次に、ポリマーを合成するためのプロセスおよび本開示のプロセスによって合成されたポリマーの特定の実施形態について説明する。本開示のポリマーを合成するためのプロセスが、異なる形態で実施されてもよく、本開示に記載される特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全となり、また主題の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
定義
「ポリマー」という用語は、同一または異なるタイプのモノマーにかかわらず、モノマーを重合することにより調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、1つのタイプのモノマーのみから調製されるポリマーを指すために通常用いられる用語「ホモポリマー」、および2つ以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指す「コポリマー」を包含する。本明細書で使用される、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、総称であるインターポリマーという用語は、コポリマーと、ターポリマーなどの3種類以上の異なるモノマーから調製されるポリマーとを含む。
「ポリエチレン」または「エチレン系ポリマー」は、エチレンモノマーに由来する50重量%を超える単位を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知であるポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状および実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ならびに高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
本開示の実施形態は、C2モノマー、少なくとも1つのC3〜C12αオレフィンコモノマー、少なくとも1つのジエン、多鎖触媒、および任意に、溶媒を添加することによって、長鎖分岐状ポリマーを合成するプロセスであって、多鎖触媒が、複数の重合部位を有する分子を含む、長鎖分岐状ポリマーを合成するプロセスと、少なくとも2つのコポリマーストランドを生成するプロセスであって、各コポリマーストランドが重合部位のうちの1つで共重合する、少なくとも2つのコポリマーストランドを生成するプロセスと、2つのコポリマーストランドをジエンと結合させることによって、長鎖分岐状ポリマーを合成するプロセスであって、2つのコポリマーストランドの結合が、共重合と協奏的に行われる、長鎖分岐状ポリマーを合成するプロセスと、を含む。
本開示によるポリマーを合成するプロセスは、従来の長鎖分岐とは異なる。「長鎖分岐」という用語は、100個を超える炭素原子を有する分岐を指す。「分岐」は、三級または四級炭素原子から伸びるポリマーの一部を指す。分岐が三級炭素原子から伸びる場合、他に2つの分岐があり、それらは集合的に、それから分岐が伸びるポリマーストランドであり得る。従来、長鎖分岐(LCB)は、スキーム1に示すように、重合プロセスで自然に発生し得る。これは、三官能性長鎖分岐を形成する、ポリマー鎖のビニル末端および高分子ビニルの再挿入により、発生することができる。分岐の程度に応じて、核磁気共鳴(NMR)などの様々な方法が、LCBを決定するか、またはポリマー内のLCBの効果を区別するかのいずれかを行うことができる。例えば、LCBの効果は、van Gurp−Palmen解析の剪断流において観察され、また、低角振動数での剪断粘度の増加およびずり減粘挙動の強度も、LCBに起因し得る。伸長流では、LCBの効果は通常、硬化の程度または溶融物の強度および達成される最大変形で特定される。ビニル末端ポリマーの濃度が限られており(ポリマー鎖ごとに最大1つ)、LCBの形成を確実にするために高エチレン変換を実行する必要があるため、ポリマー内の高レベルの天然LCBを達成することは困難である。高い変換を確保するために、反応器内のエチレン濃度が低く、したがって、大量のビニル末端ポリマーを第2のポリマー鎖に再挿入することを可能にする。
スキーム1:自然に発生する長鎖分岐:ビニル末端ポリマーにつながる連鎖移動事象
スキーム1では、「Cat」が触媒であり、「P」はポリマー鎖である。
自然に発生する分岐プロセスを通じて形成する最小限の長鎖分岐がある。LCBを強化する1つの方法は、ラジカル、不均一、または均一プロセスのいずれであっても、重合システムへのα,ω−ジエンの付加によるものである。一般に、ジエンはα−オレフィンと同様の方法でポリマー鎖に付加するが、スキーム2に示すように、ポリマー鎖にもう一度挿入してLCBを形成できるペンダントビニル基を残す。一般に、ジエンの長さは重要ではなく、2つのポリマー鎖を一緒に連結できることだけが重要である。原則として、ペンダントビニルの濃度は、反応器に添加されるジエンの量によって制御することができる。したがって、LCBの程度は、ペンダントビニルの濃度によって制御することができる。
スキーム2:ジエンの取り込みによる長鎖分岐
スキーム2では、「Cat」は触媒であり、「P」はポリマー鎖であり、この例のジエンは、1,5−ヘキサジエンである。
ジエンをポリマー合成システムに組み込む従来のプロセスは、ゲル形成または反応器の付着汚れという根本的な欠点に悩まされている。後の段落で説明する反応動力学的モデリングは、ゲル形成のより良い理解を可能にする良好な予測結果を提供し得る。例えば、より長いポリマー鎖はより多くの挿入されたオレフィンを有し、したがってより多くの挿入されたジエンを有し、したがってより多くのペンダントビニルを有し、より長いポリマー鎖が触媒に再挿入されてLCBを形成する可能性が高いことを意味する。したがって、より長いポリマー鎖が優先的に再挿入されて、さらに大きなポリマー分子である四官能性分岐を形成し、ゲルの問題をもたらす。スキーム2に示されているように、四官能性LCBは、短いセグメント(ジエンの2つの二重結合間の炭素数)があり、短いセグメントの両側にある2つの長鎖を架橋する。一定圧力でのセミバッチ反応器内のポリエチレンについての、分岐の関数としての重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)のシミュレーションを、図1に示す。図1では、Mwが無限大になるにつれて、Mnはわずかに増加するだけである。Mwが200,000グラム/モル(g/mol)を超える数に増加すると、ポリマーがゲル化するか、ゲル化が発生するか、または反応器の付着汚れが存在する。
「ゲル」または「ゲル化」という用語は、少なくとも2つの成分(第1の成分は三次元架橋ポリマーであり、第2の成分はポリマーが完全に溶解しない媒体である)から構成される固体を指す。ポリマーがゲル化して完全に溶解しない場合、反応器がポリマーゲルが付着して汚れる可能性がある。
「ラダー分岐状」ポリマーという用語は、本出願に開示されるような四官能性長鎖分岐ポリマーを指し、「ラダー分岐メカニズム」という用語は、「ラダー分岐状」ポリマーがどのように形成されるかを指す。
本開示の1つ以上の実施形態では、長鎖分岐状ポリマーを合成するプロセスは、長鎖分岐を達成し、ゲル形成または反応器付着汚れを回避する。理論に拘束されることを意図するものではないが、ジエンの2つのアルケンを2つの近位ポリマー鎖にわたって協奏的に反応させることにより、反応器の付着汚れが回避されると考えられている。例えば、スキーム3に示すように、ジエンの1つのアルケンは第2のアルケンの前に反応し、第2のアルケンはポリマーストランドにあまりに多くのエチレン分子が付加される前に反応し、これにより、第2のアルケンが、反応部位にごく近接していることを取り除く。多くのエチレンモノマーが挿入される前の、ジエンの第1のアルケンの1つのポリマーへの反応およびジエンの第2のアルケンの隣接するポリマー鎖への反応は、近位ポリマー鎖へのジエンの協調的付加と称される。
スキーム3:「ラダー分岐」メカニズムとも呼ばれる、ジエンを協調的に組み込むことの表示(Pはポリマー鎖である)。
ポリマーストランドは、ポリマー、より具体的にはコポリマーの直鎖状セグメントであり、分岐接合部によって末端(複数可)で任意に接合される。例えば、スキーム1に示すように、3つのポリマーストランドの末端を結合する三官能性分岐接合部とは対照的に、四官能性分岐接合は4つのポリマーストランドの末端を接合する。
多鎖触媒とジエンとの組み合わせは、分岐の量および種類に影響を与える。本開示の実施形態は、以下のようなポリマー特性を制御することを目的とする:1)複数のジエン種の使用、2)複数の多鎖触媒種の使用、または3)複数の反応器ゾーンもしくはゾーンの勾配を含む重合環境の組み合わせ。
とはいえ、単鎖触媒を含む複数の触媒を使用することは、従来の分岐を可能にする場合がある。複数のジエン種の使用には、分岐を形成しないか、または「従来の」LCBをもたらす傾向があるジエンも含まれる。本開示によるポリマーを合成するプロセスは、従来の長鎖分岐とは異なる。「長鎖分岐」という用語は、100個を超える炭素原子を有する分岐を指す。「分岐」という用語は、三級または四級炭素原子から伸びるポリマーの一部を指す。分岐が三級炭素原子から伸びる場合、他に2つの分岐があり、それらは集合的に、それから分岐が伸びるポリマー鎖であり得る。長鎖分岐(LCB)は、スキーム1に示すように、重合プロセスで自然に発生し得る。これは、三官能性長鎖分岐を形成する、ポリマー鎖の末端および高分子ビニルの再挿入により、発生し得る。
1つ以上の実施形態では、長鎖分岐ポリマーを重合するためのプロセスは、ごく近接して少なくとも2つの活性部位を有する触媒(多鎖触媒)を含む。2つの活性部位がごく近接するために、2つの活性部位は、18.5オングストローム(Å)未満離れている可能性がある。いくつかの実施形態では、2つの活性部位は、2.5オングストローム(Å)〜18.5Å、9Å〜14Å、または約11Åの距離を含む。様々な実施形態では、長鎖分岐ポリマーを重合するためのプロセスは、多鎖触媒を含む。1つ以上の実施形態では、多鎖触媒は、2つの活性部位が、同じ金属中心上にある、少なくとも1つの金属中心を含み得る。いくつかの実施形態では、多鎖触媒は、2つの活性部位(2つのポリマー鎖)が同じ金属中心上にある金属−配位子錯体を含み得る。
X線結晶構造によると(A.D.Bond,Chem.Comm.2002,1664)、1,9−デカジエンは、10.8Åの末端炭素間距離を有する。1,9−デカジエンが「ラダー分岐」メカニズムを介して2つのポリマー鎖間にラングを形成するというデータがあるが、10個を超える炭素原子を有するα,ω−ジエンも「ラダー分岐」メカニズムを介してラングを形成し得ると考えることができる。理論に拘束されることを意図するものではないが、10個を超える炭素原子を有するα,ω−ジエンがラングを形成するかどうかの問題は、2つのポリマー鎖間の距離によって決定され得る。例えば、2つのポリマー鎖が触媒(例えば、二金属触媒、不均一触媒)の異なる金属原子に存在する場合、α,ω−ジエンは、この構造を1,15−ヘキサデカジエンに伸長させるために、追加のメチレン単位(同じC−C結合長および角度)を含む場合がある。理論に拘束されることを意図するものではないが、この16炭素類似体は、「ラダー分岐」メカニズムを介してラングを形成する可能性があると推定される。このように、ジエン、1,11−ドデカジエン(末端炭素間の距離13.3Å)、1,13−テトラデカジエン(末端炭素間の距離15.9Å)、1,15−ヘキサデカジエン(末端炭素間の距離18.5Å)を考慮することができる。いくつかの実施形態では、「ラダー分岐」メカニズムの二本鎖触媒が二金属触媒である場合、ジエンは18.5Å以下である。
現代の計算技術は、触媒の鎖間の距離を推定する方法として、既知の実験的結晶構造を高精度で再現できることはよく知られている。不均一系の場合、金属の表面濃度を推定することができ、これは、ナノメートルの2乗あたりの金属原子(M/nm2)で測定されることが多い。この表面被覆率は、均一に分散している場合、ポリマー鎖間の距離を反映するM−M距離に変換され得る、表面上のアクセス可能な金属の推定値を提供する。拡張表面の場合、1金属/nm2は、十分に所望のカットオフの範囲内にある、金属原子間の10Åの距離をもたらす。18.5Åで、0.3金属/nm2の被覆率を決定することができる。
活性部位がごく近接している、少なくとも2つの活性部位を有する触媒の例としては、二元金属の遷移金属触媒、不均一系触媒、2つの関連する活性触媒を有するジアニオン活性剤、複数の伝播ポリマー鎖を有する連結遷移金属触媒、モノアニオン基、二座モノアニオン基、三座モノアニオン基、または外部ドナーを有する単座、二座、もしくは三座モノアニオン基を含む第IV族オレフィン重合触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
表1の触媒は、以前に記載された触媒のクラスおよび企図される特定の触媒の例示的な実施形態である。表1の例は、限定することを意図したものではなく、むしろ、それらは、前述の触媒のクラスの単なる例示的かつ具体的な例である。
理論に束縛されることを意図するものではないが、このセクションで説明するメカニズムは、ジエンコモノマーを所望の条件下で重合するときに、二本鎖触媒がどのように独特の架橋分子アーキテクチャを作り出すことができるかを説明している。「ジエン」という用語は、2つのアルケンを有するモノマーまたは分子を指す。反応動力学の図解をスキーム4に示しており、このスキームでは、触媒中心が2つのポリオレフィン鎖を生成する。スキーム4は、ジエン架橋と連鎖移動の組み合わせが、ジエンの「ラダー分岐状」ポリマー構造をどのように作り出すかを示している。ジエンの「ラダー分岐状」ポリマーという用語は、長鎖分岐を指し、この長鎖分岐において、1〜12個の炭素原子を含む短鎖またはラングが2つの長鎖に一緒に結合している。示されるように、少なくとも2つのポリマー鎖部位を有する金属−配位子触媒は、2つの別個のポリマー鎖を伝播する。ジエンの1つのアルケンは、触媒の部位の1つに組み込まれ、伝播部位が近接しているため、ジエンの第2のアルケンは、次に、第2のポリマー鎖に迅速に組み込まれ、それによって、架橋またはラングを形成する。ジエンのこの連続的な添加は、ジエンの「協奏的」添加と呼ばれ、ジエンの添加が反応器内のビニル含有ポリマーの濃縮をもたらし、その後に反応する2つの近位鎖のない触媒とは区別される。「ラング」という用語は、ジエンが2つの別個のポリマーストランドに組み込まれ、それによってストランドを一緒に連結した後のジエンを指す。第1および第2のポリマーストランドは、ポリマーが別の触媒に移動するか、ポリマーが触媒から放出されるか、触媒が減滅するか、または別のジエンが添加されるまで伝播し続ける。
反応動力学
スキーム4.結果として生じる分子アーキテクチャを含む「ラダー分岐」反応動力学の実例。金属−配位子触媒は、L−M
+でまとめて表される。
理論に束縛されることを意図するものではないが、これらの提案された反応動力学に関連する分子量分布は、ジエン架橋反応が分岐の唯一の源である場合、高い分岐レベルで本質的に安定であると考えられている。分子量分布(MWD)は、重量平均分子量を数平均分子量で除算すること(Mw/Mn)によって定義される。MWDの固有の安定性は、重量平均分子量(Mw)が、高い分岐レベルでも適度に増加することを意味し、これは、MwおよびMw/Mnが中程度の四官能性分岐レベルで無限大になる従来のジエンコモノマー分岐技術とは対照的である。
ポリエチレンを合成するためのプロセスが、ジエンの「ラダー分岐状」分子アーキテクチャを有する長鎖分岐状ポリマーをどのように作り出すかを実証する目的で、数学モデルを導出する。数学モデルは、特許請求の範囲の測定基準と範囲を確立するためにも使用される。本開示で説明されるような分岐アーキテクチャの数学モデルは、提案された分岐のメカニズムの反応動力学説明から導出され得る。このモデルは、数学的単純化を容易にするためにいくつかの仮定に基づいているが、これらの仮定は、本開示の範囲を限定することを意図していない。この仮定は、コポリマーの非リビング添加の一般的な産業用途、ならびに仮定されたジエン分岐メカニズムに固有の追加の仮定に従う。一般的に行われる仮定は、(1)伝播が連鎖移動よりもはるかに速いため、平均鎖長は1つのモノマーよりもはるかに長くなること、(2)単一の純粋な触媒種のみが活性であること、(3)触媒中心がその寿命の間に多くの鎖を作製するので、鎖の寿命は反応または滞留時間のごく一部であること、(4)共重合が、組成のドリフトが無視できる場合、単独重合モデルで近似できること、を含む。
ジエンの「ラダー分岐」理論の反応動力学
一般的に行われる4つの仮定に加えて、ジエンの「ラダー分岐」理論の反応動力学に基づく4つの仮定がある。第1の仮定は、触媒中心が同じ反応動力学と統計とを有する2つの運動連鎖を同時に生成することである。第2に、ラングが、ジエンが長さを増す2つのポリマー鎖を架橋するときに形成されることである。第3に、分岐点が、2つの非架橋鎖がジエンによって架橋されるときに必ず形成されることである。最後に、MWDは影響を受けないため、架橋を形成しないジエン反応は無視されることである。
提案されたジエンの「ラダー分岐」メカニズムの反応動力学的記述には、各反応が分子アーキテクチャにどのように影響するかを記述する命名法の展開が必要である。以下のいくつかの命名要素は小分子(M、A、D)を表し、一方、他の命名要素は分子アーキテクチャ(Pn、m、Sn、Dn)を表す。反応動力学は、命名要素がどのように相互作用して分子アーキテクチャを形成するかを示す。
反応動力学的命名法
M:モノマーまたはコモノマーであり、A:連鎖移動剤種であり、D:ジエン分岐種であり、n、m:亜種の単量体繰り返し単位の数を反映する指標であり、Pn、m:n個およびm個のモノマー繰り返し単位を有する2つの非架橋伝搬ポリマーを含む触媒であり、Dn:n個のモノマー繰り返し単位を有するデッドポリマー分子であり、Sn:n個のモノマー繰り返し単位を有する架橋ポリマー分子を生成する触媒であり、Kc:運動連鎖(kinetic chain)は、連鎖移動によって作成された線形セグメントとして定義され、 Rg:ラングは鎖セグメント間のブリッジとして定義され、Br:以前は架橋されていなかった2つの分子が架橋されると、分岐が作成される。
分岐反応動力学の等式は、上記で紹介した命名法および仮定を使用して、以下に記述されている。各反応について簡単に説明し、重合反応動力学の当業者は、反応動力学スキームおよび反応速度法則を理解できる必要がある。
伝播の結果は、1つの繰り返し単位による鎖サイズの漸増増加である。伝播は、触媒中心から長さが増加する2つの分子のそれぞれについて別々に記述される。例えば、Pn、mの最初の添え字は触媒の左鎖を表し、2番目の添え字は触媒の右鎖を表す。架橋分子(Sn)の長さの増加について伝播をモデル化すると、反応に等しく利用できる各中心の左と右に2つの鎖位置があるため、速度に2の係数が表示される。
連鎖移動は、伝播と同様に、触媒の左右の位置に対して別々に記述される。非架橋種(Pn、m)の連鎖移動は、デッドポリマー分子(DnまたはDm)および空き位置(P0、mまたはPn、0)を生成する。伝播する架橋分子(Sn)が連鎖移動に関与すると、非架橋種(Pn、0またはP0、n)が生成され、n個の繰り返し単位すべてがまだ触媒に結合しているため、デッドポリマーは生成されない。連鎖移動から生じる空の位置(P0、mおよびPn、0)は、非常に迅速に再開し、伝播に関与すると想定される。各ジエンには2つの重合性基があり、各触媒中心にはジエンを組み込むための2つの位置(左と右)があるため、ジエン架橋の反応速度式には4の係数を含む。
ジエン架橋は、架橋されていない(Pn、m)種がジエンと生産的に反応する場合にのみ、四官能性分岐(br)の形成をもたらす。四官能性分岐とは、短いセグメントの両側から2つずつ、4つのポリマー鎖が延びる短いセグメントを指す。ジエンでは、四官能性分岐が予期されるタイプのLCBである。ラング(rg)は、架橋(Sn)または非架橋(Pn、m)分子のどちらを有しているかに関係なく、いずれかの触媒中心がジエンを生産的に組み込むときに生成される。鎖内環化およびペンダントビニル形成など、架橋を引き起こさないジエン反応は無視され、これらの反応動力学は非生産的であると見なされる。
反応動力学からモデルを作成するには、関与するポリマー種のタイプごとに一連のポピュレーションバランスを導出する必要がある。これらのポピュレーションバランスは、鎖長(n、m)の関数として導出され、様々なポリマー亜種の反応動力学的変化率を表す。ポピュレーションバランスは、質量作用の法則を仮定して以下に示されており、P
n、m、S
n、およびDnの記号は、n≧1およびm≧1についての亜種のモル濃度を表す。反応動力学モデルは、水素(k
trh)およびベータ水素脱離(k
b)などの他の連鎖移動反応を含めるよう拡大することができ、これは、移動項、Ω=k
traA+k
trhH
2+k
bの定義を単に拡張することによる。
式(1)、(2)、および(3)では、次のようになる:
Ω=k
traA (4)
Ψ=k
dD (5)
Φ=k
pM (6)
他の重要なポピュレーションバランスは、式(1)〜(8)から導き出すことができ、例えば、左側(L
n)および右側(R
n)の伝播するポリマー亜種の分布である。反応動力学スキームを定義する際に課せられる対称性のために、伝播するポリマー亜種の左側および右側の分布は等しい。
運動連鎖(kc)、分岐(br)、ラング(rg)などの分子属性の形成速度は、反応動力学スキームから導出された質量作用速度の法則を使用して以下に表される。簡略表記は、架橋されていない分子を有する触媒の濃度(ξ
0、0)および架橋ポリマー分子を有する触媒の濃度(μ
0)を定義するために使用される。したがって、全触媒濃度は、ξ
0、0+μ
0である。
使用可能なモデルをレンダリングする最初の工程は、関連するポリマー亜種の割合
をゼロに設定することにより、伝播するポリマー種の分布に「定常状態の仮定」を実装することである。これは、伝播する鎖の寿命が対象期間のごく一部である場合の、追加の重合モデリングにおける非常に一般的な仮定である。この種のほとんどの非リビング商業的重合では、反応器の滞留時間が少なくとも数分であるのに対し、鎖の寿命は通常1秒よりはるかに短い。次の関係は、「定常状態」の仮定を実装し、すべてのインデックスのライブレートを合計した後に導き出される。
「定常状態の仮定」は、分子アーキテクチャモデルで役立つ単純な分岐測定基準(B
c、B
n、R
c)の関係をもたらす。この特定のケースでは、即時特性は、定常状態の、十分に混合された反応器、または温度もしくは組成のドリフトが無視できるバッチ反応器などの様々な反応器に適用されるため、便利で関連性がある。即時分岐測定基準(B
c、B
n、R
c)は、連鎖移動(Ω)およびジエン架橋率(Ψ)パラメーターに空間的または時間的変動がない場合の累積平均値と同等である。
反応動力学鎖ごとの即時四官能性分岐、
ポリマー分子あたりの即時四官能性分岐、
反応動力学鎖ごとの即時ラング、
MWD平均の予測のモーメント
ポリマー種の鎖長分布のモーメントを説明するモデルは、多くの場合、反応動力学スキームから生じるポピュレーションバランスから導き出すことができる。モーメントベースのモデルは、分子量平均および多分散指数を予測するのに役立つが、一般に、二峰性、ピークMW、およびテーリングなどの、MWDの小さなニュアンスについては説明していない。モーメント法では、以下のような様々なポリマー亜種の鎖長分布モーメントを定義する。バルクポリマーモーメント(λ
i)は、バルクポリマー特性を反映し、バルクモーメントのモデルの解は、一般的に、様々なリビングポリマーモーメントの解が必要である。
リビングポリマーMWDモーメント:
バルクポリマーMWDモーメント:
熟練したポリマー反応エンジニアなら誰でも、一連のポピュレーションバランスからのモーメントモデル(等式(20)および(21))の導出を理解するであろう。主要バルクポリマーモーメントの変化率(λ
0、λ
1、λ
2)は、運動連鎖が長く、したがってΦ>>Ωという仮定を課した後に、無視できる項を除去して以下に与えられる。
これらのバルクモーメントの変化率の評価には、多くのリビングポリマー亜種モーメントが必要である。これらのライブポリマーモーメントは、「定常状態の仮定」のために代数的量であり、以下に示されている。λ
3のようなより高いバルクモーメントが予測されている場合は、追加のライブモーメントが必要とされる。
モーメント率を代数的に単純化した後、即時的な数と重量の平均鎖長(DPn、DPw)を以下に示す。もちろん、平均分子量(M
n、M
w)は、平均鎖長にg/モル単位の見かけのモノマー繰り返し単位重量を乗算したものに等しくなる。
モデルの表現は、Φ/Ωに等しい平均線形運動連鎖長DP
noなどの、いくつかの置換によってさらに単純化される。また、モデルは、即時分岐測定基準B
c、B
n、R
cのいずれかの関数として表すことができる。モデルは、運動連鎖あたりのジエン「ラダー分岐」(B
c)およびポリマー分子あたりの分岐(B
n)に関して以下に記述されている。この系については、ポリマー分子あたりの分岐が運動連鎖あたりのラングに等しい(B
n=R
c)ことが以前に示された。
数平均分子量および重量平均分子量(M
n、M
w)はまた、数重量平均線形反応動力学的鎖重量および重量平均線形反応動力学的鎖重量をM
noおよびM
woと定義した後に、反応動力学的鎖あたりのジエン「ラダー分岐」(Bc)およびポリマー分子あたりの分岐(Bn)の関数として予測することができる。
モーメントモデル(等式(20)および(21))から生じる予期しない予測は、高ジエン分岐レベルでは、最大多分散性が約4であるというものである。もちろん、この予測は理想的な共重合および単一の対称触媒系に関するものであり、いかなる非理想的なものも、多分散性を高める可能性がある。
完全なMWD曲線のモデル
時には、分子量分布曲線のポピュレーションバランスを解くことが可能である。明示的な代数的解法は、通常、この場合に想定されるように、反応速度に空間的または時間的変動がない場合にのみ利用可能である。解法は、Pn、mから導出されたさらに別の分布量Vnの定義から始まる。Vnのポピュレーションバランスは、対称性による単純化を使用して、Pn、mのポピュレーションバランスを合計することによって導出される。
長い鎖を想定しているため、すべての亜種の分布を、離散関数ではなく連続関数であるかのように扱うことが可能である。離散定常状態ポリマー種のポピュレーションバランスは、差分項が導関数に置き換えられた場合、連続変数nの微分方程式で厳密に近似することができる。例えば、Snの定常状態のポピュレーションバランスには、等式(31)に示すように導関数に置き換えられた差分項Sn−Sn−1が含まれている。
同様の置き換えが、次の一連の常微分方程式(ODE)をもたらし、これらを統合して、様々な定義済みのライブ亜種分布L(n)、S(n)、およびV(n)の鎖長分布を生成することができる。このモデルは、初期値問題として以下に要約されており、ここでは鎖長分布関数は、n=0で開始すると想定されている。分布関数のn=0の下限は、数学的な単純さのためだけに選択されており、最終的には、高重合体が形成されたときにモデル予測に大きな影響を与えない。
即時的デッドポリマー鎖長分布は、種の割合
から明らかであるように、L
nに比例する。したがって、L
nを介して、上記の微分方程式系の解は、即時デッドポリマー分布X
nを与え、連続分布X(n)は同様にL(n)に比例する。
即時的デッドポリマーの分布、
完全なMWD曲線の解法
増加するポリマー鎖長の分布関数は、常微分方程式の積分に精通している人が数値的または解析的に解くことができる。解析的解法は、代数的に複雑であるが、モーメントモデル(等式(20)および(21))と完全に一致し、ピーク位置の多峰性およびテーリングなどのMWDのニュアンスも予測するため、ここに示す。
Mathematica(商標)として知られるソフトウェアパッケージを使用して、伝播するポリマー分布関数L(N)、S(n)、およびV(n)を記述する常微分方程式の系に対する解析的解法を開発した。L(n)の解析解は、L(n)をその積分で正規化することにより、即時的なデッドポリマー分布X(n)を記述するために使用された。
X(n)の明示的な解析解は、Mathematica(商標)を使用して得ることができる。X(n)の解析解は、パラメーターBnおよびDPnoの関数として以下に記載され、解は、置換により、RcまたはBnに関して言い換えられてもよい。
Rc=Bn=Bc/(1−Bc)。(36)
鎖長分布関数X(n)は、Mathematica(商標)で与えられたRootSumの定義から次のように評価される。以下の多項式は、x1、x2、およびx3と呼ばれる3つの根を有している。多項式の3つの根のうちの2つは、Bnの可能な値の範囲にわたり複雑である。
0=1+Bn+(3+5Bn+2Bn 2)x+3(1+Bn)x2+x3(37)
根x
1、x
2、およびx
3は、即時デッド鎖長分布関数X(n)に使用されている。
X(n)の様々なモーメントが評価され、即時的な数と重量の平均鎖長(DP
n、DP
w)または分子量(M
n、M
w)が得られる。連続分布X(n)から得られた平均鎖長および重量は、長鎖重合および離散分布のために以前に与えられた即時モデル予測に等しく、両方のB
cおよびB
nに関して以下に表され、ここで、R
c=B
nである。
ポリマー反応工学の当業者は、シミュレートされたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)曲線を作成するための予測されたバルクポリマーMWDモデルの使用に精通している。このようなシミュレーションは、反応動力学およびレシピがSEC測定にどのように影響するかを関連付けるのに有用である。SEC測定の一次較正結果は、dw/dLog(M)対Log(M)の表またはプロットであり、ここで、Mは種の分子量またはサイズであり、dw/dLog(M)は、Mに相当するポリマーの相対量を示す。SECの結果が、n2X(n)対Log(M)の表またはプロットでシミュレートできることが一般的に認められており、ここでn2X(n)は、dw/dLog(M)に比例すると予想される。
図2は、ジエン「ラダー分岐」(Bc、Bn、Rc)のレベルが変化する、一連のシミュレートされたSEC曲線を示している。図2の独立変数は、プロットが普遍的であり、開始分子量とは無関係であるように、線形分子量または鎖長によってスケーリングされる。図2のゼロ分岐の場合は、よく知られている「最確」MWDであり(P.J.Flory,J.Am.Chem.Soc.1936,58,1877)、理想的な均一条件下で実行された線形付加共重合について期待されたMWDである。
ピークMW値のより詳細な分析を、MWDモデルに適用された大きな一連の分岐レベルを使用して実行した。図3は、関数分岐レベルとしての相対ピークMWのユニバーサルプロットを示している。図3は、ピークMW不感性の低い分岐領域(0<Rc<0.15)ならびにより高い分岐レジーム(Rc≧0.15)を示し、ここで、ピークMWは分岐レベルとともに着実に増加する。
代替の三官能性ジエン「ラダー分岐」メカニズムおよびモデル
二本鎖触媒が所望の条件下でジエンを組み込むときに観察される分岐およびMWDの傾向を説明することができる代替メカニズムがある。Mnはジエンの付加とともに増加することがよく観察されるが、一部の触媒とジエンとの組み合わせでは、Mwの増加をもたらすが、ジエンレベルが上昇すると、測定可能なMn増加はほとんどまたはまったくないことを実証する。一定のMnについての1つの説明は、単一のベータ水素脱離(または水素への連鎖移動)が、ジエンが両方の伝播鎖に挿入された直後に発生する傾向があり得るということである。このシナリオでは、ジエンの挿入によって三官能性分岐の作成をもたらし、純粋な形では、架橋された伝播種(Sn)が反応動力学から排除される。
反応動力学スキームは、「ジエン架橋」の代わりに次の反応を使用することにより、この代替メカニズムを考慮するように変更されている。
モデリングおよび反応動力学の当業者であるポリマー反応エンジニアは、以前と同じ一連の仮定を使用して、これらの代替反応動力学のモーメントおよびMWD関数モデルを再導出することができる。結果として得られる即時的デッド鎖長分布関数X(n)は、この三官能性分岐メカニズムについて以下に示されている。
等式(41)において、Bcは、運動連鎖あたりの分岐点として定義され、DPnoは、ジエンを含まない平均線形鎖長として定義される。反応動力学的スキームは、線形(運動)連鎖長が、ジエンによって誘発されるベータ水素脱離のために、ジエンの取り込みとともに実際に減少することを前提としている。したがって、分岐の適切な代替指標はBnであり、これは、数平均ポリマー分子あたりの分岐点として定義され、ここで、Bc=Bn/(1+Bn)である。関数X(n)は、Bnに関して容易に書き換えられる。
X(n)の積分は、即時的な数および重量の平均鎖長(DP
n、DP
w)または分子量(M
n、M
w)の結果を与える。連続分布X(n)から得られる平均鎖長および平均重量は、長鎖重合が想定される場合のモーメントモデルの予測に等しくなる。X(n)の積分は、DP
nおよびM
nが、分岐レベル(B
cまたはB
n)に対して一定であることを確認している。X(n)の積分はまた、ジエンが三官能性分岐を作成すると想定される場合に、分岐レベルによって多分散性がどのように変化すると予想されるかも示している。
多分散性(Mw/Mn)と三官能性分岐レベルの上記の関係は、いかなる分岐レベルでも不安定性または発散を示していない。最も驚くべきことは、高分岐レベルでは、多分散性が4で横ばいになると予測されることである。もちろん、この予測は理想的な共重合および対称触媒系に関するものであり、いかなる非理想的なものも、多分散性を高めると予想される。
鎖長分布関数を再び使用して、予測したMWD曲線を作成することができる。図4は、三官能性分岐のレベル(BcまたはBn)が変化する一連のシミュレートされたSEC曲線である。図4の独立変数は、プロットが普遍的であり、開始分子量とは無関係であるように、線形分子量または鎖長によってスケーリングされる。図4のゼロ分岐の場合は、よく知られている「最確」MWDであり、理想的な均一条件下で実行された線形付加共重合について期待されたものである。図5は、三官能性ジエン分岐の相対ピークMWのプロットであり、MWDピークが、0.2<Bn<0.9または0.17<Bc<0.5のおおよその範囲の中間分岐レベルで分岐レベルに最も感度が高いことを示している。
従来の分岐モデル
このセクションの目的は、様々な従来のジエン分岐およびランダムポリマーカップリングを「ラダー分岐」モデルと比較することである。この比較は、「ラダー分岐」とは対照的に、従来のジエン分岐およびランダムポリマーカップリングに固有の不安定性を実証している。ジエンの「ラダー分岐」から生じる分子アーキテクチャは、(a)従来のジエン連続撹拌槽型反応器(Dienes Continuous Stirred Tank Reactor(CSTR))分岐モデル、(b)従来のジエンセミバッチ分岐モデル、 (c)ポリマーCSTRカップリングモデル、および(d)ポリマーバッチカップリングモデルとは異なる。
a)従来のジエンCSTR分岐モデルVer Strate−1980(G.Ver Strate,C.Cozewith,W.W.Graessley,J.App.Polym.Sci.1980,25,59)、Guzman−2010(J.D.Guzman,D.J.Arriola,T.Karjala,J.Gaubert,B.W.S.Kolthammer,AIChE 2010,56,1325):
b)従来のジエンセミバッチ分岐モデル、Cozewith−1979(C.Cozewith,W.W.Graessley,G.Ver Strate,Chem.Eng.Sci.1979,34,245)、およびd)ポリマーバッチカップリングモデル、Cozewith−1979、Flory−1953(P.J.Flory,Principles of Polymer Chemistry,Cornell University Press,1953)、Tobita−1995(H.Tobita,J.Polym.Sci.B 1995,33,1191):
四官能性長鎖分岐状ポリオレフィンの特性評価
分岐の程度に応じて、核磁気共鳴(NMR)などの様々な方法が、LCBを決定するか、またはポリマー内のLCBの効果を区別するかのいずれかを行うことができる。例えば、LCBの効果は、van Gurp−Palmen解析の剪断流において観察され、また、低角周波数での剪断粘度の増加およびずり減粘挙動の強度も、LCBに起因し得る。伸長流では、LCBの効果は通常、硬化の程度または溶融物の強度および達成される最大変形で特定される。Mark−Houwinkプロット、広い分子量分布(MWD)が広く、およびg’visプロットなどの他のプロットは、LCBに関する追加情報を提供する。ビニル末端ポリマーの濃度が限られており(ポリマー鎖ごとに最大1つ)、LCBの形成を確実にするために高変換を実行する必要があるため、ポリマー内の高レベルの天然LCBを達成することは困難である。高い変換を確保するために、反応器内のエチレン濃度が低く、したがって、大量のビニル末端ポリマーを第2のポリマー鎖に再挿入することを可能にする。
ジエンをポリマー合成システムに取り込む従来のプロセスは、高分岐レベルでのゲル形成または反応器の付着汚れという根本的な欠点に悩まされている。前の段落で説明した反応動力学的モデリングは、ゲル形成のより良い理解を可能にする良好な予測結果を提供し得る。例えば、より長いポリマー鎖は、比例してより多くのペンダントビニルを有し、より多くのペンダントビニルを含有するポリマー鎖は、触媒中に再挿入されてLCBを形成する可能性が高い。したがって、より大きなポリマー鎖が優先的に再挿入されて、さらに大きなポリマー分子である四官能性分岐を形成し、ゲルの問題または不安定性は、LCBレベルが閾値に達するともたらされる。一定圧力でのセミバッチ反応器内のエチレン系ポリマーについての、従来の四官能性分岐の関数としての重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)のシミュレーションを、図1に示す。図1では、Mwが無限大になるにつれて、Mnはわずかに増加するだけである。この例では、Mwが200,000グラム/モル(g/mol)を超える数まで増加すると、ポリマーの分子量分布(MWD)が不安定になり、ゲルが形成し始める。MWDは、重量平均分子量、Mwを数平均分子量、Mnで除算すること(Mw/Mn)によって定義される。
ポリマーゲルは、本開示の目的のために、その高分岐レベルおよび/または高分子量のために相分離されたポリマー画分であると狭義に定義される。ポリマーゲルは、溶液中または溶融状態で観察でき、光学的透明性およびフィルムならびに繊維の性能などの特性を妨げる傾向がある。ポリエチレンインターポリマーゲルは、高温キシレンへのポリマーの不溶性度によって測定することができる。ゲル含有量は、GPCポリマーの回収率と相関していることが多く、したがってGPCポリマーの回収率から推定される。ポリマーゲルが形成されると、それらは反応器内に堆積し、付着汚れを引き起こし得る。
図7および図8は、従来の分岐状および「ラダー分岐状」ポリマーから予想されるMWD曲線における差異を示している。MWDデータの調査およびMWDモデルとの比較から、MWDの特性を説明する一連の測定基準が開発された。ここに示されている各MWD記述測定基準は、平均MWに依存せず、MWDの高MW部分に焦点を当てている。MWD測定基準は、スケーリングされたMWD曲線(dW/dlogM)から導出され、MWDの一次ピークまたは最高ピークは1の値を有するものとして定義される。複数のピークが同じ高さを有する場合、最も高いMWピークが一次ピークである。MWD曲線の独立変数はLog(M)であり、これは、10を底とするMの対数である。測定基準が定義され、Mw/MwoおよびMp/Mpoの関数として定義され、これは、図6、図7、図8および図9を使用して、分子またはセグメントあたりの分岐に変換することができる。GPCデータ解釈の当業者は、これらの測定基準を理解し、GPCデータからそれらを計算することができるであろう。
GPC形状測定基準のファミリーG(A/B)は、MWD曲線の右側の定義された点での勾配から計算され、ここで、S(A)およびS(B)は、一次ピークの高さのA%およびB%での一次ピークの右側のこれらの勾配の最初の出現である。点AおよびBは、MWDが「最確」であったならば、ほぼ同じ勾配を有するであろうペアとして選択される。これらの点とそれらの勾配の描写は、最確のMWDについて図10のグラフに示されている。これらの勾配ペアS(A)およびS(B)を一緒に使用して、二次導関数に似た関数G(A/B)を計算し、これは、「ラダー分岐状」MWDを従来型またはランダム分岐状MWDに区別するための有用な測定基準であることが示されるであろう。G(79/29)およびG(96/08)の値は、MWDの右側(RHS)の勾配の変化を記述し、高MW勾配から以下に定義される:
G(79/29)=(S(79)−S(29))/S(79)(48)
G(96/08)=(S(96)−S(8))/S(96)(49)
形状測定基準G(79/29)およびG(96/08)は、MWDモデルで四官能性「ラダー分岐」および従来のジエン分岐についてテストし、その結果を図11、図12、図13、図14にプロットした。これらの図は、従来の分岐では、MWが分岐に応答するにつれて着実に増加するG(79/29)およびG(96/08)値が得られることを示している。ただし、「ラダー分岐」に適用すると、これらの形状測定基準は、低レベルの分岐(低Mw/Mwo)で急激に低下し、中レベルから高レベルの分岐でゼロに近づく。「ラダー分岐状」MWDの高MW部分は、最確MWDに似ているため、これは驚くべきことではない。
図11、図12、図13、および図14は、分岐に対するG(79/29)およびG(96/08)測定基準の同様の応答を示しているが、G(96/08)測定基準は、従来のジエンの分岐に起因する高MWテーリングに対してより感度が高いことが予想される。「高MWテーリング」または「高分子量テール」という用語は、従来のGPCおよび絶対GPCによって示されるような高分子量画分を指す。触媒−ジエンのペアリングおよび実験条件に応じて、「ラダー分岐状」系に従来の分岐があり、それによって形状測定基準値が純粋な「ラダー分岐」について期待される値よりも高くなることが予想され得る。
MWD面積測定基準
「ラダー分岐状」MWDの目視検査は、分岐状ポリマーで通常見られる高MWテールの特徴的な欠如があることを示している。図16および図17は、モデルが「ラダー分岐状」ポリマーのテーリングの欠如をどのように予測するかを示している。「ラダー分岐」MWDデータは、多くの実験でテールの特徴的な欠如を示しているが、重合条件およびジエン/触媒ペアリングによってはテールが形成される可能性があることも示している。
多分散指数(Mw/Mn、Mz/Mwなど)はテーリングの既知の測定基準であるが、低MWDアーチファクトに対する感度のために好ましくない。したがって、多分散指数のより焦点を絞ったバージョンを使用して、MWDの高MW部分でのみ積分が実行される標準を開発する。Mw/Mn、Mz/Mw測定基準は、ジエン「ラダー分岐」を従来の分岐から区別することに成功し、高MWベースライン選択およびベースラインノイズに非常に感度が高い。
MWD曲線下面積は、MWD分散指数(Mw/Mn、Mz/Mwなど)の計算に必要なより高いモーメントと比較して、ベースラインの問題に比較的不感性である。したがって、MWDの非加重積分を伴う測定基準を開発することを決定した。これらMWD面積測定基準、AHIGHおよびATAILは、MWD曲線の右側に定義された領域についてGPC曲線の面積から計算される。MWD面積測定基準(AHIGHおよびATAIL)は、スケーリングされたMWD曲線(dW/logM)から導出され、MWDの一次ピークまたは最高ピークは1の値を有するものとして定義される。複数のピークが同じ高さを有する場合、最も高いMWピークが一次ピークである。MWD曲線の独立変数はLog(M)であり、これは、10を底とするMの対数である。MWD面積測定基準の両方は、MWDの高MW部分の最大勾配の点に依存する。面積測定基準を評価するために必要な量および制限を以下に列挙し、最確MWDについて図15に示す。
Smax=スケーリングされたMWDの一次ピーク(勾配の絶対値)のRHS(より高いMW側)での最大下降勾配の最初の実例
Hsmax=最大勾配の点でのスケーリングされたMWDの高さ
pt1=SmaxのLogM値
pt2=Smax接線がx軸と交差するLogM値
MWD面積測定基準は以下に定義されており、ここで、A
HIGHは、最大勾配の点の後にある低下するMWD領域の面積にすぎない。第2の面積測定基準、A
TAILは、図15に表示される小さな高MW面積であり、A
HIGHから三角形の面積を減算することによって評価される。
A
TAIL=A
HIGH−1/2(H
smax)
2/S
max(51)
面積測定基準AHIGHおよびATAILは、MWDモデルで「ラダー分岐」と従来のジエン分岐についてテストされて、結果を図16、図17、図18、および図19にプロットした。プロットは、AHIGHまたはATAILにより定義される高MW面積が、従来の分岐レベルが増加するにつれて劇的に増加することを示している。しかしながら、「ラダー分岐」モデルは、高MW面積測定基準(AHIGHまたはATAIL)が「ラダー分岐」レベルによってほとんど影響を受けないと予測している。最確MWDのためのAHIGHおよびATAILの値は、それぞれ0.07および0.015である。例示的MWDデータは、ジエンを含まない直鎖状ポリマーが、重合の非理想的な側面のために、AHIGHおよびATAILのわずかに高い値を有する傾向があることを実証するであろう。例示的データはまた、最確MWDから予想されるものを超える高MWテールを本質的に含まない、様々な高度に分岐した「ラダー分岐状」ポリマーも示している。高MW面積測定基準は、ある程度の従来の分岐を伴う場合に「ラダー分岐状」ポリマーが示し得るあるわずかなレベルの高MWテール形成の診断にもなる。測定基準ATAILが、AHIGHよりも線形MWDの非理想性にあまり影響されない。しかしながら、理論的には、AHIGHおよびATAIL測定基準は、高MWテール形成を等しく示す。
四官能性長鎖分岐状ポリオレフィン
スキーム4に記載されているように、「ラダー分岐」から生成されたポリマーは、本開示に含まれる。
実施形態では、本開示のエチレン系ポリマーは、少なくとも10の、190℃での溶融粘度比またはレオロジー比(V0.1/V100)を有し、V0.1は、0.1ラジアン/秒の角振動数で190℃でのエチレン系ポリマーの粘度であり、V100は、100ラジアン/秒の角振動数で190℃でのエチレン系ポリマーの粘度である。1つ以上の実施形態では、溶融粘度比は、少なくとも14、少なくとも20、少なくとも25、または少なくとも30である。いくつかの実施形態では、溶融粘度比は、50超、少なくとも60、または100超である。いくつかの実施形態では、溶融粘度比は、14〜200である。
「レオロジー比」および「溶融粘度比」は、190℃でのV0.1/V100で定義され、V0.1は、0.1ラジアン/秒の角振動数で190℃でのエチレン系ポリマーの粘度であり、V100は、100ラジアン/秒の角振動数で190℃におけるエチレン系ポリマーの粘度である。
1つ以上の実施形態では、本開示のエチレン系ポリマーは、0.86未満の平均g’を有し、平均g’が、トリプル検出器を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される固有粘度比である。いくつかの実施形態では、本開示のエチレン系ポリマーは、0.64〜0.86の平均g’を有する。「0.64〜0.86」に含まれるすべての個々の値および部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示されており、例えば、エチレン系ポリマーの平均g’は、0.64〜0.75、0.68〜0.79、または0.65〜0.83の範囲であり得る。1つ以上の実施形態では、平均g’は、0.65〜0.84、0.66〜0.82、または0.66〜0.80である。
いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、ピーク高さを有するトリプル検出器を使用するゲル浸透クロマトグラフィー曲線から決定される、0.035以下のG(79/29)値、ピーク高さの79%での勾配M79、およびピーク高さの29%での勾配M29を有し、G(79/29)値は、(M79−M29)/M79に等しい。「0.035以下の」に含まれるすべての個々の値および部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示されており、例えば、「0.035以下の」は、0.0超〜0.035、0.010〜0.034を含み、かつ負の値を含む。1つ以上の実施形態では、本開示のエチレン系ポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー曲線から決定される、0.030以下のG(79/29)値を有し得る。
1つ以上の実施形態では、本開示のエチレン系ポリマーの溶融粘度比は、溶融粘度比(V0.1/V100)がV0.1、0.1ラジアン/秒の角振動数で190℃でのエチレン系ポリマーの粘度、およびV100、100ラジアン/秒の角振動数で190℃でのエチレン系ポリマーの粘度によって決定される場合、弾性係数を10倍を超えてもよく、弾性係数mは[((tan(δ0.1)−tan(δ100))*1000)/(0.1−100))]であり、ここで、tan(δ0.1)は、0.1ラジアン/秒での位相角の正接であり、tan(δ100)は、100ラジアン/秒での位相角の正接である。
1つ以上の実施形態では、エチレン系ポリマーは、8秒/ラジアン以下である、190℃における弾性係数mを有することができ、ここで、mは、[((tan(δ0.1)−tan(δ100))*1000)/(0.1−100))]である。他の実施形態では、エチレン系ポリマーは、4秒/ラジアン以下である、190℃における弾性係数mを有することができる。
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーの溶融強度は、6cNを超えてもよい(レオテンス装置、190℃、2.4mm/秒2、ダイ出口からホイールの中心まで120mm、押出速度38.2秒−1、長さ30mm、直径2mm、および流入角180°のキャピラリーダイ)。いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーの溶融強度は、10cNを超えてもよい。
実施形態では、エチレン系ポリマーは、MWD面積測定基準ATAILによって定量される分子量テールを有してもよく、ATAILは、0.04以下である。「0.04以下」に含まれるすべての個々の値および部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示されている。例えば、いくつかの実施形態では、本開示のエチレン系ポリマーのATAILは、トリプル検出器を使用するゲル透過クロマトグラフィーによって決定されるとき、0超かつ0.03以下である。
実施形態では、エチレン系ポリマーのMwは、トリプル検出器を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されるとき、800,000ダルトン以下であり得る。1つ以上の実施形態では、エチレン系ポリマーのMwは、400,000ダルトン以下であり得る。
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーは、1.20超のMp/Mp0有してもよく、ここで、Mpは、従来のゲル浸透クロマトグラフィーから決定されるエチレン系ポリマーのピーク分子量であり、Mp0は、ポリエンコモノマーを有しないエチレン系ポリマーの初期ピーク分子量である。
実施形態では、エチレン系ポリマーは、1.20超のMw/Mw0を有し、ここで、Mwは、ゲル透過クロマトグラフィーによって取得されるエチレン系ポリマーのGPC曲線から決定されるエチレンベースのポリマーの重量平均分子量である。Mw0は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる比較のエチレン系ポリマーの初期重量平均分子量である。比較のエチレン系ポリマーは、定義された重合反応条件下で、エチレンモノマーと、存在する場合、少なくとも1つのポリエンコモノマーなしでエチレン系ポリマー中に存在するすべてのC3〜C14コモノマーとの重合の反応生成物である。
各Mw0およびMp0は、前述のように、重合中に反応器にジエンを添加しないポリマー樹脂の測定基準である。ジエンの各後続の添加は、測定基準MwまたはMpがそれから決定され得るポリマー樹脂を生成する。反応器に取り込まれるジエンの量は、反応器内の他の反応物と比較して少ない。したがって、ジエンの添加は、反応器内のコモノマー、エチレン、および溶媒の総量に影響を及ぼさない。
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.1〜3.0のgpcBR分岐指数を有する。「0.10〜3.00」に含まれるすべての個々の値および部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示されており、例えば、エチレン系ポリマーは、0.10〜2.00、0.10〜1.00、0.15〜0.65、0.20〜0.75、または0.10〜0.95のgpcBR分岐指数を含んでもよい。
前の段落に記載される長鎖分岐重合プロセスは、オレフィン、主にエチレンおよびプロピレンの重合に利用される。いくつかの実施形態では、重合スキーム中に単一種のオレフィンまたはα−オレフィンのみが存在し、本質的に、少量の取り込まれたジエンコモノマーを含むホモポリマーであるものを形成する。しかしながら、追加のα−オレフィンを重合手順に組み込んでもよい。追加のα−オレフィンコモノマーは、典型的には、20個以下の炭素原子を有する。例えば、α−オレフィンコモノマーは、3〜10個の炭素原子、または3〜8個の炭素原子を有し得る。例示的なα−オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、およびエチリデンノルボルネンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、1つ以上のα−オレフィンコモノマーは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、および1−オクテンからなる群から、または代替的に1−ヘキセンおよび1−オクテンからなる群から選択することができる。
長鎖分岐状ポリマー、例えばエチレンのホモポリマーおよび/またはインターポリマー(コポリマーを含む)ならびに任意に、α−オレフィンなどの1つ以上のコモノマーは、エチレン由来の単位を少なくとも50重量パーセント含み得る。「少なくとも50重量パーセントから」によって包含される個々の値および部分範囲はすべて、別個の実施形態として本明細書に開示され、例えば、エチレン系ポリマー、エチレンのホモポリマーおよび/またはインターポリマー(コポリマーを含む)、および任意にα−オレフィンなどの1つ以上のコモノマーは、エチレン由来の単位を少なくとも60重量パーセント、エチレン由来の単位を少なくとも70重量パーセント、エチレン由来の単位を少なくとも80重量パーセント、エチレン由来の単位を50〜100重量パーセント、またはエチレン由来の単位を80〜100重量パーセント含み得る。
エチレン系ポリマーのいくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、追加のα−オレフィンを含む。エチレン系ポリマー中の追加のα−オレフィンの量は、50モルパーセント(mol%)以下であり、他の実施形態では、追加のα−オレフィンの量は、少なくとも0.01mol%〜25mol%を含み、さらなる実施形態では、追加のα−オレフィンの量は、少なくとも0.1mol%〜10mol%を含む。いくつかの実施形態では、追加のα−オレフィンは1−オクテンである。
いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン由来の単位を少なくとも50モルパーセント含んでもよい。少なくとも90モルパーセントからのすべての個々の値および部分範囲は本明細書に含まれ、別個の実施形態として本明細書に開示される。例えば、エチレン系ポリマーは、エチレン由来の単位を少なくとも93モルパーセント、単位を少なくとも96モルパーセント、エチレン由来の単位を少なくとも97モルパーセント、または代替的に、エチレン由来の単位を90〜100モルパーセント、エチレン由来の単位を90〜99.5モルパーセント、エチレン由来の単位を97〜99.5モルパーセント含み得る。
長鎖分岐状ポリマーのいくつかの実施形態では、追加のα−オレフィンの量は、50%未満であり、他の実施形態は、少なくとも1モルパーセント(mol%)〜20mol%を含み、さらなる実施形態では、追加のα−オレフィンの量は、少なくとも5mol%〜10mol%を含む。いくつかの実施形態では、追加のα−オレフィンは1−オクテンである。
任意の従来の重合プロセスを用いて長鎖分岐状ポリマーを生成してもよい。かかる従来の重合プロセスとしては、1つ以上の従来の反応器、例えばループ反応器、等温反応器、流動床気相反応器、撹拌槽型反応器、バッチ反応器などの並列、直列、またはそれらの任意の組み合わせを使用する、溶液重合プロセス、気相重合プロセス、スラリー相重合プロセス、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば単一ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、そこで、エチレン、および任意に1つ以上のα−オレフィンは、本明細書に記載の触媒系、および任意に1つ以上の共触媒の存在下で重合される。別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、そこで、エチレン、および任意に1つ以上のα−オレフィンは、本開示および本明細書に記載の触媒系および任意に1つ以上の他の触媒の存在下で重合される。本明細書に記載の触媒系は、任意に1つ以上の他の触媒と組み合わせて、第1の反応器または第2の反応器において使用することができる。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、そこで、エチレン、および任意に1つ以上のα−オレフィンは、本明細書に記載の触媒系の存在下で両方の反応器において重合される。
別の実施形態では、長鎖分岐状ポリマーは、単一反応器系、例えば単一ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、そこで、エチレン、および任意に1つ以上のα−オレフィンは、本開示内に記載される触媒系および前の項に記載される任意に1つ以上の共触媒の存在下で重合される。いくつかの実施形態では、長鎖分岐状ポリマーを生成するための重合プロセスは、触媒系の存在下でエチレンと少なくとも1つの追加のα−オレフィンとを重合することを含む。
長鎖分岐ポリマーは、1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。かかる添加剤としては、帯電防止剤、色増強剤、染料、潤滑剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。エチレン系ポリマーは、任意の量の添加剤を含有し得る。エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマーおよび1つ以上の添加剤の重量に基づいて、そのような添加剤の合計重量で約0〜約10パーセント低下する可能性がある。エチレン系ポリマーは、充填剤をさらに含み得、その充填剤としては、有機または無機充填剤を挙げることができるが、これらに限定されない。長鎖分岐状ポリマーは、エチレン系ポリマーとすべての添加剤または充填剤との合計重量に基づいて、約0〜約20重量パーセントの、例えば炭酸カルシウム、タルク、またはMg(OH)2などの充填剤を含んでもよい。エチレン系ポリマーは、1つ以上のポリマーとさらに配合されてブレンドを形成することができる。
いくつかの実施形態では、長鎖状ポリマーを生成するための重合プロセスは、2つのポリマー生成部位を有する触媒の存在下でエチレンと少なくとも1つの追加のα−オレフィンとを重合することを含み得る。2つのポリマー生成部位を有するこのような触媒から得られる長鎖分岐状ポリマーは、ASTM D792(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に従って、例えば、0.850g/cm3〜0.960g/cm3、0.880g/cm3〜0.920g/cm3、0.880g/cm3〜0.910g/cm3、または0.880g/cm3〜0.900g/cm3の密度を有し得る。
別の実施形態では、長鎖重合プロセスから得られる長鎖分岐状ポリマーは、5〜100のメルトフロー比(I10/I2)を有し、ここで、メルトインデックスI2は、ASTM D1238(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に従って、190℃および2.16kgの荷重で測定され、メルトインデックスI10は、ASTM D1238に従って、190℃および10kgの荷重で測定される。他の実施形態では、メルトフロー比(I10/I2)は、5〜50であり、他では、メルトフロー比は、5〜25であり、他では、メルトフロー比は、5〜9である。
いくつかの実施形態では、長鎖重合プロセスから得られる長鎖分岐状ポリマーは、1〜20の分子量分布(MWD)を有してもよく、MWDは、Mw/Mnとして定義され、Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量である。他の実施形態では、触媒系から得られたポリマーは、1〜10のMWDを有する。別の実施形態は、1〜3のMWDを含み、他の実施形態は、1.5〜2.5のMWDを含む。
並列式重合反応器(PPR)
小規模溶液重合の例は、5mLの総液量、150 psigの一定のエチレン圧力、および120℃の重合温度を使用して、15mLバイアルで実行される。5mLの液量は、500nmolのMMAO−3A、トルエン中の触媒および活性剤溶液を含有する0.84mLのコモノマー混合物からなり、5mLの液量を達成するのに十分なIsopar−Eが添加される。空の反応バイアルを80℃にて20±3psigのH2で同時に事前加圧することによって、水素(H2)を反応混合物に添加し、これにより、いかなるジエンについての実験も、同じH2負荷で実行されるようになる。すべての液量は室温で分注され、5mLの総容量に対して容量的に添加された。触媒は、トルエン中の5mM溶液として反応混合物に最後に添加され、これは、1.5当量の共触媒A(メチルジ(テトラデシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)によって別々に活性化された。コモノマー溶液は、主に1−オクテンと少量(0〜6%)のジエン種の体積分率で構成されていた。重合は約30分を超えない時間実行され、CO添加とそれに続くバイアル減圧によってクエンチされた。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(従来のGPC)
クロマトグラフィーシステムは、Precision Detectors(現在はAgilent Technologies)二角レーザ光散乱(LS)検出器モデル2040に結合された内部IR5赤外検出器(IR5)および4−キャピラリー粘度計(DV)を装備した、PolymerChar GPC−IR(Valencia、Spain)高温GPCクロマトグラフからなる。すべての光散乱測定について、15度角を測定目的で使用する。オートサンプラーオーブン区画を摂氏160度に設定し、カラム区画を摂氏150度に設定した。使用したカラムは、4つのAgilent「Mixed A」30cm、20ミクロンの直線状混床式カラムであった。使用したクロマトグラフィー溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有した。溶媒源は、窒素注入された。使用した注入体積は200マイクロリットルであり、流速は1.0ミリリットル/分であった。
GPCカラムセットの較正は、580〜8,400,000の範囲の分子量を有する少なくとも20の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて実施し、個々の分子量の間に少なくとも10の間隔を空けて、6つの「カクテル」混合物中に該標準を配置した。標準は、Agilent Technologiesから購入した。1,000,000以上の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.025グラムで、また1,000,000未満の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.05グラムでポリスチレン標準を調製した。ポリスチレン標準を穏やかに撹拌しながら摂氏80度で30分間溶解させた。ポリスチレン標準のピーク分子量を、方程式52を使用してポリエチレン分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に説明されているように)。:
(52)
式中、Mは分子量であり、Aは0.4315の値を有し、Bは1.0に等しい。
第3次と第5次との間の多項式を使用して、それぞれのポリエチレン同等較正点にあてはめた。NIST標準物質NBS 1475が52,000Mwで得られるように、カラム分解能およびバンドの広がり効果を補正するため、Aに対してわずかな調整(約0.415〜0.44)を行った。
GPCカラムセットの合計プレートカウントは、エイコサン(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製され、穏やかに撹拌しながら20分間溶解した)を用いて行った。プレートカウント(方程式53)および対称性(方程式54)を、以下の式に従って、200マイクロリットル注入で測定した:
(53)
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大高さであり、1/2高さはピーク最大値の1/2の高さである。
(54)
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10の高さはピーク最大値の1/10の高さであり、リアピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、フロントピークはピーク最大値よりも早い保持体積でのピーク前部を指す。クロマトグラフィーシステムのプレート計数は、24,000超となるべきであり、対称性は、0.98〜1.22の間となるべきである。
試料はPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動で調製され、2mg/mlを試料の標的重量とし、PolymerChar高温オートサンプラーを介して、予め窒素をスパージしたセプタキャップ付バイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。試料を、「低速」振とうしながら摂氏160度で2時間溶解した。
M
n(GPC)、M
w(GPC)、およびM
z(GPC)の計算は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、等間隔の各データ収集点(i)においてベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、および点(i)に関する狭い標準較正曲線から得られたポリエチレン当量分子量を使用して、等式55〜57に従って、PolymerChar GPC−IRクロマトグラフの内部IR5検出器(測定チャネル)を使用して得られたGPC結果に基づいた。
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC−IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(FM)は、試料中のそれぞれのデカンピーク(RV(FM試料))を狭い標準較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークと整合することによって各試料のポンプ流量(流量(見かけ))を直線的に較正するために使用された。こうして、デカンマーカーピークの時間におけるいかなる変化も、流量(流量(有効))における線形シフトに関連すると推測される。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、最小二乗フィッティングルーチンを使用して、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に適合させる。次に、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を求める。流量マーカーピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に対する)有効流量は式58のように計算される。流量マーカーピークの処理は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアにより行われた。許容される流量補正は、有効流量が見かけ流量の+/−2%以内であるべきである。
流量(有効)=流量(見かけ)*(RV(FM較正済み)/RV(FM試料))(58)
トリプル検出器GPC(TDGPC)(絶対GPC)
クロマトグラフィーシステム、分析条件、カラムセット、カラム較正および従来の分子量モーメントの計算および分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に記載されている方法に従って実施された。
粘度計および光散乱検出器のIR5検出器からのオフセットの判定については、マルチ検出器オフセットの決定のための体系的なアプローチが、Balke,Mourey,et.al.(Mourey and Balke,Chromatography Polym.Chpt12,(1992))(Balke,Thitiratsakul,Lew,Cheung,Mourey,Chromatography Polym.Chpt 13、(1992))によって公開されたものと一致した様式で行われ、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して、広いホモポリマーポリエチレン標準(Mw/Mn>3)からのトリプル検出器ログ(MWおよびIV)の結果を、狭い標準較正曲線からの狭い標準カラム較正の結果に最適化する。
絶対分子量データは、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して、Zimm(Zimm,B.H.,J.Chem.Phys.,16,1099(1948))およびKratochvil(Kratochvil,P.,Classical Light Scattering from Polymer Solutions,Elsevier,Oxford,NY(1987))によって公開されたものと一致する様式で得た。分子量の判定において使用される全体的な注入濃度は、好適な直鎖状ポリエチレンホモポリマー、または既知の重量平均分子量のポリエチレン標準のうちの1つから導出される、質量検出器面積および質量検出器定数から取得する。(GPCOne(商標)を使用して)計算される分子量は、以下に述べるポリエチレン標準物のうちの1つ以上から導出される光散乱定数、および0.104の屈折率濃度係数、dn/dcを用いて得る。一般に、(GPCOne(商標)を使用して決定された)質量検出器応答(IR5)および光散乱定数は、約50,000g/モルを超える分子量を有する直鎖状標準物から決定することができる。(GPCOne(商標)を使用して決定された)粘度計の較正は、製造業者によって記載された方法を使用して、または代替的に、標準物質(Standard Reference Materials(SRM))1475a(国立標準技術局(National Institute of Standards and Technology(NIST)から入手可能)などの好適な直鎖状標準物の公開された値を使用することによって、達成することができる。較正標準に関する特定の粘度面積(DV)および注入された質量を、その固有粘度に関連付ける(GPCOne(商標)を使用して得られる)粘度計定数を計算する。クロマトグラフィー濃度は、第2のウイルス係数効果(分子量に対する濃度効果)への対処を排除するのに十分に低いと仮定される。
絶対重量平均分子量(M
w(Abs))は、(GPCOne(商標)を使用して)光散乱(LS)面積積分クロマトグラム(光散乱定数を要素として含める)を質量定数および質量検出器(IR5面積から回収した質量で除算することによって得られる。分子量および固有粘度の応答は、信号対雑音比が低くなるクロマトグラフィーの端で線形に外挿される(GPCOne(商標)を使用)。他のそれぞれのモーメント、M
n(Abs)およびM
z(Abs)は、等式59〜60に従って次のように計算される:
(60)
g’
ave値
g’は、分岐ポリマーの粘度を同じMWでの直鎖状ポリマーの粘度で除算したものとして定義される。
g’aveまたは平均g’は、g’の重量平均値である(B.H.Zimm,W.H.Stockmayer,J.Chem.Phys.1949,17,1301)。
動的機械的スペクトル(または小角度振動剪断)
複素粘度(η*)、弾性率(、G’G’’)、タンデルタ、および位相角(δ)は、190℃で0.1〜100ラジアン/秒の振動数範囲で動的振動数掃引試験によって得られる。歪みのレベルは、190℃で100ラジアン/秒の歪み掃引試験によって特定される線形粘弾性レジーム内に設定される。試験トは、TA Instrumentsによる歪み制御レオメーターARES−G2で直径25mmのステンレス鋼平行平板を使用して実行される。厚さ3.3mmの試料を絞り、実際の試験の前に2段階でトリミングする。最初の工程では、試料を2.5分間溶融し、3mmのギャップに絞り、トリミングする。190℃でさらに2.5分間浸漬した後、試料を2mmのギャップまで絞り、余分な材料をトリミングする。この方法は、熱平衡を可能にするために、さらに5分の遅延を組み込む。試験は、窒素雰囲気下で実行する。
三重検出器GPC(TDGPC)によるgpcBR分岐指数
gpcBR分岐指数は、前述の光散乱、粘度、および濃度検出器をまず較正することによって決定された。その後、光散乱、粘度計、および濃度クロマトグラムからベースラインを差し引いた。その後、屈折率クロマトグラムからの検出可能なポリマーの存在を示す光散乱および粘度計クロマトグラムにおける低分子量保持体積範囲のすべての積分を確保するために、積分ウィンドウを設定した。その後、直鎖状ポリエチレン標準物を使用して、ポリエチレンおよびポリスチレンのマルク−ホウインク定数を確立した。定数を得ると、2つの値を使用して、方程式(62)および(63)に示すように、溶出体積の関数としてのポリエチレン分子量およびポリエチレン固有粘度についての2つの線形基準従来較正を構築した。
gpcBR分岐指数は、Yau,Wallace W.,“Examples of Using 3D−GPC−TREF for Poly−olefin Characterization,”Macromol.Symp.,2007,257,29−45に記載のように、長鎖分岐を特性評価するための堅固な方法である。この指数は、ポリマー検出器面積全体に有利な、g’値の決定および分岐頻度計算において従来使用されている「スライスごとの」TDGPC計算を回避する。TDGPCデータから、ピーク面積法を使用して、光散乱(LS)検出器によって試料バルク絶対重量平均分子量(M
w、絶対値)を得ることができる。この方法は、伝統的なg’決定で必要とされる光散乱検出器シグナルの濃度検出器シグナルに対する「スライスごとの」比を回避する。TDGPCでは、方程式(64)を使用して独立して試料固有粘度も得た。この場合の面積計算は、全体的な試料面積として、検出器ノイズおよびTDGPC設定によってベースラインおよび積分限界に対して引き起こされる変動にあまり高感度ではないため、より高い精度を提供する。さらに重要なことに、ピーク面積計算は、検出器体積オフセットの影響を受けなかった。同様に、高精度の試料固有粘度(IV)を、等式(64)の面積法によって得た。
等式(64)中、DPiは、オンライン粘度計から直接監視される差圧シグナルを表す。gpcBR分岐指数を決定するために、試料ポリマーの光散乱溶出面積を使用して、試料の分子量を決定した。試料ポリマーの粘度検出器溶出面積を使用して、試料の固有粘度(IVまたは[η])を決定した。最初に、溶出体積の関数としての分子量および固有粘度の両方について、従来の較正(「cc」)を使用して、SRM1475aまたは等価物などの直鎖状ポリエチレン標準試料の分子量および固有粘度を決定した。
等式(66)を使用して、gpcBR分岐指数を決定した。
式中、[η]は、測定された固有粘度であり、[η]
ccは、従来較正(またはconv GPC)からの固有粘度であり、Mwは、測定された重量平均分子量であり、M
w、ccは、従来の較正の重量平均分子量である。光散乱(LS)による重量平均分子量は、通常、「絶対重量平均分子量」または「M
w(絶対値)」と呼ばれる。従来のGPC分子量較正曲線(「従来の較正」)を使用することによるM
w,ccは、「ポリマー鎖骨格分子量」、「従来の重量平均分子量」、および「M
w(従来)」と呼ばれることが多い。
「ccまたは従来」の下付き文字を有するすべての統計値は、それらそれぞれの溶出体積、前述の対応する従来の較正、および濃度(Ci)を使用して決定される。下付き文字のない値は、質量検出器、LALLS、および粘度計面積に基づく測定値である。KPEの値は、線形基準試料がゼロのgpcBR測定値を有するまで反復して調整される。例えば、この特定の場合において、gpcBRを決定するためのαおよびログKの最終値は、ポリエチレンではそれぞれ0.725および−3.355、ポリスチレンではそれぞれ0.722および−3.993である。かつては、前述の手順を使用して、Kおよびαの値が決定されていた。
以前は、分岐試料を使用して手順を繰り返していた。最良の「cc」較正値として最終的なマルク−ホウインク定数を使用して、分岐試料を分析した。
gpcBRの解釈は、単純である。直鎖状ポリマーの場合、LSおよび粘度計によって測定される値が従来の較正標準に近いため、gpcBRはゼロに近くなる。分枝ポリマーの場合、測定されるポリマー分子量が計算されるMw,ccよりも高く、また計算されるIVccが測定されるポリマーIVよりも高いため、特に高レベルの長鎖分枝では、gpcBRがゼロよりも大きくなる。実際に、gpcBR値は、ポリマー分岐の結果としての分子サイズ収縮効果による分数IV変化率を表す。0.5または2.0のgpcBR値は、等価重量の直鎖状ポリマー分子に対する、それぞれ50%および200%のレベルでのIVの分子サイズ収縮効果を意味する。これらの特定の例では、伝統的な「g’指数」および分岐頻度計算と比較して、gpcBRを使用する利点は、gpcBRのより高い精度によるものである。gpcBR指数決定に使用されるすべてのパラメーターは、良好な精度で得られ、濃度検出器からの高分子量での低TDGPC検出器応答による悪影響を受けない。検出器体積の整列の誤差も、gpcBR指数決定の精度には影響しない。
バッチ反応器重合手順
バッチ反応器の重合反応は、2LのParr(商標)バッチ反応器内で行われる。反応器は、電気加熱マントルによって加熱し、冷却水を含有する内部蛇管冷却コイルによって冷却した。反応器および加熱/冷却システムの両方は、Camile(商標)TGプロセスコンピュータによって制御および監視される。反応器の底部には、反応器の内容物をステンレス鋼のダンプポットに移すダンプ弁が取り付けられている。ダンプポットには、触媒失活溶液(典型的には、5mLのIrgafos/Irganox/トルエン混合液)が事前に充填されている。ポットおよびタンクの両方を窒素でパージして、ダンプポットを30ガロンのブローダウンタンクに通気する。重合または触媒補給のために使用したすべての溶媒を溶媒精製カラムに通過させて、重合に影響を及ぼし得る一切の不純物を除去する。1−オクテンおよびIsoparEを、A2アルミナを含有する第1のカラム、Q5を含有する第2のカラムの2つのカラムに通す。エチレンを、A204アルミナおよび4
モレキュラーシーブを含有する第1のカラム、Q5反応材料を含有する第2のカラムの2つのカラムに通す。移送に使用されるN
2を、A204アルミナ、4
モレキュラーシーブ、およびQ5を含有する単一のカラムに通す。
反応器は、反応器の負荷に応じて、IsoparE溶媒、および/または1−オクテンを含有し得るショットタンクからまず装填する。ショットタンクは、ショットタンクに取り付けたラボスケールを使用して負荷設定点まで充填する。液体供給物を添加した後、反応器を重合温度設定点に加熱する。エチレンが使用される場合、反応圧力設定点を維持するための反応温度で、エチレンが反応器に添加される。添加されるエチレンの量は、マイクロモーション流量計(Micro Motion)によって監視される。いくつかの実験では、150℃での標準条件は、585gのIsoparE中の13gのエチレン、15gの1−オクテン、240psiの水素であり、150℃での標準条件は、555gのIsoparE中の15gのエチレン、45gの1−オクテン、200psiの水素である。
プロ触媒および活性剤を適量の精製したトルエンと混合して、所望のモル濃度の溶液を得る。プロ触媒および活性化剤は、不活性グローブボックス内で処理され、シリンジ内に引き込まれ、触媒ショットタンク内に加圧移送される。シリンジを5mLのトルエンで3回すすぐ。触媒が添加された直後に、実行タイマーが始まる。エチレンを使用する場合は、それは、反応器内の反応圧力設定点を維持するためにカミールによって添加される。重合反応を10分間実行し、次いで、撹拌機を停止し、下部のダンプ弁を開放して、反応器の内容物をダンプポットに移す。ダンプポットの内容物をトレイ中に注ぎ、ラボフード内に置き、そこで、溶媒を一晩蒸発させる。残存するポリマーを含有するトレイは、真空オーブンに移され、真空下で140℃に加熱されて、いずれの残存する溶媒も除去する。トレイが周囲温度に冷却された後、効率を測定するためにポリマーの収量が測定され、ポリマー試験に供された。
様々な多鎖触媒および様々なジエンの存在下での四官能性分岐
小規模重合の結果は表3〜表7にまとめられている(実験は並列式重合反応器、PPRで行われる)。表3〜表7に記録されたポリマーの結果は、多鎖触媒および単鎖触媒対照の存在下でエチレン、オクテン、およびジエン種を重合することによってもたらされた。表3〜表7の各表のポリマーの結果は、様々な触媒とジエン種との生成物であった。表3の結果は、比較触媒C1(「Comp.Cat.C1」)、触媒1(「Cat.1」)、および触媒2(「Cat.2」)の存在下での、3−メチル−1,4−ペンタジエン、エチレン、およびオクテンのポリマー生成物に基づいている。表4の結果は、Cat.2および触媒4(「Cat.4」)の存在下での、1,4−ペンタジエン、エチレン、およびオクテンのポリマー生成物に基づいている。表5の結果は、Comp.Cat.C1、触媒3(「Cat.3」)、触媒5(「Cat.5」)、および触媒6(「Cat.6」)の存在下での、1,5−ヘキサジエン、エチレン、およびオクテンのポリマー生成物に基づいている。表6の結果は、Comp.Cat.C1、Cat6、Cat.2、およびCat.4の存在下での、1,7−オクタジエン、エチレン、およびオクテンのポリマー生成物に基づいている。表7の結果は、Cat.3、Cat.5、Cat.6、およびCat.2の存在下での、1,9−デカジエン、エチレン、およびオクテンのポリマー生成物に基づいている。(Figueroa,R.;Froese,R.D.;He,Y.;Klosin,J.;Theriault,C.N.;Abboud,K.A.Organometallics 2011,30,1695−1709,Froese,R.D.;Jazdzewski,B.A.;Klosin,J.;Kuhlman,R.L.;Theriault,C.N.;Welsh,D.M;Abboud,K.A.Organometallics 2011,30,251−262)
シリーズ3.Cで単鎖触媒((Comp.Cat.C1)は、他の触媒と比較した場合、ポリマー中の2倍以上のオクテンレベルによって示されるように、増加した量のα−オレフィンを組み込んだ。シリーズ3.Cで単鎖触媒((Comp.Cat.C1)を使用する場合、添加されたジエンの様々なレベルは、ポリマーMWDに有意な影響を与えなかった。しかし、表3から表7の二本鎖の触媒にジエンを添加することは、ジエンレベルが増加するにつれて、MwおよびMpのより高い値をもたらし、多くの場合、高分子量テールの形成の証拠はなかった。
ジエンを含有するそれぞれの実施例では、反応器に取り込まれるジエンの量は、反応器内の他の反応物と比較して少なかった。したがって、ジエンの添加は、反応器に添加されたコモノマー、エチレン、および溶媒の量に影響を及ぼさなかった。
実施例1−3−メチル−1,4−ペンタジエンを用いた四官能性分岐
実施例2−1,4−ペンタジエンを用いた四官能性分岐
図20は、ジエンの量が増加するにつれてのピーク重量平均分子量のシフトを示している。図20では、表4に記録されているP2.4.1〜P2.4.4シリーズが、LogMとしての関数としてdWdLogMとしてプロットされており、これはGPCプロットである。ジエンの体積分率が増加すると、GPCプロットのピークが右にシフトした。
実施例3−1,5−ヘキサジエンを用いた四官能性分岐
実施例4−1,7−オクタジエンを用いた四官能性分岐
バッチ反応器からの分岐状の実施例
2つの分岐した例の分子量分布(MWD)曲線およびDSCを調べ、線状試料と比較した。
バッチ反応器実施例1
表8〜表12では、比較直鎖状ポリマー試料(1C)のポリマー特性を、バッチ反応器からの分岐状ポリマーと比較した。重合反応は、555gのISOPAR−E
(商標)および200psiの水素圧(ΔH
2)で、150℃の温度で起こった。エチレン圧力は、0.3μモルの触媒8、0.36μモルの共触媒A(メチルジ(テトラデシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)、および10μモルのMMAO−3Aの存在下で150psiで一定に保たれた。
図21は、GPCによって決定された、シリーズ8.C(直鎖状)および8.1(分岐状)のポリマーの従来の分子量分布曲線である。分岐状ポリマー、シリーズ8.1の曲線の形状は、直鎖状ポリマーと比較して変更されている。さらに、分子量曲線のピークが右にシフトしている。
図22は、GPCによって決定された、シリーズ8.C(直鎖状)および8.1(分岐状)のポリマーの絶対分子量分布曲線である。
図23は、シリーズ8.1である分岐状試料の伸長粘度固定具である。
分岐状の実施例8.1の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表9に記録した。0.1ラジアン/秒での粘度は27,457Pasと計算され、100ラジアン/秒での粘度は974Pasと測定され、28.2のレオロジー比(V0.1/V100)をもたらした。
弾性係数mは、[((tan(δ
0.1)−tan(δ
100))*1000)/(0.1−100))]である。tan(δ
0.1)は、0.1ラジアン/秒における位相角の正接であり、tan(δ
100)は、100ラジアン/秒における位相角の正接である。実施例8.1の分岐状ポリマーのtan(δ
0.1)は1.6であり、実施例1のtan(δ
100)は、0.8であって、これは190℃で7.9の弾性係数をもたらす。
比較例8.Cの動的機械的スペクトルを測定し、結果を表10に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は892Pasと計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は526Pasと測定され、1.7のレオロジー比(V0.1/V100)をもたらした。比較直鎖状ポリマー、8.Cのtan(δ0.1)は53.3であり、tan(δ100は2.0であって、これは、190℃で513.4の弾性率をもたらす。
直鎖状比較ポリマー樹脂のレオロジー比は、分岐した実施例、シリーズ8.1のレオロジー比と比較した場合、非常に低かった(1.7)。分岐状の実施例1、シリーズ8.1の増加したレオロジー比および低い弾性係数は、非線形ポリマー挙動を示している。強いずり減粘および弾性挙動は、絡み合った長鎖分岐ポリマーを例示することが多い。
図24は、分岐した実施例1、シリーズ8.1のレオテンス装置によって得られた溶融強度である。
分岐状の実施例2
表11では、ジエンが1,9−デカジエンである分岐状ポリエチレンを合成した。分岐状ポリマーを、555gのIsoparEおよび200psiの水素圧(ΔH
2)で、150℃の温度で重合させた。エチレン圧力は、0.3μモルの触媒7、0.36μモルの共触媒A、および10μモルのMMAO−3Aの存在下で150psiで一定に保たれた。
図25は、GPCによって決定された、シリーズ11.C(直鎖状)および11.1(分岐状)の分岐状の実施例2のポリマーの従来の分子量分布曲線である。図26は、光散乱トリプル光検出器によって決定された、シリーズ11.C(直鎖状)および11.1(分岐状)のポリマーの絶対分子量分布曲線である。分岐状ポリマー、シリーズ11.1の曲線の形状は、直鎖状ポリマーと比較して変更されている。
図27は、シリーズ11.1の分岐状の実施例2の伸長粘度固定具によって得られた伸長粘度である。
比較例の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表12に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は17,643Pasと計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は857Pasと測定され、20.6のレオロジー比(V 0.1/V100)をもたらした。実施例2、シリーズ11.1の分岐状ポリマーのtan(δ0.1)は2.0であり、tan(δ100)は、1.0であって、これは190℃で10.4の弾性係数をもたらす。
図28は、分岐状の実施例2、シリーズ11.1のレオテンス装置によって得られた溶融強度である。
様々な条件下での分岐研究
四官能性の「ラダー分岐」を、エチレン圧力の増加、オクテンモノマーの増加、開始分子量の増加、開始分子量の減少、様々なジエン、ジエン量の増加または減少、および様々な多鎖触媒などの様々な条件下で研究した。
実施例1:様々なジエンおよびジエンの量
表13〜表22の実施例は、同一の条件下で調製され、150℃の温度で触媒7の存在下で重合されたものであった。含まれる条件は、585gのIsoparE、15gの1−オクテン、240psiの水素圧、150psiのエチレン圧力、0.3μモルの触媒7、0.36μモルの共触媒A、および10μモルのMMAO−3Aであった。
表13の結果は、重合反応にジエンが存在する場合、高分子量テールなしで分子量が増加することを示している。
これらの重合条件を利用して高分子量ポリマーを生成すると、ジエンが重合反応に取り込まれたときに発生する四官能性の「ラダー分岐」が生じた。重合反応は、高分子量で四官能性の「ラダー分岐」を有するポリマー樹脂をもたらした。
ホモポリマー(少量のジエンを含む)を製造するために使用される重合反応にジエンを取り込むと、分子量(四官能性の「ラダー分岐」)が増加した。表15に記録されたデータは、エチレンのみの樹脂の実施例では、2つの異なるジエンが重合反応に取り込まれたときに分子量が増加したことを示した。
表16の結果は、分岐が様々な触媒と様々な密度で発生することを示している。表16の樹脂は、触媒8およびポリマー中の7mol%に十分なオクテンによる分岐を実証した。
表17の結果に基づいて、分子量は、四官能性「ラダー分岐」を示すジエンの添加により増加した。これらの実施例は、より高い線形分子量を有していた。実施例5.1および5.2において、触媒8は、デカジエンまたはペンタジエンが重合反応に存在する場合、より高分子量を有するポリマー樹脂を生成した。
表18の結果は、異なるα−オレフィンコモノマーを使用した場合に分子量の増加(四官能性の「ラダー分岐」)が発生したことを示している。表18のポリマー樹脂は、2つの異なる触媒と2つの異なるヘキセンの充填によって生成された。
表19の結果に基づくと、ジエンによる分子量の増加(四官能性「ラダー分岐」)は、様々なレベルのオクテンで発生した。表19の実施例は、ポリマーに7mol%のオクテンが含まれていても、四官能性「ラダー分岐」が発生したことを示している。
表20に示されているように、四官能性「ラダー分岐」は、様々なレベルのオクテンおよびより高い開始分子量で発生した。実施例8.1および8.2は、7mol%のオクテンおよび約83,000g/molの開始M
wを有するポリマー樹脂が、デカジエンおよびペンタジエンの両方で分岐をもたらすことを示した。
表21の結果は、はるかに低い密度(ポリマー中の高レベルのオクテン)および低い開始分子量で分子量の増加(四官能性「ラダー分岐」)があることを示した。実施例9.1では、ポリマー樹脂は9mol%を超えるオクテンを含み、開始M
wは約43,000g/molであった。ジエンが重合反応に取り込まれると、分子量が増加した(「ラダー分岐」が発生した)。
表22の結果は、より低い開始分子量で異なるレベルの取り込まれたオクテンを有するジエン(四官能性「ラダー分岐」)で増加した分子量を示した。実施例22.1では、ポリマー樹脂の開始分子量は約51,000g/molであったが、ジエンが重合反応に取り込まれると、分子量は70,000g/molに増加した(四官能性「ラダー分岐」が発生した)。
表23および表24のデータによると、反応器内のエチレン圧力およびオクテンの量が増加すると、分子量が増加した(四官能性「ラダー分岐」が発生した)。
実施例4:触媒7が触媒したデカジエン−ホモポリマー
表25に要約された結果は、オクテンが反応器に存在しない場合に、四官能性の「ラダー分岐」が発生することを示している。表25の各実施例の分子量は、重合反応中のデカジエンの量が増加するにつれて増加した。
実施例26.C.1は、0.2オクテンを含有する重合反応の結果である。図29は、実施例26.C.1、26.C.2、および26.1〜26.4のLog(MW)のグラフである。デカジエンの量が増加すると、分子量のピークが右にシフトする。表27〜表32は、例26.C.1、26.C.2、および26.1〜26.4の動的機械的スペクトルの結果をまとめたものである。表27〜表32のそれぞれの結果は、四官能性「ラダー分岐」の量が増加するにつれて、弾性係数mが減少することを示している。さらに、表27〜表32のそれぞれの結果は、四官能性「ラダー分岐」の量が増加するにつれて、レオロジー比が増加することを示している。
図29は、シリーズ26.C.1、26.C.2、および26.1〜26.4の曲線の従来の分子量分布である。
比較例の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表27に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は762Pas と計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は552Pasと測定され、1.4のレオロジー比(V
0.1/V
100)をもたらした。実施例26.C.1の分岐状ポリマーのtan(δ
0.1)は192.8であり、実施例26.C.1のtan(δ
100)は、2.8であって、これは190℃で1901.6の弾性係数をもたらす。
比較例26.C.1の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表28に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は662Pasと計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は501Pasと測定され、1.3のレオロジー比(V
0.1/V
100)をもたらした。実施例26.C.1の直鎖状ポリマーのtan(δ
0.1)は401.3であり、実施例26.C.1のtan(δ
100)は、3.1であって、これは190℃で3986.2の弾性係数をもたらす。
実施例26.1の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表29に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は7,410Pasと計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は883Pasと測定され、8.4のレオロジー比(V
0.1/V
100)をもたらした。実施例13.1の分岐状ポリマーのtan(δ
0.1)は4.3であり、実施例13.1のtan(δ
100)は、1.3であって、これは190℃で29.8の弾性係数をもたらす。
実施例26.2の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表30に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は56,549Pasと計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は1,236Pasと測定され、45.8のレオロジー比(V
0.1/V
100)をもたらした。実施例26.2の分岐状ポリマーのtan(δ
0.1)は1.2であり、実施例26.2のtan(δ
100)は、0.8であって、これは190℃で4.2の弾性係数をもたらす。
実施例26.3の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表31に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は56,549Pasと計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は1,236Pasと測定され、117.8のレオロジー比(V
0.1/V
100)をもたらした。実施例26.3の分岐状ポリマーのtan(δ
0.1)は1.2であり、実施例26.3のtan(δ
100)は、0.8であって、これは190℃で4.2の弾性係数をもたらす。
実施例26.4の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表32に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は909,000Pasと計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は3,054Pasと測定され、297.6のレオロジー比(V0.1/V100)をもたらした。実施例26.4の分岐状ポリマーのtan(δ0.1)は0.3であり、実施例26.4のtan(δ100)は、0.3であって、これは190℃で0.4の弾性係数をもたらす。
連続反応器からの比較例
Guzman−2010は、定常状態のCSTRでの従来のジエン分岐に起因するMWDおよび物理的特性を実証および分析した。幾何拘束型触媒(Constrained geometry catalyst(CGC))を使用して、非常によく混合された1ガロンの反応器システムでエチレン、1−オクテン、および1,9−デカジエンを共重合させた。Guzmanによって使用された特定のCGC触媒は、米国特許第5,965,756号(構造IX)および米国特許第7,553,917号(実施例3)によって詳細に説明された。Guzman−2010触媒は、触媒中心から単鎖を成長させるように設計された。Guzmanのデータを、ジエン供給濃度の範囲にわたって525psigの圧力および155℃の温度でCSTRを操作しながら、定常状態で収集した。Guzmanによって収集された様々な定常状態のポリマー試料には、測定可能なレベルのゲルまたは不溶性物質は含まれていなかった。しかしながら、最高レベルのジエン供給では、若干の内部反応器付着汚れが観察され、より高いレベルのジエン供給は、ゲル形成または反応器MWD不安定性をもたらすことが予想された。
表33では、Guzmanから選択した一連のデータを、ジエン供給レベルのスペクトルにわたって固定された反応器条件について要約した。シリーズ全体を通して、エチレンおよび1−オクテンの供給濃度を、それぞれ13.8重量%と3.6重量%に設定した。触媒供給速度を、シリーズ全体で79%の一定のエチレン変換率を維持するように継続的に調整し、2.2kg/時の固定ポリマー生産速度を得た。コポリマー組成の尺度であるポリマー密度は、約0.922g/ccで一定であった。
表33のデータは、従来のジエン分岐レベルの変化が、I2およびI10によって反映されるような、平均分子量および多分散性ならびに粘度などの特性にどのように影響を与えかを実証した。分子量に対する従来のジエン分岐の影響を、絶対および従来のMWD測定技術の両方について表33に示した。絶対MWD測定は分岐状ポリマーに適した方法であるが、常に利用できるとは限らない。したがって、表33には、屈折率検出器を使用した従来の手法により測定された分子量も含まれている。表33の結果は、どちらの測定技術でも、ジエンの供給量がゼロから923ppmに増加するにつれて、重量平均分子量(Mw)が大幅に上昇することを実証した。
Guzmanでは報告されていないが、表33に関連するMWD曲線が見出され、絶対および従来のGPC測定技術についてそれぞれ図30Aおよび30Bにプロットした。図30Aおよび30BのMWD曲線データは、従来のジエン分岐から生じる予想される高Mwテール形成が起こったことを実証した。ジエン分岐の増加に伴うピークMWの大幅な動きの欠如は、MWD曲線からも明らかである。
図30Aおよび30Bの分子量分布データを、より多くのジエンモノマーがCSTRに供給されたときのMWD曲線の位置および形状の展開を説明する単純な測定基準に縮小した。表34のデータは、Guzmanのポリマー試料の絶対MWD測定および従来のMWD測定の両方に対するこれらのMWD測定基準を示した。表34の絶対MWD測定データは、1,9−デカジエン供給量が0〜923ppmの範囲であるため、分子量が最大87%増加することを示した。M
pで示されるように、ピーク分子量変化は、分子量測定のどちらの手段でも大幅に変化せず、これは、「ラダー分岐状」ポリマーの結果と一致しない。形状係数は、表34に要約されており、ジエン供給量レベルおよびM
wが増加するにつれて、G
79/29およびA
TAILの両方についての値が増加したため、「ラダー分岐状」ポリマーと一致している。
市販の樹脂に関するいくつかの重要なパラメーターを、表35に示す。材料の基本的なパラメーターのいくつかは、溶液、気相、および高圧反応器で作製された。
表35に要約されたデータは、図31および図32のグラフにプロットされている。データは、LDPE、LLDPE、ULDPE、およびジエンモノマーを含有するエチレン樹脂と比較した「ラダー分岐状」ポリマーの違いを示している。図31および図32において、本開示の「ラダー分岐状」ポリマー(グラフの凡例におけるラダー−PE)は一緒にクラスター化され、したがって、「ラダー分岐状」ポリマーが他のエチレン系ポリマーと比較して独特のポリマー特性を有することを示す。図31のグラフに示されるように、「ラダー分岐状」ポリマーは、少なくとも10のレオロジー比、および0.86未満の平均g’を有する。図31では、プロットされたLDPE樹脂は、0.65未満の平均g’を有し、先行技術のエチレン−ジエン樹脂(凡例に先行技術のET−ジエンとして列挙されている)は、一緒にクラスター化されない。
図33では、溶融強度(センチニュートン、cN)を、メルトインデックス(Log I2)の関数として測定した。三角形および円で示されているように、二本鎖触媒から生成されたポリマーを、一本鎖触媒から生成されたポリマー、およびオートクレーブLDPE、管状LDPE、ならびに線状ポリエチレンの文献ベースの曲線と比較した。二本鎖触媒から生成されたポリマーの溶融強度は、オートクレーブLDPE、管状LDPE、および単鎖触媒から生成されたポリマーの溶融強度よりも小さかったが、直鎖状ポリエチレンよりも有意に大きかった。これは、二本鎖触媒から生成されたポリマーが絡み合った長鎖分岐を有していることを示している。
特許請求の範囲に記載の主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、説明した実施形態に様々な修正を加えることができることが当業者には明らかであろう。したがって、本明細書は、そのような修正および変形が添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入る限り、説明した実施形態の修正および変形を網羅することが意図される。
次に、ポリマーを合成するためのプロセスおよび本開示のプロセスによって合成されたポリマーの特定の実施形態について説明する。本開示のポリマーを合成するためのプロセスが、異なる形態で実施されてもよく、本開示に記載される特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全となり、また主題の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
定義
「ポリマー」という用語は、同一または異なるタイプのモノマーにかかわらず、モノマーを重合することにより調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、1つのタイプのモノマーのみから調製されるポリマーを指すために通常用いられる用語「ホモポリマー」、および2つ以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指す「コポリマー」を包含する。本明細書で使用される、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、総称であるインターポリマーという用語は、コポリマーと、ターポリマーなどの3種類以上の異なるモノマーから調製されるポリマーとを含む。
「ポリエチレン」または「エチレン系ポリマー」は、エチレンモノマーに由来する50重量%を超える単位を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知であるポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状および実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ならびに高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
本開示の実施形態は、C2モノマー、少なくとも1つのC3〜C12αオレフィンコモノマー、少なくとも1つのジエン、多鎖触媒、および任意に、溶媒を添加することによって、長鎖分岐状ポリマーを合成するプロセスであって、多鎖触媒が、複数の重合部位を有する分子を含む、長鎖分岐状ポリマーを合成するプロセスと、少なくとも2つのコポリマーストランドを生成するプロセスであって、各コポリマーストランドが重合部位のうちの1つで共重合する、少なくとも2つのコポリマーストランドを生成するプロセスと、2つのコポリマーストランドをジエンと結合させることによって、長鎖分岐状ポリマーを合成するプロセスであって、2つのコポリマーストランドの結合が、共重合と協奏的に行われる、長鎖分岐状ポリマーを合成するプロセスと、を含む。
本開示によるポリマーを合成するプロセスは、従来の長鎖分岐とは異なる。「長鎖分岐」という用語は、100個を超える炭素原子を有する分岐を指す。「分岐」は、三級または四級炭素原子から伸びるポリマーの一部を指す。分岐が三級炭素原子から伸びる場合、他に2つの分岐があり、それらは集合的に、それから分岐が伸びるポリマーストランドであり得る。従来、長鎖分岐(LCB)は、スキーム1に示すように、重合プロセスで自然に発生し得る。これは、三官能性長鎖分岐を形成する、ポリマー鎖のビニル末端および高分子ビニルの再挿入により、発生することができる。分岐の程度に応じて、核磁気共鳴(NMR)などの様々な方法が、LCBを決定するか、またはポリマー内のLCBの効果を区別するかのいずれかを行うことができる。例えば、LCBの効果は、van Gurp−Palmen解析の剪断流において観察され、また、低角振動数での剪断粘度の増加およびずり減粘挙動の強度も、LCBに起因し得る。伸長流では、LCBの効果は通常、硬化の程度または溶融物の強度および達成される最大変形で特定される。ビニル末端ポリマーの濃度が限られており(ポリマー鎖ごとに最大1つ)、LCBの形成を確実にするために高エチレン変換を実行する必要があるため、ポリマー内の高レベルの天然LCBを達成することは困難である。高い変換を確保するために、反応器内のエチレン濃度が低く、したがって、大量のビニル末端ポリマーを第2のポリマー鎖に再挿入することを可能にする。
スキーム1:自然に発生する長鎖分岐:ビニル末端ポリマーにつながる連鎖移動事象
スキーム1では、「Cat」が触媒であり、「P」はポリマー鎖である。
自然に発生する分岐プロセスを通じて形成する最小限の長鎖分岐がある。LCBを強化する1つの方法は、ラジカル、不均一、または均一プロセスのいずれであっても、重合システムへのα,ω−ジエンの付加によるものである。一般に、ジエンはα−オレフィンと同様の方法でポリマー鎖に付加するが、スキーム2に示すように、ポリマー鎖にもう一度挿入してLCBを形成できるペンダントビニル基を残す。一般に、ジエンの長さは重要ではなく、2つのポリマー鎖を一緒に連結できることだけが重要である。原則として、ペンダントビニルの濃度は、反応器に添加されるジエンの量によって制御することができる。したがって、LCBの程度は、ペンダントビニルの濃度によって制御することができる。
スキーム2:ジエンの取り込みによる長鎖分岐
スキーム2では、「Cat」は触媒であり、「P」はポリマー鎖であり、この例のジエンは、1,5−ヘキサジエンである。
ジエンをポリマー合成システムに組み込む従来のプロセスは、ゲル形成または反応器の付着汚れという根本的な欠点に悩まされている。後の段落で説明する反応動力学的モデリングは、ゲル形成のより良い理解を可能にする良好な予測結果を提供し得る。例えば、より長いポリマー鎖はより多くの挿入されたオレフィンを有し、したがってより多くの挿入されたジエンを有し、したがってより多くのペンダントビニルを有し、より長いポリマー鎖が触媒に再挿入されてLCBを形成する可能性が高いことを意味する。したがって、より長いポリマー鎖が優先的に再挿入されて、さらに大きなポリマー分子である四官能性分岐を形成し、ゲルの問題をもたらす。スキーム2に示されているように、四官能性LCBは、短いセグメント(ジエンの2つの二重結合間の炭素数)があり、短いセグメントの両側にある2つの長鎖を架橋する。一定圧力でのセミバッチ反応器内のポリエチレンについての、分岐の関数としての重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)のシミュレーションを、図1に示す。図1では、Mwが無限大になるにつれて、Mnはわずかに増加するだけである。Mwが200,000グラム/モル(g/mol)を超える数に増加すると、ポリマーがゲル化するか、ゲル化が発生するか、または反応器の付着汚れが存在する。
「ゲル」または「ゲル化」という用語は、少なくとも2つの成分(第1の成分は三次元架橋ポリマーであり、第2の成分はポリマーが完全に溶解しない媒体である)から構成される固体を指す。ポリマーがゲル化して完全に溶解しない場合、反応器がポリマーゲルが付着して汚れる可能性がある。
「ラダー分岐状」ポリマーという用語は、本出願に開示されるような四官能性長鎖分岐ポリマーを指し、「ラダー分岐メカニズム」という用語は、「ラダー分岐状」ポリマーがどのように形成されるかを指す。
本開示の1つ以上の実施形態では、長鎖分岐状ポリマーを合成するプロセスは、長鎖分岐を達成し、ゲル形成または反応器付着汚れを回避する。理論に拘束されることを意図するものではないが、ジエンの2つのアルケンを2つの近位ポリマー鎖にわたって協奏的に反応させることにより、反応器の付着汚れが回避されると考えられている。例えば、スキーム3に示すように、ジエンの1つのアルケンは第2のアルケンの前に反応し、第2のアルケンはポリマーストランドにあまりに多くのエチレン分子が付加される前に反応し、これにより、第2のアルケンが、反応部位にごく近接していることを取り除く。多くのエチレンモノマーが挿入される前の、ジエンの第1のアルケンの1つのポリマーへの反応およびジエンの第2のアルケンの隣接するポリマー鎖への反応は、近位ポリマー鎖へのジエンの協調的付加と称される。
スキーム3:「ラダー分岐」メカニズムとも呼ばれる、ジエンを協調的に組み込むことの表示(Pはポリマー鎖である)。
ポリマーストランドは、ポリマー、より具体的にはコポリマーの直鎖状セグメントであり、分岐接合部によって末端(複数可)で任意に接合される。例えば、スキーム1に示すように、3つのポリマーストランドの末端を結合する三官能性分岐接合部とは対照的に、四官能性分岐接合は4つのポリマーストランドの末端を接合する。
多鎖触媒とジエンとの組み合わせは、分岐の量および種類に影響を与える。本開示の実施形態は、以下のようなポリマー特性を制御することを目的とする:1)複数のジエン種の使用、2)複数の多鎖触媒種の使用、または3)複数の反応器ゾーンもしくはゾーンの勾配を含む重合環境の組み合わせ。
とはいえ、単鎖触媒を含む複数の触媒を使用することは、従来の分岐を可能にする場合がある。複数のジエン種の使用には、分岐を形成しないか、または「従来の」LCBをもたらす傾向があるジエンも含まれる。本開示によるポリマーを合成するプロセスは、従来の長鎖分岐とは異なる。「長鎖分岐」という用語は、100個を超える炭素原子を有する分岐を指す。「分岐」という用語は、三級または四級炭素原子から伸びるポリマーの一部を指す。分岐が三級炭素原子から伸びる場合、他に2つの分岐があり、それらは集合的に、それから分岐が伸びるポリマー鎖であり得る。長鎖分岐(LCB)は、スキーム1に示すように、重合プロセスで自然に発生し得る。これは、三官能性長鎖分岐を形成する、ポリマー鎖の末端および高分子ビニルの再挿入により、発生し得る。
1つ以上の実施形態では、長鎖分岐ポリマーを重合するためのプロセスは、ごく近接して少なくとも2つの活性部位を有する触媒(多鎖触媒)を含む。2つの活性部位がごく近接するために、2つの活性部位は、18.5オングストローム(Å)未満離れている可能性がある。いくつかの実施形態では、2つの活性部位は、2.5オングストローム(Å)〜18.5Å、9Å〜14Å、または約11Åの距離を含む。様々な実施形態では、長鎖分岐ポリマーを重合するためのプロセスは、多鎖触媒を含む。1つ以上の実施形態では、多鎖触媒は、2つの活性部位が、同じ金属中心上にある、少なくとも1つの金属中心を含み得る。いくつかの実施形態では、多鎖触媒は、2つの活性部位(2つのポリマー鎖)が同じ金属中心上にある金属−配位子錯体を含み得る。
X線結晶構造によると(A.D.Bond,Chem.Comm.2002,1664)、1,9−デカジエンは、10.8Åの末端炭素間距離を有する。1,9−デカジエンが「ラダー分岐」メカニズムを介して2つのポリマー鎖間にラングを形成するというデータがあるが、10個を超える炭素原子を有するα,ω−ジエンも「ラダー分岐」メカニズムを介してラングを形成し得ると考えることができる。理論に拘束されることを意図するものではないが、10個を超える炭素原子を有するα,ω−ジエンがラングを形成するかどうかの問題は、2つのポリマー鎖間の距離によって決定され得る。例えば、2つのポリマー鎖が触媒(例えば、二金属触媒、不均一触媒)の異なる金属原子に存在する場合、α,ω−ジエンは、この構造を1,15−ヘキサデカジエンに伸長させるために、追加のメチレン単位(同じC−C結合長および角度)を含む場合がある。理論に拘束されることを意図するものではないが、この16炭素類似体は、「ラダー分岐」メカニズムを介してラングを形成する可能性があると推定される。このように、ジエン、1,11−ドデカジエン(末端炭素間の距離13.3Å)、1,13−テトラデカジエン(末端炭素間の距離15.9Å)、1,15−ヘキサデカジエン(末端炭素間の距離18.5Å)を考慮することができる。いくつかの実施形態では、「ラダー分岐」メカニズムの二本鎖触媒が二金属触媒である場合、ジエンは18.5Å以下である。
現代の計算技術は、触媒の鎖間の距離を推定する方法として、既知の実験的結晶構造を高精度で再現できることはよく知られている。不均一系の場合、金属の表面濃度を推定することができ、これは、ナノメートルの2乗あたりの金属原子(M/nm2)で測定されることが多い。この表面被覆率は、均一に分散している場合、ポリマー鎖間の距離を反映するM−M距離に変換され得る、表面上のアクセス可能な金属の推定値を提供する。拡張表面の場合、1金属/nm2は、十分に所望のカットオフの範囲内にある、金属原子間の10Åの距離をもたらす。18.5Åで、0.3金属/nm2の被覆率を決定することができる。
活性部位がごく近接している、少なくとも2つの活性部位を有する触媒の例としては、二元金属の遷移金属触媒、不均一系触媒、2つの関連する活性触媒を有するジアニオン活性剤、複数の伝播ポリマー鎖を有する連結遷移金属触媒、モノアニオン基、二座モノアニオン基、三座モノアニオン基、または外部ドナーを有する単座、二座、もしくは三座モノアニオン基を含む第IV族オレフィン重合触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
表1の触媒は、以前に記載された触媒のクラスおよび企図される特定の触媒の例示的な実施形態である。表1の例は、限定することを意図したものではなく、むしろ、それらは、前述の触媒のクラスの単なる例示的かつ具体的な例である。
理論に束縛されることを意図するものではないが、このセクションで説明するメカニズムは、ジエンコモノマーを所望の条件下で重合するときに、二本鎖触媒がどのように独特の架橋分子アーキテクチャを作り出すことができるかを説明している。「ジエン」という用語は、2つのアルケンを有するモノマーまたは分子を指す。反応動力学の図解をスキーム4に示しており、このスキームでは、触媒中心が2つのポリオレフィン鎖を生成する。スキーム4は、ジエン架橋と連鎖移動の組み合わせが、ジエンの「ラダー分岐状」ポリマー構造をどのように作り出すかを示している。ジエンの「ラダー分岐状」ポリマーという用語は、長鎖分岐を指し、この長鎖分岐において、1〜12個の炭素原子を含む短鎖またはラングが2つの長鎖に一緒に結合している。示されるように、少なくとも2つのポリマー鎖部位を有する金属−配位子触媒は、2つの別個のポリマー鎖を伝播する。ジエンの1つのアルケンは、触媒の部位の1つに組み込まれ、伝播部位が近接しているため、ジエンの第2のアルケンは、次に、第2のポリマー鎖に迅速に組み込まれ、それによって、架橋またはラングを形成する。ジエンのこの連続的な添加は、ジエンの「協奏的」添加と呼ばれ、ジエンの添加が反応器内のビニル含有ポリマーの濃縮をもたらし、その後に反応する2つの近位鎖のない触媒とは区別される。「ラング」という用語は、ジエンが2つの別個のポリマーストランドに組み込まれ、それによってストランドを一緒に連結した後のジエンを指す。第1および第2のポリマーストランドは、ポリマーが別の触媒に移動するか、ポリマーが触媒から放出されるか、触媒が減滅するか、または別のジエンが添加されるまで伝播し続ける。
反応動力学
スキーム4.結果として生じる分子アーキテクチャを含む「ラダー分岐」反応動力学の実例。金属−配位子触媒は、L−M
+でまとめて表される。
理論に束縛されることを意図するものではないが、これらの提案された反応動力学に関連する分子量分布は、ジエン架橋反応が分岐の唯一の源である場合、高い分岐レベルで本質的に安定であると考えられている。分子量分布(MWD)は、重量平均分子量を数平均分子量で除算すること(Mw/Mn)によって定義される。MWDの固有の安定性は、重量平均分子量(Mw)が、高い分岐レベルでも適度に増加することを意味し、これは、MwおよびMw/Mnが中程度の四官能性分岐レベルで無限大になる従来のジエンコモノマー分岐技術とは対照的である。
ポリエチレンを合成するためのプロセスが、ジエンの「ラダー分岐状」分子アーキテクチャを有する長鎖分岐状ポリマーをどのように作り出すかを実証する目的で、数学モデルを導出する。数学モデルは、特許請求の範囲の測定基準と範囲を確立するためにも使用される。本開示で説明されるような分岐アーキテクチャの数学モデルは、提案された分岐のメカニズムの反応動力学説明から導出され得る。このモデルは、数学的単純化を容易にするためにいくつかの仮定に基づいているが、これらの仮定は、本開示の範囲を限定することを意図していない。この仮定は、コポリマーの非リビング添加の一般的な産業用途、ならびに仮定されたジエン分岐メカニズムに固有の追加の仮定に従う。一般的に行われる仮定は、(1)伝播が連鎖移動よりもはるかに速いため、平均鎖長は1つのモノマーよりもはるかに長くなること、(2)単一の純粋な触媒種のみが活性であること、(3)触媒中心がその寿命の間に多くの鎖を作製するので、鎖の寿命は反応または滞留時間のごく一部であること、(4)共重合が、組成のドリフトが無視できる場合、単独重合モデルで近似できること、を含む。
ジエンの「ラダー分岐」理論の反応動力学
一般的に行われる4つの仮定に加えて、ジエンの「ラダー分岐」理論の反応動力学に基づく4つの仮定がある。第1の仮定は、触媒中心が同じ反応動力学と統計とを有する2つの運動連鎖を同時に生成することである。第2に、ラングが、ジエンが長さを増す2つのポリマー鎖を架橋するときに形成されることである。第3に、分岐点が、2つの非架橋鎖がジエンによって架橋されるときに必ず形成されることである。最後に、MWDは影響を受けないため、架橋を形成しないジエン反応は無視されることである。
提案されたジエンの「ラダー分岐」メカニズムの反応動力学的記述には、各反応が分子アーキテクチャにどのように影響するかを記述する命名法の展開が必要である。以下のいくつかの命名要素は小分子(M、A、D)を表し、一方、他の命名要素は分子アーキテクチャ(Pn、m、Sn、Dn)を表す。反応動力学は、命名要素がどのように相互作用して分子アーキテクチャを形成するかを示す。
反応動力学的命名法
M:モノマーまたはコモノマーであり、A:連鎖移動剤種であり、D:ジエン分岐種であり、n、m:亜種の単量体繰り返し単位の数を反映する指標であり、Pn、m:n個およびm個のモノマー繰り返し単位を有する2つの非架橋伝搬ポリマーを含む触媒であり、Dn:n個のモノマー繰り返し単位を有するデッドポリマー分子であり、Sn:n個のモノマー繰り返し単位を有する架橋ポリマー分子を生成する触媒であり、Kc:運動連鎖(kinetic chain)は、連鎖移動によって作成された線形セグメントとして定義され、 Rg:ラングは鎖セグメント間のブリッジとして定義され、Br:以前は架橋されていなかった2つの分子が架橋されると、分岐が作成される。
分岐反応動力学の等式は、上記で紹介した命名法および仮定を使用して、以下に記述されている。各反応について簡単に説明し、重合反応動力学の当業者は、反応動力学スキームおよび反応速度法則を理解できる必要がある。
伝播の結果は、1つの繰り返し単位による鎖サイズの漸増増加である。伝播は、触媒中心から長さが増加する2つの分子のそれぞれについて別々に記述される。例えば、Pn、mの最初の添え字は触媒の左鎖を表し、2番目の添え字は触媒の右鎖を表す。架橋分子(Sn)の長さの増加について伝播をモデル化すると、反応に等しく利用できる各中心の左と右に2つの鎖位置があるため、速度に2の係数が表示される。
連鎖移動は、伝播と同様に、触媒の左右の位置に対して別々に記述される。非架橋種(Pn、m)の連鎖移動は、デッドポリマー分子(DnまたはDm)および空き位置(P0、mまたはPn、0)を生成する。伝播する架橋分子(Sn)が連鎖移動に関与すると、非架橋種(Pn、0またはP0、n)が生成され、n個の繰り返し単位すべてがまだ触媒に結合しているため、デッドポリマーは生成されない。連鎖移動から生じる空の位置(P0、mおよびPn、0)は、非常に迅速に再開し、伝播に関与すると想定される。各ジエンには2つの重合性基があり、各触媒中心にはジエンを組み込むための2つの位置(左と右)があるため、ジエン架橋の反応速度式には4の係数を含む。
ジエン架橋は、架橋されていない(Pn、m)種がジエンと生産的に反応する場合にのみ、四官能性分岐(br)の形成をもたらす。四官能性分岐とは、短いセグメントの両側から2つずつ、4つのポリマー鎖が延びる短いセグメントを指す。ジエンでは、四官能性分岐が予期されるタイプのLCBである。ラング(rg)は、架橋(Sn)または非架橋(Pn、m)分子のどちらを有しているかに関係なく、いずれかの触媒中心がジエンを生産的に組み込むときに生成される。鎖内環化およびペンダントビニル形成など、架橋を引き起こさないジエン反応は無視され、これらの反応動力学は非生産的であると見なされる。
反応動力学からモデルを作成するには、関与するポリマー種のタイプごとに一連のポピュレーションバランスを導出する必要がある。これらのポピュレーションバランスは、鎖長(n、m)の関数として導出され、様々なポリマー亜種の反応動力学的変化率を表す。ポピュレーションバランスは、質量作用の法則を仮定して以下に示されており、P
n、m、S
n、およびDnの記号は、n≧1およびm≧1についての亜種のモル濃度を表す。反応動力学モデルは、水素(k
trh)およびベータ水素脱離(k
b)などの他の連鎖移動反応を含めるよう拡大することができ、これは、移動項、Ω=k
traA+k
trhH
2+k
bの定義を単に拡張することによる。
式(1)、(2)、および(3)では、次のようになる:
Ω=k
traA (4)
Ψ=k
dD (5)
Φ=k
pM (6)
他の重要なポピュレーションバランスは、式(1)〜(8)から導き出すことができ、例えば、左側(L
n)および右側(R
n)の伝播するポリマー亜種の分布である。反応動力学スキームを定義する際に課せられる対称性のために、伝播するポリマー亜種の左側および右側の分布は等しい。
運動連鎖(kc)、分岐(br)、ラング(rg)などの分子属性の形成速度は、反応動力学スキームから導出された質量作用速度の法則を使用して以下に表される。簡略表記は、架橋されていない分子を有する触媒の濃度(ξ
0、0)および架橋ポリマー分子を有する触媒の濃度(μ
0)を定義するために使用される。したがって、全触媒濃度は、ξ
0、0+μ
0である。
使用可能なモデルをレンダリングする最初の工程は、関連するポリマー亜種の割合
をゼロに設定することにより、伝播するポリマー種の分布に「定常状態の仮定」を実装することである。これは、伝播する鎖の寿命が対象期間のごく一部である場合の、追加の重合モデリングにおける非常に一般的な仮定である。この種のほとんどの非リビング商業的重合では、反応器の滞留時間が少なくとも数分であるのに対し、鎖の寿命は通常1秒よりはるかに短い。次の関係は、「定常状態」の仮定を実装し、すべてのインデックスのライブレートを合計した後に導き出される。
「定常状態の仮定」は、分子アーキテクチャモデルで役立つ単純な分岐測定基準(B
c、B
n、R
c)の関係をもたらす。この特定のケースでは、即時特性は、定常状態の、十分に混合された反応器、または温度もしくは組成のドリフトが無視できるバッチ反応器などの様々な反応器に適用されるため、便利で関連性がある。即時分岐測定基準(B
c、B
n、R
c)は、連鎖移動(Ω)およびジエン架橋率(Ψ)パラメーターに空間的または時間的変動がない場合の累積平均値と同等である。
反応動力学鎖ごとの即時四官能性分岐、
ポリマー分子あたりの即時四官能性分岐、
反応動力学鎖ごとの即時ラング、
MWD平均の予測のモーメント
ポリマー種の鎖長分布のモーメントを説明するモデルは、多くの場合、反応動力学スキームから生じるポピュレーションバランスから導き出すことができる。モーメントベースのモデルは、分子量平均および多分散指数を予測するのに役立つが、一般に、二峰性、ピークMW、およびテーリングなどの、MWDの小さなニュアンスについては説明していない。モーメント法では、以下のような様々なポリマー亜種の鎖長分布モーメントを定義する。バルクポリマーモーメント(λ
i)は、バルクポリマー特性を反映し、バルクモーメントのモデルの解は、一般的に、様々なリビングポリマーモーメントの解が必要である。
リビングポリマーMWDモーメント:
バルクポリマーMWDモーメント:
熟練したポリマー反応エンジニアなら誰でも、一連のポピュレーションバランスからのモーメントモデル(等式(20)および(21))の導出を理解するであろう。主要バルクポリマーモーメントの変化率(λ
0、λ
1、λ
2)は、運動連鎖が長く、したがってΦ>>Ωという仮定を課した後に、無視できる項を除去して以下に与えられる。
これらのバルクモーメントの変化率の評価には、多くのリビングポリマー亜種モーメントが必要である。これらのライブポリマーモーメントは、「定常状態の仮定」のために代数的量であり、以下に示されている。λ
3のようなより高いバルクモーメントが予測されている場合は、追加のライブモーメントが必要とされる。
モーメント率を代数的に単純化した後、即時的な数と重量の平均鎖長(DPn、DPw)を以下に示す。もちろん、平均分子量(M
n、M
w)は、平均鎖長にg/モル単位の見かけのモノマー繰り返し単位重量を乗算したものに等しくなる。
モデルの表現は、Φ/Ωに等しい平均線形運動連鎖長DP
noなどの、いくつかの置換によってさらに単純化される。また、モデルは、即時分岐測定基準B
c、B
n、R
cのいずれかの関数として表すことができる。モデルは、運動連鎖あたりのジエン「ラダー分岐」(B
c)およびポリマー分子あたりの分岐(B
n)に関して以下に記述されている。この系については、ポリマー分子あたりの分岐が運動連鎖あたりのラングに等しい(B
n=R
c)ことが以前に示された。
数平均分子量および重量平均分子量(M
n、M
w)はまた、数重量平均線形反応動力学的鎖重量および重量平均線形反応動力学的鎖重量をM
noおよびM
woと定義した後に、反応動力学的鎖あたりのジエン「ラダー分岐」(Bc)およびポリマー分子あたりの分岐(Bn)の関数として予測することができる。
モーメントモデル(等式(20)および(21))から生じる予期しない予測は、高ジエン分岐レベルでは、最大多分散性が約4であるというものである。もちろん、この予測は理想的な共重合および単一の対称触媒系に関するものであり、いかなる非理想的なものも、多分散性を高める可能性がある。
完全なMWD曲線のモデル
時には、分子量分布曲線のポピュレーションバランスを解くことが可能である。明示的な代数的解法は、通常、この場合に想定されるように、反応速度に空間的または時間的変動がない場合にのみ利用可能である。解法は、Pn、mから導出されたさらに別の分布量Vnの定義から始まる。Vnのポピュレーションバランスは、対称性による単純化を使用して、Pn、mのポピュレーションバランスを合計することによって導出される。
長い鎖を想定しているため、すべての亜種の分布を、離散関数ではなく連続関数であるかのように扱うことが可能である。離散定常状態ポリマー種のポピュレーションバランスは、差分項が導関数に置き換えられた場合、連続変数nの微分方程式で厳密に近似することができる。例えば、Snの定常状態のポピュレーションバランスには、等式(31)に示すように導関数に置き換えられた差分項Sn−Sn−1が含まれている。
同様の置き換えが、次の一連の常微分方程式(ODE)をもたらし、これらを統合して、様々な定義済みのライブ亜種分布L(n)、S(n)、およびV(n)の鎖長分布を生成することができる。このモデルは、初期値問題として以下に要約されており、ここでは鎖長分布関数は、n=0で開始すると想定されている。分布関数のn=0の下限は、数学的な単純さのためだけに選択されており、最終的には、高重合体が形成されたときにモデル予測に大きな影響を与えない。
即時的デッドポリマー鎖長分布は、種の割合
から明らかであるように、L
nに比例する。したがって、L
nを介して、上記の微分方程式系の解は、即時デッドポリマー分布X
nを与え、連続分布X(n)は同様にL(n)に比例する。
即時的デッドポリマーの分布、
完全なMWD曲線の解法
増加するポリマー鎖長の分布関数は、常微分方程式の積分に精通している人が数値的または解析的に解くことができる。解析的解法は、代数的に複雑であるが、モーメントモデル(等式(20)および(21))と完全に一致し、ピーク位置の多峰性およびテーリングなどのMWDのニュアンスも予測するため、ここに示す。
Mathematica(商標)として知られるソフトウェアパッケージを使用して、伝播するポリマー分布関数L(N)、S(n)、およびV(n)を記述する常微分方程式の系に対する解析的解法を開発した。L(n)の解析解は、L(n)をその積分で正規化することにより、即時的なデッドポリマー分布X(n)を記述するために使用された。
X(n)の明示的な解析解は、Mathematica(商標)を使用して得ることができる。X(n)の解析解は、パラメーターBnおよびDPnoの関数として以下に記載され、解は、置換により、RcまたはBnに関して言い換えられてもよい。
Rc=Bn=Bc/(1−Bc)。(36)
鎖長分布関数X(n)は、Mathematica(商標)で与えられたRootSumの定義から次のように評価される。以下の多項式は、x1、x2、およびx3と呼ばれる3つの根を有している。多項式の3つの根のうちの2つは、Bnの可能な値の範囲にわたり複雑である。
0=1+Bn+(3+5Bn+2Bn 2)x+3(1+Bn)x2+x3(37)
根x
1、x
2、およびx
3は、即時デッド鎖長分布関数X(n)に使用されている。
X(n)の様々なモーメントが評価され、即時的な数と重量の平均鎖長(DP
n、DP
w)または分子量(M
n、M
w)が得られる。連続分布X(n)から得られた平均鎖長および重量は、長鎖重合および離散分布のために以前に与えられた即時モデル予測に等しく、両方のB
cおよびB
nに関して以下に表され、ここで、R
c=B
nである。
ポリマー反応工学の当業者は、シミュレートされたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)曲線を作成するための予測されたバルクポリマーMWDモデルの使用に精通している。このようなシミュレーションは、反応動力学およびレシピがSEC測定にどのように影響するかを関連付けるのに有用である。SEC測定の一次較正結果は、dw/dLog(M)対Log(M)の表またはプロットであり、ここで、Mは種の分子量またはサイズであり、dw/dLog(M)は、Mに相当するポリマーの相対量を示す。SECの結果が、n2X(n)対Log(M)の表またはプロットでシミュレートできることが一般的に認められており、ここでn2X(n)は、dw/dLog(M)に比例すると予想される。
図2は、ジエン「ラダー分岐」(Bc、Bn、Rc)のレベルが変化する、一連のシミュレートされたSEC曲線を示している。図2の独立変数は、プロットが普遍的であり、開始分子量とは無関係であるように、線形分子量または鎖長によってスケーリングされる。図2のゼロ分岐の場合は、よく知られている「最確」MWDであり(P.J.Flory,J.Am.Chem.Soc.1936,58,1877)、理想的な均一条件下で実行された線形付加共重合について期待されたMWDである。
ピークMW値のより詳細な分析を、MWDモデルに適用された大きな一連の分岐レベルを使用して実行した。図3は、関数分岐レベルとしての相対ピークMWのユニバーサルプロットを示している。図3は、ピークMW不感性の低い分岐領域(0<Rc<0.15)ならびにより高い分岐レジーム(Rc≧0.15)を示し、ここで、ピークMWは分岐レベルとともに着実に増加する。
代替の三官能性ジエン「ラダー分岐」メカニズムおよびモデル
二本鎖触媒が所望の条件下でジエンを組み込むときに観察される分岐およびMWDの傾向を説明することができる代替メカニズムがある。Mnはジエンの付加とともに増加することがよく観察されるが、一部の触媒とジエンとの組み合わせでは、Mwの増加をもたらすが、ジエンレベルが上昇すると、測定可能なMn増加はほとんどまたはまったくないことを実証する。一定のMnについての1つの説明は、単一のベータ水素脱離(または水素への連鎖移動)が、ジエンが両方の伝播鎖に挿入された直後に発生する傾向があり得るということである。このシナリオでは、ジエンの挿入によって三官能性分岐の作成をもたらし、純粋な形では、架橋された伝播種(Sn)が反応動力学から排除される。
反応動力学スキームは、「ジエン架橋」の代わりに次の反応を使用することにより、この代替メカニズムを考慮するように変更されている。
モデリングおよび反応動力学の当業者であるポリマー反応エンジニアは、以前と同じ一連の仮定を使用して、これらの代替反応動力学のモーメントおよびMWD関数モデルを再導出することができる。結果として得られる即時的デッド鎖長分布関数X(n)は、この三官能性分岐メカニズムについて以下に示されている。
等式(41)において、Bcは、運動連鎖あたりの分岐点として定義され、DPnoは、ジエンを含まない平均線形鎖長として定義される。反応動力学的スキームは、線形(運動)連鎖長が、ジエンによって誘発されるベータ水素脱離のために、ジエンの取り込みとともに実際に減少することを前提としている。したがって、分岐の適切な代替指標はBnであり、これは、数平均ポリマー分子あたりの分岐点として定義され、ここで、Bc=Bn/(1+Bn)である。関数X(n)は、Bnに関して容易に書き換えられる。
X(n)の積分は、即時的な数および重量の平均鎖長(DP
n、DP
w)または分子量(M
n、M
w)の結果を与える。連続分布X(n)から得られる平均鎖長および平均重量は、長鎖重合が想定される場合のモーメントモデルの予測に等しくなる。X(n)の積分は、DP
nおよびM
nが、分岐レベル(B
cまたはB
n)に対して一定であることを確認している。X(n)の積分はまた、ジエンが三官能性分岐を作成すると想定される場合に、分岐レベルによって多分散性がどのように変化すると予想されるかも示している。
多分散性(Mw/Mn)と三官能性分岐レベルの上記の関係は、いかなる分岐レベルでも不安定性または発散を示していない。最も驚くべきことは、高分岐レベルでは、多分散性が4で横ばいになると予測されることである。もちろん、この予測は理想的な共重合および対称触媒系に関するものであり、いかなる非理想的なものも、多分散性を高めると予想される。
鎖長分布関数を再び使用して、予測したMWD曲線を作成することができる。図4は、三官能性分岐のレベル(BcまたはBn)が変化する一連のシミュレートされたSEC曲線である。図4の独立変数は、プロットが普遍的であり、開始分子量とは無関係であるように、線形分子量または鎖長によってスケーリングされる。図4のゼロ分岐の場合は、よく知られている「最確」MWDであり、理想的な均一条件下で実行された線形付加共重合について期待されたものである。図5は、三官能性ジエン分岐の相対ピークMWのプロットであり、MWDピークが、0.2<Bn<0.9または0.17<Bc<0.5のおおよその範囲の中間分岐レベルで分岐レベルに最も感度が高いことを示している。
従来の分岐モデル
このセクションの目的は、様々な従来のジエン分岐およびランダムポリマーカップリングを「ラダー分岐」モデルと比較することである。この比較は、「ラダー分岐」とは対照的に、従来のジエン分岐およびランダムポリマーカップリングに固有の不安定性を実証している。ジエンの「ラダー分岐」から生じる分子アーキテクチャは、(a)従来のジエン連続撹拌槽型反応器(Dienes Continuous Stirred Tank Reactor(CSTR))分岐モデル、(b)従来のジエンセミバッチ分岐モデル、 (c)ポリマーCSTRカップリングモデル、および(d)ポリマーバッチカップリングモデルとは異なる。
a)従来のジエンCSTR分岐モデルVer Strate−1980(G.Ver Strate,C.Cozewith,W.W.Graessley,J.App.Polym.Sci.1980,25,59)、Guzman−2010(J.D.Guzman,D.J.Arriola,T.Karjala,J.Gaubert,B.W.S.Kolthammer,AIChE 2010,56,1325):
b)従来のジエンセミバッチ分岐モデル、Cozewith−1979(C.Cozewith,W.W.Graessley,G.Ver Strate,Chem.Eng.Sci.1979,34,245)、およびd)ポリマーバッチカップリングモデル、Cozewith−1979、Flory−1953(P.J.Flory,Principles of Polymer Chemistry,Cornell University Press,1953)、Tobita−1995(H.Tobita,J.Polym.Sci.B 1995,33,1191):
四官能性長鎖分岐状ポリオレフィンの特性評価
分岐の程度に応じて、核磁気共鳴(NMR)などの様々な方法が、LCBを決定するか、またはポリマー内のLCBの効果を区別するかのいずれかを行うことができる。例えば、LCBの効果は、van Gurp−Palmen解析の剪断流において観察され、また、低角周波数での剪断粘度の増加およびずり減粘挙動の強度も、LCBに起因し得る。伸長流では、LCBの効果は通常、硬化の程度または溶融物の強度および達成される最大変形で特定される。Mark−Houwinkプロット、広い分子量分布(MWD)が広く、およびg’visプロットなどの他のプロットは、LCBに関する追加情報を提供する。ビニル末端ポリマーの濃度が限られており(ポリマー鎖ごとに最大1つ)、LCBの形成を確実にするために高変換を実行する必要があるため、ポリマー内の高レベルの天然LCBを達成することは困難である。高い変換を確保するために、反応器内のエチレン濃度が低く、したがって、大量のビニル末端ポリマーを第2のポリマー鎖に再挿入することを可能にする。
ジエンをポリマー合成システムに取り込む従来のプロセスは、高分岐レベルでのゲル形成または反応器の付着汚れという根本的な欠点に悩まされている。前の段落で説明した反応動力学的モデリングは、ゲル形成のより良い理解を可能にする良好な予測結果を提供し得る。例えば、より長いポリマー鎖は、比例してより多くのペンダントビニルを有し、より多くのペンダントビニルを含有するポリマー鎖は、触媒中に再挿入されてLCBを形成する可能性が高い。したがって、より大きなポリマー鎖が優先的に再挿入されて、さらに大きなポリマー分子である四官能性分岐を形成し、ゲルの問題または不安定性は、LCBレベルが閾値に達するともたらされる。一定圧力でのセミバッチ反応器内のエチレン系ポリマーについての、従来の四官能性分岐の関数としての重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)のシミュレーションを、図1に示す。図1では、Mwが無限大になるにつれて、Mnはわずかに増加するだけである。この例では、Mwが200,000グラム/モル(g/mol)を超える数まで増加すると、ポリマーの分子量分布(MWD)が不安定になり、ゲルが形成し始める。MWDは、重量平均分子量、Mwを数平均分子量、Mnで除算すること(Mw/Mn)によって定義される。
ポリマーゲルは、本開示の目的のために、その高分岐レベルおよび/または高分子量のために相分離されたポリマー画分であると狭義に定義される。ポリマーゲルは、溶液中または溶融状態で観察でき、光学的透明性およびフィルムならびに繊維の性能などの特性を妨げる傾向がある。ポリエチレンインターポリマーゲルは、高温キシレンへのポリマーの不溶性度によって測定することができる。ゲル含有量は、GPCポリマーの回収率と相関していることが多く、したがってGPCポリマーの回収率から推定される。ポリマーゲルが形成されると、それらは反応器内に堆積し、付着汚れを引き起こし得る。
図7および図8は、従来の分岐状および「ラダー分岐状」ポリマーから予想されるMWD曲線における差異を示している。MWDデータの調査およびMWDモデルとの比較から、MWDの特性を説明する一連の測定基準が開発された。ここに示されている各MWD記述測定基準は、平均MWに依存せず、MWDの高MW部分に焦点を当てている。MWD測定基準は、スケーリングされたMWD曲線(dW/dlogM)から導出され、MWDの一次ピークまたは最高ピークは1の値を有するものとして定義される。複数のピークが同じ高さを有する場合、最も高いMWピークが一次ピークである。MWD曲線の独立変数はLog(M)であり、これは、10を底とするMの対数である。測定基準が定義され、Mw/MwoおよびMp/Mpoの関数として定義され、これは、図6、図7、図8および図9を使用して、分子またはセグメントあたりの分岐に変換することができる。GPCデータ解釈の当業者は、これらの測定基準を理解し、GPCデータからそれらを計算することができるであろう。
GPC形状測定基準のファミリーG(A/B)は、MWD曲線の右側の定義された点での勾配から計算され、ここで、S(A)およびS(B)は、一次ピークの高さのA%およびB%での一次ピークの右側のこれらの勾配の最初の出現である。点AおよびBは、MWDが「最確」であったならば、ほぼ同じ勾配を有するであろうペアとして選択される。これらの点とそれらの勾配の描写は、最確のMWDについて図10のグラフに示されている。これらの勾配ペアS(A)およびS(B)を一緒に使用して、二次導関数に似た関数G(A/B)を計算し、これは、「ラダー分岐状」MWDを従来型またはランダム分岐状MWDに区別するための有用な測定基準であることが示されるであろう。G(79/29)およびG(96/08)の値は、MWDの右側(RHS)の勾配の変化を記述し、高MW勾配から以下に定義される:
G(79/29)=(S(79)−S(29))/S(79)(48)
G(96/08)=(S(96)−S(8))/S(96)(49)
形状測定基準G(79/29)およびG(96/08)は、MWDモデルで四官能性「ラダー分岐」および従来のジエン分岐についてテストし、その結果を図11、図12、図13、図14にプロットした。これらの図は、従来の分岐では、MWが分岐に応答するにつれて着実に増加するG(79/29)およびG(96/08)値が得られることを示している。ただし、「ラダー分岐」に適用すると、これらの形状測定基準は、低レベルの分岐(低Mw/Mwo)で急激に低下し、中レベルから高レベルの分岐でゼロに近づく。「ラダー分岐状」MWDの高MW部分は、最確MWDに似ているため、これは驚くべきことではない。
図11、図12、図13、および図14は、分岐に対するG(79/29)およびG(96/08)測定基準の同様の応答を示しているが、G(96/08)測定基準は、従来のジエンの分岐に起因する高MWテーリングに対してより感度が高いことが予想される。「高MWテーリング」または「高分子量テール」という用語は、従来のGPCおよび絶対GPCによって示されるような高分子量画分を指す。触媒−ジエンのペアリングおよび実験条件に応じて、「ラダー分岐状」系に従来の分岐があり、それによって形状測定基準値が純粋な「ラダー分岐」について期待される値よりも高くなることが予想され得る。
MWD面積測定基準
「ラダー分岐状」MWDの目視検査は、分岐状ポリマーで通常見られる高MWテールの特徴的な欠如があることを示している。図16および図17は、モデルが「ラダー分岐状」ポリマーのテーリングの欠如をどのように予測するかを示している。「ラダー分岐」MWDデータは、多くの実験でテールの特徴的な欠如を示しているが、重合条件およびジエン/触媒ペアリングによってはテールが形成される可能性があることも示している。
多分散指数(Mw/Mn、Mz/Mwなど)はテーリングの既知の測定基準であるが、低MWDアーチファクトに対する感度のために好ましくない。したがって、多分散指数のより焦点を絞ったバージョンを使用して、MWDの高MW部分でのみ積分が実行される標準を開発する。Mw/Mn、Mz/Mw測定基準は、ジエン「ラダー分岐」を従来の分岐から区別することに成功し、高MWベースライン選択およびベースラインノイズに非常に感度が高い。
MWD曲線下面積は、MWD分散指数(Mw/Mn、Mz/Mwなど)の計算に必要なより高いモーメントと比較して、ベースラインの問題に比較的不感性である。したがって、MWDの非加重積分を伴う測定基準を開発することを決定した。これらMWD面積測定基準、AHIGHおよびATAILは、MWD曲線の右側に定義された領域についてGPC曲線の面積から計算される。MWD面積測定基準(AHIGHおよびATAIL)は、スケーリングされたMWD曲線(dW/logM)から導出され、MWDの一次ピークまたは最高ピークは1の値を有するものとして定義される。複数のピークが同じ高さを有する場合、最も高いMWピークが一次ピークである。MWD曲線の独立変数はLog(M)であり、これは、10を底とするMの対数である。MWD面積測定基準の両方は、MWDの高MW部分の最大勾配の点に依存する。面積測定基準を評価するために必要な量および制限を以下に列挙し、最確MWDについて図15に示す。
Smax=スケーリングされたMWDの一次ピーク(勾配の絶対値)のRHS(より高いMW側)での最大下降勾配の最初の実例
Hsmax=最大勾配の点でのスケーリングされたMWDの高さ
pt1=SmaxのLogM値
pt2=Smax接線がx軸と交差するLogM値
MWD面積測定基準は以下に定義されており、ここで、A
HIGHは、最大勾配の点の後にある低下するMWD領域の面積にすぎない。第2の面積測定基準、A
TAILは、図15に表示される小さな高MW面積であり、A
HIGHから三角形の面積を減算することによって評価される。
A
TAIL=A
HIGH−1/2(H
smax)
2/S
max(51)
面積測定基準AHIGHおよびATAILは、MWDモデルで「ラダー分岐」と従来のジエン分岐についてテストされて、結果を図16、図17、図18、および図19にプロットした。プロットは、AHIGHまたはATAILにより定義される高MW面積が、従来の分岐レベルが増加するにつれて劇的に増加することを示している。しかしながら、「ラダー分岐」モデルは、高MW面積測定基準(AHIGHまたはATAIL)が「ラダー分岐」レベルによってほとんど影響を受けないと予測している。最確MWDのためのAHIGHおよびATAILの値は、それぞれ0.07および0.015である。例示的MWDデータは、ジエンを含まない直鎖状ポリマーが、重合の非理想的な側面のために、AHIGHおよびATAILのわずかに高い値を有する傾向があることを実証するであろう。例示的データはまた、最確MWDから予想されるものを超える高MWテールを本質的に含まない、様々な高度に分岐した「ラダー分岐状」ポリマーも示している。高MW面積測定基準は、ある程度の従来の分岐を伴う場合に「ラダー分岐状」ポリマーが示し得るあるわずかなレベルの高MWテール形成の診断にもなる。測定基準ATAILが、AHIGHよりも線形MWDの非理想性にあまり影響されない。しかしながら、理論的には、AHIGHおよびATAIL測定基準は、高MWテール形成を等しく示す。
四官能性長鎖分岐状ポリオレフィン
スキーム4に記載されているように、「ラダー分岐」から生成されたポリマーは、本開示に含まれる。
実施形態では、本開示のエチレン系ポリマーは、少なくとも10の、190℃での溶融粘度比またはレオロジー比(V0.1/V100)を有し、V0.1は、0.1ラジアン/秒の角振動数で190℃でのエチレン系ポリマーの粘度であり、V100は、100ラジアン/秒の角振動数で190℃でのエチレン系ポリマーの粘度である。1つ以上の実施形態では、溶融粘度比は、少なくとも14、少なくとも20、少なくとも25、または少なくとも30である。いくつかの実施形態では、溶融粘度比は、50超、少なくとも60、または100超である。いくつかの実施形態では、溶融粘度比は、14〜200である。
「レオロジー比」および「溶融粘度比」は、190℃でのV0.1/V100で定義され、V0.1は、0.1ラジアン/秒の角振動数で190℃でのエチレン系ポリマーの粘度であり、V100は、100ラジアン/秒の角振動数で190℃におけるエチレン系ポリマーの粘度である。
1つ以上の実施形態では、本開示のエチレン系ポリマーは、0.86未満の平均g’を有し、平均g’が、トリプル検出器を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される固有粘度比である。いくつかの実施形態では、本開示のエチレン系ポリマーは、0.64〜0.86の平均g’を有する。「0.64〜0.86」に含まれるすべての個々の値および部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示されており、例えば、エチレン系ポリマーの平均g’は、0.64〜0.75、0.68〜0.79、または0.65〜0.83の範囲であり得る。1つ以上の実施形態では、平均g’は、0.65〜0.84、0.66〜0.82、または0.66〜0.80である。
いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、ピーク高さを有するトリプル検出器を使用するゲル浸透クロマトグラフィー曲線から決定される、0.035以下のG(79/29)値、ピーク高さの79%での勾配M79、およびピーク高さの29%での勾配M29を有し、G(79/29)値は、(M79−M29)/M79に等しい。「0.035以下の」に含まれるすべての個々の値および部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示されており、例えば、「0.035以下の」は、0.0超〜0.035、0.010〜0.034を含み、かつ負の値を含む。1つ以上の実施形態では、本開示のエチレン系ポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー曲線から決定される、0.030以下のG(79/29)値を有し得る。
1つ以上の実施形態では、本開示のエチレン系ポリマーの溶融粘度比は、溶融粘度比(V0.1/V100)がV0.1、0.1ラジアン/秒の角振動数で190℃でのエチレン系ポリマーの粘度、およびV100、100ラジアン/秒の角振動数で190℃でのエチレン系ポリマーの粘度によって決定される場合、弾性係数を10倍を超えてもよく、弾性係数mは[((tan(δ0.1)−tan(δ100))*1000)/(0.1−100))]であり、ここで、tan(δ0.1)は、0.1ラジアン/秒での位相角の正接であり、tan(δ100)は、100ラジアン/秒での位相角の正接である。
1つ以上の実施形態では、エチレン系ポリマーは、8秒/ラジアン以下である、190℃における弾性係数mを有することができ、ここで、mは、[((tan(δ0.1)−tan(δ100))*1000)/(0.1−100))]である。他の実施形態では、エチレン系ポリマーは、4秒/ラジアン以下である、190℃における弾性係数mを有することができる。
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーの溶融強度は、6cNを超えてもよい(レオテンス装置、190℃、2.4mm/秒2、ダイ出口からホイールの中心まで120mm、押出速度38.2秒−1、長さ30mm、直径2mm、および流入角180°のキャピラリーダイ)。いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーの溶融強度は、10cNを超えてもよい。
実施形態では、エチレン系ポリマーは、MWD面積測定基準ATAILによって定量される分子量テールを有してもよく、ATAILは、0.04以下である。「0.04以下」に含まれるすべての個々の値および部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示されている。例えば、いくつかの実施形態では、本開示のエチレン系ポリマーのATAILは、トリプル検出器を使用するゲル透過クロマトグラフィーによって決定されるとき、0超かつ0.03以下である。
実施形態では、エチレン系ポリマーのMwは、トリプル検出器を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されるとき、800,000ダルトン以下であり得る。1つ以上の実施形態では、エチレン系ポリマーのMwは、400,000ダルトン以下であり得る。
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーは、1.20超のMp/Mp0有してもよく、ここで、Mpは、従来のゲル浸透クロマトグラフィーから決定されるエチレン系ポリマーのピーク分子量であり、Mp0は、ポリエンコモノマーを有しないエチレン系ポリマーの初期ピーク分子量である。
実施形態では、エチレン系ポリマーは、1.20超のMw/Mw0を有し、ここで、Mwは、ゲル透過クロマトグラフィーによって取得されるエチレン系ポリマーのGPC曲線から決定されるエチレンベースのポリマーの重量平均分子量である。Mw0は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる比較のエチレン系ポリマーの初期重量平均分子量である。比較のエチレン系ポリマーは、定義された重合反応条件下で、エチレンモノマーと、存在する場合、少なくとも1つのポリエンコモノマーなしでエチレン系ポリマー中に存在するすべてのC3〜C14コモノマーとの重合の反応生成物である。
各Mw0およびMp0は、前述のように、重合中に反応器にジエンを添加しないポリマー樹脂の測定基準である。ジエンの各後続の添加は、測定基準MwまたはMpがそれから決定され得るポリマー樹脂を生成する。反応器に取り込まれるジエンの量は、反応器内の他の反応物と比較して少ない。したがって、ジエンの添加は、反応器内のコモノマー、エチレン、および溶媒の総量に影響を及ぼさない。
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.1〜3.0のgpcBR分岐指数を有する。「0.10〜3.00」に含まれるすべての個々の値および部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示されており、例えば、エチレン系ポリマーは、0.10〜2.00、0.10〜1.00、0.15〜0.65、0.20〜0.75、または0.10〜0.95のgpcBR分岐指数を含んでもよい。
前の段落に記載される長鎖分岐重合プロセスは、オレフィン、主にエチレンおよびプロピレンの重合に利用される。いくつかの実施形態では、重合スキーム中に単一種のオレフィンまたはα−オレフィンのみが存在し、本質的に、少量の取り込まれたジエンコモノマーを含むホモポリマーであるものを形成する。しかしながら、追加のα−オレフィンを重合手順に組み込んでもよい。追加のα−オレフィンコモノマーは、典型的には、20個以下の炭素原子を有する。例えば、α−オレフィンコモノマーは、3〜10個の炭素原子、または3〜8個の炭素原子を有し得る。例示的なα−オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、およびエチリデンノルボルネンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、1つ以上のα−オレフィンコモノマーは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、および1−オクテンからなる群から、または代替的に1−ヘキセンおよび1−オクテンからなる群から選択することができる。
長鎖分岐状ポリマー、例えばエチレンのホモポリマーおよび/またはインターポリマー(コポリマーを含む)ならびに任意に、α−オレフィンなどの1つ以上のコモノマーは、エチレン由来の単位を少なくとも50重量パーセント含み得る。「少なくとも50重量パーセントから」によって包含される個々の値および部分範囲はすべて、別個の実施形態として本明細書に開示され、例えば、エチレン系ポリマー、エチレンのホモポリマーおよび/またはインターポリマー(コポリマーを含む)、および任意にα−オレフィンなどの1つ以上のコモノマーは、エチレン由来の単位を少なくとも60重量パーセント、エチレン由来の単位を少なくとも70重量パーセント、エチレン由来の単位を少なくとも80重量パーセント、エチレン由来の単位を50〜100重量パーセント、またはエチレン由来の単位を80〜100重量パーセント含み得る。
エチレン系ポリマーのいくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、追加のα−オレフィンを含む。エチレン系ポリマー中の追加のα−オレフィンの量は、50モルパーセント(mol%)以下であり、他の実施形態では、追加のα−オレフィンの量は、少なくとも0.01mol%〜25mol%を含み、さらなる実施形態では、追加のα−オレフィンの量は、少なくとも0.1mol%〜10mol%を含む。いくつかの実施形態では、追加のα−オレフィンは1−オクテンである。
いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン由来の単位を少なくとも50モルパーセント含んでもよい。少なくとも90モルパーセントからのすべての個々の値および部分範囲は本明細書に含まれ、別個の実施形態として本明細書に開示される。例えば、エチレン系ポリマーは、エチレン由来の単位を少なくとも93モルパーセント、単位を少なくとも96モルパーセント、エチレン由来の単位を少なくとも97モルパーセント、または代替的に、エチレン由来の単位を90〜100モルパーセント、エチレン由来の単位を90〜99.5モルパーセント、エチレン由来の単位を97〜99.5モルパーセント含み得る。
長鎖分岐状ポリマーのいくつかの実施形態では、追加のα−オレフィンの量は、50%未満であり、他の実施形態は、少なくとも1モルパーセント(mol%)〜20mol%を含み、さらなる実施形態では、追加のα−オレフィンの量は、少なくとも5mol%〜10mol%を含む。いくつかの実施形態では、追加のα−オレフィンは1−オクテンである。
任意の従来の重合プロセスを用いて長鎖分岐状ポリマーを生成してもよい。かかる従来の重合プロセスとしては、1つ以上の従来の反応器、例えばループ反応器、等温反応器、流動床気相反応器、撹拌槽型反応器、バッチ反応器などの並列、直列、またはそれらの任意の組み合わせを使用する、溶液重合プロセス、気相重合プロセス、スラリー相重合プロセス、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば単一ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、そこで、エチレン、および任意に1つ以上のα−オレフィンは、本明細書に記載の触媒系、および任意に1つ以上の共触媒の存在下で重合される。別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、そこで、エチレン、および任意に1つ以上のα−オレフィンは、本開示および本明細書に記載の触媒系および任意に1つ以上の他の触媒の存在下で重合される。本明細書に記載の触媒系は、任意に1つ以上の他の触媒と組み合わせて、第1の反応器または第2の反応器において使用することができる。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、そこで、エチレン、および任意に1つ以上のα−オレフィンは、本明細書に記載の触媒系の存在下で両方の反応器において重合される。
別の実施形態では、長鎖分岐状ポリマーは、単一反応器系、例えば単一ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、そこで、エチレン、および任意に1つ以上のα−オレフィンは、本開示内に記載される触媒系および前の項に記載される任意に1つ以上の共触媒の存在下で重合される。いくつかの実施形態では、長鎖分岐状ポリマーを生成するための重合プロセスは、触媒系の存在下でエチレンと少なくとも1つの追加のα−オレフィンとを重合することを含む。
長鎖分岐ポリマーは、1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。かかる添加剤としては、帯電防止剤、色増強剤、染料、潤滑剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。エチレン系ポリマーは、任意の量の添加剤を含有し得る。エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマーおよび1つ以上の添加剤の重量に基づいて、そのような添加剤の合計重量で約0〜約10パーセント低下する可能性がある。エチレン系ポリマーは、充填剤をさらに含み得、その充填剤としては、有機または無機充填剤を挙げることができるが、これらに限定されない。長鎖分岐状ポリマーは、エチレン系ポリマーとすべての添加剤または充填剤との合計重量に基づいて、約0〜約20重量パーセントの、例えば炭酸カルシウム、タルク、またはMg(OH)2などの充填剤を含んでもよい。エチレン系ポリマーは、1つ以上のポリマーとさらに配合されてブレンドを形成することができる。
いくつかの実施形態では、長鎖状ポリマーを生成するための重合プロセスは、2つのポリマー生成部位を有する触媒の存在下でエチレンと少なくとも1つの追加のα−オレフィンとを重合することを含み得る。2つのポリマー生成部位を有するこのような触媒から得られる長鎖分岐状ポリマーは、ASTM D792(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に従って、例えば、0.850g/cm3〜0.960g/cm3、0.880g/cm3〜0.920g/cm3、0.880g/cm3〜0.910g/cm3、または0.880g/cm3〜0.900g/cm3の密度を有し得る。
別の実施形態では、長鎖重合プロセスから得られる長鎖分岐状ポリマーは、5〜100のメルトフロー比(I10/I2)を有し、ここで、メルトインデックスI2は、ASTM D1238(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に従って、190℃および2.16kgの荷重で測定され、メルトインデックスI10は、ASTM D1238に従って、190℃および10kgの荷重で測定される。他の実施形態では、メルトフロー比(I10/I2)は、5〜50であり、他では、メルトフロー比は、5〜25であり、他では、メルトフロー比は、5〜9である。
いくつかの実施形態では、長鎖重合プロセスから得られる長鎖分岐状ポリマーは、1〜20の分子量分布(MWD)を有してもよく、MWDは、Mw/Mnとして定義され、Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量である。他の実施形態では、触媒系から得られたポリマーは、1〜10のMWDを有する。別の実施形態は、1〜3のMWDを含み、他の実施形態は、1.5〜2.5のMWDを含む。
並列式重合反応器(PPR)
小規模溶液重合の例は、5mLの総液量、150 psigの一定のエチレン圧力、および120℃の重合温度を使用して、15mLバイアルで実行される。5mLの液量は、500nmolのMMAO−3A、トルエン中の触媒および活性剤溶液を含有する0.84mLのコモノマー混合物からなり、5mLの液量を達成するのに十分なIsopar−Eが添加される。空の反応バイアルを80℃にて20±3psigのH2で同時に事前加圧することによって、水素(H2)を反応混合物に添加し、これにより、いかなるジエンについての実験も、同じH2負荷で実行されるようになる。すべての液量は室温で分注され、5mLの総容量に対して容量的に添加された。触媒は、トルエン中の5mM溶液として反応混合物に最後に添加され、これは、1.5当量の共触媒A(メチルジ(テトラデシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)によって別々に活性化された。コモノマー溶液は、主に1−オクテンと少量(0〜6%)のジエン種の体積分率で構成されていた。重合は約30分を超えない時間実行され、CO添加とそれに続くバイアル減圧によってクエンチされた。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(従来のGPC)
クロマトグラフィーシステムは、Precision Detectors(現在はAgilent Technologies)二角レーザ光散乱(LS)検出器モデル2040に結合された内部IR5赤外検出器(IR5)および4−キャピラリー粘度計(DV)を装備した、PolymerChar GPC−IR(Valencia、Spain)高温GPCクロマトグラフからなる。すべての光散乱測定について、15度角を測定目的で使用する。オートサンプラーオーブン区画を摂氏160度に設定し、カラム区画を摂氏150度に設定した。使用したカラムは、4つのAgilent「Mixed A」30cm、20ミクロンの直線状混床式カラムであった。使用したクロマトグラフィー溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有した。溶媒源は、窒素注入された。使用した注入体積は200マイクロリットルであり、流速は1.0ミリリットル/分であった。
GPCカラムセットの較正は、580〜8,400,000の範囲の分子量を有する少なくとも20の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて実施し、個々の分子量の間に少なくとも10の間隔を空けて、6つの「カクテル」混合物中に該標準を配置した。標準は、Agilent Technologiesから購入した。1,000,000以上の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.025グラムで、また1,000,000未満の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.05グラムでポリスチレン標準を調製した。ポリスチレン標準を穏やかに撹拌しながら摂氏80度で30分間溶解させた。ポリスチレン標準のピーク分子量を、方程式52を使用してポリエチレン分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に説明されているように)。:
(52)
式中、Mは分子量であり、Aは0.4315の値を有し、Bは1.0に等しい。
第3次と第5次との間の多項式を使用して、それぞれのポリエチレン同等較正点にあてはめた。NIST標準物質NBS 1475が52,000Mwで得られるように、カラム分解能およびバンドの広がり効果を補正するため、Aに対してわずかな調整(約0.415〜0.44)を行った。
GPCカラムセットの合計プレートカウントは、エイコサン(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製され、穏やかに撹拌しながら20分間溶解した)を用いて行った。プレートカウント(方程式53)および対称性(方程式54)を、以下の式に従って、200マイクロリットル注入で測定した:
(53)
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大高さであり、1/2高さはピーク最大値の1/2の高さである。
(54)
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10の高さはピーク最大値の1/10の高さであり、リアピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、フロントピークはピーク最大値よりも早い保持体積でのピーク前部を指す。クロマトグラフィーシステムのプレート計数は、24,000超となるべきであり、対称性は、0.98〜1.22の間となるべきである。
試料はPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動で調製され、2mg/mlを試料の標的重量とし、PolymerChar高温オートサンプラーを介して、予め窒素をスパージしたセプタキャップ付バイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。試料を、「低速」振とうしながら摂氏160度で2時間溶解した。
M
n(GPC)、M
w(GPC)、およびM
z(GPC)の計算は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、等間隔の各データ収集点(i)においてベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、および点(i)に関する狭い標準較正曲線から得られたポリエチレン当量分子量を使用して、等式55〜57に従って、PolymerChar GPC−IRクロマトグラフの内部IR5検出器(測定チャネル)を使用して得られたGPC結果に基づいた。
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC−IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(FM)は、試料中のそれぞれのデカンピーク(RV(FM試料))を狭い標準較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークと整合することによって各試料のポンプ流量(流量(見かけ))を直線的に較正するために使用された。こうして、デカンマーカーピークの時間におけるいかなる変化も、流量(流量(有効))における線形シフトに関連すると推測される。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、最小二乗フィッティングルーチンを使用して、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に適合させる。次に、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を求める。流量マーカーピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に対する)有効流量は式58のように計算される。流量マーカーピークの処理は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアにより行われた。許容される流量補正は、有効流量が見かけ流量の+/−2%以内であるべきである。
流量(有効)=流量(見かけ)*(RV(FM較正済み)/RV(FM試料))(58)
トリプル検出器GPC(TDGPC)(絶対GPC)
クロマトグラフィーシステム、分析条件、カラムセット、カラム較正および従来の分子量モーメントの計算および分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に記載されている方法に従って実施された。
粘度計および光散乱検出器のIR5検出器からのオフセットの判定については、マルチ検出器オフセットの決定のための体系的なアプローチが、Balke,Mourey,et.al.(Mourey and Balke,Chromatography Polym.Chpt12,(1992))(Balke,Thitiratsakul,Lew,Cheung,Mourey,Chromatography Polym.Chpt 13、(1992))によって公開されたものと一致した様式で行われ、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して、広いホモポリマーポリエチレン標準(Mw/Mn>3)からのトリプル検出器ログ(MWおよびIV)の結果を、狭い標準較正曲線からの狭い標準カラム較正の結果に最適化する。
絶対分子量データは、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して、Zimm(Zimm,B.H.,J.Chem.Phys.,16,1099(1948))およびKratochvil(Kratochvil,P.,Classical Light Scattering from Polymer Solutions,Elsevier,Oxford,NY(1987))によって公開されたものと一致する様式で得た。分子量の判定において使用される全体的な注入濃度は、好適な直鎖状ポリエチレンホモポリマー、または既知の重量平均分子量のポリエチレン標準のうちの1つから導出される、質量検出器面積および質量検出器定数から取得する。(GPCOne(商標)を使用して)計算される分子量は、以下に述べるポリエチレン標準物のうちの1つ以上から導出される光散乱定数、および0.104の屈折率濃度係数、dn/dcを用いて得る。一般に、(GPCOne(商標)を使用して決定された)質量検出器応答(IR5)および光散乱定数は、約50,000g/モルを超える分子量を有する直鎖状標準物から決定することができる。(GPCOne(商標)を使用して決定された)粘度計の較正は、製造業者によって記載された方法を使用して、または代替的に、標準物質(Standard Reference Materials(SRM))1475a(国立標準技術局(National Institute of Standards and Technology(NIST)から入手可能)などの好適な直鎖状標準物の公開された値を使用することによって、達成することができる。較正標準に関する特定の粘度面積(DV)および注入された質量を、その固有粘度に関連付ける(GPCOne(商標)を使用して得られる)粘度計定数を計算する。クロマトグラフィー濃度は、第2のウイルス係数効果(分子量に対する濃度効果)への対処を排除するのに十分に低いと仮定される。
絶対重量平均分子量(M
w(Abs))は、(GPCOne(商標)を使用して)光散乱(LS)面積積分クロマトグラム(光散乱定数を要素として含める)を質量定数および質量検出器(IR5面積から回収した質量で除算することによって得られる。分子量および固有粘度の応答は、信号対雑音比が低くなるクロマトグラフィーの端で線形に外挿される(GPCOne(商標)を使用)。他のそれぞれのモーメント、M
n(Abs)およびM
z(Abs)は、等式59〜60に従って次のように計算される:
(60)
g’
ave値
g’は、分岐ポリマーの粘度を同じMWでの直鎖状ポリマーの粘度で除算したものとして定義される。
g’aveまたは平均g’は、g’の重量平均値である(B.H.Zimm,W.H.Stockmayer,J.Chem.Phys.1949,17,1301)。
動的機械的スペクトル(または小角度振動剪断)
複素粘度(η*)、弾性率(、G’G’’)、タンデルタ、および位相角(δ)は、190℃で0.1〜100ラジアン/秒の振動数範囲で動的振動数掃引試験によって得られる。歪みのレベルは、190℃で100ラジアン/秒の歪み掃引試験によって特定される線形粘弾性レジーム内に設定される。試験トは、TA Instrumentsによる歪み制御レオメーターARES−G2で直径25mmのステンレス鋼平行平板を使用して実行される。厚さ3.3mmの試料を絞り、実際の試験の前に2段階でトリミングする。最初の工程では、試料を2.5分間溶融し、3mmのギャップに絞り、トリミングする。190℃でさらに2.5分間浸漬した後、試料を2mmのギャップまで絞り、余分な材料をトリミングする。この方法は、熱平衡を可能にするために、さらに5分の遅延を組み込む。試験は、窒素雰囲気下で実行する。
三重検出器GPC(TDGPC)によるgpcBR分岐指数
gpcBR分岐指数は、前述の光散乱、粘度、および濃度検出器をまず較正することによって決定された。その後、光散乱、粘度計、および濃度クロマトグラムからベースラインを差し引いた。その後、屈折率クロマトグラムからの検出可能なポリマーの存在を示す光散乱および粘度計クロマトグラムにおける低分子量保持体積範囲のすべての積分を確保するために、積分ウィンドウを設定した。その後、直鎖状ポリエチレン標準物を使用して、ポリエチレンおよびポリスチレンのマルク−ホウインク定数を確立した。定数を得ると、2つの値を使用して、方程式(62)および(63)に示すように、溶出体積の関数としてのポリエチレン分子量およびポリエチレン固有粘度についての2つの線形基準従来較正を構築した。
gpcBR分岐指数は、Yau,Wallace W.,“Examples of Using 3D−GPC−TREF for Poly−olefin Characterization,”Macromol.Symp.,2007,257,29−45に記載のように、長鎖分岐を特性評価するための堅固な方法である。この指数は、ポリマー検出器面積全体に有利な、g’値の決定および分岐頻度計算において従来使用されている「スライスごとの」TDGPC計算を回避する。TDGPCデータから、ピーク面積法を使用して、光散乱(LS)検出器によって試料バルク絶対重量平均分子量(M
w、絶対値)を得ることができる。この方法は、伝統的なg’決定で必要とされる光散乱検出器シグナルの濃度検出器シグナルに対する「スライスごとの」比を回避する。TDGPCでは、方程式(64)を使用して独立して試料固有粘度も得た。この場合の面積計算は、全体的な試料面積として、検出器ノイズおよびTDGPC設定によってベースラインおよび積分限界に対して引き起こされる変動にあまり高感度ではないため、より高い精度を提供する。さらに重要なことに、ピーク面積計算は、検出器体積オフセットの影響を受けなかった。同様に、高精度の試料固有粘度(IV)を、等式(64)の面積法によって得た。
等式(64)中、DPiは、オンライン粘度計から直接監視される差圧シグナルを表す。gpcBR分岐指数を決定するために、試料ポリマーの光散乱溶出面積を使用して、試料の分子量を決定した。試料ポリマーの粘度検出器溶出面積を使用して、試料の固有粘度(IVまたは[η])を決定した。最初に、溶出体積の関数としての分子量および固有粘度の両方について、従来の較正(「cc」)を使用して、SRM1475aまたは等価物などの直鎖状ポリエチレン標準試料の分子量および固有粘度を決定した。
等式(66)を使用して、gpcBR分岐指数を決定した。
式中、[η]は、測定された固有粘度であり、[η]
ccは、従来較正(またはconv GPC)からの固有粘度であり、Mwは、測定された重量平均分子量であり、M
w、ccは、従来の較正の重量平均分子量である。光散乱(LS)による重量平均分子量は、通常、「絶対重量平均分子量」または「M
w(絶対値)」と呼ばれる。従来のGPC分子量較正曲線(「従来の較正」)を使用することによるM
w,ccは、「ポリマー鎖骨格分子量」、「従来の重量平均分子量」、および「M
w(従来)」と呼ばれることが多い。
「ccまたは従来」の下付き文字を有するすべての統計値は、それらそれぞれの溶出体積、前述の対応する従来の較正、および濃度(Ci)を使用して決定される。下付き文字のない値は、質量検出器、LALLS、および粘度計面積に基づく測定値である。KPEの値は、線形基準試料がゼロのgpcBR測定値を有するまで反復して調整される。例えば、この特定の場合において、gpcBRを決定するためのαおよびログKの最終値は、ポリエチレンではそれぞれ0.725および−3.355、ポリスチレンではそれぞれ0.722および−3.993である。かつては、前述の手順を使用して、Kおよびαの値が決定されていた。
以前は、分岐試料を使用して手順を繰り返していた。最良の「cc」較正値として最終的なマルク−ホウインク定数を使用して、分岐試料を分析した。
gpcBRの解釈は、単純である。直鎖状ポリマーの場合、LSおよび粘度計によって測定される値が従来の較正標準に近いため、gpcBRはゼロに近くなる。分枝ポリマーの場合、測定されるポリマー分子量が計算されるMw,ccよりも高く、また計算されるIVccが測定されるポリマーIVよりも高いため、特に高レベルの長鎖分枝では、gpcBRがゼロよりも大きくなる。実際に、gpcBR値は、ポリマー分岐の結果としての分子サイズ収縮効果による分数IV変化率を表す。0.5または2.0のgpcBR値は、等価重量の直鎖状ポリマー分子に対する、それぞれ50%および200%のレベルでのIVの分子サイズ収縮効果を意味する。これらの特定の例では、伝統的な「g’指数」および分岐頻度計算と比較して、gpcBRを使用する利点は、gpcBRのより高い精度によるものである。gpcBR指数決定に使用されるすべてのパラメーターは、良好な精度で得られ、濃度検出器からの高分子量での低TDGPC検出器応答による悪影響を受けない。検出器体積の整列の誤差も、gpcBR指数決定の精度には影響しない。
バッチ反応器重合手順
バッチ反応器の重合反応は、2LのParr(商標)バッチ反応器内で行われる。反応器は、電気加熱マントルによって加熱し、冷却水を含有する内部蛇管冷却コイルによって冷却した。反応器および加熱/冷却システムの両方は、Camile(商標)TGプロセスコンピュータによって制御および監視される。反応器の底部には、反応器の内容物をステンレス鋼のダンプポットに移すダンプ弁が取り付けられている。ダンプポットには、触媒失活溶液(典型的には、5mLのIrgafos/Irganox/トルエン混合液)が事前に充填されている。ポットおよびタンクの両方を窒素でパージして、ダンプポットを30ガロンのブローダウンタンクに通気する。重合または触媒補給のために使用したすべての溶媒を溶媒精製カラムに通過させて、重合に影響を及ぼし得る一切の不純物を除去する。1−オクテンおよびIsoparEを、A2アルミナを含有する第1のカラム、Q5を含有する第2のカラムの2つのカラムに通す。エチレンを、A204アルミナおよび4
モレキュラーシーブを含有する第1のカラム、Q5反応材料を含有する第2のカラムの2つのカラムに通す。移送に使用されるN
2を、A204アルミナ、4
モレキュラーシーブ、およびQ5を含有する単一のカラムに通す。
反応器は、反応器の負荷に応じて、IsoparE溶媒、および/または1−オクテンを含有し得るショットタンクからまず装填する。ショットタンクは、ショットタンクに取り付けたラボスケールを使用して負荷設定点まで充填する。液体供給物を添加した後、反応器を重合温度設定点に加熱する。エチレンが使用される場合、反応圧力設定点を維持するための反応温度で、エチレンが反応器に添加される。添加されるエチレンの量は、マイクロモーション流量計(Micro Motion)によって監視される。いくつかの実験では、150℃での標準条件は、585gのIsoparE中の13gのエチレン、15gの1−オクテン、240psiの水素であり、150℃での標準条件は、555gのIsoparE中の15gのエチレン、45gの1−オクテン、200psiの水素である。
プロ触媒および活性剤を適量の精製したトルエンと混合して、所望のモル濃度の溶液を得る。プロ触媒および活性化剤は、不活性グローブボックス内で処理され、シリンジ内に引き込まれ、触媒ショットタンク内に加圧移送される。シリンジを5mLのトルエンで3回すすぐ。触媒が添加された直後に、実行タイマーが始まる。エチレンを使用する場合は、それは、反応器内の反応圧力設定点を維持するためにカミールによって添加される。重合反応を10分間実行し、次いで、撹拌機を停止し、下部のダンプ弁を開放して、反応器の内容物をダンプポットに移す。ダンプポットの内容物をトレイ中に注ぎ、ラボフード内に置き、そこで、溶媒を一晩蒸発させる。残存するポリマーを含有するトレイは、真空オーブンに移され、真空下で140℃に加熱されて、いずれの残存する溶媒も除去する。トレイが周囲温度に冷却された後、効率を測定するためにポリマーの収量が測定され、ポリマー試験に供された。
様々な多鎖触媒および様々なジエンの存在下での四官能性分岐
小規模重合の結果は表3〜表7にまとめられている(実験は並列式重合反応器、PPRで行われる)。表3〜表7に記録されたポリマーの結果は、多鎖触媒および単鎖触媒対照の存在下でエチレン、オクテン、およびジエン種を重合することによってもたらされた。表3〜表7の各表のポリマーの結果は、様々な触媒とジエン種との生成物であった。表3の結果は、比較触媒C1(「Comp.Cat.C1」)、触媒1(「Cat.1」)、および触媒2(「Cat.2」)の存在下での、3−メチル−1,4−ペンタジエン、エチレン、およびオクテンのポリマー生成物に基づいている。表4の結果は、Cat.2および触媒4(「Cat.4」)の存在下での、1,4−ペンタジエン、エチレン、およびオクテンのポリマー生成物に基づいている。表5の結果は、Comp.Cat.C1、触媒3(「Cat.3」)、触媒5(「Cat.5」)、および触媒6(「Cat.6」)の存在下での、1,5−ヘキサジエン、エチレン、およびオクテンのポリマー生成物に基づいている。表6の結果は、Comp.Cat.C1、Cat6、Cat.2、およびCat.4の存在下での、1,7−オクタジエン、エチレン、およびオクテンのポリマー生成物に基づいている。表7の結果は、Cat.3、Cat.5、Cat.6、およびCat.2の存在下での、1,9−デカジエン、エチレン、およびオクテンのポリマー生成物に基づいている。(Figueroa,R.;Froese,R.D.;He,Y.;Klosin,J.;Theriault,C.N.;Abboud,K.A.Organometallics 2011,30,1695−1709,Froese,R.D.;Jazdzewski,B.A.;Klosin,J.;Kuhlman,R.L.;Theriault,C.N.;Welsh,D.M;Abboud,K.A.Organometallics 2011,30,251−262)
シリーズ3.Cで単鎖触媒((Comp.Cat.C1)は、他の触媒と比較した場合、ポリマー中の2倍以上のオクテンレベルによって示されるように、増加した量のα−オレフィンを組み込んだ。シリーズ3.Cで単鎖触媒((Comp.Cat.C1)を使用する場合、添加されたジエンの様々なレベルは、ポリマーMWDに有意な影響を与えなかった。しかし、表3から表7の二本鎖の触媒にジエンを添加することは、ジエンレベルが増加するにつれて、MwおよびMpのより高い値をもたらし、多くの場合、高分子量テールの形成の証拠はなかった。
ジエンを含有するそれぞれの実施例では、反応器に取り込まれるジエンの量は、反応器内の他の反応物と比較して少なかった。したがって、ジエンの添加は、反応器に添加されたコモノマー、エチレン、および溶媒の量に影響を及ぼさなかった。
実施例1−3−メチル−1,4−ペンタジエンを用いた四官能性分岐
実施例2−1,4−ペンタジエンを用いた四官能性分岐
図20は、ジエンの量が増加するにつれてのピーク重量平均分子量のシフトを示している。図20では、表4に記録されているP2.4.1〜P2.4.4シリーズが、LogMとしての関数としてdWdLogMとしてプロットされており、これはGPCプロットである。ジエンの体積分率が増加すると、GPCプロットのピークが右にシフトした。
実施例3−1,5−ヘキサジエンを用いた四官能性分岐
実施例4−1,7−オクタジエンを用いた四官能性分岐
バッチ反応器からの分岐状の実施例
2つの分岐した例の分子量分布(MWD)曲線およびDSCを調べ、線状試料と比較した。
バッチ反応器実施例1
表8〜表12では、比較直鎖状ポリマー試料(1C)のポリマー特性を、バッチ反応器からの分岐状ポリマーと比較した。重合反応は、555gのISOPAR−E
(商標)および200psiの水素圧(ΔH
2)で、150℃の温度で起こった。エチレン圧力は、0.3μモルの触媒8、0.36μモルの共触媒A(メチルジ(テトラデシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)、および10μモルのMMAO−3Aの存在下で150psiで一定に保たれた。
図21は、GPCによって決定された、シリーズ8.C(直鎖状)および8.1(分岐状)のポリマーの従来の分子量分布曲線である。分岐状ポリマー、シリーズ8.1の曲線の形状は、直鎖状ポリマーと比較して変更されている。さらに、分子量曲線のピークが右にシフトしている。
図22は、GPCによって決定された、シリーズ8.C(直鎖状)および8.1(分岐状)のポリマーの絶対分子量分布曲線である。
図23は、シリーズ8.1である分岐状試料の伸長粘度固定具である。
分岐状の実施例8.1の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表9に記録した。0.1ラジアン/秒での粘度は27,457Pasと計算され、100ラジアン/秒での粘度は974Pasと測定され、28.2のレオロジー比(V0.1/V100)をもたらした。
弾性係数mは、[((tan(δ
0.1)−tan(δ
100))*1000)/(0.1−100))]である。tan(δ
0.1)は、0.1ラジアン/秒における位相角の正接であり、tan(δ
100)は、100ラジアン/秒における位相角の正接である。実施例8.1の分岐状ポリマーのtan(δ
0.1)は1.6であり、実施例1のtan(δ
100)は、0.8であって、これは190℃で7.9の弾性係数をもたらす。
比較例8.Cの動的機械的スペクトルを測定し、結果を表10に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は892Pasと計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は526Pasと測定され、1.7のレオロジー比(V0.1/V100)をもたらした。比較直鎖状ポリマー、8.Cのtan(δ0.1)は53.3であり、tan(δ100は2.0であって、これは、190℃で513.4の弾性率をもたらす。
直鎖状比較ポリマー樹脂のレオロジー比は、分岐した実施例、シリーズ8.1のレオロジー比と比較した場合、非常に低かった(1.7)。分岐状の実施例1、シリーズ8.1の増加したレオロジー比および低い弾性係数は、非線形ポリマー挙動を示している。強いずり減粘および弾性挙動は、絡み合った長鎖分岐ポリマーを例示することが多い。
図24は、分岐した実施例1、シリーズ8.1のレオテンス装置によって得られた溶融強度である。
分岐状の実施例2
表11では、ジエンが1,9−デカジエンである分岐状ポリエチレンを合成した。分岐状ポリマーを、555gのIsoparEおよび200psiの水素圧(ΔH
2)で、150℃の温度で重合させた。エチレン圧力は、0.3μモルの触媒7、0.36μモルの共触媒A、および10μモルのMMAO−3Aの存在下で150psiで一定に保たれた。
図25は、GPCによって決定された、シリーズ11.C(直鎖状)および11.1(分岐状)の分岐状の実施例2のポリマーの従来の分子量分布曲線である。図26は、光散乱トリプル光検出器によって決定された、シリーズ11.C(直鎖状)および11.1(分岐状)のポリマーの絶対分子量分布曲線である。分岐状ポリマー、シリーズ11.1の曲線の形状は、直鎖状ポリマーと比較して変更されている。
図27は、シリーズ11.1の分岐状の実施例2の伸長粘度固定具によって得られた伸長粘度である。
比較例の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表12に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は17,643Pasと計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は857Pasと測定され、20.6のレオロジー比(V 0.1/V100)をもたらした。実施例2、シリーズ11.1の分岐状ポリマーのtan(δ0.1)は2.0であり、tan(δ100)は、1.0であって、これは190℃で10.4の弾性係数をもたらす。
図28は、分岐状の実施例2、シリーズ11.1のレオテンス装置によって得られた溶融強度である。
様々な条件下での分岐研究
四官能性の「ラダー分岐」を、エチレン圧力の増加、オクテンモノマーの増加、開始分子量の増加、開始分子量の減少、様々なジエン、ジエン量の増加または減少、および様々な多鎖触媒などの様々な条件下で研究した。
実施例1:様々なジエンおよびジエンの量
表13〜表22の実施例は、同一の条件下で調製され、150℃の温度で触媒7の存在下で重合されたものであった。含まれる条件は、585gのIsoparE、15gの1−オクテン、240psiの水素圧、150psiのエチレン圧力、0.3μモルの触媒7、0.36μモルの共触媒A、および10μモルのMMAO−3Aであった。
表13の結果は、重合反応にジエンが存在する場合、高分子量テールなしで分子量が増加することを示している。
これらの重合条件を利用して高分子量ポリマーを生成すると、ジエンが重合反応に取り込まれたときに発生する四官能性の「ラダー分岐」が生じた。重合反応は、高分子量で四官能性の「ラダー分岐」を有するポリマー樹脂をもたらした。
ホモポリマー(少量のジエンを含む)を製造するために使用される重合反応にジエンを取り込むと、分子量(四官能性の「ラダー分岐」)が増加した。表15に記録されたデータは、エチレンのみの樹脂の実施例では、2つの異なるジエンが重合反応に取り込まれたときに分子量が増加したことを示した。
表16の結果は、分岐が様々な触媒と様々な密度で発生することを示している。表16の樹脂は、触媒8およびポリマー中の7mol%に十分なオクテンによる分岐を実証した。
表17の結果に基づいて、分子量は、四官能性「ラダー分岐」を示すジエンの添加により増加した。これらの実施例は、より高い線形分子量を有していた。実施例5.1および5.2において、触媒8は、デカジエンまたはペンタジエンが重合反応に存在する場合、より高分子量を有するポリマー樹脂を生成した。
表18の結果は、異なるα−オレフィンコモノマーを使用した場合に分子量の増加(四官能性の「ラダー分岐」)が発生したことを示している。表18のポリマー樹脂は、2つの異なる触媒と2つの異なるヘキセンの充填によって生成された。
表19の結果に基づくと、ジエンによる分子量の増加(四官能性「ラダー分岐」)は、様々なレベルのオクテンで発生した。表19の実施例は、ポリマーに7mol%のオクテンが含まれていても、四官能性「ラダー分岐」が発生したことを示している。
表20に示されているように、四官能性「ラダー分岐」は、様々なレベルのオクテンおよびより高い開始分子量で発生した。実施例8.1および8.2は、7mol%のオクテンおよび約83,000g/molの開始M
wを有するポリマー樹脂が、デカジエンおよびペンタジエンの両方で分岐をもたらすことを示した。
表21の結果は、はるかに低い密度(ポリマー中の高レベルのオクテン)および低い開始分子量で分子量の増加(四官能性「ラダー分岐」)があることを示した。実施例9.1では、ポリマー樹脂は9mol%を超えるオクテンを含み、開始M
wは約43,000g/molであった。ジエンが重合反応に取り込まれると、分子量が増加した(「ラダー分岐」が発生した)。
表22の結果は、より低い開始分子量で異なるレベルの取り込まれたオクテンを有するジエン(四官能性「ラダー分岐」)で増加した分子量を示した。実施例22.1では、ポリマー樹脂の開始分子量は約51,000g/molであったが、ジエンが重合反応に取り込まれると、分子量は70,000g/molに増加した(四官能性「ラダー分岐」が発生した)。
表23および表24のデータによると、反応器内のエチレン圧力およびオクテンの量が増加すると、分子量が増加した(四官能性「ラダー分岐」が発生した)。
実施例4:触媒7が触媒したデカジエン−ホモポリマー
表25に要約された結果は、オクテンが反応器に存在しない場合に、四官能性の「ラダー分岐」が発生することを示している。表25の各実施例の分子量は、重合反応中のデカジエンの量が増加するにつれて増加した。
実施例26.C.1は、0.2オクテンを含有する重合反応の結果である。図29は、実施例26.C.1、26.C.2、および26.1〜26.4のLog(MW)のグラフである。デカジエンの量が増加すると、分子量のピークが右にシフトする。表27〜表32は、例26.C.1、26.C.2、および26.1〜26.4の動的機械的スペクトルの結果をまとめたものである。表27〜表32のそれぞれの結果は、四官能性「ラダー分岐」の量が増加するにつれて、弾性係数mが減少することを示している。さらに、表27〜表32のそれぞれの結果は、四官能性「ラダー分岐」の量が増加するにつれて、レオロジー比が増加することを示している。
図29は、シリーズ26.C.1、26.C.2、および26.1〜26.4の曲線の従来の分子量分布である。
比較例の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表27に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は762Pas と計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は552Pasと測定され、1.4のレオロジー比(V
0.1/V
100)をもたらした。実施例26.C.1の分岐状ポリマーのtan(δ
0.1)は192.8であり、実施例26.C.1のtan(δ
100)は、2.8であって、これは190℃で1901.6の弾性係数をもたらす。
比較例26.C.1の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表28に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は662Pasと計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は501Pasと測定され、1.3のレオロジー比(V
0.1/V
100)をもたらした。実施例26.C.1の直鎖状ポリマーのtan(δ
0.1)は401.3であり、実施例26.C.1のtan(δ
100)は、3.1であって、これは190℃で3986.2の弾性係数をもたらす。
実施例26.1の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表29に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は7,410Pasと計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は883Pasと測定され、8.4のレオロジー比(V
0.1/V
100)をもたらした。実施例13.1の分岐状ポリマーのtan(δ
0.1)は4.3であり、実施例13.1のtan(δ
100)は、1.3であって、これは190℃で29.8の弾性係数をもたらす。
実施例26.2の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表30に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は56,549Pasと計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は1,236Pasと測定され、45.8のレオロジー比(V
0.1/V
100)をもたらした。実施例26.2の分岐状ポリマーのtan(δ
0.1)は1.2であり、実施例26.2のtan(δ
100)は、0.8であって、これは190℃で4.2の弾性係数をもたらす。
実施例26.3の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表31に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は56,549Pasと計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は1,236Pasと測定され、117.8のレオロジー比(V
0.1/V
100)をもたらした。実施例26.3の分岐状ポリマーのtan(δ
0.1)は1.2であり、実施例26.3のtan(δ
100)は、0.8であって、これは190℃で1.5の弾性係数をもたらす。
実施例26.4の動的機械的スペクトルを測定し、結果を表32に記録した。0.1ラジアン/秒での剪断粘度は909,000Pasと計算され、100ラジアン/秒での剪断粘度は3,054Pasと測定され、297.6のレオロジー比(V0.1/V100)をもたらした。実施例26.4の分岐状ポリマーのtan(δ0.1)は0.3であり、実施例26.4のtan(δ100)は、0.3であって、これは190℃で0.4の弾性係数をもたらす。
連続反応器からの比較例
Guzman−2010は、定常状態のCSTRでの従来のジエン分岐に起因するMWDおよび物理的特性を実証および分析した。幾何拘束型触媒(Constrained geometry catalyst(CGC))を使用して、非常によく混合された1ガロンの反応器システムでエチレン、1−オクテン、および1,9−デカジエンを共重合させた。Guzmanによって使用された特定のCGC触媒は、米国特許第5,965,756号(構造IX)および米国特許第7,553,917号(実施例3)によって詳細に説明された。Guzman−2010触媒は、触媒中心から単鎖を成長させるように設計された。Guzmanのデータを、ジエン供給濃度の範囲にわたって525psigの圧力および155℃の温度でCSTRを操作しながら、定常状態で収集した。Guzmanによって収集された様々な定常状態のポリマー試料には、測定可能なレベルのゲルまたは不溶性物質は含まれていなかった。しかしながら、最高レベルのジエン供給では、若干の内部反応器付着汚れが観察され、より高いレベルのジエン供給は、ゲル形成または反応器MWD不安定性をもたらすことが予想された。
表33では、Guzmanから選択した一連のデータを、ジエン供給レベルのスペクトルにわたって固定された反応器条件について要約した。シリーズ全体を通して、エチレンおよび1−オクテンの供給濃度を、それぞれ13.8重量%と3.6重量%に設定した。触媒供給速度を、シリーズ全体で79%の一定のエチレン変換率を維持するように継続的に調整し、2.2kg/時の固定ポリマー生産速度を得た。コポリマー組成の尺度であるポリマー密度は、約0.922g/ccで一定であった。
表33のデータは、従来のジエン分岐レベルの変化が、I2およびI10によって反映されるような、平均分子量および多分散性ならびに粘度などの特性にどのように影響を与えかを実証した。分子量に対する従来のジエン分岐の影響を、絶対および従来のMWD測定技術の両方について表33に示した。絶対MWD測定は分岐状ポリマーに適した方法であるが、常に利用できるとは限らない。したがって、表33には、屈折率検出器を使用した従来の手法により測定された分子量も含まれている。表33の結果は、どちらの測定技術でも、ジエンの供給量がゼロから923ppmに増加するにつれて、重量平均分子量(Mw)が大幅に上昇することを実証した。
Guzmanでは報告されていないが、表33に関連するMWD曲線が見出され、絶対および従来のGPC測定技術についてそれぞれ図30Aおよび30Bにプロットした。図30Aおよび30BのMWD曲線データは、従来のジエン分岐から生じる予想される高Mwテール形成が起こったことを実証した。ジエン分岐の増加に伴うピークMWの大幅な動きの欠如は、MWD曲線からも明らかである。
図30Aおよび30Bの分子量分布データを、より多くのジエンモノマーがCSTRに供給されたときのMWD曲線の位置および形状の展開を説明する単純な測定基準に縮小した。表34のデータは、Guzmanのポリマー試料の絶対MWD測定および従来のMWD測定の両方に対するこれらのMWD測定基準を示した。表34の絶対MWD測定データは、1,9−デカジエン供給量が0〜923ppmの範囲であるため、分子量が最大87%増加することを示した。M
pで示されるように、ピーク分子量変化は、分子量測定のどちらの手段でも大幅に変化せず、これは、「ラダー分岐状」ポリマーの結果と一致しない。形状係数は、表34に要約されており、ジエン供給量レベルおよびM
wが増加するにつれて、G
79/29およびA
TAILの両方についての値が増加したため、「ラダー分岐状」ポリマーと一致している。
市販の樹脂に関するいくつかの重要なパラメーターを、表35に示す。材料の基本的なパラメーターのいくつかは、溶液、気相、および高圧反応器で作製された。
表35に要約されたデータは、図31および図32のグラフにプロットされている。データは、LDPE、LLDPE、ULDPE、およびジエンモノマーを含有するエチレン樹脂と比較した「ラダー分岐状」ポリマーの違いを示している。図31および図32において、本開示の「ラダー分岐状」ポリマー(グラフの凡例におけるラダー−PE)は一緒にクラスター化され、したがって、「ラダー分岐状」ポリマーが他のエチレン系ポリマーと比較して独特のポリマー特性を有することを示す。図31のグラフに示されるように、「ラダー分岐状」ポリマーは、少なくとも10のレオロジー比、および0.86未満の平均g’を有する。図31では、プロットされたLDPE樹脂は、0.65未満の平均g’を有し、先行技術のエチレン−ジエン樹脂(凡例に先行技術のET−ジエンとして列挙されている)は、一緒にクラスター化されない。
図33では、溶融強度(センチニュートン、cN)を、メルトインデックス(Log I
2)の関数として測定した。三角形および円で示されているように、二本鎖触媒から生成されたポリマーを、一本鎖触媒から生成されたポリマー、およびオートクレーブLDPE、管状LDPE、ならびに線状ポリエチレンの文献ベースの曲線と比較した。二本鎖触媒から生成されたポリマーの溶融強度は、オートクレーブLDPE、管状LDPE、および単鎖触媒から生成されたポリマーの溶融強度よりも小さかったが、直鎖状ポリエチレンよりも有意に大きかった。これは、二本鎖触媒から生成されたポリマーが絡み合った長鎖分岐を有していることを示している。
特許請求の範囲に記載の主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、説明した実施形態に様々な修正を加えることができることが当業者には明らかであろう。したがって、本明細書は、そのような修正および変形が添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入る限り、説明した実施形態の修正および変形を網羅することが意図される。