JP2023027537A - 加熱スラブの温度測定方法、圧下条件設定方法及び鋼板の製造方法 - Google Patents

加熱スラブの温度測定方法、圧下条件設定方法及び鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 熱間圧延ラインにおいて加熱スラブの温度を高精度に測定する。【解決手段】 本発明の加熱スラブの温度測定方法は、スラブを加熱する加熱炉1と、加熱炉で加熱された加熱スラブに対して脱スケールを行うデスケーリング装置2と、脱スケール後の加熱スラブに対して圧下工程を行う圧下設備3と、を有する熱間圧延ライン30における加熱スラブの温度測定方法であって、デスケーリング装置による加熱スラブの脱スケールから2秒以上20秒以下の範囲内の時間経過後であって前記圧下工程の開始前に、加熱スラブから放射される放射光の0.60~0.90μmの波長範囲から選択した2以上の波長成分に対応した放射光強度を取得する放射光強度取得ステップと、前記2以上の波長成分に対応した放射光強度を用いて加熱スラブの表面温度を算出するスラブ温度算出ステップと、を含む。【選択図】 図1

Description

本発明は、熱間圧延ラインにおける加熱スラブの温度測定方法に関し、また、この温度測定方法を利用した加熱スラブの圧下条件設定方法及び鋼板の製造方法に関する。
熱延鋼板を製造する熱間圧延ラインでは、素材であるスラブ(鋼片)を加熱炉で1200℃程度に加熱し、この加熱スラブに対して、適宜、幅圧下プレス装置を用いて板幅を調整し、粗圧延機によって熱間圧延を行い、おおよそ30~50mm程度の板厚の粗バーと呼ばれる半製品の鋼板を製造する。次に、クロップシャーによって粗バーの先端部を切断した後、連続圧延可能な5~7スタンドの仕上げ圧延機によって熱間圧延して板厚1.2~25mmの熱延鋼板を製造する。そして最後に、熱延鋼板は、ランアウトテーブルの冷却装置によって冷却された後、コイラー(巻取装置)によって巻き取られる。
このような熱間圧延ラインにおいて、幅圧下プレス装置、粗圧延機、仕上げ圧延機などにより、被加工材(加熱スラブ及び粗バー)を塑性変形させる際の負荷(荷重、トルク、動力)を精度良く予測することが、熱延鋼板の安定した製造を実現し、生産トラブルを抑止するうえで重要である。特に近年は、ハイテンと呼ばれる高強度材や薄物材の生産比率が増加しており、加工設備を保護する観点からも負荷の予測精度の一層の向上が求められている。
熱間圧延ラインを構成する設備において、被加工材に塑性変形を付与する際の負荷(荷重や動力)を予測するためには、高温状態にある被加工材の温度変化を精度良く予測することが肝要である。この場合、熱間圧延ライン内の被加工材の温度変化は、制御用計算機の温度予測モデルによる計算温度が用いられる。また、熱間圧延ライン内に複数配置された放射温度計を用いた実測温度を用いて、計算温度を適宜補正しながら熱延鋼板の製造が行われる。しかし、従来は加熱スラブが加熱炉から抽出されてから、最初の塑性変形が付与されるまでは、加熱スラブの実測温度を取得することは困難であった。
これは、加熱炉から抽出された加熱スラブは、加熱炉内で発生した酸化スケール(1次スケール)に覆われており、加熱スラブを搬送する際に、一部の酸化スケールは剥離するものの、剥離する部分がランダムであるため、加熱スラブの温度を正確に測定することが困難であった。また、加熱スラブに対して、最初の塑性変形が付与されるまでには、デスケーリング装置によって加熱スラブの1次スケールを除去するものの、デスケーリング装置から噴射された水が霧状水滴となって、放射温度計による温度測定を妨害するという問題が生じる。更に、加熱スラブの上面に乗り水が滞留して、放射温度計による温度測定が困難になることもある。
上記のように、加熱炉から抽出された加熱スラブの温度を精度良く測定することは、熱間圧延ラインの操業にとって重要な技術であり、従来、以下のような技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、加熱スラブが圧延される際の圧延荷重と、加熱スラブの圧延前後の外形寸法とに基づいて圧延時における被加工材(加熱スラブ)の温度を逆算し、その被加工材の温度から加熱スラブが加熱炉から圧延機に至るまでの冷却状態を加味して加熱スラブの加熱炉からの抽出温度を計算する方法が提案されている。
特許文献2には、被測温鋼材の下面に対向配置され、被測温鋼材に向けて水を放出するノズルと、ノズル内に配置した放射温度計により、被測温鋼材から放射される熱放射光を、水を介して検出する温度測定装置が提案されている。
また、特許文献3には、加熱炉から抽出された加熱スラブに形成された酸化スケールを、スプレーノズルから噴射される冷却水によって除去し、その冷却水によって表面温度の低下した加熱スラブの復熱が完了したタイミングを待って、加熱スラブの表面温度を測定する方法が提案されている。
特開昭63-26214号公報 特開2012-21827号公報 特許4349177号公報
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。
即ち、特許文献1に提案された技術は、加熱炉から抽出された加熱スラブの温度測定では、加熱スラブを覆う酸化スケールや周囲の水蒸気などにより、放射温度計による温度測定が困難であることに鑑みて提案された技術であるが、被加工材(加熱スラブ)の変形抵抗を精度良く予測することが難しいため、圧延荷重や外形寸法から被加工材の温度を精度良く算出することは困難である。
特許文献2に提案された技術は、被測温鋼材の表面温度を精度良く測定する手段として有効と考えられるが、測温対象となる被測温鋼材の含有成分が異なる場合には、被測温鋼材表面の色調が変化するために、放射温度計の放射率を調整しなければならない。放射温度計の放射率を調整しない場合には、温度測定精度が低下する。また、被測温鋼材の表面に酸化スケールが存在する場合にも、被測温鋼材表面の色調が変化して、測温精度が低下するという問題がある。
特許文献3に提案された技術は、加熱スラブに対して冷却水を噴射して、酸化スケールを除去してから、加熱スラブの温度測定を行っており、加熱スラブの復熱が完了したタイミングを待ってから温度測定を行うことから、復熱が完了するまでの間は加熱スラブの実測温度を確定できず、生産能率が低下するという点に改善の余地がある。
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、熱間圧延ラインにおいて加熱スラブの温度を高精度に測定することのできる、加熱スラブの温度測定方法を提供することであり、また、この温度測定方法を利用した加熱スラブの圧下条件設定方法及び鋼板の製造方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]スラブを加熱する加熱炉と、加熱炉で加熱された加熱スラブに対して脱スケールを行うデスケーリング装置と、脱スケール後の加熱スラブに対して圧下工程を行う圧下設備と、を有する熱間圧延ラインにおける前記加熱スラブの温度測定方法であって、
前記デスケーリング装置による前記加熱スラブの脱スケールから2秒以上20秒以下の範囲内の時間経過後であって前記圧下工程の開始前に、前記加熱スラブから放射される放射光の0.60~0.90μmの波長範囲から選択した2以上の波長成分に対応した放射光強度を取得する放射光強度取得ステップと、
前記2以上の波長成分に対応した放射光強度を用いて前記加熱スラブの表面温度を算出するスラブ温度算出ステップと、
を含む加熱スラブの温度測定方法。
[2]前記放射光強度取得ステップで取得する放射光強度は、前記加熱スラブから放射される放射光の0.60~0.90μmの波長範囲から選択した2つの波長成分に対応した放射光強度であって、選択した2つの放射光の波長の差が0.1μm以上である、上記[1]に記載の加熱スラブの温度測定方法。
[3]前記放射光強度取得ステップでは、前記加熱スラブの成分組成の炭素含有量またはクロム含有量に応じて、前記放射光の波長成分を選択する、上記[1]または上記[2]に記載の加熱スラブの温度測定方法。
[4]前記デスケーリング装置は、ポンプ圧力が10~50MPaの高圧水を用いて脱スケールを行う、上記[1]から上記[3]のいずれかに記載の加熱スラブの温度測定方法。
[5]前記放射光強度取得ステップは、
前記デスケーリング装置による前記加熱スラブの脱スケールから2秒以上10秒未満の範囲内の時間経過後に放射光強度を取得する第1の放射光強度取得ステップと
前記デスケーリング装置による前記加熱スラブの脱スケールから10秒以上20秒以下の範囲内の時間経過後に放射光強度を取得する第2の放射光強度取得ステップと、
を含み、
前記スラブ温度算出ステップは、
前記第1の放射光強度取得ステップで取得した放射光強度から前記加熱スラブの表面温度を算出する第1のスラブ温度算出ステップと、
前記第2の放射光強度取得ステップで取得した放射光強度から前記加熱スラブの表面温度を算出する第2のスラブ温度算出ステップと、
を含み、
前記第1のスラブ温度算出ステップで算出した表面温度と、前記第2のスラブ温度算出ステップで算出した表面温度とから、前記加熱スラブの表面温度を特定する、
上記[1]から上記[4]のいずれかに記載の加熱スラブの温度測定方法。
[6]前記第1の放射光強度取得ステップ、及び、前記第2の放射光強度取得ステップは、同一の波長成分の放射光強度を取得する、上記[5]に記載の加熱スラブの温度測定方法。
[7]前記第1の放射光強度取得ステップ、及び、前記第2の放射光強度取得ステップで取得する放射光強度は、前記加熱スラブから放射される放射光の0.60~0.90μmの波長範囲から選択した2つの波長成分に対応した放射光強度であって、選択した2つの放射光の波長の差が0.1μm以上である、上記[6]に記載の加熱スラブの温度測定方法。
[8]上記[1]から上記[7]のいずれかに記載の加熱スラブの温度測定方法を用いて、加熱スラブが前記圧下設備に装入される前に前記加熱スラブの温度を測定し、測定した温度情報に基づいて、前記圧下設備における当該加熱スラブの圧下条件を再設定する、加熱スラブの圧下条件設定方法。
[9]上記[8]に記載の加熱スラブの圧下条件設定方法を用いて鋼板を製造する、鋼板の製造方法。
本発明によれば、熱間圧延ラインにおける加熱スラブの温度を高精度に測定できるので、圧下工程の負荷を精度良く予測でき、過負荷による設備破損を防止しながら、生産能率を向上させることができる。
熱延鋼板を製造する熱間圧延ラインの一例を示す概略図である。 加熱炉の構造の一例を示す概略図である。 デスケーリング装置の構成の一例を示す概略図である。 幅圧下プレス装置の構造の一例を示す模式図である。 加熱スラブの表面温度を測定するための温度測定装置の設置位置を示す概略図である。 波長λを変化させた時の放射光強度Ebλの推移を示す図である。 黒体が発する放射光強度Ebλと黒体以外の物体が発する放射光強度Eλとの関係を模式的に示す図である。 放射光の透過率に及ぼす水膜厚さの影響が波長によって変化する状況を示す図である。 実施例における加熱スラブの実測温度の一例を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。
<熱間圧延ラインの構成>
本発明に係る加熱スラブの温度測定方法は、熱延鋼板を製造する熱間圧延ラインなどに適用されるものであり、熱延鋼板を製造する熱間圧延ラインの一例を図1に示す。図1に示すように、熱延鋼板の熱間圧延ライン30としては、加熱炉1、デスケーリング装置2、幅圧下プレス装置3、粗圧延機4、仕上げ圧延機5、水冷装置6、コイラー7を含む装置から構成される。
不図示のスラブ(鋼片)は、加熱炉1に装入された後、所定の設定温度まで加熱され、加熱スラブ(熱間スラブ)として加熱炉1から抽出される。加熱炉1から抽出された加熱スラブは、表面に形成された1次スケールがデスケーリング装置2によって除去され、その後、幅圧下プレス装置3により所定の設定幅まで幅圧下され、次いで、粗圧延機4によって所定厚さまで圧延され、粗バーとして、仕上げ圧延機5に搬送される。ここで、「粗バー」とは、加熱スラブが粗圧延機4で所定厚さまで圧延された、おおよそ30~50mm程度の板厚の半製品の鋼板である。
仕上げ圧延機5では、粗バーは、5スタンドから7スタンドの連続式圧延機により製品厚さまで圧延される。仕上げ圧延機5の下流側にはランアウトテーブルと呼ばれる設備に水冷装置6を備えており、仕上げ圧延機5による圧延によって製造された熱延鋼板は、水冷装置6によって所定の温度まで冷却された後、コイラー7によってコイル状に巻き取られる。
熱間圧延ライン30の搬送工程の途中には温度測定手段として放射温度計が複数配置されている。図1に示す例では、粗圧延機4の出側に粗出側温度計15が設置され、仕上げ圧延機5の上流側に仕上げ入側温度計16が設置されている。これらの温度計によって適宜被加工材(圧延材)の表面温度が測定される。
通常、仕上げ入側温度計16は、仕上げ圧延前の粗バーの表面温度を測定し、仕上げ圧延機5に被加工材が噛込まれる際のロール間隙などの各種設定値を、熱間圧延ライン30の操業を統括する制御用計算機(図示せず)による計算によって決定するための温度情報の基準となるデータを採取する。また、仕上げ入側温度計16で高温の粗バーが検知されると、その信号は、設定計算の起動の役割と、温度データの制御装置及び制御用計算機への提供の役割とを兼ねている。但し、そのような機能は、粗出側温度計15によって測定された、粗圧延の最終パス出側の被加工材の表面温度を測定することによって行う場合もある。
ここで、本明細書において、加熱炉1に装入されたスラブが加熱炉1から抽出されて以降、幅圧下プレス装置3または粗圧延機4による最初の圧下工程が実行されるまでを加熱スラブと呼ぶ。つまり、加熱スラブとは、加熱炉1から抽出されて以降、塑性加工が行われていない状態のスラブを意味する。また、圧下工程とは、塑性加工が行われていない状態の加熱スラブに対して、最初に塑性変形を付与する工程をいう。図1に示す例では、加熱スラブは幅圧下プレス装置3により、板幅方向に圧下される。したがって、図1に示す例の圧下工程とは、幅圧下プレス装置3により1パス目の幅圧下を付与する工程を差す。但し、幅圧下プレス装置3を有するも幅圧下を行わない場合や、幅圧下プレス装置3を備えていない熱間圧延ラインでは、粗圧延機4によって第1パスの圧延を行う工程を指す。
<加熱炉>
熱間圧延ライン30に用いられる加熱炉1は、例えば、図2に示す構造の設備である。スラブ10は、図面の左側から加熱炉1に装入される。加熱炉1に装入されるスラブ10の温度は、連続鋳造後にスラブヤードで冷却されて室温程度まで冷やされたものから、冷却途中で600℃程度の温度になっている場合がある。また、連続鋳造後にスラブヤードを介さず600~800℃ほどで装入される場合もある。
加熱炉1の内部は複数の帯域に区切られており、一般に、上流側の2~8個の帯域に区切られた加熱帯と、下流側の1~3個の均熱帯とから構成される。図2では、5個の加熱帯と1個の均熱帯で構成される例を示しており、ここでは、両者を合わせて「加熱炉帯」と呼ぶ。
個々の加熱炉帯は、加熱炉1に装入されたスラブ10の平均温度が徐々に昇温して所定の目標加熱温度(加熱炉1から抽出される際のスラブの平均温度の目標値)にするために、それぞれ異なる雰囲気温度に設定されている。また、加熱炉帯の炉内上部には加熱炉帯内の雰囲気温度を計測するための温度計9がそれぞれ設置されている。
加熱炉1に装入されたスラブ10は、ウォーキングビーム8と呼ばれる搬送設備によって加熱炉1の内部で順次各加熱炉帯を通過する。また、加熱炉内には複数のスラブ10が同時に装入されており、加熱炉1に装入された順番で、加熱炉1の出口から抽出されて、加熱スラブとなって熱間圧延が行われていく。
熱間圧延ライン30の操業を統括する制御用計算機(図示せず)には、加熱炉1から抽出される加熱スラブについて、加熱炉内部の雰囲気温度及び各加熱炉帯での在炉時間などにより特定される熱履歴からスラブ10の内部での伝熱計算を行い、加熱炉1から抽出した加熱スラブの温度計算を実行するスラブ温度計算部が備えられている。
<デスケーリング装置>
デスケーリング装置2は、図3に示すように、加熱スラブ12の表面側及び裏面側に配置されたスプレーノズル14、14’によって構成されている。搬送ロール13によって加熱スラブ12を搬送させながら、スプレーノズル14、14’から加熱スラブ12に向けて高圧水を噴射し、加熱スラブ12の表面及び裏面に形成された酸化スケール(1次スケール)を高圧水によって除去する。
デスケーリング装置2のスプレーノズル14、14’は、噴射される水の水量が5.0~10.0m/minで、高圧水を噴射するポンプの圧力が10~50MPaのものを用いる。ポンプの圧力が10MPaよりも低いと加熱スラブ12を覆う酸化スケールを除去しきれない部分が生じる。一方、ポンプの圧力が50MPaよりも高いと、デスケーリング装置2が大型化して設備コストが増大してしまう。そのような観点から、ポンプの圧力は10~50MPaが好ましく、より好ましくは15~30MPaとする。
<幅圧下プレス装置>
本実施形態において、加熱スラブ12に対する圧下工程となる幅圧下プレス装置3について説明する。図4は、幅圧下プレス装置の構造の一例を示す模式図である。幅圧下プレス装置3は1対の幅圧下用金型17、17を有し、加熱スラブ12を搬送させながら、幅圧下用金型駆動装置18、18により幅圧下金型17、17を駆動させ、幅方向の両側から間欠的に幅圧下用金型17、17を用いて加熱スラブ12を幅圧下する。加熱スラブ12はピンチロール19などを用いて搬送されており、ピンチロール19の駆動量を変更することで、幅圧下パス間の加熱スラブ12の送りピッチを変更することができる。図示していないが、搬送ロールを用いて加熱スラブ12が送られる場合もある。
ここで、加熱スラブ12が幅圧下プレス装置3に搬送され、幅圧下用金型17、17によって加熱スラブ12の幅圧下を行う工程が、加熱スラブ12に対する圧下工程となる。加熱スラブ12に圧下工程が実行されると、塑性変形により加熱スラブ12を覆う酸化スケールが剥離して、以降の工程においては通常の放射温度計による被加工材の温度測定が可能となる。
<粗圧延機>
図1に示す熱間圧延ライン30では、粗圧延機4は、リバース圧延可能な可逆式圧延機4aと、下流側への搬送方向のみの圧延が可能な非可逆式圧延機4bとで構成されている。尚、可逆式圧延機4a及び非可逆式圧延機4bの下側に図示した矢印(実線)が圧下パス(板厚みを薄くする圧延パス)を表している。可逆式圧延機4aでは、通常、5~11程度の圧下パスが可逆方向に(上流側から下流側または下流側から上流側に)行われる。最終の圧下パスでは、圧延と下流側の圧延機への搬送とを同時に実施するために、可逆式圧延機4aの圧延パス回数は奇数となり、圧延を行いつつ下流側にある非可逆式圧延機4bへ被加工材を搬送する。
ここで、幅圧下プレス装置3を有しない熱間圧延ライン、または、幅圧下プレス装置3による幅圧下を行うことなく粗圧延機4まで加熱スラブ12を搬送する操業条件では、加熱スラブ12が粗圧延機4に到達し、粗圧延機4による第1パスの圧下を行う工程が加熱スラブ12に対する圧下工程となる。加熱スラブ12に対して圧下工程が実行されると、塑性変形により加熱スラブ12を覆う酸化スケールが剥離して、以降の工程においては通常の放射温度計による被加工材の温度測定が可能となる。
<温度測定装置>
本発明の実施形態における加熱スラブ12の温度測定方法において、加熱スラブ12の表面温度を測定するための二波長式放射温度計からなる温度測定装置11は、例えば、図5に示すように、幅圧下プレス装置3による幅圧下が加熱スラブ12の圧下工程となる場合には、デスケーリング装置2と圧下設備である幅圧下プレス装置3との間に配置される。温度測定装置11による加熱スラブ12の温度測定は、デスケーリング装置2により加熱スラブ12の脱スケールが行われ、加熱スラブ12が搬送ロール13によって幅圧下プレス装置3の方向に搬送される途中に行われる。
<放射温度計>
加熱スラブ12の温度を測定するための従来の放射温度計について説明する。
絶対温度が0(ゼロ)K以上の物体は、その表面から物体の温度に応じた放射光を発している。放射温度計とは、物体が放射する放射光の強度を測定して温度換算する計器である。放射光強度は物体の温度に依存する。物体が完全放射体(黒体)の場合には、単位表面積、単位波長間隔当たりの放射光強度と絶対温度との関係は、プランクの法則によると下記の(1)式で表される。
Figure 2023027537000002
ここで、(1)式において、Ebλは、単位表面積、単位波長間隔当たりの放射光強度(W/(m×μm))であり、Tは絶対温度(K)であり、λは黒体からの放射光の波長(μm)であり、Cは第1輻射定数(W×m)であり、Cは第2輻射定数(m×K)である。C、Cは、下記の(2)式及び(3)式で与えられる。
Figure 2023027537000003
ここで、(2)式及び(3)式において、cは真空中の光速度(299792458m/s)、hはプランク定数(6.62607015×10-34J×s)、kはボルツマン定数(1.380649×10-23J/K)である。
第1輻射定数C及び第2輻射定数Cを(1)式に代入すると、放射光強度Ebλは波長λと絶対温度Tとの関数となる。
絶対温度Tが1000~1400Kの場合に、波長λを変化させた時の放射光強度Ebλの推移を図6に示す。図6に示すように、放射光強度Ebλを或る一定値として比較すると、物体の温度が高いほど物体が発する放射光の波長は短く、温度が低いほど波長は長くなる。即ち、測定対象の温度が高いほど短い波長を検出できる放射温度計が適している。
黒体が発する放射光強度Ebλと、黒体以外の物体が発する放射光強度Eλとの比を放射率εといい、両者は下記の(4)式の関係にある。放射率εは、物体を形成する物質の特性及びその表面状態や形状などによって決まる定数(0<ε<1)であり、吸収率と等しい。
Figure 2023027537000004
但し、一般的には、放射率εは、物体の温度及び測定時の波長によって変化するので、測定対象が黒体でない限り真の温度は測定できない(図7を参照)。この理由は、物体によって放射光の吸収率(放射率ε)が異なるからである。尚、図7は、黒体が発する放射光強度Ebλと黒体以外の物体が発する放射光強度Eλとの関係を模式的に示す図である。
図1に示す熱間圧延ライン30に配置される粗出側温度計15及び仕上げ入側温度計16は、粗バーの温度と、粗出側温度計15及び仕上げ入側温度計16により測定される温度とを予め対比させ、粗出側温度計15及び仕上げ入側温度計16で設定する放射率εを予め調整することにより、概ね正しい温度測定が可能となっている。
これに対して、本発明で対象とする加熱スラブ12では、装入されるスラブ10の成分組成により、加熱炉1での加熱温度が800~1300℃程度に大きく変動する場合があるため、適正な放射率を設定することが困難である。そこで、本発明に係る加熱スラブの温度測定方法では、二波長式放射温度計の原理を用いて加熱スラブ12の温度を測定する。二波長式放射温度計は、波長λにおける放射光強度Eλ1と、波長λにおける放射光強度Eλ2との2種類の波長における放射光強度の比Rから温度Tを算出する。比Rは下記の(5)式で表される。
Figure 2023027537000005
仮に、測定波長λにおける放射光強度Eλ1と、測定波長λにおけるEλ2との比Rが一定であれば、比Rは温度Tだけを変数とする関数になるので、放射率εの設定が不要になる。
二波長式放射温度計では、測定する物質の2波長の放射率(ελ1、ελ2)が同じとなるような波長帯域を選定するので、つまり、ελ1/ελ2≒1.0となるような波長帯域を選定するので、放射率(ελ1、ελ2)の設定が不要となる。一般的な放射温度計は、測定対象毎に放射率εの設定が必要であるが、二波長式放射温度計では放射率εの設定が不要であり、測定対象の放射率εが未知の際には二波長式放射温度計が有効である。
二波長式放射温度計で測定することにより、測定対象となる加熱スラブ12の温度が大きく変化したり、スラブ10の成分組成により加熱スラブ12の色調が変化して、加熱スラブ12の放射率が変動したりしても、加熱スラブ12の温度を精度良く測定することが可能となる。
<温度測定条件>
本発明に係る加熱スラブ12の温度測定方法は、2以上の波長成分に対する放射光強度を取得する放射光強度取得ステップと、それらの2以上の波長成分に対する放射光強度から加熱スラブの表面温度を算出するスラブ温度算出ステップとを含む。波長成分として2つの波長成分λ及び波長成分λを選択する場合には、放射光強度取得ステップは、波長λにおける放射光強度Eλ1と波長λにおける放射光強度Eλ2とを取得する。そして、スラブ温度算出ステップでは、検出した放射光強度Eλ1と放射光強度Eλ2との比Rを計算し、(5)式を用いて加熱スラブ12の絶対温度Tを算出する。
また、本実施形態では、3以上の波長成分に対する放射光強度を取得する態様であってもよい。例えば、放射光強度取得ステップで3つの波長成分λ、λ、λを選択した場合、放射光強度取得ステップでは、放射光強度Eλ1、放射光強度Eλ2、放射光強度Eλ3を取得する。そして、スラブ温度算出ステップでは、取得した3つの放射光強度から任意の2つの放射光強度を選択して、それらの組合せ(Eλ1とEλ2、Eλ2とEλ3、Eλ1とEλ3)から、3つの相対強度Rを算出し、それぞれについて(5)式を用いて、加熱スラブ12の温度を算出する。
この場合、算出される加熱温度は3つ(T、T、T)であり、T、T、Tの平均値を加熱スラブ12の温度測定値としてもよく、T、T、Tの中間値を加熱スラブ12の温度測定値としてもよい。また、4以上の波長成分に対する放射光強度を取得する場合も同様である。多数の波長成分を選択することにより、外乱に対しても安定した温度測定が可能となる。
本実施形態では、上記温度測定方法において、加熱スラブ12から放射される放射光の0.60~0.90μmの波長範囲のなかから選択した2以上の波長成分に対応した放射光強度を取得する。選択する波長が0.60μmよりも小さい場合には、図6に示すように、加熱スラブ12の温度が比較的低温になると、加熱スラブ12から取得できる放射光強度が低下して、温度測定精度が低下する。一方、選択する波長が0.90μmよりも大きいと、加熱スラブ12から取得できる放射光強度は十分であるものの、図8に示すように、加熱スラブ12の上面にデスケーリング装置2から噴射される水が乗り水となっている場合に、水膜の厚さによって放射光の透過率が変動し、これにより、加熱スラブから取得される放射光強度にばらつきが生じて、温度測定精度が低下する。このような観点から、加熱スラブから放射される放射光の波長の選択範囲を0.60~0.90μmとした。また、より好ましい波長範囲は0.65~0.85μmである。尚、図8は、放射光の透過率に及ぼす水膜厚さの影響が波長によって変化する状況を示す図である。
更に、本発明の実施形態として、放射光強度取得ステップにおいて、0.60~0.90μmの波長範囲から2つの波長を選択する場合に、2つの波長の差が0.1μm以上であることが好ましい。上記二波長式放射温度計において、波長λと波長λとの差が小さいと、放射光強度Eλ1と放射光強度Eλ2との比Rが1.0に近くなり、(5)式による加熱スラブの温度推定において誤差が生じやすくなるからである。
また、本発明の実施形態における放射光強度取得ステップは、加熱スラブ12の脱スケールから2秒以上20秒以下の範囲内の時間経過後であって、圧下工程の開始前に、上記温度測定装置11により放射光強度を取得する。ここで、加熱スラブ12の脱スケールからの経過時間とは、図3に示すデスケーリング装置2において、最終のデスケーリングノズルから噴射された水が、加熱スラブ12の表面に衝突し、その水が衝突した加熱スラブ12の表面から放射される放射光を、温度測定装置11が受光するまでの時間をいう。
脱スケールからの経過時間が2秒未満では、加熱スラブ12にデスケーリング装置2からの水が衝突することにより表面温度が一旦低下しており、復熱が不十分であるため、加熱スラブ12から放射される放射光強度が、加熱スラブ内部の温度情報を反映しないからである。一方、脱スケールからの経過時間が20秒を超えると、デスケーリング装置2からの水による表面温度の低下後に復熱が十分行われているものの、その間に2次スケール(デスケーリング後に生成する酸化スケール)の生成が開始して、生成した2次スケールが放射光強度取得ステップで取得する放射光強度への外乱となり、温度測定精度が低下するからである。また、脱スケールから温度測定までの経過時間が20秒を超えると、加熱スラブ12に対する圧下工程の開始までに待機時間が生じ、熱間圧延ライン30の生産能率が低下するからである。放射光強度取得ステップの実施時期は、より好ましくは、加熱スラブの脱スケールから3.2秒以上11.0秒以下の範囲内の時間経過後である。
更に、本発明の好ましい実施形態は、上記温度測定方法において、放射光強度取得ステップで取得する放射光の波長成分を、温度測定対象となる加熱スラブ12の成分組成の炭素含有量またはクロム含有量に応じて選択することである。
加熱スラブ12の成分組成の炭素含有量が高いと放射率εが増加する場合があり、加熱スラブ12が発する放射光強度が増加するため、放射光強度取得ステップで取得する放射光として、0.60~0.90μmの範囲の波長の短い方を選択することにより、他の成分組成の加熱スラブと測定条件を揃えることができる。一方、加熱スラブ12の成分組成のクロム含有量が高いと放射率εが低下する場合があり、加熱スラブ12が発する放射光強度が低下するため、放射光強度取得ステップで取得する放射光として、0.60~0.90μmの範囲の波長の長い方を選択することが好ましい。具体的には、基準とする成分組成の加熱スラブに対して、炭素含有量が1質量%増加する場合に、波長として0.01~0.02程度短いものを選択し、クロム含有量が1質量%増加する場合に、波長として最大0.01程度長いものを選択することが好ましい。
加熱スラブの脱スケール工程からの経過時間に伴って、加熱スラブ12の表面には2次スケールの生成が開始されるが、酸化物の組成や成長速度が、加熱スラブ12の成分組成によって異なるため、温度測定対象となる加熱スラブ12の成分組成の炭素含有量またはクロム含有量に応じて、取得する放射光の波長成分を選択することは、放射光強度への外乱を低減するのに有効である。加熱スラブの成分組成として、炭素含有量またはクロム含有量を選択するのは、これらによる2次スケールのスケール組成や成長速度が影響を受けやすいことによる。尚、炭素含有量とクロム含有量はスラブ10の製造過程で取得される情報であり、熱間圧延ライン30の制御用計算機に、加熱スラブの属性情報として入力される。
更に、本発明の好ましい実施形態は、上記温度測定方法において、加熱スラブ12に対して高圧水を噴射するデスケーリング装置2のポンプ圧力を10~50MPaとすることである。
これは、加熱スラブ12に対する脱スケール工程で、デスケーリング装置2のポンプ圧力が10MPa未満の場合には、加熱スラブの成分組成として珪素含有量が多い場合などで、酸化スケールを十分剥離できない場合が生じ得るからである。また、デスケーリング装置2のポンプ圧力が50MPaを超えると、デスケーリング装置2を大型化する必要があり、設備コストが増加するとともに、ポンプの運転に必要な動力が大きくなり、熱延鋼板の製造コストが増加するからである。このような観点から、デスケーリング装置2のポンプ圧力は10~50MPaであることが好ましい。より好ましくは、デスケーリング装置2のポンプ圧力は15~30MPaである。
上記のようにして加熱スラブ12の温度測定を行うことで、熱間圧延ライン30における加熱スラブ12の温度測定を高精度に行うことが可能となる。これにより、加熱炉1から加熱スラブ12を抽出する際の抽出温度の計算モデル(スラブ温度計算モデル)の計算結果と、上記による実測温度とを比較することにより、スラブ温度計算モデルによる計算温度の推定精度の向上を図ることができる。スラブ温度計算モデルの推定精度が向上すると、スラブ内部における加熱炉内の均熱度を精度良く予測することができるので、加熱スラブ12の熟熱度を必要以上に上げることを防ぐことができ、加熱炉内でのスラブ10の長期滞在を抑止し、加熱炉1の燃料原単位を改善することができる。
<その他の温度測定方法>
本発明の他の実施形態は、上記の放射光強度取得ステップにおいて、加熱スラブ12の脱スケールから2秒以上10秒未満の時間経過後に、2以上の波長成分に対する放射光強度を取得する第1の放射光強度取得ステップと、加熱スラブ12の脱スケールから10秒以上20秒以下の時間経過後に、2以上の波長成分に対する放射光強度を取得する第2の放射光強度取得ステップを含み、第1の放射光強度取得ステップにより取得した放射光強度から加熱スラブ12の表面温度を算出する第1のスラブ温度算出ステップと、第2の放射光強度取得ステップにより取得した放射光強度から加熱スラブ12の表面温度を算出する第2のスラブ温度算出ステップを含み、前記第1のスラブ温度算出ステップで算出した表面温度及び第2のスラブ温度算出ステップで算出した表面温度から、加熱スラブ12の表面温度を特定する、加熱スラブの温度測定方法である。
この場合には、加熱スラブ12の搬送方向の2箇所に温度測定装置11、及び、温度測定装置11a(図示せず)を配置し、搬送方向上流側の温度測定装置11を用いて第1の放射光強度取得ステップを実施し、搬送方向下流側の温度測定装置11aを用いて第2の放射光強度取得ステップを実施することが好ましい。
これは、放射光強度取得ステップを加熱スラブ12の脱スケールからの経過時間帯に応じて2分割し、それぞれの経過時間帯で、上記と同様の温度測定を行うものである。その際、第1の放射光強度取得ステップと、第2の放射光強度取得ステップでは、同一の波長成分に対する放射光強度を取得することが好ましい。
第1のスラブ温度算出ステップで算出した表面温度(以下、「第1の表面温度」と記す)と、第2の放射光強度取得ステップで算出した表面温度(以下、「第2の表面温度」と記す)では、加熱スラブ12の脱スケール後の復熱の状態や2次スケールの成長状態が異なる条件で算出された温度情報であり、両者を組み合わせることにより、より精度の高い温度情報を取得できることになる。この場合、加熱スラブ12の温度は、第1の表面温度と第2の表面温度との平均値を用いることができる。
ここで、第1の表面温度は、加熱スラブ12の脱スケールからの復熱初期であって、2次スケールの発生が少ない条件の温度情報であるのに対して、第2の表面温度は、加熱スラブ12の脱スケールからの復熱が進行した段階であって、2次スケールの発生がやや多い条件の温度情報となる。加熱スラブ12の温度情報としては、脱スケールからの復熱が十分進んだ状態で、且つ、2次スケールが発生していない状態で測定するのが理想的であるが、上記の2つの温度情報として、例えば両者の平均値を使用するなど、両者を組み合わせることで、より精度の高い加熱スラブ12の温度情報を得ることができる。
<圧下条件設定方法>
以上のような加熱スラブの温度測定方法を用いて、加熱スラブ12が圧下設備に装入される前に、加熱スラブの温度情報を特定することで、特定された加熱スラブの温度情報に基づいて、圧下工程を行う圧下設備の圧下条件を再設定することができる。
圧下工程を行う圧下装置が幅圧下プレス装置3である場合には、先ず、加熱スラブ12に対して予め設定された幅圧下量の目標値に対して、幅圧下プレス装置3における幅圧下プレス荷重を予測する。そして、予測された幅圧下荷重予測値を、幅圧下プレス装置3の上限荷重と比較して、幅圧下荷重予測値が上限荷重を超える場合には、幅圧下プレス装置3の幅圧下量の目標値が小さくなるように再設定する。また、予測された幅圧下荷重予測値が上限荷重に対して十分余裕がある場合には、幅圧下プレス装置3の幅圧下量の目標値が大きくなるように再設定することができる。これにより、鋼板の製造方法において、例えば、幅圧下量の最大値を300mmに制限していたものを、更に増加させることも可能となり、熱間圧延ライン30の生産能率を向上させることができる。
一方、圧下工程を行う圧下装置が粗圧延機4である場合には、先ず、加熱スラブ12に対して予め設定された圧下率の目標値に対して、粗圧延機4における圧延荷重を予測する。そして、予測された圧延荷重を粗圧延機4の上限荷重と比較し、圧延荷重予測値が上限荷重を超える場合には、粗圧延機4の圧下率の目標値が小さくなるように再設定する。また、予測された圧延荷重予測値が上限荷重に対して十分余裕がある場合には、粗圧延機4の圧下率の目標値が大きくなるように再設定することができる。これにより、鋼板の製造方法において、例えば、粗圧延機4による圧延パス数を低減することができ、熱間圧延ライン30の生産能率を向上させることができる。
尚、本発明に係る加熱スラブの温度測定により、加熱スラブ12の実測温度が得られるので、熱間圧延ライン30を統括する制御用計算機の設定計算精度が向上し、その結果、粗圧延機4による粗圧延工程の全般、及び、仕上げ圧延機5による仕上げ圧延工程における圧延荷重の予測精度が向上し、熱延鋼板の板厚精度などの寸法精度が向上するとともに、生産トラブルが減少して、熱間圧延ライン30の生産能率も向上する。
以下、図1に示す熱間圧延ラインに本発明に係る加熱スラブの温度測定方法を適用した結果について説明する。本実施例では、幅圧下プレス装置を、圧下工程を行う圧下装置とし、デスケーリング装置と幅圧下プレス装置との間に二波長式放射温度計を設置した。デスケーリング装置のデスケーリングノズルの再下流側の位置と二波長式放射温度計との水平方向距離は10.5m、二波長式放射温度計と幅圧下プレス装置の金型位置との水平方向距離は4.8mである。
使用した二波長式放射温度計は、加熱スラブから放射される放射光の波長として、波長λ=0.61μm、波長λ=0.90μmを選択した。また、これらの波長成分に対応した放射光強度を取得する検出器は、InGaAs素子を用いた。二波長式放射温度計は、加熱スラブの搬送方向に対して加熱スラブの斜め上方で放射光を取得するように配置した。これは、図5に示すように、二波長式放射温度計(温度測定装置)を加熱スラブの温度測定位置に対して斜め上方に設置することによって、デスケーリング装置からの高圧水が霧状水滴となって、放射光の受光強度が低下するのを低減させるためである。このときの二波長式放射温度計と加熱スラブの測定部との水平方向距離は4mであった。
図9に、本実施例における加熱スラブの実測温度の一例を示す。これは、搬送ロールによって加熱スラブを速度65m/minで搬送させながら、二波長式放射温度計によって加熱スラブの幅方向中央部を加熱スラブの長手方向の全長に亘って15mmの間隔で連続的に測定した結果である。
図9からは、加熱スラブの先端部及び尾端部の近傍で、定常部に対して温度変動が生じていることがわかった。この場合、加熱スラブの尾端部で実測温度が低いことから、加熱スラブ内の最低温度を尾端部とし、この加熱スラブ内の最低温度を前提として、幅圧下プレス装置の幅荷重を計算した。
計算された幅圧下プレス装置の幅荷重が予め設定された幅圧下荷重の上限値以下であるか否かをオンラインで確認し、幅圧下荷重の上限値以下である場合には、計画どおり幅圧下プレス工程を実行して熱延鋼板を製造した。計算された幅圧下プレス装置の幅荷重が幅圧下荷重の上限値を超えた場合には、幅圧下プレス装置の幅圧下量の目標値が小さくなるように再設定して幅圧下プレス工程を実行し、熱延鋼板を製造した。
その結果、幅圧下プレス装置の過負荷を防ぐことができ、生産トラブルの発生を抑止できた。
1 加熱炉
2 デスケーリング装置
3 幅圧下プレス装置
4 粗圧延機
4a 可逆式圧延機
4b 非可逆式圧延機
5 仕上げ圧延機
6 水冷装置
7 コイラー
8 ウォーキングビーム
9 温度計
10 スラブ
11 温度測定装置
12 加熱スラブ
13 搬送ロール
14 スプレーノズル
14’ スプレーノズル
15 粗出側温度計
16 仕上げ入側温度計
17 幅圧下用金型
18 幅圧下用金型駆動装置
19 ピンチロール
30 熱間圧延ライン

Claims (9)

  1. スラブを加熱する加熱炉と、加熱炉で加熱された加熱スラブに対して脱スケールを行うデスケーリング装置と、脱スケール後の加熱スラブに対して圧下工程を行う圧下設備と、を有する熱間圧延ラインにおける前記加熱スラブの温度測定方法であって、
    前記デスケーリング装置による前記加熱スラブの脱スケールから2秒以上20秒以下の範囲内の時間経過後であって前記圧下工程の開始前に、前記加熱スラブから放射される放射光の0.60~0.90μmの波長範囲から選択した2以上の波長成分に対応した放射光強度を取得する放射光強度取得ステップと、
    前記2以上の波長成分に対応した放射光強度を用いて前記加熱スラブの表面温度を算出するスラブ温度算出ステップと、
    を含む加熱スラブの温度測定方法。
  2. 前記放射光強度取得ステップで取得する放射光強度は、前記加熱スラブから放射される放射光の0.60~0.90μmの波長範囲から選択した2つの波長成分に対応した放射光強度であって、選択した2つの放射光の波長の差が0.1μm以上である、請求項1に記載の加熱スラブの温度測定方法。
  3. 前記放射光強度取得ステップでは、前記加熱スラブの成分組成の炭素含有量またはクロム含有量に応じて、前記放射光の波長成分を選択する、請求項1または請求項2に記載の加熱スラブの温度測定方法。
  4. 前記デスケーリング装置は、ポンプ圧力が10~50MPaの高圧水を用いて脱スケールを行う、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の加熱スラブの温度測定方法。
  5. 前記放射光強度取得ステップは、
    前記デスケーリング装置による前記加熱スラブの脱スケールから2秒以上10秒未満の範囲内の時間経過後に放射光強度を取得する第1の放射光強度取得ステップと
    前記デスケーリング装置による前記加熱スラブの脱スケールから10秒以上20秒以下の範囲内の時間経過後に放射光強度を取得する第2の放射光強度取得ステップと、
    を含み、
    前記スラブ温度算出ステップは、
    前記第1の放射光強度取得ステップで取得した放射光強度から前記加熱スラブの表面温度を算出する第1のスラブ温度算出ステップと、
    前記第2の放射光強度取得ステップで取得した放射光強度から前記加熱スラブの表面温度を算出する第2のスラブ温度算出ステップと、
    を含み、
    前記第1のスラブ温度算出ステップで算出した表面温度と、前記第2のスラブ温度算出ステップで算出した表面温度とから、前記加熱スラブの表面温度を特定する、
    請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の加熱スラブの温度測定方法。
  6. 前記第1の放射光強度取得ステップ、及び、前記第2の放射光強度取得ステップは、同一の波長成分の放射光強度を取得する、請求項5に記載の加熱スラブの温度測定方法。
  7. 前記第1の放射光強度取得ステップ、及び、前記第2の放射光強度取得ステップで取得する放射光強度は、前記加熱スラブから放射される放射光の0.60~0.90μmの波長範囲から選択した2つの波長成分に対応した放射光強度であって、選択した2つの放射光の波長の差が0.1μm以上である、請求項6に記載の加熱スラブの温度測定方法。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の加熱スラブの温度測定方法を用いて、加熱スラブが前記圧下設備に装入される前に前記加熱スラブの温度を測定し、測定した温度情報に基づいて、前記圧下設備における当該加熱スラブの圧下条件を再設定する、加熱スラブの圧下条件設定方法。
  9. 請求項8に記載の加熱スラブの圧下条件設定方法を用いて鋼板を製造する、鋼板の製造方法。
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