JP2022504217A - 改変されたMHCクラスII DRα1ドメインを含む組換えポリペプチドおよび使用方法 - Google Patents

改変されたMHCクラスII DRα1ドメインを含む組換えポリペプチドおよび使用方法 Download PDF

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Abstract

Figure 2022504217000001
改変されたDRα1ドメインを含む組換えポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態において、それらのポリペプチドは、改変されたDRα1ドメイン、抗原ペプチドおよび必要に応じてリンカー配列を含む。それらの組換えポリペプチドを含む医薬組成物、前記組換えポリペプチドまたは医薬組成物を用いて炎症性疾患を処置する方法、およびそれらの組換えポリペプチドをコードする核酸を含む発現構築物も提供される。本発明は、例えば、配列番号1のアミノ酸位置14に対応する位置にグルタミン残基を含むDRα1ドメインを含む、組換えポリペプチドを提供する。

Description

関連出願への相互参照
本願は、2019年10月5日出願の米国仮出願第62/741,941号の利益を主張する。この仮出願は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
分野
本開示は、組換え治療タンパク質、特に、改変された部分的なMHC分子、および炎症性疾患の処置におけるそれらの使用に関する。
政府支援の承認
本発明は、National Institutes of Healthが授与した助成金番号R42AI122574ならびにDepartment of Veterans Affairsが授与した助成金番号5 I01 BX000226-10および1IK6BX004209の下で、政府支援を受けて行われた。米国政府は、本発明における一定の権利を有する。
背景
多発性硬化症(MS)は、最も蔓延している、中枢神経系の白質と灰白質の両方の慢性炎症性疾患であり、世界の200万人超および米国の少なくとも40万人が罹患している(GBD 2015 Neurological Disorders Collaborator Group,Lancet Neurol.16:877-897,2017)。MSにおける炎症過程は、自己免疫主導の脱髄によって媒介され、この脱髄は神経変性損傷を伴うことが多い。現在、MSの治療法はない。したがって、MS患者は、疾患徴候のいくつかを回復させるために疾患修飾治療に頼らなければならない(Wingerchukら、Mayo Clin.Proc.89:225-240,2014)。再発寛解型のMSについては、約15種の疾患修飾薬剤が利用可能である(Reichら、N.Engl.J.Med.378:169-180,2018)。しかしながら、引き続き、MSに対する改善された治療が必要とされている。
GBD 2015 Neurological Disorders Collaborator Group,Lancet Neurol.16:877-897,2017 Wingerchukら、Mayo Clin.Proc.89:225-240,2014 Reichら、N.Engl.J.Med.378:169-180,2018)
要旨
改変された主要組織適合(MHC)クラスII DRα1ポリペプチドが、本明細書中に開示される。これらの改変されたDRα1ポリペプチドは、CD74に対する変更された親和性、およびCD74への結合についてマクロファージ遊走阻止因子(MIF)と競合する能力を、分子構造に対して明らかな影響なく示す。
いくつかの実施形態において、配列番号1のアミノ酸位置14に対応する位置にグルタミン残基(いくつかの場合はL14Q変異、またはDRα1-MOG-35-55構築物の状況においてはL50Qと称される)を含むMHCクラスII DRα1ドメインを含む組換えポリペプチドが開示される。そのグルタミン残基は、この位置における天然のロイシン残基を置換している(図1)。いくつかの例において、DRα1ドメインは、ヒトDRα1ドメインである。この組換えDRα1ドメインの配列は、いくつかの例において、配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
他の実施形態において、配列番号1のアミノ酸位置14に対応する位置にグルタミン残基を含むDRα1ドメイン、抗原ペプチドおよび必要に応じてリンカー配列を含む組換えポリペプチドが開示される。1つの例において、そのリンカー配列は、第1のグリシン-セリンスペーサー、トロンビン切断部位および第2のグリシン-セリンスペーサーを含む。その抗原ペプチドは、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)ポリペプチド、例えば、ヒトMOG-35-55またはマウスMOG-35-55であり得る。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドの配列は、配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
本明細書中に開示される組換えポリペプチドをコードする核酸分子も提供される。例示的な核酸分子としては、配列番号4~6が挙げられる。いくつかの実施形態において、その核酸は、発現構築物および/またはベクターに含められる。その発現構築物またはベクターを含む細胞または細胞株も開示される。
いくつかの実施形態において、開示される組換えポリペプチドまたはそれらの組換えポリペプチドをコードする核酸は、例えば、薬学的に許容され得るキャリアとともに、医薬組成物に含められる。いくつかの例において、その組成物は、少なくとも5mg/kgの組換えポリペプチドを含む。
炎症性障害を処置する方法がさらに本明細書中に開示され、その方法は、開示される組換えポリペプチドまたは医薬組成物(例えば、配列番号1~3のいずれか1つのポリペプチドを含む組成物)を、炎症性障害に罹患している被験体に投与する工程を含む。いくつかの例において、被験体は、多発性硬化症(またはそのマウスモデルであるEAE)を有する。
本開示の前述の特徴および他の特徴は、添付の図面を参照して進められる以下の詳細な説明からさらに明らかになるだろう。
図1は、HLAクラスIIα1ドメイン(配列番号7~19)の18位の残基(Q18、矢印)を示しているアミノ酸配列アラインメントである。この残基は、ヒトおよびマウスのクラスIIα1ドメインのほとんど(非抗原提示DMおよびDO制御性分子のドメインを含む)の間で保存されている。しかしながら、DRα1は、この位置にロイシン(L)を有する。この残基は、このアラインメントにおける18位として示されている。しかしながら、結晶構造では、この残基は、14位に位置している。 図2Aおよび2Bは、CD74へのDRα1-hMOG-35-55、ヒトMHCクラスII DR由来RTL302(DRβ1501からのヒトβ1ドメインに続くヒトDRα1ドメイン;このRTLは、抗原ペプチドおよびスペーサーを含まない)、ヒトクラスII DR由来RTL312(ヒトMOG-35-55ペプチドに続く、グリシン-セリンスペーサー、トロンビン切断部位、グリシン-セリンスペーサー、DRβ1501からのDRβ1ドメインおよびDRα1ドメイン)、ヒトクラスII由来DP2構築物(RTL600;抗原ペプチド、グリシン-セリンスペーサー、トロンビン切断部位、グリシン-セリンスペーサー、DPβ1ドメインおよびDPα1ドメイン)およびDP4構築物(RTL600;抗原ペプチド、グリシン-セリンスペーサー、トロンビン切断部位、グリシン-セリンスペーサー、DP4β1ドメインおよびDPα1ドメイン)の結合を示している。さらに、コーティングされたrhCD74(C27S)へのマウスMHCクラスII由来RTL551(マウスMOG-35-55、グリシン-セリンスペーサー、トロンビン切断部位、グリシン-セリンスペーサー、IAbβ1ドメインおよびIAbα1ドメイン)の結合を試験した。等モル濃度(250nm)の各タンパク質リガンドを用いて結合実験を行った(図2A)。図2Bは、野生型バージョンと比較した、DRα1変異体の部分的なアミノ酸配列を示しているアラインメントである。DRα1-hMOG-35-55(ヒトMOG-35-55ペプチドを含むDRα1;配列番号20)およびDRhQ(グルタミン置換を含むDRα1-hMOG-35-55;配列番号21)に加えて、DRα1-mMOG-35-55(マウスMOG-35-55ペプチドを含むDRα1;配列番号22)およびDRmQ(グルタミン置換を含むDRα1-mMOG-35-55;配列番号23)を合成した。矢印は、突然変異誘発の位置を指し示している。DRα1-hMOGおよびDRα1-mMOGは、9位も異なる(Sの代わりにP)。 図3Aおよび3Bは、DRα1-hMOG-35-55とDRhQとDRα1-mMOG-35-55との間の免疫学的差異を評価するために、DRα1由来構築物であるDRα1-hMOG-35-55、DRα1-mMOG-35-55およびDRhQをFab G4でプロービングしたことを示しているグラフである(図3A)。円偏光二色性を用いて、二次構造含有量の差を評価した(図3B)。 図4A~4Cは、CD74に対するDRα1結合部位の位置を特定するようにデザインされたストラテジーを示している。図4Aは、CD74に結合する領域を絞り込むために用いられた重複ペプチド(完全長(配列番号24)およびP1~P7、それぞれ配列番号25~31)を示している概略図である。マウスCD74(図4B)またはマウスH2M(図4C)を、プロテインA/Gビーズに吸着された特異的なモノクローナル抗体を用いて免疫沈降し、次いで、重複ペプチドのプール(「すべて」)または個々のペプチドを加えた。免疫複合体をしっかり洗浄し、結合したペプチドを、1%SDSを含む電気泳動サンプル緩衝液で溶出した。溶出した材料を、Tris-トリシンにおけるSDS-ペプチドゲルによる電気泳動によって解析した。次いで、ゲルをBioRad Molecular Imager FXにおいてフルオロフォアについてスキャンした。 図5A~5Cは、CD74またはFab G5へのP2またはP7ペプチドの結合を示している一連のパネルである。ペプチドP2およびP7を、それぞれプロテインA/GビーズおよびプロテインLビーズに吸着された免疫沈降マウスCD74またはFab G4に結合する能力について個別に試験した(図5A)。P2だけが、CD74およびFab G4に結合することができた。P7は、いずれの標的にも結合することができなかった。DRα1-hMOG-35-55ポリペプチドにおけるP2ペプチドの位置が図5Bに示されている。競合実験は、DRα1-hMOG-35-55が、750nMという相対親和性(K)で、免疫沈降CD74へのFITC標識P2ペプチドの結合に打ち勝つことができたことを示した(図5C)。 図5A~5Cは、CD74またはFab G5へのP2またはP7ペプチドの結合を示している一連のパネルである。ペプチドP2およびP7を、それぞれプロテインA/GビーズおよびプロテインLビーズに吸着された免疫沈降マウスCD74またはFab G4に結合する能力について個別に試験した(図5A)。P2だけが、CD74およびFab G4に結合することができた。P7は、いずれの標的にも結合することができなかった。DRα1-hMOG-35-55ポリペプチドにおけるP2ペプチドの位置が図5Bに示されている。競合実験は、DRα1-hMOG-35-55が、750nMという相対親和性(K)で、免疫沈降CD74へのFITC標識P2ペプチドの結合に打ち勝つことができたことを示した(図5C)。 図6Aおよび6Bは、rhCD74への構築物の結合を示しているグラフである。構築物DRα1-hMOG-35-55およびDRhQを、結合中にG4Fabありまたはなしの直接結合アッセイによってELISAプレート上のrhCD74への直接結合について評価した(図6A)。Kを計算したポリペプチドは、DRα1-hMOG-35-55に対しては0.65μM、DRhQに対しては0.089μMであった。競合実験において、DRhQは、DRα1-hMOG-35-55と比べて、CD74への結合についてrhMIFと対抗する高い活性を示した(図6B)。 図7Aおよび7Bは、EAEマウスにおける構築物の効果を示しているグラフである。8~12週齢のC57BL/6WT雄マウスを、材料および方法に記載されているように免疫した。≧2.0のEAEスコアから開始して、DRhQもしくはDRα1-hMOG-35-55タンパク質(図7A)またはDRα1-mMOG-35-55もしくはDRmQ(図7B)(0.1ml中に100μg)を5日間にわたって毎日、s.c.注射し、それらのマウスをEAEの臨床的徴候についてスコア付けした(上のパネル)。マウス群に対する平均EAEスコアおよびSDを免疫後の8日目から27日目までの各日について計算し、実験全体にわたるEAEスコア曲線を数値的に積分することによって、各マウスに対して合計した(CDI、総疾患負荷(total disease load)を表す;下のパネル)。 図7Aおよび7Bは、EAEマウスにおける構築物の効果を示しているグラフである。8~12週齢のC57BL/6WT雄マウスを、材料および方法に記載されているように免疫した。≧2.0のEAEスコアから開始して、DRhQもしくはDRα1-hMOG-35-55タンパク質(図7A)またはDRα1-mMOG-35-55もしくはDRmQ(図7B)(0.1ml中に100μg)を5日間にわたって毎日、s.c.注射し、それらのマウスをEAEの臨床的徴候についてスコア付けした(上のパネル)。マウス群に対する平均EAEスコアおよびSDを免疫後の8日目から27日目までの各日について計算し、実験全体にわたるEAEスコア曲線を数値的に積分することによって、各マウスに対して合計した(CDI、総疾患負荷(total disease load)を表す;下のパネル)。 図8は、ERK1/2リン酸化アッセイを示しているパネルである。EAEマウスからの200万個の脾細胞を、ビヒクル、DRhQまたはDRα1-hMOG-35-55で30分間処置し、次いで、細胞をプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤の存在下において溶解した。上清を電気泳動およびウエスタンブロットによって解析して、P-ERK1/2および全ERK1/2(T-ERK1/2)を評価した。DRα1-hMOG(図示せず)およびDRhQは、インビトロにおいてERK1/2リン酸化をダウンレギュレートすることができた。 図9Aは、模式図で描写されたDRhQの構造モデルであり、DRα1-hMOG-35-55構築物における関連性のあるアミノ酸残基であってドッキングモデルによってCD74と接触すると示されたアミノ酸残基の位置を示している。14位におけるQ残基の側鎖が強調されている。抗原性MOGペプチドが薄灰色で示されており、MOGペプチドにおけるW3に対する側鎖が示されている。図9Bは、図1に記載された分子(Protein Data Bankからの分子)からのいくつかのα1ドメインを示しており、それらのβ1ストランド-ループ-βストランド領域を、PyMOL(Schrodinger,Portland OR)を用いてアラインメントした。14位がスティックとして強調されている。なお、図1におけるアミノ酸残基のナンバリングは、結晶構造におけるナンバリングと異なる:図1におけるQ18は、結晶構造のほとんどにおいてアミノ酸残基14に対応し、そのドメインのβストランド1の末端に位置する。
配列表
本明細書中または添付の配列表に列挙されるいずれの核酸配列およびアミノ酸配列も、37C.F.R.§1.822に定義されているように、ヌクレオチド塩基およびアミノ酸に対する標準的な一文字省略形を用いて示される。少なくともいくつかの場合では、各核酸配列の一方の鎖しか示されないが、相補鎖は、示された鎖の任意の参照によって含められると理解される。
配列番号1は、L14Q置換(下線部)を有する例示的なヒトDRα1ポリペプチドのアミノ酸配列である:
Figure 2022504217000002
配列番号2は、例示的なDRhQポリペプチドのアミノ酸配列である。DRhQは、抗原ペプチドであるヒトMOG-35-55(下線部)、スペーサー(太字部)、その2つのスペーサー間のトロンビン切断部位(大文字の斜体部)、および改変されたDRα1ドメイン(黒色の大文字)を含む。DRα1部分におけるL14Q(L50Q)変異には、下線が引かれている:
Figure 2022504217000003
配列番号3は、例示的なDRmQポリペプチドのアミノ酸配列である。DRmQは、抗原ペプチドであるマウスMOG-35-55(下線部)、スペーサー(太字部)、その2つのスペーサー間のトロンビン切断部位(大文字の斜体部)、および改変されたDRα1ドメイン(黒色の大文字)を含む。DRα1部分におけるL14Q(L50Q)変異には、下線が引かれている:
Figure 2022504217000004
配列番号4は、ヒトL14Q DRα1をコードする例示的な核酸である。その変異をコードするコドンには、下線が引かれている:
Figure 2022504217000005
配列番号5は、DRhQをコードする例示的な核酸である。DRα1部分におけるL14Q(L50Q)変異をコードするコドンには、下線が引かれている:
Figure 2022504217000006
配列番号6は、DRmQをコードする例示的な核酸である。DRα1部分におけるL14Q(L50Q)変異をコードするコドンには、下線が引かれている:
Figure 2022504217000007
配列番号7~19は、ヒトおよびマウスのクラスIIα1ドメインである。
配列番号20~23は、ヒトおよびマウスのDRα1-MOG-35-55構築物である。
配列番号24~31は、DRα1の完全長ペプチドおよびP1~P7ペプチドである。
配列番号32~64は、例示的な抗原ペプチドである。
詳細な説明
MSの動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)とMS被験体の両方において、複数の一連のエビデンスが、その自己免疫疾患のプロセスにおける自己反応性のミエリン特異的CD4T細胞の役割を裏付けている(Steinman,Cell 85:299-302,1996;Zamvilら、Annu.Rev.Immunol.8:579-621,1990;Chitnis,Int.Rev.Neurobiol.79:43-72,2007)。MSの初期の炎症段階を慢性的な進行性段階に押し進めると考えられている重要なサイトカインは、最初に報告されたサイトカインであるマクロファージ遊走阻止因子(MIF)およびその祖先型機能ホモログであるD-ドーパクロムトートメラーゼ(D-DT)である(Chitnis,Int.Rev.Neurobiol.79:43-72,2007)。MIFおよびD-DTのレベルは、MSでは上昇し、MSの臨床上の悪化のマーカーとして、およびEAEでは疾患進行の必要条件として、意味づけられている(Benedekら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 114:E8421-E8429,2017;Niinoら、J.Neurol.Sci.179(S1-2):127-131,2000;Powellら、J.Immunol.175:5611-5614,2005;Meza-Romeroら、J.Immunol.192:4164-4173,2014)。
MIF/D-DTレセプターであるCD74に強く結合し、MIF/D-DT結合を競合的に阻害し、かつリン酸化された細胞外シグナル関連キナーゼ(p)ERK1/2を介した下流のシグナル伝達を競合的に阻害する、RTL1000と呼ばれる強力な生物学的治療薬および第二世代誘導体であるDRα1-ヒト(h)MOG-35-55が、すでに開発されている(Vandenbarkら、J.Immunol.171:127-133,2003;Benedekら、J.Neuroinflammation 12:123,2015)。RTL1000およびDRα1-hMOG-3-55は、EAEを有するマウスを臨床的徴候の発生後に処置することができ、T細胞およびマクロファージの活性化および中枢神経系への遊走を阻害し、疾患重症度を低下させる(Vandenbarkら、J.Immunol.171:127-133,2003;Benedekら、Eur.J.Immunol.43:1309-1321,2013;Meza-Romeroら、J.Immunol.192:4164-4173,2014)。RTLによる処置は、抗炎症性マクロファージ/小膠細胞の数を増大させ、再ミエリン化を促進し、急性および慢性EAEの重症度を低下させることも見出された(Meza-Romeroら、J.Immunol.192:4164-4173,2014)。
本開示において、本発明者らは、CD74に対するDRα1-hMOG-35-55構築物の親和性を変化させる(結合能を8~10倍増加させる)、その構築物の50位におけるロイシンからグルタミンへのアミノ酸置換(L50Q)(DRhQと呼ばれる)を特定した。この置換は、円偏光二色性および抗体プロービングによって評価したとき、その分子の構造に影響せず、増大した結合親和性は、DRhQが同族のCD74レセプターへのMIF結合を競合的に阻害する相応の能力に変換された。DRhQでWT C57BL/6マウスを処置すると、脾細胞におけるpERK1/2リン酸化がインビトロにおいてバックグラウンドレベルにまで低下した。最後に、L50Q置換によって、その構築物が重篤なEAEの継続中の臨床的徴候を処置する能力が有意に高まった。
I.用語
別段述べられない限り、専門用語は、従来の使用法に従って使用される。分子生物学における一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin,Genes V,Oxford University Pressから出版,1994(ISBN 0-19-854287-9);Kendrewら(編),The Encyclopedia of Molecular Biology,Blackwell Science Ltd.から出版,1994(ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A.Meyers(編),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,VCH Publishers,Inc.から出版,1995(ISBN 1-56081-569-8)に見られ得る。
別段説明されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。単数形の用語「a」、「an」および「the」は、文脈が他のことを明確に示さない限り、複数の指示対象を含む。同様に、語「または」は、文脈が他のことを明確に示さない限り、「および」を含むことを意図している。ゆえに、「AまたはBを含む」は、A、またはB、またはAおよびBを含むことを意味する。核酸またはポリペプチドに対して与えられるすべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズおよびすべての分子量または分子質量の値は、近似値であり、説明のために提供されることがさらに理解される。本明細書中に記載される方法および材料と類似のまたは等価な方法および材料を本開示の実施または試験において用いることができるが、好適な方法および材料を下記に記載する。
本明細書中で述べられるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が参照により援用される。本明細書中で述べられるすべてのGenBankアクセッション番号は、2018年10月5日にGenBankに存在するものとしてその全体が参照により援用される。矛盾する場合は、用語の説明を含む本明細書が支配する。さらに、材料、方法および例は、単に例証的なものであって、限定することを意図したものではない。
本開示の様々な実施形態の精査を容易にするために、特定の用語の以下の説明が提供される。
抗原:動物に注射または吸収される組成物を含む、動物において抗体産生またはT細胞応答を刺激することができる化合物、組成物または物質。抗原は、異種免疫原によって誘導されるものを含む特定の体液性免疫または細胞性免疫の生成物と反応する。用語「抗原」には、すべての関連する抗原エピトープが含まれる。「エピトープ」または「抗原決定基」または「抗原ペプチド」は、B細胞および/またはT細胞が応答する、抗原上の部位のことを指す。1つの実施形態において、T細胞は、エピトープがMHC分子とともに提示されているとき、そのエピトープに応答する。エピトープは、連続したアミノ酸と、タンパク質の3次フォールディングによって並置される連続していないアミノ酸との両方から形成され得る。連続したアミノ酸から形成されるエピトープは、通常、変性溶媒に曝露されたときも保持されるのに対して、3次フォールディングによって形成されるエピトープは、通常、変性溶媒で処理されると失われる。エピトープは、通常、ユニークな空間的立体配座に少なくとも3アミノ酸、およびより通常は少なくとも8アミノ酸(例えば、約8~50または8~23アミノ酸)を含む。エピトープの空間的立体配座を測定する方法としては、例えば、X線結晶構造解析および2次元核磁気共鳴法が挙げられる。
抗原は、組織特異的抗原または疾患特異的抗原であり得る。組織特異的抗原は、疾患特異的抗原でもあり得るので、これらの用語は、排他的ではない。組織特異的抗原は、限られた数の組織、例えば、単一の組織において発現される。組織特異的抗原は、1つより多い組織によって発現され得る(例えば、中枢神経系または末梢神経系において発現される抗原であるがこれに限定されない)。
CD74:CD74分子、主要組織適合遺伝子複合体、クラスIIインバリアント鎖またはIiとしても知られる。CD74は、抗原提示を制御するシャペロンである。CD74は、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)に対する細胞表面レセプターでもある。CD74の核酸配列およびタンパク質配列は、公的に入手可能である。例えば、GenBankアクセッション番号NM_001025158、NM_004355およびNM_001025159は、例示的なヒトCD74核酸配列を開示しており、GenBankアクセッション番号NP_001020329、NP_004346およびNP_001020330は、例示的なヒトCD74アミノ酸配列を開示している。同様に、GenBankアクセッション番号NM_001042605およびNM_010545は、例示的なマウスCD74核酸配列を開示しており、GenBankアクセッション番号NP_001036070およびNP_034675は、例示的なマウスCD74アミノ酸配列を開示している。これらの各配列は、2018年10月5日にGenBankに存在するものとして参照により本明細書中に援用される。
コントロール:「コントロール」とは、実験サンプルと比較するために用いられるサンプルまたは標準物質のことを指す。いくつかの実施形態において、コントロールは、健康な被験体または健康な被験体の集団から得られたサンプルである。他の実施形態において、コントロールは、ヒストリカルコントロールまたは標準的な参照値もしくは参照値の範囲(例えば、以前に試験されたコントロールサンプル、例えば、健康な被験体におけるCD74の発現または活性のレベルなどのベースラインまたは正常値を表すサンプル群)である。さらなる例において、コントロールは、処置前の被験体からのものである(例えば、MHCクラスIIβ1α1ポリペプチドまたはMHCクラスIIα1ドメインポリペプチドによる処置前のCD74の発現または活性のレベル)。
ドメイン:特定の機能と同一視できる、ポリペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列の不連続の部分。例えば、MHCクラスII分子を構成するαおよびβポリペプチドの各々は、それぞれ2つのドメインα1、α2およびβ1、β2を有すると認識されている。それらの様々なドメインは、通常、連結アミノ酸配列によってつなげられている。1つの実施形態において、ドメイン配列全体が、その配列を、リンカーまたは隣接ドメインの全部または一部を含むように伸長することによって、組換え分子に含められる。例えば、MHCクラスII分子のα1ドメインを選択するとき、選択された配列は、α鎖のアミノ酸残基番号1から、α1ドメインのカルボキシ末端におけるアミノ酸84までのα1ドメイン全体に及び得る。様々なMHC分子ドメインにおけるアミノ酸の正確な数は、哺乳動物の種に応じて、ならびに1つの種の中の遺伝子クラスの間で、変動する。組換え分子において使用するための配列の選択には、アミノ酸の数に基づいた正確な構造の定義ではなく、ドメイン機能の維持が必要とされる。当業者は、選択されたドメインのアミノ酸配列全体にいくらか満たない配列が使用されたとしても、ドメイン機能が維持され得ることを認識するだろう。例えば、α1ドメインのアミノ末端またはカルボキシ末端におけるいくつかのアミノ酸が、ドメイン機能に影響することなく取り除かれ得る。選択された特定のドメインの機能活性は、本開示によって提供されるMHCクラスIIポリペプチド(例えば、α1ポリペプチド)の状況において、例えば、T細胞増殖アッセイおよび/またはCD74結合アッセイにおいて、評価され得る。
有効量:進行を阻害するまたは疾患もしくは症状を後退させるのに十分な、あるいはその疾患または症状によって引き起こされる症候を軽減することができる、特定の化合物の用量または量。例えば、これは、炎症性障害および/または自己免疫障害などの障害を処置または阻害するために必要な、開示されるMHC分子の量または用量であり得る。1つの実施形態において、有効量は、被験体において所望の応答(例えば、炎症性障害もしくは自己免疫障害または他の疾患もしくは障害を処置または阻害すること)を、単独でまたは1つもしくはそれを超えるさらなる治療剤と合わせて、誘導する量である。
炎症:炎症性の作用物質を隔絶するように働く組織に対する損傷によって誘発される局所的な防御応答。炎症は、病原体、損傷細胞または刺激物質などの有害な刺激に対する血管組織の複雑な生物学的応答によって取り仕切られている。炎症は、傷害性の刺激を除去するための、ならびに組織に対する治癒プロセスを惹起するための、生物による防御的な試みである。炎症反応は、全身的な、または炎症部位における局所的な、白血球の蓄積を特徴とする。炎症反応は、多くの方法、例えば、白血球の数、多形核好中球(PMN)の数、PMN活性化の程度の測度(例えば、ルミナール高感度化学発光)または存在するサイトカインの量の測度によって計測され得る。
一次性の炎症障害は、炎症自体によって引き起こされる障害である。二次性の炎症障害は、別の障害の結果である炎症である。炎症は、多くの炎症性疾患をもたらし得、それらの炎症性疾患としては、関節リウマチ、変形性関節症、炎症性肺疾患(慢性閉塞性肺疾患を含む)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む)、歯周病、リウマチ性多発筋痛症、アテローム性動脈硬化症、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、シェーグレン症候群、喘息、アレルギー性鼻炎および皮膚障害(皮膚筋炎および乾癬を含む)などが挙げられるがこれらに限定されない。炎症性の構成要素(多発性硬化症を含むがこれに限定されない)を含む自己免疫障害も、炎症性障害であると見なされる。
疾患を阻害または処置する:疾患を「阻害する」とは、例えば、炎症性障害または自己免疫障害などの疾患の素因を有すると判明している人において、疾患の完全な発症を阻害することを指す。疾患の阻害は、例えば、ある疾患もしくは障害を有するかまたはある疾患もしくは障害を発症するリスクがある被験体における、その疾患の部分的な阻害から実質的に完全な阻害の範囲に及び得る。いくつかの例において、用語「阻害する」とは、疾患の発生または進行を低減するまたは遅延させることを指す。疾患を「処置する」とは、疾患または病理学的症状の徴候または症候(例えば、炎症性障害または自己免疫障害の徴候または症候)を回復させる治療的介入のことを指す。その疾患または障害を阻害または処置するために有効量の薬学的化合物を投与される被験体は、そのような障害に対する標準的な診断法、例えば、症候、家族歴という根拠またはその疾患もしくは障害を発症する危険因子によって特定され得る。
リンカー:2つの分子(例えば、2つのポリペプチド)を共有結合で連結する分子。リンカー(例えば、ペプチドリンカーまたは化学リンカー)は、本開示の組換えMHCポリペプチドに、例えばα1ドメインと抗原ペプチドとの間に、含められ得る。ペプチドリンカー配列は、一般に2~25アミノ酸長(例えば、5~10、10~15、15~20または20~25アミノ酸)であり、それらとしては、Chaudharyら(Nature 339:394-397,1989)が報告したグリシン(4)-セリンスペーサーが挙げられるが、これに限定されない。同様に、化学リンカー(例えば、チオール結合または架橋剤)も使用できる。
MHCクラスII:MHCクラスII分子は、共有結合によらずに会合した2つのタンパク質であるα鎖およびβ鎖から形成される。α鎖は、α1およびα2ドメインを含み、β鎖は、β1およびβ2ドメインを含む。抗原が適合する間隙は、α1ドメインとβ1ドメインとの相互作用によって形成される。α2およびβ2ドメインは、α鎖およびβ鎖をAPCの細胞膜に繋ぎ留める膜貫通型Igフォールド様ドメインである。MHCクラスII複合体は、(適切な共刺激シグナルの存在下において)抗原と会合したとき、CD4 T細胞を刺激する。CD4 T細胞の基本的な機能は、炎症反応を惹起すること、免疫系の他の細胞を制御すること、および抗体合成のためにB細胞を助けることである。
薬学的に許容され得るキャリア:Remington:The Science and Practice of Pharmacy,The University of the Sciences in Philadelphia,Editor,Lippincott,Williams,& Wilkins,Philadelphia,PA,21st 30 Edition(2005)には、本明細書中に開示されるタンパク質の薬学的送達に適した組成物および製剤が記載されている。
組換え:組換え核酸または組換えポリペプチドは、天然に存在しない配列を有するか、または他の方法で分断された2つもしくはそれを超える配列セグメントの人工的な組み合わせによって作製された配列を有する、核酸またはポリペプチドである。この人工的な組み合わせは、化学合成によって、または単離された核酸セグメントの人工的操作、例えば、遺伝子操作手法によって、達成されることが多い。
配列同一性:2つの核酸配列間または2つのアミノ酸配列間の類似性は、それらの配列間の類似性に関して表現され、別の方法では配列同一性と称される。配列同一性は、パーセンテージ同一性(または類似性または相同性)に関して計測されることが多く、そのパーセンテージが高いほど、2つの配列は、より類似している。互いと同じまたは類似の、かなりの量の配列同一性および機能を有するポリペプチドまたはそのドメイン(例えば、異なる種において同じタンパク質)は、「ホモログ」と呼ぶことができる。
比較のために配列をアラインメントする方法は、当該分野で周知である。様々なプログラムおよびアラインメントアルゴリズムが、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981;Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970;Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444,1988;Higgins & Sharp,Gene,73:237-244,1988;Higgins & Sharp,Comput.Appl.Biosci.5:151-153,1989;Corpetら、Nucl.Acids Res.16,10881-90,1988;Huangら、Comput.Appl.Biosci.8,155-65,1992;およびPearson,Methods Mol.Biol.24:307-331,1994に記載されている。Altschulら(J.Mol.Biol.215:403-410,1990)には、配列のアラインメント方法および相同性の計算の詳細な考慮すべき事柄が示されている。NCBIベーシックローカルアラインメントサーチツール(BLAST)は、配列解析プログラムであるblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxと関連して使用するために、National Center for Biotechnology Information(NCBI,Bethesda,MD)をはじめとしたいくつかの提供元から、およびインターネットにおいて、利用可能である。
高度の配列同一性を示さない核酸配列であっても、遺伝暗号の縮重に起因して、類似のアミノ酸配列をコードすることがある。この縮重を用いて核酸配列を変化させることにより、すべてが実質的に同じタンパク質をコードする複数の核酸分子を作製することができると理解される。
被験体:ヒトと非ヒト哺乳動物の両方を含むカテゴリーである、生存している多細胞脊椎動物。
II.DRαドメイン
MHCクラスII DRα1ドメインまたはそのフラグメントを含むがMHCクラスIIα2、β1またはβ2ドメインを含まず、かつ配列番号1のアミノ酸14に対応するアミノ酸位置に存在するロイシン(L)からグルタミン(Q)への置換を含む、単離された組換えポリペプチドが本明細書中に開示される。哺乳動物のMHCクラスII DRα鎖タンパク質のアミノ酸配列、ならびにこれらのタンパク質をコードする核酸は、当該分野で周知であり、GenBankをはじめとした数多くの提供元から入手可能である。例示的な配列は、参照により本明細書中に援用されるDasら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:3543-3547,1983)に提供されている(ヒトHLA DRα)。例示的なヒトDRαポリペプチドは、GenBankアクセッション番号NP_061984(2018年10月5日にGenBankに存在したものとして参照により本明細書中に援用される)である。さらなるMHCクラスII DRαポリペプチドは、例えば、IMGT/HLAデータベース(ebi.ac.uk/imgt/hla/のワールドワイドウェブにおいて利用可能)などの公的データベースから、当業者によって特定され得る。
特定の実施形態において、MHCクラスIIα1ドメインは、ヒトHLA-DRAポリペプチドである。このα1ドメインは、哺乳動物のMHCクラスIIα鎖タンパク質において十分に定義されている。いくつかの例において、MHCクラスIIα鎖は、成熟αポリペプチドを生成するためにタンパク分解性に除去される、ポリペプチドの輸送に関わるリーダー配列を含む。
α1ドメインは、成熟α鎖のアミノ酸残基約1~90を含み得るが、当業者は、このドメインのC末端カットオフが、必ずしも正確に定義されないこと、および例えば、成熟α鎖のアミノ酸残基70~100の任意の点に存在し得ることを認識するだろう。いくつかの例において、α1ドメインは、成熟MHCクラスII DRαドメインのアミノ酸1~70、1~71、1~72、1~73、1~74、1~75、1~76、1~77、1~78、1~79、1~80、1~81、1~82、1~83、1~84、1~85、1~86、1~87、1~88、1~89、1~90、1~91、1~92、1~93、1~94、1~95、1~96、1~97、1~98、1~99または1~100を含む。他の例において、α1ドメインは、完全長DRα1ポリペプチドの残基約20~120(例えば、残基約20~110、24~110、24~109、25~100、25~109、26~110、26~109、30~120、32~120、32~115、26~90、26~85、26~84または他の重複領域)を含む。いくつかの例において、DRα1ドメインは、N末端メチオニンを含まないが、しかしながら、N末端メチオニンは、例えば、細菌系、酵母系または哺乳動物系における発現の結果として、存在し得る。
さらなる例において、DRα1ドメインは、5’および/または3’末端に数アミノ酸の欠失または付加(例えば、約1~25アミノ酸の付加または欠失、例えば、5’または3’末端からの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸の付加または欠失、またはそれらの組み合わせ(例えば、一方の末端からの欠失および他方の末端への付加))を含み得る。α1ドメインの組成は、これらのパラメータのほかに、哺乳動物の種および対象となっている特定のα鎖に応じても変動し得る。当業者は、アミノ酸配列の正確な数値パラメータが、ドメイン機能(例えば、CD74の結合またはダウンレギュレーション)の維持より重要ではないことを認識するだろう。
いくつかの実施形態において、配列番号1のアミノ酸位置14に対応する位置にグルタミン残基を含むDRα1ドメインを含む組換えポリペプチドが開示される。その組換えポリペプチドは、MHCクラスIIα2、β1またはβ2ドメインを含まない。いくつかの例において、組換えDRα1ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。さらなる実施形態において、組換えポリペプチドは、配列番号1またはそのフラグメントと少なくとも75%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一の配列を有する。例えば、DRα1ポリペプチドは、配列番号1またはそのフラグメントと少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有する配列番号1のホモログまたはオルソログであり得る。例示的な配列は、ワールドワイドウェブにおいて容易に利用可能なコンピュータプログラムおよび本明細書中に示されるアミノ酸配列を用いて得ることができる。いくつかの例において、そのホモログは、配列番号1のポリペプチドの機能(例えば、変更された二次構造、CD74への結合および/またはマウスにおけるEAEの阻害)を保持している。
他の実施形態において、配列番号1のアミノ酸位置14に対応する位置にグルタミン残基を含むDRα1ドメインまたはそのフラグメントおよび抗原ペプチドを含む組換えポリペプチドが開示される。その組換えポリペプチドは、MHCクラスIIα2、β1またはβ2ドメインを含まない。いくつかの例において、その組換えポリペプチドは、リンカー(例えば、DRα1ポリペプチドと抗原ペプチドとの間のリンカー)をさらに含む。そのリンカーは、ペプチドリンカーまたは化学リンカー(例えば、化学架橋剤)であり得る。
いくつかの実施形態において、抗原ペプチドは、ヒトまたはマウスのミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)35-55である。したがって、いくつかの実施形態において、上記組換えポリペプチドは、配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。さらなる実施形態において、上記組換えポリペプチドは、配列番号2もしくは配列番号3またはそのフラグメントと少なくとも75%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一の配列を有する。例えば、上記ポリペプチドのDRα1部分は、配列番号1またはそのフラグメントと少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有する配列番号1のホモログまたはオルソログであり得る。例示的な配列は、ワールドワイドウェブにおいて容易に利用可能なコンピュータプログラムおよび本明細書中に示されるアミノ酸配列を用いて得ることができる。いくつかの例において、上記ポリペプチドは、配列番号2または配列番号3のポリペプチドの機能(例えば、変更された二次構造、CD74への結合および/またはマウスにおけるEAEの阻害)を保持している。上記ポリペプチドに含められ得るさらなる抗原ペプチドを下記で論じる。
組換えポリペプチド(例えば、配列番号1~3)の軽微な改変は、実質的に等価な活性(例えば、配列番号1~3と比べて)を有するポリペプチドをもたらし得る。そのような改変は、部位特異的突然変異誘発によるような意図的なものであってもよいし、自然発生的なものであってもよい。これらの改変によって生成されるポリペプチドのすべてが、本明細書中に含められる。したがって、MHCクラスII DRα1ポリペプチドの非限定的な具体例は、配列番号1~3のいずれか1つの保存的バリアント(例えば、保存的アミノ酸置換、例えば、1つまたはそれを超える保存的アミノ酸置換、例えば、1~10個の保存的置換、2~5個の保存的置換、4~9個の保存的置換、例えば、1、2、5または10個の保存的置換)である。
開示される組換えDRα1ポリペプチドをコードする(例えば、配列番号1~3のいずれか1つをコードする)核酸分子および/またはその任意のホモログもしくはバリアントは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅などの標準的なアプローチによって作製され得る。いくつかの例において、組換えポリペプチドは、配列番号4~6のいずれか1つの核酸配列を含むかまたはそれからなる核酸によってコードされる。さらなる実施形態において、その核酸は、配列番号4~6のいずれか1つまたはそのフラグメントと少なくとも75%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一の配列を有する。
いくつかの実施形態において、上記組換えポリペプチド(例えば、配列番号1~3)は、その組換えポリペプチドをコードする核酸構築物(例えば、配列番号4~6のいずれか1つを含む核酸構築物)から原核細胞または真核細胞において発現され得る。組換えポリペプチドをコードする核酸構築物(例えば、発現構築物)は、プロモーター、エンハンサーおよび/または3’調節領域などの調節エレメントも含むことがあり、それらのエレメントの選択は、タンパク質が発現される細胞のタイプに基づいて決定される。それらの構築物は、選択された細胞型における組換えポリペプチドの発現に適したベクターに導入される。
ポリペプチドを発現および精製するための数多くの原核生物系および真核生物系が知られている。例えば、制御された強力なプロモーターおよび効率的なリボソーム結合部位を、ポリペプチドをコードする構築物の上流に配置することによって、原核細胞において異種ポリペプチドを生成することができる。好適なプロモーター配列としては、ベータ-ラクタマーゼ、トリプトファン(trp)、ファージT7およびラムダPプロモーターが挙げられる。細菌細胞または哺乳動物細胞において異種タンパク質を生成するための方法およびプラスミドベクターは、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989;Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Press,2001;Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates,1992(および2000年までの補遺);ならびにAusubelら、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,4th ed.,Wiley & Sons,1999に記載されている。
大量のタンパク質の発現に適した好適な原核細胞としては、大腸菌および枯草菌が挙げられる。多くの場合、高レベルで発現されたタンパク質は、不溶性の封入体内に見られる。これらの凝集物からタンパク質を抽出するための方法は、例えば、Sambrookら(2001,chapter 15を参照のこと)によって報告されている。あるいは、原核細胞における組換えポリペプチドの組換え発現は、融合タンパク質の最適な発現および精製のためにデザインされた市販のシステムを用いて都合よく得てもよい。そのような融合タンパク質は、通常、精製を容易にするタグを含む。そのようなシステムの例としては、pMALタンパク質融合および精製システム(New England Biolabs,Inc.,Beverly,MA);GST遺伝子融合システム(Amersham Pharmacia Biotech,Inc.,Piscataway,NJ);およびpTrcHis発現ベクターシステム(Invitrogen,Carlsbad,CA)が挙げられる。さらなるシステムとしては、His6-タグ(例えば、Roche Applied Science,Mannheim,Germany)またはストレプトアビジン結合ペプチド(例えば、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)が挙げられる。例えば、pMAL発現系は、発現されるタンパク質にマルトース結合タンパク質を付加するベクターを利用する。その融合タンパク質は、大腸菌において発現され、融合タンパク質は、アミロースカラムを用いて粗細胞抽出物から精製される。必要であれば、Xa因子などの好適なプロテアーゼで処理することによって、融合タンパク質からマルトース結合タンパク質ドメインを切断することができる。次いで、第2のアミロースカラムに通すことによって、その調製物からマルトース結合フラグメントを除去することができる。
上記組換えポリペプチドは、Invitrogen(Carlsbad,CA)によって作製された、Pichia pastoris、Drosophila、バキュロウイルスおよび/またはシンドビス発現系を含む真核生物発現系においても発現され得る。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、サル腎臓(COS)、HeLa、Spodoptera frugiperdaおよびSaccharomyces cerevisiaeなどの真核細胞も、組換えポリペプチドを発現するために使用され得る。これらの細胞での使用に適した調節領域としては、哺乳動物細胞の場合は、ウイルスプロモーター(例えば、CMV、アデノウイルスまたはSV40由来のプロモーター)および酵母細胞の場合は、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたはアルコールデヒドロゲナーゼに対するプロモーターが挙げられる。
上記ベクターは、純粋なDNAとして(トランスフェクション)、例えば、リン酸カルシウムもしくはリン酸ストロンチウムを用いた沈殿、エレクトロポレーション、リポフェクション、DEAEデキストラン、マイクロインジェクション、プロトプラスト融合または微粒子銃(microprojectile guns)によって、レシピエント細胞(例えば、真核細胞)に導入され得る。あるいは、上記核酸分子は、ウイルスベクターを用いた感染によって導入され得る。例えば、レトロウイルス、アデノウイルスまたはヘルペスウイルスを使用するシステムが開発されている。
哺乳動物細胞において生成されたDRα1ポリペプチド(例えば、本明細書中に記載されるもの)は、そのタンパク質が上清中に放出された後に抽出され得、抗MHC抗体または他の抗体を用いて調製されたイムノアフィニティーカラムを用いて精製され得る。あるいは、そのポリペプチドは、例えばβ-グロビンとの、キメラタンパク質として発現され得る。その後、β-グロビンに対する抗体を用いて、そのキメラタンパク質が精製される。次いで、β-グロビン遺伝子と組換えポリペプチドをコードする核酸配列との間に存在する操作された対応するプロテアーゼ切断部位を用いることにより、翻訳後にそれら2つのポリペプチドフラグメントが互いから分離される。β-グロビンキメラタンパク質を生成するための1つの有用な発現ベクターは、pSG5(Stratagene,La Jolla,CA)である。
原核細胞における組換えポリペプチドの発現により、グリコシル化されていないポリペプチドが生じ得る。天然に存在するグリコシル化標的部位におけるポリペプチドのグリコシル化は、ポリペプチドを哺乳動物細胞などの好適な真核生物発現系において発現させることによって達成され得る。他の例では、所望の翻訳後修飾部位(例えば、N結合型グリコシル化、リン酸化または他の修飾のための1つまたはそれを超える部位)を含むように(例えば、部位特異的突然変異誘発によって)組換えポリペプチドを改変することができる。
発現されたタンパク質の精製は、一般に、6M尿素を含む塩基性溶液(通常、pH10付近)中で行われる。次いで、中性pHの緩衝液(通常、pH7.4付近のリン酸緩衝食塩水)に対する透析によって、精製されたタンパク質のフォールディングが達成される。他のタンパク質精製方法も知られており、それらは、本明細書中に開示される組換えポリペプチドとともに用いることができる。
III.抗原ペプチド
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される組換えポリペプチドは、DRα1ドメインに直接またはペプチドリンカーもしくは化学リンカーを介して共有結合により連結された抗原ペプチドを含む。APCの表面上でのMHC複合体における抗原の提示は、一般に、抗原ペプチド全体が関わらない(例えば、米国特許第5,468,481号を参照のこと)。むしろ、MHC IIの場合はβ1ドメインとα1ドメインとの間の溝またはMHC Iの場合はα1ドメインとα2ドメインとの間の溝に位置するペプチドが、通常、ポリペプチド抗原全体の小さい直鎖状フラグメントとなる。Janeway & Travers(Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,1997)に論じられているように、MHCクラスI分子のペプチド溝に位置するペプチドは、結合ポケットのサイズによって限定され、通常、8~15アミノ酸長(例えば、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸)、より通常は8~10アミノ酸長である(が、考えられる例外についてはCollinsら、Nature 371:626-629,1994を参照のこと)。対照的に、MHCクラスII分子のペプチド溝に位置するペプチドは、このように限定されず、それより大きいことが多く、通常、少なくとも3~50アミノ酸長(例えば、8~30、10~25または15~23アミノ酸長)である。いくつかの例において、MHCクラスII分子のペプチド溝に位置するペプチドは、約15~23アミノ酸長である。ペプチドフラグメントは、合成ペプチド合成機を使用することなどの標準的なアプローチによって調製され得るか、または組換えポリペプチドの一部として発現され得る。
いくつかの例において、抗原ペプチドは、ミエリンタンパク質(例えば、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)またはプロテオリピドタンパク質(PLP))などの神経タンパク質または中枢神経系タンパク質からのペプチドを含む。具体例において、抗原ペプチドは、それぞれ配列番号2のアミノ酸1~21または配列番号3の1~21によって例証される、ヒトまたはマウスのMOG-35-55ペプチドを含む。他の例では、抗原ペプチドは、光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)、アレスチン、ホスデューシンまたはリカバリンなどの網膜タンパク質からのペプチドである。さらなる抗原ペプチドとしては、II型コラーゲン(コラーゲンII)、フィブリノゲン-α、ビメンチン、α-エノラーゼ、ヒト軟骨糖タンパク質-39、α2グリアジンまたはインスリンからのペプチドが挙げられる。いくつかの例において、抗原ペプチドは、リン酸化、グリコシル化またはシトルリン化などの翻訳後修飾を含む。例示的な抗原ペプチドの配列は、表1ならびに国際特許出願公開第WO2012/103365および米国特許出願公開第2012/0276127号(この両方の全体が参照により本明細書中に援用される)に提供されている。当業者は、特定の疾患または障害と関連性があるさらなる抗原ペプチドを特定できる。
Figure 2022504217000008
Figure 2022504217000009
いくつかの例において、上記抗原ペプチドは、発現されたペプチドにおいてその抗原ペプチドがDRα1ドメインのアミノ末端に連結されるように、選択された抗原ペプチドをコードする核酸配列を、DRα1ポリペプチドをコードする構築物の5’末端に作動可能に連結することによって、MHCクラスII DRα1ポリペプチドに共有結合により連結される。他の例では、上記抗原ペプチドは、発現されたペプチドにおいてその抗原ペプチドがDRα1ドメインのカルボキシ末端に連結されるように、選択された抗原をコードする核酸配列を、DRα1ポリペプチドをコードする構築物の3’末端に作動可能に連結することによって、DRα1ポリペプチドに共有結合により連結される。この結果を得る1つの好都合な方法は、抗原ペプチドをコードする配列を、DRα1ドメインコード領域を増幅するために用いられるPCRプライマーに組み込むことである。いくつかの例において、リンカーペプチド配列をコードする配列が、抗原ペプチドとDRα1ポリペプチドとの間に含められる。しかしながら、抗原ペプチドは、厳密にMHCクラスIIα1ドメインコード領域の5’末端(または3’末端)にライゲートされる必要はない。例えば、抗原ペプチドコード領域は、DRα1ドメインコード配列の5’または3’末端の最初の数コドン以内(通常、最初の10個のコドン以内)のα1ドメインに挿入され得る。
いくつかの実施形態において、抗原ペプチドをDRα1ドメインに連結するための遺伝子系は、異なる抗原ペプチドを有するいくつかのDRα1ドメインを生成する場合に特に有用である。記載される系は、ユニークな制限酵素認識部位がDRα1ドメインに(例えば、α1ドメインの5’または3’末端に)含められた発現ベクターの構築を可能にする。そのような構築物とともに、抗原ペプチドをコードする配列のライブラリーが作製され、ここで、各抗原コード領域は、選択された制限酵素に対する部位に隣接している。次いで、特定の抗原をDRα1ドメインに含めることは、(a)選択された制限酵素を用いて抗原コード領域を放出し、(b)同じ制限酵素でDRα1ドメイン構築物を切断し、(c)抗原コード領域をDRα1ドメイン構築物にライゲートすることによって、簡潔に行われる。このように、多数のDRα1ドメイン-ペプチド抗原構築物が、短時間で作製および発現され得る。
いくつかの例において、上記抗原は、ペプチドリンカーによってDRα1ドメインポリペプチドに共有結合により連結される。いくつかの例において、そのリンカーは、1つまたはそれを超える(例えば、1、2、3、4つまたはそれを超える)グリシン-セリンスペーサー、例えばGGGGS(配列番号52)を含む。いくつかの例において、そのリンカーは、2つのグリシン-セリンスペーサーを含む。非限定的な例において、上記組換えポリペプチドは、抗原ペプチドとDRα1ポリペプチドとの間に第1のグリシン-セリンスペーサー、トロンビン切断部位および第2のグリシン-セリンスペーサーを含み得る。
いくつかの例において、上記抗原は、ジスルフィド結合によってDRα1ドメインポリペプチドに共有結合により連結される。いくつかの例において、そのジスルフィド結合は、DRα1ドメインポリペプチド内の天然に存在するシステイン残基(例えば、DRα1ドメイン内のシステイン残基)を使用している。当業者は、DRα1ドメインポリペプチド内の好適なシステイン残基を特定できる。他の例では、そのジスルフィド結合は、DRα1ドメインポリペプチド内の天然に存在しないシステイン残基(例えば、突然変異誘発によってDRα1ドメインポリペプチドに導入されたシステイン残基)を使用して形成される。さらなる例において、そのジスルフィド結合は、ペプチド抗原内の天然に存在するシステイン残基を使用して形成される。なおもさらなる例において、そのジスルフィド結合は、ペプチド抗原内の天然に存在しないシステイン残基(例えば、突然変異誘発によってペプチド抗原に導入されたシステイン残基)を使用して形成される。
IV.障害を処置または阻害する方法
炎症性障害および/または自己免疫障害を含むがこれらに限定されない被験体における障害を処置または阻害する方法が本明細書中に開示される。開示される方法は、配列番号1のアミノ酸位置14に対応する位置にグルタミン残基を有するMHCクラスII DRα1ドメインポリペプチドを含む組換えポリペプチド(配列番号1によって例証される)、または抗原ペプチドに共有結合により連結された、配列番号1のアミノ酸位置14に対応する位置にグルタミン残基を有するMHCクラスII DRα1ドメインポリペプチドを含む組換えポリペプチド(配列番号2および3によって例証される)、またはその組換えポリペプチドをコードする核酸を被験体に投与する工程を含む。1つの非限定的な例において、その被験体は、多発性硬化症を有し、MOG-35-55ペプチドに連結された、配列番号1のアミノ酸位置14に対応する位置にグルタミン残基を有するMHCクラスII DRα1ドメインポリペプチド(例えば、配列番号2または配列番号3)を投与される。
いくつかの実施形態において、上記方法は、処置するための障害を有する被験体を選択する工程、および有効量の本明細書中に記載される組換えポリペプチド、本明細書中に記載される組換えポリペプチドをコードする核酸、または開示される組換えポリペプチドもしくは核酸を含む医薬組成物をその被験体に投与する工程を含む。
いくつかの実施形態において、被験体は、炎症性疾患もしくは炎症性障害および/または自己免疫疾患もしくは自己免疫障害を有し、それらとしては、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、I型糖尿病、ウェゲナー肉芽腫症、炎症性腸疾患、多発性筋炎、皮膚筋炎、多内分泌不全、シュミット症候群、自己免疫性ブドウ膜炎、セリアック病(celiac disease)、アジソン病、副腎炎、グレーヴズ病、甲状腺炎、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、悪性貧血、胃の萎縮症、慢性肝炎、ルポイド肝炎、アテローム性動脈硬化症、初老期認知症、脱髄性疾患、多発性硬化症、亜急性皮膚エリテマトーデス、副甲状腺機能低下症、ドレスラー症候群、重症筋無力症、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、尋常性天疱瘡、天疱瘡、疱疹状皮膚炎、円形脱毛症(alopecia arcata)、類天疱瘡、強皮症、全身性進行性硬化症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、手指硬化症および毛細血管拡張症)、成人発症型真性糖尿病(II型糖尿病)、男性および女性の自己免疫性不妊症、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、混合結合組織病、結節性多発動脈炎(polyarteritis nedosa)、全身性壊死性血管炎、若年発症型関節リウマチ、糸球体腎炎、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、グッドパスチャー症候群、シャーガス病、サルコイドーシス、リウマチ熱、喘息、反復流産、抗リン脂質症候群、農夫肺、多形性紅斑、心術後症候群、クッシング症候群、自己免疫性慢性活動性肝炎、愛鳥家肺、アレルギー性疾患、アレルギー性脳脊髄炎、中毒性表皮壊死症、脱毛症、アルポート症候群、肺胞炎、アレルギー性肺胞炎、線維化肺胞炎、間質性肺疾患、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、高安動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、側頭動脈炎、住血吸虫症、巨細胞性動脈炎、回虫症、アスペルギルス症、サムター症候群(Sampter’s syndrome)、湿疹、リンパ腫様肉芽腫症、ベーチェット病、カプラン症候群、川崎病、デング熱、脳脊髄炎、心内膜炎、心内膜心筋線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑(erythema elevatum et diutinum)、乾癬、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎(eosinophilic faciitis)、シャルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア症、毛様体炎、慢性毛様体炎、異虹彩色性毛様体炎(heterochronic cyclitis)、フックス毛様体炎、IgA腎症、ヘノッホシェーンライン紫斑病、糸球体腎炎、移植片対宿主病、移植拒絶反応、ヒト免疫不全ウイルス感染症、エコーウイルス感染症、心筋症、アルツハイマー病、パルボウイルス感染症、風疹ウイルス感染症、予防接種後症候群、先天性風疹感染症、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、腎細胞癌、多発性骨髄腫、イートン・ランバート症候群、再発性多発性軟骨炎、悪性黒色腫、クリオグロブリン血症、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症(Waldenstrom’s macroglobulemia)、エプスタイン・バーウイルス感染症、ルブラウイルスならびにエヴァンズ症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
さらなる炎症性疾患としては、変形性関節症、炎症性肺疾患(慢性閉塞性肺疾患を含む)、歯周病、リウマチ性多発筋痛症、アテローム性動脈硬化症、全身性硬化症、アレルギー性鼻炎および皮膚障害(皮膚筋炎および乾癬を含む)などが挙げられる。
他の実施形態において、被験体は、網膜障害、例えば、網膜変性症、例えば、網膜色素変性症、錐体杆体ジストロフィー、レーバー先天黒内障または黄斑症(例えば、加齢黄斑変性症、シュタルガルト様黄斑変性症、卵黄様黄斑ジストロフィー(ベスト病)、常染色体優性放射状ドルーゼン(Malattia Leventinese)(ドインの蜂巣状網膜ジストロフィー)、糖尿病黄斑症、潜在性黄斑ジストロフィーおよびセロファン黄斑症)を有する。他の例では、網膜障害には、自己免疫性網膜症、糖尿病性網膜症または血管性網膜症などの網膜症が含まれる。なおもさらなる例では、網膜障害には、網膜剥離または緑内障が含まれる。網膜障害は、進行性(例えば、網膜変性症または緑内障)または急性(例えば、網膜剥離)であり得る。さらなる例において、被験体は、ブドウ膜炎または視神経炎を有する被験体である。他の実施形態において、被験体は、脳卒中(例えば、虚血性脳卒中または出血性脳卒中)を有していたことがある。なおもさらなる例において、被験体は、物質嗜癖を有する被験体、例えば、メタンフェタミン乱用およびアルコール乱用を含む物質嗜癖によって誘導される認知機能障害または精神神経機能障害を有する被験体である。
いくつかの実施形態において、配列番号1のアミノ酸位置14に対応する位置にロイシンからグルタミンの置換を含むDRα1ドメインまたはその一部(例えば、CD74に結合することができるかまたはCD74の発現および/もしくは活性を低下させることができるα1ドメインの一部)を含む有効量の組成物が被験体に投与される。1つの例において、その組成物は、改変されたDRα1-MOG-35-55(例えば、配列番号2または配列番号3)を含む。
本明細書中に開示される組換えポリペプチドまたは核酸(例えば、有効量の開示される組換えポリペプチドまたは核酸)を含む医薬組成物は、選択される特定の投与様式に応じて、適切な固形キャリアまたは液体キャリアとともに製剤化され得る。本開示において有用な薬学的に許容され得るキャリアおよび賦形剤には、当業者に公知のものが含まれる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,The University of the Sciences in Philadelphia,Editor,Lippincott,Williams,& Wilkins,Philadelphia,PA,21st Edition(2005)を参照のこと。例えば、非経口製剤は、通常、水、生理食塩水、他の平衡塩類溶液、デキストロース水溶液、グリセロールなどのような薬学的かつ生理的に許容され得る流体ビヒクルである注射可能な流体を含む。固形組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤またはカプセル剤の形態)の場合、従来の無毒性固形キャリアとしては、例えば、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムが挙げられ得る。
投与される医薬組成物は、生物学的に中性のキャリアに加えて、微量の無毒性補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤、pH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレート)を含み得る。含められ得る賦形剤は、例えば、ヒト血清アルブミンまたは血漿調製物などの他のタンパク質である。医薬組成物の剤形は、選択される投与様式によって決定され得る。例えば、注射可能な流体に加えて、局部製剤、吸入製剤、経口製剤および坐剤製剤が使用され得る。局部調製物には、点眼剤、軟膏、スプレー、パッチなどが含まれ得る。吸入調製物は、液体(例えば、液剤または懸濁剤)であり得、それらには、ミスト、スプレーなどが含まれ得る。経口製剤は、液体(例えば、シロップ剤、水剤または懸濁剤)または固体(例えば、散剤、丸剤、錠剤またはカプセル剤)であり得る。坐剤調製物は、固体、ゲル、または懸濁液の形態でもあり得る。固形組成物の場合、従来の無毒性固形キャリアとしては、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムが挙げられ得る。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に公知であるか、または当業者に明らかであり得る。
いくつかの例において、医薬組成物は、その意図された目的を達成する任意の様式によって投与され得る。組換えポリペプチドまたはその一部(またはそのようなポリペプチドをコードする核酸)を投与するための量およびレジメンは、担当臨床医によって決定され得る。治療的な適用のための有効な用量は、処置される症状の性質および重症度、特定のDRα1ドメインもしくはその一部ならびに/または選択された抗原ペプチド、患者の年齢および症状、ならびに他の臨床因子に応じて変動し得る。通常、用量範囲は、約0.1μg/kg体重~約100mg/kg体重であり得る。他の好適な範囲としては、約100μg/kg~約50mg/kg体重、約500μg/kg~約10mg/kg体重または約1mg/kg~約5mg/kg体重、例えば、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kgまたは約5mg/kgの用量が挙げられる。投薬スケジュールは、そのタンパク質に対する被験体の感度などのいくつかの臨床因子に応じて、1ヶ月に1回から毎日まで様々であり得る。投薬スケジュールの例は、1ヶ月に1回、隔週で、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回または毎日投与される約1mg/kg;1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回または毎日の約2.5mg/kgの用量;1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回または毎日の約5mg/kgの用量;1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回または毎日の約10mg/kgの用量;または1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回または毎日の約30mg/kgの用量である。
1つまたはそれを超える開示される組換えポリペプチドを含む医薬組成物は、正確な投与量の個々の投与に適した単位剤形に製剤化され得る。1つの非限定的な具体例において、単位投与量は、約1ng~約5gの組換えポリペプチド(例えば、約10μg~1g、約100mg~500mgまたは約10mg~100mg)を含み得る。投与される活性な化合物の量は、処置される被験体、苦痛の重症度および投与の様式に依存し得る。これらの範囲内において、投与される製剤は、ある量の活性な構成要素を、処置される被験体において所望の効果を達成するのに有効な量で含み得る。
上記組換えポリペプチドは、それらの組換えポリペプチドが有効であるヒトまたは他の動物の組織に、様々な様式で(例えば、局部的に、経口的に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、鼻腔内に、皮内に、髄腔内に、皮下に、眼内に、吸入を介して、または坐剤を介して)投与され得る。1つの例において、それらの化合物は、被験体の皮下に投与される。別の例では、それらの化合物は、被験体の静脈内に投与される。
いくつかの実施形態において、上記組換えポリペプチドは、局部適用または局所適用のための不活性なマトリックスに含められ得る。いくつかの例において、その製剤は、例えば硝子体内注射で、眼に注射され得る。不活性なマトリックスの一例として、卵ホスファチジルコリン(PC)などのジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)からリポソームが調製され得る。カチオン性およびアニオン性リポソームを含むリポソームが、当業者に公知であるような標準的な手順を用いて作製され得る。1つまたはそれを超える組換えポリペプチドを含むリポソームは、液滴の形態でもしくは水性ベースのクリームとして局部適用され得るか、または眼内に注射され得る。局部適用のための製剤では、組換えポリペプチドは、リポソームカプセルが眼表面からの摩耗および破損に起因して分解するにつれて長い時間をかけてゆっくり放出される。眼内注射用の製剤では、リポソームカプセルは、細胞消化に起因して分解する。これらの製剤の両方が、緩効性薬物送達系の利点を提供し、それにより、被験体が実質的に一定濃度の組換えポリペプチドに長い時間にわたって曝露される。1つの例では、DRα1ポリペプチドが、DMSOまたはアルコールなどの有機溶媒に溶解され得、ポリ無水物、ポリ(グリコール)酸、ポリ(乳)酸またはポリカプロラクトンポリマーを含み得る。組換えポリペプチドは、植込錠のサイズ、形状および処方ならびに移植手順のタイプに応じて、眼における様々な部位に植え込むことができる送達系に含められ得る。好適な部位としては、前眼房、前眼部、後眼房、後眼部、硝子体腔、脈絡膜上腔、結膜下、上強膜、角膜内、角膜上(epicorneal)および強膜が挙げられるがこれらに限定されない。
いくつかの例において、開示される組換えポリペプチドの有効量(例えば、治療有効量)は、被験体における障害(例えば、炎症性障害および/または自己免疫障害)を処置または阻害するのに必要な組換えポリペプチドの量であり得る。他の例では、開示される組換えポリペプチドの治療有効量は、網膜障害、脳卒中、外傷性脳損傷、または物質嗜癖に関連する障害(例えば、物質嗜癖に起因する認知機能障害または精神神経機能障害)を処置または阻害するのに必要な組換えポリペプチドの量であり得る。
本開示は、1つまたはそれを超える開示される組換えポリペプチドと、障害の処置において有用な1つまたはそれを超える他の作用物質との併用も含む。いくつかの例において、それらの組換えポリペプチドは、有効な用量の、炎症性障害または自己免疫障害に対する1つまたはそれを超える治療薬(非ステロイド性抗炎症薬、コルチコステロイド、メトトレキサート、抗TNF化合物、ミコフェノール酸、アミノサリチル酸、抗生物質、インターフェロン、酢酸グラチラマー、抗体治療薬(例えば、リツキシマブまたはミラツズマブ)または免疫抑制化合物もしくは免疫調節化合物を含むがこれらに限定されない)とともに投与され得る。別の例では、それらの組換えポリペプチドは、有効な用量の、網膜障害に対する1つまたはそれを超える治療薬(遺伝子治療薬、ビタミン補給剤またはミネラル補給剤(例えば、ビタミンA、Cおよび/もしくはEまたは亜鉛および/もしくは銅)、抗血管新生治療(例えば、ラニビズマブまたはベバシズマブ)、光凝固術、光線力学的療法、ルテインもしくはゼアキサンチン、コルチコステロイドまたは免疫抑制剤を含むがこれらに限定されない)と併用して投与され得る。特定の疾患に対する適切な併用療法は、当業者によって選択され得る。用語「併用投与」または「同時投与」とは、活性な作用物質の同時の投与と連続した投与との両方のことを指す。
以下の実施例は、ある特定の特徴および/または実施形態を例証するために提供される。これらの実施例は、記載される特定の特徴または実施形態に本開示を限定すると解釈されるべきでない。
実施例1
材料および方法
Fab、抗体および他の試薬。G4は、ヒトIgGライブラリーに由来するDRα1ドメインに反応性のヒトFabであり、Dr.Yoram Reiter,Technion Israelからの厚意により供与された。抗ヒトMOG抗体は、Santa Cruz Biotechnologyから購入した。CHAPS、T20およびウシ血清アルブミンは、Sigma-Aldrichから購入した。抗CD74抗体は、Everest Biotechから購入した。UltraPure(商標)TRISは、Invitrogenから購入した。ベクターpET21d(+)は、Novagenから購入した。BL21(DE3)は、New England Biolabsから購入した。IPTGは、Inalcoから購入した。
DRα1構築物のクローニング、発現および精製。DRα1構築物の精製は、報告されている(Vandenbarkら、J.Immunol.171:127-133,2003)。簡潔には、ヒトMOG-35-55ペプチド、可動性リンカー、およびアミノ酸残基15から97までのMHCクラスII DRα1ドメインをコードする配列を含む合成DNAフラグメント、ならびにDRα1ドメイン内に変異L50Qを含む類似の合成DNAフラグメントを、高レベル発現ベクターpET21d(+)(Novagen)にクローニングした。これらのクローンを、大腸菌BL21(DE3)株(New England Biolabs)に形質転換し、50μg/mlの抗生物質カルベニシリンを含むLB寒天プレートにプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした。翌日、各クローンからの3つの個々のコロニーを選択し、上記抗生物質が補充されたLBブロス中で生育して、IPTGによって誘導される、目的のタンパク質の産生を試験した。確認後、100mlの一晩培養物を調製し、それを用いて、上記抗生物質が補充されたLBを含む4X1Lフラスコに接種した。対数増殖の時点においてIPTGを2mMという最終濃度まで加えて、標的タンパク質合成を誘導した。培養物を37℃でさらに4時間インキュベートし、遠心分離によって収集し、その細菌ペーストを、使用するまで-80℃で凍結した。
ペレットを超音波処理緩衝液(50mM Tris、300mM NaCl、2mM EDTA pH8.0)に再懸濁し、超音波処理して、細胞を破壊し、封入体を放出させた。これらの封入体に含まれるタンパク質を、20mMエタノールアミン、6M尿素,pH10緩衝液中、4℃で一晩、静かに撹拌しながら可溶化した。その可溶化タンパク質を陰イオン交換カラムに通し、そのタンパク質を可溶化緩衝液中のNaCl勾配で溶出することによって、精製を行った。画分を回収し、SDS-PAGEによって解析した。目的のタンパク質を含む画分をプールし、20mM Tris,pH8.5に対して透析し、5mg/mlまで濃縮し、急速冷凍し、次いで、使用するまで1mlアリコートとして-80℃で保存した。
アミノ酸配列のアラインメント。目的の種々のクラスIIα1ドメイン配列は、すべてNCBIから検索し、BLASTウェブサイト(NIH)からのBLASTの2つまたはそれを超える配列を用いてアラインメントし、次いで、関連性のある領域を示すように手作業で最適化した。
円偏光二色性によるタンパク質の構造解析。タンパク質を解凍し、SDS-PAGEによって解析した(データ示さず)後、AVIV分光計を用いて遠紫外光(180~260nm)の吸光度によってそれらの二次構造含有量について試験した。タンパク質は、95%超純粋だった。100マイクロリットルの各ポリペプチドを、20mM Tris緩衝液pH8.5中に1mg/mlの濃度で調製し、CDキュベットに入れた。0.5nm間隔で計測する0.1mm光路長で180nm~260nmの遠紫外スペクトルにおける吸光度についてタンパク質をスキャンした。20mM Tris緩衝液だけを含むサンプルもスキャンし、そのシグナルをタンパク質の計測結果から減算した。各タンパク質について少なくとも3回のスキャンを平均し、モル楕円率としてプロットした。
CD74へのDRα1構築物の結合および競合アッセイ。これらの実験を、以下のとおり、Maxisorpプレート(Nunc)を用いるELISAによって行った。結合実験および競合実験の前に、タンパク質を、リジン側鎖の第一級アミンを標的化するAlexa Fluor488(Invitrogen)またはビオチン(Pierce Biotechnology)で標識した。結合体化されなかったAlexa Fluor 488またはビオチンを、Superdex 75 10/300カラム(GE Healthcare)を用いるサイズ排除クロマトグラフィーによって除去した。結合実験の場合は、組換えヒトCD74(rhCD74)構築物を作製した(データ示さず)。そのデザイン、作製および精製は、すでに記載されている(Benedekら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 114:E8421-E8429,2017)。プレートを、RTで2時間または4℃で一晩、0.1μg/mlの濃度の、rhCD74(C27S)のTBS溶液でコーティングした。5%BSAのTBS溶液および0.0125%Tween(登録商標)20(T20)でブロッキングした後、0.0125%T20を含むブロッキング緩衝液中に調製されたDRα1-MOG構築物を室温で3時間捕捉した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合体化されたストレプトアビジンで検出した。データをPrismソフトウェアにロードし、相対親和性を測定するために1または2結合部位方程式にあてはめた。
競合実験の場合は、ELISAプレートを、TBS中、0.5μg/mlの濃度のMIFで室温においてコーティングした。次いで、プレートを5%BSAのTBS溶液および0.0125%T20で一晩ブロッキングした後、5%BSA/TBS+0.0125%T20中に調製され、段階希釈したDRα1構築物とともにrhCD74を含む競合ミックスを25℃で1.5時間加えた。結合したrhCD74を、推定MIF/D-DT結合部位から離れた領域においてヒトCD74に特異的に認識するモノクローナル抗体で検出した。450nmの吸光度を測定し、データをPrismで解析し、パラメータをそのソフトウェアに含まれる競合方程式を用いて計算した。DRα1-hMOG-35-55とP2ペプチド(次の項を参照のこと)との競合の場合は、マウスCD74をDR1501Tgマウス脾細胞から免疫沈降し、競合実験を設定した。2.5μlのP2ペプチドを、DRα1-hMOG-35-55タンパク質の濃度を上げながら使用した。結合したペプチドを、2%SDSを用いて免疫沈降物から溶出し、16.5%PAG Tris/トリシン中で解析した。ゲルをFITCについてスキャンし、蛍光をデンシトメトリーによって定量化した。P2蛍光 対 DRα1競合物をプロットし、データをPrismで解析した。相対密度の値を1結合部位方程式にあてはめた。
DRα1-hMOG-35-55上のCD74結合エピトープのマッピング。DRα1-MOGタンパク質およびそれらの親分子であるRTL1000に高親和性で結合することができるFabは、以前に記載されている(Meza-Romeroら、J.Immunol.192:4164-4173,2014)。しかしながら、DRα1ドメイン上のその結合領域は、まだ明らかになっていない。G4Fabに対するエピトープをマッピングするために、完全長のDRα1ドメインを網羅する一連の7つの重複ペプチドであってN末端がFITCで標識されたペプチドを合成した。これらのペプチドを、脾細胞からのIn1免疫沈降マウスCD74およびプロテインLビーズに免疫吸着されたG4に結合する能力について試験した。
免疫沈降およびウエスタンブロット実験。免疫沈降の後、個々のペプチドを、0.1%CHAPS/TEN緩衝液(50mM Tris、2mM EDTA、150mM NaCl,pH7.4)中での14~16時間の結合実験において解析した。免疫複合体を50μlの2%SDS/ESB(電気泳動サンプル緩衝液)で20分間溶出し、次いで、非還元条件下の10~20%SDS-PAGEにおける電気泳動によって解析した。電気泳動の後、ゲルをFITC標識ペプチドについてスキャンした。平行した実験では、免疫沈降したマウスH2Mを用いて、ペプチドセットの結合を試験した。H2M分子は、クラスIIα1ドメインに結合するが、異なる領域に結合するので、H2M分子は、結合中にα1ドメイン合成ペプチドに対して異なる選択性を示すはずである。G4は、rhCD74へのDRα1構築物の結合を阻止するので、本発明者らは、G4およびCD74が同じペプチドセットを認識する可能性も試験した。その点について、G4FabをプロテインLビーズに結合させ、次いで、その免疫複合体にP2またはP7ペプチドを適用した。結合した材料を、上に記載したように溶出し、電気泳動によって解析し、ゲルをFITC標識材料についてスキャンした。タンパク質をPVDF(ポアサイズ0.1μm)に転写した後、5%BSAのTBS溶液および0.05%T20でブロッキングする標準的な手法を用いて、ウエスタンブロット実験を行った。
ERK1/2リン酸化の遮断。EAEマウス由来の200万個の脾細胞を、20mM Tris pH8.5、25μgのDRhQまたはDRα1-hMOG-35-55で37℃において30分間、インビトロで処置した。次いで、細胞を遠沈し、プロテアーゼおよびホスフェート阻害剤が補充されたRIPA緩衝液で溶解した。細胞溶解を氷上で30分間進め、核およびオルガネラを含む残屑を、4℃における10分間の14,000rpmでの遠心分離によって除去した。上清を回収し、還元条件下の10~20%の勾配ゲルにおけるSDS-PAGEに供した。電気泳動の後、タンパク質をPVDFに転写し、膜をまずはp-ERK1/2についてプロービングし、取り除き、次いで、抗全ERK1/2抗体でプロービングした。
EAEの誘導。8~12週齢のC57BL/6 WT雄マウスをJackson Laboratoryから購入した。すべての手技が、承認されたものであり、連邦、州および施設のガイドラインに従って行われた。0.2mlの、200μgのマウスMOG-35-55ペプチドのエマルジョンおよび400μgの熱殺菌した結核菌H37RA(Difco)を含むフロイント完全アジュバントを分配するために、マウスの側腹部の皮下の4部位に免疫した(Meza-Romeroら、J.Immunol.192:4164-4183,2014)。さらに、免疫後の0および2日目に、List Biological Laboratoriesから得た百日咳毒素(Ptx)をマウスの腹腔内に注射した(マウス1匹あたりそれぞれ75および200ng)。≧2.0のEAEスコアから開始して、DRα1-hMOG-35-55、DRhQ、DRα1-mMOG-35-55およびDRmQタンパク質(0.1ml中に100μg)を5日間にわたって毎日、s.c.注射し、それらのマウスを、以前に記載されているように(Meza-Romeroら、J.Immunol.192:4164-4183,2014)、後肢と前肢の合計麻痺スコアの6点スケールで段階分けするEAEの臨床的徴候についてスコア付けした。マウス群に対する平均EAEスコアおよびSDを免疫後の8日目から27日目までの各日について計算し、実験全体にわたるEAEスコア曲線を数値的に積分することによって、各マウスに対して合計した(CDI、総疾患負荷を表す)。
データ解析。EAE重症度データを比較する統計解析ならびに結合および競合の結果に対するデータをあてはめる方程式を、Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad)を用いて計算した。
実施例2
改変されたDRα1ポリペプチドの作製および解析
DRα1-hMOG-35-55、DRα1-mMOG-35-55、DRhQおよびDRmQタンパク質の生成量は似ていたことから、L50Q置換は、転写および発現率に影響しないことが示唆された。タンパク質の収率は、一貫して約90~100mg/リットルLBブロスだった。Fab G4を用いて、精製タンパク質を検出した。以前の研究では、Fab G4が、種々の状況におけるDRα1ドメイン(独立型のドメインとして、より大きな構築物の一部として(本明細書中に記載されるものと同様)または2ドメイン組換えタンパク質の一部として(RTL1000と同様)を含む)を検出したことが示された。
いくつかのヒトクラスIIα1ドメインのアラインメントの解析(図1)によって、他のヒトまたはマウスクラスIIと共有しないこのDRα1ドメインのユニークな特性が明らかになった。このユニークな特徴は、アラインメントに用いられた配列のほとんどにおいて18位にグルタミン(Q)残基を示す(Q18、図1における矢印;配列番号1におけるアミノ酸位置14)。しかしながら、DRα1ドメインは、18位にロイシン(L)を有する。その他のペプチド提示クラスIIドメインとともに、このQ18残基は、非抗原提示タンパク質DMα1およびDOα1の間でも保存されていた。Protein Data Blank(PDB)に保存されている解析されたすべてのクラスIIα1ドメインの1次配列および結晶構造において、この領域は、分子本体の外側に向かっているポリペプチドのN末端におけるβストランド1とβストランド2との間のループに局在している。
L18とQ18の機能的役割を探索するために、ELISA実験における結合アッセイを、マウスおよびヒト起源の以前に構築されたいくつかのRTLを用いて行った。図2Aは、Q18を有するポリペプチド(DP2、DP4およびマウス由来RTL551(IAb))が、ELISAアッセイにおいてrhCD74に対して、L18を有する構築物よりも高い結合活性を示したことを示している。L18とQ18(DRα1-MOG-35-55構築物における50位)とが、CD74レセプターに対して異なる結合親和性を有し得るかを調べるために、変異ポリペプチドを作製した(図2Bに示されている配列)。
ヒトFab G4(DRα1ドメインを認識する)を、L50Q置換がDRα1構築物の免疫学的認識に影響するかを判定するためのツールとして使用した。このFab G4は、それがDRα1-hMOG-35-55ならびにDRα1-mMOG-35-55と交差反応するのと同じ様式でDRhQ変異体と交差反応した(図3A)。DRhQおよびDRα1-MOG-35-55タンパク質の二次構造含有量を対照比較するために、円偏光二色性分光計においてタンパク質の遠紫外スキャンを行った(図3B)。以前の研究では、DRα1-hMOG-35-55が、かなりの量のアルファヘリックス二次構造およびベータシート二次構造を含むことが示された(Meza-Romeroら、J.Immunol.192:4164-4183,2014)。上記分子のすべてが、190nmの吸光度が高い正の値を示し(これは、α-ヘリックスエレメントを示す主な特徴である)、215nmの吸光度が負の値を示した(これは、βシート二次構造の存在を示唆する)。全体として、これらの結果は、これら3つのタンパク質が構造的に類似していることを示すことから、それらの構築物のβシートプラットフォームにおけるグルタミン(Q)からロイシン(L)への置換は、アルファ-ヘリックス含有量を最小限にしか変化させず、分子の底部におけるベータシート構造の量を変化させなかったことが示唆される。
DRα1タンパク質の全長にわたって7つの重複ペプチドをデザインした(図4A)。これらのペプチドは、蛍光スキャンによって検出されるために、アミノ酸配列のN末端にFITC部分を含んだ。これらのうち、P1は、完全長ペプチドの溶解度の問題に起因して改変されなければならず、第2のペプチド(P6)は、合成できなかった。それらのペプチドを個々におよびプールとして使用することにより、マウス脾細胞由来の免疫沈降CD74に結合させた。第1のアプローチとして、全ペプチドのカクテルを、ln1免疫沈降CD74を含むプロテインA/Gビーズに同時に加えた。図4Bに示されているように、2つのペプチドP2およびP5だけしか、免疫沈降マウスCD74に結合せず、P5の結合の程度は低かった。これを確かめるために、個々のペプチドを、同じ条件下でプロテインA/G-ln1-CD74複合体に加えた。図4Bに示されているように、P2およびP5ペプチドだけしか、明確にマウスCD74に結合しなかった。P2は、より強い結合を示した一方で、P5は、より低い親和性を有した。
このストラテジーの有用性を試験するために、上記実験を免疫沈降H2Mでも行った。異なるペプチド(またはペプチドのセット)が、H2Mに結合するだろうと仮定した。図4Cに見られるように、異なるセットの重複ペプチドが、このタンパク質に結合したことから、前の実験の結果が確証された。この後の実験は、P7ペプチドが、免疫沈降H2Mに強く結合し、それより低い程度でP4が結合したことを示した(図4C)。この結果は、DR/DM複合体の公開されている結晶構造(Posら、Cell 151:1557-1568,2012)と一致した。これらの2つの分子の境界面は、DMおよびDRのアルファ鎖によって支配されている。DMは、DRα1領域のN末端から離れていてペプチド結合溝に近いDRα1ドメインの側方表面に、DRβ1ドメインに接触することなく結合する。
以前の刊行物において、G4Fabが、CD74へのDRα1構築物の結合を阻止するのに有効であることが実証された(Meza-Romeroら、J.Immunol.192:4164-4173,2014)。ゆえに、実験は、P2が、プロテインLに結合したG4Fabとも相互作用するかを判定すること、免疫沈降CD74への結合を比較することを目指し、行われた。潜在的には、P7ペプチドは、G4またはCD74に結合しない可能性がある。予想通り、P2ペプチドだけしかG4に結合することができなかったことから、G4とCD74は、DRα1ポリペプチド上に同じ結合部位を有することが実証された(図5A)。図5Bは、P2ペプチドの位置を伴うDRα1ドメインの概略図を示している。P2ペプチドが、CD74に結合する境界面と会合したことを確かめるために、競合実験を行って、DRα1-hMOG-35-55とP2ペプチドとが、mCD74への結合について互いに競合するかを判定した。それらの結果から、DRα1-hMOG-35-55が、750nMという相対親和性(K)で、免疫沈降CD74へのFITC標識P2ペプチドの結合に打ち勝つことができることが示された(図5C)。
DRα1-hMOG-35-55、DRhQ、DRα1-mMOG-35-55およびDRmQを含むDRα1-MOGを、それらのレセプターへの結合について評価した。組換えヒトCD74(C27S)をELISAプレート上にコーティングし、次いで、ブロッキングの後、DRα1構築物をRTで1~1.5時間捕捉し、抗MOG抗体で検出した。それらの結果をPrismソフトウェアに入力し、曲線を1部位特異的結合方程式にあてはめて、Kを計算した。図6Aおよび表2に示されているように、これらの結果から、DRα1構築物の50位(または上記アラインメントにおける18位または配列番号1における14位)のロイシンからグルタミンへの置換が、変異タンパク質の結合能を高めたことが示唆される。
Figure 2022504217000010
DRhQ変異体は、対応物である野生型バージョンの構築物と比較して、レセプターに対して8~10倍高い親和性で結合した(Kを含む表2を参照のこと)。このことから、DRα/CD74相互作用のドッキングモデル(Meza-Romeroら、Metab.Brain Dis.31:249-255,2016;Wingerchukら、Mayo Clin.Proc.89:225-240,2014)および上で論じられたP2ペプチドを用いた実験によって示唆されるように、L50を含む領域が、CD74へのDRα構築物の結合部位の一部である可能性があることが確認された。競合アッセイは、直接結合の結果と一致した(図6B)。競合実験では、DRhQは、CD74への結合について、DRα1-hMOG-35-55より8~10倍高い、MIFに打ち勝つ能力を示した(DRhQ IC50=0.28μM 対 DRα1-hMOG-35-55 IC50=1.6μM)ことから、この領域がその結合相互作用に寄与するというより直接的な役割を支持することが立証される。他方で、DRα1-mMOG-35-55およびその誘導体DRmQは、それらの間で有意差を示さず、基本的には、DRhQと比較して中間の競合活性を示した。
図7Aに示されているように、DRhQ構築物によるC57BL/6雄マウスの処置は、天然のL50含有DRα1-hMOG-35-55構築物と比較して、継続中のEAEの重症度を有意に低下させた。対照的に、CD74へのMIFの結合を阻止する能力が異ならない(上記を参照のこと)DRmQ構築物による処置は、L50含有DRα1-mMOG-35-55構築物と比較して、EAEに対して処置の効果が異ならなかった(図7B)。
研究から、MIFは、細胞表面上のCD74/CD44との相互作用によってERK1/2リン酸化を駆動する主要な炎症促進性サイトカインであることが示されている(Lengら、J.Exp.Med.197:1467-1476,2003)。EAEマウスから収集された脾細胞は、アップレギュレートされたレベルのp-ERK1/2を示したことから、炎症過程と関連する継続中の活性なシグナル伝達カスケードが示唆された。DRα1-MOG構築物で処置すると、このリン酸化は、30分間のインキュベーションの後、インビトロにおいてダウンレギュレートされた。このことは、継続中の炎症反応を有する動物由来の脾細胞をそれらの構築物で処置することにより、ERK1/2リン酸化のダウンレギュレーションがもたらされたことを示唆する(図8)。
Protein Data Bankに寄託されているいくつかのヒトおよびマウスのクラスII分子の結晶構造では、Qアミノ酸残基は、そのドメインのN末端におけるβストランド1とβストランド2との間のループにおけるβストランド1の末端に位置する(図9Aおよび9B)。実際に、このループは、TSST-1トキシンとクラスIIのa1ドメインとの結合と関連付けられており(Karpら、Nature 346:474-476,1990;Kimら、Science 266:1870-1874,1994)、クラスIIとインバリアント鎖(Ii、CD74)との間の会合は、TSSTとクラスIIとの結合を妨げる(Karpら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9657-9661,1992)ことから、潜在的な共有エピトープまたは重複エピトープが示唆される。本発明者らは、タンパク質-タンパク質ドッキングアルゴリズムを使用して、CD74とDRα1-hMOG-35-55との間の境界面の存在を予測し(Meza-Romeroら、Metab.Brain Dis.31:249-255,2016;Wingerchukら、Mayo Clin.Proc.89:225-240,2014)、その構築物におけるアミノ酸残基F48、L50、P52、D53およびS55(図9AにおけるF12、L14、P16、D17およびS19)をこの境界面の重要な構成要素と定義した。ゆえに、本発明者らは、DRα1-hMOG-35-55およびDRα1-mMOG-35-55にQ変異を導入して、それぞれDRhQおよびDRmQバリアントを作製した。免疫学的観点および生物物理学的観点からは、これらの新規変異体は、それらの親分子と区別がつかない。両方のタンパク質が、Fab G4に対して同じレベルおよび同じ質の交差反応を示すことから、そのエピトープが、構造的に改変されていないことが示唆される(図3A)。同様に、両方の構築物が、円偏光二色性分光法による同一のプロファイルを示すことから、その二次構造が、変異体DRhQ(図3B)およびDRmQ(図示せず)において保存されていることが示唆される。
先の実験的研究は、DRα1-MOG-35-55(Benedekら、Eur.J.Immunol.43:1309-1321,2013)に加えて、RTL1000も、CD74に結合することおよびCD74へのMIFの結合を阻止することができることを示唆した(Benedekら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 114:E8421-E8429,2017)。DRα1ドメインアミノ酸配列にわたる重複ペプチドのセットを使用することによって、ドッキングアルゴリズムによって予測されたように(Meza-Romeroら、Cytokine 88:62-70,2016;Meza-Romeroら、Metab.Brain Dis.31:249-255,2016)、主要な結合部位が、DRα1ドメインのN末端に絞り込まれた(図4Aおよび4B)。これらすべてのアミノ酸残基が、免疫沈降マウスCD74およびFab G4に結合すると示されたP2ペプチドのコアを構成する(図5A)。さらに、DRα1-hMOG-35-55は、免疫精製されたマウスCD74への結合についてP2ペプチドに打ち勝った(図5C)ことから、両方のリガンドが、同じ領域においてレセプターに結合することが示唆される。いくつかのマウスおよびヒトMHCクラスII分子の結晶構造の綿密な調査は、これらの残基が、α1ドメインのN末端におけるβ1ストランドとβ2ストランドとの間のループに位置することを示した。本発明者らのドッキングモデルによると、このループ内の残基が、CD74上の残基と近接して接触する(図9A)。
本発明者らはまた、組換えバージョンのヒトCD74へのこの新規バリアントの結合についてこのバリアントを試験し、また、MIFがレセプターに結合するのを防ぐ活性またはレセプターに結合することについてMIFに打ち勝つ活性を試験した。本発明者らの結果は、Qを有するバリアントが、親分子とはかなり異なって、直接結合ELISAアッセイにおいてCD74に対して8~10倍高い親和性のKを示したことを示唆することから、この位置のQが、その相互作用に良い影響を与えたことが示唆される(図6A、表2)。したがって、DRhQは、CD74レセプターへの結合についてMIFより高い競合活性を示し、IC50が8~10倍高かった(図6B、表2)。直接結合および競合実験によって評価されたこのより高い親和性は、実験動物におけるEAEを処置する薬物の効力に反映された。図7Aおよび7Bに示されているように、このレベルの疾患重症度の場合はDRα1-hMOG-35-55による処置効果がなかったことに比べて、これらの構築物は、マウスの疾患スコアを有意に低下させることができた。これらの実験から、EAEマウスから収集された脾細胞が、炎症過程に関連する継続中の活性なシグナル伝達カスケードを示唆するアップレギュレートされたレベルのp-ERK1/2を示したこと、およびこのERK1/2のリン酸化が、インビトロにおけるDRhQ処置によってダウンレギュレートされ得ることが実証された(図8)。
本開示の原理が適用され得る多くの考えられる実施形態を考慮すると、例証された実施形態は、単なる例であって本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでないと認識されるべきである。むしろ、本発明の範囲は、以下の請求項によって定義される。ゆえに、本発明者らは、これらの請求項の範囲および趣旨の範囲内に入るすべてを本発明者らの発明であると主張する。

Claims (19)

  1. 配列番号1のアミノ酸位置14に対応する位置にグルタミン残基を含むDRα1ドメインを含む、組換えポリペプチド。
  2. 前記DRα1ドメインが、ヒトDRα1ドメインである、請求項2に記載の組換えポリペプチド。
  3. 配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1または請求項2に記載の組換えポリペプチド。
  4. 配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の組換えポリペプチド。
  5. 配列番号1のアミノ酸配列からなる、請求項4に記載の組換えポリペプチド。
  6. 抗原ペプチドをさらに含む、請求項1に記載の組換えポリペプチド。
  7. リンカーをさらに含む、請求項6に記載の組換えポリペプチド。
  8. 前記リンカーが、ペプチドリンカーまたは化学架橋剤を含む、請求項7に記載の組換えポリペプチド。
  9. 前記リンカーが、第1のグリシン-セリンスペーサー、トロンビン切断部位および第2のグリシン-セリンスペーサーを含む、請求項7に記載の組換えポリペプチド。
  10. 前記抗原ペプチドが、MOG-35-55である、請求項6~9のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
  11. 前記MOG-35-55が、ヒトMOG-35-55またはマウスMOG-35-55である、請求項10に記載の組換えポリペプチド。
  12. 前記組換えポリペプチドが、配列番号2もしくは配列番号3を含むか、または配列番号2もしくは配列番号3からなる、請求項10に記載の組換えポリペプチド。
  13. 請求項1~12のいずれか1項に記載の組換えポリペプチドをコードする、核酸分子。
  14. 請求項13に記載の核酸を含む、発現構築物。
  15. 請求項14に記載の発現構築物を含む、細胞株。
  16. 有効量の請求項1~12のいずれか1項に記載の組換えポリペプチドまたは請求項13に記載の核酸分子;および
    薬学的に許容され得るキャリア
    を含む、医薬組成物。
  17. 前記組成物が、少なくとも5mg/kgの前記組換えポリペプチドを含む、請求項16に記載の医薬組成物。
  18. 炎症性障害を処置する方法であって、有効量の請求項16または請求項17に記載の医薬組成物を、前記炎症性障害を有する被験体に投与する工程を含む、方法。
  19. 前記炎症性障害が、多発性硬化症または実験的自己免疫性脳症(EAE)である、請求項18に記載の方法。
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