JP2022520430A - 溶解性が改善されたpic1変異体およびそれを使用する方法 - Google Patents

溶解性が改善されたpic1変異体およびそれを使用する方法 Download PDF

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Abstract

輸血血小板の生存期間を改善する方法が記載されている。この方法は、輸血血小板に不応である同種免疫患者にとって有用であり得る。また、遅発性溶血性輸血反応を治療する方法も記載されている。また、溶解性および活性が改善されたPIC1ペプチド変異体も記載されている。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月15日に出願された米国特許仮出願第62/806,432号および2019年12月17日に出願された米国特許仮出願第62/949,181号の恩典およびそれに対する優先権を主張し、どちらの出願も、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
背景
ヒトアストロウイルスは、エンベロープを持たない正二十面体RNAウイルスの科に属し、ヒト幼児において急性胃腸炎を引き起こす世界中に広まった風土病病原体である[1]。重度の急性疾患を引き起こすカリシウイルスおよびロタウイルスとは違って、アストロウイルス胃腸炎は非炎症性である[2]。アストロウイルスに対する炎症反応が弱いのは、アストロウイルスカプシドを形成する787アミノ酸残基のアストロウイルスコートタンパク質に起因する可能性がある。このコートタンパク質は、補体の古典経路の活性化を阻害することが判明した[3]。補体は、病原体に対する強い炎症反応を特徴とする、ヒトの先天性免疫応答である[4]。アストロウイルスコートタンパク質のアミノ酸配列についての解析により、ヒト好中球ディフェンシン1型(HNP-1)に対して緩い相同性を有する領域が同定され、補体の古典経路を阻害する能力を保持した短いペプチドの開発につながった[5]。
血小板不応状態は、同種免疫が生じ抗血小板抗体が現れた患者を治療する臨床医にとって、困難な臨床上のジレンマであり続けている[18]。これらの同種免疫された患者において、輸血された血小板の生存期間は短いため、出血リスクを最小限にするために必要とされる血小板レベルを維持する能力が大きく制限される。現在の管理方法は、患者の循環血中抗血小板抗体の影響を受けにくい血小板集団を試験および特定することに重点を置いている[24]。これらの方法は多くの患者の役に立つが、追加試験に時間がかかり、高レベルの抗血小板抗体を有するかまたは適合もしくは回避が困難であるHLA型を有する個体にとってはある程度しか成功しない可能性がある[22]。これまで、薬理学的介入は、同種免疫された患者において血小板不応状態を緩和し輸血血小板の生存期間を改善する安定した能力を示していない[24]。
遅発性溶血性輸血反応(DHTR)は、輸血後1週間を過ぎてから起こるヘマトクリット値の減少を特徴とする。一部の患者において、DHTRに関連するヘマトクリット値の低下は急激であり、重度の、生命を脅かしさえする合併症を引き起こす場合がある。ヘマトクリット値の急激な低下は、溶血亢進と呼ばれることがある。
DHTRの背景にあるメカニズムは、依然として十分に理解されていない。最も一般的に論じられている理論は、赤血球(RBC)抗原に感作されたことがある患者が輸血時点では検出不可能な同種抗体レベルを有している場合にDHTRが起こるとするものである[33]。したがって、血液型判定および交差試験では、不適合性の証拠が示されない。この抗原を有する赤血球を輸血後1~4週目に、DHTRの原因となる一次応答または既往応答が起こり得る[34]。
多くのDHTRは、軽症かつ自己限定性であると考えられ、したがってDHTRは確認されないことが頻繁にある。しかし、輸血後1~2週に輸血前レベルまでヘモグロビンが減少する場合、DHTRが疑われる。重症のDHTR反応は、何の前触れもなく起こり、多くの場合、生命を脅かす。これらは、急性の溶血性輸血反と同様に治療される。
DHTRでは、通常はIgGサブクラスの抗体で被覆されたドナーRBCが、肝臓および脾臓において血管外溶血によって破壊されるという仮説が立てられている。この疾患プロセスの主なメカニズムは、Fcを媒介とした食作用によって起こると考えられている[35]。DHTRにおける補体活性化の役割は、あるとしても、依然として不明である。
本特許または出願ファイルは、色彩を付して作成された少なくとも1つの図面を含む。彩色図面を伴う本特許または特許出願公開の写しは、請求および所要手数料の納付に応じて、特許庁によって提供される。
図1A~1Dは、溶血アッセイおよびC1q結合におけるサルコシン変異体による補体活性化阻害を示す。図1Aは、CH50式アッセイによるABO不適合性溶血の阻害についての試験結果を示す。ペプチドの最終濃度は1.8mMである。PIC1はPA-dPEG24を示す。示されているデータは、n=4の独立した実験の平均値+SEMである。 図1Bは、CH50式アッセイによる、B因子枯渇血清中での古典的補体経路媒介性溶血の阻害についての試験結果を示す。ペプチドの最終濃度は0.4mMである。示されているデータは、n=4の独立した実験の平均値+SEMである。 図1Cは、濃度を段階的に上げたサルコシン変異体の精製C1qへの結合についてのELISA式アッセイの結果を示す。示されているデータは、n=3の独立した実験の平均値±SEMである。 図1Dは、各ペプチドの結合曲線の最大半量結合濃度の計算結果を示す。 図2A~2Dは、サルコシン変異体によるMPOペルオキシダーゼ活性阻害についてのアッセイの結果を示す。図2Aは、各ペプチドがある一定の濃度範囲(mM)内にある場合のMPOペルオキシダーゼ活性をTMBベースのアッセイで測定したデータを示す。PIC1はPA-dPEG24を示す。示されているデータは、n=3の独立した実験の平均値±SEMである。 図2Bは、各ペプチドの阻害曲線について計算した最大半減阻害濃度を示すグラフである。 図2Cは、濃度を段階的に上げたサルコシン変異体の精製MPOへの結合についてのELISA式アッセイの結果を示す。示されているデータは、n=3の独立した実験の平均値±SEMである。 図2Dは、各ペプチドの結合曲線について計算した最大半量結合濃度を示すグラフである。 図3A~3Hは、サルコシン変異体ペプチドがMPOヘム環を酸化的分解から保護する能力についてのアッセイの結果を示す。PA-dPEG24(図3A)、A2(図3B)、L3(図3C)、I4(図3D)、L5(図3E)、I8(図3F)、C9(図3G)、およびC9,10(図3H)の結果を示している。過酸化水素の非存在下(MPO)、過酸化水素の存在下(MPO+H2O2)、ペプチドの存在下(MPO+A2)、ならびに過酸化水素およびペプチドが共に存在する場合(MPO+A2+H2O2)の、ヘム環の吸光スペクトルを示している。各種ペプチドは3.0mMの濃度で試験した。 図3Aの説明を参照。 図3Aの説明を参照。 図3Aの説明を参照。 図3Aの説明を参照。 図3Aの説明を参照。 図3Aの説明を参照。 図3Aの説明を参照。 図4は、総抗酸化能(TAC)アッセイにおける、サルコシン変異体による酸化活性阻害の結果を示す。抗酸化活性を、銅還元当量(CRE)として測定した。0.03~0.25mMの濃度範囲でペプチドを試験し、次いで標準物質と比較した。示されているデータは、n=3の独立した実験の平均値+SEMである。 図5Aは、サルコシン変異体ペプチドがNET形成を阻害する能力についてのアッセイの結果を示すグラフである。グラフは、NETosisのマーカーとしての好中球による遊離DNA放出をサルコシン変異体が阻害していることを示す。精製したヒト好中球を、オボアルブミン-抗オボアルブミン免疫複合体と共にプレインキュベーションした2%正常ヒト血清、および0.05%H2O2で刺激した。最終濃度が2mMになるようにサルコシンペプチドおよびPIC1を血清に添加した。示されているデータは、n=3の独立した実験の平均値+SEMである。 図5Bは、好中球のみの対照(1行目)と比べた、免疫複合体(IC)および過酸化水素(H2O2)(2行目)による好中球刺激後のNET形成を蛍光顕微鏡によって写した代表的な画像を示す。3行目は、ICおよびH2O2で刺激した好中球を変異体I8で処理するとNET形成が阻害されることを示す。ヒストンは抗ヒストン抗体でプローブし(αヒストン;左側の列);好中球エラスターゼは抗好中球エラスターゼでプローブし(αNE;中央の列);DNAはDAPIで染色している(右側の列)。 図6A~6Cは、抗血小板抗体で感作されたヒト血小板が補体を活性化して血小板の生存率を低下させることを示すデータを示す。ヒト血小板を抗血小板抗体(Ab)で感作し、正常ヒト血清(NHS)と共にインキュベーションした。濃度を段階的に上げた古典的補体経路阻害物質PA-dPEG24(PIC1)を添加した。図6Aは、ストリップした血小板膜結合型タンパク質に対するiC3b ELISAによって血小板表面におけるC3活性化を測定したアッセイの結果を示す。示されているデータは、n=5の独立した実験の平均値±SEMである。 図6Bは、上清中の補体アナフィラトキシンC5aの生成をC5a ELISAによって測定したアッセイの結果を示す。示されているデータは、n=4の独立した実験の平均値±SEMである。 図6Cでは、Presto Blueによって細胞生存能力を測定した。示されているデータは、n=6の独立した実験の平均値±SEMである。 図7A~7Cは、ラット血清中でのヒト血小板の生存能力についてのアッセイの結果を示す。図7Aは、ヒト血小板を、段階的に増量したウィスターラットまたはスプラーグドーリー(S-D)ラットの血清と共に30分間インキュベーションし、Presto Blueを用いて細胞生存能力を測定したアッセイの結果を示す。示されているデータは、n=3の独立した実験の平均値±SEMである。 図7Bは、ヒト血小板を、ウィスターラット血清(NRS)または熱不活化したウィスターラット血清(加熱RS)と共に、段階的に期間を長くしてインキュベーションし、Presto Blueを用いて生存能力を試験したアッセイの結果を示す。示されているデータは、n=3の独立した実験の平均値±SEMである。 図7Cは、ヒト血小板を、PA-dPEG24(PIC1)の濃度を段階的に上げて、ウィスターラット血清と共にインキュベーションしたアッセイの結果を示す。示されているデータは、n=3の独立した実験の平均値±SEMである。 図8A~8Cは、PKH26で染色したヒト血小板に対するアッセイで示された代表的なフローサイトメトリー画像である。図8Aでは、未染色のヒト血小板をフローサイトメトリーによって調査した。 図8Bでは、PKH26で染色したヒト血小板をフローサイトメトリーによって調査した。 図8Cでは、染色ヒト血小板および未染色ヒト血小板を1:1の比で混合し、フローサイトメトリーによって調査した。 図9A~9Cは、ウィスターラットに輸血されたPKH26染色ヒト血小板に対するアッセイで示された代表的なフローサイトメトリー画像である。図9Aでは、輸血前の血液試料(T=0)をフローサイトメトリーによって調査した。 図9Bでは、血小板輸血から0.5分後(T=0.5)に採取した血液試料をフローサイトメトリーによって調査した。 図9Cでは、血小板輸血から2分後に採取した血液をフローサイトメトリーによって調査した。 図10は、輸血されたPKH26染色血小板を蛍光顕微鏡によって可視化した組織を示す。PKH26染色血小板を輸血した(上の列)。ラットに見せかけの輸血を行った(下の列)。肝臓および脾臓の代表的な蛍光顕微鏡画像を示している。 図11は、PA-dPEG24(PIC1)の存在下または非存在下の、ウィスターラットに輸血されたPKH26染色ヒト血小板についてのフローサイトメトリーアッセイの結果を示す。染色ヒト血小板の輸血の30秒前に、PA-dPEG24(160mg/kg)を注入した。1×108個の染色ヒト血小板をラットに輸血した。輸血前(T=0)、血小板輸血から0.5分後(T=0.5)、または血小板輸血から2分後(T=2)に、血液試料を採取した。代表的なフローサイトメトリー画像を示している。 図12A~12Bは、PA-dPEG24による補体阻害がある場合のインビボ血小板生存アッセイの結果を示す。血小板輸血の30秒前に、160mg/kgのPA-dPEG24(PIC1)を注入した。図12Aでは、PKH26染色ヒト血小板(1×108個)を輸血し、ある期間にわたって血液を採取した。血液試料中の血小板総数に対する染色ヒト血小板の比率をフローサイトメトリーによって調査した。示されているデータは、各群4匹のラットの平均値±SEMである。図12Bでは、未染色ヒト血小板(1×108個)を輸血し、ある期間にわたって血液を採取した。血液試料中の血小板総数は、販売業者によって測定された。血小板総数の経時的変化を、血小板輸血から0.5分後の各ラットの絶対血小板数を基準として示している。示されているデータは、各群4匹のラットの平均値±SEMである。 図13は、濃度を段階的に上げたPIC1(PA-dPEG24)の存在下での、補体許容性緩衝液に加えた対象の血清における赤血球溶血の程度を示すグラフである。データは、n=3の独立した実験の平均値および平均値の標準誤差(SEM)を示す。
1つの局面において、a)古典的補体経路阻害物質を、それを必要とする対象に投与する段階;およびb)該対象に血小板を輸血する段階を含む、対象における輸血血小板に対する免疫応答を抑制するための方法が提供される。
別の局面において、a)古典的補体経路阻害物質で血小板を処理する段階;およびb)該処理された血小板を対象に輸血する段階を含む、同種免疫された対象における血小板不応状態を抑制するための方法が提供される。
別の局面において、血小板が対象に輸血される前に古典的補体経路阻害物質を該対象に投与する段階を含む、抗原不適合ドナーに由来する血小板を受け取る対象における血小板不応状態を予防する方法が提供される。
別の局面において、a)古典的補体経路阻害物質で血小板を処理する段階;およびb)該処理された血小板を対象に輸血する段階を含む、抗原不適合ドナーに由来する血小板を受け取る対象における血小板不応状態を予防する方法が提供される。
上記の局面の様々な態様において、方法は、対象における輸血血小板の生存率を高めるのに有効である。様々な態様において、方法は、対象における輸血血小板に対する補体媒介性攻撃を低減するのに有効である。様々な態様において、方法は、対象における輸血血小板の生存率を高めるのに有効である。
いくつかの態様において、対象はヒトである。
いくつかの態様において、補体媒介性阻害物質はPIC1ペプチドである。いくつかの態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 1~45のいずれか1つと少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 3、4、5、6、9、10、19、および29のいずれか1つと少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 3、4、5、6、9、10、19、および29のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 3のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 5のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 6のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 9のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 10のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 19のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 29のアミノ酸配列を含む。
別の局面において、血小板および古典的補体経路阻害物質を含む、レシピエントに輸血するための血液製剤が提供される。いくつかの態様において、補体媒介性阻害物質はPIC1ペプチドである。いくつかの態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 3、4、5、6、9、10、19、および29のいずれか1つと少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 3、4、5、6、9、10、19、および29のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 3のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 5のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 6のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 9のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 10のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 19のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 29のアミノ酸配列を含む。
別の局面において、対象の遅発性溶血性輸血反応(DHTR)を治療する方法が提供される。この方法は、治療的有効量の古典的補体経路阻害物質を対象に投与する段階を含む。
いくつかの態様において、古典的補体経路阻害物質は非経口的に投与される。いくつかの態様において、古典的補体経路阻害物質は静脈内に投与される。様々な態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、補体媒介性阻害物質はPIC1ペプチドである。いくつかの態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 3、4、5、6、9、10、19、および29のいずれか1つと少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 3、4、5、6、9、10、19、および29のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 3のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 5のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 6のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 9のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 10のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 19のアミノ酸配列を含む。特定の態様において、PIC1ペプチドは、SEQ ID NO: 29のアミノ酸配列を含む。
発明の詳細な説明
他に規定されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語はすべて、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様または等価な方法および材料を、本発明の実践または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を後述する。
用語「阻害」は、個々にもしくは複合体としてのいずれかの、酵素、タンパク質、ペプチド、因子、副産物、もしくはそれらの誘導体の生物学的機能の低下;インビボであるかインビトロであるかを問わず、生物学的タンパク質、ペプチド、もしくはそれらの誘導体の量の減少;または一連の関連した生物学的もしくは化学的反応を含むことが公知である生物学的な一続きの事象、カスケード、もしくは経路の妨害を意味する。したがって、用語「阻害」は、例えば、対照試料と比較しての、補体カスケードの1つの構成要素の量の減少;1つの構成要素もしくは構成要素の複合体の形成速度もしくは形成総量の低減;または細胞溶解、コンバターゼ酵素の形成、補体由来の膜侵襲複合体の形成、炎症、もしくは炎症性疾患などの結果をもたらす複雑なプロセスもしくは一連の生物学的反応の全体的活性の低減を説明するために使用され得る。インビトロアッセイにおいて、用語「阻害」は、何らかの生物学的または化学的事象の測定可能な低減を意味し得る。しかし、「阻害性」であるために、その測定可能な低減が全体である必要はないことが当業者には理解されよう
用語「PIC1」は、ポラーアソータント(PA)配列IALILEPICCQERAA(SEQ ID NO: 1)を含むペプチド、ならびに同じアミノ酸配列を含むがPEG化のような修飾を有するペプチドを意味する。用語「PIC1変異体」は、PA配列IALILEPICCQERAA(SEQ ID NO: 1)と少なくとも85%同一、または少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも99%同一であるが、100%同一ではない配列を含むペプチドを意味する。PIC1変異体には、PA配列のアミノ酸のうちの少なくとも1つが欠失しているペプチドが含まれ得る。PIC1変異体には、PA配列にアミノ酸が挿入されているペプチドが含まれ得る。PIC1変異体には、PA配列のアミノ酸のうちの少なくとも1つがアラニンなどの別のアミノ酸、修飾アミノ酸、またはサルコシン(Sar)などのアミノ酸誘導体で置換されているペプチドが含まれ得る。
明細書において使用される用語「対象」は、診断、予後判定、または治療法が望まれる任意の対象を意味する。例えば、対象は、哺乳動物、例えば、ヒトもしくは非ヒト霊長類(例えば、類人猿、サル、オランウータン、もしくはチンパンジー)、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、または雌ウシであることができる。
本明細書において使用される用語「治療的有効量」は、有意義な患者利益を示すのに十分である各活性成分の総量を意味する。ペプチド化合物の治療的有効量は、いくつかの因子、例えば、治療される病態、病態の重症度、投与時間、投与経路、使用される化合物の排出速度、治療期間、使用される併用療法、ならびに対象の年齢、性別、体重、および状態などに応じて変わる。当業者は、治療的有効量を決定することができる。したがって、当業者は、最大の治療的効果を得るために、投与量を設定し投与経路を変更する必要があり得る。
本明細書において使用される場合、「治療する」、「治療すること」、または「治療」とは、障害(例えば、本明細書において説明する障害)もしくはその症状を改善するためまたは障害(例えば、本明細書において説明する障害)もしくはその症状の進行を防ぐかもしくは遅らせるために有効である量、様式(例えば投与スケジュール)、および/または方式(例えば投与経路)で、治療薬を投与することを意味する。これは、例えば、障害またはその症状に関連するパラメーターが、例として統計学的に有意な程度または当業者に検出可能な程度まで改善することによって証明され得る。有効な量、様式、または方式は、対象に応じて変わることができ、対象に合わせられてよい。治療は、障害またはその症状の進行を防ぐかまたは遅らせることにより、罹患したまたは診断された対象における障害またはその症状に起因する悪化を防ぐかまたは遅らせることができる。
1つの局面において、治療的有効量のPIC1またはPIC1変異体を対象に投与する段階を含む、対象の炎症を抑制する方法が提供される。別の局面において、治療的有効量のPIC1またはPIC1変異体を対象に投与する段階を含む、対象の炎症性障害を治療する方法が提供される。関係する局面において、対象の炎症を治療および/または予防する方法において使用するためのPIC1またはPIC1変異体が提供される。方法は、治療的有効量のPIC1またはPIC1変異体を含む組成物を、それを必要とする対象に投与する段階を含む。
PIC1およびPIC1変異体の例には、表1に挙げるペプチドが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
(表1)
Figure 2022520430000001
Figure 2022520430000002
いくつかの態様において、PIC1は、1つまたは複数のPEG部分を含む。PEG部分は、PEG化によってN末端、C末端、またはN末端およびC末端の両方に結合されてよい。1つまたは複数の態様において、24個のPEG部分がN末端に結合される。1つまたは複数の態様において、24個のPEG部分がC末端に結合される。1つまたは複数の態様において、24個のPEG部分がN末端およびC末端に結合される。1つまたは複数の態様において、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、または24個のPEG部分が、N末端に結合される。1つまたは複数の態様において、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、または24個のPEG部分が、C末端に結合される。1つまたは複数の態様において、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、または24個のPEG部分が、N末端およびC末端の両方に結合される。
PIC1ペプチドは合成ペプチドであってよい。合成ペプチドは、インビトロで調製される。合成ペプチドは、当技術分野において公知の様々な方法に従って調製することができる。例えば、合成ペプチドは、個々のアミノ酸を順次結合してペプチドを形成させることによって調製することができる。いくつかの態様において、個々のアミノ酸のカルボキシル基は、伸長するペプチド鎖のアミノ末端に順次結合される。保護基を用いて、望まれない副反応が結合過程の進行中に起こるのを防ぐことができる。ペプチド合成は、液相または固相で行うことができる。
例示的なPIC1ペプチドには、PA-dPEG24(ポラーアソータント(PA)配列およびC末端の24個のPEG部分を含むペプチド)、PA-dPEG20(C末端の20個のPEG部分を含む)、PA-dPEG16(C末端の16個のPEG部分を含む)、PA-dPEG12(C末端の12個のPEG部分を含む)、PA-dPEG08(C末端の8個のPEG部分を含む)、PA-dPEG06(C末端の6個のPEG部分を含む)、PA-dPEG04(C末端の4個のPEG部分を含む)、PA-dPEG03(C末端の3個のPEG部分を含む)、およびPA-dPEG02(C末端の2個のPEG部分を含む)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
PIC1ペプチドは、カスケードの開始成分C1に結合し活性化を妨害することにより、補体の古典経路を阻害することができる。PA-dPEG24は、PIC1ファミリーに属する15アミノ酸のPEG化ペプチドである。pA-dPEG24は、SEQ ID NO: 19の配列を含む。PA-dPEG24は、免疫複合体によって開始された補体活性化を阻害し、かつNET形成を阻害することができる。PA-dPEG24は、様々な免疫複合体による補体活性化を一貫して阻害することができ、いくつかの刺激によって開始されるNET形成を阻害することもできる。
PEG化を必要とせずに水に溶解できるサルコシン置換変異体が、本明細書に記載されている。これらのサルコシン置換変異体には、SEQ ID NO: 3、4、5、6、9、10、および29のいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドが含まれる。本明細書において提供される例は、8位のイソロイシンをサルコシンで置換すると、補体阻害およびミエロペルオキシダーゼ阻害に関して親分子より優れた可溶性ペプチドが生じたことを示している。9位のシステインをサルコシンで置換すると、溶解性は向上したが、それ以外の点では親化合物と比べて機能的特徴が変わることはなかった。しかし、9位および10位の隣接するシステイン残基の両方を単一のサルコシン残基で置換すると、試験したアッセイのほとんどにおいて機能活性が低下した。
本明細書に記載されているサルコシンPIC1変異体のうちの数種では、溶解性が改善しており、かつ新しい洞察を与えるいくつかの予期しない構造-機能が見出された。いくつかのサルコシン置換変異体は、親ペプチドよりも高い効力を示し、このことは、補体、ミエロペルオキシダーゼ、NET、またはオキシダントストレスを含む炎症性疾患プロセスに対して高い潜在的治療能力を与え得る。
理論に拘束されることを望むものではないが、サルコシン残基は、溶解性プロファイルが好ましく、NH基に由来するプロトンがないために分子内または分子間の水素結合の数が減少しており、かつφ、ψねじれ角の変化によって隣接残基が変化して立体構造の制約が大きくなり得るために、医薬品化学において頻繁に使用される[16]。サルコシンによって2~5位および8位の比較的疎水性のアミノ酸アラニン、ロイシン、およびイソロイシンを置換すると、ペプチドの全体的疎水性を低めることによって溶解性を大きく改善することができる。予想外に、9位のシステインをサルコシンで置換すると、隣接するシステイン(C9,10)の両方を単一のサルコシンで置換した場合と同様に溶解性が改善したが、10位のシステインを置換しても溶解性が改善しなかったことが、本明細書において提供されるデータによって示されている。理論に拘束されることを望むものではないが、システイン残基は荷電しておらず、比較的極性である。9位、9位と10位の両方におけるサルコシン置換によって溶解性は向上するが10位のサルコシン置換によってはそうならないという観察結果から、ただ全体的疎水性を変えることよりはむしろ、ペプチドの立体構造を変更することが溶解性に影響を及ぼし得ることが示唆される。
また、a)古典的補体経路阻害物質を、それを必要とする対象に投与する段階;およびb)該対象に血小板を輸血する段階を含む、対象における輸血血小板に対する免疫応答を抑制するための方法も本明細書に記載されている。古典的補体経路阻害物質は、SEQ ID NO: 1~45のいずれかの配列を含むペプチド、例えば、SEQ ID NO: 3、4、5、6、9、10、19、および29のいずれかの配列を含むペプチドであることができる。補体経路阻害物質は、輸血前、輸血中(例えば、輸血血小板の一部として)、または輸血後に投与されてよい。補体経路阻害物質は、輸血の1時間前に、輸血の20~40分前に、輸血の10~20分前に、輸血の1~10分前に、輸血の約1分前に、輸血の1分前に、または輸血まで1分未満となってから、投与されてよい。補体経路阻害物質は、輸血の1時間後に、輸血の20~40分後に、輸血の10~20分後に、輸血の1~10分後に、輸血の約1分後に、輸血の1分後に、または輸血後1分未満のうちに、投与されてよい。
また、a)古典的補体経路阻害物質で血小板を処理する段階;およびb)該処理された血小板を対象に輸血する段階を含む、同種免疫された対象における血小板不応状態を抑制するための方法も本明細書に記載されている。古典的補体経路阻害物質は、SEQ ID NO: 1~45のいずれかの配列を含むペプチド、例えば、SEQ ID NO: 3、4、5、6、9、10、19、および29のいずれかの配列を含むペプチドであることができる。
また、血小板が対象に輸血される前に古典的補体経路阻害物質を該対象に投与する段階を含む、抗原不適合ドナーに由来する血小板を受け取る対象における血小板不応状態を予防する方法も本明細書に記載されている。古典的補体経路阻害物質は、SEQ ID NO: 1~45のいずれかの配列を含むペプチド、例えば、SEQ ID NO: 3、4、5、6、9、10、19、および29のいずれかの配列を含むペプチドであることができる。補体経路阻害物質は、輸血の1時間前に、輸血の20~40分前に、輸血の10~20分前に、輸血の1~10分前に、輸血の約1分前に、輸血の1分前に、または輸血まで1分未満となってから、投与されてよい。
また、a)古典的補体経路阻害物質で血小板を処理する段階;およびb)該処理された血小板を対象に輸血する段階を含む、抗原不適合ドナーに由来する血小板を受け取る対象における血小板不応状態を予防する方法も本明細書に記載されている。
本明細書に記載されている実験では、抗血小板抗体で感作されたヒト血小板が補体活性化を開始し、その結果、細胞生存能力が低下することをエクスビボの系を用いて実証している。感作された血小板によって開始される補体活性化の大部分が古典経路によって起こることが示されている。さらに、古典経路阻害物質は、ヒト血清補体媒介性の消滅から抗体感作血小板を保護することもできる。
ウィスターラット血清は、ヒトA型赤血球またはヒトAB型赤血球の補体媒介性溶解を開始する天然抗体を含んでいる[31]。理論に拘束されることを望むものではないが、ウィスターラット血清はヒト血小板の補体媒介性消滅も引き起こし得ることから、ヒト血小板がウィスターラット血清に不適合であることが実証されている。ウィスターラット血清によるヒト血小板の補体媒介性破壊は、主に古典経路を介して起こる。ウィスターラットに輸血されたヒト血小板を用いる新しい血小板不応状態動物モデルが、本明細書に記載されている。ウィスターラットに輸血されたPKH26染色ヒト血小板はフローサイトメトリーによって測定可能であったが、このような血小板は循環血中半減期が短く、免疫不適合性であることと一致する。古典的経路補体阻害物質であるPA-dPEG24は、循環血中の不適合血小板の数を一時的に増加させるのに有効であった。
1つの局面において、治療的有効量のPIC1またはPIC1変異体を対象に投与する段階を含む、対象のDHTRを治療する方法が提供される。この方法は、治療的有効量のPIC1またはPIC1変異体を含む組成物を、それを必要とする対象に投与する段階を含む。
補体阻害物質の使用によってDHTRを治療するか、改善するか、またはそうでなければ進行を遅くできることが、本明細書で初めて記載されている。理論に拘束されることを望むものではないが、DHTRにおける溶血は、食作用をもたらす抗体-Fc受容体相互作用を伴い得る[35]。PIC1ペプチドは、カスケードの開始成分C1に結合し活性化を妨害することにより、補体の古典経路を阻害することができる。1つの例示的なPIC1ペプチドは、15アミノ酸のPEG化ペプチドであるPA-dPEG24である。PA-dPEG24は、様々な免疫複合体による補体活性化を一貫して阻害することができる。PA-dPEG24はまた、いくつかの刺激によって開始されるNET形成を阻害することもできる。
関係する局面において、対象のDHTRを治療および/または予防する方法において使用するためのPIC1またはPIC1変異体が提供される。この方法は、治療的有効量のPIC1またはPIC1変異体を含む組成物を、それを必要とする対象に投与する段階を含む。
いくつかの態様において、PIC1は、対象に輸血が行われた後、かつDHTRの任意の症状が現れる前に、投与される。
理論に拘束されることを望むものではないが、補体系の抗体媒介性活性化は古典的補体経路によって指示される。この経路では、開始複合体C1にIgMまたは複数のIgGが結合すると、活性化および下流のエフェクター機能(すなわち、C3a、C5a、および膜侵襲複合体の形成)が誘発される。古典的補体経路に対するPIC1ペプチド阻害物質は、C1複合体のうちの認識分子であるC1qに結合して抗体媒介性活性化を防ぐことができる。PA-dPEG24(IALILEPICCQERAA-dPEG24(SEQ ID NO: 19))は、インビトロでもインビボでも古典経路活性化を阻害することが実証されており、ラットの血管内に投与された場合、30秒までに90%を超える補体活性化の全身的阻害を実現することができる。
いくつかの態様において、古典的補体経路阻害物質は、遅発性溶血性輸血反応に苦しむ患者における活発な溶血を治療するのに使用される。
本発明はまた、以下の実施例によっても説明され実証される。しかし、本明細書の任意の箇所でのこのおよび他の実施例の使用は例示にすぎず、本発明または任意の例示的な用語の範囲および意味を決して限定しない。同様に、本発明は、本明細書において説明するいかなる特定の好ましい態様にも限定されない。実際、本発明の多くの修正および変形例は、本明細書を読むと当業者には明らかになり得、そのような変形例は、精神においても範囲においても本発明から逸脱することなく行うことができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲と共に、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるものとする。
以下の材料および方法のセクションは、下記の実施例1~6に当てはまる。これらの実施例において、サルコシン置換変異体を合成し、水溶性を評価し、次いで、標準的な補体、ミエロペルオキシダーゼ、NET形成、および抗酸化能アッセイにおいて試験した。
実施例1~6のための材料および方法
Eastern Virginia Medical School IRB承認済みのプロトコール02-06-EX 0216のもと、文書による同意を得て健常ドナーの血液を採取した。血液を反応物、すなわち精製した血小板、赤血球、および好中球の調製のために使用した。
試薬
PA-dPEG24(IALILEPICCQERAA-dPEG24またはPIC1)は、HPLCおよび質量スペクトル解析によって確認される純度が95%以上になるようにPolyPeptide Group(San Diego, CA)によって製造された。凍結乾燥されたPA-dPEG24を0.05Mヒスチジン緩衝液中で可溶化し、pHを6.7に調整した。サルコシン置換誘導体ペプチドおよびベースとなるペプチドIALILEPICCQERAA(PA)は、純度が90%を上回るようにNew England Peptide(Gardner, MA)によって合成された。サルコシン変異体およびPEGを水に溶解し、NaOHを用いてpHを調整した。PAをDMSOに溶解し、次いで、水を加えて最終濃度が30%DMSOになるようにし、pHを調整した。抗体感作したヒツジ赤血球(EA)、精製したC1q、およびB因子を枯渇させたヒト血清は、Complement Technology(Tyler, TX)から購入した。精製ミエロペルオキシダーゼはLee BioSolutions(Maryland Heights, MO)から購入し、テトラメチルベンジジン(TMB)およびPicoGreenはThermo Fisher(Waltham MA)から購入した。
16種のサルコシン置換変異体を含む、表2に示すペプチドを合成した。
(表2)ペプチドの名称および配列
Figure 2022520430000003
緩衝液
ベロナール緩衝生理食塩水、0.1%ゼラチン、0.15mM CaCl2、および1mM MgCl2を含む補体許容性GVBS++緩衝液を調製した[12]。ベロナール緩衝生理食塩水ならびに0.1%ゼラチンおよび10mM EDTAを含む補体阻害性緩衝液GVBS--を調製した。
プール正常ヒト血清(NHS)
以前に説明されているようにしてプール正常ヒト血清(NHS)を調製した[12]。少なくとも4名の健常ヒトドナーの血液を、添加剤を入れていない)バキュテナーチューブ(赤トップ)中に集めた。血液を凝固させ血清を分離するために、血液を室温で30分間、氷上で2時間放置した。次いで、血清を集め、等分し、-80℃で凍結した。
補体活性についての溶血アッセイ
溶血補体アッセイのために、以前に説明されているようにして、AB型ドナーに由来するヒト赤血球(RBC)を精製し、洗浄し、1×109細胞/mlに標準化した[13]。最終濃度20%のO型ドナー由来のヒト血清を1mM PIC1またはサルコシン変異体ペプチドと混合し、体積が0.15mlになるまでGVBS++を加え、0.5ml RBCを加えた。B因子枯渇血清の溶血アッセイの場合、最終0.005%のB因子枯渇血清を、1mM PIC1またはサルコシン変異体ペプチドおよび0.1mlの抗体感作ヒツジ赤血球(EA)とともに最終体積0.75mlのGVBS++中でインキュベーションした。試料は、37℃で1時間インキュベーションした。次いで、1.0mlのGVBS--をB因子枯渇試料に添加して反応を停止させた。試料を3,000rpmで5分間、遠心した。次いで、上清を採取し、412nmで読み取った。解析を実施して、GVBS++緩衝液中のヒトO型血清およびAB型赤血球からなる陽性対照に対する比率(%)として値を表した。
MPO活性アッセイ
PIC1およびサルコシン変異体を25mg/mlに希釈し、次いで、96ウェルプレート中、0.02mlの体積で段階的に濃度設定した。ミエロペルオキシダーゼ(MPO)を20μg/mlに希釈し、0.02mlを該濃度設定したペプチドに添加した。TMB(3,3′,5,5′-テトラメチルベンジジン)(0.1ml)を各ウェルに2分間添加し、続いて0.1mlの2.5N H2SO4をさらに2分間添加し、次いで、96ウェルプレートリーダー(BioTek)を用いて450nmで読み取った。
C1qおよびMPOの結合アッセイ
重炭酸緩衝液に溶かした1μg/mlのC1qまたはMPOで、Immunlon-2HB ELISAプレートを4℃で一晩コーティングした。プレートをPBST(phosphate buffered saline + 0.1% Tween)で洗浄し、次いで、室温で2時間、1%ゼラチン/PBSによってブロックした。洗浄後、プレートを、2.5mg/mlから始め、次いで1%ゼラチン/PBS中で段階的に希釈したPAまたはサルコシン変異体ペプチドとともに、室温で1時間インキュベーションした。洗浄後、プレートを、1%ゼラチン/PBS中で1:1000希釈したウサギ抗PA(Cocalico Biologicals, Reamstown, PAと共に開発した)を用いて室温で1時間プローブし、続いて、1%ゼラチン/PBS中で1:1000希釈したヤギ抗ウサギHRP(Sigma Aldrich, St Louis, MO)を用いて室温で1時間プローブした。このとき、各プローブの間に洗浄段階を含めた。TMB基質溶液を用いてウェルを発色させ、1N H2SO4を用いて停止し、プレートリーダーにおいて450nmで読み取った。
MPOヘム環の酸化的分解
96ウェルプレートにおいて、0.025mlの1.7mg/ml MPOを、合計体積0.125mlのPBS中で、0.00125mlの0.5% H2O2および3mMのPIC1またはサルコシン変異体ペプチドと混合し、室温で2分間、放置してインキュベーションした。以前に報告されているように、96ウェルプレートリーダーを用いて各ウェルの300~550nmの吸光度をスキャンして、MPOヘム環の鉄の状態を反映する曲線を作成した[14]。
総抗酸化能アッセイ
TAC(Total Antioxidant Capacity)アッセイ(Cell Biolabs, Inc, San Diego, CA)を用いて、銅(II)から銅(I)への還元に基づいてサルコシン変異体の抗酸化能を測定した。このアッセイは、推奨されるキットプロトコールに従って実施した。
NETosisアッセイ
以前に説明されているようにして、免疫複合体を用いるNETosisアッセイを実施した[9]。簡単に説明すると、GVBS++に溶かしたオボアルブミン-抗オボアルブミン免疫複合体で、37℃で30分間、正常ヒト血清を刺激した。次いで、この混合物を0.05%H2O2と共に、サルコシン変異体(2mM)を含むまたは含まないRPMIに再懸濁した精製ヒト好中球に添加して、NETosisを生じさせた。PicoGreenを用いて、好中球から放出された遊離DNAの定量を行った。スライドをDAPI(Southern Biotech, Birmingham, AL)で染色した。以下の抗体を用いてNET形成を可視化した:
(i)一次抗体としてのマウス抗エラスターゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)およびヤギ抗マウス二次抗体Alexa Fluor 568(Novus Biologicals, Centennial, CO)ならびに
(ii)ウサギ抗ヒストンH3(Abcam, Cambridge MA)およびヤギ抗ウサギ抗体Alexa Fluor 488(Novus Biologicals)。
Olympus BX53顕微鏡を用いた蛍光顕微鏡検査法を実施してNETを可視化した。
統計学的解析
Excel(Microsoft, Redmond, WA)を用いて定量データを解析して、平均値、標準誤差(SEM)、およびスチューデントのt検定[15]を明らかにした。
実施例1:ペプチドの溶解性
ベースとなるペプチドIALILEPICCQERAA(PA)の溶解性および生物学的機能に対するサルコシン残基の影響を評価するために、15箇所すべてをサルコシン残基で置換したペプチド誘導体を合成した。また、9位および10位の隣接するシステイン(C9、C10)が単一のサルコシン残基で置換されたペプチドも含まれる。これらのペプチドを表2に示している。各ペプチドの水溶性についてのアッセイを実施し、結果を表3に示した。A2位、L3位、I4位、L5位、I8位、C9位、およびC9,10位のサルコシン置換により、水溶性のペプチドが生じた。PEG化の非存在下で溶解性が向上したことから、様々な生物活性をさらに評価するためにこれらのペプチドを選択した。
(表3)ペプチドの水溶性アッセイの結果
Figure 2022520430000004
実施例2:ペプチド変異体の補体阻害アッセイ
抗体によって開始される補体活性化をペプチド変異体が阻害する程度の評価を行った。次の2つの溶血アッセイにおいてペプチド変異体を試験した:(i)ABO不適合性エクスビボアッセイおよび(ii)B因子枯渇血清中での古典経路CH50式アッセイ。
ABO不適合性溶血アッセイでは、「AB+型」ドナーに由来する精製赤血球を、抗A抗体および抗B抗体を含む「O型」対象由来の血清と共にインキュベーションした;ペプチドは1.8mMで試験した。これらのデータを図1Aに示す。変異体A2、I4、I8、およびC9は、等モルの親化合物PA-dPEG24(PIC1)が阻害したよりも大幅に、ABO不適合性溶血をそれぞれ阻害した(P<0.015)。I8変異体は、PA-dPEG24よりも53%多く(P<0.002)、ABO溶血を低減した。しかし、C9,10変異体は、ABO溶血をほんのわずかしか阻害しなかった。
次いで、B因子枯渇血清を利用することにより古典経路を他の経路から切り離して、抗体感作ヒツジ赤血球を用いてCH50式溶血アッセイを実施した。ペプチドは0.4mMで試験した。これらのデータを図1Bに示す。このアッセイにおいて、I8変異体は、PA-dPEG24よりも75%多く(P<0.001)溶血を阻害する優れた活性を示した。他のペプチドは、PA-dPEG24と比べて同様の古典的補体経路阻害を示したが、例外としてC9,10はこの場合もやはり、ほんのわずかの活性しか示さなかった。
次いで、ペプチド変異体のC1q結合についてのELISA式アッセイを、C1qを捕捉基質として用いて実施した。各ペプチドの結合曲線を図1Cに示す。図1Dに示すように、これらの結合曲線から、最大半量結合濃度を算出した。これらの結合曲線および最大半量結合濃度から、I8およびPA(親ペプチド)の両方が、他のペプチドと比べて優れたC1q結合をもたらしたことが示される。しかし、PAは水溶性が乏しく、したがって、PAは最初にDMSO中で可溶化し、次いで水性緩衝液に加えて希釈する必要がある。高濃度のDMSOは検出試薬の邪魔をして、その結果、結合曲線が不完全になる。I8のC1q結合が優れていることは、補体媒介性溶血の阻害が優れていることと相互に関係している。総じて、抗体によって開始される補体活性化および溶血に対して、I8変異体は、PAおよび他のペプチド変異体よりも優れた阻害を示す。
実施例3:ミエロペルオキシダーゼの阻害および結合
次いで、PA-dPEG24について以前に説明されているようにして、TMBベースのインビトロアッセイにおいてミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性の阻害を試験した[7]。このアッセイでは、ある範囲の濃度にわたって変異体をMPO阻害について試験した。このデータを図2Aに示す。システイン無しの変異体(C9,10)を除いて、すべての変異体において強いMPO阻害が見出された。図2Bに示すデータを用いて、各変異体の用量反応曲線から最大半減阻害値を算出した。MPO阻害には測定できるほどの相違があり、この場合もやはり、変異体I8が、様々な変異体のなかでも最大の効力を示した。
プレートを用いるアッセイを実施して、固相化されたMPOへのペプチド変異体の結合を試験した。これらの結合曲線を図2Cに示す。C9,10を除くすべての変異体について、MPO結合が確認された。I8曲線とPA曲線がほぼ完全に重なるため、PA曲線はグラフに示していない。これらの曲線から、最大半量結合濃度を算出し、図2Dに結果を示した。I8は、他のサルコシン変異体と比べて優れたMPO結合を示した。この結果は、上記の用量-反応データによって確認される強まったMPO阻害と合致している。
実施例4:MPOヘム環の分解からの保護
次いで、変異体がMPO分子中のヘム環の分解を防止する能力を評価した。PA-dPEG24について以前に示されているように、MPOは塩素イオンおよび過酸化水素の存在下で次亜塩素酸を生成するため、次亜塩素酸がヘム環を分解すると考えられる[8]。ヘム環の分解は、波長300~550nmの吸光度を分光計で測定することにより評価することができる。このスペクトル範囲ですべての変異体について吸光度測定を行い、各変異体のデータを図3A~3Hに示した。どのペプチドもヘム環分解をいくらか阻害し、図3Fおよび図3Gに示すように、I8変異体およびC9変異体の場合にヘム環の吸収スペクトルがほぼ完全に維持されていた。これら2種の変異体の場合のヘム環維持は、PA-dPEG24ペプチドの場合のヘム環維持を上回っていた(図3A)。C9,10変異体もまたヘム環分解の抑制を示したことから(図3H)、MPOペルオキシダーゼ活性の阻害以外の保護メカニズムがあることが示唆された。(図2Aに示されるように)C9,10変異体はMPOペルオキシダーゼ活性を阻害する性質を持たない。
実施例5:抗酸化能アッセイ
PA-dPEG24について以前に説明されているようにして、総抗酸化能(TAC)アッセイにおいて各変異体の抗酸化能を試験した[10]。抗酸化活性を、銅還元当量(CRE)として測定した。0.03~0.25mMの濃度範囲でペプチドを試験し、次いで標準物質と比較した。これらの結果を図4に示す。変異体は異なる総抗酸化能を示し、L3、I4、およびI8は、PA-dPEG24(PIC1)の抗酸化能に迫る抗酸化能を示した。システイン無しの変異体C9,10は、抗酸化能を示さなかった。
実施例6:NETosisの阻害
ペプチド変異体をNETosis阻害について試験した。このアッセイでは、精製したヒト好中球を、オボアルブミン-抗オボアルブミン免疫複合体および過酸化水素を用いて活性化した正常ヒト血清によって刺激した。次いで、それらの好中球から出された遊離DNAをPicoGreenアッセイにおいて測定した。これらの結果を図5Aに示す。図5Aのグラフに示すように、このアッセイにおいて、A2、L3、L5、I8、およびC9を含む多数の変異体が、PA-dPEG24と比べて同様のNETosis阻害能力を示した。I4は、PA-dPEG24と比べて低いNETosis阻害能力を示し、C9,10は、陰性対照(緩衝液)と比べてごくわずかな阻害を示した。これらの結果は、サルコシン変異体ペプチドの多くが、刺激されていない好中球に由来する遊離DNAのベースライン値までNETosisを阻害できることを示す。蛍光顕微鏡検査法による好中球細胞外トラップ(NET)形成の直接的可視化を利用して、I8変異体による上記のNETosis結果を確認した。以前に説明されているようにして、ヒト好中球を精製し、スライドガラス上で刺激し、次いでDAPIで染色してDNAを可視化し、抗好中球エラスターゼ(αNE)および抗ヒストンH3(αヒストン)でプローブした[9]。刺激されていない好中球は、NETの証拠を示さなかった(図5B、1行目)。オボアルブミン-抗オボアルブミン免疫複合体および過酸化水素で刺激した好中球は、多くのNETを示し(図5B、2行目)、PA-dPEG24の存在下で免疫複合体によって刺激した好中球は、NETの著しい減少を示した(図5B、3行目)。蛍光顕微鏡検査法によるNET可視化によって、遊離DNAの定量的測定において認めれた知見が裏付けられた。
試験したペプチドの特性を表4に要約する。
(表4)ペプチド特性の一覧
Figure 2022520430000005
*以前に発表されている
ND=未実施
思いがけない知見は、試験した抗炎症性アッセイのほとんどにおいて、I8変異体が親化合物PA-dPEG24よりも優れているということである。理論に拘束されることを望むものではないが、I8のC1q結合は、PA-dPEG24のC1q結合より若干優れており、C1活性化の阻害強化を推進している可能性がある。
C9変異体が、2つのシステインアミノ酸のうちの1つが失われているにもかかわらず、補体阻害の点で親化合物PA-dPEG24とほぼ等しく機能したこともまた、思いがけないことである。総抗酸化能アッセイでは、C9はPA-dPEG24の約半分の抗酸化能を有し、半分の数のシステインを有することとつじつまが合っていた。補体阻害アッセイでは、システインが存在しない場合(変異体C9,10)、すべてではないがほとんどの補体阻害が失われていた。宿主の補体阻害物質は、典型的にはシステインに富む[17]。これらの知見を合わせると、システインは補体阻害に寄与するが、これらのペプチドによる補体阻害の全体を説明するものではないことが示唆される。
以下の材料および方法のセクションは、下記の実施例7~11に当てはまる。
実施例7~11のための材料および方法
倫理に関する記載
Eastern Virginia Medical School IRB承認済みのプロトコール02-06-EX 0216のもと、文書による同意を得て健常ドナーの血液を採取した。血液を反応物、すなわち精製した血小板よび正常ヒト血清の調製のために使用した。
試薬
PIC1(IALILEPICCQERAA-dPEG24)は、HPLCおよび質量スペクトル解析によって確認される純度が95%以上になるようにPolyPeptide Group(San Diego, CA)によって製造された。凍結乾燥されたPIC1を0.05Mヒスチジン緩衝液、pH6.7に可溶化した。血小板感作抗体は、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)患者の血清の形態で、Tissue for Research LTD(Suffolk, United Kingdom)から入手した。PrestoBlue(登録商標)細胞生死判定試薬は、Life Technologies (Eugene, Oregon)によって製造された。PKH26赤色蛍光細胞染料は、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)によって製造された。
緩衝液
ベロナール緩衝生理食塩水、0.1%ゼラチン、0.15mM CaCl2、および1mM MgCl2を含む補体許容性GVBS++緩衝液を調製した[12]。ベロナール緩衝生理食塩水ならびに0.1%ゼラチンおよび10mM EDTAを含む補体阻害性緩衝液GVBS--を調製した。
プール正常ヒト血清(NHS)
以前に説明されているようにしてプール正常ヒト血清(NHS)を調製した[12]。
ラット血清
ラット血清は、Innovative Research(Peary Court, Novi, MI)から購入した。
ヒト血小板精製
ヒトドナー間での再現性を保証するために、多数の健常ヒトドナーから血小板を精製した。健常志願者の末梢血(8mL)を、酸性クエン酸デキストロース(ACD)を含むバキュテナー(BD, Franklin Lakes, NJ)無菌採取チューブ中に直接抜き取り、採取から3時間以内に使用した。さらに250ulのACDを添加した後、22℃にて、500×g、100×g、および800×gの順で各5分間、血液を遠心分離し、各遠心後に上清を採取し、新しいチューブに移した。次いで、精製した血小板をGVBS--、次に生理食塩水で洗浄し、その後、最後にGBVS++に再懸濁した。
血小板染色
インビトロ実験の場合、製造業者の推奨に従って、血小板をPrestoBlue細胞生死判定試薬で染色した。インビボ実験の場合、製造業者の推奨に従って、血小板をPKH26赤色蛍光細胞染料で染色した。
補体および血小板のインビトロ研究
ヒト抗血小板抗体で血小板を感作する実験の場合、精製した血小板を30℃で15分間、4%ITP血清で処理した後、補体が十分な2%正常ヒト血清を添加し、37℃で30分間、インキュベーションした。PIC1を含む試料については、感作した血小板と混合する前に、血清およびPIC1を5分間プレインキュベーションした。次いで、試料を遠心し、ELISAによるC5a解析のために上清を取り出した。C5a ELISAキット(R&D Systems)を製造業者の取扱い説明書に従って使用した。細胞をGVBS--で1回、水で1回洗浄して血小板を溶解した。残存する細胞ペレットを37℃で1時間、25mMメチルアミンで処理し、遠心し、ELISAによって上清をiC3bについて分析した。以前に説明されているように、捕捉用のヤギ抗ヒトC3抗体(Complement Technology, Tyler, TX)、プローブ用のマウス抗ヒトiC3b抗体(Quidel, San Diego, CA)、および検出用のヤギ抗マウスHRP(Sigma-Aldrich, St Louis, MO)を用いて、iC3bについてのELISAを実施した[30]。
ラット血清を用いる実験では、37℃の湯浴で、異なる時点に(5分、20分、および60分)、精製した血小板を5%ウィスターラット血清と共にインキュベーションした。その後、この混合物にGVBS--を添加し、500g、22℃で5分間、これを遠心した。250ulのPBSで再懸濁した後、PrestoBlueを希釈率1:10で細胞に添加し、37℃の湯浴で30分間、インキュベーションした。次いで細胞をプレートに播種し、マイクロプレートリーダーを用いて530nmで読み取った。血清へのPIC1添加の際、血小板の添加の前に5分のプレインキュベーション時間を設けた。
動物実験
体重250gの約16週齢の雄ウィスターラットを購入し(Hilltop Scottdale, PA)、頚静脈内カテーテルを所定の位置に留置した。実験過程の間ずっと、ケタミンおよびアセプロマジンを用いてラットを鎮静させ、バイタルサインをモニターした。PKH26染色ヒト血小板の輸血の30秒前に、PIC1注入を実施した。輸血前、次いで、輸血後0.5分目、2分目、5分目、20分目、60分目、および120分目に、動物からK2EDTAマイクロティナチューブ(BD, Franklin Lakes, NJ, USA)中に血液試料を採取した。最後の採血を完了すると、Fatal Plus(Vortech Pharmaceuticals, Dearborn, MI, USA)を用いて動物を安楽死させた。安楽死後に剖検を完了して、組織病理検査のために器官を採取した。
フローサイトメトリー
DXP 8 Color 488/637/407アップグレード(Cytek Development, Freemont, CA, USA)と共にFACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ, USA)を用いて、フローサイトメトリーを実施した。Cytek FlowJo CEバージョン7.5.110.7を用いてデータを取得した。フローサイトメトリー機器による解析の前に、ラットの全血を500×gで5分間、遠心した。血漿血小板層を取り出し、次いでPBSで1:10に希釈した。血小板サイズに基づいて選択した約20,000個の事象をFlowJo機器によって測定した。FlowJo V10.4.2(FlowJo LLC, Ashland, OR, USA)を用いてデータを解析した。
染色血小板の器官組織学的検査
安楽死後に肝臓および脾臓を取り出し、ホルマリン中で固定し、組織学的検査スライド用に薄片に切った。蛍光顕微鏡を用いてスライドを可視化した。
統計学的解析
Excel(Microsoft, Redmond, WA)を用いて定量データを解析して、平均値、標準誤差(SEM)、およびスチューデントのt検定を明らかにした[15]。
実施例7:抗体感作したヒト血小板に対するヒト血清補体攻撃
抗体感作した血小板が補体をどの程度まで活性化できるかを明らかにするために、精製ヒト血小板およびプール正常ヒト血清(NHS)を用いたエクスビボ実験を以下のように実施した。理論に拘束されることを望むものではないが、臨床医学において、一般に血小板不応状態は抗血小板抗体の存在と関連付けられている。これらの実験では、血小板を感作するためにITP血清抗体を使用した。
ヒト血小板を、感作用抗体、NHS、または両方と共にインキュベーションした。濃度を段階的に上げたPA-dPEG24(PIC1)を、感作用抗体およびNHSの存在下で添加した。血小板に対する補体攻撃および細胞生存能力を調査した。C3は、補体活性化カスケードの中心的成分である。C3断片であるiC3bは、食作用に寄与するオプソニンである。ストリップした血小板膜結合型タンパク質に対するiC3b ELISAによって血小板表面におけるC3活性化を調査し、データを図6Aに示した。この実験は、(i)血小板のみ、(ii)感作用抗体を伴う血小板、(iii)NHSを伴う血小板、(iv)感作用抗体とNHSの両方を伴う血小板、ならびに(v)感作用抗体、NHS、および段階的に増量したPIC1を伴う血小板に対するiC3bアッセイを含んだ。これらの結果から、抗体によって開始される古典的補体経路を介した攻撃が示唆される。段階的に濃度を上げたPA-dPEG24は、血小板に対するiC3bオプソニン作用を用量依存的に減少させた。PA-dPEG24が0.8mMの場合、iC3bは、感作用抗体のみの場合に測定されたバックグラウンドレベルの場合と同様のレベルで血小板に結合した。
次いで、これらの実験から取り出された血漿をELISAによって炎症誘発性アナフィラトキシンC5aについて調査した。このデータを図6Bに示す。結合したiC3bと同様に、感作用抗体およびNHSの存在下でインキュベーションされた血小板の場合、いずれか単独の場合と比べてC5a生成が著しく増加していた。段階的に濃度を上げたPA-dPEG24は、C5a生成を用量依存的に阻害した。C5a生成の有意な阻害は、1.5mM(P=0.028)および3.0mM(44%減少、P=0.006)のときに起こった。
生体染色剤Presto Blueを用いて、血小板の細胞生存能力を測定した。このデータを図6Cに示す。感作用抗体およびNHSのみと共にインキュベーションした血小板と比べて、感作用抗体およびNHSの存在下で段階的に濃度を上げたPA-dPEG24を用いた場合、血小板の生存能力は用量依存的に上昇した。血小板の生存能力の有意な上昇は、PA-dPEG24濃度が1.5mM(P=0.031)および3.0mM(53%増加、P=0.003)のときに起こった。これらの結果から、抗血小板抗体は補体を活性化して、オプソニン作用、アナフィラトキシン生成、および細胞生存能力低下をもたらし得ることが示唆される。これらの作用は、古典的補体経路阻害物質の存在下では大幅に逆転させることができる。
実施例8:抗体感作ヒト血小板に対するラット血清補体攻撃
本発明者らのエクスビボでの知見を血小板不応状態の動物モデルに変換するために、ヒト血小板がラット血清中の補体を活性化する程度を調査した。以前に開発された急性溶血性輸血反応(AHTR)の同種異系赤血球輸血モデルをこのアッセイのために使用した[29]。このモデルでは、ウィスターラット血漿中にもとから存在する天然抗体をヒト赤血球に仕向けて、補体媒介性溶血、および輸血されたヒト赤血球の血管外除去をもたらした。また、このモデルでは、補体阻害により、循環血中の輸血赤血球の数が一定期間にわたって増加した[29、31]。ラット血清がヒト血小板生存能力を低下させ得る程度を評価するために、ウィスターラットまたはスプラーグドーリーラットに由来する段階的に濃度を上げたラット血清中で、ヒト血小板をインキュベーションした。このデータを図7Aに示す。生体染色剤Presto Blueを用いて、細胞生存能力を調査した。ラット血清濃度が上昇するにつれ、生存可能なヒト血小板の数が劇的に減少し、10%血清中での30分間のインキュベーション後、25%またはそれ未満の血小板のみが生存可能であった(P<0.02)。
次いで、ウィスターラット血清補体媒介性のヒト血小板消滅をタイムコース実験で試験した。これらのデータを図7Bに示す。熱不活化ラット血清を対照として使用して、血小板生存能力に対する補体媒介性効果を特定した。生存可能な血小板の数を、補体が十分な5%ラット血清中でPresto Blueを用いて調査した。生存可能な血小板の数は、最初の5分で50%近く減少し、以降の時点では一定のままであった。これらのデータから、補体媒介性の血小板生存能力低下は非常に速く起こり、補体媒介性細胞溶解を反映している可能性が高いことが示唆される。5分の時点で、熱不活化ラット血清と比べて、補体が十分なラット血清中のヒト血小板では、血小板生存能力が2分の1に低下していることが認められた(P=0.01)。これらのデータは、ラット血清の補体系はヒト血小板を急速に消滅させることができることを実証する。
ラット血清によるヒト血小板消滅が古典的補体経路によって媒介される程度を評価するために、本発明者らはPA-dPEG24を利用した。ヒト血小板およびラット血清を用いるインビトロ実験を、段階的に濃度を上げたPA-dPEG24と共に血清中でインキュベーションすることを含めて前述したようにして実施した。これらのデータを図7Cに示す。生体染色剤Presto Blueを用いて生存能力を調査した結果、PA-dPEG24の用量増加に伴う血小板生存能力の用量依存的向上が示された。PA-dPEG24は、試験したすべての用量において、対照の正常ラット血清中血小板と比べて、ラット血清中のヒト血小板の生存率を改善した(P<0.017)。これらのデータをまとめると、ラット血清中のヒト血小板に生存能力の低下が起こると考えられ、その多くは補体の不活性化または阻害によって元に戻せることが示唆される。
実施例9:PKH26染色血小板のフローサイトメトリーアッセイ
PKH26で血小板を染色するための以前に報告されている方法を最適化し、ラット血液試料中の輸血血小板を調査するために使用した[32]。PKH26は、ウィスターラットに輸血する前にヒト赤血球を染色するために使用されており、その後、循環中の赤血球の残留性をフローサイトメトリーによって測定する[31]。図8Aのデータに示すように、未染色の精製ヒト血小板は、530/30nmでのフローサイトメトリーによって、低いバックグラウンドシグナルを伴う典型的な分布を示した。図8Bにおいて、PKH26染色した精製ヒト血小板は、バックグラウンドより約104倍大きなピークシグナル強度を示した。染色血小板および未染色血小板を1:1の比率で混合した。図8Cに示すように、フローサイトメトリーのヒストグラムは、うまく分かれたピークおよび同様の曲線下面積を示した。これらの結果から、ヒト血小板のPKH26染色についての最適化した方法は、輸血後の信頼性が高いフローサイトメトリーデータをもたらすことが示される。
実施例10:PKH26染色血小板の試験的輸血
PKH26染色ヒト血小板が輸血後血液試料中で測定され得るかどうかを評価するためのパイロット研究を、頚静脈内カテーテルを留置した6匹のラットにおいて実施した。3匹のラットに1×108個のPKH26染色ヒト血小板を静脈内投与した。3匹のラットに見せかけの輸血を行った。血液試料は、輸血前(T=0)、ならびに輸血から0.5分、2分、5分、20分、60分、および120分後に得た。血液を小児用K2EDTAバイアル中に採取し、次いで生理食塩水で希釈し、フローサイトメトリーによって解析した。図9Aに示すように、T=0の試料では、最小限の染色血小板シグナルしか検出されなかった。図9Bに示すように、輸血後0.5分の時点で、PKH26染色血小板が、正確な蛍光強度で検出可能であった。輸血された3匹の各ラットにおいて、0.5分の時点で測定された染色血小板は、血液試料中の血小板総数の約5%に相当した。図9Cに示すように、輸血後2分の時点で、PKH26染色血小板に由来するシグナルは減少したが、それでもなおバックグラウンドを上回り測定可能であった。以降の時点では、血液試料中の染色血小板のフローサイトメトリー検出は減少し続けた。
このデータから、1×108個のPKH26染色ヒト血小板を静脈内輸血すると、フローサイトメトリーによって検出可能なシグナルを生成できることが示される。ラット血流中に残る輸血ヒト血小板の数は時間とともに急速に減少した。このことは、免疫学的不適合性と合致している。
次に、蛍光顕微鏡検査法によってラットの肝臓および脾臓中のPKH26輸血血小板を確認できるかどうかを評価した。安楽死後に肝臓および脾臓を取り出し、ホルマリンで固定し、標準的な方法によって薄片に切った。PKH26染色血小板は、(図10Aに示したように)肝臓中でも(図10Bに示したように)脾臓中でも容易に可視化され、脾臓では赤脾髄に分布していることが明らかであった。これらの結果から、このモデルにおける血小板の確固とした血管外除去が示唆される。
実施例11:補体阻害および不適合性血小板の輸血
古典的補体経路阻害物質PA-dPEG24を用いて、古典的補体経路の阻害が血流中の輸血された不適合性血小板の数に影響を与え得るかどうかを評価した。PA-dPEG24は、AHTRラットモデルの血流中の不適合性輸血赤血球の数を増やすことができる。図6Cに示したように、PA-dPEG24は、ラット血清中のヒト血小板の生存率を高めることができる。
(i)PA-dPEG24または(ii)溶媒対照の生理食塩水を注入後、前述のPKH26染色ヒト血小板を用いて輸血を実施した。図11は、PA-dPEG24(PIC1)または対照の生理食塩水で処置されたラットに対する輸血後0分、0.5分、および2分時点の血小板について選択された代表的なフローサイトメトリー測定結果を示す。未染色の天然ラット血小板が縦線の左側であり、染色された輸血血小板が右側である。輸血後0.5分の時点で、PA-dPEG24で処置された動物において、溶媒を与えられた動物と比べて染色輸血血小板数の増加が認められる。この差は、2分の時点では目立っていない。
図12Aの、これらの実験についてまとめたデータから、PA-dPEG24を与えられた動物では、0.5分の時点で輸血血小板が対照と比べて2倍に増加しており(P=0.05)、それ以降の時点の輸血血小板の量には有意な差はないことが示される。未染色血小板についても同様の傾向を明らかにできるかを見極めるために、(図12Bに示したように)PIC1または対照の生理食塩水で処理した未染色血小板を輸血されたラットの血小板総数を評価した。各血液試料の血小板数をAntech Diagnostics(Chesapeake, VA)によって測定した。輸血直後である30秒の時点での最大血小板数と比べて、各時点における血小板数の減少を計算した。PA-dPEG24処置動物と比べた生理食塩水処置動物において、血小板数の統計学的に有意な大きな減少が、2分(P=0.04)および20分(P=0.03)に認められた。これらの結果から、ウィスターラットに輸血されたヒト血小板が血小板不応性の表現型を生じ得ること、および古典的補体阻害によって輸血血小板生存率を一時的に高められることが示唆される。
実施例12:遅発性溶血性輸血反応の治療のためのPIC1
14歳の鎌状赤血球症患者に、血管閉塞性疾患および急性胸部症候群向けのpRBC(packed Red Blood Cell)輸血を施した。輸血後8日目に、四肢疼痛の悪化が該患者に起こり、続いて、新たな発熱、高血圧、および呼吸代償不全が起こった。該患者のヘモグロビンは一晩で7.6g/dLから5.0g/dLに減少し、これは遅発性溶血性輸血反応と合致していた。その後、該患者は、複数回のpRBC輸血を必要とし、かつメチルプレドニゾロン、IVIg(intravenous immunoglobulin)、エクリズマブ、リツキシマブ、およびトシリズマブを含む複数の免疫調節薬を投与されながら、8日間のICU滞在を生き延びた。該患者の疾患プロセスをもっと良く理解するために、患者の赤血球および血漿を、古典的補体経路阻害物質であるPIC1(PA-dPEG24)の存在下または非存在下で溶血アッセイにおいて解析した。
エクリズマブ処置前に、患者のルーチンな医学的管理上の採血から、匿名化された廃棄血液を得た。補体許容性緩衝液(GVBS++)または補体阻害性緩衝液(GVBS--)中で患者の血漿および赤血球を用いる溶血補体アッセイを、段階的に濃度を上げたPA-dPEG24の存在下で実施した。補体許容性GVBS++緩衝液は、0.1%ゼラチン、0.15mM CaCl2、および1mM MgCl2を含むベロナール緩衝生理食塩水である[11]。補体阻害性緩衝液GVBS--は、0.1%ゼラチンおよび10mM EDTAを含むベロナール緩衝生理食塩水である。約5×107個の洗浄済み赤血球を、37℃で1時間、反応体積0.15mlで、20%血漿と共にインキュベーションした。
1,500×gで5分間の遠心分離によって赤血球を沈降させ、次いで上清を回収した。上清の412nmにおける吸光度をBio Tek Synergy HTプレートリーダー分光光度計によって測定した。分光光度計を用いて412nmで遊離ヘモグロビンを定量することにより、溶血を測定した。
この患者の血漿は、補体許容性緩衝液中の赤血球の溶解を引き起こしたことから、補体媒介性溶血が実証された(図1)。PIC1の添加により、溶血の統計学的に有意な用量依存的減少が示された。高用量では、PIC1は溶血をバックグラウンドシグナルのレベルまで阻害した。
鎌状赤血球症およびDHTRに罹患したこの患者について、自身の血漿による自身の赤血球の補体媒介性溶血がエクスビボで実証された。補体媒介性溶血は、高用量の古典的補体経路阻害物質PIC1によって完全に阻止された。
上記のデータから、古典的補体経路阻害物質を用いて遅発性溶血性輸血反応に苦しむ患者における活発な溶血を治療できることが示される。さらに、このデータから、補体媒介性溶血がDHTRの病因において重要な役割を果たしていることが実証される。
参照文献
Figure 2022520430000006
Figure 2022520430000007
Figure 2022520430000008
Figure 2022520430000009
本明細書に引用される、刊行物、特許出願、および特許を含む参照文献はすべて、各参照文献が参照により組み入れられることが個別かつ具体的に示され、その全体が本明細書において記載された場合と同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。

Claims (45)

  1. 対象における輸血血小板に対する免疫応答を阻害するための方法であって、
    a)古典的補体経路阻害物質を、それを必要とする対象に投与する段階;および
    b)該対象に血小板を輸血する段階
    を含む、方法。
  2. 同種免疫された対象における血小板不応状態を抑制するための方法であって、
    a)古典的補体経路阻害物質で血小板を処理する段階;および
    b)該処理された血小板を該対象に輸血する段階
    を含む、方法。
  3. 抗原不適合ドナーに由来する血小板を受け取る対象における血小板不応状態を予防する方法であって、該血小板が該対象に輸血される前に古典的補体経路阻害物質を該対象に投与する段階を含む、方法。
  4. 抗原不適合ドナーに由来する血小板を受け取る対象における血小板不応状態を予防する方法であって、
    a)古典的補体経路阻害物質で血小板を処理する段階;および
    b)該処理された血小板を該対象に輸血する段階
    を含む、方法。
  5. 前記対象における輸血血小板の生存率を高めるのに有効である、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
  6. 前記対象における輸血血小板に対する補体媒介性攻撃を低減するのに有効である、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
  7. 前記対象における輸血血小板の生存率を高めるのに有効である、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
  8. 前記対象がヒトである、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
  9. 前記補体媒介性阻害物質がPIC1ペプチドである、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
  10. 前記PIC1ペプチドが、SEQ ID NO: 1~45のいずれか1つと少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む、請求項9記載の方法。
  11. 前記PIC1ペプチドが、SEQ ID NO: 3、4、5、6、9、10、19、および29のいずれか1つと少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む、請求項10記載の方法。
  12. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 3のアミノ酸配列を含む、請求項11記載の方法。
  13. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を含む、請求項11記載の方法。
  14. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 5のアミノ酸配列を含む、請求項11記載の方法。
  15. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 6のアミノ酸配列を含む、請求項11記載の方法。
  16. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 9のアミノ酸配列を含む、請求項11記載の方法。
  17. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 10のアミノ酸配列を含む、請求項11記載の方法。
  18. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 19のアミノ酸配列を含む、請求項11記載の方法。
  19. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 29のアミノ酸配列を含む、請求項11記載の方法。
  20. 血小板および古典的補体経路阻害物質を含む、レシピエントに輸血するための血液製剤。
  21. 前記補体媒介性阻害物質がPIC1ペプチドである、請求項20記載の血液製剤。
  22. 前記PIC1ペプチドが、SEQ ID NO: 3、4、5、6、9、10、19、および29のいずれか1つと少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む、請求項21記載の血液製剤。
  23. 前記PIC1ペプチドが、SEQ ID NO: 3、4、5、6、9、10、19、および29のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項22記載の血液製剤。
  24. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 3のアミノ酸配列を含む、請求項23記載の血液製剤。
  25. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を含む、請求項23記載の血液製剤。
  26. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 5のアミノ酸配列を含む、請求項23記載の血液製剤。
  27. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 6のアミノ酸配列を含む、請求項23記載の血液製剤。
  28. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 9のアミノ酸配列を含む、請求項23記載の血液製剤。
  29. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 10のアミノ酸配列を含む、請求項23記載の血液製剤。
  30. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 19のアミノ酸配列を含む、請求項23記載の血液製剤。
  31. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 29のアミノ酸配列を含む、請求項23記載の血液製剤。
  32. 対象の遅発性溶血性輸血反応(DHTR)を治療する方法であって、治療的有効量の古典的補体経路阻害物質を該対象に投与する段階を含む、方法。
  33. 前記古典的補体経路阻害物質が非経口的に投与される、請求項32記載の方法。
  34. 前記対象がヒトである、請求項32または請求項33記載の方法。
  35. 前記補体媒介性阻害物質がPIC1ペプチドである、請求項32~34のいずれか一項記載の方法。
  36. 前記PIC1ペプチドが、SEQ ID NO: 3、4、5、6、9、10、19、および29のいずれか1つと少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む、請求項35記載の方法。
  37. 前記PIC1ペプチドが、SEQ ID NO: 3、4、5、6、9、10、19、および29のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項36記載の方法。
  38. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 3のアミノ酸配列を含む、請求項37記載の方法。
  39. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を含む、請求項37記載の方法。
  40. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 5のアミノ酸配列を含む、請求項37記載の方法。
  41. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 6のアミノ酸配列を含む、請求項37記載の方法。
  42. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 9のアミノ酸配列を含む、請求項37記載の方法。
  43. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 10のアミノ酸配列を含む、請求項37記載の方法。
  44. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 19のアミノ酸配列を含む、請求項37記載の方法。
  45. 前記PIC1ペプチドがSEQ ID NO: 29のアミノ酸配列を含む、請求項37記載の方法。
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