JP2023028084A - 壁用の臭気封止材及び壁紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境面に配慮しつつ、建物への臭気の付着や、臭気が付着した建材からの臭気の拡散を抑制することが可能な壁用の臭気封止材及び壁用の臭気封止材を有する壁紙を得る。【解決手段】最表層に形成された紙基材層と、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層と、無機酸化物層と、カルボキシル基と、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層と、をこの順で備える。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば建造物の内装等に用いられる壁紙の下層に設けられる壁用の臭気封止材、又は壁用の臭気封止材を備える壁紙に関する。
従来、建物の老朽化や居住者の生活状況によって室内に強い臭いや異臭が発生することがある。このような臭いは、例えば、建物の床や壁の内部に用いられる建材に含まれる各種化学物質や建材に染み込んだ室内の臭いが室内に拡散することにより生じる。このような場合、住宅の居住性や快適性が低下してしまう。
そこで、壁紙に臭気が染み込むことを防止するために、壁紙に貼り付けるフィルムであって、アミノ基を有する化合物を担持する粒子状吸着剤を含む層と、アミノ基を有する化合物を担持しない粒子状吸着剤を含む層とが積層されたフィルムが提案されている(特許文献1)。
特開2012-210718号公報
高い意匠性を有する一般的な壁紙や壁紙の下地となる建物の壁面に付着した臭気は、一般的なクリーニングや修繕で消すことが難しい場合がある。しかしながら、一般的な壁紙に代えてこのようなフィルムを壁材表面に貼り付けた場合、壁紙の質感や意匠性が低下するおそれがある。
また近年では、環境面に配慮して、合成樹脂フィルム等を使用せずに、紙を基材としたガスバリア性材料の開発が進められてきている。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、環境面に配慮しつつ、壁紙の意匠性を低下させることなく、建物への臭気の付着を抑制することが可能な壁用の臭気封止材及び壁紙を得ることにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る壁用の臭気封止材は、最表層に形成された紙基材層と、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層と、無機酸化物層と、カルボキシル基と、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層と、をこの順で備えることを特徴とする。
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る壁用の臭気封止材は、最表層に形成された原紙層と、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層と、無機酸化物層と、カルボキシル基と、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層と、をこの順で備え、前記原紙層は、紙基材と、前記紙基材の一方の面に設けられた第1の積層樹脂層及び前記紙基材の他方の面に設けられた第2の積層樹脂層の少なくとも一方と、を備えることを特徴とする。
また、上記の課題を解決するために、本発明の他の態様に係る壁紙は、上述した臭気遮断性積層体と、臭気遮断性積層体の表面に貼着された表面基材とを備えることを特徴とする。
本発明の態様によれば、環境面に配慮しつつ、建物への臭気の付着を抑制することが可能な壁用の臭気封止材及び壁紙を得ることができる。
本発明の第一実施形態に係る壁用の臭気封止材の一構成例を示す断面図である。 本発明の第二実施形態に係る壁用の臭気封止材の一構成例を示す断面図である。 本発明の第三実施形態に係る壁紙の一構成例を示す断面図である。 本発明の第四実施形態に係る壁紙の一構成例を示す断面図である。
以下、実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は特許請求の範囲にかかる発明を模式的に示すものであり、各部の幅、厚さ等の寸法は現実のものとは異なり、これらの比率も現実のものとは異なる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態の各態様について説明する。
以下、本発明の実施形態に係る壁用の臭気封止材及び壁用の臭気封止材を有する壁紙について、図1から図4を用いて説明する。本発明の実施形態に係る壁用の臭気封止材は、例えば、建物の壁面に貼り付ける壁紙の下層に施工される。なお、以下の説明では、壁用の臭気封止材が壁紙と対向する側を臭気封止材の「上」とし、壁用の臭気封止材が壁紙と対向しない側を「下」として説明する場合がある。
1.第一実施形態
図1は、本発明の第一実施形態に係る壁用の臭気封止材100の一構成例を説明するための断面図である。本実施形態に係る壁用の臭気封止材100は、例えば、建物の壁面に貼り付ける壁紙の下層に施工される建材用防臭シートである。
壁用の臭気封止材100は、バリア層10と、バリア層10に形成されたポリオレフィンを含む層14の下側の面(他方の面の一例)側に設けられたプライマー層20と、プライマー層20のバリア層10と反対側の面に設けられた接着層30とを備えている。
バリア層10は、室内の臭いや臭いの原因となる液体等が壁紙の下層となる建造物壁面のコンクリートや板(以下、下地と記載する場合がある)に透過することや、下地から室内に各種化学物質が拡散することを防止する機能を有する層である。プライマー層20は、バリア層10と接着層30との接着性を向上させるために設けられた層である。接着層30は、壁用の臭気封止材100を下地(建造物壁面のコンクリートや板)に接着するために設けられた層である。すなわち、壁用の臭気封止材100は、バリア層10が壁紙(図示せず)と対向し、接着層30が建造物の壁面と対向するように施工され、建造物の壁面に固定される。
以下、バリア層10、プライマー層20及び接着層30の各層について詳細に説明する。
(1.1)壁用の臭気封止材の基本構成
<バリア層>
バリア層10は、紙基材層11と、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12と、無機酸化物層13と、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層14と、をこの順で備える積層構造を有している。
(紙基材層)
紙基材層11としては、特に限定されず、壁用の臭気封止材100が適用される壁紙の用途に応じて適宜選択すればよい。植物由来のパルプを主成分としている紙であれば特に制限はない。紙基材層11の具体例として、上質紙、特殊上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、模造紙及びクラフト紙、グラシン紙が挙げられる。
紙基材層11の厚さは、例えば、30μm以上100μm以下であれば好ましく、30μm以上70μm以下であればより好ましい。紙基材層11の厚さが30μm以上であれば、ガスバリア性をより向上させることができる。また、紙基材層11の厚さが100μm以下であれば、安定して臭気の拡散を抑制することができる。また、紙基材層11の厚さは、積層体全体の厚さの70%以上であってよい。紙基材層11の厚さが、積層体全体の厚さの70%以上であれば、環境適性に優れているといえる。
紙基材層11には、少なくとも後述するポリビニルアルコール系樹脂を含む層12と接する側にコート層を設けてあってもよい。コート層を設けることで、紙にポリビニルアルコール系樹脂を含む層12が染み込むことを防ぐことができるほか、紙の凹凸を埋める目止めの役割を果たすこともでき、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層を欠陥なく均一に製膜することができる。コート層には、バインダー樹脂として例えば、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、などの各種共重合体、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、パラフィン(WAX)等を用い、填料として例えば、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等が含まれていてもよい。
コート層の厚さは、特に制限されないが、例えば、1μm以上10μm以下であれば好ましく、3μm以上8μm以下であればより好ましい。コート層の厚さが1μm以上であれば、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層をより均一に製膜することができる。コート層の厚さが10μm以下であれば、コストを抑えつつ各層を均一に製膜することができる。
紙の質量は、積層体全体を基準として、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上95質量%以下であることが更に好ましい。紙の質量が積層体全体を基準として、50質量%以上であれば、プラスチック材料の使用量を十分に削減することができ、積層体全体として紙製であるということができるとともに、リサイクル性に優れる。
(ポリビニルアルコール系樹脂を含む層)
ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12は、紙基材層11の一方の面側に設けられ、紙基材層11と後述する無機酸化物層13との間の密着性向上や、積層体のガスバリア性(特に酸素バリア性)の向上のために設けられる層である。
ポリビニルアルコール系樹脂とは、例えば、完全けん化のポリビニルアルコール樹脂、部分けん化のポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂、エチレン?ビニルアルコール共重合樹脂等である。またポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、300以上1500以下が好ましい。重合度が300以上であれば、ガスバリア性積層体のバリア性や屈曲耐性が良好になり、重合度が1500以下であれば、後述するポリビニルアルコール系樹脂の塗液の粘度が低くなり、塗布性が良好になる。
ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12を設ける方法としては、紙基材層11上に上述したポリビニルアルコール系樹脂及び溶媒を含む塗液を塗布し、乾燥させることで得ることができる。塗液に含まれる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられ、特に水と、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコールとの混合溶媒が好ましい。また前記塗液には、界面活性剤や防腐剤、保存安定剤、シランカップリング剤、有機チタネート等の添加剤を含んでいても構わない。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を含む層12は、柔軟性に優れ、屈曲後(折り曲げ後)に後述する無機酸化物層13の割れを抑制してガスバリア性の劣化を抑えることができるとともに、無機酸化物層13と紙基材層11との密着性を向上させることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12におけるポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、例えば、1質量%以上100質量%以下あり、20質量%以上70質量%以下であれば好ましく、30質量%以上50質量%以上であればより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が50質量%以上であれば、ガスバリア性を向上させ、臭気の拡散を抑制することができる。
ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12の厚さは、例えば、1μm以上であれば好ましく、2μm以上5μm以下であればより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12の厚さが1μm以上であれば、上述した紙基材層11の凹凸を効率的に埋めることができ、後述する無機酸化物層13を均一に積層させることができる。また、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12の厚さが5μm以下であれば、コストを抑えつつ無機酸化物層13を均一に積層させることができる。
[無機酸化物層]
無機酸化物層13は、金属又は無機化合物を蒸着した層である。無機酸化物層13は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び酸化マグネシウムの少なくとも一つを含む薄膜層である。無機酸化物層13には、無機酸化物とともに、微量の不純物が含まれていても良い。
無機酸化物層13の厚さは、使用用途によって適宜設定すればよいが、例えば30nm以上100nm以下であれば好ましく、50nm以上80nm以下であればより好ましい。無機酸化物層13の厚さを30nm以上とすることで、無機酸化物層13の連続性を十分なものとしやすくなる。また無機酸化物層13の厚さを100nm以下とすることで、カールやクラックの発生を十分に抑制でき、十分なガスバリア性能及び可撓性を達成しやすい。
無機酸化物層13は、真空成膜手段によって成膜することが、酸素ガスバリア性能や膜均一性の観点から好ましい。成膜手段には、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)などの公知の方法があるが、成膜速度が速く生産性が高いことから真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法における加熱手段としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましく、成膜速度を照射面積や電子ビーム電流などで制御しやすいことや蒸着材料への昇温降温が短時間で行えることを考慮すると電子線加熱方式を用いることがより好ましい。また、無機酸化物層13と紙基材層11との密着性及び無機酸化物層13の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。また、無機酸化物層13を構成する蒸着膜の透明性を向上させるために、蒸着の際、酸素等の各種ガスなど吹き込む反応蒸着を用いてもよい。
[ポリオレフィンを含む層]
ポリオレフィンを含む層14は、無機酸化物層13の一方の面側に、無機酸化物層13に接するように設けられる層で、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む。
このようなポリオレフィンを含む層14は、柔軟性に優れ、屈曲後(折り曲げ後)に無機酸化物層13の割れを抑制することができるとともに、無機酸化物層13に対する密着性に優れる。さらに、上述したポリオレフィンを含むことで、水蒸気バリア性に優れる積層体を得ることができる。また、ポリオレフィンを含む層を設けることで、ヒートシール層としての役割も兼ねることができるため、ヒートシール層を別途設けなくともよい。
ポリオレフィンを含む層14は、上述したポリオレフィンのほかに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、有機チタネート、ポリアクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリオレフィン系エマルジョン、ポリイミド、メラミン、フェノール等が挙げられる。
ポリオレフィンを含む層14におけるポリオレフィンの含有量は、例えば、50質量%以上であれば好ましく、70質量%以上であればより好ましい。ポリオレフィンを含む層14のポリオレフィンの含有量が50質量%以上であれば、ガスバリア性を向上させ、臭気の拡散を抑制することができる。
ポリオレフィンを含む層14の厚さは、例えば、2μm以上10μm以下であれば好ましく、3μm以上8μm以下であればより好ましい。ポリオレフィンを含む層14の厚さが2μm以上であれば、上述したヒートシール層としての役割を十分に発揮することができる。また、ポリオレフィンを含む層14の厚さが10μm以下であれば、コストを抑えつつ無機酸化物層に対する密着性やバリア性を十分に発揮することができる。
ポリオレフィンを含む層14を設ける方法としては、無機酸化物層13上に上述したポリオレフィン及び溶媒を含む塗液を塗布し、乾燥させることで得ることができる。塗液に含まれる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、特性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また環境の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水がより好ましい。
バリア層10は、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12及び無機酸化物層13により臭気を透過し、室内への臭気の拡散を防止することができる。また、ポリオレフィンを含む層14は、無機酸化物層13を保護しかつ無機酸化物層13のガスバリア性を向上させることができ、壁用の臭気封止材100の施工時や壁用の臭気封止材100の使用時(壁用の臭気封止材100の施工した住居で賃借人が生活する際)においてもバリア層10の防臭機能が維持されやすくなる。
<プライマー層>
プライマー層20は、バリア層10のポリオレフィンを含む層14側の面と密着して設けられ、バリア層10と接着層30との接着性を向上させるために設けられている。
プライマー層20を構成するプライマーとしては、ポリブチレンカーボネート樹脂を使用することが好ましい。ポリブチレンカーボネート樹脂以外のプライマー層20を構成するプライマーとしては、例えばエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の樹脂材料を単独又は混合して用いることができる。プライマー層20は、これらの樹脂材料をロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いてバリア層10に塗布することにより形成される。
プライマー層20を構成するプライマーとしては、アクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体とイソシアネートとを含む樹脂で形成することができる。アクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体は、末端に水酸基を有するアクリル重合体成分(成分A)、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール成分(成分B)、ジイソシアネート成分(成分C)を配合して反応させてプレポリマーとし、このプレポリマーにさらにジアミンなどの鎖延長剤(成分D)を添加して鎖延長することで得られる。この反応によりポリエステルウレタンが形成されると共に、アクリル重合体成分が分子中に導入され、末端に水酸基を有するアクリル-ポリエステルウレタン共重合体が形成される。プライマー層20を構成するプライマーは、このアクリル-ポリエステルウレタン共重合体の末端の水酸基をイソシアネートと反応させて硬化させることにより形成される。
成分Aとしては、末端に水酸基を有する直鎖状のアクリル酸エステル重合体が用いられる。特に、成分Aとして、末端に水酸基を有する直鎖状のポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いることが、耐候性(特に光劣化に対する特性)に優れウレタンと共重合させて相溶化するのが容易である点から好ましい。成分Aは、共重合体においてアクリル樹脂成分となり、分子量5000~7000(重量平均分子量)であることが耐候性、接着性の観点からさらに好ましい。また、成分Aは、両末端に水酸基を有する重合体のみを用いてもよいが、片末端に共役二重結合が残っている重合体と、両末端に水酸基を有する重合体とを混合して用いてもよい。
成分Bとしては、成分C(ジイソシアネート成分)と反応してポリエステルウレタンを形成し、共重合体においてウレタン樹脂成分を構成する材料が用いられる。成分Bは、両末端に水酸基を有するポリエステルジオールが用いられる。ポリエステルジオールとしては、芳香族又はスピロ環骨格を有するジオール化合物とラクトン化合物もしくはその誘導体、又はエポキシ化合物との付加反応生成物、二塩基酸とジオールとの縮合生成物、および環状エステル化合物から誘導されるポリエステル化合物等を挙げることができる。ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、メチルペンテンジオール等の短鎖ジオール、1,4-シクロへキサンジメタノール等の脂環族短鎖ジオール等を挙げることができる。また、塩基酸としては、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を挙げることができる。ポリエステルポリオールとして好ましいのは、酸成分としてアジピン酸ないしアジピン酸とテレフタル酸の混合物を用い、ジオール成分として3-メチルペンテンジオールおよび1,4-シクロへキサンジメタノールを用いたアジペート系ポリエステルである。
成分Bと成分Cとが反応して形成されるウレタン樹脂成分は、プライマー層20に柔軟性を与え、接着性向上に寄与する。また、アクリル重合体を含むアクリル樹脂成分は、プライマー層20の耐候性および耐ブロッキング性に寄与する。ウレタン樹脂における成分Bの分子量は、プライマー層20に柔軟性を十分に発揮可能なウレタン樹脂が得られる範囲であればよい。例えば、成分Bがアジピン酸又はアジピン酸とテレフタル酸の混合物と、3-メチルペンテンジオールおよび1,4-シクロへキサンジメタノールを含むポリエステルジオールの場合、成分Bの分子量が500以上5000以下(重量平均分子量)であることが好ましい。
成分Cとしては、1分子中に2個のイソシアネート基を有する脂肪族又は脂環族のジイソシアネート化合物が用いられる。このジイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,4,4)-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4’-シクロヘキシルジイソシアネート等を挙げることができる。ジイソシアネート成分としては、イソホロンジイソシアネートが物性およびコストが優れる点で好ましい。成分A~Cを反応させる場合のアクリル重合体、ポリエステルポリオールおよび後述する鎖延長剤の合計の水酸基(アミノ基の場合もある)と、イソシアネート基は、イソシアネート基が過剰となるように双方の当量比を調整する。
三成分A、B、Cを60℃~120℃の環境下で2時間~10時間程度反応させる。ジイソシアネートのイソシアネート基がポリエステルポリオール末端の水酸基と反応してポリエステルウレタン樹脂成分が形成されると共に、アクリル重合体末端の水酸基にジイソシアネートが付加した化合物も混在する。これにより、過剰のイソシアネート基および水酸基が残存した状態のプレポリマーが形成される。形成されたプレポリマーに、鎖延長剤として例えばイソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミンを加えてイソシアネート基を鎖延長剤と反応させ、鎖延長する。これにより、アクリル重合体成分がポリエステルウレタンの分子中に導入され、末端に水酸基を有するアクリル-ポリエステルウレタン共重合体を得ることができる。
アクリル-ポリエステルウレタン共重合体にイソシアネートを加えると共に、塗布法、乾燥後の塗布量を考慮して必要な粘度に調節して塗布液を調整する。調整した塗布液を、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で第一バリア層10Aに塗布することにより、プライマー層20が形成される。
イソシアネートとしては、アクリル-ポリエステルウレタン共重合体の水酸基と反応して架橋硬化させることが可能なものであればよく、例えば、2価以上の脂肪族又は芳香族イソシアネートが用いられる。特に、熱変色防止、耐候性の点から脂肪族イソシアネートを用いることが望ましい。脂肪族イソシアネートとしては、具体的に、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートの単量体、又はこれらの2量体、3量体などの多量体、あるいはこれらのイソシアネートをポリオールに付加した誘導体(アダクト体)のようなポリイソシアネートなどを挙げることができる。
プライマー層20の乾燥後の塗布量は、1g/m以上20g/m以下であることが好ましく、1g/m以上5g/m以下であることがより好ましい。また、プライマー層20は、必要に応じてシリカ粉末などの充填剤、光安定剤、着色剤等の添加剤が添加されていてもよい。
<接着層>
接着層30は、例えば、接着基材31と、接着基材31に設けられた粘着層32と、を備えており、例えばシート状の接着層(すなわち接着シート)である。
接着基材31は、網状シート材等で構成された支持体であることが好ましい。また、支持体としては、例えば、不織布、織布が用いられる。また、接着基材31は、上述した支持体が例えば樹脂フィルムで貼り合わされたラミネートクロス、又は支持体の表面が樹脂材料で覆われたコーティングクロスであってもよい。
粘着層32は、接着基材31に含浸されて形成された層、または接着基材31の表面に形成された層であり、従来公知の樹脂材料により形成することができる。粘着層32を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエン-アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体を用いることが可能である。これらの樹脂は単独、あるいは2種以上を混合して使用しても良い。
粘着層32の形成量(塗布液を塗布、乾燥した後に残った固形分量)は、0.1g/m以上2.0g/m以下であることが好ましい。
また、粘着層32には、上述した性能を損なわない範囲内で、樹脂以外の公知の添加剤を用いることが可能である。添加剤としては、例えば、無機顔料微粒子、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、粘度調整剤、離型剤、ワックス・樹脂フィラーに代表される滑り剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤等を用いることが可能である。
接着層30を設けることにより、壁用の臭気封止材100はいわゆるタック加工された建材用防臭シートとなる。このため、壁用の臭気封止材100を施工する際に、容易に下地へ貼り付け可能となり、壁用の臭気封止材100の施工性を向上させることができる。
(1.2)第一実施形態の効果
以上のような壁用の臭気封止材100は、以下の効果を有する。
(1)壁用の臭気封止材100は、無機酸化物層13により臭気を透過し、室内への臭気の拡散を防止することができる。このため、壁用の臭気封止材100は、高い防臭機能を発揮することができる。
(2)壁用の臭気封止材100は、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12の厚さが1μm以上5μm以下である。この構成によれば、壁用の臭気封止材100は、紙基材層11の凹凸を効率的に埋めることができ、無機酸化物層13を均一に積層させることができる。
(3)壁用の臭気封止材100は、無機酸化物層13の厚さが30nm以上100nm以下である。この構成によれば、壁用の臭気封止材100は、カールやクラックの発生を抑制しつつ十分なガスバリア性能及び可撓性が向上する。
(4)壁用の臭気封止材100は、ポリオレフィンを含む層14の厚さが2μm以上10μm以下である。この構成によれば、壁用の臭気封止材100は、コストを抑えつつ無機酸化物層13に対する密着性を向上させつつ、バリア性を高めることができる。
(5)壁用の臭気封止材100は、接着層30が設けられることにより、いわゆるタック加工された建材用防臭シートとなる。このため、壁用の臭気封止材100は、容易に施工可能となり、高い施工性を有する。
2.第二実施形態
次に、本発明の第二実施形態に係る壁用の臭気封止材について、図2を用いて説明する。
図2は、本発明の第二実施形態に係る壁用の臭気封止材150の一構成例を説明するための断面図である。本実施形態に係る壁用の臭気封止材150は、壁用の臭気封止材100と同様に、建物の壁面に貼り付ける壁紙の下層に施工される建材用防臭シートである。
図2に示すように、壁用の臭気封止材150は、バリア層110と、バリア層110に形成されたポリオレフィンを含む層14の下側の面(他方の面の一例)側に設けられたプライマー層20と、プライマー層20のバリア層110と反対側の面に設けられた接着層30とを備えている。
すなわち、壁用の臭気封止材150は、バリア層10に代えてバリア層110を備える点で、第一実施形態に係る壁用の臭気封止材100と相違する。
また、バリア層110は、原紙層60と、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12と、無機酸化物層13と、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層14と、をこの順で備える積層構造を有している。
すなわち、バリア層110は、紙基材層11に代えて原紙層60を備える点で、バリア層10と相違する。
以下、原紙層60について説明する。なお、原紙層60以外の各層(ポリビニルアルコール系樹脂を含む層12、無機酸化物層13及びポリオレフィンを含む層14)については、バリア層10の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
(2.1)壁用の臭気封止材の基本構成
<原紙層>
原紙層60は、バリア層110の最表層に形成され、紙基材61と樹脂層との積層構造である。図2では、紙基材61の両面(一方の面及び他方の面の一例)に積層樹脂層62,63(第1の積層樹脂層及び第2積層樹脂層の一例)がそれぞれ設けられた積層構造の原紙層60を示しているが、積層樹脂層62,63の一方のみが設けられていても良い。
壁用の臭気封止材150の最表層に原紙層60を設けることにより、バリア層110の上面(すなわち原紙層60の上面)から糊を塗布して後述する表面基材(壁紙等)を施工することが可能となる。また、壁用の臭気封止材150の最表層に原紙層60を設けることにより、水濡れ耐性が向上し、壁面から水分が大量にしみ込んだ場合においてもシートの破損を防ぐことができる。
(紙基材)
紙基材61としては、前述の紙基材層11と同様に、特に限定されず、壁用の臭気封止材150が適用される壁紙の用途に応じて適宜選択すればよい。植物由来のパルプを主成分としている紙であれば特に制限はない。紙基材61の具体例として、上質紙、特殊上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、模造紙及びクラフト紙、グラシン紙が挙げられる。
紙基材61の厚さは、例えば、30μm以上100μm以下であれば好ましく、30μm以上70μm以下であればより好ましい。紙基材61の厚さが30μm以上であれば、ガスバリア性をより向上させることができる。また、紙基材61の厚さが100μm以下であれば、安定して臭気の拡散を抑制することができる。また、紙基材61の厚さは、積層体全体の厚さの70%以上であってよい。紙基材61の厚さが、積層体全体の厚さの70%以上であれば、環境適性に優れているといえる。
紙の質量は、積層体全体を基準として、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上95質量%以下であることが更に好ましい。紙の質量が積層体全体を基準として、50質量%以上であれば、プラスチック材料の使用量を十分に削減することができ、積層体全体として紙製であるということができるとともに、リサイクル性に優れる。
(積層樹脂層)
積層樹脂層62,63としては、例えばポリオレフィン系樹脂等の樹脂材料を用いることが好ましい。積層樹脂層62,63は、紙基材61とともに樹脂材料が例えば押出ラミネート加工されることにより形成される。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が挙げられる。中でも、安価で加工性に優れる点から、ポリオレフィン系樹脂としてポリエチレン(PE)を用いることが特に好ましい。
紙基材61と積層樹脂層62,63との積層構造である原紙層60は、例えば、紙基材61に対してポリエチレン等の樹脂材料を押出ラミネートすることにより形成される。積層構造である原紙層60は、例えば15μm以上150μm以下の厚さとされることが好ましい。原紙層60の厚さが15μm以上の場合、表面基材である壁紙や化粧材を剥がすことができる、原紙層60の厚さが150μm以下の場合、コストが低く製造可能であるため好ましい。
(2.2)第二実施形態の効果
以上のような壁用の臭気封止材150は、第一実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(6)壁用の臭気封止材150は、積層体の最表層において原紙層60を形成する。この構成によれば、積層体の上面から表面基材を施工することが可能となり、また、水濡れ耐性が向上し、シートの破損を防ぐことができる。
3.第三実施形態
次に、第三実施形態に係る壁用の臭気封止材100である防臭シートを有する壁紙の構成例について、図3を用いて説明する。図3は、壁用の臭気封止材100を有する壁紙200の構成を示す断面図である。
壁紙200は、壁用の臭気封止材100と、壁用の臭気封止材100の表面上(すなわちバリア層10)に積層された表面基材210とを備えている。壁用の臭気封止材100は、前述した壁用の臭気封止材100と同様の構成を有するため、説明を省略する。
(3.1)壁紙の構成
<表面基材>
表面基材210は、壁紙や化粧材として一般的に用いられるシート体であれば特に限定されない。壁用の臭気封止材100と表面基材210とは貼り合わされることが好ましい。
壁紙用途としての表面基材210としては、例えば原紙(裏打ち紙)や、原紙と例えば樹脂層等の他の層とを有する積層体が挙げられる。表面基材210が原紙と原紙表面に設けられた樹脂層とを含む積層体である場合、樹脂層は気泡を有する発泡体であってもよい。樹脂層が発泡体である場合、軽量性、断熱性、意匠性、質感に優れる点で好ましい。
また、表面基材210は、化粧基材の上面に化粧シートが積層された化粧材であっても良い。化粧材は、例えば、基材の表面に化粧シートが積層された化粧材であっても良い。化粧シートの基材は、例えば木質系、金属系、合成樹脂系等、従来の壁紙における基材(層)と同様の材質を任意に採用可能である。また、化粧シートは、例えば、ポリオレフィン系樹脂シートの表面側に絵柄模様層を印刷し、絵柄模様層の表面側に透明樹脂層と表面保護層とをこの順に積層してなる。絵柄模様層は、化粧シートに所望の絵柄による意匠性を付与する層である。絵柄の種類等は特に限定的ではないが、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。また、絵柄模様層は、絵柄模様のない単色の層であっても良い。
以下、表面基材210が積層構造を有する発泡壁紙210aである場合について説明する。
<発泡壁紙>
図3に示すように、発泡壁紙210aは、壁用の臭気封止材100の紙基材層11側の面上に設けられる。発泡壁紙210aは、基材220と、基材220の上面に積層された発泡樹脂層230とを少なくとも有している。
(基材)
基材220の材料としては、壁紙用の裏打紙等、紙基材として通常使用されている材料であれば、特に限定されずに使用可能である。基材220の材料としては、例えば水溶性難燃剤を含浸させたパルプ主体の難燃紙や、無機質剤を混抄した無機質紙等を用いることが可能である。特に、基材220の材料として繊維質の材料を用いることにより、基材220の構成が発泡壁紙210aに適切な構成となるとともに、基材220を形成する材料の入手が容易となる。
また、基材220の秤量は、50g/m以上70g/m以下であることが好ましい。
水溶性難燃剤としては、例えば、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン等を用いることが可能である。
無機質剤としては、例えば、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を用いることが可能である。
ここで、基材220の表面のうち、発泡樹脂層230を積層する側の面(図3中において、基材220の上側の面)には、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施してもよい。また、発泡樹脂層230を積層する側の面には、アクリル-ブチル共重合体や、イソシアネートとポリオールとからなるポリウレタン等により易接着処理層を設けてもよい。
(発泡樹脂層)
発泡樹脂層230は、基材220上(図3中において、基材220の上側の面)に積層されている。
発泡樹脂層230は、樹脂組成物を含んで形成されている。また、発泡樹脂層230は、樹脂組成物とともに、充填剤、発泡剤、発泡助剤、樹脂分及び添加剤等を有している。
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、二酸化チタン等の無機充填剤や、メラミンシアヌレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、木粉、セルロース及びその誘導体等の有機充填剤を用いることが可能である。
発泡剤としては、例えば、アゾ系発泡剤、ヒドラジド系発泡剤、ニトロソ系発泡剤等の熱分解型発泡剤を、一種を単独で又は二種類以上を併用して用いることが可能である。
発泡助剤としては、例えば、脂肪族系化合物、脂肪酸アミド系化合物、ビウレア等の尿素系化合物、ヒドラジン系化合物等の非金属系化合物、塩化亜鉛等の金属塩化物、酸化亜鉛等の金属酸化物等の有機または無機金属系化合物等を用いることが可能である。
以上のような、壁紙200は、例えば基材220の発泡樹脂層230とは逆側の面に緩衝層を設けていても良い。
以上のような壁用の臭気封止材100と表面基材210とを有する壁紙200は、壁紙200の施工と同時に壁用の臭気封止材100を施工することが可能となるため好ましい。
(3.2)第三実施形態の効果
以上のような壁紙200は、第一実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(7)壁用の臭気封止材100を有する壁紙200は、壁紙200の施工と同時に壁用の臭気封止材100を施工することが可能となる。このため、作業工程を増やすことなく壁用の臭気封止材100を施工することが可能となる。
4.第四実施形態
次に、第四実施形態に係る壁用の臭気封止材150である防臭シートを有する壁紙の構成例について、図4を用いて説明する。図4は、壁用の臭気封止材150を有する壁紙250の構成を示す断面図である。
(4.1)壁紙の基本構成
壁紙250は、壁用の臭気封止材150と、壁用の臭気封止材150の表面上(すなわちバリア層110)に積層された表面基材210とを備えている。つまり、壁紙250は、壁用の臭気封止材100に代えて壁用の臭気封止材150を備える点で、第三実施形態に係る壁紙200と相違する。なお、壁用の臭気封止材150は、前述した壁用の臭気封止材150と同様の構成を有するため、説明を省略する。
以上のような壁紙250は、壁紙200と同様に、例えば基材220の発泡樹脂層230とは逆側の面に緩衝層を設けていても良い。
以上のような壁用の臭気封止材150を有する壁紙250は、壁紙250の施工と同時に壁用の臭気封止材150を施工することが可能となるため好ましい。
(4.2)第四実施形態の効果
以上のような壁紙250は、第一実施形態及び第二実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(8)壁用の臭気封止材150を有する壁紙250は、壁紙250の施工と同時に壁用の臭気封止材150を施工することが可能となる。このため、作業工程を増やすことなく壁用の臭気封止材150を施工することが可能となる。
以下、本実施形態に係る積層体について、実施例を挙げて説明する
実施例では、本実施形態に係る壁用の臭気封止材を用いて壁紙を施工した室内と、本実施形態に係る壁用の臭気封止材を用いずに壁紙を施工した室内において、臭気の評価を行った。
(実施例1)
紙基材(クレーコート紙、紙の厚さ:28μm、クレーコート層の厚さ:5μm)のクレーコート表面上に、けん化度98%、重合度500のポリビニルアルコール樹脂を水/IPA=8/2の溶液に固形分濃度10質量%で溶解した塗液をバーコーターで塗布し、オーブンで乾燥させ、ポリビニルアルコール樹脂を含む層を形成した。ポリビニルアルコール樹脂を含む層の厚さは1μmとした。続いて、ポリビニルアルコール樹脂を含む層上に真空蒸着法にてAL蒸着を施し、無機酸化物層を形成した。無機酸化物層の厚さは50nmとした。その後、無機酸化物層上にカルボキシル基の塩を含む塗液(三井化学株式会社製、ケミパールS500)をバーコーターで塗工し、オーブンで乾燥させ、ポリオレフィンを含む層を形成した。ポリオレフィンを含む層の厚さは3μmとした。以上により、バリア層を形成した。
次に、紙基材の他方の面に、ポリブチレンカーボネート樹脂を、固形分としての塗布量が1g/mとなるようにグラビア印刷法にて塗布した。次に、ポリブチレンカーボネート樹脂の表面に、接着層として接着基材であるラミネートクロスの表面にアクリル樹脂を塗布、乾燥させて粘着層とした接着シート(恵比寿化成株式会社製、#703N)を貼り付けた。最後に、ポリブチレンカーボネート樹脂を乾燥させることにより、紙基材と接着層との間にプライマー層を形成した。
以上により、実施例1の壁用の臭気封止材を形成した。
(実施例2)
ポリビニルアルコール樹脂を含む層の厚さを5μmとした以外は、実施例1と同様にして実施例2の壁用の臭気封止材を形成した。
(実施例3)
無機酸化物層の厚さを30nmとした以外は、実施例1と同様にして実施例3の壁用の臭気封止材を形成した。
(実施例4)
ポリオレフィンを含む層の厚さを10μmとした以外は、実施例1と同様にして実施例4の壁用の臭気封止材を形成した。
(実施例5)
ポリビニルアルコール樹脂を含む層の厚さを3μmとした。そして無機酸化物層の厚さを15μmとした。これ以外は、実施例1と同様にして実施例5の壁用の臭気封止材を形成した。
(実施例6)
ポリオレフィンを含む層の厚さを1.5μmとした以外は、実施例5と同様にして実施例6の壁用の臭気封止材を形成した。
(実施例7)
ポリビニルアルコール樹脂を含む層の厚さを3μmとした以外は、実施例1と同様にして実施例7の壁用の臭気封止材を形成した。
(実施例8)
実施例7で形成したバリア層において、紙基材ではなく紙基材と積層樹脂層との積層構造である原紙層を基材として用いた。なお原紙層は、紙基材に対してポリエチレン等の樹脂材料を押出ラミネートすることにより形成した。これ以外は、実施例7と同様にして実施例8の壁用の臭気封止材を形成した。
(比較例1)
基材層として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。また、ポリビニルアルコール樹脂を含む層、無機酸化物層及びポリオレフィンを含む層を形成しなかった。次に、二軸延伸エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)フィルム上に、ポリエステルポリオールと硬化剤としてイソホロンジイソシアネートとを含む2液ウレタン樹脂系接着剤を用い、バリア層と原紙層との間に乾燥後の塗布量が1g/mになるようにアンカー剤を塗工して、アンカーコート層を形成した。さらに、アンカーコート層の表面に、ポリエチレン(PE)を塗布、乾燥させて樹脂層を形成した。なお、樹脂層の厚さは34μmとした。そして、糊付けによる施工を可能にするために、樹脂層の表面にコート紙を設けた。これ以外は、実施例1と同様にして比較例1の壁用の臭気封止材を形成した。
(比較例2)
アンカーコート層及び樹脂層の形成を省略した。これ以外は、比較例1と同様にして比較例2の壁用の臭気封止材を形成した。
(比較例3)
基材層において、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムではなく、二軸延伸エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)フィルムを用いた。これ以外は、比較例1と同様にして比較例3の壁用の臭気封止材を形成した。
(比較例4)
アンカーコート層及び樹脂層の形成を省略した。これ以外は、比較例3と同様にして比較例4の壁用の臭気封止材を形成した。
<評価>
上述した実施例1~8、比較例1~4で得られた壁用の臭気封止材を異なる室内において壁紙の下層に施工し、それぞれの室内について次の評価を実施した。
〔臭気抑制機能の評価〕
各室内において、複数の測定日において室内空気質の測定を行い、臭気の抑制効果を確認した。臭気抑制機能の評価では、臭気が観測される各室内において、壁用の臭気封止材及び壁紙の施工前における臭気と、壁用の臭気封止材及び壁紙の施工を行った後所定期間経過した後の臭気とを、7人の評価者が各室内の臭いをかぐことにより確認し、以下◎、○、△、×の4段階で臭気抑制効果を評価した。
<評価基準>
◎:7人の観測者全員が壁用の臭気封止材の施工前後で臭気の抑制を確認できた場合
○:4人以上の観測者が壁用の臭気封止材の施工前後で臭気の抑制を確認できた場合
△:4人以上の観測者が壁用の臭気封止材の施工前後で臭気の抑制を確認できなかった場合
×:7人の観測者全員が壁用の臭気封止材の施工前後で臭気の抑制を確認できなかった場合
〔施工性の評価〕
実施例1~8、比較例1~4の壁用の臭気封止材をそれぞれハサミ又はカッターにて切削した。このときの実施例及び比較例の壁用の臭気封止材の施工性を以下の○、×の2段階で評価した。
<評価基準>
○:壁用の臭気封止材を容易に切削できた場合
×:壁用の臭気封止材の切削は可能だが、困難を伴う場合
〔環境適性の評価〕
実施例1~8、比較例1~4の壁用の臭気封止材全体における樹脂使用率の相対比較を行い、環境適性について評価した。
上述の各分析において、以下の○、△の2段階で評価した。
<評価基準>
○:壁用の臭気封止材全体における樹脂使用率が低い場合
△:壁用の臭気封止材全体における樹脂使用率が評価「○」に対して高い場合
〔製造コストの評価〕
実施例1~8、比較例1~4の壁用の臭気封止材のそれぞれの製造コストを評価した。
上述の各分析において、以下の○、△の2段階で評価した。
<評価基準>
○:壁用の臭気封止材の製造コストが安価な場合
△:壁用の臭気封止材の製造コストが評価「○」に対して高価である場合
(評価結果)
以下の表1に、臭気抑制機能、施工性、環境適性及び製造コストの評価結果を示す。
Figure 2023028084000002
表1に示すように、実施例1~8の壁用の臭気封止材を用いた室内では、7人の観測者のうち4人以上の評価者が積層体の施工前後で臭気の抑制を確認できた。一方、比較例1~4の壁用の臭気封止材を用いた室内では、7人の観測者のうち4人以上の評価者が積層体の施工前後で臭気の抑制を確認することができなかった。
また、表1に示すように、実施例1~8及び比較例1及び比較例3の壁用の臭気封止材は、ハサミやカッターで容易に切削できた。一方、比較例2及び比較例4の壁用の臭気封止材は、ハサミやカッターで切削することはできたが、困難を伴った。
以上の評価結果から、実施例1~8の壁用の臭気封止材を用いた室内では、比較例1~4の壁用の臭気封止材を用いた室内と比較して、臭気抑制効果が高いことが確認された。
また、実施例1~8の壁用の臭気封止材又は基材層上に樹脂層を備える積層体は、基材層上に樹脂層を備えない積層体と比較して、施工性が高いことが確認された。
さらに、実施例1~8の壁用の臭気封止材は、比較例1~4の壁用の臭気封止材と比較して、環境適性が高いことが明らかになった。
したがって、本実施形態の壁用の臭気封止材を壁紙の下層に施工することにより、施工性を低下させることなく、臭気抑制効果とともに高い環境適性を備えることが明らかになった。
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
10,110:バリア層
11:紙基材層
12:ポリビニルアルコール系樹脂を含む層
13:無機酸化物層
14:ポリオレフィンを含む層
20:プライマー層
30:接着層
31:接着基材
32:粘着層
60:原紙層
61:紙基材
62,63:積層樹脂層
100,150:壁用の臭気封止材
200,250:壁紙
210:表面基材
210a:発泡壁紙
220:基材
230:発泡樹脂層

Claims (9)

  1. 最表層に形成された紙基材層と、
    ポリビニルアルコール系樹脂を含む層と、
    無機酸化物層と、
    カルボキシル基と、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層と、
    をこの順で備える壁用の臭気封止材。
  2. 最表層に形成された原紙層と、
    ポリビニルアルコール系樹脂を含む層と、
    無機酸化物層と、
    カルボキシル基と、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有するポリオレフィンを含む層と、をこの順で備え、
    前記原紙層は、
    紙基材と、
    前記紙基材の一方の面に設けられた第1の積層樹脂層及び前記紙基材の他方の面に設けられた第2の積層樹脂層の少なくとも一方と、
    を備える壁用の臭気封止材。
  3. 前記無機酸化物層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び酸化マグネシウムの少なくとも一つを含む
    請求項1又は2に記載の壁用の臭気封止材。
  4. 前記ポリビニルアルコール系樹脂を含む層の厚さは、1μm以上5μm以下である
    請求項1から3のいずれか1項に記載の壁用の臭気封止材。
  5. 前記無機酸化物層の厚さは、30nm以上100nm以下である
    請求項1から4のいずれか一項に記載の壁用の臭気封止材。
  6. 前記ポリオレフィンを含む層の厚さは、2μm以上10μm以下である
    請求項1から5のいずれか一項に記載の壁用の臭気封止材。
  7. 前記ポリオレフィンを含む層の前記無機酸化物層の面とは反対側の面に、
    プライマー層と、
    接着層と、
    を備える請求項1から6のいずれか一項に記載の壁用の臭気封止材。
  8. 前記接着層は、接着基材と粘着層とを備え、
    前記接着基材は、網状シート材であり、
    前記粘着層は、前記網状シート材に含浸されたアクリル系樹脂である
    請求項7に記載の壁用の臭気封止材。
  9. 請求項1から8のいずれか一項に記載の積層体と、
    前記積層体の表面に積層された表面基材と、
    を備える壁紙。
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