JP2023037101A - 電解装置 - Google Patents

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伸雄 高山
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Abstract

【課題】本発明の目的は、水素ガスの製造効率を向上させる技術を提供することである。【解決手段】アノード電極とカソード電極の間に複数の複極式電極が配置され、電解水原水が供給される電解槽と、前記電解槽に電圧を印加し、電気分解を行う第1電源と、前記電解槽に、前記第1電源が印加する方向とは逆方向で、スパイク状またはパルス状の波形の電圧を過渡的に印加する第2電源と、を備える電解装置。【選択図】図8

Description

本発明は、電解装置に関する。
電気分解は、古くから産業界で利用され、例えば、食塩水や水道水を用いたNaOHおよびCl、次亜塩素酸、アルカリイオン水、オゾン水等の製造分野で利用されている。電気分解に関し、設備コストの低減、電解効率の向上、装置の耐久性向上等を図る様々な提案がなされている(例えば特許文献1、非特許文献1~6)。なお、本明細書において、「電気分解」を単に「電解」と記載する場合がある。
特開2001-096275号公報
水素エネルギーシステムVol.30、No.1(2005)第114回定例研究会資料 新宅大輔 博士論文 論文題目:水の電気分解における水素製造の高効率化」に関する研究、東京海洋大学、2008年 内野 陽介 博士論文 論文題目:アルカリ水電解槽における逆電流の解析 Analysis of reverse current in an alkaline water electrolyzer Ikutaro HAMADA1 and Osamu SUGINO2 (表面科学 Vol. 34, No. 12, pp. 638-643, 2013) 村本 裕二、藤井 庸平、清水 教之 静電気学会誌、37, 6(2013)268-272 電気二重層内のイオンの振る舞い -電気二重層の静電容量に及ぼす充電電圧波形と冷却の影響- 板垣昌幸、Electohemistry,78,No.9」(2010)783,電解化学インピーダンス(1)総論
近年、二酸化炭素ガスによる世界的な温暖化現象が問題視され、温暖化現象の要因として、石油、石炭等の化石燃料を利用する火力発電所が挙げられている。このため、火力発電所の新規建設が抑制されている。化石燃料の代替案としては、再生可能エネルギーが着目されており、再生可能エネルギーの中でも、太陽光や風力エネルギー等の自然エネルギーが重要視されている。しかし、自然エネルギーの強度は常時変化するので、自然エネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電方式では、安定した発電は難しい。
温暖化現象の要因としては、化石燃料を利用する自動車、船舶、飛行機等の移動手段も挙げられ、これらの移動手段に対し、二酸化炭素ガスの排出抑制に繋がる大きな変化が期待されている。自然エネルギーを移動手段の駆動に直接利用することが考えられるが、原理的に困難である。このように、自然エネルギーを直接エネルギー源として利用することで二酸化炭素ガスの排出抑制を図ることは難しい。
そこで、自然エネルギーを利用して電気エネルギーを発生させ、この電気エネルギーを利用して水素ガスを生成することが考えられている。水素ガスは、燃焼時に二酸化炭素ガスを排出しないので、水素ガスの利用は二酸化炭素ガスの排出抑制に貢献する。そのため、自然エネルギーの利用先として、水素ガスの製造は適している。また、水素ガスは、保存可能なので利用しやすいという利点もある。蓄えた水素ガスを利用することで、安定的に電気エネルギーを発生させることができる。移動手段においては、水素ガスを利用して電気エネルギーを発生させ、走行するための動力源へ該電気エネルギーを供給できる。
従って、自然エネルギーを利用した水素ガスの製造は、自然エネルギー由来の電力の利用に繋がり、また自然エネルギー由来のエネルギー源を利用する移動手段の利用に繋がるので、二酸化炭素ガスの排出抑制に貢献する。
本発明は、水素ガスの製造効率の向上を目的とする。その背景としては、本発明の技術により、自然エネルギーを利用した水素ガスの製造効率を向上させ、これにより二酸化炭素ガスの排出抑制に貢献することにある。
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)アノード電極とカソード電極の間に複数の複極式電極が配置され、電解水原水が供給される電解槽と、
前記電解槽に電圧を印加し、電気分解を行う第1電源と、
前記電解槽に、前記第1電源が印加する方向とは逆方向で、スパイク状またはパルス状の波形の電圧を過渡的に印加する第2電源と、
を備える電解装置。
(2)(1)に記載の電解装置において、
前記第1電源の陽極は前記アノード電極に接続し、前記第1電源の陰極は前記カソード電極に接続し、
前記第2電源の陽極は前記複極式電極に接続し、前記第2電源の陰極は前記アノード電極に接続し、
前記第2電源と前記電解槽とを接続および切断するリレーを備える電解装置。
(3)(2)に記載の電解装置において、
前記第2電源の前記陽極と前記複極式電極の間、および前記第2電源の前記陰極と前記アノード電極の間には、それぞれダイオードが設置される電解装置。
(4)(1)から(3)のいずれか一つに記載の電解装置において、
前記逆極性電圧は、周波数が1000Hzから0.1Hzの範囲にあり、スパイク状である電解装置。
(5)(1)から(4)のいずれか一つに記載の電解装置において、
前記第2電源により電解槽に印加される逆極性電流の絶対値は、前記第1電源により電解槽に印加される電流の絶対値と同じか、それよりも大きい電解装置。
(6)(1)から(5)のいずれか一つに記載の電解装置において、
前記アノード電極、前記カソード電極、前記複極式電極は、いずれも前記電解水原水が通水する通水用穴を複数有する電解装置。
(7)(1)から(6)のいずれか一つに記載の電解装置において、
前記電解槽において前記電解水原水が電気分解されることにより生成される電解水から、溶存している水素ガス及び酸素ガスが分離される電解装置。
(8)(1)から(4)のいずれか一つに記載の電解装置において、
前記アノード電極、前記カソード電極、前記複極式電極は、いずれも前記電解槽内を仕切り、
前記アノード電極、前記カソード電極、および前記複極式電極のうち、対向する前記電極間には隔膜が設置され、
前記電解槽には、
前記各電極と前記各隔膜の間に前記電解水原水を供給する入口部と、
前記各電極と前記各隔膜の間にて生成される電解水を前記電解槽から排出する出口部とが設けられている電解装置。
(9)(1)から(4)のいずれか一つに記載の電解装置において、
前記カソード電極および前記各複極式電極における前記アノード電極側の面毎に、当該面に密着する隔膜が設けられる電解装置。
(10)(1)から(7)のいずれか一つに記載の電解装置において、
前記アノード電極、前記カソード電極、および前記複極式電極のうち、対向する前記電極間にはイオン交換樹脂が充填される電解装置。
(11)(1)から(10)のいずれか一つに記載の電解装置において、
前記アノード電極、前記カソード電極、および前記複極式電極の少なくともいずれか一つがステンレス鋼により形成され、
前記電解水原水は、支持電解質として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムの少なくともいずれか一つを含有する電解装置。
隔膜式2極式電解槽における電流-電圧曲線を示す図である。 隔膜式2極式電解槽における電流-電圧曲線を示す図である。 水素発生反応の素過程を示す図である。 電圧の印加の仕方と電気二重層における支持電解質の存在形態との関係を示す図である。 電流密度とエネルギー変換効率の関係を示す図である。 複極式電極を示す図である。 通水型の電解槽の構造を示す図である。 図7と略同様の電解槽を備える電解装置の構造を示す図である。 電解槽に供給される電圧(V)の経時変化を示す図である。 サブ電源が印加するアノ-ド極およびカソード極間の電圧の変化の波形を示す図である。 水素ガスと酸素ガスを別けて採取可能な電解槽の構造を示す図である。 水素ガスと酸素ガスを別けて採取可能な電解槽の構造を示す図である。 図12の電圧低減型隔膜式/複極式構造の電解槽を備える電解装置の構造を示す図である。 サブ電源の波形を示す平面図である。 高純度水対策を施した電解槽の構造を示す図である。 図15の高純度水用隔膜式、複極式電解槽を備える電解装置を示す図である。 図15の電解槽を備える電解装置を示す図である。 電解装置の電流の流れを説明するための模式的な回路図である。 スイッチを接続した際の電解装置の電流の流れを説明するための模式的な回路図である 。
以下、実施形態の電解装置及び該装置を用いた水素ガスの製造方法について説明するところ、まず、その狙いについて説明する。
水素ガスの製造方法は、(1)水の電気分解による方法、(2)石油等の化石燃料を熱分解する方法、に大別されるところ、実施形態は、(1)水の電気分解による水素ガスの製造方法に関する。
水の電気分解に利用する電解槽は、(1)アノ-ド電極とカソード電極の二つの極を備える電解槽、(2)アノ-ド電極とカソード電極の間に挿入された複極式電極を複数備える電解槽、に大別される。(2)の複極式の電解槽は、電極枚数を増やすことで、全電極面積を増大でき、大電流の通電が可能となる。水素ガスの発生量は電解電流に依存する。そのため、大量の水素ガスを生成するには、大電流の通電(高い全電解電流)が必要となるため、(2)の複極式の電解槽を利用することが望ましい。
実施形態の目的は、水素ガスの製造効率の向上であり、換言すると、水の電解効率の改善である。該改善の着想にあたり、本出願人は、まず、水の電解におけるHO分子の電極表面での反応を検討した。この検討には、水素エネルギーシステムVol.30、No.1(2005)第1回定例研究会資料(非特許文献1)が参考になる。図1、図2(非特許文献1)には、隔膜式2極式電解槽における電流(電流密度)-電圧曲線が示される。図1、図2において、カソード電極(Pt極)の曲線は、ゼロ点から一旦立ち上がり、その後オーム損に従って直線的に上昇している。電解効率を上げるためには、曲線の立ち上がり部分を利用して、換言すると電流密度を低くして、オーム損を省くことが重要であると考えられる。
水素発生反応(H+e→1/2H)の反応式は単純だが、その素過程は複雑な過程から成っている。
水素発生反応の素過程には以下の3種類があるといわれている(図3:非特許文献4)。(1)溶液中に存在するプロトンの表面吸着(H+e→Had:Hadは電極表面に吸着した水素を示す)。これはVolmer過程と呼ばれる。(2)溶液中に存在するプロトンと吸着水素の会合脱離(Heyrovsky過程)。(2’)吸着水素同士の会合脱離(Tafel過程)。すなわち(1)が起こった後、(2)あるいは(2’)の過程を経て水素が発生するものと考えられる。しかし最も典型的な触媒金属である白金ですら、律速段階に関する議論が継続的に行われている。Volmer過程は一般に最も速い過程だと考えられているが、(110)面、その他の面方位、あるいは多結晶ではTafel過程が律速であると報告されている。(100)面と多結晶ではHeyrovsky過程が律速であるとの報告もある。また、水素発生反応の逆反応である水素酸化反応において、小さい過電圧ではVolmer-Tafel、大きい過電圧ではVolmer-Heyrovsky過程が支配的であるとの提案もある(非特許文献4)。
また、電解操作に使用する支持電解質が、電極の周りである電気二重層にどのように存在するかを考えることも必要である。図4(非特許文献5)には、電圧の印加の仕方と電気二重層における支持電解質の存在形態との関係が示される。電極表面における支持電解質の分布は電極への電圧印加の方法に依存し、ステップファンクション状に依存した場合は、よりランダムに分布することが予測される(非特許文献5)。なお、「ステップファンクション状に依存した場合」とは、電極にステップ状の波形(ステップ波)の電圧を印加した場合を意味する。
一方、電極に一定の勾配で電圧印加した場合、支持電解質はより整然と電極の表面に分布する。エネルギー変換効率の向上を考えた場合、支持電解質の分布がよりランダムであることが、水素イオンが電極表面に到達して還元される確率を向上させるのに役立つと考えられる。すなわち、エネルギー変換効率を向上させるために、支持電解質の分布をよりランダムにさせる電極への電圧印加方法を検討することも重要である。
なお、図5(非特許文献1)に示す電流密度とエネルギー変換効率の関係からも、効率的な水素ガスの生成には、電流密度を低減(例えば1A/cm以下)することが望ましいことは明らかである。電極面積を広げることで電流密度を低減できる。電極面積を広げると、電解槽および電解装置のコストが上昇することが予測される。従って、運転コスト、設備コストを併せて検討することが肝要である。
実施形態の各電解装置では、以上の点を考慮した構成となっている。すなわち、実施形態の各電解装置では、エネルギー変換効率の向上のために電流密度を低減するため、また、大量の水素ガスの生成を可能とするために、電解槽が複極式になっている。単純な複極式の電解槽の場合、水の電気分解により、水素ガスと酸素ガスが同時に発生するので、実施形態では、水素ガスと酸素ガスを分離するための気液分離器を装置に組み込んだ例も説明している。実施形態では、電気分解のための水溶液の導電度が低い場合を考慮して、純水用電解槽を備える例も説明している。
実施形態の各電解装置では、エネルギー変換効率を向上させる電極への電圧印加方法を採用している。実施形態では、電圧の印加方法として、電極表面に形成される電気二重層内の支持電解質の分布を積極的に乱す為に、過渡的、周期的に逆極性の電圧をパルス状に印加する例や、逆極性の電圧の波形をステップ状またはスパイク状にする例を説明している。なお、「過渡的」は、「一時的」あるいは「間欠的」と換言可能である。
水素ガスの生成量を所定量確保しながらエネルギー変換効率を向上させるには、電解電流を所定の値に保持して、電解電圧を低下させることが望ましい。電解電流を保持して電解電圧を低下させるために最も容易な方法は、電極面積を増大して電流密度を下げることである。電解槽の構造の簡単化、コストの低減、エネルギー変換効率の向上を達成するためには複極式電解槽が適している。複極式電解槽では、アノード電極とカソード電極の間に複極式電極が配置される。
図6に複極式電極100を示す。この複極式電極100は、板状であり、カソード電極またはアノード電極としても使用できる。電解電流密度を低減するためには、複極式電極100(カソード電極またはアノード電極として使用される複極式電極100を含む。)の表面に生成される水素ガスまたは酸素ガスの気泡を速やかに除去することが望ましい。そこで、複極式電極100の表面には通水用穴101が複数あり、複極式電極100は多孔性になっている。電解槽の中でこれらの通水用穴101に電解水原水が通ることにより、複極式電極100の表面の生成ガスが速やかに除去される。
図7は、通水型の電解槽の構造を示す図である。この電解槽には、図6の複極式電極100である複極式電極3が組み込まれている。この電解槽では、上下に分かれた二つの電解槽フレーム4の間において一方側にアノード電極1が配置され、他方側にカソード電極2が配置され、両電極1、2の間に複数の複極式電極3が配置される。アノード電極1およびカソード電極2も、通水用穴101が複数ある図6の複極式電極100と同じものが使用される。
積層される電極1~3の間には、パッキン5が組み込まれる。本例では、各複極式電極3において、図7の下面側がアノード電極面として機能し、図7の上面側がカソード電極面として機能する。複極式電極3とパッキン5の数は、水素ガスの目標製造量を勘案して決定すればよい。一方(図7の下側)の電解槽フレーム4には、該電解槽フレーム4の内部に電解水原水を導入する入口部6が形成される。他方(図7の上側)の電解槽フレーム4には、電解水を該電解槽フレーム4の外部に排出する出口部7が形成される。
コスト低減等の観点から、アノード電極1、カソード電極2、および複極式電極3の少なくともいずれか一つがステンレス鋼により形成されてもよい。この場合、電解水原水の導電度を上げるための化学物質として、あるいは電解水原水の導電度を上げてさらにpHをアルカリ性にする支持電解質として、NaOH(水酸化ナトリウム)、KOH(水酸化カリウム)、NaCO(炭酸ナトリウム)、またはKCO(炭酸カリウム)等を使用してもよい。
図8は、図7と略同様の電解槽を備える電解装置の構造を示す。電解槽フレーム4の中にメイン電源10のアノード電極1.1、メイン電源10のカソード電極1.2、および複数の複極式電極3が配置されている。タンク15に充填された電解水原水がポンプ16により電解槽に供給される。電解槽にて電解水原水が電解されて水素ガスと酸素ガスが生成され、電解水に溶解(あるいは溶存)する。水素ガスと酸素ガスが溶解(あるいは溶存)した電解水はタンク15に戻る。タンク15の前段あるいはタンク15に接続された不図示の気液分離器により、該電解水から水素ガスと酸素ガスが分離されてもよい。あるいは、電解槽フレーム4の上部にて水素ガスと酸素ガスが貯留され、水素ガスと酸素ガスの混合ガスが電解槽フレーム4の上部にある不図示の出口部から外部に排出されてもよい。
なお、電解槽フレーム4において、アノード電極1.1の平面方向における一方側(図8中下側)には、アノード電極1.1よりも複極式電極3から離れる側(図8中左側)に入口部6.1があり、カソード電極1.2よりも複極式電極3から離れる側(図8中右側)に入口部6.2がある。電解槽フレーム4において、アノード電極1.1の平面方向における他方側(図8中上側)には、アノード電極1.1よりも複極式電極3から離れる側(図8中左側)に出口部7.1があり、カソード電極1.2よりも複極式電極3から離れる側(図8中右側)に出口部7.2がある。
アノード電極1.1側の入口部6.1から電解水原水が電解槽フレーム4内に導入される。電解水原水は、アノード電極1.1の表面でアノード電解された後、各複極式電極3の一面であるアノード電極面でさらにアノード電解され、各複極式電極3の他面であるカソード電極面でカソード電解される。アノード電極1.1にアノード電解された電解水の一部は、アノード電極1.1側の出口部7.1からバイパスラインを介してカソード電極1.2側の入口部6.2に送られ、カソード電極1.2にカソード電解される。このようにして電解された電解水は、カソード電極1.2側の出口部7.2から排出され、タンク15に送られる。アノード電解とは、アノード電極またはアノード電極面に電解され、酸化されることを指す。カソード電解とは、カソード電極またはカソード電極面に電解され、還元されることを指す。
エネルギー変換効率を向上させるために、電解電圧を下げる構成に関して説明する。本例では、直流電源をメイン電源10(第1電源)およびサブ電源11(第2電源)として2台用いる。しかし、直流電源を2台以上用いて後述する波形の電圧を電解槽に印加してもよいし、後述する波形の電圧をプログラム等により1台の直流電源で印加してもよい。メイン電源10は、最初、単独で電解槽に接続され、電解槽に略一定の電圧を供給し、電解槽で電気分解を行う。サブ電源11がメイン電源10と共に電解槽に接続されることで、アノード電極1.1とカソード電極2.2との間には、メイン電源10のみが電解槽に接続される場合と逆方向の逆極性電圧が印加される。
逆極性電圧は、サブ電源11が後述のリレー14により過渡的(間欠的)に電解槽に接続されるのに伴い、過渡的に電解槽に印加される。メイン電源10のアノード電極1.1(陽極)とサブ電源11のカソード電極2.2(陰極)は電解槽のアノ-ド電極1(図7参照)に接続する。メイン電源10のカソード電極1.2(陰極)は電解槽のカソード電極2(図7参照)に接続する。電解槽フレーム4内には、複数の板状の電極100(図6)が並ぶ。図8中で最も左側の電極100(図6)は、メイン電源10の陽極に接続し、メイン電源10のみが電解槽に接続する場合、アノード電極として機能する。そのため、最も左側の電極100をアノード電極1.1と記載する。図8中で最も右側の電極100(図6)は、メイン電源10の陰極に接続し、カソード電極として機能する。そのため、最も右側の電極100をカソード電極1.2と記載する。本明細書では、電解槽内に並ぶ複数の電極のうち、図7と同様に、一端に位置する電極をアノード電極1と記載し、他端に位置する電極をカソード電極2と記載し、電極1,2間に位置する電極を複極式電極3と記載する場合がある。
サブ電源11のアノ-ド電極2.1(陽極)は、電解槽のカソード電極1.2に最も近い複極式電極3に接続する。サブ電源11の陽極と複極式電極3との間にリレー14が設置される。リレー14は、サブ電源11と電解槽とを接続および切断する。リレー14の接続、切断を制御する関数発生器12が設けられる。サブ電源11は、リレー14を介して過渡的に逆極性電圧を印加する。なお、サブ電源11のアノ-ド電極2.1(陽極)は、いずれの複極式電極3に接続してもよい。リレー14は関数発生器12を用いて制御される。上記回路において電源10、11の陽極、陰極と電解槽の各間にはダイオード13が設置される。
メイン電源10から供給する電圧は主たる電気分解を行うこと目的としている。メイン電源10のみで電気分解を継続すると、電解電圧が経時に伴い上昇する。これは、電解水原水(電解用水溶液)中のイオン濃度がアノ-ド電極1.1とカソード電極1.2の間で極性に従って分布するようになるからである。電解電流を一定に維持する為には電圧を上げることが必要となるが、電圧を上げると、エネルギー変換効率の低下をもたらす。
電解電圧の上昇に対する対策として、本出願人は、逆極性電圧を過渡的に、かつ周期的に電解槽に印加することで、イオン濃度分布の偏りを均し、イオン濃度分布を通常に戻すことが有効と考えた。
図18は、電解装置の電流の流れを説明するための模式的な回路図である。
電解装置は、リレー14を切断した状態では、メイン電源10を定電流制御し、電解槽により電気分解を行う。電解槽におけるアノード電極1と、カソード電極2に最も近い複極式電極3との間には、図18における右側(第1方向)に電流が流れる。
図19は、リレー14を接続した際の電解装置の電流の流れを説明するための模式的な回路図である。
電解装置は、電気分解を継続すると、電解電圧の上昇を抑えるために逆極性電圧の印加処理を行う。電解装置は、メイン電源10を定電流制御した状態で、サブ電源11に接続するリレー14を短時間で開閉することを繰り返し、サブ電源11を電解槽に周期的に短時間接続する。リレー14は、電圧関数発生器12を用いて、サブ電源11を流れる電流が、関数発生器12から出力される波形となるように制御される。リレー14が接続する間、アノード電極1と、サブ電源11が接続する複極式電極3との間には、リレー14の切断時とは逆方向(図18における左側;第2方向)の逆極性電流が流れる。
電解装置は、リレー14の接続、切断を繰り返すことで、サブ電源11による過渡的、周期的な逆極性電圧(および逆極性電流)を電解槽(アノード電極1と、サブ電源11が接続する複極式電極3との間)に印加する。電解槽へのサブ電源11の接続、切断制御の期間もメイン電源10は定電流制御されるが、メイン電源10の出力電圧は低下する。サブ電源11の接続、切断制御期間において、サブ電源11が切断されている間は、メイン電源10の低下した出力電圧により電気分解が行われる。サブ電源11が電解槽に接続した際は、アノード電極1と、サブ電源11が接続する複極式電極3との間では、メイン電源10のみにより電気分解が行われる際とは各電極1,3の極性が逆となった状態で電気分解が行われる。
図9は、電解槽におけるアノード電極1と、サブ電源11が接続する複極式電極3との間(電解槽)に印加される電圧(V)の経時変化を示す図である。
上記のようにリレー14のON、OFFを行うことで、図9に示されるように、電解槽に印加される電圧が過渡的、周期的に急激に低下する現象が観測された。
逆極性電圧は、電解槽に印加される電圧が、例えば1/10以下に低下するように電解槽に印加されてもよい。電解槽にサブ電源11の作用によって加えられる逆極性の電流値(最大の電流値)の絶対値は、メイン電源10の定電流値の絶対値と同じかそれよりも大きくなることが好ましい。定電流値とは、定電流制御されるメイン電源10の目標となる出力電流値を指す。メイン電源10の定電流制御は、メイン電源10の内部回路により実現してもよいし、メイン電源10の外部のコントローラにより実現してもよい。コントローラは、関数発生器12や、リレー14、各電源10、11等、電解装置の各要素を制御してもよい。
本例の電圧印加方法により、電極1~3の表面における電気二重層内の支持電解質の偏った分布を積極的に乱して均すことができるので、本例の電圧印加方法は有効であることが分かる。
本例の電圧印加方法は、電解水原水(または電解水)中のイオン分布の偏りを均す方法なので、その効果には周波数依存性があり、電気化学的視点から逆極性電圧の周波数は1000Hz以下が望ましい(非特許文献6)。逆極性電圧の周波数の下限値は0.1Hzであるところ、該下限値は、略100Hzから0.1Hzであることがイオン分布の偏りを均す効果には有効である(非特許文献5)。
更に、電解水の流量は重要な因子である。電解すると、電極1~3の表面に水素ガスまたは酸素ガスの気泡が付着し、実効電流密度が大きくなる。電流密度を下げるためには、電極1~3の表面の気泡を速やかに除去することが望ましい。気泡の除去対策として、電解槽内部の電解水の流量は重要である。サブ電源11を有効化する為には、電解槽の内部の電極1~3の表面の流量は、0.2l/min/cm2以上が望ましい。
〔実施例1〕
単純通水型複極式電解槽を用いた図8の電解装置を用いて、電解槽に供給される電圧の波形を確認した。まず、2Lのタンク15に純水を充填し、炭酸カリウム(KCO)200gを添加して炭酸カリウム溶液を生成した。この溶液を電解水原水として使用する。タンク15から電解槽へ供給する電解水原水の流量は、調整弁17を用いて制御し、0.01~0.02l/min/cmとした。メイン電源10、サブ電源11は、出力が0~15V、1.0~5.0Aの直流電源を用いた。
Figure 2023037101000002
表1に示されるように、メイン電源10をONし、メイン電源10の定電流値を3Aに設定した。サブ電源11が電解槽から切断されている時、メイン電源10は略13Vを印加した。関数発生器12から0.5Hzのスパイク状のシグナルを発生させる。スパイク状とは、出力が急激に変動し、ピークが持続されずに元の出力に急激に戻る波形の形状を指す。関数発生器12がこのシグナルを発生させると、サブ電源11がスパイク状の逆極性電流を電解槽に印加するようにリレー14が制御され、瞬間的に開閉することが周期的に繰り返される。本例では、サブ電源11は、電解槽(アノード電極1と、サブ電源11が接続する複極式電極3との間)に逆極性電流-3.1Aを0.5Hzで出力するように制御される。サブ電源11が印加する電圧の変化の波形を図10に示す。
メイン電源10の電圧は初期に略13Vであった。サブ電源11によるスパイク状の逆極性電流-3.1Aの印加により、定電流制御されるメイン電源10の出力電流には変化は無いが、メイン電源10による電解槽の電解電圧(出力電圧)が急激に低減し、10~12Vとなる現象が観測された。本例の電圧印加方法は、メイン電源10の電解電圧を低下させることができるので、エネルギー変換効率を向上させるのに有効であることが分かる。また、本例の電圧印加方法は、逆極性電流により、電解水原水中のイオンを乱し、該イオン分布の偏りを均すことができるので、この点でもエネルギー変換効率を向上させるのに有効であることが分かる。
Figure 2023037101000003
同様にして、関数発生器12から0.5Hzのパルス状のシグナルを発生させることにより、サブ電源11から、パルス状で、パルス幅0.25sの逆極性電流-3.1Aを印加した(図14のサブ電源の波形を参照)。パルス状とは、出力が変動し、そのピークが一定で持続した後、元の出力に戻る波形の形状を指す。メイン電源10は、定電流値3Aで定電流制御される。本例でも、メイン電源10による電解槽の電解電圧(出力電圧)が急激に低減し、10~12Vとなる現象が観測された。本例の電圧印加方法も、メイン電源10の電解電圧を低減でき、加えて逆極性電流により、電解水原水中のイオン分布の偏りを均すことができるので、エネルギー変換効率の向上に有効であることが分かる。
本例の図8の電解装置では、電解水原水から生成される水素ガスおよび酸素ガスは、電解槽フレーム4上部の電解槽出口から混合された状態で排出される、あるいは、混合された状態で電解水から分離される。従って、本例の電解装置により生成される混合ガスは、水素ガスの燃焼用に好適に使用できる。
図11は、水素ガスと酸素ガスを別けて採取可能な電解槽の構造を示す。本例の電解槽でも、電解槽フレーム4にアノ-ド電極1Aおよびカソード電極2Aが設置され、それらの間に複数の複極式電極3が設置される。電極1A、2A、3は、いずれも電解槽フレーム4内を仕切る。アノ-ド電極1Aおよびカソード電極2Aは穴なしとなっており、図6の複極式電極3における通水用穴101が無い物を使用している。
電解槽フレーム4において、アノード電極1Aの平面方向における一方側(図11中下側)には、電極1A、2A、3および後述の隔膜8を挟む各位置に電解水原水の入口部6がある。電解槽フレーム4において、他方側(図11中上側)には、電極1A、2A、3および隔膜8を挟む位置にアノード電極1A側から出口部7.2、7.1が交互に配置されている。
電極1A、2A、3のうち、隣り合う電極1A、2A、3間には、電解槽フレーム4内を仕切る隔膜8が設けられている。隔膜8は、電気分解にて生じる水素ガスと酸素ガスを分離するものであり、イオン交換膜を例えば用いることができ、耐熱性が必要な場合には、フッ素系カチオン交換膜を用いることが適している。
各入口部6から電極1A、2A、3間に電解水原水が供給され、電解電圧がアノード電極1Aとカソード極2Aの間に印加されることにより、電極1A、2A、3間にて電解が行われ、複極式電極3の表面でも電解反応が起こる。複極式電極3において、アノード電極1A側の面がカソード電極面となり、カソード電極2A側の面がアノード電極面として機能する。図11において、1つの電解セルは、基本的に、破線で囲んで示すように、隔膜8を挟んで対向する2枚の電極1A、2、3、入口部6,出口部7.1、7.2を含んで構成される。
電解セルにおいて、アノード電極1A側または複極式電極3のアノード電極面側の空間の出口部7.1から酸素ガス溶存電解水が排出される。電解セルにおいて、カソード電極2A側または複極式電極3のカソード電極面側の空間の出口部7.2から水素ガス溶存電解水が排出される。
図12は、水素ガスと酸素ガスを別けて採取可能な電解槽の構造を示す。図12の電解槽では、図11の電解槽よりも電極1、2、3間の距離を狭めることができ、電解電圧をより低減できる。本例の電解槽は、図11の電解槽と同様に、電極1~3、入口部6.1、6.2、出口部7.1、7.2が配置されている。本例では、アノ-ド電極1側から、入口部6.2、6.1の順で交互に並ぶ。本例では、アノ-ド電極1側から、出口部7.1、7.2の順で交互に並ぶ。
本例では、アノ-ド電極1およびカソード電極2は多孔性の穴あきであり、図6の複極式電極3と同じものが使用される。隔膜8は、カソード電極2における複極式電極3とは対向しない側の面に密着して設けられる。隔膜8は、複極式電極3のアノード電極面に密着して設けられる。隔膜8は、導電性、耐熱性等を考慮するとフッ素系カチオン交換膜が適している。必要に応じて、フッ素系カチオン交換膜の後ろ側に多孔性支持体を設けてもよい。
図12において、電解セルは、基本的に、破線で囲んで示すように、入口部6.1、6.2、出口部7.1、7.2を含んで構成される。電解セルの基本構成は、図11と同様で、アノード電極1、またはアノード電極1側に配置される複極式電極3のアノード電極面を備える。電解セルの基本構成は、カソード電極2、またはカソード電極2側に配置される複極式電極3のカソード電極面を備える。電解セルの基本構成は、中央に隔膜8を備える。
本例でも、電解セルにおいて、アノード電極1側または複極式電極3のアノード電極面側の空間の出口部7.1から酸素ガス溶存電解水が排出される。電解セルにおいて、カソード電極2A側または複極式電極3のカソード電極面側の空間の出口部7.2から水素ガス溶存電解水が排出される。
図11、図12の電解槽では、導電度を低減するために、電解水原水に高濃度の電解質が添加されることが望ましい。例えば、電解質は、NaOH、KOH等のアルカリ性支持電解質であってよい。
図13は、図12の電圧低減型隔膜式、複極式構造の電解槽を備える電解装置の構造を示す。電解水原水は、図13の下方のタンク15.1から供給ポンプ16.1により電解槽の入口部6.1に供給される。入口部6.1は、出口部7.2に繋がる空間に繋がる。該空間では、電解水原水が電解されてアノード電解水と共に主として酸素ガスが生成され、主として酸素ガスがアノード電解水に溶存し、酸素ガス溶存電解水が生成される。酸素ガス溶存電解水は、出口部7.2から下方のタンク15.1に送られる。タンク15.1からガスが分離機19に排出され、分離機19にてガスから酸素ガスが分離される。酸素ガスは、分離機19から酸素ガスタンク21に送られ、酸素ガスタンク21に溜めれる。
電解水原水は、図13の上方のタンク15.2から供給ポンプ16.2により電解槽の入口部6.2に供給される。入口部6.2は、出口部7.1に繋がる空間に繋がる。該空間では、電解水原水が電解されてカソード電解水と共に主として水素ガスが生成され、主として水素ガスがカソード電解水に溶存し、水素ガス溶存電解水が生成される。水素ガス溶存電解水は、出口部7.1から上方のタンク15.2に送られる。タンク15.2からガスが分離機19に排出され、分離機19にてガスから水素ガスが分離される。水素ガスは、分離機19から水素ガスタンク20に送られ、水素ガスタンク20に溜めれる。
このように、電解装置には、水素ガス溶存電解水を通水するラインと、酸素ガス溶存電解水を通水するラインの2種類のラインが設けられている。タンク15.1に繋がるラインでは、主として水素ガスが溶存する水素ガス溶存電解水が循環する。タンク15.2に繋がるラインでは、主として酸素ガスが溶存する酸素ガス溶存電解水が循環する。
電解用電源として、メイン電源10とサブ電源11が設置される。電源10、11と電極1~3との接続関係は図8の例と同様であり、メイン電源10の配線とサブ電源11の配線は交差し、これにより電解電圧を低減できるようになっている。メイン電源10のアノード電極1.1(陽極)とサブ電源11のカソード電極2.2(陰極)が電解槽のアノ-ド電極1に接続する。メイン電源10のカソード電極1.2(陰極)は電解槽のカソード電極2に接続する。サブ電源11のアノ-ド電極2.1(陽極)は、カソード電極2に最も近い複極式電極3に接続する。リレー14の接続、切断制御により、周期的、過渡的に逆極性電圧を該複極式電極3に印加する。
サブ電源11は、図9に参照されるように、周期的、過渡的で急峻なスパイク状(インパルス状)の波形の出力電圧を印加してもよいが、さらに、図14に示すように、周期的、過渡的で一定の幅を有するパルス状の波形のものを印加してもよい。この場合でも、サブ電源11による逆極性電圧は、メイン電源10の電解電圧を低減でき、加えて電解水原水(電解水)中のイオン分布の偏りを均すことができるので、エネルギー変換効率の向上に有効である。逆極性電圧をパルス状の波形とした場合の有効性は、スパイク状(インパルス状)の波形のものと同様に周波数依存性を有する。本例において、メイン電源10は定電流制御され、サブ電源11が出力する逆極性電流の絶対値は、メイン電源10の出力電流の絶対値と略同じとした。
ところで、図12の電解槽において、逆浸透膜フィルター処理した高純度水を電解水原水として用いる場合、電解水原水の導電度が低いので高い電気分解電圧が必要となる。図15に高純度水対策を施した電解槽の構造を示す。図15の電解槽では、アノード電極1とカソード電極2の間に複極式電極3が複数並ぶ。各電極1、2、3として、図6の複極式電極100と同じものを2枚重ね、その間に隔膜8を挟んだものが用いられている。
電解槽において、対向する電極1、2、3間における下部に入口部6があり、上部に出口部7がある。本例では、電解セルは、図15において破線で囲んで示すように、対向する2つの電極1、2、3と、1つの入口部6、1つの出口部7を含んで構成される。対向する電極1~3間にはイオン交換樹脂9が充填される。これにより、電解水原水の純度が純水レベル以上であっても、電解電圧を低減でき、電解できる。本例では、イオン交換膜8としてフッ素系カチオン交換膜が使用され、イオン交換樹脂9として、フッ素系カチオン交換樹脂が使用されている。これらは、高純度水の電解時に電解電圧を低減させるのに特に有効である。各電解セルにおいて入口部6から高純度原水が供給され、電解され、出口部7から酸素ガスおよび水素ガスが溶存する電解水が排出される。
図16は、図15の高純度水用隔膜式、複極式電解槽を備える電解装置を示す図である。逆浸透膜フィルター処理した電解水原水が各タンク15に注入され、ポンプ16の稼働により電解水原水が各入口部6から電解槽に供給され、電解される。酸素ガスおよび水素ガスが溶存する電解水が出口部7から排出され、タンク15に送られる。タンク15から排出される酸素ガスおよび水素ガスの混合ガスは、分離器18、19により酸素ガスおよび水素ガスに分離される。酸素ガスは酸素ガスタンク21に溜められ、水素ガスは、水素ガスタンク20に溜められる。
メイン電源10のアノード電極1.1(陽極)とサブ電源11のカソード電極2.2(陰極)が電解槽のアノ-ド電極1に接続する。メイン電源10のカソード電極1.2(陰極)は電解槽のカソード電極2に接続する。サブ電源11のアノ-ド電極2.1(陽極)は、カソード電極2に最も近い複極式電極3に接続する。メイン電源10は、定電流制御される。関数発生器12の出力波形に基づいてリレー14の接続、切断が制御されることにより、サブ電極11は、周期的、過渡的に電解槽に接続される。これにより、逆極性電圧が電解槽(アノード電極1と複極式電極3との間)に印加される。逆極性電圧は、スパイク状(インパルス状)またはパルス状の波形であってよい。
〔実施例2〕
図8の電解装置において、電解槽を図15の電解槽に替えた電解装置を図17に示す。図17では、図15の電解槽を模式的に描いている。隔膜8はフッ素系カチオン交換膜(デュポン社製117)を使用し、イオン交換樹脂9はフッ素系カチオン交換樹脂(デュポン社製NR50)を使用した。本例では、電極1~3の表面に通水する形式を採用した。表面流量は0.01から0.2l/min/cmとした。
Figure 2023037101000004
メイン電源10およびサブ電源11と、電極1~3との接続関係は、図16の接続関係と同じである。メイン電源10およびサブ電源11として、出力が0~15V、1.0~5.0Aの直流電源を用いた。サブ電源11のアノ-ド電極2.1(陽極)は、カソード電極2に最も近い複極式電極3に接続する。サブ電源11は、周期的、過渡的に逆極性電圧を電解槽(アノード電極1と複極式電極3との間)に印加するために用いられる。逆極性電圧は、上述してきたスパイク状(インパルス状)またはパルス状の波形であってよい。メイン電源10が出力する定電流は3Aに設定した。この電流になるようにメイン電源10の電圧は変動した。
メイン電源10をONし、電解槽に13Vを印加し、定電流値を3Aに制御した。サブ電源11をONしないとき電圧は略13Vであった。関数発生器12から0.5Hzのスパイク状のシグナルが出力され、このシグナルに基づいてリレー14が制御される。これにより、スパイク状の逆極性電圧が電解槽に印加される。逆極性電圧の波形は、図10の波形と同様であった。
メイン電源10の電圧は、初期は略13Vであった。サブ電源11をONし、スパイク状の0.5Hzの逆極性電流-3.1Aが電解槽に印加される。これにより、表4に示されるように、メイン電源10による電流には変化が無いが、メイン電源10が出力する電解電圧が急激に低減する現象が観測された。本例におけるスパイク状の逆極性電圧の印加も、メイン電源10の電解電圧を低減でき、加えて電解水原水(電解水)中のイオン分布の偏りを均すことができるので、エネルギー変換効率の向上に有効であることが分かる。
Figure 2023037101000005
また、同様にして、関数発生器12から0.5Hzのパルス状のシグナルを発生させ、サブ電源11を過渡的(間欠的)に電解槽に接続することにより、パルス状の逆極性電圧を電解槽に印加した(図14のサブ電源の波形を参照)。この例の電圧印加方法においても、メイン電源10による電解槽の電解電圧が急激に低減する現象が観測され、加えて電解水原水中のイオン分布の偏りを均すので、エネルギー変換効率の向上に有効であることが分かる。
本発明は、その特徴から逸脱することなく、実施形態で実施できる。実施形態、変形例、効果は単なる例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。実施形態および変形例の特徴、構造は、追加でき、また代替の構成を得るために様々な方法で組み合わせることができる。
1…アノード電極、1.1…第1電源(メイン電源)の陽極、1.2…第1電源(メイン電源)の陰極、2…カソード電極、2.1…第2電源(サブ電源)の陽極、2.2…第2電源(サブ電源)の陰極、3…複極式電極、6…入口部、7.1、7.2…出口部、8…隔膜、9…イオン交換樹脂、10…第1電源(メイン電源)、11…第2電源(サブ電源)、13…ダイオード、14…リレー、101…通水用穴

Claims (11)

  1. アノード電極とカソード電極の間に複数の複極式電極が配置され、電解水原水が供給される電解槽と、
    前記電解槽に電圧を印加し、電気分解を行う第1電源と、
    前記電解槽に、前記第1電源が印加する方向とは逆方向で、スパイク状またはパルス状の波形の電圧を過渡的に印加する第2電源と、
    を備える電解装置。
  2. 請求項1に記載の電解装置において、
    前記第1電源の陽極は前記アノード電極に接続し、前記第1電源の陰極は前記カソード電極に接続し、
    前記第2電源の陽極は前記複極式電極に接続し、前記第2電源の陰極は前記アノード電極に接続し、
    前記第2電源と前記電解槽とを接続および切断するリレーを備える電解装置。
  3. 請求項2に記載の電解装置において、
    前記第2電源の前記陽極と前記複極式電極の間、および前記第2電源の前記陰極と前記アノード電極の間には、それぞれダイオードが設置される電解装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の電解装置において、
    前記逆極性電圧は、周波数が1000Hzから0.1Hzの範囲にあり、スパイク状である電解装置。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の電解装置において、
    前記第2電源により電解槽に印加される逆極性電流の絶対値は、前記第1電源により電解槽に印加される電流の絶対値と同じか、それよりも大きい電解装置。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の電解装置において、
    前記アノード電極、前記カソード電極、前記複極式電極は、いずれも前記電解水原水が通水する通水用穴を複数有する電解装置。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の電解装置において、
    前記電解槽において前記電解水原水が電気分解されることにより生成される電解水から、溶存している水素ガス及び酸素ガスが分離される電解装置。
  8. 請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の電解装置において、
    前記アノード電極、前記カソード電極、前記複極式電極は、いずれも前記電解槽内を仕切り、
    前記アノード電極、前記カソード電極、および前記複極式電極のうち、対向する前記電極間には隔膜が設置され、
    前記電解槽には、
    前記各電極と前記各隔膜の間に前記電解水原水を供給する入口部と、
    前記各電極と前記各隔膜の間にて生成される電解水を前記電解槽から排出する出口部とが設けられている電解装置。
  9. 請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の電解装置において、
    前記カソード電極および前記各複極式電極における前記アノード電極側の面毎に、当該面に密着する隔膜が設けられる電解装置。
  10. 請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の電解装置において、
    前記アノード電極、前記カソード電極、および前記複極式電極のうち、対向する前記電極間にはイオン交換樹脂が充填される電解装置。
  11. 請求項1から請求項10のいずれか一つに記載の電解装置において、
    前記アノード電極、前記カソード電極、および前記複極式電極の少なくともいずれか一つがステンレス鋼により形成され、
    前記電解水原水は、支持電解質として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムの少なくともいずれか一つを含有する電解装置。
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