JP2023033910A - 硬化性高分子化合物を含む樹脂組成物 - Google Patents

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成生 林本
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Abstract

【課題】フィルム化できる十分なフレキシビリティーを有し、低粗度銅箔に対する接着性が高く、誘電率及び誘電正接が低く、かつ線膨張率の低い硬化物となる組成物の提供。【解決手段】式(1)で表される高分子化合物、スチレンとブタジエンの共重合体若しくはスチレンとブタジエンの共重合体の水素添加物及びラジカル開始剤を含む樹脂組成物。TIFF2023033910000007.tif7066【選択図】なし

Description

本発明は、溶液を基材中にキャストする方法で容易にフィルム状に成形することができ、ラジカル開始剤と併用することにより、熱あるいは光硬化反応が可能で、しかもその硬化物は線膨張率が低く、誘電特性及び接着性に優れる樹脂組成物に関する。
フェノキシ樹脂は二官能のエポキシ樹脂と二官能のフェノール化合物を重合することにより得られる分子量の非常に大きな高分子化合物である。このフェノキシ樹脂を添加することにより、一般的なエポキシ樹脂組成物やラジカル重合性組成物をフィルム形状にすることができるため、フィルム状接着剤の重要な成分として幅広い分野で使用されており、特に電気・電子分野においてはプリント配線基板の層間絶縁層や樹脂付き銅箔などに用いられている。
フェノキシ樹脂を添加した樹脂組成物の硬化物は接着性に優れフィルム形成能は有するものの耐熱性が低く、しかも誘電率及び誘電正接が高いため(周波数1GHzで誘電率3.5、誘電正接0.03程度である。)、近年の信号応答速度が高速化した電子機器用途には使用できないのが実情である。誘電特性に優れた樹脂としてはポリテトラフルオロエタン(PTFE)などの高分子フッ素化合物(特許文献1)や液晶ポリマー(特許文献2)が一般に知られているが、これらの樹脂は他の樹脂との相溶性が極めて低く、接着性も不充分である。特許文献3には、70重量%以下の1個のエチレン性不飽和基を有する単量体と30重量%以上の1個以上の脂肪族水酸基を有する(メタ)アクリレートとのランダム共重合体中の脂肪族水酸基に、1個以上のエチレン性不飽和基と1個のカルボキシ基を有する単量体をエステル化反応させて得られる硬化性高分子化合物が記載されているが、本発明者が追試したところ、同文献の構造式で得られた硬化性高分子化合物の硬化物は、10GHzの誘電正接がいいものでも0.005前後であり、現在の高周波回路基板用途に求められる低誘電特性を充分に満たすものではない。
特開2005-001274号公報 特開2014-060449号公報 特開平10-017812号公報
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、フィルム化できるだけの十分なフレキシビリティーを有し、低粗度銅箔に対する接着性が高く、誘電率及び誘電正接が低く、かつ線膨張率の低い硬化物となる組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、特定構造の高分子化合物、平均粒径が0μmを超えて10μm以下のフッ素樹脂の微粒子及びラジカル開始剤を含む樹脂組成物が上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
即ち本発明は、
(1)下記式(1)
Figure 2023033910000001
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。m及びnは繰り返し単位数の平均値であってそれぞれ独立に1乃至2,000の範囲にある。)で表される高分子化合物、平均粒径が0μmを超えて10μm以下のフッ素樹脂の微粒子及びラジカル開始剤を含む樹脂組成物、
(2)前項(1)に記載の樹脂組成物からなるフィルム状接着剤、及び
(3)前項(1)に記載の樹脂組成物、又は前項(2)に記載のフィルム状接着剤の硬化物、
に関する。
本発明の樹脂組成物は熱或いは光エネルギーを加えることにより硬化物とすることが可能であり、該硬化物は線膨張係数が低く、誘電特性及び接着性に優れるという効果を奏する。
以下に、本発明の実施形態について説明する。
本発明の樹脂組成物の必須成分である式(1)で表される高分子化合物は、フェノール性水酸基を有する(メタ)アクリレートとスチレンとのランダム共重合体(以下、単に「共重合体」とも記載する)である中間原料と、(メタ)アクリル酸クロライドとの脱塩酸反応物である。尚、前記の合成方法は一例であって、式(1)で表される高分子化合物の合成方法はこれに限定されるものではない。
先ず、共重合体(中間原料)について説明する。
共重合体の原料であるフェノール性水酸基を有する(メタ)アクリレートは、一分子中にフェノール性水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物でありさえすれば特に限定されず、例えば4-ヒドロキシフェニルメタクリレート、2-ヒドロキシフェニルメタクリレート、3-ヒドロキシフェニルメタクリレート、4-ヒドロキシフェニルアクリレート、2-ヒドロキシフェニルアクリレート、3-ヒドロキシフェニルアクリレートなどが挙げられるが、4-ヒドロキシフェニルメタクリレートが好ましい。
尚、本明細書において「(メタ)アクリレート」との記載は「アクリレート及びメタクリレート」の両者を意味する。
下記式(2)は、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレートとスチレンとのランダム共重合体の構造式であり、式(2)中のR、m及びnは式(1)におけるR、m及びnと同じ意味を表す。本発明の樹脂組成物が含有する式(1)で表される高分子化合物(式(1)で表される構造を有する高分子化合物)としては、下記式(2)で表される共重合体を中間原料とする高分子化合物が好ましい。
Figure 2023033910000002
フェノール性水酸基を有する(メタ)アクリレートとスチレンとの共重合方法は、公知の共重合方法であれば特に限定されず、例えば塊状重合、溶液重合、乳化重合及び懸濁重合などが挙げられる。
溶液重合に使用可能な溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド及びγ-ブチロラクトンなどが挙げられる。乳化重合及び懸濁重合には通常水と界面活性剤が用いられ、水中で原料成分を乳化あるいは懸濁した状態で共重合反応が行われる。
共重合反応はラジカル重合、カチオン重合及びアニオン重合のいずれであっても構わない。ラジカル重合の場合は、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。ラジカル重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、過酸化水素、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド及びベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の配合量は、共重合体の原料成分100質量部に対して通常0.001乃至5質量部である。重合温度は通常50乃至250℃、好ましくは60乃至200℃であり、重合時間は通常0.5乃至30時間、好ましくは1乃至20時間である。ラジカル重合反応は空気中の酸素に重合阻害を防ぐために、窒素ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
カチオン重合開始剤の具体例としては、硫酸及び塩酸等の無機酸、CFCOOH及びCClCOOH等の有機酸、CFSOH及びHClO等の超強酸が挙げられる。またアニオン重合開始剤の具体例としては、ブチルリチウム、Na-ナフタレン錯体、アルカリ金属、アルキルリチウム化合物、ナトリウムアミド、グリニャール試薬及びリチウムアルコキシド等が挙げられる。しかしながら、カチオン重合やアニオン重合に使用されるイオン性の開始剤は、重合反応後も共重合体中に残存して誘電特性や絶縁性に悪影響を及ぼす懸念があるため、高分子化合物の中間原料となる共重合体の合成は、ラジカル重合で行うことが好ましい。
カチオン重合開始剤又はアニオン重合開始剤の配合量は、共重合体の原料成分100質量部に対して通常0.01乃至5質量部である。重合温度は通常40乃至150℃、好ましくは50乃至120℃であり、重合時間は通常0.5乃至20時間、好ましくは1乃至15時間である。
共重合体の数平均分子量は通常3,000乃至300,000であり、好ましくは5,000乃至200,000である。
数平均分子量が前記の範囲内の共重合体を得るためには、共重合体を合成する際の開始剤の使用量を適切な量に調整することが好ましい。数平均分子量が前記の範囲内の共重合体を得るために必要な開始剤の量は、フェノール性水酸基を有する(メタ)アクリレートの種類や共重合反応に用いる水酸基を有する(メタ)アクリレートとスチレンの量にもよるので一概には言えないが、開始剤の量を減ずると分子量の大きな共重合体が得られることが一般に知られており、上記した配合量の範囲内で所望の分子量の共重合体が得られる開始剤の配合量を選択すればよい。
共重合体を合成する際のフェノール性水酸基を有する(メタ)アクリレートとスチレンの使用割合は特に限定されないが、スチレンの使用量(質量)はフェノール性水酸基を有する(メタ)アクリレートの質量の通常4乃至99.5倍、好ましくは4.5乃至99.7倍である。共重合体の原料となるフェノール性水酸基を有する(メタ)アクリレートとスチレンの使用割合を前記の範囲とすることにより、その硬化物が優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)を発現する高分子化合物が得られる。
本発明に用いられる高分子化合物は、前記の共重合体が有するフェノール性水酸基(この水酸基は、原料であるフェノール性水酸基を有する(メタ)アクリレートが有していた水酸基である)と、(メタ)アクリル酸クロライドが有するクロリド基との脱塩酸反応により得られる。
本発明に用いられる高分子化合物を合成する際の共重合体と(メタ)アクリル酸クロライドの使用割合は特に限定されないが、共重合体の有する水酸基に対する(メタ)アクリル酸クロライドが過剰な場合や不足する場合は、高分子化合物中に未反応のまま残存する(メタ)アクリル酸クロライドや(メタ)アクリル酸クロライドと反応せずに残る水酸基が硬化物の諸特性に悪影響をもたらす可能性があるため、共重合体の有する水酸基と等当量の(メタ)アクリル酸クロライドを使用することが好ましい。
共重合体と(メタ)アクリル酸クロライドとの反応は、共重合体の有機溶剤溶液中に、撹拌下で(メタ)アクリル酸クロライドを添加して反応させればよい。ここで用い得る有機溶剤は共重合体及び(メタ)アクリル酸クロライドを溶解し得るものであれば特に限定されず、中間原料となる共重合体を溶剤中で合成した場合は、重合反応後の共重合体溶液をそのまま用いてもよい。(メタ)アクリル酸クロライドとの反応に供する共重合体溶液の濃度は通常10乃至90質量%、好ましくは20乃至80質量%である。また、反応温度は通常30乃至120℃、好ましくは40乃至110℃であり、反応時間は通常0.5乃至4時間、好ましくは1乃至3時間である。
共重合体と(メタ)アクリル酸クロライドとの反応は脱塩酸反応であるため、発生する塩酸をトラップし更に反応を促進するために、反応溶液中にあらかじめトリエチルアミンあるいはピリジンのような3級アミンを添加しておくことが好ましい。3級アミンの使用量は(メタ)アクリル酸クロライドと等モル乃至4倍モルが好ましく、等モル乃至3倍モルがより好ましい。反応時に発生する塩酸は、アミンの塩酸塩として析出するため、反応後濾過により除去することができる。また過剰の3級アミンは濾過後加熱減圧下で系外に留去することができる。
また、本発明に用いられる高分子化合物中の(メタ)アクリロイル基同士の重合反応を防ぎ、高分子化合物の保存安定性を向上させるために、合成反応終了後の高分子化合物溶液に重合禁止剤を少量加えておくことが好ましい。重合禁止剤の具体例としては、ハイドロキノン、パラメトキシフェノール、メチルハイドロキノン、ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン、t-ブチルハイドロキノン、2-t-ブチル-1,4-ベンゾキノン、1,4-ベンゾキノン、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジルフリーラジカル、6-t-ブチル-2,4-キシレノール、4-t-ブチルピロカテコール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール及びフェノチアジン等が挙げられる。
こうして得られた本発明に用いられる高分子化合物の数平均分子量の範囲は、好ましくは11,000乃至300,000、より好ましくは15,000乃至200,000である。前記の範囲よりも分子量が小さい場合は低粗度銅箔に対する接着性が低くなり、大きい場合は粘度が高くなり塗工等が困難となることがある。
尚、本明細書における分子量は、GPCの測定結果に基づいてポリスチレン換算で算出した値を意味する。
本発明の樹脂組成物は、ラジカル開始剤を含有する。
好ましい熱ラジカル開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド及びトリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。
好ましい光ラジカル開始剤の例としてはベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オンや2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1;アシルホスフィンオキサイド類およびキサントン類等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物におけるラジカル開始剤の含有量は、高分子化合物及び後述する任意成分であるラジカル反応性モノマー等の樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.1乃至10質量部、好ましくは0.1乃至8質量部である。
本発明の樹脂組成物はフッ素樹脂の微粒子を含有する。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエタン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン-テトラフルエチレンコポリマー(ETFE)、パーフルオロエチレン-プロペンコポリマー(FEP)などが挙げられるが、特にポリテトラフルオロエチレンの微粒子が好ましい。微粒子の平均粒径は、接着性を向上させ線膨張率を低減させる点で0μmを超えて10μm以下が好ましい。フッ素樹脂微粒子の製造方法は、フッ素樹脂のブロックを微粉砕して分級してもよく、フッ素含有モノマーの乳化重合などによって微粒子状に合成してもよい。
本発明の樹脂組成物におけるフッ素樹脂微粒子の含有量は、式(1)で表される高分子化合物及び後述する任意成分であるラジカル反応性モノマー等の樹脂成分の合計100質量部に対して通常3乃至40質量部、好ましくは5乃至30質量部である。樹脂成分に対するフッ素樹脂微粒子の含有量を前記の範囲とすることにより、本発明の樹脂組成物の硬化物の優れた諸特性が発現する。フッ素樹脂は一般に誘電特性には優れるものの、金属などの基材に対する接着性が乏しく、更に線膨張率が極めて高いため、プリント配線基板のような、銅箔に対する高い接着性と寸法安定性が要求される分野においては使用方法が極めて限定されていた。しかしながら本発明においては、前記式(1)で表される高分子化合物と特定の粒子径を有するフッ素樹脂微粒子を併用することにより、優れた誘電特性を発現しながら、更に銅箔に対する接着性が向上し、線膨張率が低下するという効果が得られる。
本発明の樹脂組成物には、有機溶剤を併用してもよい。有機溶剤の具体例としては、トルエン及びキシレン等の芳香族系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート及びプロピレングリコールモノブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトン等のラクトン類、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド及びN,N-ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、等が挙げられる。本発明の樹脂組成物における有機溶剤の含有量は、樹脂組成物中に通常90質量%以下、好ましくは30乃至80質量%である。
本発明の樹脂組成物にはラジカル反応性のモノマーを併用してもよい。
併用し得るラジカル反応性のモノマーは、ラジカルの作用により式(1)で表される高分子化合物と共重合し得る官能基を有するものであれば特に限定されないが、例えばアクリレートモノマー及びメタクリレートモノマー等の不飽和二重結合基を有する化合物が挙げられる。
本発明の樹脂組成物におけるラジカル反応性のモノマー含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、樹脂組成物の固形分(有機溶剤以外の樹脂組成物の構成成分)に対して通常50質量%以下である。
本発明の樹脂組成物には、保存安定性を向上させるために重合禁止剤を併用してもよい。併用し得る重合禁止剤は一般に公知のものであれば特に限定されず、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、クロラニル及びトリメチルキノン等のキノン類や、芳香族ジオール類、ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、その用途に応じて所望の性能を付与させる目的で本来の性能を損なわない範囲の量の充填剤や添加剤を配合して用いることができる。充填剤は繊維状であっても粉末状であってもよく、シリカ、カーボンブラック、アルミナ、タルク、雲母、ガラスビーズ、ガラス中空球等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物には、難燃性化合物、添加剤などの併用も可能である。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、難燃性の化合物では、4,4-ジブロモビフェニルなどの臭素化合物、リン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂、メラミンやベンゾグアナミンなどの窒素化合物、オキサジン環含有化合物、シリコン系化合物等が挙げられる。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤等、所望に応じて適宜組み合わせて使用することも可能である。
本発明の樹脂組成物は、さまざまな基材上に塗布あるいは含浸して使用することができる。例えば熱ラジカル開始剤を用いた場合、PETフィルム上に塗布することにより多層プリント基板の層間絶縁層として、ポリイミドフィルム上に塗布することによりカバーレイとして、また銅箔上に塗布乾燥することにより樹脂付き銅箔として、使用することができる。またガラスクロスやガラスペーパー、カーボンファイバー、各種不織布などに含浸させることにより、プリント配線基板やCFRPのプリプレグとして使用することができる。さらに光ラジカル開始剤を用いることにより各種レジストとして使用することもできる。
本発明の層間絶縁層やカバーレイ、樹脂付き銅箔、プリプレグなどはホットプレス機などで加温加圧成形することにより、硬化物とすることができる。
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
合成例1(式(1)で表される高分子化合物の合成)
(工程1)下記式(3)で表される共重合体(共重合体1)の合成
温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、スチレン38.5部、ハイドロキノンモノメタクリレート1.5部、過酸化ベンゾイル0.4部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)10部を加え、窒素雰囲気下120乃至130℃で5時間反応させることにより、下記式(3)で表される共重合体1のPGMEA溶液を得た。前記PEGMEA溶液の一部を減圧下で加温して溶剤と未反応スチレンを除去した乾燥質量を固形分量として算出した共重合体1の得量は34.2部であり、未反応スチレンが5.8部だったことを考慮すると、得られた共重合体はスチレン32.7部とハイドロキノンモノメタクリレート1.5部の共重合物であった。また、前記乾燥質量の測定に供したサンプルの数平均分子量は38,000、重量平均分子量は161,000であった。スチレンとハイドロキノンモノメタクリレートの共重合比と数平均分子量から式(3)におけるnの値は361、mの値は9と算出される。
Figure 2023033910000003
(工程2)下記式(4)で表される高分子化合物(高分子化合物1)の合成
工程1で得られた共重合体1のPGMEA溶液から、未反応のスチレンを加熱減圧下でPGMEAと共に留去した後、PGMEAを追加して共重合体1の25質量%溶液138部を得た。この溶液中にトリエチルアミン5部を加え、撹拌下60℃で、メタクリル酸クロライド0.876部を加え1時間反応させた。反応液を補足粒子径1ミクロンの濾紙で加圧濾過してトリエチルアミン塩酸塩を除去し、濾過液からロータリエバポレーターによって、過剰のトリエチルアミンおよびPGMEAを留去し、PGMEAの量を調節することにより、下記式(4)で表される高分子化合物(高分子化合物1)を25質量%含む溶液139部を得た。得られた高分子化合物1の数平均分子量は40,000、重量平均分子量は164,000であった。
Figure 2023033910000004
実施例1(本発明の樹脂組成物の調製)
実施例1で得られた高分子化合物1のPGMEA溶液20部に、ラジカル開始剤としてジクミルパーオキサイド0.1部、平均粒径8μmのテフロン(登録商標)の微粒子(株式会社喜多村製 製品名KTR-8N)0.5部を加えて均一に混合することにより本発明の樹脂組成物1を得た。
実施例2(本発明の樹脂組成物の調製)
合成例1で得られた高分子化合物1のPGMEA溶液20部に、ラジカル開始剤としてジクミルパーオキサイド0.1部、実施例1で使用したテフロン(登録商標)の微粒子1.0部を加えて均一に混合することにより本発明の樹脂組成物2を得た。
比較例1(比較用の樹脂組成物の調製)
合成例1で得られた高分子化合物1のPGMEA溶液20部に、ラジカル開始剤としてジクミルパーオキサイド0.1部を加えて均一に混合することにより比較用の樹脂組成物3を得た。
(樹脂組成物の硬化物の誘電特性評価)
実施例1、2及び比較例1で得られた樹脂組成物1乃至3を、アプリケーターを用いて厚さ18μmの銅箔の鏡面上に厚さ280μmでそれぞれ塗布し、90℃で10分間加熱して溶剤を乾燥させた。前記で得られた銅箔上のフィルム状接着剤を、真空オーブンを用いて180℃で1時間加熱硬化させた後、エッチング液に浸して銅箔を除去した。本発明の樹脂組成物1、2及び比較用の樹脂組成物3からなるフィルム状接着剤からは、フィルムとして取り扱い可能な厚さ70μmの硬化物が得られたため、前記で得られた硬化物を用いて誘電特性を評価した。誘電特性は、ネットワークアナライザー8719ET(アジレントテクノロジー製)を用いて、10GHzにおける誘電率と誘電正接を空洞共振法で測定した結果により評価した。またTMA(熱機械特性装置)を用いてガラス転移温度およびα1(ガラス状領域における線膨張率)を測定した。結果を表1に示した。
(樹脂組成物の硬化物の接着強度評価)
実施例1、2、及び比較例1で得られた樹脂組成物1乃至3を、アプリケーターを用いて厚さ12μmの高周波用低粗度銅箔(CF-T4X-SV:福田金属箔粉株式会社製)のマット面上に厚さ50μmで塗布し、90℃で10分間加熱して溶剤を乾燥させることにより本発明の樹脂組成物からなるフィルム状接着剤を有する銅箔を得た。前記で得られた銅箔の接着剤面上に、前記と同じ銅箔のマット面を重ねあわせて真空プレス中で3MPaの圧力で1時間加熱硬化させた後、銅箔間の90°引きはがし強さ(接着強度)をオートグラフAGX-50(株式会社島津製作所製)を用いて測定した。結果を表1に示した。
Figure 2023033910000005
以上のように、本発明の樹脂組成物の硬化物は、フレキシブルなフィルムを形成し、更に優れた誘電特性を保持したまま高い接着性及び低い線膨張率を示した。

Claims (3)

  1. 下記式(1)
    Figure 2023033910000006
    (式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。m及びnは繰り返し単位数の平均値であってそれぞれ独立に1乃至2,000の範囲にある。)で表される高分子化合物、平均粒径が0μmを超えて10μm以下のフッ素樹脂の微粒子及びラジカル開始剤を含む樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の樹脂組成物からなるフィルム状接着剤。
  3. 請求項1に記載の樹脂組成物、又は請求項2に記載のフィルム状接着剤の硬化物。


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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2024105898A1 (ja) * 2022-11-15 2024-05-23 日本化薬株式会社 硬化性高分子化合物、及び該化合物を含む樹脂組成物

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