JP2023002558A - 放射冷却式遮光装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】昼間の日射環境下において遮光対象の温度上昇を抑制できる放射冷却式遮光装置を提供する。【解決手段】外面側に放射冷却層CPを備える遮光体Mが設けられ、当該遮光体Mの内面の太陽光吸収率が70%以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、放射冷却作用を備えた放射冷却式遮光装置に関する。
放射冷却とは、物質が周囲に赤外線などの電磁波を放射することでその温度が下がる現象のことを言う。この現象を利用すれば、たとえば、電気などのエネルギーを消費せずに冷却対象を冷やす放射冷却装置(放射冷却層)を構成することができる。
放射冷却装置(放射冷却層)の従来例として、放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置させる光反射層とが積層状態で設けられ、赤外放射層が、酸化マグネシウムの単結晶、多結晶、又は、焼結体等にて形成され、光反射層が、銀又は銀合金を備える形態に構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
つまり、放射冷却装置(放射冷却層)は、赤外放射層が、波長8μmから14μmの帯域で大きな熱輻射エネルギーを放射し、光反射層が、赤外放射層を透過した光(紫外光、可視光、赤外光)を反射して放射面から放射させて、赤外放射層を透過した光(紫外光、可視光、赤外光)が冷却対象に投射されて、冷却対象が加温されることを回避することにより、昼間の日射環境下においても冷却対象を冷やすことができる。
尚、光反射層は、赤外放射層を透過した光に加えて、赤外放射層から光反射層の存在側に放射される光を赤外放射層に向けて反射する作用も奏することになるが、以下の説明においては、光反射層が赤外放射層を透過した光(紫外光、可視光、赤外光)を反射することを目的として設けられるものであるとして説明する。
特開2019-168174号公報
遮光装置、つまり、日傘、オーニング、天幕テント(屋根部分が存在し且つ側方部分が開放されたテント)、ターフ等、各種の用途に使用される遮光装置においては、昼間の日射環境下においても、当該遮光装置にて上方が覆われた遮光対象の温度上昇を抑制することが望まれるが、従来の遮光装置では、遮光対象の温度上昇を抑制できないものであり、改善が望まれている。
すなわち、例えば、遮光装置としての日傘においては、当該日傘を使用する使用者(遮光対象)に対して太陽光が照射されることを回避できるものであるが、当該日傘を形成する遮光体(布等の膜材)が、太陽光の照射により高温になり、高温になった遮光体(布等の膜材)からの熱伝達によって使用者(遮光対象)が加熱される虞がある。
しかも、使用者(遮光対象)が位置する路地面やコンクリート路面等の地表面に照射した太陽光が、当該地表面にて反射して日傘を形成する遮光体(布等の膜材)の内面に照射されることが発生したとき、つまり、太陽光の照り返しが発生したときに、その照射された太陽光が日傘を形成する遮光体(布等の膜材)の内面にて反射して使用者(遮光対象)に照射されることにより、使用者(遮光対象)が加熱される虞がある。
つまり、従来の遮光装置では、太陽光の照射により高温になった遮光体が遮光対象を加熱してしまう虞や、太陽光の照り返しが発生したときに、太陽光が遮光体の内面にて反射されて遮光対象に照射されることにより、遮光対象を加熱してしまう虞があり、その結果、遮光対象の温度上昇を抑制できないものであり、改善が望まれるものであった。
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、昼間の日射環境下において遮光対象の温度上昇を抑制できる放射冷却式遮光装置を提供する点にある。
本発明の放射冷却式遮光装置は、外面側に放射冷却層を備える遮光体が設けられ、当該遮光体の内面の太陽光吸収率が70%以上である点にある。
すなわち、遮光対象を覆うように配置される遮光体の外面側に放射冷却層が備えられるものであるから、放射冷却層の放射冷却作用により遮光体が冷却されるため、太陽光が照射されても遮光体の高温化が回避されることにより、遮光体が遮光対象を加熱することを回避できることになる。
また、遮光体における内面の太陽光吸収率が70%以上であるから、太陽光の照り返しが発生したときに、その太陽光が遮光体における内面に照射されても、太陽光の大部分が吸収されるため、遮光体における内面に照射された太陽光が、当該内面にて反射して遮光対象を加熱することを回避できることになる。
ちなみに、遮光体は、その内面に照射された太陽光を吸収することにより、温度が上昇するが、上述の如く、放射冷却層の放射冷却作用により遮光体が冷却されるため、遮光体の高温化が回避されることになる。
このように、遮光対象を覆うように配置される遮光体が高温化することが回避され、しかも、太陽光の照り返しが遮光体における内面にて反射して遮光対象を加熱することが回避されるため、昼間の日射環境下において遮光対象の温度上昇を抑制できることになる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の特徴構成によれば、昼間の日射環境下において遮光対象の温度上昇を抑制できる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記遮光体が、本体形成基材の外面に前記放射冷却層を備え、かつ、前記本体形成基材の内面に、太陽光吸収率が70%以上である太陽光吸収層を備えている形態である点にある。
すなわち、遮光体が、放射冷却層を外面に備える本体形成基材の内面に、太陽光吸収率が70%以上である太陽光吸収層を備える形態に構成されることになる。
このように、太陽光吸収層を、放射冷却層を外面に備える本体形成基材とは別の層として構成するものであるから、例えば、本体形成基材を、用途に適した遮光体を構成するのに好適な材料を用いて形成するようにしながら、その内面に太陽光吸収層を備えさせることにより、遮光体の内面の太陽光吸収率を70%以上にできる。
尚、太陽光吸収層は、黒色や焦げ茶色等、太陽光吸収に適した色に着色されたフィルムを本体形成部材の内面に積層して形成する、本体形成部材の内面に、黒色や焦げ茶色等、太陽光吸収に適した色の塗料を塗布して形成する等、各種の形態で太陽光吸収層を本体形成部材の内面に備えさせることができる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の特徴構成によれば、種々の用途に適した遮光体を良好に作成できる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記遮光体が、本体形成基材の外面に前記放射冷却層を備え、かつ、前記本体形成基材が、太陽光吸収率が70%以上である材料にて形成されている点にある。
すなわち、遮光体が、放射冷却層を外面に備える本体形成基材にて形成されることになり、本体形成基材が、太陽光吸収率が70%以上である材料にて形成されることになる。
つまり、放射冷却層を外面に備える本体形成部材を、太陽光吸収率が70%以上である材料にて形成することにより、遮光体の内面の太陽光吸収率が70%以上であるように構成するものであるから、放射冷却層を外面に備える本体形成基材そのものを太陽光の吸収材料として利用するため、内面の太陽光吸収率が70%以上である遮光体の構成の簡素化を図ることができる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の特徴構成によれば、遮光体の構成の簡素化を図ることができる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記遮光体が、可撓性の膜状体に形成されている点にある。
すなわち、遮光体が、可撓性の膜状体に形成されているから、その遮光体を用いて、日傘、オーニング、天幕テント(屋根部分が存在し且つ側方部分が開放されたテント)、ターフ等の遮光装置を構成できる。つまり、遮光体が可撓性を備える必要がある遮光装置を適切に作成することができる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の特徴構成によれば、遮光体が可撓性を備える必要がある遮光装置を適切に作成することができる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記遮光体が、遮光対象の上方を覆いかつ当該遮光対象物の側方を開放する状態で設けられている点にある。
すなわち、遮光体が、遮光対象の上方を覆いかつ当該遮光対象物の側方を開放する状態で設けられているから、遮光対象の上方を覆う遮光体の内面には、太陽光の照り返しが発生したときに、その照り返しの太陽光が照射されることになるが、その照射された太陽光が遮光体にて吸収されることになる。
つまり、外面側に放射冷却層を備える遮光体が、遮光対象の上方を覆いかつ当該遮光対象物の側方を開放する状態で設けられていても、放射冷却層の放射冷却作用により遮光体が高温化することが回避され、しかも、太陽光の照り返しが遮光体における内面にて反射して遮光対象を加熱することが回避されるため、昼間の日射環境下において遮光対象の温度上昇を適切に抑制できることになる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の特徴構成によれば、遮光対象の上方を覆いかつ当該遮光対象物の側方を開放する状態で遮光体が設けられている場合において、昼間の日射環境下において遮光対象の温度上昇を適切に抑制できる。
本発明の放射冷却式遮光装置は、前記放射冷却層が、放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置させる光反射層とを備える形態に構成され、
前記赤外放射層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整された樹脂材料層であり、
前記光反射層が、銀または銀合金を備え、
前記太陽光吸収層の太陽光吸収率が70%以上である点を特徴とする。
すなわち、放射冷却層における赤外放射層としての樹脂材料層の放射面から入射する太陽光は、樹脂材料層を透過した後、樹脂材料層の放射面の存在側とは反対側にある光反射層で反射され、放射面から系外へ逃がされる。
なお、本明細書の記載において、単に光と称する場合、当該光の概念には紫外光(紫外線)、可視光、赤外光を含む。これらを電磁波としての光の波長で述べると、その波長が10nmから20000nm(0.01μmから20μmの電磁波)の電磁波を含む。
また、放射冷却層への伝熱(入熱)は、樹脂材料層で赤外線に変換されて、放射面から系外へ逃がされる。
このように、放射冷却層は、放射冷却層へ照射される太陽光を反射し、また、放射冷却層への伝熱(例えば、大気からの伝熱や、放射冷却層が冷却する遮光体からの伝熱)を赤外光として系外へ放射することができる。
そして、樹脂材料層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整されているから、銀または銀合金を備える光反射層にて太陽光を適切に反射させるようにしながら、昼間の日射環境においても、冷却機能を発揮することができる。
従って、昼間の日射環境においても、遮光体の外面側に備えられた放射冷却層によって、遮光体を冷却することができ、その結果、昼間の日射環境においても、遮光体の温度上昇を適切に抑制できる。
もちろん、放射冷却層の存在によって、太陽光が遮光体を透過することが抑制されるから、太陽光が遮光体を透過して遮光対象に照射されることはない。
従って、昼間の日射環境においても放射冷却作用により遮光体を冷却して、遮光対象が加熱されることを適切に回避できるのである。
ちなみに、樹脂材料層は、柔軟性の高い樹脂材料にて形成されることになるから、樹脂材料層に柔軟性を持たせることができ、しかも、光反射層は、例えば銀の薄膜として構成する等により、柔軟性を備えさせることができる。
したがって、樹脂材料層と光反射層とを備える放射冷却層に柔軟性を持たせることができ、放射冷却層を遮光体の外面側に適切に備えさせることができる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の特徴構成によれば、使用する環境が直射日光のある日射環境のときにも遮光体の温度上昇を適切に抑制できる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記赤外放射層と前記光反射層との間に保護層を備える形態に構成され、
前記保護層が、厚さが300nm以上で、40μm以下のポリオレフィン系樹脂、又は、厚さが17μm以上で、40μm以下のポリエチレンテレフタラート樹脂である点にある。
すなわち、赤外放射層としての樹脂材料層の放射面から入射する太陽光は、樹脂材料層及び保護層を透過した後、樹脂材料層の放射面の存在側とは反対側にある光反射層で反射され、放射面から系外へ逃がされる。
また、保護層が、ポリオレフィン系樹脂にて厚さが300nm以上で、40μm以下の形態に、又は、エチレンテレフタラート樹脂にて厚さが17μm以上で、40μm以下の形態に形成されているから、昼間の日射環境においても、光反射層の銀または銀合金が変色することを抑制できるため、光反射層にて太陽光を適切に反射させるようにしながら、昼間の日射環境においても、冷却機能を的確に発揮させることができる。
つまり、保護層が存在しない場合には、樹脂材料層にて発生したラジカルが光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することや、樹脂材料層を透過する水分が光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することにより、光反射層の銀または銀合金が短期間で変色して、光反射機能を適切に発揮しない状態になる虞があるが、保護層の存在により、光反射層の銀または銀合金が短期間で変色することを抑制できる。
保護層にて光反射層の銀または銀合金の変色を抑制することについて説明を加える。
保護層が、ポリオレフィン系樹脂にて厚さが300nm以上で、40μm以下の形態に形成される場合には、ポリオレフィン系樹脂は、波長0.3μmから0.4μmの紫外線の波長域の全域において紫外線の光吸収率が10%以下である合成樹脂であるから、保護層が紫外線の吸収により劣化し難いものとなる。
そして、保護層を形成するポリオレフィン系樹脂の厚さが、300nm以上であるから、樹脂材料層にて発生したラジカルが光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することを遮断し、また、樹脂材料層を透過する水分が光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することを遮断する等の遮断機能を良好に発揮することになり、光反射層を形成する銀又は銀合金の変色を抑制できることになる。
つまり、ポリオレフィン系樹脂にて形成される保護層は、紫外線の吸収により、反射層から離れる表面側にラジカルを形成しながら劣化することになるが、厚さが300nm以上であるから、形成したラジカルが光反射層に到達することはなく、また、ラジカルを形成しながら劣化するにしても、紫外線の吸収が低いことにより劣化の進み具合は遅いものであるから、上述の遮断機能を長期に亘って発揮することになる。
保護層が、エチレンテレフタラート樹脂にて厚さが17μm以上で、40μm以下の形態に形成される場合には、エチレンテレフタラート樹脂は、ポリオレフィン系樹脂よりも、波長0.3μmから0.4μmの紫外線の波長域において紫外線の光吸収率が高い樹脂材料であるが、厚さが17μm以上であるから、樹脂材料層にて発生したラジカルが光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することを遮断し、また、樹脂材料層を透過する水分が光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することを遮断する等の遮断機能を長期に亘って良好に発揮することになり、保護層を形成する銀又は銀合金の変色を抑制できることになる。
つまり、エチレンテレフタラート樹脂にて形成される保護層は、紫外線の吸収により、反射層から離れる表面側にラジカルを形成しながら劣化することになるが、厚さが17μm以上であるから、形成したラジカルが反射層に到達することはなく、また、ラジカルを形成しながら劣化するにしても、厚さが17μm以上であるから、上述の遮断機能を長期に亘って発揮することになる。
尚、ポリオレフィン系樹脂及びエチレンテレフタラート樹脂にて保護層を形成する場合において、その厚さの上限を定める理由は、保護層が放射冷却に寄与しない断熱性を奏することを極力回避するためである。つまり、保護層は、厚さが厚くなるほど放射冷却に寄与しない断熱性を奏することになるから、反射層を保護する機能を発揮させながらも、放射冷却に寄与しない断熱性を奏することを極力回避するために、厚さの上限が定められることになる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、光反射層の銀または銀合金が短期間で変色することを抑制しながら遮光体を良好に冷却できる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記放射冷却層が、接着剤又は粘着剤の接続層にて前記遮光体の外面に装着されている点にある。
すなわち、遮光体が可撓性を有する場合において、可撓性を有する遮光体の外面に対して、接着剤又は粘着剤の接続層にて放射冷却層を密着させる状態に的確に装着できる。
ちなみに、遮光体の外面は、一般的に、鏡面では無く、凹凸が存在する状態に形成されることになるが、接着剤又は粘着剤の接続層にて放射冷却層を遮光体の外面に接続させるものであるから、光反射層に対して遮光体の外面の凹凸が反映されるのを抑制して、光反射層を平坦な状態に維持することができる。
つまり、光反射層に対して遮光体の外面の凹凸が反映されると、遮光体の外面の凹凸に起因する光の散乱により、光反射層の反射率が低下して、光が吸収されてしまう不都合を生じる状態となるが、光反射層を平坦な状態に維持することにより、光反射層の反射率の低下を抑制することができる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、可撓性を有する遮光体の外面に対して放射冷却層を密着させる状態に的確に装着できる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記放射冷却層における前記放射面が、凹凸状に形成されている点にある。
すなわち、放射面が凹凸状に形成されることにより、放射面の表面積を増加させることができ、その結果、放射冷却層を風にて冷却して、冷却機能を向上させることができる。
例えば、自然風が遮光体の存在箇所に通風される場合において、その自然風が放射面に対して通風されることにより、冷却機能を向上させることができる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、冷却機能を向上させることができる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記光反射層は、波長0.4μmから0.5μmの反射率が90%以上、波長0.5μmより長波の反射率が96%以上である点にある。
すなわち、太陽光スペクトルは波長0.3μmから4μmにかけて存在し、そして、波長が0.4μmから大きくなるにつれて強度が大きくなり、特に波長0.5μmから波長2.5μmにかけての強度が大きい。
光反射層が、波長0.4μmから0.5μmにかけて90%以上の反射率を示し、波長0.5μmより長波の反射率が96%以上である反射特性を備えると、光反射層が太陽光エネルギーを5%程度以下しか吸収しなくなる。
その結果、夏場の南中時に、光反射層が吸収する太陽光エネルギーを50W/m程度以下とすることができ、樹脂材料層による放射冷却を良好に行うことができる。
尚、本明細書では、太陽光について、断りのない場合、スペクトルはAM1.5Gの規格とする。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、光反射層による太陽光エネルギーの吸収を抑えて、樹脂材料層による放射冷却を良好に行うことができる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層の膜厚が、
波長0.4μmから0.5μmの光吸収率の波長平均が13%以下であり、波長0.5μmから波長0.8μmの光吸収率の波長平均が4%以下であり、波長0.8μmから波長1.5μmまでの光吸収率の波長平均が1%以内であり、1.5μmから2.5μmまでの光吸収率の波長平均が40%以下となる光吸収特性を備え、且つ、
8μmから14μmの輻射率の波長平均が40%以上となる熱輻射特性を備える状態の厚みに調整されている点にある。
尚、波長0.4μmから0.5μmの光吸収率の波長平均とは、0.4μmから0.5μmの範囲の波長毎の光吸収率の平均値を意味するものであり、波長0.5μmから波長0.8μmの光吸収率の波長平均、波長0.8μmから波長1.5μmまでの光吸収率の波長平均、及び、1.5μmから2.5μmまでの光吸収率の波長平均も同様である。また、輻射率を含む他の同様な記載も同様な平均値を意味するものであり、以下、本明細書においては同様である。
すなわち、樹脂材料層は、厚みによって光吸収率や輻射率(光放射率)が変化する。そのため、太陽光をできるだけ吸収せず、いわゆる大気の窓の領域の波長帯域(光の波長8μmから14μmの領域)において大きな熱輻射を発するように樹脂材料層の厚みを調整する必要がある。
具体的には、樹脂材料層における太陽光の光吸収率(光吸収特性)の観点において、波長0.4μmから0.5μmの光吸収率の波長平均が13%以下であり、波長0.5μmから波長0.8μmの光吸収率の波長平均が4%以下であり、波長0.8μmから波長1.5μmまでの光吸収率の波長平均が1%以内であり、1.5μmから2.5μmまでの光吸収率の波長平均が40%以下とする必要がある。尚、2.5μmから4μmまでの光吸収率については、波長平均が100%以下であればよい。
このような光吸収率が分布する場合、太陽光の光吸収率は10%以下となり、エネルギーで言うと100W以下となる。
つまり、太陽光の光吸収率は樹脂材料層の膜厚を厚くすると増加する。樹脂材料層を厚膜にすると、大気の窓の輻射率はほぼ1となり、その際に宇宙に放出する熱輻射は125W/mから160W/mとなる。
上述の如く、光反射層での太陽光吸収は50W/m以下であることが好ましい。
したがって、樹脂材料層と光反射層における太陽光吸収の和が150W/m以下であり、大気の状態がよければ冷却が進む。樹脂材料層は、以上のように太陽光スペクトルのピーク値付近の吸収率が小さなものを用いるのが良い。
また、樹脂材料層の赤外光を放射する輻射率(熱輻射特性)の観点では、波長8μmから14μmの輻射率の波長平均が40%以上となる必要がある。
すなわち、光反射層で吸収される50W/m程度の太陽光の熱輻射を樹脂材料層から宇宙に放出させるには、それ以上の熱輻射を樹脂材料層が出す必要がある。
例えば、外気温が30℃のとき、波長8μmから14μmの大気の窓の熱輻射の最大は200W/mである(輻射率1として計算)。この値が得られるのは、高山など、空気の薄いよく乾燥した環境の快晴時である。低地などでは大気の厚みが高山よりも厚くなるので、大気の窓の波長帯域は狭くなり、透過率は低下する。ちなみに、このことを「大気の窓が狭くなる」と呼ぶ。
また、実際に放射冷却式遮光装置を使用する環境は多湿であることもあり、その場合も大気の窓は狭くなる。低地で利用する際の大気の窓域で発生する熱輻射は、状態の良いときで30℃において160W/mと見積もられる(輻射率1として計算)。
また、日本ではよくあることであるが、空に靄があるときや、スモッグが存在する場合、大気の窓はさらに狭くなり、宇宙への放射は125W/m程度となる。
かかる事情を鑑みて、波長8μmから14μmの輻射率の波長平均は40%以上(大気の窓帯での熱輻射強度が50W/m以上)ないと中緯度帯の低地で用いることができない。
したがって、樹脂材料層の厚みを、上述した光学的規定の範囲になるように調整することにより、太陽光の光吸収による入熱よりも大気の窓における出熱の方が大きくなり、昼間の日射環境においても屋外で放射冷却できるようになる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、太陽光の光吸収による入熱よりも大気の窓における出熱の方が大きくなって、日射環境においても放射冷却できる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層を形成する樹脂材料は、炭素-フッ素結合、シロキサン結合、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エーテル結合、エステル結合、ベンゼン環のいずれかを1つ以上有する樹脂材料から選択される点にある。
すなわち、樹脂材料層を形成する樹脂材料として、炭素-フッ素結合(C-F)、シロキサン結合(Si-O-Si)、炭素-塩素結合(C-Cl)、炭素-酸素結合(C-O)、エーテル結合(R-COO-R)、エステル結合(C-O-C)、ベンゼン環のいずれかを1つ以上有する無色の樹脂材料を用いることができる。
キルヒホッフの法則により、輻射率(ε)と光吸収率(A)は等しい。光吸収率(A)は吸収係数(α)から下記式1で求めることができる。
A=1-exp(-αt)・・・(式1) 尚、tは膜厚である。
つまり、樹脂材料層の厚みを厚くすると、吸収係数の大きな波長帯域で大きな熱輻射が得られる。屋外で放射冷却する場合、大気の窓の波長帯域である波長8μmから14μmにおいて吸収係数の大きな材料を用いるとよい。また、太陽光の吸収を抑制するためには、波長0.3μmから4μm、特に0.4μmから2.5μmの範囲で吸収係数を持たない、或いは小さな材料を用いるとよい。上記式1の吸収係数と光吸収率の関係式からわかるように、光吸収率(輻射率)は樹脂材料層の膜厚によって変化する。
日射環境下での放射冷却によって周囲の大気より温度を下げるためには、樹脂材料層を形成する樹脂材料として、大気の窓の波長帯域で大きな吸収係数をもち、太陽光の波長帯域で吸収係数を殆ど持たない材料を選ぶと、樹脂材料層の膜厚の調整によって、太陽光は殆ど吸収しないが、大気の窓の熱輻射を多く出す、つまりは太陽光の入力よりも放射冷却による出力の方が大きな状態を作り出すことができる。
樹脂材料層を形成する樹脂材料の吸収スペクトルについて説明を加える。
炭素-フッ素結合(C-F)に関しては、CHFおよびCFに起因する吸収係数が大気の窓である波長8μmから14μmにかけた広帯域に大きく広がっており、特に8.6μmで吸収係数が大きい。併せて、太陽光の波長帯域に関しては、エネルギーが大きな波長0.3μmから2.5μmで目立った吸収係数がない。
C-F結合を有する樹脂材料としては、
完全フッ素化樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
部分フッ素化樹脂であるポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリフッ化ビニル(PVF)、
フッ素化樹脂共重合体であるペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、
四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、
エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、
エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)が挙げられる。
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を代表としての基本構造部のC-C結合、C-H結合、C-F結合の結合エネルギーを求めると、4.50eV、4.46eV、5.05eVとなる。それぞれ、波長0.275μm、波長0.278μm、波長0.246μmに対応し、これら波長より短波長側の光を吸収する。
太陽光スペクトルは波長0.300μmより長波しか存在しないため、フッ素樹脂を用いた場合、太陽光の紫外線、可視光線、近赤外線をほとんど吸収しない。
尚、紫外線は波長0.400μmよりも短波長側の範囲とし、可視光線は波長0.400μmから0.800μmの範囲とし、近赤外線は波長0.800μmから3μmの範囲とし、中赤外線は波長3μmから8μmの範囲とし、遠赤外線は波長8μmよりも長波長側の範囲とする。
シロキサン結合(Si-O-Si)をもつ樹脂材料としては、シリコーンゴムおよびシリコーン樹脂が挙げられる。当該樹脂は、C-Siの結合の伸縮に起因する大きな吸収係数が波長13.3μmを中心にブロードに表れ、CSiHの対象面外変角(縦揺れ)に起因する吸収係数が波長10μmを中心にブロードに表れ、CSiHの対象面内変角(はさみ)に起因する吸収係数が波長8μm付近に小さく表れる。このように、大気の窓において大きな吸収係数を持つ。紫外領域に関しては、主鎖のSi-O-Siの結合エネルギーが4.60eVであり、波長0.269μmに対応し、この波長より短波長側の光を吸収する。太陽光スペクトルは波長0.300μmより長波しか存在しないため、シロキサン結合を用いた場合、太陽光の紫外線、可視光線、近赤外線をほとんど吸収しない。
炭素-塩素結合(C-Cl)に関しては、C-Cl伸縮振動による吸収係数が波長12μmを中心に半値幅1μm以上の広帯域に現れる。
また、炭素-塩素結合(C-Cl)を持つ樹脂材料としてはポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられるが、ポリ塩化ビニルの場合、塩素の電子吸引の影響で、主鎖に含まれるアルケンのC-Hの変角振動に由来する吸収係数が波長10μmあたりに現れる。つまり、大気の窓の波長帯域で大きな熱輻射を出すことが可能である。なお、アルケンの炭素と塩素の結合エネルギーは3.28eVであり、その波長は0.378μmに対応し、この波長より短波長側の光を吸収する。つまり、太陽光の紫外線を吸収するが、可視域については吸収をほとんど持たない。
エーテル結合(R-COO-R)、エステル結合(C-O-C)に関しては、波長7.8μmから9.9μmにかけて吸収係数を持つ。また、エステル結合、エーテル結合に含まれる炭素-酸素結合に関しては、波長8μmから10μmの波長帯域にかけて強い吸収係数が現れる。
ベンゼン環を炭化水素樹脂の側鎖に導入すると、ベンゼン環自身の振動や、ベンゼン環の影響による周りの元素の振動によって、波長8.1μmから18μmにかけて広く吸収が現れるようになる。
これらの結合をもつ樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂、エチレンテレフタラート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートがある。例えばメタクリル酸メチルのC-C結合の結合エネルギーは3.93eVであり、波長0.315μmに対応し、この波長より短波長の太陽光を吸収するが、可視域については吸収をほとんど持たない。
樹脂材料層を形成する樹脂材料が、前述の輻射率、吸収率特性を有すれば、樹脂材料層としては、一種類の樹脂材料の単層膜、あるいは、複数種類の樹脂材料の多層膜、複数種類がブレンドされた樹脂材料の単層膜、複数種類がブレンドされた樹脂材料の多層膜でも構わない。なお、ブレンドには、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体といった共重合体や側鎖を置換した変性品も含まれる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、放射冷却層が太陽光の入力よりも放射冷却による出力の方が大きな状態を作り出すことができる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層を形成する樹脂材料の主成分がシロキサンであり、
前記樹脂材料層の厚みが、1μm以上である点にある。
すなわち、上記式1のA=1-exp(-αt)から分かるように、厚みtによって、光吸収率(輻射率)は変化する。樹脂材料の光吸収率(輻射率)が、大気の窓において大きな吸収係数を持つ厚みが必要である。
シロキサン結合(Si-O-Si)が主たる構成要素の樹脂材料の場合、1μm以上の膜厚があると、大気の窓における輻射強度が大きくなって、太陽光の入力よりも放射冷却による出力の方が大きな状態を作り出すことができる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、樹脂材料層を形成する樹脂材料の主成分がシロキサンである場合において、放射冷却層が太陽光の入力よりも放射冷却による出力の方が大きな状態を作り出すことができる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層の厚みが、10μm以上である点にある。
すなわち、炭素-フッ素結合(C-F)、炭素-塩素結合(C-Cl)、炭素-酸素結合(C-O)、エステル結合(R-COO-R)、エーテル結合(C-O-C)、ベンゼン環のいずれかが主たる構成要素の樹脂材料の場合、10μm以上の膜厚があると、大気の窓における輻射強度が大きくなって、太陽光の入力よりも放射冷却による出力の方が大きな状態を作り出すことができる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、樹脂材料層を形成する樹脂材料が、炭素-フッ素結合(C-F)、炭素-塩素結合(C-Cl)、炭素-酸素結合(C-O)、エステル結合(R-COO-R)、エーテル結合(C-O-C)、ベンゼン環のいずれかが主たる構成要素の樹脂材料の場合において、放射冷却層が太陽光の入力よりも放射冷却による出力の方が大きな状態を作り出すことができる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層の厚みが、20mm以下である点にある。
すなわち、樹脂材料層を形成する樹脂材料の大気の窓の熱輻射は材料表面から約100μm程度以内の範囲で生じる。
つまり、樹脂材料の厚みが厚くなっても放射冷却に寄与する厚みは変わらず、残りの厚みは放射冷却後の冷熱を断熱する作用を与える。理想的に太陽光を全く吸収しない樹脂材料層ができたとすると、太陽光は放射冷却式遮光装置の光反射層でのみ吸収される。
樹脂材料の熱伝導率はおしなべて0.2W/m・K程度であり、この熱伝導性を考慮して計算すると樹脂材料層の厚みが20mmを超えると、冷却面(光反射層における樹脂材料層の存在側とは反対側の面)の温度が上昇する。太陽光をまったく吸収しない理想的な樹脂材料が存在したとしても、樹脂材料の熱伝導率はおしなべて0.2W/m・K程度であるので、20mm以上の厚みにすると、樹脂材料層の熱輻射(放射冷却)によって、上記冷却面にて冷却する遮光体を冷却することができず、遮光体が日射を受けて加熱されてしまうため、20mm以上の膜厚にすることはできない。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、遮光体を適切に冷却することができる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、フッ素樹脂もしくはシリコーンゴムである点にある。
すなわち、炭素-フッ素結合(C-F)が主たる構成要素のフッ素樹脂、つまり、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEPP)は、太陽光スペクトルの紫外光域、可視光、近赤外域において殆ど光吸収性を持たない。
また、シロキサン結合(Si-O-Si)を主鎖とし、側鎖の分子量が小さい樹脂、つまり、シリコーンゴムは、フッ素樹脂と同様に、太陽光スペクトルの紫外光域、可視光、近赤外域において殆ど光吸収性を持たない。
フッ素樹脂およびシリコーンゴムの熱伝導率は0.2W/m・Kであり、この点に鑑みると、これら樹脂は厚さ20mmまで厚くしても放射冷却機能を発揮する。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、樹脂材料層の樹脂材料がフッ素樹脂あるいはシリコーンゴムである場合において、放射冷却層が放射冷却機能を適切に発揮させることができる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合、ベンゼン環のいずれかを1つ以上を有する炭化水素を主鎖とする樹脂、又は、側鎖の炭化水素の炭素数が2個以上のシリコーン樹脂であり、
前記樹脂材料層の厚みが500μm以下である点にある。
すなわち、樹脂材料層を形成する樹脂材料が、炭素-塩素結合(C-F)、炭素-酸素結合(C-O)、エステル結合(R-COO-R)、エーテル結合(C-O-C)、ベンゼン環のいずれかを1つ以上を有する炭化水素を主鎖とする樹脂であった場合、或いは、側鎖の炭化水素の炭素数が2個以上のシリコーン樹脂であった場合には、共有結合電子による紫外線吸収以外に、近赤外域に結合の変角や伸縮などの振動に基づく吸収が現れる。
具体的には、CH、CH、CHの第一励起状態への遷移の基準音による吸収がそれぞれ波長1.6μmから1.7μm、波長1.65μmから1.75μm、波長1.7μmに現れる。さらに、CH、CH、CHの結合音の基準音による吸収がそれぞれ波長1.35μm、波長1.38μm、波長1.43μmに現れる。さらに、CH、CHの第二励起状態への遷移の倍音がそれぞれ波長1.24μmあたりに現れる。C-H結合の変角や伸縮の基準音は波長2μmから2.5μmにかけて広帯域に分布している。また、R-CO-Rのような構造式を有する場合、波長1.9μmあたりに大きな光吸収が存在する。
例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、エチレンテレフタラート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルは、近赤外域に関してCH、CH、CHに起因する同様の光吸収特性を示す。これら樹脂材料を熱伝導性の観点で規定した20mmの厚さまで厚くすると、太陽光に含まれる近赤外線を吸収して加熱される。したがって、これらの樹脂材料を用いる際は、厚さを500μm以下にする必要がある。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、樹脂材料が、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合、ベンゼン環のいずれかを1つ以上を有する炭化水素を主鎖とする樹脂、又は、側鎖の炭化水素の炭素数が2個以上のシリコーン樹脂である場合において近赤外線の吸収を抑制できる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、炭素-フッ素結合、シロキサン結合を含む樹脂と、炭化水素を主鎖とする樹脂とのブレンドであり、前記樹脂材料層の厚みが500μm以下である点にある。
すなわち、樹脂材料層を形成する樹脂材料が、炭素-フッ素結合(C-F)或いはシロキサン結合(Si-O-Si)を主鎖とする樹脂と、炭化水素を主鎖とする樹脂とをブレンドした樹脂材料の場合、ブレンドされた炭化水素を主鎖とする樹脂の割合に応じてCH、CH、CHなどに起因する近赤外域の光吸収が現れる。炭素-フッ素結合或いはシロキサン結合が主成分の場合、炭化水素に起因する近赤外域の光吸収は小さくなるので、熱伝導性の観点での上限の20mmまで厚くすることができる。しかし、ブレンドされる炭化水素樹脂が主成分となる場合は厚さを500μm以下にする必要がある。
フッ素樹脂或いはシリコーンゴムと炭化水素のブレンドには、フッ素樹脂或いはシリコーンゴムの側鎖を炭化水素に置換したものや、フッ素モノマーおよびシリコーンモノマーと炭化水素モノマーの交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体も含まれる。なお、フッ素モノマーと炭化水素モノマーの交互共重合体としては、フルオロエチレン・ビニルエステル(FEVE)、フルオロオレフィンーアクリル酸エステル共重合体、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)が挙げられる。
置換する炭化水素側鎖の分子量および割合に応じてCH、CH、CHなどに起因する近赤外域の光吸収が現れる。
側鎖や共重合として導入されるモノマーが低分子であるとき、あるいは、導入されるモノマーの密度が小さいとき、炭化水素に起因する近赤外域の光吸収は小さくなるので、熱伝導性の観点での限界の20mmまで厚くすることができる。
フッ素樹脂或いはシリコーンゴムの側鎖や共重合されるモノマーとして高分子の炭化水素を導入する場合、樹脂の厚みを500μm以下にする必要がある。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、樹脂材料が炭素-フッ素結合、シロキサン結合を含む樹脂と、炭化水素を主鎖とする樹脂とのブレンドである場合において、近赤外線の吸収を抑制できる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、フッ素樹脂であり、
前記樹脂材料層の厚みが、300μm以下である点にある。
すなわち、放射冷却層は実用の観点では、樹脂材料層の厚みは薄い方がよい。樹脂材料の熱伝導率は、金属やガラスなどよりも一般に低い。冷却対象物(遮光体)を効果的に冷却するには、樹脂材料層の膜厚は必要最低限であるのがよい。樹脂材料層の膜厚を厚くするほどに大気の窓の熱輻射は大きくなり、ある膜厚を超えると大気の窓における熱輻射エネルギーは飽和する。
飽和する樹脂材料層の膜厚は樹脂材料にもよるが、フッ素樹脂の場合は概ね300μmもあれば十分に飽和する。したがって、熱伝導度の観点で500μmよりも300μm以下に樹脂材料層の膜厚を抑えるのが望ましい。
ちなみに、熱輻射は飽和していないが、厚みが100μm程度であっても大気の窓領域において十分な熱輻射を得ることができる。厚さが薄い方が、熱貫流率が高まり冷却対象物の温度をより効果的に下げられるので、例えば、フッ素樹脂の場合、100μm程度以下の厚さにしてもよい。
また、フッ素樹脂の場合は、C-F結合に起因する吸収係数よりも炭素-ケイ素結合、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合に由来する吸収係数の方が大きい。当然、熱伝導度の観点で500μmよりも300μm以下に膜厚を抑えるのが望ましいが、更に膜厚を薄くして熱伝導性を上げるとさらに大きな放射冷却効果が期待できる。
ちなみに、フッ素樹脂の一例としては、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好適に使用できる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、樹脂材料がフッ素樹脂である場合において放射冷却効果を向上できる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合、ベンゼン環のいずれかを一つ以上有する樹脂材料であり、
前記樹脂材料層の厚みが、50μm以下である点にある。
すなわち、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合、ベンゼン環を含む樹脂材料の場合には、厚みが100μmであっても、大気の窓における熱輻射エネルギーは飽和しており、厚さ50μmでも大気の窓領域において十分な熱輻射が得られる。
樹脂材料の厚さが薄い方が、熱貫流率が高まり冷却対象物の温度をより効果的に下げられるので、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合、ベンゼン環を含む樹脂の場合、50μm以下の厚さにすると断熱性が小さくなり被冷却物を効果的に冷却することができる。
薄くする効用は断熱性を下げて冷熱を伝えやすくすること以外にもある。それは、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合を含む樹脂が呈する、近赤外域でのCH、CH、CH由来の近赤外域の光吸収の抑制である。薄くすると、これらによる太陽光吸収を小さくすることができるので、放射冷却装置の冷却能力が高まる。
以上の観点から炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合、ベンゼン環を含む樹脂の場合、50μm以下の厚さにするとより効果的に日照下において放射冷却効果を出すことができる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合、ベンゼン環のいずれかを一つ以上有する樹脂材料において放射冷却効果を向上できる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、炭素-ケイ素結合を有する樹脂材料であり、
前記樹脂材料層の厚みが、10μm以下である点にある。
すなわち、炭素-ケイ素結合を有する樹脂材料の場合、厚さ50μmでも大気の窓領域において熱輻射が飽和しきっており、厚さ10μmでも大気の窓領域において十分な熱輻射が得られる。樹脂材料の厚さが薄い方が、熱貫流率が高まり冷却対象物の温度をより効果的に下げられるので、炭素-ケイ素結合を含む樹脂材料の場合、10μm以下の厚さにすると断熱性が小さくなり冷却物対象を効果的に冷却することができる。薄くすると、太陽光吸収を小さくすることができるので、放射冷却式遮光装置の冷却能力が高まる。
以上の観点から炭素-ケイ素結合を含む樹脂材料の場合、10μm以下の厚さにするとより効果的に日射環境において放射冷却効果を出すことができる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、炭素-ケイ素結合を有する樹脂材料において放射冷却効果を向上できる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、塩化ビニル樹脂又は塩化ビニリデン樹脂であり、
前記樹脂材料層の厚みが、100μm以下で10μm以上である点にある。
すなわち、厚みが100μm以下で10μm以上である塩化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル)又は塩化ビニリデン樹脂(ポリ塩化ビニリデン)は、大気の窓領域において十分な熱輻射が得られるものである。
塩化ビニル樹脂又は塩化ビニリデン樹脂は、その熱輻射特性が大気の窓領域において大きな熱輻射が得られるフッ素樹脂よりもやや劣るものの、シリコーンゴム等の他の樹脂材料よりも優れ、フッ素樹脂よりもかなり安価であるから、直射日光下で周囲温度よりも温度が低下する放射冷却装置を安価に構成するのに有効である。
さらに、薄膜状の塩化ビニル樹脂又は塩化ビニリデン樹脂は、軟質性であるから、他物が接触しても傷がつき難いため、長期に亘って美麗な状態に維持できる。ちなみに、薄膜状のフッ素樹脂は、硬質性であるから、他物の接触により傷がつき易く、美麗な状態を維持し難いものである。
また、塩化ビニル樹脂は、難燃性であり且つ生分解され難いものであるから、屋外で使用する放射冷却装置の樹脂材料層を形成する樹脂材料として好適である。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、日射環境においても周囲温度よりも温度が低下しかつ傷がつき難い放射冷却層を安価に得ることができる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記光反射層が、銀または銀合金で構成され、その厚みが50nm以上である点にある。
すなわち、光反射層に上述の反射率特性、つまり、波長0.4μmから0.5μmの反射率が90%以上、波長0.5μmより長波の反射率が96%以上である反射率特性を持たせるためには、光反射層における放射面側の反射材料としては、銀または銀合金である必要がある。
そして、銀または銀合金のみで前述の反射率特性を持たせた状態で太陽光を反射する場合、厚さが50nm以上必要である。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、光反射層による太陽光エネルギーの吸収を的確に抑えて、樹脂材料層による放射冷却を良好に行うことができる。
本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成は、前記光反射層が、前記保護層に隣接して位置する銀または銀合金と前記保護層から離れる側に位置するアルミまたはアルミ合金の積層構造である点にある。
すなわち、光反射層に前述の反射率特性を持たせるためには、銀または銀合金とアルミまたはアルミ合金を積層させた構造にしてもよい。なお、この場合も放射面側の反射材料は銀または銀合金である必要がある。この場合、銀の厚みは10nm以上必要であり、アルミの厚みは30nm以上必要である。
そして、アルミまたはアルミ合金は、銀または銀合金よりも安価であるから、適切な反射率特性を持たせながらも、光反射層の低廉化を図ることができる。
つまり、高価な銀または銀合金を薄くして、光反射層の低廉化を図るようにしながらも、光反射層を、銀または銀合金とアルミまたはアルミ合金との積層構造にすることにより、適切な反射率特性を持たせながらも、光反射層の低廉化を図ることができる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の更なる特徴構成によれば、適切な反射率特性を持たせながらも、光反射層の低廉化を図ることができる。
放射冷却式遮光装置の基本構成を説明する図である。 樹脂材料の吸収係数と波長帯域との関係を示す図である。 樹脂材料の光吸収率と波長との関係を示す図である。 シリコーンゴムの輻射率スペクトルを示す図である。 PFAの輻射率スペクトルを示す図である。 塩化ビニル樹脂の輻射率スペクトルを示す図である。 エチレンテレフタラート樹脂の輻射率スペクトルを示す図である。 オレフィン変成材料の輻射率スペクトルを示す図である。 放射面の温度と光反射層の温度との関係を示す図である。 シリコーンゴム及びペルフルオロアルコキシフッ素樹脂の光吸収率スペクトルを示す図である。 エチレンテレフタラート樹脂の光吸収率スペクトルを示す図である。 銀をベースにした光反射層の光反射率スペクトルを示す図である。 フルオロエチレンビニルエーテルの輻射率スペクトルを示す図である。 塩化ビニリデン樹脂の輻射率スペクトルを示す図である。 放射冷却層の実験結果を示す表である。 放射冷却式遮光装置の具体構成を示す図である。 放射冷却式遮光装置の具体構成を示す図である。 放射冷却式遮光装置の具体構成を示す図である。 放射冷却式遮光装置の具体構成を示す図である。 樹脂材料の光吸収率と波長との関係を示す図である。 ポリエチレンの光透過率と波長との関係を示す図である。 試験用構成を説明する図である。 保護層がポリエチレンの場合の試験結果を示す図である。 保護層が紫外線吸収アクリルの場合の試験結果を示す図である。 ポリエチレンの輻射率スペクトルを示す図である。 放射冷却式遮光装置の実験結果を示すグラフである。 放射冷却式遮光装置の実験結果を示すグラフである。 放射冷却層の別構成を説明する図である。 放射冷却層を凹凸状に形成した構成を示す図である。 放射冷却層の凹凸状の具体例を示す図である。 放射冷却層の凹凸状の具体例を示す図である。 オーニングを示す斜視図である。 天幕テントを示す斜視図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔放射冷却式遮光装置の基本構成〕
図1に示すように、放射冷却式遮光装置Wは、外面側に放射冷却層CPを備える遮光体Mが設けられ、当該遮光体Mの内面の太陽光吸収率が70%以上に構成されている。
具体的には、遮光体Mが、本体形成基材Eの外面に放射冷却層CPを備え、かつ、本体形成基材Eの内面に、太陽光吸収率が70%以上である太陽光吸収層Kを備える形態に構成されている。
図1には、放射冷却式遮光装置Wとして日傘が例示され、日傘の骨材にて支持される遮光体Mが、可撓性の膜状体として形成されている。
つまり、遮光体Mが、織物製の本体形成基材Eの外面側に柔軟性の放射冷却層CPが装着された形態に形成されて、柔軟性を備える膜状体として形成されることにより、折り畳みできるように構成されている。
また、太陽光吸収層Kは、例えば、黒色や焦げ茶色等の太陽光吸収率が70%以上である塗料を、本体形成基材Eの内面に塗布することにより形成されている。尚、太陽光吸収層Kは、太陽光吸収率が70%以上である合成樹脂製や布製の膜材を、本体形成基材Eの内面に貼着することによっても形成できる。
放射冷却式遮光装置Wとしての日傘は、遮光体Mにて使用者(遮光対象)の上方を覆うようにする状態で使用されることになるが、遮光体Mの外面側に放射冷却層CPが備えられるものであるから、放射冷却層CPの放射冷却作用により遮光体Mが冷却されるため、太陽光が照射されても遮光体Mの高温化が回避されることにより、遮光体Mが使用者(遮光対象)を加熱することを回避することになる。
また、太陽光を含む光Lが地面やコンクリート路面等の地表面Gに照射することにより、太陽光が地表面Gで反射する照り返しが生じる場合があるが、遮光体Mにおける内面の太陽光吸収率が70%以上であるから、太陽光の照り返しが発生したときに、その太陽光が遮光体Mにおける内面に照射されても、太陽光の大部分が吸収されるため、遮光体Mにおける内面に照射された太陽光が、当該内面にて反射して使用者(遮光対象)を加熱することを回避することになる。
ちなみに、遮光体Mは、その内面に照射された太陽光を吸収することにより、温度が上昇するが、上述の如く、放射冷却層CPの放射冷却作用により遮光体Mが冷却されるため、遮光体Mの高温化が回避されることになる。
従って、放射冷却式遮光装置Wとしての日傘は、使用者(遮光対象)の上方を覆うように配置される遮光体Mが高温化することが回避され、しかも、太陽光の照り返しが遮光体Mの内面にて反射して使用者(遮光対象)を加熱することが回避されるため、昼間の日射環境下において使用者(遮光対象)の温度上昇を抑制できることになる。
〔放射冷却層の詳細〕
図1に示す如く、放射冷却層CPは、放射面Hから赤外光IRを放射する赤外放射層Aと、当該赤外放射層Aにおける放射面Hの存在側とは反対側に位置させる光反射層Bと、赤外放射層Aと光反射層Bとの間の保護層Dとを積層状態に備え、且つ、フィルム状に形成されている。
つまり、放射冷却層CPが、放射冷却フィルムとして構成されている。
光反射層Bは、赤外放射層A及び保護層Dを透過した太陽光等の光Lを反射するものであり、その反射特性が、波長400nm(0.4μm)から500nm(0.5μm)の反射率が90%以上、波長500nmより長波の反射率が96%以上である。
太陽光スペクトルは、図10に示す如く、波長300nmから4000nmにかけて存在し、波長400nmから大きくなるにつれ強度が大きくなり、特に波長500nmから波長1800nmにかけての強度が大きい。
尚、本実施形態において、光Lとは、紫外光(紫外線)、可視光、赤外光を含むものであり、これらを電磁波としての光の波長で述べると、その波長が10nmから20000nm(0.01μmから20μmの電磁波)の電磁波を含む。ちなみに、本書では、紫外光(紫外線)の波長域が、300nmから400nmの間であるとする。
光反射層Bが、波長400nmから500nmにかけて90%以上の反射特性を示し、波長500nmより長波の反射率が96%以上の反射特性を示すことにより、放射冷却層CP(放射冷却フィルム)が光反射層Bで吸収する太陽光エネルギーを5%以下に抑えることができ、すなわち夏場の南中時に吸収する太陽光エネルギーを50W程度とすることができる。
光反射層Bは、銀あるいは銀合金で構成される、又は、保護層Dに隣接して位置する銀または銀合金と保護層Dから離れる側に位置するアルミまたはアルミ合金の積層構造として構成されて、柔軟性を備えるものであって、その詳細は後述する。
赤外放射層Aは、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整された樹脂材料層Jとして構成されるものであって、その詳細は後述する。
従って、放射冷却層CPは、放射冷却層CPに入射した光Lのうちの一部の光を、赤外放射層Aの放射面Hにて反射し、放射冷却層CPに入射した光Lのうちで樹脂材料層J及び保護層Dを透過した光(太陽光等)を、光反射層Bにて反射して、放射面Hから外部へ逃がすように構成されている。
そして、光反射層Bにおける樹脂材料層Jの存在側とは反対側に位置する本体形成基材Eからの放射冷却層CPへの入熱(例えば、本体形成基材Eからの熱伝導による入熱)を、樹脂材料層Jによって赤外光IRに変換して放射することにより、本体形成基材Eを冷却するように構成されている。
つまり、放射冷却層CPは、当該放射冷却層CPへ照射される光Lを反射し、また、当該放射冷却層CPへの伝熱(例えば、大気からの伝熱や本体形成基材Eからの伝熱)を赤外光IRとして外部に放射するように構成されている。
また、樹脂材料層J、保護層D及び光反射層Bが柔軟性を備えることによって、放射冷却層CP(放射冷却フィルム)が柔軟性を備えるように構成されている。
〔樹脂材料層の概要〕
樹脂材料層Jを形成する樹脂材料は、厚みによって光吸収率や輻射率(光放射率)が変化する。そのため、太陽光をできるだけ吸収せず、いわゆる大気の窓の波長帯域(波長8μmから波長14μmの帯域)において大きな熱輻射を発するように樹脂材料層Jの厚みを調整する必要がある。
具体的には、太陽光の光吸収率の観点で、樹脂材料層Jの厚みを、波長0.4μmから0.5μmの光吸収率の波長平均が13%以下であり、波長0.5μmから波長0.8μmの光吸収率の波長平均が4%以下であり、波長0.8μmから波長1.5μmまでの光吸収率の波長平均が1%以内であり、波長1.5μmから2.5μmまでの光吸収率の波長平均が40%以下であり、波長2.5μmから4μmまでの光吸収率の波長平均が100%以下である状態の厚みに調整する必要がある。
このような吸収率分布の場合、太陽光の光吸収率は10%以下となり、エネルギーで言うと100W以下となる。
後述の如く、樹脂材料の光吸収率は樹脂材料の膜厚を厚くすると増加する。樹脂材料を厚膜にすると、大気の窓の輻射率はほぼ1となり、その際に宇宙に放出する熱輻射は125W/mから160W/mとなる。保護層D及び光反射層Bでの太陽光吸収は50W/m以下である。樹脂材料層J、保護層D及び光反射層Bにおける太陽光吸収の和が150W/m以下であり、大気の状態がよければ冷却が進む。樹脂材料層Jを形成する樹脂材料は、以上のように太陽光スペクトルのピーク値付近の光吸収率が小さなものを用いるのが良い。
また、樹脂材料層Jの厚みは、赤外放射(熱輻射)の観点では、波長8μmから14μmの輻射率の波長平均が40%以上となる状態の厚みに調整する必要がある。
保護層D及び光反射層Bで吸収される50W/m程度の太陽光の熱エネルギーを、樹脂材料層Jの熱輻射より樹脂材料層Jから宇宙に放出させるには、それ以上の熱輻射を樹脂材料層Jが出す必要がある。
例えば、外気温が30℃のとき、8μmから14μmの大気の窓の熱輻射の最大は200W/mである(輻射率1として計算)。この値が得られるのは、高山など、空気の薄いよく乾燥した環境の快晴時である。低地などでは大気の厚みが高山よりも厚くなるので、大気の窓の波長帯域は狭くなり、透過率は低下する。ちなみに、このことを「大気の窓が狭くなる」と呼ぶ。
また、放射冷却層CP(放射冷却フィルム)を実際に使用する環境は多湿であることもあり、その場合においても大気の窓は狭くなる。低地で利用する際の大気の窓域で発生する熱輻射は、状態の良いときで30℃において160W/mと見積もられる(輻射率1として計算)。また、日本ではよくあることであるが空に靄があるときや、スモッグが存在する場合、大気の窓はさらに狭くなり、宇宙への放射は125W/m程度となる。
かかる事情を鑑みて、波長8μmから14μmの輻射率の波長平均は40%以上(大気の窓帯での熱輻射強度が50W/m)ないと中緯度帯の低地で用いることができない。
したがって、上記事項を鑑みた光学的規定の範囲になるように樹脂材料層Jの厚みを調整すると、太陽光の光吸収による入熱よりも大気の窓における出熱の方が大きくなり、日射環境下でも屋外で放射冷却できるようになる。
〔樹脂材料の詳細〕
樹脂材料には、炭素-フッ素結合(C-F)、シロキサン結合(Si-O-Si)、炭素-塩素結合(C-Cl)、炭素-酸素結合(C-O)、エステル結合(R-COO-R)、エーテル結合(C-O-C結合)、ベンゼン環を含む無色の樹脂材料を用いることができる。
それぞれの樹脂材料(炭素-酸素結合を除く)について、大気の窓の波長帯域における吸収係数を持つ波長域を図2に示す。
キルヒホッフの法則により、輻射率(ε)と光吸収率(A)は等しい。光吸収率は吸収係数(α)からA=1-exp(-αt)の関係式(以下、光吸収率関係式と呼ぶ)で求めることができる。尚、tは膜厚である。
つまり、樹脂材料層Jの膜厚を調整すると、吸収係数の大きな波長帯域で大きな熱輻射が得られる。屋外で放射冷却する場合、大気の窓の波長帯域である波長8μmから14μmにおいて吸収係数の大きな材料を用いるとよい。
また、太陽光の吸収を抑制するために波長0.3μmから4μm、特に0.4μmから2.5μmの範囲で吸収係数を持たない、或いは小さな材料を用いるとよい。吸収係数と吸収率の関係式からわかるように、光吸収率(輻射率)は樹脂材料の膜厚によって変化する。
直射日光の照射がある昼間の日射環境下での放射冷却によって周囲の大気より温度を下げるためには、大気の窓の波長帯域において大きな吸収係数をもち、太陽光の波長帯域では吸収係数を殆ど持たない材料を選ぶと、膜厚の調整によって太陽光は殆ど吸収しないが、大気の窓の熱輻射を多く出す、つまりは太陽光の入力よりも放射冷却による出力の方が大きな状態を作り出すことができる。
炭素-フッ素結合(C-F)に関しては、CHFおよびCFに起因する吸収係数が大気の窓である波長8μmから14μmにかけた広帯域に大きく広がっており、特に8.6μmで吸収係数が大きい。併せて、太陽光の波長帯域に関しては、エネルギー強度が大きな0.3μmから2.5μmの波長で目立った吸収係数がない。
炭素-フッ素結合(C-F)を有する樹脂材料としては、
完全フッ素化樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
部分フッ素化樹脂であるポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリフッ化ビニル(PVF)、
フッ素化樹脂共重合体であるペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、
四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、
エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、
エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)が挙げられる。
シロキサン結合(Si-O-Si)をもつ樹脂材料としては、シリコーンゴムおよびシリコーン樹脂が挙げられる。
当該樹脂は、C-Siの結合の伸縮に起因する大きな吸収係数が波長13.3μを中心にブロードに表れ、CSiHの対象面外変角(縦揺れ)に起因する吸収係数が波長10μmを中心にブロードに表れ、CSiHの対象面内変角(はさみ)に起因する吸収係数が波長8μm付近に小さく表れる。
炭素-塩素結合(C-Cl)に関しては、C-Cl伸縮振動による吸収係数が波長12μmを中心に半値幅1μm以上の広帯域に現れる。
また、樹脂材料としては塩化ビニル樹脂(PVC)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)が挙げられるが、塩化ビニル樹脂の場合、塩素の電子吸引の影響で、主鎖に含まれるアルケンのC-Hの変角振動に由来する吸収係数が波長10μmあたりに現れる。
エステル結合(R-COO-R)、エーテル結合(C-O-C結合)に関しては、波長7.8μmから9.9μmにかけて吸収係数を持つ。また、エステル結合、エーテル結合に含まれる炭素-酸素結合に関しては、波長8μmから10μmの波長帯域にかけて強い吸収係数が現れる。
ベンゼン環を炭化水素樹脂の側鎖に導入すると、ベンゼン環自身の振動や、ベンゼン環の影響による周りの元素の振動によって、波長8.1μmから18μmにかけて広く吸収が現れるようになる。
これらの結合をもつ樹脂としては、メタクリル酸メチル樹脂、エチレンテレフタラート樹脂、トリメチレンテレフタレート樹脂、ブチレンテレフタレート樹脂、エチレンナフタレート樹脂、ブチレンナフタレート樹脂がある。
〔光吸収の考察〕
上記した結合および官能基を持つ樹脂材料の紫外-可視領域における光吸収、つまり、太陽光吸収について考察する。紫外線から可視光の吸収の起源は結合に寄与する電子の遷移である。この波長域の吸収は、結合エネルギーを計算するとわかる。
先ずは、炭素-フッ素結合(C-F)をもった樹脂材料の紫外から可視域に吸収係数が生じる波長について考える。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を代表としての基本構造部のC-C結合、C-H結合、C-F結合の結合エネルギーを求めると、4.50eV、4.46eV、5.05eVとなる。それぞれ、波長0.275μm、波長0.278μm、波長0.246μmに対応し、これら波長の光を吸収する。
太陽光スペクトルは波長0.300μmより長波しか存在しないため、フッ素樹脂を用いた場合、太陽光の紫外線、可視光線、近赤外線をほとんど吸収しない。なお、紫外線の定義は波長0.400μmよりも短波長側、可視光線の定義は波長0.400μmから0.800μm、近赤外線は波長0.800μmから3μmの範囲とし、中赤外線は3μmから8μmの範囲とし、遠赤外線は波長8μmよりも長波とする。
厚さ50μmのPFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)の紫外から可視域の吸収率スペクトルを図3に示すが、殆ど吸収率を持っていないことがわかる。なお、0.4μmよりも短波長側で若干の吸収率スペクトルの増加がみられるが、この増加は測定に用いたサンプルの散乱の影響が表れているだけであり、実際には吸収率は増大していない。
シロキサン結合(Si-O-Si)の紫外領域に関しては、主鎖のSi-O-Siの結合エネルギーが4.60eVであり、波長269nmに対応する。太陽光スペクトルは波長0.300μmより長波しか存在しないため、シロキサン結合が大多数の場合、太陽光の紫外線、可視光線、近赤外線をほとんど吸収しない。
厚さ100μmのシリコーンゴムの紫外から可視域の吸収率スペクトルを図3に示すが、殆ど吸収率を持っていないことがわかる。なお、波長0.4μmよりも短波長側で若干の吸収率スペクトルの増加がみられるが、この増加は測定に用いたサンプルの散乱の影響が表れているだけであり、実際には吸収率は増大していない。
炭素-塩素結合(C-Cl)に関して、アルケンの炭素と塩素の結合エネルギーは3.28eVであり、その波長は0.378μmであるので、太陽光の内紫外線を多く吸収するが、可視域については吸収をほとんど持たない。
厚さ100μmの塩化ビニル樹脂の紫外から可視域の吸収率スペクトルを図3に示すが、波長0.38μmよりも短波長側で光吸収が大きくなる。
厚さ100μmの塩化ビニリデン樹脂の紫外から可視域の吸収率スペクトルを図3に示すが、波長0.4μmよりも短波長側で若干の吸収率スペクトルの増加がみられる。
エステル結合(R-COO-R)、エーテル結合(C-O-C結合)、ベンゼン環をもつ樹脂としては、メタクリル酸メチル樹脂、エチレンテレフタラート樹脂、トリメチレンテレフタレート樹脂、ブチレンテレフタレート樹脂、エチレンナフタレート樹脂、ブチレンナフタレート樹脂がある。例えばアクリルのC-C結合の結合エネルギーは3.93eVであり、波長0.315μmより短波長の太陽光を吸収するが、可視域については吸収をほとんど持たない。
これら結合および官能基を持つ樹脂材料の一例として、厚さ5mmのメタクリル酸メチル樹脂の紫外から可視域の吸収率スペクトルを図3に示す。尚、例示するメタクリル酸メチル樹脂は、一般的に市販されているものであって、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が混入している。
5mmと厚板であるために、吸収係数の小さな波長も大きくなり、波長0.315よりも長波の0.38μmよりも短波側で光吸収が大きくなる。
これら結合および官能基を持つ樹脂材の一例として厚さ40μmのエチレンテレフタラート樹脂の紫外から可視域の吸収率スペクトルを図3に示す。
図示のように、波長0.315μmに近づくほどに吸収率が大きくなり、波長0.315μmで急激に吸収率が大きくなる。なお、エチレンテレフタラート樹脂も、厚みを増していくと、波長0.315μmより少し長波側において、C-C結合由来の吸収端による吸収率が大きくなり、市販されているメタクリル酸メチル樹脂と同様に紫外線における吸収率が増大する。
樹脂材料層Jは、前述の輻射率(光放射率)、光吸収率の特性を有する樹脂材料を用いるものであれば、一種類の樹脂材料の単層膜、複数種類の樹脂材料の多層膜、複数種類の樹脂材料がブレンドされた樹脂材料の単層膜、複数種類の樹脂材料がブレンドされた樹脂材料の多層膜でも構わない。
なお、ブレンドには、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体といった共重合体や側鎖を置換した変性品も含まれる。
〔シリコーンゴムの輻射率〕
図4に、シロキサン結合をもつシリコーンゴムの大気の窓における輻射率スペクトルを示す。
シリコーンゴムからは、C-Siの結合の伸縮に起因する大きな吸収係数が波長13.3μを中心にブロードに表れ、CSiHの対象面外変角(縦揺れ)に起因する吸収係数が波長10μmを中心にブロードに表れ、CSiHの対象面内変角(はさみ)に起因する吸収係数が波長8μm付近に小さく表れる。
この影響で、厚さ1μmの輻射率の波長平均は、波長8μmから14μmにおいて80%であり、波長平均40%以上という規定の中に入る。図示の通り、膜厚が厚くなると大気の窓領域における輻射率は増大する。
ちなみに、図4には、無機材料である厚み1μmの石英が銀上に存在するときの放射スペクトルを併せて示す。石英は厚み1μmのとき、波長8μmから14μmの間で狭帯域な輻射ピークしか持たない。
この熱輻射を波長8μmから14μmの波長域で波長平均をすると、波長8μmから14μmの輻射率は32%となり、放射冷却性能を示すことが難しい。
樹脂材料層Jを用いた本発明の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)は、光反射層Bとして無機材料を用いる従来技術よりも薄い赤外放射層Aでも放射冷却性能が得られる。つまり、無機材料である石英やテンパックスガラスにて赤外放射層Aを形成する場合には、赤外放射層Aが膜厚1μmでは放射冷却性能が得られないが、樹脂材料層Jを用いた本発明の放射冷却層CPでは、樹脂材料層Jが膜厚1μmでも放射冷却性能を示す。
〔PFAの輻射率〕
図5に、炭素-フッ素結合を持つ樹脂の代表例として、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)の大気の窓における輻射率を示す。CHFおよびCFに起因する吸収係数が大気の窓である波長8μmから14μmにかけた広帯域に大きく広がっており、特に8.6μmで吸収係数が大きい。
この影響で、厚さ10μmの輻射率の波長平均は、波長8μmから14μmにおいて45%であり、波長平均40%以上という規定の中に入る。図示の通り、膜厚が厚くなると大気の窓領域における輻射率は増大する。
〔塩化ビニル樹脂及び塩化ビニリデン樹脂の輻射率〕
図6に、炭素-塩素結合をもつ樹脂の代表例として、塩化ビニル樹脂(PVC)の大気の窓における輻射率を示す。また、図14に、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)の大気の窓における輻射率を示す。
炭素-塩素結合に関しては、C-Cl伸縮振動による吸収係数が波長12μmを中心に半値幅1μm以上の広帯域に現れる。
また、塩化ビニル樹脂の場合、塩素の電子吸引の影響で、主鎖に含まれるアルケンのC-Hの変角振動に由来する吸収係数が波長10μmあたりに現れる。塩化ビニリデン樹脂についても同様である。
これらの影響で、厚さ10μmの輻射率の波長平均は、波長8μmから14μmにおいて43%であり、波長平均40%以上という規定の中に入る。図示の通り、膜厚が厚くなると大気の窓領域における輻射率は増大する。
〔エチレンテレフタラート樹脂〕
図7に、エステル結合やベンゼン環を持つ樹脂の代表例として、エチレンテレフタラート樹脂の大気の窓における輻射率を示す。
エステル結合に関しては、波長7.8μmから9.9μmにかけて吸収係数を持つ。また、エステル結合に含まれる炭素-酸素結合に関しては、波長8μmから10μmの波長帯域にかけて強い吸収係数が現れる。ベンゼン環を炭化水素樹脂の側鎖に導入すると、ベンゼン環自身の振動や、ベンゼン環の影響による周りの元素の振動によって、波長8.1μmから18μmにかけて広く吸収が現れる。
これらの影響で、厚さ10μmの輻射率の波長平均は、波長8μmから14μmにおいて71%であり、波長平均40%以上という規定の中に入る。図示の通り、膜厚が厚くなると大気の窓領域における輻射率は増大する。
〔オレフィン変成材料の輻射率〕
図8には、炭素-フッ素結合(C-F)、炭素-塩素結合(C-Cl)、エステル結合(R-COO-R)、エーテル結合(C-O-C結合)、ベンゼン環を含まない、主成分がオレフィンである、オレフィン変性材料の輻射率スペクトルを示す。サンプルは、蒸着した銀上にオレフィン樹脂をバーコーターで塗布し乾燥させることによって作製した。
図示の通り、大気の窓領域での輻射率は小さく、この影響で、厚さ10μmの輻射率の波長平均は、波長8μmから14μmにおいて27%であり、波長平均40%以上という規定の中に入らない。
図示の輻射率はバーコーターとして塗布するために変性されたオレフィン樹脂のものであり、純粋なオレフィン樹脂の場合には、更に、大気の窓領域における輻射率は小さい。
このように、炭素-フッ素結合(C-F)、炭素-塩素結合(C-Cl)、エステル結合(R-COO-R)、エーテル結合(C-O-C結合)、ベンゼン環を含まないと放射冷却できない。
〔光反射層および樹脂材料層の表面の温度〕
樹脂材料層Jの大気の窓の熱輻射は樹脂材料の表面近傍で発生する。
図4より、シリコーンゴムの場合は10μmより厚いと大気の窓領域における熱輻射は増大しない。つまり、シリコーンゴムの場合、大気の窓における熱輻射の大部分は表面から深さ約10μm以内の部分で生じており、より深い部分の輻射は外に出てこない。
図5より、フッ素樹脂の場合は100μmより厚くなっても大気の窓領域における熱輻射の増大は殆どなくなる。つまり、フッ素樹脂場合、大気の窓における熱輻射は表面から深さ約100μm以内の部分で生じており、より深い部分の輻射は外に出てこない。
図6より、塩化ビニル樹脂の場合は100μmより厚くなっても大気の窓領域における熱輻射の増大は殆どなくなる。つまり、塩化ビニル樹脂場合、大気の窓における熱輻射は表面から深さ約100μm以内の部分で生じており、より深い部分の輻射は外に出てこない。
図14より、塩化ビニリデン樹脂は、塩化ビニル樹脂と同様であることが分かる。
図7より、エチレンテレフタラート樹脂の場合は125μmより厚くなっても大気の窓領域における熱輻射の増大は殆どなくなる。つまり、エチレンテレフタラート樹脂場合、大気の窓における熱輻射は表面から深さ約100μmの部分で生じており、より深い部分の輻射は外に出てこない。
以上のように、樹脂材料表面から発生する大気の窓領域の熱輻射は、表面からの深さが概ね100μm以内の部分で生じており、それ以上に樹脂の厚みが増していくと、熱輻射に寄与しない樹脂材料によって、放射冷却層CPの放射冷却した冷熱が断熱される。
理想的に太陽光を全く吸収しない樹脂材料層Jを光反射層Bの上に作製することを考える。この場合、太陽光は放射冷却層CPの光反射層Bでのみ吸収される。
樹脂材料の熱伝導率はおしなべて0.2W/m/K程度であり、この熱伝導性を考慮して計算すると、樹脂材料層Jの厚みが20mmを超えると、冷却面(光反射層Bにおける樹脂材料層Jの存在側とは反対側の面)の温度が上昇する。
太陽光をまったく吸収しない理想的な樹脂材料が存在したとしても、樹脂材料の熱伝導率はおしなべて0.2W/m/K程度であるので、図9のように20mmを超えると光反射層Bが日射を受けて加熱されてしまい、光反射層側に設置された本体形成基材Eは加熱される。つまり、放射冷却層CPの樹脂材料の厚みは20mm以下にする必要がある。
なお、図9は、真夏の西日本の良く晴れた日の南中を想定して計算した放射冷却層(放射冷却フィルム)CPの放射面Hの表面温度と光反射層Bの温度のプロットである。太陽光はAM1.5とし、1000W/mのエネルギー密度としている。外気温は30℃であり、放射エネルギーは温度によって変わるが30℃において100Wである。樹脂材料層で太陽光の吸収はないものとしての計算である。無風状態を仮定し、対流熱伝達率は5W/m/Kとしている。
〔シリコーンゴム等の光吸収率について〕
図10に、側鎖がCHであるシリコーンゴムの厚さが100μmのときの太陽光スペクトルに対する光吸収率、及び、厚さ100μmのペルフルオロアルコキシフッ素樹脂の太陽光スペクトルに対する光吸収率スペクトルを示す。先に述べた通り、両樹脂ともに紫外域においては光吸収率を殆ど持たないことがわかる。
シリコーンゴムに関して、近赤外域においては、光吸収率が波長2.35μmより長波側の域で増加する。但し、この波長域における太陽光スペクトルの強度は弱いため、波長2.35μmより長波側の光吸収率が100%となっても吸収される太陽光エネルギーは20W/mである。
ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂に関しては、波長0.3μmから2.5μmの波長範囲では光吸収率を殆ど持たず、波長2.5μmより長波長側で光吸収を持つ。但し、当該樹脂の膜厚を厚くし、波長2.5μmより長波長側の光吸収率が100%になったとしても、吸収される太陽光エネルギーは7W程度である。
尚、樹脂材料層Jの厚さ(膜厚)を厚くしていくと、大気の窓領域の輻射率はほぼ1となる。つまり、厚膜の場合、低地で利用する際の大気の窓域で宇宙に放射する熱輻射は、30℃において160W/mから125W/m程度となる。光反射層Bにおける光吸収は、上述の規定の如く、50W/m程度であり、光反射層Bの光吸収とシリコーンゴム又はペルフルオロアルコキシフッ素樹脂を厚膜にした際の太陽光吸収を足しても宇宙に放射する熱輻射より小さい。
以上より、シリコーンゴム及びペルフルオロアルコキシフッ素樹脂の最大の膜厚は、熱伝導性の観点から20mmとなる。
〔炭化水素系樹脂の光吸収について〕
樹脂材料層Jを形成する樹脂材料が、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合、ベンゼン環を1つ以上有する炭化水素を主鎖とする樹脂であった場合、或いは、シリコーン樹脂であり側鎖の炭化水素の炭素数が2個以上の場合、先述の共有結合電子による紫外線吸収以外に、近赤外域に結合の変角や伸縮などの振動に基づく吸収が観測される。
具体的には、CH、CH、CHの第一励起状態への遷移の基準音による吸収がそれぞれ波長1.6μmから1.7μm、波長1.65μmから1.75μm、波長1.7μmに現れる。さらに、CH、CH、CHの結合音の基準音による吸収がそれぞれ波長1.35μm、波長1.38μm、波長1.43μmに現れる。さらに、CH、CHの第二励起状態への遷移の倍音がそれぞれ波長1.24μmあたりに現れる。C-H結合の変角や伸縮の基準音は波長2μmから2.5μmにかけて広帯域に分布している。
また、エステル結合(R-COO-R)、エーテル結合(C-O-C)を有する場合、波長1.9μmあたりに大きな光吸収が存在する。
これらに起因する光吸収率は、上述の光吸収率関係式より、樹脂材料の膜厚が薄いと小さくなり目立たなくなるが、膜厚が厚いと大きくなる。
図11には、エステル結合とベンゼン環を持つエチレンテレフタラート樹脂の膜厚を変化させた場合における光吸収率と太陽光のスペクトルとの関係を記す。
図示の如く、膜厚が25μm、125μm、500μmと大きくなるごとに、それぞれの振動に起因する波長1.5μmよりも長波域の光吸収が増加する。
また、長波長側だけでなく、紫外線領域から可視領域にかけての光吸収も増加する。これは、化学結合に起因する光の吸収端に広がりがあることに起因している。
膜厚が薄い時は最も大きな吸収係数を持つ波長で光吸収率が大きくなるが、膜厚が厚くなると、上述の光吸収率関係式より、広がりを持った吸収端の弱い吸収係数が吸収率となり出現する。このことにより、膜厚が厚くなると紫外線領域から可視領域にかけての光吸収が増加する。
厚さが25μmのときの太陽光スペクトルの吸収は15W/m、厚さが125μmのとき太陽光スペクトルの吸収は41W/m、厚さが500μmの時の太陽光スペクトルの吸収は88W/mである。
光反射層Bの光吸収は、上述の規定により50W/mであるから、膜厚が500μmである場合、エチレンテレフタラート樹脂の太陽光吸収と光反射層Bの太陽光吸収の和が138W/mとなる。日本の低地の夏場における、大気の窓の波長帯域の赤外放射の最大値は先述の通り30℃において大気の状態の良い日で160W程度、通常は125W程度である。
以上より、エチレンテレフタラート樹脂の膜厚が500μm以上では、放射冷却性能を発揮しなくなる。
1.5μmから4μmの波長帯域の吸収スペクトルの起源は、官能基でなく主鎖の炭化水素の振動であり、炭化水素系樹脂であればエチレンテレフタラート樹脂と同様の挙動を示す。また、炭化水素系樹脂は紫外域に化学結合に起因する光吸収を有しており、紫外から可視についてもエチレンテレフタラート樹脂と同様の挙動を示す。
つまり、炭化水素樹脂であれば波長0.3μmから4μmまでエチレンテレフタラート樹脂と同様の挙動をとる。以上から、炭化水素系の樹脂の膜厚は500μmよりも薄い必要がある。
〔ブレンド樹脂の光吸収について〕
樹脂材料が、炭素-フッ素結合或いはシロキサン結合を主鎖とする樹脂と、炭化水素を主鎖とする樹脂とをブレンドした樹脂材料である場合には、ブレンドされた炭化水素を主鎖とする樹脂の割合に応じてCH、CH、CHなどに起因する近赤外域の光吸収が現れる。
炭素-フッ素結合或いはシロキサン結合が主成分の場合、炭化水素に起因する近赤外域の光吸収は小さくなるので、熱伝導性の観点での上限の20mmまで厚くすることができる。しかし、ブレンドされる炭化水素樹脂が主成分となる場合は厚さを500μm以下にする必要がある。
フッ素樹脂或いはシリコーンゴムと炭化水素とのブレンドには、フッ素樹脂或いはシリコーンゴムの側鎖を炭化水素に置換したものや、フッ素モノマーおよびシリコーンモノマーと炭化水素モノマーの交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体も含まれる。なお、フッ素モノマーと炭化水素モノマーの交互共重合体としては、フルオロエチレン・ビニルエステル(FEVE)、フルオロオレフィン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)が挙げられる。
置換する炭化水素側鎖の分子量および割合に応じてCH、CH、CHなどに起因する近赤外域の光吸収が現れる。側鎖や共重合として導入されるモノマーが低分子であるとき、あるいは、導入されるモノマーの密度が小さいときには、炭化水素に起因する近赤外域の光吸収は小さくなるので、熱伝導性の観点での限界の20mmまで厚くすることができる。
フッ素樹脂或いはシリコーンゴムの側鎖や共重合されるモノマーとして高分子の炭化水素を導入する場合、樹脂の厚みを500μm以下にする必要がある。
〔樹脂材料層の厚みについて〕
放射冷却層CPの実用の観点では、樹脂材料層Jの厚みは薄い方がよい。樹脂材料の熱伝導率は、金属やガラスなどよりも一般に低い。本体形成基材Eを効果的に冷却するには、樹脂材料層Jの膜厚は必要最低限であるのがよい。樹脂材料層Jの膜厚を厚くするほどに大気の窓の熱輻射は大きくなり、ある膜厚を超えると大気の窓における熱輻射エネルギーは飽和する。
飽和する膜厚は樹脂材料にもよるが、フッ素樹脂の場合は概ね300μmもあれば十分に飽和する。したがって、熱伝導度の観点で500μmよりも300μm以下に膜厚を抑えるのが望ましい。さらに、熱輻射は飽和していないが、厚みが100μm程度であっても大気の窓領域において十分な熱輻射を得ることができる。厚さが薄い方が、熱貫流率が高まり本体形成基材Eの温度をより効果的に下げられるので、フッ素樹脂の場合、100μm程度以下の厚さにするのがよい。
C-F結合に起因する吸収係数よりも炭素-ケイ素結合、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合に由来する吸収係数の方が大きい。当然、熱伝導度の観点で500μmよりも300μm以下に膜厚を抑えるのが望ましいが、更に膜厚を薄くして熱伝導性を上げるとさらに大きな放射冷却効果が期待できる。
炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合、ベンゼン環を含む樹脂の場合、厚みが100μmであっても飽和しており、厚さ50μmでも大気の窓領域において十分な熱輻射が得られる。樹脂材料の厚さが薄い方が、熱貫流率が高まり本体形成基材Eの温度をより効果的に下げられるので、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合、ベンゼン環を含む樹脂の場合、50μm以下の厚さにすると断熱性が小さくなり本体形成基材Eを効果的に冷却することができる。炭素-塩素結合の場合には、100μm以下の厚さであれば、本体形成基材Eを効果的に冷却することができる。
薄くする効用は断熱性を下げて冷熱を伝えやすくすること以外にもある。それは、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合を含む樹脂が呈する、近赤外域でのCH、CH、CH由来の近赤外域の光吸収の抑制である。薄くすると、これらによる太陽光吸収を小さくすることができるので、放射冷却層CPの冷却能力が高まることになる。
以上の観点から、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合、ベンゼン環を含む樹脂の場合、50μm以下の厚さにするとより効果的に日照下において放射冷却効果を出すことができる。
炭素-ケイ素結合の場合、厚さ50μmでも大気の窓領域において熱輻射が飽和しきっており、厚さ10μmでも大気の窓領域において十分な熱輻射が得られる。樹脂材料層Jの厚さが薄い方が、熱貫流率が高まり本体形成基材Eの温度をより効果的に下げられるので、炭素-ケイ素結合を含む樹脂の場合、10μm以下の厚さにすると断熱性が小さくなり本体形成基材Eを効果的に冷却することができる。薄くすると、太陽光吸収を小さくすることができるので、放射冷却層CPの冷却能力が高まる。
以上の観点から、炭素-ケイ素結合を含む樹脂の場合、10μm以下の厚さにするとより効果的に日照下において放射冷却効果を出すことができる。
〔光反射層の詳細〕
光反射層Bに上述の反射率特性を持たせるためには、放射面Hの存在側(樹脂材料層Jの存在側)の反射材料は銀または銀合金である必要がある。
図12に示す通り、銀をベースとして光反射層Bを構成すれば、光反射層Bに求められる反射率が得られる。
銀または銀合金のみで太陽光を前記の反射率特性を持たせた状態で反射する場合、厚さが50nm以上必要である。
但し、光反射層Bに柔軟性を備えさせるためには、厚さを100μm以下にする必要がある。これ以上厚いと曲げにくくなる。
ちなみに、「銀合金」としては、銀に、銅、パラジウム、金、亜鉛、スズ、マグネシウム、ニッケル、チタンのいずれかを、例えば、0.4質量%から4.5質量%程度添加した合金を用いることができる。具体例としては、銀に銅とパラジウムを添加して作成した銀合金である「APC-TR(フルヤ金属製)」を用いることができる。
光反射層Bに上述の反射率特性を持たせるためには、保護層Dに隣接して位置する銀または銀合金と保護層Dから離れる側に位置するアルミまたはアルミ合金とを積層させた構造にしてもよい。尚、この場合においても、放射面Hの存在側(樹脂材料層Jの存在側)の反射材料は銀または銀合金である必要がある。
銀(銀合金)とアルミ(アルミ合金)の2層で構成する場合、銀の厚みは10nm以上必要であり、アルミの厚みは30nm以上必要である。
但し、光反射層Bに柔軟性を備えさせるためには、銀の厚さとアルミの厚さとの合計を100μm以下にする必要がある。これ以上厚いと曲げにくくなる。
ちなみに、「アルミ合金」としては、アルミに、銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、機械構造用炭素鋼、イットリウム、ランタン、ガドリニウム、テルビウムを添加した合金を用いることができる。
銀および銀合金は雨や湿度に弱くそれらから保護をする必要があり、また、その変色を抑制する必要がある。そのために、図16から図19に示す如く、銀や銀合金に隣接させる形態で、銀を保護する保護層Dが必要である。
保護層Dの詳細は、後述する。
〔実験結果について〕
ガラス基板上に銀を300nmの厚さで形成し、その上に、シロキサン結合を有するシリコーンゴム、炭素-フッ素結合を有するフルオロエチレンビニルエーテル、オレフィン変性体(オレフィン変成材料)、塩化ビニル樹脂をバーコーターで膜厚制御しつつ塗布し、放射冷却性能を測定した。
放射冷却性能の評価は外気温35℃の6月下旬の屋外の南中後3時間で実施し、基板を断熱性高く保持したうえで、基板裏面の温度(℃)を測定した。但し、塩化ビニル樹脂については、外気温が29℃のときに実施した。冶具に設置後5分後の温度が外気温より低いか、或いは高いかで放射冷却効果があるか否かを評価した。
放射冷却試験の結果を、図15に示す。
ちなみに、フルオロエチレンビニルエーテルの大気の窓領域の輻射率は、図13に示す通りである。尚、シリコーンゴムの輻射率は、図4に示す通りであり、オレフィン変性体(オレフィン変成材料)の輻射率は、図8に示す通りであり、塩化ビニル樹脂の輻射率は、図6に示す通りである。
シロキサン結合を有するシリコーンゴムの場合、理論から予想された通り1μm以上の厚みで放射冷却能力を発揮することがわかった。
炭素-フッ素結合を有するフルオロエチレンビニルエーテルは、理論で予測される10μmよりも薄い5μmの膜厚で放射冷却能力を発揮することがわかった。この原因は、炭素-フッ素結合による大気の窓の光吸収のみならず、ビニルエーテルのエーテル結合による光吸収が加わり、それぞれ単独のときよりも大気の窓の光吸収率が増えたためである。
オレフィン変性体(オレフィン変成材料)は、大気の窓領域の熱輻射が殆どでないため放射冷却能力を持たない。
〔放射冷却式遮光装置の具体構成〕
放射冷却層CPは、樹脂材料層J及び保護層Dを形成する樹脂材料が柔軟であるから、光反射層Bを薄膜にすると、光反射層Bにも柔軟性を備えさせることができ、その結果、放射冷却層CPを、柔軟性を備えるフィルム(放射冷却フィルム)とすることができる。
そして、図16から図19に示すように、フィルム状の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)を、接着剤又は粘着剤の接続層Sにて本体形成基材Eの外面に装着することにより、本体形成基材Eを冷却することができる。また、本体形成基材Eの内面に、太陽光救出率が70%以上である太陽光吸収層K備えさせる。
接続層Sに用いる接着剤又は粘着剤としては、ウレタン系接着剤(粘着剤)、アクリル系接着剤(粘着剤)、EVA(エチレン酢酸ビニル)系接着剤(粘着剤)等がある。
放射冷却層CPをフィルム状に作製するには、種々の形態が考えられる。例えば、フィルム状に作製された光反射層Bに保護層D及び樹脂材料層Jを塗布して作ることが考えられる。あるいは、フィルム状に作製された光反射層Bに保護層D及び樹脂材料層Jを貼り付けて作ることが考えられる。或いは、フィルム状に作製された樹脂材料層Jの上に、保護層Dを塗布あるいは貼り付けて作成し、保護層Dの上に、蒸着・スパッタリング・イオンプレーティング・銀鏡反応などによって光反射層Bを作製することが考えられる。
具体的に説明すると、図16の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)は、光反射層Bを、銀又は銀合金の一層として形成する場合や、銀(銀合金)とアルミ(アルミ合金)の2層で構成する場合において、当該光反射層Bの上側に、保護層Dを形成し、保護層Dの上部に、樹脂材料層Jを形成したものであり、かつ、光反射層Bの下側にも、下側保護層Dsを形成する。
図16の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)の作成方法としては、フィルム状の樹脂材料層Jの上に、保護層D、光反射層B、下側保護層Dsを順次塗布して、一体的に成形する方法を採用することができる。
図17の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)は、光反射層Bを、アルミ(アルミ合金)として機能するアルミ箔にて形成されたアルミ層B1と、銀又は銀合金からなる銀層B2とから構成し、当該光反射層Bの上側に、保護層Dを形成し、保護層Dの上部に、樹脂材料層Jを形成したものである。
図17の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)の作成方法としては、アルミ箔にて構成されるアルミ層B1の上に、銀層B2、保護層D、樹脂材料層Jを順次塗布して、一体的に成形する方法を採用することができる。
尚、別の作成方法として、樹脂材料層Jをフィルム状に形成して、当該フィルム状の樹脂材料層Jの上に、保護層D、銀層B2を順次塗布し、アルミ層B1を銀層B2に貼り付ける方法を採用することができる。
図18の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)は、光反射層Bを、銀又は銀合金の一層として形成する場合や、銀(銀合金)とアルミ(アルミ合金)の2層で構成する場合において、当該光反射層Bの上側に、保護層Dを形成し、保護層Dの上部に、樹脂材料層Jを形成し、光反射層Bの下側に、PET等のフィルム層Fを形成したものである。
図18の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)の作成方法としては、PET(エチレンテレフタラート樹脂)等にてフィルム状に形成されたフィルム層F(基材に相当)の上に、光反射層B、保護層Dを順次塗布して、一体的に成形し、保護層Dに対して、別途形成したフィルム状の樹脂材料層Jをのり層Nにて接着する方法を採用することができる。
のり層Nにて使用する接着剤(粘着剤)は、例えば、ウレタン系接着剤(粘着剤)、アクリル系接着剤(粘着剤)、EVA(エチレン酢酸ビニル)系接着剤(粘着剤)等があり、太陽光に対して高い透明性を持つものが望ましい。
図19の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)は、光反射層Bを、アルミ(アルミ合金)として機能するアルミ層B1と、銀又は銀合金(代替銀)からなる銀層B2とから構成し、アルミ層B1を、PET(エチレンテレフタラート樹脂)等にてフィルム状に形成されたフィルム層F(基材に相当)の上部に形成し、銀層B2の上側に、保護層Dを形成し、保護層Dの上側に、樹脂材料層Jを形成したものである。
図19の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)の作成方法としては、フィルム層Fの上に、アルミ層B1を塗布して、フィルム層Fとアルミ層B1とを一体的に成形し、別途、フィルム状の樹脂材料層Jの上に、保護層D、銀層B2を塗布して、樹脂材料層J、保護層D、銀層B2を一体形成し、アルミ層B1と銀層B2とをのり層Nにて接着する方法を採用することができる。
のり層Nにて使用する接着剤(粘着剤)は、例えば、ウレタン系接着剤(粘着剤)、アクリル系接着剤(粘着剤)、EVA(エチレン酢酸ビニル)系接着剤(粘着剤)等があり、太陽光に対して高い透明性を持つものが望ましい。
〔保護層の詳細〕
保護層Dは、厚さが300nm以上で、40μm以下のポリオレフィン系樹脂、又は、厚さが17μm以上で、40μm以下のポリエチレンテレフタラートである。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン及びポリプロピレンがある。
図20に、ポリエチレン、塩化ビニリデン樹脂、エチレンテレフタラート樹脂、塩化ビニル樹脂の紫外線の吸収率を示す。
また、図21に、保護層Dを形成する合成樹脂として好適なポリエチレンの光透過率を示す。
放射冷却層CP(放射冷却フィルム)は、夜間のみならず、日射環境下にても放射冷却作用を発揮するものであるから、光反射層Bが光反射機能を発揮する状態を維持するには、保護層Dにて光反射層Bを保護することにより、日射環境下で光反射層Bの銀が変色しないようにする必要がある。
保護層Dが、ポリオレフィン系樹脂にて厚さが300nm以上で、40μm以下の形態に形成される場合には、ポリオレフィン系樹脂は、波長0.3μmから0.4μmの紫外線の波長域の全域において紫外線の光吸収率が10%以下である合成樹脂であるから、保護層Dが紫外線の吸収により劣化し難いものとなる。
そして、保護層Dを形成するポリオレフィン系樹脂の厚さが、300nm以上であるから、樹脂材料層Jにて発生したラジカルが光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することを遮断し、また、樹脂材料層Jを透過する水分が光反射層Bを形成する銀又は銀合金に到達することを遮断する等の遮断機能を良好に発揮することになり、光反射層Bを形成する銀又は銀合金の変色を抑制できることになる。
ちなみに、ポリオレフィン系樹脂にて形成される保護層Dは、紫外線の吸収により、光反射層Bから離れる表面側にラジカルを形成しながら劣化することになるが、厚さが300nm以上であるから、形成したラジカルが光反射層Bに到達することはなく、また、ラジカルを形成しながら劣化するにしても、紫外線の吸収が低いことにより劣化の進み具合は遅いものであるから、上述の遮断機能を長期に亘って発揮することになる。
保護層Dが、エチレンテレフタラート樹脂にて厚さが17μm以上で、40μm以下の形態に形成される場合には、エチレンテレフタラート樹脂は、ポリオレフィン系樹脂よりも、波長0.3μmから0.4μmの紫外線の波長域において紫外線の光吸収率が高い樹脂材料であるが、厚さが17μm以上であるから、樹脂材料層Jにて発生したラジカルが光反射層Bを形成する銀又は銀合金に到達することを遮断し、また、樹脂材料層Jを透過する水分が光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することを遮断する等の遮断機能を長期に亘って良好に発揮することになり、光反射層Bを形成する銀又は銀合金の変色を抑制できることになる。
つまり、エチレンテレフタラート樹脂にて形成される保護層Dは、紫外線の吸収により、光反射層Bから離れる表面側にラジカルを形成しながら劣化することになるが、厚さが17μm以上であるから、形成したラジカルが光反射層Bに到達することはなく、また、ラジカルを形成しながら劣化するにしても、厚さが17μm以上であるから、上述の遮断機能を長期に亘って発揮することになる。
説明を加えると、エチレンテレフタラート樹脂(PET)の劣化は紫外線によってエチレングリコールとテレフタル酸のエステル結合が開裂しラジカルが形成されることに起因する。この劣化は、エチレンテレフタラート樹脂(PET)における紫外線が照射される面の表面から順に進行する。
例えば、大阪における強さの紫外線がエチレンテレフタラート樹脂(PET)に照射されると、1日あたり、照射される面より順に約9nmのエチレンテレフタラート樹脂(PET)のエステル結合が開裂していく。エチレンテレフタラート樹脂(PET)は十分に重合しているので、開裂した表面のエチレンテレフタラート樹脂(PET)が光反射層Bの銀(銀合金)を攻撃することはないが、エチレンテレフタラート樹脂(PET)の開裂端が光反射層B銀(銀合金)まで到達すると、銀(銀合金)が変色する。
従って、屋外で使用するうえで、保護層Dを1年以上耐久させるためには、9nm/日と365日とを積算して、約3μmの厚さが必要となる。保護層Dのエチレンテレフタラート樹脂(PET)を3年以上耐久させるためには、厚さが10μm以上必要である。5年以上耐久させるためには、厚さが17μm以上必要である。
尚、ポリオレフィン系樹脂及びエチレンテレフタラート樹脂にて保護層Dを形成する場合において、その厚さの上限を定める理由は、保護層Dが放射冷却に寄与しない断熱性を奏することを回避するためである。つまり、保護層Dは、厚さが厚くなるほど放射冷却に寄与しない断熱性を奏することになるから、光反射層Bを保護する機能を発揮させながらも、放射冷却に寄与しない断熱性を奏することを回避するために、厚さの上限が定められることになる。
つまり、保護層Dが厚くなると、光反射層Bの銀(銀合金)の着色を防ぐうえでのデメリットは生じないが、放射冷却するうえでの問題が発生する。つまり、厚くすると放射冷却材料の断熱性を上げることになる。
例えば、保護層Dを形成する合成樹脂として優れている主成分がポリエチレンの樹脂は、図25に示すように、大気の窓における輻射率が小さいため、厚く形成しても放射冷却に寄与しない。それどころか、厚くすると放射冷却材料の断熱性を上げることになる。次に、厚くなると主鎖の振動に由来する近赤外域の吸収が増加し、太陽光吸収が増える効果が増加する。
これら要因により、保護層Dが厚いことは、放射冷却にとって不利である。このような観点から、ポリオレフィン系樹脂にて形成される保護層Dの厚さは、5μm以下であることが好ましく、さらには、1μmであることが一層好ましい。
ところで、図18に示すように、樹脂材料層Jと保護層Dとの間にのり層Nが位置する場合には、のり層Nからもラジカルが発生することになるが、保護層Dを形成するポリオレフィン系樹脂の厚さが300nm以上であり、保護層Dを形成するエチレンテレフタラート樹脂の厚さが17μm以上であれば、のり層Nにて発生したラジカルが光反射層Bの到達することを、長期に亘って抑制できる。
〔保護層の考察〕
保護層Dによる銀の着色のされ方の違いを検討するために、図22に示すような、赤外放射層Aとしての樹脂材料層Jを備えない保護層Dを露出させたサンプルを作製し、模擬太陽光が照射された後の銀の着色を調べた。
つまり、保護層Dとして、紫外線を吸収する一般的なアクリル系樹脂(例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が混入するメタクリル酸メチル樹脂)とポリエチレンとの二種類を、バーコーターで、光反射層Bとして銀を備えるフィルム層F(基材に相当)上に塗布したサンプルを形成し、保護層Dとしての機能を検討した。塗布した保護層Dの厚みは、それぞれ10μmと1μmである。
尚、フィルム層F(基材に相当)は、PET(エチレンテレフタラート樹脂)等にてフィルム状に形成されたものである。
図24に示すように、保護層Dが紫外線を良く吸収するアクリル系樹脂の場合、保護層Dが紫外線で分解されラジカルを形成し、直ぐに銀が黄化して、放射冷却層CPとして機能しなくなる(太陽光を吸収し、一般の材料のように日射が当たると温度上昇する)。
尚、図中の600hの線は、JIS規格5600-7-7の条件でキセノンウエザー試験(紫外光エネルギーは60W/m)を600h(時間)行った後の反射率スペクトルである。また、0hの線は、キセノンウエザー試験を行う前の反射率スペクトルである。
図23に示すように、保護層Dが紫外線の光吸収率が低いポリエチレンの場合には、近赤外域から可視域での反射率の低下がみられないことがわかる。つまり、主成分がポリエチレンの樹脂(ポリオレフィン系樹脂)は、地上に届く太陽光が持つ紫外線を殆ど吸収しないため、太陽光が当たってもラジカルを形成し難いので、日射が当たっても、光反射層Bとしての銀の着色が発生しない。
尚、図中の600hの線は、JIS規格5600-7-7の条件でキセノンウエザー試験(紫外光エネルギーは60W/m)を600h(時間)行った後の反射率スペクトルである。また、0hの線は、キセノンウエザー試験を行う前の反射率スペクトルである。
なお、この波長帯域の反射率スペクトルが波打つ理由は、ポリエチレン層のファブリペロー共振である。キセノンウエザー試験の熱などによってポリエチレン層の厚みが変化したことによる原因で、この共振位置が0hの線と600hの線とで多少変わっていることがわかるが、銀の黄化に由来する紫外-可視域における大きな反射率の低下は観測されない。
尚、フッ素樹脂系も紫外線吸収の観点からは保護層Dを形成する材料に適用できるが、実際に保護層Dとして形成すると、形成段階で着色し、劣化するため、保護層Dを形成する材料としては用いることができない。
また、シリコーンも紫外線吸収の観点からは保護層Dを形成する材料に適用できるが、銀(銀合金)との密着性が極めて悪く、保護層Dを形成する材料としては用いることができない。
〔放射冷却式遮光装置の実験結果〕
放射冷却式遮光装置Wとしての日傘に関する試験を実施した。試験に使用する日傘として、下記のA~Dの4種類を用いて、8月29日から31日までの間で、膜温度と体感温度とを測定した。
A:外布が黒色で内布が銀色の傘。
B:外布が銀色で内布が黒色の傘。
C:外側が放射冷却層CPで内側が黒色(太陽光吸収率が70%以上)の傘(放射冷却式遮光装置W)。
D:外側が放射冷却層CPで内側が銀色(太陽光吸収率が70%未満)の傘。
これら4種類の傘を芝生上の2mの高さに間隔を1.5mあけて並べた。
そして、傘の中心付近の膜にT型熱電対を貼り付け、傘の膜温度を測定した。併せて、膜中心部から約10cm下の箇所に黒体温度計を取り付け、体感温度を測定した。
尚、黒体温度計とは、表面が黒色の球状体の内部に、当該内部の空間温度を計測する温度計を配設したものである。
図26は、8月29日から31日までの膜温度の測定結果を示し、図27は、8月29日から31日までの体感温度の測定結果を示す。
膜温度に関して、Aの傘は日中70℃近くまで昇温するのに対し、Bの傘は日中60℃程度であった。それに対して、Cの傘及びDの傘はともに35℃程度と外気温程度となった。
体感温度に関しては、Aの傘とBの傘がほぼ同等であり、Dの傘がAの傘やBの傘よりも少し温度が低くなり、Cの傘だけが、体感温度が顕著に下がることが分かった。
Aの傘とBの傘の体感温度は、膜温度が高温であることに起因して高温とはなるものの、外気の対流(風)の影響で膜温度よりも低下することになる。
これに対して、放射冷却層CPを備えたCの傘及びDの傘の体感温度は、外気の対流の影響と、地表面Gからの太陽光の照り返しの影響、地表面Gの熱輻射の影響を受けることにより、低温である膜温度よりも上昇する傾向となる。
特に、Dの傘のように傘裏面(傘内面)の太陽光反射率が大きい場合、太陽光の地表面Gでの照り返しが傘の下にいる人に反射して、照らすため、体感温度がAの傘やBの傘に近づく傾向となる。
一方、Cの傘のように傘裏面(傘内面)の太陽光吸収率が大きい場合、太陽光の地面での照り返しを傘が吸収し、人に照射することを防ぐことができるため、体感温度を顕著に下げることができる。
実験現場における地表面Gの太陽光の反射率は20%であったが、地表面Gの太陽光の反射率は、場所によっては40%~50%であり、地球全体でいうと30%%が平均である。南中時の太陽光強度は1000W/mであるので、南中時の照り返しは、約200W/m~500W/mであり、平均で300W/mであるということである。
尚、今回の実験では、傘の裏側(内側)を黒色にするために、太陽光を90%吸収する黒色フィルムを用いたが、黒色である必要はなく、太陽光エネルギーを70%以上、望ましくは80%以上、さらに望ましくは90%以上吸収する素材を用いるのであれば同様の効果が出る。
〔放射冷却層の別構成〕
図28に示すように、放射冷却層CPは、フィルム層F(基材に相当)の上部にアンカー層Qを備え、当該アンカー層Qの上部に、光反射層B、保護層D、赤外放射層Aを備える形態に構成してもよい。
尚、フィルム層F(基材に相当)は、例えば、PET(エチレンテレフタラート樹脂)等にてフィルム状に形成されたものである。
アンカー層Qは、フィルム層Fと光反射層Bとの密着を強めるために導入されている。
つまり、フィルム層Fに、直接、銀(Ag)を製膜しようとすると、簡単に剥がれが生じる虞がある。アンカー層Qは、アクリルやポリオレフィン、ウレタンが主成分であり、イソシアネート基を持つ化合物やメラミン樹脂が混合されているものが望ましい。太陽光に直接当たらない部分のコーティングであり、紫外線を吸収する素材であっても問題ない。
尚、フィルム層Fと光反射層Bとの密着を強める方法には、アンカー層Qを入れる以外の方法もある。例えば、フィルム層Fの製膜面にプラズマ照射して表面を荒らすと密着性は高まる。
〔接続層の考察〕
本体形成基材Eの外面に放射冷却層CPを装着する場合、接続層Sの厚さを、5μm以上で、100μm以下にすることが良い。
すなわち、本体形成基材Eの外面(表面)は鏡面でないことが多い。鏡面とは異なる本体形成基材Eの外面(材料表面)は、数μmレベル程度の傷や凹凸が無数に存在することが多い。
本体形成基材Eの外面(材料表面)に存在するμmレベルの凹凸が、放射冷却層CPの光反射層B(銀層)に転写されると、反射率が下がることになる。
したがって、放射冷却層CPに外面(材料表面)に存在する凹凸が反映されないようにする構造を導入する必要があり、このために、放射冷却層CPを、5μmから100μm程度の厚みの接続層Sにて、本体形成基材Eの外面に接合させるとよい。
接着剤や粘着剤にて構成される5μm以上の接続層Sが存在すると、接続層Sが本体形成基材Eの外面の凹凸を吸収し、放射冷却層CPの光反射層B(銀層)が平坦となる。
光反射層B(銀層)が平坦になると、太陽光反射率の低下(換言すると太陽光吸収率の増大)を防げることになる。
但し、接続層Sの厚みが厚くなると断熱性が向上する。断熱性が向上すると放射冷却層CPの冷熱が断熱されるため、良くない。このような観点から不必要なほどに厚い接続層Sは不要であり、100μmの厚さがあれば十分である。
〔放射冷却層の別例示〕
図29に示すように、放射冷却層CPの放射面Hを凹凸状に形成するとよい。
つまり、例えば、放射面Hに凸部Uが存在する状態に形成してもよい。
尚、凹凸状の例としては、直方体状の凸部Uが並ぶラインアンドスペース構造(図30参照)、円錐柱の凸部Uを縦横に並べた構造(図31参照)、図示は省略するが、三角柱やピラミッド状の凸部Uがラインアンドペース状に並んだ構造、方形体状の凸部Uが縦横に並んだ構造、凸部Uをランダムに形成した構造等、各種の構成を採用できる。
ちなみに、放射面Hを凹凸状に形成する際の高低差は、100μm程度である。
放射面Hを凹凸状に形成した場合の利点としては、放射面Hの表面積が増加することにより、例えば、外気の対流(風)が放射面Hに対して通風されることにより、冷却機能を向上させることができる。
放射面Hを凹凸状に形成すると、見た目に関してもメリットがある。放射冷却層CPの放射面H(上面)が鏡面である場合よりも、放射面Hが凹凸状に形成されている場合の方が、太陽光が散乱されるので、放射冷却層CPのギラツキが低減される。
尚、放射面Hに「散乱する」という機能を付与しても、光反射層Bの銀(銀合金)における光吸収は増大しないので、放射冷却を良好に行うことができる。
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態では、樹脂材料層Jを形成する樹脂材料として各種のものを例示したが、好適に使用できる樹脂材料としては、塩化ビニル樹脂(PVC)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、フッ化ビニル樹脂(PVF)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)を挙げることができる。
(2)上記実施形態では、保護層Dを備えさせる場合を例示したが、保護層Dを省略する形態で実施してもよい。
(3)上記実施形態では、本体形成基材Eの内面に、太陽光吸収率が70%以上である太陽光吸収層Kを備えている形態を例示したが、遮光体Mが、本体形成基材Eの外面に放射冷却層CPを備え、かつ、本体形成基材Eが、太陽光吸収率が70%以上である材料にて形成される形態で実施してもよい。太陽光吸収率が70%以上である材料としては、例えば、黒色の合成樹脂フィルム、黒色の織物を例示することができる。
(4)上記実施形態では、日傘を放射冷却式遮光装置Wとして例示したが、放射冷却式遮光装置Wとしては、壁面1Aから張出し状に設置されるオーニング1(図32参照)、屋根部分2Aが存在し且つ側方部分が開放された天幕テント2(図33参照)を挙げることができ、その他、図示は省略するがターフ等を挙げることができる。
その他、本体形成基材Eとしての膜材が合成樹脂材料にて形成された傘に、放射冷却層CP及び太陽光吸収層Kを備えさせて、放射冷却式遮光装置Wとして構成してもよい。
尚、本体形成基材Eを形成する好適な合成樹脂材料としては、塩化ビニル樹脂、エチレンテレフタラート樹脂、アクリル樹脂、エチレン樹脂を挙げることができ、その他、フッ素樹脂、ポリカーボネイト樹脂を用いることができる。
(5)上記実施形態では、樹脂材料層Jの放射面Hを露出させる形態を例示したが、放射面Hを覆うハードコートを設けるようにしてもよい。
ハードコートとしては、UV硬化アクリル系、熱硬化アクリル系、UV硬化シリコーン系、熱硬化シリコーン系、有機無機ハイブリッド系、塩化ビニルが存在し、いずれを用いてもよい。添加材として有機系帯電防止剤を用いてもよい。
UV硬化アクリル系の中でもウレタンアクリレートは特によい。
ハードコートの成膜方法としては、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などを用いることができる。
ハードコート(塗膜)の厚みは1~50μmであり、特に2~20μmが望ましい。
また、樹脂材料層Jの樹脂材料として、塩化ビニル樹脂を用いる場合において、塩化ビニル樹脂の可塑剤の量を減らし、硬質塩化ビニル樹脂、或いは、半硬質塩化ビニル樹脂にしてもよい。この場合、放射層の塩化ビニルそのものがハードコート層となる。
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
A 赤外放射層
B 光反射層
D 保護層
E 本体形成基材
H 放射面
J 樹脂材料層
本発明の放射冷却式遮光装置は、外面側に放射冷却層を備える遮光体が設けられ、当該遮光体の内面の太陽光吸収率が70%以上であり、
前記遮光体が、本体形成基材の外面に前記放射冷却層を備え、かつ、前記本体形成基材の内面に、太陽光吸収率が70%以上である太陽光吸収層を備えている形態であり、
前記放射冷却層が、放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置させる光反射層とを備える形態に構成され、
前記赤外放射層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整された樹脂材料層であり、
前記光反射層が、銀または銀合金を備え、
前記太陽光吸収層の太陽光吸収率が70%以上である点にある。
また、遮光体が、放射冷却層を外面に備える本体形成基材の内面に、太陽光吸収率が70%以上である太陽光吸収層を備える形態に構成されることになる。
このように、太陽光吸収層を、放射冷却層を外面に備える本体形成基材とは別の層として構成するものであるから、例えば、本体形成基材を、用途に適した遮光体を構成するのに好適な材料を用いて形成するようにしながら、その内面に太陽光吸収層を備えさせることにより、遮光体の内面の太陽光吸収率を70%以上にできる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の特徴構成によれば、種々の用途に適した遮光体を良好に作成できる。
また、放射冷却層における赤外放射層としての樹脂材料層の放射面から入射する太陽光は、樹脂材料層を透過した後、樹脂材料層の放射面の存在側とは反対側にある光反射層で反射され、放射面から系外へ逃がされる。
なお、本明細書の記載において、単に光と称する場合、当該光の概念には紫外光(紫外線)、可視光、赤外光を含む。これらを電磁波としての光の波長で述べると、その波長が10nmから20000nm(0.01μmから20μmの電磁波)の電磁波を含む。
また、放射冷却層への伝熱(入熱)は、樹脂材料層で赤外線に変換されて、放射面から系外へ逃がされる。
このように、放射冷却層は、放射冷却層へ照射される太陽光を反射し、また、放射冷却層への伝熱(例えば、大気からの伝熱や、放射冷却層が冷却する遮光体からの伝熱)を赤外光として系外へ放射することができる。
そして、樹脂材料層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整されているから、銀または銀合金を備える光反射層にて太陽光を適切に反射させるようにしながら、昼間の日射環境においても、冷却機能を発揮することができる。
従って、昼間の日射環境においても、遮光体の外面側に備えられた放射冷却層によって、遮光体を冷却することができ、その結果、昼間の日射環境においても、遮光体の温度上昇を適切に抑制できる。
もちろん、放射冷却層の存在によって、太陽光が遮光体を透過することが抑制されるから、太陽光が遮光体を透過して遮光対象に照射されることはない。
従って、昼間の日射環境においても放射冷却作用により遮光体を冷却して、遮光対象が加熱されることを適切に回避できるのである。
ちなみに、樹脂材料層は、柔軟性の高い樹脂材料にて形成されることになるから、樹脂材料層に柔軟性を持たせることができ、しかも、光反射層は、例えば銀の薄膜として構成する等により、柔軟性を備えさせることができる。
したがって、樹脂材料層と光反射層とを備える放射冷却層に柔軟性を持たせることができ、放射冷却層を遮光体の外面側に適切に備えさせることができる。
要するに、本発明の放射冷却式遮光装置の特徴構成によれば、使用する環境が直射日光のある日射環境のときにも遮光体の温度上昇を適切に抑制できる。
)上記実施形態では、日傘を放射冷却式遮光装置Wとして例示したが、放射冷却式遮光装置Wとしては、壁面1Aから張出し状に設置されるオーニング1(図32参照)、屋根部分2Aが存在し且つ側方部分が開放された天幕テント2(図33参照)を挙げることができ、その他、図示は省略するがターフ等を挙げることができる。
その他、本体形成基材Eとしての膜材が合成樹脂材料にて形成された傘に、放射冷却層CP及び太陽光吸収層Kを備えさせて、放射冷却式遮光装置Wとして構成してもよい。
尚、本体形成基材Eを形成する好適な合成樹脂材料としては、塩化ビニル樹脂、エチレンテレフタラート樹脂、アクリル樹脂、エチレン樹脂を挙げることができ、その他、フッ素樹脂、ポリカーボネイト樹脂を用いることができる。
)上記実施形態では、樹脂材料層Jの放射面Hを露出させる形態を例示したが、放射面Hを覆うハードコートを設けるようにしてもよい。
ハードコートとしては、UV硬化アクリル系、熱硬化アクリル系、UV硬化シリコーン系、熱硬化シリコーン系、有機無機ハイブリッド系、塩化ビニルが存在し、いずれを用いてもよい。添加材として有機系帯電防止剤を用いてもよい。
UV硬化アクリル系の中でもウレタンアクリレートは特によい。

Claims (24)

  1. 外面側に放射冷却層を備える遮光体が設けられ、当該遮光体の内面の太陽光吸収率が70%以上である放射冷却式遮光装置。
  2. 前記遮光体が、本体形成基材の外面に前記放射冷却層を備え、かつ、前記本体形成基材の内面に、太陽光吸収率が70%以上である太陽光吸収層を備えている形態である請求項1に記載の放射冷却式遮光装置。
  3. 前記遮光体が、本体形成基材の外面に前記放射冷却層を備え、かつ、前記本体形成基材が、太陽光吸収率が70%以上である材料にて形成されている形態である請求項1に記載の放射冷却式遮光装置。
  4. 前記遮光体が、可撓性の膜状体に形成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
  5. 前記遮光体が、遮光対象の上方を覆いかつ当該遮光対象の側方を開放する状態で設けられている請求項1~4のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
  6. 前記放射冷却層が、放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置させる光反射層とを備える形態に構成され、
    前記赤外放射層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整された樹脂材料層であり、
    前記光反射層が、銀または銀合金を備え、
    前記太陽光吸収層の太陽光吸収率が70%以上である請求項2に記載の放射冷却式遮光装置。
  7. 前記赤外放射層と前記光反射層との間に保護層を備える形態に構成され、
    前記保護層が、厚さが300nm以上で、40μm以下のポリオレフィン系樹脂、又は、厚さが17μm以上で、40μm以下のポリエチレンテレフタラート樹脂である請求項6に記載の放射冷却式遮光装置。
  8. 前記放射冷却層が、接着剤又は粘着剤の接続層にて前記遮光体の外面に装着されている請求項6又は7に記載の放射冷却式遮光装置。
  9. 前記放射冷却層における前記放射面が、凹凸状に形成されている請求項6~8のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
  10. 前記光反射層は、波長0.4μmから0.5μmの反射率が90%以上、波長0.5μmより長波の反射率が96%以上である請求項6~9のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
  11. 前記樹脂材料層の膜厚が、
    波長0.4μmから0.5μmの光吸収率の波長平均が13%以下であり、波長0.5μmから波長0.8μmの光吸収率の波長平均が4%以下であり、波長0.8μmから波長1.5μmまでの光吸収率の波長平均が1%以内であり、1.5μmから2.5μmまでの光吸収率の波長平均が40%以下となる光吸収特性を備え、且つ、
    8μmから14μmの輻射率の波長平均が40%以上となる熱輻射特性を備える状態の厚みに調整されている請求項6~10のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
  12. 前記樹脂材料層を形成する樹脂材料は、炭素-フッ素結合、シロキサン結合、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エーテル結合、エステル結合、ベンゼン環のいずれかを1つ以上有する樹脂材料から選択される請求項6~11のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
  13. 前記樹脂材料層を形成する樹脂材料の主成分がシロキサンであり、
    前記樹脂材料層の厚みが、1μm以上である請求項6~12のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
  14. 前記樹脂材料層の厚みが、10μm以上である請求項12に記載の放射冷却式遮光装置。
  15. 前記樹脂材料層の厚みが、20mm以下である請求項6~14のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
  16. 前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、フッ素樹脂もしくはシリコーンゴムである請求項15に記載の放射冷却式遮光装置。
  17. 前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合、ベンゼン環のいずれかを1つ以上有する炭化水素を主鎖とする樹脂材料、又は、側鎖の炭化水素の炭素数が2個以上のシリコーン樹脂であり、
    前記樹脂材料層の厚みが500μm以下である請求項6~14のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
  18. 前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、炭素-フッ素結合、シロキサン結合を含む樹脂と、炭化水素を主鎖とする樹脂とのブレンドであり、前記樹脂材料層の厚みが500μm以下である請求項6~14のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
  19. 前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、フッ素樹脂であり、
    前記樹脂材料層の厚みが、300μm以下である請求項6~14のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
  20. 前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エステル結合、エーテル結合、ベンゼン環のいずれかを一つ以上有する樹脂材料であり、
    前記樹脂材料層の厚みが、50μm以下である請求項6~14のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
  21. 前記樹脂材料が、炭素-ケイ素結合を有する樹脂材料であり、
    前記樹脂材料層の厚みが、10μm以下である請求項6~14のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
  22. 前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、塩化ビニル樹脂又は塩化ビニリデン樹脂であり、
    前記樹脂材料層の厚みが、100μm以下で10μm以上である請求項6~11のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
  23. 前記光反射層が、銀または銀合金で構成され、その厚みが50nm以上である請求項6~22のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
  24. 前記光反射層が、前記保護層に隣接して位置する銀または銀合金と前記保護層から離れる側に位置するアルミまたはアルミ合金の積層構造である請求項7~22のいずれか1項に記載の放射冷却式遮光装置。
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