JP2022538598A - プレmRNAのトランススプライシングに基づく合成転写用論理「AND」ゲートを作製するためのシステムおよびその使用 - Google Patents
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Abstract
目的とする転写物を所定の細胞状態において生じさせるための合成核酸発現システムが提供され、前記システムは、(a)目的とする前記転写物の5’側フラグメントをコードする少なくとも1つのエクソンと、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される第1のRNA配列とを含む第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列をコードする核酸配列に対して作動可能に連結される第1のプロモーターを含む第1の核酸配列、および(b)目的とする前記転写物の3’側フラグメントをコードする少なくとも1つのエクソンと、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される第2のRNA配列とを含む第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列をコードする核酸配列に対して作動可能に連結される第2のプロモーターを含む第2の核酸配列を含み、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターが異なっており、各々が前記所定の細胞状態によって特異的に調節される。
【選択図】図1
【選択図】図1
Description
本発明は一般には、目的とする転写物の真核生物細胞における発現に関する。具体的には、本発明は、mRNAのトランススプライシングに基づくブールAND論理ゲートによって調節される転写物を発現させるためのシステムを提供する:すなわち、前記転写物の発現が、2つの異なる入力シグナルが同時に存在する場合でのみ生じる。
論理ゲートは、どのようなタイプの装置であれ、1つまたは複数のバイナリー入力またはアナログ入力に対する論理演算を実施して、ただ1つのバイナリー出力をもたらすことができる装置である。論理ANDゲートは、すべてのその指定された入力が存在する場合に出力をもたらすだけであろう。医学において、論理ANDゲートの細心な実行は、治療遺伝子またはレポーター遺伝子を事前に定められた細胞条件において発現させようと試みる現在の戦略の選択性、安全性および効力を高める可能性がある。例えば、ベクター媒介のインビボ遺伝子送達において、潜在的な入力には、標的組織またはその脈管構造の表面における異なった分子構造、特異的な環境条件(例えば、pH、酸素濃度、サイトカイン、ケモカイン、タンパク質分解酵素または代謝産物の存在)、活発に発現した遺伝子のパターンおよびそれらのプロモーターの状態、またはどのような組み合わせであれそのような事象の組み合わせが含まれる。遺伝子に基づく論理ゲートを実行するための特に興味深いツールが「転写ターゲティング」であり、これは、(1)において定義されるように、「...、特定の細胞集団における治療遺伝子の発現が、遺伝子を標的細胞の状態に特異的なプロモーターの下流側に配置することによって調節されるアプローチの使用を伴う」。
最近の研究において、Nissimら(2)は、転写ターゲティングの潜在的可能性を、論理ANDゲートとして働くRNA型遺伝子回路を作製するための2つの合成プロモーターを考案することによって明らかにしている。2つのプロモーター(P1およびP2)を慎重に選択することによって、著者らはその後、このシステムを、P1およびP2の両プロモーターが活性である体内の唯一の細胞としてのがん細胞に4成分の免疫調節カセットの発現を限定するために用いた。このシステムでは、その4つの遺伝子の発現を制御するマスター転写因子(TF、出力、すなわち、目的とする遺伝子(GOI))の発現が、その2つの合成プロモーターの一方によってそれぞれが駆動される2つの別々のモジュールの協調した活性によって支配される。
しかしながら、このタイプの回路において用いられる戦略は、その2つのプロモーターの一方のみが活性であるときにおけるGOIのかなりの基礎的発現を必然的に許しており、そのような発現は様々な臨床応用においては、望まれない潜在的に有害な結果を引き起こす可能性がある。
1つの態様において、本発明は、目的とする転写物を所定の細胞状態において生じさせるための合成核酸発現システムであって、(a)目的とする前記転写物の5’側フラグメントをコードする少なくとも1つのエクソンと、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される第1のRNA配列とを含む第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列をコードする核酸配列に対して作動可能に連結される第1のプロモーターを含む第1の核酸配列、および(b)目的とする前記転写物の3’側フラグメントをコードする少なくとも1つのエクソンと、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される第2のRNA配列とを含む第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列をコードする核酸配列に対して作動可能に連結される第2のプロモーターを含む第2の核酸配列を含み、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターが異なっており、各々が前記所定の細胞状態によって、または前記所定の細胞状態を特徴づける因子によって特異的に調節され、
スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される前記第1のRNA配列が標的配列を含み、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される前記第2のRNA配列がガイド配列を含み、標的配列がガイド配列に対して相補的であり、標的配列のガイド配列へのハイブリダイゼーションがトランススプライシングを促進させ、かつ、標的配列およびガイド配列は前記所定の細胞状態の生来的トランスクリプトームのそれぞれの転写物との十分な塩基相補性を欠き、したがって前記所定の細胞状態の生来的トランスクリプトームの前記それぞれの転写物とのトランススプライシングを妨げ、
かつ、前記少なくとも1つのエクソンの各々が、不完全な目的とする転写物をコードし、前記第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列および第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列の組み合わされた/トランススプライシングされた少なくとも1つのエクソンを含むメッセンジャーRNAが、完全な目的とする転写物をコードする、合成核酸発現システムを提供する。
スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される前記第1のRNA配列が標的配列を含み、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される前記第2のRNA配列がガイド配列を含み、標的配列がガイド配列に対して相補的であり、標的配列のガイド配列へのハイブリダイゼーションがトランススプライシングを促進させ、かつ、標的配列およびガイド配列は前記所定の細胞状態の生来的トランスクリプトームのそれぞれの転写物との十分な塩基相補性を欠き、したがって前記所定の細胞状態の生来的トランスクリプトームの前記それぞれの転写物とのトランススプライシングを妨げ、
かつ、前記少なくとも1つのエクソンの各々が、不完全な目的とする転写物をコードし、前記第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列および第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列の組み合わされた/トランススプライシングされた少なくとも1つのエクソンを含むメッセンジャーRNAが、完全な目的とする転写物をコードする、合成核酸発現システムを提供する。
別の態様において、本発明は、目的とする転写物を生じさせるための合成核酸発現システムであって、(a)目的とする前記転写物の5’側フラグメントをコードする少なくとも1つのエクソンを含む第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列に対して作動可能に連結される第1のプロモーターを含む第1の核酸配列、および(b)目的とする前記転写物の3’側フラグメントをコードする少なくとも1つのエクソンを含む第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列に対して作動可能に連結される第2のプロモーターを含む第2の核酸配列を含み、前記少なくとも1つのエクソンの各々が、不完全な目的とする転写物をコードし、かつ、前記第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列および第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列の組み合わされた/トランススプライシングされた少なくとも1つのエクソンが、完全な目的とする転写物をコードする、合成核酸発現システムを提供する。
さらに別の態様において、本発明は、上記実施形態のいずれか1つに記載の合成発現システムの第1の核酸配列(a)および/または第2の核酸配列(b)を含む組成物またはキットを提供する。
なおも別の態様において、本発明は、上記実施形態のいずれか1つに記載の合成発現システムの第1の核酸配列(a)および/または第2の核酸配列(b)を含むベクターを提供する。すなわち、組成物またはベクターは(a)を単独で含む、または(b)を単独で含む、または(a)および(b)の両方を含む。
さらなる態様において、本発明は、上記実施形態のいずれか1つに記載の合成発現システムを含む真核生物細胞を提供する。
さらにさらなる態様において、本発明は、目的とする転写物を真核生物細胞において発現させる方法であって、前記真核生物細胞に上記実施形態のいずれか1つに記載の合成発現システムの第1の核酸配列(a)および第2の核酸配列(b)を導入すること、または前記真核生物細胞に上記実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つのベクターを導入することを含む方法を提供する。
なおもさらなる態様において、本発明は、細胞状態に伴う、または該細胞状態によって引き起こされる疾患に罹患する患者を処置するための方法であって、前記患者の細胞を前記患者に対する上記実施形態に記載の少なくとも1つのベクターと接触させることを含み、前記第1のプロモーターおよび第2のプロモーターの各々が独立して前記細胞状態によって特異的に調節され、かつ、目的とする前記転写物が、前記疾患の処置を容易にする転写物産物をコードし、それにより、目的とする前記転写物を前記細胞状態においてだけで発現させ、前記疾患を処置する、方法を提供する。
さらなる態様において、本発明は、2つ以上のベクターがインビトロで導入される真核生物細胞を選択するための方法であって、上記実施形態のいずれか1つに記載の2つの異なるベクターを施すことを含み、前記2つのベクターの一方が第1の核酸配列(a)を含み、しかし第2の核酸配列(b)を含まず、前記2つのベクターの他方が第2の核酸配列(b)を含み、しかし第1の核酸配列(a)を含まず、目的とする前記転写物が、細胞生存のために必須である転写物産物、または検出可能な遺伝子産物をコードする、方法を提供する。
特許ファイルまたは出願ファイルには、着色して作成された図面が少なくとも1つ含まれる。着色図面と一緒での本特許公報または本特許出願公開公報の複写物が請求および必要な手数料の支払いにより当局によって提供される。
電子回路とは異なり、生物学的システムでは、バイナリー出力をもたらすことができるバイナリー入力は、Nissimら(上掲)によって明らかにされるように、生じさせることが困難である:これは、モジュール1のデフォルト状態が実際には所望されるような「0」ではなく、むしろ減衰した「1」であるからである。課題は、この戦略の安全性を最適化し、その結果、モジュール1のデフォルト状態が実際に0であるようにすることである。
本発明は、mRNAのトランススプライシング(TS)の現象を利用することによって、すなわち、異なるmRNA種からのエクソンの二分子結合を利用することによってこの課題に対処する。なお、この現象は数多くの生物において十分に裏づけされており、現在、遺伝性または後天性の遺伝子障害を処置するために欠陥エクソンを取り換えるために詳しく研究されている(3)。TSを、トランススプライシングされることになるエクソンに隣接する対応イントロンの間での塩基対形成を促進させることによって、事前に選択された転写物に対して標的化することができる(これは「標的化TS」として示される)(例えば、(4~6)および本発明者自身の以前の成果(7)を参照のこと)。
本発明によって対処される別の課題が、二重トランスフェクション細胞についての選択を行うために一般に使用される抗生物質の不安定性などの難題に悩む、2つの異なるDNA発現ベクターが導入された真核生物細胞の選択である。
Nissimらと同様に、本発明は2モジュール型システムを提供する(図1)。モジュール1は、プロモーターP1によって駆動されるものであり、翻訳開始コドンを含むTF(または任意のGOI)の5’末端(これはエクソン1として示される)と、その後にTS「標的」イントロンとをコードする。極めて重要なことに、所望の「0」状態を保証すると、成熟型の潜在的に有害なタンパク質がこのモジュールから全く翻訳され得ない。モジュール2は、プロモーターP2によって駆動されるものであり、TS「ガイド」イントロンと、それに続く、タンパク質の残り部分をコードするエクソン2とを含む。同様に、モジュール2は機能的タンパク質を何ら産生させることができず、単独であるとき、モジュール2もまた、永続的に状態「0」である。モジュール2は、利益をもたらすTS事象についての可能性を増大させるようにTSガイド配列の縦列反復を有することができる。この設計を使用すると、システムは、P1およびP2の両プロモーターの同時機能に完全に依存するようになる:すなわち、無傷なTFまたはどのようなGOIであれそのポリペプチド産物が、プロモーターP1のみまたはプロモーターP2のみが活性である細胞において翻訳されることの危険性が完全に回避される。
標的細胞における標的配列が、矯正されるべき内因性遺伝子の転写物であるとき、トランススプライシングの「従来」使用に直面する主要な技術的課題は、どのようにしてシススプライシングとうまく競合させるかである(8)。ここで提案されるようなトランススプライシングを適用するとき、標的転写物が外因性遺伝子によってコードされる場合、シススプライシングを完全に回避することができる。これを、効率的なスプライシングプロセスを完了させるために必須である3つの基本的なイントロンエレメント、すなわち、アクセプタースプライス部位、ポリピリミジン域および分岐点を標的遺伝子からなくすことによって達成することができる(図2を参照のこと)。
本発明の合成核酸発現システムは、目的とする転写物の制御された発現を、異なるプレmRNA配列に分けられる2つ以上の不完全な部分にその配列を分割することによって可能にする基盤技術である。したがって、二重モジュールシステムに関して上記で説明されるように、それぞれのプレmRNA配列が別個のプロモーターの制御を受けることによって、2つのプレmRNA配列の発現を、2つ以上のプロモーターの2つ以上の異なる入力が同時に存在する場合でのみ保証することができる;その後、トランススプライシングにより、これら2つ以上の配列が所望の転写物に結合される。
この概念を、両方の入力が存在する細胞のみにおける目的とする転写物の特異的な発現のために、例えば、がん細胞の死を特異的に引き起こすタンパク質をがん患者におけるがん細胞において発現させるために、あるいは培養物における特異的な部分集団についての選択、例えば、骨髄から単離される集団における幹細胞または特異的免疫細胞などについての選択を行うために利用することができる。
実際、論理ANDゲートにより制御されたトランススプライシングが、両方の入力が存在する細胞のみにおける目的とする転写物(この場合、(2)において使用される蛍光タンパク質mKate2)の完全に特異的な発現のために利用できることが本発明に従って見出されている。TSを誘導するために使用されるイントロン配列のまさにその性質は重要でないことがさらに見出された。これは、本明細書中における首尾よく試験された多くの回路の各々が完全に異なるからである;試験された第1の回路の2つのモジュール(これらはTS1およびTS2と称される)において、これらのイントロン配列は、2つのmKate2エクソンを隔てる元のイントロンに基づいており、「基本的」TS設計を表している。これとは異なって、試験された第2の回路を構成する2つのモジュール(TS11およびTS12)におけるイントロン配列は、がん治療のための標的化TSの効力を最大化することを目指した研究(8)においてVolkerらのグループによって行われる徹底的な分析に基づいている。さらに、従来の技術を使用して、本システムが、結合ドメインおよびスプライシングドメインのわずかな変化によって非常に効率的であるように調整できることが本明細書中に示されている。このことは、本発明の合成核酸発現システムが万能的であることを明らかにする。両方のモジュールにおけるTS誘導エレメントおよびスプライシングエレメントの最適な構成が決定されると、この構成は、実際の治療用GOI、所与の臨床応用のために選定されるプロモーターまたは標的細胞の正体にかかわらず、すべての可能な回路において役立たせるために好適である。
上記を考慮すると、1つの態様において、本発明は、目的とする転写物を所定の細胞状態において生じさせるための合成核酸発現システムであって、(a)目的とする前記転写物の5’側フラグメントをコードする少なくとも1つのエクソンと、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される第1のRNA配列とを含む第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列をコードする核酸配列に対して作動可能に連結される第1のプロモーターを含む第1の核酸配列、および(b)目的とする前記転写物の3’側フラグメントをコードする少なくとも1つのエクソンと、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される第2のRNA配列とを含む第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列をコードする核酸配列に対して作動可能に連結される第2のプロモーターを含む第2の核酸配列を含み、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターが異なっており、各々が前記所定の細胞状態によって、または前記所定の細胞状態を特徴づける因子によって特異的に調節され、
スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される前記第1のRNA配列が標的配列を含み、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される前記第2のRNA配列がガイド配列を含み、標的配列がガイド配列に対して相補的であり、標的配列のガイド配列へのハイブリダイゼーションがトランススプライシングを促進させ、かつ、標的配列およびガイド配列は前記所定の細胞状態の生来的トランスクリプトームのそれぞれの転写物との十分な塩基相補性を欠き、したがって前記所定の細胞状態の生来的トランスクリプトームの前記それぞれの転写物とのトランススプライシングを妨げ、
かつ、前記少なくとも1つのエクソンの各々が、不完全な目的とする転写物をコードし、前記第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列および第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列の組み合わされた/トランススプライシングされた少なくとも1つのエクソンを含むメッセンジャーRNAが、完全な目的とする転写物をコードする、合成核酸発現システムを提供する。
スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される前記第1のRNA配列が標的配列を含み、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される前記第2のRNA配列がガイド配列を含み、標的配列がガイド配列に対して相補的であり、標的配列のガイド配列へのハイブリダイゼーションがトランススプライシングを促進させ、かつ、標的配列およびガイド配列は前記所定の細胞状態の生来的トランスクリプトームのそれぞれの転写物との十分な塩基相補性を欠き、したがって前記所定の細胞状態の生来的トランスクリプトームの前記それぞれの転写物とのトランススプライシングを妨げ、
かつ、前記少なくとも1つのエクソンの各々が、不完全な目的とする転写物をコードし、前記第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列および第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列の組み合わされた/トランススプライシングされた少なくとも1つのエクソンを含むメッセンジャーRNAが、完全な目的とする転写物をコードする、合成核酸発現システムを提供する。
ある特定の実施形態において、前記少なくとも1つのエクソンの各々が、目的とする転写物をコードしない、または目的とする転写物を産生させることができない。
ある特定の実施形態において、第1の核酸配列と、第2の核酸配列とが、同じ核酸分子に存在する。
ある特定の実施形態において、第1の核酸配列および第2の核酸配列が別々の核酸分子に存在する。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載の合成核酸発現システムは、プロモーターと、目的とする転写物の異なる不完全な転写物をそれぞれのエクソンがコードする少なくとも1つのエクソンを含むトランススプライシング可能なプレmRNA配列とを各々が含む3つ、4つ、5つまたは6つの核酸配列あるいはそれよりも多い核酸配列を含む。前記3つ、4つ、5つ、6つの核酸配列またはより多いトランススプライシング可能なプレmRNA配列の組み合わされた/トランススプライシングされた少なくとも1つのエクソンが、完全な目的とする転写物をコードする。
代替において、2つのトランススプライシング可能なプレmRNA配列は、それぞれのトランススプライシング可能なプレmRNA配列における二次構造または三次構造が引き寄せるために互いに結合することができるであろう。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載の合成発現システムは以下の少なくとも1つによって特徴づけられる:(i)スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される第1のRNA配列は第1の核酸配列の3’末端またはその近くに位置し、スプライシングのためのドナー部位を含み、しかし、スプライシングのためのアクセプター部位を欠き、かつ、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される第2のRNA配列は第2の核酸の5’末端またはその近くに位置し、スプライシングのためのアクセプター部位を含み、しかし、スプライシングのためのドナー部位を欠く;(ii)前記ガイド配列および前記標的配列の各々が、ヌクレオチド長さで約10~約500以上の間である結合部位配列を含む;(iii)スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される第1および第2のRNA配列は、前記ガイド配列および前記標的配列のハイブリダイゼーションを介して構造的に相互作用し、かつ、例えば、リボザイム機能などによって機能的に相互作用しない;(iv)前記第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列および前記第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列の各々が、内部結合配列および/または自己相補的配列を何ら有しない非構造化ヌクレオチドを含み、したがって、機能的リボザイムを形成するための正しい折り畳みのために要求される配列を欠く;または(v)前記ガイド配列および前記標的配列の各々が結合部位配列を含み、前記ガイド配列の結合部位は前記標的配列の結合部位に関して少なくとも1つまたは複数のミスマッチヌクレオチドを有する:あるいは本発明の合成発現システムは(i)~(v)のうちの2つ以上の組み合わせによって特徴づけられる。
上記実施形態のいずれか1つに記載の合成核酸発現システムは、第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列および第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列の両方が、第1のプロモーターおよび第2のプロモーターの各々の2つの異なる入力が同時に存在する場合でのみ転写されるという意味で、ブールANDゲートを提供する操作された遺伝子回路として働くことができる。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載の第1の核酸配列の3’末端はスプライシングのためのドナー部位を含み、しかし、スプライシングのためのアクセプター部位を欠き、かつ、第2の核酸の5’末端はスプライシングのためのアクセプター部位を含み、しかし、スプライシングのためのドナー部位を欠き、ただし、この場合、分岐点および/またはポリピリミジン域が第1または第2の核酸配列の少なくとも1つに存在する。上記で指摘されるように、数個のイントロンが第1または第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列に存在するならば、トランススプライシングを促進させないイントロンが、効率的なスプライシングプロセスを完了させるために必須である機能的なイントロンエレメントを含む。
上記実施形態のいずれか1つに記載の第1または第2の核酸配列の結合ドメインは、互いに完全にまたは部分的に相補的である標的配列またはガイド配列を含み、その結果として、それらの各々が結合部位配列を含み、この場合、結合部位配列はヌクレオチド長さで約10~約100、10~約200、10~約300、10~約400、または10~約500以上の間であり、例えば、ヌクレオチド長さで10~20、10~30、10~40、10~50、10~60、10~60、10~70、10~80、10~90、10~100、10~110、10~120、10~130、10~140、10~150、10~160、10~170、10~180、10~190、10~200、10~210、10~220、10~230、10~240、10~250、10~260、10~270、10~280、10~290、10~300、20~30、20~40、20~50、20~60、20~60、20~70、20~80、20~90、20~100、20~110、20~120、20~130、20~140、20~150、20~160、20~170、20~180、20~190、20~200、20~210、20~220、20~230、20~240、20~250、20~260、20~270、20~280、20~290、20~300、30~40、30~50、30~60、30~60、30~70、30~80、30~90、30~100、30~110、30~120、30~130、30~140、30~150、30~160、30~170、30~180、30~190、30~200、30~210、30~220、30~230、30~240、30~250、30~260、30~270、30~280、30~290、30~300、40~50、40~60、40~60、40~70、40~80、40~90、40~100、40~110、40~120、40~130、40~140、40~150、40~160、40~170、40~180、40~190、40~200、40~210、40~220、40~230、40~240、40~250、40~260、40~270、40~280、40~290、40~300、50~60、50~60、50~70、50~80、50~90、50~100、50~110、50~120、50~130、50~140、50~150、50~160、50~170、50~180、50~190、50~200、50~210、50~220、50~230、50~240、50~250、50~260、50~270、50~280、50~290、50~300、60~70、60~80、60~90、60~100、60~110、60~120、60~130、60~140、60~150、60~160、60~170、60~180、60~190、60~200、60~210、60~220、60~230、60~240、60~250、60~260、60~270、60~280、60~290、60~300、70~80、70~90、70~100、70~110、70~120、70~130、70~140、70~150、70~160、70~170、70~180、70~190、70~200、70~210、70~220、70~230、70~240、70~250、70~260、70~270、70~280、70~290、70~300、80~90、80~100、80~110、80~120、80~130、80~140、80~150、80~160、80~170、80~180、80~190、80~200、80~210、80~220、80~230、80~240、80~250、80~260、80~270、80~280、80~290、80~300、90~100、90~110、90~120、90~130、90~140、90~150、90~160、90~170、90~180、90~190、90~200、90~210、90~220、90~230、90~240、90~250、90~260、90~270、90~280、90~290、90~300、100~110、100~120、100~130、100~140、100~150、100~160、100~170、100~180、100~190、100~200、100~210、100~220、100~230、100~240、100~250、100~260、100~270、100~280、100~290、100~300、110~120、110~130、110~140、110~150、110~160、110~170、110~180、110~190、110~200、110~210、110~220、110~230、110~240、110~250、110~260、110~270、110~280、110~290、110~300、120~130、120~140、120~150、120~160、120~170、120~180、120~190、120~200、120~210、120~220、120~230、120~240、120~250、120~260、120~270、120~280、120~290、120~300、130~140、130~150、130~160、130~170、130~180、130~190、130~200、130~210、130~220、130~230、130~240、130~250、130~260、130~270、130~280、130~290、130~300、140~150、140~160、140~170、140~180、140~190、140~200、140~210、140~220、140~230、140~240、140~250、140~260、140~270、140~280、140~290、140~300、150~160、150~170、150~180、150~190、150~200、150~210、150~220、150~230、150~240、150~250、150~260、150~270、150~280、150~290、150~300、160~170、160~180、160~190、160~200、160~210、160~220、160~230、160~240、160~250、160~260、160~270、160~280、160~290、160~300、170~180、170~190、170~200、170~210、170~220、170~230、170~240、170~250、170~260、170~270、170~280、170~290、170~300、180~190、180~200、180~210、180~220、180~230、180~240、180~250、180~260、180~270、180~280、180~290、180~300、190~200、190~210、190~220、190~230、190~240、190~250、190~260、190~270、190~280、190~290、190~300、200~210、200~220、200~230、200~240、200~250、200~260、200~270、200~280、200~290、200~300、210~220、210~230、210~240、210~250、210~260、210~270、210~280、210~290、210~300、220~230、220~240、220~250、220~260、220~270、220~280、220~290、220~300、230~210、230~220、230~230、230~240、230~250、230~260、230~270、230~280、230~290、240~250、240~260、240~270、240~280、240~290、240~300、250~260、250~270、250~280、250~290、250~300、260~270、260~280、260~290、260~300、270~280、270~290、270~300、280~290、280~300、290~300などである。ある特定の実施形態において、結合部位配列は長さが約20~30、20~40、20~50、20~60である。
ある特定の実施形態において、結合部位は長さが約10ヌクレオチド、20ヌクレオチド、30ヌクレオチド、40ヌクレオチド、50ヌクレオチド、60ヌクレオチド、70ヌクレオチド、80ヌクレオチド、90ヌクレオチド、100ヌクレオチド、110ヌクレオチド、120ヌクレオチド、130ヌクレオチド、140ヌクレオチド、150ヌクレオチド、160ヌクレオチド、170ヌクレオチド、180ヌクレオチド、190ヌクレオチド、200ヌクレオチド、210ヌクレオチド、220ヌクレオチド、230ヌクレオチド、240ヌクレオチド、250ヌクレオチド、260ヌクレオチド、270ヌクレオチド、280ヌクレオチド、290ヌクレオチド、または300ヌクレオチドである。ある特定の実施形態において、結合部位配列はヌクレオチド長さで約50である。
結合ドメイン/部位のまさにその長さは、本発明のヌクレオチド配列の働きを左右するものではなく、例えば、下記の実施例において記載されるように、この技術分野において周知の方法を使用して容易に調整され得ることは強調されなければならない。さらに、結合ドメインに結合することができる転写物を標的細胞または細胞状態のゲノムがコードしないという意味で、結合ドメインは完全に合成であってもよいことに留意することは重要である。したがって、内因性転写物とのトランススプライシングの危険性が何ら存在しない。
ある特定の実施形態において、また、Poddarら(8)によれば、中央の2ヌクレオチドの標的ミスマッチが、上記実施形態のいずれか1つに記載の選択された結合ドメイン(BD)の中に実行され、これにより、ミスマッチが存在するBD(mBD)を生じさせている。これは、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)によるアデノシンのイノシンへの編集(A→I編集)を含めてアンチセンス効果のきっかけとなり得るであろう長い核二本鎖RNA の形成を防止するためである。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載の(結合ドメインの)標的配列は、ガイド配列に対して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、または150のミスマッチを含む。
ある特定の実施形態において、標的配列は、ガイド配列に対して、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%相補的であるヌクレオチド配列を含む。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載のスプライシング部位は、この技術分野では周知の、5’側スプライスドナー部位および3’側スプライス領域についてのコンセンサス配列の近くに設計される(Moore他、1993、The RNA World、Cold Spring Harbor Laboratory Press、p.303-358;および(8)を参照のこと)。加えて、5’側ドナースプライス部位および3’側スプライス領域として機能する能力を維持する改変されたコンセンサス配列が本発明の実施において使用される場合がある。簡単に記載すると、5’側スプライス部位のコンセンサス配列は、AG/GURAGU(式中、A=アデノシン、U=ウラシル、G=グアニン、C=シトシン、R=プリン、/=スプライス部位)である。3’側スプライス部位は、3つの別個の配列エレメント、すなわち、分岐点または分岐部位、ポリピリミジン域、および3’側コンセンサス配列(YAG)からなる。哺乳動物における分岐点のコンセンサス配列がYNYURAC(Y=ピリミジン;N=任意のヌクレオチド)である。下線が引かれたAが分岐形成部位である。ポリピリミジン域は、分岐点とスプライス部位アクセプターとの間に位置し、異なる分岐点の利用および3’側スプライス部位の認識のために重要である。最近では、U12依存性イントロンと呼ばれるプレmRNAイントロン(その多くがジヌクレオチドAUで始まり、ジヌクレオチドACで終わる)が記載されている。U12依存性イントロン配列、同様にまた、スプライスアクセプター/ドナー配列として機能するどのような配列もまた、本発明のプレmRNAトランススプライシング分子(RTM)を生成させるために使用される場合がある。
用語「プレmRNAトランススプライシング分子」(RTM)は、本明細書中では用語「合成核酸発現システム」およびその核酸配列成分と交換可能に使用される。
イントロンスプライスエンハンサー、分岐点またはポリピリミジン域がさらに、必要に応じてRTMに導入される場合がある。
アクセプタースプライス部位を標的結合ドメインから隔てるためのスペーサー/リンカー領域もまた、RTMに含まれる場合がある。スペーサー/リンカー領域は、例えば、(i)スプライシングされなかったRTMの翻訳をどのようなものであれ阻止するために機能するであろう終止コドン、および/または(ii)標的プレmRNAに対するトランススプライシングを増強する配列などの特徴を含むように設計される場合がある。
適切な3’側アクセプター部位の選定は簡単明瞭であり、適切な3’側アクセプター部位は、この技術分野において周知の方法を使用して、例えば、下記の実施例1および実施例2において例示される方法などを使用して、最適な産出をもたらすように容易に調整することができる。手短に言えば、検出可能なタンパク質、例えば、蛍光タンパク質などが、本発明の2つの組み合わされた核酸配列によってコードされ、選ばれた宿主細胞において発現させられる。蛍光強度はトランススプライシングの効率を反映しており、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)装置で測定される。この方法は、以下の限定されない3’側アクセプター部位が使用された下記の実施例において示されるようなスプライス部位および結合ドメインにおける変化体の膨大な量の分析を容易にする:(1)アルファ-フェトプロテイン(AFP;配列番号17);(2)コンセンサス(配列番号18);(3)単純ヘルペスウイルス(HSV-I、配列番号19);および(4)pHA16(変異型コンセンサス配列、配列番号20)。3’側アクセプター部位配列と結合ドメイン配列/立体配置とのある特定の組み合わせがトランススプライシング効率における最大で4倍の増大をもたらし得ることが見出された(実施例2)。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載の所定の細胞状態が、所定の細胞タイプ、組織タイプ、細胞周期時期、代謝状態および病理学的状態から選択される。
非常に多数の転写因子が病理学的状態および代謝状態の期間中に調節され、本発明は、そのような転写因子と結合することができるすべての転写調節配列に関連する細胞状態を意図することに留意しなければならない。既知の疾患調節された転写調節配列に関連する細胞状態の限定されない例には、がん、神経変性疾患、代謝疾患および炎症が含まれる。既知の疾患調節された転写調節配列を有する代謝状態の例には、高グルコース濃度または低グルコース濃度、あるいは増殖および/またはは老化の状態がある。
プロモーターは一般には、単一RNAの転写をその下流側のDNAから開始させるタンパク質が結合するDNAの配列として既知である。この用語には、本明細書中で使用される場合、古典的プロモーターの上流側または下流側の配列、例えば、転写の調節に寄与するエンハンサーなどが含まれる場合がある。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載の前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が独立して前記事前に定められた細胞状態によって特異的に誘導され、活性化され、または抑制される。
用語「誘導されるプロモーター」または用語「誘導性プロモーター」は、本明細書中で使用される場合、合成因子などの特異的な外的シグナルが結合した後でRNA分子の転写を開始させるプロモーターを示す。
用語「活性化されるプロモーター」または用語「活性化可能なプロモーター」は、本明細書中で使用される場合、内因性因子などの特異的な内因性シグナルが結合した後でRNA分子の転写を開始させるプロモーターを示す。
用語「抑制されるプロモーター」または用語「抑制性プロモーター」は、本明細書中で使用される場合、RNA分子の転写を特定の細胞状態においてダウンレギュレーションするプロモーターを示す。
ある特定の実施形態において、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が誘導性プロモーターまたは活性化可能なプロモーターである。
用語「に対して作動可能に連結されるプロモーター」は、本明細書中で使用される場合、下流側遺伝子の発現を促進させること/調節すること/開始させることができるプロモーターを示す。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載の前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が、細胞タイプ特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、疾患特異的プロモーター、または細胞周期応答性プロモーターである。
ある特定の実施形態において、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が疾患特異的プロモーターであり、例えば、腫瘍特異的プロモーター(例えば、良性腫瘍特異的プロモーターまたは悪性腫瘍特異的プロモーター)などである。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載のプロモーターが生来的/内因性プロモーターである。
特定の所望された結果のために選定される適切なプロモーターは本発明の具体的な応用を容易にしており、しかし、本発明の論理ANDゲートによってもたらされる安全な特異的発現、または結合ドメインおよびスプライシング部位によってもたらされる効率的なトランススプライシングのどちらにも影響を及ぼさない。代謝状態または病理学的状態によって調節されるプロモーターがこの技術分野では周知であり、また、細胞状態を特定のプロモーターの活性に基づいて検出するための方法が疾患について、例えば、がんなどについて開発されているので(9~11)、プロモーターの選定は簡単明瞭である。
組織特異的または細胞特異的なプロモーターの例が、例えば、組織特異的プロモーターが、B細胞、単球性細胞、白血球、マクロファージ、筋肉、膵腺房細胞、内皮細胞、星状膠細胞および肺などの具体的なタイプの細胞または組織において活性であることを教示するInvivoGeneウェブサイトにおいて見出される場合がある。したがって、限定されない例として、以下の組織特異的プロモーターが本発明との関連で使用される場合がある:B29プロモーター(B細胞)、CD14プロモーター(単球性細胞)、CD43プロモーター(白血球&血小板)、CD45プロモーター(造血細胞)、CD68プロモーター(マクロファージ)、デスミンプロモーター(筋肉)、エラスターゼ-1プロモーター(膵腺房細胞)、エンドグリンプロモーター(内皮細胞)、フィブロネクチンプロモーター(分化中の細胞、治癒中の組織)、Flt-1プロモーター(内皮細胞)、GFAPプロモーター(星状膠細胞)、GPIIbプロモーター(巨核球)、ICAM-2プロモーター(内皮細胞)、INF-βプロモーター(造血細胞)、Mbプロモーター(筋肉)、NphsIプロモーター(有足細胞)、OG-2プロモーター(骨芽細胞、オドンブラスト(odonblast))、SP-Bプロモーター(肺)、SYN1プロモーター(ニューロン)、WASPプロモーター(造血細胞)。
疾患特異的プロモーターの一例が腫瘍特異的プロモーターであり、例えば、黒色腫特異的プロモーター(例えば、Pleshkanら(12)によって教示されるような黒色腫特異的プロモーター)などである。具体的な例には、ヒトチロシナーゼ遺伝子、黒色腫阻害活性(MIA)遺伝子およびメラコルチン受容体遺伝子のプロモーターが含まれる。
がんの遺伝子治療において使用される組織特異的プロモーターで、本発明の発現システムにおいて使用することができる組織特異的プロモーターの他の例は、前立腺特異的抗原(PSA;前立腺)、前立腺特異的膜抗原(PSMA;前立腺および他の腫瘍の血管内皮)、プロバシン(前立腺)、ヒト腺性カリクレイン(hK2;前立腺)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP;グリア由来/神経膠腫)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP;グリア由来およびアスクロサイト(ascrocyte)/神経膠腫)、ミエリンプロテオリピドタンパク質(グリア由来/神経膠腫)、神経特異的エノラーゼ(ニューロン由来/SCLC)、ニューロンの特異的シナプシン1(ニューロン由来)、Ncx/Hox11L.1(神経堤由来細胞/神経芽細胞腫、アルブミン(肝臓/肝細胞癌)、サーファクタントタンパク質B(II型肺胞細胞および気管支細胞/肺がん)、チログロブリン(甲状腺/甲状腺癌)、および卵巣特異的プロモーター(卵巣由来)(13)である。
上記実施形態のいずれか1つに記載の第1の核酸配列および第2の核酸配列において使用されることがある細胞周期転写調節配列の例示的な対が国際公開WO2009/007980において、また、14~17において見出される。
疾患および組織特異的プロモーターを教示する上記参考文献の各々が、本明細書中に完全に開示されるかのように組み込まれる。
効率的発現システムの設計はこの技術分野では周知である。例えば、本発明の発現システムは、転写が開始される速度を決定するTATAボックスおよび他の上流側エレメント、同様にまた、最適な転写にそれらの組み合わせが寄与する種々のタイプのプロモーター、エンハンサーおよびポリアデニル化配列を含む場合がある(例えば、国際公開WO2009/007980を参照のこと)。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載のプロモーターは合成プロモーターである。
合成プロモーターを設計する技術は周知であり、例えば、(18)およびそれに引用される刊行物に従って、本発明の第1の核酸配列および第2の核酸配列において使用することができる。手短に言えば、プロモーターは、転写因子のための結合部位であるシス作用エレメントの組み合わせからなるモジュール式であり、遺伝子の発現パターンを主として決定するのが、このプロモーター構造である。シス作用エレメントがその生来的なプロモーター状況から取り出され、合成プロモーターにおける基本的構成要素として使用されるとき、多くのシス作用エレメントがその活性を保持しているという観察によって、プロモーターのモジュール性が裏づけられる。したがって、本発明者らは、合成プロモーターを構築する際に使用するためのシス作用エレメントと、合成プロモーターをそれに基づいて構築するための多くの最小プロモーターとの大きいコレクションを有する。上記実施形態のいずれか1つに記載の核酸分子において使用され得るであろうさらなる合成プロモーターの例が、本明細書中に完全に開示されるかのように参照によって組み込まれる米国特許出願公開第20170002378号(A1)に開示される。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載のプロモーターの各々は、本発明の合成核酸発現システムに含まれるどのような他のプロモーターとも異なっており、異なる入力シグナル/条件によって調節される。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載の第1のプロモーターは第2のプロモーターと異なっており、第1のプロモーターおよび第2のプロモーターは、異なる入力シグナル/条件によって調節される/活性化される/誘導される。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載の第2の核酸配列は1つのガイド配列の縦列反復を含む。
どのような場合でも、上記実施形態のいずれか1つに記載の第1または第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列におけるエクソン(1つまたは複数)は、目的とする転写物とは異なる不完全な転写物をコードする。ある特定の実施形態において、不完全な目的とする転写物は非機能的な転写物である、または非機能的なタンパク質をコードする。
ある特定の態様において、上記実施形態のいずれか1つに記載の目的とする転写物は、転写因子(例えば、合成転写因子)、ケモカイン、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、栄養要求性マーカー、酵素、増殖因子、レポーター遺伝子、短いヘアピンRNA(shRNA)、またはマイクロRNA(miRNA)をコードする。それぞれの可能性により、別個の実施形態が表される。合成転写因子の限定されない一例がGADであり、これは、酵母のGAL4 DNA結合ドメインがウイルスのVP16転写活性化ドメインに融合されたものである。
ある特定の実施形態において、前記第1の核酸配列および前記第2の核酸配列は同じ核酸分子に存在し、または前記第1の核酸配列および第2の核酸配列は別個の核酸分子に存在する;本発明の合成発現システムは以下の少なくとも1つによって特徴づけられる:(i)スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される第1のRNA配列は第1の核酸配列の3’末端またはその近くに位置し、スプライシングのためのドナー部位を含み、しかし、スプライシングのためのアクセプター部位を欠き、かつ、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される第2のRNA配列は第2の核酸の5’末端またはその近くに位置し、スプライシングのためのアクセプター部位を含み、しかし、スプライシングのためのドナー部位を欠く;(ii)前記ガイド配列および前記標的配列の各々が、ヌクレオチド長さで約10~約500以上の間である結合部位配列を含む;(iii)スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される第1および第2のRNA配列は、前記ガイド配列および前記標的配列のハイブリダイゼーションを介して構造的に相互作用し、かつ、例えば、リボザイム機能などによって機能的に相互作用しない;(iv)前記第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列および前記第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列の各々が、内部結合配列および/または自己相補的配列を何ら有しない非構造化ヌクレオチドを含み、したがって、機能的リボザイムを形成するための正しい折り畳みのために要求される配列を欠く;または(v)前記ガイド配列および前記標的配列の各々が結合部位配列を含み、前記ガイド配列の結合部位は前記標的配列の結合部位に関して少なくとも1つまたは複数のミスマッチヌクレオチドを有する:あるいは、合成発現システムは(i)~(v)のうちの2つ以上の組み合わせによって特徴づけられる;前記所定の細胞状態が、所定の細胞タイプ、組織タイプ、細胞周期時期、代謝状態および病理学的状態から選択される;前記不完全な目的とする転写物は非機能的な転写物であり、または非機能的なタンパク質をコードする;かつ、目的とする前記転写物は、転写因子(例えば、合成転写因子)、ケモカイン、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、栄養要求性マーカー、酵素、増殖因子、レポーター遺伝子、短いヘアピンRNA(shRNA)、またはマイクロRNA(miRNA)をコードする。
特定の実施形態において、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々は独立して前記事前に定められた細胞状態によって特異的に誘導され、または活性化され、かつ、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が、細胞タイプ特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、疾患特異的プロモーター、または細胞周期応答性プロモーターである。
特定の実施形態において、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々は疾患特異的プロモーターであり、例えば、腫瘍特異的プロモーターなどである。
本明細書中に開示される基盤技術は、特定の条件のもとにおけるインビトロでの転写物の制御された発現のために利用される場合がある。限定されない例において、本開示は、多数の抗生物質マーカーを必要とすることなく、真核生物細胞における多数のプラスミドの選択のために利用される場合がある。限定されない一例において、本発明は、例えば、6つの同時トランスフェクションされたプラスミドの選択を、わずか3つの抗生物質マーカーを使用して行うことを提供する。多数のトランスフェクション細胞の選択が、別個のプレmRNA配列を別個のDNA分子にコードさせることによって達成される場合がある。別の一例において、その生存のために不可欠な要素の非存在下で成長する栄養要求性細胞培養を、両方のDNA分子が存在する場合にだけ発現される、成長を可能にする遺伝子産物をコードする多数のDNA分子によりトランスフェクションされる細胞について選択するために使用することができる。両方の場合において、これら多数の別個の不完全な転写物の転写を制御するプロモーターは、同一であり、かつ構成的でさえあることが可能である。
したがって、別の態様において、本発明は、目的とする転写物を生じさせるための第2の合成核酸発現システムであって、(a)目的とする前記転写物の5’側フラグメントをコードする少なくとも1つのエクソンを含む第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列に対して作動可能に連結される第1のプロモーターを含む第1の核酸配列、および(b)目的とする前記転写物の3’側フラグメントをコードする少なくとも1つのエクソンを含む第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列に対して作動可能に連結される第2のプロモーターを含む第2の核酸配列を含み、前記少なくとも1つのエクソンの各々が、不完全な目的とする転写物をコードし、かつ、前記第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列および第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列の組み合わされた/トランススプライシングされた少なくとも1つのエクソンが、完全な目的とする転写物をコードする、第2の合成核酸発現システムを提供する。
したがって、上記第2の発現システムは、完全な目的とする転写物の産生を、目的とする前記転写物の5’側フラグメントをコードする前記少なくとも1つのエクソンと、目的とする前記転写物の3’側フラグメントをコードする前記少なくとも1つのエクソンとのトランススプライシングによって可能にする。
ある特定の実施形態において、第2の合成核酸発現システムは、プロモーターと、目的とする転写物の異なる不完全な転写物をそれぞれのエクソンがコードする少なくとも1つのエクソンを含むトランススプライシング可能なプレmRNA配列とを各々が含む3つ、4つ、5つまたは6つの核酸配列あるいはそれ以上の核酸配列を含む。前記3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上のトランススプライシング可能なプレmRNA配列の組み合わされた/トランススプライシングされた少なくとも1つのエクソンが、完全な目的とする転写物をコードする。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載のトランススプライシング可能なプレmRNA配列はさらに、1つのトランススプライシング可能なプレmRNA配列が別のトランススプライシング可能なプレmRNA配列に結合することを可能にする、したがってトランススプライシングを容易にする核酸配列を含む。
特に、前記第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列および第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列の各々がさらに、前記第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列が前記第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列に結合することを可能にする、したがってトランススプライシングを容易にする核酸配列を含む。
本発明の合成核酸発現システムのいずれか1つに含まれるトランススプライシング可能なプレmRNA配列のいずれか1つが2つ以上のエクソンを含むとき、これらのエクソンの間にはイントロンが点在しており、したがって、どのような構成であれ、効率的なシススプライシングプロセスを完了させるために必須である機能的なイントロンエレメント(アクセプタースプライス部位およびドナースプライス部位、ポリピリミジン域および分岐点)が、イントロンの切り取りを容易にするこれらのイントロンに常に存在するであろうことが理解されなければならない。しかしながら、第1または第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列の内部におけるシススプライシングは、完全な目的とする転写物を含むRNA、または完全な目的とする転写物をコードするRNAをもたらすことができないこともまた明らかになっている。さらに、下記において説明されるように、第1または第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列は、トランススプライシングのために必要なイントロンのシススプライシングを防止するように設計される。
上記実施形態のいずれか1つに記載の核酸構築物は、例えば、適切な配列のクローニングおよび制限、または、Narang他(1979)、Meth.Enzymol.68:90-99のホスホトリエステル法、Brown他(1979)、Meth.Enzymol.68:109-151のホスホジエステル法、Beaucage他(1981)、Tetra.Lett.、22:1859-1862のジエチルホスホルアミダイト法による直接科学的合成、および米国特許第4,458,066号の固体支持体法を含めてどのような方法であれ好適な方法によって調製される場合がある。
さらに別の態様において、本発明は、上記実施形態のいずれか1つに記載の合成発現システムの第1の核酸配列(a)および/または第2の核酸配列(b)を含む組成物またはキットを提供する。
MatuskovaおよびDurinikova(19)は、導入遺伝子の細胞内への送達のために、ウイルス性および非ウイルス性の2つのシステムがあることを教示する。非ウイルス性手法が、ポリマーナノ粒子、脂質、リン酸カルシウム、DNA被覆微小粒子またはmRNAのエレクトロポレーション/ヌクレオフェクションまたはバイオリスティック送達によって表される。非ウイルス性手法はまた、トランスポゾンシステム、例えば、’’Sleeping Beauty’’として一般に既知のトランスポゾンシステムなどを提供する(Sleeping Beautyトランスポゾンを使用するプロトコルについては、例えば、(20)を参照のこと)。
ウイルス性手法は、DNAが宿主細胞のクロマチンに組み込まれるか否かに依存して本発明に従って使用することができる2つの主要なタイプのベクターを提供する。レトロウイルスベクター、例えば、ガンマレトロウイルスまたはレンチウイルスに由来するレトロウイルスベクターなどは、組み込まれたプロウイルスとして核に存続し、細胞分裂とともに複製する。他のタイプのベクター(例えば、ヘルペスウイルスまたはアデノウイルスに由来するベクター)はエピソーム形態で細胞に留まる。
なおも別の態様において、本発明は、上記実施形態のいずれか1つに記載の合成発現システムの第1の核酸配列(a)および/または第2の核酸配列(b)を含むベクターを提供する。すなわち、組成物またはベクターは(a)を単独で含む、または(b)を単独で含む、または(a)および(b)の両方を含む。
ある特定の実施形態において、ベクターは上記実施形態のいずれか1つに記載の合成発現システムの第1の核酸配列(a)または第2の核酸配列(b)を含み、しかし第1の核酸配列(a)および第2の核酸配列(b)の両方を含まない。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載のベクターは、DNAベクター、例えば、プラスミドベクターまたはウイルスベクターなど、あるいは非ウイルス性ベクター、例えば、ポリマーナノ粒子、脂質、リン酸カルシウム、DNA被覆微小粒子またはトランスポゾンなどである。
ある特定の実施形態において、DNAベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、ガンマウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルスおよびヘルペスウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来する改変ウイルスから選択されるウイルスベクターである。
さらなる態様において、本発明は、上記実施形態のいずれか1つに記載の合成発現システムを含む真核生物細胞を提供する。
さらにさらなる態様において、本発明は、目的とする転写物を真核生物細胞において発現させる方法であって、前記真核生物細胞に上記実施形態のいずれか1つに記載の合成発現システムの第1の核酸配列(a)および第2の核酸配列(b)を導入すること、または前記真核生物細胞に上記実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つのベクターを導入することを含む方法を提供する。
ある特定の実施形態において、上記実施形態のいずれか1つに記載の合成発現システムの第1の核酸配列(a)または第2の核酸配列(b)、あるいは上記実施形態のいずれか1つに記載のベクターを含む組成物は、医薬的に許容され得るキャリアをさらに含む医薬組成物である。
ある特定の実施形態において、前記導入することが、インビトロ、インビボまたはエクスビボで実施される。
なおもさらなる態様において、本発明は、細胞状態に伴う、または該細胞状態によって引き起こされる疾患に罹患する患者、または前記患者から得られる細胞を処置する際における使用のための上記実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つのベクターであって、前記使用が、前記患者の細胞を前記ベクターの少なくとも1つと接触させることを含み、前記第1のプロモーターおよび第2のプロモーターの各々が独立して前記細胞状態によって特異的に調節され、かつ、目的とする前記転写物が、前記疾患の処置を容易にする転写物産物をコードし、それにより、目的とする前記転写物を前記細胞状態においてだけで発現させ、前記疾患を処置する、ベクターを提供する。
類似する態様において、本発明は、細胞状態に伴う、または該細胞状態によって引き起こされる疾患に罹患する患者を処置するための方法であって、前記患者の細胞を前記患者に対する上記実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つのベクターと接触させることを含み、前記第1のプロモーターおよび第2のプロモーターの各々が独立して前記細胞状態によって特異的に調節され、かつ、目的とする前記転写物が、前記疾患の処置を容易にする転写物産物をコードし、それにより、目的とする前記転写物を前記細胞状態においてだけで発現させ、前記疾患を処置する、方法を提供する。
別の類似する態様において、本発明は、細胞状態に伴う、または該細胞状態によって引き起こされる疾患に罹患する患者、または前記患者から得られる細胞を処置するための医薬品の製造における上記実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つのベクターの使用であって、前記患者の細胞を前記ベクターの少なくとも1つと接触させることを含み、前記第1のプロモーターおよび第2のプロモーターの各々が独立して前記細胞状態によって特異的に調節され、かつ、目的とする前記転写物が、前記疾患の処置を容易にする転写物産物をコードし、それにより、目的とする前記転写物を前記細胞状態においてだけで発現させ、前記疾患を処置する、使用を提供する。
ある特定の実施形態において、上記の使用または方法は、前記細胞を2つの異なるベクターと接触させることを含み、この場合、前記2つのベクターの一方が第1の核酸配列(a)を含み、しかし第2の核酸配列(b)を含まず、前記2つのベクターの他方が第2の核酸配列(b)を含み、しかし第1の核酸配列(a)を含まない。
ある特定の実施形態において、前記接触させることが、インビトロ、インビボまたはエクスビボで実施される。
接触させることがインビトロまたはエクスビボで実施される場合には、患者からの細胞または他の対象からの細胞が得られ、前記少なくとも1つのベクターと接触させられ、その後、患者に戻される(例えば、養子細胞移入療法)。したがって、少なくとも1つのベクターにより形質導入される細胞は、疾患を処置する際における使用のためのものであり、または疾患を処置するための医薬品の製造における使用のためのものである。
接触させることがインビボで実施されることになった場合には、治療効果的な量の前記少なくとも1つのベクターが患者に投与され、ベクターがその部位で標的細胞と接触する。
ある特定の実施形態において、細胞状態が、細胞タイプ、組織タイプ、細胞周期時期、代謝状態、病理学的状態、分化状態、エピジェネティック状態および活性化状態から選択される。
ある特定の実施形態において、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が独立して前記事前に定められた細胞状態によって特異的に誘導され、または活性化される。
ある特定の実施形態において、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が独立して、細胞タイプ特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、疾患特異的プロモーター、分化状態特異的プロモーター、エピジェネティック状態特異的プロモーター、活性化状態特異的プロモーターおよび細胞周期応答性プロモーターから選択される。
ある特定の実施形態において、第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列および第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列におけるエクソン(1つまたは複数)は、目的とする転写物とは異なる不完全な転写物をコードし、この不完全な目的とする転写物は非機能的な転写物であり、または非機能的なタンパク質をコードする。
ある特定の実施形態において、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が疾患特異的プロモーターであり、例えば、腫瘍特異的プロモーターなどである。
ある特定の実施形態において、患者はヒト患者である。
ある特定の実施形態において、疾患はがんであり、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が腫瘍特異的プロモーターである。
ある特定の態様において、前記疾患の処置を容易にする転写物産物は、転写因子(例えば、合成転写因子)、ケモカイン、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、酵素、増殖因子、レポーター遺伝子、短いヘアピンRNA(shRNA)、またはマイクロRNA(miRNA)である。
ある特定の実施形態において、上記方法は、前記細胞を2つの異なるベクターと接触させることを含み、この場合、前記2つのベクターの一方が第1の核酸配列(a)を含み、しかし第2の核酸配列(b)を含まず、前記2つのベクターの他方が第2の核酸配列(b)を含み、しかし第1の核酸配列(a)を含まず、前記接触させることが、インビトロ、インビボまたはエクスビボで実施され、前記細胞状態が、細胞タイプ、組織タイプ、細胞周期時期、代謝状態、病理学的状態、分化状態、エピジェネティック状態および活性化状態から選択され、前記疾患の処置を容易にする前記転写物産物が、転写因子(例えば、合成転写因子)、ケモカイン、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、酵素、増殖因子、レポーター遺伝子、短いヘアピンRNA(shRNA)、またはマイクロRNA(miRNA)である。
ある特定の実施形態において、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が独立して、前記事前に定められた細胞状態によって特異的に誘導され、または活性化され、あるいは前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が独立して、細胞タイプ特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、疾患特異的プロモーター、分化状態特異的プロモーター、エピジェネティック状態特異的プロモーター、活性化状態特異的プロモーターまたは細胞周期応答性プロモーターから選択される。
ある特定の実施形態において、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が疾患特異的プロモーターであり、例えば、腫瘍特異的プロモーターなどであり、前記患者がヒト患者である。
ある特定の実施形態において、疾患はがんであり、前記真核生物細胞が腫瘍細胞であり、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が腫瘍特異的プロモーターである。
さらなる態様において、本発明は、2つ以上のベクターがインビトロで導入される真核生物細胞を選択するための方法であって、上記実施形態のいずれか1つに記載の2つの異なるベクターを施すことを含み、前記2つのベクターの一方が第1の核酸配列(a)を含み、しかし第2の核酸配列(b)を含まず、前記2つのベクターの他方が第2の核酸配列(b)を含み、しかし第1の核酸配列(a)を含まず、目的とする前記転写物が、細胞生存のために必須である転写物産物、または検出可能な遺伝子産物をコードする、方法を提供する。
ある特定の実施形態において、選択するための上記方法は、上記実施形態のいずれか1つに記載の3つ以上の異なるベクターを施すことを含み、この場合、それぞれのベクターが、他のベクターによって運ばれるどのような他の核酸配列とも異なるエクソンをコードする核酸配列を運び、それぞれのエクソンが、目的とする異なる不完全な転写物を含み、または目的とする異なる不完全な転写物をコードする。
ある特定の実施形態において、選択するための上記方法において使用される前記第1のプロモーターおよび第2のプロモーターの各々が構成的プロモーターである。
ある特定の実施形態において、前記第1のプロモーターおよび第2のプロモーターの各々が誘導性プロモーターまたは活性化可能なプロモーターである。誘導性プロモーターまたは活性化可能なプロモーターは同一である場合があり、または異なる場合があり、同一の入力または異なる入力によって調節される/誘導される/活性化される場合がある。
ある特定の実施形態において、真核生物細胞は栄養要求体であり、細胞の生存のために必須である要素を欠く成長培地において成長し、細胞生存のために必須である前記遺伝子産物は栄養要求性マーカー(例えば、「一般に使用される栄養要求性マーカー」のもとでWikipediaにおいて教示されるようなもの)である。
ある特定の実施形態において、検出可能な遺伝子産物は、酵素、例えば、ルシフェラーゼなど、または蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)などである。
ある特定の実施形態において、真核生物細胞は、酵母、マウス、ラット、昆虫、魚類、鳥類またはヒトの細胞である。
(定義)
用語「核酸配列」は、本明細書中で使用される場合、当該配列それ自体を示し、また同様に、核酸配列を含む核酸分子を示す。例えば、核酸配列を含む合成核酸発現システムは、核酸配列を含む核酸分子を含む合成核酸発現システムと同義である。
用語「核酸配列」は、本明細書中で使用される場合、当該配列それ自体を示し、また同様に、核酸配列を含む核酸分子を示す。例えば、核酸配列を含む合成核酸発現システムは、核酸配列を含む核酸分子を含む合成核酸発現システムと同義である。
本出願から成熟する特許の存続期間中には、多くの関連したプロモーター/発現産物/結合ドメイン/スプライス部位が発見されるであろうことが予想され、そして、用語「転写調節配列」、用語「結合ドメイン」、用語「スプライシング部位」、用語「アクセプター部位」、用語「ドナー部位」など、および用語「発現産物」の範囲は、すべてのそのような新しい配列およびポリペプチドを含むことが意図される。
本明細書中で使用される場合、用語「対象」または用語「個体」または用語「動物」または用語「患者」または用語「哺乳動物」は、診断、予後診断または治療が所望される対象を何であれ示し、特に哺乳動物対象を示し、例えば、ヒトを示す。
用語「処置する」は、本明細書中で使用される場合、所望の生理学的効果を得る手段を示す。効果は、疾患および/または該疾患に起因すると考えられる症状を部分的または完全に治癒させるという点で治療的である場合がある。この用語は、疾患を抑制すること、すなわち、その発症を停止させること、または疾患を改善すること、すなわち、疾患の退行を引き起こすことを示す。
本発明による使用のための医薬組成物は、1つまたは複数の生理学的に許容され得るキャリアまたは賦形剤を使用して従来の様式で配合される場合がある。キャリア(1つまたは複数)は、組成物のそれ以外の成分との適合性があり、かつ、その受容者に対して有害ではないという意味で「許容され得る」ものでなければならない。
投与方法には、非経口経路、例えば、静脈内経路、腹腔内経路、筋肉内経路、皮下経路、粘膜(例えば、経口、鼻腔内、口腔、膣、直腸、眼内)経路、クモ膜下腔内経路、局所経路および皮内経路が含まれるが、これらに限定されない。投与は全身的または局所的であることが可能である。ある特定の実施形態において、医薬組成物は経口投与のために適合化される。
用語「キャリア」は、活性な薬剤が一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤またはビヒクルを示す。医薬組成物におけるキャリアは、結合剤、例えば、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン(ポリビドンまたはポビドン)、トラガカントゴム、ゼラチン、デンプン、ラクトースまたはラクトース一水和物など、崩壊剤、例えば、アルギン酸、トウモロコシデンプンおよび類似物など、滑剤または界面活性剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはラウリル硫酸ナトリウムなど、ならびに流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素などを含む場合がある。
キャリア、投与様式、投薬形態物などの以下の例示は、キャリア、投与様式、投薬形態物などが本発明と一緒での使用のために選択されることがある既知の可能性として列挙される。しかしながら、当業者は、選択される所与の配合物および投与様式がどれも、所望の結果を達成することを判定するために最初に試験されなければならないことを理解するであろう。
用語「治療効果的な量」は、本明細書中で使用される場合、組織、系、動物またはヒトの求められている生物学的応答または医学的応答、すなわち、細胞状態に伴う、または該細胞状態によって引き起こされる疾患(例えば、がんなど)の処置を誘発することになる核酸配列/分子またはベクターの量を意味する。この量は、とりわけ、処置されるべき状態のタイプおよび重篤度、ならびに治療計画に依存して、上記で記載されるような所望の治療効果を達成するために効果的でなければならない。治療効果的な量は典型的には、適切に設計された臨床試験(用量範囲研究)において決定され、当業者は、効果的な量を決定するためにそのような試験をいかにして適切に行うかを理解しているであろう。一般に知られているように、効果的な量は、受容体に対するリガンドの親和性、体内におけるその分布プロフィル、様々な薬理学的パラメーター(例えば、体内における半減期など)を含めて様々な要因に、また、もしあれば、望まれていない副作用に、ならびに年齢および性別その他などの要因に依存する。
別途示されている場合を除き、本明細書において使用されるすべての数字は、すべての場合において用語「約」によって修飾されるとして理解されるものとする。したがって、反することが示されている場合を除き、本明細書において示される数値パラメーターは、本発明によって得られることになる所望の特性に依存して最大でプラス10%またはマイナス10%まで変化することがある近似値である。
次に、本発明が以下の限定されない実施例によって例示される。
実施例1.目的とする遺伝子の特異的かつ効率的な発現
全般的考慮事項。このプロジェクトにおける本発明者らの主な目的は、TSに基づく本発明者らの新しい回路の概念実証を実際に示すこと、すなわち、生細胞の内部において以下のことを示すことであった:
全般的考慮事項。このプロジェクトにおける本発明者らの主な目的は、TSに基づく本発明者らの新しい回路の概念実証を実際に示すこと、すなわち、生細胞の内部において以下のことを示すことであった:
2モジュール型回路の成熟タンパク質産物が、モジュール1(これはプロモーターP1によって駆動される)およびモジュール2(これはプロモーターP2によって駆動される)の両方が共発現されるときに合成されるだけであり、しかし、2つのモジュールのそれぞれが単独で発現されるときには全く存在しない。
ゼロのバックグラウンドが本発明者らの設計に対しては固有であるが、その実際の産出を最大化すること、すなわち、両方のモジュールが完全に活性であるときに合成される成熟タンパク質産物のレベルを最大化することは、入念な最適化ステップが要求されるであろう(例えば、元のNissim論文(2)、とりわけ、補足資料を参照のこと)。これらは当然のことながら、本発明者らの現在のiGEM努力の範囲を超えるものであるが、それらは間違いなく、本発明者らの将来の計画の中心にある。このシステムは万能的であることを忘れてはならない。両方のモジュールにおけるTS誘導エレメントの最適な構成が決定されると、この構成は、実際の治療用GOI、所与の臨床応用のために選定されるプロモーターまたは標的細胞の正体にかかわらず、すべての可能な回路において役立たせることができるであろう。
実験設計。この目標を達成するために、以下の構成要素を含む実験的な細胞内システムが組み立てられている:
細胞:増殖およびトランスフェクションが容易であるヒトHEK293T細胞(293T ATCC(登録商標);CRL-3216(商標)ヒト胚性腎臓)が選ばれている。
遺伝子送達:本発明者らの予備実験では、改良された脂質試薬(例えば、FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega)など)を使用するHEK293T細胞におけるプラスミドDNAの一過性発現は、細胞死を実質的に全く伴うことなく100%の効力に近づくことができることが見出されている(図示されず)。
目的とする遺伝子:概念実証を実際に示すために、フローサイトメトリーによって検出することが容易であるNissimらによって使用される同じmKate2レポーター遺伝子が使用されている((2)および図1を参照のこと)。(2)でのような2つのエクソンへの遺伝子の元の分割は保たれている。
回路:本研究において、2つのモジュールをそれぞれが含む2つの異なる回路が組み立てられ、分析されている(詳細については下記を参照のこと)。プロモーター、ポリA部位、その他などのエレメントを共有するが、TSをこれら2つの回路のそれぞれにおいて誘導するために選択されるイントロン配列は完全に異なる。第1の回路の2つのモジュール(これらはTS1およびTS2と称される)において、これらのイントロン配列は、(2)において使用される2つのmKate2エクソンを隔てる元のイントロンに基づいており、「基本的」TS設計を表している。これとは異なって、第2の回路を構成する2つのモジュール(TS11およびTS12)におけるイントロン配列は、がん治療のための標的化TSの効力を最大化することを目指した研究(8)においてVolker Patzel(シンガポール国立大学、mRNA TSにおける世界的リーダー)のグループによって行われる徹底的な分析に基づいている。
ベクター:モジュール1をそれぞれの回路において発現させるために、発現ベクターpLN193が使用され、モジュール2についてはpLN75が使用されている。これらのベクターに組み込まれる種々の構成要素の説明がそれらの完全なDNA配列を含めて、(2)の補足資料において得ることができる。
2つの回路の遺伝子組成:
モジュールTS1:モジュールTS1の発現がSSX1pプロモーターによって駆動され、このプロモーターは、Nissimらによって使用されたものであり、HEK293細胞において活性である(2)。上記で論じられるように、本発明者らの回路は、2つの外部導入モジュールの転写物の間で起こるように設計されるTS事象に基づいており、したがって、最適な誘導配列を選択する際における完全な自由度を可能にしている。ここでは、mKate2のエクソン1の下流側において、モジュールTS2に対するTS誘導配列として役立たせるための5’側基礎ステムを含む、Nissimら(2)によって用いられるmiR1イントロンの最初の198bpが導入されている。この配列の後には、(2)における第1モジュールの34bpのリンカーと、HSV1pAポリA部位とが続く。
モジュールTS1:モジュールTS1の発現がSSX1pプロモーターによって駆動され、このプロモーターは、Nissimらによって使用されたものであり、HEK293細胞において活性である(2)。上記で論じられるように、本発明者らの回路は、2つの外部導入モジュールの転写物の間で起こるように設計されるTS事象に基づいており、したがって、最適な誘導配列を選択する際における完全な自由度を可能にしている。ここでは、mKate2のエクソン1の下流側において、モジュールTS2に対するTS誘導配列として役立たせるための5’側基礎ステムを含む、Nissimら(2)によって用いられるmiR1イントロンの最初の198bpが導入されている。この配列の後には、(2)における第1モジュールの34bpのリンカーと、HSV1pAポリA部位とが続く。
モジュールTS2:このモジュールは、モジュールTS1の転写物との最適な標的化されたTSを容易にして、無傷のmKate2コード配列を生成させるために設計される。その発現がH2A1pプロモーターによって駆動され(2)、この後には、40bpのリンカー(プラスミドpTB913から得られる好熱性桿菌のカナマイシン耐性遺伝子(GenBankアクセションK02551.1)における421位~460位)と、TS1のTS結合ドメイン(BD)としての3’側基礎ステム、および完全なアクセプタースプライス部位を含むmiR1イントロンの残り219bpとが続き、その後に、mKate2のエクソン2、40bpのリンカー(カナマイシン耐性遺伝子の361位~400位)、BamHIおよびHindIIIの制限部位、ならびにHSV1pAポリA部位が続く。
モジュールTS11:TS1に類似して、このモジュールのプロモーターはSSX1pである。モジュールTS11では、mKate2のエクソン1のすぐ3’側において、強力なドナースプライス部位を完全に保存するために、かつ、TS誘導配列に先行するリンカーを提供するために、mKate2イントロンの最初の50bpが挿入された(2)。ここでは、(8)において最近報告されている最適化されたTSエレメントを適合させることが選ばれている。この論文には、がんの自殺遺伝子療法としての、内因性のα-フェトプロテイン(AFP)転写物に対する単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼをコードする配列のTS媒介ターゲティングの活性および特異性の両方を改善するRNA構造の設計が十分に詳しく記載されている。特に、AFPのイントロン5(NCBI参照配列:NG_023028.1)に由来する最適化された50bpの配列が選ばれている。それにもかかわらず、(8)での場合と全く同じ配列を適合化することは、AFP遺伝子が((8)において図S1Cに示されるように)HEK293細胞で発現され、予想されたTSが内因性転写物への結合によって弱まることがあるとして問題を引き起こしている。そのような望まれていない結果を回避し、それにもかかわらず、選択された区間の好都合な特性を保持するために、イントロン5からの50bpの配列を反転させることが単に選ばれている。この反転配列はまた、「アンチセンス効果のきっかけとなり得るであろう長い核二本鎖RNAの形成を防止するために」Patzelのグループによって導入される人為的な2塩基ミスマッチを保持する(8)。モジュール1における最終的なTS誘導配列は下記の通りである(ミスマッチが太字で表される):
このTS誘導配列の後には、(2)での場合のように、34bpのリンカーと、HSV1pAポリA部位とが続く。
モジュールTS12:発現がH2A1pプロモーターによって駆動される。プロモーター配列の後には、カナマイシン耐性遺伝子の40bpのリンカー(421位~460位)が続く。モジュールTS12におけるTS結合ドメイン(BD)は、2ヌクレオチドのミスマッチ(太字)を有する、AFPに基づいたモジュール1のTS誘導配列の逆相補体である。
このTS BDの後には、HSV1pAポリAに先行する34bpのリンカー(2)、ならびにイントロンスプライスエンハンサー、分岐点、ポリピリミジン域およびアクセプタースプライス部位(すべてが(8)から得られる)、続いてmKate2のエクソン2、40bpのリンカー(カナマイシン耐性遺伝子の361位~400位)およびHSV1pAポリA部位が続く。
4つすべての新しいモジュールのプラスミドマップについては、図3A~図3Dを参照のこと。
結果。概念実証を得るために、HEK293細胞における同時トランスフェクション実験が設計されている。最初に、本発明者らのシステムのために選択されている2つのプロモーター、すなわち、SSX1p(モジュールTS1およびモジュールTS11)およびH2A1p(モジュールTS2およびモジュールTS12)が実際にHEK293T細胞において活性であることが確認された。この目的のために、HEK293細胞が、無傷のmKate2タンパク質をSSX1pプロモーターのもとでコードするプラスミドpLN74、またはECFPがH2A1pプロモーターによって駆動されるプラスミドpLN75のどちらかにより一過性にトランスフェクションされている(2)。実際、無関係なDNAではなく、どちらのプラスミドでもそのトランスフェクションにより、それぞれのタンパク質の強い蛍光がもたらされた(図示されず)。
その後、引き続いて、本発明者らの2つの新しい回路の機能を評価した。本発明者らの設計では、2つのモジュールのそれぞれが単独で導入されたときの完全なGOI(本発明者らの場合はmKate2フルオロフォア)の発現が何ら保証されていない。GOIの発現を可能にする唯一のシナリオが、2つのモジュールの転写物の間における成功したTSである。したがって、HEK293T細胞が、すべてのトランスフェクションにおけるDNAの最終量を一定に保つために無関係なDNAを使用して、2つの回路のモジュール1プラスミドまたはモジュール2プラスミドのどちらかにより単独で、あるいはこれら2つの1:1混合物により一過性にトランスフェクションされている。mKate2をコードするプラスミドpLN74は、トランスフェクション効力を評価するために役立った。同じスキームに沿って行われる2つの独立した実験の結果が図4に示される。
実際、予想通り、細胞がそれぞれのモジュールにより別個にトランスフェクションされたときには、mKate2の蛍光が全く検出できず、それにもかかわらず、2つのモジュールによる細胞の同時トランスフェクションの後では、明瞭なシグナルが明白であった。
結論。
これらの実験は、本発明者らの手法の概念実証を明確に実際に示すものである:
― 両方の回路において、それぞれのモジュールの単独でのトランスフェクションは、(閉じた回路をそのような状況のもとではどのような状況であれ簡単にはもたらすことができないため、予想の通り)ゼロの蛍光を生じさせた:したがって、TSに基づいた本発明者らの概念は、安全性の課題に対する解決策を提供するものである。
- 2つのモジュールの同時トランスフェクションは回路を閉じさせ、これにより、明瞭なmKate2蛍光をもたらした。
- TSを((8)に基づいて)改善するために設計されていたいくつかの構成要素を含む第2の回路は実際に、「基本的」TSを導くだけであった第1の回路よりも大きい効力を示した。
これらの実験は、本発明者らの手法の概念実証を明確に実際に示すものである:
― 両方の回路において、それぞれのモジュールの単独でのトランスフェクションは、(閉じた回路をそのような状況のもとではどのような状況であれ簡単にはもたらすことができないため、予想の通り)ゼロの蛍光を生じさせた:したがって、TSに基づいた本発明者らの概念は、安全性の課題に対する解決策を提供するものである。
- 2つのモジュールの同時トランスフェクションは回路を閉じさせ、これにより、明瞭なmKate2蛍光をもたらした。
- TSを((8)に基づいて)改善するために設計されていたいくつかの構成要素を含む第2の回路は実際に、「基本的」TSを導くだけであった第1の回路よりも大きい効力を示した。
実施例2.スプライシング部位または結合ドメインを調整することによるTS効率の改善
実施例1で使用される論理ANDゲートを、トランススプライシング効率を改善することを目指す以下の実験において使用した。SSX1p-を、ドナー部位を含む第1の構築物にクローン化した。H2A1p-を、3’側アクセプター部位を含む第2の構築物にクローン化した。すべての構築物が、結合ドメイン(BD)、レポーター遺伝子(mKAte2)の半分の配列、すなわち、第1の構築物および第2の構築物と合致する前半分および後半分、ならびにイントロン配列、すなわち、miRV3(50bp)を含む。
実施例1で使用される論理ANDゲートを、トランススプライシング効率を改善することを目指す以下の実験において使用した。SSX1p-を、ドナー部位を含む第1の構築物にクローン化した。H2A1p-を、3’側アクセプター部位を含む第2の構築物にクローン化した。すべての構築物が、結合ドメイン(BD)、レポーター遺伝子(mKAte2)の半分の配列、すなわち、第1の構築物および第2の構築物と合致する前半分および後半分、ならびにイントロン配列、すなわち、miRV3(50bp)を含む。
本発明者らのANDゲートにおけるトランススプライシングを強化するために、改変が、実施例1に記載される当初構築物の3’側アクセプター部位に対して、またはBD部位に対して行われている(TS11およびTS12がここではpKR3およびpKR4aとしてそれぞれ示され、これらをサンプル1において試験し、再評価した)。HEK293T細胞が本発明者らの設計の様々な組み合わせによりトランスフェクションされた。
サンプル2~4では、様々な3’側アクセプター部位配列が調べられ、サンプル6~19では、様々な結合ドメイン配列および構成が調べられる(表1および表2を参照のこと)。
コンセンサス-「コンセンサス」なアクセプター配列、ドナー配列および分岐配列。(Smith,C.W.J.、Porro,E.B.、Patton,J.G.およびNadal-Ginard,B.(1989).Scanning from an independently specified branch point defines the 3[prime] splice site of mammalian introns.Nature 342、243-247);Taggart,A.J.、DeSimone,A.M.、Shih,J.S.、Filloux,M.E.およびFairbrother,W.G.(2012).Largescale mapping of branchpoints in human pre-mRNA transcripts in vivo.Nature structural&molecular biology 19、719-721)。
HSV-単純ヘルペスウイルスのアクセプター配列、ドナー配列および分岐配列。
pHA16-Nissim研究室で開発された変異型「コンセンサス」配列。
結果
元のAFP結合配列およびスプライシング配列、同様にまた他の設計を調べた。図5において認められ得るように、本発明者らの設計物のいくつかが当初のAFP結合配列およびスプライシング配列よりも良好に機能した。例えば、元のAFP設計は比較的良好に機能する(サンプル1および実施例1)が、スプライシングアクセプター配列をAFPからコンセンサスに切り替えることにより、出力レベルの約4倍の増大がもたらされ(サンプル2)、当初設計におけるミスマッチを、マッチするコドンに変更することによってもまた、出力レベルの約4倍の増大がもたらされ(サンプル5)、そして、当初のBDをほんの30bpに短くすることにより、出力レベルの約3倍の増大がもたらされた(サンプル9)。したがって、元のAFP結合配列およびスプライシング配列よりも優れている構築物が設計されている。
元のAFP結合配列およびスプライシング配列、同様にまた他の設計を調べた。図5において認められ得るように、本発明者らの設計物のいくつかが当初のAFP結合配列およびスプライシング配列よりも良好に機能した。例えば、元のAFP設計は比較的良好に機能する(サンプル1および実施例1)が、スプライシングアクセプター配列をAFPからコンセンサスに切り替えることにより、出力レベルの約4倍の増大がもたらされ(サンプル2)、当初設計におけるミスマッチを、マッチするコドンに変更することによってもまた、出力レベルの約4倍の増大がもたらされ(サンプル5)、そして、当初のBDをほんの30bpに短くすることにより、出力レベルの約3倍の増大がもたらされた(サンプル9)。したがって、元のAFP結合配列およびスプライシング配列よりも優れている構築物が設計されている。
実験モデルおよび実験対象の詳細
細胞培養および細胞株
HEK293T、細胞を、American Type Culture Collection(Rockville、MD)から得た(HEK293T、カタログ#CRL-1573)。HEK293T細胞を、10%のウシ胎児血清(FBS;Biological Industries;カタログ#04-007-1A)、1%の非必須アミノ酸(MEM/NEAA;Biological Industries;カタログ#01-340-1B)および1%のPen/Strep(Biological Industries、#03-031-1B)が補充されるDMEM(Gibco)において、5%のCO2とともに37℃で培養した。すべての細胞株を、供給者から購入した後直ちに貯蔵し、少ない継代数で使用した。
細胞培養および細胞株
HEK293T、細胞を、American Type Culture Collection(Rockville、MD)から得た(HEK293T、カタログ#CRL-1573)。HEK293T細胞を、10%のウシ胎児血清(FBS;Biological Industries;カタログ#04-007-1A)、1%の非必須アミノ酸(MEM/NEAA;Biological Industries;カタログ#01-340-1B)および1%のPen/Strep(Biological Industries、#03-031-1B)が補充されるDMEM(Gibco)において、5%のCO2とともに37℃で培養した。すべての細胞株を、供給者から購入した後直ちに貯蔵し、少ない継代数で使用した。
プラスミド構築
上記の様々な構築物を、従来の制限酵素クローニングおよびGibsonアセンブリーを使用して構築した。すべてのDNAを、QIAGEN Plasmid Plus Midi Kit(Plasmid Plus Midi Kit;QIAGEN;カタログ#20-12945)によって精製した。
上記の様々な構築物を、従来の制限酵素クローニングおよびGibsonアセンブリーを使用して構築した。すべてのDNAを、QIAGEN Plasmid Plus Midi Kit(Plasmid Plus Midi Kit;QIAGEN;カタログ#20-12945)によって精製した。
トランスフェクション
本研究において、2つのプラスミドの異なる組み合わせを調べた:構築物1のバリアントは前半部のmKate2 RNA転写物を発現し、構築物2のバリアントは後半部のmKate2転写物を発現した。mKate2により、トランススプライシング発現を評価することが可能である。簡単に記載すると、100μLのOptiMEM培地(Life Technologies、カタログ#31985)と混合される8μLのFuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega、Madison、WI;カタログ#E2311)を2つのプラスミド(それぞれ1μg)の混合物に加えた。FuGENE HD/DNA複合体を室温で20分間インキュベーションしている間に、HEK293T懸濁細胞を調製し、培養培地において1.2×106細胞/mLに希釈した。0.5mLの希釈された細胞(0.6×106細胞)を、FuGENE HD/DNA複合体の各チューブに加え、よく混合し、2mLの細胞培養培地を含有する6ウエルプレートにおける指定のウエルに移し、続いて5%のCO2とともに37℃でインキュベーションした。トランスフェクション細胞をトランスフェクション後48時間でFACS分析のために調製した。
本研究において、2つのプラスミドの異なる組み合わせを調べた:構築物1のバリアントは前半部のmKate2 RNA転写物を発現し、構築物2のバリアントは後半部のmKate2転写物を発現した。mKate2により、トランススプライシング発現を評価することが可能である。簡単に記載すると、100μLのOptiMEM培地(Life Technologies、カタログ#31985)と混合される8μLのFuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega、Madison、WI;カタログ#E2311)を2つのプラスミド(それぞれ1μg)の混合物に加えた。FuGENE HD/DNA複合体を室温で20分間インキュベーションしている間に、HEK293T懸濁細胞を調製し、培養培地において1.2×106細胞/mLに希釈した。0.5mLの希釈された細胞(0.6×106細胞)を、FuGENE HD/DNA複合体の各チューブに加え、よく混合し、2mLの細胞培養培地を含有する6ウエルプレートにおける指定のウエルに移し、続いて5%のCO2とともに37℃でインキュベーションした。トランスフェクション細胞をトランスフェクション後48時間でFACS分析のために調製した。
実施例3.コンビナトリアル免疫調節のための多出力ANDゲート
コンビナトリアル免疫調節因子(免疫原性細胞表面抗原)、ケモカイン、サイトカインおよび免疫チェックポイント阻害剤の、本発明者らの回路からの発現を容易にするために、モジュール1およびモジュール2におけるmKate2がNissimら(上掲)に従って、その同族の合成プロモーターに結合し、下流側遺伝子の発現を活性化する合成転写因子GADにより置き換えられる。このGADは、酵母のGAL4 DNA結合ドメインをウイルスのVP16転写活性化ドメインに融合することによって以前に作製されたものであり、例えば、Promegaによって販売される哺乳動物用の2ハイブリッド型システム構築物(カタログ番号E2440)からクローン化することができる。モジュール1は、GADの1つの不完全なフラグメントをコードするものであり、腫瘍特異的プロモーター1によって調節される場合があり、モジュール2は、GADの相補する不完全なフラグメントをコードするものであり、腫瘍特異的プロモーター2によって調節される場合がある。トランススプライシングにより、完全なGAD転写因子をコードするmRNAがもたらされることになる。したがって、免疫調節因子の特異的発現が、両方の入力プロモーターが標的細胞において相互に活性であるときに予想される。
コンビナトリアル免疫調節因子(免疫原性細胞表面抗原)、ケモカイン、サイトカインおよび免疫チェックポイント阻害剤の、本発明者らの回路からの発現を容易にするために、モジュール1およびモジュール2におけるmKate2がNissimら(上掲)に従って、その同族の合成プロモーターに結合し、下流側遺伝子の発現を活性化する合成転写因子GADにより置き換えられる。このGADは、酵母のGAL4 DNA結合ドメインをウイルスのVP16転写活性化ドメインに融合することによって以前に作製されたものであり、例えば、Promegaによって販売される哺乳動物用の2ハイブリッド型システム構築物(カタログ番号E2440)からクローン化することができる。モジュール1は、GADの1つの不完全なフラグメントをコードするものであり、腫瘍特異的プロモーター1によって調節される場合があり、モジュール2は、GADの相補する不完全なフラグメントをコードするものであり、腫瘍特異的プロモーター2によって調節される場合がある。トランススプライシングにより、完全なGAD転写因子をコードするmRNAがもたらされることになる。したがって、免疫調節因子の特異的発現が、両方の入力プロモーターが標的細胞において相互に活性であるときに予想される。
実施例4.がんの処置
Nissimら(上掲)に基づいて、本発明の合成発現が、適切な数のレンチウイルスに編成される。i.p.播種されたOV8腫瘍を有するマウスに、モジュール1、モジュール2および陰性コントロール出力を含有するコントロールレンチウイルス混合物、またはモジュール1、モジュール2およびSCIP出力を含有する治療用ウイルス混合物のどちらかがi.p.注入される。ヒトT細胞もまた、定期的にi.p.注入される。これらの設定のもとでは、コントロールユニットに対して、SCIP回路により処置されるマウスにおける有意に低下した腫瘍負荷量および高まった生存率が予想される。
Nissimら(上掲)に基づいて、本発明の合成発現が、適切な数のレンチウイルスに編成される。i.p.播種されたOV8腫瘍を有するマウスに、モジュール1、モジュール2および陰性コントロール出力を含有するコントロールレンチウイルス混合物、またはモジュール1、モジュール2およびSCIP出力を含有する治療用ウイルス混合物のどちらかがi.p.注入される。ヒトT細胞もまた、定期的にi.p.注入される。これらの設定のもとでは、コントロールユニットに対して、SCIP回路により処置されるマウスにおける有意に低下した腫瘍負荷量および高まった生存率が予想される。
Claims (27)
- 目的とする転写物を所定の細胞状態において生じさせるための合成核酸発現システムであって、
(a)目的とする前記転写物の5’側フラグメントをコードする少なくとも1つのエクソンと、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される第1のRNA配列とを含む第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列をコードする核酸配列に対して作動可能に連結される第1のプロモーターを含む第1の核酸配列、および
(b)目的とする前記転写物の3’側フラグメントをコードする少なくとも1つのエクソンと、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される第2のRNA配列とを含む第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列をコードする核酸配列に対して作動可能に連結される第2のプロモーターを含む第2の核酸配列を含み、
前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターが異なっており、各々が前記所定の細胞状態によって特異的に調節され、
スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される前記第1のRNA配列が標的配列を含み、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される前記第2のRNA配列がガイド配列を含み、前記標的配列は前記ガイド配列に対して相補的であり、前記標的配列の前記ガイド配列へのハイブリダイゼーションがトランススプライシングを促進させ、かつ、前記標的配列および前記ガイド配列は前記所定の細胞状態の生来的トランスクリプトームのそれぞれの転写物との塩基相補性を欠き、したがって前記それぞれの転写物とのトランススプライシングを妨げ、
かつ、前記少なくとも1つのエクソンの各々が、不完全な目的とする転写物をコードし、前記第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列および第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列の前記組み合わされた少なくとも1つのエクソンを含むメッセンジャーRNAが、完全な目的とする転写物をコードする、合成核酸発現システム。 - 前記第1の核酸配列と、前記第2の核酸配列とが、同じ核酸分子に存在する、請求項1に記載の合成発現システム。
- 前記第1の核酸配列および第2の核酸配列が別々の核酸分子に存在する、請求項1に記載の合成発現システム。
- 下記の特徴:
(i)スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される前記第1のRNA配列は前記第1の核酸配列の3’末端またはその近くに位置し、スプライシングのためのドナー部位を含み、しかし、スプライシングのためのアクセプター部位を欠き、かつ、スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される前記第2のRNA配列は前記第2の核酸の5’末端またはその近くに位置し、スプライシングのためのアクセプター部位を含み、しかし、スプライシングのためのドナー部位を欠くこと;
(ii)前記ガイド配列および前記標的配列の各々が、ヌクレオチド長さで約10~約500以上の間である結合部位配列を含むこと;
(iii)スプライセオソーム依存的トランススプライシングのために要求される前記第1および前記第2のRNA配列は、前記ガイド配列および前記標的配列のハイブリダイゼーションを介して構造的に相互作用すること;
(iv)前記第1のトランススプライシング可能なプレmRNA配列および前記第2のトランススプライシング可能なプレmRNA配列の各々が、内部結合配列および/または自己相補的配列を何ら有しない非構造化ヌクレオチドを含み、したがって、機能的リボザイムを形成するために要求される配列を欠くこと;または
(v)前記ガイド配列および前記標的配列の各々が結合部位配列を含み、前記ガイド配列の前記結合部位は前記標的配列の前記結合部位に関して少なくとも1つまたは複数のミスマッチヌクレオチドを有すること
の少なくとも1つによって特徴づけられる、あるいは
(i)~(v)のうちの2つ以上の組み合わせによって特徴づけられる、請求項1に記載の合成発現システム。 - 前記所定の細胞状態が、所定の細胞タイプ、組織タイプ、細胞周期時期、代謝状態および病理学的状態から選択される、請求項1に記載の合成発現システム。
- 前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が独立して前記事前に定められた細胞状態によって特異的に誘導される、または活性化される、請求項5に記載の合成発現システム。
- 前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が独立して、細胞タイプ特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、疾患特異的プロモーターおよび細胞周期応答性プロモーターから選択される、請求項5に記載の合成発現システム。
- 前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が独立して疾患特異的プロモーターであり、例えば、腫瘍特異的プロモーターなどである、請求項7に記載の合成発現システム。
- 前記不完全な目的とする転写物が非機能的な転写物である、または非機能的なタンパク質をコードする、請求項1に記載の合成発現システム。
- 目的とする前記転写物が、転写因子(例えば、合成転写因子)、生来的転写因子、細胞表面タンパク質、ケモカイン、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、酵素、増殖因子、レポーター遺伝子、短いヘアピンRNA(shRNA)、およびマイクロRNA(miRNA)から選択される転写物産物をコードする、請求項1に記載の合成発現システム。
- 請求項1~10のいずれか一項に記載の合成発現システムの前記第1の核酸配列(a)および/または前記第2の核酸配列(b)を含む組成物。
- 請求項1~10のいずれか一項に記載の合成発現システムの前記第1の核酸配列(a)および/または前記第2の核酸配列(b)を含むベクター。
- 前記第1の核酸配列(a)または前記第2の核酸配列(b)を含み、しかし、前記第1の核酸配列(a)および前記第2の核酸配列(b)の両方を含まない、請求項12に記載のベクター。
- DNAベクター、例えば、プラスミドベクターまたはウイルスベクターなど、あるいは非ウイルス性ベクター、例えば、ポリマーナノ粒子、脂質、リン酸カルシウム、DNA被覆微小粒子またはトランスポゾンなどである、請求項12または13に記載のベクター。
- 請求項1~10のいずれか一項に記載の合成発現システムまたは請求項12~14のいずれか一項に記載のベクターを含む真核生物細胞。
- 目的とする転写物を真核生物細胞において発現させる方法であって、前記真核生物細胞に請求項1~10のいずれか一項に記載の合成発現システムの前記第1の核酸配列(a)および前記第2の核酸配列(b)を導入すること、または前記真核生物細胞に請求項12~14のいずれか一項に記載の少なくとも1つのベクターを導入することを含む方法。
- 前記導入することが、インビトロ、インビボまたはエクスビボで実施される、請求項16に記載の方法。
- 細胞状態に伴う、または該細胞状態によって引き起こされる疾患に罹患する患者、または前記患者から得られる細胞を処置する際における使用のための請求項12~14のいずれか一項に記載のベクターであって、前記使用は前記患者の細胞を前記ベクターの少なくとも1つと接触させることを含み、前記第1のプロモーターおよび第2のプロモーターの各々が独立して前記細胞状態によって特異的に調節され、かつ、目的とする前記転写物が、前記疾患の処置を容易にする転写物産物をコードし、それにより、目的とする前記転写物を前記細胞状態においてだけで発現させ、前記疾患を処置する、使用のためのベクター。
- 前記細胞を2つの異なるベクターと接触させることを含み、前記2つのベクターの一方が前記第1の核酸配列(a)を含み、しかし前記第2の核酸配列(b)を含まず、前記2つのベクターの他方が前記第2の核酸配列(b)を含み、しかし前記第1の核酸配列(a)を含まない、請求項18に記載の使用のためのベクター。
- 前記接触させることが、インビトロ、インビボまたはエクスビボで実施される、請求項18に記載の使用のためのベクター。
- 前記細胞状態が、細胞タイプ、組織タイプ、細胞周期時期、代謝状態、病理学的状態、分化状態、エピジェネティック状態および活性化状態から選択される、請求項18に記載の使用のためのベクター。
- 前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が独立して前記事前に定められた細胞状態によって特異的に誘導される、または活性化される、請求項21に記載の使用のためのベクター。
- 前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が独立して、細胞タイプ特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、疾患特異的プロモーター、分化状態特異的プロモーター、エピジェネティック状態特異的プロモーター、活性化状態特異的プロモーターおよび細胞周期応答性プロモーターから選択される、請求項21に記載の使用のためのベクター。
- 前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が疾患特異的プロモーターであり、例えば、腫瘍特異的プロモーターなどである、請求項23に記載の使用のためのベクター。
- 前記患者がヒト患者である、請求項23に記載の使用のためのベクター。
- 前記疾患ががんであり、前記第1のプロモーターおよび前記第2のプロモーターの各々が腫瘍特異的プロモーターである、請求項24に記載の使用のためのベクター。
- 前記疾患の処置を容易にする前記転写物産物が、転写因子(例えば、合成転写因子)、ケモカイン、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、栄養要求性マーカー、酵素、増殖因子、短いヘアピンRNA(shRNA)、またはマイクロRNA(miRNA)である、請求項18に記載の使用のためのベクター。
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