JP2023022343A - 植物細胞の培養方法及び植物再生方法 - Google Patents

植物細胞の培養方法及び植物再生方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、植物細胞の培養方法に関する。本発明はまた、植物細胞からの植物再生方法に関する。【解決手段】本発明の植物細胞の培養方法は、植物細胞を、ファイトスルホカインを含む培養培地を用いて培養することを含む、ここにおいて、前記植物細胞は、植物生殖細胞、植物受精卵細胞又は植物受精卵由来細胞群である。本発明の植物細胞からの植物再生方法では、(1)植物細胞を、ファイトスルホカインを含む培養培地で培養し;そして、(2)再分化培地で培養する、ここにおいて、前記植物細胞は、植物生殖細胞、植物受精卵細胞又は植物受精卵由来細胞群である、ことを含む。【選択図】なし

Description

本発明は、植物細胞の培養方法、植物再生方法に関する。
トウモロコシ(非特許文献1)、イネ(非特許文献2)、コムギ(非特許文献3)、オオムギ(非特許文献4、5)、タバコ(非特許文献6)などの種において、受精後の胚珠から受精卵を単離・培養し、植物体を再生した例が報告されている。受精卵は本来、植物体へと成長する能力を保有した細胞であり、それゆえ、種、品種間差によって生じる培養効率の影響を受け難く、組織培養が難しい種、品種においても、植物体を作出できることが期待される。
トウモロコシにおいては、難培養品種とされていたB73の受精卵から、植物体を作出する方法が報告されている(非特許文献7、特許文献1)。この技術は、胚珠を受精卵から単離する場合の酵素処理条件を最適化し、受精卵の活性をできる限り維持した状態で培養に供することを特徴とする。この方法の開発により、B73の受精卵から植物体が得られるようになったが、受精卵を単離する材料植物の状態等により、植物体の再生効率が安定しないことが、実用化の妨げとなっていた。
現在までに既知の受精卵から植物体を作出法における各工程の概要は、以下の通りである。
1)植物受精卵細胞の獲得
受精卵を獲得する方法としては、自然に、又は人工的に交配を行った胚珠から受精卵を単離する方法や、植物から単離した卵細胞と精細胞をインビトロで融合させて受精卵を得る方法、などが行われている。前者の方法においては、Leducらにより(非特許文献1)、また、後者の方法においては、Kranzらによる電気融合の方法(非特許文献8)が報告されている。
2)細胞塊形成工程
1)の工程により獲得した植物受精卵細胞を培養して、生存、分裂させ、細胞塊に増殖させる工程である。「培養工程」と呼称される場合もある。本明細書中の「細胞塊」は、細胞分裂を繰り返している不定形の細胞塊のみならず、胚発生に類似した形態をとる胚様体も含む。この工程では、溶液や培地、ナースセルなどの選択が、植物受精卵細胞の生存、分裂、細胞塊形成に重要な影響を与える。
植物の受精卵細胞を培養する溶液や培地を選択するにあたり最も重要なことは、使用する溶液や培地の浸透圧を適切にすることであると言われている。適した浸透圧は植物種によって異なるため、種々の糖類を用いて浸透圧が調整されている。また、培地の植物ホルモンについても検討されている。例えば、オオムギ受精卵の植物体再生効率を、2,4-Dを含む液体培地と含まない培地で比較したところ、2,4-Dを含む液体培地で培養する方が、再生効率が高いことが示されている(非特許文献4)。さらに、トウモロコシでは、2,4-Dに加えてBAP(6-ベンジルアミノプリン)を液体培地に添加することも行われている(非特許文献1)。
植物の受精卵細胞の培養には、受精卵の生存や分裂に必要な有機的な成分の供給源を用いることが一般的である。例えば、単離した受精卵を胚珠に戻す方法や、ナースセルを使用する方法が挙げられる。Kumlehnらは、単離したコムギ受精卵細胞を胚珠に戻す方法を使って、植物体の再生を行っている(非特許文献9)。ナースセルを使用する方法では、小胞子培養物を用いた方法(非特許文献1、3、4,10)、懸濁培養細胞を使った方法(非特許文献8)、葯培養物を使った方法(非特許文献1)が報告されている。
3)再分化工程
工程2)で得られた受精卵由来の細胞塊から再分化させ、植物体を再生させる工程である。「植物体再生工程」と呼称される場合もある。本工程で使用されている培地の無機塩や糖類、植物成長調節物質などは植物種によって異なる。例えばMS培地、B5培地、N6培地であって、アガロース、寒天やゲランガム、ゲルライト等を使用した固体培地を用いることができる。成長調節物質は、含まれない場合(非特許文献1)や、1mg/l以下のサイトカイニン類及び1mg/l以下のオーキシン類が含まれる場合がある(非特許文献3、4)
以上のように、植物受精卵細胞の培養方法、及び再生植物体の作成方法は、さまざまな改良が行われてきた。しかしながら、受精卵細胞は、葉、培養細胞、カルスなどと異なり、作出や単離に手間がかかる、受精直前の卵細胞や精細胞は電気処理やカルシウム溶液添加など融合処理をしなければ分化を開始しない、などの問題がある。これまでに植物体の再生に成功している品種は限定的であり、安定して再生植物体を得るには材料植物の状態から培地やナースセルの条件なども最適化し、それを厳格に再現できなければ、実用的に利用することは困難である。また、ゲノム編集や遺伝子組換えなどのための植物材料として植物受精卵細胞を扱う場合には、DNA、RNA、タンパク質を受精卵に導入する必要があり、単に植物受精卵細胞を培養するよりも、植物受精卵細胞の生存、分裂、再生の難易度が高くなる。そのため、より安定的に再生植物体を獲得しうる培養方法が求められていた。
細胞の増殖等を促進する因子の一つとして、ファイトスルホカイン(PSK)が1996年に単離、同定された(非特許文献11)。非特許文献11では、ファイトスルホカインが機械的に分散させたアスパラガスの葉肉細胞の増殖を促進することを記載している。非特許文献12及び13は、ファイトスルホカインが、ニンジンの体細胞胚形成の誘導因子として機能することを記載している。非特許文献14はファイトスルホカインペプチドの前駆体ホモログの比較分析を行っている。非特許文献15は、トウモロコシの配偶体形成から種子形成期における生殖細胞中のファイトスルホカインの動態を解析した結果を報告している。
しかしながら、ファイトスルホカインの植物細胞の培養工程における効果、特に、植物生殖細胞、植物受精卵細胞又は植物受精卵由来細胞群の培養工程における効果は明らかにされていなかった。
国際公開 WO2017/171092 特開2016-63785 国際公開 WO2018/143480
Leduc et al.,(1996),Developmental Biology 177:190-203 Zhang et al.,(1999),Plant Cell Reports 19:128-132 Kumlehn et al.(1998)Planta 205:327-333 Holm et al.,(1994),The Plant Cell 6:531-543 Holm et al.,(2000),Transgenic Research 9:21-32 Yuchi et al.,(2004),Chinese Science Bulletin 49:810-814. Koiso et al.,(2017)Plant Direct 1-10. Kranz et al.(1993)Plant Cell 5:739-746 Kumlehn et al (1997) Plant Journal 12: 1 Kranz et al.(1999)Methods in Molecular Biol 111: 259-267 Matsubayashi and Sakagami (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 7623-7627 Hanai et al.(2000)Plant CellPhysiol. 41: 27-32 Kobayashi et al.(1999)Journal of Experimental Botany 50:1123-1128 Lorbiecke et al. (2005) J. Exp. Bot. 56: 1805-1819 Lorbiecke et al. (2002) Plant Science 163、321-332 Bakos et al. (2003) Plant Cell, Tissue and Organ Culture 74: 243-247
植物受精卵細胞は、植物体内で胚へ発生する。通常、受精卵細胞や胚は、その外部を胚乳や母体組織などの固形状の環境で覆われている。一方、植物体から単離された受精卵細胞やそこから分裂を繰り返した細胞塊は、多くの場合、液体状の培地で培養されており、植物体内での環境下とは大きく異なるため、受精卵細胞が植物体再生に至らないことが問題であった。本発明者らは鋭意検討の結果、従来の植物受精卵を培養・植物体再生方法に加えて、ファイトスルホカインが受精卵から植物体を誘導する効果を持つことを見出し、植物細胞の培養培地にファイトスルホカイン(PSK)を適量培地に添加することにより、受精卵細胞を培養し、受精卵及び受精卵に由来する細胞塊から安定して効率よく再生植物体を得る方法を想到した。
本発明は、植物細胞の培養方法を提供することを目的とする。本発明の方法は、植物細胞を、ファイトスルホカインを含む培養培地を用いて培養することを含む、ここにおいて、前記植物細胞は、植物生殖細胞、植物受精卵細胞又は植物受精卵由来細胞群である。
本発明はまた、植物細胞からの植物再生方法を提供する。本発明の方法は、
(1)植物細胞を、ファイトスルホカインを含む培養培地で培養し;そして、
(2)再分化培地で培養する、
ここにおいて、前記植物細胞は、植物生殖細胞、植物受精卵細胞又は植物受精卵由来細胞群である、
ことを含む。
限定されるわけではないが、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
植物細胞を、ファイトスルホカインを含む培養培地を用いて培養することを含む、ここにおいて、前記植物細胞は、植物生殖細胞、植物受精卵細胞又は植物受精卵由来細胞群である、植物細胞の培養方法。
[態様2]
前記植物細胞が、植物受精卵細胞又は植物受精卵由来細胞群である、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記植物細胞が、植物受精卵細胞である、態様1又は2に記載の方法。
[態様4]
ファイトスルホカインを含む培養培地を、植物細胞が再性分化能を有する時期まで、植物細胞を培養する工程の、いずれかの時期又はすべての時期において使用する、態様1-3のいずれかに記載の方法。
[態様5]
ファイトスルホカインを含む培養培地を、植物受精卵細胞の培養開始から、培養開始後21日目までの間のいずれかの時期において使用する、態様1-4のいずれか1項に記載の方法。
[態様6]
ファイトスルホカインの培養培地中の濃度が2.1nM以上である、態様1-5のいずれか1項に記載の方法。
[態様7]
前記植物細胞が、単子葉植物の細胞である、態様1-6のいずれか1項に記載の方法。
[態様8]
前記植物細胞が、イネ科植物の細胞である、態様7に記載の方法。
[態様9]
前記植物細胞が、トウモロコシである、態様8に記載の方法。
[態様10]
植物細胞が、物質が導入された植物細胞である、態様1-9のいずれか1項に記載の方法。
[態様11]
培養培地が、フィーダー細胞を含む、態様1-10のいずれか1項に記載の方法。
[態様12]
植物細胞からの植物再生方法であって、
(1)植物細胞を、ファイトスルホカインを含む培養培地で培養し;そして、
(2)再分化培地で培養する、
ここにおいて、前記植物細胞は、植物生殖細胞、植物受精卵細胞又は植物受精卵由来細胞群である、
ことを含む、植物再生方法。
[態様13]
植物細胞からの植物再生方法であって、
(1)植物細胞を態様1-11に記載のいずれか1項に記載の方法によって培養し;
(2)再分化培地で培養する、
ことを含む、植物再生方法。
[態様14]
再分化培地が、フィーダー細胞を含む、態様12又は13に記載の方法。
[態様15]
再分化培地が、オーキシン類を含む、態様12-14のいずれか1項に記載の方法。
本発明により、植物細胞、特に植物受精卵細胞又は植物細胞受精卵由来細胞群を培養することによって得た細胞塊から、安定して効率よく再生植物体を得ることが可能になった。
図1は、液体培地中の単離直後のトウモロコシ受精卵細胞の顕微鏡写真図(スケールバーは50μm)である。 図2は、培養開始後4日目のトウモロコシ受精卵細胞の顕微鏡写真図(スケールバーは50μm)である。A:ファイトスルホカイン非添加区。B:ファイトスルホカイン8.0nM添加区。図2Bでは、図2Aと比較して、受精卵から直線状に構造物が伸びているのが観察される。 図3は、ファイトスルホカインを添加した培地で2週間培養後、植物体誘導培地に移植し生育中のトウモロコシ受精卵由来培養物の写真である。 図4は、ファイトスルホカインを培養開始時と培養開始後3週間の2回投与し得られたトウモロコシ受精卵由来培養物の顕微鏡写真である。A:培養開始後3週間の受精卵由来細胞群(スケールバーは100μm)。B:培養開始後3週間でファイトスルホカインを再投与し、さらに15日培養した後の培養物(スケールバーは200μm)。
1.植物細胞の培養方法
本発明は、植物細胞の培養方法に関する。本発明の方法は、植物細胞を、ファイトスルホカインを含む培養培地を用いて培養することを含む。前記植物細胞は、植物生殖細胞、植物受精卵細胞又は植物受精卵由来細胞群である。
植物
植物の種類は特に限定されるものではない。双子葉植物及び単子葉植物のいずれでもよく、好ましくは単子葉植物である。より好ましくは、イネ科植物であり、さらに好ましくは、コムギ、トウモロコシ、オオムギ、イネ、ソルガム、ライムギ、サトウキビ等であり、最も好ましくは、トウモロコシ、コムギ、イネである。双子葉植物にはタバコ、大豆、ジャガイモ、ヒマヮリが含まれるがこれらに限定されるものではない。好ましくは、大豆、タバコである。
非限定的に、一態様において、前記植物細胞は、単子葉植物の細胞である。非限定的に、一態様において、前記植物細胞は、イネ科植物の細胞である。非限定的に、一態様において、前記植物細胞は、トウモロコシである。
植物細胞
上記植物細胞の培養方法において、植物細胞は、植物生殖細胞、植物受精卵細胞又は植物受精卵由来細胞群である。非限定的に、一態様において、植物細胞は、植物受精卵細胞又は植物受精卵由来細胞群である。非限定的に、一態様において、前記植物細胞は、植物受精卵細胞である。
本明細書において、「受精卵細胞」とは、精細胞と卵細胞とが融合した細胞を意味する。「植物受精卵細胞」とは、植物の胚嚢を含む組織から単離される受精した卵細胞である、即ち、植物体の段階で受粉・受精させ、該植物体から単離した受精卵細胞、であってもよい。あるいは、受粉・受精前の植物体から卵細胞及び精細胞を単離したのち、それらを融合させて受精卵細胞を作出及び取得してもよい。なお、電気的な融合により受精卵を作成及び取得してもよい。また、異種の植物同士の卵細胞と精細胞の融合により得られた受精卵細胞、であってもよい。
上記培養方法に利用する細胞は、植物細胞が再性分化能を有する時期まで、植物細胞を培養する工程、即ち、再分化培地で植物細胞を培養する再分化工程の前までの、いずれの段階になる植物細胞であってもよい。本明細書において、「植物受精卵由来細胞群」とは、植物受精卵細胞が細胞分裂して形成された細胞塊を含む、植物受精卵細胞が細胞分裂を開始した以降の任意の段階の細胞を含む細胞群を意味する。「植物受精卵由来細胞群」は好ましくは、再分化工程開始前の段階の細胞群である。
一態様において、単離された植物細胞、特に受精卵細胞は、プロトプラスト化された細胞であってもよい。「プロトプラスト」とは、植物細胞から細胞壁を取り除いた細胞である。
一態様において、上記培養方法に利用する細胞は、植物生殖細胞であってもよい。生殖細胞は、生殖において遺伝情報を次世代へ伝える役割を持つ細胞で、多細胞生物を構成する細胞のうち、体細胞以外の細胞をいう。本明細書において、「生殖細胞」は、卵細胞(「卵」、「卵子」ともいう)、精細胞(「精子」ともいう)を含む。
植物生殖細胞は、好ましくは、雄ずい又は雌ずいから単離された卵細胞また精細胞である。本明細書において「卵細胞」とは、雌ずいの中において、胚嚢母細胞の減数分裂により形成される雌性配偶子を意味する。卵細胞の単離方法は限定されないが、例えば、適切な浸透圧の溶液中において子房を切断し、その切断面から出てきた卵細胞を顕微鏡下においてガラスキャピラリーを用いて単離することができる。
本明細書において「精細胞」とは、雄ずいの葯の中において、花粉母細胞の減数分裂により形成される雄性配偶子を意味する。精細胞の単離方法は限定されないが、例えば、適切な浸透圧の溶液に葯から採取した花粉を浸すと、数分後には、花粉から精細胞を含む花粉内容物が溶液中に放出されるので、顕微鏡下においてガラスキャピラリーを用いて精細胞を単離することができる。
受精卵細胞の取得方法
植物受精卵細胞は、自然受精法により植物体内で作出し、作成された受精卵細胞を植物体から取得してもよい。自然受精法を用いた受精卵細胞の取得方法は、例えば、柱頭を露出させ、花粉を付着させ受粉させたのち、胚嚢を含む組織から受精卵を単離する方法である。植物体からの受精卵細胞の単離は、受粉後の植物体から受精直後の子房を取り出し、適切な浸透圧の溶液中においてその子房を切断し、その切断面から出て来た受精卵を顕微鏡下においてガラスキャピラリー等を用いて単離することができる。あるいは、酵素溶液で子房又は胚珠を一定時間処理した後に、例えば、ガラス針等を用いて顕微鏡下において珠心等の組織を解剖し摘出、単離することもできる。
植物の卵細胞と精細胞をin vitroで融合して受精卵を作出してもよい。即ち、植物体より先ず卵細胞と精細胞を単離し、電気融合法等の公知の方法により、in vitroで受精卵細胞を作出することが可能である(配偶子融合ともいう)。電気融合法は、電気刺激により2種又は2種以上の細胞をin vitroで融合する方法である。具体的には、適切な浸透圧の溶液中において単離した卵細胞及び精細胞に、電気パルスを加えることで細胞融合を引き起こす。
電気融合により細胞融合を行う場合、電圧、電極間距離等の条件は、植物の種類又は細胞の大きさ等に応じて当業者が適宜決めることができる。例えば、特開2016-63785(特許文献2)や国際公開WO2017/171092(特許文献1)に記載の条件を適用することができる。
あるいは、卵細胞と精細胞の細胞融合には、カルシウム融合法、PEG融合法等の他の公知の細胞融合方法を用いてもよい。「カルシウム融合法」は、カルシウム濃度依存的に細胞膜の融合が生じやすくなる、という細胞膜の性質を利用するものである。「PEG融合法」は、細胞をポリエチレングリコール(polyethyleneglycol、PEG)で処理することによって細胞膜が結合し、PEGを取り除くと細胞が融合することを利用するものである。
一態様において、植物受精卵細胞は、卵細胞を、植物の卵細胞を含む組織から単離した後に、精細胞を融合させることによって得られるものである。
一態様において、植物受精卵細胞は、物質が導入された植物受精卵細胞である。
培養培地
上記植物細胞の培養方法は、植物細胞を、ファイトスルホカイン(PSK)を含む培養培地を用いて培養することを含む。ファイトスルホカイン含む培養培地は、非限定的に、例えば、ファイトスルホカインを培地に添加する方法、ファイトスルホカインを発現するように形質転換されたフィーダー細胞を培養培地に添加する方法、あるいはそれらを組み合わせることによって作製しうる。
非限定的に、一態様において、植物細胞の培養は、植物受精卵細胞から植物体を再生させる工程において行う。一態様において、植物受精卵細胞を培地で培養することは、再分化培地における培養工程の前に行う。本明細書において、「植物受精卵細胞」は、受精卵が分裂を繰り返した結果生じた細胞塊を含む意味で使用する場合がある。
以下、植物細胞の培養方法の態様の例を説明する。植物受精卵細胞の培養培地は、植物受精卵細胞を通常培養するために通常使用されるものでもよく、特に限定されない。非限定的に、例えばMS培地、LS培地、N6培地、B5培地、R2培地、CC培地を基本とする培地等が挙げられる。これらの培地は、基本の濃度から高濃度にされたものでも、希釈されたものであってもよい。好ましくは、1/10倍から2倍量、より好ましくは、1/5倍から1倍量である。
ファイトスルホカイン(PSK)は、Matsubayashiらによりアスパラガス培養培地から単離構造決定された、植物細胞の分裂、増殖等を誘導するペプチドホルモンの一種である(非特許文献11)。ファイトスルホカインはアミノ酸5残基からなる分子量846.88のPSKαと、4残基からなる活性を持たないPSKβが同定されている。分子内に2残基あるチロシンが翻訳後酸化修飾を受けており、この硫酸化がファイトスルホカインの生理活性に重要とされている。ファイトスルホカインは、好ましくは、翻訳後酸化修飾を受けている態様である。本明細書における「ファイトスルホカイン(PSK)」は、PSKαとPSKβのいずれも含む。
一態様において、ファイトスルホカインを発現するように形質転換されたフィーダー細胞を培養培地に添加してもよい。
フィーダー細胞の形質転換方法は、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol、PEG)法、電気穿孔法(エレクトロポーレーション)、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法、マイクロインジェクション法、ウィスカー法等、当業者に公知の種々の方法を用いることができる。
形質転換に使用するファイトスルホカインをコードする核酸の塩基配列は、ファイトスルホカインをコードし得るものであればいかなる形態でもよい。例えば、既にファイトスルホカインが同定されている植物種(イネ(Oryza sativa)、トウモロコシ(Zea mays)、アラビドプシス(Arabidopsis thaliana)、ダイズ(Glycine max)、ブラシカナプス(Brassica napus)、リンゴ(Malus domestica)、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、ドリアン(Durio zibethinus)など)のmRNAから合成されたcDNA、ゲノムDNA、さらには、これらの塩基配列から派生した塩基配列を含む。派生した塩基配列とは、非限定的に、例えば、PSK前駆体ポリペプチド(90アミノ酸残基)をコードする塩基配列から、PSKα、PSKβをコードする塩基配列が保存されるように、その他の塩基配列を除去、置換、付加した配列を含む。例えば、フィーダー細胞でPSK前駆体ポリペプチドが発現、プロセシング、PSKα/βの翻訳後修飾を受ける、任意の様態を含む。非限定的に、複数植物由来のPSK前駆体遺伝子配列のキメラであっても、数塩基の置換・欠損があっても、マーカー遺伝子等とのキメラであっても良い。あるいは、PSKα若しくはPSKβをコードするように、人工的に塩基を並べた塩基配列でもよい。
フィーダー細胞は、ファイトスルホカインで形質転換されたフィーダー細胞のみを使用してもよく、あるいは、ファイトスルホカインで形質転換されたフィーダー細胞と非形質転換フィーダー細胞の混合細胞を使用してもよい。
適宜調整された培養培地にファイトスルホカインを添加する。培養培地に添加されるファイトスルホカインの濃度は特に限定されない。一態様において、0.1mMに調整されたファイトスルホカインを培地2.4mlに対して25μlから300μl加えてもよい。好ましくは50μl以上であり、より好ましくは75μl以上、さらに好ましくは100μl以上である。濃度としては、1.1nMから11.5nMで調整するのがよく、好ましくは2.1nM以上、より好ましくは3.2nM以上、さらに好ましくは4.2nM以上の濃度に調整するのが良い。上限は特に設定しないが、16.0nM、好ましくは12.0nMさらに好ましくは、8.0nM以下の濃度で調整するのが良い。
形質転換されたフィーダー細胞を用いファイトスルホカインを含む培地を作製する場合は、上述のファイトスルホカイン濃度と同等になるように、添加するフィーダー細胞の量を調整する工程が必要となる。
上記ファイトスルホカインの濃度は、例えば培地が固体のように、ファイトスルホカインが必ずしも培地全体に均一に含まれているとは限らない場合、培地単位体積当たりの含有量として把握することができる。
培養工程において、ファイトスルホカインを培地に添加する時期は特に限定されない。添加時期は、培養開始時もしくはそれ以降でもよい。非限定的に、一態様において、ファイトスルホカインを含む培養培地を、植物細胞が再性分化能を有する時期まで、植物細胞を培養する工程の、いずれかの時期に使用する。非限定的に、一態様において、ファイトスルホカインを含む培養培地を、植物細胞が再性分化能を有する時期まで、植物細胞を培養する工程のすべての時期において使用する。
非限定的に、一態様において、ファイトスルホカインを含む培養培地を、植物受精卵細胞の培養開始から、培養開始後21日目までの間のいずれかの時期において使用する。この態様において、植物は好ましくはトウモロコシである。
培養期間中、ファイトスルホカインを培養培地に、一度に添加してもよく、あるいは、(例えば数回に)分けて添加してもよい。
非限定的に、一態様において、培地は、植物成長調整物質を含んでもよい。植物成長調整物質は、オーキシン類である。具体的には、例えば、オーキシン類として特にインドール-3-酢酸(IAA)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、ピクローラム、ダイカンバ、ナフタレン酢酸(NAA)、ナフトキシ酢酸、フェニル酢酸、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸又は他のオーキシン類を添加することができる。一態様において、オーキシン類は、2,4-D、IAA、NAAからなる群より選択される植物ホルモンである。あるいは、カイネチンや4PUのようなサイトカイニンなど、他の植物成長調節物質を添加することもできる。これらの植物成長調節物質は、単独でも複数を異なる濃度で混合させてもよい。
一様態において、培養培地に、フィーダー細胞を加えてもよい。フィーダー細胞の種類は特に限定されない。例えばイネ由来のOC細胞や、トウモロコシの花粉、コムギの単離子房などを用いることが可能である。公知のフィーダー細胞や植物外植片を用いることが可能である。例えば、イネ浮遊細胞培養物(Line Oc、理研バイオリソースセンター製)や、トウモロコシのナース細胞(非特許文献8)、小胞子培養物(非特許文献16)などが挙げられる。植物外植片としては、子房(非特許文献3)などが挙げられる。
フィーダー細胞を添加する時期は限定されるものではなく、植物細胞の培養開始前、開始時、開始後であってもよい。特に本発明の方法において、ファイトスルホカイン(PSK)を添加する場合に、植物細胞にこの成分を効率的に暴露させるためには、ファイトスルホカインを添加し、一定時間経過後にフィーダー細胞を添加した方がより効率的に受精卵細胞が、ファイトスルホカインを利用することができる可能性がある。あるいは、上述したように、ファイトスルホカインを発現するように形質転換されたフィーダー細胞を培養培地に添加してもよい。
植物細胞の「培養」工程の途中で、液体培地を新しく交換する工程を含めてもよい。
受精卵細胞の培養方法は、ファイトスルホカインを添加することに特に限定されず公知の方法を適宜採用してよい。植物細胞の植物種に応じて適切な培養方法を適用しうる。一例として、調整した液体培地中にミリセルを設置し、その中に植物受精卵細胞を置床し、適切な温度、明暗条件及び期間で生育させる。培養温度は、適宜選択可能であり、好ましくは18℃-35℃、さらに好ましくは20-28℃、最も好ましくは23-26℃で行われる。また、この工程の培養は好ましくは暗所、もしくは薄暗い所で行われるが、これに限定されない。培養期間もまた適宜選択可能であり、好ましくは7日から21日、より好ましくは10日から15日である。植物受精卵細胞が再分化工程に供するのに適した状態になるまで液体培地で培養する。
受精卵細胞の培養により植物細胞が増殖した細胞群(細胞塊)を、再分化工程に供する前に液体培地から固体培地に移し、再分化能を有する状態にまで培養させてもよい。再分化能を有する状態の細胞塊にまで培養するために必要な培養条件、時間等は植物の種類や品種によって異なるため、当業者が適宜設定することができる。本発明の「培養培地」には液体培地のみならず、固体培地も含む。
例えば、トウモロコシを用いた場合において、受精卵の取得から7日から28日間、好ましくは10-25日、さらに好ましくは14-21日間、液体培養を行い得られた細胞塊を用いることが好ましい。また、例えば、該細胞塊が直径0.3mm以上、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1mm以上、最も好ましくは2mm以上の大きさになったときに、固形培地に移し、培養を開始することができる。本明細書において、「細胞塊の直径」は、細胞塊の最も長い箇所の長さを意味する。例えば、回転楕円形のような形状を有する細胞塊において、「細胞塊の直径」とは、回転楕円形の最も長い軸方向の長さを意味する。
一態様において、植物生殖細胞を受精前に処理又は保存しておくための溶液にファイトスルホカインを添加してもよい。本明細書における「培養培地」は、植物生殖細胞を受精前に処理又は保存しておくための培地も含んでもよい。非限定的に、MS培地、N6培地あるいは適宜浸透圧が調整されたマンニトール水溶液等がある。
2.植物再生方法
本発明はまた、植物再生方法に関する。本発明の方法は、
(1)植物細胞を、ファイトスルホカインを含む培養培地で培養し;そして、
(2)再分化培地で培養する、
ここにおいて、前記植物細胞は、植物生殖細胞、植物受精卵細胞又は植物受精卵由来細胞群である、
ことを含む。
本発明の方法はまた、
(1)植物細胞を本発明の植物細胞の培養方法によって培養し;
(2)再分化培地で培養する、
ことを含む、植物再生方法。
「植物細胞」、「培養培地」、「ファイトスルホカイン」等の用語の意義は、「1.植物細胞の培養方法」において記載した通りである。
再分化工程は特に限定されず、受精卵細胞から植物体を再生するための公知の方法を利用することが可能である。植物受精卵細胞が、再分化能を有する状態の細胞塊になった後に再分化培地において培養することが好ましい。培養細胞塊を、任意の培地、例えばMS培地からなる固形又は液体の再分化培地に移し、培養する。非限定的に、再分化工程は光を照射して行ってもよい。光は、例えば、20~180μmol/m・秒が好ましく、50~150μmol/m・秒がより好ましい。再分化培地には、例えばMS培地、B5培地、N6培地であり、アガロース、寒天やゲランガム、ゲルライト等固化材を使用した固体培地を含まない液体培地であってもよい。
再分化培地には、オーキシン、サイトカイニンを含む植物成長調節物質を添加してもよい。一態様において、再分化培地は、オーキシン類を含む。「オーキシン」、「サイトカイニン」の等の用語の意義は、「1.植物細胞の培養方法」において記載した通りである。
再分化培地はフィーダー細胞を含んでもよい。「フィーダー細胞」の用語の意義は、「1.植物細胞の培養方法」において記載した通りである。
再分化工程によって根、シュートなどが再分化した個体を、土が入ったポットなどに移植すれば、正常な植物個体として育成させることができる。。
上記植物再生法によって再生された植物(再生植物体)も提供される。再生された植物とは、受精卵細胞の培養、再分化により再生された植物、該植物から得られた細胞、組織等や、本発明の方法により得られた再分化当代である「T0世代」やT0世代の植物の自殖種子に由来するT1世代」などの後代植物、それらを片親にして交配した雑種植物やその後代植物を含む。
3.植物への物質の導入
植物、特に単子葉植物の遺伝子組換え技術は、1990年代にアグロバクテリウムを利用した方法がイネ、トウモロコシで開発されたことを契機に急速に利用が普及した。現在までに様々な形質転換方法が開発されてきている。しかしながら、それらの多くは、植物組織の脱分化と再分化を経由することが必要であるが故に、種や品種間で形質転換の効率が大きく異なることが知られている。種や品種によっては形質転換の効率が低く、再現性をもって形質転換植物を得ることができない。例えば、トウモロコシにおいて育種上非常に重要な系統であるB73では、再現性を持った形質転換法はいまだ開発されていない。
また、近年効率的にゲノム編集を行うことが可能になりつつあるが、これも作物種、品種ごとに組織培養の容易性が異なる点が、ゲノム編集効率に大きな影響を与えるため、実用化の妨げとなっている。
本発明の、植物細胞の培養方法、植物再生方法により、植物細胞を培養することによって得た細胞塊から、安定して効率よく再生植物体を得ることが可能になった。上記植物細胞の培養方法、再生方法の工程における、卵細胞、精細胞、受精卵細胞、分裂を開始した受精卵細胞、細胞塊のいずれかに物質を導入することにより、物質が導入された再生植物を安定して効率よく取得することができる。一態様において、受精卵細胞に形質転換物質を導入する。
一態様において、本発明の培養方法、植物再生方法における、植物受精卵細胞は、物質が導入された植物受精卵細胞である。
導入する物質は、非限定的に、核酸、タンパク質及びペプチドからなる群から選択される。核酸は特に限定されず、RNA、DNA、両者の結合体、混合物であってもよい。好ましくはベクターのような環状DNA、直鎖DNA、環状RNA又は直鎖RNAである。使用される形質転換方法に応じた任意の長さのものを使用可能である。例えば、PEG法を用いる場合、核酸の長さは、好ましくは100kb以下、より好ましくは、50kb以下である。さらに好ましくは30kb以下、特に好ましくは20kb以下、もっとも好ましくは10kb以下である。
ゲノム編集のためのCas9ヌクレアーゼ等ヌクレアーゼや、修飾酵素、抗体等のタンパク質も導入しうる。タンパク質の大きさは、非限定的に、好ましくは分子量300kDa以下、より好ましくは200kDa以下、さらに好ましくは150kDa以下である。
ペプチドは、決まった順番で様々なアミノ酸が、アミド結合(「ペプチド結合」ともいう)つながった分子の総称で、一般にタンパク質よりも長さが短い。好ましくは、100a.a.以下、より好ましくは、50a.a.以下である。
2種類以上の核酸、タンパク質及びペプチドを導入してもよい。核酸は、2種類以上のDNA又はRNAでも、DNAとRNAの組み合わせでもよい。核酸とタンパク質など異なる種の物質を導入してもよい。
物質を植物に導入する方法は、植物に所望の物質を導入することのできる公知の方法ならば特に限定されず、植物の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエチレングリコール法(PEG法)、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、マイクロインジェクション法、ウィスカー法などの物理化学的方法(DNAの直接導入法)あるいはアグロバクテリウム法などの生物学的方法(DNAの間接導入法)を好ましく用いることができる。
植物への物質の導入は、非限定的に、例えば、国際公開WO2017/171092(特許文献1)、国際公開WO2018/143480(特許文献3)に記載の方法によって行うことができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1 トウモロコシ受精卵の単離
本実施例では、トウモロコシ植物体より珠心切片を摘出し、珠心切片から受精卵を単離した。
温室内で育成したトウモロコシ(品種:B73)の交配適期の雌穂の柱頭に、トウモロコシの雄穂から採取した花粉を受粉させた。交配時間は午前10時30分前後に行った。交配後雌穂をパラフィン紙でできた袋で覆い、他の花粉が飛来するのを防止した。
交配後24時間経過した雌穂の胚珠から、胚嚢を含む珠心切片を摘出し、3.5cmプラスチックシャーレ中の1mLの10%マンニトール溶液(650mosmol/kg HO)に入れた。3.5cmプラスチックシャーレに、酵素混合液0.5mLを入れ、1.5mL酵素溶液とし、20-30分間室温で放置した。酵素混合液は1%セルラーゼ(Worthington社製)、0.3%マセロザイム(ヤクルト本社製)、0.05%ペクトリアーゼ(盛進製薬製)を含む浸透圧650mosmol/kgのマンニトール水溶液からなる。
単離は、2本のガラス針を用い行った。片方のガラス針で珠心切片を固定し動かないようにし、もう一方のガラス針で、受精卵細胞が存在すると推定される領域の組織を掻き出すことにより受精卵細胞を単離した。領域の推定は、受精が行われると、2個存在する助細胞のうち花粉管が侵入した方が変性し、暗褐色化するのでそれを目印とした。単離した受精卵細胞は、3.5cmプラスチックシャーレ中に準備した600mosmol/kgのマンニトール水溶液で2度洗浄後、培地に移動した(図1)。
実施例2 受精卵培養用の培地の作製及び受精卵細胞の培養
本実施例では、受精卵培養用の培地を作製し、当該培地を用いて受精卵細胞を培養した。
受精細胞用培地は、ZMS培地(Kranz、1993)を用いた。MS培地との変更点は、165mg/L NHNO、有機物として、1.0mg/L ニコチン酸、10.0mg/L チアミン・HO、1mg/L ピリドキシン・HCl、750mg/L グルタミン、150mg/L プロリン、100mg/L アスパラギン、100mg/L ミオイノシトールを添加した点である。植物ホルモンとして2mg/L 2,4-D、を加え、さらにグルコースを添加し浸透圧を600mosmol/kg HOに調整した。pHは5.7とした。
作成した受精細胞用培地を直径12mmのMillicell CMインサート(ミリポア社製)内に入れ、2mLの培地の入った3.5cmプラスチックシャーレの中に入れた。さらに、40~60μLのイネ浮遊細胞培養物(Line Oc、理研バイオリソースセンター製)をフィーダー細胞としてシャーレーに加えた。
洗浄・滅菌したミクロキャピラリーを用い、単離した受精卵細胞を新鮮な9%マンニトール液滴(600mosmol/kg HO)中に投入し、その後、受精細胞用培地の入ったCMインサート内のメンブレン上に移した。
受精卵細胞は、暗所に26℃で1日間静置したのち、20日間振盪培養した。
実施例3:トウモロコシ受精卵の受精卵の生育におけるファイトスルホカインの効果
本実施例では、受精卵の培養工程(細胞塊形成工程)における培養培地に添加したファイトスルホカイン(PSK)の受精卵の生育における効果を調べた。ファイトスルホカインは、(株)ペプチド研究所から、Phytosulfokineとして発売されているものを購入し用いた。このファイトスルホカインは、5アミノ酸残基からなるαタイプである。
実施例2に記載の方法で準備したシャーレーに0,1mMのファイトスルホカインを25から200μl添加し、培養を継続し、非添加区のものと比較した。培養3-4日目くらいから、図2に示したような成長過程を呈した。ファイトスルホカイン非添加区の受精卵においては、培養開始後、液胞のような丸い構造物が受精卵の周りに放出されることが知られていた(図2A)。この現象は、分裂を継続する受精卵に限って認められており、何らかの生物学的意義があるものと推察される。しかしながらファイトスルホカイン添加区、特に8.0nMの濃度条件下においては、その放出された構造物が図2Bのように、直線的に放出される傾向が強かった。ファイトスルホカイン非添加区ではこのような現象は観察されず、ファイトスルホカインが何らかの影響を受精卵に与えていると考えられた。さらに培養を継続すると、培養後2週間で受精卵が胚的な培養物が出現することが観察された(図3)。
Figure 2023022343000001
実施例4 植物細胞の培養開始から時間が経過してから添加したファイトスルホカインの効果
本実施例では、植物細胞の培養開始から時間が経過してから添加したファイトスルホカインの効果を調べた。
ファイトスルホカインを8.0nMの濃度で、約3週間経過後も、移植適期に達しないトウモロコシの受精卵由来細胞群に対して再度ファイトスルホカインを3.2nM投与し培養を継続した。その結果、再投与後、移植適期の状態まで生育を回復した細胞塊を多数確認した。それらの細胞塊を再分化培地に移植することにより、植物体が誘導できた。よって、ファイトスルホカインは培養初期のみならず、培養後1か月程度経過した受精卵由来細胞群に対しても受精卵由来細胞群の分裂を促進する効果を示すことが確認された(図4)
実施例5 ファイトスルホカイン形質転換フィーダー細胞の作製
本実施例では、Oryza sativaのファイトスルホカイン(PSK)遺伝子(Accession No. AB020505.1)を、アグロバクテリウム法にてイネ浮遊細胞培養物(Line Oc、理研バイオリソースセンター製)に導入することによって、ファイトスルホカイン形質転換フィーダー細胞を得た。
本発明により、単離された植物受精卵細胞から安定的に植物体を誘導することが可能になった。それに伴い、例えば、ゲノム編集や形質転換を生じさせるDNAやたんぱく質等の物質を導入した受精卵から植物体を作出することも可能になった。これにより、従来培養が困難等の理由で、ゲノム編集や形質転換が困難であったため有用形質を付与することできなかった植物体であっても、簡便に、安定して再現性良く形質転換体やゲノム編集個体を得ることが可能となる。

Claims (15)

  1. 植物細胞を、ファイトスルホカインを含む培養培地を用いて培養することを含む、ここにおいて、前記植物細胞は、植物生殖細胞、植物受精卵細胞又は植物受精卵由来細胞群である、植物細胞の培養方法。
  2. 前記植物細胞が、植物受精卵細胞又は植物受精卵由来細胞群である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記植物細胞が、植物受精卵細胞である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. ファイトスルホカインを含む培養培地を、植物細胞が再性分化能を有する時期まで、植物細胞を培養する工程の、いずれかの時期又はすべての時期において使用する、請求項1-3のいずれかに記載の方法。
  5. ファイトスルホカインを含む培養培地を、植物受精卵細胞の培養開始から、培養開始後21日目までの間のいずれかの時期において使用する、請求項1-4のいずれか1項に記載の方法。
  6. ファイトスルホカインの培養培地中の濃度が2.1nM以上である、請求項1-5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記植物細胞が、単子葉植物の細胞である、請求項1-6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記植物細胞が、イネ科植物の細胞である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記植物細胞が、トウモロコシである、請求項8に記載の方法。
  10. 植物細胞が、物質が導入された植物細胞である、請求項1-9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 培養培地が、フィーダー細胞を含む、請求項1-10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 植物細胞からの植物再生方法であって、
    (1)植物細胞を、ファイトスルホカインを含む培養培地で培養し;そして、
    (2)再分化培地で培養する、
    ここにおいて、前記植物細胞は、植物生殖細胞、植物受精卵細胞又は植物受精卵由来細胞群である、
    ことを含む、植物再生方法。
  13. 植物細胞からの植物再生方法であって、
    (1)植物細胞を請求項1-11に記載のいずれか1項に記載の方法によって培養し;
    (2)再分化培地で培養する、
    ことを含む、植物再生方法。
  14. 再分化培地が、フィーダー細胞を含む、請求項12又は13に記載の方法。
  15. 再分化培地が、オーキシン類を含む、請求項12-14のいずれか1項に記載の方法。
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