JP2023033951A - 樹脂組成物および成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた水蒸気バリア性、機械物性、耐冷熱性、および低そり性を有するシール部材を得るための樹脂組成物を提供する。【解決手段】ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対してポリエチレン共重合体(B)1~40重量部を配合してなり、前記ポリプロピレン樹脂(A)の海相内に前記ポリエチレン共重合体(B)の島相が平均直径3.0μm以下で分散している樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物およびそれを溶融成形してなる成形品に関するものである。
電気電子部品のケース部材、パッキン部材、および配管継ぎ手や電池に使われるガスケット部材などのシール部材は、樹脂や金属、セラミックなどの部材の間に挟み込まれることで部材間の隙間を埋め、密閉性を高めるために、柔軟な樹脂成形体が使用されている。
さらに近年、車載部品や電池の長期信頼性の向上の観点から、シール部材には、高温などの過酷な使用環境でも密閉性を維持できることが求められている。その対策として、ポリプロピレン樹脂にエンジニアリングプラスチックスを10~50重量%混合した複合材料よりなるガスケット(特許文献1)や、円筒形電池の電池ケースと接触するアウターガスケットにおいて、基材樹脂層と、前記電池ケースと接触する表面樹脂層の少なくとも2層からなることを特徴とするアウターガスケット(特許文献2)、アイソタクティックポリプロピレン、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、およびエチレン・α-オレフィン共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物からなるガスケット(特許文献3)が開示されている。
特開平05-198292号公報 特開2008-204839号公報 国際公開第2006/057361号
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、エンジニアリングプラスチックをポリプロピレン樹脂に配合することで急激な高温雰囲気あるいは温度変化の条件下による熱ストレスによる収縮を抑制できるが、一方で室温以下の低温では弾性率の上昇により柔軟性が低下し、さらに樹脂と金属との線膨張差により金属部材から剥離することで密閉性が低下し、またウェルド強度が低いことが課題であった。
また特許文献2に開示された発明は、ガスケットの表層部をブロン樹脂などのより柔軟な樹脂とすることで、低温から高温までの温度変化による寸法変化に対し、金属部材との密着性を維持できるが、表層部の水蒸気バリア性が低いため、水蒸気が侵入することで部材の内部が劣化し、長期信頼性に課題があった。
また特許文献3に開示された発明は、ガスケットをプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体およびスチレン系エラストマーを配合してなるポリプロピレン樹脂組成物とすることで、高温でのゴム弾性および圧縮永久歪みに優れ、高温でも金属部材との密着性を維持することができるが、低温での金属部材との密着性や水蒸気バリア性が低下し、またウェルド強度が低く、さらに成形時のソリが大きく組付け時に密閉性が低下することが課題であった。
本発明は、優れた機械物性、低温および高温での金属部材との密着性、水蒸気バリア性に優れ、さらに成形時のソリが抑制でき、ウェルド強度にも優れる樹脂組成物およびその成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記した課題を解決するために検討を重ねた結果、ポリプロピレン樹脂に特定の配合量で特定の熱可塑性樹脂を配合し、さらに特定の海島構造となるようにアロイ化することで、優れた機械物性や水蒸気バリア性を発現しつつ、低温および高温での金属部材との密着性やウェルド強度に優れ、さらに成形時のソリが抑制できることを見出し、本発明に達した。すなわち本発明は、以下の構成を有する。
[1]ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、ポリエチレン共重合体(B)1~40重量部を配合してなり、前記ポリプロピレン樹脂(A)の海相内に前記ポリエチレン共重合体(B)の島相が平均直径3.0μm以下で分散している樹脂組成物。
[2]前記ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、さらに融点もしくはガラス転移点のいずれかが200℃以上であるエンジニアリングプラスチック(C)1~60重量部を配合してなる[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記エンジニアリングプラスチック(C)がポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレートから選ばれる少なくとも一つのである[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記ポリプロピレン樹脂(A)の海相内に、前記エンジニアリングプラスチック(C)の島相が平均直径5.0μm以下で分散している[2]または[3]に記載の樹脂組成物。
[5]前記エンジニアリングプラスチック(C)がポリブチレンテレフタレートである[2]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前記ポリエチレン共重合体(B)がα-オレフィン-エチレン共重合体(b1)およびメタクリル酸グリシジル-エチレン共重合体(b2)から選ばれる少なくとも一つである[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]前記ポリエチレン共重合体(B)がα-オレフィン-エチレン共重合体(b1)およびメタクリル酸グリシジル-エチレン共重合体(b2)であり、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、α-オレフィン-エチレン共重合体(b1)を5~20重量部、およびメタクリル酸グリシジル-エチレン共重合体(b2)を5~20重量部配合してなる[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]ASTM E 96 Bに従い求めた90℃での水蒸気透過係数が25g・mm/m・day以下である[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]ISO527(2012)に従い評価した-40℃環境下での引張伸度が10%以上である[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]ISO527(2012)に従い評価した-40℃環境下での引張弾性率が2.2GPa以下である[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11][1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を溶融成形してなる成形品。
[12][1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を溶融成形してなるシール部材。
[13][1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を溶融成形してなる電池ガスケット。
本発明の樹脂組成物によれば、優れた機械物性や水蒸気バリア性を損なうことなく、低温および高温での金属部材との密着性やウェルド強度に優れ、さらに成形時のソリが抑制された成形品を得ることができる。
本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物はポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対してポリエチレン共重合体(B)1~40重量部を配合してなり、前記ポリプロピレン樹脂(A)の海相内にポリエチレン共重合体(B)の島相が平均直径3.0μm以下で分散している樹脂組成物である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)成分および(B)成分が互いに反応した反応物を含むが、当該反応物は複雑な反応により生成されたものであり、その構造を特定することは実際的でない事情が存在する。したがって、本発明は配合する成分により発明を特定するものである。
本発明者らは、ポリプロピレン樹脂中に、ポリエチレン共重合体(B)を配合し、ポリエチレン共重合体(B)を島相としたアロイ構造を形成することで、機械物性や水蒸気バリア性を損なうことなく、低温および高温での金属との密着性を向上し、さらに成形時のソリを抑制でき、その樹脂組成物からなる成形品がシール部材として適した特性を有していることを見出した。
さらに、ポリエチレン共重合体(B)の島相が特定の平均直径で分散している構造とすることで、機械物性、特に靭性の向上やウェルド強度が向上することを見出した。
本発明のポリプロピレン樹脂(A)は、プロピレンを主成分として重合または共重合して得られる熱可塑性樹脂である。ここで「主成分」とは、ポリプロピレン樹脂100重量部に対してプロピレン由来のモノマー成分が90重量部以上であることを意味する。ポリプロピレン樹脂100重量部に対して10重量部未満であれば、エチレン、ブテン、イソプレン、ペンテンなどの炭素数が4から20のα-オレフィンなどのオレフィン類を共重合してもよい。水蒸気バリア性を向上できる観点で、プロピレンを単独で重合したホモポリプレピレン樹脂であることが好ましい。
本発明のポリプロピレン樹脂の溶融粘度(MFR)は、ポリエチレン共重合体(B)の島相の分散径を微細化でき、機械物性やウェルド強度を向上できる点で、8~20g/10minの範囲であることが好ましい。溶融粘度の上限はさらに好ましくは18g/10min以下であり、16g/10min以下がより好ましい。一方で、溶融粘度の下限は、10g/10min以上が好ましく、12g/10min以上が特に好ましい。なお、ポリプロピレン樹脂の溶融粘度は、JISK7210(2014)に従い、東洋精機製メルトインデクサーを用いて230℃、2.16kg荷重で測定した値である。
本発明の樹脂組成物は、ポリエチレン共重合体(B)を配合する。ポリエチレン共重合体(B)の配合量は、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して1~40重量部である。前記ポリエチレン共重合体(B)の配合量は1重量部未満では低温および高温での柔軟性を発現することができず、より好ましくは2重量部以上であり、特に好ましくは5重量部以上である。一方で、前記ポリエチレン共重合体(B)の配合量が40重量部を超えると、樹脂組成物の機械物性および水蒸気バリア性が低下し、さらに射出成型時の成形品のソリが悪化することから、シール部材として使用することが困難となる。より好ましくは30重量部以下であり、特に好ましくは20重量部以下である。
本発明のポリエチレン共重合体は、エチレンを重合またはエチレンおよびエチレン以外のモノマーを共重合して得られる熱可塑性樹脂である。本発明のポリエチレン共重合体は、ポリエチレン共重合体100重量部に対してエチレン由来のモノマー成分が50重量部以上、99.5重量部未満であると定義する。ポリエチレン共重合体100重量部に対して50重量部未満であればブテン、イソプレン、ペンテン、ヘキセン、オクテンなどの炭素数が4から20のα-オレフィンなどのオレフィン類や、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、スチレン、4-メチルスチレン、酢酸ビニル、ブタジエン、無水マレイン酸、テトラフルオロエタンなどの付加重合性モノマーを共重合してもよい。
ポリエチレン共重合体の具体例として、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/ブテン共重合体、エチレン/オクテン共重合体、エチレン/ブテン/オクテン共重合体、エチレン/イソプレン/エチレントリブロック共重合体、エチレン/ブテン/エチレントリブロック共重合体、エチレン/ブタジエン/エチレントリブロック共重合体、結晶性エチレンブロック/非晶性エチレン・ブテンブロック共重合体などのα-オレフィン-エチレン共重合体(b1)や、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体などのグリシジルアクリレート-エチレン共重合体(b2)、無水マレイン酸-エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体が挙げられ、中でもα-オレフィン-エチレン共重合体(b1)やグリシジルアクリレート-エチレン共重合体(b2)が好ましく、その中でもエチレン/ブテン共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体がより好ましい。これらは各々単独、あるいは混合物の形で用いることができる。
前記ポリエチレン共重合体(B)の配合量は、さらに2種類以上の特定の樹脂の組み合わせによっても好ましい形態が規定でき、低温および高温での金属との密着性をさらに向上できる点で、ポリエチレン共重合体(B)はα-オレフィン-エチレン共重合体(b1)とメタクリル酸グリシジル-エチレン共重合体(b2)からなり、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、α-オレフィン-エチレン共重合体(b1)を5~20重量部、およびメタクリル酸グリシジル-エチレン共重合体(b2)を5~20重量部配合することが好ましい。
本発明の樹脂組成物のモルフォロジーは、機械物性とウェルド強度を両立するために、ポリプロピレン樹脂(A)が海相(連続相)を形成し、当該海相の中に前記ポリエチレン共重合体(B)の島相が平均直径3.0μm以下で分散している海島構造であることを特徴とする。ポリエチレン共重合体(B)の島相の平均直径は、より好ましくは2.0μm以下であり、特に好ましくは1.0μm以下である。なお、前記ポリエチレン共重合体(B)の島相の平均直径は小さいほど好ましいが、その下限値としては0.01μm程度である。
本発明の樹脂組成物における海島構造の島相の平均直径は、電子顕微鏡観察により、以下の方法により求めることができる。一般的な成形条件において、樹脂組成物の相分離構造および各相の大きさは変化しないことから、本発明においては、樹脂組成物を成形して得られる試験片を用いて相分離構造を観察する。まず、射出成形により得られるISOダンベル試験片(長さ200mm×幅10mm×厚さ4mm)の断面方向中心部を1~2mm角に切削し、四酸化ルテニウムでポリエチレン共重合体(B)を染色した後、0.1μm以下(約80nm)の超薄切片をウルトラミクロトームにより-196℃で切削し、透過型電子顕微鏡用サンプルを得る。海島構造の島相の平均直径を求める場合、前述の透過型電子顕微鏡用サンプルについて、正方形の電子顕微鏡観察写真に島相が50個以上100個未満存在するように、倍率を調整する。かかる倍率において、観察像に存在する島相から無作為に50個の島相を選択し、それぞれの島相について長径と短径を測定する。その長径と短径の平均値を各島相の直径とし、測定した全ての島相の直径の平均値を島相の直径とする。なお、島相の長径および短径とは、それぞれ島相の最も長い直径および最も短い直径を示す。
本発明の樹脂組成物における海島構造のポリエチレン共重合体(B)の島相の平均直径を上記の値とする方法は、特に限定されることはないが、例えばポリプロピレン樹脂(A)の溶融粘度(MFR)を8~20g/10minの範囲とすることや、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、前記ポリエチレン共重合体(B)を100重量部以上配合して溶融混練した後に、最終的な樹脂組成物の組成が所定の配合量になるようにポリプロピレン樹脂(A)をさらに溶融混練する方法などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物には、さらに高温時の寸法を安定させ、成形の際の型抜き時の変形を抑えることができる点で、融点もしくはガラス転移点のいずれかが200℃以上であるエンジニアリングプラスチック(C)を配合してなることが好ましい。
前記エンジニアリングプラスチック(C)の溶融粘度(MFR)は、エンジニアリングプラスチック(C)の分散性を向上し、機械物性とウェルド強度をさらに向上できる観点で、JISK7210(2014)に従い、エンジニアリングプラスチック(C)の融点もしくはガラス転移点の+20℃の温度で、2.16kg荷重で測定したMFRが10~30g/10minであることが好ましい。
前記エンジニアリングプラスチック(C)は、特に低温での柔軟性を高め、金属との密着性をより高められる点で、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、液晶性ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、およびポリエチレンテレフタレートの中から選ばれる少なくとも一つであることが好ましく、中でもポリブチレンテレフタレート樹脂であることがさらに好ましい。
本発明で用いる液晶性ポリエステル樹脂とは、溶融時に異方性を形成するポリエステル樹脂である。液晶性ポリエステル樹脂の構造単位としては、例えば、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位および芳香族イミノオキシ単位などが挙げられる。
本発明で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体とブタンジオールあるいはそのエステル形成性誘導体とを主成分とし、重縮合反応させる等の通常の重合方法によって得られる重合体である。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、その特性を損なわない範囲で、例えば、ポリブチレンテレフタレート100重量部に対して20重量部程度、他の共重合成分を含んでもよい。
共重合成分としては、ジカルボン酸化合物およびジオールが挙げられる。ジカルボン酸化合物として、例えばイソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、1,4-アントラセンジカルボン酸、1,5-アントラセンジカルボン酸、1,8-アントラセンジカルボン酸、2,6-アントラセンジカルボン酸、9,10-アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸化合物や、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸化合物などが挙げられる。
ジオール化合物としては、例えばエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオール等を挙げることができる。
これら重合体および共重合体の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/セバケート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレン/エチレンテレフタレート等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上混合してもよい。ここで、「/」は共重合体を表す。
本発明で用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂のカルボキシル基量は、残存カルボキシル基による成形時のピーク圧力の増加、滞留時の機械物性の低下を抑制する成形性の観点から、50eq/t以下であることが好ましく、30eq/t以下がより好ましい。カルボキシル基量の下限値は、0eq/tである。ここで、ポリブチレンテレフタレート樹脂のカルボキシル基量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂をo-クレゾール/クロロホルム溶媒に溶解させた後、エタノール性水酸化カリウムで滴定し測定した値である。
本発明で用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂は、o-クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が、0.60~1.60であるものが好ましく、特に0.80~1.30の範囲にあるものが好適である。固有粘度が0.60以上であると機械的特性が十分に得られ、一方、固有粘度が1.60以下とすることで成形性に優れる。
本発明のエンジニアリングプラスチック(C)の配合量は、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して1重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましい。配合量の上限は、機械物性を向上できる点で、60重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましく、40重量部以下が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物では、機械物性とウェルド強度を両立するために、ポリプロピレン樹脂(A)の海相内に、エンジニアリングプラスチック(C)の島相が平均直径5.0μm以下で分散していることが好ましい。エンジニアリングプラスチック(C)の島相の平均直径は、より好ましくは3.0μm以下であり、特に好ましくは2.0μm以下である。なお、エンジニアリングプラスチック(C)の島相の平均直径は小さいほど好ましいが、その下限値としては0.01μm程度である。
なお、本発明におけるエンジニアリングプラスチック(C)の島相の平均直径は、ポリエチレン共重合体(B)の島相の平均直径と同様の方法で求める。
本発明の樹脂組成物には、水蒸気バリア性を向上し、クリープ変形を抑制するため、さらに無機フィラーを配合することが好ましい。
前記の無機フィラーの具体例としては、例えば、繊維状、ウィスカー状、針状、粒状、粉末状および層状の無機フィラーが挙げられ、具体的には、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維や液晶性ポリエステル繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、針状酸化チタン、ガラスビーズ、ミルドファイバー、ガラスフレーク、ワラステナイト、シリカ、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの混合物、微粉ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、スメクタイト系粘土鉱物(モンモリロナイト、ヘクトライト)、バーミキュライト、マイカ、フッ素テニオライト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウム、およびドロマイトなどが挙げられる。本発明に使用する上記の無機フィラーは、その表面が公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理されていてもよい。また、本発明に使用する上記の無機フィラーは、2種以上を併用してもよい。
無機フィラーの平均粒径は、衝撃強度の点から0.1~200μmであることが好ましい。無機フィラーの樹脂中での分散性を向上できる点で、特に0.1μm以上であることが好ましく、機械強度の観点から200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、20μm以下が特に好ましい。
無機フィラーの配合量は、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して0.1重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましく、3重量部以上が特に好ましい。一方、20重量部以下が好ましく、15重量部以下がより好ましく、10重量部以下が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、難燃剤、離型剤、顔料、染料および帯電防止剤などの任意の添加剤を配合することができる。
離型剤としては、例えばモンタン酸やステアリン酸などの高級脂肪酸エステル系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、エチレンビスステアロアマイド系ワックスなどが挙げられる。離型剤を配合することで溶融加工時に金型からの離型性をよくすることができる。
離型剤の配合量は、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対し、0.01~1重量部が好ましい。離型性の観点から、0.03重量部以上がより好ましく、耐熱性の観点から0.6重量部以下がより好ましい。
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(A)と前記ポリエチレン共重合体(B)と、必要に応じて各種添加剤を予備混合して、溶融混練機に供給して溶融混練する方法、あるいは、重量フィダーなどの定量フィダーを用いて各成分を所定量溶融混練機に供給して溶融混練する方法などが挙げられる。溶融混練機としては、例えば“ユニメルト”あるいは“ダルメージ”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機、コニカル押出機およびニーダータイプの混練機などを用いることができる。
上記の予備混合の例として、ドライブレンドする方法や、タンブラー、リボンミキサーおよびヘンシェルミキサー等の機械的な混合装置を用いて混合する方法などが挙げられる。また、無機フィラーは、二軸押出機などの多軸押出機の元込め部とベント部の途中にサイドフィーダーを設置して添加してもよい。また、液体の添加剤の場合は、二軸押出機などの多軸押出機の元込め部とベント部の途中に液添ノズルを設置してプランジャーポンプを用いて添加する方法や、元込め部などから定量ポンプで供給する方法などを用いてもよい。
上記溶融混練する方法では、ポリエチレン共重合体(B)の島相の平均直径を小さくするために、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、前記ポリエチレン共重合体(B)を100重量部以上配合してあらかじめ溶融混練した後に、最終的な樹脂組成物の組成が所定の配合量になるようにポリプロピレン樹脂(A)をさらに加えて溶融混練することが好ましい。あらかじめ溶融混練する場合のポリエチレン共重合体(B)の配合量の上限は、400重量部程度であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、ペレット化して、成形加工に供することが好ましい。ペレット化の方法として、溶融混練機などを用いて溶融混練された樹脂組成物を、ストランド状に吐出し、ストランドカッターでカッティングする方法が挙げられる。
本発明の樹脂組成物を溶融成形することにより、各種形状の成形品を得ることができる。溶融成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形およびブロー成形などが挙げられ、射出成形が特に好ましく用いられる。
射出成形の方法としては、通常の射出成形方法以外にもガスアシスト成形、2色成形、サンドイッチ成形、インモールド成形、インサート成形およびインジェクションプレス成形などが知られているが、いずれの成形方法も適用できる。
本発明の樹脂組成物は、水蒸気透過係数が低い点が特徴であり、ASTM E 96 Bに従い求めた90℃での水蒸気透過係数が25g・mm/m・day以下であることが好ましい。係る特徴を有することで、シール部材として、特に内容物の腐食を防ぐことができるため、食品、化粧品、医薬等の包装材および容器、自動車の燃料のタンク部材、建材の配管部材、電気電子部品ケース部材、パッキン部材、ならびに配管継ぎ手や電池などに使われるガスケット部材の用途に好適に用いることができる。水蒸気透過係数が25g・mm/m・day以下であれば、水蒸気バリア性に優れ、リチウムイオン電池の内部活性物質の失活を防ぎ、長期にわたり特性を発現することができるため、リチウム電池用ガスケット部材の用途において好適に用いられる。なお、水蒸気透過係数は、ASTM E 96 Bに従い求めた、樹脂厚み1mmでの90℃熱風乾燥環境における値で評価する。水蒸気透過係数はより好ましくは23g・mm/m・day以下であり、特に好ましくは21g・mm/m・day以下である。なお、水蒸気透過係数の下限値は、1g・mm/m・dayである。水蒸気透過係数を上記の値とするための方法としては、そのような樹脂組成物を得られる限り限定はされないが、たとえばポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、前記ポリエチレン共重合体(B)の配合量を40重量部以下とし、さらに前記エンジニアリングプラスチック(C)の配合量を60重量部以下とすることが挙げられる。
また、本発明の樹脂組成物は、23℃環境下におけるISO527(2012)に従い評価した引張伸度が5%以上であることが好ましい。23℃環境下における引張伸度が5%以上であれば、延伸加工や曲げ加工、カシメ加工においても優れた加工性を有するため、シール部材として、特に電気電子部品ケース部材、パッキン部材、および配管継ぎ手や電池などに使われるガスケット部材の用途に好適に用いられる。23℃環境下における引張伸度は、より好ましくは10%以上であり、特に好ましくは20%以上である。23℃環境下での引張伸度の上限は300%である。
また、本発明の樹脂組成物は、-40℃環境下でのISO527(2012)に従い評価した引張伸度が10%以上であることが好ましい。-40℃環境下での引張伸度が10%以上であれば、低温環境下でもクラックを抑制することができ、シール部材として、特に電気電子部品ケース部材、パッキン部材、および配管継ぎ手や電池などに使われるガスケット部材の用途に好適に用いられる。-40℃環境下での引張伸度は、より好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは15%以上であり、特に好ましくは20%以上である。-40℃環境下での引張伸度の上限は300%である。引張伸度を上記の値とするための方法としては、そのような樹脂組成物を得られる限り限定はされないが、たとえばポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、前記ポリエチレン共重合体(B)としてα-オレフィン-エチレン共重合体(b1)を5重量部以上、メタクリル酸グリシジル-エチレン共重合体(b2)を5重量部以上配合し、さらにエンジニアリングプラスチック(C)を配合することが挙げられる。
また、本発明の樹脂組成物は、-40℃環境下でのISO527(2012)に従い評価した引張弾性率が2.2GPa以下であることが好ましい。-40℃環境下での引張弾性率が2.2GPa以下であれば、低温環境下でも金属などの他部材との密着性を高めることができ、シール部材として、特に電気電子部品ケース部材、パッキン部材、および配管継ぎ手や電池などに使われるガスケット部材の用途に好適に用いられる。-40℃環境下での引張弾性率はより好ましくは2.0GPa以下であり、特に好ましくは1.8GPa以下である。-40℃環境下での引張弾性率の下限は1.0GPaである。引張弾性率を上記の値とするための方法としては、そのような樹脂組成物を得られる限り限定はされないが、たとえばポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、前記ポリエチレン共重合体(B)10重量部以上配合し、さらにエンジニアリングプラスチック(C)を配合することが挙げられる。
本発明の成形品は、機械物性および耐熱性、さらに水蒸気バリア性に優れる特徴を活かして、シール部材として好適に用いることができる。
シール部材の具体例として、食品、化粧品、医薬等の包装材および容器、自動車の燃料のタンク部材、建材の配管部材、電気電子部品ケース部材、パッキン部材、ならびに配管継ぎ手や電池などに使われるガスケット部材が挙げられる。
特に本発明の樹脂組成物では、機械物性および耐熱性に優れるため、電池ガスケットとしての使用に適している。
次に、実施例により本発明の熱可塑性樹脂組成物について具体的に説明する。ここで%および部とは、すべて重量%および重量部を表し、下記の樹脂名中の「/」は共重合を意味する。
[各特性の測定方法]
各実施例および比較例においては、次に記載する測定方法によって、その特性を評価した。
1.海島構造の電子顕微鏡観察(島相の平均直径)
日精樹脂工業株式会社製NEX1000射出成形機を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の温度条件で、射出時間と保圧時間は合わせて15秒、冷却時間15秒の成形サイクル条件で、試験片厚み約4mmのISOダンベルのモルフォロジー観察用試験片を得た。モルフォロジー観察用試験片の断面方向中心部を1~2mm角に切削し、四酸化ルテニウムで前記ポリエチレン共重合体(B)を染色した後、0.1μm以下(約80nm)の超薄切片をウルトラミクロトームにより-196℃で切削し、透過型電子顕微鏡用サンプルを得た。透過型電子顕微鏡用サンプルについて、正方形の電子顕微鏡観察写真に島相が50個以上100個未満存在するように、倍率を調整した。かかる倍率において、観察像に存在する島相から無作為に50個の島相を選択し、それぞれの島相について長径と短径を測定した。その長径と短径の平均値を各島相の直径とし、測定した全ての島相の直径の平均値を島相の平均直径とした。なお、島相の長径および短径とは、それぞれ島相の最も長い直径および最も短い直径を示す。前記ポリエチレン共重合体(B)の島相の平均直径は3.0μm以下で分散していることが優れていると判断し、より好ましくは2.0μm以下であり、特に好ましくは1μm以下であると優れていると判断した。同じ方法で、エンジニアリングプラスチック(C)の島相の平均直径も求めた。前記エンジニアリングプラスチック(C)の島相の平均直径は5.0μm以下で分散していることが優れていると判断し、より好ましくは3.0μm以下であり、特に好ましくは2.0μm以下であると優れていると判断した。前記ポリエチレン共重合体(B)および前記エンジニアリングプラスチック(C)の島相の平均直径の下限は0.01μmである。
2.23℃環境下での機械物性(引張強度、引張伸度、および引張弾性率)
樹脂組成物を、日精樹脂工業株式会社製NEX1000射出成形機を用いて、上記1.項のモルフォロジー観察用試験片と同一の射出成形条件で、試験片厚み約4mmのISOダンベルの引張物性評価用試験片を得た。得られた引張物性評価用試験片を用い、23℃環境下でISO527(2012)に従い、引張最大点強度(引張強度)、引張最大点伸び(引張伸度)、および引張弾性率を測定した。値は3本の測定値の平均値とした。引張強度の値が20MPa以上だと優れ、25MPa以上だとより優れると判断した。また、引張伸度の値が5%以上だと機械物性に優れていると判断し、10%以上でより優れ、20%以上だと特に優れていると判断した。また、引張弾性率は2.2GPa以下だと優れていると判断し、2.0GPa以下でより優れ、1.8GPa以下でより優れると判断した。
3.-40℃環境下での機械物性(引張強度および引張伸度、引張弾性率)
日精樹脂工業株式会社製NEX1000射出成形機を用いて、上記2.項の機械物性評価用試験片と同一の射出成形条件で、試験片厚み約4mmのISOダンベルの引張物性評価用試験片を得た。得られたISOダンベルを(株)島津製作所製恒温槽TCR-1内で-40℃に温度調整した低温環境下で、ISO527(2012)に従い、引張最大点強度(引張強度)、引張最大点伸び(引張伸度)、および引張弾性率を測定した。値は3本の測定値の平均値とした。引張強度の値が20MPa以上だと優れ、25MPa以上だとより優れると判断した。また、引張伸度の値が5%以上だと機械物性に優れていると判断し、10%以上でより優れ、15%以上だとさらに優れ、20%以上だと特に優れていると判断した。また、引張弾性率は2.2GPa以下だと優れていると判断し、2.0GPa以下でより優れ、1.8GPa以下でより優れると判断した。
4.ウェルド強度
日精樹脂工業株式会社製NEX1000射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃の温度条件で、射出時間と保圧時間は合わせて15秒、冷却時間15秒のサイクル条件、成形圧力は成形下限圧力に10MPa足した保圧条件にて、両端にゲートを有するASTM1号ダンベル片の両端から樹脂組成物を射出し、中央部にウェルド部を有する試験片を得た。この試験片を用い、チャック間距離114mm、歪み速度5mm/分の速度で引張試験を行い、破断強度をウェルド強度とした。ウェルド強度は15MPa以上が優れると判断し、18MPa以上がより優れ、20MPa以上が特に優れると判断した。
5.水蒸気バリア性
日精樹脂工業株式会社製NEX1000射出成形機を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の温度条件で、射出時間と保圧時間は合わせて15秒、冷却時間15秒の成形サイクル条件で、試験片厚み約1mm、縦横80mmの角板試験片を得た。得られた角板試験片から直径65mmの水蒸気透過試験片を作成し、ASTM E 96 Bに従い、エスペック株式会社製熱風乾燥機PVH201を用い、90℃の環境内に500時間暴露後の重量変化より水蒸気透過量を計算し、下記式より水蒸気透過係数を算出した。水蒸気透過係数は25g・mm/m・day以下が水蒸気バリア性に優れ、23g・mm/m・day以下がより優れ、21g・mm/m・day以下が特に優れると判断した。
水蒸気透過係数(g・mm/m・day)=水蒸気透過量×厚み(mm)/透過面積(m)/処理時間(day)
6.低温および高温での金属密着性(耐冷熱サイクル性)
日精樹脂工業株式会社製NEX1000射出成形機を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃の条件で、大きさが縦47mm、横47mm、高さ27mmで、材質がS35Cの鉄芯をインサート成形用の金型に設置し、樹脂厚み1.5mmで被覆した成形品を、ESPEC(株)製TSA-73EL-A冷熱試験機を用いて-40℃×1hで処理後、80℃×1hで処理することを1サイクルとする条件で、1サイクル毎に成形品の観察を行い、クラックが発生するサイクル回数を測定した。クラックが発生するサイクル回数が5サイクル以上で耐冷熱サイクル性に優れると判断し、10サイクル以上でより優れ、15サイクル以上で特に優れると判断した。
7.耐湿熱環境性
日精樹脂工業株式会社製NEX1000射出成形機を用いて、2.項の機械物性評価用試験片と同一の射出成形条件で、試験片厚み約4mmのISOダンベルの引張物性評価用試験片を得た。得られたISOダンベルを121℃×100%RHの温度と湿度に設定されたエスペック(株)社製高度加速寿命試験装置EHS-411に投入し、50時間湿熱処理を行った。湿熱処理後の成形品について、上記2.項の引張試験と同一の条件で引張最大点強度を測定し、3本の測定値の平均値を求めた。湿熱処理後の引張最大点強度と湿熱処理未処理の引張最大点強度から、下記式により引張強度保持率を求めた。
引張強度保持率(%)=(湿熱処理後の引張最大点強度÷湿熱処理前の引張最大点強度)×100
引張強度保持率が50%未満の材料は耐加水分解性に劣ると判断し、引張強度保持率の数字が大きい材料ほど耐加水分解性に優れており、耐湿熱環境性に優れていると判断した。
8.成形品の寸法安定性(ソリ量)
日精樹脂工業株式会社製NEX1000射出成形機を用いて、金型温度80℃の温度条件で、射出時間と保圧時間は合わせて15秒、冷却時間15秒の成形サイクル条件で、試験片厚み1mmの80mm×80mm角板を得た。得られた角板のいずれか一点の角を定盤上で押さえた際の、対角の浮き上がり量をそり量として評価した。そり量が小さいほど低そり性に優れるとし、5mm以下がより優れ、3mm以下が特に優れると判断した。
実施例および比較例に用いられる原料を次に示す。
ポリプロピレン樹脂(A)
(A-1)(株)日本ポリプロ製ホモポリプロピレン樹脂、MA3、MFR11g/10minを用いた。
(A-2)(株)サンアロマー製ホモポリプロピレン樹脂、PM801A、MFR13g/10minを用いた。
(A-3)(株)プライムポリマー製ホモポリプロピレン樹脂、J106M、MFR15g/10minを用いた。
(A-4)(株)サンアロマー製ホモポリプロピレン樹脂、PM802A、MFR20g/10minを用いた。
(A-5)(株)プライムポリマー製ホモポリプロピレン樹脂、J107M、MFR30g/10minを用いた。
(A-6)(株)プライムポリマー製ホモポリプロピレン樹脂、E111G、MFR0.5g/10minを用いた。
(A-7)(株)プライムポリマー製ブロックポリプロピレン樹脂、J-750HP、MFR14g/10minを用いた。
ポリエチレン共重合体(B)
(B-1)エチレン/ブテン共重合体((b1)に該当する):三井化学(株)“タフマー”(登録商標)4085S
(B-2)結晶性エチレンブロック/非晶性エチレン・ブテンブロック共重合体((b1)に該当する):JSR(株)“ダイナロン”(登録商標)6200P
(B-3)エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体((b2)に該当する):住友化学(株)製、“ボンドファースト”(登録商標)BF-2C
(B-4)無水マレイン酸-エチレン共重合体((b1)および(b2)のいずれにも該当しない):DOW(株)製、“BYNEL”(登録商標)40E1053
エンジニアリングプラスチック(C)
(C-1)液晶性ポリエステル樹脂:以下の条件で製造した液晶性ポリエステル樹脂を用いた。
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸899重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸163重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート216重量部および無水酢酸960重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、145℃から320℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を320℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を直径10mmの円形吐出口を1つ有する口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶性ポリエステル樹脂(C-1)を得た。この液晶ポリエステル樹脂について組成分析を行ったところ、p-ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位の割合が57.7モル%、4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位の割合が6.3モル%、ポリエチレンテレフタレート由来のエチレンジオキシ単位の割合が19.4モル%、テレフタル酸由来の構造単位の割合が16.7モル%であった。また融点は280℃であり、300℃でのMFRが29g/10minであった。
(C-2)ポリブチレンテレフタレート樹脂:東レ(株)製、融点が225℃で245℃でのMFRが18g/10minのポリブチレンテレフタレート樹脂を用いた。
エンジニアリングプラスチック(C)以外の樹脂(C’)
(C’-1)ホモポリエチレン樹脂:プライムポリマー製、“ハイゼックス”1300J、MFR12g/10minを用いた。
[実施例1~16、比較例1~6]
スクリュー径30mm、L/Dが35の同方向回転ベント付き二軸押出機(日本製鋼所製、TEX-30α)を用いて、ポリプロピレン樹脂(A)、ポリエチレン共重合体(B)、およびエンジニアリングプラスチック(C)を表1、表2および表3に示した組成で混合した後、二軸押出機の元込め部から添加した。混練温度260℃、スクリュー回転150rpmの押出条件で溶融混合を行い、得られた樹脂組成物をストランド状に吐出し、冷却バスを通して固化させた後、ストランドカッターによりペレット化した。
得られたペレットを110℃の温度の熱風乾燥機で6時間乾燥後、前記方法で評価し、表1、表2および表3にその結果を示した。
[実施例17]
スクリュー径30mm、L/Dが35の同方向回転ベント付き二軸押出機(日本製鋼所製、TEX-30α)を用いて、まずポリプロピレン樹脂(A-5)100重量部に対して、エチレン/ブテン共重合体(B-1)200重量部を混合した後、係る混合物を二軸押出機の元込め部から3kg/hのフィード速度で添加し、さらに元込め部とベント部の途中に設置したサイドフィーダーから、最終的に表2に示す組成となるように、ポリプロピレン樹脂(A-5)を7kg/hのフィード速度で添加した。混練温度260℃、スクリュー回転150rpmの押出条件で溶融混合を行い、最終的に表2に示す組成とした樹脂組成物をストランド状に吐出し、冷却バスを通して固化させた後、ストランドカッターによりペレット化した。
得られたペレットを110℃の温度の熱風乾燥機で6時間乾燥後、前記方法で評価し、表2にその結果を示した。
Figure 2023033951000001
Figure 2023033951000002
Figure 2023033951000003
実施例1~10、16、17と比較例1~6との比較より、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、ポリエチレン共重合体(B)を1~40重量部配合し、ポリエチレン共重合体(B)の島相の平均直径が3μm以下の樹脂組成物が、室温および-40℃環境下での機械物性、ウェルド強度、水蒸気バリア性、耐冷熱サイクル性、ならびに低そり性のバランスに優れることがわかった。
実施例11、12、13、14と実施例10および比較例3、4との比較により、さらに融点もしくはガラス転移点が200℃以上のエンジニアリングプラスチック(C)をポリプロピレン樹脂(A)100重量部に1~60重量部配合した樹脂組成物が、さらに-40℃環境下での機械物性、ウェルド強度、水蒸気バリア性、耐冷熱サイクル性、低そり性のバランスにより優れることがわかった。
実施例12と実施例11の比較より、前記エンジニアリングプラスチック(C)がポリブチレンテレフタレート樹脂である樹脂組成物が、さらに-40℃環境下での機械物性、水蒸気バリア性、耐冷熱サイクル性、低そり性、のバランスにより優れることがわかった。
実施例11~15と比較例3、4の比較より、エンジニアリングプラスチック(C)の島相の平均直径が5μm以下であると、ウェルド強度に優れることがわかった。
実施例4、7、8と実施例9との比較より、ポリエチレン共重合体(B)がα-オレフィン-エチレン共重合体(b1)およびメタクリル酸グリシジル-エチレン共重合体(b2)から選択されるいずれかである樹脂組成物が、さらに室温および-40℃環境下での機械物性、水蒸気バリア性に優れることがわかった。
実施例10と実施例4、8の比較より、ポリエチレン共重合体(B)がαオレフィン-エチレン共重合体(b1)とメタクリル酸グリシジル-エチレン共重合体(b2)であり、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、(b1)成分および(b2)成分それぞれの配合量が5~20重量部である樹脂組成物が、さらに-40℃環境下での機械物性、耐冷熱サイクル性のバランスに優れることがわかった。
実施例17と比較例5との比較より、先にポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、前記ポリエチレン共重合体(B)を100重量部以上配合して溶融混練した後に、所定の配合量になるようにポリプロピレン樹脂(A)をさらに加えて溶融混練することで、前記ポリエチレン共重合体(B)の島相の平均直径を3.0μm以下とすることができ、室温および-40℃環境下での機械物性、ウェルド強度、水蒸気バリア性、耐冷熱サイクル性、ならびに低そり性のバランスに優れる樹脂組成物をことがわかった。

Claims (13)

  1. ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、ポリエチレン共重合体(B)1~40重量部を配合してなり、前記ポリプロピレン樹脂(A)の海相内に前記ポリエチレン共重合体(B)の島相が平均直径3.0μm以下で分散している樹脂組成物。
  2. 前記ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、さらに融点もしくはガラス転移点のいずれかが200℃以上であるエンジニアリングプラスチック(C)1~60重量部を配合してなる請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記エンジニアリングプラスチック(C)がポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、液晶ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレートから選ばれる少なくとも一つである請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記ポリプロピレン樹脂(A)の海相内に、前記エンジニアリングプラスチック(C)の島相が平均直径5.0μm以下で分散している請求項2または3に記載の樹脂組成物。
  5. 前記エンジニアリングプラスチック(C)がポリブチレンテレフタレートである請求項2~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
  6. 前記ポリエチレン共重合体(B)がα-オレフィン-エチレン共重合体(b1)およびメタクリル酸グリシジル-エチレン共重合体(b2)から選ばれる少なくとも一つである請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
  7. 前記ポリエチレン共重合体(B)がα-オレフィン-エチレン共重合体(b1)およびメタクリル酸グリシジル-エチレン共重合体(b2)であり、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対して、α-オレフィン-エチレン共重合体(b1)を5~20重量部、およびメタクリル酸グリシジル-エチレン共重合体(b2)を5~20重量部配合してなる請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
  8. ASTM E 96 Bに従い求めた90℃での水蒸気透過係数が25g・mm/m・day以下である請求項1~7のいずれかに記載の樹脂組成物。
  9. ISO527(2012)に従い評価した-40℃環境下での引張伸度が10%以上である請求項1~8のいずれかに記載の樹脂組成物。
  10. ISO527(2012)に従い評価した-40℃環境下での引張弾性率が2.2GPa以下である請求項1~9のいずれかに記載の樹脂組成物。
  11. 請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を溶融成形してなる成形品。
  12. 請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を溶融成形してなるシール部材。
  13. 請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を溶融成形してなる電池ガスケット。
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