JP2023016382A - トランス型カロテノイドをシス型カロテノイドに異性化する方法 - Google Patents

トランス型カロテノイドをシス型カロテノイドに異性化する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】新規な、トランス型カロテノイドをシス型カロテノイドに異性化する方法を提供する。【解決手段】トランス型カロテノイドをシス型カロテノイドに異性化する方法であって、前記トランス型カロテノイドを含有する微生物を亜臨界流体中で処理する工程を含んでなり、前記流体が水を含有する、方法を用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、トランス型カロテノイドをシス型カロテノイドに異性化する方法に関し、より詳しくは、前記トランス型カロテノイドを含有する微生物を亜臨界流体中で処理する工程を含んでなり、前記流体が水を含有する、トランス型カロテノイドをシス型カロテノイドに異性化する方法に関する。
カロテノイドは自然界に広く存在する天然色素であり、カロテノイドの一種としてアスタキサンチン、アドニルビン、アドニキサンチン、ゼアキサンチン、およびβ-クリプトキサンチン等が知られている。アスタキサンチン、アドニルビンおよびアドニキサンチン等には抗不安の生理作用をはじめとする様々な作用があることが知られており(特許文献1)、食品、医薬品等としての用途が期待されている。
アスタキサンチン、アドニルビン、およびアドニキサンチン等は、動物、植物、微生物に広く分布している。例えば、アスタキサンチンは、サケ、マス、マダイ等の魚類、カニ、エビ、オキアミ等の甲殻類等広く自然界に分布すると共に、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、パラコッカス(Paracoccus)属、ブレバンディモナス(Brevundimonas)属、エリスロバクター(Erythrobacter)属に属する細菌類、ヘマトコッカス(Haematococcus)属緑藻類、ファフィア(Phaffia)属酵母類等の微生物によっても産生される。アスタキサンチンやアドニキサンチン等のカロテノイドは、化学合成法により工業的に生産されているが、健康志向や環境保護意識の高まり等から、天然物由来のものが求められている。
上記微生物のうち、パラコッカス属に属する細菌は、カロテノイドの生産性が高い上に増殖速度が大きく、カロテノイドの抽出が容易である等の利点を有している。パラコッカス属に属するアスタキサンチン産生菌株の例としてはE-396株(FERM BP-4283:1993年4月27日付(原寄託日)、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6))(特許文献2)が知られている。
一方、カロテノイドのシス異性化は、菌体からの抽出効率向上に寄与することが知られており、また、カロテノイドのシス体は体内吸収性向上に寄与することも知られている。しかしながら、微生物からシス型カロテノイドを得ようとする場合、微生物の細胞中に含まれるカロテノイドは、細胞膜等の細胞組織への取り込みや細胞に含まれる脂質等生体高分子との相互作用等により、カロテノイド分子そのものを異性化するのに比べ、異性化効率が低く、収率が低いという問題があった。
また、カロテノイドは一般的に水への溶解性が低い。入手性、製造時のハンドリングのしやすさ、環境への影響、ヒトや動物等への適用を考えると抽出溶媒として水を用いるのが好ましい一方、前述の低溶解性から、カロテノイドを水含有溶媒で抽出することは従来困難であり、カロテノイド収率も低かった。
ここで、特許文献3には、メタノールを用いた合成リコペンの熱異性化方法が開示されており、リコペン分子を極性溶媒中で熱処理することで、all-E-リコペン(トランス型)を増加させる異性化方法が記載されている。しかしながら、特許文献3記載の方法において、出発物質は微生物に含有された状態ではなく、シス化率を高める効果は認められない。また、特許文献3で効果が示された抽出溶媒はメタノールのみである。
また、カロテノイド色素の抽出に超臨界または亜臨界CO系内の有機溶媒を用いることが報告されている。具体的には、特許文献4には、植物性カロテノイド色素含有物を超臨界または亜臨界CO系内の有機溶媒に接触させて、カロテノイド色素を抽出する方法が記載されている。しかしながら、特許文献4には、シス異性化に関しての言及はない。
したがって、菌体からの抽出効率向上や体内吸収性向上の観点から、微生物に含有された状態でも適用可能な、シス型カロテノイドの製造技術が依然として求められているといえる。
特開2012-025712号公報 特開平08-009964号公報 特表2004-521931号公報 特開2007-046015号公報
本発明者らは、今般、トランス型カロテノイドを含む微生物菌体を、水を含有する亜臨界流体中で処理することにより、微生物の加工物中のカロテノイドのシス異性化比率が向上されることを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
従って、本発明は、微生物の加工物中のカロテノイドのシス異性化比率を向上させる方法を提供する。
本発明には、以下の発明が包含される。
[1] トランス型カロテノイドをシス型カロテノイドに異性化する方法であって、前記トランス型カロテノイドを含有する微生物を亜臨界流体中で処理する工程を含んでなり、前記流体が水を含有する、方法。
[2] 前記亜臨界流体での処理工程における温度は、160℃以上である、[1]に記載の方法。
[3] 前記流体がエタノールをさらに含んでなる、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記エタノールの含有量が、前記流体全体に対して20質量%~80質量%である、[3]に記載の方法。
[5] 前記流体が、抗酸化剤および植物油 から選択される少なくとも1種をさらに含んでなる、[1]~[4]のいずれか一つに記載の方法。
[6] 前記抗酸化剤が、アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、および没食子酸プロピルからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記抗酸化剤が、大豆油およびマスタードオイルからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の方法。
[7] 前記微生物が、パラコッカス・カロティニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)である、[1]~[6]のいずれか一つに記載の方法。
[8] 前記トランス型カロテノイドが、トランス型アドニルビン、トランス型アドニキサンチン、トランス型アスタキサンチン、トランス型ゼアキサンチン、およびトランス型β-クリプトキサンチンからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の方法。
[9] シス型カロテノイド含有微生物の加工物の製造方法であって、トランス型カロテノイドを含有する微生物を亜臨界流体中で処理する工程を含んでなり、前記流体が水を含有する、方法。
[10] 前記微生物の加工物が、シス型アスタキサンチン、シス型アドニルビン、およびシス型アドニキサンチンからなる群から選択される少なくとも一種を含んでなる、[9]に記載の方法。
[11] 前記微生物の加工物における、アスタキサンチン総量に対するシス型アスタキサンチン含有率が10面積%以上であるか、アドニルビン総量に対するシス型アドニルビン含有率が10面積%以上であるか、または、アドニキサンチン総量に対するシス型アドニキサンチン含有率が10面積%以上である、[10]に記載の方法。
[12] シス型アスタキサンチン、シス型アドニルビン、およびシス型アドニキサンチンからなる群から選択される少なくとも一種を含んでなるシス型カロテノイドを含有する微生物の加工物であって、以下の(i)~(iii)の少なくともいずれか1つを満たす、加工物:
(i) 内因性アスタキサンチン総量に対する内因性シス型アスタキサンチン含有率が51面積%以上である、
(ii) 内因性アドニルビン総量に対する内因性シス型アドニルビン含有率が57面積%以上である、
(iii) 内因性アドニキサンチン総量に対する内因性シス型アドニキサンチン含有率が47面積%以上である。
[13] 前記微生物の加工物中のカロテノイドが全て内因性である、[12]に記載の加工物。
[14] 前記微生物の加工物が乾燥物である、[12]または[13]に記載の加工物。
[15] 前記微生物が、パラコッカス・カロティニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)である、[12]~[14]のいずれか一つに記載の加工物。
本発明によれば、トランス型カロテノイドをシス型カロテノイドに効率よく異性化することができ、微生物の加工物中のカロテノイドのシス異性化比率を向上させることができる。本発明によれば、微生物の加工物中のカロテノイドの、シス異性化比率を向上でき、シス型カロテノイドの収率を向上させることも可能である。また、本発明によれば、微生物の加工物中のカロテノイドの、シス型カロテノイド含有率、シス異性化比率および/またはカロテノイド残存率を向上でき、シス型カロテノイドの収率を向上させることも可能である。また、本発明によればシス型カロテノイド含有微生物の加工物において、内因性シス型カロテノイド含有率を向上できる上で有利である。
発明の具体的説明
本発明の、トランス型カロテノイドをシス型カロテノイドに異性化する方法は、前記トランス型カロテノイドを含有する微生物を亜臨界流体中で処理する工程を含んでなり、前記流体が水を含有することを一つの特徴としている。
本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値および上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
カロテノイド
本発明の一実施態様によれば、カロテノイドとしては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、カロテンやキサントフィルが挙げられ、好ましくはキサントフィルである。本発明におけるカロテノイドとしては、具体的には、アスタキサンチン、アドニルビン、アドニキサンチン、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、エキネノン、カンタキサンチン、3-ヒドロキシエキネノン、アステロイデノン、ビオラキサンチン、アンテラキサンチン、ネオキサンチン、フコキサンチン、ペリジニンおよびロドキサンチン等のキサントフィル、ならびに、リコピン、β-カロテン等のカロテンが挙げられ、好ましくは、アスタキサンチン、アドニルビン、アドニキサンチンである。これらのカロテノイドは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。かかるカロテノイドとしては、例えば、アスタキサンチン、アドニルビン、およびアドニキサンチンの組み合わせであってもよい。
本発明の別の実施態様によれば、本発明のカロテノイドとしては、アスタキサンチン、アドニルビンおよびアドニキサンチンに加え、カンタキサンチン、アステロイデノン、β-カロテン、エキネノンおよび3-ヒドロキシエキネノンからなる群から選択される少なくとも一つをさらに含むことが好ましい。また、本発明のカロテノイドとして、アスタキサンチン、アドニルビンおよびアドニキサンチンに加え、カンタキサンチン、アステロイデノン、β-カロテン、エキネノンおよび3-ヒドロキシエキネノンをさらに含むことがより好ましい。
カロテノイドは分子中央部分の共役二重結合のシス体、トランス体による異性体が存在する。分子中の共役二重結合の1つまたは2つ以上がシス型である異性体を「シス体」または「シス型」カロテノイドといい、分子中の共役二重結合のすべてがトランス型である異性体を「トランス体」、「トランス型」または「オールトランス型」カロテノイドという。単に「カロテノイド」という場合には、シス型カロテノイドとトランス型カロテノイドの双方を含むものとする。シス、トランス異性体の定義は、アスタキサンチン、アドニルビン、アドニキサンチン等の各カロテノイドについても同様にあてはまる。
アスタキサンチンは、赤色の色素であり、その化学式は3,3’-dihydroxy-β,β-carotene-4,4’-dione (C40H5204、分子量596.852)である。トランス型のアスタキサンチンの構造式は下記式(A)で表される。また、シス型のアスタキサンチンとしては、9-シス体、13-シス体、15-シス体、ジシス体またはそれらの組み合わせが含まれる。ここで、9Z-アスタキサンチンの構造式は下記式(B)で表され、13Z-アスタキサンチンの構造式は下記式(C)で表される。
Figure 2023016382000001
アドニルビンの化学式は3-hydroxy-β,β-carotene-4,4’-dione (C40H5203、分子量580.853)であり、トランス型アドニルビンの構造式は下記式で表される。また、シス型アドニルビンには、9-シス体、13-シス体、15-シス体、ジシス体またはそれらの組み合わせが含まれる。
Figure 2023016382000002
アドニキサンチンの化学式は3,3’-dihydroxy-β,β-caroten-4-one (C40H5403、分子量582.869)であり、トランス型アドニキサンチンの構造式は下記式で表される。また、シス型アドニキサンチンには、9-シス体、13-シス体、15-シス体、ジシス体またはそれらの組み合わせが含まれる。
Figure 2023016382000003
また、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のカロテノイドとしては、アスタキサンチン、アドニルビン、およびアドニキサンチンから選択される一種以上のカロテノイドが挙げられる。
また、本発明のカロテノイドは、遊離体、脂肪酸エステル体、薬学的に許容可能な塩、であってもよく、吸収性の観点から、好ましくは、遊離体である。また、カロテノイドは、光学異性体であってもよい。
本発明において、カロテノイドは、薬学的に許容可能な塩の形態であってもよく、これらの塩も本発明におけるカロテノイドに含まれる。本発明において、カロテノイドは、酸または塩基と塩を形成する場合もある。本発明において、薬学的に許容可能な塩は、カロテノイドと薬学的に許容可能な塩を形成するものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、ハロゲン化水素酸塩(例えば、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩等)、無機酸塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩等)、有機カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等)、アミノ酸塩(例えば、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩等)等が挙げられるが、これに限定されない。
また、本発明のカロテノイドは、光学異性体等の立体異性体であってもよい。
アスタキサンチンの光学異性体としては、例えば、3S,3’S-体、3S,3’R-体(meso-体)、3R,3’R-体からなる群から選ばれる少なくとも1つを挙げることができ、好ましくは、3S,3’S-体である。
アドニキサンチンの光学異性体としては、3S,3’R-体、3S,3’S-体、3R,3’S-体および3R,3’R-体からなる群から選ばれる少なくとも1つを挙げることができ、好ましくは、3S,3’R-体である。
本発明の一実施態様によれば、本発明のカロテノイド(好ましくは、トランス型カロテノイド)は微生物中に含まれることが好ましい。具体的には、本発明のトランス型カロテノイドは、微生物を用いた方法(例えば、微生物による発酵法)で製造することができる。かかる微生物は、細菌、藻類、酵母を含み、カロテノイド産生細菌または酵母としては、好ましくは、パラコッカス(Paracoccus)属、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属、ブレブンディモナス(Brevundimonas)属もしくはエリスロバクター(Erythrobacter)属に属する細菌またはファフィア酵母が用いられ、より好ましくはパラコッカス属に属する細菌である。ここで、パラコッカス(Paracoccus)属細菌としては、パラコッカス・カロティニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)、パラコッカス・マークシイ(Paracoccus marcusii)、パラコッカス・ヘウンデシス(Paracoccus haeundaensis)およびパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens)が好ましく用いられ、より好ましくは、パラコッカス・カロティニファシエンスである。パラコッカス属微生物の具体的な菌株の例として、パラコッカス・カロティニファシエンス E-396株およびパラコッカス属細菌A581-1株(FERM BP-4671)が挙げられ、これらの変異株も本発明に好ましく用いられる。
また、カロテノイド産生細菌として、好ましくは16SリボソームRNAに対応するDNAの塩基配列が上記E-396株の塩基配列と高い相同性(同一性)を有する細菌が用いられる。ここで言う「高い相同性を有する」とは、E-396株の16SリボソームRNAに対応するDNAの塩基配列と目的の細菌の対応する塩基配列とが、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上相同であること意味する。E-396株の塩基配列と高い相同性を有する細菌が用いられる。E-396株の16SリボソームRNAに対応するDNAの塩基配列は、例えば国際公開第2010/044469号の配列表に記載されている。16SリボソームRNAに対応するDNAの塩基配列とは、16SリボソームRNAの塩基配列中のU(ウラシル)をT(チミン)に置き換えた塩基配列を意味する。
本発明の一実施態様によれば、カロテノイド産生細菌として、カロテノイドの生産性が改良された変異株も用いることができる。改良された変異株は、アスタキサンチン生産能の高い菌株(例えば、特開2001-95500号に記載の菌株)等の公知の菌株を用いることができる。また、カロテノイドの生産性が改良された変異株は、当業者であれば公知技術に基づき、変異処理とスクリーニングにより取得することができる。変異処理する方法は変異を誘発するものであれば特に限定されない。例えば、N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)およびエチルメタンスルホネート(EMS)等の変異剤による化学的方法、紫外線照射およびX線照射等の物理的方法、遺伝子組換えおよびトランスポゾン等による生物学的方法等を用いることができる。変異処理される微生物は特に限定されないが、カロテノイド産生細菌であることが好ましい。また、変異株は、自然に起こる突然変異により生じたものでもよい。
カロテノイド産生微生物の培養方法(すなわち、カロテノイド産生微生物からのカロテノイドの産生方法)、および該微生物の加工方法は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されない。例えば、カロテノイド産生細菌の培養方法および該細菌の加工方法を以下に示す。
菌体(培養物)の生産方法
例えば、特開2007-261972の方法に従い、カロテノイド産生細菌を培養し、菌体(培養物)を作製する。
本発明において、細菌の培養に用いるカロテノイド生産用培地は、カロテノイド産生細菌が生育し、カロテノイドを産生するものであるならば特に限定されないが、炭素源、窒素源(具体的には、無機窒素源および/または有機窒素源)、無機塩類および必要に応じてビタミン類等を含有する培地が好ましく用いられる。また、さらにアミノ酸、核酸塩基等を添加すると好ましい場合もある。その他として、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス等を適宜添加しても良い。
炭素源としては、例えば、グルコース、シュークロース、ラクトース、フルクトース、トレハロース、マンノース、マンニトールおよびマルトース等の糖類、酢酸、フマル酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マロン酸およびピルビン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブタノールおよびグリセノール等のアルコール類、大豆油、ヌカ油、オリーブ油、トウモロコシ油、ゴマ油およびアマニ油等の油脂類等が挙げられ、これらの炭素源の中から、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。中でも好ましくはグルコースまたはシュークロースが用いられる。培養前の培地(始発培地)に添加する量は炭素源の種類により異なり適宜調整すれば足りるが、通常、培地1L当たり1~100g、好ましくは2~50gである。また、炭素源は始発培地に添加するだけでなく、培養途中に逐次的または連続的に追加供給することも好ましく行われる。
無機窒素源としては、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩類、硝酸カリウム等の硝酸塩類、アンモニアおよび尿素等が挙げられ、これらの中から、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。添加量は窒素源の種類により異なり適宜調整すれば足りるが、通常、培地1Lに対し0.1g~20g、好ましくは0.2~10gである。
有機窒素源としては、例えば、ペプトン、コーンスティープリカー(ろ過処理物を含む)、ファーマメディア、大豆粕、大豆粉、ピーナッツミール、ディスティラーズソルブル、乾燥酵母、グルタミン酸ソーダ等が挙げられ、これらの中から、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。添加濃度は窒素源の種類により異なり適宜調整すれば足りるが、通常、0~80g/L、好ましくは0~40g/Lである。無機窒素源および有機窒素源は、通常始発培地に添加するが、逐次的または連続的に追加供給してもよい。
無機塩類としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム等のリン酸塩類、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩類、硫酸鉄、塩化鉄等の鉄塩類、塩化カルシウム、炭酸カルシウム等のカルシウム塩類、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム等のナトリウム塩類、硫酸マンガン等のマンガン塩類、塩化コバルト等のコバルト塩類、硫酸銅等の銅塩類、硫酸亜鉛等の亜鉛塩類、モリブデン酸ナトリウム等のモリブデン塩類、硫酸ニッケル等のニッケル塩類、セレン酸ナトリウム等のセレン塩類、ホウ酸およびヨウ化カリウム等が挙げられ、これらの中から、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。添加量は無機塩の種類により異なり適宜調整すれば足りるが、通常、培地1Lに対し0.0001~15gである。無機塩類は通常始発培地に添加するが、逐次的または連続的に追加供給してもよい。
ビタミン類としては、例えば、シアノコバラミン、リボフラビン、パントテン酸、ピリドキシン、チアミン、アスコルビン酸、葉酸、ナイアシン、p-アミノ安息香酸、ビオチン、イノシトール、コリン等が挙げられ、これらの中から、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。添加割合はビタミン類の種類により異なり適宜調整すれば足りるが、通常、培地1Lに対し0.001~1000mgであり、好ましくは0.01~100mgである。ビタミン類は通常始発培地に添加するが、逐次的または連続的に追加供給してもよい。
アミノ酸、核酸塩基、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス等の添加割合は、物質の種類により異なり適宜調整すれば足りるが、通常、培地1Lに対し0.2g~200g、好ましくは3~100gである。上記アミノ酸等は通常始発培地に添加するが、逐次的または連続的に追加供給してもよい。
本発明において用いるカロテノイド生産用培地は、殺菌処理した後、細菌の培養に用いられることが好ましい。殺菌処理は、当業者であれば、適宜行うことができる。例えば、適切な容器中の培地をオートクレーブで加熱滅菌することができる。あるいは、滅菌フィルターによりろ過滅菌してもよい。
培地のpHは、例えばpH2~12、好ましくはpH6~9に調整される。
培養は、適切な培養容器において行われる。培養容器は培養容量により適宜選択することができ、例えば、試験管、フラスコ、発酵槽等をあげることができる。培養温度は15~80℃、好ましくは20~35℃、より好ましくは25℃~32℃であり、通常1日~20日間、好ましくは2~12日間、より好ましくは3~9日間、好気条件で培養を行う。好気条件としては、例えば、振とう培養または通気撹拌培養等が挙げられ、溶存酸素濃度を一定の範囲に制御することが好ましい。溶存酸素濃度の制御は、例えば、攪拌回転数、通気量、内圧等を変化させることにより行うことができる。溶存酸素濃度は好ましくは0.3~10ppm、より好ましくは0.5~7ppm、さらに好ましくは1~5ppmに制御される。
本発明の一実施態様によれば、培養が終了した菌体培養液等の培養物から、公知技術に基づき、培地成分のみを取り除くことができる。その後、ドラムドライヤーにて菌体を乾燥させてもよい。乾燥方法としては、ドラムドライヤーの他、スプレードライ、造粒型スプレードライ、凍結乾燥等を用いることができる。
上記のようにカロテノイド産生細菌を培養、ドラムドライヤーの他、スプレードライ、造粒型スプレードライ、凍結乾燥等を用いることができる。
本発明の別の実施態様によれば、上記のようにカロテノイド産生細菌を培養して得られる培養物から遠心分離、ろ過分離またはデカンテーションによりカロテノイドおよび菌体を含む濃縮物を分離することができる。分離工程は酸性条件下で行うこともできる。ここで、本明細書において、「培養物」は、培養液、培養上清、培養菌体、培養で得られた培養濃縮物、乾燥菌体または菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。
培養物は、そのまま分離操作を施すこともできるが、不要な成分の除去効果を高めるために水で培養物を希釈してから分離することもできる。また、遠心分離、ろ過分離、デカンテーション等の操作の最中に水を加えることも可能である。また、培養終了後、分離するまでの間に培養微生物を死滅させるために加熱殺菌を行うことも可能である。
本発明において、菌体の分離の方法は、沈降性に基づいて分離する方法あるいは粒子の大きさに基づいて分離する方法を利用することできる。かかる方法は、具体的には、遠心分離、ろ過分離またはデカンテーションを、単独または2種以上を組み合わせてもよい。また、1回遠心分離を行い、上澄み液に残ったカロテノイドをさらに回収するためにもう一度上澄み液だけを遠心分離に供するというように同種の分離を2回以上繰り返してもよい。遠心分離、ろ過分離またはデカンテーションは当業者であれば、公知の手法に基づき適宜実施することができる。
上記分離方法によって培養物から得られた培養濃縮物には、カロテノイドと菌体が濃縮される。培養濃縮物が次の工程に適した粘度、水分含量になるように、分離速度、分離強度等を適宜調整することも好ましく行うことができる。また、培養濃縮物に水等を加えて希釈することも好ましく行うことができる。
上記のように得られる培養物中の微生物には、アスタキサンチン、アドニルビン、アドニキサンチン等のカロテノイドが1種以上含まれる。
トランス型カロテノイドを含有する微生物を亜臨界流体中で処理する工程
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の異性化方法において、トランス型カロテノイドを含有する微生物を亜臨界流体中で処理する工程(以下、亜臨界流体処理または亜臨界流体処理工程ともいう)を含んでなり、前記流体が水を含有する。トランス型カロテノイド含有微生物を亜臨界流体処理するには、トランス型カロテノイド含有微生物を亜臨界流体と接触させればよい。具体的には、例えば、流体が水である場合、トランス型カロテノイドを含む微生物含有液(例えば、培養濃縮液)の水を亜臨界水の状態にすればよい。
(流体)
流体は、加熱および/または加圧により、亜臨界流体の状態をとりうるものであれば特に限定されない。「亜臨界流体」とは、常圧における沸点から臨界温度までの温度域で加圧することにより液体状態を保った流体をいう。上記流体は、入手しやすさや、製造時のハンドリングのしやすさ、環境への影響、ヒトや動物等への適用等の観点から、水を含有することが好ましい。ここで、流体が水である場合、亜臨界水とは、水を大気圧での沸点(100℃)から臨界温度(374.15℃)の範囲で加圧した際に液状を保持している状態の水である。上記流体は、より好ましくは、エタノールをさらに含有するものである。流体におけるエタノールの濃度は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、0.5~90質量%であり、より好ましくは10~85質量%、さらに好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは20~60質量%である。流体がエタノールを含有することにより、カロテノイドの溶解性が向上し、シス異性化比率が向上できる上で有利である。また、流体がエタノールを含有することにより、カロテイドの溶解性が向上し、低い温度でも効率的な異性化ができる上で有利である。
(抗酸化剤)
本発明の一つの実施態様によれば、上記流体は、抗酸化剤を含んでいてもよい。本発明の抗酸化剤としては、特に限定されないが、ヒト・動物等への適用のしやすさのから、食品添加物として用いられるものが好ましい。抗酸化剤の種類は、カロテノイドの種類に応じて適宜選択できる。抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸(VC)、α-トコフェロール、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、パルミチン酸アスコルビル(PAVC)、コエンザイムQ10、レスベラトロール、およびクルクミンが挙げられ、好ましくは、アスコルビン酸、α-トコフェロールである。これら抗酸化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせで用いてもよい。
上記流体における抗酸化剤の濃度は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、好ましくは0.01~20質量%であり、より好ましくは0.1~10質量%であり、さらに好ましくは0.5~5質量%である。
(植物油)
本発明の一つの実施態様によれば、上記流体は、植物油を含んでいてもよい。本発明の植物油としては、特に限定されず、その種類は、カロテノイドの種類に応じて適宜選択できる。植物油としては、例えば、大豆油、マスタードオイル、ヘンプシード油、ゴマ油、紅花油、コメ油、アルガン油、オリーブ油、ヒマワリ油、マカダミア油、およびパーム油が挙げられ、好ましくは、大豆油、マスタードオイルである。これら植物油は1種を単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせで用いてもよい。
上記流体における植物油の濃度は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、好ましくは0.01~20質量%であり、より好ましくは0.1~10質量%であり、さらに好ましくは0.5~5質量%である。
亜臨界流体処理における加熱温度は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、シス異性化反応を促進する観点から、例えば、100℃以上が挙げられ、好ましくは120℃以上であり、より好ましくは140℃以上であり、さらに好ましくは160℃以上であり、さらに好ましくは180℃以上である。亜臨界流体処理における加熱温度は、カロテノイドの分解を抑制する観点から、例えば、250℃以下が挙げられ、好ましくは240℃以下であり、より好ましくは220℃以下であり、さらに好ましくは200℃以下である。
亜臨界流体処理における圧力は、流体の状態が亜臨界流体である範囲において特に限定されないが、好ましくは、1MPa~25MPaであり、より好ましくは、3MPa~18MPaである。上記範囲の下限以上であれば、好適に流体を亜臨界流体とすることができる。また、上記範囲の上限以下であれば、より低い温度でトランス型カロテノイドをシス型カロテノイドに異性化することができ、生産時のエネルギー効率の観点で好ましい。
亜臨界流体処理の時間は、本発明の効果を奏する限り限定されないが、例えば、1分~180分が挙げられ、好ましくは3分~150分であり、より好ましくは5分~120分である。処理時間は、加熱温度により適宜設定してもよい。例えば、加熱温度が120~180℃である場合、処理時間は1分~180分が好ましく、例えば、加熱温度が180より高く200℃以下である場合、処理時間は10分~90分が好ましく、例えば、加熱温度が200℃より高く240℃以下である場合、処理時間は1分~60分が好ましい。
本発明の好ましい実施態様によれば、亜臨界流体処理の条件として、加熱温度が160~200℃であり、圧力が3MPa~18MPaであり、時間が10分~90分であり、流体が水と共にエタノールを含む。
本発明の一実施態様によれば、本発明の異性化方法において、亜臨界流体処理工程後に、冷却する工程(冷却工程ともいう)を含むことが好ましい。冷却工程の冷却温度は、上記の亜臨界流体処理時の加熱温度の下限より低い温度であればよく、カロテノイドの分解を抑制する観点から、例えば、100℃以下が挙げられ、好ましくは60℃以下であり、より好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは25℃以下であり、さらに好ましくは10℃以下である。冷却する工程の冷却温度の下限は、0℃が挙げられる。
本発明の別の実施態様によれば、本発明の異性化方法は、冷却工程の後に、亜臨界流体処理後の微生物から流体を除く工程を更に含んでいてもよい。流体を除く工程は、例えば、25~30℃、低圧下で、流体を蒸発させる工程であってもよい。
シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物
本発明の別の態様によれば、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物が提供される。かかる微生物の加工物は、少なくともシス型カロテノイドを含有する。シス型カロテノイドの少なくとも一部は、微生物中に含まれるトランス型カロテノイドがシス異性化することで得られる。上記微生物の加工物は、シス型カロテノイドおよび微生物由来成分以外の任意の成分を含んでいてもよい。そのような任意の成分としては、上記の抗酸化剤、植物油、流体の残留成分等が例示される。ここで、加工物とは、微生物そのものではなく、上記異性化方法により、シス型カロテノイドを増加させたものである。なお、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物は、シス型カロテノイドを含有する微生物の処理物、シス異性化処理物、またはシス異性化物と称してもよい。
本発明の好ましい実施態様によれば、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物に含まれるシス型カロテノイドには、上述の異性化方法により得られたシス型カロテノイドが含まれる。かかるシス型カロテノイドとしては、好ましくは、シス型アドニルビン、シス型アドニキサンチン、シス型アスタキサンチン、シス型ゼアキサンチン、シス型β-クリプトキサンチンであり、より好ましくは、シス型アスタキサンチン、シス型アドニルビン、シス型アドニキサンチンである。これらのカロテノイドは1種を単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
(シス型カロテノイド含有率)
本発明のシス型カロテノイドを含有する微生物の加工物において、カロテノイド総量を100面積%とした場合のシス型カロテノイド含有率(面積%)(以下、単に、シス型カロテノイド含有率ともいう)は特に限定されないが、例えば、10面積%以上が挙げられ、好ましくは20面積%以上、より好ましくは30面積%以上、さらに好ましくは40面積%以上、さらに好ましくは50面積%以上、さらに好ましくは60面積%以上である。シス型カロテノイド含有率の上限は特に限定されないが、例えば、90面積%以下であり、好ましくは80面積%以下、より好ましくは70面積%以下である。
本発明の上記微生物の加工物における、シス型カロテノイド含有率、後述のシス異性化比率、およびカロテノイド残存率は、順相カラム(好ましくは、シリカカラム、より好ましくは、粒径5μm、カラム長150mmx内径4.6mmの形態のもの)を用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィー)法により測定できる。定量は、クロマトグラム中における各カロテノイド異性体ピークのピーク面積に基づいてなされる。このような測定は、市販のHPLC装置(例えば株式会社島津製作所製)およびカラム(例えば、Luna、5μm、Silica(2)、100Å(150mmxφ4.6mm)(Phenomenex製))を用いることにより、簡便に行うことができる。上記測定としては、以下の条件により行うことができる。装置:高速液体クロマトグラフProminence システム(SPD-M20A、株式会社島津製作所製)、カラム:Luna、5μm、Silica(2)、100Å(150mm x φ4.6mm)(Phenomenex製)を2本連結、移動相:ヘキサン/酢酸エチル/アセトン(70:20:10、v/v/v)、カラム温度:40℃、流速:1.2mL/min、検出波長:470nm。
HPLC用試料は以下のように調製することができる。最初に、上記の微生物の加工物をアセトンに懸濁し、10℃で15分間超音波処理を行った後、フィルター(好ましくは、孔径 0.22μmのフィルター、より好ましくは、孔径 0.22μmのPTFEフィルター)でろ過する。次に、得られたろ液を、35℃減圧下のエバポレーションにより溶媒を除去した後、酢酸エチル/ヘキサン(体積比 70:30)に溶解し、再度上記フィルターでろ過し、HPLC用試料を得る。なお、培養物からのHPLC用試料の調製方法も、上述の微生物の加工物からのHPLC試料の調製方法と同様である。
本発明の一実施態様によれば、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物はシス型アスタキサンチンを含み、上記微生物の加工物におけるアスタキサンチン総量に対するシス型アスタキサンチン含有率は、例えば、10面積%以上が挙げられ、好ましくは20面積%以上、より好ましくは30面積%以上、さらに好ましくは40面積%以上であり、さらに好ましくは51面積%以上であり、さらに好ましくは53面積%以上である。シス型アスタキサンチン含有率の上限は特に限定されないが、好ましくは90面積%以下である。上記アスタキサンチンは内因性であることが好ましい。ここで、内因性カロテノイドや内因性シス型カロテノイドとは、微生物の内因性カロテノイドに由来するものであり、本発明の異性化方法により異性化されたカロテノイド(好ましくは、シス型カロテノイド)を含むものとする。内因性カロテノイドや内因性シス型カロテノイドの定義は、アスタキサンチン、アドニルビン、アドニキサンチン等の各カロテノイドについても同様にあてはまる。
本発明の一実施態様によれば、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物はシス型アドニルビンを含み、上記微生物の加工物におけるアドニルビン総量に対するシス型アドニルビン含有率は、例えば、10面積%以上が挙げられ、好ましくは20面積%以上、より好ましくは30面積%以上、さらに好ましくは40面積%以上であり、さらに好ましくは57面積%以上であり、さらに好ましくは60面積%以上である。シス型アドニルビン含有率の上限は特に限定されないが、好ましくは90面積%以下である。上記アドニルビンは内因性であることが好ましい。
本発明の一実施態様によれば、シス型カロテノイドを含有する生物の加工物はシス型アドニキサンチンを含み、上記微生物の加工物におけるアドニキサンチン総量に対するシス型アドニキサンチン含有率は、例えば、10面積%以上が挙げられ、好ましくは20面積%以上、より好ましくは30面積%以上、さらに好ましくは40面積%以上であり、さらに好ましくは47面積%以上であり、さらに好ましくは50面積%以上である。シス型アドニキサンチン含有率の上限は特に限定されないが、好ましくは90面積%以下である。上記アドニキサンチンは内因性であることが好ましい。
(シス異性化比率)
本発明のシス型カロテノイドを含有する微生物の加工物におけるシス異性化比率(以下、シス化率ともいう)は、異性化処理の前後(すなわち、亜臨界流体処理工程の前と、冷却工程の後)における、シス型カロテノイドの増加率を意味する。高濃度(例えば93面積%以上、好ましくは96面積%以上)のトランス型カロテノイド含有率のカロテノイドを含有する微生物を用いてシス異性化処理を行った場合には、異性化処理前のシス型カロテノイドは微量で無視できる。このため、シス異性化比率は、得られた微生物の加工物のシス型カロテノイド含有率として求めることができる。すなわち、シス異性化比率(面積%)は、シス型カロテノイド含有率と同様、クロマトグラム中における各カロテノイド異性体ピークのピーク面積に基づいてなされる。具体的には、高濃度のトランス型カロテノイド含有率のカロテノイドを含有する微生物を用いてシス異性化処理を行った場合には、シス異性化比率は、上記微生物の加工物をHPLC分析して、次の式により求めることができる。ここで、ピーク面積としては、ピークが分離している場合はピーク開始点と終了点を結んで得られた面積値であり、ピークが重なっている場合はピーク間の極小値から垂直分割して得られた面積値である。
Figure 2023016382000004
カロテノイドのシス異性化比率は、特に限定されないが、例えば、10面積%以上が挙げられ、好ましくは20面積%以上、より好ましくは30面積%以上、さらに好ましくは40面積%以上、さらに好ましくは50面積%以上、さらに好ましくは60面積%以上である。シス型カロテノイド含有率の上限は特に限定されないが、例えば、90面積%以下であり、好ましくは80面積%以下、より好ましくは70面積%以下である。
本発明の一実施態様によれば、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物はシス型アスタキサンチンを含み、上記微生物の加工物におけるアスタキサンチンのシス異性化比率(=(シス型アスタキサンチンのピーク面積の合算値/全アスタキサンチンのピーク面積の合算値)×100)は、例えば、10面積%以上が挙げられる。かかるアスタキサンチンのシス異性化比率は、好ましくは20面積%以上、より好ましくは30面積%以上、さらに好ましくは40面積%以上であり、さらに好ましくは51面積%以上であり、さらに好ましくは53面積%以上である。アスタキサンチンのシス異性化比率の上限は特に限定されないが、好ましくは90面積%以下である。上記アスタキサンチンは内因性であることが好ましい。
本発明の一実施態様によれば、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物はシス型アドニルビンを含み、上記微生物の加工物におけるアドニルビンのシス異性化比率(=(シス型アドニルビンのピーク面積の合算値/全アドニルビンのピーク面積の合算値)×100)は、例えば、10面積%以上が挙げられる。かかるアドニルビンのシス異性化比率は、好ましくは20面積%以上、より好ましくは30面積%以上、さらに好ましくは40面積%以上であり、さらに好ましくは57面積%以上であり、さらに好ましくは60面積%以上である。アドニルビンのシス異性化比率の上限は特に限定されないが、好ましくは90面積%以下である。上記アドニルビンは内因性であることが好ましい。
本発明の一実施態様によれば、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物はシス型アドニキサンチンを含み、上記微生物の加工物におけるアドニキサンチンのシス異性化比率(=(シス型アドニキサンチンのピーク面積の合算値/全アドニキサンチンのピーク面積の合算値)×100)は、例えば、10面積%以上が挙げられる。かかるアドニキサンチンのシス異性化比率は、好ましくは20面積%以上、より好ましくは30面積%以上、さらに好ましくは40面積%以上であり、さらに好ましくは47面積%以上であり、さらに好ましくは50面積%以上である。アドニキサンチンのシス異性化比率の上限は特に限定されないが、好ましくは90面積%以下である。上記アドニキサンチンは内因性であることが好ましい。
(カロテノイド残存率)
本発明のシス型カロテノイドを含有する微生物の加工物におけるカロテノイド残存率とは、異性化処理前(具体的には、亜臨界流体処理工程の前)のカロテノイド含有量に対する異性化処理後(具体的には、冷却工程の後)のカロテノイド含有量の割合を意味する。カロテノイド残存率は、HPLC分析して、次の式により求めることができる。
Figure 2023016382000005
本発明のシス型カロテノイドを含有する微生物の加工物におけるカロテノイド残存率(以下、残存率ともいう)は、特に限定されないが、例えば、10面積%以上が挙げられ、好ましくは20面積%以上、より好ましくは30面積%以上、さらに好ましくは40面積%以上、さらに好ましくは50面積%以上、さらに好ましくは60面積%以上である。シス型カロテノイド含有率の上限は特に限定されないが、例えば、100面積%以下であり、95面積%以下であってよい。
本発明の一実施態様によれば、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物はシス型アスタキサンチンを含み、上記微生物の加工物におけるアスタキサンチン残存率(=(異性化処理後の全アスタキサンチンのピーク面積の合算値/異性化処理前の全アスタキサンチンのピーク面積の合算値)×100)は、例えば、10面積%以上が挙げられる。かかるアスタキサンチン残存率は、好ましくは20面積%以上、より好ましくは30面積%以上、さらに好ましくは40面積%以上であり、さらに好ましくは51面積%以上であり、さらに好ましくは53面積%以上である。アスタキサンチン残存率の上限は特に限定されないが、例えば、100面積%以下である。上記アスタキサンチンは内因性であることが好ましい。
本発明の一実施態様によれば、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物はシス型アドニルビンを含み、上記微生物の加工物におけるアドニルビン残存率(=(異性化処理後の全アドニルビンのピーク面積の合算値/異性化処理前の全アドニルビンのピーク面積の合算値)×100)は、例えば、10面積%以上が挙げられる。かかるアドニルビン残存率は、好ましくは20面積%以上、より好ましくは30面積%以上、さらに好ましくは40面積%以上であり、さらに好ましくは57面積%以上であり、さらに好ましくは60面積%以上である。アドニルビン残存率の上限は特に限定されないが、例えば、100面積%以下である。上記アドニルビンは内因性であることが好ましい。
本発明の一実施態様によれば、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物はシス型アドニキサンチンを含み、上記微生物の加工物におけるアドニキサンチン残存率(=(異性化処理後の全アドニキサンチンのピーク面積の合算値/異性化処理前の全アドニキサンチンのピーク面積の合算値)×100)は、例えば、10面積%以上が挙げられる。かかるアドニキサンチン残存率は、好ましくは20面積%以上、より好ましくは30面積%以上、さらに好ましくは40面積%以上であり、さらに好ましくは57面積%以上であり、さらに好ましくは60面積%以上である。アドニキサンチン残存率の上限は特に限定されないが、例えば、100面積%以下である。上記アドニキサンチンは内因性であることが好ましい。
(シス型カロテノイドの収率)
本発明のシス型カロテノイドを含有する微生物の加工物におけるシス型カロテノイドの収率(シス体収率ともいう)は、上記シス異性化比率にカロテノイド残存率を乗じることで算出される。かかるシス型カロテノイド収率は、特に限定されないが、例えば、10%以上が挙げられ、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。シス型カロテノイド収率の上限は特に限定されないが、例えば、80%以下であり、70%以下であってよい。
本発明の一実施態様によれば、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物はシス型アスタキサンチンを含み、上記微生物の加工物におけるシス型アスタキサンチンの収率は、上記アスタキサンチンのシス異性化比率にアスタキサンチン残存率を乗じることで算出される。かかるシス型アスタキサンチン収率は、特に限定されないが、例えば、5%以上が挙げられ、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上である。シス型アスタキサンチン収率の上限は特に限定されないが、例えば、80%以下であり、70%以下であってよい。
本発明の一実施態様によれば、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物はシス型アドニルビンを含み、上記微生物の加工物におけるシス型アドニルビンの収率は、上記アドニルビンのシス異性化比率にアドニルビン残存率を乗じることで算出される。かかるシス型アドニルビン収率は、特に限定されないが、例えば、5%以上が挙げられ、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。シス型アドニルビン収率の上限は特に限定されないが、例えば、80%以下であり、70%以下であってよい。
本発明の一実施態様によれば、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物はシス型アドニキサンチンを含み、上記微生物の加工物におけるシス型アドニキサンチンの収率は、上記アドニキサンチンのシス異性化比率にアドニキサンチン残存率を乗じることで算出される。かかるシス型アドニキサンチン収率は、特に限定されないが、例えば、5%以上が挙げられ、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上である。シス型アドニキサンチン収率の上限は特に限定されないが、例えば、80%以下であり、70%以下であってよい。
本発明の好ましい実施態様によれば、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物中のカロテノイドは全て内因性である。
本発明のシス型カロテノイドを含有する微生物の加工物は、前記トランス型カロテノイドを含有する微生物を亜臨界流体中で処理した後に、必要により、乾燥、粉砕等を行うことにより得られる。したがって、上記微生物の加工物としては、乾燥物、粉砕物が挙げられ、好ましくは、乾燥物である。
本発明の別の態様によれば、微生物由来シス型カロテノイド含有組成物が提供される。かかるシス型カロテノイド含有組成物は、好ましくはシス型カロテノイドを含有する微生物の加工物である。
本発明の一実施態様によれば、本発明の微生物由来シス型カロテノイド含有組成物は、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物と共に、シス型カロテノイド等の微生物由来成分以外の任意の成分を含んでいてもよい。そのような任意の成分としては、上記抗酸化剤、植物油、流体の残留成分等が例示される。さらに、上記任意成分の他に、所望により経口上許容可能または薬学的に許容可能な添加剤を配合した組成物として提供することができる。上記添加剤として、溶剤、溶解補助剤、溶解剤、滑沢剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤、保存料、防腐剤、界面活性剤、ゲル化剤、調整剤、キレート剤、pH調整剤、緩衝剤、賦形剤、増粘剤、着色剤、芳香剤、甘味料または香料等が挙げられる。
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の微生物の加工物または組成物は天然品を含むことが挙げられ、上記微生物の加工物または組成物は天然品のみであることがより好ましい。ここで、天然品とは、微生物由来物のみであり、保存料等の添加剤を含まないもの(すなわち、無添加物)である。
本発明の微生物の加工物または組成物は、特に限定されないが、飼料(好ましくは、色揚げ飼料)、食品もしくは飲料等の飲食品(好ましくは、健康食品)、食品添加物、医薬品、医薬部外品、または化粧料として、またはそれら飼料等の原料として用いることができる。上記微生物の加工物は、亜臨界流体中でのシス異性化反応により得ることができる。かかる流体としては、ヒト等の動物に対する安全性の高い流体(例えば、水等)を選択することができ、上記用途に好適に用いられる。
本発明の一つの実施態様によれば、本発明のシス型カロテノイドを含有する微生物の加工物または微生物由来シス型カロテノイド含有組成物は、トランス型カロテノイドを含有する微生物を亜臨界流体中で処理する工程を含む製造方法により製造することができる。ここで、前記流体は水を含有する。
上記の製造方法の態様は、本発明のトランス型カロテノイドをシス型カロテノイドに異性化する方法またはシス型カロテノイドを含有する微生物の加工物に関する記載に準じて実施することができる。
本発明の微生物の加工物または組成物の摂取または投与方法としては、特に限定されないが、点滴、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、皮内注射等の注射、経口、経粘膜、経皮、鼻腔内、口腔内、腹腔内等による摂取または投与が挙げられ、好ましくは、経口摂取または経口投与である。
本発明の微生物の加工物または組成物の摂取量または投与量は、特に限定されず、前記加工物または組成物の処方、カロテノイドの種類、純度、対象の種類、対象の年齢または体重、症状、摂取または投与時間、微生物の加工物や組成物の形態、摂取または投与方法、本発明のカロテノイド以外のカロテノイドまたは薬剤の組み合わせ等に依存して決定できる。本発明の微生物の加工物または組成物は、色揚げ、繁殖率向上、卵黄の栄養強化、暑熱ストレス耐性向上、または免疫力向上のための有効量となるように、1日の摂取量単位の形態から構成されることが好ましい。例えば、本発明の微生物の加工物または組成物を経口摂取または経口投与する場合、カロテノイドとして、例えば、0.01~1000mg/体重kgであり、好ましくは0.05~500mg/体重kgとなるように、微生物の加工物を調製したり、または、該微生物の加工物を組成物に配合することができる。
また、本発明の微生物の加工物または組成物の1日の摂取量または投与量は、上述の微生物の加工物または組成物の摂取量または投与量と同様、微生物の加工物または組成物の処方等に応じて適宜選択されるものである。本発明の微生物の加工物または組成物の1日の摂取量または投与量は、例えば1回または複数回で対象に摂取させるかまたは投与してもよいが、1~5回で対象に摂取させるかまたは投与することが好ましい。したがって、本発明の組成物の1日の摂取または投与回数は、1日に1~5回であり、好ましくは、1日に1~3回であり、より好ましくは、1日に1回である。
本発明の一つの実施態様によれば、本発明の微生物の加工物または組成物を適用する対象は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されないが、好ましくは魚類、甲殻類、哺乳動物、鳥類であり、より好ましくは、サケ、マス、マダイ、カニ、エビ、オキアミ、牛、羊等の反芻動物、ヒト等の霊長類、犬、猫、豚、鶏等の家禽類である。当該対象は健常者(健常動物)であっても患者(患者動物)であってもよい。
本発明の別の態様によれば、対象を色揚げする方法、対象の繁殖率を向上する方法、対象の卵黄の栄養を強化する方法、対象の暑熱ストレス耐性を向上する方法、または対象の免疫力を向上する方法であって、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物の有効量を、それを必要とする対象に投与することまたは摂取させることを含んでなる、方法が提供される。ここで、「有効量」とは、1日の摂取量単位における、上記微生物の加工物中のカロテノイドの含有量等と同様に設定することができる。ここで、「色揚げ」とは、魚肉や卵黄等の色を、消費者の嗜好に合わせた色味とすることを含む。
また、本発明の別の態様によれば、色揚げ、繁殖率向上、卵黄の栄養強化、暑熱ストレス耐性向上、または免疫力向上のための、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物または微生物由来シス型カロテノイド含有組成物の使用が提供される。
また、本発明の別の態様によれば、色揚げ、繁殖率向上、卵黄の栄養強化、暑熱ストレス耐性向上、または免疫力向上のための組成物としての、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物の使用が提供される。
また、本発明の別の態様によれば、色揚げ、繁殖率向上、卵黄の栄養強化、暑熱ストレス耐性向上、または免疫力向上のための組成物の製造における、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物の使用が提供される。
また、本発明の別の態様によれば、色揚げ、繁殖率向上、卵黄の栄養強化、暑熱ストレス耐性向上、または免疫力向上のための、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物が提供される。
上記の方法、使用、色揚げ等のための微生物の加工物の態様は、本発明のトランス型カロテノイドをシス型カロテノイドに異性化する方法またはシス型カロテノイドを含有する微生物の加工物に関する記載に準じて実施することができる。
以下、調製例、試験例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術範囲は、これらの例示に限定されるものではない。また、特に記載しない限り、本明細書に記載の単位や測定方法はJIS規格による。
調製例1:カロテノイド含有培養濃縮液の調製
特開2007-261972号公報の実施例1に記載の方法に準拠してパラコッカス・カロティニファシエンス E-396菌株(FERM BP-4283)の培養を行った。具体的には、グルコース2g/L、肉エキス3g/L、ペプトン10g/L、塩化ナトリウム5g/Lの組成からなる培地10mlを試験管に入れ、121℃、15分間蒸気殺菌した。これにE-396菌株(FERM BP-4283)を1白金耳植菌し30℃で6日間、300rpmの往復振とう培養を行った。
得られた培養液を遠心分離し培養上清を除去することにより、カロテノイド含有培養濃縮液(培養濃縮物ともいう)を得た。得られたカロテノイド含有培養濃縮物に蒸留水を加えることにより適宜希釈して、亜臨界流体処理用試料を得た。
試験例1:カロテノイド含有培養濃縮液の異性化反応(亜臨界流体処理)における温度の検討
調製例1で得られた亜臨界流体処理用試料をポータブルリアクタ(TPR3-VS2-120、耐圧硝子工業株式会社)に供し、窒素加圧(4MPa)およびオイルバスにて加熱(140℃~240℃)することで亜臨界水条件とし、30分間異性化反応(以下、亜臨界流体処理ともいう)を行った。ここで、加熱温度は140℃~240℃の間で変更して反応を行った。その後、氷水で冷却し、微生物の加工物を得た。得られた微生物の加工物をアセトンに懸濁し、10℃で15分間超音波処理を行った後、PTFEフィルター(大阪ケミカル社製、孔径 0.22μm)でろ過した。得られたろ液を、35℃減圧下でエバポレーションすることで溶媒を除去した後、酢酸エチル/ヘキサン(体積比 70:30)に溶解し、再度PTFEフィルターでろ過することで、HPLC用試料(以下、サンプルともいう)を得た。得られたHPLC用試料をHPLCにて下記分析条件にて分析し、得られたクロマトグラム中のピーク面積に基づいて、アスタキサンチン、アドニルビン、およびアドニキサンチンのシス異性化比率(シス化率ともいう)、カロテノイド残存率(残存率ともいう)、およびシス異性体収率(シス体収率ともいう)を算出した。
上記HPLCは以下の条件で行った。
装置:高速液体クロマトグラフProminence システム(SPD-M20A、株式会社島津製作所製)
カラム:Luna、5μm、Silica(2)、100Å(150mm x φ4.6mm)(Phenomenex製)を2本連結して使用
移動相:ヘキサン/酢酸エチル/アセトン(70:20:10,v/v/v)
カラム温度:40℃
流速:1.2mL/min
検出波長:470nm
結果を表1に示す。各サンプルの値は、平均値および標準偏差(n=3)として示す。表中のアスタキサンチンにおいて、「all-E」はトランス体を示す。「Other Z」は9Z、13Z、15Z以外のシス体を示す。
なお、亜臨界流体処理前のパラコッカス菌培養濃縮液(カロテノイド含有培養濃縮液)をHPLCにて上記分析条件にて分析した結果、アスタキサンチン、アドニルビン、およびアドニキサンチンのトランス型の含有率は、それぞれ93.2面積%、96.7面積%、96.5面積%であった。
Figure 2023016382000006
表1から明らかなように、140℃以上の加熱温度において、カロテノイドのシス化率、残存率、およびシス体収率の向上が見られた。ここで、カロテノイドのシス体収率の観点からは、加熱温度は、160℃~220℃の範囲が好ましく、180~200℃の範囲がより好ましいと考えられた。具体的には、カロテノイドがアドニキサンチンおよびアスタキサンチンの場合、シス体収率の観点からは、加熱温度は、160℃~220℃の範囲が好ましく、180~200℃の範囲がより好ましいと考えられた。カロテノイドがアドニルビンの場合、シス体収率の観点からは、加熱温度は、160℃~220℃の範囲が好ましく、200~220℃の範囲がより好ましいと考えられた。
試験例2:カロテノイド含有培養濃縮液の亜臨界流体処理における圧力の検討
亜臨界流体処理条件として、窒素加圧を4MPa、8MPa、12MPa、16MPaとし、それぞれの圧力に対して加熱温度を180、200、220℃とすること以外は試験例1と同様の処理を行い、アスタキサンチン、アドニルビン、アドニキサンチンのシス化率、残存率、およびシス体収率を算出した。
結果を表2に示す。各サンプルの値は、平均値および標準偏差(n=3)として示す。
Figure 2023016382000007
表2から明らかなように、各カロテノイドのシス化率、残存率、およびシス体収率において、窒素加圧による大きな変化は認められなかった。
試験例3:カロテノイド含有培養濃縮液の亜臨界流体処理におけるエタノール添加の検討
亜臨界流体処理条件として、温度160、180、または200℃において、最終濃度として0~50質量%となるようにエタノールを助溶媒として添加すること以外は試験例1と同様の処理を行い、アスタキサンチン、アドニルビン、アドニキサンチンのシス化率、残存率、およびシス体収率を算出した。
結果を表3に示す。各サンプルの値は、平均値および標準偏差(n=3)として示す。
Figure 2023016382000008
Figure 2023016382000009
Figure 2023016382000010
表3から明らかなように、亜臨界水にエタノールを添加することで、亜臨界水単独での亜臨界流体処理に比べてカロテノイドの少なくとも一つにおいてシス化率の向上が見られた。これは、エタノールの添加によりカロテノイドの溶解性が向上することにより、カロテノイドのシス異性化が溶解状態で促進されるためと考えられた。また、溶解性の向上により、低い温度でも効率的な異性化効果が得られると考えられた。低温度での亜臨界流体処理によりカロテノイドの熱分解が抑制され、より高収率でシス体が得られると考えられた。
試験例4:カロテノイド含有培養濃縮液の亜臨界流体処理における添加剤の検討
亜臨界流体処理条件として、最終濃度として1質量%となるように添加剤を添加し、温度200℃とすること以外は試験例1と同様の処理を行い、アスタキサンチン、アドニルビン、およびアドニキサンチンのシス化率、残存率、およびシス体収率を算出した。添加剤としては、アスコルビン酸(関東化学株式会社)、α-トコフェロール(東京化成工業株式会社)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(関東化学株式会社)、没食子酸プロピル(東京化成工業株式会社)、大豆油(健康サララ、味の素株式会社)、マスタードオイル(テズ、Recon Oil Industries Ltd.)を用いた。
結果を表4に示す。各サンプルの値は、平均値および標準偏差(n=3)として示す。
Figure 2023016382000011
表4から明らかなように、添加剤を添加することで、カロテノイドのシス化率およびシス体収率の向上が見られた。
試験例5:カロテノイド含有培養濃縮液の亜臨界流体処理における加熱時間の検討
亜臨界流体処理条件として、加熱温度180℃において加熱時間を30~120分の間で変更させるか、加熱温度200℃において加熱時間を15~60分の間で変更させるか、または、加熱温度220℃において加熱時間を5~45分の間で変更させる以外は試験例1と同様の処理を行い、アスタキサンチン、アドニルビン、およびアドニキサンチンのシス化率、残存率、およびシス体収率を算出した。
結果を表5に示す。各サンプルの値は、平均値および標準偏差(n=3)として示す。
Figure 2023016382000012
表5から明らかなように、加熱時間を長くすることでシス化率の向上が見られた。ここで、カロテノイドのシス化率の観点からは、加熱温度180℃では30~120分の範囲が好ましく、加熱温度200℃では15~60分の範囲が好ましく、加熱温度220℃では5~45分の範囲が好ましいと考えられた。
また、表5から明らかなように、加熱温度により高いシス体収率を示す時間は異なる。ここで、カロテノイドのシス体収率の観点からは、加熱温度180℃では30~120分の範囲が好ましく、加熱温度200℃では15~45分の範囲が好ましく、加熱温度220℃では5~30分の範囲が好ましいと考えられた。
試験例6:カロテノイド含有培養濃縮液の亜臨界流体処理におけるエタノールおよび添加剤の有無の検討(最適化検討)
亜臨界流体処理条件として、温度160、180、または200℃において、エタノール(最終濃度:50質量%)および/またはα-トコフェロール(最終濃度:1質量%)を添加する以外は試験例1と同様の処理を行い、アスタキサンチン、アドニルビン、およびアドニキサンチンのシス化率、残存率、およびシス体収率を算出した。
結果を表6に示す。各サンプルの値は、平均値および標準偏差(n=3)として示す。
Figure 2023016382000013
表6から明らかなように、加熱温度160℃、180℃、200℃ではエタノールを添加することで、アスタキサンチン、アドニルビン、およびアドニキサンチンのうち少なくとも1つのカロテノイドのシス化率またはシス体収率のさらなる向上が見られた。特に、加熱温度160℃、180℃では、アスタキサンチン、アドニルビン、およびアドニキサンチンのうちの少なくとも1つのカロテノイドのシス化率またはシス体収率に特に向上が見られた。

Claims (15)

  1. トランス型カロテノイドをシス型カロテノイドに異性化する方法であって、前記トランス型カロテノイドを含有する微生物を亜臨界流体中で処理する工程を含んでなり、前記流体が水を含有する、方法。
  2. 前記亜臨界流体での処理工程における温度は、160℃以上である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記流体がエタノールをさらに含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記エタノールの濃度が、前記流体全体に対して20質量%~80質量%である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記流体が、抗酸化剤および植物油から選択される少なくとも1種をさらに含んでなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記抗酸化剤が、アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、および没食子酸プロピルからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記抗酸化剤が、大豆油およびマスタードオイルからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記微生物が、パラコッカス・カロティニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記トランス型カロテノイドが、トランス型アドニルビン、トランス型アドニキサンチン、トランス型アスタキサンチン、トランス型ゼアキサンチン、およびトランス型β-クリプトキサンチンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
  9. シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物の製造方法であって、トランス型カロテノイドを含有する微生物を亜臨界流体中で処理する工程を含んでなり、前記流体が水を含有する、方法。
  10. 前記微生物の加工物が、シス型アスタキサンチン、シス型アドニルビン、およびシス型アドニキサンチンからなる群から選択される少なくとも一種を含んでなる、請求項9に記載の方法。
  11. 前記微生物の加工物における、アスタキサンチン総量に対するシス型アスタキサンチン含有率が10面積%以上であるか、アドニルビン総量に対するシス型アドニルビン含有率が10面積%以上であるか、または、アドニキサンチン総量に対するシス型アドニキサンチン含有率が10面積%以上である、請求項10に記載の方法。
  12. シス型アスタキサンチン、シス型アドニルビン、およびシス型アドニキサンチンからなる群から選択される少なくとも一種を含んでなる、シス型カロテノイドを含有する微生物の加工物であって、以下の(i)~(iii)の少なくともいずれか1つを満たす、加工物:
    (i) 内因性アスタキサンチン総量に対する内因性シス型アスタキサンチン含有率が51面積%以上である、
    (ii) 内因性アドニルビン総量に対する内因性シス型アドニルビン含有率が57面積%以上である、
    (iii) 内因性アドニキサンチン総量に対する内因性シス型アドニキサンチン含有率が47面積%以上である。
  13. 前記微生物の加工物中のカロテノイドが全て内因性である、請求項12に記載の加工物。
  14. 前記微生物の加工物が乾燥物である、請求項12または13に記載の加工物。
  15. 前記微生物が、パラコッカス・カロティニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)である、請求項12~14のいずれか一項に記載の加工物。
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