JP2022541528A - クロストリジウム綱コンソーシアムの組成ならびに肥満、メタボリックシンドローム及び過敏性腸疾患の治療法 - Google Patents
クロストリジウム綱コンソーシアムの組成ならびに肥満、メタボリックシンドローム及び過敏性腸疾患の治療法 Download PDFInfo
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Abstract
本明細書に開示されるのは、Clostridiaのコンソーシアムを含む組成物、ならびにこの組成物を対象に投与することによって、肥満、メタボリックシンドローム、過敏性腸症候群を治療する方法、ならびに体重増加を軽減し、小腸における脂質吸収を阻害する方法である。【選択図】図1A
Description
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月17日に出願された米国仮出願62/875,194の出願日の利益を主張する。この先願出願の内容は、その全体が参照により、本明細書に組み込まれる。
本出願は、2019年7月17日に出願された米国仮出願62/875,194の出願日の利益を主張する。この先願出願の内容は、その全体が参照により、本明細書に組み込まれる。
配列表の参照
2020年7月16日に作成され、24,576バイトのサイズを有するテキストファイル名「21101_0401P1_SL.txt」として本明細書に提出された配列表は、米国特許規則第1.52条(e)(5)項に従って、参照することにより本明細書に組み込まれる。
2020年7月16日に作成され、24,576バイトのサイズを有するテキストファイル名「21101_0401P1_SL.txt」として本明細書に提出された配列表は、米国特許規則第1.52条(e)(5)項に従って、参照することにより本明細書に組み込まれる。
微生物叢は、宿主の代謝及び肥満に影響を及ぼすが、疾患から防御する生物体は不明なままである。
本明細書には、細菌のコンソーシアムが開示されている。本明細書には、Clostridium(クロストリジウム属)のコンソーシアムが開示されている。
本明細書には、Clostridia(クロストリジウム綱)のコンソーシアム由来の上清を含む組成物が開示されている。
本明細書には、Clostridiumのコンソーシアムを含む組成物が開示されている。
本明細書には、Clostridia anaerovorax株、Clostridium XIVa、Clostridium IV、及びLachnospiraceae sppsを含む細菌のコンソーシアムであって、このコンソーシアムは、このコンソーシアムが投与されていない対象と比較して対象における腸上皮内の脂質吸収遺伝子の発現を抑制するコンソーシアムが開示される。
本明細書には、対象における微生物叢の相対量を変更する方法であって、本明細書に記載される任意の組成物の有効量を対象に投与して、これによってその対象における微生物叢の相対量を変更することを含む方法が開示される。
本明細書には、肥満の対象を治療する方法が開示される。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。
本明細書には、メタボリックシンドロームを有する対象を治療する方法が開示される。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。
本明細書には、過敏性腸症候群を有する対象を治療する方法が開示される。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。
本明細書には、対象の体重増加を軽減する方法が開示される。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。
本明細書には、対象の小腸において脂肪吸収を阻害する方法が開示される。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。
本明細書には、対象の肝臓においてCD36を下方制御する方法が開示される。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。
添付の図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、複数の態様を例示し、説明と合わせて本発明の原則を説明する役割を果たす。
本発明のさらなる利点は、一部は以下の説明において記載されることになり、一部は説明から明らかとなるか、または本発明を実施することにより学習され得る。本発明の利点は、特に添付の特許請求の範囲で指摘される要素及び組み合わせにより、理解及び達成されることになる。当然のことながら、上記の全般的な説明及び以下の詳細な説明は、両方とも、例示及び説明にすぎず、特許請求されるとおりの本発明を限定するものではない。
本開示は、本明細書に含まれる以下の本発明の詳細な説明、図面及び実施例を参照することによってより容易に理解することができる。
本方法及び組成物を開示ならびに説明する前に、それらは、他に特定されない限り、特定の合成方法に限定されず、他に特定されない限り、特定の試薬にも限定されず、よって、当然のことながら、異なるものになってもよいことを理解されたい。本明細書で使用する用語は、特定の態様のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法及び材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法及び材料をここで記載する。
さらに、別段に明記しない限り、本明細書に記載のいずれの方法も、そのステップが特定の順序で実行されることを必要とすると解釈されることを決して意図するものではないことを理解されたい。したがって、方法の請求項がそのステップが従うべき順序を実際に記載していない場合、または該ステップが特定の順序に限定されるべきであることが請求項または説明に具体的に述べられていない場合、いかなる点でも順序が推測されることを決して意図しない。これは、ステップの配置または操作の流れに関する論理的な問題、文法構成または句読法から派生する明らかな意味、及び本明細書に記載の態様の数または種類を含めた、任意のあり得る非明示的な解釈の根拠に対して成り立つ。
本明細書で言及されるすべての刊行物は、それらの刊行物が引用される方法及び/または材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示に対してのみ提供される。明細書中、本発明を、先行発明を理由にそのような刊行物に先行する権利がないとする承認として解釈されるべきものはなにもない。さらに、本明細書に提供する公開日は、実際の公開日と異なる場合があり、個別の確認が必要な場合がある。
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上別途明確に示されない限り、複数の指示対象を含む。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上別途明確に示されない限り、複数の指示対象を含む。
本明細書で使用される「または」という用語は、特定のリストの任意の1つのメンバーを意味するとともに、そのリストのメンバーの任意の組み合わせも含む。
範囲は、本明細書では、「約」もしくは「およそ」1つの特定の値から、及び/または「約」もしくは「およそ」別の特定の値までのように表されてもよい。かかる範囲が表される場合、さらなる態様は、該1つの特定の値から、及び/または該他の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表される場合、先行詞「約」または「およそ」を使用することによって、該特定の値がさらなる態様を形成することが理解される。さらに、該範囲の各々の終末点は、他の終末点との関連において、及び他の終末点とは独立しての両方で重要であることが理解される。また、本明細書に開示される多くの値があること、及び各値もまた、該値自体に加えて、「約」その特定の値として本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」もまた開示される。また、2つの特定の単位間の各単位も開示されることが理解される。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13、及び14も開示される。
本明細書で使用される、「任意の」または「任意に」という用語は、その後に記載される事象または状況が生じても生じなくてもよいこと、ならびにその記載が、当該事象または状況が生じる場合及びそれが生じない場合を含むことを意味する。
本明細書で使用される、「試料」という用語は、対象由来の組織または器官、細胞(対象内、対象から直接採取、または培養中で維持された細胞もしくは培養細胞株由来の細胞のいずれか)、細胞溶解物(もしくは溶解物画分)または細胞抽出物、あるいは、細胞または細胞物質(例えば、ポリペプチドもしくは核酸)由来の1つ以上分子を含む溶液を意味し、本明細書に記載のとおりにアッセイされる。試料はまた、細胞もしくは細胞成分を含む任意の体液または排出物(例えば、限定するものではないが、血液、尿、ふん便、唾液、涙液、胆汁、脳脊髄液)であってもよい。いくつかの態様では、試料は、脳、脊髄、脳脊髄液または血液から採取してもよい。
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、投与の標的、例えば、ヒトを指す。したがって、本開示の方法の対象は、脊椎動物、例えば、哺乳動物、魚類、鳥類、爬虫類、または両生類であり得る。「対象」という用語にはまた、飼育動物(例えば、ネコ、イヌなど)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ショウジョウバエなど)も含まれる。一態様では、対象は哺乳動物である。別の態様では、対象はヒトである。この用語は、特定の年齢または性別を示さない。したがって、雌雄にかかわらず、成年、幼年、青年、及び新生の対象、ならびに胎児が包含されることが意図される。
本明細書で使用する場合、「患者」という用語は、疾患または障害に罹患している対象を指す。「患者」という用語は、ヒト及び脊椎動物対象を含む。開示されている方法のいくつかの態様では、「患者」は、例えば、投与する工程の前などに多発性硬化症の治療が必要であると診断されている。本開示の方法のいくつかの態様では、「患者」は、例えば、投与するステップの前などにII型糖尿病、肥満または炎症性腸疾患の処置が必要であると診断されている。
本明細書で使用されるとき、「正常」という用語はII型糖尿病、肥満もしくは炎症性腸疾患を有さないか、またはII型糖尿病、肥満もしくは炎症性腸疾患を発症する高い易罹患性を有さない個体、試料、または対象を指す。
本明細書で使用されるとき、「易罹患性」という用語は、対象が疾患と臨床的に診断される可能性を指す。例えば、II型糖尿病、肥満、または炎症性腸疾患に対する感受性が高いヒト対象とは、対象がII型糖尿病、肥満、または炎症性腸疾患と臨床的に診断される可能性が高いヒト対象を指し得る。
本明細書で使用される、「含む」という用語は、「~からなる」及び「~から本質的になる」態様を含むことができる。
本明細書で使用される場合、「対照」とは、正常な対象由来の、またはII型糖尿病、肥満、もしくは炎症性腸疾患を有さない正常な対象由来の組織由来の試料である。
本明細書で使用される場合、「過剰発現」とは、正常な試料で検出される発現よりも多い発現を意味する。例えば、過剰発現される核酸は、正常より約1標準偏差、または正常より約2標準偏差、または正常レベルの発現より約3標準偏差上回って発現されてもよい。したがって、対照レベルの発現を約3標準偏差上回って発現される核酸は過剰発現される核酸である。
本明細書で使用される場合、「治療する」とは、II型糖尿病、肥満、または炎症性腸疾患を有するヒトまたは他の哺乳動物(例えば、動物モデル)などの対象に本発明の化合物または分子を投与して、その疾患もしくは状態の影響の悪化を防止もしくは遅らせるか、またはその疾患の影響を部分的もしくは完全に逆転させることを意味する。
本明細書で使用される場合、「予防する」とは、II型糖尿病、肥満、もしくは炎症性腸疾患を発症する易罹患性が高い対象、またはII型糖尿病、肥満、もしくは炎症性腸疾患を発症する可能性を最小限に抑えることを意味する。
本明細書で使用される、用語「参照」、「参照発現」、「参照試料」、「参照値」、「対照」、「対照試料」などは、試料または1以上の微生物の発現レベルの文脈で用いられる場合、参照基準を指し、その際、該参照は、異なる組織(すなわち、同じ組織ではないが複数の組織)間で一定のレベルで発現され、実験条件によって影響を受けず、所定の病態(例えば、II型糖尿病、肥満、もしくは炎症性腸疾患に罹患していない)の試料におけるレベルを示す。該参照値は、所定の基準値でも所定の基準値の範囲でもよく、無病、または所定の型もしくは重症度の病気を表す。
組成物
本開示は、細菌分離株及び群落を含む組成物及び使用方法に関する。具体的には、本開示は、本明細書、特に表1に開示されている細菌コンソーシアムからの1つ以上の微生物またはそれらの混合物を含む組成物に関する。好ましい実施形態では、組成物は、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の2つ以上の株を含む。微生物は、配列番号1~4に対応し、少なくとも98%同一である16S リボソーム遺伝子配列を同定することによって特徴付けられ得る。
本開示は、細菌分離株及び群落を含む組成物及び使用方法に関する。具体的には、本開示は、本明細書、特に表1に開示されている細菌コンソーシアムからの1つ以上の微生物またはそれらの混合物を含む組成物に関する。好ましい実施形態では、組成物は、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の2つ以上の株を含む。微生物は、配列番号1~4に対応し、少なくとも98%同一である16S リボソーム遺伝子配列を同定することによって特徴付けられ得る。
本明細書に開示されているのは、新たに同定された細菌である。配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌は、Clostridium属に属することが見出された。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、細菌がClostridium sp.(クロストリジウム種)である少なくとも1つの細菌を含む。
Clostridia anaerovorax。本明細書には、細菌Clostridia anaerovoraxが開示される。本明細書で使用されるClostridia anaerovoraxとは、配列番号1に対して少なくとも少なくとも98%の配列同一性を共有する16S 核酸配列を有する細菌を指す。Clostridia anaerovoraxは、NRRLまたはATCCアクセッション番号_____を有する。Clostridia anaerovoraxは、CD4-Cre+マウス(WT)の小腸下部由来の糞便ペレット及び管腔内容物から分離された。
Clostridium XIVa。本明細書では、細菌、Clostridium XIVaが開示される。Clostridium XIVaとは、本明細書において用いる場合、配列番号2に対して少なくとも少なくとも98%の配列同一性を共有する16S 核酸配列を有する細菌を指す。Clostridium XIVaは、NRRLまたはATCC アクセッション番号_____を有する。Clostridium XIVaは、CD4-Cre+マウス(WT)の小腸下部由来の糞便ペレット及び管腔内容物から分離された。
Clostridium IV。本明細書では、細菌、Clostridium IVが開示される。Clostridium IVとは、本明細書において用いる場合、配列番号3に対して少なくとも少なくとも98%の配列同一性を共有する16S 核酸配列を有する細菌を指す。Clostridium IVは、NRRLまたはATCC アクセッション番号_____を有する。Clostridium IVは、CD4-Cre+マウス(WT)の小腸下部由来の糞便ペレット及び管腔内容物から分離された。
Lachnospiraceae spps。本明細書では、細菌、Lachnospiraceae sppsが開示される。Lachnospiraceae sppsとは、本明細書において用いる場合、配列番号4に対して少なくとも少なくとも98%の配列同一性を共有する16S 核酸配列を有する細菌を指す。Lachnospiraceae sppsは、NRRLまたはATCC アクセッション番号_____を有する。Lachnospiraceae sppsは、CD4-Cre+マウス(WT)の小腸下部由来の糞便ペレット及び管腔内容物から分離された。
Clostridia Consortium.本開示は、細菌分離株及び群落を含む組成物及び使用方法に関する。本明細書には、Clostridiaコンソーシアム(2つ以上の異なる菌株の混合物)が開示される。具体的には、本開示は、本明細書、特に表1に開示されている細菌コンソーシアム由来の1つ以上の微生物またはそれらの混合物を含む組成物に関する。いくつかの態様では、この組成物は、表1に列挙される2つ以上の菌株を含む。この微生物は、配列番号1~4に相当し、それ対して少なくとも少なくとも98%同一である16Sリボソーム遺伝子配列を特定することによって、ならびに/またはそれぞれ、NRRLもしくはATCCアクセッション番号: ____、____、____、及び____を有する細菌に対する比較によって、特徴付けられ得る。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する2つ以上の細菌株を含む。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する3つ以上の細菌株を含む。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、それぞれ配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する4つの菌株を含む。
いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、他の細菌株が存在しない場合に、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する2つ以上の細菌株を含む。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、他の細菌株が存在しない場合に、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する3つ以上の細菌株を含む。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、他の細菌株が存在しない場合に、それぞれ、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する4つの細菌株を含む。
いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、表1に列挙された最大4つの細菌株を含む。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、表1の2つ以上の細菌株を含む。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsを含む。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV、Lachnospiraceae spps、及び表1の1つ以上の細菌株を含む。いくつかの態様では、このコンソーシアムの種々の細菌は、それらの16Sリボソーム遺伝子配列によって特定され得る。
いくつかの態様では、本明細書に開示されるClostridiaコンソーシアムは、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の4つを超える菌株を含む、より複雑なClostridiaコンソーシアムを含む、複雑な微生物群落と同程度に対象にコロニー形成された場合、対象における脂肪症を軽減し得る。
いくつかの態様では、本明細書に開示されるClostridiaコンソーシアムは、それぞれ、未処理のWTマウスまたはT-MyD88-/-マウスと比較した場合、高脂肪食を与えられたときに、WTマウスまたは肥満傾向のT-MyD88-/-マウスにおける体重増加及び脂肪蓄積を減少し得る。
いくつかの態様では、本明細書に開示されるClostridiaコンソーシアムは、それぞれ、未処理のWTマウスまたはT-MyD88-/-マウスと比較した場合、高脂肪食を与えられたときに、WTマウスまたは肥満傾向のT-MyD88-/-マウスにおける、体脂肪率を下げ、及びVAT量を減少し得る。
いくつかの態様では、本明細書に開示されるClostridiaコンソーシアムは、それぞれ、未処理のWTマウスまたはT-MyD88-/-マウスと比較した場合、高脂肪食を与えられたときに、WTマウスまたは肥満傾向のT-MyD88-/-マウスにおける血糖値を低下及びインスリン抵抗性を減少し得る。
本明細書に開示されるのは、対象の脂肪症を軽減し、対象の体重増加及び/または脂肪蓄積を減らし、対象の体脂肪率を下げ、及び/または対象の内臓脂肪組織(VAT)量を減らし、血糖値を下げる、及び/または、対象のインスリン抵抗性を低下させ、対象の小腸での脂質吸収を阻害し、対象の肝臓でCD36を下方制御し、ならびに対象の腸上皮内での脂質吸収遺伝子の発現を抑制するためのClostridiaコンソーシアムである。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、表1に列挙された最大4つの細菌株を含む。いくつかの態様では、表1の任意の2つ以上の細菌株の組み合わせが、Clostridiaコンソーシアムにおいて使用され得る。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、Clostridia anaerovorax,Clostridium XIVa,Clostridium IV and Lachnospiraceae sppsを含む。いくつかの態様では、コンソーシアム内のさまざまな細菌は、それらの16Sリボソーム遺伝子配列によって同定され得る。
本明細書には、Clostridiaのコンソーシアム由来の上清を含む組成物が開示されている。本明細書にはまた、Clostridiumのコンソーシアムを含む組成物が開示されている。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsを含む。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsのうちの1つ以上を含む。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsのうちの2つ以上を含む。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsのうちの3つ以上を含む。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsからなる。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsのうちの1つ以上からなる。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsのうちの2つ以上からなる。いくつかの態様では、Clostridiaコンソーシアムは、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsのうちの3つ以上からなる。
いくつかの態様では、本明細書に記載される任意の組成物は、対象の腸上皮内の脂質吸収遺伝子の発現を抑制し得る。いくつかの態様では、本明細書に開示される任意の組成物は、1つ以上の脂質吸収及び/または合成遺伝子を抑制し得る。いくつかの態様では、脂質吸収遺伝子は、CD36、FasN、Dgat、Srepbf1、SLC27a1、及びSLC27a4であり得る。
いくつかの態様では、本明細書に記載される任意の組成物は、対象の小腸の脂質吸収を阻害し得る。
いくつかの態様では、本明細書に記載される任意の組成物は、対象の体重増加を軽減し得る。
いくつかの態様では、本明細書に記載される任意の組成物は、対象の肝臓においてCD36を下方制御し得る。
また、本明細書には、2つ以上のClostridia anaerovorax株、Clostridium XIVa、Clostridium IV、及びLachnospiraceae sppsを含む細菌のコンソーシアムであって、このコンソーシアムは、このコンソーシアムが投与されていない対象と比較して対象における腸上皮内の脂質吸収遺伝子の発現を抑制するコンソーシアムも開示される。
いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、表1から選択される1つ以上のClostridia株をさらに含み得る。
いくつかの態様では、開示される組成物は、配列番号1~4の16Sリボソーム配列に対して少なくとも95、96、97、98、99またはそれ以上の同一性パーセントの相同性によって同定可能な少なくとも2つ以上の細菌微生物を含む。いくつかの態様では、16S配列の量は、約1.2kb、1.1kb、1.0kb、0.9kb、8kb、0.7kb、0.6kb、0.5kb、0.4kb、0.3kb、0.2kb、または0.1kb未満であり、かつ約50nt、0.1kb、2kb、0.3kb、0.4kb、0.5kb、0.6kb、0.7kb、0.8kb、0.9kb、1.0kb、または1.1kbを超える。いくつかの態様では、16Sリボソーム配列相同性の量は、約150nt~500ntの間、例えば、約250ntである。2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、配列を最適な比較目的のために整列させる(例えば、第2の核酸配列との最適な整列のためにギャップを、第1の核酸配列の配列に導入してもよい)。次に、対応するヌクレオチド位置にあるヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じヌクレオチドによって占有される場合には、その分子は、その位置にて同一である。2つの配列の間の同一性パーセントは、その配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一の位置の数/位置の総数×100)。
2つの配列間の相同性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。2つの配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin及びAltschul(1990) Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 87:2264-2268のアルゴリズムであって、Karlin and Altschul(1993) Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 90:5873-5877のように改変されたアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、Altschul,et al.(1990) J.Mol.Biol.215:403-410のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれる。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実施して、本開示の核酸分子に対して類似または相同なヌクレオチド配列を得てもよい。比較目的のためのギャップアライメントを得るために、Gapped BLASTを、Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載のように利用してもよい。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、XBLAST及びNBLAST)を使用してもよい。これらのアルゴリズムを、DNAをRNAと整列させるために使用してもよく、場合によっては、タンパク質を翻訳されたヌクレオチド配列と整列させるために使用してもよい。
いくつかの態様では、少なくとも2つ以上の微生物が本開示の組成物に含まれる。2つ以上の微生物が組成物を形成する場合、その微生物を共培養して、開示された組成物を生成し得ると考えられる。いくつかの態様では、開示された組成物は、2つ以上の株の個々の培養物を組み合わせることによって形成され得る。微生物は、当技術分野で公知の方法によって増殖され得る。例えば、微生物は、嫌気性または好気性の条件下で液体培地中で増殖され得る。微生物の増殖に使用される適切な液体培地としては、栄養ブロス及びトリプシンダイズ天(TSA)などのような当技術分野で公知の培地が挙げられる。いくつかの態様では、この組成物は、表1に列挙された菌株の全リストを含む。いくつかの態様では、組成物は、以下の菌株のうちの少なくとも2つ以上を含む:Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV、及びLachnospiraceae spps。
いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、少なくとも1×10-5細胞の各Clostridia株を含んでもよい。いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、少なくとも1×10-6細胞の各Clostridia株を含んでもよい。いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、少なくとも1×10-7細胞の各Clostridia株を含んでもよい。いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、少なくとも1×10-8細胞の各Clostridia株を含んでもよい。いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、少なくとも1×10-9細胞の各Clostridia株を含んでもよい。いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、少なくとも1×10-10細胞の各Clostridia株を含んでもよい。いくつかの態様では、本明細書に開示される任意の組成物の単一投薬量は、1×10-5 ~1×10-10細胞の各Clostridia株を含んでもよい。いくつかの態様では、このコンソーシアムの細胞は活性である。
いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、不均衡な微生物叢に関連する疾患または障害を有する対象の微生物叢を置き換え得る。いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、対象の微生物叢を、機能不全の微生物叢に関連する疾患または障害で置き換え得る。いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、対象の微生物叢を、機能的多様性が減少する微生物叢に関連する疾患または障害で置き換え得る。いくつかの態様では、不均衡な微生物叢(または機能不全の微生物叢もしくは機能的多様性が減少する微生物叢)とは、Desulfovibrioの増加及びクロストリジウム(Clostridia)の減少である場合がある。いくつかの態様では、不均衡な微生物叢(または機能不全の微生物叢もしくは機能的多様性が減少する微生物叢)とは、Desulfovibrioの無変化(または増加なし)及びクロストリジウム(Clostridia)の減少である場合がある。いくつかの態様では、不均衡な微生物叢(または機能不全の微生物叢もしくは機能的多様性が減少する微生物叢)とは、クロストリジウム(Clostridia)の減少である場合がある。いくつかの態様では、不均衡な微生物叢(または機能不全の微生物叢もしくは機能的多様性が減少する微生物叢)とは、クロストリジウム(Clostridia)の非存在または欠失である場合がある。
いくつかの態様では、疾患または障害は、肥満、メタボリックシンドローム、インスリン欠乏、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能異常、糖尿病、または炎症性腸疾患であり得る。いくつかの態様では、炎症性腸疾患は、クローン病であっても、または潰瘍性大腸炎であってもよい。いくつかの態様では、インスリン抵抗性関連障害は、糖尿病、高血圧、脂質異常症、または心血管疾患であってもよい。いくつかの態様では、糖尿病はI型糖尿病であってもよい。いくつかの態様では、糖尿病はII型糖尿病であってもよい。
いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含んでもよい。いくつかの態様では、この組成物はまた、添加剤も含んでもよい。適切な添加剤としては、成長、微生物による特定の代謝産物の生成を支持し、pHを変化させ、標的代謝産物を濃縮し、殺虫効果を高め、及びそれらの組み合わせを支持し得る当技術分野で公知の物質が挙げられる。例示的な添加剤としては、炭素源、窒素源、リン源、無機塩、有機酸、増殖培地、ビタミン、ミネラル、酢酸、アミノ酸などが挙げられる。
適切な炭素源の例としては、限定するものではないが、デンプン、ペプトン、酵母エキス、アミノ酸、糖、例えば、スクロース、グルコース、アラビノース、マンノース、グルコサミン、マルトース、サトウキビ、アルファルファ抽出物、糖蜜、ラムなど;有機酸、例えば、酢酸、フマル酸、アジピン酸、プロピオン酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、ピルビン酸、マロン酸などの塩;エタノール、グリセロールなどのアルコール;オイルまたは油脂、例えば、ダイズ油、米ぬか油、オリーブ油、コーン油、及びゴマ油が挙げられる。添加される炭素源の量は、炭素源の種類によって異なり、通常、培地1リットルあたり1~100グラムである。組成物中の炭素源の重量分率は、組成物の総重量の約98%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約2%、または約1%以下であり得る。好ましくは、アルファルファは、約1~20%(w/v)の濃度で、主要な炭素源として培地に含まれる。より好ましくは、アルファルファは、約5~12%(w/v)の濃度である。
適切な窒素源の例としては、限定するものではないが、アミノ酸、酵母抽出物、アルファルファ抽出物、トリプトン、牛肉抽出物、ペプトン、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アンモニア、またはそれらの組み合わせが挙げられる。窒素源の量は、窒素源によって異なり、通常、培地1リットルあたり0.1~30グラムである。組成物中の窒素源の重量分率は、組成物の総重量の約98%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約2%、または約1%以下であり得る。
適切な無機塩の例としては、限定するものではないが、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硫酸マンガン、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸第二銅、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。組成物中の無機塩の重量分率は、組成物の総重量の約98%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約2%、または約1%以下であり得る。
いくつかの態様では、本開示の組成物は、酢酸またはカルボン酸をさらに含み得る。適切な酢酸としては、限定するものではないが、ホルミン酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、3-メチルブタン酸、酢酸メチル酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、及び酢酸2-メチルブチルを含む、任意の当技術分野で公知のものが挙げられる。いくつかの態様では、酢酸は、酢を用いることによって含まれる。組成物中の酢酸の重量分率は、組成物の総重量の約98%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約2%、または約1%以下であり得る。
いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、凍結されてもよい。本開示の組成物は、液体であっても、または乾燥形態であってもよい。いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、固体であってもよい。いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、液体であってもよい。いくつかの態様では、この組成物は、水性懸濁液の成分を含んでもよい。この水性懸濁液は、適用前に希釈される濃縮原液として提供されてもよいし、またはすぐに使用できる希釈溶液として提供されてもよい。また、組成物は、粉末、顆粒、粉塵、ペレットまたはコロイド状濃縮物であってもよい。このような乾燥形態は、湿潤するとすぐに溶解するように、または徐放性、持続放出性、もしくは他の時間依存的方式で溶解するように処方されてもよい。また、この組成物は、効果的であるために湿潤または溶解に依存しない乾燥形態であってもよい。
いくつかの態様では、本開示の組成物は、少なくとも1つの任意の賦形剤を含み得る。適切な賦形剤の非限定的な例としては、抗酸化剤、添加剤、希釈剤、結合剤、充填剤、緩衝剤、ミネラル塩、pH調整剤、崩壊剤、分散剤、香味剤、栄養剤、膠質浸透圧剤、安定剤、防腐剤、嗜好性増強剤及び着色剤が挙げられる。組み合わせを形成するために利用される賦形剤の量及び種類は、科学の公知の原理に従って選択され得る。
いくつかの態様では、賦形剤は、少なくとも1つの希釈剤を含み得る。適切な希釈剤の非限定的な例としては、微結晶性セルロース(MCC)、セルロース誘導体、セルロース粉末、セルロースエステル(すなわち、酢酸塩及び酪酸塩混合エステル)、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、リン酸化コーンスターチ、アルファ化コーンスターチ、コメデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、デンプン-ラクトース、デンプン-炭酸カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、グルコース、フルクトース、ラクトース、ラクトース一水和物、スクロース、キシロース、ラシトール、マンニトール、マリトール、ソルビトール、キシリトール、マルトデキストリン、及びトレハロースが挙げられる。
いくつかの態様では、この賦形剤は、結合剤を含み得る。好適な結合剤としては、限定するものではないが、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルオキソアゾリドン、ポリビニルアルコール、C12-C18 脂肪酸アルコール、ポリエチレングリコール、ポリオール、糖類、オリゴ糖類、ポリペプチド類、オリゴペプチド類、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
いくつかの態様では、賦形剤は、充填剤を含んでもよい。適切な充填剤としては、限定するものではないが、炭水化物、無機化合物、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。非限定的な例として、充填剤は、二塩基性及び三塩基性の両方の硫酸カルシウム、デンプン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、微結晶性セルロース、二塩基性リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、タルク、化工デンプン、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールであってもよい。
いくつかの態様では、この賦形剤は、緩衝剤を含んでもよい。適切な緩衝剤の代表的な例としては、限定するものではないが、MOPS、HEPES、TAPS、ビシン(Bicine)、トリシン(Tricine)、TES、PIPES、MES、トリス緩衝液または緩衝生理食塩水(例えば、トリス緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)が挙げられる。
いくつかの態様では、賦形剤は、崩壊剤を含んでもよい。好適な崩壊剤としては限定するものではないが、デンプン、例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、それらのアルファ化デンプン及び化工デンプン、甘味剤、クレー、例えば、ベントナイト、微晶質セルロース、アルギン酸塩、デンプングリコール酸ナトリウム、増粘剤、例えば、寒天、グアー、ローカストビーン、カラヤ、ペクチン、及びトラガカントが挙げられる。
いくつかの態様では、賦形剤は、分散増強剤を含んでもよい。適切な分散剤としては、限定するものではないが、デンプン、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、グアーガム、カオリン、ベントナイト、精製木質セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、イソアモルファスケイ酸塩、及び微結晶性セルロースが挙げられる。
いくつかの態様では、賦形剤は、潤滑剤を含んでもよい。適切な潤滑剤の非限定的な例としては、タルクまたはシリカなどの鉱物;及び脂肪、例えば、植物性ステアリン、ステアリン酸マグネシウム、またはステアリン酸が挙げられる。
組成物中の賦形剤(複数可)の重量分率は、組成物の総重量の約98%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約2%、または約1%以下であり得る。
いくつかの態様では、本開示の組成物は、室温で安定である。
いくつかの態様では、コンソーシアムは、生きている微生物の生存能力を有意に損なうことなく、貯蔵及び輸送のために低温に保たれ得る。コンソーシアムまたはそれを含む組成物は、冷蔵しても、冷凍しても、または凍結乾燥してもよい。組成物は、32°F~44°Fの間で冷蔵してもよい。
いくつかの態様では、コンソーシアムまたはそれを含む組成物は、凍結状態で貯蔵及び輸送され得る。生きている有益な微生物は、一旦、組成物が解凍されて周囲温度にされると、好ましくは曝気及び/または攪拌により、迅速に再活性化され得る。
いくつかの態様では、コンソーシアムは凍結乾燥されてもよい。コンソーシアムは最初に凍結される。次いで、水は真空下で修正物が除去される。このプロセスは、保管及び輸送のための組成物の重量をさらに減らす。同じものを含む組成物のコンソーシアムは、適用または投与の前に再構成及び再活性化され得る。
いくつかの態様では、濃縮されたコンソーシアム、またはそれを含む組成物は、適用または投与の前に水で希釈してもよい。希釈された組成物は、生存能力を失うことなく、長期間、例えば、30日まで保存され得る。生きている有益な微生物を実質的に好気性の状態に維持するために、本開示の希釈された組成物中の溶存酸素は、好ましくは、最適なレベルに保たれる。ゆっくりと曝気しながら、希釈した組成物に最適な量の酸素を供給することが好ましい。
いくつかの態様では、本明細書に開示される任意の組成物を、粉末、顆粒、すぐに使用できる飲料、食品バー、押し出し形態、カプセル、ゲルカプセル、及び分散性錠剤からなる群より選択される形態で投与してもよい。
寄託情報。本明細書に開示されている細菌XXXの寄託は、American Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Blvd.,Manassas,VA20110-2209で行われる。寄託日は______であり、寄託された細菌XXXのアクセッション番号はATCCアクセッション番号--------である。寄託に関する全ての制限が解除され、寄託は米国特許規則第1.801-1.809条の全ての要件を満たすことを目的としている。寄託物は、30年間、または最後の請求から5年間、または特許の有効期間のいずれか長い方の期間、寄託機関に保持され、その期間中に必要に応じて交換される。
方法
本明細書には、対象における微生物叢の相対量を変化させる方法が開示される。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物の有効量を対象に投与し、それにより、その対象における微生物叢の相対的存在量を変化させるすることを含み得る。いくつかの態様では、この方法は、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の2つ以上の株を含む組成物の有効用量を対象に投与し、それにより、その対象における微生物叢の相対量を変更することを含み得る。いくつかの態様では、Clostridia菌の相対量を増大し得る。いくつかの態様では、Clostridia菌の相対量を置き換え得る。いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、不均衡な微生物叢(または機能不全の微生物叢もしくは機能的多様性が低下している微生物叢)に関連する疾患または障害を有する対象の微生物叢を置き換え得る。
本明細書には、対象における微生物叢の相対量を変化させる方法が開示される。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物の有効量を対象に投与し、それにより、その対象における微生物叢の相対的存在量を変化させるすることを含み得る。いくつかの態様では、この方法は、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の2つ以上の株を含む組成物の有効用量を対象に投与し、それにより、その対象における微生物叢の相対量を変更することを含み得る。いくつかの態様では、Clostridia菌の相対量を増大し得る。いくつかの態様では、Clostridia菌の相対量を置き換え得る。いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物は、不均衡な微生物叢(または機能不全の微生物叢もしくは機能的多様性が低下している微生物叢)に関連する疾患または障害を有する対象の微生物叢を置き換え得る。
微生物叢を変更する方法はまた、対象からの試料中の1つ以上の微生物叢の相対的存在量を測定することを含み得る。本明細書で使用される場合、「相対量」という用語は、定義された場所または群落内の他の生物体と比較したある生物体の共通性または希少性を指す。例えば、相対量は、試料内の生物体の総存在量と比較して、特定の生物体の存在を一般的に測定することによって決定され得る。
微生物叢の相対量は、直接的に測定してもよいし、または間接的に測定してもよい。直接測定には、培養ベースの方法が含まれ得る。間接的な測定としては、試料全体に関連して、生物体または生物体の群に特異的なリボソームRNA(rRNA)遺伝子配列などの同一性の分子指標の有病率を比較することが含まれ得る。例えば、盲腸試料から得られたrRNA遺伝子配列の総数におけるDesulfovibrio及びClostridiaに特異的なrRNAの比率を使用して、盲腸試料中のDesulfovibrio及びClostridiaの相対量を決定し得る。
本明細書で使用される場合、「微生物叢」という用語は、生物体の胃腸管内で見出され得る、または存在し得る(コロニーを形成する)1つ以上の細菌群落を指すために使用される。複数の微生物叢を指す場合、その微生物叢は同じタイプ(株)であってもよいし、分類群の混合物であってもよい。いくつかの態様では、本明細書に開示される方法及び組成物は、対象の胃腸管におけるClostridiumなどの属由来の微生物叢の相対量を変更する。微生物叢の相対量は、Clostridiumなどの属由来の微生物叢を含む医薬組成物、またはClostridiumなどの属由来の微生物叢の相対量を実質的に増大させるか、もしくはそのようなDesulfovibrionales由来の微生物叢の相対存在量を実質的に減少させる化合物を投与することによって変更され得る。
いくつかの態様では、Clostridiaの相対量は、少なくとも約5%対象で増大され得る。いくつかの態様では、Clostridiaの相対量は、少なくとも約10%対象で増大され得る。いくつかの態様では、Clostridiaの相対量は、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%対象で増大され得る。いくつかの態様では、Clostridiaの少なくとも1つの種の相対量は、5%増大され得る。
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法は、対象に第2の治療薬を投与することをさらに含み得る。いくつかの態様では、第2の治療剤は、1つ以上のバクテリオファージであってもよい。いくつかの態様では、1つ以上のバクテリオファージは、Desulfovibrioを特異的に標的にして殺滅し得る。いくつかの態様では、第2の治療剤は、肥満、II型糖尿病、及び/または炎症性腸疾患を治療するために投与され得る1つ以上の市販の治療剤であり得る。いくつかの態様では、第2の治療剤は、抗炎症剤であり得る。
本明細書には、肥満の対象を治療する方法が開示される。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。いくつかの態様では、この方法は、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の2つ以上の株を含む組成物を対象に投与することを含み、ここでClostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して、その対象において増大される。
本明細書に開示するのは、メタボリックシンドロームを有する対象を治療する方法である。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。いくつかの態様では、この方法は、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の2つ以上の株を含む組成物を対象に投与することであって、ここでClostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して、その対象において増大されることを含み得る。
本明細書には、過敏性腸症候群を有する対象を治療する方法が開示される。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。いくつかの態様では、この方法は、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の2つ以上の株を含む組成物を対象に投与することであって、ここでClostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して、その対象において増大されることを含み得る。
本明細書に開示するのは、対象の体重増加を軽減する方法である。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。いくつかの態様では、この方法は、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の2つ以上の株を含む組成物を対象に投与することであって、ここでClostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して、その対象において増大されることを含み得る。
本明細書に開示するのは、対象の小腸において脂肪吸収を阻害する方法である。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。いくつかの態様では、この方法は、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の2つ以上の株を含む組成物を対象に投与することであって、ここでClostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して、その対象において増大されることを含み得る。いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物のいずれも、1つ以上の脂質吸収及び/または合成遺伝子を抑制し得る。いくつかの態様では、脂質吸収遺伝子は、CD36、FasN、Dgat、Srepbf1、SLC27a1、及びSLC27a4であり得る。
本明細書には、対象の肝臓においてCD36を下方制御する方法が開示される。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。いくつかの態様では、この方法は、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の2つ以上の株を含む組成物を対象に投与することであって、ここでClostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して、その対象において増大されることを含み得る。
本明細書に開示するのは、対象の脂肪症を軽減する方法である。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。いくつかの態様では、この方法は、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の2つ以上の株を含む組成物を対象に投与することであって、ここでClostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して、その対象において増大されることを含み得る。
本明細書に開示するのは、対象の体重増加を軽減する方法である。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。いくつかの態様では、この方法は、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の2つ以上の株を含む組成物を対象に投与することであって、ここでClostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して、その対象において増大されることを含み得る。
本明細書に開示するのは、対象の脂肪蓄積を軽減する方法である。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。いくつかの態様では、この方法は、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の2つ以上の株を含む組成物を対象に投与することであって、ここでClostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して、その対象において増大されることを含み得る。
本明細書では、対象において体脂肪率を低下させる、及び/または内臓脂肪組織(VAT)量を低減する方法が開示される。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。いくつかの態様では、この方法は、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の2つ以上の株を含む組成物を対象に投与することであって、ここでClostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して、その対象において増大されることを含み得る。
本明細書では、対象において血糖値を低下させる、及び/またはインスリン抵抗性を低下させる方法が開示される。いくつかの態様では、この方法は、本明細書に開示される任意の組成物を対象に投与することであって、Clostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して対象において増大されることを含み得る。いくつかの態様では、この方法は、配列番号1、2、3、及び4を含む16S rDNA配列を有する細菌の2つ以上の株を含む組成物を対象に投与することであって、ここでClostridiaの相対量が、投与前の相対量と比較して、その対象において増大されることを含み得る。
いくつかの態様では、本明細書で開示される任意の方法において、対象は、治療が必要であると特定されている。いくつかの態様では、対象は、肥満、メタボリックシンドローム、インスリン欠乏、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能異常、糖尿病、または炎症性腸疾患を有する。いくつかの態様では、炎症性腸疾患は、クローン病であっても、または潰瘍性大腸炎であってもよい。いくつかの態様では、インスリン抵抗性関連障害は、糖尿病、高血圧、脂質異常症、または心血管疾患であってもよい。いくつかの態様では、糖尿病はI型糖尿病であり得る。いくつかの態様では、糖尿病はII型糖尿病であり得る。
本明細書で使用される場合、「代謝障害」または「メタボリックシンドローム」という用語は、異常な体重増加、エネルギーの使用または消費、摂取栄養もしくは内因性の栄養素、エネルギー源、ホルモンもしくは体内の他のシグナル伝達分子に対する反応の変化、または炭水化物、脂質、タンパク質、核酸、もしくはそれらの組み合わせの代謝の変化によって引き起こされるか特徴付けられる障害、疾患及び状態を指す。代謝障害は、代謝経路の不足または過剰のいずれかに関連しており、核酸、タンパク質、脂質、及び/または炭水化物の代謝の不均衡をもたらす。代謝に影響を与える要因としては、限定するものではないが、内分泌(ホルモン)制御系(例えば、インスリン経路、GLP-1、PYYなどを含む腸内分泌ホルモン)、神経制御系(例えば、GLP-1または他の神経伝達物質または脳内の調節タンパク質)などが挙げられる。いくつかの非限定的な例は、肥満、II型糖尿病を含む糖尿病、インスリン欠乏症、インスリン抵抗性、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能異常、症候群X、炎症性及び免疫障害、骨関節炎、脂質異常症、メタボリックシンドローム、非アルコール性脂肪肝、異常な脂質代謝、がん、神経変性障害、睡眠時無呼吸、高血圧、高コレステロール、アテローム発生性脂質異常症、高脂血症状態、例えば、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、及び哺乳類における他の冠状動脈疾患、ならびに他の代謝障害であり得る。
挙げられる障害とはまた、発生するか、または一緒にクラスター化する状態であり、心臓病、脳卒中、糖尿病、及び肥満のリスクを高める。血圧の上昇、インスリンレベルの上昇、腰の周りの過剰な体脂肪、またはコレステロール値の異常など、これらの状態の1つだけが発生しても、上記の疾患のリスクが上昇し得る。組み合わせて、冠状動脈性心臓病、脳卒中、インスリン抵抗性症候群、及び糖尿病のリスクはさらに高くなる。
いくつかの態様では、本明細書に開示される任意の組成物を投与するステップは、組成物を対象の少なくとも胃、小腸、または大腸に送達することを含み得る。いくつかの態様では、この組成物は、経口的に投与されてもよい。
いくつかの態様では、この対象は、ヒトであってもよい。
いくつかの態様では、このコンソーシアムの細胞は活性である。
キット
いくつかの態様では、対象の脂肪症を軽減し、対象の体重増加及び/または脂肪蓄積を減らし、対象の体脂肪率を下げる、及び/または対象の内臓脂肪組織(VAT)量を減らし、血糖値を下げる、及び/または、対象のインスリン抵抗性を低下させ、対象の小腸での脂質吸収を阻害し、対象の肝臓でCD36を下方制御し、ならびに対象の腸上皮内での脂質吸収遺伝子の発現を抑制し得る1つ以上の細菌、菌株または微生物を備えるキットが開示される。
いくつかの態様では、対象の脂肪症を軽減し、対象の体重増加及び/または脂肪蓄積を減らし、対象の体脂肪率を下げる、及び/または対象の内臓脂肪組織(VAT)量を減らし、血糖値を下げる、及び/または、対象のインスリン抵抗性を低下させ、対象の小腸での脂質吸収を阻害し、対象の肝臓でCD36を下方制御し、ならびに対象の腸上皮内での脂質吸収遺伝子の発現を抑制し得る1つ以上の細菌、菌株または微生物を備えるキットが開示される。
実施例1:微生物叢のT細胞媒介調節は、肥満を防ぐ。
要約:微生物叢は、宿主の代謝及び肥満に影響を及ぼすが、疾患から保護する生物は不明なままである。微生物叢の組成を調節する免疫経路を調査する研究中に、微生物叢によって引き起こされる加齢に伴うメタボリックシンドロームの発症が観察された。Desulfovibrioの増殖及びClostridiaの喪失は、このモデルの肥満に関連する重要な特徴であり、Clostridiaの交換は肥満を救済する。Clostridiaの喪失及びDesulfovibrioの増殖を防ぐために、T細胞依存性の事象が必要であった。Clostridiaの不適切なIgA標的化及びDesulfovibrioの増大は、有益なClostridiaのコロニー形成に拮抗した。転写及び代謝分析により、肥満宿主における脂質吸収の増強が明らかになった。Desulfovibrioでは違うが、Clostridiaによる無菌動物のコロニー形成は、脂質吸収を制御する遺伝子の発現を下方制御し、肥満症を軽減させた。さらに、Clostridiaの上清は、腸上皮内の脂質吸収遺伝子の発現を抑制した。Clostridiaの減少及びDesulfovibrioの増加は、メタボリックシンドローム及び肥満のヒトに見られる微生物叢の特徴であった。したがって、微生物叢の免疫制御は、脂質代謝を抑制して代謝欠陥を防ぐように機能する有益な微生物集団を維持しているように見える。
要約:微生物叢は、宿主の代謝及び肥満に影響を及ぼすが、疾患から保護する生物は不明なままである。微生物叢の組成を調節する免疫経路を調査する研究中に、微生物叢によって引き起こされる加齢に伴うメタボリックシンドロームの発症が観察された。Desulfovibrioの増殖及びClostridiaの喪失は、このモデルの肥満に関連する重要な特徴であり、Clostridiaの交換は肥満を救済する。Clostridiaの喪失及びDesulfovibrioの増殖を防ぐために、T細胞依存性の事象が必要であった。Clostridiaの不適切なIgA標的化及びDesulfovibrioの増大は、有益なClostridiaのコロニー形成に拮抗した。転写及び代謝分析により、肥満宿主における脂質吸収の増強が明らかになった。Desulfovibrioでは違うが、Clostridiaによる無菌動物のコロニー形成は、脂質吸収を制御する遺伝子の発現を下方制御し、肥満症を軽減させた。さらに、Clostridiaの上清は、腸上皮内の脂質吸収遺伝子の発現を抑制した。Clostridiaの減少及びDesulfovibrioの増加は、メタボリックシンドローム及び肥満のヒトに見られる微生物叢の特徴であった。したがって、微生物叢の免疫制御は、脂質代謝を抑制して代謝欠陥を防ぐように機能する有益な微生物集団を維持しているように見える。
序論。過去1世紀にわたって、肥満及びメタボリックシンドロームは、世界的な大流行に発展した。現在、19億人以上が肥満であり、II型糖尿病、心血管疾患、及び肝疾患などの代謝機能障害を発症するリスクがある(D.Mozaffarian et al.,Circulation 131,e29-322(2015))。複数の研究で、代謝性疾患の免疫系調節の役割を強調している。これらの報告は、主に肥満時の炎症反応の役割に焦点を当てている。彼らは、体重増加中の脂肪組織内のマクロファージ浸潤の増大及び制御性T細胞の減少を報告した(M.F.Gregor,及びG.S.Hotamisligil,Annu Rev Immunol 29,415-445(2011);ならびにF.Emanuela et al.,Journal of nutrition and metabolism 2012,476380(2012))。しかし、多くのヒトでの研究によって、次善の免疫応答もメタボリックシンドローム及び肥満に関連していることが示唆されている。確かに、肥満の成人は、免疫化に対する免疫応答の不足、感染の発生率の増大、及び粘膜IgAレベルの低下を示し、これらの個人内で効果的な免疫を確立できないことを示唆している(A.Pallaro et al.,J Nutr Biochem 13,539(2002);A.Must et al.,JAMA 282,1523-1529(1999);D.C.Nieman et al.,J Am Diet Assoc 99,294-299(1999);D.N.McMurray,P.A.Beskitt,S.R.Newmark,Int J Obes 6,61-68(1982);J.Hirokawa et al.,Biochem Biophys Res Commun,235,94-98(1997);and S.Tanaka et al.,Int J Obes Relat Metab Disord 17,631-636(1993))。欠陥のある免疫反応が代謝性疾患に影響を与える機構は不明なままである。
微生物叢は哺乳類宿主内の代謝の重要な調節因子として浮上しており、肥満の個体の微生物叢の組成は、動物に移されたときに代謝障害を与えるのに十分である(P.J.Turnbaugh et al.,Nature 444,1027-1031(2006))。特に、微生物叢の遺伝子の豊富さの減少は、酪酸及びメタンの生成の減少を含む、代謝性疾患の間に報告されている。逆に、硫化水素及び粘液分解などの一部の微生物叢機能は、代謝性疾患のある個人で強化される(J.Qin et al.,Nature 490,55-60(2012))。最近、腸の免疫応答が微生物叢の組成を調節するのに重要であることが示された(J.L.Kubinak et al.,Cell Host Microbe 17,153-163(2015);及びS.Kawamoto et al.,Immunity 41,152-165(2014))。特にIgAは、特定の微生物の増殖を抑制し、微生物叢を多様化するように機能する。微生物のIgA結合の変化、または腸のIgAのわずかな減少でさえ、多様性に悪影響を与え得る(J.L.Kubinak et al.,Cell Host Microbe 17,153-163(2015);S.Kawamoto et al.,Immunity 41,152-165(2014);及びS.Wang et al.,Immunity 43,289-303(2015))。したがって、微生物叢の免疫制御の欠陥は、代謝性疾患の一因となり得る。
結果。最近、微生物叢のT細胞依存性IgA標的化の適切な開発を指示する分子経路が特定された。先天性アダプター分子であるMyd88(T-Myd88-/-マウス)のT細胞特異的除去を有する動物は、腸内での濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達及びIgA産生に欠陥がある。これは、腸内微生物の調節不全のIgA標的化、及び遺伝子型間の微生物叢内の組成の違いに関連していた(J.L.Kubinak et al.,Cell Host Microbe 17,153-163(2015);及びS.Wang et al.,Immunity 43,289-303(2015))。これらの研究中、より古いT-Myd88-/-マウスは、野生型対照と比較して一貫して肥満であることが観察された(図1A)。標準的な固形飼料を与えられたにもかかわらず、T-Myd88-/-マウスは、加齢とともに体重増加と脂肪蓄積の有意な増大を示した(図1B及び図1Cならびに図7A及び図7B)。1歳までに、オスのT-Myd88-/-マウスの体重は60gまで増量し、NMR分析に基づいて50%の体脂肪組成を示した(図1D及び図1E)。
T-Myd88-/-動物は、ヒトに見られる代謝性疾患の併存疾患の多くを発症した(F.X.Pi-Sunyer,Med Sci Sports Exerc 31,S602-608(1999))。標準食で飼育された1歳齢のT-Myd88-/-マウスは、そのWT(野性型)対応動物と同様のレベルまでグルコースを除去したが(図7C)、循環インスリンのレベルが高く、HOMA-IR指数が高くなった(図1F及び図1G)。さらに、追加のインスリンでチャレンジした場合、T-Myd88-/-マウスは、WT(野性型)動物と同様の動態でグルコースを除去できず、インスリン抵抗性の発症を示している(図1H)。食物摂取量は、WT(野性型)対照と比較して2か月齢のT-Myd88-/-マウスで減少したが、1歳齢の動物では同等であった(図7D及び図7E)。さらに、若いマウスではエネルギー消費量が減少したが、これらの変化は時間の経過とともに持続しなかった(図7D)。運動もWT(野性型)とT-Myd88-/-マウスとの間で両方の年齢で類似しており、熱産生の適度な増加が、WTコントロールと比較して高齢のT-MyD88-/-マウスで測定され、これらによって、他のモデルで見られるような体重増加の主な原因ではないことが示唆されている(図7F及び図7G)(M.Vijay-Kumar et al.,Science 328,228-231(2010))。T-Myd88-/-マウスも脂肪肝疾患を発症し、脂肪組織内に炎症性の表現型を示し、これは、冠状構造及び調節不全の脂肪細胞の大きさによって特徴付けられた(図1I)。標準的なマウスの固形飼料での肥満は、発症するのに数か月を要する。対照的に、動物に高脂肪食(HFD、45%脂肪)を与えた場合、T-Myd88-/-動物は、食餌療法開始後早ければ8週間でも、WTマウスよりも多くの体重及び内臓脂肪組織(VAT)の質量を蓄積した(図1J及び図8A及びB)。したがって、T-Myd88-/-動物は、メタボリックシンドローム及び肥満を発症する傾向があり、これは食餌の脂肪の摂取量の増加によって加速され得る。
T-Myd88-/-微生物叢の組成は、若い動物のWTとは異なる(J.L.Kubinak et al.,Cell Host Microbe 17,153-163(2015))。微生物叢とは、代謝機能の公知の原因因子であり、ヒトの肥満の発症と関連している(S.Ussar et al.,Cell Metab 22,516-530(2015);及びE.Le Chatelier et la.,Nature 500,541-546(2013))。微生物叢がT-Myd88-/-マウスに見られるメタボリックシンドロームに関与しているか否かを最初に判断するために、WT及びT-Myd88-マウスにHFDを与えながら広域の抗生物質を与えた。WTマウスは、抗生物質の体重増加に差を示さなかった。対照的に、体重増加は、T-Myd88-/-動物の抗生物質治療によって完全に救済された(図2A及びB)。これには、体脂肪率とVAT量が、痩せた動物で観察された脂肪蓄積と同様のレベルまで低下することを伴った(図2C及び図2D)。
T-Myd88-/-マウスのメタボリックシンドロームに影響を与える微生物叢の特徴を特定するために、16S rRNA遺伝子配列決定を通常の固形飼料を与えられた老齢動物で実施し、肥満T-Myd88-/-マウスの微生物叢の分類学的組成及び多様性を評価した。老齢のWTマウス及びT-Myd88-/-マウスの回腸及び糞便の内容物には、有意に異なる群落があった(図3A及び図9A)。さらに、老齢マウスの糞便では種の豊富さがわずかに減少していた(図3B)。WTとT-Myd88-/-との間の微生物叢群落の主な相違を説明し得る生物体を特定するために、16S rRNAデータに対してランダムフォレスト分析を実施した。糞便微生物叢は、86%の精度で遺伝子型を正確に分類できたが、回腸微生物叢は、100%の精度で遺伝子型を予測した。精度に最も強い影響を与えた微生物叢のメンバーは、主に幅広い分類学クラスのClostridiaに属し、T-Myd88-/-マウスと比較してWTマウスに富んでいた(図3C及び図9B)。追加のランダムフォレストアプローチによって、糞便と回腸の微生物叢がそれぞれR2=0.5及びR2=0.76で総重量を予測し得、Clostridiaの多くのメンバーがこの予測に強く影響することが示された(図3D及び図9B)。WTマウスと比較して、T-Myd88-/-マウスは、Dorea、SMB53、未分類のペプトストレプトコッカス科(Peptostreptococcaceae)、及びクロストリジウム属(Clostridium)を含む複数のクロストリジウム綱(Clostridia)分類群の多様性及び全体的な存在量の大幅な減少を示した(図9C)。
微生物の多様性の低下を含む微生物叢の組成のシフトは、その微生物叢の機能に悪影響を与える可能性があり、メタボリックシンドロームを含む多くの西洋の生活習慣病と相関している(M.Vijay-Kumar et al.,Science 328,228-231(2010);及びS.Ussar et al.,Cell Metab 22,516-530(2015))。さらに、遺伝子の豊富さが低い微生物叢を保有する個体は、肥満である可能性が高くなる(E.Le Chatelier et al.,Nature 500,541-546(2013))。糞便及び回腸の微生物叢トランスクリプトームでは、T-Myd88-/-動物内の多くの遺伝子ファミリーからの転写物の提示は一般的に減少した。16S rRNA遺伝子配列決定によって回腸内で同じ数の生物体が検出されたため、これによって、これらの部位の微生物叢が代謝機能を低下させたという仮説が支持される(図3E及び図10A)。2つの遺伝子型間の参照ゲノムに一意にマッピングされた全読み取りの割合が同等であることで、動物のトランスクリプトームの同じカバレッジを示唆している。ただし、T-Myd88-/-マウスの回腸及び糞便トランスクリプトームのクロストリジウム科(Clostridiaceae)参照ゲノムにマッピングされた読み取りの割合は、特に著しく減少した(図3F及び図10B及び図10C)。したがって、肥満動物に存在するClostridiaは、微生物叢への機能的寄与が低下している。さらに、肥満は、代謝性疾患を患うヒトで同様に報告されているとおり、Clostridia内の微生物の機能的多様性の喪失と関連している(J.Qin et al.,Nature 490,55-60(2012))。
重要なClostridia生物体の喪失が、病気の際にある役割を果たし得るので、微生物の移動が肥満を救済し得るか否かを判断するために、共同飼育実験を行った(図11A)。マウスは食糞性であるので、共同飼育によって、遺伝子型間の微生物の効率的かつ頻繁な移動が可能になり、微生物叢に対する既知の均質化効果を有する。WTまたはT-Myd88-/-動物は、同じ遺伝子型の動物と一緒に飼育されるか、離乳時に反対の遺伝子型の動物と共同飼育された。共同飼育の前に、T-Myd88-/-マウスは、明確な微生物叢の組成を有しており、1週間の共同飼育は、2つの群落の混合を引き起こした(図12A)。
1週間後、動物をHFDに配して、脂肪蓄積の兆候をモニターした。分離されたWTマウスと比較して、T-Myd88-/-マウス及びそれらと共同飼育された動物は、体重が有意に増加し、インスリン抵抗性を発症し、VAT及び総体脂肪が増大した(図4A及び図11B~図11E)。さらに、3か月後、共同飼育されたWT動物の微生物叢は、個別に飼育されたWTマウスとは有意に異なり、個別に飼育されたT-Myd88-/-の微生物叢との類似性が高くなった(図12B)。したがって、T-Myd88-/-動物で形成された微生物叢の移動可能な成分は、そうでなければ健康なWT動物において、メタボリックシンドロームを生じ得る。
共同飼育された動物の体重増加の相違が最初の3週間以内に検出されたので、初期と最終の両方の時点で検出可能な微生物組成の違いに焦点が当てられた。共同飼育の3か月後、Desulfovibrio、Lactobacillales、及びBifidobacterium pseudolongumは、共飼育されたWTマウス内により多く存在した(図4B及び図12C及びD)。しかし、Desulfovibrio属は、別々に飼育されたT-Myd88-/-動物及び共同飼育された動物で、わずか1週間の共同飼育後に有意に多くの量を示した(図12E)。Desulfovibrioは、ムチン内のジスルフィド結合分解の副産物として硫化水素を生成する粘液溶解性d-プロテオバクテリアである(G.R.Gibson,G.T.Macfarlane,J.H.Cummings,J Appl Bacteriol 65,103-111(1988);M.C.Pitcher,J.H.Cummings, Gut 39,1-4(1996);F.E.Rey et al.,Proc Natl Acad Sci U S A 110,13582-13587(2013);及びM.S.Desai et al.,Cell 167,1339-1353(2016))。炎症性腸疾患(IBD)との関連に加えて、Desulfovibrioのコロニー形成の増加及び硫化水素産生に関連する遺伝子が、II型糖尿病及び肥満の患者で検出される(J.Qin et al.,Nature 490,55-60(2012))。したがって、肥満マウスの群落の変化は、人間に見られるものの多くを模倣しており、Clostridiaの喪失及びDesulfovibrioの増加が、代謝性疾患に非常に関連していることを示唆している(J.Qin et al.,Nature 490,55-60(2012);J.Zierer et al.,Nat Genet 50,790-795(2018);and S.M.Harakeh et al.,Front Cell Infect Microbiol 6,95(2016))。
肥満につながるT-Myd88-/-動物とのWTマウスの共同飼育は、WT動物におけるClostridiaのメンバーのコロニー形成の減少とも関連している(図12F)。したがって、Desulfovibrioのコロニー形成がこれらの生物体の存在量を減少し得るか否かを試験した。
特定病原体除去(SPF)マウスに、Desulfovibrio desulfuricans subsp.desulfuricans(マウスで同定されたDesulfovibrioと97%を超える16S rRNA遺伝子配列類似性を有する株である)を、1週間コロニー形成させた。結果は、WT SPF動物がClostridiales目Lachnospiraceae科及びDorea属に有意な減少があったことを示している(図4C及び図13A)。Desulfovibrioによるコロニー形成は、Bifidobacteriumの有意な増加があったため、全ての生物の全体的な減少をもたらさなかった(図4C)。群落へのこれらの変化は、Desulfovibrioのコロニー形成の間接的な影響であり得るので、Desulfovibrioが無菌系のClostridiaメンバーのコロニー形成に影響を与え得るか否かを試験した。
クロロホルム処理した糞便スラリーでコロニー形成した無菌動物は、Clostridiaceae及びLachnospiraceaeについて濃縮された(図14)。次に、この群落を、D.desulfuricansの有無のもとで分析した。Desulfovibrioのコロニー形成は、遺伝子型及び体重の両方の予測精度に強く影響する属であるClostridiumの有意な減少をもたらす(図4D)。したがって、T-Myd88-/-マウス及びII型糖尿病のヒトに見られるように、Desulfovibrio種の拡大は、痩せに関連する微生物のコロニー形成に拮抗し得る。
本発明者らは、これらの痩せ関連微生物を再導入することで、T-Myd88-/-マウス内の肥満を防ぐことができるか否かを特定しようとした。肥満になりやすいT-Myd88-/-動物を胞子形成細菌のカクテルで隔日で治療すると、体重増加及び脂肪蓄積が有意に減少した(図4E及びF)。3か月の終わりに、胞子形成微生物で処理されたT-Myd88-/-マウスは、未処理のT-Myd88-/-マウスと比較した場合、体脂肪率が低く、VAT量が減少した(図4F及び図4G)。したがって、Clostridiaの喪失は、T-Myd88-/-マウスの肥満及びメタボリックシンドロームと因果関係がある。
腸の免疫不全の間に形成された微生物叢は、メタボリックシンドロームを引き起こすようである。動物を12週間共同飼育すると、WT(野性型)宿主に肥満が伝染したが、T-Myd88-/-からWT無菌レシピエントへの糞便移植では、肥満を移すには不十分であった(図15A)。さらに、SPFWTまたはT-Myd88-/-妊娠母獣のいずれかが無菌WT妊娠母獣と共同飼育された場合、離乳時に分離された、得られた、コロニー形成した子犬は、肥満の表現型を伝達しなかった(図15A)。したがって、T-Myd88-/-マウスの免疫欠陥が、肥満誘発性微生物叢の持続を可能にするために必要であるか否かを試験した。対照的に、微生物叢は完全にインタクトな免疫系の存在下で適切に制御された。内因性T細胞を欠くTcrb-’-マウスは、広域抗生物質処理により内因性微生物叢を枯渇させ、次いで、WTまたはT-Myd88-’-CD4+T細胞のいずれかの養子移入の前に、WT及びT-Myd88-/-微生物叢の1:1混合物でコロニー形成した(図15B)。微生物叢の形成がケージ内の他の動物の存在によって影響されないように、そして各微生物群落が独立して形成されるように、マウスを個別に収容されたケージに分けた。これらのマウスは最初に同じ微生物叢でコロニー形成されたという事実にもかかわらず、T-Myd88-/-CD4+T細胞を与えられたTcrb-’-マウスは、WT CD4+T細胞を与えられたTcrb-’-マウスと比較して有意に体重が増えた(図5A)。したがって、T細胞内のMyd88シグナル伝達の欠陥は、動物の代謝欠陥を促進する。細菌の10%が、Tcrb-’-マウス内でIgAによってコーティングされており、微生物叢をIgAで標的化するためのT細胞の重要性を示している(図3B)。しかし、T細胞移植の1週間後、WT(野性型)T細胞を与えられたマウスは、IgA結合微生物の3倍の増大を示した(図15C)。微生物叢に対するIgG1またはIgG3の応答は、発生に時間がかかったが、T細胞移植の8週間後に検出可能であった(図15D~図15F)。総IgAレベルは、この実験環境内の動物で類似していたが、微生物叢へのIgA及びIgG1の結合は、ノックアウトT細胞を投与された動物では欠陥があった(図5B及び図15E及び図15G)。T細胞非依存性の機構によって支配されていると考えられているIgG3による微生物叢の標的化は、T-Myd88-/-T細胞を投与されたTcrb-’-マウスでは欠陥がなかった(図15H)(M.A.Koch et al.,Cell 165,827-841(2016))。微生物叢の組成は、時間の経過とともに遺伝子型間でますます異なった(図5C)。さらに、肥満誘発性マウスからT細胞を投与された動物の群楽の変化は、T-Myd88-/-動物で観察された変化と類似している。確かに、両方の遺伝子型でDesulfovibrionaceaeとClostridiaceaeとの存在量の間に有意な負の相関があった。
T-Myd88-/-T細胞を投与された動物は、同じ微生物叢混合物で開始したにもかかわらず、最終的には有意に少ないClostridiaceaeでコロニー形成された(図5D及び図5E)。3つの分類群は、属のレベルで、ClostridiaのOscillospira属を含むIgAによって示差的に標的されたが、ほとんどのClostridia属は、このレベルの分類学的な分離で大きく変動した(図16A)。IgA結合インデックスは、より細かいOTUレベル(97%の類似性)で評価され、T-Myd88-/- T細胞を投与された動物でIgAが特異的に標的とするClostridia分類OTUの富化が見られた(図5F)。Desulfovibrioを標的とするIgAの増加傾向が観察された(図16A及びB)。したがって、Clostridiaの減少及びその機能的寄与は、IgAによる不適切な標的化とDesulfovibrioの拡大の組み合わせから生じ得る。
抗体反応が代謝障害に影響を与えるという仮説を支持するために、肥満誘発性微生物叢を、抗生物質で処理したWTまたはRag1-’-動物に移入した。実際、肥満誘発性微生物叢のWTマウスへの移入は、表現型を付与しなかったが、抗体を欠くRag1-’-動物への移入は、WT微生物叢を投与された動物と比較して有意に大きな体重増加をもたらした(図5G及び図15I)。TFHは、胚中心のB細胞内で抗体クラススイッチ及び突然変異を指示するように機能するT細胞である。T-Myd88-/-マウスのT細胞発達障害は、TFH細胞内にあることが以前に確立されていた。
TFH細胞に分化できないBcl6-’-T細胞を投与されたT-Myd88-/-動物は、WT T細胞を投与された動物と比較して有意に体重が多かった(図5H)(S.Crotty,Annu Rev Immunol 29,621-663(2011))。したがって、TFH細胞に発達する能力を持たないT細胞は、肥満の表現型を救うことができない。したがって、肥満を防ぐために微生物叢を調節するには、適切なTFH細胞機能が必要である。
短鎖脂肪酸(SCFA)は、宿主の代謝に影響を与える、よく研究された微生物叢依存の機構である。ただし、SCFAの生成は、WT動物とT-Myd88-/-動物との間で相違はなかった(図17A)。脂肪組織内で軽度の炎症を誘発する腸透過性及び細菌産物の漏出の増大も提唱されている(F.E.Rey et al.,Proc Natl Acad Sci U S A 110,13582-13587(2013);及びP.D.Cani et al.,Diabetes,56,1761-1772(2007))。ただし、T-Myd88-/-動物の血清内の細菌リガンドの相違は検出されなかった。さらに、抗炎症性の5-ASAを注入した食事にT-Myd88-/-を配すると(H.Luck et al.,Cell Metab 21,527-542(2015))、体重増加を救うことができなかった(図17B)。肝臓のRNA-seq及び遺伝子セット濃縮分析(GSEA)により、動物に標準的なマウス飼料を与えたにもかかわらず、グリセロ脂質及びグリセロ脂質代謝を含む脂質代謝に関与する経路は、WT対照と比較して、T-Myd88-/-動物内で最も有意に濃縮された経路であることが明らかになった(図6A)。特に、Fasn、Dgat2、及びSrebpf1などの脂質合成に必要な遺伝子、ならびにSlc27a4及びCd36などの脂質吸収に関与する遺伝子の発現は、T-Myd88-/-動物の肝臓内で高度に上方制御された(図6B)。CD36は、T-Myd88-/-動物で上方制御されたが、抗生物質治療は、CD36発現を有意に下方制御した(図6C)。さらに、肥満のT-Myd88-/-動物のClostridia処置は、CD36の有意な下方制御を引き起こし、Clostridiaが脂質の取り込みを減少させるように機能することを示唆している(図6D)。確かに、ノトバイオートの動物は、無菌マウスと比較した場合、肝臓のCD36発現内で有意な減少を示したClostridiaコンソーシアムでコロニーを形成した(図6E)。したがって、T-Myd88-/-での脂質の取り込みは、微生物叢に依存した方式に見える。
無菌動物にClostridiaを定着させると、小腸内のCD36及びFASNの両方が有意に下方制御され(図6F及び図6G)、Clostridiaが腸内の脂質吸収と代謝に影響を与えることが示唆される。さらに、培養Clostridiaコンソーシアムから収集された無細胞上清(CFS)は、培養腸上皮細胞(IEC)のCD36を有意に下方制御した(図6H)。対照的に、培養されたDesulfovibrio種から収集されたCFSは、IECでのCD36の発現を直接上昇させた(図6H)。さらに、Clostridiaコンソーシアムに単一関連する無菌動物は、Desulfovibrioに単一関連する動物または無菌動物と比較して、体脂肪率の有意な減少を示した(図6I)。特に、Clostridiaコンソーシアムのみでコロニー形成した無菌マウスにDesulfovibrioを添加すると、小腸での体脂肪率及びCD36発現が増大した(図6J及び図6K)。したがって、微生物叢は、腸上皮内の脂質代謝を直接調節し得る。
脂質吸収の増大をサポートするために、HFDを給餌されたT-Myd88-/-は、盲腸内のいくつかの長鎖脂肪酸(LCFA)の有意な減少、及びそれに伴う血清の増大があった(図6L及び図6M)。内腔脂質プロファイル及び16S配列決定の比較により、Desulfovibrio及びClostridiaのメンバーと、LCFA及び他の脂質の存在量との間の相反する相関関係が明らかになった。盲腸内容物内のLCFAの枯渇は、Desulfovibrioの存在と有意に相関していた。対照的に、SMB53及びDoreaを含むClostridiaの複数のメンバーは、LCFAの蓄積と関連しており(図17C)、微生物組成が脂質吸収を調節できるという仮説をさらに支持している。したがって、肥満及び2型糖尿病の個体に見られる特定のClostridia種の喪失は、腸の吸収及び脂肪の代謝の増大につながる場合があり、健康に対する適切な微生物叢組成の重要性を強調している。
考察。微生物叢は、さまざまな自己免疫及び代謝状態に関係している。しかし、これらの疾患は必ずしも病原性生物の獲得に関連しているわけではなく、代わりに有益な種の喪失が原因因子であると提唱されている(I.Cho et al.,Nature 488,621-626(2012))。有益な細菌の喪失につながる機構としては、抗生物質の使用、衛生状態の向上、及び低繊維食が挙げられる(N.M.Koropatkin,E.A.Cameron,E.C.Martens,Nat Rev Microbiol 10,323-335(2012))。本明細書に記載の結果は、健康な微生物群落を維持するための別の機構が、腸内のこれらの集団の適切な免疫制御によるものであることを示している。T-Myd88-/-動物内に形成された微生物叢は、Desulfovibrioの拡大及びClostridiaの喪失など、II型糖尿病及び肥満の個体に見られる腸内毒素症を反映している(J.Qin et al.,Nature 490,55-60(2012))。包括的なヒトの研究は不足しているが、肥満及び2型糖尿病の個体は、粘膜IgAが低く、免疫化に対する反応が低下していることも報告されている。これは、これらの個体が腸内細菌叢に対して最適ではないが完全に欠乏しているわけではない免疫応答を有していることを示唆しており、これは食事の欠乏と相まって代謝性疾患につながる。これらのデータは、微生物叢のT細胞依存性標的化が健康な群落の維持に重要であることを示唆している。細菌のIgA結合は通常、その根絶につながると考えられているが、IgAは、特定の細菌の機能的遺伝子発現を調節し、特定の共生生物の粘膜結合を助けることさえできる(G.P.Donaldson et al.,Science 360,795-800(2018);T.C.Cullender et al.,Cell Host Microbe 14,571-581(2013);及びD.A.Peterson,Net al.,Cell Host Microbe 2,328-339(2007))/実際、この結果は、T-Myd88-/-動物では、IgAのレベルが低いにもかかわらず、Desulfovibrio及びいくつかのClostridia種がIgAコーティングの増大を示すことを示す。したがって、IgAによるClostridiaの不適切な標的化は、Clostridiaのコロニー形成を減少させるか、または代謝機能を変化させて肥満の発症に影響を与え得る。
さらに、いくつかのClostridiaは、IgAの標的になりにくい。興味深いことに、IgA欠損症の個体内の微生物叢の最近の評価では、いくつかのClostridiaによるコロニー形成の有意な減少が示された(J.Fadlallah et al.,Sci Transl Med 10,(2018))。したがって、IgAは、Bacteroides fragilisで示されているように、一部のClostridia種のコロニー形成を増強するようにも機能し得る(G.P.Donaldson et al.,Science 360,795-800(2018))。Desulfovibrioがこのモデル及びメタボリックシンドロームの個体で拡大する機構はまだ不明である。
ただし、本明細書で説明する結果は、この拡大が、特定のClostridiaのメンバーのコロニー形成に直接影響を与え得ることを示しているが、これがどのように発生するかは謎のままである。腸内微生物のIgA標的化が、無菌環境でのコロニー形成及び機能にどのように影響するかを理解することで、免疫系がこの微生物の関係にどのように影響するかについての洞察が得られる場合がある。Clostridiaのメンバーがいくつかの状況でますます認識されるようになると(24)、他の微生物によるコロニー形成及び免疫系が一緒になってClostridiaの機能にどのように影響するかを決定することが重要になる。
CD36は、腸内の脂質吸収の重要な調節因子であり、その欠乏は、HFD摂食時の肥満及びメタボリックシンドロームの発症に対する抵抗性をもたらす(M.Buttet et al.,PLoS One 11,e0145626(2016);and M.Buttet et al.,Biochimie 96,37-47(2014))。ヒト肝臓内でのCD36の発現増大は、脂肪肝疾患に関連している。さらに、腸内での発現がわずか2分の1に減少する、CD36の多型を有する個体は、代謝性疾患に耐性がある(L.Love-Gregory,N.A.Abumrad,Curr Opin Clin Nutr Metab Care 14,527-534(2011))。したがって、CD36の相対的な発現レベルは、哺乳類での脂質吸収及び恒常性にとって重要である。最近の研究では、微生物叢がCD36発現の増強を通じて、腸内の脂質の宿主吸収を上方制御し得ることが実証されている(Y.Wang et al.,Science 357,912-916(2017))。しかし、細菌も宿主の脂質吸収を抑制し得る可能性があることが判明した。
したがって、腸内細菌は、脂質代謝を差別的に調節し得る。確かに、Desulfovibrioによって分泌された生成物は、CD36の発現を上方制御するが、Clostridiaによって生成された生成物は、CD36の発現を下方制御し得る。したがって、CD36の発現を抑えるように機能する生物体の喪失は、脂質の不適切な吸収につながる場合があり、脂質は時間の経過とともに蓄積し得、肥満及びメタボリックシンドロームにつながる。Desulfovibrio及びClostridiaなどの生物体の相互作用のさらなる特徴付け、ならびにCD36の発現に影響を与える分泌分子の同定は、将来の標的療法にとって情報提供する場合がある。
材料及び方法。マウス。C57Bl/6 Myd88LoxP/LoxPマウス(Jackson Laboratories)を、C57Bl/6 CD4-Cre動物(Taconic)と交配して、Myd88+/+;CD4-Cre+マウス(WT)及びMyd88LoxP/LoxP;CD4-Cre+(T-MyD88-/-)Myd88+/+動物を作成した。年齢を一致させた雄性マウスを使用して、標準的な食餌で免疫及び微生物叢の反応を含む自発的な体重の表現型を比較した。年齢を一致させた雄性及び雌性のマウスを使用して、高脂肪食餌(HFD)で免疫及び微生物叢の反応を含む体重の表現型を比較した。微生物叢のT細胞依存性の形成を測定するために、4週齢のTcrb-/-マウス(Jackson Laboratories)を使用した。Desulfovibrio desulfuricans依存性の微生物叢の形成を調査するために、6週齢のWT C57Bl/6マウス(Jackson Laboratories)または年齢を一致させたCD4-Cre+(WT)マウスを使用した。免疫不全マウスの体重増加に対する微生物叢の影響を測定するために、4週齢のRag1-/-マウス(Jackson Laboratories)を使用した。GFマウスを滅菌アイソレーターで維持し、糞便のプレーティング及びPCRによって、GFの状態を毎月確認した。この研究では、GF C57Bl/6動物を使用した。
胞子形成微生物によるマウスのコロニー形成。糞便ペレットを、WTマウスから採取し、3%クロロホルム(v/v)を含む還元PBSで、嫌気性チャンバー内で37℃で1時間インキュベートした。還元PBS及び3%クロロホルムを含む対照のチューブも嫌気性チャンバー内で37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、チューブを穏やかに混合し、糞便物質を10秒間静置させた。上清を新しいチューブに移し、CO2をチューブに押し込むことによってクロロホルムを除去した。従来の条件での胞子形成(SF)実験では、SFコホート内のマウスに100μLの胞子形成糞便画分を強制経口投与し、CTRLコホート内のマウスに100μLのPBS対照を経口投与し、これはまた3日目ごとにクロロホルム除去した。無菌動物との胞子形成の関連性のために、強制経口投与用のアイソレーターにそれらを引き込む前に、強制経口投与材料を含むチューブを、無菌アイソレーターのポートで1時間滅菌した。次に、ブリーダーペアに100μLの胞子形成カクテルを強制経口投与した。彼らの子孫は、小腸と肝臓の分析のために8週齢で屠殺した。
T細胞のT-Myd88-/-マウスへの移入。T-Myd88-/-マウスは、T細胞移入の前日に500ラドで亜致死的に照射した。WT(CD4-cre+)及びBCL6KO(Bcl6LoxP/LoxPCD4-cre+)マウスの脾臓を使用し、CD4+T細胞分離キット(Miltenyi)を使用してT細胞を分離した。T-Myd88-/-に、WTまたはBcl6-/-MACSが豊富なT細胞のいずれかを5×106で回眼窩後方に注入し、5週間にわたって毎週体重を秤量した。
食餌療法。SPF施設内に収容された動物には、照射された2920×(Envigo)の標準的な固形飼料を与えた。HFD実験中、対照として、マウスに45kcal%の脂肪DIOマウス飼料(Research Diets)という高脂肪食または10 kcal%の脂肪DIOマウス飼料(Research Diets)の食餌を対照として、与えた。マウスはまた、5-ASA炎症実験中に、1%の5-ASA(Envigo)を含む照射された標準2020固形飼料を含むカスタムの食餌、または5-ASA(Envigo)を欠く対照食餌を与えられた。
抗生物質治療。WT及びT-Myd88-/-マウスは、その飲料水内の0.5mg/mLのアンピシリン(Fisher Scientific)、ネオマイシン(Fisher Scientific)、エリスロマイシン(Fisher Scientific)、及びゲンタマイシン(GoldBio)で、HFD給餌中14週間、維持し、体重増加表現型に対する微生物叢の相対的な寄与を決定した。TCRb-/-及びRag1-/-マウスを、その飲料水内に含まれる0.5mg/mLのアンピシリン(Fisher Scientific)、ネオマイシン(Fisher Scientific)、エリスロマイシン(Fisher Scientific)、及びゲンタマイシン(GoldBio)に1週間配し、糞便移動によって再コロニー化される前の内因性微生物叢を減少させた。
Tcrb-/-マウス内の微生物叢のT細胞形成。4匹のTcrb-/-マウスの3つの別々のケージを、飲料水中の抗生物質カクテルに1週間入れた。抗生物質は、さらなる治療の前に24時間除去した。WTドナー由来の1つの糞便ペレット及びT-Myd88-/-ドナーからの1つの糞便ペレットを、0.1%システインを含む還元PBS中で粉砕し、直ちにTcrb-/-マウスに経口投与した。この強制経口投与は、1週間の間1日おきに繰り返した。最後の強制経口投与の48時間後、マウスを個別に収容されたケージに入れ、5×106個のCD4+MACS-富化WTまたはT-Myd88-/-細胞を眼窩後方に注射した。これはD0と表示した。
ブドウ糖負荷試験。グルコースでチャレンジする前に、マウスを6時間絶食させた。空腹時血糖値は、Contour Glucose Meter(Bayer)及びContour Glucose Strips(Bayer)を使用して検出した。体重1グラムあたり1ミリグラムのグルコースを、時点ゼロで動物に腹腔内注射した。血糖値は、血糖計とストリップを使用して、5分、15分、30分、60分、及び120分の時点で測定された。
インスリンELISA。6時間絶食させたマウスから血清を採取し、マウスインスリンELISAキット(Crystal Chem)を用いてインスリンを測定した。血清試料は、製造業者の指示に従って重複して実行された。
インスリン抵抗性試験。グルコースでチャレンジする前に、マウスを6時間絶食させた。空腹時血糖値は、Contour Glucose Meter(Bayer)及びContour Glucose Strips(Bayer)を使用して検出した。インスリン(体重1kgあたり0.75U)を、時点ゼロで動物に腹腔内注射した。血糖値は、血糖計及びストリップを使用して、5分、10分、15分、20分、25分、30分、40分、及び60分の時点で測定した。血糖値が30mg/dLに低下した場合は、25%ブドウ糖の150μL(i.p.)注射に続いて、動物を実験から除外した。
マウス腸上皮細胞(MODE-K細胞)を使用したインビトロ実験。マウス腸上皮細胞は、L-グルタミン及びピルビン酸ナトリウムを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で維持した。DMEMには、10%FBS、1%(v/v)グルタミン、ペニシリン-ストレプトマイシン、及び1%HEPESを補充した。細菌が遺伝子発現を調節するか否かを決定するために、細胞のコンフルエントな単層を、(1:1)のペニシリン-ストレプトマイシンを含まないDMEM:CFS(培養ClostridiaコンソーシアムまたはDesulfovibrio種のいずれかから収集した)で4時間インキュベートした。次に培地を吸引し、細胞を後で分析するために600tL RiboZol(VWR)に入れた。
qPCR及びRNA-seqのための小腸、細胞培養及び肝臓組織からのRNA分離。長さ0.5cmの組織切片または1x105個の細胞を、700tLのRiboZol(VWR)に-70℃で保存した。Direct-zol RNA MiniPrep Kit(Zymoresearch)を使用してRNAを単離した。qScript cDNA合成キット(Quanta Biosciences)を使用してcDNAを合成した。qPCRは、Light Cycler 480 SYBR Green I Master(Roche)を使用して実施した。qPCR実験は、Lightcycler LC480装置(Roche)で実施した。肝臓RNA配列では、Illumina TruSeq Stranded RNA Sample PrepとRiboZero処理(ヒト、マウス、ラットなど)を使用してQCに続いてRNAを調製し、Illumina HiSeq Sequencingを使用して分析した。
糞便免疫グロブリンの定量化。管腔IgAを定量するために、糞便ペレットを、1.5mLマイクロ遠心チューブに収集し、秤量した。管腔内容物を、糞便重量1ミリグラムあたり10tLの滅菌1X HBSSに再懸濁し、100×gで5分間回転させて、粗材料を除去した。次に、上清を新しい1.5mLマイクロ遠心チューブに入れ、8000×gで5分間回転させて、細菌をペレット化した。
次に、上清(IgAを含む)を新しい1.5 mLマイクロ遠心チューブに入れ、IgA固有のELISAキット(eBioscience、製造元の指示に従って実行)の試料(1/10及び1/100(v/v)希釈)として使用した。450nmで吸光度を読み取り、標準曲線を使用してIgAの濃度を計算した。濃度は糞便重量に対して正規化した。
細菌ペレットを、500tLの滅菌PBSに再懸濁し、8000×gで5分間回転させて2回洗浄した。次に、洗浄した細菌ペレットを、糞便1mgあたり10tLの滅菌PBSに再懸濁した。各試料の5マイクロリットルを96ウェル丸底プレートにプレートした。細菌は、10%(v/v)FBSを含む100tLの滅菌HBSSで室温で15分間ブロックした。細胞を洗浄せずに、100tLの抗IgA(ebioscience clone mA-6E1 PE)、抗IgG1(Santacruz CruzFluor555)、または抗IgG3(Santacruz CruzFluor555)(10%(v/v)FBSを含む滅菌HBSSで1:500に希釈)を、ウェルに追加した。ウェルを4℃で30分間インキュベートした。プレートを2500×gで5分間回転させて2回洗浄した後、上清を除去し、細胞を滅菌HBSSに再懸濁した。最終洗浄後、細菌ウェルを、5tLの1×SYBRグリーン染色(Invitrogenカタログ番号S7563)を含む250tLのHBSSに再懸濁した。ウェルを4℃で20分間インキュベートした後、フローサイトメーターで直ちに数えた。Rag1-/-糞便ペレットを、ネガティブコントロールとして全ての実験に含んだ。
Desulfovibrio desulfuricans ATCC 27774及びDesulfovibrio piger ATCC 29098の増殖。細菌種Desulfovibrio desulfuricansは、ATCC(#27774)から購入した。細菌種Desulfovibrio pigerは、ATCC(#29098)から購入した。バイアルは嫌気性細菌のATCCの指示に従って取り扱って、開き、細胞は前述のDesulfovibrio培地で増殖させた(F.E.Rey et al.,Proc Natl Acad Sci U S A 110,13582-13587(2013))。培地は、NH4Cl(1g/L)(Fisher Chemical)、Na2SO4(2g/L)(Fisher Chemical)、Na2S2O3・5H2O(1g/L)(Sigma)、MgSO4・7H2O(1 g/L)(Fisher Chemical)、CaCl2・2H2O(0.1g/L)(Fisher Chemical)、KH2PO4(0.5g/L)(Fisher Bioreagents)、Yeast Extract(1g/L)(Amresco)、Resazurin(0.5mL/L)(Sigma)、システイン(0.6g/L)(Sigma),DTT(0.6g/L)(Sigma)、NaHCO3(1g/L)(Fisher Chemical)、ピルビン酸(3g/L)(Acros Organics)、マレイン酸(3g/L)(Acros Organics)、ATCC Trace Mineral Mix(10mL/L)、ATCC Vitamin Mix(10mL/L)で構成されており、pH7.2に調製した。細菌を、嫌気性チャンバー(Coy Labs)で48時間増殖させ、25%グリセロールを含む増殖培地に70℃で保存した。2.5×108の細菌CFUを、マウスの飲料水250μLに1週間添加した。
糞便、回腸、及びIgAに結合した微生物DNAの分離及び16S配列決定。動物を屠殺し、それらの下部消化管全体(十二指腸から直腸まで)を取り出し、縦方向に切断した。小腸の下部10cm由来の1つの糞便ペレット及び管腔内容物を各動物から収集して、それぞれ糞便及び回腸の微生物群落を特徴付けた。糞便及び回腸の試料は、約250mgの0.15mmガーネットビーズ(MoBio、カタログ番号13122-500)を含む2mLのスクリューキャップチューブ内で-70℃で直ちに凍結した。Power Fecal DNA Isolation Kit(MoBio)を使用して、製造元の指示に従ってDNAを抽出した。T細胞移植実験からのIgA結合細菌及びIgA非結合細菌を、盲腸内容物から単離し、処理前に-70℃で凍結した。IgA結合細菌分離、16S rDNA増幅、配列決定、及び配列プロセシングは、ペアエンド300サイクルMiSeqリードを使用して行った(J.L.Kubinak et al.,Cell Host Microbe 17,153-163(2015))。IgAインデックスを算出した(A.L.Kau et al.,Sci Transl Med 7,276ra224(2015))。
メタトランスクリプトミクス。糞便ペレットまたは内腔回腸内容物を、直接Trizolに入れ、RNA抽出まで-20℃で保存した。Direct-zol(Zymo Research、#R2052)を使用して試料からトータルRNAを抽出し、次いで、Ribo-Zero Gold rRNA(疫学)除去キット(Illumina、#MRZE724)を使用して、University of Utah high-throughput genomics core facilityによるIllumina配列決定のために調製した。Illuminaライブラリは、シングルエンド50サイクル配列決定を使用してHiSeq2500で多重化及び配列決定した。ヒト2(v 0.9.9)分析フレームワークは、その後の配列決定処理とデータ分析に使用した(S.Abubucker et al.,PLoS Comput Biol 8,e1002358(2012))。まず、Humann2に実装されたニードデータスクリプトを使用して、生の配列を品質トリミングし、Trimmomatic(A.M.Bolger,M.Lohse,B.Usadel,Bioinformatics 30,2114-2120(2014))を使用してフィルタリングし、次にフィルタリングしてホスト読み取りを、Mus musculusゲノム構築GRCm38に対して、bowtie2を使用して除去した(B.Langmead,S.L.Salzberg,Nat Methods 9,357-359(2012)。品質フィルタリングした読み取りには、遺伝子型間で有意差は観察されなかったが、試料全体にわたって、マウスゲノムにマッピングされた回腸試料からの読み取りが多いほど、細菌の転写産物のカバレッジが狭くなった。次に、これらの短い読み取りのマッピングを改善するために、品質フィルタリングした読み取りのマッピングは、UniRef90遺伝子のアノテーション付きのマウス分離細菌リファレンスゲノムのカスタムデータベースに制限された。このカスタムデータベースは、マウス腸内細菌コレクション(miBC)の一部として最近分離及び配列決定された53の生物体(I.Lagkouvardos et al.,Nat Microbiol 1,16131(2016))、及びhumman2のチョコフランデータベースに含まれる9つのリファレンスゲノム(16S配列決定で検出されたが、miBCコレクションにまだ含まれていない種を表す)で構成されていた。これらの9つのゲノムは以下:Bifidobacterium pseudolongum、Bifidobacterium animalis、Bifidobacterium longum、Bacteroides fragilis、Mucispirillum schaedleri、Lactobacillus reuteri、Clostridium perfringens、Desulfovibrio_desulfuricans、及びCandidatus Arthromitusであった。Uniref90アノテーションを使用してカスタムデータベースを作成するために、miBCゲノムのアミノ酸配列を、Diamondアライナを使用してUniref90データベースにアラインメントし(B.Buchfink,C.Xie,D.H.Huson,Nat Methods 12,59-60(2015))50%のクエリカバレッジ及び90%の同一性を必要とする。次に、これらのuniref90アノテーション付きmiBCアミノ酸配列を使用して、対応する各遺伝子のヌクレオチド配列にアノテーションを付け、すでにアノテーションが付けられている9つのゲノムと組み合わせて、マウス固有の細菌ゲノムを含むカスタムヌクレオチドマッピングリファレンスを作成した。Humann2を使用して、フィルタリングされた配列読み取りをカスタムリファレンスにマッピングするために、リード長が短いことに起因して、ヌクレオチドアラインメント(翻訳されたアラインメントなし)を使用した。次に、humann2から出力されたuniref90遺伝子ファミリーの1キロベースあたりの整列された読み取りのカウントを、100万あたりのカウント(試料内)に正規化するか、遺伝子オントロジー(Gene Ontology)(GO)タームに再グループ化してから、後続の分析のために正規化した。
代謝表現型。総体脂肪組成は、NMR Bruker Minispecで測定した。CLAMS代謝ケージを使用して間接熱量測定法を測定した。エネルギー消費量(EE)は、次の式を使用して計算した。発熱量(CV)=3.815+(1.232*RER)。EE=CV*VO2。
肝臓及び脂肪組織の顕微鏡検査。肝臓及び脂肪組織をホルマリンで固定し、ワックスに包埋し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。顕微鏡画像は、ThermofisherのEVOSコアXLイメージングシステムを使用して収集した。
血清及び盲腸内容物のメタボロミクス(SCFA測定値を除く)。試料の抽出及び準備。盲腸内容物は分析前に-70℃で保存した。内部標準(1試料あたり1tgのd4-コハク酸及び5tgの標識アミノ酸(13C、15N標識)混合物)を含む5ミリリットルの75%エタノール溶液を各試料に添加した。試料を激しくボルテックスした後、沸騰水中で10分間インキュベートした。冷却した試料を5,000×gで5分間スピンダウンした。上清を新しいチューブに移し、次いで、一晩スピードバキュームして乾燥させた。
GC-MS分析。GC-MS分析は、Agilent6890ガスクロマトグラフ及びGerstelMPS2オートサンプラーを備えたWaters GCT Premier質量分析計を使用して実行した。乾燥した試料を、ピリジン中の40mg/mLのO-メトキシアミン塩酸塩(MOX)40tLに懸濁し、30℃で1時間インキュベートした。オートサンプラバイアルに、この溶液25tLを追加した。40マイクロリットルの40tLのN-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド(MSTFA)を、オートサンプラーを介して自動的に添加し、37℃で60分間振とうしながらインキュベートした。インキュベーション後、オートサンプラーを介して3tLの脂肪酸メチルエステル標準(FAMES)溶液を添加し、次いで1μLの調製試料を、スプリットモードでガスクロマトグラフの入口に注入し、入口温度は250℃に保った。分析には10:1の分割比を使用した。ガスクロマトグラフの初期温度は95℃で1分間、続いて40℃/分の勾配で110℃まで、保持時間は2分であった。この後、2回目の5℃/分の勾配で250℃まで、350℃への3回目の勾配、次に3分の最終保持時間を続けた。クロマトグラフィー分離には、長さ5mのガードカラムを備えた30mのPhenomex ZB5-5 MSiカラムを使用した。ヘリウムを1mL/分のキャリアガスとして使用した。いくつかの代謝物が大量にあるので、試料を10倍希釈でもう一度分析した。
GC-MSデータの分析。MassLynx 4.1ソフトウェア(Waters)を使用してデータを収集した。代謝物を同定し、QuanLynxを使用してそれらのピーク面積を記録した。このデータはExcelスプレッドシート(Microsoft,Redmond WA)に転送した。代謝物の同一性は、純粋に購入した標準を使用して開発された社内の代謝物ライブラリと市販のNISTライブラリとの組み合わせを使用して確立された。GC-MSを使用して全ての代謝物が観察されるわけではない。これはいくつかの理由に起因した。例えば、一部の代謝物は非常に低濃度で存在していた。第二に、代謝物は、揮発するには大きすぎるか、カルニチンなどの第4級アミンであるか、または単に十分にイオン化しないせいで、GC-MSに適合しない場合がある。十分にイオン化しない代謝物としては、オキサロ酢酸、ヒスチジン、及びアルギニンが挙げられる。システインは、細胞の状態に応じて観察され、タンパク質とジスルフィド結合を形成することが多く、細胞内濃度が低い。
盲腸内容物の短鎖脂肪酸検出。試料の抽出及び準備。試料を冷凍庫から取り出し、RTで5分間解凍させた。これらの試料に、400tLのdd-H2O、10tLの5-スルホサリチル酸(1mg/tL)、及び2tLの内部標準(1Mピバル酸)を添加した。試料を30秒間ボルテックスし、氷上で30分間静置した。次いで、試料を2000×gで10分間4℃で遠心分離した。次に、上清を、10tLの濃HClを含むPTFEで裏打ちされたキャップを備えたガラスバイアルに移した。次に、3mLのエーテルを添加し、その試料を30秒間ボルテックスした後、1,200×gで10分間4℃で遠心分離した。次いで、上清を、PTFEで裏打ちされたキャップ付きの新しいガラスバイアルに移し、50tLのN-メチル-N-(tert-ブチルジメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、tertブチルジメチルクロロシラン(MTBSTFA;Thermo Scientific)で誘導体化した。試料をボルテックスし、60℃の砂浴に30分間入れた。試料をRTまで冷却させ、穏やかな窒素流下で約250tLの容量まで部分的に蒸発させ、ガラス製GC-MSバイアルに移した。
GC-MS分析。GC/MS分析は、Agilent 5793質量分析計に接続されたAgilent 6890ガスクロマトグラフ、及びDB-1カラムを装備したAgilent 7683(Santa Clara,CA,USA) オートインジェクター(15m×0.25mm内径×0.25μmの膜厚、J&W Scientific、Folsom、CA、USA)で行った。ヘリウムキャリアガスを、1.0mL/分の流量で使用した。1μLの試料を注入したスプリット比10:1を、250℃に保持された注入口に入れた。使用したGCオーブンの勾配は、40℃(1分間保持);5℃/分の勾配で70℃まで(3分間保持);20℃/分の勾配で160℃まで(0分保持);40℃/分の勾配で330℃まで(6分間保持)であった。データは、質量範囲44~200m/zのスキャンモードで取得し、標的は、酢酸の場合は、m/z 117.0、ブタン酸の場合は、m/z131.0、プロパン酸の場合はm/z145.0、及びピバル酸の場合はm/z159.0を使用して定量した。
実施例2:4つのClostridia株が肥満、インスリン抵抗性、炎症性腸疾患を救済する。
4つのClostridiaメンバーの製剤は、マウスの脂肪症を軽減させる。肥満症の軽減に寄与する群落の特定のメンバーを絞り込むために、さまざまなインビトロ技術を採用している。これらの実験は、この群落の4つの特定のメンバーの組み合わせの試験につながった。Clostridia anaerovorax 、Lachnospiraceae spps、Clostridium XIVa、及びClostridium IVを含む洗練された4つのメンバー群落(本明細書では洗練されたClostridiaコンソーシアム-rCC-4とも呼ばれる)。これらの4系統を使用して、マウスにコロニーを形成し、脂肪の蓄積をより複雑なClostridiaコンソーシアム(図ではSFと呼ぶ)と比較した。興味深いことに、これらの4つの菌株は、複雑な微生物群落と同程度まで脂肪症(rCC-M)を減らすのに十分であった(図18)。
4つのClostridiaメンバーの製剤は、マウスの脂肪症を軽減させる。肥満症の軽減に寄与する群落の特定のメンバーを絞り込むために、さまざまなインビトロ技術を採用している。これらの実験は、この群落の4つの特定のメンバーの組み合わせの試験につながった。Clostridia anaerovorax 、Lachnospiraceae spps、Clostridium XIVa、及びClostridium IVを含む洗練された4つのメンバー群落(本明細書では洗練されたClostridiaコンソーシアム-rCC-4とも呼ばれる)。これらの4系統を使用して、マウスにコロニーを形成し、脂肪の蓄積をより複雑なClostridiaコンソーシアム(図ではSFと呼ぶ)と比較した。興味深いことに、これらの4つの菌株は、複雑な微生物群落と同程度まで脂肪症(rCC-M)を減らすのに十分であった(図18)。
Clostridiaの置き換えが肥満、インスリン抵抗性、及び炎症性腸疾患を救済する。一連の実験を通じて、Clostridiaの有意な減少が、肥満誘発性動物で確認された。したがって、これらの痩せた関連微生物の再導入が肥満を防御し得るか否かを試験した。Clostridiaは、胞子形成菌として公知であるので、糞便をクロロホルムで処理してこれらの微生物を濃縮した。動物は、このモデルで体重増加を加速し、西洋化されたライフスタイルをよりよく模倣することが示されている、高脂肪食(HFD)に配した。肥満になりやすいT-Myd88-/-動物を、胞子形成細菌のカクテルで治療すると、体重増加及び脂肪蓄積が有意に減少した(図19A~図19B)。ちょうど3か月の終わりに、Clostridiaで処置したT-Myd88-/-マウスは、未処理のT-Myd88-/-と比較した場合、体脂肪率が低く、VAT量が減少していた(図19C)。Clostridia処置はまた、血糖値を低下させ、インスリン抵抗性を低下させる(図19D及び図19E)。重要なことに、Clostridia処理によるこれらの代謝パラメーターの改善は、HFDに配されたWT動物でも見られ(図19D及び図19E;WT)、ClostridiaによるMetSの改善がMetS及びTIIDのいくつかの異なるモデルに関連することを支持する。
IBDと糖尿病との間の関係は、物議を醸しているが、現在この関係を支持するいくつかの研究がある。IBDの12,601人の患者を対象とした横断研究では、糖尿病が3番目に多い併存疾患であった。デンマークの47,325人の患者からの別のより最近の横断研究は、糖尿病がIBD(UCとCDの両方)と有意に関連していることを示した。1200人のIBD患者の小児コホートでは、糖尿病の有病率もUC患者の方が対照よりも高かった。2019年にIBDの患者8070人及び健康な対照40,030人を使用した最近の研究では、ステロイドの使用を制御している場合でも、IBDの個体では糖尿病の発生率が有意に高いことが実証された。最後に、1977年から2014年にかけてIBDナシに対してIBDと診断された6,028,844人の個人の全国的な人口ベースのコホートによって、特に2003年から2014年の間にIBDのある個人の糖尿病の発生率の増大が明らかになった。血糖ホメオスタシスに加えて、IBDの個体は、脂質代謝に変化があると報告されており、代謝性疾患とIBDとの間の関連性を裏付けている。これらの疾患の両方に共通するのは、慢性炎症及び微生物叢の動揺であるが、これらの病気の間の関係の根底にある機構は不明である。
現在、健康な対照と比較して、糖尿病及びIBDを有する個体の微生物叢組成を分析した徹底的な研究があり、いくつかの類似点が明らかになっている。Clostridiales、Ruminococcaceae及びLachnospiraceaeのメンバーの特定の枯渇を伴う微生物叢の多様性の減少が、糖尿病、肥満、及びIBDの患者で報告されている。系統発生レベルでの微生物叢の組成は一般に個体間で異なるが、微生物叢の機能的能力は非常に安定している。したがって、メタゲノム研究は、微生物叢の疾患への寄与についてより多くの洞察を提供し得る。2型糖尿病とIBDの両方のメタゲノム研究により、Clostridiaのメンバーの減少と一致して短鎖脂肪酸(SCFA)の産生が減少していることが明らかになった。生物体の特定のサブセットの喪失に加えて、これらの障害の中で特定された同様の病原体がある。TIIDがある350以上の個体を調査し、微生物叢の組成を健康な個人の組成と比較した研究では、TIIDに関連する最も重要なシフトは、硫酸塩還元菌であるDesulfovibrioの富化であることが判明した。別の独立した研究では、TIIDも持っていた免疫力が低下した個体でのDesulfovibrioの異常増殖が確認された。IBDでは、多くの研究がDesulfovibrioの増大を指摘している。IBDの一般的な治療法であるメサラミンは、糞便中の硫化物を阻害するが、この薬物を服用していない患者では、硫化物のレベルが高くなる。メタゲノム研究は、IBD及びII型糖尿病の系統的研究を確認し、硫黄含有アミノ酸であるシステインの代謝に関与する遺伝子が、疾患のある個体では増大することを実証している。したがって、微生物叢の組成における同様のシフトは、IBD及び糖尿病の個体で確認されており、これらの共通点が、これらの疾患の発症の根底にあり得ることが示唆されている。
糖尿病とIBDとの間の関係に基づいて、これらの細菌がIBDのマウスモデルから救済されるか、または保護され得るか否かを試験した。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)大腸炎の慢性モデルを使用し、DSSを飲料水に5日間入れた後、通常の水を10日間続け、さらに2サイクル繰り返した。ClostridiaまたはPBSを、1日おきに経口強制投与し、組織学を実施した。確かに、Clostridiaで治療された動物は、結腸の長さの増大及び組織病理学的スコアの減少によって決定されるとおり、大腸炎の発症から有意に保護された(図19F、19G)。したがって、Clostridiaはメタボリックシンドローム(MetS)及びIBDの発症を防ぎ得る。
Claims (44)
- Clostridiaのコンソーシアム由来の上清を含む組成物。
- 前記Clostridiaコンソーシアムが2つ以上の細菌の株を含み、前記2つ以上の細菌の株が、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsである、請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物が、対象の腸上皮内の脂質吸収遺伝子の発現を抑制し得、前記Clostridiaコンソーシアムが、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsのうちの2つ以上を含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物が、対象の小腸における脂質吸収を阻害し得、前記Clostridiaコンソーシアムが、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsのうちの2つ以上を含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物が、対象の体重増加を軽減し得、前記Clostridiaコンソーシアムが、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsのうちの2つ以上を含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物が、対象の肝臓においてCD36を下方制御し得、前記Clostridiaコンソーシアムが、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsのうちの2つ以上を含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物が、対象の脂肪症を軽減し得、前記Clostridiaコンソーシアムが、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsのうちの2つ以上を含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物が、対象の体脂肪率を低下させ得る、及び/または内臓脂肪組織(VAT)量を減少し得、かつ前記Clostridiaコンソーシアムが、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsのうちの2つ以上を含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物が、対象の血糖値を低下させる、及び/またはインスリン抵抗性を低下させ得、前記Clostridiaコンソーシアムが、Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV及びLachnospiraceae sppsのうちの2つ以上を含む、請求項1に記載の組成物。
- Clostridiumのコンソーシアムを含む組成物。
- 前記組成物が、対象の腸上皮内の脂質吸収遺伝子の発現を抑制し得る、請求項10に記載の組成物。
- 前記Clostridiumコンソーシアムが、Clostridia anaerovorax属、Clostridium XIVa、及びClostridium IV、及びLachnospiraceae sppsを含む、請求項10または11に記載の組成物。
- 表1から選択される1つ以上の細菌をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
- 薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記組成物が凍結されている、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記組成物が固体である、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記組成物が各Clostridia株の少なくとも1×10-5細胞を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記組成物の単一投薬量が、1×10-5 ~1×10-10細胞の各Clostridia株を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記組成物が、不均衡な微生物叢に関連する疾患または障害を有する対象の微生物叢を置き換え得る、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記不均衡な微生物叢が、Desulfovibrioの増大かつClostridiaの減少である、請求項19に記載の組成物。
- 前記不均衡な微生物叢が、Clostridiaの減少かつDesulfovibrioの増大なしである、請求項19に記載の組成物。
- 前記疾患または障害が、肥満、メタボリックシンドローム、インスリン欠乏、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能異常、糖尿病、または炎症性腸疾患である、請求項19に記載の組成物。
- 前記組成物が、粉末、顆粒、すぐに使用できる飲料、食品バー、押出成形形態、カプセル、ゲルカプセル、及び分散性錠剤からなる群より選択される形態で投与される、請求項1~22のいずれか1項に記載の組成物。
- Clostridia anaerovorax、Clostridium XIVa、Clostridium IV、及びLachnospiraceae sppsのうちの2つ以上を含む細菌のコンソーシアムであって、前記コンソーシアムは、前記コンソーシアムが投与されていない対象と比較して対象における腸上皮内の脂質吸収遺伝子の発現を抑制する、前記細菌のコンソーシアム。
- 対象における微生物叢の相対量を変更する方法であって、先行請求項のいずれかに記載される組成物の有効量を前記対象に投与して、これによって前記対象における前記微生物叢の相対量を変更することを含む、前記方法。
- 前記Clostridia菌の相対量が増大または置き換えられる、請求項25に記載の方法。
- 前記Clostridiaの相対量が、前記対象において少なくとも約5%増大される、請求項25に記載の方法。
- 第2の治療剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
- 肥満の対象を治療する方法であって、請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与することを含み、Clostridiaの相対量が、投与前の前記相対量と比較して前記対象において増大される、前記方法。
- メタボリックシンドロームの対象を治療する方法であって、請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与することを含み、Clostridiaの相対量が、投与前の前記相対量と比較して前記対象において増大される、前記方法。
- 過敏性腸症候群の対象を治療する方法であって、請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与することを含み、Clostridiaの相対量が、投与前の前記相対量と比較して前記対象において増大される、前記方法。
- 対象の体重増加を軽減する方法であって、請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与することを含み、Clostridiaの相対量が、投与前の前記相対量と比較して前記対象において増大される、前記方法。
- 対象の小腸における脂質吸収を阻害する方法であって、請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与することを含み、Clostridiaの相対量が、投与前の前記相対量と比較して前記対象において増大される、前記方法。
- 対象の肝臓におけるCD36を下方制御する方法であって、請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与することを含み、Clostridiaの相対量が、投与前の前記相対量と比較して前記対象において増大される、前記方法。
- 前記対象が、前記治療が必要であると特定されている、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
- 前記対象が、肥満、メタボリックシンドローム、インスリン欠乏、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能異常、糖尿病、または炎症性腸疾患を有する、請求項25~28、請求項32、請求項33または請求項34のいずれか1項に記載の方法。
- 前記炎症性腸疾患が、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項36に記載の方法。
- 前記インスリン抵抗性関連障害が、糖尿病、高血圧、脂質異常症、または心血管疾患である、請求項36に記載の方法。
- 前記組成物を投与する前記ステップが、前記組成物を前記対象の少なくとも胃、小腸、または大腸に送達することを含む、請求項25~38のいずれか1項に記載の方法。
- 前記組成物が、経口的に投与される、請求項25~39のいずれか1項に記載の方法。
- Clostridiaの少なくとも1つの種の相対量が、5%増大される、請求項25~40のいずれか1項に記載の方法。
- 前記対象が、ヒトである、請求項25~41のいずれか1項に記載の方法。
- 前記コンソーシアムの前記細胞が活性である、請求項25~42のいずれか1項に記載の組成物または方法。
- 前記組成物が、不均衡な微生物叢に関連する疾患または障害を有する対象の微生物叢を置き換えるためである、請求項25~43のいずれか1項に記載の方法。
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