JP2023031532A - 転がり軸受、および、転がり軸受装置 - Google Patents

転がり軸受、および、転がり軸受装置 Download PDF

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翔平 深間
Shohei Fukama
吾朗 中尾
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Abstract

【課題】確実なシール効果を低コストで発揮させることができる転がり軸受を提供する。【解決手段】シール部材1のシールリップ7が、軸受2のアキシアル方向に3か所以上並んで形成され、軸受2の内部側から外部側に向かうほど、シールリップ7の内外輪3、4に対するラジアル方向の締め代が次第に増大する構成とする。【選択図】図2

Description

この発明は、転がり軸受、および、この転がり軸受を用いた転がり軸受装置に関する。
自動車の補機(例えば、電磁クラッチやプーリ)などに用いられる転がり軸受装置においては、路面から跳ね上げられた泥水が軸受の内部に入るのを防止するとともに、グリースなどの潤滑剤が軸受の外部に漏れ出すのを防止するために、軸受の内部空間と外部とを区切ってシール性を向上するための部材が設けられる。
例えば下記特許文献1では、シール部材(密封板7)の軸方向外側にスリンガ(カバー4)を設け、このシール部材とスリンガの間、および、スリンガの先端と外輪との間にラビリンス18、19を形成することによって、軸受外部からの泥水などの浸入を防止している(特許文献1の図1など参照)。このスリンガは、内輪2の内径に形成された段差部3に嵌め込まれている。また、シール部材のシールリップ部9aは、内輪2に対してアキシアル方向から接触している。
特開2002-213465号公報
特許文献1のようにスリンガを設ける構成においては、内外輪の一方のスリンガ嵌め合い面に、スリンガを嵌め込むための溝加工などが必要となるとともに、スリンガの部品代も必要となる。また、シールリップ部をアキシアル方向から内輪に接触させるため、シールリップ部が接触するシール溝の加工が必要となる。このため、加工代や部品代などのコストが嵩む問題がある。
そこで、本発明は、シール部材による確実なシール効果を低コストで発揮させることを課題とする。
この課題を解決するために、本発明においては、
外周に内輪軌道溝が形成された内輪と、
前記内輪の外側に同軸に設けられ、内周に外輪軌道溝が形成された外輪と、
前記内外輪間に設けられる転動体と、
前記内外輪のいずれかに形成されたシール溝に、軸受の内部空間と外部とを区切るように設けられるシール部材と、
を有し、
前記シール部材が、
前記内外輪のいずれかに形成されたシール溝に嵌合するシール嵌合部と、
前記シール嵌合部から延設されたシール本体部と、
前記シール本体部から延設され、前記内外輪のいずれかに対しラジアル方向から接触するシールリップと、
を有し、軸受の内部空間と外部とを区切るように前記内外輪間に設けられた転がり軸受において、
前記シールリップが、軸受のアキシアル方向に3か所以上並んで形成され、前記軸受の内部側から外部側に向かうほど、前記シールリップの前記内外輪に対するラジアル方向の締め代が次第に増大するように構成されていることを特徴とする転がり軸受を構成した。
このように、3か所以上のシールリップをラジアル方向から内外輪に接触させるとともに、軸受外部側の高い締め代によって優れたシール機能を発揮させることによって、軸受外部からの泥水などの浸入と、グリースなどの潤滑剤が軸受の外部に漏れ出すのを確実に防止することができる。また、スリンガなどの追加の部品を必要としないため、この部品を取り付けるための加工代や部品代などのコストを削減することができる。
前記構成においては、
軸受の内部側から外部側に向かうほど、前記シールリップのラジアル方向の長さが次第に長くなっている構成とするのが好ましい。
このようにすると、アキシアル方向に沿って延びる内外輪のシール面へのシールリップの接触によって、その締め代が、軸受の内部側から外部側に向かうほど次第に増大する状態とすることができる。
前記各構成においては、
軸受の内部側から外部側に向かうほど、前記シールリップのアキシアル方向の厚みが次第に厚くなっている構成とするのが好ましい。
このようにすると、外部側に向かうほどシールリップの剛性が高まってシール機能が向上するため、軸受外部からの泥水などの浸入をより確実に防止することができる。
前記各構成においては、
前記シール部材の前記シール嵌合部がゴム材からなる構成とするのが好ましい。
このようにすると、シール溝にシール部材の芯金を加締め固定する場合と比較して高い嵌合精度を確保することができる。このため、確実な嵌合状態を確保するために設計上の締め代を必要な締め代よりも大きくする必要がなく、シールリップが過剰に強く内外輪のシール面に摺接して回転トルクが増大するのを防止することができる。また、シール溝に対するゴム材の密着性が高いため、シール溝とシール嵌合部との間の隙間からのグリース漏れを防止することができる。
前記転がり軸受は、
自動車の補機に上記の転がり軸受を適用した転がり軸受装置に採用するのが好ましい。
上記のシール部材を採用した転がり軸受は、軸受外部からの泥水などの浸入を確実に防止することができるため、特に泥水などの影響を受けやすい自動車の補機に適している。
この発明に係る転がり軸受は、上記のようにシールリップを軸受のアキシアル方向に3か所以上並んで形成するとともに、軸受の内部側から外部側に向かうほど、シールリップの内外輪に対するラジアル方向の締め代が次第に増大するようにしたので、軸受外部からの泥水などの浸入と、グリースなどの潤滑剤が軸受の外部に漏れ出すのを確実に防止することができる。また、スリンガなどの追加の部品を必要としないため、この部品を取り付けるための加工代や部品代などのコストを削減することができる。
本発明に係る転がり軸受に用いられるシール部材の一実施形態を示す断面図 図1に示すシール部材の要部の断面図 図1に示すシール部材を採用した転がり軸受の断面図 図3に示す転がり軸受の要部の断面図 図3に示す転がり軸受を採用した転がり軸受装置の断面図
本発明に係る転がり軸受2、および、この転がり軸受2に用いられるシール部材1を図面に基づいて説明する。シール部材1は、軸受2の内部空間と外部とを区切るように内輪3と外輪4(図3など参照)の間に設けられる部材であって、図1および図2に示すように、シール嵌合部5、シール本体部6、および、シールリップ7を主要な構成要素としている。これらは、主に、ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、アクリルゴムなどのゴム材によって構成されている。
以下においては、シール部材1(軸受2)の軸受中心軸に沿う方向をアキシアル方向、軸受中心軸に対して直角の方向をラジアル方向、軸受中心軸周りの円周に沿う方向を周方向という。図1から図5の各図において、アキシアル方向は左右方向、ラジアル方向は上下方向に対応する。
シール嵌合部5は、シール部材1の内周端部に形成されている。このシール嵌合部5はゴム材のみによって構成されており、図3および図4に示すように、内輪3の外周または外輪4の内周のいずれか(この実施形態においては外輪4の内周)のアキシアル方向の両端部に形成されたシール溝8に嵌合する。
シール本体部6は、シール嵌合部5からラジアル方向内向きに延設された部材である。シール本体部6によって、内輪3と外輪4の両端部におけるラジアル方向隙間が覆われる。シール本体部6のアキシアル方向内側(転がり軸受2の内部空間に臨む側)には、アキシアル方向内側に向かって突出する突起部9が形成されている。
シール本体部6には、その剛性を高めるための金属製の芯金10が一体に設けられている。芯金10は、シール嵌合部5の近傍からシールリップ7の近傍まで延びる、周方向の断面が略S字形に成形された部材であり、例えば、鋼板をプレスすることによって成形される。
芯金10の形状をさらに具体的に説明すると、その周方向断面において、シール嵌合部5側からラジアル方向内向きに延設された第一部10aと、第一部10aから約80度屈曲してアキシアル方向外向きに延設された第二部10bと、第二部10bから約80度屈曲してラジアル方向内向きに延設された第三部10cと、第三部10cから約40度屈曲してアキシアル方向内向きに延設された第四部10dと、から構成されている。第三部10cの軸受2の内部空間に臨む面側(図3参照)は、シール本体部6の表面に露出している。シール本体部6の外形は、概ね芯金10の形状に沿っている。なお、この芯金10の形状は例示に過ぎず、その屈曲角度、屈曲位置、屈曲数などは、適宜変更されることもある。
シールリップ7は、シール本体部6からさらにラジアル方向内向きに延設され、内輪3の外周または外輪4の内周のいずれか(この実施形態においては内輪3の外周)にラジアル方向から接触して、軸受内部空間を密封するための部材である。このシールリップ7は、軸受2のアキシアル方向に沿って3か所並んで形成されている。各シールリップ7は、ラジアル方向の内側がアキシアル方向の外側に向かって傾斜している。その傾斜角は、ラジアル方向に対して約30度である。
3か所に形成されたシールリップ7は、軸受2の内部側から外部側に向かうほど(図1および図2において左から右に向かうほど)、このシールリップ7の内外輪3、4に対するラジアル方向の締め代が次第に増大するように構成されている。具体的には、軸受2の内部側から外部側に向かうほど、シールリップ7のラジアル方向の長さが次第に長くなっており、このシールリップ7を、アキシアル方向に沿って延びる内輪3のシール面11に接触させることによって、締め代の大きさd、d、dを変化させている(d<d<d)。
また、3か所に形成されたシールリップ7は、軸受2の内部側から外部側に向かうほど、そのアキシアル方向(図2では、シールリップ7の傾斜に対応して、アキシアル方向から傾斜した方向)の厚みt、t、tが次第に厚くなっている(t<t<t)。シール本体部6とシールリップ7の間には、シール部材1のアキシアル方向の厚みを局所的に減ずる凹部12が形成されている。
上記のシール部材1は、シールリップ7を軸受2のアキシアル方向に3か所以上並んで形成したので、軸受外部からの泥水などの浸入と、グリースなどの潤滑剤が軸受2の外部に漏れ出すのを確実に防止することができる。また、スリンガなどの追加の部品を必要としないため、この部品を取り付けるための加工代や部品代などのコストを削減することができる。
また、上記のシール部材1は、軸受2の内部側から外部側に向かうほど、シールリップ7の内外輪3、4に対するラジアル方向の締め代が次第に増大するようにしたので、軸受外部側の高い締め代によって優れたシール機能が発揮される。このため、軸受外部から泥水が浸入するのを確実に防止することができ、このシール部材1を設けた軸受2のトラブルを確実に回避することができる。
なお、上記の実施形態においては、シールリップ7のラジアル方向の長さを軸受2の内部側から外部側に向かうほど次第に長くすることによって、シールリップ7の内外輪3、4に対するラジアル方向の締め代が次第に増大する構成としたが、例えば、いずれのシールリップ7のラジアル方向の長さも同じとした上で、内外輪3、4のシール面11をアキシアル方向に対して傾斜させることによって、シールリップ7の内外輪3、4に対するラジアル方向の締め代が次第に増大する構成とすることができる可能性もある。
また、上記の実施形態においては、シールリップ7が軸受2のアキシアル方向に3か所並んで形成されたものについて説明したが、シールリップ7の数は3か所以上であれば適宜変更することもできる。
また、上記の実施形態においては、軸受2の内部側から外部側に向かうほど、シールリップ7のラジアル方向の長さが次第に長くなるとともに、アキシアル方向の厚みが次第に厚くなる構成としたが、アキシアル方向の厚みを一定としつつ、シールリップ7のラジアル方向の長さが次第に長くなる構成とすることもできる。
また、上記の実施形態においては、軸受2の内部側から外部側に向かうほど、シールリップ7の内外輪3、4に対するラジアル方向の締め代が順に増大する構成としたが、並んで形成された3か所以上のシールリップ7のうち、締め代が同程度(ラジアル方向の長さが同程度)のシールリップ7が一部で隣り合う構成とできる可能性もある。
上記のシール部材1を採用した転がり軸受2は、図3および図4に示すように、外周に内輪軌道溝13が形成された内輪3と、内輪3の外側に同軸に設けられ、内周に外輪軌道溝14が形成された外輪4と、内外輪3、4間に設けられ、保持器15によって周方向の間隔が所定間隔となるように保持される転動体16と、内外輪3、4のいずれかに(この実施形態では外輪4)に形成されたシール溝8に、軸受2の内部空間と外部とを区切るように設けられる上記のシール部材1と、を主要な構成要素としている。
この転がり軸受2においては、シール部材1のゴム材からなるシール嵌合部5が、外輪4に形成されたシール溝8に嵌合している。この転がり軸受2のアセンブリ状態において、シール部材1の各シールリップ7は内輪3のシール面11に接触しており、軸受2の内部側から外部側に向かうほど、シールリップ7のシール面11に対するラジアル方向の締め代が次第に増大している。
上記の転がり軸受2は、ゴム材からなるシール嵌合部5をシール溝8に嵌合するため、シール溝8にシール部材1の芯金を加締め固定する場合と比較して高い嵌合精度を確保することができる。このため、確実な嵌合状態を確保するために設計上の締め代を必要な締め代よりも大きくする必要がなく、シールリップ7が過剰に強く内外輪3、4のシール面11に摺接して回転トルクが増大するのを防止することができる。また、シール溝8に対するゴム材の密着性が高いため、シール溝8とシール嵌合部5との間の隙間からのグリース漏れを防止することができる。
また、上記の転がり軸受2においては、シール本体部6にアキシアル方向内側に向かって突出する突起部9が形成されたシール部材1を採用したので、軸受2の動作時に軸受内部のグリースなどの潤滑剤に遠心力が作用しても、この潤滑剤のラジアル方向外向きの移動が突起部9によって妨げられてシール溝8まで到達しない(図4中の矢印f参照)。このため、シール溝8とシール部材1との間の隙間を通って潤滑剤が外部に漏れるのを防止することができる。
また、突起部9を形成することにより、例えば、複数のシール部材1を重ね合わせた状態で保管や運搬する際に、シール部材1同士の間に隙間が形成されて密着しない。このため、転がり軸受2のアセンブリの際に、密着したシール部材1を引き剥がすなどの余計な作業が不要となり、そのアセンブリをスムーズに行うことができる。
また、上記の転がり軸受2においては、シール本体部6とシールリップ7の間にアキシアル方向の厚みを減ずる凹部12が形成されたシール部材1を採用したので、この凹部12近傍の剛性が下がり、シールリップ7と内輪3のシール面11が過剰に強く摺接することに伴う回転トルクの増大を防止することができる。
なお、上記の実施形態においては、複列式の転がり軸受2を例示して説明したが、この発明に係るシール部材1は、単列式の転がり軸受2をはじめ、他の種類の転がり軸受2に対しても採用することもできる。
上記の転がり軸受2は、図5に示すように、自動車の補機に駆動力を伝達する転がり軸受装置17(この実施形態ではプーリ)に採用することができる。上記のシール部材1を採用した転がり軸受2は、軸受外部からの泥水などの浸入を確実に防止することができるため、特に泥水などの影響を受けやすい自動車の補機駆動用の転がり軸受装置17に好適である。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及びすべての変更が含まれることが意図される。
1 シール部材
2 軸受(転がり軸受)
3 内輪
4 外輪
5 シール嵌合部
6 シール本体部
7 シールリップ
8 シール溝
9 突起部
10 芯金
11 シール面
12 凹部
13 内輪軌道溝
14 外輪軌道溝
15 保持器
16 転動体
17 転がり軸受装置

Claims (5)

  1. 外周に内輪軌道溝(13)が形成された内輪(3)と、
    前記内輪(3)の外側に同軸に設けられ、内周に外輪軌道溝(14)が形成された外輪(4)と、
    前記内外輪(3、4)間に設けられる転動体(16)と、
    前記内外輪(3、4)のいずれかに形成されたシール溝(8)に、軸受(2)の内部空間と外部とを区切るように設けられるシール部材(1)と、
    を有し、
    前記シール部材(1)が、
    前記内外輪(3、4)のいずれかに形成されたシール溝(8)に嵌合するシール嵌合部(5)と、
    前記シール嵌合部(5)から延設されたシール本体部(6)と、
    前記シール本体部(6)から延設され、前記内外輪(3、4)のいずれかに対しラジアル方向から接触するシールリップ(7)と、
    を有し、軸受(2)の内部空間と外部とを区切るように前記内外輪(3、4)間に設けられた転がり軸受において、
    前記シールリップ(7)が、軸受(2)のアキシアル方向に3か所以上並んで形成され、前記軸受(2)の内部側から外部側に向かうほど、前記シールリップ(7)の前記内外輪(3、4)に対するラジアル方向の締め代が次第に増大するように構成されていることを特徴とする転がり軸受。
  2. 前記軸受(2)の内部側から外部側に向かうほど、前記シールリップ(7)のラジアル方向の長さが次第に長くなっている請求項1に記載の転がり軸受。
  3. 前記軸受(2)の内部側から外部側に向かうほど、前記シールリップ(7)のアキシアル方向の厚みが次第に厚くなっている請求項1または2に記載の転がり軸受。
  4. 前記シール部材(1)の前記シール嵌合部(5)がゴム材からなる請求項1から3のいずれか1項に記載の転がり軸受。
  5. 自動車の補機に請求項1から4のいずれか1項に記載の転がり軸受(2)を適用した転がり軸受装置。
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