JP2022187091A - ボールねじ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】使用用途に応じ、荷重負荷能力の増減を容易に行うことができると共に、ねじ軸の周囲における荷重の負荷バランスを容易に最適化することができ、用途に応じた性能を容易に且つ柔軟に与えることが可能なボールねじ装置を提供する。【解決手段】多数のボールと、前記多数のボールが転動する螺旋状の転動溝を外周面に有するねじ軸と、前記多数のボールの無限循環路を有すると共に前記多数のボールを介して前記ねじ軸に螺合するナット部材と、を備え、前記ナット部材は、前記ねじ軸を囲むリング状に形成されると共に当該ねじ軸の周囲一巻き分の無限循環路を有するナット要素と、前記ナット要素を収容する中空部を有すると共に、前記ナット要素を前記ねじ軸の軸方向へ複数重ねて当該中空部内に収容するナットハウジングと、前記ナットハウジングの中空部内で互いに隣接する前記ナット要素の間に設けられる位相調整スペーサと、を備えている。【選択図】図3
Description
本発明は、回転運動と直線運動を相互に変換することが可能なボールねじ装置に関するものである。
ボールねじ装置は回転運動と直線運動を相互に変換することが可能な機械要素であり、各種工作機械、搬送装置、産業用ロボット等において、サーボモータが発生する回転運動を直線運動に変換する目的で多用されている。前記ボールねじ装置は、多数のボールと、これらボールが転走する螺旋状の転動溝が外周面に形成されたねじ軸と、前記ボールを介して前記ねじ軸の周囲に螺合するナット部材と、を備えている。
前記ナット部材には前記ボールの無限循環路が設けられている。この無限循環路は、前記ボールが前記ねじ軸と前記ナット部材との間で荷重を負荷しながら転動する螺旋状の負荷軌道と、前記負荷軌道の一端から他端へボールを戻す無負荷軌道とから構成されている。ボールねじ装置の荷重負荷能力に対しては前記負荷軌道に配列されたボール数が支配的であり、当該ボールねじ装置のユーザーは使用用途に応じて前記負荷軌道のねじ軸周囲の巻き数を考慮し、前記ナット部材を選定する必要があった。
一方、特許文献1には、ボールの無限循環路を有するリング状のボールガイド部材を複数重ねて使用するボールねじ装置が開示されている。各ボールガイド部材には前記ねじ軸の周囲一巻き分の軌道路が設けられており、この軌道路が前記ねじ軸の転動溝と対抗することによってボールの無限循環路が構成されている。このため、複数のボールガイド部材をハウジング内に重ねて収容することで、前記無限循環路を複数回路有するナット部材が構築されている。この特許文献1の開示によれば、前記ハウジングに配列するボールガイド部材の個数を選定することにより、ボールねじ装置の荷重負荷能力を任意に変更することができる。
その一方、特許文献1に開示されるボールガイド部材のように、ねじ軸の周囲一巻き分の無限循環路は無負荷軌道を含んでいることから、前記ハウジングに複数のボールガイド部材を配列する場合、前記ねじ軸の周囲における無負荷軌道の配置を当該ボールねじ装置の使用用途に応じて考慮する必要があった。すなわち、前記無負荷軌道においてはボールが荷重を負荷し得ないことから、ボールねじ装置に対して作用する荷重を考慮して、前記ねじ軸の周囲における荷重の負荷バランスを最適化する必要があった。
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、ユーザーの使用用途に応じ、荷重負荷能力の増減を容易に行うことができると共に、ねじ軸の周囲における荷重の負荷バランスを容易に最適化することができ、用途に応じた性能を容易に且つ柔軟に与えることが可能なボールねじ装置を提供することにある。
すなわち、本発明は、多数のボールと、前記多数のボールが転動する螺旋状の転動溝を外周面に有するねじ軸と、前記多数のボールの無限循環路を有すると共に前記多数のボールを介して前記ねじ軸に螺合するナット部材と、を備えたボールねじ装置であって、前記ナット部材は、前記ねじ軸を囲むリング状に形成されると共に当該ねじ軸の周囲一巻き分の無限循環路を有するナット要素と、前記ナット要素を収容する中空部を有すると共に、前記ナット要素を前記ねじ軸の軸方向へ複数重ねて当該中空部内に収容するナットハウジングと、前記ナットハウジングの中空部内で互いに隣接する前記ナット要素の間に設けられる位相調整スペーサと、を備えている。
本発明によれば、前記ナットハウジング内に配列するナット要素の数を変更することで、ボールねじ装置の荷重負荷能力の増減を容易に実施することが可能である。また、互いに隣接するナット要素の間に配置される位相調整スペーサの厚みを変更することで、各ナット要素の位相、すなわちねじ軸の周囲における無負荷軌道の位置を任意に調整することができ、ねじ軸の周囲における荷重の負荷バランスを容易に最適化することが可能となる。
以下、添付図面を用いて本発明のボールねじ装置を詳細に説明する。
図1は本発明を適用したボールねじ装置の一例を示す斜視図である。このボールねじ装置1は、外周面にボールの転動溝20が螺旋状に形成されたねじ軸2と、多数のボールを介して前記ねじ軸2の周囲に螺合する円筒状のナット部材3とから構成されている。また、前記ナット部材3は前記ねじ軸2の周囲を一巡するボールの無限循環路を備えている。前記ボールは前記無限循環路に配列された状態で前記ねじ軸2とナット部材3との間に介在しており、例えば前記ねじ軸2を前記ナット部材3に対して回転させることにより、当該ナット部材3が前記ねじ軸2の軸方向へ移動し、又は前記ナット部材3を前記ねじ軸2に対して回転させることにより、当該ねじ軸2が前記ナット部材3の軸方向へ移動する。
図2は前記ボールねじ装置1の分解斜視図である。前記ナット部材3は、前記ねじ軸2が挿通する中空部30を有して略円筒状に形成されたナットハウジング31と、このナットハウジング31の中空部内に収容されると共に前記多数のボール40の軌道路を備えた複数のナット要素4と、前記中空部30内で互いに隣接する複数のナット要素4の間に配置された位相調整スペーサ5と、を備えている。また、前記ナットハウジング31の中空部30の開口縁には止め輪32が装着され、これによって前記複数のナット要素4及び前記位相調整スペーサ5は当該中空部30内に固定されている。尚、図2は二基のナット要素4を前記ナットハウジング31の中空部30内に配置し、それらの間に位相調整スペーサ5を配置した様子を示しているが、前記ナット要素4は三基以上であっても差し支えなく、前記ナット要素4の基数に応じて前記ナットハウジング31の軸方向長さは変更される。その場合、各ナット要素4と位相調整スペーサ5は前記ナットハウジング31の中空部30内において交互に配列される。
図3は前記ねじ軸2に螺合する前記ナット部材3を軸方向に沿って切断した断面図である。同図に示されるように、前記ナットハウジング31の中空部30内には二基のナット要素4が収容され、これらナット要素4の間には前記位相調整スペーサ5が配置されている。前記ナットハウジング31の外周面には半径方向に突出したフランジ部33が設けられており、このフランジ部33を利用して前記ナット部材3を他の部材に固定することができる。また、前記ナットハウジング31に設けられた中空部30はその軸方向の一端が蓋部34によって覆われており、当該中空部30内に収容した前記ナット要素4の抜け止めが図られている。尚、前記蓋部34の中央には前記ねじ軸2を挿通させるための中央開口部35が当該ねじ軸2の外径よりも大きな内径で設けられている。
各ナット要素4は前記ねじ軸2が挿通される貫通孔を有してリング状に形成されており、前記貫通孔の内周面には前記多数のボール40の軌道路41が設けられる一方、当該ナット要素4の外周面は前記ナットハウジング31の中空部30の内周面に適合している。前記ナット要素4は前記軌道路41を転動するボール40を介して前記ねじ軸2に螺合している。前記軌道路41は前記ねじ軸2の周囲を一巻きする閉ループとして設けられている。
前記軌道路41は、前記多数のボール40が前記ナット要素4と前記ねじ軸2との間で荷重を負荷しながら転動する螺旋状の負荷軌道42と、前記多数のボール40を荷重から解放して前記ねじ軸2のねじ山部21を乗り越えさせる無負荷軌道43とを含んでいる。例えば前記ねじ軸2が回転すると、ボール40は前記負荷軌道42と前記ねじ軸2の転動溝20の間を転動し、前記負荷軌道42の終端に至ると、前記無負荷軌道43によって前記ねじ軸2のねじ山部21を乗り越えて前記負荷軌道42の始端に戻される。これにより、ボール40は前記ねじ軸2の周囲に設けられた閉ループとしての無限循環路を循環する。尚、図3に示したナット部材3は二基のナット要素4を有しており、前記ねじ軸2の周囲における無負荷軌道43の位置(以下、「位相」という)が互いに異なっている。
また、各ナット要素4はリング状に形成された第一部材44と第二部材45の組み合わせから構成されている。前記軌道路41はこれら第一部材44と第二部材45の境界部、すなわち前記第一部材44と前記第二部材45との接合面に位置しており、これら第一部材44及び第二部材45を組わせた際に前記軌道路41が完成する。この実施形態において、前記第一部材44は金属材料の鍛造加工によって所定形状に成形される一方、前記第二部材45は金属板のプレス加工によって所定形状に成形されている。このため、本実施形態のボールねじ装置1は前記軌道路41を転動するボール40と第一部材44の間のみに大きな荷重が作用する用途、例えば前記ねじ軸2を回転させて前記ナット部材3に固定した可動体を図3中の矢線A方向へ押圧しながら移動させる用途に利用することができる。
前記第一部材44は量産性に主眼をおいて鍛造加工によって製作しているが、切削加工、研削加工を用いて製作しても差し支えない。また、このボールねじ装置1の使用用途に応じ、前記第一部材44のみならず第二部材45にも大きな荷重が作用するのであれば、当該第二部材45は金属板のプレス成型ではなく、前記第一部材44と同様に製作しても差し支えない。
一方、前記位相調整スペーサ5は前記ねじ軸2の外径よりも大きな内径を有するリング状に形成されており、当該位相調整スペーサ5の外周面は前記ナットハウジング31の中空部30の内周面に適合している。この位相調整スペーサ5は互いに隣接する二基のナット要素4の間に配置されており、前記ナットハウジング31の中空部30内における二基のナット要素4の軸方向の間隔を決定している。
このボールねじ装置1では前述したように各ナット要素4には前記ねじ軸2の周囲を一巻きする軌道路41が一回路のみ設けられており、前記ナットハウジング31の中空部30に収容するナット要素4の基数を増加させることで、前記ねじ軸2と前記ナット部材3との間で荷重を負荷するボール40の数を増加させることができる。すなわち、ナットハウジング31内に配列するナット要素4の基数に応じた負荷能力を前記ナット部材3に与えることが可能である。
前記ナットハウジング31に複数のナット要素4を収容する際、これらナット要素4の位相、すなわち前記ねじ軸2の周囲における各ナット要素4の無負荷軌道43の位置は任意に設定することができる。例えば、図3に示すように、前記ナットハウジング31に対して二基のナット要素4を収容する場合、一方のナット要素4の無負荷軌道43の位置に対して、他方のナット要素4の無負荷軌道43の位置を任意の角度だけオフセットさせても良いし、オフセットさせることなく軸方向に重ねて配置してもよい。但し、前記ねじ軸2に形成されたボール40転動溝20は螺旋状に形成されており、各ナット要素4は多数のボール40を介して前記ねじ軸2に螺合していることから、一方のナット要素4の位相に対して他方のナット要素4の位相をオフセットさせた場合、当該ねじ軸2の周囲におけるオフセット角度が大きくなるにつれ、前記ねじ軸2の軸方向に関する二基のナット要素4の間隔は大きくなり、これらナット要素4の間に挟まれる位相調整スペーサ5の厚みは大きくなる。
このため、前記ナットハウジング31内で互いに隣接する二基のナット要素4の間に配置される前記位相調整スペーサ5の厚みを変更することにより、一方のナット要素4の位相に対する他方のナット要素4の位相を任意に変更することが可能である。すなわち、本実施形態のボールねじ装置では、前記位相調整スペーサ5の厚みを選択することにより、前記ナットハウジング31に収容された複数のナット要素4に関して、前記ねじ軸2の周囲における無負荷軌道43の配置を自由に設定することができ、前記ナット部材3のねじ軸2の周囲における荷重の負荷バランスを使用用途に対して容易に最適化することが可能となる。
図4は前記ナットハウジング31に収容された各ナット要素4の位相を更に容易に調整するための構成を示すものである。同図において、前記ナットハウジング31の中空部30の内周面には周方向に等間隔で複数の係止平面36が設けられている。図4に示す例では前記ナットハウジング31に対して六つの係止平面36が設けられており、互いに隣接する係止平面36の垂線は60度の角度で交わっている。
一方、前記ナットハウジング31の中空部30に収容される前記ナット要素4の外周面には、周方向に等間隔で複数の位置決め平面46が設けられている。これら位置決め平面46は、前記ナット要素4を前記ナットハウジング31に収容した際に、当該ナットハウジング31の係止平面36に適合する。これにより、前記ナット要素4を前記ナットハウジング31の中空部30内に収容すると、前記係止平面36と前記位置決め平面46が互いに接することにより、当該中空部30内における前記ナット要素4の周方向の位置が決定されることになる。
このため、図4に示す例では、前記ナット要素4の周方向の位置を前記ナットハウジング31に対して60度の角度ずつ段階的に変更することが可能であり、前記ナットハウジング31に複数のナット要素4を収容した場合、各ナット要素4の位相を前記ねじ軸2の周囲で60度ずつオフセットして配置することができる。従って、前記ナットハウジング31に対して複数のナット要素4を組付ける際に、各ナット要素4の位相を目視によって明確に調整することができ、本発明のボールねじ装置1をより容易に組み立てることが可能となる。但し、この場合であっても、前記位相調整スペーサ5の厚みは、前述の如く、オフセット角度に応じて変更することが必要である。
尚、図4に示した例では、六つの前記係止平面36を前記ナットハウジング31の中空部30の内周面に対して周方向へ60度の角度で均等に配置したが、係止平面36の数は任意で差し支えなく、例えば八つの係止平面36を周方向へ45度の角度で均等に配置してもよい。
そして、以上のように構成された本発明のボールねじ装置によれば、前記ナットハウジング31の中空部30内に収容し配列するナット要素4の数を任意に変更することで、ボールねじ装置1の荷重負荷能力の増減を容易に実施することができ、使用用途に適した荷重負荷能力のボールねじ装置1を容易に生産することが可能となる。また、前記ナットハウジング31内で互いに隣接するナット要素4の間に配置される位相調整スペーサ5の厚みを変更することで、前記ねじ軸2の周囲における各ナット要素4の無負荷軌道43の配置を任意に調整することができ、当該ねじ軸2の周囲における荷重の負荷バランスを容易に最適化することが可能となる。すなわち、本発明のボールねじ装置によれば、荷重負荷能力及び前記ねじ軸2の周囲における荷重の負荷バランスを、当該ボールねじ装置の使用用途に応じて容易に且つ柔軟に与えることが可能である。
1…ボールねじ装置、2…ねじ軸、3…ナット部材、4…ナット要素、5…位相調整スペーサ、30…中空部、31…ナットハウジング、36…係止平面、40…ボール、46…位置決め平面
Claims (3)
- 多数のボールと、
前記多数のボールが転動する螺旋状の転動溝を外周面に有するねじ軸と、
前記多数のボールの無限循環路を有すると共に前記多数のボールを介して前記ねじ軸に螺合するナット部材と、を備え、
前記ナット部材は、
前記ねじ軸を囲むリング状に形成されると共に当該ねじ軸の周囲一巻き分の無限循環路を有するナット要素と、
前記ナット要素を収容する中空部を有すると共に、前記ナット要素を前記ねじ軸の軸方向へ複数重ねて当該中空部内に収容するナットハウジングと、
前記ナットハウジングの中空部内で互いに隣接する前記ナット要素の間に設けられる位相調整スペーサと、を備えたことを特徴とするボールねじ装置。 - 前記ナットハウジングの中空部の内周面には周方向に等間隔で複数の係止平面が設けられる一方、前記ナット要素の外周面には前記ナットハウジングの係止平面に適合する位置決め面が設けられていることを特徴とする請求項1記載のボールねじ装置。
- 前記ナット要素はリング状に形成された複数の部材を組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1記載のボールねじ装置。
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