JP2023038823A - 摺動部材及び摺動部材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】軸部材と軸受部材との間の焼き付きを抑制できる摺動部材を提供する。【解決手段】本発明の一態様に係る摺動部材は、軸径が180mm以上の軸部材と、上記軸部材の外周面を摺動可能に支持する内周面を有する軸受部材とを備える摺動部材であって、上記外周面の算術平均粗さをRa1[μm]とした場合に、上記外周面と上記内周面との接触率Aatが下記式1を満たす。TIFF2023038823000011.tif10165【選択図】図1

Description

本発明は、摺動部材及び摺動部材の製造方法に関する。
船用のクランク軸、中間軸、推進軸等の軸部材は、すべり軸受等の軸受部材によって摺動可能に支持される。また、軸部材及び軸受部材の間の隙間には、潤滑液が供給されている。この潤滑液は、軸部材と軸受部材との間に潤滑膜を形成することで、両部材の間の焼き付きを抑制する。一方で、潤滑膜の厚さに比べ軸部材及び軸受部材の表面粗さが大きいと、両部材の間に焼き付きが生じやすくなる。
摺動部材の焼き付きを抑制する技術として、軸部材の表面等の摺動面を平滑化する方法が知られている。例えば特許文献1には、内燃機関の低フリクション化に対応可能な表面特性を有する組合せ摺動部材が記載されている。
特許文献1には、ピストンリングの摺動面の表面粗さRzを0.5~1.0μmとし、かつシリンダライナの摺動面の表面粗さRzを0.5~1.5μm、初期摩耗高さRpkを0.05~0.2μm、有効負荷粗さRkを0.2~0.6μm、油溜まり深さRvkを0.10~0.35μmとすることで、低フリクション化を図ることができることが記載されている。
特開2004-116707号公報
船用の大型の摺動部材の製造においては、機械加工中に軸部材にたわみが生じること等に起因して、軸部材の真円度及び円筒度の高精度化を図り難いことがある。そのため、この摺動部材は、機械加工のみでは十分な寸法精度を実現することが困難となる場合がある。
このような事情から、船用の大型の摺動部材を製造するに際しては、機械加工後に摺動面を手動で研磨することが考えられる。しかしながら、このような大型の摺動部材の摺動面の表面形状を特許文献1に記載されているように緻密に制御することは製造コスト等の観点から現実的ではない。また、船用の摺動部材等にあっては、軸受部材の硬度が高くない場合があり、この軸受部材の摺動面を研磨加工すること自体が容易でないこともある。
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、製造コストの増加を抑えつつ、軸部材と軸受部材との間の焼き付きを抑制できる摺動部材を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る摺動部材は、軸径が180mm以上の軸部材と、上記軸部材の外周面を摺動可能に支持する内周面を有する軸受部材と
を備える摺動部材であって、上記外周面の算術平均粗さをRa[μm]とした場合に、上記外周面と上記内周面との接触率Aatが下記式1を満たす。
Figure 2023038823000002
本発明の一態様に係る摺動部材は、製造コストの増加を抑えつつ、軸部材と軸受部材との間の焼き付きを抑制できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る摺動部材における軸部材の軸方向と垂直な切断面を示す模式的断面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る摺動部材の製造方法を示すフロー図である。 図3は、No.10、No.11及びNo.12における最小膜厚比と軸受部材の受ける面圧との関係を表すグラフである。 図4は、No.6、No.7及びNo.9における最小膜厚比と軸受部材の受ける面圧との関係を表すグラフである。 図5は、No.8、No.13及びNo.14における最小膜厚比と軸受部材の受ける面圧との関係を表すグラフである。 図6は、No.6からNo.14における最小膜厚比と最大接触圧力との関係を表すグラフである。 図7は、No.6からNo.9における軸部材の中心軸を含む切断面を示す模式的断面図である。 図8は、No.13における軸部材の中心軸を含む切断面を示す模式的断面図である。 図9は、No.14における軸部材の中心軸を含む切断面を示す模式的断面図である。 図10は、軸部材の算術平均粗さと焼き付き限界面圧との関係を表すグラフである。 図11は、軸部材と軸受部材との接触率と焼き付き限界面圧との関係を表すグラフである。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
本発明の一態様に係る摺動部材は、軸径が180mm以上の軸部材と、上記軸部材の外周面を摺動可能に支持する内周面を有する軸受部材とを備える摺動部材であって、上記外周面の算術平均粗さをRa[μm]とした場合に、上記外周面と上記内周面との接触率Aatが下記式1を満たす。
Figure 2023038823000003
一般に軸部材の外周面と軸受部材の内周面との接触率が高い場合、軸受部材の内周面が受ける面圧は低くなるため、両部材の間の焼き付きを抑制しやすい。当該摺動部材は、上記式1を満たすことで、焼き付きを抑制可能な限界値以上となるように上記接触率を制御できる。また、当該摺動部材は、上記式1を用いることで、摺動面の表面形状を緻密に制御することを要しないので、製造コストの増加を抑制できる。
上記算術平均粗さRaとしては、0.20μm以下が好ましい。このように、上記算術平均粗さRaが上記上限以下であることによって、軸部材と軸受部材との間の焼き付きをより確実に抑制できる。
上記軸部材がクランク軸のクランクジャーナル又はクランクピンであるとよい。クランク軸は互いに偏心している部位を有するため機械加工の際にたわみが生じやすい。このため、機械加工のみでは寸法精度を高め難く、機械加工後に手動で研磨することを特に要しやすい。一方で、当該摺動部材は、上記式1を用いることで、摺動面の表面形状を緻密に制御することを要しないので、上記軸部材がクランク軸のクランクジャーナル又はクランクピンである場合に製造コストの増加を効果的に抑制できる。
本発明の他の一態様に係る摺動部材の製造方法は、軸径が180mm以上の軸部材と、上記軸部材の外周面を摺動可能に支持する内周面を有する軸受部材とを備える摺動部材の製造方法であって、上記外周面の算術平均粗さをRa[μm]とした場合に、上記外周面と上記内周面との接触率Aatが上記式1を満たすように上記外周面を手研磨する研磨工程を備える。
当該摺動部材の製造方法は、上記研磨工程で上記式1を満たすように上記外周面を手研磨することによって、焼き付きを抑制可能な限界値以上となるように上記接触率を制御できる。また、当該摺動部材の製造方法は、上記研磨工程で上記式1を用いることで、摺動面の表面形状を緻密に制御することを要しないので、製造コストの増加を抑制できる。
なお、本発明において、「軸径」とは軸部材の外周面の直径を意味し、「算術平均粗さ」とはJIS-B0601(2013)に準拠して、高域カットオフ値(λc)0.8mm、低域カットオフ値(λs)2.5μmで測定される値を意味する。
本発明において、「接触率」とは、軸部材の半径方向に任意の角度でこの軸部材の外周面を軸受部材の内周面に押し付けながら軸部材をその中心軸回りに回転させた場合において、軸部材の外周面の全摺動面積のうち軸受部材と接触した部分の面積の割合を意味する。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
[摺動部材]
図1の摺動部材は、軸径Dが180mm以上の軸部材1と、軸部材1の外周面11を摺動可能に支持する内周面21を有する軸受部材2と、潤滑油3とを備える。軸部材1の中心軸Pは水平方向(図1のY方向)に延びている。軸受部材2の内周面21は、軸部材1の外周面11を周方向に沿って取り囲んでいる。潤滑油3は、軸部材1の外周面11と軸受部材2の内周面21との間の隙間に供給されている。また、潤滑油3は油膜31を形成している。このように内周面21は、油膜31を介して外周面11に対向することで、外周面11を摺動可能に支持している。
180mm以上の軸径を有する軸部材1にあっては、機械加工のみでは外周面11の寸法精度を高め難いため、この外周面11の一部分又は全部分は機械加工後に手動で研磨されている。ここで、「手動で研磨する」とは、サンドペーパー等を用いて手動で研磨することを意味する。
外周面11の算術平均粗さ(より詳しくは、外周面11を手動で研磨した後の算術平均粗さ)をRa[μm]とした場合に、外周面11と内周面21との接触率Aatは下記式1を満たす。なお、「算術平均粗さRa」としては、以下の手順で求められる値を採用することができる。まず、外周面11の周方向に沿って90deg間隔で4つの周方向位置を決める。次に、これらの各周方向位置において、軸方向に位置の異なる2つの測定箇所を定める。そして、これらの測定箇所において、評価長さ4mmで測定される算術平均粗さを平均し、この値を外周面11の算術平均粗さRaとして求める。また、上記評価長さは、手動で研磨した方向と直交する方向に沿って定めることができる。例えば、外周面11を周方向に沿って研磨した場合、軸部材1の軸方向に沿って上記評価長さを定めることができる。
Figure 2023038823000004
接触率Aatの上限としては、特に限定されるものではないが、例えば0.90が好ましく、0.85がより好ましく、0.80がさらに好ましい。接触率Aatが上記上限を超えると、手動で研磨する場合における研磨量が増大することによって製造コストを抑制できないおそれがある。なお、「接触率Aat」は、例えば軸部材1の軸方向と平行に延びる平面を有するストレッチ、又は軸部材1の外周面11を部分的に取り囲む内周面を有するシェル形状の軸受模範材を用いて求めることができる。これらの接触率Aatの測定方法では、上記平面又は上記内周面にインクを塗布した後、上記平面又は上記内周面を軸部材1の外周面11の全体に渡って押し付けてインクを転写する。その後、インクの転写部分を外周面11における内周面21との接触部分とし、インクの転写率によって接触率Aを判定する。上記ストレッチを用いる手法又は上記軸受模範材を用いる手法を実施する際は、希釈剤によって希釈したインクを用いるとよい。例えば、(株)ダイゾー製のレッドタッチペーストを、JIS-K2220(2013)で規定されるちょう度が250以上300以下となるように希釈して用いるとよい。上記ちょう度は、上記接触率Aatの測定時におけるインクの温度に対応してインクの濃度を調整することで制御できる。具体的には、上記測定時におけるインクの温度が0℃以上14℃以下の場合には、インクの濃度を65%、上記温度が14℃超24℃以下の場合には、インクの濃度を70%、上記温度が24℃超40℃以下の場合には、インクの濃度を75%とすることで制御可能である。このように希釈したインクを上記ストレッチ又は上記軸受模範材に塗布することによって、インクを転写した際に外周面11の微小な凹凸を適切に判定しやすい。
<軸部材>
軸部材1は、軸受部材2に対して周方向に回転する回転体である。軸部材1としては、例えば船に配置される船用のクランク軸、中間軸、推進軸等が挙げられる。軸部材1の材質としては、例えば炭素鋼、低合金鋼、アルミニウム合金等が挙げられる。
軸部材1は、クランク軸のクランクジャーナル又はクランクピンであるとよい。クランク軸は互いに偏心している部位が多いため機械加工の際にたわみが生じやすい。このため、機械加工のみでは寸法精度を高め難く、機械加工後に軸部材1の外周面11を手動で研磨することを特に要しやすい。一方で、当該摺動部材は上記式1を用いることで、摺動面の表面特性を緻密に制御することを要しない。したがって、当該摺動部材は、軸部材1がクランク軸のクランクジャーナル又はクランクピンである場合に製造コストの増加を効果的に抑制できる。
軸部材1の軸径Dの下限としては、上述のように180mmであり、280mmであってもよく、360mmであってもよい。軸部材1の軸径Dが上記下限以上の場合、機械加工のみでは寸法精度を高め難く、機械加工後に軸部材1の外周面11を手動で研磨することを要しやすい。一方で、大径の軸部材1の外周面11の表面形状を手動の研磨によって厳密に制御することは製造コスト等の観点から現実的とは言い難い。この点に関し、当該摺動部材は上記式1を用いることで、摺動面の表面形状を緻密に制御することを要しない。このため、軸部材1の軸径Dが上記下限以上であっても製造コストの増加を抑制できる。
軸部材1の軸径Dの上限としては、1500mmが好ましく、1400mmがより好ましく、1300mmがさらに好ましい。軸径Dが上記上限を超えると、当該摺動部材が大きくなり過ぎて、装置の小型化等の要請に反するおそれがある。
軸部材1のヤング率の下限としては、190GPaが好ましく、200GPaがより好ましく、210GPaがさらに好ましい。軸部材1のヤング率が上記下限に満たないと、機械加工時に軸部材1のたわみが大きくなるおそれがある。その結果、手動での研磨に要する時間が増加し、製造コストを十分に抑制し難くなるおそれがある。一方、当該摺動部材は、軸部材1に多少のたわみが生じるような場合において特に優れた効果を奏する。このような観点から、軸部材1のヤング率の上限としては、特に限定されないが、例えば220GPaとすることができる。
外周面11の算術平均粗さRaの上限としては、0.20μmが好ましく、0.16μmがより好ましく、0.08μmがさらに好ましい。算術平均粗さRaが上記上限を超えると、外周面11と内周面21との間の焼き付きを抑制し難くなるおそれがある。一方、算術平均粗さRaの下限としては、手動での研磨によって外周面11の表面形状を容易に調整できる観点から0.01μmとすることができ、0.04μmであってもよい。
軸部材1は、その軸方向の両端に軸受部材2と接触しないあたり抜け部分を有していてもよい。つまり、軸部材1の外周面11には、軸方向の両端に、上述の接触率Aatの測定方法によって接触しない非接触部分が設けられていてもよい。軸部材1は、上述のクランクジャーナル又はクランクピンである場合に、このあたり抜け部分が生じやすい。当該摺動部材は、軸部材1がこのようなあたり抜け部分を有する構成において、軸部材1と軸受部材2との間の焼き付きを容易に抑制することができる。
軸部材1の外周面11には、以下の手順で算出される複数の粗さ突起頂点が存在していてもよい。まず、JIS-B0601(2013)に準拠してカットオフ値0.25mmで測定される測定長4.0mmの粗さ曲線を基に、粗さ曲線の平均線をJIS-B0601(2013)に準じて設定する。この平均線を基準にこの平均線よりも上部に位置する測定点の高さを正の値とし、この平均線よりも下部に位置する測定点の高さを負の値として定義する。高さが正となるすべての測定点の高さの平均値をThr0とする。次に、粗さ曲線上の各測定点うち、両側に隣接する測定点よりも高く、かつ高さが-Thr0よりも大きい測定点を仮の頂点とする。隣接する仮の頂点の間に位置する測定点のうち高さが最小となる(隣接する仮の頂点からの深さが最大となる)測定点を谷とする。そして、すべての仮の頂点について、仮の頂点と、その仮の頂点の両側に隣接する谷との高低差をそれぞれ求め、この高低差の大きい方の値が0.2×Thr0未満の頂点を除外する。この結果、残った仮の頂点を粗さ突起頂点として求める。
軸部材1の外周面11に上記粗さ突起頂点が存在している場合、外周面11における粗さ突起の曲率半径の下限としては、55μmであってもよく、58μmであってもよい。上述の手動での研磨を行うと、粗さ突起の曲率半径が大きくなりやすい。粗さ突起の曲率半径が大きいと、外周面11と内周面21との間で焼き付きが発生しやすくなる。当該摺動部材は、このような構成においても外周面11と内周面21との間の焼き付きを容易に抑制できる。
なお、上記「粗さ突起の曲率半径」とは、以下の手順で算出される値を意味する。まず、上記粗さ突起頂点とその粗さ突起頂点の両側に隣接する谷との間に位置する全ての測定点からその粗さ突起頂点に向かって直線を引き、その直線の勾配が最大となる測定点をその粗さ突起の端部と定める。各粗さ突起の両端部間の粗さ曲線を最小2乗法によって近似して得られた2次関数の2次係数をaとし、各粗さ突起の曲率半径を-0.5/aによって求める。上記粗さ曲線上における全ての粗さ突起の曲率半径の中央値を粗さ突起の曲率半径として求める。
手動での研磨を行うと、上述の通り軸部材1の外周面11における粗さ突起の曲率半径が大きくなりやすい。また、外周面11の他の粗さ特性についても粗度が大きくなりやすい。この場合、番手の十分大きいサンドペーパーを用いることによって、外周面11の算術平均粗さRaを低減できる。例えば、粗さが200番手以上のサンドペーパーを用いて研磨することによって、算術平均粗さRaを0.20μm以下にまで低減することができる。上記サンドペーパーの番手としては、500番手超であってもよく、600番手超であってもよい。サンドペーパーによる研磨手順としては、例えば軸部材1を回転させつつ外周面11にサンドペーパーを手で押し付けることによって、外周面11の周方向に沿って外周面11を研磨する方法が挙げられる。また、船用のクランク軸等のように軸部材1を回転させつつ研磨することが困難な場合は、サンドペーパーを用いて外周面11の周方向に沿って外周面11を手動で擦る方法が挙げられる。
<軸受部材>
軸受部材2としては、例えば船に配置される船用のクランク軸受、中間軸受、推進軸受等が挙げられる。軸受部材2の材質としては、例えばホワイトメタル、アルミニウム合金、トリメタル、ケルメット等が挙げられる。
軸部材1の硬度H[HV]は軸受部材2の硬度H[HV]よりも大きいことが好ましい。一般に、軸受部材2は硬度Hが小さいため、内周面21の表面粗さを機械加工等によって意図的に制御することは困難である。このような場合でも、軸部材1の硬度Hを軸受部材2の硬度Hよりも大きくすることで、軸部材1との摺動に起因して軸受部材2の内周面21を研磨することができる。その結果、軸受部材2の内周面21の表面粗さを低下させ、外周面11と内周面21との接触率Aatを制御しやすい。軸受部材2の硬度Hに対する軸部材1の硬度Hの比(H/H)の下限としては、4.1が好ましく、5.0がより好ましく、6.0がさらに好ましく、8.0が特に好ましい。上記比が上記下限に満たないと、軸部材1の回転によって内周面21の表面粗さを低下させることが困難となるおそれがある。逆に、上記比の上限としては、特に限定されないが、軸部材1及び軸受部材2の材質の選定を容易にする観点等から、例えば20とすることができる。
<潤滑油>
潤滑油3としては、例えばパラフィン系ベースオイル等が挙げられる。潤滑油3は、油膜31を形成することによって、外周面11と内周面21との間を流体潤滑状態に維持することを容易にする。
潤滑油3の粘度の下限としては、4.8×10-3Pa・秒が好ましく、9.8×10-3Pa・秒がより好ましい。上記粘度が上記下限に満たないと、外周面11と内周面21との間の焼き付きを十分に抑制できないおそれがある。逆に、潤滑油3の粘度の上限としては、1.1×10-1Pa・秒が好ましく、8.1×10-2Pa・秒がより好ましい。上記粘度が上記上限を超えると、外周面11と内周面21との間の摩擦損失を十分に抑制できないおそれがある。なお、上記粘度は軸部材1の定常駆動時における油膜31の温度を基に算出される粘度を意味する。また、「定常駆動時」とは軸部材1の回転の開始時及び回転の終了時を除き、軸部材1の回転が一定に保たれている時点を意味する。
<利点>
当該摺動部材は、上述の式1を満たすことで、焼き付きを抑制可能な限界値以上となるように接触率Aatを制御できる。また、当該摺動部材は、上述の式1を用いることで、算術平均粗さRa以外の粗さ特性を所定の範囲に制御することや、接触率Aatを過剰に大きくするように制御すること等、摺動面における表面形状の緻密な制御を要しない。このため、当該摺動部材は、軸部材1と軸受部材2との間の焼き付きを抑制できると共に、製造コストの増加を抑制できる。
[摺動部材の製造方法]
図2の摺動部材の製造方法では、図1の摺動部材を製造する。当該摺動部材の製造方法は、軸部材1の外周面11を手研磨する研磨工程S1を備える。
<研磨工程>
研磨工程S1では、外周面11と内周面21との接触率Aatが上述の式1を満たすように外周面11を手研磨する。研磨工程S1では、上述の式1を満たすことができるように、接触率Aatを高めるか、又は外周面11の算術平均粗さRaを低減するように外周面11を研磨する。
接触率Aatを高める方法としては、例えば上述のストレッチ、又はシェル形状の軸受模範材を用いて外周面11の接触部分を特定したうえで、外周面11及び内周面21の全体の接触率が高められるように、この接触部分を部分的に研磨する方法が挙げられる。
外周面11の算術平均粗さRaを低減する方法としては、例えば番手の高いサンドペーパーを用いて外周面11を研磨することが挙げられる。サンドペーパーの番手としては、200番手以上が好ましく、500番手以上がより好ましく、600番以上がさらに好ましい。このように番手の大きいサンドペーパーを用いることによって、上述の式1を満たすように外周面11の算術平均粗さRaを低減しやすい。
<利点>
当該摺動部材の製造方法は、研磨工程S1で上述の式1を満たすように外周面11を手研磨することで、焼き付きを抑制可能な限界値以上となるように接触率Aatを制御できる。また、当該摺動部材の製造方法は、研磨工程S1で上述の式1を用いることで、摺動面の表面形状を緻密に制御することを要しない。このため、当該摺動部材の製造方法は、軸部材1と軸受部材2との間の焼き付きを抑制できると共に、製造コストの増加を抑制できる。
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。したがって、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
上記実施形態において、軸部材の中心軸は水平方向に延びているが、この軸部材の中心軸は水平方向に対して傾斜していてもよい。
上記実施形態において、軸部材の外周面と軸受部材の内周面との間の隙間に潤滑油を供給しているが、当該摺動部材においては、上記潤滑油以外の潤滑液を用いることも可能である。例えば上記潤滑液として、海水等を用いることも可能である。
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。本実施例では、焼き付き試験及びシミュレーション試験を行った。
[焼き付き試験]
神鋼造機(株)製の摩擦摩耗試験機に、軸部材及び軸部材の外周面を全周に亘って取り囲む内周面を有する軸受部材を固定した。上記摩擦摩耗試験機を用いて、以下の構成条件及び稼働条件の下で、軸部材の外周面に軸受部材の内周面を押し付けつつ軸部材を回転させ、No.1からNo.5の焼き付き試験を行った。軸受部材から軸部材への荷重は、試験の開始時から段階的に最大荷重まで増大させた。軸部材及び軸受部材の間で焼き付きが発生した際は上記摩擦摩耗試験機を停止し、その時点の荷重の直前の段階の荷重を限界荷重とした。この焼き付き試験では、軸部材を回転させつつ軸部材の外周面にサンドペーパーを手で押し付けることで、軸部材の外周面を手動で研磨した。この手動による研磨によって軸部材の外周面の算術平均粗さRa、及び軸部材と軸受部材との接触率を制御した。この焼き付き試験では、試験用に比較的軸径の小さい軸部材を用いた関係上、以下のNo.1からNo.5のいずれに関しても、軸部材と軸受部材との接触率を実質的に100%まで向上できた。この焼き付き試験における焼き付きの発生有無及び限界荷重を表1に示す。
<No.1>
No.1では、軸部材として、ヤング率が210GPa、ポアソン比が0.30の炭素鋼を用い、軸径は48.00mm(公差が-0.090mmから-0.075mm)とした。軸部材の外周面の算術平均粗さは0.0765μmに制御した。なお、No.1からNo.5において、軸部材の外周面の算術平均粗さは、軸部材の外周面の軸方向に沿って評価長さを定め、上述した算術平均粗さRaの測定方法によって求めた。軸受部材としては、上側半割部材と下側半割部材とを組み合わせて構成される、大同メタル工業(株)製のすべり軸受を用いた。このすべり軸受は、ヤング率が55GPa、ポアソン比が0.33のJIS-H5401(1958)で規定されるWJ1相当のホワイトメタルを用いており、内周面の直径は48.00mm(公差が0mmから+1.05mm)、内周面の軸方向長さ(軸受幅)は15.6mmである。軸受部材の内周面の算術平均粗さは0.8000μmとした。軸部材の回転速度は3500rpmで一定とした。また、軸部材を回転させる際は、潤滑油としてENEOS(株)製の「FBKオイルRO32」を、軸部材の外周面と軸受部材の内周面との間に供給した。潤滑油の供給温度は70℃とし、供給方法は循環式給油とした。軸受部材から軸部材への荷重は、試験の開始時に0.0kNとし、5分間間隔で段階的に0.5kNずつ最大荷重20.0kNまで増大させた。
<No.2>
No.2では、軸部材として、ヤング率が210GPa、ポアソン比が0.30の低合金鋼を用い、軸径は48.00mm(公差が-0.090mmから-0.075mm)とした。軸部材の外周面の算術平均粗さは0.0680μmに制御した。軸受部材はNo.1と同様とした。軸部材の回転速度は3500rpmで一定とした。また、軸部材の外周面と軸受部材の内周面との間にNo.1と同様に潤滑油を供給した。軸受部材から軸部材への荷重は、試験の開始時に0.0kNとし、5分間間隔で段階的に5.0kNずつ最大荷重20.0kNまで増大させた。
<No.3>
No.3では、軸部材の外周面の算術平均粗さを0.1600μmに制御したことを除き、No.1と同様の構成条件及び稼働条件とした。
<No.4>
No.4では、軸部材の外周面の算術平均粗さを0.4225μmに制御したことを除き、No.1と同様の構成条件及び稼働条件とした。
<No.5>
No.5では、軸部材の外周面の算術平均粗さを0.2450μmに制御したことを除き、No.2と同様の構成条件及び稼働条件とした。
Figure 2023038823000005
表1に示す通り、軸部材の外周面の算術平均粗さが0.4225μmであるNo.4では、限界荷重は8.5kNである。これは荷重が9.0kNの時点で焼き付きが発生したことを意味する。また、軸部材の外周面の算術平均粗さが0.2450μmであるNo.5では、限界荷重は5.0kNである。これは荷重が10.0kNの時点で焼き付きが発生したことを意味する。焼き付きが発生しなかったNo.1、No.2及びNo.3は上述の式1を満たしている。一方で、焼き付きが発生したNo.4及びNo.5は上述の式1を満たしていない。
[シミュレーション試験]
シミュレーション試験では、ソフトウェアとしてExcite Power Unit(EXCITE 2019 R1、AVL List GmbH社)を用い、以下の構成条件及び稼働条件を設定して軸部材と軸受部材との摺動状態を確認した。以下のNo.6からNo.14の解析モデルとしては、いずれも単一軸受モデル(ジョイント:EHD2)を用いた。軸部材の外周面と軸受部材の内周面との間には潤滑油を循環式給油で供給した。図3にNo.10、No.11及びNo.12の最小膜厚比Λと上記内周面の受ける面圧との関係を、図4にNo.6、No.7及びNo.9の最小膜厚比Λと上記内周面の受ける面圧との関係を、図5にNo.8、No.13及びNo.14の最小膜厚比Λと上記内周面の受ける面圧との関係を、図6にNo.6からNo.14の最小膜厚比Λと最大接触圧力との関係を示す。ただし、「最小膜厚比」とは、上記潤滑油の最小油膜厚さをhmin[μm]、軸部材の外周面の算術平均粗さをRa[μm]、軸受部材の内周面の算術平均粗さをRa[μm]とした場合に下記式2で算出される値を意味し、「最大接触圧力」とは、軸部材の外周面と軸受部材の内周面とが固体接触した際の最大圧力を意味する。
Figure 2023038823000006
<No.6>
No.6では、図7の軸部材102を用い、以下の構成条件及び稼働条件を設定した。
(構成条件)
軸部材:軸部材102として、軸方向長さLが15.6mm、軸径Dが48.0mm、剛性が205000N/mm、ポアソン比が0.30の鋼を用いた。軸部材102の外周面における算術平均粗さRaを0.40μm、2乗平均平方根粗さRqをこの算術平均粗さRaに1.3を掛けることによって求められる0.520μmとした。ソフトウェアに入力する粗さパラメータ(Summit Roughness、Mean Summit Height及びElastic Factor)としては、以下の手順で上記算術平均粗さRaを変換した値を採用した。まず、小型軸部材(軸系39.96mm、軸方向長さ42mm)を6個用意し、外周面の算術平均粗さRaが約0.07μmから0.60μmの範囲で異なる値となるようにそれぞれの外周面を手動で研磨した。上記算術平均粗さRaは、小型軸部材の外周面の軸方向に沿って評価長さを定め、上述した算術平均粗さRaの測定方法によって求めた。また、上記算術平均粗さRaを測定する際に取得した波形データを元に、上記粗さパラメータをソフトウェアのマニュアルの定義に従って求めた。そして、上記算術平均粗さRaと上記粗さパラメータとの関係を表す回帰式を導出し、この回帰式によって、所定の算術平均粗さRaを対応する上記粗さパラメータに変換した。以下のNo.7からNo.14においても、ソフトウェアに入力する軸部材の粗さパラメータとして、上述の方法によって変換した値を採用した。軸部材102の外周面は、その周方向に延びる環状の凹部を1つ有する。この凹部は、幅(軸部材102の軸方向における長さ)がLA1[mm]で、深さがd[mm]の断面矩形状である。軸部材102の軸方向において、軸部材102の両端から上記凹部までの距離は等しい。上記凹部の深さdは10μmとした。上記凹部は軸部材102の回転時に軸受部材と接触することのないあたり抜け部分である。このため、軸部材102と軸受部材との接触率Aatは(L-LA1)/Lで算出される。凹部の幅LA1は、接触率Aatが0.6となる値とした。
軸受部材:軸受部材として、内周面の軸方向長さ(軸受幅)が15.6mm、軸部材との半径隙間が0.047mm、剛性が5000N/mm、ポアソン比が0.33のホワイトメタルを用いた。軸受部材の内周面の算術平均粗さRaを0.40μm、2乗平均平方根粗さRqをこの算術平均粗さRaに1.3を掛けることによって求められる0.520μmとした。ソフトウェアに入力する粗さパラメータとしては、算術平均粗さRaを上述の回帰式によって対応する上記粗さパラメータに変換した値を採用した。以下のNo.7からNo.14においても、ソフトウェアに入力する軸受部材の粗さパラメータとして、上述の方法によって変換した値を採用した。
(稼働条件)
回転速度:軸部材102の回転速度を3500rpmとした。
荷重:軸受部材の内周面の受ける荷重を0.1kNから200kNまで段階的に増大させた。
潤滑油:密度が871kg/m、比熱が2083J/(kg・K)の潤滑油を用いた。また、潤滑油の粘度を9.8×10-3Pa・秒で固定とした。この粘度は、ENEOS社製FBK-RO32オイルの70℃における粘度に相当する。
固体接触時のモデル:軸部材と軸受部材の固体接触時は、表面粗さ突起の塑性変形モデルとして降伏応力が200MPaの完全弾塑性体を用いた。
<No.7>
No.7では、図7の軸部材102を用い、以下の構成条件を設定した。また、稼働条件はNo.6と同様とした。
(構成条件)
軸部材:外周面における算術平均粗さRaを0.08μm、2乗平均平方根粗さRqをこの算術平均粗さRaに1.3を掛けることによって求められる0.104μmとし、凹部の幅LA1を、接触率Aatが0.7となる値としたことを除き、No.6と同様の構成とした。
軸受部材:内周面の算術平均粗さRaを0.08μm、2乗平均平方根粗さRqをこの算術平均粗さRaに1.3を掛けることによって求められる0.104μmとしたことを除き、No.6と同様の構成とした。
<No.8>
No.8では、図7の軸部材102を用い、以下の構成条件を設定した。また、稼働条件はNo.6と同様とした。
(構成条件)
軸部材:外周面における算術平均粗さRaを0.20μm、2乗平均平方根粗さRqをこの算術平均粗さRaに1.3を掛けることによって求められる0.260μmとし、凹部の幅LA1を接触率Aatが0.7となる値としたことを除き、No.6と同様の構成とした。
軸受部材:内周面の算術平均粗さRaを0.20μm、2乗平均平方根粗さRqをこの算術平均粗さRaに1.3を掛けることによって求められる0.260μmとしたことを除き、No.6と同様の構成とした。
<No.9>
No.9では、図7の軸部材102及びNo.6と同様の軸受部材を用いた。また、稼働条件はNo.6と同様とした。
(構成条件)
軸部材:凹部の幅LA1を、接触率Aatが0.7となる値としたことを除き、No.6と同様の構成とした。
<No.10>
No.10では、以下の構成条件を設定した。また、稼働条件はNo.6と同様とした。
(構成条件)
軸部材:軸部材として、軸方向長さが15.6mm、軸径が48.0mm、剛性が205000N/mm、ポアソン比が0.30の鋼を用いた。軸部材の外周面における算術平均粗さRaを0.08μm、2乗平均平方根粗さRqをこの算術平均粗さRaに1.3を掛けることによって求められる0.104μmとした。軸部材の外周面は、凹部を有さず、接触率Aatは1.0である。
軸受部材:内周面の算術平均粗さRaを0.08μm、2乗平均平方根粗さRqをこの算術平均粗さRaに1.3を掛けることによって求められる0.104μmとしたことを除き、No.6と同様の構成とした。
<No.11>
No.11では、以下の構成条件を設定した。また、稼働条件はNo.6と同様とした。
(構成条件)
軸部材:外周面における算術平均粗さRaを0.20μm、2乗平均平方根粗さRqをこの算術平均粗さRaに1.3を掛けることによって求められる0.260μmとしたことを除き、No.10と同様の構成とした。
軸受部材:内周面の算術平均粗さRaを0.20μm、2乗平均平方根粗さRqをこの算術平均粗さRaに1.3を掛けることによって求められる0.260μmとしたことを除き、No.6と同様の構成とした。
<No.12>
No.12では、以下の構成条件を設定した。また、稼働条件はNo.6と同様とした。
(構成条件)
軸部材:外周面における算術平均粗さRaを0.40μm、2乗平均平方根粗さRqをこの算術平均粗さRaに1.3を掛けることによって求められる0.520μmとしたことを除き、No.10と同様の構成とした。
軸受部材:No.6と同様の軸受部材を用いた。
<No.13>
No.13では、図8の軸部材103を用い、以下の構成条件を設定した。また、稼働条件はNo.6と同様とした。
(構成条件)
軸部材:軸部材103として、軸方向長さLが15.6mm、軸径Dが48.0mm、剛性が205000N/mm、ポアソン比が0.30の鋼を用いた。軸部材103の外周面における算術平均粗さRaを0.20μm、2乗平均平方根粗さRqをこの算術平均粗さRaに1.3を掛けることによって求められる0.260μmとした。軸部材103の外周面は、その周方向に延びる環状の凹部を3つ有する。これらの凹部は、幅(軸部材103の軸方向における長さ)がそれぞれLA21[mm]、LA22[mm]、LA23[mm]で、深さがいずれもd[mm]の断面矩形状である。凹部の幅LA21、LA22及びLA23は互いに等しい。軸部材103の軸方向において、上記凹部は等間隔に配置されている。上記凹部の深さdは10μmとした。上記凹部は軸部材103の回転時に軸受部材と接触することのないあたり抜け部分である。このため、軸部材103と軸受部材との接触率Aatは、(L-LA21-LA22-LA23)/Lで算出される。凹部の幅LA21、LA22及びLA23は、接触率Aatが0.7となる値とした。
軸受部材:内周面の算術平均粗さRaを0.20μm、2乗平均平方根粗さRqをこの算術平均粗さRaに1.3を掛けることによって求められる0.260μmとしたことを除き、No.6と同様の構成とした。
<No.14>
No.14では、図9の軸部材104を用い、以下の構成条件を設定した。また、稼働条件はNo.6と同様とした。
(構成条件)
軸部材:軸部材104は、その軸方向長さが、軸受部材の内周面の軸方向長さL(軸受幅L)よりも小さく制御されている。すなわち、軸部材104は、その両端で軸方向長さが上記内周面よりもそれぞれLA31[mm]、LA32[mm]ずつ短くなっている。短くした軸方向長さLA31及びLA32は等しい。軸部材104は、その両端にあたり抜け部分を有する軸部材を模している。軸部材104として、軸方向長さがL-LA31-LA32[mm]、軸径Dが48.0mm、剛性が205000N/mm、ポアソン比が0.30の鋼を用いた。軸部材104の外周面における算術平均粗さRaを0.20μm、2乗平均平方根粗さRqをこの算術平均粗さRaに1.3を掛けることによって求められる0.260μmとした。軸部材104と軸受部材との接触率Aatは、(L-LA31-LA32)/Lで算出される。また、LA31及びLA32は、接触率Aatが0.7となる値とした。
軸受部材:内周面の算術平均粗さRaを0.20μm、2乗平均平方根粗さRqをこの算術平均粗さRaに1.3を掛けることによって求められる0.260μmとしたことを除き、No.6と同様の構成とした。すなわち、軸受部材の内周面の軸方向長さLを15.6mmとした。
図3に示す通り、接触率Aatが1.0で等しいNo.10、No.11及びNo.12の比較では、同じ面圧に対しては算術平均粗さRaが小さいほど最小膜厚比Λが大きい。図4においても、同じ面圧に対しては、算術平均粗さRaの小さいNo.7は、算術平均粗さRaの大きいNo.6、No.9に比べて最小膜厚比Λが大きい。また、接触率Aatが0.6のNo.6よりも接触率Aatが0.7のNo.9の方が同じ面圧に対して最小膜厚比Λが大きい。図5においては、接触率Aat及び算術平均粗さRaの等しいNo.8、No.13及びNo.14の比較では、あたり抜け部分の配置が異なることによって最小膜厚比Λに差異が生じることがわかる。
図6は、最大接触圧力が、接触率Aat、算術平均粗さRa及びあたり抜け部分の配置に依存せず、最小膜厚比Λによって一意に決まる傾向を示している。このため、最小膜厚比Λの大きさは軸部材と軸受部材との間の焼き付き耐性を示す指標として用いることができる。また、上述の通り算術平均粗さRaが小さく、接触率Aatが大きいほど最小膜厚比Λが大きいため、本シミュレーション試験の摺動部材は算術平均粗さが小さく、接触率Aatが大きいほど焼き付き耐性に優れる。
焼き付き試験におけるNo.4の限界荷重は8.5kNであり、この限界荷重を面圧換算すると11.4MPaである。したがって、No.4では、面圧が約12.0MPaの条件で焼き付きが発生していると考えられる。一方で、No.4の条件は、軸部材の算術平均粗さRaが0.40μmで接触率Aatが1.0のNo.12に対応する。図3から、No.12において面圧が12.0MPaときの最小膜厚比Λは2.2である。最小膜厚比Λが2.2の場合、一般に焼き付きが発生しうる最小膜厚比Λの範囲である3未満を満たしている。また、図6を参照すると、最小膜厚比Λが2.2付近にあるときに最大接触圧力が生じている。したがって、本シミュレーション試験では、最小膜厚比Λが2.2となるときの面圧において焼き付きが発生するものとした。すなわち、最小膜厚比Λが2.2となるときの面圧を焼き付き限界面圧Plim[MPa]とした。
図10は、図3、図4及び図5のそれぞれにおいて最小膜厚比Λが2.2となるときの面圧を焼き付き限界面圧として読み取り、横軸を算術平均粗さ、縦軸を焼き付き限界面圧Plimとしてプロットしたものである。また、図10の曲線はプロットした値の累乗近似を意味する。軸部材102を用い接触率Aatが1.0の条件において、軸部材の外周面の算術平均粗さをRa[μm]とした場合に、焼き付き限界面圧PlimはRaの-1.44乗で近似された。一方で、軸部材102を用い接触率Aatが0.7の条件において、焼き付き限界面圧PlimはRaの-1.39乗で近似された。このことから、焼き付き限界面圧Plimは、接触率Aatの影響を受けずに算術平均粗さRaの約-1.4乗に比例することが示唆された。
図11は、図3、図4及び図5のそれぞれにおいて最小膜厚比Λが2.2となるとき面圧を焼き付き限界面圧として読み取り、横軸を接触率Aat、縦軸を焼き付き限界面圧Plimとしてプロットしたものである。また、図10の曲線はプロットした値の累乗近似を意味する。軸部材102を用い算術平均粗さRaが0.08μmの条件において、焼き付き限界面圧PlimはRaの3.24乗で近似された。軸部材102を用い算術平均粗さRaが0.20μmの条件において、焼き付き限界面圧PlimはRaの3.44乗で近似された。軸部材102を用い算術平均粗さRaが0.40μmの条件において、焼き付き限界面圧PlimはRaの2.91乗で近似された。このことから、軸部材102を用いた場合の焼き付き限界面圧Plimは、算術平均粗さRaの影響を受けずに接触率Aatの約3.2乗に比例することが示唆された。
一方で、軸部材103を用い算術平均粗さRaが0.20μmの条件において、焼き付き限界面圧PlimはRaの6.10乗で近似された。また、軸部材104を用い算術平均粗さRaが0.20μmの条件において、焼き付き限界面圧PlimはRaの1.77乗で近似された。
図10及び図11に関する上述の検討から、算術平均粗さRa[μm]及び接触率Aatは焼き付き限界面圧Plim[MPa]に対して独立に寄与するものと考えられる。このため、焼き付き限界面圧Plimが下記式3で算出されるものと推測した。ただし、下記式3においてα、β及びγは軸部材の形状によって決まる定数である。
Figure 2023038823000007
ミュレーション試験における焼き付き限界面圧Plimの値を基に、上記式3におけるα、β及びγの値を導出した。この結果、軸部材102を用いる場合は、上記式3でα=3.6、β=-1.4、γ=3.2とすることができ、軸部材103を用いる場合は、上記式3でα=3.6、β=-1.4、γ=6.1とすることができ、軸部材104を用いる場合は、上記式3でα=3.6、β=-1.4、γ=1.8とすることができる。
上記式3の焼き付き限界面圧Plimが十分大きい条件において、軸部材と軸受部材との焼き付きが抑制されるものと考えられる。例えば、焼き付き試験における最大荷重20kNを面圧に換算した26.71MPaを用いて、Plim≧26.71を焼き付きが抑制される条件とすることができる。この条件は、上記式3を用いて下記式4として得られる。
Figure 2023038823000008
船舶のクランク軸の製造工程において、機械加工後に軸部材と軸受部材との接触状態が不良となる場合、軸部材の両端部においてあたり抜けが発生することが多い。このため、上記式4に、軸部材104を用いる場合のパラメータであるα=3.6、β=-1.4、γ=1.8を代入し、上述の式1を得た。
本発明の一態様に係る摺動部材は、製造コストを抑制しつつ、軸部材と軸受部材との間の焼き付きを抑制できるため、例えば船用の摺動部材に適用できる。
1、102、103、104 軸部材
11 外周面
2 軸受部材
21 内周面
3 潤滑油
31 油膜
D、D、D、D 軸径
P、P、P、P 軸部材の中心軸
、L 軸部材の軸方向長さ
軸受部材の軸方向長さ
A1、LA21、LA22、LA23 凹部の幅
A31、LA32 軸部材の軸方向長さの短縮量
、d 凹部の深さ

Claims (4)

  1. 軸径が180mm以上の軸部材と、
    上記軸部材の外周面を摺動可能に支持する内周面を有する軸受部材と
    を備える摺動部材であって、
    上記外周面の算術平均粗さをRa[μm]とした場合に、上記外周面と上記内周面との接触率Aatが下記式1を満たす摺動部材。
    Figure 2023038823000009
  2. 上記算術平均粗さRaが0.20μm以下である請求項1に記載の摺動部材。
  3. 上記軸部材がクランク軸のクランクジャーナル又はクランクピンである請求項1又は請求項2に記載の摺動部材。
  4. 軸径が180mm以上の軸部材と、上記軸部材の外周面を摺動可能に支持する内周面を有する軸受部材とを備える摺動部材の製造方法であって、
    上記外周面の算術平均粗さをRa[μm]とした場合に、上記外周面と上記内周面との接触率Aatが下記式1を満たすように上記外周面を手研磨する研磨工程を備える摺動部材の製造方法。
    Figure 2023038823000010
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