JP2022547324A - 網膜および脈絡膜の構造ならびに機能を回復させるための組成物および方法 - Google Patents

網膜および脈絡膜の構造ならびに機能を回復させるための組成物および方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、慢性的な網膜障害および他の障害において、網膜機能を復元もしくは回復する、網膜構造を復元もしくは回復する、ならびに/または脈絡膜の構造および/もしくは機能を復元または回復するための、抗コネキシン43ヘミチャネル開放化合物を含む、坑ヘミチャネル化合物の使用に関する。

Description

関連出願
本出願は、2019年9月13日に出願された米国仮特許出願第62/900,379号、および2019年9月20日に出願された米国仮特許出願第62/903,504号の利益を主張するものであり、当該出願の両方が、その全体で参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は概して、網膜および脈絡膜、ならびに他の眼のプロセスに関連し、およびコネキシンヘミチャネルに関連する。
参照による組み込み
本明細書に記載されるすべての米国特許、米国特許出願公報、外国特許、外国およびPCTが公表した出願、記事および他の文書、参考文献および刊行物、ならびに本明細書において公表されるすべての特許において引用される参照文献として列挙されるものはすべて、その全体で参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれる情報は、すべてのテキストおよび他の内容が本明細書において反復されたものとして本出願の一部を成し、出願される本明細書のテキストおよび内容の一部として取り扱われる。
以下は、本発明を理解するのに有用であり得る情報を含む。本明細書に具体的または黙示的に参照される情報、刊行物、または文書のすべてが、ここに記載され、権利請求される発明に対する先行技術である、または必須であると認めるものではない。
糖尿病は、身体がインスリンホルモンに対して抵抗性になる状態であり、ますます増加している。糖尿病は、血流から糖やグルコースが出て、細胞内に入ることを阻止する。この状態により、糖尿病性網膜症として知られる眼関連疾患を含む、重篤な合併症が生じる場合がある。
ヒトは、長期間にわたって高血糖状態になると、身体中の微小血管の壁が厚くなる。これによって、酸素および重要な栄養素が、血液から、生存を酸素と栄養素に依存する細胞へと移動することがさらに難しくなる。この影響を大きく受ける領域としては、眼の背部にある網膜が挙げられる。これら小血管における循環不良も、漏出の原因となり得る。血液が小血管から漏れると、網膜内に留まり、光波を視覚へと転換する能力が低下する。さらに、脈絡膜の厚さが糖尿病で変化しており、網膜症の重症度に関連する可能性がある。糖尿病性黄斑浮腫の存在は、脈略膜厚の著しい低下と関連している。Regatieri CV,Branchini L,Carmody J,Fujimoto JG,Duker JS,Choroidal thickness in patients with diabetic retinopathy analyzed by spectral-domain optical coherence tomography.Retina.2012 Mar;32(3):563-8を参照のこと。
糖尿病が原因で血管が損傷を受けると、網膜全体の状態が劇的に低下する。漏れた血液が網膜を塞ぎ、一方で栄養素と酸素の低下によって、網膜組織が死に至る。治療を行わないと、最終的には視力が低下し、最後には個体は全ての視覚を失う。
糖尿病に罹患して20年経過した後、ほとんどの人々が軽度の糖尿病性網膜症の何らかの兆候を有すると推定される。糖尿病性網膜症における病理学的過程には、網膜の微小動脈瘤と点状出血が含まれる。基底にある脈絡膜の小血管の膨張および/または出血は、受容体細胞と網膜神経細胞を傷つけ、失明をもたらす可能性がある。
国立眼研究所(NEI:National Eye Institute)によると、糖尿病性網膜症は、典型的には一連の四つの段階を経て進行する。(1)軽度の非増殖性網膜症:この段階は、微小動脈瘤と呼ばれる網膜血管の小さな腫脹領域を伴う。(2)中等度の非増殖性網膜症:疾患が進行するにつれて、眼科医は、網膜血管の腫脹と歪みを見ることができるようになる場合がある。またこの段階では、酸素と栄養素を輸送する能力が失われている場合もある。(3)重度の非増殖性網膜症:この段階では血管閉塞の悪化、網膜の一部に血液の欠乏が見られる。新たな血管が網膜の閉塞領域で増殖する場合もある。(4)増殖性糖尿病性網膜症(PDR):最後に、これらの新たに増殖する血管が、網膜の内部で増殖し、漏出、視力喪失および瘢痕組織の形成が生じて、網膜剥離や失明へと至る可能性がある。
糖尿病性網膜症は主に注射とレーザー手術の二つの方法で治療される。注射は、例えばコルチコステロイドまたは血管内皮成長因子(VEGF)アンタゴニストなどの薬剤を眼に直接入れることを含む。外科的には、医師がレーザーを使用し、網膜の一部を焼くことができる。これらの領域を効果的に死滅させることで、利用可能なわずかな血液供給が、残った生組織へとまわることができ、視力の保持が助けられる。
残念なことに、糖尿病性網膜症の治療法は判明していない。血管の増殖、漏出、および酸素欠乏によって生じた損傷は永久的であり、糖尿病性網膜症は現在の治療法では完全には元の状態に戻らない。
外網膜への代謝産物送達システムの重要な部分であるにもかかわらず、脈絡膜は未だ十分に解明されていない。Zouache and Luthert,The Choroid In AMD:A Critical Point of Failure? Retina Specialist January 8,2018。網膜への二つの主要な血液供給源のうちの一つである脈絡膜は、外側RPE、光受容体、およびいくつかの上部組織層に血液を供給する。 脈絡膜不全は、加齢黄斑変性症の病因において作用する。早期および後期の両方のAMDにおいて、脈絡膜の変化が報告されている。さらに、基底板の沈着、地図状萎縮、および円板状瘢痕を呈する黄斑では、脈絡毛細管枝の血管密度は、正常な黄斑よりも有意に小さい。Zouache and Luthert、上記。重要なことは、脈絡膜の変化を伴う患者は、網膜静脈の閉塞を発生させるリスクがあるということである。異常な脈絡膜の構造と機能に対する治療が必要とされる。
本特許は、糖尿病性網膜症を根本的に反転させ、網膜および脈絡膜の構造ならびに機能を、当該および他の疾患、障害ならびに状態において回復させることができる、抗ヘミチャネル化合物を含む方法および組成物の重要な発見に関する。
Regatieri CV,Branchini L,Carmody J,Fujimoto JG,Duker JS,Choroidal thickness in patients with diabetic retinopathy analyzed by spectral-domain optical coherence tomography.Retina.2012 Mar;32(3):563-8
本明細書に記載され、権利請求される発明は、発明の概要に記載され、または参照されるものを含むが、これらに限定されない、多くの特性および実施形態を有する。すべてが含有されることは意図されておらず、本明細書に記載され、および権利請求される発明は、導入部分で特定される特徴または実施形態に限定されず、それらは解説のみを目的として含有され、制限ではない。
本特許は、網膜の構造および機能を回復させ、および復元させるための抗ヘミチャネル化合物の使用のための方法および組成物を対象とする。単回投与でさえ、かなりの期間にわたって有用であることが判明した。本特許はまた、脈絡膜の構造および機能を回復させ、および復元させるための抗ヘミチャネル化合物の使用のための方法および組成物も対象とする。
データは、例えば、抗ヘミチャネル化合物が、慢性網膜性の疾患、状態および障害を含む、網膜の機能を強化し、および回復させるために使用され得ることを示す。特にデータは、抗ヘミチャネル化合物が、内網膜の光受容体および双極細胞の機能を改善するために使用され得ることを示す。また、例えば抗ヘミチャネル化合物を使用して、内網膜細胞を保護、強化および回復させ得ること、および内網膜の機能を改善し得ること、光情報伝達経路および光受容体神経細胞後の応答を改善ならびに回復させ得ること、そして網膜層の構造を改善および回復させ得ることも示される。また、抗ヘミチャネル化合物は、OCTによって測定される網膜層の構造を保持および強化し得ること、そして脈絡膜の構造も改善され、回復され得ることも示された。
本特許はまた、過去には難治性であると考えられていた慢性眼疾患の反転における、抗ヘミチャネル化合物の使用のための方法および組成物も対象とする。本特許は、例えば、糖尿病性網膜症、非増殖性糖尿病性網膜症(NEIステージ1、2および/または3、「軽度」、「中程度」および「重度」の非増殖性網膜症と指定される)、糖尿病性黄斑浮腫、炎症性または感染性の脈絡膜炎、ブドウ膜炎、加齢黄斑変性(ウェット型およびドライ型)、地図状萎縮、ならびに網膜の構造および/または機能の喪失により全体または部分として特徴付けられる網膜の他の慢性障害が含まれる、網膜および/または脈絡膜の損傷が過去には根本的に不可逆的であると考えられていた慢性的な眼の疾患、障害および状態における網膜機能の保護および改善だけではなく、復元および回復させるための抗ヘミチャネル化合物の使用を記載するものである。
本特許はまた、脈絡膜の構造および/または機能の喪失により全体または部分として特徴付けられる脈絡膜の障害を治療するための抗ヘミチャネル化合物の使用についても記載する。本発明の方法、化合物、および組成物を使用して、脈絡膜の構造および/または機能を保護および改善するだけでなく、復元および回復させることもできる。
本特許はまた、罹患患者において網膜機能を回復させるための経口送達抗ヘミチャネル化合物の使用、慢性網膜疾患の反転または実質的な反転のための経口送達抗ヘミチャネル化合物の使用も記載する。
本特許はまた、慢性眼疾患に罹患する、その必要のある患者における網膜機能の復元のための経口送達抗ヘミチャネル化合物の使用も記載する。本特許はまた、慢性眼疾患に罹患する、その必要のある患者における網膜構造の復元のための経口送達抗ヘミチャネル化合物の使用も記載する。
本特許はまた、その必要のある患者における脈絡膜の構造および機能の復元のための経口送達抗ヘミチャネル化合物の使用も記載する。
本特許はまた、別の態様では、自然発生的および慢性的な全身性の高血糖症に続発する糖尿病性網膜症に対して保護し、存在する可能性のある糖尿病性網膜症を反転させるための抗ヘミチャネル化合物の使用も対象とする。
本特許はまた、例えば、ベンゾピラン化合物(シス-6-アセチル-4S-(3-クロロ-4-フルオロ-ベンゾイルアミノ)-3,4-ジヒドロ-2,2-ジメチル-2H-ベンゾ[b]ピラン-3S-オール(SB-220453、Xiflamまたはトナベルサット(tonobersat)とも呼称される)であるトナベルサットを含む、これら目的のための抗ヘミチャネル化合物の使用方法も対象とする。
本発明は、一つの態様では、例えば、糖尿病、または網膜および/もしくは脈絡膜の構造ならびに/または機能の喪失により全体または部分的に特徴付けられる他の状態を有する対象における、網膜および脈絡膜の損傷を反転させるための抗ヘミチャネル化合物の使用に関する。
本特許は、一つの態様では、網膜機能を復元または回復させるための、コネキシン43ヘミチャネルを含むコネキシンヘミチャネルを調節するための化合物の使用および方法について記載する。また、網膜構造を復元または回復させるための、コネキシン43ヘミチャネルを含むコネキシンヘミチャネルを調節するための化合物の使用および方法について記載する。
本特許は、一つの態様では、脈絡膜の機能を復元または回復させるための、コネキシン43ヘミチャネルを含むコネキシンヘミチャネルを調節するための化合物の使用および方法について記載する。また、脈絡膜の構造を復元または回復させるための、コネキシン43ヘミチャネルを含むコネキシンヘミチャネルを調節するための化合物の使用および方法についても記載する。
また別の態様では、例示として、脈絡膜の構造および機能を保持するための、網膜の構造および機能を保持するための、網膜の機能を回復させるための、網膜の機能を復元させるための、そして自発的および慢性的な全身性高血糖症に続発する糖尿病性網膜症に対して保護し、反転させるための、抗コネキシン43ヘミチャネル開放化合物を含む、抗ヘミチャネル化合物の使用も記載する。
本発明方法は、それにより利益を受ける対象に、ならびに本明細書に言及される他の慢性的な網膜障害のある対象に、抗ヘミチャネル化合物を投与することにより、対象の脈絡膜の構造および機能の復元ならびに回復に有用であり、網膜機能の回復に有用であり、網膜機能の復元に有用であり、ならびに自然発生的で慢性的な全身性高血糖症に続発する糖尿病性網膜症および黄斑浮腫に対して保護し、反転させるのに有用である。
本発明の別の目的は、網膜構造の回復もしくは復元、網膜機能の復元、および/または網膜機能の回復から利益を受ける疾患、障害および状態の治療のための化合物、組成物、製剤、キット、用量および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、脈絡膜構造の回復もしくは復元、脈絡膜機能の復元、および/または脈絡膜機能の回復から利益を受ける疾患、障害および状態の治療のための化合物、組成物、製剤、キット、用量および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、網膜機能の喪失に対する保護から利益を受ける疾患、障害および状態の治療のための化合物、組成物、製剤、キットおよび方法を提供することである。
本発明の別の目的は、脈絡膜機能の喪失に対する保護から利益を受ける疾患、障害および状態の治療のための化合物、組成物、製剤、キットおよび方法を提供することである。
一部の態様では、治療方法は、例えばヒト等の哺乳動物に適用される。
本発明に有用な抗ヘミチャネル化合物には、式Iの化合物、例えばXiflam(トナベルサット)および/または前述の化合物のいずれかのプロドラッグ、ならびに本明細書に記載される、または本明細書の参照により組み込まれる他の抗ヘミチャネル化合物が含まれる。一部の実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、Xiflam(トナベルサット)以外の低分子、例えば、Colin Greenらの氏名で出願された米国特許出願公開20160177298の式Iまたは式IIに記載されるヘミチャネル遮断剤である。当該開示内容は、本参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。
様々な好ましい実施形態は、網膜および/もしくは脈絡膜の構造または機能の喪失により少なくとも部分的に特徴付けられる疾患、障害、および状態を治療するため、または網膜および/もしくは脈絡膜の構造または機能の喪失のリスクがある、またはリスクがあり得る対象を治療するための経口的に利用可能な低分子の抗ヘミチャネル化合物の使用を含む。一つの実施形態では、網膜および/もしくは脈絡膜の構造または機能は、経口的に利用可能な抗ヘミチャネル化合物を含む、記載される抗ヘミチャネル化合物を用いて治療することによって、実質的または完全に回復される。
他の好ましい実施形態は、網膜および/もしくは脈絡膜の構造または機能の喪失のリスクがある、またはリスクがあり得る対象を治療するための経口的に利用可能な低分子の抗ヘミチャネル化合物の使用を含む。
本発明の他の態様は、慢性的な網膜の障害を有する対象において、脈絡膜の血流を改善または回復させる方法を含み、当該方法は、当該対象に、有効量のヘミチャネル遮断剤を投与することを含む。
本発明の他の態様は、慢性的な網膜の障害を有する対象において、外網膜への脈絡膜血管の血流を改善または回復させる方法を含み、当該方法は、当該対象に、有効量のヘミチャネル遮断剤を投与することを含む。
その必要のある対象において、網膜の機能および/または脈絡膜の機能の残存を増加させる、および復元または回復させるための方法も含まれ、当該方法は、例えば、当該対象に、残存促進量のN-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド(Xiflam)を投与することを含む。一部の実施形態では、残存促進量は、1日当たり約10~約200mgである。他の実施形態では、残存促進量は、1日当たり約20~約100mgである。これらの量は、単回投与または分割投与、例えばBIDで投与されてもよい。他の1日用量、ならびに特に有用な毎週投与、毎月投与、およびインプラント投与、ならびに投与レジメンも開発され、本明細書に提供される。
一部の方法では、残存の増加、復元または回復は、慢性的な網膜障害を治療する。他の態様では、慢性的な網膜障害は、糖尿病性網膜症または糖尿病性黄斑浮腫である。他の態様では、残存を増加させる方法は、ウェット型加齢黄斑変性、ドライ型加齢黄斑変性、地図状萎縮、および高血圧性網膜症からなる群から選択される慢性的な網膜障害を治療する。
残存を増加させる、復元または回復させる方法の他の態様では、慢性的な網膜障害は、網膜変性、浮腫、糖尿病、虚血性網膜変性、網膜血管閉塞、および網膜中心静脈閉塞によって引き起こされる。
本発明の方法の他の態様では、混合a波機能(mixed a-wave function)および/または改善された混合b波機能(mixed b-wave function)が改善され、または正常化される。
本発明の方法の他の態様では、網膜のPIIおよびPIIIの桿体ならびに錐体の機能が改善される。
本発明の方法の他の態様では、網膜のERG機能が、改善または正常化される。
さらに本発明の方法の他の態様では、内網膜の機能が、改善または正常化される。
本発明の方法の他の態様では、光受容体の機能が、改善または正常化される。
また、その必要のある対象において、網膜構造の残存を増加させる、復元または回復させるための方法も含まれ、当該方法は、当該対象に、1日当たり10~200mg、または1日当たり1.4mg/kg、または本明細書に記載される他の用量のN-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド(Xiflam)を投与することを含む。一部の実施形態では、網膜構造は、網膜色素上皮、網膜血管内皮、および/または網膜層の構造を含む。他の実施形態では、網膜内の微小動脈瘤および/または巨大動脈瘤が減少する。
また、その必要のある対象において、脈略膜の機能の残存を増加させる、復元または回復させるための方法も含まれ、当該方法は、当該対象に、1日当たり10~200mg、または上記もしくは本明細書に記載される他の用量のN-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド(Xiflam)を投与することを含む。これらの方法の一部の実施形態では、脈絡膜の血流が、改善または正常化される。他の実施形態では、外網膜に供給する脈絡膜血管の血流が、改善または正常化される。これらの方法のさらに他の実施形態では、脈絡膜の血流の調節が、改善または正常化される。
また本明細書において特許請求される、その必要のある対象において脈略膜の構造の残存を増加させる方法も記載され、当該方法は、当該対象に、1日当たり10~200mgのN-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド(Xiflam)を投与することを含む。これらの方法の一部の実施形態では、脈絡膜の厚さが改善される。他の実施形態では、脈絡膜血管床が、改善または正常化される。
本発明の特定の実施形態では、網膜機能の残存の増加は、網膜機能を回復または復元する。
他の実施形態では、網膜構造の残存の増加は、網膜構造を回復または復元する。
他の実施形態では、脈絡膜機能の残存の増加は、脈絡膜機能を回復または復元する。
他の実施形態では、脈絡膜構造の残存の増加は、脈絡膜構造を回復または復元する。
様々な実施形態では、ヘミチャネル開放を遮断または改善または阻害する低分子は、Xiflam(トナベルサット)またはそのアナログのプロドラッグである。
別の態様では、本発明は、本明細書に記載または参照される、対象の治療、または疾患、障害および状態の治療における使用のための医薬品の製造におけるヘミチャネル遮断剤の使用を提供する。医薬品は、抗ヘミチャネル化合物を含み、抗ヘミチャネル化合物から本質的になり、または抗ヘミチャネル化合物からなる。一つの実施形態では、抗ヘミチャネル化合物は、低分子抗ヘミチャネル化合物である。別の実施形態では、低分子抗ヘミチャネル化合物は、経口的に利用可能な低分子抗ヘミチャネル化合物である。
一つの実施形態では、医薬品は、抗ヘミチャネル化合物の一例である低分子ヘミチャネル遮断剤を含み、本質的にからなり、またはからなる。一つの実施形態では、医薬品は、米国特許出願公開20160177298の式Iまたは式IIによる化合物を含み、本質的にからなり、またはからなる。一つの実施形態では、医薬品は、Xiflam(トナベルサット)を含み、本質的にそれからなり、またはそれからなる。
式I:
Figure 2022547324000002
式中、Yは、C-Rであり;
は、アセチルであり;
は、水素、C3-8シクロアルキル、任意で酸素により中断される、またはヒドロキシ、C1-6アルコキシもしくは置換アミノカルボニルにより置換されるC1-6アルキル、C1-6アルキルカルボニル、C1-6アルコキシカルボニル、C1-6アルキルカルボニルオキシ、C1-6アルコキシ、ニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはCFSであり;またはCF-A-基であり、式中、Aは、-CF-、
-CO-、-CH-、CH(OH)、SO、SO、CH-O、またはCONHであり;またはCFH-A’-基であり、式中、A’は、酸素、硫黄、SO、SO、CF、またはCFHであり;トリフルオロメトキシ、C1-6アルキルスルフィニル、パーフルオロC2-6アルキルスルホニル、C1-6アルキルスルホニル、C1-6アルコキシスルフィニル、C1-6アルコキシスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ホスホノ、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アリールスルホニル、または任意の芳香族部分が任意選択で置換されるヘテロアリールスルホニル、C1-6アルキルカルボニルアミノ、C1-6アルコキシカルボニルアミノ、C1-6アルキル-チオカルボニル、C1-6アルコキシ-チオカルボニル、C1-6アルキル-チオカルボニルオキシ、1-メルカプトC2-7アルキル、ホルミル、または任意のアミノ部分が任意選択で一つもしくは二つのC1-6アルキル基、またはC1-6アルキルスルフィニルアミノ、C1-6アルキルスルホニルアミノ、C1-6アルコキシスルフィニルアミノもしくはC1-6アルコキシスルホニルアミノで置換される、またはC1-6アルキルカルボニル、ニトロもしくはシアノでエチレニル末端置換されるアミノスルフィニル、アミノスルホニルまたはアミノカルボニル、または-C(C1-6アルキル)NOHもしくは-C(C1-6アルキル)NNHであり;または一つもしくは二つのC1-6アルキルで任意選択で置換される、またはC2-7アルカノイルで任意選択で置換されるアミノであり;RとRのうちの一つは、水素またはC1-4アルキルであり、他方は、C1-4アルキル、CFまたはCHは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1-4アルコキシ、ヒドロキシ、C1-4アルキルカルボニルオキシ、-S-C1-4アルキル、ニトロ、任意選択で一つまたは二つのC1-4アルキル基で置換されるアミノ、シアノ、またはC1-4アルコキシカルボニルであり;またはRとRは共に、C1-4アルキルで任意選択で置換されるC2-5ポリメチレンであり;
は、C1-6アルキルカルボニルオキシ、ベンゾイルオキシ、ONO、ベンジルオキシ、フェニルオキシ、またはC1-6アルコキシであり、およびRとRは水素であるか、またはRはヒドロキシであり、Rは水素またはC1-2アルキルであり、およびRは水素であり;
はヘテロアリールまたはフェニルであり、その両方ともが、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、アミノから選択される基または原子で独立して任意選択で1回または2回置換され、この場合においてアミノはC1-4アルキル、シアノ、アジド、C1-4アルコキシ、トリフルオロメトキシ、およびトリフルオロメチルにより任意で1回または2回置換され;
は、水素、C1-6アルキル、OR11またはNHCOR10であり、式中、R11は、水素、C1-6アルキル、ホルミル、C1-6アルカノイル、アロイルまたはアリール-C1-6アルキルであり、R10は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、モノもしくはジC1-6アルキルアミノ、アミノ-C1-6アルキル、ヒドロキシ-C1-6アルキル、ハロ-C1-6アルキル、C1-6アシルオキシ-C1-6アルキル、C1-6アルコキシカルボニル-C1-6-アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり;R-N-CO-R基は、R基に対してシスであり;およびXは、酸素またはNR12であり、式中、R12は、水素またはC1-6アルキルであり;
式II
Figure 2022547324000003
式中、
Qは、Oまたは式=NHOR43のオキシムであり、式中、R43は、
(i)H、C1-4フルオロアルキル、または任意選択で置換されるC1-4アルキルから選択され、または
(ii)-A300-R300であり、式中、A300は、直接結合、-C(O)O*-、-C(R)(R)O*-、
-C(O)O-C(R)(R)O*-、もしくは-C(R)(R)OC(O)O*-であり、式中、*の印が付いた原子は、R300に直接接続され、RとRは独立して、H、フルオロ、C1-4アルキル、またはC1-4フルオロアルキルから選択されるか、またはRとRは、それらが結合される原子とともにシクロプロピル基を形成し、そしてR300は、[1]、[2]、[2A]、[3]、[4]、[5]または[6]の群から選択され;
は、Hであり、
Aは、直接結合、-C(O)O*-、-C(R)(R)O*-、-C(O)O-C(R)(R)O*-、または-C(R)(R)OC(O)O*-であり、式中、*の印が付いた原子は、Rに直接接続され、RとRは独立して、H、フルオロ、C1-4アルキル、またはC1-4フルオロアルキルから選択されるか、またはRとRは、それらが結合される原子とともにシクロプロピル基を形成し、
は、[1]、[2]、[2A]、[3]、[4]、[5]および[6]の群から選択され、**の印が付いた原子は、Aに直接接続され、
Figure 2022547324000004
とRはそれぞれ独立して、H、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、および
ベンジルから選択され;
は独立して、H、C1-4アルキル、およびC1-4フルオロアルキルから選択され;
は、
(i)H、C1-4アルキルもしくはC1-4フルオロアルキル、または
(ii)天然もしくは非天然のアルファ-アミノ酸の側鎖、または本明細書に記載のペプチド模倣体もしくは他のペプチド、または
(iii)ビオチン、もしくはビオチンに化学的に連結される、から選択され;
は、H、-N(R11)(R12)、または-N(R11)(R12)(R13)X、または-N(R11)C(O)R14から選択され、
式中、R11、R12、およびR13は独立して、H、C1-4アルキル、またはC1-4フルオロアルキルから選択され、
14は、H、C1-4アルキル、またはC1-4フルオロアルキルであり、
15は独立して、C1-4アルキルおよびC1-4フルオロアルキルから選択され、および
は、薬学的に許容可能なアニオンである。
「包含すること」、「含有すること」または「~を特徴とする」と同義である「含むこと」という用語は、包括的でオープンエンドであり、医薬品(または方法の場合には工程)から追加の列記されない要素または成分を除外するものではない。「~からなる」という文言は、医薬品(または方法の場合には工程)において明記されない要素、工程または成分をすべて除外する。「本質的に~からなる」という文言は、明記された物質と、医薬品(または方法の場合には工程)の基礎的で新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものを指す。本発明の基礎的で新規な特徴は、本明細書全体を通じて記載されており、コネキシンギャップジャンクションヘミチャネルを遮断または調節する、ならびに場合によっては網膜構造を保持、保護および回復または復元する、脈絡膜構造を保持、保護、および回復または復元する、網膜機能を保持、保護、および回復または復元する、脈絡膜機能を保持、保護、および回復または復元する、本発明の医薬品および方法の能力を含む。本明細書に記載される医薬品および方法を含む本発明の基礎的で新規な特徴における重大な変更は、ヘミチャネル調節、ならびに/または網膜構造を保持、保護および回復または復元する、脈絡膜構造を保持、保護、および回復または復元する、網膜機能を保持、保護、および回復または復元する、脈絡膜機能を保持、保護、および回復または復元することの望ましくない、または臨床的に所望されない有害で不都合な、または悪影響のある縮小を含む。一つの実施形態では、医薬品は、例えば低分子コネキシン43ヘミチャネル遮断剤など、コネキシン43ヘミチャネル遮断剤を含み、本質的にからなり、またはからなる。
別の態様では、本発明は、本明細書に記載され、または本明細書において言及される疾患、障害および/または状態のいずれかのヘミチャネルの調節、および治療のための医薬品(または一つ以上の医薬品、および/もしくは使用説明書を含む、または含まない容器を含有するパッケージまたはキット)の製造におけるヘミチャネル遮断剤の使用を提供する。一つの態様では、例えば本発明は、Xiflamおよび/またはそのアナログもしくはプロドラッグを含む、低分子コネキシンヘミチャネル遮断剤の使用を提供する。一つの実施形態では、医薬品は、例えば低分子コネキシン43ヘミチャネル遮断剤など、コネキシン43ヘミチャネル遮断剤を含み、本質的にからなり、またはからなる。一つの実施形態では、本発明で有用なヘミチャネル遮断剤組成物は、薬学的に許容可能な担体を含んでもよく、および丸剤、溶液、マイクロスフィア、リポソーム、ナノ粒子、インプラント(例えば、腹腔インプラント、皮下インプラントおよび眼内インプラントならびに徐放インプラントまたは制御放出インプラントを含む)、マトリクス、またはヒドロゲル製剤として製剤化されてもよく、または凍結乾燥形態で提供されてもよい。
本明細書に記載される目的に対して調節されるヘミチャネルは、その目的に対して対象となる任意のコネキシンであってもよい。例えば、本明細書に記載される目的に対して調節されるヘミチャネルは、網膜、血管、および/または血管壁において発現されるコネキシンヘミチャネルであってもよい。一つの実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、血管内のコネキシンヘミチャネルを遮断する。他の実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、微小血管内のコネキシンヘミチャネルを遮断する。他の実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、毛細血管内のコネキシンヘミチャネルを遮断する。他の実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、内皮のコネキシンヘミチャネルを遮断する。
様々な実施形態において例示として、調節されるヘミチャネルは、コネキシン36(Cx36)、コネキシン37(Cx37)、コネキシン40(Cx40)、コネキシン43(Cx43)、コネキシン45(Cx45)、コネキシン57(Cx57)、コネキシン59(Cx59)および/またはコネキシン62(Cx62)のうちの一つ以上を含む。
一つの実施形態では、特に網膜に関連する場合、調節されるヘミチャネルは、Cx36、Cx37、Cx40、Cx43、Cx45、またはCx57タンパク質のうちの一つ以上を含む。標的となるヘミチャネルコネキシンとしては、血管内の選択ヘミチャネルコネキシン(例えば、Cx37、Cx40またはCx43)ならびに星状膠細胞(例えば、Cx43)、アマクリン細胞(例えば、Cx36、Cx45)、双極細胞(例えば、Cx36、Cx45)、外網状層および内網状層、神経節細胞層(例えば、Cx36、Cx45)、錐体光受容体および網膜内皮細胞、ならびに例えば他の網膜神経細胞におけるヘミチャネルコネキシンのうちの一つ以上が挙げられる。一部の実施形態では、Cx36ヘミチャネルおよびCx43ヘミチャネルが標的とされる。一つの特定の実施形態では、ヘミチャネル、および/または調節されるヘミチャネルは、Cx43を含む。一つの実施形態では、外網状層の細胞におけるコネキシンを含むヘミチャネル(例えば、Cx43)が標的とされ、この場合において本発明方法は、OPLの薄層化を停止および反転させ、OPLを復元させることができる。
特に脈絡膜または網膜の血管に関連する他の実施形態では、調節されるヘミチャネルは、Cx37、Cx40、またはCx43タンパク質のうちの一つ以上を選択的に含んでもよい。一つの特定の実施形態では、ヘミチャネル、および/または調節されるヘミチャネルは、Cx43を含む。一つの実施形態では、大きな内径の非有窓血管から構成される、ハラー層(Haller’s layer)としても知られる外側の脈絡膜の細胞における血管コネキシンを含むヘミチャネルが標的とされる。別の実施形態では、非常に小さな血管から構成されるザットラー層(Sattler’s layer)として知られる内側の脈絡膜の細胞における血管および内皮細胞のコネキシンを含むヘミチャネルが標的とされる。別の実施形態では、外側の脈絡膜および内側の脈絡膜の細胞におけるコネキシンを含むヘミチャネルが標的とされる。別の実施形態では、脈絡毛細管枝の毛細血管におけるコネキシンを含むヘミチャネルが標的とされる。一つの実施形態では、本発明方法において標的とされるヘミチャネル血管コネキシンは、周皮細胞におけるヘミチャネルコネキシン、ならびに血管平滑筋細胞および内皮細胞におけるコネキシンを含む。別の実施形態では、本発明方法において標的とされるヘミチャネル血管コネキシンは、周皮細胞におけるヘミチャネル、および例えば微小毛細血管など内皮細胞におけるコネキシンを含む。Cx43ヘミチャネルは、本発明の好ましい標的である。
本発明の当該態様の別の実施形態は、低分子または他のヘミチャネル遮断剤を含む医薬パックを提供する。一つの実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、Xiflam(トナベルサット)である。
別の実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、Peptide5、GAP9、GAP19、GAP26、GAP27、またはα-コネキシンカルボキシ末端(ACT)ペプチド、例えば、ACT-1、または他の活性抗ヘミチャネルペプチド模倣体を含む、本質的にからなる、またはからなる。
ヘミチャネル遮断剤の活性は、特定の生物学的アッセイを使用して評価されてもよい。分子運動に対して判明している、または可能性のあるヘミチャネル遮断剤の効果は、以下の実施例に記載される方法、またはコネキシンヘミチャネルを介した化合物の通過を判定する他の当分野に公知の方法または同等の方法を使用して、特定、評価、またはスクリーニングされ得る。様々な方法が当分野に公知であり、例えば、検出可能なマーカーで標識された分子の転移などの色素転移実験、ならびに低分子蛍光透過性トレーサーの膜貫通が挙げられ、それらはヘミチャネルの機能的な状態の試験に広く使用されている。本発明の当該態様の様々な実施形態が本明細書に記述されており、化合物がヘミチャネルを遮断する能力を特定または評価する際に使用するための方法が挙げられ、当該方法は、(a)試験サンプルと試験システムを持ち寄ることであって、当該試験サンプルは一つ以上の試験化合物を含み、そして当該試験システムは、ヘミチャネル遮断を評価するためのシステムを備え、当該システムは、例えば、当該システムへの低酸素または虚血の導入に応答して、炎症メディエーターに応答して、またはヘミチャネル開放を誘導する他の化合物もしくは事象、例えば細胞外における一滴のCa2+などに応答して、色素または標識代謝物の転移の上昇を呈するという点を特徴とすること、および(b)例えば、当該システム中の色素または他の標識代謝物の存在または量の増加を判定すること、を含む。陽性対照および/または陰性対照も同様に使用され得る。任意選択で、所定量のヘミチャネル遮断剤(例えば、Xiflam)を当該試験システムに追加してもよい。ヘミチャネル遮断剤の活性の評価に有用な他の方法としては、細胞質の腫脹または細胞浮腫の減少、および細胞からのカリウム排出の減少である電気生理学的技術およびチャネルコンダクタンス遮断技術が挙げられ、それらはすべて当分野で公知である。
一つの態様では、ARPE-19細胞を使用した試験をはじめとするアッセイを使用して、網膜機能の回復または復元に有用な化合物の活性を確認、測定または評価する方法が提供される。Dunn KC,et al.,ARPE-19,a human retinal pigment epithelial cell line with differentiated properties.Exp Eye Res.1996 Feb;62(2):155-69を参照のこと。脈絡膜の構造および機能の回復または復元に有用な化合物の活性を確認、測定、または評価するための当分野の方法が使用されてもよい。例えば、脈絡膜の厚さは、超音波検査法、磁気共鳴画像法(MRI)、および深部強調画像光干渉断層撮影法(EDI-OCT)を使用して測定することができる。EDI-OCTは非侵襲的なモダリティであり、網膜および脈絡膜の断面撮像を可能にし、これを使用して、許容可能な再現性および感度で脈絡膜の厚さが測定される。脈絡膜の厚さは、網膜機能との正の相関を示しており、例えば、多焦点網膜電位図(mfERG)で測定される場合、脈絡膜が厚くなると、網膜機能は良好になる。波長掃引型OCT(SS-OCT:swept-source OCT)をはじめとする他の網膜-脈絡膜の解剖学的評価法が、脈絡膜機能の回復または復元に有用な化合物の活性を確認、測定または評価に使用され得る。
図1は、ビヒクル処置または薬剤処置された動物の未加工のECG波形を示す(A)。0.26mg/kg(BおよびE)、0.8mg/kg(CおよびF)、および2.4mg/kg(DおよびG)のトナベルサットを使用した、ERGの混合a波およびb波の振幅に対するビヒクルおよびヘミチャネル調節剤(トナベルサット)の効果。示されるビヒクルデータは、損傷から2週間後のものである。これらの動物において、ERG機能の回復はなかった。統計解析は、二元配置ANOVAおよびボンフェローニ事後検定を使用して行われた。有意な値は、アスタリスクで示されている:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。 同上。 同上。 同上。
図2は、光損傷を受けたラットの処置から3カ月後のERGでの混合a波(A)およびb波(B)の振幅に対する、ビヒクル、および2.4mg/kgのヘミチャネル調節剤(トナベルサット)の効果を示す。桿体のPIII(C)およびPII(D)の解析からは、未処置動物が、光損傷を受ける前の振幅と比較して、有意に振幅が低下したことを示す。処置された動物は網膜機能を維持し、桿体PII対照とは合致し、桿体PIIIの対照に対してはわずかに低いのみであった。すべての平均結果は、平均±SEMとして表される。統計解析は、a-波およびb-波の値の二元配置ANOVAおよびボンフェローニ事後検定を使用して行われた。桿体PIIおよびPIIIの統計解析は、ウェルチの補正を用いた独立t検定を使用して実施された。有意な値は、アスタリスクで示されている:***p<0.001。LD=光損傷。 同上。
図3は、光損傷を受けたラットの網膜および脈絡膜の厚さに対する、ヘミチャネル調節剤(トナベルサット)の経口送達の効果を示す。正常なSprague Dawley(SD)ラット(A)、光損傷から2週間後に2.4mg/kgのトナベルサット処置された動物(B)、およびビヒクル処置を受けた光損傷ラット(C)の眼底画像および光干渉断層撮影法(OCT)の画像。眼底画像の緑色の線は、隣接断面OCT画像のスキャン位置を表す。OCT画像上の色付き線は、内側の境界膜(シアニン)、OPL(オレンジ)、ONL(オレンジから黄色)、脈絡膜(緑色から赤色)を強調している。定量化は、ONLと脈絡膜の両方が、ビヒクル処置動物において、正常(光暴露前)と比較し、光損傷から2週間後までに薄化することを示している。使用された三つのトナベルサット用量の各々について、処置動物は、ONLまたは脈絡膜において、光損傷から24時間、1週間および2週間後の解析された時点のいずれでも薄化を示さなかった(列D~F)。最小用量および中用量でいくらかの薄化があったが、有意ではなかった。**=p<0.01;***=p<0.001。スケールバー=100μm 同上。 同上。 同上。
図4は、光損傷から3カ月後のビヒクル(A)またはヘミチャネル調節剤(トナベルサット、2.4mg/kg)を用いた処置(B)の効果を示す。代表的なOCT画像はビヒクル処置動物における有意な薄化を示しており、特にINL、ONL、および脈絡膜において明白な薄化を伴っている。OCT画像上の色付き線は、内側の境界膜(シアニン)、INL(オレンジ~黄色)、ONL(黄色~赤色)、脈絡膜(赤色から紫色)、および強膜(紫色~緑色)を強調している。INL、ONL、および脈絡膜の厚さの測定値は、損傷前の網膜、LDから3カ月でのビヒクル処置、LDから3カ月でのトナベルサット処置について、C~Eに示される。データは、平均±SEMとして表される。光損傷を受けたビヒクル(ピーナッツバター)群と比較して有意な値は、アスタリスク:*p<0.05で示されている。**p<0.01、***p<0.001。LD=光損傷。スケールバー=100μm 同上。
図5は、光損傷を受けたラットに対する、経口送達ヘミチャネル調節剤(トナベルサット)の三つの濃度の効果に関する免疫組織化学解析を示す。経口処置されたラットは、ビヒクル群(A)と比較して、三つの用量レベル(B~D)すべてについて、網膜におけるコネキシン43の免疫反応性が低かった。Iba-1免疫標識細胞は、トナベルサット処置ラットの網膜のIPLにおいて、三つ全ての用量(F~H)について、ビヒクル処置ラット(E)と比較し、低活性化(出芽)を示した。しかし、0.26mg/kgの最低経口用量では、Iba-1反応性において若干の増加が明らかであった。GFAP免疫反応性は、ビヒクルラット(I)と比較して、0.8mg/ml(K)および2.4mg/kg(L)の網膜では増加しなかった。0.26mg/kgの最低経口用量では、GFAP標識がわずかに増加したが、依然としてビヒクル単独(J)よりは発現が低かった。略語:CGL:神経節細胞層、IPL内網状層。スケールバー:50μm。
図6は、光損傷を受けたラットのビヒクル単独と比較した、三つの経口トナベルサット用量レベルの各々で処置された動物における、GFAP免疫反応領域(A)、コネキシン43発現(B)、およびIba-1活性化細胞の平均数(C)の定量を示す。解析により、ビヒクル対照と比較して、三つすべてのトナベルサット処置群においてGFAPおよびコネキシン43の上方制御が有意に低いことが明らかとなった(p<0.001)(A~B)。Iba-1陽性細胞の定量により、ビヒクルと比較して、三つすべてのトナベルサット処置群の活性ミクログリアの数が有意に低下したことが明らかとなった(p<0.001)(C)。一元配置ANOVA、次いでテューキー多重比較検定を使用して、統計解析を実施した。未処置群の結果と比較して有意な値は、アスタリスクで示される:***p<0.001
図7は、高血糖ラットのOCTの代表的な画像を示しており、一つの眼当たり、平均5~8個の高反射スポットを示している(網膜全体で7か所の均等に間隔を置いたOCTスキャンに基づいており、そのため、眼全体に対しては過小評価となっている)が、正常なSDラット(A)にはない。高反射スポットは、微小動脈瘤(直径20μm未満;B0の矢印)、および巨大動脈瘤(140~160μm;Cの矢印)と思われ、それらは特にINSおよびONLに位置していた。OCT画像上の色付きの線は、INL(オレンジ色から黄色)、ONL(黄色から赤色)、脈絡膜(紫色からシアン)を強調している。エバンスブルー色素かん流により、OCTを使用してマッピングされた動脈瘤の部位での血管漏出が確認された。眼底画像(D)の緑色の線は、OCTスキャン(E)が行われた場所を示す。高反射スポット(矢印)は、微小動脈瘤である。ラットにエバンスブルーを注入し、次いで網膜を取り出して、血管漏出領域(F)が明らかな領域で撮像した。漏出は全ての微小動脈瘤とは関連しなかったが、血管漏出は、微小動脈瘤を有する4匹の高血糖ラットにおいて一貫して認められた。スケールバー=100μm 同上。
図8は、高血糖系統が導出された正常なSDラットと比較して、生後5週の高血糖系統の網膜機能のERG解析を示す。代表的なERG混合a-波形およびb-波形を、A、Bに示す。平均混合a波の振幅は、正常なSDラットと比較して、高血糖ラットで有意に低下した。また混合b波の振幅も、正常SDラットと比較して、高血糖ラットにおいて有意に低下した。分解解析は、桿体PIII(C)、PII(D)、錐体PII(E)応答に関し、高血糖ラットにおいて、およびOP対照群について、振幅が有意に低下したことを示す。一元配置ANOVA、次いでテューキー多重比較検定を使用して、統計解析を実施した。正常なSDと比較して有意な値は、アスタリスクで示されている:**p<0.01;***p<0.001。OP=律動様小波。 同上。
図9は、ビヒクル処置された動物と比較した、14日間(5~7週目)、1日1回、8週目(使用された最低用量で、0.28mg/kg)での高血糖ラットの網膜の構造および機能に関するOCTおよびERG解析を示す。(A)は、高反射スポットを示しており、治療後にはほとんど見えない(B)。ERGは、ビヒクル処置ラットと比較して、処置された高血糖ラットにおいて有意に回復しており、一方で非処置ラットは、5週目から8週目でさらに悪化した。処置された動物において、混合a-波は、8週目でビヒクル処置動物と比較して有意に高かった(C)。同様に、混合b波も、ビヒクル対照群と比較して、全ての強度に関し、トナベルサット処置動物において有意に回復していた(D)。さらなる解析により、処置された高血糖ラットは、桿体PIII(E)、PII(F)、錐体PII(G)、および合計OP(H)振幅が有意に回復したことが明らかとなった。一元配置ANOVA、次いでテューキー多重比較検定を使用して、統計解析を実施した。ビヒクル処置と比較して有意な値は、アスタリスクで示されている:**p<0.01;***p<0.001。OP=律動様小波。スケールバー=100μm 同上。 同上。
図10は、トナベルサット処置された、およびビヒクル処置された8週齢の高血糖ラットにおける、免疫組織化学標識を示す。GFAP標識はCGLで強く、この場所で星状細胞は、高血糖ラットの網膜において微小動脈瘤の周辺領域に存在し、神経線維層からONLにまで広がっている。このことから、ミュラー細胞の活性化が示唆される(A)。IPLの高血糖網膜において、異常に高いIba-1標識が存在しており(B)、この場所では細胞体が腫脹し、多数の細長い枝を有する細胞が存在しており、およびコネキシン43標識は未処置動物のGCLにおいて異常に高かった(C)。14日間トナベルサットを毎日与えられた高血糖ラットは、三つのマーカーすべての標識(D~F)により明白であるように炎症が低下していた。G~Iの結果の定量化によって、三つのマーカーのGFAP、コネキシン43、およびIba-1のすべてが、非損傷対照網膜と比較して、ビヒクル処置ラットにおいて有意に高く、トナベルサット処置によって、8週間で有意に標識が低下し、未処置ラットの網膜レベルよりも有意に低かったことが示される。一元配置ANOVA、次いでテューキー多重比較検定を使用して、統計解析を実施した。未処置群の結果と比較して有意な値は、アスタリスクで示される:***p<0.001。スケールバー=100μm 同上。
コネキシン43ヘミチャネル開放の増加は、眼の障害を含む様々な病態において、インフラマソーム経路の活性化と炎症に関連している。本発明者らは、ドライ型AMDの光損傷網膜動物モデルとDRの自然発生ラットモデルを使用して、網膜の機能と形態、ならびに脈絡膜の機能と構造の回復および復元において、例えばXiflamをはじめとする経口送達低分子コネキシンヘミチャネル遮断剤などのコネキシンヘミチャネル遮断剤の臨床的に安全な用量の有用性を発見した。臨床パラメータ(眼底造影、光干渉断層撮影法(OCT)および網膜電位図)および炎症性マーカー(Iba-1ミクログリアマーカー、星状細胞マーカーのグリア線維酸性タンパク質、およびコネキシン43タンパク質発現に対する免疫組織化学法)を評価し、ヘミチャネル遮断剤処置によって、ドライ型AMDモデルにおいて光損傷後最大3カ月評価したとき、網膜光受容体の機能の保持がもたらされたことを示した。DRモデルでは、エバンスブルー色素かん流を使用して確認された動脈瘤の存在を含む臨床徴候は、1日1回、2週間のトナベルサット処置後に低下した。炎症も減少し、網膜機能は回復した。本発明者らは、ヘミチャネル遮断剤を使用することで、慢性的網膜疾患において解剖学的および機能的な転帰の改善だけでなく、回復もし得ることを発見した。
驚くべきことに、経口摂取されたヘミチャネル遮断剤の単回投与は、急性光損傷から3か月までの評価期間にわたって神経保護的であったことが発見された。ヘミチャネル遮断剤処置は、網膜の機能、特に内網膜の光受容体と双極細胞の機能を有意に保持したことが見出された。さらに、試験された三つのヘミチャネル遮断剤の用量の各々を使用して特定された律動様小波の増加は、光損傷にもかかわらず、内網膜細胞を保持する効果を示している。網膜電位図(ERG)におけるPIIIおよびPII応答の改善も、光伝達経路、および光受容体後のニューロン応答の特異的な保持を示している。実施例2に記載される当該試験も、ヘミチャネル遮断剤を使用して、OCTにより測定されたときの網膜層構造が保持され得ることを示した。これら発見のさらなる詳細については、実施例2を参照のこと。
さらに、実施例3に示されるように、例えば経口遮断剤のXiflamなどのヘミチャネル遮断剤が、糖尿病性SDラットモデルにおける自然発生的および慢性的な全身性高血糖症に続発するDRの兆候の消滅に有効であることが見出された。視覚的な網膜機能に対する影響を伴う網膜の微小動脈瘤と巨大動脈瘤の徴候は、糖尿病およびDRの表現型モデルで見いだされた。
経口ヘミチャネル遮断剤、本例の場合ではXiflamの使用は、プラセボ対照と比較して、微小動脈瘤と巨大動脈瘤の退縮、およびERGにより測定されたときの網膜機能の有意な復元を示した。これらの全く異なるモデルからの結果は、他の慢性的な眼炎症性疾患、特にインフラマソーム経路を含む疾患に対する示唆を有する。本特許に記載される黄斑変性および糖尿病性網膜症のモデルにおけるヘミチャネル遮断は、炎症を低減しただけでなく、驚くべきことに、網膜の構造と機能、ならびに、そして重要なことに、脈絡膜の構造を救済し、復元した。
本出願は、ヘミチャネル開放の調節が、網膜の構造と機能、ならびに脈絡膜の構造の維持と復元に対して、直接的で長期的な効果を有するという驚くべき発見に関連する。以下の実施例1~3を参照のこと。これらの発見は、治療法が不明な糖尿病性網膜症を含む、網膜の構造および/または機能の喪失によって全体的または部分的に特徴付けられる様々な疾患、障害および状態の治療に重要な影響を与える。
また、例えばコネキシン43ヘミチャネル遮断剤をはじめとするヘミチャネル遮断剤を使用して、脈絡膜を保持し得ることも見出された。したがって、ヘミチャネル遮断剤を、疾患状態の脈絡膜の機能を保持するための方法に使用することができる。
定義
本明細書で使用される場合、値またはパラメータの「約」という用語は、当分野で理解される意味を指し、当該値またはパラメータそれ自体を対象とする実施形態を含む。例えば、「約X」と言及する記述は、「X」の記述を含む。例えば、用量の重量値の「約5mg」という用語は、重量値の+/-0.5を指す。
「低分子」は、本明細書において、約600~900ダルトン未満の分子量を有すると定義され、概して有機化合物である。低分子は、ヘミチャネル遮断剤プロドラッグの活性剤であり得る。一つの実施形態では、低分子は600ダルトン未満である。別の実施形態では、低分子は900ダルトン未満である。
本明細書において使用される場合、「治療」(および例えば「治療する」または「治療すること」などの文法的なバリエーション)とは、治療される個体、組織または細胞の自然の経過を変える臨床的介入を指し、予防目的、または臨床病理の経過の間のいずれかで実施することができる。治療の望ましい効果としては限定されないが、疾患、障害もしくは状態の発生または再発の予防、兆候または症状の軽減、疾患の任意の直接的または間接的な病的帰結の縮小、疾患進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後の改善が挙げられる。一部の実施形態では、本発明の化合物、方法および組成物を使用して、疾患、障害もしくは状態の発現を遅延させるか、または疾患、障害もしくは状態の進行を減速させることができる。当該用語は必ずしも対象が完全回復するまで治療されることを暗示するものではない。したがって、「治療」は、特定の疾患、障害もしくは状態の症状または重症度を低下、軽減または改善すること、または特定の疾患、障害もしくは状態を発症するリスクを予防または別手段により低下させることを含む。また、状態の完全または部分的な寛解状態の維持または促進を含んでもよい。
本明細書で使用される場合、「治療」は、ヘミチャネル遮断剤の投与後に、対象において、網膜構造を保持および/もしくは復元すること、網膜機能を保持および/もしくは復元すること、脈絡膜構造を保持および/もしくは復元すること、ならびに/または脈絡膜機能を保持および/もしくは復元することを含む。好ましいヘミチャネル遮断剤は、Xiflamである。好ましい投与経路は、経口である。
疾患、状態または障害などを「治療すること」という用語は、障害、疾患および/または状態を予防すること、減速させること、低下させること、減少させること、および特に停止させること、および反転させること、ならびに/または網膜の構造および/もしくは機能を改善すること、ならびに復元すること、または回復させること、または正常化させること、ならびに/または脈略膜の構造および/もしくは機能を改善すること、ならびに復元すること、または回復させること、または正常化させることを指す場合がある。特に例えば、障害、疾患もしくは状態を停止させることまたは反転させることにおいて、または網膜の機能および/もしくは構造、または脈絡膜の機能および/もしくは構造を復元させることにおいて、それぞれ、障害、疾患または状態の症状のうちの一つ以上、またはすべてが反転され、または実質的に除去され、網膜のONLが、復元され、回復され、および/または正常化され、網膜ERG機能、内網膜機能、網膜光受容体機能(特に桿体光受容体機能)、ならびに/または網膜PIIIおよびPII桿体応答が、復元され、回復され、および/もしくは正常化され、脈絡膜の脈絡毛細管枝が復元され、回復され、および/または正常化される。
他の実施形態では、網膜の外顆粒層および内顆粒層は、実施例に示されるように本明細書に記載される化合物および方法を使用して保護される。これは加齢性黄斑変性をはじめとする慢性的な網膜疾患において重要であり、さらに本発明の保護的作用に有用性が見いだされる。
「予防すること」という用語は、全体または一部において予防すること、または改善すること、または制御することを意味する。
本明細書で使用される場合、「有効量」とは、望ましい治療結果または予防結果を達成するために必要な用量および期間での有効な量を指す。例えば限定されないが、「有効量」とは、正常に機能しない網膜および/もしくは脈絡膜の構造ならびに/または機能が関与する疾患、障害または状態の兆候および/または症状を治療することができる、本明細書に開示される化合物または組成物の量を指す場合があり、または正常に機能しない網膜および/もしくは脈絡膜の構造ならびに/または機能を有益に調節ならびに復元することができるヘミチャネル化合物またはヘミチャネル組成物の量を指す場合がある。
本明細書で使用される場合、本発明の物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの「治療有効量」は、例えば疾患状態、個体の年齢、性別、および体重などの因子、および個体において望ましい応答を惹起させる物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの能力に応じて変化し得る。治療有効量はまた、物質/分子、アゴニストもしくはアンタゴニストの任意の毒性作用または有害作用を、治療上の有益な作用が上回り得る量でもあることが好ましい。ヘミチャネル遮断剤の治療有効量は、対象において、網膜の構造および/もしくは機能を有益に維持または改善し、ならびに/または脈絡膜の構造および/もしくは機能を維持または改善する。
本明細書で使用される場合、「予防有効量」とは、望ましい予防結果を実現するために、典型的には、復元もしくは回復した網膜および/もしくは脈絡膜の機能ならびに/または構造を維持するために必要な用量および期間での有効な量を指す。必ずではないが典型的には、予防有効量は、治療有効量よりも少ない。
「医薬製剤」という用語は、その中に含有される例えばヘミチャネル遮断剤などの活性成分の生物活性が有効となるような形態であり、当該製剤が投与される対象に対して、許容できない毒性がある追加成分は含有されない、調製物を指す。
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」とは、対象に安全に投与されることができる、活性成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容可能な担体としては限定されないが、緩衝剤、賦形剤、安定剤、および保存剤が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「個体」および「患者」を含む「対象」などの用語は、それら全てが本明細書において相互互換可能に使用されてもよく、ヒト、家畜および産業動物、ならびに動物園動物、野生動物公園動物、スポーツ動物、またはペット動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシなどを含む任意の哺乳動物を指す。好ましい哺乳動物は、成人、子供、および高齢者を含むヒトである。好ましいスポーツ動物は、ウマおよびイヌである。好ましいペット動物は、イヌおよびネコである。特定の実施形態では、対象、個体または患者は、ヒトである。
本明細書で使用される場合、「ヘミチャネル」という用語は、ギャップジャンクションの一部であり(二つのヘミチャネルまたはコネクソンは、隣接細胞間の細胞間スペースを超えて接続し、ギャップジャンクションを形成する)、多くのコネキシンタンパク質、典型的には同種または異種の、すなわちコネキシンタンパク質のホモヘキサマーまたはヘテロヘキサマーから構成され、二つの隣接細胞の細胞質間のギャップジャンクションに対する孔を形成する。ヘミチャネルは、ジャンクションの一方の側の細胞によって供給され、対向する細胞からの二つのヘミチャネルが通常一緒になって、完全な細胞間ヘミチャネルを形成する。しかし一部の細胞、および一部の状況下での細胞では、ヘミチャネルそれ自体が、細胞質と細胞外スペースの間の導管として活性であり、イオンや低分子の移送を可能にする。
例えばXiflamなどの式Iの化合物、および/または前述の化合物のいずれかのアナログもしくはプロドラッグは、ヘミチャネル、好ましくは任意のタイプのコネキシンタンパク質を含むヘミチャネルの機能および/または活性を調節することができる。したがって文脈により別段であることが必要とされない限り、「ヘミチャネル」という言及は、様々なコネキシンタンパク質のいずれか一つ以上を含む、本質的にからなる、またはからなるヘミチャネルを含むよう、広く捉えられるものとする。しかしながら一例として、ヘミチャネルは、上記に具体的に言及されるものをはじめとする、任意のコネキシンのうちの一つ以上を含んでもよい。一つの実施形態では、ヘミチャネルは、前述のコネキシンのうちの一つからなる。一つの実施形態では、ヘミチャネルは、コネキシン36、37、40、43、45および57のうちの一つ以上を含む。一つの実施形態では、ヘミチャネルは、コネキシン37、40、または43のうちの一つからなる。一つの実施形態では、ヘミチャネルは、コネキシン43ヘミチャネルである。一つの実施形態では、ヘミチャネルは、網膜ヘミチャネルである。一つの実施形態では、ヘミチャネルは、脈絡膜ヘミチャネルである。一つの実施形態では、ヘミチャネルは、血管ヘミチャネルである。一つの実施形態では、ヘミチャネルは、血管内皮細胞に存在するコネキシンヘミチャネルである。一つの特定の実施形態では、ヘミチャネルは、コネキシン30、37およびコネキシン43のうちの一つ以上を含む。一つの特定の実施形態では、ヘミチャネルは、コネキシン30からなる。一つの特定の実施形態では、ヘミチャネルは、コネキシン37からなる。一つの特定の実施形態では、ヘミチャネルは、コネキシン43からなる。一つの実施形態では、ヘミチャネルは、コネキシン26を除く一つ以上のコネキシンを含む。一つの実施形態では、組成物は、前述のものを含む任意のコネキシンのヘミチャネル遮断剤を含んでもよく、または除外してもよい。
ヘミチャネルは、任意のタイプの細胞中に存在し得る。したがって、文脈から別段であることが必要とされない限り、「ヘミチャネル」への言及は、ヘミチャネル、または任意の細胞型に存在するヘミチャネルに対する参照を含むと捉えられるものとする。本発明の一つの実施形態では、ヘミチャネルは、細胞、器官、または癌もしくは腫瘍に存在する。一つの実施形態では、ヘミチャネルは、血管ヘミチャネルである。一つの実施形態では、ヘミチャネルは、血管内皮細胞および/または血管平滑筋細胞に存在する、または網膜および/もしくは脈絡膜、または脈絡膜の血管系に存在するコネキシンヘミチャネルである。
本明細書で使用される場合、「ヘミチャネルの調節」は、ヘミチャネルの一つ以上の機能および/または活性の調節であり、典型的には、ヘミチャネルを通る細胞間の分子の流れの調節である。そのような機能および活性としては例えば、細胞外空間または細胞外環境からヘミチャネルを通り細胞内への分子の流れ、および/または細胞内空間もしくは細胞環境からヘミチャネルを通り、細胞外空間または細胞外環境への分子の流れが挙げられる。ヘミチャネルの調節に有用な化合物は、「ヘミチャネル調節剤」と呼称される場合もある。本明細書に記載される発明および方法のすべての態様は、ヘミチャネルの調節によって達成され得る。
ヘミチャネルの機能の調節は、任意の手段によって行われてもよい。しかし例示のみを目的として、調節は、ヘミチャネルの閉鎖を誘導または促進すること、ヘミチャネルの開放を予防、遮断、阻害、または減少させること、ヘミチャネルおよび/またはギャップジャンクションの細胞内部移行を誘発、誘導、または促進すること、のうちの一つ以上によって行われてもよい。例えば、「遮断すること」、「阻害すること」、「予防すること」、「減少すること」、および「アンタゴナイズすること」などの文言の使用は、完全な遮断、阻害、予防、またはアンタゴニズムを暗示すると捉えられ得ないが、好ましくはあり得、ヘミチャネルの機能もしくは活性、および/またはヘミチャネルを少なくとも低下させるための部分的な遮断、阻害、予防、またはアンタゴニズムを含むと捉えられるものとする。同様に、「誘導すること」または「促進すること」とは、ヘミチャネル(またはヘミチャネルの群)の完全な内部移行を暗示すると捉えられないものとし、ヘミチャネルの機能または活性を少なくとも低下させるための部分的な内部移行を含むと捉えられるものとする。
本明細書で使用される場合、「抗ヘミチャネル化合物」および「ヘミチャネル遮断剤」という用語は、コネキシンヘミチャネルを介した分子の通過に干渉する化合物である。抗ヘミチャネル化合物またはヘミチャネル遮断剤は、ヘミチャネルの開放を遮断もしくは減少させ、ヘミチャネルを通した細胞外空間への分子の放出を遮断もしくは低下させ、および/またはヘミチャネルを通した細胞内空間への分子の侵入を遮断もしくは低下させ得る。抗ヘミチャネル化合物およびヘミチャネル遮断剤は、ヘミチャネルの漏出、または細胞外空間から、もしくは細胞外空間への分子の通過を完全または部分的に遮断する化合物を含む。抗ヘミチャネル化合物およびヘミチャネル遮断剤には、ヘミチャネルの開放確率を減少させる化合物も含まれる。開放確率は、チャネルが開いたままである時間と、閉じている時間の割合の尺度である(Goldberg GS,et al.,Selective permeability of gap junction channels Biochimica et Biophysica Acta 1662(2004)96-101に概説される)。抗ヘミチャネル化合物およびヘミチャネル遮断剤には、ヘミチャネル調節剤が含まれる。抗ヘミチャネル化合物およびヘミチャネル遮断剤は、コネキシンヘミチャネルを介した分子の通過に直接、または間接的に干渉してもよい。本明細書に記載される発明および方法の全ての態様は、例えば、本明細書に記載されるようにヘミチャネルを遮断することによって、またはヘミチャネルの開放確率を減少させることによって達成され得る。一つの実施形態では、コネキシンヘミチャネルは、コネキシン43ヘミチャネル、および/または他の血管コネキシンヘミチャネルである。
本明細書で使用される場合、「網膜構造を回復または復元する」および「網膜構造を復元または回復する」、「網膜構造を復元すること、および/または回復すること」などの用語は、例えば網膜色素上皮の回復、網膜血管内皮の回復、および/または正常な網膜層構造の回復を含む、網膜構造の完全性の改善を指す。「網膜構造を回復または復元する」という用語はまた、微小動脈瘤および/または巨大動脈瘤の減少または除去も指す(図9Bを参照)。本発明の一部の実施形態では、網膜構造は復元され、正常状態または疾患前状態に戻される。本発明の一部の実施形態では、網膜色素上皮、網膜血管内皮、および/または網膜層構造が復元され、正常状態または疾患前状態に戻される。
「網膜機能の回復または復元」および「網膜機能の復元または回復」、「網膜機能を復元させること、および/または網膜機能を回復させること」などの用語は、例えば混合a-波機能を改善すること(例えば、図9Cを参照)、混合b-波機能を改善すること(例えば、図9Dを参照)、ならびに/またはPIIおよびPIIIの桿体ならびに錐体の機能を改善すること(例えば、図9E~Gを参照)を含む、網膜機能を改善することを指し、それらは例えば網膜電位図により評価されてもよい。「網膜機能を回復または復元する」という用語はまた、全体的なERG機能を改善することも指す。ERG機能と内網膜機能の復元を示す図1、および光受容体機能の改善を示す図2も参照のこと。本発明の一部の実施形態では、網膜機能は復元され、正常状態または疾患前状態に戻される。本発明の一部の実施形態では、網膜ERG、PIIおよびPIIIの桿体ならびに/または錐体の機能などが復元され、正常状態または疾患前状態に戻される。
本明細書で使用される場合、「脈絡膜構造の回復または復元」、および「脈絡膜構造の復元または回復」、「脈絡膜構造を復元すること、および/または回復すること」などの用語は、例えば、OCT血管造影法または蛍光血管造影法を使用して判定され得る、脈絡膜の厚さの回復、および/または脈絡膜血管床の回復を含む、脈絡膜構造の完全性の改善を指す。本発明の一部の実施形態では、脈絡膜構造は復元され、正常状態または疾患前状態に戻される。本発明の一部の実施形態では、脈絡膜の厚さ、および/または脈絡膜血管床は復元され、正常状態または疾患前状態に戻される。
本明細書で使用される場合、「脈絡膜機能を回復または復元する」、および「脈絡膜機能を復元または回復する」、「脈絡膜機能を復元すること、および/または回復すること」などの用語は、例えば高速OCT血管造影法を使用して判定され得る脈絡膜の血流の改善を指す。「脈絡膜機能を回復または復元する」という用語はまた、外網膜への脈絡膜血管の血流の改善、および脈絡膜の血流の調節の改善も指す。本発明の一部の実施形態では、脈絡膜機能は復元され、正常状態または疾患前状態に戻される。本発明の一部の実施形態では、脈絡膜の血流は復元され、正常状態または疾患前状態に戻される。
本発明の化合物は、網膜構造、網膜機能、脈絡膜構造、および/または脈絡膜機能の保持または復元のための治療方法において使用されてもよく、網膜および/もしくは脈絡膜の構造または機能の完全性の病理学的な異常、または別段で望ましくない、もしくは所望されない減少によって、全体または一部で特徴付けられる疾患、障害または状態の治療方法における使用が挙げられる。網膜および/または脈絡膜の完全性は、視力喪失の予防に必須である。
「ペプチド」、「ペプチド模倣体」および「模倣体」という用語は、それらが模倣するタンパク質領域と実質的に同じ構造的特徴および機能的特徴を有し得る合成操作された、または遺伝子操作された化合物を含む。コネキシンヘミチャネルの場合、これらは、例えば、ヘミチャネルコネキシンの細胞外ループを模倣してもよい。
本特許は、網膜構造、網膜機能、脈絡膜構造、および/もしくは脈絡膜機能の保持または復元のための新規の方法を記述するものであり、それらは、多くの疾患、障害または状態において本発明方法により改善されることができ、それらの一部は、慢性的な網膜の機能障害および/もしくは網膜構造の喪失、ならびに/または慢性的な脈略膜の機能障害および/もしくは脈略膜構造の喪失によって特徴付けられる。
本発明は特に、網膜構造、網膜機能、脈絡膜構造、および/または脈絡膜機能の喪失によって全体または一部で特徴付けられる疾患、障害または状態の治療に関し、例えばXiflamなどの式Iの化合物、または式IIの化合物、および/または前述の化合物のいずれかのアナログもしくはプロドラッグなどのヘミチャネル遮断剤の投与によって、網膜構造、網膜機能、脈絡膜構造、および/もしくは脈絡膜機能を保持または復元する方法を提供するものである。
一部の実施形態では、本発明は、Cx43ヘミチャネルを直接および直ちに遮断し、網膜構造、網膜機能、脈絡膜構造、および/もしくは脈絡膜機能の保持または復元をもたらすための、例えばXiflamなどの式Iの化合物、または式IIの化合物、および/または前述の化合物のいずれかのアナログもしくはプロドラッグの使用を特徴とする。一部の例示的な用量は、例えば、0.2~3.0mg/kg、または0.2~2mg/kg、および0.2~1.0mg/kg、または0.2~0.5mg/kgを含む、約0.1~約5.0mg/kgの範囲である。いくつかの例示的な1日用量、または他の定期的用量は、1用量当たり約10~250mgの範囲であり、例えば、1用量当たり約20~25mg、1用量当たり約25~50mg、1用量当たり約50~75mg、1用量当たり約75~100mg、および1用量当たり約100~250mgが挙げられ、1用量当たり、20、50、100、および150mgの用量が挙げられる。
コネキシン
様々な実施形態において、調節されるヘミチャネルは、任意のコネキシンヘミチャネルであり、コネキシン26(Cx26)ヘミチャネルを含んでもよく、または除外してもよい。特定の実施形態では、調節されるヘミチャネルは、コネキシン36(Cx36)ヘミチャネル、コネキシン37(Cx37)ヘミチャネル、コネキシン40(Cx40)ヘミチャネル、コネキシン43(Cx43)ヘミチャネル、コネキシン45(Cx45)ヘミチャネル、および/またはコネキシン57(Cx57)ヘミチャネルである。一つの実施形態では、調節されるヘミチャネルは、Cx36、Cx37、Cx40、Cx43、Cx45、および/またはCx57タンパク質のうちの一つ以上を含む。一つの特定の実施形態では、ヘミチャネル、および/または調節されるヘミチャネルは、Cx37および/またはCx40および/またはCx43ヘミチャネルである。一つの特定の実施形態では、ヘミチャネル、および/または調節されるヘミチャネルは、Cx30および/またはCx43および/またはCx45ヘミチャネルである。一つの特定の実施形態では、ヘミチャネル、および/または調節されるヘミチャネルは、Cx36、Cx37、Cx43、および/またはCx45ヘミチャネルである。
一部の実施形態では、調節されるヘミチャネルは、前述のコネキシンタンパク質のいずれかを含んでもよく、または除外してもよい。一部の態様では、ヘミチャネル遮断剤は、Cx43ヘミチャネル、Cx40ヘミチャネル、および/またはCx45ヘミチャネルの遮断剤である。特定の好ましい実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、コネキシン43ヘミチャネル遮断剤である。本明細書に特徴付けられる使用のいずれかに対する本発明の医薬組成物はまた、記載されるコネキシンヘミチャネル(同種ヘミチャネルおよび異種ヘミチャネルを含む)のいずれかを阻害または遮断し得る、ヘミチャネル遮断剤を含んでもよい。一部の実施形態では、調節されるヘミチャネルは、前述のコネキシンヘミチャネルのいずれかを含んでもよく、もしくは除外してもよく、またはヘテロマーヘミチャネルであってもよい。
本発明の投与、同時投与、組成物、キット、または治療方法のいずれかで使用されるヘミチャネル遮断剤は、一つの実施形態では、Cx43ヘミチャネル遮断剤である。他の実施形態は、Cx45ヘミチャネル遮断剤、Cx30ヘミチャネル遮断剤、Cx37ヘミチャネル遮断剤、Cx40ヘミチャネル遮断剤、および上述もしくは本明細書に記載されるものを含む、または上述もしくは本明細書に記載される任意の他のコネキシンから本質的になる、またはからなるものを含む、コネキシンヘミチャネルまたはヘミチャネルのうちのいずれかの遮断剤を含む。一部の実施形態は、前述のコネキシンもしくはヘミチャネル、または本特許に記載される他のコネキシンもしくはヘミチャネルのうちのいずれかを含んでもよく、または除外してもよい。様々な実施形態において例示として、調節されるヘミチャネルは、コネキシン36、コネキシン37、コネキシン40、コネキシン43、コネキシン45、コネキシン57、コネキシン59および/またはコネキシン62のうちの一つ以上を含む。
一つの実施形態では、特に網膜に関連する場合、調節されるヘミチャネルは、Cx36、Cx37、Cx40、Cx43、Cx45、またはCx57タンパク質のうちの一つ以上を含む。標的となるヘミチャネルコネキシンとしては、血管内の選択ヘミチャネルコネキシン(例えば、Cx37、Cx40またはCx43)ならびに星状膠細胞(例えば、Cx43)、アマクリン細胞(例えば、Cx36、Cx45)、双極細胞(例えば、Cx36、Cx45)、外網状層および内網状層、神経節細胞層(例えば、Cx36、Cx45)、錐体光受容体および網膜内皮細胞、ならびに例えば他の網膜神経細胞におけるヘミチャネルコネキシンのうちの一つ以上が挙げられる。一部の実施形態では、Cx36ヘミチャネルおよびCx43ヘミチャネルが標的とされる。一つの特定の実施形態では、ヘミチャネル、および/または調節されるヘミチャネルは、Cx43を含む。一つの実施形態では、外網状層の細胞におけるコネキシンを含むヘミチャネル(例えば、Cx43)が標的とされ、この場合において本発明方法は、OPLの薄層化を停止および反転させ、OPLを復元させることができる。
特に脈絡膜または網膜の血管に関連する他の実施形態では、調節されるヘミチャネルは、Cx37、Cx40、またはCx43タンパク質のうちの一つ以上を選択的に含んでもよい。一つの特定の実施形態では、ヘミチャネル、および/または調節されるヘミチャネルは、Cx43を含む。一つの実施形態では、大きな内径の非有窓血管から構成される、ハラー層(Haller’s layer)としても知られる外側の脈絡膜の細胞における血管コネキシンを含むヘミチャネルが標的とされる。別の実施形態では、非常に小さな血管から構成されるザットラー層(Sattler’s layer)として知られる内側の脈絡膜の細胞における血管および内皮細胞のコネキシンを含むヘミチャネルが標的とされる。別の実施形態では、外側の脈絡膜および内側の脈絡膜の細胞におけるコネキシンを含むヘミチャネルが標的とされる。別の実施形態では、脈絡毛細管枝の毛細血管におけるコネキシンを含むヘミチャネルが標的とされる。一つの実施形態では、本発明方法において標的とされるヘミチャネル血管コネキシンは、周皮細胞におけるヘミチャネルコネキシン、ならびに血管平滑筋細胞および内皮細胞におけるコネキシンを含む。別の実施形態では、本発明方法において標的とされるヘミチャネル血管コネキシンは、周皮細胞におけるヘミチャネル、および例えば微小毛細血管など内皮細胞におけるコネキシンを含む。Cx43ヘミチャネルは、本発明の好ましい標的である。
低分子ヘミチャネル遮断剤
ヘミチャネル遮断剤の例としては、例えばXiflam(トナベルサット)などの低分子ヘミチャネル遮断剤が挙げられる。トナベルサット(PubChem、DrugBank、およびMedChemExpressにも示される)の構造は、
Figure 2022547324000005
トナベルサットの他の化学名は、PubChem(N-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド)、DrugBank(N-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド)、およびChemical Book(N-((3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルクロマン-4-イル)-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド;または2H-ベンゾ(B)ピラン-3-オール、6-アセチル-4-(3-クロロ-4-フルオロベンゾイルアミノ)-3,4-ジヒドロ-2,2-ジメチル-;またはN-[(3S,4S)-6-アセチル-3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロ-ベンズアミド)に見出される。
一部の実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、Xiflam以外の低分子、例えば、Colin Greenらの氏名で出願された米国特許出願公開20160177298の式Iまたは式IIに記載されるヘミチャネル遮断剤である。当該開示内容は、上述のように本参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。様々な好ましい実施形態は、本明細書に記述または参照される疾患、障害および状態を治療するために、ヘミチャネルの開放を遮断もしくは改善する、または別段によりアンタゴナイズもしくは阻害する低分子の使用を含む。様々な実施形態では、ヘミチャネル開放を遮断または改善または阻害する低分子は、Xiflamまたはそのアナログのプロドラッグである。
一部の実施形態では、本発明は、例えば、網膜構造を復元または回復するための、網膜機能を復元または回復するための、ならびに脈絡膜の構造および/もしくは機能を復元または回復するための、例えばXiflamなどの式Iの化合物、および/またはCx43ヘミチャネルを遮断する前述の化合物のいずれかのアナログもしくはプロドラッグを含む、低分子ヘミチャネル遮断剤の使用を特徴とする。
例示として、ヘミチャネル遮断剤のXiflam(トナベルサット)は、IUPAC名N-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド、または(3S-シス)-N-(6-アセチル-3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-2,2-(ジメチル-d6)-2H-1-ベンゾピラン-4-イル)-3-クロロ-4-フルオロベンズアミドとして知られ得る。
別の有用な化合物は、ボールジン(boldine)であり、ボルドー樹およびテンダイウヤク(Lindera aggregata)に見出されるアポルフィン類のアルカロイドである。
一つの実施形態では、Xiflamおよび/またはそのアナログもしくはプロドラッグは、式Iを有する化合物群から選択される:
Figure 2022547324000006
式中、
Yは、C-Rであり;
は、アセチルであり;
は、水素、C3-8シクロアルキル、任意で酸素により中断される、またはヒドロキシ、C1-6アルコキシ、もしくは置換アミノカルボニルにより置換されるC1-6アルキル、C1-6アルキルカルボニル、C1-6アルコキシカルボニル、C1-6アルキルカルボニルオキシ、C1-6アルコキシ、ニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはCFSであり;またはCF-A-基であって、式中、Aは、-CF-、-CO-、-CH-、CH(OH)、SO、SO、CH-O-、またはCONHであり;またはCFH-A’-基であり、式中、A’は、酸素、硫黄、SO、SO、CF、またはCFHであり;トリフルオロメトキシ、C1-6アルキルスルフィニル、パーフルオロC2-6アルキルスルホニル、C1-6アルキルスルホニル、C1-6アルコキシスルフィニル、C1-6アルコキシスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ホスホノ、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アリールスルホニル、または任意の芳香族部分が任意選択で置換されるヘテロアリールスルホニル、C1-6アルキルカルボニルアミノ、C1-6アルコキシカルボニルアミノ、C1-6アルキル-チオカルボニル、C1-6アルコキシ-チオカルボニル、C1-6アルキル-チオカルボニルオキシ、1-メルカプトC2-7アルキル、ホルミル、または任意のアミノ部分が任意選択で一つもしくは二つのC1-6アルキル基、またはC1-6アルキルスルフィニルアミノ、C1-6アルキルスルホニルアミノ、C1-6アルコキシスルフィニルアミノもしくはC1-6アルコキシスルホニルアミノで置換される、またはC1-6アルキルカルボニル、ニトロもしくはシアノでエチレニル末端置換されるアミノスルフィニル、アミノスルホニルまたはアミノカルボニル、または-C(C1-6アルキル)NOHもしくは-C(C1-6アルキル)NNHであり;または一つもしくは二つのC1-6アルキルで任意選択で置換される、またはC2-7アルカノイルで任意選択で置換されるアミノであり;RとRのうちの一つは、水素またはC1-4アルキルであり、他方は、C1-4アルキル、CFまたはCHは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1-4アルコキシ、ヒドロキシ、C1-4アルキルカルボニルオキシ、-S-C1-4アルキル、ニトロ、任意選択で一つまたは二つのC1-4アルキル基で置換されるアミノ、シアノ、またはC1-4アルコキシカルボニルであり;またはRとRは共に、C1-4アルキルで任意選択で置換されるC2-5ポリメチレンであり;
は、C1-6アルキルカルボニルオキシ、ベンゾイルオキシ、ONO、ベンジルオキシ、フェニルオキシ、またはC1-6アルコキシであり、およびRとRは水素であるか、またはRはヒドロキシであり、Rは水素もしくはC1-2アルキルであり、およびRは水素であり;
はヘテロアリールまたはフェニルであり、その両方ともが、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、アミノから選択される基または原子で独立して任意選択で1回または2回置換され、この場合においてアミノはC1-4アルキル、シアノ、アジド、C1-4アルコキシ、トリフルオロメトキシ、およびトリフルオロメチルにより任意で1回または2回置換され;
は、水素、C1-6アルキル、OR11またはNHCOR10であり、式中、R11は、水素、C1-6アルキル、ホルミル、C1-6アルカノイル、アロイルまたはアリール-C1-6アルキルであり、R10は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、モノもしくはジC1-6アルキルアミノ、アミノ、アミノ-C1-6アルキル、ヒドロキシ-C1-6アルキル、ハロ-C1-6アルキル、C1-6アシルオキシ-C1-6アルキル、C1-6アルコキシカルボニル-C1-6-アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり;R-N-CO-R基は、R基に対してシスであり;およびXは、酸素またはNR12であり、式中、R12は、水素またはC1-6アルキルである。
一部の実施形態では、本発明は、例えば、網膜構造を復元または回復するための、網膜機能を復元または回復するための、ならびに脈絡膜の構造および/もしくは機能を復元または回復するための、例えば、式IIの化合物、および/またはCx43ヘミチャネルを遮断する前述の化合物のいずれかのアナログもしくはプロドラッグを含む、低分子ヘミチャネル遮断剤の使用を特徴とする。

式II
Figure 2022547324000007
式中、
Qは、Oまたは式=NHOR43のオキシムであり、式中、R43は、
(i)H、C1-4フルオロアルキル、または任意選択で置換されるC1-4アルキルから選択され、または
(ii)-A300-R300であり、式中、A300は、直接結合、-C(O)O*-、-C(R)(R)O*-、
-C(O)O-C(R)(R)O*-、もしくは-C(R)(R)OC(O)O*-であり、式中、*の印が付いた原子は、R300に直接接続され、RとRは独立して、H、フルオロ、C1-4アルキル、またはC1-4フルオロアルキルから選択されるか、またはRとRは、それらが結合される原子とともにシクロプロピル基を形成し、そしてR300は、[1]、[2]、[2A]、[3]、[4]、[5]または[6]の群から選択され;
は、Hであり、
Aは、直接結合、-C(O)O*-、-C(R)(R)O*-、-C(O)O-C(R)(R)O*-、または-C(R)(R)OC(O)O*-であり、式中、*の印が付いた原子は、Rに直接接続され、RとRは独立して、H、フルオロ、C1-4アルキル、またはC1-4フルオロアルキルから選択されるか、またはRとRは、それらが結合される原子とともにシクロプロピル基を形成し、
は、[1]、[2]、[2A]、[3]、[4]、[5]および[6]の群から選択され、**の印が付いた原子は、Aに直接接続され、
Figure 2022547324000008
とRはそれぞれ独立して、H、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、および
ベンジルから選択され;
は独立して、H、C1-4アルキル、およびC1-4フルオロアルキルから選択され;
は、
(i)H、C1-4アルキルもしくはC1-4フルオロアルキル、または
(ii)天然もしくは非天然のアルファ-アミノ酸の側鎖、または本明細書に記載のペプチド模倣体もしくは他のペプチド、または
(iii)ビオチン、もしくはビオチンに化学的に連結される、から選択され;
は、H、-N(R11)(R12)、または-N(R11)(R12)(R13)X、または-N(R11)C(O)R14から選択され、
式中、R11、R12、およびR13は独立して、H、C1-4アルキル、またはC1-4フルオロアルキルから選択され、
14は、H、C1-4アルキル、またはC1-4フルオロアルキルであり、
15は独立して、C1-4アルキルおよびC1-4フルオロアルキルから選択され、および
は、薬学的に許容可能なアニオンである。
一部の実施形態では、Qは、Oである。
上述のマーカッシュ群のいずれかに対し、当該群は、当該群に列記されたもののいずれかを含んでもよく、または除外してもよい。本発明方法における使用のためのヘミチャネル遮断剤は、これら化合物のいずれかを含んでもよく、または除外してもよい。
別の実施形態では、式Iのアナログは、化合物カラベルサット(carabersat)の(N-[(3R,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-4-フルオロベンズアミド)、またはtrans-(+)-6-アセチル-4-(S)-(4-フルオロベンゾイルアミノ)-3,4-ジヒドロ-2,2-ジメチル-2H-1-ベンゾ[b]ピラン-3R-オール半水化物である。
特定の実施形態では、Xiflamおよび/またはそのアナログは、遊離塩基の形態、または薬学的に許容可能な塩の形態である。他の実施形態では、Xiflamおよび/もしくはそのアナログの一つ以上の多形体、一つ以上の異性体、ならびに/または一つ以上の溶媒和物が使用されてもよい。
他の様々な低分子が、ヘミチャネル活性の阻害に有用であると報告されている。Greenらの米国特許出願公開20160177298、式II;Savoryらの米国特許出願公開20160318891;およびSavoryらの米国特許出願公開20160318892を参照のこと。それら出願は、上記のように参照によりその全体で組み込まれる。本発明方法における使用のためのヘミチャネル遮断剤は、これら化合物のいずれかを含んでもよく、または除外してもよい。
一つの態様では、本発明は、本明細書に記載される疾患、障害または状態、ならびに病的な、もしくは障害を受けた網膜構造、網膜機能、および/または脈絡膜構造を特徴とするものを治療するための方法における、単独での、またはキット、パッケージ、もしくは他の製造品内での医薬組成物の使用に関するものである。一部の態様では、ヘミチャネル遮断剤は、コネキシン43ヘミチャネル遮断剤である。上述のように、他のコネキシンヘミチャネルの遮断剤も本発明範囲内である。
一部の実施形態では、「プロ部分(promoiety)」とは、活性剤の官能基をマスクする保護基として作用し、それにより活性剤をプロドラッグへと変換するものを指す。典型的には、プロ部分は、インビボで酵素的または非酵素的な手段により切断される結合を介して薬剤に付加され、それによりプロドラッグを活性型へと変化させる。一部の実施形態では、プロ部分は、活性剤であってもよい。一部の実施形態では、プロ部分は、ヘミチャネル遮断剤の分子、ペプチド、抗体、または抗体断片に結合されてもよい。一部の実施形態では、プロ部分は、例えば、ペプチド、ペプチド模倣体、または低分子、または他の有機ヘミチャネル遮断剤のいずれかに結合されてもよい。一部の実施形態では、プロ部分は、式Iの化合物に結合されてもよい。一部の実施形態では、プロドラッグは、別のヘミチャネル化合物、例えばGreenらの米国特許出願公開20160177298;Savoryらの米国特許出願公開20160318891;またはSavoryらの米国特許出願公開20160318892に記載される化合物であってもよい。
化学的な送達改変
本発明で有用なヘミチャネル遮断剤は、マイクロ粒子製剤(マイクロスフィア、Mps)、またはナノ粒子(ナノスフィア、Nps)製剤、またはその両方の内に製剤化されてもよく、またはリポソームもしくはインプラントの内に製剤化されてもよい。粒子状の薬剤送達システムは、ナノ粒子(1~999nm)およびマイクロ粒子(1~1,000μm)を含み、それらはさらに、ナノスフィアおよびマイクロスフィア、ならびにナノカプセルおよびマイクロキャップスと分類される。ナノカプセルおよびマイクロカプセルでは、薬剤の粒子または液滴が、ポリマー膜中に取り込まれる。粒子状システムは、注入による送達の利点があり、そのサイズとポリマー組成は、インビボにおけるそれらの生物学的振る舞いに大きな影響を与える。マイクロスフェアは、ナノスフェアよりもはるかに長い期間、硝子体内に留まることができるため、マイクロ粒子は、注射後のレゼルボアのような作用をする。ナノ粒子は急速に拡散し、組織および細胞中に内部移行される。
ヘミチャネル遮断剤の活性の評価 ヘミチャネル遮断剤の活性または有効性を評価するために、様々な方法が使用され得る。本発明の一つの態様では、対象におけるヘミチャネル遮断剤治療の効果は、例として、本明細書に記載されるように、網膜構造、網膜機能、ならびに脈絡膜構造および/または脈絡膜機能を評価する技術を使用して、評価またはモニタリングされる。
ヘミチャネル遮断剤の活性はまた、特定の生物学的アッセイを使用して評価されてもよい。分子運動に対して判明している、または可能性のあるヘミチャネル遮断剤の効果は、以下の実施例に記載される方法、またはコネキシンヘミチャネルを介した化合物の通過を判定する他の当分野に公知の方法または同等の方法を使用して、特定、評価、またはスクリーニングされ得る。様々な方法が当分野に公知であり、例えば、検出可能なマーカーで標識された分子の転移などの色素転移実験、ならびに低分子蛍光透過性トレーサーの膜貫通が挙げられ、それらはヘミチャネルの機能的な状態の試験に広く使用されている。例えば、Schlaper,KA,et al.Currently Used Methods for Identification and Characterization of Hemichannels.Cell Communication and Adhesion 15:207-218(2008)を参照のこと。インビボの方法が使用されてもよい。例えば、Danesh-Meyer,HV,et al.Connexin43 mimetic peptide reduces vascular leak and retinal ganglion cell death following retinal ischemia.Brain,135:506-520 (2012);Davidson,JO,et al.(2012)の方法を参照のこと。コネキシンヘミチャネルの遮断は、胎児虚血のモデルにおいて転帰を改善する。Annals of Neurology 71:121-132 (2012)。
化合物がヘミチャネルを遮断する能力を特定または評価する際に使用するためのある方法は、(a)試験サンプルと試験システムを持ち寄ることであって、当該試験サンプルは一つ以上の試験化合物を含み、そして当該試験システムは、ヘミチャネル遮断を評価するためのシステムを備え、当該システムは、例えば、当該システムへの高グルコース、低酸素または虚血の導入に応答して、炎症メディエーターに応答して、またはヘミチャネル開放を誘導する他の化合物もしくは事象、例えば一滴の細胞外Ca2+などに応答して、色素または標識代謝物の転移の上昇を呈するという点を特徴とすること、および(b)例えば、当該システム中の色素または他の標識代謝物の存在または量の増加を判定すること、を含む。陽性対照および/または陰性対照も同様に使用され得る。任意選択で、所定量のヘミチャネル遮断剤(例えば、Peptide5またはXiflam)を当該試験システムに追加してもよい。
剤形および製剤、ならびに投与
別段の明示的な記載がない限り、投与に関する全ての記載が、本発明のヘミチャネル遮断剤に適用される。
ヘミチャネル遮断剤は、本明細書に記載されるように投薬、投与、または製剤化され得る。
一つの実施形態では、一つ以上のヘミチャネル遮断剤を含む、本質的にからなる、またはからなる組成物が投与される。ヘミチャネル遮断剤は、QD、BID、TID、QID、または週に1回の投与、例えばQWK(週1回)またはBIW(週2回)で投与されてもよい。それらはまた、本明細書に記載される用量を使用して、毎月投与されてもよい。それらはまた、PRN(すなわち必要に応じて)投与されてもよく、およびHS(就寝前(hora somni)、すなわち就寝時)に投与されてもよい。
ヘミチャネル遮断剤は、治療を必要とする対象に投与することができる。したがって本発明によれば、コネキシンヘミチャネル、例えば、コネキシン43ヘミチャネル、またはコネキシン45ヘミチャネル、またはコネキシン36ヘミチャネルを調節して、その開放確率を一過性に、および部位特異的に減少させることができる製剤が提供される。
ヘミチャネル遮断剤は、実質的に単離された形態で製剤中に存在してもよい。生成物は、当該生成物の意図される目的に干渉しない担体または希釈剤と混合されてもよく、それでもなお実質的に単離されているとみなされる。本発明の生成物はまた、実質的に精製された形態であってもよく、その場合において本発明生成物は概して、約80%、85%、または90%、例えば少なくとも約88%、少なくとも約90、95、または98%、または少なくとも約99%の低分子ヘミチャネル遮断剤または当該調製物の乾燥質量を含む。
対象へのヘミチャネル遮断剤の投与は、対象の体内の標的部位に薬剤を送達することができる任意の手段によって行われてもよい。例として、ヘミチャネル遮断剤は、以下の経路のうちの一つによって投与されてもよい:経口、局所、全身(例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、経皮、鼻腔内、または座薬による)、非経口(例えば、筋肉内、皮下、または静脈内注射もしくは動脈内注射)、移植(腹膜内移植、皮下移植および眼内移植を含む)、例えば浸透圧ポンプ、経皮パッチなどのデバイスを介した注入。例示的な投与経路は、 Binghe,W.and B.Wang(2005).Drug delivery:principles and applications,Binghe Wang,Teruna Siahaan,Richard Soltero,Hoboken,N.J.Wiley-Interscience,c2005にも概説されている。一つの実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、全身投与される。別の実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、局所投与される。別の実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、例えば、眼の上に局所的に、または眼内に直接的に投与される。
一部の態様では、ヘミチャネル遮断剤は、インプラントとして、またはインプラントと併せて提供されてもよい。一部の態様では、インプラントは、集中投与を伴う、または伴わない、徐放送達、制御放出送達、または持続放出送達を提供してもよい。一部の実施形態では、極微針、針、イオントフォレーシスデバイス、またはインプラントを、ヘミチャネル遮断剤の投与に使用してもよい。インプラントは、例えば、S.Pflugfelder et al.,ACS Nano,9(2),pp 1749-1758(2015)に記載されるような溶解性ディスクマテリアルであってもよい。一部の態様では、本発明のヘミチャネル遮断剤、例えばコネキシン43ヘミチャネル遮断剤は、脳室内、および/またはくも膜下腔内、および/または硬膜外(extradural)、および/または硬膜下、および/または硬膜外(epidural)の経路を介して投与されてもよい。
ヘミチャネル遮断剤は、1回、複数回、または定期的に投与されてもよい。また、PRN(必要に応じて)投与されてもよく、または所定のスケジュールで投与されてもよく、またはその両方であってもよい。一部の態様では、ヘミチャネル遮断剤は、毎日、毎週、毎月、隔月、または年4回投与され、またはこれらの期間の任意の組み合わせで投与される。例えば、治療は、ある期間、毎日投与されてもよく、その後は毎週および/または毎月投与されてもよい。遮断剤を投与する他の方法も本明細書に取り上げられている。一つの態様では、ヘミチャネル遮断剤は、患者に、1日目から5日目、10日目、30日目、45日目、60日目、75日目、90日目、または100~180日目に患者を治療するために充分な量で投与される。
例えばXiflamなどの式Iの化合物、または前述の化合物のいずれかのアナログもしくはプロドラッグ、または式IIの化合物などのヘミチャネル遮断剤は、単独で投与されてもよく、または一つ以上の追加成分と併用されて投与されてもよく、一つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤、および/または担体を含む医薬組成物内で製剤化されてもよい。一部の実施形態では、例えばXiflam(トナベルサット)などの式Iの化合物、前述の化合物のいずれかのアナログもしくはプロドラッグ、または式IIの化合物などのヘミチャネル遮断剤は、食品を含む組成物中で経口投与されてもよい。一部の実施形態では、食品は、ピーナッツバターまたはヘーゼルナッツベースのクリームである。理論に拘束されるものではないが、トナベルサットを含む式I、または式IIの比較的疎水性の化合物は、食品(例えば、ピーナッツバター)の乳化脂肪中でカプセル封入された後、ゆっくりと放出され、それにより長期的な治療存続期間が得られる。
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容可能な希釈剤、担体および/または賦形剤」という用語は、医薬組成物の調製に有用な物質を含むことが意図され、例えばXiflamなどの式Iの化合物、前述の化合物のいずれかのアナログ、または式IIの化合物と同時投与されてもよく、一方でその目的とする機能を発揮させ、概して安全であり、非毒性であり、生物学的にもその他でも望ましくないものではない。薬学的に許容可能な希釈剤、担体、および/または賦形剤には、獣医学用途ならびにヒトの医薬品用途に好適なものが含まれる。好適な担体、および/または賦形剤は、例えばXiflamなどの式Iの化合物、および前述の化合物のいずれかのアナログの性質を考慮して、当業者により容易に理解される。しかし例としては、希釈剤、担体および/または賦形剤としては、溶液、溶媒、分散媒、遅延剤、高分子剤および脂質剤、エマルションなどが挙げられる。さらなる例としては、好適な液体担体、特に注射可能な溶液に対しては、水、生理食塩水、デキストロース水溶液などが挙げられ、静脈内投与、髄腔内投与および嚢内投与については等張性溶液が好ましく、例えばリポソームなどのビヒクルが剤の投与にも特に好適である。
組成物は、錠剤、丸薬、カプセル、半固体、粉末、持続性放出製剤、溶液、懸濁液、エリキシル、エアロゾル、注射用液体、ゲル、クリーム、経皮送達デバイス(例えば、経皮パッチ)、例えば皮膚もしくは眼などの器官インサートなどのインサート、または任意の他の適切な組成物を含む、任意の標準的な公知の剤形の形態を取ってもよい。本発明が関連する分野の当業者であれば、治療される状態の性質、および使用される活性剤の性質を考慮した最も好適な剤形を、過度の実験を行うことなく容易に理解するであろう。例えばXiflamなどの式Iの化合物、および前述の化合物のいずれかのアナログ、および/または式IIの化合物などのヘミチャネル遮断剤のうちの一つ以上が、単一の組成物内で製剤化され得ることを理解されたい。特定の実施形態では、好ましい剤形としては、注射溶液、インプラント(好ましくは集中投与を伴う、または伴わない徐放性、制御放出性、または持続的放出性のインプラント)、および経口製剤が挙げられる。
本発明に有用な組成物は、剤形および投与様式を考慮して、任意の好適なレベルの例えばXiflamなどの式Iの化合物、および前述の化合物のいずれかのアナログ、および/または式IIの化合物などのヘミチャネル遮断剤を含んでもよい。しかし例として、本発明で使用される組成物は、投与方法に応じて、約0.1重量%~約99重量%、好ましくは約1重量%~約60重量%のヘミチャネル遮断剤を含有してもよい。
標準的な希釈剤、担体、および/または賦形剤に加えて、本発明による組成物は、一つ以上の追加の構成要素とともに製剤されてもよく、またはそのような方法で、例えばXiflamなどの式Iの化合物、および前述の化合物のいずれかのアナログ、および/または式IIの化合物などのヘミチャネル遮断剤の活性または生物利用効率を強化し、それらの完全性を保護する、またはそれらの半減期もしくは保存寿命を延長するのを補助し、対象への投与時にゆっくりと放出するよう製剤化されてもよく、または例えば他の望ましい利益を提供するように製剤化されてもよい。例えば、徐放性ビヒクルには、マクロマー、ポリ(エチレングリコール)、ヒアルロン酸、ポリ(ビニルピロリドン)、またはハイドロゲルが含まれる。さらなる例として、組成物はまた、保存剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、緩衝剤等を含んでもよい。本発明が関連する分野の当業者であれば、特定の目的に対して望ましい可能性がある追加の添加剤を特定することができる。
上述のように、ヘミチャネル遮断剤は、持続性システムによって投与されてもよい。持続性放出組成物の適切な例としては、例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの形状の物品の形態の半透過性ポリマーマトリクスが挙げられる。持続放出性マトリクスとしては、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号、EP 58,481)、L-グルタミン酸とガンマ-エチル-L-グルタミン酸塩のコポリマー、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリル酸塩)、酢酸エチレンビニル、またはポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP133,988)が挙げられる。持続性放出組成物はまた、リポソーム封入された化合物も含む。ヘミチャネル遮断剤を含有するリポソームは、例えば、DE3,218,121;EP52,322;EP36,676;EP88,046;EP143,949;EP142,641;日本特許出願83-118008;米国特許第4,485,045号および第4,544,545号;ならびにEP102,324に記載されるものなどをはじめとする公知の方法により調製されてもよい。通常、リポソームは、脂質含有量が約30モルパーセントのコレステロールよりも多い、小さな(または約200~800オングストローム)の単層型のリポソームであり、選択割合は、最も効果の高い治療法に対して調整される。例えば、PGLAナノ粒子もしくはマイクロ粒子、または原位置(in situ)イオン活性化ゲル化システムを使用した徐放性送達が使用されてもよい。
さらに本発明に従う使用のためのヘミチャネル遮断剤医薬組成物は、特定の例では対象に対し治療利益があり得る、または他の利益があり得る追加の活性成分または活性剤とともに製剤化され得ることが予期される。本発明が関連する分野の当業者であれば、本明細書の本発明に関する記述、および治療される障害の性質を考慮して、適切な追加の活性成分を認識するであろう。
さらに、本発明に従う使用のためのヘミチャネル遮断剤医薬組成物は、キャンディまたは食品で、例えば「グミ状」の医薬品として製剤化され得ることが予期される。
組成物は、例えば、Gennaro AR:Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th ed.,Lippincott,Williams & Wilkins,2000のような標準的な参照文献に見出され得る標準的な技術に従い製剤化され得る。しかしさらなる例として、US2013/0281524またはUS5948811に提供される情報を使用してもよい。
医薬組成物の保存および/または投与に適した任意の容器を、本発明における使用のためのヘミチャネル遮断剤製品に使用してもよい。
ヘミチャネル遮断剤、例えば、コネキシン43ヘミチャネル遮断剤は、一部の態様では、投与部位への制御された放出、および/または隔離された放出を提供するように製剤化されてもよい。本発明の一部の態様では、製剤は、即時放出、または長期放出もしくは持続放出の剤形であってもよい。一部の態様では、剤形は、長期放出剤形および/または持続放出剤形と組み合わされた、即時放出剤形の両方を含んでもよい。一部の態様では、ヘミチャネル遮断剤の即時放出、ならびに持続放出および/または長期放出の両方は、即時放出型においてヘミチャネル遮断剤を混合することにより取得することができる。本発明の一部の態様では、ヘミチャネル遮断剤は、例えば、本開示のコネキシン43遮断剤または他のヘミチャネル遮断剤である。本発明の一部の態様では、剤形は、例えば、生分解性インプラント、または非生分解性インプラントなどのインプラントであってもよい。
本発明は、様々な障害の治療、反転もしくは実質的な反転、または改善のためにヘミチャネルの機能を調節する方法を含む。本発明の方法は、ヘミチャネル遮断剤を単独で、または望ましい場合には一つ以上の他の剤もしくは療法と組み合わせて投与することを含む。
ヘミチャネル遮断剤、および任意で一つ以上の他の活性剤の投与は、障害の進行中の任意のとき、または障害もしくは障害の一つ以上の症状の発生前または発生後の任意のときに行われてもよい。一つの実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、症状の継続的な管理または反転を支援するために、長期間、定期的に投与される。別の実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、障害の発症を防止または遅延させるために、または障害を除去するために、長期間または生涯にわたって定期的に投与される。
一部の実施形態では、ヘミチャネル遮断剤、例えば、コネキシン43ヘミチャネル遮断剤(例えば、トナベルサットを含む式(I)の化合物、または式(II)の化合物)は、一つ以上の粒子を含む医薬組成物として投与され得る。一部の態様では、医薬組成物は、例えば、即時放出製剤、または制御放出製剤、例えば、遅延放出粒子であってもよい。他の態様では、ヘミチャネル遮断剤は、治療される領域への選択的な送達のために、一つ以上の粒子の粒子状製剤中で製剤化され得る。一部の実施形態では、粒子は、例えば、ナノ粒子、ナノスフェア、ナノカプセル、リポソーム、ポリマーミセル、またはデンドリマーであってもよい。一部の実施形態では、粒子は、マイクロ粒子であってもよい。ナノ粒子またはマイクロ粒子は、生分解性ポリマーを含んでもよい。他の実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、インプラントもしくはマトリクスとして調製され、または投与され、または投与部位への隔離放出を提供するように製剤化される。一部の実施形態では、ヘミチャネル遮断剤、例えば、コネキシン43ヘミチャネル遮断剤(例えば、トナベルサットを含む式(I)の化合物、または式(II)の化合物)の医薬組成物は、マイクロ粒子を含まない。
一部の実施形態では、記載されるように、製剤化されるヘミチャネル遮断剤は、例として、コネキシン37、またはコネキシン40、またはコネキシン43、またはコネキシン45のヘミチャネル遮断剤である。コネキシン36、またはコネキシン37、またはコネキシン40、またはコネキシン43、またはコネキシン45の遮断剤が好ましい。最も好ましい遮断剤は、コネキシン36およびコネキシン43のヘミチャネル遮断剤である。特に好ましい遮断剤は、コネキシン43ヘミチャネル遮断剤である。本明細書で使用される場合、「マトリクス」には例えば、ポリマーマトリクス、生分解性または非生分解性マトリクス、およびインプラントやヘミチャネル遮断剤の送達に適用される構造物の製造に有用な他の担体などのマトリクスが含まれる。インプラントには、レゼルボアインプラント、および生分解性マトリクスインプラントが含まれる。
コネキシンヘミチャネル遮断剤の組み合わせの製品/キット
本発明の別の実施形態では、上述の疾患および障害の治療に有用な物質を含有する製品または「キット」が提供される。キットは、コネキシンヘミチャネル遮断剤を含む、本質的にからなる、またはからなる容器を含む。キットはさらに、容器上にある、または容器と関連付けられたラベルまたは添付文書を含んでもよい。「添付文書」という用語は、治療用製品の市販パッケージに通例含まれる説明書を指すために使用され、当該治療用製品の使用に関する適応症、使用、用量、投与、禁忌および/または警告についての情報を含有する。適切な容器としては例えば、ビン、バイアル、シリンジ、ブリスターパックなどが挙げられる。容器は、例えばガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器は、状態の治療に効果的なヘミチャネル遮断剤またはその製剤を保持し、および滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば容器は静脈内溶液バッグであってもよく、または皮下注射針により貫通可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。ラベルまたは添付文書は、組成物が、本明細書に記述または参照される疾患、障害および/または状態のいずれかのような、選択された状態の医療に使用されることを示す。ラベルまたは添付文書はまた、組成物が他の障害を治療するために使用され得ることを示す場合もある。あるいは、またはさらに、製品は、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液およびブドウ糖溶液などの薬学的に許容可能な緩衝液を含有する第二の容器をさらに含んでもよい。さらに、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針およびシリンジをはじめとする商業的な、およびユーザーの観点から望ましい他の物品を含んでもよい。
キットは、ヘミチャネル遮断剤を、その必要のある患者に投与するための指示をさらに含んでもよい。
対象の治療のためのヘミチャネル遮断剤の化合物、組成物、または製剤、および使用に関する説明書を含む容器を含む、本質的にからなる、またはからなる製品も提供される。例えば、別の態様では、本発明は、対象の治療のための使用を含む使用に関する説明書とともに、低分子を含む一つ以上のコネキシンヘミチャネル遮断剤の治療有効量を含有する容器を含む、本質的にからなる、またはからなる製品を含む。
一部の態様では、製品は、一つ以上のコネキシンヘミチャネル遮断剤、例えば、低分子ヘミチャネル遮断剤を単独でまたは組み合わせて含むマトリクスを含んでもよい。
用量、量、および濃度
当然のことながら、投与されるヘミチャネル遮断剤の用量、投与期間、および全体的な投与レジメンは、送達される標的部位、治療される対象の任意の症状の重症度、治療される障害のタイプ、単位用量のサイズ、選択された投与様式、ならびに対象の年齢、性別および/または一般健康状態、ならびに当業者に公知の他の因子のような変数に応じて、対象によって異なり得る。
本明細書において、その必要のある対象において、網膜の構造および/もしくは機能、ならびに脈絡膜の構造および/もしくは機能の残存、ならびに復元または回復を高めるための方法も含まれ、当該方法は、当該対象に、例えば、N-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド(Xiflam)などのヘミチャネル遮断剤の有効量を投与することを含む。一部の実施形態では、残存促進量は、1日当たり約10~約200mg、または一部の実施形態では、1日当たり約3.5~350mgである。他の実施形態では、残存促進量は、1日当たり約20~約100mgである。これらの量は、単回投与または分割投与、例えばBIDで投与されてもよい。1日当たり約0.5~約5mg/kgの範囲の用量が好ましい。用量は、例えば、1日当たり約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、もしくは約5.0mg/kg、または列記される用量の任意の二つの間の任意の範囲であってもよい。
特に好ましい1日用量は、単回用量または分割用量(例えば、BID)で、1日当たり約1.4mg/kgである。したがって例えば、約70kg、90kg、または100kgの体重の対象では、1日用量はそれぞれ、約98mg、約126mg、または約140mgである。これらの用量は、約10日後、例えばXiflamなどのヘミチャネル遮断剤の有効なピーク定常状態濃度を提供する。
有効性、ならびに患者にとっての簡便性およびコンプライアンスのために、他の用量、ならびに有用な毎週投与、毎月投与、およびインプラント投与、ならびに投与レジメンも開発され、本明細書に提供される。いくつかの好ましい毎週用量は、約2mg/kg~約50mg/kgの範囲である。毎週用量は、例えば、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは約50mg/kg、または列挙される毎週用量のいずれか二つの間の任意の範囲であってもよい。約42~約47mg/kgのQWK投与は例えば、網膜および/または脈絡膜の構造ならびに機能に関する本発明方法の実施のための例えばXiflamなどの式Iまたは式IIのヘミチャネル遮断剤などのヘミチャネル遮断剤に関し、1週当たり約4~5予測半減期の有効トラフヘミチャネル濃度を提供する。約42~約47mg/kgの用量での血漿ピーク濃度は、有効なトラフ濃度よりも高いが、忍容性はある。25~100mg/kgの用量も、毎月投与されたときに有効である。
一部の実施形態では、残存促進量は、週1回(QWK)投与される、約4.5~約450mgである。これらの用量は、約4.5~約45mgのQWK、および約45~450mg/週(QWK)、またはその間の任意の用量の範囲の用量を含む。本明細書に開示される毎週用量のいずれかに、患者の体重(例えば、60、65、70、75、80、85、90、95または100kg)を掛け合わせることによって得られる用量が使用されてもよい。
別の毎週QWK投与実施形態では、ヘミチャネル遮断剤化合物は、10~20%の集中投与、もしくは他の望ましい集中投与を伴う、または伴わない徐放性放出、持続性放出もしくは制御性放出の経口製剤またはインプラント製剤において投与される。例えば眼内インプラント製剤などのインプラント製剤は、徐放放出、持続放出もしくは制御放出の経口製剤またはインプラント製剤での配置から移動することが好ましい。
1日当たり3.5~350mg、1日当たり10~200mg、または1日当たり20~100mgの投与量を使用して、網膜の構造および/もしくは機能を復元または回復してもよく、ならびに/または脈絡膜の構造および/もしくは機能を復元または回復してもよい。一部の実施形態では、網膜機能および/もしくは脈絡膜機能の残存を促進するための量として、網膜構造および/もしくは機能を復元または回復するための量として、または脈絡膜構造および/もしくは機能を復元または回復するための量として、15~150mg、25~250mg、40~400mg、または80~800mgの抗ヘミチャネル化合物の経口用量が、単回用量または分割用量で投与される。他の実施形態では、100~500mg、500~1000mg、または1000~2000mgの経口用量が、単回用量または分割用量で投与される。分割用量は、BID、TID、もしくはQID、またはQWKで投与される。Xiflamは、現在の経口投与に好ましい化合物である。
毎週の投与が、網膜の構造および/もしくは機能の復元または回復に、または脈絡膜の構造および/もしくは機能の復元または回復に有用であることが重要である。網膜の構造および/もしくは機能の復元または回復のために、または脈絡膜の構造および/もしくは機能の復元または回復のために、例えば500mg~2000mg、またはこれらの用量の間の量、例えば、750mg、1000mg、1250mg、1500mg、および1750mgなどの高用量が、週に1回、またはさらには1カ月に1回投与されればよい。Xiflamは、これらの量の経口投与に現在好ましい化合物である。他のQWK用量は、約2500~5500mgの用量を含み、好ましい用量は、約2900mg、3700mg、4200mg、3300mg、4200mg、および4700mgのQWK、ならびにこれらの間の全ての用量である。これらの用量は、毎月投与されたときにも有効である。
本明細書で参照される疾患、障害、または状態の治療に使用され得る有効用量の例が記述される。他の例示的な用量は、例えば、0.2~3.0mg/kg、または0.2~2mg/kg、および0.2~1.0mg/kg、または0.2~0.5mg/kgを含む、約0.1~約5.0mg/kgの範囲である。いくつかの例示的な1日用量、または他の定期的用量は、1用量当たり約10~250mgの範囲であり、例えば、1用量当たり約20~25mg、1用量当たり約25~50mg、1用量当たり20~40mg、1用量当たり約50~75mg、1用量当たり約75~100mg、および1用量当たり約100~250mgが挙げられ、1用量当たり、20、50、100、および150mgの用量が挙げられ、または体重1kg当たり、これらmg範囲の薬剤のうちの一つに入る任意の特定の用量が挙げられる。一部の実施形態では、ヘミチャネル遮断剤が投与された対象におけるヘミチャネル遮断剤(トナベルサットを含む式(I)の化合物、および式(II)の化合物を含む)の循環濃度は、約5マイクロモル~約200マイクロモル、約7マイクロモル~約100マイクロモル、または約10マイクロモル~約90マイクロモルの範囲である。
上述のように、例えばコネキシン37、40、または43ヘミチャネル遮断剤などのヘミチャネル遮断剤の用量は、単回適用または分割適用で投与されてもよい。用量は、1回で投与されてもよく、または適用が繰り返されてもよい。典型的には、適用は、本明細書に記載される任意の疾患、障害もしくは状態を予防、遅延、または治療するために、必要に応じて、毎週、隔週、または3週間ごと、毎月、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24か月毎、またはそれ以上で繰り返される。また用量は、12時間~7日おきに、またはそれ以上で適用されてもよい。例えば、用量は、12時間、または1、2、3、4、5、6、もしくは7日間隔、またはこれらの時間のうちのいずれか2回の間、または12時間~7日の間の任意の時間間隔で適用されてもよい。コネキシン43ヘミチャネル遮断剤は例えば、最大4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、または26週間、投与されてもよい。一部の適応症については、より頻繁な投与が採用されてもよい。一部の実施形態では、ヘミチャネル遮断剤は、第一の期間は毎日、開始用量レベルで投与され、その後のさらなる期間は毎日、増加した用量レベルで投与されてもよい。
製造および純度
式Iおよび式IIのモノを含む低分子ヘミチャネル遮断剤は、過去に記述されているように調製され得る。
一部の実施形態では、本発明の製剤は実質的に純粋である。実質的に純粋とは、製剤が、約10%、5%、または1%未満、および好ましくは約0.1%未満の任意の不純物を含むことを意味する。一部の実施形態では、コネキシン43調節剤の代謝物を含む総不純物は、1~15%以下である。一部の実施形態では、コネキシン43調節剤の代謝物を含む総不純物は、2~12%以下である。一部の実施形態では、コネキシン43調節剤の代謝物を含む総不純物は、3~11%以下である。他の実施形態では、コネキシン43調節剤の代謝物を含む総不純物は、4~10%以下である。
これら実施例に記述される実験は、脈絡膜の厚さを維持する、網膜の厚さを維持する、ならびに糖尿病性網膜症の動物において網膜機能を保持および復元するヘミチャネル遮断剤の用量および投薬レジメンを用いた治療の能力を評価し、実証した。
実施例1
方法
ドライ型加齢黄斑変性の網膜光損傷モデル-過去の研究に記述されるように、強い光による損傷モデルを作製し、実施した。Mat Nor N,Guo CX,Rupenthal ID,Chen YS,Green CR,Acosta ML.Sustained Connexin43 Mimetic Peptide Release From Loaded Nanoparticles Reduces Retinal and Choroidal Photodamage.Invest Ophthalmol Vis Sci.2018;59:3682-93;Guo CX,Mat Nor MN,Danesh-Meyer HV,Vessey KA,Fletcher EL,O’Carroll SJ,et al.Connexin43 Mimetic Peptide Improves Retinal Function and Reduces Inflammation in a Light-Damaged Albino Rat Model.Invest Ophthalmol Vis Sci.2016;57:3961-73;Guo CX,Tran H,Green CR,Danesh-Meyer HV,Acosta ML.Gap junction proteins in the light-damaged albino rat.Mol Vis.2014;20:670-82;Noell WK,Walker VS,Kang BS,Berman S.Retinal damage by light in rats.Invest Ophthalmol.1966;5:450-73。光損傷ラットモデルは、当該薬剤と他の薬剤の直接比較を行うことができるために選択された。Kim Y,Griffin JM,Nor MNM,Zhang J,Freestone PS,Danesh-Meyer HV,et al.Tonabersat Prevents Inflammatory Damage in the Central Nervous System by Blocking Connexin43 Hemichannels.Neurotherapeutics.2017;14:1148-65;Mat Nor N,Guo CX,Rupenthal ID,Chen YS,Green CR,Acosta ML,supra;Guo CX,Mat Nor MN,Danesh-Meyer HV,Vessey KA,Fletcher EL,O’Carroll SJ,et al.、上記。当該モデルは、AMDの病理学的因子(酸化ストレスおよび炎症)を示し、測定可能なエンドポイント(網膜の電気的機能を含む)が得られる。当該モデルのデメリットは、他のげっ歯類モデルと同様に、ドルーゼンが発生しないことである。すべての実験手順は、オークランド大学の動物倫理委員会の承認番号001462により承認され、眼研究における動物の使用に関するAssociation for Research in Vision and Ophthalmology (ARVO)の声明に準拠している。6~8週齢のアルビノのSprague Dawley(SD)ラット(200~250g、雄または雌)を使用した。成体のSDラットを24時間連続の明光に曝露し、一貫して午前9時に開始して、潜在的な時刻変動を最小化した。光暴露は一度に二匹の動物に対して行われ、ラットが互いを遮蔽物として使用して避難しないようにした。LDプロトコルおよび介入は、各用量群に対する個体数が得られるまで繰り返された(1群当たりn=7)。動物ケージの直接上に蛍光ランプ(Philips Master TLD 18W/965;Koninklijke Philips Electronics N.V.、中国)を使用して、2700ルクスの光輝度を生成した。ランプは冷却され、380~760nmの波長の広帯域光を放射し、ケージの上部の平均強度は120W/m2であった。動物はケージ内で自由に動き、食物と水に自己裁量でアクセスした。ベースラインの網膜電位図(ERG)の読み取り値および光干渉断層撮影(OCT)画像を、光損傷の前に収集した。光曝露後、動物は24時間、1週間または2週間(および1群については3か月間)、通常の明暗サイクル条件(12時間の光、174ルクス、および12時間の暗所、<62ルクス)に戻した。
光損傷を受けたラットのトナベルサット処置-LDラットを、低用量、中用量、または高用量のトナベルサットに無作為に割り当てた(1群当たりn=7)。ピーナッツバター中のトナベルサット混合物を、各実験用に新たに調製した。三つの経口トナベルサット用量を検証した(1群当たりn=7)。損傷から最大2週間後まで追跡し、最大用量群から3匹の動物を分けて組織学的解析を行い、4匹の動物は損傷から3カ月後まで追跡した。ビヒクルのみの対照群には10匹の動物とした。3カ月間維持されたラット群は、薬剤処置動物とビヒクル処置動物で別のケージ中で維持されたが、同じ光条件下で維持された。過去、不成功であったヒト試験の用量レベルを考慮して、トナベルサットは、ピーナッツバター中で、0.26mg/kg(平均で0.08mgが送達、推定循環濃度10μM)、0.8mg/kg(平均で0.24mg送達、30μMが循環)、または2.4mg/kg(平均で0.72mgが送達、90μMが循環)で動物に与えられた。Silberstein SD.Tonabersat,a novel gap-junction modulator for the prevention of migraine.Cephalalgia.2009;29 Suppl 2:28-35;Dahlof CG,Hauge AW,Olesen J.Efficacy and safety of tonabersat,a gap-junction modulator,in the acute treatment of migraine:a double-blind,parallel-group,randomized study.Cephalalgia.2009;29 Suppl 2:7-16;Goadsby PJ,Ferrari MD,Csanyi A,Olesen J,Mills JG,Tonabersat TONSG.Randomized,double-blind,placebo-controlled,proof-of-concept study of the cortical spreading depression inhibiting agent tonabersat in migraine prophylaxis.Cephalalgia.2009;29:742-50。動物は、光曝露期間の直前に給餌された。薬剤を摂取しなかった動物は、実験(実験数合計、n=29、薬剤およびビヒクル処置動物)から除外された。処置の時点で研究者には処置群が分かっていたが、その後、統計比較を行う前に群を無作為化した。これは、いずれが処置動物または対照動物であるかの知識無しに解析が行われたことを意味する。要約すると、成体ラットは一晩、暗順応され、ERGデータが収集された。動物は、強い光暴露の前にビヒクルまたはトナベルサットを与えられた。2週間後、再び動物をERGおよびOCTで評価し、直後に組織採取を進めた。ただし、高用量群のラット4匹には、さらに3カ月間実験を行った。
高血糖ラット糖尿病性網膜症モデル-生後4週間以内に糖尿病性網膜症の臨床兆候を発現した自然発生的なSDラットの高血糖系統を、オークランド大学の医療健康科学学部、Vernon Jansen動物研究ユニット内で特定し、単離した。高血糖および微小動脈瘤を呈するこれらのラットを特定することで、複雑で慢性的な疾患モデルを治療し、疾患の病因に関する正確な情報が無くとも客観的で測定可能なエンドポイントを基にした治療効果の評価を行う機会が得られた。交配は3世代にわたって行われ、眼は、4~8週齢の間、異常性についてスクリーニングされた。これらのラットに関する追加情報は、補足情報として提示される。グルコースレベルを、Freestyle Optium Glucometer (Abbott Laboratories Ltd.,英国)およびFreestyle Optiumグルコースストリップを使用して、非絶食ラットにおいて検証した(Lee JJ,Yi HY,Yang JW,Shin JS,Kwon JH,Kim CW.Characterization of streptozotocin-induced diabetic rats and pharmacodynamics of insulin formulations.Biosci Biotechnol Biochem.2003;67:2396-401)。
1群当たり10匹のラットを選択し(10匹の正常なSDと、10匹の高血糖)、5週齢まで成長させ、OCTおよびERGを使用して評価した。その後、高血糖ラット群を5匹ずつの二つの亜群へと分け、一つの亜群には0.5gのピーナッツバター中、0.28mg/kgの低用量レベルのトナベルサットを5週目から7週目までの14日間与え、他方の亜群には、0.5gのピーナッツバターのみを与えた。8週齢でERGおよびOCTを使用して全ての動物を再び評価し、その後、動物を安楽死させて、免疫組織化学解析のために眼を採取した。データ群を無作為化し、その後に統計比較を行った。要約すると、正常なSDおよび高血糖ラットを、5週齢でOCTおよびERGを用いて分析した。次いで、高血糖ラットを二つの群に分け、6週齢から7週齢の間の14日間、ビヒクルまたはトナベルサットを与えた。8週齢で、再び動物をERGおよびOCTを用いて評価し、免疫組織化学分析のために組織を収集した。しかし4匹のトナベルサット処置ラットは3カ月齢まで放置され、その後に最終的なERGおよびOCT、ならびに組織収集された。
血管漏出に関するエバンスブルー色素評価-高血糖ラットの網膜における微小動脈瘤および巨大動脈瘤(OCTを使用して観察される)は、血管漏出部位を反映するかを調べるために、過去に報告されるようにエバンスブルー色素を用いて3カ月齢のラットをかん流した。Cai S,Yang Q,Hou M,Han Q,Zhang H,Wang J,et al.Alpha-Melanocyte-Stimulating Hormone Protects Early Diabetic Retina from Blood-Retinal Barrier Breakdown and Vascular Leakage via MC4R.Cell Physiol Biochem.2018;45:505-22。簡潔に述べると、エバンスブルー色素(30mg/ml、Sigma-Aldrich社、米国)を、通常の生理食塩水中に溶解し、濾過した。正常SDおよび高血糖ラットの尾静脈内に注射として45mg/kgの色素を送達し、2時間循環させた。ラットに深麻酔をかけながら、眼を摘出し、次いで3MのKClの心内注射を急速に投与することにより動物を安楽死させた。後区視神経乳頭陥凹全体を4%パラホルムアルデヒド中で30分間固定し、網膜を取り出して平らに広げた。Olympus FluoView FV1000 (Olympus Corporation、日本、東京)を使用して、エバンスブルーを559nm波長で刺激して、赤色の蛍光発光により可視化した。
網膜電位図の記録-手順は過去に報告されるように実施した。Vessey KA,Wilkinson-Berka JL,Fletcher EL.Characterization of retinal function and glial cell response in a mouse model of oxygen-induced retinopathy.J Comp Neurol.2011;519:506-27。原則として、SDラットは12~14時間、一晩の暗所順応させて、その後にERG記録を行った。ドライ型AMDについては、ERG基準は、光損傷の前、および光損傷の後の時点(強い光から24時間、1週間、2週間、および3カ月後)で、全ての群に対して記録された。DRモデルについては、ERGは5週齢で記録され、正常なSDと高血糖ラットの網膜機能が比較された。トナベルサット処置高血糖ラットとビヒクル対照高血糖ラットを再び8週齢で評価した。暗順応後、ケタミン(75mg/kg、Parnell Technologies社、ニュージーランド)およびドミトール(domitor)(0.5mg/kg、Pfizer社、ニュージーランド)の組み合わせを腹腔内注射することによりラットを麻酔した。暗順応した動物を操作する間に、発光ダイオード(λmax=650nm)により暗赤色の光を生成した。ERG記録の間、角膜は、1%カルボキシメチルセルロースナトリウム(Celluvisc、米国、アラガン社)を用いて水和した状態を維持した。左右の目のERGは、金リング電極(Roland Consult Stasche & Finger GmbH、ドイツ)を使用して記録した。U字型の活性電極を角膜の中心と接触させ続けた。V字形状の不活性電極を前歯の周りに引っ掛けて、湿った舌と接触させた。動物を37℃の加温パッド上に置くことによって正常体温を維持し、温度誘導性のERG振幅変動を回避した。全視野のERG応答は、Ganzfeld球を介して、フォトグラフィックフラッシュユニット(Nikon SB900 flash、日本)から生成されたツインフラッシュ(0.8ミリ秒の刺激間隔)により惹起された。直径およそ650mmで内部を白く塗られた積分球を使用して、フラッシュ光を網膜全体に反射させた。フラッシュ強度範囲は、-2.9~2.1log cd.s/m2であり、中性密度フィルター((Kodak Wratten,Eastman Kodak、米国)を使用して減衰され、-3.9、-2.9、-1.9、0.1、1.1、1.6、1.8および2.1log cd.s/m2の光強度を得た。フラッシュ強度は、IL1700研究用放射計(UV Process Supply Inc.,米国)を使用して較正された。本試験は、桿体と錐体の経路の分離に、ツインフラッシュパラジウムを利用した。発光エネルギーが同一の対となるフラッシュを、フラッシュユニットから誘導した。桿体および錐体の混合応答は最初のフラッシュの後に記録され、第二のフラッシュからの応答は、錐体のみからの機能を記録し、表す。桿体PIII応答は、最初の混合応答から錐体応答をデジタル減算することで導出された。ERGのPIIIコンポーネントは、桿体の光電流の直接的な反映であり、それら応答を計算モデルへ適合させた後に桿体の光電流に関する情報を考慮することによって、a波の傾きはより適切に解釈される。そのために、最大光レベルでのERGデータは、最初の応答振幅は強度とともに直線的に立ち上がると想定した桿体応答のモデルと適合され、続いて飽和されてPII(双極細胞コンポーネント)およびPIII(光受容体コンポーネント)が明らかにされる。この桿体PIIおよびPIIIの分離を通して、本発明者らは、a波およびb波のERGデータが、錐体経路および桿体経路の両方の変化に対応することを確認することができる。律動様小波(OP)は、内網膜機能を調べるための別の方法である。OPは、桿体PIIから未加工のb波を差し引くことによって分離された。Weymouth AE,Vingrys AJ.Rodent electroretinography:methods for extraction and interpretation of rod and cone responses.Prog Retin Eye Res.2008;27:1-44。OP2、3、および4の合計振幅を解析した。電気ノイズを低減するために、Faradayケージ内で記録を行った。ERG信号の結果は、Dual Bio Amp(AD Instruments社、オーストラリア)によって1,000倍増幅され、波形は、Scopeソフトウェア(AD Instruments社、ニュージーランド)を使用して記録され、各眼のa波およびb波の振幅に関する公開アルゴリズムを使用して分析された。Guo CX,Mat Nor MN,Danesh-Meyer HV,Vessey KA,Fletcher EL,O’Carroll SJ,et al.、上記;Vessey KA,Wilkinson-Berka JL,Fletcher EL、上記。80%の検出力と、5%のアルファ値を達成するために、本発明者らは、ERG研究がサンプルサイズ5を必要とすると判断した。
光干渉断層撮影法-スペクトルドメイン光干渉断層撮影法(SD-OCT;Micron IV;Phoenix Research Laboratories社、米国)を採用して、インビボでの網膜層の形態に関する情報を得た。OCTは、ERG記録が取得された直後に、麻酔下、および1%トロピカミド(Bausch & Lomb New Zealand Ltd.、ニュージーランド)を使用して瞳孔拡張した動物を用いて実施された。Guo CX,Mat Nor MN,Danesh-Meyer HV,Vessey KA,Fletcher EL,O’Carroll SJ,et al.、上記。ラットを37℃の加温パッド上に置き、体温を維持させて、冷却白内障の発生を防止した。眼を、Poly Gel(3mg/gのCarbomerを含有する;Alcon Laboratories Pty Ltd、オーストラリア)で覆い、OCTレンズをゲルに接触させることにより網膜を撮像した。StreamPix 6ソフトウェア、バージョン7.2.4.2 (Phoenix Research Laboratories社、米国)を画像取り込みに使用した。SD-OCT水平線のBスキャンは、2μmの軸分解能を有し、Aスキャン当たり1024ピクセルから構成された。網膜背側の視神経から2mmで取得された10個のBスキャンを得て、平均化した。画像は、InSightソフトウェア、バージョン1.1.5207(Phoenix Research Laboratories社、米国)を使用して解析された。脈絡膜層の厚さは、超反射性のブルッフ膜から脈絡膜-強膜の境界面まで測定した。外核層(ONL)の厚さは、外境界膜(OLM)から外網状層(OPL)の境界面まで測定した。
組織採取および処理-最後のOCT記録の終了時に、ケタミン(75mg/kg、Parnell Technologies社、ニュージーランド)およびドミトール(0.5mg/kg、Pfizer社、ニュージーランド)の組み合わせを使用して、ラットを深麻酔した。動物は、生理食塩水で2~3分間経心的にかん流し、続いて、0.1Mのリン酸緩衝液、pH7.4(PB)中、4%のパラホルムアルデヒドで30分間かん流した。眼を眼窩から解剖し、眼杯をさらに4%のパラホルムアルデヒド中で浸漬固定して、その後にPBで30分間洗浄した。次いで組織を、室温でそれぞれ30分間、10%および20%のスクロース/PB溶液に通すことにより凍結保護して、その後、4℃で一晩、30%スクロース/PBに浸漬した。次いで組織を、Leica CM3050 S cryostat (Leica社、ドイツ)を使用して、垂直平面での凍結切片(16μmの切片厚)作製のためのoptimum cutting temperature compound (Sakura Finetek,Torrance社、米国)に包埋した。Superfrost Plusスライド(Labserv社、ニュージーランド)上に切片を収集し、免疫組織化学標識を行った。DR動物については、本発明者らは、無作為に選択されたビヒクル注射動物から脾臓、膵臓、肝臓、心臓、および腎臓を収集した(補足情報を参照)。
組織切片の免疫組織化学標識-凍結組織切片を、室温で10~15分間空気乾燥させ、0.1M PBで洗浄した。切片を、PAP pen(Invitrogen社、ニュージーランド)で囲んでインキュベーションウェルを形成し、6%正常ヤギ血清またはロバ血清(Invitrogen社、米国)、1%ウシ血清アルブミン(BSA)、および0.5% TritonX-100の0.1M PB溶液で1時間、室温でブロッキングした。一次抗体には、ウサギ抗コネキシン43(1:1000、Cat C6219、Sigma Aldrich社、USA)、ミクログリア細胞により特異的に発現されるマウス抗Iba-1((ionized calcium-binding adapter molecule 1、1:250、Cat Ab5076、Abcam社、米国)、および星状細胞とミュラー細胞に対するマウス抗GFAP(1:1000、Cat C9205、Sigma-Aldrich社、米国)の抗体が含有された。切片を、一次抗体と共に室温で一晩インキュベートし、次いで、0.1M PB中、それぞれ15分間で4回洗浄した。二次抗体のAlexa TM 488またはAlexaTM 594とコンジュゲートされたヤギ抗ウサギ、またはヤギ抗マウス(Invitrogen社、オーストラリア)を、1:500で希釈し、室温、暗所で2~3時間適用した。次いでスライドを0.1M PBで完全に洗浄し、DAPI(1:1000;Sigma-Aldrich社、米国)で細胞核を染色し、その後、抗fading medium(Citifuor Ltd、英国)でカバースリップした。カバースリップは、マニキュア液で密封された。405、473、および559nmの波長の励起レーザー(Olympus Corporation、日本)を装備したOlympus FluoView FV1000共焦点レーザー走査顕微鏡を使用して、切片を撮像した。
統計解析-GraphPad Prism 5(GraphPad Software社、米国)を使用して、グラフ作成および統計解析を実施した。すべてのデータは、平均±平均標準誤差(SEM)として表される。機能データおよび形態データは、0.05のアルファ値を用いた分散分析(ANOVA)を使用して比較された。刺激強度の効果を比較するため、ERG応答解析では、二元配置ANOVA、続いてボンフェローニの事後検定を使用した。対照動物および光損傷動物では、2.1 log cd.s/m2の強度でのERG応答において一方向ANOVA、続いてTukey検定が使用され、またOCTデータ解析でも使用された。桿体PIIおよびPIIIの統計解析は、サンプル間の平均分布は正規であると仮定する、ウェルチの補正を用いた独立t検定を使用して実施された。
実施例2
網膜劣化に関する動物明光損傷モデルにおいて、ヘミチャネル遮断剤を用いた処置は、脈絡膜の厚さ、網膜の厚さを保持し、および網膜機能を復元した。
試験された光強度範囲に対してプロットされた混合a-波ERGデータは陰性波を生じさせ、フラッシュ強度が低範囲レベルから中範囲レベルになるにつれ増加した。混合b-波のERG応答は、陽性波であり、ほとんどのフラッシュ強度に対して一貫している。
24時間の光曝露後、アルビノラットのERG応答は、-100μVの最大a波振幅で有意に減弱した。損傷後2週間でのビヒクル飼育動物群、および光損傷後24時間、1週間および2週間での三つの処置用量の各群について、ERGデータを図1に示す。
光曝露後24時間では、ビヒクル対照群と三つのトナベルサット用量群のいずれの間にも差異はなかった(図1)。
しかし、光損傷対照群と比較して混合a-波振幅の有意な改善が、0.26mg/kgおよび0.8mg/kgで処置された動物の両方において処置後1週間で見られ(p<0.01、図1B~C)、および2.4mg/kg処置群において広範な強度範囲:0.1~2.1 log cd.s/m2で見られた(p<0.001、図1D)。
処置後2週間までに、経口トナベルサットヘミチャネル遮断剤の三つの全ての用量は、0.1~2.1log cd.s/m2の強度で、混合a-波振幅において有意な回復をもたらした(p<0.001、図1B~D)。これらの動物は、ビヒクル処置された光損傷群を超えて、ERG a-波において採用した最大強度でほぼ500μVの改善があった(p<0.001、図1B~D)。治療により、SDラットの平均の約-600μVよりもわずかに低いのみのERG機能の回復がもたらされた。言い換えると、ヘミチャネル遮断剤の三つ全ての用量で、ERG機能が回復した。
0.26および0.8mg/kgのトナベルサット処置群については、処置から24時間後に混合b-波機能に有意な改善があり(図1E~F)、高用量処置群には見られなかった(図1G)。しかし内網膜機能の明白な改善は、トナベルサットの三つ全ての用量について、治療から1週間後および2週間後までにすべての刺激強度にわたって、混合b-波振幅の増加として認められた(図1E~G)。トナベルサットの最大用量である2.4mg/kgは、最も高い改善(平均で1200μV)を示し、これはb-波の絶対振幅において、損傷を受けていないSDラットの正常範囲内である[36]。0.26および0.8mg/kgについては、b-波の絶対振幅に改善(平均で1000μV)があった。それにもかかわらず、2週間の回復期間の終了時には、すべてのトナベルサット処置動物の混合a波および混合b波の機能が、正常な損傷を受けていないアルビノラットの分散の範囲内にあった。Heiduschka P,Schraermeyer U.,Comparison of visual function in pigmented and albino rat by electroretinography and visual evoked potentials.Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol.2008;246:1559-73。言い換えると、ヘミチャネル遮断剤の三つ全ての用量で、内網膜機能が復元した。
最大用量の経口トナベルサット(2.4mg/kg)で処置された4匹の動物のコホートを、通常の交配および給餌条件下で3カ月間維持した。経口投与されるトナベルサット処置の利益は、長期間維持された。経口トナベルサット(2.4mg/kg)の投与から2週間で評価された、元々の7匹の処置動物におけるERG a-波およびb-波の振幅は、トナベルサットの経口投与から3カ月で収集され、評価された4匹の処置動物のコホートと比較して、わずかに低いのみであった。ビヒクル処置対照と比較して、a-波では、400μVを超える光受容体機能の改善があり、b-波では、800μVを超える振幅があった(図2A~B)。PIII桿体およびPII桿体の応答において、光損傷前と比較して経口トナベルサット処置から3か月後に変化はなく、このことから、トナベルサット処置により光受容体機能が完全に保持されたことが示唆される。対照的に、ビヒクルのみを処置された光損傷群において、桿体PIIIおよび桿体PIIの振幅の変化は、3カ月で有意に低下した(p<0.001、図2C~D)。言い換えると、ヘミチャネル遮断剤の三つ全ての用量は、光受容体機能、ならびにPIII桿体およびPII桿体の応答を復元した。
網膜層および脈絡膜の厚さの解析は、損傷から24時間後、1週間後および2週間後でOCTスキャンを使用して実施された。図3は、正常な成体Sprague Dawleyラット、ビヒクル処置された光損傷ラット、および2.4mg/kgのトナベルサット処置された動物に対する、光損傷から2週間後の眼底およびOCTスキャンの典型的な外観を示す(図3A~C)。光損傷前の同じ目と比較して、ビヒクル処置動物では2週目の時点で明白な網膜および脈絡膜の両方の有意な薄化があった(p<0.001;図3A~B)。網膜の厚さの喪失は、主にONLの薄化によるものであった。しかし経口トナベルサットの三つ全ての用量は、網膜および脈絡膜の両方の厚さを有意に保持し、調べられた処置後のいずれの時点(24時間、1週間および2週間)でも薄化は検出されなかった(図3D~F)。2.4mg/kgのトナベルサットの経口投与から3カ月後のOCT解析により、網膜および脈絡膜の両方の厚さが、ビヒクル処置群と比較して有意に保持されたことが示された(p<0.001、図4A~B)。網膜の薄化は、ビヒクル処置動物の内顆粒層(INL;図4C)およびONL層(図4D)の両方で明らかであったが、経口トナベルサット処置動物では、光損傷手順前の同じ動物と比較して、ONLの厚さに差異はなかった。3カ月目の経口トナベルサット処置群では、光損傷手順前に撮影された同じ動物と比較して、INLにおいて厚さのわずかな低下があった(p<0.05)。ビヒクル処置されたラットは、光損傷手順前の同じ網膜と比較して有意なINLの薄化を示した(p<0.001)。3カ月目の経口トナベルサット処置ラットと、光損傷手順前に評価された同じラットとの間に、脈絡膜の厚さの差はなかった(図4E)。対照的に、損傷後3カ月目で評価されたビヒクル処置光損傷ラットは、脈絡膜の有意な薄化があった(p<0.001)。言い換えると、ヘミチャネル遮断剤の三つ全ての用量は、網膜構造および脈絡膜構造の両方を復元した。
最後のERGおよびOCT評価の後、眼を取り出し、網膜を含む目の後区、および付着したRPE-脈絡膜-強膜を、GFAPの免疫組織化学的標識を使用して評価し、グリオーシス(星状細胞増加症)の程度、処置前後のミクログリアの免疫反応性を判定するためのIba-1、およびコネキシン43を調べた。ビヒクル処置ラット(図5A)と比較して、トナベルサット処置ラットは、使用した三つすべてのトナベルサット用量で、網膜におけるコネキシン43免疫反応性が低かった(図5B~D)。Iba-1免疫標識細胞は、薬剤処置群(図5F~H)の網膜の内網状層(IPL)において、ビヒクル処置群(図5E)と比較し、活性が低かった。0.26mg/kgの処置ラットにおいて、わずかに高レベルのIba-1反応性が認められた。GFAP免疫反応性は、ビヒクル処置ラット(図5I)と比較して、0.8mg/mlのトナベルサット(図5K)および2.4mg/kgのトナベルサット(図5L)の網膜では増加しなかった。0.26mg/kgを投与された動物では、GFAP標識のわずかな増加があったが(図5J)、ビヒクル処置ラットで見られたものよりも有意に低かった。画像定量により、ビヒクル対照と比較して、すべてのトナベルサット処置群において、有意に低いGFAP、コネキシン43、およびIba-1のレベルが示され、用量応答性の傾向があった(p<0.001)(図6A~C)(これらの網膜炎症マーカーの正常レベルの維持について、用量が高いほど、効果が高い)。
実施例3
糖尿病性網膜症を有する高血糖動物において、ヘミチャネル遮断剤を用いた処置は、網膜機能を復元した
対照SDラットの平均体重は、4週齢で185±1.1g、6週齢で198.2±0.8g、8週齢で217.5±1.3gであった。高血糖ラットは体重が少なく、4週齢で172.5±2.5g、6週齢で179.6±2.1g、8週齢で183.1±1.8gであった。三つすべての週齢群と、週齢合致させた正常SDラットの間の差異は、統計的に有意であった(t検定、p<0.001)。正常なSDラットの血中グルコース値は4.9~7.4mmol/Lの範囲であった(平均6.07mmol/L、週齢群間で有意差なし)。高血糖ラットにおいて、グルコース値は14.0~21.0mmol/Lであり、平均は4週で16.85±0.63mmol/L、6週で15.43±0.79mmol/L、8週で16.54±0.65mmol/Lであり、高血糖症のレベルは若いときから一貫していた。高血糖ラットの三つすべての週齢群と、正常SDラットの間の差異は、統計的に有意であった(t検定、p<0.001)。
4週齢の高血糖ラットの前区(角膜、レンズ)の細隙灯検査では、この系統が導出されたSDラットと比較して、明らかな肉眼的差異はなにも示されなかった。角膜、水晶体、および虹彩は、正常なSDラットと同一であるように見え、糖尿病性白内障または新血管形成の徴候はなかった。しかし、高血糖ラットのOCTにより、一つの眼当たり、平均5~8個の高反射スポットが明らかとなった(網膜全体で7か所の均等に間隔を置いたOCTスキャンに基づいており、そのため、眼全体に対しては過小評価となっている)が、正常なSDラットでは1~2個以下であった。高反射スポットは、微小動脈瘤(直径20~30μm)および巨大動脈瘤(140~160μm)(図7B~C)であるように見え、それらは特にINLおよびONLに位置していた。網膜厚または脈絡膜厚に有意な変化はなかったが、動脈瘤のある動物では脈絡膜は、わずかに厚みが減少したように見えた。エバンスブルー色素かん流により、OCTを使用してマッピングされた動脈瘤の部位で、血管漏出が確認された(図7F)。
動脈瘤が網膜機能に影響を及ぼしたかを判定するために、ERG解析を5週齢で実施し、高血糖ラットの網膜機能と、正常なSDラットの網膜機能とを比較した。代表的なERG波形を、図8に示す。0.1~2.1log cd.s/m2の強度に対する、正常SDラットと比較して、高血糖ラットにおいて平均混合a-波振幅は有意に低下した(p<0.01)。最大強度でSDラットは-630μVを測定し、それと比較して高血糖糖尿病ラットの網膜では-370μVであった。-3.9~2.1log cd.s/m2の強度に対する、混合ERG b波振幅も、高血糖ラットにおいて有意に低下した(p<0.001)。正常SDラットは800μVの最大強度を示し、一方で糖尿病動物ではわずか400μVであった。a波とb波の潜時の間に差異はなかった。さらなる解析によって、桿体PIII(p<0.001)、PII(p<0.001)、錐体PII(p<0.001)の応答に関し、および律動様小波(OP)の合計振幅(p<0.001)に関し、高血糖ラットにおいて振幅が有意に低下したことが明らかとなった(図8)。桿体PIII感度、または桿体PII、錐体PII、およびOP合計潜時において、有意な変化はなかった。
トナベルサットDR処置群について、5週齢まで成長した10匹の高血糖ラットを、二つの群に均等に分け、一つの群に、5~7週目まで14日間、1日1回、トナベルサットを0.28mg/kgの低用量レベルで与えた。8週目では、処置された高血糖ラットと非処置の高血糖ラットとの間で体重に差異はなく、網膜層の厚さ(INLまたはONL)または脈絡膜の厚さに有意差はなかった。しかし、処置後の微小動脈瘤の数およびサイズにおいて差異があった(図9A~B)。網膜機能は、ビヒクル注入高血糖ラットと比較し、薬剤処置された高血糖ラットにおいて有意に回復した(図9C)。処置された動物において、混合ERG a-波は、0.1~2.1 cd.s/m2の強度で有意に高く(p<0.001)、8週齢での非処置動物の-370μVと比較して最大強度-630μVであり、非損傷の対照SDラットレベルにほぼ合致していた(図8A)。同様に、混合b-波信号は、全ての強度について、トナベルサット処置動物において有意に回復していた(p<0.001)。この時点で非処置対照ではわずか400μVであったことと比較し、最大強度は700μVであり(図9D)、再びほぼ正常SDラットの混合b-波値まで回復した(図9Bを参照)。潜時は、差異がなかった。さらなる解析により、ヘミチャネル遮断剤化合物で処置された処置高血糖ラットは、桿体PIII(p<0.001)、PII(p<0.001)、錐体PII(p<0.01)、および合計OP(p<0.01)振幅を有意に回復させたことが明らかとなった(図9E~H)。処置前後で潜時に差異はなかった。言い換えると、ヘミチャネル遮断剤は、網膜の機能と構造を回復させ、復元した。
高血糖ラットにおいてOCTおよびERGで見られる差異が網膜の炎症と相関するかを判定するために、8週間で眼を採取し、免疫組織化学検査を行った。GFAP標識は、網膜神経節細胞(RGC)層で強く、グリオーシスは、高血糖ラットの網膜中の微小動脈瘤の周辺領域で見られ、神経線維層(FLL)からONLまで伸長していた。このことから、ミュラー細胞活性化が示唆される(図10A)。高血糖網膜において、異常に高いIba-1標識が存在しており(図10B)、このことから、細胞体が腫脹し、多数の細長い枝を有する細胞が存在する内網膜層における活性化ミクログリアが示唆され、コネキシン43標識は、高血糖ラットのGCLにおいて異常に高かった(図10C)。14日間トナベルサットを毎日投与された高血糖ラットは、三つのマーカーすべて(図10E~F)の標識の低下により明白であるように、炎症が低下していた。結果の定量化は図10Gに示されており、GFAP、コネキシン43、およびIba-1の三つすべてのマーカーは、非損傷の対照網膜と比較して、未処置の高血糖ラットにおいて有意に高く(p<0.001)、そして8週齢で三つすべての処置群が正常まで回復し、未処置ラット網膜のレベルよりも、有意に低い標識を示した(p<0.001)。
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すべての特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、および本明細書に参照または言及される他の文書および資料は、本発明が関連する分野の当業者の技能のレベルを示しており、そのような各々参照される文書および資料は、個々にその全体で参照により組み込まれる、またはその全体が本明細書に記述されているのと同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。出願人は、任意のかかる特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、電子的に入手可能な情報、および他の参照される資料または文書からのあらゆる資料および情報を、本明細書に物理的に組み入れる権利を留保する。本明細書における任意の出願、特許、および刊行物への参照は、それらが有効な先行技術を構成する、または世界の任意の国の普遍的な一般知識の一部を形成するという承認または任意の形態の提案ではなく、またそのように受け取られてはならない。
本明細書に記載される特定の方法および組成物は、好ましい実施形態の代表であり、および例示であり、本発明の範囲の限定としては意図されていない。他の目的、態様、および実施形態は、本明細書を考慮することで当業者には思いつくものであり、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神内に包含される。本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、本明細書に開示される本発明に様々な置換および改変がなされ得ることは、当業者には容易に明らかであろう。本明細書に解説的に記載される本発明は、任意の要素、または限定の非存在下で適切に実施される場合があり、それらは必須として本明細書に具体的には開示されない。したがって、例えば、本明細書の各例、および本発明の実施形態または実施例では、「含む」、「本質的にからなる」、および「からなる」という用語のいずれかを、本明細書の他の二つの用語のいずれかで置き換えてもよい。本明細書に解説的に記載される方法およびプロセスは、異なる工程の順序で実施されてもよく、必ずしも本明細書または特許請求の範囲に示される工程の順序に限定されるものではない。また、本明細書および添付の請求の範囲において使用される場合、文脈から別段であることが明白に示唆されない限り、単数形(a、anおよびthe)は複数の指示対象も含む。いかなる状況においても、特許は、本明細書に具体的に開示される特定の実施例または実施形態または方法に限定されるとは解釈されない。いかなる状況においても、特許は、審査官または任意の他の特許商標庁の職員もしくは従業員による声明によって制限されると解釈されない。ただし、かかる声明が、具体的であり、出願人による書面応答において明示的に採用された必要条件または留保が無い場合を除く。さらに、タイトル、見出しなどは、本書面の読者の理解を強化するために提供され、本発明の範囲を限定するものとして読まれるべきではない。本明細書において参照される本発明の態様、実施形態、または構成要素の任意の例は、非限定的とみなされるものとする。
採用された用語および表現は、限定ではなく、説明の用語として使用され、示される、および記載される特性またはその一部の任意の均等を除外するような用語および表現の使用において意図はないが、請求される本発明の範囲内で様々な改変が可能であると認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態および任意の特性によって具体的に開示されているが、本開示の概念の改変および変形は、当業者によって再分類されてもよく、そのような改変および変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であるとみなされることが理解されよう。
本発明は、本明細書に幅広く、および一般的に記載されている。包括的な開示内容に含まれる、狭義の種の各々、および亜属のグループ化も、本発明の一部を形成する。これは、除外される物質が、本明細書に具体的に列挙されているか否かにかかわらず、任意の主題を属から除去する但し書き、または負の制限を伴う本発明の包括的な記述を含む。
他の実施形態は、以下の請求の範囲内である。さらに、本発明の特性または態様がマーカッシュ群で記述される場合、それにより当業者は、本発明が、マーカッシュ群の任意の個々の構成要素または構成要素の亜群に関しても記載されていると認識するであろう。

Claims (57)

  1. 慢性的な網膜障害を有する対象において網膜機能を復元または回復するための方法であって、前記対象に、ヘミチャネル遮断剤の有効量を投与することを含む、方法。
  2. 慢性的な網膜障害を有する対象において網膜構造を復元または回復するための方法であって、前記対象に、ヘミチャネル遮断剤の有効量を投与することを含む、方法。
  3. 慢性的な網膜障害を有する対象において脈絡膜機能を復元または回復するための方法であって、前記対象に、ヘミチャネル遮断剤の有効量を投与することを含む、方法。
  4. 慢性的な網膜障害を有する対象において脈絡膜構造を復元または回復するための方法であって、前記対象に、ヘミチャネル遮断剤の有効量を投与することを含む、方法。
  5. 前記ヘミチャネル遮断剤が、コネキシン43ヘミチャネル遮断剤である、請求項1~3または4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記ヘミチャネル遮断剤が、低分子ヘミチャネル遮断剤である、請求項1~3または4のいずれかに記載の方法。
  7. 前記ヘミチャネル遮断剤が、N-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド(トナベルサット)である、請求項1~3または4のいずれかに記載の方法。
  8. 前記低分子ヘミチャネル遮断剤が、以下の式(I)または式(II)の低分子ヘミチャネル遮断剤であり:
    Figure 2022547324000009
    式中、Yは、C-Rであり;
    は、アセチルであり;
    は、水素、C3-8シクロアルキル、任意で酸素により中断される、またはヒドロキシ、C1-6アルコキシもしくは置換アミノカルボニルにより置換されるC1-6アルキル、C1-6アルキルカルボニル、C1-6アルコキシカルボニル、C1-6アルキルカルボニルオキシ、C1-6アルコキシ、ニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはCFSであり;またはCF-A-基であり、式中、Aは、-CF-、
    -CO-、-CH-、CH(OH)、SO、SO、CH-O、またはCONHであり;またはCFH-A’-基であり、式中、A’は、酸素、硫黄、SO、SO、CF、またはCFHであり;トリフルオロメトキシ、C1-6アルキルスルフィニル、パーフルオロ C2-6アルキルスルホニル、C1-6アルキルスルホニル、C1-6アルコキシスルフィニル、C1-6アルコキシスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ホスホノ、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アリールスルホニル、または任意の芳香族部分が任意選択で置換されるヘテロアリールスルホニル、C1-6アルキルカルボニルアミノ、C1-6アルコキシカルボニルアミノ、C1-6アルキル-チオカルボニル、C1-6アルコキシ-チオカルボニル、C1-6アルキル-チオカルボニルオキシ、1-メルカプト C2-7アルキル、ホルミル、または任意のアミノ部分が任意選択で一つもしくは二つのC1-6アルキル基、またはC1-6アルキルスルフィニルアミノ、C1-6アルキルスルホニルアミノ、C1-6アルコキシスルフィニルアミノもしくはC1-6アルコキシスルホニルアミノで置換される、またはC1-6アルキルカルボニル、ニトロもしくはシアノでエチレニル末端置換されるアミノスルフィニル、アミノスルホニルまたはアミノカルボニル、または-C(C1-6アルキル)NOHもしくは-C(C1-6アルキル)NNHであり;または一つもしくは二つのC1-6アルキルで任意選択で置換される、またはC2-7アルカノイルで任意選択で置換されるアミノであり;RとRのうちの一つは、水素またはC1-4アルキルであり、他方は、C1-4アルキル、CFまたはCHは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1-4アルコキシ、ヒドロキシ、C1-4アルキルカルボニルオキシ、-S-C1-4アルキル、ニトロ、任意選択で一つまたは二つのC1-4アルキル基で置換されるアミノ、シアノ、またはC1-4アルコキシカルボニルであり;またはRとRは共に、C1-4アルキルで任意選択で置換されるC2-5ポリメチレンであり;
    は、C1-6アルキルカルボニルオキシ、ベンゾイルオキシ、ONO、ベンジルオキシ、フェニルオキシ、またはC1-6アルコキシであり、およびRとRは水素であるか、またはRはヒドロキシであり、Rは水素またはC1-2アルキルであり、およびRは水素であり;
    はヘテロアリールまたはフェニルであり、その両方ともが、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、アミノから選択される基または原子で独立して任意選択で1回または2回置換され、この場合においてアミノはC1-4アルキル、シアノ、アジド、C1-4アルコキシ、トリフルオロメトキシ、およびトリフルオロメチルにより任意で1回または2回置換され;
    は、水素、C1-6アルキル、OR11またはNHCOR10であり、式中、R11は、水素、C1-6アルキル、ホルミル、C1-6アルカノイル、アロイルまたはアリール-C1-6アルキルであり、R10は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、モノもしくはジC1-6アルキルアミノ、アミノ-C1-6アルキル、ヒドロキシ-C1-6アルキル、ハロ-C1-6アルキル、C1-6アシルオキシ-C1-6アルキル、C1-6アルコキシカルボニル-C1-6-アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり;R-N-CO-R基は、R基に対してシスであり;およびXは、酸素またはNR12であり、式中、R12は、水素またはC1-6アルキルであり;
    または式II
    Figure 2022547324000010
    式中、
    Qは、Oまたは式=NHOR43のオキシムであり、式中、R43は、
    (i)H、C1-4フルオロアルキル、または任意選択で置換されるC1-4アルキルから選択され、または
    (ii)-A300-R300であり、式中、A300は、直接結合、-C(O)O*-、-C(R)(R)O*-、
    -C(O)O-C(R)(R)O*-、もしくは-C(R)(R)OC(O)O*-であり、式中、*の印が付いた原子は、R300に直接接続され、RとRは独立して、H、フルオロ、C1-4アルキル、またはC1-4フルオロアルキルから選択されるか、またはRとRは、それらが結合される原子とともにシクロプロピル基を形成し、そしてR300は、[1]、[2]、[2A]、[3]、[4]、[5]または[6]の群から選択され;
    は、Hであり、
    Aは、直接結合、-C(O)O*-、-C(R)(R)O*-、-C(O)O-C(R)(R)O*-、または-C(R)(R)OC(O)O*-であり、式中、*の印が付いた原子は、Rに直接接続され、RとRは独立して、H、フルオロ、C1-4アルキル、またはC1-4フルオロアルキルから選択されるか、またはRとRは、それらが結合される原子とともにシクロプロピル基を形成し、
    は、[1]、[2]、[2A]、[3]、[4]、[5]および[6]の群から選択され、**の印が付いた原子は、Aに直接接続され、
    Figure 2022547324000011
    とRはそれぞれ独立して、H、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、および
    ベンジルから選択され;
    は独立して、H、C1-4アルキル、およびC1-4フルオロアルキルから選択され;
    は、
    (i)H、C1-4アルキルもしくはC1-4フルオロアルキル、または
    (ii)天然もしくは非天然のアルファ-アミノ酸の側鎖、または本明細書に記載のペプチド、または
    (iii)ビオチン、もしくはビオチンに化学的に連結される、から選択され;
    は、H、-N(R11)(R12)、または-N(R11)(R12)(R13)X、または-N(R11)C(O)R14から選択され、
    式中、R11、R12、およびR13は独立して、H、C1-4アルキル、またはC1-4フルオロアルキルから選択され、
    14は、H、C1-4アルキル、またはC1-4フルオロアルキルであり、
    15は独立して、C1-4アルキルおよびC1-4フルオロアルキルから選択され、および
    は、薬学的に許容可能なアニオンである、請求項6に記載の方法。
  9. 前記ヘミチャネル遮断剤が、1日当たり約10~200mgの範囲の量で経口投与される、請求項1~3または4のいずれかに記載の方法。
  10. 前記ヘミチャネル遮断剤が、1日当たり約10~約200mgの範囲の量で経口投与される、請求項7に記載の方法。
  11. 前記ヘミチャネル遮断剤が、約0.2mg/kg~約5mg/kgの範囲の量で経口投与される、請求項7に記載の方法。
  12. 前記対象におけるトナベルサットの循環濃度が、約10マイクロモル~約90マイクロモルの範囲である、請求項7に記載の方法。
  13. 前記ヘミチャネル遮断剤が、注射によって投与される、請求項1に記載の方法。
  14. 前記ヘミチャネル遮断剤が、経口投与される、請求項1に記載の方法。
  15. 前記ヘミチャネル遮断剤が、1日に1回投与される、請求項1~3または4に記載の方法。
  16. 前記ヘミチャネル遮断剤が、1週に1回投与される、請求項1~3または4に記載の方法。
  17. 前記対象が、ヒトである、請求項7に記載の方法。
  18. 前記ヘミチャネル遮断剤が、マイクロ粒子を含む組成物中にはない、請求項1に記載の方法。
  19. 前記網膜機能が、混合a-波機能、混合b-波機能、ならびに/またはPIIおよびPIIIの桿体ならびに錐体の機能から選択される、請求項1に記載の方法。
  20. 慢性的な網膜障害を有する対象において網膜構造の完全性を改善する方法であって、前記対象に、ヘミチャネル遮断剤の有効量を投与することを含む、方法。
  21. 網膜色素上皮が回復される、請求項20に記載の方法。
  22. 網膜血管内皮が回復される、請求項20に記載の方法。
  23. 正常な網膜層構造が回復される、請求項20に記載の方法。
  24. 慢性的な網膜障害を有する対象において、微小動脈瘤および/または巨大動脈瘤を減少させる方法または除去する方法であって、前記対象に、ヘミチャネル遮断剤の有効量を投与することを含む、方法。
  25. 慢性的な網膜障害を有する対象において光受容体の機能を改善する方法であって、前記対象に、ヘミチャネル遮断剤の有効量を投与することを含む、方法。
  26. 慢性的な網膜障害を有する対象において脈絡膜構造の完全性を改善する方法であって、前記対象に、ヘミチャネル遮断剤の有効量を投与することを含む、方法。
  27. 脈絡膜の厚さが回復される、請求項26に記載の方法。
  28. 脈絡膜の血管床が回復される、請求項26に記載の方法。
  29. 慢性的な網膜障害を有する対象において外網膜への脈絡膜血管の血流を改善する方法であって、前記対象に、ヘミチャネル遮断剤の有効量を投与することを含む、方法。
  30. 慢性的な網膜障害を有する対象において脈絡膜の血流を改善する方法であって、前記対象に、ヘミチャネル遮断剤の有効量を投与することを含む、方法。
  31. その必要のある対象において、網膜機能の残存を増加させる方法であって、前記対象に、残存促進量のN-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド(Xiflam)を投与することを含む、方法。
  32. 前記残存促進量は、1日当たり10~200mgである、請求項31に記載の方法。
  33. 前記残存促進量は、1日当たり20~100mgである、請求項31に記載の方法。
  34. 前記残存の増加が、慢性的な網膜障害を治療する、請求項31に記載の方法。
  35. 前記慢性的な網膜障害が、糖尿病性網膜症である、請求項34に記載の方法。
  36. 前記慢性的な網膜障害が、糖尿病性黄斑浮腫である、請求項34に記載の方法。
  37. 前記慢性的な網膜障害が、ウェット型加齢黄斑変性、ドライ型加齢黄斑変性、地図状萎縮、および高血圧性網膜症からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
  38. 前記慢性的な網膜障害が、網膜変性、浮腫、糖尿病、虚血性網膜変性、網膜血管閉塞、および網膜中心静脈閉塞によって引き起こされる、請求項34に記載の方法。
  39. 混合a-波機能、および/または改善された混合b-波機能が改善される、請求項31に記載の方法。
  40. PIIおよびPIII桿体ならびに錐体の機能が改善される、請求項31に記載の方法。
  41. ERG機能が改善される、請求項31に記載の方法。
  42. 内網膜機能が改善される、請求項31に記載の方法。
  43. 光受容体機能が改善される、請求項31に記載の方法。
  44. その必要のある対象において網膜構造の残存を増加させる方法であって、前記対象に、1日当たり10~200mgのN-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド(Xiflam)を投与することを含む、方法。
  45. 前記網膜構造は、網膜色素上皮、網膜血管内皮、および/または網膜層の構造を含む、請求項44に記載の方法。
  46. 前記網膜中の微小動脈瘤、および/または巨大動脈瘤が減少される、請求項44に記載の方法。
  47. その必要のある対象において脈絡膜機能の残存を増加させる方法であって、前記対象に、1日当たり10~200mgのN-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド(Xiflam)を投与することを含む、方法。
  48. 脈絡膜の血流が改善される、請求項47に記載の方法。
  49. 外網膜に供給する脈絡膜血管の血流が改善される、請求項47に記載の方法。
  50. 脈絡膜の血流の調節が改善される、請求項47に記載の方法。
  51. その必要のある対象において脈絡膜構造の残存を増加させる方法であって、前記対象に、1日当たり10~200mgのN-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド(Xiflam)を投与することを含む、方法。
  52. 脈絡膜の厚さが改善される、請求項51に記載の方法。
  53. 脈絡膜の血管床が改善される、請求項51に記載の方法。
  54. 網膜機能の残存の増加は、網膜機能を回復または復元する、請求項31に記載の方法。
  55. 網膜構造の残存の増加は、網膜構造を回復または復元する、請求項44に記載の方法。
  56. 脈絡膜機能の残存の増加は、脈絡膜機能を回復または復元する、請求項47に記載の方法。
  57. 脈絡膜構造の残存の増加は、脈絡膜構造を回復または復元する、請求項51に記載の方法。
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