JP2023005434A - 活性エネルギー線硬化性組成物及びコーティング部材 - Google Patents

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哲 野崎
Satoru Nozaki
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Takaaki Niitsuma
千尋 原
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Abstract

【課題】ガラスグレーズと同様の質感を備え、傷がつきにくく基材との密着性に優れたコーティング膜を形成することができる活性エネルギー線硬化性組成物及びこの活性エネルギー線硬化性組成物を用いて形成されたコーティング部材を提供する。【解決手段】硬化性組成物には、ウレタン(メタ)アクリレートからなるA成分、(メタ)アクリレート化合物からなるB成分、多官能チオールからなるC成分、ポリシロキサンからなるD成分及びシリカからなるE成分が含まれている。A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して、A成分の含有量が30質量部以上、B成分の含有量が0~45質量部、A成分の含有量とB成分との含有量の合計が60~94質量部、C成分の含有量が0.5~30質量部、D成分の含有量が0.5~5質量部、C成分の含有量とD成分の含有量との合計が5質量部以上、E成分の含有量が1~10質量部である。【選択図】図1

Description

本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物及びコーティング部材に関する。
例えば陶磁器や家電製品の外装材、電子機器の筐体等の、消費財における使用者の目に触れる部分には、防汚性の向上や耐擦傷性の向上、高級感の演出などの種々の目的でガラスグレーズが焼き付けられていることがある。しかし、ガラスグレーズの焼成には高温での加熱が必要であり、焼成過程における消費エネルギーが多い、焼成に長時間を要するなどの問題がある。
このような問題に対し、有機樹脂を主体とするコーティング剤を用いて基材の表面にコーティング膜を形成する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、イソシアヌレート骨格を有する(メタ)アクリレート(A)と、(A)を除く多官能(メタ)アクリレート(B)と、疎水性ナノシリカ(C)と、ガラスフィラー(D)と、光重合開始剤(E)と、を含み、前記(D)の平均粒径が5~18μmであることを特徴とするトップコート用活性エネルギー線硬化型塗料組成物が記載されている。
特開2020-152741号公報
しかし、特許文献1の塗料組成物を硬化させてなるトップコートは、硬さが低く傷がつきやすいという問題がある。また、特許文献1のトップコートは、基材の材質によっては密着性に劣り、基材からトップコートが剥離しやすいことがある。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、ガラスグレーズと同様の質感を備え、傷がつきにくく基材との密着性に優れたコーティング膜を形成することができる活性エネルギー線硬化性組成物及びこの活性エネルギー線硬化性組成物を用いて形成されたコーティング部材を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、ウレタン(メタ)アクリレートからなるA成分と、
(メタ)アクリレート化合物からなるB成分と、
多官能チオールからなるC成分と、
ポリシロキサンからなるD成分と、
シリカからなるE成分と、を含み、
前記A成分~前記E成分の含有量の合計100質量部に対して、前記A成分の含有量が30質量部以上であり、前記B成分の含有量が0質量部以上45質量部以下であり、前記A成分の含有量と前記B成分との含有量の合計が60質量部以上94質量部以下であり、前記C成分の含有量が0.5質量部以上30質量部以下であり、前記D成分の含有量が0.5質量部以上5質量部以下であり、前記C成分の含有量と前記D成分の含有量との合計が5質量部以上であり、前記E成分の含有量が0.5質量部以上10質量部以下である、活性エネルギー線硬化性組成物にある。
また、本発明の他の態様は、基材と、
前記基材上に設けられたコーティング膜と、を有するコーティング部材であって、
前記コーティング膜は、前記の態様の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる、コーティング部材にある。
前記活性エネルギー線硬化性組成物(以下、「硬化性組成物」という。)には、ウレタン(メタ)アクリレートからなるA成分と、(メタ)アクリレート化合物からなるB成分と、多官能チオールからなるC成分と、ポリシロキサンからなるD成分と、シリカからなるE成分と、が含まれており、これらの含有量はそれぞれ前記特定の範囲内にある。前記硬化性組成物は、これらのA成分~E成分を、活性エネルギー線によって硬化させることにより、ガラスグレーズと同様の質感を備え、傷がつきにくく基材との密着性に優れたコーティング膜を形成することができる。
また、前記コーティング部材の表面には、前記硬化性組成物の硬化物からなるコーティング膜が形成されている。それ故、前記コーティング部材は、ガラスグレーズと同様の質感を有している。また、前記コーティング部材の表面に前記コーティング膜が形成されているため、コーティング部材の表面には傷がつきにくい。さらに、前記コーティング膜は、基材との密着性に優れている。
以上のように、前記の態様によれば、ガラスグレーズと同様の質感を備え、傷がつきにくく基材との密着性に優れたコーティング膜を形成することができる硬化性組成物及びこの硬化性組成物を用いて形成されたコーティング部材を提供することができる。
図1は、実施例1におけるコーティング部材の断面図である。
(活性エネルギー線硬化性組成物)
前記硬化性組成物中に含まれる各成分の機能及び含有量の限定理由を以下に詳説する。
[A成分]
硬化性組成物中には、必須成分として、ウレタン(メタ)アクリレートからなるA成分が含まれている。硬化性組成物中には、1種類のウレタン(メタ)アクリレートが含まれていてもよいし、2種類以上のウレタン(メタ)アクリレートが含まれていてもよい。ウレタン(メタ)アクリレートは、B成分である(メタ)アクリレート化合物とともに活性エネルギー線によって重合し、コーティング膜の基本骨格となる。
硬化性組成物中のA成分の含有量は、A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して30質量部以上であり、かつ、A成分の含有量とB成分の含有量との合計がA成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して60質量部以上94質量部以下となる範囲であればよい。すなわち、例えば硬化性組成物中にB成分が含まれていない場合には、A成分の含有量は、A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して60質量部以上94質量部以下の範囲であればよい。一方、硬化性組成物中にB成分を配合する場合には、A成分の一部をB成分に置き換えることができる。例えば、硬化性組成物中にB成分が含まれている場合には、A成分の含有量は、A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して30質量部以上、かつ、A成分の含有量とB成分の含有量との合計が60質量部以上94質量部以下の範囲となるように設定すればよい。
硬化性組成物中のA成分の含有量をA成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して30質量部以上とすることにより、コーティング膜の硬さを向上させることができる。A成分の含有量がA成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して30質量部未満の場合には、コーティング膜の硬さの低下を招くおそれがある。コーティング膜の硬さをより高める観点からは、A成分の含有量は、A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して32質量部以上であることが好ましく、35質量部以上であることがより好ましい。
また、硬化性組成物中のA成分の含有量とB成分の含有量との合計をA成分~E成分の合計100質量部に対して60質量部以上とすることにより、硬化性組成物を容易に硬化させることができる。A成分の含有量とB成分の含有量との合計がA成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して60質量部未満の場合には、硬化性組成物の硬化性の悪化を招くおそれがある。コーティング膜の硬化性の悪化をより確実に回避する観点からは、A成分の含有量とB成分の含有量との合計は、A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して64質量部以上であることが好ましく、65質量部以上であることがより好ましい。
一方、A成分の含有量とB成分の含有量との合計が過度に多くなると、硬化性組成物中の他の成分の割合が低くなり、コーティング膜の密着性や防汚性の悪化を招くおそれがある。A成分の含有量とB成分の含有量との合計をA成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して94質量部以下、好ましくは87.5質量部以下、より好ましくは82質量部以下とすることにより、密着性及び防汚性に優れたコーティング膜を容易に得ることができる。
硬化性組成物がB成分を含んでいる場合には、A成分の含有量は、A成分~E成分の合計100質量部に対して30質量部以上63質量部以下であることが好ましく、32質量部以上52質量部以下であることがより好ましく、35質量部以上45質量部以下であることがさらに好ましい。この場合には、硬化性組成物中の有機溶剤の配合量を低減し、または有機溶剤を配合せずに硬化性組成物を調製することができる。このような硬化性組成物を用いることにより、例えばプラスチックなどの有機溶剤に溶解しやすい材質からなる基材に対しても容易にコーティング膜を形成することができる。
A成分として用いられるウレタン(メタ)アクリレートは、分子構造中にイソシアネートに由来する構造単位と(メタ)アクリレート化合物に由来する構造単位とを有している。ウレタン(メタ)アクリレートの分子構造内において、これらの構造単位同士はウレタン結合を介して互いに結合されている。
ウレタン(メタ)アクリレートにおけるイソシアネートに由来する構造単位としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ジイソシアネートに由来する構造単位、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂肪族ジイソシアネートに由来する構造単位、ビュレット型ポリイソシアネート、イソシアヌレート型ポリイソシアネート等のジイソシアネートの多量体に由来する構造単位、アダクト型ポリイソシアネートに由来する構造単位及びポリイソシアネートとポリオールとを反応させてなるウレタンプレポリマーに由来する構造単位が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートにおける(メタ)アクリレート化合物に由来する構造単位としては、例えば、アクリル酸に由来する構造単位、アクリル酸メチルやアクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル等の単官能アクリル酸エステルに由来する構造単位、1,3-ブチレングリコールジアクリレートや1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の多官能アクリル酸エステルに由来する構造単位、メタクリル酸に由来する構造単位、メタクリル酸メチルやメタクリル酸ブチル等の単官能メタクリル酸エステルに由来する構造単位、1,3-ブチレングリコールジメタクリレートや1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート等の多官能メタクリル酸エステルに由来する構造単位、及び、前述した(メタ)アクリレートモノマーのオリゴマーに由来する構造単位等が挙げられる。
また、A成分としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製「UV-1700B」、サートマー社製「CN9006NS」、共栄化学株式会社製「UA-306H」、「UA-306T」等の市販されているウレタン(メタ)アクリレートを使用することもできる。
硬化性組成物中には、A成分として、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートが含まれていることが好ましい。このようなウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、サートマー社製「CN9006NS」や、ペンタエリスリトールトリアクリレートとジイソシアネートとを縮合させてなるウレタンプレポリマー(例えば、共栄化学株式会社製「UA-306H」、「UA-306T」)が挙げられる。
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を備えた多官能ウレタン(メタ)アクリレートをA成分として用いることにより、コーティング膜中にA成分同士、あるいはA成分と他の成分とが網目状に結合した構造を容易に形成することができる。その結果、コーティング膜の硬さをより高め、より傷がつきにくくすることができる。
[B成分]
前記硬化性組成物中には、任意成分として、(メタ)アクリレート化合物からなるB成分が含まれていてもよい。硬化性組成物中には、1種類の(メタ)アクリレート化合物が含まれていてもよいし、2種類以上の(メタ)アクリレート化合物が含まれていてもよい。(メタ)アクリレート化合物は、A成分であるウレタン(メタ)アクリレートと同様に、活性エネルギー線によって重合し、コーティング膜の基本骨格に組み込まれる。従って、前記硬化性組成物においては、A成分の一部をB成分に置き換えることができる。
B成分の含有量は、A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して0質量部以上45質量部以下であり、かつ、A成分の含有量とB成分の含有量との合計がA成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して60質量部以上94質量部以下となる範囲から適宜設定することができる。B成分の含有量が過度に多い場合には、コーティング膜の硬化性の悪化を招くおそれがある。B成分の含有量を、A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して好ましくは45質量部以下、より好ましくは43質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下とすることにより、硬化性の悪化をより確実に回避することができる。
(メタ)アクリレート化合物としては、(メタ)アクリレートモノマーや、(メタ)アクリレートモノマーのオリゴマー等を使用することができる。(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸を使用することができる。また、(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート等の、多官能(メタ)アクリレート化合物を使用することもできる。
(メタ)アクリレートモノマーのオリゴマーとしては、例えば、前述した(メタ)アクリレートモノマーの2量体や3量体を使用することができる。これらの(メタ)アクリレート化合物は、単独で使用されていてもよいし、2種類以上の(メタ)アクリレート化合物が併用されていてもよい。
硬化性組成物中には、B成分として、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物が含まれていることが好ましい。このような(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、サートマー社製「SR444」、「SR295」、「SR399NS」及び「SR454NS」等が挙げられる。
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を備えた多官能(メタ)アクリレート化合物をB成分として用いることにより、コーティング膜中にB成分同士、あるいはB成分と他の成分とが網目状に結合した構造を容易に形成することができる。その結果、コーティング膜の硬さをより高め、より傷がつきにくくすることができる。
また、硬化性組成物中には、B成分として、(メタ)アクリレートモノマーが含まれていることが好ましい。(メタ)アクリレートモノマーはA成分に比べて粘度が低いため、硬化性組成物中に(メタ)アクリレートモノマーを配合することにより、粘度調整のための有機溶剤の配合量を低減し、または有機溶剤を配合せずに硬化性組成物を調製することができる。このような硬化性組成物を用いることにより、例えばプラスチックなどの有機溶剤に冒されやすい材質からなる基材に対しても容易にコーティング膜を形成することができる。
また、有機溶剤の配合量が少ない硬化性組成物や、有機溶剤が配合されていない硬化性組成物においては、基材に塗布された硬化性組成物からの有機溶剤の揮発量を低減し、または有機溶剤の揮発が起こらなくすることができる。このような硬化性組成物は、環境負荷の低減にも有効である。
これらの作用効果をより確実に得る観点からは、B成分の含有量は、A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して30質量部以上であることが好ましい。
[C成分]
硬化性組成物中には、必須成分として、多官能チオールからなるC成分が含まれている。硬化性組成物中には、1種類の多官能チオールが含まれていてもよいし、2種類以上の多官能チオールが含まれていてもよい。多官能チオールは、硬化性組成物を硬化させる際に、A成分等に含まれる二重結合の反応率を向上させる作用を有している。また、前記硬化性組成物を硬化させる際に、硬化性組成物に活性エネルギー線が照射されると、硬化性組成物中に過酸化物ラジカルが生じることがある。しかし、多官能チオールと二重結合との反応(いわゆるエン・チオール反応)においては、多官能チオール中のチオール基を過酸化物ラジカルと反応させ、チイルラジカルとすることができる。これにより、過酸化物ラジカルによる効果阻害の発生を抑制することができる。
硬化性組成物中のC成分の含有量は、A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して0.5質量部以上30質量部以下であり、かつ、C成分の含有量とD成分の含有量との合計がA成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して5質量部以上となる範囲であればよい。硬化性組成物中のC成分の含有量を前記特定の範囲内とすることにより、硬化性組成物の硬化性を向上させる。また、この場合には、硬化過程におけるコーティング膜の収縮を抑制することができる。さらに、このような硬化性組成物によれば、コーティング膜の架橋密度を高め、より強固なコーティング膜を形成することができる。
前述した作用効果をより確実に得る観点からは、硬化性組成物中のC成分の含有量は、A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましい。C成分の含有量がA成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して0.5質量部未満の場合には、C成分による硬化性向上の効果が不十分となり、硬化性組成物の硬化性の悪化や耐衝撃性の悪化を招くおそれがある。
また、C成分の含有量とD成分の含有量との合計がA成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して5質量部未満の場合には、コーティング膜の硬さの低下を招くおそれがある。
一方、C成分の含有量が過度に多い場合には、コーティング膜の硬さの低下を招くおそれがある。C成分の含有量をA成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して30質量部以下、好ましくは25質量部以下とすることにより、かかる問題を容易に回避することができる。
C成分として用いられる多官能チオールは、1分子中に2個以上のチオール基(-SH)を有している。多官能チオールとしては、例えば、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン等の2官能チオール、1,3,5-トリス[2-(3-メルカプトブチリルオキシ)エチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン等の3官能チオール及びペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチラート)等の4官能チオールが挙げられる。
硬化性組成物中には、C成分として、1分子中に2個以上4個以下のチオール基を有する多官能チオールが含まれていることが好ましい。このような多官能チオールとしては、例えば、昭和電工株式会社製「カレンズMT BD1」、「カレンズMT PE1」及び「カレンズMT NR1」等が挙げられる。なお、「カレンズMT」は、昭和電工株式会社の登録商標である。
1分子中に2個以上4個以下のチオール基を備えた多官能チオールをC成分として用いることにより、コーティング膜中に含まれる硫黄原子の量を多くし、コーティング膜の屈折率を高くすることができる。その結果、コーティング膜の質感をよりガラスグレーズに近づけることができる。また、多官能チオールにおけるチオール基の数を多くすることにより、チオール基と水酸基との間に水素結合が形成されやすくなる。その結果、セラミックスなどの、水酸基を有する基材とコーティング膜との密着性をより向上させることができる。これらの作用効果をより高める観点からは、硬化性組成物中には、C成分として、1分子中に3個以上4個以下のチオール基を有する多官能チオールが含まれていることがより好ましい。
[D成分]
硬化性組成物中には、D成分として、少なくとも1種類のポリシロキサンが含まれている。ポリシロキサンは、コーティング膜中の有機成分との親和性に優れており、コーティング膜と基材との密着性を向上させる作用を有している。また、ポリシロキサンは、コーティング膜中の無機成分との親和性にも優れているため、ポリシロキサンとシリカ(E成分)とを併用することにより、硬化性組成物中のシリカの凝集を抑制し、硬化性組成物の粘度の上昇を抑制することができる。また、ポリシロキサンをシリカと併用することにより、シリカをコーティング膜中に分散させ、コーティング膜の構造を強化することができる。
硬化性組成物中のD成分の含有量は、A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下であり、かつ、C成分の含有量とD成分の含有量との合計がA成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して5質量部以上となる範囲であればよい。硬化性組成物中のD成分の含有量を前記特定の範囲内とすることにより、硬化性組成物と基材との密着性を向上させることができる。
前述した作用効果をより確実に得る観点からは、硬化性組成物中のD成分の含有量は、A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して1質量部以上であることが好ましい。D成分の含有量がA成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して0.5質量部未満の場合には、硬化性組成物と基材との密着性の悪化を招くおそれがある。
一方、D成分の含有量が過度に多い場合には、D成分によって硬化性組成物の硬化反応が妨げられやすくなり、コーティング膜の硬さの低下を招くおそれがある。D成分の含有量をA成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して5質量部以下、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3質量部以下とすることにより、かかる問題を容易に回避することができる。
D成分として用いられるポリシロキサンとしては、シロキサン結合(-O-Si-)を繰り返してなる主鎖を有する化合物を使用することができる。硬化性組成物中には、1種類のポリシロキサンが含まれていてもよく、2種類以上のポリシロキサンが含まれていてもよい。ポリシロキサンとしては、例えば、直鎖状ポリシロキサンや分岐ポリシロキサン、環状ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン等が挙げられる。
D成分には、ポリシルセスキオキサンが含まれていることが好ましい。D成分としてポリシルセスキオキサンを用いることにより、コーティング膜と基材との密着性をより向上させるとともに、コーティング膜の構造をより強化することができる。同様の観点から、D成分はポリシルセスキオキサンからなることがより好ましい。
ポリシルセスキオキサンは、3官能性シランを含むシラン化合物を加水分解することにより得られる縮合物である。ポリシルセスキオキサンの合成に用いられるシラン化合物としては、例えば、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシ(1-フェニルエチル)シラン、トリメトキシ(2-フェニルエチル)シラン、(1E,4E)-1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシフェニル)-5-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-1,4-ペンタジエン-3-オン、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリメトキシ(4-メトキシフェニル)シラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン等のフェニル基を有するシラン、メチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルジメトキシメチルシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン等のアルキル基を有するシラン、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、ビニルトリメトキシシラン、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、メタクリル酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン等の不飽和結合を有するシラン及び(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン(MPTES)、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランが挙げられる。これらのシラン化合物は、単独で使用されていてもよいし、2種類以上のシラン化合物が併用されていてもよい。
[E成分]
硬化性組成物中には、E成分として、少なくとも1種類のシリカが含まれている。シリカは、ポリシロキサン(D成分)との親和性が高いため、シリカをポリシロキサンと併用することにより、硬化性組成物中のシリカの凝集を抑制することができる。その結果、硬化性組成物の粘度の上昇を抑制するとともに、コーティング膜の構造を強化し、耐摩耗性を向上させることができる。
硬化性組成物中のE成分の含有量は、A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下とする。硬化性組成物中のE成分の含有量を前記特定の範囲内とすることにより、コーティング膜の構造を強化し、耐衝撃性及び耐摩耗性を向上させることができる。
前述した作用効果をより確実に得る観点からは、硬化性組成物中のE成分の含有量は、A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して1.5質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましい。E成分の含有量がA成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して0.5質量部未満の場合には、コーティング膜の耐衝撃性や耐摩耗性の悪化を招くおそれがある。
一方、E成分の含有量が過度に多い場合には、コーティング膜の靭性の低下を招き、衝撃が加わった際に割れが生じやすくなるおそれがある。E成分の含有量をA成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して10質量部以下、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下とすることにより、かかる問題を容易に回避することができる。
E成分として用いられるシリカは、親水性シリカであってもよいし、疎水性シリカであってもよい。コーティング膜の防汚性を向上させる観点からは、E成分は、メタノール滴定法による疎水化度が20%以上となる特性を備えた疎水性シリカであることが好ましい。E成分として疎水性シリカを用いることにより、コーティング膜と汚れとの親和性を低下させることができる。その結果、コーティング膜から汚れを容易に除去することができる。
メタノール滴定法による疎水化度の算出方法は、具体的には、以下の通りである。まず、メタノール濃度が既知であるメタノール水溶液上にシリカを滴下し、液面にシリカを浮かべる。この状態からメタノール水溶液にメタノールを滴下し、メタノール水溶液におけるメタノール濃度を徐々に上昇させる。そして、メタノール水溶液の液面からシリカが沈降した時点におけるメタノール水溶液中のメタノール濃度を、疎水化度とする。すなわち、メタノール滴定法による疎水化度は、シリカが沈降した時点におけるメタノール水溶液の総体積(単位:mL)に対するメタノール水溶液中のメタノールの体積(単位:mL)の比を百分率(単位:%)で表した値である。
このような特性を有する疎水性シリカは、例えば、疎水性官能基を備えた表面処理剤を用いてシリカ粒子に表面処理を施すことにより得ることができる。表面処理が施されるシリカ粒子は、球状シリカ粒子であってもよいし、不定形シリカ粒子であってもよい。表面処理剤としては、例えば、メチルトリメトキシシランやヘキサメチルジシラザン、フェニルトリメトキシシラン等の疎水性官能基を備えたシランカップリング剤を用いることができる。
また、疎水性シリカとしては、例えば、信越化学工業株式会社製「QSG-30」、テイカ株式会社製「MSP-011」、日本アエロジル株式会社製「AEROSIL NAX50」、株式会社アドマテックス製「YA050C-SP3」等の市販品を使用することもできる。なお、「AEROSIL」はエボニック オペレーションズ ゲーエムベーハーの登録商標である。
シリカの平均一次粒子径は、15nmを超え100nm未満であることが好ましい。この場合には、コーティング膜の引裂強度をより向上させ、ひいては耐摩耗性をより向上させることができる。かかる作用効果をより高める観点からは、シリカの平均一次粒子径は、20nm以上90nm以下であることが好ましく、25nm以上80nm以下であることがより好ましい。なお、シリカの平均一次粒子径は、レーザ回折/散乱法により算出される値である。
[活性エネルギー線重合開始剤]
前記硬化性組成物は、活性エネルギー線の照射によって硬化することができるように構成されている。例えば、硬化性組成物中には、活性エネルギー線の照射によって重合反応を開始させることができるように構成された活性エネルギー線重合開始剤(以下、「重合開始剤」という。)が含まれていてもよい。
重合開始剤は、例えば、光線や電子線などの活性エネルギー線を照射した際にラジカルを生じさせることができるように構成されていてもよい。ラジカルの発生に必要なエネルギーは特に限定されることはない。例えば、重合開始剤は、可視光線によってラジカルを発生することができるように構成されていてもよいし、紫外線によってラジカルを発生することができるように構成されていてもよい。
硬化性組成物中の重合開始剤の含有量は、例えば、A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して0.2質量部以上8質量部以下の範囲から適宜設定することができる。硬化性組成物中の重合開始剤の含有量を前記特定の範囲内とすることにより、硬化性組成物を十分に硬化させ、所望の特性を有するコーティング膜を容易に形成することができる。
重合開始剤の含有量が過度に少ない場合には、重合開始剤から生じるラジカルの量が不足するため、コーティング膜の硬化が不十分となりやすい。一方、重合開始剤の含有量が過度に多い場合には、コーティング膜の特性の悪化を招くおそれがある。
重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、フォスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤等の光ラジカル重合開始剤を使用することができる。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2、2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのカルボニル化合物や、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの硫黄化合物が挙げられる。
また、光ラジカル重合開始剤としては、IGM Resins B.V.製「Omnirad1173」、「Omnirad184」、「Omnirad369」、「Omnirad500」、「Omnirad651」、「Omnirad754」、「Omnirad819」、「Omnirad907」、「Omnirad1300」、「Omnirad1800」、「Omnirad1870」、「Omnirad2959」、「Omnirad4265」及び「OmniradTPO H」等の市販品を使用することもできる。なお、「Omnirad」はIGM Group B.V.の登録商標である。
[その他の成分]
硬化性組成物中には、前述したA成分~E成分の他に、必要に応じて、硬化性組成物の粘度を調整するための有機溶剤が含まれていてもよい。また、硬化性組成物中には、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、消泡剤、増粘剤、沈殿防止剤、帯電防止剤、防曇剤、ノンスリップ剤、抗菌剤及び有機微粒子等の添加剤が含まれていてもよい。
また、硬化性組成物中には、コーティング膜の特性を向上させるための充填材が含まれていてもよい。硬化性組成物中に充填材を配合することにより、充填材の材質に応じてコーティング膜の耐傷性、熱伝導性、導電性及び屈折性等の物性を向上させることができる。充填材としては、例えば、ジルコニウム化合物や、平均粒径0.5μm以上5μm以下のガラス粉、平均粒径0.5μm以上5μm以下のシリカ粉、アルミナ、カーボン及び銀粉等が挙げられる。
(コーティング部材)
前記硬化性組成物を基材上に塗布した後、硬化させることによりコーティング部材を得ることができる。このようにして得られるコーティング部材は、基材と、
前記基材上に設けられたコーティング膜と、を有している。
また、前記コーティング膜は、前記硬化性組成物の硬化物から構成されている。
コーティング部材における基材の材質は特に限定されることはない。例えば、基材は金属やセラミックスなどの無機材料から構成されていてもよいし、プラスチックなどの有機材料から構成されていてもよい。また、基材の形状は、所望の用途等に応じて適宜設定すればよい。
コーティング膜は、基材の表面全体に設けられていてもよいし、基材の表面の一部に設けられていてもよい。コーティング膜の厚みは、例えば、1μm以上500μm以下の範囲から適宜設定することができる。コーティング膜の厚みは、3μm以上150μm以下であることが好ましく、5μm以上100μm以下であることが好ましい。
(コーティング部材の製造方法)
前記コーティング部材を作製するに当たっては、基材の表面に前記硬化性組成物を塗布し、次いで、基材上の硬化性組成物を硬化させればよい。硬化性組成物の塗布方法は特に限定されることはなく、バーコーター、ダイコーター、ディップコーター、スプレーコーター、グラビア印刷機及びフレキソ印刷機などの種々の装置を用いて硬化性組成物の塗布を行うことができる。
硬化性組成物中に有機溶剤が含まれている場合には、硬化性組成物の塗布が完了してから硬化性組成物を硬化させるまでの間に、必要に応じて、基材上に塗布された硬化性組成物から有機溶剤を揮発させてもよい。
基材上の硬化性組成物を硬化させるに当たっては、硬化性組成物に活性エネルギー線を照射すればよい。活性エネルギー線のエネルギーは、硬化性組成物の構成に応じて適宜設定すればよい。例えば、活性エネルギー線中に光ラジカル重合開始剤が含まれている場合には、光ラジカル重合開始剤の吸収波長に対応した光線を硬化性組成物に照射すればよい。より具体的には、光ラジカル重合開始剤の吸収波長が紫外線領域にある場合には、光源として、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ及び紫外線発光ダイオードなどの紫外線ランプを使用すればよい。この場合、硬化性組成物への露光量は、例えば、100mJ/cm以上900mJ/cm以下の範囲から適宜設定すればよい。また、光線の照射時間は、光源の種類や光源と塗布面との距離、光源の出力及び所望の露光量等に応じて適宜設定すればよい。
前記コーティング部材の製造方法においては、基材の表面に硬化性組成物を塗布する前に、コーティング膜との密着性を向上させるための表面処理を基材に施すことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、プラズマ処理などが挙げられる。
(実施例1)
前記硬化性組成物及びコーティング部材の実施例を、図1を参照しつつ説明する。本例の硬化性組成物には、ウレタン(メタ)アクリレートからなるA成分と、(メタ)アクリレート化合物からなるB成分と、多官能チオールからなるC成分と、ポリシロキサンからなるD成分と、シリカからなるE成分と、が含まれている。A成分~E成分の含有量の合計100質量部に対して、A成分の含有量が30質量部以上であり、B成分の含有量が0質量部以上45質量部以下であり、A成分の含有量とB成分の含有量との合計が60質量部以上94質量部以下であり、C成分の含有量が0.5質量部以上30質量部以下であり、D成分の含有量が0.5質量部以上5質量部以下であり、C成分の含有量とD成分の含有量との合計が5質量部以上であり、E成分の含有量が0.5質量部以上10質量部以下である。
また、本例の硬化性組成物を図1に示す基材2に塗布した後、活性エネルギー線を照射して硬化性組成物を硬化させることにより、基材2と、硬化性組成物の硬化物からなり、基材2上に形成されたコーティング膜3とを有するコーティング部材1を得ることができる。
本例においては、A成分~E成分及び重合開始剤を表1に示す質量比で含有する硬化性組成物(試験剤S1~試験剤S3)を調製し、これらの試験剤の特性を評価した。なお、表1に示した各成分の含有量は、A成分~E成分の含有量の合計を100質量部とした場合の質量比である。本例において使用したA成分~E成分及び重合開始剤は、具体的には以下の通りである。
・A成分:ウレタンアクリレート(三菱ケミカル株式会社「UV1700B」)
・B成分:エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(サートマー社製「SR454NS」)
・C成分:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製「カレンズMT PE1」)
・D成分:ポリシルセスキオキサン(フェニルトリエトキシシラン(PhTES)、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン(MPTES)及びアクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(ATEP)の縮合生成物)
なお、本例において用いたポリシルセスキオキサンの合成方法は以下の通りである。まず、24.5mmolのPhTES、187.0mmolのMPTES、31.1mmolのATEP、1.3molのHO、0.2molのエタノール及び4.2mmolの酢酸を混合する。この混合物を70℃の温度で3時間加熱し、ポリシルセスキオキサンのゾルとする。次いで、真空中において、ポリシルセスキオキサンのゾルを70℃の温度で10分間加熱し、溶媒を除去する。以上により、ポリシルセスキオキサンを得ることができる。このようにして得られたポリシルセスキオキサンは、粘り気のある液体である。
・E成分:メチルトリメトキシシラン及びヘキサメチルジシラザンにより表面処理が施された疎水性シリカ(信越化学工業株式会社製「QSG-30」、平均一次粒子径30nm、真球状、メタノール滴定法による疎水化度:67%)
・重合開始剤:光ラジカル重合開始剤(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、IGM Resins B.V.製「Omnirad1173」)
なお、表1に示した試験剤R1~試験剤R9は、試験剤S1~試験剤S3との比較のための試験剤である。試験剤R1~試験剤R9は、各成分の質量比が表1に示す値である以外は、試験剤S1~試験剤S3と同様の構成を有している。
本例においては、表1に示す試験剤を用い、コーティング膜の硬さ、基材との密着性及び耐衝撃性の評価を行った。
[コーティング膜の硬さ]
コーティング膜の硬さは、JIS K5600-5-4:1999に規定された鉛筆法による引っかき硬度に基づいて評価した。まず、厚み1.0mmのアクリル板を基材とし、基材上に厚みが15μmとなるように試験剤を塗布した。次いで、試験剤に露光量が300mJ/cmとなるように紫外線を照射し、試験剤を硬化させた。
以上により得られたテストピースを用い、JIS K5600-5-4:1999に規定された鉛筆法により、コーティング膜の引っかき硬度の評価を行った。各試験剤の硬化物からなるコーティング膜の引っかき硬度は、表1に示す通りであった。
[基材との密着性]
基材との密着性は、JIS K5600-5-6:1999に規定されたクロスカット法による付着性に基づいて評価した。厚み1.0mmのアクリル板、厚み2.5mmのガラス板、厚み0.5mmのアルミニウム板または厚み0.5mmのアルミナ板のいずれかを基材とし、基材上に厚みが15μmとなるように試験剤を塗布した。次いで、試験剤に露光量が300mJ/cmとなるように紫外線を照射し、試験剤を硬化させた。
以上により得られたテストピースを用い、JIS K5600-5-6:1999に規定されたクロスカット法により、コーティング膜の付着性の評価を行った。各基材に対するコーティング膜の付着性は、表1に示す通りであった。
なお、表1に示す付着性の程度を示す記号の意味は、以下の通りである。
0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
1:カットの交差点において塗膜の小さなはがれが存在している。クロスカット部分のうち塗膜がはがれている部分の割合が、明確に5%を上回ることはない。
2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分のうち塗膜がはがれている部分の割合が、明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大きくはがれている、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分のうち塗膜がはがれている部分の割合が、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じている、及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分のうち塗膜がはがれている部分の割合が、明確に35%を上回ることはない。
5:分類1~4のいずれにも分類できない状態である。
[耐衝撃性]
厚み1.0mmのアクリル板を基材とし、基材上に厚みが150μmとなるように試験剤を塗布した。次いで、試験剤に露光量が300mJ/cmとなるように紫外線を照射し、試験剤を硬化させた。
以上により得られたテストピースのコーティング膜上に、質量130gの鋼球を300mmの高さから落下させ、コーティング膜に衝撃を与えた。その後、コーティング膜を目視観察し、割れや傷の有無を評価した。表1の「耐衝撃性」欄には、衝撃を与えた後のコーティング膜に割れや傷が存在しない場合には、記号「A」、傷が生じた場合には記号「B」、割れが生じた場合には記号「C」を記載した。
Figure 2023005434000002
表1に示したように、試験剤S1~試験剤S3は、A成分~E成分を含んでおり、これらの成分の含有量がそれぞれ前記特定の範囲内である。それ故、試験剤S1~試験剤S3を硬化させてなるコーティング膜は、ガラスグレーズと同様の質感を有している。また、これらの試験剤を硬化させてなるコーティング膜は、高い硬さを有し、傷がつきにくい。さらに、コーティング膜は、様々な基材に対しても高い密着性を有している。
一方、試験剤R1には、C成分が含まれていないため、硬化性組成物の硬化性が低い。そのため、試験剤R1を硬化させてなるコーティング膜は、試験剤S1~試験剤S3を硬化させてなるコーティング膜に比べて耐衝撃性に劣っている。
試験剤R2には、D成分が含まれていないため、E成分が凝集しやすい。そのため、試験剤R2を硬化させてなるコーティング膜は、試験剤S1~試験剤S3を硬化させてなるコーティング膜に比べて、ガラスやアルミニウム、アルミナなどの無機材料からなる基材に対する密着性に劣っている。
試験剤R3には、C成分及びD成分の両方が含まれていない。そのため、試験剤R3を硬化させてなるコーティング膜は、試験剤S1~試験剤S3を硬化させてなるコーティング膜に比べて硬さが低く、基材に対する密着性及び耐衝撃性に劣っている。
試験剤R4は、C成分が含まれていないことに加え、試験剤S1に比べてD成分の含有量が多くなっているため、硬化性組成物の硬化性が低くなっている。そのため、試験剤R4を硬化させてなるコーティング膜は、試験剤S1を硬化させてなるコーティング膜の硬さが低下するとともに、基材に対する密着性も悪化した。
試験剤R5には、D成分が含まれていないことに加え、試験剤S2に比べてE成分の含有量が多くなっているため、E成分の凝集がより起こりやすくなっている。そのため、試験剤R5を硬化させてなるコーティング膜は、E成分の凝集により、試験剤S2を硬化させてなるコーティング膜よりも耐衝撃性が悪化した。
試験剤R6には、E成分が含まれていないため、試験剤S1~試験剤S3に比べてコーティング膜の構造の強化が不十分となりやすい。そのため、試験剤R6を硬化させてなるコーティング膜は、試験剤S1~試験剤S6を硬化させてなるコーティング膜に比べて耐衝撃性が低く、傷がつきやすい。
試験剤R7に含まれるC成分の量は、前記特定の範囲よりも多い。そのため、試験剤R7を硬化させてなるコーティング膜の硬さは、試験剤S1~試験剤S3を硬化させてなるコーティング膜の硬さよりも低い。
試験剤R8は、D成分の含有量が前記特定の範囲よりも多いため、試験剤S1~試験剤S3に比べて硬化性が低い。そのため、試験剤R8を硬化させてなるコーティング膜の硬さは、試験剤S1~試験剤S3を硬化させてなるコーティング膜の硬さよりも低い。
試験剤R9は、E成分の含有量が前記特定の範囲よりも多いため、試験剤S1~試験剤S3に比べてE成分が凝集しやすい。そのため、試験剤R9を硬化させてなるコーティング膜は、試験剤S1~試験剤S3を硬化させてなるコーティング膜に比べて耐衝撃性に劣る。
(実施例2)
本例では、有機溶剤が配合された硬化性組成物の例を説明する。本例の硬化性組成物(試験剤S4~試験剤S6)には、表2に示すように、A成分、C成分~E成分、重合開始剤及び有機溶剤が表2に示す質量比で含まれている。一方、本例の硬化性組成物中には、B成分が配合されていない。なお、本例において用いたA成分、C成分~E成分及び重合開始剤は、実施例1で用いた化合物と同一である。また、本例で用いた有機溶剤は、具体的には1-メトキシ-2-プロパノールである。
なお、表2に示した試験剤R10~試験剤R12は、試験剤S4~試験剤S6との比較のための試験剤である。試験剤R10~試験剤R12は、各成分の質量比が表2に示す値である以外は、試験剤S4~試験剤S6と同様の構成を有している。
本例においては、表2に示す試験剤を用いて、コーティング膜の硬さ、基材との密着性及び耐衝撃性の評価を行った。これらの特性の評価方法は、基材上にコーティング膜を形成する際に、基材上に硬化性組成物を塗布してから紫外線を照射するまでの間に硬化性組成物から有機溶剤を揮発させた点を除き、実施例1において説明した方法と同様である。表2に、各試験剤を用いて得られたコーティング膜の硬さ、基材との密着性及び耐衝撃性を示す。
Figure 2023005434000003
表2に示したように、試験剤S4~試験剤S6は、必須成分であるA成分及びC成分~E成分を含んでおり、これらの成分の含有量がそれぞれ前記特定の範囲内である。それ故、試験剤S4~試験剤S6を硬化させてなるコーティング膜は、ガラスグレーズと同様の質感を有している。また、これらの試験剤を硬化させてなるコーティング膜は、高い硬さを有し、傷がつきにくい。さらに、コーティング膜は、様々な基材に対しても高い密着性を有している。
一方、試験剤R10には、C成分が含まれていないため、硬化性組成物の硬化性が低い。そのため、試験剤R10を硬化させてなるコーティング膜は、試験剤S4~試験剤S6を硬化させてなるコーティング膜に比べて耐衝撃性に劣っている。
試験剤R11には、D成分が含まれていないため、E成分が凝集しやすい。そのため、試験剤R11を硬化させてなるコーティング膜は、試験剤S4~試験剤S6を硬化させてなるコーティング膜に比べて、ガラスやアルミニウム、アルミナなどの無機材料からなる基材に対する密着性に劣っている。
試験剤R12には、C成分及びD成分の両方が含まれていない。そのため、試験剤R12を硬化させてなるコーティング膜は、試験剤S4~試験剤S6を硬化させてなるコーティング膜に比べて硬さが低く、基材に対する密着性及び耐衝撃性に劣っている。
以上、実施例1及び実施例2に基づいて本発明に係る活性エネルギー線硬化性組成物及びコーティング部材の具体的な態様を説明したが、本発明に係る活性エネルギー線硬化性組成物及びコーティング部材の具体的な態様は、実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲において適宜構成を変更することができる。
1 コーティング部材
2 基材
3 コーティング膜

Claims (8)

  1. ウレタン(メタ)アクリレートからなるA成分と、
    (メタ)アクリレート化合物からなるB成分と、
    多官能チオールからなるC成分と、
    ポリシロキサンからなるD成分と、
    シリカからなるE成分と、を含み、
    前記A成分~前記E成分の含有量の合計100質量部に対して、前記A成分の含有量が30質量部以上であり、前記B成分の含有量が0質量部以上45質量部以下であり、前記A成分の含有量と前記B成分との含有量の合計が60質量部以上94質量部以下であり、前記C成分の含有量が0.5質量部以上30質量部以下であり、前記D成分の含有量が0.5質量部以上5質量部以下であり、前記C成分の含有量と前記D成分の含有量との合計が5質量部以上であり、前記E成分の含有量が0.5質量部以上10質量部以下である、活性エネルギー線硬化性組成物。
  2. 前記A成分には、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートが含まれている、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
  3. 前記C成分には、1分子中に2個以上4個以下のチオール基を有する多官能チオールが含まれている、請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
  4. 前記D成分には、ポリシルセスキオキサンが含まれている、請求項1~3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
  5. 前記E成分には、メタノール滴定法による疎水化度が20%以上となる疎水性シリカが含まれている、請求項1~4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
  6. 前記A成分~前記E成分の含有量の合計100質量部に対して、前記A成分の含有量が30質量部以上63質量部以下であり、前記B成分の含有量が30質量部以上45質量部以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
  7. 前記B成分には、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物が含まれている、請求項6に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
  8. 基材と、
    前記基材上に設けられたコーティング膜と、を有するコーティング部材であって、
    前記コーティング膜は、請求項1~7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる、コーティング部材。
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