JP2022537042A - インクレチンミメティックが装填された脂質ナノカプセル - Google Patents

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Abstract

本発明は、固体の脂質外殻と、1種以上のインクレチンミメティックが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核とを含む、経口投与用の脂質ナノカプセルに関する。また本発明は、GLP-1機能不全に関連する障害を処置および/または予防するための脂質ナノカプセルの使用に関する。

Description

本発明は、脂質ナノカプセルベースの薬物送達システムおよびGLP-1関連障害を処置するためのその使用の分野に関する。
治療用ペプチドの全身循環への吸収を可能にする経口剤形の開発は、製薬業界にとって最大の課題の1つである。選択された糖尿病ペプチドは、それらの低い経口バイオアベイラビリティ(0.5~1.0%であると推定)にも関わらず、開発の後期に移行している。それでもなお、静脈内投与または皮下投与を上回る経口ペプチド送達の利点は、特に、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)などの抗糖尿病薬の場合に顕著である。インクレチンミメティックペプチドの経口投与は、ネイティブなペプチドの通常の生理経路を模倣するというさらなる治療上の利点を有する。GLP-1アゴニストは、肝門領域を標的とし、皮下送達を介するよりも肝門脈を介してより高い濃度でアクセスすることにより、全身への曝露およびその関連する副作用を低減することができる。インクレチンミメティックペプチドの投与の経口経路を利用するために多くの進行中の試みがなされているにも関わらず、市場において現在経口投与されているものは、GLP-1類縁体のみであり(セマグルチド、Rybelsus(登録商標)、NovoNordiskにより開発)、これは、機能的な賦形剤、すなわちナトリウムN-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリラート(SNAC)の同時投与を必要とする。
胃腸の生理機能は、刺激的な環境を提供し、薬物送達の分野においてその完全な潜在能力までは完全に利用されてはいない。幅広い様々な細胞が、胃腸上皮を介して点在している。これらのうち、腸内分泌L細胞は、それらが分泌するペプチド(たとえばGLP-1およびGLP-2)の多面的な作用のため、特に関心を集めている。これら細胞は、5~7日間の比較的迅速なターンオーバーを有し、その密度は、2型糖尿病(T2DM)および炎症性腸疾患(IBD)などの病態において増大し、これら疾患の処置にとって魅力的な標的となっている。T2DMの状況では、消化器系L細胞から分泌されるGLP-1は、食後のインスリン分泌を刺激し、ジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP-IV)により迅速に加水分解される。よって、血漿中半減期が改善されているいくつかのGLP-1類縁体(たとえばエキセナチド、リラグルチド、セマグルチド)が開発されており、T2DMの処置を成功させることが証明されている。近年では、研究者は、肥満、T2DM、およびIBDの処置の標的として、分泌されたペプチドからL細胞自身に興味を向けている。実際に、内因性GLP-1の分泌を高めることは、インクレチンベースの糖尿病療法においてより生理的かつ新規な代替案を提示するであろう(Burant, Diabetes Care. 2013; 36 Suppl 2, S175-179)。酪酸およびプロピオン酸を含む短鎖脂肪酸などの腸管内腔で見出される特定の内因性リガンドはL細胞を活性化し得るが、ナノ担体の使用は、腸ペプチドの産生を刺激するための別の治療戦略を提示し得る。実際に、ナノ担体は、特定のリガンドを模倣するように操作でき、腸での滞留を増大させるように設計することにより、長期間のL細胞の活性化を誘発することができる。
経口ペプチド送達の現在の戦略は、送達システムを単にビヒクルとして使用する。これらのうちいずれもが、製剤の最大治療可能性を達成するために担体自身の生理的な特性を利用しない。
本発明者らは、機能障害性糖血症に関連する代謝障害を処置および/または予防するための経口経路を介したインクレチンミメティックを使用する前例のない手法を開発した。実際に、本発明者らは、GLP-1類縁体とナノ担体を組み合わせることが、急性的または常習的な処置の後に肥満/糖尿病のマウスの糖血症を正常にするために十分であるとのエビデンスを提供する。本発明の脂質ナノカプセルベースの薬物送達システムは、自身の生体作用(GLP-1放出の刺激)およびカプセル化された生物活性分子(インクレチンミメティック)の生体作用を相乗的に協同させる。興味深いことに、経口経路を使用する強力な利点に加えて、この手法は、少なくとも現在販売されている薬物と同程度効率的であり、さらには、経口グルコース負荷、インスリン抵抗性、脂質分布、および脂肪肝の改善により効果的であり得る。よって、この戦略は、経口インクレチンミメティックペプチド送達において現在の手法を超えるさらなる利点を提供し、内因性GLP-1レベルの増大を提供する。
本発明は、経口投与用の脂質ナノカプセルであって、
固体の脂質外殻と、
1種以上のインクレチンミメティックが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核と
を含む、脂質ナノカプセルに関する。
一実施形態では、固体の脂質外殻は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、脂溶性界面活性剤、およびそれらの混合物を含む群で選択される1種以上の界面活性剤を含む。
一実施形態では、脂溶性液体内核は、1種以上の油を含む。一実施形態では、1種以上の油は、トリグリセリド、脂肪酸、脂肪酸エステル、またはそれらの混合物である。
一実施形態では、逆ミセルは、界面活性剤、油、およびそれらの混合物を含む群で選択される1種以上の成分を含む。
一実施形態では、脂質ナノカプセルは、約100nm~約300nmの範囲の平均直径を有する。
一実施形態では、脂質ナノカプセルは、in vivoで内因性GLP-1の分泌を誘導する。
一実施形態では、1種以上のインクレチンミメティックは、アルビグルチド、デュラグルチド、エキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、およびセマグルチドを含む群で選択される。一実施形態では、1種以上のインクレチンミメティックは、エキセナチドである。
一実施形態では、ナノカプセルは、
脂肪酸のポリ-オキシエチレンエステル、非イオン性脂溶性界面活性剤、および任意選択でペグ化脂質、特にペグ化リン脂質を含む固体の脂質外殻と、
トリグリセリドおよび脂肪酸エステルを含み、エキセナチドが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核と
を含む。
一実施形態では、脂質ナノカプセルは、
界面活性剤のSolutol(登録商標)HS15、Lipoid(登録商標)S100、および任意選択でDSPE-PEG2000-OCHを含む固体の脂質外殻と、
油のLabrafac(商標)Lipophile WL1349および/またはPlurol(登録商標)CC 497またはPeceol(商標)を含み、エキセナチドが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核と
を含む。
一実施形態では、エキセナチドは、肥満/糖尿病を高脂肪食により誘導したマウスにおいて少なくとも4%の相対的なバイオアベイラビリティを特徴とする薬物動態プロファイルを有する。
本発明の別の対象は、固体の脂質外殻と、1種以上のインクレチンミメティックが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核とを含む経口投与用の脂質ナノカプセルの治療有効量と、
薬学的に許容されるビヒクルと
を含む、医薬組成物である。
また本発明は、固体の脂質外殻と、1種以上のインクレチンミメティックが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核とを含む経口投与用の脂質ナノカプセルの治療有効量を含む医薬に関する。
さらに本発明は、それを必要とする対象のGLP-1機能不全に関連する障害の処置および/または予防に使用するための、固体の脂質外殻と、1種以上のインクレチンミメティックが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核とを含む脂質ナノカプセルに関する。
一実施形態では、障害は、2型糖尿病(T2DM)、肥満、炎症性腸疾患(IBD)、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝疾患、高血糖、脂肪肝、過体重、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリックシンドローム、前糖尿病、空腹時血中ブドウ糖不良、過食症、食物摂取挙動の変化、肝臓インスリン抵抗性、全身インスリン抵抗性、移行の加速、脂肪組織炎症、心機能不全、急性心筋梗塞、高血圧、心血管疾患、アテローム性動脈硬化、末梢動脈疾患、脳卒中、心不全、冠動脈心疾患、腎疾患、糖尿病合併症、ニューロパチー、および胃不全麻痺を含む群で選択される。一実施形態では、上記障害は、2型糖尿病(T2DM)、肥満、および炎症性腸疾患(IBD)を含む群で選択される。
本発明の別の対象は、
GLP-1機能不全に関連する障害を処置および/または予防するためのキットであって、
固体の脂質外殻と、1種以上のインクレチンミメティックが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核とを含む1つ以上の脂質ナノカプセルと、
1種以上の経口血糖降下薬と
を含む、キットである。
定義
本発明では、以下の用語は以下の意味を有する。
ある値に先行する「約」は、上記値の±10%を意味する。用語「約」が表す値は、それ自体もまた具体的であり、好ましくは開示されていることを理解されたい。
「~を含む(comprise)」は、「~を含む(contain)」、「~を包有する(encompass)」、および「~を備える(include)」を意味するように意図されている。一部の実施形態では、用語「~を含む」はまた、用語「~からなる(consist of)」を包有する。
「薬学的に許容される賦形剤」は、動物、好ましくはヒトに投与される場合に有害な反応、アレルギー反応、または他の望ましくない反応をもたらさない賦形剤を表す。これは、あらゆる溶媒、分散培地、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体または賦形剤は、あらゆる種類の非毒性の固体、半固体、または液体のフィラー、希釈剤、カプセル化物質、または製剤化助剤を表す。ヒト投与では、製剤は、FDA局の生物学的製剤基準が要求する無菌性、全般的な安全性、および純度の基準に一致しなければならない。
「対象」は、哺乳類、好ましくはヒトを表す。一実施形態では、対象は雄性である。別の実施形態では、対象は雌性である。一実施形態では、対象は、「患者」、すなわち医療の受診を待機しているか、または医療を受診しているか、または過去/現在/将来に医療の対象であった/ある/となり得るか、またはGLP-1関連障害の発症に関してモニタリングされている、温血動物、より好ましくはヒトであり得る。一実施形態では、対象は、成年(たとえば18歳超の対象)である。別の実施形態では、対象は、小児(たとえば18歳未満の対象)である。
「治療有効量」は、標的に有意な負のまたは有害な副作用を引き起こすことなく、(1)GLP-1関連障害の発症を遅延もしくは予防すること;(2)GLP-1関連障害の1つ以上の症状の進行、憎悪、もしくは悪化を遅延もしくは停止させること;(3)GLP-1関連障害の症状の寛解をもたらすこと;(4)GLP-1関連障害の重症度もしくは発症頻度を低減させること;または(5)GLP-1関連障害を予防することを目的とする作用物質のレベルまたは量を意味する。一実施形態では、治療有効量は、防止的または予防的作用のため、GLP-1関連障害の発症より前に投与される。別の実施形態では、治療有効量は、治療作用のため、GLP-1関連障害の発症の後に投与される。
「処置」は、治療上の処置および防止的または予防的な手段(この目的は、GLP-1関連障害を予防または遅延(減少)することである)の両方を表す。処置を必要とするものは、すでに障害を有するもの、および障害を有する傾向のあるもの、または障害を予防すべきものを含む。対象または哺乳類は、本発明に係る脂質ナノカプセルの治療量を投与された後に、以下の観察可能かつ/または測定可能な変化:GLP-1関連障害に関連する症状のうちの1つ以上に関連する寛解;罹患率および死亡率の低下、ならびにクオリティオブライフの問題の改善のうちの1つ以上を示す場合、「処置」が成功している。処置の成功および疾患の改善を評価するための上記パラメータは、医師によく知られている規定の手法により容易に測定可能である。
詳細な説明
本発明者らは、たとえば2型糖尿病(T2DM)、肥満などのGLP-1機能不全に関連する障害を処置および/または予防するための、インクレチンミメティックが搭載された経口投与用の脂質ナノカプセルを製剤化した。本発明に係るナノカプセルは、たとえば米国特許公開公報第2017087096号および国際特許公開公報第2018157202号により開示される脂質ベースの製剤、ならびにShresthaら(Nanoscale. 2018; 10:603-613)およびBeloquiら(Mol Pharm. 2016; 13:4222-4230)により開示されるナノ粒子とは、構造上顕著に異なる。さらに、本明細書中開示される比較試験により証明されるように(比較の実施例3を参照)、最先端の技術に由来するこれらナノ粒子は、in vivoでのさらなる試験においてGLP-1の分泌を誘導できず、高血糖および高インスリン血症も減少できないが、対して本発明に係るナノカプセルは、これが可能である。さらに、本発明に係るペグ化ナノカプセルは、半減期またはミメティックインクレチン、およびその全身吸収を改善させる。
本発明は、経口投与用の脂質ナノカプセルであって、
固体の脂質外殻と、
1種以上のインクレチンミメティックが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核と
を含む、脂質ナノカプセルに関する。
一部の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルを調製するために使用される成分は、「GRAS(generally recognized as safe)」のリストに属している。
本明細書中使用される場合、用語「ナノカプセル」および「ナノ粒子」は、互いに置き換えられ得る。
第1の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの固体の脂質外殻は、1種以上(または少なくとも1種)の界面活性剤を含む。
一実施形態では、1種以上の界面活性剤は、ペグ化されている。
一実施形態では、少なくとも1種の界面活性剤のHLB(親水親油バランス:Hydrophilic-Lipophilic Balance)は、約4~約40、好ましくは約6~約16、より好ましくは約10~約14の範囲にある。
HLB値は、C. Larpent in Traite K.342 of the Editions Techniques de l’Ingenieurにより定義されている。
一実施形態では、少なくとも1種の界面活性剤は、イオン性、非イオン性、または両性の界面活性剤である。一実施形態では、少なくとも1種の界面活性剤は、エトキシ化脂肪アルコール、エトキシ化脂肪酸、エトキシ化脂肪酸の部分グリセリド、およびポリエトキシ化脂肪酸トリグリセリド、ならびにそれらの混合物を含む群で選択される。特定の実施形態では、少なくとも1種の界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤は、脂肪酸のポリ-オキシエチレンエステル、好ましくはSolutol(登録商標)HS15(Kolliphor(登録商標)HS 15とも称される)である。
エトキシ化脂肪アルコールの例として、限定するものではないが、ラウリルアルコールでのエチレンオキシドの付加物、特に9~50のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名ではラウレス-9~ラウレス-50);ベヘニルアルコールでのエチレンオキシドの付加物、特に9~50のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名ではベヘネス-9~ベヘネス-50);セトステアリルアルコール(セチルアルコールおよびステアリルアルコールの混合物)でのエチレンオキシドの付加物、特に9~30のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名ではセテアレス-9~セテアレス-30);セチルアルコールでのエチレンオキシドの付加物、特に、9~30のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名ではセテス-9~セテス-30);ステアリルアルコールでのエチレンオキシドの付加物、特に9~30のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名ではステアレス-9~セテアレス-30);イソステアリルアルコールでのエチレンオキシドの付加物、特に9~50のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名ではイソステアレス-9~イソステアレス-50);ならびにそれらの混合物が挙げられる。
エトキシ化脂肪酸の例として、限定するものではないが、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、またはベヘン酸でのエチレンオキシドの付加物、およびそれらの混合物、特に9~50のオキシエチレン基を含むもの、たとえばPEG-9~PEG-50ラウラート(CTFA名:PEG-9ラウラート~PEG-50ラウラート);PEG-9~PEG-50パルミタート(CTFA名:PEG-9パルミタート~PEG-50パルミタート);PEG-9~PEG-50ステアラート(CTFA名:PEG-9ステアラート~PEG-50ステアラート);PEG-9~PEG-50パルミトステアラート;PEG-9~PEG-50ベヘナート(CTFA名:PEG-9ベヘナート~PEG-50ベヘナート);およびそれらの混合物などが挙げられる。
一実施形態では、少なくとも1種の界面活性剤は、感熱性、親水性の非イオン性界面活性剤である。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの固体の脂質外殻は、少なくとも1種の脂溶性界面活性剤をさらに含む。
一実施形態では、少なくとも1種の脂溶性界面活性剤は、リン脂質である。一実施形態では、少なくとも1種の界面活性剤は、ホスファチジルコリン(レシチンとも称される)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、およびホスファチジルエタノールアミンを含む群で選択される。脂溶性界面活性剤の例として、限定するものではないが、Lipoid S 45、Lipoid S 75-3、Lipoid S 100、Lipoid GPC、Lipoid E 80、ソルビタンオレアート(Span 80)、Epikuron(商標)135、およびPlurol(登録商標)が挙げられる。特定の実施形態では、脂溶性界面活性剤は、Lipoid S 100および/またはソルビタンオレアート(Span 80)である。
一実施形態では、少なくとも1種の界面活性剤、特に脂溶性界面活性剤、より具体的には脂質、より具体的にはリン脂質は、ペグ化脂質、より具体的にはペグ化リン脂質である。ペグ化リン脂質の例として、限定するものではないが、DPPE-PEGx(ここでDPPEは、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンを意味する)、DSPE-PEGx(ここでDSPEは、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンを意味する)、DOPE-PEGx(ここでDOPEは、ジオレイルホスファチジルエタノールアミンを意味する)、およびPOPE-PEGx(ここでPOPEは、パルミトイルオレイルホスファチジルエタノールアミンを意味する)(式中、xは、g/molでのPEG分子の大きさを表す)が挙げられる。一部の実施形態では、xは、約400~約20,000、好ましくは約800~約5,000、より好ましくは約1,000~約3,000を含む。本明細書中使用される場合、約400~約20,000は、約400、500、600、700、800、900、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、および20,000を含む。一実施形態では、xは、1,000、2,000、3,000、4,000、または5,000である。一実施形態では、xは、6,000、7,000、8,000、または9,000である。一実施形態では、xは、10,000である。
本明細書中使用される場合、用語「PEG」は、当該最新技術の状態で一般に受け入れられている一般式(I)のポリエチレングリコールの化合物を表す:
Figure 2022537042000001
(式中、xは、約400~約20,000を含み(g/molでPEG分子の大きさを表す)、Rは、-OH、-O(C-C12)アルコキシル基、-(C-C12)カルボキシ基、-NHを表す)。
一実施形態では、Rは、-OCH(メトキシル)、-OC、-OC、-OC、-OC11、-OC13、およびそれらのアイソマーを含む-O(C-C)アルコキシル基を表す。一実施形態では、Rは、-COOH(メタン酸)、-CH-COOH(エタン酸)、-C-COOH(プロピオン酸)、-C-COOH(酪酸)、-C-COOH(ペント酸(pentoic acid))、-C10-COOH(ヘキサン酸)、およびそれらのアイソマーを含む-(C-C)カルボキシ基を表す。
一実施形態では、ペグ化リン脂質は、DSPE-PEG2000-OCH(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-メトキシルポリ(エチレングリコール)2000)であり、これは、式(I)のPEGを含むDSPE-PEG(式中xは2,000であり、Rは-OCHである)である。
一実施形態では、ペグ化リン脂質は、DSPE-PEG2000-CH-CH-COOH(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[ポリ(エチレングリコール)-2000]-プロピオナート)であり、これは、式(I)のPEGを含むDSPE-PEG(式中xは2,000であり、Rはプロピオン酸である)である。
実際に、ペグ化リン脂質は、粘液の拡散、安定性の増大、および長期間の血液循環を提供する。粘液浸透(mucopenetration)の増大は、L細胞の表面とのナノカプセルの接触の増大を支援し得る。実際に、ペグ化リン脂質は、たとえばNanocs(登録商標)またはNanosoft Polymers(登録商標)から商業的に利用可能であり得る。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの脂質外殻は、非イオン性界面活性剤、脂溶性界面活性剤、およびそれらの混合物を含む群で選択される1種以上の成分を含む。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの脂質外殻は、感熱性、親水性の非イオン性界面活性剤、リン脂質、およびそれらの混合物を含む群で選択される1種以上の成分を含む。一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの固体の脂質外殻は、感熱性、親水性の非イオン性界面活性剤、およびリン脂質を含む。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの脂質外殻は、脂質ナノカプセルの総重量に対して、総量において約1~40重量%、好ましくは約3~約25重量%、より好ましくは約5~約15重量%の範囲の1種以上の界面活性剤、好ましくはLipoid(登録商標)S100、および/またはSolutol(登録商標)HS15を含む。一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの脂質外殻は、脂質ナノカプセルの総重量に対して、総量において約6.45重量%の1種以上の界面活性剤、好ましくはLipoid(登録商標)S100および/またはSolutol(登録商標)HS15を含む。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの脂質外殻は、脂質ナノカプセルの総重量に対して、総量において約0.1~40重量%、好ましくは約0.5~約25重量%、より好ましくは約1~約10重量%の1種以上の界面活性剤、好ましくはLipoid(登録商標)S100および/またはSolutol(登録商標)HS15、および/またはDSPE-PEG2000-OCHもしくはDSPE-PEG2000-CH-CH-COOHを含む。
本発明の範囲内において、「約0.1~約40重量%」との表現は、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%、5.5重量%、6重量%、6.5重量%、7重量%、7.5重量%、8重量%、8.5重量%、9重量%、9.5重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、および40重量%を包有する。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの脂質外殻は、1種以上の非イオン性界面活性剤、好ましくはSolutol(登録商標)HS15、および1種以上の脂溶性界面活性剤、好ましくはLipoid(登録商標)S100および/またはペグ化リン脂質を含む。一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの脂質外殻は、1種の非イオン性界面活性剤、好ましくはSolutol(登録商標)HS15と、2種の脂溶性界面活性剤、好ましくはLipoid(登録商標)S100およびペグ化リン脂質とを含む。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの脂溶性液体内核は、1種以上の油を含む。
一実施形態では、油は、少なくとも1種のトリグリセリド、脂肪酸、脂肪酸エステル、またはそれらの混合物である。
一実施形態では、脂肪酸は、飽和または不飽和のC~C26脂肪酸、およびそれらの混合物から選択される。一実施形態では、不飽和脂肪酸は、モノ不飽和脂肪酸またはポリ不飽和脂肪酸であり得る。一実施形態では、脂肪酸は、ポリ不飽和型であり、特に、αリノレン酸(18:3、ALA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)を含むω-3脂肪酸の群から選択される。特に、ω-3脂肪酸の供給源は、魚の油であり得る。
一実施形態では、脂肪酸エステルは、C~C18、好ましくはC~C12の脂肪酸エステルから選択される。特定の実施形態では、脂肪酸エステルは、パルミチン酸エチル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、およびそれらの混合物を含むかまたはからなる群で選択される。
一実施形態では、トリグリセリドは、合成トリグリセリドまたは天然起源のトリグリセリドである。トリグリセリドの天然起源として、限定するものではないが、動物脂肪または植物油、たとえばダイズ油または長鎖トリグリセリド(LCT)の供給源が挙げられる。
別の実施形態では、トリグリセリドは、中鎖トリグリセリド(MCT)としても知られている、中鎖脂肪酸から構成される。中鎖トリグリセリド(MCT)油は、炭化水素鎖が8~12個の炭素原子を含むトリグリセリドである。
MCT油の例として、限定するものではないが、TCR製品(フランスのSociete Industrielle des Oleagineuxからの商品名、脂肪酸鎖の約95%が8~10個の炭素原子を含むトリグリセリドの混合物)およびMyglyol(登録商標)812(スウェーデンの企業Dynamit Nobelにより販売されているトリグリセリド、カプリル酸およびカプリン酸のグリセリドトリエステルの混合物)が挙げられる。
一実施形態では、トリグリセリドの脂肪酸の単位は、不飽和、モノ不飽和、またはポリ不飽和である。一実施形態では、脂溶性液体内核は、可変の脂肪酸の単位を含むトリグリセリドの混合物を含む。
一実施形態では、油は、グリセロール、グリセリル脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、リノール酸および/またはオレイン酸のモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリド、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸および/またはカプリン酸のプロピレングリコールエステル、植物性脂肪酸のトリグリセリド、ならびにそれらの混合物を含む群で選択される。
脂溶性内核に含まれ得る油の例として、限定するものではないが、Labrafac(商標)Lipophile WL1349(カプリル酸およびカプリン酸の中鎖トリグリセリド)、Labrafac(商標)PG(カプリル酸およびカプリン酸のプロピレングリコールエステル)、Plurol(登録商標)CC 497(ポリグリセリル-6ジオレアート)、Peceol(商標)(グリセリルモノオレアート)、Maisine(登録商標)CC(主にリノール酸およびオレイン酸のモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリド)、ならびにMiglyol(登録商標)810/812(カプリル酸およびカプリン酸のトリグリセリド)が挙げられる。特定の実施形態では、脂溶性内核は、Labrafac(商標)Lipophile WL1349を含む。特定の実施形態では、脂溶性内核は、Plurol(登録商標)CC 497またはPeceol(商標)を含む。本明細書中使用される場合、用語「Labrafac(商標)Lipophile WL1349」および「Labrafac(登録商標)WL 1349」は、区別せずに使用されてよく、同じ成分を表す。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの脂溶性内核は、脂質ナノカプセルの総重量に対して、総量において約25~約65重量%、好ましくは約30~約55重量%、より好ましくは約35~約45重量%の範囲の1種以上の油、好ましくはLabrafac(商標)Lipophile WL1349および/またはPeceol(登録商標)(またはPlurol(登録商標)CC 497)を含む。一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの脂溶性内核は、脂質ナノカプセルの総重量に対して、総量において約41.4重量%の1種以上の油、好ましくはLabrafac(商標)Lipophile WL1349および/またはPeceol(登録商標)(またはPlurol(登録商標)CC 497)を含む。
本発明の範囲内において、「約25~約65重量%」との表現は、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量%、47重量%、48重量%、49重量%、50重量%、51重量%、52重量%、53重量%、54重量%、55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%、および65重量%を包有する。
一実施形態では、本発明の脂質ナノカプセルは、少なくとも1種の塩および水をさらに含む。一実施形態では、本発明の脂質ナノカプセルは、塩化ナトリウムおよび水をさらに含む。
一実施形態では、本発明の脂質ナノカプセルが調製される水相は、まず、特定の濃度の塩、好ましくは塩化ナトリウム(NaCl)を含む。一実施形態では、この塩の濃度は、脂質ナノカプセルの総重量に対して、約2~約8重量%、好ましくは約4~約6重量%、より好ましくは約4.2~約5.2重量%の範囲にある。
本発明の範囲内において、「約2~約8%」との表現は、2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%、3.5重量%、4.0重量%、4.5重量%、5.0重量%、5.5重量%、6.0重量%、6.5重量%、7.0重量%、7.5重量%、および8.0重量%を包有する。
一実施形態では、本発明の脂質ナノカプセルが調製される水相は、浸透剤(osmotic agent)、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤(lyoprotective agent)、保存剤、またはそれらの混合物をさらに含む。一実施形態では、凍結保護剤または凍結乾燥保護剤は、マンニトールまたはトレハロースである。一実施形態では、凍結保護剤または凍結乾燥保護剤は、凍結乾燥されるナノカプセルの懸濁液に添加される。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの逆ミセルは、界面活性剤、油、およびそれらの混合物を含む群で選択される1種以上の成分を含む。
一実施形態では、逆ミセルの界面活性剤は、10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下のHLB値を有する。
一実施形態では、逆ミセルの界面活性剤は、脂肪エステルである。一実施形態では、逆ミセルの界面活性剤は、ソルビタンオレアート、ソルビタンモノラウラート、ソルビタントリオレアート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタンモノオレアートのポリオキシエチレン、ソルビタントリオレアートのポリオキシエチレン、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、逆ミセルの界面活性剤は、Span(登録商標)80、Span(登録商標)20、Span(登録商標)85、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)80、またはTween(登録商標)85である。
一実施形態では、逆ミセルの油は、リン脂質を含む。一実施形態では、リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、およびホスファチジルエタノールアミン、およびそれらの混合物を含む。
一実施形態では、逆ミセルの油は、脂肪酸トリグリセリド、好ましくはカプリル酸トリグリセリド、および/もしくはカプリン酸トリグリセリド、またはそれらの混合物を含む。特定の実施形態では、逆ミセルの油は、Labrafac(商標)Lipophile WL1349を含む。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの逆ミセルは、本明細書中上述される界面活性剤および油を含む。
特定の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの逆ミセルは、少なくとも1種のインクレチンミメティック、Span(登録商標)80およびLabrafac(商標)Lipophile WL1349を含むかまたはからなる。特定の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルの逆ミセルは、エキセナチド、Span(登録商標)80およびLabrafac(商標)Lipophile WL1349を含むかまたはからなる。
一実施形態では、本発明の逆ミセルは、逆ミセルの総重量に対して、約5~50重量%、好ましくは約10~35重量%、より好ましくは約15~20重量%の界面活性剤、好ましくはSpan(登録商標)80を含む。特定の実施形態では、本発明の逆ミセルは、逆ミセルの総重量に対して、約16.67重量%の界面活性剤、好ましくはSpan(登録商標)80を含む。
本発明の範囲内において、「約5~約50重量%」との表現は、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量%、47重量%、48重量%、49重量%、および50重量%を包有する。
一実施形態では、本発明の逆ミセルは、逆ミセルの総重量に対して、約50~約95重量%、好ましくは約75~約90重量%、より好ましくは約80~約85重量%の油、好ましくはLabrafac(商標)Lipophile WL1349を含む。特定の実施形態では、本発明の逆ミセルは、逆ミセルの総重量に対して、約83.33重量%の油、好ましくはLabrafac(商標)Lipophile WL1349を含む。
本発明の範囲内において、「約50~約95重量%」との表現は、50重量%、51重量%、52重量%、53重量%、54重量%、55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%、65重量%、66重量%、67重量%、68重量%、69重量%、70重量%、71重量%、72重量%、73重量%、74重量%、75重量%、76重量%、77重量%、78重量%、79重量%、80重量%、81重量%、82重量%、83重量%、84重量%、85重量%、86重量%、87重量%、88重量%、89重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、および95重量%を包有する。
一実施形態では、逆ミセルは、脂質ナノカプセルの総重量に対して、約0.01~約40重量%、好ましくは約1~約35重量%、より好ましくは約10~約25重量%を表す。
本発明の範囲内において、「約0.01~約40重量%」との表現は、0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、および40重量%を包有する。
一実施形態では、界面活性剤/油の重量比は、1:10~1:1の範囲にある。一実施形態では、界面活性剤/油の重量比は、1:8~1:3の範囲にある。一実施形態では、界面活性剤/油の重量比は、1:5である。本発明の範囲内において、「1:10~1:1」との表現は、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、および1:1を包有する。
一実施形態では、インクレチンミメティック/界面活性剤の重量比は、0.001~0.2、好ましくは0.005~0.05、より好ましくは0.01~0.03の範囲にある。一実施形態では、インクレチンミメティック/界面活性剤の重量比は、約0.03である。本発明の範囲内において、「0.001~0.2」との表現は、0.001、0.0025、0.005、0.0075、0.01、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.15、0.175、および0.2を包有する。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、少なくとも約100、110、120、125、130、140、150、160、170、175、180、190、または200nmの平均直径を有する。一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、最大約200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、または300nmの平均直径を有する。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、約100nm~約300nm、好ましくは約150nm~約250nm、より好ましくは約180nm~約230nmの範囲の平均直径を有する。一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、約200nm~約300nmの範囲の平均直径を有する。特定の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、約200nmの平均直径を有する。実際に、約200nm超の平均直径を有する脂質ナノカプセルは、内因性GLP-1の分泌を誘導する特性を有し、よってGLP-1の血中レベルの増大を促進させる特性を有する。一部の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、in vivoでの内因性GLP-1の分泌を誘導する。実際に、in vivoでの内因性GLP-1の分泌は、最新技術に由来するいずれかの適切な方法またはそれから出典した方法により、測定され得る。例として、GLP-1のレベルは、血液サンプル、特には血漿サンプルにおいて、ELISAキット、たとえば市販のTotal GLP-1 ELISA kit、(Meso Scale Delivery(登録商標)製)により測定され得る。内因性GLP-1の分泌は、処置前に得られた参照値と比較した倍率変化として表され得る。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルのインクレチンミメティックは、エキセナチド、アルビグルチド、デュラグルチド、リラグルチド、リキシセナチド、およびセマグルチドを含む群で選択される。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、少なくともエキセナチドを含む。
一実施形態では、エキセナチドは、肥満/糖尿病を高脂肪食により誘導したマウスにおいて少なくとも4%の相対的なバイオアベイラビリティを特徴とする薬物動態プロファイルを有する。
本発明の範囲内において、「少なくとも4%」との表現は、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、15%、またはそれ以上を含む。
特定の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、
固体の脂質外殻と、
エキセナチドが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核と
を含む。
特定の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、
脂肪酸のポリ-オキシエチレンエステルおよび脂溶性界面活性剤を含む固体の脂質外殻と、
トリグリセリドおよび脂肪酸エステルを含み、エキセナチドが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核と
を含む。
特定の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、
界面活性剤のSolutol(登録商標)HS15およびLipoid(登録商標)S100を含む固体の脂質外殻と、
油のLabrafac(商標)Lipophile WL1349および/またはPlurol(登録商標)CC 497またはPeceol(商標)を含み、エキセナチドが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核と
を含む。
特定の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、
界面活性剤のSolutol(登録商標)HS15およびLipoid(登録商標)S100からなる固体の脂質外殻と、
油のLabrafac(商標)Lipophile WL1349および/またはPlurol(登録商標)CC 497またはPeceol(商標)、塩化ナトリウム、水、およびエキセナチドが搭載された逆ミセルからなる脂溶性液体内核と
からなる。
特定の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、
脂肪酸のポリ-オキシエチレンエステル、非イオン性脂溶性界面活性剤、および任意選択でペグ化脂質、特にペグ化リン脂質を含む固体の脂質外殻と、
トリグリセリドおよび脂肪酸エステルを含み、エキセナチドが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核と
を含む。
特定の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、
界面活性剤のSolutol(登録商標)HS15、Lipoid(登録商標)S100、および任意選択でDSPE-PEG2000-OCHを含む固体の脂質外殻と、
油のLabrafac(商標)Lipophile WL1349および/またはPlurol(登録商標)CC 497またはPeceol(商標)を含み、エキセナチドが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核と
を含む。
特定の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、
界面活性剤のSolutol(登録商標)HS15、Lipoid(登録商標)S100および任意選択でDSPE-PEG2000-OCHからなる固体の脂質外殻と、
油のLabrafac(商標)Lipophile WL1349および/またはPlurol(登録商標)CC 497またはPeceol(商標)、塩化ナトリウム、水、およびエキセナチドが搭載された逆ミセルからなる脂溶性液体内核と
からなる。
特定の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、
脂肪酸のポリ-オキシエチレンエステル、非イオン性脂溶性界面活性剤、およびペグ化脂質、特にペグ化リン脂質を含む固体の脂質外殻と、
トリグリセリドおよび脂肪酸エステルを含み、エキセナチドが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核と
を含む。
特定の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、
界面活性剤のSolutol(登録商標)HS15、Lipoid(登録商標)S100、およびDSPE-PEG2000-OCHからなる固体の脂質外殻と、
油のLabrafac(商標)Lipophile WL1349および/またはPlurol(登録商標)CC 497またはPeceol(登録商標)、塩化ナトリウム、水、およびエキセナチドが搭載された逆ミセルからなる脂溶性液体内核と
からなる。
特定の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、
界面活性剤のSolutol(登録商標)HS15、Lipoid(登録商標)S100、およびDSPE-PEG2000-CHCHCOOHからなる固体の脂質外殻と、
油のLabrafac(商標)Lipophile WL1349および/またはPlurol(登録商標)CC 497またはPeceol(登録商標)、塩化ナトリウム、水、およびエキセナチドが搭載された逆ミセルからなる脂溶性液体内核と
からなる。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、2つのステップで製剤化される。一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルを調製するための方法は、
1.1種以上のインクレチンミメティックを逆ミセルの中にカプセル化するステップと、
2.逆ミセルを脂質ナノカプセルの中にカプセル化するステップと
を含む。
インクレチンミメティックが搭載された逆ミセルは、第1のステップの終了時に得られる。インクレチンミメティックが搭載された逆ミセルの脂質ナノカプセルは、第2のステップの終了時に得られる。
一実施形態では、第1のステップは、界面活性剤、油、およびそれらの混合物、好ましくは界面活性剤および油を含む群で選択される1種以上の成分の高速撹拌を含む(ステップ1a)。
一実施形態では、第1のステップは、1種以上のインクレチンミメティック、好ましくはエキセナチドを、上述の1種以上の成分の混合物、好ましくは界面活性剤および油の混合物の中に浸すことをさらに含む(ステップ1b)。
一実施形態では、第2のステップは、転相プロセスを含み、ここで脂質ナノカプセルの成分は、磁力による撹拌の下共に混合される(ステップ2a)。一実施形態では、脂質ナノカプセルの成分は、本明細書中上述される固体の脂質外殻および脂溶性液体内核の成分を含む。一実施形態では、脂質ナノカプセルの成分は、油、界面活性剤、塩、および水を含む。一実施形態では、このステップは、30℃~50℃、好ましくは35℃~45℃の範囲の温度、より好ましくは約40℃の温度で行われる。一実施形態では、このステップは、100rpm~1,000rpmの範囲の速度、好ましくは200rpmで行われる。一実施形態では、このステップは、少なくとも1分間、2分間、または5分間行われる。
一実施形態では、第2のステップは、漸進的に加熱/冷却する温度サイクルをさらに含む(ステップ2b)。一実施形態では、温度サイクルは、40℃~85℃、好ましくは45℃~75℃、より好ましくは50℃~68℃の範囲の温度で行われる。一実施形態では、ステップ1で得られたインクレチンミメティックを含む逆ミセルは、温度サイクルの最後のサイクルの間にステップ2bで得られた混合物に添加される(ステップ2c)。一実施形態では、ステップ2cは、転相領域(phase inversion zone:PIZ)より約3℃高い温度で行われる。一実施形態では、ステップ2cは、約58℃~約70℃、好ましくは約60℃~約68℃、より好ましくは約62℃~約64.5℃の範囲の温度で行われる。一実施形態では、温度が冷却され、最後の温度サイクルにおいてPIZに達した後に、冷水(0℃~5℃、好ましくは約4℃)が、ステップ2cの終了時に得た混合物に添加される(ステップ2d)。一実施形態では、ステップ2dの終了時に、混合物の温度は、約57℃~約63℃、好ましくは約58℃~約62℃、より好ましくは約59.5℃~約61.5℃である。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルを調製するための方法は、いずれの有機溶媒の使用をも含まない。言い換えると、本方法は、本発明に係る脂質ナノカプセルを調製するための有機溶媒フリーの方法である。
一実施形態では、本発明の脂質ナノカプセルは、凍結乾燥され、次にコロイド懸濁液の形態で再構成され得る。一実施形態では、浸透剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、保存剤、またはそれらの混合物が、凍結乾燥される脂質ナノカプセルの懸濁液に添加され得る。一実施形態では、これら化合物が完全に溶解した後に、懸濁液は、約-50℃で迅速に凍結する第1のステップを経てもよい。一実施形態では、次に、これら懸濁液は、減圧下、低温の蒸気の形態の水を直接通過することにより凍結乾燥され得る。一実施形態では、その後、乾燥形態の脂質ナノカプセルが、使用前に長期間無菌の形態で保存され得る。
さらに本発明は、本明細書中上述される脂質ナノカプセルの治療有効量と、薬学的に許容されるビヒクルとを含む医薬組成物に関する。
さらに本発明は、医薬として使用するための本明細書中上述される脂質ナノカプセルまたは医薬組成物に関する。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、医薬の調製のために使用される。本発明の1つの目的は、医薬の調製のための本発明に係る脂質ナノカプセルの使用である。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセル、医薬組成物、または医薬は、GLP-1機能不全に関連する障害の処置および/または予防に使用するためのものである。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセル、医薬組成物、または医薬は、2型糖尿病(T2DM)、肥満、炎症性腸疾患(IBD)、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝疾患、高血糖、脂肪肝、過体重、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリックシンドローム、前糖尿病、空腹時血中ブドウ糖不良、過食症、食物摂取挙動の変化、肝臓インスリン抵抗性、全身インスリン抵抗性、移行の加速、脂肪組織炎症、心機能不全、急性心筋梗塞、高血圧、心血管疾患、アテローム性動脈硬化、末梢動脈疾患、脳卒中、心不全、冠動脈心疾患、腎疾患、糖尿病合併症、ニューロパチー、および胃不全麻痺を含む群で選択される障害の処置および/または予防に使用するためのものである。
特定の実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセル、医薬組成物、または医薬は、2型糖尿病(T2DM)、肥満、または炎症性腸疾患(IBD)の処置および/または予防に使用するためのものである。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセルは、肝臓の重量、肝臓の脂質の集積、ならびに脂肪滴の数および大きさを有意に減少させる利点を有する。
また本発明は、それを必要とする対象のGLP-1機能不全に関連する障害を処置および/または予防するための方法であって、本発明に係る脂質ナノカプセル、医薬組成物、または医薬の前記対象への経口投与を含む、方法に関する。
一実施形態では、本方法は、2型糖尿病(T2DM)、肥満、炎症性腸疾患(IBD)、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝疾患、高血糖、脂肪肝、過体重、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリックシンドローム、前糖尿病、空腹時血中ブドウ糖不良、過食症、食物摂取挙動の変化、肝臓インスリン抵抗性、全身インスリン抵抗性、移行の加速、脂肪組織炎症、心機能不全、急性心筋梗塞、高血圧、心血管疾患、アテローム性動脈硬化、末梢動脈疾患、脳卒中、心不全、冠動脈心疾患、腎疾患、糖尿病合併症、ニューロパチー、および胃不全麻痺を含む群で選択される障害を処置および/または予防するためのものである。
本発明の別の目的は、それを必要とする個体のGLP-1の血中レベルを増大させるためのin vivoでの方法であって、本発明に係る脂質ナノカプセル、医薬組成物、また医薬の治療有効量の前記個体への経口投与を含む、方法である。
本発明の別の目的は、それを必要とする個体の血糖値を減少させるためのin vivoでの方法であって、本発明に係る脂質ナノカプセル、医薬組成物、また医薬の治療有効量の前記個体への経口投与を含む、方法である。
本発明の脂質ナノカプセル、医薬組成物、および医薬の一日総使用量は、健全な医療の判断の範囲内で担当医により決定されることが理解されるであろう。いずれかの特定の患者に特有の治療有効量は、処置される障害および障害の重症度;使用される特定の作用物質の活性;使用される特定の組成物、患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、および食事;使用される特定の作用物質の投与の時間、投与の経路、および排泄速度;処置期間;使用される特定の作用物質と併用してまたは同時に使用される薬物;ならびに医療の分野でよく知られている同様の要因を含む様々な要因に依存する。たとえば、作用物質の用量を望ましい治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで開始し、望ましい効果が達成されるまでこの用量を徐々に増大させることは、十分に当業者の範囲内にある。
しかしながら、本製品の一日の用量は、約0.01~約1,000mg/成年/日、好ましくは0.1~約500、より好ましくは約1~約200mg/成年/日の幅広い範囲で変動し得る。一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセル、医薬組成物、または医薬は、約0.1mg~約20mg/成年/日の用量で投与される。
脂質ナノカプセルの有効量は、0.1mg/kg~約1,000mg/kg体重/日の用量レベルで通常供給される。
一実施形態では、脂質ナノカプセルの有効量は、1日あたり1回、2回、または3回投与され得る。
一実施形態では、本発明に係る脂質ナノカプセル、医薬組成物、または医薬は、経口投与により投与されるか、または経口投与による投与に適している。
また本発明は、GLP-1機能不全に関連する障害を処置および/または予防するためのキットであって、
本発明に係る1つ以上の脂質ナノカプセルと、
1種以上の経口血糖降下薬と、
を含む、キットに関する。
一実施形態では、経口血糖降下薬は、α-グルコシダーゼ阻害剤、好ましくはアカルボース、ミグリトール、またはボグリボース;ビグアナイド、好ましくはメトホルミン;cycloset、好ましくはブロモクリプチン;DPP-4阻害剤、好ましくはシタグリプチン、サキサグリプチン、ビルダグリプチン、リナグリプチン、またはアログリプチン;メグリチニド、好ましくはレパグリニド、またはナテグリニド;SGLT2阻害剤、好ましくはダパグリフロジンまたはカナグリフロジン;スルホニル尿素、好ましくはグリピジド、グリブリド、グリクラジド、またはグリメピリド;チアゾリジンジオン、好ましくはロシグリタゾンまたはピオグリタゾンを含む群で選択される。
本発明の別の目的は、GLP-1機能不全に関連する障害を処置および/または予防するための薬物送達システムであって、
本発明に係る1つ以上の脂質ナノカプセルと、
1種以上の経口血糖降下薬と
を含む、薬物送達システムである。
図1A~Fは、バイオミメティック腸液における脂質ナノカプセルの安定性およびエキセナチドの放出を示すヒストグラムおよびプロットの組み合わせである。図1Aは、所定の時間間隔でペプシンの存在下にてFaSSGFでインキュベーションした後のエキセナチドが搭載された逆ミセル(RM)の脂質ナノカプセル(EXE RM LNC)のバリエーションの粒径およびPDIを示す(平均値±SEM;n=9)。図1Bは、所定の時間間隔でペプシンの非存在下にてFaSSGFでインキュベーションした後のEXE RM LNCのバリエーションの粒径およびPDIを示す(平均値±SEM;n=9)。図1Cは、所定の時間間隔にてFaSSIFでインキュベーションした後のEXE RM LNCのバリエーションの粒径およびPDIを示す(平均値±SEM;n=9)。図1Dは、所定の時間間隔にてFeSSIFでインキュベーションした後のEXE RM LNCのバリエーションの粒径およびPDIを示す(平均値±SEM;n=9)。図1Eは、所定の時間間隔にてFeSSIF-V2でインキュベーションした後のEXE RM LNCのバリエーションの粒径およびPDIを示す(平均値±SEM;n=9)。EXE RM LNCの粒径は、いずれの場合でも有意に変化せず(P>0.05)、アッセイした培地における単分散度を呈した(PDI<0.2)。図1Fは、HPLCにより測定した37℃、6時間にわたるFaSSIF(pH6.5)における累積的なエキセナチドの放出プロファイルを示す(平均値±SEM;n=9)。 図2A~Bは、正常血糖マウスにおけるin vitroおよびin vivoにおけるRM LNCが介在するGLP-1の分泌を示すグラフの組み合わせである。図2Aは、2時間の共インキュベーション期間の後のGLUTag細胞(左)およびNCI-H716細胞(右)(それぞれマウスおよびヒトのL細胞)におけるRM LNCが介在するin vitroでのGLP-1の分泌(2mg/mL)を示す(平均値±SEM;n=6-10)。図2Bは、RM LNの経口投与から60分後および180分後の正常血糖マウスにおけるin vivoでの総GLP-1の分泌を示す(平均値±SEM;n=7~8)。図2Aおよび図2BのP値は、スチューデントt検定またはマン・ホイットニー検定により決定した。 図3は、正常血糖マウスのエキセナチドの血漿中レベルを示すプロットを表す。エキセナチドの血液像は、ELISAにより測定される水溶液(EXE)またはRM LNCの中へのカプセル化(EXE RM LNC)(500μg/kgエキセナチドの用量、約1.62mg/gの脂質ナノカプセル用量に対応)において正常血糖マウスへ経口投与した後に測定された(平均値±SEM;n=4)。2元ANOVA、次にTukeyの事後検定を行ったところ、異なる上付き文字を伴うデータは有意に異なる(P<0.05)。 図4A~4Dは、L細胞および腸細胞様細胞でのin vitroでの細胞傷害性試験を示すヒストグラムの組み合わせである。図4Aは、薬物濃度に関する細胞の生存率として表される37℃で2時間のインキュベーションの後のCaco-2細胞でのEXE RM LNCの細胞の生存率を示す。図4Bは、ナノ粒子の濃度に関する細胞の生存率として表される37℃で2時間のインキュベーションの後のCaco-2細胞でのEXE RM LNCの細胞の生存率を示す。図4Cは、2時間の間増大する脂質ナノカプセルの濃度(1mg/mL~10mg/ml)との共インキュベーション後のGLUTag細胞でのRM LNCの細胞の生存率を示す。図4Dは、2時間の間増大する脂質ナノカプセルの濃度(1mg/mL~10mg/ml)との共インキュベーション後のヒトNCI-H716細胞でのRM LNCの細胞の生存率を示す。データは、平均値±SEM(n=9)で示される。破線は、80%の生存率に対応する。データは、3つの独立した実験に対応する。 図5は、グルコース試験の30分前および試験から120分後に測定された血漿グルコースレベル(mg/dl)を示すプロットを表す(n=8~9)。2元ANOVA、次にTukeyの事後検定を行ったところ、異なる上付き文字を伴うデータは有意に異なる(P<0.05)。 図6は、グルコース試験の30分前および試験から120分後に測定された平均曲線下面積(AUC、mg/dl/分)を示すヒストグラムを表す(n=8~9)。 図7は、血中グルコースのAUCをインスリンのAUCで乗算することにより決定されるインスリン抵抗性指数を示すヒストグラムを表す(n=8~9)。 図8は、皮下投与(EXE s.c.)(50μg/kgのエキセナチド用量)ならびに溶液における経口投与およびRM LNCの中での経口投与(それぞれEXEおよびEXE RM LNC)(約1.62mg/gの脂質ナノカプセル用量に対応する500μg/kgのエキセナチド用量)の後のエキセナチドの濃度-時間のプロファイルおよびAUCを示すプロットを表す。データは、平均値±SEMとして表されている(n=8~10)。1元ANOVA、次にTukeyの事後検定を行ったところ、異なる上付き文字を伴うデータは有意に異なる(P<0.05)。 図9A~9Bは、8週間および10週間HFDにより誘導された糖尿病マウスにおけるEXE RM LNCのOGTTの評価を示すプロットの組み合わせである。図9Aは、対照食およびHFD(8週間)を与えたマウス(C57BL6/Jマウス)で測定した2g/kgのグルコースの経口試験による血漿グルコースレベルおよびAUCを示す。図9Bは、対照食およびHFD(10週間)を与えたマウス(C57BL6/Jマウス)で測定した2g/kgのグルコースの経口試験による血漿グルコースレベルおよびAUCを示し、これらは2元ANOVAにより決定した。データは、平均値±SEMとして表されている(n=7~8)。異なる上付き文字を伴う値は、有意に異なる(P<0.05)。P値は、OGTTでは2元ANOVAにより、グループ間のAUCの比較では1元ANOVA、次いでTukeyの事後検定を行うことにより、決定された。 図10A~10Bは、肥満/糖尿病マウスにおけるグルコースのホメオスタシスに及ぼすEXE RM LNCの作用を示すプロットの組み合わせである。図10Aは、mg/dlで表される5週間の処置(13週間のHFDの給餌)にわたる血漿グルコースレベルを示す。図10Bは、mg/dlで表される5週間の処置(13週間のHFDの給餌)後の血漿中グルコース濃度を示す。データは、平均値±SEMとして表されている(n=10)。異なる上付き文字を伴うデータは、有意に異なる(P<0.05)。P値は、2元ANOVA、次にTukeyの事後検定を行うことにより決定した。 図11は、肥満/糖尿病マウスにおける高インスリン血症に及ぼすEXE RM LNCの作用を示すヒストグラムを表す。インスリン血漿中レベルは、門脈から測定した(n=8~10)。データは、平均値±SEMとして表されている。異なる上付き文字を伴うデータは、有意に異なる(P<0.05)。P値は、Kruskal-Wallis検定、次にDunnの事後検定を行うことにより決定した。 図12は、肝臓の重量(g)に及ぼすEXE RM LNC処置の影響を示すヒストグラムを表す。異なる上付き文字を伴うデータは、有意に異なる(P<0.05)。P値は、1元ANOVAとTukeyの事後検定により決定した。 図13A~Cは、脂質のホメオスタシスに及ぼすEXE RM LNC処置の影響を示すヒストグラムの組み合わせである。図13Aは、肝臓の総脂質含有量(mg-1/100mgの組織)を示す。図13Bは、肝臓のトリグリセリド(nmol.mg-1)を示す。図13Cは、肝臓のコレステロール(nmol.mg-1)を示す。異なる上付き文字を伴うデータは、有意に異なる(P<0.05)。P値は、Kruskal-Wallis検定、次いでDunnの事後検定を行うことにより決定した。 同上。 図14A~14Eは、ヒストグラムの組み合わせである。図14Aは、脾臓の重量に及ぼすEXE RM LNC処置の影響を示す。図14Bは、内臓脂肪組織(VAT)の重量に及ぼすEXE RM LNC処置の影響を示す。図14Cは、皮下脂肪組織(SAT)の重量に及ぼすEXE RM LNC処置の影響を示す。図14Dは、心外膜脂肪組織(EAT)の重量に及ぼすEXE RM LNC処置の影響を示す。図14Eは、褐色脂肪組織(BAT)の重量に及ぼすEXE RM LNC処置の影響を示す。データは、平均値±SEMとして表されている(n=9~10)。異なる上付き文字を伴うデータは、有意に異なる(P<0.05)。P値は、1元ANOVA、次いでTukeyの事後検定を行うことにより決定した。 同上。 図15A~15Bは、GLUTag細胞(マウスL細胞)および正常血糖マウスにおけるGLP-1の刺激に及ぼす(リガンドとしてグラフトされたプロピオナートを伴うまたは伴わない)ペグ化ナノカプセルの作用を示す、ヒストグラムの組み合わせである。0.5から2mg/mLへと増大するナノカプセル濃度との2時間の共インキュベーションの後のマウスのGLUTag細胞におけるGLP-1の刺激に及ぼす(リガンドとしてグラフトされたプロピオナートを伴うまたは伴わない)ペグ化RM LNCの作用(平均値±SEM;n=4;N=3)。各パネルおよびアッセイされた各濃度において、左から右へ:培地、RM LNC、RM LNC PEGおよびRM LNC PEG-PROが表されている。図15A(a)は、総GLP-1レベルを表し;図15B(b)は、細胞外総GLP-1レベルを表す(pg/mLで表されている)。 図16は、同じナノカプセル用量(1.62mg/g)を使用して、対照としての培地(黒色のバー)RM LNC(濃灰色のバー)、RM LNC PEG(淡灰色のバー)、およびRM LNC PEG-PRO(白色のバー)を経口強制投与してから60分後および180分後の健常な対照マウスにおける総GLP-1レベルを示すヒストグラムである(平均値±SEM;n=8)。異なる上付き文字は、1元ANOVA、次いでTukeyの事後検定に基づき、グループ間の有意差を表す(*p<0.05)。 図17A~17Fは、単回で経口投与した後の肥満/糖尿病マウスにおける薬理学的試験および薬物動態学的試験を示すグラフおよびヒストグラムの組み合わせである。図17A:血中グルコース値(mg/dL)および平均AUC(mg/dL・min)を、グルコース投与の30分前および120分後に試験した(n=7~8)。HFD(黒色のダイヤ);EXE(四角);EXE RM LNC(逆三角形);RM LNC PEG(三角形);EXE RM LNC PEG(灰色のダイヤ)。図17B:血漿中総GLP-1濃度を、グルコース投与の30分前および15分後に測定した(n=6~8)。条件の順序に関しては、図17Aの挿入を参照されたい。図17C:OGTT後の肥満/糖尿病マウスの門脈で測定した活性GLP-1レベル(製剤の投与から3時間後)(n=6~8)。図17D:インスリン濃度を、経口グルコース投与の30分前および15分後に、尾静脈由来の血液から回収した血漿で測定した(n=6~8)。条件の順序に関しては、図17Aまたは図17Cの挿入を参照されたい。図17E:インスリン抵抗性指数(n=7~8)。図17F:薬物溶液または薬物を搭載したペグ化ナノカプセル(それぞれEXEおよびEXE RM LNC PEG)の経口投与(用量:500μg/kg)後の糖尿病マウス(10週間のHFDの給餌)における血漿中エキセナチド濃度-時間のプロファイルおよびエキセナチドAUC(n=9~10)。データは、平均値±SEMとして示されている。異なる上付き文字は、2元分散分析(ANOVA)およびTukeyの事後検定(図17A、F)、Kruskal-Wallis検定、次いでDunnの事後検定(図17B)、または1元ANOVA、次いでTukeyの事後検定(図17C~E)を行い得られたグループ間の有意差を表す(*p<0.05)。 同上。 同上。 図18A~Cは、長期間の治療を介してHFD食により誘導される糖尿病マウスにおける高血糖および高インスリン血症の抑制に及ぼす異なる経口投与頻度でのペグ化EXEおよび非ペグ化EXEが搭載された脂質ナノカプセルの作用を示すグラフの組み合わせである。図18A:4週間の投与(合計14週間のHFD給餌)後の血漿中グルコース値(mg/dL)(平均値±SEM;n=7~10)。図18B:インスリン濃度を、尾静脈から回収した血液由来の血漿で試験した(平均値±SEM;n=6~9)。図18C:HOMA-IRを、Amrutkar et al.(Diabetes. 2015; 64:2791-2804)で以前に定義されるように式[mg/dLの空腹時血糖×ng/mLの空腹時インスリン]/405を使用して計算した(平均値±SEM;n=8-9)。異なる上付き文字は、2元分散分析、次いでTukeyの事後検定(図18A)、またはKruskal-Wallis検定、次いでDunnの事後検定(図18B~C)に基づくグループ間の統計上有意差を示す(*p<0.05)。 図19A~19Gは、ナノ構造の脂質の担体(NLC)を介したグルコース試験の30分前および120分後に測定した血漿グルコースレベル(mg/dL)(n=9~10)(図19A)ならびにグルコース試験の30分前および120分後に測定した平均曲線下面積(AUC、mg/dL/分)(n=9~10)(図19B)、グルコース試験の30分前および15分後に測定した血漿中総GLP-1レベル(図19C~D)、血漿中インスリンレベル(図19E~F)、ならびにインスリン抵抗性指数(n=8~9)(図19G)を示すグラフの組み合わせである。データは、平均値±SEMとして表されている(n=8~10)。 同上。
本発明を、以下の実施例によりさらに示す。
実施例1:作業例1
1.材料および方法
1.1-試験設計
この試験の目的は、インクレチンミメティックペプチドの経口送達のためのナノ担体ベースの薬物送達システムを開発することであった。内因性GLP-1の分泌の亢進は、内分泌ベースの糖尿病療法においてより生理的かつ新規の代替案を表す。内因性GLP-1の分泌のみを増大させることが、病理学的な状況での治療効果を誘導するには十分ではないとの仮説が立てられていた。よって、T2DMのための別の経口処置として、その自身の生体作用(内因性GLP-1の分泌を誘導)およびカプセル化されたインクレチンミメティックペプチドの作用(ペプチドのバイオアベイラビリティを増大)の相乗作用を提供する二重作用の薬物送達ナノシステムを設計することに焦点が置かれた。この新規ナノシステムの物理化学的な特性は特徴づけられており(大きさ、ゼータ電位)、in vitroでのバイオミメティック培地におけるカプセル化ペプチド(エキセナチド)のカプセル化の効率、安定性、および放出が確認された。GLP-1の分泌を誘導するナノシステムそれ自体の特性を、マウス細胞株およびヒト細胞株においてin vitroで、ならびに正常血糖マウスにおいてin vivoで評価した。さらに、薬物動態学的試験を、正常血糖マウスで行い、ペプチド単独と比較して、ナノシステムの中にカプセル化された場合に高いバイオアベイラビリティを確認した。GLP-1を誘導する際のナノ担体の効力に関する概念実証を得た後に、高血糖の低減に関する二重作用のナノシステムの有用性を、3、8、または10週間のHFDの給餌の後急性的な処置(1つの単回投与)により糖尿病および肥満のマウスにおいて評価し、ナノシステムの中にカプセル化されたペプチドのバイオアベイラビリティの増大を、肥満/糖尿病マウスで確認した。最後に、グルコースのホメオスタシスおよび脂質の代謝に及ぼすナノシステムの影響を、常習的な長期間の処置(5週間の間1日1回)により肥満/糖尿病マウスモデルで試験し、このナノシステムが、T2DMの処置におけるインクレチンペプチドの経口送達において現在の戦略に代わる有効な代替案を表すことを確認した。肥満/糖尿病マウスにおける処置および薬物動態学的試験では、以前の試験に基づきグループあたり10匹のマウスを使用した。全ての動物実験は、実験動物の保護に関する2013年5月29日のベルギーの法律により明記されるように、地元の動物委員会(2014/UCL/MD/033および2017/UCL/MD/005)により承認されており、これに従い行われた。
1.2-材料
エキセナチドは、Bachem(Bubendorf, Switzerland)から購入した。Labrafac(登録商標)WL 1349(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)およびPeceol(登録商標)(オレイン酸モノ、ジ、およびトリグリセリド)は、Gattefosse(Saint-Priest, France)から購入した。Lipoid(登録商標)S 100(94%のホスファチジルコリンでのダイズレシチン)は、Lipoid GmbH(Ludwigshafen, Germany)から購入した。Solutol(登録商標)HS15(遊離PEG 660およびPEG 660 12-ヒドロキシステアラートの混合物、Mw 870Da)およびSpan(登録商標)80(ソルビタンオレアート)は、Sigma-Aldrich(St. Louis, USA)から購入した。塩化ナトリウム(NaCl)、レシチン、タウロコール酸ナトリウム、ペプシン、3-(4,5-ジメチル-チアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびTriton-X 100は、Sigma-Aldrich(St. Louis, USA)から購入した。Total GLP-1(ver.2)アッセイキットおよび活性型GLP-1アッセイキットは、Meso Scale Discovery(Maryland, USA)から購入した。エキセンディン-4酵素イムノアッセイキットは、Phoenix Europe GmbH(Karlsruhe, Germany)から購入した。Ultrasensitive Mouse Insulin ELISA Kitは、Mercodia AB(Uppsala, Sweden)から購入した。Matrigel(登録商標)は、BD Bioscience(Belgium)から得た。ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)阻害剤は、Millipore(St. Charles, USA)から購入した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)-GlutaMAX(5.5Mmのグルコース)、ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)-1640培地、ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)、ウシ胎仔血清(FBS)、リン酸緩衝食塩水(PBS)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA、0.02%)を含むトリプシン(0.25%)も使用し、これらは、Thermo Fisher Scientific(Invitrogen, Belgium)から購入した。この試験で利用される全ての化学試薬は、分析グレードであった。
1.3-逆ミセルが搭載された脂質ナノカプセルの調製および特性決定
逆ミセルが搭載された脂質ナノカプセル(RM LNC)を、最初に薬物を逆ミセルの中にカプセル化し、次にLNCの中にさらにカプセル化する、2つのステップで製剤化した。最初に、エキセナチドが搭載された逆ミセル(EXE RM)を、界面活性剤(Span(登録商標)80)および油(Labrafac(登録商標)WL 1349)の混合物(1:5の重量比)を高速で撹拌することにより調製した。次に、50μLのEXE(MilliQ水において30mg/ml)を、混合物に滴下し、撹拌しながら維持した。エキセナチドが搭載された逆ミセルの脂質ナノカプセル(EXE RM LNC)を、Heurtaultら(Pharm Res. 2002; 19:875-880)に記載される転相プロセスの改変版により調製した。簡潔に述べると、脂溶性Labrafac(登録商標)WL 1349、Peceol(登録商標)、Lipoid(登録商標)S100、Solutol(登録商標)HS15、塩化ナトリウム(NaCl)およびMilliQ水を含む全ての成分(表1に示されている)を、40℃、200rpmで5分間、磁力による撹拌によりまとめて混合した。
Figure 2022537042000002
漸進的に加熱/冷却する温度サイクルを、50℃~67℃で行った。最後のサイクルの間に、500μLのあらかじめ温めた薬物を搭載したRMを、転相領域(PIZ;59℃~61.5℃)より約3℃高い混合物に添加した。この溶液を、転相領域(PIZ)の温度に達するまで冷却し、2.5mlの冷却MilliQ水(4℃)を添加し、高速で2分間撹拌した。ブランクのRM LNCを、エキセナチドの非存在下にて同じプロトコルにより調製した。
1.4-エキセナチドの定量化
RM LNCの中にカプセル化したエキセナチドを、Shresthaら(Nanoscale. 2018; 10:603-613)により以前に記載される勾配方法を使用し高速液体クロマトグラフィー(HPLC, Shimadzu, Japan)により定量化した。簡潔に述べると、security guardカラム(Phenomenex, USA)を伴うKinetex(登録商標)EVO C18カラム(100Å、2.6μm、150×4.6mm)(Phenomenex, USA)を、室温で使用した。水性移動相は、0.05(v/v)%のトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液を含み、有機移動相は、0.05(v/v)%のアセトニトリルからなるものであった。勾配システムは、1mL/分の流速にて、比を最初は10:90(v/v、水相:有機相)とし、10分間で90:10(v/v)へと線形に変化させ、次の1分間で一定に保つように開発された。次に、この比を、次の1.5分間で最初の組成へと線形に変化させ、最後の1分間で安定化させた。使用される注入容量は20μLであり、使用される検出波長は、220nmであった。保持時間は5.9分であり、検出限界および定量限界は、それぞれ1.1±0.4μg/mLおよび3.3±1.1μg/mLであった。
1.5-EXE RM LNCの特性決定
EXE RM LNCを、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd., Worcestershire, UK)を使用する動的光散乱(DLS)によりそれらの粒径および多分散指数(PDI)を測定することにより特性決定した。ゼータ電位は、Zetasizer Nano ZSを使用してレーザードップラー流速計(LDV)により決定した。測定では、5μLの脂質ナノカプセル懸濁液を、995μLの超純水に分散させた。全ての測定は、三連で行った。
また、EXE RM LNCを、それらの薬物カプセル化の効率(EE、%)に基づき特性決定した。薬物の総含有量を計算するために、50μLのEXE RM LNCを950μLのメタノールに溶解し、次に強力なボルテックスにかけた。遊離エキセナチドおよびカプセル化エキセナチドを、Amicon(登録商標)遠心フィルター(MWCO 30kDa、4000g、4℃、20分)(Millipore)を使用する限外濾過により分離した。ろ液を、さらに、1:2の希釈倍率を使用して希釈した。ろ液中のエキセナチドおよびメタノールに溶解したエキセナチドを、上述のHPLC法を使用して定量化した。EEは、以下の式:EE(%)=(エキセナチドの総量-遊離エキセナチド)/(エキセナチドの総量)×100を使用して計算した。
1.6-刺激した消化管液における脂質ナノカプセルの安定性および薬物の放出
EXE LNCのin vitroでの安定性を、5つの異なるバイオミメティック培地:ペプシンを伴うFaSSGF(Fasted State-Simulated Gastric Fluid)および伴わないFaSSGF、FaSSIF(Fasted State-Simulated Intestinal Fluid)、FeSSIF(Fed State-Simulated Intestinal Fluid)、ならびにFeSSIF-V2(FeSSIF version 2)(biorelevant.com, UK)で試験した。使用される疑似体液の組成の詳細な記載は、表2に提示する。
Figure 2022537042000003
脂質ナノカプセルの安定性に及ぼす胃および腸の状態の影響を、脂質ナノカプセルの大きさおよびPDIに基づき評価した。EXE RM LNCを、ペプシンを伴うFaSSGFおよび伴わないFaSSGF、FaSSIF、FeSSIF、およびFeSSIF-V2において37℃で穏やかに撹拌しながらインキュベートした(10mLの培地において100μLの脂質ナノカプセル)。所定の時間間隔(刺激した胃の培地では0、0.5、1、および2時間、ならびに刺激した腸の培地およびFeSSIFでは0、0.5、1、3、および6時間)で、サンプルを取り出し、次にDLSにより分析した。
1.7-in vitroでの薬物放出試験
EXE RM LNCからの薬物の放出を、ペプシンの非存在下のFaSSGF培地およびFaSSIF培地において、それぞれ2時間および6時間評価した。試験は、透析方法を使用して行った。簡潔に述べると、1mLのEXE RM LNCを、使い捨ての透析膜(MWCO 100kDa)(Float-A-Lyzer(登録商標)G2, Microfloat, Spectrum labs, USA)に載置し、磁力により撹拌しながら37℃の35mlの培地を含む50mlのファルコンチューブに導入した。所定の時間で、50μLのサンプルを取り出し、950μLのメタノールに溶解させた。エキセナチドの濃度を、上述のようにHPLCにより決定した。
1.8-in vitroでの細胞試験
1.8.1-細胞培養
ヒトNCI-H716 L細胞株は、ATCC(American Type CultureCollection)(Manassas, VA)から入手し、15~20継代で使用した。完全培地は、1(v/v)%のペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)および10(v/v)%のウシ胎仔血清(FBS)を含むロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地から構成されていた。細胞を、37℃、5(v/v)%のCO/95(v/v)%の空気の雰囲気にて75cmのフラスコ(Corning, Lowell, MA, USA)で懸濁および増殖させた。1日おきに、いくらかの新鮮な培地を添加した。培地を交換した後、培養物を遠心分離し、その後適切な密度で再懸濁させた。
消化器系のマウスL細胞株のGLUTag細胞を、16~29継代で使用した。細胞を、10(v/v)%の不活性化FBSおよび1(v/v)%のP/Sを補充したDMEM GlutaMAX(5.5mMのグルコース)(完全DMEM培地)において、5%のCOを供給させながら37℃で増殖させた。細胞を、EDTA(0.02%)を含むトリプシン(0.25%)を使用して、4~5日ごとに継代培養した。
Caco-2細胞(クローン1)を、25~30継代で使用した。Caco-2細胞株を、10(v/v)%のHyCloneTM FBS、1(v/v)%のL-グルタミン、1(v/v)%の非必須アミノ酸、および1(v/v)%のP/Sを補充したDMEMからなる培地において、10(v/v)%のCO/95(v/v)%の空気の雰囲気にて37℃で維持した。培地は、1日おきに交換した。
1.8.2-細胞傷害性試験
EXE RM LNCのin vitroでの細胞傷害性試験を、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-(2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(MTT)比色分析アッセイ(Beloqui et al., Journal of Controlled Release. 2013; 166, 115-123)を使用して上述のように計算した薬物および脂質ナノカプセルの濃度に基づき、Caco-2細胞において行った。また、細胞の生存率に及ぼす搭載されていないRM LNCの影響を、GLUTag細胞およびNCI-H716細胞で試験した。Caco-2細胞(5×10個の細胞/ウェル)を、96ウェルの組織培養プレート(Costar Corning CellBIND Surface, USA)に播種し、一晩接着させた。GLUTagおよびNCI-H716における細胞傷害性試験では、5×10個の細胞/ウェルを、Matrigel(登録商標)でコーティングした(10μL/mLの培地)96ウェルプレートに播種した。あらかじめ温めたPBSバッファーでプレートを洗浄(×3)した後、増大する脂質ナノカプセルの濃度(2~18mg/mL)に対応する増大する薬物濃度(0.5~10mg/mL)のEXE RM LNC100μLを、DMEM(FBSを含まない)に分散し、37℃で2時間Caco-2細胞と共インキュベートさせた。増大する搭載されていないRM LNCの濃度(1mg/mlから10mg/ml)を、DMEM GlutaMAXまたはRPMI-1640培地(FBSを含まない)に分散し、GLUTag細胞またはNCI-H716細胞と、それぞれ37℃で2時間共インキュベートした。インキュベーション後、上清を、3時間の間、0.5mg/mlのMTT100μLと交換した。紫色のホルマザンの結晶を、MultiSksan EXプレートリーダー(Thermo Fisher Scientific, USA)を使用する560nmでの吸光度の判定のため200μLのDMSOで溶解した。Triton-X 100を伴う細胞(100%死亡)および培養培地を伴う細胞(100%生存)を、それぞれ陽性対照および陰性対照とみなした。試験は、三連で行った。
1.9-in vitroでのGLP-1の分泌
GLUTag細胞およびNCI-H716細胞(1.8×10個の細胞/ウェル)を、Matrigel(登録商標)でコーティングした24ウェル細胞培養プレートに播種し、24時間接着させた。翌日に、プレートを、予め温めたPBSを使用してやさしく洗浄した。次に、GLUTag細胞を、FBSを含まないDMEM GlutaMAXまたは搭載されていないRM LNCと共インキュベートした。他方で、NCI-H716細胞を、FBSを含まないRPMI-1640培地および搭載していないRM LNCとインキュベートした。両方の培地は、50μMの最終濃度でDPP-IV阻害剤を含んでいた(Millipore, St. Charles, MO, USA)。以前に試験した脂質ナノカプセル(Xu et al., Mol Pharm. 2018; 15, 108-115)と比較した脂質ナノカプセルの効率を確認するために、本発明者らは、2mg/mlの脂質ナノカプセルの濃度を使用した。37℃で2時間インキュベーションした後、上清を回収し、250g、4℃で5分間遠心分離し(Centrifuge 5804 R, Eppendorf AG, Hamburg, Germany)、さらなる分析まで-80℃で保存した。細胞を、DPP-IV阻害剤の存在下でPBSに回収した。GLP-1を含む細胞抽出物を、3回の凍結融解サイクルの後に入手し、次に、250gにて4℃で5分間遠心分離した。総GLP-1の濃度を、Total GLP-1 ELISA kit(Meso Scale Delivery, Gaithersburg, USA)を使用して決定した。GLP-1の分泌は、上清+細胞で検出されるGLP-1の量として表されている。GLP-1の分泌は、以下の式により計算した:GLP-1の分泌=Cextracellular/(Cintracellular+Cextracellular)(式中、Cextracellularは、上清で試験したGLP-1の濃度であり、Cintracellularは、細胞で試験したGLP-1の濃度である)。
1.10-正常血糖マウスにおける総GLP-1の分泌
正常血糖マウス(雄性のC57BL/6Jマウス、20~25g、10週齢;Janvier Laboratories, France)を、それぞれ8匹のマウスを含む2つのグループに無作為に分割した。動物を一晩絶食させた後、自由に水にアクセスさせながら実験を行った。マウスを、約1.62mg/gのナノ粒子用量に対応するブランクのRM LNCで処置した。対照マウスを、等量のMilliQ水の経口強制投与により処置した。経口投与から60分後および180分後に、尾静脈の先端から血液サンプルを取り出した。サンプルを、DPP-IV阻害剤(血液1mlあたり20μL)の存在下で回収し、氷上で維持した。試験の直後に、血液サンプルを遠心分離(3,000rpm、4℃で10分)し、血漿を、分析まで-80℃で凍結した。総GLP-1レベルを、Total GLP-1 ELISA kit(Meso Scale Delivery, USA)を使用して定量化した。総GLP-1血漿値は、未処置の対照グループと比較した倍率変化として表されている。
1.11-高脂肪食により誘導した肥満/糖尿病マウスにおける経口グルコース負荷試験
8週齢の雄性のマウスを、ケージあたり5匹で収容し、5つのグループ(グループあたり10匹のマウス)に分割した。2週間順化させた後、実験前に3、8、または10週間、マウスに高脂肪食(60%の脂肪、20%の炭水化物(kcal/100g)、D12492i, Research Diets, USA)(HFDで処置したグループおよびエキセナチドで処置したグループ)または通常の固形飼料食(対照、AIN93Mi, Research Diets, USA)を与え、一晩絶食させた後に、経口エキセナチド溶液(EXE、500μgのエキセナチド/kg体重)、エキセナチドの逆ミセルが搭載された脂質ナノカプセル(EXE RM LNC、500μgのエキセナチド/kg体重)、または搭載されていないミセルが搭載された脂質ナノカプセル(RM LNC、EXE RM LNCと同等の濃度)で1時間処置し、その後経口グルコース強制投与を用いて試験した。対照グループ(対照食グループおよびHFDグループ)は、等量の無菌のMilliQ水を経口強制投与することにより処置した。1時間後、マウスを、経口グルコース強制投与(2g/kgのグルコース用量)で試験した。血中グルコースを、経口グルコース負荷の30分前(-30分)、ならびに経口グルコース負荷から0、15、30、90、および120分後に測定した。血中グルコースは、尾静脈の先端から回収した血液サンプルから、グルコースメーター(Accu Check, Roche, Switzerland)を用いて決定した。血液サンプルは、-30分および15分で回収し、ELISA kits(それぞれMeso Scale Delivery, USAおよびMercodia, Uppsala, Sweden)により総GLP-1およびインスリンの血漿中濃度を試験した。インスリン抵抗性指数は、入手した血漿における血中グルコースおよびインスリンの曲線下面積を、経口グルコース負荷試験(OGTT)で乗算することにより決定した。
1.12-正常血糖マウスおよび肥満/糖尿病マウスにおける薬物動態学的試験
8週齢の雄性のマウスを、無作為に3つのグループ(時点あたり10匹のマウス)に分割し、食餌および無菌水に自由にアクセスできる制御された環境(23±2℃の室温、12時間の明暗周期)に収容した。2週間順化させた後、マウスに3週間HFD(60%の脂肪)を与えた。実験の前に、マウスを、無菌性のMilli-Q水に自由にアクセスさせながら一晩絶食させた。エキセナチド溶液およびEXE RM LNCを、500μg/kgの用量で経口投与した。またエキセナチドを、50μg/kg用量で皮下投与した。異なる時点(0、0.5、1、1.5、2、4、6、および8時間)で、血液サンプルを、尾静脈の先端から回収した。次に、血液サンプルを遠心分離(1500g、4℃で10分間)し、エキセナチドの血漿中濃度を、ELISA kit(EK-070-94, Phoenix Europe GmbH, Karlsruhe, Germany)を使用して定量化した。エキセナチドの相対的なバイオアベイラビリティ(FR%)を、以下の式:
Figure 2022537042000004
を使用して計算した。
薬物動態学的なパラメータは、PKSolver(Zhang et al., Comput Methods Programs Biomed. 2010; 99, 306-314)を使用して分析した。正常血糖マウスの場合では、時点あたり4匹のマウスを代わりに使用した。エキセナチドは、同じ条件下で測定した。
1.13-肥満/糖尿病マウスにおける常習的なエキセナチドの長期間の処置試験
8週齢の雄性のマウスを、無作為に7つのグループ(グループあたり10匹のマウス)に分割し、無菌性の食餌(AIN93Mi;Research diet)および無菌水に自由にアクセスできる制御された環境(23℃±2℃の室温、12時間の明暗周期)でケージあたり5匹を収容した。2週間の順化期間の後に、マウスに、8週間HFD(60%の脂肪および20%の炭水化物(kcal/100g)、D12492i, Research Diets, USA)(エキセナチドで処置したグループ)または通常の固形飼料食(対照)を与えた。この期間の後に、続く5週間の処置期間の中で、マウスの体重を毎日記録し、糖血症を1週間に1回モニタリングした。マウスを、(i)エキセナチド溶液もしくはRM LNCの中にカプセル化されたエキセナチド(500μg/kg用量)(EXE RM LNC)、もしくは対応する濃度の搭載されていないRM LNCを用いて経口的に、または(ii)エキセナチド溶液(10μg/kg)を用いるかもしくはByetta(登録商標)(10μg/kg)(販売されているエキセナチド皮下投与注射剤)としての皮下投与により、午後4時に毎日処置した。対照グループ(健常およびHFD)は、等量の無菌性MilliQ水を用いて毎日経口的に処置した。グルコース試験前に、マウスを、週に1回6時間絶食させた。処置期間の終了時に、動物に、イソフルラン(Forene, Abbott, England)で麻酔をかけ、血液を、門脈および大静脈からサンプリングした。全採血の後、マウスを、頚椎脱臼により安楽死させた。皮下脂肪組織、肝臓、および脾臓を正確に解剖し、重量測定し、液体窒素に即座に浸漬した後、さらなる解析のため-80℃で保存するか、または組織解析(肝臓)のため4%のパラホルムアルデヒド(PFA)に保存した。体組成および脂肪組織に及ぼす影響を、皮下脂肪組織(SAT)、精巣上体脂肪組織(EAT)、内臓脂肪組織(VAT)および褐色脂肪組織(BAT)の重量(mg)により評価した。総GLP-1(ELISA kit, Meso Scale Delivery, Gaithersburg, USA)およびインスリン(Ultrasensitive insulin ELISA, Mercodia, Uppsala, Sweden)を含む食物摂取および体重に関与するグルコースおよび消化管ホルモンのレベルを、末梢血および門脈血で測定した。脂肪肝を、オイルレッドO染色により可視化した。肝臓組織は、Tissue-Tek Optimal Cutting Temperature compound(Sakura Europe, Leiden, Netherlands)に埋め込み、冷却したイソペンタンにて急速冷凍した。5μメートル厚の組織切片を、脂肪含有量の分析のためオイルレッドO染色で染色した。マウスあたり5つの高倍率の視野(20×)を分析した。平均液滴領域の定量化を、ImageJソフトウェア(Version 2.0.0-rc-69/1.52i, National Institutes of Health, Bethesda, Maryland, USA)を使用して行った。肝臓の全般的な形態を、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色した切片により評価した。リアルタイム定量PCR(qRT-PCR)分析では、総RNAは、TriPure試薬(Roche)を使用して組織から単離した。相補DNAは、Reverse Transcription System kit(Promega, Madison, Wisconsin, USA)を使用する1μgの総RNAの逆転写により調製した。リアルタイムPCRは、製造社の説明にしたがい検出のためGoTaq(登録商標)qPCR Master Mix(Promega, Madison, USA)を使用して、CFX96リアルタイムPCRシステムおよびCFX Manager 3.1ソフトウェア(Bio-Rad, Hercules, California, USA)で行った。リボソームタンパク質L19(Rpl19)を、ハウスキーピング遺伝子として選択した。全てのサンプルは、2つの96ウェル反応プレートにおいて二連で行い、データは、2-ΔΔCT法により分析した。増幅させた産物の同一性および純度は、増幅の終了時に融解曲線分析により評価した。目的のマウス遺伝子のプライマー配列を、表3に提示する。
Figure 2022537042000005
総脂質を、(Everard et al., Nat Commun. 2019; 10, 457)により上述されるように改変したFolch法(Biol Chem. 1957; 226, 497-509)により、クロロホルム-メタノールで抽出した後に測定した。トリグリセリドおよびコレステロールの濃度を、最終産物の酵素反応と分光光度法による検出とをカップリングしたキット(Diasys Diagnostic and System, Holzheim, Germany)を使用して測定した。全てのサンプルは、二連で行った。
1.14-統計分析
GraphPad Prism 7プログラム(CA, USA)を使用して統計分析を行った。全ての分析および各グループで、全ての排除は、異常値の検出のためのGrubbs検定の使用により裏付けられていた。値は、分析を行う前にグループ間で分散が有意に異なるものだった場合に、対数変換により正規化した。2元または1元ANOVA、次にTukeyの事後検定を、複数のグループ間の比較に適用した。正規化の後であっても分散がグループ間で有意に異なっていた場合、ノンパラメトリック検定を行った。この結果は、平均値±標準誤差(SEM)として表されている。P<0.05の差異は、統計上有意であるとみなした。
2.結果および論考
2.1-エキセナチドは、脂質ベースの脂質ナノカプセルの中にうまくカプセル化され、保存されている。
近年、脂質ベースの脂質ナノカプセル(LNC)が、約200nmの大きさを提示する場合、マウスにおいてin vivoで内因性GLP-1の分泌をもたらしたことが発見された(Xu et al., Mol Pharm. 2018; 15, 108-115)。カプセル化されたGLP-1類縁体の薬理学的作用と共にLNCの生体作用の相乗作用を提供することが実現可能であり得るかどうかは知られていなかった。よって、概念実証として、GLP-1類縁体エキセナチド(EXE)を、親水性分子である、LNCの中にカプセル化されているインクレチンミメティックとして選択した。この可能性を評価するためには、脂質ナノカプセル自体で観察されるin vivoでの(たとえば内因性GLP-1の分泌をもたらす)生体作用に寄与する、ナノ担体の物理化学的な特徴を保ちつつ、脂質ナノカプセルの液体の脂質内核の中にエキセナチドをカプセル化することが重要であった(Xu et al., Mol Pharm. 2018; 15, 108-115)。LNCは、転相プロセスにより調製した(Heurtault et al., Pharm Res. 2002; 19, 875-880)。LNCを調製するために使用された以前に記載の手法(Xu et al., Mol Pharm. 2018; 15, 108-115)と比較して、この内部の油状のコアは、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドの混合物(Labrafac(登録商標)WL 1349)ならびにオレイン酸モノ、ジ、およびトリグリセリド(Peceol(登録商標))と置き換えられた。このバリエーションは、60℃~90℃から50℃~67℃へと漸進的に加熱/冷却する温度サイクルの低減を可能にし、EXEのLNCへの組み込みを可能にした。LNCへのカプセル化の前に、EXEは、ソルビタンオレアート(Span(登録商標)80)ならびにカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Labrafac(登録商標)WL 1349)の混合物から構成される界面活性剤-油の組み合わせを使用して逆ミセル(RM)の中に導いた(Anton et al., Int J Pharm. 2010; 398, 204-209)。次に、これらEXE RMを、LNC調製プロセスの最後のサイクルの間に製剤に組み込んだ。製剤の最終的な組成は、上記の表1に記載されており、物理化学的な特性評価が表4に詳述されている。
Figure 2022537042000006
EXE RM LNC、およびペプチドを含まないRMをカプセル化した脂質ナノカプセル(RM LNC)の両方の平均粒径は、約220nmであった。小さなPDI指数(PDI<0.2)は、粒度分布の観点からの得られた脂質ナノカプセルの均一性を表した。大きさおよびPDIに加え、エキセナチドのカプセル化の後の脂質ナノカプセルの表面電荷にも有意な影響はなかった(P>0.05)。特に、EXE RM LNCは、約85%の封入効率を呈した。
脂質ナノカプセルは、バイオミメティック消化管液においてin vitroで安定したままであり、エキセナチドの分解を阻止していた(図1)。脂質ナノカプセルの安定性は、絶食状態および食事が供給される状態の模擬胃液または模擬腸液を含む5つのバイオミメティック培地(それぞれ、ペプシンを伴うかまたは伴わないFaSSGF、FaSSIF、FeSSIF、およびFeSSIF-v2)において確認された(図1A~E)。これら結果により、新規に開発した脂質ナノカプセルが以前に記載された従来の脂質ナノカプセル(Xu et al., Mol Pharm. 2018; 15, 108-115; Roger et al., Int J Pharm. 2009; 379, 260-265)と同じ胃に耐性のある特性を保持していたことが確認された。in vitroでのエキセナチドの放出プロファイルを、胃の培地(ペプシンを伴わないFaSSGF、pH1.6)および腸の培地(FaSSIF、pH6.5)でさらに評価した(図1A~F)。エキセナチドは、6時間の期間にわたりRM LNCから漸進的に放出し、FaSSIFではこの時間の後に60%の累積的なエキセナチドの放出を達成したが、FaSSGFでは検出できなかった(図1F)。
2.2-RM LNCは、正常血糖マウスにおいてin vitroおよびin vivoの両方でGLP-1の分泌を誘導し、EXEの血中レベルを増大させる。
まず、GLP-1の分泌を誘導する特性に及ぼすRM LNCの特性を、マウスL細胞(GLUTag細胞)およびヒトL細胞(NCl-H716)の両方においてin vitroで調査した(図2A)。約220nmの粒径のRM LNCは、両方のin vitroモデルで内因性GLP-1の分泌を誘発することができた(図2A)。重要なことに、さらなる液体の脂質がRM LNCの内核に組み込まれたが、GLP-1の分泌の刺激は、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドのコアを含む脂質ナノカプセルに関して以前に記載されたもの(Xu et al., Mol Pharm. 2018; 15, 108-115)と同等であった。よって、これらデータにより、ナノシステムの外部の物理化学的な特性(たとえば表面電荷)を保存することにより、GLP-1の分泌を誘導するナノ担体の特性を維持することが可能であったことが確認された。
RM LNCが正常血糖マウスにおいてin vivoでGLP-1の分泌を誘発できるかどうかをさらに調査した(図2B)。特に、RM LNCの経口投与により、GLP-1レベルが最大約3倍まで増大したことが観察されたため、薬理学的作用がin vivoで保存されていた(図2B)。よって、ナノ担体の薬理学的作用は、細胞の性質(マウスまたはヒト)に関わらず両細胞株においてin vitroで、および正常血糖マウスにおいてin vivoで再現された。
RM LNCがGLP-1の内因性分泌を誘発するだけでなく、インクレチンミメティックペプチドの経口送達のためのナノ担体として二重作用として作用するという仮説を検証するために、これらペプチドの吸収を増大させるナノ担体の特性を評価した。この目的のため、エキセナチドの血漿中濃度を、水溶液またはRM LNCの中にカプセル化された溶液(500μg/kgのエキセナチド用量)として経口投与した後に測定した。エキセナチドの血漿中レベルは、溶液における遊離エキセナチドとして送達された場合よりもRM LNCの中にカプセル化された場合に高かった(図3)。まとめると、これらデータにより、内因性GLP-1レベルを高め、EXEの血漿中レベルを増大させ、よってペプチドの吸収を可能にするRM LNCの有効性に関する仮説が確認された。
さらに、EXE RM LNCの細胞傷害性のエビデンスは、増大する薬物濃度0.5~10mg/mL(図4A)またはナノ粒子の濃度2~18mg/mL(図4B)の後にヒトの腸上皮Caco-2細胞で観察できなかった。GLUTag細胞およびNCI-H716細胞におけるRM LNCの細胞傷害性は、それぞれ図4Cおよび図4Dに記載されている。
2.3-エキセナチドの血漿中レベルの増大と内因性GLP-1の放出の組み合わせは、糖尿病マウスの糖血症を改善する。
ナノ担体が介在する内因性GLP-1レベルのEXE血漿中濃度の増大との組み合わせに関する治療上の関連性を、食餌誘導性肥満/糖尿病マウスモデルで評価した。EXE RM LNCの投与を、マウスの高脂肪食(HFD)誘導性T2DMモデル(C57BL/6J)において急性的な処置(1回の単一投与)により行った。最初に、HFDマウスが、絶食状態で著しく高血糖性かつ高インスリン性であり、強力な度合いのインスリン抵抗性(たとえばインスリン抵抗性の指数)を呈したことが確認された。
経口グルコース投与(2g/kg)の60分前に、500μg/kgのエキセナチド用量(遊離およびRM LNCの中にカプセル化)ならびに同等の濃度のRM LNCまたは水を1度経口投与した。驚くべきことに、本発明者らは、これらマウスの糖血症が、痩せた正常血糖対照マウスで観察されたものと同じ全体的な経口グルコース試験を通したプロファイルをたどったため、EXE RM LNCでの処置が、糖血症を完全に正常化したことを見出した(図5)。逆に、EXEで処置したマウスで測定したグルコースレベルは、30分でHFDを供給したマウスのレベルと同様のままであり、90分までEXE RM LNCで処置したマウスのレベルよりも依然として高かった(図5)。EXE RM LNCは、血漿グルコースレベルおよびグルコースの曲線下面積(AUC)を有意に減少できた(図6)。重要なことに、総GLP-1レベルは、対照グループ(対照およびHFD)と比較してRM LNCで処置したグループおよびEXE RM LNCで処置したグループの両方において有意に増大したことが観察され、病態下でGLP-1の放出を刺激するナノシステム自体の特性が確認された。しかしながら、EXE RM LNCのみが、HFDグループと比較して有意にインスリン抵抗性指数を低減した(図7)。
興味深いことに、RM LNC単独は、未処置のHFDマウスと比較して血中グルコースレベルを低下させる効果を有していた。しかしながら、この効果は、高血糖を低減するには十分ではなかった。HFDマウスにおいてエキセナチドレベルを測定する薬物動態学的試験により、エキセナチドの血中レベルが、エキセナチド溶液と比較してRM LNCの中で経口投与された場合(EXE RM LNC)に有意に増大したことが確認された(LNCとの相対的なバイオアベイラビリティ4.32%、P<0.001)。この相対的なバイオアベイラビリティは、開発の最終段階に推移した既知のペプチドが推定0.5~1%のバイオアベイラビリティを伴うことを鑑みると、価値が高く、大幅に改善されていると考えることができる。計算された薬物動態学的なパラメータを、表5にまとめる。
Figure 2022537042000007
本発明者らは、正常血糖マウス(図3)対HFDマウス(図8)における異なるエキセナチドの薬物動態プロファイル(たとえば異なるCmax、AUC、Tmax)を観察した。エキセナチドの血中レベルの増大および内因性GLP-1レベルの増大をまとめて考慮すると、これらデータは、T2DMの症状の寛解のために開発されたナノシステムの有効性に関する強力な概念実証として用いられる。
このモデルは、マウスの食餌誘導性糖尿病および代謝障害のより強力なモデルであるため、EXE対EXE RM LNCの影響をHFDで8週間および10週間処置したマウスでさらに調査した。OGTTの間の血中グルコースレベルの低下に及ぼすEXE RM LNCの有効性に関して同等の結果が、疾患の慢性度に関わらず得られた(図9A~B)。
2.4-常習的なEXE RM LNCの長期間の処置は、肥満および糖尿病のマウスのグルコースの代謝を改善する。
グルコースの代謝に及ぼすEXE RM LNCでの常習的かつ長期間の処置の影響を評価するために、肥満/糖尿病の傾向のマウスを、8週間のHFDに供した後、500μg/kgのエキセナチド(経口)(EXE RM LNC)または等量の搭載されていない脂質ナノカプセル(RM LNC)または溶液における遊離エキセナチド(EXE)または水を毎日投与しながら5週間HFDに供した。この実験的な処置の影響を既存の処置戦略と比較するために、市販のエキセナチドの皮下投与形態(Byetta(登録商標))で処置したグループも同様に包含した。エキセナチドの経口投与を、10μg/kgのエキセナチド溶液またはByetta(登録商標)の皮下投与(s.c.)と比較した。
5週間毎日処置した後、マウスを屠殺し、血液を、門脈および大静脈から取り出した。興味深いことに、5週間の処置の後、EXE RM LNCのみが、対照グループのレベルと同等なレベルに達成するまで血漿グルコースレベルを減少できた(図10A~B)。EXE RM LNCで処置したマウスが、RM LNCで処置したマウスよりも有意に低い血漿グルコースレベルを有したことに言及することは注目に値する。また血漿グルコースレベルは、EXEで処置したグループよりもRM LNCグループにおいて有意に低かった。よって、これらデータは、グルコースのホメオスタシスに関してEXE RM LNCにより提供される相乗効果を表している。この効果は、恐らくはRM LNCにより誘発される内因性GLP-1の分泌およびエキセナチドの血漿中レベルの増大の組み合わせによるものである。さらに、EXE RM LNCで処置したマウスおよび皮下投与により処置したマウスは、対照グループと同等なインスリンレベルを呈した(図11)。HFDグループと比較したこの低下は、このデータがKruskal-Wallis検定、次いでDunnの事後検定を行うことにより分析された場合に統計上有意性に達しなかったが、マン・ホイットニー検定により分析した場合に有意差が見出された(EXE RM LNC対HFDでP=0.04)。
2.5-EXE RM LNCを用いた常習的な処置は、肥満/糖尿病マウスにおいて食餌誘導性脂肪肝を減少する。
本発明者らは、肝臓の重量が、HFDを供給したグループと比較して5週間の処置(13週間のHFDの供給)の後にEXE RM LNCで処置したグループにおいてのみ有意に低いことを見出した(図12)。オイルレッドO染色の後の組織分析は、HFDマウスよりもEXE RM LNCで処置したマウスにおいて低い肝臓の脂質の蓄積および少なく小さな脂肪滴により証明されるように、顕著な脂肪肝の減少を明らかにした(データ不図示)。
トリグリセリドレベルへのわずかな影響にも関わらず、肝臓の総脂質含有量およびコレステロールレベルは、EXE RM LNCで処置したマウスと皮下投与で処置したマウスとの間で同等であり、HFDグループのレベルよりも有意に低かった(図13A~C)。
EXE RM LNCを使用した本手法は、全ての他の処置よりも肝臓の重量の減少において効率的であり、通例の投与経路(s.c.)による市販の薬と同程度に効率的あり、よって、現在の皮下投与の手法と比較して良好なグルコースのパラメータに及ぼす効果および肝臓のマーカーにおける非劣性を明らかに示すことに留意することが非常に重要である。
生化学的および組織学的な分析に加えて、免疫細胞集団の浸潤/動員(F4/80、Cd11c、Mcp1)、炎症(Tnfa)および脂質の代謝(Fasn、Pparg、Cpt1a)に関連する重要なマーカーを、肝臓および内臓脂肪組織(VAT)にて定量PCRにより分析した。肝臓では、EXE RM LNCで処置したマウスにおけるCd11cおよびMcp1のmRNA発現は、HFDグループよりも有意に低く(それぞれ(P=0.05およびP=0.0355)、同じ効果が、Byetta(登録商標)で処置したグループで観察された(それぞれP=0.0015およびP=0.0007)。
内臓脂肪の質量は、肝疾患およびインスリン抵抗性の発症に関するリスク因子とみなされている(Perseghin, Diabetes Care. 2011; 34 Suppl 2, S367-370; Lebovitz & Banerji, Diabetes Care. 2005; 28, 2322-2325)。EXE RM LNCで処置したグループおよびByetta(登録商標)で処置したグループの両方が、HFDを供給したマウスよりも少ない脂肪を呈したこと、ならびに未処置の対照グループとのこれらグループの脂肪量の有意差はなかったことが見出された(図14A~E)。これらの重量は、マン・ホイットニー検定により分析した場合は著しく有意に異なるものであった(EXE RM LNC対HFDではP=0.0057およびByetta(登録商標)対HFDではP=0.0004)。興味深いことに、HFDグループで観察されたF4/80の高い発現は、ANOVAによるとEXE RM LNCで処置したマウスでのみ有意にダウンレギュレートされていた。HFDグループと比較した際、有意な効果は、他のマーカー(Cd11c、Mcp1、Fasn、Pparg、Tnfa)では観察されなかった。
2.6-論考
多くの進行中の試みにも関わらず、T2DMの注射可能な治療薬の経口薬物送達戦略への変換は、依然として課題である。結果として、販売されているGLP-1類縁体を用いた現在の処置は、未だ排他的に皮下投与されている。ペプチドの別の薬物送達システムを提供する目的の試験は、経口投与経路の見込みを完全に利用するために最も重要である。しかしながら、経口ペプチド送達の現在の最先端の戦略は、送達システムを単にビヒクルとして使用し、これらは、担体が最終的な製剤にさらなる治療効果を有し得る可能性を研究していない。インクレチンベースの糖尿病疾患治療の状況では、内因性GLP-1の分泌の亢進は、ペプチドの生理機能により密接に類似する新規の別の処置を表す。ここで、(i)カプセル化された合成GLP-1類縁体の送達および(ii)内因性GLP-1の分泌の刺激に及ぼす二重の治療効果を有する脂質ベースの薬物送達システム、すなわち脂質ナノカプセルが提供される。
この送達システムの開発における主な一課題は、脂質ナノカプセルの物理化学的な特性を保ちつつ、脂質コアの中に親水性ペプチドをカプセル化することであった。この目的のため、まず、エキセナチドを逆ミセルの中に捕捉し、次に、それ自身を脂質ナノカプセルの内部脂質コアに包含した。この戦略は、それらの構造を変えず、L細胞の活性化に関するそれらの効果を保持しつつ、脂質ベースのナノ担体の中にGLP-1ミメティックをカプセル化でき、よって、内因性GLP-1の分泌を誘発することができた。
GLP-1の分泌を誘導するエキセナチドを搭載した脂質ナノカプセルの特性を、マウスL細胞およびヒトL細胞の両方においてin vitroで、ならびに正常血糖マウスにおいてin vivoで確認した(図2A~B)。さらに、本発明者らは、薬物動態学的試験を行い、エキセナチドの全身循環への吸収を確認した(図3)。製剤の安定性のエビデンス、ペプチドの完全性を保存するナノシステムの特性、ペプチドの全身循環への吸収を可能にしつつin vivoでGLP-1レベルを増大させるその特性、および最終的にはHFD誘導性肥満/糖尿病マウスモデルの病理学的状況での本製剤の効果が、本明細書中において提供される。
急性的な処置によるin vivoでの肥満/糖尿病マウスの糖血症を改善するための本発明者らの二重作用ナノシステムの有用性を、最初に評価した。単一の急性投与、次にOGTT試験を行った後、EXE RM LNCで処置したマウスは、血中グルコースレベルを正常化し、これは対照のグループの値と同等であった。空の脂質ナノカプセルおよびEXEを搭載した脂質ナノカプセルは、未処置のグループまたはEXE溶液で処置したグループと比較して増大したGLP-1レベルを提示したが、EXE RM LNCで処置したマウスのみが、インスリン抵抗性指数の有意な減少を呈したことが観察された。肥満/糖尿病マウスの薬物動態分析により、EXE RM LNCが4%超までエキセナチドのバイオアベイラビリティを増大させたことが確認された。これらデータは、内因性GLP-1レベルの増大およびペプチドのバイオアベイラビリティの増大の両方を組み合わせることにより糖血症の寛解における二重作用薬物送達ナノシステムの有効性のエビデンスを提供する。
このナノシステムがT2DMの処置におけるインクレチンペプチドの送達に関する現在の皮下投与戦略の代替案を表すことを示すために、5週間の毎日の投与プロトコルからなる常習的な/長期間の処置を行った。グルコースのホメオスタシスおよび脂質の代謝に及ぼすナノシステムの効果を評価した。5週間の処置の後、EXE RM LNCで処置したマウスは、インスリンレベルの減少と共に、未処置の対照マウスの値と同等の正常化した血漿グルコースレベルを呈した。よって、観察された有用な効果は、ナノ担体の急性的な効果に限定されるものではなく、経口グルコース負荷に及ぼす治療効果にも変換される。
まとめると、エキセナチドが搭載された脂質ナノカプセルは、高血糖および高インスリン血症の低減の両方に有効であった。
この手法が、グルコースのホメオスタシスに関して、皮下投与される現在販売されている薬物で観察されたものと同等の結果をもたらしたことは注目に値する。よって、これら結果は、常習的な処置での経口投与により投与される利点を伴いこの手法の非劣性を表す。
またこれらデータは、肝臓および内臓脂肪組織の両方における免疫細胞集団(マクロファージ、樹状細胞)および炎症性マーカーの浸潤-動員に関連するあまり重要ではないマーカーに対する強力な傾向を指摘しており、繰り返しになるが、このようなマーカーに及ぼすこの手法の有用な効果を強調している。F4/80は、炎症性細胞の浸潤のマーカーであり(成熟なマクロファージ)、Cd11c、Mcp1、およびTnfaは、肥満に関連する炎症の間のM1マクロファージの表現型を反映することが知られている。EXE RM LNCが、内臓脂肪組織におけるF4/80の遺伝子発現を有意に低減した唯一の処置であったことに留意することが重要である。肥満では、脂肪組織におけるマクロファージの浸潤は、慢性炎症をもたらし、インスリン抵抗性および糖尿病のトリガー因子であるとみなされている(Weisberg et al., Clin Invest. 2003; 112, 1796-1808)。しかしながら、マウスのマクロファージのアブレーションは、グルコースのホメオスタシスの正常化に関連していた(Hernandez et al., Cell Metab. 2014; 20, 499-511)。機構的な観点から、本発明者らは、以前に、RM LNCがGLP-1、および恐らくは共ペプチドのGLP-2の分泌を増大させることを示しており、これは、腸のバリア機能を強化することにより、肥満のげっ歯類において細菌化合物の転位、炎症、および脂肪肝を低減することが示されている(Cani et al., Gut. 2009; 58, 1091-1103)。
理論により拘束されることを望むものではないが、EXE RM LNCまたはRM LNCのいずれかを用いた毎日の経口強制投与は、1日中腸ペプチドの産生を刺激し得、よって、HFD供給マウスに良好な代謝プロファイルを維持することに寄与し得る。全ての場合において、毎日の常習的な投与は、代謝を改善し、さらには他のマーカーを正常化するために十分である。最後に、脂質ナノカプセルは、DPP-IVの活性を調節し得、よって、体内循環する総GLP-1レベルの増大を保持し得る。
実施例2:作業例2
1.材料および方法
1.1-材料
エキセナチド(酢酸エキセナチド)(EXE)は、Bachem(登録商標)(Bubendorf, Switzerland)から購入した。Labrafac(登録商標)WL 1349(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)およびPeceol(登録商標)(オレイン酸モノ、ジ、およびトリグリセリド)は、Gattefosse(Saint-Priest, France)の厚意により提供された。Lipoid(登録商標)S 100(94%のホスファチジルコリンでのダイズレシチン)は、Lipoid GmbH(Ludwigshafen, Germany)からの贈与であった。Solutol(登録商標)HS15(遊離PEG 660およびPEG 660 12-ヒドロキシステアラートの混合物、Mw 870Da)およびSpan(登録商標)80(ソルビタンオレアート)は、Sigma-Aldrich(St. Louis, USA)から購入した。1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-メトキシルポリ(エチレングリコール)2000(DSPE-PEG2000-CH)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[ポリ(エチレングリコール)-2000]-プロピオナート(DSPE-PEG2000-CH-CH-COOH)は、Nanosoft Polymers(Winston-Salem, USA)から得た。レシチン、塩化ナトリウム(NaCl)、サポニン、ペプシン、Triton-X 100、タウロコール酸ナトリウムおよびジメチルスルホキシド(DMSO)、3-(4,5-ジメチル-チアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)は、Sigma-Aldrich(St. Louis, USA)から購入した。Total GLP-1(ver.2)アッセイキットおよび活性型GLP-1アッセイキットは、Meso Scale Discovery(Maryland, USA)から購入した。エキセンディン-4酵素イムノアッセイキットは、Phoenix Europe GmbH(Karlsruhe, Germany)から購入した。Ultrasensitive Mouse Insulin ELISA Kitは、Mercodia AB(Uppsala, Sweden)から購入した。Matrigel(商標)は、BD Bioscience(Belgium)から得た。ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)阻害剤は、Millipore(St. Charles, USA)から購入した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)-GlutaMAX(5.5Mmのグルコース)、ウシ胎仔血清(FBS)、ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)、トリプシン(0.25%)-EDTA(0.02%)、およびリン酸緩衝食塩水(PBS)も使用し、これらは、Thermo Fisher Scientific(Invitrogen, Belgium)から購入した。DiD(DiIC18(5)solid(1,1’-イオクタデシル(ioctadecyl)-3,3,3’,3’-テトラメチルインドジカルボシアニン,4-クロロベンゼンスルホナート塩))は、Thermo Fisher Scientific(Invitrogen, UK)から得た。この試験で利用される全ての化学試薬は、分析グレードであった。
1.2-非目的のナノ粒子および目的のナノ粒子の調製および特性決定
1.2.1-非目的および目的の脂質ベースのナノシステムの調製
エキセナチドをカプセル化した逆ミセル(EXE RM)および改変された脂質ナノカプセル(nanocapule)(LNC)を含む非目的の脂質ナノシステム(EXE RM LNC)を、実施例1に記載されるように調製した。まず、エキセナチドをカプセル化した逆ミセル(EXE RM)を、1:5w/wの比率のSpan(登録商標)80(界面活性剤)およびLabrafac(登録商標)WL 1349(油)からなる混合物を高速下で撹拌することにより調製した。撹拌の間に、50μLの薬物溶液(MilliQ水において30mg/mLのエキセナチド)を、混合物に滴下した。第2に、LNCを、わずかに改変した転相プロセスにより生成した。769.5mgのLabrafac(登録商標)WL 1349、85.5mgのPeceol(登録商標)、13.4mgのLipoid(登録商標)S100、120mgのSolutol(登録商標)HS15、50mgの塩化ナトリウム(NaCl)、および1.025mLのMilliQ水の混合物を、200rpmで5分間撹拌した。3回の漸進的に加熱/冷却するサイクル(50℃~67℃)を行った。最後のサイクルで、500μLのあらかじめ温めたEXE RMを、温度が転相領域(PIZ;59~61.5℃)より約3℃高い際に混合物に添加した。最後に、2.5mLの冷却水を添加して、2分間の高速撹拌下でPIZの温度に到達させた。ブランクの非目的のナノシステム(RM LNC)は、同じプロトコルを使用して薬物溶液を添加することなく生成した。
1.2.2-DiD標識した非目的の脂質ベースのナノシステムおよび目的の脂質ベースのナノシステムの調製
DiD標識したRM LNCを、225μgのDiDを混合物に添加することにより調製した。すなわち、45μLのDiD(エタノールにおいて5mg/mL)をバイアルに添加し、次に、有機溶媒が完全に蒸発するまで水槽で加熱した。その後、Labrafac(登録商標)WL 1349を同じバイアルに添加し、DiDが完全に油相に溶解するまで水槽でDiDと混合した。次に、混合物を室温(約20℃)に冷却し、他の成分を添加し、上述のように調製プロセスを続行した。
1.2.3-プロピオナートを伴うまたは伴わないペグ化された逆ミセルが搭載された脂質ナノカプセルの調製
プロピオナートを伴うまたは伴わないペグ化された逆ミセルが搭載された脂質ナノカプセル(それぞれRM LNC PEGまたはRM LNC PEG-PRO)を、それぞれDSPE-PEG2000-CHまたはDSPE-PEG2000-CH-CH-COOHを5mg/mLの濃度のRM LNCと、穏やかに撹拌しながら37℃で4時間インキュベートすることにより生成した。インキュベーションの間に、懸濁液を、15分ごとにボルテックスし、次に氷槽で1分間クエンチした。
1.3-エキセナチドの定量化
ペグ化RM LNCの中にカプセル化されたエキセナチドを、実施例1に記載の勾配方法(1.4参照)を使用して高速液体クロマトグラフィー(HPLC, Shimadzu, Japan)により定量化した。
1.4-NPの特性決定
ペグ化RM LNC NPの平均直径、多分散指数(PDI)、ゼータ電位、および薬物カプセル化の効率(EE、%)を、実施例1に開示されるように決定した(1.5参照)。
1.5-刺激した消化管液におけるナノカプセルの安定性および薬物の放出
1.5.1-刺激した消化管液におけるペグ化ナノカプセルの安定性
リガンドとしてのプロピオナートを伴うまたは伴わないペグ化EXE RM LNCのin vitroでの安定性を、実施例1に開示されるように評価した(1.6参照)。
1.5.2-in vitroでの薬物放出試験
ペグ化EXE RM LNCからの薬物の放出を、実施例1に開示されるように、ペプシンの非存在下でのFaSSGF培地およびFaSSIF培地において、それぞれ2時間および6時間評価した(1.7参照)。
1.6-in vitroでの細胞試験
1.6.1-細胞培養
消化器系のマウスL細胞株のGLUTagは、Daniel Drucker博士(University of Toronto, Canada)の厚意により提供された。GLUTag細胞は、17~25継代で使用した。細胞は、10(v/v)%の不活性化FBSおよび1(v/v)%のP/Sを補充したDMEM GlutaMAX(5.5mMのグルコース)(完全DMEM培地)において、5%のCOを供給しながら37℃で増殖させた。細胞は、4~5日ごとに継代培養した。
1.6.2-細胞傷害性試験
搭載されていないペグ化RM LNCナノカプセルのin vitroでの細胞傷害性試験を、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-(2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(MTT)比色分析アッセイ(Xu et al. Mol Pharm. 2018; 15:108-115)を使用し、以前に計算されたナノ粒子の濃度を使用して、GLUTag細胞において行った。GLUTag細胞(5×10個の細胞/ウェル)を、Matrigel(商標)がコーティングされた(10μL/mLの培地)96ウェルプレートに播種した。プレートをあらかじめ温めたPBSバッファーで洗浄(×3)した後、増大するナノカプセルの濃度(0.5~10mg/mL)のナノ粒子懸濁液100μLを、DMEM GlutaMAX培地(FBSを含まない)に分散し、GLUTag細胞と37℃で2時間共インキュベートした。インキュベーションの後、上清を、0.5mg/mLのMTT100μLと3時間にわたり置き換えた。紫色のホルマザン結晶を、MultiSksan EXプレートリーダー(Thermo Fisher Scientific, USA)を使用する560nmでの吸光度の判定のため、200μLのDMSOに溶解した。Triton-X 100を伴う細胞(100%死亡)および培養培地を伴う細胞(100%生存)を、それぞれ陽性対照および陰性対照とみなした。試験は、三連で行った。
1.6.3-in vitroでのGLP-1の分泌
GLUTag(1.8×10個の細胞/ウェル)を、Matrigel(商標)をコーティングした24ウェルの細胞培養プレート上に播種し、24時間接着させた。翌日、プレートを、予め温めたPBSを使用してやさしく洗浄した。次に、GLUTag細胞を、FBSを伴わないDMEM GlutaMAXまたは搭載されていないペグ化NP(リガンドを伴うかまたは伴わないRM LNCナノカプセル)と共インキュベートした。この培地は、50μMの最終濃度でDPP-IV阻害剤を含んでいた(Millipore(登録商標), St. Charles, MO, USA)。GLP-1の分泌に及ぼす異なるナノ粒子の濃度の作用を試験するために、本発明者らは、0.5~2mg/mLのナノカプセルおよび0.1~3mg/mLのナノ粒子の濃度をそれぞれ使用した。プロトコルは、実施例1に記載されている(1.9参照)。
1.7-in vivoでの試験
1.7.1-動物
動物試験を含む全てのプロトコルは、Universite catholique de Louvain ethical committee on animal experiments (2018/UCL/MD/45;laboratory agreement LA1230418)により承認されており、実験動物の保護に関するベルギーの法律(2013年5月29日の国王令)にしたがい行われた。
1.7.2-正常血糖マウスにおけるリガンドがコンジュゲートしたペグ化NPおよびリガンドがコンジュゲートしていないペグ化NPの総GLP-1の分泌
(プロピオナートを伴うまたは伴わない)ペグ化RM LNCを試験するために、雄性のC57BL/6Jマウス(20~25g、10週齢、Janvier Laboratories, France)を、無作為に4つのグループ(それぞれ8匹)に分け、実施例1に開示されるように(1.10参照)約1.62mg/gのナノカプセル用量で処置した。
1.7.3-肥満/糖尿病マウスの小腸および結腸におけるナノカプセルの分布
雄性のC57BL/6Jマウス(8週齢)を無作為に4つのグループ(n=4/グループ)に分けた。順化(2週間)の後、マウスに、10週間HFDの給餌(60%の脂肪および20%の炭水化物(kcal%)を含むげっ歯類の食餌(D12492i, Research Diets, USA)を行った。実験の前に、マウスを、水に自由にアクセスさせながら一晩絶食させた。小腸および結腸におけるナノカプセルの分布の評価のため、RM LNC、ペグ化RM LNCおよびペグ化RM LNC-PROを含むDiD標識したナノカプセル(約1.62mg/gのナノ粒子用量)を、経口強制投与を介して投与した。対照マウスには、等量のMilliQ水を経口投与した。投与から1時間後に十二指腸、空腸、回腸、および結腸の切片を切除し、その後OCT(Optimal Cutting Temperature compound)で急速に凍結した。全ての組織で、6μm厚の切片を、Leica CM-3050-Sクリオスタットを使用して切断した。組織切片は、簡潔に4%のパラホルムアルデヒドで5分間固定した。0.02%のポリソルベート20を含むPBSで洗浄した後、スライドを、DAPIを含むVECTASHIELD Hard Set Mounting Mediumで標本にした。サンプルは、Zeiss共焦点顕微鏡(LSM 150)を使用してCLSMにより試験し、連続して画像を捕捉した。データは、Axio Visionソフトウェア(version 4.8)を使用して分析した。
1.7.4-肥満/糖尿病マウスの腸からの粘液の抽出
未処置の10週間HFDにより誘導された糖尿病マウスを、水に自由にアクセスさせながら一晩絶食させた。粘液の抽出の前に、マウスを頚椎脱臼により屠殺した。以下のプロトコルは、Wangら(Bio-protocol. 2017; 7:e2394)からの出典であった。簡潔に述べると、十二指腸および先端空腸(apical jejunum)を解剖し、腸の糞便物質(decal matter)を除去するためにPBSで非常に優しく流した後、ペトリ皿に載置した。19.5ゲージの針を伴う注射器を使用して、腸のセグメントの1つの開口端を介してPBSをやさしく送達した。腸のセグメントを、外科用ハサミを使用して長軸方向に切断した。次に、粘液を、セルスクレーパー(1.8cmの刃、Falcon(登録商標))を使用して腸のセグメントからこすり取り、清潔なチューブに移した。単離した粘液を、さらなる粘液の拡散および粘液の安定性の試験のため-20℃に保存した。
1.7.5-単一の粒子の追跡および共焦点顕微鏡(confocal microcopy)
DID RM LNC、DID RM LNC PEG、およびDID RM LNC PEG-PROを、水またはマウスの小腸粘液に希釈し、やさしく撹拌することにより混合した。5μLの容量を、接着スペーサー(S24737, Secure-Seal(商標)Spacer, Thermo Fisher)およびカバーガラス(#1.5)で密閉した顕微鏡のスライドガラス上に載置した。
単一の粒子の追跡のため、蛍光シグナルを、MLC 400 B laser box(Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)、Yokogawa CSU-X1共焦点スピニングディスクデバイス(Andor, Belfast, UK)、iXon ultra EMCCDカメラ(Andor Technology(登録商標), Belfast, UK)、およびNIS Elementsソフトウェア(Nikon, Japan)を搭載したスピニングディスク型共焦点顕微鏡(Nikon Eclipse Ti, Tokyo, Japan)を使用して記録した。100倍の油浸対物レンズ(Plan Apo VC 100x oil, 1.4 NA, Nikon, Japan)を使用した。対物レンズヒーター(Biotechs)と組み合わせた実体顕微鏡用培養装置(stage-top incubator)(37℃、Tokai Hit)を、イメージングの間使用した。43.9msの時間分解能での100フレームの動画を、カバースリップから5~10μm上で記録した。粘液の別のパートにおけるナノカプセルの集積または蛍光標識の漏出によりさらなる分析は行うことができず、よって、個別のナノカプセルは観察または分析できなかった。
また、単一の粒子の追跡で調製したサンプルを、レーザー走査型共焦点顕微鏡により試験した。画像は、ガルバノスキャナを使用して60x/1.27 Plan Apo IR水浸対物レンズ(SR Plan Apo IR AC, Nikon)を伴うNikon A1R HD共焦点レーザー走査型顕微鏡で記録した。637nmの波長(LU-N4 Laser Unit)を、DiDの励起に使用した。蛍光シグナルは、Multi-Alkali PMT(A1-DUG-2 GaAsP Multi Detector Unit)で検出した。Nyquist解像度、0.5μmの刻み幅でのガラス表面上の19.5μmのスタックを記録し、可視化のため最大値投影(maximum intnsity projection:MIP)を作製した。全てのイメージングは、RTで行った。
1.7.6-HFD誘導性肥満/糖尿病マウスにおける薬理学的試験
雄性のC57BL/6Jマウス(8週齢)を無作為に収容した(ケージあたり5匹のマウス)。通常の固形飼料食(AIN93Mi, Research Diets(登録商標), USA)を与えながらの順化期間(2週間)の後、マウスに10週間HFDを与えた。実験前に、ケージを無作為に5つのグループ(10匹のマウス/グループ)に分けた。マウスを一晩絶食させた後、遊離薬物溶液(EXE)(用量:500μg/kg)、非ペグ化またはペグ化薬物搭載ナノシステム(EXE RM LNCまたはEXE RM LNC PEG)(用量:500μg/kg)、または空のペグ化ナノシステム(RM LNC PEG)(用量:他のグループと同等のナノカプセル濃度)を経口強制投与した。対照のHFDグループには、等量の無菌水を経口投与した。経口グルコース負荷試験(OGTT)を、実施例1のように上述の製剤の経口投与から1時間後に行った。簡潔に述べると、グルコースを経口投与し(2g/kg)、次に、血中グルコースを、グルコース負荷の30分前(-30分)、およびグルコース投与から0、15、30、90、および120分後に尾静脈の先端からの血液を測定して、グルコースメーター(Accu Check, Roche, Switzerland)で決定した。また血漿中インスリンおよび総GLP-1レベルを、ELISAキット(それぞれMercodia, Uppsala, SwedenおよびMeso Scale Delivery, USA)を使用して-30分および15分で、尾静脈から回収した血液サンプル由来の血漿で試験した。インスリン抵抗性指数を、OGTTの間の血中グルコースおよびインスリンのAUCを乗算することにより計算した。OGTT試験の終了時に、マウスをイソフルラン(Forene, Abbott, England)を用いて安楽死させ、血液サンプルを門脈から回収した。活性GLP-1レベルを、ELISA(Meso Scale Delivery, Gaithersburg, USA)により試験した。
1.7.7-肥満/糖尿病マウスにおける薬物動態学的試験
雄性のC57BL/6Jマウス(8週齢)を、2週間の順化の間収容し、無作為に2つのグループ(時点あたり10匹のマウス)に分けた。次に、上述のセクションに記載されるように、10週間マウスにHFDの給餌を行った。全てのマウスに、無菌性MilliQ水に自由にアクセスさせながら一晩絶食させた後、経口強制投与を行った。エキセナチド溶液およびEXE RM LNC PEGを、500μg/kgの用量で経口投与した。所定の時点(0、0.5、1、1.5、2、4、6、および8時間)で、血液サンプルを、尾静脈の先端から回収し、遠心分離し(1,500g、10分、4℃)、血漿抽出に供した後、さらなる分析まで-80℃で保存した。エキセナチド血漿中濃度を、ELISA kits(EK-070-94, Phoenix Europe GmbH, Karlsruhe, Germany)を使用して決定した。
1.7.8-肥満/糖尿病マウスの異なる経口投与頻度での長期間の処置
雄性のC57BL/6Jマウス(8週齢)を、無作為に7つのグループ(10匹のマウス/グループ)に分け、無菌の食餌(AIN93Mi; Research Diet)(対照食)および無菌水に自由にアクセスさせながらケージあたり5匹で収容した。2週間の順化の後、マウスに10週間、HFDまたは通常の対照食を与えた。この期間の後、マウスを、さらに1カ月、HFDを与え続けながら(合計14週間のHFD)、本発明者らの製剤で処置した。この月の間、マウスに、毎日(D)または2日に1回(T)、午後4時に、(i)毎日の処置での同等のナノカプセル濃度の空の、または薬物を搭載した、ペグ化製剤(500μg/kg用量)(RM LNC PEG-DまたはEXE RM LNC PEG-D)および(ii)1日おきの処置での非ペグ化またはペグ化薬物搭載製剤(500μg/kg用量)(EXE RM LNC-TまたはEXE RM LNC PEG-T)を経口投与した。対照グループ(健常およびHFD)には、等量の無菌性Milli-Q水を毎日経口投与した。この4週間の処置期間の間、マウスの体重を毎日記録し、糖血症を、1週間に1回モニタリングした。グルコース試験前に6時間、マウスを1週間に1回絶食させた。
1.8-統計分析
データ分析には、GraphPad Prism 8 program(CA, USA)を使用した。全ての分析前に、各グループの外れ値検知のためGrubbs検定を行った。分析を行う前に、グループ間で分散に有意差がある場合、対数変換を使用して値を正規化した。統計分析は、2超のグループを含む試験では2元または1元ANOVA、続いてTukeyの事後検定を使用して、2つのグループではt検定またはマン・ホイットニー検定を使用して行った。正規化の後であってもグループ間の分散に有意差が存在する場合、ノンパラメトリック検定を行った。統計上の有意性は、p<0.05とみなした。全てのデータは、平均値±標準誤差(SEM)として表した。
2.結果および論考
2.1-標的化部分としてのプロピオナートを伴うペグ化ナノ粒子の調製および特性決定
L細胞を標的とする脂質ベースのナノカプセルを開発するために、DSPE-PEG2000を、粘液拡散能が高いナノカプセルを提供するためのペグ化リンカーとして選択した。PEG鎖が粒子のコアの中に保持されるよりも表面にのみ局在化したことを保証するために、ポストインサーション法(post-insertion method)を選択した。DSPE-PEG2000-OCHおよびDSPE-PEG2000-CH-CH-COOHの両方を使用して、L細胞の表面に存在するL細胞GPCRに対する特異的な標的化を提供した。空の脂質ナノカプセルの物理化学的な特性を、DSPE-PEG2000-OCHおよびDSPE-PEG2000-CH-CH-COOHのポストインサーションの前(RM LNC)および後(それぞれRM LNC PEGおよびRM LNC PEG-PRO)に評価した(表6)。
Figure 2022537042000008
ブランクのLNCは、約200nmの粒径および狭い粒度分布(PDI=0.18)を提示した。生体機能ポリマーとLNCをインキュベートした後、RM LNC PEGおよびRM LNC PEG-PROでそれぞれ約18nmおよび約27nmの大きさの増大が観察された。ゼータ電位の値は、-0.94mV(RM LNC)から-9.93mV(RM LNC PEG)に有意に減少した。RM LNC PEG-PROの表面電荷はさらに減少し、脂肪酸の存在下で-18.20mVに達した。それぞれの空のナノカプセルと比較した場合、同様の粒径およびゼータ電位が、DiDでナノ担体を標識した後に得られた(表6)。さらにまた、ペグ化ナノカプセルの中にエキセナチドをカプセル化した場合(EXE RM LNC PEG)、ナノカプセルの大きさおよび表面電荷には有意に影響しなかった(表6)。
2.2-ペグ化NPは、in vitroおよびin vivoの両方でGLP-1の分泌を誘導する。
in vitroでGLP-1の刺激を誘導する、搭載されておらず、ペグ化されており、プロピオナートをグラフトしたRM LNCの特性を、最初にGLUTag細胞(マウスL細胞)で調査した。ナノ粒子の濃度は、4mg/mL未満の濃度で細胞傷害性のエビデンスが観察されなかったことを考慮して、0.5mg/mL~2mg/mLの範囲とした。図15A~Bに示されるように、全ての脂質ベースの製剤は、ナノ粒子の濃度に関わらず、L細胞においてin vitroで内因性GLP-1の分泌を有意に増大できた(**p<0.05)。
さらに、これらナノカプセルが正常血糖マウスにおいてin vivoでGLP-1の刺激をさらに強化および/または誘導できるかどうかを試験した。正常血糖マウスに経口投与する際に、ペグ化脂質ナノカプセル(それぞれRM LNC PEGおよびRM LNC PEG-PRO)ならびに非ペグ化脂質ナノカプセル(RM LNC)は両方とも、投与から60分後にGLP-1レベルを有意に増大させた(*p<0.05)(図16)。特に、RM LNC PEGは、60分で最大約8倍までGLP-1レベルを増大させ、対してRM LNC PEG-PROは、元の修飾されていないRM LNCと同じ作用を有し、未処置の対照グループと比較して最大約4倍までGLP-1の分泌を増大させた。さらに、対照グループと比較した場合に、RM LNC PEGのみが、180分でこの効果を引き延ばした(*p<0.05)。ペグ化NPは、非ペグ化NPと比較した場合にin vitroで有意な作用を発揮しなかったが(図15A~B)、ペグ化は、in vivoでGLP-1の分泌を誘導するナノ担体の特性を有意に改善および長期化できた。
2.3-肥満/糖尿病マウスの小腸および結腸におけるナノ粒子の分布
ナノカプセルの分布を、10週間HFDを供給したマウスにおいてin vivoでの経口強制投与後の腸の異なるセグメントにおいて追跡した。HFDマウスに経口投与した後の小腸および結腸の中のDiD標識したナノカプセルの集積を、蛍光ナノ粒子により経過観察した。全ての蛍光粒子(DiD RM LNC、DiD RM LNC PEG、およびDiD RM LNC PEG-PRO)は、十二指腸で見出すことができ、ここでDiD RM LNC PEGグループは、他のグループと比較して最も強力な赤色蛍光(DiD)を示した。
粘液の拡散の潜在的な差を調査するために、単一の粒子の追跡を行った。この目的のため、粒子を小腸粘液と混合し、特注のガラスのチャンバーに入れ、スピニングディスク型顕微鏡で可視化した。しかしながら、粒子の水溶液と比較して観察される粒子の量が非常に少なかったため、マウスの小腸の粘液におけるin vitroでの粒子の拡散を判定することはできなかった。共焦点顕微鏡を用いた場合、粘液単独と比較して高い蛍光強度を有する大きな構造が、全ての製剤で観察され、これは粘液の構成要素に対する凝集および/または結合を表す。個別のナノカプセルの移動度が調査できなかったため、異なる製剤間の正味の移動度に何らかの差異があるかどうかを結論付けることはできなかった。
DiD標識したRM LNCは、投与から1時間後に、主に十二指腸で観察され、空腸ではほとんど観察されなかった。興味深いことに、処置から1時間後に、RM LNC PEGのみが、空腸の腸上皮を通過でき、ここで他のグループと比較して上皮の基底層で高いレベルの赤色蛍光が観察された。さらに、RM LNC PEGのみが、小腸全体(十二指腸、空腸、および回腸)を通過し、結腸に達することができた。
2.4-肥満/糖尿病マウスにおける薬理学的試験および薬物動態学的試験
in vivoでの製剤の効力の評価の前に、模擬胃液および模擬腸液での製剤の安定性を、in vitroで証明し、エキセナチドの放出プロファイルを評価した。
2型糖尿病マウスの食後の高血糖の制御に及ぼすエキセナチドを搭載したRM LNC PEG(EXE RM LNC PEG)の治療上の効力を決定するために、薬力学的なプロファイルを、10週間HFDを供給したマウスで行った。単回用量のナノカプセルを投与した後、経口グルコース負荷試験(OGTT)を行った。遊離薬物溶液および薬物を搭載した製剤(それぞれEXE溶液、EXE RM LNCおよびEXE RM LNC PEGを含む)で500μg/kgのエキセナチドの用量、空のRM LNC PEG(薬物を搭載したナノカプセルと同等の量)、または同等の水量を、経口グルコース試験(グルコース濃度:2g/kg)の60分前に経口投与した。グルコース投与の時点は、0時間に対応する(図17A)。薬物溶液で処置したマウスの血漿中グルコースプロファイルは、水を与えたHFDを供給したマウスと同様の傾向を示した。逆に、EXE RM LNC、EXE RM LNC PEG、および空のRM LNC PEGを含むナノカプセルで処置した全てのグループは、血中グルコースレベルおよびグルコースの曲線下面積(AUC)を著しく低下することができた(図17A)。空のRM LNC PEGは、エキセナチドを搭載したRM LNCと比較して同様の血漿グルコースレベルの低下に関する効力および同様のAUCを有しており、ペグ化の後ナノ担体単独により達成された血糖降下作用が、薬物をカプセル化した非ペグ化ナノ担体と同等であったことを表していることは注目に値する。よって、ペグ化ナノカプセルにより分泌されるGLP-1レベル(図16)は、グルコースを低下させる作用に関して治療上関連することが見出された。試験した全ての製剤の中で、EXE RM LNC PEGを経口的に処置されたマウスのみが、未処置のHFDマウスと比較して全OGTT試験にわたり血漿グルコースレベルの有意な減少を示したことは注目に値する。
さらにまた、総GLP-1レベル(図17B)は、対照グループと比較して全てのナノカプセルで処置したグループにおいて有意に改善した(*p<0.05)。EXE RM LNCグループにおける総GLP-1レベルの増大はKruskal-Wallis検定およびDunnの事後検定により分析される場合、HFDグループと比較して有意差に達しなかったが、マン・ホイットニー検定を適用した場合に、有意差が観察された(p=0.008)(図17B)。未処置のHFDマウスと比較した(製剤の投与から3時間後の)門脈で測定した活性GLP-1の濃度もまた、OGTT試験の後のEXE RM LNC PEGで処置したマウスにおいて有意に増大していた(*p<0.05)(図17C)。1元ANOVAによりデータを分析する際に、RM LNC PEGおよびHFDの間に有意差はなかったが、スチューデントt検定により、これらグループ間に有意差が現れた(p=0.028)。これらデータにより、ペグ化が、病態下でGLP-1の放出を刺激し、この作用を長期化するナノシステムの特性を改善できることが確認された。インスリンレベルに関してグループ間に差は観察されなかった(図17D)。しかしながら、EXE RM LNC PEGは、未処置の糖尿病マウスと比較してインスリン抵抗性指数を顕著に低減できた(図17E)。1元ANOVAでは、EXE RM LNCおよびRM LNC PEGの間に有意差はなかったが、スチューデントt検定により、これらグループ間に有意差が現れた(それぞれp=0.035およびp=0.023)。驚くべきことに、搭載されていないペグ化RM LNCに対してEXEが搭載されたナノカプセルと比較して同等の結果が得られ、ペグ化を介して得られたGLP-1レベルの増大の治療上の関連性がさらに確認された。
ペグ化RM LNCを介したエキセナチドの経口送達を調査するために、薬物動態学的試験を行い、薬物溶液を介するかまたはRM LNC PEG(EXE RM LNC PEG)の中の500μg/kgのエキセナチドの単回用量の経口投与の後の、慢性的な糖尿病マウス(10週間のHFD;n=ポイントあたり10)におけるエキセナチドの経口吸収を評価した(図17F)。エキセナチドの吸収の異なるパターンを、薬物溶液単独またはEXE RM LNC PEGの経口強制投与の後に肥満/糖尿病マウスにおいて観察した。溶液として経口投与した場合、エキセナチドの血漿中濃度は、試験期間を通して変化しないままであった。比較すると、EXE RM LNC PEGは、8時間の経口投与の後ペプチドの全身での吸収をより多く誘発し、ここで、TmaxおよびCmaxは、それぞれ、1時間および27.91±1.22ng/mLであった。異なるエキセナチドの薬物動態プロファイル(たとえば異なるCmax、AUC、Tmax)が、EXE RM LNC PEG対EXE RM LNCの経口投与後に観察され、これは、ペグ化が製剤の循環時間を延長し(薬物を搭載した製剤のt1/2は、1.68±0.35時間から5.69±1.02時間へと長期化した)、次いでカプセル化ペプチドの全身吸収を増大した(AUCは、11.79±2.73ng・h/mLから27.91±1.22ng・h/mLへ増大した)ことを表していることに留意されたい。
2.5-肥満/糖尿病マウスにおけるペグ化脂質ナノカプセルでの長期間の処置
グルコースの代謝に及ぼすペグ化後に観察されるGLP-1の分泌の増大の影響を調査するために、長期間の処置(1カ月)を、糖尿病マウス(10週間、HFD)で行い、エキセナチドを搭載するかまたは搭載していないRM LNC PEG(500μg/kg)を異なる投与頻度(毎日または1日おきに1回)(合計14週間のHFD、10週目から4週間毎日または1日おきに投与)で投与した。経口投与(1日おきに1回)(EXE RM LNC PEG;500μg/kg)によるかまたは同一量の搭載していないペグ化ナノカプセル(RM LNC PEG)を用いて低頻度で処置したマウスもまた、投与レジメンにより、非ペグ化EXE搭載ナノカプセル(EXE RM LNC;500μg/kg)を投与したマウスと比較した。
4週間の処置の後の血漿中グルコースおよびインスリンのレベルならびに計算されたHOMA-IRを、図18A~Cに表す。毎日投与されたペグ化グループ(搭載または非搭載)および1日おきに投与されたEXEを搭載したペグ化グループは、同等のグルコースの血漿中レベルを呈した。よって、これらレベルは、非肥満/糖尿病の未処置の対照マウスと同等であった(p>0.05、図18A)。ペグ化ナノカプセルがEXEをカプセル化していた場合のみが、長期間の処置によるグルコースの血漿中レベルの低下に有効であったことは注目に値する。より重要なことに、これらは、投与頻度が少ない場合であっても効率的であり、これは本試験の主な目標である(図18A)。さらに、これらグループは、インスリン抵抗性のホメオスタシスのモデル評価(HOMA-IR)により分析されるように同等のインスリン抵抗性を呈し、これは、健常な対照グループで得られた対照値と同等(p>0.05)であった(図18C)。HFDグループと比較すると、これらグループの間の低下は、Kruskal-Wallis検定、次いでDunnの事後検定を使用する場合、統計上有意ではなかった(図18C)。しかしながら、マン・ホイットニー検定を使用した場合、有意差が観察された(それぞれEXE RM LNC PEG-D対HFDではp=0.0012、RM LNC PEG-D処置対HFDではp=0.0003、およびEXE RM LNC PEG-T処置対HFDではp=0.05)。
2.6-結論
結論として、GLP-1の分泌を増大させることおよび製剤の抗糖尿病効果を長期化することは、ナノカプセルのペグ化を介して達成され得る。
実施例3:比較例
Shresthaら(Nanoscale 2018、上記参照)は、本明細書中開示される本発明に係るナノ粒子と比較して異なる脂質ベースのナノ粒子:ナノ構造の脂質の担体(NLC)に関するin vitroでのデータを提示した。脂質ナノカプセルとの差異のうち、NLCは、固体のコアを呈し、本発明に係る脂質ナノカプセルのように液体のコアを呈さなかった。Shresthaらでは、エキセナチドおよびリラグルチドがカプセル化され、これらNLCは、150nmのナノ粒径を提示する際にin vitroでGLP-1の分泌を誘導していたことを示した。また、Beloquiら(Mol Pharm、上記参照)の試験では、NLC(150nm)のGLP-1を分泌する作用が利用された。試験される異なるナノ粒子のうち、150nmのナノ粒径を提示するNLCのみが、in vitroでGLP-1の分泌を誘導できた。しかしながら、これらナノ粒子は、in vivoでのさらなる試験においてGLP-1の分泌を誘導できず、また高血糖および高インスリン血症も減少できなかった。
in vivoの試験を、4週間HFDを供給したマウスにおいて(実施例1のように)行った。エキセナチド(500μg/kgのエキセナチド用量)をカプセル化したNLCを1度経口投与した後、経口グルコース負荷試験(OGTT)を行った。図19に示されるように、グルコースの曲線下面積に及ぼす作用(図19A~B)、GLP-1レベルの増加(図19C~D)、高インスリン血症の変化(図19E~F)、およびインスリン抵抗性指数に及ぼす作用(図19G)は観察できない。
これら結果は、同様の組成を先験的に提示する2つの脂質ベースのナノ粒子が必ずしも同じ効果を誘導しないことを表している。

Claims (18)

  1. 経口投与用の脂質ナノカプセルであって、
    固体の脂質外殻と、
    1種以上のインクレチンミメティックが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核と
    を含む、脂質ナノカプセル。
  2. 前記固体の脂質外殻が、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、脂溶性界面活性剤、およびそれらの混合物を含む群で選択される1種以上の界面活性剤を含む、請求項1に記載の脂質ナノカプセル。
  3. 前記脂溶性液体内核が、1種以上の油を含む、請求項1または2に記載の脂質ナノカプセル。
  4. 前記1種以上の油が、トリグリセリド、脂肪酸、脂肪酸エステル、またはそれらの混合物である、請求項3に記載の脂質ナノカプセル。
  5. 前記逆ミセルが、界面活性剤、油、およびそれらの混合物を含む群で選択される1種以上の成分を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の脂質ナノカプセル。
  6. 前記脂質ナノカプセルが、約100nm~約300nmの範囲の平均直径を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の脂質ナノカプセル。
  7. 前記脂質ナノカプセルが、in vivoで内因性GLP-1の分泌を誘導する、請求項1~6のいずれか1項に記載の脂質ナノカプセル。
  8. 前記1種以上のインクレチンミメティックが、アルビグルチド、デュラグルチド、エキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、およびセマグルチドを含む群で選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の脂質ナノカプセル。
  9. 前記1種以上のインクレチンミメティックが、エキセナチドである、請求項1~8のいずれか1項に記載の脂質ナノカプセル。
  10. 脂肪酸のポリ-オキシエチレンエステル、非イオン性脂溶性界面活性剤、および任意選択でペグ化脂質、特にペグ化リン脂質を含む固体の脂質外殻と、
    トリグリセリドおよび脂肪酸エステルを含み、エキセナチドが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核と
    を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の脂質ナノカプセル。
  11. 界面活性剤のSolutol(登録商標)HS15、Lipoid(登録商標)S100、および任意選択でDSPE-PEG2000-OCHを含む固体の脂質外殻と、
    油のLabrafac(商標)Lipophile WL1349および/またはPlurol(登録商標)CC 497またはPeceol(商標)を含み、エキセナチドが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核と
    を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の脂質ナノカプセル。
  12. エキセナチドが、肥満/糖尿病を高脂肪食により誘導したマウスにおいて少なくとも4%の相対的なバイオアベイラビリティを特徴とする薬物動態プロファイルを有する、請求項9~11のいずれか1項に記載の脂質ナノカプセル。
  13. 固体の脂質外殻と、1種以上のインクレチンミメティックが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核と、を含む経口投与用の脂質ナノカプセルの治療有効量、および
    薬学的に許容されるビヒクル
    を含む、医薬組成物。
  14. 固体の脂質外殻と1種以上のインクレチンミメティックが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核とを含む経口投与用の脂質ナノカプセルの治療有効量を含む、医薬。
  15. それを必要とする対象のGLP-1機能不全に関連する障害の処置および/または予防に使用するための、固体の脂質外殻と1種以上のインクレチンミメティックが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核とを含む脂質ナノカプセル。
  16. 前記障害が、2型糖尿病(T2DM)、肥満、炎症性腸疾患(IBD)、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝疾患、高血糖、脂肪肝、過体重、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリックシンドローム、前糖尿病、空腹時血中ブドウ糖不良、過食症、食物摂取挙動の変化、肝臓インスリン抵抗性、全身インスリン抵抗性、移行の加速、脂肪組織炎症、心機能不全、急性心筋梗塞、高血圧、心血管疾患、アテローム性動脈硬化、末梢動脈疾患、脳卒中、心不全、冠動脈心疾患、腎疾患、糖尿病合併症、ニューロパチー、および胃不全麻痺を含む群で選択される、請求項15に記載の使用のための脂質ナノカプセル。
  17. 前記障害が、2型糖尿病(T2DM)、肥満、および炎症性腸疾患(IBD)を含む群で選択される、請求項16に記載の使用のための脂質ナノカプセル。
  18. GLP-1機能不全に関連する障害を処置および/または予防するためのキットであって、
    固体の脂質外殻と、1種以上のインクレチンミメティックが搭載された逆ミセルを含む脂溶性液体内核と、を含む1つ以上の脂質ナノカプセル、および
    1種以上の経口血糖降下薬
    を含む、キット。
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