JP2023000373A - 連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、連続強化繊維への熱可塑性樹脂の含浸性が良好で、生産性の高い連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、衝撃特性に優れる連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を提供することを目的とする。【解決手段】連続強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させることを含み、熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散項と極性項をそれぞれγpold、γpolpとし、連続強化繊維の表面自由エネルギーの分散項と極性項をそれぞれγfibd、γfibpとしたときに、ΔWfloc=2(((γpold)1/2-(γfibd)1/2)2+((γpolp)1/2-(γfibp)1/2)2)で表されるΔWfloc[mJ/m2]と、熱可塑性樹脂のメルトフローレート(融点+5℃で測定)の値MFR[g/10min]とが、ΔWfloc/MFR≦0.9[mJ・10min/m2・g]の関係を満たすことを特徴とする、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料及びその製造方法に関する。
各種機械や自動車等の構造部品、圧力容器、及び管状の構造物等には、マトリックス樹脂材料にガラス繊維等の強化材が添加された複合材料成形体が使用されている。特に、強度の観点から、強化繊維が連続繊維である連続繊維強化樹脂複合材料が望まれている。
連続繊維強化樹脂複合材料は、複合材料中のボイドが強度に影響を及ぼすことが知られており、樹脂が繊維に十分に含浸することが重要である。また、連続繊維強化樹脂複合材料の生産にあたる固定費を削減するためには、短時間のプロセスでの樹脂の繊維への含浸が不可欠である。繊維への樹脂の含浸を早めるために、アラミド繊維上にシランカップリング剤、界面活性材を塗布したもの(例えば、特許文献1参照)、2種類の樹脂を混錬することにより、樹脂粘度を特定の範囲に規定したもの(例えば、特許文献2参照)、繊維の表面自由エネルギーを大きくし、樹脂の濡れを促進させる方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
国際公開第2007/055017号 国際公開第2019/189820号 特許第6356497号公報
しかしながら、上記従来技術の連続繊維強化樹脂複合材料では、いずれも、連続強化繊維に対して樹脂の含浸性(含浸スピード)が十分でなく、生産性の点で更なる改善が望まれる。また、繊維束間や繊維層間にボイドが存在する場合、強度、弾性率、衝撃等の物性が十分でない点で改善の余地がある。
そこで、かかる従来技術の水準に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、連続強化繊維への熱可塑性樹脂の含浸性が良好で、生産性の高い連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法を提供することである。また、本発明が解決しようとする課題は、衝撃特性に優れる連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を提供することである。
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討し、実験を重ねた結果、熱可塑性樹脂のメルトフローレートの値MFR[g/10min]に対する、熱可塑性樹脂と連続強化繊維の表面自由エネルギーより計算されるΔWfloc[mJ/m]の比率(ΔWfloc/MFR)を特定の範囲とすることで、上記課題を解決できることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]
連続強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させることを含み、
前記熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散項と極性項をそれぞれγpol 、γpol とし、前記連続強化繊維の表面自由エネルギーの分散項と極性項をそれぞれγfib 、γfib としたときに、ΔWfloc=2(((γpol 1/2 -(γfib 1/2+((γpol 1/2 -(γfib 1/2)で表されるΔWfloc[mJ/m]と、
前記熱可塑性樹脂のメルトフローレート(融点+5℃で測定)の値MFR[g/10min]とが、
ΔWfloc/MFR≦0.9[mJ・10min/m・g]の関係を満たす
ことを特徴とする、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
[2]
前記連続強化繊維が無機繊維である、[1]に記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
[3]
前記無機繊維がガラス繊維及び/又は炭素繊維である、[2]に記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
[4]
前記熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂である、[1]~[3]のいずれかに記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
[5]
熱可塑性樹脂と連続強化繊維とを含み、
前記熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散項と極性項をそれぞれγpol 、γpol とし、前記連続強化繊維の表面自由エネルギーの分散項と極性項をそれぞれγfib 、γfib としたときに、ΔWfloc=2(((γpol 1/2 -(γfib 1/2+((γpol 1/2 -(γfib 1/2)で表されるΔWfloc[mJ/m]と、
前記熱可塑性樹脂のメルトフローレート(融点+5℃で測定)の値MFR[g/10min]とが、
ΔWfloc/MFR≦0.9[mJ・10min/m・g]の関係を満たす
ことを特徴とする、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料。
[6]
前記連続強化繊維が無機繊維である、[5]に記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料。
[7]
前記無機繊維がガラス繊維及び/又は炭素繊維である、[6]に記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料。
[8]
前記熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂である、[5]~[7]のいずれかに記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料。
本発明によれば、連続強化繊維への熱可塑性樹脂の含浸性が良好で、生産性の高い連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、衝撃特性に優れる連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を提供することができる。
実施例及び比較例で得られた連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の含浸距離の測定結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法]
本実施形態の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料(以下、単に「連続繊維強化樹脂複合材料」又は「複合材料」ともいう。)の製造方法は、連続強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させることを含み、前記熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散項と極性項をそれぞれγpol 、γpol とし、前記連続強化繊維の表面自由エネルギーの分散項と極性項をそれぞれγfib 、γfib としたときに、ΔWfloc=2(((γpol 1/2 -(γfib 1/2+((γpol 1/2 -(γfib 1/2)で表されるΔWfloc[mJ/m]と、前記熱可塑性樹脂のメルトフローレート(融点+5℃で測定)の値MFR[g/10min]とが、ΔWfloc/MFR≦0.9[mJ・10min/m・g]の関係を満たすことを特徴とする。
連続強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させて連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を得る方法は、特に制限されず、以下の種々の方法が挙げられる。
一方法では、例えば、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する基材(例えば、連続強化繊維からなる基材、熱可塑性樹脂からなる基材)を、所望の複合材料に合わせて裁断又は賦形し、目的とする製品の厚みを考慮して必要個数積み重ね又は必要枚数積層させ、金型に金型形状に合わせてセットする。
基材の裁断は、1枚ずつ行ってもよいし、所望の枚数を重ねてから行ってもよい。生産性の観点からは、重ねた状態で裁断することが好ましい。裁断する方法は、任意の方法でよく、例えば、ウォータージェット、刃プレス機、熱刃プレス機、レーザー、プロッター等が挙げられる。中でも、断面形状に優れ、更に、複数を重ねて裁断する際に端面を溶着することで取扱い性がよくなる熱刃プレス機が好ましい。適切な裁断形状は、トライアンドエラーを繰り返すことでも調整できるが、金型の形状にあわせてCAE(computer aided engineering)によるシミュレーションを行うことで設定することが好ましい。
基材の賦形は、任意の方法で行ってよく、例えば、シート状の形状に賦形してよい。
基材を金型にセットした後に金型を閉じて圧縮する。そして、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度に金型を温調して熱可塑性樹脂を溶融させ、賦形する。型締め圧力に特に規定はないが、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上である。また、ガス抜き等をするために一旦型締めをし、圧縮成形した後に一旦金型の型締め圧力を解除してもよい。圧縮成形の時間は、強度発現の観点からは、使用される熱可塑性樹脂が熱劣化しない範囲で長い方が好ましいが、生産性の観点からは、好ましくは2分以内、より好ましくは1分以内が適している。
その他の方法として、ダブルベルトプレス機や連続圧縮成形装置により連続繊維強化樹脂複合材料を構成する基材を連続的に供給し、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱して任意の圧力で圧縮成形し、熱可塑性樹脂の結晶化温度やガラス転移温度以下に冷却して製造する方法が挙げられる。
連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造において、熱可塑性樹脂が連続強化繊維に短時間で十分に含浸するかどうかは、熱可塑性樹脂と連続強化繊維との親和性によって決定される。ここで言う親和性は、熱可塑性樹脂と連続強化繊維の表面自由エネルギーの分散項と極性項それぞれの値の近さにより定量化でき、下記式で求められるΔWflocで表すことができる
ΔWfloc=2(((γpol 1/2-(γfib 1/2+((γpol 1/2-(γfib 1/2
γpol ・・・熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散項
γpol ・・・熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの極性項
γfib ・・・連続強化繊維の表面自由エネルギーの分散項
γfib ・・・連続強化繊維の表面自由エネルギーの極性項
ΔWflocは、樹脂と繊維のなじみやすさを示していると考えられる。ΔWflocの値が大きいほど、熱可塑性樹脂と連続強化繊維の分散項、極性項が大きく異なるため、樹脂-繊維の相互作用を作り出すのに必要なエネルギー、すなわち含浸にかかるエネルギーは大きくなり、同じ温度及び同じ時間で測定したときの含浸距離が短くなる(含浸スピードが遅くなる)。反対に、ΔWflocの値が小さいほど、含浸にかかるエネルギーは小さくなり、同じ温度及び同じ時間で測定したときの含浸距離が長くなる(含浸スピードが速くなる)。従って、ΔWflocの値が小さいほど短時間で熱可塑性樹脂を連続強化繊維に含浸させることができ、複合材料の生産性が向上する。
ΔWflocは、熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散項及び極性項、連続強化繊維の表面自由エネルギーの分散項及び極性項を適宜調整することで、調整することができる。
特に、連続強化繊維の表面自由エネルギーについては、連続強化繊維の表面処理によって、適切に調整することができる。例えば、シランカップリング剤としてアミノシランを用いてガラス強化繊維の表面処理を行った場合、ガラス強化繊維の表面自由エネルギーの極性項は低くなる傾向にある。逆に、アミノシラン以外のシランカップリング剤を用いてガラス強化繊維の表面処理を行った場合、例えば、エポキシ基や酸無水物などの官能基を有するシランカップリング剤を用いてガラス強化繊維の表面処理を行った場合には、ガラス強化繊維の表面自由エネルギーの極性項は高くなる傾向にある。
ΔWflocは、繊維に対する樹脂の含浸性の観点から、10mJ/m以下であることが好ましく、より好ましくは5mJ/m以下、さらに好ましくは1mJ/m以下である。
また、連続強化繊維への熱可塑性樹脂の含浸性(含浸スピード)は、熱可塑性樹脂のメルトフローレート(融点+5℃で測定)の値MFRが大きく影響することがわかった。MFRは、熱可塑性樹脂の連続強化繊維への入り込みやすさを示していると考えられる。熱可塑性樹脂の流動性が高ければ、連続強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させる時間が短くなり、必要最低限の時間で熱可塑性樹脂が十分含浸するため、複合材料の生産性が向上する。
熱可塑性樹脂のMFRは、得られる連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の強度、剛性、成形性、外観の観点から80g/10min以下であることが好ましく、60g/10min以下であることがより好ましく、40g/10min以下であることがさらに好ましい。また、繊維への含浸性やフィルムの製膜性の観点から、5g/10min以上であることが好ましく、より好ましくは10g/10min以上、さらに好ましくは20g/10min以上である。
発明者が鋭意検討した結果、ΔWflocのMFRに対する比率(ΔWfloc/MFR)を適切に調整することで、連続繊維強化樹脂複合材料の含浸性を高めることができることがわかった。
本実施形態の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は、ΔWfloc/MFRの値が、0.9[mJ・10min/m・g]以下であり、好ましくは0.5[mJ・10min/m・g]以下であり、より好ましくは0.1[mJ・10min/m・g]以下である。ΔWfloc/MFRが上記範囲であると、熱可塑性樹脂が連続強化繊維に短時間で十分に含浸し、連続繊維強化樹脂複合材料の生産性が高くなる。
ΔWflocは、熱可塑性樹脂及び連続強化繊維のそれぞれについて、水の接触角と流動パラフィンの接触角とを求めることにより表面自由エネルギーの分散項及び極性項を求め、上述のΔWflocの計算式に代入することにより求められる値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で算出することができる。
また、MFRは、ISO1133に準拠して、融点+5℃で測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
なお、連続強化繊維と熱可塑性樹脂との濡れ性は、連続強化繊維と熱可塑性樹脂との濡れ角θが小さい場合に良好とされ、下記の式に従い、連続強化繊維の表面自由エネルギーが熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーよりも高い場合に濡れ角θが小さくなる。
2((γfib γpol 1/2+(γfib γpol 1/2)=(γpol +γpol )(1+cosθ)
γpol ・・・熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散項
γpol ・・・熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの極性項
γfib ・・・連続強化繊維の表面自由エネルギーの分散項
γfib ・・・連続強化繊維の表面自由エネルギーの極性項
一方、ΔWflocは、下記の式に従い、上述のとおり、熱可塑性樹脂と連続強化繊維の各表面自由エネルギーの値の差が小さければ小さいほど低い値となる。
ΔWfloc=2(((γpol 1/2 -(γfib 1/2+((γpol 1/2 -(γfib 1/2
このように、濡れ性(濡れ角θ)とΔWflocとは導出する式が異なり、含浸性の指標として異なるものである。
また、表面張力は、一般に液体の表面自由エネルギーを指し、表面自由エネルギーの分散項と極性項との和で表される。表面張力を含浸性の指標とすると、連続強化繊維と熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散項と極性項それぞれの差を考慮することができず、精度に欠ける。
(連続強化繊維)
連続強化繊維としては、通常の連続繊維強化樹脂複合材料に使用されるものを用いてよい。
連続強化繊維としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックス繊維等の無機繊維;植物繊維、アラミド繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール系繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維等の有機繊維が挙げられる。
機械的特性、熱的特性、汎用性の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維、アラミド繊維が好ましく、生産性の面からは、ガラス繊維が好ましい。
上記連続強化繊維は、1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂100質量部に対する連続強化繊維の含有量は、好ましくは49~84質量部であり、より好ましくは60~77質量部であり、さらに好ましくは65~73質量部である。
連続繊維強化樹脂複合材料中の連続強化繊維の体積含有率Vf(%)は、好ましくは30~70%であり、より好ましくは40~60%であり、さらに好ましくは45~55%である。
-集束剤-
連続強化繊維として、ガラス繊維を選択する場合、集束剤を用いてもよい。
集束剤(サイジング剤)は、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなる群から選択される1種以上を含むものであってよく、少なくとも結束剤又はシランカップリング剤を含むことが好ましく、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなることがより好ましい。連続強化繊維の周りを被膜する樹脂と強い結合を作る集束剤であることにより、空隙率の少ない連続繊維強化樹脂複合材料を得ることができる。
集束剤は、使用される材料に対して外的に加えられてもよく、使用される材料に内的に含まれていてもよい。例えば、潤滑剤は、用いられる熱可塑性樹脂の市販品に含まれている場合がある。
--シランカップリング剤--
シランカップリング剤は、通常、ガラス繊維の表面処理剤として用いられ、界面接着強度向上に寄与する。
シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類、マレイン酸類等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としてポリアミドを用いる際には、ポリアミド樹脂の末端基であるカルボキシル基、アミノ基と結合しやすいものを選択することが好ましく、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン類やマレイン酸類、エポキシシラン類が好ましい。
シランカップリング剤は、連続強化繊維の表面自由エネルギーの分散項と極性項とを決定する重要な因子である。シランカップリング剤を用いて連続強化繊維の表面を処理し、連続強化繊維の表面自由エネルギーの分散項と極性項とを調整することにより、ΔWflocを適切に調整することができる。
--潤滑剤--
潤滑剤は、ガラス繊維の開繊性向上に寄与する。
潤滑剤としては、シランカップリング剤及び結束剤を阻害しない限り、目的に応じた通常の液体又は固体の任意の潤滑材料が使用可能であり、以下に限定されるものではないが、例えば、カルナウバワックスやラノリンワックス等の動植物系又は鉱物系のワックス;脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、芳香族系エステル、芳香族系エーテル等の界面活性剤等が挙げられる。
--結束剤--
結束剤は、ガラス繊維の集束性向上及び界面接着強度向上に寄与する。
結束剤としては、目的に応じたポリマー、連続繊維強化樹脂複合材料の主たる材料としての熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂が使用可能である。
結束剤としてのポリマーは、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等が挙げられる。また、例えば、m-キシリレンジイソシアナート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)及びイソホロンジイソシアナート等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるポリウレタン系樹脂も好適に使用される。
アクリル酸のホモポリマーとしては、重量平均分子量が1,000~90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000~25,000である。
アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーを構成する共重合性モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びメサコン酸よりなる群から選択される1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く)。共重合性モノマーとして、エステル系モノマーを1種以上有することが好ましい。
アクリル酸のホモポリマー及びコポリマーの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩やグリシン塩等が挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤等)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20~90%とすることが好ましく、40~60%とすることがより好ましい。
塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、3,000~50,000の範囲が好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から、3,000以上が好ましく、複合材料とした際の特性向上の観点から50,000以下が好ましい。
結束剤として用いられる熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性フッ素系樹脂、及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂等が挙げられる。結束剤として用いられる熱可塑性樹脂は、連続強化繊維の周囲を被覆する樹脂と同種の熱可塑性樹脂及び/又は変性熱可塑性樹脂であると、複合材料となった後、ガラス繊維と熱可塑性樹脂の接着性が向上し、好ましい。
熱可塑性樹脂としてポリアミドを用いる際には、結束剤としてはポリアミド樹脂と濡れ性のよい、又は表面張力の近い樹脂を用いることが好ましい。具体的には、例えば、ポリウレタン樹脂のエマルジョンやポリアミド樹脂のエマルジョンやその変性体を選択することができる。
更に、一層、連続強化繊維とそれを被覆する熱可塑性樹脂の接着性を向上させ、集束剤を水分散体としてガラス繊維に付着させる場合において、乳化剤成分の比率を低減、あるいは乳化剤不要とできる等の観点から、結束剤として用いられる熱可塑性樹脂としては、変性熱可塑性樹脂が好ましい。
ここで、変性熱可塑性樹脂とは、熱可塑性樹脂の主鎖を形成し得るモノマー成分以外に、その熱可塑性樹脂の性状を変化させる目的で、異なるモノマー成分を共重合させ、親水性、結晶性、熱力学特性等を改質したものを意味する。
結束剤として用いられる変性熱可塑性樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、変性ポリオレフィン系樹脂、変性ポリアミド系樹脂、変性ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
結束剤としての変性ポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマーと不飽和カルボン酸及び/又はそのエステル体等のオレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体であり、公知の方法で製造できる。オレフィン系モノマーと不飽和カルボン酸及び/又はそのエステル体とを共重合させたランダム共重合体でもよいし、オレフィンに不飽和カルボン酸をグラフトしたグラフト共重合体でもよい。
オレフィン系モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和カルボン酸、及びこれら不飽和カルボン酸のエステル化体(メチルエステル、エチルエステル等)等が挙げられ、これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
オレフィン系モノマーと、当該オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合比率としては、共重合成分の合計質量を100質量%として、オレフィン系モノマー60~95質量%、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマー5~40質量%であることが好ましく、オレフィン系モノマー70~85質量%、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマー15~30質量%であることがより好ましい。オレフィン系モノマーが60質量%以上であれば、マトリックスとの親和性が良好であり、また、オレフィン系モノマーの質量%が95質量%以下であれば、変性ポリオレフィン系樹脂の水分散性が良好で、連続強化繊維への均一付与が行いやすい。
結束剤として用いられる変性ポリオレフィン系樹脂は、共重合により導入したカルボキシル基等の変性基が、塩基性化合物で中和されていてもよい。塩基性化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ類;アンモニア;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類が挙げられる。結束剤として用いられる変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、5,000~200,000が好ましく、50,000~150,000がより好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から5,000以上が好ましく、水分散性とする場合の乳化安定性の観点から200,000以下が好ましい。
結束剤として用いられる変性ポリアミド系樹脂とは、分子鎖中にポリアルキレンオキサイド鎖や3級アミン成分等の親水基を導入した変性ポリアミド化合物であり、公知の方法で製造できる。
分子鎖中にポリアルキレンオキサイド鎖を導入する場合は、例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等の一部又は全部をジアミン又はジカルボン酸に変性したものを共重合して製造される。3級アミン成分を導入する場合は、例えばアミノエチルピペラジン、ビスアミノプロピルピペラジン、α-ジメチルアミノε-カプロラクタム等を共重合して製造される。
結束剤として用いられる変性ポリエステル系樹脂とは、ポリカルボン酸又はその無水物とポリオールとの共重合体で、かつ末端を含む分子骨格中に親水基を有する樹脂であり、公知の方法で製造できる。
親水基としては、例えば、ポリアルキレンオキサイド基、スルホン酸塩、カルボキシル基、これらの中和塩等が挙げられる。ポリカルボン酸又はその無水物としては、芳香族ジカルボン酸、スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3官能以上のポリカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸等が挙げられる。
スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スルホテレフタル酸塩、5-スルホイソフタル酸塩、5-スルホオルトフタル酸塩等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸又は脂環式ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
3官能以上のポリカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
これらの中で、変性ポリエステル系樹脂の耐熱性を向上させる観点から、全ポリカルボン酸成分の40~99モル%が芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。また、変性ポリエステル系樹脂を水分散液とする場合の乳化安定性の観点から、全ポリカルボン酸成分の1~10モル%がスルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。
変性ポリエステル系樹脂を構成するポリオールとしては、ジオール、3官能以上のポリオール等が挙げられる。
ジオールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA又はそのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。3官能以上のポリオールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
変性ポリエステル系樹脂を構成するポリカルボン酸又はその無水物とポリオールとの共重合比率としては、共重合成分の合計質量を100質量%として、ポリカルボン酸又はその無水物40~60質量%、ポリオール40~60質量%であることが好ましく、ポリカルボン酸又はその無水物45~55質量%、ポリオール45~55質量%がより好ましい。
変性ポリエステル系樹脂の重量平均分子量としては、3,000~100,000が好ましく、10,000~30,000がより好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から3,000以上が好ましく、水分散性とする場合の乳化安定性の観点から100,000以下が好ましい。
結束剤として用いる、ポリマー、熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
結束剤の全量を100質量%として、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩より選択された1種以上のポリマーを50質量%以上用いることが好ましく、60質量%以上用いることがより好ましい。
集束剤が、シランカップリング剤及び結束剤からなる場合、集束剤は、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤及び結束剤の合計質量として、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.2~2質量%、更に好ましくは0.2~1質量%付与して付着させる。ガラス繊維の集束性制御と界面接着強度向上の観点から、集束剤の付与量が、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤及び結束剤の合計質量として0.1質量%以上であることが好ましく、糸の取扱い性の観点から3質量%以下であることが好ましい。
また、集束剤が、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなる場合、集束剤は、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤、潤滑剤及び結束剤の合計質量として、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.2~2質量%、更に好ましくは0.2~1質量%付与して付着させる。ガラス繊維の集束性制御と界面接着強度向上の観点から、集束剤の付与量が、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤、潤滑剤及び結束剤の合計質量として0.1質量%以上であることが好ましく、糸の取扱い性の観点から3質量%以下であることが好ましい。
--ガラス繊維用の集束剤の組成--
連続強化繊維としてガラス繊維を用いる場合、当該ガラス繊維の集束剤においては、それぞれ、シランカップリング剤を0.1~2質量%、潤滑剤を0.01~1質量%、結束剤を1~25質量%を含有することが好ましく、これらの成分を水で希釈し、全質量を100質量%に調整することが好ましい。
ガラス繊維用の集束剤におけるシランカップリング剤の配合量は、ガラス繊維の集束性向上及び界面接着強度向上と複合材料の機械的強度向上との観点から、0.1~2質量%が好ましく、より好ましくは0.1~1質量%、更に好ましくは0.2~0.5質量%である。
ガラス繊維用の集束剤における潤滑剤の配合量は、充分な潤滑性を与えるという観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、界面接着強度向上と複合材料の機械的強度向上の観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
ガラス繊維用の集束剤における結束剤の配合量は、ガラス繊維の集束性制御及び界面接着強度向上と複合材料の機械的強度向上との観点から、好ましくは1~25質量%、より好ましくは3~15質量%、更に好ましくは3~10質量%である。
--ガラス繊維用の集束剤の使用態様--
ガラス繊維用の集束剤は、使用態様に応じて、水溶液、コロイダルディスパージョンの形態、乳化剤を用いたエマルジョンの形態等、いずれの形態に調整してもよいが、集束剤の分散安定性向上、耐熱性向上の観点から、水溶液の形態とすることが好ましい。
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を構成する連続強化繊維としてのガラス繊維は、上述した集束剤を、公知のガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、ガラス繊維に付与して製造したガラス繊維を乾燥することによって連続的に得られる。
また、連続強化繊維として、炭素繊維を選択した場合も同様に、集束剤を用いてもよく、集束剤は、カップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなることが好ましい。カップリング剤としては炭素繊維の表面に存在する水酸基と相性の良いもの、結束剤としては選択した熱可塑性樹脂と濡れ性が良いものや表面張力の近いもの、潤滑剤としてはカップリング剤と結束剤を阻害しないものを選択することができる。
炭素繊維に用いる集束剤の種類については、特に制限はなく、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、特開2015-101794号公報に記載のものを用いることができる。
その他の連続強化繊維を用いる場合、連続強化繊維の特性に応じ、ガラス繊維、炭素繊維に用いることが可能な集束剤の種類、付与量を適宜選択すればよく、炭素繊維に用いる集束剤に準じた集束剤の種類、付与量とすることが好ましい。
-連続強化繊維の形状-
連続強化繊維は複数本のフィラメントからなるマルチフィラメントであり、単糸数は、取扱い性の観点から30~15,000本であることが好ましい。連続強化繊維の単糸径Rは、強度の観点、及び、取り扱い性の観点から2~30μmであることが好ましく、4~25μmであることがより好ましく、6~20μmであることが更に好ましく、8~18μmであることが最も好ましい。
連続強化繊維の単糸径R(μm)と密度D(g/cm3)の積RDは、連続強化繊維の取り扱い性と複合材料の強度の観点から、好ましくは5~100μm・g/cm3、より好ましくは10~50μm・g/cm3、更に好ましくは15~45μm・g/cm3、より更に好ましくは20~45μm・g/cm3である。
密度Dは比重計により測定することができる。他方、単糸径R(μm)は、密度D(g/cm3)と繊度(dtex)、単糸数(本)から、以下の式:
Figure 2023000373000001
により算出することができる。また、単糸径R(μm)は例えば、連続強化繊維単糸のSEM観察によって求めることができる。
連続強化繊維の積RDを所定の範囲とするには、市販で入手可能な連続強化繊維について、連続強化繊維の有する密度に応じて、繊度(dtex)及び単糸数(本)を適宜選択すればよい。例えば、連続強化繊維としてガラス繊維を用いる場合、密度が約2.5g/cm3であるから、単糸径が2~40μmのものを選べばよい。具体的には、ガラス繊維の単糸径が9μmである場合、繊度660dtexで単糸数400本のガラス繊維を選択することにより、積RDは、23となる。また、ガラス繊維の単糸径が17μmである場合、繊度11,500dtexで単糸数2,000本のガラス繊維を選択することにより、積RDは、43となる。連続強化繊維として炭素繊維を用いる場合、密度が約1.8g/cm3であるから、単糸径が2.8~55μmのものを選べばよい。具体的には、炭素繊維の単糸径が7μmである場合、繊度2,000dtexで単糸数3,000本の炭素繊維を選択することにより、積RDは、13となる。連続強化繊維としてアラミド繊維を用いる場合、密度が約1.45g/cm3であるから、単糸径が3.4~68μmのものを選べばよい。具体的には、アラミド繊維の単糸径が12μmである場合、繊度1,670dtexで単糸数1,000本のアラミド繊維を選択することにより、積RDは、17となる。
連続強化繊維、例えば、ガラス繊維は、原料ガラスを計量、混合し、溶融炉で溶融ガラスとし、これを紡糸してガラスフィラメントとし、集束剤を塗布し、紡糸機を経て、ダイレクトワインドロービング(DWR)、ケーキ、撚りを入れたヤーン等の巻き取り形態として製造される。連続強化繊維はどのような形態でも構わないが、ヤーン、ケーキ、DWRに巻き取ってあると、樹脂を被覆させる工程での生産性、生産安定性が高まるため好ましい。生産性の観点からはDWRが最も好ましい。
連続強化繊維の形態は、特に制限されず、織物や編み物、組紐、パイプ状のもの、ノンクリンプファブリック、一方向材等、種々の形態が挙げられる。中でも、織物、ノンクリンプファブリック、一方向材の形態で好ましく用いられる。
(熱可塑性樹脂)
本実施形態の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造に用いられる熱可塑性樹脂は、1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよいが、2種類以上であることが好ましい。2種類以上の熱可塑性樹脂を適宜組み合わせることにより、連続繊維強化樹脂複合材料の物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)を調整することができる。
また、前記2種類以上の熱可塑性樹脂は相溶していることが好ましい。連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる2種類以上の熱可塑性樹脂が互いに相溶していると、物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
熱可塑性樹脂が相溶している状態とは、連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる連続強化繊維の長さ方向に直行する断面において、熱可塑性樹脂を電子染色し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したときに、複数の熱可塑性樹脂によるドメインが形成されていない状態をいう。具体的には、後述の実施例に記載の方法により観察することができる。
2種類以上の熱可塑性樹脂の内、最も質量割合が大きい樹脂は、高温特性と吸水特性の観点から、二番目に質量割合が大きい樹脂の5倍以下の質量割合であることが好ましく、4倍以下の質量割合であることがより好ましく、3倍以下の質量割合であることが更に好ましい。熱可塑性樹脂の質量割合が上記範囲であると、物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
熱可塑性樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド612、ポリアミド6I等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテル系樹脂;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンサルファイド;熱可塑性ポリエーテルイミド;テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂;ポリウレタン系樹脂;アクリル系樹脂及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性フッ素系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂が、機械的物性、汎用性の観点からより好ましく、熱的物性の観点を加えるとポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が更に好ましい。また、繰り返し荷重負荷に対する耐久性の観点からポリアミド系樹脂がより更に好ましい。
-ポリエステル系樹脂-
ポリエステル系樹脂とは、主鎖に-CO-O-(エステル)結合を有する高分子化合物を意味する。
ポリエステル系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂は、ホモポリエステルであってもよく、また、共重合ポリエステルであってもよい。
共重合ポリエステルの場合、ホモポリエステルに適宜第3成分を共重合させたものが好ましく、第3成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分等が挙げられる。
また、バイオマス資源由来の原料を用いたポリエステル系樹脂を用いることもでき、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネートアジペート等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
-ポリアミド系樹脂-
ポリアミド系樹脂とは、主鎖に-CO-NH-(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。例えば、脂肪族系ポリアミド、芳香族系ポリアミド、全芳香族系ポリアミド等があげられる。
ポリアミド系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω-アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合体が挙げられる。
ポリアミド系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
ラクタムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカンラクタムやドデカラクタムが挙げられる。
ω-アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムの水による開環化合物であるω-アミノ脂肪酸が挙げられる。ラクタム又はω-アミノカルボン酸はそれぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
ジアミン(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2-メチルペンタンジアミンや2-エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p-フェニレンジアミンやm-フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンやシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。
ジカルボン酸(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸やセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。単量体としてのジアミン及びジカルボン酸はそれぞれ1種単独又は2種以上の併用により縮合させてもよい。
ポリアミド系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612等の脂肪族ポリアミド、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)等の半芳香族ポリアミド、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミド等が挙げられる。
共重合ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合体、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合体、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2-メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合体が挙げられる。
ポリアミド樹脂を用いる場合、熱可塑性樹脂が、(A)脂肪族ポリアミドを50~99質量部、及び、イソフタル酸単位を少なくとも75モル%含むジカルボン酸単位と、炭素数4~10のジアミン単位を少なくとも50モル%含むジアミン単位とを含有する(B)半芳香族ポリアミドを1~50質量部、を含有することが好ましい。
熱可塑性樹脂が、上記範囲の(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドを含むと、ポリアミドとして(A)脂肪族ポリアミドのみを含む場合と比較して、連続繊維強化樹脂複合材料の物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
熱可塑性樹脂100質量%に対して、(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドの合計含有量は、70~100質量%であることが好ましく、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%である。
上記(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとを含む熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、15000~35000であることが好ましく、17000~35000であることがより好ましく、20000~35000であることが更に好ましく、より更に好ましくは22000~34000であり、24000~33000が特に好ましく、25000~32000が最も好ましい。上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、上記範囲であると、強度、剛性が向上する傾向にある。
また、上記熱可塑性樹脂において、(A)脂肪族ポリアミドの重量平均分子量MwAは、(B)半芳香族ポリアミドの重量平均分子量MwBの1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。MwAがMwBの1.5倍以上であると、強度、剛性が向上する傾向にある。
なお、熱可塑性樹脂、(A)脂肪族ポリアミド、及び(B)半芳香族ポリアミドの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により観察することができる。
上記(A)脂肪族ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612等が挙げられる。
熱可塑性樹脂中のポリアミド100質量%中の、(A)脂肪族ポリアミドの含有量は、50~99質量%であることが好ましく、より好ましくは60~90質量%、更に好ましくは70~80質量%である。
上記(B)半芳香族ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド6I、ポリアミド9I、ポリアミド10I等が挙げられる。
上記イソフタル酸単位及び炭素数4~10のジアミン単位の合計量は、(B)半芳香族ポリアミドの全構成単位100モル%に対して、80~100モル%であることが好ましく、90~100モル%であることがより好ましく、95~100モル%であることが更に好ましい。
なお、(B)半芳香族ポリアミドを構成する単量体単位の割合は、例えば、13C核磁気共鳴分光法(NMR)により測定することができる。
(B)半芳香族ポリアミドにおいて、ジカルボン酸単位中のイソフタル酸単位の割合は、少なくとも75モル%であり、好ましくは85モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。ジカルボン酸単位中のイソフタル酸単位の割合が上記範囲であると、高温特性と吸水特性が向上する傾向にある。
(B)半芳香族ポリアミドにおいて、ジアミン単位中の炭素数4~10のジアミン単位の割合は、少なくとも50モル%であり、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上である。ジアミン単位中の炭素数4~10のジアミン単位の割合が上記範囲であると、高温特性と吸水特性が向上する傾向にある。
熱可塑性樹脂中のポリアミド100質量%中の、(B)半芳香族ポリアミドの含有量は、1~50質量%であることが好ましく、より好ましくは10~40質量%、更に好ましくは20~30質量%である。
上記(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドは、公知の末端封止剤により末端封止されていてもよく、(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとを合わせたポリアミド1gに対する当量として表される(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドの封止された末端量の合計が、5~180μ当量/gであることが好ましく、10~170μ当量/gがより好ましく、20~160μ当量/gがさらに好ましく、30~140μ当量/gが特に好ましく、40~140μ当量/gが最も好ましい。封止された末端量が、上記範囲であると、物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
ここで、封止された末端量とは、封止剤により封止されたアミノ末端及びカルボキシル末端の合計量である。封止された末端量は、H-NMRを用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
(A)脂肪族ポリアミドの末端基濃度は、(B)半芳香族ポリアミドの末端基濃度の1/2以下であることが好ましく、2/5以下であることがより好ましい。(A)脂肪族ポリアミドの末端基濃度が(B)半芳香族ポリアミドの末端基濃度の1/2以下であると、物性(強度、剛性、高温特性、吸水特性、衝撃特性、及び外観等)が向上する傾向にある。
(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドの末端基濃度は、H-NMRを用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとは、tanδのピーク温度の差が45~100℃であることが好ましく、50~90℃であることがより好ましく、60~90℃であることが更に好ましい。(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとのtanδのピーク温度の差が、上記範囲であると、高温特性と吸水特性が向上する傾向にある。
(A)脂肪族ポリアミド及び(B)半芳香族ポリアミドのtanδのピーク温度は、例えば、粘弾性測定解析装置を用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
(A)脂肪族ポリアミドと(B)半芳香族ポリアミドとの粘度の差が3倍以上であることが強度、剛性、成形性、外観の観点から好ましく、4倍以上であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂の粘度はMFR測定(ISO1133に準拠)により求めることができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により観察することができる。
[添加剤]
本実施形態の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料には、必要に応じて添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、着色剤、老化防止剤、酸化防止剤、耐候剤、金属不活性剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、防菌・防黴剤、防臭剤、導電性付与剤、分散剤、軟化剤、可塑剤、架橋剤、共架橋剤、加硫剤、加硫助剤、発泡剤、発泡助剤、難燃剤、制振剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤等が挙げられる。
添加剤の添加量は、複合材料100質量%に対して、3質量%以下としてよい。
(着色剤)
着色剤としては、カーボンブラック、ニグロシン、アルミ顔料、二酸化チタン、群青、シアニンブルー、シアニングリーン、キナクリドン、珪藻土、モノアゾ塩、ペリレン、ジスアゾ、縮合アゾ、イソインドリン、弁柄、ニッケルチタンイエロー、ジケトンピロロピロール、金属塩、ペリレンレッド、金属酸化物、バナジン酸ビスマス、コバルトグリーン、コバルトブルー、アンスラキノン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等が挙げられる。中でも、黒色の着色剤が好ましく、カーボンブラック、ニグロシンがより好ましい。
[連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料]
本実施形態の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含み、前記熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散項と極性項をそれぞれγpol 、γpol とし、前記連続強化繊維の表面自由エネルギーの分散項と極性項をそれぞれγfib 、γfib としたときに、ΔWfloc=2(((γpol 1/2 -(γfib 1/2+((γpol 1/2 -(γfib 1/2)で表されるΔWfloc[mJ/m]と、前記熱可塑性樹脂のメルトフローレート(融点+5℃で測定)の値MFR[g/10min]とが、ΔWfloc/MFR≦0.9[mJ・10min/m・g]の関係を満たすことを特徴とする。
本実施形態の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は、例えば、上述の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法により製造することができる。
本実施形態の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は、上記ΔWfloc/MFRの値が、0.9[mJ・10min/m・g]以下であり、好ましくは0.5[mJ・10min/m・g]以下であり、より好ましくは0.1[mJ・10min/m・g]以下である。ΔWfloc/MFRが上記範囲であると、衝撃特性に優れる連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料となる。
また、上記ΔWflocは、繊維に対する樹脂の含浸性の観点から、10mJ/m以下であることが好ましく、より好ましくは5mJ/m以下、さらに好ましくは1mJ/m以下である。
また、上記MFRは、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の強度、剛性、成形性、外観の観点から80g/10min以下であることが好ましく、60g/10min以下であることがより好ましく、40g/10min以下であることがさらに好ましい。また、繊維への含浸性やフィルムの製膜性の観点から、5g/10min以上であることが好ましく、より好ましくは10g/10min以上、さらに好ましくは20g/10min以上である。
ΔWflocは、熱可塑性樹脂及び連続強化繊維のそれぞれについて、水の接触角と流動パラフィンの接触角とを求めることにより表面自由エネルギーの分散項及び極性項を求め、上述のΔWflocの計算式に代入することにより求められる値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で算出することができる。
また、MFRは、ISO1133に準拠して、融点+5℃で測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
本実施形態の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を構成する連続強化繊維の種類及び熱可塑性樹脂の種類としては、上述のものとしてよい。
[連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の形態]
連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の形態は、特に制限されず、以下の種々の形態が挙げられる。例えば、連続強化繊維の織物や編み物、組紐、パイプ状のものと熱可塑性樹脂とを複合化した形態、一方向に引き揃えた連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを複合化した形態、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなる糸を一方向に引き揃えて賦形した形態、連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなる糸とを織物や編み物、組紐、パイプ状にして賦形した形態等が挙げられる。
本実施形態の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は、平板であってよく、連続強化繊維の層と熱可塑性樹脂の層とを含む積層体であってよい。例えば、連続強化繊維の長さ方向が平板の表面に略平行に配置されていてもよい。なお、連続強化繊維の層とは、連続強化繊維(例えば、連続強化繊維基材)を含む層であり、連続強化繊維の内部に熱可塑性樹脂が含浸している層であってよい。
連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の賦形前の中間材料の形態としては、特に制限されず、連続強化繊維と樹脂繊維との混繊糸、連続強化繊維の束の周囲を樹脂で被覆したコーティング糸、連続強化繊維に予め樹脂を含浸させテープ状にしたもの、連続強化繊維を樹脂のフィルムで挟んだもの、連続強化繊維に樹脂パウダーを付着させたもの、連続強化繊維の束を芯材としてその周囲を樹脂繊維で組紐としたもの、強化繊維の間に予め樹脂を含浸させたもの、連続強化繊維と溶融した樹脂とを接触させた形態等が挙げられる。
[連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の成形]
本実施形態の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は、さらに成形することができる。上記の方法としては、例えば、本実施形態の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を、所定の大きさに切りだし、赤外線ヒーターで加熱し、プレス成形機で加熱圧縮プレスする方法等が挙げられる。
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々変形して実施することができることはいうまでもない。
まず、実施例・比較例で用いた測定方法等について説明する。
(接触角測定)
熱可塑性樹脂の接触角測定・・・射出成形により作製した樹脂成形品の平らな面に、水と流動パラフィンをそれぞれ滴下し、滴下から3秒後に形成される液滴を真横(上記平らな面に平行な方向)から観察し、樹脂成形品と各液滴とのなす接触角をそれぞれθ/2法により測定した。
強化繊維の接触角測定・・・平らなプレパラートの上に両面テープを張り、その上に繊維長さが1mm以下となるように細かく刻んだ強化繊維を十分に振りかけることにより強化繊維を両面テープ上に粘着させ、粘着していない強化繊維を取り除くことによってサンプルを得た。サンプルに対し、水と流動パラフィンをそれぞれ滴下し、上記樹脂成形品と同様にそれぞれθ/2法により強化繊維の接触角を測定した。
接触角の測定には、接触角測定装置(日本国協和界面科学製CA-X150型接触角計)を用いた。
(表面自由エネルギーの計算)
固体試料である熱可塑性樹脂及び強化繊維の表面自由エネルギーを、成分既知の2つの液体、水と流動パラフィンによる上記(接触角測定)の結果を以下の式に代入することにより、計算した。
2((γ γ 1/2+(γ γ 1/2)=(γ +γ )(1+cosθ)
γ ・・・液体の表面自由エネルギーの分散項
γ ・・・液体の表面自由エネルギーの極性項
γ ・・・固体試料の表面自由エネルギーの分散項
γ ・・・固体試料の表面自由エネルギーの極性項
なお、水の表面自由エネルギーの分散項を21.8[mJ/m]、
水の表面自由エネルギーの極性項を51.0[mJ/m]、
流動パラフィンの表面自由エネルギーの分散項を38.1[mJ/m]、
流動パラフィンの表面自由エネルギーの極性項を0[mJ/m
として計算した。
水の接触角測定によって測定したθの値と、水の表面自由エネルギーγ (21.8mJ/m)およびγ (51.0mJ/m)とを上記の式に代入することで、固体試料の表面自由エネルギーの分散項γ と極性項γ の2つの未知数からなる関係式を得た。
また、流動パラフィンの接触角測定によって測定したθの値と、流動パラフィンの表面自由エネルギーγ (38.1mJ/m)およびγ (0mJ/m)とを上記の式に代入することで、固体試料の表面自由エネルギーの分散項γ と極性項γ の2つの未知数からなる関係式を得た。
水、流動パラフィンの結果より得られた2つの未知数からなる上記2つの式を連立させることで、熱可塑性樹脂及び強化繊維の表面自由エネルギーの分散項γ と極性項γ をそれぞれ計算した。
(ΔWflocの計算)
ΔWflocは、下記の式に、上記(表面自由エネルギーの計算)で得られた熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散項及び極性項、並びに連続強化繊維の表面自由エネルギーの分散項及び極性項を代入することにより計算した。
ΔWfloc=2(((γpol 1/2 -(γfib 1/2+((γpol 1/2 -(γfib 1/2
γpol ・・・熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散項
γpol ・・・熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの極性項
γfib ・・・連続強化繊維の表面自由エネルギーの分散項
γfib ・・・連続強化繊維の表面自由エネルギーの極性項
(融点の測定)
示差走査熱量計(DSC:PERKINELMER社製DSC8500)を用いて、23℃から10℃/分の昇温速度で昇温した際に、現れる吸熱ピークのピークトップ温度を融点[℃]として測定した。吸熱ピークが2つ以上現れる場合は、最も高温側の吸熱ピークのピークトップ温度を融点として測定した。
(MFRの測定)
JIS K7210:1999(ISO 1133:1997)に準拠して、東洋精機製Semi-Auto Melt Indexer 2Aを用い、荷重を2.16kgとして、各熱可塑性樹脂の融点よりも5℃高い温度にてMFR[g/10min]を測定した。3回の測定結果の平均をMFRの測定値とした。
(含浸距離の測定)
ガラスクロスと熱可塑性樹脂フィルムとを用いて以下のように樹脂含浸を行った。
プレス機として、最大型締め力50トンの油圧成型機(株式会社ショージ)を使用した。ガラスクロス(80mm×80mm)の上に、熱可塑性樹脂フィルム(40mm×40mm)を2枚重ねた後、カプトンフィルムシート(東レ・デュポン株式会社製、100mm×100mm)2枚で上記ガラスクロスと熱可塑性樹脂フィルムとを挟み、積層物を得た。更に鉄板(300mm×300mm×5mmt)2枚で上記積層物を挟んだ。
プレス機の温度は270℃に予熱し、上記鉄板で挟んだ積層物を30秒間5MPaの圧力で加圧して熱可塑性樹脂をガラス強化繊維に含浸させたのち、室温に水冷したプレス機にて温度が30℃以下になるまで5MPaで加圧した。
上記の工程にて作製したサンプルの中央から10mm×10mmの試験片を切り出し、断面を研磨した。研磨した断面を高分解能走査型顕微鏡(SEM)(日立製作所(株)FESEM/EDX S-4700)で観察することにより、含浸距離を計測した。上記断面において、ガラスクロスの熱可塑性樹脂側の表面が構成する線と、含浸した熱可塑性樹脂の含侵先端部により構成される線との間の平均距離を少なくとも幅3mmの範囲の観察により計算することで、含浸距離を計算した。これを同一条件にて3回実施して平均を取り、各実施例・比較例の含浸距離[μm]とした。
(衝撃特性の測定)
比較例6、実施例10、11で得られた連続繊維強化樹脂複合材料を縦100mm、横100mm、肉厚2mmに切削加工したサンプルを用いて、落錘衝撃試験機(INSTRON社製)により複合材料の衝撃エネルギーと衝撃時の延性指数を測定した。重りの総重量は10.2kg、錘の高さは1.12m、衝突のエネルギーは112Jであった。
衝撃エネルギー[J]は、ロードセルにより測定した衝突時の力[N]を、衝突時の時間で積分することにより求めた。衝撃時の延性指数は、ロードセルで測定した衝撃の力をピークトップまで時間で積分した数値である「ピークトップまでの衝撃エネルギー[J]」の、ロードセルで測定した衝撃の力をピークトップ以降、時間で積分した数値である「ピークトップ以降の衝撃エネルギー[J]」に対する比率であり、下記式により計算した。
衝撃時の延性指数=(ピークトップまでの衝撃エネルギー)÷(ピークトップ以降の衝撃エネルギー)
実施例、比較例で用いた材料は以下のとおりである。
(ガラス強化繊維)
・GF-1
繊度11500dtexで単糸数2000本のガラス繊維を製造した。巻き取り形態はDWRであり、平均単糸径は17μmとした。
集束剤は塗布することなく、そのまま使用した。
・GF-2
繊度11500dtexで単糸数2000本のガラス繊維を製造した。巻き取り形態はDWRであり、平均単糸径は17μmとした。
ガラス繊維に対して、ポリウレタン樹脂Y65-55(株式会社ADEKA製)2質量%を含む水溶液を付着量が0.15質量%となるように塗布して乾燥させたのち、カルナウバワックスが1質量%、共重合化合物(無水マレイン酸80質量%、アクリル酸メチル10質量%、及びメタクリル酸メチル10質量%を共重合させた、重量平均分子量が20000である共重合化合物)が3質量%となるように脱イオン水で調製した集束剤を、付着量が0.30質量%となるように塗布して乾燥させることで作製した。
・GF-3
繊度11500dtexで単糸数2000本のガラス繊維を製造した。巻き取り形態はDWRであり、平均単糸径は17μmとした。
ガラス繊維に対して、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(以下、単に「アミノシラン」と称する。)KBE-903(信越化学工業株式会社製)0.5質量%、ポリウレタン樹脂Y65-55(株式会社ADEKA製)2質量%を含む水溶液を付着量が0.15質量%となるように塗布して乾燥させたのち、カルナウバワックスが1質量%、共重合化合物(無水マレイン酸80質量%、アクリル酸メチル10質量%、及びメタクリル酸メチル10質量%を共重合させた、重量平均分子量が20000である共重合化合物)が3質量%となるように脱イオン水で調製した集束剤を、付着量が0.30質量%となるように塗布して乾燥させることで作製した。
・GF-4
繊度11500dtexで単糸数2000本のガラス繊維を製造した。巻き取り形態はDWRであり、平均単糸径は17μmとした。
ガラス繊維に対して、アミノシラン0.5質量%を含む水溶液を付着量が0.15質量%となるように塗布して乾燥させたのち、ポリウレタン樹脂Y65-55(株式会社ADEKA製)が2質量%、カルナウバワックスが1質量%、共重合化合物(無水マレイン酸40質量%、アクリル酸メチル50質量%、及びメタクリル酸メチル10質量%を共重合させた、重量平均分子量が20000である共重合化合物)が3質量%となるように脱イオン水で調製した集束剤を、付着量が0.30質量%となるように塗布して乾燥させることで作製した。
・GF-5
繊度11500dtexで単糸数2000本のガラス繊維を製造した。巻き取り形態はDWRであり、平均単糸径は17μmとした。
ガラス繊維に対して、アミノシラン0.5質量%、ポリウレタン樹脂Y65-55(株式会社ADEKA製)2質量%を含む水溶液を付着量が0.15質量%となるように塗布して乾燥させたのち、カルナウバワックスが1質量%、共重合化合物(無水マレイン酸20質量%、アクリル酸メチル50質量%、及びメタクリル酸メチル30質量%を共重合させた、重量平均分子量が20000である共重合化合物)が3質量%となるように脱イオン水で調製した集束剤を、付着量が0.30質量%となるように塗布して乾燥させることで作製した。
・GF-6
繊度11500dtexで単糸数2000本のガラス繊維を製造した。巻き取り形態はDWRであり、平均単糸径は17μmとした。
ガラス繊維に対して、アミノシラン0.5質量%を含む水溶液を付着量が0.15質量%となるように塗布して乾燥させたのち、ポリウレタン樹脂Y65-55(株式会社ADEKA製)が2質量%、カルナウバワックスが1質量%、共重合化合物(アクリル酸メチル50質量%、及びメタクリル酸メチル50質量%を共重合させた、重量平均分子量が20000である共重合化合物)が3質量%となるように脱イオン水で調製した集束剤を0.30質量%となるように塗布して乾燥させることで作製した。
各ガラス強化繊維の測定結果を表1に示す。
(ガラスクロスの作製)
レピア織機(織幅2m)を用い、上記ガラス強化繊維を経糸、緯糸として用いて製織することでガラスクロスを製造した。得られたガラスクロスの織形態は、平織、織密度は6.5本/25mm、目付は600g/mであった。
(熱可塑性樹脂)
ポリアミド(PA)66:レオナ1300S(旭化成(株)、融点265℃)
ポリアミド(PA)6I:レオナR16024(旭化成(株)、ガラス転移温度130℃)
ポリプロピレン(PP):ノバテックMA3(日本ポリプロ株式会社、融点168℃)
・PA-1
PA66のみをそのまま用いた。MFRの値は27.1g/10minであった。
・PA-2
PA66とPA6Iを、それぞれ70質量%、30質量%の割合でコンパウンドした。PA-2の融点は262℃であった。MFRの値は43.2g/10minであった。
・PP:ノバテックMA3のみをそのまま用いた。MFRの値は11.0g/10minであった。
各熱可塑性樹脂の測定結果を表2に示す。
(熱可塑性樹脂フィルムの作製)
上記熱可塑性樹脂を、Tダイ押出成形機(株式会社創研製)を用いて成形することで、熱可塑性樹脂フィルムを得た。押出温度はホッパーの直下から順番に、PA1、PA2の場合は260℃、285℃、290℃、260℃にて製膜し、PPの場合はホッパー直下から順番に165℃、180℃、185℃、165℃にて製膜した。得られたフィルムの厚さは180μmであった。
[実施例1~9、比較例1~5]
各実施例及び比較例において、表3に示すガラス強化繊維及び熱可塑性樹脂を用いた。
各物性の測定結果を表3に示す。また、含浸距離の測定結果を図1に示す。
含浸距離について、比較例1及び実施例1~5の結果、ΔWflocの値が低くなるにつれ含浸距離が向上した。特に、ΔWfloc/MFRが0.5mJ・10min/m・g以下の時に良好に、0.1mJ・10min/m・g以下の時により良好に含浸が進行した。
また、実施例4と実施例6を、実施例5と実施例7を比較した結果、ΔWflocが同等の場合においてはMFRの値が高いPA-2を使用した場合に含浸が良好に進行した。
比較例2~5および実施例8、9の結果と、比較例1及び実施例1~7の結果とを比較したところ、極性官能基を持たないPPに関してもPAと同様の傾向がΔWfloc/MFRと含浸距離との間に確認された。
[比較例6]
GF-1ガラスクロスとPA-1樹脂フィルムとを用いて以下のように成形を行い、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を得た。
成形機として、最大型締め力50トンの油圧成形機(株式会社ショージ製)、及び平板型の連続繊維強化樹脂複合材料(縦200mm、横100mm、肉厚2mm)を得るためのインロー構造の金型を準備した。上記GF-1ガラスクロス5枚とPA-1樹脂フィルム6枚とを準備し、それぞれ金型形状に合わせて切断した後、PA-1樹脂フィルムが表面となるように交互に重ね、金型内に設置した。なお、樹脂100質量部に対してガラス強化繊維が230質量部となるよう、樹脂の質量とガラス強化繊維の質量を調整した。
成形機内温度を330℃に加熱し、次いで型締め力5MPaで型締めし、圧縮成形を行った。成形時間はポリアミド66の融点である265℃に達してから1分とし、金型を25℃まで急冷したのちに開放し、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を取り出した。
得られた連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の各物性の測定結果を表4に示す。
[実施例10、11]
ガラスクロス及び熱可塑性樹脂フィルムを表4に示すとおりに変更したこと以外は比較例6と同様にして、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を得た。
得られた連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の各物性の測定結果を表4に示す。
複合材料の衝撃エネルギーに関して、比較例6及び実施例10、11の結果、ΔWfloc/MFRが小さくなるにつれ複合材料の衝撃エネルギーは大きくなり、実施例10、11は良好な衝撃特性を示した。
また、複合材料の衝撃時の延性指数に関して、比較例6及び実施例10、11の結果、ΔWfloc/MFRが小さくなるにつれ複合材料の衝撃時の延性指数は大きくなり、実施例10、11は良好な衝撃時の延性指数を示した。
複合材料の衝撃エネルギーは、例えば車両の構造部材として複合材料を用いた場合に、衝撃を吸収することで乗客の安全性を担保できるため、高い方が望ましい。
また、材料の破壊時に、可能な限り長い時間、大きいエネルギーを吸収するために破壊の形態を脆性破壊ではなく延性破壊の形態とすることが望ましいが、材料として衝撃時の延性指数が良好な複合材料を用いることで、破壊の形態を脆性破壊から延性破壊に近づけることが可能となる。
Figure 2023000373000002
Figure 2023000373000003
Figure 2023000373000004
Figure 2023000373000005
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法によれば、高い生産性で連続繊維強化樹脂複合材料を製造することができる。また、本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、高レベルでの機械的物性が要求される各種機械や自動車等の構造部品、圧力容器、及び管状の構造物等の材料として、産業上の利用可能性を有している。

Claims (8)

  1. 連続強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させることを含み、
    前記熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散項と極性項をそれぞれγpol 、γpol とし、前記連続強化繊維の表面自由エネルギーの分散項と極性項をそれぞれγfib 、γfib としたときに、ΔWfloc=2(((γpol 1/2 -(γfib 1/2+((γpol 1/2 -(γfib 1/2)で表されるΔWfloc[mJ/m]と、
    前記熱可塑性樹脂のメルトフローレート(融点+5℃で測定)の値MFR[g/10min]とが、
    ΔWfloc/MFR≦0.9[mJ・10min/m・g]の関係を満たす
    ことを特徴とする、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
  2. 前記連続強化繊維が無機繊維である、請求項1に記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
  3. 前記無機繊維がガラス繊維及び/又は炭素繊維である、請求項2に記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
  4. 前記熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂である、請求項1~3のいずれか一項に記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
  5. 熱可塑性樹脂と連続強化繊維とを含み、
    前記熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーの分散項と極性項をそれぞれγpol 、γpol とし、前記連続強化繊維の表面自由エネルギーの分散項と極性項をそれぞれγfib 、γfib としたときに、ΔWfloc=2(((γpol 1/2 -(γfib 1/2+((γpol 1/2 -(γfib 1/2)で表されるΔWfloc[mJ/m]と、
    前記熱可塑性樹脂のメルトフローレート(融点+5℃で測定)の値MFR[g/10min]とが、
    ΔWfloc/MFR≦0.9[mJ・10min/m・g]の関係を満たす
    ことを特徴とする、連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料。
  6. 前記連続強化繊維が無機繊維である、請求項5に記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料。
  7. 前記無機繊維がガラス繊維及び/又は炭素繊維である、請求項6に記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料。
  8. 前記熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂である、請求項5~7のいずれか一項に記載の連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料。
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