特許請求の範囲によって網羅されるものから逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に対して重要でない変更を加えることができる。
拡張可能な突起部を備えたインナーロータが、固定されたアウターロータ又はステータを備えた’301刊行物に示される。拡張可能なインナーロータは、例えば、’221刊行物に記載されているように、回転する外部ハウジングを備えた装置で使用することもできる。周方向に拡張可能な外向き突起部を備えたインナーロータが、’301刊行物に記載されている。
図及び詳細な説明において、回転方向及び前縁及び後縁の指定は、参照の目的で使用される。反対方向への回転及び逆の構成も可能である。
詳細な説明及び特許請求の範囲において、「シリンダ」という用語は、環状ハウジングの半径方向の内面によって規定される空間を説明するために使用され、インナーロータの外向き突起部がその内面と噛み合う。外向き突起部は、シリンダ内のピストンとして機能し、可変容積チャンバを規定する。「シリンダ」という用語は、特定の断面形状を意味するために使用されていない。例えばシリンダの断面が円形である必要はなく、例えば長方形にすることもできる。「シリンダ」という用語は、ロータ以外の実施形態等で、可変容積チャンバを規定するためにピストンが入る任意のキャビティを指すために使用することができる。
「一次脚部」及び「二次脚部」という用語は、ロータの各脚部が互いに対して移動可能な構成要素に分割される場合に使用され得る(そしてこれらの構成要素は、以下に説明するように、さらにサブ要素に分割され得る)。「一次脚部」及び「二次脚部」という用語は、必ずしも一次脚部と二次脚部との間の違いを意味するわけではなく、それら用語が説明するそれぞれの構成要素に適宜割り当てることができる。この文書に示される実施形態では、これらの構成要素のうちの1つは、他の構成要素よりも長い外周を有するが、他の実施形態では、それらの外周は等しくてもよい。便宜上、示される実施形態では、「一次脚部」という用語は、より大きな外周長さを有する構成要素に割り当てられる。前縁を形成する一次脚部又は二次脚部の部分は、本明細書では「踵(heel)」と呼ばれ、後縁を形成する一次脚部又は二次脚部の部分は、本明細書では「つま先(toe)」と呼ばれる。図2~図18の実施形態では、「つま先」は「一次脚部」にある。
従来技術の実施形態は、図1~図18に示されるように軸線方向(axial)の拡張を可能にするように修正され得る。つま先部分と踵部分との間にシールを提供し、つま先及び踵を互いに対して回転できるようにすることにより、ロータ脚部が周方向に拡張して、つま先と前方シリンダ壁との間だけでなく、踵と後方シリンダ壁との間に接触シールを形成することができることが示され、これは、チャンバ内でシールされている流体の圧力に比例する。これは非常にうまく機能することが証明されているが、ロータの側面に可動シールを提供していない。
多くの回転装置は、回転シリンダの前壁及び後壁、並びにインナーロータとシリンダの内向きの軸線方向面との間の軸線方向面に対してシールしなければならないインナーロータを必要とする。他の非限定的な実施形態又は使用例では、シリンダは、代わりに、それらの1つ又は複数の中心軸線の周りに回転する1つ又は複数のロータで固定され得、1つ又は複数のロータは、シリンダの中心軸線の周りを同時に回転する。
いくつかの用途では、厳密な公差嵌合で必要なシールを達成することが可能である。空気等の非常に高圧で低粘度の流体の場合に、この嵌合を実現することは非常に困難な場合がある。例えば、製造公差又は摩耗補償が必要な用途、より高い圧力が必要な用途、又は熱膨張により所与の圧力に対して厳密な公差嵌合が困難又は不可能になる用途の場合には、より高度なシール構成が必要である。特に難しいのは、シリンダ壁とインナーロータの側面との間の摩擦により、インナーロータの温度がアウターロータに不釣り合いに上昇するシナリオである。これにより、インナーロータが軸線方向に膨張して摩擦が増大し、より多くの熱が発生する熱暴走状況が発生する可能性がある。観察される結果は、インナーロータの軸線方向の膨張であり、これは、インナーロータとアウターロータ側壁との間のギャップを、高摩擦、高摩耗、及びさらに多くの熱生成を伴う締り嵌めを生じさせる点まで閉じる(近づける)。
インナーロータ及びアウターロータ(又はステータ)シリンダ壁の接触又は接触に非常に近い嵌合を可能にし、インナーロータ及びアウターロータの軸線方向の製造公差、摩耗、及び熱膨張を説明する解決策が必要である。
以下に提示されるのは、インナーロータが軸線方向に拡張するのを可能にするいくつかの異なる構成である。実施形態は、軸線方向だけでなく周方向の拡張を可能にするロータの幾何学的形状を含む。この解決策は、製造公差を緩くして低コストを実現し、熱膨張又は摩耗による幾何学的形状の変化を補償することを目的としている。さらに、外向きのインナーロータ側壁とアウターロータのインターフェイス接続(interfacing)側壁との間の軸力は、実施形態では、シリンダで生成される圧力に比例するため、このシール力は、シールするのに十分であり、過度の摩擦又は摩耗を引き起こさない。
こうして、ロータの実施形態は、周方向に拡張することに加えて、軸線方向に拡張することができる。これは、図1に示されるように2つのロータを単に並べて配置することを含むいくつかの方法で行うことができる。図1は、第2のインナーロータ504に隣接する第1のインナーロータ502を示している。これらのロータ502及び504の両方の内径(ID)は、インナーロータのシャフトシリンダ506等のシリンダ又は軸線方向に拘束されない軸受け等のブッシング上で軸線方向に移動することができる。インナーロータ502の軸線方向の動きは、図1において、508とラベル付けされた両方向矢印によって示され、インナーロータ504の軸線方向の動きは、510とラベル付けされた両方向矢印によって示される。
図2に示される実施形態では、二次脚部644はそれぞれ踵604を形成し、3つの軸線方向構成要素、手前側(near side)踵要素608、中央踵要素610、及び向う側(far side:反対側)踵要素612に分割された構成要素から形成される。これらの3つの構成要素は、互いに独立して軸線方向に移動できる。「踵」は、図2の湾曲した矢印606によって示されるように、ロータ600が示される図に対して時計回りに回転しているときの脚部の前縁を指すためにここで使用されている。手前側及び向う側は示される図に対している。
これらの構成要素の回転は、互いに拘束することができ、又は回転位置は、それら構成要素が接触しているシリンダ壁によって拘束することができる。一次脚部642はそれぞれ、ロータのつま先602を形成し、互いに軸線方向に独立して移動することができる2つの軸線方向に移動可能な半体614及び616に分割された構成要素から形成される。これらの構成要素の回転は、同様に互いに制約することができ、又は回転位置は、それら構成要素が接触しているシリンダ壁によって制約することができる。
図3は、踵要素608、610、612だけを示しており、これらは、一緒になって、周方向に一緒に回転する組み合わされた踵要素624を形成している。つま先要素は、この図には示されていない。
図4は、中央踵要素610及び向う側踵要素612の分解図を示しており、簡略化するために、手前側踵要素608は示していない。踵要素608と610との間には踵フローティングシール618があり、別の踵フローティングシール619が踵要素610と612との間にある。この実施形態では、各踵フローティングシール618又は619は、向う側踵要素612の溝620等の、(2つの構成要素の間をシールする)2つの構成要素のそれぞれの溝に位置付けされる。踵フローティングシール618及び619は、3つの構成要素の間のギャップを通って脚部を通過するロータの外径(OD)から半径方向内側への漏れを低減する。踵フローティングシール618及び619は、説明を簡略化するために片方の脚部にのみ示されるが、各脚部に同様のシールがあることを意図していることに留意されたい。踵シール618及び619は、2つの構成要素の溝に示されるが、一方の構成要素の溝にあるか、又は一方の構成要素に固定されて、他方の構成要素に接触することもできる。シールはまた、半径方向及び軸線方向にフローティングすることができる。シールは、図4の踵フローティングシール618上の踵シール半径方向部分622によって示されるように、溝内のシールの周方向の動きを防ぐために半径方向又は幾分半径方向である表面を有し得る。
図5は、図2のつま先要素のみを示しており、この実施形態では、つま先要素は、2つの左右対称の構成要素、第1のつま先要素614及び第2のつま先要素616から構成され、これらは、互いに対して軸線方向に移動し、一緒になって組み合わされたつま先要素626のみを形成することができる。つま先要素614の軸線方向の動きは、矢印632を使用して示され、つま先要素616の軸線方向の動きは、矢印634を使用して示される。ロータのつま先シール630は、つま先要素614と616との間に示される。
図6は、図2のインナーロータの向う側つま先要素のみを示し、周方向つま先シール溝640及び溝内のつま先フローティングシール636を含む例示的な脚部の向う側つま先要素部分を示している。この場合にも、溝640及びつま先シール636は、半径方向又は幾分半径方向の部分を有し得、この実施形態では、シールの周方向の動きを防止するつま先シール半径方向部分638を有し得る。これらの溝及びシール要素は、簡略化するために他の脚部から省略される。
これらの設計における重要な考慮事項は、フローティングシールが2つ以上の軸線方向に移動可能な構成要素の間で有効であると見なされることである。しかしながら、リングが常にシリンダ内にあるピストンとは異なり、このロータの脚部は、圧縮チャンバに出入りし、従ってそれら脚部がチャンバに再び入るときに引っ掛かる(catch)ことができるため、フローティングシールは、インナーロータの軸線方向の外面では実用的とは見なされない。このため、インナーロータの軸線方向の外面は、軸線方向の可動シールとして機能する。好ましい実施形態では、つま先及び踵は、互いに対してフローティングすることもできる。圧縮、圧縮空気取り入れ口、燃焼、又は他のソースからの圧力は、それらロータ要素を軸線方向に離すために、ロータのOD(外径)からシールまでのロータ要素同士の間のスペースに入り込むことができる。同様に、圧縮、圧縮空気取り入れ口、燃焼、又は他のソースからの圧力は、ロータのOD(外径)とシールとの間、構成要素が互いに周方向にスライドする場合の構成要素同士の間のつま先及び踵の半径方向の表面にさらされる。この圧力により、つま先及び踵がシリンダ壁に押し込まれ、液漏れに対するシールが形成される。チャンバの側面に対して軸線方向にロータ要素を拡張することにより、軸線方向の面での漏れを防ぐためのシールが提供される。その結果、ロータは、チャンバ内の圧力に比例する力で全方向に拡張することができる。
ロータ要素及びシールの多くの異なる構成が可能であり、本発明者によって考案された。本明細書に示すシーリング性能の達成に役立つ特性は次のとおりである。
a)それらロータ要素の間に周方向シールを有する2つ以上のロータ要素上の軸線方向面であり、それによりシールから半径方向外向きへの圧力が、シールから半径方向内向きへの表面同士の間の圧力よりも大きい。この圧力は、シールの有効性の結果であり、2つ以上の構成要素を互いに引き離す軸力を生成するためにも使用され、これにより、アウターロータの内向きのシリンダ壁に隣接するインナーロータ要素の最も外側の軸線方向面同士の間にシールが形成される。
b)シールは、好ましくは、シールが占めるインナーロータの溝に対するシールの周方向の動きを防止する、幾分半径方向に整列した表面を含む特徴を有するだろう。これにより、シールの周方向端部がつま先又は踵の接触面に整列される。
c)上記に対する僅かな変更は、依然として利益の一部を提供するだろう。これらの変更には、溝の長さよりも短いシール、又はつま先から踵までの脚部の全周長よりも短い溝が含まれる可能性がある。
図7に示されるのは、軸線方向に拡張する構成及びシール構成を含むインナーロータ700の部分断面であり、このシール構成は、インナーロータの脚部を越えて圧縮チャンバから半径方向内向きの流体の漏れを防止又は低減し、また、ロータのつま先及び踵部分の周方向の拡張、並びにロータ要素の軸線方向の拡張を可能にし且つ生じさせて、アウターロータチャンバの軸線方向内向き面に対してインナーロータ脚部の外向き面のシールを形成する。この非限定的な実施形態では、2つの独立したロータセットの周方向に大きい方が3つのつま先要素702、704、706を含み、小さい方が2つの踵要素708及び710を含む。これは、周方向に大きいセットが3つのロータで構成され、周方向に小さいセットが2つ(のつま先要素)で構成される図2~図6とは対照的である。どちらの構成でも許容できる。
図7には、図10及び図12にさらに詳細に示される踵軸線方向シール716、及び図8及び図9にさらに詳細に示されるつま先周方向シール722、724も示されている。湾曲した矢印712は、例示的な回転方向を示している。
図8では、最も外側のつま先要素702は、外側つま先要素702と中間つま先要素704との間の周方向シール722のより良い図を提供するために示していない。可撓性ピン742を収容するために、第1の踵要素708に配置された貫通孔772が表示される。他の踵又はつま先要素もまた、予負荷を与えるための可撓性ピン又は他の変形可能な要素を収容するための貫通孔を特徴とし得る。可撓性ピン742は、図16により詳細に示される。
図9では、図7及び図8に示される2つのつま先要素の間のつま先周方向シール722が、分離した状態で示されている。この非限定的な実施形態では、第1のつま先周方向シール722は、複数の隆起部726及び溝727を有し、ここでは、隆起した同心特徴として長手方向に整列され、これら隆起部及び溝は、隆起部726がつま先要素704の対応する溝とインターフェイス接続し、溝727がつま先要素704の対応する隆起部とインターフェイス接続するときに、複数のシール効果を提供するのに役立つ。任意の数の隆起部及び/又は溝を使用することができる。一実施形態では、単一の隆起部726又は溝727は、つま先要素704の単一の対応する溝又は隆起部と噛み合うことができ、同様に、複数の隆起部及び溝は、示されるように噛み合うことができる。横方向隆起部728、ここではつま先周方向シール722上の半径方向に整列した特徴は、シールが周方向に動くのを防ぐ。半径方向は矢印767で示され、周方向は矢印768で示される。これらの半径方向に整列した特徴は、シールの幅よりも軸線方向に広い幅を有しており、また、図14に示される半径方向空間734からの溝に沿って周方向に漏れを防ぐ。矢印769によって半径方向に整列した特徴の軸線方向幅が示され、矢印770によってシール幅が示される。つま先要素と踵要素との間のこの半径方向空間734は、シールされておらず、つま先及び踵を押し広げるために周方向力を与える。
図10では、また、2つの踵要素のうちの1つが隠されており、2つの踵要素の間の周方向フローティングシール718を明らかにしている。このシールは、上記のつま先要素同士の間の周方向シールに似ている。シールの形状はまた、周方向に拡張するつま先要素702(図10で隠されている)704、706と、踵要素708(図10で隠されている)710との間の漏れを防ぐ軸線方向に整列したシール716を提供する。図10は、可撓性ピン742のための貫通孔771を特徴としている。可撓性ピン742は、図16により詳細に示されている。周方向フローティングシール718は、第2の踵要素710の軸線方向に面する内面778にある。
踵要素同士の間の周方向シール718は、それ自体で図11に示されている。この周方向シールは、軸線方向に整列した表面シールのために軸線方向に整列した溝720を規定する部分を含む。つま先要素同士の間のシールと同様に、それ(シール)は、隆起部同士の間の溝758を規定する複数の同心隆起部756、及びここでは半径方向に整列した特徴である横方向隆起部760を有する。複数の横方向隆起部760も存在し得る。つま先要素同士の間のシールと同様に、単一の長手方向隆起部756又は単一の長手方向溝758を使用して、踵要素の対応する溝又は隆起部と噛み合わせることができる。示される実施形態では、シールの部分762は、軸線方向シール716(図12に示される)の上に延びて、軸線方向シール716を受け入れるためのノッチ720を規定する。別の実施形態では、部分762は、軸線方向シール716上の突起部714を含む一体物として形成され得る。別の実施形態では、周方向シール718及び踵軸線方向シール716は、2つの別個の部品ではなく、1つの部品として形成され得る。
図12は、それ自体の軸線方向シール716を示している。この画像の左向きの表面上のレリーフ715は、流体が主に左向きの表面に作用して、シールを溝の右に向けて押すのを可能にするために設けられる。中心面に沿って左側にある突起部714は、シールが溝内で軸線方向に移動するのを防ぐために設けられる。
図13は、シールが取り外された部分的に分解したロータ脚部セクションを示しており、踵シール隆起部756及び溝758に対応する溝730及び隆起部731、並びにつま先シール隆起部726及び溝727に対応する溝732及び隆起部733を示しており、溝及び隆起部730、731、732、733は、シールを受け入れるためにロータ要素内に形成される。
図14は、同じくシールが取り外された、図13の部分的に分解したロータの側面図を示している。この図から、圧縮チャンバからの流体圧力がどこにアクセスすることを意図しており、シールによってその流体がどこに流れるのが妨げられるかが明らかである。左側のつま先と右側の踵との間のスロット734は加圧され、つま先及び踵を周方向に押し離し、それによって、つま先及び踵がそれぞれの後方及びアウターロータシリンダ壁に十分な力で接触して効果的なシールを提供する。この実施形態では、スロット734は部分的に半径方向に整列される。
図15~図18の矢印は、矢印の方向に沿って見た、矢印で示される表面を示すことに留意されたい。
図15は、インナーロータの外径(OD)に接する方向に沿って見たロータ及びシール718の断面図であり、ロータ踵要素708と710(シールから半径方向外向きのロータの部分)との間のスロット(周方向半径方向空間736)を示している。インナーロータの外径(OD)のチャンバ内の圧縮、圧縮空気取り入れ口、燃焼、又は他のソースからの流体圧力は、このスロット736のいずれかの側の軸線方向に面する表面752及び758に作用して、軸線方向に移動可能なロータ要素、ロータ踵要素708及び710を互いに離れる方向に押すことができる。第1のロータ踵要素708の第1の軸線方向に面する内面752にかかる力は、第1のロータ踵要素708を押して、シリンダ壁の軸線方向内向き面に対して、ロータ踵要素708の軸線方向の最も外側面740同士の間にシールを形成する。圧力勾配は、シールの半径方向の最も外側面からシールの半径方向の最も内側面まで存在することが理解される。この圧力勾配の多くは、可変容積チャンバ内の流体圧力の結果として、軸線方向に移動可能なロータ要素同士の間に生成される軸線方向外向き力にも寄与する。
インナーロータ要素同士の間に示されるシールのそれぞれについて、シールは、示されるように、構成要素同士の間にシールを形成するロータ要素から分離され得るか、又はロータ要素のうちの1つと一体に形成され得る。前者の場合に、各シールは、各セグメントの1つ又は複数の対応する溝又は1つ又は複数の対応する隆起部と噛み合うように配置された1つ又は複数のシール隆起部又は1つ又は複数のシール溝を有することができる。後者の場合に、各シールは、一体ではない構成要素の1つ又は複数の対応する溝又は1つ又は複数の対応する隆起部と噛み合うように配置された1つ又は複数のシール隆起部又は1つ又は複数のシール溝を有することができる。いずれの場合にも、シールは全体として、少なくとも1つの構成要素内の全体的な溝に延びることができ、シール上及びこの全体的な溝内に隆起部及び溝が噛み合っている。
第2のロータ踵要素710は、第2のロータ踵要素710の軸線方向に面する内面778に同様の力を受ける。第2の軸線方向に面する内面778もまた、図10及び図13に確認することができる。
シリンダの前面及び後面は、つま先要素及び踵要素の相対的な角度位置を規定する(そのため、シリンダに入る脚部は、既にシリンダに入っているその脚部の前の脚部の周方向幅のために、シリンダに入る正しい周方向幅にある)。同様に、シリンダ内にある脚部の軸線方向幅は、シリンダに入ろうとしている次の脚部の軸線方向幅を設定する。
シールの予負荷
図16には、シールに予負荷をかける、又は予エネルギーを与えるための多くの可能な方法のうちの1つが示されている。断面平面は、一連の軸線方向孔を明らかにし、これにより、つま先及び踵部分が、それらがアウターロータチャンバに挿入されるときよりも大きな角度で広げられたときに、ばね鋼、ニチノール、又はチタンワイヤ等の可撓性ピン又はばねワイヤ742を、ダイニング(dining)アセンブリを曲げることなくロータ内に挿入することができる。つま先及び踵が一緒に作動位置に来ると、ばねワイヤが弾性変形するため、つま先と踵との間に外向きの周方向力が生成され、インナーロータのつま先及び踵と、アウターロータのチャンバの前縁及び後縁との間の初期シール接点が形成される。同様の戦略を使用して、インナーロータの側面をアウターロータシリンダの軸線方向内向き面に対して予負荷することができる。ここに示される可撓性ピン742は、そのピンが最も外側のインナーロータ部材に及ぼす軸線方向力の成分を有しており、それにより、軸線方向付勢(energizing:エネルギー付与)の一部又は全部を同様に達成することができる。
シリンダ壁に対してシールする各ロータについて、壁に向けてロータを強制し壁に対してシールしている流体又はガス圧力によって誘発されるトルク又は力が、それがシールしている壁からロータを遠ざける流体又はガスの圧力によって誘発されるトルク又は力をわずかに超えるか、又は超えることが望ましい。これにより、過度の摩耗、摩擦、及び発熱を最小限に抑えながら、十分なシーリングが確実に行われる。
一定の流体圧力の領域について、流体が所与の測定軸線に沿って表面に及ぼす正味の力は、測定軸線が垂直である平面に投影された表面の表面積に比例する。オーバーシールのように流体圧力が変化する領域を含む一般的な言及として、所与の測定軸線に沿った正味の力は、問題の表面上の全ての点で、局所的な流体圧力に、測定軸線が垂直である平面への表面の投影を掛けた積分に等しくなる。正味のトルクは、問題の点に表面上の全ての点で、局所的な流体圧力に、回転軸線を含む平面への表面の投影を掛けたものと、問題の点に回転軸線の周りのモーメントアームを掛けたものとの積分に等しくなる。
こうして、ロータを周方向又は軸線方向に膨張又は収縮させる流体力を受けるロータの表面は、正味の力又はトルクが効果的なシーリングをもたらすことを保証しながら、異なる幾何学的形状で設計することができる。
例えば、踵前縁表面744は、軸線方向半径方向空間734の踵内面748と同様の幾何学的形状で設計されるが、踵とシリンダ壁との間のシールの高圧側での踵前縁の曲面744の投影表面積とそれぞれのモーメントアームとの積が、踵軸線方向シール716の高圧側での周方向に面する踵内面748の湾曲した内面の投影表面積とそのそれぞれのモーメントアームとの積よりも小さくなるように設計され、こうして、つま先から離れて踵に向かう方向に正味の非ゼロトルクを与え、シリンダ壁に対してシール力を与える。
つま先後縁表面746が、軸線方向半径方向空間734のつま先内面750と同様の幾何学的形状で設計されているが、つま先とシリンダ壁との間のシールの高圧側でのつま先後縁の曲面746の投影表面積とそれぞれのモーメントアームとの積が、踵軸線方向シール716の高圧側での内側つま先750の湾曲した内面の投影表面積とそのそれぞれのモーメントとの積よりも小さくなるように設計されており、こうして、踵から離れてつま先に向かう方向に正味の非ゼロトルクを与え、シリンダ壁に対してシール力を与える。
図17及び図18に示される実施形態では、踵セグメント軸線方向端面764は、踵軸線方向端面の半径方向外向き縁部にリップ738を有しており、つま先軸線方向端面766は、つま先軸線方向端面の半径方向外向き縁部にリップ740を有する。これらのリップは、ロータの反対側の軸線方向側面の軸線方向端面で繰り返すことができる。これらのリップは、シリンダを規定する環状ハウジングの軸線方向壁とシール面を形成する。踵軸線方向端面の半径方向外向き縁部、さらに踵セグメント同士の間及びつま先セグメント同士の間のスロット(例えば、周方向半径方向空間736)よりも半径方向外側にあるこれらのリップの位置は、半径方向内向きに延び、これらのスロット内の圧力がセグメントを押し広げて、リップを軸線方向壁に押し付けるのを助ける。軸線方向端面は、軸線方向壁に平行である必要はなく、例えば、半径方向外向き縁部から離れる方向の部分は、軸線方向壁から離れる方向に傾斜することができる。また、リップがある必要はない。踵及びつま先端面の半径方向外向き縁部は、隆起したリップがなくても、軸線方向壁に接触する軸線方向に面するシール面であり得る。
つま先リップ740は、半径方向の長さが小さく、シールを形成する表面積が比較的小さくなるように設計することができる。このシールの上に圧力勾配が形成され、外径(OD)に向かう圧力が最も高く、軸線方向に向かう圧力が最も低くなる。第1のつま先要素702上の圧力、より具体的には第1の軸線方向に面するつま先要素内面754に作用する圧力、及び第1のつま先周方向シール722の上の第1のつま先要素702を外向きに強制する圧力勾配は、つま先リップ740上の圧力によって生成される力よりも大きい力を生成し、ロータを外向きに押し出す。力の正確なバランスを調整して、最適なシール力を得ることができる。
第3のロータつま先要素706並びに踵要素708及び710に対する軸力のバランスは、同様に解析することができる。
図17及び図18はまた、第1及び第2のつま先周方向シール722及び724それぞれから外向きのつま先部材同士の間のつま先周方向スロット780及び782を示している。
インナーロータの文脈で示されるが、ここで使用される原理は、他の形態のピストンで使用することができる。ここに示される「脚部」は、それがインナーロータの一部であるかどうかに関係なく、ピストンとして機能することができる。インナーロータ要素はピストン要素でもあり、インナーロータ要素の説明は、インナーロータの残りの部分から分離されていると見なされるインナーロータの任意の単一の脚部に適用され、一般にピストン要素にも適用される。例えば、ピストンは、シリンダの長手方向を横切る第1の方向及び第2の方向に拡張することができる。ロータの実施形態における脚部の構成要素は、この非ロータの実施形態におけるピストンの構成要素に対応することができ、第1の方向はロータの実施形態の周方向に対応し、第2の方向はロータの実施形態の軸線方向に対応し、長手方向はロータの実施形態の半径方向に対応する。
ここに示される例では、長方形(矩形)の脚部(ピストン)が示される。他の例では、脚部は長方形である必要はない。例えば、その脚部は、対応する形状のシリンダ内の別の4面の非円形の形状である可能性がある。
この文書の目的のために、シリンダは、ピストンが移動して可変容積チャンバを規定するキャビティであり、円形断面を有する幾何学的形状に限定されない。
一実施形態では、説明したいくつかのエネルギー伝達機は、パワーを増大させるためにそれらの出力を一緒に結合することができる。
明細書に記載され及び特許請求の範囲に記載される実施形態は、示されるように単一のインナーロータ、又は例えば米国特許第7,111,606号に示されるように複数のインナーロータを有する装置で使用することができる。図19は、マルチロータの実施形態に適したロータの例示的なロータ脚部800を示している。シールは表示されていないが、使用する際に存在する。つま先802と踵804との間に提供される周方向の拡張により、環状ハウジングに対する脚部800の動きが非半径方向成分を有する場合でも、前縁及び後縁とシリンダ壁との間のシール接触を維持することができる。図19に示される特定の実施形態は、周方向の拡張を可能にするが、示される踵要素が1つしかないため、踵804の実質的な軸線方向の拡張を可能にしない。図1~図18に示されるように、周方向の拡張性があり、踵とつま先との両方が軸線方向に拡張可能なバージョンは、マルチロータの実施形態でも使用できる。図20は、マルチロータの実施形態の動作を概略的に示している。示されるバージョンでは、4つのロータ900があり、ロータ脚部の円運動を表す円として示され、有効半径が矢印910によって示される。ロータ900はそれぞれ、それぞれの軸線902の周りを回転し、軸線902はそれぞれ、キャリア904に対して固定される。キャリア904は、軸線908を介して環状ハウジング906に対して回転する。ロータキャリア相対回転及びキャリア環状ハウジング相対回転は、ロータ脚部と環状ハウジングとの噛み合いによって同期させることができる。図20は、回転する環状ハウジング906及び固定されるキャリアを示している。ハウジングを固定してキャリアを回転させることもでき、或いは両方を、追加のハウジング(図示せず)等の別個の固定要素に対して回転させることもできる。
脚部は、時間の一部のみシリンダ内にあり、シリンダ内にあるときのみ、せいぜい(at most)シーリング係合状態にある。円筒形ピストンのような従来のシールでは、シールは連続的に接触しているため、ピストンとシリンダの間に配置できる。上記のインナーロータがロータリーピストンとシリンダの間に可動シールを使用している場合に、ロータ脚部がシリンダに入ったときに、シールがシリンダの端部にぶら下がっていた。本発明において、シリンダ内にある脚部が周方向の長さだけでなく軸線方向の幅を設定するという事実は、ピストンの脚部がシリンダに出入りするのを可能にするものである。ピストンの脚部の外面のこの使用は、軸線方向に移動可能な脚部要素同士の間、及び周方向に移動可能な脚部要素同士の間での可変ギャップインターフェイスを使用する結果として可能にもなる。インナーロータの構成要素同士の間のこれらのシールは、加圧されたときにのみシールする必要があるが、常にシール係合することができる。
左又は右のつま先部分或いは左又は右の踵部分の1つを指す、インナーロータ要素のシリンダ接触シール面は、隣接するインナーロータ脚部の同様の表面に堅固に接続されているので、シリンダに入る脚部のシール面の軸線方向及び周方向位置は、脚部が入るシリンダに対して、既にシリンダ内にある脚部によって設定される(シリンダ内の脚部のシール面の位置が、シリンダ壁との接触によって設定されるため)。このようにして、入ってくるロータ脚部のシール面をシリンダ壁に対して正確に配置して、効果的なシーリングのための接触又は十分に小さいギャップを可能にし、入ってくるピストン脚部のシール面がシリンダの端部に「引っ掛かる」又は「ぶら下がる」ような過度の接触又は干渉なしにすることができる。
これは、本発明により、全ての右側の前方シール面が1つの剛性要素で構成され、全ての右側の後方シール面が1つの剛性要素で構成されることによって可能になる。同じことが左側にも当てはまり、左側の構成要素と右側の構成要素との間、及び前方要素と後方要素との間に可変ギャップが提供される。これらのギャップが大きいほど、脚部のシール面とシリンダ壁との間のギャップは小さくなる。シール及び溝、又は突出した特徴及び溝の組合せが、左右要素と前後要素との間に提供され、これらの構成要素の間に可変ギャップシールを提供する。さらに、これらの可変ギャップ面の割合は、これらのギャップ内で加圧された流体が、流体圧力に比例する力でシリンダ壁に対してインナーロータ要素を押すのを可能にするのに十分な大きさの断面である。
特許請求の範囲において、「備える、有する、含む(comprising)」という用語は、その包括的意味で使用され、存在する他の要素を排除するものではない。請求項の特徴の前の不定冠詞「1つの(a, an)」は、存在する特徴の複数を除外するものではない。本明細書に記載の個々の特徴のそれぞれは、1つ又は複数の実施形態で使用することができ、本明細書に記載するだけで、特許請求の範囲によって規定される全ての実施形態に必須であると解釈すべきではない。