JP2023036006A - 中空糸膜、中空糸膜の製造方法、及び中空糸膜モジュール - Google Patents

中空糸膜、中空糸膜の製造方法、及び中空糸膜モジュール Download PDF

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Sari Iwakawa
雅規 藤田
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Abstract

【課題】人工肺に通常使用されるガス分離中空糸膜に、簡便な手法により、長期間安定的な生体適合性を付与し、かつ膜の疎水性を保つ技術を提供する。【解決手段】ポリオレフィン、及び親水性ポリマーを含み、上記親水性ポリマー由来する窒素原子を0.0030質量%以上0.8750質量%以下含み、上記中空糸膜中、上記親水性ポリマーを含む層の厚みが99.0nm以下であり、窒素ガス透過性が5mL/[min・cm2・bar]以上である、中空糸膜。【選択図】なし

Description

本発明は、中空糸膜及び中空糸膜モジュールに関するものであり、血液成分やタンパク質、有機物の付着による膜の分離性能低下を抑制する用途に好適に用いられる。特に、本発明は、体外血液循環において、血液中の二酸化炭素等の炭酸ガスを除去し、血液中に酸素を添加するための中空糸膜型人工肺に関する。
多孔質膜を使用した膜型人工肺は、心臓疾患の開心術時における体外循環装置や循環補助用人工心肺装置として、一般に広く使用されている。膜型人工肺は主に中空糸膜を用い、その中空糸膜を介して血液中のガス交換を行うものである。人工肺への血液の灌流方式として、中空糸膜の内側に血液を流し、中空糸膜の外側にガスを流す内部灌流方式と、逆に血液を中空糸膜の外側へ流し、ガスを中空糸膜の内側へ流す外部灌流方式とがある。
中空糸膜型人工肺は、中空糸膜の内表面又は外表面が血液と接触するため、血液と接触する中空糸膜の内表面又は外表面が血小板の粘着(付着)や活性化に影響を与える。特に、中空糸膜の外表面が血液と触れる外部灌流型人工肺は、血液の流れが乱流であるため、血小板系の粘着(付着)や活性化に影響を与えやすい。
体液や血液と接触する医療用の分離膜は、タンパク質や血小板が付着すると分離膜の性能低下や、生体反応を引き起こす原因となり、深刻な問題となる。特に人工肺においては、(1)血小板の中空糸膜表面への付着、(2)タンパク質の中空糸膜表面及び膜内部細孔へ付着による血漿成分の漏洩(血漿リーク)などが起き、ガス交換可能な膜面積が減少し、ガス交換能が低下することから、分離膜に生体適合性を付与することが求められており、様々な検討がなされている。
例えば、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドを主構成成分とする高分子を表面にコーティングする方法(特許文献1)が公開されている。また、ポリメトキシエチルアクリレート(PMEA)をコーティングする方法(特許文献2)が開示されている。また、人工肺への抗血栓を向上させるコーティング方法として、ヘパリンを使用する方法も開示されている(特許文献3)。
他に、ビニルピロリドンなどの生体適合性親水性高分子の付与により、安全かつ簡便に血小板やタンパクの付着を抑制する手法は、人工肺用の中空糸膜に限らず、利用されている。ビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体をポリスルホンからなる製膜原液に溶解し、製膜する方法(特許文献4)が開示されている。
さらに、ポリビニルピロリドン(特許文献5)又はポリビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体(特許文献6)を膜に付与する方法が開示されており、これらの中空糸膜はタンパク質の付着が改質前の膜に比較して、改善している。
特開2004-357826号公報 特許第3908839号公報 特開2020-127705号公報 WO2013/012024 特開平3-16626号公報 特開2011-78974号公報
特許文献1に記載の方法は、アクリルアミドが遺伝毒性を示すことから、長期に血液に接触させる材料としての利用は好ましくない。また、特許文献2に記載の方法は、PMEAは優れた生体適合性を示すが、コーティング剤の溶媒への溶解性が低いため、コーティング時に溶媒として、劇物であるメタノールを使用する必要があり、コーティング時の有機溶剤により、微細な膜構造が変形する懸念がある。そのため、コーティング条件が変わるたびに膜の性能を維持するための構造制御が必要となりうる。また、最適な膜厚に制限があり、分離膜へコーティングする場合、コーティングにより、膜の分離性能を変化させる恐れがあるため、人工肺などのガス交換膜・分離膜への適用は難しい。ヘパリンを使用する方法である特許文献3に記載の方法は、ヘパリンが生物由来材料のため、アレルギーを生じさせる問題があること、さらに血液の凝固抑制に伴いヘパリン自体が消費されることから、長時間使用時に血液の凝固抑制効果を維持することは難しい問題がある。
特許文献4に記載の方法は、膜全体に親水性ユニットが存在し、中空糸膜断面方向に均一に親水化されるため、ガス交換を行う人工肺に関しては、疎水性が保てず、血漿リークが生じ易くなるという欠点がある。また、特許文献5や特許文献6に記載の方法でも、膜全体に親水性高分子が存在するため、ガス交換膜として中空糸膜を使用する場合、親水性高分子が膜内部の細孔への血漿成分のしみ込みに寄与し、血漿リークの発生を早める場合があった。
これらの効果は膜全体に親水性高分子が存在するタンパク質透過用途の膜でのみ確認されており、ガス交換を目的とした、膜の疎水性を保つ必要がある人工肺中空糸膜では確認されていない。
このように現行広く使用されているビニルピロリドンを含む生体適合性親水性ポリマーの付与方法は、簡便で効果が高い一方、その付与量や方法によっては膜の断面方向まで親水化してしまうため、人工肺中空糸膜への適用は達成されていなかった。
すなわち、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、人工肺に通常使用されるガス交換用中空糸膜に、簡便な手法により、長期間安定的な生体適合性を付与し、かつ膜の疎水性を保つ技術を提供することを目的とする。
本発明の目的は、血小板やタンパク質の付着が少ない高性能な中空糸膜及び中空糸膜モジュールを提供することにある。すなわち、より長時間生体適合性を維持し、安定した優れたガス透過性能を発揮できる中空糸膜と中空糸膜モジュールを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、血小板の付着及びタンパク付着の少ない中空糸膜及び中空糸分離膜モジュールは、以下の構成により、達成されることを見出した。すなわち、以下の発明である。
(1)ポリオレフィン、及び親水性ポリマーを含み、
上記親水性ポリマーに由来する窒素原子を0.0030質量%以上0.8750質量%以下含み、
前記中空糸膜中、前期親水性ポリマーを含む層の厚みが99.0nm以下であり、
窒素ガス透過性が5mL/[min・cm・bar]以上である、中空糸膜。
(2)上記親水性ポリマーがビニルピロリドンユニットを有し、
上記ビニルピロリドンユニットを0.026質量%以上7.000質量%以下含む、上記(1)に記載の中空糸膜。
(3)上記中空糸膜の一方の表面における上記親水性ポリマーの含有量が、他方の表面における上記親水性ポリマーの含有量よりも多い、上記(1)又は(2)に記載の中空糸膜。
(4)上記親水性ポリマーが、さらにカルボン酸ビニルユニットを有する、上記(1)又は(2)に記載の中空糸膜。
(5)上記カルボン酸ビニルユニットの側鎖末端の炭素数が1~9である、上記(4)に記載の中空糸膜。
(6)均一膜である、上記(1)又は(2)のいずれかに記載の中空糸膜。
(7)上記ポリオレフィンはポリプロピレンである、上記(1)又は(2)に記載の中空糸膜。
(8)以下の工程1を有する、上記(1)又は(2)に記載の中空糸膜の製造方法。
工程1:親水性溶液を中空糸膜に接触させた状態で、放射線を照射する工程。
(9)上記工程1において、中空糸膜の一方の表面にのみ、上記親水性溶液を接触させる、上記(1)又は(2)に記載の中空糸膜の製造方法。
(10)上記(1)又は(2)に記載の中空糸膜を含む、中空糸膜モジュール。
本発明によれば、人工肺に通常使用される疎水性中空糸膜に生体適合性を付与した中空糸膜及び中空糸膜モジュール、並びに生体適合性を付与した中空糸膜の製造方法を提供できる。
実施例1~13の血小板の付着状態を示す写真。 実施例14~23の血小板の付着状態を示す写真。 比較例1、2の血小板の付着状態を示す写真。
本発明の中空糸膜は、ポリオレフィン、及び親水性ポリマーを含み、中空糸膜100質量%において、上記親水性ポリマーに由来する窒素原子を0.0030質量%以上0.8750質量%以下含み、前記中空糸膜中、前記親水性ポリマーを含む層の厚みが99.0nm以下であり、窒素ガス透過性が5mL/[min・cm・bar]以上である、中空糸膜である。以下、このような本発明について説明する。
本発明の中空糸膜は、ポリオレフィンを含む。中空糸膜がポリオレフィンを含むことで、膜の疎水性とガス透過性を両立できる。ポリオレフィンとしては、特に限定されないが、ガス透過性などの点から、ポリプロピレンであることが好ましい。
本発明の中空糸膜は、中空糸膜100質量%において、親水性ポリマーに由来する窒素原子を0.0030質量%以上0.8750質量%以下含む。中空糸膜100質量%における親水性ポリマーに由来する窒素原子の含有量が、0.0030質量%以上の場合、生体適合性の付与効果が十分に得られる。一方、0.8750質量%以下の場合、中空糸膜の疎水性が保たれ、かつ、親水性ポリマー自身の架橋により生じるゲルが形成されないため、中空糸膜のガス透過性が低下することを抑えることができる。そのため、本発明の中空糸膜は、中空糸膜100質量%において、親水性ポリマーに由来する窒素原子を0.0030質量%以上、0.8750質量%以下含む。なお、中空糸膜100質量%における親水性ポリマーに由来する窒素原子の量は、より好ましくは0.0033質量%以上、0.1250質量%以下であり、さらに好ましくは0.0050質量%以上、0.01250質量%以下である。
なお、親水性ポリマーに由来する窒素原子が0.0030質量%以上0.875質量%以下であれば、いずれの部分に由来する窒素原子であっても特に限定されないが、窒素原子は1級アミド結合及び/又は3級アミド結合に由来する窒素原子であることが好ましい。つまり本発明は、親水性ポリマーの1級アミド結合及び/又は3級アミド結合に由来する窒素原子が0.0030質量%以上0.8750質量%以下であることが好ましい。
中空糸膜100質量%における親水性ポリマーに由来する窒素原子の含有量は、微量窒素分析装置(ND-100型・三菱化学株式会社)を用いて、酸化分解-化学発光法により測定し、求めることができる。また、どのような官能基に由来する窒素原子が存在するかは、TOF-SIMS測定により、窒素原子を含む2次イオン種類を同定することや、エタノールやブタノール、ヘキサンなどの有機溶媒により、親水性ポリマーを抽出し、H-NMRを測定することにより確認することができる。さらに、親水性ポリマーがアミド基を含有する場合、H-NMR測定により、1級アミド結合、2級アミド結合、及び3級アミド結合に由来するピーク面積の比率から、各アミド結合の比率を算出することができる。
本発明の中空糸膜は、親水性ポリマーを含む層を有し、その層の厚みが99.0nm以下である。親水性ポリマーは中空糸膜と生体成分が接触する側の中空糸膜表面に局在していることが好ましい。中空糸膜の内部まで、親水性ポリマーが存在する場合、生体成分が膜内部まで滲出し、膜の内部へのタンパク質の付着量が増加するため、耐血漿リーク性が低下する。さらに中空糸膜のガス透過性低下を抑制する観点から、親水性ポリマーを含む層の厚みは、75.0nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以下、さらには5.0nm以下が好ましい。また、親水性ポリマーを含む層の厚みは、親水性ポリマーによる抗血栓性がより発揮される観点から、0.1nm以上が好ましく、より好ましくは、0.2nm以上である。
親水性ポリマーを含む層の厚みは、GCIB-TOF-SIMS(ガスクラスターイオン銃搭載飛行時間型二次イオン質量分析法)により、膜表面からの膜厚方向へエッチングを行い、そのエッチング深さにおける、親水性ポリマー由来の2次イオンのピーク強度を測定する。その際に、親水性ポリマー由来の2次イオンのピーク強度の中空糸膜の素材に由来の2次イオンピーク強度に対する比率が一定以上の場合には、その深さは、親水性ポリマーを含む層であるとし、表面から、親水性ポリマーを含む層までの深さを求めることにより、親水性ポリマーを含む層の厚みを求めることができる。
本発明の中空糸膜は、窒素ガス透過性が5mL/[min・cm・bar]以上である。本発明の中空糸膜の窒素ガス透過性を5mL/[min・cm・bar]以上とすることで、人工肺としてのガス透過性能が十分に満たされることとなる。なお、中空糸膜の窒素ガス透過性は、より好ましくは10mL/[min・cm・bar]以上であり、さらに好ましくは、50mL/[min・cm・bar]以上である。また、中空糸膜の窒素ガス透過性について上限は特に設定されないが、ガス透過性が高い中空糸膜は、血漿リークが生じやすくなるため、120mL/[min・cm・bar]以下が好ましい。
本発明における親水性ポリマーとは、親水性ユニットを有するポリマーを意味し、生体適合性を向上させるために、本発明の中空糸膜はポリオレフィン、及び親水性ポリマーを含む。ここで親水性ユニットとは、親水性ユニットのみからなる重合体の水溶性が高く、親水性ユニットのみからなる重合体の室温(20℃)での水への溶解度が、1%(質量基準)以上となるユニットのことを意味する。
鋭意検討を進めた結果、本発明の中空糸膜において生体適合性とガス透過性能を両立させるための最適な親水性を発揮させるためには、親水性ユニット内の窒素原子を含む官能基の親水性を制御することが重要であることが明らかとなり、親水性ユニットとして2級以外のアミド結合を有するポリマーが好ましく、アミン、1級又は3級のアミド結合、窒素原子を含むヘテロ環化合物を有するポリマーがより好ましいことがわかった。ここで親水性ユニットの具体例としては、ビニルアミン、アリルアミン、リジン、ジアリルメチルアンモニウムクロライドなどのアミン、メタクリルアミド、カルバミン酸エチル、N、N-ジメチルメタクリルアミド、ビニルピロリドンなどの1級若しくは3級アミド結合、又は2-ビニルピリジンなどの窒素原子を含むヘテロ環化合物を有するユニットが好適に用いられる。このような親水性ユニットを有するポリマーは、生体適合性を向上させることができるため、本発明の中空糸膜は親水性ポリマーを有する。
また、親水性ユニット内の窒素原子を含む官能基が側鎖である場合、側鎖の分子量が小さいほど、親水性ポリマーを含む層の厚みが薄い状態で、生体適合性を付与することができるため、ガス透過性を維持しやすく、本発明の親水性ポリマーの窒素原子を含む側鎖の分子量は小さい方が好ましい。
親水性ユニットとしては、これらの中でも汎用性が高く、医療用の錠剤の安定剤としても使用される、ビニルピロリドンユニットが好ましく、つまり親水性ポリマーとしてはビニルピロリドンユニットを含むポリマーがより好ましい。
側鎖の分子量とはポリマーの主鎖以外の分子の合計分子量を指し、ビニルピロリドンユニットの側鎖の分子量は90である。
本発明の中空糸膜は、親水性ポリマーがビニルピロリドンユニットを含み、中空糸膜100質量%において、ビニルピロリドンユニットを0.026質量%以上7.000質量%以下含むことが好ましい。中空糸膜100質量%におけるビニルピロリドンユニットの含有量を0.026質量%以上とすることで、生体適合性の付与効果を十分に高めることができる。一方、中空糸膜100質量%におけるビニルピロリドンユニットの含有量が7.000質量%以下の場合、中空糸膜の疎水性が保たれ、血漿リークが生じ難くなることや、さらには親水性ポリマー自身の架橋により中空糸膜のガス透過性の低下が生じないため、ビニルピロリドンユニットは7.000質量%以下が好ましい。なお、中空糸膜100質量%におけるビニルピロリドンユニットの含有量は、より好ましくは0.030質量%以上0.993質量%以下であり、さらに好ましくは0.046質量%以上0.099質量%以下である。
本発明において、中空糸膜100質量%におけるビニピロリドンユニットの含有量は、微量窒素分析により求めた窒素原子の含有量に対し、ビニルピロリドンユニット(分子量:111)に含まれる窒素原子(原子量14)が1原子であることから、下記式により、窒素原子の含有量をビニルピロリドンユニットの含有量に換算し、求めることができる。
ビニルピロリドンユニットの含有量=
窒素の含有量[質量%]×(ビニルピロリドンユニットの分子量/窒素の原子量)
一般に表面への血小板やタンパク質の付着は、タンパク質の高次構造が変化し、内部にある疎水性部位が露出し、材料表面との疎水性相互作用により、付着が生じると考えられている。一方で、血小板などの細胞や、タンパク質の周囲や材料表面には、水素結合により運動性が束縛された水、いわゆる結合水が存在する。そのため、材料表面の親水性が強いと、タンパク質周囲の結合水もトラップされるために、タンパク質の付着を充分に抑制することができないと言われている。すなわち、血小板などの細胞やタンパク質の付着抑制には、材料表面の疎水性と親水性のバランスを適度に設定することが重要であると推察できる。
以上のことから、血液などの生体成分と接触する中空糸膜の表面には、親水性ポリマーが一定量存在し、生体適合性が付与されていることが、ガス透過性能を維持する上で重要である。
本発明における生体適合性とは、抗血小板付着性と抗タンパク付着性により、中空糸膜の表面における血栓形成が抑制されることを意味する。中空糸膜上に形成した血栓による、中空糸膜のガス交換に使用される膜面積の低下が発生しないため、ガス透過性能を維持することが可能となる。
抗血小板付着性は、後述する中空糸膜への血小板付着数の測定により評価できる。
また、中空糸膜の細孔内にタンパク質が付着し、中空糸膜が親水化されることにより、血漿リークが生じることから、抗タンパク付着性を有することにより、血漿リークを防ぐことが可能となる。
本発明における中空糸膜は、その一方の表面における親水性ポリマーの含有量(2次イオンピーク強度の規格化値を基準)が、他方の表面における親水性ポリマーの含有量(2次イオンピーク強度の規格化値を基準)よりも多いことが好ましい。より好ましくは、中空糸膜の外表面における親水性ポリマーの含有量が、内表面における親水性ポリマーの含有量よりも多いことが好ましい。これは生体成分の接触する一方の表面にのみ親水性ポリマーによる生体適合性を付与するが、親水性ポリマーが血液非接触部である中空糸膜のもう一方の表面及び断面内部に被覆されていると、血液を流したときに、親水性ポリマーにより親水化された中空糸内部に血漿が滲出し、血漿リークを生ずる可能性があるため、中空糸膜の血液接触部のみに被覆されていることが好ましい。このような理由から、本発明においては、血液非接触部には親水性ポリマーが実質的に存在しないことが好ましく、親水性ポリマーが、中空糸膜自体の疎水性を弱めないことにより、中空糸膜断面方向への血漿リークを防止する。そのため、親水性ポリマーは、中空糸膜の一方の表面に局在することが好ましい。
一方の表面における親水性ポリマーの含有量は、2次イオンピーク強度の規格化値を基準とし、他方の表面の親水性ポリマーの含有量を100%とした時に、80%以下が好ましく、さらに好ましくは、他方の表面の40%以下であることが好ましく、さらに好ましくは、他方の表面の10%以下であることが好ましい。
中空糸膜の一方の表面における親水性ポリマーの含有量を、他方の表面における親水性ポリマーの含有量よりも多くする方法、さらには親水性ポリマーを一方の表面にのみ存在させる方法としては、疎水性中空糸膜に親水性ポリマーを固定する方法や、中空糸膜の製造時に膜原液に親水性ポリマーを混入し、製膜する方法などが挙げられるが、血液接触部となる一方の表面のみに効率よく局在させるためには、疎水性中空糸膜に親水性ポリマーを固定する方法がより好ましい。
本発明において、中空糸膜のそれぞれの表面における親水性ポリマーの含有量は、内外それぞれの表面の親水性ポリマー由来の2次イオンの量を、TOF-SMSを用いて測定することにより、求めることができる。得られた中空糸膜の内外表面のそれぞれにおいて、親水性ポリマー由来の2次イオン(CNO、及びCHNO)のピーク強度の和を、ポリオレフィン中空糸膜由来の2次イオン(C)のピーク強度で除した2次イオンピーク強度の規格化した値を基準として比較し、一方の表面よりも他方の表面の親水性ポリマーの含有量(2次イオンピーク強度の規格化値を基準)が多い場合、一方の表面に親水性ポリマーが多く、存在する、つまり中空糸膜の一方の表面における親水性ポリマーの含有量(2次イオンピーク強度の規格化値を基準)が、他方の表面における親水性ポリマーの含有量(2次イオンピーク強度の規格化値を基準)よりも多いとする。
本発明の中空糸膜中の親水性ポリマーは、カルボン酸ビニルユニットを有することが好ましい。カルボン酸ビニルユニットは疎水性であり、親水性ポリマー内にカルボン酸ビニルユニットが存在する場合、親水性ポリマーによる基材への生体適合性付与効果を最適にすることが可能となる。カルボン酸ビニルユニットとは、「-CH(OCO-R)-CH-」(Rは炭化水素基)で表される繰り返し単位を意味する。一般に、カルボン酸ビニルユニットの側鎖末端Rの炭素の数が多くなるほど、疎水性が高くなるため、親水性ポリマー付与後の中空糸膜の疎水性を保つためには、カルボン酸ビニルユニットの側鎖末端Rの炭素数は、1以上が好適に用いられる。一方、親水性ポリマー自体の疎水性が強い場合、親水性ポリマーの水溶性が低下することから、親水性ポリマー内のカルボン酸ビニルユニットの側鎖末端Rの炭素数は少ない方が好ましく、9以下がより好ましい。カルボン酸ビニルユニットの側鎖末端Rの炭素数が1~9のカルボン酸ビニルユニットとしては、酢酸ビニル(炭素数1)、プロピオン酸ビニル(炭素数2)、ブタン酸ビニル(炭素数3)、ペンタン酸ビニル(炭素数4)、ヘキサン酸ビニル(炭素数5)、ヘプタン酸ビニル(炭素数6)、オクタン酸ビニル(炭素数7)、ノナン酸ビニル(炭素数8)、デカン酸ビニル(炭素数9)などを挙げることができる。また、カルボン酸ビニルユニットの側鎖末端Rは、イソプロピル基やターシャリーブチル基のような分岐構造を含んでいても構わない。例えば、ピバル酸ビニル(炭素数4)、2-エチルヘキサン酸ビニル(炭素数7)が挙げられる。本発明の中空糸膜中の親水性ポリマーが有するカルボン酸ビニルユニットは、側鎖の炭素数が1である酢酸ビニルユニット、2であるプロピオン酸ビニルであることが特に好ましい。
親水性ポリマーは、ビニルピロリドンユニットとカルボン酸ビニルユニットを有することが好ましく、このビニルピロリドンユニットとカルボン酸ビニルユニットの共重合体中におけるそれぞれのユニットの好ましい比率は、カルボン酸ビニルユニットによって異なるが、一般的には10~80モル%である。
カルボン酸ビニルユニットの炭素数は多い方が、より疎水性が強くなるため、カルボン酸ビニルの炭素数が多い場合には、親水性ポリマー中のカルボン酸ビニルユニットの比率は低い方が好ましい。特にカルボン酸ビニルユニットが酢酸ビニルユニットである場合、親水性ポリマー中に25~75モル%が好適に用いられ、より好ましくは35~65モル%である。ただし、水溶性の観点から、酢酸ビニルユニットは60モル%以下が好ましく、さらに取り扱い性を考慮すると、35~50モル%がより好ましい。親水性ポリマーとしてビニルピロリドンユニットとカルボン酸ビニルユニットを有する共重合体を用いる場合、交互共重合体もランダム共重合体も用いることが可能であり、これらの場合はビニルピロリドンユニットと酢酸ビニルユニットが隣り合うため、タンパク質の付着抑制効果が高く、好適に用いられる。
本発明における中空糸膜は、均一膜であることが好ましい。均一膜は一般に、不均一膜や非対称膜に比較して、ガス透過性が高いため、ガス交換用途に好適に用いられる。本発明において均一膜とは、中空糸膜内の細孔分布が、膜の断面方向に均一に存在し、中空糸膜の内外表面の構造が同一となる対称構造の膜をいう。
本発明における中空糸膜は、ポリオレフィンで構成されることが好ましい。そして中空糸膜はポリオレフィンで構成されていればその詳細は特に限定されないが、均一膜として工業的に生産可能なポリプロピレンであることがより好ましい。
本発明の中空糸膜は、疎水性のポリオレフィンからなるため、中空糸膜の内表面及び外表面は疎水的である。親水性ポリマーが中空糸膜に付与された場合も、その量が適切であれば、膜全体の疎水性が保たれた状態となるため、液体を透過させず、耐血漿リーク性を保つことができる。
中空糸膜に親水性ポリマーを固定化する方法としては、中空糸膜表面に親水性溶液を塗布した後、放射線照射、熱処理、架橋剤などにより中空糸膜と親水性ポリマーを架橋し、固定化する方法がある。また、中空糸膜を親水性溶液に接触させた状態で、放射線照射、熱処理による架橋反応をさせても構わない。本発明における中空糸膜の製造方法は、特に限定されないが、親水性溶液を中空糸膜に接触させた状態で、放射線を照射する工程(工程1という)を含む製造方法であることが好ましい。ここで親水性溶液とは、親水性ユニットを有するポリマー、すなわち、親水性ポリマーを含む溶液をいう。
一般的に、工程1における放射線量としては5~50kGyが好適である。
工程1の代わりに熱処理による架橋反応をさせてもよく、その場合の加熱条件としては120~300℃が好適である。
親水性ポリマーを中空糸膜に固定化する工程は、中空糸膜をモジュールケースに組み込む前でもよく、中空糸膜をモジュールケース内に組み込んだ後、又は中空糸膜をモジュールケースに固定化した後でも構わない。なかでも、親水性溶液と中空糸膜以外のモジュール材料に、熱や架橋剤による変性を生じさせにくいため、中空糸膜をモジュールケースに組み込む前に親水性溶液を中空糸膜と接触させた状態で放射線照射により、架橋・固定化する方法、つまり工程1を含む製造方法は好適である。
本発明において、工程1で用いる放射線は、α線、β線、γ線、X線、紫外線、電子線などがあげられる。また、血液接触材料は滅菌することが必要であり、γ線や電子線を用いた放射線滅菌法が多用されている。すなわち、放射線照射を用いた架橋は、中空糸膜と親水性ポリマーの固定化と同時に、滅菌が可能である。滅菌と架橋を同時に行う場合は、15kGy以上の照射線量が好ましい。しかしながら、照射線量が50kGy以上であると、親水性ポリマー内の架橋や分解、中空糸膜や中空糸膜以外のモジュール材料の劣化などが起きるため、15kGy以上、50kGy以下が好適である。
また、放射線を照射する際に、抗酸化剤を用いることで、親水性ポリマー内の架橋反応を制御することや中空糸膜の材料であるポリオレフィンの変性を防ぐことも可能である。ここでいう抗酸化剤とは、他の分子に電子を与えやすい性質を持つ分子のことをいう。例えば、ビタミンCなどの水溶性ビタミン類、ポリフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、グルコース、ガラクトース、マンノース、トレハロースなどの糖類、ソジウムハイドロサルファイト、ピロ亜硫酸ナトリウム、二チオン酸ナトリウムなどの無機塩類、尿酸、システイン、グルタチオン、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの抗酸化剤は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。本発明の医療用途の血液接触材料に用いる場合は、抗酸化剤は生体毒性の低いものが好適に用いられ、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが選ばれる。抗酸化剤の量は多すぎれば、中空糸膜と親水性ポリマーの架橋を抑制し、少量の場合には、材料などの劣化を十分に防ぐことができない。親水性溶液中に添加される抗酸化剤の量は、抗酸化剤の種類により、異なるが、特にエタノール、n-プロパノール、2-プロパノールの場合は、0.01質量%以上、10.0質量%以下が好適に用いられ、さらに好ましくは0.05質量%以上、1.0質量%以下である。
中空糸膜に対する親水性ポリマーの吸着平衡定数が高い場合には、中空糸膜への吸着量が多く、中空糸膜の親水化が進み、耐血漿リーク性が低下する場合が多い。この場合は、親水性溶液に含まれる親水性ポリマー濃度を下げる、又は中空糸膜に対する親水性溶液の量を少なくすることで、中空糸膜表面に固定化される親水性ポリマーの量を調整することができる。
中空糸膜がポリプロピレン、親水性ポリマーがビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体の場合、親水性溶液中の親水性ポリマー濃度は20ppm以上、70000ppm以下が好ましく、200ppm以上、1000ppm以下がより好ましい。また、エタノール濃度は0.01質量%以上、10.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上、1.0質量%以下がより好ましい。中空糸膜がポリプロピレン、親水性ポリマーがビニルピロリドンとプロピオン酸ビニルの共重合体の場合、親水性溶液中の親水性ポリマー濃度は20ppm以上、70000ppm以下が好ましく、200ppm以上、500ppm以下がより好ましい。
中空糸膜表面に固定化される親水性ポリマーを含む層の厚みは、親水性溶液に含まれる親水性ポリマー濃度を変化させることに加えて、エタノール濃度を変化させることによっても、制御することができる。親水性溶液中のエタノール濃度が高い場合、疎水性基材であるポリオレフィンへの親水性溶液の親和性が高まり、親水性ポリマーがより中空糸膜の内部まで浸透するため、中空糸膜表面からより深い位置まで親水性ポリマーが固定化される。すなわち、親水性ポリマーを含む層の厚みが厚くなる。固定化される親水性ポリマーの位置がより深い場合、中空糸膜の親水化が進み、中空糸膜の内部へのタンパク質の付着量が増加するため、耐血漿リーク性が低下する場合が多い。この場合は、親水性溶液に含まれるエタノール濃度を下げることで、疎水性基材であるポリオレフィンへの親水性溶液の親和性が弱まり、中空糸膜内部への親水性ポリマーの浸透が抑制され、中空糸膜表面からより浅い位置で親水性ポリマーが固定化される。このように、中空糸膜表面に固定化される親水性ポリマーを含む層の厚みを調整することができる。そのため、エタノール濃度は0.01質量%以上、20.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上、10.0質量%以下がより好ましい。
本発明の中空糸膜の製造方法は、工程1において、中空糸膜の一方の表面にのみ、親水性溶液を接触させる方法が好ましい。つまり中空糸膜の内表面又は外表面の一方にのみ、親水性溶液を接触させる製造方法では、中空糸膜の一方の表面にのみ親水性溶液を接触させた状態で放射線照射する。中空糸膜の外表面に親水性溶液を接触させる場合には、中空糸膜の端部を樹脂などに埋没し、親水性溶液の中空糸内部への滲出を防いだ状態で、放射線を照射し、架橋・固定化する。その後、樹脂に埋没させた部分の中空糸を切断し、親水性ポリマーが外表面に架橋・固定化された中空糸膜を得る。また、中空糸膜がモジュールケースに組み込まれた状態で架橋・固定化する場合には、中空糸膜端部がモジュールケースの保持板又は保持樹脂により、中空糸膜外表面と内表面との空間を区切ることができるため、親水性溶液を中空糸外表面に接触する空間にのみ留まらせることができ、この状態で放射線を照射し、親水性ポリマーが外表面に架橋・固定化された中空糸膜を内蔵した中空糸膜モジュールを得ることができる。
一方、内表面にのみ親水性溶液を接触させる場合には、中空糸膜内部に親水性溶液を送液し、封止した状態で、放射線を照射し、親水性ポリマーを架橋する。内部に親水性溶液を送液する場合には、加圧送液が好ましいため、中空糸膜がモジュールケースに挿入され、保持された状態での架橋が好ましい。中空糸膜の端部の封止材としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などが好ましい。放射線照射時の耐性と生体適合性の観点から、ウレタン樹脂がより好ましい。また中空糸膜の挿入されるモジュールケースとしては、放射線耐性の点から、ポリプロピレンやポリスチレン、ポリカーボネートなどが好適に用いられる。
本発明の中空糸膜モジュールは、本発明の中空糸膜を含む。本発明の中空糸膜モジュールへの中空糸膜の組み込まれ方は特に限定されず、束状や層状、コイル状で中空糸膜を使用でき、その形状は特に制限されない。
本発明の中空糸膜モジュールは、特に体外血液循環において、血液中の二酸化炭素等の炭酸ガスを除去し、血液中に酸素を添加するための中空糸膜型人工肺に好適である。中空糸膜型人工肺モジュールとしては、体外へ血液を脱血・返血する回路・カテーテル、ポンプ、血液リザーバーや保温装置、ガスラインまたはガスボンベ、ガスレギュレーター、生体モニターおよび装置モニターと組み合わせて使用される。
以下、実施例と比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
<ポリプロピレン中空糸膜>
中空糸膜はポリプロピレンからなり、外径380μm、内径280μm、膜厚50μmであり、バブルポイント法により測定した細孔径サイズが0.2μm以下であるものを用いた。
<評価方法>
(中空糸膜中の窒素原子含有量)
中空糸膜100質量%における窒素原子含有量は、窒素を含む親水性ポリマーを固定化した中空糸膜を乾燥し、一定質量となるように切断し、その中に含まれる窒素原子の量を、微量窒素分析装置(ND-100 型・三菱化学株式会社)を用いて、酸化分解-減圧化学発光法により測定した。より詳細には、中空糸膜15cmを熱分解・酸化させ、生成した一酸化窒素を化学発光法により、測定した。定量は、ピリジン標準液で作成した検量線から算出した。測定時の設定は以下とした。
電気炉温度:熱分解部分:800℃、触媒部分:900℃、メインO流量:300mL/min、サブO流量:300mL/min、Ar流量:400mL/min、センシングモード:High
3回測定を行った結果の平均値を測定値とし、小数点第5位を四捨五入した値を用いた。
(中空糸膜の親水性ポリマーを含む層の厚み)
窒素原子を含む親水性ポリマーを固定化した中空糸膜を乾燥し、親水性ポリマーを固定化した表面から、GCIB-TOF-SIMSを用いて、深さ方向にエッチングしながら、検出される親水性ポリマーに由来する2次イオンのピーク強度及び中空糸膜の素材に由来する2次イオンピーク強度を測定した。親水性ポリマー層の厚みは、親水性ポリマーに由来する2次イオンである、CNOとCHNOのピーク強度の和を、中空糸膜の素材であるCイオンのピーク強度で除した値が0.5以上となる深さ方向のエッチング距離を、親水性ポリマーを含む層とした。
より詳細には、TOF-SIMS5(ION-TOF社製)を用いて、親水性ポリマーに由来する負2次イオンである、CNO(m/z=42.00.)及びCHNO(m/z=84.04)として検出される負2次イオンのピーク強度の和を、基材である中空糸膜のポリオレフィンの鎖状炭化水素C(m/z=25.01)の負2次イオンのピーク強度により除した値が0.5以上となる場合、その深さは親水性ポリマーを含む層とした。
親水性ポリマーを含む層の判断基準:
{(CNOの2次イオンピーク強度[Counts]+(CHNOの2次イオンピーク強度[Counts])}/Cのイオンピーク強度[Counts]≧0.5
表面から、親水性ポリマーを含む層が検出される最大深さ、すなわち最大エッチング距離を、親水性ポリマーを含む層の厚みとした。
測定では、1次イオンBi ++、2次イオン極性:負イオンのみ、1次イオンの加速電圧は30kV、パルス幅は12.5ns、バンチングあり、検出の質量範囲(m/z)は0-1500、ラスターサイズ 200μm、スキャン数 1scan/cycle、ピクセル数 128 pixel、測定真空度(試料導入前) 4×10-7Pa以下、帯電融和あり、後段加速 9.5kVとした。
エッチングイオンはAr-GCIB、エッチングイオン加速電圧を0.25kVとし、Arクラスターサイズを1600(中央値)とした。
エッチング深さは、測定後の測定箇所のエッチング深さを触針式表面粗さ計により、測定し、総エッチング回数により、除した値を1回当たりのエッチング深さとした。最表面から8μmまでの2次イオンピーク強度を測定し、{(CNOの2次イオンピーク強度[Counts]+(CHNOの2次イオンピーク強度[Counts])}/Cのイオンピーク強度[Counts]≧0.5となる最大エッチング距離を、親水性ポリマーを含む層の厚みとして算出した。なお、本測定による親水性ポリマー層の厚みの下限は5.0nmであった。
測定する中空糸膜の表面は、外表面の場合は中空糸状の状態で測定し、内表面の場合は、内表面を露出するように、中空糸の長手方向に糸を切断した状態で測定した。2次イオンピークの強度は、200μm四方の平均2次イオンピークの強度を測定し、求めた。
(中空糸膜の窒素ガス透過性)
中空糸膜のガス透過性は、JIS K7126-1(2006)の圧力センサ法に準拠して測定温度37℃で外圧式にて、窒素ガスの単位時間あたりの透過側の圧力変化を測定し、透過ガス体積を求めた。窒素ガスの供給圧力は、0.04MPa(ゲージ圧力)、透過側の体積は475.9cm、測定時間は4分間とした。中空糸膜は7cmの長さでエポキシ樹脂により封止されたモジュール形状とし、下記式により、ガス透過性を求めた。3回測定を行った結果の平均値を測定値とし、小数点第1位を四捨五入した値を用いた。
窒素ガス透過性=
透過ガス体積[mL]/[時間[min]×中空糸膜外面積[cm]×圧力差[bar]]
(中空糸膜中のビニルピロリドンユニットの含有量)
中空糸膜100質量%におけるビニピロリドンユニットの含有量は、上述の微量窒素分析により求めた窒素原子の含有量に対し、ビニルピロリドンユニット(分子量:111)に含まれる窒素原子(原子量:14)が1原子であることから、下記式により、窒素原子の含有量をビニルピロリドンユニットの含有量に換算し、求めた。小数点第4位を四捨五入した値を用いた。
ビニルピロリドンユニットの含有量=
窒素の含有量[質量%]×(ビニルピロリドンユニットの分子量/窒素の原子量)
(中空糸膜の内外表面における親水性ポリマーの含有量)
中空糸膜の内外表面における親水性ポリマーの含有量は、親水性ポリマー由来の窒素原子イオンのシグナル強度をTOF-SIMSを用いて、測定することにより、求めた。より詳細には、TOF-SIMS5(ION-TOF社製)を用いて、親水性ポリマー由来の2次イオン、すなわちCNO(m/z=42.00.)とCHNO(m/z=84.04)として検出される負2次イオンのピーク強度の和を、基材であるポリオレフィンの鎖状炭化水素C(m/z=25.01)の負2次イオンのピーク強度により除した値を、親水性ポリマーの含有量(2次イオンピーク強度の規格化値を基準)として求めた。
表面における親水性ポリマーの含有量(2次イオンピーク強度の規格化値を基準)
={(CNOの2次イオンピーク強度[Counts]+(CHNOの2次イオンピーク強度[Counts])}/ Cのイオンピーク強度[Counts]
測定では、1次イオンBi ++、2次イオン極性:負イオンのみ、1次イオンの加速電圧は30kV、パルス幅は12.5ns、バンチングあり、検出の質量範囲(m/z)は0-1500、ラスターサイズ 200μm、スキャン数 16scan、ピクセル数 256 pixel、測定真空度(試料導入前) 4×10-7Pa以下、帯電融和あり、後段加速 9.5kVとした。測定する中空糸膜表面は、外表面の場合は中空糸状の状態で測定し、内表面の場合は、内表面を露出するように、中空糸の長手方向に糸を切断した状態で測定した。2次イオンピーク強度は、表面から深さ1-3nmの表面の200μm四方の平均イオン強度を16回測定し、平均を求め、小数点第5位を四捨五入した値を用いた。
(タンパク質の付着量)
中空糸膜の両末端をエポキシ樹脂により封止した長さ1.5mの親水性ポリマーを固定化後又は未処理の中空糸膜を、PBS(Phosphate Buffered Saline;リン酸緩衝食塩水))を用いて、洗浄した。次に、該中空糸膜を80g/Lのアルブミン/PBS溶液10mLに浸漬し、37℃で72時間インキュベートした。該中空糸膜をPBSを用いて洗浄後、2.5%グルタルアルデヒド/生理食塩水溶液により固定化し、乾燥させた。次に、中空糸膜をBCAアッセイキット(“THERMO Scientific”(登録商標)、製品番号:23235、“MicroBCA”(登録商標)Protein Assay Kit)の1.8mLのWorking reagentに浸漬し、60℃、60分間インキュベートし、反応後のWorking reagentの562nmの吸光度測定し、糸に残存するタンパク質の付着量を求めた。測定値は、少数点第2を四捨五入した値を用いた。
(血小板の付着数)
血小板の付着試験については、外表面を露出した状態の中空糸膜を、サンプルカップ底面に接着して並べ、ヒト新鮮血に接触させた後、洗浄・固定化した中空糸膜をSEM(Scanning Electron Microscope;走査電子顕微鏡)観察をした。より具体的には下記に示す通り、ヒト新鮮血は10% ACD-A採血を行い、160Gで25分間遠心分離をすることにより、血小板を多く含むPRPを得た。サンプルカップ底面に固定された中空糸膜は事前にPBS洗浄した。サンプルカップにPRPを1mL分注した後に、血小板活性化刺激剤として、ADP(Adenosine diphosphate;アデノシン-2-リン酸)を100μMとなるように添加し、15分間振盪した。15分経過後、サンプルカップ内のPRPは廃棄し、生理食塩水を1mL加え、振盪、廃棄を10回程度繰り返し、サンプルカップ内の血小板を洗浄により取り除いた。続いて、2.5%グルタルアルデヒド/生理食塩水溶液をサンプルカップに加え、1時間以上静置し、中空糸膜に付着した血小板を固定化した。固定化後のサンプルは固定化液を廃棄した後に、注射用水で洗浄し、真空乾燥機(東京理科機械、FD-1)により、1時間以上、乾燥した。SEM観察に当たり、Ptスパッター(日立ハイテクフィールディング社、E-1045)を放電電流:15mA、時間40秒の条件で行い、SEM(日立ハイテクフィールディング社、SEMEDX Type-HS-3000)を用いて、中空糸膜外表面に接着した血小板の観察を行った。観察は倍率1500倍、視野角4.35×10μmとし、20視野の平均値を血小板付着数とした。
なお1視野当たりカウントは50個までとし、50個以上は50個として平均値を求め、小数点第1位を四捨五入した値を血小板付着数とした。また、複数の血小板が伸展・変形し、1つずつカウントができず、大部分に血小板の付着が認められる場合には、血栓形成ありとした。
(実施例1)
ポリプロピレン中空糸膜の端部を封止し、外表面にのみ液が触れる状態とした。この中空糸膜を親水性溶液に浸漬し、25kGyのγ線照射を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットと酢酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA64)を500ppm、エタノールを0.1%質量含む溶液であった。γ線照射後の中空糸膜をPBSで洗浄し、中空糸膜の窒素量、タンパク質の付着量、血小板付着数、窒素ガス透過性について、測定を行った。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、窒素ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例2)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットと酢酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA64)を200ppm、エタノールを0.1質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、窒素ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例3)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットと酢酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA64)を1000ppm、エタノールを0.1質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、窒素ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例4)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットと酢酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA64)を10000ppm、エタノールを0.1質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、窒素ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例5)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットと酢酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA64)を70000ppm、エタノールを0.1質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、窒素ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例6)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットとプロピオン酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(重量平均分子量55,000)を20ppm、エタノールを0.1質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、窒素ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例7)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットとプロピオン酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(重量平均分子量55,000)を200ppm、エタノールを0.1質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、窒素ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例8)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットとプロピオン酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(重量平均分子量55,000)を1000ppm、エタノールを0.1質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性の高く、窒素ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例9)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットとプロピオン酸ビニルユニット(重量平均分子量55,000)のモル比6:4のランダム共重合体を1000ppm、エタノールを10.0質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、窒素ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例10)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットとプロピオン酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(重量平均分子量55,000)を5000ppm、エタノールを10.0質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、窒素ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例11)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットのみからなる重合体(ASHLAND LCC社製 ポビドン K30)を500ppm、エタノールを0.1質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す通り、実施例1や2に比べてタンパク質の付着量は多いが、血小板の付着数は少なく、生体適合性が高く、ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例12)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットのみからなる重合体(ASHLAND LCC社製 ポビドン K30)を1000ppm、エタノールを0.1質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す通り、実施例1や2に比べてタンパク質の付着量は多いが、血小板の付着数は少なく、生体適合性が高く、ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例13)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットのみからなる重合体(ASHLAND LCC社製 ポビドン K30)を10000ppm、エタノールを0.1質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す通り、実施例1や2に比べてタンパク質の付着量が多いが、血小板の付着数は少なく、生体適合性が高く、ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例14)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットとブタン酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(重量平均分子量42,000)を300ppm、エタノールを0.5質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例15)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットとペンタン酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(重量平均分子量52,000)を300ppm、エタノールを1.0質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例16)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットとカプロン酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(重量平均分子量41,000)を300ppm、エタノールを10.0質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例17)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットとエナント酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(重量平均分子量40,000)を200ppm、エタノールを10.0質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例18)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットとオクタン酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(重量平均分子量48,000)を100ppm、エタノールを10.0質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例19)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットとノナン酸ビニルユニットのモル比8:2のランダム共重合体(重量平均分子量4,400)を300ppm、エタノールを10.0質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例20)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットとデカン酸ビニルユニットのモル比8:2のランダム共重合体(重量平均分子量19,000)を300ppm、エタノールを10.0質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例21)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットとピバル酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(重量平均分子量21,000)を300ppm、エタノールを1.0質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ少なく、生体適合性が高く、ガス透過性の高い中空糸膜であった。
(実施例22)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットとプロピオン酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(重量平均分子量55,000)を5000ppm、エタノールを20.0質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量がやや多いが血小板の付着数が少ない、生体適合性の高い中空糸膜であった。
(実施例23)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットとプロピオン酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(重量平均分子量55,000)を7500ppm、エタノールを30.0質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量がやや多いが血小板の付着数が少ない、生体適合性の高い中空糸膜であった。
(比較例1)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットと酢酸ビニルユニットのランダム共重合体を含まず、エタノールを0.1質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量、血小板の付着数がそれぞれ多く、生体適合性が低い中空糸膜であった。
(比較例2)
親水性溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットと酢酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA64)を20ppm、エタノールを0.1質量%含む溶液であった。
結果を表1に示す。タンパク質の付着量は少ないが、血小板の付着数が多く、生体適合性が低い中空糸膜であった。
(比較例3)
窒素溶液の組成が異なる以外は、実施例1と同様に、処理と評価を行った。親水性溶液は、ビニルピロリドンユニットと酢酸ビニルユニットのモル比6:4のランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA64)を700000ppm、エタノールを0.1質量%含む溶液であった。
結果は親水性ポリマー濃度が高く、親水性ポリマーのゲルが生じたため、中空糸膜としての使用に不適であった。
Figure 2023036006000001
表中「中空糸膜窒素含有量(質量%)」とは、中空糸膜100質量%における親水性ポリマーに由来する窒素原子の含有量(質量%)を意味する。
表中「中空糸膜ビニルピロリドン含有量(質量%)」とは、中空糸膜100質量%におけるビニルピロリドンユニットの含有量(質量%)を意味する。
本発明における接触液体としては、血液成分を例としているが、血液成分に限定されない。例えば、細胞、微生物、植物の培養細胞、又は生体組織を処理した体細胞又は生殖細胞、体性幹細胞、人工多能性幹細胞や胚性肝細胞からなる細胞浮遊液や、血小板製剤や赤血球製剤などの血液製剤、又は合成微粒子や、無機微粒子、ベシクルなどの微粒子分散液さらに、これらの接触液体に、これらに限定されず、環境中の雨水や海水、土砂液や合成高分子溶液などへの適用も含む。これらの溶液の酸素化膜や脱気膜としての利用も可能である。

Claims (10)

  1. ポリオレフィン、及び親水性ポリマーを含み、
    前記親水性ポリマーに由来する窒素原子を0.0030質量%以上0.8750質量%以下含み、
    前記中空糸膜中、前記親水性ポリマーを含む層の厚みが99.0nm以下であり、
    窒素ガス透過性が5mL/[min・cm・bar]以上である、中空糸膜。
  2. 前記親水性ポリマーがビニルピロリドンユニットを有し、
    前記ビニルピロリドンユニットを0.026質量%以上7.000質量%以下含む、請求項1に記載の中空糸膜。
  3. 前記中空糸膜の一方の表面における前記親水性ポリマーの含有量が、他方の表面における前記親水性ポリマーの含有量よりも多い、請求項1又は2に記載の中空糸膜。
  4. 前記親水性ポリマーがカルボン酸ビニルユニットを有する、請求項1又は2に記載の中空糸膜。
  5. 前記カルボン酸ビニルユニットの側鎖末端の炭素数が1~9である、請求項4に記載の中空糸膜。
  6. 均一膜である、請求項1又は2に記載の中空糸膜。
  7. 前記ポリオレフィンはポリプロピレンである、請求項1又は2に記載の中空糸膜。
  8. 以下の工程1を有する、請求項1又は2に記載の中空糸膜の製造方法。
    工程1:親水性溶液を中空糸膜に接触させた状態で、放射線を照射する工程。
  9. 前記工程1において、前記中空糸膜の一方の表面にのみ、前記親水性溶液を接触させる、請求項1又は2に記載の中空糸膜の製造方法。
  10. 請求項1又は2に記載の中空糸膜を含む、中空糸膜モジュール。
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