JP2022527320A - 非定型プロテインキナーゼcの阻害剤およびヘッジホッグ経路依存性癌の治療におけるその使用 - Google Patents

非定型プロテインキナーゼcの阻害剤およびヘッジホッグ経路依存性癌の治療におけるその使用 Download PDF

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Abstract

ヘッジホッグ経路依存性癌を治療する方法が提供される。本方法の局面には、ヘッジホッグ経路のシグナル伝達によって促進されるヘッジホッグ経路依存性癌の成長、増殖、または転移を阻害することが含まれる。特に、非定型プロテインキナーゼCイオタの阻害剤を用いてヘッジホッグ経路依存性癌を治療する方法が開示される。TIFF2022527320000005.tif94158

Description

連邦政府の支援による研究開発に関する声明
本発明は、米国立衛生研究所によって授与された契約AR054780の下で政府の支援を受けてなされたものである。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
発明の分野
本発明は、ヘッジホッグ経路(hedgehog pathway)依存性の癌および障害を治療するための治療法に関するものである。特に、本発明は、非定型プロテインキナーゼC(aPKC)イオタ(iota)の阻害剤を用いて、ヘッジホッグ経路依存性の癌および障害を治療する方法に関する。
発明の背景
ヘッジホッグ(Hh)シグナル伝達経路は、後生動物(metazoa)の全てで発生と腫瘍形成に重要な役割を果たしている。哺乳類では3つのHh遺伝子が確認されている:ソニック・ヘッジホッグ(SHh)、デザート・ヘッジホッグ(DHh)、およびインディアン・ヘッジホッグ(IHh)。これらのタンパク質は、受容体Patched(ヒトではPtch1またはPtch2)に拮抗して作用する分泌タンパク質である。Ptchは、一つには、転写因子Gliを活性化するGタンパク質共役型受容体であるSmoothened(Smo)の活性に拮抗することで作用する。ShhがPtchに結合すると、Ptchを介したSmoの抑制が解除され、SmoがGli依存性転写を促進できるようになる。発生過程では、Hhにより誘導されたSmo活性は、前駆細胞の増殖、移動、および分化を促進して、臓器の発生をパターン化する。しかし、例えばPtchの不活性化変異またはSmoの活性化変異による、Hh経路シグナル伝達の調節異常は、癌と関連している(Toftgard, R. Hedgehog signaling in cancer. Cell Mol. Life Sci., 57: 1720-1731 (2000)(非特許文献1))。Hh標的遺伝子の誘導は、腫瘍上皮における腫瘍の成長と維持に必要であり、Hh経路シグナル伝達は、多くの上皮性腫瘍の腫瘍転移に関与している。例えば、基底細胞癌(BCC)の発生と拡大には、高レベルのHh経路シグナル伝達が必要である。
Hh経路に関連した癌および障害を治療するためのより良い方法が求められている。
Toftgard, R. Hedgehog signaling in cancer. Cell Mol. Life Sci., 57: 1720-1731 (2000)
ヘッジホッグ経路依存性の癌を治療する方法が提供される。この方法の局面には、ヘッジホッグ経路シグナル伝達によって促進されるヘッジホッグ経路依存性癌の成長、増殖、および/または転移を阻害することが含まれる。特に、aPKCイオタの阻害剤を用いてヘッジホッグ経路依存性癌を治療する方法が開示される。
一局面では、ヘッジホッグ経路依存性癌の対象を治療する方法が提供され、この方法は、治療上有効な量のCRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩を含む組成物を、対象に投与する工程を含む。
特定の態様では、その癌は、構成的に活性なヘッジホッグ経路を含んでいる。一態様では、その癌は基底細胞癌(BCC)である。いくつかの態様では、その癌は転移性である。
複数サイクルの治療が、ある一定期間にわたって対象に投与され得る。例えば、治療は、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、またはそれ以上の期間にわたって対象に投与される。好ましくは、複数サイクルの治療を、少なくとも部分的な腫瘍反応、より好ましくは完全な腫瘍反応をもたらすのに十分な期間にわたって対象に投与する。特定の態様では、CRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩を含む組成物を、毎日の投薬レジメン(daily dosing regimen)に従って、または間欠的に投与する。
特定の態様では、前記方法は、手術、化学療法、放射線療法、免疫療法、生物学的療法、またはそれらの組み合わせなどであるがこれらに限定されない、追加の抗癌療法を投与する工程をさらに含む。
特定の態様では、投与される前記組成物は、薬学的に許容される添加剤をさらに含む。
特定の態様では、前記方法は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を、CRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与する工程をさらに含む。例示的なHDAC阻害剤としては、ヒドロキサム酸類、例えば、ボリノスタット、ベリノスタット、パノビノスタット、ギビノスタット、ダシノスタット(LAQ824)、トリコスタチンA;セスキテルペンラクトン類、例えばパルテノリド;環状テトラペプチド類、例えばトラポキシンB;デプシペプチド類、例えばロミデプシン;およびベンズアミド類、例えば、エンチノスタット(MS-275)、タセジナリン(CI994)、モセチノスタットなどが挙げられる。一態様では、HDAC阻害剤はボリノスタットである。
特定の態様では、前記対象は哺乳類、例えば、ヒトもしくは非ヒト霊長類、げっ歯類、家畜、またはペットである。
特定の態様では、CRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩は、対象におけるヘッジホッグ経路依存性の癌性細胞の生存性を低下させるのに十分な量で投与される。
特定の態様では、CRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩は、対象におけるヘッジホッグ経路依存性の癌性細胞のGli 1 mRNAの産生を減少させるのに十分な量で投与される。
特定の態様では、CRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩は、対象におけるヘッジホッグ経路依存性の癌性細胞の成長および細胞増殖を低減させるのに十分な量で投与される。
別の局面では、ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞の成長または増殖を阻害する方法が提供され、この方法は、ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞を有効量のCRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩と接触させる工程を含む。
特定の態様では、ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞は、BCC細胞である。
特定の態様では、ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞は、構成的に活性なヘッジホッグ経路を含む。
特定の態様では、ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞は、インビボまたはインビトロである。
特定の態様では、ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞は、哺乳類(例えば、ヒトもしくは非ヒト霊長類、げっ歯類、家畜、またはペット)の癌性細胞である。
特定の態様では、前記方法は、ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞をHDAC阻害剤と接触させる工程をさらに含む。
別の局面では、ヘッジホッグ経路依存性癌の治療に使用するための、CRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩を含む組成物が提供される。いくつかの態様では、該組成物はHDAC阻害剤をさらに含む。一態様では、HDAC阻害剤はボリノスタットである。
別の局面では、基底細胞癌の治療に使用するための、CRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩を含む組成物が提供される。いくつかの態様では、該組成物はHDAC阻害剤をさらに含む。一態様では、HDAC阻害剤はボリノスタットである。
本発明は、添付の図面と併せて読む場合に、以下の詳細な説明から最もよく理解される。一般的な慣行に従って、図面の様々な特徴は縮尺通りではないことが強調される。それどころか、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大または縮小されている。図面には以下の図が含まれる。
非定型プロテインキナーゼイオタ(aPKCι)阻害剤がBCC細胞の生存性を調節することを示している。BCCの生存性に対する化合物CRT0422839およびCRT0364436の効果を、マウスBCC細胞株(BSC1)で試験し、Mirza et al.(JCI Insight (2017) 2(21):e97071)に以前に記載された既知のペプチド阻害剤PSIを用いた結果と比較した。aPKC阻害剤であるPSI(図1A)、CRT0329868(図1B)、CRT0364436(図1C)、またはCRT0422839(図1D)を1μmおよび10μmの濃度で用いて処理した後のBSCI細胞の生存性が示されている。 図1Aの説明を参照のこと。 図1Aの説明を参照のこと。 図1Aの説明を参照のこと。 マウスBCC細胞株(BSC1)をPSI、CRT0329868、CRT0422839、またはCRT0364436で処理した場合の、Shh経路出力のマーカーであるGli 1 mRNAの発現レベルに対する効果を示しており、Gli 1 mRNAの発現は、BCCの成長およびShh経路シグナル伝達の阻害をさらに立証するために測定された。結果は、1μmおよび10μmの濃度の該化合物で6時間(図2A)または24時間(図2B)処理した後に示されている。 aPKCι阻害剤であるCRT0364436/TEV-44229の化学構造と特性を示している。 aPKCι阻害剤であるCRT0422839/TEV-47448の化学構造と特性を示している。
発明の詳細な説明
本発明の方法および組成物を説明する前に、本発明は記載されている特定の方法または組成物に限定されるものではなく、当然ながら、そうしたものは変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明するためのものであって、限定することを意図したものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解されたい。
数値の範囲が提供されている場合、その範囲の上限値と下限値の間の、文脈上明らかに別の指示がない限り、下限値の10分の1の単位までの、介在する各値もまた、具体的に開示されていることが理解される。ある記載された範囲内の任意の記載された値または介在する値と、その記載された範囲内の任意の他の記載された値または介在する値との間のより小さい各範囲は、本発明に包含されている。これらのより小さい範囲の上限値と下限値は、独立して、その範囲に含まれても除外されてもよい;そのより小さい範囲に制限値のいずれか一方または両方が含まれるか、どちらも含まれない場合の各範囲もまた、記載された範囲内の具体的に除外された制限値を条件として、本発明に包含されている。記載された範囲が制限値の一方または両方を含む場合、それらの含まれている制限値の一方または両方を除外する範囲もまた、本発明に包含されている。
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料はどれも本発明の実施または試験に使用することができるが、可能性がありかつ好ましいいくつかの方法および材料をここで説明する。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が引用されることに関連付けて該方法および/または材料を開示し説明するために、参照により本明細書に組み入れられる。本開示は、矛盾が存在する限りでは、組み込まれた刊行物のいかなる開示にも優先することが理解される。
本開示を読めば当業者には明らかなように、本明細書で説明および図示される個々の態様のそれぞれは、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの態様のいずれかの特徴から容易に分離したり、それと容易に組み合わせたりすることができる、個別の構成要素および特徴を有している。記載された方法は、記載されたイベントの順序で、または論理的に可能な他の順序で実施することができる。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他を指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意する必要がある。こうして、例えば、「細胞」(a cell)への言及は、複数のそのような細胞を含み、「阻害剤」(the inhibitor)への言及は、当業者に知られる1つまたは複数の阻害剤とその均等物、例えば化合物または薬物、への言及を含む、といった具合である。
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日以前にそれらが開示されたためにのみ提供される。本明細書中のいかなる開示も、先行発明が理由でそのような公開に先行する権利が本発明にはない、ことの承認として解釈されるべきではない。さらに、提供された公開日は、実際の公開日とは異なる場合があり、個別に確認する必要があるかもしれない。
用語「約」は、特に所定の量に関しては、プラスマイナス5%の偏差を包含することを意味する。
「腫瘍」、「癌」および「新生物」という用語は交換可能に使用され、その成長、増殖または生存が対応する正常細胞の成長、増殖または生存よりも大きい細胞または細胞集団を指し、例えば、細胞増殖性障害、過剰増殖性障害または分化性障害を指す。一般的に、成長は制御されない。用語「悪性」は、近くの組織への浸潤を指す。「転移」または二次性、再発性もしくは再発の腫瘍、癌または新生物という用語は、対象内の他の部位、場所または領域への腫瘍、癌または新生物の広がりまたは播種を意味し、その部位、場所または領域は、原発性の腫瘍または癌と異なっている。新生物、腫瘍および癌には、良性、悪性、転移性および非転移性のタイプが含まれ、かつ新生物、腫瘍または癌のステージ(I、II、III、IVまたはV)またはグレード(G1、G2、G3など)、あるいは進行している、悪化している、安定化された、または寛解期にある新生物、腫瘍、癌または転移が含まれる。特に、「腫瘍」、「癌」および「新生物」という用語には、扁平上皮癌、腺癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、および小細胞癌などの癌腫が含まれる。
用語「ヘッジホッグ経路依存性癌」には、ヘッジホッグ経路の活性化に依存する癌、またはヘッジホッグ経路の異常な活性化に関連する癌が含まれ、例えば、基底細胞癌、髄芽腫、横紋筋肉腫、小細胞肺癌、網膜芽細胞腫、胃および上部消化管癌、骨肉腫、膵臓癌、乳癌、大腸癌、卵巣癌、脳腫瘍、乳腺癌、甲状腺癌、および前立腺癌が含まれるが、これらに限定されない。
「抗腫瘍活性」とは、細胞増殖の速度の低下、それゆえに既存の腫瘍もしくは治療中に生じる腫瘍の成長速度の低下、および/または既存の新生物(腫瘍)細胞もしくは新たに形成された新生物細胞の破壊、それゆえに治療中の腫瘍の全体的なサイズの減少を意図している。そのような活性は、ヒト腎細胞癌の異種移植モデルなどの動物モデルを用いて評価することができる。例えば、動物モデルの説明については、Pulkkanen et al., In Vivo (2000) 14:393-400およびEveritt et al., Toxicol. Lett. (1995) 82-83:621-625を参照されたい。
aPKCイオタ阻害剤(例えば、CRT0422839またはCRT0364436)の「治療上有効な用量または量」とは、aPKCイオタ阻害剤を投与したとき、または本明細書に記載されるように、aPKCイオタ阻害剤と組み合わせてヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、ボリノスタット)をさらに投与したときに、抗腫瘍活性などのポジティブ(肯定的)な治療反応をもたらす量を意図している。さらに、「有効量」のaPKCイオタ阻害剤は、ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞の成長、増殖、および/もしくは転移を阻害し、かつ/またはヘッジホッグ経路依存性癌性細胞におけるGli 1 mRNAの産生を減少させ、かつ/またはヘッジホッグ経路依存性癌性細胞の生存性を低下させることができる。
本明細書で使用する用語「腫瘍反応」(tumor response)とは、全ての測定可能な病変の減少または消失を意味する。腫瘍反応の基準は、WHO報告基準[WHO Offset Publication, 48-World Health Organization, Geneva, Switzerland, (1979)]に基づいている。理想的には、一次元または二次元で測定可能な全ての病変を各評価で測定する必要がある。臓器に複数の病変が存在する場合には、このような測定ができないことがあり、そうした状況では、可能であれば最大6つの代表的な病変を選択する必要がある。
本明細書で使用する用語「完全奏効」(complete response:CR)とは、少なくとも4週間の間隔をおいた2回の評価により判定して、臨床的に検出可能な全ての悪性疾患が完全に消失することを意味する。
本明細書で使用する用語「部分奏効」(partial response:PR)とは、少なくとも4週間の間隔をおいた少なくとも2回の連続した評価により判定して、評価可能な疾患の進行なしに、かつ新しい病変の証拠なしに、全ての測定可能な疾患の最長垂直径の積の合計がベースラインから50%以上減少することを意味する。評価では、溶解性病変(lytic lesion)のサイズの部分的な減少、溶解性病変の再石灰化、または芽球性病変(blastic lesion)の密度の減少を示す必要がある。転移性疾患の部位に一過性の炎症が見られることは珍しいことではない。サイズが増加したように見える個々の病変は、少なくとも28日の間隔をおいて行われた2回の連続した測定でその増加が立証されない限り、必ずしもPRの資格を失うものではない。
「薬学的に許容される添加剤または担体」とは、組成物に任意に含めることができる添加剤で、患者に重大な毒物学的有害作用を与えないものを指す。
「薬学的に許容される塩」には、アミノ酸塩、無機酸により調製された塩、例えば塩化物塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化物、および硝酸塩、または前記のいずれかの対応する無機酸形態から調製された塩、例えば塩酸塩など、または有機酸により調製された塩、例えばリンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、パモ酸塩、サリチル酸塩、およびステアリン酸塩、ならびにエストレート(estolate)、グルセプテート(gluceptate)、およびラクトビオン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。同様に、薬学的に許容されるカチオンを含む塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、およびアンモニウム(置換アンモニウムを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用する用語「治療」、「治療する」などは、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。その効果は、疾患もしくはその症状を完全にまたは部分的に予防するという意味で予防的であり得、かつ/または疾患および/もしくはその疾患に起因する有害作用を部分的にまたは完全に治癒するという意味で治療的であり得る。「治療」は、本明細書で使用するとき、哺乳類、特にヒトにおける疾患のあらゆる治療をカバーし、以下を含む:(a)生存時間を延ばすこと;(b)疾患による死亡リスクを減らすこと;(c)疾患の素因があるかもしれないが、まだそれを有すると診断されていない対象において疾患が発生するのを防ぐこと;(d)疾患を阻害すること、すなわち、その発症・進行を阻止すること(例えば、疾患の進行速度を低下させること)、および(e)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の退行を引き起こすこと。
「実質的に精製された」とは、一般的に、物質(例えば、化合物、分子、薬剤)がサンプル(該物質がその中に存在する)の大部分を占めるように、該物質を単離することを意味する。典型的には、サンプル中で、実質的に精製された成分がサンプルの50%、好ましくは80%~85%、より好ましくは90~95%を占めている。
「対象」、「個体」および「患者」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、診断、予後、治療、または療法が望まれる任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。治療上の「哺乳動物」とは、ヒト、家畜・農場動物、および動物園、スポーツまたはペット動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどを含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。場合によっては、本発明の方法は、実験動物に、獣医学的応用に、およびマウス、ラット、ハムスターなどのげっ歯類、霊長類、トランスジェニック動物を含むがこれらに限定されない、疾患の動物モデルの開発に利用される。
方法
ヘッジホッグ経路依存性癌をaPKCイオタの阻害剤で治療するための方法が開示される。いくつかの態様では、aPKCイオタの阻害剤はHDAC1の阻害剤と組み合わせて使用される。特定の理論に拘束されるものではないが、aPKCはGLI1転写因子をリン酸化して、GLI1のクロマチン会合と遺伝子転写の活性化をもたらし、これはヘッジホッグ経路の活性化につながる。GLI1の活性は、その核内輸送の制御によってコントロールされている。つまり、GLI1は、それが活性でない核ラミナと、それが活性である核質との間を移動している。aPKCイオタがGLI1を活性化するメカニズムには、HDAC1がGLI1に動員され、HDAC1媒介脱アセチル化によってGLI1が活性化されることが関与しているようである。したがって、aPKCイオタの阻害剤だけでなく、HDAC1の阻害剤もヘッジホッグ経路依存性癌の治療に有用であり得る。
本発明の方法は既存の腫瘍の治療に向けられるが、この方法は、治療中に生じるさらなる腫瘍の増殖・成長の予防にも有用であり得ることが認識される。
非定型プロテインキナーゼCイオタの阻害剤
上記で説明したように、本発明の方法は、aPKCイオタの阻害剤を投与する工程を含む。例示的なaPKCイオタの阻害剤には、CRT0422839(TEV-47448)およびCRT0364436(TEV-44229)、またはそれらの薬学的に許容される塩が含まれる。
CRT0422839は、化学式:
Figure 2022527320000002
を有し、CRT0364436は、化学式:
Figure 2022527320000003
を有する。
このようなaPKCイオタ阻害剤は、ヘッジホッグ経路依存性癌の治療において抗腫瘍活性を有する。特に、これらのaPKCイオタ阻害剤は、ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞の成長、増殖および転移を阻害し、ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞におけるGli 1 mRNAの産生を減少させ、かつヘッジホッグ経路依存性癌性細胞の生存を低下させる能力がある(実施例参照)。
HDAC1の阻害剤
特定の態様では、併用療法がaPKCイオタ阻害剤とHDAC1阻害剤を用いて行われる。例示的なHDAC1阻害剤には、ヒドロキサム酸類、例えば、ボリノスタット、ベリノスタット、パノビノスタット、ギビノスタット、ダシノスタット(LAQ824)、トリコスタチンA;セスキテルペンラクトン類、例えばパルテノライド;環状テトラペプチド類、例えばトラポキシンB;デプシペプチド類、例えばロミデプシン;およびベンズアミド類、例えば、エンチノスタット(MS-275)、タセジナリン(CI994)、モセチノスタットが含まれる。いくつかの態様では、他のクラスのHDAC類に影響を与えずにHDAC1を選択的に阻害する阻害剤、例えばパルテノライド、が使用される。
ヘッジホッグシグナル伝達経路の阻害
本明細書に記載されるように、aPKCイオタ阻害剤を単独で、またはHDAC阻害剤と組み合わせて使用すると、Hh経路のシグナル伝達が阻害される。阻害されるとは、該経路の活性が低下、抑制、減少、減衰、または拮抗されることを意味する。例えば、Hh経路が過活性であるかまたは構成的に活性である細胞(例えば、癌性細胞)では、例えば、Smo遺伝子の活性化変異またはPtchもしくはSUFU遺伝子の不活性化変異を含んでいる細胞、あるいはSHH/IHHリガンド、SMOまたはGLI1/2などの経路活性化因子が過剰発現している細胞では、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤を用いてHh経路のシグナル伝達を阻害することが望ましいかもしれない。ヘッジホッグシグナル伝達経路の異常な活性化を促進する他の変異はよく知られており、当業者であれば容易に確認することができる。ヘッジホッグシグナル伝達の異常な活性化に関連する変異、特に癌に関与する変異については、例えば、以下を参照されたい:Pellegrini et al. (2017) Int. J. Mol. Sci. 18(11) pii: E2485;Bao et al. (2018) Mol. Nutr. Food Res. 62(1);Levanat et al. (2017) Curr. Pharm. Des. 23(1):73-94;Laukkanen et al. (2016) Anticancer Agents Med. Chem. 16(3):309-317;Suzman et al. (2015) Cancers (Basel). 7(4):1983-1993;Holikova et al. (2004) Int. J. Dermatol. 43(12):865-869;Wetmore (2003) Curr. Opin. Genet. Dev. 13(1):34-42;Bale (2002) Annu. Rev. Genomics Hum. Genet. 3:47-65;Lacour et al. (2002) Br. J. Dermatol. 146 Suppl 61:17-19;Wicking et al. (2001) Cancer Lett. 173(1):1-7;およびDaya-Grosjean et al. (2005) Cancer Lett. 225(2):181-192;これらは参照により本明細書に組み入れられる。
本発明の方法を実施する際には、aPKCイオタ阻害剤は、単独でまたはHDAC阻害剤と組み合わせて、有効量、すなわちHh経路のシグナル伝達を阻害するのに有効な量で、細胞に提供される。生化学的に言えば、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤の有効量または有効用量は、細胞におけるHh経路のシグナル伝達を30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、200%以上、または500%以上阻害するのに十分な量である。言い換えれば、有効量または有効用量のaPKCイオタ阻害剤またはHDAC阻害剤を接触させた細胞におけるHhシグナル伝達経路の活性は、有効量/用量のaPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤を接触させていない細胞で観察された活性の約70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下であるか、または約0%、すなわち無視できるほどであろう。別の言い方をすれば、Hh経路のシグナル伝達は、約0.5倍以上、1倍以上、2倍以上、5倍以上、8倍以上、または10倍以上に変化するであろう。
aPKCイオタ阻害剤またはHDAC阻害剤による細胞の活性阻害の量は、分子生物学の技術分野の当業者に知られているいくつかの方法で調べることができる。例えば、リン酸化された転写因子Gliの細胞内での量は、ウェスタンブロッティングで測定可能である;GliのDNA標的配列への結合量は、電気泳動移動度アッセイ(EMSA)で測定可能である;Hhシグナル伝達によって通常活性化される転写因子、例えばptch1、ptch2、hhip1、nhk2、rab34などの発現量は、例えばGliの転写標的である遺伝子のRNAまたはタンパク質レベルを測定することによって、あるいはルシフェラーゼ、EGFPなどのレポータータンパク質に機能的に連結されたGli応答性プロモーターを含む核酸ベクターを細胞にトランスフェクション/感染させ、産生されるレポータータンパク質の量を定性的または定量的に測定することによって測定可能である。このようにして、aPKCイオタ阻害剤またはHDAC阻害剤の阻害効果を確認することができる。
臨床的な意味では、aPKCイオタ阻害剤またはHDAC阻害剤の有効用量は、適切な期間、通常は少なくとも約1週間、場合によっては約2週間以上、最大で約4週間、8週間、またはそれ以上の期間投与した場合に、Hhシグナル伝達経路の望ましくない活性に関連した症状の変化を証明する用量である。例えば、aPKCイオタ阻害剤またはHDAC阻害剤の有効用量は、適切な期間、通常は少なくとも約1週間、場合によっては約2週間以上、最大で約4週間、8週間、またはそれ以上の期間投与した場合に、癌に罹患している患者の腫瘍の成長および転移を遅らせる、止める、または逆転させる用量である。当業者であれば、初期量がそのような期間投与され、その後、場合によっては投与量を減らした、維持用量が投与され得ることを理解するであろう。
投与されるaPKCイオタ阻害剤またはHDAC阻害剤の有効量または有効用量を算出することは、当業者の技量の範囲内であり、当業者にとっては日常的なことであろう。言うまでもなく、投与される最終量は、投与経路、治療対象となる疾患または病状の性質、および患者ごとに異なる要因を含めて、様々な要因に左右される。有能な臨床医であれば、必要に応じて、病状の進行を停止または逆転させるために患者に投与される治療薬の有効量を決定することができるであろう。LD50動物データ、および薬剤について入手できる他の情報を利用して、臨床医は、個人の最大安全用量を、投与経路に応じて決定することができる。例えば、静脈内投与される用量は、体液(そこに治療用組成物が投与される)がより多いことを考えると、髄腔内または局所投与される用量より多くてもよい。同様に、体内から速やかに排出される組成物は、治療濃度を維持するために、より高用量で、または反復用量で投与することができる。通常の技術をもってすれば、有能な臨床医は、日常の臨床試験の過程で、特定の治療薬の投与量を最適化することができるだろう。
本発明の方法は、インビトロおよびインビボでの細胞において、Hh経路のシグナル伝達 -- それゆえHh経路のシグナル伝達に関連する細胞活動 -- を阻害するために使用することができる。例えば、Hh経路のシグナル伝達が望ましくない細胞、例えば、制御されないHh経路シグナル伝達が増殖または転移を促進する癌性細胞を、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤と接触させることができる。細胞は、任意の哺乳動物種、例えば、マウス、げっ歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、霊長類、ヒトなどに由来し得る。
本発明の方法をインビトロで実施する場合、細胞は樹立された細胞株に由来してもよいし、初代細胞であってもよい;ここで、「初代細胞」、「初代細胞株」、および「初代培養物」は、本明細書では交換可能に使用され、培養物の限られた回数の継代(すなわち分割)のためにインビトロで増殖させた、対象に由来する細胞および細胞培養物を指す。例えば、初代培養物は、0回、1回、2回、4回、5回、10回、または15回継代されていてよいが、危機的な段階に陥るほどの回数は継代されていない培養物である。典型的には、本発明の初代細胞株は、インビトロで10回未満継代して維持される。
細胞が初代細胞である場合、それらは任意の簡便な方法で個体から採取することができる。例えば、細胞、例えば血球、例えば白血球は、アフェレーシス、白血球アフェレーシス、密度勾配分離などで採取され得る。別の例として、細胞、例えば、皮膚、筋肉、骨髄、脾臓、肝臓、膵臓、肺、腸、胃、神経系組織などは、バイオプシー(生検)で採取され得る。採取した細胞を分散または浮遊させるために、適切な溶液を使用することができる。そのような溶液は、一般的に、平衡塩類溶液、例えば、生理食塩水、PBS、ハンクス平衡塩類溶液などであり、好都合にはウシ胎児血清または他の天然由来の因子を補充され、一般に5~25mMの低濃度の許容される緩衝剤と併用される。便利な緩衝剤としては、HEPES、リン酸緩衝剤、乳酸緩衝剤などがある。細胞はすぐに使用することも、長期間凍結保存し、解凍して再利用することも可能である。そのような場合、細胞は通常、10% DMSO、50%血清、40%緩衝媒体、または凍結温度で細胞を保存するために当技術分野で一般的に使用されるようなその他の溶液中で凍結され、凍結した培養細胞を解凍するために当技術分野で一般的に知られている方法で解凍される。
aPKCイオタ阻害剤またはHDAC阻害剤は、水、アルコール類、またはDMSO、DMFなどの溶媒中に溶解し、水または適切な緩衝液で希釈してから細胞に提供することができる。
Hh経路のシグナル伝達を調節するために、aPKCイオタ阻害剤またはHDAC阻害剤を約30分~約24時間、例えば、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、16時間、18時間、20時間、または約30分~約24時間の任意の他の期間、細胞に提供することができ、これをほぼ毎日~約4日おきの頻度で、例えば、1.5日おき、2日おき、3日おき、またはほぼ毎日~約4日おきの任意の他の頻度で繰り返すことができる。薬剤は、対象の細胞に1回または複数回、例えば、1回、2回、3回、または4回以上提供され得る;各接触イベントに続いて、該細胞を薬剤と一緒にある程度の時間、例えば16~24時間、インキュベートすることができ、その後、培地を新鮮な培地と交換して、細胞をさらに培養する。
aPKCイオタ阻害剤またはHDAC阻害剤を細胞に接触させる工程は、細胞の生存を促進する任意の培地および任意の培養条件下で行うことができる。例えば、細胞は、ウシ胎児血清または熱不活性化ヤギ血清(約5~10%)、L-グルタミン、チオール、特に2-メルカプトエタノール、および抗生物質、例えばペニシリンおよびストレプトマイシンを補充した、イスコフ改変DMEMまたはRPMI 1640など、都合のよい任意の適切な栄養培地に懸濁することができる。その培養液は成長因子を含んでいてもよく、該因子に対して細胞が反応する。本明細書で定義される成長因子とは、膜貫通型受容体に対する特異的な作用を介して、培養下でまたは無傷の組織において、細胞の生存、成長、および/または分化を促進することができる分子である。成長因子には、ポリペプチド因子と非ポリペプチド因子が含まれる。細胞の生存を促進する条件は、典型的には、非相同末端結合と相同組換えを許容する条件である。
本出願における研究および治療で対象となる癌性細胞には、前癌性(例えば、良性)、悪性、前転移性、転移性、および非転移性の細胞が含まれ、癌性の表現型は、Hh経路のシグナル伝達によって促進される。言い換えれば、Hh経路のシグナル伝達(および多くの場合、調節されていないHh経路のシグナル伝達)は、個体の細胞を癌化しやすくするか、または個体の癌の症状、例えば腫瘍の成長と転移、を誘発または増強する。多くのそのような例では、Hh経路のシグナル伝達は、健康な細胞で観察されるシグナル伝達のレベルと比較して、腫瘍細胞で上昇しており、例えば、健康な細胞でのHh経路のシグナル伝達の量と比べて、2倍以上、3倍以上、4倍以上、6倍以上、8倍以上、10倍以上、20倍以上、または50倍以上である。Hhシグナル伝達のレベルは、当技術分野で知られているか、本明細書に記載されるような、任意の便利な方法で測定することができる。
いくつかの応用例では、aPKCイオタ阻害剤またはHDAC阻害剤は、インビボでHh経路のシグナル伝達を調節するために、例えば、腫瘍の成長または転移を阻害して癌を治療するために使用される。これらのインビボ態様では、aPKCイオタ阻害剤またはHDAC阻害剤は、個体に直接投与される。aPKCイオタ調節剤は、以下で説明するような、当技術分野でよく知られた多数の方法のいずれかによって投与することができる。
製剤
aPKCイオタ阻害剤(例えば、CRT0422839、CRT0364436)またはHDAC阻害剤は、様々な製剤に組み込むことができる。より詳細には、aPKCイオタ阻害剤またはHDAC阻害剤は、適切な薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることによって薬学的組成物に製剤化され得る。薬学的製剤は、薬学的に許容されるビヒクル中に1つまたは複数のaPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤を含む組成物である。「薬学的に許容されるビヒクル」とは、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認された、または米国薬局方もしくはその他の一般に認められた薬局方に掲載された、ヒトなどの哺乳類に使用するためのビヒクルであり得る。用語「ビヒクル」は、哺乳動物への投与のために本発明の化合物を製剤化する際に用いる希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を指す。そのような薬学的ビヒクルは、脂質、例えばリポソーム、例えばリポソームデンドリマー;液体、例えば水および油、例えば、石油、動物、植物、合成由来のもの、例えば、落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油など、生理食塩水;アカシアガム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などであり得る。さらに、補助剤、安定剤、増粘剤、滑沢剤、および着色剤を使用してもよい。薬学的組成物は、固体、半固体、液体、気体の形態の製剤、例えば、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、軟膏剤、溶液剤、座剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、マイクロスフェア剤、およびエアロゾル剤に製剤化することができる。このように、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤の投与は、経皮、皮内、経口、頬、直腸、非経口、腹腔内、皮内、気管内などの投与を含む、様々な方法で達成することができる。活性薬剤は、投与後に全身性であってもよいし、または局所投与、壁内(intramural)投与の使用、もしくは移植部位に活性用量を保持するように作用するインプラントの使用によって局在化されてもよい。活性薬剤は、即時活性化用に、または持続放出用に製剤化され得る。
一部の疾患、特に中枢神経系の疾患では、薬剤が血液脳関門(BBB)を通過するように製剤化する必要があるかもしれない。血液脳関門(BBB)を介した薬物送達の1つの戦略は、マンニトールもしくはロイコトリエンなどの浸透圧手段によるBBBの破壊、またはブラジキニンなどの血管作動性物質の使用による生化学的なBBBの破壊を伴う。特定の薬剤を脳腫瘍に標的化するためにBBB開通を使用する可能性も選択肢の1つである。本発明の治療用組成物が血管内注射によって投与される場合は、BBB破壊剤を本発明の治療用組成物と共投与することができる。BBBを通過するための他の戦略は、カベオリン-1を介したトランスサイトーシス、グルコースおよびアミノ酸担体などの担体を介したトランスポーター、インスリンまたはトランスフェリンの受容体を介したトランスサイトーシス、およびp-糖タンパク質などの能動拡散トランスポーターを含めて、内因性の輸送システムの使用を伴ってもよい。また、能動輸送成分は、血管の内皮壁を横切る輸送を容易にするために、本発明で使用するための治療用化合物にコンジュゲートすることができる。あるいは、BBBの背後への治療薬の薬物送達は、局所送達、例えばオンマイヤリザーバー(Ommaya reservoir)を介した、髄腔内送達によるもの(例えば、米国特許第5,222,982号および第5385582号を参照;参照により本明細書に組み入れられる);ボーラス注射、例えば、注射器で、硝子体内または頭蓋内などへの注射によるもの;連続注入、例えば、カニューレを挿入して、例えば対流を用いた注入によるもの(例えば、米国出願第20070254842号を参照;参照により本明細書に組み入れられる);または薬剤が可逆的に貼付されたデバイスを移植することによるもの(例えば、米国出願第20080081064号および第20090196903号を参照;参照により本明細書に組み入れられる)であり得る。
医薬品に含めるために、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤は、適切な商業的供給源から入手することができる。一般命題として、非経口的に投与されるaPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤の1回あたりの合計の薬学的有効量は、用量反応曲線によって測定できる範囲内であろう。
HDAC阻害剤を含む、または含まないaPKCイオタ阻害剤ベースの治療薬、すなわち治療上の投与に使用される製剤は、無菌であり得る。無菌状態は、無菌のろ過膜(例えば、0.2μm膜)を通してろ過することにより容易に達成される。治療用組成物は、一般に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針で穿刺可能なストッパーを有する静注用溶液バッグまたはバイアルに入れられる。aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤を含む組成物は、水溶液として、または用時調製のための凍結乾燥製剤として、1回投与用または複数回投与用の容器、例えば密封されたアンプルまたはバイアルに、保存することができる。凍結乾燥製剤の例としては、10mLバイアルに、滅菌ろ過済みの1%(w/v)化合物水溶液5mLを充填し、得られた混合物を凍結乾燥する。輸液は、静菌性の注射用水を用いて凍結乾燥化合物を用時調製することによって得られる。あるいは、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤は、局所投与用のローション剤に製剤化することもできる。
薬学的組成物は、所望の製剤に応じて、薬学的に許容される非毒性の担体または希釈剤を含むことができ、これらの担体または希釈剤は、動物またはヒトに投与する薬学的組成物を製剤化するために一般的に使用されるビヒクルとして定義されている。希釈剤は、該組み合わせの生物学的活性に影響を与えないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、緩衝用水、生理食塩水、PBS、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス液である。さらに、薬学的組成物または製剤は、他の担体、アジュバント、または非毒性、非治療性、非免疫原性の安定剤、賦形剤などを含むことができる。また、該組成物は、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤、湿潤剤、界面活性剤など、生理学的条件に近づけるための追加の物質を含むこともできる。
前記組成物はまた、例えば酸化防止剤のような、様々な安定化剤のいずれかを含むことができる。薬学的組成物がポリペプチドを含む場合、ポリペプチドは、該ポリペプチドのインビボ安定性を高める、または他の方法でその薬理学的特性を増強する(例えば、ポリペプチドの半減期を増加させる、その毒性を低減させる、溶解性または取り込みを向上させる)様々な公知化合物と複合体を形成することができる。このような修飾または複合体形成剤の例には、硫酸、グルコン酸、クエン酸、およびリン酸が含まれる。組成物の核酸またはポリペプチドもまた、それらのインビボ特性を高める分子と複合体を形成することもできる。そのような分子には、例えば、炭水化物、ポリアミン、アミノ酸、その他のペプチド、イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン)、および脂質が含まれる。
様々なタイプの投与に適した製剤に関するさらなるガイダンスは、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Company, Philadelphia, Pa., 17th ed. (1985)に見い出すことができる。薬物送達の方法の簡単なレビューについては、Langer, Science 249:1527-1533 (1990)を参照されたい。
薬学的組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与され得る。活性成分の毒性および治療効果は、細胞培養および/または実験動物において、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療上有効な用量)を決定するなど、標準的な薬学的手法に従って決定することができる。毒性と治療効果との用量比が治療指数であり、それはLD50/ED50の比で表すことができる。大きな治療指数を示す治療薬が好適である。
細胞培養および/または動物実験から得られたデータは、ある範囲のヒト投与量を処方する際に使用され得る。活性成分の投与量は、一般的に、毒性の低いED50を含む循環濃度の範囲内に収まる。投与量は、利用する剤形および投与経路に応じて、この範囲内で変化しうる。
薬学的組成物の処方に使用される成分は、高純度であり、潜在的に有害な汚染物質を実質的に含まないことが好ましい(例えば、少なくとも食品(National Food:NF)グレード、一般的には少なくとも分析グレード、より一般的には少なくとも医薬品グレード)。さらに、インビボ使用を目的とした組成物は、通常、無菌である。所与の化合物を使用前に合成しなければならない場合、得られる生成物は、通常、合成または精製過程の間に存在し得る潜在的な毒性物質、特にエンドトキシンを実質的に含まない。非経口投与用の組成物もまた、無菌であり、実質的に等張であり、GMP条件下で製造される。
aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤は、他の薬剤に加えて提供されてもよい。例えば、Hh経路のシグナル伝達によって促進される癌を治療する方法では、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤を他の既知の癌治療薬と共投与することができる。
投与
本明細書に記載の方法に従って治療できるヘッジホッグ経路依存性の癌には、ヘッジホッグ経路の活性化に依存するか、またはヘッジホッグ経路の異常な活性化もしくは構成的活性化に関連する、以下のような癌が含まれるが、これらに限定されるものではない:基底細胞癌、髄芽腫、横紋筋肉腫、小細胞肺癌、網膜芽細胞腫、胃および上部消化管癌、骨肉腫、膵臓癌、乳癌、大腸癌、卵巣癌、脳腫瘍、乳腺癌、甲状腺癌、および前立腺癌。
少なくとも1つの治療上有効な用量のaPKCイオタ阻害剤(例えば、CRT0422839またはCRT0364436)の単独またはHDAC阻害剤との組み合わせのいずれか、および/または任意で他の抗癌剤が投与される。これらの薬剤の各々の「治療上有効な用量または量」とは、投与したときに、ヘッジホッグ経路依存性癌に対する個体の治療に関してポジティブな治療反応をもたらす量を意図している。特に関心があるのは、本明細書で定義されるような、抗腫瘍効果をもたらすこれらの薬剤の量である。「ポジティブな治療反応」とは、本発明による治療を受けている個体が、その個体が治療を受けているヘッジホッグ経路依存性癌の1つまたは複数の症状の改善を示すことを意図している。
したがって、例えば、「ポジティブな治療反応」は、治療(例えば、aPKCイオタ阻害剤を用いた治療、またはaPKCイオタ阻害剤とHDAC阻害剤および/もしくは任意で他の抗癌剤を用いた併用療法)と関連した疾患の改善、および/または治療と関連した疾患の1つまたは複数の症状の改善となろう。それゆえ、例えば、ポジティブな治療反応は、以下のような疾患の改善の1つまたは複数を指すことになる:(1)腫瘍サイズの縮小;(2)癌細胞数の減少;(3)腫瘍成長の阻害(すなわち、ある程度の減速、好ましくは停止);(4)末梢臓器への癌細胞浸潤の阻害(すなわち、ある程度の減速、好ましくは停止);(5)腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の減速、好ましくは停止);および(6)癌に伴う1つまたは複数の症状のある程度の緩和。
このような治療反応は、改善の程度に関してさらに特徴づけることができる。こうして、例えば、改善を完全奏効として特徴づけることができる。「完全奏効」とは、全ての測定可能または評価可能な疾患の全ての症状・徴候の消失が、検査への参加時に陽性であった全ての初期異常または部位について繰り返し行われた身体検査、臨床検査、核およびX線検査(すなわち、CT(コンピュータ断層撮影)および/またはMRI(磁気共鳴イメージング))、その他の非侵襲的な手法によって確認されることを意味する。あるいは、疾患の改善を部分奏効として分類することもある。「部分奏効」とは、全ての測定可能な病変の垂直直径の積の合計が、治療前の測定値と比較したとき、50%を超えて減少することを意図している(評価可能な奏効のみの患者には、部分奏効は適用されない)。
特定の態様では、複数回の治療上有効な用量のaPKCイオタ阻害剤の単独またはHDAC阻害剤との組み合わせのいずれか、および任意で他の抗癌剤は、毎日の投薬レジメンに従って、または間欠的に投与される。例えば、治療上有効な用量は、週に1日、週に2日、週に3日、週に4日、または週に5日などで投与される。「間欠的」な投与とは、治療上有効な用量が、例えば、1日おき、2日おき、3日おきなどに投与されることを意図している。例えば、いくつかの態様では、aPKCイオタ阻害剤の単独またはHDAC阻害剤との組み合わせのいずれか、および/または任意で他の抗癌剤は、週2回または週3回、長期間にわたって、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8...10...15...24週間など、投与される。「週2回」または「週に2回」とは、問題の薬剤の2回の治療上有効な用量が、投与の最初の週の1日目から始めて、7日以内に対象に投与され、投与間隔を最低72時間、最高96時間とすることを意図している。「週3回」または「週に3回」とは、3回の治療上有効な用量が、7日以内に対象に投与され、最低48時間および最高72時間の投与間隔が可能であることを意図している。本発明において、このタイプの投与は「間欠的」療法と呼ばれる。本発明の方法によれば、対象は、所望の治療反応が達成されるまで、1週間またはそれ以上のサイクルで間欠的療法(すなわち、治療有効量を週2回または週3回投与)を受けることができる。前記薬剤は、本明細書で後述されるように、任意の許容される投与経路で投与され得る。
特定の態様では、aPKCイオタ阻害剤と、HDAC阻害剤と、任意で他の抗癌剤との併用療法が投与される。aPKCイオタ阻害剤は、HDAC阻害剤の前に、HDAC阻害剤と同時に、またはHDAC阻害剤の後に投与することができる。HDAC阻害剤と同時に提供される場合には、aPKCイオタ阻害剤を同じ組成物で提供しても、異なる組成物で提供してもよい。このように、2つの薬剤は、同時療法(concurrent therapy)によって個体に提示することができる。「同時療法」とは、物質の組み合わせの治療効果が治療を受けているヒト対象にもたらされるような、ヒト対象への投与を意図している。例えば、同時療法は、少なくとも1つの治療有効用量のaPKCイオタ阻害剤を含む薬学的組成物と、少なくとも1つの治療有効用量の少なくとも1つのHDAC阻害剤を含む薬学的組成物を、特定の投薬レジメンに従って投与することにより達成され得る。同様に、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤、および任意で他の抗癌剤を、少なくとも1つの治療用量で投与することができる。別々の薬学的組成物の投与は、これらの物質の組み合わせによる治療効果が治療を受けている対象にもたらされる限り、同じ時間に(すなわち、同時に)または異なる時間に(すなわち、順次、いずれかの順序で、同じ日に、または異なる日に)行うことができる。
特定の態様では、aPKCイオタ阻害剤を、HDAC阻害剤の投与前に短期間投与し、HDAC阻害剤による治療を中止した後で短期間継続して、GLI1とHDAC1の会合およびGLI1とヘッジホッグシグナル伝達経路の活性化を阻害するための治療の間対象においてaPKCイオタ阻害剤のレベルが十分であるようにする。例えば、aPKCイオタ阻害剤を、HDAC阻害剤の初回量を投与する1週間前に開始して投与し、HDAC阻害剤の最終量を対象に投与した後で1週間継続することができる。
他の態様では、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤および/または任意で他の抗癌剤などの、薬剤を含む薬学的組成物は、持続放出製剤、または持続放出デバイスを用いて投与される製剤である。そのようなデバイスは当技術分野でよく知られており、例えば、経皮パッチ、および小型の埋め込み型ポンプがあり、これらは、非持続放出薬学的組成物を用いて持続放出効果を得るために、様々な用量で、連続的に定常状態で経時的に薬物を送達することができる。
aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤および任意で他の抗癌剤を含む薬学的組成物は、当技術分野で知られる医学的に許容される方法に従って、同じまたは異なる投与経路を用いて投与され得る。適切な投与経路には、非経口投与、例えば、皮下(SC)、腹腔内(IP)、筋肉内(IM)、静脈内(IV)、または輸液、経口、肺、鼻腔内、局所、経皮、腫瘍内、および座剤が含まれる。組成物が肺送達により投与される場合、その治療有効量は、血流中のaPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤などの薬剤の可溶性レベルが、非経口的に、例えばSC、IP、IM、またはIVで投与される治療有効量で得られるものと同等になるように、調整される。いくつかの態様では、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤および任意で他の抗癌剤を含む薬学的組成物は、IMまたはSC注射によって、特にIMまたはSC注射によって局所的に腫瘍に投与される。いくつかの態様では、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤および任意で他の抗癌剤は、例えばパッチまたはゲルとして、局所的に投与される。
いくつかの態様では、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤および任意で他の抗癌剤は、注入または局所注射により、例えば、約50mg/h~約400mg/hの速度で、例えば、約75mg/h~約375mg/h、約100mg/h~約350mg/h、約150mg/h~約350mg/h、約200mg/h~約300mg/h、約225mg/h~約275mg/hで注入することにより投与される。例示的な注入速度は、例えば、約0.5mg/m2/日~約10mg/m2/日、例えば、約1mg/m2/日~約9mg/m2/日、約2mg/m2/日~約8mg/m2/日、約3mg/m2/日~約7mg/m2/日、約4mg/m2/日~約6mg/m2/日、約4.5mg/m2/日~約5.5mg/m2/日の所望の治療用量を達成することができる。投与(例えば、注入による)は、所望の期間にわたって繰り返され、例えば、約1日~約5日の期間にわたって、または数日に1回、例えば約5日に1回、約1ヶ月、約2ヶ月などにわたって繰り返すことができる。また、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤は、癌性細胞を除去するための外科的介入など、他の治療的介入の前に、介入の時に、または介入の後に投与することもできる。aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤はまた、免疫療法、化学療法、放射線療法、または生物学的療法の少なくとも1つが対象に投与される併用療法の一部として投与することもできる。
投与される様々な組成物のそれぞれの量に影響を与える要因としては、投与方法、投与頻度(毎日、または週に2回または3回などの間欠的投与)、治療対象となる特定の疾患、疾患の重症度、疾患の履歴、個体が別の治療薬で同時療法を受けているかどうか、ならびに治療を受けている個体の年齢、身長、体重、健康状態、および体調が挙げられるが、これらに限定されない。一般的に、治療を受けている対象の体重が増えるほどに、この薬剤の投与量を増やすことが好ましい。
aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤および任意で他の抗癌剤の個々の用量は、通常、対象に測定可能な効果をもたらすのに必要な量よりは少なくなく、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤および任意で他の抗癌剤とそれらの副産物の吸収、分布、代謝、排泄(absorption, distribution, metabolism, excretion:「ADME」)のための薬物動態学および薬理学に基づいて、それゆえに対象における該組成物の体内動態(disposition)に基づいて決定され得る。それには、投与経路ならびに投与量を考慮することが含まれ、投与量は、局所適用(主に局所効果のために作用させたい場所に直接適用する)、経腸適用(消化管の一部にとどまった時の全身または局所効果のために消化管を介して適用する)、または非経口適用(全身または局所効果のために消化管以外の経路で適用する)に応じて調整することができる。例えば、aPKCイオタ阻害剤(例えば、CRT0422839またはCRT0364436)の投与は、局所的であってもよいし、注射、例えば、静脈内、筋肉内、もしくは腫瘍内注射、またはそれらの組み合わせによるものであってもよい。
対象におけるaPKCイオタ阻害剤とその対応する生物学的活性の体内動態は、通常、関心対象の標的に存在するaPKCイオタ阻害剤の割合に対して評価される。例えば、aPKCイオタ阻害剤は、投与されると、その物質を癌細胞と癌性組織に集結させる複合糖質または他の生物学的標的と一緒に蓄積する可能性がある。したがって、関心対象の標的に経時的に蓄積するようにaPKCイオタ阻害剤が投与される投薬レジメンは、個々の用量を少なくするための戦略の一部となり得る。これはまた、例えば、インビボでよりゆっくりとクリアランスされるaPKCイオタ阻害剤の用量を、インビトロアッセイから算出された有効濃度と比べて、低くすることができることを意味し得る(例えば、インビトロでの有効量がmM濃度に近いのに対し、インビボではmM濃度未満)。
一例として、用法または投薬レジメンの有効量は、aPKCキナーゼ活性および/またはGLI1活性化、および/またはヘッジホッグ経路の活性化および/または細胞増殖および/または細胞移動/浸潤を阻害するための、所定のaPKCイオタ阻害剤のIC50から推し量ることができる。「IC50」とは、インビトロで50%の阻害に必要な薬物の濃度を意味する。あるいは、有効量は、所定のaPKCイオタ阻害剤濃度のEC50から推量することもできる。「EC50」とは、インビボで最大効果の50%を得るのに必要な血漿濃度を意味する。関連する態様では、ED50(有効投与量)に基づいて投与量を決定することもできる。
一般的に、有効量は、計算されたIC50の200倍より少なくするのが常である。典型的には、投与されるaPKCイオタ阻害剤の量は、計算されたIC50の約200倍未満、約150倍未満、約100倍未満、多くの態様では約75倍未満、約60倍、50倍、45倍、40倍、35倍、30倍、25倍、20倍、15倍、10倍未満、さらには約8倍または約2倍未満である。一態様では、有効量は、計算されたIC50の約1倍~50倍であり、時には計算されたIC50の約2倍~40倍、約3倍~30倍、または約4倍~20倍である。他の態様では、有効量は、計算されたIC50と同じであり、特定の態様では、有効量は、計算されたIC50よりも多い量である。
有効量は、通常、計算されたEC50の100倍を超えることはない。例えば、投与されるaPKCイオタ阻害剤の量は、計算されたEC50の約100倍未満、約50倍未満、約40倍、35倍、30倍、または25倍未満、多くの態様では約20倍未満、約15倍未満、さらには約10倍、9倍、9倍、7倍、6倍、5倍、4倍、3倍、2倍または1倍未満である。有効量は、計算されたEC50の約1倍~30倍、時には計算されたEC50の約1倍~20倍、または約1倍~10倍であり得る。また、有効量は、計算されたEC50と同じでもよいし、計算されたEC50よりも多くてもよい。IC50は、インビトロでaPKCキナーゼ活性および/またはGLI1活性化、および/または細胞増殖および/または細胞移動/浸潤を阻害することによって算出することができる。
有効性を達成するためには、aPKCイオタ阻害剤のレベルが、特定の期間にわたって特定のレベルを超えていなければならない。有効性は用量依存的であり、aPKCイオタ阻害剤のレベルが高いほど、抗腫瘍効果が高くなる。毒性を最小限に抑えるために、aPKCイオタ阻害剤のレベルは、特定の期間内および特定の期間にわたって、一定のレベルより低く維持することができる(「休薬期間」はaPKCイオタ阻害剤のクリアランスを可能にする)。すなわち、薬物は、次回の投与を行う前の一定の期間まで一定のレベルより低く保持される。投与と投与の間の休薬が短いほど、毒性は大きくなる。
特定の態様では、ヘッジホッグ経路依存性癌を有する患者の治療方法は、aPKCイオタ阻害剤の単独またはHDAC阻害剤との組み合わせのいずれか、および/または任意で他の抗癌剤を用いた治療サイクルを含み、その後に、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤を投与しないで、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤の望ましくない作用から患者を「回復」させる休薬期間が続く。複数回のaPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤の投与を毎日の投薬レジメンに従ってまたは間欠的に行い、その後休薬期間を設けることができる。
前述の投薬レジメンに従って治療を受けている対象が部分奏効を示すか、または長期間の寛解後に再発した場合には、疾患の完全寛解を達成するために後続の治療コースが必要となることがある。こうして、第1の治療期間からの休薬期間に続いて、対象は、aPKCイオタ阻害剤の単独またはHDAC阻害剤との組み合わせのいずれか、および任意で他の抗癌剤を投与する工程を含む1つまたは複数の追加の治療期間を受けることができる。そのような治療期間と治療期間の間の休薬期間は、本明細書では中断期間と呼ばれる。中断期間の長さは、これらの治療薬を用いた以前の治療期間で達成された腫瘍反応の程度(すなわち、完全対部分)に依存することが認識されよう。
応用例
Hh経路シグナル伝達の調節異常によって促進される癌の一例は、基底細胞癌(BCC)である。BCC腫瘍ではGliレベルが上昇しており、BCCに対する分子標的薬はSmoに拮抗してGli mRNAを減少させることに焦点を当てている。1つのそのような例は、Smoを阻害する植物アルカロイドのシクロパミン(cyclopamine)である。モデルシステム(インビトロおよびインビボ)は、シクロパミンがBCCを効果的に阻害することを示したが、シクロパミンの臨床応用では、その使用を妨げるような重篤な副作用が見られた。転移性BCC腫瘍に良好な効果を示した別のSmoアンタゴニストは、ビスモデギブ(vismodegib)である。その他の治療法には、手術、化学療法、免疫療法、例えば、ユーフォルビア・ピプルス(Euphorbia peplus)、イミキモド(Imiquimod)、アルダラ(Aldara)など、および放射線療法が含まれる。場合によっては、Hh経路の活性化変異がSmoの下流または上位(epistatic)であるため、BCCはSmoアンタゴニストに対して耐性であるか、または癌細胞はSmoアンタゴニストに対して耐性ができている。本発明の方法は、そのような癌に応用することができる。
Hh経路シグナル伝達の調節異常によって促進される疾患の別の例は、ゴーリン症候群(Gorlin Syndrome)としても知られる基底細胞母斑症候群(Basal Cell Nevus Syndrome:BCNS)であり、これは数十から数百のBCCの発症を特徴とする稀な多臓器疾患である。BCNSを有する対象は、PTCH1の欠陥のあるコピーを受け継いでいる。BCNSは、人口56,000~164,000人あたり1例の有病率で、有効かつ許容しうる治療法がない希少疾病である。その結果として、BCC腫瘍を治療または予防する薬物は、BCNSの患者にとって興味深いものである。
本発明の方法および組成物は、次の2つの臨床集団におけるBCCの治療または予防に使用される:i)遺伝性のBCC腫瘍を有する患者、例えば基底細胞母斑症候群の患者;およびii)散発性のBCC腫瘍を有する一般集団の患者。米国では、BCCは年間100万人が新たに診断される最も一般的な癌である。BCCが致命的となることはめったにないが、BCCの高い発生率と、罹患した個体での頻繁な再発は、かなりの罹患率をもたらす可能性がある。現在、皮膚癌の発生率は年々増加しており、皮膚癌の治療は国民保健サービス(national health service)に大きな負担をかけている。現在、日焼け防止剤がランダム化比較試験でBCCの発生を減らすとは示されていないため、BCC予防のための有効な治療法は存在していない。
Hh経路シグナル伝達の調節異常によって促進される癌の別の例は、髄芽腫である。髄芽腫は、小脳または後頭蓋窩に由来する悪性度の高い原発性脳腫瘍である。髄芽腫は最も一般的な悪性の脳腫瘍であって、新たに診断された症例の14.5%を占める。髄芽腫は通常、脳幹と小脳の間にある第4脳室の近傍に形成される。髄芽腫に対する公知の治療法には、化学療法、例えば、ロムスチン、シスプラチン、カルボプラチン、ビンクリスチンまたはシクロホスファミドの1つまたは複数、およびビスモデギブが含まれる。本発明の方法は、Smoアンタゴニストに対して耐性である(または耐性ができた)髄芽腫に応用することができる。
Hh経路シグナル伝達の調節異常によって促進される癌の別の例は、横紋筋肉腫である。横紋筋肉腫は、骨格筋の前駆細胞から癌細胞が発生すると考えられている肉腫(結合組織の癌)である。それは解剖学的にどのような場所にも存在し得る。ほとんどは、頭、首、泌尿生殖器など、骨格筋がもともと少ない領域で発生している。横紋筋肉腫の診断は、骨格筋細胞への分化が認識されるかにかかっている。タンパク質myoD1およびミオゲニン(myogenin)は、発達中の骨格筋細胞に通常見られる転写因子タンパク質であって、筋肉が成熟して神経に支配されるようになると消失する。したがって、myoD1とミオゲニンは通常、正常な骨格筋には見られず、横紋筋肉腫の有用な免疫組織化学的マーカーとしての機能を果たす。横紋筋肉腫の治療は、化学療法、放射線療法、時には手術で構成されている。
他の組織のヘッジホッグ経路依存性癌、例えばSmoアンタゴニストに耐性のある他の組織のヘッジホッグ経路依存性癌変異型なども、本発明の方法で治療することができる。これらには、例えば、小細胞肺癌、膵臓癌、大腸癌、卵巣癌、および前立腺癌のサブタイプが含まれ、これらは全てヘッジホッグ経路の遮断剤に反応することがわかっている。
キット
ヘッジホッグ経路依存性癌を治療するための、少なくとも1つのaPKCイオタ阻害剤(例えば、CRT0422839またはCRT0364436)および/またはHDAC阻害剤、および/または任意で1つまたは複数の他の抗癌剤を含む組成物を保持する1つまたは複数の容器を含むキットが提供される。組成物は、液状であってもよいし、凍結乾燥されていてもよい。該組成物に適した容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、試験管などがある。容器は、ガラス、プラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静注用溶液バッグまたは皮下注射針で穿刺可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。
前記キットは、薬学的に許容される緩衝液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、またはデキストロース液を含む第2の容器をさらに含むことができる。それはまた、エンドユーザーに有用な他の材料、例えば、緩衝液、希釈剤などのその他の薬学的に許容される処方溶液、フィルター、針、および注射器または他の送達デバイスを含むこともできる。送達デバイスには、該組成物があらかじめ充填されていてもよい。
また、前記キットは、ヘッジホッグ経路依存性癌の対象を治療するための、aPKCイオタ阻害剤および/またはHDAC阻害剤を含む組成物を使用する方法についての書面での指示を有する添付文書を含むことができる。その添付文書は、未承認のドラフト添付文書であってもよいし、米国食品医薬品局(FDA)またはその他の規制機関によって承認された添付文書であってもよい。あるいは、指示は、情報が記録されたコンピュータ可読媒体、例えば、ディスケット、CD、DVD、フラッシュドライブなどで提供されてもよく、または指示は、削除されたサイトの情報にアクセスするためにインターネットを介して使用できるウェブサイトのアドレスで提示されてもよい。ヘッジホッグ経路依存性癌の対象を治療するための指示を提供する便利な手段はどれも、該キットに含めることができる。
以下の実施例は、本発明の製造および使用方法の完全な開示と説明を当業者に提供するために提示されたものであり、本発明者らが本発明とみなす範囲を限定することを意図したものではなく、また、以下の実験が実施された全てのまたは唯一の実験であることを表すことを意図したものでもない。使用された数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされてきたが、多少の実験誤差および偏差を考慮する必要がある。特に明記されない限り、部は重量部、分子量は重量平均分子量、温度は摂氏度、圧力は大気圧またはそれに近い圧力である。
分子・細胞生物化学の一般的な方法は、以下のような標準的な教科書に見い出すことができる:Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed. (Sambrook et al., HaRBor Laboratory Press 2001); Short Protocols in Molecular Biology, 4th Ed. (Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons 1999); Protein Methods (Bollag et al., John Wiley & Sons 1996); Nonviral Vectors for Gene Therapy (Wagner et al. eds., Academic Press 1999); Viral Vectors (Kaplift & Loewy eds., Academic Press 1995); Immunology Methods Manual (I. Lefkovits ed., Academic Press 1997); およびCell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology (Doyle & Griffiths, John Wiley & Sons 1998);これらの開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。本開示で言及される遺伝子操作のための試薬、クローニングベクター、およびキットは、BioRad、Stratagene、Invitrogen、Sigma-Aldrich、およびClonTechなどの市販業者から入手可能である。
実施例1
BCC細胞モデルにおけるヘッジホッグ経路の調節
はじめに
基底細胞癌(BCC)は、生存と成長のために高レベルのヘッジホッグ(HH)シグナル伝達を必要とする(Chang et al. (2012) Arch. Dermatol. 148(11):1324-1325; Atwood et al. (2015) Cancer Cell 27(3):342-353; Atwood et al. (2013) Nature 494(7438):484-488; Hutchin et al. (2005) Genes Dev. 19(2):214-223)。HH経路の活性化には、HHリガンドがPatched-1に結合することによってSmoothened(SMO)の阻害を緩和することが必要である。これは、転写因子のGLIファミリーの活性化をもたらし、最終的に、Gli1それ自体を含むHH標的遺伝子の転写を促進する。最近、SMO阻害剤がBCCの治療のためにFDAで承認されたが、薬剤耐性が大きな問題として浮上してきている(Chang et al., 前記; Atwood et al. (2015), 前記; Sekulic et al. (2012) N. Engl. J. Med. 366(23):2171-21791)。BCCは成長のためにHH経路に一様に依存するため(Atwood et al. (2015), 前記)、耐性BCCは、経路固有の変異ならびに非正規のGLI活性化メカニズムを用いて、SMOレベルでの薬理学的遮断を回避するように進化している(Atwood et al. (2015), 前記; Atwood et al. (2013), 前記)。
最近、本発明者らは、BCCにおける薬剤耐性の強力なメカニズムとして、非定型
Figure 2022527320000004
の過剰活性化を確認した(Atwood et al. (2013), 前記)。aPKCがGLI1のジンクフィンガードメインをリン酸化すると、SMOおよびPatched-1からの入力の下流で、クロマチン会合、遺伝子転写、およびHH経路活性化が起こる。さらに、GLIはaPKCの転写を促進し、GLIを含む別の正のフィードバックループを形成している。この非正規のHHシグナル伝達経路の過剰活性化は、進行したBCCでは経路活性化とビスモデギブ逃避を促進する(Atwood et al. (2013), 前記)。アロステリック(Erdogan et al. (2006) J. Biol. Chem. 281(38):28450-28459)またはオルソステリック(Kjaer et al. (2013) Biochem. J. 451(2):329-342)のaPKCの小分子阻害剤が開発中であるが、BCCの治療には応用されていない。
GLIタンパク質は、SMOの下流で、p300によるアセチル化とそれに続く脱アセチル化によって、さらに制御されている。ヒストンデアセチラーゼ1/2(HDAC1/2)による、それぞれK518およびK757でのGLI1/2の脱アセチル化は、クロマチン会合と遺伝子転写に必要なGLI転写因子の核成熟プロセスにおいて重要なステップである(Canettieri et al. (2010) Nat. Cell Biol. 12(2):132-142)。HDAC1はそれ自体がGLIの転写標的であり、HHシグナル伝達の第3の正のフィードバックループを形成している。特に興味深いことに、HDAC阻害は多くのHH駆動型癌の治療に提案されている(Canettieri et al., 前記; Coni et al. (2017) Sci Rep. 7:44079; Zhao et al. (2014) Pharmacol. Res. Perspect. 2(3):e00043; Coni et al. (2013) PLoS One 8(6):e65718)。HDAC阻害剤は、ヒストン-DNA複合体を変化させることにより、また、非ヒストンタンパク質のアセチル化状態を変化させることにより、成長を遮断して、アポトーシスを促進する(Falkenberg et al. (2014) Nat. Rev. Drug Discov. 13(9):673-691)。クラスI/IIのHDAC阻害剤であるボリノスタットは、現在、皮膚リンパ腫の治療薬としてFDAに承認されている(Mann et al. (2007) Clin. Cancer Res. 13(8):2318-2322)。残念ながら、HDAC阻害は、その広範な細胞毒性によって妨げられてきた。デノボ創薬(de novo drug discovery)は、有効な標的がなく、臨床開発にコストがかかるため、依然として困難である(Hoelder et al. (2012) Mol. Oncol. 6(2):155-176)。
ここで、本発明者らは、aPKCイオタ阻害剤であるCRT0422839およびCRT0364436が、BCC細胞の生存を調節し、かつGLI経路の調節と合致してGLI1 mRNAのレベルを低下させることを示す。
結果
BCCに対するaPKCイオタ阻害の効果をインビトロで調べるために、マウスBCC細胞株を増加用量のCRT0422839またはCRT0364436で処理した。CRT0422839またはCRT0364436のいずれかで処理すると、BCCの成長と生存の用量依存的低下が生じた(図1Cおよび1D)。BCCの生存を、Mirza et al.(JCI Insight (2017) 2(21) pii: e97071;その全体が参照により本明細書に組み入れられる)により以前に記載された、aPKC阻害剤のPSI(図1A)およびCRT0329868(図1B)で処理した場合の生存性と比較した。さらに、CRT0422839またはCRT0364436のいずれかで処理すると、Gli1 mRNAのレベルの用量依存的減少が生じた(図2Aおよび2B)。
実施例2
aPKCイオタの生化学的キナーゼアッセイ
aPKCイオタのキナーゼ活性を阻害する化合物の能力は、IMAP FPプログレッシブ・バインディング・システム(Molecular Devices R8127)を用いて、384ウェルの黒色、非結合性、平底アッセイプレート(Corning 3575)で測定される。アッセイ混合物(最終容量=10μl)は、20mM Tris-HCL(pH7.5)、150μM ATP、10mM MgCl2、0.01% Triton X-100, 250μM EGTA、1mM DTT、15pM PKCι(EMD Millipore 14-505)、100nM FAM-PKCε-偽基質(pseudosubstrate)(Molecular Devices RP7548)、0.1% DMSO、および様々な濃度の試験化合物CRT0422839および CRT0364436を含む。BioMek NXピンツール(Beckman Coulter社)を用いて、化合物希釈液(100% DMSOで調製)を100nlでアッセイプレートに添加する。酵素反応をATP(MilliporeSigma A7699)の添加により開始させ、その後、プレートを25℃のインキュベーター内で1時間インキュベートする。IMAP検出試薬(85% 1X結合バッファーAと15% 1X結合バッファーB中に1:400)の20μlアリコートを各ウェルに加え、その後25℃で2時間インキュベートする。次に、FPデュアルミラー、FP480励起フィルター、P-pol 535およびS-pol 535発光フィルターを用いて、PerkinElmer Envision 2102マルチラベルプレートリーダー(PerkinElmer社)でFPを測定する。ActivityBase(IDBS社)を用いてデータ解析を行う。IC50値は、化合物濃度のlog10に対して阻害率をプロットし、XLFit 4(IDBS社)の4パラメータロジスティックモデル(トップとボトムをそれぞれ100と0に設定)にフィッティングして算出する。
上記は、単に本発明の原理を説明するものである。当業者であれば、本明細書に明示的に記載または表示されていなくても、本発明の原理を具体化しかつその精神と範囲に含まれる様々なアレンジを考案できることが理解されよう。さらに、本明細書に記載される全ての例および条件文は、本発明の原理と、本技術の促進のために本発明者らにより提供された概念を読者が理解するのを助けることを主な目的としており、そのような具体的に記載された例および条件に限定されるものではないと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、局面、および態様、ならびにそれらの具体的な例を記載した本明細書中の全ての記述は、それらの構造的均等物と機能的均等物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような均等物には、現在知られている均等物と将来開発される均等物の両方、つまり、構造に関係なく同じ機能を果たす開発された要素、が含まれることが意図されている。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され、記載された例示的な態様に限定されることを意図していない。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって具体化される。

Claims (30)

  1. ヘッジホッグ経路依存性癌の対象を治療する方法であって、治療上有効な量のCRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩を含む組成物を、該対象に投与する工程を含む、前記方法。
  2. 前記癌が基底細胞癌(BCC)である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記癌が構成的に活性なヘッジホッグ経路を含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記癌が転移性である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 複数サイクルの治療が、少なくとも部分的な腫瘍反応をもたらすのに十分な期間にわたって対象に投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記期間が少なくとも6ヶ月である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記期間が少なくとも12ヶ月である、請求項6に記載の方法。
  8. 複数サイクルの治療が、完全な腫瘍反応をもたらすのに十分な期間にわたって対象に投与される、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記組成物が、毎日の投薬レジメンに従って、または間欠的に投与される、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 追加の抗癌療法を投与する工程をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記追加の抗癌療法が、手術、化学療法、放射線療法、免疫療法、生物学的療法、またはそれらの組み合わせである、請求項10に記載の方法。
  12. 前記組成物が薬学的に許容される添加剤をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
  13. ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を、CRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与する工程をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記HDAC阻害剤がボリノスタットである、請求項13に記載の方法。
  15. 前記対象が哺乳類である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記対象がヒトである、請求項15に記載の方法。
  17. CRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩が、対象におけるヘッジホッグ経路依存性癌性細胞の生存性を低下させるのに十分な量で投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
  18. CRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩が、対象におけるヘッジホッグ経路依存性癌性細胞のGli 1 mRNAの産生を減少させるのに十分な量で投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
  19. CRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩が、対象におけるヘッジホッグ経路依存性癌性細胞の成長および細胞増殖を低減させるのに十分な量で投与される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
  20. ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞の成長または増殖を阻害する方法であって、ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞を有効量のCRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩と接触させる工程を含む、前記方法。
  21. 前記ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞が、基底細胞癌(BCC)細胞である、請求項20に記載の方法。
  22. 前記ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞が、構成的に活性なヘッジホッグ経路を含む、請求項20または21に記載の方法。
  23. 前記ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞が、インビボまたはインビトロである、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 前記ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞が、ヒトの癌性細胞である、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
  25. 前記ヘッジホッグ経路依存性癌性細胞をデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と接触させる工程をさらに含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記HDAC阻害剤がボリノスタットである、請求項25に記載の方法。
  27. ヘッジホッグ経路依存性癌の治療に使用するための、CRT0422839もしくはCRT0364436またはその薬学的に許容される塩を含む組成物。
  28. 前記癌が基底細胞癌(BCC)である、請求項27に記載の組成物。
  29. ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤をさらに含む、請求項27または28に記載の組成物。
  30. 前記HDAC阻害剤がボリノスタットである、請求項29に記載の組成物。
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