JP2022188835A - 半導体レーザ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】視感度や画質の向上に寄与する半導体レーザ装置を提供すること。【解決手段】半導体レーザ装置LD0は、基板1と第1導電型の第1クラッド層2と第2導電型の第2クラッド層3と発光層ELとを有する。また、前記発光層ELに形成され、レーザ光を放射する少なくとも2つの第1と第2の発光部EM01、EM02と、共振器方向に延在する光導波路OWと、前記レーザ光のビーム形状を調整する調整領域ARとを有する。更には、前記調整領域ARは少なくとも前記光導波路の光出射端面側に形成され、第1の調整領域AR01と第2の調整領域AR02を含む。また、前記第1の発光部EM01から放射される第1のレーザ光の第1の波長λ01は、前記第2の発光部EM02から放射される第2のレーザ光の第2の波長λ02と異なり、前記第1と第2の調整領域AR01、AR02の前記共振器方向におけるそれぞれの長さが異なっている。【選択図】図1

Description

本発明は、半導体レーザ装置に関する。
近年、半導体レーザ装置(以下、単に「半導体LD」または「LD」とも称す)を用いたプロジェクタ等のディスプレイ装置の市場が拡大している。
また、様々な分野において、拡張現実(AR:Augmented Reality)、仮想現実(VR:Virtual Reality)、複合現実(MR:Mixed Reality)、代替現実(SR:Substitutional Reality)といったリアリティ化技術が実用化されており、これらの技術を用いたヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mount Display)、ヘッドアップディスプレイ(Head-up Display)、ARグラス等のディスプレイ装置が商品化されている。
例えば、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)では、光源にRGB(赤色・緑色・青色)の3色のレーザ光を用い、画像表示用の空間変調素子であるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により画像を作成し、導波路(waveguide)を通して網膜等に投影する技術が知られている。このMEMSを用いたシステムは、広色域、高解像度、広視野角などで利点があると言われている。一方で、広色域、高解像度、広視野角など画質の更なる高性能化のために、RGBの各色においてマルチビームLD(複数の半導体レーザ装置)を用いていたが、各色の波長は同一であった。全ビームの波長が揃っていると(即ち、波長が同一であると)、レーザ光の干渉性による画質低下が生じることになる。
特許文献1は、同一素子内で複数の波長のレーザを発振可能な多波長半導体レーザを開示している。特許文献1では、レーザ光の具体的な波長についての記載はないが、AlGaAs系の量子井戸レーザであることから、赤外領域のレーザ光であり、RGB以外の色領域におけるレーザ光について述べられている。また、異なる波長を発振する第1と第2の量子井戸活性層は、それぞれの井戸幅(物理的膜厚)が異なっている。
特開平05-082894号公報
上述した技術背景に加え、画質(解像度・フレームレート)向上のため、狭ピッチでマルチエミッタ(複数の発光部)を独立駆動するモノリシック構造の横シングルモードLDが求められている。しかしながら横シングルモードレーザは波長スペクトルが狭く干渉性が高いため画質悪化が課題になっている。
また、ディスプレイ装置の高性能化として、レーザ光の干渉を抑制し、広色域、高解像度、広視野角などの視感度や画質の更なる向上が求められている。視感度や画質の更なる向上には、例えば、RGBの3色のレーザ光を用いた光源の各色において、発振波長の異なる複数のレーザ光を出射することのできる半導体レーザ装置であることが、前述したレーザ光の干渉性による画質低下の抑制の観点から好ましい。
しかしながら、本発明者らによれば、次のことが見出された。発振波長の異なる複数の波長のレーザ光を出射するためには、それぞれのレーザ光を放射する発光部の発光層(活性層)のバンドギャップエネルギーを変えることが考えられる。そのためには、例えば、発光層の膜厚、または発光層の膜厚は変えずに発光層の組成、を発光部ごとで変えれば、異なる複数の波長のレーザ光を得ることができる。しかし、本発明者らの鋭意研究の結果、レーザ光の波長が発光部ごとで異なると、それぞれの発光部から放射されるレーザ光のビーム形状において違いが生じることが見出された。これは、レーザ光の波長が異なると、光導波路内を伝搬するそれぞれのレーザ光が感じる等価屈折率が変わり、結果、それぞれのレーザ光のビーム形状に違いを生じてしまうと考えられる。そして、このようなビーム形状の違いが生じると(または、それぞれのビーム形状のずれが大きくなると)、視感度や画質の悪化の一つの原因となり得る。また、LDの光出射端面から出射されるレーザ光のビーム形状やビーム広がり角がレーザ光ごとに異なる場合、ビームを受けるレンズなどの光学系をビームごとに設計および調整すれば、ビーム形状の違いから生じる不具合はある程度補正される。しかし、これは非常に手間が掛かるばかりか、コストアップの要因にもなる。
前述した特許文献1では、発光波長の違いによる、それぞれのレーザ光のビーム形状およびその違いについては何ら言及されていない。
本発明の課題は、視感度や画質の向上に寄与する半導体レーザ装置を提供することである。その他の課題および新規な特徴は、本明細書および図面の記載から明らかになる。
一実施の形態に係る半導体レーザ装置は、基板と、前記基板の主面に積層される、第1導電型の第1クラッド層と第2導電型の第2クラッド層と、前記第1クラッド層と前記第2クラッド層とに挟まれるように形成され、前記基板主面に平行な第1の面上において形成される、発光層と、を有する。また、前記発光層に形成され、レーザ光を放射する少なくとも2つの第1と第2の発光部と、前記発光層および前記第1クラッド層と前記第2クラッド層の一部により構成され、共振器方向に延在する光導波路と、前記第1と第2の発光部から放射される前記レーザ光のビーム形状を調整する調整領域と、を有する。更には、前記調整領域は少なくとも前記光導波路の光出射端面側において形成され、前記第1の発光部に形成される第1の調整領域と前記第2の発光部に形成される第2の調整領域を含む。また、前記第1と第2の調整領域は、少なくとも前記第1と第2の発光部にそれぞれ対応する前記発光層に形成され、前記第1の発光部から放射される第1のレーザ光の第1の波長は、前記第2の発光部から放射される第2のレーザ光の第2の波長と異なり、前記第1と第2の調整領域の前記共振器方向におけるそれぞれの長さが異なっている。
一実施の形態に係る半導体レーザ装置では、視感度や画質の向上に寄与する半導体レーザ装置を提供することができる。
好ましい実施の形態に係る半導体レーザ装置の構成の一例を示す要部斜視図である。 実施の形態1に係る半導体レーザ装置の構成の一例を示す要部斜視図である。 実施の形態1に係る半導体レーザ装置の構成を示す要部上面図である。 実施の形態1に係る半導体レーザ装置における発光層EL11~EL13の構成の一例を示す要部断面図である。 レーザ光のビーム形状(NFP/FFP)に係る説明図(1)である。 レーザ光のビーム形状(NFP/FFP)に係る説明図(2)である。 実施の形態1に係る半導体レーザ装置におけるレーザ光のビーム形状(NFP)の改善結果を示す説明図である。 実施の形態1に係る半導体レーザ装置におけるレーザ光のビーム形状(NFP)の改善結果を示すグラフである。 実施の形態1に係る半導体レーザ装置におけるレーザ光のビーム形状(FFP)の改善結果を示すグラフである。 実施の形態1に係る半導体レーザ装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。 実施の形態1に係る半導体レーザ装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。 実施の形態1に係る半導体レーザ装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。 実施の形態1に係る半導体レーザ装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。 実施の形態1に係る半導体レーザ装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。 実施の形態1に係る半導体レーザ装置の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。 実施の形態2に係る半導体レーザ装置の構成を示す要部上面図と要部横断面図である。 実施の形態2に係る半導体レーザ装置におけるレーザ光の光導波路付近の分布を示す説明図である。 実施の形態3に係る半導体レーザ装置の構成を示す要部上面図と要部横断面図である。 実施の形態4に係る半導体レーザ装置の構成を示す要部上面図である。 実施の形態4に係る半導体レーザ装置における作用を示す説明図である。
以下、実施の形態に係る半導体レーザ装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要件または対応する構成要件には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、各実施の形態と各変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。なお、符号においては、形成箇所が異なる等の理由で個別に説明する必要がある際には、例えば、発光部EM11、EM12、EM13など、それぞれで異なる符号を付して説明するが、本来部材が持つ機能として説明する際には、例えば、発光部EM、と表現する場合もある。
[好ましい実施の形態に係る半導体レーザ装置の構成]
図1は、好ましい実施の形態に係る半導体レーザ装置の構成の一例を示す要部斜視図である。
なお、図1に示されるx軸、y軸、z軸については、xは水平方向/幅方向/横方向、yは共振器方向/奥行方向/縦方向、zは垂直方向/厚さ方向/高さ方向、をそれぞれ意味するものとする。この方向に関する定義については、他の図においても同様である。
図1に示されるように、好ましい実施の形態に係る半導体レーザ装置LD0は、GaAs基板1の上に、n型クラッド層2、発光層ELおよびp型クラッド層3が形成されている。また、レーザ光を放射する少なくとも2つの発光部EM01、EM02が、x方向において所定の間隔にて形成されている。発光部EM01、EM02からは、異なる波長のレーザ光λ01、λ02がそれぞれ放射される。
発光部EM01、EM02においては、発光層ELおよび第1クラッド層2と第2クラッド層3の一部により構成される光導波路OW01、OW02が共振器方向(y方向)に亘ってそれぞれ形成されている。
また、光導波路OWの少なくとも光出射端面側には、第1と第2の発光部EM01、EM02から放射されるレーザ光λ01、λ02のビーム形状を調整(補正)する調整領域ARが設けられている。調整領域ARは、第1の発光部EM01に形成される第1の調整領域AR01と第2の発光部EM02に形成される第2の調整領域AR02を含んでいる。なお、第1と第2の調整領域AR01、AR02は、光導波路OW01、OW02の内、少なくとも発光層EL01、EL02に形成されていれば良い。また、第1と第2の調整領域AR01、AR02の共振器方向における長さARL01、ARL02は、それぞれ異なって形成されている。なお、図1では調整領域ARはx方向において発光部EMの領域内に形成しているが、x方向の形成範囲は特にこれに限定されず効果を奏する任意の範囲で形成できる。
このように、第1と第2の調整領域AR01、AR02の共振器方向の長さを異ならせることにより、波長が異なることに起因するレーザ光λ01、λ02のビーム形状の違いを補正し、ビーム形状のばらつきを抑えることができる。
なお、レーザ光のビーム形状を調整(補正)する調整領域ARとは、光の閉じ込め度合いが相対的に弱い領域を意味し、光導波路を構成する第1クラッド層2、第2クラッド層3および発光層ELとの屈折率の差を小さくした領域である。一例として、次から選択される領域である。
(1)発光層EL内において、特定の領域の発光層ELのバンドギャップエネルギーを他の領域の発光層ELのバンドギャップエネルギーより広げた領域。(2)発光層EL内において、特定の領域の発光層ELのバンドギャップエネルギーを、クラッド層2、3のバンドギャップエネルギーに近づけるようにした領域。(3)光導波路内において、特定の領域の光導波路OWの等価屈折率を他の領域の導波路OWの等価屈折率よりも相対的に低くした領域。(4)発光層EL内において、特定の領域の発光層ELの厚さを他の領域の発光層ELの厚さよりも相対的に薄くした領域。(5)発光層EL内において、特定の領域の発光層ELの組成を、バンドギャップエネルギーを広げる、または等価屈折率を小さくするように、他の領域の発光層ELの組成と異ならせるようにした領域。異なる組成としては、一例として、他の領域に比べて不純物としての亜鉛(Zn)が多く混入しているか否かである。(6)上記に示す(1)から(5)を適宜組み合わせた領域。
[実施の形態1]
実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1では、レーザ光を放射する3つの発光部EM11、EM12、EM13が形成され、それぞれの発光部EMからは異なる波長のレーザ光λ11、λ12、λ13が放射される。また、発光部EM11、EM12、EM13においては、発光層ELおよび第1クラッド層2と第2クラッド層3の一部により構成される光導波路OW11、OW12、OW13が共振器方向(y方向)に亘ってそれぞれ形成されている。更には、光導波路OW11、OW12、OW13を含む半導体レーザ装置LD1の光出射端面側の領域には、発光部EM11、EM12、EM13から放射されるレーザ光λ11、λ12、λ13のビーム形状を調整(補正)する調整領域ARが設けられている。調整領域ARは、発光部EM11、EM12、EM13のそれぞれに対応する調整領域AR11、AR12、AR13を含んでいる。それぞれの調整領域AR11、AR12、AR13は、共振器方向における長さARL11、ARL12、ARL13を有しており、それぞれの長さARLは異なっている。
本実施の形態において、調整領域ARは、光出射端面側の発光層ELのバンドギャップエネルギーを広げ、光導波路の等価屈折率を相対的に小さくした領域である。
(半導体レーザ装置の構成)
図2は、実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1の構成の一例を示す要部斜視図である。図3は、実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1の構成を示す要部上面図である。図4は、実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1における発光層EL11~EL13の構成の一例を示す要部断面図である。
図2に示されるように、半導体レーザ装置LD1は、GaAs基板1の上に、n型クラッド層2(厚さ2μm)、発光層EL11、EL12、EL13およびp型クラッド層3(厚さ1.7μm)が形成されている。n型クラッド層2およびp型クラッド層3の組成は(AlGa1-x1-yInP(0<x≦1、0<y<1)であり、ここではx=1、y=0.5とした。
半導体レーザ装置LD1には、3つの発光部EM11、EM12、EM13が形成され、異なる波長λのレーザ光を放射させるため、それぞれの発光部EMにおける発光層EL11、EL12、EL13の厚さ(ET11、ET12、ET13)を異ならせている。すなわち、厚さ、ET11>ET12>ET13、の関係になっている。本実施の形態では、それぞれの厚さETは、ET11(104nm)、ET12(92nm)、ET13(80nm)としている。詳細は後述するが、発光層EL11、EL12、EL13は選択成長法により形成されるため、それぞれの厚さETを異ならせることができる。
3つの発光部EM11、EM12、EM13から放射される波長λは、発光部EM11>発光部EM12>発光部EM13、の関係となっている。一例として、発光領域ER11からは642nm(λ11)、発光領域ER12からは639nm(λ12)、発光領域ER13からは636nm(λ13)の波長のレーザ光がそれぞれ放射される。このように、発光層ELの厚さETによりレーザ光の波長が異なり、発光層ELの厚さETが厚くなるほど、波長λの値も大きくなっている。
なお、上述の例では、それぞれの波長は3nmの差で設定されているが、これらの波長の差は、1nm~30nmの間で適宜選択することができ。例えば、波長の差を1nmとした場合は、発光領域ER11からは622nm、発光領域ER12からは621nm、発光領域ER13からは620nmの波長のレーザ光がそれぞれ放射される。また、波長の差を30nmとした場合は、発光領域ER11からは690nm、発光領域ER12からは660nm、発光領域ER13からは630nmの波長のレーザ光がそれぞれ放射される。
また、それぞれの発光部EM11、EM12、EM13には、p型クラッド層3の一部をエッチングしてリッジ溝RGを形成し、電流狭窄構造(電流注入構造)および横方向(x方向)の光閉じ込めのための構造としてのリッジR11、R12、R13が形成されている。このように、リッジRは、p型クラッド層3よりも屈折率が低い空気(屈折率=1)に両側面から挟まれるように、共振器方向(y方向)に亘って形成されたリッジ構造となっている。
発光部EM11、EM12、EM13においては、発光層ELおよび第1クラッド層2と第2クラッド層3の一部により構成される光導波路OW11、OW12、OW13が共振器方向(y方向)に亘ってそれぞれ形成されている。
また、光導波路OW11、OW12、OW13を含む半導体レーザ装置LD1の光出射端面側の領域に、発光部EM11、EM12、EM13から放射されるレーザ光λ11、λ12、λ13のビーム形状を調整(補正)する調整領域ARが設けられている。すなわち、調整領域ARは、光出射端面側において、第1クラッド層2の一部および発光層ELと第2クラッド層3に形成されている。
調整領域ARは、光出射端面側の発光層ELのバンドギャップエネルギーを広げ、光導波路の等価屈折率を相対的に小さくした領域であり、本実施の形態では、一例として、亜鉛(Zn)を熱拡散などの手法により混入させた領域である。亜鉛(Zn)が混入することで、発光層ELとクラッド層2、3が混晶化し、発光層ELのバンドギャップエネルギーが広がる。結果、発光層ELの屈折率が低下することで、光導波路の等価屈折率を下げている。詳細は後述するが、等価屈折率が小さい領域は、光の閉じ込め度合いが小さくなり、光導波路内でのレーザ光のビーム形状を広げる方向で作用させることができる。
また、本実施の形態に係る半導体レーザ装置LD1では、調整領域ARは、光出射端面においてx方向に亘って連続して形成されている一方で、共振器方向(y方向)における長さが異なっている。すなわち、調整領域ARは、それぞれの発光部EM11、EM12、EM13に対応する調整領域AR11、AR12、AR13を含んでいる。また、調整領域AR11、AR12、AR13は、共振器方向における長さARL11、ARL12、ARL13を有しており、それぞれの長さARLが異なって形成されている。本実施の形態では、一例として、それぞれの長さARLは、ARL11(20μm)、ARL12(15μm)、ARL13(10μm)としている。
更には、図2および図3に示されるように、本実施の形態に係る半導体レーザ装置LD1では、光反射端面側においても、調整領域ARと同様の構成からなるリア領域ARRが形成されている。図2および図3の平面図(a)では、リア領域ARRは、光反射端面においてx方向に亘って連続して形成され、共振器方向におけるリア領域ARRの長さは同じに形成されている。なお、リア領域ARRは、レーザ光のビーム形状のばらつきを抑制する観点では、必ずしも形成する必要はないが、その他の理由(実施の形態4にて後述する)、端面保護の観点または製造上の都合で形成されていても良い。
リア領域ARRの変形例として、図3の平面図(b)に示すように、光反射端面側に形成されるリア領域ARRを、光出射端面側に形成される調整領域ARと相似形としても良い。すなわち、発光部EM11における調整領域AR11とリア領域ARR111の共振器方向における長さARL11とARRL111とは同じ長さで形成されている。同様に、発光部EM12における調整領域AR12とリア領域ARR121の共振器方向における長さARL12とARRL121とは同じ長さで形成されている。また、発光部EM13における調整領域AR13とリア領域ARR131の共振器方向における長さARL13とARRL131とは同じ長さで形成されている。
発光層ELの厚さが厚い場合には光の閉じ込め度合いが大きくなり、端面における光の密度が高くなる。例えば、発光層EL11の厚さは、他の発光層EL12、EL13の厚さよりも厚く形成されている。そのため、厚さが厚い発光層EL11の光反射端面側に形成されるリア領域ARR111をより長くすることで、リア端面(光反射端面)の保護をより向上させることができる。
また、GaAs基板1の裏面とリッジRの上面には、図示しないn側電極とp側電極が形成されている。n側電極とp側電極に電流を印加することで、3つの発光部EM11、EM12、EM13に形成される発光領域ER11、ER12、ER13から、赤色領域におけるレーザ光(波長:600nm~700nm)が放射される。
発光層EL11、EL12、EL13の構成を図4により説明する。発光層ELは、光導波路としてはコア層として機能する。図4に示されるように、発光層ELは、下から順に、下部n側ガイド層nGL、バリア層BL、量子井戸層QW、バリア層BLおよび上部p側ガイド層pGLにより構成されている。発光層ELの厚さは波長や各層の屈折率にも依存するが、赤色レーザでは約50nm~約500nmの範囲から選ばれ、本実施の形態では約100nmの厚さとしている。図2に示される発光領域ER11、ER12、ER13は、主に量子井戸層QWの所望の領域に相当する。なお、図4においては、量子井戸層QWは、単一量子井戸層(SQW)として示されているが、多重量子井戸層(MQW)であっても良い。
本実施の形態に係る半導体レーザ装置LD1では、発光層ELを構成するそれぞれの層の厚さは次のように設定されている。発光層EL11は、下から順に、下部n側ガイド層nGL(40nm)、バリア層BL(9nm)、量子井戸層QW(6nm)、バリア層BL(9nm)および上部p側ガイド層pGL(40nm)により構成され、トータルの厚さET11は104nmである。発光層EL12は、下から順に、下部n側ガイド層nGL(35nm)、バリア層BL(8.25)nm)、量子井戸層QW(5.5nm)、バリア層BL(8.25nm)および上部p側ガイド層pGL(35nm)により構成され、トータルの厚さET12は92nmである。発光層EL13は、下から順に、下部n側ガイド層nGL(30nm)、バリア層BL(7.5nm)、量子井戸層QW(5nm)、バリア層BL(7.5nm)および上部p側ガイド層pGL(30nm)により構成され、トータルの厚さET13は80nmである。
このように、発光層ELの厚さETは、ET11(104nm)、ET12(92nm)、ET13(80nm)となり、12nmごとで厚さが異なっている。
発光層EL11、EL12、EL13の結晶層は(AlGa1-x1-yInP(0≦x<1、0<y<1)の結晶層から構成されている。量子井戸層QWは(Ga1-yInP(x=0、y=0.55)であり、ガイド層GLおよびバリア層BLは(AlGa1-x1-yInP(x=0.7、y=0.5)である。なお、量子井戸層QWにおいては、Al組成(x)をx=0としているが、発光層ELのなかでAl組成(x)が量子井戸層QWで最も小さくなるように適宜選択することができる。しかし、量子井戸層QWのAl組成(x)が約0.5よりも大きくなると間接遷移型となるため、量子井戸層QWのAl組成(x)は0.5以下であることが好ましい。
また、本実施の形態に係る半導体レーザ装置では、発光層ELの厚さETを変えることで、異なる波長のレーザ光を一つのチップから放射することを可能としている。しかし、発光層ELの厚さを変えなくても、発光層ELの結晶層を構成する組成の内、取り分け、In(インジウム)の組成比を変えることにより、エネルギーバンドギャップを変化させ、異なる波長の複数のレーザ光を一つのチップから放射することも可能である。この場合、一例として、発光層EL11のIn組成比(y):0.59、発光層EL12のIn組成比(y):0.55、発光層EL13のIn組成比(y):は0.51とすれば、異なる波長のレーザ光を一つのチップから放射することが可能である。なお、このIn組成比(y)は、0.35~0.65の範囲から選択することが好ましい。
なお、本実施の形態にて発光層ELと表現する場合は、発光層ELに上述の下部n側ガイド層nGL、量子井戸層QW、バリア層BLおよび上部p側ガイド層pGLを全て含むことを意味する他、量子井戸層QWとバリア層BLを含むことを意味する場合、または、p型クラッド層3、n型クラッド層2の少なくともどちらか一方の一部をも含むことを意味する場合もある。
また、図4で示される発光層ELの構成は、特に言及しない限り、後述する他の実施の形態における発光層ELにおいても同様な構成である。
(レーザ光のビーム形状(NFP/FFP))
次に、図5および図6を用いて、レーザ光のビーム形状や特性の評価として用いられるNFP(NearField Pattern)とFFP(Far Field Pattern)について説明する。なお、NFPとFFPに関しては、x方向に相当する水平方向(slow axis)とz方向に相当する垂直方向(fast axis)における形状がある。ビーム形状の特性の評価においては、水平方向と垂直方向の両方向における評価および検討が必要であるが、本実施の形態では、特に言及しない限り、垂直方向のビーム形状について述べるものとする。
まず、図5を用いて、NFPとFFPの定義について説明する。図5においては、(a)は半導体レーザ装置の光出射端面の概略側面図であり、(b)は半導体レーザ装置を上面から見た概略上面図である。また、(c)(d)は、それぞれNFPとFFPを示す分布例を示す図である。
レーザ光は(b)に模式的に示されるように、光導波路OWの中を伝搬し、光出射面から外部に放射される。NFPは、光の出射端面におけるビーム形状の特性を示し、(c)に示されるように、横軸がz方向に相当する垂直位置(μm)、縦軸が光強度にて表現される。また、FFPは、光の出射端面から離れた位置(約10mm)におけるビーム形状の特性を示し、(d)に示されるように、横軸がz方向におけるビームの広がり角を示す角度(deg)、縦軸が光強度にて表現される。すなわち、レーザ光のビーム形状においては、人間が直接視認することになる光出射端面から放射された後のビーム形状、すなわちFFPで示されるビーム形状の評価が重要である。
図6は、NFPとFFPとの関係を示す説明図である。図6において、実線は波長λが長い場合の特性を示し、破線は波長λが短い場合の特性を示している。NFPにおいて垂直方向のビーム形状が狭いレーザ光の場合、FFPでは垂直方向のビームの広がり角は広がる。一方で、NFPにおいて垂直方向のビーム形状が広いレーザ光の場合、FFPでは垂直方向のビームの広がり角は狭くなる。これは、波の回折現象により説明できるものであるが、ここでは説明を省略する。このように、FFPのビームの広がり角を調整にするには、NFPにおけるビーム特性を改善する必要があるといえる。
ここで、レーザ光は光導波路を伝搬して外部に放射される。光導波路は、リッジR(p型クラッド3の一部)、発光層ELおよびn型クラッド2の一部から構成される。なお、前述したように、本実施の形態に係る半導体レーザ装置LD1では、リッジ構造を採用しているため、リッジRの周囲にはSiOや空気などの低屈折率の媒質が存在している。
レーザ光のビーム形状は、光の分布で重み付けした(すなわち、光が感じる)等価屈折率により形状が異なってくる。光分布は、レーザ光が通る材料の屈折率、膜厚および波長(真空中の光の波長)の三要素を含んでいる。例えば、レーザ光の波長λが変化すると、光導波路内を伝搬している光が感じる等価屈折率が変化し、結果、レーザ光のビーム形状(NFP)が変化する。また、同様に、発光層ELの膜厚が厚くなると、光導波路内を伝搬する光が感じる等価屈折率が高くなり、結果、レーザ光のビーム形状(NFP)が変化する。
本実施の形態の構造では、発光層ELの膜厚が厚くなることで等価屈折率が高くなると、光導波路内での光の閉じ込め度合いが相対的に強くなり、レーザ光のビーム形状(NFP)が狭くなる方向に作用する。すなわち、波長が長いレーザ光のビーム形状は、波長が短いレーザ光のビーム形状よりも相対的に狭くなることになる。
したがって、波長が異なる複数のレーザ光を放射する場合において、ビームの広がり角(FFP)を揃えるには、レーザ光が光導波路内を伝搬する過程でのレーザ光のビーム形状(NFP)の検討が重要になる。このように、波長が異なるレーザ光のそれぞれの光導波路の等価屈折率を制御することで、それぞれのレーザ光のビーム形状を調整(補正)することができ、結果、放射されるレーザ光のそれぞれのビーム形状の違いを抑制することが可能となる。
(ビーム形状の改善結果)
次に、調整領域ARを形成することによるNFPとFFPの改善結果を説明する。図7Aは、本実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1におけるレーザ光のビーム形状(NFP)の改善結果を示す説明図である。図7Bは、本実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1におけるレーザ光のビーム形状(NFP)の改善結果を示すグラフである。また、図7Cは、本実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1におけるレーザ光のビーム形状(FFP)の改善結果を示すグラフである。
図7Aにおいて、(A)は発光部EM11~EM13におけるレーザ光λ11~λ13が、光導波路内を伝搬していく過程を模式的に示した図である。右側がフロント側の光出射端面で、左側がリア側の光反射端面の方向である。また、図中、光導波路内の各位置((a)~(e))での垂直方向のビーム形状(NFP)が模式的に示されている。点線(P)は、光導波路に形成された調整領域ARと利得領域(または非調整領域non-ARとも称す)との境界であり、点線(P)より右側が調整領域ARで、左側が利得領域(非調整領域non-AR)である。また、図7Aにおいて、(B)は、光導波路内をレーザ光λ11~λ13が伝搬する過程でのレーザ光の垂直方向におけるビーム形状(NFP)の広がり具合を定性的に示したグラフである。横軸は伝搬長(μm)、縦軸は垂直方向のビーム形状(NFP)の半値全幅を示している。なお、それぞれのレーザ光の波長は、前述したように、λ11(642nm)、λ12(639nm)、λ13(636nm)である。
図7Aの(A)に示されるように、光導波路内の位置(a)では、それぞれのレーザ光λ11、λ12、λ13のビーム形状に違いが生じている。これは、EM11の量子井戸が厚く、光の閉じ込め度合いが相対的に強くなるため、垂直方向のビーム形状(NFP)が狭く、NFP値が小さくなる。また、EM13では、量子井戸が薄く、光の閉じ込め度合いが相対的に弱くなり光導波路内の等価屈折率が相対的に低くなる。そのため、垂直方向のビーム形状(NFP)が広がり、NFP値が大きくなる。位置(a)における垂直方向のNFPは、図7Aの(B)において伝搬長0μm付近に示されるように、ばらつきが大きく生じている。仮に、調整領域ARを設けなければ、それぞれのレーザ光は、位置(a)におけるビーム形状にて光出射端面から放射されることになり、結果、垂直方向のビーム形状(FFP)の広がり角が不揃いのレーザ光となる。
本実施の形態では、それぞれのレーザ光の垂直方向のビーム形状(NFP)を調整(補正)するため、調整領域ARを設けている。調整領域ARは、EM11においては光出射端面から20μm(ARL11)、EM12においては光出射端面から15μm(ARL12)、EM13においては光出射端面から10μm(ARL13)の位置までそれぞれ形成されている。
ここで、前述したように、調整領域ARは、光出射端面側の発光層ELのバンドギャップエネルギーを広げ、光導波路の等価屈折率を相対的に小さくした領域である。したがって、垂直方向のビーム形状(NFP)が狭いレーザ光λ11においては、等価屈折率を相対的に小さくした光導波路を長い距離に亘って伝搬させることで、垂直方向のビーム形状(NFP)を広げる方向で補正することができる。図7の(A)に示されるように、EM11におけるレーザ光λ11のビーム形状は、位置(a)から位置(e)に向かうに従い、広げることができる。また、垂直方向のビーム形状(NFP)が広いレーザ光λ13においては、等価屈折率を相対的に小さくした光導波路を短い距離で伝搬させることで、垂直方向のビーム形状(NFP)の広がり幅を少なくすることができる。
このように、調整領域ARの共振器方向における長さARLを発光部EMごとで調整することで、(B)に示されるように、位置(e)に相当する伝搬長20μm付近(光出射端面)では、垂直方向のビーム形状(NFP)のばらつきを抑制することができる。したがって、各レーザ光のビーム形状に応じて(すなわち、レーザ光の波長に応じて)、調整領域ARを伝搬する距離を調整することにより、光出射端面から放射されるレーザ光のビーム形状(FFP)の広がり角を揃えることが可能となる。
図7Bおよび図7Cには、レーザ光のビーム形状(NEP、FFP)の改善結果が示されている。各図において、(a)は比較例として、調整領域ARを形成しなかった場合のNFP特性とFFP特性である。(b)は、本実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1におけるNFP特性とFFP特性である。実線は、発光部EM13(波長λ13=636nm)に相当するNFP特性とFFP特性で、点線は、発光部EM11(波長λ=642nm)に相当するNFP特性とFFP特性である。なお、図7Bおよび図7Cでは、比較の都合上、中間の波長を放射する発光部EM12(波長λ12=639nm)のNFP特性とFFP特性は省略されている。
図7Bから分かるように、(a)の比較例では、NFPの半値全幅の差が0.15μmであったが、(b)の本実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1では、NFPの半値全幅の差が0.03μmに縮小することができた。このように、垂直方向のNFP形状の特性のばらつきが改善されている。
また、図7Cから分かるように、(a)の比較例では、FFPの半値全幅の差が1.9°であったが、(b)の本実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1では、NFPの半値全幅の差が0.3°に縮小することができた。このように、垂直方向のFFP形状の特性のばらつきが改善されている。
このように、調整領域ARの共振器方向における長さARLを発光部EMごとで異ならせることで、光導波路内を伝搬するレーザ光のNFPが改善し、結果、FFP(ビーム形状の広がり角)が改善されることで、それぞれのビーム形状の垂直方向の広がり角のばらつきを抑えることが可能となる。
なお、複数のレーザ光におけるビーム形状の広がり角の異なる度合いは、半導体レーザ装置の設計にも依存するが、(AlGa1-x1-yInP系の赤色レーザはGaN系の青色系レーザに比べ、発光層とクラッド層との間の屈折率差が大きいため、膜厚等の構造の違いの影響が大きくなる傾向がある。そのため、本実施の形態のような光導波路内の等価屈折率を調整する方法は、赤色レーザに適用することでより顕著な効果が得られる。
(ビーム形状の調整領域ARと窓構造との関係)
半導体レーザ装置の高出力化に伴い端面損傷(COD:Catastrophic Optical Damage)が生じ、その対策として、光出射端面の光吸収を低減させた端面窓構造と呼ばれる手法が知られている。次に、本実施の形態における調整領域ARと窓構造との関係を説明する。
窓構造は、光出射端面付近のバンドギャップエネルギーを広げて、光吸収を抑制させることで、光出射端面付近の発熱を低減させることを目的とした技術である。このような窓構造は、光出射端面に不純物を拡散させ、クラッド層と発光層やガイド層を混晶化させることで形成される。
本実施の形態における調整領域ARは、発光層EL全体とクラッド層2、3との屈折率の差をなくすための領域である。前述したように、発光層ELは量子井戸層QW、バリア層BL、ガイド層GLから構成されており、少なくともガイド層GLの屈折率が下がるだけでも、ビーム形状を調整(補正)する効果がある。
一方で、COD対策としての窓構造は、最低条件として、量子井戸層のバンドギャップエネルギーが広いことが要求される。仮に、ガイド層やバリア層のバンドギャップエネルギーが変化しても、量子井戸層のバンドギャップエネルギーが変化しなければ、COD対策としての効果は殆ど生じない。
また、本実施の形態における調整領域ARは、バンドギャップエネルギーが広がった領域である。調整領域ARの一例として、バンドギャップ波長が発光波長よりも10nm短い場合、COD対策の窓構造としては不十分であるが、ビーム形状を変化させる効果のある領域と見なすことができる。例えば、発光波長630nmの発光部の場合、光出射端面近傍の領域付近における発光層あるいはガイド層のバンドギャップ波長が620nm以下であれば、ビーム形状を広げる効果を得ることができる。一方で、電流が注入され発光する領域(利得領域)や電流が注入されなくてもバンドギャップ波長が変化していない領域は、本実施の形態における調整領域ARではなく、非調整領域となる。なお、調整領域ARのバンドギャップ波長を確認する方法としては、一例として、フォトルミネッセンス測定がある。これは、外表面からバンドギャップエネルギーより高いエネルギーを持つ光を当てて、励起状態となった材料が安定状態に緩和する過程で発生する光を測定する手法である。端面付近のフォトルミネッセンス波長が発光波長よりも10nm以上短い場合、または混晶化が進みフォトルミネッセンス強度が低下した場合は、本実施の形態における調整領域ARの特性を有するものと推定することができる。
(半導体レーザ装置の製造方法)
次に、実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1の製造方法の一例について説明する。図8~図13は、半導体レーザ装置LD1の製造方法に含まれる工程の一例を示す要部断面図である。
実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1の製造方法は、主として、(1)GaAs基板1の上にn型クラッド層2を形成する工程と、(2)マスクMKを形成する工程と、(3)発光層EL11、EL12、EL13を選択成長法にて形成する工程、(4)p型クラッド層3およびキャップ層4を形成する工程(マスクMKの除去工程を含む)、(5)調整領域ARを形成する工程、(6)リッジRおよび電極を形成して個片化する工程、とを含む。
(1)GaAs基板1の上にn型クラッド層2を形成する工程
まず、図8に示されるように、GaAs基板1の上に厚さ約2μmのn型クラッド層2をMOCVD法でエピタキシャル成長する。使用される原料ガスは、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)やトリメチルインジウム(TMI)などである。n型クラッド層2の組成は(AlGa1-x1-yInP(0<x≦1、0<y<1)であり、ここではx=1、y=0.5とした。本実施の形態では、GaAs基板1との格子整合を考慮し、In組成yは0.5に調整している。また、AlとGaの組成比(x:1-x)は、xの方が大きいことが好ましく、(x:1-x)=1:0でも良い。
(2)マスクMKを形成する工程
次に、n型クラッド層2を形成した後、n型クラッド層2の表面にマスクMKとして機能する酸化シリコン(SiO)膜をCVD法にて形成する。このSiO膜は結晶成長を阻害する膜であり、例えば窒化シリコン(Si)膜を用いても良い。
SiO膜を形成後、図9に示されるように、リソグラフィー法を用いてSiO膜に複数のストライプ状の開口部(本実施の形態では3つの開口部)を形成する。3つの開口部の幅は(x方向(水平方向)の大きさに相当する)それぞれ異なり、図9の左側から順に広くなるように形成する。すなわち、開口部の幅は、一例として、EW11(20μm)、EW12(30μm)、EW13(40μm)である。また、それぞれのマスク幅は、一例として、MK1(50μm)、MK2(25μm)、MK3(15μm)、MK4(5μm)とした。
(3)発光層EL11、EL12、EL13を選択成長法にて形成する工程
次に、図10に示されるように、マスクMKの開口部の領域に、下部n側ガイド層nGL、バリア層BL、量子井戸層QW、バリア層BLおよび上部p側ガイド層pGLからなる発光層EL11、EL12、EL13を形成する。これらの層の形成には選択成長と呼ばれる方法にて実施する。選択成長法は、マスクMKの上面には結晶が成膜されないことを利用して、マスクMKの開口部の領域のみに所望の膜を形成するものである。
選択成長法にて成長する結晶は(AlGa1-x1-yInP(0≦x<1、0<y<1)であり、使用される原料ガスは、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)やトリメチルインジウム(TMI)などである。
選択成長法により、マスクMKの開口部のそれぞれの領域に、図4で示すように、下部n側ガイド層nGL、バリア層BL、量子井戸層QW、バリア層BLおよび上部p側ガイド層pGLの順で成膜する。図9に示したマスクMKの開口部が最も狭い領域(EW11)には図10に示すように発光層EL11が形成され、マスクMKの開口部が最も広い領域(EW13)には発光層EL13が形成される。なお、選択成長法により発光層ELを形成する際、発光層ELの側面には緩やかな傾斜面が形成されるが、図面では省略されている。また、図4では単独の量子井戸層QWの場合を示しているが、複数の量子井戸を有する多重量子井戸層であっても良い。
この発光層ELを形成する工程では、(AlGa1-x1-yInPを選択成長法により形成するが、各元素の組成割合を示すxとyの値は次のように設定している。すなわち、本実施の形態では、ガイド層GLおよびバリア層BLはx=0.7、y=0.5とした。また、量子井戸層QWは、成長においては原料ガスのTMAの供給を行わず、量子井戸層QWはAlを含有しない(すなわちx=0)GaInPとしている。
ガイド層GLはSCH(Separated Confinement Heterostructure)層や閉じ込め層と呼ばれることもあり、クラッド層2(3)よりも屈折率が高く、量子井戸層QWよりも屈折率が低いことが好ましい。そのため、クラッド層2(3)に比べてAl組成比xが小さくなるように原料の供給比を調整する。例えば、Al組成比xはクラッド層2(3)がもっとも高く、ガイド層GLまたはバリア層BL、量子井戸層QWの順に低くなるように原料ガスの供給量を調整する。
前述したように、量子井戸層QWの厚さは5nm~6nmの範囲で形成されている。選択成長法にて形成される発光層ELは、光導波路としてはコア層として機能する。発光層ELの厚さは波長や各層の屈折率にも依存するが、赤色レーザでは約50nm~約500nmの範囲から選ばれ、本実施の形態では合計約100nmの厚さとしている。
また、選択成長法にて形成される発光層ELの厚さETは、それぞれの発光層ELにおいて異なっている。すなわち、マスクMKの開口部の大きさにより、選択成長される発光層ELの厚さに違いが生じ、発光層ELの幅EWが狭いほど発光層ELの厚さETが厚くなっている。具体的には、厚さETは、ET11(104nm)>ET12(92nm)>ET13(80nm)、の関係になっている(図2参照)。
上述したように、マスクMKの異なる開口領域に、選択成長法により発光層ELを堆積すると、発光層ELの膜厚が異なる。このメカニズムについては明らかではないが、次の(i)~(iv)であると想定することができる。
(i)選択成長法ではマスクMKの表面では膜成長が生じないため、マスクMKの表面に供給された原料ガスは、マスクMKの表面上を移動して(migrate)、マスクMKの開口部の領域に移動する。(ii)マスクMKの表面積が大きいほど、移動する原料ガスの量が多くなる。(iii)表面積が大きなマスクMKに隣接するマスクMKの開口部の領域には、より多くの量の原料ガスが開口部に移動し、開口部における原料ガスの濃度が高くなる。また、マスクMKの開口部が小さければ原料ガスの濃度もより高くなる。(iv)結果として、マスクMKの開口部が最も狭い領域に形成される発光層EL11により多くの原料が供給されることになる。
なお、上記形態に限らず、下部n側ガイド層nGLの一部を、マスクMKの形成前にn型クラッド層2に続けて成膜してもよい。または、マスクMKに開口部を形成した後、n型クラッド層2の一部を選択成長し、続けて下部n側ガイド層nGLを選択成長してもよい。また、上部p側ガイド層pGLの形成後、続けて次の工程(4)で形成するp型クラッド層3の一部を選択成長しても良い。
(4)p型クラッド層3およびキャップ層4を形成する工程(マスクMKの除去工程を含む)
次に、図11に示されるように、マスクMKを除去する。そして、図12に示されるように、厚さ約1.7μmのp型クラッド層3をMOCVD法でエピタキシャル成長し、使用される原料ガスは、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)やトリメチルインジウム(TMI)などである。p型クラッド層3の組成は(AlGa1-x1-yInP(0<x≦1、0<y<1)であり、ここではx=1、y=0.5とした。続けて、p型クラッド層3の上面に300nmのキャップ層4としてGaAsを形成する。
なお、p型クラッド層3の形成の途中には、エッチストップ層(図示しない)を形成する工程を含んでも良い。エッチストップ層は、この後の工程(6)でp型クラッド層3をエッチングしてリッジRを形成する際のエッチング停止層として機能するものである。
(5)調整領域ARを形成する工程
次に、図13に示されるように、キャップ層4の表面にマスクMKとして機能する酸化シリコン(SiO)膜をCVD法にて形成する。このSiO膜に代わって、窒化シリコン(Si)膜など熱処理工程で半導体表面を保護できる材料を用いても良い。
マスクMKを形成後、図13に示されるように、リソグラフィー法を用いてマスクMKに開口部を形成する。この開口部は、光出射端面に相当する領域を開口するように形成される。なお、図中、破線Pは素子を形成する際のウエハの劈開位置を示しており、素子分離した時の共振器端面と成る位置である。その後、本実施の形態では、亜鉛(Zn)を600℃程度の熱拡散法またはイオン打ち込み法などの手法を用いて、p型クラッド層3、発光層ELに至るまで、亜鉛(Zn)を混入させる。または、亜鉛(Zn)はn型クラッド層2に至ってもよい。亜鉛(Zn)を混入させた領域が調整領域ARとして機能する領域である。
この時、マスクMKの開口の大きさを発光部EM11、EM12、EM13ごとで変えることで、それぞれの発光部EM11、EM12、EM13において調整領域ARの共振器方向における長さARL11、ARL12、ARL13を異ならせることができる。
なお、図13において示される垂直方向の破線Pは、この後の工程(6)の個片化の際に劈開により分断される箇所に相当している。
(6)リッジRおよび電極を形成して個片化する工程
次に、p型クラッド層3をエッチングにより図2で示したリッジ溝RGを形成して、発光層EL11、EL12、EL13のそれぞれに対して共振器方向に延在するリッジRを形成する。
そして、図2では簡便のために図示しないが、SiO等のパッシベーション酸化膜を成膜し、フォトリソグラフィとエッチング技術を用いてリッジ上部に酸化膜の開口部を設け、その上に電極を形成する。その後、GaAs基板を劈開し、劈開面に端面コーティングなどを形成する。このような工程を経ることで、図2および図3に示すような半導体レーザ装置LD1が形成される。
このように、本実施の形態1においては、選択成長法により堆積する層は、工程(3)で形成される比較的に薄い発光層ELである。一方で、工程(1)および工程(4)で形成される厚いn型クラッド層2やp型クラッド層3は、選択成長法を用いることなく形成される。
(効果)
光出射端面側の領域に、発光部EM11、EM12、EM13から放射されるレーザ光λ11、λ12、λ13のビーム形状を調整(補正)する調整領域ARを設け、調整領域ARの共振器方向における長さARLを発光部EMごとで調整することで、光導波路内を伝搬するそれぞれのレーザ光の垂直方向のビーム形状(NFP)のばらつきを抑制することができる。更には、光出射端面から放射されるレーザ光のビーム形状(FFP)の広がり角を揃えることが可能となる。
これにより、広色域、高解像度、広視野角などの視感度や画質の更なる向上が可能となる。すなわち、実施の形態1では、視感度や画質の向上に寄与する半導体レーザ装置を提供することができる。
[実施の形態2]
(半導体レーザ装置の構成)
実施の形態2に係る半導体レーザ装置LD2は、調整領域AR2における亜鉛(Zn)の濃度分布を異ならせている点を除き、実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1と同じ構成である。よって、特に言及しない限り、以下では、実施の形態1と異なる点について主に説明し、同じ説明の繰り返しは省略する。
図14は、実施の形態2に係る半導体レーザ装置LD2の構成を示す(a)要部上面図と(b)要部横断面図である。(b)要部横断面図では、3つの発光層EL21、EL22、EL23における共振器方向(y方向)での断面図が示されている。
実施の形態2においても、実施の形態1と同じく、調整領域AR2は、光出射端面側の発光層ELのバンドギャップエネルギーを広げ、光導波路の等価屈折率を相対的に小さくした領域である。すなわち、調整領域AR2に亜鉛(Zn)を混入させて、発光層ELのバンドギャップエネルギーを広げ、光導波路の等価屈折率を相対的に小さくしている。
本実施の形態においては、図14に示されるように、調整領域AR21、AR22、AR23の共振器方向における長さARL21、ARL22、ARL23がそれぞれで異なることに加え、本実施の形態における調整領域AR2は、調整領域AR2に混入した亜鉛(Zn)の濃度に勾配を持たせている。亜鉛(Zn)の濃度は、光反射端面側の利得領域から共振器方向において光出射端面へ向かうに従い、濃度が徐々に高くなるように形成されている。すなわち、利得領域から光出射端面に向けて、徐々にバンドギャップエネルギーが広がるようにしている。このため、光導波路の等価屈折率を徐々に下げることができる。
図15は、実施の形態2に係る半導体レーザ装置LD2におけるレーザ光の光導波路付近の分布を説明する説明図である。図15において、上段は、共振器方向における等価屈折率および亜鉛(Zn)の濃度分布の状態を示す図で、下段は、レーザ光の分布を示すシミュレーション結果である。また、(a)は、調整領域ARにおいて亜鉛(Zn)の濃度に勾配がない場合で、(b)は、本実施の形態2に係り、調整領域AR2の亜鉛(Zn)の濃度に勾配がある場合である。図15の下段において、黒色領域の間の白色領域は、発光層ELの領域に相当する領域で、光強度が強いことを示している。また、黒色領域は、クラッド層2,3の一部を含む、光導波路OWに相当する領域である。なお、図15(a)、(b)共に、図の右側が光出射端面側になっている。
図15(a)から理解できるように、亜鉛(Zn)の濃度の勾配が無く、等価屈折率が調整領域ARの境界で急峻に変化する(すなわち等価屈折率が急峻に下がる)と、境界付近で光が散乱(点線の部分)していることが分かる。一方、図15(b)に示されるように、亜鉛(Zn)の濃度に勾配を持たせ、光出射端面に向かうに従い徐々に濃度を高めるように変化させると、等価屈折率も徐々に下げることができる。結果、図15(a)で見られたような光の散乱が抑制され、光導波路OWを伝搬する光の損失を抑制することが可能となる。これにより、半導体レーザ装置の出力の効率を高めることができる。
(半導体レーザ装置の製造方法)
前述したような調整領域AR2における亜鉛(Zn)の濃度分布は、実施の形態1にて説明された、調整領域ARを形成する工程(5)(図13)にて形成することができる。すなわち、亜鉛(Zn)を熱拡散等の手法で拡散させる際、所望の濃度分布を得るように、温度や時間を調整することで実現できる。
その他の工程は、実施の形態1で示した製造工程と同様であるので、その説明を省略する。
(効果)
実施の形態2に係る半導体レーザ装置LD2も、実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1と同様の効果を奏する。なお、実施の形態2に係る半導体レーザ装置LD2においては、調整領域AR2における等価屈折率の変化割合を徐々に変更させているため、レーザ光のビーム形状のばらつきを抑制できることに加え、光導波路OWを伝搬する光の損失を抑制することも可能となる。
[実施の形態3]
(半導体レーザ装置の構成)
実施の形態3に係る半導体レーザ装置LD3は、調整領域AR3の構成が異なっていることを除き、実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1と同じ構成である。よって、特に言及しない限り、以下では、実施の形態1と異なる点について主に説明し、同じ説明の繰り返しは省略する。
図16は、実施の形態3に係る半導体レーザ装置LD3の構成を示す(a)要部上面図と(b)要部横断面図である。(b)要部横断面図では、3つの発光層EL31、EL32、EL33における共振器方向(y方向)での断面図が示されている。
実施の形態3における調整領域AR3は、調整領域AR3における発光層ELの膜厚Et31、Et32、Et33を、利得領域の発光層ELの膜厚ET31、ET32、ET33よりも薄くしている。すなわち、調整領域AR3における発光層ELの膜厚Etを薄くすることにより、発光層ELのバンドギャップエネルギーを広げ、光導波路の等価屈折率を相対的に小さくしている。
すなわち、調整領域AR3の発光層ELにおける量子井戸層の膜厚が、利得領域の量子井戸層の膜厚よりも薄くなるため、量子井戸層内でのキャリアの量子準位が高くなり、相対的にバンドギャップエネルギーが広がる。また、量子井戸層およびガイド層の膜厚が薄くなることにより、光導波路の等価屈折率が低下し、光の閉じ込め度合いを相対的に弱くするこができる。
また、本実施の形態においても、図16に示されるように、調整領域AR31、AR32、AR33の共振器方向における長さARL31、ARL32、ARL33がそれぞれで異なる構成としている。
なお、調整領域AR3における発光層ELの膜厚Etを、共振器方向において光反射端面に向かうに従い、徐々に薄くすることも可能である。共振器方向において、発光層ELの膜厚Etに勾配を形成することで、実施の形態2で述べたように、調整領域AR3と利得領域との境界における等価屈折率の急峻な変化を抑制することができる。このように、膜厚に勾配をもたせることで、実施の形態2と同じく、光の散乱による損失をも抑制することができる。
(半導体レーザ装置の製造方法)
実施の形態3における調整領域AR3は、実施の形態1での製造工程における、(2)マスクMKを形成する工程と(図9)、(3)発光層EL11、EL12、EL13を選択成長法にて形成する工程(図10)、において形成することができる。また、実施の形態1での製造工程における、(5)調整領域ARを形成する工程(図13)、は、実施の形態3では省略される。なお、特に言及しない限り、以下では、実施の形態1と異なる点について主に説明し、同じ説明の繰り返しは省略する。また、その他の工程は、実施の形態1で示した製造工程と同様であるので、その説明を省略する。
(2)マスクMKを形成する工程
実施の形態1では、発光層ELが形成される領域に開口が形成されるように、マスクMKに対してy方向に延びるストライプ状の開口部を形成したが(図9参照)、実施の形態3では、光出射端面側および光反射端面側のそれぞれにおいて、x方向に亘って連続した開口部をマスクMKに設ける(例えば、図3に示した調整領域ARの部分がマスクMKを設けない開口部に相当する)。すなわち、ストライプ状の開口部に加え、光出射端面側および光反射端面側のそれぞれに、x方向において、調整領域AR3およびリア領域ARR3に相当する領域を含む大きな連続した開口部を設ける。
(3)発光層ELを選択成長法にて形成する工程
工程(2)で形成された、光出射端面側および光反射端面側におけるマスクMKの開口部は、x方向において連続した広い開口部となる。すなわち、発光層ELは、光出射端面側および光反射端面側のx方向において連続した膜として形成されることになる。そのため、発光層ELを選択成長する際、調整領域AR3およびリア領域ARR3に相当する領域の発光層ELの膜厚Etを薄く形成することができる。なお、マスクMKの開口部の大きさにより異なる膜厚が形成される理由については、実施の形態1において説明したので、ここでは繰り返さない。
このように、調整領域AR3における発光層ELの膜厚Etを、利得領域の発光層ELの膜厚ETよりも薄く形成することができる。
なお、上述した製造工程では、利得領域の発光層ELと調整領域ARの発光層とを同時に形成しているが、利得領域の発光層ELと調整領域ARの発光層とを別の工程として別々に形成しても良い。
(効果)
実施の形態3に係る半導体レーザ装置LD3は、実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1と同様の効果を奏する。
[実施の形態4]
(半導体レーザ装置の構成)
実施の形態4に係る半導体レーザ装置LD4は、光出射端面側に形成された調整領域ARと同様の構成を、光反射端面側にリア領域ARR4として設け、リア領域ARR4の共振器方向における長さARRLをそれぞれの発光部EMにおいて異ならせていることを除き、実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1と同じ構成である。よって、特に言及しない限り、以下では、実施の形態1と異なる点について主に説明し、同じ説明の繰り返しは省略する。
図17は、実施の形態4に係る半導体レーザ装置LD4の構成を示す要部上面図である。図18は、実施の形態4に係る半導体レーザ装置における作用を示す説明図である。
実施の形態4においては、前述した実施の形態1、2、3と同じく、光出射端面側において調整領域AR4が形成されている。なお、調整領域AR4は、前述した実施の形態1、2、3で説明した調整領域ARの構成から選択され得る。光出射端面側に形成される調整領域AR4は、発光部EMごとに形成される調整領域AR41、AR42、AR43を含んでいる。また、調整領域AR41、AR42、AR43の共振器方向における長さARLは、前述した他の実施の形態と同じく、それぞれで異なり、ARL41>ARL42>ARL43、の関係になっている。
光反射端面側に形成されるリア領域ARR4は、発光部EMごとに形成されるリア領域ARR41、ARR42、ARR43を含んでいる。また、リア領域ARR41、ARR42、ARR43の共振器方向における長さARRLは、それぞれで異なり、ARRL41<ARRL42<ARRL43、の関係になっている。
レーザ光の波長が異なることによるビーム形状の違いは、他の実施の形態と同様に、光出射端面側に形成された調整領域AR4にて調整(補正)し、ビーム形状の違いを抑制することができる。しかしながら、図18に示すレーザ光の出力特性は、調整領域ARが形成されていない利得領域の長さにより異なり、利得領域の長さが異なっていると、レーザ光が発振する閾値や出力効率にばらつきが生じてしまうことになる。
したがって、本実施の形態では、それぞれの発光部EMにおける出力特性のばらつきを抑制するため、利得領域の長さを揃えることを行っている。すなわち、リア領域ARR41、ARR42、ARR43の共振器方向における長さARRLをそれぞれ変えることで、利得領域の長さを揃えている。言い換えれば、光出射端面側に形成された調整領域AR4のそれぞれの長さARLに基づき生じた利得領域の長さの違いを、リア領域ARR4により調整しているものである。したがって、それぞれの発光部EMにおいて、光出射端面側の調整領域AR4の長さARLと、光反射端面側のリア領域ARR4の長さARRLとが異なるように形成されている。
(半導体レーザ装置の製造方法)
リア領域ARR41の形成は、例えば、実施の形態1にて説明された、調整領域ARを形成する工程(5)(図13)にて形成することができる。すなわち、亜鉛(Zn)を熱拡散等の手法で拡散させる際に用いるマスクMKに、リア領域ARR41、ARR42、ARR43を形成するための開口部を追加して形成することで実現できる。その他の工程は、実施の形態1で示した製造工程と同様であるので、その説明を省略する。
(効果)
実施の形態4に係る半導体レーザ装置LD4も、実施の形態1に係る半導体レーザ装置LD1と同様の効果を奏する。なお、実施の形態4に係る半導体レーザ装置LD4においては、光反射端面側のリア領域ARR4の長さARRLを、それぞれの発光部EMで異ならせているので、それぞれの発光部EMで利得領域の長さを揃えることができ、レーザ光のビーム間の出力特性のばらつきを抑制することが可能となる。
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更され得る。例えば、上記実施の形態では、赤色領域の半導体レーザ装置に関して説明したが、同種の材料系で作製可能な赤色以外の可視光領域であれば、他の色領域の半導体レーザ装置においても適用することが可能である。また、上記実施の形態では、光導波路構造としてリッジ構造に基づき説明したが、その他の光導波路構造でもよく、例えば、埋め込み型、ハイメサ型、チャネル型、等の構造にも適用することが可能である。更には、それぞれの実施の形態を適宜組み合わせても良い。
また、上記実施の形態では、一つの半導体レーザ装置から波長の異なる3つまたは4つのレーザ光を出射する場合について説明したが、出射するレーザ光は5つ以上であってもよい。
また、特定の数値例について記載した場合であっても、理論的に明らかにその数値に限定される場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値であってもよい。また、成分については、「Aを主要な成分として含むB」などの意味であり、他の成分を含む態様を排除するものではない。
また、一つの波長を出射する発光部EMには、調整領域ARが設けられておらず、その他の波長を出射する発光部EMに調整領域ARを設けてレーザ光のビーム間の出力特性のばらつきを抑制するものであっても良い。更には、上記実施の形態では、以下の形態を含む。
(付記1)
基板と、
前記基板の主面に積層される、第1導電型の第1クラッド層と第2導電型の第2クラッド層と、
前記第1クラッド層と前記第2クラッド層とに挟まれるように形成され、前記基板主面に平行な第1の面上において形成される、発光層と、
前記発光層に形成され、レーザ光を放射する少なくとも2つの第1と第2の発光部と、
前記発光層および前記第1クラッド層と前記第2クラッド層の一部により構成され、共振器方向に延在する光導波路と、
前記第1と第2の発光部から放射される前記レーザ光のビーム形状を調整する調整領域と、を有し、
前記調整領域は少なくとも前記光導波路の光出射端面側において形成され、前記第1の発光部に形成される第1の調整領域と前記第2の発光部に形成される第2の調整領域を含み、前記第1と第2の調整領域は、少なくとも前記第1と第2の発光部にそれぞれ対応する前記発光層に形成され、
前記第1の発光部から放射される第1のレーザ光の第1の波長は、前記第2の発光部から放射される第2のレーザ光の第2の波長と異なり、
前記第1と第2の調整領域の前記共振器方向におけるそれぞれの長さが異なる、半導体レーザ装置。
(付記2)
付記1に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1の波長は前記第2の波長よりも長く、
前記第1の調整領域の前記共振器方向における長さは、前記第2の調整領域の前記共振器方向における長さよりも長い、半導体レーザ装置。
(付記3)
付記1に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1と第2の調整領域のそれぞれのバンドギャップエネルギーは、前記共振器方向の中央部に位置するそれぞれの前記発光層のバンドギャップエネルギーよりも広い、半導体レーザ装置。
(付記4)
付記1に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1と第2の調整領域のそれぞれの等価屈折率は、前記共振器方向の中央部に位置するそれぞれの導波路内の等価屈折率よりも低い、半導体レーザ装置。
(付記5)
付記1に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1と第2の調整領域におけるそれぞれの前記発光層の厚さは、前記共振器方向の中央部に位置するそれぞれの前記発光層の厚さと異なる、半導体レーザ装置。
(付記6)
付記5に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1と第2の調整領域におけるそれぞれの前記発光層の厚さは、前記共振器方向の中央部に位置するそれぞれの前記発光層の厚さよりも薄い、半導体レーザ装置。
(付記7)
付記1に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1と第2の調整領域におけるそれぞれの前記発光層の組成は、前記共振器方向の中央部に位置するそれぞれの前記発光層の組成と異なる、半導体レーザ装置。
(付記8)
付記7に記載の半導体レーザ装置において、
前記第1と第2の調整領域は亜鉛(Zn)を前記共振器方向の中央部よりも高い濃度で混入した領域であり、
前記亜鉛の濃度は、前記光出射端面から前記共振器方向に向かって漸次少なくなるように傾斜している、半導体レーザ装置。
(付記9)
付記1に記載の半導体レーザ装置において、
前記共振器方向における前記光出射端面の反対側に形成される光反射端面を備え、前記光反射端面側には、前記第1と第2の調整領域と同じ構成の領域が、前記共振器方向においてそれぞれ異なる長さで形成される、半導体レーザ装置。
(付記10)
付記1に記載の半導体レーザ装置において、
前記導波路の中央部に配置される利得領域の前記共振器方向における長さは、前記第1と第2の発光部において同じである、半導体レーザ装置。
(付記11)
付記1に記載の半導体レーザ装置において、
前記発光層は、(AlGa1-x1-yInP(0≦x<1、0<y<1)の結晶層から構成され、前記レーザ光は赤色領域のレーザ光である、半導体レーザ装置。
AR ビーム形状の調整領域
ARL 調整領域の共振器方向における長さ
ARR リア領域
ARRL リア領域の共振器方向における長さ
BL バリア層
EM 発光部
EL 発光層
ER 発光領域
EW 発光層の幅
ET 発光層の厚さ
OW 光導波路領域
R リッジ
LD 半導体レーザ装置
QW 量子井戸層
MK マスク
nGL 下部n側ガイド層
pGL 上部p側ガイド層
1 GaAs基板
2 n型クラッド層
3 p型クラッド層
4 キャップ層

Claims (11)

  1. 基板と、
    前記基板の主面に積層される、第1導電型の第1クラッド層と第2導電型の第2クラッド層と、
    前記第1クラッド層と前記第2クラッド層とに挟まれるように形成され、前記基板主面に平行な第1の面上において形成される、発光層と、
    前記発光層に形成され、レーザ光を放射する少なくとも2つの第1と第2の発光部と、
    前記発光層および前記第1クラッド層と前記第2クラッド層の一部により構成され、共振器方向に延在する光導波路と、
    前記第1と第2の発光部から放射される前記レーザ光のビーム形状を調整する調整領域と、
    を有し、
    前記調整領域は少なくとも前記光導波路の光出射端面側において形成され、前記第1の発光部に形成される第1の調整領域と前記第2の発光部に形成される第2の調整領域を含み、前記第1と第2の調整領域は、少なくとも前記第1と第2の発光部にそれぞれ対応する前記発光層に形成され、
    前記第1の発光部から放射される第1のレーザ光の第1の波長は、前記第2の発光部から放射される第2のレーザ光の第2の波長と異なり、
    前記第1と第2の調整領域の前記共振器方向におけるそれぞれの長さが異なる、
    半導体レーザ装置。
  2. 前記第1の波長は前記第2の波長よりも長く、
    前記第1の調整領域の前記共振器方向における長さは、前記第2の調整領域の前記共振器方向における長さよりも長い、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
  3. 前記第1と第2の調整領域のそれぞれのバンドギャップエネルギーは、前記共振器方向の中央部に位置するそれぞれの前記発光層のバンドギャップエネルギーよりも広い、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
  4. 前記第1と第2の調整領域のそれぞれの等価屈折率は、前記共振器方向の中央部に位置するそれぞれの導波路内の等価屈折率よりも低い、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
  5. 前記第1と第2の調整領域におけるそれぞれの前記発光層の厚さは、前記共振器方向の中央部に位置するそれぞれの前記発光層の厚さと異なる、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
  6. 前記第1と第2の調整領域におけるそれぞれの前記発光層の厚さは、前記共振器方向の中央部に位置するそれぞれの前記発光層の厚さよりも薄い、請求項5に記載の半導体レーザ装置。
  7. 前記第1と第2の調整領域におけるそれぞれの前記発光層の組成は、前記共振器方向の中央部に位置するそれぞれの前記発光層の組成と異なる、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
  8. 前記第1と第2の調整領域は亜鉛(Zn)を混入した領域であり、
    前記亜鉛の濃度は、前記光出射端面から前記共振器方向に向かって漸次少なくなるように傾斜している、請求項7に記載の半導体レーザ装置。
  9. 前記共振器方向における前記光出射端面の反対側に形成される光反射端面を備え、前記光反射端面側には、前記第1と第2の調整領域と同じ構成の領域が、前記共振器方向においてそれぞれ異なる長さで形成される、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
  10. 前記導波路の中央部に配置される利得領域の前記共振器方向における長さは、前記第1と第2の発光部において同じである、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
  11. 前記発光層は、(AlGa1-x1-yInP(0≦x<1、0<y<1)の結晶層から構成され、前記レーザ光は赤色領域のレーザ光である、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
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