JP2022535602A - 心血管有害事象のリスクのある対象における鉄欠乏症の処置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、心血管有害事象のリスクのある対象における、鉄イソマルトシドなどの鉄炭水化物複合体の静脈内投与による鉄欠乏症の処置の分野に関し、鉄欠乏症の処置によって、対象における心血管有害事象の発生率またはリスクが低減する。【選択図】なし

Description

本発明は、心血管有害事象のリスクのある対象における、静脈内鉄炭水化物複合体投与による鉄欠乏症の処置の分野に関する。
鉄欠乏症(ID)では、体が重要な酸素運搬体であるヘモグロビンを生成する能力を損ない、重要なエネルギー(ATP)生成酵素の機能を損なう。その結果、症状としては、疲労ならびに他のエネルギー欠乏の徴候、例えば、急速な心臓拍動、息切れ、および胸の痛みが挙げられる。
鉄欠乏性貧血(IDA)は、鉄の貯蔵が枯渇した場合に発現する。IDAは広範囲に広がっている。WHOによれば、世界中で約10億人がIDAを患っている。毎日の経口鉄投与は、大多数のIDA患者にとって最も重要な治療であるが、服用遵守の不足、有効性の不足、および副作用に起因してしばしば失敗する。
高用量静脈内(IV)鉄投与は、魅力的な処置選択肢である。患者には、典型的には、年間1~3グラムの鉄が必要であり、高用量静脈内鉄投与は、効果的かつ急速に症状を改善し、ヘモグロビンレベルを上昇させる。高用量静脈内鉄投与は、1回または少数回の来院で処置することができ、静脈内鉄投与は、経口鉄投与に失敗する患者にとっての唯一の選択肢である。
鉄イソマルトシド1000(INN:デルイソマルトース第二鉄)は、新世代の高用量静脈内鉄投与製品に属する。旧来の低用量製品(グルコン酸第二鉄および鉄スクロース)では5~20回の来院が必要となるが、これらの新世代製品では、製品の高速点滴によって、1回または2回の来院で鉄を是正することができる。
鉄イソマルトシドは、IDAの患者であって、(i)経口鉄投与に不耐性である患者、もしくは経口鉄投与への応答が意に満たないものであった患者、もしくは鉄の貯蔵を急速に補充する臨床上の必要性がある場合に;または(ii)非血液透析依存慢性腎臓疾患(NDD-CKD)を有する患者を処置するために;あるいは慢性腎臓疾患の患者における透析に関するIDを処置するために、一般に使用されている鉄炭水化物複合体である。これは、欧州連合および他の多くの国において、Monofer(登録商標)、Monoferric(登録商標)、およびDiafer(登録商標)の商品名で市販されている。鉄イソマルトシドの典型的な治療レジメンは、1000mgの鉄の単回点滴、静脈内点滴として与えられる、最大20mg鉄/kg体重の元素鉄の用量、または最大500mg、最大週3回の静脈内ボーラス注射としての用量のいずれかからなり、Ganzoni式または次の表のいずれかを使用して、累積鉄を決定する必要がある。
Figure 2022535602000001
IDは、深刻な帰結を有する。慢性心不全(CHF)患者において、鉄が正常な状態の患者に対して、IDの患者は、死亡または入院加療のリスクが上昇すると報告されている。生活の質(QoL)は著しく影響を受け、鉄貯蔵が回復すると、急速に改善する。例えば、非盲検非対照設計で、20人の虚弱な高齢のCHF患者というかなり小さい試料サイズでは、比較的高用量において、最初の試験用量はなく、鉄イソマルトシド1000の単回高速静脈内点滴をしたが、非常に良好な耐容性を示し、QoL尺度を改善した。Hildebrandtら、2010。
集めた実験および臨床上のエビデンスによって、慢性心不全(慢性HF)の患者において、IDが潜在的な治療標的であると考えるための論拠が提供される。実際に、近年、それぞれ450人超および300人超の患者を包含する、FAIR-HF治験(鉄欠乏症および慢性心不全の患者における、カルボキシマルトース第二鉄のアセスメント、Ankerら、2009も参照されたい)ならびにCONFIRM-HF治験(鉄欠乏症と慢性心不全との組合せの患者におけるカルボキシマルトース第二鉄の性能評価、Ponikowskiら、2015も参照されたい)を含む複数の研究によって、慢性HFの鉄欠乏症患者における静脈内鉄投与治療の効果が調査されている。集約したデータに基づいて、収縮期HF(HFrEF)の鉄欠乏症患者における、静脈内鉄投与治療(鉄スクロースまたはカルボキシルマルトース第二鉄を使用)の効果を評価した5つのランダム化対照治験のメタ解析、Jankowskaら、2016では、収縮期HFの鉄欠乏症患者における静脈内鉄投与治療によって、アウトカムが改善すること、HF症状が緩和されること、運動能力および生活の質が改善すること、ならびにHFによる入院加療のリスクが低減することを示すエビデンスがあると述べられている。しかしながら、死亡数および有害事象(AE)の発生率は、メタ解析をした5つの研究において、同様であった。
鉄の補充がどのようにCHFに有益性を付与するか、特に、どこでHb変化が最少となるかを、機序の観点から探究する試みもなされてきた。例えば、ランダム化二重盲検プラセボ対照治験において、鉄イソマルトシド1000の単回全量点滴によって、鉄の貯蔵が満たされ、点滴の2週間後、骨格筋のエナジェティクスが増大することが示された。Charles-Edwardsら、2019。同じランダム化二重盲検治験からのデータに基づいて、左室駆出率LVEF≦45%である鉄欠乏症CHF患者において、鉄イソマルトシド1000の単回全用量点滴によって鉄が満たされることが観察され、P波のばらつきが減少した。Jaumdallyら、2019。
しかしながら、静脈内鉄投与治験のいずれも、主な心血管アウトカムに関する効果について、試験を促進するものではなかった。そのため、急性および慢性心不全の診断および処置についての2016 ESCガイドラインでは、HFpEF/HFmrEFにおいて鉄欠乏症を処置することの効果は未知であると結論付けられた。FAIR-HFおよびCONFIRM-HFからの知見に基づいて、European Society of Cardiology(ESC)ガイドラインでは、HF症状を緩和し、運動能力および生活の質を改善するために、鉄欠乏症の患者(血清フェリチン<100μg/L、またはフェリチンが100~299μg/Lの間かつトランスフェリン飽和度<20%)において、静脈内カルボキシマルトース第二鉄投与を検討することが推奨されている。Ponikowskiら、2016。同様に、American College of Cardiology(ACC)、American Heart Association(AHA)の臨床診療ガイドラインに関するタスクフォース、およびHeart Failure Society of America(HSFA)は、New York Heart Association(NYHA)クラスIIおよびIII HFかつ鉄欠乏症(フェリチン<100ng/mL、またはトランスフェリン飽和度が20%未満の場合には100~300nm/mL)の患者において、機能的状態およびQoLを改善するためには、静脈内鉄置換が妥当でありうると推奨している。Yancyら、2017。
この理解に基づいて、鉄貯蔵を満たすだけでなく、慢性心不全の管理について患者に有益性が提供される、鉄欠乏症を処置する方法を提供することが、明らかに必要である。
この発明の一態様では、心血管有害事象のリスクのある対象において、鉄欠乏症を処置する。したがって、鉄イソマルトシドによる処置のために、非経口鉄投与についての適格性を規定するのに一般に使用される基準、すなわち、IDもしくはIDAの診断、および/または経口鉄投与に耐容性を示す能力、もしくはこれを吸収する能力を潜在的に欠くことに基づくだけでなく、心血管有害事象を経験するリスクにも基づいて、対象が選択される。
この発明の第2の態様では、鉄欠乏症の処置によって、対象における心血管有害事象の発生率またはリスクが低減する。したがって、鉄イソマルトシドによる処置のために、非経口鉄投与についての適格性を規定するのに一般に使用される基準、すなわち、IDもしくはIDAの診断、および/または経口鉄投与に耐容性を示す能力、もしくはこれを吸収する能力を潜在的に欠くことに基づいて、ならびに心血管有害事象を経験するリスクに基づいて選択された対象は、対象における心血管有害事象の発生率またはリスクの低減による有益性を受ける。
本発明の第3の態様は、本明細書で定義される心血管有害事象の発生率またはリスクを低減する、本明細書で定義される対象の特定の群の処置に関する。
これらの態様に従って、本発明は特に、鉄欠乏症を処置する治療方法であって、選択された対象のサブグループに、鉄イソマルトシド、および鉄イソマルトシド1000と、使用されて心血管有害事象のリスクのある対象を処置するか、またはそのような心血管有害事象のリスクを上昇させるかのいずれかである他の薬物との組合せを投与することを含む、方法に関する。
前記第1の実施形態では、本発明は、心血管有害事象のリスクのある対象において鉄欠乏症を処置する方法であって、有効量の鉄イソマルトシドを投与することを含む、方法に関する。
前記第1の態様のうちの複数の実施形態では、心血管有害事象のリスクのある対象は、以下のリスク因子のうちの1つまたは複数を有する対象である:
(i)心筋梗塞(MI)、特にSTEMIまたは非STEMIの履歴を有する対象;
(ii)脳卒中の履歴を有する対象;
(iii)心房細動(AF)、特に、初めて診断されたAF、発作性(Proxysmal)AF、もしくは持続性AFの履歴を有する対象;
(iv)うっ血性心不全、特に駆出率が低下した心不全(HFrEF)の履歴を有する対象;
(v)心臓弁障害の履歴を有する対象;
(vi)高血圧症の履歴を有する対象;
(vii)糖尿病を有する対象;
(viii)肥満症の履歴を有する対象;
(ix)高齢の対象、特に60歳以上、65歳以上、70歳以上、75歳以上、もしくは80歳以上の対象;
(x)喫煙者;
(xi)飲酒者;
(xii)甲状腺機能亢進症および/または関連する甲状腺中毒症を有する対象;
(xiii)慢性閉塞性肺障害(COPD)を有する対象;
(xiv)心筋症、特に遺伝性心筋症、もしくは後天性心筋症を有する対象;
(xv)感染症のない全身性炎症であって、全身性炎症が特に、約2~3mg/Lの範囲を超えるC-反応性タンパク質(CRP)の増加に関係するものを有する対象;
(xvi)透析の対象であって、透析が特に、血液透析もしくは腹膜透析である、対象;
(xvii)以下のうちの1つまたは複数によって処置された対象:
a)プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、例えば、ダプロデュスタット、バダデュスタット、ロキサデュスタット、モリデュスタット、およびデジデュスタ(desidusta)を含む、低酸素誘導因子(HIF)シグナル伝達経路のモジュレーター;
b)赤血球造血刺激剤(ESA)、例えば、エリスロポエチン(Epo)、エポエチンアルファ(Procrit/Epogen)、エポエチンベータ(NeoRecormon)、ダルベポエチンアルファ(Aranesp)、およびメトキシポリエチレングリコール-エポエチンベータ(Mircera);ならびに
c)ヘプシジンモジュレーター、例えば、ヘプシジンアゴニストもしくはヘプシジンアンタゴニスト;
(xviii)抗凝血剤および/もしくはNSAIDによって処置された対象;
(xix)遺伝性出血性毛細管拡張症を有する対象;または
(xx)遺伝性鉄剤不応性鉄欠乏性貧血を有する対象。
前記第1の態様の特定の実施形態では、本発明は、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象において鉄欠乏症を処置する方法であって、有効量の鉄イソマルトシドを投与することを含む、方法に関する。一実施形態によれば、対象はまた、心筋梗塞(MI)の履歴および/または脳卒中の履歴を有する。好ましい実施形態によれば、CHFは、駆出率が低下した心不全(HFrEF)である。
前記第1の態様のさらに特定の実施形態では、心血管有害事象のリスクのある対象、またはうっ血性心不全の履歴を有する対象は、慢性腎臓疾患(CKD)を有する。前記第1の態様の別の特定の実施形態では、心血管有害事象のリスクのある対象、またはうっ血性心不全の履歴を有する対象は、慢性腎臓疾患(CKD)を有しない。前記第1の態様の別の特定の実施形態では、心血管有害事象のリスクのある対象は、慢性腎臓疾患(CKD)を有し、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象である。
一実施形態によれば、うっ血性心不全の履歴を有する対象は、HFrEFを有する。別の実施形態によれば、うっ血性心不全の履歴を有する対象は、New York Heart Association(NYHA)クラスII~IVにおけるうっ血性心不全、特にNew York Heart Association(NYHA)クラスII~IVにおけるHFrEF型うっ血性心不全を有する。
前記第2の態様の実施形態では、本発明は、心血管有害事象のリスクのある対象において鉄欠乏症を処置する方法であって、鉄欠乏症の処置によって、対象における心血管有害事象の発生率またはリスクが低減し、方法が、有効量の鉄イソマルトシドを投与することを含む、方法に関する。
前記第2の態様の一実施形態では、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心臓に影響を及ぼす事象(心臓有害事象);末梢血管系に影響を及ぼす事象(末梢血管有害事象);脳血管系に影響を及ぼす事象(脳血管有害事象);呼吸器、胸部および縦隔有害事象;一般有害事象;ならびに感染症および侵襲からなる群から選択される。一実施形態によれば、心臓有害事象は、うっ血性心不全、心房細動、心拍停止、心房ブロック、心不全、洞房結節機能不全、急性心筋梗塞、徐脈、狭心症、心筋虚血、および心室性期外収縮からなる群から選択され;末梢血管有害事象は、高血圧症、収縮期血圧の上昇、血圧の上昇、トロポニンの上昇、および低血圧症からなる群から選択され;脳血管有害事象は、脳血管性偶発症状、脳梗塞、および一過性虚血発作からなる群から選択され;呼吸器、胸部および縦隔有害事象は、呼吸困難および肺浮腫からなる群から選択され;一般有害事象は、胸痛および死亡からなる群から選択され;感染症および侵襲は、敗血症性ショックである。
本発明のこの第2の態様の好ましい実施形態では、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心臓に影響を及ぼす事象(心臓有害事象);末梢血管系に影響を及ぼす事象(末梢血管有害事象);脳血管系に影響を及ぼす事象(脳血管有害事象);および死亡からなる群から選択される。好ましい実施形態によれば、心臓に影響を及ぼす事象(心臓有害事象)は、うっ血性心不全、心筋梗塞、不安定狭心症、および不整脈であり;末梢血管系に影響を及ぼす事象(末梢血管有害事象)は、高血圧症であり;脳血管系に影響を及ぼす事象(脳血管有害事象)は、脳卒中である。
本発明のこの第2の態様の特に好ましい実施形態では、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、うっ血性心不全、心筋梗塞、不安定狭心症、不整脈、高血圧症、低血圧症、脳卒中、および死亡からなる群から選択される。
本発明のこの第2の態様のさらなる特に好ましい実施形態では、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、うっ血性心不全、心房細動、高血圧症、および/または心拍停止である。
一実施形態によれば、うっ血性心不全に関する具体的な心血管有害事象は、うっ血性心不全に起因する入院加療または死亡である。一実施形態によれば、うっ血性心不全に関する具体的な心血管有害事象は、うっ血性心不全の悪化に起因する入院加療である。本発明は特に、CV有害事象がCHFであるCV有害事象を対象とする。
前記第3の態様の実施形態では、本発明は、対象において鉄欠乏症を処置する方法であって、鉄欠乏症の処置によって、対象における心血管有害事象の発生率またはリスクが低減し、方法が、有効量の鉄イソマルトシドを投与することを含み、
対象が、
(A)心血管有害事象のリスクのある対象;
(B)うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象;または
(C)うっ血性心不全(CHF)の履歴を有しかつ心血管有害事象のリスクのある対象
であり、
発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、
(a)うっ血性心不全、心筋梗塞、不安定狭心症、不整脈、高血圧症、低血圧症、脳卒中、および死亡;
(b)うっ血性心不全;
(c)心房細動;
(d)高血圧症;または
(e)心拍停止
からなる群から選択される、方法に関する。
本発明のこの第3の態様の好ましい実施形態では、対象は、心血管有害事象のリスクのある対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、うっ血性心不全である。
本発明のこの第3の態様のさらに好ましい実施形態では、対象は、心血管有害事象のリスクのある対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心房細動である。
本発明のこの第3の態様のさらに好ましい実施形態では、対象は、心血管有害事象のリスクのある対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心拍停止である。
本発明のこの第3の態様のさらに好ましい実施形態では、対象は、うっ血性心不全の履歴を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心拍停止もしくはうっ血性心不全、または両方である。
本発明のこの第3の態様のさらに好ましい実施形態では、対象は、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心房細動である。
本発明のこの第3の態様のさらに好ましい実施形態では、対象は、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心拍停止である。
本発明のこの第3の態様の特定の実施形態では、本明細書で定義される対象は、心血管有害事象のリスクのあるおよび/またはうっ血性心不全の履歴を有する対象であり、対象は、慢性腎臓疾患(CKD)を有する。
本発明のこの第3の態様の別の特定の実施形態では、本明細書で定義される対象は、心血管有害事象のリスクのあるおよび/またはうっ血性心不全を有する対象であり、対象は、慢性腎臓疾患(CKD)を有しない。
これらの実施形態では、慢性腎臓疾患(CKD)は、好ましくは、保存期慢性腎臓疾患(NDD-CKD)である。
本発明のこの第3の態様のさらにいっそう好ましい実施形態では、うっ血性心不全の履歴を有する対象は、HFrEF、NYHAクラスII~IVにおけるうっ血性心不全、または両方を有する。
本発明のこの第3の態様の特に好ましい実施形態では、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、うっ血性心不全の悪化に起因する心血管性の死亡および/または入院加療である。
本発明によれば、鉄欠乏症は、好ましくは、TSAT<20%および/またはフェリチン<100μg/Lと定義される。本発明の一実施形態では、鉄欠乏症は鉄欠乏性貧血である。
本発明のさらなる実施形態では、処置する対象は、慢性的な鉄の低下または吸収不良を有する。前記第1の態様のさらなる実施形態では、対象は、経口鉄投与に耐容性を示さない、または経口鉄投与が有効でない対象である。
本発明における使用に好ましい鉄炭水化物複合体は、鉄イソマルトシド、とりわけデルイソマルトース第二鉄(デルイソマルトシド第二鉄と呼ばれることもある)である。
CKD-04試験、IDA-03試験およびCKD-04/IDA-03の組合せ試験についての好ましい条件で0.25%以上の発生率を有する判定および確認された処置により発現した複合心血管(CV)有害事象の発生率の分析を要約する表である。 全患者、CHFを有するもしくは有さない患者、またはCVリスクを有する患者におけるCKD-04試験、IDA-04試験およびCKD-04/IDA-03の組合せ試験についての処置により発現したうっ血性心不全有害事象の分析を要約する表である。 鉄イソマルトシドでの処置と鉄スクロースでの処置とを比較した、CVリスクを有し、病歴でCHFを有するまたは有さない患者におけるCKD-04試験およびCKD-04/IDA-03の組合せ試験についての処置により発現したうっ血性心不全有害事象(ロジスティック回帰)の分析を要約する表である。 特定の処置により発現した複合CV有害事象を経験した患者の割合を示すグラフである(鉄イソマルトシド1000:左側の棒、鉄スクロース:右側の棒)。 処置により発現したCHF有害事象を経験した患者の割合を示すグラフである(CKD-04およびIDA-03の組合せ;鉄イソマルトシド1000:左側の棒、鉄スクロース:右側の棒)。 判定された複合有害心血管事象(CKD-04)の確率を示すカプランマイヤー図である。 CKD-04/IDA-03の組合せ試験についての病歴でCHFを有する患者のヘモグロビン(g/dL)のベースラインからの変化を示すグラフである(鉄イソマルトシド1000:破線、鉄スクロース:実線)。 CKD-04/IDA-03の組合せ試験についての病歴でCHFを有する患者のフェリチン(ng/mL)のベースラインからの変化を示すグラフである(鉄イソマルトシド1000:破線、鉄スクロース:実線)。 CKD-04/IDA-03の組合せ試験についての病歴でCHFを有する患者のTSAT(%)のベースラインからの変化を示すグラフである(鉄イソマルトシド1000:破線、鉄スクロース:実線)。 IIM1000、VenoferおよびFCMでの処置後、処置により発現した複合CV有害事象を経験した患者の割合を示すグラフである(IIM1000に対するCKD-04/IDA-03の組合せ試験(Ferwon試験);Injectaferに関するFDA CDERによる報告書に基づくVenoferおよびFCMを用いた試験)。 VenoferおよびFCMを用いた試験(Injectaferに関するFDA CDERによる報告書)と比較した、IIM1000を用いたCKD-04試験、IDA-03試験およびCKD-04/IDA-03の組合せ試験(Ferwon試験)についての有害事象の分析を要約する表である。
本記載がより容易に理解されうるように、ある特定の用語をまず定義する。追加の定義は、発明を実施するための形態の全体を通じて説明される。
対象の「処置」または「治療」とは、疾患に関係する症状、合併症、状態、または生化学的兆候の発症、進行、発現、重症度、または再発を後進、緩和、回復、阻害、減速、または防止することを目的に、対象に対して実行する任意のタイプの処置もしくはプロセス、または対象への活性剤の投与を指す。
「対象」としては、任意のヒトまたは非ヒト動物が挙げられる。「非ヒト動物」という用語には、限定するものではないが、脊椎動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ならびにげっ歯類、例えばマウス、ラット、およびモルモットが含まれる。好ましい実施形態では、対象はヒトである。「対象」または「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
薬物または治療剤の「治療有効量」または「治療有効用量」とは、単独で、または別の治療剤と組み合わせて使用した場合に、疾患の発症に対して対象を保護する、または疾患の後退を促進する、病徴の重症度の減少、無病徴期間の頻度および継続期間の増加、または疾患の苦痛に起因する障害もしくは不能の防止によるエビデンスに基づいた、いずれかの量の薬物である。治療剤が疾患の後退を促進する能力は、当業者である施術者に公知の多様な方法、例えば、ヒトにおいては臨床治験中の対象、動物においてはヒトにおける有効性の予測的なモデル系を使用して、またはin vitroアッセイにおける薬剤の活性のアッセイによって評価することができる。
この文章の目的のため、mgまたはgにおける鉄炭水化物複合体の用量を明記する場合、文献の慣習に一致して、値は、mgまたはgにおいて提供される元素鉄の量を指す。
A.鉄炭水化物複合体
鉄炭水化物複合体、および鉄炭水化物複合体と追加の薬物との組合せを投与することを含む、鉄欠乏症を処置する治療方法であって、鉄炭水化物複合体がある特定の特性を有し、これによって、処置下の対象にある一定の効果を発揮する、治療方法を本明細書に記載する。したがって、本発明の方法は、作用機序を共有する複合体に適用できる。例えば、鉄炭水化物複合体は、iFGF23(非損傷FGF23)の有意な上昇を誘導するべきではない。特にカルボキシマルトース第二鉄(FCM)では、iFGF23が有意に上昇するが(例えば、WO2013/134273A1を参照されたい)、臨床治験の結果は、鉄イソマルトシド1000(Monofer(登録商標))によってiFGF23が上昇し、これによってiFGF23媒介効果を引き起こすリスクは低いことのエビデンスを提供している。例えばWolfら、2019を参照されたい。
したがって、この発明の好ましい鉄炭水化物複合体は、鉄イソマルトシド(IIM)である。本明細書で使用される「鉄イソマルトシド」という用語は、鉄、例えば酸化水酸化鉄、およびマトリックス様構造におけるイソマルトシドとしての鉄を含む、コロイド複合体を指す。本明細書で使用される「イソマルトシド」という用語は、水素化オリゴイソマルトース(オリゴイソマルトシド)を指す。
特定の実施形態では、イソマルトシドは、500~7,000Da、例えば500~3,000Da、700~1,400Da、特に約1,000Daの重量平均分子量Mを有する、水素化多糖類/オリゴ糖類の混合物である。このような水素化多糖/オリゴ糖の数平均分子量(M)は、好ましくは400~1,400Daの範囲内であり、これらの分子の90重量%は、3,500Da未満、特に2,700Da未満の分子量を有し、分子の残りの10%の分子量は、4,500Da未満、特に3,200Da未満である。例えば、前記水素化多糖/オリゴ糖は、水素化ポリグルコース、オリゴグルコース、またはこれらの混合物であり、例えば、水素化デキストラン、水素化デキストリン、もしくは水素化オリゴイソマルトース(オリゴイソマルトシド)、またはこれらの混合物であり、水素化オリゴイソマルトース、特に分子の大部分(例えば、少なくとも60%、例えば70~80%)が3~6個の単糖単位を有する水素化オリゴイソマルトースが好ましい。したがって、本発明の好ましい実施形態では、鉄炭水化物複合体は、鉄水素化オリゴイソマルトース、特に、オリゴイソマルトシド分子の大部分(例えば、少なくとも60%、例えば70~80%)が3~6個の単糖単位を有する鉄(III)水素化オリゴイソマルトース、例えば鉄(III)オリゴイソマルトシド1000(INN名:デルイソマルトース第二鉄)である。鉄イソマルトシド類は、典型的には、酸化水酸化鉄と、水素化イソマルトース(イソマルトシド)鎖との強コロイド複合体によって特徴付けられ、鉄を徐々に放出する。
上記特定の実施形態では、水素化多糖/オリゴ糖のダイマー糖の含有量は、水素化多糖/オリゴ糖の総重量を基準として、好ましくは2.9重量%以下、2.5重量%以下、または2.3重量%以下、特に2.1重量%以下、または1.5重量%以下、最も好ましくは1.0重量%以下である。好ましくは、本発明の鉄炭水化物複合体を調製するために使用する水素化多糖/オリゴ糖の調製物は、0.5重量%以下のモノマー糖の含有量を有する。このような水素化多糖/オリゴ糖調製物から調製した鉄水素化デキストラン複合体は、典型的には、120,000~180,000Da、特に130,000~160,000Daの範囲内の見かけの分子量(M)を有する。水素化多糖/オリゴ糖調製物を鉄調製物と接触させる前に、高分子量水素化多糖類および/または低分子量水素化多糖類を除去するために、調製物を膜プロセスによって精製することができる。特定の実施形態では、水素化多糖/オリゴ糖調製物は、340Daと800Daとの間のカットオフ値を有する、1つまたは複数の膜プロセスによって精製されている。さらにより特定の実施形態では、水素化多糖/オリゴ糖調製物は、2,700Da超の分子量を有する多糖類を阻止できるカットオフ値を有する膜を使用する、1つまたは複数の膜プロセスによって精製されており、任意選択で続いてさらに加水分解させ、続いて、340Daと800Daとの間のカットオフ値を有する膜を使用する、1つまたは複数の膜プロセスを行う。あるいは、前記膜プロセスによる精製を、水素化の前に行う。
特に好ましい実施形態では、本発明の鉄イソマルトシドは、式:
Oを含有する{FeO(1-3X)(OH)(1+3X)(C 3-},(C10(-C10-)(C13,(MeCl)
[式中、
Xは、0.0311±0.0062、特に0.0311±0.0031であり;
Rは、0.1400±0.0420、特に0.1400±0.0210であり;
Zは、0.4900±0.1470、特に0.4900±0.0735であり;
Yは、0.1400±0.0130、特に0.1400±0.0065であり;
Meは、一価の金属イオン、例えばナトリウムイオンまたはカリウムイオンであり、好ましくはナトリウムイオンである]
を有する化合物である。
さらなる特に好ましい実施形態では、本発明の鉄複合体化合物は、式:
{FeO(1-3X)(OH)(1+3X)(C 3-},(HO),(C10(-C10-)(C13,(MeCl)
[式中、
Xは、0.0311±0.0062、特に0.0311±0.0031であり;
Tは、0.2500±0.1250、特に0.2500±0.24750であり;
Rは、0.1400±0.0420、特に0.1400±0.0210であり;
Zは、0.4900±0.1470、特に0.4900±0.0735であり;
Yは、0.1400±0.0130、特に0.1400±0.0065であり;
Meは、一価の金属イオン、例えばナトリウムイオンまたはカリウムイオンであり、好ましくはナトリウムイオンである]
を有する化合物である。
特定の実施形態では、鉄複合体は、23~39重量%の鉄含有量(乾燥物質について決定される)を有し、任意選択で、約100mg/mlを有する注射可能な溶液の形態で存在する。
鉄イソマルトシド類は、例えば、WO2010/108493A1およびWO2019/048674A1に記載されているように入手可能である。鉄イソマルトシドの好ましい例は、多くの他の国において、Monofer(登録商標)、Monoferric(登録商標)、またはDiafer(登録商標)の商品名で市販されている。
この発明において使用するための別の特定の鉄炭水化物複合体は、ベペクテート第二鉄(ferric bepectate)(FBP)である。本明細書で使用される「ベペクテート第二鉄」という用語は、ヒドロキシエチルアミロペクチン誘導体によって被覆された、例えば酸化水酸化鉄としての、鉄核を含むコロイド複合体を指す。ベペクテート第二鉄はまた、ポリグルコフェロン(polyglucoferron)とも呼ばれている。ベペクテート第二鉄およびその製造は、例えばWO2012175608A1に開示されている。簡潔に記すと、ヒドロキシエチルデンプンを、水中に溶解させる。次いで、pH値を、8.0~10.0の値に調整する。その後、シアニド化合物を、ヒドロキシエチルデンプン溶液に加える。次いで、溶液を80~99℃の温度に加熱して、第1の期間、この温度を保つ。最後に、pH値を2.0~4.0の値に調整し、溶液を50~90℃の温度にして、第2の期間、この温度を保つ。この方法によって製造されるデンプンは、末端の少なくとも1つに、ヘプトン酸残基を有することによって特徴付けられる。したがって、このようなデンプンは、デンプン分子に存在する末端グルコシル残基の数に応じて、1分子当たり複数のヘプトン酸残基を有しうる。このヘプトン酸残基によって、ヒドロキシエチルデンプンの親水性が上昇し、例えば金属イオン、例えば鉄イオンのような配位子とともに、このヒドロキシエチルデンプンによって形成される、複合体の安定性が上昇する。より一般的に言うと、ヒドロキシエチルデンプン(HES)は、単一のグルコシル残基のヒドロキシル基の一部が、ヒドロキシエチル残基によって置換されているデンプンである。ヘプトン酸残基による修飾は、ヒドロキシエチルデンプンの末端グルコシル残基を、ヘプトン酸残基に変換することによって起こる。好ましくは、この方法に使用するヒドロキシエチルデンプンは、200,000g/mol未満、特に130,000g/mol未満、特に100,000g/mol未満、特に90,000g/mol未満、特に80000g/mol未満、非常に特定的には75,000g/mol未満の重量平均分子量(Mw)を有する。非常によく好適な分子量は、55,000g/mol~85,000g/molの範囲内である。このようなヒドロキシエチルデンプンは、現在の医学分野において使用される(非修飾)ヒドロキシエチルデンプンよりも、かなり低い分子量を有する。ヒドロキシエチルデンプンの分子量を決定するための好適な方法は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)である。好ましい実施形態では、ヒドロキシエチルデンプンは、0.4~0.6、特に0.45~0.55の平均モル置換度を有する。0.50前後の平均モル置換度が特に好ましい。平均モル置換度は、グルコシル残基1つ当たりの、ヒドロキシエチル残基によって置換されたヒドロキシル基の量についての尺度である。各グルコース単位(またはグルコシル残基)は、3つのヒドロキシル基を有するため、平均モル置換度は、最大で3になることができる。0.5の平均モル置換度は、(平均または統計基準において、)1つおきのグルコシル残基毎に1つのヒドロキシル基が、ヒドロキシエチル残基によって置換されていることを指示する。好ましい実施形態では、ヒドロキシエチルデンプンは、55,000~85,000g/mol、好ましくは70,000g/mol前後の重量平均分子量、および0.45~0.55、特に0.50前後の平均モル置換度を有する。70,000g/mol±15,000g/molの分子量および0.5±0.05の平均モル置換度を有する、このようなヒドロキシエチルデンプンを、HES 70/0.5と呼ぶこともできる。このヘプトン酸修飾ヒドロキシエチルデンプン、HES 70/0.5を製造するためのプロセスは、WO2019/048674A1の実施例1に、鉄複合体の形成は実施例2に記載されており、そのすべてが参照によって組み込まれる。
鉄イソマルトシド類は、本発明による使用のために好ましい鉄炭水化物複合体である。
B.治療方法
対象の選択されたサブグループに、および/または規定された投与レジメンによって、鉄イソマルトシドを投与することを含む、鉄欠乏症を処置する治療方法を、本明細書に記載する。したがって、本発明はまた、前記方法に使用するための鉄イソマルトシド、鉄欠乏症を処置するための鉄イソマルトシドの使用、およびまたは鉄欠乏症を処置するための医薬の製造における、鉄イソマルトシドの使用にも関する。
I.処置する対象
本発明の方法は、典型的には、それを必要とする対象に対して実行される。本発明の方法を必要とする対象は、鉄欠乏症を有する、鉄欠乏症と診断された、鉄欠乏症を有する疑いがある、または鉄欠乏症を発現するリスクのある対象である。鉄欠乏性貧血(IDA)は、鉄の貯蔵が枯渇した場合に発現する。IDを患う対象がIDAを有することもあるが、IDAの対象は必然的にIDを患う。IDおよびIDAを診断する方法は、当技術分野において十分に確立されており、臨床診療において一般に使用されている。
鉄欠乏症を有する、鉄欠乏症と診断された、鉄欠乏症を有する疑いがある、または鉄欠乏症を発現するリスクのある対象は、対象において経口鉄投与が耐容性を示さない、または有効でない場合、すなわち、経口鉄投与に不耐性である対象、または経口鉄投与への応答が意に満たないものであった対象の場合、鉄炭水化物複合体の形態で、非経口、特に静脈内鉄投与を、すなわち、本発明による鉄イソマルトシドを与えられることになる。静脈内鉄投与が指示される別の状況は、迅速な鉄の送達の必要性、すなわち、鉄貯蔵を迅速に満たす臨床上の必要性がある場合である。
鉄欠乏症および貧血
鉄貯蔵パラメーター
鉄欠乏症を有する対象は、低いまたは不十分な、全身の鉄の状態のマーカーを示すことがある。これは、このような対象が、適正な鉄レベルを維持するのに十分な鉄を、体内に貯蔵していない場合があることを意味する。工業国に住む、十分に栄養を摂った健康な大多数の人は、およそ4~5グラムの体内に貯蔵された鉄を有する。この鉄のうちの約2.5gは、血液を通じて酸素を運ぶ、ヘモグロビンに含有されている。残りのおよそ1.5~2.5グラムの鉄のうちの大部分は、鉄結合複合体に含有されており、すべての細胞内に存在するが、骨髄ならびに肝臓および脾臓などの臓器ではより高濃度となる。肝臓が貯蔵する鉄は、健康体における、鉄の主要な生理学的蓄えである。体の鉄含有量全体のうち、約400mgは、酸素貯蔵(ミオグロビン)またはエネルギー生成酸化還元反応の実行(チトクロムタンパク質)などの細胞プロセスのために鉄を使用する、タンパク質において利用される。貯蔵された鉄に加えて、少量の鉄、典型的には約3~4mgは、トランスフェリンと呼ばれるタンパク質に結合して、血液の血漿を通じて循環する。
遊離可溶型第一鉄(鉄(II)またはFe2+)は毒性があり、典型的には、非常に低濃度においてのみ、体内に存在する。
鉄欠乏症の個体では、まず、体内に貯蔵された鉄が枯渇する。体が利用する鉄の大部分は、ヘモグロビンによって必要とされるため、鉄欠乏性貧血は、鉄欠乏症の主要な臨床症状発現である。臓器を含めた組織への酸素運搬は不可欠であり、重度の貧血は有害であり、全身性酸素不足に起因して、場合によっては生命にかかわる。鉄欠乏症の対象は、細胞内プロセスに必要な鉄を細胞が使い果たすよりもかなり前に、酸素枯渇によって生じる臓器の損傷を患うことになり、一部の場合では死亡しうる。
複数の全身の鉄の状態のマーカーがあり、適切な健康を維持するのに十分な鉄貯蔵を、対象が有するかを決定するために測定されうる。これらのマーカーは、循環性鉄貯蔵、鉄結合複合体に貯蔵された鉄、または両方でありえ、典型的には鉄貯蔵パラメーターとも呼ばれる。鉄貯蔵パラメーターとしては、例えば、ヘマトクリット、ヘモグロビン濃度(Hb)、総鉄結合能(TIBC)、トランスフェリン飽和度(TSAT)、血清鉄レベル、肝臓鉄レベル、脾臓鉄レベル、および血清フェリチンレベルを挙げることができる。これらのうち、ヘマトクリット、ヘモグロビン濃度(Hb)、総鉄結合能(TIBC)、トランスフェリン飽和度(TSAT)、および血清鉄レベルは、循環性鉄貯蔵として一般に知られる。肝臓鉄レベル、脾臓鉄レベル、および血清フェリチンレベルは、一般に、貯蔵鉄または鉄結合複合体に貯蔵された鉄と呼ばれる。
上の血液パラメーターは血清において決定されるが、同様に血漿において決定することもできることに留意されたい。血清レベルおよび血漿レベルは相関性があり、互いに変換することができる。
本開示は、それを必要とする対象において1つまたは複数の鉄貯蔵パラメーターを改善する方法を提供する。少なくとも1つの鉄貯蔵パラメーターは、血清フェリチンレベル、トランスフェリン飽和度(TSAT)、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、総鉄結合能、鉄吸収レベル、血清鉄レベル、肝臓鉄レベル、脾臓鉄レベル、およびこれらの組合せから選択されうる。
一実施形態では、少なくとも1つの鉄貯蔵パラメーターはヘモグロビン濃度であり、改善には、対象のヘモグロビン濃度の上昇を含む。他の実施形態では、少なくとも1つの鉄貯蔵パラメーターはトランスフェリン飽和度であり、改善には、対象のトランスフェリン飽和度の上昇を含む。さらに他の実施形態では、少なくとも1つの鉄貯蔵パラメーターは血清フェリチンレベルであり、改善には、対象の血清フェリチンレベルの上昇を含む。
血清フェリチン
肝臓が貯蔵するフェリチンは、体内に貯蔵された鉄の主要な供給源である。フェリチンは、鉄を貯蔵し、制御された様式で鉄を放出する、細胞内タンパク質である。医学的には、血液試料中および/または肝臓組織の試料中に存在するフェリチンの量は、肝臓に貯蔵された鉄の量を反映している(フェリチンはどこにでもあり、肝臓に加えて、体内の多くの他の組織に見出すことができるが)。フェリチンは、鉄を肝臓に無毒性形態で貯蔵し、必要な領域に運搬する役割を果たす。健康な対象では、ときとして基準範囲とも呼ばれる、正常なフェリチンの血液血清レベルは、通常、男性については30~300ng/ml、女性については15~200ng/mlである。心血管有害事象のリスクのある患者では、正常なフェリチン血液血清レベルは、通常、100ng/ml超である。しかしながら、鉄欠乏症の対象では、典型的には、フェリチンによる結合および肝臓への貯蔵に利用可能な鉄の量が減少するにつれて、血清フェリチンレベルが顕著に低減するが、これは、鉄を吸収し、貯蔵する能力を体が失うために起こる。
本明細書で使用される場合、「血清フェリチン」(s-フェリチン)という用語は、2サイト免疫酵素(「サンドイッチ」)アッセイを使用して測定される、血液血清中のフェリチンのレベルを指す。フェリチンは、体のための主な鉄貯蔵タンパク質である。フェリチンの濃度は、体の総鉄貯蔵に直接的に比例するため、血清フェリチンレベルは、鉄の状態の評価における一般的な診断ツールとなっている。鉄欠乏性貧血の対象は、正常な対象のおよそ1/10の血清フェリチンレベルを有し、鉄過剰症(ヘモクロマトーシス、ヘモジデリン沈着症)の対象は、正常よりも遥かに高い血清フェリチンレベルを有する。フェリチンレベルはまた、早期段階において鉄欠乏症を検出する、高感度の手段を提供する。成人と子供との両方において、慢性炎症は、鉄の蓄えに対して不相応なフェリチンレベルの上昇をもたらす。高いフェリチンレベルは、急性および慢性肝臓疾患、慢性腎不全、ならびに一部のタイプの腫瘍性疾患にも観察される。
一部の実施形態では、本明細書で開示する方法によって処置した対象は、血清フェリチンレベルの上昇を経験する。一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象において血清フェリチンを上昇させる方法であって、方法が、対象に鉄イソマルトシドを投与することを含み、鉄イソマルトシドが、血清フェリチンの上昇をもたらす、方法を提供する。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の4週間または8週間後に、100ng/ml超、110ng/ml超、120ng/ml超、130ng/ml超、140ng/ml超、150ng/ml超、160ng/ml超、170ng/ml超、180ng/ml超、190ng/ml超、または200ng/ml超の血清フェリチンの平均上昇をもたらす。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の4週間または8週間後に、400ng/mL未満、390ng/mL未満、380ng/mL未満、370ng/mL未満、360ng/mL未満、350ng/mL未満、340ng/mL未満、330ng/mL未満、320ng/mL未満、310ng/mL未満、300ng/mL未満、290ng/mL未満、280ng/mL未満、270ng/mL未満、260ng/mL未満、または250ng/mL未満から選択される、血清フェリチンの平均上昇をもたらす。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の4週間または8週間後に、100~400ng/mL、100~375ng/mL、100~350ng/mL、100~325ng/mL、100~300ng/mL、100~275ng/mL、または150~300ng/mLの血清フェリチンの平均上昇をもたらす。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の1週間後に、200ng/mL超、230ng/mL超、260ng/mL超、290ng/mL超、320ng/mL超、350ng/mL超、380ng/mL超、410ng/mL超、または440ng/mL超の血清フェリチンの平均上昇をもたらす。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の1週間後に、600ng/mL未満、590ng/mL未満、580ng/mL未満、570ng/mL未満、560ng/mL未満、550ng/mL未満、540ng/mL未満、530ng/mL未満、520ng/mL未満、510ng/mL未満、500ng/mL未満、490ng/mL未満、480ng/mL未満、470ng/mL未満、460ng/mL未満、または450ng/mL未満から選択される、血清フェリチンの平均上昇をもたらす。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の1週間後に、200~600ng/mL、250~600ng/mL、300~600ng/mL、350~600ng/mL、または400~600ng/mLの血清フェリチンの平均上昇をもたらす。
トランスフェリン飽和度(TSAT)
貯蔵された鉄に加えて、少量の鉄、典型的には約3~4mgは、トランスフェリンと呼ばれるタンパク質に結合して、血液の血漿を通じて循環する。そのため、血清鉄(s-鉄)レベルは、タンパク質トランスフェリンに結合している、血液中を循環する鉄の量によって表すことができる。トランスフェリンは、肝臓によって生成される糖タンパク質であり、1つまたは2つの第二鉄(鉄(III)またはFe3+)イオンを結合することができる。トランスフェリンは、血液中の鉄の最もよく見られる動的な担体であり、そのため、貯蔵鉄を運搬して全身で使用する体の能力に必須の成分である。トランスフェリン飽和度(すなわちTSAT)は、パーセンテージとして測定され、血清鉄と総鉄結合能との比に100を乗じることによって計算される。この値によって臨床家は、鉄を結合するために利用可能なトランスフェリンの総量に対して、どれほど多くの血清鉄が実際に結合しているかがわかる。例えば、35%のTSAT値は、血液試料中のトランスフェリンの利用可能な鉄結合部位の35%が、鉄によって占められていることを意味する。健康な対象では、典型的なTSAT値は、男性についてはおよそ15~50%、女性については12~45%である。心血管有害事象のリスクのある患者では、正常なTSAT値は、典型的には20%超である。しかしながら、鉄欠乏症の対象では、典型的には、トランスフェリンによる結合に利用可能な鉄の量が減少するにつれて、TSAT値が顕著に低減するが、これは、鉄を吸収し、貯蔵する能力を体が失うために起こる。一部の実施形態では、TSAT値は20%未満であり、かつ/またはフェリチン濃度は100μg/L未満である。
一部の実施形態では、本明細書で開示する方法によって処置した対象は、TSAT値の上昇を経験する。一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象においてTSATを上昇させる方法であって、方法が対象に鉄イソマルトシドを投与することを含み、鉄イソマルトシドが対象におけるTSATの上昇をもたらす、方法を提供する。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の4週間または8週間後に、1%超、1.5%超、2%超、または2.5%超のTSATの平均上昇をもたらす。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の4週間または8週間後に、5%未満、4%未満、または3%未満のTSATの平均上昇をもたらす。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の4週間または8週間後に、1~5%、1.5~4%、または2~3%のTSATの平均上昇をもたらす。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の1週間後に、5%超、6%超、または7%超のTSATの平均上昇をもたらす。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の1週間後に、20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、または15%未満のTSATの平均上昇をもたらす。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の1週間後に、5~20%、または5~15%のTSATの平均上昇をもたらす。
ヘマトクリット
ヘマトクリットは、血中血球容積または赤血球体積分率とも呼ばれ、血液中の赤血球の体積パーセンテージである。健康な対象については、ヘマトクリットは典型的には、男性については血液体積の約45%、女性については血液体積の約40%である。しかしながら、鉄欠乏症の対象では、ヘマトクリットはしばしば、不良な鉄吸収および/または不良な鉄貯蔵能に起因して、有意に枯渇する。
本明細書で開示する鉄イソマルトシドは、ヘマトクリットを上昇させるために、対象に投与されうる。正確な投与のタイミングは、例えば、対象が経験している鉄欠乏症の重症度、対象が経験している、またはしていない鉄吸収のレベル、および処置をする健康管理の専門家の判断に応じて、対象によって必然的に変動することになる。一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象においてヘマトクリットを上昇させる方法であって、方法が対象に鉄イソマルトシドを投与することを含み、鉄イソマルトシドが対象のヘマトクリットの上昇をもたらす、方法を提供する。一部の実施形態では、上昇は、1%~30%、1%~15%、1%~12%、1%~10%、1%~9%、1%~8%、1%~7%、1%~6%、1%~5%、1%~4%、1%~3%、または1%~2%である。
ヘモグロビン濃度
ヘモグロビン濃度は、平均血球ヘモグロビン濃度またはMCHCとも呼ばれ、所与の体積の沈降赤血球におけるヘモグロビンタンパク質の濃度の尺度である。典型的には、ヘモグロビンタンパク質の総量を、ヘマトクリットで除することによって計算される。ヘモグロビン濃度は、質量または重量の画分として測定することもでき、パーセンテージ(%)として提示される。しかしながら、数字の上では、ヘモグロビン濃度の質量またはモルでの尺度と、質量または重量の画分(%)とは同一であるが、赤血球密度が1g/mlであること、および血液の血漿におけるヘモグロビン損失が無視できることを仮定している。健康な対象については、典型的なヘモグロビン濃度の質量またはモルでの尺度は、それぞれ、32g/dl~36g/dlまたは4.9mmol/L~5.5mmol/Lの範囲にわたる。しかしながら、鉄欠乏症の対象では、体が鉄を吸収および貯蔵する能力を失っているため、ヘモグロビン濃度が大きく低減しうる。
一部の実施形態では、本明細書で開示する方法によって処置した対象は、ヘモグロビン濃度の上昇を経験する。一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象においてヘモグロビン濃度を上昇させる方法であって、方法が対象に鉄イソマルトシドを投与することを含み、鉄イソマルトシドが対象におけるヘモグロビン濃度の上昇をもたらす、方法を提供する。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の1週間後に、0.1~5.0g/dL、0.1~4.0g/dL、0.1~3.0g/dL、または0.1~2.0g/dLのヘモグロビン濃度の平均上昇をもたらす。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の1週間後に、0.1g/dL超、0.2g/dL超、0.3g/dL超、0.4g/dL超、0.5g/dL超、0.6g/dL超、0.7g/dL超、0.8g/dL超、または0.9g/dL超のヘモグロビン濃度の平均上昇をもたらす。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、1.0g/dL未満、0.9g/dL未満、0.8g/dL未満のヘモグロビン濃度の平均上昇をもたらす。一部の実施形態では、処置の1週間後に、0.7g/dL未満、0.6g/dL未満、0.5g/dL未満、0.4g/dL未満、または0.3g/dL。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の4週間または8週間後に、0.5~5.0g/dL、0.5~4.0g/dL、0.5~3.0g/dL、または0.5~2.0g/dLのヘモグロビン濃度の平均上昇をもたらす。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、処置の4週間または8週間後に、0.5g/dL超、0.7g/dL超、0.9g/dL超、1.1g/dL超、1.3g/dL超、または1.5g/dL超のヘモグロビン濃度の平均上昇をもたらす。
一部の実施形態では、鉄イソマルトシドは、2.0g/dL未満、1.9g/dL未満、1.8g/dL未満のヘモグロビン濃度の平均上昇をもたらす。一部の実施形態では、処置の4週間または8週間後に、1.7g/dL未満、1.6g/dL未満、1.5g/dL未満、1.4g/dL未満、または1.3g/dL未満。
総鉄結合能(TIBC)
総鉄結合能(TIBC)とは、鉄とタンパク質トランスフェリンとを結合させる、血液の能力の尺度である。TIBCは典型的には、血液試料を抜き取り、試料が運ぶことができる鉄の最大量を測定することによって測定される。したがって、TIBCは、血液中の鉄を運搬するタンパク質であるトランスフェリンを、間接的に測定する。健康な対象については、典型的なTIBCの質量またはモル濃度での尺度は、それぞれ、250~370μg/dL、または45~66μmol/Lの範囲内である。しかしながら、鉄欠乏症の対象では、体が鉄を赤血球前駆細胞に送達して、ヘモグロビンを生成しようとして、より多くのトランスフェリンを生成しなければならないため、典型的には、TIBCがこれらのレベルを上回って上昇する。
一部の実施形態では、本明細書で開示する方法によって処置した対象は、TIBCの低減を経験する。一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象においてTIBCを低減する方法であって、方法が、対象に鉄イソマルトシドを投与することを含み、鉄イソマルトシドが対象のTIBCの低減をもたらす、方法を提供する。
一部の実施形態では、低減は、0.1%~30%、0.1%~28%、0.1%~26%、0.1%~25%、0.1%~24%、0.1%~23%、0.1%~22%、0.1%~21%、0.1%~20%、0.1%~15%、0.1%~10%、または0.1%~5%である。
心血管有害事象のリスクのある対象は一般に、全身性炎症の対象である、またはそのリスクがあることになり、これによって、鉄パラメーターのアセスメントが複雑になりうる。本明細書で開示される場合、心血管有害事象のリスクのある対象では、正常な鉄パラメーターとは、一般に、TSAT>20%および/または血清フェリチン>100μg/Lであると考えられる。この発明の一実施形態によれば、TSATが20%未満である、かつ/もしくは血清フェリチンが100μg/L未満である場合には、処置は適当であり、または関連する実施形態では、TSATが20%未満であり、かつ血清フェリチンが300μg/L未満である場合には、処置は適当である。好ましい実施形態では、TSATは20%未満であり、かつ/または血清フェリチンは100μg/L未満である。処置基準には、例えば、300μg/L以下、400μg/L以下、500μg/L以下、または600μg/L以下の血清フェリチンのような、血清フェリチンに関する、これを超えると再用量が推奨されない上限も含まれてもよい。再処置基準には、処置の基準よりも高い、フェリチンおよびTSATについての限度も含まれてもよい。例えば、好ましい一実施形態では、最初の有効用量の投与の後に、TSATが25%未満である、かつ/または血清フェリチンが100μg/L未満である場合、血清フェリチンが400μg/L以下であるという条件で、対象はさらなる用量を受けることになる。
症状
鉄欠乏症の症状は、状態が鉄欠乏性貧血に進行する前に生じうる。鉄欠乏症の症状としては、例えば、特に、疲労、目眩、蒼白、脱毛、過敏性、衰弱、異食、爪の脆性または溝、Plummer-Vinson症候群(舌、咽頭および食道を覆う粘膜の苦痛を伴う萎縮)、免疫機能障害、食氷、ならびにレストレスレッグス症候群を挙げることができる。
本明細書で開示する方法によって処置した対象は、鉄欠乏症の改善を経験することになる。一部の実施形態では、本明細書で開示する方法によって処置した対象は、鉄欠乏症の減少を経験する。この減少は、本明細書で開示する鉄イソマルトシドの投与を通じて、対象の体内の鉄の総量が増加するために起こりうる。一部の実施形態では、本明細書で開示する方法によって処置した対象は、1つまたは複数の鉄欠乏症の症状の減少または解消を経験し、症状は、疲労、目眩、蒼白、脱毛、過敏性、衰弱、異食、爪の脆性または溝、Plummer-Vinson症候群(舌、咽頭および食道を覆う粘膜の苦痛を伴う萎縮)、免疫機能障害、食氷、レストレスレッグス症候群、ならびに前述のものの組合せから選択される。
一部の実施形態では、鉄欠乏症は鉄欠乏性貧血である。鉄欠乏性貧血は、赤血球が循環するレベルの低さによって特徴付けられ、不十分な鉄の食事からの摂取、吸収、および/または貯蔵によって引き起こされうる。ヘモグロビンタンパク質に結合された鉄を含有し、典型的には、体内の鉄の量が不足している場合には形成されない、赤血球。
鉄欠乏性貧血は、典型的には、蒼白(皮膚および粘膜における、オキシヘモグロビンの低減から生じる青ざめた色)、疲労、頭部ふらふら感、ならびに衰弱によって特徴付けられる。しかしながら、鉄欠乏性貧血の徴候は、対象同士の間で変動しうる。鉄欠乏症はゆっくりと発現する傾向があるため、疾患への順応が起こることもあり、しばらくの間、認識されないままのこともある。一部の例では、対象は特に、呼吸困難(呼吸に苦労すること)、異食(異常で強迫的な食物への欲求)、しばしばOCD型の強迫衝動および強迫現象をもたらす不安、過敏性または悲哀、狭心症、便秘、眠気、耳鳴り、口腔潰瘍、動悸、脱毛、失神または意識の遠のき、鬱病、労作時の息切れ、筋肉の攣縮、淡黄色の皮膚、刺痛(痺れ)または灼熱感、月経周期不順、過多月経期(heavy menstrual period)、社会的発達の遅延、舌炎(舌の炎症または感染症)、口角炎(口の角における炎症性病変)、匙形爪(スプーン形状の爪)、または弱いもしくは脆性の爪、食欲不振、そう痒症(全身性の痒み)、Plummer-Vinson症候群(舌、咽頭および食道を覆う粘膜の苦痛を伴う萎縮)、ならびにレストレスレッグス症候群を発現しうる。
貧血は、典型的には、対象の血液試料から測定した全血球計算に基づいて診断される。典型的には、フローサイトメトリーによって、試料中の赤血球の総数、ヘモグロビンレベル、および赤血球のサイズを報告する自動式カウンターが利用される。しかしながら、試料中の赤血球の総数をカウントして貧血を診断するために、顕微鏡スライド上の染色血液塗抹標本を、顕微鏡を使用して検査することもできる。多くの国では、4つのパラメーター(赤血球数、ヘモグロビン濃度、平均血球体積、および赤血球分布幅)を測定して、貧血の存在が決定される。世界保健機関は、ヘモグロビンレベル(Hb)について、対象のヘモグロビンレベルがこれらの値を下回った場合、貧血と診断することができる、ある特定の閾値を設定している。これらの値は、0.5~5.0歳の年齢の子供については、Hb=11.0g/dLまたは6.8mmol/L;5~12歳の年齢の子供については、Hb=11.5g/dLまたは7.1mmol/L;12~15歳の年齢のティーンについては、Hb=12.0g/dLまたは7.4mmol/L;15歳以上の年齢の非妊娠女性については、Hb=12.0g/dLまたは7.4mmol/L;妊娠女性については、Hb=11.0g/dLまたは6.8mmol/L;15歳以上の年齢の男性については、Hb=13.0g/dLまたは8.1mmol/Lである。
本明細書で開示する方法によって処置した対象は、貧血の改善を経験しうる。本明細書で開示する方法によって処置した対象は、鉄欠乏性貧血の改善を経験しうる。一部の実施形態では、本明細書で開示する方法によって処置した対象は、貧血または鉄欠乏性貧血の1つまたは複数の症状の減少を経験する。一部の実施形態では、本明細書で開示する方法によって処置した対象は、貧血または鉄欠乏性貧血の1つまたは複数の症状の解消を経験する。一部の実施形態では、貧血または鉄欠乏性貧血の1つまたは複数の症状は、蒼白、疲労、頭部ふらふら感、衰弱、呼吸困難、異食、不安、過敏性または悲哀、狭心症、便秘、眠気、耳鳴り、口腔潰瘍、動悸、脱毛、失神または意識の遠のき、鬱病、労作時の息切れ、筋肉の攣縮、淡黄色の皮膚、刺痛(痺れ)または灼熱感、月経周期不順、過多月経期、社会的発達の遅延、舌炎、口角炎、匙形爪、食欲不振、そう痒症、Plummer-Vinson症候群、レストレスレッグス症候群、ならびに前述のものの組合せから選択される。
一部の実施形態では、明細書で開示する方法によって処置した対象は、ヘモグロビンレベルが閾値レベルよりも上に上がる、かつ/または維持されるため、貧血および/または鉄欠乏性貧血の改善を経験しうる。一部の実施形態では、貧血を処置する方法が開示され、この方法は、対象に鉄イソマルトシドを投与することを含み、鉄イソマルトシドは、11.0g/dL、11.5g/dL、12.0g/dL、および13.0g/dLから選択されるレベルを含む、11.0g/dL~13.0g/dLの範囲にわたるレベル以上の、対象におけるヘモグロビンレベルをもたらす。一部の実施形態では、貧血を処置する方法が開示され、この方法は、対象に鉄イソマルトシドを投与することを含み、鉄イソマルトシドは、6.8mmol/L、7.1mmol/L、7.4mmol/L、および8.1mmol/Lから選択されるレベル以上の、対象におけるヘモグロビンレベルをもたらす。一部の実施形態では、男性対象における貧血を処置する方法が開示され、この方法は、男性対象に鉄イソマルトシドを投与することを含み、鉄イソマルトシドは、13.0g/dLおよび8.1mmol/Lから選択されるレベル以上の、男性対象におけるヘモグロビンレベルをもたらす。一部の実施形態では、女性対象における貧血を処置する方法が開示され、この方法は、女性対象に鉄イソマルトシドを投与することを含み、鉄イソマルトシドは、12.0g/dLおよび7.4mmol/Lから選択されるレベル以上の、女性対象におけるヘモグロビンレベルをもたらす。
心血管有害事象についてのリスク因子
本発明による処置を適用できる、本明細書で開示する鉄欠乏症を有する対象の特定の群は、心血管有害事象のリスクがあるものとして特徴付けられる。
本発明によれば、心血管有害事象のリスクのある対象は、心臓に影響を及ぼす事象(心臓有害事象)、例えば、うっ血性心不全(CHF)、特に入院加療もしくは医学的処置を必要とするCHF、心筋梗塞、不安定狭心症、特に入院加療を必要とする狭心症、または不整脈;末梢血管系に影響を及ぼす事象(末梢血管有害事象)、例えば、高血圧症および低血圧症;脳血管系に影響を及ぼす事象(脳血管有害事象)、例えば脳卒中;ならびに/あるいは一般有害事象、例えば死亡からなる群から選択される1つまたは複数の事象について、リスクを有する対象である。
より具体的には、本発明による心血管有害事象のリスクのある対象は、心血管事象、特に本明細書で定義される心血管事象についての以下のリスク因子のうちの1つまたは複数を有する対象である。
慢性腎臓疾患(CKD)
3カ月間、糸球体濾過率(GFR)<60ml/分/1.73mである対象は、腎臓の損傷の有無にかかわらず、CKDを有するものとして分類される。透析または腎臓移植のいずれかを必要とする、これらのCKDの対象は、典型的には、末期腎性疾患(ESRD)対象と呼ばれる。そのため、対象がCKDのより早期の段階である保存期の終わりに達したとき、彼または彼女は、伝統的には、ESRD対象として分類される。このときより前は、これらの対象は保存期CKD対象と呼ばれる。保存期CKD(NDD-CKD)対象とは、早期の慢性腎臓疾患と診断され、かつまだ透析を受けるように医学的に指導されていない対象である。米国National Kidney Foundationは、慢性腎臓疾患の5つの段階を定義している。典型的には、CKDを有する対象は、透析が医学的に必要となるまでに、段階1から段階4を通って進行する。しかしながら、まだ透析を開始していない、または移植を推奨されていない、段階5のような進行した段階のCKDの対象も、典型的には、保存期CKD対象と呼ばれる。
本明細書で使用される場合、NDD-CKDは、慢性腎臓疾患と診断されているが、鉄イソマルトシドの投与中に透析を受けていない、すべての対象に及ぶことが意図される。このような対象は、例えば、透析に供されたことがない対象、一部の実施形態では、透析に供されたことがあるが、鉄イソマルトシドの投与中には透析を受けていない対象を含むことができる。
心血管疾患は、慢性腎臓疾患(CKD)の対象において、度々死因となる。CKDの対象においては、アテローム性動脈硬化症についての伝統的なリスク因子での有病率が高いにもかかわらず、CKDの対象では、冠状動脈疾患(CAD)と比較して、心不全、不整脈、および突然心臓死が、心血管に関連する死亡率の不相応に大きな負荷を構成している。左室肥大(LVH)および左室機能不全は、アテローム性動脈硬化症を有することの帰結でありうるが、CKDにおける心血管傷害の一般的な非アテローム性動脈硬化機序でもある。冠状動脈疾患、左室肥大(LVH)、および心不全(HF)を含めた心臓疾患は、慢性腎臓疾患(CKD)の対象においては一般的である。糸球体濾過率(GFR)が低下するにつれて、LVHがますますよく見られるようになるようであり、透析の使用が増加する。
LVHはCKDの対象における重要な死亡率の予測因子であり、貧血は、CKDにおけるLVHおよびHFの発現および進行についての、ならびに死亡率を含めた有害な心血管のアウトカムの発現および進行についての、重要な独立したリスク因子であることが判明している。
LVHの存在は、心不全、心室性不整脈、心筋梗塞に続く死亡、LV駆出率の減少、突然心臓死、大動脈基部拡張、および脳血管事象の発生率の上昇に関係しているため、臨床的に重要である。一般に、LVHによる心不全の発現は、左室収縮機能の低下および/または拡張機能不全から生じる。左室リモデリングの有害な効果は、明白な心不全まで進行させる、重要な決定因子になりうることである。
理論によって限定されることを意図するものではないが、貧血とLVHの発現との間の関係を説明しうる、可能性のある機序としては、おそらくミオサイトの壊死およびアポトーシスの増加を生じる、心筋への酸素送達の低減の効果、貧血に関連した心臓の出力の増加および体血管抵抗の低減、酸化ストレスの増加、酸化的リン酸化の有効性の低下、ならびに交感神経系の活性化が挙げられる。
CKDにおいては、ますます重度になる貧血は、より頻繁で重度のLVH、LV拡張、HF、ならびにCKDおよび心臓疾患の対象における、あらゆる原因による、および心臓によるより不良な予後と関係する。CKDにおける貧血の増大が、LVHおよび心不全の程度がますます重度となることに関係するならば、本開示の態様に従って貧血に関する欠乏症を是正することは、HFおよびLVHの臨床的特徴に対する有益な影響を有する。臨床的特徴には、HFの臨床症状発現、ならびにそれに続くLVHの発現および進行が含まれる。
複数の、ほとんどが非対照短期の研究は、HFおよびCKDの対象にエリスロポエチンを用いて、貧血を約10~12g/dLのHbレベルに改善すると、HFの臨床症状発現が改善し、入院加療率が低減するが、CHF対象におけるハードエンドポイントを改善するには至らないことを示唆している。しかしながら、エリスロポエチンの使用に関係する、むしろ予想外の有害なアウトカムを考えると、正常または正常付近のHbレベルを満足することを狙ったエリスロポエチン処置によって、対象の罹患率および/または死亡率のリスクが上昇する可能性がある。
LVHはそれ自体、CKDの対象における有害な心血管アウトカムの有力な予後マーカーであるが、一部の対象においては、Hbレベルが10g/dL未満から最大10g/dL超のレベルに改善することによって、後退するようである。重ねて、限定されることを意図するものではないが、正常レベルを超えてHbをさらに上昇させると、LVHがさらに後退する、または臨床上の改善をもたらすわけではないようである。LVHの対象における貧血是正に対する、続いての臨床応答の決定において、LVHのベースラインの外形は、重要な因子でありうる。
うっ血性心不全(CHF)
標準化されたMedDRAの用語である「うっ血性心不全」および「うっ血性心臓障害」は、本明細書で互換的に使用される。
心不全は、構造的および/または機能的な心臓異常によって引き起こされる、徴候(例えば、頚静脈圧の上昇、肺の湿性ラ音、および末梢浮腫)を伴いうる、典型的症状(例えば、息切れ、足首の腫脹、および疲労)によって特徴付けられる臨床症候群であり、安静時またはストレス中の心臓の出力の低減および/または心内圧の上昇をもたらす。したがって、HFの現在の定義は、HF自体を、臨床症状が明らかな段階に制限するものである。臨床症状が明らかになるまでは、無症候性の構造的または機能的心臓異常、例えば、HFの前兆である、収縮期または拡張期左室(LV)機能不全によって、対象を提示することができる。これらの前兆は不良なアウトカムに関係し、前兆段階で処置を開始することで、無症候性収縮期LV機能不全による対象の死亡率が低減しうるため、その認識は重要である。
「うっ血性HF」は、慢性心不全を記載するために、特に、ほとんどは末梢浮腫または肺水腫として表示される、体液過剰(volume overload)のエビデンスがある場合に、使用される用語である。うっ血性心不全(CHF)は、駆出率が低下した心不全、LVEF<40%(HFrEF)、駆出率が保存された心不全、LVEF≧50%(HFpEF)、または駆出率が中間域にある心不全、LVEF40~49%(HFmrEF)でありうる。本発明の特定の実施形態では、うっ血性心不全(CHF)は、駆出率が低下した心不全、LVEF<40%(HFrEF)である。
うっ血性心不全(CHF)はまた、身体的活動中にどれほど制限されるかに基づいて、患者を4カテゴリのうちの1つに分類する、New York Heart Association(NYHA)分類に従って分類することもできる。症状を有せず、例えば、歩行、階段を上ることなどの普通の身体的活動において、過度の疲労、動悸、または呼吸困難(息切れ)などの制限を有しない患者は、NYHAクラスIに割り当てられる。軽度の症状(軽度の息切れおよび/または狭心症)、ならびに身体的活動のわずかな制限の患者は、NYHAクラスIIに割り当てられる。普通未満の活動、例えば20~100mの短距離の歩行中でさえ、症状に起因して活動に顕著な制限を有し、安静時にのみ具合の良い患者は、NYHAクラスIIIに割り当てられる。安静時でさえ症状を経験し、いかなる身体的活動も不快感なく続けることができない患者は、NYHAクラスIVに割り当てられる。本発明の特定の実施形態では、うっ血性心不全(CHF)は、NYHAクラスII~IVのうっ血性心不全である。
心房細動(AF)
心房細動(AF)は、初めて診断されたAF(不整脈の継続期間、またはAF関連症状の存在および重症度とは関係なく、以前に診断されたことがないAF)、発作性AF(ほとんどの場合は48時間以内に、自然に終了する。一部のAF発作は、最大7日間継続しうる。7日以内にカルディオバージョンされたAFエピソードは、発作性と考えるべきである)、および持続性AF(7日よりも長く続くAFで、薬物を用いるか、もしくは直流カルディオバージョンによるかのいずれかで、7日以上後にカルディオバージョンによって終了したエピソードを含む)、長期持続性AF(リズムコントロール戦略を採用すると決定された時点で1年以上続いている、継続的AF)、または永続的AF(患者(および医師によって甘受されているAF)でありうる。本発明の特定の実施形態では、AFは、初めて診断されたAF、発作性AF、または持続性AFである。
AFは、より高リスクの虚血性心臓疾患、慢性腎臓疾患、突然心臓死、脳卒中、またはインシデント(incident)うっ血性心不全を含めた、死亡、心血管有害事象、および腎性疾患のリスクの上昇に関係している。
高血圧症
高血圧症は、180mm Hg超の値をもたらす20mm Hg超の収縮期血圧の上昇、または105mm Hg超の値をもたらす15mm Hg超の拡張期血圧の上昇と定義される。
高血圧症は、心臓疾患についての主要なリスク因子、特に脳卒中についてのリスク因子の1つである。高血圧症は、虚血性脳卒中の約50%を引き起こし、出血性脳卒中のリスクを上昇させる。
高血圧症を、心血管有害事象についてのこのような高リスク因子とする、高血圧症に関係する複数の機序がある。例えば、高血圧症では、血管が狭まるまたは詰まることに起因して、血管に応力がかかる。これによって、アテローム性動脈硬化症がもたらされうる、または容易に破裂する、もしくは動脈壁を膨張させて動脈瘤を生じる、血管における弱い箇所が形成されうる。
心筋梗塞(MI)
心筋梗塞(MI)は、長期の虚血に起因する心筋細胞の死と定義される。心筋虚血を発症した後、組織学的細胞死は直ちには起こらないが、発現までにかかるのは有限の期間である。数時間後、心筋細胞の完全な壊死が認められうる。MIは、冠状動脈疾患(CAD)の最初の症状発現でありうる。
MIは、急性冠状動脈症候群の時間的に関連する症状のいずれかの状況における心筋酵素マーカーの特徴的な変化、または虚血もしくは梗塞のいずれかに整合する心電図(ECG)変化の存在を記載するために使用される用語である。高い心筋組織特異性および高い臨床的感度を有する心筋型トロポニンcTn(IまたはT)が、好ましいバイオマーカーとして使用される。あるいは、cTnアッセイが利用可能でない場合、質量アッセイによって測定されるクレアチンキナーゼのMB画分(CKMB)を使用することができる。両アッセイにおいて、cTnおよびCKMB濃度の上昇は、正常な参照集団の第99百分位(上限参照限界(URL))を超える値と定義される。この区別的な第99百分位は、MIの診断についての決定レベルと称される。
胸部の不快感、または2つの近接するリードにST上昇を発現する他の虚血性症状の患者におけるMIは、「ST上昇型MI」(STEMI)と称される。提示時にST上昇のない患者は、通常、「非ST上昇型MI(非STEMI)を有すると称される。好ましい実施形態では、心筋梗塞(MI)は、STセグメント上昇心筋梗塞(STEMI)または非STEMIである。
MIの履歴を有する対象は、さらなる心血管有害事象について最もリスクの高い群の1つである。特に、MIを生き延びている、すなわち、MIの履歴を有する対象は、再発性梗塞のリスクが上昇し、冠状動脈性心疾患を有しない同じ年齢の人よりも6倍高い年間死亡率を有する。
脳卒中
脳卒中は、古典的には、脳梗塞、脳内出血、およびクモ膜下出血を含めた、血管が原因となる中枢神経系の急性局所性傷害に起因する、神経脱落症状として特徴付けられる。
脳卒中の履歴を有する対象、すなわち、脳卒中を患ったことがある対象は、さらなる心血管有害事象について、特にさらなる脳卒中について、リスクが高いままである。
心臓弁障害
大動脈弁狭窄症は、欧州および北米において最も一般的な、外科手術またはカテーテル処置に至る原発性弁疾患であり、人口の高齢化に起因して有病率が増加している。
僧帽弁逆流(MR)は、欧州において2番目に頻繁な、弁の外科手術についての予兆である。特に、外科的および経カテーテル処置管理に関して、続発性MRから原発性MRを区別することができる。原発性MRでは、僧帽弁機構の1つまたは複数の構成要素が、直接的な影響を受ける。最も頻繁な病因は、変性性のもの(脱出症、動揺弁尖(flail leaflet))である。原発性MRの原因の1つとしての心内膜炎。続発性MR(機能性MRとしても知られる)は、正常な僧帽弁尖およびコード(chord)を有する、原発性左室(LV)の機能不全に起因するMRと定義される。LV機能不全は、冠状動脈性心疾患(CHD)または(非虚血性)心筋症に起因しうる。
例えば生まれつきの、心臓弁の欠陥の履歴を有する対象は、弁の問題を発現する可能性が上昇する。心臓弁疾患は、心血管有害事象、例えば、HF、脳卒中、血餅、不整脈、または死亡を含めた、多くの合併症を引き起こしうる。
糖尿病
顕著な低血糖は、頻尿、渇き、視朦、疲労、および反復性感染症を含めた症状に関係する。血中グルコースを低下させることの狙いは、症状の緩和を越えて、糖尿病の長期的な合併症を低減することである。糖尿病2型(diabetes mellitus type 2)(2型糖尿病(type 2 diabete)としても知られる)は、高い血糖、インスリン抵抗性、およびインスリンの相対的不足によって特徴付けられる、長期的な代謝異常である。一般的な症状としては、渇きの増大、頻尿、および原因不明の体重減少が挙げられる。かつては若年性糖尿病またはインスリン依存性糖尿病として知られた1型糖尿病は、膵臓がインスリンをほとんど、またはまったく生成しない、慢性的状態である。遺伝的性質および一部のウイルスを含めた様々な因子が、1型糖尿病に寄与しうる。1型糖尿病は通常、小児期または青年期に現れるが、成人において発現することもある。積極的な研究にもかかわらず、1型糖尿病の治療法はない。処置は、インスリン、食餌、およびライフスタイルによって、血糖レベルを管理し、合併症を防止することに焦点を当てている。
糖尿病を有すると、糖尿病でない人と比較して、心血管有害事象についてのリスクが2~4倍上昇する。心血管有害事象は、糖尿病の人についての死亡率の主要な原因である。これは特に、いずれも心血管有害事象についてのリスク因子であり、糖尿病を患う対象に広く蔓延している、高血圧症、脂質異常症(abnormal blood lipid)、および肥満症に起因する。
例えば、制御されていない糖尿病は、血管の損傷を引き起こすことがあり、これによってアテローム性動脈硬化症および高血圧症が生じうる。グルコースレベルが高いと、脂肪質付着物(アテローム)が発生する可能性が上昇し、冠動脈に生じた場合には、冠状動脈性心疾患および心臓発作を起こしうる。糖尿病の対象は、糖尿病でない対象よりも心臓発作または脳卒中を有しやすく、糖尿病でない対象と比較して、心不全のリスクが増加する。糖尿病は、エストロゲンの保護効果を阻害し、これによって、糖尿病を有する閉経前の女性における心血管有害事象のリスクが上昇しうる。
肥満症
「肥満症」とは、肥満度指数(BMI)、すなわち、人の体重を、その人の身長の2乗で除することによって得られる測定値が、30kg/m2を超えるほどの過剰な体重によって特徴付けられる状態である。30kg/m超のBMIを有する、すなわち、肥満であると、心血管有害事象についてのリスク因子である、高血圧症(例えば、腹腔内脂肪に起因する)、糖尿病、およびアテローム性動脈硬化症を発現する深刻なリスクがある。
特に、食事の塩は、血圧を上昇させ、これによって高血圧症および関連リスクを生じうる重大な因子であるため、例えば超過体重であると、塩の多量摂取によって心血管有害事象のリスクが上昇する。
年齢、喫煙、および飲酒
高齢である、喫煙者である、および/または飲酒者である対象は、心血管有害事象についてのリスクが上昇する。
本発明の特定の実施形態によれば、高齢の対象とは、60歳以上、65歳以上、70歳以上、75歳以上、もしくは80歳以上である。55歳以降では、脳卒中のリスクは、10年毎に2倍になる。収縮期血圧は、歳を取ることによる心血管事象のリスクの重要な予測因子である。
飲酒者とは、多量のアルコールが抜けていない(intact)対象、特に週に7杯超を飲む対象を指す。
過度の量のアルコールを消費する飲酒者は、血圧上昇、急性心筋梗塞、または心筋症などの問題を患いうる、または発現しうる。さらに、アルコールの濫用は、心筋を損ない、脳卒中および心臓不整脈のリスクを上昇させることが示されている。
喫煙者とは、タバコの常用喫煙者であった人、および/または現在タバコの常用喫煙者である人である。
1940年代以来、喫煙は、心血管疾患と結びついていることが知られている。これは、複数の機序に起因する。例えば、喫煙は、内皮(血管の内層)を損ない、動脈の脂肪質付着物を増加させ、詰まりを増加させ、低密度リポタンパク質コレステロールを上昇させ、高密度リポタンパク質を低減し、冠状動脈攣縮を促進する。さらに、タバコ中の中毒性成分として含まれるニコチンは、心拍数を加速させ、血圧を上昇させる。
甲状腺機能亢進症および関連する甲状腺中毒症
甲状腺機能亢進症は、高すぎるレベルのチロキシンによって特徴付けられる。甲状腺機能亢進症は、体の代謝を加速させて、意図的でない体重減少、および急速または不規則な心臓拍動を引き起こしうる。
甲状腺中毒症とは、体内の過剰な甲状腺ホルモンによって特徴付けられる状態である。
慢性閉塞性肺障害(COPD)
「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」とは、通常は有害な粒子またはガスへの有意な曝露によって引き起こされる、気道および/または肺胞の異常に起因する、持続性呼吸症状および空気の流れの制限によって特徴付けられる疾患である。主なリスク因子はタバコの喫煙であるが、他の環境的曝露も寄与しうる。
心筋症
心筋症は、流れを制限する冠状動脈疾患または異常な負荷状態では説明できない、心室心筋の構造的および機能的な異常によって定義される。歴史的に、この障害の群は、心臓が唯一の関与する臓器である原発性疾患と、心筋症が全身性障害の症状発現である続発性形態とに細分されてきた。ESCガイドラインは、心筋症を、心外性疾患の存在には関係なく、具体的な形態学的および機能的基準によって定義し、次いで、家族性/遺伝性および非家族性/非遺伝性のサブタイプにグループ分けする分類体系を採用している。
本発明の特定の実施形態では、心筋症は、遺伝性心筋症または後天性心筋症である。
炎症
炎症誘発性バイオマーカーと、インシデント高血圧症、代謝症候群、冠状動脈疾患(CAD)、急性冠動脈症候群(ACS)、末梢動脈疾患、脳卒中、ならびに再発性の冠動脈および脳血管事象との間には関係がある。特定の実施形態では、全身性炎症は、C反応性タンパク質(CRP)の増加に関係している。CRPは、炎症の非特異的マーカーである。約2~3mg/Lの範囲が、それを上回ると全身性炎症の徴候があると考えられる限度である。アテローム性動脈硬化症の病原論における炎症の役割は、過去20年にしっかりと明らかにされている。
透析
透析の対象は、心血管有害事象のリスクが高い対象である。
本発明の特定の実施形態では、透析は、血液透析または腹膜透析である。
薬物療法
対象を以下の1つまたは複数によって処置した場合、心血管有害事象についてのリスクが上昇する:
(i)プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、例えば、ダプロデュスタット、バダデュスタット、ロキサデュスタット、モリデュスタット、およびデジデュスタを含めた、低酸素誘導因子(HIF)シグナル伝達経路のモジュレーター;
(ii)赤血球造血刺激剤(ESA)、例えば、エリスロポエチン(Epo)、エポエチンアルファ(Procrit/Epogen)、エポエチンベータ(NeoRecormon)、ダルベポエチンアルファ(Aranesp)、およびメトキシポリエチレングリコール-エポエチンベータ(Mircera);ならびに
(iii)ヘプシジンモジュレーター、例えば、ヘプシジンアゴニストもしくはヘプシジンアンタゴニスト。
対象は、貧血を制御する取り組みにおいて、1つまたは複数の赤血球造血刺激剤(ESA)を摂取する。ESAは、体が赤血球を生成するのを支援することによって機能する。これらの赤血球は、次いで、骨髄から血流に放出され、血中鉄レベルを維持する役に立つ。赤血球造血刺激剤は、一般にESAと略記される、構造および/または機能が、体の赤血球生成(赤血球造血)を刺激するサイトカインエリスロポエチンに類似した薬剤である。典型的なESAは、構造的および生物学的に、天然に存在するタンパク質のエリスロポエチンに類似する。市販のESAの例としては、エリスロポエチン(Epo)、エポエチンアルファ(Procrit/Epogen)、エポエチンベータ(NeoRecormon)、ダルベポエチンアルファ(Aranesp)、およびメトキシポリエチレングリコール-エポエチンベータ(Mircera)が挙げられる。米国において現在販売が承認されている2種のESAは、エポエチンアルファ(Procrit、Epogen)およびダルベポエチンアルファ(Aranesp)である。
ESAは、ESRD対象に一般に与えられる。これらの対象は通常、十分なエリスロポエチンを生成できないため、低いヘモグロビンレベルを有する。ESAの使用によって最もよく起こる副作用としては、特に、高血圧;腫脹;熱;目眩;吐き気;および注射の部位における痛みが挙げられる。これらの副作用に加えて、ESAの使用がもたらす複数の安全上の問題点がある。ESAによって、静脈血栓塞栓症(静脈における血液の詰まり)のリスクが上昇する。ESAはまた、ヘモグロビンを過度に高く上昇させることがあり、対象は、心臓発作、脳卒中、心不全、および死亡について、より高リスクとなる。
本発明のさらなる特定の実施形態では、対象は、抗凝血剤および/またはNSAIDによって処置されている。
遺伝性出血性毛細管拡張症
遺伝性出血性毛細管拡張症(Osler-Weber-Rendu疾患としても知られる)は、親から遺伝する遺伝性障害である。その重症度は、同じ家族内であっても、人によって大きく異なる場合がある。動脈と静脈との間に、動静脈奇形(AVM)と呼ばれる異常なつながりを発現する。影響を受ける最も一般的な位置は、鼻、肺、脳、および肝臓である。これらのAVMは、経時的に拡大することもあり、出血または破裂する場合もあり、ときとして悲惨な合併症を引き起こす。
遺伝性鉄剤不応性鉄欠乏性貧血
遺伝性鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)は、吸収および利用に障害を生じることによって特徴付けられる、遺伝による障害である。IRIDAは一般に、ヘプシジンのアップレギュレーションをもたらす、遺伝的突然変異に関係するものと理解される。IRIDAの具体的な症例は、遺伝子TMPRSS6における変異に関するものと理解される。IRIDAは一般に、経口鉄投与の不応であるが、部分的には非経口鉄投与に応答性がある。
FGF23
高レベルの線維芽細胞増殖因子23(FGF23)は、心血管疾患についてのリスク因子として理解されるようになっている。
「線維芽細胞増殖因子23(FGF23)」は、ホスフェートおよびビタミンDホメオスタシスを調節する骨細胞由来ホルモンである。FGF23はタンパク質切断を受け、結果として、非切断、すなわち非損傷FGF23(iFGF23)とその切断断片とのミックスが、in vivoにおいて見出される。非損傷形態であるiFGF23は、ホスフェートの尿中排泄を制御するホスフェート代謝に対する活性形態であり、高レベルのiFGF23では、ホスフェートの尿中廃棄をもたらす。2種の主な抗体アッセイのタイプが現在存在し、一方はiFGF23のみを捕捉するものであり、他方はホルモンのC末端部(terminal end)に結合し、そのため、iFGF23とC末端断片との両方を捕捉するものである。そのため、後者の計量、cFGF23は、非損傷FGF23断片とC末端FGF23断片との合計の尺度である。したがって、FGF23に関する2種の試験が存在し、すなわちiFGF23とcFGF23とであり、これらは異なる解釈を有する。
高い両FGF23レベルは、独立して、よく見られるおよびインシデントLVH、心血管疾患事象、ならびにCKDおよび非CKD集団における死亡率に関係する。その上、最近の研究によって、FGF23が直接LVHを誘導することが実証され、FGF23が単純な心血管リスクのバイオマーカーではないことが示唆される。CKD対象は、iFGF23を生成して、腎臓を経由したホスフェートの尿中排泄分画を増加させることによる、高い血清ホスフェートレベルの相殺を、体が常時試みることに起因して、非常に高いFGF23レベルを有する傾向がある。この理由のため、iFGF23レベルはCKD対象において上昇し、結果として、iFGF23の他の下流での効果がより顕著でありうる。
FGF23レベルの上昇は、CKDにおいて、血清ホスフェートを正常な範囲内に維持するのを支援するが、推算糸球体濾過率(eGFR)が減少すると、FGF23濃度が上昇し、より多くのネフロン当たりホスフェート排泄を刺激し、1,25-ジヒドロキシビタミンDレベルを低下させることによって、腎性質量が低減するにもかかわらず、正常なホスフェートホメオスタシスを維持することを支援する。非経口投鉄与は、腎性尿細管ホスフェートの再吸収およびビタミンDの1-アルファ-ヒドロキシル化を抑制して、低リン酸血症をもたらす。データは、FGF23の上昇によって、低リン酸血症が媒介されることを指示している。
透析前CKD、インシデントおよびよく見られるESRD、ならびに腎臓移植レシピエントの集団における前向き研究によって、高い両FGF23レベルは、独立して、CKDの進行および心血管事象の発現、ならびに死亡率に関係することが実証されている。当初、高いFGF23レベルが、ホスフェートに起因する毒性の高感度バイオマーカーとして作用することによって、これらの観測が主導されると考えられた。しかしながら、FGF23自体が、心臓において、「オフターゲット」の直接的な末端臓器毒性を媒介することが今や示されており、高いFGF23レベルが、CKDにおける有害アウトカムの新規機序でありうることが示唆される。
具体的な実施形態では、1つまたは複数の心血管有害事象について、本明細書で記載する方法に従って処置した対象は、高いFGF23レベルを有する。健康なヒトの血清中の非損傷FGF23の正常なレベルは、およそ26.1pg/mLであり、健康なヒトの血清中のC末端FGF23断片の正常なレベルは、およそ49.0RU/mLである。ある特定の実施形態では、対象のFGF23レベル(例えば、非損傷FGF23および/またはC末端FGF23断片)は、健康なヒトにおける正常な範囲に対して高い。一部の実施形態では、対象の血清中の非損傷FGF23レベルは、250pg/mLと350pg/mLとの間、200pg/mLと300pg/mLとの間、200pg/mLと350pg/mLとの間、300pg/mLと350pg/mLとの間、300pg/mLと400pg/mLとの間、または250pg/mLと500pg/mLとの間である。ある特定の実施形態では、対象の血清中の非損傷FGF23レベルは、200pg/mL、225pg/mL、250pg/mL、275pg/mL、300pg/mL、325pg/mL、または350pg/mL超である。一部の実施形態では、対象の血清中のC末端FGF23断片レベルは、60RU/mLと100RU/mLとの間、100RU/mLと200RU/mLとの間、200RU/mLと300RU/mLとの間、または250RU/mLと400RU/mLとの間である。ある特定の実施形態では、対象の血清中のC末端FGF23断片レベルは、60RU/mL、100RU/mL、125RU/mL、150RU/mL、175RU/mL、200RU/mL、225RU/mL、250RU/mL、275RU/mL、または300RU/mL超である。
一部の実施形態では、本明細書で開示する方法によって処置した対象は、ヘモグロビン濃度の上昇および/またはFGF23の減少を経験する。具体的な実施形態では、本明細書で開示する方法によって処置した対象は、10g/dL超、11g/dL超、12g/dL超、13g/dL超、または15g/dL超のレベルへの対象のヘモグロビン濃度の上昇を経験する。ある特定の実施形態では、本明細書で開示する方法によって処置した対象は、10g/dL~11g/dL、1lg/dL~12g/dL、10g/dL~13g/dL、11g/dL~13g/dL、11g/dL~15g/dL、または12g/dL~15g/dLのレベルへの対象のヘモグロビン濃度の上昇を経験する。一部の実施形態では、本明細書で開示する方法によって処置した対象は、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%の、血清または血漿中の非損傷FGF23レベルの減少を経験する。ある特定の実施形態では、本明細書で開示する方法によって処置した対象は、15%~30%、20%~30%、25%~50%、30%~60%、または15%~60%の、血清または血漿中の非損傷FGF23レベルの減少を経験する。一部の実施形態では、本明細書で開示する方法によって処置した対象は、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%の、血清または血漿中のC末端FGF23断片レベルの減少を経験する。一部の実施形態では、本明細書で開示する方法によって処置した対象は、15%~30%、20%~30%、25%~50%、30%~60%、または15%~60%の、血清または血漿中のC末端FGF23断片レベルの減少を経験する。
したがって、本発明のこの態様の第1の好ましい実施形態では、本発明による処置を適用できる対象の特定の群は、心筋梗塞(MI)の履歴、脳卒中の履歴、心房細動(AF)の履歴、うっ血性心不全(CHF)の履歴、慢性腎臓疾患(CKD)、高血圧症の履歴、糖尿病、心臓弁障害の履歴、肥満症の履歴を有する対象、ならびに/または喫煙者、飲酒者、および/もしくは高齢の対象である。これらとしては特に、心筋梗塞(MI)の履歴、脳卒中の履歴、心房細動(AF)の履歴、慢性腎臓疾患(CKD)、うっ血性心不全(CHF)の履歴、および/または高血圧症の履歴を有する対象が挙げられる。心筋梗塞(MI)の履歴、脳卒中の履歴、および/またはうっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象、特にうっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象は、特に好ましい心血管有害事象のリスクのある対象の群であり、そのため、本発明による処置を適用できる。
特定の状態、障害、または疾患を有する、例えば、心筋梗塞、脳卒中、心房細動、またはうっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象とは、対象の過去および現在の病歴を指すことを意味する。病歴とは、対象が経験したすべての医学的事象および問題、すなわち、対象の以前の医学的な病気、診断、および患者の寿命全体を通じた全体的な健康の説明である。特定の状態、障害、または疾患の履歴を有する対象は、リスクがあると分類されるために、必ずしも、所定の時点で特定の状態、障害、または疾患を有しなければならないわけではない。特定の状態、障害、または疾患の履歴で十分である。例えば、喫煙をやめている対象は、喫煙の履歴を有するため、依然としてリスクがある。
本発明のこの態様の第2の好ましい実施形態では、本発明による処置を適用できる対象の特定の群は、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象である。これらには特に、心筋梗塞(MI)の履歴および/または脳卒中の履歴も有する対象が含まれる。好ましい実施形態では、CHFは、駆出率が低下した心不全(HFrEF)である。
本発明のこの態様の第3の好ましい実施形態では、本発明による処置を適用できる対象の特定の群は、心筋梗塞(MI)の履歴を有する対象である。好ましい実施形態では、MIは、STEMIまたは非STEMIである。本発明のこの態様の第4の好ましい実施形態では、本発明による処置を適用できる対象の特定の群は、脳卒中の履歴を有する対象である。
本明細書で定義される対象(すなわち、心血管有害事象のリスクのあるおよび/またはうっ血性心不全の履歴を有する対象)には、慢性腎臓疾患(CKD)も有する対象、またはCKDを有しない対象が含まれる。CKDを有する対象は、本発明による処置を適用できる患者の特定のサブグループである。特に、これらには、慢性腎臓疾患(CKD)およびうっ血性心不全(CHF)を有する対象が含まれ、慢性腎臓疾患(CKD)は、好ましくは、保存期慢性腎臓疾患(NDD-CKD)である。群(慢性腎臓疾患(CKD)およびうっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象、特に保存期慢性腎臓疾患(NDD-CKD)の対象において、鉄イソマルトシドを投与することの、他の鉄炭水化物複合体と比較した治療上の有益性は、特に顕著である。
一実施形態では、うっ血性心不全の履歴を有する対象は、HFrEFを有する。別の実施形態では、うっ血性心不全の履歴を有する対象は、NYHAクラスII~IVにおけるうっ血性心不全、特にNYHAクラスII~IVにおけるHFrEF型うっ血性心不全を有する。
本発明のこの態様の複数のさらなる実施形態では、本発明による処置を適用できる対象の特定の群は、以下のリスク因子のうちの1つまたは複数を有する対象である:
(i)心房細動(AF)、特に初めて診断されたAF、発作性(Proxysmal)AF、もしくは持続性AFの履歴を有する対象;
(ii)心臓弁障害の履歴を有する対象;
(iii)高血圧症の履歴を有する対象;
(iv)糖尿病を有する対象;
(v)肥満症の履歴を有する対象;
(vi)高齢の対象、特に60歳以上、65歳以上、70歳以上、75歳以上、もしくは80歳以上の対象;
(vii)喫煙者;
(viii)飲酒者;
(ix)甲状腺機能亢進症および/もしくは関連する甲状腺中毒症を有する対象;
(x)慢性閉塞性肺障害(COPD)を有する対象;
(xi)心筋症、特に遺伝性心筋症、もしくは後天性心筋症を有する対象;
(xii)感染症のない全身性炎症であって、全身性炎症が特に、約2~3mg/Lの範囲を超えるC-反応性タンパク質(CRP)の増加に関係するものを有する対象;
(xiii)透析の対象であって、透析が特に、血液透析もしくは腹膜透析である、対象;
(xiv)以下のうちの1つ以上によって処置された対象:
a)プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、例えば、ダプロデュスタット、バダデュスタット、ロキサデュスタット、モリデュスタット、およびデジデュスタを含めた、低酸素誘導因子(HIF)シグナル伝達経路のモジュレーター;
b)赤血球造血刺激剤(ESA)、例えば、エリスロポエチン(Epo)、エポエチンアルファ(Procrit/Epogen)、エポエチンベータ(NeoRecormon)、ダルベポエチンアルファ(Aranesp)、およびメトキシポリエチレングリコール-エポエチンベータ(Mircera);ならびに
c)ヘプシジンモジュレーター、例えば、ヘプシジンアゴニストもしくはヘプシジンアンタゴニスト;
(xv)抗凝血剤および/もしくはNSAIDによって処置された対象;
(xvi)遺伝性出血性毛細管拡張症を有する対象;または
(xvii)遺伝性鉄剤不応性鉄欠乏性貧血を有する対象。
II.治療上の有益性
鉄を対象に送達することに加えて、本開示は、本明細書で定義される対象において心血管有害事象の発生率またはリスクを低減するための方法を提供する。「心血管有害事象(複数)」または「心血管有害事象(単数)」についての発生率またはリスクの低減への言及は、列挙した事象のうちの1つまたは複数についての発生率またはリスクを低減することを指すことを意味する。
本発明のこの第2の態様の一実施形態によれば、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心臓に影響を及ぼす事象(心臓有害事象);末梢血管系に影響を及ぼす事象(末梢血管有害事象);脳血管系に影響を及ぼす事象(脳血管有害事象);呼吸器、胸部および縦隔有害事象;一般有害事象;ならびに感染症および侵襲からなる群から選択される。
本発明のこの第2の態様の特定の実施形態では、発生率またはリスクが低減する心臓有害事象は、うっ血性心不全、心房細動、心拍停止、心房ブロック、心不全、洞房結節機能不全、急性心筋梗塞、徐脈、狭心症、心筋虚血、および心室性期外収縮からなる群から選択され;末梢血管有害事象は、高血圧症、収縮期血圧の上昇、血圧の上昇、トロポニンの上昇、および低血圧症からなる群から選択され;脳血管有害事象は、脳血管性偶発症状、脳梗塞、および一過性虚血発作からなる群から選択され;呼吸器、胸部および縦隔有害事象は、呼吸困難および肺浮腫からなる群から選択され;一般有害事象は、胸痛および死亡からなる群から選択され;感染症および侵襲は、敗血症性ショックである。
本発明のこの第2の態様の好ましい実施形態によれば、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心臓に影響を及ぼす事象(心臓有害事象);末梢血管系に影響を及ぼす事象(末梢血管有害事象);脳血管系に影響を及ぼす事象(脳血管有害事象);および死亡からなる群から選択される。好ましくは、心臓に影響を及ぼす事象(心臓有害事象)は、うっ血性心不全、心筋梗塞、不安定狭心症、および不整脈であり;末梢血管系に影響を及ぼす事象(末梢血管有害事象)は、高血圧症であり;脳血管系に影響を及ぼす事象(脳血管有害事象)は、脳卒中である。
本発明のこの第2の態様の特に好ましい実施形態によれば、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、うっ血性心不全、心筋梗塞、不安定狭心症、不整脈、高血圧症、低血圧症、脳卒中、および死亡からなる群から選択される。
本発明のこの第2の態様のさらなる特に好ましい実施形態によれば、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、うっ血性心不全、心房細動、高血圧症、および/または心拍停止である。
したがって、本発明のこの第2の態様の特に好ましい実施形態、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、うっ血性心不全である。
したがって、本発明のこの第2の態様の特に好ましい実施形態、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心房細動である。
したがって、本発明のこの第2の態様の特に好ましい実施形態、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、高血圧症である。
したがって、本発明のこの第2の態様の特に好ましい実施形態、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心拍停止である。
うっ血性心不全に関する具体的な心血管有害事象は、入院加療、うっ血性心不全の悪化に起因する入院加療、またはうっ血性心不全に起因する死亡である。本発明は特に、CV有害事象がCHFであるCV有害事象を対象とする。
III.選択された対象における治療上の有益性
本明細書で定義される対象の特定の群、および発生率またはリスクを低減させる心血管有害事象を考慮すると、本発明は、第3の態様によれば、対象において鉄欠乏症を処置する方法であって、鉄欠乏症の処置によって、対象における心血管有害事象の発生率またはリスクが低減し、方法が、有効量の鉄イソマルトシドを投与することを含み、
対象が、
(A)本明細書で定義される、心血管有害事象のリスクのある対象;
(B)うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象;または
(C)うっ血性心不全(CHF)の履歴を有し、心血管有害事象のリスクのある対象
であり、
発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、
(a)うっ血性心不全、心筋梗塞、不安定狭心症、不整脈、高血圧症、低血圧症、脳卒中、および死亡;
(b)うっ血性心不全;
(c)心房細動;
(d)高血圧症;または
(e)心拍停止
からなる群から選択される、方法に関する。
本発明のこの第3の態様の好ましい実施形態によれば、対象は、心血管有害事象のリスクのある対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、うっ血性心不全である。
本発明のこの第3の態様のさらに好ましい実施形態によれば、対象は、心血管有害事象のリスクのある対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心房細動である。
本発明のこの第3の態様のさらに好ましい実施形態によれば、対象は、心血管有害事象のリスクのある対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心拍停止である。
本発明のこの第3の態様のさらに好ましい実施形態によれば、対象は、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心拍停止もしくはうっ血性心不全、または両方である。
本発明のこの第3の態様のさらに好ましい実施形態によれば、対象は、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、うっ血性心不全である。
本発明のこの第3の態様のさらに好ましい実施形態によれば、対象は、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心房細動である。
本発明のこの第3の態様のさらに好ましい実施形態によれば、対象は、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心拍停止である。
本発明のこの第3の態様のさらに好ましい実施形態によれば、対象は、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、高血圧症である。
本発明のこの第3の態様の別の実施形態によれば、対象は、心血管有害性のリスクのあるおよび/またはうっ血性心不全の履歴を有する対象であり、対象は、慢性腎臓疾患(CKD)を有する。本発明のこの第3の態様の別の実施形態によれば、対象は、心血管有害性のリスクのあるおよび/またはうっ血性心不全の履歴を有する対象であり、対象は、慢性腎臓疾患(CKD)を有しない。特に、これらには、慢性腎臓疾患(CKD)および/またはうっ血性心不全(CHF)を有する対象が含まれ、慢性腎臓疾患(CKD)は、好ましくは、保存期慢性腎臓疾患(NDD-CKD)である。
本発明のこの第3の態様のさらなる特に好ましい実施形態によれば、対象は、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有し、慢性腎臓疾患(CKD)、特に保存期慢性腎臓疾患(NDD-CKD)を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、うっ血性心不全である。
本発明のこの第3の態様のさらなる特に好ましい実施形態によれば、対象は、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有し、慢性腎臓疾患(CKD)、特に保存期慢性腎臓疾患(NDD-CKD)を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心房細動である。
本発明のこの第3の態様のさらなる特に好ましい実施形態によれば、対象は、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有し、慢性腎臓疾患(CKD)、特に保存期慢性腎臓疾患(NDD-CKD)を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、心拍停止である。
本発明のこの第3の態様のさらなる特に好ましい実施形態によれば、対象は、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有し、慢性腎臓疾患(CKD)、特に保存期慢性腎臓疾患(NDD-CKD)を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象は、高血圧症である。
これらの実施形態の一部では、うっ血性心不全の履歴を有する対象は、HFrEFを有する。一部の実施形態では、うっ血性心不全の履歴を有する対象は、NYHAクラスII~IVにおけるうっ血性心不全、特にNYHAクラスII~IVにおけるHFrEF型うっ血性心不全を有する。
他の実施形態では、本開示は、本明細書で定義される対象において、心血管有害事象に関する入院加療の発生率またはリスクを低減するための方法を提供する。
一部の実施形態では、本開示は、本明細書で定義される対象において、心血管有害事象に起因する死亡率および罹患率、すなわち、特に死亡を低減するための方法を提供する。
IV.投薬および投与レジメン
本発明による、心血管有害事象のリスクのある対象において鉄欠乏症を処置する方法は、有効量の鉄イソマルトシドを投与することを含む。そのため、本発明の方法は、前記鉄イソマルトシドの投与の前に、前記患者が鉄欠乏症であるかを決定すること、および前記患者が鉄欠乏症である場合に、前記鉄イソマルトシドを投与することを含んでもよく、好ましい実施形態によれば、含む。より詳細には、本発明の方法は、前記鉄イソマルトシドの投与の前に、前記患者に心血管有害事象のリスクがあるかを決定すること、および前記患者に心血管有害事象のリスクがある場合に、前記鉄イソマルトシドを投与することをさらに含む。
鉄イソマルトシドの典型的な治療レジメンは、1000mgの鉄の単回点滴、静脈内注入として与えられる、最大20mg鉄/kg体重の元素鉄の用量、または静脈内ボーラス注射として与えられる、最大500mg、最大週3回の用量のいずれかからなる。累積鉄必要量は、Ganzoni式を使用して決定することができ、一実施形態によれば、計算された用量が投与される。あるいは、投与する累積用量は、以下の表によって選択される。
Figure 2022535602000002
あるいは、鉄イソマルトシドの典型的な治療レジメンは、以下の表によって選択される。
Figure 2022535602000003
そのため、一部の実施形態では、有効量の鉄イソマルトシドは、約500mg~2000mgの範囲内、例えば、500mg、1000mg、1500mg、または2000mgの量の元素鉄であり、単回用量において、または2回以上、特に2回もしくは3回の用量において投与することができる。あるいは、鉄イソマルトシドの有効量は、最大50mg鉄/kg体重、特に最大30mg鉄/kg体重、または好ましくは最大20mg鉄/kg体重の量である。
特定の実施形態では、用量は、単回1日用量である。例えば、典型的な鉄イソマルトシドの単回1日用量は、1000mg元素鉄である。
反復投与については、200~700mg、好ましくは300~600、最も好ましくは最大500mgの元素鉄の第1の用量に、200~700mg、好ましくは300~600、最も好ましくは最大500の元素鉄の第2の用量が続く。2回の用量は、1カ月、2週間、または好ましくは1週間以内に投与されうる。好ましくは、これらは1週間以内に投与される。鉄イソマルトシドのさらなる用量、例えば、200~700mg、好ましくは300~600、最も好ましくは最大500mgの元素鉄の第3の用量が続いてもよい。このさらなる、例えば第3の用量は、同じ時間フレーム内、すなわち、1カ月、2週間、または好ましくは1週間以内に投与されうる。これらの多重用量は、好ましくは、ボーラス注射として投与される。各用量が、少なくとも2日、特に3日離して投与されるならば、さらに好ましい。例えば、1週間以内に3回の用量が投与される場合、これらの用量は、1日目、4日目、および7日目に投与されることが好ましい。
本発明の鉄炭水化物複合体としてベペクテート第二鉄を使用する場合、元素鉄としての有効累積用量の計算は、Ganzoni式または上に提示した表に基づいて、同様に決定することができる。あるいは、1000mgまたは1500mgの元素鉄を、有効累積用量とすることができる。適当なベペクテート第二鉄の単回用量、すなわち、一度に投与される用量は、例えば、500mg、1000mg、または1500mgであり、最大15mg/kg、または代替的には最大20mg/kgである。あるいは、適当な単回用量を、15mg/kgまたは20mg/kg体重とすることができる。
血液透析に関するCKD患者について、例えば100mg~500mg、好ましくは100mgまたは200mgのような、鉄イソマルトシドまたはベペクテート第二鉄の反復用量を、透析セッションと併用して投与してもよい。
C.薬物の組合せ
本発明による、鉄欠乏症の処置に使用するための、鉄イソマルトシドと1つまたは複数の追加の薬物との組合せであって、追加の薬物が、
(1)アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)、例えば、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ラミプリル、またはトランドラプリル;
(2)ベータブロッカー、例えば、ビソプロロール、カルベジロール、メトプロロールスクシネート、またはネビボロール;
(3)無機質コルチコイド受容体アンタゴニスト(MRA)、例えば、エプレレノンまたはスピロノラクトン;
(4)アンギオテンシン受容体ブロッカー、例えば、カンデサルタン、バルサルタン、またはロサルタン;
(5)Ifチャネルブロッカー、例えばイバブラジン;
(6)アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤、例えばサクビトリル/バルサルタン、および
(7)利尿剤、例えば、フロセミド、ブメタニド、トラセミド、ベンドロフルメトアジド(bendroflumethoazide)、ヒドロクロロチアジド、メトラゾン、インダパミド、アミロライド、またはトリアムテレン
からなる群から選択される、組合せを本明細書にさらに記載する。
追加の薬物についての投与量は、通常、成人に投与される薬物の量を指す。幼児への投与についての投与量は、それに応じて調整されうる。
本発明による、鉄欠乏症の処置に使用するための、鉄イソマルトシドと1つまたは複数の追加の薬物との特定の組合せは、追加の薬物が、対象を、心血管有害事象についてより高リスクにするものである。この態様によれば、追加の薬物は、
(i)プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、例えば、ダプロデュスタット、バダデュスタット、ロキサデュスタット、モリデュスタット、およびデジデュスタを含めた、低酸素誘導因子(HIF)シグナル伝達経路のモジュレーター;
(ii)赤血球造血刺激剤(ESA)、例えば、エリスロポエチン(Epo)、エポエチンアルファ(Procrit/Epogen)、エポエチンベータ(NeoRecormon)、ダルベポエチンアルファ(Aranesp)、およびメトキシポリエチレングリコール-エポエチンベータ(Mircera);ならびに
(iii)ヘプチジンモジュレーター、例えば、ヘプチジンアゴニストもしくはヘプチジンアンタゴニスト
からなる群から選択される。
例示的実施形態
1.心血管有害事象のリスクのある対象において鉄欠乏症を処置する方法であって、有効量の鉄イソマルトシドを投与することを含む、方法。
2.心血管有害事象のリスクのある対象が、心筋梗塞(MI)の履歴、脳卒中の履歴、心房細動(AF)の履歴、うっ血性心不全(CHF)の履歴、慢性腎臓疾患(CKD)、高血圧症の履歴、糖尿病、心臓弁障害の履歴、肥満症の履歴を有する対象、ならびに/または喫煙者、飲酒者、および/もしくは高齢の対象である、実施形態1に記載の方法。
3.心血管有害事象のリスクのある対象が、心筋梗塞(MI)の履歴、脳卒中の履歴、心房細動(AF)の履歴、慢性腎臓疾患(CKD)、うっ血性心不全(CHF)の履歴、および/または高血圧症の履歴を有する対象である、実施形態2に記載の方法。
4.心血管有害事象のリスクのある対象が、心筋梗塞(MI)の履歴、脳卒中の履歴、および/またはうっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象である、実施形態3に記載の方法。
5.うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象において鉄欠乏症を処置する方法であって、有効量の鉄イソマルトシドを投与することを含む、方法。
6.うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象が、心筋梗塞(MI)の履歴、および/または脳卒中の履歴を有する、実施形態5に記載の方法。
7.うっ血性心不全(CHF)が、駆出率が低下した心不全(HFrEF)である、実施形態2から6のいずれか1つに記載の方法。
8.心血管有害事象のリスクのある対象が、心筋梗塞(MI)の履歴を有する対象である、実施形態1から4に記載の方法。
9.心筋梗塞(MI)が、STEMIまたは非STEMIである、実施形態8に記載の方法。
10.心血管有害事象のリスクのある対象が、脳卒中の履歴を有する対象である、実施形態1から4に記載の方法。
11.対象が、心血管有害事象のリスクのあるおよび/またはうっ血性心不全の履歴を有する対象であり、対象が慢性腎臓疾患(CKD)を有する、実施形態1から7のいずれか1つに記載の方法。
12.対象が、心血管有害事象のリスクのあるおよび/またはうっ血性心不全を有する対象であり、対象が、慢性腎臓疾患(CKD)を有しない、実施形態1から7のいずれか1つに記載の方法。
13.心血管有害事象のリスクのある対象が、慢性腎臓疾患(CKD)を有しかつうっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象である、実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法。
14.うっ血性心不全の履歴を有する対象が、HFrEFを有する、実施形態13に記載の方法。
15.うっ血性心不全の履歴を有する対象が、New York Heart Association(NYHA)クラスII~IVにおけるうっ血性心不全を有する、実施形態13または14に記載の方法。
16.慢性腎臓疾患(CKD)が、保存期慢性腎臓疾患(NDD-CKD)である、実施形態11から15のいずれか1つに記載の方法。
17.心血管有害事象のリスクのある対象が、心房細動(AF)の履歴を有する対象である、実施形態1から3に記載の方法。
18.心房細動(AF)が、初めて診断されたAF、発作性(Proxysmal)AF、または持続性AFである、実施形態17に記載の方法。
19.心血管有害事象のリスクのある対象が、心臓弁障害の履歴を有する対象である、実施形態1または2に記載の方法。
20.心血管有害事象のリスクのある対象が、高血圧症の履歴を有する対象である、実施形態1から3に記載の方法。
21.心血管有害事象のリスクのある対象が、糖尿病を有する対象である、実施形態1または2に記載の方法。
22.心血管有害事象のリスクのある対象が、肥満症の履歴を有する対象である、実施形態1または2に記載の方法。
23.心血管有害事象のリスクのある対象が、高齢の対象、喫煙者、または飲酒者である、実施形態1または2に記載の方法。
24.高齢の対象が、60歳以上、65歳以上、70歳以上、75歳以上、または80歳以上である、実施形態23に記載の方法。
25.心血管有害事象のリスクのある対象が、甲状腺機能亢進症および/または関連する甲状腺中毒症を有する対象である、実施形態1に記載の方法。
26.心血管有害事象のリスクのある対象が、慢性閉塞性肺障害(COPD)を有する対象である、実施形態1に記載の方法。
27.心血管有害事象のリスクのある対象が、心筋症を有する対象である、実施形態1に記載の方法。
28.心筋症が、遺伝性心筋症または後天性心筋症である、実施形態27に記載の方法。
29.心血管有害事象のリスクのある対象が、感染症のない全身性炎症を有する対象である、実施形態1に記載の方法。
30.全身性炎症が、約2~3mg/Lの範囲を超えるC-反応性タンパク質(CRP)の増加に関係する、実施形態29に記載の方法。
31.心血管有害事象のリスクのある対象が、透析の対象である、実施形態1に記載の方法。
32.透析が、血液透析または腹膜透析である、実施形態31に記載の方法。
33.心血管有害事象のリスクのある対象が、以下のうちの1つ以上:
a)プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、例えば、ダプロデュスタット、バダデュスタット、ロキサデュスタット、モリデュスタット、およびデジデュスタを含めた、低酸素誘導因子(HIF)シグナル伝達経路のモジュレーター;
b)赤血球造血刺激剤(ESA)、例えば、エリスロポエチン(Epo)、エポエチンアルファ(Procrit/Epogen)、エポエチンベータ(NeoRecormon)、ダルベポエチンアルファ(Aranesp)、およびメトキシポリエチレングリコール-エポエチンベータ(Mircera);ならびに
c)ヘプチジンモジュレーター、例えば、ヘプチジンアゴニストもしくはヘプチジンアンタゴニスト
によって処置された対象である、実施形態1に記載の方法。
34.心血管有害事象のリスクのある対象が、抗凝血剤および/もしくはNSAIDによって処置された対象である、実施形態1に記載の方法。
35.心血管有害事象のリスクのある対象が、遺伝性出血性毛細管拡張症を有する対象である、実施形態1に記載の方法。
36.心血管有害事象のリスクのある対象が、遺伝性鉄剤不応性鉄欠乏性貧血を有する対象である、実施形態1に記載の方法。
37.鉄欠乏症が鉄欠乏性貧血である、実施形態1から36のいずれか1つに記載の方法。
38.対象が、慢性的な鉄の低下または吸収不良を有する、実施形態1から37のいずれか1つに記載の方法。
39.対象が、経口鉄投与に耐容性を示さない、または経口鉄投与が有効でない対象である、実施形態1から38のいずれか1つに記載の方法。
40.鉄欠乏症が、TSAT<20%および/またはフェリチン<100μg/Lと定義される、実施形態1から39のいずれか1つに記載の方法。
41.鉄欠乏症の処置によって、対象における心血管有害事象の発生率またはリスクが低減する、実施形態1から40のいずれか1つに記載の方法。
42.心血管有害事象が、心臓に影響を及ぼす事象(心臓有害事象);末梢血管系に影響を及ぼす事象(末梢血管有害事象);脳血管系に影響を及ぼす事象(脳血管有害事象);呼吸器、胸部および縦隔有害事象;一般有害事象;ならびに感染症および侵襲からなる群から選択される、実施形態41に記載の方法。
43.心臓有害事象が、うっ血性心不全、心房細動、心拍停止、心房ブロック、心不全、洞房結節機能不全、急性心筋梗塞、徐脈、狭心症、心筋虚血、および心室性期外収縮からなる群から選択され;末梢血管有害事象が、高血圧症、収縮期血圧の上昇、血圧の上昇、トロポニンの上昇、および低血圧症からなる群から選択され;脳血管有害事象が、脳血管性偶発症状、脳梗塞、および一過性虚血発作からなる群から選択され;呼吸器、胸部および縦隔有害事象が、呼吸困難および肺浮腫からなる群から選択され;一般有害事象が、胸痛および死亡からなる群から選択され;感染症および侵襲が、敗血症性ショックである、実施形態42に記載の方法。
44.心血管有害事象が、心臓に影響を及ぼす事象(心臓有害事象);末梢血管系に影響を及ぼす事象(末梢血管有害事象);脳血管系に影響を及ぼす事象(脳血管有害事象);および死亡からなる群から選択される、実施形態41に記載の方法。
45.心臓に影響を及ぼす事象(心臓有害事象)が、うっ血性心不全、心筋梗塞、不安定狭心症、および不整脈であり;末梢血管系に影響を及ぼす事象(末梢血管有害事象)が高血圧症であり;脳血管系に影響を及ぼす事象(脳血管有害事象)が脳卒中である、実施形態44に記載の方法。
46.心血管有害事象が、うっ血性心不全、心筋梗塞、不安定狭心症、不整脈、高血圧症、低血圧症、脳卒中、および死亡からなる群から選択される、実施形態41に記載の方法。
47.心血管有害事象が、うっ血性心不全、心房細動、高血圧症、および心拍停止からなる群から選択される、実施形態41から42に記載の方法。
48.心血管有害事象がうっ血性心不全である、実施形態41から47のいずれか1つに記載の方法。
49.心血管有害事象が、うっ血性心不全に起因する入院加療または死亡である、実施形態41に記載の方法。
50.心血管有害事象が、うっ血性心不全に起因する入院加療である、実施形態49に記載の方法。
51.心血管有害事象が、うっ血性心不全に起因する死亡である、実施形態49に記載の方法。
52.心血管有害事象が、うっ血性心不全の悪化に起因する心血管性の死亡および/または入院加療である、実施形態41に記載の方法。
53.心血管有害事象が心房細動である、実施形態41から43および47のいずれか1つに記載の方法。
54.心血管有害事象が高血圧症である、実施形態41から47に記載の方法。
55.心血管有害事象が心拍停止である、実施形態41から43および47のいずれか1つに記載の方法。
56.鉄イソマルトシドがデルイソマルトース第二鉄である、実施形態41から55のいずれか1つに記載の方法。
57.対象において鉄欠乏症を処置する方法であって、鉄欠乏症の処置によって、対象における心血管有害事象の発生率またはリスクが低減し、方法が、有効量の鉄イソマルトシドを投与することを含み、
対象が、
(A)心血管有害事象のリスクのある対象;
(B)うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象;または
(C)うっ血性心不全(CHF)の履歴を有しかつ心血管有害事象のリスクのある対象
であり、
発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、
(a)うっ血性心不全、心筋梗塞、不安定狭心症、不整脈、高血圧症、低血圧症、脳卒中、および死亡;
(b)うっ血性心不全;
(c)心房細動;
(d)高血圧症;または
(e)心拍停止
からなる群から選択される、方法。
58.対象が、心血管有害事象のリスクのある対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、うっ血性心不全である、実施形態57に記載の方法。
59.対象が、心血管有害事象のリスクのある対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、心房細動である、実施形態57に記載の方法。
60.対象が、心血管有害事象のリスクのある対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、心拍停止である、実施形態57に記載の方法。
61.対象が、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、心拍停止もしくはうっ血性心不全、または両方である、実施形態57に記載の方法。
62.対象が、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、うっ血性心不全である、実施形態57に記載の方法。
63.対象が、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、心房細動である、実施形態57に記載の方法。
64.対象が、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、心拍停止である、実施形態57に記載の方法。
65.対象が、心血管有害事象のリスクのあるおよび/またはうっ血性心不全の履歴を有する対象であり、対象が慢性腎臓疾患(CKD)を有する、実施形態57から64のいずれか1つに記載の方法。
66.対象が、心血管有害事象のリスクのあるおよび/またはうっ血性心不全を有する対象であり、対象が、慢性腎臓疾患(CKD)を有しない、実施形態57から64のいずれか1つに記載の方法。
67.慢性腎臓疾患(CKD)が、保存期慢性腎臓疾患(NDD-CKD)である、実施形態65または66に記載の方法。
68.うっ血性心不全の履歴を有する対象が、HFrEFを有する、実施形態57または61から67のいずれか1つに記載の方法。
69.うっ血性心不全の履歴を有する対象が、NYHAクラスII~IVにおけるうっ血性心不全を有する、実施形態57または61から68のいずれか1つに記載の方法。
70.発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、うっ血性心不全の悪化に起因する心血管性の死亡および/または入院加療である、実施形態57から69に記載の方法。
71.心血管有害事象のリスクのある対象が、慢性腎臓疾患(CKD)を有し、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象である、実施形態57に記載の方法。
72.鉄欠乏症が鉄欠乏性貧血である、実施形態41から71のいずれか1つに記載の方法。
73.対象が、慢性的な鉄の低下または吸収不良を有する、実施形態41から72のいずれか1つに記載の方法。
74.対象が、経口鉄投与に耐容性を示さない、または経口鉄投与が有効でない対象である、実施形態41から73のいずれか1つに記載の方法。
75.鉄欠乏症が、TSAT<20%および/またはフェリチン<100μg/Lと定義される、実施形態41から74のいずれか1つに記載の方法。
76.鉄イソマルトシドがデルイソマルトース第二鉄である、実施形態57から75のいずれか1つに記載の方法。
77.前記鉄イソマルトシドの投与の前に、前記患者に心血管有害事象のリスクがあるかを決定することをさらに含む、実施形態1から76のいずれか1つに記載の方法。
78.前記患者に心血管有害事象のリスクがある場合、前記鉄イソマルトシドを投与する、実施形態77に記載の方法。
79.P波のばらつき/継続期間を低減するためではなく、心房細動(AF)またはAFになりやすくなる障害を、このような状態を患う動物において、防止または処置するための方法であって、このような動物に治療有効量の鉄剤を投与することを含む、実施形態1から78のいずれか1つに記載の方法。
80.前記AFになりやすくなる障害が、心臓弁疾患、高血圧、心不全、冠状動脈疾患、肥満症、および真性糖尿病から選択される、請求項79に記載の方法。
81.前記動物が哺乳動物である、請求項79または80に記載の方法。
82.前記動物がヒトである、請求項81に記載の方法。
83.前記AFが発作性、持続性、長期性、または慢性である、請求項79から82のいずれか一項に記載の方法。
84.前記鉄剤を、経口、筋肉内、または静脈内経路を介して投与する、請求項79から83のいずれか一項に記載の方法。
85.前記動物が鉄欠乏症である、請求項79から84のいずれか一項に記載の方法。
86.前記動物が鉄欠乏症ではない、請求項79から85のいずれか一項に記載の方法。
87.AF症状、例えば、動悸または息切れ、運動不耐性、入院加療、心不全、脳卒中、および死亡を低減する、請求項79から86のいずれか一項に記載の方法。
88.前記動物が心筋鉄欠乏症を有する、請求項79から87のいずれか一項に記載の方法。
89.前記心筋鉄欠乏症が、鉄欠乏症についての正常な血液試験を有するにもかかわらず、補充に応答する、請求項79から88のいずれか一項に記載の方法。
本開示を以下の実施例によってさらに説明するが、これらは、さらなる限定として解釈されるべきではない。この出願全体を通じて引用された、すべての図およびすべての参考文献、Genbankシーケンス、特許および公開特許出願の内容は、明確に、参照によって本明細書に組み込まれる。
鉄欠乏性貧血および非透析依存性慢性腎疾患を有する成人ヒト対象における鉄イソマルトシド(「IIM」、商品名Monofer(登録商標)、Monoferric(登録商標))および鉄スクロース(「IS」、商品名Venofer(登録商標))での処置に関して、2つの第III相ランダム化非盲検比較安全性および有効性試験を実施した。これらの試験は、特に心血管リスク因子を有する患者における処置により発現した心血管有害事象の発生率の比較を可能にした。
試験設計
試験は、ランダム化非盲検比較試験であった。鉄欠乏性貧血(IDA)を有する対象を、2つの処置のうちの1つの1処置コースに1:1にランダムに割り付けた。鉄イソマルトシド1000を、1000mgの単回用量の元素鉄として投与した。鉄スクロースを、その米国の表示に従って200mgの緩徐な静脈内ボーラス注射として投与し、1000mgの累積用量に達するように最大5回繰り返した。
目標
試験は、鉄イソマルトシドまたは鉄スクロースで処置した場合のIDAおよび非透析依存性慢性腎疾患を有する対象におけるプロトコール定義の心血管有害事象の発生率の比較を可能にした。
前記プロトコール定義の心血管有害事象は以下の通りであった:
(1)入院加療または医学的介入を必要とするうっ血性心不全:
入院加療または医学的介入を必要とするうっ血性心不全を、以下の基準を満たすと定義した:
- 少なくとも12時間の滞在になる(または入院/退院の時間が分からない場合、日付の変更)入院患者病棟への入院または救急科への来院と定義される入院加療を必要とする;および
- 以下:新しい呼吸困難、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、浮腫、肺底部の湿性ラ音、頸静脈怒張、もしくはこれらの悪化のうちの少なくとも1つを含むうっ血性心不全の臨床的所見、または心不全の悪化の放射線学的証拠ならびに
- 治療の追加/増加:
・ 利尿薬、変力物質もしくは血管拡張療法による静脈内処置;あるいは
・ 機械的もしくは外科的処置(機械的循環補助、心臓移植または心機能を改善するための心室ペーシング)、または具体的には心不全の処置を目的とした限外濾過、血液濾過もしくは透析の使用。
(2)不整脈
不整脈を、医療提供者により評価される、対象が経験した正常な洞調律からの何らかの症候性の逸脱と定義した。評価としては、外来患者の来院時の身体検査、ECGまたは病院入院が挙げられた。不整脈としては任意の伝導異常、心房室ブロック、QTc間隔の延長、上室性/結節性不整脈、血管迷走神経発作、心室性不整脈または他の心血管不整脈が挙げられた。
(3)高血圧症
治験薬物投与直後の観察期間中、高血圧症を、180mmHg超をもたらす、20mmHg超の収縮期血圧の上昇、または105mmHg超の値をもたらす、15mmHg超の拡張期血圧の上昇と定義した。
対象が薬物療法を受ける治験来院からの対象の解放後、高血圧症を、客観的基準である血圧の上昇(180mmHg超の値をもたらす、20mmHg超の収縮期血圧の上昇、または105mmHg超の値をもたらす、15mmHg超の拡張期血圧の上昇)に関連して、予定外の外来患者の医療来院、病院入院、または内科的療法の変更(例えば降圧薬の投与)を必要とすることと定義した。
(4)低血圧症
治験薬物投与直後の観察期間中、低血圧症を、90mmHg未満の値をもたらす、20mmHg超の収縮期血圧の低下、または50mmHg未満の値をもたらす、15mmHg超の拡張期血圧の低下と定義した。
対象が薬物療法を受ける治験来院からの対象の解放後、低血圧症を、客観的基準である血圧の減衰(90mmHg未満の値をもたらす、20mmHg超の収縮期血圧の低下、または50mmHg未満の値をもたらす、15mmHg超の拡張期血圧の低下)と関連して、予定外の外来患者の医療来院、病院入院、または内科的療法の変更(例えば流体/体積過多、降圧薬の保持)を必要とすることと定義した。
(5)心筋梗塞(MI):
心筋梗塞(MI)を、急性冠症候群のいずれかの時間的に関連した症状の設定における心筋酵素マーカーの特徴的な変化、または虚血もしくは梗塞のいずれかと一致している心電図(ECG)変化の存在と定義した。
MIを示す心筋酵素マーカーは以下を含んでいた:
- 少なくとも1つの値が2×正常上限(ULN)以上である、血清トロポニン(IまたはT)またはクレアチンキナーゼ-MBの適当な増加および減少。1つの値のみを測定した場合に、これが2×ULN以上である場合、事象を、臨床的証拠の全体性に基づき判定した。
- 総クレアチンホスホキナーゼのみを測定した場合、連続的な変化(すなわち、少なくとも2つの値)が2×ULN以上である必要があった。
虚血を示す症状は10分間以上にわたって存在する必要があり、該症状としては、胸痛、胸部圧迫感または胸部絞扼感が挙げられた。呼吸困難、発汗または悪心は、虚血の症状とみなされ、臨床的証拠の全体性に基づき判断された。
ECGの変化を以下のように定義した:
- 2つ以上の近接誘導における新しいQ波;
- 2つ以上の近接誘導+におけるT波変化に対して進展するST部分(例えば、0.5mm以上の一過性ST部分下降)
- 新しい左脚分枝ブロック;または
- 2つ以上の近接誘導における1mmのST部分上昇。
(6)脳卒中:
脳卒中を、中枢神経系を含む血管原因に起因し、別の容易に同定可能な原因(すなわち脳腫瘍または外傷)によるものでない、24時間以内に可逆的でない局所神経障害の突然発症と定義した。脳卒中を、出血性、虚血性または不明と下位分類した。
(7)入院加療を必要とする不安定狭心症:
入院加療を必要とする不安定狭心症を、以下の基準を満たす虚血性症状と定義した:
- 10分間以上持続し、最終診断時に心筋虚血であるとみなされる;
- 医療施設への予定外の来院および一晩の入院(胸痛観察室を含まない)を必要とする;ならびに
- 以下のうちの少なくとも1つ:
・ 新しい動的ECG変化、
・ 心臓画像診断によるまたはそれなしでのストレス試験での虚血の証拠、
・ 心外膜冠状動脈における70%以上の病変および/または血栓の血管造影証拠。
(8)任意の原因による死亡:
何らかの原因による死亡を、対象の死亡が宣告された日と判定した。
試験の二次有効性目標は、ヘモグロビン(Hb)、s-フェリチンおよびトランスフェリン飽和度(TSAT)に対するIDAを有する対象における鉄イソマルトシドおよび鉄カルボキシマルトースでの処置の効果を比較するものであった。
評価項目
主要安全性アウトカムメジャーは、8週間以内のプロトコール定義の過敏性反応の発生率(このような事象を有する参加者の数)であった。
主要有効性アウトカムメジャーは、8週間以内にHb(g/dL)を増加させる能力であった。
第2の安全性アウトカムメジャーは、8週間以内のプロトコール定義の心血管有害事象の発生率(このような事象を有する参加者の数)であった。
第2の有効性アウトカムメジャーは、8週間以内のs-フェリチン(ng/mL)の変化および8週間以内のトランスフェリン飽和度(%)の変化であった。
安全性アセスメント
試験は以下の安全性アセスメントを含んでいた:
・ AEデータを収集し、関連性、重篤度、重症度および予測性について評価する。これらを、当局に報告し、国際的および地域的要件に従って経過観察する。
・ 身体検査、バイタルサインの測定値、ECG、身長、体重および安全性の実験室パラメーター。
有効性アセスメント
試験は以下の有効性アセスメントを含んでいた:
・ Hb、s-フェリチン、TSAT(s-鉄およびトランスフェリン)
試験期間および来院回数
個々の対象について、試験期間は8週間(28日間のスクリーニング期間を含む)であり、各対象は6~8回通院した。
対象集団
以下の適格性基準を満たす対象が含まれた:
1.男性または女性>18歳;
2.Hb≦11g/dL;および
3.参加の意志があり、インフォームドコンセント用紙(ICF)に署名する。
IDA-03
IDA-03試験の追加包含基準は以下であった:
1.様々な病因*、例えば異常子宮出血、胃腸疾患、がん、減量術式(胃バイパス術)および有意な失血をもたらす他の状態に起因するIDA;
2.TSAT<20%;
3.S-フェリチン≦100ng/mL;ならびに
4.試験登録前の少なくとも1カ月間***の経口鉄療法に対する不耐性または非応答性**の文書化された履歴。
患者の平均年齢は44歳(範囲18~91歳)であり、89%が女性であった。
CKD-04
CKD-04試験の追加包含基準は以下であった:
1.(i)スクリーニングでeGFR<60mL/分/1.73m(腎疾患における食事改善療法(MDRD)により計算)、または(ii)スクリーニングでeGFR<90mL/分/1.73mのいずれかにより定義される慢性腎臓障害、および病歴で尿組成物における異常により示される腎臓損傷、ならびに/またはフラミンガムモデルに基づく中等/高リスクの心血管疾患;
2.TSAT≦30%の場合、s-フェリチン≦100ng/mLまたは≦300ng/mLのスクリーニング;ならびに
3.ランダム化前の4週間にESAなしまたは安定な用量(±20%)のESAのいずれか。
患者の平均年齢は69歳(範囲25~97歳)であり、63%が女性であった。
*IDAの病因(不明の場合も)を、病歴で文書化し、原文書で照合した。
**経口鉄処置に対する不耐性および非応答を、病歴で徴候および症状と共に文書化し、原文書で照合した。
***過去9カ月以内の治験責任医師の判断による少なくとも1カ月の処方された経口鉄療法に対する不耐性または非応答性を文書化し、これらが再び経口鉄の候補になることはない。
対象が以下の基準のいずれかを満たした場合、この試験の包含に適格でなかった:
1.治験責任医師の判断に従ってIDA以外の因子に主に起因する貧血
2.ヘモクロマトーシスまたは他の鉄蓄積症
3.任意の静脈内鉄化合物に対する以前の重篤な過敏反応
4.スクリーニング前の過去30日以内の静脈内鉄での処置
5.スクリーニング前の過去30日以内のエリスロポエチンまたはエリスロポエチン刺激剤、赤血球輸血、放射線療法および/または化学療法での処置
6.試験期間中の計画された外科手技
7.アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)および/またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)>3倍正常上限(例えば非代償性肝硬変または活動性肝炎)
8.スクリーニング前の過去30日以内の一般的な麻酔下での手術
9.非代償性肝硬変または活動性肝炎(CKD-04のみ)
10.CKDの処置に必要な透析
11.過去6カ月以内のアルコールまたは薬物乱用
12.妊娠または授乳中の女性。妊娠を回避するために、出産の可能性のある女性は、適切な避妊(例えば子宮内避妊器具、ホルモン避妊薬または二重障壁法)を全試験期間中および最終投与後7日間使用する必要がある。
試験処置
対象には、以下に示すように鉄イソマルトシド(A群)の1処置コースまたは鉄スクロース(B群)の1処置コースのいずれかを服用させた:
・ A群:鉄イソマルトシドを、100mLの0.9%の塩化ナトリウムで希釈したベースラインで1000mgの単一静脈内点滴として投与し、約20分にわたって与えた(50mgの鉄/分、累積用量:1000mg)。
・ B群:鉄スクロースを、表示に従って200mgの緩徐な静脈内ボーラス注射として投与し、1000mgの累積用量に達するように最大5回繰り返した。
事前薬物療法(例えば抗ヒスタミンまたはステロイド)は、試験薬の投与前は禁止された。対象が、例えばアレルギーまたは喘息の処置を毎日受けていた場合、これは「事前薬物療法」とみなされず、試験への参加を継続できた。
統計分析
共主要安全性評価項目を、鉄イソマルトシド処置群における処置により発現した重篤および/または重度の重篤でない過敏性AEの発生率の正確な両側95%CIを構築することにより分析した。95%CIの上界が3%未満である場合、安全性目標を満たしていた。
さらに、鉄イソマルトシドと鉄スクロースとのリスク差を、リスク差の95%CIを構築することによりアセスメントした。未調整のCI(連続補正あり)とCochran-Mantel-Haenszel法を用いて層調整した95%のNewcombe CIの両方を作成する。
感受性について、処置群を、共変量の関数として基礎疾患の処置および種類を用いたロジスティク回帰モデルによる処置群と、Fisherの正確検定による処置群との間で比較した。
安全性分析の全対象が分析に含まれた。
共主要有効性評価項目を、制限付き最尤法(REML)に基づく反復測定混合モデル(MMRM)手法を用いて分析した。ベースライン後Hbデータで設定した処置意図(ITT)による分析の全対象は、これらの観察データと共に含まれた。モデルは、処置(鉄イソマルトシドおよび鉄スクロース)、週、週と処置の相互作用、層、ならびにベースラインHb値およびベースラインHbと週の相互作用の連続固定共変量の固定分類効果を含んでいた。無構造(共)分散構造を使用して、対象内誤差をモデル化した。予想外に、この分析が収束しなかった場合、以下の構造を、以下の順番で適用した:一次アンテディペンデンス(first-order ante-dependence)、不均一化合物対称、化合物対称。Kenward-Rodgerの近似を使用して、分母の自由度を推定した。主要比較は、処置と週の相互作用効果の最小二乗平均に基づく8週目での鉄イソマルトシドと鉄スクロースとの間の比較である。このモデルに基づく推定平均差を、両側対称の95%CIで報告し、95%CIの下界が0.5g/dL以上である場合、有効性目標を満たしていた。
ベースラインアセスメント
以下を、治験施設で臨床ベースライン来院時に試験スタッフによりアセスメントした:
・ 変化がスクリーニング以降発生していないことを確認するために見直される包括および除外基準
・ 該当する場合、妊娠テスト
・ 心筋梗塞、脳卒中またはうっ血性心不全の履歴を含む、関連性のある病歴の記録
・ 同時薬物療法の記録
・ 身体検査(ベースライン来院以降は実施しない)
・ 身長測定
・ 体重測定
・ バイタルサインの検査
・ ランダム化
・ ECG
・ FACIT疲労スケールによる疲労のアセスメント
・ ISDRアンケートおよび医療資源使用アンケートによる薬剤経済学のアセスメント
・ 安全性実験室テスト
・ 有効性実験室テスト
・ 鉄イソマルトシドでの処置(A群のみ)
・ 鉄スクロースでの処置(B群のみ)
・ AEの評価および記録
試験アセスメント
人口統計およびベースラインアセスメント
出生日、性別、人種、民族性および喫煙習慣を収集した。習慣的な喫煙者を、過去6カ月以内に喫煙していた対象と定義した。
妊娠テスト
尿妊娠テストを、出産の可能性のある全女性に対して実施した。テストは、治験施設職員により取り扱われ、解釈された。
関連性のある病歴
関連性のある病歴を記録した。病歴の変更を、試験中のその後の来院時に記録した(症状または疾患の悪化をAEと記録した)。以下を収集した:疾患、ならびに開始および停止日。IDAの原因となる基礎疾患を除き、試験への登録の12カ月超前に発生した開始日を12カ月超として設定した。
同時薬物療法
対象が任意の同時薬物療法を受けていた場合、これをベースライン来院時に記録した。同時薬物療法の変更を、試験中のその後の来院時に記録した。以下を収集した:商品名、適応症、経路、用量、頻度、単位、ならびに開始および停止日。試験への登録の12カ月超前に発生した開始日を12カ月超として設定した。
身体検査
身体検査を、治験責任医師の判断に基づき実施した。身体検査は以下を含みうる:
・ 頭-眼-耳-鼻-喉
・ 心血管系
・ 呼吸器系
・ 神経系
・ 胃腸管系
・ 筋骨格系
・ 泌尿生殖器系
・ 皮膚系
・ 必要な場合、他。
身長
身長は、靴を脱いで測定した。
体重
体重を測定した。
バイタルサイン
心拍および血圧を、対象が試験薬を受けた以下の時点で測定した:点滴の約0~10分前、点滴中、点滴終了の5~15分および20~40分後。バイタルサインを、所与の時間間隔で1回超測定した場合、該期間の最低拡張期血圧測定値(付随する収縮期血圧および心拍を含む)を、電子症例報告書(eCRF)に記載した。
心電図
標準12誘導ECGを記録した(日付、時間および署名を含む)。ベースラインおよび他の処置来院時、2つのECGを記録した:1つは試験薬の投与前および1つは服用開始の約30分後。1つのECGのみを経過観察来院時に記録した。
ECGは、心臓病専門医による評価が不要であった。
実験室アセスメント
血液試料を試験薬の投与前に採取すること、および可能な場合、血液試料を、パラメーターにおける何らかの日間変動を低減するためにすべての来院日で同じ時間に採取することが要求された。
実験室アセスメントを中央実験室で実施した。全実験手順を記載した実験室マニュアルを、各治験施設に提供した。
適格性実験室アセスメント
以下の適格性の実験室アセスメントを実施した:
・ 血液一式(complete hematology set):Hb、白血球(leucocytes/White Blood Cells(WBC))、赤血球(erythrocytes/Red Blood Cells(RBC))、ヘマトクリット、血小板、好中性顆粒球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、平均赤血球ヘモグロビン(MCH)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)および網状赤血球数
・ 生化学
・ S-フェリチン
・ アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)
・ C反応性タンパク質(CRP)
・ 推定糸球体濾過率(eGFR)。
ビタミンE
ビタミンEを、人口統計データの一部としてベースライン来院時に測定した。
安全性実験室アセスメント
以下の安全性実験室アセスメントを分析した:
・ 血液一式:白血球/WBC、赤血球/RBC、ヘマトクリット、血小板、好中性顆粒球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、MCH、MCV、MCHCおよび網状赤血球数
・ 生化学
・ s-ナトリウム、s-カリウム、s-カルシウム、s-尿素、s-クレアチニン、s-アルブミン
・ s-ビリルビン、ASAT、ALAT
・ CRP
有効性実験室アセスメント
以下の有効性実験室パラメーターを分析した:
・ Hb:ヘモグロビンをCoulter LH750システムにより分析した。システムがヘモグロビン量を測定できるように、溶解試薬を全血球計数パラメーターに使用して、血液を調製した。溶解試薬は急速にかつ同時に赤血球を破壊し、かなりの比率のヘモグロビンを安定な色素に変換した。色素の吸収度は、試料中のヘモグロビン濃度に正比例した。この方法の精度は、ヘモグロビンシアニド法の精度と等しかった。
・ S-フェリチン:アクセスフェリチンアッセイは、両側免疫酵素(「サンドイッチ」)アッセイであった。試料を、ヤギ抗フェリチンアルカリホスファターゼコンジュゲートを含む反応器に添加し、常磁性粒子を、ヤギ抗マウス:マウス抗フェリチン複合体で被覆した。血清または血漿(ヘパリン)フェリチンは、固体相の固定化されたモノクローナル抗フェリチンに結合し、ヤギ抗フェリチン酵素コンジュゲートは、フェリチン分子の異なる抗原部位と反応する。磁場で分離し、固体相に結合しなかった除去物質を洗浄する。化学発光基質、Lumi-Phos*530を反応器に添加し、反応により発生した光をルミノメーターで測定した。
・ TSAT(s-鉄およびトランスフェリンを収集して、TSATを計算する;TSAT=(鉄μg/dL/トランスフェリンmg/dL)×70.9)。
・ S-鉄:血清鉄(s-鉄)を、免疫比濁アッセイに基づくRoche自動臨床化学分析装置を使用して熱量測定アッセイにより測定した。
有害事象(AE)
AEデータを収集し、試験薬に対する関連性、重篤度、重症度および予測性について評価した。
下記の表に要約したように、合計N=260の患者(IIM群におけるN=168;IS群におけるN=92)は、彼らの病歴に従ってCHFと診断された。
病歴に従ってCVリスクと診断された患者は、合計N=518(IIM群におけるN=345;IS群におけるN=173)であった。そのうちの合計N=226の患者(IIM群におけるN=144;IS群におけるN=82)が、彼らの病歴に従ってCVリスクおよびCHFと診断された。CHFを有さず、CVリスクと診断された患者は、合計N=292であった(IIM群におけるN=144;IS群におけるN=82)。合計N=2748はCHFを有さない患者であった(IIM群におけるN=144;IS群におけるN=82)。
Figure 2022535602000004
結果
重要所見は、心血管有害事象のリスクを有する患者において処置により発現したうっ血性心不全有害事象に対する鉄イソマルトシド1000の明らかな影響を含む。
合計1525人の患者をCKD-04試験に登録し、イソマルトシド1000または鉄スクロースのいずれかで処置した。CKD-04試験において鉄イソマルトシド1000で処置した1019人の患者の4.1%は、複合心血管事象を有しており、発生率は、鉄スクロース処置群で6.9%(506人の患者)であった。
合計1525人の患者をIDA-03治験に登録し、イソマルトシド1000または鉄スクロースのいずれかで処置した。鉄イソマルトシド1000で処置した989人の患者の0.8%および鉄で処置した494人の患者の1.2%が、複合心血管事象を経験した。CKD-04/IDA-03の組合せ試験において、複合心血管事象は、鉄スクロースでの4.1%に対して鉄イソマルトシド1000で処置した2008人の患者の2.5%で観察され(p=0.0176)、患者を鉄イソマルトシド1000で処置した場合、複合心血管事象の60%の減少をもたらした。各試験において、うっ血性心不全、高血圧症、心房細動、低血圧症および心拍停止の比率が、鉄スクロース処置群と比較して鉄イソマルトシド1000処置群においてより低かった。図1を参照のこと。
全患者集団を、様々な患者サブグループに分離した:全患者、CHFを有するまたは有さない全患者、CVリスク有する患者およびCVリスクを有し、CHFを有するまたは有さない患者。各患者群において、処置により発現したうっ血性心不全有害事象の発生率は同様であり、ほとんどの場合で、鉄スクロースによる処置と比較して、鉄イソマルトシド1000を使用すると著しく低かった。図2を参照のこと。例えば、CKD-04/IDA-03の組合せ試験において、CHFを有する全患者の6.5%が、鉄スクロースで処置した場合、処置により発現したうっ血性心不全有害事象を有していたが、鉄イソマルトシド1000での処置では、前記患者群の1.8%しかこのような有害事象を経験しなかった。心不全の悪化/増悪は、鉄イソマルトシド1000で処置した場合のわずか1.8%と比較して、前記患者群において鉄スクロースを用いた場合、5.4%で発生した。処置により発現したうっ血性心不全有害事象において同様に有意な減少が観察された。CVリスクを有する患者において、うっ血性心不全の発生率は、IIM処置群において1.2%であり、IS処置群において3.5%であり、IIM処置群の1.2%およびIS処置群の1.7%でうっ血性心不全の悪化が発生した。CVリスクおよびCHFを有する患者において、うっ血性心不全の発生率は、IIM処置群において1.4%およびIS処置群において4.9%であり、IIM処置群の1.4%およびIS処置群の3.7%でうっ血性心不全の悪化が発生した。前記試験の結果の有意性をさらに図5に例示する。この図は、CKD-04/IDA03の組合せ試験のデータを棒グラフの形態で例示的に示している。
鉄イソマルトシド1000対鉄スクロースでの処置のオッズ比を図3に示す。オッズ比<1は、処置により発現したうっ血性心不全有害事象の確率を示し、これは、鉄スクロースでの処置より鉄イソマルトシド1000での処置の方が低い。図4を参照のこと。
判定された複合心血管有害事象を経験しない患者(CKD-04)の確率は、鉄スクロースでの処置の8週間後より鉄イソマルトシド1000での処置の8週間後の方が著しく高い。図6を参照のこと。
CKD-04/IDA-03の組合せ試験(全患者)において、鉄イソマルトシド1000は、1および2週目においてベースラインからのHbのより高い上昇をもたらし(p<0.001)、4および8週目においてベースラインからのHbの変化の非劣勢が示された(主要有効性評価項目)。図7を参照のこと。
要約すれば、試験は、特に複合心血管評価項目およびうっ血性心不全についてのCKD-04においてならびにCKD-04およびIDA-03にわたってプールされた分析において、心血管有害事象の発生率が鉄スクロースと比較して鉄イソマルトシド1000での処置の方が低いことを示している。さらに、CV有害事象の発生率および鉄スクロースに対する数値差は、一般に、CHF患者サブグループ(病歴でCHF/CVリスク因子およびCHF)においてより高い。VenoferおよびFCM(CDER報告書)と比較して、複合評価項目(および任意の原因による死亡を含むほとんどの下位項目)の発生率は、鉄イソマルトシド1000での処置の方が低い。
鉄イソマルトシドでの処置は、病歴でうっ血性心不全を有する患者において、1および2週目までのベースラインからのHbのより高い上昇、ならびに8週目で同様の応答をもたらす。
均等形態
当業者は、単に常套的実験だけを用いて、本明細書に開示される具体的な実施形態の多くの均等形態を認識するか、または確認することができる。このような均等形態は、以下の請求項に包含されることが意図される。
非特許文献
Anker SD, Comin Colet J, Filippatos G, Willenheimer R, Dickstein K, Drexler H, Luscher TF, Bart B, Banasiak W, Niegowska J, Kirwan BA, Mori C, von Eisenhart Rothe B, Pocock SJ, Poole-Wilson PA, Ponikowski P. Ferric carboxymaltose in patients with heart failure and iron deficiency. N Engl J Med 2009; 361:2436-2448.
Ponikowski P, van Veldhuisen DJ, Comin-Colet J, Ertl G, Komajda M, Mareev V, McDonagh T, Parkhomenko A, Tavazzi L, Levesque V, Mori C, Roubert B, Filippatos G, Ruschitzka F, Anker SD. Beneficial effects of long-term intravenous iron therapy with ferric carboxymaltose in patients with symptomatic heart failure and iron deficiency. Eur Heart J 2015; 36:657-668.
Figure 2022535602000005
Ponikowski P, Voors AA, Anker SD, Bueno H, Cleland JG, Coats AJ, Falk V, Gonzalez-Juanatey JR, Harjola VP, Jankowska EA, Jessup M, Linde C,Nihoyannopoulos P, Parissis JT, Pieske B, Riley JP, Rosano GM, Ruilope LM, Ruschitzka F, Rutten FH, van der Meer P; Authors/Task Force Members;Document Reviewers. 2016 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure: The Task Force for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure of the European Society of Cardiology (ESC). Eur J Heart Fail. 2016 Aug; 18(8):891-975. doi: 10.1002/ejhf.592. Epub 2016 May 20.
Yancy CW, Jessup M, Bozkurt B, Butler J, Casey DE Jr, Colvin MM, Drazner MH, Filippatos GS, Fonarow GC, Givertz MM, Hollenberg SM, Lindenfeld J, Masoudi FA, McBride PE, Peterson PN, Stevenson LW, Westlake C. 2017 ACC/AHA/HFSA Focused Update of the 2013 ACCF/AHA Guideline for the Management of Heart Failure: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines and the Heart Failure Society of America. J Am Coll Cardiol. 2017 Aug 8; 70(6):776-803. doi: 10.1016/j.jacc.2017.04.025. Epub 2017 Apr 28.
Myles Wolf, MD, Janet Rubin, MD, Maureen Achebe, MD, Michael John Econs, MD, Munro Peacock, MD, Erik Allen Imel, MD, Lars L. Thomsen, MD, Thomas O. Carpenter, MD, Thomas Joseph Weber, MD, Heinz Zoller, MD. Effects of Iron Isomaltoside versus Ferric Carboxymaltose on Hormonal Control of Phosphate Homeostasis: The PHOSPHARE IDA04/05 Randomized Controlled Trials. ENDO 2019, March 23-26 2019, New Orleans, Session OR13 - OR13. Rare Bone Diseases and Mineral Metabolism, abstract OR13-3.
Figure 2022535602000006
Charles-Edwards G, Amaral N3, Sleigh A, Ayis S, Catibog N3, McDonagh T3, Monaghan M, Amin-Youssef G, Kemp GJ, Shah AM, Okonko DO. Effect of Iron Isomaltoside on Skeletal Muscle Energetics in Patients With Chronic Heart Failure and Iron Deficiency. Circulation. 2019 May 21; 139(21):2386-2398. doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.118.038516.
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Claims (15)

  1. 対象において鉄欠乏症を処置する方法であって、鉄欠乏症の処置によって、対象における心血管有害事象の発生率またはリスクが低減し、方法が、有効量の鉄イソマルトシドを投与することを含み、
    対象が、
    (A)心血管有害事象のリスクのある対象;
    (B)うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象;または
    (C)うっ血性心不全(CHF)の履歴を有しかつ心血管有害事象のリスクのある対象
    であり、
    発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、
    (a)うっ血性心不全、心筋梗塞、不安定狭心症、不整脈、高血圧症、低血圧症、脳卒中、および死亡;
    (b)うっ血性心不全;
    (c)心房細動;
    (d)高血圧症;または
    (e)心拍停止
    からなる群から選択される、方法。
  2. 対象が、心血管有害事象のリスクのある対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、うっ血性心不全である、請求項1に記載の方法。
  3. 対象が、心血管有害事象のリスクのある対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、心房細動である、請求項1に記載の方法。
  4. 対象が、心血管有害事象のリスクのある対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、心拍停止である、請求項1に記載の方法。
  5. 対象が、うっ血性心不全の履歴を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、心拍停止もしくはうっ血性心不全、または両方である、請求項1に記載の方法。
  6. 対象が、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、心房細動である、請求項1に記載の方法。
  7. 対象が、うっ血性心不全(CHF)の履歴を有する対象であり、発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、心拍停止である、請求項1に記載の方法。
  8. 対象が、心血管有害事象のリスクのあるおよび/またはうっ血性心不全の履歴を有する対象であり、対象が慢性腎臓疾患(CKD)を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 対象が、心血管有害事象のリスクのあるおよび/またはうっ血性心不全を有する対象であり、対象が慢性腎臓疾患(CKD)を有しない、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  10. 慢性腎臓疾患(CKD)が、保存期慢性腎臓疾患(NDD-CKD)である、請求項8または9に記載の方法。
  11. うっ血性心不全の履歴を有する対象が、HFrEFを有する、請求項1、または5から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. うっ血性心不全の履歴を有する対象が、NYHAクラスII~IVにおけるうっ血性心不全を有する、請求項1、または5から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 発生率またはリスクが低減する心血管有害事象が、うっ血性心不全の悪化に起因する心血管性の死亡および/または入院加療である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 鉄欠乏症が、TSAT<20%および/またはフェリチン<100μg/Lと定義される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 鉄イソマルトシドがデルイソマルトース第二鉄である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
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