最初に、図1および図2を参照して、本発明の実施形態が適用される自動ドア100の概要を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る自動ドア100を概略的に示す正面図である。自動ドア100は、開閉駆動される扉部10と、自動ドア100全体を制御する制御部としてのコントローラ20と、通行者を検知するセンサ30(起動センサ31、補助センサ32の総称)と、扉部10を開閉駆動する動力を発生させる扉駆動部としてのドアエンジン40と、動力を扉部10に伝達する動力伝達部50を主に備える。なお、以下の説明では、図1における左右方向を水平方向とし、図1における上下方向を鉛直方向とするが、自動ドア100は任意の姿勢で設置することができ、その設置方向が以下の例に限定されるものではない。
扉部10は、それぞれ水平方向に可動に設けられる第1の可動扉11Lと第2の可動扉11Rと、第1の可動扉11Lおよび第2の可動扉11Rが開状態のときにそれぞれと重なる位置に設けられる第1の固定扉12Lと第2の固定扉12Rと、第1の可動扉11Lと第2の可動扉11Rの水平方向の動作をガイドするガイド機構13を備える。第1の可動扉11L、第2の可動扉11R、第1の固定扉12L、第2の固定扉12Rは、鉛直方向の寸法が水平方向の寸法よりも大きい縦長の矩形状に構成される。扉部10の開駆動時には、図1で左側に示される第1の可動扉11Lが左方向に駆動され、図1で右側に示される第2の可動扉11Rが右側に駆動される。また、扉部10の閉駆動時には、開駆動時とは逆に、第1の可動扉11Lが右方向に駆動され、第2の可動扉11Rが左方向に駆動される。なお、扉部10を構成する扉の数や形状は上記に限られず、設置場所のニーズに合わせて適宜設計可能である。また、同様に、扉部10の可動方向も水平方向に限られず、水平方向から傾斜した方向としてもよい。
ガイド機構13は、走行レール131と、戸車132と、ガイドレール133と、振れ止め部134を備える。走行レール131は、可動扉11L、11Rの上方において、その可動域の全体に亘って水平方向に延伸する柱状のレール部材である。戸車132は、可動扉11L、11Rの上部にそれぞれ二つずつ設けられ、各可動扉11L、11Rを走行レール131に懸架する。各可動扉11L、11Rが水平方向に開閉駆動される際、戸車132が走行レール131を転動するため、円滑な開閉動作が可能となる。ガイドレール133は、可動扉11L、11Rの下方において、その可動域の全体に亘って水平方向に延伸する溝状のレール部材である。振れ止め部134は、可動扉11L、11Rの下部から張り出して溝状のガイドレール133に収まる。各可動扉11L、11Rが水平方向に開閉駆動される際、振れ止め部134がガイドレール133に沿って動くため、各可動扉11L、11Rの見込み方向(図1の紙面に垂直な方向)の振動を抑制できる。
なお、扉部10の開閉に関する各種のパラメータはコントローラ20で設定可能である。例えば、開閉速度、開閉強度、開口幅等を設定できる。開閉速度は、第1の可動扉11Lおよび第2の可動扉11Rの水平方向の速度であり、両扉の速度の方向は互いに逆向きである。両扉で速度の大きさ(速さ)は等しくするのが好適であるが、異なる速さとしてもよい。また、開閉速度は、通常開閉時とそれ以外の時で異なる値を設定してもよい。例えば、扉部10の通常の閉駆動中に、閉じる可動扉11L、11Rに通行者が挟まれるのを緊急回避するために開駆動に切り替えるいわゆる反転の場合、その開駆動時の可動扉11L、11Rの速度は、通常の開駆動時の速度と異なる値を設定してもよい。また、停電時等の通常の電源が利用できない非常時にバッテリから供給される臨時の電力によって扉部10が駆動される際の開速度や閉速度を通常の駆動時と異なる値に設定してもよい。
開閉強度は、可動扉11L、11Rの開閉時の力の大きさであり、後述するモータ42の発生トルク値で制御される。上記の開閉速度と同様に、基本的には可動扉11L、11Rで等しい開閉強度とするのが好適である。また、通常開閉時とそれ以外の時で異なる開閉強度を設定してもよい。開口幅は、典型的には扉部10が全開のときの第1の可動扉11Lと第2の可動扉11Rの水平方向の間隔である。図1に示されるように、第1の可動扉11Lの全閉位置と全開位置の間の移動距離をW1、第2の可動扉11Rの全閉位置と全開位置の間の移動距離をW2とすれば、開口幅はW1+W2で表される。ここで、移動距離W1、W2は、自動ドア100の水平方向寸法に収まる範囲で個別に設定できる。なお、停電時等の通常の電源が利用できない非常時にバッテリから供給される臨時の電力によって扉部10が駆動される際の開口幅を通常時よりも小さくすることで非常時の扉部10の開閉駆動による電力消費を抑制してもよい。
図1には、センサ30の例として、光学センサとしての起動センサ31と、補助センサ32が設けられる。起動センサ31は、扉部10の上方の無目60の表面に設けられる光電センサである。起動センサ31は、赤外線等の光を床面に向けて投光する投光部と、床面からの反射光を受光する受光部を備える。通行者等の物体が自動ドア100に近づいて光を遮ると受光部の受光量が変化するため、物体を検知できる。このような起動センサ31での検知情報がコントローラ20に入力されると、ドアエンジン40の駆動により扉部10が開く。なお、起動センサ31は室内側(例えば図1の紙面の表側)と室外側(例えば図1の紙面の裏側)にそれぞれ設けられ、いずれの側から近づく通行者も検知できる。以下で両者を区別する必要がある場合は、それぞれ室内側起動センサ31I、室外側起動センサ31Oと記載する。
なお、起動センサ31は、マイクロ波等の電波や超音波の反射により通行者を検知する構成としてもよい。また、図1で31Aとして示すように、可動扉11Lおよび11Rの少なくとも一方に設けられるタッチプレートが通行者によって押されることで、扉部10を駆動する構成としてもよい。また、観光施設やアミューズメントパーク等では、通行者の検知や操作に加えてまたは代えて、施設の係員の操作で扉部10を駆動する態様も想定される。このとき施設の係員は扉部10から離れた位置に設けられる操作盤や自動ドア100と通信可能な操作端末で遠隔から扉部10を駆動できる。
扉部10を通行する検知対象物を検知する通行センサとしての補助センサ32は、扉部10の第1の固定扉12Lと第2の固定扉12Rに設けられる光電センサである。補助センサ32は、第1の固定扉12Lおよび第2の固定扉12Rの一方に設けられる投光部と、他方に設けられる受光部を備える。投光部と受光部は床面から同じ高さに設けられ、投光部から水平方向に投光される赤外線等の光を受光部で受光する。扉部10が開いている状態で、その開口部を通行者が通過して光を遮ると受光部の受光量が変化するため、通行者を検知できる。補助センサ32の主な目的は閉保護であり、可動扉11L、11Rの閉動作中に補助センサ32が通行者を検知すると、コントローラ20は閉駆動を中止して開駆動に切り替える反転制御を行う。これにより、通行者が閉じる可動扉11L、11Rに挟まれるのを防止できる。なお、このような閉保護の制御において、補助センサ32と同様に光電センサで構成される起動センサ31の検知情報を併用することで、通行者の検知精度を高めて安全性を更に向上できる。
なお、補助センサ32は、マイクロ波等の電波や超音波の反射により通行者を検知する構成としてもよい。また、補助センサ32は固定扉12L、12Rとは異なる場所に設けてもよい。例えば、起動センサ31と同様に無目60に設けてもよいし、自動ドア100近傍の天井に設置してもよい。このような補助センサ32を複数設ければ、高コストになる一方で安全性が飛躍的に高まる。
上記の起動センサ31および補助センサ32は、出力段に増幅器を備えており、各センサでの検知情報を、後段のコントローラ20で扱える所定のレベルまで増幅する。したがって、センサの検出強度が低い場合は増幅率が高くなり、センサの検出強度が大きい場合は増幅率が低くなる。このように、各センサの増幅率は各センサの検出強度を示すデータになっている。
ドアエンジン40は、モータ駆動部41と、モータ42と、駆動プーリ43を備える。モータ駆動部41は、インテリジェントパワーモジュール(IPM)で構成され、扉部10の開閉動作を制御するコントローラ20の制御の下でモータ42を駆動する電圧ないし電流を発生させる。回転動力を発生させる動力源としてのモータ42は、各種の公知のモータとして構成できるが、本実施形態では、一例として、ホール素子を用いたエンコーダを備えるブラシレスモータとする。エンコーダで検出されたモータ42の回転子の位置がモータ駆動部41に入力され、それに応じた駆動電圧ないし駆動電流がモータ42に印加されることで、所望の回転動力が発生される。モータ42によって回転駆動される駆動プーリ43は、図示しない歯車機構等を介してモータ42の回転子と連結され、連動して回転する。
動力伝達部50は、ドアエンジン40で発生された動力を扉部10に伝達し、可動扉11L、11Rを開閉駆動する。動力伝達部50は、動力伝達ベルト51、従動プーリ52、連結部材53を備える。動力伝達ベルト51は、内周面に多数の歯が形成された環状のタイミングベルトであり、図1の右側において駆動プーリ43に巻き付けられ、図1の左側において従動プーリ52に巻き付けられる。この状態において動力伝達ベルト51の水平方向の寸法は、駆動プーリ43と従動プーリ52の水平方向の距離に等しく、また可動扉11L、11Rの可動域の水平方向の寸法と同程度である。モータ42により駆動プーリ43が回転すると、動力伝達ベルト51を介して従動プーリ52が連動して回転する。
連結部材53は、可動扉11L、11Rをそれぞれ動力伝達ベルト51に連結して、開閉駆動する。ここで、一方の可動扉は動力伝達ベルト51の上側に連結され、他方の可動扉は動力伝達ベルト51の下側に連結される。図1の例では、動力伝達ベルト51が反時計回りに回転すると、第1の可動扉11Lが左側に移動し第2の可動扉11Rが右側に移動する開動作となり、動力伝達ベルト51が時計回りに回転すると、第1の可動扉11Lが右側に移動し第2の可動扉11Rが左側に移動する閉動作となる。
以上のような構成の自動ドア100において、起動センサ31が通行者を検知すると、コントローラ20の制御の下、ドアエンジン40が反時計回りの回転動力を発生させ、扉部10を開駆動する。また、開駆動後、通行者が検知されない状態が所定時間継続した場合は、コントローラ20の制御の下、ドアエンジン40が時計回りの回転動力を発生させ、扉部10を閉駆動する。なお、閉駆動中に補助センサ32や起動センサ31が通行者を検知すると、コントローラ20が閉駆動から開駆動に切り替える反転制御を行う。
図2は、自動ドア100の内外で相互に通信可能な各種の構成機器を模式的に示す。自動ドア100は、各構成機器が接続され、構成機器間のデータ通信を行うバス2を有する。バス2は、任意の通信規格、例えばCAN(Controller Area Network)に則って構成される。CANは、ホストコンピュータを介さずに構成機器が相互に通信できるように設計されており、自動ドアに限らず様々なシステムの制御情報の伝送に広く利用されている。バス2に接続された各構成機器は、バス2を介して他の構成機器に情報を送信でき、他の構成機器がバス2に送信した情報のうち自身に必要な情報を選択的に受信できる。
図2には、バス2に接続される構成機器として、コントローラ20、起動センサ31、タッチプレート31A、補助センサ32、操作盤33、認証装置34、電気錠コントローラ35、外部インターフェース36、表示装置37が例示され、いずれの構成機器も自動ドア100を構成する。なお、本図は、バス2に接続されうる構成機器を例示列挙したものであり、図1に示されない構成機器も含まれている。また、実際の自動ドア100に設ける構成機器は目的に応じて選択でき、図示される全ての構成機器を設ける必要はない。例えば、通行者の検知や操作のみで扉部10を駆動する自動ドア100においては、係員等の操作を行うための操作盤33は設ける必要はない。逆に、観光施設やアミューズメントパーク等で、施設の係員の操作のみで扉部10を駆動する自動ドア100においては、通行者の検知や操作のための起動センサ31やタッチプレート31Aを設ける必要はない。ただし、自動ドア100全体を制御するコントローラ20は、多くの場合で必須の構成機器である。
図示される構成機器のうち、コントローラ20、起動センサ31、タッチプレート31A、補助センサ32については前述したので説明を省略する。操作盤33は、観光施設やアミューズメントパーク等で施設の係員が操作し、扉部10を駆動する制御盤である。例えば、利用者が所定のタイミングで異なる部屋を移動するアトラクションにおいては、その移動タイミングに合わせて係員が操作盤33を操作し、各部屋の扉部10を開閉制御することで利用者が円滑に移動できる。なお、操作盤33は、施設に固定的に設置されたものでもよいし、係員が携帯できるものでもよい。また、後述する外部インターフェース36を介してコントローラ20等と通信可能なタブレットやスマートフォン等の通信端末に操作盤33の機能を実装してもよい。
認証装置34は、集合住宅やオフィスの入口など、高いレベルのセキュリティが要求される場所で、通行を許可すべき通行者を認証する。認証の方法は、扉部10近傍に設けられるキーパッドの入力によるパスワード認証や、指紋等の通行者の生体情報を用いた生体認証等がある。認証装置34での認証が成功すると、コントローラ20が扉部10を開駆動し、通行者は自動ドア100を通行できる。認証装置34での認証が失敗すると、たとえ起動センサ31が通行者を検知していたとしても、コントローラ20は扉部10を開駆動せず、未認証の通行者の不正な通行を阻止できる。
電気錠コントローラ35は、自動ドア100を施錠する電気錠35Aを制御する。電気錠35Aは、錠を施錠位置と解錠位置の間で駆動する錠駆動手段として、例えば通電状態に応じた駆動力を発生するソレノイドを備える。
外部インターフェース36は、有線または無線の接続により、自動ドア100外の各種の外部機器36Aとの間で信号を入出力する。外部機器36Aとしては、自動ドア100の設置や保守点検のために現場に赴いた作業員が使用する調整器等の作業端末や、インターネット等の公衆情報通信網を介して接続された遠隔のサーバやコンピュータが例示される。このような外部機器36Aの入力操作により、自動ドア100の各構成機器の制御やパラメータ調整等の各種設定を行える。また、外部機器36Aは、自動ドア100の各構成機器や、それらに付随して設けられるメモリから情報を読み取り、状態診断や保守点検を行える。なお、上述の通り、自動ドア100内のバス2はCAN規格に則って構成されるが、外部機器36Aと外部インターフェース36の間の通信が、それとは別の規格、例えば、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)で行われる場合、外部インターフェース36は一方の規格に基づく信号を他方の規格に基づく信号に変換するプロトコル変換器として機能する。
表示装置37は、他の構成機器から受信した情報に基づいて自動ドア100の稼働状況等を表示する表示部である。この表示装置37がタッチパネル等の入力機能を備える場合は、表示画面上のタッチ操作により、自動ドア100の各構成機器の制御やパラメータ調整等の各種設定を行える。なお、表示装置37は、扉部10の付近に設けてもよいし、扉部10から離れた場所、例えば、自動ドア100と同じ建物内でその管理を行うバックヤードに設けてもよい。
以上で例示列挙した自動ドア100を構成する構成機器、すなわち、コントローラ20、起動センサ31、タッチプレート31A、補助センサ32、操作盤33、認証装置34、電気錠コントローラ35、外部インターフェース36、表示装置37は、CAN規格に則ったバス2を介して相互に通信可能である。つまり、各構成機器はCAN通信のためのCANトランシーバとCANコントローラを内蔵している。外部インターフェース36は、これらに加え、外部機器36Aが利用する通信規格とCAN規格のプロトコル変換を行うプロトコル変換部を有する。これにより、外部インターフェース36に接続された外部機器36Aは、自動ドア100の他の構成機器とバス2を介して相互に通信可能である。
続いて、コントローラ20およびドアエンジン40によって実行される扉部10の閉維持制御について説明する。図3は、扉部10の閉維持制御に関連する自動ドア100の構成を模式的に示す。図3(A)は、図1から抜粋した扉部10周辺の正面図であり、図3(B)は、扉部10の二つの可動扉11L、11Rの上面図または平面図である。
図3(B)に模式的に示されるように、各可動扉11L、11Rの戸先または閉端部には、扉部10が全閉状態になる時の衝撃を弾性変形によって吸収するゴム製の弾性部材111L、111R(以下、弾性部材111と総称することがある)がそれぞれ設けられる。なお、弾性部材111L、111Rは、各可動扉11L、11Rの戸先に限らず、各可動扉11L、11Rと共に走行レール131上を転動する戸車132L、132Rや、各可動扉11L、11Rと共に動力伝達ベルト51に沿って移動する連結部材53L、53Rに設けてもよいし、扉部10の全閉位置おいてこれらと接触して停止させる左右の不図示のストッパに設けてもよい。また、可動扉11L(または戸車132L、連結部材53L、左方ストッパ)および可動扉11R(または戸車132R、連結部材53R、右方ストッパ)のいずれか一方のみに弾性部材111を設けてもよい。
制御部としてのコントローラ20は、扉駆動部としてのドアエンジン40に印加する電圧を制御しながら、扉部10を全閉状態にした後に閉方向に押し付ける閉維持制御を行う。
コントローラ20は、扉部10の閉維持制御のための構成として、扉移動検知部21と、電圧検知部22と、閉状態維持電圧設定部23を備える。
扉移動検知部21は、扉部10の移動すなわち可動扉11Lおよび/または可動扉11Rの移動を検知する。特に、扉部10の閉維持制御時は、弾性部材111の弾性力による全閉位置(厳密には後述する完全全閉位置)から開方向への扉部10の移動または遷移が扉移動検知部21によって検知される。具体的には、ドアエンジン40においてホール素子が検出したモータ42の回転子の位置の変化に基づいて、扉移動検知部21は扉部10の移動を検知する。なお、扉部10の位置や運動を直接的に測定するセンサが設けられる場合、扉移動検知部21はセンサの測定データに基づいて扉部10の移動を検知してもよい。
電圧検知部22は、コントローラ20が閉維持制御においてドアエンジン40に印加する電圧を下げている時に弾性部材111の反力により扉部10が開方向に移動した際の電圧を検知する。具体的には、電圧検知部22は、扉移動検知部21が閉維持制御時に全閉状態から開方向への扉部10の移動を検知した際にドアエンジン40に印加されていた電圧を検知する。閉状態維持電圧設定部23は、扉部10を閉状態に維持するためにドアエンジン40に印加する閉状態維持電圧として、電圧検知部22が検知した電圧より大きい電圧を設定する。
図4は、扉部10の閉維持制御時におけるドアエンジン40への電圧の印加例を模式的に示す。縦軸はドアエンジン40に印加される電圧Vを表し、横軸は時間Tを表す。図4(A)は、閉状態維持電圧設定部23が閉状態維持電圧としての押付電圧(Ve)を設定する場合の印加電圧Vの時間変化を表し、図4(B)は、押付電圧(Ve)が設定済の場合の印加電圧Vの時間変化を表す。
図4(A)において、扉部10が全開状態から閉駆動される際、ドアエンジン40には通常閉駆動電圧Vaが印加される。時刻Taにおいて、ドアエンジン40におけるホール素子等によって扉部10の各可動扉11L、11Rが全閉位置の手前の所定位置に到達したことが検知されると、印加電圧Vは通常閉駆動電圧Vaから線形に減少する。時刻Tbにおいて印加電圧Vが最小閉駆動電圧Vbまで下がった後、その状態で扉部10は時刻Tcまで低速で閉駆動される。時刻Tcでは、ドアエンジン40におけるホール素子等によって扉部10の各可動扉11L、11Rが全閉位置に到達したことが検知される。この時、図3(B)に示したように、各可動扉11L、11Rの戸先等に設けられる弾性部材111L、111Rが互いに接触し、扉部10は全閉状態になる。
時刻Tcから時刻Tdにかけては、印加電圧Vが最小閉駆動電圧Vbから押切電圧Vcまで増加しながら、扉部10が全閉状態から更に閉方向に押し付けられる押切動作が行われる。この間に各弾性部材111L、111Rは押しつぶされるように弾性変形するため、この弾性変形量に相当する距離だけ扉部10は全閉位置から更に閉方向に移動する。この扉部10の閉方向への移動または速度は、扉移動検知部21によって検知され、時刻Tdにおいて実質的に零になる。この時、各弾性部材111L、111Rはこれ以上弾性変形できなくなり、扉部10はこれ以上閉方向に移動できなくなる。以下、時刻Tdにおける扉部10の位置を完全全閉位置といい、時刻Tcにおける扉部10の位置である全閉位置と必要に応じて区別する。
時刻Teから時刻Tfにかけては、扉移動検知部21による扉部10の移動の検知および電圧検知部22によるドアエンジン40への印加電圧Vの検知を行いながら、コントローラ20がドアエンジン40への印加電圧Vを徐々にまたは段階的に下げる。図示の例では、印加電圧Vが下限電圧Vdまで下げられた際に、各弾性部材111L、111Rの開方向の弾性力が下限電圧Vdによる閉駆動力を上回った結果、扉部10が完全全閉位置から開方向に移動したことが扉移動検知部21によって検知される。そこで、閉状態維持電圧設定部23は、扉部10の完全全閉状態の復帰および維持のための閉状態維持電圧として、扉移動検知部21が扉部10の開方向への移動を検知した際に電圧検知部22が検知した下限電圧Vdより大きい押付電圧Veを設定する。時刻Tf以降、通行者等によって扉部10が開駆動されるまで、ドアエンジン40には押付電圧Veが印加される。
押付電圧Veは、各弾性部材111L、111Rの開方向の弾性力を上回る閉駆動力を発生させて扉部10を完全全閉状態に維持できる必要最小限の印加電圧Vである。このため、閉維持制御のためにモータに過大な電圧が印加されていた特許文献1に比べて、ドアエンジン40ひいては自動ドア100における閉維持制御時の消費電力を低減できる。また、閉維持制御の低消費電力化によってドアエンジン40および/またはコントローラ20からの発熱を抑制できるため、これらの周囲に実装されるアルミ電解コンデンサや信号伝送用のフォトカプラ等の熱の影響を受けやすい部品の劣化や故障を防止して長寿命化できる。
押付電圧Veは、電圧検知部22が検知した下限電圧Vdに1より大きい任意の定数αを乗じて得られる(Ve=α×Vd)。定数αは例えば扉部10の走行抵抗や弾性部材111の反発力に応じて適宜設定可能である。押付電圧Veと下限電圧Vdの差ΔV(=Ve-Vd=(α-1)Vd)は任意の正の値でよいが、時刻Teから時刻Tfにかけて印加電圧Vが段階的に下げられる場合、下限電圧Vdの直前の電圧と下限電圧Vdの差であるδv(>0)より大きくするのが好ましい。この場合の押付電圧Ve(=Vd+ΔV)は、扉部10を完全全閉状態に維持できていたVd+δvより大きくなるため、扉部10を確実に完全全閉状態に維持できる。
一方で、押付電圧Veを必要以上に大きくしないために、δv<ΔV<2δvとするのが好ましい。また、押付電圧Veは最大でも時刻Teからドアエンジン40への印加電圧Vを下げる前の押切電圧Vc以下とするのが好ましい。なお、時刻Teからコントローラ20が印加電圧Vを0まで下げても扉部10が完全全閉位置から開方向に移動せず電圧検知部22が検知状態にならなかった場合、コントローラ20は扉部10を閉状態に維持するための押付電圧Veをドアエンジン40に印加しない、あるいは、閉状態維持電圧設定部23によって押付電圧Veが0に設定される。この場合、押付電圧Veを印加せずに扉部10の完全全閉状態を維持できるため、閉状態の自動ドア100における消費電力を著しく低減できる。
図4(A)に関して説明した押付電圧Veの設定は、扉部10が全閉状態になる度に実行する必要はない。図4(B)に示すように、前回以前の扉部10の閉駆動時に閉状態維持電圧設定部23が押付電圧Veを設定済の場合、時刻TdからTeにかけて扉部10の押切動作が完了して完全全閉状態になった後、速やかに設定済の押付電圧Veがドアエンジン40に印加される。このように、扉部10が時刻Te以降の定常状態(完全全閉状態)に移行するまでの時間を短縮できると共に、図4(A)の時刻Tc以降の押付電圧Veの探索プロセスに要した電力を削減できる。なお、変形例として、時刻Tcで扉部10が全閉状態になった後、押切電圧Vcを経ずに最小閉駆動電圧Vbから設定済の押付電圧Veに直接的に電圧を遷移させてもよい。
図4(A)の押付電圧Veの設定プロセスは任意のタイミングで実行できるが、例えば、自動ドア100の設置時や電源投入時のように、自動ドア100の稼働前すなわち扉部10が実際に開閉駆動される前に実行するのが好ましい。なお、自動ドア100の稼働中であっても、自動ドア100を通行する通行者がいないタイミングで扉部10を開閉駆動し、押付電圧Veの設定プロセスを実行してもよい。また、図4(A)の押付電圧Veの設定プロセスは、1日のうち決まった時間帯や開閉回数が所定回数以上になった時等の所定のタイミングおよび/または1日に決まった回数等の任意の頻度で定期的に行うのが好ましい。本実施形態の押付電圧Veの設定プロセスによれば、自動ドア100の個体差や各々の設置環境に応じて最適な押付電圧Veを設定でき、個々の自動ドア100の閉維持制御時の消費電力を最小化できる。
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。