発明の詳細な説明
2012年10月30日に発行された米国特許第8,299,079号、老眼を寛解または軽減するための調製物および方法(PREPARATIONS AND METHODS FOR AMELIORATING OR REDUCING PRESBYOPIA)、ならびに2013年6月4日に発行された米国特許第8,455,494号、老眼を寛解または軽減するための調製物および方法(PREPARATIONS AND METHODS FOR AMELIORATING OR REDUCING PRESBYOPIA)、ならびに2010年11月25日に公開された米国特許出願公開第2010/0298335号、老眼を寛解または軽減するための調製物および方法(PREPARATIONS AND METHODS FOR AMELIORATING OR REDUCING PRESBYOPIA)、および2013年9月19日に公開された米国特許出願公開第2013/0245030号、老眼を寛解または軽減するための調製物および方法(PREPARATIONS AND METHODS FOR AMELIORATING OR REDUCING PRESBYOPIA)は全て参照により本明細書に組み入れられ、副交感神経刺激薬およびαアゴニストを用いて老眼を軽減するための方法および調製物について論じる。
本明細書に記載の態様では、治療的有効量の1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬または1種類もしくは複数種類のコリンエステラーゼ阻害物質あるいはその薬学的に許容される塩と、1種類もしくは複数種類のαアゴニストもしくはアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩を含む、眼科用局部調製物が提供される。
一部の態様では、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬はピロカルピンもしくはカルバコールまたはその薬学的に許容される塩である。さらなる態様では、1種類もしくは複数種類のαアゴニストはブリモニジンまたはその薬学的に許容される塩である。さらなる態様では、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬はコリンエステラーゼ阻害物質と交換される。
一部の態様では、1種類または複数種類のコリンエステラーゼ阻害物質は、有機リン酸類、例えば、メトリホナート、カルバメート、例えば、フィゾスチグミン(エゼリンとも知られる)、ネオスチグミン(プロスチグミンとも知られる)、ピリドスチグミン、アムベノニウム(ambenonium)、デマルカリウム(demarcarium)、またはリバスチグミン;フェナントレン誘導体、例えば、ガランタミン;ピペリジン化合物、例えば、ドネペジル、タクリン(テトラヒドロアミノアクリジン(THA)とも知られる)、エドロホニウム、ヒュペリジン(huperzine)A、またはラドスチギル(ladostigil)である。別の態様では、コリンエステラーゼ阻害物質はジイソプロピルフルオロホスホネートまたはDFP(Floropryl)でもよい。他の態様では、1種類または複数種類のコリンエステラーゼ阻害物質はヨウ化ホスホリン(phospholine iodide)(エコチオパートとも知られる)もしくはフィゾスチグミンまたはその薬学的に許容される塩である。
ある特定の態様では、1種類または複数種類のαアンタゴニストは、ドキサゾシン、シロドシン、プラゾシン、タムスロシン、アルフゾシン、テラゾシン、トリマゾシン、フェノキシベンザミン、もしくはフェントラミン、チモキサミン、またはその薬学的に許容される塩である。
本明細書に記載の態様では、薬学的調製物は、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬(ムスカリンアゴニストとも知られる)もしくはコリンエステラーゼ阻害物質を単独でまたは1種類もしくは複数種類のαアゴニストと組み合わせて含む。一態様では、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬はピロカルピンである。別の態様では、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬はカルバコールである。さらなる態様では、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬はピロカルピンおよびカルバコールまたはその薬学的に許容される塩である。ある特定の態様では、1種類もしくは複数種類のαアゴニストはブリモニジンもしくはフェントラミンまたはその薬学的に許容される塩である。
前記眼科用調製物は、近視、遠視、乱視、老眼、または他の光学的誤差に悩んでいる対象に、これらの光学的誤差を一時的に処置、寛解、または軽減するのに、ならびに多焦点性を一時的に作り出すのに十分な縮瞳を引き起こすために必要に応じて頻繁に投与され得る。これらの屈折異常は全て、眼鏡を常時必要としていた患者が眼鏡なしで全てを行うのを可能にする臨床上および実用上で使用可能な程度で、これらの薬物から利益を得る。従って、本発明は、縮瞳を誘導することによって、ならびに多焦点性を一時的に作り出すことによって、これらの光学的誤差を一時的に処置、寛解、または軽減するための方法をさらに提供する。
本明細書において定義される「光学的誤差」または「屈折異常」は、屈折異常(視力異常)とも知られ、眼が光を正しく焦点に集めないようにし、それによって、かすみ目を引き起こす視力障害または光学的不具合である。主な屈折異常は、近視(myopia)(近視(nearsightedness))、遠視(hyperopia)(遠視(farsightedness)、かすみ目)、老眼(眼内の水晶体が柔軟性を失った時)、偽水晶体(人工眼内レンズの移植によって生じる近見視の欠陥)、ならびに乱視(正乱視、不正乱視、および高度の正乱視を含む)である。屈折異常の中には、白内障手術またはレーザー手術の後に発生するものもある。
本明細書で使用する「副交感神経刺激剤もしくは副交感神経刺激薬」または「ムスカリンアゴニスト」という用語は、中枢神経系、末梢神経系、またはその両方におけるアセチルコリンによって媒介される作用を強化する任意のコリン作用性薬物を含むことが意図される。本発明の調製物および方法に適した、これらの、いわゆるアセチルコリン受容体アゴニストの例には、アセチルコリン、ムスカリン、ピロカルピン、ニコチン、スキサメトニウム、ベタネコール、カルバコール、メタコリン、フェニルプロパノールアミン、アンフェタミン、エフェドリン、フェントラミン、およびフェンフルラミンが含まれる。
本明細書で使用する「αアゴニスト」または「α遮断薬」という用語は、α(α1およびα2の両方とも)アドレノセプターを優先的に刺激する化合物を指す。本発明の調製物および方法に適したαアンドロゲン(androgenic)アゴニストの例には、アミロライド、アプラクロニジン、ブリモニジン、クロニジン(およびその誘導体、例えば、p-クロロおよびアミノ誘導体)、デトミジン(detomidine)、デクスメデトミジン、ジピバリルエピネフリン(dipivalylepinephrine)、エピネフリン、グアナベンズ、グアンファシン、イソプロテレノール、メデトミジン、メタプロテレノール、メフェンテルミン、メトキサミン、メチルドパ、ナファゾリン、ノルエピネフリン、フェントラミン、フェニレフリン、リルメニジン、サルブタモール、テルブタリン、テトラヒドロゾリン、キシラジン、チモキサミン、ならびにその薬学的に許容される塩およびプロドラッグが含まれる。
本発明において「治療的有効量」とは、屈折異常に悩んでいる対象に投与された場合に、処置眼の視力が部分的または完全に一時的に回復するように、屈折異常を一時的に軽減、寛解、または処置するのに十分な縮瞳を引き起こすのに有効な、本発明の調製物中に存在する1種類または複数種類の活性成分の任意の量である。視力の完全回復は、処置されている屈折異常に応じて、近距離または遠距離で助けを全く借りずにサイズ12のタイムズ・ニュー・ローマンフォントを読むのに十分でなければならない。近見視力の部分回復は、処置眼が、ぼやけが少ない状態で見るのを可能にする。さらに、「治療的有効量」とは、屈折異常に悩んでいる対象に投与された場合に、処置眼の多焦点性が部分的または完全に一時的に回復するように、屈折異常を一時的に軽減、寛解、または処置するのに十分な縮瞳を引き起こすのに有効な、本発明の調製物中に存在する1種類または複数種類の活性成分の任意の量である。ある人によって焦点距離より長い距離が観察され、その人がイエーガー5または20/50近見視力より良ければ、多焦点性は回復している。
従って、治療的有効量は、屈折異常の程度を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも100%軽減する治療用調製物の量を指す。ある特定の態様について、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬と1種類もしくは複数種類のαアゴニストを含む眼科用調製物の量は、屈折異常を約12時間、11時間、10時間、9時間、8時間、7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、または1時間にわたって寛解または軽減するのに有効な量である。老眼の程度は、眼科検査のための当技術分野において公知の任意の方法によって決定することができる。
ある特定の態様について、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬を単独でまたは1種類もしくは複数種類のαアゴニストと組み合わせて含む眼科用調製物の量は、多焦点性を約8時間、7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、または1時間にわたって回復させるのに有効な量である。
これらの態様の一部では、副交感神経刺激薬はカルバコールであり、かつαアゴニストはブリモニジンである。一部の態様では、副交感神経刺激薬はカルバコールであり、かつαアンタゴニストはフェントラミンである。一部の態様では、副交感神経刺激薬はピロカルピンであり、かつαアンタゴニストはブリモニジンである。一部の態様では、副交感神経刺激薬はピロカルピンであり、かつαアンタゴニストはフェントラミンである。一部の態様では、カルバコール濃度は0.5%~50%である。他の態様では、カルバコール濃度は2%~3%である。一部の態様では、ピロカルピン濃度は0.1%未満である。一部の他の態様では、ピロカルピンは4%未満である。一部の態様では、ブリモニジン濃度は0.05%~0.2%である。一部の態様では、フェントラミン濃度は2%未満である。
近視者または遠視者を処置する一部の態様では、カルバコール濃度は好ましくは約0.5%~5.0%である。近視者または遠視者を処置する一部の態様では、カルバコール濃度は好ましくは約3.0%またはそれ未満である。近視者を処置する一部の態様では、カルバコール濃度は好ましくは約1.5%またはそれ未満である。
一部の態様では、ブリモニジンまたはその薬学的に許容される塩は約0.2%未満の量で存在する。他の例示的な態様では、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬はピロカルピンまたはその薬学的に許容される塩であり、約0.5%未満の量で調製物中に存在する。さらなる例示的な態様では、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬はピロカルピンまたはその薬学的に許容される塩であり、約0.1%未満の量で調製物中に存在する。
いくつかのさらなる態様では、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬はカルバコールまたはその薬学的に許容される塩であり、約5%の量で調製物中に存在する。ある特定の態様では、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬はカルバコールまたはその薬学的に許容される塩であり、0.001%以下の量で調製物中に存在する。
いくつかのさらなる態様では、1種類または複数種類のαアンタゴニストはフェントラミンまたはその薬学的に許容される塩であり、2%以下の量で調製物中に存在する。ある特定の態様では、1種類または複数種類のαアンタゴニストはフェントラミンまたはその薬学的に許容される塩であり、0.005%以下の量で調製物中に存在する。
一部の態様では、αアンタゴニストはチモキサミンまたはその薬学的に許容される塩であり、2%以下の量で調製物中に存在する。
本明細書で使用する「寛解する、寛解すること、および寛解」という用語は、屈折異常の重篤度の低下を指すことが意図される。寛解とは、1種類または複数種類の屈折異常が完全に無いこと、例えば、全く無いことでもよい。寛解とは、屈折異常の量が、処置無しで存在していたものよりも少なくなるような部分的なものでもよい。例えば、本発明の方法を用いた屈折異常の程度は、これらの方法を使用せずに存在していた屈折異常の量よりも少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも100%少なくてもよい。
本明細書に記載の方法は、患者の少なくとも1つの眼に、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬またはその薬学的に許容される塩と、1種類もしくは複数種類のαアゴニストもしくはアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩を含む、治療的有効量の眼科用調製物を投与することによって、近視、遠視、乱視、老眼、偽水晶体(例えば、白内障手術後に、天然水晶体を人工眼内レンズと交換する)、およびレーザー手術後の歪みを含むが、これに限定されない屈折異常を寛解する。一部の好ましい態様では、単一眼科用調製物は、副交感神経刺激薬とαアゴニストもしくはアンタゴニストを含む。これらの態様の一部では、副交感神経刺激薬はカルバコールであり、かつαアゴニストはブリモニジンである。近視者または遠視者を処置する一部の態様では、カルバコール濃度は好ましくは約0.5%~5.0%である。近視者または遠視者を処置する一部の態様では、カルバコール濃度は好ましくは約3.0%またはそれ未満である。近視者を処置する一部の態様では、カルバコール濃度は好ましくは約1.5%またはそれ未満である。
ピンホールカメラでは、中に入ってくる光の量が少なくなる。中に入ってくる光の量を多くするには焦点が必要なので、使用者は、ピンホールカメラを用いて焦点を合わせる必要はほとんどなかった。ピンホールを使用すると光学的周辺部(optical periphery)は取り除かれる。本明細書に記載の処置方法および組成物は、ピンホール効果を得て焦点深度を激増させるために薬物を使用する。眼には2つのタイプの筋肉:収縮筋と開大筋がある。これらのタイプの筋肉の両方に作用することで、本明細書に記載の薬物のユニークな組み合わせはピンホール効果を実現して屈折異常を矯正することができる。
薬理学的ピンホール効果は、少なくとも、屈折異常がある、あらゆる患者の非利き目において誘導される。一部の態様では、この処置は両眼に投与されることがある。一部の好ましい態様では、この処置は正視老眼者および近視老眼者の非利き目に、ならびに遠視老眼者および遠視者の両眼にしか投与されない。純粋近視者の場合、ピンホール効果は近視者の非利き目または両眼のいずれかにおいて誘導され得る。
さらに具体的には、副交感神経刺激性化合物を用いると瞳孔は小さくなり(収縮)、ブリモニジンは麻痺薬として働く(散大を阻止する)。ブリモニジンは、屈折矯正手術後の一部の患者においてハローとグレアを引き起こす光学収差を最小限にするために、ならびに緑内障を処置するために、夜間に発生する瞳孔散大を阻止する。
老眼を含むが、これに限定されない屈折異常の一部については、処置によるかすみの可能性を小さくするために、前記製剤は片眼にしか入れられない。片眼にしか点眼剤を入れないことで、脳は、もう片方の眼が光を受け取ると同時に、処置眼によって得る細部を埋める(fill in)。遠視を含むが、これに限定されない他の屈折異常については、点眼剤は好ましくは処置中に両眼に入れられるが、代わりに片眼にしか入れられない場合がある。近視視力、偽水晶体、または乱視の患者では、前記製剤は片眼に入れられてもよく、両眼に入れられてもよい。
一態様では、方法は、眼を有する患者の視力のかすみを軽減するか、または無くし、前記眼に、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬またはその薬学的に許容される塩と1種類もしくは複数種類のαアゴニストもしくはアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩を含む、治療的有効量の眼科用調製物を投与する工程を含む。
一部の態様では、本発明は、眼を有する患者の焦点を改善しかつ/または屈折異常を矯正する方法に関し、方法は、前記眼に治療的有効量の眼科用調製物を投与する工程であって、眼科用調製物が、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬またはその薬学的に許容される塩、および、1種類もしくは複数種類のαアゴニストもしくはアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩を含む、工程を含む。
一部の屈折異常については、本明細書に記載の薬学的調製物を患者の片眼にだけ投与することも有用な場合がある。場合によっては、前記組成物が患者の両眼に投与された場合に、遠見視力のぼやけ(遠近調節焦点(accommodative focus)の結果)や、かすみ目(瞳孔収縮の結果)が生じることがある。片眼にだけ適用されると、ぼやけや、かすみが減少するか、または完全に緩和して老眼改善の利益が得られる。当初、患者の脳は処置眼と未処置眼との間で補い合い、それによって望ましくない影響を小さくすると考えられた。従って、片眼しか処置されなかった場合には、処置眼における瞳孔収縮と焦点深度の増加と未処置眼における正常な遠見視力と輝度(brightness)の組み合わせによって、遠見視または近見視の場合に脳は、あらゆる単眼のぼやけを無視するようになる。しかしながら、前記薬学的調製物が両眼に適用された場合には、遠見視力は保たれるが、副交感神経刺激薬またはその薬学的に許容される塩、例えば、ピロカルピンおよびカルバコール単独が近視化(myopic shift)を引き起こし、焦点深度を増加させながら遠見視力を犠牲にして近視を誘導する。両眼に適用された場合に、ブリモニジンなどのα2アゴニストまたはその薬学的に許容される塩を添加すると、近視化が阻止され、かつ遠見視力が保たれる。
ブリモニジンは、瞳孔を収縮しそれに従って視力を高めるのに通常使用されないが、出願人らは、瞳孔に対するピロカルピンまたはカルバコールの効果を増強することを発見した。従って、本願の一態様は、患者の片眼または両眼に、治療的有効量のピロカルピンもしくはその薬学的に許容される塩と、有効量のブリモニジンもしくはその薬学的に許容される塩またはフェントラミンもしくはその薬学的に許容される塩とを適用することによって、患者の屈折異常を寛解または軽減するための方法である。
本願の別の態様は、患者の片眼または両眼に、治療的有効量のカルバコールもしくはピロカルピンまたはその薬学的に許容される塩と、有効量のブリモニジンまたはその薬学的に許容される塩とを適用することによって、患者の1種類または複数種類の屈折異常を寛解または軽減するための方法である。
ブリモニジンはまた、他の副交感神経刺激薬、例えば、アセチルコリン、ムスカリン、ニコチン、スキサメトニウム、ベタネコール、メタコリン、フェニルプロパノールアミン、アンフェタミン、エフェドリン、フェントラミン、およびフェンフルラミンの瞳孔に対する効果も増強するはずである。
一部の態様では、2種類の薬物は単一併用眼科用調製物として投与される。別の態様では、2種類の薬物は、2種類の個別の眼科用調製物として製剤化され、眼に連続して、または同時に適用される。
カルバコールとブリモニジンの単一併用調製物を用いる態様では、前記調製物中のカルバコール濃度は好ましくは約0.1%~5.0%であり、前記調製物中のブリモニジン濃度は好ましくは約0.20%またはそれ未満である。一部の好ましい態様では、ブリモニジン濃度は約0.15%またはそれ未満である。他の好ましい態様では、ブリモニジン濃度は約0.10%またはそれ未満である。一部の好ましい態様では、カルバコール濃度は約3.0%またはそれ未満である。一部の態様では、カルバコール濃度は5%またはそれ未満である。併用調製物は好ましくは透過促進剤も含む。一部の態様では、透過促進剤には、カルボキシメチルセルロース、BAK、ナノ粒子、ビクロベキストリアン、およびEDTAの1つまたは複数が含まれるが、これに限定されない。一部の態様では、併用調製物はトロピカミドも含む。併用調製物は、カルバコールおよびブリモニジン点眼剤が個別に与えられるよりも屈折異常を寛解するのに効果が高い。
一部の態様では、前記調製物はまた、効力を高め、眼表面毒性を軽減し、忍容性を高めるために透過促進剤および賦形剤も含む場合がある。一部の態様では、透過促進剤は、0.1%~0.3%の量のBACである。
ピロカルピンとブリモニジンの単一併用調製物を用いる態様では、ピロカルピン濃度は好ましくは0.1%未満であり、前記調製物中のブリモニジン濃度は好ましくは約0.20%またはそれ未満である。一部の好ましい態様では、ブリモニジン濃度は約0.15%またはそれ未満である。他の好ましい態様では、他の好ましい態様では、ブリモニジン濃度は約0.10%またはそれ未満である。さらに他の好ましい態様では、ブリモニジンは0.05%である。併用調製物は透過促進剤などの他の要素をさらに含んでもよい。
ピロカルピンとフェントラミンの単一併用調製物を用いる態様では、ピロカルピン濃度は好ましくは0.1%未満である。併用調製物は透過促進剤などの他の要素をさらに含んでもよい。
カルバコールとフェントラミンの単一併用調製物を用いる態様では、前記調製物中のカルバコール濃度は好ましくは約0.5%~5.0%であり、前記調製物中のフェントラミン濃度は好ましくは約2.0%またはそれ未満である。一部の好ましい態様では、カルバコール濃度は約3.0%またはそれ未満である。一部の態様では、カルバコール濃度は5%またはそれ未満である。併用調製物は透過促進剤などの他の要素をさらに含んでもよい。
一部の態様では、処置において使用される調製物は、前頭痛の症状を軽減するためにトロピカミドを含む。前頭痛は、一般的に、眼の小帯線維に影響を及ぼす毛様体筋痙攣によって引き起こされる。小帯線維は遠近調節の間に水晶体を正しい位置に取り付け、光の焦点が合うように水晶体の形の変化を可能にする。一部の態様では、トロピカミド濃度は約0.01%~約0.10%w/vである。一部の好ましい態様では、トロピカミド濃度は約0.25%~約0.080%w/vである。他の好ましい態様では、トロピカミド濃度は約0.04%~約0.06%w/vである。
本明細書に記載の薬学的調製物は、溶液、懸濁液、軟膏、またはクリームの形で眼への局部投与用に適合される。または、眼科用薬学的調製物は、洗眼剤、眼科用液剤(例えば、点眼剤)、または眼用軟膏の形で使用されてもよい。
眼科用薬学的調製物は、一般的に使用される薬学的に許容される担体を用いて、望ましい製剤に合うように、一般的に使用される薬学的に許容される担体を有効量の1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬と1種類もしくは複数種類のαアゴニストと混合するようなやり方で調製することができる。眼科用液剤および洗眼剤に用いられる担体には、一般的に使用される担体のいずれか1つ、通常、純水が含まれる。眼科用薬学的調製物は溶液の形に前もって調製するか、または凍結乾燥法などを用いて、望ましい調製物に用いられる、例えば、望ましい液体担体に固体調製物を溶解して望ましい調製物に用いられる固体調製物に処理することができる。このような固体調製物の例には、錠剤、顆粒、および散剤が含まれる。これらの眼科用薬学的調製物は従来の方法に従って調製することができ、好ましくは、膜フィルター、オートクレーブなどを用いた従来法によって使用前に滅菌しなければならない。眼科用調製物は、糖類、例えば、グルコースおよびマルトース;糖アルコール、例えば、マンニトールおよびソルビトール;電解質、例えば、塩化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、および塩化カルシウム;アミノ酸、例えば、グリシンおよびアラニン;ビタミンおよびその誘導体、例えば、チアミン塩酸塩、リン酸リボフラビンナトリウム、塩酸ピリドキシン、ニコチンアミド、葉酸、ビオチン、ビタミンA、L-アスコルビン酸、およびα-グリコシル-L-アスコルビン酸を含んでもよく、これらは全て、適切な組み合わせで使用することができる。特に、眼科用液剤の形をした本発明の眼科用薬学的調製物の場合、有効成分としての1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬と1種類もしくは複数種類のαアゴニストの併用と、単糖、例えば、グルコースおよびフルクトース、二糖、例えば、マルトース、およびマルトトリオースより大きなオリゴ糖より選択される1種類もしくは複数種類の他の糖類は、満足の行く治療効果を安定して発揮し得る。さらに、粘度を付与する作用物質、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コンドロイチン硫酸、ポリビニルアルコール、およびプルラン、ならびに可溶化剤、例えば、ポリソルベート80が前記調製物に使用され得る。
一部の好ましい態様では、カルボキシメチルセルロース、EDTA、ナノ粒子、ビクロベキストリアン、およびBAKを含むが、これに限定されない透過促進剤が眼科用薬学的調製物に含まれる。これらの態様の一部では、これらの促進剤のうち1つだけが用いられる。他の態様では、これらの促進剤のうち2つが用いられる。さらに他の態様では、これらの促進剤のうち3つ全てが用いられる。ナノ粒子を使用する態様では、透過を高めるために点眼剤がナノ粒子に組み込まれる。BACは、他の陽イオン界面活性剤と同様の用途で抗菌性防腐剤として薬学的製剤に用いられる四級アンモニウム化合物である。
一部の態様では、1%~3%のカルバコールまたはその薬学的に許容される塩と、0.5%~0.2%のブリモニジンまたはその薬学的に許容される塩の併用は、特に、0.01%~0.3%という高濃度の塩化ベンザルコニウムを含む透過促進剤と組み合わされる。
一部の態様では、カルバコールまたはその薬学的に許容される塩は、特に、0.01%~0.3%という高濃度の塩化ベンザルコニウムを含む透過促進剤と組み合わされる。
一部の態様では、組成物は、水を実質的に含まない散剤として製剤化されてもよく、患者または処置を行っている医師によって使用直前に溶液、懸濁液、軟膏、またはクリームに再構成される。一部の態様は活性成分および他の賦形剤を含有してもよいが、水を含まない。もちろん、活性成分および/または1種類もしくは複数種類の賦形剤は吸湿性でもよく、従って、少量の水を含有してもよい。一部の態様は、組成物中に、0.1重量%以下、0.5重量%以下、1重量%以下、2重量%以下、3重量%以下、4重量%以下、5重量%以下、6重量%以下、7重量%以下、8重量%以下、9重量%以下、または10重量%以下の水を含有する。
前記調製物は、1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬と1種類もしくは複数種類のαアゴニストのそれぞれについて約0.0001%~約5%を含有してもよい。
一態様では、前記調製物はブリモニジンと副交感神経刺激薬を含む。一態様では、副交感神経刺激薬はピロカルピンである。別の態様では、副交感神経刺激薬はカルバコールである。別の態様では、副交感神経刺激剤はフェンテルミンである。別の態様では、前記調製物はフェントラミンと副交感神経刺激薬を含む。
ブリモニジンを使用する一部の好ましい態様では、ブリモニジン濃度は約0.20%またはそれ未満である。ブリモニジンを使用する他の好ましい態様では、ブリモニジン濃度は約0.15%またはそれ未満である。他の好ましい態様では、ブリモニジン濃度は約0.10%またはそれ未満である。別の好ましい態様では、ブリモニジン濃度は約0.05%またはそれ未満である。
1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬と1種類もしくは複数種類のαアゴニストは、薬学的に許容される添加塩として薬学的調製物中に存在してもよい。薬学的に許容される塩は当技術分野において周知であり、本発明の化合物の比較的無毒の無機酸添加塩および有機酸添加塩を指す。塩は、本発明の化合物を最終的に単離および精製している間にインサイチューで調製されてもよく、遊離塩基官能基を適切な有機酸と反応させることによって別々に調製されてもよい。薬学的に許容される、無毒の酸添加塩の例は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸、または有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸と共に形成された、あるいはイオン交換などの当技術分野において用いられる他の方法を使用することによって形成されたアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩(camphorsulfonate)、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヒドロイオジド(hydroiodide)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パルモネート(palmoate)、ペクチネート(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが含まれる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれる。さらなる薬学的に許容される塩には、適宜、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成される無毒のアンモニウム、四級アンモニウム、およびアミンカチオンが含まれる。
ある特定の態様では、前記薬物の少なくとも1つは、単独で投与された場合に使用される目的で有効な用量の75%より少ない量で存在する。例えば、ピロカルピンは、単独で使用された時の投与量の75%より少ない量で存在し得る薬物であり、次いで、ピロカルピンは前記調製物中に約3%または4%より多く存在し得る。例えば、カルバコールは3%の正常有効用量に対して2.25%でもよく、ピロカルピンは2%の正常有効用量に対して0.5%~1.0%でもよい。
前記調製物中に存在するα2アゴニストがブリモニジンである場合に、一部の態様は、約0.3%もしくはそれ未満、0.25%以下、0.2%以下、0.19%以下、0.18%以下、0.17%以下、0.16%以下、0.15%以下、0.14%以下、0.13%以下、0.12%以下、0.11%以下、0.1%以下のブリモニジン、0.09%以下のブリモニジン、0.08%以下のブリモニジン、0.07%以下のブリモニジン、0.06以下のブリモニジン、0.05%以下のブリモニジン、またはその薬学的に許容される塩を含んでもよい。
前記調製物中に存在するα2アゴニストがチモキサミンである場合に、一部の態様は、約2%もしくはそれ未満またはその薬学的に許容される塩を含んでもよい。
前記調製物中に存在するα2アゴニストがナファゾリンである場合に、一部の態様は、約0.2%もしくはそれ未満、0.15%以下、0.125%以下、0.12%以下、0.11%以下、0.10%以下、0.09%以下、0.08%以下、0.07%以下、0.06%以下、0.05%以下のナファゾリンまたはその薬学的に許容される塩を含んでもよい。副交感神経刺激薬としてピロカルピンまたはその薬学的に許容される塩を含有する一部の態様では、前記製剤は、約4%もしくはそれ未満、3%もしくはそれ未満、2.8%以下、2.6%以下、2.5%以下、2.3%以下、2.0%以下、1.8%以下、1.6%以下、1.5%以下、1.2%以下、1%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.275%以下、0.25%以下、0.225%以下、0.2%以下、0.175%以下、0.15%以下、0.125%以下、0.1%以下、0.09%以下、0.08%以下、0.07%以下、0.06%以下、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、0.01%以下、0.005%以下、0.0025%以下、0.00125%以下、または0.001%以下のピロカルピンまたはその薬学的に許容される塩を含有してもよい。
前記製剤中に存在する副交感神経刺激薬がカルバコールまたはその薬学的に許容される塩である場合に、一部の態様は、約5%もしくはそれ未満、4.5%以下、4%以下、3.5%以下、3%以下、2.75%以下、2.5%以下、2.25%以下、2%以下、1.75%以下、1.5%以下、1.25%以下、1%以下、0.75%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、または0.1%以下のカルバコールまたはその薬学的に許容される塩を含有してもよい。
ある特定の態様は、αアンタゴニストとしてフェントラミンまたはその薬学的に許容される塩を含有してもよい。これらの態様では、前記調製物は、約5%もしくはそれ未満、4%以下、3.5%以下、3%以下、2.5%以下、2%以下、1.8%以下、1.6%以下、1.4%以下、1.2%以下、1%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.275%以下、0.25%以下、0.225%以下、0.2%以下、0.175%以下、0.15%以下、0.125%以下、0.1%以下、0.09%以下、0.08%以下、0.07%以下、0.06%以下、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、0.01%以下、0.005%以下、0.0025%以下、0.00125%以下、または0.001%以下のフェントラミンまたはその薬学的に許容される塩を含有してもよい。
他で特定しない限り、前記調製物における投与量中の「%」は重量パーセントを示すことが意図される。
コポリマー中の単量体の「%」が示されている場合、そのパーセントはモル(または反復単位)パーセントを意味することが意図される。従って、コポリマー中で、各単量体の反復単位は、コポリマーに存在する各単量体の単位の総数を計算したものだとみなされる。例えば、平均(数平均)して、7単位の別の単量体(例えば、単量体B)ごとに、3単位の、ある単量体(例えば、単量体A)を含有する2種類の単量体のコポリマーは30%の単量体Aと70%の単量体Bを含有すると言われる。
1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬と1種類もしくは複数種類のαアゴニストを含有する薬学的調製物は、都合よく、無毒の薬学的有機担体、または無毒の薬学的無機担体と混同される場合がある。代表的な薬学的に許容される担体は、例えば、水、水と水混和性溶媒、例えば、低級アルカノールまたはアリールアルカノール、植物油、ポリアルキレングリコール、石油ベースのゼリー(petroleum based jelly)、エチルセルロース、オレイン酸エチル、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、および従来使用されている他の許容可能な担体の混合物である。前記薬学的調製物はまた、無毒の補助物質、例えば、乳化剤、防腐剤、湿潤剤、粘着性を高める(bodying)作用物質など、例えば、ポリエチレングリコール200、300、400、および600、カーボワックス(carbowax)1,000、1,500、4,000、6,000、および10,000、抗菌成分、例えば、四級アンモニウム化合物、低温滅菌(cold sterilizing)特性を有することが知られており、使用中に害のないフェニル水銀塩、チメロサール、メチルパラベンおよびプロピルパラベン、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、緩衝成分、例えば、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、グルコン酸緩衝液、ならびに他の従来の成分、例えば、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン、オレイン酸塩、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチレート(polyoxyethylene sorbitan monopalmitylate)、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、モノチオグリセロール、チオソルビトール、エチレンジアミン四酢酸なども含有してもよい。さらに、本発明の目的のために、従来のリン酸緩衝液ビヒクル系、等張性ホウ酸ビヒクル、等張性塩化ナトリウムビヒクル、等張性ホウ酸ナトリウムビヒクルなどを含む適切な眼科用ビヒクルを担体培地として使用することができる。
前記薬学的調製物は、無毒の補助物質、例えば、使用中に害のない抗菌成分、例えば、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベンおよびプロピルパラベン、ベンジルドデシニウムブロミド(benzyldodecinium bromide)、ベンジルアルコール、またはフェニルエタノール;緩衝成分、例えば、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、またはグルコン酸緩衝液;および他の従来の成分、例えば、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチレート、エチレンジアミン四酢酸などを含有してもよい。
前記薬学的調製物は、pHを約4.5~8.5の治療上有用な範囲に維持するために緩衝剤を含有してもよい。ある特定の態様では、pHは約5~8に調節される。他の態様では、pHは約6~7.5に調節される。他の態様では、pHは約7.3に調節される。使用される緩衝剤は、当業者に公知の緩衝剤であり、限定することを意図していないが、一部の例は、酢酸、ホウ酸、炭酸、クエン酸、およびリン酸緩衝液である。本発明の一態様では、ホウ酸は緩衝剤である。
前記薬学的調製物は1種類または複数種類の乳化剤を含有してもよい。本明細書で使用する「乳化剤」はエマルジョンの形成および/または安定化を促進する。適切な乳化剤は、天然材料、超微粒子状固体、または合成材料でもよい。天然乳化剤は動物供給源に由来してもよく、野菜供給源に由来してもよい。動物供給源に由来する天然乳化剤には、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、またはコレステロールが含まれる。野菜供給源に由来する天然乳化剤には、アラビアゴム、トラガカントゴム、ツノマタ(chondrus)、またはペクチンが含まれる。特にセルロース誘導体に由来する野菜供給源には、粘度を高めるための、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースが含まれる。超微粒子状の乳化剤には、ベントナイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、または三ケイ酸マグネシウムが含まれる。合成作用物質には、アニオン性作用物質、カチオン性作用物質、または非イオン性作用物質が含まれる。特に有用な乳化剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウムもしくはポリエチレングリコール400モノステアレート、またはその任意の組み合わせである。
前記薬学的調製物は1種類または複数種類の増粘剤を含有してもよい。本明細書で使用する「増粘剤」は、本発明の調製物を高密度にするか、コンシステンシーの点で粘性にする作用物質を指す。本発明の文脈で使用することができる適切な増粘剤には、例えば、非イオン性水溶性ポリマー、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(商標Natroso(登録商標)250または350で市販されている)、カチオン性水溶性ポリマー、例えば、Polyquat37(登録商標Synthalen(登録商標)CNで市販されている)、脂肪アルコール、脂肪酸、アニオン性ポリマー、ならびにそのアルカリ塩およびその混合物が含まれる。
前記薬学的調製物は1種類もしくは複数種類の可溶化剤を含有してもよい。本明細書で使用する「可溶化剤」という用語は、溶質が溶解するのを可能にする物質を指す。本発明の文脈で使用可能な可溶化剤の代表例には、錯体形成可溶化剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン-四酢酸、メタリン酸ナトリウム、コハク酸、尿素、シクロデキストリン、ポリビニルピロリドン、ジエチルアンモニウム-オルト-安息香酸塩、およびミセル形成可溶化剤、例えば、TWEEN(登録商標)およびspan、例えば、TWEEN80(登録商標)が含まれるが、それに限定されるわけではない。本発明の調製物に有用な他の可溶化剤は、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンn-アルキルエーテル、n-アルキルアミンn-オキシド、ポロキサマー、有機溶媒、例えば、アセトン、リン脂質およびシクロデキストリンである。
前記薬学的調製物は粘膜付着剤(mucoadhesive)を含有してもよい。本明細書で使用する「粘膜付着剤」という用語は、対象の粘膜に付着することができる、高分子、ポリマー、およびオリゴマー、またはその混合物を含む天然成分または合成成分を意味する。粘膜への粘膜付着剤の付着は、主として、水素結合およびファンデルワールス力などの非共有結合性相互作用を介して生じる。本明細書において開示される態様において使用するための粘膜付着剤の例には、Carbopol(登録商標)、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩、キトサン、ヒアルロン酸、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート-20、-21、-40、-60、-61、-65、-80、-81、-85;ポリ(エチレングリコール)、例えば、PEG-7、-14、-16、-18、-55、-90、-100、-135、-180、-4、-240、-6、-8、-9、-10、-12、-20、または-32;オリゴ糖および多糖類、例えば、タマリンドの実の多糖、ゲラン(gellan)、カラゲナン、キサンタンガム、アラビアゴム、およびデキストラン;セルロースエステルおよびセルロースエーテル;修飾セルロースポリマー、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース;ポリエーテルポリマーおよびオリゴマー、例えば、ポリオキシエチレン;ポリ(エチレンオキシド)と、長い疎水鎖(例えば、約12~20個の炭素原子の脂肪族鎖)を有する様々な反応性水素含有化合物との縮合物、例えば、ポリ(エチレンオキシド)と、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸アミド、多価アルコールとの縮合物;ポリエーテル化合物、例えば、ポリ(メチルビニルエーテル)、10反復単位未満のポリオキシプロピレン;ポリエーテル化合物、例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体;エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体と、他の賦形剤、例えば、ポリ(ビニルアルコール)の混合物;ポリアクリルアミド;加水分解されたポリアクリルアミド;ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(メタクリル酸);ポリ(アクリル酸)または架橋ポリアクリル酸、例えば、Carbomer(登録商標)、すなわち、ペンタエリスリトールのアリルエーテル、スクロースのアリルエーテル、またはプロピレンのアリルエーテルのいずれかと架橋したアクリル酸のホモポリマーが含まれるが、これに限定されない。ある特定の態様では、粘膜付着剤は多糖である。本明細書において開示される態様において粘膜付着剤として特に有用な多糖の1つはタマリンドの実の多糖であり、これは、タマリンドノキ(Tamarindus Indica)の仁から抽出されたガラクトオキシログルカン(galactoxyloglucan)であり、オレゴン州ポートランドのTCI Americaから購入することができる。
前記薬学的調製物は、前記調製物を望ましい等浸透圧範囲まで調節する張性作用物質(tonicity agent)を含有してもよい。張性作用物質は眼科分野の当業者に公知であり、限定することを意図していないが、いくつかの例には、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、および他の電解質が含まれる。一態様では、張性作用物質はグリセリンである。別の態様では、張性作用物質は塩化物塩である。一部の態様では、イオン含有率は約0.5%~約1.8%に調節され、塩化ナトリウム相当量で表される。これらの態様では、前記調製物は、張性を調節する成分に加えて、分子量が300~250,000の範囲内にある眼科的に許容可能な水溶性非イオン性合成ポリマーと、非荷電の非イオン性張性調節作用物質を含有してもよい。
溶液中に用いられる非イオン合成ポリマーの正確なパーセントは、選択されたポリマーの分子量に左右される。しかしながら、さらなる粘度を増加させる作用物質(viscosity building agent)が存在しなければ、眼科用液剤の粘度は一般的に約1~約10cpsだと意図される。ある特定の態様では、眼科用液剤の粘度は23℃で約2cps~約8cpsである。例えば、本発明の調製物に組み込まれ得る非イオンポリマー物質の中にはポリビニルアルコールおよびポリエチレングリコールがある。ポリビニルアルコールが溶液に添加された場合には、約0.1%~約5%の濃度またはさらに約0.25%~約2%の濃度で存在するのに対して、ポリエチレングリコールが使用された場合には、溶液の約0.25%~約3%を構成する。このようなポリマーは市販されており、これらの組成は当業者に周知である。
前記薬学的調製物は防腐剤を含有してもよい。防腐剤は、多目的の眼科用調製物において細菌汚染を防ぐために用いられ、限定することを意図していないが、例には、塩化ベンザルコニウム、安定化オキシクロロ錯体(stabilized oxychloro complex)(他には、Purite(登録商標)とも知られる)、酢酸フェニル水銀、クロロブタノール、ベンジルアルコール、パラベン、およびチメロサールが含まれる。一部の態様では、防腐剤はPurite(登録商標)である。
前記薬学的調製物は、防腐有効性を高めるためにキレート剤を含有してもよい。適切なキレート剤は、当技術分野において公知のキレート剤であり、限定することを意図していないが、エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、およびエデト酸二カリウムのようなエデト酸塩が有用な防腐剤の例である。
前記薬学的調製物は、活性成分が数時間にわたって放出される持効性製剤として製剤化されることがある。例えば、活性成分がミセル液滴の中にカプセル化または分散されるように、持効性調製物用の安定した液体調製物は、親水性成分と疎水性成分の両方を含む合成ポリマーを含むことがある。
前記ポリマーは、ペンダント親水性基、例えば、酸性基を含有する単量体のホモポリマーでもよく、その一部または全てが酸性基などのペンダント親水性基を含有する異なる単量体のコポリマーでもよい。単量体はビニル単量体でもよい。コポリマーは、約10%またはそれ以上の、親水性ペンダント基を含有する単量体を含有してもよい。一態様では、単量体の25重量%超が親水性ペンダント基を含有する。別の態様では、単量体の40重量%超が親水性ペンダント基を含有する。ある特定の態様では、単量体の10重量%~100重量%が親水性ペンダント基を含有し、単量体の0%~90%が疎水性単量体である。他の態様では、単量体の25重量%~100重量%が親水性ペンダント基を含有し、単量体の0%~75%が疎水性単量体である。さらなる態様では、単量体の40重量%~100重量%が親水性ペンダント基を含有し、単量体の0%~60%が疎水性単量体である。
単量体の特定の選択は、ポリマーの望ましい溶解性または分散性(dispersability)、特定の製剤の望ましい放出パターンおよび必要とされる他の特性に関してなされる。本調製物において使用されるポリマーは一般的に架橋結合剤を含まず、親水性単量体と疎水性単量体を両方とも含むが、架橋結合は、前記ポリマーの特性のさらなる制御として使用される場合がある。例えば、ポリマーが作られる単量体混合物中に、少量の三官能性の架橋可能な単量体が含まれる場合がある。架橋可能な単量体の量は一般的に少なく、例えば、1重量%~15重量%、または1重量%~10重量%である。ある特定の態様では、前記ポリマーは10%~75%親水性単量体と20%~80%疎水性単量体を含んでもよい。他の態様では、前記ポリマーは10%~55%親水性単量体と30%~60%疎水性単量体を含んでもよい。
適切な親水性単量体には、単量体酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、ビニルスルホン酸、マレイン酸、アンゲリカ酸、オレイン酸、またはα-クロロ-アクリル酸またはスルホエチル-メタクリレート、およびビニルピロリドンが含まれる。マレイン酸などの天然ジカルボン酸が無水物の形で導入されてもよい。
適切な疎水性単量体には、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、ビニルエーテル、アクリロニトリル、ヒドロキシメタクリレート、スチレン、および酢酸ビニルが含まれる。アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートの中にあるアルキル基は、通常、1~4個の炭素原子、例えば、エチル、メチルまたはブチルを含有するが、例えば、18個までの炭素原子を含有する、もっと長い鎖の基、例えば、ラウリルを使用することができる。特に、疎水性単量体が存在する場合、その少なくとも一部は、5重量%~20重量%の比率の可塑化単量体でもよい。ある特定の態様では、可塑化単量体はポリマーの約10%を作る。適切な可塑化単量体は、アクリル酸またはメタクリル酸の長鎖エステル、例えば、エチルヘキシルアクリレートである。
ある特定の態様では、前記ポリマーは、アクリル酸、ビニルピロリドン、メタクリル酸、および無水マレイン酸より選択される親水性単量体と、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルアクリレート、2-エチル-ヘキシルアクリレート、およびスチレンより選択される疎水性単量体のコポリマーである。別の態様では、前記ポリマーは、ビニルピロリドンを含む、または含まないアクリル酸を含んでもよい。ある特定の態様では、前記ポリマーは20%~55%アクリル酸を含有してもよい。
実施例1
眼科用液剤 100ml中
本実施例の成分を、いつものやり方で眼科用液剤として滅菌済み調製物に調製し、必要に応じてpHを約7.3に調節した。本実施例は60の異なる眼科用調製物を提供する。
実施例2
眼科用液剤 100ml中
本実施例の成分を、いつものやり方で眼科用液剤として滅菌済み調製物に調製し、必要に応じて、緩衝溶液を用いてpHを7.3に調節した。本実施例は80の異なる眼科用調製物を提供する。
実施例3
眼科用液剤 100ml中
本実施例の成分を、いつものやり方で眼科用液剤として滅菌済み調製物に調製し、必要に応じて、緩衝溶液を用いてpHを7.3に調節した。本実施例は12の異なる眼科用調製物を提供する。
実施例4
老眼に悩んでいる患者の近見視力(VA)に対するピロカルピン単独またはピロカルピンとブリモニジンとの併用の効果を評価した。最初に、予備評価のために10人の患者を選択した。各患者に、0.25%、0.5%、もしくは1.0%ピロカルピンを含有する1滴の製剤と0.2%ブリモニジンを含有する1滴の製剤、または0.25%、0.5%、もしくは1.0%ピロカルピンを含有する1滴の製剤を投与した。最初に試験した6種類の投与量を表1に示した。
図1は、上述した6種類の投与量のうちの1つを投与して1時間後、2時間後、および4時間後の視力変化を示す。一部の患者は眼に灼熱感の症状を訴えたが、前記製剤は、患者が快適になるように最適化されていなかったことに注目しなければならない。6種類の全ての投与量が、いくらかの(様々な)初期の視力改善をもたらした。しかしながら、ピロカルピン単独を含有する製剤の効果はかなり急速に弱まるように見えるが、それに対して、両薬物を含有する製剤の効果が弱まるにはもっと時間がかかる。
0.5%ピロカルピンと0.2%ブリモニジンを含有する製剤の有効性をもっと理解するために、出願人は二重盲式無作為化臨床試験を行った。老眼に悩んでいる患者40人を採用した。患者を2つの群:活性薬物群およびプラセボ群に無作為に分けた。処置を与える前に各患者の視力を測定した。試験の1日目に、活性薬物群に登録した患者には、0.5%ピロカルピンを含有する点眼剤を1滴、0.2%ブリモニジンを含有する点眼剤を1滴与えた。当業者であれば、2種類の薬物は、両薬物を含有する組成物として製剤化することができ、両薬物が眼に同時に送達されるように前記組成物の望ましい回数の点眼剤を眼に適用できることを認めるだろう。プラセボ群に登録した患者にはプラセボ点眼剤を2滴与えた。処置して1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、および10時間後に各患者の視力を測定することによって、この処置に対する患者の応答を調べた。処置を7日間にわたって繰り返し、毎回、指定された量を投与し、処置して1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、および10時間後に視力を測定することによって患者の応答を調べた。表2、パート1~6は、1日目~7日目にわたって処置前ならびに処置して1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、および10時間後に測定した患者の視力を列挙している。一部の患者は眼に灼熱感の症状を訴えたが、前記製剤は、患者が快適になるように最適化されていなかったことに注目しなければならない。
(表2)
パート1
パート2
パート3
パート4
パート5
パート6
図2は、活性薬物群およびプラセボ群について、投与して1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、および10時間後の視力変化の平均を示す。黒四角は活性薬物群の視力変化の平均を表すのに対して、黒三角はプラセボ群の視力変化の平均を表す。データから分かるように、活性薬物群には、投与して8時間後に薬物の残存効果があり、患者は矯正レンズなしで数時間読書することができる。
実施例5
ある試験では、老眼の影響を軽減するためにカルバコールとαアゴニスト(ブリモニジン)の使用を調べた(参照により本明細書に組み入れられる、Improved Presbyopic Vision With Miotics, Abdelkader, Eye & Contact Lens2015;0:1-5)。
前向き二重マスク無作為化プラセボ対照臨床試験は、両眼で少なくとも20/20の裸眼遠見視力があり、その他の眼の病態がない、43歳~56歳の天然で正視かつ老眼の対象48人を組み入れた。裸眼エンドポイントプリントサイズ(print size)≧イエーガー(J)5がレンズ≧+1.00Dを用いることで≧1視力表(optotype)改善したら老眼は存在するとみなされた。対象を2つの群に分けた。処置群(n=30眼)には単一用量の2.25%カルバコール+0.2%ブリモニジン点眼剤を与えた。対照群(n=18眼)にはプラセボ点眼剤を与えた。対象全員の非利き目に点眼剤を盲検化して与えた。処置後の最小経過観察は3ヶ月であった。処置前と、処置して1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、および10時間後に対象の瞳孔径および近見視力と遠見視力の両方を、盲検化された試験者が同じ室内照明で評価した。
カルバコール+ブリモニジン点眼剤を与えた対象全員において近見視力の統計的に有意な改善が認められた(P<0.0001)。対象は、この処置を好み、もし利用できれば、この療法を使用すると考えられる。試験中に耐性の証拠もタキフィラキシーの証拠もなかった。
処置群には、2種類の薬物:2.25%カルバコールと0.2%ブリモニジンを含有する点眼剤(処置群)を与えた。対照としてプラセボ点眼剤を一部の対象に使用した。処置群の薬理学的処置には、複数の目的:副交感神経支配の刺激、焦点深度の増加および遠近調節、ならびにαアゴニストによるその増強および延長があった。本試験の目的は、視覚的に有益な縮瞳を作り出して焦点深度を改善することで老眼視力を一時的に改善するために、副交感神経刺激薬とαアゴニストを一緒に使用する効果を盲検化して評価することであった。
0.25ジオプトリーより大きな近視、遠視、および乱視がある患者、ならびに、角膜、水晶体、および硝子体の混濁、瞳孔不規則、瞳孔不同症、弱視、慢性の一般的な病態がある、ならびに都合悪くカルバコールおよびブリモニジンと相互作用する薬物療法を使用している患者を除外した。単一用量のカルバコール(2.25%イソプトカルバコール、Alcon Inc., Fort Worth, TX, USA)+0.2%ブリモニジンまたはプラセボを対象の非利き目に盲検化して投与した。次いで、対象に、3ヶ月間、毎日1回、点眼剤を自宅で使用するように指示した。
処置群の平均年齢は50.83±4.57歳(範囲、43~56歳);16人が男性および14人が女性であった。対照群の平均年齢は49.8±3.1歳(範囲、45~55歳);8人が男性および10人が女性であった。処置群では、≧50歳の対象の数は16人、<50歳の対象の数は14人であった。対照群では、≧50歳の対象の数は9人、<50歳の対象の数は9人であった。2つの群間で平均年齢または性別の統計的に有意な差は見出されなかった。表3は、両群の対象の個体群統計学的データをまとめたものである。
1日目に、≧50歳処置群(2.25%カルバコール+0.2%ブリモニジン)では、平均近見視力(NVA)は、処置前のJ- 7.68±1.62から、処置して1時間後のJ- 3±1.26(P<0.0001)、2時間後のJ- 3.4±1.4(P<0.0001)、4時間後のJ- 4±1.26(P<0.0001)、8時間後のJ- 4.75±1.09(P<0.0001)、10時間後のJ- 5.6±1.3(P<0.0001)へと有意に改善した。
<50歳処置群(2.25%カルバコール+0.2%ブリモニジン)では、平均近見視力(NVA)は、処置前のJ- 6.29±0.91から、処置して1時間後のJ- 2.5±0.94(P<0.0001)、2時間後のJ- 3.14±0.86(P=0.0001)、4時間後のJ- 3.71±0.91(P<0.0001)、8時間後のJ- 4.64±0.74(P<0.0001)、10時間後のJ- 5.29±0.73(P=0.0036)へと有意に改善した。
両年齢群間で、処置前および処置後の任意の時点で平均NVAおよび瞳孔径の統計的に有意な差は見出されなかった(P>0.05)。
プラセボ(対照)群では、処置前および処置後の任意の時点で平均NVAの統計的に有意な差は見出されなかった。データを表4にまとめた。表4は、処置(カルバコール+ブリモニジン)群および対照(プラセボ)群の近見視力(NVA)(イエーガー)変化の平均を経時的に示す。図3および4は、処置群および対照群の近見視力(イエーガー)変化の平均を経時的に示す。
1週間後の≧50歳処置群について、1日目(J- 3.4±1.4)と7日目(J- 3±0.73)(P=0.29)の間で、点眼剤を投与して2時間後に平均NVAの統計的に有意な差は見出されなかった。
1週間後の<50歳処置群について、1日目(J- 3.14±0.86)と1週間(J- 2.64±0.74)(P=0.11)との間で、点眼剤を投与して2時間後に平均NVAの統計的に有意な差は見出されなかった。
≧50歳処置群について、1日目(J- 4±1.26)と1ヶ月(J- 3.56±0.73)(P=0.23)との間で、点眼剤を投与して4時間後に平均NVAの統計的に有意な差は見出されなかった。
<50歳群ついて、1日目(J- 3.71±0.91)と1ヶ月(J- 3.29±0.61)(P=0.15)との間で、点眼剤を投与して4時間後に平均NVAの統計的に有意な差は見出されなかった。
≧50歳処置群について、1日目(J- 4.75±1.09)と2ヶ月(J- 4.13±0.81)(P=0.07)との間で、点眼剤を投与して8時間で平均NVAの統計的に有意な差は見出されなかった。
<50歳群ついて、1日目(J- 4.64±0.74)と2ヶ月(J- 4.21±0.43)(P=0.07)との間で、点眼剤を投与して8時間後に平均NVAの統計的に有意な差は見出されなかった。
≧50歳処置群について、1日目(J- 5.6±1.3)と3ヶ月(J- 5.13±0.81)(P=0.2)との間で、点眼剤を投与して10時間後に平均NVAの統計的に有意な差は見出されなかった。
<50歳処置群ついて、1日目(J- 5.29±0.73)と3ヶ月(J- 4.93±0.62)(P=0.17)との間で、点眼剤を投与して10時間後に平均(NVA)の統計的に有意な差は見出されなかった。
裸眼遠見視力は、処置前の対象全員において両眼で20/20であり、処置後の全期間において20/20のままであった。
カルバコール+ブリモニジンが与えられた本試験の老眼者が全員、この療法を好み、もし利用できれば使用すると考えられる。全員が、近見視用眼鏡を使用するのを止め、近見視力と遠見視力の両方で満足した。30人のうち12人の対象(40%)が、効果が最初の8時間で優れており、次いで、段々と消えていったと報告した。近見視力の改善は、出勤日の間、対象にとって満足の行くものであった。
プラセボ群の参加者は誰もプラセボを使用しないと考えられる。プラセボを与えた対象全員が、点眼剤が近見視力を改善せず、点眼剤の使用を中断したと報告した。
カルバコール+ブリモニジン処置群に対する試験期間中に眼の重篤有害事象は観察されなかった。結膜充血または眼の充血は観察されなかった。軽度の灼熱感が1人の対象(3.3%)で認められた。鈍い頭痛が全対象の10%で報告された。点眼剤は優れた安全性と安定性を示した。最初の数週間に一時的なかすみを1人の対象(3.3%)が報告した。しかしながら、この対象は、この症状が軽度かつ一時的であり、点眼剤を中断する気にはならなかったと報告した。徐脈(bradychardia)、気管支痙攣、および消化問題などの全身副作用は見出されなかった。耐性の証拠もタキフィラキシーの証拠もなく、点眼剤の効果は経過観察の全期間で持続した。
プラセボ群について軽度の灼熱感が2人の対象(11.1%)で報告された。
本実施例では、40歳代と50歳代の参加者において焦点深度を増加させることによって老眼視力を改善するために2.25%カルバコールとαアゴニスト(0.2%ブリモニジン)を使用した。焦点深度の増加によって多くの老眼者が点眼剤の使用から利益を得ることができた。両薬物ともFDAによって認可されており、緑内障に対して安全かつ有効であると何年も使用されてきた。プラセボ点眼剤を対照として使用した。この技法はピンホール効果を薬理学的に作り出して、小さくなった瞳孔からの焦点深度を増加させると考えられている。単眼処置では、瞳孔が正常な他眼の視力が、いくらかぼやけた近見視力を有するが、遠くの物体は明瞭であり、光覚(light perception)の減少はない。像が合わさると、1人の対象(3.3%)を除いて、処置群の(1人を除く)対象全員が、かすみを認識することなく近距離および遠距離で明瞭な焦点を結んだ。片眼だけを処置しても、脳が、もう片方の眼から輝度を埋めるので、かすみの症状は生じなかった。カルバコールとブリモニジンを1日1回使用して10時間の効果を生むことができる。ブリモニジンは明所視瞳孔にほとんど影響を及ぼさないが、暗所での過度の瞳孔散大を阻止し、それによって、暗所視症状、通常、屈折矯正手術後の周辺角膜(peripheral cornea)からの暗所視症状を軽減するために何年もわたって効果的に用いられてきた。ブリモニジンは老眼を寛解するのに使用されたことがない。
カルバコールとブリモニジンの間には相乗効果があるので、点眼剤を1回適用すると、ほとんどの人にとって十分な近見視力を改善するのに足る縮瞳を一日中、生じることが可能になる。カルバコールとブリモニジンの組み合わせは活性があり、これらの効果はより長く続いた。遠見視力は対象全員において保たれ、その結果、モノビジョン症状は報告されなかった。片眼だけの処置によって、かすみの症状が最小化した。相乗作用によって低用量の縮瞳薬を使用することが可能になり、頭痛の症状が軽減した。ブリモニジンは、副交感神経刺激薬が充血を引き起こす傾向を無くした。本試験では、耐性の証拠もタキフィラキシーの証拠もなく、点眼剤(カルバコール+ブリモニジン)の効果は試験期間中にわたって持続した。経過観察期間全体にわたって、処置されたどの眼にも眼合併症は検出されなかった。近見視力は有意に改善したが、対象の大多数ではJ 1に戻らなかった。試験群の4人の対象(13.3%)、各年齢群で2人の対象においてNVAはJ 1に戻った。
非利き目に1日1滴のカルバコールとブリモニジンの点眼剤を用いて老眼を処置することで、高齢の対象でも、多くの老眼者に許容可能な読書時視力が可能になった。小さくなった瞳孔からの焦点深度が増加したために、典型的なモノビジョン療法のように、遠見視力のぼやけも中間視力のぼやけも生じなかった。未処置眼で正常な輝度を知覚することで、処置眼の小さくなった瞳孔からのかすみの症状が無くなった。この活性のある組み合わせは弱い非老眼遠視者も改善し、必要に応じて眼鏡と一緒に使用することができる。
実施例6
別の試験では、カルバコールとブリモニジンを使用して老眼、近視、および遠視における視力を改善する効力を評価した。
本試験における医学的処置は、2種類の薬物:様々な濃度の副交感神経刺激薬(カルバコール)とαアゴニスト作用物質(0.2%ブリモニジン)を含有する眼科用点眼剤を用いて、屈折異常がある患者の視力を改善するように設計された。対照として0.2%ブリモニジン単独とプラセボ点眼剤を一部の対象において使用した。処置群の薬理学的処置は、主として焦点深度、おそらく、遠近調節の改善とαアゴニストによるその増強と延長によって副交感神経支配を刺激した。この試験では、盲検法で、様々な濃度の副交感神経刺激薬とαアゴニストを使用して、視覚的に有益な縮瞳を作り出して異なるタイプの老眼(正視、近視、および遠視)を一時的に処置する効力を評価した。
平均年齢が49.8±3.9歳(範囲41~57歳)の老眼対象177人;96人が男性および81人が女性を本試験に採用した。本試験の参加者は全員、書面によるインフォームドコンセントに同意した。薬理学的刺激プロトコールは、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,299,079号に開示される方法に従って開発された。対象は全員、身体と眼が健康であり、参加のための禁忌、あるいは合併症(例えば、心臓または呼吸の状態、片頭痛、強度近視、眼薬物療法もしくは全身薬物療法、または眼手術)の素因を確認するために質問表を記入した。対象全員が、本試験の資格があるとみなされる前に完全散大眼検査を受けた。この検査では、薬物に対する禁忌、網膜剥離に対する感受性、眼の病態、または周辺網膜変性をスクリーニングした。除外基準は、0.75ジオプトリーより大きな近視または乱視、およびどちらかの眼に2ジオプトリーより大きな遠視がある患者、ならびに、角膜、水晶体、および硝子体の混濁、瞳孔不規則、瞳孔不同症、弱視、慢性の一般的な病態がある、ならびに都合悪くカルバコールとブリモニジンと相互作用する薬物療法を使用している患者に関係した。薬物に対する既知の感受性、またはこれらの点眼剤の使用を妨げる状態があるかどうか対象をスクリーニングした。試験中に対象を綿密にモニタリングし、対象が経験した、あらゆる眼反応、全身反応、または生理学的反応を報告するように定期的に頼んだ。万一、副作用が起きたらアトロピンを使用することができたが、何も報告されなかった。異なる老眼対象群を差別化した。群1は66人の正視老眼者(n=66眼)を組み入れ、群2は55人の近視老眼者(≦-0.75D球面、n=55眼)を組み入れ、群3は56人の遠視老眼者(≦+2D球面、n=112眼)を組み入れた。次いで、各群を年齢に従って50歳またはそれ以上と50歳未満にさらに分けた。
単一用量の異なる濃度のカルバコール(イソプトカルバコール2.25%、1.5%、3%、Alcon Inc., Fort Worth, TX, USA)+0.2%ブリモニジンまたは0.2%ブリモニジン単独またはプラセボを、それぞれ、群1および群2の非利き目と群3の両眼に盲検化して点眼した。処置前と、処置して1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、および10時間後に初期瞳孔径および近見視力と遠見視力の両方を同じ室内照明で記録した。処置して1週間後に、および最初の3ヶ月の間は毎月、投与量、満足度、副作用、および合併症(例えば、網膜剥離、色素散乱、虹彩後癒着、および眼内炎症)を評価するために、対象をモニタリングし、視力の評価および細隙灯生体顕微鏡検査を含む徹底的な眼科検査に供した。対象に、経過観察期間中には毎日1回、点眼剤を使用するように指示した。標準的なスネレンプロジェクター(Snellen projector)視力表を用いて遠見視力を測定した。イエーガー眼視力表を用いて近見視力を即指定した。あらゆる有害な症状と、近見視力および遠見視力に対する対象の満足度もモニタリングした。
統計解析はスチューデントt検定を用いて行い、0.05未満のp値が統計的に有意だとみなした。データは平均、範囲、および標準偏差(SD)で表した。
対象の平均年齢(歳)は、正視老眼者(群1)では50.3±4(範囲43~57)歳、近視老眼者(群2)では50.8±3.7(範囲45~57)歳、遠視老眼者(群3)では48.3±3.8(範囲41~56)歳であった。群1では、≧50歳の対象の数は34人、<50歳の対象の数は32人であった。群2では、≧50歳の対象の数は28人、<50歳の対象の数は27人であった。群3では、≧50歳の対象の数は29人、<50歳の対象の数は27人であった。3つの群間で平均年齢または性別の統計的に有意な差は見出されなかった。
図5、図6、および図7は、正視、近視、および遠視の老眼群について近見視力(J)変化の平均を経時的に示す。
群1(正視老眼者):
この群で使用したカルバコール濃度は2.25%であった。処置前の自覚的屈折度(manifest refraction)の平均は-0.1±0.12Dであった。1時間、2時間、4時間、8時間、10時間での処置後の屈折度の平均は、それぞれ、-0.6±0.14D、-0.5±0.12D、-0.48±0.09D、-0.4±0.1D、および-0.38±0.12Dであった。
表5に示したように、≧50歳処置群(カルバコール2.25%+ブリモニジン0.2%)では、平均近見視力(NVA)は、処置前のJ- 7.6±1.62から、処置して1時間後のJ- 3±1.26(P<0.0001)、2時間後のJ- 3.4±1.4(P<0.0001)、4時間後のJ- 4±1.26(P<0.0001)、8時間後のJ- 4.75±1.09(P<0.0001)、および10時間後のJ- 5.6±1.3(P=0.00004)へと有意に改善した。
(表5)群1(純粋老眼者)≧50歳。2.25%カルバコール+ブリモニジン対プラセボ対ブリモニジン。
表6に示したように、<50歳処置群(カルバコール2.25%+ブリモニジン0.2%)では、平均近見視力(NVA)は、処置前のJ- 6.29±0.91から、処置して1時間後のJ- 2.5±0.94(P<0.0001)、2時間後のJ- 3.14±0.86(P=0.0001)、4時間後のJ- 3.71±0.91(P<0.0001)、8時間後のJ- 4.64±0.74(P<0.0001)、および10時間後のJ- 5.29±0.73(P=0.0036)へと有意に改善した。
(表6)群1(純粋老眼者)<50歳。2.25%カルバコール+ブリモニジン0.2%点眼剤対プラセボ対ブリモニジン。
≧50群と<50群との間で、処置前(P=0.5)ならびに処置して1時間後(P=0.49)、2時間後(P=0.7)、4時間後(P=0.64)、8時間後(P=0.94)、および10時間後(P=0.57)に平均NVAの統計的に有意な差は見出されなかった。
プラセボまたは0.2%ブリモニジン単独群において、処置前および処置後の任意の時点で平均NVAの統計的に有意な差は見出されなかった。
群2(近視老眼者):
この群で使用したカルバコール濃度は1.5%であった。処置前球面屈折異常の平均は-0.63±0.13ジオプトリーであり、屈折乱視(refractive astigmatism)の平均は0.17±0.24ジオプトリーに達した。1時間、2時間、4時間、8時間、10時間での処置後の球面屈折度の平均は、それぞれ、-0.8±0.18D、-0.71±0.22D、-0.69±0.21D、-0.67±0.23D、-0.65±0.18Dであった。
表7に示したように、≧50歳処置群(カルバコール1.5%+ブリモニジン0.2%)では、平均近見視力NVAは、処置前のJ- 5.5±1.37から、処置して1時間後のJ- 2.25±0.58(P<0.0001)、2時間後のJ- 2.75±0.58(P<0.0001)、4時間後のJ- 3.13±0.72(P<0.0001)、8時間後のJ- 3.25±0.68(P<0.0001)、および10時間後のJ- 3.63±0.89(P<0.0001)へと有意に改善した。
(表7)群2(近視老眼者)≧50歳。1.5%カルバコール+ブリモニジン対プラセボ対ブリモニジン。
表8に示したように、<50歳処置群(カルバコール1.5%+ブリモニジン0.2%)では、平均近見視力(NVA)は、処置前のJ- 5.86±0.7から、処置して1時間後のJ- 2±0.55(P<0.0001)、2時間後のJ- 2.57±1.1(P=0.0001)、4時間後のJ- 2.86±0.86(P<0.0001)、8時間後のJ- 3.29±0.9(P<0.0001)、および10時間後のJ- 3.86±0.86(P=0.0002)へと有意に改善した。
(表8)群2(近視老眼者)<50歳。1.5%カルバコール+ブリモニジン対プラセボ対ブリモニジン。
≧50群と<50群との間で、処置前(P=0.6)ならびに処置して1時間後(P=0.6)、2時間後(P=0.7)、4時間後(P=0.59)、8時間後(P=0.9)、および10時間後(P=0.54)に平均NVAの統計的に有意な差は見出されなかった。
プラセボまたは0.2%ブリモニジン単独群において、処置前および処置後の任意の時点で平均NVAの統計的に有意な差は見出されなかった。
群3(遠視老眼者):
この群に使用したカルバコール濃度は3%であった。両眼における処置前の球面屈折異常の平均は+1.16±0.43ジオプトリーであり、屈折乱視の平均は0.2±0.25ジオプトリーであった。1時間、2時間、4時間、8時間、10時間での処置後の球面屈折度の平均は、それぞれ、+0.21±0.16D、+0.24±0.17D、+0.33±0.14D、+0.41±0.15D、+0.43±0.16Dであった。
表9に示したように、≧50歳処置群(カルバコール3%+ブリモニジン0.2%)では、両眼の平均近見視力(NVA)は、処置前のJ- 7.5±1.86から、処置して1時間後のJ- 4±1.26(P<0.0001)、2時間後のJ- 4.75±1.18(P<0.0001)、4時間後のJ- 5.38±1.09(P=0.0004)、8時間後のJ- 5.5±0.89(P=0.0005)、10時間後のJ- 5.69±0.79(P=0.0012)へと有意に改善した。
(表9)群3(遠視老眼者)≧50歳。3%カルバコール+ブリモニジン対プラセボ対ブリモニジン。
表10に示したように、<50歳処置群(カルバコール3%+ブリモニジン0.2%)では、両眼の平均近見視力(NVA)は、処置前のJ- 7.29±1.2から、処置して1時間後のJ- 3±1.36(P<0.0001)、2時間後のJ- 4.29±1(P<0.0001)、4時間後のJ- 4.57±1.2(P<0.0001)、8時間後のJ- 4.86±1.17(P<0.0001)、10時間後のJ- 5±1.36(P<0.0001)へと有意に改善した。
(表10)群3(遠視老眼者)<50歳。3%カルバコール+ブリモニジン点眼剤対プラセボ対ブリモニジン。
≧50群と<50群との間で、処置前(P=0.8)ならびに処置して1時間後(P=0.2)、2時間後(P=0.4)、4時間後(P=0.2)、8時間後(P=0.3)、および10時間後(P=0.27)に平均NVAの統計的に有意な差は見出されなかった。
最良の矯正遠見視力は、処置前の対象全員において両眼で20/20であり、処置後の全期間において20/20のままであった。
プラセボまたは0.2%ブリモニジン単独群では、処置前および処置後の任意の時点で平均NVAの統計的に有意な差は見出されなかった。
カルバコール+ブリモニジンを与えた正視老眼対象および近視老眼対象は全員、眼鏡の使用を止めた。誰もプラセボもブリモニジン点眼剤単独も使用しないと考えられる。対象は全員、点眼剤が近見視力を改善せず、そのため点眼剤の使用を中断したと報告した。
カルバコール+ブリモニジン点眼剤を与えた30人の遠視老眼者対象のうち24人(80%)が遠見視用と近見視用両方の眼鏡の使用を止めた。4人の対象(13.4%)だけが、本来の遠視に応じて処置前に必要とされた値より2~3ジオプトリー小さい近見視用眼鏡を使用した。2人の対象(6.6%)しか処置を止めなかった。このことから、眼鏡は対象に、より良い近見視を与えてくれると分かった。対象全員が差を感じ取らず、点眼剤の使用を中断したので、誰もプラセボもブリモニジン点眼剤単独も使用しないと考えられる。
カルバコール+ブリモニジン点眼剤で処置した参加者には試験期間中に眼の重篤有害事象は観察されなかった。全群の5.5%において軽度の灼熱感が認められた。最初の数日間に鈍い頭痛と前頭痛が全対象の10%で報告された。最初の数週間、低光度での一時的な困難が全群で報告されたが、遠視対象の方が多く報告された(40%)。しかしながら、遠視対象は、これらの症状が軽度かつ一時的であり、点眼剤を中断する気にはならなかったと報告した。全群の処置された対象の97.8%が、この点眼剤を使用して老眼を処置することになると言った。彼らは近見視力および遠見視力に対して満足感を示した。この点眼剤は優れた安全性と安定性を示した。耐性の証拠もタキフィラキシーの証拠もなく、点眼剤の効果は経過観察の全期間で持続した。
ブリモニジン点眼剤を与えた10人の対象で軽度の灼熱感が報告された。プラセボ群では有害な症状は報告されなかった。
この盲検試験では、群1および群2の対象の100%がカルバコール+ブリモニジン点眼剤を好み、もし利用できれば使用すると考えられる。群3では、対象の80%が眼鏡の使用を止め、13.4%だけが、本来の遠視に応じて処置前に必要とされた値より2~3ジオプトリー小さい近見視用眼鏡を使用し、6.6%が処置を止めた。誰もプラセボもブリモニジン単独も使用しないと考えられる。経過観察期間中に耐性の証拠もタキフィラキシーの証拠もなかった。
カルバコール+ブリモニジンは、矯正レンズおよび外科的処置の許容可能かつ安全な代案であるように思われる。
前記で議論したように、本試験では、屈折異常がある参加者の視力を改善するために様々な濃度のカルバコールとαアゴニスト(0.2%ブリモニジン)を使用した。プラセボまたはブリモニジン点眼剤単独を対照として使用した。この技法は、ピンホール効果を薬理学的に作り出して、小さくなった瞳孔からの焦点深度を増加させ、結果として生じる眼の視力が明瞭になることに基づいている。単眼処置では、瞳孔が正常な他眼の視力が、いくらかぼやけた近見視力を有するかもしれないが、遠くの物体は明瞭であり、光覚の減少はない。像が合わさると、群1および群2のほとんどの対象が、かすみを認識することなく近距離および遠距離で明瞭な焦点を結んだ。群3では、最初の数週間、一時的なかすみが対象の40%で報告された。これは両側処置と、これらの眼に使用した高濃度のカルバコール(3%)に起因した。しかしながら、これらの対象は、これらの症状が軽度かつ一時的であり、点眼剤を中断する気にはならなかったと報告した。
カルバコールとブリモニジンを1日1回使用して10時間の効果を生むことができる。ブリモニジンは明所視瞳孔にほとんど影響を及ぼさないが、暗所での過度の瞳孔散大を阻止し、それによって、暗所視症状、通常、屈折矯正手術後の周辺角膜(peripheral cornea)からの暗所視症状を軽減するために何年もわたって効果的に用いられてきた。本試験によって、老眼ならびに近視および遠視の処置においてカルバコールとブリモニジンの間には相乗効果があることが見出された。遠見視力は保たれ、その結果、モノビジョン症状はない。一部の参加者には片眼だけ処置することで、かすみの症状が最小化する。相乗作用によって低用量の縮瞳薬を使用することが可能になり、頭痛の症状が軽減する。ブリモニジンは、副交感神経刺激薬が充血を引き起こす傾向を無くす。
本試験では、耐性の証拠もタキフィラキシーの証拠もなく、点眼剤(カルバコール+ブリモニジン)の効果は3ヶ月の処置の間ずっと持続した。経過観察期間全体にわたって、処置されたどの眼にも眼合併症は検出されなかった。
カルバコールとブリモニジンを用いた老眼、近視、および遠視を含む屈折異常の薬理学的処置は、眼鏡およびコンタクトレンズ-単焦点もしくは多焦点または他の任意の外科的選択肢の許容可能かつ安全な代案である。カルバコールとブリモニジンを併用すると多くの老眼対象の読書時視力を改善することができる。本試験から、カルバコールとブリモニジンは通常の遠見視力と読書を改善し、患者は、以前は一日中必要であった眼鏡をもはや必要としないことが分かった。従って、この併用処置は弱い非老眼遠視者と近視者も改善する。この処置はまた、他の屈折問題を処置するのに使用することもできる。この薬理学的処置の可能性は、屈折異常がある対象に新たな治療アプローチを開き、そのため、時間とともに良好な遠近調節を行うことが可能になる。
ピロカルピンおよびブリモニジンは同じように、老眼、近視、および遠視を含む屈折異常を処置することができる。
実施例7
本試験は、カルバコールとブリモニジンを両方とも含有する製剤の効力を、同時に投与されるカルバコールおよびブリモニジンの個別製剤と比較した。同じ参加者に併用製剤と個別製剤を投与間に1週間の休薬期間を設けて与えた。
本試験は、視覚的に有益な縮瞳を作り出して老眼視力を薬理学的に改善するために、副交感神経刺激薬(3%カルバコール)とαアゴニスト(0.2%ブリモニジン)を併用および個別の形で使用する有効性を盲検法で試験および比較した。
前向き盲検無作為化臨床試験では、両眼で少なくとも20/20の裸眼遠見視力があり、その他の眼の病態がない、42歳~58歳の天然で正視かつ老眼の対象10人を利用した。参加者は、無作為に選択された志願者であった。裸眼エンドポイントプリントサイズ≧イエーガー(J)5がレンズ≧+1.00Dを用いることで≧1視力表改善したら、老眼は存在するとみなされた。対象は全員、身体と眼が健康であり、参加のための禁忌、あるいは合併症(例えば、心臓または呼吸の状態、片頭痛、強度近視、眼薬物療法もしくは全身薬物療法、または眼手術)の素因を確認するために質問表を記入した。対象全員が、本試験の資格があるとみなされる前に完全散大眼検査を受けた。この検査では、薬物に対する禁忌、網膜剥離に対する感受性、眼の病態、または周辺網膜変性をスクリーニングした。
組み入れ規準は、41~60歳、老眼(裸眼エンドポイントプリントサイズ≧イエーガー(J)5がレンズ≧+1.00Dを用いることで≧1視力表改善した)、正視眼(調節麻痺下等価球面度数(cycloplegic spherical equivalent)(SE)、±0.25D;乱視、≦0.25D)、および両眼裸眼遠見視力≧20/20を含んだ。除外基準は、0.25ジオプトリーより大きな近視、遠視、および乱視がある患者、ならびに、角膜、水晶体、硝子体の混濁、瞳孔不規則、瞳孔不同症、弱視、慢性の一般的な病態がある、ならびに都合悪くカルバコールとブリモニジンと相互作用する薬物療法を使用している患者を含んだ。
対象全員の非利き目に、単一用量の3%カルバコールと0.2%ブリモニジンを併用および個別でクロスオーバーの形で試験間に1週間の休薬期間を設けて与えた。個別の形では、最初にカルバコールを投与し、その5分後にブリモニジンを投与した。処置前と、処置して1時間後、2時間後、4時間後、および8時間後に対象の瞳孔径および近見視力と遠見視力の両方を、盲検化された試験者が同じ室内照明で評価した。さらに、対象全員に、単一用量の3%カルバコールだけ、または一用量の0.2%ブリモニジンだけを与えた。図8a~8bは、この試験からのデータを示す。投与量、満足度、副作用、および合併症を評価するために対象全員をモニタリングした。
この試験では、遠見視力を測定するために標準的なスネレンプロジェクター視力表を使用した。近見視力はイエーガー(J)眼視力表を用いて40cmで評価した。統計解析はスチューデントt検定を用いて行い、0.05未満のp値は統計的に有意だとみなした。データを平均、範囲、および標準偏差(SD)で表した。
図9は、3%カルバコール+2%ブリモニジンを併用および個別の形で与えた同じ老眼対象について近見視力(J)変化の平均の分布を経時的に示す。処置前と処置直後との間のNVA変化の平均は、参加者に併用点眼剤を与えた場合にかなり大きかった。併用点眼剤投与では、この変化は8時間のデータ収集期間全体にわたって大きく続いた。
図10は、3%カルバコール+2%ブリモニジンを併用および個別の形で与えた同じ老眼対象について瞳孔径(mm)変化の平均の分布を経時的に示す。処置前と処置直後との間の瞳孔径の変化の平均は、参加者に併用点眼剤を投与した場合に大きかった。併用点眼剤投与では、この変化の平均は8時間のデータ収集期間全体にわたって大きく続いた。
図11は、併用点眼剤、個別投与された点眼剤、ブリモニジン単独、およびカルバコール単独の間での近見視力(J)変化の平均の分布の比較を経時的に示す。変化の平均は、ブリモニジン単独で処置した参加者が最も小さく、併用点眼剤で処置した参加者が最も大きかった。
併用点眼剤には相乗効果があり、個別に投与したカルバコールおよびブリモニジンよりも良好に近見視力を改善した。
実施例8
カルバコールおよびピロカルピンについて用量範囲試験を行った。0.5%および1%のピロカルピン濃度をピロカルピンとブリモニジン0.2%およびプラセボと比較した。1.5%、2.25%、および3%のカルバコール濃度をカルバコールとブリモニジン0.2%およびプラセボと比較した。ピロカルピンとカルバコールをブリモニジンありとブリモニジンなしでも互いに比較した。
群1の12人の対象の非利き目に、0.5%ピロカルピン+ブリモニジン0.2%、1.0%ピロカルピン+ブリモニジン0.2%、またはプラセボ点眼剤を盲検化して与えた。
群2の12人の対象の非利き目に、3種類の強さのカルバコール1.5%、2.25%、または3%のうちの1つを単独でまたは0.2%ブリモニジンと組み合わせて、あるいはプラセボ点眼剤を盲検化して与えた。
群1および群2の両方に同じ処置前および処置後の精密検査を行い、測定値:年齢、性別、初期瞳孔径、および近見視力(NVA)を記録した。処置して1時間後、2時間後、4時間後、および8時間後に対象のNVAを同じ室内照明で評価した。あらゆる有害な症状ならびに近見視力および遠見視力に対する対象の満足度を記録した。
3施設にまたがって78人の患者を0.5%ピロカルピン+0.2%ブリモニジンまたはカルバコール+0.2%ブリモニジンについて評価した。32人の患者をピロカルピン+ブリモニジンについて評価し、46人の患者をカルバコールとブリモニジンについて評価した。
図12および13に示したように、ピロカルピン+ブリモニジン群およびピロカルピン群にまたがって、瞳孔直径のベースラインからの変化とVAの変化の間には明らかな関連性があった。ピロカルピンまたはカルバコール、+ブリモニジンで処置した患者ではLogMAR活性が改善した。LogMAR VAの変化は1時間および2時間ではピロカルピンに有利に働いた。LogMAR VAの変化は8時間および10時間ではカルバコールに有利に働いた。
カルバコール+ブリモニジン併用について40人の患者を評価した(プラセボ:N=17、カルバコール1.5%+ブリモニジン:N=8、カルバコール2.25%+ブリモニジン:N=8、カルバコール3%+ブリモニジン:N=7)。図14に示したように、カルバコールをブリモニジンに添加した場合に用量反応が観察された。図15に示したように、忍容性については、反対のカルバコール用量反応が観察された。カルバコール患者を対象にした処置後満足度調査の結果を図16に示した。この調査では、患者に、点眼剤を再び使用するかどうか尋ねた。
これらの試験の結果から、ブリモニジンはカルバコールとピロカルピンの両方と相乗作用することが分かった。ピロカルピンとカルバコールは両方とも有効な処置であることも示された。ブリモニジンとカルバコールの併用の方が活性が高く、ブリモニジンとピロカルピンよりも長く続いた。瞳孔径は近見視力の改善と直接の相関関係があった。この組み合わせは読書時視力の有意な改善につながった。処置をしても、もう片方の眼が輝度を埋めるので、かすみの症状は生じなかった。この処置は遠見視力も中間視力も妨害せず、モノビジョン症状も引き起こさなかった。特別な作業に視力の改善が十分でなければ、この処置は眼鏡と一緒に使用することができる。ピロカルピンの方が速やかな作用があるが、カルバコールの持続時間は8時間である。カルバコール濃度の増加は、いくらかの不快感の増加を引き起こした。ピロカルピンは中性pHでは不安定であり(約pH5を必要とする)、灼熱感があり、持続時間が短かった。
有意な有害事象は生じなかった。点眼剤に関連する軽度の不快感が(プラセボを含む)全群の10~30%で認められた。対象の90パーセントが、老眼を処置するために、活性のある点眼剤が利用できれば使用することになると言った。
本試験では0.2%ブリモニジン濃度を使用したが、0.15%もしくは0.1%またはもっと少ない濃度でも、ピロカルピンまたはカルバコールとの十分な相乗作用をもたらすはずである。低濃度のブリモニジンは眼に対して「漂白(whitening)」効果があることが判明している。本試験のカルバコール濃度は全て(1.5%、2.25%、および3.0%)、視力を改善した。
実施例9
別の試験では、手術なしで片方の瞳孔を数時間小さくして、老眼を緩和し、眼鏡なしで光学的誤差を改善するためにピロカルピンとブリモニジンの組み合わせを使用した。
+/-球面(sphere)0.5Dと、読書のために+/-0.5D矯正がある、任意の人種、45~60歳の男性および女性の参加者を組み入れのために選択した。ピロカルピンまたはブリモニジンに対してアレルギーまたは有害反応がある個体、緑内障、白内障、眼の感染症、眼の炎症、網膜裂孔、網膜疾患、過去30日以内に眼手術がある個体、コンタクトレンズを装着している個体、過去7日以内に点眼剤を使用した個体、妊娠または授乳中の個体、および過去30日以内に他の任意の臨床試験に参加したことがある個体を試験から除外した。
20人の志願者を、休薬期間を設けるために1週間間隔を空けて3つの別々の日に試験した。通常の外部検査ならびに遠見視および読書のための屈折度(最新の屈折度が60日以内に確かめられていたら、その値を使用する)も行った。眼内圧も測定し(Goldman applanation)、水晶体および網膜の散大検査も同様に行った。
3つの試験日があった。それぞれの日に、5人の患者からなる3つの群の各々に異なる治験薬を与えた。3つの試験日の後に各患者がそれぞれの薬で試験され、各患者が自分自身の対照になるように、7日の休薬期間の後に群に別の治験薬を用いて試験を繰り返した。各患者を試験するたびに、同じ試験者が同じ部屋の中で同じ照明で試験した。
志願者の非利き目に決定した後、志願者を3つの群に無作為化し、非利き目にだけ点眼剤で処置した。試験した用量は、1%ピロカルピン、0.2%ブリモニジン、および1%ピロカルピン+0.2%ブリモニジンであった。併用点眼剤の場合、最初にピロカルピンを投与し、その5分後にブリモニジンを投与した。それぞれ、一度に点眼剤を1適しか投与しなかった。8時間にわたって1時間ごとに薄明視照明の下で視力表を読むように患者に頼み、毎回、赤外線瞳孔計(infrared pupilometer)で瞳孔直径を測定した。
結果を図17~19に示した。これらの図はそれぞれ、瞳孔散大、近見視、および中間視力の視覚的尺度を、ブリモニジン単独、ピロカルピン単独、および1%ピロカルピン+0.2%ブリモニジンについて経時的に示す。近見視力および中間視力は両方とも、ブリモニジン単独またはピロカルピン単独と比較してピロカルピン+ブリモニジン点眼剤によって有意に改善した。
ピロカルピン+ブリモニジン処置を与えた後に20人の患者を調査した。具体的には、これらの点眼剤を利用できれば眼鏡の代わりに使用するかどうか尋ねた。図20に示したように、対象の90%は、もし利用できれば、老眼を処置するために、この点眼剤を使用することになると言った。
実施例10
別の試験では、眼に眼内レンズ(IOL)(偽水晶体)が移植されており、手術後に老眼鏡が必要になった患者を試験した。白内障を処置し、遠見視力を矯正するために、典型的に、患者はこのタイプの手術を受ける。
本試験では、38~80歳の患者15人が、遠見視力を矯正するために偽水晶体手術を受けた。患者の1人は両眼手術を受けたが、残りの14人は片眼手術を受けた。
問題のない手術の少なくとも3ヶ月後、老眼患者の片眼に3%カルバコール+0.2%ブリモニジンを含有する単回併用点眼剤を与えた。結果を図21に示した。
患者全員について、点眼剤を投与する前と投与した後の遠見視力は20/20であった。患者全員において、点眼剤による処置後瞳孔径は激減した。さらに、点眼剤による処置後に、点眼剤投与後の8時間の期間全体を通じてNVAは大きく強化された。1人の患者だけが副作用として灼熱感を報告した。
本試験から、偽水晶体に起因する屈折異常はカルバコールとブリモニジンの併用製剤によって少なくとも8時間、矯正されることが分かった。手術中の外科的操作および薬理学的操作にもかかわらず、これらの点眼剤は依然として、これらの患者において近見視力を矯正するように働いた。点眼剤の形をとる眼科用調製物によって、白内障患者は、その多くが高齢者であるが老眼鏡なしで目が見えるようになる。
本明細書において議論された特許および非特許参照文献は全て、参照により本明細書に組み入れられる。
実施例11
ある試験では、老眼処置のアウトカムに対するカルバコールとαアゴニスト(ブリモニジン)の使用を調べた(Influence of Different Concentrations of Carbachol Drops on the Outcome of Presbyopia Treatment - A Randomized Study, Abdelkader, International Journal of Ophthalmic Research 2019 September; 5(1):317-320、参照により本明細書に組み入れられる)。本試験は、老眼対象の近見視を長期間にわたって効果的に改善するためのカルバコールの最適用量を調べることを目的とした。
前向き二重マスク無作為化試験は、両眼で少なくとも20/20の裸眼遠見視力があり、その他の眼の病態がない、44~60歳の正視かつ老眼の対象57人を組み入れた。裸眼エンドポイントプリントサイズ≧イエーガー(J)5がレンズ≧+1.00Dを用いることで≧1視力表改善したら、老眼は存在するとみなされた。対象を2つの群に分けた。群1(n=32眼)には単一用量の2.25%カルバコール+0.2%ブリモニジン点眼剤を与えた。群2(n=25眼)には単一用量の3%カルバコール+0.2%ブリモニジン点眼剤を与えた。対象全員の非利き目に点眼剤を与えた。処置前と、処置して1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、および12時間後に、対象の瞳孔径および近見視力と遠見視力の両方を、盲検化された試験者が同じ室内照明で評価した。
両濃度のカルバコール+ブリモニジン点眼剤を与えた対象全員において、近見視力(NVA)の統計的に有意な改善が認められた(P<0.0001)。低濃度よりも高濃度のカルバコール点眼剤において平均NVAの有意な、かつ持効性の改善が報告された(P<0.0001)。両群のどの対象においても眼の重篤有害事象は観察されなかった。高濃度のカルバコールは安全であると見出され、近見視力改善の点で低濃度よりも大きな効力をもたらし、作用期間が長く続いた。
0.25ジオプトリーより大きな近視、遠視、および乱視がある患者、ならびに、角膜、水晶体、および硝子体の混濁、瞳孔不規則、瞳孔不同症、弱視、慢性の一般的な病態がある、ならびに都合悪くカルバコールおよびブリモニジンと相互作用する薬物療法を使用している患者を除外した。
群1(2.25%カルバコール)の平均年齢は51.1±4.5歳(範囲、44~55歳)であり、男性が18人、女性が14人であった。群2(3%カルバコール)の平均年齢は52.8±3.9歳(範囲、47~60歳)であり、男性が14人、女性が11人であった。処置群では、≧50歳の対象の数が16人、<50歳の対象の数が14であった。2つの群間で平均年齢または性別の統計的に有意な差は見出されなかった。
群1では、平均近見視力(NVA)は、処置前のJ 7.37±1.6から、処置して1時間後のJ 2.96±0.8、2時間後のJ 3.34±1.1、4時間後のJ 3.93±0.98、8時間後のJ 4.98±0.85へと有意に改善した(p<0.0001)。処置して12時間後に、平均NVAは6.75±1.58 J(p=0.11)であった。平均瞳孔径(PS)は、処置前の4.74±0.47mmから、処置して1時間後の2.68±0.41mm、2時間後の3±0.37mm、4時間後の3.35±0.4mm、8時間後の3.58±0.43mmへと有意に減少した(p<0.0001)。処置して12時間後に平均瞳孔径は4.51±69mm(p=0.12)であった。
群2では、平均近見視力(NVA)は、処置前のJ 7.72±1.48から、処置して1時間後のJ 1.36±0.56、2時間後のJ 1.4±0.57、4時間後のJ 1.8±0.58、8時間後のJ 2.32±0.47、12時間後の2.64±0.7へと有意に改善した(p<0.0001)。平均瞳孔径(PS)は、処置前の4.55±0.55mmから、処置して1時間後の1.2±0.25mm、2時間後の1.34±0.31mm、4時間後の1.64±0.3mm、8時間後の2±0.28mm、12時間後の2.27±0.34mmへと有意に減少した(p<0.0001)。
群2では、3%カルバコールを点眼した場合に、処置して12時間後まで近見視力の改善は統計的に有意であった。これに対して、群1では、近見視力の改善は処置して8時間後までしか有意でなかった。2.25%濃度よりも3%のカルバコールとブリモニジン点眼剤において平均NVAの有意な改善が報告された(p<0.0001)。
群1(2.25%カルバコール+ブリモニジン)対群2(3%カルバコール+ブリモニジン)について、近見視力(NVA)(イエーガー)および瞳孔径(PS)(mm)の変化の平均を経時的に以下の表12に示した。
図23~23は、群1および群2について近見視力(イエーガー)および瞳孔径(mm)の変化の平均を経時的に示す。
群1および群2で使用した点眼剤の組成物は100ppmの塩化ベンザルコニウム(BAKまたはBAC)も含有した。
両群のどの患者にも、灼熱感も、前頭痛も、かすみも、他の任意の眼の重篤有害事象も観察されなかった。徐脈、気管支痙攣、および消化問題などの全身副作用は見出されなかった。
裸眼遠見視力は、処置前の対象全員において両眼で20/20であり、処置後の全期間において20/20のままであった。
両濃度のカルバコール+ブリモニジン点眼剤を与えた対象全員において平均近見視力(NVA)と平均瞳孔径(PS)が統計的に有意に改善した(p<0.0001)。3%カルバコール点眼剤を与えた対象全員において、処置後12時間まで平均NVAおよびPSの有意な改善が報告された(p<0.0001)。高濃度のカルバコールでは眼の重篤有害事象は観察されなかった。
2つの群間のカルバコール濃度には0.75%差と違いがあったが、処置後12時間まで平均NVAおよびPSの改善が認められた。
データに基づいて、高濃度のカルバコール濃度は安全であることが見出され、近見視力改善の点で低濃度よりも大きな効力をもたらし、作用期間が長く続いた。
実施例12
ある臨床研究では、年齢が41~52歳の遠視対象30人を2つの群に分けた。群の平均平均は47.5±3.7歳(範囲、41~52歳)であった。平均年齢に統計的に有意な差はなかった。群1には3%カルバコール点眼剤を両側に投薬した。群2には3%カルバコール+0.2%ブリモニジン点眼剤を両側に投薬した。点眼剤を対象全員の両眼に与えた。処置前と、処置して1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、および12時間後に、対象の瞳孔径および近見視力と遠見視力の両方を、盲検化された試験者が同じ室内照明で評価した。
30人の対象のうち24人(80%)が遠見視用と近見視用両方の眼鏡の使用を止め、4人の対象(13.4%)だけが、処置前に必要とされた値より2~3ジオプトリー小さい近見視用眼鏡を使用した。2人の遠視対象(6.6%)しか処置を止めなかった。
実施例13
ある試験では、矯正老眼において併用対個別のカルバコールとブリモニジン点眼剤の使用者を調べた(参照により本明細書に組み入れられる、Clinical outcomes of combined versus separate carbachol and brimonidine drops in corrected presbyopia, Abdelkader et al., Eye and Vision 2016; 3:31)。本試験は、視覚的に有益な縮瞳を作り出して老眼視力を薬理学的に改善するために、副交感神経刺激薬(3%カルバコール)とα2アゴニスト(0.2%ブリモニジン)を併用および個別の形で用いる効力を盲検化して試験および比較することによって老眼対象の近見視力を改善することを目的とした。
前向き二重マスク無作為化対照臨床試験を行った。両眼で少なくとも20/20の裸眼遠見視力があり、その他の眼の病態がない、42~58歳の天然で正視かつ老眼の対象10人が組み入れの資格があった。対象全員の非利き目に、3%カルバコールと0.2%ブリモニジンを併用および個別、3%カルバコール単独、ならびに0.2%ブリモニジン(対照)単独をクロスオーバーの形で、試験間に1週間の休薬期間を設けて与えた。処置前と、処置して1時間後、2時間後、4時間後、および8時間後に、対象の瞳孔径および近見視力と遠見視力の両方を、盲検化された試験者が同じ室内照明で評価した。
同じ製剤(formula)中に3%カルバコールと0.2%ブリモニジンを併用して与えた対象全員の平均近見視力(NVA)は、個別またはカルバコール単独もしくはブリモニジン単独を与えた対象と比較して統計的に有意に改善した(P<0.0001)。併用溶液は、試験した他の溶液よりも大きな効力を示した。瞳孔を小さくすることで焦点深度を改善すると、両眼遠見視力が変化することなく近見視力が統計的に有意に改善した。
参加者は、無作為に選択された志願者であった。裸眼エンドポイントプリントサイズ≧イエーガー(J)5がレンズ≧+1.00Dを用いることで≧1視力表改善したら、老眼は存在するとみなされた。対象が全員、身体と眼が健康であるようにスクリーニングされ、参加のための禁忌、あるいは合併症(例えば、心臓または呼吸の状態、片頭痛、強度近視、眼薬物療法もしくは全身薬物療法、または眼手術)の素因を確認するために質問表を記入した。対象全員が、本試験の資格があるとみなされる前に完全散大眼検査を受けた。この検査では、薬物に対する禁忌、網膜剥離に対する感受性、眼の病態、または周辺網膜変性がスクリーニングされた。組み入れ規準は以下の通りであった:年齢42~58歳、正視眼[調節麻痺下等価球面度数(SE)、±0.25D;乱視、≦0.25D]および両眼裸眼遠見視力≧20/20。除外基準は、0.25Dより大きな近視、遠視、および乱視がある患者、ならびに、角膜、水晶体、および硝子体の混濁、瞳孔不規則、瞳孔不同症、弱視、慢性の一般的な病態がある、ならびに都合悪くカルバコールおよびブリモニジンと相互作用する薬物療法を使用している患者を含んだ。本試験に組み入れた、どの患者にも、散瞳または縮瞳を引き起こし得る局部薬物療法が与えられたことはなかった。試験中に対象を綿密にモニタリングし、対象が経験した、あらゆる眼反応、全身反応、または生理学的反応を報告するように定期的に頼んだ。万一、副作用が起きたらアトロピンを使用することができたが、何も報告されなかった。以下の手順は全て、人体実験に関する担当委員会の倫理基準に従った。
単一用量の3%カルバコールと0.2%ブリモニジンを併用および個別の形で、ならびに3%カルバコール単独または0.2%ブリモニジン単独(対照)を、試験間に1週間の休薬期間を設けて同じ10人の正視老眼対象の非利き目に点眼した。個別の形では、最初にカルバコールを点眼し、その5分後にブリモニジンを投与した。単一用量の併用3%カルバコールと0.2%ブリモニジンでは、100ppmの塩化ベンザルコニウムが存在した。3%カルバコール点眼剤は50ppmの塩化ベンザルコニウムを含んだ。0.2%ブリモニジン点眼剤は50ppmの塩化ベンザルコニウムを含んだ。
処置前に、ならびに処置して1時間後、2時間後、4時間後、および8時間後に、同じ独立した試験者が同じ部屋の中で同じ機器を用いて、初期瞳孔径ならびに近見視力および遠見視力を記録した。遠見視力は標準的なスネレンプロジェクター視力表を用いて4mで測定した。近見視力(NVA)は、常に160cd/m2の同じ光度を使用して、イエーガー表示法がある携帯型ローゼンバウム(Rosenbaum)視力表を用いて40cmで評価した。瞳孔径(PS)はColvard携帯型赤外線瞳孔計を用いて測定した。
平均年齢が49.7±4.8歳(範囲、42~58歳)である天然で正視かつ老眼の対象10人が組み入れの資格があった。これらの対象(6人が男性および4人が女性)は、両眼で少なくとも20/20の裸眼遠見視力があり、その他の眼の病態がなかった。
併用点眼剤群において、平均近見視力(NVA)は、処置前のJ 8.6±1.5から、処置して1時間後のJ 1.1±0.3、2時間後のJ 1.1±0.3、4時間後のJ 1.8±0.4、および8時間後のJ 2.3±0.5へと有意に改善した(P<0.0001)。平均瞳孔径(PS)は、処置前の4.3±0.5mmから、処置して1時間後の1.2±0.3mm、2時間後の1.2±0.3mm、4時間後の1.7±0.2mm、および8時間後の2.1±0.3mmへと有意に減少した(P<0.0001)。
個別点眼剤群において、平均NVAは、処置前のJ 8.6±1.5から、処置して1時間後のJ 3.4±1(P=0.0002)、2時間後のJ 3.6±1(P=0.0002)、4時間後のJ 4.5±1(P=0.0004)、および8時間後のJ 5.2±0.8(P=0.0008)へと有意に改善した。平均(PS)は、処置前の4.3±0.5mmから、処置して1時間後の1.9±0.3mm、2時間後の2.2±0.2mm、4時間後の2.5±0.3mm、および8時間後の2.8±0.2mmへと有意に減少した(P<0.0001)。
3%カルバコール単独群において、平均NVAは、処置前のJ 8.6±1.5から、1時間後のJ 5.5±1(P=0.001)、2時間後のJ 5.9±0.8(P=0.001)、4時間後のJ 7±1.2(P=0.007)、および8時間後のJ 7.5±1(P=0.027)へと有意に改善した。平均(PS)は、処置前の4.3±0.5mmから、1時間後の2.8±0.3mm(P=0.0002)、2時間後の3±0.3mm(P=0.0002)、4時間後の3.5±0.3mm(P=0.0007)へと有意に減少した。処置して8時間後には平均(PS)は4±0.3mm(P=0.15)であった。
0.2%ブリモニジン単独群では、処置前と、処置後の任意の時点において平均NVAおよび平均(PS)の統計的に有意な差は見出されなかった(P>0.05)。
個別の形またはカルバコール単独もしくはブリモニジン単独よりも、併用3%カルバコールとブリモニジン点眼剤では平均NVAが有意に改善したと報告された(P<0.0001)。
図27~28は、本試験の近見視力変化の平均および瞳孔径変化の平均の分布を示す。
本試験からのデータを以下の表13に示した。
瞳孔不同症によって誘導される網膜照度の眼内差により生じるプルフリッヒ効果を訴えた対象はいなかった。本発明者らの予備研究における対象全員が、あらゆる運動の知覚に歪みがなく、昼も夜も安全に車を運転することができたと報告した。
個別またはカルバコール単独もしくはブリモニジン単独を与えた対象と比較して、同じ製剤中に3%カルバコールとブリモニジンを併用して与えた対象全員の近見視が高く、有意に改善したことが見出された(P<0.0001)。
本試験は、併用製剤を与えた対象における近見視力の著しい改善を、併用製剤に添加された透過促進剤(塩化ベンザルコニウムおよびカルボキシメチルセルロース)が原因であり、おそらく、瞳孔散大筋および収縮筋の受容体が両方とも同時に作用された場合に、克服すべきことは少ない、他方が最大効果を可能にする前に一方が刺激される場合よりも大きく互いを強化するという事実も原因であるとした。
本試験から、酒石酸ブリモニジン0.2%単独は、軽度の縮瞳作用を、主に、輝度条件下で点眼して1時間の間に生じることが分かったが、これは統計的有意性に達しなかった(P>0.05)。単眼処置では、瞳孔が正常な他眼の視力は、いくらかぼやけた近見視を有するが、遠くの物体ははっきりしており、光覚は減少しない。
本試験は、非利き目に1日1滴のカルバコールとブリモニジンの点眼剤で老眼を単眼薬理学的処置することで、高齢の対象でも、多くの老眼者に許容可能な読書時視力が可能になると結論を下した。
実施例11~13では、様々な濃度のカルバコール単独、ブリモニジン単独、およびカルバコール+ブリモニジンが試験された。塩化ベンザルコニウムの防腐剤を添加した。カルバコールおよびブリモニジン単独では50ppmの塩化ベンザルコニウムを添加した。カルバコール+ブリモニジンでは100ppmの塩化ベンザルコニウムを添加した。
先行技術は、塩化ベンザルコニウムが既知の毒性作用を有し、注意して使用しなければならないと開示している、さらに、先行技術は、角膜上皮細胞への潜在的な損傷があるために、100ppmを上回る塩化ベンザルコニウム濃度の使用から離れることを開示している。
しかしながら、3%カルバコール+0.2%ブリモニジンの併用と100ppmの塩化ベンザルコニウム点眼剤を試験している間に、3%カルバコールと50ppmの塩化ベンザルコニウムの個別投与、次いで、0.2%ブリモニジンの投与、3%カルバコールと50ppmの塩化ベンザルコニウムだけの投与、および0.2%ブリモニジンだけの投与によって、正視老眼者の平均瞳孔径は、3%カルバコール+0.2%ブリモニジンと100ppmの塩化ベンザルコニウム点眼剤を投与した対象にだけ1~8時間で≦2.5mmの目標瞳孔径に達した。3%カルバコールと50ppmの塩化ベンザルコニウムだけの点眼剤を投与した対象は、図24に示したように1~8時間の間に目標瞳孔径に一度も達しなかった。
3%カルバコール+0.2%ブリモニジンの併用と100ppmの塩化ベンザルコニウム点眼剤を試験している間に、3%カルバコールと50ppmの塩化ベンザルコニウムの個別投与、次いで、0.2%ブリモニジンの投与、3%カルバコールと50ppmの塩化ベンザルコニウムだけの投与、および0.2%ブリモニジンだけの投与によって、正視老眼者の平均近見視力(NVA)は、3%カルバコール+0.2%ブリモニジンと100ppmの塩化ベンザルコニウム点眼剤を投与した対象にだけ1~8時間で≧20/40に達した。3%カルバコールと50ppmの塩化ベンザルコニウムだけの点眼剤を投与した対象は、図25に示したように≧20/40のNVAに一度も達しなかった。
図26a~26bは、瞳孔径およびNVAに対する非常に有意な12時間効果を示す。3%カルバコールと0.2%ブリモニジンの併用と100ppmの塩化ベンザルコニウムによって目標瞳孔径は1~12時間で2.25%カルバコールと0.2%ブリモニジンの併用点眼剤と100ppmを上回る≦2.5mmに達した。3%カルバコールと0.2%ブリモニジンの併用と100ppmの塩化ベンザルコニウムによって、NVAは1~12時間で、2.25%カルバコールと0.2%ブリモニジンの併用点眼剤と100ppmを上回る≧20/40に達した。
ブリモニジン単独と50ppmがNVAの瞳孔径にほとんど影響を及ぼさなかったことを考えると、カルバコール、ブリモニジンの併用と100ppmのBAKによる大きさおよび持続時間の点で、さらに大きな薬力学的効果は予期されなかった。さらに、カルバコール3%とブリモニジン0.2%の点眼剤が併用投与された場合に8時間にわたって≦2.5mmの目標瞳孔径を実現したのに対して、同じ累積BAK曝露である約100ppmで、これらの同じ活性成分が5分間間隔を空けて個別投与された場合に、この目標に約4時間しか到達せず、20/40のNVA目標を1時間だけ実現したことに注目すると、この薬力学的効果は特に予期されないものであった。従って、出願人は、薬力学的効果が個々の成分の相加効果によるものではなく、新規の組み合わせによるものだと示唆している。
実施例14
ある試験では、老眼成人における眼内圧に対するカルバコールと酒石酸ブリモニジンの併用処置の効果を調べた。ブリモニジンは房水産物(aqueous product)およびぶどう膜強膜路を減らすのに対して、カルバコールは小柱網を介した流出を増やすので、ブリモニジンとカルバコールの併用はIOPを少なくとも4mmHg下げると予期される。しかしながら、これは発生せず、予期されなかった。以前の試験は、片眼だけ投薬したが、遠見視および近見視のための両眼視力を調べた。以前の試験は、片眼で近見視力がピンホール効果により改善すれば両眼の近見視力が、処置された片眼と同様に同じかまたはそれより良くなるという前提に頼っていた。しかしながら、副交感神経刺激薬が唯一の活性成分として投薬された場合には、近距離での読書と同じような毛様体収縮と水晶体の形状変化を誘導する。この水晶体変化は、多くの患者において、近視に向かう著しい近視化と、遠見視力のぼやけを引き起こす。
従って、ピンホール効果を作り出すために副交感神経刺激薬を使用する戦略は、片眼が良好な遠見視力を維持するように片眼だけを処置することであった。対象の片眼にブリモニジンとカルバコールの組み合わせが投薬され、遠見視力が両眼で検査されたら、投薬された眼において近視化が生じたために対象が遠見視力を失っても片眼が未処置のままであるので、遠距離の両眼視力は20/20のままになると考えられる。以下の試験は、前記用量のブリモニジンとカルバコールを与えた同じ眼を眼内圧と遠見視力について単眼で検査した。この試験は、遠見視力が3%カルバコールと0.2%酒石酸ブリモニジンの製剤による影響を受けないという証拠を提供する。これは、カルバコール単独が遠見喪失(distance loss)をもたらすので予期せぬものであった。両眼が処置された場合に、遠見視力が保たれるというのは今までにないことである。健常対象において縮瞳薬単独ではIOPを一過的に増加させ、次いで減少させるが、ブリモニジンとカルバコールの併用ではIOPが増加または減少する証拠はなかったことにも注目しなければならない。この試験を下記で議論する。
前向き単群臨床試験を行った。9人の男性および7人の女性を含む、42~58歳(平均=49.5)の対象16人を登録した。16人の対象は、裸眼エンドポイントプリントサイズ≧イエーガー(J)5がレンズ≧+1.00Dを用いることで≧1視力表改善することによって定義されるように老眼であり、調節麻痺下等価球面度数±0.25Dおよび乱視≦0.25Dによって定義されるように正視であり、両眼で少なくとも20/20の裸眼遠見視力を有し、その他の眼の病態がなく、全身が健康であった。対象全員に3%カルバコールと0.2%酒石酸ブリモニジンを与えた。試験薬物を非利き目に局所適用した。利き目は処置せず、対照として役立った。
携帯型眼圧計(Tono-Pen)を用いて眼内圧(IOP)を測定した。4回の測定値の平均をとり、悪いシグナルまたは極端な読み取り値があるものを捨てた。ベースラインでは、対象全員は正常血圧であり、平均IOPは処置された眼では13.8mmHGであり、対照眼では14.5mmHGであった。どちらの眼でもIOPの有意な変化は観察されなかった。この単一用量試験の結果から、老眼がある正常血圧対象に3%カルバコールと0.2%酒石酸ブリモニジンが併用投与された場合には、IOPに対して有意な効果がないことが分かる。これは、IOPの変動が望ましくない緑内障の未診断の高眼圧がある患者に広く使用することができる処置にとって特に重要な知見である。試験の結果を表14に示した。
従って、本明細書中で説明された本発明の態様は本発明の原理の適用の単なる例示であると理解しなければならない。例示された態様の詳細についての本明細書中での言及は特許請求の範囲を限定することを目的としない。特許請求の範囲はそれ自体で、本発明に必要不可欠なものとみなされる特徴を説明する。
例えば、ブリモニジンからのαアドレナリン刺激の使用は、偽水晶体に対する局部副交感神経刺激薬療法と組み合わされた場合に暗所視および薄明視を改善するのに使用することができる。
[本発明1001]
偽水晶体患者の少なくとも1つの屈折異常を寛解または軽減するための方法であって、該屈折異常が、近視、遠視、および乱視からなる群より選択され、該方法が、以下の工程を含む、該方法:
該患者の少なくとも1つの眼に眼科用調製物を投与する工程であって、該眼科用調製物が、
治療的有効量の1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬またはその薬学的に許容される塩;および
治療的有効量のαアゴニストもしくはαアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩
を含む、該工程。
[本発明1002]
前記αアゴニストがブリモニジンである、本発明1001の方法。
[本発明1003]
ブリモニジンが約0.05~0.3%の量で前記調製物中に存在する、本発明1002の方法。
[本発明1004]
前記副交感神経刺激薬がカルバコールである、本発明1001の方法。
[本発明1005]
カルバコールが約0.5~5%の量で前記調製物中に存在する、本発明1004の方法。
[本発明1006]
前記副交感神経刺激薬がカルバコールであり、かつ前記αアゴニストがブリモニジンである、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記副交感神経刺激薬がピロカルピンである、本発明1001の方法。
[本発明1008]
ピロカルピンが約0.25%~約1.5%の量で存在する、本発明1007の方法。
[本発明1009]
前記αアゴニストがフェントラミンである、本発明1001の方法。
[本発明1010]
フェントラミンが約2%未満の量で存在する、本発明1009の方法。
[本発明1011]
前記調製物が片眼に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1012]
前記調製物が両眼に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1013]
副交感神経刺激薬および前記αアゴニストが単一製剤中で組み合わされている、本発明1001の方法。
[本発明1014]
前記眼科用調製物がトロピカミドをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1015]
以下の工程を含む、眼手術を受けたことがある患者において少なくとも1つの屈折異常を処置する方法:
該患者の少なくとも1つの眼に眼科用調製物を投与する工程であって、該眼科用調製物が、
治療的有効量の1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬またはその薬学的に許容される塩;および
治療的有効量のαアゴニストもしくはαアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩
を含む、該工程。
[本発明1016]
前記αアゴニストがブリモニジンである、本発明1015の方法。
[本発明1017]
ブリモニジンが約0.05~0.3%の量で前記調製物中に存在する、本発明1016の方法。
[本発明1018]
前記副交感神経刺激薬がカルバコールである、本発明1015の方法。
[本発明1019]
カルバコールが約0.5~5%の量で前記調製物中に存在する、本発明1018の方法。
[本発明1020]
前記副交感神経刺激薬がカルバコールであり、かつ前記αアゴニストがブリモニジンである、本発明1015の方法。
[本発明1021]
前記副交感神経刺激薬がピロカルピンである、本発明1015の方法。
[本発明1022]
ピロカルピンが約0.25%~約1.5%の量で存在する、本発明1021の方法。
[本発明1023]
前記αアゴニストがフェントラミンである、本発明1015の方法。
[本発明1024]
フェントラミンが約2%未満の量で存在する、本発明1023の方法。
[本発明1025]
前記調製物が片眼に投与される、本発明1015の方法。
[本発明1026]
前記調製物が両眼に投与される、本発明1015の方法。
[本発明1027]
副交感神経刺激薬および前記αアゴニストが単一製剤中で組み合わされている、本発明1015の方法。
[本発明1028]
前記眼科用調製物がトロピカミドをさらに含む、本発明1015の方法。
[本発明1029]
前記屈折異常が、近視、遠視、乱視、ならびに近視、遠視、および乱視の任意の組み合わせからなる群より選択される、本発明1015の方法。
[本発明1030]
前記手術がレーザー手術である、本発明1015の方法。
[本発明1031]
前記手術が、少なくとも1つの天然水晶体を人工眼内レンズと交換することを含む、本発明1015の方法。
[本発明1032]
前記眼科用調製物が、前記人工眼内レンズを有する眼の少なくとも1つに対して多焦点性(multifocality)を一時的に回復させる、本発明1031の方法。
[本発明1033]
偽水晶体患者において多焦点性を作り出して、片眼または両眼を有する患者において老眼の症状を軽減する方法であって、以下の工程を含む、該方法:
老眼の該片眼または両眼に薬学的に有効な量の眼科用調製物を投与する工程であって、該眼科用調製物が、少なくとも治療的有効量の1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬またはその薬学的に許容される塩;および治療的有効量のαアゴニストもしくはαアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩を含む、該工程。
[本発明1034]
前記αアゴニストがブリモニジンである、本発明1033の方法。
[本発明1035]
ブリモニジンが約0.05~0.3%の量で前記調製物中に存在する、本発明1034の方法。
[本発明1036]
前記副交感神経刺激薬がカルバコールである、本発明1033の方法。
[本発明1037]
カルバコールが約0.5~5%の量で前記調製物中に存在する、本発明1035の方法。
[本発明1038]
カルバコールが約2.25~3.5%の量で前記調製物中に存在する、本発明1033の方法。
[本発明1039]
前記副交感神経刺激薬がカルバコールであり、かつ前記αアゴニストがブリモニジンである、本発明1033の方法。
[本発明1040]
前記αアゴニストがフェントラミンである、本発明1033の方法。
[本発明1041]
フェントラミンが約2%未満の量で存在する、本発明1078の方法。
[本発明1042]
前記調製物が片眼に投与される、本発明1033の方法。
[本発明1043]
前記調製物が両眼に投与される、本発明1033の方法。
[本発明1044]
副交感神経刺激薬と前記αアゴニストが単一製剤中で組み合わされている、本発明1033の方法。
[本発明1045]
前記眼科用調製物がトロピカミドをさらに含む、本発明1033の方法。
[本発明1046]
前記患者の片眼または両眼が人工眼内レンズを含む、本発明1033の方法。
[本発明1047]
前記眼科用調製物が、前記人工眼内レンズを有する眼の少なくとも1つに対して多焦点性を一時的に回復させる、本発明1045の方法。
[本発明1048]
前記眼科用調製物が、約0.005~0.1%の量で存在する塩化ベンザルコニウムをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1049]
前記眼科用調製物が、0.005%を超える量で存在する塩化ベンザルコニウムをさらに含む、本発明1015の方法。
[本発明1050]
偽水晶体患者において多焦点性を作り出して、片眼または両眼を有する患者において老眼の症状を軽減する方法であって、以下の工程を含む、該方法:
老眼の該片眼または両眼に薬学的に有効な量の眼科用調製物を投与する工程であって、該眼科用調製物が、少なくとも治療的有効量の1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬またはその薬学的に許容される塩;治療的有効量のαアゴニストもしくはαアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩;および透過促進剤(permeation enhancer)を含む、該工程。
[本発明1051]
前記αアゴニストがブリモニジンである、本発明1050の方法。
[本発明1052]
前記副交感神経刺激薬がカルバコールである、本発明1050の方法。
[本発明1053]
前記塩化ベンザルコニウムが約0.005~0.1%の量で前記眼科用調製物中に存在する、本発明1050の方法。
[本発明1054]
偽水晶体患者の少なくとも1つの屈折異常を寛解または軽減するための方法であって、該屈折異常が、近視、遠視、および乱視からなる群より選択され、該方法が、以下の工程を含む、該方法:
該患者の少なくとも1つの眼に眼科用調製物を投与する工程であって、該眼科用調製物が、
治療的有効量の1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬またはその薬学的に許容される塩;および
透過促進剤
を含む、該工程。
[本発明1055]
前記副交感神経刺激薬がカルバコールである、本発明1054の方法。
[本発明1056]
前記透過促進剤が塩化ベンザルコニウムであり、かつ約0.005~0.1%の量で前記眼科用調製物中に存在する、本発明1054の方法。
[本発明1057]
塩化ベンザルコニウムである透過促進剤をさらに含む、本発明1015の方法。
[本発明1058]
前記副交感神経刺激薬がカルバコールである、本発明1057の方法。
[本発明1059]
前記塩化ベンザルコニウムが約0.005~0.1%の量で前記眼科用調製物中に存在する、本発明1057の方法。
[本発明1060]
偽水晶体患者において多焦点性を作り出して、片眼または両眼を有する患者において老眼の症状を軽減する方法であって、以下の工程を含む、該方法:
老眼の該片眼または両眼に薬学的に有効な量の眼科用調製物を投与する工程であって、該眼科用調製物が、少なくとも治療的有効量の1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬またはその薬学的に許容される塩;および透過促進剤を含む、該工程。
[本発明1061]
前記副交感神経刺激薬がカルバコールである、本発明1060の方法。
[本発明1062]
前記塩化ベンザルコニウムが約0.005~0.1%の量で前記眼科用調製物中に存在する、本発明1060の方法。
[本発明1063]
偽水晶体患者の少なくとも1つの屈折異常を寛解または軽減するための方法であって、該屈折異常が、近視、遠視、および乱視からなる群より選択され、該方法が、以下の工程を含む、該方法:
該患者の片眼または両眼に眼科用調製物を投与する工程であって、該眼科用調製物が、
治療的有効量の1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬またはその薬学的に許容される塩;および
治療的有効量のαアゴニストもしくはαアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩
を含み、該偽水晶体患者の少なくとも中間視力が、該患者の片眼または両眼に該眼科用調製物を投与することで改善される、該工程。
[本発明1064]
前記眼科用調製物が透過促進剤をさらに含む、本発明1063の方法。
[本発明1065]
前記αアゴニストがブリモニジンである、本発明1063の方法。
[本発明1066]
前記副交感神経刺激薬がカルバコールである、本発明1063の方法。
[本発明1067]
前記透過促進剤が塩化ベンザルコニウムであり、かつ約0.005~0.1%の量で前記眼科用調製物中に存在する、本発明1064の方法。
[本発明1068]
前記副交感神経刺激薬がピロカルピンである、本発明1063の方法。
[本発明1069]
前記副交感神経刺激薬がカルバコールであり、かつ前記αアゴニストがブリモニジンである、本発明1063の方法。
[本発明1070]
副交感神経刺激薬またはその薬学的に許容される塩を与えた偽水晶体患者において、副交感神経刺激薬によって誘導される近視化を阻止するための方法であって、以下の工程を含む、該方法:
該偽水晶体患者の両眼に眼科用調製物を投与する工程であって、該眼科用調製物が、
治療的有効量の1種類もしくは複数種類の該副交感神経刺激薬またはその薬学的に許容される塩;および
治療的有効量のα2アゴニストまたはその薬学的に許容される塩
を含み、該眼科用調製物が、該副交感神経刺激薬によって誘導される近視化(myopic shift)を阻止しながら、該偽水晶体患者の投与された両眼において焦点深度を増加させ、かつ遠見視力を保つ、該工程。
[本発明1071]
前記副交感神経刺激薬がカルバコールである、本発明1070の方法。
[本発明1072]
前記副交感神経刺激薬がカルバコールであり、かつ前記α2アゴニストがブリモニジンである、本発明1070の方法。
これらの態様の一部では、副交感神経刺激薬はカルバコールであり、かつαアゴニストはブリモニジンである。一部の態様では、副交感神経刺激薬はカルバコールであり、かつαアンタゴニストはフェントラミンである。一部の態様では、副交感神経刺激薬はピロカルピンであり、かつαアゴニストはブリモニジンである。一部の態様では、副交感神経刺激薬はピロカルピンであり、かつαアンタゴニストはフェントラミンである。一部の態様では、カルバコール濃度は0.5%~5.0%である。他の態様では、カルバコール濃度は2%~3%である。一部の態様では、ピロカルピン濃度は0.1%未満である。一部の他の態様では、ピロカルピンは4%未満である。一部の態様では、ブリモニジン濃度は0.05%~0.2%である。一部の態様では、フェントラミン濃度は2%未満である。
ピンホールカメラでは、中に入ってくる光の量が少なくなる。中に入ってくる光の量を多くするには焦点が必要なので、使用者は、ピンホールカメラを用いて焦点を合わせる必要はほとんどない。ピンホールを使用すると光学的周辺部(optical periphery)は取り除かれる。本明細書に記載の処置方法および組成物は、ピンホール効果を得て焦点深度を激増させるために薬物を使用する。眼には2つのタイプの筋肉:収縮筋と開大筋がある。これらのタイプの筋肉の両方に作用することで、本明細書に記載の薬物のユニークな組み合わせはピンホール効果を実現して屈折異常を矯正することができる。
一部の屈折異常については、本明細書に記載の薬学的調製物を患者の片眼にだけ投与することも有用な場合がある。場合によっては、前記組成物が患者の両眼に投与された場合に、遠見視力のぼやけ(遠近調節焦点(accommodative focus)の結果)や、かすみ目(瞳孔収縮の結果)が生じることがある。片眼にだけ適用されると、ぼやけや、かすみが減少するか、または完全に緩和して老眼改善の利益が得られる。当初、患者の脳は処置眼と未処置眼との間で補い合い、それによって望ましくない影響を小さくすると考えられた。従って、片眼しか処置されない場合には、処置眼における瞳孔収縮と焦点深度の増加と未処置眼における正常な遠見視力と輝度(brightness)の組み合わせによって、遠見視または近見視の場合に脳は、あらゆる単眼のぼやけを無視するようになる。しかしながら、前記薬学的調製物が両眼に適用された場合には、遠見視力は保たれるが、副交感神経刺激薬またはその薬学的に許容される塩、例えば、ピロカルピンおよびカルバコール単独が近視化(myopic shift)を引き起こし、焦点深度を増加させながら遠見視力を犠牲にして近視を誘導する。両眼に適用された場合に、ブリモニジンなどのα2アゴニストまたはその薬学的に許容される塩を添加すると、近視化が阻止され、かつ遠見視力が保たれる。
カルバコールとブリモニジンの単一併用調製物を用いる態様では、前記調製物中のカルバコール濃度は好ましくは約0.1%~5.0%であり、前記調製物中のブリモニジン濃度は好ましくは約0.20%またはそれ未満である。一部の好ましい態様では、ブリモニジン濃度は約0.15%またはそれ未満である。他の好ましい態様では、ブリモニジン濃度は約0.10%またはそれ未満である。一部の好ましい態様では、カルバコール濃度は約3.0%またはそれ未満である。一部の態様では、カルバコール濃度は5%またはそれ未満である。併用調製物は好ましくは透過促進剤も含む。一部の態様では、透過促進剤には、カルボキシメチルセルロース、BAK、ナノ粒子、シクロデキストリン、およびEDTAの1つまたは複数が含まれるが、これに限定されない。一部の態様では、併用調製物はトロピカミドも含む。併用調製物は、カルバコールおよびブリモニジン点眼剤が個別に与えられるよりも屈折異常を寛解するのに効果が高い。
1種類もしくは複数種類の副交感神経刺激薬と1種類もしくは複数種類のαアゴニストは、薬学的に許容される添加塩として薬学的調製物中に存在してもよい。薬学的に許容される塩は当技術分野において周知であり、本発明の化合物の比較的無毒の無機酸添加塩および有機酸添加塩を指す。塩は、本発明の化合物を最終的に単離および精製している間にインサイチューで調製されてもよく、遊離塩基を適切な有機酸と反応させることによって別々に調製されてもよい。薬学的に許容される、無毒の酸添加塩の例は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸、または有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸と共に形成された、あるいはイオン交換などの当技術分野において用いられる他の方法を使用することによって形成されたアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩(camphorsulfonate)、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヒドロイオジド(hydroiodide)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パルモネート(palmoate)、ペクチネート(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが含まれる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれる。さらなる薬学的に許容される塩には、適宜、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成される無毒のアンモニウム、四級アンモニウム、およびアミンカチオンが含まれる。
前記調製物中に存在するα2アゴニストがブリモニジンである場合に、一部の態様は、約0.3%もしくはそれ未満、0.25%以下、0.2%以下、0.19%以下、0.18%以下、0.17%以下、0.16%以下、0.15%以下、0.14%以下、0.13%以下、0.12%以下、0.11%以下、0.1%以下のブリモニジン、0.09%以下のブリモニジン、0.08%以下のブリモニジン、0.07%以下のブリモニジン、0.06%以下のブリモニジン、もしくは0.05%以下のブリモニジン、またはその薬学的に許容される塩を含んでもよい。