JP2023028583A - 酸化マグネシウム基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】主表面が{111}面である酸化マグネシウム(MgO)基板にレーザ光を照射して形成した改質層で基板を剥離できる、MgO基板の製造方法を提供する。【解決手段】レーザ集光部を主表面が(111)面であるMgO基板の主表面に対向するように配置する工程と、レーザ集光部からMgO基板の主表面にレーザ光Bを照射してMgO基板の内部にレーザ光を集光しつつレーザ集光部とMgO基板とを相対的に2次元状に走査させることにより主表面から所定の深さに加工痕及びこの加工痕からレーザ光走査方向に沿って延びる改質層を形成する工程と、改質層からMgO単結晶の{100}面に沿って広がるクラックを繋ぎ合わせ劈開面を形成する工程とを含んでいる。【選択図】図5
Description
この発明は、酸化マグネシウム基板の製造方法に関し、詳しくは、レーザ光を用いた加工により酸化マグネシウム基板を製造する酸化マグネシウム基板の製造方法に関する。
半導体分野、ディスプレイ分野、エネルギー分野などで、酸化マグネシウム(以下では、MgOともいう。)単結晶で形成されたMgO基板が使用されている。MgO基板を製造するには、バルク状に結晶成長させて基板状に切断する他、薄膜状にエピタキシャル成長させることが知られている(特許文献1を参照)。
一方、ダイヤモンドは高周波・高出力電子デバイスに適した半導体と考えられ、その合成方法のひとつである気相合成法(CVD法)ではMgO基板が下地基板として利用されている(特許文献2を参照)。このCVD法によるヘテロエピキャシタル成長では下地MgO基板の結晶方位と同方位に成長した単結晶ダイヤモンドのバルク結晶が得られる。すなわち下地MgO基板の結晶方位が[100]で結晶方位[100]ダイヤモンドのバルク結晶が、下地MgO基板の結晶方位が[111]で結晶方位[111]ダイヤモンドのバルク結晶が得られる。
ダイヤモンドは、磁気センサにも利用されている。磁気センサでは、ダイヤモンド単結晶に高密度なNVセンタを形成し、NVセンタの配向軸を揃えることが必要である。CVD法により[111]方向に高密度なNVセンタを配向する技術が確立されてきているため、主表面を(111)面とする単結晶ダイヤモンドによる(111)バルク結晶の必要性が高まっている。
上記のダイヤモンド基板の製造において下地基板であるMgO基板は高価であり、例えば単結晶ダイヤモンドを気相合成した後に下地基板として必要な厚さを残しつつMgO基板を剥離して分離することで、MgO基板は下地基板として再利用が可能となる。このため、MgO基板の主表面から所定の深さにレーザ光を集光して照射し、2次元状に走査することにより結晶構造が改質された改質層を形成し、この改質層でMgO基板を剥離する技術が提供されている(特許文献3~5を参照)。
この技術は、MgO単結晶が{100}面に沿って劈開が進みやすいという性質を利用し、主表面を{100}面とするMgO基板をこの面に沿って剥離するものである。NaCl型イオン結晶であるMgO単結晶の劈開面は{100}面であり、MgO基板の剥離面と劈開面とが{100}面で一致する場合において有用な技術である。
しかしながら、主表面を{111}面とするMgO基板では{111}面に沿った劈開が生じないため、前記技術を適用することは困難であった。また主表面を{111}面とするMgO基板の主表面から所定の深さにレーザ光を集光して照射すると{100}面方向に加工痕が形成され主表面側に劈開が進展してしまい{111}面のMgO基板の剥離、すなわち新たなMgO基板を創製することは困難であった。
この発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、主表面が{111}面であるMgO基板であっても主表面から所定の深さにレーザ光を集光して照射し、2次元状の所定の方向に走査することにより結晶構造が改質された改質層を形成し、主表面が{111}面であるMgO基板を剥離するMgO基板の製造方法を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するために、この出願に係る酸化マグネシウム基板の製造方法は、レーザ光を集光するレーザ集光部を主表面が(111)面である酸化マグネシウム単結晶の基板の主表面に対向するように配置する工程と、レーザ集光部から基板の主表面にレーザ光を照射して基板の内部にレーザ光を集光しつつレーザ集光部及び基板を相対的に所定方向に2次元状に走査させることにより主表面から所定の深さに加工痕及びこの加工痕からレーザ光走査方向に沿って改質層を形成する工程と、改質層から酸化マグネシウム単結晶の{100}面に沿って広がるクラックを繋ぎ合わせて劈開面を形成する工程とを含んでいる。
改質層を形成する工程は、<110>方向から選ばれる少なくとも2方向に沿ってそれぞれ集光したレーザ光を走査してもよい。改質層を形成する工程は、<111>方向から選ばれる少なくとも2方向に沿ってそれぞれ集光したレーザ光を走査してもよい。改質層を形成する工程は、少なくとも2方向に沿って集光したレーザ光を走査することにより形成した加工痕を始点としてすべり方向に発生したすべりにより前記{100}面に沿ってクラックを発生させてもよい。
改質層を形成する工程は、少なくとも2方向に沿って集光したレーザ光を走査する工程と、レーザ集光部及び基板を相対的にラインピッチ方向に所定の間隔にわたり移動させる工程とを含んでもよい。基板において、主表面から改質層に達する深さまでの部分と、改質層よりも深い部分とを剥離させる工程をさらに含んでもよい。
レーザ光は、高輝度レーザ光であってもよい。レーザ光は、パルス幅が数psから数十nsの範囲にあってもよい。
この発明によると、主表面が{111}面であるMgO基板について、主表面から所定の深さにレーザ光を集光して照射し、2次元状に走査することにより結晶構造が改質された改質層を形成し、この改質層でMgO基板を剥離することができる。
以下、MgO基板の製造方法の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚み及び平面寸法の関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
本実施の形態では、MgO基板はMgO単結晶から構成され、特記する場合を除いて、上面が主表面の(111)面であることを想定している。この主表面は(111)面に限らず、{111}面であれば他の面であってもよい。また、本明細書においては、使用できる文字に制限があるため、便宜上、ミラー指数の表示において数字に附される上線は数字の前の負号「-」で代えることにする。
図1は、加工装置100の概略的な構成を示す斜視図である。加工装置100は、MgO基板10を載置するステージ110と、ステージ110が水平面内のXY方向に移動可能なように支持するステージ支持部120と、MgO基板10を固定する固定具130とを有している。固定具130には、粘着層、機械的なチャック、静電チャック、真空チャックなどが適用可能である。
ステージ110上には、加工対象物としてMgO基板10が、主表面10aの(111)面を上面として固定されている。加工対象物の形状はこれに限らず、主表面10aを(111)面とするものであれば、例えばMgO単結晶のインゴットやインゴットを一定の長さに切断したブロックであってもよい。
また、加工装置100は、パルスレーザ光を発生するレーザ光源160と、対物レンズ170及び収差調整部180を含むレーザ集光部190とを有し、レーザ光源160から発したレーザ光Bがレーザ集光部190を介してMgO基板10の主表面10aの(111)面に向けて照射されるようにする。
レーザ光源160は、高輝度レーザ光を発生するものである。高輝度レーザ光は、ピークパワー及びパワー密度で特定される。ここで、ピークパワーとはパルスエネルギーをパルス幅で除算した値であり、パワー密度とは単位時間当たりのエネルギーの単位面積当たりの値である。高輝度レーザ光は、ピークパワーが10kW以上であり、ピークパワーから求められるパワー密度が1000W/cm2以上であることが好ましい。またパワー密度を高めるためにパルス幅が短い方が効果的であり、10ns以下が好ましく、100ps以下であることがさらに好ましい。そして、15ps以下であることがよりさらに好ましい。
高輝度レーザ光は、パルス幅が短いレーザ光を用いて低いレーザ出力でレーザ光Bを照射し加工基板にダメージを与えないレーザ光であることが好ましい。さらにパワー密度を高めるためにはパルス幅の短いレーザ光(例えばパルス幅が10ns以下のレーザ光)が好ましい。このようにパルス幅の短いレーザ光を照射することで、高輝度レーザ光のパワー密度を格段に高めやすい。
図2は、MgO単結晶の結晶構造を示す図である。図2(a)に示すように、MgO単結晶の単位格子は、白丸で示すマグネシウムの陽イオン(Mg2+)と黒丸で示す酸素の陰イオン(O2-)とが面心立方格子構造を形成しておりNaCl型イオン結晶とも呼ばれる。
図2(b)は、MgO単結晶の単位格子における(111)及び(11-1)面を示している。陰イオン又は陽イオンの同じ極性のMg2+又はO2-イオンは、{111}面に沿って配列されている。このため、後述する理由により{111}面に沿った劈開は困難である。また、図中には、[1-10]方向も示されている。[1-10]方向は、単位格子において(111)面の輪郭が形成する三角形の一片が延びる方向を向いている。
図3は、MgO単結晶に生じる劈開を説明する図である。図3(a)に示すように、“+”で示すマグネシウムの陽イオン及び“-”で示す酸素の陰イオンが配列されてイオン結晶を構成している。図3(a)は、図2(a)に示したMgOの面心立方格子の{100}面の内の一つの面におけるマグネシウムイオン及び酸素イオンの配置を示している。この面内では、マグネシウムイオン及び酸素イオンは交互に配列されている。
図3(a)に示すように外力が加えられ、図3(b)のように{100}面の内で前記一つの面に直交する{100}面の内の他の面に沿って隣接する層が一つのイオンに相当する距離だけ変位したとする。この場合には、同極性のイオンが対向して互いに斥力を及ぼすため、この面に沿って劈開が発生する。これに対し、図2(b)に示したように{111}面には同極性のイオンが配列されているため、{111}面の内の一つの面に直交する{111}面の内の他の面に沿って隣接する層が一つのイオンに相当する距離だけ変位したとしてもイオンの配列に変化はなく、劈開は発生しない。このような理由によって、MgO単結晶においては、{100}面が劈開面であり{111}面では劈開が生じない。
図4は、MgO10を示す上面図である。図1の加工装置で加工されるMgO基板10は、略矩形で所定の厚さの板状の形状を有している。MgO基板10は上面を主表面10aの(111)面とし、略矩形の外周の一つの辺の両端には切り欠きが形成され、この辺に向かう方向が[1-10]方向であることを示している。
図中には、MgO基板10に対する{001}面を構成する(100)面、(001)面及び(001)面の方位も示されている。(100)面、(001)面及び(001)面は、(111)面を底面とする正三角錐を形成している。[1-10]方向は、(001)面及び(111)面がなす辺が延びる方向である。なお、以下の図面においても、参照のために(100)面、(001)面及び(001)面の方位を適宜に記載するものとする。
図5は、{100}面によって構成された(111)面を説明する図である。図5(a)は(111)面側すなわち(111)面を上から見て{001}面を構成する(100)面、(010)面及び(001)面の向きを示している。(100)面、(010)面及び(001)面は、表面の(111)面から約55度傾いて三方向に向いて(111)面を底面とする正三角錐の各斜面を形成している。
この正三角錐の各斜面が底面を越えるように延長し、各斜面がそれぞれひし形を形成するようにする。この図形は、(111)面への正射影の輪郭が正六角形を形成し、(111)面とは正三角錐の底面に相当する正三角形で交差する。したがって、この図形は(111)面に沿って延びているということができる。以下、このようなそれぞれひし形の形状を有する3つの斜面で形成された図形を便宜上から単位図形と称することにする。
図5(b)に示すように、単位図形の一つを基準として、この単位図形の周囲に(111)面に沿って単位図形を連結することができる。この面は、厳密には{100}面を構成する(100)面、(010)面及び(001)面の各斜面が接続して構成されているが、各単位図形が(111)面を含んでいるため、単位図形が敷き詰められてなる面は(111)面を形成するということができる。ここで、単位図形の(100)面、(010)面及び(001)面はMgO単結晶において劈開する{100}面を構成するため、図5(c)に示すように単位図形を連結するように{100}面に沿ったクラックによる劈開面を適切に繋ぎ合わせることで(111)面に沿って{100}面の劈開面が表面に存在するMgO基板を形成することができる。
図6は、MgO基板へのレーザ光走査を説明する上面図である。図に示すように、(001)面及び(111)面が交差する[-110]又は[1-10]方向に沿った第1の走査方向、(100)面及び(111)面が交差する[0-11]又は[01-1]方向に沿った第2の走査方向並びに(010)面及び(111)面が交差する[10-1]又は[-101]方向に沿った第3の走査方向について、所定のオフセットを有して主表面10aの(111)面の全面にわたって走査する。
面心立方格子構造を有するMgO単結晶は、{110}面<110>方向のすべり系を有している。このため、<110>方向に含まれる第1から第3の走査方向である[-110]又は[1-10]方向、[-1-11]又は[11-1]及び[1-1-1]又は[-111]方向に沿ってレーザ光を集光して照射して加工痕を形成すると、この加工痕から欠陥や転移の発生により{110}面及び<110>方向のすべりを起点として単位図形の(100)面、(010)面及び(001)面にクラックが形成される。図3で示したように、MgO単結晶では(100)面、(010)面及び(001)面を含む{100}面に沿って劈開が発生する。
図7は、MgO基板10に改質層を形成する加工を説明する断面図である。図7(a)に示すように、パルス状のレーザ光BによってMgO基板10を所定の方向に走査し、レーザ光Bによる加工痕を所定間隔で形成する。レーザ光Bは、MgO基板10の主表面10aに対向するレーザ集光部190を介して主表面10aから所定の深さのMgO基板10の内部に集光して照射される。前述のように、加工痕からのすべりを起点として、単位図形の(100)面、(010)面及び(001)面の少なくとも一つに沿ってクラックを発生させることができる。なお、このクラックはレーザ光Bの走査方向に{100}面に沿って進展することが実験で確認されている。
続いて、図7(b)に示すように、レーザ光BによってMgO基板10を前記所定の方向とは逆の方向に走査し、レーザ光Bによる加工痕を所定間隔で形成する。この加工痕の位置は、図7(a)の最初の走査で形成した加工痕の位置と同じであってもよいし、最初の走査で形成した隣接する加工痕の中央など他の位置であってもよい。前述のように、加工痕からのすべりを起点として、単位図形の(100)面、(010)面及び(001)の内でクラックが発生していなかった面に沿ってクラックを発生させることができる。
このように、レーザ光Bによって2段階にわたって走査することによって、単位図形の(100)面、(010)面及び(001)に沿ってクラックを発生させることができる。加工痕から発生したクラックは相互に連結して(111)面に沿って広がり、クラックを含んで結晶の性質が変化した改質層が(111)面に沿って形成される。この改質層に沿ってMgO基板10を剥離することができるようになる。
なお、図7(b)に示した2回目の走査では、図7(a)に示した1回目の走査とは逆の方向に走査したが、これに限られない。2回目の走査でも、1回目の走査と同じ方向に走査してもよい。
図8は、MgO基板10に改質層を形成する加工の他の態様を説明する断面図である。図8(a)に示すように、パルス状のレーザ光BによってMgO基板10を所定の方向に走査し、レーザ光Bによる加工痕を所定間隔で形成する。レーザ光Bは、MgO基板10の主表面10aに対向するレーザ集光部190を介して主表面10aから所定の深さのMgO基板10の内部に集光して照射される。前述のように、加工痕からの{100}面のすべりを起点として、単位図形の(100)面、(010)面及び(001)面の少なくとも一つに沿ってクラックを発生させることができる。
続いて、図8(b)に示すように、MgO基板10において主表面10aに対向する背面から照射したレーザ光BによってMgO基板10を前記所定の方向に走査し、レーザ光Bによる加工痕を所定間隔で形成する。この加工痕の位置は、図7(a)の最初の走査で形成した加工痕の位置と同じであってもよいし、最初の走査で形成した隣接する加工痕の中央など他の位置であってもよい。前述のように、加工痕からのすべりを起点として、単位図形の(100)面、(010)面及び(001)の内でクラックが発生していなかった面に沿ってクラックを発生させることができる。
なお、図1に示した加工装置100では、MgO基板10のステージ110上に(111)面の主表面10aが上面として固定されている。MgO基板10において主表面10aに対向する背面にレーザ光Bを照射するためには、ステージ110に取り付けられたMgO基板10を一旦取り外し、背面が上向きになるようにMgO基板10を裏返しにしてステージ110に再度取り付ける必要がある。
図9は、レーザ光によるMgO基板の走査の他の態様を説明する上面図である。図に示すように、(001)面及び(111)面が交差する[-110]又は[1-10]方向に直交する[11-2]又は[-1-12]方向の第1の走査方向、(100)面及び(111)面が交差する[0-11]又は[01-1]方向に直交する[2-1-1]又は[-211]方向の第2の走査方向並びに(010)面及び(111)面が交差する[10-1]又は[-101]方向に直交する[-12-1]又は[1-21]方向の第3の走査方向について、所定のラインピッチを有して主表面10aの(111)面の全面にわたって走査する。
MgO単結晶は、{110}面<110>方向のすべり系を有している。このため、<110>方向に含まれる[-110]又は[1-10]方向、[0-11]又は[01-1]及び[10-1]又は[-101]方向にそれぞれ直交する第1から第3の走査方向に沿ってレーザ光を集光して照射して加工痕を形成すると、この加工痕からの{110}面のすべりを起点として単位図形の(100)面、(010)面及び(001)面に劈開によるクラックを形成することができる。図3で示したように、MgO単結晶では(100)面、(010)面及び(001)面を含む{100}面に沿って劈開が発生する。
このように、レーザ光Bを上記の結晶方向に走査することによって、単位図形の{100}面を構成する(100)面、(010)面及び(001)に沿ってクラックを発生させることができる。加工痕から発生したクラックは{100}面の劈開面として相互に連結して(111)面に沿って広がり、この連結した{100}面の劈開面に沿ってMgO基板10を剥離することができるようになる。
以上のように、本実施の形態によると、主表面が(111)面であるMgO基板10についても、MgO単結晶において劈開が容易に生じる{100}面を構成する(100)面、(010)面及び(001)のような{100}面で形成された単位図形を(111)面に沿って配置して連結することにより、(111)面に沿ってクラックが延びる改質層を形成することができる。したがって、このような改質層からこのMgO基板10を剥離することができる。
例えばダイヤモンド単結晶の下地基板として使用されるMgO基板については、例えば厚さ200μmのMgOの下地基板から厚さ180μmのMgO基板を得て再利用すればダイヤモンド基板製造プロセスにおいて大幅なコストダウンを達成でき、ダイヤモンド基板のコスト低減に大きく貢献することが期待できる。
(実験例1)
実験例1として、加工装置100は表1で示すような条件を使用した。なお、対物レンズ補正環は、図1の加工装置100における収差調整部180に相当している。
実験例1として、加工装置100は表1で示すような条件を使用した。なお、対物レンズ補正環は、図1の加工装置100における収差調整部180に相当している。
加工対象物のMgO基板10には、表2に示すものを使用した。
図10は、改質層が形成された実験例1のMgO基板10の顕微鏡写真である。実験例1では、図6に示したような[-110]又は[1-10]方向、[0-11]又は[01-1]方向及び[10-1]又は[-101]方向に沿ってMgO基板10を走査した。図7に示したように、レーザ光BによるMgO基板10への走査は2段階で行った。レーザ光Bによる走査は、MgO基板10の主表面10aの全面には行わず、それぞれの走査方向のラインピッチ方向について所定範囲でのみ行った。図10には、上記方向にレーザ光Bを走査した改質層が観察される。
図11は、図10に示したMgO基板10をさらに拡大した顕微鏡写真である。各顕微鏡写真は、[-110]又は[1-10]方向、[0-11]又は[01-1]方向及び[10-1]又は[-101]方向のレーザ光Bの走査に沿って延びる改質層の一部をそれぞれ拡大したものである。走査方向に沿って延びる改質層は、ラインピッチ方向に一定の幅に広がりを有して形成されていることが観察される。
詳しくは、図11(a)では(010)面、図11(b)では(100)面、図11(c)では(001)面にそれぞれ劈開が発生している。このようにレーザ光Bの各走査方向に対して3つの{100}面の劈開が得られる。すなわち実験例1によれば上記の6方向または6方向の各逆方向を除く3方向に表1の実験条件によりレーザ光Bを照射することで(001)面、(010)面及び(100)面の劈開が生じる。
(実験例2)
実験例2は、前述の実験例1の表1に示した条件を使用して実験例1の表2に示した加工対象物と同様のMgO基板10を使用した。図12は、改質層が形成された実験例2のMgO基板10の顕微鏡写真である。実験例2では、図9に示したような[11-2]又は[-1-12]方向、[2-1-1]又は[-211]方向及び[-12-1]又は[1-21]方向に沿ってMgO基板10を走査した。図7に示したように、レーザ光BによるMgO基板10への走査は2段階で行った。レーザ光Bによる走査は、MgO基板10の主表面10aの全面には行わず、それぞれの走査方向のラインピッチ方向について所定範囲でのみ行った。図12には、レーザ光Bを上記方向にMgO基板10を走査した改質層が観察される。
実験例2は、前述の実験例1の表1に示した条件を使用して実験例1の表2に示した加工対象物と同様のMgO基板10を使用した。図12は、改質層が形成された実験例2のMgO基板10の顕微鏡写真である。実験例2では、図9に示したような[11-2]又は[-1-12]方向、[2-1-1]又は[-211]方向及び[-12-1]又は[1-21]方向に沿ってMgO基板10を走査した。図7に示したように、レーザ光BによるMgO基板10への走査は2段階で行った。レーザ光Bによる走査は、MgO基板10の主表面10aの全面には行わず、それぞれの走査方向のラインピッチ方向について所定範囲でのみ行った。図12には、レーザ光Bを上記方向にMgO基板10を走査した改質層が観察される。
図13は、図12に示したMgO基板10をさらに拡大した顕微鏡写真である。図14は、図13に示した顕微鏡写真をさらに拡大した顕微鏡写真である。図13(a)は[1-21]又は[-12-1]方向に沿って延びる改質層の一部を拡大したものであり、図14(a)は図13(a)をそれぞれさらに拡大したものである。図14(a)においては、実線の矢印によってレーザ光Bの走査方向が示され、破線の矢印によって劈開が進展する方向が示されている。以下の図14(b)及び図14(c)においても同様である。図13(b)は[2-1-1]又は[-211]方向に沿って延びる改質層の一部を拡大したものであり、図14(b)は図13(b)をさらに拡大したものである。図13(c)は[2-1-1]又は[-211]方向に沿って延びる改質層の一部を拡大したものであり、図14(c)は図13(c)さらに拡大したものである。
各レーザ光Bの走査方向において走査方向に対して約60°の角度でクラックが発生しており、これは<110>方向にすべりが生じているためと考えられる。このクラックを起点として{100}面の劈開が生じていることが観察される。上記の各走査方向に対する{100}面の劈開は各走査方向でそれぞれ(100)、(001)、(010)面に生じているため、単位図形の(100)面、(010)面及び(001)の劈開をつなぎ合わせるためには上記走査方向のうち少なくとも2方向に対してレーザ光Bを操作すればよいと考えられる。
10 MgO基板
10a 主表面
100 加工装置
160 レーザ光源
190 レーザ集光部
10a 主表面
100 加工装置
160 レーザ光源
190 レーザ集光部
Claims (8)
- レーザ光を集光するレーザ集光部を主表面が(111)面である酸化マグネシウム単結晶の基板の主表面に対向するように配置する工程と、
前記レーザ集光部から前記基板の主表面にレーザ光を照射して前記基板の内部にレーザ光を集光しつつ前記レーザ集光部及び前記基板を相対的に所定方向に2次元状に走査させることにより前記主表面から所定の深さに加工痕及びこの加工痕からレーザ光走査方向に沿って改質層を形成する工程と、前記改質層から酸化マグネシウム単結晶の{100}面に沿って広がるクラックを繋ぎ合わせて劈開面を形成する工程と
を含む酸化マグネシウム基板の製造方法。 - 前記改質層を形成する工程は、<110>方向から選ばれる少なくとも2方向に沿ってそれぞれ前記集光したレーザ光を走査する請求項1に記載の方法。
- 前記改質層を形成する工程は、<111>方向から選ばれる少なくとも2方向に沿ってそれぞれ前記集光したレーザ光を走査する請求項1に記載の方法。
- 前記改質層を形成する工程は、少なくとも2方向に沿って前記集光したレーザ光を走査することにより形成した加工痕を始点としてすべり方向に発生したすべりにより前記{100}面に沿ってクラックを発生させる請求項2又は3に記載の方法。
- 前記改質層を形成する工程は、前記少なくとも2方向に沿って集光したレーザ光を走査する工程と、前記レーザ集光部及び前記基板を相対的にラインピッチ方向に所定の間隔にわたり移動させる工程とを含む請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記基板において、前記主表面から前記改質層に達する深さまでの部分と、前記改質層よりも深い部分とを剥離させる工程をさらに含む請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記レーザ光は、高輝度レーザ光である請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記レーザ光は、パルス幅が数psから数十nsの範囲にある請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
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JP2021134381A JP2023028583A (ja) | 2021-08-19 | 2021-08-19 | 酸化マグネシウム基板の製造方法 |
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