JP2022536846A - 胃癌を診断するための高メチル化遺伝子の検出 - Google Patents

胃癌を診断するための高メチル化遺伝子の検出 Download PDF

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Abstract

本発明は、対象における胃癌の診断または同定方法に関する。本発明者らは実際に、単独でまたは好ましくは組み合わせて、胃癌患者の診断または経過観察、非常に具体的には、他のタイプの癌との鑑別に役立ち得る3つのDNAメチル化バイオマーカーを同定した。さらに、それは胃癌と診断された対象に好適な治療計画を決定するかつ/または適合させるために使用することができる。本発明はまた、高メチル化された遺伝子を検出するため、診断するため、または同定するためのプライマーまたはプローブを含むキットに関する。【選択図】なし

Description

発明の要旨
本発明は、対象における胃癌を、前記対象の生物学的サンプル中の特定の遺伝子の異常な高メチル化レベルの検出によって、診断または同定するための方法に関する。本発明者らは実際に、単独でまたは組み合わせて、胃癌患者の診断または経過観察に役立ち得る3つのDNAメチル化バイオマーカーを同定した。本発明者らは、対象の血液サンプルでdPCRにより前記遺伝子のDNA高メチル化を測定することを提案する。メチル化された遺伝子は、好ましくは、ZNF790-AS1、MSC-AS1およびKCNA3からなる群から選択される。本発明はまた、胃癌を診断するためのキットおよび他のツールに関する。
胃癌(stomach cancer)は、胃癌(gastric cancer)とも呼ばれ、胃の内壁から発生する癌である。初期の症状には、胸やけ、上腹部痛、悪心および食欲減退、嚥下障害が含まれ得る。後期の徴候および症状には、特に、体重減少、食欲不振、嘔吐、吐血、持続性潰瘍、嚥下困難および便潜血が含まれ得る。この癌は、胃から身体の他の部分、特に、肝臓、肺、骨、腹部の内層およびリンパ節に広がる可能性がある。胃癌のほとんどの症例は胃癌腫である。リンパ腫および間葉系腫瘍もまた胃で発生する可能性がある。ほとんどの場合、胃癌は、何年にもわたって段階的に発症する。この疾患の予後は、診断時の腫瘍の病期に関連する。疾患が進行しているほど予後は悪くなる。転移性疾患の場合、5年生存率は5%未満であり、この疾患についての早期診断の重要性を強調している。
最も一般的な原因は、細菌ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)による感染であり、これは症例の60%以上を占める。特定の種類のヘリコバクター・ピロリ菌は、他の種類よりもリスクが高くなる。その他のリスク因子として、喫煙、漬物などの食事要因および肥満がある。症例の約10%は家族内発症であり、症例の1%~3%は遺伝性びまん性胃癌などのその人の両親から受け継いだ遺伝性症候群によるものである。世界的に見て、胃癌は、癌の5番目に多い原因であり、癌による死亡の3番目に多い原因であり、症例の7%、死亡の9%を占めている。2012年には、新たに950,000人に発生し、723,000人が死亡した。
胃癌の診断は、通常、内視鏡検査中の生検によって行われる。これに続いて、この疾病が身体の他の部分に広がっているかどうかを判定するための医用撮像が行われる。特に胃癌に関連する承認された血液由来のバイオマーカーは存在しない。この疾患の罹患率の高い二国、日本および韓国は、すでに胃内視鏡、超音波検査などにより胃癌のスクリーニングを行っている。しかしながら、これらの方法は、かなりの費用を発生させる高価な医療機器を必要とする。さらに、胃内視鏡を受けたがらない患者もいる。
これに関連して、簡単な手段で血液サンプルに使用することができる、高感度で特異的な胃癌のバイオマーカーを同定する必要がなおある。
候補癌バイオマーカーの同定は、次世代シーケンシング(NGS)を使用した病変組織DNAのゲノムワイドシーケンシングの導入以来、爆発的に増えた。しかしながら、そのような同定は、末梢で非侵襲的に行われる場合にのみ、癌の早期検出に有用である。DNA配列の特定の変化であり、それゆえ、明確に認識され得る突然変異とは異なり、DNAメチル化は複数のCpG部位に存在することが多く、腫瘍組織と正常組織の間に様々な定量的差異がある。
遺伝子発現のダウンレギュレーションをもたらす腫瘍抑制遺伝子のプロモーターおよび最初のエキソンのメチル化は、腫瘍形成において重要な役割を果たすことが示されている。異常なDNAメチル化は、発癌の初期段階で発生することが多く、従って、癌の早期検出のための魅力的な潜在的マーカーを提供する。癌スクリーニングおよび早期検出のためのバイオマーカーを開発するために、メチル化の増加(高メチル化)は、高感度で特異的なアッセイの開発のための明確な標的領域を有する陽性判定を提供し、従って、臨床試験にとって全体的な低メチル化よりも有利である(Jain, Wojdacz & Su, 2013)。
これらの魅力的な有望さにもかかわらず、メチル化されたDNAマーカー候補を有用な臨床診断マーカーに変換するには課題がある。
いくつかの総説では、癌療法におけるDNAメチル化バイオマーカーの慣用を制限する障害について議論されている(Mikeska T, 2012; Jain, Wojdacz & Su, 2013; Delpu Y et al, 2013)。
これらの総説は、分析感度がメチル化スクリーニング技術の診断適用性の重要なパラメーターであり、単一マーカーのアプローチでは、マーカーが癌の原因と関連している極めて明確に定義された高リスク群を除いて、スクリーニングに十分な感度(>90%)が得られる可能性が低いため、いくつかのマーカーを組み合わせるかまたは既存のスクリーニング試験を補完することによって初めて良好な分析感度が達成できることを強調している。
スクリーニング試験または診断試験の別の重要な要素は高い特異度である。特異度が低いと、偽陽性の結果が多数発生し、これが患者の精神的ストレスや不必要な医療行為につながる可能性があり、集団での試験の信頼性と受け入れが損なわれる。メチル化イベントの局所的な状態については、真に癌に関連する高メチル化イベントをベースラインのメチル化と区別するのに十分な定量的アッセイが必要である。DNAメチル化バイオマーカーは、多くの場合、1つの癌に特異的ではなく、大部分は腫瘍種間で保存されていることも報告されている。従って、ある特定の種類の癌のバイオマーカーとして単一のDNAメチル化変化を提案することは難しいと思われるが、可能な限り初期に適当な処置で患者を処置するためにはやはり理想的なことである。この特異度の欠如を補うために、いくつかのバイオマーカーの組合せが提案されることが多いが、それでも試験の感度は低下する。
全体として、上述の総説は、臨床使用におけるメチル化バイオマーカーの大きな可能性について原理証明はすでに得ることができるものの、この分野は、高感度と高特異度の両方を示す理想的なバイオマーカーを同定するための多くの課題に直面していることを示している。
さらに、これらの総説のいずれにも胃癌を診断するためのメチル化バイオマーカーを強調する研究は開示されていない。これは、高感度で特異的な胃癌のメチル化バイオマーカーを同定することが極めて難しいことを示唆している。
しかしながら、この科学的背景において、本発明者らは、以下の実験の部に開示されるように、3つの異なる特異的なメチル化バイオマーカーを、優れた感度と特異度で胃癌を診断、監視または経過観察するために単独でまたは組み合わせて使用可能であることを見出した。これらの発見は、上に引用した総説の分野の専門家によって示唆された全ての欠点と対照をなす。
発明の詳細な説明
癌バイオマーカーの分野で最も広く研究されているエピジェネティック修飾は、シトシンのメチル化である。ヒトゲノムのDNAメチル化は、大部分はCpGジヌクレオチドのシトシン残基において5位の炭素で起こり、5-メチルシトシンを生じる。CpGジヌクレオチドはヒトゲノムではまれである(約1%)。CpGジヌクレオチドは、CpGアイランドとしても知られる、G+C含量が50%を超えCpG頻度比率が少なくとも0.6である、200塩基より大きいクラスターに存在することが多く見られる。ヒト遺伝子プロモーターのおよそ60%は、CpGアイランドに関連している。プロモーター領域内のCpGアイランドは、組織分化に関与する一部を除いて、通常、正常細胞ではメチル化されていない。一般に、CpGアイランドのメチル化は、転写サイレンシングに関連している。癌では、全体的な低メチル化(DNAメチル化の全体的な減少)と局所的な高メチル化(腫瘍抑制遺伝子のプロモーターおよび最初のエキソンのメチル化など)の両方が観察されている。DNAの低メチル化は、反復エレメント、レトロトランスポゾン、イントロンおよび同様のエレメントなどの多くのゲノム配列で起こり、ゲノムの不安定性をもたらし、ウィルムス腫瘍のIGF2遺伝子(IGF-2をコードする)の場合のように、一部の癌原遺伝子の活性化を説明し、インプリンティングの喪失につながる可能性がある(Jain, Wojdacz & Su, 2013)。
本発明者の知る限り、胃癌を特異的に診断するためのDNAメチル化バイオマーカーを明らかにした研究はこれまでになかった。
しかし、本発明者らは、3つの特定の遺伝子(すなわち、MSC-AS1、ZNF790-AS1およびKCNA3)のプロモーターまたはイントロン内の特定の領域が、特に胃癌腫瘍サンプルでは異常に高メチル化されることを見出した。興味深いことに、これらの3つの遺伝子のうちの2つ(すなわち、MSC-AS1およびZNF790-AS1)は、癌の診断または進行との関連は見出されていない。第3の遺伝子(KCNA3)は、胃癌に関連していなかった。
本発明の「MSC-AS1遺伝子」は、実際には、「MSCアンチセンスRNA1」と呼ばれる非コードRNAを示す。そのDNA配列は、8番染色体(71 71843123~72 056312)上、より正確には8q19.3~8q21.11に位置する。これには5つのエキソンが含まれる。そのDNA配列は、NC_000008.11と呼ばれる。これは、それぞれNR_033651.1およびNR_033652.1のインデックスが付けられた2つのRNA変異体に転写される。本発明者らは、健常なサンプルとの対比によって、72755486と72756187との間(配列番号4)、より好ましくは72755783と72756187との間(配列番号1)に含まれるDNA領域が、胃腫瘍サンプルでは特異的に有意に高メチル化されていることを確認した。従って、本発明者らは、対象における胃癌を診断または同定するための高感度で信頼性の高い非侵襲的方法で、またはそのような目的に有用なキットでこの遺伝子を使用することを提案する。
本発明の「ZNF790-AS1遺伝子」は、「ZNF790アンチセンスRNA1」と呼ばれる非コードRNAを示す。これはまた、「CTD-2162K18.5」とも呼ばれている。このDNA配列は、19番染色体(36 797550~36 828111)上、より正確には19q13.12上に位置する。これには6つのエキソンが含まれる。そのDNA配列は、NC_0000019.10と呼ばれる。これは、それぞれNR_040027.1およびNR_040028.1のインデックスが付けられた2つのRNA変異体に転写される。そのプロモーター領域の高メチル化については報告されたことはない。本発明者らは、健常なサンプルとの対比によって、37288170と37288811との間(配列番号5)、より好ましくは37288170と37288450との間(配列番号2)に含まれるDNA領域が、胃腫瘍サンプルでは特異的に有意に高メチル化されていることを確認した。従って、本発明者らは、対象における胃癌を診断または同定するための高感度で信頼性の高い非侵襲的方法で、またはそのような目的に有用なキットでこの遺伝子を使用することを提案する。
本発明の「KCNA3遺伝子」は、「HPCN3」、「HGK5」、「HLK3」、「HUKIII」、「KV1.3」、「MK3」、「PCN3」としても知られるカリウム電位依存性チャネルサブファミリーAメンバー3タンパク質をコードする遺伝子を示す。これは、Tリンパ球およびBリンパ球で発現され、自己免疫疾患、肥満、およびアルツハイマー病に関与する。そのDNA配列は、1番染色体(110 653560~110 675033)上、より正確には1p13.3上に位置する。これには4つのエキソンが含まれる。そのDNA配列は、NC_000001.11と呼ばれる。これは、NM_002232.4のインデックスが付けられたmRNAに転写され、NP_002223.3のインデックスが付けられたタンパク質に転写される。本発明者らは、健常なサンプルまたは前記患者の参照サンプルとの対比によって、この遺伝子のプロモーターおよび最初のエキソンを部分的に含む、111217406と111218015との間(配列番号6)、より好ましくは111217406と111217815との間(配列番号3)に含まれるDNA領域が、胃腫瘍サンプルでは特異的に有意に高メチル化されていることを確認した。従って、本発明者らは、対象における胃癌を診断または同定するためまたは胃癌の経過観察を行うための高感度で信頼性の高い非侵襲的方法でこの遺伝子を使用することを提案する。
本発明者は、これらの遺伝子のいずれかのプロモーターまたは他の領域の高メチル化が、初期段階でさえ、高感度で特異的な胃癌のバイオマーカーとして、それに罹患している患者において使用できることを示した。MSC-AS1遺伝子、ZNF790-AS1遺伝子、およびKCNA3遺伝子を、以下、「本発明のバイオマーカー」と呼ぶ。これらは、個別に、または2つずつ組み合わせて、または3つ全てを一緒に、使用することができる。
本発明の方法
従って、第1の側面において、本発明は、対象における胃癌のイン・ビトロ(in vitro)診断または同定方法であって、前記対象の生物学的サンプル中の、上記のZNF790-AS1遺伝子、MSC-AS1遺伝子、およびKCNA3遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子、好ましくは2つの遺伝子のメチル化のレベルまたは量を決定することを含む方法に関する。特に好ましい態様では、前記方法は、上記の3つの遺伝子ZNF790-AS1、MSC-AS1、およびKCNA3のメチル化のレベルまたは量を決定することを含む。
好ましい態様では、前記方法は、MSC-AS1遺伝子の配列番号4のヌクレオチド領域において、またはZNF790-AS1遺伝子の配列番号5のヌクレオチド領域において、またはKCNA3遺伝子の配列番号6のヌクレオチド領域においてメチル化のレベルまたは量を決定することを含む。
より好ましい態様では、前記方法は、MSC-AS1遺伝子の配列番号1のヌクレオチド領域において、またはZNF790-AS1遺伝子の配列番号2のヌクレオチド領域において、またはKCNA3遺伝子の配列番号3のヌクレオチド領域においてメチル化のレベルまたは量を決定することを含む。
より好ましい態様では、前記方法は、前記対象の生物学的サンプル中のMSC-AS1遺伝子、ZNF790-AS1遺伝子およびKCNA3遺伝子のメチル化のレベルまたは量を同時にまたは逐次に決定することを含む。
本明細書で使用される場合、用語「対象」とは、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。好ましくは、それは、健常である(胃癌の症状がない)可能性がある、または癌、好ましくは胃癌を発症すると考えられるかもしくはそれに罹患している疑いがあるヒト患者を指す。前記対象は、例えば、以下の症状:胸やけ、上腹部痛、悪心、食欲減退、体重減少、嘔吐、嚥下困難および便潜血の少なくとも1つを示す。前記対象はまた、過去に胃癌に罹患した可能性があり、治療を受けたことがあり、潜在的疾患再発について監視されている。前記対象はまた、健常に見えるかもしれないが、例えば、遺伝的家族歴、例えば、家族の一員が同じ疾患に罹患しているもしくは罹患していたまたはリンチ症候群もしくは生殖細胞CDH1突然変異などの遺伝的素因を有するなど胃癌を発症する素因がある。
本明細書で使用される場合、「生物学的サンプル」という表現は、固形組織(例えば、消化管生検など)または体液、身体排出物および排泄物(例えば、痰、誘発喀痰、血液、血清、血漿、尿、糞便など)を指す。好ましくは、前記生物学的サンプルは、体液サンプル、最も好ましくは、血液または血漿サンプルである。
本発明の方法において、前記遺伝子が参照サンプルに比べて高メチル化されている場合、前記対象は胃癌に罹患していると診断または同定される。言い換えれば、メチル化のレベルまたは量が高いことは、胃癌、浸潤性高悪性度胃癌または胃癌再発の指標と見なされる。別の側面において、前記メチル化は、前記対象の以前のサンプルのメチル化と比較することができ、次に、前記対象は、胃癌に罹患しているまたは罹患していないと診断される。
DNAメチル化を検出するために複数の技術が提案されている。Delpu et al (2013)の総説には、それらのいくつかが開示されている:
メチル化特異的PCR(MS-PCR)は、目的のメチル化DNA領域および非メチル化DNA領域を増幅するように2セットのPCRプライマーが特別に設計された方法である。PCR産物の検出は、もともとはゲル電気泳動によって行われる。この技術は、蛍光分子の取り込みによってPCR増幅をリアルタイムで監視する定量的MS-PCR(qMS-PCR)に置き換えられた。この改善により、多数の特定の領域のDNAメチル化レベルの正確な定量が可能になり、長い電気泳動工程が回避される。定量的マルチプレックスMS-PCR(QM-MS-PCR)およびワンステップMS-PCR(OS-MS-PCR)も、異なる起源の組織の特定の遺伝子を共増幅するためまたはDNA抽出処理を行わずに特定の領域のDNAメチル化レベルを決定するために利用可能である。qMS-PCR技術は、簡単、迅速、安価、高感度で標準化が容易である。これらは、現在、臨床使用における癌診断に最も慣用される技術の1つである。メチル化感受性高分解能融解分析(methylation-sensitive high-resolution melting)(MS-HRM)は、重亜硫酸塩処理を受けたDNAのPCR産物のヌクレオチド配列は、目的のDNA領域のメチル化状態によって異なるという事実に基づく。メチル化レベルは、融解解離曲線を、既知のメチル化CpG部位を含む同じ領域の標準的なPCR産物と比較することによって決定される。COBRA、すなわち、複合重亜硫酸塩制限分析(combined bisulfite restriction analysis)は、新しい制限酵素部位を創出するまたはMSREのコンセンサス部位を維持する重亜硫酸塩変換の能力を使用する。増幅後、PCR産物は適当なMSREで消化される。消化されたPCR産物の割合が未消化のPCR産物と、ポリアクリルアミドゲル電気泳動および画像定量化ソフトウェアによって比較される。この技術は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織サンプルから得られたDNAに確実に適用される。さらに、このアプローチにより多数の生物学的サンプルのDNAメチル化の評価が可能になる。より最近では、ハイスループットアプローチが開発された。例えば、Methyl Lightは、蛍光に基づくリアルタイムPCR(TaqMan(登録商標)、Applied Biosystems、フォスターシティ、CA、USA)を重亜硫酸塩処理と組み合わせて使用するハイスループット定量的メチル化アッセイである。また、重亜硫酸塩処理と組み合わせられるパイロシーケンシングは、ヌクレオチドが成長中のDNA鎖に組み込まれるたびに表される酵素反応の結果として光が放出される定量的DNAシーケンシング法である。これらの定量技術は、異種DNA調製物中の少量のメチル化DNAを検出する。標準化が容易で、迅速かつ安価なこれらの技術は、臨床目的で使用されることが多くなっている。
より最近では、次世代シーケンシング(NGS)技術により、DNAメチル化プロファイルの分解能レベルが著しく向上した。NGSはまた、免疫沈降したDNA断片にも適合させることができる(メチルDNA免疫沈降シーケンシングはMeDIP seqとも呼ばれる)。最終的に、NGSは、重亜硫酸塩変換後のゲノム全体のシーケンシングを可能にする。これらのNGSアプローチに加えて、ハイスループット一塩基多型(SNP)遺伝子型決定システムは、重亜硫酸塩変換したゲノムDNAからのDNAメチル化分析に好適である。さらに、当業者に周知の他の方法、例えば、未修飾DNAを直接分析する方法(例えば、ナノポアシーケンシング)、特定の制限酵素を使用する方法、メチル化配列濃縮法(例えば、EpiMarkメチル化濃縮キット、New England)、免疫沈降法が使用可能である。
これら全ての方法(qMS-PCR、MS-HRM、COBRA、MSRE、Methyl Light、NGS、SNP遺伝子型決定法、パイロシーケンシング、マイクロアレイ、ICE-cold PCR、ナノポアなど)が、本発明のマーカーのメチル化を決定するために使用できる。
本発明の方法は、使用される検出技術に応じて、CpG部位において「メチル化のレベル」、「メチル化レベル」または「メチル化の量」を検出することを必要とする。本発明によれば、用語「メチル化のレベル」または「メチル化の量」は、定量的尺度の決定を指す。従って、用語「メチル化のレベル」または「メチル化の量」は互換的に使用できる。
本発明によれば、胃癌の診断を実施するためまたは胃癌の進化を追跡するための「高メチル化」を検出するために使用される「参照サンプル」は、胃癌に罹患していない対象に由来する生物学的サンプルまたは胃癌に罹患していると以前に診断された対象に由来する生物学的サンプル(例えば、正常もしくは健常な細胞もしくは組織もしくは体液、または正常もしくは健常な細胞もしくは組織もしくは体液からの情報を使用して作成されたデータセット)である。例えば、前記参照サンプルは、全血から抽出されたゲノムDNA、または健常な対象から抽出された循環DNA(この場合、前記サンプルは、患者について試験されたもの(例えば、血漿)と同じである)であり得る。本発明の特定の態様では、参照サンプルは、使用される生物学的サンプルの種類に応じて異なり得る。例えば、組織サンプルは、腫瘍の周囲組織(正常な隣接組織)において非腫瘍性と同定されたサンプルまたは同じ器官の健常な部分(隣接していない)由来の組織のいずれかであり得る。
別の例によれば、診断またはスクリーニングのための参照血液サンプルは、癌(胃癌を含む)に罹患していない対象に由来するサンプル(例えば、正常もしくは健常な細胞もしくは組織もしくは体液)または胃癌に罹患していると以前に診断された対象に由来するサンプル(例えば、正常もしくは健常な細胞もしくは組織、または正常もしくは健常な細胞もしくは組織もしくは体液からの情報を使用して作成されたデータセット)であり得る。さらに、癌患者の経過観察のための血液サンプルは、癌(胃癌を含む)に罹患していない対象に由来する生物学的サンプル、例えば、正常もしくは健常な細胞もしくは組織もしくは体液(その陽性を強調するため)または参照時間(例えば、病気の診断もしくは初期の処置サイクル)に採取された同じ対象および同じ体液に由来する生物学的サンプル(その潜在的進化を強調するため)であり得る。
好ましい態様では、本発明による参照値は、健常な対象に由来するサンプルにおいてまたは処置前にまたは処置の初期に実施される胃癌に罹患している対象に由来するサンプルにおいて得られる。
「高メチル化」は、例えば、本発明のバイオマーカーの1つのメチル化値(量)または状態(レベル)が、試験した対象の生物学的サンプルにおいて、参照サンプルで測定した対応するバイオマーカーのメチル化値(量)または状態(レベル)に比べて有意に高い場合に決定される。対象の生物学的サンプルにおける本発明のバイオマーカーの少なくとも1つの、参照サンプルにおける正常なメチル化量またはレベルに比べて有意に高いメチル化量またはレベルは、試験した対象が胃癌を有するか、胃癌を有するリスクが高いかまたは処置に応答しないことを示している。
「有意に高いメチル化量またはレベル」とは、前記の量またはレベルを評価するために使用されるアッセイの平均と標準誤差の合計よりも大きいメチル化量またはレベルを指す。
好ましい態様では、前記メチル化量は、次世代シーケンシング(NGS)によってまたはqPCRによって、好ましくはdPCRによって決定される。
本明細書で使用される場合、用語「dPCR」は、「デジタルPCR」を表す。これは、サンプルが多数の区画に分けられ、各区画で個別にPCR反応が実施される従来のPCR法の改良法である。この分割により、核酸量のより信頼性の高い収集と高感度の測定が可能になる。この方法は、遺伝子配列の変化、例えば、コピー数変異体および点突然変異を研究するのに有用であることが実証されており、次世代シーケンシングのためのサンプルのクローン増幅に慣用されている。より正確には、PCR溶液は、水油エマルジョン技術によってより小さな反応に分割され、その後、個別にPCRが実行される。例えば、PCRサンプルは、ピコリットル~ナノリットルサイズのサンプルに分割し、油滴に封入することができる。油滴は、各ウェルに真空を適用する液滴生成器を使用して作製される。使用するシステムに応じて、500万~1000万ピコリットルの液滴(25~50μLサンプル)から20,000ナノリットルの油滴(20μLサンプル)を作出することができる。他の種類のコンパートメント(微細加工されたものなど)並びに単一チューブ限界希釈も使用できる。
より好ましい態様では、MSC-AS1遺伝子のメチル化のレベルまたは量は、配列番号7~10のプライマーを使用することによる、例えば、配列番号7~8または配列番号9~10のプライマー対を使用することによるddPCRによって決定される。
より好ましい態様では、ZNF790-AS1遺伝子のメチル化のレベルまたは量は、配列番号11~14のプライマーを使用することによる、例えば、配列番号11~12または配列番号13~14のプライマー対を使用することによるddPCRによって決定される。
より好ましい態様では、KCNA3遺伝子のメチル化のレベルまたは量は、配列番号15~16のプライマー対を使用することによるddPCRによって決定される。
1つの例示的態様では、本方法は、PCR中に蓄積するPCR産物の検出の特異度および/または感度を向上させるために蛍光性プローブを使用する遺伝子発現を検出するための方法(例えば、dPCR)を使用できる。このようなアッセイは、例えば、マッチしたプローブとミスマッチのプローブのTの差を増大する副溝結合(MGB)部分を含むプローブを使用するTaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイである。加えて、これらのMGBプローブには、反応に複数の色素を使用する場合のスペクトル分解能を高める非蛍光クエンチャー(NFQ)が含まれる場合がある。
この好ましい態様で使用できるプローブは、下記表2および配列番号17~21に表される。
より好ましい態様では、MSC-AS1遺伝子のメチル化のレベルまたは量は、配列番号7~10のプライマーおよび配列番号17~18のプローブを使用することによるddPCRによって決定される。
より好ましい態様では、ZNF790-AS1遺伝子のメチル化のレベルまたは量は、配列番号11~14のプライマーおよび配列番号19~20のプローブを使用することによるddPCRによって決定される。
より好ましい態様では、KCNA3遺伝子のメチル化のレベルまたは量は、配列番号15~16のプライマー対および配列番号21のプローブを使用することによるddPCRによって決定される。
本発明によるバイオマーカーの好ましい組合せは以下である:
・ZNF790-AS1遺伝子およびMSC-AS1遺伝子、
・ZNF790-AS1遺伝子およびKCNA3遺伝子、
・MSC-AS1遺伝子およびKCNA3遺伝子、
・ZNF790-AS1遺伝子およびMSC-AS1遺伝子およびKCNA3遺伝子。
本発明の方法はまた、前記遺伝子のメチル化のレベルまたは量を、上記で定義されたような参照サンプルにおいて決定された同じ遺伝子のメチル化レベルまたは量と比較する工程も含む。
ZNF790-AS1遺伝子およびMSC-AS1遺伝子が、試験した対象の生物学的サンプルにおいて、参照サンプルにおける同じバイオマーカーと比べて有意に高メチル化されている場合、試験した対象は胃癌を有するか、または胃癌を有するもしくはそれを発症するリスクが高い。
ZNF790-AS1遺伝子およびKCNA3遺伝子が、試験した対象の生物学的サンプルにおいて、参照サンプルにおける同じバイオマーカーと比べて有意に高メチル化されている場合、試験した対象は胃癌を有するか、または胃癌を有するもしくはそれを発症するリスクが高い。
MSC-AS1遺伝子およびKCNA3遺伝子が、試験した対象の生物学的サンプルにおいて、参照サンプルにおける同じバイオマーカーと比べて有意に高メチル化されている場合、試験した対象は胃癌を有するか、または胃癌を有するもしくはそれを発症するリスクが高い。
ZNF790-AS1遺伝子、MSC-AS1遺伝子およびKCNA3遺伝子が、試験した対象の生物学的サンプルにおいて、参照サンプルにおける同じバイオマーカーと比べて有意に高メチル化されている場合、試験した対象は胃癌を有するか、または胃癌を有するもしくはそれを発症するリスクが高い。
別の側面において、本発明のバイオマーカーは、胃癌患者の転帰を予測するために使用できる。また、これらは、患者の生存を最大限に延ばすための適当な処置の選択において熟練の腫瘍学者を支援するために使用できる。適当な処置は、例えば、化学療法処置、免疫療法処置、放射線療法処置および/または手術である。好ましくは、本発明の用法指示は、処置開始前に作成される。
具体的には、前記患者は、化学療法薬での処置を受けているかまたは受ける予定である。
前記「化学療法薬」は、一般には、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、白金系成分、特定のキナーゼ阻害剤、ホルモン、サイトカイン、抗血管新生剤、抗体、免疫療法剤または血管破壊剤から選択される薬剤である。
本発明はまた、胃癌に罹患している対象の臨床転帰を予測するための方法であって、
a)前記対象の生物学的サンプル中のZNF790-AS1遺伝子、MSC-AS1遺伝子、およびKCNA3遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子のメチル化のレベルまたは量を決定し、それを参照値と比較すること、
b)工程a)の比較に基づいて臨床転帰を予測すること
を含む方法に関する。
MSC-AS1遺伝子、KCNA3遺伝子および/もしくはZNF790-AS1遺伝子またはこれらの遺伝子の組合せが、試験した対象の生物学的サンプルにおいて、参照サンプルにおける同じバイオマーカーと比べて有意に高メチル化されている場合、試験した対象は、不良の臨床転帰(短い生存、転移など)を示す可能性がある。
逆に、MSC-AS1遺伝子、KCNA3遺伝子および/もしくはZNF790-AS1遺伝子またはこれらの遺伝子の組合せが、試験した対象の生物学的サンプルにおいて、参照サンプルにおける同じバイオマーカーと比べて有意に高メチル化されていないか、あるいは同等以下のメチル化である場合、試験した対象は、良好な臨床転帰を示す可能性がある。
本発明はまた、胃癌に罹患している対象に治療計画を適合させる方法であって、
a)前記対象の生物学的サンプル中のZNF790-AS1遺伝子、MSC-AS1遺伝子、およびKCNA3遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子のメチル化のレベルまたは量を決定すること、および
b)手術後の前記対象または処置が施された後の前記対象の生物学的サンプル中の、工程a)において選択された同じバイオマーカーのメチル化のレベルまたは量と、それを比較すること、
c)工程a)単独または工程a)と工程b)との比較に基づいて前記対象の治療計画を適合させる/修正すること
を含む方法に関する。
特に、前記手術または治療計画は、前記バイオマーカーのレベルまたは量が、前記処置の前に決定された前記バイオマーカーのレベルまたは量に有意に劣るか、あるいは同等である場合に、有効であると認められる。
これに対し、前記バイオマーカーのレベルまたは量が、処置下にあって、前記処置の前に決定された(または処置の初期に決定された)前記バイオマーカーのレベルまたは量に比べて増加した場合には、前記治療計画は変更すべきである。
治療戦略のこの側面は、生活の質を維持し、効果のない処置の不要な毒性効果を回避しながら生存を改善するために、個別化医療の状況において重要な目標である。
本発明はまた、胃癌と診断されている対象における胃癌の進行の監視方法であって、
a)第1の時点で、前記対象の生物学的サンプル中のZNF790-AS1遺伝子、MSC-AS1遺伝子、およびKCNA3遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子のメチル化のレベルまたは量を決定すること、
b)第2の時点で、前記対象の生物学的サンプル中の工程a)において先に選択された前記遺伝子のメチル化のレベルまたは量を決定すること、並びに
c)工程a)において決定されたメチル化のレベルまたは量を工程b)において決定されたレベルまたは量と比較すること
を含む方法に関する。
工程b)において決定されたメチル化のレベルまたは量が、工程a)において決定されたレベルまたは量よりも有意に高い場合、胃癌の悪性度が増悪していると結論付けることができる。言い換えれば、試験した対象が、すでに治療を受けている可能性があるにもかかわらず、増悪する疾患を有する。
対象がすでに治療を受けている場合、第1のサンプルは、胃癌の処置の前に対象から採取し、第2のサンプルは、胃癌の処置を受けた後に対象から採取したものでよい。従って、前記第1の時点は、好ましくは、前記対象の処置の前であり、前記第2の時点は、前記対象が胃癌の処置を受けた後である。
この場合、本発明の方法は、前記処置の有効性を評価するために使用できる。
処置に対する応答は、より好ましくは、RECIST 1.1基準(Mandard et al, 1994)に従って定義される。完全奏功(CR)は、全ての標的病変の消失と定義される。どの病的リンパ節(標的または非標的にかかわらず)も短軸が10mm未満に縮小していなければならない。部分奏功(PR)は、ベースライン径和を基準として、標的病変の径の和の少なくとも30%の減少と定義される。進行(PD)は、試験における最小和を基準として、標的病変の径の和の少なくとも20%の増加と定義される(試験において最小であればベースライン和を含む)。20%の相対的な増加に加えて、その和はまた、少なくとも5mmの絶対的な増加も示さなければならない(注:1以上の新たな病変の出現も進行と見なされる)。安定(SD)は、試験中の最小径和を基準として、PRに当てはまめるには十分な縮小でなく、PDに当てはめるには十分な増加でもないことと定義される。評価の時間は、多くの場合、疾患によって異なる(胃癌の場合、通常、6週間から3か月の間に含まれる)。
本発明に関して、MSC-AS1遺伝子、KCNA3遺伝子および/もしくはZNF790-AS1遺伝子またはこれらの遺伝子の組合せのメチル化が、処置が施された後に取得された生物学的サンプルにおいて、処置が施される前に取得されたサンプルにおける同じバイオマーカーと比べて有意に減少している場合、試験した対象は、試験した処置に対して効率的に応答する可能性がある(従って、上記のRECIST基準「完全奏功」に定義される「奏効者」である)。
逆に、MSC-AS1遺伝子、KCNA3遺伝子および/もしくはZNF790-AS1遺伝子またはこれらの遺伝子の組合せのメチル化が、処置が施された後に取得された生物学的サンプルにおいて、処置が施される前に取得されたサンプルにおける同じバイオマーカーと比べて有意に増加している場合、試験した対象は、試験した処置に対して効率的に応答しない可能性がある(従って、「不奏効者」である)。
本明細書で使用される場合、「不奏効者」は、RECIST 1.1基準に従って定義されるような進行性疾患または安定性疾患を有する患者と見なされる。
本明細書で使用される場合、「処置」は、手術、化学療法、放射線療法および標的療法のいくつかの組み合わせを含み得る。特に、処置を決定する前に、学際的な会議を計画する必要がある。処置前の評価には、一般状態、栄養評価、心機能(心毒性の化学療法が計画される場合)、肺機能(開胸による手術が想定される場合)および腎機能に関する身体検査を含める必要がある。処置は、腫瘍の病期によって異なる。例えば、限局性腫瘍の場合、処置は、周術期化学療法または術後化学放射線療法と組み合わせた手術に基づく。転移性疾患では、処置は、フルオロピリミジン(カペシタビンまたは5-フルオロウラシル)および白金塩(シスプラチンまたはオキサリプラチン)を組み合わせた緩和的化学療法に基づく。HER2受容体を遮断するモノクローナル抗体であるトラスツズマブは、免疫組織化学またはFISHによって決定されたHER2陽性腫瘍を有する患者に対しては、緩和的化学療法と組み合わせて使用する必要がある。
本発明の全ての方法において、本発明のバイオマーカー、他の遺伝子とのそれらの組合せ、試験した対象、生物学的サンプル、および他の全てのパラメーターおよび定義は、上記で定義されたものである。
本発明のキット
本発明さらに、胃癌を診断するために本発明の高メチル化バイオマーカーを決定するための診断キットおよびツールを提供する。
第1に、本発明は、上記で強調した高メチル化領域を検出するのに有用な核酸に関する。より詳しくは、本発明は、配列番号1または配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5または配列番号6の配列の少なくとも10、12、15、20、30、40または50の連続するヌクレオチド(例えば、10~30ヌクレオチドまたは10~25ヌクレオチド)の配列を有する単離された核酸に関する。
本発明の範囲内において、「核酸」とは、mRNA、ゲノムDNAまたはmRNAに由来するcDNAを意味する。
これらの核酸は、優先的には、プライマーまたはプローブである。
別の側面において、本発明は、MSC-AS1遺伝子の配列番号1もしくは配列番号4のヌクレオチド領域において、またはZNF790-AS1遺伝子の配列番号2もしくは配列番号5のヌクレオチド領域において、またはKCNA3遺伝子の配列番号3もしくは配列番号6のヌクレオチド領域においてメチル化のレベルまたは量を決定するための前記核酸、好ましくはプライマーを含むキットに関する。
好ましい態様では、本発明は、MSC-AS1遺伝子の配列番号1もしくは配列番号4のヌクレオチド領域において、またはZNF790-AS1遺伝子の配列番号2もしくは配列番号5のヌクレオチド領域において、またはKCNA3遺伝子の配列番号3もしくは配列番号6のヌクレオチド領域においてメチル化のレベルまたは量を決定するための前記核酸、好ましくはプライマーおよび/またはプローブを含むキットに関する。
本明細書で使用される場合、用語「プライマー」は、標的ゲノム領域の5’領域または3’領域(それぞれプラス鎖およびマイナス鎖、またはその逆)に特異的にハイブリダイズまたはアニーリングすることができる単離された核酸分子を示す。一般に、それらは約10~30ヌクレオチド長であり、約50~200ヌクレオチド長を含む領域の両端でアニーリングする。適当な条件下で適当な試薬を用いて、そのようなプライマーは、それらのプライマーに隣接するヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅を可能にする。それらは対で使用する必要があるため、「プライマー対」または「プライマーセット」と呼ばれることが多い(配列番号7~8;配列番号9~10、配列番号11~12;配列番号13~14;および配列番号15~16の対を参照)。
本明細書で使用される場合、用語「プローブ」は、(例えば、配列番号1または配列番号2または配列番号3または配列番号4または配列番号5または配列番号6の)目的のゲノム領域と特異的にハイブリダイズすることが可能な分子を示す。これらは、生物学的サンプル中の前記ゲノム領域の存在を強調するのに有用である。これらのプローブは、少なくとも1つの非天然ヌクレオチド、例えば、ペプチド核酸(PNA)、リン酸基を有するペプチド核酸(PHONA)、架橋核酸またはロックド核酸(BNAまたはLNA)、およびモルホリノ核酸を含み得る。非天然ヌクレオチドにはまた、メチルホスホネート型DNAまたはRNA、ホスホロチオエート型DNAまたはRNA、ホスホルアミデート型DNAまたはRNA、および2’-O-メチル型DNAまたはRNAなどの化学的に修飾された核酸または核酸類似体も含まれる。
好ましい態様では、本発明のプローブは、重亜硫酸塩処理された配列番号1~配列番号6またはそれらの断片と相補的である少なくとも15の連続するヌクレオチドを含む。より好ましい態様では、本発明によるプローブとして使用できる分子は、合計最小サイズ15ヌクレオチドを有する。さらにより好ましい態様では、これらの分子は、15~30ヌクレオチド(合計)を含む。
ある特定の用途では、本発明のプローブおよびプライマーを検出可能な標識で直接的または間接的に標識してもよい。前記標識は、実施される実験に応じて、任意の種類のものであり得る。前記標識は、放射性同位体(32P、33P、35S、Hまたは125Iなど)、またはリガンド(ビオチン、アビジンまたはストレプトアビジンなど)、ジオキシゲニン、ハプテン、着色剤および発光剤(放射性発光剤、化学発光剤、生物発光剤、蛍光剤またはリン光剤など)から選択される非放射性物質であり得る。好ましくは、6-カルボキシフルオレセイン(FAM)、VIC、HEXおよびテトラメチルローダミン(TAMRA)を使用する。非標識ポリヌクレオチド配列はまた、直接、プローブまたはプライマーとして、例えば、PCRに基づくプロセス(例えば、定量的PCR)で使用することもできる。
「特異的ハイブリダイゼーション」は、定義された分子がその標的ゲノム領域以外のゲノム領域とハイブリダイズしない場合に見られる。好ましくは、それは、高ストリンジェンシー条件で、すなわち、温度条件およびイオン強度条件が、2つの相補的DNA断片間のハイブリダイゼーションを可能にするように選択される場合に、その標的領域とハイブリダイズする。例として、高ストリンジェンシー条件は次の通りであり得る。DNA-DNAまたはDNA-RNAハイブリダイゼーションは、2段階で行われる:(1)5SSC(1SSCは、0.15M NaCl+0.015Mクエン酸ナトリウム溶液に相当する)、50%のホルムアミド、7%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10デンハルト、5%のデキストラン硫酸および1%のサケ精子DNAを含有するリン酸バッファー(20mM、pH7.5)中、42℃で3時間のプレハイブリダイゼーション;(2)プローブのサイズに応じた温度(すなわち、サイズが100ヌクレオチドより大きなプローブの場合は42℃)で20時間の実際のハイブリダイゼーション、続いて、20℃、2SSC+2%SDSで20分の洗浄2回および20℃、0.1SSC+0.1%SDSで20分の洗浄1回。最終洗浄は、サイズが100ヌクレオチドより大きなプローブの場合、60℃、0.1SSC+0.1%SDSで30分間行う。定義されたサイズのポリヌクレオチドについて上記した高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、より大きなまたはより小さなサイズのオリゴヌクレオチドの場合には当業者により調整される。
本明細書で使用される場合、用語「キット」とは、材料を送達するための任意のシステムを指す。本発明に関して、これは、反応試薬(例えば、適当な容器内のオリゴヌクレオチド、酵素など)および/または補助材料(例えば、バッファー、アッセイを実施するための書面での指示など)のある場所から別の場所への貯蔵、輸送、または送達を可能にするシステムを含む。例えば、キットは、関連する反応試薬および/または補助材料を含む1以上のエンクロージャー(例えば、箱)を含む。本キットはまた、1以上の試薬、バッファー、ハイブリダイゼーション媒体、核酸、プライマー、ヌクレオチド、プローブ、分子量マーカー、酵素、固相支持体、データベース、分配順序を計算するためのコンピュータプログラムおよび/または本方法の実施を容易にするための使い捨て実験器具(マルチウェルプレートなど)も含み得る。本キットに含めることができる酵素には、ヌクレオチドポリメラーゼなどが含まれる。固相支持体には、ビーズなどを含めることができ、分子量マーカーには、結合可能なマーカー、例えば、ビオチンおよびストレプトアビジンなどを含めることができる。
本発明のキットは、より好ましくは、MSC-AS1遺伝子の配列番号1もしくは配列番号4のヌクレオチド領域またはZNF790-AS1遺伝子の配列番号2もしくは配列番号5のヌクレオチド領域またはKCNA3遺伝子の配列番号3もしくは配列番号6のヌクレオチド領域を特異的に標的とするプライマーを含む。
好ましい態様では、本発明のキットは、より好ましくは、MSC-AS1遺伝子の配列番号1もしくは配列番号4のヌクレオチド領域またはZNF790-AS1遺伝子の配列番号2もしくは配列番号5のヌクレオチド領域またはKCNA3遺伝子の配列番号3もしくは配列番号6のヌクレオチド領域を特異的に標的とするプライマーおよびプローブを含む。
前記キットは、好ましくは、配列番号1、配列番号2もしくは配列番号3それぞれまたは配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6それぞれにおいてメチル化のレベルまたは量を決定するための配列番号7~10、配列番号11~14または配列番号15~16のプライマーおよび、配列番号1、配列番号2もしくは配列番号3それぞれまたは配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6それぞれにおいてメチル化のレベルまたは量を決定するための配列番号17~18、配列番号19~20または配列番号21のプローブを含む。より好ましくは、前記キットは、配列番号1もしくは配列番号4においてメチル化のレベルもしくは量を決定するための配列番号7~8もしくは配列番号9~10のプライマー対および配列番号17~18のプローブ、配列番号2もしくは配列番号5においてメチル化のレベルもしくは量を決定するための配列番号11~12もしくは配列番号13~14のプライマー対および配列番号19~20のプローブ、または配列番号3もしくは配列番号6においてメチル化のレベルもしくは量を決定するための配列番号15~16のプライマー対および配列番号21のプローブを含む。
本発明のキットは、より好ましくは、以下の領域でメチル化のレベルまたは量を決定するためのプライマーおよびプローブを含む:
・MSC-AS1遺伝子の配列番号1もしくは配列番号4のヌクレオチド領域およびZNF790-AS1遺伝子の配列番号2もしくは配列番号5のヌクレオチド領域;または
・MSC-AS1遺伝子の配列番号1もしくは配列番号4のヌクレオチド領域およびKCNA3遺伝子の配列番号3もしくは配列番号6のヌクレオチド領域;または
・KCNA3遺伝子の配列番号3もしくは配列番号6のヌクレオチド領域およびZNF790-AS1遺伝子の配列番号2もしくは配列番号5のヌクレオチド領域;または
・MSC-AS1遺伝子の配列番号1もしくは配列番号4のヌクレオチド領域およびKCNA3遺伝子の配列番号3もしくは配列番号6のヌクレオチド領域およびZNF790-AS1遺伝子の配列番号2もしくは配列番号5のヌクレオチド領域。
MSC-AS1遺伝子の配列番号1または配列番号4のヌクレオチド領域の高メチル化を決定するために本発明のキットで使用できる例示的プライマーは、配列番号7~10で強調している。さらに使用できる2つの例示的プローブを表2および配列番号17~18に示している。
ZNF790-AS1遺伝子の配列番号2または配列番号5のヌクレオチド領域の高メチル化を決定するために本発明のキットで使用できる例示的プライマーは、配列番号11~14で強調している。さらに使用できる2つの例示的プローブを表2および配列番号19~20に示している。
KCNA3遺伝子の配列番号3または配列番号6のヌクレオチド領域の高メチル化を決定するために本発明のキットで使用できる例示的プライマーは、配列番号15~16で強調している。さらに使用できる1つの例示的プローブを表2および配列番号21に示している。
これらの例示的プライマーおよびプローブを下記表1および2にまとめる。
Figure 2022536846000001
Figure 2022536846000002
本発明はまた、MSC-AS1遺伝子の配列番号1もしくは配列番号4のヌクレオチド領域またはZNF790-AS1遺伝子の配列番号2もしくは配列番号5のヌクレオチド領域またはKCNA3遺伝子の配列番号3もしくは配列番号6のヌクレオチド領域を特異的に標的とするヌクレオチドを保持するマイクロアレイに関する。好ましい態様では、前記マイクロアレイは、配列番号7~21の任意のプライマーおよび/またはプローブを含む。
本発明によれば、「核マイクロアレイ」は、マイクロチップ、スライドガラスまたはミクロスフェアサイズのビーズであり得る基材に結合された種々の核酸プローブからなる。マイクロチップは、ポリマー、プラスチック、樹脂、多糖類、シリカもしくはシリカ系材料、炭素、金属、無機ガラス、またはニトロセルロースで構成されてよい。プローブは、cDNA(「cDNAマイクロアレイ」)またはオリゴヌクレオチド(「オリゴヌクレオチドマイクロアレイ」)などの核酸であり得、オリゴヌクレオチドは、約10~約40塩基対以下の長さであり得る。一般に、上述の例示的プライマーおよびプローブは、前記基材に結合させることができる。
好ましい態様では、本発明の核酸マイクロアレイは、配列番号1~6のメチル化領域のうち1つ、2つ、または3つと特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを保持するオリゴヌクレオチドマイクロアレイである。より好ましい態様では、本発明の核酸マイクロアレイは、配列番号1もしくは配列番号4でメチル化のレベルもしくは量を決定するためのプライマー配列番号7~10の少なくとも1つの、配列番号2もしくは配列番号5でメチル化のレベルもしくは量を決定するための配列番号11~14のプライマー、または配列番号3もしくは配列番号6でメチル化のレベルもしくは量を決定するための配列番号15~16のプライマーを含む。
より好ましい態様では、本発明の核酸マイクロアレイはまた、追加の遺伝子および所望により、1以上のハウスキーピング遺伝子に特異的な核酸も保持するが、好ましくは、最大500、400、300、200、好ましくは、100、90、80、70、より好ましくは、60、50、45、40、35、30、25、20、15、10、またはそれ以下(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2または1)の異なる核酸からなる。
本発明のバイオマーカーがメチル化されているかどうかを決定するために、試験サンプルを標識し、ハイブリダイゼーション条件で本発明の核酸マイクロアレイと接触させ、マイクロアレイ表面に結合されたプローブ配列と相補的である標的核酸との間での複合体形成に至らせる。次に、核酸マイクロアレイ上のハイブリダイズされた標識複合体の存在が決定される。マイクロアレイハイブリダイゼーション技術の多くの変形が当業者に利用可能である。
配列番号1~6の任意の遺伝子に特異的な好適なマイクロアレイオリゴヌクレオチドは、各遺伝子のゲノム配列に基づいて、当技術分野で公知のマイクロアレイオリゴヌクレオチド設計の任意の方法を使用して設計することができる。特に、マイクロアレイオリゴヌクレオチドの設計のために開発された利用可能なソフトウエア、例えば、OligoArrayソフトウエア(http://berry.engin.umich.edu/oligoarray/で利用可能)、GoArraysソフトウエア(http://www.isima.fr/bioinfo/goarrays/で利用可能)、Array Designerソフトウエア(http://www.premierbiosoft.com/dnamicroarray/index.htmlで利用可能)、Primer3ソフトウエア(http://frodo.wi.mit.edu/primer3/primer3_code.htmlで利用可能)、またはPromide ソフトウエア(http://oligos.molgen.mpg.de/で利用可能)、MethPrimer(http://www.urogene.org/cgi-bin/methprimer/methprimer.cgi)などを使用することができる。
本発明はまた、本発明の方法で提案するように、対象の生物学的サンプルにおける、以下のための、上記のキットの、または上記のマイクロアレイの、または上記のプライマーの、または上記のプローブの使用に関する:
・対象における胃癌の診断または同定、
・胃癌に罹患している対象における臨床転帰の予測、
・胃癌を有する対象の治療計画の決定、および/または
・胃癌と診断されている対象における胃癌の進行の監視。
本明細書で使用される場合、用語「イン・ビトロ(in vitro)」および「エクス・ビボ(ex vivo)」は、同等であり、通常の宿主生物(例えば、動物またはヒト)から単離された生物学的成分(例えば、細胞または細胞集団)を使用して行われる研究または実験を指す。
図1は、Methyl-seqによるGC患者由来の腫瘍および非腫瘍隣接組織における選択されたバイオマーカー、ZNF790-AS1、MSC-AS1、およびKCNA3のDNAメチル化レベル(n=10)を開示する。対応のあるノンパラメトリックウィルコクソン検定を正常組織DNAと隣接組織DNAの間の高メチル化の差異の分析に使用した。 図2は、ddPCRによる選択されたバイオマーカー、ZNF790-AS1、MSC-AS1、およびKCNA3のDNAメチル化の検証(n=20)を開示する。対応のあるノンパラメトリックウィルコクソン検定を腫瘍組織DNAと隣接する正常組織DNAの間の高メチル化の差異の分析に使用した。 図3は、ddPCRによるGC患者におけるMSC-AS1バイオマーカーのDNAメチル化の検証を開示する。GC患者の血漿(n=22)および健常な個体の血漿(n=10)におけるDNAメチル化の差異をddPCRにより試験した。マン・ホイットニー検定を有意性の分析に使用した。 図4は、メチル化DNAの検出量による患者の生存確率を開示する。GC患者は、血漿1ミリリットルあたりに検出されたメチル化配列のコピー量に応じて3つの三分位数に分けられた。ログランク、tft:ログランク傾向検定。
材料および方法:
<患者および健常な対照個体>
20人の胃癌患者からのマッチした腫瘍および隣接する非腫瘍組織の生検検体をこの研究に含めた。33人の健常な個体由来の血漿サンプルは、Biological Specialty Corporation(コルマール、USA)およびBioPredict.Inc(オラデル、USA)から購入した。55人の進行胃癌患者由来の血漿は、EDTAチューブに収集した。この研究は、現地の倫理委員会に承認を受け、全ての患者から書面による同意を得た。
<腫瘍サンプルの調製、貯蔵、DNA抽出、および定量>
腫瘍および隣接する非腫瘍組織の生検検体は、切除直後にさらなる分析まで、液体窒素で急速冷凍した。各腫瘍は、病理学者により概説されており、腫瘍細胞含量は、ヘマトキシリン-エオジン-サフラン染色により評価した。DNAは、QIAampDNAMini Kit(Qiagen)で製造者の説明書に従い抽出した。DNA濃度は、dsDNA BR Assay(Invitrogen)を使用してQubit 2.0蛍光光度計(Invitrogen、Life Technologies)により測定した。抽出されたDNAサンプルは、試験まで-20℃で保存した。
<血漿サンプルの調製、貯蔵、DNA抽出、および定量>
健常な個体の血漿サンプルをドライアイス中に受け取り、等分量にし、すぐに-80℃で冷凍した。抽出前に、血漿サンプルを3000gで10分間遠心分離し、次いで、QIAmp Circulating Nucleic Acid Kit(Qiagen)またはRSC Maxwell instrumentによるccfDNA Plasma kit(Promega)を製造者の説明書に従い使用して抽出した。胃癌患者由来の血漿は、RSC Maxwell instrumentによるccfDNA Plasmaキットt(Promega)またはQIAmp Circulating Nucleic Acid Kit(Qiagen)を使用して抽出した。DNAの量は、dsDNA HS Assay(Invitrogen)を使用してQubit 2.0蛍光光度計(Invitrogen、Life Technologies)により測定した。抽出されたDNAサンプルは、試験まで-20℃で保存した。
<バフィーコートの調製、DNA抽出、および定量>
バフィーコートは、胃癌に罹患していない患者の全血からまたは健常な個体から調製し、次いで、QIAmp Circulating Nucleic Acid Kit(Qiagen)を製造者の説明書に従って使用して抽出した。DNAの量は、dsDNA BR Assay(Invitrogen)を使用してQubit 2.0蛍光光度計(Invitrogen、Life Technologies)により測定した。抽出されたDNAサンプルは、試験まで-20℃で保存した。
<Methyl-seqによる胃癌患者のゲノムワイドDNAメチロームプロファイリング>
DNAメチロームライブラリーを、SeqCap Epi CpGiant Enrichment kit(Roche)を製造者の説明書に従って使用して調製した。簡単に述べれば、500ng~1μgの腫瘍または非腫瘍組織DNAを、Bioruptor(Diagenode s.a、ベルギー)を使用して断片化した。断片化されたDNAにNGSアダプターを連結させ、続いて、重亜硫酸塩変換処理を、EZ DNA Methylation-Lightning Kit(Zymo research)を使用して行った。いくつかの精製および増幅段階の後、重亜硫酸塩変換されたサンプルをSeqCap Epiプローブプールでハイブリダイズし、次いで、SeqCap Pure Capture Beadsにより捕捉した。サンプルがNextseq(商標)500シーケンサー(Illumina)へ移る前に捕捉後の増幅を適用した。
<Methyl-seqデータに基づいたDNAメチル化バイオマーカーの分析および同定>
品質管理に続いて、配列データを重亜硫酸塩変換した参照ゲノムにアラインし、メチレン:R scriptを使用して、腫瘍および非腫瘍のDNA間の差次的にメチル化されたCpG部位(DMC)および差次的にメチル化された領域(DMR)について分析した。DMRは、80%を超えるサンプルで少なくとも5つのDMCを含有する領域である。種々の情報:非腫瘍組織DNAのメチル化レベル、腫瘍組織DNAのメチル化レベル、腫瘍および非腫瘍組織のDNA間のメチル化レベルの差異、q値、同定されたDMRに対応する遺伝子記号などを含むDMRのリストが作成された。次いで、作成されたこのDMRリストに基づいて、胃癌患者のDNAメチル化バイオマーカーを同定するために種々のパラメーターが使用された。第1に、q値が0.05未満の全てのDMRを選択した。第2に、腫瘍および非腫瘍のDNA間でメチル化レベルの差異が40%を超えるDMRを選択した。次に、第3に、前の2つの基準を満たすDMRを、非腫瘍DNAでのメチル化レベルが5%未満であったという条件によって選択した。この後、遺伝子間領域のDMRを候補バイオマーカーリストから除外し、遺伝子で注釈付けされたDMRを公開データベースで検証して、以前に記載されたものを除外した。
<組織DNA、バフィーコートDNAおよび血漿ccfDNAの重亜硫酸塩変換>
組織DNA、バフィーコートDNAおよび血漿ccfDNAは、EZ DNA Methylation-Gold Kit(Zymo Research)を使用して重亜硫酸塩により修飾した。簡単に説明すると、重亜硫酸塩反応をサーマルサイクラーで、98℃で12分間および64℃で2時間35分間実施した。重亜硫酸塩変換されたDNAのクリーンアップは、製造者の推奨に従い、変換されたDNAをM-Elution Bufferで溶出し、-20℃で保存した。
<液滴に基づくデジタルPCRによる選択バイオマーカーのメチル化変化の検出>
腫瘍DNAにおける選択バイオマーカーの高メチル化は、ddPCRによって検証した。デュプレックス形式を使用し、DNA量を正規化するためのアルブミンを使用して高メチル化を分析した。プライマーおよびプローブは上記表1および2に記載した。特に、MSC-AS1については配列番号9~10のプライマー対および配列番号18のプローブ、ZNF790-AS1については配列番号11~12のプライマー対および配列番号19のプローブ並びにKCNA3については配列番号15~16のプライマー対および配列番号21のプローブを使用した。
標的配列のDNAメチル化は、Raindrop ddPCR system(Raindance technologies、現在Bio-Rad)またはQX-200 platform(BIO-RAD Technologies)のいずれかを使用したddPCRにより分析した。簡単に説明すると、第1のシステムを使用する場合、12.5μLのKapa probe Fast qPCR master mix(Kapa Biosystems)を、0.75μLの40mM dNTP Mix(New England BioLabs)、0.5μLの25mM MgCl2、1μL 25x Droplet Stabilizer(RainDance Technologies)、1.25μLの20xアッセイ混合物(8μMのフォワードプライマーおよびリバースプライマー、4μMの6-FAMおよび12μMのVIC Taqman(登録商標)標識プローブを含有)、および標的修飾DNA鋳型を含有するアッセイ溶液と混合し、最終反応量を25μLにした。可能な場合、各反応で最少10ngの修飾DNAを使用した。
第2のシステムを使用する場合、PCR試薬の混合物(BIO-RAD Technologies)は、製造者の推奨に従い調製した。トリプレックスパネルは、KCNA3およびMSC-AS1のメチル化された標的配列並びに参照遺伝子としてのメチル化されていないアルブミン配列を検出するために開発された。ZNF790-AS1のメチル化された標的配列並びに参照遺伝子としてのメチル化されていないアルブミン配列を検出するデュプレックスアッセイも開発された。トリプレックスパネルでは、フォワードプライマーおよびリバースプライマーの反応混合物の終濃度は、アルブミンおよびKCNA3については400nM、MSC-AS1については600nMであった。600nMのVIC Taqman(登録商標)標識プローブを使用して、アルブミンの非メチル化配列を検出し、400nMのFAM Taqman(登録商標)標識プローブを使用して、MSC-AS1のメチル化配列を検出し、200のFAMおよびVIC Taqman(登録商標)標識プローブの両方を使用して、KCNA3のメチル化配列を検出した(プライマーおよびプローブ配列については方法1を参照)。ZNF790-AS1の標的配列を検出するデュプレックスもQX-200 platform用に最適化した。このアッセイでは、フォワードプライマーおよびリバースプライマーの反応混合物の終濃度は、アルブミンについては400nM、ZNF790-AS1については600nMであった。さらに、600nMのVIC Taqman(登録商標)標識プローブを使用して、アルブミンの非メチル化配列を検出し、400nMのFAM Taqman(登録商標)標識プローブを使用して、ZNF790-AS1のメチル化配列を検出した。ddPCRのPCR工程は、以下のプログラムを使用してBIO-RAD C1000またはS1000で実行した:95℃で10分(2.5℃/秒のランプレートを使用)、続いて、94℃、30秒および57.3℃(トリプレックスアッセイ)または58.4℃(デュプレックスアッセイ)、1分(2.5℃/秒のランプレートを使用)を45サイクル、最終工程98℃で10分。完了後、エマルジョンは、4℃で保存するかまたはすぐに処理して各液滴からのエンドポイント蛍光シグナルを測定した。データは、Quantasoft BIO-RADソフトウエアを製造者の説明に従い使用して分析した。集団は、蛍光レベルに従ってクラスター化され、腫瘍および正常な増幅可能なDNA分子の両方の正確な計数が可能である。
種々のアッセイについて、ブランク上限(limit of blank、LOB)は、従前に記載されているように(Taly, V., et al. 2013)、デュプレックスおよびトリプレックスで開発されたアッセイの両方で全血から抽出された市販のDNA(Promega)を使用して計算した。これは、高メチル化DNAが存在しない正常な対照DNAサンプルで測定された陽性液滴の頻度により定義される(サンプルの利用可能性に応じて各アッセイにつきn=10~23)。計算されたLOBは、メチル化レベルを計算するために各サンプルから減じた。
サンプル分析は、前述の手順(Taly, V., et al. 2013)に従い実行した。観察した液滴の数値がLOB値より高い場合、サンプルは陽性と見みなした。各サンプルのメチル化レベルは、アルブミン配列を含む液滴の数値に対するメチル化配列を含む液滴の数値の割合として計算した。
修飾処理の適切な実現を確実にするために、2つのDNA対照を使用した(陽性対照:ユニバーサル高メチル化DNAおよび陰性対照:正常なヒトゲノムDNA。
<健常な個体および胃癌患者由来の血漿の循環無細胞DNA(ccfDNA)における選択バイオマーカーのメチル化レベルの測定>
健常な個体または胃癌患者由来の血漿における選択バイオマーカーのDNAメチル化は、前に説明した同じ反応条件を使用してddPCRによって測定した。デュプレックス形式を使用し、DNA量を正規化するためのアルブミンを使用して高メチル化を分析した。上記表1および2に記載した同じプライマーおよびプローブを使用した。特に、MSC-AS1については配列番号9~10のプライマー対および配列番号18のプローブ、ZNF790-AS1については配列番号11~12のプライマー対および配列番号19のプローブ並びにKCNA3については配列番号15~16のプライマー対および配列番号21のプローブを使用した。
<検出感度および特異度の計算>
非腫瘍組織DNAのメチル化レベルの平均および標準偏差の合計を、各選択バイオマーカーの感度および特異度を計算するための閾値として使用した。感度は、腫瘍組織で閾値より高いメチル化レベルを示している患者のパーセンテージである。特異度は、非腫瘍組織で閾値より低いメチル化レベルを示している患者のパーセンテージである。
<統計分析>
統計分析は、Prism Software(GraphPad Software Inc.)およびR software 3.6.3 Studioを使用して実行した。P値≦0.05を有意とみなした。正常組織と隣接組織の間の高メチル化の差異の分析では、対応のあるノンパラメトリックウィルコクソン検定を使用した。健常な血漿および胃癌血漿のccfDNA間の高メチル化の差異の分析では、マン・ホイットニー検定を使用した。患者の人口統計学的特性は、カイ二乗検定またはフィッシャーの正確確率検定により比較した。連続データは、独立サンプルのt検定で分析した。生存率は、カプラン・マイヤー法を使用して計算した。無増悪生存期間(PFS)は、研究でctDNA決定のために使用された採血日から最初に記録された放射線画像検査による進行(RECIST V1.1)、または死亡のいずれか早い方まで測定した。経過観察に失敗した患者は、最後の経過観察訪問で打ち切りとした。結果とベースライン特性との関連は、Cox比例ハザードモデルで評価し、95%CIのハザード比(HR)を得た。
結果
<Methyl-seqデータに基づいたDNAメチル化バイオマーカーの同定>
10人の胃癌(GC)患者由来の合計20個のサンプル(腫瘍および非腫瘍組織のDNA組)をSeqCap Epi CpGiant Enrichmentライブラリーの調製後、Methyl-seqによってメチロームプロファイルについて分析した。非腫瘍組織DNAと比較して胃腫瘍組織DNAにおいて187,166のDMRを同定した。それらの中で、15,543のDMRはq値が0.05未満であった。この後、より厳密な閾値:腫瘍DNAと非腫瘍DNAの間でメチル化レベルの差異が40%を超え、かつメチル化レベルが非腫瘍DNAにおけるメチル化の5%未満である、を胃癌の潜在的DNAメチル化バイオマーカーの同定に適用した。最後に、3つの潜在的バイオマーカー:KCNA3、ZNF790-AS1、およびMSC-AS1を確認した。
<Methyl-seqによるGC患者由来の腫瘍DNAにおける選択バイオマーカーの高メチル化>
図1に示されるように、選択バイオマーカー:KCNA3、ZNF790-AS1、およびMSC-AS1のメチル化レベルは、胃腫瘍組織DNAにおいて非腫瘍組織DNAでのメチル化レベルと比べて有意に増加していた。これらの全てのバイオマーカーのMethyl-seqによる検出感度および特異度は80%を超えていた:
Figure 2022536846000003
<ddPCRによる選択バイオマーカーのDNAメチル化変化の検証>
GC患者由来の腫瘍および非腫瘍組織におけるいくつかの潜在的バイオマーカーのDNAメチル化の差異を、ddPCRによってMSC-AS1については配列番号9~10のプライマー対および配列番号18のプローブ、ZNF790-AS1については配列番号11~12のプライマー対および配列番号19のプローブ並びにKCNA3については配列番号15~16のプライマー対および配列番号21のプローブを使用して検証した(n=20)。腫瘍組織におけるDNAメチル化は、Methyl-seqによりすでに実証されたように、非腫瘍組織におけるDNAメチル化と比べて有意に増加していた(図2)。
胃癌におけるバイオマーカーMSC-A1、KCNA3およびZNF-90-AS1のddPCRによる検出感度および特異度は80%を超えていた:
Figure 2022536846000004
<より高い感度および特異度を達成するための異なるバイオマーカーの組合せ>
個々のバイオマーカーのMethyl-seqおよびddPCRによる感度および特異度をそれぞれ表3および表4に示している。1つのバイオマーカーのみを使用した最も高い感度は85%である。より高い検出感度および特異度を達成するために、異なるバイオマーカーを組み合わせることができる(表5および6、それぞれMethyl-seqまたはddPCRにより得られた結果)。本発明で対象とするように、ddPCRによる検出感度は、さらに、MSC-AS1とZNF790-AS1またはMSC-AS1とKCNA3を組み合わせることにより100%に高めることができる。
Figure 2022536846000005
Figure 2022536846000006
<健康な個体および患者由来の血漿ccfDNAおよびバフィーコート画分における選択バイオマーカーのddPCRによるメチル化プロファイル>
これらの潜在的バイオマーカーの目的は、胃癌患者におけるDNA高メチル化を検出することであるが健康な個体では検出されない。これを検証するために、健康な個体由来の血漿ccfDNAにおけるメチル化レベルをddPCRにより調査した。これら全ての潜在的バイオマーカー:KCNA3、ZNF790-AS1およびMSC-AS1について健康な血漿ccfDNAにおいて有意なレベルのメチル化は観察されなかった(MSC-AS1については図3、他のマーカーについての結果(デュプレックスおよびトリプレックスアッセイについては、それぞれ表7および表9))。さらに、バフィーコート(胃癌に罹患していない患者由来のもの、胃癌を有する患者または健康な個体由来のもの)から抽出されたDNAもマーカーに関して試験し、これらのサンプルにおいて試験したマーカーのメチル化は観察されなかった(デュプレックスおよびトリプレックスアッセイについては、それぞれ表8および10)。各バイオマーカーについて実行したサンプルの数は、DNAの利用可能性によって異なった。バフィーコートDNA1~6は結腸直腸癌患者由来のものであり、バフィーコートDNA7~16は健康な個体由来のものであり、他のバフィーコートは胃癌患者由来のものであった。LOBの計算について前述したように、全血から抽出された市販のDNA(Promega)もまたアッセイの検証に使用した。バフィーコートDNAに加えて、これらの対照は、血液中に含まれる細胞ではマーカーが陽性でないことを確認するために実行し、血球溶血(例えば、分析前のサンプル処理による)の場合に偽陽性がないことを保証した。
しかしながら、健康な対象および胃癌患者の血漿から抽出されたDNAで試験した場合、開発したデュプレックスおよびトリプレックスアッセイの両方を使用して、メチル化は胃の患者でのみ観察され(下記参照)、血液サンプルでのGCの検出について100%の潜在的特異度をもたらした。
Figure 2022536846000007
Figure 2022536846000008
Figure 2022536846000009
Figure 2022536846000010
<胃癌の進行の監視>
マーカーMSC-A1およびKCNA3を使用して決定された循環無細胞DNAのメチル化状況は、無増悪生存期間と相関していることを示した(図4)。一次、二次または三次治療中の55人の患者を上記手順によりメチル化腫瘍DNAの存在について試験した。少なくとも1つのマーカーについて陽性であった(n=43)のは76パーセントを超えていた(78%)。GC患者のメチル化状況は無増悪生存期間が長いことと関連していた(図4参照)。検出されたメチル化マーカーの量に従って患者を分けると(メチル化ctDNA濃度(血漿1mLあたりのコピー数)が低い三分位数、中間の三分位数および高い三分位数)、無病生存期間の有意差が観察された。実際に、メチル化ctDNA濃度が最も高い群では、メチル化ctDNA濃度が中間の群に対して、メチル化ctDNA濃度が低い群に対して進行の確率が増加していることが観察された(ログランク傾向検定、p=0.0092)。これらのマーカーの適切性は単変量分析を使用してさらに検証した。メチル化状況の分析(サンプルをメチル化について陽性と陰性と見なした場合またはメチル化ctDNAの量を3つの三分位数に分けて考えた場合の両方)により癌進行の予測に有意な結果が得られた場合、潜在的GCマーカー(性別、Her2増幅または腫瘍分化度など)の分析により有意な結果は得られなかった。表11は、一次および二次化学療法で処置した患者について得られたデータ(n=48)をまとめている。重要なことに、ctDNAの量もまた、連続変数として取得した場合、GCの進行と関連していた(p値=0.024)。
Figure 2022536846000011
参考文献
Figure 2022536846000012

Claims (15)

  1. 対象における胃癌のイン・ビトロ診断または同定方法であって、前記対象の生物学的サンプル中のMSC-AS1遺伝子と、ZNF790-AS1遺伝子およびKCNA3遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子とのメチル化のレベルまたは量を決定することを含む、方法。
  2. 前記遺伝子が参照値に比べて高メチル化されている場合、前記対象は胃癌に罹患していると診断または同定される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記生物学的サンプルは前記対象の血液サンプルである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記メチル化は、次世代シーケンシング(NGS)またはqPCR、好ましくは、デジタルPCR(dPCR)によって決定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記メチル化のレベルまたは量は、MSC-AS1遺伝子の配列番号4のヌクレオチド領域において、並びに、ZNF790-AS1遺伝子の配列番号5のヌクレオチド領域においてまたはKCNA3遺伝子の配列番号6のヌクレオチド領域において決定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. MSC-AS1遺伝子と、ZNF790-AS1遺伝子またはKCNA3遺伝子との前記メチル化のレベルまたは量は、それぞれ配列番号7~10と、配列番号11~14または配列番号15~16とのプライマーを使用し、かつ、それぞれ配列番号17~18と、配列番号19~20または配列番号21とのプローブを使用することによるdPCRにより決定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記対象の生物学的サンプル中のMSC-AS1遺伝子、ZNF790-AS1遺伝子およびKCNA3遺伝子のメチル化のレベルまたは量を同時にまたは逐次に決定することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 胃癌と診断されている対象における胃癌の進行のイン・ビトロ監視方法であって、
    a)第1の時点で、前記対象の生物学的サンプル中のMSC-AS1遺伝子と、ZNF790-AS1遺伝子およびKCNA3遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子とのメチル化のレベルまたは量を決定すること、
    b)第2の時点で、前記対象の生物学的サンプル中の、工程a)において先に選択された前記遺伝子のメチル化のレベルまたは量を決定すること、並びに
    c)工程a)において決定されたメチル化のレベルまたは量を工程b)において決定されたレベルもしくは量または参照値と比較すること
    を含む、方法。
  9. 工程a)におけるサンプルが胃癌の処置の前に得られ、かつ、工程b)におけるサンプルが前記対象が胃癌の処置を受けた後に得られる、請求項8に記載の方法。
  10. 前記メチル化のレベルまたは量が、前記対象の生物学的サンプル中のMSC-AS1遺伝子、ZNF790-AS1遺伝子およびKCNA3遺伝子において同時にまたは逐次に決定される、請求項8または9に記載の方法。
  11. 前記参照値が健康な対象において得られる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 胃癌に罹患している対象に好適な治療計画を決定するまたは適合させるための、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 胃癌に罹患している対象の臨床転帰を予測するための、請求項8に記載の方法。
  14. MSC-AS1遺伝子の配列番号4のヌクレオチド領域と、ZNF790-AS1遺伝子の配列番号5のヌクレオチド領域またはKCNA3遺伝子の配列番号6のヌクレオチド領域のいずれかとを特異的に標的とするプライマーを含むキットであって、所望により、MSC-AS1遺伝子の配列番号4のヌクレオチド領域と、ZNF790-AS1遺伝子の配列番号5のヌクレオチド領域またはKCNA3遺伝子の配列番号6のヌクレオチド領域のいずれかとを特異的に標的とするプローブも含み、好ましくは、配列番号7~10と、配列番号11~14または配列番号15~16のいずれかとのプライマーと、配列番号17~21のそれらの対応するプローブとを含む、キット。
  15. 以下のための、請求項14に記載のキットの使用:
    a)対象における胃癌の診断または同定、
    b)胃癌に罹患している対象における臨床転帰の予測、
    c)胃癌を有する対象の治療計画の決定、および/または
    d)胃癌と診断されている対象における胃癌の進行の監視。

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