JP2023146697A - 空調室外機用吸引空気冷却装置及び空調室外機の吸引空気冷却方法 - Google Patents

空調室外機用吸引空気冷却装置及び空調室外機の吸引空気冷却方法 Download PDF

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雅行 杉本
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Abstract

【課題】夏期等の高温時において冷房能力の向上を図ることができる空調室外機用吸引空気冷却装置を提供する。【解決手段】放射冷却膜Wが空調室外機Kに吸引される吸引空気を冷却する冷却作用状態に装着されている。【選択図】図1

Description

本発明は、空調室外機に吸引される吸引空気を冷却する空調室外機用吸引空気冷却装置、及び、空調室外機に吸引される吸引空気を冷却する空調室外機の吸引空気冷却方法に関する。
ヒートポンプサイクルを用いて冷房運転と暖房運転とを行う空調システムにおいては、空調室外機を建物の外部に設置して、冷房運転においては外気中に放熱し、暖房運転においては外気の熱を吸収させることになる。
空調室外機は、建物の南向きとなる箇所に設置されることがある。このように、空調室外機が建物の南向きとなる箇所に設置されると、空調室外機が設置される空間に存在する空気が、太陽光による直接あるいは間接的な加熱により、冬期等においても高温となる傾向となり、冬期等の低温時において当該空調室外機に吸引される吸引空気が極力高温となる結果、暖房能力の向上を図り易いものとなる。
しかしながら、空調室外機を建物の南向きとなる箇所に設置すると、夏期等の高温時においては、空調室外機が設置される空間に存在する空気が、太陽光による直接あるいは間接的な加熱により高温になることに起因して、冷房能力の低下を招くものとなる。
このため、空調室外機の設置空間を覆う日除け部材を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
ちなみに、特許文献1においては、日除け部材の上部に、太陽光発電部を設けることが記載されている。
特開2002-76407号公報
従来では、空調室外機の設置空間を覆う日除け部材を設けるものの、単に、日除け部材を設けるだけでは、夏期等の高温時において、空調室外機が設置される空間に存在する空気を適切に低温にすることができないものであり、その結果、空調室外機に吸引される吸引空気が高温となり、冷房能力の向上を図り難いものであった。
ちなみに、冬期等の低温時においては、空調室外機が設置される空間に存在する空気を高温にすべく、日除け部材を取り外すことが考えられるが、日除け部材の上部に太陽光発電部を設ける場合には、日除け部材を取り外すことなく、冬期等の低温時においても、日除け部材を装着し続けることになる。
本発明は、上記実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、夏期等の高温時において冷房能力の向上を図ることができる空調室外機用吸引空気冷却装置及び空調室外機の吸引空気冷却方法を提供する点にある。
本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の特徴構成は、放射冷却膜が空調室外機に吸引される吸引空気を冷却する冷却作用状態に装着されている点にある。
すなわち、放射冷却膜が空調室外機に吸引される吸引空気を冷却する冷却作用状態に装着されているから、空調室外機が建物の南向きとなる箇所に設置されていても、当該空調室外機に吸引される吸引空気が低温になる結果、夏期等の高温時において冷房能力の向上を図ることができる。
放射冷却とは、物質が周囲に赤外線などの電磁波を放射することでその温度が下がる現象のことを言う。この現象を利用すれば、たとえば、電気などのエネルギーを消費せずに冷却対象を冷やすことができる。
つまり、放射冷却膜が、赤外線などの電磁波を外部(例えば、天空)に放射することより、その温度が下がることになり、その結果、夏期等の高温時において、空調室外機に吸引される吸引空気が冷却され、冷房能力が向上する。
要するに、本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置によれば、夏期等の高温時において冷房能力の向上を図ることができる。
本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成は、前記放射冷却膜が、前記冷却作用状態と前記吸引空気を冷却しない冷却停止状態とに切換自在に装着されている点にある。
すなわち、夏期等の高温時においては、放射冷却膜を空調室外機に吸引される吸引空気を冷却する冷却作用状態にすることにより、空調室外機が建物の南向きとなる箇所に設置されていても、当該空調室外機に吸引される吸引空気を冷却して、冷房能力を向上させることができる。
そして、冬期等の低温時においては、放射冷却膜を空調室外機に吸引される吸引空気を冷却しない冷却停止状態にすることにより、空調室外機に吸引される吸引空気が不必要に低温になることを抑制して、暖房能力を向上させることができる。
特に、空調室外機が建物の南向きとなる箇所に設置されていれば、空調室外機が設置されている空間の外気が、太陽光による直接あるいは間接的な加熱により、冬期等の低温時においても高温となる傾向となるから、暖房能力を適切に向上させることができる。
要するに、本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成によれば、夏期等の高温時において冷房能力の向上を図り、冬期等の低温時において暖房能力の向上を図ることができる。
本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成は、前記放射冷却膜が、前記空調室外機の設置空間の上部を覆う状態に装着されている点にある。
すなわち、放射冷却膜が、空調室外機の設置空間の上部を覆う状態に装着されているから、空調室外機の設置空間の外気を冷却することにより、空調室外機に吸引される吸引空気を冷却して、冷房能力を向上させることができる。
つまり、空調室外機の設置空間の上部を覆う状態に放射冷却膜を装着するという簡素な構成により、空調室外機に吸引される吸引空気を冷却して、冷房能力を向上させることができる。
要するに、本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成によれば、簡素な構成により、冷房能力を向上させることができる。
本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成は、前記空調室外機の設置空間の上部を覆う透明性保温シートが設けられ、
前記放射冷却膜が、前記冷却作用状態において前記透明性保温シートの上部を覆う状態となり、前記冷却停止状態において前記透明性保温シートの上部を開放する状態となる点にある。
すなわち、空調室外機の設置空間の上部を覆う透明性保温シートが設けられ、放射冷却膜が、冷却作用状態において透明性保温シートの上部を覆う状態となる。
したがって、夏期等の高温時においては、放射冷却膜が透明性保温シートを冷却して、当該透明性保温シートの下方に位置する外気を冷却することになる結果、空調室外機に吸引される吸引空気を冷却することになり、空調室外機が建物の南向きとなる箇所に設置されていても、当該空調室外機に吸引される吸引空気を冷却して、冷房能力を向上させることができる。
また、放射冷却膜が、冷却停止状態において、空調室外機の設置空間の上部を覆う透明性保温シートの上部を開放する状態となるから、空調室外機が建物の南向きとなる箇所に設置されていれば、太陽光が透明性保温シートに照射する状態となり、当該透明性保温シートの下方に位置する外気が適切に高温になり、空調室外機に吸引される吸引空気を適切に高温にして、暖房能力を一層向上することができる。
要するに、本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成は、夏期等の高温時において冷房能力の向上を図り、冬期等の低温時において暖房能力の一層の向上を図ることができる。
本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成は、前記放射冷却膜が、前記空調室外機の外気吸引部から建物上部の上方に延びる筒状に形成されている点にある。
すなわち、放射冷却膜が、空調室外機の外気吸引部から建物上部の上方に延びる筒状に形成されているから、建物上部の上方に存在する空気を空調室外機に吸引される吸引空気として導入することができ、空調室外機が建物の南向きとなる箇所に設置されていても、当該空調室外機に吸引される吸引空気の低温化を推進して、冷房能力を一層向上させることができる。
つまり、建物上部の上方に存在する空気は、建物の地上近くに存在する空気よりも温度が低く、しかも、筒状に形成された放射冷却膜を通して空調室外機の外気吸引部に流動する途中において、放射冷却膜にて冷却されるものとなるから、空調室外機に吸引される空気の低温化が推進されて、冷房能力を一層の向上させることができる。
要するに、本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成によれば、冷房能力を一層の向上させることができる。
本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成は、前記空調室外機の外気吸引部の上部及び側部を囲むフードが設けられ、
前記放射冷却膜が、前記フードの外面に装着されている点にある。
すなわち、雪国等においては、空調室外機の外気吸引部の上部及び側部を囲むフードを設けて、降り積もる雪が空調室外機の外気吸引部を塞ぐことを回避することになる。ちなみに、雪国等においては、一般に、空調室外機を地上高く載置する架台を設けて、空調室外機が降り積もる雪に埋もれないようにすることになる。
そして、放射冷却膜がフードの外面に装着されているから、夏期等の高温時において、放射冷却膜がフードを冷却することにより、当該フードを通して室外空調機に吸引される空気を冷却することができる。
つまり、既設のフードを有効利用した簡素な構成にて放射冷却膜を設置して、夏期等の高温時において冷房能力の向上を図ることができる。
要するに、本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成によれば、既設のフードを有効利用した簡素な構成にて放射冷却膜を設置できる。
本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成は、前記放射冷却膜が、放射冷却層を備え、
前記放射冷却層が、放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置させる光反射層とを備える形態に構成され、
前記赤外放射層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整された塩化ビニル系樹脂からなる樹脂材料層であり、
前記光反射層が、銀又は銀合金を備えている点にある。
本発明で用いられる塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの単独重合体及び塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの共重合体であり、その製造方法は、従来公知の重合方法で行われる。
すなわち、放射冷却層における赤外放射層の放射面から入射する太陽光は、樹脂材料層を透過した後、樹脂材料層の放射面の存在側とは反対側にある光反射層で反射され、放射面から系外へ逃がされる。
なお、本明細書の記載において、単に光と称する場合、当該光の概念には紫外光(紫外線)、可視光、赤外光を含む。これらを電磁波としての光の波長で述べると、その波長が10nmから20000nm(0.01μmから20μmの電磁波)の電磁波を含む。
また、放射冷却層への伝熱(入熱)は、赤外放射層としての樹脂材料層で赤外線に変換されて、放射面から系外へ逃がされる。
このように、放射冷却層は、放射冷却層へ照射される太陽光を反射し、また、放射冷却層への伝熱(例えば、大気からの伝熱や、放射冷却層が冷却する膜材からの伝熱)を赤外光として系外へ放射することができる。
また、塩化ビニル系樹脂からなる樹脂材料層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域(大気の窓領域)で放つ厚みに調整されているから、銀または銀合金を備える光反射層にて太陽光を適切に反射させるようにしながら、昼間の日射環境下においても、冷却機能を発揮することができる。
従って、昼間の日射環境下においても、放射冷却層の放射冷却作用により空調室外機に吸引される吸引空気を冷却できることになる。
ちなみに、塩化ビニル系樹脂は、上述の如く大気の窓領域において十分な熱輻射が得られるものであり、しかも、同様な熱輻射が得られるフッ素樹脂やシリコーンゴムよりもかなり安価であるから、直射日光下で周囲温度よりも温度が低下する放射冷却膜を安価に構成するのに有利である。
また、薄膜状の塩化ビニル系樹脂は、可塑剤を入れることにより軟質性となることから、他物が接触しても他物に合わせて柔軟に形状を変化させることによって傷つくことを回避するため、長期に亘って美麗な状態に維持できる。ちなみに、薄膜状のフッ素樹脂は、硬質性であるから、他物の接触により柔軟に形状を変化させることができず傷がつき易く、美麗な状態を維持し難いものである。
また、塩化ビニル系樹脂は、可塑剤を入れることにより、傷がついても80℃以上に加熱することで変形し表面傷を無くし平滑化することができ、つまりは傷を自己修復することができる。フッ素樹脂やシリコーンゴムにこの特性はない。軟質塩化ビニル系樹脂のこの特性によって綺麗な状態を長期間維持することができる。このことは長期にわたる放射冷却性能の維持につながる。
また、塩化ビニル系樹脂は、難燃性であり且つ生分解され難いものであるから、屋外で使用する放射冷却膜の赤外放射層を形成する樹脂材料として好適である。
また、薄膜状の塩化ビニル系樹脂が柔軟性であることに加えて、塩化ビニル系樹脂には可塑剤が混入されて軟質化されているから、樹脂材料層がさらに柔軟性を備えることになる結果、放射冷却膜が柔軟性を備えるものとなる。
要するに、本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成によれば、昼間の日射環境下において放射冷却作用により空調室外機に吸引される空気を冷却できる。
本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層の膜厚が、
波長0.4μmから0.5μmの光吸収率の波長平均が13%以下であり、波長0.5μmから波長0.8μmの光吸収率の波長平均が4%以下であり、波長0.8μmから波長1.5μmまでの光吸収率の波長平均が1%以内であり、1.5μmから2.5μmまでの光吸収率の波長平均が40%以下となる光吸収特性を備え、且つ、8μmから14μmの輻射率の波長平均が40%以上となる熱輻射特性を備える状態の厚みに調整されている点にある。
尚、波長0.4μmから0.5μmの光吸収率の波長平均とは、0.4μmから0.5μmの範囲の波長毎の光吸収率の平均値を意味するものであり、波長0.5μmから波長0.8μmの光吸収率の波長平均、波長0.8μmから波長1.5μmまでの光吸収率の波長平均、及び、1.5μmから2.5μmまでの光吸収率の波長平均も同様である。また、輻射率を含む他の同様な記載も同様な平均値を意味するものであり、以下、本明細書においては同様である。
すなわち、樹脂材料層は、厚みによって光吸収率や輻射率(光放射率)が変化する。そのため、太陽光をできるだけ吸収せず、いわゆる大気の窓の領域の波長帯域(光の波長8μmから14μmの領域)において大きな熱輻射を発するように樹脂材料層の厚みを調整する必要がある。
具体的には、樹脂材料層における太陽光の光吸収率(光吸収特性)の観点において、波長0.4μmから0.5μmの光吸収率の波長平均が13%以下であり、波長0.5μmから波長0.8μmの光吸収率の波長平均が4%以下であり、波長0.8μmから波長1.5μmまでの光吸収率の波長平均が1%以内であり、1.5μmから2.5μmまでの光吸収率の波長平均が40%以下とする必要がある。尚、2.5μmから4μmまでの光吸収率については、波長平均が100%以下であればよい。
このような光吸収率が分布する場合、太陽光の光吸収率は10%以下となり、エネルギーで言うと100W以下となる。
つまり、太陽光の光吸収率は樹脂材料層の膜厚を厚くすると増加する。樹脂材料層を厚膜にすると、大気の窓の輻射率はほぼ1となり、その際に宇宙に放出する熱輻射は125W/mから160W/mとなる。
光反射層での太陽光吸収は50W/m以下であることが好ましい。
したがって、樹脂材料層と光反射層における太陽光吸収の和が150W/m以下であり、大気の状態がよければ冷却が進む。樹脂材料層は、以上のように太陽光スペクトルのピーク値付近の吸収率が小さなものを用いるのが良い。
また、樹脂材料層の赤外光を放射する輻射率(熱輻射特性)の観点では、波長8μmから14μmの輻射率の波長平均が40%以上となる必要がある。
すなわち、光反射層で吸収される50W/m程度の太陽光の熱輻射を樹脂材料層から宇宙に放出させるには、それ以上の熱輻射を樹脂材料層が出す必要がある。
例えば、外気温が30℃のとき、波長8μmから14μmの大気の窓の熱輻射の最大は200W/mである(輻射率1として計算)。この値が得られるのは、高山など、空気の薄いよく乾燥した環境の快晴時である。低地などでは大気の厚みが高山よりも厚くなるので、大気の窓の波長帯域は狭くなり、透過率は低下する。ちなみに、このことを「大気の窓が狭くなる」と呼ぶ。
また、実際に空調室外機を使用する環境、つまり、放射冷却式膜を使用する環境は多湿であることもあり、その場合も大気の窓は狭くなる。低地で利用する際の大気の窓域で発生する熱輻射は、状態の良いときで30℃において160W/mと見積もられる(輻射率1として計算)。
また、日本ではよくあることであるが、空に靄があるときや、スモッグが存在する場合、大気の窓はさらに狭くなり、宇宙への放射は125W/m程度となる。
かかる事情を鑑みて、波長8μmから14μmの輻射率の波長平均は40%以上(大気の窓帯での熱輻射強度が50W/m以上)ないと中緯度帯の低地で用いることができない。
したがって、樹脂材料層の厚みを、上述した光学的規定の範囲になるように調整することにより、太陽光の光吸収による入熱よりも大気の窓における出熱の方が大きくなり、昼間の日射環境下でも屋外で放射冷却できるようになる。
つまり、樹脂材料層が塩化ビニル系樹脂にて形成される場合には、樹脂材料層の厚みが、100μm以下で10μm以上であることが好ましい。
要するに、本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成によれば、太陽光の光吸収による入熱よりも大気の窓における出熱の方が大きくなって、日射環境下でも空調室外機に吸引される吸引空気を適切に冷却できる。
本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成は、前記光反射層は、波長0.4μmから0.5μmの反射率が90%以上、波長0.5μmより長波の反射率が96%以上である点にある。
すなわち、太陽光スペクトルは波長0.295μmから4μmにかけて存在し、そして、波長が0.4μmから大きくなるにつれて強度が大きくなり、特に波長0.5μmから波長2.5μmにかけての強度が大きい。
光反射層が、波長0.4μmから0.5μmにかけて90%以上の反射率を示し、波長0.5μmより長波の反射率が96%以上である反射特性を備えると、光反射層が太陽光エネルギーを5%程度以下しか吸収しなくなる。
その結果、夏場の南中時に、光反射層が吸収する太陽光エネルギーを50W/m程度以下とすることができ、樹脂材料層による放射冷却を良好に行うことができる。
尚、本明細書では、太陽光について、断りのない場合、スペクトルはAM1.5Gの規格とする。
要するに、本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成によれば、光反射層による太陽光エネルギーの吸収を抑えて、樹脂材料層による放射冷却を良好に行うことができる。
本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成は、前記光反射層が、銀または銀合金で構成され、その厚みが50nm以上である点にある。
すなわち、光反射層に上述の反射率特性、つまり、波長0.4μmから0.5μmの反射率が90%以上、波長0.5μmより長波の反射率が96%以上である反射率特性を持たせるためには、光反射層における放射面側の反射材料としては、銀または銀合金である必要がある。
そして、銀または銀合金のみで前述の反射率特性を持たせた状態で太陽光を反射する場合、厚さが50nm以上必要である。
要するに、本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成によれば、光反射層よる太陽光エネルギーの吸収を的確に抑えて、樹脂材料層による放射冷却を良好に行うことができる。
本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成は、前記光反射層が、銀または銀合金と前記樹脂材料層から離れる側に位置するアルミまたはアルミ合金との積層構造である点にある。
すなわち、光反射層に前述の反射率特性を持たせるためには、銀または銀合金とアルミまたはアルミ合金を積層させた構造にしてもよい。なお、この場合も放射面側の反射材料は銀または銀合金である必要がある。この場合、銀の厚みは10nm以上必要であり、アルミの厚みは30nm以上必要である。
そして、アルミまたはアルミ合金は、銀または銀合金よりも安価であるから、適切な反射率特性を持たせながらも、光反射層の低廉化を図ることができる。
つまり、高価な銀または銀合金を薄くして、光反射層の低廉化を図るようにしながらも、光反射層を、銀または銀合金とアルミまたはアルミ合金との積層構造にすることにより、適切な反射率特性を持たせながらも、光反射層の低廉化を図ることができる。
要するに、本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成によれば、適切な反射率特性を持たせながらも、光反射層の低廉化を図ることができる。
本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、可塑剤が混入された塩化ビニル系樹脂であり、
前記可塑剤が、フタル酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類及びリン酸エステル類からなる群より選択される1つ以上の化合物からなる点にある。
すなわち、薄膜状の塩化ビニル系樹脂は、上述の如く、可塑剤を入れることにより軟質性となることから、他物が接触しても他物に合わせて柔軟に形状を変化させることによって傷つくことを回避するため、長期に亘って美麗な状態に維持できる。ちなみに、薄膜状のフッ素樹脂は、硬質性であるから、他物の接触により柔軟に形状を変化させることができず傷がつき易く、美麗な状態を維持し難いものである。
ちなみに、塩化ビニル系樹脂に混入する可塑剤を、塩化ビニル系樹脂の100重量部に対して、1重量部以上200重量部以下の範囲で混入させることにより、塩化ビニル系樹脂に適度な柔軟性を備えさせることができる。
また、塩化ビニル系樹脂に可塑剤を入れることにより、上述の如く、傷がついても80℃以上に加熱することで変形し表面傷を平滑化することができ、つまりは傷を自己修復することができる。フッ素樹脂やシリコーンゴムにこの特性はない。塩化ビニル系樹脂のこの特性によって綺麗な状態を長期間維持することができる。このことは長期にわたる放射冷却性能の維持につながる。
しかも、塩化ビニル系樹脂に混入する可塑剤が、フタル酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類及びリン酸エステル類からなる群より選択される1つ以上の化合物からなるものであるから、可塑剤が太陽光に含まれている紫外線(波長295nmから400nmの紫外光)を吸収し難いものとなるため、可塑剤が混入された塩化ビニル系樹脂の耐候性を向上できる。
つまり、塩化ビニル系樹脂に混入する可塑剤が紫外線を吸収すると、可塑剤の加水分解が進む結果、塩化ビニル系樹脂が脱塩酸等を生じて着色(茶色)し、しかも、機械強度の低下を生じる虞があるが、可塑剤が太陽光に含まれている紫外線を吸収し難いものとなるため、可塑剤が混入された塩化ビニル系樹脂の耐候性を向上できるのである。
要するに、本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成によれば、放射冷却性能を長期に亘って維持することができ、しかも、耐候性を向上できる。
本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成は、前記赤外放射層と前記光反射層との間に保護層を備える形態に構成され、
前記保護層が、厚さが300nm以上で、40μm以下のポリオレフィン系樹脂、又は、厚さが17μm以上で、40μm以下のポリエチレンテレフタラート樹脂である点にある。
すなわち、赤外放射層としての樹脂材料層の放射面から入射する太陽光は、樹脂材料層及び保護層を透過した後、樹脂材料層の放射面の存在側とは反対側にある光反射層で反射され、放射面から系外へ逃がされる。
また、保護層が、ポリオレフィン系樹脂にて厚さが300nm以上で、40μm以下の形態に、又は、エチレンテレフタラート樹脂にて厚さが17μm以上で、40μm以下の形態に形成されているから、昼間の日射環境下においても、光反射層の銀または銀合金が変色することを抑制できるため、光反射層にて太陽光を適切に反射させるようにしながら、昼間の日射環境下においても、冷却機能を的確に発揮させることができる。
つまり、保護層が存在しない場合には、樹脂材料層にて発生したラジカルが光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することや、樹脂材料層を透過する水分が光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することにより、光反射層の銀または銀合金が短期間で変色して、光反射機能を適切に発揮しない状態になる虞があるが、保護層の存在により、光反射層の銀または銀合金が短期間で変色することを抑制できる。
保護層にて光反射層の銀または銀合金の変色を抑制することについて説明を加える。
保護層が、ポリオレフィン系樹脂にて厚さが300nm以上で、40μm以下の形態に形成される場合には、ポリオレフィン系樹脂は、波長0.295μmから0.4μmの紫外線の波長域の全域において紫外線の光吸収率が10%以下である合成樹脂であるから、保護層が紫外線の吸収により劣化し難いものとなる。
そして、保護層を形成するポリオレフィン系樹脂の厚さが、300nm以上であるから、樹脂材料層にて発生したラジカルが光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することを遮断し、また、樹脂材料層を透過する水分が光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することを遮断する等の遮断機能を良好に発揮することになり、光反射層を形成する銀又は銀合金の変色を抑制できることになる。
つまり、ポリオレフィン系樹脂にて形成される保護層は、紫外線の吸収により、反射層から離れる表面側にラジカルを形成しながら劣化することになるが、厚さが300nm以上であるから、形成したラジカルが光反射層に到達することはなく、また、ラジカルを形成しながら劣化するにしても、紫外線の吸収が低いことにより劣化の進み具合は遅いものであるから、上述の遮断機能を長期に亘って発揮することになる。
保護層が、エチレンテレフタラート樹脂にて厚さが17μm以上で、40μm以下の形態に形成される場合には、エチレンテレフタラート樹脂は、ポリオレフィン系樹脂よりも、波長0.295μmから0.4μmの紫外線の波長域において紫外線の光吸収率が高い樹脂材料であるが、厚さが17μm以上であるから、樹脂材料層にて発生したラジカルが光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することを遮断し、また、樹脂材料層を透過する水分が光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することを遮断する等の遮断機能を長期に亘って良好に発揮することになるため、保護層を形成する銀又は銀合金の変色を抑制できることになる。
つまり、エチレンテレフタラート樹脂にて形成される保護層は、紫外線の吸収により、反射層から離れる表面側にラジカルを形成しながら劣化することになるが、厚さが17μm以上であるから、形成したラジカルが反射層に到達することはなく、また、ラジカルを形成しながら劣化するにしても、厚さが17μm以上であるから、上述の遮断機能を長期に亘って発揮することになる。
尚、ポリオレフィン系樹脂及びエチレンテレフタラート樹脂にて保護層を形成する場合において、その厚さの上限を定める理由は、保護層が放射冷却に寄与しない断熱性を奏することを極力回避するためである。つまり、保護層は、厚さが厚くなるほど放射冷却に寄与しない断熱性を奏することになるから、反射層を保護する機能を発揮させながらも、放射冷却に寄与しない断熱性を奏することを極力回避するために、厚さの上限が定められることになる。
要するに、本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成によれば、光反射層の銀または銀合金が短期間で変色することを抑制しながら良好に冷却できる。
本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成は、前記放射冷却膜が、膜材と前記放射冷却層とを備え、前記放射冷却層が、接着剤又は粘着剤の接続層にて前記膜材の外面に装着されている点にある。
すなわち、可撓性を有する膜材の外面に対して、接着剤又は粘着剤の接続層にて放射冷却層を密着させる状態に的確に装着できる。
ちなみに、膜材の外面は、一般的に、鏡面では無く、凹凸が存在する状態に形成されることが多いが、接着剤又は粘着剤の接続層にて放射冷却層を膜材の外面に接続させるものであるから、光反射層に対して膜材の外面の凹凸が反映されるのを抑制して、光反射層を平坦な状態に維持することができる。
つまり、光反射層に対して膜材の外面の凹凸が反映されると、膜材の外面の凹凸に起因する光の散乱により、光反射層の反射率が低下して、光が吸収されてしまう不都合を生じる状態となるが、光反射層を平坦な状態に維持することにより、光反射層の反射率の低下を抑制することができる。
要するに、本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成によれば、可撓性を有する膜材の外面に対して放射冷却層を密着させる状態に的確に装着できる。
本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成は、前記膜材の前記放射冷却層から離れる裏面部に、塩化ビニル系樹脂にて形成される膜材側樹脂層を備えている点にある。
すなわち、樹脂材料層が塩化ビニル系樹脂にて形成されることに加えて、膜材の放射冷却層から離れる裏面部に、塩化ビニル系樹脂にて形成される膜材側樹脂層が備えられているから、一対の放射冷却式膜材を接合する際において、一方側の放射冷却式膜材の膜材側樹脂層を他方側の放射冷却式膜材の樹脂材料層に当て付けた状態で、熱容着により接合することができるため、複数枚の放射冷却膜を接合して帆布状に形成する際の生産性を向上できる。
つまり、複数枚の放射冷却膜を接合して帆布状に形成する際には、例えば、矩形状の膜として形成された放射冷却膜の端縁同士を接合する形態で、複数枚の放射冷却膜を接合することが行われることになる。そして、その接続を縫製にて行うと手間が掛かる作業となるが、その接合を熱容着の接合により行うことができるため、複数枚の放射冷却膜を接合して帆布状に形成する際の生産性を向上できるのである。
ちなみに、熱容着としては、高周波溶着、熱風溶着、熱間溶着等を適用できる。
ちなみに、膜材側樹脂層についても、可塑剤を混入することが好ましいものである。この場合には、膜材側樹脂層においては紫外線吸収剤を混合する又は紫外線を吸収し易い色に着色する等により、膜材側樹脂層に混入した可塑剤の紫外線の吸収を抑制できることになる。このため、膜材側樹脂層に混入する可塑剤としては、フタル酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、リン酸エステル類の他、トリメリット酸エステル(TOTM)、及び、エポキシ化脂肪酸エステル(エポキシ化大豆油)をも可塑剤として用いることができる。
要するに、本発明の空調室外機用吸引空気冷却装置の更なる特徴構成によれば、複数枚の放射冷却膜を接合して帆布状に形成する際の生産性を向上できる。
本発明の空調室外機の吸引空気冷却方法の特徴構成は、放射冷却膜を空調室外機に吸引される吸引空気を冷却する冷却作用状態に装着する点にある。
すなわち、放射冷却膜が空調室外機に吸引される吸引空気を冷却する冷却作用状態に装着されているから、空調室外機が建物の南向きとなる箇所に設置されていても、当該空調室外機に吸引される吸引空気が低温になる結果、夏期等の高温時において冷房能力の向上を図ることができる。
つまり、放射冷却膜が、赤外線などの電磁波を外部(例えば、天空)に放射することより、その温度が下がることになり、その結果、夏期等の高温時において、空調室外機に吸引される吸引空気が冷却され、冷房能力が向上する。
要するに、本発明の空調室外機の吸引空気冷却方法の特徴構成によれば、夏期等の高温時において冷房能力の向上を図ることができる。
本発明の空調室外機の吸引空気冷却方法の更なる特徴構成は、前記空調室外機の冷房運転時に、前記放射冷却膜の装着状態を前記冷却作用状態にし、前記空調室外機の暖房運転時に、前記吸引空気を冷却しない冷却停止状態に前記放射冷却膜の装着状態を切換える点にある。
すなわち、夏期等の高温時における空調室外機の冷房運転時は、放射冷却膜の装着状態を空調室外機に吸引される吸引空気を冷却する冷却作用状態にすることにより、空調室外機が建物の南向きとなる箇所に設置されていても、当該空調室外機に吸引される吸引空気を冷却して、冷房能力を向上させることができる。
そして、冬期等の低温時における空調室外機の暖房運転時には、放射冷却膜の装着状態を空調室外機に吸引される吸引空気を冷却しない冷却停止状態にすることにより、空調室外機に吸引される吸引空気が不必要に低温になることを抑制して、暖房能力を向上させることができる。
特に、空調室外機が建物の南向きとなる箇所に設置されていれば、空調室外機が設置されている空間の外気が、太陽光による直接あるいは間接的な加熱により、冬期等の低温時においても高温となる傾向となるから、暖房能力を適切に向上させることができる。
要するに、本発明の空調室外機の吸引空気冷却方法の更なる特徴構成によれば、夏期等の高温時において冷房能力の向上を図り、冬期等の低温時において暖房能力の向上を図ることができる。
空調室外機用吸引空気冷却装置を説明する概略図である。 放射冷却膜の冷却作用状態を示す側面図である。 放射冷却膜の冷却停止状態を示す側面図である。 樹脂材料の光吸収率と波長との関係を示す図である。 塩化ビニル樹脂の輻射率スペクトルを示す図である。 塩化ビニリデン樹脂の輻射率スペクトルを示す図である。 銀をベースにした光反射層の光反射率スペクトルを示す図である。 放射冷却膜の具体構成を示す図である。 放射冷却膜の具体構成を示す図である。 放射冷却膜の具体構成を示す図である。 放射冷却膜の具体構成を示す図である。 ポリエチレンの光透過率と波長との関係を示す図である。 試験用構成を説明する図である。 保護層がポリエチレンの場合の試験結果を示す図である。 保護層が紫外線吸収アクリルの場合の試験結果を示す図である。 ポリエチレンの輻射率スペクトルを示す図である。 塩化ビニル樹脂に混入した可塑剤の実験結果を示す図である。 放射冷却層の別構成を説明する図である。 放射冷却膜の接合状態を示す図である。 放射冷却層を凹凸状に形成した構成を示す図である。 放射冷却層の凹凸状の具体例を示す図である。 放射冷却層の凹凸状の具体例を示す図である。 樹脂材料層にフィラーを混入させた構成を説明する図である。 樹脂材料層にフィラーを混入させた構成を説明する図である。 のり層にフィラーを混入させた構成を説明する図である。 のり層にフィラーを混入させた構成を説明する図である。 樹脂材料層の表裏を凹凸状にした構成を説明する図である。 空調室外機用吸引空気冷却装置の別形態を示す概略図である。 空調室外機用吸引空気冷却装置の別形態を示す概略図である。 透明性保温シートを設置した状態を示す概略図である。 放射冷却膜が透明性保温シートを覆う状態を示す概略図である。 空調室外機用吸引空気冷却装置の別形態を示す概略図である。 空調室外機用吸引空気冷却装置の別形態を示す概略図である。 空調室外機用吸引空気冷却装置の別形態を示す概略図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔空調室外機用吸引空気冷却装置の基本構成〕
図1に示すように、ヒートポンプ式の空調システムの空調室外機Kが建物の南向き箇所の地面近くに設置され、帆布状に形成された放射冷却膜Wが、空調室外機Kに吸引される吸引空気を冷却する冷却作用状態に装着されている。つまり、本実施形態においては、帆布状に形成された放射冷却膜Wが、冷却作用状態として、空調室外機Kの設置空間の上部を覆う状態に装着されている。ちなみに、冷却作用状態に装着された放射冷却膜Wは、設置空間の両横側方を開放している。
例示する空調室外機Kは、図2及び図3に示す如く、空気を空調室外機Kの内部に吸引する外気吸引部1を背面側に備え、空調室外機Kの内部から空気を排出する空気吹出部2を前面側に備えている。
帆布状の放射冷却膜Wは、矩形状に形成された放射冷却膜Wの複数枚の端縁を接合して帆布状に形成されるものであり、その詳細は後述する。
従って、空調システムは、夏期等において冷房運転を行う際に、空調室外機Kに吸引される吸引空気が冷却されることにより、冷房能力を向上させる。
放射冷却膜Wが、冷却作用状態と吸引空気を冷却しない冷却停止状態とに切換自在に装着されている。
つまり、空調室外機Kの冷房運転時に、放射冷却膜Wを空調室外機Kの設置空間の上部を覆う冷却作用状態にし、空調室外機Kの暖房運転時に、放射冷却膜Wを空調室外機Kの設置空間の上部を開放する冷却停止状態に切換えるように構成されている。
ちなみに、本実施形態においては、放射冷却膜Wを空調室外機Kの設置空間の上部を覆う冷却作用状態にした状態においては、空調室外機Kの背面側には建物(外壁)が位置することになるため、空調室外機Kの設置空間の両横側方のみが開口している。
また、放射冷却膜Wは、冷却作用状態において、空調室外機Kの空気吹出部2を露出させて、空気吹出部2からの排風を前方側に流動させる通路部分を放射冷却膜Wの下方側に形成するようにしている。
具体的には、図2及び図3に示す如く、支柱3の上部に、放射冷却膜Wの巻き取り及び繰り出しを行う収納部4が設けられ、支柱3の下部に、放射冷却膜Wの先端を支持する支持アーム5が揺動自在に設けられている。
そして、冷却作用状態においては、図2に示す如く、放射冷却膜Wを収納部4から繰り出して、放射冷却膜Wを、空調室外機Kの空気吹出部2を露出させる形態で、空調室外機Kの設置空間の上部を覆う状態にし、冷却停止状態においては、図3に示す如く、放射冷却膜Wを収納部4に巻き取ることにより、空調室外機Kの設置空間の上部を開放する状態に放射冷却膜Wを収納するように構成されている。
〔放射冷却膜の基本構成〕
図1に示すように、本実施形態の放射冷却膜Wは、膜材Eの外面にフィルム状の放射冷却層CPが装着されて、放射冷却層CPの放射冷却作用により、膜材Eが冷却されるように構成されている。つまり、放射冷却膜Wが、膜材Eを空調室外機Kの設置空間に向け、放射冷却層CPを外部に向けた状態に設置されている。
従って、本実施形態おいては、冷却作用状態においては、放射冷却層CPにて冷却された膜材Eが、空調室外機Kの設置空間に存在する空気を冷却するように構成されている。
放射冷却層CPは、接着剤又は粘着剤の接続層Sにて膜材Eの外面に装着(接続)されている。
放射冷却層CPは、放射面Hから赤外光IRを放射する赤外放射層Aと、当該赤外放射層Aにおける放射面Hの存在側とは反対側に位置させる光反射層Bとを備え、加えて、赤外放射層Aと光反射層Bとの間の保護層Dを備えている。放射冷却層CPは、赤外放射層A、保護層D及び光反射層Bを積層状態に備え、且つ、フィルム状に形成されている。
つまり、放射冷却層CPが、放射冷却フィルムとして構成されている。
光反射層Bは、赤外放射層A及び保護層Dを透過した太陽光等の光Lを反射するものであり、その反射特性が、波長400nmから500nmの反射率が90%以上、波長500nmより長波の反射率が96%以上である。
太陽光スペクトルは、波長300nmから4000nmにかけて存在し、波長400nmから大きくなるにつれ強度が大きくなり、特に波長500nmから波長1800nmにかけての強度が大きい。
尚、光反射層Bは、赤外放射層Aを透過した光に加えて、赤外放射層Aから光反射層Bの存在側に放射される光を赤外放射層Aに向けて反射する作用も奏することになるが、以下の説明においては、光反射層Bを設ける目的が赤外放射層Aを透過した光(紫外光、可視光、赤外光)を反射することにあるとして説明する。
本実施形態において、光Lとは、紫外光(紫外線)、可視光、赤外光を含むものであり、これらを電磁波としての光の波長で述べると、その波長が10nmから20000nm(0.01μmから20μmの電磁波)の電磁波を含む。本書では、紫外光(紫外線)の波長域が、295nmから400nmの間であるとする。
光反射層Bが、波長400nmから500nmにかけて90%以上の反射特性を示し、波長500nmより長波の反射率が96%以上反射特性を示すことにより、放射冷却層CP(放射冷却フィルム)が光反射層Bで吸収する太陽光エネルギーを5%以下に抑えることができ、夏場の南中時に吸収する太陽光エネルギーを50W程度とすることができる。
光反射層Bは、銀あるいは銀合金で構成される、又は、保護層Dに隣接して位置する銀または銀合金と保護層D(赤外放射層A)から離れる側に位置するアルミまたはアルミ合金の積層構造として構成されて、柔軟性を備えるものであって、その詳細は後述する。
赤外放射層Aは、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整された塩化ビニル系樹脂からなる樹脂材料層Jとして構成されるものであって、その詳細は後述する。
ちなみに、本発明で用いられる塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの単独重合体及び塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの共重合体であり、その製造方法は、従来公知の重合方法で行われる。
従って、放射冷却層CPは、放射冷却層CPに入射した光Lのうちの一部の光を、赤外放射層Aの放射面Hにて反射し、放射冷却層CPに入射した光Lのうちで樹脂材料層J及び保護層Dを透過した光(太陽光等)を、光反射層Bにて反射して、放射面Hから外部へ逃がすように構成されている。
そして、光反射層Bにおける樹脂材料層Jの存在側とは反対側に位置する膜材Eからの放射冷却層CPへの入熱(例えば、膜材Eからの熱伝導による入熱)を、樹脂材料層Jによって赤外光IRに変換して放射することにより、膜材Eを冷却するように構成されている。
つまり、放射冷却層CPは、当該放射冷却層CPへ照射される光Lを反射し、また、当該放射冷却層CPへの伝熱(例えば、大気からの伝熱や膜材Eからの伝熱)を赤外光IRとして外部に放射するように構成されている。
また、樹脂材料層J、保護層D及び光反射層Bが柔軟性を備えることによって、放射冷却層CP(放射冷却フィルム)が柔軟性を備えるように構成されている。
加えて、膜材Eが柔軟性を備えることによって、放射冷却膜Wが柔軟性を備えるように構成されている。
膜材Eの放射冷却層CPから離れる裏面部に、塩化ビニル樹脂又は塩化ビニリデン樹脂にて形成される膜材側樹脂層Ejが備えられている。
つまり、膜材Eが、膜材本体Ehと膜材側樹脂層Ejとを積層した形態に形成されている。
膜材本体Ehとしては、綿、麻等の天然繊維の織物として形成したもの、無機繊維、合成繊維、特殊繊維の織物として形成したもの、スパンボンド、スパンレース、ニードルパンチ等の不織布として形成したものがある。尚、膜材本体Ehの厚みは、例えば、0.1mmから5mm程度である。
尚、無機繊維としては、金属繊維、ガラス繊維があり、合成繊維としては、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリルニトリル系、ポリビニルアルコール系、ポリプロン系、ポリエチレン系があり、特殊繊維としては、アラミド繊維、炭素繊維、生分解性繊維がある。
〔樹脂材料層の概要〕
樹脂材料層Jを形成する樹脂材料は、厚みによって光吸収率や輻射率(光放射率)が変化する。そのため、太陽光をできるだけ吸収せず、いわゆる大気の窓の波長帯域(波長8μmから波長14μmの帯域)において大きな熱輻射を発するように樹脂材料層Jの厚みを調整する必要がある。
具体的には、太陽光の光吸収率の観点で、樹脂材料層Jの厚みを、波長0.4μmから0.5μmの光吸収率の波長平均が13%以下であり、波長0.5μmから波長0.8μmの光吸収率の波長平均が4%以下であり、波長0.8μmから波長1.5μmまでの光吸収率の波長平均が1%以内であり、波長1.5μmから2.5μmまでの光吸収率の波長平均が40%以下であり、波長2.5μmから4μmまでの光吸収率の波長平均が100%以下である状態の厚みに調整する必要がある。
このような吸収率分布の場合、太陽光の光吸収率は10%以下となり、エネルギーで言うと100W以下となる。
後述の如く、樹脂材料の光吸収率は樹脂材料の膜厚を厚くすると増加する。樹脂材料を厚膜にすると、大気の窓の輻射率はほぼ1となり、その際に宇宙に放出する熱輻射は125W/mから160W/mとなる。保護層D及び光反射層Bでの太陽光吸収は50W/m以下である。樹脂材料層J、保護層D及び光反射層Bにおける太陽光吸収の和が150W/m以下であり、大気の状態がよければ冷却が進む。樹脂材料層Jを形成する樹脂材料は、以上のように太陽光スペクトルのピーク値付近の光吸収率が小さなものを用いるのが良い。
また、樹脂材料層Jの厚みは、赤外放射(熱輻射)の観点では、波長8μmから14μmの輻射率の波長平均が40%以上となる状態の厚みに調整する必要がある。
保護層D及び光反射層Bで吸収される50W/m程度の太陽光の熱エネルギーを、樹脂材料層Jの熱輻射より樹脂材料層Jから宇宙に放出させるには、それ以上の熱輻射を樹脂材料層Jが出す必要がある。
例えば、外気温が30℃のとき、8μmから14μmの大気の窓の熱輻射の最大は200W/mである(輻射率1として計算)。この値が得られるのは、高山など、空気の薄いよく乾燥した環境の快晴時である。低地などでは大気の厚みが高山よりも厚くなるので、大気の窓の波長帯域は狭くなり、透過率は低下する。ちなみに、このことを「大気の窓が狭くなる」と呼ぶ。
また、放射冷却層CP(放射冷却フィルム)を備える放射冷却膜Wが実際に使用される環境は多湿であることもあり、その場合においても大気の窓は狭くなる。低地で利用する際の大気の窓域で発生する熱輻射は、状態の良いときで30℃において160W/mと見積もられる(輻射率1として計算)。また、日本ではよくあることであるが空に靄があるときや、スモッグが存在する場合、大気の窓はさらに狭くなり、宇宙への放射は125W/m程度となる。
かかる事情を鑑みて、波長8μmから14μmの輻射率の波長平均は40%以上(大気の窓帯での熱輻射強度が50W/m)ないと中緯度帯の低地で用いることができない。
したがって、上記事項を鑑みた光学的規定の範囲になるように樹脂材料層Jの厚みを調整すると、太陽光の光吸収による入熱よりも大気の窓における出熱の方が大きくなり、日射環境下でも屋外で放射冷却できるようになる。
本実施形態においては、樹脂材料層Jを形成する塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル樹脂又は塩化ビニリデン樹脂)の厚みが、100μm以下で10μm以上である。
〔樹脂材料の詳細〕
キルヒホッフの法則により、輻射率(ε)と光吸収率(A)は等しい。光吸収率は吸収係数(α)からA=1-exp(-αt)の関係式(以下、光吸収率関係式と呼ぶ)で求めることができる。尚、tは膜厚である。
つまり、樹脂材料層Jの膜厚を調整すると、吸収係数の大きな波長帯域で大きな熱輻射が得られる。屋外で放射冷却する場合、大気の窓の波長帯域である波長8μmから14μmにおいて吸収係数の大きな材料を用いるとよい。
また、太陽光の吸収を抑制するために波長0.3μmから4μm、特に0.4μmから2.5μmの範囲で吸収係数を持たない、或いは小さな材料を用いるとよい。吸収係数と吸収率の関係式からわかるように、光吸収率(輻射率)は樹脂材料の膜厚によって変化する。
日射環境下での放射冷却によって周囲の大気より温度を下げるためには、大気の窓の波長帯域において大きな吸収係数をもち、太陽光の波長帯域では吸収係数を殆ど持たない材料を選ぶと、膜厚の調整によって太陽光は殆ど吸収しないが、大気の窓の熱輻射を多く出す、つまりは太陽光の入力よりも放射冷却による出力の方が大きな状態を作り出すことができる。
太陽光スペクトルは波長0.295μmより長波しか存在しない。なお、紫外線の定義は波長0.4μmよりも短波長側の範囲、可視光線の定義は波長0.4μmから0.8μmの範囲、近赤外線の定義は波長0.8μmから3μmの範囲、中赤外線の定義は3μmから8μmの範囲、遠赤外線の定義は波長8μmよりも長波の範囲とする。
炭素-塩素結合(C-Cl)に関して、アルケンの炭素と塩素の結合エネルギーは3.28eVであり、その波長は0.378μmであるので、太陽光の紫外線を多く吸収するが、可視域についての吸収をほとんど持たない。
厚さ100μmの塩化ビニル樹脂の紫外から可視域の吸収率スペクトルを図4に示すが、波長0.38μmよりも短波長側で光吸収が大きくなる。
厚さ100μmの塩化ビニリデン樹脂の紫外から可視域の吸収率スペクトルを図4に示すが、波長0.4μmよりも短波長側で若干の吸収率スペクトルの増加がみられる。
ちなみに、図4には、厚さ40μmのエチレンテレフタラート樹脂(PET)の紫外から可視域の吸収率スペクトル、及び、エチレン樹脂(ポリエチレン)の紫外から可視域の吸収率スペクトルを併記する。
図5に、炭素-塩素結合をもつ塩化ビニル樹脂(PVC)の大気の窓における輻射率を示す。また、図6に、炭素-塩素結合をもつ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)の大気の窓における輻射率を示す。
炭素-塩素結合に関しては、C-Cl伸縮振動による吸収係数が波長12μmを中心に半値幅1μm以上の広帯域に現れる。
また、塩化ビニル樹脂の場合、塩素の電子吸引の影響で、主鎖に含まれるアルケンのC-Hの変角振動に由来する吸収係数が波長10μmあたりに現れる。塩化ビニリデン樹脂についても同様である。
これらの影響で、厚さ10μmの輻射率の波長平均は、波長8μmから14μmにおいて43%であり、波長平均40%以上という規定の中に入る。図示の通り、膜厚が厚くなると大気の窓領域における輻射率は増大する。
図5に示す如く、塩化ビニル樹脂の場合は100μmより厚くなっても大気の窓領域における熱輻射の増大は殆どなくなる。つまり、塩化ビニル樹脂の場合、大気の窓における熱輻射は表面から深さ約100μm以内の部分で生じており、より深い部分の輻射は外に出てこない。
図6に示す如く、塩化ビニリデン樹脂は、塩化ビニル樹脂と同様であることが分かる。
以上のように、樹脂材料表面から発生する大気の窓領域の熱輻射は、表面からの深さが概ね100μm以内の部分で生じており、それ以上に樹脂の厚みが増していくと、熱輻射に寄与しない樹脂材料によって、放射冷却層CPの放射冷却した冷熱が断熱される。
理想的に太陽光を全く吸収しない樹脂材料層Jを光反射層Bの上に作製することを考える。この場合、太陽光は放射冷却層CPの光反射層Bでのみ吸収される。
樹脂材料の熱伝導率はおしなべて0.2W/m/K程度であり、この熱伝導性を考慮して計算すると、樹脂材料層Jの厚みが20mmを超えると、冷却面(光反射層Bにおける樹脂材料層Jの存在側とは反対側の面)の温度が上昇する。
太陽光をまったく吸収しない理想的な樹脂材料が存在したとしても、樹脂材料の熱伝導率はおしなべて0.2W/m/K程度であるので、厚みが20mmを超えると光反射層Bが日射を受けて加熱されてしまい、光反射層側に設置された膜材Eは加熱される。
つまり、放射冷却層CPの樹脂材料の厚みは20mm以下にする必要がある。
〔樹脂材料層の厚みについて〕
放射冷却層CPの実用の観点では、樹脂材料層Jの厚みは薄い方がよい。樹脂材料の熱伝導率は、金属やガラスなどよりも一般に低い。膜材Eを効果的に冷却するには、樹脂材料層Jの膜厚は必要最低限であるのがよい。樹脂材料層Jの膜厚を厚くするほどに大気の窓の熱輻射は大きくなり、ある膜厚を超えると大気の窓における熱輻射エネルギーは飽和する。
飽和する膜厚は樹脂材料にもよるが、炭素-塩素結合を含む樹脂の場合、厚みが100μmであっても飽和しており、厚さ50μmでも大気の窓領域において十分な熱輻射が得られる。樹脂材料の厚さが薄い方が、熱貫流率が高まり膜材Eの温度をより効果的に下げられるので、炭素-塩素結合を含む樹脂の場合、50μm以下の厚さにすると断熱性が小さくなり膜材Eを効果的に冷却することができる。炭素-塩素結合の場合には、100μm以下の厚さであれば、膜材Eを効果的に冷却することができる。
薄くする効用は断熱性を下げて冷熱を伝えやすくすること以外にもある。それは、炭素-塩素結合を含む樹脂が呈する、近赤外域でのCH、CH、CH由来の近赤外域の光吸収の抑制である。薄くすると、これらによる太陽光吸収を小さくすることができるので、放射冷却層CPの冷却能力が高まることになる。
以上の観点から、炭素-塩素結合を含む樹脂である塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル樹脂及び塩化ビニリデン樹脂)の場合、50μm以下の厚さにするとより効果的に日照下において放射冷却効果を出すことができる。
〔光反射層の詳細〕
光反射層Bに上述の反射率特性を持たせるためには、放射面Hの存在側(樹脂材料層Jの存在側)の反射材料は銀または銀合金である必要がある。
図7に示す通り、銀をベースとして光反射層Bを構成すれば、光反射層Bに求められる反射率が得られる。
銀または銀合金のみで太陽光を前記の反射率特性を持たせた状態で反射する場合、厚さが50nm以上必要である。
但し、光反射層Bに柔軟性を備えさせるためには、厚さを100μm以下にする必要がある。これ以上厚いと曲げにくくなる。
ちなみに、「銀合金」としては、銀に、銅、パラジウム、金、亜鉛、スズ、マグネシウム、ニッケル、チタンのいずれかを、例えば、0.4質量%から4.5質量%程度添加した合金を用いることができる。具体例としては、銀に銅とパラジウムを添加して作成した銀合金である「APC-TR(フルヤ金属製)」を用いることができる。
光反射層Bに上述の反射率特性を持たせるためには、保護層Dに隣接して位置する銀または銀合金と保護層D(樹脂材料層J)から離れる側に位置するアルミまたはアルミ合金とを積層させた構造にしてもよい。尚、この場合においても、放射面Hの存在側(樹脂材料層Jの存在側)の反射材料は銀または銀合金である必要がある。
銀(銀合金)とアルミ(アルミ合金)の2層で構成する場合、銀の厚みは10nm以上必要であり、アルミの厚みは30nm以上必要である。
但し、光反射層Bに柔軟性を備えさせるためには、銀の厚さとアルミの厚さとの合計を100μm以下にする必要がある。これ以上厚いと曲げにくくなる。
ちなみに、「アルミ合金」としては、アルミに、銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、機械構造用炭素鋼、イットリウム、ランタン、ガドリニウム、テルビウムを添加した合金を用いることができる。
銀および銀合金は雨や湿度に弱くそれらから保護をする必要があり、また、その変色を抑制する必要がある。そのために、図8~図11に示す如く、銀や銀合金に隣接させる形態で、銀を保護する保護層Dが必要である。
保護層Dの詳細は、後述する。
〔放射冷却膜の具体構成〕
放射冷却層CPは、樹脂材料層J及び保護層Dを形成する樹脂材料が柔軟であるから、光反射層Bを薄膜にすると、光反射層Bにも柔軟性を備えさせることができ、その結果、放射冷却層CPを、柔軟性を備えるフィルム(放射冷却フィルム)とすることができる。
そして、図8~図11に示すように、放射冷却層CP(放射冷却フィルム)を、接着剤又は粘着剤の接続層Sにて膜材Eの外面に装着することにより、膜材Eを冷却することができる。
接続層Sに用いる接着剤又は粘着剤としては、ウレタン系接着剤(粘着剤)、アクリル系接着剤(粘着剤)、EVA(エチレン酢酸ビニル)系接着剤(粘着剤)等がある。
図8~図11においては、膜材Eとして、膜材本体Ehを塩化ビニル樹脂又は塩化ビニリデン樹脂の樹脂溶液中に浸漬させて、膜材本体Ehに塩化ビニル樹脂又は塩化ビニリデン樹脂を含浸させた膜材Eを例示する。
したがって、膜材Eは、放射冷却層CPから離れる裏面部に、塩化ビニル樹脂又は塩化ビニリデン樹脂にて形成される膜材側樹脂層Ejを備えることに加えて、放射冷却層CPに近づく表面部に、塩化ビニル樹脂又は塩化ビニリデン樹脂にて形成される表面側樹脂層Ekを備える形態に構成されている。
つまり、膜材Eが、表面側樹脂層Ekと膜材本体Ehと膜材側樹脂層Ejとを積層した形態に形成されている。
ちなみに、図8~図11における膜材Eとしては、表面側樹脂層Ekを省略して、図1に示す如く、膜材本体Ehと膜材側樹脂層Ejとを積層した形態に形成しても良いことは勿論である。
膜材本体Ehと膜材側樹脂層Ejとを積層した形態に膜材Eを形成するには、膜材本体Ehに塩化ビニル樹脂又は塩化ビニリデン樹脂を塗布して膜材側樹脂層Ejを形成する、あるいは、膜材本体Ehに、別途製作した塩化ビニル樹脂又は塩化ビニリデン樹脂の膜を貼り付けて膜材側樹脂層Ejを形成する等の製作手順を用いることができる。
放射冷却層CPをフィルム状に作製するには、種々の形態が考えられる。例えば、フィルム状に作製された光反射層Bに保護層D及び樹脂材料層Jを塗布して作ることが考えられる。あるいは、フィルム状に作製された光反射層Bに保護層D及び樹脂材料層Jを貼り付けて作ることが考えられる。或いは、フィルム状に作製された樹脂材料層Jの上に、保護層Dを塗布あるいは貼り付けて作成し、保護層Dの上に、蒸着・スパッタリング・イオンプレーティング・銀鏡反応などによって光反射層Bを作製することが考えられる。
具体的に説明すると、図8の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)は、光反射層Bを、銀又は銀合金の一層として形成する場合や、銀(銀合金)とアルミ(アルミ合金)の2層で構成する場合において、当該光反射層Bの上側に、保護層Dを形成し、保護層Dの上部に、樹脂材料層Jを形成したものであり、かつ、光反射層Bの下側にも、下側保護層Dsを形成する。ちなみに、下側保護層Dsは、例えばアクリル樹脂にて形成される。
図8の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)の作成方法としては、フィルム状の樹脂材料層Jの上に、保護層D、光反射層B、下側保護層Dsを順次塗布して、一体的に成形する方法を採用することができる。
図9の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)は、光反射層Bを、アルミ(アルミ合金)として機能するアルミ箔にて形成されたアルミ層B1と、銀又は銀合金からなる銀層B2とから構成し、当該光反射層Bの上側に、保護層Dを形成し、保護層Dの上部に、樹脂材料層Jを形成したものである。
図9の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)の作成方法としては、アルミ箔にて構成されるアルミ層B1の上に、銀層B2、保護層D、樹脂材料層Jを順次塗布して、一体的に成形する方法を採用することができる。
尚、別の作成方法として、樹脂材料層Jをフィルム状に形成して、当該フィルム状の樹脂材料層Jの上に、保護層D、銀層B2を順次塗布し、アルミ層B1を銀層B2に貼り付ける方法を採用することができる。
図10の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)は、光反射層Bを、銀又は銀合金の一層として形成する場合や、銀(銀合金)とアルミ(アルミ合金)の2層で構成する場合において、当該光反射層Bの上側に、保護層Dを形成し、保護層Dの上部に、樹脂材料層Jを形成し、光反射層Bの下側に、PET等のフィルム層Fを形成したものである。
図10の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)の作成方法としては、PET(エチレンテレフタラート樹脂)等にてフィルム状に形成されたフィルム層F(基材に相当)の上に、光反射層B、保護層Dを順次塗布して、一体的に成形し、保護層Dに対して、別途形成したフィルム状の樹脂材料層Jをのり層Nにて接着する方法を採用することができる。
のり層Nにて使用する接着剤(粘着剤)は、例えば、ウレタン系接着剤(粘着剤)、アクリル系接着剤(粘着剤)、EVA(エチレン酢酸ビニル)系接着剤(粘着剤)等があり、太陽光に対して高い透明性を持つものが望ましい。
図11の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)は、光反射層Bを、アルミ(アルミ合金)として機能するアルミ層B1と、銀又は銀合金(代替銀)からなる銀層B2とから構成し、アルミ層B1を、PET(エチレンテレフタラート樹脂)等にてフィルム状に形成されたフィルム層F(基材に相当)の上部に形成し、銀層B2の上側に、保護層Dを形成し、保護層Dの上側に、樹脂材料層Jを形成したものである。
図11の放射冷却層CP(放射冷却フィルム)の作成方法としては、フィルム層Fの上に、アルミ層B1を塗布して、フィルム層Fとアルミ層B1とを一体的に成形し、別途、フィルム状の樹脂材料層Jの上に、保護層D、銀層B2を塗布して、樹脂材料層J、保護層D、銀層B2を一体形成し、アルミ層B1と銀層B2とをのり層Nにて接着する方法を採用することができる。
のり層Nにて使用する接着剤(粘着剤)は、例えば、ウレタン系接着剤(粘着剤)、アクリル系接着剤(粘着剤)、EVA(エチレン酢酸ビニル)系接着剤(粘着剤)等があり、太陽光に対して高い透明性を持つものが望ましい。
〔保護層の詳細〕
保護層Dは、厚さが300nm以上で、40μm以下のポリオレフィン系樹脂、又は、厚さが17μm以上で、40μm以下のポリエチレンテレフタラートである。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン及びポリプロピレンがある。
上述の如く、図4に、ポリエチレン(オレフィン系樹脂)の紫外線の吸収率を示す。
また、図12に、保護層Dを形成する合成樹脂として好適なポリエチレンの光透過率を示す。
放射冷却層CP(放射冷却フィルム)は、夜間のみならず、日射環境下にても放射冷却作用を発揮するものであるから、光反射層Bが光反射機能を発揮する状態を維持するには、保護層Dにて光反射層Bを保護することにより、日射環境下で光反射層Bの銀が変色しないようにする必要がある。
保護層Dが、ポリオレフィン系樹脂にて厚さが300nm以上で、40μm以下の形態に形成される場合には、ポリオレフィン系樹脂は、波長0.295μmから0.4μmの紫外線の波長域の全域において紫外線の光吸収率が10%以下である合成樹脂であるから、保護層Dが紫外線の吸収により劣化し難いものとなる。
そして、保護層Dを形成するポリオレフィン系樹脂の厚さが、300nm以上であるから、樹脂材料層Jにて発生したラジカルが光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することを遮断し、また、樹脂材料層Jを透過する水分が光反射層Bを形成する銀又は銀合金に到達することを遮断する等の遮断機能を良好に発揮することになり、光反射層Bを形成する銀又は銀合金の変色を抑制できることになる。
ちなみに、ポリオレフィン系樹脂にて形成される保護層Dは、紫外線の吸収により、光反射層Bから離れる表面側にラジカルを形成しながら劣化することになるが、厚さが300nm以上であるから、形成したラジカルが光反射層Bに到達することはなく、また、ラジカルを形成しながら劣化するにしても、紫外線の吸収が低いことにより劣化の進み具合は遅いものであるから、上述の遮断機能を長期に亘って発揮することになる。
保護層Dが、エチレンテレフタラート樹脂にて厚さが17μm以上で、40μm以下の形態に形成される場合には、エチレンテレフタラート樹脂は、ポリオレフィン系樹脂よりも、波長0.295μmから0.4μmの紫外線の波長域において紫外線の光吸収率が高い樹脂材料であるが、厚さが17μm以上であるから、樹脂材料層Jにて発生したラジカルが光反射層Bを形成する銀又は銀合金に到達することを遮断し、また、樹脂材料層Jを透過する水分が光反射層を形成する銀又は銀合金に到達することを遮断する等の遮断機能を長期に亘って良好に発揮することになり、光反射層Bを形成する銀又は銀合金の変色を抑制できることになる。
つまり、エチレンテレフタラート樹脂にて形成される保護層Dは、紫外線の吸収により、光反射層Bから離れる表面側にラジカルを形成しながら劣化することになるが、厚さが17μm以上であるから、形成したラジカルが光反射層Bに到達することはなく、また、ラジカルを形成しながら劣化するにしても、厚さが17μm以上であるから、上述の遮断機能を長期に亘って発揮することになる。
説明を加えると、エチレンテレフタラート樹脂(PET)の劣化は紫外線によってエチレングリコールとテレフタル酸のエステル結合が開裂しラジカルが形成されることに起因する。この劣化は、エチレンテレフタラート樹脂(PET)における紫外線が照射される面の表面から順に進行する。
例えば、大阪における強さの紫外線がエチレンテレフタラート樹脂(PET)に照射されると、1日あたり、照射される面より順に約9nmのエチレンテレフタラート樹脂(PET)のエステル結合が開裂していく。エチレンテレフタラート樹脂(PET)は十分に重合しているので、開裂した表面のエチレンテレフタラート樹脂(PET)が光反射層Bの銀(銀合金)を攻撃することはないが、エチレンテレフタラート樹脂(PET)の開裂端が光反射層B銀(銀合金)まで到達すると、銀(銀合金)が変色する。
従って、屋外で使用するうえで、保護層Dを1年以上耐久させるためには、9nm/日と365日とを積算して、約3μmの厚さが必要となる。保護層Dのエチレンテレフタラート樹脂(PET)を3年以上耐久させるためには、厚さが10μm以上必要である。5年以上耐久させるためには、厚さが17μm以上必要である。
尚、ポリオレフィン系樹脂及びエチレンテレフタラート樹脂にて保護層Dを形成する場合において、その厚さの上限を定める理由は、保護層Dが放射冷却に寄与しない断熱性を奏することを回避するためである。つまり、保護層Dは、厚さが厚くなるほど放射冷却に寄与しない断熱性を奏することになるから、光反射層Bを保護する機能を発揮させながらも、放射冷却に寄与しない断熱性を奏することを回避するために、厚さの上限が定められることになる。
つまり、保護層Dが厚くなると、光反射層Bの銀(銀合金)の着色を防ぐうえでのデメリットは生じないが、放射冷却するうえでの問題が発生する。つまり、厚くすると放射冷却材料の断熱性を上げることになる。
例えば、保護層Dを形成する合成樹脂として優れている主成分がポリエチレンの樹脂は、図16に示すように、大気の窓における輻射率が小さいため、厚く形成しても放射冷却に寄与しない。それどころか、厚くすると放射冷却材料の断熱性を上げることになる。次に、厚くなると主鎖の振動に由来する近赤外域の吸収が増加し、太陽光吸収が増える効果が増加する。
これら要因により、保護層Dが厚いことは、放射冷却にとって不利である。このような観点から、ポリオレフィン系樹脂にて形成される保護層Dの厚さは、5μm以下であることが好ましく、さらには、1μmであることが一層好ましい。
ところで、図10に示すように、樹脂材料層Jと保護層Dとの間にのり層Nが位置する場合には、のり層Nからもラジカルが発生することになるが、保護層Dを形成するポリオレフィン系樹脂の厚さが300nm以上であり、保護層Dを形成するエチレンテレフタラート樹脂の厚さが17μm以上であれば、のり層Nにて発生したラジカルが光反射層Bの到達することを、長期に亘って抑制できる。
〔保護層の考察〕
保護層Dによる銀の着色のされ方の違いを検討するために、図13に示すような、赤外放射層Aとしての樹脂材料層Jを備えない保護層Dを露出させたサンプルを作製し、模擬太陽光が照射された後の銀の着色を調べた。
つまり、保護層Dとして、紫外線を吸収する一般的なアクリル系樹脂(例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が混入するメタクリル酸メチル樹脂)とポリエチレンとの二種類を、バーコーターで、光反射層Bとして銀を備えるフィルム層F(基材に相当)上に塗布したサンプルを形成し、保護層Dとしての機能を検討した。塗布した保護層Dの厚みは、それぞれ10μmと1μmである。
尚、フィルム層F(基材に相当)は、PET(エチレンテレフタラート樹脂)等にてフィルム状に形成されたものである。
図15に示すように、保護層Dが紫外線を良く吸収するアクリル系樹脂の場合、保護層Dが紫外線で分解されラジカルを形成し、直ぐに銀が黄化して、放射冷却層CPとして機能しなくなる(太陽光を吸収し、一般の材料のように日射が当たると温度上昇する)。
尚、図中の600hの線は、JIS規格5600-7-7の条件でキセノンウエザー試験(紫外光エネルギーは60W/m)を600h(時間)行った後の反射率スペクトルである。また、0hの線は、キセノンウエザー試験を行う前の反射率スペクトルである。
図14に示すように、保護層Dが紫外線の光吸収率が低いポリエチレンの場合には、近赤外域から可視域での反射率の低下がみられないことがわかる。つまり、主成分がポリエチレンの樹脂(ポリオレフィン系樹脂)は、地上に届く太陽光が持つ紫外線を殆ど吸収しないため、太陽光が当たってもラジカルを形成し難いので、日射が当たっても、光反射層Bとしての銀の着色が発生しない。
尚、図中の600hの線は、JIS規格5600-7-7の条件でキセノンウエザー試験(紫外光エネルギーは60W/m)を600h(時間)行った後の反射率スペクトルである。また、0hの線は、キセノンウエザー試験を行う前の反射率スペクトルである。
なお、この波長帯域の反射率スペクトルが波打つ理由は、ポリエチレン層のファブリペロー共振である。キセノンウエザー試験の熱などによってポリエチレン層の厚みが変化したことによる原因で、この共振位置が0hの線と600hの線とで多少変わっていることがわかるが、銀の黄化に由来する紫外-可視域における大きな反射率の低下は観測されない。
尚、フッ素樹脂系も紫外線吸収の観点からは保護層Dを形成する材料に適用できるが、実際に保護層Dとして形成すると、形成段階で着色し、劣化するため、保護層Dを形成する材料としては用いることができない。
また、シリコーンも紫外線吸収の観点からは保護層Dを形成する材料に適用できるが、銀(銀合金)との密着性が極めて悪く、保護層Dを形成する材料としては用いることができない。
〔可塑剤の混入について〕
樹脂材料層Jを塩化ビニル系樹脂にて形成する場合には、可塑剤を塩化ビニル系樹脂に混入させて、柔軟性を向上させることが好ましい。
塩化ビニル系樹脂に混入する可塑剤としては、フタル酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、リン酸エステル類のいずれかである。
そして、可塑剤が、塩化ビニル系樹脂の100重量部に対して、1重量部以上で、200重量部以下の範囲で混入されている。尚、加工の観点で可塑剤の重量部は100重量部以下がのぞましい。
可塑剤の脂肪族二塩基酸エステルが、アジピン酸エステル類、アジピン酸エステル共重合体類、アゼライン酸エステル類、アゼライン酸エステル共重合体類、セバシン酸エステル類、セバシン酸エステル共重合体類、コハク酸エステル類、コハク酸エステル共重合体類を単独でもしくは複数組み合わせて構成されていてもよい。
可塑剤の脂肪族二塩基酸エステルが、脂肪族二塩基酸と飽和脂肪族アルコール2分子とがエステル結合したものであるとよい。
可塑剤のフタル酸エステルが、フタル酸と飽和脂肪族アルコール2分子とがエステル結合したものであるとよい。
可塑剤のリン酸エステルが、リン酸トリエステル、又は、芳香族リン酸エステルであるとよい。
<フタル酸エステル類の詳細>
フタル酸エステル類を列挙すると、次の通りである。
フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DPP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOTP)、イソフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOIP)等。
<脂肪族二塩基酸エステル類の詳細>
脂肪族二塩基酸エステル類を列挙すると、次の通りである。
アジピン酸ジブチル(DBA)、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アゼライン酸ビス-2-エチルヘキシル(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)、コハク酸ジエチル(DESU)等。
また、アジピン酸等の2塩基酸とジオール(二官能アルコール、あるいはグリコール)との共重合(ポリエステル化)によって合成された分子量400~4000の脂肪族ポリエステル。
<リン酸トリエステル>
リン酸トリエステルを列挙すると、次の通りである。
トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリブチルホスフェート(TBP)、トリス(2エチルヘキシル)ホスフェート(TOP))。
<芳香族リン酸エステル>
芳香族リン酸エステルを列挙すると、次の通りである。
トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレシルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、トレジルジフェニルホスフェート(CDP)、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート。
<適正な可塑剤の評価について>
塩化ビニル樹脂用の可塑剤には、フタル酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、リン酸トリエステル類、芳香族リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、エポキシ化脂肪酸エステル類がある。これら可塑剤類から下記化合物を選定し、塩化ビニル100重量部に対し各種可塑剤を43重量部混ぜて、キセノンウエザー試験により評価した。
なお、塩化ビニル樹脂には、トリアジン系の紫外線吸収剤とヒンダードアミン系の光安定剤を塩化ビニル100重量部あたりそれぞれ0.5重量部ずつ混錬した。
フタル酸エステルの代表として、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)。
脂肪族二塩基酸エステルの代表として、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ブタンジオール共重合体(平均分子量1000程度)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)。
リン酸トリエステルの代表として、トリブチルホスフェート(TBP)。
芳香族リン酸エステルの代表として、トリクレシルホスフェート(TCP)。
トリメリット酸エステルの代表として、トリメリット酸トリー2―エチルヘキシル(TOTM)。
エポキシ化脂肪酸エステルの代表として、エポキシ化大豆油。
耐久試験はキセノンウエザー試験を1920時間(実暴露4年に相当)実施した結果をもって耐久性の優劣判断を行った。尚、紫外線換算で487時間が1年に相当する。
キセノンウエザー試験の条件は以下の通りである。
紫外線強度180W/m(波長295-400nm)。
〈散水なし条件〉BPT89℃、湿度50%、1時間42分。
〈散水あり条件〉槽内温度38℃、湿度90%、18分。
1920時間の試験結果を図17に示す。ちなみに、本実施形態では塩化ビニル樹脂で実験しているが、塩化ビニリデン樹脂でも同様である。
上記実験の結果、トリメリット酸エステル(TOTM)、及び、エポキシ化脂肪酸エステル(エポキシ化大豆油)を可塑剤として用いると耐久性が著しく下がることが明らかとなった。なお、エポキシ化脂肪酸は1120時間で茶変し試験継続できなくなったので同図に載せていない。
これに対して、フタル酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、リン酸トリエステル系、芳香族リン酸エステル系を用いると4年程度耐久することが分かった。つまり、塩化ビニル系樹脂に混入する可塑剤として、フタル酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、リン酸トリエステル系、芳香族リン酸エステル系を用いると、4年程度経過しても、放射冷却層CPの反射率は低下しないが、塩化ビニル系樹脂に混入する可塑剤として、トリメリット酸エステル系、エポキシ化脂肪酸エステルを用いると、放射冷却層CPの反射率が、4年程度経過する前から、大きく低下することが分かった。
以上の試験結果より、塩化ビニル系樹脂の可塑剤としては、フタル酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、リン酸トリエステル類、芳香族リン酸エステル類の耐久が優れており、トリメリット酸エステル、エポキシ化脂肪酸エステルは耐久性がないことがわかる。
尚、この理由については、後述の如く考察し、体系化する。
〔その他の添加剤について〕
樹脂材料層Jを形成する塩化ビニル系樹脂には、難燃剤、安定剤、安定化助剤、充てん剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤が入っていてもよい。
〔放射冷却層の別構成〕
図18に示すように、放射冷却層CPは、フィルム層F(基材に相当)の上部にアンカー層Gを備え、当該アンカー層Gの上部に、光反射層B、保護層D、赤外放射層Aを備える形態に構成してもよい。
尚、フィルム層F(基材に相当)は、例えば、PET(エチレンテレフタラート樹脂)等にてフィルム状に形成されたものである。
アンカー層は、フィルム層Fと光反射層Bとの密着を強めるために導入されている。つまり、フィルム層Fに、直接、銀(Ag)を製膜しようとすると、簡単に剥がれが生じる虞がある。アンカー層Gは、アクリルやポリオレフィン、ウレタンが主成分であり、イソシアネート基を持つ化合物やメラミン樹脂が混合されているものが望ましい。太陽光に直接当たらない部分のコーティングであり、紫外線を吸収する素材であっても問題ない。
尚、フィルム層Fと光反射層Bとの密着を強める方法には、アンカー層Gを入れる以外の方法もある。例えば、フィルム層Fの製膜面にプラズマ照射して表面を荒らすと密着性は高まる。
〔接続層の考察〕
膜材Eの外面に放射冷却層CPを装着する場合、接続層Sの厚さを、5μm以上で、100μm以下にすることが良い。
すなわち、膜材Eの外面(表面)は鏡面でないことが多い。鏡面とは異なる膜材Eの外面(材料表面)は、数μmレベル程度の傷や凹凸が無数に存在することが多い。
膜材Eの外面(材料表面)に存在するμmレベルの凹凸が、放射冷却層CPの光反射層B(銀層)に転写されると、反射率が下がることになる。
したがって、放射冷却層CPに外面(材料表面)に存在する凹凸が反映されないようにする構造を導入する必要があり、このために、放射冷却層CPを、5μmから100μm程度の厚みの接続層Sにて、膜材Eの外面に接合させるとよい。
接着剤や粘着剤にて構成される5μm以上の接続層Sが存在すると、接続層Sが膜材Eの外面の凹凸を吸収し、放射冷却層CPの光反射層B(銀層)が平坦となる。
光反射層B(銀層)が平坦になると、太陽光反射率の低下(換言すると太陽光吸収率の増大)を防げることになる。
但し、接続層Sの厚みが厚くなると断熱性が向上する。断熱性が向上すると放射冷却層CPの冷熱が断熱されるため、良くない。このような観点から不必要なほどに厚い接続層Sは不要であり、100μmの厚さがあれば十分である。
〔放射冷却膜の接続〕
放射冷却膜Wにて帆布を製作するには、複数の放射冷却膜Wを接合して構成されることになる。
放射冷却膜Wの表面側には、塩化ビニル樹脂又は塩化ビニリデン樹脂からなる樹脂材料層J(赤外放射層A)が存在し、放射冷却膜Wの裏面側には、塩化ビニル樹脂又は塩化ビニリデン樹脂からなる膜材側樹脂層Ejが存在するから、図19に示す如く、複数の放射冷却膜Wを熱溶着により接合することになる。
つまり、帆布を形成する際には、例えば、矩形状の膜として形成された放射冷却膜Wの端縁同士を接合する形態で、複数枚の放射冷却膜Wを接合することが行われることになるが、その接合を熱溶着により行うことができるため、帆布に形成する際の生産性を向上できるのである。
ちなみに、熱溶着としては、高周波溶着、熱風溶着、熱間溶着等を適用できる。
〔放射冷却膜の別例示〕
複数枚の放射冷却膜Wを接合した帆布にて構成する場合には、図20に示すように、放射冷却層CPの放射面Hを凹凸状に形成するとよい。
つまり、例えば、放射面Hに凸部Uが存在する状態に形成してもよい。
凹凸状の具体例としては、直方体状の凸部Uが並ぶラインアンドスペース構造(図21参照)、円錐柱の凸部Uを縦横に並べた構造(図22参照)、図示は省略するが、三角柱やピラミッド状の凸部Uがラインアンドペース状に並んだ構造、方形体状の凸部Uが縦横に並んだ構造、凸部Uをランダムに形成した構造等、各種の構成を採用できる。
ちなみに、放射面Hを凹凸状に形成する際の高低差は、100μm程度である。
放射面Hを凹凸状に形成した場合の利点としては、風が吹く等により、外気が流動して放射冷却層CPの熱が熱交換により外気に排出される。
このような観点で、図20に示すように、放射冷却層CPの赤外放射層Aを、エンボス加工等により凹凸状に形成して、表面積を増やすのがよい。
放射面Hを凹凸状に形成すると、見た目に関してもメリットがある。放射冷却層CPの放射面H(上面)が鏡面である場合よりも、放射面Hが凹凸状に形成されている場合の方が、太陽光が散乱されるので、放射冷却層CPのギラツキが低減される。
尚、放射面Hに「散乱する」という機能を付与しても、光反射層Bの銀(銀合金)における光吸収は増大しないので、放射冷却を良好に行うことができる。
〔放射冷却層の別構成〕
図23及び図24に示すように、赤外放射層Aを構成する樹脂材料層Jに、無機材料のフィラーQを混入させて、光散乱構成を備えさせるようにしてもよい。
また、図25及び図26に示すように、樹脂材料層Jと保護層Dを接続するのり層Nが、樹脂材料層Jと保護層Dとの間に設けられる場合には、無機材料のフィラーQをのり層Nに混入させて、光散乱構成を備えさせるようにしてもよい。
のり層に用いる接着剤又は粘着剤としては、ウレタン系、アクリル系、エチレン酢酸ビニル系等を好適に使用できる。
つまり、のり層Nにて使用する接着剤(粘着剤)は、例えば、ウレタン系接着剤(粘着剤)、アクリル系接着剤(粘着剤)、EVA(エチレン酢酸ビニル)系接着剤(粘着剤)等があり、太陽光に対して高い透明性を持つものが適用される。
ちなみに、のり層Nの厚さは、例えば、10μm程度である。
ちなみに、図23~図26に示す放射冷却膜Wは、図10に示す放射冷却膜Wと同等な構成(フィルム層Fとして下側保護層Dsを設ける構成)を示すが、無機材料のフィラーQを樹脂材料層Jに混入する場合には、図8、図9及び図11に示す構成の放射冷却膜Wを適用できる。
樹脂材料層Jに無機材料のフィラーQが混入されることにより、放射冷却層CPを放射面Hの存在側から見たときに、透明な樹脂材料層Jに混入された無機材料のフィラーQを見ることになるため、無機材料のフィラーQの光散乱作用により、放射冷却膜Wを放射面Hの存在側から見たときの色が白色になり、美観を向上できるものとなっている。
また、樹脂材料層Jと保護層Dとを接続するのり層Nに無機材料のフィラーQが混入されることにより、放射冷却層CPを放射面Hの存在側から見たときに、透明な樹脂材料層Jを通して、のり層Nに混入された無機材料のフィラーQを見ることになるため、無機材料のフィラーQの光散乱作用により、放射冷却膜Wを放射面Hの存在側から見たときの色が白色になり、美観を向上できるものとなっている。
尚、フィラーQを、樹脂材料層J及びのり層Nの両者に混入させてもよい。
フィラーQを形成する無機材料としては、二酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸カルシウム(CaCO)等を好適に使用できる。
特に、光触媒活性がない200nm程度の酸化チタン(TiO)を好適に使用することができる。
また、酸化チタン(TiO)が、アルミナコート、シリカコート、ジルコニアコートの少なくとも一つがなされているようにしてもよい。このようにすることによって、フィラーを適切に光触媒活性がないようにすることができるため、樹脂材料層Jを劣化させることを抑制し易いものとなる。
ちなみに、樹脂材料層JにフィラーQを混入すると、樹脂材料層Jの表裏両面が凹凸状になる。
樹脂材料層Jの裏面が凹凸状になる場合には、樹脂材料層Jと保護層Dとの間にのり層Nが位置するようにすることが望ましい。
つまり、樹脂材料層Jの裏面が凹凸状であっても、樹脂材料層Jと保護層Dとの間にのり層N(接合層)が位置するから、樹脂材料層Jと保護層Dとを適切に接合することができる。
尚、樹脂材料層Jの裏面が凹凸状になる場合において、例えば、プラズマ接合により、樹脂材料層Jと保護層Dとを直接的に接合するようにしてもよい。尚、プラズマ接合とは、樹脂材料層Jの接合面と保護層Dの接合面にプラズマの放射によりラジカルを形成し、そのラジカルにより接合する形態である。
〔保護層のフィラー混入について〕
ちなみに、保護層DにフィラーQを混入すると、保護層Dの光反射層Bに接する裏面が凹凸状になり、光反射層Bの表面を凹凸状に変形させる原因になるため、保護層DにフィラーQを混入することは避ける必要がある。つまり、光反射層Bの表面が凹凸状に変形すると、光反射を適正通り行えないものとなり、その結果、放射冷却を適正通り行えないものとなる。
〔赤外放射層の別構成〕
図27に示すように、赤外放射層Aを構成する樹脂材料層Jの表裏両面を凹凸状に形成して、光散乱構成を備えさせるようにしてもよい。
このように構成すれば、放射面Hを見たときに、放射面Hのギラツキを抑制できるものとなる。
つまり、図8~図11で示した放射冷却層CPの樹脂材料層Jは、表裏両面が平坦で、フィラーQが混入しない構成であるが、このような構成の場合には、放射面Hが鏡面状となるため、放射面Hを見たときに、ギラツキを感じるものとなるが、光散乱構成を備えさせるとこのギラツキを抑制できる。
樹脂材料層Jの表裏両面を凹凸状にするには、エンボス加工や表面に傷を付ける加工等を行うことにより行うことができる。
樹脂材料層Jの裏面が凹凸状になっても、樹脂材料層Jと保護層Dとの間にのり層Nを位置させれば、樹脂材料層Jと保護層Dとを適切に接合することができる。
〔空調室外機用吸引空気冷却装置の別構成〕
図28に示すように、放射冷却膜Wを、冷却作用状態において、空調室外機Kの前面側をも覆う状態で設けてもよい。この場合には、放射冷却膜Wにおける空調室外機Kの空気吹出部2に対向する箇所に、空気吹出部2から吹き出される空気を外部に排出する排出孔6を形成して、空気吹出部2からの排風を前方側に流動させる通路部分を形成することが好ましい。
図1~図3においては、放射冷却膜Wが空調室外機Kの設置空間の全体を覆う形態に設ける場合を例示したが、図29に示すように、外気吸引部1が空調室外機Kの横面側に形成される場合には、放射冷却膜Wを、空調室外機Kの設置空間における外気吸引部1が存在する側の空間を覆う形態で設けるようにしてもよい。ちなみに、冷却作用状態に装着された放射冷却膜Wは、設置空間の両横側方を開放している。
尚、図示は省略するが、空調室外機Kの外面や空調室外機Kが置かれている床面等を黒色に塗って、放射冷却膜Wの冷却停止状態において、空調室外機Kの外面や空調室外機Kが置かれている床面等が、太陽光の熱を吸収し易くしてもよい。
図28に示した如く、放射冷却膜Wが空調室外機Kの設置空間の全体を覆う形態に設ける場合において、図30及び図31に示す如く、空調室外機Kの設置空間の上部を覆う透明性保温シート7を設けるようにする。
そして、放射冷却膜Wを、冷却作用状態において透明性保温シート7の上部を覆う状態となり、冷却停止状態において透明性保温シート7の上部を開放する状態となる形態で設けるようにしてもよい。
ちなみに、この形態の場合においては、透明性保温シート7における空調室外機Kの空気吹出部2に対向する箇所に、空気吹出部2から吹き出される空気を外部に排出するシート側排出孔7Aが形成され、また、放射冷却膜Wには、図28と同様に、空気吹出部2から吹き出される空気を外部に排出する排出孔6が形成されている。つまり、放射冷却膜Wの冷却停止状態においては、空気吹出部2からの排風を前方側に流動させる通路部分が、シート側排出孔7Aにて形成され、放射冷却膜Wの冷却作用状態においては、空気吹出部2からの排風を前方側に流動させる通路部分が、シート側排出孔7A及び排出孔6にて形成される。
図32に示す如く、放射冷却膜Wを、空調室外機Kの外気吸引部1から建物上部の上方に延びる筒状に形成する形態で設けてもよい。つまり、例えば、合成樹脂製の板材又は網状材を筒状に形成した基材を設け、その基材の外面部にて放射冷却膜Wを筒状に保持する等、放射冷却膜Wを筒状に設けてもよい。
尚、この形態の場合には、放射冷却膜Wを冷却停止状態にする際には、放射冷却膜Wと空調室外機Kとの接続を外す、あるいは、放射冷却膜Wを取り外して、外気吸引部1が放射冷却膜Wの外部空気を吸入できる状態にする。
図33に示す如く、空調室外機Kの外気吸引部1の上部及び側部を囲むフード8が設けられている場合には、放射冷却膜Wを、フード8の外面に装着してもよい。
つまり、雪国等においては、空調室外機Kが架台9にて地上高く支持され、外気吸引部1の上部及び側部を囲むフード8及び空気吹出部2の部及び側部を囲む吹出側フード10が設けられていることになるが、このような場合には、外気吸引部1の上部及び側部を囲むフード8の外面に放射冷却膜Wを装着してもよい。
ちなみに、フード8の外面に装着する放射冷却膜Wとしては、膜材Eを備えるものを使用できるが、膜材Eを省略した放射冷却膜Wを使用してもよい。つまり、例えば、図10に示す放射冷却膜Wにおいて膜材Eを省略した形態の放射冷却層CPを放射冷却膜Wとして用いて、当該放射冷却膜Wをフード8の外面に接着剤により貼付する形態で装着してもよい。尚、接着剤としては、ウレタン系、アクリル系、エチレン酢酸ビニル系等の各種接着剤を使用できる。
図28に示すように、放射冷却膜Wにおける空調室外機Kの空気吹出部2に対向する箇所に、空気吹出部2から吹き出される空気を外部に排出する排出孔6を形成する場合において、図34に示す如く、空気吹出部2に排出孔6に対応させた状態で、放射冷却膜Wを空調室外機Kの前面に密着させる形態で配置してもよい。
このように構成する場合には、例えば、支持アーム5を伸縮調整自在に構成する。そして、放射冷却膜Wを収納部4から繰り出す際や放射冷却膜Wを収納部4に巻き取る際には、支持アーム5を伸長させた状態にして、放射冷却膜Wが空調室外機Kに接触しないようにする。また、冷却作用状態においては、放射冷却膜Wを収納部4から繰り出して、放射冷却膜Wを空調室外機Kの設置空間の上部を覆う状態にし、その後、支持アーム5を短縮させて、放射冷却膜Wを空調室外機Kの前面に密着させるようにする。
ちなみに、図示は省略するが、図30及び図31に示す如く、空調室外機Kの設置空間の上部を覆う透明性保温シート7及び放射冷却膜Wを設けるようにする場合において、透明性保温シート7を、空気吹出部2にシート側排出孔7Aを対応させた状態で、空調室外機Kの前面に密着させるようにする。また、放射冷却膜Wを、冷却作用状態において、排出孔6を空気吹出部2及びシート側排出孔7Aを対応させた状態で透明性保温シート7の上面に密着させる状態で、透明性保温シート7の上部を覆うようにしてもよい。
尚、冬期において、放射冷却膜Wを冷却停止状態にし、透明性保温シート7を、空気吹出部2にシート側排出孔7Aを対応させた状態で、空調室外機Kの前面に密着させるようにした場合に、暖房運転を行ったところ、8時から16時の空調コストが約5.7%低下することがわかった。
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態では、放射冷却層CPが保護層Dを備えさせる場合を例示したが、保護層Dを省略する形態で実施してもよい。
(2)上記実施形態では、複数の放射冷却膜Wを接合して帆布を形成する場合に、膜材Eに膜材側樹脂層Ejを備えさせて、熱溶着により複数の放射冷却膜Wを接合する場合を例示したが、膜材側樹脂層Ejを省略して、複数の放射冷却膜Wを縫製により接合して帆布を形成するようにしてもよい。
(3)放射冷却膜Wを、空調室外機Kの設置空間の上部を覆う冷却作用状態に装着するにあたり、上述の実施形態で述べた如く、空気吹出部2からの排風を前方側に流動させる通路部分をように構成することが望ましいものとなるが、空気吹出部2からの排風を前方側に流動させる通路部分を形成する構成としては、空気吹出部2からの排風を導くダクトを、放射冷却膜Wを貫通する状態で設けるようにする等、通路部分を構成する具体形態は種々変更できる。尚、透明性保温シート7を設ける場合においても、上記ダクトを、透明性保温シート7を貫通する貫通する状態で設けるようにする等、通路部分を構成する具体形態は種々変更できる。
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
1 外気吸引部
7 透明性保温シート
8 フード
A 赤外放射層
B 光反射層
CP 放射冷却層
D 保護層
E 膜材
Eh 膜材本体
Ej 膜材側樹脂層
H 放射面
J 樹脂材料層
K 空調室外機
N のり層
Q フィラー
S 接続層
W 放射冷却膜

Claims (17)

  1. 放射冷却膜が空調室外機に吸引される吸引空気を冷却する冷却作用状態に装着されている空調室外機用吸引空気冷却装置。
  2. 前記放射冷却膜が、前記冷却作用状態と前記吸引空気を冷却しない冷却停止状態とに切換自在に装着されている請求項1に記載の空調室外機用吸引空気冷却装置。
  3. 前記放射冷却膜が、前記空調室外機の設置空間の上部を覆う状態に装着されている請求項1又は2に記載の空調室外機用吸引空気冷却装置。
  4. 前記空調室外機の設置空間の上部を覆う透明性保温シートが設けられ、
    前記放射冷却膜が、前記冷却作用状態において前記透明性保温シートの上部を覆う状態となり、前記冷却停止状態において前記透明性保温シートの上部を開放する状態となる請求項2に記載の空調室外機用吸引空気冷却装置。
  5. 前記放射冷却膜が、前記空調室外機の外気吸引部から建物上部の上方に延びる筒状に形成されている請求項1又は2に記載の空調室外機用吸引空気冷却装置。
  6. 前記空調室外機の外気吸引部の上部及び側部を囲むフードが設けられ、
    前記放射冷却膜が、前記フードの外面に装着されている請求項1又は2に記載の空調室外機用吸引空気冷却装置。
  7. 前記放射冷却膜が、放射冷却層を備え、
    前記放射冷却層が、放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置させる光反射層とを備える形態に構成され、
    前記赤外放射層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整された塩化ビニル系樹脂からなる樹脂材料層であり、
    前記光反射層が、銀又は銀合金を備えている請求項1~6のいずれか1項に記載の空調室外機用吸引空気冷却装置。
  8. 前記樹脂材料層の膜厚が、
    波長0.4μmから0.5μmの光吸収率の波長平均が13%以下であり、波長0.5μmから波長0.8μmの光吸収率の波長平均が4%以下であり、波長0.8μmから波長1.5μmまでの光吸収率の波長平均が1%以内であり、1.5μmから2.5μmまでの光吸収率の波長平均が40%以下となる光吸収特性を備え、且つ、8μmから14μmの輻射率の波長平均が40%以上となる熱輻射特性を備える状態の厚みに調整されている請求項7に記載の空調室外機用吸引空気冷却装置。
  9. 前記光反射層は、波長0.4μmから0.5μmの反射率が90%以上、波長0.5μmより長波の反射率が96%以上である請求項7又は8に記載の空調室外機用吸引空気冷却装置。
  10. 前記光反射層が、銀または銀合金で構成され、その厚みが50nm以上である請求項7~9のいずれか1項に記載の空調室外機用吸引空気冷却装置。
  11. 前記光反射層が、銀または銀合金と前記樹脂材料層から離れる側に位置するアルミまたはアルミ合金との積層構造である請求項7~10のいずれか1項に記載の空調室外機用吸引空気冷却装置。
  12. 前記樹脂材料層を形成する樹脂材料が、可塑剤が混入された塩化ビニル系樹脂であり、
    前記可塑剤が、フタル酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類及びリン酸エステル類からなる群より選択される1つ以上の化合物からなる請求項7~11のいずれか1項に記載の空調室外機用吸引空気冷却装置。
  13. 前記樹脂材料層と前記光反射層との間に保護層を備える形態に構成され、
    前記保護層が、厚さが300nm以上で、40μm以下のポリオレフィン系樹脂、又は、厚さが17μm以上で、40μm以下のポリエチレンテレフタラート樹脂である請求項7~12のいずれか1項に記載の空調室外機用吸引空気冷却装置。
  14. 前記放射冷却膜が、膜材と前記放射冷却層とを備え、前記放射冷却層が、接着剤又は粘着剤の接続層にて前記膜材の外面に装着されている請求項7~13のいずれか1項に記載の空調室外機用吸引空気冷却装置。
  15. 前記膜材の前記放射冷却層から離れる裏面部に、塩化ビニル系樹脂にて形成される膜材側樹脂層を備えている請求項14に記載の空調室外機用吸引空気冷却装置。
  16. 放射冷却膜を空調室外機に吸引される吸引空気を冷却する冷却作用状態に装着する空調室外機の吸引空気冷却方法。
  17. 前記空調室外機の冷房運転時に、前記放射冷却膜の装着状態を前記冷却作用状態にし、前記空調室外機の暖房運転時に、前記吸引空気を冷却しない冷却停止状態に前記放射冷却膜の装着状態を切換える請求項16に記載の空調室外機の吸引空気冷却方法。
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