JP2022538922A - ペプチド-mhc複合体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ペプチド-HLA-E複合体などの安定化ペプチド-MHC(pMHC)複合体を提供する。この複合体は、ペプチドのC末端アンカー残基と、MHC結合溝のFポケット内のアミノ酸残基との間にジスルフィド結合のような非天然型連結を有する。【選択図】図1

Description

本発明はペプチド-MHC(pMHC)複合体に関する。本発明は、特に、安定化され、天然様TCR認識を保持するpMHC複合体に関する。
MHC分子は、内因性及び外因性の抗原性ペプチドをT細胞に提示することによって免疫監視(immune surveillance)において重要な役割を果たす。MHCクラスI複合体は、2つのサブユニット、3つの細胞外ドメイン(α1、α2及びα3)、膜貫通ドメイン及び細胞質テイルからなる重鎖と、(全てのクラスI分子のインビボ発現に必要とされる)β2ミクログロブリン(β2M)と呼ばれる軽鎖から構成される。重鎖のα1ドメイン及びα2ドメインが一緒になって、2つのαヘリックスに挟まれた8つの反平行βストランドのプラットフォーム(これがペプチド結合溝を形成する)を形成するように構造的に配列されている。MHCクラスI分子は、代表的には約8~10アミノ酸のペプチドを結合する。MHCクラスII複合体は、クラスI複合体に類似する全体構造を有するが、ペプチド結合溝は両サブユニットから形成され、より長いペプチド、代表的には11~30アミノ酸のペプチドを収容するより開口した構成である。MHC複合体の結合溝は、ポケットA~Fと呼ばれる6つのポケット又はサブサイトに分けられると考えられ得る。結合溝の各端のポケット(A及びF)は高度に保存されており、広範な水素結合ネットワークを介するペプチドのN及びC末端アンカー残基の結合を担っている。他のポケットは多型であり、したがってペプチド相互作用の特異性の決定において役割を果たしている(Matsumuraら,Science. 1992 Aug 14;257(5072):927-34)。
単離されたpMHC複合体は、免疫学研究及び種々の治療様式の開発において必須のツールである;しかし、幾つかの場合において、ペプチドはMHCに弱く結合し、したがって迅速に解離する。このことは、安定な複合体に依拠する方法論(例えば、MHC多量体を用いるT細胞応答の計数)に対して課題をもたらし得る。MHC複合体の不安定性は、非古典的なヒトMHCクラスI分子であるHLA-Eに結合するペプチドに関して特に問題であるようである。
古典的MHC分子とは異なり、HLA-Eは、ほとんど専ら、1アミノ酸だけ異なる2つの対立遺伝子形態E*01:01及びE*01:03のみで存在する。このため、HLA-Eが提示するペプチドは、免疫療法の魅力的な標的となる。なぜならば、それらは、高度に多型の古典的MHC分子を標的することに固有の課題を回避できるからである。通常の条件下で、HLA-Eは、他のHLAクラスI分子から切断されたリーダー配列ペプチドと結合し、免疫監視の方法としてNK細胞に提示する。或る特定の感染因子により引き起こされるか又は腫瘍組織における抗原プロセッシング機構の欠陥は、NK細胞による標的化殺傷をもたらし、HLA-Eペプチドレパートリの増加(おそらくはT細胞免疫監視を可能にする)と関連付けられる。HLA-Eが細菌及びウイルスのペプチド(例えばMycobacterium tuberculosis又はHIVに由来するもの)を提示することができ、これらペプチドHLA-E複合体がCD8+ T細胞を刺激することができるという証拠が増加している(van Hallら,Microbes Infect. 2010 Nov;12(12-13):910-8;Joostenら,PLoS Pathog. 2010 Feb 26;6(2):e1000782;Joostenら,J Immunol Res. 2016;2016:2695396;Hansenら,Science. 2016 Feb 12;351(6274):714-20;Nattermannら,Antivir Ther. 2005;10(1):95-107;Nattermannら,Am J Pathol. 2005 Feb;166(2):443-53))。HLA-Eの役割は、霊長類(Wuら,J Immunol. 2018 Jan 1;200(1):49-60)及びマウス(Oliveiraら,J Exp Med. 2010 Jan 18;207(1):207-21)を含む或る範囲の哺乳動物にわたって保存されているようである。ペプチドHLA-E複合体を標的する免疫療法アプローチを利用する努力は、HLA-A*02などの古典的クラスI複合体と比較して貧弱な単離ペプチドHLA-E複合体の安定性によって妨げられてきた。例えば、単離されたペプチドHLA-E複合体の不安定性は、該複合体を特異的に認識するT細胞受容体(TCR)又は抗体ベース治療薬の同定及びその後の開発を妨げ得る。
単離されたpMHC複合体を安定化させる方法は、当技術分野において公知である(例えば、US8992937;WO2013030620;Truscott J Immunol.2007 May 15;178(10):6280-9;Mitaksovら,Chem Biol. 2007 Aug;14(8):909-22)を参照)。
しかし、本発明者らは、そのようなアプローチが、pMHC複合体(HLA-Eを含む複合体を含む)を、天然様TCR結合を保持する様式で安定化するために適切ではないことを見出した。本発明は、天然様TCR認識を実証する安定化ペプチド-MHC複合体を提供することを目的とする。
第1の観点において、本発明は、当該ペプチドのC末端アンカー残基と、当該MHC結合溝のFポケット内のアミノ酸残基との間に非天然型連結を含む安定化ペプチド-MHC(pMHC)複合体を提供する。
本発明者らは、予想外にも、pMHC複合体が、該ペプチドのC末端アンカーアミノ酸残基と該MHC結合溝のFポケット内のアミノ酸残基との間に非天然型連結を導入することにより、安定化され得ることを見出した。この連結は、pMHC複合体が天然型pMHC複合体の三次元立体構造を保持し、天然型複合体を認識するTCRにより認識されることができるものである。
本発明のpMHC複合体は、ペプチドのC末端アンカー残基とMHC結合溝のFポケットのアミノ酸残基との間に非天然型連結を有しない天然型複合体と比較して優れた安定性を有するという意味で安定化されている。安定性は、それぞれBiacore又はOctetなどの当業者に周知の表面プラズモン共鳴(SPR)又はバイオレイヤー干渉法(BLI)により評価され得る。本発明に従うpMHC複合体は、天然型pMHC複合体のものより長い結合半減期を有する。本発明のpMHC複合体の結合半減期は、天然型pMHC複合体の結合半減期より少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍又は少なくとも5倍大きくあり得る。本発明のpMHC複合体において、ペプチドは、少なくとも3時間のMHCに対する結合半減期を有し得る。好ましくは、結合半減期は、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも15時間、又は少なくとも20時間である。複合体の安定性を決定する代替のアプローチは、熱変性を含む。
本発明のpMHC複合体は天然型pMHC複合体の天然型三次元立体構造を保持する。したがって、それらは、天然型複合体を認識するペプチドMHC結合性部分(例えば、TCR又はTCR模擬抗体)により認識され得る。認識はSPRにより決定され得る。本発明のpMHC複合体に関する結合部部分の親和性は、同等の条件下で測定したとき、天然型複合体に関する結合性部分の親和性と3倍以下の差であり得る。当業者は、或る特定の天然型pMHC複合体が標準的条件(例えば室温)下で非常に不安定である(例えば、短い結合半減期を有する)ので、天然型複合体に関する結合性部分の親和性を測定することによって、本発明の複合体に関する結合性部分の親和性との比較が不可能であり得ることを理解する。このような場合、条件を変える(例えば、温度を下げる)ことにより親和性を測定(及び比較)することが可能になり得る。結合性部分は、標準的条件(例えば、実施例2Bに示す条件)下で、少なくとも100μM、少なくとも50μM、少なくとも10μM、少なくとも1μM又はそれ以下の当該複合体に関するKDを有し得る。
本発明のpMHC複合体は、MHC結合性ペプチドのC末端アンカー残基とペプチド結合溝のFポケット内のアミノ酸残基との間の非天然型連結を含んでなる。この連結は、ペプチドが結合溝内で安定化されるものである。非天然型連結は、結合溝におけるペプチドの立体配置を乱さない。このことは、該ペプチドが、天然様の様式でペプチドMHC結合性部分(例えば、TCR)により認識されるはずであることを意味する。ペプチドの立体配置は、X線結晶構造解析により決定し得る。連結は共有結合であり得る。共有結合は、pMHC結合溝のFポケット及び/又はペプチドのC末端アンカー残基のアミノ酸残基から、好ましくはMHC結合溝のFポケット及びペプチドのC末端アンカー残基の両方のアミノ酸残基から置換されたアミノ酸同士間に形成され得る。MHC結合溝のFポケット及び/又はC末端アンカー残基のアミノ酸残基から置換されるアミノ酸の少なくとも1つは、非天然アミノ酸であり得る。C末端アンカー残基は非天然アミノ酸であることが好ましい。当業者は、MHC分子のどのアミノ酸位置がFポケット内に位置するかを認識している(例えば、Matsumuraら、Science. 1992 Aug 14;257(5072):927-34の表Iを参照)。好ましくは、連結は、MHC結合性ペプチドのC末端アンカー残基とMHC重鎖の116位のアミノ酸残基との間である。或いは、MHC結合性ペプチドのC末端アンカー残基とMHC重鎖の147位に位置するアミノ酸残基との間の連結もまた好ましい。連結に適切なMHC重鎖上の他の位置として、81位、124位及び143位が挙げられる。
好ましくは、非天然型連結はジスルフィド結合である。この結合は、MHC結合溝のFポケット及び/又はペプチドのC末端アンカー残基から、好ましくはMHC結合溝のFポケット及びペプチドのC末端アンカー残基の両方のアミノ酸残基から置換された、ジスルフィド結合を形成できるアミノ酸(例えば、システイン又はその誘導体)同士間で形成され得る。
下記表は、種々のMHCクラスI分子における好ましいシステイン又はその誘導体変異のアイデンティティー及び位置を示す。番号付けはMHC重鎖上の位置を参照する。
Figure 2022538922000002
最も好ましい変異は、116位又は147位におけるシステイン置換又はシステイン誘導体置換である。特に好ましい変異として、HLA-E中のF116位又はS147位におけるシステイン置換又はシステイン誘導体置換が挙げられる。HLA-E中のシステイン置換又はシステイン誘導体置換の代替位置は、L81、S143又はL124である。
pMHC複合体は、2つのMHCサブユニット重鎖及び軽鎖を含んでなり得る。MHCサブユニットはペプチドリガンドと会合し、このペプチドリガンドは、一方又は両方のサブユニットが形成する結合溝に結合する。好ましくは、MHC複合体はクラスI MHC複合体である。或いは、MHC複合体は、クラスII MHC複合体である。MHC複合体は可溶性であり得る。可溶性複合体を製造する方法は当技術分野において公知である;例えば、クラスI複合体の重鎖は、膜貫通領域及び細胞質領域を除去するように短縮化され得る。好ましくは、MHC複合体はヒトのものであり、MHCの代わりにヒト白血球抗原(HLA)複合体と呼ばれ得る。或いは、MHC複合体は他の種(例えば、マウス又は非ヒト霊長類)のものであり得る。MHC複合体は、古典的なものであっても、非古典的なものであってもよい。ヒトの古典的MHC複合体には、多量体HLA-A、HLA-B及びHLA-Cが含まれる。ペプチドリガンドを提示する非古典的MHC複合体には、HLA-E、HLA-F及びHLA-Gが含まれる。好ましくは、MHC複合体は非古典的HLA-Eである。
pMHC複合体は、天然MHC複合体に対して、MHCサブユニット内に1又は2以上の変異を含み得る。変異には、置換、挿入及び欠失が含まれる。好ましくは、変異は、ペプチド結合溝のFポケット内の1又は2以上の位置でなされる。或いは又は加えて、変異(挿入、置換又は欠失を含む)は、単離された複合体の安定性又は結合性部分による認識と干渉しない限り、MHC内の他の位置で行われてもよい。結合溝のFポケット内の変異には、1以上のアミノ酸のシステインへの置換が含まれる。
pMHC複合体は、MHC結合性ペプチドと呼ばれ得るペプチドリガンドを含んでなる。MHC結合性ペプチドは、8~30アミノ酸長であり得る。ペプチドは、8、9、10、11、12、13若しくは14アミノ酸長又は15アミノ酸長以上であり得る。好ましくは、MHC結合性ペプチドは9アミノ酸長である。MHC結合性ペプチドは、天然MHC結合性ペプチド配列のものに対応するアミノ酸配列を有し得る。或いは、MHC結合性ペプチドは、天然MHC結合性ペプチドのアミノ酸配列に対して1又は2以上の変異を含み得る。変異には、置換、挿入及び欠失が含まれ得る。好ましくは、MHC結合性ペプチドはHLA-E結合性ペプチドである。或いは又は加えて、MHC結合性ペプチドは他のMHC複合体に結合し得る。当技術分野において公知のMHC結合性ペプチドの例が多く存在する。MHC結合性ペプチドは、ウイルス性又は細菌性タンパク質を含む外来タンパク質から得られてもよいし、内因性の自己タンパク質から得られてもよい。MHC結合性ペプチドを同定する方法は当技術分野において公知であり、例えば、インシリコ予測(例えば、SYFPEITHI、(Rammenseeら,Immunogenetics (1999) 50: 213-219)及びNetMHCpan(Jurtzら,J Immunol.2017 Nov 1;199(9):3360-3368))及び/又は質量分析を用いて、細胞表面から溶離したペプチドMHC複合体を同定する。
MHC結合性ペプチドは、MHCへの結合に関与する1又は2以上の位置で変異を含み得る。当業者に公知であるように、MHC結合性ペプチドはアンカー残基を含み、このアンカー残基は、ペプチドとMHC結合溝との間の相互作用の安定化に関与する。MHCクラスIの結合溝は、両端で保存チロシン残基によって閉じられており、このことが結合したペプチドのサイズを通常8~10残基に制限しており、ペプチドのC末端部はMHCのFポケット内にドッキングする。アンカー残基の位置及びアイデンティティーは公知である(Falkら,Nature. 1991 May 23;351(6324):290-6)。例えば、HLA-A2に結合するペプチドのアンカー残基は、2位及び9位に位置する。アンカー残基の同様の位置がHLA-E結合性ペプチドについても見出されている(Lampenら,Mol Immunol. 2013 Jan;53(1-2):126-31)。代表的には、アンカー位置のアミノ酸のアイデンティティーは固定されているか、又は限定された変動を示す。全てのMHC結合性ペプチドについて、C末端アンカー残基は疎水性であり、その側鎖は、MHC結合溝の深い疎水性Fポケット内に収容される。本発明において好ましくは、MHC結合性ペプチドは、C末端アンカー残基(P9又はPΩと表記される)で変異している。MHC結合性ペプチドがHLA-Eに結合する場合、C末端アンカー残基はペプチドの9位であり得る。HLA-Eに結合するペプチドは、P9でロイシンに対して強い選好性を有する。変異は、ジスルフィド結合を形成することができるアミノ酸(例えば、天然アミノ酸システイン)への置換であり得、或いは、置換は、ジスルフィド結合を形成することができる非天然アミノ酸への置換であり得る。
MHC結合溝のFポケット及び/又はペプチドのC末端アンカー残基のアミノ酸から置換されるアミノ酸の少なくとも1つは、非天然アミノ酸であり得、これはジスルフィド結合を形成することができる非天然アミノ酸であり得る。ペプチドのC末端アンカー残基はそのように置換されることが好ましい。
ジスルフィド結合を形成することができる好ましい非天然アミノ酸の例には、ホモシステイン、及び追加(例えば1又は2)のメチル基が組み込まれて延長された炭素側鎖を有するホモシステインアナログが含まれる。好ましい例としては、2-アミノ-5-スルファニル-ペンタン酸(本明細書において「h3C」と呼ぶ)(例えば、Chem-Impex International Inc.が提供するもの、Cat No 29777;又はIris Biotech GmbHが提供するもの、Cat. No. # 917883-62-6)及び2-アミノ-6-スルファニルヘキサン酸(本明細書において「h4C」と呼ぶ)(これは、例えば、Creative Chemistry Solutionsからカスタム合成として入手可能である)が挙げられる。非天然アミノ酸(h3C及びh4Cを含む)は、D又はL異性体配置であり得る。
Figure 2022538922000003
ホモシステイン、h3C及びh4Cのそれぞれの化学構造を下記に示す:
Figure 2022538922000004
h3C及びh4cの延長された炭素側鎖は、これとシステイン残基との間で形成されるジスルフィドブリッジの長さが増大することを意味する。下記は、H3C又はH4Cとcysとの間で形成されるジスルフィドブリッジの長さが、cys-cysに対して増大していることを示す模式図である。
Figure 2022538922000005
ペプチドのC末端アンカー残基が、ジスルフィド結合を形成することができるこれら非天然アミノ酸の1つ(好ましくは、h3C又はh4C)に置換され、MHC結合溝のFポケット内のアミノ酸(好ましくは、116又は147残基)がシステインに置換されていることが好ましい。
この情報を考慮して、当業者は、どの非天然アミノ酸(h3C又はh4C)をペプチドのC末端アンカー残基から置換すべきか、及びMKC結合溝のFポケット中のどの残基(116又は147)をシステインに置換すべきかを決定することができる。ジスルフィド結合は、ペプチドのC末端アンカー位置のh3CとHLA-Eの147位のシステインとの間、又はペプチドのC末端アンカー位置のh4CとHLA-Eの116位のシステインとの間に形成されていることが好ましい。或いは、ジスルフィド結合は、ペプチドのC末端アンカー位置のh3CとHLA-Eの116位のシステインとの間、又はペプチドのC末端アンカー位置のh4CとHLA-Eの147位のシステインとの間に形成されている。
pMHC複合体の製造方法は当技術分野において公知である。代表的には、MHC複合体は、細菌発現系において組換え的に産生され、合成ペプチドと共にインビトロでリフォールドされる。適切な方法は、Garbocziら(Proc Natl Acad Sci U S A. 1992 Apr 15;89(8):3429-33)に提供されており、本明細書の実施例1に更に記載されている。MHC結合性ペプチドは化学的に生産されてもよく、このことは化学合成されることを意味する。合成ペプチドの製造方法は当該技術分野において公知であり、特にMerrifield合成としても知られる固相ペプチド合成(SPPS)である。
本発明の複合体は、単離され及び/又は実質的に純粋な形態であり得る。例えば、複合体は、他のポリペプチド又はタンパク質を実質的に含まない形態で提供され得る。pMHC複合体は可溶性形態であり得、このことは、MHC複合体がその膜貫通領域及び細胞質領域を除去するように短縮化され得ることを意味する。
本発明のpMHC複合体は更に改変されていてもよい。例えば、pMHC複合体は、治療部分に融合され、及び/又は固体支持体に付着され、及び/又はビオチンタグのようなタグに融合され、及び/又は多量体形態であり得る。タグはC末端であってもよい。
本発明のpMHC複合体は、治療効果を誘発することができる部分と(共有結合的に又はその他の様式で)結合していてもよい。このような部分は、免疫原性であることが知られているキャリアタンパク質であり得る。KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)及びウシ血清アルブミンは、ワクチン組成物において用いられる適切なキャリアタンパク質の例である。或いは、本発明のポリペプチド及び/又はポリペプチド-MHC複合体は、融合パートナーと結合していてもよい。融合パートナーは、検出目的のため又は複合体を固体支持体に付着させるため又はpMHCのオリゴマー化のために用いられ得る。pMHC複合体は、ビオチン化部位を組み込まれていてもよく、該部位には、例えばBirA酵素(O'Callaghanら,1999 Jan 1;266(1):9-15)を用いて、ビオチンを付加することができる。他の適切な融合パートナーとして、蛍光又は発光標識、放射性標識、核酸プローブ及び造影試薬、抗体、又は検出可能な物質を生成する酵素が挙げられるが、これらに限定されない。検出方法として、フローサイトメトリー、顕微鏡検査、電気泳動又はシンチレーション計数が挙げられる。融合パートナーとして、サイトカイン、例えばインターロイキン2、インターフェロンα及び顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子を挙げ得る。
単離されたペプチドMHC複合体は、適切な固体支持体に付着させることにより不動化され得る。固体支持体の例として、ビーズ、膜、セファロース、磁性ビーズ、プレート、チューブ、カラムが挙げられるが、これらに限定されない ペプチド-MHC複合体は、ELISAプレート、磁性ビーズ又は表面プラズモン共鳴バイオセンサーチップに付着させ得る。ペプチド-MHC複合体を固体支持体に付着させる方法は当業者に公知であり、例えば、親和性結合性ペア、例えばビオチンとストレプトアビジン又は抗体と抗原を用いることを含む。好ましい実施形態において、ペプチド-MHC複合体はビオチンで標識され、ストレプトアビジンで被覆された表面に付着される。
第2の観点において、本発明は第1の観点の複合体の多量体を提供する。
本発明のpMHC複合体は、多量体形態、例えば、二量体又は四量体又は五量体又は八量体又はそれ以上の多量体の形態であり得る。多量体ペプチドMHC複合体の製造に適切な方法の例は、Gretenら(Clin. Diagn. Lab. Immunol. 2002 Mar;9(2):216-20)及びその参照文献並びにWooldridgeら(Immunology (2009) 126(2):147-64)に記載されている。一般に、ペプチド-MHC多量体は、ビオチン残基をタグ付加され、蛍光標識ストレプトアビジンを介して複合体化されたペプチド-MHCを用いて製造し得る。或いは、多量体のポリペプチド-MHC複合体は、免疫グロブリンを分子足場として用いることにより形成し得る。この系では、MHC分子の細胞外ドメインは、免疫グロブリン重鎖の定常領域と、短いアミノ酸リンカーで隔てられて融合される。ポリペプチド-MHC多量体は、キャリア分子(例えばデキストラン)を用いて製造されている(WO02072631)。多量体のペプチドMHC複合体は、アビディティ効果のため、当該複合体を結合する結合性部分(例えば、T細胞受容体)の検出の向上に有用であり得る。
第3の観点において、本発明は、ペプチドのC末端アミノ酸アンカー残基とMHC結合溝のFポケット内のアミノ酸残基との間に非天然型連結を形成することを含む、第1の観点の安定化pMHC複合体を製造する方法を提供する。
本発明において有用なMHCを産生する簡便な方法は、該MHCをコードする核酸を発現系において用いて発現させることである。本発明はさらに、本発明において有用な安定化MHCをコードする単離核酸を提供する。核酸にはDNA及びRNAが含まれる。当業者は、本発明において有用な安定化MHCを依然として提供する、前記核酸に対する置換、欠失及び/又は付加を決定することができる。
本発明はまた、少なくとも1つの上記核酸を含む、プラスミド、ベクター、転写又は発現カセットの形態の構築物を提供する。本発明はまた、1又は2以上の上記構築物を含む組換え宿主細胞を提供する。前記のように、本発明において有用な安定化MHCをコードする核酸は、それをコードする核酸からの発現を含む安定化MHCの製造方法と同様に、本発明の一観点を構成する。発現は、核酸を含む組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することにより簡便に達成され得る。発現による産生後、安定化MHCは、任意の適切な技法を用いて単離及び/又は精製された後、適切に用いられ得る。種々の宿主細胞においてポリペプチドをクローニングし及び発現させるシステムは、周知である。適切な宿主細胞として、細菌、哺乳動物細胞、酵母及びバキュロウイルス系が挙げられる。異種ポリペプチドの発現に当該分野で利用可能な哺乳動物細胞株として、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NSOマウスメラノーマ細胞及び多くの他の細胞が挙げられる。一般的で好ましい細菌宿主はE. coliである。原核細胞(例えばE. coli)における発現は、当該分野において十分に確立されている。
適切な調節配列(プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子を含む)及び他の必要な配列を含有する適切なベクターは、適切に選択又は構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウイルス性、例えば、ファージ又はファージミドであり得る。更なる詳細については、例えば、Sambrookら,1989.Molecular Cloning: a laboratory manual (Cold Spring Harbor, N.Y.: Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)を参照。核酸の操作(例えば、核酸構築物の調製、変異誘発、配列決定、細胞へのDNAの導入及び遺伝子発現における)及びタンパク質の分析のための多くの公知の技法及びプロトコルは、Ausubelら、Short protocols in molecular biology: a compendium of methods from Current protocols in molecular biology(Brooklyn, NY: Green Pub. Associates: New York, NY: Wiley)に詳細に記載されている。
よって、本発明の更なる観点は、本明細書に開示される核酸を含む宿主細胞を提供する。更に別の観点は、該核酸を宿主細胞に導入することを含む方法を提供する。導入は、任意の利用可能な技法を採用し得る。真核細胞については、好適な技法として、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクション及びレトロウイルス又は他のウイルス(例えば、ワクシニア又は昆虫細胞についてはバキュロウイルス)を用いる形質導入が挙げられ得る。細菌細胞については、好適な技法として、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション及びバクテリオファージを用いるトランスフェクションが挙げられ得る。導入の後、例えば宿主細胞を遺伝子発現の条件下で培養することにより、核酸からの発現を引き起こすか又は可能にさせ得る。本発明の核酸は、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)に組み込まれてもよい。組込みは、標準的な技法に従って、ゲノムとの組換えを促進する配列を含めることによって促進され得る。本発明はまた、発現系において上記構築物を用いて上記の安定化MHCを発現させることを含む方法を提供する。
本発明はまた、下記:
第1の観点の複合体を、T細胞受容体(TCR)、TCR模擬抗体又はT細胞の集団と組み合わせること;及び
該複合体に結合するTCR、TCR模擬抗体又はT細胞を同定すること
を含むスクリーニング方法を提供する。
本発明の各観点の好ましい特徴は、他の観点の各々についても、必要な変更を加えて上で同様である。本明細書で言及される先行技術文献は、法律により許容される最大限まで組み込まれる。
図1は、経時的なILT2結合の喪失により決定される、示されたpMHC複合体の安定性を示す。 図2は、天然型pMHC複合体と、既存の方法論を用いて安定化された同等のpMHC複合体との間のTCR認識の差を示す。 図3は、天然型pMHC複合体と、本発明の同等な安定化pMHC複合体との間のTCR認識の違いを示す。
実施例
ここで、本発明を、以下の非限定的実施例及び図面を参照して説明する。
図1は、経時的なILT2結合の喪失により決定される、示されたpMHC複合体の安定性を示す。天然型pHLA-E複合体は限定的な安定性を示す。
図2は、天然型pMHC複合体と、既存の方法論を用いて安定化された同等のpMHC複合体との間のTCR認識の差を示す。
図3は、天然型pMHC複合体と、本発明の同等な安定化pMHC複合体との間のTCR認識の違いを示す。
実施例1-単離されたペプチドHLA-E複合体は限定的安定性を有する
本実施例は、単離ペプチドHLA-E複合体が短い半減期を有することを実証し、このことが、結合性物質(例えばTCR及び抗体)を同定及び特徴付けに用いるに十分に安定でないことを意味する。この目的には、少なくとも4時間の半減期が代表的には好ましく、これを実質的に超える半減期が望ましい。
安定性は、HLA-Eにより提示されることが知られている幾つかのペプチドを用いて評価される。これらペプチドには、Joostenら(PLoS Pathog. 2010 Feb 26;6(2):e1000782)及びHansenら(Science. 2016 Feb 12;351(6274):714-20)にそれぞれ記載されたMTBペプチド及びHIVペプチド、並びにHLA-A*02及びHLA-Cw3からのリーダーペプチドに相当する2つの自己ペプチドが含まれる。
方法
ペプチド
ペプチドは Peptide Protein Research Ltdから化学合成により取得し、使用前にDMSO中で4mg/mlの濃度に可溶化した。

HLA-E*01:01及びHLA-E*01:03ペプチド複合体の作製
HLA-E重鎖及びβ2-ミクログロブリン(β2m)を、別々にE. coliにおいて封入体として発現させ、その後、以前(Garbocziら、Proc Natl Acad Sci U S A. 1992 Apr 15;89(8):3429-33)に記載された方法を用いてリフォールドさせて精製した。HLA-E重鎖は、C末端ビオチン化タグ(AviTagTM GLNDIFEAQKIEWHE)を含んでいたが、膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを除かれていた。簡潔には、HLA-E重鎖及びβ2mを興味対象ペプチドと共に30:5:2の比で混合してリフォールドさせた。次いで、リフォールドした可溶性pHLAを、アニオン交換に続いてサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)が組み込まれた2工程プロトコルを用いて精製した。ビオチン化複合体を生成するため、ビオチン化工程を、アニオン交換の後で、かつ、O'Callaghanら,Anal Biochem. 1999 Jan 1;266(1):9-15に記載されるようにビオチン-タンパク質リガーゼ(BirA)を用いるSECの前に含ませた。
Figure 2022538922000006
AviTagTM及びそのGSGGリンカーの配列に下線を付し、F116及びS147を太字及び下線で示す。
Figure 2022538922000007
ペプチド-HLA複合体の安定性の評価
ペプチド-HLA-E複合体の安定性は、BIAcore T200 装置を用いる表面プラズモン共鳴(SPR)により評価した。約500~1000応答単位(RU)の精製ビオチン化ペプチド-HLA-Eモノマーを、ストレプトアビジン結合CM-5シリーズSセンサーチップに捕捉した。親和性を増強された可溶形態のIg様転写物2受容体(ILT2)を1μMの濃度で、チップ表面上に10μl/分の流速で60秒間流した。ILT2はクラスI HLA分子に立体配置依存性様式で結合するため、複合体の安定性の指標として用いられる。pHLA-E複合体へのILT2結合を5時間にわたって一定間隔で測定し、次いでペプチド-HLAを含まない対照フローセルでのバルク緩衝液の応答を差し引くことによって、応答をILT2結合について規格化した。結合半減期(T1/2)は、BIA T200評価ソフトウェア及びGraphPad Prism 8を用いて、%活性を時間に対してプロットすることにより算出した。
結果
下記表1は、ILT2結合により決定された、HLA-E*01:03と複合体化した、示されたペプチドの各々の半減期(T1/2)を提供する。示した複合体の全てが、5時間以下の半減期を有し、幾つかの複合体は1時間以下の半減期を有する。結合性データの代表例を図1(左側パネル)に提供する。
Figure 2022538922000008
これらデータは、天然型ペプチド-HLA-E複合体が限定的な安定性を有する。このことは、結合性物質の同定及び特性決定に不適切であることを示している。
実施例2-ペプチドHLA-E複合体はcysトラップ法により安定化することは可能であるが、撹乱されたTCR結合を示す
A)
本実施例では、HLA-E重鎖を、Y84位にシステイン変異が組み込まれるように改変し;ペプチドを、C末端に追加の3アミノ酸(Gly-Cys-Gly)が含まれるように改変した。このアプローチは、一般には「Cysトラップ」と呼ばれ、ペプチドを結合溝に「捕捉」することによって、種々のHLA複合体の安定性を向上させるために用いられて成功している(Truscott J Immunol 2007 May 15;178(10):6280-9;Mitaksovら,Chem Biol. 2007 Aug;14(8):909-22)。
方法
実施例1に記載したものと同じ実験方法を用いた。

結果
下記の表2は、ILT2結合により決定された、示されたcys捕捉ペプチドHLA-E複合体の各々の半減期を提供する。示した複合体の全てが、実施例1に示した未改変複合体と比較して実質的に延長した半減期を有し、大部分は20時間を超えている。結合性データの代表例を図1(右側パネル)に提供する。
Figure 2022538922000009
これらデータは、cysトラップが組み込まれた改変ペプチド-HLA-E複合体が向上した安定性を有することを示している。
B)
続いて、MTBペプチドRLPAKAPLL+GCGを含むCys捕捉安定化ペプチド-HLA-E複合体を、抗原特異的TCRによる認識について試験し、未改変複合体と比較した。このペプチドを選択した。なぜならば、未改変の天然型ペプチドHLA-E複合体は、比較的長い半減期を有し、したがってTCR結合の評価に適しているからである。
方法
ペプチド-HLA-E複合体へのTCR結合の評価
MTBペプチドRLPAKAPLL HLA-E複合体を認識する4つのTCRを、ナイーブなファージライブラリから単離し、以前(Boulterら,Protein Eng. 2003 Sep;16(9):707-11)に記載したとおりに可溶性αβヘテロダイマーとして調製した。
結合特性決定
精製された可溶性TCRのペプチド-HLA複合体への結合解析は、BIAcore T200装置を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)により行った。ビオチン化pHLA-E分子を、上記実施例1に記載されるように、興味対象ペプチドと共にリフォールドさせた。全ての測定は、0.005%の界面活性剤P20を補充したダルベッコPBS緩衝液中で25℃にて行った。
ビオチン化ペプチド-HLA-Eモノマーを、ストレプトアビジン結合CM-5シリーズSセンサーチップに不動化した。平衡結合定数は、約1000応答単位(RU)のペプチド-HLA-E*01:03複合体を被覆したフローセル上に10~30μl/分の一定流速で注入した可溶性TCRの連続希釈物を用いて決定した。平衡応答は、ペプチド-HLAを含まない対照フローセルでのバルク緩衝液の応答を差し引くことによって、各TCR濃度について規格化した。KD値は、GraphPad Prism 8ソフトウェアを用いた非線形曲線フィッティング及びLangmuir結合等温式 結合 = C×Max/(C+KD)(式中、「結合」は注入されたTCR濃度Cでの平衡結合(単位RU)であり、Maxは最大結合である)により得た。
高親和性相互作用については、結合パラメータを単一サイクル速度論分析により決定した。5つの異なる濃度の可溶性TCRを、約50~200RUのペプチド-HLA複合体を被覆したフローセル上に、50~60μl/分の流速を用いて注入した。代表的には、60~200μlの可溶性TCRを、100~1000nMの最高濃度で注入し、2倍系列希釈物を他の4回の注入に用いた。最初に最低濃度を注入した。解離相を測定するため、緩衝液を、10%以上の解離が生じる(代表的には1~3時間後)まで注入した。動力学的パラメータは、BIAevaluation(登録商標)又はBIAcore T200評価ソフトウェアを用いて算出した。解離相を、一時指数関数的減衰方程式に当てはめて、半減期を算出した。平衡定数KDはkoff/konから算出した。
結果
下記表2に示す結合親和性は、図2に示す結合曲線と共に、抗原特異的TCRが天然型の非安定化ペプチドHLA-E複合体を認識可能である一方、cysトラップ安定化複合体の認識は実質的に低下し、場合によっては検出レベル未満であることを示している。
Figure 2022538922000010
これらデータは、cysトラップアプローチが、安定化複合体を生じるものの、TCRの認識を撹乱させることを示す。これは、追加残基の組込み及びジスルフィド結合の形成から生じたペプチド又はMHCの構造変化に起因し得る。したがって、このアプローチは、結合性物質(例えばTCR)の同定及び特徴付けのための安定化ペプチドHLA-E複合体の製造に適していない。
実施例3-TCR認識の変化が最小である安定なペプチドHLA-E複合体の作製
A)
本実施例では、ペプチドHLA-E複合体を、新規な操作されたジスルフィド結合がHLA-E重鎖のペプチド結合溝とペプチドのC末端アンカー残基との間に組み込まれるように改変した。
新規ジスルフィドを創出するため、MTBペプチドであるRLPAKAPLLペプチドのP9アンカー残基を、非天然アミノ酸L-3-Cホモシステイン(2-アミノ-5-スルファニル-ペンタン酸)(RLPAKAPL-h3C)に改変し、HLA-E重鎖のF116位又はS147位のいずれかをシステインに変異させた。
方法
実施例1に記載のように、ペプチドHLA-E複合体を作製して、安定性について評価した。TCR結合は実施例2に記載のように評価した。

結果
下記表4は、新規ジスルフィドが、複合体の半減期を天然型複合体より長くしたことによって示されるように、安定性の実質的な向上をもたらしたことを実証している。
Figure 2022538922000011
新規な安定化ペプチド-HLA-E複合体が天然様TCR認識を保持することを実証するため、ペプチド(RLPAKAPLL)-HLA-E複合体の向上した認識に関してファージライブラリから分離された異なる9つのTCRについて結合を評価した。各々の場合で、安定化複合体へのTCR結合の動力学を天然型複合体と比較した。
表5及び6は、安定化複合体(それぞれF116又はS147にシステイン変異を有する)に対するTCR結合が、全ての場合で保存されることを示す。各TCRについて、安定化複合体と天然型複合体との間で、結合に僅かな差しか観察されず、このことは、ペプチドがほぼ天然様立体構造をとっていることを示している。
図3は表5の4つのTCRについての結合曲線を示す。
Figure 2022538922000012
Figure 2022538922000013
B)
更なる実施例では、MTBペプチドであるRLPAKAPLLペプチドのP9アンカー残基を、非天然アミノ酸L-4-Cホモシステイン(2-アミノ-6-スルファニルヘキサン酸)(RLPAKAPL-h4C)に改変し、HLA-E重鎖のF116又はS147位をシステインに変異させた。複合体の安定性及びTCR結合はAの部に記載したとおりに評価した。
結果
得られた複合体の結合半減期は24.47時間であった。このことは、新規ジスルフィドが天然型複合体に比べて安定性の実質的な向上をもたらしたことを実証している(表4に示す)。6つのTCRについてTCR結合を評価した。6つ全ての場合で、安定化複合体へのTCR結合は保存された。天然型複合体と比較した結合の差は、F116とのジスルフィドについては1.53~3.24倍の範囲、S147とのジスルフィドについては1.11~2.83倍の範囲であった。
Figure 2022538922000014

Claims (15)

  1. ペプチドのC末端アンカー残基とMHC結合溝のFポケット中のアミノ酸残基との間に非天然型連結を含む安定化ペプチド-MHC(pMHC)複合体。
  2. 前記非天然型連結が共有結合である、請求項1に記載の複合体。
  3. 前記共有結合が、前記MHC結合溝のFポケット及び/又は天然型ペプチドのC末端アンカー残基中のアミノ酸残基から置換されたアミノ酸同士間、好ましくはMHC結合溝のFポケット及び天然型ペプチドのC末端アンカー残基の両方のアミノ酸残基から置換されたアミノ酸同士間に形成されている、請求項2に記載の複合体。
  4. 前記MHC結合溝のFポケット中の置換アミノ酸残基が116位又は147位にある、請求項3に記載の複合体。
  5. 前記非天然型連結がジスルフィド結合である、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合体。
  6. 前記MHC重鎖の116位又は147位のアミノ酸残基がシステインに置換されている、請求項5に記載の複合体。
  7. 前記ペプチドのC末端アンカー残基から置換されたアミノ酸が非天然アミノ酸である、請求項1~6のいずれか1項に記載の複合体。
  8. 前記ペプチドのC末端アミノ酸アンカー残基が、延長された炭素側鎖を有するホモシステインアナログに置換されている、請求項7に記載の複合体。
  9. 前記ホモシステインアナログが、2-アミノ-5-スルファニル-ペンタン酸又は2-アミノ-6-スルファニルヘキサン酸である、請求項8に記載の複合体。
  10. 可溶性である請求項1~9のいずれか1項に記載の複合体。
  11. 前記MHCがビオチン化タグを含み、該タグはC末端であってもなくてもよい、請求項1~10のいずれか1項に記載の複合体。
  12. 前記MHCがHLA-Eである、請求項1~11のいずれか1項に記載の複合体。
  13. 請求項1~12のいずれか1項に記載の複合体の多量体。
  14. 前記MHC重鎖と前記ペプチドのC末端アミノ酸アンカー残基との間に共有結合を形成することを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のペプチド-MHC複合体を製造する方法。
  15. 請求項1~12のいずれか1項に記載の複合体を、T細胞受容体(TCR)、TCR模擬抗体又はT細胞の集団と組み合わせること;及び
    前記複合体に結合するTCR、TCR模擬抗体又はT細胞を同定すること
    を含む、スクリーニング方法。
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