(7)式の形が最も合うときの係数が別途求められる。例えば、コークス炉1の過去の操業結果から得られる、一組のΔTr1、ΔTr2、ΔTr3、Δtkのデータを1つの教師データとして多数の教師データを作成し、教師データを用いて重回帰分析を実行することにより係数c1、c2、c3、d1を求めれば良い。
<投入熱量算出部622>
投入熱量算出部622は、目標炉温軌道の候補と、炉状態算出部621により算出された炉団温度の予測値と、に基づいて、非定常操業時における投入熱量の予測値を算出する。なお、本欄では、目標炉温軌道の候補は、目標炉温決定部630から出力される場合を例示する。投入熱量算出部622は、目標炉温軌道の候補と、炉状態算出部621により算出された炉団温度の予測値と、の差が小さくなる(好ましくは0(零)になる)投入熱量の予測値として、時刻tの1時間後の予測値Q(t+1)を算出する。このような投入熱量の予測値の算出方法自体は、公知の技術で実現される。投入熱量算出部622は、例えば、PID制御をコンピュータシミュレーションする制御シミュレータを用いて、目標炉温軌道の候補に対する、炉状態算出部621により算出された炉団温度の予測値の偏差に応じた投入熱量の予想値をPID制御により算出する。また、PID制御に代えてPI制御等の他の制御を用いても良い。
この他、投入熱量算出部622は、以下の(13)式および(14)式を用いて、投入熱量の予測値Q(t+1)を算出しても良い。
Figure 2023039710000006
ここで、Tr_ref(t+m)は、時刻t+mにおける目標炉温軌道(炉団温度の目標値)の候補であり、本欄では、目標炉温決定部630から与えられる場合を例示する(図6の目標炉温決定部630から予測値算出部620に向かう矢印線を参照)。Tr(t+m)は、時刻t+mにおける炉団温度の予測値であり、本欄では、炉状態算出部621により算出される。従って、Tr_ref(t+m)からTr(t+m)を減算した値であるTr_errは、時刻t+mにおける炉団温度の予測誤差である。Q(t+1)_oldは、更新前の時刻t+1における投入熱量であり、Q(t+1)_newは、更新後の時刻t+1における投入熱量である。また、(14)式に示すGは、Tr_errに乗算される所定のゲインである。mは、2以上の正の整数であり、時刻tよりもどの程度先の時刻における炉団温度の予測誤差を算出対象とするのかに応じて適宜設定される。
(13)式および(14)式の計算を実行する場合、投入熱量算出部622は、時刻t+1における投入熱量Q(t+1)の候補の初期値を、炉状態算出部621に出力する。時刻t+1における投入熱量Q(t+1)の候補の初期値は、どのようにして定めても良い。例えば、投入熱量算出部622は、時刻t+1における投入熱量Q(t+1)の候補の初期値を、乱数を用いて定めても、予め設定された値に定めても良い。炉状態算出部621は、時刻t+1における投入熱量Q(t+1)の候補の初期値を用いて、<炉状態算出部621>の項で説明したようにして炉団温度の予測値を算出する。このとき、炉状態算出部621は、少なくとも、時刻t~t+mにおける1時間ごとの炉団温度の予測値を算出する。投入熱量算出部622は、炉状態算出部621により算出された時刻t+mにおける炉団温度の予測値と、時刻t+mにおける目標炉温軌道(炉団温度の目標値)の候補と、に基づいて、(13)式により、時刻t+mにおける炉団温度の予測誤差Tr_errを算出する。
そして、投入熱量算出部622は、時刻t+mにおける炉団温度の予測誤差Tr_errが所定値以下であるか否かを判定する。時刻t+mにおける炉団温度の予測誤差Tr_errは小さいほど好ましい。従って、所定値として、例えば、0(零)または0に近い値が設定される。投入熱量算出部622は、時刻t+mにおける炉団温度の予測誤差Tr_errが所定値以下でない場合、時刻t+1における投入熱量Q(t+1)の候補の初期値を(14)式の右辺第1項(Q(t+1)_old)に与えると共に、時刻t+mにおける炉団温度の予測誤差Tr_errを(14)式の右辺第2項に与えて、(14)式により、更新後の時刻t+1における投入熱量Q(t+1)_newを算出する。投入熱量算出部622は、このようにして算出した更新後の時刻t+1における投入熱量Q(t+1)_newを、時刻t+1における投入熱量Q(t+1)の新たな候補とする。そして、時刻t+1における投入熱量Q(t+1)の新たな候補を用いて、時刻t+1における投入熱量Q(t+1)の候補の炉状態算出部621への出力と、炉状態算出部621による炉団温度の予測値の算出と、時刻t+mにおける炉団温度の予測誤差Tr_errを算出と、更新後の時刻t+1における投入熱量Q(t+1)_newの算出とを、時刻t+mにおける炉団温度の予測誤差Tr_errが所定値以下になるまで繰り返し実行する。
投入熱量算出部622は、時刻t+mにおける炉団温度の予測誤差Tr_errが所定値以下である場合、当該時刻t+mにおける炉団温度の予測誤差Tr_errを算出する際に用いた更新後の時刻t+1における投入熱量Q(t+1)_newを、時刻t+1における投入熱量Q(t+1)の予測値として確定する。炉状態算出部621は、投入熱量算出部622により確定された時刻t+1における投入熱量Q(t+1)の予測値を用いて時刻t+1における炉団温度Tr(t+1)の予測値を算出し、算出した予測値を、時刻t+1における炉団温度Tr(t+1)の予測値として確定する。
予測値算出部620は、以上のようにして確定した、投入熱量Q(t+1)および炉団温度Tr(t+1)の予測値を、目標炉温決定部630に出力する(図6の予測値算出部620から目標炉温決定部630に向かう矢印線(炉団温度、投入熱量)を参照)。
そして、時刻tを時刻ts+1~te-1まで1時間ごとに後ろにずらして前述したようにして投入熱量Q(t+1)および炉団温度Tr(t+1)の予測値を確定することを繰り返す。これにより、時刻ts+1~teまで1時間ごとの各時刻における、投入熱量Q(t+1)および炉団温度Tr(t+1)の予測値が確定する。非定常操業の終了時刻teにおける炉団温度Tr(te)の予測値が確定すると、炉状態算出部621は、(7)式~(12)式により、非定常操業の終了時のコークス温度Tc(te)の予測値を算出して確定する。予測値算出部620は、以上のようにして確定された、コークス温度Tc(te)の予測値を、目標炉温決定部630に出力する(図6の予測値算出部620から目標炉温決定部630に向かう矢印線(コークス温度)を参照)。
時刻t+mにおける目標炉温軌道の候補Tr_ref(t+m)の候補の数は1つであっても複数であっても良いが、後述する<目標炉温決定部630>の項では、時刻t+mにおける目標炉温軌道の候補Tr_ref(t+m)の候補の数が複数である場合を例示する。時刻t+mにおける目標炉温軌道の候補Tr_ref(t+m)の候補の数が複数である場合、予測値算出部620は、複数の候補のそれぞれについて、時刻ts+1~teの1時間ごとの各時刻における、投入熱量Q(t+1)および炉団温度Tr(t+1)の予測値を、以上のようにして確定する。
<目標炉温決定部630>
目標炉温決定部630は、予測値算出部620により算出(確定)された、投入熱量の予測値、炉団温度の予測値、およびコークス温度の予測値に基づいて、目標炉温軌道を決定する。
図8は、目標炉温軌道の一例を説明する図である。図8の上に示すグラフは、コークス温度の時間変化の一例を示し、下に示すグラフは、炉団温度の時間変化の一例を示す。図8において、白丸の時間軸上の位置(時刻)が、コークス温度、炉団温度が得られる時刻である。図8では、表記の都合上、非定常操業の開始時刻tsから終了時刻teまでの期間にのみ白丸を示すが、コークス温度および炉団温度は、当該期間外においても得られる。
図8の上に示すグラフにおいて、Tc(te)は、予測値算出部620により算出(確定)されたコークス温度Tc(te)の予測値である。Tc_svは、非定常操業の終了時のコークス温度の目標値であり、コークスに要求される品質等に応じて設定される。以下の説明では、この目標値Tc_svを、目標コークス温度とも称する。
図8の下に示すグラフにおいて、Tr(ts)は、非定常操業の開始時の炉団温度Tr(ts)の実績値である。ΔTr1は、非定常操業の開始直前の定常状態における炉団温度(=非定常操業の開始時の炉団温度)から、非定常操業時における最低炉団温度までの炉団温度の変化量(℃)である。以下の説明では、ΔTr1を、非定常開始時炉温変化量とも称する。ΔTr2は、非定常操業時における最低炉団温度から、非定常操業の終了直後の定常状態における炉団温度(=非定常操業の終了時の炉団温度)までの炉団温度の変化量(℃)である。以下の説明では、ΔTr2を、非定常終了時炉温変化量とも称する。time1は、炉団温度が、非定常操業の開始直前の定常状態における炉団温度から、非定常操業時における最低炉団温度まで変化するのに要する時間(hr)である。以下の説明では、この時間time1を、最低炉温到達時間time1とも称する。time2は、炉団温度が、非定常操業時における最低炉団温度から、非定常操業の終了直後の定常状態における炉団温度まで変化するのに要する時間(hr)である。以下の説明では、この時間time2を、最低炉温維持時間time2とも称する。time0は、非定常操業の期間(hr)である。そして、非定常操業の開始時刻tsから終了時刻teまでの実線で示すグラフが、目標炉温軌道Tr_refである。
本欄では、目標炉温決定部630が、組合せ最適化問題等の最適化問題を解くことにより、図8の下に示すような目標炉温軌道Tr_refの最適解を算出して、目標炉温軌道Tr_refを決定する場合を例示する。この場合、非定常開始時炉温変化量ΔTr1、非定常終了時炉温変化量ΔTr2、最低炉温到達時間time1、および最低炉温維持時間time2が、設計変数(求解対象の変数)になる。
まず、目標炉温決定部630は、目標炉温軌道Tr_refの候補群(複数の候補)を生成して予測値算出部620に出力する。本欄では、遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法を用いて目標炉温軌道Tr_refの最適解を算出する場合を例示する。従って、目標炉温軌道Tr_refの候補群に含まれる個々の候補は、遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法に従って生成される。遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法自体は公知の技術で実現されるので、その詳細な説明を省略する。
予測値算出部620は、<炉状態算出部621>の項および<投入熱量算出部622>の項で説明したようにして、投入熱量Q(t)の予測値、炉団温度Tr(t)の予測値、およびコークス温度Tc(te)の予測値を算出(確定)する。投入熱量Q(t)の予測値および炉団温度Tr(t)の予測値は、非定常操業の開始時刻tsから非定常操業の終了時刻teまでの1時間ごとの値である。コークス温度Tc(te)の予測値は、非定常操業の終了時の値である。
目標炉温決定部630は、予測値算出部620に出力した目標炉温軌道Tr_refの候補と、当該目標炉温軌道Tr_refの候補に対して予測値算出部620により算出(確定)された、投入熱量Q(t)の予測値、炉団温度Tr(t)の予測値、およびコークス温度Tc(te)の予測値と、を用いて、以下の(16)式の制約式を満足する場合の以下の(15)式の評価関数J(適合度関数)の値を算出する。
Figure 2023039710000007
(15)式の右辺第1項および第3項のtの積算の範囲は、tsからteまでの範囲である(ts≦t≦te)。(15)式の右辺第1項は、目標炉温軌道Tr_refの候補と、炉団温度Tr(t)の予測値と、の差を評価する第1評価指標の一例である。(15)式の右辺第2項は、目標物理量の一例である目標コークス温度Tc_svと、コークスの乾留状態を表す物理量の予測値の一例であるコークス温度Tc(te)の予測値と、の差を評価する第2評価指標の一例である。(15)式の右辺第3項は、投入熱量Q(t)を評価する第3評価指標の一例である。w1、w2、w3は、重み係数w1、w2、w3であり、重み係数決定装置200で決定される(この点については[適用例における重み係数wiの決定]の欄で後述する)。また、(15)式に示す例では、(15)式の右辺の各項の値が小さいほど、それぞれの評価指標による評価が高いことを示す。従って、評価関数Jの値は0に近ければ近いほど好ましい。すなわち、目標炉温決定部630は、(16)式の制約式を満足する範囲で評価関数Jの値が(0以上の範囲で)最小になる設計変数を最適解として探索する。前述したように本欄では、設計変数は、非定常開始時炉温変化量ΔTr1、非定常終了時炉温変化量ΔTr2、最低炉温到達時間time1、および最低炉温維持時間time2である(図8を参照)。なお、評価関数の値が最大となるような設計変数を最適解として探索しても良い。このようにする場合、例えば、(15)式の右辺の各項に(-1)を乗算したものを評価関数として用いる。目標炉温決定部630は、(16)式の制約式を満足する範囲で、当該評価関数の値が最大となる設計変数を最適解として探索する。
なお、目標炉温決定部630は、生成した目標炉温軌道Tr_refの候補が(16)式の制約式を満足しない場合、当該目標炉温軌道Tr_refの候補を予測値算出部620に出力せずに破棄する。
目標炉温決定部630は、目標炉温軌道Tr_refの候補群に含まれる個々の候補についての評価関数Jの値の算出結果に基づいて、収束条件を満足するか否かを判定する。収束条件は、遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法で用いられる収束条件であれば、どのような条件であっても良い。収束条件は、例えば、目標炉温軌道Tr_refの候補群に含まれる個々の候補について算出した評価関数Jの値のうちの最小値が所定値以下であるという条件であっても、評価関数Jの値の算出回数(繰り返し処理の回数)が所定値であるという条件であっても良い。
目標炉温決定部630は、収束条件を満足しない場合、目標炉温軌道Tr_refの候補群を再生成して更新する。そして、目標炉温決定部630は、収束条件を満足まで、前述したようにして評価関数Jの値の算出と、収束条件を満足するか否かの判定と、目標炉温軌道Tr_refの候補群の再生成と、を繰り返し実行する。
目標炉温決定部630は、収束条件を満足したときに算出した複数の目標炉温軌道Tr_refの候補に対する評価関数Jの値のうち、評価関数Jの値が最小値となるときの設計変数(非定常開始時炉温変化量ΔTr1、非定常終了時炉温変化量ΔTr2、最低炉温到達時間time1、および最低炉温維持時間time2)により定まる目標炉温軌道Tr_refを、目標炉温軌道Tr_refの最適解として決定する。
<制御部640>
制御部640は、投入熱量算出部622が投入熱量の予測値を算出する方法と同じ方法で現在時刻の1時間後の時刻における燃焼室3に対する投入熱量を算出する。例えば、投入熱量算出部622が、PID制御をコンピュータシミュレーションする制御シミュレータを用いて現在時刻の1時間後の時刻における投入熱量の予測値を算出する場合、制御部640は、PID制御器を有する。制御部640は、PID制御器を用いて、目標炉温決定部630により決定された目標炉温軌道Tr_refの現在時刻の1時間後の時刻における値を算出する。そして、制御部640は、燃焼室3に対する投入熱量を、算出した現在時刻の1時間後の時刻における燃焼室3に対する投入熱量と、目標炉温決定部630により決定された目標炉温軌道Tr_refの現在時刻の1時間後の時刻における値と、の差に応じた熱量にするための制御信号を生成して出力する。制御信号の出力先として、調整弁5を操作するアクチュエータの制御装置が例示される。当該制御装置は、制御信号に従う開度になるように調整弁5を操作することをアクチュエータに指示する。
また、投入熱量算出部622が、(13)式および(14)式を用いて、投入熱量の予測値Q(t+1)を算出する場合、例えば、制御部640は、(13)式および(14)式を用いて、投入熱量の予測値Q(t+1)を算出し、燃焼室3に対する投入熱量を当該投入熱量の予測値Q(t+1)にするための制御信号を生成して出力しても良い。なお、このようにする場合には、現在時刻の1時間後の時刻までの投入熱量の予測値Q(t+1)が算出されれば良い。すなわち、このようにする場合、<投入熱量算出部622>の項における説明において、時刻tを時刻ts+1~te-1まで1時間ごとに後の時刻にずらして繰り返し実行する処理は不要である。
<非定常操業中に操業条件が変更される場合>
以上の炉状態算出部621、投入熱量算出部622、および目標炉温決定部630における処理は、非定常操業の開始時刻tsになると実行され、目標炉温軌道が決定される。その後、非定常操業の途中で、目標炉温軌道の決定に影響する操業条件が変更される場合がある。このような場合には、当該操業条件が変更されたタイミング以降の目標炉温軌道を決定し直すのが好ましい。このような操業条件として、乾留時間のスケジュール値が例示される。乾留時間のスケジュール値が変更されると、非定常操業の終了時刻teが変更される。そこで、以下では、乾留時間のスケジュール値が非定常操業の開始時刻tsにおける値よりも長くなった場合を例示して、非定常操業中に操業条件が変更された場合の目標炉温軌道の再決定方法の一例を説明する。なお、或る通りに属する炭化室2におけるコークスの乾留時間のスケジュール値の変更は、例えば、当該通りよりも先に窯出し装炭作業が実行される通りに属する炭化室2における窯出し装炭作業が予定よりも遅れたり早まったりすることにより発生する。
図9Aは、非定常操業の開始時刻tsに決定される目標炉温軌道の一例を説明する図であり、図9Bは、操業条件が変更されたタイミングで決定される目標炉温軌道の一例を説明する図である。
図9Aおよび図9Bにおいて、Tr_ref_oldは、非定常操業の開始時刻tsに決定された目標炉温軌道を示す。図9Aおよび図9Bにおいて、Tr_mesは、炉団温度Tr(t)の実績値である実績炉温軌道を示す。図9Aでは、非定常操業の開始時刻tsまで炉団温度Tr(t)の実績値が得られていることを示す。図9Aでは、目標炉温軌道Tr_ref_oldに対応する設計変数(非定常開始時炉温変化量ΔTr1、非定常終了時炉温変化量ΔTr2、最低炉温到達時間time1、および最低炉温維持時間time2)を、ΔTr1_old、ΔTr2_old、time1_old、time2_oldと表記している。
非定常操業の途中で、目標炉温軌道の決定に影響する操業条件が変更された場合には、非定常操業の開始時刻tsから、非定常操業の終了時刻teまでではなく、操業条件が変更された時刻から、非定常操業の終了時刻teまでの期間において、予測値算出部620(炉状態算出部621および投入熱量算出部622)による、投入熱量Q(t)の予測値、炉団温度Tr(t)の予測値、およびコークス温度Tc(te)の予測値の算出(確定)と、目標炉温決定部630による目標炉温軌道Tr_refの決定と、が実行される。この場合、設計変数のうち、操業条件が変更された時刻において変更できない設計変数については、目標炉温決定部630により既に決定されている(最新の)目標炉温軌道Tr_refにおける値にする。従って、目標炉温決定部630による評価関数Jの算出に際して、(16)式に示す制約式に加えて、操業条件が変更された時刻において変更できない設計変数が、目標炉温決定部630により既に決定されている(最新の)目標炉温軌道Tr_refにおける値であるという制約条件を示す制約式が追加される。
また、非定常操業の開始時刻tsから、操業条件が変更された時刻までの期間における、投入熱量および炉団温度については、予想値ではなく実測値を用いる。従って、目標炉温決定部630による評価関数Jの算出に際して、(16)式に示す制約式に加えて、非定常操業の開始時刻tsから、操業条件が変更された時刻までの期間における、投入熱量Q(t)、炉団温度Tr(t)の値は、(予想値ではなく)実測値であるという制約条件を示す制約式が追加される。
また、炉状態算出部621、投入熱量算出部622、および目標炉温決定部630における処理において、変更後の操業条件が用いられる。非定常操業の終了時刻teにおける乾留時間tk(te)のスケジュール値が変更される場合、(12)式におけるtk(te)の値が変更される。また、非定常操業の期間time0が変更される。
図9Bでは、時刻tmにおいて操業条件が変更された場合を例示する。この場合、操業条件が変更された時刻tmまで炉団温度Tr(t)の実績値(実績炉温軌道Tr_mes)が得られていることになる。操業条件が変更された時刻tmにおいて、設計変数のうち、操業条件が変更された時刻tmにおいて変更できない設計変数は、非定常開始時炉温変化量ΔTr1および最低炉温到達時間time1である。従って、目標炉温決定部630による評価関数Jの算出に際して、(16)式に示す制約式に加えて、非定常開始時炉温変化量ΔTr1および最低炉温到達時間time1を、非定常操業の開始時刻tsに決定された目標炉温軌道Tr_ref_oldにおける非定常開始時炉温変化量ΔTr1_oldおよび最低炉温到達時間time1_oldとする制約式(ΔTr1=ΔTr1_old、time1=time1_old)が追加される。また、(16)式の非定常操業の期間time0は、図9Aに示す変更前の期間time0_oldから図9Bに示す変更後の期間time0_newに変更される。なお、乾留時間のスケジュール値が変更されることは、例えば、窯出し装炭作業(コークスの押出作業)の際に把握される。
以上の変更を行った上で前述した炉状態算出部621、投入熱量算出部622、および目標炉温決定部630における処理を実行することにより、操業条件が変更された時刻tmにおいて変更可能な設計変数が決定される。図9Bでは、操業条件が変更された時刻tmにおいて変更可能な設計変数(非定常終了時炉温変化量ΔTr2、最低炉温維持時間time2)を、ΔTr2_new、time2_newと表記している。また、図9Bでは、図9Aに示す目標炉温軌道Tr_ref_oldのうち、操業条件が変更された時刻tm以降の時刻における部分が、非定常終了時炉温変化量ΔTr2_new、最低炉温維持時間time2_newにより定まる目標炉温軌道Tr_ref_newに変更されることを示す。なお、図9Bでは、目標炉温軌道Tr_ref_newとの比較のために、図9Aに示す目標炉温軌道Tr_ref_oldのうち、操業条件が変更された時刻tm以降の時刻における部分も示す。
<フローチャート>
次に、図10のフローチャートを参照しながら、処理装置600を用いた処理方法の一例を説明する。
まず、ステップS1001において、取得部610は、処理装置600で使用するデータを取得する。
本欄では、取得部610は、非定常操業の終了時のコークス温度の目標値である目標コークス温度Tc_sv(℃)を取得する(図8を参照)。
また、取得部610は、通り時間ttと、通り数Da(個)とを取得する。通り時間ttは、スケジュール値または実績値である。
また、取得部610は、非定常操業の開始時刻tsにおける乾留時間tk(ts)の実績値(hr)と、非定常操業の終了時刻teにおける乾留時間tk(te)のスケジュール値(hr)と、を取得する。
また、取得部610は、非定常操業の開始時刻tsと、非定常操業の終了時刻teとを取得する(図8を参照)。非定常操業の開始時刻tsは実績値である。非定常操業の終了時刻teは、予定時刻である。取得部610は、非定常操業の開始時刻tsに、非定常操業の開始時刻teにおける乾留時間(te)のスケジュール値を加算した値を非定常操業の終了時刻teとして算出する。このようにすることに代えて、取得部610は、非定常操業の開始時刻tsと、各通りにおける通り時間ttの加算値と、を加算した値を、非定常操業の終了時刻teとして算出しても良い。そして、取得部610は、非定常操業の開始時刻tsと、非定常操業の終了時刻teと、に基づいて、非定常操業の期間time0(hr)を算出する(図8を参照)。
また、取得部610は、非定常操業の開始時刻tsにおける炉団温度Tr(ts)の実績値(℃)を取得する(図8を参照)。
取得部610は、前述した実績値の他に、炉団温度Tr(t)、コークスの押出作業の終了時のコークス温度Tc(t)、および燃焼室3に対する投入熱量Q(t)等、コークス炉1における各種の実績値(操業実績データ)を取得する。図7を参照しながら前述したように、炉団温度Trおよび燃焼室3に対する投入熱量Qは、コークス炉1の制御周期で取得される。また、コークスの押出作業の終了時のコークス温度Tcは、通り時間の周期で取得される。
また、取得部610は、予測値算出部620および目標炉温決定部630における処理で使用される定数として、重み係数w1、w2、w3、係数a1~a2、b1、c1~c3、d1、時間Δt1、Δt2、Δt3、ゲインG、および非定常操業の終了時のコークス温度の目標値Tc_sv等を取得する。また、取得部610は、コークス炉1における操業条件として前述した操業条件(目標コークス温度Tc_svや乾留時間(te)のスケジュール値等)以外の操業条件を取得しても良い。
なお、取得部610におけるデータの取得のタイミングは、図10に例示するタイミングに限定されず、図10のいずれのタイミングであっても良い。
次に、ステップS1002において、取得部610は、目標炉温軌道Tr_refを決定するタイミングであるか否かを判定する。本欄では、取得部610は、非定常操業が開始したタイミングと、操業条件が変更されたタイミングで、目標炉温軌道Tr_refを決定するタイミングであると判定する。取得部610は、例えば、ステップS1001において、非定常操業の開始時刻tsを取得している場合に、非定常操業が開始したと判定する。また、取得部610は、例えば、ステップS1001において、非定常操業の終了時刻teにおける乾留時間tk(te)のスケジュール値として、既に取得しているスケジュール値と異なるスケジュール値を取得している場合に、操業条件が変更されたと判定する。
ステップS1002の判定の結果、目標炉温軌道Tr_refを決定するタイミングでない場合(ステップS1002でNOの場合)、ステップS1001の処理が再び実行される。そして、ステップS1002の判定の結果、目標炉温軌道Tr_refを決定するタイミングであると判定されると(ステップS1002でYESの場合)、ステップS1003の処理が実行される。
ステップS1003において、目標炉温決定部630は、目標炉温軌道Tr_refの候補群の初期値を生成する。
次に、ステップS1004において、処理装置600は、現在処理時刻tを、目標炉温軌道Tr_refを決定する時刻tcに設定する。本欄では、目標炉温軌道Tr_refを決定する時刻tcは、非定常操業の開始時刻tsまたは操業条件が変更された時刻tmである。なお、現在処理時刻tは、現実の時刻ではなく、コンピュータシミュレーションにおけるシミュレーション時刻である。
次に、ステップS1005において、投入熱量算出部622は、目標炉温軌道Tr_refの候補と、炉状態算出部621により算出された炉団温度の予測値と、に基づいて、時刻t+1における投入熱量Q(t+1)の予測値を、目標炉温軌道Tr_refの候補群に含まれる複数の候補のそれぞれについて算出する。前述したように時刻t+1における投入熱量Q(t+1)の予測値の算出は、例えば、PID制御をコンピュータシミュレーションする制御シミュレータや、(13)式および(14)式を用いた計算等により実現される。
次に、ステップS1006において、炉状態算出部621は、ステップS1005で算出された時刻t+1における投入熱量Q(t+1)の予測値と、時刻t+1よりも前の時刻t、t-1、t-2における炉団温度Tr(t)、Tr(t-1)、Tr(t-2)の予測値および/または実測値と、を用いて、炉団温度の予測値Tr(t+1)を算出する((4)式~(6)式を参照)。なお、時刻t+1が時刻ts+1である場合、炉団温度Tr(t)、Tr(t-1)、Tr(t-2)の実測値が用いられる。時刻t+1が時刻ts+4以降においては、炉団温度Tr(t)、Tr(t-1)、Tr(t-2)の予測値が用いられる。時刻t+1が、これらの間の時刻である場合、炉団温度Tr(t)、Tr(t-1)、Tr(t-2)の予測値と実測値との双方が用いられる。
次に、ステップS1007において、処理装置600は、現在処理時刻tが時刻te-1であるか否かを判定する。この判定の結果、現在処理時刻tが時刻te-1でない場合(ステップS1007でNOの場合)、ステップS1008の処理が実行される。
ステップS1008において、処理装置600は、現在処理時刻tに1時間を加算して現在処理時刻tを更新する。そして、ステップS1005~S1006において、更新後の現在処理時刻tの1時間後の時刻t+1における、投入熱量Q(t+1)の予測値および炉団温度Tr(t+1)の予測値が、目標炉温軌道Tr_refの候補群に含まれる複数の候補のそれぞれについて算出される。以上のように、ステップS1007において、現在処理時刻tが時刻te-1になると判定されるまで、ステップS1005~S1008の処理は繰り返し実行される。
ステップS1007において、現在処理時刻tが時刻te-1であると判定されると(ステップS1007でYESの場合)、目標炉温軌道Tr_refを決定する時刻tc(非定常操業の開始時刻tsまたは操業条件が変更された時刻tm)から、非定常操業の終了時刻teまでの1時間ごとの各時刻t+1における投入熱量Q(t+1)の予測値および炉団温度Tr(t+1)の予測値が、目標炉温軌道Tr_refの候補群に含まれる複数の候補のそれぞれについて算出される。この場合、ステップS1009の処理が実行される。
ステップS1009において、炉状態算出部621は、非定常操業の開始時刻tsにおける炉団温度Tr(ts)の実績値、非定常操業の終了時刻teにおける炉団温度Tr(te)の予測値、非定常操業の開始時刻tsにおける乾留時間tk(ts)の実績値、および非定常操業の終了時刻teにおける乾留時間tk(te)のスケジュール値に基づいて、非定常操業の終了時刻teにおけるコークス温度Tc(te)の予測値を、目標炉温軌道Tr_refの候補群に含まれる複数の候補のそれぞれについて算出する((7)式~(12)式を参照)。なお、非定常操業の終了時刻teにおけるコークス温度Tc(te)の予測値を算出する際には、(9)~(11)式により計算される非定常操業中の炉団温度の予測値Tr(te-Δt1)、Tr(te-Δt2)、Tr(te-Δt3)も用いられる。
次に、ステップS1010において、目標炉温決定部630は、(16)式を含む制約式を満足する場合の(15)式の評価関数Jの値を、目標炉温軌道Tr_refの候補群に含まれる複数の候補のそれぞれについて算出する。
次に、ステップS1011において、目標炉温決定部630は、収束条件を満足するか否かを判定する。この判定の結果、収束条件を満足しない場合(ステップS1011でNOの場合)、ステップS1012の処理が実行される。ステップS1012において、目標炉温決定部630は、目標炉温軌道Tr_refの候補群を更新する。そして、更新後の目標炉温軌道Tr_refの候補を用いて、ステップS1004~S1011の処理が実行される。このようにステップS1004~S1012の処理は、収束条件を満足するまで繰り返し実行される。
そして、ステップS1011において、収束条件を満足すると判定されると(ステップS1011でYESの場合)、ステップS1013の処理が実行される。ステップS1013において、目標炉温決定部630は、収束条件を満足したときに算出した複数の目標炉温軌道Tr_refの候補に対する評価関数Jの値のうち、評価関数Jの値が最小値となるときの設計変数(非定常開始時炉温変化量ΔTr1、非定常終了時炉温変化量ΔTr2、最低炉温到達時間time1、および最低炉温維持時間time2)により定まる目標炉温軌道Tr_refを、目標炉温軌道Tr_refの最適解として決定する。
次に、ステップS1014において、制御部640は、ステップS1006で投入熱量算出部622により投入熱量Q(t+1)の予測値を算出するのと同じ方法で現在時刻の1時間後の時刻における燃焼室3に対する投入熱量を算出する。そして、制御部640は、燃焼室3に対する投入熱量を、算出した現在時刻の1時間後の時刻における燃焼室3に対する投入熱量と、目標炉温決定部630により決定された目標炉温軌道Tr_refの現在時刻の1時間後の時刻における値と、の差に応じた熱量にするための制御信号を生成して出力する。なお、現在時刻は、当該ステップS1014を実行するときの現実の時刻である。ステップS1014の処理が終了すると、図10のフローチャートによる処理は終了する。
<計算例>
図11は、目標炉温軌道Tr_refおよび実績炉温軌道Tr_mesの一例を示す図である。図11に示す実績炉温軌道Tr_mesは、過去の操業の結果から所望の品質を満足するコークスが製造されたときの炉団温度である。目標炉温軌道Tr_refは、当該過去の操業において、目標炉温軌道Tr_refを決定する時刻tc(非定常操業の開始時刻tsまたは操業条件が変更された時刻tm)よりも後の時刻の実績値を用いずに目標炉温軌道Tr_refを決定する時刻tcまでの実績値を用いて本欄で説明した手法で決定した炉団温度である。
図11(a)は、非定常操業の間、操業条件が変更されなかった場合の計算結果を示す。図11(a)に示すように、目標炉温軌道Tr_refを実績炉温軌道Tr_mesに高精度に追従させることができることが分かる。
図11(b)は、非定常操業の途中で、操業条件(乾留時間)が変更された場合の計算結果を示す。図11(b)では、図9Bと同様に、比較のため、操業条件が変更された時刻tm以降においても、非定常操業の開始時刻tsにおいて決定された目標炉温軌道Tr_ref_oldを示す。図11(b)において、非定常操業の開始時刻tsから操業条件が変更された時刻tmまでは、非定常操業の開始時刻tsにおいて決定された目標炉温軌道Tr_ref_oldが目標炉温軌道として用いられる。そして、操業条件が変更された時刻tmから非定常操業の終了時刻teまでは、操業条件が変更された時刻tmにおいて決定された目標炉温軌道Tr_ref_newが用いられる。
図11(b)に示すように、操業条件が変更された時刻tmにおいて目標炉温軌道Tr_ref_newを決定し直すと、目標炉温軌道Tr_refを実績炉温軌道Tr_mesにより一層高精度に追従させることができることが分かる。
<まとめ>
以上のように本欄では、処理装置600は、非定常操業時における炉温の予測値に影響を与える因子である第1影響因子に基づいて、非定常操業時における炉温の予測値を算出し、非定常操業時におけるコークスの乾留状態を表す物理量の予測値に影響を与える因子である第2影響因子に基づいて、当該物理量の予測値を算出する。そして、処理装置600は、当該炉温の予測値と、当該物理量の予測値と、に基づいて、目標炉温軌道Tr_refを決定する。従って、非定常操業時における炉温と、非定常操業時におけるコークスの乾留状態と、がどのようになるのかを予測し、予測した結果が反映されるように、目標炉温軌道を動的に決定することができる。非定常操業における目標炉温を精度よく決定することができる。
また、本欄では、処理装置600は、非定常操業時における炉温の予測値に影響を与える因子である第1影響因子として、非定常操業時における燃焼室3に対する投入熱量と、当該予測値の予測時刻(炉温の予測値が得られた時刻)よりも前のタイミングにおける炉温と、を含む影響因子を用いる。また、処理装置600は、非定常操業時におけるコークスの乾留状態を表す物理量に影響を与える因子である第2影響因子として、非定常操業時における炉温の予測値を含む影響因子を用いる。そして、処理装置600は、第1影響因子に基づいて、既に算出している炉温の予測値の予測時刻よりも後の予測時刻における炉温の予測値を算出する(具体例として(4)式~(6)式を参照)。また、処理装置600は、このようにして算出した非定常操業時における炉温の予測値を含む第2影響因子に基づいて、非定常操業時におけるコークスの乾留状態を表す物理量の予測値を算出する(具体例として(7)式~(11)式を参照)。従って、非定常操業時における炉温の予測値およびコークスの乾留状態を表す物理量の予測値に与える影響が大きい影響因子を用いて、炉温の予測値およびコークスの乾留状態を表す物理量の予測値を算出することができる。
また、本欄では、処理装置600は、炉温の予測値として、燃焼室3に対する制御周期に基づいて定められる所定の時間ごとの変化量を算出する。従って、燃焼室3に対する制御周期と同期したタイミングで、炉温の予測値の変化量を算出することができる。よって、例えば、炉温の予測値の時刻を、燃焼室3に対する制御周期に合う時刻に調整するための計算が不要になると共に、炉温の変化量の予測値を累積加算することにより炉温を予測することができる。
また、本欄では、処理装置600は、第2影響因子として、乾留時間を更に含む影響因子を用いる。従って、非定常操業時におけるコークスの乾留状態を表す物理量の予測値の予測精度をより向上させることができる。
また、本欄では、処理装置600は、非定常操業時におけるコークスの乾留状態を表す物理量の予測値として、非定常操業の開始時から非定常操業の終了時までの変化量を算出する。従って、非定常操業の開始時と非定常操業の終了時とのそれぞれにおけるコークスの乾留状態を表す物理量を予測することにより、コークスの乾留状態を表す物理量を予測することができる。
また、本欄では、処理装置600は、非定常操業の終了時を、炭化室2への装炭と押出との休止が終了してからDa+1通り目の通りにおけるコークスの押出作業の終了時として処理を実行する。従って、コークス炉におけるバッチ式の操業の区切りとなるタイミングで、非定常操業の終了時を定めることができる。また、例えば、コークス温度が測定されるタイミングに合わせて非定常操業の終了時を定めることができる。
また、本欄では、処理装置600は、非定常操業の開始時を、炭化室2への装炭と押出との休止が開始される時よりもDb通り前の通りにおけるコークスの押出作業の終了時として処理を実行する。従って、コークス炉におけるバッチ式の操業の区切りとなるタイミングで、非定常操業の終了時を定めることができる。また、例えば、コークス温度が測定されるタイミングに合わせて非定常操業の開始時を定めることができる。
また、本欄では、処理装置600は、目標炉温軌道が決定された後に操業条件が変更された場合、第1影響因子および第2影響因子のうち、操業条件の変更により変更される影響因子を操業条件に応じて変更した上で、操業条件が変更された時刻tm以降の時刻での、非定常操業時における炉温の予測値およびコークスの乾留状態を表す物理量の予測値を算出し直し、目標炉温軌道を決定し直す。従って、目標炉温軌道が決定された後に操業条件が変更された場合であっても、非定常操業における目標炉温を精度よく決定することができる。
また、本欄では、処理装置600は、目標炉温軌道の候補と炉温の予測値との差(具体例として(15)式の右辺第1項を参照)と、コークスの乾留状態を表す物理量の目標値である目標物理量とコークスの乾留状態を表す物理量の予測値との差(具体例として(15)式の右辺第2項を参照)と、を算出することを含む計算の結果に基づいて、目標炉温軌道を決定する。従って、炉温の予測値の定量的な評価と、コークスの乾留状態を表す物理量の予測値の定量的な評価と、の双方を実現することができる。よって、非定常操業における目標炉温を、これらの定量的な評価に基づいて精度よく決定することができる。
また、本欄では、処理装置600は、目標炉温軌道の候補と炉温の予測値との差を評価する第1評価指標(具体例として(15)式の右辺第1項を参照)と、コークスの乾留状態を表す物理量の目標値である目標物理量とコークスの乾留状態を表す物理量の予測値との差を評価する第2評価指標(具体例として(15)式の右辺第2項を参照)と、を含む評価関数の値に基づいて、目標炉温軌道を決定する。従って、炉温の予測値の定量的な評価とコークスの乾留状態を表す物理量の予測値の定量的な評価とを、最適化問題を解くことにより実行することができる。
また、本欄では、処理装置600は、投入熱量を評価する第3評価指標(具体例として(15)式の右辺第3項を参照)を更に含む評価関数の値に基づいて、目標炉温軌道を決定する。従って、非定常操業における目標炉温を決定するための最適化問題を、より高精度な最適解が得られる最適化問題とすることができる。
また、本欄では、処理装置600は、目標炉温軌道の候補を異ならせて評価関数の値を算出し、算出した評価関数の値に基づいて、目標炉温軌道を決定する。従って、物理現象を記述する微分方程式等を用いなくても、メタヒューリスティクス手法により目標炉温軌道を決定することができる。
また、本欄では、処理装置600は、目標炉温軌道の候補と炉温の予測値とに基づいて、投入熱量の予測値を算出する。従って、第1影響因子として投入熱量の予測値を定量的に求めることができる。
また、本欄では、処理装置600は、非定常操業時におけるコークスの乾留状態を表す物理量として、非定常操業時に製造されるコークスの温度、または、非定常操業時における炉壁4の温度を用いる。従って、非定常操業時におけるコークスの乾留状態を表す物理量として、非定常操業時に測定可能な物理量を用いることができる。よって、例えば、コークスの乾留状態を表す物理量の予測値の検証が可能になる。なお、図5Bを参照しながら説明したように、非定常操業時に製造されるコークスの温度は、例えば、コークスの押出作業の最中に測定される。非定常操業時における炉壁4の温度についても同様に、例えば、コークスの押出作業の最中に測定される。
また、本欄では、処理装置600は、炉温として、複数の燃焼室3における温度の代表値である炉団温度を用いる。従って、炉温に関する変数を少なくすることができる。よって、例えば、計算負荷をより軽減することができる。
また、本欄では、処理装置600は、燃焼室3に対する投入熱量を、目標炉温軌道と炉温の実績値との差に応じた熱量にするための制御信号を生成して出力する。従って、処理装置600において、目標炉温軌道を実現するための制御を実行することができる。
なお、本欄では、炉温が炉団温度である場合を例示した。しかしながら、炉温は炉団温度に限定されない。例えば、前述したように全ての燃焼室3に調整弁およびアクチュエータを設置すると共に全ての燃焼室3に温度計6を設置している場合、通り(ブロック)を個々の炭化室2として扱うように各式を変更し、コークス炉1の燃焼室3における温度である炉温を、炉団温度ではなく、個々の燃焼室3の温度としても良い。このようにする場合、例えば、(4)式~(6)式、(13)式~(14)式を燃焼室3ごとの式に変更しても良い。また、非定常操業の開始時刻tsおよび終了時刻teにおけるコークス温度がどの炭化室2におけるコークス温度であるかに応じて、当該炭化室2に近い1つまたは複数の燃焼室3の燃焼室の温度を、(7)式の説明変数であるΔTr1~ΔTr3を定める温度にしても良い。また、(15)式の右辺第1項および第3項について、Σ|Tr(t)-Tr_ref|およびΣ|Q(t)|を、燃焼室3ごとに算出し、燃焼室3ごとのΣ|Tr(t)-Tr_ref|およびΣ|Q(t)|の和を、それぞれ重み係数w1、w3に乗算される評価指標としても良い。
[適用例における重み係数wiの決定]
以上の適用例において重み係数決定装置200で決定される重み係数wiは、(15)式の重み係数w1、w2、w3である。この場合、[適用例]の欄と[重み係数決定装置および重み係数決定方法]の欄との対応関係は以下のようになる。
[適用例]の欄の評価関数J((1)式)は、[重み係数決定装置および重み係数決定方法]の欄の(15)式に対応する。[適用例]の欄の評価指標eiは、(15)式の右辺第1項~第3項の|Tr(t)-Tr_ref|、|Tc(te)-Tc_sv|、|Q(t)|に対応する。[適用例]の欄の評価関数内変数diは、(15)式の右辺第1項~第3項のTr(t)、Tr_ref、Tc(te)、Q(t)になる。これらの評価関数内変数diのうち、目標炉温軌道Tr_ref(非定常開始時炉温変化量ΔTr1、非定常終了時炉温変化量ΔTr2、最低炉温到達時間time1、および最低炉温維持時間time2)が、設計変数に対応する。また、炉団温度(Tr)、投入熱量Q(t)、コークス温度(Tc)が、[重み係数決定装置および重み係数決定方法]の欄で説明した物品が処理されることにより値が変動する物理量を示す変数に対応する。また、炉団温度(Tr)、投入熱量Q(t)が、[重み係数決定装置および重み係数決定方法]の欄で説明した物品を処理するために用いられる装置(燃焼室3、調整弁5)の状態を表す物理量に対応する。また、コークス温度(Tc)が、[重み係数決定装置および重み係数決定方法]の欄で説明した物品の状態を表す物理量に対応する。
また、[適用例]において、(15)式の評価関数Jおよび(16)式の制約式を用いて目標炉温軌道Tr_refの最適解を求解する問題が、[重み係数決定装置および重み係数決定方法]の欄で説明した第1最適化問題に対応する。[適用例]において、予測値算出部620により投入熱量Q(t+1)および炉団温度Tr(t+1)の予測値および非定常操業の終了時のコークス温度Tc(te)の予測値を算出することが、[重み係数決定装置および重み係数決定方法]の欄で説明した予測計算(推定計算)に対応する。
また、差分評価関数J_dif((3)式)は、例えば、以下の(17)式に対応する。差分評価関数J_difを用いて重み係数の最適解wi_optを求解する問題が、[重み係数決定装置および重み係数決定方法]の欄で説明した第2最適化問題に対応する。
Figure 2023039710000008
(17)式の右辺第1項~第3項の|Tr_sim(t)-Tr_ope(t)|、|Tc_sim(te)-Tc_ope(te)|、|Q(t)_sim(t)-Q_ope(t)|は、[重み係数決定装置および重み係数決定方法]の欄で説明した差分評価指標|di'_sim-di'_opt|に対応する。
(17)式の右辺第1項~第3項のTr_ope(t)、Tc_ope(te)、Q_ope(t)は、実際の操業において、熟練のオペレータが非定常操業時(非定常操業の開始時刻ts~終了時刻te)に手動で調整弁5の開度を操作することにより所望の品質のコークスが製造された場合の炉団温度、コークス温度、投入熱量の実績値である。当該炉団温度の実績値Tr_ope(t)、コークス温度の実績値Tc_ope(te)、投入熱量の実績値Q_ope(t)は、[重み係数決定装置および重み係数決定方法]の欄で説明した評価関数内変数の最適値di'_optに対応する。
(17)式の右辺第1項~第3項のTr_sim(t)、Tc_sim(te)、Q(t)_sim(t)は、(16)式の制約式を満足する範囲で(15)式の評価関数Jの値が最小になるときの炉団温度、コークス温度、投入熱量の計算値である。[重み係数決定装置および重み係数決定方法]の欄で説明した評価関数内変数の計算値di'_optは、当該炉団温度、コークス温度、投入熱量の計算値Tr_sim(t)、Tc_sim(te)、Q(t)_sim(t)に対応する。なお、(17)式においては、(15)式に含まれる評価関数内変数di(=Tr(t)、Tr_ref、Tc(te)、Q(t))のうち、目標炉温軌道Tr_refについては差分評価指標の算出対象としていない場合を例示する。また、炉団温度、コークス温度、投入熱量の計算値Tr_sim(t)、Tc_sim(te)、Q(t)_sim(t)は、[適用例]で説明したように制御部640による制御に使用された目標炉温軌道Tr_refと共に算出されたものを用いても良い。
[適用例]における重み係数wiを決定する場合、重み係数決定装置200の機能構成は、例えば、図12に示すようになる。図12において、重み係数決定装置200は、算出部210と、重み係数決定部220と、評価指標決定部230と、記憶部240と、出力部250と、を備える。算出部210は、[適用例]の欄で説明した取得部610と、予測値算出部620と、目標炉温決定部630と、をさらに備える。
[重み係数決定装置および重み係数決定方法]の欄で説明したように、記憶部240は、評価関数内変数の最適値di'_optを定めた際に得られた物理量の実績値であって、評価関数Jの評価指標eiを算出するために用いられる物理量の実績値を、当該評価関数内変数の最適値di'_optと関連付けて記憶する。
図13を参照しながら[適用例]におけるこのような物理量の実績値の一例を説明する。図13は、記憶部240に記憶される情報の一例を説明する図である。
前述したように[適用例]においては、評価関数内変数の最適値di'_optは、実際の操業において熟練のオペレータが非定常操業時(ts~te)に手動で調整弁5の開度を操作することにより所望の品質のコークスが製造された場合の炉団温度、コークス温度、投入熱量の実績値Tr_ope(t)、Tc_ope(te)、Q_ope(t)に対応する。以下の説明では、これらの炉団温度、コークス温度、投入熱量の実績値Tr_ope(t)、Tc_ope(te)、Q_ope(t)を、オペレータ操作履歴とも称する。図13(a)は、オペレータ操作履歴の一例を示す図である。[適用例]の欄で説明したように、炉団温度および投入熱量は、非定常操業の開始時刻tsから終了時刻teまでの間で1時間ごとに得られるものとする。一方、コークス温度は、非定常操業の終了時における温度とする。
[重み係数決定装置および重み係数決定方法]の欄で説明した、評価関数内変数の最適値di'_optを定めた際に得られた物理量の実績値であって、評価関数Jの評価指標eiを算出するために用いられる物理量の実績値は、オペレータ操作履歴が得られたときの操業条件に対応する。図13(b)に示すように、図13(a)に示す非定常操業時と同じ期間(図13(a)非定常操業の開始時刻tsと同じ時刻を始期とし、終了時刻teと同じ時刻を終期とする期間)における操業条件が記憶部240に記憶される。操業条件は、図10のステップS1001で取得部610が取得する情報であり、休止期間、乾留時間、および目標コークス温度を含む。図13(a)に示すオペレータ操作履歴と、図13(b)に示す操業条件とは、時刻ts~teを介して相互に関連付けられる。
以上のような対応関係に従って算出部210(取得部610、予測値算出部620、目標炉温決定部630)によって、図10のステップS1001~S1013の処理が実行される。ただし、ステップS1001において取得部610は、記憶部240に記憶されている操業条件を取得する。
また、ステップS1013において、目標炉温決定部630は、収束条件を満足したときに算出した複数の目標炉温軌道Tr_refの候補に対する評価関数Jの値のうち、評価関数Jの値が最小値となるときの設計変数を含む評価関数内変数を算出する。具体的に目標炉温決定部630は、(15)式の右辺第1項~第3項のTr(t)、Tr_ref、Tc(te)、Q(t)を算出する。目標炉温決定部630は、このようにして算出した評価関数内変数Tr(t)、Tr_ref、Tc(te)、Q(t)のうちのTr_refを、目標炉温軌道Tr_refの最適解として決定し、Tr(t)、Tc(te)、Q(t)を、評価関数内変数の計算値Tr_sim(t)、Tc_sim(te)、Q_sim(t)として記憶部240に記憶する。以下の説明では、このようにして記憶部240に記憶された評価関数内変数の計算値Tr_sim(t)、Tc_sim(te)、Q_sim(t)を制御履歴とも称する。図13(c)において、図13(a)に示す非定常操業時と同じ期間における制御履歴が記憶部240に記憶される。図13(a)に示すオペレータ操作履歴と、図13(b)に示す操業条件と、図13(c)に示す制御履歴とは、時刻ts~teを介して相互に関連付けられる。
そして、[重み係数決定装置および重み係数決定方法]の欄で説明したようにして重み係数決定部220により(15)式の重み係数の最適解w1_opt、w2_opt、w3_optが決定される。また、評価指標決定部230により(15)式の評価関数Jに含まれる評価指標(|Tr_sim(t)-Tr_ope(t)|、|Tc_sim(te)-Tc_ope(te)|、|Q(t)_sim(t)-Q_ope(t)|)のうち、(15)式の評価関数Jに含める評価指標が決定される。前述したように、例えば、評価指標決定部230は、重み係数決定部220により決定された(15)式の重み係数の最適解w1_opt、w2_opt、w3_optの絶対値が、正の閾値以下である場合、当該重み係数を0(零)に設定(変更)する。このようにする場合、出力部250は、重み係数決定部220により決定された重み係数の最適解w1_opt、w2_opt、w3_optのうち、評価指標決定部230により0(零)に変更された重み係数については当該重み係数の値として0(零)を示す情報を出力し、そうでない重み係数については、重み係数決定部220により決定された重み係数の最適解を示す情報を出力する。このようにする場合、処理装置600は、(15)式の評価関数Jの重み係数w1~w3の値として、出力部250により出力された情報に示される値を設定する。また、例えば、出力部250が、重み係数決定部220により決定された重み係数の最適解wi_optの情報と、評価指標決定部230により評価関数Jに含める評価指標eiとして決定された評価指標eiおよび評価関数Jに含めない評価指標eiとして決定された評価指標eiの情報と、を出力する場合、処理装置600は、評価関数Jに含めない評価指標eiとして決定された評価指標eiに対する重み係数については、重み係数の最適解wi_optを破棄して0(零)を設定すれば良い。例えば、出力部250は、これらの情報を、処理装置600に送信しても良いし、コンピュータディスプレイに表示しても良いし、処理装置600で読み出し可能な記憶媒体に記憶しても良い。
図14は、目標炉温軌道Tr_ref、推定炉温軌道Tr_sim、およびオペレータ介入炉温軌道Tr_opeの一例を示す図である。図14に示すオペレータ介入炉温軌道Tr_opeは、オペレータ操作履歴に含まれる炉団温度Tr_ope(t)の実績値である。前述したように、オペレータ操作履歴に含まれる炉団温度実績値は、実際の操業において熟練のオペレータが非定常操業時に手動で調整弁5の開度を操作することにより所望の品質のコークスが製造された場合の炉団温度である。目標炉温軌道Tr_refは、オペレータ操作履歴を用いて重み係数決定装置200により決定された重み係数w1~w3を用いて目標炉温決定部630により決定された目標炉温軌道である。推定炉温軌道Tr_simは、オペレータ操作履歴を用いて重み係数決定装置200により決定された重み係数w1~w3を用いて目標炉温決定部630により目標炉温軌道が決定されたときに予測値算出部620により算出されている炉団温度Tr(t)の予測値である。図14に示すように、本欄で説明したようにして重み係数w1~w3を決定することにより、オペレータ介入炉温軌道Tr_opeに近い推定炉温軌道Tr_simが算出されることが分かる。
以上のように本欄では、コークスのような製品を製造する際の調整弁5の動作の指標である目標炉温軌道Tr_refを、最適化問題を用いて求解する際の評価関数J((15)式)における重み係数w1~w3を決定する場合を例示した。従って、評価関数Jにおける評価指標による評価が高くなるように製品(コークス)を製造することができる。
また、記憶部240は、オペレータ操作履歴(図13(a))と操業条件(図13(b))とを相互に関連付けて記憶する。そして、算出部210は、オペレータ操作履歴に関連付けられて記憶されている操業条件に基づいて、評価関数内変数の計算値Tr(t)、Tr_ref、Tc(te)、Q(t)を算出する。したがって、算出部210は、評価関数内変数の最適値di_optが得られたときと同じ操業条件下で評価関数内変数の計算値Tr(t)、Tr_ref、Tc(te)、Q(t)を算出することができる。
[その他の変形例]
なお、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
1 コークス炉
2 炭化室
3 燃焼室
4 炉壁
5 調整弁
6 温度計
7 押出ラム
8 温度計
9 ガイド車
200 重み係数決定装置
210 算出部
220 重み係数決定部
240 記憶部
250 出力部
600 処理装置
610 取得部
620 予測値算出部
621 炉状態算出部
622 投入熱量算出部
630 目標炉温決定部
640 制御部
k 乾留時間
t 通り時間
s 非定常操業の開始時刻
e 非定常操業の終了時刻
m 操業条件が変更された時刻
c コークス温度
r 炉団温度
Tr_ref 目標炉温軌道
Tr_mes 実績炉温軌道
Tr_sim 推定炉温軌道
Tr_ope オペレータ介入炉温軌道
time0 非定常操業の期間
time1 最低炉温到達時間
time2 最低炉温維持時間
ΔTr1 非定常開始時炉温変化量
ΔTr2 非定常終了時炉温変化量

Claims (11)

  1. 最適化問題を求解するために用いられる評価関数に含まれる複数の評価指標に対する重み係数を逆強化学習により決定する重み係数決定装置であって、
    前記評価指標を定める変数である評価関数内変数について、前記評価関数の値が最大または最小になるときの計算値を算出する算出手段と、
    前記算出手段により算出された前記評価関数内変数の計算値と、予め設定されている当該評価関数内変数の最適値と、の差を評価する差分評価指標の値を算出し、算出した前記差分評価指標の値に基づいて、前記重み係数の値を決定する重み係数決定手段と、を備える、重み係数決定装置。
  2. 前記重み係数決定手段は、
    前記差分評価指標を含む評価関数である差分評価関数を用いた最適化問題を求解することにより、前記重み係数の値を決定する、請求項1に記載の重み係数決定装置。
  3. 前記算出手段は、
    前記重み係数の候補値を用いて前記評価関数内変数の計算値を算出し、
    前記重み係数決定手段は、
    前記差分評価指標の値が所定の条件を満たす場合の前記評価関数内変数の計算値の算出に用いた前記重み係数の候補値を前記重み係数の値として決定し、
    前記重み係数の候補値は、前記差分評価指標の値が所定の条件を満たすまで繰り返し変更される、請求項1または2に記載の重み係数決定装置。
  4. 前記評価関数内変数の最適値と、当該評価関数内変数の最適値を定めた際に得られた物理量の実績値であって、前記評価指標を算出するために用いられる物理量の実績値と、が相互に関連付けられて記憶媒体に記憶されており、
    前記算出手段は、前記評価関数内変数の最適値に関連付けられて記憶されている前記物理量の実績値を用いて前記評価関数内変数の計算値を算出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の重み係数決定装置。
  5. 前記評価関数内変数には、
    物品を処理することにより値が変動する物理量を示す変数が含まれる、請求項1~4のいずれか1項に記載の重み係数決定装置。
  6. 前記算出手段は、
    前記評価関数内変数のうち、設計変数以外の前記評価関数内変数の少なくとも1つの値の予測計算を実行する、請求項5に記載の重み係数決定装置。
  7. 前記重み係数決定手段により決定された重み係数の値に基づいて、当該重み係数に対する前記評価指標を前記評価関数に含めるか否かを判定し、当該判定の結果に基づいて、前記評価関数に含める前記評価指標を決定する評価指標決定手段をさらに備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の重み係数決定装置。
  8. 前記評価指標は、
    非定常操業時におけるコークスの乾留状態を表す物理量の予測値と目標値との差に関する第1評価指標と、
    コークス炉における燃焼室の温度である炉温の非定常操業時における予測値と目標値との差に関する第2評価指標と、
    を含み、
    前記算出手段は、
    前記非定常操業時における前記炉温の予測値に影響を与える因子である第1影響因子に基づいて、前記非定常操業時における前記炉温の予測値を算出し、前記非定常操業時における前記物理量の予測値に影響を与える因子である第2影響因子に基づいて、前記非定常操業時における前記物理量の予測値を算出する予測値算出手段と、
    前記非定常操業時における前記炉温の予測値と、前記非定常操業時における前記物理量の予測値と、に基づいて、前記評価関数内変数の計算値および前記評価関数の値を算出し、前記評価関数の値に基づいて、前記非定常操業時における前記炉温の目標値の時間変化である目標炉温軌道を含む前記評価関数内変数の値を決定する目標炉温決定手段と、
    を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の重み係数決定装置。
  9. 前記評価指標は、
    前記非定常操業時における前記燃焼室に対する投入熱量に関する第3評価指標をさらに含む、請求項8に記載の重み係数決定装置。
  10. 最適化問題を求解するために用いられる評価関数に含まれる複数の評価指標に対する重み係数を逆強化学習により決定する重み係数決定方法であって、
    前記評価指標を定める変数である評価関数内変数について、前記評価関数の値が最大または最小になるときの計算値を算出する算出工程と、
    前記算出工程により算出された前記評価関数内変数の計算値と、予め設定されている当該評価関数内変数の最適値と、の差を評価する差分評価指標の値を算出し、算出した前記差分評価指標の値に基づいて、前記重み係数の値を決定する重み係数決定工程と、を備える、重み係数決定方法。
  11. 請求項1~9のいずれか1項に記載の重み係数決定装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
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