JP2023001899A - 組成物 - Google Patents

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洋行 塚田
Hiroyuki Tsukada
勇輔 小沼
Yusuke Konuma
宏司 西岡
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Abstract

【課題】耐熱性に優れたフィルムを形成可能な組成物及び該フィルムを提供する。【解決手段】樹脂(A)、シクロオレフィン系ポリマー(B)、フェノール系酸化防止剤(C)及び溶媒を含み、フェノール系酸化防止剤(C)は、式(P):TIFF2023001899000024.tif3042[式(P)中、Rp、Rq、Rr及びRsは、互いに独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数5~12のシクロアルキル基を表し、*は結合手を表す]で表される置換基Pを含み、式(1):[HSP値間距離((B);構造S)/HSP値間距離(溶媒;構造S)]/[HSP値間距離((B);(C))/HSP値間距離(溶媒;(C))]≦2.2 (1)を満たす、組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、高周波帯域用のプリント回路基板やアンテナ基板に対応可能な基板材料などに利用できるフィルムを形成可能な組成物、及び該フィルムに関する。
5Gと称される第5世代移動通信システムの本格的な普及に伴い、高周波帯域に対応できるプリント回路やアンテナに利用可能なプリント配線基板などが要求されている。しかし、高周波帯域になると基板材料由来の伝送損失が顕著に影響してくるため、伝送損失を抑制可能な基板材料の選択が重要となる。例えば、CCLと称される銅張積層板は樹脂層の両表面に接着剤を介して銅箔が積層された構造等を有する。該CCLの伝送損失は、伝送路となる樹脂層の誘電損失、特に誘電正接や比誘電率を低減することにより抑制し得るため、誘電正接の低いフィルムが検討されている。例えば、特許文献1には、ポリイミド樹脂等の樹脂(A)と環状オレフィン(共)重合体(B)とを含む低誘電性樹脂組成物、及び該組成物から形成された誘電正接が低いフィルムが開示されている。
特開2017-125176号公報
しかしながら、高周波帯域に対応可能なCCL中の樹脂層は、CCLの製造工程において高温環境下に曝されることがあるため、低誘電性樹脂組成物から形成されたフィルムには、耐熱性も要求される。
したがって、本発明の目的は、耐熱性に優れたフィルムを形成可能な組成物及び該フィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、以下の好適な態様を包含する。
[1]樹脂(A)、シクロオレフィン系ポリマー(B)、フェノール系酸化防止剤(C)及び溶媒を含み、
フェノール系酸化防止剤(C)は、式(P):
Figure 2023001899000001
〔式(P)中、R、R、R及びRは、互いに独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数5~12のシクロアルキル基を表し、*は結合手を表す〕
で表される置換基Pを含み、
式(1):
[HSP値間距離((B);構造S)/HSP値間距離(溶媒;構造S)]/[HSP値間距離((B);(C))/HSP値間距離(溶媒;(C))]≦2.2 (1)
〔式(1)中、HSP値間距離((B);構造S)は、シクロオレフィン系ポリマー(B)と、フェノール系酸化防止剤(C)中の置換基Pを水素原子に置換した構造SとのHSP値間距離を表し、HSP値間距離(溶媒;構造S)は、溶媒と構造SとのHSP値間距離を表し、HSP値間距離((B);(C))は、シクロオレフィン系ポリマー(B)とフェノール系酸化防止剤(C)とのHSP値間距離を表し、HSP値間距離(溶媒;(C))は、溶媒とフェノール系酸化防止剤(C)とのHSP値間距離を表す〕
を満たす、組成物。
[2]式(1)中の[HSP値間距離((B);(C))/HSP値間距離(溶媒;(C))]は、0.14以上である、[1]に記載の組成物。
[3]式(1)中のHSP値間距離(溶媒;構造S)は12.5以上である、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]式(1)中のHSP値間距離((B);(C))は6.0以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]シクロオレフィン系ポリマー(B)は粒子状である、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]シクロオレフィン系ポリマー(B)のガラス転移温度が100℃以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]シクロオレフィン系ポリマー(B)は、式(I):
Figure 2023001899000002
[式(I)中、mは0以上の整数を表し、R~R18は、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、R11~R14が複数存在する場合、それらは同一であってもよく、異なっていてもよく、R16とR17とは互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい]
で表されるシクロオレフィン由来の単量体単位(I)を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]シクロオレフィン系ポリマー(B)における前記単量体単位(I)の含有量は、シクロオレフィン系ポリマー(B)を構成する繰り返し単位の合計モル量に対して、60モル%以上である、[7]に記載の組成物。
[9]樹脂(A)、シクロオレフィン系ポリマー(B)及びフェノール系酸化防止剤(C)を含むフィルムであって、大気中、360℃で5分間アニール処理した際のシクロオレフィン系ポリマー(B)に由来する2500~3500cm-1の範囲におけるIRピークの維持率は50%以上である、フィルム。
本発明によれば、耐熱性に優れたフィルムを形成可能な組成物及び該フィルムを提供できる。
〔組成物〕
本発明の組成物は、樹脂(A)、シクロオレフィン系ポリマー(B)(単にポリマー(B)ということがある)、フェノール系酸化防止剤(C)及び溶媒を含み、
フェノール系酸化防止剤(C)は、式(P):
Figure 2023001899000003
〔式(P)中、R、R、R及びRは、互いに独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数5~12のシクロアルキル基を表し、*は結合手を表す〕
で表される置換基P(フェノール系活性部位ということがある)を含み、
式(1):
[HSP値間距離((B);構造S)/HSP値間距離(溶媒;構造S)]/[HSP値間距離((B);(C))/HSP値間距離(溶媒;(C))]≦2.2 (1)
〔式(1)中、HSP値間距離((B);構造S)(B2ともいう)は、シクロオレフィン系ポリマー(B)と、フェノール系酸化防止剤(C)中の置換基Pを水素原子に置換した構造SとのHSP値間距離を表し、HSP値間距離(溶媒;構造S)(A2ともいう)は、溶媒と構造SとのHSP値間距離を表し、HSP値間距離((B);(C))(B1ともいう)は、シクロオレフィン系ポリマー(B)とフェノール系酸化防止剤(C)とのHSP値間距離を表し、HSP値間距離(溶媒;(C))(A1ともいう)は、溶媒とフェノール系酸化防止剤(C)とのHSP値間距離を表す〕
を満たす。なお、本明細書において、フェノール系酸化防止剤(C)中の置換基Pを水素原子に置換した構造Sを単に「構造S」ということがある。また、本発明の組成物に含まれ、式(1)を満たす溶媒を「第1溶媒」と称することがある。
本発明者らは、シクロオレフィン系ポリマーと樹脂(但し、該シクロオレフィン系ポリマー以外のポリマーから構成されたもの)とを含む組成物から形成されたフィルムは高温環境下に曝露されると、該シクロオレフィン系ポリマーが酸化により劣化し、耐熱性が低下する場合があることを見出した。そこで、本発明者らは、得られるフィルム中のシクロオレフィン系ポリマー(B)の酸化に着目して検討を進めた結果、(B2/A2)/(B1/A1)が2.2以下であると、意外なことに、本発明の組成物から形成されるフィルムが、高温環境下に曝露されても、フィルム中のシクロオレフィン系ポリマー(B)の酸化による劣化を有効に抑制できることを見出した。その理由は以下のように考えられる。
<a>式(1)の[HSP値間距離((B);構造S)/HSP値間距離(溶媒;構造S)](B2/A2)について
後述の通り、フェノール系酸化防止剤(C)の構造S部分がフェノール系酸化防止剤(C)のポリマー(B)への吸着性や覆い方に寄与しやすい部分であり、構造S部分でポリマー(B)を吸着しやすい又は構造S部分がポリマー(B)に寄りやすいほど、フェノール系活性部位がポリマー(B)の周囲を覆い易くなるため、ポリマー(B)の酸化防止効果が発現されやすい。つまり、HSP値間距離((B);構造S)(B2)が小さくなるほど、すなわち、構造S部分とポリマー(B)との親和性が高くなるほど、フェノール系酸化防止剤(C)が、ポリマー(B)の酸化防止に有利なサイトでポリマー(B)に吸着しやすく、酸化防止効果を発現しやすい。一方、HSP値間距離(溶媒;構造S)(A2)が大きくなるほど、構造S部分と溶媒との親和性が低下し、相対的にポリマー(B)と構造S部分との親和性が高くなるため、構造S部分がポリマー(B)に吸着しやすく、ポリマー(B)の酸化防止効果を発現しやすい。つまり、式(1)の分子(B2/A2)が小さくなるほど、組成物中において、フェノール系酸化防止剤(C)の構造S部分とポリマー(B)との親和性が高まりやすく、構造S部分におけるポリマー(B)との吸着性を向上しやすく、フェノール系活性部位がポリマー(B)の周囲を覆い易くなるため、ポリマー(B)の酸化防止効果を発現しやすいと考えられる。
<b>式(1)の分母[HSP値間距離((B);(C))/HSP値間距離(溶媒;(C))](B1/A1)について
フェノール系酸化防止剤(C)は、組成物中もしくはフィルム中で凝集すると、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)の周囲を覆いにくくなり、酸化防止機能が低下してしまうため、凝集することなく、溶媒中に分散(好ましくは均一分散)又は溶解していることが好ましい。ここで、HSP値間距離(溶媒;(C))(A1)が小さくなるほど、フェノール系酸化防止剤(C)の全体構造と溶媒との親和性が高まるため、フェノール系酸化防止剤(C)は溶媒中に分散又は溶解しやすい。一方、HSP値間距離((B);(C))(B1)が大きくなるほど、フェノール系酸化防止剤(C)の全体構造とポリマー(B)との親和性が低下するため、相対的に溶媒とフェノール系酸化防止剤(C)の全体構造との親和性が高まり、フェノール系酸化防止剤(C)は溶媒中に分散又は溶解しやすい。つまり、式(1)の分母[HSP値間距離((B);(C))/HSP値間距離(溶媒;(C))](B1/A1)が大きくなるほど、溶媒中でのフェノール系酸化防止剤(C)の分散性又は溶解性を向上しやすいため、凝集を抑制しやすいという観点からは、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)の周囲を被覆しやすくなり、ポリマー(B)の酸化防止効果を発現しやすいと考えられる。
<c>式(1)中の(B2/A2)/(B1/A1)について
上記(a)及び(b)に示される通り、式(1)中の分子(B2/A2)の値が小さくなるほど、フェノール系酸化防止剤(C)の構造S部分でのポリマー(B)の吸着性を向上しやすく、また式(1)中の分母(B1/A1)の値が大きくなるほど、溶媒中でのフェノール系酸化防止剤(C)の分散性又は溶解性を向上しやすいと考えられる。よって、(B2/A2)/(B1/A1)の値が小さくなると、酸化防止に有利な構造S部分でのポリマー(B)の吸着性と、溶媒中でのフェノール系酸化防止剤(C)の分散性又は溶解性とを両立しやすいと考えられる。したがって、(B2/A2)/(B1/A1)が2.2以下という小さい値であると、フェノール系酸化防止剤(C)が優れた酸化防止機能を発現でき、耐熱性に優れたフィルムが形成できると考えられる。
一方、式(1)中の(B2/A2)/(B1/A1)が2.2を超えると、フェノール系酸化防止剤(C)の酸化防止機能が低下し、十分な耐熱性を発現できない。なお、本明細書において、耐熱性とは、フィルムを高温環境下に曝したときに、フィルムが劣化しにくい、特にポリマー(B)が劣化しにくい特性を示す。また、耐吸湿性とは、フィルムが水分を吸着又は吸収しにくい特性を示す。
式(1)中の(B2/A2)/(B1/A1)は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.7以下、さらに好ましくは1.5以下、さらにより好ましくは1.3以下、特に好ましくは1.1以下、特により好ましくは1.0以下、特にさらに好ましくは0.9以下である。(B2/A2)/(B1/A1)が上記上限以下であると、構造S部分でのポリマー(B)の吸着性とフェノール系酸化防止剤(C)の分散性又は溶解性とを両立しやすく、フェノール系酸化防止剤(C)が分散した状態でポリマー(B)に吸着しやすいことから、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすいため、得られるフィルムの耐熱性及び耐吸湿性を向上しやすい。(B2/A2)/(B1/A1)の下限は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上、さらにより好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.5以上である。(B2/A2)/(B1/A1)が上記下限以上であると、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)を均一に覆いやすいため、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
式(1)中の(B2/A2)は、式(1)を満たせば、特に限定されないが、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.6以下、さらにより好ましくは0.45以下、特に好ましくは0.30以下、特により好ましくは0.28以下、特にさらに好ましくは0.25以下、特にさらにより好ましくは0.20以下である。(B2/A2)が上記上限以下であると、フェノール系酸化防止剤(C)の構造S部分が、ポリマー(B)に寄りやすく又は吸着しやすく、ポリマー(B)の周りを覆いやすいため、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすく、得られるフィルムの耐熱性及び耐吸湿性を向上しやすい。(B2/A2)の下限は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.03以上、さらにより好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.08以上、特により好ましくは0.10以上、特にさらにより好ましくは0.12以上である。(B2/A2)が上記下限以上であると、フェノール系酸化防止剤(C)とポリマー(B)との親和性が高すぎず、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)を均一に覆いやすいため、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
式(1)中の(B1/A1)は、式(1)を満たせば、特に限定されないが、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.10以上、さらにより好ましくは0.14以上、特に好ましくは0.16以上、特により好ましくは0.18以上、特にさらに好ましくは0.18より大きく、特にさらにより好ましくは0.19以上である。(B1/A1)が上記下限以上であると、溶媒中でのフェノール系酸化防止剤(C)の凝集を抑制しやすく、分散性を向上しやすいため、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)を被覆しやすく、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすい。そのため、得られるフィルムの耐熱性及び耐吸湿性を向上しやすい。(B1/A1)の上限は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下、さらにより好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下、特により好ましくは0.4以下である。(B1/A1)が上記上限以下であると、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)に寄りやすく又は吸着しやすく、ポリマー(B)の周りを覆いやすいため、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすく、得られるフィルムの耐熱性及び耐吸湿性を向上しやすい。
式(1)中のHSP値間距離((B);構造S)(B2)は、式(1)を満たせば、特に限定されないが、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.4以上、特に好ましくは2.6以上である。(B2)が上記下限以上であると、フェノール系酸化防止剤(C)の構造S部分とポリマー(B)との親和性が高すぎず、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)を均一に覆いやすいため、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすく、得られるフィルムの耐熱性及び耐吸湿性を向上しやすい。HSP値間距離((B);構造S)(B2)の上限は、好ましくは7.5以下、より好ましくは6.5以下、さらに好ましくは5.5以下、さらにより好ましくは5.0以下、特に好ましくは4.0以下、特により好ましくは3.5以下、特にさらに好ましくは3.0以下である。(B2)が上記上限以下であると、フェノール系酸化防止剤(C)の構造S部分がポリマー(B)に寄りやすく又は吸着しやすく、ポリマー(B)の周りを覆いやすいため、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすく、得られるフィルムの耐熱性及び耐吸湿性を向上しやすい。
式(1)中のHSP値間距離(溶媒;構造S)(A2)は、式(1)を満たせば、特に限定されないが、好ましくは7.0以上、より好ましくは8.5以上、さらに好ましくは10.0以上、さらにより好ましくは12.5以上、特に好ましくは13.0以上、特により好ましくは16.0以上、特にさらに好ましくは17.0以上である。(A2)が上記下限以上であると、フェノール系酸化防止剤(C)が溶媒に溶解及び分散しにくく、ポリマー(B)の周りを覆いやすいため、ポリマー(B)の酸化を抑制して、得られるフィルムの耐熱性及び耐吸湿性を向上しやすい。また、HSP値間距離(溶媒;構造S)(A2)の上限は、好ましくは30.0以下、より好ましくは25.0以下、さらに好ましくは20.0以下である。(A2)が上記上限以下であると、フェノール系酸化防止剤(C)が組成物中で凝集することを防ぎ、ポリマー(B)の周りを覆いやすいため、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすい。
式(1)中のHSP値間距離((B);(C))(B1)は、式(1)を満たせば、特に限定されないが、好ましくは2.1以上、より好ましくは2.3以上、さらに好ましくは2.5以上、さらにより好ましくは3.0以上、特に好ましくは3.2以上である。(B1)が上記下限以上であると、フェノール系酸化防止剤とポリマー(B)との親和性が高すぎず、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)を均一に覆いやすいため、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすい。また、溶媒中でのフェノール系酸化防止剤(C)の凝集を抑制しやすく、分散性又は溶解性を向上しやすいため、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすい。そのため、得られるフィルムの耐熱性及び耐吸湿性を向上しやすい。HSP値間距離((B);(C)))(B1)の上限は好ましくは12.0以下、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは6.0以下、さらにより好ましくは5.5以下、特に好ましくは5.0以下、特により好ましくは4.5以下、特にさらに好ましくは4.0以下である。(B1)が上記上限以下であると、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)に寄りやすく又は吸着しやすく、ポリマー(B)の周りを覆いやすいため、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすく、得られるフィルムの耐熱性及び耐吸湿性を向上しやすい。
式(1)中のHSP値間距離(溶媒;(C))(A1)は、式(1)を満たせば、特に限定されないが、好ましくは10.0以上、より好ましくは12.0以上、さらに好ましくは12.5以上、さらにより好ましくは13.0以上、特に好ましくは15.4以上、特により好ましくは16.0以上、特にさらに好ましくは16.5以上、特にさらにより好ましくは17.0以上である。(A1)が上記下限以上であると、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)の周りを覆いやすいため、また、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)の周囲を覆う形態でフィルム化されやすいため、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすく、得られるフィルムの耐熱性及び耐吸湿性を向上しやすい。また、(A1)の上限は、好ましくは30.0以下、より好ましくは25.0以下、さらに好ましくは20.0以下である。(A1)が上記上限以下であると、溶媒中でのフェノール系酸化防止剤(C)の凝集を抑制しやすく、分散性又は溶解性を向上しやすいため、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすく、得られるフィルムの耐熱性及び耐吸湿性を向上しやすい。
本発明の組成物が式(1)を満たすように調整する方法は、特に限定されず、各HSP間距離を[HSP値間距離((B);構造S)/HSP値間距離(溶媒;構造S)]に代入したときに、その値が2.2以下になるように、フェノール系酸化防止剤(C)の全体構造及び構造Sそれぞれに対するポリマー(B)のHSP値間距離、該全体構造及び該構造Sそれぞれに対する溶媒のHSP値間距離を適宜選択すればよい。式(1)中の(B2/A2)及び(B1/A1)も、それぞれ同様に調整して上記範囲に調整できる。
本発明の一実施形態において、HSP値間距離((B);構造S)(B2)は、HSP値間距離((B);(C))(B1)より小さいことが好ましい。B2がB1よりも小さいと、ポリマー(B)が酸化しにくいため、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。これは、以下の理由のためであると考えられる。B2がB1よりも小さいことは、フェノール系酸化防止剤(C)の構造Sの部分が特にポリマー(B)と親和性が高いことを意味しており、フェノール系酸化防止剤(C)の構造Sの部分が接するようにポリマー(B)に吸着しやすいため、ポリマー(B)の周りにフェノール系酸化防止剤(C)の前記置換基Pが均一に存在しやすくなり、結果、ポリマー(B)の酸化で発生した不安定なラジカルが前記置換基Pでトラップされやすくなる。前記ラジカルのトラップにより生成した置換基Pのラジカルは、さらにポリマー(B)のラジカルをトラップすることができ、ポリマー(B)を不活化させることができる。例えば、前記R及びRがいずれも嵩高い置換基の場合は、置換基Pがラジカル化した後、置換基Pのヒドロキシル基に対してパラ位でポリマー(B)のラジカルをトラップし、ポリマー(B)を不活化させやすい。よって、ポリマー(B)と構造Sとが近くに存在していると、ポリマー(B)の不活性化に寄与する置換基Pのヒドロキシル基のパラ位がポリマー(B)の近くに存在しやすく、置換基Pラジカルがポリマー(B)を不活性化しやすいため、フェノール系酸化防止剤(C)による酸化防止機能が発現しやすい。また、フェノール系酸化防止剤(C)の前記置換基Pのヒドロキシル基が適度にポリマー(B)と離れるため、トラップしたラジカルがポリマー(B)に移ることを防止しやすい。
本発明の一実施形態において、B2がB1よりも小さい場合、B2とB1との差の絶対値は、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)を覆いやすいためポリマー(B)の酸化を抑制しやすく、フィルムの耐熱性及び耐吸湿性を向上しやすい観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上、さらにより好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.5以上である。また、B2とB1との差はフェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)に対して均一に吸着しやすく、またフェノール系酸化防止剤(C)の前記置換基Pがポリマー(B)との間に適度な空間を維持しやすい観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.0以下である。
前記HSPはハンセン溶解度パラメータ(δ)であり、(δD,δP,δH)の3次元のパラメータで定義され、式(X):
δ=(δD)+(δP)+(δH) ・・・(X)
[式(X)中、δDはLоndоn分散力項を示し、δPは分子分極項(双極子間力項)を示し、δHは水素結合項を表す]
により表される。HSPに係る詳細は、「PROPERTIES OF POLYMERS」(著者:D.W.VANKREVELEN、発行所:ELSEVIER SCIENTFIC PUBLISHING COMPANY、1989年発行、第5版)に記載されている。ハンセン溶解度パラメータのδD,δP、及びδHは、ハンセン溶解球法(Hansen Sоlubility Sphere法)に従って、ハンセン溶解度パラメータを提案したハンセン博士のグループによって開発されたプログラムであるHSPiP(Hansen Sоlubility Parameters in Practice)を用いて計算することができ、例えば実施例に記載のVer.4.1.07等を用いることができる。以下にハンセン溶解球法の詳細を説明する。対象となる成分をHSP値が既知の溶媒に溶解させ、当該成分の特定の溶媒に対する溶解性を評価する。溶解性の評価は、それぞれ対象とする成分が溶媒に溶解したか否かを目視で判定して行う。これを複数の溶媒について行う。この溶媒の種類は、δtが幅広く異なる溶媒を用いることが好ましく、より具体的には、好ましくは10種以上、より好ましくは15種以上、さらに好ましくは18種以上である。次に、得られた溶解性の評価結果をHSPiPに入力することで得られたHansen球の中心座標(δd,δp,δh)を対象とする成分のHSPとする。また、HSPは上記の方法の他、例えばHSPiPのデータベースの数値や文献値を用いてもよく、HSPiPを使用して構造式から求めてもよい。なお、本明細書において、ハンセン溶解度パラメータの値をHSP値と称し、該HSP値は、25℃における値を表す。樹脂(A)のHSP値、ポリマー(B)のHSP値、及び溶媒のHSP値は、それぞれ、上記のいずれかの方法により求めてもよく、例えば実施例に記載の方法により求められる。
二つの物質のハンセン溶解度パラメータ(以下、HSPと略すことがある)の距離をHSP値間距離という。HSP間距離(Ra)は、両物質の親和性を表す指標であって、その値が小さい程、両物質の親和性が高いことを示す。逆に、Raの値が大きい程、両物質の親和性が低いこと、すなわち、相溶しがたいことを示す。
HSP値間距離は、二つの物質A及びBのそれぞれのハンセン溶解度パラメータδA及びδBを、
δA=(δDA,δPA,δHA)
δB=(δDB,δPB,δHB)
と仮定すれば、HSP間距離(Ra)は、式(Y):
Ra=[4×(δDA-δDB)+(δPA-δPB)+(δHA-δHB)0.5 ・・・(Y)
により計算することができる。
なお、本明細書において、HSP値及びHSP値間距離は上記に定義した通りであり、上記方法に従って求めることができる。
<フェノール系酸化防止剤(C)>
本発明におけるフェノール系酸化防止剤(C)は、下記式(P):
Figure 2023001899000004
[式(P)中、R、R、R及びRは、互いに独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数5~12のシクロアルキル基を表し、*は結合手を表す]
で表される置換基Pを含む。フェノール系酸化防止剤(C)が置換基Pを含む場合、酸素の存在下でポリマー(B)に生じた不安定なラジカル、例えば炭素ラジカルやパーオキシラジカルと反応して不活化し、ラジカル連鎖反応を抑制することができるためポリマー(B)の酸化を抑制しやすく、得られるフィルムの耐熱性及び耐吸湿性を向上しやすい。
式(P)において、R、R、R及びRは、互いに独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数5~12のシクロアルキル基を表す。炭素数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、tert―アミル基等が挙げられる。炭素数5~12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、R、R、R及びRは、ポリマー(B)の酸化を抑制し、得られるフィルムの耐熱性及び耐吸湿性を向上しやすい観点から、好ましくはR、R、R及びRのうち少なくとも1つが水素原子でなく、より好ましくはR及びRのいずれかは水素原子ではなく、さらに好ましくはR、R、R及びRのうち少なくとも1つが嵩高い置換基であり、さらにより好ましくはR及びRの少なくとも一方が嵩高い置換基であり、特に好ましくはR及びRがいずれも嵩高い置換基である。前記嵩高い置換基は、tert-ブチル基、ネオペンチル基、tert―アミル基等であってよく、好ましくはtert-ブチル基である。フェノール系酸化防止剤(C)が置換基Pを複数有する場合、置換基Pの構造は同一又は異なっていてもよい。すなわち、置換基Pを複数有する場合、各置換基P中のR、R、R及びRは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。R及びRの少なくとも一方が水素原子ではなく、好ましくはR及びRの少なくとも一方が嵩高い置換基であると、不安定なラジカル、例えば炭素ラジカルやパーオキシラジカルと反応して、フェノキシラジカルとなった際に、フェノキシラジカルがより安定化されるため、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすく、得られるフィルムの耐吸湿性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、フェノール系酸化防止剤(C)と樹脂(A)とのHSP値間距離は、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)を覆いやすいためポリマー(B)の酸化を抑制しやすく、フィルムの耐熱性及び耐吸湿性を向上しやすい観点から、好ましくは5.0以上、より好ましくは8.0以上、さらに好ましくは8.5以上、さらにより好ましくは9.5以上、特に好ましくは10.0以上、特により好ましくは11.0以上である。また、フェノール系酸化防止剤(C)と樹脂(A)とのHSP値間距離は、組成物中やフィルム中でのフェノール系酸化防止剤の凝集を防ぎやすい観点から、好ましくは16.0以下、より好ましくは15.0以下、さらに好ましくは13.0以下、さらにより好ましくは12.5以下である。
本発明の一実施形態において、構造Sと樹脂(A)とのHSP値間距離は、好ましくは5.0以上、より好ましくは7.0以上、さらに好ましくは8.0以上、さらにより好ましくは9.0以上、特に好ましくは10.0以上であり、好ましくは15.0以下、より好ましくは14.0以下、さらに好ましくは13.0以下、さらにより好ましくは12.0以下である。前記HSP値間距離が上記上限以下又は上記下限以上であると、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、構造Sは芳香環を有することが好ましい。該フェノール系酸化防止剤(C)が構造Sとして、芳香環を有すると、得られるフィルムが高温環境下に曝露されても、ポリマー(B)の酸化による劣化を有効に抑制しやすく、優れた耐熱性を発現しやすい。この理由は定かではないが、フェノール系活性部位を除く構造Sが芳香環を有すると、フェノール系酸化防止剤自体の耐熱向上に加え、ポリマー(B)との親和性が高まるためだと推定される。さらに、構造Sが芳香環を有すると、本発明の組成物に含まれるポリマー(B)の製膜時における酸化及びこれによる極性基の生成を有効に抑制しやすいため、耐吸湿性に優れたフィルムを形成しやすい。上記芳香環は、置換基Pと異なるのであれば、置換基(置換基Qということがある)を有していてもよい。
本発明の一実施形態において、構造Sが有する芳香環は、炭素数5~20の芳香環であることが好ましい。芳香環としては、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が挙げられる。
芳香族炭化水素環としては、例えば、単環式芳香族炭化水素環、縮合多環式芳香族炭化水素環又は環集合芳香族炭化水素環が挙げられる。
単環式芳香族炭化水素環は、炭素数6~15の単環式芳香族炭化水素環が好ましく、その例としては、ベンゼン環等が挙げられる。縮合多環式芳香族炭化水素環は、炭素数10~20の縮合多環式芳香族炭化水素環が好ましく、その例としては、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等が挙げられる。環集合芳香族炭化水素環は、2以上の単環式芳香族炭化水素環、2以上の縮合多環式芳香族炭化水素環、又は、1以上の単環式芳香族炭化水素環と1以上の縮合多環式芳香族炭化水素環とが互いに単結合を介して結合しているものを意味し、炭素数10~40の環集合芳香族炭化水素環が好ましい。その例としては、ビフェニル環、フェニルナフチル環、テルフェニル環、ペリレン環等が挙げられる。芳香族炭化水素環の中でも、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を高めやすい観点から、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環等が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
芳香族複素環としては、例えば、単環式芳香族複素環、縮合多環式芳香族複素環又は環集合芳香族複素環が挙げられる。本明細書において、芳香族複素環には、互変異性体を有する環も含まれ、その環自体に芳香族性がなくても、その互変異性体に芳香族性があれば、用語「芳香族複素環」に含まれる。例えば、イソシアヌル環(s-トリアジン-2,4,6-トリオン環)は、互変異性体が芳香族性のあるs-トリアジン-2,4,6-トリオールであるため、本明細書においては、芳香族複素環に含まれる。単環式芳香族複素環は、硫黄原子、窒素原子及び酸素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み、炭素及びヘテロ原子数5~15の芳香族複素環が好ましく、その例としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、イソシアヌル環、ジアザベンゼン環、フラン環、チオフェン環、アゾール環、ジアゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環等が挙げられる。縮合多環式芳香族複素環は、硫黄原子、窒素原子及び酸素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み、炭素及びヘテロ原子数8~20の縮合多環式芳香族複素環が好ましく、その例としては、アザナフタレン(キノリン)環、ジアザナフタレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾシロール環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、アクリジン環、インドール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、チアゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等が挙げられる。環集合芳香族複素環は、2以上の単環式芳香族複素環、2以上の縮合多環式芳香族複素環、1以上の単環式芳香族複素環と1以上の縮合多環式芳香族複素環とが互いに単結合を介して結合しているものに加え、1以上の単環式芳香族炭化水素環と1以上の縮合多環式芳香族複素環、又は、1以上の単環式芳香族複素環と1以上の縮合多環式芳香族炭化水素環が互いに単結合を介して結合しているものも含む。環集合芳香族複素環は、炭素数10~40の環集合芳香族複素環が好ましく、その例としては、ビピリジン環、テルピリジン環等が挙げられる。芳香族複素環の中でも、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を高めやすい観点から、トリアジン環、イソシアヌル環等が好ましく、トリアジン環がより好ましい。
フェノール系酸化防止剤(C)中の構造Sは、置換基を有していてもよい芳香環を1又は2以上有していてもよい。置換基を有していてもよい芳香環を2以上含む場合、各芳香環は、2価以上の炭化水素基、より好ましくは2価又は3価の炭化水素基、さらに好ましくはアルキレン基で連結されていてもよい。アルキレン基としては、上記に例示の炭素数1~12のアルキル基のうち、1つの水素原子を取り除いた基が挙げられる。該アルキレン中の炭素原子は、硫黄原子、窒素原子及び酸素原子から選択される少なくとも1つと置き換わっていてもよい。
芳香環の中でも、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性に加え、誘電特性を高めやすい観点からは、芳香族炭化水素環が好ましく、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性をより向上しやすい観点から、単環式芳香族炭化水素環及び/又は縮合多環式芳香族炭化水素環がより好ましく、単環式芳香族炭化水素環がさらに好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
芳香環が有し得る置換基Qとしては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アルキルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、アシル基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロキシル基、エステル結合を有する基などが挙げられる。これらの置換基Qは単独又は二種以上組合せて使用できる。
ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。アルキル基としては、例えば、上記に例示の炭素数1~12のアルキル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えば、上記に例示の炭素数5~12のシクロアルキル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基などが挙げられる。シクロアルコキシ基としては、例えばシクロヘキシルオキシ等の炭素数5~12のシクロアルコキシ基などが挙げられる。アルキルチオ基としては、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等の炭素数1~12のアルキルチオ基などが挙げられる。シクロアルキルチオ基としては、例えばシクロヘキシルチオ基等の炭素数5~12のシクロアルキルチオ基などが挙げられる。アルキルアミノ基としては、アルキル部位が上記に例示の炭素数1~12のアルキル基であるモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基などが挙げられる。シクロアルキルアミノ基としては、シクロアルキル部位が上記に例示の炭素数5~12のシクロアルキル基であるモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基などが挙げられる。これらの置換基の中でも、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を高めやすい観点から、アルキル基、アルコキシ基等が好ましく、アルキル基がより好ましく、炭素数1~12のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1~4のアルキル基がさらにより好ましく、メチル基及び/又はエチル基が特に好ましい。
構造S中の芳香環は、置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を高めやすい観点から、置換基を有していることが好ましい。構造S中の芳香環の置換基の数は、特に限定されないが、好ましくは0以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは2以上、さらにより好ましくは3以上、特に好ましくは4以上、特により好ましくは5以上であり、好ましくは12以下、より好ましくは11以下、さらに好ましくは10以下、さらにより好ましくは9以下、特に好ましくは8以下、特により好ましくは7以下であり、特にさらに好ましくは6である。
フェノール系酸化防止剤(C)において、置換基Pの数は、特に限定されないが、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を高めやすい観点から、1以上、好ましくは2以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下であり、さらにより好ましくは3である。
フェノール系酸化防止剤(C)の構造は、構造S中の水素原子を取り除いた部分に置換基Pの結合手が結合した構造である。例えば、構造Sが置換基Qとしてメチル基を有する芳香環である場合、メチル基から1つの水素原子を取り除いた部分に置換基Pの結合手が結合した構造であってもよく、芳香環から1つの水素原子を取り除いた部分に置換基Pの結合手が結合した構造であってもよい。このように、置換基Pは、構造Sの芳香環に結合していてもよく、芳香環が有する置換基Qから1つの水素原子を取り除いた置換基(置換基Q’ともいう)に結合していてもよく、置換基Pが複数ある場合には、その両方に結合していてもよい。フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点からは、置換基Pは少なくとも芳香環が有する置換基Q’に結合していることが好ましい。なお、置換基Pが芳香環に結合する場合は、ヘテロ原子(例えば窒素原子)に結合する場合を含む意味である。
芳香環を基準にした置換基Pの結合位置は、特に限定されないが、例えば芳香環がベンゼン環である場合、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、置換基Pは、互いに隣接しない炭素原子に直接又は置換基Q’を介して結合していることが好ましく、直接又は置換基Q’を介して1,3位又は1,3,5位に結合していることがより好ましく、置換基Q’を介して1,3,5位に結合していることがさらに好ましい。また、例えば芳香環がトリアジン環である場合、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、置換基Pは、直接又は置換基Q’を介して2,4位又は2,4,6位に結合していることがより好ましく、置換基Q’を介して2,4,6位に結合していることがさらに好ましい。例えば芳香環がイソシアヌル環である場合、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、置換基Pは、直接又は置換基Q’を介して1,3位又は1,3,5位の窒素原子に結合していることが好ましく、直接1,3,5位の窒素原子に結合していることがより好ましい。
本発明の一実施形態において、構造Sが置換基を有していてもよい芳香環を有するフェノール系酸化防止剤(C)としては、例えば以下の構造を有するものが挙げられる。
Figure 2023001899000005

[各式中、R、R、R及びRは、上記に示した定義と同じである]
なお、上記構造中、各フェノール系酸化防止剤(C)において、置換基P中のR、R、R及びRは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。上記のような構造であると、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、フェノール系酸化防止剤(C)の具体例としては、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルメチル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、4,4’,4”-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、ペンタエリスリトール テトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート))、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、2,2’,6,6’-テトラ-tert-ブチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、6,6’-ジ-tert-ブチル-4,4’-ブチリデン-ジ-m-クレゾール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸][オキサリルビス(アザンジイル)]ビス(エタン-2,1-ジイル)、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-N’-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイル]プロパンヒドラジド、2,4,6-トリス(2,4-ジヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、イソシアヌル酸トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)、4-[[4,6-ビス(n-オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール等が挙げられる。これらの中でも、フィルムの耐吸湿性を向上しやすい観点から、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルメチル)-2,4,6-トリメチルベンゼンが好ましい。
本発明の一実施形態において、本発明の組成物に含まれるフェノール系酸化防止剤(C)の含有量は、ポリマー(B)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上、さらにより好ましくは0.2質量部以上、特に好ましくは0.5質量部以上、特により好ましくは2質量部以上である。フェノール系酸化防止剤(C)の含有量が上記下限以上であると、フェノール系酸化防止剤(C)によりポリマー(B)を覆いやすく、ポリマー(B)の酸化を十分に抑制しやすいため、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。フェノール系酸化防止剤(C)の含有量は、ポリマー(B)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。フェノール系酸化防止剤(C)の含有量が上記上限以下であると、フィルムの誘電特性を高めやすい。
<シクロオレフィン系ポリマー(B)>
本発明の組成物はシクロオレフィン系ポリマー(B)を含む。
本発明の一実施形態において、樹脂(A)とポリマー(B)とのHSP値間距離は、好ましくは6.0以上、より好ましくは6.5以上、さらに好ましくは7.0以上、さらにより好ましくは8.0以上である。樹脂(A)とポリマー(B)とのHSP値間距離が上記下限以上であると、ポリマー(B)と樹脂(A)との間に界面ができやすいことから、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)の周りを覆うように吸着しやすく、ポリマー(B)の酸化を防止しやすい。また、樹脂(A)とポリマー(B)とのHSP値間距離は、樹脂(A)とポリマー(B)間の親和性を高め、ポリマー(B)の分散性を高めやすい観点から、好ましくは30.0以下、より好ましくは25.0以下、さらに好ましくは20.0以下、さらにより好ましくは15以下である。
本発明の一実施形態において、ポリマー(B)は粒子状、針状または繊維状であってもよく、粒子状であることが好ましい。ポリマー(B)が粒子状であると、組成物中及び得られるフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。組成物におけるポリマー(B)の分散性が高まると、得られるフィルムにおけるポリマー(B)の分散性が高まるため、フィルムの耐吸湿性、表面平滑性、誘電特性、耐熱性及び機械的特性を高めやすく、フィルムの物性、例えばフィルムの熱伝導率のバラツキや線膨張係数(以下、CTEと称する)、フィルムの表面荒れを低減しやすい。本明細書において、機械的特性とは、屈曲耐性及び弾性率を含む機械的な特性を意味し、機械的特性が高まる又は向上するとは、例えば、屈曲耐性及び/又は弾性率が高くなることを示す。溶媒は単独又は二種以上を組合せて使用できる。本明細書において、「粒子状ポリマー(B)の粒子径」を単に「粒子径」ということがある。
シクロオレフィン系ポリマー(B)を構成する単量体単位は、特に限定されないが、ポリマー(B)の分散性を高めやすい観点、及び得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、式(I)
Figure 2023001899000006
[式(I)中、mは0以上の整数を表し、
~R18は、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表し、R11~R14が複数存在する場合、それらは互いに独立に、同一であってもよく、異なっていてもよく、R16とR17とは互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい]
で表されるシクロオレフィン由来の単量体単位(I)を含むことが好ましい。
式(I)において、mは0以上の整数である。ポリマー(B)の分散性、及びフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすく、入手も容易である観点からは、mの上限は好ましくは3以下の整数、より好ましくは2以下の整数、さらに好ましくは1以下の整数である。
~R18の置換基の一員である炭素原子数1~20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチール基等のアラルキル基;上記アルキル基、アリール基及びアラルキル基の水素原子の一部がハロゲン原子で置換された基等が挙げられる。これらの中でも、ポリマー(B)の分散性、及び得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、アルキル基、アリール基又はアラルキル基であることが好ましい。すなわち、R~R18は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基又は炭素原子数7~20のアラルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基であることがより好ましい。
式(I)で表されるシクロオレフィンとしては、例えば、ノルボルネン、5-メチルノルボルネン、5-エチルノルボルネン、5-ブチルノルボルネン、5-フェニルノルボルネン、5-ベンジルノルボルネン、テトラシクロドデセン、トリシクロデセン、トリシクロウンデセン、ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセン、8-メチルテトラシクロドデセン、8-エチルテトラシクロドデセン等が挙げられる。これらの中でも、原料モノマーの入手容易性、ポリマー(B)の分散性、及び得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、ノルボルネンであることが好ましい。式(I)で表されるシクロオレフィンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の一実施形態において、シクロオレフィン系ポリマーは、単量体単位(I)の二連鎖構造を含むことが好ましい。該二連鎖構造を含むことにより、単量体単位(I)の含有量が同程度のポリマーに比べて、耐熱性を向上しやすい。なお、二連鎖構造の有無は、13C-NMRスペクトル分析により判定することができる。例えば、テトラシクロデセン-エチレン共重合体の場合、テトラシクロデセンの孤立鎖であるエチレン-テトラシクロデセン-エチレン連鎖由来のシグナルは、54.7ppm付近及び51.1ppm付近に現れ、endo-exo結合のテトラシクロデセンの二連鎖であるエチレン-テトラシクロデセン-テトラシクロデセン-エチレン連鎖由来のシグナルは、51.5ppm付近及び50.8ppm付近に、exo-exo結合のエチレン-テトラシクロデセン-テトラシクロデセン-エチレン連鎖由来のシグナルは、55.3ppm付近及び54.3ppm付近に現れるので、55ppm近辺及び50ppm近辺のシグナルのパターンで判定することができる。
単量体単位(I)の二連鎖構造には、下記構造式(II-1)又は下記構造式(II-2)で表されるメソ型二連鎖、及び/又は、下記構造式(III-1)又は下記構造式(III-2)で表されるラセモ型二連鎖が含まれる。
Figure 2023001899000007
メソ型二連鎖とラセモ型二連鎖との比(以下、メソ型二連鎖/ラセモ型二連鎖と称することがある)は、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.40以下、さらに好ましくは0.30以下、特に好ましくは0.20以下であり、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上である。メソ型二連鎖とラセモ型二連鎖との比が上記範囲であると、フィルムの機械的特性及び耐熱性を高めやすい。メソ型二連鎖とラセモ型二連鎖との比は、例えば13C-NMRを用いて、「R.A.Wendt,G.Fink,Macromol.Chem.Phys.,2001,202,3490」及び「特開2008-285656号公報」に記載の帰属に基づいて算出でき、具体的には実施例に記載の方法により算出できる。なお、メソ型二連鎖とラセモ型二連鎖を上記範囲に調整する方法としては、モノマーの嵩高さに対して、適切な配位子の広さを持った触媒を選択する方法等がある。前記触媒としては、例えば、特開平9-183809号公報に記載された触媒を用いることができる。
シクロオレフィン系ポリマーにおける前記単量体単位(I)の含有量は、シクロオレフィン系ポリマーを構成する繰り返し単位の合計モル量に対して、好ましくは60モル%以上、より好ましくは65モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは75モル%以上であり、好ましくは100モル%以下、より好ましくは99モル%以下、さらに好ましくは98モル%以下である。単量体単位(I)の含有量が上記の下限以上であると、ガラス転移温度(以下、Tgと称することがある)を高めやすいため、フィルムのCTEを低減しやすく、また、フィルムの耐吸湿性を向上しやすい。さらに、フィルムの耐熱性及び屈曲耐性等の機械的特性を向上しやすい。単量体単位(I)の含有量が上記の上限以下であると、屈曲耐性等の機械的特性を高めやすい。単量体単位(I)の含有量は、13C-NMRを用いて、「R.A.Wendt,G.Fink,Macromol.Chem.Phys.,2001,202,3490」に記載の帰属に基づいて算出でき、例えば実施例に記載の方法により算出できる。
シクロオレフィン系ポリマーは、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、エチレン、炭素原子数3~20の直鎖状α-オレフィン、及び炭素数8~20の芳香族ビニル化合物からなる群から選択される少なくとも1つに由来する単量体単位(II)を含むことが好ましい。
炭素原子数3~20の直鎖状α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等が挙げられる。これらの中でも、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン又は1-オクテンであることが好ましく、プロピレンであることがより好ましい。炭素原子数3~20の直鎖状α-オレフィンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、「直鎖状α-オレフィン」とは、α位に炭素-炭素不飽和二重結合を有する直鎖状のオレフィンをいう。
炭素数8~20の芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ジフェニルエチレン、イソプロペニルベンゼン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン、イソプロペニルナフタレン、イソプロペニルアントラセン等が挙げられる。これらの中でも、原料モノマーの入手容易性、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、好ましくはスチレン、メチルスチレンまたはジメチルスチレン、より好ましくはスチレンである。炭素数8~20の芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の一実施形態において、シクロオレフィン系ポリマーは、原料モノマーの入手容易性、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、好ましくはエチレン、プロピレン及びスチレンからなる群から選択される少なくとも1つに由来する単量体単位(II)、より好ましくはエチレン及びスチレンからなる群から選択される少なくとも1つに由来する単量体単位(II)を含むことが好ましい。
シクロオレフィン系ポリマーにおける前記単量体単位(II)の含有量は、シクロオレフィン系ポリマーを構成する繰り返し単位の合計モル量に対して、好ましくは0モル%以上、より好ましくは0.01モル%以上、さらに好ましくは1モル%以上、さらにより好ましくは2モル%以上であり、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下、特に好ましくは25モル%以下である。単量体単位(II)の含有量が上記の下限以上であると、フィルムの屈曲耐性等の機械的特性、加工性及び成形性を高めやすい。単量体単位(II)の含有量が上記の上限以下であると、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、耐熱性、加工性、屈曲耐性等の機械的特性及び耐吸湿性を向上しやすい観点から、シクロオレフィン系ポリマーは、シクロオレフィンコポリマーであることが好ましく、式(I)で表されるシクロオレフィン由来の単量体単位(I)とエチレン、炭素原子数3~20の直鎖状α-オレフィン及び炭素数8~20の芳香族ビニル化合物からなる群から選択される少なくとも1つに由来する単量体単位(II)とを含むシクロオレフィン系ポリマーであることがより好ましく、ノルボルネンに由来する単量体単位(I)とエチレンに由来する単量体単位(II)とを含むエチレン-ノルボルネン共重合体、又はノルボルネンに由来する単量体単位(I)とスチレンに由来する単量体単位(II)とを含むスチレン-ノルボルネン共重合体であることがさらに好ましい。
シクロオレフィン系ポリマーは、その他の単量体単位(III)を含んでいてもよい。その他の単量体単位(III)を構成するその他の単量体としては、例えば、ブタジエン又はイソプレン等の共役ジエン;1,4-ペンタジエン等の非共役ジエン;アクリル酸;アクリル酸メチル又はアクリル酸エチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル又はメタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル;酢酸ビニル等が挙げられる。その他の単量体単位(III)は単独又は二種以上組合せて使用できる。
なお、ポリマー(B)は単独又は二種以上組合せて使用できる。
本発明の一実施形態において、シクロオレフィン系ポリマー以外のオレフィン系ポリマーとしては、例えば、前記単量体単位(II);前記単量体単位(III);3-メチルー1-ブテン、3-メチルー1-ペンテン、4-メチルー1-ペンテン及びビニルシクロアルカンからなる群から選択される少なくとも1つの単量体単位;並びにそれらの誘導体等を含む重合体又は共重合体が挙げられ、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリメチルペンテンが好ましく、中でも耐熱性を高める観点から、ポリプロピレン又はポリメチルペンテンがより好ましい。
本発明の一実施形態において、ポリマー(B)のガラス転移温度及び融点の少なくともいずれか一方は100℃以上であることが好ましい。ポリマー(B)のTgは、好ましくは100℃以上、より好ましくは140℃以上、さらに好ましくは160℃以上、さらにより好ましくは180℃以上、特に好ましくは200℃以上、特により好ましくは220℃以上、とりわけ好ましくは240℃以上、とりわけより好ましくは260℃以上であり、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下、さらに好ましくは320℃以下である。また、ポリマー(B)が融点を有する結晶性ポリマーである場合、ポリマー(B)の融点が、好ましくは100℃以上、より好ましくは140℃以上、さらに好ましくは160℃以上、さらにより好ましくは180℃以上、特に好ましくは200℃以上、特により好ましくは220℃以上、特にさらに好ましくは240℃以上、最も好ましくは260℃以上であり、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下、さらに好ましくは350℃以下である。ポリマー(B)のTg及び融点の少なくともいずれか一方が上記の下限以上であると、フィルムのCTEを低減しやすく、かつ耐湿水性、耐熱性及び屈曲耐性等の機械的特性をより高めやすい。ポリマー(B)のTg及び融点の少なくともいずれか一方が上記の上限以下であると、フィルムの機械的特性、特に反復屈曲耐性が高めやすい。ポリマー(B)のTgは、JIS K 7196に基づき、TMAにより測定した軟化温度であり、例えば実施例に記載の方法により測定できる。なお、ポリマー(B)のTg及び融点を調整する方法は、特に限定されないが、例えば単量体単位(I)の含有量、ポリマー(B)のMw、結晶化度等を適宜調整する方法が挙げられる。単量体単位(I)の含有量、ポリマー(B)のMw、及び結晶化度からなる群から選択される少なくとも1つが大きくなるほど、ポリマー(B)のTg及び融点が高くなる傾向がある。ポリマー(B)の融点は、例えば示差走査熱量計(DSC)を用いて、これにより得られる融解曲線から融解ピーク温度を測定することにより求めることができる。DSCは、特に限定されないが、例えば株式会社日立ハイテクサイエンス製のDSCを使用してもよい。
本発明の一実施形態において、ポリマー(B)の重量平均分子量(以下、重量平均分子量をMwと略すことがある)は、好ましくは30,000以上、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは70,000以上、特に好ましくは90,000以上であり、好ましくは2,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下、さらに好ましくは700,000以下である。Mwが上記の下限以上であると、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を高めやすく、また強度を向上しやすい。Mwが上記の上限以下であると、フィルムの耐吸湿性、機械的特性及び成形性を高めやすい。
本発明の一実施形態において、ポリマー(B)のMwと数平均分子量(以下、数平均分子量をMnと略すことがある)との比(Mw/Mn)は、ポリスチレン換算で、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.2以下、さらに好ましくは2.0以下、さらにより好ましくは1.95以下、特に好ましくは1.90以下であり、好ましくは1.30以上、より好ましくは1.50以上、さらに好ましくは1.60以上、特に好ましくは1.65以上である。Mw/Mn比が上記の上限以下であると、フィルムの耐吸湿性、耐熱性及び機械的特性を高めやすく、また上記の下限以上であると成形性を高めやすい。なお、Mw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略すことがある)測定を行い、標準ポリスチレン換算により求めることができ、例えば実施例に記載の方法により求められる。
本発明の一実施形態において、CTEが低減されたフィルムを得られやすい観点から、ポリマー(B)の屈折率は、好ましくは1.600以下、より好ましくは1.570以下、さらに好ましくは1.550以下であり、好ましくは1.500以上、より好ましくは1.520以上である。ポリマー(B)の屈折率は屈折計により測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の一実施形態において、ポリマー(B)のCTEは、好ましくは58ppm/K以下、より好ましくは55ppm/K以下、さらに好ましくは50ppm/K以下であり、好ましくは0ppm/K以上、より好ましくは0.01ppm/K以上、さらに好ましくは1ppm/K以上、さらにより好ましくは5ppm/K以上である。ポリマー(B)のCTEが上記の上限以下であると、得られるフィルムのCTEを低減しやすい。また、銅箔と貼り合せて銅張積層板を作製する場合には、積層フィルムの剥がれ防止の観点から、フィルムのCTEを20ppm/K前後に調整することが好ましい。混合する樹脂のCTEに応じて、最適なCTEを有するポリマー(B)を選択することができる。なお、CTEは、例えば熱機械分析(以下、TMAと称することがある)により測定でき、実施例に記載の方法により求められる。
本発明の一実施形態において、ポリマー(B)が粒子状である場合、本発明における組成物中の粒子状ポリマー(B)のメジアン径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、さらにより好ましくは3μm以下、特に好ましくは1μm以下、特により好ましくは0.8μm以下、特にさらに好ましくは0.5μm以下である。組成物中の粒子状ポリマー(B)のメジアン径が上記の下限以上であると、組成物から形成されるフィルムの誘電特性を高めやすく、またフィルムを製造しやすい。組成物中の粒子状ポリマー(B)のメジアン径が上記の上限以下であると、組成物中及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。組成物中の粒子状ポリマー(B)のメジアン径を求める方法は特に限定されないが、例えば遠心沈式粒度分布測定装置や超音波減衰式粒度分布測定装置により求めることができる。また、粒子状ポリマー(B)の粒子径に影響を及ぼさない範囲の量で、樹脂(A)やフェノール系酸化防止剤(C)を粒子状ポリマー(B)分散液に添加して組成物を形成する場合、予め、該分散液中の粒子状ポリマー(B)のメジアン径を測定し、これを該組成物中の粒子状ポリマー(B)のメジアン径とすることができる。なお、本明細書において、メジアン径とはD50とも称され、その値よりもサイズの小さい側の粒子状ポリマー(B)の粒子数と、大きい側の粒子数とが等しくなる値を示す。また、本明細書において、「粒子径」は、特記しない限り、粒子状ポリマー(B)のメジアン径及び/又は平均一次粒子径を含む意味である。
本発明の一実施形態において、本発明の組成物に含まれるポリマー(B)の含有量は、樹脂(A)とポリマー(B)との合計質量に対して、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。該組成物に含まれるポリマー(B)の含有量が上記の下限以上であると、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすいことからポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。また、該組成物に含まれるポリマー(B)の含有量が上記の上限以下であると、膜形成が容易となるため、フィルム製造の観点から有利である。なお、フィルム中のポリマー(B)の分散性が高いと熱伝導率及びCTEの均一性が高くなるため、例えばCCLの樹脂層として該フィルムを使用した場合に、フィルムと銅箔との剥がれを抑制しやすくなる。
<シクロオレフィン系ポリマー(B)の製造方法>
ポリマー(B)は、市販品を用いてもよく、また、製造方法は特に限定されないが、例えば、式(IV)で表される遷移金属錯体(α)を一成分として使用してなる触媒の存在下、シクロオレフィン系ポリマーを形成する単量体、例えば式(I)で表されるシクロオレフィン、前記エチレン及び炭素数3~20の直鎖状α-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1つの単量体、及び任意に前記その他の単量体を重合させることにより製造することが好ましい。本発明におけるシクロオレフィン系ポリマーの製造では、式(IV)で表される遷移金属錯体(α)を用いるため、シクロオレフィン系ポリマー中の単量体単位(I)の含有量を顕著に増加させやすく、Tgを上記範囲内に調整しやすい。
Figure 2023001899000008
[式(IV)中、Mは元素の周期律表の第4族の遷移金属元素を表し、
Cpはシクロペンタジエニル骨格を有する基を表し、
Aは元素の周期律表の第16族の原子を表し、
Tは元素の周期律表の第14族の原子を表し、
及びDは、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基又は炭素数2~20の2置換アミノ基を表し、それらは同一であってもよく、異なってもよい。
~Rは、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数2~20の2置換アミノ基又は炭素数1~20のシリル基を表し、それらは同一であってもよく、異なってもよく、さらにそれらは任意に結合して環を形成してもよい。]
Mは、元素の周期律表(IUPAC無機化学命名法改訂版1989)の第4族の遷移金属元素であり、例えば、チタニウム原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子等が挙げられる。
Cpは、シクロペンタジエニル骨格を有する基であり、例えば、シクロペンタジエニル、置換シクロペンタジエニル、インデニル、置換インデニル、フルオレニル、置換フルオレニル等が挙げられる。具体例としては、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、n-プロピルシクロペンタジエニル基、n-ブチルシクロペンタジエニル基、イソブチルシクロペンタジエニル基、フェニルシクロペンタジエニル基、インデニル基、メチルインデニル基、n-プロピルインデニル基、n-ブチルインデニル基、イソブチルインデニル基、フェニルインデニル基、フルオレニル基、メチルフルオレニル基、n-プロピルフルオレニル基、フェニルフルオレニル基、ジメチルフルオレニル基等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはシクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、n-ブチルシクロペンタジエニル基、イソブチルシクロペンタジエニル基、インデニル基、メチルインデニル基又はフルオレニル基が挙げられる。
Aは、元素の周期律表の第16族の原子であり、例えば、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。これらの中でも、酸素原子であることが好ましい。
Tは、元素の周期律表の第14族の原子であり、例えば、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子等が挙げられる。これらの中でも、炭素原子又はケイ素原子であることが好ましい。
、Dは、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基又は炭素数2~20の2置換アミノ基であり、それらは同一であってもよく、異なってもよい。これらの中でも、ハロゲン原子であることが好ましい。
、Dがハロゲン原子である場合の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
、Dが炭化水素基である場合、その炭素数は好ましくは1~10である。前記炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。
、Dがハロゲン化炭化水素基である場合の具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、1-フルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、1,1,2-トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、1-クロロエチル基、1,1-ジクロロエチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,1,2-トリクロロエチル基、1,1,2,2-テトラクロロエチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、1-ブロモエチル基、1,1-ジブロモエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,1,2-トリブロモエチル基、1,1,2,2-テトラブロモエチル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,3-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,5-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、2,3,4-トリフルオロフェニル基、2,3,5-トリフルオロフェニル基、2,3,6-トリフルオロフェニル基、2,3,4,5-テトラフルオロフェニル基、2,3,4,6-テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,3-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、2,3,4-トリクロロフェニル基、2,3,5-トリクロロフェニル基、2,3,6-トリクロロフェニル基、2,3,4,5-テトラクロロフェニル基、2,3,4,6-テトラクロロフェニル基、ペンタクロロフェニル基、2-ブロモフェニル基、3-ブロモフェニル基、4-ブロモフェニル基、2,3-ジブロモフェニル基、2,4-ジブロモフェニル基、2,5-ジブロモフェニル基、2,6-ジブロモフェニル基、2,3,4-トリブロモフェニル基、2,3,5-トリブロモフェニル基、2,3,6-トリブロモフェニル基、2,3,4,5-テトラブロモフェニル基、2,3,4,6-テトラブロモフェニル基、ペンタブロモフェニル基等が挙げられる。
、Dがアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、ネオペントキシ基、n-ヘキソキシ基、n-オクトキシ基等が挙げられる。
、Dがアリールオキシ基である場合の具体例としては、フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
、Dが2置換アミノ基である場合の2置換アミノ基とは、置換基が2個結合したアミノ基である。その具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ-sec-ブチルアミノ基、ジ-tert-ブチルアミノ基、ジ-n-ヘキシルアミノ基、ジ-n-オクチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
~Rは、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数2~20の2置換アミノ基又は炭素原子数1~20のシリル基を表し、それらは同一であってもよく、異なってもよく、さらにそれらは任意に結合して環を形成してもよい。これらの中でも、炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましい。
~Rがハロゲン原子である場合の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
~Rが炭化水素基である場合、炭素数は1~10であることが好ましい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,3,4-トリメチルフェニル基、2,3,5-トリメチルフェニル基、2,3,6-トリメチルフェニル基、2,3,4,5-テトラメチルフェニル基、2,3,4,6-テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基等が挙げられる。
~Rがハロゲン原子、ハロゲン化炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、及び2置換アミノ基である場合の具体例としては、D、Dがハロゲン原子、ハロゲン化炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、及び2置換アミノ基である場合の具体例として上記に例示したものが挙げられる。
~Rがシリル基である場合の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-n-プロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリ-n-ブチルシリル基、トリイソブチルシリル基、トリ-sec-ブチルシリル基、トリtert-ブチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
このような、式(IV)で表される化合物の具体例としては、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(メチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(ジメチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(トリメチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(n-プロピルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(n-ブチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(イソブチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(フェニルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(メチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(ジメチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(トリメチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(n-プロピルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(n-ブチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(イソブチルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(フェニルシクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(メチルシクロペンタジエニル)(2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(ジメチルシクロペンタジエニル)(2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(トリメチルシクロペンタジエニル)(2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(n-プロピルシクロペンタジエニル)(2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(n-ブチルシクロペンタジエニル)(2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(イソブチルシクロペンタジエニル)(2-フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(フェニルシクロペンタジエニル)(2-フェノキシ)チタニウムジクロライド等が挙げられる。
また、上記の具体例におけるチタニウムをジルコニウムあるいはハフニウムに変更した化合物、及び、それらを含めイソプロピリデンをジメチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチレンに変更した化合物についても同様に例示できる。更に、ジクロライドをジブロマイド、ジアイオダイド、ジメチル、ジベンジル、ジメトキシド、ジエトキシドに変更した化合物についても、同様に例示することができる。
上記の式(IV)で表される遷移金属錯体(α)は、種々の助触媒と組合せて、本発明の一実施形態に係るポリマー(B)を製造するための触媒として使用できる。助触媒とは、遷移金属錯体(α)と相互作用をして、環状オレフィン、アルケニル芳香族炭化水素に対する重合活性種を生成せしめる化合物のことである。その例としては、有機アルミニウム化合物(β)及び/又は下記式(γ1)~式(γ3)のいずれかで表されるホウ素化合物(γ)を挙げることができるが、これらの助触媒を使用することにより生成する重合活性種の構造は明らかではない。
式(γ1) BQ
式(γ2) J(BQ
式(γ3) (L-H)(BQ
[式(γ1)~式(γ3)中、Bは3価の原子価状態のホウ素原子を表し、
~Qは、互いに独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1~20の置換シリル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数2~20の2置換アミノ基を表し、
は、無機又は有機のカチオンを表し、
Lは、中性ルイス塩基を表し、(L-H)はブレンステッド酸を表す。]
前記有機アルミニウム化合物(β)としては、公知の有機アルミニウム化合物が使用できる。具体的には、式(β1)で表される有機アルミニウム化合物、式(β2)で表される構造を有する環状のアルミノキサン及び式(β3)で表される構造を有する線状のアルミノキサンが挙げられ、これらは単独でも、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
式(β1) E AlZ3-a
式(β2) {-Al(E)-O-}
式(β3) E{-Al(E)-O-}AlE
[式(β1)~式(β3)中、E、E及びEは、互いに独立に、炭素数1~8の炭化水素基を表し、全てのE、全てのE及び全てのEは同一であってもよく、異なっていてもよく、Zは水素又はハロゲンを表し、全てのZは同一であってもよく、異なっていてもよく、aは0~3の整数を表し、bは2以上の整数を表し、cは1以上の整数を表す。]
式(β1)の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、ジヘキシルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムクロライド;メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、ヘキシルアルミニウムジクロライド等のアルキルアルミニウムジクロライド;ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジヘキシルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。これらの中でも、好ましくはトリアルキルアルミニウムが挙げられ、より好ましくはトリエチルアルミニウム又はトリイソブチルアルミニウムが挙げられる。
式(β2)、式(β3)における、E、Eの具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基等のアルキル基が挙げられる。これらの中でも、好ましくはメチル基又はイソブチル基が挙げられる。bは2以上の整数であり、好ましくは2~40の整数である。cは1以上の整数であり、好ましくは1~40の整数である。
上記のアルミノキサンは各種の方法で作られる。その方法については特に限定されず、公知の方法に準じて作ればよい。例えば、トリアルキルアルミニウム、例えば、トリメチルアルミニウム等を適当な有機溶剤、例えば、ベンゼン、脂肪族炭化水素などに溶かした溶液を水と接触させて作る方法、トリアルキルアルミニウム、例えば、トリメチルアルミニウム等を、結晶水を含んでいる金属塩、例えば、硫酸銅水和物等に接触させて作る方法が例示できる。
ホウ素化合物(γ)としては、式(γ1)、式(γ2)又は式(γ3)で表されるホウ素化合物のいずれかを用いることができる。
式(γ1)において、Bは3価の原子価状態のホウ素原子を表し、Q~Qは、互いに独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1~20の置換シリル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数2~20の2置換アミノ基を表し、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Q~Qは、互いに独立に、好ましくはハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、又は、炭素数1~20のハロゲン化炭化水素基である。
式(γ1)で表されるホウ素化合物の具体例としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4-トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等が挙げられ、好ましくはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが挙げられる。
式(γ2)において、Bは3価の原子価状態のホウ素原子を表し、Q~Qは上記の式(γ1)におけるQ~Qと同様である。また、Jは無機又は有機のカチオンを表す。
における無機のカチオンとしては、フェロセニウムカチオン、アルキル置換フェロセニウムカチオン、銀陽イオン等が挙げられる。
における有機のカチオンとしては、トリフェニルメチルカチオン等が挙げられる。
(BQとしては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(2,2,4-トリフルオロフェニル)ボレートアニオン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートアニオン等が挙げられる。
これらの具体的な組合せとしては、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’-ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート等が挙げられ、好ましくはトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
式(γ3)において、Bは3価の原子価状態のホウ素を表し、Q~Qは上記の式(γ1)におけるQ~Qと同様である。また、Lは中性ルイス塩基を表し、(L-H)はブレンステッド酸を表す。
式(γ3)において、ブレンステッド酸である(L-H)としては、トリアルキル置換アンモニウムカチオン、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオン、ジアルキルアンモニウムカチオン、トリアリ-ルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
(BQとしては、前述と同様のものが挙げられる。
これらの具体的な組合せとしては、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジ-iso-プロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。これらの中でも、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートであることが好ましい。
助触媒としては、有機アルミニウム化合物(β)及び化合物(γ)を併用することが好ましい。
式(IV)で表される遷移金属錯体(α)、有機アルミニウム化合物(β)及び/又は化合物(γ)は、重合時に任意の順序で投入し使用することができるが、それらの任意の化合物の組合せを予め接触させて得られた反応物を用いてもよい。
助触媒/遷移金属錯体(α)のモル比は、好ましくは0.01~10,000、より好ましくは0.5~2,000である。触媒成分を溶液状態で使用する場合、遷移金属錯体(α)の濃度は、好ましくは0.0001~5mmol/L、より好ましくは0.001~1mmol/Lである。触媒成分の使用量は、使用される全モノマーの合計量に対して、好ましくは0.00001~1mol%、より好ましくは0.0001~0.1mol%である。
本発明の一実施形態に係るポリマー(B)の重合法としては、特に限定されず、例えば、バッチ式又は連続式の気相重合法、塊状重合法、適当な溶媒を使用しての溶液重合法あるいはスラリー重合法等、任意の方法を採用することができる。
溶媒を使用する場合、触媒を失活させないという条件の各種の溶媒が使用可能であり、このような溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、二塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙げられる。
また、溶媒を使用する場合、重合中の系内のエチレン分圧は、例えば50~400kPa、好ましくは50~300kPaであり、水素分圧は好ましくは0~100kPaである。なお、系内にエチレン及び水素を投入する場合、水素分圧での加圧を実施した後、エチレン分圧での加圧を実施することが好ましい。また、式(I)で表されるシクロオレフィンの溶液を重合反応槽に投入した後、さらにトルエンを投入してもよい。
重合温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは50~150℃、さらに好ましくは50~100℃である。なお、重合体の分子量を調節するために水素等の連鎖移動剤を添加することもできる。
<樹脂(A)>
樹脂(A)はポリマー(B)とは異なるポリマーである。樹脂(A)がシクロオレフィン系樹脂である場合は、ポリマー(B)とは異なる種類、例えば樹脂を構成する単量体単位の種類やその含有量等が異なるシクロオレフィン系樹脂であればよい。
樹脂(A)としては、特に限定されず、例えばジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、アニリン樹脂、アセトン-ホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、マレイミド系樹脂、マレイミド-シアン酸エステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、及びポリカルボジイミド樹脂から選択される熱硬化性樹脂;オレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;スチレン系樹脂;ゴム系樹脂;フッ素系樹脂;ビニル系樹脂;汎用エンジニアリングプラスチック;液晶ポリマー、芳香族ポリエーテル系樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチック;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などのポリイミド系樹脂;並びに生分解性プラスチックなどが挙げられる。これらの中でも、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、ポリイミド系樹脂、液晶ポリマー、フッ素系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、及びマレイミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂であることが好ましく、ポリイミド系樹脂及び/又は液晶ポリマーであることがより好ましく、ポリイミド系樹脂であることがさらに好ましい。樹脂(A)は単独又は二種以上組合せて使用できる。
樹脂(A)のTgは、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上、さらにより好ましくは220℃以上、特に好ましくは300℃以上、特により好ましくは350℃以上であり、好ましくは550℃以下である。樹脂(A)のTgが上記の下限以上であると、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。樹脂(A)のTgが上記の上限以下であると、機械的特性を高めやすい。樹脂(A)のTgは、例えば動的粘弾性測定(以下、DMA測定と略すことがある)を行うことで求められ、実施例に記載の方法により測定できる。
樹脂(A)のMwは、ポリスチレン換算で、好ましくは50,000以上、より好ましくは100,000以上、より好ましくは150,000以上、さらに好ましくは200,000以上、さらにより好ましくは250,000以上、特に好ましくは300,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下、さらに好ましくは700,000以下、さらにより好ましくは500,000以下、とりわけ好ましくは450,000以下である。樹脂(A)のMwが上記の下限以上であると、得られるフィルムの耐吸湿性、耐熱性及び機械的特性を向上しやすい。樹脂(A)のMwが上記の上限以下であると成形性を高めやすい。なお、樹脂(A)のMwは、例えばGPC測定を行い、標準ポリスチレン換算によって求めることができ、例えば実施例に記載の方法により求められる。
樹脂(A)として好適なポリイミド系樹脂は、イミド基を含む繰返し構造単位を含有する樹脂(以下、ポリイミド樹脂ということがある)、及びイミド基及びアミド基の両方を含む繰り返し構造単位を含有する樹脂(以下、ポリアミドイミド樹脂ということがある)、並びにイミド化によりポリイミド系樹脂を製造する前の前駆体を含む意味である。該ポリイミド樹脂を製造する前の前駆体はポリアミック酸である。なお、本明細書において、「繰り返し構造単位」を「構成単位」ということがある。また、「由来の構成単位」を単に「単位」ということがあり、例えば化合物由来の構成単位を化合物単位などということがある。
本発明の好適な実施形態において、樹脂(A)は、式(1):
Figure 2023001899000009
[式(1)中、Xは2価の有機基を表し、Yは4価の有機基を表し、*は結合手を表す]
で表される構成単位を有するポリイミド系樹脂であることが好ましい。このようなポリイミド系樹脂であると、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
式(1)中のXは、互いに独立に2価の有機基を表し、好ましくは炭素数2~100の2価の有機基を表す。2価の有機基としては、例えば2価の芳香族基、2価の脂肪族基等が挙げられ、2価の脂肪族基としては、例えば2価の非環式脂肪族基又は2価の環式脂肪族基が挙げられる。これらの中でも、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい観点、並びに、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、2価の環式脂肪族基及び2価の芳香族基が好ましく、2価の芳香族基がより好ましい。2価の有機基は、有機基中の水素原子がハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基又はハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、これらの基の炭素数は好ましくは1~8である。なお、本明細書において、2価の芳香族基は芳香族基を有する2価の有機基であり、その構造の一部に脂肪族基又はその他の置換基を含んでいてもよい。また、2価の脂肪族基は脂肪族基を有する2価の有機基であり、その構造の一部にその他の置換基を含んでいてもよいが、芳香族基は含まない。
ポリイミド系樹脂は、複数種のXを含み得、複数種のXは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。式(1)中のXとしては、例えば式(2)~式(8)で表される基(構造);式(5)~式(8)で表される基中の水素原子がメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基などが挙げられる。
Figure 2023001899000010
[式(2)及び式(3)中、R及びRは、互いに独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基を表し、R及びRに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、Wは、互いに独立に、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-COO-、-OOC-、-SO-、-S-、-CO-又は-N(R)-を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の一価の炭化水素基を表し、nは0~4の整数であり、tは0~4の整数であり、uは0~4の整数であり、*は結合手を表す。
式(4)中、環Aは炭素数3~8のシクロアルカンを表し、Rは炭素数1~20のアルキル基を表し、rは0以上であって(環Aの炭素数-2)以下の整数を表し、S1及びS2は、互いに独立に、0~20の整数を表し、*は結合手を表す。]
式(1)中のXの他の例としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、1,12-ドデカンジイル基、2-メチル-1,2-プロパンジイル基、2-メチル-1,3-プロパンジイル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基などの2価の非環式脂肪族基が挙げられる。2価の非環式脂肪族基中の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、炭素原子はヘテロ原子、例えば酸素原子、窒素原子等で置換されていてもよい。
これらの中でも、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい観点、並びに、得られるフィルムの高い耐吸湿性及び耐熱性を達成しやすい観点から、本発明におけるポリイミド系樹脂は、式(1)中のXとして、式(2)で表される構造及び/又は式(3)で表される構造を含むことが好ましく、式(2)で表される構造を含むことがより好ましい。
式(2)及び式(3)において、各ベンゼン環又はシクロヘキサン環の結合手は、-W-を基準に、それぞれ、オルト位、メタ位又はパラ位、もしくはα位、β位又はγ位のいずれに結合していてもよく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、好ましくはメタ位又はパラ位、もしくはβ位又はγ位、より好ましくはパラ位、もしくはγ位に結合することができる。R及びRは、互いに独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基を表す。炭素数1~6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基及びビフェニル基等が挙げられる。R及びRに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらの中でも、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、R及びRは、互いに独立に、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のフッ化アルキル基であることが好ましく、炭素数1~3のアルキル基又は炭素数1~3のフッ化アルキル基であることがより好ましく、メチル基又はトリフルオロメチル基であることがさらに好ましい。
式(2)及び式(3)において、t及びuは、互いに独立に、0~4の整数であり、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1である。
式(2)及び式(3)において、Wは、互いに独立に、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-COO-、-OOC-、-SO-、-S-、-CO-又は-N(R)-を表し、得られるフィルムの耐吸湿性、耐熱性及び機械的特性、特に屈曲耐性を向上しやすい観点から、好ましくは単結合、-O-、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-COO-、-OOC-又は-CO-を表し、より好ましくは単結合、-O-、-CH-、-C(CH-又は-C(CF-を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の一価の炭化水素基を表す。炭素数1~12の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル、n-ヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基及びn-デシル基等が挙げられ、これらはハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、上記と同様のものが挙げられる。
式(2)及び式(3)において、nは、0~4の整数であり、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、好ましくは0~3の整数、より好ましくは1又は2である。nが2以上の場合、複数のW、R、及びtは互いに同一であってもよく、異なっていてもよく、-W-を基準とした各ベンゼン環の結合手の位置も同一であってもよく、異なっていてもよい。
本発明におけるポリイミド系樹脂が、式(1)中のXとして、式(2)で表される構造と式(3)で表される構造の両方を含む場合、式(2)におけるW、n、R、R、t及びuは、互いに独立に、式(3)におけるW、n、R、R、t及びuと同一であってもよく、異なっていてもよい。
式(4)において、環Aは炭素数3~8のシクロアルカンを表す。シクロアルカンとしては、例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンが挙げられ、好ましくは炭素数4~6のシクロアルカンが挙げられる。環Aにおいて、各結合手は、互いに隣接していてもよいし、隣接していなくてもよい。例えば、環Aがシクロヘキサンである場合、2つの結合手はα位、β位又はγ位の位置関係にあってもよく、好ましくはβ位又はγ位の位置関係にあってもよい。
式(4)中のRは炭素数1~20のアルキル基を表す。炭素数1~20のアルキル基としては、R~R18における炭素数1~20の炭化水素基として上記に例示のものが挙げられ、好ましくは炭素数1~10のアルキル基を表す。式(4)中のrは0以上であって(環Aの炭素数-2)以下の整数を表す。rは0以上であり、好ましくは4以下である。式(4)中のS1及びS2は、互いに独立に、0~20の整数を表す。S1及びS2は、互いに独立に、好ましくは0以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは15以下である。
式(2)~式(4)で表される構造の具体例としては、式(4’)及び式(9)~式(30)で表される構造が挙げられる。なお、これらの式中、*は結合手を表す。
Figure 2023001899000011
本発明の好適な実施形態において、式(1)中のXとして、式(2)及び/又は式(3)で表される構造を含む場合、式(1)中のXが式(2)及び/又は式(3)で表される構成単位の割合は、式(1)で表される構成単位の総モル量に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、好ましくは100モル%以下である。式(1)中のXが式(2)及び/又は式(3)で表される構成単位の割合が上記の範囲であると、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。式(1)中のYが式(2)及び/又は式(3)で表される構成単位の割合は、例えばH-NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
式(1)において、Yは、互いに独立に4価の有機基を表し、好ましくは炭素数4~40の4価の有機基を表し、より好ましくは環状構造を有する炭素数4~40の4価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。前記有機基は、有機基中の水素原子がハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基又はハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、これらの基の炭素数は好ましくは1~8である。本発明におけるポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。Yとしては、式(31)~式(38)で表される基(構造);式(34)~式(38)で表される基中の水素原子がメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;4価の炭素数1~8の鎖式炭化水素基などが挙げられる。
Figure 2023001899000012
[式(31)~式(33)中、R19~R26は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を表し、R19~R26に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
及びVは、互いに独立に、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-COO-、-OOC-、-SO-、-S-、-CO-、-N(R)-、式(a)又は式(b)
Figure 2023001899000013
(式(a)中、R27~R30は、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、Zは単結合、-C(CH-又は-C(CF-を表し、iは1~3の整数であり、*は結合手を表す)
を表し、Rは、水素原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の一価の炭化水素基を表し、e及びdは、互いに独立に、0~3の整数を表し(但し、e+dは0ではない)、fは1~3の整数を表し、g及びhは、互いに独立に、0~4の整数を表し、*は結合手を表す]
これらの中でも、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、本発明におけるポリイミド系樹脂は、式(1)中のYとして、式(31)で表される構造、式(32)で表される構造又は式(33)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つの構造を含むことが好ましく、式(31)で表される構造を含むことがより好ましい。
式(31)~式(33)において、R19~R26は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を表す。炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基及び炭素数6~12のアリール基としてはそれぞれ、式(2)及び式(3)における炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基及び炭素数6~12のアリール基として上記に例示のものが挙げられる。R19~R26に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、ハロゲン原子としては上記に例示のものが挙げられる。これらの中でも、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、R19~R26は、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
式(31)において、V及びVは、互いに独立に、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-COO-、-OOC-、-SO-、-S-、-CO-、-N(R)-、式(a)又は式(b)を表し、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、好ましくは単結合、-O-、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-COO-、-OOC-又は-CO-を表し、より好ましくは単結合、-COO-、-O-、-C(CH-又は-C(CF-を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の一価の炭化水素基を表す。炭素数1~12の一価の炭化水素基としては、上記に例示のものが挙げられる。
式(31)において、e及びdは、互いに独立に、0~3の整数を表し、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、好ましくは0又は1であり、より好ましくはe+d=1であってもよく、e及びdは好ましくは3であってもよい。なお、式(31)中のeが0のときは、式(31)は-V-を有していない(2つのベンゼン環は-V-で結合していない)ことを示し、dが0のときは、式(31)は-V-を有していない(2つのベンゼン環は-V-で結合していない)ことを示す。
式(32)において、fは1~3の整数を表し、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。なお、fが2のときは、ナフタレン環にR23及びR24が結合した構造を示し、fが3のときは、アントラセン環にR23及びR24が結合した構造を示す。
式(33)において、g及びhは、互いに独立に、0~4の整数を表し、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は1であり、さらに好ましくはg+h=0~2の整数である。
式(a)において、R27~R30は、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。炭素数1~6のアルキル基としては、式(2)及び(3)における炭素数1~6のアルキル基として上記に例示のものが挙げられる。これらの中でも、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、R27~R30は、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましく、水素原子がさらにより好ましい。
式(a)において、Zは単結合、-C(CH-又は-C(CF-を表す。Zがこのような構造であると、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。iは1~3の整数を表し、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、好ましくは1又は2である。iが2以上の場合、複数のZ及びR27~R30は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
式(31)~式(33)で表される構造の具体例としては、式(39)~式(51)で表される構造が挙げられる。なお、これらの式中、*は結合手を表す。
Figure 2023001899000014
本発明の一実施形態において、式(1)中のYとして、式(31)~式(33)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つを含む場合、式(1)中のYが式(31)~式(33)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つで表される構成単位の割合は、式(1)で表される構成単位の総モル量に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、好ましくは100モル%以下である。式(1)中のYが式(31)~式(33)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つで表される構成単位の割合が上記の範囲であると、組成物中及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。式(1)中のYが式(31)~式(33)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1つで表される構成単位の割合は、例えばH-NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明におけるポリイミド系樹脂は、式(1)で表される構成単位の他に、式(52)で表される構成単位、式(53)で表される構成単位、及び式(54)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
Figure 2023001899000015
[式(52)及び式(53)中、Yは4価の有機基を表し、
は3価の有機基を表し、
及びXは、互いに独立に、2価の有機基を表し、
*は結合手を表す。
式(54)中、G及びXは、互いに独立に、2価の有機基を表し、
*は結合手を表す。]
本発明の好適な実施形態では、式(52)及び式(53)において、Yは式(1)におけるYと同義であり、X及びXは、式(1)におけるXと同義である。式(53)におけるYは式(1)におけるYの結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基であることが好ましい。Yとしては、式(31)~式(38)で表される基(構造)の結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基;3価の炭素数1~8の鎖式炭化水素基などが挙げられる。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のY又はYを含み得、複数種のY又はYは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
式(54)において、Gは、互いに独立に、2価の有機基であり、好ましくは炭素数1~8の炭化水素基又はフッ素置換された炭素数1~8の炭化水素基で置換されていてもよい、炭素数2~100の2価の有機基であり、より好ましくは炭素数1~8の炭化水素基又はフッ素置換された炭素数1~8の炭化水素基で置換されていてもよい、環状構造を有する炭素数2~100の2価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。Gの有機基としては、例えば式(31)~式(38)で表される基の結合手のうち、隣接しない2つが水素原子に置き換わった基及び炭素数6以下の2価の鎖式炭化水素基が挙げられ、好ましくは式(39)~式(51)で表される基の結合手のうち、隣接しない2つが水素原子に置き換わった基などが挙げられる。
式(54)中のXは式(1)におけるXと同義であり、ポリイミド系樹脂が式(1)で表される構成単位と式(54)で表される構成単位とを含む場合、各構成単位におけるXは同一であってもよく、異なっていてもよい。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のX又はGを含み得、複数種のX又はGは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、式(1)で表される構成単位、並びに、場合により式(52)で表される構成単位、式(53)で表される構成単位及び式(54)で表される構成単位から選択される少なくとも1つの構成単位からなる。また、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、上記ポリイミド系樹脂において、式(1)で表される構成単位の割合は、ポリイミド系樹脂に含まれる全構成単位、例えば式(1)で表される構成単位、並びに、場合により式(52)で表される構成単位、式(53)で表される構成単位及び式(54)で表される構成単位から選択される少なくとも1つの構成単位の総モル量に基づいて、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。なお、ポリイミド系樹脂において、式(1)で表される構成単位の割合の上限は100モル%以下である。なお、上記割合は、例えば、H-NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。また、本発明におけるポリイミド系樹脂は、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、好ましくはポリイミド樹脂である。
本発明の一実施形態において、本発明におけるポリイミド系樹脂は、例えば上記の含ハロゲン原子置換基等によって導入することができる、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子を含有していてもよい。ポリイミド系樹脂がハロゲン原子、好ましくはフッ素原子を含有する場合、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすいことに加え、光学特性を向上しやすい。ポリイミド系樹脂にフッ素原子を含有させるために好ましい含フッ素置換基としては、例えばフルオロ基及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
ポリイミド系樹脂がハロゲン原子を含有する場合、ポリイミド系樹脂におけるハロゲン原子の含有量は、ポリイミド系樹脂の質量を基準として、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは1~35質量%、さらに好ましくは5~30質量%である。ハロゲン原子の含有量が上記の下限以上であると、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。ハロゲン原子の含有量が上記の上限以下であると、フィルムのCTEを低減でき、また合成がしやすくなる。
ポリイミド系樹脂のイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上であり、通常100%以下である。フィルムの誘電特性、光学特性、耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、イミド化率が上記の下限以上であることが好ましい。イミド化率は、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値に対する、ポリイミド系樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。なお、ポリイミド系樹脂がトリカルボン酸化合物を含む場合には、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値と、トリカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量との合計に対する、ポリイミド系樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。また、イミド化率は、IR法、NMR法などにより求めることができる。
本発明におけるポリイミド系樹脂は、上記の通り、ポリイミド系樹脂をイミド化する前の前駆体を包含する。ポリイミド系樹脂がポリアミック酸の場合、ポリアミック酸は式(1’):
Figure 2023001899000016
[式(1’)中、Y及びXはそれぞれ、式(1)におけるY及びXを表す]
で表される構成単位を含む。
本発明の一実施形態において、本発明の組成物に含まれる樹脂(A)の含有量は、樹脂(A)とポリマー(B)との合計質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは93質量%以下、さらにより好ましくは90質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。樹脂(A)の含有量が上記下限以上であると、膜形成が容易となるため、フィルム製造の観点から有利である。樹脂(A)の含有量が上記上限以下であると、組成物中のポリマー(B)の分散性が向上しやすいため、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、組成物に含まれる樹脂(A)及びポリマー(B)の合計質量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらにより好ましくは25質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。組成物に含まれる樹脂(A)及びポリマー(B)の合計質量が上記の範囲であると、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)に吸着しやすいことから、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
<樹脂(A)の製造方法>
樹脂(A)は、市販品を用いてもよく、慣用の方法により製造してもよい。本発明の一実施形態では、前記樹脂(A)はポリイミド系樹脂であることが好ましい。ポリイミド系樹脂の製造方法は特に限定されないが、例えば、ポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物とテトラカルボン酸化合物とを反応させてポリアミック酸を得る工程、及び該ポリアミック酸をイミド化する工程を含む方法により製造できる。また、樹脂(A)がポリアミック酸である場合、ポリアミック酸を得る工程を実施すればよい。なお、テトラカルボン酸化合物の他に、ジカルボン酸化合物、トリカルボン酸化合物を反応させてもよい。
ポリイミド系樹脂の合成に用いられるテトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物;及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。テトラカルボン酸化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。テトラカルボン酸化合物は、二無水物の他、酸クロリド化合物等のテトラカルボン酸化合物類縁体であってもよい。
テトラカルボン酸化合物の具体例としては、無水ピロメリット酸(以下、PMDAと略すことがある)、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物(以下、BPADAと略すことがある)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと略すことがある)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(以下、6FDAと略すことがある)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(以下、ODPAと略すことがある)、2,2’,3,3’-、2,3,3’,4’-又は3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3”,4,4”-、2,3,3”,4”-又は2,2”,3,3”-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(以下、HPMDAと略すことがある)、2,3,5,6-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(以下、CBDAと略すことがある)、ノルボルナン-2-スピロ-α’-スピロ-2”-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)(TAHQと略すことがある)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物などが挙げられる。これらの中でも、得られるフィルムの耐吸湿性、耐熱性、誘電特性及び機械的特性を向上しやすい観点から、PMDA、BPDA、6FDA、BPADA、ODPA、HPMDA、CBDA、TAHQが好ましい。これらのテトラカルボン酸化合物は単独又は二種以上組合せて使用できる。
ポリイミド系樹脂の合成に用いられるジアミン化合物としては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン及びこれらの混合物が挙げられる。なお、本実施形態において「芳香族ジアミン」とは、芳香環を有するジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基又はその他の置換基を含んでいてもよい。この芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環及びフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環である。また「脂肪族ジアミン」とは、脂肪族基を有するジアミンを表し、その構造の一部にその他の置換基を含んでいてもよいが、芳香環は有しない。
ジアミン化合物の具体例としては、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル(以下、m-TBと記載することがある)、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(以下、TFMBと記載することがある)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、1,3-APBと略すことがある)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、1,4-APBと略すことがある)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、BAPPと記載することがある)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、4,4’-メチレンジアニリン、3,3’-メチレンジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4”-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3”-ジアミノ-p-テルフェニル、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン(p-PDAと略すことがある)、レゾルシノール-ビス(3-アミノフェニル)エーテル、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-tert-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-tert-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ピペラジン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4”-ジアミノ-p-ターフェニル、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,5-ジ-tert-ブチルベンゼン、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、2,4-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、2,6-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-(ヘキサフルオロプロピリデン)ジアニリン、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキンサン、1,2-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、2-メチル-1,2-ジアミノプロパン、2-メチル-1,3-ジアミノプロパン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、2’-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ビス[4,4’-(4-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、ビス[4,4’-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジンなどが挙げられる。これらの中でも、ポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい観点から、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、TFMB、4,4’-メチレンジアニリン、3,3’-メチレンジアニリン、p-PDA、BAPP、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビシクロヘキサン、m-TB、4,4”-ジアミノ-p-ターフェニル、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,5-ジ-tert-ブチルベンゼン、1,3-APB、1,4-APB、レゾルシノール-ビス(3-アミノフェニル)エーテル、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、2,4-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、2,6-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-(ヘキサフルオロプロピリデン)ジアニリンなどが好ましい。ジアミン化合物は単独又は二種以上組合せて使用できる。
なお、上記ポリイミド系樹脂は、フィルムの各種物性を損なわない範囲で、上記の樹脂合成に用いられるテトラカルボン酸化合物に加えて、他のテトラカルボン酸、ジカルボン酸及びトリカルボン酸並びにそれらの無水物及び誘導体をさらに反応させたものであってもよい。
他のテトラカルボン酸としては、上記テトラカルボン酸化合物の無水物の水付加体が挙げられる。
ジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、単独又は2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、テレフタル酸;イソフタル酸;ナフタレンジカルボン酸;4,4’-ビフェニルジカルボン酸;3,3’-ビフェニルジカルボン酸;炭素数8以下である鎖式炭化水素、のジカルボン酸化合物及び2つの安息香酸が単結合、-O-、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-又はフェニレン基で連結された化合物並びに、それらの酸クロリド化合物が挙げられる。
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、単独又は2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸の無水物;2,3,6-ナフタレントリカルボン酸-2,3-無水物;フタル酸無水物と安息香酸とが単結合、-O-、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-又はフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。
ポリイミド系樹脂の製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物及びトリカルボン酸化合物の使用量は、所望とする樹脂の各構成単位の比率に応じて適宜選択できる。
本発明の好適な実施形態においては、ジアミン化合物の使用量は、テトラカルボン酸化合物1molに対して、好ましくは0.94mol以上、より好ましくは0.96mol以上、さらに好ましくは0.98mol以上、特に好ましくは0.99mol以上であり、好ましくは1.20mol以下、より好ましくは1.10mol以下、さらに好ましくは1.05mol以下、特に好ましくは1.02mol以下である。テトラカルボン酸化合物に対するジアミン化合物の使用量が上記の範囲であると、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
ジアミン化合物とテトラカルボン酸化合物との反応温度は、特に限定されず、例えば5~200℃であってもよく、反応時間も特に限定されず、例えば0.5~72時間程度であってもよい。本発明の好適な実施形態においては、反応温度は、好ましくは5~50℃、より好ましくは10~40℃であり、反応時間は、好ましくは3~24時間である。このような反応温度及び反応時間であると、組成物及びフィルム中のポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
ジアミン化合物とテトラカルボン酸化合物との反応は、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、反応に影響を与えない限り特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン(以下、GBLと記載することがある)、γ-バレロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと記載することがある)、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記載することがある)等のアミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;N-メチルピロリドン等のピロリドン系溶媒;及びそれらの組合せなどが挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、フェノール系溶媒、アミド系溶媒、ピロリドン系溶媒を好適に使用できる。
ジアミン化合物とテトラカルボン酸化合物との反応は、必要に応じて、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性雰囲気又は減圧の条件下において行ってもよく、例えば、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気等の不活性雰囲気下、厳密に制御された脱水溶媒中で撹拌しながら行うことが好ましい。
イミド化工程では、イミド化触媒を用いてイミド化しても、加熱によりイミド化しても、これらを組合せてもよい。イミド化工程で使用するイミド化触媒としては、例えばトリプロピルアミン、ジブチルプロピルアミン、エチルジブチルアミン等の脂肪族アミン;N-エチルピペリジン、N-プロピルピペリジン、N-ブチルピロリジン、N-ブチルピペリジン、及びN-プロピルヘキサヒドロアゼピン等の脂環式アミン(単環式);アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びアザビシクロ[3.2.2]ノナン等の脂環式アミン(多環式);並びにピリジン、2-メチルピリジン(2-ピコリン)、3-メチルピリジン(3-ピコリン)、4-メチルピリジン(4-ピコリン)、2-エチルピリジン、3-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、3,4-シクロペンテノピリジン、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリン、及びイソキノリン等の芳香族アミンが挙げられる。また、イミド化反応を促進しやすい観点から、イミド化触媒とともに、酸無水物を用いることが好ましい。酸無水物は、イミド化反応に用いられる慣用の酸無水物等が挙げられ、その具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸等の芳香族酸無水物などが挙げられる。加熱によるイミド化工程は、ポリアミック酸が溶解した溶媒中で行ってもよく、後述のようにフィルム化した状態で行ってもよい。
本発明の一実施形態では、イミド化する場合、反応温度は、通常20~250℃であり、反応時間は好ましくは0.5~24時間、より好ましくは1~12時間である。
ポリイミド系樹脂は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組合せた分離手段により分離精製して単離してもよく、好ましい態様では、樹脂を含む反応液に、多量のメタノール等のアルコールを加え、樹脂を析出させ、濃縮、濾過、乾燥等を行うことにより単離することができる。
樹脂(A)の好適な液晶ポリマーとしては、液晶性ポリエステルが挙げられ、好ましくは以下の式(a1)、(a2)及び(a3)で表される構造単位を含む液晶ポリエステルが挙げられる。
-O-Ar-CO- (a1)
-CO-Ar-CO- (a2)
-X-Ar-Y- (a3)
[式(a1)~式(a3)中、Arは、1,4-フェニレン基、2,6-ナフチレン基又は4,4’-ビフェニレン基を表し、
Arは、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基又は2,6-ナフチレン基を表し、
Arは、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表し、
Xは-NH-を表し、
Yは、-O-又はNH-を表す。]
前記液晶ポリエステルの全構造単位100モル%に対して、式(a1)で表される構造単位の含有量が30~80モル%、式(a2)で表される構造単位の含有量が10~35モル%、式(a3)で表される構造単位の含有量が10~35モル%である液晶ポリエステルが好ましい。
式(a1)で表される構造単位は、芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位、式(a2)で表される構造単位は、芳香族ジカルボン酸由来の構造単位、式(a3)で表される構造単位は、芳香族ジアミン、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位である。
本実施形態においては、前記Arが2,6-ナフチレン基であり、前記Arが1,3-フェニレン基であり、前記Arが1,4-フェニレン基であり、前記Yが-O-である液晶ポリエステルが好ましい。
式(a1)で表される構造単位としては、p-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸、4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸由来の構造単位などが挙げられる。液晶ポリエステルは、2種以上の前記構造単位を含んでいてもよい。これらのうち、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸由来の構造単位が好ましい。
当該液晶ポリエステルの全構造単位100モル%に対して、式(a1)で表される構造単位の含有量は、好ましくは30モル%以上80モル%以下であり、より好ましくは40モル%以上70モル%以下であり、さらに好ましくは45モル%以上65モル%以下である。
式(a2)で表される構造単位としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位などが挙げられる。液晶ポリエステルは、2種以上の前記構造単位を含んでいてもよい。これらのうち、イソフタル酸由来の構造単位が好ましい。
当該液晶ポリエステルの全構造単位100モル%に対して、式(a2)で表される構造単位の含有量は、好ましくは10モル%以上35モル%以下であり、より好ましくは15モル%以上30モル%以下であり、さらに好ましくは17.5モル%以上27.5モル%以下である。
式(a3)で表される構造単位としては、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、4-アミノ安息香酸由来の構造単位などが挙げられる。液晶ポリエステルは、2種以上の前記構造単位を含んでいてもよい。これらのうち、4-アミノフェノール由来の構造単位が好ましい。
当該液晶ポリエステルの全構造単位100モル%に対して、式(a3)で表される構造単位の含有量は、好ましくは10モル%以上35モル%以下であり、より好ましくは15モル%以上30モル%以下であり、さらに好ましくは17.5モル%以上27.5モル%以下である。
本実施形態で使用される液晶ポリエステルは、例えば、特開2019-163431号公報に記載の方法により製造することができる。
また、本実施形態で使用される液晶ポリエステルは、例えば、特開2022-041945号公報に開示されているように、ポリマー(B)とのHSP値間距離が、通常6.0以上である。そのため、ポリマー(B)と液晶ポリエステルの間に界面ができやすいことから、フェノール系酸化防止剤がポリマー(B)の周りを覆うように吸着しやすく、ポリマー(B)の酸化を防止しやすい。
芳香族ポリエーテル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば芳香族ポリエーテルイミド、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリエーテルスルホン等が挙げられる。
マレイミド系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェニルメタンマレイミド、メタフェニレンビスマレイミド、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,2’-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4-ジフェニルスルホンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、ノボラック型マレイミド化合物、ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物、これらのマレイミド系樹脂のプレポリマー等が挙げられる。
<溶媒>
本発明の組成物は、式(1)を満たす溶媒(第1溶媒)を含む。第1溶媒は、特に制限されず、例えばN,N-ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと記載することがある)、N-N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記載することがある)等のアミド系溶媒;γ-ブチロラクトン(以下、GBLと記載することがある)、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;N-メチルピロリドン等のピロリドン系溶媒;及びそれらの組合せが挙げられる。これらの中でも、アミド系溶媒、ラクトン系溶媒又はピロリドン系溶媒が好ましい。このような溶媒であると、相対的に溶媒とポリマー(B)との親和性が高まって、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)に吸着しやすく、また、ポリマー(B)の凝集を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすいので、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、第1溶媒とポリマー(B)とのHSP値間距離は、好ましくは8.5以上、より好ましくは9.0以上、さらに好ましくは10.0以上、さらにより好ましくは11.0以上である。該HSP値間距離が上記の下限以上であると、相対的にフェノール系酸化防止剤(C)とポリマー(B)との親和性が高まってフェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)に吸着しやすく、また、ポリマー(B)が粒子状の場合、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、第1溶媒とポリマー(B)とのHSP値間距離の上限は、好ましくは30.0以下、より好ましくは25.0以下、さらに好ましくは20.0以下である。該第1溶媒とポリマー(B)とのHSP値間距離が上記の上限以下であると、ポリマー(B)の凝集を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、第1溶媒は、ポリマー(B)が溶解しない溶媒であることが好ましい。このような溶媒であると、界面ができやすいことからフェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)に吸着しやすく、またポリマー(B)の凝集を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。ここで、本明細書では、「溶解する」か「溶解しない」かの評価は、実施例における<溶解性の評価>に記載の方法に従って行うことができる。
本発明の一実施形態において、第1溶媒とポリマー(B)とのHSP値間距離が、ポリマー(B)の相互作用半径よりも大きいことが好ましい。このような関係であると、ポリマー(B)が第1溶媒に溶解されにくいため、ポリマー(B)の凝集を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。なお、本明細書において、相互作用半径とは、ある特定のポリマーを溶解し得る複数の溶媒、すなわち良溶媒のハンセン溶解度パラメータを3次元のHSP空間にプロットすると、各良溶媒のプロットは互いに似たところ、言い換えると、近い位置、すなわち座標に球状に集まる傾向があり、その球、すなわちハンセンの溶解球の半径を指す。相互作用半径が大きい溶質は多くの溶媒に溶けやすく、相互作用半径が小さい溶質は少数の溶媒に溶けやすく、多数の溶媒に溶け難いといえる。未知の特定のポリマーに対しては、各種の溶媒が良溶媒であるか、貧溶媒であるかを、溶解性試験を行って調べ、その結果をHSPiPに入力することにより、当該ポリマーの相互作用半径が算出される。本明細書において、「相互作用半径」は上記に定義した通りであり、上記方法に従って求めることができる。
本発明の一実施形態において、第1溶媒と樹脂(A)とのHSP値間距離は、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下、さらに好ましくは9.5以下、さらにより好ましくは9.0以下、特に好ましくは8.5以下であり、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは1.0以上、さらにより好ましくは3.0以上、特に好ましくは5.0以上である。該HSP値間距離が上記の上限以下であると、第1溶媒と樹脂(A)との親和性が向上し得るため、ポリマー(B)の分散性を高めやすく、また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、第1溶媒は、樹脂(A)が溶解する溶媒であることが好ましい。このような溶媒であると、得られる組成物及びフィルム中にポリマー(B)が分散しやすい。また、該フィルムは海島構造を形成しやすい。
本発明の一実施形態において、第1溶媒と樹脂(A)とのHSP値間距離は、樹脂(A)の相互作用半径よりも小さいことが好ましい。このような関係であると、樹脂(A)が第1溶媒に溶解されやすいため、ポリマー(B)の凝集を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。
本発明の一実施形態において、第1溶媒の含有量は、本発明の組成物の質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。第1溶媒の含有量が上記の範囲であると、界面ができやすいことからフェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)に吸着しやすく、またポリマー(B)の凝集を抑制しやすい。
本発明の一実施形態において、溶媒は第1溶媒に加えて、第2溶媒を含んでいてもよい。溶媒が第1溶媒に加えて、第2溶媒を含むと、粒子径が低減された粒子状のポリマー(B)を含む組成物を調製しやすい。
第2溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、二塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの中でも、炭化水素系溶媒が好ましい。第2溶媒が炭化水素系溶媒を含むと、ポリマー(B)と第2溶媒との溶解性が高まるため、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。第2溶媒は単独又は二種以上を組合せて使用できる。
本発明の一実施形態において、第2溶媒とフェノール系酸化防止剤(C)とのHSP値間距離は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1.0以上、さらにより好ましくは1.5以上である。また、第2溶媒とフェノール系酸化防止剤(C)とのHSP値間距離の上限は、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは5.0以下、さらにより好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。前記HSP値間距離が上記範囲内であると、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)に吸着しやく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、第2溶媒とポリマー(B)とのHSP値間距離が好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。該HSP値間距離が上記の上限以下であると、第2溶媒とポリマー(B)との溶解性が高まるため、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。さらに、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)に吸着しやすいことから、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。HSP値間距離の下限は通常0を超える。
本発明の一実施形態において、第2溶媒はポリマー(B)が溶解する溶媒であることが好ましい。このような溶媒であると、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、第2溶媒とポリマー(B)とのHSP値間距離が、ポリマー(B)の相互作用半径よりも小さいことが好ましい。このような関係であると、ポリマー(B)が第2溶媒に溶解されやすいため、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、第2溶媒と樹脂(A)とのHSP値間距離は、好ましくは4.0以上、より好ましくは5.0以上、さらに好ましくは6.0以上、さらにより好ましくは7.0以上、特に好ましくは8.0以上、特により好ましくは9.0以上である。該HSP値間距離が上記の下限以上であると、樹脂(A)が第2溶媒に溶解されにくいため、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。第2溶媒と樹脂(A)とのHSP値間距離の上限は好ましくは30.0以下、より好ましくは27.0以下、さらに好ましくは25.0以下、さらにより好ましくは23.0以下、特に好ましくは21.0以下である。第2溶媒と樹脂(A)とのHSP値間距離が上記の上限以下であると、ポリマー(B)の凝集を抑制しやすいことから、ポリマー(B)の分散性を高めやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、第2溶媒は、樹脂(A)が溶解しない溶媒であることが好ましい。このような溶媒であると、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。さらに、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)に吸着しやすいことから、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、第2溶媒と樹脂(A)とのHSP値間距離が、樹脂(A)の相互作用半径よりも大きいことが好ましい。このような関係であると、(A)が第2溶媒に溶解されにくいため、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。さらに、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)に吸着しやすいことから、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、ポリマー(B)の第2溶媒に対する溶解度は、ポリマー(B)の第1溶媒に対する溶解度よりも大きいことが好ましい。このような関係であると、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。さらに、フェノール系酸化防止剤(C)がポリマー(B)に吸着しやすいことから、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。なお、ポリマー(B)の溶媒に対する溶解度は、以下の方法で測定できる。サンプル瓶にポリマー(B)1000mgと溶媒3mLとを加え、室温下で2時間撹拌する。次いで、固相と液相とを濾過により分別し、固相を減圧下、80℃で2時間乾燥させた後の質量:X(mg)を測定し、下記式により、溶解度Y(mg/mL)を求めることができる。
Y=(1000-X)/3
なお、例えば本明細書の定義で、ポリマー(B)が、第2溶媒に「溶解する」に相当し、第1溶媒に「溶解しない」に相当する場合、明らかに第2溶媒に対する溶解度の方が大きいため、溶解度を測定しなくてもよい。
本発明の一実施形態において、本発明の組成物に含まれ得る第2溶媒の含有量は、第1溶媒の含有量100質量部に対して、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下、さらにより好ましくは45質量部以下、特に好ましくは40質量部以下、特により好ましくは35質量部以下、特にさらに好ましくは30質量部以下、特にさらにより好ましくは30質量部未満、極めて好ましくは25質量部以下であり、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上である。第2溶媒の含有量が上記の上限以下であると、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。第2溶媒の含有量が上記の下限以上であると、組成物を調製しやすい。
本発明の一実施形態において、溶媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、第1溶媒と第2溶媒以外の他の溶媒を含んでいてもよい。他の溶媒としては、特に限定されず、慣用の溶媒を使用することができる。
本発明の一実施形態において、本発明の組成物に含まれ得る溶媒の含有量は、該組成物の質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。合計溶媒の含有量が上記の範囲であると、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。さらに、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、第1溶媒と第2溶媒との合計質量は、組成物に含まれ得る第1溶媒、第2溶媒及び他の溶媒の合計質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらにより好ましくは95質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。第1溶媒と第2溶媒との合計質量が上記の範囲であると、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。さらに、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、二次酸化防止剤をさらに含むことが好ましい。一次酸化防止剤であるフェノール系酸化防止剤(C)に加えて二次酸化防止剤を含むことにより、ポリマー(B)の酸化を抑制しやすく、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。二次酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤等が挙げられ、これらの二次酸化防止剤は単独又は二種以上を組合せて使用できる。
本発明の一実施形態において、リン系酸化防止剤としては、例えばトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ジフェニレンジホスホナイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)フルオロホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)メチルホスファイト、2-(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)-5-エチル-5-ブチル-1,3,2-オキサホスホリナン、2,2’,2”-ニトリロ[トリエチル-トリス(3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ホスファイト]等が挙げられる。これらのリン系酸化防止剤は単独又は二種以上を組合せて使用できる。
本発明の一実施形態において、硫黄系酸化防止剤としては、例えばジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、トリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ネオペンタンテトライルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられる。これらの硫黄系酸化防止剤は単独又は二種以上を組合せて使用できる。
本発明の一実施形態において、本発明の組成物に含まれ得る二次酸化防止剤の含有量は、ポリマー(B)100質量部に対して、好ましくは0.002質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.04質量部以上、さらにより好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは1質量部以上である。二次酸化防止剤の含有量が上記下限以上であると、ポリマー(B)の酸化を十分に抑制しやすいため、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。二次酸化防止剤の含有量は、ポリマー(B)100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、さらにより好ましくは7質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。二次酸化防止剤の含有量が上記上限以下であると、フィルムの誘電特性を高めやすい。
本発明の一実施形態において、本発明の組成物に含まれ得る二次酸化防止剤の含有量は、フェノール系酸化防止剤(C)100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは30質量部以上である。二次酸化防止剤の含有量が上記下限以上であると、ポリマー(B)の酸化を十分に抑制しやすいため、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。二次酸化防止剤の含有量は、フェノール系酸化防止剤100質量部に対して、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは700質量部以下、さらに好ましくは600質量部以下、さらにより好ましくは500質量部以下、特に好ましくは200質量部以下、特により好ましくは150質量部以下、特にさらに好ましくは100質量部以下である。二次酸化防止剤の含有量が上記上限以下であると、フィルムの誘電特性を高めやすい。
本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、難燃剤、架橋剤、界面活性剤、相溶化剤、イミド化触媒、耐候剤、滑剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、無滴剤、顔料、フィラーなどが挙げられる。添加剤は単独又は二種以上を組合せて使用できる。本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、相溶化剤を含んでいなくても、ポリマー(B)の凝集体の形成を有効に抑制し、ポリマー(B)が高い分散性を示すため、高い耐吸湿性及び耐熱性を示すフィルムを形成できる。そのため、本発明における組成物において、相溶化剤の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下、さらにより好ましくは0.1質量部未満、特に好ましくは0.05質量部以下、特により好ましくは0.01質量部以下、特にさらに好ましくは0.001質量部以下であり、特にさらにより好ましくは0質量部であってもよい。また、例えば樹脂(A)がポリアミック酸のようなポリイミド系樹脂前駆体であり、フィルム製造時に熱イミド化が必要な場合には、相溶化剤によるイミド化の阻害や、加熱による相溶化剤の変質によるフィルムの特性悪化を防ぐ観点から、相溶化剤の含有量は、上記範囲の中でも、0.1質量部未満であることが好ましい。該相溶化剤の上記含有量は、樹脂(A)100質量部に代えて、樹脂(A)とポリマー(B)との合計100質量部を基準とした含有量としてもよい。
本発明の組成物は、樹脂(A)、シクロオレフィン系ポリマー(B)、フェノール系酸化防止剤(C)及び溶媒を含み、フェノール系酸化防止剤(C)が式(P)で表される置換基Pを含み、式(1)を満たすため、得られるフィルムを高温環境下に曝露しても、フィルム中のシクロオレフィン系ポリマー(B)の酸化による劣化を有効に抑制でき、優れた耐熱性を有することができる。さらに本発明の組成物は、製膜時において、ポリマー(B)の酸化により極性基が生成することを抑制でき、得られるフィルム中で極性基に起因する吸湿を抑制できるため、優れた耐吸湿性を有することもできる。したがって、本発明の組成物は、優れた耐熱性と優れた耐吸湿性とを両立できる。なお、耐湿性等の低下は、表面に付着している付着物(例えば界面活性剤などの分散剤や保護材)の変質によっても生じ得るが、特定のフェノール系酸化防止剤により該付着物の変質も抑制できると考えられる。
本発明の一実施態様では、本発明は、本発明の組成物から形成されるフィルムを含む。該フィルムは、後述の〔フィルム〕の項に記載の本発明のフィルムの吸湿率及びポリマー(B)のIRピーク維持率と同様の範囲の吸湿率及びIRピーク維持率を示す。
〔組成物の製造方法〕
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、樹脂(A)、ポリマー(B)、フェノール系酸化防止剤(C)及び溶媒(第1溶媒)、並びに任意に第2溶媒、二次酸化防止剤、及び添加剤等を混合することによって調製又は製造してもよいが、ポリマー(B)が粒子状である本発明の好適な一実施形態では、以下の工程:
粒子状ポリマー(B)を含む分散液(以下、粒子状ポリマー(B)分散液ということがある)を調製する工程(I);及び
該粒子状ポリマー(B)分散液に樹脂(A)を添加する工程(II)
を含み、前記工程(I)及び/又は前記工程(II)において、フェノール系酸化防止剤(C)を添加する方法により製造することが好ましい。このような製造方法を用いると、ポリマー(B)の粒子の凝集を抑制し得るため、ポリマー(B)の分散性を向上しやすい。また、耐吸湿性及び耐熱性に優れたフィルムが得られやすい。
<工程(I)>
工程(I)は、粒子状ポリマー(B)を含む分散液を調製する工程である。
本発明の一実施形態において、工程(I)は、例えば以下の工程:
ポリマー(B)を第2溶媒に溶解させてポリマー(B)溶液を得る工程(1);及び
該ポリマー(B)溶液を第1溶媒に接触させた後、第2溶媒を留去して、粒子状ポリマー(B)分散液を得る工程(2)
を含む方法により、粒子状ポリマー(B)分散液を調製する工程であることが好ましい。このような工程を含むと、ポリマー(B)の粒子の凝集を抑制し得るため、ポリマー(B)の分散性を向上しやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
工程(1)は、ポリマー(B)を第2溶媒に溶解させてポリマー(B)溶液を得る工程である。
工程(1)において、第2溶媒に溶解させるポリマー(B)の形態は特に限定されず、例えば粒子状、繊維状、シート状、ペレット状などであってもよい。
ポリマー(B)溶液は、該溶液の質量に対して、好ましくは0.01~20質量%のポリマー(B)を含む。ポリマー(B)溶液中のポリマー(B)の含有量は、該溶液の質量に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、さらにより好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。該溶液中のポリマー(B)の含有量が上記の下限以上であると、組成物を調製しやすい。また該溶液中のポリマー(B)の含有量が上記の上限以下であると、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
ポリマー(B)を第2溶媒に溶解させる方法は、特に限定されないが、例えばポリマー(B)に対して第2溶媒を加えてもよいし、第2溶媒に対してポリマー(B)を加えてもよいし、その両方であってもよい。また、ポリマー(B)に対する第2溶媒の溶解度に応じて、加熱等により溶解させてもよい。
工程(2)は、ポリマー(B)溶液を第1溶媒に接触させた後、第2溶媒を留去して、粒子状ポリマー(B)を含む分散液を得る工程である。
工程(2)において、ポリマー(B)溶液を第1溶媒と接触させる方法は、特に限定されないが、例えばポリマー(B)溶液と第1溶媒とを混合する方法が挙げられる。具体的には、第1溶媒に対して、ポリマー(B)溶液を添加する方法、ポリマー(B)溶液に対して、第1溶媒を添加する方法が例示できる。このように接触させることにより、第1溶媒と第2溶媒との混合液中に、粒子径が小さい粒子状ポリマー(B)を析出又は分散させることができる。なお、粒子状ポリマー(B)の凝集が生じない範囲であれば、工程(2)中、任意のタイミングで樹脂(A)や他の添加剤を少量添加してもよい。
第1溶媒と接触させるポリマー(B)溶液の使用量は、第1溶媒の使用量1質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上、特に好ましくは0.7質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、特に好ましくは1.5質量部以下である。第1溶媒と接触させるポリマー(B)溶液の使用量が上記の範囲であると、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすく、また、粒子径が低減されやすいことから分散性を高めやすい。
工程(2)において、ポリマー(B)溶液を第1溶媒と接触させた後、第2溶媒を留去する。第2溶媒の留去により、粒子状ポリマー(B)の分散安定性を高めることができる。また、第2溶媒の留去により、ポリマー(B)がさらに析出してもよい。第2溶媒は少なくとも部分的に留去又は除去すればよく、粒子状ポリマー(B)分散液中に第2溶媒が残存していてもよい。ポリマー(B)の凝集を抑制しやすく、かつ分散液を調製しやすい観点から、粒子状ポリマー(B)分散液中に第2溶媒が部分的に残存又は一部含有していることが好ましい。
工程(2)において、第2溶媒を留去する方法としては、特に限定されず、エバポレータ等を用いて減圧留去する方法が例示される。留去時の圧力及び温度については、第2溶媒と第1溶媒の沸点等の特性に応じて適宜選択できる。本発明の好適な製造方法では、第2溶媒と第1溶媒の混合液から第2溶媒を留去するため、通常、第2溶媒の沸点は第1溶媒の沸点よりも低い。このようにして、ポリマー(B)の凝集体を含まず、ポリマー(B)が分散した粒子状ポリマー(B)分散液を得ることができる。
第2溶媒留去後に得られる粒子状ポリマー(B)分散液に含まれる第2溶媒の含有量は、第1溶媒の含有量100質量部に対して、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下、さらにより好ましくは45質量部以下、特に好ましくは40質量部以下、特により好ましくは35質量部以下、特にさらに好ましくは30質量部以下、特にさらにより好ましくは30質量部未満、極めて好ましくは25質量部以下であり、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上である。第2溶媒の含有量が上記の上限以下であると、ポリマー(B)の凝集体の形成を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。また、第2溶媒の含有量が上記の下限以上であると、分散液を調製しやすい。
本発明の別の一実施形態において、工程(I)は、例えば以下の工程:
粒子状ポリマー(B)と溶媒とを混合する工程(1’)
を含む方法により、粒子状ポリマー(B)分散液を調製する工程であってもよい。このような工程を含むと、ポリマー(B)の粒子の凝集を抑制し得るため、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
工程(1’)は、粒子状ポリマー(B)と溶媒とを混合して、粒子状ポリマー(B)分散液を得る工程である。
工程(1’)において使用する粒子状ポリマー(B)は、例えばポリマー(B)を粉砕機によって粉砕することによって得ることができ、必要に応じて、分級機を用いて、粒子状ポリマー(B)の粒子径を所望の範囲内に調整してもよい。また、前記工程(1)及び(2)によって得られた粒子状ポリマー(B)分散液から取り出した粒子状ポリマー(B)を使用してもよい。
工程(1’)において使用する粒子状ポリマー(B)のメジアン径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、さらにより好ましくは3μm以下である。添加する粒子状ポリマー(B)のメジアン径が上記の下限以上であると、組成物から形成されるフィルムの誘電特性を高めやすく、またフィルムを製造しやすい。粒子状ポリマー(B)のメジアン径が上記の上限以下であると、組成物から形成されるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、粒子状ポリマー(B)と混合する溶媒は、フェノール系酸化防止剤(C)が粒子状ポリマー(B)に吸着しやすい観点から、好ましくは第1溶媒を含む溶媒であり、より好ましくは第1溶媒である。
本発明の一実施形態において、工程(I)において得られる粒子状ポリマー(B)分散液は、本発明の効果を損なわない範囲で、第1溶媒と第2溶媒以外の他の溶媒を含んでいてもよい。他の溶媒としては、特に限定されず、慣用の溶媒を使用することができる。
本発明の一実施形態において、工程(I)において得られる粒子状ポリマー(B)分散液に含まれ得る第1溶媒、第2溶媒及び他の溶媒の合計含有量は、該分散液の質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、好ましくは99.99質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下、さらに好ましくは99質量%以下、特に好ましくは95質量%以下である。溶媒の前記含有量が上記の範囲であると、ポリマー(B)の凝集を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、第1溶媒と第2溶媒との合計質量は、工程(I)において得られる粒子状ポリマー(B)分散液に含まれ得る第1溶媒、第2溶媒及び他の溶媒の合計質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらにより好ましくは95質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。第2溶媒と第1溶媒との合計質量が上記の範囲であると、ポリマー(B)の凝集を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を向上しやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、工程(I)において得られる粒子状ポリマー(B)分散液に含まれる粒子状ポリマー(B)の含有量は、該ポリマー(B)分散液の質量に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。粒子状ポリマー(B)の含有量が上記の範囲であると、ポリマー(B)の凝集を抑制しやすく、ポリマー(B)の分散性を高めやすい。また、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、後述の工程(II)において、添加する樹脂(A)をワニスの形態で添加する場合、工程(I)において得られる粒子状ポリマー(B)分散液に含まれる粒子状ポリマー(B)の含有量は、該ポリマー(B)分散液の質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
粒子状ポリマー(B)分散液に含まれる粒子状ポリマー(B)のメジアン径は、本発明の上記組成物中の粒子状ポリマー(B)のメジアン径と同様の範囲から選択できる。分散液中の粒子状ポリマー(B)のメジアン径が上記の下限以上であると、組成物から形成されるフィルムの誘電特性を高めやすく、またフィルムを製造しやすい。分散液中の粒子状ポリマー(B)のメジアン径が上記の上限以下であると、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。なお、粒子状ポリマー(B)分散液に含まれる粒子状ポリマー(B)のメジアン径は、レーザー回析を用いた散乱式粒度分布測定により求めることができ、例えば実施例に記載の方法により求めることができる。
<工程(II)>
工程(II)は、粒子状ポリマー(B)分散液に樹脂(A)を添加する工程である。
工程(II)において、添加する樹脂(A)は固体、好ましくは粉体の形態であってもよく、樹脂(A)を所定の溶媒、例えば第1溶媒に溶かしたワニスの形態であってもよい。本発明の一実施形態では、工程(II)において、樹脂(A)がポリイミド系樹脂である場合、ポリイミド樹脂又はポリアミック酸を固体、好ましくは粉体の形態又はワニスの形態で添加することができる。樹脂(A)をワニスの形態で添加する場合、ワニス中の樹脂(A)の含有量は、該ワニスの質量に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらにより好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。該ワニス中の樹脂(A)の含有量が上記の範囲であると、膜形成が容易となるため、フィルム製造の観点から有利である。
工程(II)で添加する樹脂(A)は、樹脂(A)とポリマー(B)との合計質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。添加する樹脂(A)の含有量が上記の下限以上であると、膜形成が容易となるため、フィルム製造の観点から有利である。また、樹脂(A)の含有量が上記の上限以下であると、得られるフィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすく、またフィルムの誘電特性を高めやすい。
該粒子状ポリマー(B)分散液に樹脂(A)を添加する方法は、特に限定されず、樹脂(A)を一度に添加してもよく、樹脂(A)を複数回にわけて添加してもよい。
上記方法において、前記工程(I)及び/又は前記工程(II)においてフェノール系酸化防止剤(C)を添加することにより、本発明の組成物を製造できる。フェノール系酸化防止剤(C)の添加は、工程(I)及び工程(II)のいずれの工程において行ってもよく、工程(I)及び工程(II)の両方の工程で行ってもよい。フェノール系酸化防止剤(C)を添加する方法は特に限定されず、フェノール系酸化防止剤(C)を一度に添加してもよく、フェノール系酸化防止剤(C)を複数回にわけて添加してもよい。
本発明の一実施形態において、工程(I)が工程(1)及び工程(2)を含む工程である場合、フェノール系酸化防止剤を分散させやすく、ポリマー(B)に均一に吸着させやすい観点から、フェノール系酸化防止剤(C)の添加は工程(I)において行うことが好ましい。また、本発明の一実施形態において、工程(I)が工程(1’)を含む工程である場合、フェノール系酸化防止剤を分散させやすく、ポリマー(B)に均一に吸着させやすい観点から、フェノール系酸化防止剤(C)の添加は工程(I)において行うことが好ましい。
工程(I)においてフェノール系酸化防止剤(C)を添加する場合、工程(1)及び工程(2)、並びに工程(1’)のいずれの工程において行ってもよいが、フェノール系酸化防止剤を分散させやすく、ポリマー(B)に均一に吸着させやすい観点から、工程(2)又は工程(1’)、特に工程(1’)において行うことが好ましい。
工程(II)においてフェノール系酸化防止剤(C)を添加する場合、フェノール系酸化防止剤(C)と樹脂(A)との添加順序は特に制限されず、フェノール系酸化防止剤(C)を添加した後に樹脂(A)を添加してもよく、樹脂(A)を添加した後にフェノール系酸化防止剤(C)を添加してもよい。本発明の一実施形態では、フェノール系酸化防止剤を分散させやすく、ポリマー(B)に均一に吸着させやすい観点から、粒子状ポリマー(B)分散液にフェノール系酸化防止剤(C)を添加した後に、樹脂(A)を添加することが好ましい。
工程(I)及び/又は工程(II)で添加するフェノール系酸化防止剤(C)は、粒子状ポリマー(B)分散液又は組成物中のポリマー(B)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上、さらにより好ましくは0.2質量部以上、特に好ましくは1質量部以上、特により好ましくは2質量部以上である。フェノール系酸化防止剤の添加量が上記下限以上であると、フェノール系酸化防止剤によりポリマー(B)を覆いやすく、ポリマー(B)の酸化を十分に抑制しやすいため、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。フェノール系酸化防止剤の含有量は、ポリマー(B)100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、さらにより好ましくは7質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。フェノール系酸化防止剤の含有量が上記上限以下であると、フィルムの誘電特性を高めやすい。
本発明における上記製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、工程(I)及び(II)以外の工程を含んでいてもよく、上述の樹脂(A)及びポリマー(B)以外のポリマー、二次酸化防止剤又は添加剤を加えてもよい。添加剤としては、上記に記載の添加剤が挙げられる。
なお、本発明の好適な実施形態では、ポリマー(B)分散液に樹脂(A)を添加するが、粉体形態のポリマー(B)を樹脂(A)のワニスに添加してもよい。前記工程(II)に示したように、樹脂(A)のワニスは、樹脂(A)を所定の溶媒、例えば第1溶媒に溶かしたものであってもよいし、樹脂(A)の前駆体を合成した際の樹脂溶液、例えば樹脂(A)がポリイミド系樹脂である場合、ポリアミック酸溶液(少なくともポリアミック酸と合成溶媒を含む溶液)であってもよい。
〔フィルム〕
本発明は、樹脂(A)、シクロオレフィン系ポリマー(B)及びフェノール系酸化防止剤(C)を含み、大気中、360℃で5分間アニール処理した際のシクロオレフィン系ポリマー(B)に由来する2500~3500cm-1の範囲におけるIRピークの維持率が50%以上であるフィルムを包含する。本発明のフィルムは、IRピークの維持率が50%以上であるため、優れた耐熱性を有することができる。また、好適な実施態様では、本発明のフィルムは、耐吸湿性にも優れる。そのため、本発明のフィルムは、CCLの樹脂層に使用した場合、誘電特性を高めやすく、誘電損失及び伝送損失を抑制しやすい。
ポリマー(B)のIRピーク維持率は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらにより好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上、特により好ましくは90%以上である。ポリマー(B)のIRピーク維持率が上記下限以上であると、優れた耐熱性を発現しやすい。IRピーク維持率の上限は特に限定されず、通常100%以下である。
IRピーク維持率は、大気中、360℃で5分間アニール処理した際のシクロオレフィン系ポリマー(B)に由来する2500~3500cm-1、好ましくは2900~3000cm-1の範囲におけるIRピークの維持率である。IRピーク維持率は、以下のように算出できる。まず、耐熱性試験機を用いてフィルムを大気下、360℃で5分間維持する耐熱劣化試験を行う。その耐熱劣化試験前後においてFT-IR測定装置によりIR測定を行う。IR測定結果において、以下の式:
IRピーク維持率
=〔(劣化試験後のシクロオレフィン系ポリマーピーク強度)/(劣化試験後の樹脂(A)のピーク強度)〕÷〔(劣化試験前のシクロオレフィン系ポリマーピーク強度)/(劣化試験前の樹脂(A)のピーク強度)〕
により、IRピーク維持率を算出する。
ここで、樹脂(A)のピーク強度は、耐熱劣化試験において、変化がほぼない、好ましくは変化がない波長範囲のピーク強度を示し、樹脂(A)の種類に応じて適宜選択すればよい。樹脂(A)の変化のない波長範囲のピーク強度(例えば、芳香族ポリイミドや芳香族ポリエステルにおいては、ベンゼン環のC=C 伸縮振動を示すピークが挙げられる)を基準にすることで、耐熱劣化試験前後のシクロオレフィン系ポリマーのピーク強度の変化率を求めることができる。また、IRピーク維持率の式において、各ピーク強度は、所定の波長範囲のピークトップ強度であってよい。また、IRピーク維持率の式において、シクロオレフィン系ポリマーのピーク強度は、シクロオレフィン系ポリマーに含まれるC-Hの伸縮振動由来のピークであって、2500~3500cm-1、好ましくは2900~3000cm-1の範囲におけるピークトップ強度である。
樹脂(A)がポリイミド系樹脂(芳香族ポリイミド)である場合、本発明の好適な実施態様では、IRピーク維持率の式において、ポリイミド系樹脂のピーク強度は、ベンゼン環のC=C伸縮振動由来のピークであって、1450~1550cm-1、好ましくは1480~1520cm-1のピークトップ強度であることが好ましい。IRピーク維持率は、例えば実施例に記載の方法により測定し、求めることができる。
本発明の一実施形態において、フィルムの吸湿率は、好ましくは0.64質量%以下、より好ましくは0.60質量%以下、さらに好ましくは0.57質量%以下、さらにより好ましくは0.54質量%以下、特に好ましくは0.52質量%以下、特により好ましくは0.50質量%以下である。吸湿率が上記上限以下であると、優れた耐吸湿性を発現できる。そのため、本発明のフィルムをCCLの樹脂層に使用した場合、誘電特性を高めやすく、誘電損失及び伝送損失を抑制しやすい。また、本発明のフィルムの吸湿率は、通常0.01重量%以上であってよい。なお、本発明のフィルムの吸湿率は、フィルムを温度23℃及び湿度50%環境に一定時間曝露し、曝露後のフィルムの水分量を水分計により測定することにより求めることができ、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
フィルムの吸湿率及びIRピーク維持率は、フィルムの組成、例えばフィルムに含まれる樹脂(A)及び/又はポリマー(B)を構成する構成単位の種類、それらの構成比、それらの分子量、フィルム中のポリマー(B)の含有量、ポリマー(B)が粒子状である場合その粒子径、フェノール系酸化防止剤(C)の種類、その含有量、フィルムの製造条件などを適宜調整することによって調整し得る。例えば、好ましい態様として記載されるポリマー(B)の種類、樹脂(A)及び/又はポリマー(B)を構成する構成単位の種類及びそれらの構成比、ポリマー(B)の含有量、ポリマー(B)が粒子状である場合その粒子径、フェノール系酸化防止剤(C)の種類、その含有量、フィルムに含まれる成分間のHSP値間距離、並びにフィルムの製造方法を選択することにより、フィルムの吸湿率及びIRピーク維持率を上記範囲に調整してもよい。特に、式(1)を満たすように調整した組成物を用いること等により、フィルムの吸湿率及びIRピーク維持率を上記範囲に調整できる。
本発明の一実施形態において、本発明のフィルムに含まれるポリマー(B)は、粒子状であることが好ましい。ポリマー(B)が粒子状であると、ポリマー(B)の分散性を高めやすく、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の一実施形態において、ポリマー(B)が粒子状である場合、粒子状ポリマー(B)の平均一次粒子径は15μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、さらにより好ましくは3μm以下、特に好ましくは1μm以下、特により好ましくは0.8μm以下、特にさらに好ましくは0.5μm以下であり、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上である。粒子状ポリマー(B)の平均一次粒子径が上記の下限以上であると、フィルムの機械的特性を高めやすい。粒子状ポリマー(B)の平均一次粒子径が上記の上限以下であると、粒子状ポリマー(B)の粒子分散性を高めやすく、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。なお、粒子状ポリマー(B)の平均一次粒子径は、電子顕微鏡により撮影した画像の画像解析により求めることができる。例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いてフィルムの断面観察を行い、観察画像から50個以上の粒子の粒子径を測定し、それらの平均値を粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径とすることができ、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の好適な実施形態では、本発明のフィルムは、樹脂(A)に対して、ポリマー(B)が分散、好ましくは均一分散した複合フィルムであることが好ましい。例えば、該複合フィルムは海島構造を有し、樹脂(A)が海、ポリマー(B)が島であることが好ましい。このような複合フィルムは、耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明の好適な実施形態において、本発明のフィルムは、本発明の上記組成物から形成されたものであることが好ましい。このようなフィルムは、好ましくは本発明の組成物から溶媒を除去して形成されるため、本発明のフィルムに含まれる成分、例えば樹脂(A)、ポリマー(B)、フェノール系酸化防止剤(C)及び二次酸化防止剤などに関する記載は、〔組成物〕の項に記載のものと同様である。また、本発明の好適な一実施形態において、本発明のフィルムに溶媒が含まれる場合、溶媒の種類及び本発明のフィルムに含まれる各成分と溶媒とのHSP値間距離に関する記載は、〔組成物〕の項に記載のものと同様である。
本発明の一実施形態において、フィルムに含まれる樹脂(A)及びポリマー(B)の合計質量は、該フィルムの質量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。フィルムに含まれる樹脂(A)及びポリマー(B)の合計質量が上記の下限以上であると、ポリマー(B)の分散性を高めやすく、フィルムの耐吸湿性及び耐熱性を向上しやすい。
本発明のフィルムの厚さは、用途に応じて適宜選択でき、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。フィルムの厚さは、膜厚計等を用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。なお、本発明のフィルムが多層フィルムである場合、上記厚さは単層部分の平均厚さを表す。
本発明のフィルムは、単層フィルムであってもよく、本発明の組成物からなる層を少なくとも1層含む多層フィルムであってもよい。該多層フィルムは他の層(又は他のフィルム)を含むことができる。このような場合にも全ての層を含めて本発明のフィルムと称する。他の層としては、例えば機能層などが挙げられる。該機能層としては、プライマー層、ガスバリア層、粘着層、保護層などが例示できる。機能層は単独又は二種以上組合せて使用できる。
本発明のフィルムは、通常工業的に採用されている方法によって、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理が施されていてもよい。
本発明の組成物及びフィルムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記以外の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組合せてもよく、上記の1つの実施形態に係る構成や方法等を上記の他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよい。
本発明の一実施形態にかかるフィルムは、耐吸湿性、耐熱性及び誘電特性に優れる。そのため、高周波帯域用のプリント回路基板やアンテナ基板に対応可能な基板材料などに好適に利用できる。例えばCCLは、樹脂層の両表面に接着剤を介して銅箔が積層された構造を有する。本発明のフィルムを該樹脂層として使用する場合、耐吸湿性に優れ、誘電損失が小さいため、伝送損失を低減することができる。本発明のフィルムを該樹脂層として使用する場合、表面平滑性が高く、また物性のバラツキ及びCTEが低減されているため、従来のものと比較し、銅箔と樹脂層との剥がれを有効に抑制できる。また、機械的特性、特に屈曲耐性に優れるため、塑性変形に強く、巻き癖が付きにくく、またフレキシブル基板材料にも使用できる。
本発明のフィルムは、その他、自動車部品、電気・電子部品等の工業材料;レンズ、プリズム、光ファイバー、記録媒体等の光学材料等にも好適に用いられる。
〔フィルムの製造方法〕
本発明のフィルムの製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の工程:
(a)樹脂(A)、ポリマー(B)、フェノール系酸化防止剤(C)及び溶媒を含む組成物を調製する組成物調製工程、
(b)組成物を基材に塗布して塗膜を形成する塗布工程、及び
(c)塗布された液(塗膜)を乾燥させて、フィルムを形成するフィルム形成工程
を含む方法によって製造することができる。樹脂(A)がポリイミド系樹脂である場合、熱イミド化を行う際には、イミド化反応を完了させる工程が含まれてもよい。
<組成物調製工程>
組成物調製工程は、例えば、樹脂(A)、ポリマー(B)、フェノール系酸化防止剤(C)及び溶媒、並びに任意に前記添加剤を混合することにより組成物を調整すればよい。好ましくは本発明の組成物を使用すること、特に本発明の組成物の上記製造方法を用い、これにより得られる組成物を使用することが好ましい。本発明の組成物を用いることで、フィルム中のポリマー(B)の分散性、耐吸湿性及び耐熱性に優れたフィルムを形成できる。
<塗布工程及びフィルム形成工程>
塗布工程は、組成物調製工程で得られた組成物を基材に塗布して塗膜を形成する工程である。
塗布工程において、公知の塗布方法により、基材上に組成物を塗布して塗膜を形成する。公知の塗布方法としては、例えばワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法、カーテンコート法、スロットコート法、流涎成形法等が挙げられる。
基材の例としては、銅板(銅箔含む)、SUS板(SUS箔、SUSベルト含む)、ガラス基板、PETフィルム、PENフィルム、他のポリイミド系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム等が挙げられる。中でも、耐熱性に優れる観点から、好ましくはSUS板、ガラス基板、PETフィルム、PENフィルム等が挙げられ、フィルムとの密着性及びコストの観点から、より好ましくはSUS板、ガラス基板又はPETフィルム等が挙げられる。
フィルム形成工程において、塗膜を乾燥し、基材から任意に剥離することによって、フィルムを形成することができる。本発明の一実施形態において、基材が銅箔の場合には、塗膜を銅箔から剥離することなくフィルムを形成し、得られた銅箔上にフィルムが積層された積層体を銅張積層板に用いることもできる。剥離する場合、剥離後にさらにフィルムを乾燥する乾燥工程を行ってもよい。ここで、組成物を基材に塗布してフィルムを形成する場合、塗膜の基材側の面はほぼ平坦であるものの、基材側とは反対側の面(以下、エア面ともいう)に表面荒れが発生することで、厚さのバラツキが発生し、フィルムの表面平滑性が損なわれることがあるが、本発明の組成物を使用すると、このような表面荒れの形成を有効に抑制できるため、表面平滑性に優れたフィルムを形成できる。
塗膜の乾燥は、樹脂(A)の耐熱性などに応じて適宜選択できるが、通常50~450℃、好ましくは55~400℃、より好ましくは70~380℃の温度にて行うことができ、本発明の別の実施形態では、50~400℃、好ましくは70~360℃の温度にて行うことができる。本発明の好適な実施形態では、段階的に乾燥を行うことが好ましい。段階的に乾燥を行うことにより、組成物を均一に乾燥することができ、得られるフィルムの耐吸湿性を向上しやすい。例えば、50~150℃の比較的低温下で加熱した後、200~450℃、好ましくは200~400℃、より好ましくは200~350℃で加熱してもよい。乾燥又は加熱の時間は、好ましくは5分~10時間、より好ましくは10分~5時間である。このような範囲で段階的に低温から高温に加熱することにより、得られるフィルムの耐吸湿性、耐熱性、熱伝導率又は熱拡散率の均一性、光学特性及びTgを向上しやすい。必要に応じて、窒素やアルゴン中等の不活性雰囲気条件下、真空もしくは減圧条件下、及び/又は通風下において塗膜の乾燥を行ってもよい。
段階的に乾燥を行う場合、段階的な乾燥の間で、基材から塗膜を剥離後、塗膜の乾燥を継続してもよく、全ての乾燥が終了してから基材から塗膜(フィルム)を剥離してもよい。例えば1段階目の乾燥後に基材から塗膜を剥離して2段階目以降の乾燥を行ってもよいし、すべての乾燥段階が終了した後に基材から塗膜(フィルム)を剥離してもよい。なお、1段階目の乾燥は予備乾燥であってよい。
基材が銅箔である場合、例えば、銅箔を、第二塩化鉄溶液等でエッチング除去することで、基材である銅箔からフィルムを剥離してよい。
本発明の一実施形態において、組成物中の樹脂(A)がポリイミド系樹脂前駆体、例えばポリアミック酸であり、フィルム製造時にポリイミド系樹脂を生成する場合、該組成物を基材に塗布後、加熱により熱イミド化することが好ましい。該加熱により、溶媒を除去する乾燥と熱イミド化を同時に行うことができる。乾燥及びイミド化温度は、通常50~450℃の範囲であり、優れた耐吸湿性を有し、かつ平滑なフィルムを得やすい観点からは、段階的に加熱を行うことが好ましい。例えば、50~150℃の比較的低温下で加熱して溶媒を除去した後、300~450℃の範囲の温度まで段階的に加熱してもよい。加熱の時間は、例えば上記範囲と同様の範囲から選択できる。
本発明のフィルムが多層フィルムである場合には、例えば、共押出加工法、押出ラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法等の多層フィルム形成法により製造することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。まず測定方法について説明する。
<ハンセン溶解度パラメータ(HSP)及びHSP値間距離>
フェノール系酸化防止剤、溶媒、シクロオレフィンコポリマー及びポリイミド樹脂のハンセン溶解度パラメータ(HSP)、並びにHSP値間距離は以下のように求めた。
(フェノール系酸化防止剤及び溶媒のハンセン溶解度パラメータ(HSP))
ハンセン溶解度パラメータを提案したハンセン博士のグループによって開発されたプログラムであるHSPiP(Ver.4.1.07)を用いて、各種HSP値を求めた。
フェノール系酸化防止剤のHSP値は、HSPiPのデータベースの数値を用い、AO-330のδDは17.9MPa0.5、δPは0.1MPa0.5、δHは0.9MPa0.5であり、Irganox 1010のδDは18.7MPa0.5、δPは0.8MPa0.5、δHは7.4MPa0.5であり、Sumilizer GA80のδDは18.3MPa0.5、δPは1.6MPa0.5、δHは4.7MPa0.5であった。
フェノール系酸化防止剤の構造SのHSP値は、HSPiPを用い、構造式から算出し、AO-330の構造SのδDは17.4MPa0.5、δPは0.1MPa0.5、δHは1.4MPa0.5であり、Irganox 1010の構造SのδDは16.4MPa0.5、δPは4.4MPa0.5、δHは6.4MPa0.5であり、Sumilizer GA80の構造SのδDは16.7MPa0.5、δPは5.0MPa0.5、δHは4.5MPa0.5であった。
溶媒のHSP値は、HSPiPのデータベースの数値を用い、GBLのδDは18.0MPa0.5、δPは16.6MPa0.5、δHは7.4MPa0.5であり、DMAcのδDは16.8MPa0.5、δPは11.5MPa0.5、δHは9.4MPa0.5であり、トルエンのδDは18.0MPa0.5、δPは1.4MPa0.5、δHは2.0MPa0.5であった。
(シクロオレフィンコポリマーのHSP)
シクロオレフィンコポリマーの各種溶媒への溶解性を評価した。溶解性の評価は、透明の容器に溶解度パラメータが既知の溶媒(HSPiPのデータベースを参照、使用した溶媒:2-(1-シクロへキセニル)シクロヘキサノン、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール、塩化メチル、1,4-ジオキサン、1,4-ジクロロベンゼン、クロロホルム、トルエン、1-フェニルオクタン、p-キシレン、スチレン、エタノール、1-ブタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、GBL、N-メチルホルムアミド、酢酸)10mLとシクロオレフィンコポリマー0.1gを投入し混合液を調製した。得られた混合液に対して累計6時間超音波処理を施した。超音波処理後の混合液の外観を目視にて観察し、得られた観察結果から下記の評価基準に基づいて、それぞれの樹脂の溶媒への溶解性を評価した。
(評価基準)
2:室温で混合液の外観は白濁、沈殿が発生しているが、50℃に加温して攪拌子で30分攪拌することで混合液の外観が透明になる。
1:室温で混合液の外観は透明である。
0:室温で混合液の外観は白濁、沈殿が発生しており、50℃に加温して攪拌子で30分攪拌しても混合液の外観が透明にならない。
得られたシクロオレフィンコポリマーの溶媒への溶解性の評価結果から、HSPiPを用い、上述のハンセン溶解球法によりHSP値を算出した。
(ポリイミド系樹脂のHSP)
ポリイミド系樹脂の各種溶媒への溶解性を評価した。溶解性の評価は、透明の容器に溶解度パラメータが既知の溶媒(HSPiPのデータベースを参照、使用した溶媒:アセトン、トルエン、エタノール、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサン、GBL、エチルアセテート、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1-ブタノール、N-メチルホルムアミド、1-メチルナフタレン、ブロモベンゼン、1-メチルイミダゾール、ピラゾール、酢酸)10mLとポリイミド系樹脂 0.1gを投入し混合液を調製した。得られた混合液に対して累計6時間超音波処理を施した。超音波処理後の混合液の外観を目視にて観察し、得られた観察結果から下記の評価基準に基づいて、それぞれの樹脂の溶媒への溶解性を評価した。
(評価基準)
1:混合液の外観は白濁している。
0:混合液の外観は透明である。
得られたポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性の評価結果から、HSPiPを用い、上述のハンセン溶解球法によりHSP値を算出した。
(HSP値間距離)
2つの物質のHSP値間距離(Ra)は、式(Y)に従って求めた。
<ノルボルネン(NB)含有量>
シクロオレフィンコポリマーにおけるノルボルネン由来の単量体単位の含有量(「NB含有量」ともいう)は、13C-NMRを用いて測定した。13C-NMR測定条件は、以下の通りである。
装置:Bruker社製 AVANCE600、10mmクライオプローブ
測定温度:135℃
測定方法:プロトンデカップリング法
濃度:100mg/mL
積算回数:1024回
パルス幅:45度
パルス繰り返し時間:4秒
化学シフト値基準:テトラメチルシラン
溶媒:1,2-ジクロロベンゼン-dと1,1,2,2-テトラクロロエタン-dとの体積比85:15の混合溶媒
シクロオレフィンコポリマー中のNB含有量は、1,2-ジクロロベンゼン(127.68ppm)を基準とし、「R.A.Wendt,G.Fink,Macromol.Chem.Phys.,2001,202,3490」に記載の帰属に基づいて算出した。具体的には、13C-NMRを用いて測定されたスペクトルチャートのケミカルシフト値44.0-52.0ppmに観測されるシグナル積分値:IC2,C3(ノルボルネン環の2、3位の炭素原子に由来)、ケミカルシフト値27.0-33.0ppmに観測されるシグナル積分値:IC5,C6+ICE(ノルボルネン環の5、6位の炭素原子と、エチレン部の炭素原子とに由来)より、以下の式から求めた。
NB含有量(mol%)=IC2,C3/(IC5,C6+ICE)×100
<メソ型二連鎖/ラセモ型二連鎖>
シクロオレフィンコポリマーのノルボルネン二連鎖のメソ型二連鎖とラセモ型二連鎖との比(メソ型二連鎖/ラセモ型二連鎖)は、13C-NMRを用いて上記NB含有量の測定と同様の条件にて測定した。
前記ノルボルネン二連鎖のメソ型二連鎖/ラセモ型二連鎖は、1,1,2,2-テトラクロロエタン(74.24ppm)を基準とし、「R.A.Wendt,G.Fink,Macromol.Chem.Phys.,2001,202,3490」及び「特開2008-285656号公報」に記載の帰属に基づいて算出した。具体的には、メソ型二連鎖/ラセモ型二連鎖は、13C-NMRを用いて測定されたスペクトルチャートのケミカルシフト値27.5-28.4ppmに観測されるシグナル積分値:IC5,C6-m(メソ型二連鎖のノルボルネン環の5、6位の炭素原子に由来)、ケミカルシフト値28.4-29.6ppmに観測されるシグナル積分値:IC5,C6-r(ラセモ型二連鎖のノルボルネン環の5、6位の炭素原子に由来)より、以下の式から求めた。
メソ型二連鎖/ラセモ型二連鎖=IC5,C6-m/IC5,C6-r
<屈折率>
シクロオレフィンコポリマーの屈折率は、真空プレス機で厚さ100μmに成形したシート状の試料を用いて、下記条件で測定することにより求めた。
機器:(株)アタゴ製 アッベ屈折計「TYPE-3」
光源波長:589.3nm
中間液:1-ブロモナフタレン
測定温度:23±1℃
<CTE>
シクロオレフィンコポリマーのCTEは、TMAを用いて、下記条件で測定を行い、50℃から100℃におけるCTEを算出した。
装置:(株)日立ハイテクサイエンス製 TMA/SS6200
圧子(プローブ)径:3.5mm 荷重:38.5mN 温度プログラム:20℃から130℃まで5℃/分の速度で昇温
試験片:10mm×10mm×1mmの直方体
<ガラス転移温度>
(シクロオレフィンコポリマーのTg)
シクロオレフィンコポリマーのTgは、JIS K 7196に基づき、TMAにより軟化温度を測定することにより求められた。具体的には、シクロオレフィンコポリマーを真空プレス機でシート状に成型した試料(厚さ:1.0mm)を下記条件で測定し、圧子が試料に沈み込む際の変位のオンセットを軟化温度とした。
装置:(株)日立ハイテクサイエンス製、「TMA/SS6200」
圧子径:1mm
荷重:780mN
温度プログラム:20℃から380℃まで5℃/分の速度で昇温
(ポリイミド系樹脂のTg)
ポリイミド系樹脂のTgは、以下の測定により求められた。TA Instrument社製、「DMA Q800」を用い、次のような試料及び条件下で測定して、損失弾性率と保存弾性率の値の比であるtanδ曲線を得た後、tanδ曲線のピークの最頂点からTgを算出した。
試料:長さ5-15mm、幅5mm
実験モード:DMA Multi-Frequency-Strain
実験モード詳細条件:
(1)Clamp:Tension:Film
(2)Amplitude:5μm
(3)Frequncy:10Hz(全温度区間で変動なし)
(4)Preload Force:0.01N
(5)Force Track:125N
温度条件:(1)昇温範囲:常温~400℃、(2)昇温速度:5℃/分
主要収集データ:(1)保存弾性率(Storage modulus、E’)、(2)損失弾性率(Loss modulus、E”)、(3)tanδ(E”/E’)
<シクロオレフィンコポリマーのMw及びMn>
シクロオレフィンコポリマーのポリスチレン換算のMw及びMnは、GPCを用いて測定した。GPC測定は下記条件で行い、ISO16014-1の記載に基づき、クロマトグラム上のベースラインを規定してピークを指定した。
(GPC装置及びソフトウェア)
装置:HLC-8121GPC/HT(東ソー(株)製)
測定ソフト:GPC-8020 modelII データ収集 Version 4.32(東ソー(株)製)
解析ソフト:GPC-8020 modelII データ解析 Version 4.32(東ソー(株)製)
(測定条件)
GPCカラム:TSKgel GMH6-HT 内径7.8mm×長さ300mm(東ソー(株)製) 3本連結
移動相:オルトジクロロベンゼン(富士フイルム和光純薬(株)製、特級)にBHT[ジブチルヒドロキシトルエン]を0.1g/100mLの濃度で添加して使用した。
流速:1mL/分
カラムオーブン温度:140℃
オートサンプラー温度:140℃
システムオーブン温度:40℃
検出:示差屈折率検出器(RID)
RIDセル温度:140℃
試料溶液注入量:300μL
GPCカラム校正用標準物質:東ソー(株)製標準ポリスチレンを下記表1のような組合せで量り取り、組合せごとに移動相 5mLを加え、室温で2時間溶解させて調製した。
Figure 2023001899000017
(試料溶液調製条件)
溶媒:オルトジクロロベンゼン(富士フイルム和光純薬(株)製、特級)に、BHTを0.1g/100mLの濃度で添加して使用した。
試料溶液濃度:1mg/mL
溶解用自動振とう器:DF-8020(東ソー(株)製)
溶解条件:5mgの試料を1,000meshのSUS製の金網袋に封入し、試料を封入した金網袋を試験管に入れ、さらに前記移動相 5mLを加え、試験管にアルミホイルで蓋をし、試験管をDF-8020にセットし、60往復/分の撹拌速度で140℃にて120分間撹拌した。攪拌後の溶液を試料として、GPC測定を行った。
<ポリイミド樹脂及びポリアミック酸のMw>
ポリイミド樹脂及びポリアミック酸のポリスチレン換算のMwは、GPCを用いて測定した。GPC測定は下記条件で行った。
GPC測定
(1)前処理方法
サンプルにDMF溶離液(10mmol/L臭化リチウム添加DMF溶液)を濃度2mg/mLとなるように加え、80℃にて30分間攪拌しながら加熱し、冷却後、0.45μmメンブランフィルターろ過したものを測定溶液とした。
(2)測定条件
カラム:TSKgel SuperAWM-H×2+SuperAW2500×1(内径6.0mm×長さ150mm、3本連結)
溶離液:DMF(10mmol/Lの臭化リチウム添加)
流量:1.0mL/分
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μL
分子量標準:標準ポリスチレン
<溶解性の評価>
実施例及び比較例で使用した溶媒に、シクロオレフィンコポリマー、ポリイミド樹脂及びポリアミック酸が溶解するか否かの評価は以下のように行った。
まず、30mLのガラス製スクリュー管に溶媒9.9gを量り取り、さらにマグネチックスターラーを入れて撹拌する。そこにポリマー、樹脂又はポリアミック酸を0.1g加え、24℃で24時間攪拌する。24時間撹拌後、目視で固体が確認できない、かつ溶液が透明の場合は「溶解する」と評価した。一方、目視で固体を確認できる、又は、溶液が不透明の場合は「溶解しない」と評価した。
<粒子状シクロオレフィンコポリマー分散液及び組成物中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの粒子径>
(製造例1、3で得られたシクロオレフィンコポリマー溶液を使用して得られた粒子状シクロオレフィンコポリマー分散液中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの粒子径)
実施例1~3、5~7、9、11、12、14及び比較例1、2で得られた粒子状シクロオレフィンコポリマーの分散液中の粒子状シクロオレフィンコポリマーのメジアン径を、レーザー回折を用いた散乱式粒度分布測定により求めた。
具体的には、容量3.5mLのガラス製セルに、実施例1~3、5~7、9、11、12、14及び比較例1、2で得られた粒子状シクロオレフィンコポリマー分散液を入れ、さらにGBLを添加して1000倍希釈し、粒子状シクロオレフィンコポリマーを含有する分散液試料を得た。得られた分散液試料をレーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(Malvern Panalytical社製、型式:NanоZS、屈折率:1.70-0.20i)を用いて測定し、粒子状シクロオレフィンコポリマー粒子のメジアン径を求めた。
なお、上記の通り、実施例1~3、5~7、9、11、12、14及び比較例1、2では粒子状シクロオレフィンコポリマーの粒子径に影響しない範囲の量でポリイミド樹脂又はポリアミック酸、及び酸化防止剤を分散液に添加して組成物を形成したため、分散液中の粒子状シクロオレフィンコポリマーのメジアン径を組成物中の粒子状シクロオレフィンコポリマーのメジアン径とした。
(製造例2、4で得られたシクロオレフィンコポリマー破砕粉を使用して得られた粒子状シクロオレフィンコポリマー分散液中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの粒子径)
実施例4、8、10、13で得られた粒子状シクロオレフィンコポリマーの分散液中の粒子状シクロオレフィンコポリマーのメジアン径を、レーザー回析を用いた散乱式粒度分布測定により求めた。
具体的には、製造例2、4で得られた粒子状シクロオレフィンコポリマーをイソプロパノール中に分散させ、粒子状シクロオレフィンコポリマーを含有する分散液試料を得た。得られた分散液試料をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(日機装(株)製、型式:MT3300EX II)を用いて測定し、粒子状シクロオレフィンコポリマーのメジアン径を求めた。
なお、上記の通り、実施例4、8、10、13では粒子状シクロオレフィンコポリマーの粒子径に影響しない範囲の量でポリアミック酸を分散液に添加して組成物を形成した。また、粒子状シクロオレフィンコポリマーはイソプロパノール、DMAc及びGBLには溶解しない。そのため、上記分散液試料中の粒子状シクロオレフィンコポリマーのメジアン径を組成物中の粒子状シクロオレフィンコポリマーのメジアン径とした。
<粒子状シクロオレフィンコポリマー分散液中の溶媒含有量>
実施例及び比較例で得られた粒子状シクロオレフィンコポリマー分散液中の溶媒含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定した。具体的には下記条件で測定を行い、一点検量により粒子状シクロオレフィンコポリマー分散液中の溶媒含有量を算出した。
装置:Agilent 7890Bガスクロマトグラフ(アジレント・テクノロジー(株)製)
カラム:DB-5(アジレント・テクノロジー(株)製)
キャリアガス:ヘリウム
注入口温度:200℃
検出器温度:250℃
内部標準液:ベンジルアルコール
溶媒:クロロホルム
<複合フィルムの厚さ>
実施例及び比較例で得られた複合フィルムの厚さは、デジマチックインジケータ((株)ミツトヨ製、「ID-C112XBS」)を使用し、フィルムの任意の5点以上の厚さを測定し、それらの平均値を複合フィルムの厚さとした。
<フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径>
実施例及び比較例で得られた複合フィルムについて、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて複合フィルムの断面観察を行った。観察画像から50個以上の粒子の粒子径を測定し、それらの平均値を粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径とした。
STEM観察測定条件
装置名:日本FEI(株)製 HeLiоsG4UX(剥片作成装置)
(株)日立ハイテク製S―5500(STEM観察用)
加速電圧:30kv
倍率:20000倍
<複合フィルムの吸湿率>
実施例5~8、12~14及び比較例2で得られた複合フィルムの吸湿率はカールフィッシャー水分計(気化式)により測定した。具体的には、水分気化装置用バイアル瓶内に、20mm×20mmの大きさに切り出したフィルムを入れ、温度23℃及び湿度50%(以下、「23℃50%」ともいう)環境に24時間以上曝露した。その後、同環境でバイアル瓶を密封し、下記に示す条件によりフィルム中の水分量を測定した。
・カールフィッシャー装置:Metrohm社製915 KF Ti-Touch
・滴定試薬:Honeywell社製HYDRANAL(登録商標)-Coulomat AG
・滴定前コンディショニング:ドリフト値10μg/分以下で安定
・滴定条件:発生電流400mV、待機時間300秒、滴定終点50mV
・水分気化装置:Metrohm社製860 KFサーモプレップ
・フィルム加熱条件:150℃、乾燥空気50mL/分で搬送。
・ブランク測定:空のバイアル瓶を23℃50%環境にて密封し、上記と同条件で測定。
実施例及び比較例で得られた複合フィルムの吸湿率は、下記式より算出した。
吸湿率=[(フィルム中の水分量)-(ブランク測定の水分量)]÷(23℃50%環境で24時間以上曝露した後のフィルム質量)×100
<複合フィルムの耐熱性評価>
実施例1~4、9~11及び比較例1で得られた複合フィルムの耐熱性は、下記に示す耐熱試験と、耐熱試験前後のシクロオレフィンコポリマーの一回反射「ATR FT-IR」の変化率から評価した。
・耐熱試験:複合フィルムを大気下で360℃5分維持
・装置:VARIAN社製 VARIAN 670 -IR
・ATRユニット:Specac社製シルバーゲートATRエボリューション(ゲルマニウムフラットプレート)
・測定面:複合フィルムをガラス基板から剥離した際のガラス基板側の面
・測定条件:積算回数32回、波数分解能4cm-1、スキャンスピード5kHz
・IRピーク 維持率算出:下記式より算出した。
IRピーク 維持率
=〔(劣化試験後のシクロオレフィンコポリマーピーク強度)/(劣化試験後のポリイミド系樹脂のピーク強度)〕÷〔(劣化試験前のシクロオレフィンコポリマーピーク強度)/(劣化試験前のポリイミド系樹脂のピーク強度)〕×100
・シクロオレフィンコポリマーピーク強度:2900~3000cm-1のピークトップ強度(C-H 伸縮振動)
・ポリイミド系樹脂ピーク強度:1480~1520cm-1のピークトップ強度(ベンゼン環のC=C 伸縮振動)
<試薬の詳細>
シクロオレフィンコポリマーの合成には、住友化学(株)製のトルエン、富士フイルム和光純薬(株)製のスチレン、荒川化学工業(株)製の2-ノルボルネン(以下「NB」という)、東ソー・ファインケム(株)製のトリイソブチルアルミニウム(以下「TIBA」という)、AGC(株)製のN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(以下「AB」という)を用いた。
トルエンは、モレキュラーシーブス13X(ユニオン昭和(株)製)と活性アルミナ(住友化学(株)製「NKHD-24」)とを用いて脱水し、次いで、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を除去したものを使用した。
NBは、トルエンに溶解させた後、モレキュラーシーブス13X(ユニオン昭和(株)製)と活性アルミナ(住友化学(株)製「NKHD-24」)とを用いて脱水し、次いで、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を除去したものを使用した(以下、「NB溶液」という)。なお、NB溶液中のNB濃度は、ガスクロマトグラフィーを用いて測定した。
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3-tert-ブチル-5-メチル-2-フェノキシ)チタンジクロリド(以下「錯体」という)は、特開平9-183809号公報に記載の方法に従って合成したものを使用した。
[シクロオレフィンコポリマーの製造]
<合成例1>
内部を減圧乾燥したオートクレーブに、NB溶液 1,500mL(NB濃度:3.00mol/L)を加え、60℃に昇温した。系内を攪拌しながら、水素分圧:5kPa、エチレン分圧:100kPaで加圧した後、TIBAのヘキサン溶液 4.0mL(濃度:1.0mol/L)と、ABを0.16gと、錯体のトルエン溶液 10.0mL(濃度:10mmol/L)とを加え、エチレンとNBとの重合を開始した。重合中は系内の温度を60℃に保ち、また、エチレンを連続的に供給して系内の圧力を開始時の値に保った。重合開始から3時間経過後、水 5.0mLを加えて重合を停止し、オートクレーブ内の溶液を抜き出した。抜き出された溶液に、トルエン 1,500gと、硫酸マグネシウム 100gとを加えて攪拌し、次いで、水 100mLを加えて攪拌し、固体を濾過により除去した。得られた液体をアセトンに滴下し、析出した粉末を濾過により単離した。単離された粉末を更にアセトンで洗浄し、減圧下、120℃で2時間乾燥して、シクロオレフィンコポリマーを216g得た。得られたシクロオレフィンコポリマーにおいて、NB含有量は82.5mol%であり、Tgは297℃であり、Mwは343,000であり、Mw/Mnは1.79であり、CTEは47.0ppm/Kであった。該シクロオレフィンコポリマーのδDは17.4MPa0.5であり、δPは1.6MPa0.5であり,δHは3.8MPa0.5であり、メソ型二連鎖/ラセモ型二連鎖は0.11であり、屈折率は1.54であった。合成例1の合成条件を表2に示す。
Figure 2023001899000018
<合成例2>
内部を減圧乾燥したオートクレーブに、NB溶液 1,427mL(NB濃度:3.00mol/L)、スチレン 55.2mLを加え、80℃に昇温した。系内を攪拌しながら、TIBAのヘキサン溶液 3.0mL(濃度:1.0mol/L)、AB 0.32g及び、錯体のトルエン溶液 15.0mL(濃度:10mmol/L)を加え、NBとスチレンの重合を開始した。重合中は系内の温度を80℃に保った。重合開始から2時間経過後、水 3.0mLを加えて重合を停止し、オートクレーブ内の溶液を抜き出した。抜き出された溶液に、得られた液体を大過剰量のアセトンに滴下し、析出した粉末を濾過により単離した。単離された粉末を更にアセトンで洗浄し、減圧下、150℃で2時間乾燥して、198.3gのシクロオレフィンコポリマーを得た。得られたシクロオレフィンコポリマーにおいて、NB含有量は96.3mol%であり、Mwは79,000であり、Mw/Mnは1.83であり、Tgは300℃超であった。また、該シクロオレフィンコポリマーのδDは17.4MPa0.5であり、δPは1.6MPa0.5であり,δHは3.8MPa0.5であった。合成例2の合成条件を表3に示す。
Figure 2023001899000019
<製造例1:シクロオレフィンコポリマー溶液1の製造>
合成例1で得たシクロオレフィンコポリマーをトルエンに2質量%の濃度で溶解して、シクロオレフィンコポリマー溶液1を得た。
<製造例2:シクロオレフィンコポリマー破砕粉1の製造>
合成例1で得たシクロオレフィンコポリマーを、株式会社喜多村社製のカウンタージェットミルで粉砕し、フィルターにより分級することによって、メジアン径が2.6μmの粒子であるシクロオレフィンコポリマー破砕粉1を得た。
<製造例3:シクロオレフィンコポリマー溶液2の製造>
合成例2で得たシクロオレフィンコポリマーをトルエンに2質量%の濃度で溶解して、シクロオレフィンコポリマー溶液2を得た。
<製造例4:シクロオレフィンコポリマー破砕粉2の製造>
合成例2で得たシクロオレフィンコポリマーを、(株)喜多村社製のカウンタージェットミルで粉砕し、フィルターにより分級することによって、メジアン径が2.7μmの粒子であるシクロオレフィンコポリマー破砕粉2を得た。
[ポリイミド樹脂の合成]
セパラブルフラスコにシリカゲル管、攪拌装置及び温度計を取り付けた反応器と、オイルバスとを準備した。乾燥窒素を用いてこのフラスコ内を窒素雰囲気にした後、6FDA 75.52gと、TFMB 54.44gとを投入した。これを400rpmで攪拌しながらDMAc 519.84gを加え、フラスコの内容物が均一な溶液になるまで攪拌を続けた。続いて、オイルバスを用いて容器内温度が20~30℃の範囲になるように調整しながらさらに20時間攪拌を続け、反応させてポリアミック酸を生成させた。30分後、撹拌速度を100rpmに変更した。20時間攪拌後、反応系温度を室温に戻し、DMAc 649.8gを加えてポリマー濃度が10質量%となるように調整した。さらに、ピリジン 32.27g、無水酢酸 41.65gを加え、室温で10時間攪拌してイミド化を行った。反応容器からポリイミドワニスを取り出した。得られたポリイミドワニスをメタノール中に滴下して再沈殿を行い、得られた粉体を加熱乾燥して溶媒を除去し、固形分としてポリイミド樹脂を得た。得られたポリイミド樹脂のδDは18.1MPa0.5であり、δPは8.3MPa0.5であり、δHは9.3MPa0.5であった。また、該ポリイミド樹脂のMwは334,300であり、Tgは361℃であった。なお、該ポリイミド樹脂と、製造例1で得られたシクロオレフィンコポリマーとのHSP値間距離は8.8であった。
[ポリアミック酸の合成]
セパラブルフラスコにシリカゲル管、攪拌装置及び温度計を取り付けた反応器を準備した。乾燥窒素を用いてこのフラスコ内を窒素雰囲気にした後、DMAc 399.20g、p-PDA 16.00g(0.148mol)を加えた後、室温で攪拌して、DMAcにp-PDAを溶解させた。これに、400rpmで攪拌しながら、BPDA 21.2869g(0.0724mol)とTAHQ 33.1603g(0.0724mol)とを加えた。その後、室温下で3時間撹拌することによりポリアミック酸溶液を得た。
〔実施例1〕
製造例1で得られたシクロオレフィンコポリマー溶液1 100.0gとGBL 98.0gを混合し、トルエン含有量がGBL 100質量部に対して7質量部となるように、50hPa、80℃で減圧留去してトルエンを留去し、粒子状シクロオレフィンコポリマー分散液を得た。上記方法にて測定した分散液及び組成物中の粒子状シクロオレフィンコポリマーのメジアン径は0.14μmであった。
得られた分散液 51.3g(シクロオレフィンコポリマー1.9質量%)に、(株)ADEKA製アデカスタブAO-330;(1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルメチル)-2,4,6-トリメチルベンゼン) 0.0487gを添加して攪拌した後、上記で得られたポリイミド樹脂を2.0g添加して、ポリイミド-シクロオレフィンコポリマー混合液として、組成物を得た。AO-330の含有量は、シクロオレフィンコポリマー 100質量部に対して、5.0質量部である。得られた組成物において、1mmを超えるシクロオレフィンコポリマーの凝集体は確認されなかった。
得られた組成物をガラス基板上において流涎成形し、線速0.4m/分で塗膜を成形した。70℃で60分、塗膜を加熱させ、ガラス基板からフィルムを剥離した後、金枠でフィルムを固定し更に窒素雰囲気下、200℃で60分間加熱することにより、厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂及び粒子状シクロオレフィンコポリマーの合計質量に対して、32.8質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は0.16μmであった。
実施例1で使用したシクロオレフィンコポリマーとポリイミド樹脂とのHSP値間距離は8.8であり、該シクロオレフィンコポリマーとトルエンとのHSP値間距離は2.2であり、ポリイミド樹脂とトルエンとのHSP値間距離は10.0であり、該シクロオレフィンコポリマーとGBLとのHSP値間距離は15.5であり、ポリイミド樹脂とGBLとのHSP値間距離は8.5であり、AO-330とGBLとのHSP値間距離は17.7であり、AO-330の構造SとGBLとのHSP値間距離は17.6であり、AO-330とシクロオレフィンコポリマーとのHSP値間距離は3.4であり、AO-330の構造SとシクロオレフィンコポリマーとのHSP値間距離は2.8であった。また、AO-330とポリイミド樹脂とのHSP値間距離は11.7であり、AO-330の構造Sとポリイミド樹脂とのHSP値間距離は11.5であり、AO-330とトルエンとのHSP値間距離は1.7であった。
上記溶解性の評価方法により、実施例1で使用したシクロオレフィンコポリマーはトルエンに溶解し、GBLに溶解しなかった。またポリイミド樹脂は、GBLに溶解し、トルエンに溶解しなかった。
〔実施例2〕
AO-330に代えて、BASFジャパン(株)製Irganox 1010;(ペンタエリスリトール テトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)) 0.0487gを添加したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド-シクロオレフィンコポリマー混合液としての組成物及び厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。Irganox 1010の含有量は、シクロオレフィンコポリマー100質量部に対して、5.0質量部である。得られたフィルムにおいて、粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂と粒子状シクロオレフィンコポリマーとの合計質量に対して32.8質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は0.16μmであった。
実施例2で使用したシクロオレフィンコポリマーとポリイミド樹脂とのHSP値間距離は8.8であり、該シクロオレフィンコポリマーとトルエンとのHSP値間距離は2.2であり、該シクロオレフィンコポリマーとGBLとのHSP値間距離は15.5であり、ポリイミド樹脂とトルエンとのHSP値間距離は10.0であり、ポリイミド樹脂とGBLとのHSP値間距離は8.5であり、Irganox 1010とGBLとのHSP値間距離は15.9であり、Irganox 1010の構造SとGBLとのHSP値間距離は12.7であり、Irganox 1010とシクロオレフィンコポリマーとのHSP値間距離は4.5であり、Irganox 1010の構造SとシクロオレフィンコポリマーとのHSP値間距離は4.3であった。また、Irganox 1010とポリイミド樹脂とのHSP値間距離は7.8であり、Irganox 1010の構造Sとポリイミド樹脂とのHSP値間距離は5.9であり、Irganox 1010とトルエンとのHSP値間距離は5.6であった。
〔実施例3〕
AO-330に代えて、BASFジャパン(株)製Irganox 1010 0.0487g、BASFジャパン(株)製Irgafos 168;(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト) 0.0292gを添加したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド-シクロオレフィンコポリマー混合溶としての組成物及び厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。Irganox 1010、Irgafos 168のそれぞれの含有量は、シクロオレフィンコポリマー100質量部に対して、5.0質量部、3.0質量部である。得られたフィルムにおいて、粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂と粒子状シクロオレフィンコポリマーとの合計質量に対して32.8質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は0.16μmであった。
実施例3で使用したシクロオレフィンコポリマーとポリイミド樹脂とのHSP値間距離は8.8であり、該シクロオレフィンコポリマーとトルエンとのHSP値間距離は2.2であり、該シクロオレフィンコポリマーとGBLとのHSP値間距離は15.5であり、ポリイミド樹脂とトルエンとのHSP値間距離は10.0であり、ポリイミド樹脂とGBLとのHSP値間距離は8.5であり、Irganox 1010とGBLとのHSP値間距離は15.9であり、Irganox 1010の構造SとGBLとのHSP値間距離は12.7であり、Irganox 1010とシクロオレフィンコポリマーとのHSP値間距離は4.5であり、Irganox 1010の構造SとシクロオレフィンコポリマーとのHSP値間距離は4.3であった。また、Irganox 1010とポリイミド樹脂とのHSP値間距離は7.8であり、Irganox 1010の構造Sとポリイミド樹脂とのHSP値間距離は5.9であり、Irganox 1010とトルエンとのHSP値間距離は5.6であった。
〔比較例1〕
AO-330に代えて、住友化学(株)製Sumilizer GA80;(ビス[3-[3-(tert-ブチル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]プロパン酸]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイルビス(2-メチルプロパン-2,1-ジイル) 0.0487gを添加したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド-シクロオレフィンコポリマー混合液としての組成物及び厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。Sumilizer GA80の含有量は、シクロオレフィンコポリマー 100質量部に対して、5.0質量部である。得られたフィルムにおいて、粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂と粒子状シクロオレフィンコポリマーとの合計質量に対して32.8質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は0.16μmであった。
比較例1で使用したシクロオレフィンコポリマーとポリイミド樹脂とのHSP値間距離は8.8であり、該シクロオレフィンコポリマーとトルエンとのHSP値間距離は2.2であり、該シクロオレフィンコポリマーとGBLとのHSP値間距離は15.5であり、ポリイミド樹脂とトルエンとのHSP値間距離は10.0であり、ポリイミド樹脂とGBLとのHSP値間距離は8.5であり、Sumilizer GA80とGBLとのHSP値間距離は15.3であり、Sumilizer GA80の構造SとGBLとのHSP値間距離は12.2であり、Sumilizer GA80とシクロオレフィンコポリマーとのHSP値間距離は2.0であり、Sumilizer GA80の構造SとシクロオレフィンコポリマーとのHSP値間距離は3.7であった。また、Sumilizer GA80とポリイミド樹脂とのHSP値間距離は8.1であり、Sumilizer GA80の構造Sとポリイミド樹脂とのHSP値間距離は6.5であり、Sumilizer GA80とトルエンとのHSP値間距離は2.8であった。
〔実施例4〕
製造例2で得られたシクロオレフィンコポリマー破砕粉1 7.31g、DMAc 52.03g、AO-330 0.365gを混合し、撹拌することで分散液を得た。得られた分散液にポリアミック酸溶液 100g(ポリアミック酸 15質量%)を添加して、ポリアミック酸-シクロオレフィンコポリマー混合溶液としての組成物を得た。AO-330の含有量は、シクロオレフィンコポリマー 100質量部に対して、5.0質量部である。
得られた組成物をガラス基板上において流涎成形により、線速0.4m/分で塗膜を作製した。50℃で80分、塗膜を加熱させ、ガラス基板からポリアミック酸-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを剥離した後、金枠でフィルムを固定し更に窒素雰囲気下、360℃まで段階的に昇温し、360℃で5分間加熱することにより、ポリアミック酸はイミド化され、厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。得られたフィルムにおいて、粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂と粒子状シクロオレフィンコポリマーとの合計質量に対して32.8質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は2.7μmであった。
実施例4で使用したシクロオレフィンコポリマーとポリアミック酸とのHSP値間距離は6.0以上であり、シクロオレフィンコポリマーとDMAcとのHSP値間距離は11.4であり、AO-330とDMAcとのHSP値間距離は14.4であり、AO-330の構造SとDMAcとのHSP値間距離は14.0であり、AO-330とシクロオレフィンコポリマーとのHSP値間距離は3.4であり、AO-330の構造SとシクロオレフィンコポリマーとのHSP値間距離は2.8であった。また、実施例4で使用したシクロオレフィンコポリマーと、ポリアミック酸をイミド化して得られたポリイミド樹脂とのHSP値間距離は6.0以上であった。
上記溶解性の評価方法により、実施例4で使用したポリアミック酸は、DMAcに溶解し、トルエンに溶解しなかった。
〔実施例5〕
実施例1と同様にして作製した組成物を、ガラス基板上において流涎成形し、線速0.4m/分で塗膜を成形した。70℃で60分、塗膜を加熱させ、ガラス基板からフィルムを剥離した後、金枠でフィルムを固定し、更に大気下、360℃で15分間加熱することにより、厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂及び粒子状シクロオレフィンコポリマーの合計質量に対して、32.8質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は0.16μmであった。
〔実施例6〕
実施例2と同様に作製した組成物を用いた以外は、実施例5と同様の方法で、厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂及び粒子状シクロオレフィンコポリマーの合計質量に対して、32.8質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は0.16μmであった。
〔実施例7〕
実施例3と同様に作製した組成物を用いた以外は、実施例5と同様の方法で、厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂及び粒子状シクロオレフィンコポリマーの合計質量に対して、32.8質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は0.16μmであった。
〔比較例2〕
比較例1と同様に作製した組成物を用いた以外は、実施例5と同様の方法で、厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂及び粒子状シクロオレフィンコポリマーの合計質量に対して、32.8質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は0.16μmであった。
〔実施例8〕
実施例4と同様にして作製した組成物を、ガラス基板上において流涎成形により、線速0.4m/分で塗膜を作製した。50℃で80分、塗膜を加熱させ、ガラス基板からポリアミック酸-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを剥離した後、金枠でフィルムを固定し、更に大気下、360℃で15分間加熱することにより、ポリアミック酸はイミド化され、厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。得られたフィルムにおいて、粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂と粒子状シクロオレフィンコポリマーとの合計質量に対して32.8質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は2.7μmであった。
〔実施例9〕
製造例3で得られたシクロオレフィンコポリマー溶液2 100.0gとDMAc 98.0gを混合し、トルエン含有量DMAc 100質量部に対して0.6質量部となるように、50hPa、80℃で減圧留去してトルエンを留去し、粒子状シクロオレフィンコポリマー分散液を得た。上記方法にて測定した分散液及び組成物中の粒子状シクロオレフィンコポリマーのメジアン径は0.13μmであった。
得られた分散液 30.0g(シクロオレフィンコポリマー 2.0質量%)に、(株)ADEKA製アデカスタブAO-330;(1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルメチル)-2,4,6-トリメチルベンゼン) 0.03gを添加して攪拌した後、上記で得られたポリアミック酸溶液を8.0g添加して、ポリアミック酸-シクロオレフィンコポリマー混合液として、組成物を得た。AO-330の含有量は、シクロオレフィンコポリマー 100質量部に対して、5.0質量部である。得られた組成物において、1mmを超えるシクロオレフィンコポリマーの凝集体は確認されなかった。
上記で得られた組成物を用いた以外は、実施例4と同様にして、厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。得られたフィルムにおいて、粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂と粒子状シクロオレフィンコポリマーとの合計質量に対して33.3質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は0.15μmであった。
実施例9で使用したシクロオレフィンコポリマーとポリアミック酸とのHSP値間距離は6.0以上であり、該シクロオレフィンコポリマーとトルエンとのHSP値間距離は2.2であり、シクロオレフィンコポリマーとDMAcとのHSP値間距離は11.4であり、AO-330とDMAcとのHSP値間距離は14.4であり、AO-330の構造SとDMAcとのHSP値間距離は14.0であり、AO-330とシクロオレフィンコポリマーとのHSP値間距離は3.4であり、AO-330の構造SとシクロオレフィンコポリマーとのHSP値間距離は2.8であった。また、実施例9で使用したシクロオレフィンコポリマーと、ポリアミック酸をイミド化して得られたポリイミド樹脂とのHSP値間距離は6.0以上であった。
上記溶解性の評価方法により、実施例9で使用したシクロオレフィンコポリマーはトルエンに溶解し、DMAcに溶解しなかった。またポリアミック酸は、DMAcに溶解し、トルエンに溶解しなかった。
〔実施例10〕
シクロオレフィンコポリマー破砕粉1に代えて、製造例4で得られたシクロオレフィンコポリマー破砕粉2を添加したこと以外は、実施例4と同様にして、ポリアミック酸-シクロオレフィンコポリマー混合溶液としての組成物及び厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。AO-330の含有量は、シクロオレフィンコポリマー 100質量部に対して、5.0質量部である。得られたフィルムにおいて、粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂と粒子状シクロオレフィンコポリマーとの合計質量に対して32.8質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は2.7μmであった。
実施例10で使用したシクロオレフィンコポリマーとポリアミック酸とのHSP値間距離は6.0以上であり、シクロオレフィンコポリマーとDMAcとのHSP値間距離は11.4であり、AO-330とDMAcとのHSP値間距離は14.4であり、AO-330の構造SとDMAcとのHSP値間距離は14.0であり、AO-330とシクロオレフィンコポリマーとのHSP値間距離は3.4であり、AO-330の構造SとシクロオレフィンコポリマーとのHSP値間距離は2.8であった。また、実施例10で使用したシクロオレフィンコポリマーと、ポリアミック酸をイミド化して得られたポリイミド樹脂とのHSP値間距離は6.0以上であった。
上記溶解性の評価方法により、実施例10で使用したシクロオレフィンコポリマーはトルエンに溶解し、DMAcに溶解しなかった。またポリアミック酸は、DMAcに溶解し、トルエンに溶解しなかった。
〔実施例11〕
製造例1で得られたシクロオレフィンコポリマー溶液1 100.0gとDMAc 98.0gを混合し、トルエン含有量がDMAc 100質量部に対して7質量部となるように、50hPa、80℃で減圧留去してトルエンを留去し、粒子状シクロオレフィンコポリマー分散液を得た。上記方法にて測定した分散液及び組成物中の粒子状シクロオレフィンコポリマーのメジアン径は0.13μmであった。
上記で作製した粒子状シクロオレフィンコポリマー分散液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂及び粒子状シクロオレフィンコポリマーの合計質量に対して、32.8質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は0.14μmであった。
実施例11で使用したシクロオレフィンコポリマーとトルエンとのHSP値間距離は2.2であり、該シクロオレフィンコポリマーとDMAcとのHSP値間距離は11.4であり、AO-330とDMAcとのHSP値間距離は14.4であり、AO-330の構造SとDMAcとのHSP値間距離は14.0であった。
上記溶解性の評価方法により、実施例11で使用したシクロオレフィンコポリマーはトルエンに溶解し、DMAcに溶解しなかった。またポリイミド樹脂は、DMAcに溶解し、トルエンに溶解しなかった。
〔実施例12〕
実施例9と同様に作製した組成物を用いた以外は、実施例8と同様の方法で、厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂及び粒子状シクロオレフィンコポリマーの合計質量に対して、33.3質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は0.15μmであった。
〔実施例13〕
実施例10と同様に作製した組成物を用いた以外は、実施例8と同様の方法で、厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂及び粒子状シクロオレフィンコポリマーの合計質量に対して、32.8質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は2.7μmであった。
〔実施例14〕
実施例11と同様に作製した組成物を用いた以外は、実施例5と同様の方法で、厚さ50μmのポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムを得た。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの含有量は、ポリイミド樹脂及び粒子状シクロオレフィンコポリマーの合計質量に対して、32.8質量%であった。得られた複合フィルム中の粒子状シクロオレフィンコポリマーの平均一次粒子径は0.15μmであった。
実施例及び比較例で得られたポリイミド-シクロオレフィンコポリマー複合フィルムのIRピーク維持率及び吸湿率を上記方法に従い測定した。得られた結果を表4及び表5に示す。
Figure 2023001899000020
Figure 2023001899000021
表4に示されるように、実施例1~4、9~11で得られたフィルムは、比較例1と比べ、COCのIRピーク維持率が高く、耐熱性に優れていた。また、表5に示されるように、実施例5~8、12~14で得られたフィルムは吸湿率が低く、比較例2と比べ、耐吸湿性に優れていた。

Claims (9)

  1. 樹脂(A)、シクロオレフィン系ポリマー(B)、フェノール系酸化防止剤(C)及び溶媒を含み、
    フェノール系酸化防止剤(C)は、式(P):
    Figure 2023001899000022
    [式(P)中、R、R、R及びRは、互いに独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数5~12のシクロアルキル基を表し、*は結合手を表す]
    で表される置換基Pを含み、
    式(1):
    [HSP値間距離((B);構造S)/HSP値間距離(溶媒;構造S)]/[HSP値間距離((B);(C))/HSP値間距離(溶媒;(C))]≦2.2 (1)
    〔式(1)中、HSP値間距離((B);構造S)は、シクロオレフィン系ポリマー(B)と、フェノール系酸化防止剤(C)中の置換基Pを水素原子に置換した構造SとのHSP値間距離を表し、HSP値間距離(溶媒;構造S)は、溶媒と構造SとのHSP値間距離を表し、HSP値間距離((B);(C))は、シクロオレフィン系ポリマー(B)とフェノール系酸化防止剤(C)とのHSP値間距離を表し、HSP値間距離(溶媒;(C))は、溶媒とフェノール系酸化防止剤(C)とのHSP値間距離を表す〕
    を満たす、組成物。
  2. 式(1)中の[HSP値間距離((B);(C))/HSP値間距離(溶媒;(C))]は、0.14以上である、請求項1に記載の組成物。
  3. 式(1)中のHSP値間距離(溶媒;構造S)は12.5以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 式(1)中のHSP値間距離((B);(C))は6.0以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
  5. シクロオレフィン系ポリマー(B)は粒子状である、請求項1又は2に記載の組成物。
  6. シクロオレフィン系ポリマー(B)のガラス転移温度が100℃以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
  7. シクロオレフィン系ポリマー(B)は、式(I):
    Figure 2023001899000023
    [式(I)中、mは0以上の整数を表し、R~R18は、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、R11~R14が複数存在する場合、それらは同一であってもよく、異なっていてもよく、R16とR17とは互いに結合し、それらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい]
    で表されるシクロオレフィン由来の単量体単位(I)を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  8. シクロオレフィン系ポリマー(B)における前記単量体単位(I)の含有量は、シクロオレフィン系ポリマー(B)を構成する繰り返し単位の合計モル量に対して、60モル%以上である、請求項7に記載の組成物。
  9. 樹脂(A)、シクロオレフィン系ポリマー(B)及びフェノール系酸化防止剤(C)を含むフィルムであって、大気中、360℃で5分間アニール処理した際のシクロオレフィン系ポリマー(B)に由来する2500~3500cm-1の範囲におけるIRピークの維持率は50%以上である、フィルム。
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