JP2023022140A - 炭素材料、還元剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】還元能力の高い還元剤を用いて二酸化炭素を高い反応効率で分解して、効率的に炭素材料を製造することが可能な炭素材料の製造方法により得られる炭素材料、および還元剤を提供する。【解決手段】結晶構造を維持したままマグネタイトを還元することで得られる、Fe3O4-δ(但し、δは1以上4未満)で表される酸素欠陥鉄酸化物、およびマグネタイトを完全に還元することで得られる、酸素完全欠陥鉄(δ=4)の少なくとも一方を含み、前記マグネタイトの平均粒子径が1μm以上であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

この発明は、二酸化炭素を還元して炭素を製造する炭素材料、および還元剤に関する。
例えば、製鉄プラント、火力発電所、セメント製造プラント、ゴミ焼却施設などでは、多量の二酸化炭素(CO)が排出されている。このため、地球温暖化防止の観点から、二酸化炭素を大気中に放出させずに回収することが重要になっている。
従来、二酸化炭素を分離回収する技術として、化学吸収法,物理吸収法,膜分離法などが知られている。また、回収した二酸化炭素を分解する技術として、半導体光触媒法、金属コロイド触媒,金属錯体,触媒等を用いた光化学的還元法、電気化学的還元法、化学的固定変換反応、例えば、塩基との反応,転移反応,脱水反応,付加反応などを用いる分解方法などが知られている。しかしながら、これらの二酸化炭素の分解方法は、何れも反応効率、コスト、消費エネルギーなどの面から実用的ではないという課題があった。
このため、例えば、特許文献1では、格子中に酸素欠陥部位である空孔のあるマグネタイト、即ち酸素欠陥鉄酸化物を用いて二酸化炭素を還元して炭素を生成し、炭素からメタンやメタノールを得る方法が開示されている。こうした特許文献1の発明では、酸素欠陥鉄酸化物によって二酸化炭素を分解し、酸化されて生じた鉄酸化物を水素で還元して再び酸素欠陥鉄酸化物に戻すことによって、連続的して効率的に二酸化炭素を分解可能なクローズドシステムを実現できるとされている。
特開平5-184912号公報
しかしながら、特許文献1で開示された反応条件では、酸素欠陥鉄酸化物の酸素欠陥度が小さく(酸素欠陥鉄酸化物をFe4-δで示した場合に、δは最大で0.16程度)、二酸化炭素の分解能力が低く、効率的に二酸化炭素を分解処理できないという課題があった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、還元能力の高い還元剤を用いて二酸化炭素を高い反応効率で分解して、効率的に炭素材料を製造することが可能な炭素材料の製造方法により得られる炭素材料、および還元剤を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明の還元剤は、結晶構造を維持したままマグネタイトを還元することで得られる、Fe4-δ(但し、δは1以上4未満)で表される酸素欠陥鉄酸化物、およびマグネタイトを完全に還元することで得られる、酸素完全欠陥鉄(δ=4)の少なくとも一方を含み、前記マグネタイトの平均粒子径が1μm以上であることを特徴とする。
また、本発明では、前記マグネタイトと水素とを反応させて前記マグネタイトの脱酸素反応により得られるものであってもよい。
また、本発明では、前記脱酸素反応は、反応温度を300℃以上、450℃以下の範囲にしてもよい。
また、本発明では、前記マグネタイトは、BET法による比表面積が0.1m/g以上、10m/g以下の範囲であってもよい。
また、本発明では、前記マグネタイトは、平均粒子径が1μm以上、1000μm以下の範囲であってもよい。
また、本発明では、前記マグネタイトは、かさ密度が0.3g/cm以上、3g/cm以下の範囲であってもよい。
また、本発明の炭素材料は、前記各項の還元剤による二酸化炭素の分解物である、平均粒子径が1μm以下のナノサイズであることを特徴とする。
なお、本出願において平均粒子径と言った場合、体積累積平均径(50%径)を意味している。
本発明によれば、還元能力の高い還元剤を用いて二酸化炭素を高い反応効率で分解して、効率的に炭素材料を製造することが可能な炭素材料の製造方法により得られる炭素材料、および還元剤を提供することが可能となる。
本発明の第1実施形態の炭素材料の製造方法を示すフローチャートである。 マグネタイトの1/4単位格子の結晶構造を示す模式図である。 実施例1の結果を示すグラフである。 実施例2の結果を示すグラフである。 実施例3の結果を示すグラフである。 実施例4の結果を示すグラフである。 実施例5の結果を示すグラフである。 実施例6の結果を示すグラフである。 還元剤を二酸化炭素に反応させた後の生成物のSEM写真である。 実施例7の酸素欠陥度δの測定結果を示すグラフである。 実施例7の酸素欠陥消費率の測定結果を示すグラフである。 実施例8の酸素欠陥度δの測定結果を示すグラフである。 実施例8の酸素欠陥消費率の測定結果を示すグラフである。 実施例9のナノ粒子マグネタイトを用いた結果を示すグラフである。 実施例9の微粒子マグネタイトを用いた結果を示すグラフである。 実施例9の粉末マグネタイトを用いた結果を示すグラフである。 実施例10の水素還元後の試料のXRD分析結果である。 実施例10の二酸化炭素分解後の試料のXRD分析結果である。 実施例11の水素還元後の試料のXRD分析結果である。 実施例11の二酸化炭素分解後の試料のXRD分析結果である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の炭素材料、および還元剤について説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
図1は、本発明の一実施形態に係る炭素材料の製造方法、二酸化炭素の分解方法を段階的に示したフローチャートである。
まず、本実施形態で用いる還元剤について説明する。
還元剤は、後述する炭素生成工程(二酸化炭素分解工程)S1において、二酸化炭素と反応させることで二酸化炭素を還元して炭素と酸素に分解する材料である。本実施形態で用いる還元剤は、Fe4-δ(但し、δは1以上4未満)で表されるマグネタイト(四酸化三鉄)の酸素欠陥鉄酸化物、またはマグネタイトを完全に還元することで得られる、酸素完全欠陥鉄(δ=4)を用いる。
図2は、マグネタイトの1/4単位格子の結晶構造を示す模式図である。
マグネタイトは、結晶学的に、スピネル型結晶格子構造を有し、酸素イオン(O2-)が立方最密充填配置にされ、その隙間(Asite、Bsite)に、+3価の鉄(Fe+3)、+2価の鉄(Fe2+)が2:1の割合で配置されている。マグネタイトは、一般式としてFeで表される。
本実施形態の還元剤は、このようなマグネタイトの結晶構造、即ちスピネル型結晶格子構造を保った状態で、図2に示す任意の位置の酸素イオンを離脱させることで得られる酸素欠陥鉄酸化物(1≦δ<4未満)、またはマグネタイトを完全に還元することで得られる、酸素完全欠陥鉄(δ=4)である。こうした還元剤は、後述する還元剤生成工程において生成される。
酸素欠陥鉄酸化物は、Fe4-δで表され、マグネタイトから離脱させた酸素イオンの離脱割合によって、δが1以上4未満の範囲にされる。また、マグネタイトから酸素イオンを全て離脱させた(即ち、δ=4)ものが、上述した酸素完全欠陥鉄となる。
δは酸素欠陥度とされ、マグネタイトの結晶構造、即ちスピネル型結晶格子構造を保った状態の酸素欠陥鉄酸化物のマグネタイトに対する酸素の欠陥割合である。こうした酸素欠陥度δは、還元剤生成工程S3においてマグネタイトが水素と反応する前の質量と、反応後の質量との差分を計測し、質量の減少量(差分)がマグネタイトから離脱した酸素量(この離脱した酸素の格子中の配置位置が原子空孔、即ち欠陥となる)と等しいことから、この質量の減少量から酸素欠陥度δ(δ=1~4)を算出することができる。
そして、マグネタイトから酸素イオンが離脱した部位は、スピネル型結晶格子構造を保った状態で原子空孔となり、離脱分だけカチオンが結晶格子内に多く閉じ込められ、格子間隔が拡がった状態になる。このような酸素離脱による原子空孔が、還元剤として二酸化炭素の脱酸素反応、即ち還元反応を生じさせる。
ここで、得られた還元剤の活性を維持するため、還元剤生成工程S3から炭素生成工程S1までのあいだ、還元剤への空気混入等による酸化を防止することが好ましい。例えば、還元炉と二酸化炭素分解炉の間を密閉状態として空気混入を防ぎつつ、還元剤を移送可能な構成とすれば、還元剤生成工程S3で得られた還元剤を酸化させることなく炭素生成工程S1に利用できる。
本実施形態の還元剤(酸素欠陥鉄酸化物、酸素完全欠陥鉄)は、平均粒子径が1μmよりも大きければよく、1μm以上20μm未満であることが好ましく、また、50μmを超え200μm未満であることも好ましい。
還元剤の平均粒子径が1μmよりも小さいものにした場合は、実験結果によれば、二酸化炭素を分解する際に一酸化炭素の生成割合が高くなり、炭素の回収率が低くなる。平均粒子径が1μm以上の還元剤を用いることで、高い炭素回収率が維持できると同時に、還元剤粒子の凝集性が低くなるため、反応器の壁面への固着現象などのトラブルが回避でき、ロータリーキルンなどの工業用反応装置への適用が可能となる。
更に、還元剤の平均粒子径を20μm未満にすることで、高い反応速度を維持することができる。また、還元剤の平均粒子径を50μmを超え200μm以下にする場合、粒子の飛散性が下がり、流動化性能が良くなるため、流動層などの工業用反応装置への適用が可能となる。この場合、ロータリーキルン式反応装置と比べて、固-気接触性や伝熱性が良く、設備費が低く、反応装置のサイズをコンパクトにすることができる。
本実施形態の炭素材料の製造方法は、炭素生成工程(二酸化炭素分解工程)S1と、炭素分離工程(炭素回収工程)S2と、還元剤生成工程S3と、を有し、還元剤を繰り返し利用するリサイクルシステムとなっている。また、本実施形態の二酸化炭素の分解方法は、炭素生成工程(二酸化炭素分解工程)S1を有する。
炭素生成工程(二酸化炭素分解工程)S1は、外部から導入された二酸化炭素(CO)と、上述した還元剤とを反応させて、二酸化炭素を炭素と酸素に分解するとともに、還元剤を酸化させてマグネタイトにする。
炭素生成工程S1は、例えば、気泡流動層やロータリーキルンなどの反応装置(二酸化炭素分解炉)を用いて、例えば、平均粒子径が1μm~500μm程度の粉末状の還元剤を攪拌しつつガス状の二酸化炭素に接触させることによって、二酸化炭素を分解(還元)する。反応装置としては、循環流動層を用いることもできるが、気泡流動層と比較して、反応器全体の高さが高い、設備費が高い、粒子再循環ループの設計と操作が複雑、粒子の滞留時間が短い(反応装置内での滞留時間は秒のオーダー)、使用できる還元剤の粒子径が限られる、粒子の摩耗を促進される、高いガス流速の維持や粉体の循環に必要なエネルギーコストが大きい、などのデメリットがある。
炭素生成工程S1の反応温度は、300℃以上、450℃以下、好ましくは350℃以上、450℃以下の範囲であればよい。また反応圧力は、0.01MPa以上、5MPa以下、好ましくは0.1MPa以上、1MPa以下の範囲であればよい。
このように、反応温度を300℃以上、450℃以下といった温度範囲にすることで、還元剤がスピネル型結晶格子構造を維持することができる。反応温度が例えば500℃以上といった高温であると、マグネタイトの繰り返し利用により、還元剤がスピネル型結晶格子構造を維持できなくなる懸念がある。かつ反応する時の消費エネルギーが増える。
反応圧力が0.01MPa以上であれば、実用プロセスとして必要な反応速度を得ることができ、更に、0.1MPa以上であれば、二酸化炭素濃度が低い実排ガスへの直接対応も可能となる。また、反応圧力が5MPa以下であれば、装置の製作コストを抑えることができる。
炭素生成工程S1では、こうした反応温度範囲に昇温させるために、二酸化炭素供給源である製鉄所、火力発電所、セメント工場、ゴミ焼却施設などの稼働に伴って発生した熱(排熱)、再生可能エネルギー由来の電気・蓄熱、及び高温の熱を取り出せる原子炉である高温ガス炉の熱エネルギーを熱源として有効利用することも好ましい。
炭素生成工程S1では、反応温度、反応圧力を高めることによって、二酸化炭素の分解(還元)速度が高まり、二酸化炭素の処理効率を高めることができる。一方、反応温度が高すぎると、還元剤のスピネル構造が破壊されるおそれがある。
炭素生成工程S1での二酸化炭素の分解には、以下の式(1)、(2)の2段階の反応が生じる。
CO→CO(中間生成物)+O2-・・・(1)
CO→C+O2-・・・(2)
そして、上述した式(1)、(2)で生じた酸素は、以下の式(3)、(4)で酸素欠陥鉄酸化物(式(3))や酸素完全欠陥鉄(式(4))の原子空孔に挿入される。
Fe4-δ+δO2-→Fe(但し、δ=1以上4未満)・・・(3)
3Fe+4O2-→Fe・・・(4)
なお、本実施形態の二酸化炭素の分解方法では、炭素生成工程(二酸化炭素分解工程)S1において、上記の式(1)だけを行うこともできる。得られた一酸化炭素(CO)は、水素添加によって、メタン、メタノールなどの炭化水素や各種樹脂などの有用な化成品を得るための原料として用いることができる。
炭素生成工程S1での上述した反応で、すべての二酸化炭素を式(2)まで反応させた場合には、最終的な生成物としてガスの発生を伴わない。即ち、二酸化炭素中の酸素は、酸素欠陥鉄酸化物、または酸素完全欠陥鉄に全て取り込まれると考えられる。これを考慮して二酸化炭素と酸素欠陥鉄酸化物の反応は、式(5)、二酸化炭素と酸素完全欠陥鉄の反応は、式(6)で表される。
2Fe4-δ+δCO→2Fe+δC(但し、δ=1以上4未満)・・(5)
3Fe+2CO→Fe+2C・・(6)
炭素生成工程S1で還元剤として用いる酸素欠陥鉄酸化物や酸素完全欠陥鉄が、二酸化炭素を炭素まで分解できるのは、これらの還元剤が非平衡状態で形成される準安定な結晶構造であるスピネル型結晶格子構造を有しており、室温においても酸素と徐々に反応し、酸素イオンを取り組み、より安定なFeに変化しようとするためである。即ち、格子中に原子空孔を有する不安定なスピネル型結晶格子構造がより安定な原子空孔のないスピネル型結晶格子構造に変化しようとすることから生じるものと考えられる。
こうした酸素欠陥鉄酸化物や酸素完全欠陥鉄の安定化(マグネタイト化)の過程で、酸素イオンが結晶中に取り込まれると結晶は電気的に中性を維持しようとするために、電子を結晶表面から放出しようとする。酸素欠陥鉄酸化物や酸素完全欠陥鉄では+2価のFe(Fe2+)が電子を放出し得る原子として存在するが、酸素欠陥鉄酸化物や酸素完全欠陥鉄の結晶の不安定性のために、通常と異なる還元ポテンシャルを生じているものと考えられる。
炭素生成工程S1では、還元剤として用いる酸素欠陥鉄酸化物や酸素完全欠陥鉄による二酸化炭素の分解能力を最大限にするため、反応環境における酸素濃度を4体積%以下に保つようにすることが好ましい。炭素生成工程S1における反応環境で酸素濃度が4体積%よりも高いと、二酸化炭素を構成する酸素が還元剤(酸素欠陥鉄酸化物、または酸素完全欠陥鉄)に取り込まれる前に、この還元剤の酸素欠陥部位に、反応雰囲気中の酸素が取り込まれて、還元剤の二酸化炭素分解能力が低下する懸念がある。
炭素生成工程S1で二酸化炭素の分解によって生じた炭素は、粒子径が1μm以下のナノサイズの粒子状の炭素材料として生成される。炭素生成工程S1において、同一温度条件では、上述した式(1)の反応速度は、式(2)の反応速度よりも遅いが、式(1)の反応速度を高めることによって式(2)の反応が迅速に進行するようになり、微細なナノサイズの炭素粒子を生成できる。式(1)と式(2)の反応速度は、酸素欠陥度δを大きくすることと、反応温度、反応圧力を高くすることにより、高めることができる。
こうしたナノサイズの粒子状炭素は、酸素欠陥鉄酸化物や酸素完全欠陥鉄が酸化されて生じたマグネタイトの表面に付着したり、あるいは表面を覆うように生成される。
一方、本実施形態では、炭素生成工程S1で二酸化炭素の分解によって、還元剤はマグネタイト(Fe)になり、ヘマタイト(Fe)が生じることは無い。
炭素分離工程(炭素回収工程)S2は、炭素生成工程S1で生成された、表面に炭素が生成、付着したマグネタイト、即ち酸化された還元剤を、炭素とマグネタイトに分離する。
本実施形態では、炭素は、マグネタイトの表面に比較的強固に付着した状態で生じる。このため、炭素の分離には、例えば、物理的な衝撃力、せん断力、摩擦により炭素をマグネタイトから擦り落とした後、比重や粒子径により分離を行う方法、マグネタイトの強磁性を利用した磁力による分離方法、例えば物理的分離や、強酸や溶剤などを用いてマグネタイトだけ、もしくは炭素だけを選択的に溶解して炭素を分離する方法、例えば化学的分離などが挙げられる。
このうち、物理的分離では、分離したマグネタイトを後述する還元剤生成工程S3で、還元剤生成原料として用いることができる。
一方、化学的分離では、例えば、塩酸を用いてマグネタイトを溶解し、塩酸に溶解しない炭素を濾過等の固液分離によって回収すれば、容易に炭素を得ることができる。この場合、マグネタイトを還元剤生成工程S3で直接、還元剤生成原料として用いることはできず、生成した塩化鉄の加水分解反応によってマグネタイトに戻る工程が必要となる。
以上の工程で得られる炭素(炭素材料)は、粒子径が1μm以下のナノサイズの粒子状炭素材料であり、粒子径が1μmを超えるものは殆ど生成しない。こうしたナノサイズの炭素粉末は、純度が例えば99%以上の高純度の炭素であり、カーボンブラック、活性炭、グラファイトとして、各種触媒、電極材料、トナー、着色剤などの機能性炭素材料に直接用いることができる。
還元剤生成工程S3は、炭素分離工程S2で分離されたマグネタイトや、外部から導入されたマグネタイトに含まれる酸素イオンを離脱(脱酸素反応)させて、マグネタイトの結晶構造、即ちスピネル型結晶格子構造を保った状態で、マグネタイトの酸素原子の任意の位置が空孔となった酸素欠陥鉄酸化物、または酸素完全欠陥鉄を生成する。
還元剤生成工程S3において、外部からマグネタイトを導入する場合のマグネタイトの原料(マグネタイト材)としては、純粋なマグネタイトに限らず、他の物質を含むものでもよく、例えば、安価で容易に入手できる砂鉄を用いることもできる。
また、マグネタイト材としては、ヘマタイト(赤鉄鉱:Fe)、鉄酸化方式の使用済みカイロ(主成分は水酸化鉄)などを用いることもできる。
本実施形態のマグネタイトは、BET法による比表面積が0.1m/g以上、10m/g以下の範囲、好ましくは0.3m/g以上、8m/g以下の範囲、より好ましくは1m/g以上、6m/g以下の範囲である。マグネタイトの比表面積が0.1m/g以上であれば、固気反応に必要な固体と気体の接触面積を確保でき、実用プロセスとして必要な反応速度が得られる。また、マグネタイトの比表面積が10m/g以下であれば、速い反応速度を確保できると共に、二酸化炭素を分解する時の一酸化炭素の生成割合が低くなり、炭素の回収率を向上させることができる。
なお、本実施形態の還元剤生成工程S3によってマグネタイトを還元して得られる還元剤は、還元前のマグネタイトよりも比表面積が大きい。還元剤の比表面積は、0.1m/g以上、30m/g以下、好ましくは0.3m/g以上、25m/g以下、より好ましくは1m/g以上、18m/g以下である。また、還元剤の比表面積は、マグネタイトの比表面積の、1倍以上、3倍以下、好ましくは1倍以上、2.5倍以下、より好ましくは1倍以上、2.0倍以下である。
また、本実施形態のマグネタイトは、平均粒子径が1μm以上、1000μm以下の範囲、好ましくは1μm以上、20μm未満の範囲、または50μm超え、200μm以下の範囲である。マグネタイトの平均粒子径が1μm以上であれば、二酸化炭素を分解する時の一酸化炭素の生成割合が低くなり、炭素の回収率を向上させることができる。更に、平均粒子径が1μmよりも大きいものにすることで、粒子の凝集性、飛散性が低くなり、流動性、ハンドリング性が良くなるため、反応器壁面への固着現象やクリンカーの形成などのトラブルが回避でき、ロータリーキルンや流動層などの工業用反応装置への適用が可能となる。また、マグネタイトの平均粒子径が1000μm以下であれば、固気反応に必要な固体と気体の接触面積を確保でき、実用プロセスとして必要な反応速度を得ることができる。
また、本実施形態のマグネタイトは、かさ密度が0.3g/cm以上、3g/cm以下の範囲、好ましくは0.4g/cm以上、2g/cm以下の範囲、より好ましくは0.5g/cm以上、1g/cm以下の範囲である。マグネタイトのかさ密度が0.3g/cm以上であれば、粒子の凝集性、飛散性が低くなり、流動性が良くなるため、ロータリーキルンや流動層などの工業用反応装置への適用が可能となる。また、マグネタイトのかさ密度が3g/cm以下であれば、粒子間、粒子内の空隙率が確保でき、反応気体が粒子内へ拡散し易くなり、実用プロセスとして必要な反応速度が得られる。
還元剤生成工程S3は、流動層やロータリーキルンなどの反応装置(還元炉)を用いて、粉末状のマグネタイト材を攪拌しつつ水素ガスに接触させることによって、マグネタイト材中のマグネタイトの酸素原子が離脱して水素と反応して水(水蒸気)が生じるとともに、酸素原子が離脱したマグネタイトは、マグネタイトの結晶構造、即ちスピネル型結晶格子構造を保った状態で、離脱した酸素原子の位置が空孔となった酸素欠陥鉄酸化物、または酸素完全欠陥鉄を生成する。
還元剤生成工程S3において、マグネタイト材がヘマタイトを含む場合、ヘマタイトは還元されてマグネタイトとなり、さらに還元されて酸素欠陥鉄酸化物または酸素完全欠陥鉄となる。
還元剤生成工程S3の反応温度は、300℃以上、450℃以下、好ましくは350℃以上、400℃以下の範囲であればよい。反応温度が300℃以上であれば、実用プロセスとして必要な反応速度が得られる。また、反応温度が450℃以下であれば、反応する時に還元剤の結晶構造が壊れることなく、高い反応性が維持でき、還元剤が繰り返し使用することができる。かつ反応する時の消費エネルギーを抑えることができる。
また、還元剤生成工程S3の反応圧力は、0.1MPa以上、5MPa以下、好ましくは0.1MPa以上、1MPa以下の範囲であればよい。反応圧力が0.1MPa以上であれば、実用プロセスとして必要な反応速度を得ることができ、反応装置のサイズをコンパクトにすることができる。また、反応圧力が5MPa以下であれば、装置の製作コストを抑えることができる。
還元剤生成工程S3で用いる水素ガスの濃度は、5体積%以上、100体積%以下の範囲、好ましくは10体積%以上、90体積%以下の範囲であればよい。水素ガスの濃度が例えば90体積%程度であっても、実質的に濃度100体積%の水素ガスと還元能力に大きな差は無い。よって、濃度が100体積%の水素ガスよりもコストが低い濃度が90体積%程度の水素ガスを用いれば、マグネタイトから低コストに還元剤を生成することができる。
還元剤生成工程S3でのマグネタイトの水素による還元では、以下のように還元剤が生成される。
Fe+δH→Fe4-δ+δHO(但し、δ=1以上4未満)・・・(7)
Fe+4H→3Fe+4HO・・・(8)
還元剤生成工程S3で得られた酸素欠陥鉄酸化物は、Fe4-δで表され、マグネタイトから離脱させた酸素イオンの離脱割合によって、δが1以上4未満の範囲にされる。また、マグネタイトから酸素イオンを全て離脱させた(即ち、δ=4)ものが、酸素完全欠陥鉄となる。
そして、マグネタイトから酸素イオンが離脱した部位は、マグネタイトの結晶構造、即ちスピネル型結晶格子構造を保った状態で原子空孔となり、離脱分だけカチオンが結晶格子内に多く閉じ込められ、格子間隔が拡がった状態になる。このような酸素離脱による原子空孔が、炭素生成工程S1において還元剤として二酸化炭素の脱酸素反応を生じさせる。
以上のような本実施形態の炭素材料の製造方法によれば、マグネタイトの結晶構造が維持され、かつ酸素原子の離脱による原子空孔の多い酸素欠陥鉄酸化物(Fe4-δ(但し、δ=1以上4未満))、またはマグネタイトを完全に還元することで得られる、酸素完全欠陥鉄(δ=4)を還元剤として用いて、二酸化炭素を還元することにより、低コストで効率的にナノサイズの炭素粒子を製造することができる。
また、炭素分離工程S2で炭素を分離した後のマグネタイト材(酸化された還元剤)を還元剤生成工程S3に供給して、水素を用いて再び還元剤にすることにより、二酸化炭素を分解して炭素材料を製造するクローズドシステムを構築することができ、温暖化ガスである二酸化炭素の排出削減に寄与することができる。
また、炭素生成工程(二酸化炭素分解工程)S1、炭素分離工程S2、還元剤生成工程S3において、例えば、製鉄所、火力発電所、セメント工場、ゴミ焼却施設などの稼働に伴って発生した熱(排熱)を、反応時の熱源として有効利用することで、排熱の大気中への放出量を抑制でき、温暖化防止に寄与する。また、再生可能エネルギー由来の電気・蓄熱、及び高温の熱を取り出せる原子炉である高温ガス炉の熱エネルギーを有効利用することで、COの発生を抑制でき、カーボンニュートラルや脱炭素社会の実現に寄与する。
以上、本発明の実施形態を説明したが、こうした実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
例えば、上述した実施形態では、マグネタイトの一般的な組成をFeとしているが、本実施形態で用いるマグネタイト材は、他の物質、例えば、チタン(Ti)などが含まれているものであってもよい。こうした他の物質、例えば、チタンは、触媒として二酸化炭素の還元に寄与している可能性がある。
以下、本発明の効果を検証した。実施例で使用した各マグネタイト材の性状を纏めて表1に示す。
Figure 2023022140000002
(実施例1)
還元剤生成工程における反応温度と酸素欠陥度δとの関係を調べる実験を行った。
反応装置として固定床反応器を用い、1gのマグネタイト(平均粒子径800nm程度、BET法による比表面積10.2m/g、かさ密度0.7g/cm)と水素とを反応させて、マグネタイトの結晶構造を維持したままマグネタイトを還元することで得られる還元剤を生成した。
なお、マグネタイトの粒子径分布や平均粒子径は粒子径分布測定装置(MT3300EXII:マイクロトラック・ベル株式会社製)によって、また、結晶構造はX線回折装置(D2 PHASER:ブルカー株式会社製)によって、それぞれ確認することができる。
反応時間1時間、水素流量1.0L/min、水素濃度100体積%として、反応温度を280℃,300℃,320℃,350℃,360℃,370℃にそれぞれ設定し、マグネタイトを水素で還元(脱酸素反応)させることで、それぞれの反応温度での試料(還元剤)を得た。そして、それぞれの反応温度で得られた還元剤(酸素欠陥鉄酸化物、酸素完全欠陥鉄)について、反応前後の質量の減少量がマグネタイトから離脱した酸素量であるとみなして、還元剤の酸素欠陥度δを算出した。
実施例1の結果を図3にグラフで示す。なお、図3中の酸素欠陥度δが4を超えている点は測定誤差であり、実質的にδ=4である。この点は、以下の実施例でも同様である。
図3に示す結果によれば、上述した反応条件で反応温度を320℃以上、360℃以下の範囲にすることによって、酸素欠陥度δを最大に高めることができ、δ=4、即ち、マグネタイトを完全に還元することで得られる、酸素完全欠陥鉄(δ=4)が得られることが確認できた。
(実施例2)
還元剤生成工程における反応時間と酸素欠陥度δとの関係を調べる実験を行った。
反応温度280℃,310℃,330℃,350℃、反応時間30分,60分,180分に設定し、マグネタイトを水素で還元させることで、それぞれの反応温度と反応時間での還元剤を得た。そして、還元剤の酸素欠陥度δを算出した。反応温度と反応時間以外の条件は実施例1と同様である。
実施例2の結果を図4にグラフで示す。
図4に示す結果によれば、上述した反応条件で反応温度が330℃以上であれば、反応時間(還元時間)が60分を超えるようにすれば、酸素欠陥度δを最大に高めることができ、δ=4、即ち、マグネタイトを完全に還元することで得られる、酸素完全欠陥鉄が得られることが確認できた。また、反応温度が330℃以上、350℃以下の範囲であれば、反応時間が30分程度であっても、δ=2~2.8のマグネタイトの結晶構造を維持した酸素欠陥鉄酸化物が得られることが確認できた。
(実施例3)
還元剤生成工程における水素流量と酸素欠陥度δとの関係を調べる実験を行った。
反応温度330℃として、水素流量を0.1L/min,0.25L/min,0.5L/min,0.75L/min,1.0L/minにそれぞれ設定し、マグネタイトを水素で還元させることで、それぞれの水素流量での試料を得た。そして、還元剤の酸素欠陥度δを算出した。反応温度と水素流量以外の条件は実施例1と同様である。
実施例3の結果を図5にグラフで示す。なお、引用文献1に記載された酸素欠陥度δも参考として記載する。
図5に示す結果によれば、上述した反応条件で水素流量が0.75L/min以上であれば、酸素欠陥度δを最大に高めることができ、δ=4、即ち、酸素完全欠陥鉄が得られることが確認できた。また、水素流量が0.5L/min程度であっても、δ=3.5を超える酸素欠陥鉄酸化物が得られることが確認できた。
(実施例4)
還元剤生成工程における水素濃度と酸素欠陥度δとの関係を調べる実験を行った。
反応温度330℃として、水素濃度を50体積%,75体積%,90体積%,100体積%にそれぞれ設定し、マグネタイトを水素で還元させることで、それぞれの水素濃度での試料を得た。そして、それぞれ得られた還元剤から、還元剤の酸素欠陥度δを算出した。反応温度と水素濃度以外の条件は実施例1と同様である。
実施例4の結果を図6にグラフで示す。
図6に示す結果によれば、上述した反応条件で水素濃度が90体積%以上であれば、酸素欠陥度δを最大に高めることができ、δ=4、即ち、酸素完全欠陥鉄が得られることが確認できた。水素ガスの濃度が90体積%程度であっても、実質的に濃度100体積%の水素ガスと還元能力に差は殆ど無く、濃度が100体積%の水素ガスよりもコストが低い濃度が90体積%程度の水素ガスを用いれば、低コストに酸素欠陥度δを最大に高めた還元剤を生成することができる。また、水素ガスの濃度が75体積%程度であっても、δ=3.5を超える酸素欠陥鉄酸化物が得られることが確認できた。
(実施例5)
炭素生成工程における反応温度と酸素欠陥消費率との関係を調べる実験を行った。
酸素欠陥消費率は、一定量の還元剤に二酸化炭素を反応させた際に、還元剤のスピネル型結晶格子構造の格子中にある原子空孔に、二酸化炭素中の酸素イオンが取り込まれた割合であり、0~100%の範囲で、この数値が100%に近いほど、その還元剤の二酸化炭素分解(還元)能力が高いことを示している。
反応装置として固定床反応器を用い、酸素欠陥度δがおおよそ4である還元剤(酸素完全欠陥鉄を用いて、反応温度315℃~390℃の範囲で二酸化炭素と反応させて炭素を生成させた。そして、反応前の還元剤の質量、酸素欠陥度δと、反応後の酸化された還元剤(マグネタイト)の質量、酸素欠陥度δとの差分に基づいて、酸素欠陥消費率を算出した。
実施例5の結果を図7にグラフで示す。
図7に示す結果によれば、上述した反応条件で反応温度が360℃以上であれば、酸素欠陥消費率は40%以上となる。特に、反応温度が370℃以上では、酸素欠陥消費率は50%以上となり、還元剤のスピネル型結晶格子構造の格子中にある原子空孔の総数の50%以上に、二酸化炭素中の酸素イオンを取り込むことができる。よって、炭素生成工程における反応温度を360℃以上にすることで、還元剤中を効率的に利用して二酸化炭素を分解して炭素を生成できることが確認された。
(実施例6)
マグネタイト材の種類と、炭素生成工程における酸素欠陥消費率および還元剤生成工程における酸素欠陥度δとの関係を調べる実験を行った。
マグネタイト材として、平均粒子径が800nm程度のナノ粒子マグネタイト1g、0.5g、平均粒子径が1.1μm程度の微粒子マグネタイト0.5g、日本産の砂鉄1g、ニュージーランド産の砂鉄1gを用意した。そして、それぞれのマグネタイト材を用いて、反応装置として固定床反応器を用い、反応温度350℃、反応時間1時間、水素流量1.0L/min、水素濃度100体積%の条件でそれぞれのマグネタイト材を還元して還元剤を生成し、これら還元剤の酸素欠陥度δを算出した。
また、微粒子マグネタイトを還元した還元剤について、比表面積を測定したところ、9.36m/gであった。還元前の5.28m/gから、比表面積が約1.77倍に増大していることがわかる。
次に、それぞれの還元剤を用いて、反応装置として固定床反応器を用い、反応温度360℃で二酸化炭素を反応させて、反応前の還元剤の質量、酸素欠陥度δと、反応後の酸化された還元剤の質量、酸素欠陥度δとの差分に基づいて、酸素欠陥消費率を算出した。
実施例6の結果を図8にグラフで示す。また、微粒子マグネタイトを水素還元して生成した還元剤(δ=4)を二酸化炭素と反応させた後の生成物のSEM写真を図9に示す。
図8に示す結果によれば、ナノ粒子マグネタイトおよび微粒子マグネタイトを用いて、水素による還元で生成した還元剤の殆どは、酸素欠陥度δが4となり、マグネタイト中の酸素がほぼ全て離脱して原子空孔となった、酸素完全欠陥鉄が得られることが確認できた。一方、ニュージーランド産砂鉄は、水素還元後の酸素欠陥度δが1未満で、還元剤としての二酸化炭素分解(還元)能力は低いことが分かった。
また、これら還元剤の酸素欠陥消費率は、微粒子マグネタイトを用いて作成した還元剤が60%~80%程度になり、二酸化炭素分解能力が特に優れていることが確認できた。これらの結果から、マグネタイト材として、平均粒子径が1.1μm程度の微粒子マグネタイトを用いることが特に好ましいことが分かった。
また、図9に示すSEM写真は、不定形の生成物の白い部分が酸化された還元剤、黒い部分がナノサイズの炭素粒子を示しており、還元剤を二酸化炭素に反応させることによって、炭素が還元剤の表面に付着するように生成されることが確認できる。
(実施例7)
マグネタイト材の粒子サイズと、還元剤生成工程における酸素欠陥度δ、炭素生成工程における酸素欠陥消費率を調べる実験を行った。
マグネタイト材として、平均粒子径が800nm程度のナノ粒子マグネタイト、平均粒子径が1.1μm程度の微粒子マグネタイト、平均粒子径が40μm程度の粉末マグネタイト、および平均粒子径が70μm程度の大粒子径粉末マグネタイトを用意した。そして、それぞれのマグネタイト材を反応温度330℃の条件で還元して還元剤を生成し、これら還元剤の酸素欠陥度δを算出した。なお、反応温度以外の条件は実施例6と同様である。
次に、それぞれの還元剤を用いて、反応温度380℃で二酸化炭素を反応させ、酸素欠陥消費率を算出した。なお、反応温度以外の条件は実施例6と同様である。
実施例7の酸素欠陥度δの測定結果を図10に、また、酸素欠陥消費率の測定結果を図11に、それぞれ示す。
図10に示す結果によれば、水素による還元で得られる還元剤は、原料のマグネタイトの粒子サイズによる差異は殆どない。一方で図11に示す結果によれば、これら還元剤を二酸化炭素に反応させた後の酸素欠陥消費率は、微粒子マグネタイトを原料にした還元剤が特に優れている。よって、微粒子マグネタイトを原料にして還元剤を生成することが好ましいことが分かった。
(実施例8)
還元剤の原料と、還元剤生成工程における酸素欠陥度δおよび炭素生成工程における酸素欠陥消費率の関係を調べる実験を行った。
マグネタイト材として、平均粒子径が800nm程度のナノ粒子マグネタイト、平均粒子径が1μm程度の微粒子マグネタイト、平均粒子径が40μm程度の粉末マグネタイト、日本産の砂鉄、ニュージーランド産の砂鉄、銅スラグ、鉄粉を用意した。そして、実施例6と同様の条件で、これら還元剤の酸素欠陥度δを算出した。なお、鉄粉は完全に還元された状態であるため、便宜的にδ=4とした。
次に、それぞれの還元剤を用いて、実施例6と同様の条件で二酸化炭素を反応させて、酸素欠陥消費率を算出した。
実施例8の酸素欠陥度δの測定結果を図12に、また、酸素欠陥消費率の測定結果を図13に、それぞれ示す。
図12に示す結果によれば、水素による還元で得られる還元剤は、マグネタイトを原料とするものはいずれも3.5以上で優れている。一方、銅スラグの酸素欠陥度δはほぼ0である。
一方で図13に示す結果によれば、これら還元剤を二酸化炭素に反応させた後の酸素欠陥消費率は、微粒子マグネタイトを原料にした還元剤が特に優れている。また、銅スラグや鉄粉は酸素欠陥消費率がほぼ0%であり、二酸化炭素の分解(還元)能力が無いことが分かった。なお、国産砂鉄とNZ産砂鉄との酸素欠陥消費率の差は、国産砂鉄に含まれている微量のチタンによる触媒効果が原因と考えられる。
(実施例9)
マグネタイト材の粒子サイズ別に、還元剤生成工程と炭素生成工程とを繰り返し行った場合の還元剤の劣化の有無、炭素の生成量を調べる実験を行った。
実施例7と同様のマグネタイト材と反応条件で還元剤を生成して質量を測定した(還元剤生成工程)。
次に、それぞれの還元剤を用いて、反応温度380℃で二酸化炭素を分解させて、反応後の還元剤+生成物(炭素)の質量を測定した。なお、炭素生成工程後に炭素分離工程は行わず、生成した炭素はそのままの状態にした。こうしたそれぞれの還元剤での還元剤生成工程と炭素生成工程とを3回繰り返し、各工程で試料の質量を測定した。
実施例9において、ナノ粒子マグネタイトを用いた結果を図14に、微粒子マグネタイトを用いた結果を図15に、粉末マグネタイトを用いた結果を図16に、それぞれ示す。
図14~図16に示す結果によれば、いずれの粒子サイズのマグネタイトを還元剤の原料として用いた場合でも、還元剤生成工程と炭素生成工程とを繰り返し行うごとに燃焼-赤外線吸収法により測定した炭素の質量がほぼ線形的に増加しており、還元剤の劣化がなく、還元剤を繰り返し利用して複数回の還元剤生成工程と炭素生成工程とを行うことができることが確認された。また、特に微粒子マグネタイトや粉末マグネタイトを還元剤の原料として用いた場合、ナノ粒子マグネタイトを用いた場合と比較して炭素質量の増加量が大きくなっており、増加分は炭素の蓄積によるものであることを考慮すると、還元剤の原料として微粒子マグネタイトや粉末マグネタイトを用いることが好ましいことが確認された。
一方、還元剤の原料としてナノ粒子マグネタイトを用いた場合、炭素生成工程後に還元剤生成工程を行った際に炭素の質量がほぼ半減しており、生成した炭素がガス化して系外に除去されたと考えられる。一方、微粒子マグネタイトや粉末マグネタイトでは、こうした生成した炭素の反応によるロスが見られない。こうしたことから、ナノ粒子マグネタイトでは反応活性が高く表面積も大きいために、生成、付着した炭素が還元剤中の酸素、もしくは還元剤生成工程での水素と反応しやすく、繰り返し使用で炭素のロスが生じやすいことが分かった。こうした炭素のガス化によるロスといった観点からも、還元剤の原料として微粒子マグネタイトや粉末マグネタイトを用いることが好ましいことが確認された。
(実施例10)
マグネタイト材としてヘマタイト(Fe)を用いた場合の二酸化炭素の分解性能を調べる実験を行った。
試料として、粉末状のα-Fe(平均粒子径1μm、純度99.9質量%(高純度化学研究所製))を用い、前処理として、アルゴンガスフロー状態にて110℃まで昇温した後、10分間保持したのち、吸気して真空状態にして更に10分間保持した。
こうして得られた前処理後の試料を用いて、反応装置として固定床反応器を用い、反応温度330℃、反応時間1時間、水素流量1.0L/min、水素濃度100体積%の条件で試料を還元して還元剤を生成して質量を測定した。
前処理前と前処理後、および水素還元後の試料の質量変化を表2に示す。なお、参考としてマグネタイトを原料に用いた場合の質量変化を記載する。
また、水素還元後の試料のXRD分析結果を図17、二酸化炭素分解後の試料のXRD分析結果を図18に示す。
Figure 2023022140000003
表2に示す結果によれば、水素還元による重量変化から、ヘマタイトは酸素完全欠陥鉄の状態まで完全に還元されていると考えられる。
また、XRD分析結果によれば、生成物は殆どFeであり、こうしたXRD分析結果からも、ヘマタイトは酸素完全欠陥鉄の状態まで完全に還元されていると考えられる。
次に、得られたヘマタイト由来の還元剤を用いて、反応温度370℃で二酸化炭素を圧力変化が無くなるまで分解させて、反応器内の圧力、温度を用いて、理想気体の状態方程式による気相部の物質量の変化を計算し、燃焼-赤外線吸収法による生成物(炭素)の質量を測定した(炭素生成工程)。
二酸化炭素の分解後の気相部物質量の変化、生成物(炭素)の質量、還元剤中の鉄1モル当たりの気相部物質量の変化を表3に示す。なお、参考としてマグネタイトを原料に用いた場合も記載する。
Figure 2023022140000004
表3に示す結果によれば、ヘマタイトを水素還元して得られた還元剤を用いて、二酸化炭素を分解できることが確認された。なお、二酸化炭素を分解した後のヘマタイト由来の還元剤の色調が黒色であったことと、XRDの分析結果から、ヘマタイト由来の還元剤であっても、二酸化炭素を分解後はマグネタイトまでしか酸化されない(ヘマタイトに戻らない)と考えられる。
(実施例11)
還元剤を生成するための原料として、使用済みカイロから取り出された水酸化鉄を含む粉末を用いて、二酸化炭素の分解性能を調べる実験を行った。
使用済みカイロとして、アイリスオーヤマ株式会社製の「ぽかぽか家族 レギュラー 10個入り(PKN-10R)」を用い、前処理として、アルゴンガスフロー状態にて110℃まで昇温した後、10分間保持したのち、吸気して真空状態にして更に10分間保持した。
こうして得られた前処理後の使用済みカイロ(粉末状)を、反応装置として固定床反応器を用い、反応温度330℃、反応時間1時間、水素流量1.0L/min、水素濃度100体積%の条件で還元して還元剤を生成して質量を測定した。
前処理前と前処理後、および水素還元前と水素還元後の試料の質量変化を表4に示す。なお、参考としてヘマタイトを原料に用いた場合の質量変化を記載する。
また、水素還元後の試料のXRD分析結果を図19、二酸化炭素分解後の試料のXRD分析結果を図20に示す。
Figure 2023022140000005
水素還元後の使用済みカイロ由来の還元剤の色調がマグネタイトやヘマタイト由来の還元剤と同じく、黒色であったことから、使用済みカイロは、酸素完全欠陥鉄の状態まで還元されていると考えられる。
また、XRD分析結果によれば、生成物は殆どFeであり、こうしたXRD分析結果からも、使用済みカイロ中の水酸化鉄は酸素完全欠陥鉄の状態まで還元されていると考えられる。
次に、得られた使用済みカイロ由来の還元剤を用いて、反応温度370℃で二酸化炭素を圧力変化が無くなるまで分解させて、質量を測定した。二酸化炭素分解前と二酸化炭素分解後の試料の質量変化を上記表4に示す。
表4に示す結果によれば、使用済みカイロを水素還元して得られた還元剤を用いて、二酸化炭素を分解できることが確認された。なお、二酸化炭素を分解した後の還元剤の色調が黒色であったことと、XRDの分析結果から、使用済みカイロ由来の還元剤であっても、二酸化炭素を分解後はマグネタイトまでしか酸化されない(水酸化鉄に戻らない)と考えられる。
本発明は、製鉄プラント、火力発電所、セメント製造プラント、ゴミ焼却施設など、二酸化炭素を多量に排出する各種プラントに適用して、二酸化炭素の排出削減と、これに付随してナノサイズの粒子状炭素などの高付加価値の炭素材料の製造を行うことができる。したがって、産業上の利用可能性を有する。

Claims (7)

  1. 結晶構造を維持したままマグネタイトを還元することで得られる、Fe4-δ(但し、δは1以上4未満)で表される酸素欠陥鉄酸化物、およびマグネタイトを完全に還元することで得られる、酸素完全欠陥鉄(δ=4)の少なくとも一方を含み、
    前記マグネタイトの平均粒子径が1μm以上であることを特徴とする還元剤。
  2. 前記マグネタイトと水素とを反応させて前記マグネタイトの脱酸素反応により得られることを特徴とする請求項1に記載の還元剤。
  3. 前記脱酸素反応は、反応温度を300℃以上、450℃以下の範囲にすることを特徴とする請求項2に記載の還元剤。
  4. 前記マグネタイトは、BET法による比表面積が0.1m/g以上、10m/g以下の範囲であることを特徴とする請求項1から3いずれか一項に記載の還元剤。
  5. 前記マグネタイトは、平均粒子径が1000μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の還元剤。
  6. 前記マグネタイトは、かさ密度が0.3g/cm以上、3g/cm以下の範囲であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の還元剤。
  7. 請求項1から6のいずれか1つに記載された還元剤による二酸化炭素の分解物である、平均粒子径が1μm以下のナノサイズであることを特徴とする炭素材料。
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