JP2023019716A - 炭素ナノ材料と有機高分子を含む繊維状構造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】導電性が高く、かつ、軽量である炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維の提供。【解決手段】カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、及び酸化グラフェンからなる群から選択される少なくとも1種の炭素ナノ材料と有機高分子とを含む繊維状構造物であって、該炭素ナノ材料の含有率が該繊維状構造物の全体に対して3質量%以上50質量%以下であり、かつ、該繊維状構造物の比導電率(specific conductivity)が100Scm2/g以上2500Scm2/g以下である、繊維状構造物、及びその製法。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性が高く、かつ、軽量である、炭素ナノ材料と有機高分子を含む繊維状構造物に関する。より詳しくは、本発明は、カーボンナノチューブ(以下、CNTともいう。)とセルロースを含む繊維状構造物に関する。
グラフェンとは、炭素からなるシート状構造体であり、高電気伝導性(導電性)、軽量性、高強度、高弾性率を有する材料である。グラフェンはそれらの特徴を活かし、エレクトロニクス分野やエネルギー分野、メディカル分野まで多岐にわたる用途が提案されている。酸化グラフェンとは、グラフェンにヒドロキシル基、カルボキシル基等を持った構造をしており、水や一部の有機溶媒に対して分散性を示し、酸化グラフェンも幅広い分野への用途が提案されている。カーボンナノチューブとは、グラフェンシートが単層又は多層の同軸管状になった物質であり、超微細径、軽量性、高強度、高屈曲性、高電流容量、高熱伝導性、高導電性を有する材料である。CNTは、次世代の軽量材料の候補となる特性を有しており、鋼、銅、ダイヤモンドをも凌ぐ機械的特性、電気特性、熱伝導特性を有し、CNTを用いた多くの用途が構想されている。また、多糖類を代表するセルロース及びセルロース誘導体は、保湿性や風合いなどの良さから衣服、肌着、マスク等の構成繊維として広く用いられているとともに、グラフェンやCNTとの相性が良く、分散剤として使用されているケースもある。
これらの炭素ナノ材料と有機高分子(例えば、セルロース又はセルロース誘導体)を混錬し、繊維化することで強度や導電性その他機能を付与させる試みはこれまでに多くなされている。
例えば、以下の特許文献1では、多層CNTをセルロース溶液へ高濃度に分散し、湿式紡糸法により繊維化することで導電性繊維を製造しているが、分散性や均一性に課題があり、得られた繊維の導電性は低い値に留まっている。
以下の特許文献2では、セルロースナノファイバー(以下、CNFともいう。)分散液と、CNTやグラフェン分散液とを混錬し、成膜することでCNTやグラフェンの構造体中へ均一且つ高濃度分散を実現している一方で、CNT含有量が低い領域では得られるCNF/CNT複合体の導電率は低い。
以下の特許文献3、特許文献4、特許文献5には、セルロース溶液中に単層CNTを分散し、これを湿式紡糸することでCNT/セルロース複合繊維を作製している。しかしながら、対セルロース比でCNT成分が低濃度にとどまっており、強度の向上は見られるものの、導電特性には言及されていない。
このように、これらの先行技術では、炭素ナノ材料を繊維内に均一に分散させるために炭素ナノ材料濃度を低く抑えていることや、高濃度であるが均一に分散できていないことから電気特性が低いものとなっている。高い導電性を実現するためには、CNTやグラフェンなどの炭素ナノ材料が繊維中に均一且つ十分な濃度分散している必要があるが、繊維中の炭素ナノ材料濃度を上げていくと繊維が硬くなっていき、生地にしたときに肌触り性が低下し、着用性が悪くなるため、より少ない添加量で高い導電性を出すことが求められてきた。
導電繊維を作製するためには表面に導電材をコーティングしてもよいが、コーティングが剥がれ落ちることがあるため洗濯耐久性は低い。特に金属メッキ繊維は漂白剤に浸漬することで錆びが発生し、極端に電気特性が低下するという問題がある。
特開2017-160562号公報 特開2020-164378号公報 特許第6316577号公報 特開2021-21151号公報 特許第5544510号公報
前記した従来技術においては、セルロース又はセルロース誘導体マトリックス内におけるCNTのネットワーク構造における不均一性や不連続性等の要因で導電特性の低い繊維しか得られていない。これらCNTネットワーク構造の不均一性や不連続性の主な要因としては、セルロース又はセルロース誘導体に炭素ナノ材料を均一に混ぜることができないことが挙げられる。
このように、CNTを使用した繊維は、スマートテキスタイルの生体電位取得電極用途やウェアラブル用配線、伸縮センサ、湿度センサ等のウェアラブルデバイスに用いられることが想定されているが、特に高い導電性が必要なウェアラブル用途の配線としては、採用し難いという問題があった。
かかる従来技術の水準に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、導電性が高く、かつ、軽量である炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維を提供することである。
本願発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、炭素ナノ材料を均一に、且つ、特定量の濃度で有機高分子(セルロース又はセルロース誘導体)に分散させる手法を予想外に見出し、有機高分子マトリックス内に均一かつ連続的に炭素ナノ材料のネットワーク構造が形成された有機高分子と炭素ナノ材料を含む、従来技術では達成することができなかった軽量で、かつ、導電性が高い繊維状構造物の作製に初めて成功した。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]カーボンナノチューブ、グラフェン、及び酸化グラフェンからなる群から選択される少なくとも1種の炭素ナノ材料と有機高分子とを含む繊維状構造物であって、該炭素ナノ材料の含有率が該繊維状構造物の全体に対して3質量%以上50質量%以下であり、かつ、該繊維状構造物の比導電率(specific conductivity)が100Scm2/g以上2500Scm2/g以下である、繊維状構造物。
[2]前記炭素ナノ材料がカーボンナノチューブ(CNT)である、前記[1]に記載の繊維状構造物。
[3]前記有機高分子がセルロースである、前記[1]又は[2]に記載の繊維状構造物。
[4]前記繊維状構造物が、繊度0.5dtex以上500dtex以下のモノフィラメントである、前記[1]~[3]のいずれかに記載の繊維状構造物。
[5]前記繊維状構造物が、単糸繊度0.5dtex以上500dtex以下、かつ、総繊度1.0dtex以上1000dtex以下のマルチフィラメントである、前記[1]~[3]のいずれかに記載の繊維状構造物。
本発明に係る炭素ナノ材料と有機高分子を含む繊維状構造物は、比導電率が所望の値にあることから、導電性に優れ、かつ、軽量である。したがって、スマートテキスタイルの心電、筋電、脳波等の生体電位取得用電極や電気刺激用電極、ウェアラブル用電線、伸縮センサ、湿度センサ等の用途に好適である。また、有機高分子がセルロース、特に、キュプラ(ベンベルグ登録商標)である場合には、風合いや、吸湿性、生物分解性に優れたものとなる。
実施例、比較例におけるCNT濃度と、比導電率との関係を示すグラフである。 実施例における単糸繊度と総繊度を示すグラフである(モノフィラメントの場合、単糸繊度と総繊度は同じである)。 実施例におけるCNT仕込み量から算出したCNT濃度と炭素ナノ材料残留指数との関係を示すグラフである 本実施形態の繊維状構造物(繊維)断面における均一なCNTネットワーク構造の一例を示す図面に代わる写真である。 比較例の繊維状構造物(繊維)断面における不均一なCNTネットワーク構造の一例を示す図面に代わる写真である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の1の実施形態は、カーボンナノチューブ、グラフェン、及び酸化グラフェンからなる群から選択される少なくとも1種の炭素ナノ材料と有機高分子とを含む繊維状構造物であって、該炭素ナノ材料の含有率が該繊維状構造物の全体に対して3質量%以上50質量%以下であり、かつ、該繊維状構造物の比導電率(specific conductivity)が100 Scm2/g以上2500Scm2/g以下である、繊維状構造物である。
グラフェンとは、炭素-炭素間のsp2結合による六員環が2次元シート状に敷き詰められた構造をしており、特異な導電特性や光学特性を持ち、さらに、軽量性、高強度、高弾性率を併せ持つ材料である。酸化グラフェンは、グラフェンを酸化させたものであり、一般的にヒドロキシル基やカルボキシル基、エポキシ基を有しており、水や極性有機溶媒に対する分散性が高い。
カーボンナノチューブ(CNT)は、グラフェンシートが筒形に巻いた形状から成る炭素系材料である。CNTとしては、各種のものが知られているが、例えば、その周壁の構成数から単層カーボンナノチューブ(Single Wall Carbon Nanotube: SWCNT)、二層カーボンナノチューブ(Double Wall Carbon Nanotube: DWCNT)、三層以上の多層カーボンナノチューブ(Multi Wall Carbon Nanotube: MWCNT)とに大別される。また、グラフェンシートの構造の違いからカイラル(らせん)型、ジグザグ型、アームチェア型に分けられる。尚、個々のCNT自体の物性としては、凡そ、強度150GPa、導電率100,000S/cm以上、ヤング率0.9TPa、熱伝導特性3,000W/m・Kといわれている。
炭素ナノ材料のうちでより好ましいものとしてカーボンナノチューブが挙げられる。カーボンナノチューブが繊維状の形状であることからカーボンナノチューブ間のネットワーク構造を形成しやすく、導電率や強度が出やすい。また、炭素ナノ材料は、カーボンナノチューブに加えグラフェンや酸化グラフェンを含んでもよい。
本実施形態では、このような所謂CNTと称されるものであれば、いずれのタイプのCNTも用いてもよく、三層以上の多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を含有していても高い導電率と比導電率を達成することができるが、より好ましくは単層カーボンナノチューブ(SWCNT)や二層カーボンナノチューブ(DWCNT)を原料として用いることが高い導電率の炭素ナノ材料/有機高分子混合繊維状構造物が得られるためには好ましい。一般的にSWCNT及びDWNTの直径は5nm以下であることより、この比率は透過型電子顕微鏡において画像解析によりCNT1本の直径が測定できる20~100万倍で観察し、視野の中からCNTバンドルがほぐれCNTが1本で存在している100箇所を選定し、100本のCNTについて画像解析ソフトから直径を評価し、直径5nm以下のCNTが50本以上存在していることが好ましい。このとき、CNT1本とは視野中で一部1本の状態で存在しているCNTが見えていれば1本と計上し、必ずしも両端が見えている必要はない。また視野中で2本と認識されても視野外でつながって1本となっていることもあり得るが、その場合は2本と計上する。100本のCNT中で直径5nm以下のCNTが70本以上であることがより好ましく、90本以上であることがさらに好ましく、100本であることが最も好ましい。
また、本実施形態の炭素ナノ材料のG/Dは、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは2以上である。
すなわち、共鳴ラマン散乱測定により得られるスペクトルで、1550~1650cm-1の範囲内で最大のピーク強度をG、1300~1400cm-1の範囲内で最大のピーク強度をDとしたとき、G/Dの比0.1以上であることが好ましい。
1550~1650cm-1の範囲内のピークはGバンドと呼ばれ、グラファイト構造に由来するピークであり、1300~1400cm-1の範囲内のピークはDバンドと呼ばれ、アモルファスカーボンやグラフェンやCNTの格子欠陥に由来するピークである。グラフェン及びCNT中の欠陥部位の相対的発生率は、G/D比を用いて数値化することができる。G/D比が1以上であることは、格子欠陥の少ない高品質のグラフェン又はCNTで構成されることを意味し、特に2以上、さらに20以上、特に30以上であれば、より高品質のグラフェンまたはCNTで構成され、熱伝導性、電気伝導性、耐熱性に優れるものとなる。また、グラフェンおよびCNTの製造方法は、特に限定されない。
有機高分子とは重量平均分子量が1万以上の有機物であり、種類を問わない。例えば、多糖類、ポリアミン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテル、天然ゴム、ポリペプチド、タンパク質、DNA、RNA、リグニン、アスファルテン、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタラート、シリコン樹脂、合成ゴムが挙げられ、これらの共重合体も含まれる。また、遷移金属及びポスト遷移金属の含有量が1,000ppm以下である。但し、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲンが含まれてもよい。
エネルギー分散型X線分析(EDX)やCHN分析装置により元素分析することによって金属元素および有機高分子元素の有無を判定することができる。
また、有機高分子の化学構造は、溶解性試験、核磁気共鳴(NMR)、赤外吸収スペクトル(IR)、酵素による分解性、色素による染色試験、結晶性、強伸度、熱分析等によって同定することができる。
多糖類とは、グルコース等の単糖類がグリコシド結合によって多数結合されている重合体であり、例えば、アミロース、アミロペクチン、セルロース、カードラン、パラミロン、キチン、デキストラン、アガロース、カラギナン、アルギン酸、ヒアルロン酸、α-1,3グルカン、α-1,2-グルカン、β-1,2-グルカン、グルコマンナン、キシラン、レバン等が挙げられる。好ましくは、セルロース、カードラン、パラミロン、キチン、アガロース、カラギナン、アルギン酸、ヒアルロン酸が挙げられる。多糖類は、水溶性が低く、洗濯耐久性の観点で、カードラン、アルギン酸、セルロースが好ましく、セルロースがよりさらに好ましい。
セルロースとは、多糖類の一種であり、グルコースがβ-1,4-グリコシド結合によって多数直鎖状に結合されている重合体である。セルロースは水溶性が低く、耐水性が高いため、古くから再生繊維や紙などに利用されている。
本願明細書中、用語「セルロース」とは、セルロースを部分的に変性させたものを含む。セルロースを部分的に変性させたものとは、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロースなどが挙げられる。好ましくはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロースが挙げられ、さらに好ましくはカルボキシメチルセルロース、酢酸セルロースが挙げられる。また、置換度が0.5以下であることが水溶性でないという観点から好ましい。
また、セルロースに少量の多糖類を含んだものでもよい。
セルロース原料としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等のいわゆる木材パルプ、及び非木材パルプが挙げられる。非木材パルプとしては、コットンリンターパルプ等のコットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、及びワラ由来パルプを挙げることができる。コットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、及びワラ由来パルプは各々、コットンリント又はコットンリンター、麻系のアバカ(例えば、エクアドル産又はフィリピン産のものが多い)、ザイサル、バガス、ケナフ、竹、ワラ等の原料から、蒸解処理による脱リグニン、及びヘミセルロース除去を目的とした精製工程及び漂白工程を経て得られる精製パルプを意味する。この他、海藻由来のセルロース、ホヤセルロース等の精製物もセルロース微細繊維の原料として使用することができる。さらに、再生セルロース繊維のカット糸及びセルロース誘導体繊維のカット糸もセルロース原料として使用でき、また、エレクトロスピニング法により得られた再生セルロース又はセルロース誘導体の極細糸のカット糸も、セルロースとして使用することができる。これらの中でも、コットンリント又はコットンリンター、麻系のアバカ、ザイサル、バガス、ケナフ、竹、ワラ等に由来した精製パルプが特に好ましい。
セルロース又はセルロース誘導体の断定方法としては、一般的な方法によって調べることができるが、例えば、XRDやIRによるスペクトル解析する方法、また、セルラーゼで分解させることができれば、セルロース又はセルロース誘導体と断定できる。
本実施形態の繊維状構造物は、スマートテキスタイルに好適に用いられる。「スマートテキスタイル」とは、一般の繊維素材では得られない新しい機能を備えたテキスタイル素材又は既存の機能を新規の技術で得るテキスタイル素材のことを指し、シャツ等に電極を取り付け、心電図や筋電、心拍などの生体信号を取り出すことで医療やヘルスケア分野への応用が期待されている。
スマートテキスタイルの電極は、肌に直接触れることから柔軟で伸縮性、通気性を持ったものが好ましく、繊維電極がこれに当たる。また、金属アレルギーを引き起こさないために有機高分子電極が好ましい。さらに、検出感度や精度の高い電極を作るために導電性の高い材料が求められている。生体信号取得用電極は衛生面からディスポーザブルなものが一般的であるが、サステナビリティの観点から洗濯することができ、繰り返し使用可能であることが望ましい。そのため、洗濯の応力に耐えられる機械的な強度と洗剤や漂白剤に耐えられる化学的な安定性が必要である。
本実施形態の繊維状構造物の炭素ナノ材料含有率は、3質量%以上50質量%以下であることが必要である。炭素ナノ材料含有率を3質量%以上とすることで十分な導電特性を確保することができ、スマートテキスタイルの心電、筋電、脳波等の生体電位取得用電極や電気刺激用電極、ウェアラブル用電線、伸縮センサ、湿度センサ等の用途に適する繊維状構造物となる。また、炭素ナノ材料含有率を50質量%よりも大きくとすると紡糸性が悪化し、歩留まりが悪くなるとともに、強度の低下が生じる。さらに、硬く肌との感触が悪くなり、セルロース及びセルロース誘導体の特性である着心地の良さを生かしきれない。炭素ナノ材料含有率は、好ましくは5質量%以上40質量%以下、より好ましくは8質量%以上30質量%以下である。
炭素ナノ材料含有率の測定方法を以下に示す。炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維状構造物を95%硫酸に室温大気下で72時間浸漬させた後、水洗、乾燥の工程を経た炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維状構造物の重量から95%硫酸浸漬前の炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維状構造物の重量を除した値に100を乗じた値を炭素ナノ材料残留指数として、炭素ナノ材料含有率は下記式:
炭素ナノ材料含有率(質量%) = 炭素ナノ材料残留指数 × 0.71
により定義される。
本実施形態の繊維状構造物は、繊度0.5dtex以上500dtex以下のモノフィラメント、又は単糸繊度0.5dtex以上500dtex以下、かつ、総繊度1.0dtex以上1000dtex以下のマルチフィラメントであることが好ましい。尚、モノフィラメントの場合、単糸繊度と総繊度は同じである。単糸繊度は、より好ましくは1dtex以上300dtex以下であり、さらに好ましくは1.5dtex以上200dtex以下である。
単糸繊度が0.5dtex以上500dtex以下であれば、紡糸工程における歩留まりが向上し、さらに、強くしなやかな糸となり製織性や製編性が向上する。他方、単糸繊度が500dtexを超えると糸が硬くなり、製織性や製編性が低下する
また、本実施形態の繊維状構造物の総繊度は、より好ましくは5dtex以上1,000dtex以下であり、さらに好ましくは10dtex以上900dtex以下であり、よりさらに好ましくは20dtex以上750dtex以下である。
総繊度が1.0dtex以下であると、糸が弱く製織性および製編性が低下する。他方、総繊度が1000dtexを超えると、糸が硬くなり、生地にしたときに肌ざわりが低下する。
[繊度測定方法]
単糸繊度及び総繊度の測定方法を以下に示す。
紡糸した炭素ナノ材料/有機高分子が混合繊維状構造物を温度23℃、湿度50.5%RHの環境に24時間以上静置したのち、10mを測りとりその重量を測定(METTLER TOLEDO社製精密天秤を使用、XPE205)する。その重量から10,000mあたりの重さを計算することにより測定した。
本明細書中、用語「繊維状構造物」とは、その構造物の長軸方向と短軸方向の比(長軸方向長さ/短軸方向長さ)が1000以上であるものをいう。
本実施形態の繊維状構造物の比導電率(specific conductivity)はスマートテキスタイルに適用するには、100Scm2/g以上2,500Scm2/g以下が適用範囲であり、150Scm2/g以上がより好ましく、200Scm2/g以上がさらに好ましい。比導電率は、当業者に公知の手法で測定することができる。例えば、4端子法による電流-電圧測定を行い、その傾きと繊度から求めることができる。
本実施形態の繊維状構造物の破断強度は、好ましくは0.1cN/dtex以上10cN/dtex以下が好ましい。破断強度が0.1cN/dtexよりも低いと製織性及び製編性が低くなるため好ましくなく、10cN/dtexより大きい値であっても製織性及び製編性が向上することはない。より好ましくは、0.3cN/dtex以上7cN/dtex以下、さらに好ましくは0.4cN/dtex以上5cN/dtex以下である。
破断強度は、当業者に公知の手法で、例えば、JIS L 1013に準拠して測定することができる。具体的には、応力-歪み測定を行い、切断位置の応力と繊度から強度を求める。
以下に本発明の繊維状物の好ましい製造方法の工程の一例を示すが、この方法に限定されるものではない。
本発明の製造方法は以下の工程:
CNTが水に分散されたCNT分散液を準備する工程;
セルロースが銅アンモニアに溶解されたセルロース溶液を準備する工程;
該CNT分散液と該セルロース溶液を0.1:1~15:1の質量比で混合して、CNT/セルロース分散溶液を調製する工程;
得られたCNT/セルロース分散溶液を、凝固浴である温水中にて湿式紡糸し、酸及び水を用いて洗浄することで銅成分を除去する工程;
を含む、前記繊維状構造物の製造方法であることができる。
上記工程で得られた繊維状構造物は、均一なCNTネットワークが構成されている。
本発明者らは、特定の理論に拘束されることは望まないが、繊維内に均一なCNTネットワーク構造が形成される理由は、以下にように推定している。CNT分散液内で形成されたCNTネットワーク構造は、CNT/セルロース分散溶液内でも維持されており、該分散溶液を湯浴中に吐出した際、セルロースドープ(銅アンモニア水溶液)からアンモニアが離脱し、セルロースが凝固しつつ、維持されたCNTネットワーク構造は、湯浴へ拡散する方向に働く力により、CNT同士の凝集が抑制される。すなわち、セルロースドープの凝固とCNTドープ凝固の抑制の効果により、セルロース繊維内部でCNTが凝集することなく、CNTネットワーク構造を維持したまま、凝固糸の状態となる。かかる繊維内のCNTネットワーク構造の存在により、従来技術では達成できなかった導電性が高い繊維状構造物の製造が可能になった。
本実施形態の繊維状構造物は、前記方法に拘わらず、例えば、以下の工程で作製することが可能である。
炭素ナノ材料と分散剤を含む分散液と、有機高分子を溶解させた水又は有機溶媒又はイオン液体又はその混合物とを混錬し、それを水又は有機溶媒を含む凝固浴中に吐出して、糸の形状の炭素ナノ材料/有機高分子混合物を得、該炭素ナノ材料/有機高分子混合物が弛まないように該凝固浴から連続的に引き上げる。また、乾燥前の水や有機溶剤等で膨潤した状態で延伸する工程、乾燥する工程を含まんでもよい。
上記方法で作製した炭素ナノ材料/有機高分子繊維状構造体は、製織性及び製編性に優れ、吸湿性および風合いが良く、洗濯耐性が高いものとなる。
前記製法における炭素ナノ材料とは、グラフェン、酸化グラフェン、CNTのことである。
まず、炭素ナノ材料は、水又は有機溶媒又はイオン液体を含む溶媒に分散される。分散には分散剤を使用してもよい。分散剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、含芳香環化合物のいずれを使用してもよい。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどが挙げられ、具体的にはポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテル(例えば、Triton(登録商標)X-100)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(例えば、Tween(登録商標)20)などが挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、アルキルアルコール硫酸エステル塩(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム等)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシンナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン硫酸エステルナトリウム、アルキルアルコールリン酸エステル塩、胆汁酸塩(例えば、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウムなど)が挙げられ、コール酸ナトリウムなどの胆汁酸塩が好ましく例示される。
但し、前記したように、本願発明者らは、得られた炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維状構造体中に含まれる炭素ナノ材料の欠陥を少なくすることや、繊維構造体中に均一に炭素ナノ材料を分散させることにより、高い機械特性を維持しつつ、導電性が改善されることを見出しており、特にCNTを使用する場合、欠陥を発生させず、長さを保持したまま均一に分散したCNT分散液およびCNT/有機高分子複合繊維状構造体を得るためには、界面活性剤として、タウロデオキシコール酸ナトリウムが好ましい。
カチオン界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウムハライド、アルキルピリジニウムハライド、アルキルイミダゾリンハライドなどが挙げられる。
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリニウムベタイン、レシチンなどが挙げられる。
含芳香環化合物としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、含アクリジン化合物、含イソアロキサジン化合物などが挙げられる。
有機溶媒としては、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン(MIBK)などのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、炭酸プロピレンなどのエステル類、DMF、アセトアミド、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどが挙げられる。
イオン液体とはアニオンとカチオンから構成される塩であり、且つ融点が100℃以下のものを指す。例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチルりん酸や1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセタートなどのイミダゾリウム塩、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどのピペリジニウム塩、テトラブチルアンモニウムアセタートなどのアンモニウム塩、トリブチル(エチル)ホスホニウムジエチルホスファートなどのホスホニウム塩、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどのピロリジニウム塩、トリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどのスルホニウム塩等が挙げられる。
分散液中の炭素ナノ材料量は、0.05質量%以30質量%以下程度、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下程度、さらに好ましくは0.15質量%以上10質量%以下程度である。
分散液中の分散剤の量は、0.2質量%以上20質量%以下程度、好ましくは0.3以上16質量%以下程度、さらに好ましくは0.5質量%以上10質量%以下程度である。
有機高分子は、水又は有機溶媒又はイオン液体を含む溶媒に溶解される。有機溶媒としては、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン(MIBK)などのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどが挙げられる。
イオン液体としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチルりん酸や1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセタートなどのイミダゾリウム塩、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどのピペリジニウム塩、テトラブチルアンモニウムアセタートなどのアンモニウム塩、トリブチル(エチル)ホスホニウムジエチルホスファートなどのホスホニウム塩、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどのピロリジニウム塩、トリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどのスルホニウム塩等が挙げられる。また、カチオンとアニオンの組み合わせとしては任意のものを使用することができる。
有機高分子を溶解させる溶媒には無機物や有機物など任意の物質を単独または複数添加してもよい。例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属の水酸化物が挙げられ、好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化銅などが挙げられる。
塩類としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩が挙げられ、より好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩、銅塩が挙げられ、さらに好ましくはナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、銅塩が挙げられる。塩類のアニオンとしては、塩素イオン、フッ素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、クエン酸イオン、シュウ酸イオン、リンゴ酸イオン、酒石酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、酢酸イオンなどが挙げられる。
好ましい塩類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸カリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一カリウムなどが挙げられる。
また、アンモニアや二硫化炭素、パラホルムアルデヒド、4-メチルモルホリンN-オキシド、四酸化二窒素系、クロラール、ピリジン系、N-エチルピリジニウムクロリド、ヒドラジン、三フッ化酢酸、尿素、チオシアン酸アンモン、チオシアン酸カルシウム、塩化亜鉛、三酸化硫黄、ポリリン酸、テトラブチルアンモニウムアセテート系を添加剤として使用することもできる。
特に、セルロースを溶解する溶媒系は一般的に多数知られている。例えば、ビスコース法溶解系、銅アンモニア法溶解系、4-メチルモルホリンN-オキシド/水系、ジメチルスルホキシド/二硫化炭素/アミン系、ジメチルホルムアミド/四酸化二窒素系、ジメチルスルホキシド/パラホルムアルデヒド系、ジメチルホルムアミド/クロラール/ピリジン系、N-エチルピリジニウムクロリド系、ジメチルアセトアミド/塩化リチウム系、ヒドラジン系、三フッ化酢酸/ジクロロメタン系、ギ酸/塩化リチウム系、尿素/水酸化ナトリウム/水系、液安/チオシアン酸アンモン系、チオシアン酸カルシウム/水系、塩化亜鉛/水系、ジメチルホルムアミド/三酸化硫黄系、硫酸水溶液系、硫酸/ポリリン酸/水系、苛性ソーダ/水系、ジメチルスルホキシド/テトラブチルアンモニウムアセテート系、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチルりん酸系、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセタート系などが挙げられる。
本実施形態の製法においては、好ましくは、ビスコース法溶解系、銅アンモニア法溶解系、4-メチルモルホリンN-オキシド/水系、硫酸/水系、硫酸/ポリリン酸/水系、苛性ソーダ/水系、ジメチルスルホキシド/テトラブチルアンモニウムアセテート系、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチルりん酸系、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセタート系が使用される。さらに好ましくはビスコース法溶解系、銅アンモニア法溶解系、4-メチルモルホリンN-オキシド/水系、苛性ソーダ/水系、ジメチルスルホキシド/テトラブチルアンモニウムアセテート系、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチルりん酸系、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセタート系が挙げられる。最も好ましくは銅アンモニア法溶解系が挙げられる。
有機高分子を溶解する溶媒への添加物の濃度は溶媒と添加物、有機高分子種の組み合わせによって決定され、それぞれ任意の濃度を設定することができる。
有機高分子溶液中の有機高分子の量は、1質量%以上30質量%以下程度、好ましくは3質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上15質量%以下程度である。
前記した溶媒及び/又は分散剤を使用して炭素ナノ材料を分散させることにより均一に分散された炭素ナノ材料分散液を得ることができ、さらに有機高分子溶液を混錬することによって、CNTと有機高分子が均一に混錬された紡糸原液を得ることができる。
紡糸原液に含まれる炭素ナノ材料の濃度は0.05質量%以上20質量%以下程度であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上17.5質量%以下程度であり、さらに好ましくは0.2質量%以上15質量%以下程度、最も好ましくは0.3質量%以上10質量%以下である。
紡糸原液に含まれる有機高分子の濃度は0.1質量%以上20質量%以下程度である。好ましくは0.5質量%以上15質量%以下程度であり、さらに好ましくは1質量%以上12.5質量%以下程度、最も好ましくは1.5質量%以上10.5質量%以下程度である。
紡糸原液は、紡糸工程によりシリンジ、紡糸口金などから凝固浴中に吐出され、糸の形状の炭素ナノ材料/有機高分子複合ゲルを得、該炭素ナノ材料/有機高分子複合ゲルが弛まないように該凝固浴から連続的に引き上げる。吐出する際のシリンジ、紡糸口金などの口径は、5μm以上5000μm以下程度、好ましくは10μm以上3000μm以下程度、さらに好ましくは15μm以上1000μm以下である。この口径を調節することにより、凝固速度や炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維状構造体の径を調節することができる。分散液は重力方向、または、重力と垂直の方向に紡糸口金から直接凝固浴に吐出され、変更ロールや変更棒で方向転換して、ネルソンロールのような回転ロールにより凝固浴から炭素ナノ材料/有機高分子複合ゲルが連続的に引き上げられる。重力方向に吐出される場合、空中を介して紡糸口金から凝固浴に吐出される場合もある。また、シリンジや紡糸口金を凝固浴の底に沈め、凝固浴から引き上げる回転ロール方向に吐出される場合もある。いずれも炭素ナノ材料/有機高分子複合ゲルが弛まないように凝固浴から連続的に引き上げられる。凝固浴中で延伸される場合もある。
本発明の態様の一つにおいては、凝固浴の溶媒は水である。凝固浴に使用する水には酸類や塩類を添加してもよい。繊維状構造物を構成する要素の一つである有機高分子種によっては酸類や塩類が含まれていない場合、炭素ナノ材料/有機高分子複合ゲルが弛まないように凝固浴から連続的に引き上げられる凝固状態とすることができない。酸類としては硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸類、ギ酸や酢酸、安息香酸、クエン酸、シュウ酸などのカルボン酸類、トルエンスルホン酸などのスルホン酸類といった有機酸類が挙げられる。塩類は無機塩及び有機塩のいずれでもよいが、無機塩類が好ましい。塩類は水溶性である。塩類は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好ましく、より好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩が挙げられ、さらに好ましくはナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩が挙げられる。塩類のアニオンとしては、塩素イオン、フッ素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、クエン酸イオン、シュウ酸イオン、リンゴ酸イオン、酒石酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、酢酸イオンなどが挙げられる。
好ましい塩類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸カリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一カリウムなどが挙げられる。
別の態様においては、凝固浴の溶媒は有機溶媒を用いてもよい。凝固浴中の有機溶媒としては、水と混和する有機溶媒が好ましく、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン(MIBK)などのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、炭酸プロピレンなどのエステル類、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどのアミド類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどが挙げられる。凝固浴の溶媒は含水有機溶媒が好ましい。凝固浴の温度に特に制限は無いが、炭素ナノ材料/有機高分子複合ゲルが弛まないように凝固浴から連続的に引き上げられる凝固状態となるように、有機溶剤と温度の組合せが決定される。5~80℃が温度制御のし易さの点で好ましい。また、有機溶媒を凝固浴とした場合も塩類を凝固浴に添加することができる。
凝固浴に添加する塩類の濃度は、0質量%以上40質量%以下程度、好ましくは0質量%以上35質量%以下程度、さらに好ましくは0質量%程度30質量%以下程度である。塩類は単独で又は2種以上の塩類を組み合わせて凝固浴に溶解される。
凝固浴の温度に特に制限は無いが、炭素ナノ材料/有機高分子複合ゲルが弛まないように凝固浴から連続的に引き上げられる凝固状態となるように、塩類と塩類濃度との組合せにより決定される。5~80℃が温度制御のし易さの点で好ましい。
吐出された紡糸原液の凝固浴中での浸漬時間は、凝固浴の条件により異なり、炭素ナノ材料/有機高分子複合ゲルが弛まないように凝固浴から連続的に引き上げられる凝固状態となっていれば、特に制限は無い。凝固浴は、静止浴であっても、チューブ等を用いた流動浴であってもよい。
凝固浴から引き上げられた炭素ナノ材料/有機高分子複合ゲルは、さらに水や凝固浴に用いたときと同様な有機溶剤に浸漬し、界面活性剤、遷移金属、塩類を洗浄除去する。
遷移金属を使用した場合は、pH3以下の酸を用いて洗浄する。
この洗浄工程における水や有機溶剤の温度は特に制限はないが、例えば、5~80℃程度、好ましくは室温程度の温度であることができる。浸漬時間も特に制限はなく、例えば、2時間以上、好ましくは24時間以上であることができる。この水中の浸漬工程により界面活性剤、又は界面活性剤、遷移金属及び、塩類が適量除去された、CNTを含む繊維が得られる。
炭素ナノ材料/有機高分子複合ゲルは湿潤状態で次の延伸工程に供される場合がある。延伸はネルソンロールのような回転ロールと回転ロールの間で行われ、回転速度が異なることにより延伸される。延伸倍率は、好ましくは、5%以上500%以下程度、より好ましくは10%以上300%以下程度である。炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維状構造体内の炭素ナノ材料の繊維軸方向への配列、有機高分子の配向が促進され、電気特性および機械特性向上する。
延伸倍率は、下記式により定義される。
延伸倍率(%)=[{(延伸後の長さ)-(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)]×100
延伸後は、必要に応じてさらに水や凝固浴に用いたときと同様な有機溶剤で洗浄し、乾燥することによりCNTを含む繊維を得ることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて具体的に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維状構造体の物性測定方法は以下のとおりであった。
[比導電率]
比導電率は4端子法を用い、炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維状構造体に、所定の電流を印加した際の電圧値の測定を行い、その電流-電圧の傾きから得た抵抗値と炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維状構造体の重量から算出した。
炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維状構造体を固定し端子間の距離が定まっている測定治具、ポテンショ/ガルバノスタット(バイオロジック社製、SP-50)を用いて測定を行い、抵抗値を得た。
得られた抵抗値、さらには測定治具の端子間の距離の値を用いて線抵抗(1cmあたりの抵抗)を算出、さらにその逆数をとることで線抵抗の逆数を算出した。
また、精密天秤(METTLER TOLEDO社製,XPE205)を用い、10m当たりの炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維状構造体の重量を測定し、その重量と長さから1cmあたりの重量を算出した。
最後に、線抵抗の逆数から1cmあたりの重量を除することで比導電率を算出した。
他方、1cmあたりの抵抗値が10,000Ωを超える高い繊維状構造物の場合は抵抗計(HIOKI社製、RM3544)を用いて端子間1cmでの抵抗値を算出した。さらに、1mm当たりの抵抗値が3.5MΩを超える高い繊維状に関しては線抵抗を35MΩ以上として算出、比導電率は線抵抗35MΩの逆数から1cm当たりの質量を除した数値以下として、比導電率を数値化した。
[繊維断面におけるCNTネットワーク構造の観察]
本実施形態の炭素ナノ材料/有機高分子混合繊維状構造物の断面構造を走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製、Regulus8220、以下、SEMとも記載。)を用い、CNTネットワーク構造の均一性を確認する。断面出しの手法として、炭素ナノ材料/有機高分子混合繊維状構造物を液体窒素等で凍結させたのち、ハンマー、刃物等で割断することにより断面出しを実施した。
[炭素ナノ材料残留指数の測定]
炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維状構造物を乾燥器(アズワン株式会社製,AVO-250SB)を用いて大気中105℃、5時間の条件で乾燥させた後、精密天秤(METTLER TOLEDO社製,XPE205)を用いて重量測定を実施した。重量測定後、95%硫酸に室温大気下で72時間浸漬させた。硫酸浸漬後、水置換及び水浸漬を行った後、乾燥器で大気中105℃、5時間の条件で乾燥させ、炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維状構造物の重量の測定を実施した。硫酸浸漬後の炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維状楮物の重量を、硫酸浸漬前の炭素ナノ材料/有機高分子複合繊維状構造物の重量を除し100を乗じることで、炭素ナノ材料残留指数を算出した。
[実施例1]
改良直噴熱分解合成法(eDIPS法)により製造されたCNT(名城ナノカーボン社製、DX2P、以下、eDIPS-CNTともいう。)2gと分散剤としてタウロデオキシコール酸ナトリウム(シグマ・アルドリッチ社製、TDOCともいう。)4gを水994gに加え、インラインミキサー(IKA社製、magic LAB)を用い10時間分散を行った。その後、自転公転式ミキサー(株式会社シンキー社製、あわとり練太郎ARE-310)を用い、10分間脱泡作業を行って、eDIPS-CNTの重量濃度が0.2質量%であるeDIPS-CNT分散液を得た。
得られたeDIPS-CNT分散液を濾過することによりeDIPS-CNT重量濃度が1質量%となるように濃縮させた。
6.1重量%のアンモニア水溶液に銅成分が3.6重量%となるように水酸化銅を溶解させ、そこにセルロースを10.15重量%となるように添加、混錬することにより銅アンモニアセルロース溶液を作製した。
上記、1重量%に濃縮させたeDIPS-CNT分散液と銅アンモニアセルロース溶液を、セルロース対比のeDIPS-CNT濃度が6.25質量%となるように配合した後、自転公転式ミキサー(株式会社シンキー社製、あわとり練太郎ARE-310)を用いて5分間混錬することでeDIPS-CNT/銅アンモニアセルロース分散液を得た。
このeDIPS-CNT/銅アンモニアセルロース分散液をシリンジに詰め込んだ後、内径0.3mm、1ホールの注入紡糸ノズルを装着したのち、高圧マイクロフィーダー(三洋テクノス株式会社製、JP-HR)を用い、吐出速度1.1ml/minの条件で40℃の純水に横方向に吐出することで糸状に凝固し、凝固糸が緩まないように回転速度10m/minの条件で巻き取り装置の速度を設定し、凝固糸を40℃の純水から引き上げ巻き取った。次いで、凝固糸を送りローラを用い5%の希硫酸中に浸漬させ、銅成分を除去した後、水槽に浸漬させ、巻き取り装置を用い、水から引き上げ乾燥させることでeDIPS-CNT/セルロース複合繊維を得た。
得られたeDIPS-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例2]
実施例1のセルロース対比のeDIPS-CNT濃度が9.0質量%となるように1重量%に濃縮させたeDIPS-CNT分散液と銅アンモニアセルロース溶液を配合し、混錬させ、eDIPS-CNT/銅アンモニアセルロース分散液を得た。吐出速度を1.3ml/min、巻き取り速度を15m/minとした他は、実施例1と同様の条件で紡糸を行い、eDIPS-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたeDIPS-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例3]
実施例1のセルロース対比のeDIPS-CNT濃度が22.8質量%となるように、1重量%に濃縮させたeDIPS-CNT分散液と銅アンモニアセルロース溶液を配合し、混錬させた他は、実施例1と同様の手法で、eDIPS-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたCNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例4]
実施例1のセルロース対比のeDIPS-CNT濃度が33質量%となるように1重量%に濃縮させたeDIPS-CNT分散液と銅アンモニアセルロース溶液を配合し、混錬させ、eDIPS-CNT/銅アンモニアセルロース分散液を得た。巻き取り速度を8m/minとした他は、実施例1と同様の条件で紡糸を行い、eDIPS-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたeDIPS-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例5]
実施例1のセルロース対比のeDIPS-CNT濃度が49.6質量%となるように、1重量%に濃縮させたeDIPS-CNT分散液と銅アンモニアセルロース溶液を配合し、混錬させ、DIPS-CNT/銅アンモニアセルロース分散液を得た。巻き取り速度を12m/minとした他は、実施例1と同様の条件で紡糸を行い、eDIPS-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたeDIPS-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例6]
Tuball-CNT(OCSiAl社製、Tuball、以下、Tuball-CNTとも記載)5gと分散剤としてタウロデオキシコール酸ナトリウム(シグマ・アルドリッチ社製、TDOCともいう。)10gを水985gに加え、インラインミキサー(IKA社製、magic LAB)を用い10時間分散を行った。その後、自転公転式ミキサー(株式会社シンキー社製、あわとり練太郎ARE-310)を用い、10分間脱泡作業を行って、Tuball-CNTの重量濃度が0.5質量%であるTuball-CNT分散液を得た。
得られたTuball-CNT分散液を濾過することによりTuball-CNT重量濃度が3質量%となるように濃縮させた。
6.1重量%のアンモニア水溶液に銅成分が3.6重量%となるように水酸化銅を溶解させ、そこにセルロースを10.15重量%となるように添加、混錬することにより銅アンモニアセルロース溶液を作製した。
上記、3重量%に濃縮させたTuball-CNT分散液と銅アンモニアセルロース溶液を、セルロース対比のTuball-CNT濃度が22.8質量%となるように配合した後、自転公転式ミキサー(株式会社シンキー社製、あわとり練太郎ARE-310)を用いて5分間混錬することでTuball-CNT/銅アンモニアセルロース分散液を得た。巻き取り速度を12m/minとした他は、実施例1と同様の条件で紡糸を行い、Tuball-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたTuball-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例7]
実施例6のセルロース対比、Tuball-CNT濃度が37.2質量%となるように、3重量%に濃縮させたTuball-CNT分散液と銅アンモニアセルロース溶液を配合し、混錬させ、実施例6と同様の条件で紡糸を行い、Tuball-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたTuball-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例8]
実施例6の分散剤をTDOCからデオキシコール酸ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、以下、DOCとも記載。)へと変更した以外は、実施例6と同様の条件で、Tuball-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたTuball-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例9]
実施例8の凝固浴を40℃の純水からエタノールへと変更した以外は、実施例8と同様の条件で、Tuball-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたTuball-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例10]
実施例8の凝固浴を40℃の純水からジメチルスルホキシドへと変更した以外は、実施例8と同様の条件で、Tuball-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたTuball-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例11]
実施例8の凝固浴を40℃の純水から1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンへと変更した以外は、実施例8と同様の条件で、Tuball-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたTuball-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例12]
実施例7の分散剤をTDOCからDOCへと変更した以外は、実施例7と同様の条件で、3重量%に濃縮させたTuball-CNT分散液と銅アンモニアセルロース溶液を配合し、Tuball-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたTuball-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例13]
実施例2と同様に、セルロース対比のeDIPS-CNT濃度が9.0質量%となるように1重量%に濃縮させたeDIPS-CNT分散液と銅アンモニアセルロース溶液を配合し、混錬させた後、0.2mm、5ホールの注入紡糸ノズルを用い、吐出速度を1ml/min、巻き取り装置の回転速度を12m/minの条件で紡糸を行い、eDIPS-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたeDIPS-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例14]
実施例2と同様に、セルロース対比のeDIPS-CNT濃度が9.0質量%となるように1重量%に濃縮させたeDIPS-CNT分散液と銅アンモニアセルロース溶液を配合し、混錬させた後、0.2mm、4ホールの注入紡糸ノズルを用い、吐出速度を0.5ml/min、巻き取り装置の回転速度を10m/minの条件で紡糸を行い、eDIPS-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたeDIPS-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例15]
実施例6と同様に、セルロース対比のTuball-CNT濃度が22.8質量%となるように3wt%に濃縮させたTuball-CNT分散液と銅アンモニアセルロース溶液を配合し、混錬させた後、0.2mm、4ホールの注入紡糸ノズルを使用、吐出速度を1m
/min、巻き取り装置の回転速度を7 m/minとした他は、実施例1と同様に行い、Tuball-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたTuball-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例16]
実施例6と同様に、セルロース対比のTuball-CNT濃度が22.8質量%となるように3wt%に濃縮させたTuball-CNT分散液と銅アンモニアセルロース溶液を配合し、混錬させた後0.2mm、5ホールの注入紡糸ノズルを使用、吐出速度を2ml/min、巻き取り装置の回転速度を10 m/minとした他は、実施例1と同様に行い、Tuball-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたTuball-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例17]
カルボキシメチルセルロースナトリウム(富士フィルム和光純薬製、製品コード:039-01335、以下、CMCとも記載)を10重量%となるように純水に溶解させ、10重量%CMC溶液を調整した。その10重量%CMC水溶液に、実施例1と同様の方法で調整した1重量% eDIPS-CNT分散液を対CMC比でeDIPS-CNT濃度が22.8 質量%となるように配合し、自転公転式ミキサー(株式会社シンキー社製、あわとり練太郎ARE-310)を用いて5分間混錬することでeDIPS-CNT/CMC分散液を得た。
このeDIPS-CNT/CMC分散液をシリンジに詰め込んだ後、内径0.3mm、1ホールの注入紡糸ノズルを装着したのち、高圧マイクロフィーダー(三洋テクノス株式会社製、JP-HR)を用い、吐出速度1.1ml/minの条件でエタノール中に横方向に吐出することで糸状に凝固し、凝固糸が緩まないように回転速度10m/minの巻き取り速度で、エタノールから引き上げ乾燥させることでeDIPS-CNT/CMC複合繊維を得た。
得られたeDIPS-CNT/CMC複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例18]
実施例14のCMC対比のeDIPS-CNT濃度が37.2質量%となるように10重量% CMC水溶液と1重量%eDIPS-CNT分散液を配合し、混錬した後、吐出速度が0.9 ml/minの条件でエタノール中に横方向に吐出することで糸状に凝固し、凝固糸が緩まないように回転速度10m/minの巻き取り速度で、エタノールから引き上げ乾燥させることでeDIPS-CNT/CMC複合繊維を得た。得られたeDIPS-CNT/CMC複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例19]
有機高分子をカードラン(富士フイルム和光純薬株式会社製)とし、吐出速度を1.3 ml/min、巻き取り速度を10 m/minとした他は実施例12と同様に行い、eDIPS-CNT/カードラン複合繊維を得た。得られたeDIPS-CNT/カードラン複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例20]
アルギン酸ナトリウム(ナカライテスク株式会社社製、300 cps)を10重量%となるように純水に溶解させ、10重量%アルギン酸ナトリウム溶液を調整した。その10重量% アルギン酸ナトリウム溶液に、実施例1と同様の方法で調整した1重量% eDIPS-CNT分散液を対アルギン酸ナトリウム比でeDIPS-CNT濃度が16.7質量%となるように自転公転式ミキサー(株式会社シンキー社製、あわとり練太郎ARE-310)を用いて5分間混錬することでeDIPS-CNT/アルギン酸ナトリウム液を得た。
このeDIPS-CNT/アルギン酸ナトリウム液をシリンジに詰め込んだ後、内径0.3 mm、1ホールの注入紡糸ノズルを装着したのち、高圧マイクロフィーダー(三洋テクノス株式会社製、JP-HR)を用い、吐出速度1.1m/minの条件で5質量%塩化カルシウム水溶液中に横方向に吐出する
ことで糸状に凝固し、凝固糸が緩まないように回転速度10m/minの条件で巻き取り装置の速度を設定し、凝固糸を5質量%塩化カルシウム水溶液から引き上げ巻き取った。次いで、凝固糸を送りローラを用い純水に浸漬させ、塩化カルシウム成分を除去した後、巻き取り装置を用い、水から引き上げ乾燥させることでeDIPS-CNT/アルギン酸複合繊維を得た。
得られたeDIPS-CNT/アルギン酸複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例21]
実施例20のアルギン酸ナトリウム対比のeDIPS-CNT濃度が23.1wt%となるように混錬させた他は実施例20と同様に行い、eDIPS-CNT/アルギン酸複合繊維を得た。得られたCNT/アルギン酸複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[実施例22]
実施例1、実施例2、実施例5、実施例6、実施例20で作製した複合繊維を大気中105℃、5時間の条件で乾燥し、重量を測定した後、95%硫酸(富士フィルム和光純薬株式会社製、薬品コード:192-04696)に72時間浸漬させた。95%硫酸に浸漬後、水洗した後、大気中、105℃、5時間の条件で乾燥し、乾燥後の重量を測定した。硫酸浸漬前後の重量から炭素ナノ材料残留指数を算出した。
図3にCNT仕込み量から算出したCNT濃度と炭素ナノ材料残留指数との関係を示す。
結果として、CNT濃度と炭素ナノ材料残留指数に相関関係があり、炭素ナノ材料残留指数に0.71を乗じることにより繊維全量に対するCNT質量%を算出できることがわかった。
[比較例1]
実施例1のセルロース対比のeDIPS-CNT濃度が1.0質量%となるように、1重量%に濃縮させたeDIPS-CNT分散液と銅アンモニアセルロース溶液を配合し、混錬させた後、実施例5と同様の条件で紡糸を行い、eDIPS-CNT/セルロース複合繊維を得た。得られたeDIPS-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[比較例2]
50質量%4-メチルモルホリンN-オキシド(東京化成工業株式会社製、以下、NMMOとも記載)を減圧濃縮し、NMMOが70質量%含有している水溶液を作製した。そこに実施例1と同様の方法で作製した1質量%eDIPS-CNT分散液と、NMMOが70質量%含有している水溶液を重量比1:4の割合で混錬させ、0.2質量%eDIPS-CNT/56質量%NMMO/43.8質量%水の混合溶液を作製した。そこにセルロースを投入し、濃縮することで最終的に0.3質量%eDIPS-CNT/5質量%セルロース/85質量%NMMO/9.7質量%水の混合溶液を得た。
この0.3質量%eDIPS-CNT/5質量%セルロース/85質量%NMMO/9.7質量%水の混合溶液をシリンジに詰め込んだ後、内径0.9 3mm、1ホールの注入紡糸ノズルを装着したのち、高圧マイクロフィーダー(三洋テクノス株式会社製、JP-HR)を用い、吐出速度1ml/minの条件でNMMO30質量%水溶液中に横方向に吐出することで糸状に凝固し、凝固糸が緩まないように回転速度1.18m/minの条件で巻き取り装置の速度を設定し、凝固糸をNMMO30質量%水溶液から引き上げ巻き取った。次いで、凝固糸を送りローラを用い純水に浸漬させ、NMMO成分を除去した後、巻き取り装置を用い、水から引き上げ乾燥させることでeDIPS-CNT/セルロース複合繊維を得た。
得られたeDIPS-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[比較例3]
イオン液体である1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチルホスファート(東京化成株式会社製、以下EMIMDEPとも記載)にCNT濃度0.2質量%となるようにeDIPS-CNT、セルロース濃度5質量%となるようにセルロースを添加し、メノウ乳鉢で30分以上混錬し、0.2質量%eDIPS-CNT/5質量%セルロース/EMIMDEP溶液を得た。
この0.2質量%eDIPS-CNT/5質量%セルロース/EMIMDEP溶液をシリンジに詰め込んだ後、内径0.3 mm、1ホールの注入紡糸ノズルを装着したのち、高圧マイクロフィーダー(三洋テクノス株式会社製、JP-HR)を用い、吐出速度0.9m/minの条件で純水中に横方向に吐出することで糸状に凝固し、凝固糸が緩まないように回転速度15m/minの条件で巻き取り装置の速度を設定し、凝固糸を純水から引き上げ乾燥させることでeDIPS-CNT/セルロース複合繊維を得た。
得られたeDIPS-CNT/セルロース複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[比較例4]
実施例20のアルギン酸ナトリウム対比のeDIPS-CNT濃度が9.1 wt%となるように混錬させた他は実施例20と同様に行い、eDIPS-CNT/アルギン酸複合繊維を得た。得られたCNT/アルギン酸複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
[比較例5]
ジメチルスルホキシド(関東化学株式会社製、以下DMSOとも記載)にCNT濃度0.2質量%となるようにeDIPS-CNT、濃度3wt%となるようにカードラン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を添加し、メノウ乳鉢で30分以上混錬し、0.2質量% eDIPS-CNT / 3質量% カードラン / DMSO液を得た。
この0.2質量% eDIPS-CNT / 3質量% カードラン / DMSO液をシリンジに詰め込んだ後、内径0.3mm、1ホールの注入紡糸ノズルを装着したのち、高圧マイクロフィーダー(三洋テクノス株式会社製、JP-HR)を用い、吐出速度1.3 m/minの条件で純水中に横方向に吐出することで糸状に凝固し、凝固糸が緩まないように回転速度7m/minの条件で巻き取り装置の速度を設定し、凝固糸を純水から引き上げ乾燥させることでeDIPS-CNT/カードラン複合繊維を得た。
得られたeDIPS-CNT/カードラン複合繊維の各物性等を以下の表1に示す。
尚、表1中、強度と伸度の空欄は未測定である。
Figure 2023019716000001
本発明に係る繊維状構造物は、柔軟で製織性及び製編性に優れ、比導電率が高く、かつ、軽量であることから、スマートテキスタイルの心電、筋電、脳波等の生体電位取得用電極や電気刺激用電極、ウェアラブル用電線、伸縮センサ、湿度センサ等の用途に適する。

Claims (5)

  1. カーボンナノチューブ、グラフェン、及び酸化グラフェンからなる群から選択される少なくとも1種の炭素ナノ材料と有機高分子とを含む繊維状構造物であって、該炭素ナノ材料の含有率が該繊維状構造物の全体に対して3質量%以上50質量%以下であり、かつ、該繊維状構造物の比導電率(specific conductivity)が100Scm2/g以上2500Scm2/g以下である、繊維状構造物。
  2. 前記炭素ナノ材料がカーボンナノチューブ(CNT)である、請求項1に記載の繊維状構造物。
  3. 前記有機高分子がセルロースである、請求項1又は2に記載の繊維状構造物。
  4. 前記繊維状構造物が、繊度0.5dtex以上500dtex以下のモノフィラメントである、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維状構造物。
  5. 前記繊維状構造物が、単糸繊度0.5dtex以上500dtex以下、かつ、総繊度1.0dtex以上1000dtex以下のメルチフィラメントである、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維状構造物。
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